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特表2024-503380コンジュゲート連結部分を調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】コンジュゲート連結部分を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 41/00 20060101AFI20240118BHJP
   C07C 323/17 20060101ALI20240118BHJP
   C07C 319/06 20060101ALI20240118BHJP
   C07B 57/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240118BHJP
   C12N 11/08 20200101ALI20240118BHJP
   C12P 7/02 20060101ALI20240118BHJP
   C12P 11/00 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 9/20 20060101ALN20240118BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
C12P41/00 K ZNA
C07C323/17
C07C319/06
C07B57/00 380
A61K38/16
A61P35/00
A61K47/54
C12N11/08
C12P7/02
C12P11/00
C12N9/20
C07K14/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541615
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 US2022011629
(87)【国際公開番号】W WO2022150596
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/135,088
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522010576
【氏名又は名称】サイブレクサ 2,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Cybrexa 2, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】マグワイア,ロバート ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン フリート,ミヒル クリスティアン アレクサンデル
(72)【発明者】
【氏名】スフーファールト.ウィレム ロベルト クラース
【テーマコード(参考)】
4B033
4B064
4C076
4C084
4H006
4H045
【Fターム(参考)】
4B033NA27
4B033NB12
4B033NB36
4B033NB62
4B033ND02
4B033NG09
4B033NH09
4B064AC12
4B064AC13
4B064AE61
4B064CA21
4B064CA35
4B064CA38
4B064CB30
4B064CD06
4B064CD11
4B064DA16
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA06
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA32
4C084CA59
4C084NA06
4C084NA13
4C084ZB262
4H006AA02
4H006AC63
4H006AC83
4H045AA20
4H045BA18
4H045BA50
4H045EA60
(57)【要約】
本発明は、治療用分子(例えば、細胞傷害性薬剤)と標的化部分(例えば、タンパク質、ペプチド、抗体、ナノ粒子、核酸)とのコンジュゲーションにおいて有用であるリンカーを調製するための方法に関する。該方法の間、Candida antarctica由来のリパーゼBのようなリパーゼを使用して、アシル化剤の存在下で(S,S)-2-ベンジルチオシクロヘキサノールまたは(S,S)-2-ベンジルチオシクロヘプタノールのエナンチオ選択的分割を行い、これらを脱保護のために還元することにより、(S,S)-2-メルカプトシクロヘキサノールまたは(S,S)-2-メルカプトシクロペンタノールを得、次いでこれらを、治療薬を標的化部分に連結するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A1)の化合物
【化1】
またはその塩(式中、環Aは、C5-7シクロアルキルまたは5~7員ヘテロシクロアルキルである)を調製するための方法であって、
a)式(A4)の化合物
【化2】
またはその塩(式中、Zは保護基である)を、酵素の存在下で、Ak1(ここで、Ak1はアシル化試薬である)で処理して、式(A2)の化合物及び式(A3)の化合物、
【化3】
またはそれらの塩の混合物(式中、Rは、COOHにより任意選択で置換されるC1-6アルキルである)を得ることと、
b)前記式(A2)の化合物またはその塩を脱保護して、式(A1)の化合物またはその塩を得ることと、を含む、前記方法。
【請求項2】
環Aが、C5-7シクロアルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
環Aが、シクロヘキシルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記式(A1)の化合物が、化合物1:
【化4】
である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
Zが、-CH(式中、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、前記5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、前記C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから独立して選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
が、フェニルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Ak1が、無水グルタル酸、無水コハク酸、または酢酸イソプロペニルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
Ak1が、無水グルタル酸である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
が、CH、CHCHCOOH、またはCHCHCHCOOHである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
が、CHCHCHCOOHである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素が、Candida antarcticaに由来するリパーゼ酵素である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記酵素が、Candida antarcticaに由来するリパーゼBである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記酵素が、固体支持体上に固定化される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記固体支持体が、アクリルビーズを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(A4)の化合物のAk1での前記処理が、約15℃~約20℃の温度で実施される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
式(A4)の化合物のAk1での前記処理が、室温で実施される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
式(A4)の化合物のAk1での前記処理が、約6時間~約24時間の期間にわたって実施される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
式(A4)の化合物のAk1での前記処理が、約16時間の期間にわたって実施される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
式(A4)の化合物のAk1での前記処理が、S1の存在下で実施され、ここで、S1が溶媒である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
S1が、エーテル溶媒である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
S1が、メチルtert-ブチルエーテルである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
S1が、2-メチルテトラヒドロフランである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記式(A3)の化合物から前記式(A2)の化合物を分離するステップをさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記分離が、前記混合物を塩基水溶液で処理し、前記混合物から前記水層を分離することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記塩基水溶液が、炭酸ナトリウム水溶液である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
Zが、-CHであり、前記脱保護が、前記式(A2)の化合物をRA1で還元することを含み、ここで、RA1が還元剤である、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
RA1が、リチウム金属、ナトリウム金属、またはカルシウム金属である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
RA1が、リチウム金属である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記還元が、S2の存在下で実行され、ここで、S2が溶媒である、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
S2が、エーテル溶媒である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
S2が、2-メチルテトラヒドロフランである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
化合物1が、75%超のエナンチオマー過剰率で単離される、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
化合物1が、90%超のエナンチオマー過剰率で単離される、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
化合物1が、95%超のエナンチオマー過剰率で単離される、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記式(A4)の化合物が、式(A5)の化合物
【化5】
またはその塩を、RCHSH(式(6))、またはその塩と反応させて、前記式(A4)の化合物またはその塩を得ることを含む方法によって調製される、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記式(A5)の化合物またはその塩と、RCHSH(式(6))、またはその塩との前記反応が、M1の存在下で実施され、ここで、M1が金属触媒である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
M1が、亜鉛塩である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
M1が、(D)-酒石酸亜鉛である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記式(A5)の化合物またはその塩と、RCHSH(式(6))との前記反応が、B1の存在下で実施され、ここで、B1が塩基である、請求項35~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
B1が、アルコキシド塩基である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
B1が、ナトリウムエトキシドである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記式(A5)の化合物と前記式(6)の化合物との前記反応が、S3の存在下で実施され、ここで、S3が溶媒である、請求項36~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
S3が、ハロゲン化溶媒またはエーテル溶媒である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
S3が、ジクロロメタンである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
S3が、2-メチルテトラヒドロフランである、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記式(A4)の化合物が、25%超のエナンチオマー過剰率で単離される、請求項35~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記式(A4)の化合物が、50%超のエナンチオマー過剰率で単離される、請求項35~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記式(A4)の化合物が、70%超のエナンチオマー過剰率で単離される、請求項35~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
式(1)の化合物
【化6】
またはその塩(式中、mは、0、1、または2である)を調製するための方法であって、
a)式(4)の化合物
【化7】
またはその塩(式中、Zは保護基である)を、酵素の存在下で、Ak1(ここで、Ak1はアシル化試薬である)で処理して、式(2)の化合物及び式(3)の化合物、
【化8】
またはそれらの塩の混合物(式中、Rは、COOHにより任意選択で置換されるC1-6アルキルである)を得ることと、
b)前記式(2)の化合物またはその塩を脱保護して、式(1)の化合物またはその塩を得ることと、を含む、前記方法。
【請求項50】
mが1である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
式(8)の化合物:
【化9】
またはその塩(式中、mは、0、1、または2であり、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、前記5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、前記C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから独立して選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)を調製するための方法であって、
式(7)の化合物
【化10】
またはその塩を、酵素の存在下でAk2(ここで、Ak2はアシル化試薬である)と反応させて、式(8)の化合物及び式(9)の化合物、
【化11】
またはそれらの塩の混合物(式中、Rは、COOHにより任意選択で置換されるC1-6アルキルである)を得ることを含む、前記方法。
【請求項52】
式(A-I)の化合物:
【化12】
またはその薬学的に許容される塩(式中、
環Aは、C5-7シクロアルキルまたは5~7員ヘテロシクロアルキルであり、
は、標的化部分であり、
は、治療部分である)、
を調製するための方法であって、
a)請求項1~48のいずれか1項に記載の方法によって調製される式(A1)の化合物またはその塩を、R-S-S-Rと反応させて、式(A8)の化合物
【化13】
またはその塩(式中、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、前記5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、前記C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから独立して選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)を得ることと、
b)式(A8)の化合物またはその塩を、ROC(O)Rと反応させて、式(A-1B)の化合物
【化14】
またはその塩(式中、
は、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、前記5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、前記C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換され、
は、ハロまたはORF1であり、ここで、ORF1が、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、前記5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、前記C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)を得ることと、
c)前記式(A-1B)の化合物またはその塩を、RHと反応させて、式(A-1C)の化合物
【化15】
またはその塩を得ることと、
d)式(A-1C)の化合物またはその塩を、RHと反応させて、式(A-I)の化合物を得ることと、を含む、前記方法。
【請求項53】
前記式(A-I)の化合物が、式(A-I)’:
【化16】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
が、以下の配列:
ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWCG(配列番号1;Pv1)、
AEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADECG(配列番号2;Pv2)、及び
ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWDADECG(配列番号3;Pv3)、
のうちの少なくとも1つを含むペプチドであり、Rが、Rのシステイン残基を介して前記式(I)の化合物のS原子に結合している、請求項52または53に記載の方法。
【請求項55】
が、ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWCG(配列番号1;Pv1)であり、Rが、Rのシステイン残基を介して前記式(I)の化合物のS原子に結合している、請求項52または53に記載の方法。
【請求項56】
が、トポイソメラーゼI標的化部分である、請求項52~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
が、
【化17】
である、請求項52~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記式(A-I)の化合物が、
【化18】
である、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
請求項1~48のいずれか1項に記載の方法によって調製される、式(A1)の化合物またはその塩。
【請求項60】
請求項49または50に記載の方法によって調製される、式(1)の化合物またはその塩。
【請求項61】
請求項51に記載の方法によって調製される、式(8)の化合物またはその塩。
【請求項62】
請求項52~58のいずれか1項に記載の方法によって調製される、式(I)の化合物またはその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用分子(例えば、細胞傷害性薬剤)と標的化部分(例えば、タンパク質、ペプチド、抗体、ナノ粒子、核酸)とのコンジュゲーションにおいて有用であるリンカーを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、細胞増殖の異常な制御を特徴とする一群の疾患である。がんの年間発生率は、米国だけで160万人を超えると推定されている。がんは、外科手術、放射線、化学療法、及びホルモンを使用して治療されるが、それは米国における死亡原因の第2位にとどまり、追加の治療戦略が必要とされる。悪性腫瘍を標的とするための実現可能で継続的に探求されている方策として薬物コンジュゲートが台頭している。
【0003】
化学療法薬の選択性は過去数十年間にわたって前進しているにもかかわらず、慣習的な細胞傷害性化学療法薬は、多くの場合、十分な特異性及び標的化効果が欠如していることから、正常な非がん性細胞に対する損傷を引き起こし、これが重篤な有害反応につながり得る。標的化部分(例えば、ペプチド、タンパク質、または抗体)に連結された薬物(例えば、細胞傷害性薬剤)から構成される薬物コンジュゲートが、腫瘍標的療法における使用に向けて開発されてきた。薬物コンジュゲートは、病変組織への薬物の優先的な送達を可能にすることにより、非がん性組織に対する障害等の望まれない副作用を低減し得る。例えば、Vrettos,V.,“On the design principles of peptide-drug conjugates for targeted drug delivery to the malignant tumor site,”Beilstein J.Org.Chem.2018,14:930-954を参照されたい。
【0004】
新たな薬物コンジュゲートの設計における重要な側面として、薬物を標的化部分に連結する基であるリンカーの開発が台頭している。リンカーは、望ましくは、標的とする病変細胞への薬物の送達を可能にするのに十分にインビボで安定している。さらに、リンカーは、標的化部分のその標的への結合親和性を撹乱すべきでない。最後に、薬物が標的に局在化した後に、リンカーは、放出された薬物がその標的に結合し得るように薬物を放出することができるべきである。Lu,J.,“Linkers Having a Crucial Role in Antibody-Drug Conjugates,”Int.J.Mol.Sci.2016,17,1-22、及びCorso A.D.,“Innovative Linker Strategies for Tumor-Targeted Drug Conjugates,”Chem.Eur.J.2019,25(65):14740-14757を参照されたい。故に、新たなリンカー及びそれらを作製するための方法の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、式(A1)の化合物
【化1】
またはその塩(式中、環Aは、C5-7シクロアルキルまたは5~7員ヘテロシクロアルキルである)を調製するための方法が提供され、該方法は、
a)式(A4)の化合物
【化2】
またはその塩(式中、Zは保護基である)を、酵素の存在下で、Ak1(ここで、Ak1はアシル化試薬である)で処理して、式(A2)の化合物及び式(A3)の化合物、
【化3】
またはそれらの塩の混合物(式中、Rは、COOHにより任意選択で置換されるC1-6アルキルである)を得ることと、
b)式(A2)の化合物またはその塩を脱保護して、式(A1)の化合物またはその塩を得ることと、を含む。
【0006】
また、本明細書では、式(A-I)の化合物:
【化4】
またはその薬学的に許容される塩(式中、
環Aは、C5-7シクロアルキルまたは5~7員ヘテロシクロアルキルであり、
は、標的化部分であり、
は、治療部分である)、
を調製するための方法が提供され、該方法は、
a)請求項1~48のいずれか1項に記載の方法によって調製される式(A1)の化合物またはその塩を、R-S-S-Rと反応させて、式(A8)の化合物
【化5】
またはその塩(式中、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)を得ることと、
b)式(A8)の化合物またはその塩を、ROC(O)OR(式中、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールは、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールは各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)と反応させて、式(A-1B)の化合物
【化6】
またはその塩を得ることと、
c)式(A-1B)の化合物またはその塩を、RHと反応させて、式(A-1C)の化合物
【化7】
またはその塩を得ることと、
式(A-1C)の化合物またはその塩を、RHと反応させて、式(A-I)の化合物を得ることと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
式(A1)の化合物の調製
本明細書では、例えば、細胞傷害性薬剤等の治療剤のコンジュゲートを調製するのに有用である、式(A1)の化合物
【化8】
またはその塩(式中、環Aは、C5-7シクロアルキルまたは5~7員ヘテロシクロアルキルである)を調製するための方法が提供される。
【0008】
式(A1)の化合物を調製するための方法は、米国特許公開第US2019/209580号、米国特許出願第16/925,094号(米国公開第2021/0009719号)、及び米国特許出願第16/924,445号(米国公開第2021/0009536号)に記載される。本開示は、より良い収量、拡張性を提示すると共に、精製のためにさほど徹底的な手順を必要としないことにより、式(A1)の化合物を調製するための以前に開示された方法に勝る利点を提供する。特に、本開示は、式(A1)の化合物のエナンチオマーの酵素触媒による分割を可能にする。本開示はさらに、式(A1)の化合物の前駆体である式(A4)の化合物のエナンチオ選択的合成を提供する。対照的に、以前に開示された方法は、本明細書で提供される方法よりも大規模な実施がより困難で、より費用がかかる、HPLCを介したまたはキラルクロマトグラフィーを用いたエナンチオマーの分離に依存していた。
【0009】
本明細書では、式(A1)の化合物
【化9】
またはその塩(式中、環Aは、C5-7シクロアルキルまたは5~7員ヘテロシクロアルキルである)を調製するための方法が提供され、該方法は、
a)式(A4)の化合物
【化10】
またはその塩(式中、Zは保護基である)を、酵素の存在下で、Ak1(ここで、Ak1はアシル化試薬である)で処理して、式(A2)の化合物及び式(A3)の化合物、
【化11】
またはそれらの塩の混合物(式中、Rは、COOHにより任意選択で置換されるC1-6アルキルである)を得ることと、
b)式(A2)の化合物またはその塩を脱保護して、式(A1)の化合物またはその塩を得ることと、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、環Aは、C5-7シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、環Aは、シクロペンチルである。いくつかの実施形態では、環Aは、シクロヘキシルである。いくつかの実施形態では、環Aは、シクロヘプチルである。
【0011】
いくつかの実施形態では、環Aは、C5-7シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、環Aは、シクロペンチルである。いくつかの実施形態では、環Aは、シクロヘキシルである。いくつかの実施形態では、環Aは、シクロヘプチルである。
【0012】
いくつかの実施形態では、環Aは、5~7員ヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、環Aは、5員ヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、環Aは、6員ヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、環Aは、7員ヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態では、環Aは、テトラヒドロフラニルである。いくつかの実施形態では、環Aは、テトラヒドロピラニルである。
【0013】
また、本明細書では、式(1)の化合物
【化12】
またはその塩(式中、mは、0、1、または2である)を調製するための方法が提供され、該方法は、
a)式(4)の化合物
【化13】
またはその塩(式中、Zは保護基である)を、
酵素の存在下で、Ak1(ここで、Ak1はアシル化試薬である)で処理して、式(2)の化合物及び式(3)の化合物、
【化14】
またはそれらの塩の混合物(式中、Rは、COOHにより任意選択で置換されるC1-6アルキルである)を得ることと、
b)式(2)の化合物またはその塩を脱保護して、式(1)の化合物またはその塩を得ることと、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、mは0である。いくつかの実施形態では、mは1である。いくつかの実施形態では、mは2である。
【0015】
いくつかの実施形態では、Zは、-CH(式中、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから独立して選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)である。
【0016】
いくつかの実施形態では、Rは、C6-10アリールである。いくつかの実施形態では、Rは、フェニルである。
【0017】
いくつかの実施形態では、Ak1は、無水グルタル酸、無水コハク酸、または酢酸イソプロペニルである。いくつかの実施形態では、Ak1は、無水グルタル酸である。いくつかの実施形態では、Ak1は、無水コハク酸である。いくつかの実施形態では、Ak1は、酢酸イソプロペニルである。
【0018】
いくつかの実施形態では、Rは、CH、CHCHCOOH、またはCHCHCHCOOHである。いくつかの実施形態では、Rは、CHである。いくつかの実施形態では、Rは、CHCHCOOHである。いくつかの実施形態では、Rは、CHCHCHCOOHである。
【0019】
本明細書で使用されるとき、「酵素」という用語は、化学反応を触媒するタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、酵素は、エステル化(例えば、アルコールからのエステルの形成)反応を触媒し得る。いくつかの実施形態では、酵素は、エナンチオ選択的様態で(例えば、反対のエナンチオマーよりも一方のエナンチオマーの形成に有利である)エステル化反応を触媒し得る。いくつかの実施形態では、酵素は、リパーゼ酵素である。
【0020】
本明細書で使用されるとき、「リパーゼ酵素」という用語は、自然条件で(例えば、水性媒体中で)脂質の加水分解を触媒する酵素を指す。非水性媒体(例えば、有機溶媒)中では、ある特定のリパーゼ酵素が、エステル化反応(例えば、アルコールのエステルへの変換)を触媒し得る。有機溶媒中で、エナンチオ選択的様態で(例えば、反対のエナンチオマーよりも一方のエナンチオマーの形成に有利である)エステル化反応を触媒することができるリパーゼ酵素は、当該技術分野で既知である。例えば、Kumar et al.,“Lipase catalysis in organic solvents:advantages and applications,”Biol.Proced.Online 2016;18:2、Ducret,A.,“Lipase-catalyzed enantioselective esterification of ibuprofen in organic solvents under controlled water activity,”Enzyme and Microbial Technology 1998,22(4):212-216を参照されたい。
【0021】
いくつかの実施形態では、酵素は、固体支持体上に固定化される(すなわち、反応媒体に不溶性である固体に結合される)。酵素は、例えば、固体支持体上の官能基への共有結合、固体支持体上への吸着、及び固体支持体上の捕捉または封入により固体支持体に結合され得る。固体基板上に固定化することにより、酵素の安定性を増加させ、生成物の回収及び酵素の再利用を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、固体支持体は、シリカまたは無機酸化物である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、活性炭または改質もしくは未改質木炭である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、合成ポリマー(例えば、アミノ及びカルボキシルプラズマ活性化ポリプロピレンフィルム、ならびにメタクリレートのコポリマー)である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、Immobeadである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、イオン交換樹脂(例えば、Amberlite及びSepabeads)である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、シリカゲルである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、ポリスチレンである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、セルロースナノクリスタルである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、キトサンである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、アクリルビーズである。酵素固定化技法は、当該技術分野で周知されている。Zdarta,J.,“A General Overview of Support Materials for Enzyme Immobilization:Characteristics,Properties,Practical Utility,”Catalysts 2018,8,92,1-27、及びMiletic,N.,“Immobilization of Candida antarctica lipase B on polystyrene nanoparticles,”Macromolecular Rapid Communications,2010,31(1):71-74を参照されたい。
【0022】
いくつかの実施形態では、酵素は、細菌または真菌源に由来するリパーゼ酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、真菌源に由来するリパーゼ酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、細菌源に由来するリパーゼ酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、Candida antarctica、Rhizomucor miehei、Thermomyces lanuginosa、Candida rugosa、Pseudomonas cepacia、Pseudomonas fluorescens、Rhizopus oryzae、Mucor javanicus、Aspergillus niger、Rhizopus niveus、Alcaligenes属菌、Resinase HT、Lipex 100L、Novozymes Stickaway、Candida cylindracea属菌、またはBacillus subtilisに由来するリパーゼ酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、Candida antarcticaに由来するリパーゼ酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、Candida antarcticaリパーゼBである。酵素は、Novozymes、Genencor、Sigma-Aldrich、c-Lecta、Aum Enzymesから入手することができ、例えば、Immobead COV-1等の固体基板上に固定化することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、酵素は、以下のうちの1つから選択される:
乾燥アクリルビーズに共有結合させたCandida antarctica由来のリパーゼA、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたCandida antarctica由来のリパーゼB、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたCandida antarctica由来のジェネリックリパーゼB、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたRhizomucor miehei由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたThermomyces lanuginosa由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたCandida rugosa由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたPseudomonas cepacia由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたPseudomonas fluorescens由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたRhizopus oryzae由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたMucor javanicus由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたAspergillus niger由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたRhizopus niveus由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたAlcaligenes属菌由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたリパーゼResinase HT、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたリパーゼLipex 100L、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたFusarium solani pisi、Novozyme 51032由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたCandida cylindracea属菌由来のリパーゼ、及び
乾燥アクリルビーズに共有結合させたBacillus subtilis由来のリパーゼ。
【0024】
いくつかの実施形態では、酵素は、以下のうちの1つから選択される:
ChiralVision製品番号IMMCALA-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMCALB-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMCALBY-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMRML-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMTLL-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMCRL-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMABC-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMAPF-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMARO-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMAMJ-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMANA-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMRNA-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMASMQ-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMRES-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMLIPX-T2-150、
ChiralVision製品番号IMML51-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMCCMO-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMAULI-T2-150、及び
ChiralVision製品番号CaLB-ADS4。
【0025】
いくつかの実施形態では、酵素は、ChiralVision製品番号IMMCALB-T2-150である。いくつかの実施形態では、酵素は、ChiralVision製品番号CaLB-ADS4である。
【0026】
式(A4)の化合物のAk1での処理は、約15℃~約20℃の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、式(A4)の化合物のAk1での処理は、室温で実施される。
【0027】
式(A4)の化合物のAk1での処理は、約6時間~約24時間の期間にわたって実施され得る。いくつかの実施形態では、式(A4)の化合物のAk1での処理は、約16時間の期間にわたって実施される。
【0028】
式(A4)の化合物のAk1での処理は、S1の存在下で実施され得、ここで、S1は溶媒である。いくつかの実施形態では、S1は、エーテル溶媒である。いくつかの実施形態では、S1は、メチルtert-ブチルエーテルである。いくつかの実施形態では、S1は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0029】
該方法は、式(A3)の化合物から式(A2)の化合物を分離するステップをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、分離は、混合物を塩基水溶液で処理し、混合物から水層を分離することを含む。いくつかの実施形態では、塩基水溶液は、炭酸ナトリウム水溶液である。
【0030】
いくつかの実施形態では、Zは、-CHであり、脱保護は、式(A2)の化合物をRA1で還元することを含み、ここで、RA1は、還元剤である。いくつかの実施形態では、Rは、フェニルである。
【0031】
いくつかの実施形態では、RA1は、リチウム金属、ナトリウム金属、またはカルシウム金属である。いくつかの実施形態では、RA1は、リチウム金属である。
【0032】
還元は、S2の存在下で実行され得、ここで、S2は溶媒である。いくつかの実施形態では、S2は、エーテル溶媒である。いくつかの実施形態では、S2は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0033】
いくつかの実施形態では、式(A1)の化合物は、75%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A1)の化合物は、90%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A1)の化合物は、95%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A1)の化合物は、99%超のエナンチオマー過剰率で単離される。
【0034】
いくつかの実施形態では、化合物1は、75%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、化合物1は、90%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、化合物1は、95%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、化合物1は、99%超のエナンチオマー過剰率で単離される。
【0035】
式(A4)の化合物は、式(A5)の化合物
【化15】
またはその塩を、RCHSH(式(6))、またはその塩と反応させて、式(A4)の化合物またはその塩を得ることを含む方法によって調製され得、式中、Rは、本明細書で定義される通りである。
【0036】
いくつかの実施形態では、式(A5)の化合物またはその塩と、RCHSH(式(6))、またはその塩との反応は、M1の存在下で実施され、ここで、M1は金属触媒である。いくつかの実施形態では、M1は、亜鉛塩である。いくつかの実施形態では、M1は、(D)-酒石酸亜鉛である。
【0037】
式(A5)の化合物またはその塩と、RCHSH(式(6))との反応は、B1の存在下で実施され得、ここで、B1は塩基である。いくつかの実施形態では、B1は、アルコキシド塩基である。いくつかの実施形態では、B1は、ナトリウムエトキシドである。
【0038】
式(A5)の化合物と式(A6)の化合物との反応は、S3の存在下で実施され得、ここで、S3は溶媒である。いくつかの実施形態では、S3は、ハロゲン化溶媒またはエーテル溶媒である。いくつかの実施形態では、S3は、ジクロロメタンである。いくつかの実施形態では、S3は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0039】
いくつかの実施形態では、式(A4)の化合物は、25%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A4)の化合物は、50%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A4)の化合物は、70%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A4)の化合物は、80%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A4)の化合物は、90%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A4)の化合物は、95%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A4)の化合物は、99%超のエナンチオマー過剰率で単離される。
【0040】
式(4)の化合物は、式(5)の化合物
【化16】
またはその塩を、RCHSH(式(6))、またはその塩と反応させて、式(4)の化合物またはその塩を得ることを含む方法によって調製され得、式中、m及びRは、本明細書で定義される通りである。
【0041】
いくつかの実施形態では、mは0である。いくつかの実施形態では、mは1である。いくつかの実施形態では、mは2である。
【0042】
いくつかの実施形態では、式(5)の化合物またはその塩と、RCHSH(式(6))、またはその塩との反応は、M1の存在下で実施され、ここで、M1は金属触媒である。いくつかの実施形態では、M1は、亜鉛塩である。いくつかの実施形態では、M1は、(D)-酒石酸亜鉛である。
【0043】
式(5)の化合物またはその塩と、RCHSH(式(6))との反応は、B1の存在下で実施され得、ここで、B1は塩基である。いくつかの実施形態では、B1は、アルコキシド塩基である。いくつかの実施形態では、B1は、ナトリウムエトキシドである。
【0044】
式(5)の化合物と式(6)の化合物との反応は、S3の存在下で実施され得、ここで、S3は溶媒である。いくつかの実施形態では、S3は、ハロゲン化溶媒またはエーテル溶媒である。いくつかの実施形態では、S3は、ジクロロメタンである。いくつかの実施形態では、S3は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0045】
いくつかの実施形態では、式(4)の化合物は、25%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(4)の化合物は、50%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(4)の化合物は、70%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(4)の化合物は、80%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(4)の化合物は、90%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(4)の化合物は、95%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(4)の化合物は、99%超のエナンチオマー過剰率で単離される。
【0046】
いくつかの実施形態では、式(A1)の化合物は、式(1)の化合物
【化17】
またはその塩であり、式中、mは、0、1、または2である。
【0047】
いくつかの実施形態では、式(A2)の化合物は、式(2)の化合物
【化18】
またはその塩であり、式中、mは、0、1、または2である。
【0048】
いくつかの実施形態では、式(A3)の化合物は、式(3)の化合物
【化19】
またはその塩であり、式中、mは、0、1、または2である。
【0049】
いくつかの実施形態では、式(A4)の化合物は、式(4)の化合物
【化20】
またはその塩であり、式中、mは、0、1、または2である。
【0050】
いくつかの実施形態では、式(A5)の化合物は、式(5)の化合物
【化21】
またはその塩であり、式中、mは、0、1、または2である。
【0051】
いくつかの実施形態では、mは0である。いくつかの実施形態では、mは1である。いくつかの実施形態では、mは2である。
【0052】
いくつかの実施形態では、式(1)の化合物は、化合物1:
【化22】
である。
【0053】
いくつかの実施形態では、式(2)の化合物は、化合物2:
【化23】
である。
【0054】
いくつかの実施形態では、式(3)の化合物は、化合物3:
【化24】
である。
【0055】
いくつかの実施形態では、式(4)の化合物は、化合物4:
【化25】
である。
【0056】
いくつかの実施形態では、式(5)の化合物は、化合物5:
【化26】
である。
【0057】
いくつかの実施形態では、式(6)の化合物は、ベンジルメルカプタンである。
【0058】
また、本明細書では、下記式を有する化合物1:
【化27】
またはその塩を調製するための方法が提供され、該方法は、
a)下記式を有する化合物5:
【化28】
またはその塩を、ベンジルメルカプタンと反応させて、下記式を有する化合物4:
【化29】
またはその塩を得ることと、
b)化合物4を、酵素の存在下で、無水グルタル酸で処理して、化合物2及び化合物3、
【化30】
またはそれらの塩の混合物を得ることと、
c)化合物2を還元して、化合物1を得ることと、を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、酵素は、リパーゼ酵素である。
【0060】
また、本明細書では、本明細書に記載の式(A1)の化合物を調製するための方法のうちのいずれかによって調製される式(A1)の化合物が提供される。
【0061】
化合物A8及び化合物8の調製
本明細書では、治療薬としてのコンジュゲートを調製する上で有用であるコンジュゲートリンカーである、式A8の化合物を調製するための方法が提供される。
【0062】
本明細書では、式(A8)の化合物:
【化31】
またはその塩(式中、
環Aは、C5-7シクロアルキルまたは5~7員ヘテロシクロアルキルであり、
は、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから独立して選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)、
を調製するための方法が提供され、該方法は、式(A7)の化合物
【化32】
またはその塩を、酵素の存在下でAk2(ここで、Ak2はアシル化試薬である)と反応させて、式(A8)の化合物及び式(A9)の化合物、
【化33】
またはそれらの塩の混合物(式中、Rは、COOHにより任意選択で置換されるC1-6アルキルである)を得ることを含む。
【0063】
本明細書では、治療薬としてのコンジュゲートを調製する上で有用であるコンジュゲートリンカーである、化合物8を調製するための方法が提供される。
【0064】
本明細書では、式(8)の化合物:
【化34】
またはその塩(式中、mは、0、1、または2であり、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから独立して選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)を調製するための方法が提供され、該方法は、
式(7)の化合物
【化35】
またはその塩を、酵素の存在下でAk2(ここで、Ak2はアシル化試薬である)と反応させて、式(8)の化合物及び式(9)の化合物、
【化36】
またはそれらの塩の混合物(式中、Rは、COOHにより任意選択で置換されるC1-6アルキルである)を得ることを含む。
【0065】
式(A7)及び式(7)の化合物、ならびにそれらを調製するための方法は、米国特許公開第US2019/209580号、米国特許出願第16/925,094号、及び米国特許出願第16/924,445号に記載される。
【0066】
いくつかの実施形態では、mは0である。いくつかの実施形態では、mは1である。いくつかの実施形態では、mは2である。
【0067】
いくつかの実施形態では、Ak2は、無水グルタル酸、無水コハク酸、または酢酸イソプロペニルである。いくつかの実施形態では、Ak2は、無水グルタル酸である。いくつかの実施形態では、Ak2は、無水コハク酸である。いくつかの実施形態では、Ak2は、酢酸イソプロペニルである。
【0068】
いくつかの実施形態では、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される。いくつかの実施形態では、Rは、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される5~10員ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Rは、5~10員ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Rは、ピリジニルである。
【0069】
いくつかの実施形態では、Rは、CH、CHCHCOOH、またはCHCHCHCOOHである。いくつかの実施形態では、Rは、CHである。いくつかの実施形態では、Rは、CHCHCOOHである。いくつかの実施形態では、Rは、CHCHCHCOOHである。
【0070】
いくつかの実施形態では、酵素は、リパーゼ酵素である。
【0071】
いくつかの実施形態では、酵素は、固体支持体上に固定化される(すなわち、反応媒体に不溶性である固体に結合される)。酵素は、例えば、固体支持体上の官能基への共有結合、固体支持体上への吸着、及び固体支持体上の捕捉または封入により固体支持体に結合され得る。固体基板上に固定化することにより、酵素の安定性を増加させ、生成物の回収及び酵素の再利用を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、固体支持体は、シリカまたは無機酸化物である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、活性炭または改質もしくは未改質木炭である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、合成ポリマー(例えば、アミノ及びカルボキシルプラズマ活性化ポリプロピレンフィルム、ならびにメタクリレートのコポリマー)である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、Immobeadである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、イオン交換樹脂(例えば、Amberlite及びSepabeads)である。いくつかの実施形態では、固体支持体は、シリカゲルである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、ポリスチレンである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、セルロースナノクリスタルである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、キトサンである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、アクリルビーズである。酵素固定化技法は、当該技術分野で周知されている。Zdarta,J.,“A General Overview of Support Materials for Enzyme Immobilization:Characteristics,Properties,Practical Utility,”Catalysts 2018,8,92,1-27、及びMiletic,N.,“Immobilization of Candida antarctica lipase B on polystyrene nanoparticles,”Macromolecular Rapid Communications,2010,31(1):71-74を参照されたい。
【0072】
いくつかの実施形態では、酵素は、細菌または真菌源に由来するリパーゼ酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、真菌源に由来するリパーゼ酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、細菌源に由来するリパーゼ酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、Candida antarctica、Rhizomucor miehei、Thermomyces lanuginosa、Candida rugosa、Pseudomonas cepacia、Pseudomonas fluorescens、Rhizopus oryzae、Mucor javanicus、Aspergillus niger、Rhizopus niveus、Alcaligenes属菌、Resinase HT、Lipex 100L、Novozymes Stickaway、Candida cylindracea属菌、またはBacillus subtilisに由来するリパーゼ酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、Candida antarcticaに由来するリパーゼ酵素である。いくつかの実施形態では、酵素は、Candida antarcticaリパーゼBである。酵素は、Novozymes、Genencor、Sigma-Aldrich、c-Lecta、Aum Enzymesから入手することができ、例えば、Immobead COV-1等の固体基板上に固定化することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、酵素は、以下のうちの1つから選択される:
乾燥アクリルビーズに共有結合させたCandida antarctica由来のリパーゼA、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたCandida antarctica由来のリパーゼB、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたCandida antarctica由来のジェネリックリパーゼB、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたRhizomucor miehei由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたThermomyces lanuginosa由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたCandida rugosa由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたPseudomonas cepacia由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたPseudomonas fluorescens由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたRhizopus oryzae由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたMucor javanicus由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたAspergillus niger由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたRhizopus niveus由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたAlcaligenes属菌由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたリパーゼResinase HT、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたリパーゼLipex 100L、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたFusarium solani pisi、Novozyme 51032由来のリパーゼ、
乾燥アクリルビーズに共有結合させたCandida cylindracea属菌由来のリパーゼ、及び
乾燥アクリルビーズに共有結合させたBacillus subtilis由来のリパーゼ。
【0074】
いくつかの実施形態では、酵素は、以下のうちの1つから選択される:
ChiralVision製品番号IMMCALA-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMCALB-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMCALBY-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMRML-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMTLL-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMCRL-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMABC-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMAPF-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMARO-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMAMJ-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMANA-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMRNA-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMASMQ-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMRES-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMLIPX-T2-150、
ChiralVision製品番号IMML51-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMCCMO-T2-150、
ChiralVision製品番号IMMAULI-T2-150、及び
ChiralVision製品番号CaLB-ADS4。
【0075】
いくつかの実施形態では、酵素は、ChiralVision製品番号IMMCALB-T2-150である。いくつかの実施形態では、酵素は、ChiralVision製品番号CaLB-ADS4である。
【0076】
式(A7)の化合物のAk2での処理は、約15℃~約20℃の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、式(A7)の化合物のAk2での処理は、室温で実施される。
【0077】
式(A7)の化合物のAk2での処理は、約12時間~約60時間の期間にわたって実施され得る。いくつかの実施形態では、式(A7)の化合物のAk2での処理は、約24時間~約48時間の期間にわたって実施される。いくつかの実施形態では、式(A7)の化合物のAk2での処理は、約48時間の期間にわたって実施される。いくつかの実施形態では、式(A7)の化合物のAk2での処理は、約42時間の期間にわたって実施される。
【0078】
式(A7)の化合物のAk1での処理は、S4の存在下で実施され得、ここで、S4は溶媒である。いくつかの実施形態では、S4は、エーテル溶媒である。いくつかの実施形態では、S4は、メチルtert-ブチルエーテルである。いくつかの実施形態では、S4は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0079】
該方法は、式(A9)の化合物から式(A8)の化合物を分離するステップをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、分離は、混合物を塩基水溶液で処理し、混合物から水層を分離することを含む。いくつかの実施形態では、塩基水溶液は、炭酸ナトリウム水溶液である。
【0080】
いくつかの実施形態では、式(A8)の化合物は、25%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A8)の化合物は、50%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A8)の化合物は、70%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A8)の化合物は、80%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A8)の化合物は、90%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A8)の化合物は、95%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(A8)の化合物は、99%超のエナンチオマー過剰率で単離される。
【0081】
式(7)の化合物のAk2での処理は、約15℃~約20℃の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、式(7)の化合物のAk2での処理は、室温で実施される。
【0082】
式(7)の化合物のAk2での処理は、約12時間~約60時間の期間にわたって実施され得る。いくつかの実施形態では、式(7)の化合物のAk2での処理は、約24時間~約48時間の期間にわたって実施される。いくつかの実施形態では、式(7)の化合物のAk2での処理は、約48時間の期間にわたって実施される。いくつかの実施形態では、式(7)の化合物のAk2での処理は、約42時間の期間にわたって実施される。
【0083】
式(7)の化合物のAk1での処理は、S4の存在下で実施され得、ここで、S4は溶媒である。いくつかの実施形態では、S4は、エーテル溶媒である。いくつかの実施形態では、S4は、メチルtert-ブチルエーテルである。いくつかの実施形態では、S4は、2-メチルテトラヒドロフランである。
【0084】
該方法は、式(9)の化合物から式(8)の化合物を分離するステップをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、分離は、混合物を塩基水溶液で処理し、混合物から水層を分離することを含む。いくつかの実施形態では、塩基水溶液は、炭酸ナトリウム水溶液である。
【0085】
いくつかの実施形態では、式(8)の化合物は、25%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(8)の化合物は、50%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(8)の化合物は、70%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(8)の化合物は、80%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(8)の化合物は、90%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(8)の化合物は、95%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、式(8)の化合物は、99%超のエナンチオマー過剰率で単離される。
【0086】
いくつかの実施形態では、式(A7)の化合物は、化合物7:
【化37】
である。
【0087】
いくつかの実施形態では、式(A8)の化合物は、化合物8:
【化38】
である。
【0088】
いくつかの実施形態では、式(A9)の化合物は、化合物9:
【化39】
である。
【0089】
別の実施形態では、本明細書では、下記式を有する化合物8:
【化40】
またはその塩を調製するための方法が提供され、該方法は、下記式を有する化合物7:
【化41】
またはその塩を、酵素の存在下で酢酸イソプロペニルと反応させて、化合物8及び化合物9、
【化42】
またはその塩の混合物を得ることを含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、化合物8は、25%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、化合物8は、50%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、化合物8は、70%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、化合物8は、80%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、化合物8は、90%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、化合物8は、95%超のエナンチオマー過剰率で単離される。いくつかの実施形態では、化合物8は、99%超のエナンチオマー過剰率で単離される。
【0091】
また、本明細書では、本明細書に記載の式(A8)の化合物を調製するための方法のうちのいずれかによって調製される式(A8)の化合物が提供される。
【0092】
式(I)の化合物の調製
本明細書では、式(A-I)の化合物:
【化43】
またはその薬学的に許容される塩(式中、
環Aは、C5-7シクロアルキル基または5~7員ヘテロシクロアルキル基であり、
は、標的化部分であり、
は、治療部分である)、
を調製するための方法が提供され、該方法は、
a)本明細書に開示される方法によって調製される式(A1)の化合物またはその塩を、R-S-S-Rと反応させて、式(A8)の化合物
【化44】
またはその塩(式中、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)を得ることと、
b)式(A8)の化合物またはその塩を、ROC(O)Rと反応させて、式(A-1B)の化合物
【化45】
またはその塩(式中、
は、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換され、
は、ハロまたはORF1であり、ここで、ORF1が、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)を得ることと、
c)該式(A-1B)の化合物またはその塩を、RHと反応させて、式(A-1C)の化合物
【化46】
またはその塩を得ることと、
d)式(A-1C)の化合物またはその塩を、RHと反応させて、式(A-I)の化合物を得ることと、を含む。
【0093】
本明細書では、式(I)の化合物:
【化47】
またはその薬学的に許容される塩(式中、
は、標的化部分であり、
は、治療部分であり、
mは、0、1、または2である)、
を調製するための方法が提供され、該方法は、
a)本明細書に開示される方法によって調製される式(1)の化合物またはその塩を、R-S-S-Rと反応させて、式(8)の化合物
【化48】
またはその塩(式中、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)を得ることと、
b)式(8)の化合物またはその塩を、ROC(O)Rと反応させて、式(1B)の化合物
【化49】
またはその塩(式中、
は、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換され、
は、ハロまたはORF1であり、ここで、ORF1が、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)を得ることと、
c)式(1B)の化合物またはその塩を、RHと反応させて、式(1C)の化合物
【化50】
またはその塩を得ることと、
d)式(1C)の化合物またはその塩を、RHと反応させて、式(I)の化合物を得ることと、を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、式(A-I)の化合物は、式(A-I)’:
【化51】
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0095】
いくつかの実施形態では、mは0である。いくつかの実施形態では、mは1である。いくつかの実施形態では、mは2である。
【0096】
いくつかの実施形態では、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Rは、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される5~10員ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Rは、5~10員ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Rは、ピリジニルである。いくつかの実施形態では、Rは、ピリジン-2-イルである。
【0097】
いくつかの実施形態では、Rは、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換されるC6-10アリールである。いくつかの実施形態では、Rは、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換されるフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは、NOで置換されたフェニルである。
【0098】
いくつかの実施形態では、Rは、ハロである。いくつかの実施形態では、Rは、クロロである。いくつかの実施形態では、Rは、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換されるC6-10アリールである。いくつかの実施形態では、Rは、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換されるフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは、NOで置換されたフェニルである。
【0099】
いくつかの実施形態では、R-S-S-Rは、炭酸ビス(5-ニトロフェニル)である。
【0100】
本明細書では、式(I)の化合物:
【化52】
またはその薬学的に許容される塩(式中、
は、標的化部分であり、
は、治療部分である)、
を調製するための方法が提供され、該方法は、
a)本明細書に開示される方法によって調製される式(1)の化合物またはその塩を、R-S-S-Rと反応させて、式(8)の化合物
【化53】
またはその塩(式中、Rは、C6-10アリールまたは5~10員ヘテロアリールであり、該5~10員ヘテロアリールが、少なくとも1個の環形成炭素原子ならびにN、O、及びSから独立して選択される1、2、3、または4個の環形成ヘテロ原子を有し、該C6-10アリール及び5~10員ヘテロアリールが各々、C1-4アルキル、ハロ、CN、NO、OH、及びOCHから独立して選択される1、2、3、4、または5つの置換基により任意選択で置換される)を得ることと、
b)化合物1Aまたはその塩を、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)と反応させて、下記式を有する化合物1B:
【化54】
またはその塩を得ることと、
c)化合物1Bまたはその塩を、RHと反応させて、下記式を有する化合物1C:
【化55】
またはその塩を得ることと、
d)化合物1Cまたはその塩を、RHと反応させて、式(I)の化合物を得ることと、を含む。
【0101】
標的化部分は、異常なレベルのバイオマーカーの存在が1つまたは複数の特定の疾患状態に関連付けられ得る、特定の細胞または組織の種類に対して親和性を有し得る。典型的なバイオマーカーには、トランスフェリン受容体;LDL受容体;上皮成長因子受容体ファミリーメンバー(例えば、EGFR、Her2、Her3、Her4)または血管内皮細胞成長因子受容体等の成長因子受容体、サイトカイン受容体、細胞接着分子、インテグリン、セレクチン、及びCD分子を含むがこれらに限定されない細胞表面タンパク質(例えば、受容体)が含まれる。マーカーは、悪性細胞上で排他的にまたはより高い量で存在する分子、例えば、腫瘍抗原であり得る。いくつかの実施形態では、標的化部分は、目的とする標的細胞上または標的部位に発現した抗原に対して特異性を有する抗体、または抗体断片である。多種多様な腫瘍特異的または他の疾患特異的抗原が同定されており、それらの抗原に対する抗体が、かかる腫瘍または他の疾患の処置において使用されているか、または使用が提案されている。当該技術分野で既知である抗体を、本発明の化合物において、特に標的抗原が関連付けられる疾患の処置のために使用することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、抗体、抗体断片、二重特異性抗体、または他の抗体ベースの分子もしくは化合物である。さらなる実施形態では、標的化部分は、アプタマー、アビマー、受容体結合リガンド、核酸、ビオチン-アビジン結合対等であり得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、ペプチドである。いくつかの実施形態では、該ペプチドは、10~50個のアミノ酸、20~40個のアミノ酸、10~20個のアミノ酸、20~30個のアミノ酸、または30~40個のアミノ酸を有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、立体構造的に制限されたペプチドである。立体構造的に制限されたペプチドには、例えば、大環状ペプチド及びステープルされたペプチドが含まれ得る。ステープルされたペプチドは、2つのアミノ酸側鎖間の共有結合性の連結によって拘束されて、ペプチド大環状化合物を形成するペプチドである。立体構造的に制限されたペプチドは、例えば、Guerlavais et al.,Annual Reports in Medicinal Chemistry 2014,49,331-345、Chang et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(2013),110(36),E3445-E3454、Tesauro et al.,Molecules 2019,24,351-377、Dougherty et al.,Journal of Medicinal Chemistry(2019),62(22),10098-10107、及びDougherty et al.,Chemical Reviews(2019),119(17),10241-10287に記載され、同文献の各々は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0105】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、例えば、米国特許第8,076,451号及び同第9,289,508号ならびに米国特許公開第2019/209580号(同文献の各々は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される)に記載される環境感受性のペプチドであるが、かかる選択的挿入が可能な他のペプチドを使用することが可能である。他の好適なペプチドは、例えば、Weerakkody,et al.,PNAS 110(15),5834-5839(2013年4月9日)に記載され、同文献もまた参照によりその全体が本明細書に援用される。理論に拘束されるものではないが、環境感受性のペプチドは、生理学的変化(例えば、pH)に応答して立体構造変化を経て、細胞膜を横切って挿入すると考えられる。該ペプチドは、酸性組織を標的とし、細胞外の低pHに応答して細胞膜を横切って極性の細胞不透過性分子を選択的に移行させることができる。いくつかの実施形態では、該ペプチドは、約6.0未満のpHを有する酸性または低酸素性マントルを有する細胞膜を横切って分子を選択的に送達することができる。いくつかの実施形態では、該ペプチドは、約6.5未満のpHを有する酸性または低酸素性マントルを有する細胞膜を横切って分子を選択的に送達することができる。いくつかの実施形態では、該ペプチドは、約5.5未満のpHを有する酸性または低酸素性マントルを有する細胞膜を横切って分子を選択的に送達することができる。いくつかの実施形態では、該ペプチドは、約5.0~約6.0のpHを有する酸性または低酸素性マントルを有する細胞膜を横切って分子を選択的に送達することができる。
【0106】
「酸性及び/または低酸素性マントル」という用語は、7.0より低い、好ましくは6.5より低いpHを有する問題の病変組織における細胞の環境を指す。酸性または低酸素性マントルは、より好ましくは約5.5のpHを有し、最も好ましくは約5.0のpHを有する。式(I)の化合物は、pH依存的様式で酸性及び/または低酸素性マントルを有する細胞膜を横切って挿入して、R-を細胞に挿入し、その後すぐにジスルフィドリンカーが切断されて、遊離RHを送達する。式(I)の化合物はpH依存性であるため、それらは、細胞を取り巻く酸性または低酸素性マントルの存在下でのみ細胞膜を横切って優先的に挿入し、酸性または低酸素性マントルを有しない「正常」細胞の細胞膜を横切っては挿入しない。酸性または低酸素性マントルを有する細胞の例は、がん細胞である。
【0107】
ペプチドR、または細胞膜を横切るペプチドRもしくは本発明の化合物の挿入様式を指して本明細書で使用される「pH感受性」または「pH依存性」という用語は、ペプチドが、中性pHの膜脂質二重層よりも酸性または低酸素性マントルを有する細胞膜脂質二重層に対してより高い親和性を有することを意味する。故に、本発明の化合物は、細胞膜脂質二重層が酸性または低酸素性マントルを有する場合(「病変」細胞)、細胞膜を通して優先的に挿入して、R-を細胞の内部に挿入する(故に上述したようなRHを送達する)が、マントル(細胞膜脂質二重層の環境)が酸性または低酸素性でない場合は(「正常」細胞)、細胞膜を通して挿入しない。この優先的な挿入は、ペプチドRがらせん構造を形成し、これにより膜挿入が容易になる結果として達成されると考えられる。
【0108】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、以下の配列のうちの少なくとも1つを含む:
ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWCG(配列番号1;Pv1)、
AEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADECG(配列番号2;Pv2)、
ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWDADECG(配列番号3;Pv3)、
Ac-AAEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADEGTKCG(配列番号4;Pv4)、及び
AAEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADEGTC(配列番号5;Pv5)。
【0109】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、以下の配列のうちの少なくとも1つを含む:
ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWCG(配列番号1;Pv1)、
AEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADECG(配列番号2;Pv2)、及び
ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWDADECG(配列番号3;Pv3)。
【0110】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、配列ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWCG(配列番号1;Pv1)を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、配列AEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADECG(配列番号2;Pv2)を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、配列ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWDADECG(配列番号3;Pv3)を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、配列Ac-AAEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADEGTKCG(配列番号4;Pv4)を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、配列AAEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADEGTC(配列番号5;Pv5)を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、配列ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWCG(配列番号1;Pv1)から本質的になる。
【0116】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、配列AEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADECG(配列番号2;Pv2)から本質的になる。
【0117】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、配列ADDQNPWRAYLDLLFPTDTLLLDLLWDADECG(配列番号3;Pv3)から本質的になる。
【0118】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、配列AAEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADEGTKCG(配列番号4;Pv4)から本質的になる。
【0119】
いくつかの実施形態では、環境感受性のペプチドは、配列AAEQNPIYWARYADWLFTTPLLLLDLALLVDADEGTC(配列番号5;Pv5)から本質的になる。
【0120】
追加の環境感受性のペプチドは、米国特許公開第US2019/209580号、米国特許出願第16/925,094号、及び米国特許出願第16/924,445号に開示され、同文献の各々はその全体が本明細書に援用される。
【0121】
「治療部分」という用語は、治療用分子または薬剤に由来する部分(例えば、R-)を指す。本発明における使用に好適な治療用分子(例えば、RH)には、PARP阻害剤、トポイソメラーゼI阻害剤、及び低分子微小管標的化部分が含まれ、これらは、正常組織に対するそれらの有害作用の可能性のため、全身送達される場合に望ましくない副作用を有し得る。
【0122】
3種のPARP阻害剤(オラパリブ、ルカパリブ、及びニラパリブ)が現在市販されており、AG-014699(Agouron/Pfizer)、KU-0059436(KuDOS/AstraZeneca)、INO-1001(Inotek/Genentech)、NT-125(現在はE-7449;Eisai;3H-ピリダジノ[3,4,5-de]キナゾリン-3-オン、8-[(1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)メチル]-1,2-ジヒドロ-)、2X-121(2X Oncology;3H-ピリダジノ[3,4,5-de]キナゾリン-3-オン、8-[(1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)メチル]-1,2-ジヒドロ-)、及びABT-888(Abbvie)等のその他が開発段階にある。PARP阻害剤は、(例えば)米国特許6,100,283、6,310,082、6,495,541、6,548,494、6,696,437、7,151,102、7,196,085、7,449,464、7,692,006、7,781,596、8,067,613、8,071,623、及び8,697,736に開示され、これらの特許は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0123】
PARP阻害剤部分を含有する式(I)の化合物は、米国特許公開第US2019/209580号に記載される。
【0124】
「低分子トポイソメラーゼI標的化部分」または「トポイソメラーゼI阻害剤」という用語は、トポイソメラーゼIに結合する化学基を指す。低分子トポイソメラーゼI標的化部分は、トポイソメラーゼIの活性を阻害する化合物に由来する基であり得る。トポイソメラーゼ阻害剤には、カンプトテシンならびにその誘導体及び類似体、例えば、オポテカン(opotecan)、イリノテカン(CPT-11)、シラテカン(DB-67、AR-67)、コシテカン(BNP-1350)、ルルトテカン、ギマテカン(ST1481)、ベロテカン(CKD-602)、ルビテカン、トポテカン、デルクステカン、及びエキサテカンが含まれる。トポイソメラーゼ阻害剤は、例えば、Ogitani,Bioorg.Med.Chem.Lett.26(2016),5069-5072、Kumazawa,E.,Cancer Chemother Pharmacol 1998,42:210-220、Tahara,M,Mol Cancer Ther 2014,13(5):1170-1180、Nakada,T.,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2016,26:1542-1545に記載される。
【0125】
トポイソメラーゼI標的化部分を有する式(I)の化合物は、米国特許出願第16/925,094号に記載される。式(I)の化合物のいくつかの実施形態では、Rは、カンプトテシン、オポテカン(opotecan)、イリノテカン(CPT-11)、シラテカン(DB-67、AR-67)、コシテカン(BNP-1350)、ルルトテカン、ギマテカン(ST1481)、ベロテカン(CKD-602)、ルビテカン、トポテカン、デルクステカン、またはエキサテカンである。式(I)の化合物のいくつかの実施形態では、Rは、エキサテカンである。
【0126】
好適な低分子微小管標的化部分(例えば、R)は、正常組織に対するそれらの有害作用の可能性のため、全身送達される場合に望ましくない副作用を有し得る、マイタンシノイドのような細胞傷害性化合物であり得る。低分子微小管標的化剤には、マイタンシノイド、アクリタキセル(aclitaxel)、ドセタキセル、エポチロン、ディスコデルモリド、ビンカアルカロイド、コルヒチン、コンブレタスタチン、ならびに前述のものの誘導体及び類似体が含まれるが、これらに限定されない。微小管標的化剤は、Tangutur,A.D.,Current Topics in Medicinal Chemistry,2017 17(22):2523-2537に記載される。微小管標的化剤にはまた、マイタンシン(DM1)等のマイタンシノイドならびにその誘導体及び類似体も含まれ、これらはLopus,M,Cancer Lett.,2011,307(2):113-118、及びWiddison,W.,J.Med.Chem.2006,49:4392-4408に記載される。
【0127】
微小管標的化部分を有する式(I)の化合物は、米国特許出願第16/924,445号に記載される。いくつかの実施形態では、Rは、マイタンシノイドである。いくつかの実施形態では、Rは、DM1またはDM4である。いくつかの実施形態では、Rは、DM1である。いくつかの実施形態では、Rは、DM4である。
【0128】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、
【化56】
から選択される。
【0129】
本発明の分子は、例えば、フルオロフォア、放射性同位体等といったプローブでタグ付けすることができる。いくつかの実施形態では、プローブは、LICOR等の蛍光プローブである。蛍光プローブは、光励起時に光を再放出することができる任意の部分(例えば、フルオロフォア)を含むことができる。
【0130】
明確にするために別個の実施形態の文脈で記載される、本発明のある特定の特徴はまた、単一の実施形態で組み合わせても提供され得る(一方で、それらの実施形態は、あたかも多項従属形式で記述されたかのように組み合わされることが意図される)ことがさらに理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特徴は、別個に、または任意の好適な部分組み合わせでも提供され得る。故に、それは式(I)の化合物の実施形態として記載される特徴は、任意の好適な組み合わせで組み合わされ得ることが企図される。
【0131】
本明細書で使用されるとき、「約」とは、指定される値の±20%を意味し、より具体的には、指定される値の±10%、±5%、±2%、及び±1%の値を含む。
【0132】
本明細書で使用されるとき、ある特定の方法を説明する場合の「反応させること」または「接触させること」という用語は、当該技術分野で既知のように使用され、一般に、化学試薬を、分子レベルでのそれらの相互作用が化学的変換または物理的変換を達成することを可能にするような様態で一緒にまとめることを指す。いくつかの実施形態では、反応は2つの試薬を伴い、第1の試薬に対して1当量以上の第2の試薬が使用される。本明細書に記載の方法の反応ステップは、特定される生成物を調製するのに好適な時間にわたって、かつそのような条件下で実施され得る。
【0133】
「塩基」という用語は、酸-塩基反応において電子対ドナーである化合物を指す。
【0134】
「酸」という用語は、酸-塩基反応において電子対アクセプターである化合物を指す。
【0135】
本明細書に記載の方法の反応は、有機合成の当業者によって容易に選択され得る好適な溶媒中で実行され得る。好適な溶媒は、反応が実行される温度(例えば、溶媒の凍結温度から溶媒の沸騰温度の範囲であり得る温度)で出発物質(反応物)、中間体、または生成物と実質的に非反応性であり得る。所与の反応は、1つの溶媒または1つよりも多くの溶媒の混合物中で実行され得る。特定の反応ステップに応じて、特定の反応ステップに好適な溶媒が選択され得る。いくつかの実施形態では、反応は、試薬のうちの少なくとも1つが液体または気体である場合等には、溶媒の不在下で実行され得る。
【0136】
好適な溶媒には、四塩化炭素、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、クロロホルム、ブロモクロロメタン、ジブロモメタン、塩化ブチル、ジクロロメタン(塩化メチレン)、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1-ジクロロエタン、2-クロロプロパン、1,1,1-トリフルオロトルエン、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジブロモエタン、ヘキサフルオロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、それらの混合物等といったハロゲン化溶媒が含まれ得る。
【0137】
好適なエーテル溶媒には、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メチルtert-ブチルエーテル、それらの混合物等が含まれる。
【0138】
「アシル化試薬」という用語は、反応体化合物の求核性位置にカルボニル基を与える化合物を指す。例えば、求電子性のカルボニル基は、求核性のOまたはN原子と反応することができる。例となるアシル化試薬には、酢酸イソプロペニル、無水コハク酸、及び無水グルタル酸が挙げられる。
【0139】
「還元剤」という用語は、不飽和炭素(例えば、カルボニル部分またはイミン部分の炭素)等の反応体化合物の求電子性位置に水素化物を与える化合物を指す。例えば、還元剤は、反応体化合物に水素化物を与えて、アミド含有反応体化合物をアミン生成物化合物に変換するか、イミン含有反応体化合物をアミン生成物化合物に変換するか、ケトン含有反応体化合物をアルコール生成物化合物に変換するか、またはエステル含有反応体化合物をアルコール生成物化合物に変換することができる。
【0140】
本明細書に記載の方法の反応は、空気中でまたは不活性雰囲気下で実行され得る。典型的には、空気と実質的に反応性のある試薬または生成物を含有する反応は、当業者に周知される空気感受性の合成技法を使用して実行され得る。
【0141】
本明細書に記載の方法は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法に従って監視することができる。例えば、生成物の形成は、核磁気共鳴分光法(例えば、Hまたは13C)、赤外分光法、分光光度法(例えば、紫外可視)、もしくは質量分析法等の分光手段によって、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もしくは薄層クロマトグラフィーによって監視することができる。反応によって得られた化合物は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法によって精製することができる。例えば、好適な吸着剤(例えば、シリカゲル、アルミナ等)上のクロマトグラフィー(中圧)、HPLC、または分取薄層クロマトグラフィー;蒸留;昇華、トリチュレーション、または再結晶。化合物の純度は、一般に、融点を測定すること(固体の場合)、NMRスペクトルを得ること、またはHPLC分離を実施すること等の物理的方法によって決定される。融点が減少する場合、NMRスペクトルにおける不要なシグナルが減少する場合、またはHPLCトレースにおける無関係なピークが除去される場合、化合物は、精製されたといわれ得る。いくつかの実施形態では、化合物は、実質的に精製される。
【0142】
本明細書で使用される「周囲温度」及び「室温」という表現は、当該技術分野で理解されており、温度、例えば、反応温度、すなわち、ほぼ反応が実行される部屋の温度、例えば、約20℃~約30℃の温度を一般に指す。
【0143】
本明細書の種々の箇所で、化合物のある特定の特徴が群または範囲で開示される。このような開示が、このような群及び範囲の成員のそれぞれ1つ1つの個別の部分的組み合わせを含むことが具体的に意図される。例えば、「C1-6アルキル」という用語は、メチル、エチル、Cアルキル、Cアルキル、Cアルキル及びCアルキルを個別に(限定されないが)開示することを特に意図している。
【0144】
「n員」という用語は、nが整数であり、典型的には、環形成原子の数がnである部分における環形成原子の数を表す。例えば、ピペリジニルは、6員ヘテロシクロアルキル環の例であり、ピラゾリルは、5員ヘテロアリール環の例であり、ピリジルは、6員ヘテロアリール環の例であり、1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレンは、10員シクロアルキル基の例である。
【0145】
「置換された」という用語は、原子または原子団が、別の基に結合した「置換基」として水素を形式的に置き換えることを意味する。「置換された」という用語は、別段の記載がない限り、任意のレベルの置換、例えば、そのような置換が許可される場合、一置換、二置換、三置換、四置換、または五置換を指す。置換基は独立して選択され、置換は化学的にアクセス可能な任意の位置にあり得る。所与の原子での置換は原子価によって制限されることを理解されたい。所与の原子での置換は、化学的に安定な分子をもたらすことを理解されたい。「任意選択で置換される」という語句は、非置換であるか、または置換されることを意味する。「置換された」という用語は、水素原子が除去され、置換基によって置き換えられることを意味する。単一の二価置換基、例えば、オキソは、2個の水素原子を置き換えることができる。
【0146】
「Cn-m」という用語は、端点を含む範囲を示し、ここで、n及びmは整数であり、炭素の数を示す。例としては、C1-4、C1-6等が挙げられる。
【0147】
単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「アルキル」という用語は、直鎖または分岐状であり得る飽和炭化水素基を指す。「Cn-mアルキル」という用語は、n~m個の炭素原子を有するアルキル基を指す。アルキル基は、形式的に、化合物の残りの部分へのアルキル基の結合点で置き換えられた1つのC-H結合を持つアルカンに対応する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1~3個の炭素原子、または1~2個の炭素原子を含有する。アルキル部分の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチル等の化学基、2-メチル-1-ブチル、n-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、1,2,2-トリメチルプロピル等の高級同族体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「アルケニル」という用語は、1つまたは複数の二重炭素-炭素結合を有するアルキル基に対応する直鎖または分岐炭化水素基を指す。アルケニル基は、形式的に、化合物の残りの部分へのアルケニル基の結合点で置き換えられた1つのC-H結合を持つアルケンに対応する。「Cn-mアルケニル」という用語は、n~m個の炭素を有するアルケニル基を指す。いくつかの実施形態では、アルケニル部分は、2~6、2~4、または2~3個の炭素原子を含む。例示的なアルケニル基には、エテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、sec-ブテニル等が含まれるが、これらに限定されない。
【0149】
単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「アルキニル」という用語は、1つまたは複数の三重炭素-炭素結合を有するアルキル基に対応する直鎖または分岐炭化水素基を指す。アルキニル基は、形式的に、化合物の残りの部分へのアルキル基の結合点で置き換えられた1つのC-H結合を持つアルキンに対応する。「Cn-mアルキニル」という用語は、n~m個の炭素を有するアルキニル基を指す。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル等を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルキニル部分は、2~6、2~4、または2~3個の炭素原子を含む。
【0150】
単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「アルキレン」という用語は、二価のアルキル結合基を指す。アルキレン基は、形式的に、化合物の残りの部分へのアルキレン基の結合点で置き換えられた2つのC-H結合を持つアルカンに対応する。「Cn-mアルキレン」という用語は、n~m個の炭素原子を有するアルキレン基を指す。アルキレン基の例としては、エタン-1,2-ジイル、エタン-1,1-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、プロパン-1,1-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ブタン-1,3-ジイル、ブタン-1,2-ジイル、2-メチル-プロパン-1,3-ジイル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを指す。いくつかの実施形態では、「ハロ」は、F、Cl、またはBrから選択されるハロゲン原子を指す。いくつかの実施形態では、ハロ基は、Fである。
【0152】
「芳香族」という用語は、1つまたは複数の多価不飽和環を有し、芳香族の性質を有する(すなわち、(4n+2)個の非局在化π(パイ)電子を有し、ここで、nは整数である)、炭素環または複素環を指す。
【0153】
単独でまたは他の用語と組み合わせて使用される「アリール」という用語は、単環式または多環式(例えば、2つの縮合環を有する)であり得る芳香族炭化水素基を指す。「Cn-mアリール」という用語は、n~m個の環炭素原子を有するアリール基を指す。アリール基には、例えば、フェニル、ナフチル等が含まれる。いくつかの実施形態では、アリール基は、6~約10個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アリール基は、6個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アリール基は、10個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アリール基は、フェニルである。
【0154】
単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」という用語は、硫黄、酸素、及び窒素から独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子環員を有する、単環式または多環式芳香族複素環を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール環は、窒素、硫黄、及び酸素から独立して選択される1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子環員を有する。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール部分における任意の環形成Nは、N-オキシドであり得る。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール環は、炭素原子と、窒素、硫黄、及び酸素から独立して選択される1、2、3または4個のヘテロ原子環員とを含む5~14個の環原子を有する。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール環は、炭素原子と、窒素、硫黄、及び酸素から独立して選択される1、2、3または4個のヘテロ原子環員とを含む5~10個の環原子を有する。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール環は、5~6個の環原子と、窒素、硫黄、及び酸素から独立して選択される1または2個のヘテロ原子環員とを有する。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールは、5員または6員ヘテロアリール環である。他の実施形態では、ヘテロアリールは、8員、9員、または10員の縮合二環式ヘテロアリール環である。
【0155】
単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「シクロアルキル」という用語は、環化アルキル及びアルケニル基を含む非芳香族炭化水素環系(単環式、二環式、または多環式)を指す。「Cn-mシクロアルキル」という用語は、n~m個の環員炭素原子を有するシクロアルキルを指す。シクロアルキル基は、単環式または多環式(例えば、2、3、または4個の縮合環を有する)基及び多環式を含み得る。シクロアルキル基は、3、4、5、6、または7個の環形成炭素(C3-7)を有することができる。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、3~6個の環員、3~5個の環員、または3~4個の環員を有する。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は単環式である。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は単環式または二環式である。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、C3-6単環式シクロアルキル基である。シクロアルキル基の環形成炭素原子は、任意選択で酸化されて、オキソまたはスルフィド基を形成することができる。シクロアルキル基には、シクロアルキルイデンも含まれる。いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。シクロアルキルの定義には、ベンゾ、またはシクロペンタンやシクロヘキサン等のチエニル誘導体等、シクロアルキル環に縮合した(すなわち、それと共通の結合を有する)1つまたは複数の芳香環を有する部分も含まれる。縮合芳香環を含有するシクロアルキル基は、縮合芳香環の環形成原子を含む任意の環形成原子を介して結合し得る。シクロアルキル基の例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルが挙げられる。
【0156】
単独でまたは他の用語と組み合わせて用いられる「ヘテロシクロアルキル」という用語は、環構造の一部として1つまたは複数のアルケニレン基を任意選択で含有し得、窒素、硫黄、酸素、及びリンから独立して選択される少なくとも1個のヘテロ原子環員を有し、4~10環員、4~7環員、または4~6環員を有する、非芳香環または環系を指す。「ヘテロシクロアルキル」という用語には、単環式の4、5、6、及び7員ヘテロシクロアルキル基が含まれる。ヘテロシクロアルキル基は、単環式または二環式(例えば、2つの縮合または架橋環を有する)またはスピロ環式環系を含むことができる。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキル基は、窒素、硫黄、及び酸素から独立して選択される1、2、または3個のヘテロ原子を有する単環式基である。ヘテロシクロアルキル基の環形成炭素原子及びヘテロ原子は、任意選択で酸化されて、オキソもしくはスルフィド基を形成することができ、または他の酸化された結合(例えば、C(O)、S(O)、C(S)またはS(O)、N-オキシド等)もしくは窒素原子を四級化することができる。ヘテロシクロアルキル基は、環形成炭素原子または環形成ヘテロ原子を介して結合することができる。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキル基は、0~3つの二重結合を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキル基は、0~2つの二重結合を含む。ヘテロシクロアルキルの定義には、ベンゾ、またはピペリジン、モルホリン、アゼピン等のチエニル誘導体等、ヘテロシクロアルキル環に縮合した(すなわち、それと共通の結合を有する)1つまたは複数の芳香環を有する部分も含まれる。縮合芳香環を含有するヘテロシクロアルキル基は、縮合芳香環の環形成原子を含む任意の環形成原子を介して結合することができる。ヘテロシクロアルキル基の例としては、テトラヒドロピラニルが挙げられる。
【0157】
ある特定の箇所では、定義または実施形態は、具体的な環(例えば、アゼチジン環、ピリジン環等)に言及する。特に明記しない限り、これらの環は、原子の原子価を超えない限り、任意の環員に結合することができる。例えば、アゼチジン環は、環の任意の位置で結合していてもよいが、一方で、アゼチジン-3-イル環は、3位で結合している。
【0158】
化学反応において本明細書で使用される「保護すること」及び「脱保護すること」という用語は、方法における化学基の組み込みを指し、かかる基は、方法における後のステップで除去される。化合物1及びその塩の調製という用語は、種々の化学基の保護及び脱保護を伴い得る。保護及び脱保護の必要性、ならびに適切な保護基の選択は、当業者により容易に決定され得る。保護基の化学的性質については、例えば、Kocienski,Protecting Groups,(Thieme,2007)、Robertson,Protecting Group Chemistry,(Oxford University Press,2000)、Smith et al.,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,6th Ed.(Wiley,2007)、Peturssion et al.,“Protecting Groups in Carbohydrate Chemistry,”J.Chem.Educ.,1997,74(11),1297、及びWuts et al.,Protective Groups in Organic Synthesis,4th Ed.,(Wiley,2006)に記載される。保護基の例としては、チオ保護基が挙げられる。
【0159】
本明細書で使用される「周囲温度」及び「室温」という表現は、当該技術分野で理解されており、温度、例えば、反応温度、すなわち、ほぼ反応が実行される部屋の温度、例えば、約20℃~約30℃の温度を一般に指す。
【0160】
本発明の化合物はまた、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩を含む。「薬学的に許容される塩」という用語は、親化合物が既存の酸または塩基部分をその塩の形態に変換することによって修飾される、開示される化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、アミン等の塩基性残基の無機または有機酸性塩、カルボン酸等の酸性残基のアルカリまたは有機塩等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成された親化合物の非毒性の塩が含まれる。本発明の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水中または有機溶媒中、あるいは2つの混合物中の化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノール)またはアセトニトリル(MeCN)のような非水性媒体が好ましい。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Ed.,(Mack Publishing Company,Easton,1985),p.1418、Berge et al.,J.Pharm.Sci.,1977,66(1),1-19、及びStahl et al.,Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(Wiley,2002)に見出される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、N-オキシド形態を含む。
【実施例
【0161】
本明細書で使用されるとき、全ての略語、記号、及び規則は、現代の科学文献で使用されるものと一致している。例えば、Janet S.Dodd,ed.,The ACS Style Guide:A Manual for Authors and Editors,2nd Ed.,Washington,D.C.:American Chemical Society,1997を参照されたい。
【0162】
出発物質及び酵素
酵素は、Novozymes、Genencor、Sigma-Aldrich(Amano enzymesを含む)、c-Lecta、Aum Enzymesから入手し、Immobead COV-1上に固定化した。出発物質は、TCI及びSigma-Aldrichから入手した。
【0163】
キラルガスクロマトグラフィー(GC)
キラルGCは、Supelco betaDEX 325(30m×0.25mm×0.25μm df)を使用して、キャリアガスとして水素を0.5m/秒の線速度で、及び温度勾配操作(2から10℃/分の速度)を使用して実施した。
【0164】
酢酸2-(アセチルチオ)シクロヘキシルの(S,S)-エナンチオマーが最初に溶出した。他の成分は、このカラムを使用したキラルGCでは分割されなかった。
保持時間:
【表1】
【0165】
アキラルGC
いくつかの変換判定のために、及び高感度キラルカラムと不適合性の試料に対してはアキラルGCを使用した。Supelco METbiodieselカラムを、キャリアガスとして水素を0.5m/秒の線速度で用いて使用した。20℃/分で50から250℃の高速勾配を使用した。
保持時間:
【表2】
【0166】
キラルHPLC
キラルHPLCは、ChiralPak AD3カラム250×4.6mmを使用して、ヘプタン/イソプロパノール/エタノール混合物を使用して実施した。ベンジルチオエーテル誘導体は、ヘプタン/イソプロパノール90/10混合物(溶離液A)を使用して分析することが可能であり、より極性のピリジルジスルフィド誘導体は、ヘプタン/イソプロパノール/エタノール63/7/30(溶離液B)を必要とした。検出は220nmで実施した。
保持時間:
【表3】
【0167】
実施例1.(D)-酒石酸亜鉛の合成
(D)-酒石酸(150g;1mol)を水(1.5L)に溶解させた。水(1L)及び20mlの3.5%HCl(20mL)中の塩化亜鉛(136g;1mol)の溶液を機械的撹拌下で加えた。酸性の混合物を、33%水酸化ナトリウム水溶液を使用してpH4へと中和した。沈殿物が形成され、混合物をさらに1時間撹拌した。混合物をP3ガラスフィルターで濾過した。固体を水、アセトン、及び酢酸エチルで洗浄した。固体を真空オーブン中で乾燥させて、所望の生成物を白色の高密度粉末(270g)として得た。
【0168】
代替として、脱イオン水(0.15L)に溶解させた(D)-酒石酸(15g;0.1mol)を、33%NaOH(20ml;0.2mol)を使用してpH12に中和した。脱イオン水(50mL)中の塩化亜鉛(13.6g)の溶液を機械的撹拌下で滴加した。最初はゲルが形成され、これが白濁した懸濁液に変化した。添加の終わりに、pHは中性まで低下した。濾過は、P3ガラスフィルターを使用して(約1時間にわたって)実施し、固体を脱イオン水、アセトン、及び酢酸エチルで洗浄した。オーブン中で真空乾燥すると、白色の飛散性粉末(22g)が得られた。
【0169】
実施例2.ラセミ2-ベンジルチオシクロヘキサノールの合成
【化57】
ベンジルメルカプタン(1.24g;10mmol)及びシクロヘキセンオキシド(1.9g;19mmol)を2-メチルテトラヒドロフランに溶解させた。N-メチルモルホリン(0.5ml)を加えた。反応は一晩で何ら生じなかった。ナトリウムエトキシド溶液(1mlの20%)の添加により、迅速な反応(1時間で50%、メルカプタンの完全な変換)がもたらされた。水性処理及び蒸発により、黄色の油(2.18g)が得られた。油を、Kugelrohr装置(オーブン145℃/<1mbar)を使用して減圧下で蒸留して、透明な油(1.89g;8.5mmol;85%)を得た。HPLC:Chiralpak AD3を使用して、ヘプタン/イソプロパノール90/10を用いて8.7m(R,R)及び9.2m(S,S)の2つのピーク。220nmでのUV検出。
【0170】
実施例3.濃縮された2-ベンジルチオシクロヘキサノール
【化58】
5L反応器に(D)-酒石酸亜鉛(263g)、ジクロロメタン(2L)、ベンジルメルカプタン(124g;1mol)、及びシクロヘキセンオキシド(147g;1.5当量)を装入した。反応物をAr雰囲気下に置いた。混合物を5日間撹拌し(>99%のメルカプタン変換がもたらされた)、7日間後に濾過した。濾液を蒸発させ、酢酸エチルを使用して小さなフラスコに移した。蒸発及び高真空蒸留により、無色透明の油(215g)が得られた。HPLC:87%(S,S)[75%のエナンチオマー過剰率]及び1%の他の成分。
【0171】
(D)-酒石酸亜鉛触媒は、再使用が可能であった。2L反応器に、回収した(D)-酒石酸亜鉛触媒(468g)、ジクロロメタン(1L)、ベンジルメルカプタン(124g;1mol)、及びシクロヘキセンオキシド(147g;1.5当量)を装入した。反応物をAr雰囲気下に置いた。混合物を1日撹拌し(>99%のメルカプタン変換がもたらされた)、濾過した。濾液を蒸発させ、酢酸エチルを使用して小さなフラスコに移した。蒸発により、無色透明の油(225g)が得られた。HPLC:85%(S,S)[73%のエナンチオマー過剰率]及び1%の他の成分。
【0172】
実施例4.酵素スクリーニング実験
20~25mgの量の酵素を2mLバイアルに加えた。これに、5体積%の酢酸イソプロペニルを含有する1mLの無水MTBEに溶解させたラセミ2-ベンジルチオシクロヘキサノール(22mg)を加えた。バイアルを密閉し、サーモスタット付きシェーカーで、24℃で16時間振とうした。インキュベーション後、キラルHPLCによる分析を、Chiralpak AD3、移動相中100倍希釈;ヘプタン/イソプロパノール(90/10)を使用して実施した。スクリーニングの結果を下記の表に示す。
【化59】
【表4】
【0173】
環状無水物(例えば、無水グルタル酸及び無水コハク酸)を用いたさらなる研究もまた有効であった。
【化60】
【0174】
上記の酵素スクリーニング実験においては無水グルタル酸を酢酸イソプロペニルの代わりに使用した。酵素CaL-B-T2の使用によりR選択的除去を可能にして、化合物2及び化合物3の85:15混合物を得た。化合物3を、2MのNHでの塩基抽出、続いて弱塩基洗浄(例えば、NaCO水溶液)を介して反応混合物から除去した。生成物をAr下で乾燥させて、化合物2を得た。
【0175】
実施例5.濃縮された2-ベンジルチオシクロヘキサノールの酵素による分割
【化61】
濃縮された2-ベンジルチオシクロヘキサノール(225g;86%のエナンチオマー過剰率;1mol)を2Lフラスコに入れた。MTBE(1.5L)、無水グルタル酸(33g;0.29mol)、及び固定化した酵素(ChiralVision製の製品番号CaLB-ADS4;50g)を加えた。混合物を、メカニカルスターラーを使用して180rpmで2日間撹拌した。1日後、主要でない(R,R)-エナンチオマーが完全に除去された。翌日、反応混合物を濾過し、酵素を酢酸イソプロピルで洗浄した。濾液をアンモニアの2M水溶液(0.5L)及び炭酸ナトリウムの1.25M水溶液(0.5L)で洗浄した。有機相を単離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、化合物2をわずかに混濁した無色の油(172g;76%)として得た。
HPLC:98.0%、100.0%のエナンチオマー過剰率。約1.1%のジベンジルジスルフィドが検出された。
【0176】
実施例6.化合物2の還元的切断
【化62】
蒸留した(S,S)-2-ベンジルチオシクロヘキサノール(11.1g;50mmol)をアルゴン雰囲気下で250mL乾燥丸底フラスコに入れ、100mLの無水2-メチルテトラヒドロフランに溶解させた。機械的撹拌下で、粒状リチウム(総計1.4g;200mmol)を2回に分けて加えた。反応物を水浴中で冷却した。周囲温度で一晩撹拌すると、灰色のスラリーが得られた。未反応の過剰なリチウムを含有する、このスラリーを100mlの冷水に注いだ。リチウム金属の完全なクエンチ後、透明な溶液が相分離した。所望の生成物のリチウム塩を含有する水相(pH>11)を固体クエン酸(10g)でpH5に酸性化した。100mLの酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、注意深く蒸発させると、(S,S)-2-メルカプトシクロヘキサノールが薄黄色の油(5g;38mmol;76%)として得られた。GC:>99%。[α]:+42°(MeOH中c=1))。
【0177】
実施例7.(S,S)-2-ピリジン-2-イルジスルファネイル(yldisulfaneyl))シクロヘキサノール
【化63】
(S,S)-2-メルカプトシクロヘキサノール(7.0g;53mmol)をアルゴン下で50mLのメタノールに溶解させ、メタノール(100mL)中のジピリジルジスルフィド(12g;55mmol)の溶液に滴加した。1.5時間後、反応混合物を蒸発乾固し、残渣をMTBE(100mL)と混合した。沈殿した2-メルカプトピリジンを濾過によって除去し、透明な濾液を1Mの炭酸ナトリウム溶液(2×100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、黄色の油(13g)を得た。油を100mlのn-ヘプタンでトリチュレーションして、薄茶色の固体(11g(86%);GC:91%)を得た。
【0178】
固体をMTBE(25mL)への溶解、50mLのヘプタンとの混合によって精製し、所望の生成物を播種した(種は、例えば、実施例9のステップ1から得た)。白色の結晶性粉末が形成された。混合物を氷浴中で冷却し、濾過した。固体をn-ヘプタン(25ml)で洗浄した。注意深く真空乾燥すると、白色の粉末(7.6g;31.5mmol;メルカプトシクロヘキサノールから収率59%;2-ベンジルチオシクロヘキサノールから収率44%)が得られた。GC:99.0%;HPLC:99.8%;キラルHPLC:100%のエナンチオマー過剰率;融点:70~72℃;[α]:-146°(MeOH中c=1)。
【0179】
実施例8.4-ニトロフェニル((S,S))-2-ピリジン-2-イルジスルファネイル(yldisulfaneyl))シクロヘキシル)カーボネート
【化64】
(S,S)-2-ピリジン-2-イルジスルファネイル(yldisulfaneyl))シクロヘキサノール(4.8g;20mmol)をアルゴン雰囲気下で乾燥フラスコに入れ、80mLの無水ジクロロメタンに溶解させた。ピリジン(5mL;60mmol;3当量)を加えた。40mLの無水ジクロロメタン中のクロロギ酸4-ニトロフェニル(4.08g;20.2mmol)の溶液をアルゴン下で、周囲温度で約1時間で滴加した。HPLC試料は、2%の残留(S,S)-2-ピリジン-2-イルジスルファネイル(yldisulfaneyl))シクロヘキサノール、3%の炭酸ビス(4-ニトロフェニル)、及び95%の所望の生成物を示した。1時間のさらなる撹拌で、変換率は増加しなかった。混合物を水(10mL)でクエンチし、0.5Mの塩酸水溶液(100mL)、重炭酸ナトリウム飽和水溶液(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。蒸発により、黄色の油(8.4g)が得られた。この油をMTBE(35mL)及びn-ヘプタン(50mL)の混合物に溶解させた。撹拌下で50℃まで加熱し、30℃までゆっくりと冷却し、播種すると、濃厚な懸濁液が得られた。これをn-ヘプタン(20mL)でさらに希釈し、氷浴中で冷却した。沈殿物を濾過し、n-ヘプタン(30mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、所望の生成物を白色の粉末(16.3mmol;81%)として得た。
HPLC:99.4%;キラルHPLC:純度99.2%、100%のエナンチオマー過剰率;融点:77~79℃;[α]:+104°(MeOH中c=1)。
【0180】
実施例9.コンジュゲート1の合成
コンジュゲート1は、米国特許出願第16/925,094号の実施例11に開示される方法に従って、ラセミ2-メルカプトシクロヘキサン-1-オールの代わりに化合物1である((1S,2S)-2-メルカプトシクロヘキサン-1-オール)を使用して調製することができる。米国特許出願第16/925,094号の実施例11は下記のように再現する。
【化65】
【0181】
ステップ1. 2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)シクロヘキサン-1-オールの合成
【化66】
MeOH(Nで脱気する)(30mL)中の1,2-ジ(ピリジン-2-イル)ジスルファン(15.2g、68.9mmol)の溶液に、2-メルカプトシクロヘキサン-1-オール(11.4g、86.2mmol)(Nで脱気する)を滴加し、N雰囲気下で、室温で16時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮乾固した。得られた粗物質を、30%EtOAc/ヘキサンを使用したカラムクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を黄色の液体として得た。HNMR(400 MHz,CDCl):δ 8.54-8.53(m,1H),7.60-7.56(m,1H),7.40-7.38(m,1H),7.17-7.14(m,1H),3.38-3.34(m,1H),2.62-2.57(m,1H),2.11-2.02(m,1H),1.75-1.74(m,2H),1.61-1.60(m,1H),1.42-1.24(m,4H)。
【0182】
表題化合物をキラル分取HPLC条件(Chiralpak IG:250mm×20mm×5mic;n-ヘキサン:0.1%ジエチルアミンを含むIPA(80:20);19mL/分;25℃(室温)に供した。(1R,2R)-2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)シクロヘキサン-1-オール(4.5g、18.6mmol)が最初に溶出し(保持時間:3.9分)、続いて(1S,2S)-2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)シクロヘキサン-1-オールが溶出した(保持時間:11.3分)。絶対立体化学は、ステップ2の生成物を、報告された絶対立体化学を有するキラル物質(Monaco,M.R.;J.Am.Chem.Soc.2014,136,49,16982-16985を参照されたい)と比較することによって確認した。
【0183】
ステップ2:4-ニトロフェニル((1S,2S)-2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)シクロヘキシル)カーボネートの合成
【化67】
DMF(90.0mL)中の(1R,2R)-2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)シクロヘキサン-1-オール(4.5g、18.6mmоl)の溶液に、DIPEA(10.3mL、56.0mmоl)及びビス(4-ニトロフェニル)カーボネート(11.35g、27.3mmоl)を室温で加えた。反応容器を密封し、室温で12時間撹拌した。反応の進行はTLC(20%EtOAc/ヘキサン)によって監視した。反応の完了後、反応混合物を水(20.0mL)でクエンチし、EtOAc(20.0mL)で抽出した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗生成物を得、この粗生成物を、20~30%EtOAc/ヘキサンを使用したカラムクロマトグラフィーによって精製して、表題生成物を灰白色の固体として得た(5.0g、収率66%)。HNMR(400 MHz,CDCl):δ 8.44(d,J=4 Hz,1H),8.28(d,J=8.8 Hz,2H),7.72(d,J=8.4 Hz,1H),7.61-7.57(t,J=7.6 Hz,1H),7.41(d,J=9.6 Hz,2H),7.08-7.05(t,J=5.2 Hz,1H),4.85-4.74(m,1H),3.03-2.92(m,1H),2.28(d,J=9.6 Hz,1H),2.20-2.12(m,1H),1.85-1.62(m,3H),1.45-1.25(m,3H)。LC-MS m/z計算値:406.7;実測値:407.4[M+H]
【0184】
ステップ3:[(1S,2S)-2-(2-ピリジルジスルファニル)シクロヘキシル]N-[(10S,23S)-10-エチル-18-フルオロ-10-ヒドロキシ-19-メチル-5,9-ジオキソ-8-オキサ-4,15-ジアザヘキサシクロ[14.7.1.02,14.04,13.06,11.020,24]テトラコサ-1,6(11),12,14,16(24),17,19-ヘプタエン-23-イル]カルバメートの合成。
【化68】
10mLの脱水DMF中の(10S,23S)-23-アミノ-10-エチル-18-フルオロ-10-ヒドロキシ-19-メチル-8-オキサ-4,15-ジアザヘキサシクロ[14.7.1.02,14.04,13.06,11.020,24]テトラコサ-1,6(11),12,14,16(24),17,19-ヘプタエン-5,9-ジオンメタンスルホン酸(250mg、0.470mmol)に、4-ニトロフェニル((1S,2S)-2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)シクロヘキシル)カーボネート(ステップ2から;191mg、0.470mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(122mg、0.941mmol)、及びDMAP(115mg、0.941mmol)を加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。LC-MSにより、所望のカップリング生成物が形成されたことが示された。次に、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NHCl水溶液、HO、及びブラインで洗浄した。混合物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗残渣を、0~5%MeOH/ジクロロメタンを使用したカラムクロマトグラフィーによって精製して、240mgの所望の生成物を72.6%の収率(240mg)で得た。
【0185】
ステップ4:Pv1(化合物11)とのカップリング
バイアル中、Pv1(275mg、.0811mmol)、ステップ3の化合物(74.1mg、0.105mmol)、アセトニトリル(10mL)、及び水(5mL)を加え、n-メチルモルホリン(0.303g、.0030mol)をこの混合物に加えた。混合物を室温で一晩撹拌した。LC-MSにより、所望のカップリング生成物が形成されたことが示された。
【0186】
反応混合物を逆相HPLC(Sunfire Prep C18カラム(10μm、50×150mm)での20~85%アセトニトリル/水、0.5%酢酸、保持時間:7.022分)によって直接精製して、所望の生成物を68%の収率(213mg)で得た。ESI(M+3H/3)3+:1291.6
【0187】
実施例10:代替の基質の酵素スクリーニング
20~25mgの量の酵素を2mLバイアルに加えた。これに、5体積%の酢酸イソプロペニルを含有する1mLの2-メチルテトラヒドロフランに溶解させたラセミ2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)シクロヘキサン-1-オール(12mg)を加えた。バイアルを密閉し、サーモスタット付きシェーカーで、21℃で2日間振とうした。インキュベーション後、キラルHPLCによる分析を、Chiralpak AD3、移動相中100倍希釈;ヘプタン/イソプロパノール/エタノール(63/7/30)を使用して実施した。スクリーニングの結果を下記の表に示す。
【化69】
【表5】
【0188】
実施例9のコンジュゲート1を得るために、実施例2、ステップ6におけるラセミ物質の代わりに、エナンチオ濃縮された2-(ピリジン-2-イルジスルファニル)シクロヘキサン-1-オールを使用することができる。
【0189】
実施例11:4-ニトロフェニル[(S,S)-2-(ピリジン-2-イルジスルファネイル(yldisulfaneyl))シクロペンチル]カーボネートの合成
【化70】
ステップ1. 2-ベンジルチオシクロペンタノールの合成
【化71】
5L反応器にD-酒石酸塩亜鉛(500g)、ジクロロメタン(2L)、ベンジルメルカプタン(127g;1mol)、及びシクロペンテンオキシド(100g;1.1当量)を装入した。反応物をアルゴン雰囲気下に置いた。混合物を15日間撹拌し(>99%のメルカプタン変換がもたらされた)、濾過した。濾液を蒸発させ、酢酸エチルを使用して小さなフラスコに移した。蒸発により、混濁した油(210g;58%のエナンチオマー過剰率)が得られた。標準的なClaisen蒸留設定を使用して、油を高真空下で蒸留した。102~108℃/0.07~0.15mbarで4つの留分が得られた。
【0190】
ステップ2.(S,S)-2-ベンジルチオシクロペンタノールの合成
【化72】
濃縮された2-ベンジルチオシクロペンタノール(88g;58%のエナンチオマー過剰率;95%純粋な前留分)を1Lフラスコに入れた。MTBE(0.6L)、無水グルタル酸(23g;0.2mol)、及び固定化した酵素(CaLB-ADS4;10g)を加えた。混合物を、メカニカルスターラーを使用して180rpmで1日撹拌した。18時間後、主要でない(R,R)-エナンチオマーが完全に除去された。反応混合物をデカントし、酵素を次の手順で再使用した。デカントした溶液をアンモニア水溶液(0.25L;2M)及び炭酸ナトリウム(0.1L;1.25M)で洗浄した。有機相を単離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、わずかに混濁した無色の油(64g;73%)を得た。この油をKugelrohrで2回に分けて蒸留して、99.8%のエナンチオマー過剰率を示す、54gのGC純度95%の油を得た。
【0191】
代替として、濃縮された2-ベンジルチオシクロペンタノール(104g;57%のエナンチオマー過剰率;97.6%純粋な主留分)を1Lフラスコに入れた。MTBE(0.5L)、無水グルタル酸(23g;0.2mol)、及び固定化した酵素(CaLB-ADS4;回収10g及び新鮮10g)を加えた。混合物を、メカニカルスターラーを使用して180rpmで1日撹拌した。24時間後、主要でない(R,R)-エナンチオマーが完全に除去された。反応混合物を濾過した。濾液をアンモニア水溶液(0.25+0.05L;2M)で洗浄した。有機相を単離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、わずかに混濁した無色の油(80g;77%)を得た。この油をKugelrohrで3回に分けて蒸留して(オーブン175℃/0.06mbar)、99.8%超のエナンチオマー過剰率を示す、74gのGC純度97.5%の油を得た。[α]:+14°(DCM中c=5);[α]:-17°(MeOH中c=1)。
【0192】
ステップ3.(S,S)-2-メルカプトシクロペンタノールの合成
【化73】
蒸留した(S,S)-2-ベンジルチオシクロペンタノール(21g;100mmol)をアルゴン雰囲気下で250ml乾燥丸底フラスコに入れ、200mLの無水2-メチルテトラヒドロフランに溶解させた。機械的撹拌下で、粒状リチウム(総計2.8g;0.4mol)を加えた。反応物を水浴中で冷却した。周囲温度で一晩撹拌すると、灰色のスラリーが得られた。試料のGCは、15面積%の生成物を示した。混合物を、MeOH(25mL)を2時間でゆっくりと加えることによってクエンチした。大量のガス放散が観察された。GC試料は、クエンチ後により高い変換率を示した。エタノール水溶液でさらにクエンチすると、さらなる起泡が生じた。
【0193】
反応混合物を0.25Lの水中で希釈した。有機相を除去し、水相をEtOAcで洗浄した。洗浄した水相を30gの固体クエン酸で酸性化し、EtOAc(200+100mL)で抽出した。抽出物を減圧濃縮して、刺激臭のある油(8g)を得た。Kugelrohr蒸留により、無色の油(1.39g+3.95g)を得た。
【0194】
代替として、蒸留した(S,S)-2-ベンジルチオシクロペンタノール(21g;100mmol)をMeOH(3.2g;100mmol)と混合し、無水2-メチルテトラヒドロフラン(25mL)に溶解させた。この溶液を、アルゴン雰囲気下で1L乾燥丸底フラスコ中、無水2-メチルテトラヒドロフラン(250mL)中の粒状リチウム(2.8g;0.4mol)の懸濁液に機械的撹拌下で、2.5時間で滴加した。4時間後、2-メチルテトラヒドロフラン(50mL)中のMeOH(3.5ml)の溶液を1時間で滴加した。混合物を、2-MeTHF(40mL)中のMeOH(10mL)を1時間でゆっくりと加えることによってクエンチした。大量のガス放散が観察された。
【0195】
反応混合物を水(0.3L)中で希釈した。有機相を除去し、強塩基性水溶液を2-MeTHFで洗浄した。洗浄した水相を固体クエン酸(30g)で酸性化し、EtOAc(250+100ml)で抽出した。抽出物を減圧下で蒸発させて、刺激臭のある油(7.5g)を得た。Kugelrohr蒸留[オーブン125~135℃/18mbar]により、無色の油(7.0g)を得た。GC99.5%。[59mmol;59%];[α]:+49°(MeOH中c=1)。
【0196】
ステップ4.(S,S)-2-(ピリジン-2-イルジスルファネイル(yldisulfaneyl))シクロペンタノールの合成
【化74】
(S,S)-2-メルカプトシクロペンタノール(5.9g;50mmol)をアルゴン下でメタノール(50mL)に溶解させ、メタノール(70mL)中のジピリジルジスルフィド(10.9g;49mmol)の溶液に1時間30分にわたって滴加した。5時間のさらなる撹拌後、反応混合物を蒸発乾固し、残渣(17g)をMTBE(250ml)及び水酸化ナトリウム溶液(0.2L;1M)と混合した。有機相を水酸化ナトリウム(50mL、1M)、水(50mL)、重炭酸ナトリウム溶液(25mL)、及びブライン(25mL)で洗浄した。有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させて、黄色の油(11.1g;定量的収率)を得た。HPLC:100%のエナンチオマー過剰率、8.6面積%のDPDS。
【0197】
油の一部(4g)を混濁するまでMTBE(8mL)及びペンタンと混合した。この混合物を冷凍庫で-25℃まで一晩冷却した。油の沈殿が観察され、HPLCにより不純物の濃縮/除去はなかった。
【0198】
油を回収し、100gのシリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。カラムは、8:2ヘキサン/酢酸エチル、続いて7:3ヘキサン/酢酸エチルで溶出した。
【0199】
生成物がわずかに混濁した油として単離され、全体的な回収率は80%であった。
GC:>99.5%;HPLC:99.8%;キラルHPLC:100%のエナンチオマー過剰率;[α]:-46°(EtOH中c=1)。
【0200】
ステップ5. 4-ニトロフェニル[(S,S)-2-(ピリジン-2-イルジスルファネイル(yldisulfaneyl))シクロペンチル]カーボネートの合成
【化75】
粗製(S,S)-2-(ピリジン-2-イルジスルファネイル(yldisulfaneyl))シクロペンタノール(7g;約25mmol)をアルゴン雰囲気下で乾燥フラスコに入れ、無水ジクロロメタン(80mL)に溶解させた。ピリジン(5ml;60mmol;3当量)を加えた。無水ジクロロメタン(20mL)中のクロロギ酸4-ニトロフェニル(4.5g;23mmol)の溶液をアルゴン下で、周囲温度で約1時間にわたって滴加した。混合物を水でクエンチし、希塩酸(100+50mL;1M)、水、及び重炭酸ナトリウム溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムのプラグで濾過し、減圧下で蒸発して、表題化合物を混濁した油(10g、定量的収率)として得た。HPLC:純度85%。
【0201】
シクロペンチルリンカー部分を含むコンジュゲートは、米国特許出願第16/925,094号の実施例11、ならびに本明細書の実施例9に開示される方法に従って調製することができる。
【0202】
本明細書に記載されるものに加えて、本発明の種々の修正形態が上述の説明から当業者に明らかとなろう。かかる修正形態もまた、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。本出願において引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物を含むが、これらに限定されない各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【配列表】
2024503380000001.app
【国際調査報告】