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特表2024-503382指向性電極構成を有する電気刺激カフデバイス及びシステム
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  • 特表-指向性電極構成を有する電気刺激カフデバイス及びシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】指向性電極構成を有する電気刺激カフデバイス及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A61N1/05
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541621
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 US2022012743
(87)【国際公開番号】W WO2022159375
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】63/139,240
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507213592
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック ニューロモデュレイション コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニアン ハリ ハラ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB12
4C053JJ13
4C053JJ27
(57)【要約】
電気刺激リードは、外面、内面、及び周囲を有するカフ本体と、カフ本体の内面上に配置された長手電極であって、カフ本体の周囲の周りに周方向配置で互いから離間した少なくとも16個の長手電極を各セットが含む少なくとも1つのセットに分割された上記長手電極と、カフ本体を通って延び、かつカフ本体の長さ全体に沿って更に延びる長手スリットとを有するカフを含む。電気刺激リードはまた、カフに結合されたリード本体と、リード本体とカフとを通って延びて電極に電気的に結合された導体とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフであって、
外面、内面、及び周囲を有するカフ本体、
前記カフ本体の前記内面上に配置された複数の長手電極であって、該長手電極の各々が、少なくとも20の長さ/幅のアスペクト比を有し、該複数の長手電極が、該カフ本体の前記周囲の周りに周方向配置で互いから離間した該長手電極のうちの少なくとも16個を各セットが備える少なくとも1つのセットに分割される前記複数の長手電極、及び
前記カフ本体を通って延び、更に該カフ本体の長さ全体に沿って延びる長手スリットであって、前記カフの外側の領域から該カフ本体内までターゲット神経の一部分を受け入れるように作動可能な前記長手スリット、
を含む前記カフと、
前記カフに結合されたリード本体と、
前記リード本体と前記カフとを通って延びて前記長手電極に電気的に結合された複数の導体と、
を備えることを特徴とする電気刺激リード。
【請求項2】
前記長手電極の各々が、100μmよりも大きくない幅を有する、請求項1に記載の電気刺激リード。
【請求項3】
前記カフは、前記カフ本体の前記周囲の少なくとも75%の周りに延びる少なくとも1つのラジアル電極を更に備える、請求項1又は2に記載の電気刺激リード。
【請求項4】
前記カフは、少なくとも1つのセットのラジアル電極を更に備え、
前記ラジアル電極の各セットが、前記カフ本体の前記周囲の少なくとも75%の周りに延びる周方向配置にある該ラジアル電極のうちの少なくとも2つを備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気刺激リード。
【請求項5】
カフであって、
外面、内面、及び周囲を有するカフ本体、
前記カフ本体の前記内面上に配置された複数の長手電極であって、該長手電極の各々が、100μmよりも大きくない幅を有し、該複数の長手電極が、該カフ本体の該周囲の周りに周方向配置で互いから離間した該長手電極のうちの少なくとも16個を各セットが備える少なくとも1つのセットに分割される前記複数の長手電極、及び
前記カフ本体を通って延び、更に該カフ本体の長さ全体に沿って延びる長手スリットであって、前記カフの外側の領域から該カフ本体内までターゲット神経の一部分を受け入れるように作動可能な前記長手スリット、
を備える前記カフと、
前記カフに結合されたリード本体と、
前記リード本体と前記カフとを通って延びて前記長手電極に電気的に結合された複数の導体と、
を備えることを特徴とする電気刺激リード。
【請求項6】
前記カフは、前記カフ本体の前記周囲の少なくとも75%の周りに延びる少なくとも1つのラジアル電極を更に備える、請求項5に記載の電気刺激リード。
【請求項7】
前記カフは、少なくとも1つのセットのラジアル電極を更に備え、
前記ラジアル電極の各セットが、前記カフ本体の前記周囲の少なくとも75%の周りに延びる周方向配置にある該ラジアル電極のうちの少なくとも2つを備える、請求項5又は6に記載の電気刺激リード。
【請求項8】
カフであって、
外面、内面、及び周囲を有するカフ本体、
前記カフ本体の前記内面上に配置された複数の長手電極であって、該複数の電極が、該カフ本体の該周囲の周りに周方向配置で互いから離間した該長手電極のうちの少なくとも32個を各セットが備える少なくとも1つのセットに分割される前記複数の長手電極、
1又は2以上のラジアル電極であって、前記カフ本体の前記周囲の少なくとも75%の周りに単独で又は該ラジアル電極のうちの2又は3以上の組合せで延びる前記1又は2以上のラジアル電極、及び
前記カフ本体を通って延び、更に該カフ本体の長さ全体に沿って延びる長手スリットであって、前記カフの外側の領域から該カフ本体内までターゲット神経の一部分を受け入れるように作動可能な前記長手スリット、
を備えるカフと、
前記カフに結合されたリード本体と、
前記リード本体と前記カフを通って延びて前記長手電極及びラジアル電極に電気的に結合された複数の導体と、
を備えることを特徴とする電気刺激リード。
【請求項9】
前記長手電極の各々が、100μmよりも大きくない幅を有する、請求項8に記載の電気刺激リード。
【請求項10】
前記カフは、少なくとも2つのセットの前記ラジアル電極を更に備え、
前記ラジアル電極の各セットが、前記カフ本体の前記周囲の少なくとも75%の周りに延びる該ラジアル電極のうちの少なくとも1つを備える、請求項8又は9に記載の電気刺激リード。
【請求項11】
前記ラジアル電極の前記セットのうちの少なくとも1つが、前記カフ本体の前記周囲の少なくとも75%の周りに組合せで延びる該ラジアル電極のうちの少なくとも2つを備える、請求項10に記載の電気刺激リード。
【請求項12】
前記長手電極のうちの各々のアスペクト比が、少なくとも50である、請求項1~11のいずれか1項に記載の電気刺激リード。
【請求項13】
前記カフ本体の前記内面にわたって配置された緩衝層を更に備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の電気刺激リード。
【請求項14】
前記長手電極の各々が、少なくとも1mmの長さを有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の電気刺激リード。
【請求項15】
前記少なくとも1つのセットの各々が、前記カフ本体の前記周囲の周りに周方向配置で互いから離間した前記長手電極のうちの少なくとも32個を備える、請求項1~14のいずれか1項に記載の電気刺激リード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、引用によって本明細書に組み込まれている2021年1月19日出願の米国仮特許出願第63/139,240号の「35 U.S.C.§119(e)」の下での利益を主張するものである。
【0002】
本発明の開示は、埋込可能な電気刺激システムと、システムを作るかつ使用する方法との分野に関する。本発明の開示はまた、埋込可能な電気刺激カフデバイス、並びにそれを作るかつ使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
埋込可能な電気刺激システムは、様々な疾患及び障害に治療効果があることが実証されている。例えば、脊髄刺激システムは、慢性疼痛症候群の治療のための治療モダリティとして使用されている。末梢神経刺激は、いくつかの他の調査中の応用と共に、慢性疼痛症候群及び失禁の治療に使用されている。機能的電気刺激システムは、脊髄損傷患者での麻痺した四肢に対して何らかの機能を回復させるために適用されている。脳深部刺激のような脳の刺激は、様々な疾患又は障害の治療に使用することができる。
【0004】
様々な処置のための療法を提供するために刺激器が開発されてきた。刺激器は、制御モジュール(パルス発生器を有する)と、1又は2以上のリードと、各リード上の刺激器電極のアレイとを含むことができる。刺激器電極は、刺激されることになる神経、筋肉、又は他の組織と接触するか又はその近くにある。制御モジュール内のパルス発生器は、電極によって身体組織に送出される電気パルスを発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,181,969号明細書
【特許文献2】米国特許第6,516,227号明細書
【特許文献3】米国特許第6,609,029号明細書
【特許文献4】米国特許第6,609,032号明細書
【特許文献5】米国特許第6,741,892号明細書
【特許文献6】米国特許第7,203,548号明細書
【特許文献7】米国特許第7,244,150号明細書
【特許文献8】米国特許第7,450,997号明細書
【特許文献9】米国特許第7,596,414号明細書
【特許文献10】米国特許第7,610,103号明細書
【特許文献11】米国特許第7,672,734号明細書
【特許文献12】米国特許第7,761,165号明細書
【特許文献13】米国特許第7,783,359号明細書
【特許文献14】米国特許第7,792,590号明細書
【特許文献15】米国特許第7,809,446号明細書
【特許文献16】米国特許第7,949,395号明細書
【特許文献17】米国特許第7,974,706号明細書
【特許文献18】米国特許第6,175,710号明細書
【特許文献19】米国特許第6,224,450号明細書
【特許文献20】米国特許第6,271,094号明細書
【特許文献21】米国特許第6,295,944号明細書
【特許文献22】米国特許第6,364,278号明細書
【特許文献23】米国特許第6,391,985号明細書
【特許文献24】米国特許出願公開第2007/0150036号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2009/0187222号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2009/0276021号明細書
【特許文献27】米国特許出願公開第2010/0076535号明細書
【特許文献28】米国特許出願公開第2010/0268298号明細書
【特許文献29】米国特許出願公開第2011/0004267号明細書
【特許文献30】米国特許出願公開第2011/0078900号明細書
【特許文献31】米国特許出願公開第2011/0130817号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第2011/0130818号明細書
【特許文献33】米国特許出願公開第2011/0238129号明細書
【特許文献34】米国特許出願公開第2011/0313500号明細書
【特許文献35】米国特許出願公開第2012/0016378号明細書
【特許文献36】米国特許出願公開第2012/0046710号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2012/0071949号明細書
【特許文献38】米国特許出願公開第2012/0165911号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2012/0197375号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2012/0203316号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第2012/0203320号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2012/0203321号明細書
【特許文献43】米国特許出願公開第2012/0316615号明細書
【特許文献44】米国特許出願公開第2013/0105071号明細書
【特許文献45】米国特許出願第12/177,823号明細書
【特許文献46】米国特許出願第13/750,725号明細書
【特許文献47】米国特許第7,596,414号明細書
【特許文献48】米国特許第7,974,706号明細書
【特許文献49】米国特許第8,423,157号明細書
【特許文献50】米国特許第10,485,969号明細書
【特許文献51】米国特許第10,493,269号明細書
【特許文献52】米国特許第10,709,888号明細書
【特許文献53】米国特許第10,814,127号明細書
【特許文献54】米国特許出願公開第2017/0333692号明細書
【特許文献55】米国特許出願公開第2018/0154156号明細書
【特許文献56】米国特許第8,224,450号明細書
【特許文献57】米国特許第8,423,154号明細書
【特許文献58】米国特許第8,606,362号明細書
【特許文献59】米国特許第8,620,436号明細書
【特許文献60】米国特許第9,308,383号明細書
【特許文献61】米国特許第9,568,053号明細書
【特許文献62】米国特許第10,350,413号明細書
【特許文献63】米国特許第10,537,741号明細書
【特許文献64】米国特許出願公開第2018/0071520号明細書
【特許文献65】米国特許出願公開第2019/0083796号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様は、外面、内面、及び周囲を有するカフ本体と、カフ本体の内面上に配置された長手電極であって、長手電極の各々が、少なくとも20の長さ/幅のアスペクト比を有し、長手電極が、カフ本体の周囲の周りに周方向配置で互いから離間した少なくとも16個の長手電極を各セットが含む少なくとも1つのセットに分割される上記長手電極と、カフ本体を通って延び、更にカフ本体の長さ全体に沿って延び、カフの外側の領域からカフ本体内までのターゲット神経の一部分を受け入れるように作動可能な長手スリットと、を有するカフを含む電気刺激リードである。電気刺激リードはまた、カフに結合されたリード本体と、リード本体及びカフを通って延びる導体とを含み、導体は、長手電極に電気的に結合される。
【0007】
少なくとも一部の態様では、長手電極の各々のアスペクト比は、少なくとも50である。少なくとも一部の態様では、長手電極の各々は、100μmよりも大きくない幅を有する。少なくとも一部の態様では、長手電極の各々は、少なくとも1mmの長さを有する。少なくとも一部の態様では、少なくとも1つのセットの各々は、カフ本体の周囲の周りに周方向配置で互いから離間した少なくとも32個の長手電極を含む。
【0008】
少なくとも一部の態様では、カフは、カフ本体の周囲の少なくとも75%の周囲に延びる少なくとも1つのラジアル電極を更に含む。少なくとも一部の態様では、カフは、少なくとも1つのセットのラジアル電極を更に含み、ラジアル電極の各セットは、カフ本体の周囲の少なくとも75%の周囲に延びる周方向配置でラジアル電極のうちの少なくとも2つを含む。
【0009】
別の態様は、外面、内面、及び周囲を有するカフ本体と、カフ本体の内面上に配置された長手電極であって、長手電極の各々が、100μmよりも大きくない幅を有し、長手電極が、カフ本体の周囲の周りを周方向配置で互いから離間した少なくとも16個の長手電極を各セットが含む少なくとも1つのセットに分割される上記長手電極と、カフ本体を通って延び、カフ本体の長さ全体に沿って更に延び、カフの外側の領域からカフ本体内までのターゲット神経の一部分を受け入れるように作動可能な長手スリットとを有するカフを含む電気刺激リードである。電気刺激リードはまた、カフに結合されたリード本体と、リード本体及びカフを通って延びる導体とを含み、導体は、長手電極に電気的に結合される。
【0010】
少なくとも一部の態様では、長手電極の各々のアスペクト比は、少なくとも50である。少なくとも一部の態様では、長手電極の各々は、少なくとも1mmの長さを有する。少なくとも一部の態様では、少なくとも1つのセットの各々は、カフ本体の周囲の周りに周方向配置で互いから離間した少なくとも32個の長手電極を含む。
【0011】
少なくとも一部の態様では、カフは、カフ本体の周囲の少なくとも75%の周囲に延びる少なくとも1つのラジアル電極を更に含む。少なくとも一部の態様では、カフは、少なくとも1つのセットのラジアル電極を更に含み、ラジアル電極の各セットは、カフ本体の周囲の少なくとも75%の周囲に延びる周方向配置でラジアル電極のうちの少なくとも2つを含む。
【0012】
更に別の態様は、外面、内面、及び周囲を有するカフ本体と、カフ本体の内面上に配置された長手電極であって、カフ本体の周囲の周りに周方向配置で互いから離間した少なくとも16個又は32個の長手電極を各セットが含む少なくとも1つのセットに分割される上記長手電極と、カフ本体の周囲の少なくとも75%の周囲を単独で又は2又は3以上のラジアル電極の組合せで(例えば、2又は3以上のラジアル電極がある時)延びる1又は2以上のラジアル電極と、カフ本体を通って延び、カフ本体の長さ全体に沿って更に延び、カフの外側の領域からカフ本体内までのターゲット神経の一部分を受け入れるように作動可能な長手スリットと、を有するカフを含む電気刺激リードである。電気刺激リードはまた、カフに結合されたリード本体と、リード本体及びカフを通って延びる導体とを含み、導体は、長手電極及びラジアル電極と電気的に結合される。
【0013】
少なくとも一部の態様では、長手電極の各々のアスペクト比は、少なくとも50である。少なくとも一部の態様では、長手電極の各々は、100μmよりも大きくない幅を有する。少なくとも一部の態様では、長手電極の各々は、少なくとも1mmの長さを有する。少なくとも一部の態様では、少なくとも1つのセットの各々は、カフ本体の周囲の周りに周方向配置で互いから離間した少なくとも32個の長手電極を含む。
【0014】
少なくとも一部の態様では、カフは、少なくとも2つのセットのラジアル電極を更に含み、ラジアル電極の各セットは、カフ本体の周囲の少なくとも75%の周囲に延びるラジアル電極のうちの少なくとも1つを含む。少なくとも一部の態様では、ラジアル電極のセットのうちの少なくとも1つは、カフ本体の周囲の少なくとも75%の周囲に組合せで延びるラジアル電極のうちの少なくとも2つを含む。少なくとも一部の態様では、カフは、カフ本体の内面にわたって配置された緩衝層を更に含む。
【0015】
本発明の非限定的かつ非包括的実施形態を以下の図面を参照して説明する。図面では、類似の参照番号は、特に指定しない限り、様々な図全体を通して類似の部品を指す。
【0016】
本発明のより良い理解のために、添付図面に関連付けて読まれることになる以下の「発明を実施するための形態」を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】制御モジュールに電気的に結合されたリードを含む電気刺激システムの一実施形態の模式図である。
図2A】細長デバイスに電気的に結合するように構成かつ配置された図1の制御モジュールの一実施形態の模式図である。
図2B図2Aの細長デバイスを図1の制御モジュールに電気的に結合するように構成かつ配置されたリード延長部の一実施形態の模式図である。
図3】各々16個の長手電極の2つのセットと2つのラジアル電極とを有するカフの一実施形態の概略斜視図である。
図4】各々が16個の長手電極の4つのセット及び3つのラジアル電極を有するカフの別の実施形態の概略斜視図である。
図5】各々が16個の長手電極の4つのセットと各々が2つのラジアル電極の3つのセットとを有するカフの一実施形態の概略斜視図である。
図6】各々が32個の長手電極の4つのセットと2つのラジアル電極とを有するカフの一実施形態の概略斜視図である。
図7】迷走神経の一部分の断面の写真である。
図8】迷走神経の一部分の周りに配置された図6のカフの断面図である。
図9】本発明の実施形態による電気刺激配置の構成要素の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、埋込可能な電気刺激システム及びシステムを作るかつ使用する方法の分野に関する。本発明はまた、埋込可能な電気刺激カフデバイス、並びにそれを作るかつ使用する方法に関する。
【0019】
適切な埋込可能電気刺激システムは、以下に限定されるものではないが、リードの遠位端に沿って配置された1又は2以上の電極を有する少なくとも1つのリードを含む。リードは、例えば、経皮リード、パドルリード、及びカフリードを含む。リードを有する電気刺激システムの例は、例えば、米国特許第6,181,969号明細書、第6,516,227号明細書、第6,609,029号明細書、第6,609,032号明細書、第6,741,892号明細書、第7,203,548号明細書、第7,244,150号明細書、第7,450,997号明細書、第7,596,414号明細書、第7,610,103号明細書、第7,672,734号明細書、第7,761,165号明細書、第7,783,359号明細書、第7,792,590号明細書、第7,809,446号明細書、第7,949,395号明細書、第7,974,706号明細書、第6,175,710号明細書、第6,224,450号明細書、第6,271,094号明細書、第6,295,944号明細書、第6,364,278号明細書、及び第6,391,985号明細書、米国特許出願公開第2007/0150036号明細書、第2009/0187222号明細書、第2009/0276021号明細書、第2010/0076535号明細書、第2010/0268298号明細書、第2011/0004267号明細書、第2011/0078900号明細書、第2011/0130817号明細書、第2011/0130818号明細書、第2011/0238129号明細書、第2011/0313500号明細書、第2012/0016378号明細書、第2012/0046710号明細書、第2012/0071949号明細書、第2012/0165911号明細書、第2012/0197375号明細書、第2012/0203316号明細書、第2012/0203320号明細書、第2012/0203321号明細書、第2012/0316615号明細書、及び第2013/0105071号明細書、及び米国特許出願第12/177,823号明細書及び第13/750,725号明細書に見出され、その全ては、それらの全体が引用によって組み込まれている。
【0020】
図1は、電気刺激システム100の一実施形態を模式的に示している。電気刺激システムは、制御モジュール(例えば、刺激器又はパルス発生器)102と、制御モジュール102に結合可能なリード103とを含む。リード103は、マウント162とカフ150を含む。リード103は、1又は2以上のリード本体106と、電極134のような電極のアレイ133と、1又は2以上のリード本体106に取り付けられたカフ150内に配置された端子のアレイ(例えば、図2A-2Bでの210)とを含む。少なくとも一部の実施形態では、リードは、リード本体106の長手長さの少なくとも一部分に沿って等直径である。図1は、制御モジュール102に結合された1つのリード103を例示している。他の実施形態は、制御モジュール102に結合された2つ、3つ、4つ、又はそれよりも多いリード103を含む場合がある。更に他の実施形態では、リード103は、複数の制御モジュール102に結合される場合がある。例えば、64個の電極を有するリードは、各々が32個の電極を取り扱うことができる2つの制御モジュール102に結合される場合がある。
【0021】
リード103は、いずれかの適切な方式で制御モジュール102に結合することができる。少なくとも一部の実施形態では、リード103は、制御モジュール102に直接に結合する。少なくとも一部の他の実施形態では、リード103は、1又は2以上の中間デバイス(図2A-2Bの200)を通じて制御モジュール102に結合する。例えば、少なくとも一部の実施形態では、1又は2以上のリード延長部224(例えば、図2Bを参照)は、リード103と制御モジュール102の間の距離を延長するためにリード103と制御モジュール102の間に配置することができる。例えば、スプリッタ又はアダプタなど又はその組合せを含む他の中間デバイスは、1又は2以上のリード延長部に加えて又はその代わりに使用される場合がある。電気刺激システム100が、リード103と制御モジュール102の間に配置された複数の細長デバイスを含む場合に、中間デバイスは、あらゆる適切な配置に構成される場合があることは理解されるであろう。
【0022】
図1では、制御モジュール102へのリード103の結合を容易にするように構成かつ配置されたスプリッタ107を有する電気刺激システム100が示されている。スプリッタ107は、リード103の近位端に結合するように構成されたスプリッタコネクタ108と、制御モジュール102(又は別のスプリッタ、リード延長部、又はアダプタなど)に結合するように構成かつ配置された1又は2以上の近位後尾部109a及び109bとを含む。スプリッタ107及びスプリッタコネクタ108は、リード103の一部である場合があり、又はリードに取り付けられる個別の構成要素である場合がある。
【0023】
制御モジュール102は、典型的には、コネクタハウジング112と密封電子機器ハウジング114とを含む。刺激回路110及び任意的な電源120は、電子機器ハウジング114に配置される。制御モジュールコネクタ144は、コネクタハウジング112に配置される。制御モジュールコネクタ144は、リード103と制御モジュール102の刺激回路110との間の電気接続を行うように構成かつ配置される。
【0024】
リード本体106と制御モジュール102とを含む電気刺激システム又は構成要素は、典型的には、患者の体内に埋め込まれる。電気刺激システムは、以下に限定されるものではないが、脳刺激、神経刺激、脊髄刺激、及び筋肉刺激などを含む様々な用途に対して使用することができる。
【0025】
リード本体106は、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、及びエポキシなど又はその組合せのような例えば非導電性の生体適合性材料で作ることができる。リード本体106は、例えば、成形(射出成形を含む)及び鋳造などを含むいずれかの工程によって望ましい形状に形成される場合がある。非導電材料は、典型的には、リード本体106の遠位端からリード本体106の近位端まで延びる。
【0026】
端子(例えば、図2A-2Bの210)は、典型的には、対応するコネクタ接点(例えば、図2Bの214及び240)への電気接続のために電気刺激システム100(並びにいずれかのスプリッタ、リード延長部、又はアダプタなど)のリード本体106の近位端に沿って配置される。コネクタ接点は、コネクタ(例えば、図1-2Bの144及び図2Bの222)に配置され、それは、次に、例えば、制御モジュール102(又はリード延長部、スプリッタ、又はアダプタなど)上に配置される。導電ワイヤ160又はケーブルなど(図1ではそのうちの1つだけが示されている)は、端子から電極134まで延びる。典型的には、1又は2以上の電極134は、各端子に電気的に結合される。少なくとも一部の実施形態では、各端子は、1つの電極134にのみ接続される。
【0027】
導電ワイヤ(「導体」)160(明瞭化のために図1に1つのみが示されている)は、リード本体106の非導電材料に埋め込まれる場合があり、又はリード本体106に沿って延びる1又は2以上の管腔(図示せず)に配置することができる。一部の実施形態では、各導体に対して個々の管腔が存在する。他の実施形態では、2又は3以上の導体が管腔を通って延びる。同じく、例えば、スタイレットを挿入して患者の体内へのリード本体106の配置を容易にするために、リード本体106の近位端で又はその近くで開口する1又は2以上の管腔(図示せず)が存在する場合がある。これに加えて、例えば、リード本体106の埋め込みの部位の中への薬物又は薬剤の注入のためにリード本体106の遠位端で又はその近くで開口する1又は2以上の管腔(図示せず)が存在する場合がある。少なくとも1つの実施形態では、1又は2以上の管腔は、生理食塩水又は硬膜外液などで連続的に又は定期的に洗浄される。少なくとも一部の実施形態では、1又は2以上の管腔は、遠位端で永久的又は取り外し可能に密封可能である。
【0028】
図1はまた、カフ150に結合されたリード本体106の一部であるマウント162を例示している。リード本体106内からの導体160(明瞭化のために図1にそのうちの1つだけが示されている)は、マウント162に受け入れられ、マウントは、次に、各導体が電極134のうちの1つとの直接電気接続のためにマウント162を通過するように(例えば、1つの導体が1つの電極と電気接続する等々)カフ150に取り付けられる。マウント162は、以下に限定されるものではないが、マウント162をカフ150に対して成形する又は接着するような様々な手段を用いて取り付けられる場合がある。他の実施形態では、リード本体106内からの導体160は、リード本体106から電極134までのジャンパー、中間ワイヤ、又は移行ワイヤを用いて電極134に電気的に結合される。
【0029】
マウント162は、図1に示すように、カフ150からオフセットされるか、カフと一直線になるか、又はいずれかの他の適切な配置とすることができる。カフリード103の例は、米国特許第7,596,414号明細書、第7,974,706号明細書、第8,423,157号明細書、第10,485,969号明細書、第10,493,269号明細書、第10,709,888号明細書、及び第10,814,127号明細書、及び米国特許出願公開第2017/0333692号明細書及び第2018/0154156号明細書に見出すことができ、これらの全ては、それらの全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0030】
図2Aは、制御モジュールコネクタ144の一実施形態に結合するように構成かつ配置された1又は2以上の細長デバイス200の近位端の一実施形態の概略側面図である。1又は2以上の細長デバイスは、例えば、リード本体106、1又は2以上の中間デバイス(例えば、図2Bのリード延長部224、又はアダプタなど、又はその組合せ)、又はその組合せを含む場合がある。図2Aは、制御モジュール102に結合された2つの細長デバイス200を例示している。これらの2つの細長デバイス200は、図1に示すような2つの後尾部、又は2つの異なるリード、又は細長デバイスのいずれかの他の組合せとすることができる。
【0031】
制御モジュールコネクタ144は、方向矢印212によって示すように、細長デバイス200の近位端をその中に挿入することができる少なくとも1つのポートを定める。図2Aでは(及び他の図では)、2つのポート204a及び204bを有するコネクタハウジング112が示されている。コネクタハウジング112は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、又はそれよりも多いポートを含むあらゆる適切な数のポートを定めることができる。
【0032】
制御モジュールコネクタ144はまた、各ポート204a及び204b内に配置されたコネクタ接点214のような複数のコネクタ接点を含む。細長デバイス200がポート204a及び204bの中に挿入される時に、コネクタ接点214は、細長デバイス200の近位端に沿って配置された複数の端子210と位置合わせされて制御モジュール102をリード103の遠位端に配置された電極(図1の134)に電気的に結合することができる。制御モジュール内のコネクタの例は、例えば、引用によってそれらの全体が組み込まれている米国特許第7,244,150号明細書及び第8,224,450号明細書に見出される。
【0033】
図2Bは、電気刺激システム100の別の実施形態の概略側面図である。電気刺激システム100は、リード延長部224を含み、それは、1又は2以上の細長デバイス200(例えば、リード本体106、アダプタ、又は別のリード延長部など、又はその組合せ)を制御モジュール102に結合するように構成かつ配置される。図2Bでは、制御モジュールコネクタ144内に定められた単一ポート204に結合されたリード延長部224が示されている。これに加えて、単一細長デバイス200に結合するように構成かつ配置されたリード延長部224が示されている。代替実施形態では、リード延長部224は、制御モジュールコネクタ144内に定められた複数のポート204に結合するように、又は複数の細長デバイス200を受け入れるように、又はその両方であるように構成かつ配置される。
【0034】
リード延長部224は、リード延長部コネクタ222上に配置される。図2Bでは、リード延長部224の遠位端226に配置されたリード延長部コネクタ222が示されている。リード延長部コネクタ222は、コネクタハウジング228を含む。コネクタハウジング228は、方向矢印238によって示すように、細長デバイス200の端子210をその中に挿入することができる少なくとも1つのポート230を定める。コネクタハウジング228はまた、コネクタ接点240のような複数のコネクタ接点を含む。細長デバイス200がポート230に挿入される時に、コネクタハウジング228に配置されたコネクタ接点240は、細長デバイス200の端子210と位置合わせされ、リード延長部224をリード(図1の103)に沿って配置された電極(図1の134)に電気的に結合することができる。
【0035】
少なくとも一部の実施形態では、リード延長部224の近位端は、リード103(又は他の細長デバイス200)の近位端と同様に構成かつ配置される。リード延長部224は、コネクタ接点240を遠位端226とは反対側であるリード延長部224の近位端248に電気的に結合する複数の導電ワイヤ(図示せず)を含む場合がある。少なくとも一部の実施形態では、リード延長部224に配置された導電ワイヤは、リード延長部224の近位端248に沿って配置された複数の端子(図示せず)に電気的に結合することができる。少なくとも一部の実施形態では、リード延長部224の近位端248は、別のリード延長部(又は別の中間デバイス)に配置されたコネクタの中への挿入に対して構成かつ配置される。他の実施形態では(かつ図2Bに示すように)、リード延長部224の近位端248は、制御モジュールコネクタ144の中への挿入に対して構成かつ配置される。
【0036】
従来のカフリードは、カフ上に配置された1又は2以上の電極で神経の一部分の周囲の周りに巻き付くカフを含む。多くの従来のカフリードでは、個々の電極はまた、ラジアル巻き付け配置で神経の周囲の少なくとも一部分の周囲の周りに巻き付く。電極のラジアル巻き付け配置は、典型的に神経の外周領域の刺激をもたらす。
【0037】
しかし、神経は、モノリシックな生物学的構成ではなく、むしろ、代わりに、神経は、神経に沿って長手方向に延びる多くの繊維(群として配置することができる)で作られている。図7は、神経内の多くの繊維282を例示する迷走神経280の一部分の断面である。一部の事例では、1つだけの繊維又は繊維の群を刺激することが望ましい場合がある。
【0038】
ラジアル巻き付け配置での電極は、一般的に、繊維又は繊維の群を選択的に刺激することはできず、むしろ代わりに、そのような電極は、神経の外周の周りに延びることに起因して多くの繊維を刺激する。これに加えて、そのような電極は、複数の神経繊維が刺激されるので望ましくない副作用を生成する場合がある。例えば、カフが迷走神経の周りにあるカフリードは、異なる繊維が身体の多くの部位に接続しているので、迷走神経を刺激する時に広範な影響を及ぼす可能性がある。
【0039】
本明細書に更に説明するように、カフリードは、神経の周囲の周りに巻き付くカフ本体を含むことができ、かつカフ本体の周囲の周りに配分された長手電極を含む。少なくとも一部の実施形態では、これらの長手電極は、カフ本体の周囲に沿った選択長手領域をターゲットにすることを可能にする。少なくとも一部の実施形態では、これらは、カフ本体の周囲の周りにセットで配置された少なくとも16、20、25、28、32、36、40、48、50、64、80、100、120、128、150、200、250、256、又はそれよりも多い長手電極であり、かつカフ本体に沿って互いから長手方向に離間した長手電極の1、2、3、又はそれよりも多いセットが存在する場合がある。
【0040】
少なくとも一部の実施形態では、カフはまた、1又は2以上の選択長手電極に対する対電極として使用することができる1又は2以上のラジアル電極を含む場合がある。少なくとも一部の実施形態では、長手電極のうちの1又は2以上は、カソードとして使用することができ、ラジアル電極のうちの1又は2以上は、アノードとして使用することができる。長手又はラジアル電極からのカソード又はアノードのあらゆる他の適切な選択を使用することができる。
【0041】
少なくとも一部の実施形態では、長手電極は、神経線維又は神経線維のセットを選択的に刺激するのに使用することができる。例えば、迷走神経の周囲にカフを有するカフリードは、神経内の心血管繊維又は体部位繊維を刺激することなく(あるいは、その刺激を低減又は閾値未満にして)免疫調節繊維を選択的に刺激するのに使用される場合がある。例えば、免疫調節繊維は、脳への又は脳からの信号を強化、減少、又は停止させるのに使用される場合がある。少なくとも一部の実施形態では、長手電極を有するカフリードは、繊維又は筋膜刺激を選択的に提供するのに使用することができる。
【0042】
図3は、カフリード103(図1)のカフ350の一実施形態を例示している。カフ350は、カフ本体の内面354上に配置されて2つのセット356a、356bでカフ本体の周囲上に配列された長手電極334を有するカフ本体352を含む。図示の実施形態では、各セット356a,356bは、16個の長手電極334を含む。以下に限定されるものではないが、16、20、25、28、32、36、40、48、50、64、80、100、120、128、150、200、250、256、又はそれよりも多い長手電極を含むあらゆる他の適切な個数の電極を使用することができる。カフリードは、1、2、3、4、又はそれよりも多いセットの長手電極334を有することができる。セット内の長手電極334の個数は、各セットに対して同じとすることができ、又は異なることができる。図示の実施形態では、各セットの長手電極334は、他方のセットの電極と長手方向に位置合わせされる。他の実施形態では、各セットの長手電極334は、他方のセットの電極と交互配置されるか、又は位置合わせされないとすることができる。
【0043】
これに加えて、カフ350は、カフ本体352の周囲の少なくとも75%、80%、90%、又は95%の周りに巻き付く2つのラジアル電極358a、358bを含む。カフ350はまた、カフ本体352の長手長さを延びるスリット360を定め、そのために神経は、スリットを開いてカフ本体を神経にわたって適合させることにより、カフ本体の内部362の中に装填することができる。スリット360は、カフ350がターゲット神経の周りに巻き付くように、ターゲット神経(図示せず)がカフ350の中に摺動される、挿入される、給送される、又は他に受け入れられることを可能にするように開かれるか又は最初にサイズが設定される。少なくとも一部の実施形態では、スリット360は、カフ350が回転的又は移行的かに関わらずターゲット神経にわたって及びその周りに又はターゲット神経に対して容易に移動されることを可能にする。
【0044】
電極334、358a、358bは、いずれかの導電性で生体適合性の材料を用いて形成することができる。適切な材料の例は、金属、合金、導電ポリマー、及び導電カーボンなど、並びにその組合せを含む。少なくとも一部の実施形態では、電極334のうちの1又は2以上は、白金、白金イリジウムのような白金合金、パラジウムロジウムのようなパラジウム合金、チタン、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、ニッケル/コバルト合金、ステンレス鋼、タンタル、導電カーボン、導電プラスチック、金属粉末で充填されたエポキシ又は他の接着剤、又はNitinol(登録商標)など、又はそのいずれかの組合せのうちの1又は2以上から形成される。電極334、358a、358bは、以下に限定されるものではないが、機械加工、成形(例えば、粉末金属成形)、フォトリソグラフィ、付加技術、又はスタンピングなど、又はそのいずれかの組合せを含むいずれかの適切な工程によって形成することができる。
【0045】
少なくとも一部の実施形態では、電極334、358a、358bは、カフ本体352と同一平面である又はそこから僅かに突出する(例えば、200、100、又は50μmよりも多くなく)接触面を有し、これは、少なくとも一部の状況では、神経に対する物理的圧力を低減する又は排除する場合がある。電極は、電気刺激を提供するのに、又は組織からの電気信号を感知するのに、又はそのいずれかの組合せに使用することができることは認識されるであろう。
【0046】
少なくとも一部の実施形態では、長手電極334は、100、75、50、40、30、又は25マイクロメートル(μm)よりも大きくない幅と、少なくとも1、2、3、4、5、7、又はそれよりも大きいミリメートル(mm)の長さとを有する。長手電極の幅は、カフ本体の周りの周方向351の距離に対応する。少なくとも一部の実施形態では、長手電極334の長さは、10mmよりも大きくない。長手電極の長さは、カフ本体の長手方向353に沿った距離に対応する。少なくとも一部の実施形態では、長手電極334は、少なくとも20、40、50、80、100、150、200、又はそれよりも大きいアスペクト比(長さ/幅)を有する。少なくとも一部の実施形態では、電極334の各々は、同じ幅、長さ、及びアスペクト比を有する。他の実施形態では、電極334は、異なる幅、長さ、又はアスペクト比を有することができ、セットの電極は、そのセット内又はセット間で同じか又は異なる幅、長さ、又はアスペクト比を有する。
【0047】
少なくとも一部の実施形態では、長手電極334は、矩形又は丸いコーナを有する矩形である。以下に限定されるものではないが、長円形、楕円形、又は湾曲している1又は2以上の辺(又は辺の各部分)を有する修正矩形など、又はそのいずれかの組合せを含むいずれかの他の適切な形状は、長手電極に対して使用することができる。直前の段落に説明した長さ及び幅の測定値は、電極334の最長部分又は最幅広部分に対応する。例えば、楕円形電極に対して、楕円の長軸に沿った長さは、長さ測定値に対応し、短軸に沿った長さは、幅測定値に対応する。
【0048】
長手電極334の狭い幅は、神経内の特定の繊維又は繊維の群を選択し、かつ選択された繊維又は繊維の群への刺激をステアリングする機能を容易にすることができる。各セット内の長手電極334の個数は、長手電極334の個数の増加と共により多くの選択性を提供することにより、繊維選択性を更に高めることができる。刺激は、長手電極334のうちの1又は2以上を用いて行うことができる。対電極として適切なラジアル電極358a、358b(又は長手電極334のうちの1又は2以上)の選択は、選択された繊維又は繊維の群への刺激のステアリングを更に強化することができる。
【0049】
カフ本体352は、以下に限定されるものではないが、シリコーンのようなポリマー材料、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、又はエポキシなど、又はそのいずれかの組合せを含むいずれかの適切な生体適合性かつ生体安定性の非導電材料で形成することができる。少なくとも一部の実施形態では、カフ本体352は、円形、楕円形、又はいずれかの他の適切な断面形状を有することができ、少なくとも一部の実施形態では、神経を受け入れるために断面形状を変更するほど十分に可撓性である場合がある。少なくとも一部の実施形態では、電極334、358a、358bは、カフ本体352と共に成形されるか、又は導電層又はフィルムなどのエッチング又は融除のような技術によって形成することができる。少なくとも一部の実施形態では、カフ本体352は、0.5から5mmの範囲内又は1から3mmの範囲内の内径(非円形カフ本体の最大直径に対応することができる)を有する。少なくとも一部の実施形態では、カフ本体352は、少なくとも5、10、又は20mmの長さを有する。
【0050】
少なくとも一部の実施形態では、カフ本体352は、以下に限定されるものではないが、成形、鋳造を含むいずれかの適切な技術を用いて形成され、シート状に形成されてその後に結合剤として接着剤を使用して成形され、平坦に形成されて熱を使用して成形され、平坦に形成されてカフ状の足場に取り付けられ、又はカフ形状に押圧又は押し出されるなど、又はそのいずれかの組合せで形成することができる。少なくとも一部の実施形態では、電極334は、以下に限定されるものではないが、接着剤で取り付ける、カフ本体に成形する(例えば、インサート成形)、熱を使って電極をカフ本体に接着する、電極を加熱してそれをカフ本体の中に押し込む、又はカフ本体上に電極材料を堆積させてフォトリソグラフィ及びエッチングを使用することなど、又はそのいずれかの組合せを含むいずれかの適切な技術を用いてカフ本体352に取り付けることができる。
【0051】
少なくとも一部の実施形態では、カフ本体352の内面354は、神経への損傷を低減するためのクッションとして作用する緩衝層364(図8)で被覆することができる。緩衝層364の材料の例は、以下に限定されるものではないが、パラフィン又は等張生理食塩水と人工脳脊髄液との組合せなど、又はそのいずれかの組合せを含む。緩衝層364は、電極334から緩衝層を通して神経までの電流の流れを許容する材料で作られる。
【0052】
少なくとも一部の実施形態では、カフ350がターゲット神経に対する望ましい位置に置かれた状態で、スリット360を定めるカフ本体352の縁部は、ターゲット神経を不要に圧迫することなくターゲット神経を捕捉するように縫合することができる。少なくとも一部の実施形態では、縫合孔(図示せず)が、任意的にカフ350の縁部の中に組み込まれ、ターゲット神経の周りにカフ350を閉じる又は部分的に閉じることを可能にする。
【0053】
図4は、カフ本体352と各群に16個の電極を有する4つの群356a、356b、356c、356dに配置された長手電極334とを有するカフ350の別の実施形態を例示している。カフ350は、3つのラジアル電極358a、358b、358cを含む。
【0054】
図5は、カフ本体352と各群に16個の電極を有する4つの群356a、356b、356c、356dに配置された長手電極334とを有するカフ350の別の実施形態を例示している。カフ350は、カフ本体352の周囲の半分未満(例えば、カフ本体の周囲の少なくとも25%、30%、33%、40%、45%、又は48%)の周りに各々が延びる6つのラジアル電極358a、358b、358c、358d、358e、358fを含み、これらのラジアル電極のうちの2つは、3つのセットの各々に配置される。他の配置は、例えば、セット当たり3、4、6、又はそれよりも多いラジアル電極(又はいずれかの他の個数のラジアル電極)を含むことができることは理解されるであろう。セットのラジアル電極は、カフ本体352の周囲の周りに同じ量を延びることができ、又はカフ本体の周囲の周りに異なる量を延びることができる。各セットは、同一とすることができ、又はセットは、ラジアル電極の異なる配置を有することができる。少なくとも一部の実施形態では、セットのラジアル電極は、組合せで、カフ本体352の周囲の少なくとも75%、80%、90%、又は95%の周りに延びる。
【0055】
図6は、カフ本体352と、各群に32個の電極を有する4つの群356a、356b、356c、356dに配置された長手電極334とを有するカフ350の更に別の実施形態を例示している。カフ350は、2つのラジアル電極358a、358bを含む。
【0056】
図8は、迷走神経280の周りに配置された図6のカフ350の断面を例示しており、長手電極334は、カフ及び迷走神経の周囲の周りに配列されている。任意的に、緩衝層364は、カフ350/電極334と神経280の間に配置される。
【0057】
カフリード103(図1)は、1又は2以上の制御モジュール102(図1)に結合することができる。カフリード103が多くの長手電極334を有する場合に、複数の制御モジュール102を使用して長手電極334を独立して制御することができる。これに加えて又はこれに代えて、多重化技術及び配置を使用して、選択された長手電極334に刺激を与えることができる。多重化配置は、制御モジュール102、カフリード103、又は別々のモジュールなどの一部、又はそのいずれかの組合せである場合がある。多重化と選択された電極を通した刺激の独立した制御及び送出との例は、米国特許第8,423,154号明細書、第8,606,362号明細書、第8,620,436号明細書、第9,308,383号明細書、第9,568,053号明細書、第10,350,413号明細書、及び第10,537,741号明細書、及び米国特許出願公開第2018/0071520号明細書及び第2019/0083796号明細書に見出すことができ、これらの全ては、それらの全体が引用によって本明細書に組み込まれている。
【0058】
図9は、リード902、刺激回路906、電源908、及びアンテナ910を有する電気刺激システム900を含む電気刺激配置904の構成要素の一実施形態の模式図である。電気刺激システムは、例えば、上述の電気刺激システムのいずれかとすることができる。電気刺激配置は、より多い、より少ない、又は異なる構成要素を含むことができ、かつ本明細書に列挙した刺激器参考文献に開示された構成を含む様々な異なる構成を有することができることは理解されるであろう。
【0059】
電源908が再充電可能バッテリ又は充電可能コンデンサである場合に、電源は、望ましい場合にアンテナ910を使用して再充電/充電される場合がある。再充電/充電のための電力は、アンテナ910を通して電源908をユーザに対して外部の再充電ユニット936に誘導結合することによって提供することができる。そのような配置の例は、上記に識別した文献に見出すことができる。
【0060】
少なくとも一部の実施形態では、電流は、電気刺激システムの近くの神経線維、筋線維、又は他の身体組織を刺激するためにリード902上の電極(図1の電極134のような)によって放出される。刺激回路906は、他の構成要素の中でも、プロセッサ934と受信機932を含むことができる。プロセッサ934は、一般的に、電気刺激システムのタイミング及び電気特性を制御するために含まれる。例えば、プロセッサ934は、望ましい場合に、パルスのタイミング、周波数、強度、持続時間、及び波形のうちの1又は2以上を制御することができる。これに加えて、プロセッサ934は、望ましい場合に、刺激を提供するのにどの電極を使用することができるかを選択することができる。一部の実施形態では、プロセッサ934は、どの電極がカソードであり、かつどの電極がアノードであるかを選択する。一部の実施形態では、プロセッサ934は、どの電極が望ましい組織の最も有用な刺激を提供するかを識別するのに使用される。
【0061】
いずれのプロセッサも使用することができ、かつ例えば規則的間隔でパルスを生成する電子デバイスのように単純なものとすることができ、又はプロセッサは、例えばパルス特性の修正を可能にする外部プログラミングユニット938から命令を受信して解釈する機能を有することができる。図示の実施形態では、プロセッサ934は、受信機932に結合され、それは、次に、アンテナ910に結合される。これは、プロセッサ934が、例えば、望ましい場合にパルス特性と電極の選択とを指示する命令を外部ソースから受信することを可能にする。
【0062】
少なくとも一部の実施形態では、アンテナ910は、プログラミングユニット938によってプログラムされる信号(例えば、RF信号)を外部遠隔測定(テレメトリ)ユニット940から受信する機能を有する。プログラミングユニット938は、遠隔測定ユニット940に対して外部であるか又はその一部とすることができる。遠隔測定ユニット940は、ユーザの皮膚上に着用されるか又はユーザによって携帯することができるデバイスとすることができ、かつ望ましい場合に、ポケットベル、携帯電話、又は遠隔制御器に類似の形態を有することができる。別の代替案として、遠隔測定ユニット940は、ユーザによって着用又は担持されない場合があり、むしろホームステーション又は臨床医のオフィスでのみ利用可能である場合がある。プログラミングユニット938は、電気刺激システム900への送信のための情報を遠隔測定ユニット940に提供することができるいずれかのユニットとすることができる。プログラミングユニット938は、遠隔測定ユニット940の一部とすることができ、又は無線又は有線接続を通じて遠隔測定ユニット940に信号又は情報を提供することができる。適切なプログラミングユニットの一例は、遠隔測定ユニット940に信号を送るためにユーザ又は臨床医によって作動されるコンピュータである。
【0063】
アンテナ910及び受信機932を通じてプロセッサ934に送られる信号は、電気刺激システム900の作動を修正するか又は他に指示するのに使用することができる。例えば、信号は、パルス持続時間、パルス周波数、パルス波形、及びパルス強度のうちの1又は2以上を修正するような電気刺激システムのパルスを修正するのに使用される場合がある。信号はまた、作動を停止する、作動を開始する、バッテリの充電を開始する、又はバッテリの充電を停止するように電気刺激システム900に指示する場合がある。
【0064】
任意的に、電気刺激システム900は、遠隔測定ユニット940又は信号を受信することができる別のユニットに信号を送り返すためにプロセッサ934とアンテナ910とに結合された送信機(図示せず)を含む場合がある。例えば、電気刺激システム900は、電気刺激システム900が適正に作動しているか否かを示す又はバッテリを充電する必要がある時又はバッテリに残っている電荷のレベルを示す信号を送信する場合がある。プロセッサ934はまた、パルス特性に関する情報をユーザ又は臨床医がその特性を決定する又は検証することができるように送信する機能を有する場合がある。
【0065】
以上の明細書は、本発明の構造、製造、及び使用の説明を提供するものである。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の多くの実施形態を作ることができるので、本発明は、以下に添付する特許請求の範囲にも属するものである。
【符号の説明】
【0066】
334 長手電極
352 カフ本体
354 カフ本体の内面
358a、358b ラジアル電極
360 スリット
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】