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特表2024-503396CD47と特異的に結合する抗体及びその抗原結合フラグメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】CD47と特異的に結合する抗体及びその抗原結合フラグメント
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240118BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240118BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P17/00
A61P25/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
A61K35/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541809
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 CN2022070626
(87)【国際公開番号】W WO2022148412
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】202110025288.8
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516082925
【氏名又は名称】北京韓美薬品有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING HANMI PHARM. CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲顧▼ 明月
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲曉▼春
(72)【発明者】
【氏名】王 礼翠
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 家望
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲キョン▼ 祐
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA341
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA671
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB271
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA34
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA67
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA23
(57)【要約】
本発明は、CD47と特異的に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントを提供する。当該抗体及びその抗原結合フラグメントは、特異性及び安定性が高く、CD47-SIPRα経路を特異的にブロッキングすることができ、且つ、一定の濃度範囲内で赤血球凝集を引き起こさず、インビボで腫瘍の成長を著しく阻害することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む、単離された抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
軽鎖可変領域は、SEQ ID NO.1に示すLCDR1であるアミノ酸配列と、SEQ ID NO.2に示すLCDR2であるアミノ酸配列と、SEQ ID NO.3に示すLCDR3であるアミノ酸配列とを含み、及び/又は
重鎖可変領域は、SEQ ID No.4に示すHCDR1であるアミノ酸配列と、SEQ ID No.5又は6と少なくとも約94%の同一性を有するHCDR2であるアミノ酸配列と、SEQ ID No.7又は8と少なくとも約78%の同一性を有するHCDR3であるアミノ酸配列とを含む、
抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントは、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体である、請求項1に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体の重鎖定常領域配列は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDのいずれかの定常領域配列から選ばれ、及び/又は、前記抗体の軽鎖定常領域配列は、κ鎖又はλ鎖から選ばれ、
好ましくは、前記重鎖定常領域配列は、IgG1又はIgG4の定常領域配列から選ばれ、及び/又は、前記軽鎖定常領域配列は、κ鎖の定常領域配列から選ばれる、請求項1又は2に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO.9又は10に示すアミノ酸配列を有し、及び/又は、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO.11又は12に示すアミノ酸配列を有し、及び/又は、軽鎖定常領域及び重鎖定常領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO.13及びSEQ ID NO.14-16のいずれか1つに示される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその機能的フラグメント。
【請求項5】
前記抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含み、重鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含み、及び/又は、
前記FR-L1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17に示され、
前記FR-L2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第12個のアミノ酸RはTに置換され、
前記FR-L3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第31個のアミノ酸YはFに置換され、
前記FR-L4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20に示され、
前記FR-H1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.21に示され、
前記FR-H2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.22に示され、
前記FR-H3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.23に示され、又は、以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第8個のアミノ酸EはTに置換され、
第11個のアミノ酸SはNに置換され、
第31個のアミノ酸AはVに置換され、及び/又は
前記FR-H4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.24に示される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
軽鎖可変領域は、SEQ ID No.25-27のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有し、及び/又は
前記重鎖可変領域は、SEQ ID No.28-33のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
軽鎖可変領域は、SEQ ID NO.26又は27に示すアミノ酸配列を有し、及び/又は
重鎖可変領域は、SEQ ID NO.33に示すアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗原結合フラグメントは、F(ab’)、Fab’、Fab、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体、ラクダ抗体、CDR及び抗体認識の最小単位(dAb)から選ばれる1種又は複数種であり、
好ましくは、前記抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)又はscFvである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
(1)請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントをコードするDNA又はRNA;
(2)(1)で定義された核酸と完全に相補的な核酸;から選ばれる、単離された核酸分子。
【請求項10】
効果的にライゲーションした請求項9に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項9に記載の核酸分子又は請求項10に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項9に記載の核酸分子、請求項10に記載の発現ベクター又は請求項11に記載の宿主細胞、及び1種又は複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の宿主細胞を、前記抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントの発現に適した培養条件で培養させ、任意選択的に、得られた産物を単離及び精製するステップを含む、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントを生産する方法。
【請求項14】
CD47を介した疾患又は病症を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項9に記載の核酸分子、請求項10に記載の発現ベクター又は請求項11に記載の宿主細胞の使用であって、
前記疾患又は病症は、好ましくは腫瘍であり、より好ましくは、前記腫瘍は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓腺癌、胆嚢癌、肝癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、黒色腫から選ばれる1種又は複数種である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体及び抗体ヒト化改変研究分野に関し、特に、本発明は、CD47と特異的に結合することができる抗体及びその抗原結合フラグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
CD47は、インテグリン関連タンパク質(integrin associated protein、IAP)とも呼ばれ、免疫グロブリンスーパーファミリーに属しており、その構造は、主に細細胞外免疫グロブリンの可変領域様ドメイン、疎水性の高い5回膜貫通領域及び選択的スプライシングによる細胞内カルボキシル末端の細胞質尾部領域を含む。CD47は、細胞表面に広く発現しており、シグナル調節タンパク質SIPRα、インテグリン及びトロンボスポンジンTSP1と結合することができ、多種の生理機能に関連し、その主な作用は、貪食細胞の表面のSIPRαと結合することでマクロファージの貪食作用を阻害することである。SIPRαも免疫グロブリンスーパーファミリーの一員であり、細胞内領域にチロシンに富んだ免疫受容体チロシンベース抑制性モチーフ(ITIM)を有する。CD47がマクロファージの表面のSIPRαと結合すると、ITIMはリン酸化して下流分子SHP1/SHP2と結合し、ファゴサイトーシスシナプスサブメンブレン(phagocytosis synapse submembrance)へのミオシンの蓄積を阻止して貪食作用を阻害する。通常、CD47は「自己」のシグナルであり、「私を食べないで」を示し、貪食作用による自己攻撃を阻害することができる。病理的状況では、CD47は、腫瘍細胞に高発現しており、腫瘍細胞が貪食細胞の監視から逃れるのに寄与する(Science,2000,288(5473):2051-2054;Trends in Cell Biology,2001,11(3):130-135.)。
【0003】
腫瘍研究によると、CD47は急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、膀胱癌及び他の固形腫瘍を含む多種のヒト腫瘍で発現することが発現された。腫瘍細胞は、CD47の高発現を向上させてSIPRαと結合させることにより、マクロファージの免疫監視から逃れる。このため、CD47-SIPRα間の相互作用(CD47抗体又はSIPRα-Fc)をブロッキングすることにより、腫瘍に対するマクロファージの貪食作用を活性化するとともに、DC細胞よりCD8+T細胞へ抗原を提示することで腫瘍に対するCD8+T細胞の特異的な殺傷作用を発揮することができる(Current Opinion in Immunology,2012,24(2):225-232;Nature Medicine,2015,21(10):1209.)。
【0004】
ほとんどの腫瘍細胞にCD47が発現しているので、CD47-SIPRα経路をブロッキングする抗体は、適用の見通しが広く、抗腫瘍への適用も広い。研究によると、CD47は免疫チェックポイントとしており、CD47抗体と他の免疫チェックポイントであるCTLA4/PD-1に対する薬剤とを併用することにより薬効を増強させることができる。しかし、赤血球にもCD47が発現しているので、CD47抗体の安全性を考慮する必要がある。研究によると、マクロファージが貪食作用を発揮するには、CD47の「私を食べないで」というシグナルをブロッキングすることに加えて、カルレチクリン(CRT)を介した「私を食べて」というシグナルが必要となる。通常の場合、カルレチクリンは、腫瘍細胞において高発現するが、正常な細胞に発現しない。また、CD47抗体をスクリーニングする場合、赤血球の凝集を起こさない抗体を選択し、且つ、抗体としてIgG4型を採用すれば、マクロファージによる赤血球への貪食を活性化することができない。この分野は依然としてCD47抗体に対する需要がある。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、単離された抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体に関し、ここで、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み、ここで、
軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID No.1、2及び3に示され、及び/又は
重鎖可変領域のHCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID No.4に示され、重鎖可変領域のHCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID No.5又は6と少なくとも約94%の同一性を有し、重鎖可変領域のHCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID No.7又は8と少なくとも約78%の同一性を有し、又は
示される軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID No.1-8に示す配列と少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%又はそれ以上の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、又は、
前記軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:1-8に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個又は4個又はそれ以上のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列である。
【0006】
ここで、前記変異体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体から選ばれる1つである。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記抗体の重鎖定常領域配列は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDのいずれかの定常領域配列から選ばれ、及び/又は、前記抗体の軽鎖定常領域配列は、κ鎖又はλ鎖から選ばれる。好ましくは、重鎖定常領域配列は、IgG1又はIgG4の定常領域配列から選ばれ、及び/又は、軽鎖定常領域配列は、軽鎖κ鎖の定常領域配列から選ばれる。
【0008】
いくつかの実施形態において、CD47キメラ抗体及びその機能的フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.9又は10に示されるものであるか、又は、SEQ ID No.9又は10に示す配列と少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、SEQ ID NO.9又は10に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個又はそれ以上のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、及び/又は、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.11又は12に示されるものであるか、又は、SEQ ID No.11又は12に示す配列と少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、SEQ ID NO.11又は12に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個又はそれ以上のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、及び/又は
前記CD47キメラ抗体及びその機能的フラグメントの軽鎖定常領域及び重鎖定常領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO.13及びSEQ ID NO.14-16に示されるものであるか、又は、それぞれSEQ ID No.13及びSEQ ID NO.14-16に示す配列と少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.2%、約99.5%又はそれ以上の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、それぞれSEQ ID NO.13及びSEQ ID NO.14-16に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個又はそれ以上のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列である。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体の軽鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含み、重鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含み、及び/又は、
前記FR-L1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17に示され、
前記FR-L2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第12個のアミノ酸RはTに置換され、
前記FR-L3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第31個のアミノ酸YはFに置換され、
前記FR-L4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20に示され、
前記FR-H1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.21に示され、
前記FR-H2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.22に示され、
前記FR-H3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.23に示され、又は、以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第8個のアミノ酸EはTに置換され、
第11個のアミノ酸SはNに置換され、
第31個のアミノ酸AはVに置換され、及び/又は
前記FR-H4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.24に示される。
【0010】
いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID No.25-27のいずれかに示され、及び/又は、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID No.28-33のいずれかに示され、又は、SEQ ID NO.25-27又は28-33に示すアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、又は、SEQ ID NO.25-27又は28-33に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個又はそれ以上のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列である。
【0011】
好ましくは、軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO.26又は27に示され、及び/又は、重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO.33に示される。
【0012】
本分野において、同一性が言及される場合、アミノ酸配列の長さは自然数でなければならないので、実際に計算して得られた同一性の数値は95%のような有限の位のパーセントではなく、95%のようなパーセントに近い数字である可能性があり、例えば117位のアミノ酸残基の可変領域配列について、1つだけのアミノ酸残基が変化した場合、それに対応する同一性のパーセントは実際には99.15%に近いパーセントであるが、便宜上、このような数字は本明細書では単に99%と表記することは周知されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記抗原結合フラグメントは、F(ab’)、Fab’、Fab、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体、ラクダ抗体、CDR及び抗体認識の最小単位(dAb)から選ばれる1種又は複数種であり、好ましくは、前記抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)又はscFvである。
【0014】
本発明の他の態様は、以下のものから選ばれる単離された核酸分子に関する:
(1)上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体をコードするDNA又はRNA;
(2)(1)で定義された核酸と完全に相補的な核酸。
【0015】
本発明の別の態様は、効果的にライゲーションした上記のような核酸分子を含むベクターに関し、好ましくは、前記ベクターは、発現ベクターである。
【0016】
本発明の一態様は、上記のような核酸分子又はベクターを含む宿主細胞に関する。
【0017】
本発明の別の態様は、上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、上記のような核酸分子、上記のようなベクター又は上記のような宿主細胞、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む組成物に関する。
【0018】
本発明の別の態様は、上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体を生産する方法に関し、前記方法は、
上記のような宿主細胞を前記抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体の発現に適した培養条件で発現させ、任意選択的に、得られた産物を単離及び精製するステップを含む。
【0019】
本発明の別の態様は、CD47を介した疾患又は病症、例えば自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、神経変性疾患及び腫瘍を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における、上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、上記のような核酸分子、上記のようなベクター又は上記のような宿主細胞の使用に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、CD47を介した疾患又は病症、例えば自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、神経変性疾患及び腫瘍を予防及び/又は治療するための上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、上記のような核酸分子、上記のようなベクター又は上記のような宿主細胞に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、必要とする被験者に、上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、上記のような核酸分子、上記のようなベクター又は上記のような宿主細胞を投与するステップを含む、CD47を介した疾患又は病症、例えば自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、神経変性疾患及び腫瘍を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記自己免疫疾患は、関節炎、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、拡張型心筋症、シェーグレン症候群、アトピー性及び接触性皮膚炎、多発性筋炎、強皮症、動脈周囲性多発動脈炎、リウマチ熱、白斑、インスリン依存型糖尿病、ベーチェット病及び慢性甲状腺炎から選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、前記自己免疫疾患は、関節炎、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、リウマチ熱、白斑、インスリン依存型糖尿病及び慢性甲状腺炎から選ばれる1種又は複数種である。より好ましくは、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、インスリン依存型糖尿病及び慢性甲状腺炎から選ばれる1種又は複数種である。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記移植体に対する免疫応答は、例えば移植片対宿主病を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記アレルギー反応は、蕁麻疹、湿疹、血管神経性浮腫、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、喉頭浮腫、食物アレルギー胃腸炎、アナフィラキシーショックから選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、前記アレルギー反応は、蕁麻疹、湿疹、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アナフィラキシーショックから選ばれる1種又は複数種である。より好ましくは、前記アレルギー反応は、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アナフィラキシーショックから選ばれる1種又は複数種である。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記感染症とは、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などの病原体及び特定の毒素が人体に侵入することによる局所的な組織と全身性炎症反応を指す。病原性ウイルスの例として、例えばHIV、(A型、B型及びC型)肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II及びCMV、EBウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器多核体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクチニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、乳頭腫ウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルスを含む。病原性細菌は、例えば梅毒トレポネーマ、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリウム、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌及び淋菌(conococci)、クレブシエラ、変形菌、セラチア菌、シュードモナス、レジオネラ菌、ジフテリア菌、サルモネラ、枯草菌、コレラ菌、破傷風菌、ボツリヌス菌、炭疽菌、ペスト菌、レプトスピラ属細菌及びボレリア・ブルグドルフェリを含む。病原性真菌は、例えばカンジダ菌(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)など)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス属菌(Aspergillus)(アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスぺルギルス・ニガー(Aspergillus niger)など)、ケカビ目(Mucorales)(ケカビ(mucor)、アブシディア(Absidia)、クモノスカビ(rhizophus))、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)及びヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)を含む。病原性寄生虫は、例えば赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、ネグレリア・フォーレリ(Naegleria fowleri)、アカントアメーバ属の生物種(Acanthamoeba sp.)、ランブル鞭毛虫(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム属の種(Cryptosporidium sp.)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、ネズミバベシア原虫(Babesia microti)、トリパノソーマ・ブルーセイ(Trypanosomabrucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondi)及びブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、マシャド・ジョセフ病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病から選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症から選ばれる1種又は複数種である。より好ましくは、前記神経変性疾患は、パーキンソン病及びハンチントン病から選ばれる1種又は複数種である。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓腺癌、胆嚢癌、肝癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、尿路上皮癌、腎細胞癌、骨肉腫、黒色腫及びメルケル細胞癌から選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、前記腫瘍は、リンパ腫、骨髄腫、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、肝癌、結腸直腸癌、乳癌、宮頸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、尿路上皮癌、腎細胞癌、骨肉腫、黒色腫から選ばれる1種又は複数種である。より好ましくは、前記腫瘍は、リンパ腫、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、胃癌、肝癌、結腸直腸癌、宮頸癌、尿路上皮癌、腎細胞癌、黒色腫から選ばれる1種又は複数種である。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記被験者は、哺乳動物から選ばれ、ヒト及び/又は他の霊長類動物を含むが、これらに限定されない。哺乳動物は、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ネコ、イヌ、マウス及び/又はラットなどの商業的に関連する哺乳動物を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、核酸分子、ベクター又は宿主細胞は、当分野の通常の施用方法、例えば非経口経路、静脈内投与により使用される。
【0030】
言い換えれば、本発明は、ハイブリドーマ手段により抗CD47モノクローナル抗体を得るとともに、赤血球凝集を起こさない抗体をスクリーニングした。IgG4型の抗体を採用することにより、CD47-SIPRα経路を特異的にブロッキングでき且つ一定の濃度範囲内で赤血球凝集を起こさないヒト化のIgG4抗体を得ることができる。
【0031】
本発明により提供される抗体及びその機能的フラグメントは、1nM又はそれ以下のKでヒトCD47と特異的に結合でき、CD47と受容体との結合をブロッキングする活性を有し、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を媒介し、及び/又は赤血球凝集を起こさず、自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、神経変性疾患及び腫瘍などを予防及び/又は治療するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
以下、本発明の具体的な実施形態又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、具体的な実施形態又は従来技術の記載に使用する必要がある図面に対して簡単に紹介する。なお、以下の記載における図面は、ただ本発明の一部の実施形態に過ぎない。当業者は、創造的な労働を付与しない前提で、これらの図面によって他の図面を得ることもできる。
図1】実施例1における抗ヒトCD47陽性クローンから分泌される抗ヒトCD47マウス由来モノクローナル抗体のインビトロ活性を示す。ここで、図1のAは、マウス由来モノクローナル抗体とCD47との結合活性を示す。図1のBは、マウス由来モノクローナル抗体のCD47/SIRPα結合へのブロッキング活性を示す。
図2】実施例1における抗ヒトCD47陽性クローンから分泌される抗ヒトCD47マウス由来モノクローナル抗体の赤血球への影響を示す。
図3】実施例3における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体とヒトCD47との結合活性を示す。
図4】実施例4における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体の特異性を示す。ここで、図4のAは、種特異性を示し、図4のBは、結合特異性を示す。
図5】実施例5における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体のCD47/SIRPα結合へのブロッキング活性を示す。
図6】実施例6における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体を介した、腫瘍細胞への貪食活性を示す。
図7】実施例7における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体の赤血球への影響を示す。
図8】実施例8における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体のインビボでの抗腫瘍効果を示す。
図9】実施例10における抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体の抗原結合活性を示す。
図10】実施例11における抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体のCD47/SIRPα結合へのブロッキング活性を示す。
図11】実施例13における抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体の赤血球への影響を示す。
図12】実施例16における抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体のインビボでの抗腫瘍効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
用語「CD47」とは、インテグリン関連タンパク質(integrin associated protein、IAP)を指し、任意の哺乳動物由来のCD47分子であってもよく、いくつかの実施形態において、霊長類動物由来のCD47分子であり、いくつかの実施形態において、ヒト由来のCD47分子であってもよい。
【0034】
本明細書で使用される用語「抗CD47抗体」、「抗CD47」、「CD47抗体」又は「CD47と結合する抗体」とは、当該抗体がCD47を標的とする診断剤及び/又は治療剤として使用できるようにCD47タンパク質又はそのフラグメントと十分な親和性で結合できる抗体を指す。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、異種のCD47における保存されたCD47のエピトープと結合する。
【0035】
用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子又は抗原のエピトープと結合する能力を持つ免疫グロブリン分子のフラグメントを指す。天然に存在する抗体は、典型的には四量体を含み、通常、少なくとも2本の重(H)鎖及び少なくとも2本の軽(L)鎖から構成される。免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEのアイソタイプを含み、その対応する重鎖は、それぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同じクラスのIgは、ヒンジ領域のアミノ酸組成と重鎖のジスルフィド結合の数及び位置の違いによって、異なるサブクラスに分けることもでき、例えばIgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のサブタイプに分けられてもよく、IgAは、IgAとIgAのサブタイプに分けられてもよい。軽鎖は、定常領域によってκ鎖とλ鎖に分けられる。
【0036】
本明細書において、用語「抗体」は最も広い意味で使用され、抗原結合部位を含むタンパク質を指し、様々な構造の天然抗体及び人工抗体を含み、完全抗体及び抗体の抗原結合フラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0037】
「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のうち、抗体とその抗原との結合に関与するドメインを指す。抗体の各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記する)及び重鎖定常領域(本明細書においてCHと略記する)から構成され、重鎖定常領域は、通常、三つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記する)及び軽鎖定常領域(本明細書においてCLと略記する)から構成される。重鎖及び軽鎖可変領域は、典型的には抗原認識を担当するが、重鎖及び軽鎖定常領域は、免疫グロブリンと宿主の組織又は因子(免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)、Fc受容体及び古典補体システムの第1成分(C1q)を含む)との結合を媒介することができる。重鎖及び軽鎖可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含む。VH及びVL領域は、さらに、「相補性決定領域(CDR)」と呼ばれる超可変領域(HVR)に細かく分けられてもよく、それらの間にはより保存的な「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる領域が介在している。各VH及びVLは、3つのCDRドメイン及び4つのFRドメインから構成され、アミノ末端からカルボキシル末端まで、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順で配列される。
【0038】
用語「相補性決定領域」又は「CDR領域」又は「CDR」(本明細書において超可変領域「HVR」とは互換的に使用されてもよい)とは、抗体可変ドメインのうち、配列的に高度に変異し且つ構造的に決定されたループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触点」)を含有する領域を指す。CDRは、主に抗原のエピトープとの結合を担当する。本明細書において、重鎖の3つのCDRは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3と呼ばれ、軽鎖の3つのCDRは、LCDR1、LCDR2及びLCDR3と呼ばれる。
【0039】
異なるナンバリングスキームに基づいて得られた同一の抗体の可変領域のCDRの境界は異なる可能性があることに留意されたい。即ち、異なるナンバリングスキームで定義される同一の抗体可変領域のCDR配列は異なる。このため、本発明で定義される特定のCDR配列を用いて抗体を限定する場合、前記抗体の範囲は、可変領域配列が前記特定のCDR配列を含むが、異なるスキーム(例えば、異なるナンバリングスキームの規則又は組み合わせ)を適用することによって、いわゆるCDRの境界が本発明で定義される特定のCDRの境界と異なる抗体をさらに含む。
【0040】
用語「モノクローナル抗体」、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単分子組成物の抗体分子製剤としての、基本的に同質の抗体群から得られた抗体を指し、即ち、個体抗体を含む群は、わずかに存在する可能性がある、天然に発生する突然変異以外に同じである。一般的なモノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、2種以上のFabドメインから構成されてもよく、これにより、2種以上のターゲットに対する特異性を向上させる。用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、任意の具体的な産生方法(例えば、組換え、トランスジェニック、ハイブリドーマなど)に限定されるものではない。
【0041】
用語「二重抗体」、「二重機能的抗体」、「二重特異性抗体」、「bispecific antibody」又は「BsAb」とは、2個の異なる抗原結合部位を有するものを指し、2つのターゲット抗原と同時に結合することができ、抗体の標的性を発揮すると同時に別の特殊な機能エフェクター分子を媒介する作用を持つものである。媒介された特殊な機能エフェクター分子は、毒素、酵素、サイトカイン、放射線核種などであってもよく、抗原と結合する、二重特異性抗体の2つのアームは、それぞれFab、Fv、ScFv又はdSFvなどに由来してもよい。
【0042】
用語「ポリクローナル抗体」とは、異なる抗原決定基(「エピトープ」)に対する異なる抗体の調製物を指す。
【0043】
用語「抗体の抗原結合フラグメント」とは、エピトープと結合できる抗体のフラグメント、部分、領域又はドメインを指す(例えば切断、組換え、合成などによって得られてもよい)。抗原結合フラグメントは、このような抗体の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はすべての6つのCDRドメインを含むことができ、また、前記エピトープと結合できるにもかかわらず、異なる特異性、親和性又は選択性を示すことができる。好ましくは、抗原結合フラグメントは、前記抗体のすべての6つのCDRドメインを含む。抗体の抗原結合フラグメントは、1本のポリペプチド鎖(例えば、scFv)の一部であってもよく、又は、1本のポリペプチド鎖を含むものであるか、又は、2本又はそれ以上のポリペプチド鎖(それぞれアミノ末端及びカルボキシル末端を有する)(例えば、二重抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメントなど)の一部であってもよく、又は、2本又はそれ以上のポリペプチド鎖を含む。
【0044】
本発明に含まれる抗原結合フラグメントの例として、(a)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価のフラグメントであるFab’又はFabフラグメント;(b)ジスルフィド結合によってヒンジドメインで連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab’)フラグメント;(c)VH領域及びCHlドメインからなるFdフラグメント;(d)抗体の1つのアームのVL領域及びVH領域からなるFvフラグメント;(e)遺伝工学的手法により抗体VH及びVLを結合ペプチドセグメントで連結した組換えタンパク質である単鎖抗体(single chain Fv、scFv);(f)基本的にVH領域からなり且つドメイン抗体(Holtなど,Trends Biotechnol.,2i(ll):484-90)とも呼ばれるdAbフラグメント(Wardなど,Nature,341,544-546(1989));(g)ラクダ又はナノ抗体(Revetsなど,Expert Opin Biol Ther.,5(l):111-24)及び(h)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。
【0045】
用語「キメラ抗体」とは、所望の生物学的活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種に由来し又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は同種であるが、鎖の残りの部分が他の種に由来し又は他の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体及びこのような抗体のフラグメントの対応する配列と同一又は同種であることを指す。本発明は、ヒト抗体由来の可変領域抗原結合配列を提供する。このため、本明細書で主に注目したキメラ抗体は、1つ又は複数のヒト抗原結合配列(例えばCDR)を有し且つ1つ又は複数の非ヒト抗体由来配列、例えばFR又はC領域の配列を含有する抗体を含む。なお、本明細書で記載されるキメラ抗体は、1種の抗体クラス又はサブクラスのヒト可変領域抗原結合配列及び他の抗体クラス又はサブクラスに由来する他の配列、例えばFR又はC領域の配列を含む抗体を指す。
【0046】
用語「ヒト化抗体」とは、他の哺乳動物種、例えばマウス種に由来するCDR配列がヒトフレーム配列に移植された抗体を指す。ヒトフレーム配列において別途のフレームワーク領域修飾を行うことができる。
【0047】
用語「ヒト抗体」又は「完全ヒト抗体」(「humAb)又は「HuMab」)とは、ヒト種系免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、ヒト種系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、インビトロでランダム変異誘発又は部位特異的変異誘発、又は遺伝子再構成中、又はインビボで体細胞突然変異によって導入された変異)。
【0048】
変異体抗体も本発明の範囲内に含まれる。このため、本願で挙げられた配列の変異体も本発明の範囲内に含まれる。当分野で知られている方法を使用することにより改良された親和性を有する抗体配列の他の変異体を得ることができ、且つ、これらの変異体も本発明の範囲内に含まれる。例えば、アミノ酸の置換は、さらに改良された親和性を有する抗体を得るために用いることができる。又は、ヌクレオチド配列のコドンの最適化は、抗体の生産における発現系の翻訳効率を改善するために用いることができる。
【0049】
このような変異体抗体の配列は、本願で挙げられた配列と70%又はそれ以上(例えば80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又はそれ以上)の配列相同性を有する。このような配列相同性は、参照配列(即ち、本願で挙げられた配列)の全長に対して計算して得られたものである。
【0050】
IMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics information system)(登録商標)又はKabat,E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesmann,K.S.& Foeller,C.,(1991),Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,NIH公開番号91-3242,アメリカ合衆国保健福祉省;Chothia,C.& Lesk,A.M.,(1987),Canonical structures For The Hypervariable domains Of Immunoglobulins.,J.Mol.Biol.,196,901-917に従って、本発明におけるアミノ酸残基に番号を割り当てる。特に明記されていない限り、本発明におけるアミノ酸残基は、Kabat EUインデックスナンバリングシステムに従って番号付けされる。
【0051】
抗体又はその抗原結合フラグメントが他の分子の領域(即ち、エピトープ)と「特異的に」結合することとは、他のエピトープよりも、より頻繁に、より速く且つより長い持続時間及び/又はより大きな親和性で前記エピトープと反応又は結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、少なくとも10-7M、例えば10-8M、10-9M、10-10M、10-11M又はそれ以上の親和性でヒトPD-L1と結合する。好ましくは、抗体又はその抗原結合フラグメントは、生理条件下で(例えば、インビボで)結合する。このため、PD-L1と特異的に結合することは、この抗体又はその抗原結合フラグメントが上記の特異性及び/又はこのような条件でPD-L1と結合する能力を指す。前記結合を決定するのに適した方法は、当分野で知られているものである。
【0052】
抗体と指定された抗原とが結合するという背景下で、用語「結合」とは、通常、約10-6M又はそれ以下のKに対応する親和性で結合することを指し、このKは、指定された抗原又は密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対するこの抗体の結合の親和性よりも、少なくとも10倍、例えば少なくとも100倍、少なくとも1,000倍低い。
【0053】
本明細書で使用されるように、用語「k」(sec-1又は1/s)とは、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも呼ばれる。
【0054】
本明細書で使用されるように、用語「k」(M-1 x sec-1又は1/Msec)とは、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数を指す。
【0055】
本明細書で使用されるように、用語「K」(M)とは、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、且つkをkで割ることにより得られるものである。
【0056】
本明細書で使用されるように、用語「K」(M-1又は1/M)とは、特定の抗体-抗原相互作用の結合平衡定数を指し、且つkをkで割ることにより得られるものである。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、CDRの一部(即ち、結合に必要なCDR残基サブグループ、SDRと呼ばれる)のみがヒト化抗体で結合していればよい。分子モデリング及び/又は経験に応じて、又はGonzales,N.R.など,(2004),SDR Grafting Of A Murine Antibody Using Multiple Human GermLine Templates To Minimize Its Immunogenicity,Mol.Immunol.,41:863-872に記載されるように、先行研究に基づいて(例えばCDR H2における残基H60-H65が、通常、不要である)Chothia超可変ループ以外に位置するKabat CDR領域(Kabatなど,(1992),Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,公開番号91-3242;Chothia,C.など,(1987),Canonical Structures For The Hypervariable Regions Of Immunoglobulins,J.Mol.Biol.,196:901-917を参照されたい)から関連するエピトープと接触しなく且つSDRに位置しないCDR残基を同定することができる。このようなヒト化抗体において、1つ又は複数のドナーであるCDR残基が存在しなく又はドナーであるCDR全体が省略される位置で、この位置を占めるアミノ酸は、受容体抗体配列において対応する位置(Kabatに従って番号付けされる)を占めるアミノ酸であってもよい。このような置換は、ヒト化抗体におけるマウスのアミノ酸の数を減らし、これにより、潜在的な免疫原性を低下させる点で潜在的に有利である。しかし、置換は、親和性の変化を引き起こす可能性もあり、且つ親和性が著しく低下することを避けることが好ましい。経験に応じてCDR内の置換位置及び置換されるアミノ酸を選択することもできる。
【0058】
CDR残基の単一のアミノ酸を変えて機能的結合が失われるという事実を利用して(Rudikoff,S.など,(1982),Single Amino Acid Substitution Altering Antigen-binding Specificity,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA))79(6):1979-1983)、代替可能な機能的CDR配列を系統的に同定することができる。このような変異体CDRを得るための好ましい方法において、CDRをコードするポリヌクレオチドの変異を誘発して(例えばランダム変異誘発又は部位特異的変異誘発により)置換されたアミノ酸残基を有するCDRを生成する。元の(機能的)CDR配列における関連する残基の身元と置換された(非機能的)変異体CDR配列の身元とを比較することにより、この置換されたBLOSUM62.iijの置換スコアを同定することができる。BLOSUMシステムは、配列データベースを分析して作成されたアミノ酸置換行列を提供して、信頼性の比較に用いる(Eddy,S.R.,(2004),Where Did The BLOSUM62 Alignment Score Matrix Come From?,Nature Biotech.,22(8):1035-1036;Henikoff,J.G.,(1992),Amino acid substitution matrices from protein blocks),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),89:10915-10919;Karlin,S.など,(1990),Methods For Assessing The Statistical Significance Of Molecular Sequence Features By Using General Scoring Schemes),PNAS,87:2264-2268;Altschul,S.F.,(1991),Amino Acid Substitution Matrices From An Information Theoretic Perspective,J.Mol.Biol.,219、555-565。現在、最も先進的なBLOSUMデータベースは、BLOSUM62データベース(BLOSUM62.iij)である。表1は、BLOSUM62.iij置換スコアを示す(スコアが高いほど、置換が保存的であるので、この置換は、機能に影響を与えない可能性が高くなる)。例えば、得られたCDRを含む抗原結合フラグメントがPD-L1と結合できない場合、BLOSUM62.iij置換スコアは、十分に保存的ではないと考えられ、より高い置換スコアを持つ新たな候補置換を選択して生成する。このため、例えば、元の残基がグルタミン酸(E)であり且つ非機能的置換残基がヒスチジン(H)である場合、BLOSUM62.iij置換スコアは、0であり、且つ、より保存的な変化(例えばアスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン又はリジン)は、好ましいものである。
【表1】
【0059】
そこで、本発明は、改良されたCDRの同定におけるランダム変異誘発の使用を考慮した。本発明の背景下で、保存的置換は、以下の3つの表における1つ又は複数のアミノ酸のカテゴリ内の置換により定義されてもよい。
【0060】
【表2】
【表3】
【表4】
より保存的な置換グループには、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン及びアスパラギン-グルタミンが含まれる。
【0061】
いくつかの実施形態において、親水性アミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Gln、Glu、His、Tyr及びLysから選ばれる。
【0062】
さらに、例えばCreighton,(1984),Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman and Company)に記載されている原理を用いて別のアミノ酸グループを作成することもできる。
【0063】
このため、含まれる抗体又はその抗原結合フラグメントのCDR変異体の配列は、置換によって親抗体のCDRの配列と異なることができ、例えば4、3、2又は1個のアミノ酸残基の置換が挙げられる。本発明の実施形態によれば、CDR領域におけるアミノ酸は、以上の3つの表で定義されるように、保存的置換で置換されてもよい。
【0064】
「相同性」又は「配列同一性」とは、配列を整列させて間隙を導入した後のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列変異体と非変異体配列間の同じ残基のパーセンテージを指す。具体的な実施形態において、ポリヌクレオチド及びポリペプチド変異体は、本明細書で記載されるポリヌクレオチド又はポリペプチドと、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%のポリヌクレオチド又はポリペプチド相同性を有する。
【0065】
このような変異体ポリペプチド配列は、本願で挙げられる配列と、70%又はそれ以上(即ち80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又はそれ以上)の配列同一性を有する。他の実施形態において、本発明は、本明細書で開示されているアミノ酸配列の様々な長さの連続した延出セグメントを含むポリペプチドフラグメントを提供する。例えば、適用可能な場合、本発明に提供されるペプチド配列は、少なくとも約5、10、15、20、30、40、50、75、100、150又はそれ以上の本発明で開示される1つ又は複数の配列の連続したペプチド、及びそれらの間の中間程度の長さを有するすべてのペプチドを含む。
【0066】
用語「治療」とは、疾患又は病状の進展又は重症度を改善、緩和、減弱又は逆転させたり、このような疾患又は病状の1種又は複数種の症状又は副作用を改善、緩和、減弱又は逆転させたりすることを指す。本発明において、「治療」はまた、有益又は有望な臨床結果を得るための方法を指し、ここで、「有益又は有望な臨床結果」は、部分的又は全部的なものや、検出可能又は検出不可能なものにもかかわらず、症状の緩和、病状又は疾患程度の減少、安定化した(即ち悪化していない)疾患又は病状の状態、疾患又は病状の状態の進展の遅延又は緩和、疾患又は病状の状態の改善又は軽減及び疾患又は病状の緩和を含むが、これらに限定されない。
【0067】
用語「予防」とは、本発明の抗体及びその機能的フラグメントを投与することにより、疾患又は病况の少なくとも1種の症状の進展を阻止又は阻害することを指す。この用語は、緩和中の被験者を治療して再発を予防又は阻害することをさらに含む。
【0068】
本発明の抗体は、組換えDNAにより産生されたモノクローナル抗体であってもよい。
【0069】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプを有してもよい。アイソタイプの選択は、通常、所望のエフェクター機能(例えばADCC誘導)により決定される。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4である。ヒト軽鎖定常領域κ又はλのいずれか一方を用いることができる。必要であれば、公知の方法により本発明の抗CD47の抗体のクラスを変換することができる。例えば、本発明の最初のIgG抗体は、クラスを本発明のIgM抗体に変換することができる。なお、クラス変換技術によりIgGサブクラスを別のサブクラスに変換することができ、例えば、IgGlをIgG2に変換することができる。このため、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療用途のために、アイソタイプの切り替えにより例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE又はIgM抗体に変換することができる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、IgG4抗体である。抗体のアミノ酸配列が他のアイソタイプに対してこのアイソタイプとほとんど同じである場合、この抗体は、特定のアイソタイプに属する。
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、全長抗体であり、好ましくはIgG抗体である。他の実施形態において、本発明の抗体は、抗体-抗原結合フラグメント又は単鎖抗体である。
【0071】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、一価抗体であり、好ましくは、WO2007059782(その全体が引用により本明細書に援用される)に記載されたようなヒンジ領域に欠失を有する一価抗体である。このため、いくつかの実施形態において、抗体は、一価抗体であり、ここで、前記抗CD47抗体は、以下の方法により構築される:i)一価抗体の軽鎖をコードする核酸構築物を提供し、前記構築物は、選択された抗原特異的抗CD47抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列及びIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする前記ヌクレオチド配列及びIgのCL領域をコードする前記ヌクレオチド配列は、効果的に連結されており、また、IgG1サブクラスの場合、CL領域をコードするヌクレオチド配列は、既に修飾されており、これにより、ポリクローナルヒトIgGの存在下で又は動物若しくはヒトに投与する場合、このCL領域は、このCL領域の一致したアミノ酸配列を含む他のペプチドとジスルフィド結合又は共有結合を形成できる任意のアミノ酸を含まない;ii)一価抗体の重鎖をコードする核酸構築物を提供し、前記構築物は、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列及びヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、CH領域をコードするヌクレオチド配列は、既に修飾されており、これにより、ポリクローナルヒトIgGの存在下で又は動物若しくはヒトに投与する場合、ヒンジ領域及び(例えばIgサブクラスに要求される)CH領域の他の領域(例えばCH3領域)に対応する領域には、ヒトIgのCH領域の一致したアミノ酸配列を含む他のペプチドと、ジスルフィド結合又は共有結合若しくは安定な非共有結合による重鎖間結合を形成することに関与する任意のアミノ酸残基が含まれておらず、ここで、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードする前記ヌクレオチド配列及び前記IgのCH領域をコードする前記ヌクレオチド配列は、効果的に連結されている;iii)一価抗体を産生するための細胞発現系を提供する;iv)(iii)の細胞発現系の細胞で(i)及び(ii)の核酸構築物を共発現させて前記一価抗体を産生する。
【0072】
同様に、いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、一価抗体であり、
(i)本明細書で記載されるような本発明の抗体の可変領域又は前記ドメインの抗原結合部分と、
(ii)免疫グロブリンのCH領域又はそのCH2及びCH3ドメインを含むドメインと、を含み、
ここで、このCH領域又はそのドメインが既に修飾されることにより、ヒンジ領域及び(この免疫グロブリンがIgG4サブクラスではない場合)CH領域の他のドメイン(例えばCH3ドメイン)に対応するドメインには任意のアミノ酸残基が含まれておらず、これらの任意のアミノ酸残基は、同じCH領域とジスルフィド結合を形成し、又は、ポリクローナルヒトIgGの存在下で同じCH領域と他の共有結合又は安定な非共有結合による重鎖間結合を形成することができる。
【0073】
他のいくつかの実施形態において、一価抗体の重鎖は修飾されることにより、ヒンジ領域全体が欠失している。
【0074】
他の実施形態において、一価抗体の配列は修飾されることにより、N-結合型グリコシル化のための任意の受容体サイトが含まれていない。
【0075】
本発明は、「二重特異性抗体」をさらに含み、ここで、抗CD47結合領域(例えば、抗CD47モノクローナル抗体のCD47結合領域)は、1種以上のエピトープを標的とする二価又は多価二重特異性フレームワークの一部である(例えば、第2のエピトープは、アクティブトランスポート受容体のエピトープを含むことができ、これにより、この二重特異性抗体は、生物学的障壁(例えば血液脳関門)を越えた、改善された細胞転移作用を示す)。このため、他の実施形態において、抗CD47抗体の一価Fabは、他の異なるタンパク質を標的とするFab又はscfvに連結されることにより、二重特異性抗体を産生することができる。二重特異性抗体は、例えば抗CD47結合領域から付与される治療機能及び受容体分子に結合されて生物学的障壁(例えば血液脳関門)を越えて転移するトランスポート機能を増強させることができるという二重機能を有することができる。
【0076】
本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントは、単鎖抗体をさらに含む。単鎖抗体は、重鎖及び軽鎖のFvドメインが連結されたペプチドである。いくつかの実施形態において、本発明は、単鎖Fv(scFv)を提供し、ここで、本発明の抗CD47抗体のFv中の重鎖及び軽鎖は、フレキシブルペプチド(典型的には、約10、12、15又はそれ以上のアミノ酸残基)で連結されて1本のペプチド鎖を形成する。このような抗体を産生する方法は、例えばUS 4,946,778;Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol.113,Rosenburg and Moore ed.,Springer-Verlag,New York,pages:269-315(1994);Birdなど,Science,242,423-426(1988);Hustonなど,PNAS USA 85,5879-5883(1988及びMcCaffertyなど,Nature,348,552-554(1990)に記載されている。単一のVH及びVLだけを使用する場合、単鎖抗体は、一価のものであり、2つのVH及びVLを使用する場合、二価のものであり、又は、2つ以上のVH及びVLを使用する場合、多価のものである。
【0077】
当分野で知られている任意の技術により本発明の抗体を産生し、例えば任意の化学的や生物学的や遺伝学的又は酵素学的な技術に限定されなく、単独で又は組み合わせて使用することができる。通常、所望の配列のアミノ酸配列が知られており、当業者は、ポリペプチドを産生するための標準的な技術により前記抗体を容易に産生することができる。例えば、公知の固相方法によりこれらの抗体を合成することができ、好ましくは、市販のペプチド合成装置(例えばApplied Biosystems、Foster City、Californiaで製造された装置)を用いてメーカーの説明書に従ってこれらの抗体を合成する。又は、当分野における公知の組換えDNA技術により本発明の抗体を合成することができる。例えば、抗体をコードするDNA配列を発現ベクターに組み込んでこれらのベクターを所要の抗体の発現に好適な真核又は原核宿主に導入した後、DNA発現産物としての抗体が得られ、その後、既知の技術を用いて宿主から抗体を単離することができる。
【0078】
任意の「好適な」数の修飾されたアミノ酸を含み、及び/又はカップリング置換基と結合することにより、本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントを修飾することができる。このような場合に、「好適」は、通常、非誘導体化親抗CD47抗体に関連するCD47選択性及び/又はCD47特異性を少なくとも基本的に保持する能力によって決定される。1つ又は複数の修飾されたアミノ酸を含むことは、例えばポリペプチド血清半減期の増加、ポリペプチド抗原性の低減又はポリペプチド貯蔵安定性の向上に寄与することができる。1種又は複数種のアミノ酸に対する修飾は、例えば、組換え生産の過程において翻訳と同時に行われ、又は、翻訳後に行われ(例えば、哺乳動物の細胞での発現過程においてN-X-S/T配列におけるN-結合型グリコシル化作用)、又は合成手段によって行われる。修飾されたアミノ酸の非限定的な例として、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、イソプレン化(例えば、ファルネシル化、ゲラニル-ゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、ポリエチレングリコール化アミノ酸、ビオチンアシル化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸などを含む。アミノ酸修飾を行う参考文献は、本分野ではよく知られており、例えばWalker,(1998),Protein Protocols On CD-Rom,Humana Press,Totowa,New Jerseyを参照する。修飾されたアミノ酸は、例えばグリコシル化アミノ酸、ポリエチレングリコール化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチンアシル化アミノ酸、脂質部分に結合したアミノ酸又は有機誘導化剤に結合したアミノ酸から選ばれてもよい。
【0079】
本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントは、共価結合によりポリマーに結合して化学修飾を行うことにより、循環半減期を増加させることもできる。例示的なポリマー及びそれをペプチドに連結する方法は、例えばUS 4,766,106;US 4,179,337;US 4,495,285及びUS 4,609,546を参照する。また、例示的なポリマーとして、ポリオキシエチル化されたポリオール及びポリエチレングリコール(PEG)(例えば、分子量は約1,000~40,000Dの間、例えば約2,000~20,000Dの間、例えば約3,000~12,000DのPEG)を含む。
【0080】
用語「被験者」とは、温血動物を指し、好ましくは哺乳動物(ヒト、家畜及び農場での動物、動物園での動物、運動動物又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなど)であり、より好ましくはヒトである。一実施形態において、被験者は、「患者」、即ち、温血動物であってもよく、より好ましくは、受け入れを待っているかか、又は医療看護を受けているか、又は医療プログラムあるいは疾患進展モニタリングの対象となる、ヒトである。一実施形態において、被験者は、成人(例えば18歳以上の被験者)である。他の実施形態において、被験者は、子供(例えば、18歳以下の被験者)である。一実施形態において、被験者は、男性である。他の実施形態において、被験者は、女性である。
【0081】
本発明の一実施形態において、サンプルは、生体サンプルである。生体サンプルの例として、疾患組織、体液を含むが、これらに限らなく、好ましくは血液、より好ましくは血清、血漿、滑液、気管支肺胞洗浄液、痰、リンパ液、腹水、尿、羊水、腹膜液、脳脊髄液、胸膜液、心嚢水及び肺胞マクロファージから製造された組織分解物及び抽出物を含むが、これらに限定されない。
【0082】
本発明の一実施形態において、用語「サンプル」は、任意の分析の前に個体から採取したサンプルを意味する。
【0083】
このため、いくつかの実施形態において、本発明の抗CD47抗体及びその抗原結合フラグメントは、完全抗体、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラス)、IgA(IgA1及びIgA2のサブクラス)、IgM及びIgE;抗原結合フラグメント、例えばSDR、CDR、Fv、dAb、Fab、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、scFv、ラクダ抗体又はナノ抗体;抗体又はその抗原結合フラグメントの変異体配列、例えば上記の抗体又はその抗原結合フラグメントと少なくとも80%の配列同一性を有する変異体配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、抗CD47又はその抗原結合フラグメントを含む誘導体、例えば完全抗体に由来するキメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、組換え抗体、二重特異性抗体をさらに含む。
【0084】
他の態様によれば、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの1本又は複数本のポリペプチド鎖をコードする発現ベクターに関する。このような発現ベクターは、組換えにより本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを産生するために用いることができる。
【0085】
本発明において、発現ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクター及び合成核酸ベクター(1組の適切な発現制御要素の核酸配列を含む)を含む任意の適切なDNA又はRNAベクターであってもよい。このようなベクターの例として、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組み合わせから誘導されたベクター及びウイルス核酸(RNA又はDNA)ベクターを含む。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体をコードする核酸は、裸のDNA又はRNAベクターに含まれ、例えば線形発現要素(例えばSykes and Johnston,Nat Biotech,12,355-59(1997)に記載されている)、小型核酸ベクター(例えばUS 6,077,835及び/又はWO00/70087に記載されている)、プラスミドベクター(例えばpBR322、pUC19/18又はpUC118/119)、最小サイズの核酸ベクター(例えばSchakowskiなど,MoI Ther,3,793-800(2001)に記載されている)を含み、又は沈殿型核酸ベクター構築物、例えばCaPO沈殿型構築物(例えばWO00/46147;Benvenisty and Reshef,PNAS USA 83,9551-55(1986);Wiglerなど,Cell,14,725(1978)及びCoraro and Pearson,Somatic Cell Genetics,2,603(1981)に記載されている)としている。このような核酸ベクター及びその使用は、本分野でよく知られているものである(例えばUS5,589,466及びUS5,973,972を参照されたい)。
【0086】
いくつかの実施形態において、ベクターは、細菌の細胞で抗CD47抗体又はその抗原結合フラグメントを発現させるのに適している。このようなベクターの例として、例えばBlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster,J Biol Chem,264,5503-5509(1989))、pETベクター(Novagen,Madison,Wisconsin)などを含む。
【0087】
発現ベクターは、酵母系で発現するのに適したベクターであってもよい。酵母系で発現するのに適した任意のベクターを採用することができる。適切なベクターは、例えば構成型又は誘導性プロモーター(例えばα因子、アルコールオキシダーゼ及びPGH)を含むベクターを含む(レビューとして、F.Ausubelなど,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley InterScience,New York(1987);Grantなど,Methods in Enzymol,153,516-544(1987);Mattanovich,D.など,Methods Mol.Biol.,824,329-358(2012);Celik,E.など,Biotechnol.Adv.,30(5),1108-1118(2012);Li,P.など,Appl.Biochem.Biotechnol.,142(2),105-124(2007);Boer,E.など,Appl.Microbiol.Biotechnol.,77(3),513-523(2007);van der Vaart,J.M.,Methods Mol.Biol.,178,359-366(2002)及びHolliger,P.,Methods Mol.Biol.,178,349-357(2002)を参照されたい)。
【0088】
本発明の発現ベクターにおいて、抗CD47抗体をコードする核酸は、任意の適切なプロモーター、エンハンサー及びその他の発現に寄与する要素又はそれとの組み合わせを含むことができる。このような要素の例として、強発現型プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサー及びRSV、SV40、SL3-3、MMTV及びHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)ターミネーター配列、大腸菌でプラスミドを産生するための複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子及び/又は便利なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)を含む。核酸は、構成型プロモーター(例えばCMV IE)に対する誘導性プロモーターを含むこともできる。
【0089】
他の態様によれば、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメント又は本発明の二重特異性分子を産生する組換え真核又は原核宿主細胞(例えばトランスフェクトーマ)に関する。宿主細胞の例として、酵母、細菌及び哺乳動物細胞(例えばCHO又はHEK細胞)を含む。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、細胞ゲノムに安定に組み込まれた核酸を含む細胞を提供し、このゲノムは、本発明の抗CD47抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含む。他の実施形態において、本発明は、非組み込み型の核酸(例えばプラスミド、コスミド、ファージミド又は線形発現要素)を含む細胞を提供し、この核酸は、本発明の抗CD47抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする配列を含む。
【0090】
本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントは、異なる細胞系、例えばヒト細胞系、非ヒト哺乳動物細胞系及び昆虫細胞系、例えばCHO細胞系、HEK細胞系、BHK-21細胞系、マウス細胞系(例えば骨髄腫細胞系)、繊維肉腫細胞系、PER.C6細胞系、HKB-11細胞系、CAP細胞系及びHuH-7ヒト細胞系で産生することができる(Dumontなど,2015,Crit Rev Biotechnol.,Sep.18,1-13.、その内容が引用により本明細書に援用される)。
【0091】
一般的な免疫グロブリンの精製方法により本発明の抗体と培地とを適切に単離し、前記方法は、例えばプロテインA-セファロース、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーである。
【0092】
本発明は、さらに、組成物に関し、前記組成物は、本発明の抗体を含み、それからなり又は基本的にそれからなる。
【0093】
本明細書で使用されるように、組成物について、「基本的に...からなる」ことは、少なくとも1種の前述したような本発明の抗体が前記組成物において生物学的活性を有する唯一の治療剤又は試薬であることを意味する。
【0094】
一実施形態において、本発明の組成物は、医薬組成物であり、且つ、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体をさらに含む。
【0095】
用語「薬学的に許容される担体」とは、動物、好ましくはヒトに投与した際に、不利なもの、アレルギー又は他の不良反応を起こさない賦形剤を指す。それは、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング層、抗菌及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを含む。ヒトに投与する場合、製剤は、監督機関(例えばFDAオフィスやEMA)に要求される無菌、発熱原性、一般的な安全性と純度の基準を満たすべきである。
【0096】
本発明は、さらに、薬剤に関し、前記薬剤は、本発明の抗体を含み、それからなり又は基本的にそれからなる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体のグリコシル化を修飾する。例えば、非グリコシル化の抗体(即ち、抗体がグリコシル化されていない)を製造することができる。グリコシル化を変えることにより、例えば抗原に対する抗体の親和性を高めたり、抗体のADCC活性を変化させたりすることができる。このような炭水化物に対する修飾は、例えば抗体配列内の1つ又は複数のグリコシル化サイトを変えることにより実現されてもよい。例えば、1つ又は複数のアミノ酸置換を行うことにより、1つ又は複数の可変領域フレームワークのグリコシル化サイトを解消し、これにより、このサイトでのグリコシル化を解消することができる。このような非グリコシル化によって、抗原に対する抗体の親和性を向上させることができる。Coなどの米国特許No.5,714,350及びNo.6,350,861(引用により本明細書に援用される)には、このような方法がさらに詳しく記載されている。また、代替として、改変されたグリコシル化のタイプを有する抗体、例えば減少量を有し又はフコシル残基を有しない低フコシル化又は非フコシル化抗体又は付加した二等分GlcNac構造を有する抗体を製造することができる。このような改変されたフコシル化モードにより抗体のADCC能力を向上させることが既に証明された。このような炭水化物に対する修飾は、例えば改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞で抗体を発現させることで実現されてもよい。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、本分野で記載されており、且つ、宿主細胞として使用されてもよく、この宿主細胞で本発明の組換え抗体を発現させることにより、改変されたグリコシル化を有する抗体を産生する。例えば、HangなどのEP1176195(引用により本明細書に援用される)には、機能的に破壊されたFUT8遺伝子を持つ細胞系が記載されており、このFUT8遺伝子はフコシルトランスフェラーゼをコードするので、このような細胞系で発現した抗体は、低フコシル化又はフコシル残基の欠如を示す。このため、いくつかの実施形態において、本発明のヒト抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、低フコシル化又は非フコシル化モードが示された細胞系、例えばフコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子発現が欠如している哺乳動物細胞系で組換え発現を行うことにより産生されてもよい。PrestaのPCT開示WO03/035835(引用により本明細書に援用される)には、変異体CHO細胞系、Lecl3細胞が記載されており、それらは、フコースをAsn(297)が連結した炭水化物に付着させる能力が低下しているので、この宿主細胞で発現した抗体の低フコシル化をもたらす(Shields,R.L.など,2002 J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照されたい)。UmanaなどのPCT開示WO99/54342(引用により本明細書に援用される)には、工学的細胞系により糖タンパク質で修飾されたグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現させることにより、工学的細胞系で発現する抗体は、付加した二等分GlcNac構造を示し、抗体のADCC活性の向上をもたらすことが記載されている(Umanaなど,1999 Nat.Biotech.17:176-180も参照されたい)。Eureka Therapeuticsは、さらに、フコース残基が欠如している改変された哺乳動物グリコシル化モードを有する抗体を産生できる遺伝子工学的CHO哺乳動物細胞を説明した(http://www.eurekainc.com/a&boutus/companyoverview.html)。又は、本発明のヒト抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、酵母又は糸状菌で産生することができ、前記酵母又は糸状菌は、哺乳動物様グリコシル化モードに用いられ、且つグリコシル化モードとしてフコースが欠如した抗体を産生することができる(例えばEP1297172B1を参照されたい)。
【0098】
本発明の抗体は、ヒトCD47に作用し、ヒト腫瘍細胞表面でのCD47発現を特異的に認識することにより、CD47と受容体SIRPαとの結合により伝達される抑制的なシグナル経路をブロッキングすることができ、マクロファージを介した腫瘍貪食反応を促進することができ、これにより、腫瘍に対する免疫治療に新たな方法を提供する。本発明の抗体は、例えば関節炎、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、拡張型心筋症、シェーグレン症候群、アトピー性及び接触性皮膚炎、多発性筋炎、強皮症、動脈周囲性多発動脈炎、リウマチ熱、白斑、インスリン依存型糖尿病、ベーチェット病及び慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、例えばパーキンソン病、ハンチントン病、マシャド・ジョセフ病、筋萎縮性側索硬化症及びクロイツフェルト・ヤコブ病などの神経変性疾患、及び例えば白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓腺癌、胆嚢癌、肝癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌及び黒色腫などの腫瘍を予防及び/又は治療するために使用されてもよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下のような技術案に関する。
【0100】
第1発明は、単離された抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体であって、ここで、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み、ここで
軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID No.1、2及び3に示され、及び/又は
重鎖可変領域のHCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID No.4に示され、重鎖可変領域のHCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID No.5又は6と少なくとも約94%の同一性を有し、重鎖可変領域のHCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID No.7又は8と少なくとも約78%の同一性を有し、又は
示される軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID No.1-8に示す配列と少なくとも70%の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、又は
前記軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:1-8に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、
ここで、前記変異体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体から選ばれる1つである。
【0101】
第2発明は、前記抗体の重鎖定常領域配列は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDのいずれかの定常領域配列から選ばれ、及び/又は、前記抗体の軽鎖定常領域配列は、κ鎖又はλ鎖から選ばれる、第1発明に記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体であって、
好ましくは、重鎖定常領域配列は、IgG1又はIgG4の定常領域配列から選ばれ、及び/又は、軽鎖定常領域配列は、軽鎖κ鎖の定常領域配列から選ばれる。
【0102】
第3発明は、CD47キメラ抗体又はその機能的フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.9又は10に示されるものであるか、又は、SEQ ID No.9又は10に示す配列と少なくとも70%の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、SEQ ID NO.9又は10に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、及び/又は、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.11又は12に示されるものであるか、又は、SEQ ID No.11又は12に示す配列と少なくとも70%の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、SEQ ID NO.11又は12に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、及び/又は
前記CD47キメラ抗体及びその機能的フラグメントの軽鎖定常領域及び重鎖定常領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO.13及びSEQ ID NO.14-16に示されるものであるか、又は、それぞれSEQ ID No.13及びSEQ ID NO.14-16に示す配列と少なくとも70%の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、それぞれSEQ ID NO.13及びSEQ ID NO.14-16に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であることを特徴とする第1又は第2発明に記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体。
【0103】
第4発明は、前記抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体の軽鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含み、重鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含み、及び/又は、
前記FR-L1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17に示され、
前記FR-L2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり:
第12個のアミノ酸RはTに置換され、
前記FR-L3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり:
第31個のアミノ酸YはFに置換され、
前記FR-L4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20に示され、
前記FR-H1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.21に示され、
前記FR-H2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.22に示され、
前記FR-H3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.23に示され、又は、以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり:
第8個のアミノ酸EはTに置換され、
第11個のアミノ酸SはNに置換され、
第31個のアミノ酸AはVに置換され、及び/又は
前記FR-H4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.24に示される、第1又は第2発明に記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体。
【0104】
第5発明は、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID No.25-27のいずれか1つに示され、及び/又は、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID No.28-33のいずれか1つに示され、又は、SEQ ID NO.25-27又は28-33に示すアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、又は、SEQ ID NO.25-27又は28-33に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、
好ましくは、軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO.26又は27に示され、及び/又は、重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO.33に示される、第1又は第2発明に記載の前記抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体。
【0105】
第6発明は、前記抗原結合フラグメントは、F(ab’)、Fab’、Fab、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体、ラクダ抗体、CDR及び抗体認識の最小単位(dAb)から選ばれる1種又は複数種であり、好ましくは、前記抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)又はscFvである、第1~第5発明のいずれか1つに記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体。
【0106】
第7発明は、以下から選ばれる単離された核酸分子である。
【0107】
(1)第1~第6発明のいずれか1つに記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体をコードするDNA又はRNA;
(2)(1)で定義された核酸と完全に相補的な核酸。
【0108】
第8発明は、効果的にライゲーションした第7発明に記載の核酸分子を含むベクターであって、好ましくは、前記ベクターは、発現ベクターである。
【0109】
第9発明は、第7発明に記載の核酸分子又は第8発明に記載のベクターを含む宿主細胞である。
【0110】
第10発明は、第1~第6発明のいずれか1つに記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、第7発明に記載の核酸分子、第8発明に記載のベクター又は第9発明に記載の前記宿主細胞、及び薬学的に許容される賦形剤、希釈剤及び/又はベクターを含む組成物である。
【0111】
第11発明は、第1~第6発明のいずれか1つに記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体を生産する方法であって、当該方法は、第9発明に記載の宿主細胞を前記抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体の発現に適した培養条件で培養させ、任意選択的に、得られた産物を単離及び精製するステップを含む。
【0112】
第12発明は、自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、神経変性疾患及び腫瘍を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における、第1~第6発明のいずれか1つに記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、第7発明に記載の核酸分子、第8発明に記載のベクター又は第9発明に記載の宿主細胞の使用であって、
好ましくは、前記自己免疫疾患は、関節炎、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、拡張型心筋症、シェーグレン症候群、アトピー性及び接触性皮膚炎、多発性筋炎、強皮症、動脈周囲性多発動脈炎、リウマチ熱、白斑、インスリン依存型糖尿病、ベーチェット病及び慢性甲状腺炎から選ばれる1種又は複数種であり、
好ましくは、前記移植体に対する免疫応答は、移植片対宿主病であり、好ましくは、前記アレルギー反応は、蕁麻疹、湿疹、血管神経性浮腫、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、喉頭浮腫、食物アレルギー胃腸炎、アナフィラキシーショックから選ばれる1種又は複数種であり、
好ましくは、前記感染症とは、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などの病原体及び特定の毒素が人体に侵入することによる局所的な組織と全身性炎症反応を指し、
好ましくは、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、マシャド・ジョセフ病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病から選ばれる1種又は複数種であり、
好ましくは、前記腫瘍は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓腺癌、胆嚢癌、肝癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、黒色腫から選ばれる1種又は複数種である。
【0113】
範囲の値が提供される場合、本明細書において特に明記されていない限り、各挿入値、下限までの単位の10分の1、この範囲の上限と下限との間及び任意の前記範囲内の他の前記値又は挿入値は、いずれも本発明の範囲内に含まれることを理解すべきである。特に除外された限界を除き、前記範囲内で特定的に除外された境界を除く限り、独立して小さな範囲に含まれてもよいこれらの小さな範囲の上限及び下限も本発明に含まれる。前記範囲が1つ又は2つの限界を含む場合、1つ又は2つの含まれる境界を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0114】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術又は科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって理解される通常の意義を意味すべきである。本明細書で記載される方法及び材料と類似又は同等の任意のものは、本発明の実施又は試験でも使用することができるが、現在、好ましい方法及び材料が開示されている。本明細書で言及されているすべての出版物は、その全体が引用により本明細書に援用される。
【0115】
一方で、本発明に提供される実施例は、本発明の抗体の製造過程を説明するためのものであり、この製造過程は、関連する方法を説明するためのものに過ぎず、限定的なものではなく、本発明の精神から逸脱することなく本発明に対して様々な修正を行うことができることは、当業者に知られている。このような修正も本発明の範囲内に含まれる。一方で、本発明に提供される実施例は、本発明の抗体の特徴及びメリットを示すためのものであるが、本発明は、これらの特徴及びメリットに限定されない。
【0116】
以下、実施例を併せて本発明の実施形態を詳細に説明するが、当業者にとっては、以下の実施例は本発明を説明するためのものに過ぎなく、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。実施例に具体的な条件が明記されていない場合、通常の条件又は製造メーカにより提案される条件に従って行う。使用される試薬又は機器に製造メーカが明記されていないものは、市販から入手できる通常の製品である。
【0117】
実施例
実施例1 マウス由来抗ヒトCD47モノクローナル抗体の製造
1.1、動物の免疫
実験動物として、北京維通利華実験動物技術社(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.)から購入された6~8週齢の雌BALB/cマウスを使用した。マウスを環境に1週間適応させた後、免疫を始めた。初回免疫は、50μgの組換えヒトCD47-Fcタンパク質(株式会社アクロバイオシステムズ(北京)、カタログ番号CD7-H5256)及びフロインド完全アジュバント(Sigma-Aldrich、カタログ番号F5881)を使用し、両者を混合して乳液を形成し、マウスに腹腔内投与した。2週間後、追加免疫を行った。追加免疫は、25μgの組換えヒトCD47-Fcタンパク質及びフロインド不完全アジュバント(Sigma-Aldrich、カタログ番号F5806)を使用し、両者を混合して乳液を形成し、マウスに腹腔内投与した。2週間ごとに同じ方法で追加免疫を行い、合計3回であった。最終免疫を行ってから10日目に、マウスの眼窩静脈叢から採血して遠心により血清を分離し、組換えヒトCD47-Fcタンパク質に対し、ELISAにより抗体価を測定した。抗体価が高いマウスを選択して融合によりハイブリドーマを製造した。融合の3日前に、アジュバントを含まない50μgの組換えヒトCD47-Fcタンパク質を腹腔内投与した。融合の当日に、無菌で脾臓を取り、DMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地、Gibco、カタログ番号11965)に15%のウシ胎児血清(FBS)(Corning、カタログ番号35-076-CV)を加えて単一の脾臓細胞懸濁液を調製し、0.25μMのCpG ODN(InvivoGen、カタログ番号tlrl-1826-1)を加えて24h刺激し、BTX ECM2001電気融合装置(Harvard Apparatus、カタログ番号45-0010)を使用して電気融合を行った。
【0118】
1.2、ハイブリドーマ細胞の製造
対数増殖期にある骨髄腫細胞SP2/0(中国科学院細胞バンクから購入)を採取し、1000rpmで5min遠心し、上澄みを捨てて、不完全DMEM培養液で細胞を懸濁させてからカウントし、必要な数の細胞を取って、0.3Mのマンニトール(Sigma、カタログ番号M8429)、0.1mMの硫酸アンモニウム(Sigma、カタログ番号M7774)、0.1mMの塩化カルシウム(Sigma、カタログ番号C5670)からなるE-fusion緩衝液で2回洗浄し、1000rpmで5min遠心した。同時に、E-fusion緩衝液で脾臓細胞を2回洗浄し、240gで6min遠心した。骨髄腫細胞と脾臓細胞とを一定の割合で混合し、50mLのプラスチック遠心管内においてE-fusion緩衝液で1回洗浄し、240gで6min遠心した。上澄みを捨てて、手のひらで遠心管の底部を軽く叩いて、沈殿細胞をほぐして均一にした。2mLのE-fusion緩衝液/(1-1.5)10E7脾臓細胞でE-fusion緩衝液を加え、10mm間隔をあけた融合セル(Harvard Apparatus、カタログ番号45-0107)ごとに2mLの細胞混合液を加え、パラメータ設定をチェックし、Automatic Startを押せばよい。融合後、滅菌条件下でビペットを用いて細胞懸濁液を融合槽から28mLのHAT培地(DMEM+HAT、Sigma、カタログ番号:H0262-10VL)を含有する50mLの遠心管に慎重に移し、37℃で10min静置し、HAT培地を細胞数(3-5)10E4/ウェルで加えてプレートに撒き、37℃、5%COインキュベータに置いてインキュベートした。5日後にHAT培地で1/2培地と置換した。7~10日後にHT培地(DMEM+HT、Sigma、カタログ番号H0137-10VL)でHAT培地と置換した。ハイブリドーマ細胞の成長状況を定期的に観察し、当該細胞がウェルの底面積の1/10以上になるまで成長すると、上清を吸い出して抗体の検出に供した。陽性クローンの細胞を拡大培養して凍結保存した。
【0119】
1.3、クローンのスクリーニング及び同定
ELISAを使用してハイブリドーマの培養上清での抗ヒトCD47抗体をスクリーニングした。pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート(Coster、カタログ番号42592)に組換えヒトCD47(北京シノバイオロジカル社から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。培養上清サンプル及び陽性血清対照を100μL/ウェルで加え、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:10000にて希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗マウスIgG抗体(Abcam、カタログ番号Ab7068)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。OD450nmの強弱によって、抗ヒトCD47選択的抗体を分泌できる陽性クローンを選択した。
【0120】
ELISAにより、陽性クローンから分泌される抗ヒトCD47選択的抗体がCD47/SIRPαの結合をブロッキングできるか否かを測定した。pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート上に組換えヒトCD47-Fc(株式会社アクロバイオシステムズ(北京)から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。抗ヒトCD47選択的抗体サンプルを50μL/ウェルで添加し、且つ、濃度が4nM(最終濃度は2nM)のビオチンで標識したSIRPα(株式会社アクロバイオシステムズ(北京)から購入)を50μL/ウェルで添加し、25℃で90minインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:1000にて希釈した、Streptavidin-HRP(BD Pharmingen、カタログ番号554066)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。ヒトCD47-Fc/ビオチンで標識したSIRPαの結合を阻害することができる抗ヒトCD47選択的抗体は中和活性を有する。ブロッキング能力の強弱によって抗ヒトCD47中和抗体を分泌できる陽性クローンを選択した。
【0121】
赤血球(RBC)にCD47が高発現している。いくつかの抗CD47抗体は、赤血球の凝集を引き起こすことができる。陽性クローンから分泌される抗ヒトCD47中和抗体が赤血球の凝集を引き起こすか否かを測定した。内部から寄付された抗凝固処理を行った健常人全血にDPBS(Gibco、カタログ番号:14190250)を加えた後、遠心により上清を取り除き、遠心チューブの底にある赤血球を収集し、3回繰り返し洗浄した後、赤血球をDPBSに再懸濁させて2%の赤血球懸濁液とした。この懸濁液を低吸着型96ウェルプレート(Coster、カタログ番号3879)に50μL/ウェルで加え、且つ、段階希釈された抗ヒトCD47抗体サンプル及び陽性対照(クローン番号CC2C6の抗CD47抗体、Biolegend、カタログ番号323102)を50μL/ウェルで加え、均一に混合した。プレートを37℃インキュベータに置いて2hrインキュベートした。その後、観察して撮影した。
【0122】
結果を表5に示し、複数の抗ヒトCD47クローンは強いCD47結合活性及びCD47/SIRPαへのブロッキング活性を有し、その中、CD47-18-5クローンマウス由来モノクローナル抗体のインビトロ活性を図1に示す。赤血球凝集の結果を図2に示し、CD47-5-65、CD47-8-21、CD47-16-5クローンは、ヒト赤血球凝集を引き起こすことができるが、CD47-5-191、CD47-18-5、CD47-18-10クローンは赤血球凝集を引き起こさなかった。
【0123】
【表5】
【0124】
1.4、モノクローナル抗体配列の測定
スクリーニングで得られた、抗原結合活性及び抗原中和活性を同時に有し且つインビトロで赤血球凝集を起こさないクローンに対して抗体DNA配列の測定を行った。まず、RNAprep Pureキット(Tiangen、DP419)を使用して細胞mRNAを抽出した。次いで、SMART 5’RACEキット(Clontech、カタログ番号634849)を使用してハイブリドーマから抽出したトータルRNAを逆転写してヒトCD47 cDNAの第1鎖を合成し、PCR増幅用の可変領域のプライマーVHGSP:GATTACGCCAAGCTTGCCAGTGGATAGACAAGCTTGGGTGTCGTTTT(SEQ ID NO:36)及びVLGSP:GATTACGCCAAGCTTGATGGATCCAGTTGGTGCAGCATCAGC(SEQ ID NO:37)をそれぞれ設計した。PCR増幅により得られた目的バンドをin-fusion方式により線形化されたpRACEベクター(Clontech、カタログ番号:634859)にクローニングし、モノクローナルを選んでDNAシーケンシングを行った。
【0125】
実施例2 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体の製造
CD47-18-5クローンをPCR増幅して得られた抗体の軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:9に示され、抗体の重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:11に示される。マウスの可変領域配列に基づいてフレームワーク領域配列を排除することにより、その相補性決定領域配列を得ることができる。ここで、軽鎖の3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:1、2及び3に示される。重鎖の3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:4、5及び7に示される。CD47-18-5クローンから構築されたキメラCD47モノクローナル抗体は、それぞれmAb-18-5、mAb-18-5 N297Aと命名され、両者の抗体の軽鎖は、いずれもCD47-18-5クローンの軽鎖可変領域(SEQ ID NO:9)と軽鎖定常領域(配列SEQ ID NO:13)とが連結されたものであり、mAb-18-5抗体の重鎖は、重鎖可変領域(SEQ ID NO:11)と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:14)とが連結されたものであり、mAb-18-5 N297A抗体の重鎖は、重鎖可変領域(SEQ ID NO:11)と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:15)とが連結されたものである。CD47-18-10クローンをPCR増幅して得られた抗体の軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:10に示され、抗体の重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:12に示される。マウスの可変領域配列に基づいてフレームワーク領域配列を排除することにより、その相補性決定領域配列を得ることができる。ここで、軽鎖の3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:1、2及び3に示される。重鎖の3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:4、6及び8に示される。CD47-18-10クローンから構築されたキメラCD47モノクローナル抗体は、それぞれmAb-18-10、mAb-18-10 N297Aと命名され、両者の抗体の軽鎖は、いずれもCD47-18-10クローンの軽鎖可変領域(SEQ ID NO:10)と軽鎖定常領域(配列SEQ ID NO:13)とが連結されたものであり、mAb-18-10抗体の重鎖は、重鎖可変領域(SEQ ID NO:12)と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:14)とが連結されたものであり、mAb-18-10 N297A抗体の重鎖は、重鎖可変領域(SEQ ID NO:12)と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:15)とが連結されたものであり、得られたキメラ抗体の軽鎖可変領域、軽鎖定常領域、重鎖可変領域、重鎖定常領域の配列情報を表6に示す。
【0126】
【表6】
【0127】
上記の抗体の軽・重鎖のアミノ酸配列をコードする遺伝子に対して遺伝子合成(蘇州金唯智バイオテクノロジー社)を行うことにより、ヌクレオチド配列を得、さらに真核細胞の発現ベクターX0GCにクローニングし、次いで、発現ベクターをExpiCHO細胞系(ExpiCHOTM、カタログ番号A29133、invitrogen)にトランスフェクションした。トランスフェクションの前日に、細胞を接種し、細胞を新鮮なExpiCHOTM発現培地(ExpiCHOTM Expression Medium、カタログ番号A29100、invitrogen)に35×10細胞/mLの細胞密度で再懸濁させた。トランスフェクションの当日にカウントした細胞密度は、(70-200)×10細胞/mLの範囲内にあり、生存率が95%超えであるべきであった。予熱したExpiCHOTM発現培地で細胞を希釈し、最終密度は60×10細胞/mLとした。トランスフェクション体積に従って、OptiPROTM培地(カタログ番号12309、invitrogen)で、プラスミド及びトランスフェクション試薬ExpiFectamineTM CHO試薬(カタログ番号A29131、invitrogen)をそれぞれ希釈し、プラスミドの最終濃度は0.5μg/mLとした。希釈後のトランスフェクション試薬をプラスミドに穏やかに加え、1~5min静置し、その後、プラスミド-トランスフェクション試薬の複合物を細胞に加え、細胞インキュベータに入れ、シェーカーで125rpm、37℃、8%COにてインキュベートした。トランスフェクションの翌日に、ExpiFectamineTM CHOエンハンサー(カタログ番号A29131、invitrogen)及びExpiCHOTM Feed(カタログ番号A29101-02、invitrogen)を補給し、細胞インキュベータは、シェーカーで125rpm、32℃、5%COの条件とした。遠心により、10日間トランスフェクションした細胞培養の上清を収集した。
【0128】
実施例3 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体とヒトCD47との結合活性及び動力学的定数
pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート上に組換えヒトCD47(北京シノバイオロジカル社から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。抗ヒトCD47抗体サンプル及び対照CC-90002(特許配列WO2016109415に由来する)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:10000にて希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗マウスIgG抗体(Abcam、カタログ番号Ab7068)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。結果を図3に示し、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体mAb-18-5、mAb-18-5 N297A、mAb-18-10、mAb-18-10 N297Aは、良好なヒトCD47結合親和性を有し、対照CC-90002よりも結合活性が強い。
【0129】
Biacore X100機器(GEから購入)により、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体とその抗原ヒトCD47との結合動力学的定数を検出した。この機器は、光学の表面プラズマ共鳴技術によりバイオチップに結合及びコーティングされた分子と被験分子との間の結合及び解離を測定した。使用される主な試薬は、Protein Aチップ(GE Healthcare、29-1275-57)である。実験の過程を簡単に説明すれば下記の通りであり。抗ヒトCD47キメラ抗体をランニング緩衝液(1×HBS-EP+10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%の界面活性剤P20,pH7.4)に希釈した。捕捉及び結合の段階では、濃度が2μg/mLの抗体を10μL/minの速度で60秒間注入した。結合の段階では、抗原CD47をランニング緩衝液で複数の濃度に希釈し、それぞれ30μL/minの速度で120秒間注入した。解離の段階では、ランニング緩衝液を使用して10μL/minの速度で600秒間注入した。再生条件は、10mMのグリシン塩溶液、pH1.5とした。結合動力学的定数及び解離動力学的定数は、Biacore X100評価用ソフトウェアにより分析及び算出した。抗ヒトCD47キメラ抗体の結合動力学的定数、解離動力学的定数及び解離平衡定数を表7に示す。データから、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体がCC-90002の結合解離パラメーターと同等又はそれ以上であることが示された。
【0130】
【表7】
【0131】
実施例4 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体の種特異性及び結合特異性
ELISAにより抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体の種特異性を測定した。pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート上に組換えヒトCD47、サルCD47、ラットCD47及びマウスCD47(いずれも北京シノバイオロジカル社から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で段階希釈した抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体サンプルを100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:10000にて希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗ヒトIgG抗体(Chemicon、カタログ番号AP309P)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0132】
フローサイトメトリーFACSにより抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体の種特異性を確認した。内部から寄付された正常ヒトRBC、カニクイザルRBC、ラットRBC及びマウスRBC細胞を収集した。2%のFBS(Hyclone、カタログ番号SH30084.03)を含む冷たいPBS(GIBCO、カタログ番号14190)で1回洗浄した。RBCを、チューブ毎に2×10個の細胞で2%のFBSを含む100μLの冷たいPBSに再懸濁させ、段階希釈された抗ヒトCD47抗体サンプル及び対照CC-90002、アイソタイプコントロールを100μL加えた。フローサイトメトリー用チューブを氷上で30minインキュベートした。2%のFBSを含むPBSで2回洗浄した。2%のFBS及び1:1000にて希釈した、FITCで標識した抗ヒトIgG抗体(北京中杉金橋、カタログ番号ZF0306)を含む冷たいPBS 200μLに再懸濁させた。氷上で、遮光で30minインキュベートした。2%のFBSを含むPBSで2回洗浄した。500μLの冷たいPBSに再懸濁させた。この細胞懸濁液をフローサイトメトリー(BD、FACS Calibur)で検出分析し、RBC細胞の蛍光強度を読み取った。
【0133】
ELISAにより抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体の結合特異性を測定した。pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート上に組換えヒトPD-1、CD28、CTLA4、ICOS、BTLA、CD47、PD-L2、CD80、CD86、B7-H2、CD47、SIRPα、SIRPγ(いずれもシノバイオロジカル社から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で段階希釈した抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体サンプル及び対照CC-90002、アイソタイプコントロールを100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:10000にて希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗ヒトIgG抗体(Chemicon、カタログ番号AP309P)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0134】
結果を図4のA及び表8に示し、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体は、ヒトCD47及びサルCD47と結合することができ、且つ親和性が類似したが、ラット、マウスCD47と結合せず、種特異性を示す。同時に、図4のBに示すように、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体はまた、強い結合特異性を有し、CD47のみと結合し、B7ファミリーメンバー、CD28ファミリーメンバー及びSIRPγと結合しない。
【0135】
【表8】
【0136】
実施例5 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体のCD47と受容体との結合へのブロッキング活性
pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート上に組換えヒトCD47-Fc(株式会社アクロバイオシステムズ(北京)から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。抗ヒトCD47抗体サンプルを50μL/ウェルで添加し、且つ、濃度が4nM(最終濃度は2nM)のビオチンで標識したSIRPα(株式会社アクロバイオシステムズ(北京)から購入)を50μL/ウェルで添加し、25℃で90minインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:1000にて希釈した、ストレプトアビジン-HRP(Streptavidin-HRP)(BD Pharmingen、カタログ番号554066)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0137】
結果を図5に示し、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体は、CC-90002と類似したCD47/SIRPαへのブロッキング活性を有する。
【0138】
実施例6 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体を介した腫瘍細胞に対する貪食活性
成熟ヒトマクロファージの製造:ヒトPBMC細胞(Lonza、カタログ番号CC-2702)を蘇生させて収集した。ヒトPBMC細胞を5×10/mLの細胞密度で無血清RPMI 1640培地(Gibco、カタログ番号11875)に再懸濁させて細胞培養ボトルに接種し、37℃の二酸化炭素インキュベータで90minインキュベートした。培養上清及び懸濁細胞を捨て、接着細胞を完全培地(10%のFBSを含むRPMI 1640)でインキュベートし、且つ、25ng/mLのM-CSF(北京シノバイオロジカル社、カタログ番号11792-HNAN)を加え、7日間インキュベートした。次いで、マクロファージを採取し、25ng/mLのM-CSF及び50ng/mLのIFN-γ(北京シノバイオロジカル社、カタログ番号11725-HNAS)を含む完全培地(10%のFBSを含むRPMI 1640)に再懸濁させた。この細胞懸濁液を48ウェル細胞培養プレートに50000個の細胞/ウェルで接種し、1日間インキュベートしてマクロファージを成熟させ、準備した。
【0139】
CFSEキット(Life technology、カタログ番号C34554)の説明書を参照してRaji腫瘍細胞(北京協和細胞資源センターから購入され、カタログ番号:3111C0001CCC000046)を染色した。簡単に言えば、PBSでCFSEを作用濃度5μMまで希釈し、且つ37℃に予熱し、1000rpmで5min遠心してRaji細胞を収集し、予熱したCFSE作用溶液でRajiを再懸濁させ、37℃で15minインキュベートした。完全培地で1回洗浄し、完全培地に再懸濁させ、30minインキュベートし、さらに完全培地で2回洗浄し、完全培地に再懸濁させて準備した。
【0140】
48ウェルプレートを完全培地で3回洗浄した。CFSE染色後のRaji細胞、被験抗ヒトCD47抗体サンプル、対照CC-90002及びアイソタイプコントロールを15min予めインキュベートし、次いで、48ウェル培養プレートに加え、37℃の二酸化炭素インキュベータで2hrインキュベートした。インキュベート終了後、48ウェルプレートを完全培地で3回洗浄し、完全培地で希釈した小麦胚芽凝集素(wheat germ agglutinin)、alexa fluor 555(Life technologies、カタログ番号W32464)を10μg/mLで加え、遮光で15minインキュベートした。さらに48ウェルプレートを完全培地で3回洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを加えて15min固定した。さらに48ウェルプレートを完全培地で3回洗浄し、完全培地を加えた。蛍光顕微鏡により撮影し、細胞数を計数した。貪食指数(%)の計算方法は、以下の通りである:貪食された緑色で標識されたRaji細胞の数/存在する赤色で標識されたマクロファージの数×100。
【0141】
結果を図6に示し、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体は、マクロファージによるRaji腫瘍細胞への貪食を媒介することができ、CC-90002の活性と同等又はそれ以上である。
【0142】
実施例7 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体の赤血球への影響
赤血球(RBC)にCD47が高発現している。いくつかの抗CD47抗体は、赤血球の凝集を引き起こすことができる。抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体が赤血球の凝集を引き起こすか否かを測定した。内部から寄付された抗凝固処理を行った健常人全血にDPBSを加えて再懸濁させ、次いで、遠心により上清を取り除き、遠心チューブの底にある赤血球を収集し、3回繰り返し洗浄した後、赤血球をDPBSに再懸濁させて2%の赤血球懸濁液とした。この懸濁液を低吸着型96ウェルプレートに50μL/ウェルで加え、且つ、段階希釈された抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体サンプル及び陽性対照(クローン番号CC2C6の抗CD47抗体、Biolegend、カタログ番号323102)を50μL/ウェルで加え、均一に混合した。プレートを37℃インキュベータに置いて2hrインキュベートし、次いで、観察して撮影した。
【0143】
結果を図7に示し、陽性対照だけは、ヒト赤血球凝集を引き起こしたが、mAb-18-5、mAb-18-10は赤血球凝集を引き起こさなかった。
【0144】
実施例8 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体の抗腫瘍薬力学的研究
本実施例において、キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体による、NCGマウスに接種したRaji腫瘍移植体の成長に対する阻害作用を検出した。6~8週齢の雌NCGマウス(南京生物医薬研究院から購入)を実験材料として使用した。マウスを環境に1週間適応させた後、マウス1匹につき、5×10個のヒトRajiリンパ腫細胞を接種した。腫瘍体積が約150mmまで達した場合、腫瘍体積によって、マウスを6匹ずつ群分け、それぞれ溶媒対照群、CC-90002対照群、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体mAb-18-5投与群、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体mAb-18-5 N297A投与群に設定した。35nmol/kgの投与用量で週2回、2週連続腹腔内投与した。投与日から腫瘍体積を週に2回測量し、その長径a、短径bを測量した。腫瘍体積の計算式は、腫瘍体積(mm)=(a×b)/2であった。
【0145】
結果を図8に示し、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体mAb-18-5は、抗腫瘍活性を有し、NCGマウスに接種したRaji移植腫瘍の成長を著しく阻害し、有効性がCC-90002と同等であった。
【0146】
実施例9 ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の製造
ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体は、Leungなど(1995、Molecule Immunol 32:1413-27)に記載された方法に基づいて得られるものである。
【0147】
GermLineデータベースから、マウス由来抗体の可変領域配列と最もマッチングするヒト化テンプレートを選択し、ここで、軽鎖可変領域のテンプレートは、IGKV1-1702であり、配列は、SEQ ID NO:34に示され、重鎖可変領域のテンプレートは、IGHV1-6901であり、配列は、SEQ ID NO:35に示される。マウス由来抗体のCDR領域を、選択したヒト化テンプレートに移植し、ヒトテンプレートのCDR領域と置換して、移植したヒト化抗体の軽鎖可変領域が得られ、配列は、SEQ ID NO:25に示され、移植したヒト化抗体の重鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:28に示される。SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:28からサイトを選択して復帰突然変異を行って、得られた軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:26、27に示され、得られた重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:29-33に示される。軽鎖可変領域と軽鎖定常領域(配列SEQ ID NO:13)とを連結して、それぞれ対応する軽鎖全長配列が得られ、重鎖可変領域と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:14)とを連結して、それぞれ対応する重鎖全長配列が得られた。親和性及び安定性のスクリーニングにより使用可能なヒト化配列が得られ、得られたヒト化配列の軽鎖及び重鎖可変領域の配列情報を表9に示す。
【0148】
【表9】
【0149】
実施例10 ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の抗原結合活性
ヒト化CD47モノクローナル抗体は、BH3008b、BH3011bと命名され、ここで、可変領域は、それぞれZ11、Z12に対応しており、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域(配列SEQ ID NO:13)とを連結し、重鎖可変領域と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:16)とを連結した。上記のように、ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の抗原結合活性の検出を行った。結果を図9に示し、ヒト化の抗ヒトCD47モノクローナル抗体BH3008b、BH3011bは、良好なヒトCD47結合親和性を有し、対照CC-90002との結合活性と同等であった。
【0150】
実施例11 ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体のCD47と受容体との結合へのブロッキング活性
上記のように、ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体のCD47と受容体との結合へのブロッキング活性を検出した。
【0151】
結果を図10に示し、ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体BH3008b、BH3011bは、CC-90002と類似したCD47/SIRPαへのブロッキング活性を有する。
【0152】
実施例12 ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体及びヒトCD47の結合動力学的定数
上記のように、Biacore X100機器により、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体とその抗原ヒトCD47との結合動力学的定数を検出した。抗ヒトCD47ヒト化抗体の結合動力学的定数、解離動力学的定数及び解離平衡定数を表10に示す。データによると、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体BH3008b、BH3011b及びCC-90002の結合解離パラメーターが同等であることが示された。
【0153】
【表10】
【0154】
実施例13 ヒト化の抗ヒトCD47モノクローナル抗体の赤血球への影響
上記のように、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体BH3008b、BH3011b及び対照CC-90002が赤血球の凝集を引き起こすか否かを測定した。ここで、陽性対照は、クローン番号CC2C6の抗CD47抗体、Biolegend、カタログ番号323102であった。
【0155】
結果を図11に示し、陽性対照だけはヒト赤血球凝集を引き起こしたが、CC-90002、BH3008b、BH3011bは赤血球凝集を引き起こさなかった。
【0156】
実施例14 サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)によるヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の純度及びその熱安定性の検出
Waters Xbridge BEH200クロマトグラフィーカラム(カタログ番号:186007640)を使用した。移動相は、0.1mol/LのNaCl緩衝液、pH6.7であり、流速は、0.8mL/minであり、クロマトグラフィーカラム温度は、25℃であり、サンプルセル温度は、4℃であり、検出波長は、280nmであり、サンプル緩衝液DPBSでサンプルを1mg/mLまで希釈し、サンプリング体積は、10μLであった。Agilent高速液体クロマトグラフィー1260システムステーションにより実験結果に対してデータ処理を行い、面積正規化法により純度である主ピークの割合を算出した。上記の製造されたヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体BH3008b、BH3011bに対してSE-HPLC純度の検出を行った。これらのモノクローナル抗体の熱安定性を確定するために、上記のサンプルを40℃の高温条件下に置き、2週目と4週目にそれぞれサンプリングしてSE-HPLC検出を行うことにより、熱安定性を観察し、結果を表11に示す。ヒト化抗ヒトCD47抗体は、いずれも良好且つ同等な安定性を示した。
【0157】
【表11】
【0158】
実施例15 イオン交換クロマトグラフィー(IEX)によるヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の電荷変異体の検出
カチオン交換クロマトグラフィーカラムMabPac SCX-10、4mm×250mm(Thermo、カタログ番号:78655)を使用し、20mmol/Lのモルホリノエタンスルホン酸(2-(N-Morpholino)ethanesulfonic acid、MES)(pH5.6)及び60mmol/Lの塩化ナトリウムを移動相Aとし、10mmol/LのMES(pH5.6)及び300mmol/Lの塩化ナトリウムを移動相Bとし、流速は、0.6mL/minであり、カラム温度は、25℃であり、サンプルセル温度は、4℃であり、検出波長は、280nmであり、サンプル注入量は、40μL(1mg/mL)であった。溶出方式は、10~55%の直線的な勾配で43min運転した。Agilent高速液体クロマトグラフィー1260システムステーションにより実験結果に対してデータ処理を行い、面積正規化法によりピーク面積の百分率を算出した。上記の製造されたヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体BH3008b、BH3011bに対してIEX検出を行った。これらのモノクローナル抗体の化学的安定性を確定するために、上記のサンプルを40℃の高温条件下に置き、2週目と4週目にそれぞれサンプリングしてIEX検出を行うことにより、電荷変異体の割合の変化を観察し、結果を表12に示す。ヒト化抗ヒトCD47抗体の電荷変異体の割合変化はいずれも低い。
【0159】
【表12】
【0160】
実施例16 ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の抗腫瘍薬力学的研究
本実施例において、ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体による、NCGマウスに接種したRaji腫瘍移植体の成長への阻害作用を検出した。6~8週齢の雌NCGマウス(南京生物医薬研究院から購入)を実験材料として使用した。マウスを環境に1週間適応させた後、マウス1匹につき、5×10個のRajiヒトリンパ腫細胞を接種した。腫瘍体積が約150mmまで達した場合、腫瘍体積によって、マウスを6匹ずつ群分けて、それぞれ溶媒対照群、CC-90002対照群、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体BH3008b投与群、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体BH3011b投与群に設定した。17.5nmol/kgの投与用量で週2回、2週連続腹腔内投与した。投与日から腫瘍体積を週に2回測量し、その長径a、短径bを測量した。腫瘍体積の計算式は、腫瘍体積(mm)=(a×b)/2であった。
【0161】
結果を図12に示し、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体BH3008b、BH3011bは、抗腫瘍活性を有し、NCGマウスに接種したRaji移植腫瘍の成長を著しく阻害し、有効性がCC-90002と同等であった。
【0162】
最後に、以上の各実施例は、本発明の技術案を説明するためのものであり、それを限定するものではない。上記の各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者にとっては、前述した各実施例に記載される技術案を修正したり、その技術的特徴の一部又は全部を同等に置き換えることは依然として可能であり、これらの修正又は置き換えは、対応する技術案の本質を本発明の各実施例に係る技術案の範囲から逸脱させるものではないことを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2024503396000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体及び抗体ヒト化改変研究分野に関し、特に、本発明は、CD47と特異的に結合することができる抗体及びその抗原結合フラグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
CD47は、インテグリン関連タンパク質(integrin associated protein、IAP)とも呼ばれ、免疫グロブリンスーパーファミリーに属しており、その構造は、主に細細胞外免疫グロブリンの可変領域様ドメイン、疎水性の高い5回膜貫通領域及び選択的スプライシングによる細胞内カルボキシル末端の細胞質尾部領域を含む。CD47は、細胞表面に広く発現しており、シグナル調節タンパク質SIPRα、インテグリン及びトロンボスポンジンTSP1と結合することができ、多種の生理機能に関連し、その主な作用は、貪食細胞の表面のSIPRαと結合することでマクロファージの貪食作用を阻害することである。SIPRαも免疫グロブリンスーパーファミリーの一員であり、細胞内領域にチロシンに富んだ免疫受容体チロシンベース抑制性モチーフ(ITIM)を有する。CD47がマクロファージの表面のSIPRαと結合すると、ITIMはリン酸化して下流分子SHP1/SHP2と結合し、ファゴサイトーシスシナプスサブメンブレン(phagocytosis synapse submembrance)へのミオシンの蓄積を阻止して貪食作用を阻害する。通常、CD47は「自己」のシグナルであり、「私を食べないで」を示し、貪食作用による自己攻撃を阻害することができる。病理的状況では、CD47は、腫瘍細胞に高発現しており、腫瘍細胞が貪食細胞の監視から逃れるのに寄与する(Science,2000,288(5473):2051-2054;Trends in Cell Biology,2001,11(3):130-135.)。
【0003】
腫瘍研究によると、CD47は急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、膀胱癌及び他の固形腫瘍を含む多種のヒト腫瘍で発現することが発現された。腫瘍細胞は、CD47の高発現を向上させてSIPRαと結合させることにより、マクロファージの免疫監視から逃れる。このため、CD47-SIPRα間の相互作用(CD47抗体又はSIPRα-Fc)をブロッキングすることにより、腫瘍に対するマクロファージの貪食作用を活性化するとともに、DC細胞よりCD8+T細胞へ抗原を提示することで腫瘍に対するCD8+T細胞の特異的な殺傷作用を発揮することができる(Current Opinion in Immunology,2012,24(2):225-232;Nature Medicine,2015,21(10):1209.)。
【0004】
ほとんどの腫瘍細胞にCD47が発現しているので、CD47-SIPRα経路をブロッキングする抗体は、適用の見通しが広く、抗腫瘍への適用も広い。研究によると、CD47は免疫チェックポイントとしており、CD47抗体と他の免疫チェックポイントであるCTLA4/PD-1に対する薬剤とを併用することにより薬効を増強させることができる。しかし、赤血球にもCD47が発現しているので、CD47抗体の安全性を考慮する必要がある。研究によると、マクロファージが貪食作用を発揮するには、CD47の「私を食べないで」というシグナルをブロッキングすることに加えて、カルレチクリン(CRT)を介した「私を食べて」というシグナルが必要となる。通常の場合、カルレチクリンは、腫瘍細胞において高発現するが、正常な細胞に発現しない。また、CD47抗体をスクリーニングする場合、赤血球の凝集を起こさない抗体を選択し、且つ、抗体としてIgG4型を採用すれば、マクロファージによる赤血球への貪食を活性化することができない。この分野は依然としてCD47抗体に対する需要がある。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、単離された抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体に関し、ここで、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み、ここで、
軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID No.1、2及び3に示され、及び/又は
重鎖可変領域のHCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID No.4に示され、重鎖可変領域のHCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID No.5又は6と少なくとも約94%の同一性を有し、重鎖可変領域のHCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID No.7又は8と少なくとも約78%の同一性を有し、又は
示される軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID No.1-8に示す配列と少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%又はそれ以上の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、又は、
前記軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:1-8に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個又は4個又はそれ以上のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列である。
【0006】
ここで、前記変異体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体から選ばれる1つである。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記抗体の重鎖定常領域配列は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDのいずれかの定常領域配列から選ばれ、及び/又は、前記抗体の軽鎖定常領域配列は、κ鎖又はλ鎖から選ばれる。好ましくは、重鎖定常領域配列は、IgG1又はIgG4の定常領域配列から選ばれ、及び/又は、軽鎖定常領域配列は、軽鎖κ鎖の定常領域配列から選ばれる。
【0008】
いくつかの実施形態において、CD47キメラ抗体及びその機能的フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.9又は10に示されるものであるか、又は、SEQ ID No.9又は10に示す配列と少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、SEQ ID NO.9又は10に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個又はそれ以上のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、及び/又は、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.11又は12に示されるものであるか、又は、SEQ ID No.11又は12に示す配列と少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、SEQ ID NO.11又は12に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個又はそれ以上のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、及び/又は
前記CD47キメラ抗体及びその機能的フラグメントの軽鎖定常領域及び重鎖定常領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO.13及びSEQ ID NO.14-16に示されるものであるか、又は、それぞれSEQ ID No.13及びSEQ ID NO.14-16に示す配列と少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.2%、約99.5%又はそれ以上の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、それぞれSEQ ID NO.13及びSEQ ID NO.14-16に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個又はそれ以上のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列である。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体の軽鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含み、重鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含み、及び/又は、
前記FR-L1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17に示され、
前記FR-L2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第12個のアミノ酸RはTに置換され、
前記FR-L3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第31個のアミノ酸YはFに置換され、
前記FR-L4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20に示され、
前記FR-H1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.21に示され、
前記FR-H2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.22に示され、
前記FR-H3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.23に示され、又は、以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第8個のアミノ酸EはTに置換され、
第11個のアミノ酸SはNに置換され、
第31個のアミノ酸AはVに置換され、及び/又は
前記FR-H4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.24に示される。
【0010】
いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID No.25-27のいずれかに示され、及び/又は、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID No.28-33のいずれかに示され、又は、SEQ ID NO.25-27又は28-33に示すアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性、例えば少なくとも約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はそれ以上の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、又は、SEQ ID NO.25-27又は28-33に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個又はそれ以上のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列である。
【0011】
好ましくは、軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO.26又は27に示され、及び/又は、重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO.33に示される。
【0012】
本分野において、同一性が言及される場合、アミノ酸配列の長さは自然数でなければならないので、実際に計算して得られた同一性の数値は95%のような有限の位のパーセントではなく、95%のようなパーセントに近い数字である可能性があり、例えば117位のアミノ酸残基の可変領域配列について、1つだけのアミノ酸残基が変化した場合、それに対応する同一性のパーセントは実際には99.15%に近いパーセントであるが、便宜上、このような数字は本明細書では単に99%と表記することは周知されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記抗原結合フラグメントは、F(ab’)、Fab’、Fab、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体、ラクダ抗体、CDR及び抗体認識の最小単位(dAb)から選ばれる1種又は複数種であり、好ましくは、前記抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)又はscFvである。
【0014】
本発明の他の態様は、以下のものから選ばれる単離された核酸分子に関する:
(1)上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体をコードするDNA又はRNA;
(2)(1)で定義された核酸と完全に相補的な核酸。
【0015】
本発明の別の態様は、効果的にライゲーションした上記のような核酸分子を含むベクターに関し、好ましくは、前記ベクターは、発現ベクターである。
【0016】
本発明の一態様は、上記のような核酸分子又はベクターを含む宿主細胞に関する。
【0017】
本発明の別の態様は、上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、上記のような核酸分子、上記のようなベクター又は上記のような宿主細胞、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む組成物に関する。
【0018】
本発明の別の態様は、上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体を生産する方法に関し、前記方法は、
上記のような宿主細胞を前記抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体の発現に適した培養条件で発現させ、任意選択的に、得られた産物を単離及び精製するステップを含む。
【0019】
本発明の別の態様は、CD47を介した疾患又は病症、例えば自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、神経変性疾患及び腫瘍を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における、上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、上記のような核酸分子、上記のようなベクター又は上記のような宿主細胞の使用に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、CD47を介した疾患又は病症、例えば自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、神経変性疾患及び腫瘍を予防及び/又は治療するための上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、上記のような核酸分子、上記のようなベクター又は上記のような宿主細胞に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、必要とする被験者に、上記のような抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、上記のような核酸分子、上記のようなベクター又は上記のような宿主細胞を投与するステップを含む、CD47を介した疾患又は病症、例えば自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、神経変性疾患及び腫瘍を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記自己免疫疾患は、関節炎、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、拡張型心筋症、シェーグレン症候群、アトピー性及び接触性皮膚炎、多発性筋炎、強皮症、動脈周囲性多発動脈炎、リウマチ熱、白斑、インスリン依存型糖尿病、ベーチェット病及び慢性甲状腺炎から選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、前記自己免疫疾患は、関節炎、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、リウマチ熱、白斑、インスリン依存型糖尿病及び慢性甲状腺炎から選ばれる1種又は複数種である。より好ましくは、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、インスリン依存型糖尿病及び慢性甲状腺炎から選ばれる1種又は複数種である。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記移植体に対する免疫応答は、例えば移植片対宿主病を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記アレルギー反応は、蕁麻疹、湿疹、血管神経性浮腫、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、喉頭浮腫、食物アレルギー胃腸炎、アナフィラキシーショックから選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、前記アレルギー反応は、蕁麻疹、湿疹、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アナフィラキシーショックから選ばれる1種又は複数種である。より好ましくは、前記アレルギー反応は、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アナフィラキシーショックから選ばれる1種又は複数種である。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記感染症とは、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などの病原体及び特定の毒素が人体に侵入することによる局所的な組織と全身性炎症反応を指す。病原性ウイルスの例として、例えばHIV、(A型、B型及びC型)肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II及びCMV、EBウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器多核体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクチニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、乳頭腫ウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルスを含む。病原性細菌は、例えば梅毒トレポネーマ、クラミジア、リケッチア、マイコバクテリウム、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌及び淋菌(conococci)、クレブシエラ、変形菌、セラチア菌、シュードモナス、レジオネラ菌、ジフテリア菌、サルモネラ、枯草菌、コレラ菌、破傷風菌、ボツリヌス菌、炭疽菌、ペスト菌、レプトスピラ属細菌及びボレリア・ブルグドルフェリを含む。病原性真菌は、例えばカンジダ菌(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)など)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス属菌(Aspergillus)(アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスぺルギルス・ニガー(Aspergillus niger)など)、ケカビ目(Mucorales)(ケカビ(mucor)、アブシディア(Absidia)、クモノスカビ(rhizophus))、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenkii)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)及びヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)を含む。病原性寄生虫は、例えば赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、ネグレリア・フォーレリ(Naegleria fowleri)、アカントアメーバ属の生物種(Acanthamoeba sp.)、ランブル鞭毛虫(Giardia lambia)、クリプトスポリジウム属の種(Cryptosporidium sp.)、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、ネズミバベシア原虫(Babesia microti)、トリパノソーマ・ブルーセイ(Trypanosomabrucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondi)及びブラジル鉤虫(Nippostrongylus brasiliensis)を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、マシャド・ジョセフ病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病から選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症から選ばれる1種又は複数種である。より好ましくは、前記神経変性疾患は、パーキンソン病及びハンチントン病から選ばれる1種又は複数種である。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓腺癌、胆嚢癌、肝癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、尿路上皮癌、腎細胞癌、骨肉腫、黒色腫及びメルケル細胞癌から選ばれる1種又は複数種である。好ましくは、前記腫瘍は、リンパ腫、骨髄腫、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、肝癌、結腸直腸癌、乳癌、宮頸癌、子宮内膜癌、前立腺癌、尿路上皮癌、腎細胞癌、骨肉腫、黒色腫から選ばれる1種又は複数種である。より好ましくは、前記腫瘍は、リンパ腫、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、胃癌、肝癌、結腸直腸癌、宮頸癌、尿路上皮癌、腎細胞癌、黒色腫から選ばれる1種又は複数種である。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記被験者は、哺乳動物から選ばれ、ヒト及び/又は他の霊長類動物を含むが、これらに限定されない。哺乳動物は、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ネコ、イヌ、マウス及び/又はラットなどの商業的に関連する哺乳動物を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、核酸分子、ベクター又は宿主細胞は、当分野の通常の施用方法、例えば非経口経路、静脈内投与により使用される。
【0030】
言い換えれば、本発明は、ハイブリドーマ手段により抗CD47モノクローナル抗体を得るとともに、赤血球凝集を起こさない抗体をスクリーニングした。IgG4型の抗体を採用することにより、CD47-SIPRα経路を特異的にブロッキングでき且つ一定の濃度範囲内で赤血球凝集を起こさないヒト化のIgG4抗体を得ることができる。
【0031】
本発明により提供される抗体及びその機能的フラグメントは、1nM又はそれ以下のKでヒトCD47と特異的に結合でき、CD47と受容体との結合をブロッキングする活性を有し、マクロファージによる腫瘍細胞の貪食を媒介し、及び/又は赤血球凝集を起こさず、自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、神経変性疾患及び腫瘍などを予防及び/又は治療するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
以下、本発明の具体的な実施形態又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、具体的な実施形態又は従来技術の記載に使用する必要がある図面に対して簡単に紹介する。なお、以下の記載における図面は、ただ本発明の一部の実施形態に過ぎない。当業者は、創造的な労働を付与しない前提で、これらの図面によって他の図面を得ることもできる。
図1】実施例1における抗ヒトCD47陽性クローンから分泌される抗ヒトCD47マウス由来モノクローナル抗体のインビトロ活性を示す。ここで、図1のAは、マウス由来モノクローナル抗体とCD47との結合活性を示す。図1のBは、マウス由来モノクローナル抗体のCD47/SIRPα結合へのブロッキング活性を示す。
図2】実施例1における抗ヒトCD47陽性クローンから分泌される抗ヒトCD47マウス由来モノクローナル抗体の赤血球への影響を示す。
図3】実施例3における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体とヒトCD47との結合活性を示す。
図4】実施例4における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体の特異性を示す。ここで、図4のAは、種特異性を示し、図4のBは、結合特異性を示す。
図5】実施例5における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体のCD47/SIRPα結合へのブロッキング活性を示す。
図6】実施例6における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体を介した、腫瘍細胞への貪食活性を示す。
図7】実施例7における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体の赤血球への影響を示す。
図8】実施例8における抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体のインビボでの抗腫瘍効果を示す。
図9】実施例10における抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体の抗原結合活性を示す。
図10】実施例11における抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体のCD47/SIRPα結合へのブロッキング活性を示す。
図11】実施例13における抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体の赤血球への影響を示す。
図12】実施例16における抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体のインビボでの抗腫瘍効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
用語「CD47」とは、インテグリン関連タンパク質(integrin associated protein、IAP)を指し、任意の哺乳動物由来のCD47分子であってもよく、いくつかの実施形態において、霊長類動物由来のCD47分子であり、いくつかの実施形態において、ヒト由来のCD47分子であってもよい。
【0034】
本明細書で使用される用語「抗CD47抗体」、「抗CD47」、「CD47抗体」又は「CD47と結合する抗体」とは、当該抗体がCD47を標的とする診断剤及び/又は治療剤として使用できるようにCD47タンパク質又はそのフラグメントと十分な親和性で結合できる抗体を指す。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、異種のCD47における保存されたCD47のエピトープと結合する。
【0035】
用語「抗体」とは、免疫グロブリン分子又は抗原のエピトープと結合する能力を持つ免疫グロブリン分子のフラグメントを指す。天然に存在する抗体は、典型的には四量体を含み、通常、少なくとも2本の重(H)鎖及び少なくとも2本の軽(L)鎖から構成される。免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEのアイソタイプを含み、その対応する重鎖は、それぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同じクラスのIgは、ヒンジ領域のアミノ酸組成と重鎖のジスルフィド結合の数及び位置の違いによって、異なるサブクラスに分けることもでき、例えばIgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のサブタイプに分けられてもよく、IgAは、IgAとIgAのサブタイプに分けられてもよい。軽鎖は、定常領域によってκ鎖とλ鎖に分けられる。
【0036】
本明細書において、用語「抗体」は最も広い意味で使用され、抗原結合部位を含むタンパク質を指し、様々な構造の天然抗体及び人工抗体を含み、完全抗体及び抗体の抗原結合フラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0037】
「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のうち、抗体とその抗原との結合に関与するドメインを指す。抗体の各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記する)及び重鎖定常領域(本明細書においてCHと略記する)から構成され、重鎖定常領域は、通常、三つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記する)及び軽鎖定常領域(本明細書においてCLと略記する)から構成される。重鎖及び軽鎖可変領域は、典型的には抗原認識を担当するが、重鎖及び軽鎖定常領域は、免疫グロブリンと宿主の組織又は因子(免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)、Fc受容体及び古典補体システムの第1成分(C1q)を含む)との結合を媒介することができる。重鎖及び軽鎖可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含む。VH及びVL領域は、さらに、「相補性決定領域(CDR)」と呼ばれる超可変領域(HVR)に細かく分けられてもよく、それらの間にはより保存的な「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる領域が介在している。各VH及びVLは、3つのCDRドメイン及び4つのFRドメインから構成され、アミノ末端からカルボキシル末端まで、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の順で配列される。
【0038】
用語「相補性決定領域」又は「CDR領域」又は「CDR」(本明細書において超可変領域「HVR」とは互換的に使用されてもよい)とは、抗体可変ドメインのうち、配列的に高度に変異し且つ構造的に決定されたループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触点」)を含有する領域を指す。CDRは、主に抗原のエピトープとの結合を担当する。本明細書において、重鎖の3つのCDRは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3と呼ばれ、軽鎖の3つのCDRは、LCDR1、LCDR2及びLCDR3と呼ばれる。
【0039】
異なるナンバリングスキームに基づいて得られた同一の抗体の可変領域のCDRの境界は異なる可能性があることに留意されたい。即ち、異なるナンバリングスキームで定義される同一の抗体可変領域のCDR配列は異なる。このため、本発明で定義される特定のCDR配列を用いて抗体を限定する場合、前記抗体の範囲は、可変領域配列が前記特定のCDR配列を含むが、異なるスキーム(例えば、異なるナンバリングスキームの規則又は組み合わせ)を適用することによって、いわゆるCDRの境界が本発明で定義される特定のCDRの境界と異なる抗体をさらに含む。
【0040】
用語「モノクローナル抗体」、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単分子組成物の抗体分子製剤としての、基本的に同質の抗体群から得られた抗体を指し、即ち、個体抗体を含む群は、わずかに存在する可能性がある、天然に発生する突然変異以外に同じである。一般的なモノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、2種以上のFabドメインから構成されてもよく、これにより、2種以上のターゲットに対する特異性を向上させる。用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、任意の具体的な産生方法(例えば、組換え、トランスジェニック、ハイブリドーマなど)に限定されるものではない。
【0041】
用語「二重抗体」、「二重機能的抗体」、「二重特異性抗体」、「bispecific antibody」又は「BsAb」とは、2個の異なる抗原結合部位を有するものを指し、2つのターゲット抗原と同時に結合することができ、抗体の標的性を発揮すると同時に別の特殊な機能エフェクター分子を媒介する作用を持つものである。媒介された特殊な機能エフェクター分子は、毒素、酵素、サイトカイン、放射線核種などであってもよく、抗原と結合する、二重特異性抗体の2つのアームは、それぞれFab、Fv、ScFv又はdSFvなどに由来してもよい。
【0042】
用語「ポリクローナル抗体」とは、異なる抗原決定基(「エピトープ」)に対する異なる抗体の調製物を指す。
【0043】
用語「抗体の抗原結合フラグメント」とは、エピトープと結合できる抗体のフラグメント、部分、領域又はドメインを指す(例えば切断、組換え、合成などによって得られてもよい)。抗原結合フラグメントは、このような抗体の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はすべての6つのCDRドメインを含むことができ、また、前記エピトープと結合できるにもかかわらず、異なる特異性、親和性又は選択性を示すことができる。好ましくは、抗原結合フラグメントは、前記抗体のすべての6つのCDRドメインを含む。抗体の抗原結合フラグメントは、1本のポリペプチド鎖(例えば、scFv)の一部であってもよく、又は、1本のポリペプチド鎖を含むものであるか、又は、2本又はそれ以上のポリペプチド鎖(それぞれアミノ末端及びカルボキシル末端を有する)(例えば、二重抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメントなど)の一部であってもよく、又は、2本又はそれ以上のポリペプチド鎖を含む。
【0044】
本発明に含まれる抗原結合フラグメントの例として、(a)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価のフラグメントであるFab’又はFabフラグメント;(b)ジスルフィド結合によってヒンジドメインで連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントであるF(ab’)フラグメント;(c)VH領域及びCHlドメインからなるFdフラグメント;(d)抗体の1つのアームのVL領域及びVH領域からなるFvフラグメント;(e)遺伝工学的手法により抗体VH及びVLを結合ペプチドセグメントで連結した組換えタンパク質である単鎖抗体(single chain Fv、scFv);(f)基本的にVH領域からなり且つドメイン抗体(Holtなど,Trends Biotechnol.,2i(ll):484-90)とも呼ばれるdAbフラグメント(Wardなど,Nature,341,544-546(1989));(g)ラクダ又はナノ抗体(Revetsなど,Expert Opin Biol Ther.,5(l):111-24)及び(h)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。
【0045】
用語「キメラ抗体」とは、所望の生物学的活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種に由来し又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一又は同種であるが、鎖の残りの部分が他の種に由来し又は他の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体及びこのような抗体のフラグメントの対応する配列と同一又は同種であることを指す。本発明は、ヒト抗体由来の可変領域抗原結合配列を提供する。このため、本明細書で主に注目したキメラ抗体は、1つ又は複数のヒト抗原結合配列(例えばCDR)を有し且つ1つ又は複数の非ヒト抗体由来配列、例えばFR又はC領域の配列を含有する抗体を含む。なお、本明細書で記載されるキメラ抗体は、1種の抗体クラス又はサブクラスのヒト可変領域抗原結合配列及び他の抗体クラス又はサブクラスに由来する他の配列、例えばFR又はC領域の配列を含む抗体を指す。
【0046】
用語「ヒト化抗体」とは、他の哺乳動物種、例えばマウス種に由来するCDR配列がヒトフレーム配列に移植された抗体を指す。ヒトフレーム配列において別途のフレームワーク領域修飾を行うことができる。
【0047】
用語「ヒト抗体」又は「完全ヒト抗体」(「humAb)又は「HuMab」)とは、ヒト種系免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、ヒト種系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、インビトロでランダム変異誘発又は部位特異的変異誘発、又は遺伝子再構成中、又はインビボで体細胞突然変異によって導入された変異)。
【0048】
変異体抗体も本発明の範囲内に含まれる。このため、本願で挙げられた配列の変異体も本発明の範囲内に含まれる。当分野で知られている方法を使用することにより改良された親和性を有する抗体配列の他の変異体を得ることができ、且つ、これらの変異体も本発明の範囲内に含まれる。例えば、アミノ酸の置換は、さらに改良された親和性を有する抗体を得るために用いることができる。又は、ヌクレオチド配列のコドンの最適化は、抗体の生産における発現系の翻訳効率を改善するために用いることができる。
【0049】
このような変異体抗体の配列は、本願で挙げられた配列と70%又はそれ以上(例えば80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又はそれ以上)の配列相同性を有する。このような配列相同性は、参照配列(即ち、本願で挙げられた配列)の全長に対して計算して得られたものである。
【0050】
IMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics information system)(登録商標)又はKabat,E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesmann,K.S.& Foeller,C.,(1991),Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,NIH公開番号91-3242,アメリカ合衆国保健福祉省;Chothia,C.& Lesk,A.M.,(1987),Canonical structures For The Hypervariable domains Of Immunoglobulins.,J.Mol.Biol.,196,901-917に従って、本発明におけるアミノ酸残基に番号を割り当てる。特に明記されていない限り、本発明におけるアミノ酸残基は、Kabat EUインデックスナンバリングシステムに従って番号付けされる。
【0051】
抗体又はその抗原結合フラグメントが他の分子の領域(即ち、エピトープ)と「特異的に」結合することとは、他のエピトープよりも、より頻繁に、より速く且つより長い持続時間及び/又はより大きな親和性で前記エピトープと反応又は結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、少なくとも10-7M、例えば10-8M、10-9M、10-10M、10-11M又はそれ以上の親和性でヒトCD47と結合する。好ましくは、抗体又はその抗原結合フラグメントは、生理条件下で(例えば、インビボで)結合する。このため、CD47と特異的に結合することは、この抗体又はその抗原結合フラグメントが上記の特異性及び/又はこのような条件でCD47と結合する能力を指す。前記結合を決定するのに適した方法は、当分野で知られているものである。
【0052】
抗体と指定された抗原とが結合するという背景下で、用語「結合」とは、通常、約10-6M又はそれ以下のKに対応する親和性で結合することを指し、このKは、指定された抗原又は密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対するこの抗体の結合の親和性よりも、少なくとも10倍、例えば少なくとも100倍、少なくとも1,000倍低い。
【0053】
本明細書で使用されるように、用語「k」(sec-1又は1/s)とは、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも呼ばれる。
【0054】
本明細書で使用されるように、用語「k」(M-1 x sec-1又は1/Msec)とは、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数を指す。
【0055】
本明細書で使用されるように、用語「K」(M)とは、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、且つkをkで割ることにより得られるものである。
【0056】
本明細書で使用されるように、用語「K」(M-1又は1/M)とは、特定の抗体-抗原相互作用の結合平衡定数を指し、且つkをkで割ることにより得られるものである。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、CDRの一部(即ち、結合に必要なCDR残基サブグループ、SDRと呼ばれる)のみがヒト化抗体で結合していればよい。分子モデリング及び/又は経験に応じて、又はGonzales,N.R.など,(2004),SDR Grafting Of A Murine Antibody Using Multiple Human GermLine Templates To Minimize Its Immunogenicity,Mol.Immunol.,41:863-872に記載されるように、先行研究に基づいて(例えばCDR H2における残基H60-H65が、通常、不要である)Chothia超可変ループ以外に位置するKabat CDR領域(Kabatなど,(1992),Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,公開番号91-3242;Chothia,C.など,(1987),Canonical Structures For The Hypervariable Regions Of Immunoglobulins,J.Mol.Biol.,196:901-917を参照されたい)から関連するエピトープと接触しなく且つSDRに位置しないCDR残基を同定することができる。このようなヒト化抗体において、1つ又は複数のドナーであるCDR残基が存在しなく又はドナーであるCDR全体が省略される位置で、この位置を占めるアミノ酸は、受容体抗体配列において対応する位置(Kabatに従って番号付けされる)を占めるアミノ酸であってもよい。このような置換は、ヒト化抗体におけるマウスのアミノ酸の数を減らし、これにより、潜在的な免疫原性を低下させる点で潜在的に有利である。しかし、置換は、親和性の変化を引き起こす可能性もあり、且つ親和性が著しく低下することを避けることが好ましい。経験に応じてCDR内の置換位置及び置換されるアミノ酸を選択することもできる。
【0058】
CDR残基の単一のアミノ酸を変えて機能的結合が失われるという事実を利用して(Rudikoff,S.など,(1982),Single Amino Acid Substitution Altering Antigen-binding Specificity,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA))79(6):1979-1983)、代替可能な機能的CDR配列を系統的に同定することができる。このような変異体CDRを得るための好ましい方法において、CDRをコードするポリヌクレオチドの変異を誘発して(例えばランダム変異誘発又は部位特異的変異誘発により)置換されたアミノ酸残基を有するCDRを生成する。元の(機能的)CDR配列における関連する残基の身元と置換された(非機能的)変異体CDR配列の身元とを比較することにより、この置換されたBLOSUM62.iijの置換スコアを同定することができる。BLOSUMシステムは、配列データベースを分析して作成されたアミノ酸置換行列を提供して、信頼性の比較に用いる(Eddy,S.R.,(2004),Where Did The BLOSUM62 Alignment Score Matrix Come From?,Nature Biotech.,22(8):1035-1036;Henikoff,J.G.,(1992),Amino acid substitution matrices from protein blocks),Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),89:10915-10919;Karlin,S.など,(1990),Methods For Assessing The Statistical Significance Of Molecular Sequence Features By Using General Scoring Schemes),PNAS,87:2264-2268;Altschul,S.F.,(1991),Amino Acid Substitution Matrices From An Information Theoretic Perspective,J.Mol.Biol.,219、555-565。現在、最も先進的なBLOSUMデータベースは、BLOSUM62データベース(BLOSUM62.iij)である。表1は、BLOSUM62.iij置換スコアを示す(スコアが高いほど、置換が保存的であるので、この置換は、機能に影響を与えない可能性が高くなる)。例えば、得られたCDRを含む抗原結合フラグメントがCD47と結合できない場合、BLOSUM62.iij置換スコアは、十分に保存的ではないと考えられ、より高い置換スコアを持つ新たな候補置換を選択して生成する。このため、例えば、元の残基がグルタミン酸(E)であり且つ非機能的置換残基がヒスチジン(H)である場合、BLOSUM62.iij置換スコアは、0であり、且つ、より保存的な変化(例えばアスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン又はリジン)は、好ましいものである。
【表1】
【0059】
そこで、本発明は、改良されたCDRの同定におけるランダム変異誘発の使用を考慮した。本発明の背景下で、保存的置換は、以下の3つの表における1つ又は複数のアミノ酸のカテゴリ内の置換により定義されてもよい。
【0060】
【表2】
【表3】
【表4】
より保存的な置換グループには、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン及びアスパラギン-グルタミンが含まれる。
【0061】
いくつかの実施形態において、親水性アミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Gln、Glu、His、Tyr及びLysから選ばれる。
【0062】
さらに、例えばCreighton,(1984),Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman and Company)に記載されている原理を用いて別のアミノ酸グループを作成することもできる。
【0063】
このため、含まれる抗体又はその抗原結合フラグメントのCDR変異体の配列は、置換によって親抗体のCDRの配列と異なることができ、例えば4、3、2又は1個のアミノ酸残基の置換が挙げられる。本発明の実施形態によれば、CDR領域におけるアミノ酸は、以上の3つの表で定義されるように、保存的置換で置換されてもよい。
【0064】
「相同性」又は「配列同一性」とは、配列を整列させて間隙を導入した後のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列変異体と非変異体配列間の同じ残基のパーセンテージを指す。具体的な実施形態において、ポリヌクレオチド及びポリペプチド変異体は、本明細書で記載されるポリヌクレオチド又はポリペプチドと、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%のポリヌクレオチド又はポリペプチド相同性を有する。
【0065】
このような変異体ポリペプチド配列は、本願で挙げられる配列と、70%又はそれ以上(即ち80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又はそれ以上)の配列同一性を有する。他の実施形態において、本発明は、本明細書で開示されているアミノ酸配列の様々な長さの連続した延出セグメントを含むポリペプチドフラグメントを提供する。例えば、適用可能な場合、本発明に提供されるペプチド配列は、少なくとも約5、10、15、20、30、40、50、75、100、150又はそれ以上の本発明で開示される1つ又は複数の配列の連続したペプチド、及びそれらの間の中間程度の長さを有するすべてのペプチドを含む。
【0066】
用語「治療」とは、疾患又は病状の進展又は重症度を改善、緩和、減弱又は逆転させたり、このような疾患又は病状の1種又は複数種の症状又は副作用を改善、緩和、減弱又は逆転させたりすることを指す。本発明において、「治療」はまた、有益又は有望な臨床結果を得るための方法を指し、ここで、「有益又は有望な臨床結果」は、部分的又は全部的なものや、検出可能又は検出不可能なものにもかかわらず、症状の緩和、病状又は疾患程度の減少、安定化した(即ち悪化していない)疾患又は病状の状態、疾患又は病状の状態の進展の遅延又は緩和、疾患又は病状の状態の改善又は軽減及び疾患又は病状の緩和を含むが、これらに限定されない。
【0067】
用語「予防」とは、本発明の抗体及びその機能的フラグメントを投与することにより、疾患又は病况の少なくとも1種の症状の進展を阻止又は阻害することを指す。この用語は、緩和中の被験者を治療して再発を予防又は阻害することをさらに含む。
【0068】
本発明の抗体は、組換えDNAにより産生されたモノクローナル抗体であってもよい。
【0069】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプを有してもよい。アイソタイプの選択は、通常、所望のエフェクター機能(例えばADCC誘導)により決定される。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4である。ヒト軽鎖定常領域κ又はλのいずれか一方を用いることができる。必要であれば、公知の方法により本発明の抗CD47の抗体のクラスを変換することができる。例えば、本発明の最初のIgG抗体は、クラスを本発明のIgM抗体に変換することができる。なお、クラス変換技術によりIgGサブクラスを別のサブクラスに変換することができ、例えば、IgGlをIgG2に変換することができる。このため、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療用途のために、アイソタイプの切り替えにより例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE又はIgM抗体に変換することができる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、IgG4抗体である。抗体のアミノ酸配列が他のアイソタイプに対してこのアイソタイプとほとんど同じである場合、この抗体は、特定のアイソタイプに属する。
【0070】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、全長抗体であり、好ましくはIgG抗体である。他の実施形態において、本発明の抗体は、抗体-抗原結合フラグメント又は単鎖抗体である。
【0071】
いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、一価抗体であり、好ましくは、WO2007059782(その全体が引用により本明細書に援用される)に記載されたようなヒンジ領域に欠失を有する一価抗体である。このため、いくつかの実施形態において、抗体は、一価抗体であり、ここで、前記抗CD47抗体は、以下の方法により構築される:i)一価抗体の軽鎖をコードする核酸構築物を提供し、前記構築物は、選択された抗原特異的抗CD47抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列及びIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする前記ヌクレオチド配列及びIgのCL領域をコードする前記ヌクレオチド配列は、効果的に連結されており、また、IgG1サブクラスの場合、CL領域をコードするヌクレオチド配列は、既に修飾されており、これにより、ポリクローナルヒトIgGの存在下で又は動物若しくはヒトに投与する場合、このCL領域は、このCL領域の一致したアミノ酸配列を含む他のペプチドとジスルフィド結合又は共有結合を形成できる任意のアミノ酸を含まない;ii)一価抗体の重鎖をコードする核酸構築物を提供し、前記構築物は、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列及びヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、CH領域をコードするヌクレオチド配列は、既に修飾されており、これにより、ポリクローナルヒトIgGの存在下で又は動物若しくはヒトに投与する場合、ヒンジ領域及び(例えばIgサブクラスに要求される)CH領域の他の領域(例えばCH3領域)に対応する領域には、ヒトIgのCH領域の一致したアミノ酸配列を含む他のペプチドと、ジスルフィド結合又は共有結合若しくは安定な非共有結合による重鎖間結合を形成することに関与する任意のアミノ酸残基が含まれておらず、ここで、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードする前記ヌクレオチド配列及び前記IgのCH領域をコードする前記ヌクレオチド配列は、効果的に連結されている;iii)一価抗体を産生するための細胞発現系を提供する;iv)(iii)の細胞発現系の細胞で(i)及び(ii)の核酸構築物を共発現させて前記一価抗体を産生する。
【0072】
同様に、いくつかの実施形態において、抗CD47抗体は、一価抗体であり、
(i)本明細書で記載されるような本発明の抗体の可変領域又は前記ドメインの抗原結合部分と、
(ii)免疫グロブリンのCH領域又はそのCH2及びCH3ドメインを含むドメインと、を含み、
ここで、このCH領域又はそのドメインが既に修飾されることにより、ヒンジ領域及び(この免疫グロブリンがIgG4サブクラスではない場合)CH領域の他のドメイン(例えばCH3ドメイン)に対応するドメインには任意のアミノ酸残基が含まれておらず、これらの任意のアミノ酸残基は、同じCH領域とジスルフィド結合を形成し、又は、ポリクローナルヒトIgGの存在下で同じCH領域と他の共有結合又は安定な非共有結合による重鎖間結合を形成することができる。
【0073】
他のいくつかの実施形態において、一価抗体の重鎖は修飾されることにより、ヒンジ領域全体が欠失している。
【0074】
他の実施形態において、一価抗体の配列は修飾されることにより、N-結合型グリコシル化のための任意の受容体サイトが含まれていない。
【0075】
本発明は、「二重特異性抗体」をさらに含み、ここで、抗CD47結合領域(例えば、抗CD47モノクローナル抗体のCD47結合領域)は、1種以上のエピトープを標的とする二価又は多価二重特異性フレームワークの一部である(例えば、第2のエピトープは、アクティブトランスポート受容体のエピトープを含むことができ、これにより、この二重特異性抗体は、生物学的障壁(例えば血液脳関門)を越えた、改善された細胞転移作用を示す)。このため、他の実施形態において、抗CD47抗体の一価Fabは、他の異なるタンパク質を標的とするFab又はscfvに連結されることにより、二重特異性抗体を産生することができる。二重特異性抗体は、例えば抗CD47結合領域から付与される治療機能及び受容体分子に結合されて生物学的障壁(例えば血液脳関門)を越えて転移するトランスポート機能を増強させることができるという二重機能を有することができる。
【0076】
本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントは、単鎖抗体をさらに含む。単鎖抗体は、重鎖及び軽鎖のFvドメインが連結されたペプチドである。いくつかの実施形態において、本発明は、単鎖Fv(scFv)を提供し、ここで、本発明の抗CD47抗体のFv中の重鎖及び軽鎖は、フレキシブルペプチド(典型的には、約10、12、15又はそれ以上のアミノ酸残基)で連結されて1本のペプチド鎖を形成する。このような抗体を産生する方法は、例えばUS 4,946,778;Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,Vol.113,Rosenburg and Moore ed.,Springer-Verlag,New York,pages:269-315(1994);Birdなど,Science,242,423-426(1988);Hustonなど,PNAS USA 85,5879-5883(1988及びMcCaffertyなど,Nature,348,552-554(1990)に記載されている。単一のVH及びVLだけを使用する場合、単鎖抗体は、一価のものであり、2つのVH及びVLを使用する場合、二価のものであり、又は、2つ以上のVH及びVLを使用する場合、多価のものである。
【0077】
当分野で知られている任意の技術により本発明の抗体を産生し、例えば任意の化学的や生物学的や遺伝学的又は酵素学的な技術に限定されなく、単独で又は組み合わせて使用することができる。通常、所望の配列のアミノ酸配列が知られており、当業者は、ポリペプチドを産生するための標準的な技術により前記抗体を容易に産生することができる。例えば、公知の固相方法によりこれらの抗体を合成することができ、好ましくは、市販のペプチド合成装置(例えばApplied Biosystems、Foster City、Californiaで製造された装置)を用いてメーカーの説明書に従ってこれらの抗体を合成する。又は、当分野における公知の組換えDNA技術により本発明の抗体を合成することができる。例えば、抗体をコードするDNA配列を発現ベクターに組み込んでこれらのベクターを所要の抗体の発現に好適な真核又は原核宿主に導入した後、DNA発現産物としての抗体が得られ、その後、既知の技術を用いて宿主から抗体を単離することができる。
【0078】
任意の「好適な」数の修飾されたアミノ酸を含み、及び/又はカップリング置換基と結合することにより、本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントを修飾することができる。このような場合に、「好適」は、通常、非誘導体化親抗CD47抗体に関連するCD47選択性及び/又はCD47特異性を少なくとも基本的に保持する能力によって決定される。1つ又は複数の修飾されたアミノ酸を含むことは、例えばポリペプチド血清半減期の増加、ポリペプチド抗原性の低減又はポリペプチド貯蔵安定性の向上に寄与することができる。1種又は複数種のアミノ酸に対する修飾は、例えば、組換え生産の過程において翻訳と同時に行われ、又は、翻訳後に行われ(例えば、哺乳動物の細胞での発現過程においてN-X-S/T配列におけるN-結合型グリコシル化作用)、又は合成手段によって行われる。修飾されたアミノ酸の非限定的な例として、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、イソプレン化(例えば、ファルネシル化、ゲラニル-ゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、ポリエチレングリコール化アミノ酸、ビオチンアシル化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸などを含む。アミノ酸修飾を行う参考文献は、本分野ではよく知られており、例えばWalker,(1998),Protein Protocols On CD-Rom,Humana Press,Totowa,New Jerseyを参照する。修飾されたアミノ酸は、例えばグリコシル化アミノ酸、ポリエチレングリコール化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチンアシル化アミノ酸、脂質部分に結合したアミノ酸又は有機誘導化剤に結合したアミノ酸から選ばれてもよい。
【0079】
本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントは、共価結合によりポリマーに結合して化学修飾を行うことにより、循環半減期を増加させることもできる。例示的なポリマー及びそれをペプチドに連結する方法は、例えばUS 4,766,106;US 4,179,337;US 4,495,285及びUS 4,609,546を参照する。また、例示的なポリマーとして、ポリオキシエチル化されたポリオール及びポリエチレングリコール(PEG)(例えば、分子量は約1,000~40,000Dの間、例えば約2,000~20,000Dの間、例えば約3,000~12,000DのPEG)を含む。
【0080】
用語「被験者」とは、温血動物を指し、好ましくは哺乳動物(ヒト、家畜及び農場での動物、動物園での動物、運動動物又はペット動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなど)であり、より好ましくはヒトである。一実施形態において、被験者は、「患者」、即ち、温血動物であってもよく、より好ましくは、受け入れを待っているかか、又は医療看護を受けているか、又は医療プログラムあるいは疾患進展モニタリングの対象となる、ヒトである。一実施形態において、被験者は、成人(例えば18歳以上の被験者)である。他の実施形態において、被験者は、子供(例えば、18歳以下の被験者)である。一実施形態において、被験者は、男性である。他の実施形態において、被験者は、女性である。
【0081】
本発明の一実施形態において、サンプルは、生体サンプルである。生体サンプルの例として、疾患組織、体液を含むが、これらに限らなく、好ましくは血液、より好ましくは血清、血漿、滑液、気管支肺胞洗浄液、痰、リンパ液、腹水、尿、羊水、腹膜液、脳脊髄液、胸膜液、心嚢水及び肺胞マクロファージから製造された組織分解物及び抽出物を含むが、これらに限定されない。
【0082】
本発明の一実施形態において、用語「サンプル」は、任意の分析の前に個体から採取したサンプルを意味する。
【0083】
このため、いくつかの実施形態において、本発明の抗CD47抗体及びその抗原結合フラグメントは、完全抗体、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラス)、IgA(IgA1及びIgA2のサブクラス)、IgM及びIgE;抗原結合フラグメント、例えばSDR、CDR、Fv、dAb、Fab、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、scFv、ラクダ抗体又はナノ抗体;抗体又はその抗原結合フラグメントの変異体配列、例えば上記の抗体又はその抗原結合フラグメントと少なくとも80%の配列同一性を有する変異体配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、抗CD47又はその抗原結合フラグメントを含む誘導体、例えば完全抗体に由来するキメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、組換え抗体、二重特異性抗体をさらに含む。
【0084】
他の態様によれば、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの1本又は複数本のポリペプチド鎖をコードする発現ベクターに関する。このような発現ベクターは、組換えにより本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを産生するために用いることができる。
【0085】
本発明において、発現ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクター及び合成核酸ベクター(1組の適切な発現制御要素の核酸配列を含む)を含む任意の適切なDNA又はRNAベクターであってもよい。このようなベクターの例として、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAとの組み合わせから誘導されたベクター及びウイルス核酸(RNA又はDNA)ベクターを含む。いくつかの実施形態において、抗CD47抗体をコードする核酸は、裸のDNA又はRNAベクターに含まれ、例えば線形発現要素(例えばSykes and Johnston,Nat Biotech,12,355-59(1997)に記載されている)、小型核酸ベクター(例えばUS 6,077,835及び/又はWO00/70087に記載されている)、プラスミドベクター(例えばpBR322、pUC19/18又はpUC118/119)、最小サイズの核酸ベクター(例えばSchakowskiなど,MoI Ther,3,793-800(2001)に記載されている)を含み、又は沈殿型核酸ベクター構築物、例えばCaPO沈殿型構築物(例えばWO00/46147;Benvenisty and Reshef,PNAS USA 83,9551-55(1986);Wiglerなど,Cell,14,725(1978)及びCoraro and Pearson,Somatic Cell Genetics,2,603(1981)に記載されている)としている。このような核酸ベクター及びその使用は、本分野でよく知られているものである(例えばUS5,589,466及びUS5,973,972を参照されたい)。
【0086】
いくつかの実施形態において、ベクターは、細菌の細胞で抗CD47抗体又はその抗原結合フラグメントを発現させるのに適している。このようなベクターの例として、例えばBlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster,J Biol Chem,264,5503-5509(1989))、pETベクター(Novagen,Madison,Wisconsin)などを含む。
【0087】
発現ベクターは、酵母系で発現するのに適したベクターであってもよい。酵母系で発現するのに適した任意のベクターを採用することができる。適切なベクターは、例えば構成型又は誘導性プロモーター(例えばα因子、アルコールオキシダーゼ及びPGH)を含むベクターを含む(レビューとして、F.Ausubelなど,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley InterScience,New York(1987);Grantなど,Methods in Enzymol,153,516-544(1987);Mattanovich,D.など,Methods Mol.Biol.,824,329-358(2012);Celik,E.など,Biotechnol.Adv.,30(5),1108-1118(2012);Li,P.など,Appl.Biochem.Biotechnol.,142(2),105-124(2007);Boer,E.など,Appl.Microbiol.Biotechnol.,77(3),513-523(2007);van der Vaart,J.M.,Methods Mol.Biol.,178,359-366(2002)及びHolliger,P.,Methods Mol.Biol.,178,349-357(2002)を参照されたい)。
【0088】
本発明の発現ベクターにおいて、抗CD47抗体をコードする核酸は、任意の適切なプロモーター、エンハンサー及びその他の発現に寄与する要素又はそれとの組み合わせを含むことができる。このような要素の例として、強発現型プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサー及びRSV、SV40、SL3-3、MMTV及びHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)ターミネーター配列、大腸菌でプラスミドを産生するための複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子及び/又は便利なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)を含む。核酸は、構成型プロモーター(例えばCMV IE)に対する誘導性プロモーターを含むこともできる。
【0089】
他の態様によれば、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメント又は本発明の二重特異性分子を産生する組換え真核又は原核宿主細胞(例えばトランスフェクトーマ)に関する。宿主細胞の例として、酵母、細菌及び哺乳動物細胞(例えばCHO又はHEK細胞)を含む。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、細胞ゲノムに安定に組み込まれた核酸を含む細胞を提供し、このゲノムは、本発明の抗CD47抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする核酸配列を含む。他の実施形態において、本発明は、非組み込み型の核酸(例えばプラスミド、コスミド、ファージミド又は線形発現要素)を含む細胞を提供し、この核酸は、本発明の抗CD47抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする配列を含む。
【0090】
本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントは、異なる細胞系、例えばヒト細胞系、非ヒト哺乳動物細胞系及び昆虫細胞系、例えばCHO細胞系、HEK細胞系、BHK-21細胞系、マウス細胞系(例えば骨髄腫細胞系)、繊維肉腫細胞系、PER.C6細胞系、HKB-11細胞系、CAP細胞系及びHuH-7ヒト細胞系で産生することができる(Dumontなど,2015,Crit Rev Biotechnol.,Sep.18,1-13.、その内容が引用により本明細書に援用される)。
【0091】
一般的な免疫グロブリンの精製方法により本発明の抗体と培地とを適切に単離し、前記方法は、例えばプロテインA-セファロース、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーである。
【0092】
本発明は、さらに、組成物に関し、前記組成物は、本発明の抗体を含み、それからなり又は基本的にそれからなる。
【0093】
本明細書で使用されるように、組成物について、「基本的に...からなる」ことは、少なくとも1種の前述したような本発明の抗体が前記組成物において生物学的活性を有する唯一の治療剤又は試薬であることを意味する。
【0094】
一実施形態において、本発明の組成物は、医薬組成物であり、且つ、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体をさらに含む。
【0095】
用語「薬学的に許容される担体」とは、動物、好ましくはヒトに投与した際に、不利なもの、アレルギー又は他の不良反応を起こさない賦形剤を指す。それは、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング層、抗菌及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを含む。ヒトに投与する場合、製剤は、監督機関(例えばFDAオフィスやEMA)に要求される無菌、発熱原性、一般的な安全性と純度の基準を満たすべきである。
【0096】
本発明は、さらに、薬剤に関し、前記薬剤は、本発明の抗体を含み、それからなり又は基本的にそれからなる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体のグリコシル化を修飾する。例えば、非グリコシル化の抗体(即ち、抗体がグリコシル化されていない)を製造することができる。グリコシル化を変えることにより、例えば抗原に対する抗体の親和性を高めたり、抗体のADCC活性を変化させたりすることができる。このような炭水化物に対する修飾は、例えば抗体配列内の1つ又は複数のグリコシル化サイトを変えることにより実現されてもよい。例えば、1つ又は複数のアミノ酸置換を行うことにより、1つ又は複数の可変領域フレームワークのグリコシル化サイトを解消し、これにより、このサイトでのグリコシル化を解消することができる。このような非グリコシル化によって、抗原に対する抗体の親和性を向上させることができる。Coなどの米国特許No.5,714,350及びNo.6,350,861(引用により本明細書に援用される)には、このような方法がさらに詳しく記載されている。また、代替として、改変されたグリコシル化のタイプを有する抗体、例えば減少量を有し又はフコシル残基を有しない低フコシル化又は非フコシル化抗体又は付加した二等分GlcNac構造を有する抗体を製造することができる。このような改変されたフコシル化モードにより抗体のADCC能力を向上させることが既に証明された。このような炭水化物に対する修飾は、例えば改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞で抗体を発現させることで実現されてもよい。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、本分野で記載されており、且つ、宿主細胞として使用されてもよく、この宿主細胞で本発明の組換え抗体を発現させることにより、改変されたグリコシル化を有する抗体を産生する。例えば、HangなどのEP1176195(引用により本明細書に援用される)には、機能的に破壊されたFUT8遺伝子を持つ細胞系が記載されており、このFUT8遺伝子はフコシルトランスフェラーゼをコードするので、このような細胞系で発現した抗体は、低フコシル化又はフコシル残基の欠如を示す。このため、いくつかの実施形態において、本発明のヒト抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、低フコシル化又は非フコシル化モードが示された細胞系、例えばフコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子発現が欠如している哺乳動物細胞系で組換え発現を行うことにより産生されてもよい。PrestaのPCT開示WO03/035835(引用により本明細書に援用される)には、変異体CHO細胞系、Lecl3細胞が記載されており、それらは、フコースをAsn(297)が連結した炭水化物に付着させる能力が低下しているので、この宿主細胞で発現した抗体の低フコシル化をもたらす(Shields,R.L.など,2002 J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照されたい)。UmanaなどのPCT開示WO99/54342(引用により本明細書に援用される)には、工学的細胞系により糖タンパク質で修飾されたグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現させることにより、工学的細胞系で発現する抗体は、付加した二等分GlcNac構造を示し、抗体のADCC活性の向上をもたらすことが記載されている(Umanaなど,1999 Nat.Biotech.17:176-180も参照されたい)。Eureka Therapeuticsは、さらに、フコース残基が欠如している改変された哺乳動物グリコシル化モードを有する抗体を産生できる遺伝子工学的CHO哺乳動物細胞を説明した(http://www.eurekainc.com/a&boutus/companyoverview.html)。又は、本発明のヒト抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は、酵母又は糸状菌で産生することができ、前記酵母又は糸状菌は、哺乳動物様グリコシル化モードに用いられ、且つグリコシル化モードとしてフコースが欠如した抗体を産生することができる(例えばEP1297172B1を参照されたい)。
【0098】
本発明の抗体は、ヒトCD47に作用し、ヒト腫瘍細胞表面でのCD47発現を特異的に認識することにより、CD47と受容体SIRPαとの結合により伝達される抑制的なシグナル経路をブロッキングすることができ、マクロファージを介した腫瘍貪食反応を促進することができ、これにより、腫瘍に対する免疫治療に新たな方法を提供する。本発明の抗体は、例えば関節炎、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、拡張型心筋症、シェーグレン症候群、アトピー性及び接触性皮膚炎、多発性筋炎、強皮症、動脈周囲性多発動脈炎、リウマチ熱、白斑、インスリン依存型糖尿病、ベーチェット病及び慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、例えばパーキンソン病、ハンチントン病、マシャド・ジョセフ病、筋萎縮性側索硬化症及びクロイツフェルト・ヤコブ病などの神経変性疾患、及び例えば白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓腺癌、胆嚢癌、肝癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌及び黒色腫などの腫瘍を予防及び/又は治療するために使用されてもよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明は、以下のような技術案に関する。
【0100】
第1発明は、単離された抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体であって、ここで、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み、ここで
軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID No.1、2及び3に示され、及び/又は
重鎖可変領域のHCDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID No.4に示され、重鎖可変領域のHCDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID No.5又は6と少なくとも約94%の同一性を有し、重鎖可変領域のHCDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID No.7又は8と少なくとも約78%の同一性を有し、又は
示される軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID No.1-8に示す配列と少なくとも70%の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、又は
前記軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:1-8に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、
ここで、前記変異体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体から選ばれる1つである。
【0101】
第2発明は、前記抗体の重鎖定常領域配列は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDのいずれかの定常領域配列から選ばれ、及び/又は、前記抗体の軽鎖定常領域配列は、κ鎖又はλ鎖から選ばれる、第1発明に記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体であって、
好ましくは、重鎖定常領域配列は、IgG1又はIgG4の定常領域配列から選ばれ、及び/又は、軽鎖定常領域配列は、軽鎖κ鎖の定常領域配列から選ばれる。
【0102】
第3発明は、CD47キメラ抗体又はその機能的フラグメントの軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.9又は10に示されるものであるか、又は、SEQ ID No.9又は10に示す配列と少なくとも70%の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、SEQ ID NO.9又は10に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、及び/又は、重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.11又は12に示されるものであるか、又は、SEQ ID No.11又は12に示す配列と少なくとも70%の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、SEQ ID NO.11又は12に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、及び/又は
前記CD47キメラ抗体及びその機能的フラグメントの軽鎖定常領域及び重鎖定常領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO.13及びSEQ ID NO.14-16に示されるものであるか、又は、それぞれSEQ ID No.13及びSEQ ID NO.14-16に示す配列と少なくとも70%の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持しているものであるか、又は、それぞれSEQ ID NO.13及びSEQ ID NO.14-16に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であることを特徴とする第1又は第2発明に記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体。
【0103】
第4発明は、前記抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体の軽鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含み、重鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含み、及び/又は、
前記FR-L1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17に示され、
前記FR-L2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり:
第12個のアミノ酸RはTに置換され、
前記FR-L3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり:
第31個のアミノ酸YはFに置換され、
前記FR-L4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20に示され、
前記FR-H1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.21に示され、
前記FR-H2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.22に示され、
前記FR-H3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.23に示され、又は、以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり:
第8個のアミノ酸EはTに置換され、
第11個のアミノ酸SはNに置換され、
第31個のアミノ酸AはVに置換され、及び/又は
前記FR-H4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.24に示される、第1又は第2発明に記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体。
【0104】
第5発明は、軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID No.25-27のいずれか1つに示され、及び/又は、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID No.28-33のいずれか1つに示され、又は、SEQ ID NO.25-27又は28-33に示すアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有し、且つ対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、又は、SEQ ID NO.25-27又は28-33に示す配列に対して1つ又は複数のアミノ酸残基を削除、置換及び/又は添加して得られた、対応する親配列の生物学的活性を保持した変異体配列であり、
好ましくは、軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO.26又は27に示され、及び/又は、重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO.33に示される、第1又は第2発明に記載の前記抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体。
【0105】
第6発明は、前記抗原結合フラグメントは、F(ab’)、Fab’、Fab、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体、ラクダ抗体、CDR及び抗体認識の最小単位(dAb)から選ばれる1種又は複数種であり、好ましくは、前記抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)又はscFvである、第1~第5発明のいずれか1つに記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体。
【0106】
第7発明は、以下から選ばれる単離された核酸分子である。
【0107】
(1)第1~第6発明のいずれか1つに記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体をコードするDNA又はRNA;
(2)(1)で定義された核酸と完全に相補的な核酸。
【0108】
第8発明は、効果的にライゲーションした第7発明に記載の核酸分子を含むベクターであって、好ましくは、前記ベクターは、発現ベクターである。
【0109】
第9発明は、第7発明に記載の核酸分子又は第8発明に記載のベクターを含む宿主細胞である。
【0110】
第10発明は、第1~第6発明のいずれか1つに記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、第7発明に記載の核酸分子、第8発明に記載のベクター又は第9発明に記載の前記宿主細胞、及び薬学的に許容される賦形剤、希釈剤及び/又はベクターを含む組成物である。
【0111】
第11発明は、第1~第6発明のいずれか1つに記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体を生産する方法であって、当該方法は、第9発明に記載の宿主細胞を前記抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体の発現に適した培養条件で培養させ、任意選択的に、得られた産物を単離及び精製するステップを含む。
【0112】
第12発明は、自己免疫疾患、移植体に対する免疫応答、アレルギー反応、感染症、神経変性疾患及び腫瘍を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における、第1~第6発明のいずれか1つに記載の抗ヒトCD47抗体、その抗原結合フラグメント又はその変異体、第7発明に記載の核酸分子、第8発明に記載のベクター又は第9発明に記載の宿主細胞の使用であって、
好ましくは、前記自己免疫疾患は、関節炎、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、クローン病、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、拡張型心筋症、シェーグレン症候群、アトピー性及び接触性皮膚炎、多発性筋炎、強皮症、動脈周囲性多発動脈炎、リウマチ熱、白斑、インスリン依存型糖尿病、ベーチェット病及び慢性甲状腺炎から選ばれる1種又は複数種であり、
好ましくは、前記移植体に対する免疫応答は、移植片対宿主病であり、好ましくは、前記アレルギー反応は、蕁麻疹、湿疹、血管神経性浮腫、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、喉頭浮腫、食物アレルギー胃腸炎、アナフィラキシーショックから選ばれる1種又は複数種であり、
好ましくは、前記感染症とは、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫などの病原体及び特定の毒素が人体に侵入することによる局所的な組織と全身性炎症反応を指し、
好ましくは、前記神経変性疾患は、パーキンソン病、ハンチントン病、マシャド・ジョセフ病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病から選ばれる1種又は複数種であり、
好ましくは、前記腫瘍は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓腺癌、胆嚢癌、肝癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、黒色腫から選ばれる1種又は複数種である。
【0113】
範囲の値が提供される場合、本明細書において特に明記されていない限り、各挿入値、下限までの単位の10分の1、この範囲の上限と下限との間及び任意の前記範囲内の他の前記値又は挿入値は、いずれも本発明の範囲内に含まれることを理解すべきである。特に除外された限界を除き、前記範囲内で特定的に除外された境界を除く限り、独立して小さな範囲に含まれてもよいこれらの小さな範囲の上限及び下限も本発明に含まれる。前記範囲が1つ又は2つの限界を含む場合、1つ又は2つの含まれる境界を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0114】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術又は科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって理解される通常の意義を意味すべきである。本明細書で記載される方法及び材料と類似又は同等の任意のものは、本発明の実施又は試験でも使用することができるが、現在、好ましい方法及び材料が開示されている。本明細書で言及されているすべての出版物は、その全体が引用により本明細書に援用される。
【0115】
一方で、本発明に提供される実施例は、本発明の抗体の製造過程を説明するためのものであり、この製造過程は、関連する方法を説明するためのものに過ぎず、限定的なものではなく、本発明の精神から逸脱することなく本発明に対して様々な修正を行うことができることは、当業者に知られている。このような修正も本発明の範囲内に含まれる。一方で、本発明に提供される実施例は、本発明の抗体の特徴及びメリットを示すためのものであるが、本発明は、これらの特徴及びメリットに限定されない。
【0116】
以下、実施例を併せて本発明の実施形態を詳細に説明するが、当業者にとっては、以下の実施例は本発明を説明するためのものに過ぎなく、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。実施例に具体的な条件が明記されていない場合、通常の条件又は製造メーカにより提案される条件に従って行う。使用される試薬又は機器に製造メーカが明記されていないものは、市販から入手できる通常の製品である。
【0117】
実施例
実施例1 マウス由来抗ヒトCD47モノクローナル抗体の製造
1.1、動物の免疫
実験動物として、北京維通利華実験動物技術社(Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd.)から購入された6~8週齢の雌BALB/cマウスを使用した。マウスを環境に1週間適応させた後、免疫を始めた。初回免疫は、50μgの組換えヒトCD47-Fcタンパク質(株式会社アクロバイオシステムズ(北京)、カタログ番号CD7-H5256)及びフロインド完全アジュバント(Sigma-Aldrich、カタログ番号F5881)を使用し、両者を混合して乳液を形成し、マウスに腹腔内投与した。2週間後、追加免疫を行った。追加免疫は、25μgの組換えヒトCD47-Fcタンパク質及びフロインド不完全アジュバント(Sigma-Aldrich、カタログ番号F5806)を使用し、両者を混合して乳液を形成し、マウスに腹腔内投与した。2週間ごとに同じ方法で追加免疫を行い、合計3回であった。最終免疫を行ってから10日目に、マウスの眼窩静脈叢から採血して遠心により血清を分離し、組換えヒトCD47-Fcタンパク質に対し、ELISAにより抗体価を測定した。抗体価が高いマウスを選択して融合によりハイブリドーマを製造した。融合の3日前に、アジュバントを含まない50μgの組換えヒトCD47-Fcタンパク質を腹腔内投与した。融合の当日に、無菌で脾臓を取り、DMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地、Gibco、カタログ番号11965)に15%のウシ胎児血清(FBS)(Corning、カタログ番号35-076-CV)を加えて単一の脾臓細胞懸濁液を調製し、0.25μMのCpG ODN(InvivoGen、カタログ番号tlrl-1826-1)を加えて24h刺激し、BTX ECM2001電気融合装置(Harvard Apparatus、カタログ番号45-0010)を使用して電気融合を行った。
【0118】
1.2、ハイブリドーマ細胞の製造
対数増殖期にある骨髄腫細胞SP2/0(中国科学院細胞バンクから購入)を採取し、1000rpmで5min遠心し、上澄みを捨てて、不完全DMEM培養液で細胞を懸濁させてからカウントし、必要な数の細胞を取って、0.3Mのマンニトール(Sigma、カタログ番号M8429)、0.1mMの硫酸アンモニウム(Sigma、カタログ番号M7774)、0.1mMの塩化カルシウム(Sigma、カタログ番号C5670)からなるE-fusion緩衝液で2回洗浄し、1000rpmで5min遠心した。同時に、E-fusion緩衝液で脾臓細胞を2回洗浄し、240gで6min遠心した。骨髄腫細胞と脾臓細胞とを一定の割合で混合し、50mLのプラスチック遠心管内においてE-fusion緩衝液で1回洗浄し、240gで6min遠心した。上澄みを捨てて、手のひらで遠心管の底部を軽く叩いて、沈殿細胞をほぐして均一にした。2mLのE-fusion緩衝液/(1-1.5)10E7脾臓細胞でE-fusion緩衝液を加え、10mm間隔をあけた融合セル(Harvard Apparatus、カタログ番号45-0107)ごとに2mLの細胞混合液を加え、パラメータ設定をチェックし、Automatic Startを押せばよい。融合後、滅菌条件下でビペットを用いて細胞懸濁液を融合槽から28mLのHAT培地(DMEM+HAT、Sigma、カタログ番号:H0262-10VL)を含有する50mLの遠心管に慎重に移し、37℃で10min静置し、HAT培地を細胞数(3-5)10E4/ウェルで加えてプレートに撒き、37℃、5%COインキュベータに置いてインキュベートした。5日後にHAT培地で1/2培地と置換した。7~10日後にHT培地(DMEM+HT、Sigma、カタログ番号H0137-10VL)でHAT培地と置換した。ハイブリドーマ細胞の成長状況を定期的に観察し、当該細胞がウェルの底面積の1/10以上になるまで成長すると、上清を吸い出して抗体の検出に供した。陽性クローンの細胞を拡大培養して凍結保存した。
【0119】
1.3、クローンのスクリーニング及び同定
ELISAを使用してハイブリドーマの培養上清での抗ヒトCD47抗体をスクリーニングした。pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート(Coster、カタログ番号42592)に組換えヒトCD47(北京シノバイオロジカル社から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。培養上清サンプル及び陽性血清対照を100μL/ウェルで加え、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:10000にて希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗マウスIgG抗体(Abcam、カタログ番号Ab7068)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。OD450nmの強弱によって、抗ヒトCD47選択的抗体を分泌できる陽性クローンを選択した。
【0120】
ELISAにより、陽性クローンから分泌される抗ヒトCD47選択的抗体がCD47/SIRPαの結合をブロッキングできるか否かを測定した。pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート上に組換えヒトCD47-Fc(株式会社アクロバイオシステムズ(北京)から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。抗ヒトCD47選択的抗体サンプルを50μL/ウェルで添加し、且つ、濃度が4nM(最終濃度は2nM)のビオチンで標識したSIRPα(株式会社アクロバイオシステムズ(北京)から購入)を50μL/ウェルで添加し、25℃で90minインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:1000にて希釈した、Streptavidin-HRP(BD Pharmingen、カタログ番号554066)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。ヒトCD47-Fc/ビオチンで標識したSIRPαの結合を阻害することができる抗ヒトCD47選択的抗体は中和活性を有する。ブロッキング能力の強弱によって抗ヒトCD47中和抗体を分泌できる陽性クローンを選択した。
【0121】
赤血球(RBC)にCD47が高発現している。いくつかの抗CD47抗体は、赤血球の凝集を引き起こすことができる。陽性クローンから分泌される抗ヒトCD47中和抗体が赤血球の凝集を引き起こすか否かを測定した。内部から寄付された抗凝固処理を行った健常人全血にDPBS(Gibco、カタログ番号:14190250)を加えた後、遠心により上清を取り除き、遠心チューブの底にある赤血球を収集し、3回繰り返し洗浄した後、赤血球をDPBSに再懸濁させて2%の赤血球懸濁液とした。この懸濁液を低吸着型96ウェルプレート(Coster、カタログ番号3879)に50μL/ウェルで加え、且つ、段階希釈された抗ヒトCD47抗体サンプル及び陽性対照(クローン番号CC2C6の抗CD47抗体、Biolegend、カタログ番号323102)を50μL/ウェルで加え、均一に混合した。プレートを37℃インキュベータに置いて2hrインキュベートした。その後、観察して撮影した。
【0122】
結果を表5に示し、複数の抗ヒトCD47クローンは強いCD47結合活性及びCD47/SIRPαへのブロッキング活性を有し、その中、CD47-18-5クローンマウス由来モノクローナル抗体のインビトロ活性を図1に示す。赤血球凝集の結果を図2に示し、CD47-5-65、CD47-8-21、CD47-16-5クローンは、ヒト赤血球凝集を引き起こすことができるが、CD47-5-191、CD47-18-5、CD47-18-10クローンは赤血球凝集を引き起こさなかった。
【0123】
【表5】
【0124】
1.4、モノクローナル抗体配列の測定
スクリーニングで得られた、抗原結合活性及び抗原中和活性を同時に有し且つインビトロで赤血球凝集を起こさないクローンに対して抗体DNA配列の測定を行った。まず、RNAprep Pureキット(Tiangen、DP419)を使用して細胞mRNAを抽出した。次いで、SMART 5’RACEキット(Clontech、カタログ番号634849)を使用してハイブリドーマから抽出したトータルRNAを逆転写してヒトCD47 cDNAの第1鎖を合成し、PCR増幅用の可変領域のプライマーVHGSP:GATTACGCCAAGCTTGCCAGTGGATAGACAAGCTTGGGTGTCGTTTT(SEQ ID NO:36)及びVLGSP:GATTACGCCAAGCTTGATGGATCCAGTTGGTGCAGCATCAGC(SEQ ID NO:37)をそれぞれ設計した。PCR増幅により得られた目的バンドをin-fusion方式により線形化されたpRACEベクター(Clontech、カタログ番号:634859)にクローニングし、モノクローナルを選んでDNAシーケンシングを行った。
【0125】
実施例2 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体の製造
CD47-18-5クローンをPCR増幅して得られた抗体の軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:9に示され、抗体の重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:11に示される。マウスの可変領域配列に基づいてフレームワーク領域配列を排除することにより、その相補性決定領域配列を得ることができる。ここで、軽鎖の3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:1、2及び3に示される。重鎖の3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:4、5及び7に示される。CD47-18-5クローンから構築されたキメラCD47モノクローナル抗体は、それぞれmAb-18-5、mAb-18-5 N297Aと命名され、両者の抗体の軽鎖は、いずれもCD47-18-5クローンの軽鎖可変領域(SEQ ID NO:9)と軽鎖定常領域(配列SEQ ID NO:13)とが連結されたものであり、mAb-18-5抗体の重鎖は、重鎖可変領域(SEQ ID NO:11)と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:14)とが連結されたものであり、mAb-18-5 N297A抗体の重鎖は、重鎖可変領域(SEQ ID NO:11)と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:15)とが連結されたものである。CD47-18-10クローンをPCR増幅して得られた抗体の軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:10に示され、抗体の重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:12に示される。マウスの可変領域配列に基づいてフレームワーク領域配列を排除することにより、その相補性決定領域配列を得ることができる。ここで、軽鎖の3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:1、2及び3に示される。重鎖の3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:4、6及び8に示される。CD47-18-10クローンから構築されたキメラCD47モノクローナル抗体は、それぞれmAb-18-10、mAb-18-10 N297Aと命名され、両者の抗体の軽鎖は、いずれもCD47-18-10クローンの軽鎖可変領域(SEQ ID NO:10)と軽鎖定常領域(配列SEQ ID NO:13)とが連結されたものであり、mAb-18-10抗体の重鎖は、重鎖可変領域(SEQ ID NO:12)と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:14)とが連結されたものであり、mAb-18-10 N297A抗体の重鎖は、重鎖可変領域(SEQ ID NO:12)と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:15)とが連結されたものであり、得られたキメラ抗体の軽鎖可変領域、軽鎖定常領域、重鎖可変領域、重鎖定常領域の配列情報を表6に示す。
【0126】
【表6】
【0127】
上記の抗体の軽・重鎖のアミノ酸配列をコードする遺伝子に対して遺伝子合成(蘇州金唯智バイオテクノロジー社)を行うことにより、ヌクレオチド配列を得、さらに真核細胞の発現ベクターX0GCにクローニングし、次いで、発現ベクターをExpiCHO細胞系(ExpiCHOTM、カタログ番号A29133、invitrogen)にトランスフェクションした。トランスフェクションの前日に、細胞を接種し、細胞を新鮮なExpiCHOTM発現培地(ExpiCHOTM Expression Medium、カタログ番号A29100、invitrogen)に35×10細胞/mLの細胞密度で再懸濁させた。トランスフェクションの当日にカウントした細胞密度は、(70-200)×10細胞/mLの範囲内にあり、生存率が95%超えであるべきであった。予熱したExpiCHOTM発現培地で細胞を希釈し、最終密度は60×10細胞/mLとした。トランスフェクション体積に従って、OptiPROTM培地(カタログ番号12309、invitrogen)で、プラスミド及びトランスフェクション試薬ExpiFectamineTM CHO試薬(カタログ番号A29131、invitrogen)をそれぞれ希釈し、プラスミドの最終濃度は0.5μg/mLとした。希釈後のトランスフェクション試薬をプラスミドに穏やかに加え、1~5min静置し、その後、プラスミド-トランスフェクション試薬の複合物を細胞に加え、細胞インキュベータに入れ、シェーカーで125rpm、37℃、8%COにてインキュベートした。トランスフェクションの翌日に、ExpiFectamineTM CHOエンハンサー(カタログ番号A29131、invitrogen)及びExpiCHOTM Feed(カタログ番号A29101-02、invitrogen)を補給し、細胞インキュベータは、シェーカーで125rpm、32℃、5%COの条件とした。遠心により、10日間トランスフェクションした細胞培養の上清を収集した。
【0128】
実施例3 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体とヒトCD47との結合活性及び動力学的定数
pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート上に組換えヒトCD47(北京シノバイオロジカル社から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。抗ヒトCD47抗体サンプル及び対照CC-90002(特許配列WO2016109415に由来する)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:10000にて希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗マウスIgG抗体(Abcam、カタログ番号Ab7068)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。結果を図3に示し、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体mAb-18-5、mAb-18-5 N297A、mAb-18-10、mAb-18-10 N297Aは、良好なヒトCD47結合親和性を有し、対照CC-90002よりも結合活性が強い。
【0129】
Biacore X100機器(GEから購入)により、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体とその抗原ヒトCD47との結合動力学的定数を検出した。この機器は、光学の表面プラズマ共鳴技術によりバイオチップに結合及びコーティングされた分子と被験分子との間の結合及び解離を測定した。使用される主な試薬は、Protein Aチップ(GE Healthcare、29-1275-57)である。実験の過程を簡単に説明すれば下記の通りであり。抗ヒトCD47キメラ抗体をランニング緩衝液(1×HBS-EP+10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%の界面活性剤P20,pH7.4)に希釈した。捕捉及び結合の段階では、濃度が2μg/mLの抗体を10μL/minの速度で60秒間注入した。結合の段階では、抗原CD47をランニング緩衝液で複数の濃度に希釈し、それぞれ30μL/minの速度で120秒間注入した。解離の段階では、ランニング緩衝液を使用して10μL/minの速度で600秒間注入した。再生条件は、10mMのグリシン塩溶液、pH1.5とした。結合動力学的定数及び解離動力学的定数は、Biacore X100評価用ソフトウェアにより分析及び算出した。抗ヒトCD47キメラ抗体の結合動力学的定数、解離動力学的定数及び解離平衡定数を表7に示す。データから、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体がCC-90002の結合解離パラメーターと同等又はそれ以上であることが示された。
【0130】
【表7】
【0131】
実施例4 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体の種特異性及び結合特異性
ELISAにより抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体の種特異性を測定した。pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート上に組換えヒトCD47、サルCD47、ラットCD47及びマウスCD47(いずれも北京シノバイオロジカル社から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で段階希釈した抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体サンプルを100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:10000にて希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗ヒトIgG抗体(Chemicon、カタログ番号AP309P)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0132】
フローサイトメトリーFACSにより抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体の種特異性を確認した。内部から寄付された正常ヒトRBC、カニクイザルRBC、ラットRBC及びマウスRBC細胞を収集した。2%のFBS(Hyclone、カタログ番号SH30084.03)を含む冷たいPBS(GIBCO、カタログ番号14190)で1回洗浄した。RBCを、チューブ毎に2×10個の細胞で2%のFBSを含む100μLの冷たいPBSに再懸濁させ、段階希釈された抗ヒトCD47抗体サンプル及び対照CC-90002、アイソタイプコントロールを100μL加えた。フローサイトメトリー用チューブを氷上で30minインキュベートした。2%のFBSを含むPBSで2回洗浄した。2%のFBS及び1:1000にて希釈した、FITCで標識した抗ヒトIgG抗体(北京中杉金橋、カタログ番号ZF0306)を含む冷たいPBS 200μLに再懸濁させた。氷上で、遮光で30minインキュベートした。2%のFBSを含むPBSで2回洗浄した。500μLの冷たいPBSに再懸濁させた。この細胞懸濁液をフローサイトメトリー(BD、FACS Calibur)で検出分析し、RBC細胞の蛍光強度を読み取った。
【0133】
ELISAにより抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体の結合特異性を測定した。pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート上に組換えヒトPD-1、CD28、CTLA4、ICOS、BTLA、CD47、PD-L2、CD80、CD86、B7-H2、CD47、SIRPα、SIRPγ(いずれもシノバイオロジカル社から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で段階希釈した抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体サンプル及び対照CC-90002、アイソタイプコントロールを100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:10000にて希釈した、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗ヒトIgG抗体(Chemicon、カタログ番号AP309P)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0134】
結果を図4のA及び表8に示し、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体は、ヒトCD47及びサルCD47と結合することができ、且つ親和性が類似したが、ラット、マウスCD47と結合せず、種特異性を示す。同時に、図4のBに示すように、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体はまた、強い結合特異性を有し、CD47のみと結合し、B7ファミリーメンバー、CD28ファミリーメンバー及びSIRPγと結合しない。
【0135】
【表8】
【0136】
実施例5 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体のCD47と受容体との結合へのブロッキング活性
pH=9.6の炭酸塩緩衝溶液を使用して、100μL/ウェルのコーティング量で1μg/mLのコーティング濃度にて、96ウェル高吸着型ELISAプレート上に組換えヒトCD47-Fc(株式会社アクロバイオシステムズ(北京)から購入)をコーティングした。コーティングを4℃で一晩行った。PBST緩衝液で5回洗浄した。1%のBSAを含むPBST緩衝液で300μL/ウェルにてブロッキングし、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。抗ヒトCD47抗体サンプルを50μL/ウェルで添加し、且つ、濃度が4nM(最終濃度は2nM)のビオチンで標識したSIRPα(株式会社アクロバイオシステムズ(北京)から購入)を50μL/ウェルで添加し、25℃で90minインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。次いで、1%のBSAを含むPBST緩衝液で1:1000にて希釈した、ストレプトアビジン-HRP(Streptavidin-HRP)(BD Pharmingen、カタログ番号554066)を100μL/ウェルで添加し、25℃で1hrインキュベートした。PBST緩衝液で5回洗浄した。発色基質TMBを100μL/ウェルで添加し、室温で10min発色させた。1MのHSOを100μL/ウェルで添加することにより、発色を停止させた。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで読み取った。
【0137】
結果を図5に示し、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体は、CC-90002と類似したCD47/SIRPαへのブロッキング活性を有する。
【0138】
実施例6 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体を介した腫瘍細胞に対する貪食活性
成熟ヒトマクロファージの製造:ヒトPBMC細胞(Lonza、カタログ番号CC-2702)を蘇生させて収集した。ヒトPBMC細胞を5×10/mLの細胞密度で無血清RPMI 1640培地(Gibco、カタログ番号11875)に再懸濁させて細胞培養ボトルに接種し、37℃の二酸化炭素インキュベータで90minインキュベートした。培養上清及び懸濁細胞を捨て、接着細胞を完全培地(10%のFBSを含むRPMI 1640)でインキュベートし、且つ、25ng/mLのM-CSF(北京シノバイオロジカル社、カタログ番号11792-HNAN)を加え、7日間インキュベートした。次いで、マクロファージを採取し、25ng/mLのM-CSF及び50ng/mLのIFN-γ(北京シノバイオロジカル社、カタログ番号11725-HNAS)を含む完全培地(10%のFBSを含むRPMI 1640)に再懸濁させた。この細胞懸濁液を48ウェル細胞培養プレートに50000個の細胞/ウェルで接種し、1日間インキュベートしてマクロファージを成熟させ、準備した。
【0139】
CFSEキット(Life technology、カタログ番号C34554)の説明書を参照してRaji腫瘍細胞(北京協和細胞資源センターから購入され、カタログ番号:3111C0001CCC000046)を染色した。簡単に言えば、PBSでCFSEを作用濃度5μMまで希釈し、且つ37℃に予熱し、1000rpmで5min遠心してRaji細胞を収集し、予熱したCFSE作用溶液でRajiを再懸濁させ、37℃で15minインキュベートした。完全培地で1回洗浄し、完全培地に再懸濁させ、30minインキュベートし、さらに完全培地で2回洗浄し、完全培地に再懸濁させて準備した。
【0140】
48ウェルプレートを完全培地で3回洗浄した。CFSE染色後のRaji細胞、被験抗ヒトCD47抗体サンプル、対照CC-90002及びアイソタイプコントロールを15min予めインキュベートし、次いで、48ウェル培養プレートに加え、37℃の二酸化炭素インキュベータで2hrインキュベートした。インキュベート終了後、48ウェルプレートを完全培地で3回洗浄し、完全培地で希釈した小麦胚芽凝集素(wheat germ agglutinin)、alexa fluor 555(Life technologies、カタログ番号W32464)を10μg/mLで加え、遮光で15minインキュベートした。さらに48ウェルプレートを完全培地で3回洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを加えて15min固定した。さらに48ウェルプレートを完全培地で3回洗浄し、完全培地を加えた。蛍光顕微鏡により撮影し、細胞数を計数した。貪食指数(%)の計算方法は、以下の通りである:貪食された緑色で標識されたRaji細胞の数/存在する赤色で標識されたマクロファージの数×100。
【0141】
結果を図6に示し、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体は、マクロファージによるRaji腫瘍細胞への貪食を媒介することができ、CC-90002の活性と同等又はそれ以上である。
【0142】
実施例7 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体の赤血球への影響
赤血球(RBC)にCD47が高発現している。いくつかの抗CD47抗体は、赤血球の凝集を引き起こすことができる。抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体が赤血球の凝集を引き起こすか否かを測定した。内部から寄付された抗凝固処理を行った健常人全血にDPBSを加えて再懸濁させ、次いで、遠心により上清を取り除き、遠心チューブの底にある赤血球を収集し、3回繰り返し洗浄した後、赤血球をDPBSに再懸濁させて2%の赤血球懸濁液とした。この懸濁液を低吸着型96ウェルプレートに50μL/ウェルで加え、且つ、段階希釈された抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体サンプル及び陽性対照(クローン番号CC2C6の抗CD47抗体、Biolegend、カタログ番号323102)を50μL/ウェルで加え、均一に混合した。プレートを37℃インキュベータに置いて2hrインキュベートし、次いで、観察して撮影した。
【0143】
結果を図7に示し、陽性対照だけは、ヒト赤血球凝集を引き起こしたが、mAb-18-5、mAb-18-10は赤血球凝集を引き起こさなかった。
【0144】
実施例8 キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体の抗腫瘍薬力学的研究
本実施例において、キメラ抗ヒトCD47モノクローナル抗体による、NCGマウスに接種したRaji腫瘍移植体の成長に対する阻害作用を検出した。6~8週齢の雌NCGマウス(南京生物医薬研究院から購入)を実験材料として使用した。マウスを環境に1週間適応させた後、マウス1匹につき、5×10個のヒトRajiリンパ腫細胞を接種した。腫瘍体積が約150mmまで達した場合、腫瘍体積によって、マウスを6匹ずつ群分け、それぞれ溶媒対照群、CC-90002対照群、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体mAb-18-5投与群、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体mAb-18-5 N297A投与群に設定した。35nmol/kgの投与用量で週2回、2週連続腹腔内投与した。投与日から腫瘍体積を週に2回測量し、その長径a、短径bを測量した。腫瘍体積の計算式は、腫瘍体積(mm)=(a×b)/2であった。
【0145】
結果を図8に示し、抗ヒトCD47キメラモノクローナル抗体mAb-18-5は、抗腫瘍活性を有し、NCGマウスに接種したRaji移植腫瘍の成長を著しく阻害し、有効性がCC-90002と同等であった。
【0146】
実施例9 ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の製造
ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体は、Leungなど(1995、Molecule Immunol 32:1413-27)に記載された方法に基づいて得られるものである。
【0147】
GermLineデータベースから、マウス由来抗体の可変領域配列と最もマッチングするヒト化テンプレートを選択し、ここで、軽鎖可変領域のテンプレートは、IGKV1-1702であり、配列は、SEQ ID NO:34に示され、重鎖可変領域のテンプレートは、IGHV1-6901であり、配列は、SEQ ID NO:35に示される。マウス由来抗体のCDR領域を、選択したヒト化テンプレートに移植し、ヒトテンプレートのCDR領域と置換して、移植したヒト化抗体の軽鎖可変領域が得られ、配列は、SEQ ID NO:25に示され、移植したヒト化抗体の重鎖可変領域の配列は、SEQ ID NO:28に示される。SEQ ID NO:25及びSEQ ID NO:28からサイトを選択して復帰突然変異を行って、得られた軽鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:26、27に示され、得られた重鎖可変領域配列は、SEQ ID NO:29-33に示される。軽鎖可変領域と軽鎖定常領域(配列SEQ ID NO:13)とを連結して、それぞれ対応する軽鎖全長配列が得られ、重鎖可変領域と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:14)とを連結して、それぞれ対応する重鎖全長配列が得られた。親和性及び安定性のスクリーニングにより使用可能なヒト化配列が得られ、得られたヒト化配列の軽鎖及び重鎖可変領域の配列情報を表9に示す。
【0148】
【表9】
【0149】
実施例10 ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の抗原結合活性
ヒト化CD47モノクローナル抗体は、BH3008b、BH3011bと命名され、ここで、可変領域は、それぞれZ11、Z12に対応しており、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域(配列SEQ ID NO:13)とを連結し、重鎖可変領域と重鎖定常領域(配列SEQ ID NO:16)とを連結した。上記のように、ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の抗原結合活性の検出を行った。結果を図9に示し、ヒト化の抗ヒトCD47モノクローナル抗体BH3008b、BH3011bは、良好なヒトCD47結合親和性を有し、対照CC-90002との結合活性と同等であった。
【0150】
実施例11 ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体のCD47と受容体との結合へのブロッキング活性
上記のように、ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体のCD47と受容体との結合へのブロッキング活性を検出した。
【0151】
結果を図10に示し、ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体BH3008b、BH3011bは、CC-90002と類似したCD47/SIRPαへのブロッキング活性を有する。
【0152】
実施例12 ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体及びヒトCD47の結合動力学的定数
上記のように、Biacore X100機器により、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体とその抗原ヒトCD47との結合動力学的定数を検出した。抗ヒトCD47ヒト化抗体の結合動力学的定数、解離動力学的定数及び解離平衡定数を表10に示す。データによると、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体BH3008b、BH3011b及びCC-90002の結合解離パラメーターが同等であることが示された。
【0153】
【表10】
【0154】
実施例13 ヒト化の抗ヒトCD47モノクローナル抗体の赤血球への影響
上記のように、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体BH3008b、BH3011b及び対照CC-90002が赤血球の凝集を引き起こすか否かを測定した。ここで、陽性対照は、クローン番号CC2C6の抗CD47抗体、Biolegend、カタログ番号323102であった。
【0155】
結果を図11に示し、陽性対照だけはヒト赤血球凝集を引き起こしたが、CC-90002、BH3008b、BH3011bは赤血球凝集を引き起こさなかった。
【0156】
実施例14 サイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)によるヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の純度及びその熱安定性の検出
Waters Xbridge BEH200クロマトグラフィーカラム(カタログ番号:186007640)を使用した。移動相は、0.1mol/LのNaCl緩衝液、pH6.7であり、流速は、0.8mL/minであり、クロマトグラフィーカラム温度は、25℃であり、サンプルセル温度は、4℃であり、検出波長は、280nmであり、サンプル緩衝液DPBSでサンプルを1mg/mLまで希釈し、サンプリング体積は、10μLであった。Agilent高速液体クロマトグラフィー1260システムステーションにより実験結果に対してデータ処理を行い、面積正規化法により純度である主ピークの割合を算出した。上記の製造されたヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体BH3008b、BH3011bに対してSE-HPLC純度の検出を行った。これらのモノクローナル抗体の熱安定性を確定するために、上記のサンプルを40℃の高温条件下に置き、2週目と4週目にそれぞれサンプリングしてSE-HPLC検出を行うことにより、熱安定性を観察し、結果を表11に示す。ヒト化抗ヒトCD47抗体は、いずれも良好且つ同等な安定性を示した。
【0157】
【表11】
【0158】
実施例15 イオン交換クロマトグラフィー(IEX)によるヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の電荷変異体の検出
カチオン交換クロマトグラフィーカラムMabPac SCX-10、4mm×250mm(Thermo、カタログ番号:78655)を使用し、20mmol/Lのモルホリノエタンスルホン酸(2-(N-Morpholino)ethanesulfonic acid、MES)(pH5.6)及び60mmol/Lの塩化ナトリウムを移動相Aとし、10mmol/LのMES(pH5.6)及び300mmol/Lの塩化ナトリウムを移動相Bとし、流速は、0.6mL/minであり、カラム温度は、25℃であり、サンプルセル温度は、4℃であり、検出波長は、280nmであり、サンプル注入量は、40μL(1mg/mL)であった。溶出方式は、10~55%の直線的な勾配で43min運転した。Agilent高速液体クロマトグラフィー1260システムステーションにより実験結果に対してデータ処理を行い、面積正規化法によりピーク面積の百分率を算出した。上記の製造されたヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体BH3008b、BH3011bに対してIEX検出を行った。これらのモノクローナル抗体の化学的安定性を確定するために、上記のサンプルを40℃の高温条件下に置き、2週目と4週目にそれぞれサンプリングしてIEX検出を行うことにより、電荷変異体の割合の変化を観察し、結果を表12に示す。ヒト化抗ヒトCD47抗体の電荷変異体の割合変化はいずれも低い。
【0159】
【表12】
【0160】
実施例16 ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体の抗腫瘍薬力学的研究
本実施例において、ヒト化抗ヒトCD47モノクローナル抗体による、NCGマウスに接種したRaji腫瘍移植体の成長への阻害作用を検出した。6~8週齢の雌NCGマウス(南京生物医薬研究院から購入)を実験材料として使用した。マウスを環境に1週間適応させた後、マウス1匹につき、5×10個のRajiヒトリンパ腫細胞を接種した。腫瘍体積が約150mmまで達した場合、腫瘍体積によって、マウスを6匹ずつ群分けて、それぞれ溶媒対照群、CC-90002対照群、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体BH3008b投与群、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体BH3011b投与群に設定した。17.5nmol/kgの投与用量で週2回、2週連続腹腔内投与した。投与日から腫瘍体積を週に2回測量し、その長径a、短径bを測量した。腫瘍体積の計算式は、腫瘍体積(mm)=(a×b)/2であった。
【0161】
結果を図12に示し、抗ヒトCD47ヒト化モノクローナル抗体BH3008b、BH3011bは、抗腫瘍活性を有し、NCGマウスに接種したRaji移植腫瘍の成長を著しく阻害し、有効性がCC-90002と同等であった。
【0162】
最後に、以上の各実施例は、本発明の技術案を説明するためのものであり、それを限定するものではない。上記の各実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者にとっては、前述した各実施例に記載される技術案を修正したり、その技術的特徴の一部又は全部を同等に置き換えることは依然として可能であり、これらの修正又は置き換えは、対応する技術案の本質を本発明の各実施例に係る技術案の範囲から逸脱させるものではないことを理解すべきである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含む、単離された抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
軽鎖可変領域は、SEQ ID NO.1に示すLCDR1であるアミノ酸配列と、SEQ ID NO.2に示すLCDR2であるアミノ酸配列と、SEQ ID NO.3に示すLCDR3であるアミノ酸配列とを含み、及び/又は
重鎖可変領域は、SEQ ID No.4に示すHCDR1であるアミノ酸配列と、SEQ ID No.5又は6と少なくとも約94%の同一性を有するHCDR2であるアミノ酸配列と、SEQ ID No.7又は8と少なくとも約78%の同一性を有するHCDR3であるアミノ酸配列とを含む、
抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントは、キメラ抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体である、請求項1に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体の重鎖定常領域配列は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、IgDのいずれかの定常領域配列から選ばれ、及び/又は、前記抗体の軽鎖定常領域配列は、κ鎖又はλ鎖から選ばれ、
好ましくは、前記重鎖定常領域配列は、IgG1又はIgG4の定常領域配列から選ばれ、及び/又は、前記軽鎖定常領域配列は、κ鎖の定常領域配列から選ばれる、請求項1又は2に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO.9又は10に示すアミノ酸配列を有し、及び/又は、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO.11又は12に示すアミノ酸配列を有し、及び/又は、軽鎖定常領域及び重鎖定常領域のアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO.13及びSEQ ID NO.14-16のいずれか1つに示される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4を含み、重鎖可変領域フレームワーク領域は、FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4を含み、及び/又は、
前記FR-L1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.17に示され、
前記FR-L2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.18に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第12個のアミノ酸RはTに置換され、
前記FR-L3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.19に示され、又は、さらに以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第31個のアミノ酸YはFに置換され、
前記FR-L4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20に示され、
前記FR-H1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.21に示され、
前記FR-H2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.22に示され、
前記FR-H3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.23に示され、又は、以下の置換のいずれか1つ或いはその任意の組み合わせにより得られたアミノ酸配列であり、
第8個のアミノ酸EはTに置換され、
第11個のアミノ酸SはNに置換され、
第31個のアミノ酸AはVに置換され、及び/又は
前記FR-H4のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.24に示される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
軽鎖可変領域は、SEQ ID No.25-27のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有し、及び/又は
前記重鎖可変領域は、SEQ ID No.28-33のいずれか1つに示すアミノ酸配列を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
軽鎖可変領域は、SEQ ID NO.26又は27に示すアミノ酸配列を有し、及び/又は
重鎖可変領域は、SEQ ID NO.33に示すアミノ酸配列を有する、請求項6に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗原結合フラグメントは、F(ab’)、Fab’、Fab、Fd、Fv、scFv、二重特異性抗体、ラクダ抗体、CDR及び抗体認識の最小単位(dAb)から選ばれる1種又は複数種であり、
好ましくは、前記抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)又はscFvである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
(1)請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントをコードするDNA又はRNA;
(2)(1)で定義された核酸と完全に相補的な核酸;から選ばれる、単離された核酸分子。
【請求項10】
効果的にライゲーションした請求項9に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項9に記載の核酸分子又は請求項10に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項9に記載の核酸分子、請求項10に記載の発現ベクター又は請求項11に記載の宿主細胞、及び1種又は複数種の薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の宿主細胞を、前記抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントの発現に適した培養条件で培養させ、任意選択的に、得られた産物を単離及び精製するステップを含む、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメントを生産する方法。
【請求項14】
CD47を介した疾患又は病症を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の抗ヒトCD47抗体又はその抗原結合フラグメント、請求項9に記載の核酸分子、請求項10に記載の発現ベクター又は請求項11に記載の宿主細胞の使用であって、
前記疾患又は病症は、好ましくは腫瘍であり、より好ましくは、前記腫瘍は、白血病、リンパ腫、骨髄腫、脳腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、非小細胞肺癌、鼻咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓腺癌、胆嚢癌、肝癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、黒色腫から選ばれる1種又は複数種である、使用。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4
【国際調査報告】