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特表2024-503402徐放性薬物送達システム及び関連の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】徐放性薬物送達システム及び関連の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/445 20060101AFI20240118BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K31/445
A61P29/00
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541902
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 US2022012050
(87)【国際公開番号】W WO2022155159
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/136,616
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】508027589
【氏名又は名称】デュレクト コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリティ,エイドリアン,ニール
(72)【発明者】
【氏名】ハラデー,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ヴェリング
(72)【発明者】
【氏名】ランゲッカー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】リッシン,ドミトリ
(72)【発明者】
【氏名】ミクシュタール,アンドリュー,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス,ジュディ
(72)【発明者】
【氏名】アウティオ,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】デイビス,マーク,ピー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA13
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC01
4C076DD37
4C076DD68
4C076FF31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA65
4C086NA12
4C086ZA08
(57)【要約】
本開示は、対象において鎮痛を生じる方法を提供する。一部の例では、方法は、関節鏡下肩峰下除圧手術を受けている対象において鎮痛を生じる。本開示はまた、改善された徐放性薬物送達システムにも関する。一部の例では、組成物は、活性医薬剤;イソ酪酸酢酸スクロースとポリオルトエステルの少なくとも1つ;有機溶媒;及び500ppm未満のレベルで存在する2,6-ジメチルアニリンを含む。一部の例では、組成物は、組成物の重量に対して1重量%未満のレベルでブピバカインN-オキシドを含む。一部の例では、組成物は、5ppm未満のレベルで存在する金属を含む。剤形及び方法も提供される。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節鏡下肩峰下除圧手術を有する対象において鎮痛を生じる方法であって:
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含む5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填すること;
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てること;及び
18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【請求項2】
関節鏡下肩峰下除圧手術を有する対象においてオピオイド消費を低減又は排除する方法であって:
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含む5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填すること;
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てること;及び
18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【請求項3】
ブピバカイン組成物を、吸引前に15℃~30℃の温度で保存することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ブピバカイン組成物が、吸引前に透明なガラスバイアル中に保存される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ブピバカイン組成物が、吸引前に5mL単回投与バイアル中に保存される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ブピバカイン組成物が、吸引前にカートン中にパッケージされたバイアル中に保存される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
10個のバイアルが、10単位カートン中にパッケージされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象において鎮痛を生じる方法であって:
ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含むブピバカイン組成物を15℃~30℃の温度で保存すること;及び
ブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【請求項9】
関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象においてオピオイド消費を低減又は排除する方法であって:
ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含むブピバカイン組成物を15℃~30℃の温度で保存すること;及び
ブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【請求項10】
前記投与の前に、16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填することをさらに含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記投与の前に、16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記投与が、18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与することを含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記保存が、ブピバカイン組成物を透明なガラスバイアル中に保存することを含む、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記保存が、ブピバカイン組成物を5mL単回投与バイアル中に保存することを含む、請求項8~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記保存が、ブピバカイン組成物を、カートン中にパッケージされたバイアル中に保存することを含む、請求項8~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
10個のバイアルが、10単位カートン中にパッケージされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象において鎮痛を生じる方法であって、
ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含むブピバカイン組成物を、ブピバカイン組成物を光から保護するカートン中で保持された透明なガラスバイアル中に保存すること;及び
ブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【請求項18】
関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象においてオピオイド消費を低減又は排除する方法であって:
ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含むブピバカイン組成物を、ブピバカイン組成物を光から保護するカートン中で保持された透明なガラスバイアル中に保存すること;及び
ブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【請求項19】
バイアルが、5mL単回投与バイアルである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
バイアルが、カートン中にパッケージされる、請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
10個のバイアルが、10単位カートン中にパッケージされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ブピバカイン組成物を15℃~30℃の温度で保存することをさらに含む、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填することをさらに含む、請求項17~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記投与が、18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与することを含む、請求項17~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ブピバカイン組成物が:
500ppm未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在する2,6-ジメチルアニリン、
ブピバカイン組成物の重量に対して1重量%未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在する、活性医薬剤のN-オキシド、
5ppm未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在する金属、
ブピバカイン組成物の重量に対して0.5重量%未満のレベルで存在する水,
100mg/mL未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルアセテート、及び
50mg/mL未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルイソブチレート
の少なくとも1つを含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年1月12日に出願された米国仮特許出願第63/136,616号に対する優先権の利益を主張し、この仮特許出願の開示内容は参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般的に、徐放性薬物送達システムに関する。
【背景技術】
【0003】
薬物送達のための生分解性担体は、薬を使い切ったデバイスを除去する必要性がこれらによりなくなるため、有用である。生分解性薬物送達システムの例としては、米国特許第8,846,072号及び第10,213,510号に開示されている、活性医薬剤(例えば、局所麻酔薬)の制御送達のためのシステムなどが挙げられ、これらは参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0004】
しかし、改善された薬物送達システム並びに投与及び保存の方法に対する必要性が残されている。例えば、改善された保存安定性及び使用時の安全性を有する薬物送達システムに対する必要性が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,846,072号
【特許文献2】米国特許第10,213,510号
【発明の概要】
【0006】
本開示は、対象において鎮痛を生じる方法を提供する。一部の例では、方法は、関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを受けている対象において鎮痛を生じる。一部の例では、方法は、関節鏡下肩峰下除圧手術を受けている対象において鎮痛を生じる。
【0007】
本開示は、不純物が低減された改善された薬物送達システムも提供する。本開示は、安定性及び/又は安全性が向上した改善された薬物送達システムを提供する。本発明者らは低量の不純物、例えば2,6-ジメチルアニリン、ブピバカインN-オキシド、水、過酸化物、ベンジルアセテート、ベンジルイソブチレート及び/又は低量の金属を含む徐放性送達システムに対する必要性も残されていると判断した。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に続く本発明の説明において示され、その一部は上記説明から明らかであるか、又は本発明の実施により分かり得るであろう。本発明は、本明細書の書面による説明及び特許請求の範囲において特に指摘される組成物及び方法により実現及び達成されるであろう。
【0009】
以下の付番された態様は、非限定的ではあるが、本開示の特定の態様の例示である:
【0010】
1. 関節鏡下肩峰下除圧手術を有する対象において鎮痛を生じる方法であって:
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含む5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填すること;
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てること;及び
18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【0011】
2. 関節鏡下肩峰下除圧手術を有する対象においてオピオイド消費を低減又は排除する方法であって:
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含む5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填すること;
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てること;及び
18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【0012】
3. 単回投与で5mLのブピバカイン組成物の全部を投与すること、その後、前記単回投与後少なくとも72時間の期間、さらなるブピバカインを投与しないこと及び任意の他の局所麻酔薬を投与しないことを含む、態様1又は2の方法。
【0013】
4. 前記期間が、少なくとも120時間の期間である、態様3の方法。
【0014】
5. 前記期間が、少なくとも168時間の期間である、態様3の方法。
【0015】
6. ブピバカイン組成物を、吸引前に15℃~30℃の温度で保存することをさらに含む、態様1~5のいずれか1つの方法。
【0016】
7. ブピバカイン組成物が、吸引前に透明なガラスバイアル中に保存される、態様1~6のいずれか1つの方法。
【0017】
8. ブピバカイン組成物が、吸引前に5mL単回投与バイアル中に保存される、態様1~7の方法。
【0018】
9. ブピバカイン組成物が、吸引前にカートン中にパッケージされたバイアル中に保存される、態様1~8のいずれか1つの方法。
【0019】
10. カートンが箱中に保存される、態様9の方法。
【0020】
11. カートンが、ブピバカイン組成物を光から保護する、態様9又は10の方法。
【0021】
12. 10個のバイアルが、10単位カートン中にパッケージされる、態様9~11のいずれか1つの方法。
【0022】
13. 関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象において鎮痛を生じる方法であって:
ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含むブピバカイン組成物を15℃~30℃の温度で保存すること;及び
ブピバカイン組成物、任意選択的に1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること、任意選択的に5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【0023】
14. 前記ブピバカイン組成物の投与が、ブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じることである、態様13の方法。
【0024】
15. 前記ブピバカイン組成物の投与が、1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じることである、態様13の方法。
【0025】
16. 前記ブピバカイン組成物の投与が、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じることである、態様13の方法。
【0026】
17. 関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象においてオピオイド消費を低減又は排除する方法であって:
ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含むブピバカイン組成物を15℃~30℃の温度で保存すること;及び
ブピバカイン組成物、任意選択的に1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること、任意選択的に5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【0027】
18. 前記ブピバカイン組成物の投与が、ブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じることである、態様17の方法。
【0028】
19. 前記ブピバカイン組成物の投与が、1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じることである、態様17の方法。
【0029】
20. 前記ブピバカイン組成物の投与が、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じることである、態様17の方法。
【0030】
21. 前記投与の前に、16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填することをさらに含む、態様16又は20の方法。
【0031】
22. 前記投与の前に16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てることをさらに含む、態様21の方法。
【0032】
23. 前記投与が、18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与することを含む、態様16及び20~22のいずれか1つの方法。
【0033】
24. 単回投与のブピバカイン組成物の全体を投与すること、その後、前記単回投与後少なくとも72時間の期間、さらなるブピバカインを投与しないこと及び任意の他の局所麻酔薬を投与しないことを含む、態様13~23のいずれか1つの方法。
【0034】
25. 前記期間が、少なくとも120時間の期間である、態様24の方法。
【0035】
26. 前記期間が、少なくとも168時間の期間である、態様24の方法。
【0036】
27. 前記保存が、ブピバカイン組成物を透明なガラスバイアル中に保存することを含む、態様13~26のいずれか1つの方法。
【0037】
28. 前記保存が、ブピバカイン組成物を5mL単回投与バイアル中に保存することを含む、態様13~27のいずれか1つの方法。
【0038】
29. 前記保存が、ブピバカイン組成物を、カートン中にパッケージされたバイアル中に保存することを含む、態様13~28のいずれか1つの方法。
【0039】
30. カートンが箱中に保存される、態様29の方法。
【0040】
31. カートンが、ブピバカイン組成物を光から保護する、態様29又は30の方法。
【0041】
32. 10個のバイアルが、10単位カートン中にパッケージされる、態様29~31のいずれか1つの方法。
【0042】
33. 関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象において鎮痛を生じる方法であって、
ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含むブピバカイン組成物を、ブピバカイン組成物を光から保護するカートン中で保持された透明なガラスバイアル中に保存すること;及び
ブピバカイン組成物、任意選択的に1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること、任意選択的に5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【0043】
34. 関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象においてオピオイド消費を低減又は排除する方法であって:
ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含むブピバカイン組成物を、ブピバカイン組成物を光から保護するカートン中で保持された透明なガラスバイアル中に保存すること;及び
ブピバカイン組成物、任意選択的に1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること、任意選択的に5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じること
を含む、前記方法。
【0044】
35. バイアルが5mL単回投与バイアルである、態様33又は34の方法。
【0045】
36. バイアルがカートン中にパッケージされる、態様33~35のいずれか1つの方法。
【0046】
37. カートンが箱中に保存される、態様36の方法。
【0047】
38. 10個のバイアルが、10単位カートン中にパッケージされる、態様36又は37の方法。
【0048】
39. ブピバカイン組成物を15℃~30℃の温度で保存することをさらに含む、態様33~38のいずれか1つの方法。
【0049】
40. 前記ブピバカイン組成物の投与が、ブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じることである、態様33~39のいずれか1つの方法。
【0050】
41. 前記ブピバカイン組成物の投与が、1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じることである、態様33~39のいずれか1つの方法。
【0051】
42. 前記ブピバカイン組成物の投与が、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じることである、態様33~39のいずれか1つの方法。
【0052】
43. 16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填することをさらに含む、態様42の方法。
【0053】
44. 16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てることをさらに含む、態様43の方法。
【0054】
45. 前記投与が、18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与することを含む、態様42~44のいずれか1つの方法。
【0055】
46. 方法が、単回投与のブピバカイン組成物の全部を投与すること、その後、前記単回投与後少なくとも72時間の期間、さらなるブピバカインを投与しないこと及び任意の他の局所麻酔薬を投与しないことを含む、態様33~45のいずれか1つの方法。
【0056】
47. 期間が、少なくとも120時間の期間である、態様46の方法。
【0057】
48. 期間が、少なくとも168時間の期間である、態様46の方法。
【0058】
49. 対象が18歳以上である、態様1~48のいずれか1つの方法。
【0059】
50. ブピバカイン遊離塩基又はその塩が、ブピバカイン遊離塩基を含む、態様1~49のいずれか1つの方法。
【0060】
51. ブピバカイン組成物が、125mg/mL~150mg/mLのブピバカイン遊離塩基等価物を含む、態様1~50のいずれか1つの方法。
【0061】
52. ブピバカイン組成物が、132mg/mLのブピバカイン遊離塩基等価物を含む、態様1~51のいずれか1つの方法。
【0062】
53. ブピバカイン組成物が、600mg~700mgのブピバカイン遊離塩基等価物を含む、態様1~52のいずれか1つの方法。
【0063】
54. ブピバカイン組成物が、660mgのブピバカイン遊離塩基等価物を含む、態様1~53のいずれか1つの方法。
【0064】
55. ブピバカイン組成物が無菌である、態様1~54のいずれか1つの方法。
【0065】
56. ブピバカイン組成物が非発熱性である、態様1~55のいずれか1つの方法。
【0066】
57. ブピバカイン組成物が、透明な、淡黄色~琥珀色の溶液である、態様1~56のいずれか1つの方法。
【0067】
58. ブピバカイン組成物の色が、保存時間と共に淡黄色~琥珀色の色範囲内で濃化する、態様1~58のいずれか1つの方法。
【0068】
59. 色範囲が効力の変化と関連していない、態様58の方法。
【0069】
60. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して60重量%~70重量%のレベルで存在するイソ酪酸酢酸スクロースを含む、態様1~59のいずれか1つの方法。
【0070】
61. 組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間保存される場合、イソ酪酸酢酸スクロースが前記レベルで存在する、すなわち、密封された正立した透明なガラスバイアル中で25℃/60%RHで20ヶ月間又は24ヶ月間の保存中に、イソ酪酸酢酸スクロースが、ブピバカイン組成物の重量に対して60重量%~70重量%のレベルのままである、態様60の方法。
【0071】
62. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して約66重量%のレベルで存在するイソ酪酸酢酸スクロースを含む、態様1~61のいずれか1つの方法。
【0072】
63. ブピバカイン組成物が、200ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有するイソ酪酸酢酸スクロースを用いて調製される、態様1~62のいずれか1つの方法。
【0073】
64. ブピバカイン組成物が、500ppm未満のレベルで存在する2,6-ジメチルアニリンを含む、態様1~63のいずれか1つの方法。
【0074】
65. 組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は24ヶ月間保存される場合、2,6-ジメチルアニリンが前記レベルで存在する、態様64の方法。
【0075】
66. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して1重量%未満のレベルで存在するブピバカインN-オキシドを含む、態様1~65のいずれか1つの方法。
【0076】
67. 組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で25℃/60%RHで20ヶ月間又は24ヶ月間保存される場合、ブピバカインN-オキシドが前記レベルで存在する、態様66の方法。
【0077】
68. ブピバカイン組成物が、5ppm未満のレベルで存在する金属を含む、態様1~67のいずれか1つの方法。
【0078】
69. 組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は24ヶ月間保存される場合、金属が前記レベルで存在する、態様68の方法。
【0079】
70. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.5重量%未満のレベルで存在する水を含む、態様1~69のいずれか1つの方法。
【0080】
71. ブピバカイン組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は24ヶ月間保存される場合、水が前記レベルで存在する、態様70の方法。
【0081】
72. ブピバカイン組成物が、100mg/mL未満のレベルで存在するベンジルアセテートを含む、態様1~71のいずれか1つの方法。
【0082】
73. ブピバカイン組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は24ヶ月間保存される場合、ベンジルアセテートが前記レベルで存在する、態様72の方法。
【0083】
74. ブピバカイン組成物が、50mg/mL未満のレベルで存在するベンジルイソブチレートを含む、態様1~73のいずれか1つの方法。
【0084】
75. ブピバカイン組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で25℃/60%RHで20ヶ月間又は24ヶ月間保存される場合、ベンジルイソブチレートが前記レベルで存在する、態様74の方法。
【0085】
76. ブピバカイン組成物が、前記投与の前に20℃~25℃の温度で保存されている、態様1~75のいずれか1つの方法。
【0086】
77. ブピバカイン組成物が未希釈で投与される、態様1~76のいずれか1つの方法。
【0087】
78. ブピバカイン組成物が、任意のさらなる薬物を含まない、態様1~77のいずれか1つの方法。
【0088】
79. ブピバカイン組成物が、任意のさらなる局所麻酔薬を含まない、態様1~77のいずれか1つの方法。
【0089】
80. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン遊離塩基、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールからなる、態様1~79のいずれか1つの方法。
【0090】
81. ブピバカイン組成物の投与前に、肩峰下腔を関節鏡で可視化することを含む、態様1~80のいずれか1つの方法。
【0091】
82. ブピバカイン組成物の投与前に、肩峰下腔における針先の適切な配置を確認することをさらに含む、態様1~81のいずれか1つの方法。
【0092】
83. 針先の適切な配置の確認が、ブピバカイン組成物の投与前の、肩峰下腔における針先の配置を確認するための関節鏡下可視化を含む、態様82の方法。
【0093】
84. 前記投与が、関節鏡下肩手術の終了時に行われる、態様1~83のいずれか1つの方法。
【0094】
85. 前記投与が、関節鏡ポートを通して18ゲージ又はそれより大きい口径の針を対象に挿入して対象の肩峰下腔に到達することを含む、態様1~84のいずれか1つの方法。
【0095】
86. 前記投与が、無傷の皮膚を通して18ゲージ又はそれより大きい口径の針を対象に挿入して対象の肩峰下腔に到達することを含む、態様1~84のいずれか1つの方法。
【0096】
87. 前記投与が、神経毒性又は心毒性の証拠を示す対象を治療するための訓練された人材及び装置を含む施設で行われる、態様1~86のいずれか1つの方法。
【0097】
88. ブピバカインが、投与後168時間以下血漿中で持続する、態様1~87のいずれか1つの方法。
【0098】
89. 2850ng/mL以下の平均ブピバカイン最大血漿濃度(Cmax)を提供する、態様1~88のいずれか1つの方法。
【0099】
90. 200ng/mL~1500ng/mLの平均ブピバカイン最大血漿濃度(Cmax)を提供する、態様1~89のいずれか1つの方法。
【0100】
91. 1000ng/mL~1500ng/mLの平均ブピバカイン最大血漿濃度(Cmax)を提供する、態様1~89のいずれか1つの方法。
【0101】
92. 7000h*ng/mL~55,000h*ng/mLの平均ブピバカインAUC(0-t)を提供する、態様1~91のいずれか1つの方法。
【0102】
93. 20,000h*ng/mL~55,000h*ng/mLの平均ブピバカインAUC(0-t)を提供する、態様1~91のいずれか1つの方法。
【0103】
94. 1時間~24時間の平均ブピバカインTmaxを提供する、態様1~93のいずれか1つの方法。
【0104】
95. 6時間~9時間超の平均ブピバカインTmaxを提供する、態様1~93のいずれか1つの方法。
【0105】
96. 10時間~35時間の平均ブピバカイン半減期を提供する、態様1~95のいずれか1つの方法。
【0106】
97. 16.4時間~26.1時間の平均ブピバカイン半減期を提供する、態様1~95のいずれか1つの方法。
【0107】
98. 17時間~35時間の平均ブピバカイン半減期を提供する、態様1~95のいずれか1つの方法。
【0108】
99. 投与後に、対象からのブピバカイン組成物の漏出がない、態様1~98のいずれか1つの方法。
【0109】
100. 投与後に、ベンジルアルコールが血漿中で12時間以下持続する、態様1~99のいずれか1つの方法。
【0110】
101. 術後鎮痛が、関節鏡下肩峰下除圧後72時間まで持続する、態様1~100のいずれか1つの方法。
【0111】
102. 対象が、肩峰下除圧手術、関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝臓切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを必要とすると同定することをさらに含む、態様1~101のいずれか1つの方法。
【0112】
103. 投与後に、対象の心血管バイタルサインをモニタリングすることをさらに含む、態様1~102のいずれか1つの方法。
【0113】
104. 投与後に、対象の呼吸バイタルサインをモニタリングすることをさらに含む、態様1~103のいずれか1つの方法。
【0114】
105. 投与後に、対象の意識状態をモニタリングすることをさらに含む、態様1~104のいずれか1つの方法。
【0115】
106. 投与後に、中枢神経系反応について対象をモニタリングすることをさらに含む、態様1~105のいずれか1つの方法。
【0116】
107. 投与後に、心血管反応について対象をモニタリングすることをさらに含む、態様1~106のいずれか1つの方法。
【0117】
108. 投与後に、アレルギー反応について対象をモニタリングすることをさらに含む、態様1~107のいずれか1つの方法。
【0118】
109. 投与後に、メトヘモグロビン血症について対象をモニタリングすることをさらに含む、態様1~108のいずれか1つの方法。
【0119】
110. 対象が、メトヘモグロビン血症を発症するリスクを有すると同定されている、態様1~109のいずれか1つの方法。
【0120】
111. 対象が、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏症を有すると診断されている、態様1~110のいずれか1つの方法。
【0121】
112. 対象が、心臓障害又は肺障害を有すると診断されている、態様1~111のいずれか1つの方法。
【0122】
113. メトヘモグロビン血症の1つ以上の症状について対象を観察することをさらに含む、態様1~112のいずれか1つの方法。
【0123】
114. メトヘモグロビン血症の1つ以上の症状が、チアノーゼ性皮膚変色、血液の変色、てんかん発作、昏睡、及び心不整脈の少なくとも1つを含む、態様113の方法。
【0124】
115. ブピバカイン含有製品が、浸潤部において感覚又は運動活性の一時的な喪失を引き起こす可能性があることを対象に通知することをさらに含む、態様1~114のいずれか1つの方法。
【0125】
116. ブピバカイン組成物の添付文書に列挙される有害反応について対象に通知することをさらに含む、態様1~115のいずれか1つの方法。
【0126】
117. 前記投与の前に、対象が妊娠していると同定すること、及び胎児に対する潜在的なリスクについて対象にアドバイスすることをさらに含む、態様1~116のいずれか1つの方法。
【0127】
118. 対象が、任意のアミド局所麻酔薬に対する過敏症の病歴を有していない、態様1~117のいずれか1つの方法。
【0128】
119. 対象が、ブピバカイン遊離塩基又はその塩に対する過敏症の病歴を有していない、態様118の方法。
【0129】
120. 対象が、任意のアミド局所麻酔薬に対するアナフィラキシー反応の病歴を有していない、態様1~119のいずれか1つの方法。
【0130】
121. 対象が、ブピバカイン遊離塩基又はその塩に対するアナフィラキシー反応の病歴を有していない、態様120の方法。
【0131】
122. 対象が、任意のアミド局所麻酔薬に対する重篤な皮膚反応の病歴を有していない、態様1~121のいずれか1つの方法。
【0132】
123. 対象が、ブピバカイン遊離塩基又はその塩に対する重篤な皮膚反応の病歴を有していない、態様122の方法。
【0133】
124. 対象が、イソ酪酸酢酸スクロースに対する過敏症の病歴を有していない、態様1~123のいずれか1つの方法。
【0134】
125. 対象が、イソ酪酸酢酸スクロースに対するアナフィラキシー反応の病歴を有していない、態様1~124のいずれか1つの方法。
【0135】
126. 対象が、イソ酪酸酢酸スクロースに対する重篤な皮膚反応の病歴を有していない、態様1~125のいずれか1つの方法。
【0136】
127. 対象が、ベンジルアルコールに対する過敏症の病歴を有していない、態様1~126のいずれか1つの方法。
【0137】
128. 対象が、ベンジルアルコールに対するアナフィラキシー反応の病歴を有していない、態様1~127のいずれか1つの方法。
【0138】
129. 対象が、ベンジルアルコールに対する重篤な皮膚反応の病歴を有していない、態様1~128のいずれか1つの方法。
【0139】
130. ブピバカイン組成物の投与の72時間以内に投与されるオピオイドの量が、ブピバカイン組成物が投与されていないがそれ以外は同一である対象に投与される平均量又は中央値量未満である、態様1~129のいずれか1つの方法。
【0140】
131. ブピバカイン組成物の投与の72時間以内に投与されるオピオイドの量が、IVモルヒネ等価用量に対して12mg未満である、態様1~129のいずれか1つの方法。
【0141】
132. ブピバカイン組成物の投与の72時間以内に投与されるオピオイドの量が、IVモルヒネ等価用量に対して8mg以下である、態様1~129のいずれか1つの方法。
【0142】
133. ブピバカイン組成物の投与後0時間~72時間に、対象の要求に応じて、さらなる鎮痛剤を、対象における術後疼痛を治療するのに十分な量で投与することをさらに含む、態様1~129のいずれか1つの方法。
【0143】
134. さらなる鎮痛薬がオピオイド鎮痛薬を含む、態様133の方法。
【0144】
135. オピオイド鎮痛薬がモルヒネを含む、態様134の方法。
【0145】
136. 2mgのモルヒネを対象に静脈投与することを含む、態様135の方法。
【0146】
137. 10mgのモルヒネを対象に経口投与することを含む、態様135の方法。
【0147】
138. ブピバカイン組成物の投与の72時間以内に、IVモルヒネ等価用量に基づく量のオピオイドレスキュー鎮痛を投与することをさらに含む、態様129及び133~137のいずれか1つの方法。
【0148】
139. 前記量が、ブピバカイン組成物が投与されていないがそれ以外は同一である対象に投与される平均量未満である、態様138の方法。
【0149】
140. 前記量が12mg未満である、態様138の方法。
【0150】
141. 前記量が8mg以下である、態様138の方法。
【0151】
142. ブピバカイン組成物が粒子状物質を含まない、態様1~141のいずれか1つの方法。
【0152】
143. ブピバカイン組成物をオートクレーブすることを含まない、態様1~142のいずれか1つの方法。
【0153】
144. ブピバカイン組成物を混合することを含まない、態様1~143のいずれか1つの方法。
【0154】
145. ブピバカイン組成物を希釈することを含まない、態様1~144のいずれか1つの方法。
【0155】
146. 産科の傍頸管ブロック麻酔を含まない、態様1~145のいずれか1つの方法。
【0156】
147. ブピバカイン組成物の硬膜外投与を含まない、態様1~146のいずれか1つの方法。
【0157】
148. ブピバカイン組成物の髄腔内投与を含まない、態様1~147のいずれか1つの方法。
【0158】
149. ブピバカイン組成物の血管内投与を含まない、態様1~148のいずれか1つの方法。
【0159】
150. ブピバカイン組成物の関節内投与を含まない、態様1~149のいずれか1つの方法。
【0160】
151. 対象の肩甲上腕関節内腔へのブピバカイン組成物の投与を含まない、態様1~150のいずれか1つの方法。
【0161】
152. ブピバカイン組成物が、肩甲上腕関節内腔を回避するのに十分な方法で、関節鏡下で対象に投与される、態様1~151のいずれか1つの方法。
【0162】
153. 神経ブロックを含まない、態様1~152のいずれか1つの方法。
【0163】
154. 局部的神経ブロックを含まない、態様1~153のいずれか1つの方法。
【0164】
155. 脳幹脊髄性神経遮断を含まない、態様1~154のいずれか1つの方法。
【0165】
156. 末梢神経遮断を含まない、態様1~155のいずれか1つの方法。
【0166】
157. 投与領域における深く且つ完全な感覚ブロックを必要とする切開前又は術前の局所領域麻酔技術を含まない、態様1~156のいずれか1つの方法。
【0167】
158. ブピバカイン組成物が、300ppm未満のレベルで存在する2,6-ジメチルアニリンを含む、態様1~157の方法。
【0168】
159. ブピバカイン組成物が、200ppm未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在する2,6-ジメチルアニリンを含む、態様1~158のいずれか1つの方法。
【0169】
160. ブピバカイン組成物が、100ppm未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在する2,6-ジメチルアニリンを含む、態様1~159のいずれか1つの方法。
【0170】
161. ブピバカイン組成物が、15ppm未満、12ppm未満、10ppm未満、又は5ppm未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在する2,6-ジメチルアニリンを含む、態様1~160のいずれか1つの方法。
【0171】
162. ブピバカイン組成物が、0.2ppm~500ppmのレベルでブピバカイン組成物中に存在する2,6-ジメチルアニリンを含む、態様1~161のいずれか1つの方法。
【0172】
163. ブピバカイン組成物が、0.3ppm~200ppmのレベルでブピバカイン組成物中に存在する2,6-ジメチルアニリンを含む、態様1~162のいずれか1つの方法。
【0173】
164. ブピバカイン組成物が、0.4ppm~100ppmのレベルでブピバカイン組成物中に存在する2,6-ジメチルアニリンを含む、態様1~163のいずれか1つの方法。
【0174】
165. ブピバカイン組成物が、0.5ppm~10ppm又は2ppm~8ppmのレベルでブピバカイン組成物中に存在する2,6-ジメチルアニリンを含む、態様1~164のいずれか1つの方法。
【0175】
166. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.7重量%未満又は0.5重量%未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在するブピバカインN-オキシドを含む、態様1~165のいずれか1つの方法。
【0176】
167. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.4重量%未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在するブピバカインN-オキシドを含む、態様1~166のいずれか1つの方法。
【0177】
168. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.01重量%~1重量%のレベルでブピバカイン組成物中に存在するブピバカインN-オキシドを含む、態様1~167のいずれか1つの方法。
【0178】
169. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.05重量%~0.4重量%又は0.1重量%~0.4重量%のレベルでブピバカイン組成物中に存在するブピバカインN-オキシドを含む、態様1~168のいずれか1つの方法。
【0179】
170. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.1重量%~0.2重量%のレベルでブピバカイン組成物中に存在するブピバカインN-オキシドを含む、態様1~169のいずれか1つの方法。
【0180】
171. ブピバカイン組成物が、4ppm未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在する金属を含む、態様1~170のいずれか1つの方法。
【0181】
172. ブピバカイン組成物が、3ppm未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在する金属を含む、態様1~171のいずれか1つの方法。
【0182】
173. ブピバカイン組成物が、0.01ppm~4ppmのレベルでブピバカイン組成物中に存在する金属を含む、態様1~172のいずれか1つの方法。
【0183】
174. ブピバカイン組成物が、0.05ppm~3ppmのレベルでブピバカイン組成物中に存在する金属を含む、態様1~173のいずれか1つの方法。
【0184】
175. ブピバカイン組成物が、0.1ppm~2ppmのレベルでブピバカイン組成物中に存在する金属を含む、態様1~174のいずれか1つの方法。
【0185】
176. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.4重量%未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在する水を含む、態様1~175のいずれか1つの方法。
【0186】
177. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.3重量%未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在する水を含む、態様1~176のいずれか1つの方法。
【0187】
178. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.03重量%~0.4重量%のレベルでブピバカイン組成物中に存在する水を含む、態様1~177のいずれか1つの方法。
【0188】
179. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.05重量%~0.35重量%のレベルでブピバカイン組成物中に存在する水を含む、態様1~178のいずれか1つの方法。
【0189】
180. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して0.08重量%~0.3重量%のレベルでブピバカイン組成物中に存在する水を含む、態様1~179のいずれか1つの方法。
【0190】
181. ブピバカイン組成物が、50mg/mL未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルアセテートを含む、態様1~180のいずれか1つの方法。
【0191】
182. ブピバカイン組成物が、20mg/mL未満又は15mg/mL未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルアセテートを含む、態様1~181のいずれか1つの方法。
【0192】
183. ブピバカイン組成物が、0.1mg/mL~80mg/mLのレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルアセテートを含む、態様1~182のいずれか1つの方法。
【0193】
184. ブピバカイン組成物が、0.5mg/mL~40mg/mLのレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルアセテートを含む、態様1~183のいずれか1つの方法。
【0194】
185. ブピバカイン組成物が、1mg/mL~20mg/mL又は1mg/mL~15mg/mLのレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルアセテートを含む、態様1~184のいずれか1つの方法。
【0195】
186. ブピバカイン組成物が、30mg/mL未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルイソブチレートを含む、態様1~185のいずれか1つの方法。
【0196】
187. ブピバカイン組成物が、10mg/mL未満又は8mg/mL未満のレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルイソブチレートを含む、態様1~186のいずれか1つの方法。
【0197】
188. ブピバカイン組成物が、0.1mg/mL~40mg/mLのレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルイソブチレートを含む、態様1~187のいずれか1つの方法。
【0198】
189. ブピバカイン組成物が、0.5mg/mL~30mg/mLのレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルイソブチレートを含む、態様1~188のいずれか1つの方法。
【0199】
190. ブピバカイン組成物が、1mg/mL~10mg/mL又は1mg/mL~8mg/mLのレベルでブピバカイン組成物中に存在するベンジルイソブチレートを含む、態様1~189のいずれか1つの方法。
【0200】
191. ブピバカイン組成物が、200ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有するイソ酪酸酢酸スクロースを用いて調製される、態様1~190のいずれか1つの方法。
【0201】
192. ブピバカイン組成物が、100ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有するイソ酪酸酢酸スクロースを用いて調製される、態様1~191のいずれか1つの方法。
【0202】
193. ブピバカイン組成物が、80ppm未満又は60ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有するイソ酪酸酢酸スクロースを用いて調製される、態様1~192のいずれか1つの方法。
【0203】
194. ブピバカイン組成物が、1ppm~100ppmのレベルで存在する過酸化物を有するイソ酪酸酢酸スクロースを用いて調製される、態様1~193のいずれか1つの方法。
【0204】
195. ブピバカイン組成物が、2ppm~80ppmのレベルで存在する過酸化物を有するイソ酪酸酢酸スクロースを用いて調製される、態様1~194のいずれか1つの方法。
【0205】
196. ブピバカイン組成物が、3ppm~60ppmのレベルで存在する過酸化物を有するイソ酪酸酢酸スクロースを用いて調製される、態様1~195のいずれか1つの方法。
【0206】
197. ブピバカイン組成物が、100ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有する有機溶媒を用いて調製される、態様1~196のいずれか1つの方法。
【0207】
198. 有機溶媒がベンジルアルコールを含む、態様197の方法。
【0208】
199. ブピバカイン組成物が、85ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有する有機溶媒を用いて調製される、態様1~198のいずれか1つの方法。
【0209】
200. ブピバカイン組成物が、10ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有する有機溶媒を用いて調製される、態様1~199のいずれか1つの方法。
【0210】
201. ブピバカイン組成物が、1ppm~90ppmのレベルで存在する過酸化物を有する有機溶媒を用いて調製される、態様1~200のいずれか1つの方法。
【0211】
202. ブピバカイン組成物が、2ppm~85ppmのレベルで存在する過酸化物を有する有機溶媒を用いて調製される、態様1~201のいずれか1つの方法。
【0212】
203. ブピバカイン組成物が、3ppm~10ppmのレベルで存在する過酸化物を有する有機溶媒を用いて調製される、態様1~202のいずれか1つの方法。
【0213】
204. ブピバカイン組成物が、200ppm未満のレベルの過酸化物を含む、態様1~203のいずれかの方法。
【0214】
205. ブピバカイン組成物が、100ppm未満のレベルの過酸化物を含む、態様1~204のいずれかの方法。
【0215】
206. ブピバカイン組成物が、50ppm未満のレベルの過酸化物を含む、態様1~205のいずれかの方法。
【0216】
207. ブピバカイン組成物が、少なくとも1ppmのレベルの過酸化物を含む、態様1~206のいずれかの方法。
【0217】
208. ブピバカイン組成物が、少なくとも5ppmのレベルの過酸化物を含む、態様1~207のいずれかの方法。
【0218】
209. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して30重量%~80重量%のレベルで存在するイソ酪酸酢酸スクロースを含む、態様1~208のいずれか1つの方法。
【0219】
210. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して40重量%~70重量%、50重量%~70重量%、61重量%~69重量%のレベルでブピバカイン組成物中に存在するイソ酪酸酢酸スクロースを含む、態様1~209のいずれか1つの方法。
【0220】
211. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して62重量%~68重量%のレベルでブピバカイン組成物中に存在するイソ酪酸酢酸スクロースを含む、態様1~210のいずれか1つの方法。
【0221】
212. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して63重量%~67重量%のレベルでブピバカイン組成物中に存在するイソ酪酸酢酸スクロースを含む、態様1~211のいずれか1つの方法。
【0222】
213. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して1重量%~25重量%の量でブピバカイン組成物中に存在するブピバカイン又はその塩を含む、態様1~212のいずれか1つの方法。
【0223】
214. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して5重量%~20重量%の量でブピバカイン組成物中に存在するブピバカイン又はその塩を含む、態様1~213のいずれか1つの方法。
【0224】
215. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して10重量%~15重量%の量でブピバカイン組成物中に存在するブピバカイン又はその塩を含む、態様1~214のいずれか1つの方法。
【0225】
216. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して約12重量%の量でブピバカイン組成物中に存在するブピバカイン又はその塩を含む、態様1~215のいずれか1つの方法。
【0226】
217. ブピバカイン組成物が、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、ジメチルスルホキシド、エタノール、N-メチルピロリドン、及びトリアセチンから選択される少なくとも1つのメンバーを含む有機溶媒を含む、態様1~216のいずれか1つの方法。
【0227】
218. ブピバカイン組成物がベンジルアルコールを含む、態様1~217のいずれか1つの方法。
【0228】
219. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン又はその塩をブピバカイン組成物中で溶解させるのに十分な量でブピバカイン組成物中に存在する有機溶媒を含むか、又は、有機溶媒が、ブピバカイン組成物の重量に対して少なくとも5重量%の量でブピバカイン組成物中に存在する、態様1~218のいずれか1つの方法。
【0229】
220. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して少なくとも10重量%の量でブピバカイン組成物中に存在する有機溶媒を含む、態様1~219のいずれか1つの方法。
【0230】
221. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して少なくとも15重量%の量でブピバカイン組成物中に存在する有機溶媒を含む、態様1~220のいずれか1つの方法。
【0231】
222. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して少なくとも20重量%の量でブピバカイン組成物中に存在する有機溶媒を含む、態様1~221のいずれか1つの方法。
【0232】
223. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して5重量%~45重量%の量でブピバカイン組成物中に存在する有機溶媒を含む、態様1~222のいずれか1つの方法。
【0233】
224. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して10重量%~35重量%の量でブピバカイン組成物中に存在する有機溶媒を含む、態様1~223のいずれか1つの方法。
【0234】
225. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して15重量%~30重量%の量でブピバカイン組成物中に存在する有機溶媒を含む、態様1~224のいずれか1つの方法。
【0235】
226. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して20重量%~25重量%の量でブピバカイン組成物中に存在する有機溶媒を含む、態様1~225のいずれか1つの方法。
【0236】
227. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して約22重量%の量でブピバカイン組成物中に存在する有機溶媒を含む、態様1~226のいずれか1つの方法。
【0237】
228. 有機溶媒がベンジルアルコールである、態様219~227のいずれか1つの方法。
【0238】
229. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して約22重量%の量でブピバカイン組成物中に存在するベンジルアルコールを含む、態様1~228のいずれか1つの方法。
【0239】
230. ブピバカイン組成物が、イソ酪酸酢酸スクロースを含む、態様1~229のいずれか1つの方法。
【0240】
231. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物からの活性医薬剤の徐放(例えば約72時間の徐放)を提供するのに十分な量でブピバカイン組成物中に存在する高粘度液体担体材料(HVLCM)を含むか、又はブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して50重量%~80重量%の量でブピバカイン組成物中に存在するHVLCMを含む、態様1~230のいずれか1つの方法。
【0241】
232. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して55重量%~75重量%の量でブピバカイン組成物中に存在するHVLCMを含む、態様1~231のいずれか1つの方法。
【0242】
233. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して60重量%~70重量%の量でブピバカイン組成物中に存在するHVLCMを含む、態様1~232のいずれか1つの方法。
【0243】
234. ブピバカイン組成物が、ブピバカイン組成物の重量に対して約66重量%の量でブピバカイン組成物中に存在するHVLCMを含む、態様1~233のいずれか1つの方法。
【0244】
235. 態様1~234のいずれか1つの方法であって、
第1の不活性材料を含む容器と、
前記容器を閉鎖することができるクロージャーであって、第2の不活性材料を含むクロージャーと、
を含む投与システム中にブピバカイン組成物を保存することをさらに含む、前記方法。
【0245】
236. 投与システムがシリコーンオイルを含まない、態様235の方法。
【0246】
237. 第2の不活性材料がフルオロカーボンを含む、態様235及び236のいずれか1つの方法。
【0247】
238. 第2の不活性材料がテトラフルオロエチレンを含む、態様235~237のいずれか1つの方法。
【0248】
239. 第2の不活性材料がフッ素化ポリマーを含む、態様235~38のいずれか1つの方法。
【0249】
240. クロージャーが、フルオロカーボンコーティングされたストッパーを含む、態様235~239のいずれか1つの方法。
【0250】
241. 第1の不活性材料がガラスを含む、態様235~240のいずれか1つの方法。
【0251】
242. ガラスが透明なガラスを含む、態様241の方法。
【0252】
243. ガラスが可視光に対して透過性である、態様241及び242のいずれか1つの方法。
【0253】
244. ガラスが、400nm~600nmの光の波長に対して1以下の光学密度を有する、態様241~243のいずれか1つの方法。
【0254】
245. ガラスが、100nm~250nmの光の波長に対して1超の光学密度を有する、態様241~244のいずれか1つの方法。
【0255】
246. ガラスが鉄を含有しない、態様241~245のいずれか1つの方法。
【0256】
247. ガラスが、鉄を含有しないホウケイ酸ガラスを含む、態様241~246のいずれか1つの方法。
【0257】
248. ガラスが、鉄を含有しないパイレックス(登録商標)ガラスを含む、態様241~247のいずれか1つの方法。
【0258】
249. 容器がバイアルを含む、態様235~248のいずれか1つの方法。
【0259】
250. 態様1~249のいずれか1つの方法であって、
第1の容器と、
第1の容器中の第2の容器であって、第1の不活性材料を含み、第1の容器が、周囲可視光が第2の容器上へ照射されることを低減し、ブピバカイン組成物が第2の容器中に含有されている、第2の容器と、
を含む投与システム中にブピバカイン組成物を保存することをさらに含む、前記方法。
【0260】
251. 第1の容器が箱又はカートンを含む、態様250の方法。
【0261】
252. 第1の容器が、1単位~25単位の箱又はカートンである、態様251の方法。
【0262】
253. 第1の容器が10単位の箱又はカートンである、態様252の方法。
【0263】
254. 第2の容器のうちの10個が第1の容器中にある、態様251~253のいずれか1つの方法。
【0264】
255. 第1の容器が第2の箱中にある、態様251~254のいずれか1つの方法。
【0265】
256. 第1の容器がポリマーを含む、態様250~255のいずれか1つの方法。
【0266】
257. 第1の容器が熱可塑性物質を含む、態様250~256のいずれか1つの方法。
【0267】
258. 第1の容器がセルロースを含む、態様250~257のいずれか1つの方法。
【0268】
259. 第1の容器がクレイ(clay)を含む、態様250~258のいずれか1つの方法。
【0269】
260. 第1の容器が、少なくとも0.5mm又は0.4mm~3mm、例えば0.5mm~2.5mm、0.5mm~1mm、0.6mm~0.9mm、又は0.7mm~0.8mmの厚さを有する材料を含む、態様250~259のいずれか1つの方法。
【0270】
261. 組成物が入れられた容器中に入れられたガスであって、10mol%未満又は10重量%未満の酸素含有量を有するガスをさらに含む、態様235~260のいずれか1つの方法。
【0271】
262. ガスが、1mol%~10mol%又は1重量%~10重量%の酸素含有量を有する、態様261の方法。
【0272】
263. ガスが、組成物が入れられた容器中のヘッドスペースを満たす、態様262の方法。
【0273】
264. 組成物が入れられた容器が、光透過を低減する層を含む、態様235~263のいずれか1つの方法。
【0274】
265. 態様1~264のいずれか1つに定義される方法において使用するためのブピバカイン組成物。
【0275】
266. ブピバカイン組成物が、態様1~264のいずれか1つに定義される、態様265の使用のためのブピバカイン組成物。
【0276】
267. 態様1~264のいずれか1つに定義される方法において使用するための医薬の製造におけるブピバカイン組成物の使用。
【0277】
268. ブピバカイン組成物が、態様1~264のいずれか1つに定義される、態様267の使用。
【0278】
269. キットであって、
ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含むブピバカイン組成物と、
関節鏡下肩峰下除圧手術を有する対象において、ブピバカイン組成物を投与して鎮痛を生じるための指示を有する添付文書であって、以下のもの:
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填することの指示;
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てることの指示;及び
18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与し、術後鎮痛を生じることの指示
を含む前記添付文書と、
を含む前記キット。
【0279】
270. キットであって、
ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含む、ブピバカイン組成物と、
関節鏡下肩峰下除圧手術を有する対象において、ブピバカイン組成物を投与してオピオイド消費を低減又は排除することの指示を有する添付文書であって、以下のもの:
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填することの指示;
16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てることの指示;及び
18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じることの指示
を含む、前記添付文書と、
を含む前記キット。
【0280】
271. 添付文書が、単回投与で5mLのブピバカイン組成物の全部を投与すること、その後、前記単回投与後少なくとも72時間の期間、さらなるブピバカインを投与しないこと及び任意の他の局所麻酔薬を投与しないことの指示をさらに含む、態様270のキット。
【0281】
272. 期間が、少なくとも120時間の期間である、態様271のキット。
【0282】
273. 期間が、少なくとも168時間の期間である、態様271のキット。
【0283】
274. 関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象において鎮痛を生じる方法であって:
ブピバカイン組成物、任意選択的に1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること、任意選択的に5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じることを含み、
ここで前記ブピバカイン組成物は15℃~30℃の温度で保存されており;
前記ブピバカイン組成物は、ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含む、
前記方法。
【0284】
275. 関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象においてオピオイド消費を低減又は排除する方法であって:
ブピバカイン組成物、任意選択的に1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること、任意選択的に5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じることを含み、
ここで前記ブピバカイン組成物は15℃~30℃の温度で保存されており;
前記ブピバカイン組成物が、ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含む、
前記方法。
【0285】
276. 関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象において鎮痛を生じる方法であって:
ブピバカイン組成物、任意選択的に1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること、任意選択的に5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じることを含み、
ここで前記ブピバカイン組成物は、ブピバカイン組成物を光から保護するカートン中で保持された透明なガラスバイアル中に保存されており;
前記ブピバカイン組成物が、ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含む、
前記方法。
【0286】
277. 関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを有する対象においてオピオイド消費を低減又は排除する方法であって:
ブピバカイン組成物、任意選択的に1mL~20mLのブピバカイン組成物を対象に投与して術後鎮痛を生じること、任意選択的に5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与して術後鎮痛を生じることを含み、
ここで前記ブピバカイン組成物は、ブピバカイン組成物を光から保護するカートン中で保持された透明なガラスバイアル中に保存されており;
前記ブピバカイン組成物が、ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含む、
前記方法。
【0287】
278. 添付文書が、態様1~264及び274~277のいずれか1つの方法、又は態様267又は268の使用を実施するための指示を含む、態様269~273のいずれか1つのキット。
【図面の簡単な説明】
【0288】
図1図1は、治療意図(ITT)集団の経時的な運動時疼痛強度(PI)を示す。
図2図2は、製剤A又は標準ブピバカインの投与後のブピバカイン濃度に従う幾何平均合計及び遊離ブピバカイン血漿濃度を示す。
図3図3は、製剤Aについての遊離ブピバカイン対総ブピバカインの個々の血漿濃度全ての相関関係を示す。
図4図4は、治療群及び治験実施施設を因子とし且つ年齢を共変量としたANCOVAを用いて、疼痛強度正規化AUCを治療群間で比較したことを示す。
図5A図5Aは、投与後の複数の時点の、プラセボを投与された被験者と比較した、製剤Aを投与された修正治療意図(MITT)セットにおける被験者による運動時平均疼痛強度を示す。
図5B図5Bは、投与後の複数の時点の、プラセボを投与された被験者と比較した、製剤Aを投与されたパー・プロトコル(PP)セットにおける被験者による運動時平均疼痛強度を表す。
図6図6は、治療群及び治験実施施設を因子とし且つ年齢を共変量としたANCOVAを用いて治療群間で比較した累積モルヒネ等価用量を示す。
図7図7は、投与後の複数の時点の、プラセボを投与された被験者と比較した、製剤Aを投与されたMITTセットにおける累積モルヒネ等価用量を表す。
図8図8は、コホート1及びコホート2について別々に分析された経時平均PI運動を示す。
図9図9は、肩甲上腕の病態が最小限であったか又は有していなかった被験者のサブグループにおける経時的なPI運動を示す。
図10図10は、製剤A 5mLが、プラセボと比較して、72時間にわたって0~10のNRSスケールで1.3ポイントの平均疼痛強度の有意な低下を実証したことを示す。
図11図11は、製剤A治療群とビヒクルプラセボ治療群との間で、いずれの主要評価項目においても統計的に有意な差がなかったことを示す。
図12図12は、製剤A治療群とビヒクルプラセボ治療群との間で、いずれの主要評価項目においても統計的に有意な差がなかったことを示す。
図13図13は、製剤Aサンプルの水分含有量及び着色を示す。
図14図14は、SAIB過酸化物含有量データ対ブピバカインN-オキシドレベルにフィッティングした線形回帰直線を示す。
図15図15は、36ヶ月間にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットのラベル強度を示す。
図16図16は、36ヶ月間にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットにおけるブピバカインN-オキシドの変化(%ブピバカインN-オキシドで測定)を示す。
図17図17は、18ヶ月間(18ヶ月目~36ヶ月目)にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットにおける、2,6-ジメチルアニリンの存在(ppmで測定)を示す。
図18図18は、3つの異なる温度(25℃、30℃及び40℃)並びに2つの異なる相対湿度(60%RH、75%RH)で6ヶ月間保存された製剤Aのサンプルにおける2,6-ジメチルアニリンの存在を示す。
図19図19は、36ヶ月間にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットにおけるベンジルアセテート(mg/mLで測定)の存在を示す。
図20図20は、3つの異なる温度(25℃、30℃及び40℃)並びに2つの異なる相対湿度(60%RH、75%RH)で6ヶ月間保存された製剤Aのサンプルにおけるベンジルアセテートの存在を示す。
図21図21は、36ヶ月間にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットにおけるベンジルイソブチレート(mg/mLで測定)の存在を示す。
図22図22は、3つの異なる温度(25℃、30℃及び40℃)並びに2つの異なる相対湿度(60%RH、75%RH)で6ヶ月間保存された製剤Aのサンプルにおけるベンジルイソブチレートの存在を示す。
図23図23は、36ヶ月間にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットにおけるパーセントSAIBの変化を示す。
図24図24は、対照製剤(N=4)、-30%SAIB製剤(N=3)、-40%SAIB製剤(N=3)、-50%SAIB製剤(N=4)、-70%SAIB製剤(N=3)、及び-90%SAIB製剤(N=3)の平均累積放出を示す。
図25図25は、対照製剤(N=12)、+20%SAIB製剤(N=12)、-20%SAIB製剤(N=12)、及び-70%SAIB製剤(N=12)の平均累積放出を示す。
図26図26は、対照製剤(N=12)及び熱ストレスSAIB製剤(N=12)の平均累積放出を示す。
図27図27は、各コホートについての、疼痛評価の予定時刻に対する運動時平均疼痛強度±標準誤差(SEM)の折れ線グラフを示す。
図28図28は、各コホートについての、疼痛評価の予定時刻に対する運動時平均疼痛強度±標準誤差(SEM)の折れ線グラフを示す。
図29図29は、各コホートについての、疼痛評価の予定時刻に対する運動時平均疼痛強度±標準誤差(SEM)の折れ線グラフを示す。
図30図30は、血漿ブピバカイン濃度対治療後時間のグラフを示す。
図31図31は、血漿ブピバカイン濃度対治療後時間のグラフを示す。
図32図32は、血漿ブピバカイン濃度対治療後時間のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0289】
本発明を詳細に説明する前に、具体的に例示される担体材料又はプロセスパラメータが当然のことながら変動し得るため、この発明は、そのような担体材料又はプロセスパラメータに限定されるものではないことを理解されたい。また、本明細書中で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0290】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、前掲又は後掲のいずれであっても、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0291】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「溶媒」は、2種以上のかかる担体の混合物を含み、「麻酔薬」への言及は、2種以上のかかる薬剤の混合物などを含む。
【0292】
本明細書で使用される、あるレベルで「存在する」とは、所与の成分、例えば2,6-ジメチルアニリンが、ゼロより大きいレベルで存在することを意味する。
【0293】
上記にまとめられるように、本開示の態様は、対象において鎮痛を生じるための方法を含む。一部の例では、方法は、関節鏡下肩峰下除圧手術、腹腔鏡下手術、関節鏡下手術、生検手術、骨手術、整形外科手術、胸部手術、軟組織手術、胆嚢摘出手術、結腸直腸手術、結腸切除手術、子宮摘出手術、卵巣摘出術、腫瘍摘出手術、虫垂切除手術、腱膜瘤切除手術、痔核切除手術、帝王切開手術、人工膝関節全置換手術、腹部形成手術、神経ブロック、ヘルニア縫合手術、ヘルニア手術、鼠径ヘルニア修復手術、肝切除手術、小腸切除手術、胃切除手術、脾臓切除手術、胆嚢切除手術、及び結腸切除手術の少なくとも1つを受けている対象において鎮痛を生じることを含む。一部の例では、方法は、関節鏡下肩峰下除圧手術を受けている対象において鎮痛を生じることを含む。特定の場合、方法は、関節鏡下肩峰下除圧手術を含む肩手術を受けている対象において術後鎮痛を生じることを提供する。特定の場合、方法は、手術後72時間まで持続する、例えば、関節鏡下肩峰下除圧の72時間後まで持続する、術後鎮痛を提供する。
【0294】
本明細書で使用される用語「対象」は、局所麻酔状態を提供することが望ましい任意の脊椎動物を指す。従って、この用語は、本開示の組成物で治療されるべき任意の動物、例えば鳥類、魚類及びヒトを含む哺乳動物を広く指す。特定の例において、本開示の方法は、長期局所麻酔状態が好都合であるか又は望ましい場合はいつでも、獣医学的実施及び畜産、例えば、鳥類及び哺乳動物において持続的な麻酔を提供するのに適している。特定の場合、組成物は、イヌ又はネコなどのペットに使用するために特に好適であり、さらに、ウマに使用することもできる。好ましい例において、用語「対象」は、ヒト対象を意図する。さらに、「対象」という用語は、特定の年齢を意味するものではなく、従って本組成物は、乳幼児、青少年、成人及び高齢の対象などの任意の年齢の対象での使用に適している。一部の例では、対象は18歳以上である。一部の例では、対象は肩峰下除圧手術を必要とし、方法は、対象が肩峰下除圧手術を必要とすると同定することをさらに含み得る。
【0295】
一部の例では、投与は、無針投与を含む。例えば、投与は、注入を含み得る。一部の例では、投与は、シリンジによる投与、任意選択的にはカテーテルによる投与を含む。一部の例では、カテーテルは、1インチ~1.5インチの長さを有する14ゲージカテーテルである。
【0296】
一部の例では、投与は、1本以上の針による投与を含む。一部の例では、方法は、所定量の活性剤組成物を、第1のボアサイズを有する第1の針に接続されたシリンジに吸引すること、及び上記活性剤組成物を、第2のボアサイズを有する第2の針に接続されたシリンジで対象に投与することを含む。特定の場合、方法は、第1の針で活性剤組成物をシリンジに吸引した後、第1の針を捨て、第2の針をシリンジに取り付けることを含む。特定の場合、方法は、第1の針で活性剤組成物をシリンジに吸引した後、第1の針を捨てて、第2の針とシリンジを接続することを含む。一部の例では、シリンジに接続された第1の針のボアサイズは、第2の針のボアサイズより大きい。例えば、第1の針のボアサイズは、第2の針のボアサイズより5%以上大きく、10%以上大きく、15%以上大きく、20%以上大きく、30%以上大きく、40%以上大きく、50%以上大きく、60%以上大きく、70%以上大きく、80%以上大きく、90%以上大きく、95以上大きく、99%以上大きくてもよく、例えば、1.5倍以上大きく、2倍以上大きく、2.5以上大きく、3倍以上大きく、3.5倍以上大きく、4倍以上大きく、4.5倍以上大きい場合を含み、また第1の針のボアサイズが第2の針のボアサイズより5倍以上大きい場合を含む。特定の場合、第1の針のボアサイズは、16ゲージ又はそれより大きく、例えば15ゲージ又はそれより大きく、例えば14ゲージ又はそれより大きく、例えば13ゲージ又はそれより大きく、12ゲージ又はそれより大きいサイズを含み、16ゲージ~12ゲージ、例えば、16ゲージ~13ゲージ又は15ゲージ~14ゲージであり得、第2の針のボアサイズは、18ゲージ又はそれより大きく、例えば17ゲージ又はそれより大きく、例えば16ゲージ又はそれより大きく、例えば15ゲージ又はそれより大きく、例えば14ゲージ又はそれより大きく、例えば13ゲージ又はそれより大きく、12ゲージ又はそれより大きいサイズを含み、18ゲージ~12ゲージ、例えば17ゲージ~13ゲージ又は15ゲージ~14ゲージであり得る。特定の場合、第1の針の長さは、第2の針の長さより短い。例えば、第1の針の長さは、第2の針の長さより5%以上短く、10%以上短く、15%以上短く、20%以上短く、30%以上短く、40%以上短く、50%以上短く、60%以上短く、70%以上短く、80%以上短く、90%以上短く、95%以上短く、99%以上短くてもよく、例えば、1.5倍以上短く、2倍以上短く、2.5以上短く、3倍以上短く、3.5倍以上短く、4倍以上短く、4.5倍以上短い場合を含み、第1の針の長さが第2の針の長さより5倍以上短い場合を含む。特定の場合、第1の針の長さは、0.5インチ~2インチ、例えば0.6インチ~1.9インチ、例えば0.7インチ~1.8インチ、例えば0.8インチ~1.7インチ、例えば0.9インチ~1.6インチであり、第1の針の長さが1インチ~1.5インチである場合を含む。特定の場合、第1の針の長さは、1.5インチ長である。一部の例では、第2の針の長さは、2インチ~4インチ、例えば2.1インチ~3.9インチ、例えば2.2インチ~3.8インチ、例えば2.3インチ~3.7インチ、例えば2.4インチ~3.6インチであり、2.5インチ~3.5インチを含む。特定の例では、第2の針の長さは3.0インチ長である。特定の場合、方法は、1.5インチの長さを有する針で活性剤組成物(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物)を吸引すること、及び3インチの長さを有する針で上記組成物を対象に投与することを含む。特定の場合、方法は、16ゲージ、1.5インチ針で活性剤組成物を吸引すること、及び18ゲージ、3インチ針で組成物を対象に投与することを含む。
【0297】
主題の方法の実施において、対象に送達される活性剤の所望の量に応じて、ある量の活性剤がシリンジに吸引され、ここで一部の例では、第1の針でシリンジに吸引される量は、0.1mL以上、例えば0.5mL以上、例えば1mL以上、例えば2mL以上、例えば3mL以上、例えば4mL以上、例えば5mL以上、例えば6mL以上、例えば7mL以上、例えば8mL以上、例えば9mL以上であり、10mL以上を含み、1mL~20mL、例えば2mL~10mL又は4mL~6mLであり得る。活性剤組成物(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物)の量に応じて、使用されるシリンジのサイズは、1mLシリンジ以上、例えば2mLシリンジ、例えば3mLシリンジ、例えば4mLシリンジ、例えば5mLシリンジ、例えば6mLシリンジ、例えば7mLシリンジ、例えば8mLシリンジ、例えば9mLシリンジであり得、10mL以上のシリンジを使用することを含み、1mLシリンジ~10mLシリンジ、例えば2mLシリンジ~8mLシリンジ又は4mLシリンジ~6mLシリンジであり得る。
【0298】
一部の例では、方法は、16ゲージ又はそれより大きい口径の針を用いて活性剤組成物をシリンジに吸引し、18ゲージ又はそれより大きい口径の針を用いて活性剤組成物を対象に投与することを含む。特定の場合、組成物は、ブピバカイン組成物(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含む)であり、方法は、16ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、ブピバカイン遊離塩基又はその塩を含み、任意選択的にイソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールをさらに含む5mLのブピバカイン組成物を5mLシリンジに吸引し、シリンジを充填すること;16ゲージ又はそれより大きい口径の針を捨てること;及び18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、5mLのブピバカイン組成物を対象の肩峰下腔内に投与し、術後鎮痛を生じることを含む。
【0299】
一部の例では、方法は、活性剤組成物(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物)を肩峰下腔内に投与することを含む。一部の例では、投与は、関節鏡下肩手術の終了時に行われる。一部の例では、主題の方法は、ブピバカイン組成物の硬膜外投与を含まない。一部の例では、主題の方法は、ブピバカイン組成物の血管内投与を含まない。一部の例では、主題の方法は、ブピバカイン組成物の関節内投与を含まない。特定の場合、主題の方法は、対象の肩甲上腕関節内腔へのブピバカイン組成物の投与を含まない。
【0300】
一部の例では、方法は、ブピバカイン組成物の投与前に、肩峰下腔を関節鏡で可視化することを含む。いくつかの例では、方法は、ブピバカイン組成物の投与前に、肩峰下腔における針先の適切な配置を確認することを含む。一部の例では、針先の適切な配置の確認は、ブピバカイン組成物の投与前に、関節鏡的に可視化して肩峰下腔における針先の配置を確認することを含む。例えば、一部の例では、ブピバカイン組成物は、肩甲上腕関節内腔を回避するのに十分な方法で、関節鏡下で対象に投与される。
【0301】
一部の例では、投与は、関節鏡下肩手術の終了時に行われる。一部の例では、組成物は、関節鏡下肩手術の終了時に肩峰下腔内に投与される。一例では、組成物は、単回注射として肩峰下腔内に投与される。「単回注射」という用語は、その従来の意味において使用され、組成物の注射の単回投与手順を指す。他の例では、組成物は、例えば所定の時間間隔で、複数回注射として肩峰下腔内に投与される。一例では、投与は、18ゲージ又はそれより大きい口径の針を、関節鏡ポートを通して対象に挿入して対象の肩峰下腔に到達することを含む。別の例では、投与は、18ゲージ又はそれより大きい口径の針を、無傷の皮膚を通して対象に挿入して対象の肩峰下腔に到達することを含む。一部の例では、投与は、神経毒性又は心毒性の証拠を示す対象を治療するための訓練された人材及び装置を含む施設で行われる。
【0302】
一部の例では、投与前に、16G針を使用して組成物をシリンジに吸引する。肩手術の完了時に、関節鏡ポータルの1つを通して、単回用量の5.0ml(660mgブピバカイン)を肩峰下腔内に沈着させることができる。あるいは、上記用量を、無傷の皮膚を通して投与してもよい。
【0303】
一部の例では、5.0mLの組成物は、大口径針(例えば、16ゲージ又はそれより大きい)によりバイアルからシリンジへと吸引される。手術の完了後及び関節鏡ポータルの閉鎖前に、調製されたシリンジに取り付けられた16ゲージ又はそれより大きい針を、肩峰下腔内への組成物の投与のためのポータルの1つに挿入することができる。あるいは、針を、無傷の皮膚を通して肩峰下腔内に挿入してもよい。針先が確実に肩峰下腔内中に配置されるように、スコープを取り外す前に針先の位置をスコープで確認し、このようにして、薬物の不注意な血管内注射又は間違った位置での沈着のリスクを除去することができる。灌流液の使用を停止し、次いで、16ゲージ針を含む1つのポータルを除き、ポータルを縫合することができる。バイタルサイン(BP、HR、呼吸数、及び温度)は、投与の前に測定することができる。組成物の全用量(例えば5.0mL)は、配置された針を通して肩峰下腔内に投与することができる。バイタルサインは、投与の直後に測定することができる。
【0304】
一部の例では、主題の方法及び組成物は、例えば、術後感染のリスクが、5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上低減される場合(術後感染のリスクを99%以上低減することを含む)、感染リスクの低減を提供する。一部の例では、主題の方法及び組成物は、鎮痛薬、例えば術後鎮痛薬のフォローアップ投与に対する必要性を低減する。特定の場合、フォローアップ投与に対する必要性は、5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上低減され、鎮痛薬のフォローアップ投与に対する必要性を99%以上低減することを含む。さらに、主題の方法は、医療供給者へのフォローアップ来院の回数を、1回来院以上、例えば2回来院以上、例えば3回来院以上、例えば4回来院以上低減する(医療供給者への5回来院の低減を含む)ことができる。
【0305】
一部の例では、活性剤(例えば、ブピバカイン)は、対象の血漿中で投与後168時間以下持続する量で対象に投与される。一部の例では、本方法は、3500ng/mL以下、例えば3400ng/mL以下、例えば3300ng/mL以下、例えば3200ng/mL以下、例えば3100ng/mL以下、例えば3000ng/mL以下、例えば2900ng/mL以下、例えば2800ng/mL以下、例えば2700ng/mL以下、例えば2600ng/mL以下(2500ng/mL以下を含む)の、活性剤の最大血漿濃度(Cmax)を提供する。例えば、特定の例による主題の方法は、2850ng/mL以下の最大ブピバカイン血漿濃度を提供する。特定の場合、投与される活性剤は、100ng/mL~2000ng/mL、例えば150ng/mL~1950ng/mL、例えば200ng/mL~1900ng/mL、例えば250ng/mL~1850ng/mL、例えば300ng/mL~1800ng/mL、例えば350ng/mL~1750ng/mL、例えば400ng/mL~1700ng/mLの最大血漿濃度を提供する。例えば、特定の例による方法は、200ng/mL~1500ng/mLの最大ブピバカイン血漿濃度を提供する。
【0306】
一部の例では、本方法は、1時間~24時間、例えば2時間~23時間、例えば3時間~22時間、例えば4時間~21時間、例えば5時間~20時間、例えば6時間~19時間、例えば7時間~18時間(8時間~15時間を含む)の時点の、投与された活性剤の最大血漿濃度(Tmax)を提供する。特定の場合、方法は、6時間~9時間の時点の最大ブピバカイン血漿濃度時間を提供する。
【0307】
一部の例では、本方法は、5時間~40時間、例えば6時間~39時間、例えば7時間~38時間、例えば8時間~37時間、例えば9時間~36時間(10時間~35時間を含む)の活性剤の平均半減期を提供する。特定の場合、方法は、10時間~35時間、例えば16.4時間~26.1時間(17時間~35時間を含む)の平均ブピバカイン半減期を提供する。
【0308】
一部の例では、本方法は、5000h*ng/mL~65,000h*ng/mL、例えば6000h*ng/mL~60,000h*ng/mL、例えば7000h*ng/mL~55,000h*ng/mL、例えば8000h*ng/mL~50,000h*ng/mL、例えば9000h*ng/mL~45,000h*ng/mL(10,000h*ng/mL~40,000h*ng/mLを含む)の平均活性剤AUC(0-t)を提供する。特定の場合、本方法は、7000h*ng/mL~55,000h*ng/mL、例えば20,000h*ng/mL~55,000h*ng/mLの平均ブピバカインAUC(0-t)を提供する。この場合、時間(t)は、72時間~192時間、例えば76時間~188時間、例えば80時間~184時間、例えば84時間~180時間、例えば88時間~176時間、例えば92時間~172時間(96時間~168時間を含む)であり得る。一部の例では、方法は、5000h*ng/mL~65,000h*ng/mL、例えば6000h*ng/mL~60,000h*ng/mL、例えば7000h*ng/mL~55,000h*ng/mL、例えば8000h*ng/mL~50,000h*ng/mL、例えば9000h*ng/mL~45,000h*ng/mL(10,000h*ng/mL~40,000h*ng/mLを含む)の平均活性剤AUC(0~96時間)を提供する。一部の例では、本方法は、7000h*ng/mL~55,000h*ng/mL、例えば20,000h*ng/mL~55,000h*ng/mLの平均ブピバカインAUC(0~96時間)を提供する。一部の例では、方法は、5000h*ng/mL~65,000h*ng/mL、例えば6000h*ng/mL~60,000h*ng/mL、例えば7000h*ng/mL~55,000h*ng/mL、例えば8000h*ng/mL~50,000h*ng/mL、例えば9000h*ng/mL~45,000h*ng/mL(10,000h*ng/mL~40,000h*ng/mLを含む)の平均活性剤AUC(0~168時間)を提供する。一部の例では、本方法は、7000h*ng/mL~55,000h*ng/mL、例えば20,000h*ng/mL~55,000h*ng/mLの平均ブピバカインAUC(0~168時間)を提供する。
【0309】
一部の例では、投与される活性剤は、対象の血漿中で投与後168時間以下持続する。例えば、本明細書中に記載される方法により投与される活性剤は、164時間以下、例えば160時間以下、例えば156時間以下、例えば152時間以下、例えば148時間以下、例えば144時間以下、例えば120時間以下、例えば96時間以下持続する。特定の場合、活性剤はブピバカイン(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物の投与に由来する)であり、ブピバカインは、対象の血漿中で、168時間以下、例えば164時間以下、例えば160時間以下、例えば156時間以下、例えば152時間以下、例えば148時間以下、例えば144時間以下、例えば120時間以下、例えば96時間以下持続する。
【0310】
特定の例では、対象に投与される組成物が、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物である場合、ベンジルアルコールは、対象への組成物の投与後、対象の血漿中で12時間以下、例えば11時間以下、例えば10時間以下、例えば9時間以下、例えば8時間以下、例えば7時間以下、例えば6時間以下、例えば5時間以下(4時間以下を含む)持続する。
【0311】
一部の例では、方法は、本明細書中に記載される活性剤組成物の投与後に対象をモニタリングすることをさらに含む。一部の例では、方法は、活性剤組成物の投与後に(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物の投与後に)、対象の心血管バイタルサインをモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に、対象の呼吸バイタルサインをモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に、対象の意識状態をモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に、中枢神経系反応について対象をモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に、心血管反応について対象をモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に、アレルギー反応について対象をモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に、メトヘモグロビン血症について対象をモニタリングすることを含む。特定の場合、対象は、メトヘモグロビン血症を発症するリスクを有すると同定されている。特定の例では、対象は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏症を有すると診断されている。一部の例では、対象は、心臓障害又は肺障害を有すると診断されている。特定の場合、方法は、メトヘモグロビン血症の1つ以上の症状、例えば、チアノーゼ性皮膚変色、血液の変色、てんかん発作、昏睡、及び心不整脈の群から選択される症状について対象を観察することをさらに含む。
【0312】
一部の例では、方法は、対象組成物(subject composition)の投与に応答して生じ得る潜在的な影響又は生理学的反応について対象に通知することを含む。例えば、方法は、ブピバカイン含有製品が、浸潤部における感覚又は運動活性の一時的な喪失を引き起こす可能性があることを対象に通知することをさらに含み得る。他の例では、方法は、ブピバカイン組成物に関して添付文書に列挙される有害反応について対象に通知することをさらに含み得る。
【0313】
特定の場合、方法は、対象を、組成物の投与に由来する有害作用から生じる潜在的なリスクを有する対象であると同定することを含む。一例では、方法は、ブピバカイン組成物に関して添付文書に列挙される有害反応について対象に通知することを含み得る。別の例では、方法は、ブピバカイン含有製品が、浸潤部における感覚又は運動活性の一時的な喪失を引き起こす可能性があることを対象に通知することを含み得る。一部の例では、方法は、投与前に、対象が妊娠していると同定すること、及び胎児に対する潜在的なリスクについて上記対象にアドバイスすることをさらに含む。一部の例では、方法は、対象が、上記組成物又は組成物の1つ以上の成分に対する過敏症の病歴又は有害反応を有するか否かについて決定することを含む。一部の例では、対象は、任意のアミド局所麻酔薬に対する過敏症の病歴を有していない。一部の例では、対象は、任意のアミド局所麻酔薬に対するアナフィラキシー反応の病歴を有していない。一部の例では、対象は、任意のアミド局所麻酔薬に対する重篤な皮膚反応の病歴を有していない。一部の例では、対象は、イソ酪酸酢酸スクロースに対する過敏症の病歴を有していない。一部の例では、対象は、イソ酪酸酢酸スクロースに対するアナフィラキシー反応の病歴を有していない。一部の例では、対象は、イソ酪酸酢酸スクロースに対する重篤な皮膚反応の病歴を有していない。一部の例では、対象は、ベンジルアルコールに対する過敏症の病歴を有していない。一部の例では、対象は、ベンジルアルコールに対するアナフィラキシー反応の病歴を有していない。一部の例では、対象は、ベンジルアルコールに対する重篤な皮膚反応の病歴を有していない。
【0314】
一部の例では、方法は、本明細書中に記載される活性剤組成物の投与後に対象をモニタリングすることをさらに含む。特定の場合、方法は、組成物の投与部位をモニタリングすることを含む。一例では、投与部位は、対象からの組成物の漏出についてモニターされる。特定の場合、本方法は、投与後の対象からのブピバカイン組成物の漏出を含まない。一部の例では、本方法は、打撲傷又は炎症について投与部位をモニタリングすることを含む。
【0315】
一部の例では、方法は、活性剤組成物の投与後に(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物の投与後に)、対象の心血管バイタルサインをモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に対象の呼吸バイタルサインをモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に対象の意識状態をモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に、中枢神経系反応について対象をモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に、心血管反応について対象をモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に、アレルギー反応について対象をモニタリングすることを含む。一部の例では、方法は、投与後に、メトヘモグロビン血症について対象をモニタリングすることを含む。特定の場合、対象は、メトヘモグロビン血症を発症するリスクを有すると同定されている。特定の場合、対象は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏症を有すると診断されている。一部の例では、対象は、心臓障害又は肺障害を有すると診断されている。特定の場合、方法は、チアノーゼ性皮膚変色、血液の変色、てんかん発作、昏睡及び心不整脈の群から選択される症状などのメトヘモグロビン血症の1つ以上の症状について対象を観察することをさらに含む。
【0316】
一部の例では、方法は、ブピバカイン組成物の投与の0時間~72時間後に、対象の要求に応じて、対象における術後疼痛を治療するのに十分な量のオピオイド鎮痛薬を投与することをさらに含む。一部の例では、オピオイド鎮痛薬は、モルヒネである。一部の例では、方法は、オピオイド鎮痛薬(例えば2mgのモルヒネ)を対象に静脈投与することを含む。一部の例では、方法は、オピオイド鎮痛薬(例えば、10mgのモルヒネ)を対象に経口投与することを含む。
【0317】
特定の場合、本明細書中に記載される方法は、対象により必要とされる併用療法の量を低減するため、例えば、疼痛を低減するために十分である。「併用療法」は、上記物質(substance)の組み合わせの治療効果が達成されるように、別の治療組成物を対象に投与することを意味する。例えば、併用療法は、主題の方法によるブピバカイン組成物を投与すること、及び疼痛治療組成物などの少なくとも1種の他の薬剤を有する医薬組成物を投与することにより達成し得る。特定の場合、方法は、1種以上のオピオイドを対象に共投与することを含む。「オピオイド」という用語は、本明細書中でその従来の意味において使用され、オピオイド受容体(すなわち、μ、κ及びδオピオイド受容体)における相互作用により薬理作用を発揮する天然又は合成の化学物質を指す。特定の場合、オピオイドは、生合成ベンジルイソキノリンアルカロイドであり、オピオイド受容体アゴニスト、アンタゴニスト及び逆アゴニストであり得る。
【0318】
投与される第2の治療剤及び治療適応疾患に応じて、ブピバカイン組成物と第2の治療剤との併用投与は、第2の治療剤の必要投与量を低減することができる。例えば、ブピバカイン組成物の併用投与は、疼痛を有効に治療するか又は管理するために必要なオピオイド又は他の鎮痛剤の量を低減することができる(例えば、オピオイド節減)。一部の例では、主題の方法は、オピオイドの必要投与量を、10%以上、例えば25%以上、例えば35%以上低減することが可能であり、第2の治療剤の必要投与量を50%以上低減することを含む。例えば、主題の方法は、(例えば、手術の14日以内に、例えば手術の12日以内、10日以内、8日以内、7日以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、又は1日以内に投与される)術後オピオイドの必要投与量を、10%以上、例えば25%以上、例えば35%以上低減することが可能であり、第2の治療剤の必要投与量を50%以上低減することを含む。
【0319】
これらの例による方法において対象に共投与されるオピオイドのタイプは異なっていてよく、例えば、限定するものではないが、他のオピオイドの中でも特に、コデイン、モルヒネ、オリパビン、シュードモルヒネ、テバイン、14-ヒドロキシ(dydroxy)モルヒネ、2,4-ジニトロフェニルモルヒネ、6-メチルジヒドロモルヒネ、6-メチレンジヒドロデソキシモルヒネ、6-アセチルジヒドロモルヒネ、アジドモルヒネ、クロルナルトレキサミン、クロロキシモルファミン、デソモルヒネ(ジヒドロデソキシモルヒネ)、ジヒドロモルヒネ、エチルジヒドロモルヒネ、ヒドロモルフィノール、メチルデソルフィン、N-フェネチルノルモルヒネ、RAM-378、6-ニコチノイルジヒドロモルヒネ、アセチルプロピオニルモルヒネ、ジアセチルジヒドロモルヒネ(ジヒドロヘロイン、アセチルモルフィノール)、ジブチリルモルヒネ、ジベンゾイルモルヒネ、ジホルミルモルヒネ、ジプロパノイルモルヒネ、ヘロイン(ジアセチルモルヒネ)、ニコモルヒネ、6-モノアセチルコデイン、ベンジルモルヒネ、コデインメチルブロミド、デソコデイン、ジメチルモルヒネ(6-O-メチルコデイン)、エチルジヒドロモルヒネ、メチルジヒドロモルヒネ(ジヒドロヘテロコデイン)、エチルモルヒネ(ジオニン)、ヘテロコデイン、イソコデイン、ホルコジン(モルホリニルエチルモルヒネ)、ミロフィン、ナロデイン(N-アリル-ノルコデイン)、トランスイソコデイン、14-シンナモイルオキシコデイノン、14-エトキシメトポン、14-メトキシメトポン、14-フェニルプロポキシメトポン、7-スピロインダニルオキシモルフォン、8,14-ジヒドロキシジヒドロモルフィノン、アセチルコドン、アセチルモルフォン、α-ヒドロコドル、ブロモイソプロプロピルジヒドロモルフィノン、コデイノン、コドルホン、コドール、コドキシム、IBNtxA、アセチルジヒドロコデイノン、ジヒドロコデイノンエノールアセテート、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシコデイン、メチルジヒドロモルフィノン、モルフェノール、モルフィノン、モルホール、N-フェネチル-14-エトキシメトポン、オキシコドン、オキシモルホール、オキシモルホン、ペンタモルホン、セモルホン(semorphone)、α-クロロコジド、β-クロロコジド、α-クロロモルフィド、ブロモコジド、ブロモモルフィド、クロロジヒドロコジド、クロロモルフィド、コジド、14-ヒドロキシジヒドロコデイン、アセチルジヒドロコデイン、ジヒドロコデイン、ジヒドロデソキシコデイン、ジヒドロイソコデイン、ニココデイン、ニコジコデイン、1-ニトロコデイン、コデイン-N-オキシド、モルヒネ-N-オキシド、オキシモルファゾン、1-ブロモコデイン、1-クロロコデイン、1-ヨードモルヒネ、コデイン-N-オキシド、ヘロイン-7,8-オキシド、モルヒネ-6-グルクロニド、6-モノアセチルモルヒネ、モルヒネ-N-オキシド、ナルトレキソール、ノルコデイン、ノルモルヒネなどが挙げられる。
【0320】
特定の場合、本明細書中に記載されるブピバカイン組成物の投与は、オピオイドと共投与される場合、疼痛を有効に治療又は管理するために必要なオピオイドの量を低減することができる。一部の例では、本開示の方法は、疼痛を管理するために必要な共投与されるオピオイドの量を、1重量%以上、例えば2重量%以上、例えば3重量%以上、例えば5重量%以上、例えば10重量%以上、例えば15重量%以上、例えば25重量%以上低減し、疼痛を管理するために必要な共投与されるオピオイドの量を50重量%以上低減することを含む。言い換えれば、疼痛を管理するために必要とされるオピオイドの量は、疼痛を管理するために必要なオピオイド単独の量と比較して、1重量%以上、例えば2重量%以上、例えば3重量%以上、例えば5重量%以上、例えば10重量%以上、例えば15重量%以上、例えば25重量%以上低減され、疼痛を管理するために必要なオピオイドの量が、疼痛を管理するために必要なオピオイド単独の量と比較して50重量%以上低減される場合を含む。例えば、疼痛を管理するために必要な共投与されるオピオイドの量(例えば、手術の14日以内、例えば手術の12日以内、10日以内、8日以内、7日以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、又は1日以内に投与される)は、1重量%以上、例えば2重量%以上、例えば3重量%以上、例えば5重量%以上、例えば10重量%以上、例えば15重量%以上、例えば25重量%以上低減され得、疼痛を管理するために必要な共投与されるオピオイドの量を50重量%以上低減することを含む。特定の場合、主題の方法は、術後疼痛を管理するためにオピオイドを対象に投与する必要性を完全に排除するのに十分である。特定の場合、主題の方法は、術後鎮痛の生成におけるオピオイドの投与を完全に排除するのに十分である。
【0321】
一部の例では、術後疼痛を管理するために、対象にレスキュー鎮痛薬が投与される。特定の場合、レスキュー鎮痛薬は、オピオイド鎮痛薬である。「レスキュー鎮痛薬」という用語は、本明細書中でその従来の意味において使用され、鎮痛薬介入を必要とすると決定された対象により経験される疼痛に応答して対象に投与される鎮痛薬を指す。一部の例では、レスキュー鎮痛薬は、疼痛を経験している対象により要求される。他の例では、レスキュー鎮痛薬は、資格のある医療専門家による評価に基づいて対象に投与される。他の例では、レスキュー鎮痛薬は、所定の時間間隔の鎮痛薬介入の一部として投与される。
【0322】
一部の例では、対象に投与されるレスキュー鎮痛薬は、上記のようなオピオイドである。レスキュー鎮痛薬の量は、鎮痛薬のタイプ(例えば、オピオイド又は非オピオイド)によって決まり、1mg~15mg、例えば2mg~14mg、例えば3mg~13mg、例えば4mg~12mg(5mg~10mgを含む)であり得る。本明細書中に記載されるブピバカイン組成物の投与後0時間~72時間に、1回以上の用量のレスキュー鎮痛薬を対象に投与することが可能であり、例えば、対象にレスキュー鎮痛薬を投与する場合、ブピバカイン組成物の投与後0時間~72時間に、2回以上、例えば3回以上、例えば4回以上(5回以上を含む)投与することができる。特定の場合、活性剤組成物(例えば、上記のブピバカイン組成物)の投与後72時間以内に対象に投与されるレスキュー鎮痛薬の量は、IVモルヒネ等価用量に対して12mg未満、例えば11mg未満、例えば10mg未満、例えば9mg未満、例えば8mg未満、例えば7mg未満、例えば6mg未満、例えば5mg未満(4mg未満を含む)である。特定の場合、対象に投与されるレスキュー鎮痛薬の量は、ブピバカイン組成物(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物)が投与されなかった以外の点では同一である対象に投与される平均量未満の量である。
【0323】
一部の例では、方法は、対象において鎮痛を生じることを含む。鎮痛、例えば術後鎮痛は、疼痛強度を評価することにより特徴づけることができる。例えば、対象は、0~10の数値評価尺度(NRS)スケールを用いて疼痛強度を評価することが可能であり、ここでゼロ(0) = 痛みなし、十=(10) 想像し得る限りの強い疼痛である。患者に、彼らの疼痛が横線(例えば10cmの横線)のどこに位置するかを指し示すことにより、疼痛強度を言葉で又は視覚的に評価することを求めてもよい。肩峰下除圧手術後の運動時疼痛強度は、肩を(90度)上げて肩痛を生じさせた後のNRSスコアを得ることにより評価することができる。本開示の方法は、例えば、プラセボ対照と比較して、手術後の、例えば手術後1日間、2日間、又は3日間の疼痛強度の改善を示すことにより、術後鎮痛を生じることができる。例えば、疼痛強度は、手術後72時間までの複数時点で、0~10の数値評価尺度(NRS)を用いて、患者により評価され得る。
【0324】
一部の例では、方法は、産科の傍頸管ブロック麻酔を含まない。一部の例では、方法は、神経ブロックを含まない。一部の例では、本方法は、局部的神経ブロックを含まない。一部の例では、本方法は、脳幹脊髄性神経遮断を含まない。一部の例では、本方法は、末梢神経遮断を含まない。一部の例では、本方法は、投与領域における深く且つ完全な感覚ブロックを必要とする切開前又は術前の局所領域麻酔技術を含まない。
【0325】
一部の例では、活性剤組成物(例えば、ブピバカイン組成物)は、シリンジに吸引される前に、ある期間保存される。例えば、活性剤組成物は、30分以上、例えば1時間以上、例えば2時間以上、例えば4時間以上、例えば8時間以上、例えば12時間以上、例えば16時間以上、例えば20時間以上、例えば1日以上、例えば2日以上、例えば3日以上、例えば4日以上、例えば5日以上、例えば6日以上、例えば1週間以上、例えば2週間以上、例えば3週間以上、例えば1ヶ月以上、例えば2ヶ月以上、例えば3ヶ月以上、例えば6ヶ月以上保存することが可能であり、組成物を1年以上保存することを含む。活性剤組成物は、上記期間まで、5℃~50℃、例えば10℃~45℃、例えば15℃~40℃、例えば20℃~35℃(25℃~30℃を含む)の温度で保存することができる。活性剤組成物は、シリンジに吸引される前に、40%RH~80%RH、例えば45%RH~75%RH、例えば50%RH~70%RH、例えば55%RH~65%RH(50%RH~60%RHを含む)の相対湿度で保存することもできる。一部の例では、活性剤組成物は、シリンジに吸引される前に15℃~30℃の温度で保存されるブピバカイン組成物である。一部の例では、活性剤組成物は、60%RHの相対湿度で保存されるブピバカイン組成物である。特定の場合、活性剤組成物は、シリンジに吸引される前に、15℃~30℃の温度及び60%RHで保存されるブピバカイン組成物である。
【0326】
活性剤組成物は、バイアル、例えば単回投与バイアル中で保存することができる。一部の例では、ガラスバイアルは、パイレックス(登録商標)ガラス、ホウ素シリカガラス又は他の種類のガラスである。特定の場合、ガラスバイアルは、鉄を含有しないガラス材料から形成される。一部の例では、バイアルは、透明バイアル、例えば透明なガラスバイアルである。「透明な」という用語は、本明細書中でその従来の意味において使用され、特定波長の光に対するバイアルの不透過性の相対的な欠如を指す。例えば、バイアルは、裸眼で可視化した場合にバイアルが「透明」に見えるように、可視波長の光に対する不透過性を欠如し得る。一部の例では、バイアルは、紫外光に対する不透過性を欠如している。一部の例では、バイアルは、赤外光に対する不透過性を欠如している。
【0327】
活性剤組成物(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物)のバイアルは、0.1mL以上、例えば0.5mL以上、例えば1mL以上、例えば2mL以上、例えば3mL以上、例えば4mL以上、例えば5mL以上、例えば6mL以上、例えば7mL以上、例えば8mL以上、例えば9mL以上(10mL以上を含む)の活性剤組成物を含み得る。例えば、目的のバイアルは、5mLのブピバカイン組成物を含み得る。バイアルは、単回投与バイアルであってもよく、又は複数回投与バイアルであってもよい。一例では、主題の方法を実施するために使用されるバイアルは、単回投与バイアルである。第2の例では、主題の方法を実施するために使用されるバイアルは、複数回投与バイアル(例えば2回投与バイアル、3回投与バイアル、4回投与バイアル、5回投与バイアル、10回以上投与のバイアルを含む)である。
【0328】
特定の場合、バイアルは、カートン又は他の種類のパッケージング容器中に保存される。例えば、カートンは、ボール紙、プラスチック又は他の種類のカートンであり得る。一部の例では、カートンは、カートン中の保存が光に対するバイアルの曝露を妨げるように、可視光を通さない。一部の例では、カートンは、湿気に対するバイアルの曝露を妨げるように密封されたパッケージング容器である。カートンは、カートン及びバイアルのサイズに応じて任意数のバイアルを含み得、ここで特定の場合、カートンは、2バイアル以上、例えば3バイアル以上、例えば4バイアル以上、例えば5バイアル以上、例えば6バイアル以上、例えば7バイアル以上、例えば8バイアル以上、例えば9バイアル以上、例えば10バイアル以上、例えば15バイアル以上、例えば20バイアル以上、例えば30バイアル以上、例えば40バイアル以上、例えば50バイアル以上、例えば60バイアル以上、例えば70バイアル以上、例えば80バイアル以上、例えば90バイアル以上(100バイアル以上を含む)を含む。特定の場合、カートンは、2単位カートン(すなわち、2バイアルを含む)、5単位カートン、10単位カートン、12単位カートン、15単位カートン、16単位カートン、20単位カートン、24単位カートン、28単位カートン、30単位カートン、32単位カートン、50単位カートン、64単位カートン又は100単位カートンであるパッケージング容器である。
【0329】
バイアルは、正立位又は倒立位で保存することができる。特定の場合、活性剤組成物(例えば、ブピバカイン組成物)の1つ以上のバイアルは、カートン中で、正立位で保存される。他の例では、活性剤組成物(例えば、ブピバカイン組成物)の1つ以上のバイアルは、カートン中で、倒立位で保存される。
【0330】
上記に詳細に記載されるとおり、本開示は、対象にある量の活性剤を投与することにより、対象において鎮痛を生じる方法を提供する。好適な医薬剤としては、多糖類、DNA及び他のポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗原、抗体、ワクチン、ビタミン、酵素、タンパク質、天然物質又は生物工学的物質など、抗感染薬(抗生物質、抗ウイルス薬、殺菌剤、抗疥癬薬又は殺シラミ薬を含む)、消毒薬(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジングルコン酸塩、酢酸マフェニド、塩化メチルベンゼトニウム、ニトロフラゾン、ニトロメルソールなど)、ステロイド薬(例えば、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、アドレノコルチコイドなど)、オピオイド(例えば、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、メプタジノール、ナルブフィン、オキシモルフォン及びペンタゾシン)、治療用ポリペプチド(例えば、インスリン、エリスロポエチン、形態形成タンパク質(例えば骨形態形成タンパク質)など)、鎮痛剤及び抗炎症剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトロラク、COX-1阻害剤、COX-2阻害剤など)、抗精神病薬(例えば、クロルプロマジン、トリフルプロマジン、メソリダジン、ピペラセタジン及びチオリダジンを含むフェノチアジン類;クロルプロチキセンを含むチオキサンテン類など)、抗血管新生剤(例えば、コンブレシアチン(combresiatin)、コントルトロスタチン、抗VEGFなど)、抗不安薬(例えば、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、オキサゼパムを含むベンゾジアゼピン類;及びバルビツール酸塩)、抗うつ薬(三環系抗うつ薬類及びモノアミンオキシダーゼ阻害剤、例えばイミプラミン、アミトリプチリン、ドキセピン、ノルトリプチリン、アモキサピン、トラニルシプロミン、フェネルジンなどを含む)、興奮剤(例えば、メチルフェニデート、ドキサプラム、ニケタミドなど)、麻薬(例えば、ブプレノルフィン、モルヒネ、メペリジン、コデインなど)、鎮痛・解熱剤及び抗炎症剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセンなど)、局所麻酔薬(例えば、アミド型局所麻酔薬又はアニリド型局所麻酔薬、例えば、ブピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカイン、ロピバカインなど)、避妊薬、化学療法及び抗新生物薬(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、5-フルオロラシル、チオグアニン、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、クロラムブシル、ストレプトゾシン、メトトレキセート、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェンなど)、心血管系薬及び抗高血圧薬(例えば、プロカインアミド、亜硝酸アミル、ニトログリセリン、プロプラノロール、メトプロロール、プラゾシン、フェントラミン、トリメタファン、カプトプリル、エナラプリルなど)、肺疾患の治療用の薬物、抗てんかん剤(例えば、フェニトイン(phenyloin)、エトトインなど)、抗発汗剤、角膜形成剤、色素沈着剤又は皮膚軟化剤、制吐剤(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポラミン、パロノセトロンなど)が挙げられる。本出願の組成物はまた、他の局所的に作用する活性剤、例えば収斂剤、制汗剤、刺激剤、発赤剤、発疱薬、硬化薬、焼灼剤(caustic)、腐食薬(escharotic)、角質溶解剤、日焼け止め剤、ならびに色素沈着低下剤及びかゆみ止め薬を含む様々な皮膚科用薬に適用することもできる。
【0331】
一部の例では、活性医薬剤は、組成物の0.5~20重量パーセント、1~8重量パーセント、2~6重量パーセント、2~5重量パーセント又は1~5重量パーセントの量で存在する。
【0332】
本明細書で使用される場合、用語「麻酔薬」は、可逆的な局所的なしびれ、疼痛緩和を提供し、神経軸索及び他の興奮性膜に沿った刺激伝導(impulse conduction)を遮断する(例えば、侵害受容経路(求心性及び/又は遠心性)の局部的な遮断(regional blockage)、鎮痛及び/又は麻酔など)、任意の薬剤を意図する。例えば、Strichartz, G.R. (編) Local Anesthetics, Handbook of Experimental Pharmacology, vol. 81, Springer, Berlin/New York, (1987)を参照されたい。この用語はまた、局所投与された場合に、知覚及び/又は運動機能の局所的な(局部的な)、完全な又は部分的な阻害を提供する任意の薬剤も包含する。麻酔薬としての使用に適した一般的に使用される薬剤の例としては、限定するものではないが、アンブカイン(ambucaine)、アモラノン(amolanone)、アミルカイン(amylcaine)、ベノキシネート(benoxinate)、ベンジルアルコール、ベンゾカイン(benzocaine)、ベトキシカイン(betoxycaine)、ビフェナミン(biphenamine)、ブピバカイン(bupivacaine)、ブタカイン(butacaine)、ブタンベン(butamben)、ブタニリカイン(butanilicaine)、ブテタミン(butethamine)、ブトキシカイン(butoxycaine)、カルチカイン(carticaine)、クロロプロカイン(chloroprocaine)、コカエチレン(cocaethylene)、コカイン(cocaine)、シクロメチカイン(cyclomethycaine)、ジブカイン(dibucaine)、ジメチソキン(dimethisoquin)、ジメトカイン(dimethocaine)、ジペロドン(diperodon)、ジクロニン(dyclonine)、エコゴニジン(ecogonidine)、エコゴニン(ecogonine)、エチドカイン(etidocaine)、ユープロシン(euprocin)、フェナルコミン(fenalcomine)、ホルモカイン(formocaine)、ヘキシルカイン(hexylcaine)、ヒドロキシテトラカイン(hydroxyteteracaine)、イソブアニン(isobuanine)、イソブチルp-アミノベンゾエート(isobutyl p-aminobenzoate)、ロイシノカイン(leucinocaine)、レボブピバカイン(levobupivacaine)、レボキサドロール(levoxadrol)、リドカイン(lidocaine)、メピバカイン(mepivacaine)、メプリルカイン(meprylcaine)、メタブトキシカイン(metabutoxycaine)、塩化メチル、ミルテカイン(myrtecaine)、ネパイン(naepaine)、オクタカイン(octacaine)、オルトカイン(orthocaine)、オキセタザイン(oxethazaine)、パレントキシカイン(parenthoxycaine)、フェナカイン(phenacaine)、フェノール、ピペロカイン(piperocaine)、ピリドカイン(piridocaine)、ポリドカノール(polidocanol)、プラモキシン(pramoxine)、プリロカイン(prilocaine)、プロカイン(procaine)、プロパノカイン(propanocaine)、プロパラカイン(proparacaine)、プロピポカイン(propipocaine)、プロポキシカイン(propoxycaine)、プソイドコカイン(pseudococaine)、ピロカイン(pyrrocaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、サリチルアルコール(salicyl alcohol)、テトラカイン(tetracaine)、トリカイン(tolycaine)、トリメカイン(trimecaine)、キシロカイン(xylocaine)、ゾラミン(zolamine)、麻酔的に活性な誘導体、その類似体及び任意の薬学的に許容される塩、ならびにそれらの任意の混合物などが挙げられる。
【0333】
アミド型及びエステル型の局所麻酔薬は、本明細書で使用するのに好ましいアミド型局所麻酔薬はアミド官能基を有することを特徴とし、エステル型局所麻酔薬はエステル官能基を含む。好ましいアミド型局所麻酔薬としては、リドカイン、ブピバカイン、プリロカイン、メピバカイン、エチドカイン、ロピバカイン及びジブカインが挙げられる。好ましいエステル型局所麻酔薬としては、テトラカイン、プロカイン、ベンゾカイン及びクロロプロカインが挙げられる。一例において、アミド型局所麻酔薬は、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、及びテトラカインからなる群から選択される。最も好ましい局所麻酔薬はブピバカインである。
【0334】
麻酔薬は、中性形態で、遊離塩基形態として、又は薬学的に許容される塩の形態で、組成物中に提供される。本明細書で使用される用語「薬学的に許容される塩」は、中性麻酔薬の生物学的有効性及び特性を保持し、医薬用途に許容できないその他のものではない塩を意図する。薬学的に許容される塩としては、酸性基又は塩基性基の塩が挙げられ、これらの基は麻酔剤中に存在し得る。本質的に塩基性であるそれらの麻酔剤は、様々な無機酸及び有機酸と多種多様な塩を形成することができる。本明細書における使用に好適な塩基性麻酔薬の薬学的に許容される酸付加塩は、非毒性の酸付加塩を形成するものであり、すなわち、薬理学的に許容されるアニオンを含む塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモエート(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))塩である。アミノ部分を含む麻酔剤は、上記の酸に加えて、種々のアミノ酸と薬学的に許容される塩を形成し得る。好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成することが可能であり、例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩及びジエタノールアミン塩が挙げられる。例えば、Berge et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい。
【0335】
一部の例では、活性剤化合物(例えば、ブピバカイン、ブピバカイン遊離塩基、ブピバカイン塩)の量は、変動し、且つ10mg~1000mg、例えば25mg~900mg、例えば50mg~800mg、例えば75mg~700mg、例えば100mg~600mg(250mg~500mgを含む)であり得る量で存在し得る。特定の場合、対象組成物は、活性剤を600mg~700mg、例えば約660mgの量で含む。特定の場合、目的の組成物はブピバカイン組成物であり、ブピバカインは、660mgの量、例えば660mgブピバカイン遊離塩基当量で組成物中に存在する。組成物中の活性剤の濃度は、0.1mg/mL~250mg/mL、例えば0.5mg/mL~225mg/mL、例えば1mg/mL~200mg/mL、例えば5mg/mL~175mg/mL(10mg/mL~150mg/mLを含む)で変動し得る。特定の場合、対象組成物中の活性剤の濃度は、125mg/mL~150mg/mLである。特定の場合、目的の組成物はブピバカイン組成物であり、組成物中のブピバカインの濃度は、約132mg/mLブピバカイン遊離塩基当量である。
【0336】
持続的局所麻酔の状態を提供する麻酔剤の能力とは、対象薬剤の、知覚及び/又は運動機能の局所的な(局部的な)完全又は部分的な阻害の評価可能な状態を確立する能力を指す。当業者であれば、このような評価を行うための多数の方法及びツールを容易に思いつくであろう。非ヒト動物被験体に関して、これらの方法としては、例えば、試験ラットにおける自発運動の測定(例えば、Med Associates Inc.(バーモント州セントアルバンス)の市販の装置及びソフトウェアを使用する)(この測定では、試験被験体についての、総移動距離、外来カウント(ambulatory count)、常同行動、成育、様々な運動に費やした時間及び安静時に費やした時間についてのデータを収集することができる);ラットにおけるピンプリック反応の可視化;例えば、IACUC No 9511-2199に詳述されている手順に従った、ラットホットプレート足退避モデルなどが挙げられる。
【0337】
特定の麻酔剤の選択に関して、当業者は、各候補薬剤の薬理学的特性が、例えば、麻酔効果の発現及び強度、持続時間などに関して変動することも認識するであろう。特定の薬剤は、軽度の麻酔効果を提供し得、活性の発現はかなり急速であるが、持続時間は短い。このような薬剤は、「初期麻酔効果」を提供するために本組成物と共に使用することが可能であり、ここで、これらは典型的には、より段階的に活性を発現するがより強い作用及びより長い持続時間の1つを特徴とする「持続的局所麻酔」を提供する異なる麻酔剤と対になる。初期麻酔効果を提供するために使用し得る麻酔薬の一例は、ベンジルアルコールである。持続的局所麻酔を提供するために使用し得る麻酔薬の一例は、ブピバカインである。初期麻酔効果を提供するために使用し得るなおさらなる薬剤としては、溶媒及び/又は浸透促進剤(penetration agent)として一般的に使用される有機材料、例えばエタノール、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ポリエチレングリコール及び特定の脂肪酸エステルなどを挙げることができる。これらの及び他の類似している薬剤は、極めて軽度の初期麻酔効果を提供することが可能であり、例えば、適用されると、組織部位を冷却し又は脱感作/麻痺させ、これによりその部位の知覚を部分的に阻害することができる。初期麻酔効果を提供するために薬剤が使用されるときはいつでも、その薬剤は、好適な組成物中で、対象効果を提供するのに十分な量で、且つ意図される効果を提供するために薬剤が組成物から迅速に放出され得るような方法で提供される。このような好適な(初期麻酔効果を提供するための薬剤を含有する)組成物の構築は、本明細書により提供されるガイダンス及び教示と組み合わせて理解される場合、当業者の技能の範囲内である。
【0338】
一部の例では、組成物は、単一の活性剤、例えば単一の麻酔薬のみを含む。特定の場合、組成物は、単一の活性剤としてブピバカインのみを含む。例えば、ブピバカイン組成物は、ブピバカイン遊離塩基又はその塩以外の任意の薬物(例えば、任意の局所麻酔薬)を含まない。特定の場合、他の活性剤(例えば、任意の他の麻酔薬)は、活性剤組成物を対象に投与した後少なくとも168時間、対象に投与されない。例えば、他の麻酔薬は、ブピバカイン組成物を対象に投与した後、168時間以上投与されない。
【0339】
一部の例では、ブピバカイン組成物は、未希釈形態で対象に投与される。いくつかの場合、方法は、ブピバカイン組成物をオートクレーブしないことを含む。従って、一部の例では、ブピバカイン組成物はオートクレーブされない。いくつかの場合、方法は、ブピバカイン組成物を混合しないことを含む。一部の例では、方法は、ブピバカイン組成物を希釈しないことを含む。
【0340】
特定の場合、2種の麻酔剤(第1の麻酔剤及び第2の麻酔剤)を含む組成物が提供され、ここで、第2の麻酔剤は、第1の麻酔剤の溶媒である。これらの特定の組成物において、第2の麻酔剤は、典型的には初期麻酔効果を提供するために使用され、そして、第1の麻酔剤は、持続的局所麻酔を特徴とする後続の麻酔効果を提供するために使用され、対象への投与の2時間以内の初期バーストを伴わない発現、かつ投与後少なくとも24時間、又はさらに長い持続時間を有する。特定の好ましい例において、第1の麻酔剤は、投与後1~2時間以内の発現と共に持続的局所麻酔を提供し、他の好ましい例において、第1の麻酔剤は、投与後30分~1時間以内の発現と共に持続的な局所麻酔を提供する。特定の他の場合において、第2の麻酔剤はまた、徐放性担体系のための溶媒でもある。
【0341】
組成物中の麻酔薬の濃度は、その特定の薬剤の吸収、不活性化、及び排出速度、並びに当業者に公知の他の因子によっても決まる。投与量値も、緩和すべき状態の重症度により変動することに留意されたい。任意の特定の対象について、特定の投与計画は、本組成物を投与するか又は本組成物の投与を監督する人の個々の必要性及び専門的な判断に従って経時的に調整されるべきであり、本明細書中に示される濃度範囲は例示にすぎず、特許請求される組成物の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことをさらに理解されたい。本組成物は、1回用量で投与してもよく、又は、異なる時間間隔で連続的に又は同時に投与される多数のより小さな用量に分割して投与してもよい。
【0342】
麻酔剤(1種又は複数種)は、典型的には、組成物の総重量(重量%)に対して、0.1~99.5重量パーセント、0.5~70重量%、又は1パーセント~50重量%の範囲内で組成物中に存在する。しかし、40%、30%、20%、又は10%と低い上限値を有する範囲を使用することが可能であり、同様に5%、3%、又は2%と高い下限値を有する範囲を使用することもできる。極めて活性な麻酔剤については、その範囲は、1重量%未満、場合により0.0001%未満であり得る。
【0343】
本組成物の製造において1つの薬剤が他の溶媒剤に少なくとも部分的に溶解される場合、麻酔剤は本明細書における別の麻酔剤の溶媒としての役割を果たす。さらに、上記の麻酔剤溶媒は、初期麻酔効果と他の麻酔剤を少なくとも部分的に溶解することとの両方を提供するのに十分な量で組成物中に存在する。特定の場合、第2の麻酔薬は、したがって、組成物の総重量(重量%)に対して95~1重量パーセントの量で、又は75~10重量%の量で、又は50~15重量%の量で存在する。
【0344】
他の麻酔剤の溶媒としての役割も果たす多数の好適な麻酔剤を使用することができる。好適な薬剤としては、例えば、芳香族アルコール、酸及び酸誘導体、並びにそれらの組み合わせなどが挙げられる。さらなる麻酔薬のための溶媒として使用し得る特に好ましい麻酔剤はベンジルアルコールである。
【0345】
一部の例では、本開示の組成物中で用いられる徐放性担体系は、非ポリマー担体として分類される。薬学的に許容される非ポリマー担体は、典型的には、生体適合性であり、好ましくは生分解性、生体内分解性、又は生体吸収性である。ある物質及びその分解生成物のいずれかが、生体組織に投与された場合に、顕著な、有害な又は不都合な作用を示さず、実質的な組織刺激又は壊死も引き起こさない場合、その物質は生体適合性である。本明細書中で互換的に使用される「生分解性」又は「生体内分解性」は、対象非ポリマー材料がin vivoで分解又は侵食されてより小さな化学種を形成することを意味し、ここで、このような分解は、例えば、酵素的、化学的、及び物理的処理から生じ得る。「生体吸収性」とは、所与の非ポリマー材料が、動物対象の体内で、例えば、細胞、組織等により分解及び吸収され得ることを意味する。
【0346】
一部の例では、非ポリマー担体材料は、本組成物からの少なくとも1つの麻酔剤の放出を制御するために、投与後2時間以内の発現及び少なくとも24時間以上の持続時間を有する持続的局所麻酔を提供するような方法で使用される。いくつかの例において、非ポリマー担体材料は、組成物からの活性医薬剤の徐放、例えば約72時間の徐放を提供するのに十分な量で組成物中に存在するHVLCM(例えば、イソ酪酸酢酸スクロース)を含む。いくつかの組成物において、非ポリマー担体材料は、少なくとも1つの麻酔薬の一次徐放プロファイル、又は疑似ゼロ次放出プロファイルのいずれかを提供するのに十分である。したがって、非ポリマー担体は、組成物の総重量(重量%)に対して99.5~1重量パーセントの量で、又は95~10重量%の量で、又は75~25重量%の量で組成物中に存在する。一部の例では、非ポリマー担体は、組成物の重量に対して、30重量%~80重量%、例えば40重量%~70重量%、50重量%~70重量%、60重量%~70重量%、61重量%~69重量%、62重量%~68重量%、又は63重量%~67重量%のレベルで存在する高粘度液体担体材料(HVLCM)、例えばイソ酪酸酢酸スクロースを含む。
【0347】
好適な非ポリマー担体の選択は、本開示及び明細書により提供される教示及びガイダンスを用いれば、当技術分野における一般的な技能の範囲内である。例えば、多数の薬学的に許容される非ポリマー担体系が、液剤、スプレー剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、スラリー剤、オイル剤、エマルション剤、マイクロエマルション剤、固形剤、硬膏剤、フィルム剤、粒子剤、微粒子剤、粉末剤又は他の好適な形態の医薬組成物を製造するために当業者に利用可能である。これらの及び他の担体系は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版, 1980年及び第17版, 1985年に記載されており、いずれもMack Publishing Company, Easton, PAにより出版されている。
【0348】
本明細書中に記載される組成物はさらに、1種以上のさらなる成分、例えば、分散剤、増量剤、結合剤、担体、安定剤、流動促進剤、抗酸化剤、pH調整剤、抗刺激剤、増粘剤、レオロジー改質剤、乳化剤、保存剤などとして作用し得る薬学的に許容される賦形剤材料を含んでいてもよい。当業者であれば、特定の賦形剤材料が、任意の特定の製剤において、上記で言及された機能のいくつかを提供し得ることを理解するであろう。従って、任意の数の好適な賦形剤材料を、本組成物と混合するか又は本組成物中に組み込んで、増量特性を提供し、活性剤放出速度を変化させ、水取り込みを増加させ又は妨げ、pHを制御し、構造的支持を提供し、当業者に公知の製造工程及び他の使用を容易にすることができる。用語「賦形剤」は、一般に、無毒であり、組成物の他の成分と有害な方法で相互作用しない実質的に不活性な材料を指す。特定の賦形剤が組成物中に存在し得る割合は、賦形剤が提供される目的及び賦形剤のアイデンティティによって決まる。
【0349】
例えば、活性剤の安定剤としても作用し得る好適な賦形剤としては、医薬グレードのデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストランなどが挙げられる。このような安定剤は、従って、単糖、二糖、多糖又は糖アルコールなどの糖類であり得る。他の好適な賦形剤としては、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウム又はリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、及びそれらの組み合わせなどが挙げられる。水和動態及び溶解動態を遅くするために添加し得る疎水性賦形剤の例としては、脂肪酸及びその薬学的に許容される塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸(steric acid)、ステアリン酸亜鉛、パルミチン酸(palimitic acid)、及びパルミチン酸ナトリウム(sodium palitate))などが挙げられる。
【0350】
本組成物において荷電脂質及び/又は洗剤賦形剤を利用することも有用であり得る。好適な荷電脂質としては、限定するものではないが、ホスファチジルコリン(レシチン)などが挙げられる。洗剤は、典型的には、非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両性界面活性剤である。好適な界面活性剤の例としては、例えば、Tergitol(登録商標)界面活性剤及びTriton(登録商標)界面活性剤(Union Carbide Chemicals and Plastics);ポリオキシエチレンソルビタン、例えば、TWEEN(登録商標)界面活性剤(Atlas Chemical Industries);ポリソルベート;ポリオキシエチレンエーテル、例えば、Brij;薬学的に許容される脂肪酸エステル、例えば、ラウリルスルフェート及びその塩;両親媒性界面活性剤(グリセリド等):及び同様の材料などが挙げられる。
【0351】
多孔度を変化させるために、他の賦形剤材料、例えば、スクロース、デキストロース、塩化ナトリウム、ソルビトール、ラクトース、ポリエチレングリコール、マンニトール、フルクトース、ポリビニルピロリドン又はこれらの適切な組み合わせのような材料を添加することができる。さらに、麻酔剤(1種又は複数種)を、油(例えば、ゴマ油、コーン油、植物油、大豆油、ヒマシ油、ピーナッツ油)、又はそれらの油のリン脂質(例えば、レシチン)若しくは中鎖脂肪酸トリグリセリド(例えば、Miglyol 812)との混合物と共に分散させて、油性懸濁剤を提供することができる。
【0352】
本組成物に組み込むことができるなおさらなる賦形剤材料としては、例えば、様々な緩衝剤含有量の希釈剤(例えば、Tris-HCl、酢酸塩);pH及びイオン強度変更剤;添加剤、例えば抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、グルタチオン、メタ重亜硫酸ナトリウム);保存剤(例えば、チメルソル(Thimersol)、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン);及び分散剤、例えば水溶性多糖類(例えば、マンニトール、ラクトース、グルコース、デンプン)、ヒアルロン酸、グリシン、フィブリン、コラーゲン及び無機塩(例えば、塩化ナトリウム)などが挙げられる。
【0353】
特定の例では、非ポリマー担体は、水中で又は水性の生物学的系において実質的に不溶性である。例示的なかかる非ポリマー担体材料としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:ステロール、例えばコレステロール、スチグマステロール、β-シトステロール、及びエストラジオール;コレステリルエステル、例えばコレステリルステアレート;C12-C24脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、及びリグノセリン酸;C18-C36モノ-、ジ-及びトリアシルグリセリド、例えば、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノリノレート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノドコサノエート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノジセノエート、グリセリルジパルミテート、グリセリルジドコサノエート、グリセリルジミリステート、グリセリルジデセノエート、グリセリルトリドコサノエート、グリセリルトリミリステート、グリセリルトリデセノエート、グリセロールトリステアレート及びそれらの混合物;ショ糖脂肪酸エステル、例えばスクロースジステアレート及びスクロースパルミテート;ソルビタン脂肪酸エステル、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート及びソルビタントリステアレート;C16-C18脂肪アルコール、例えばセチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、及びセトステアリルアルコール;脂肪酸アルコールと脂肪酸とのエステル、例えばセチルパルミテート及びセテアリルパルミテート;脂肪酸の無水物、例えば無水ステアリン酸;リン脂質、例えばホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール及びそのリゾ誘導体など;スフィンゴシン及びその誘導体;スピンゴミエリン類(spingomyelins)、例えばステアリルスピンゴミエリン(stearyl spingomyelin)、パルミトイルスピンゴミエリン(palmitoyl spingomyelin)、及びトリコサニルスピンゴミエリン(tricosanyl spingomyelin);セラミド類、例えばステアリルセラミド及びパルミトイルセラミド;スフィンゴ糖脂質;ラノリン及びラノリンアルコール;並びにそれらの組み合わせ及び混合物。特定の好ましい非ポリマー担体としては、コレステロール、グリセリルモノステアレート、グリセロールトリステアレート、ステアリン酸、無水ステアリン酸、グリセリルモノオレエート(glyceryl monocleate)、グリセリルモノリノレート、及びアセチル化モノグリセリドなどが挙げられる。
【0354】
上記の非ポリマー担体材料の1つが本組成物における使用のために選択される場合、それは、典型的には、担体材料に適合性であり且つ好適な有機溶媒と組み合わせて、「水様(watery)」~「粘性」~「展延性のあるパテ又はペースト」までにわたる稠度を有する組成物を形成する。組成物の稠度は、溶媒中の非ポリマー担体の溶解度、非ポリマー担体の濃度、麻酔剤の濃度及び/又はさらなる麻酔剤、添加剤及び賦形剤の存在などの因子に従って変動する。特定の溶媒中の非ポリマー担体の溶解度は、その結晶化度、親水性、イオン性及び親油性などの因子に従って変動する。従って、溶媒中の非ポリマー担体のイオン性及び濃度を調整して、所望の溶解度を達成することができる。好ましい非ポリマー担体材料は、低い結晶化度、非極性特性を有し、より疎水性であるものである。
【0355】
本組成物における使用に好適な有機溶媒は、一般的に、生体適合性であり、薬学的に許容され、且つ非ポリマー担体を少なくとも部分的に溶解するものである。有機溶媒はさらに、「混和性」~「可溶性」~「分散性」にわたる水中溶解度を有する。特定の例において、溶媒は、水性系においてin situで、組成物から投与部位で見られる流体中へと拡散、分散、又は浸出し、これにより固体インプラントを形成することができるように選択される。好ましくは、溶媒は、9~13(cal/cm3)1/2のヒルデブランド(Hildebrand)溶解度パラメータを有する。好ましくは、溶媒の極性度は、少なくとも5%の水中溶解度を与えるのに有効である。
【0356】
従って、好適な有機溶媒としては、限定するものではないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及び2-ピロリドン(2-ピロール)などの置換複素環式化合物;炭酸とアルキルアルコールとのエステル、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネート;脂肪酸、例えば酢酸、乳酸及びヘプタン酸;モノ-、ジ-、及びトリカルボン酸のアルキルエステル、例えば、2-エチオキシエチルアセテート、エチルアセテート、メチルアセテート、エチルラクテート、エチルブチレート、ジエチルマロネート、ジエチルグルトネート、トリブチルシトレート、ジエチルスクシネート、トリブチリン、イソプロピルミリステート、ジメチルアジペート、ジメチルスクシネート、ジメチルオキサレート、ジメチルシトレート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、グリセリルトリアセテート;アルキルケトン類、例えばアセトン及びメチルエチルケトン;エーテルアルコール、例えば、2-エトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、グリコフロール及びグリセロールホルマール;アルコール、例えばエタノール及びプロパノール;ポリヒドロキシアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセリン(グリセロール)、1,3-ブチレングリコール、及びイソプロピリデングリコール(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソロン-4-メタノール);ソルケタール;ジアルキルアミド類、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルスルホン;テトラヒドロフラン;ラクトン、例えばε-カプロラクトン及びブチロラクトン;環状アルキルアミド、例えばカプロラクタム;芳香族アミド、例えばN,N-ジメチル-m-トルアミド、及び1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン;など;並びにそれらの混合物及び組み合わせなどが挙げられる。好ましい溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、エチルラクテート、プロピレンカーボネート、グリコフロール、グリセロールホルマール、及びイソプロピリデングリコールなどが挙げられる。
【0357】
一部の例では、有機溶媒は、組成物中の活性医薬剤を溶解するのに十分な量で存在する。例えば、有機溶媒は、組成物の重量に対して、少なくとも5重量%、例えば少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%の量で組成物中に存在し得る。有機溶媒は、組成物の重量に対して、5重量%~45重量%、例えば10重量%~35重量%、15重量%~30重量%20重量%~25重量%、又は約22重量%の量で組成物中に存在し得る。有機溶媒は、組成物中で使用される選択された非ポリマー担体、有機溶媒、麻酔剤、添加剤及び/又は賦形剤に応じて、組成物の総重量(重量%)に対して99.5~1重量パーセントの量で、95~10重量%の量で、75~25重量%の量で、又は60~40重量%の量で組成物中に提供され得る。特定の例において、有機溶媒は、生物学的系内に置かれると組成物から水性媒体中へ拡散又は浸出し、それにより非ポリマー担体材料が凝固して固体マトリックスを形成する。特定の例において、有機溶媒は、生物学的系内に置かれると組成物から水性媒体中へ拡散又は浸出し、これにより非ポリマー担体材料は凝固して半固体又はゲルを形成する。好ましくは、非ポリマー担体はin situで固化し、投与(移植)後1~5日以内、好ましくは1~3日以内、好ましくは2時間以内に固体マトリックスを形成する。
【0358】
一部の例では、トリグリセリド粘度低下剤が、組成物の10重量%~50重量%、10重量%~35重量%、15重量%~30重量%、又は20重量%~25重量%、又は約15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、又は35重量%の量で存在する。
【0359】
一部の例では、非プロトン性溶媒が、組成物の10重量%~35重量%、10重量%~30重量%、10重量%~20重量%、10重量%~15重量%、又は約2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、又は20重量%の量で存在する。
【0360】
一部の例では、非ポリマー担体が液体である組成物が提供される。液体非ポリマー担体は、好ましくは非水溶性となる高粘度液体担体材料(「HVLCM」)であり、37℃で少なくとも5,000cPの(場合により少なくとも10,000、15,000、20,000、25,000又は50,000cPもの)粘度を有し、周囲条件下又は生理的条件下ではニート(そのまま)では結晶化しない。用語「非水溶性」は、周囲条件下で1重量パーセント未満の程度で水中で可溶性の材料を指す。用語「非ポリマー」は、エステルの酸部分に繰り返し単位を本質的に有さないエステル又は混合エステル、並びに、酸部分の官能単位が少数回繰り返される酸部分を有するエステル又は混合エステル(すなわち、オリゴマー)を指す。一般的に、エステルの酸部分に5個超の同一の隣接する繰り返し単位又は量体を有する材料は、本明細書中で使用される用語「非ポリマー」から除外されるが、二量体、三量体、四量体、又は五量体を含む材料は、この用語の範囲内に含まれる。エステルが、乳酸又はグリコール酸などのさらにエステル化され得るヒドロキシ含有カルボン酸部分から形成される場合、繰り返し単位の数は、乳酸部分又はグリコール酸部分の数ではなく、ラクチド部分又はグリコリド部分の数に基づいて計算され、ここでラクチド繰り返し単位は、それらの各ヒドロキシ部分及びカルボキシ部分によりエステル化された2つの乳酸部分を含み、またここでグリコリド繰り返し単位は、それらの各ヒドロキシ部分及びカルボキシ部分によりエステル化された2つのグリコール酸部分を含む。そのアルコール部分中に1~20個のエーテル化ポリオール、又はそのアルコール部分中に1~10個のグリセロール部分を有するエステルは、本明細書中で使用されるときには「非ポリマー」であるとみなされる。
【0361】
特定の例において、HVLCMは、溶媒と混合した場合、いくつかの場合には顕著に粘度が低下し、標準的な医療デバイスを用いて投与し得る低粘度液体担体材料(「LVLCM」)を形成する。LVLCM組成物は、シリンジ又は他の移植手段により容易に流入及び流出するため、典型的には、HVLCM組成物よりも体内に入れるのが容易である。また、エマルションとして容易に製剤化することができる。LVLCMは任意の所望の粘度を有し得るが、その粘度は、一般的に、対応するHVLCMよりも低い。一例として、約6,000cP未満、約4,000cP未満、約1,000cP未満、又は200cP未満のLVLCMの粘度範囲は、典型的には、in vivo適用に有用である。
【0362】
本組成物中で使用される特定のHVLCMは、様々な材料のうちの1つ以上であり得る。好適な材料として、1種以上のカルボン酸の非ポリマーエステル又は混合エステルが挙げられる。特定の例において、エステルは、2~20個のヒドロキシ部分を有するポリオールでエステル化されるカルボン酸から形成され、これは1~20個のエーテル化ポリオールを含み得る。HVLCMのエステルの酸部分を形成するために特に好適なカルボン酸としては、1つ以上のヒドロキシ基を有するカルボン酸、例えば、ラクトン若しくは環状カーボネートの開環アルコール分解によって得られるもの、又はカルボン酸無水物のアルコール分解によって得られるものなどが挙げられる。またアミノ酸も、ポリオールとエステルを形成するのに好適である。特定の例において、エステル又は混合エステルは、カルボン酸無水物(例えば環状無水物)のアルコール分解によって得られた1つ以上のカルボン酸でエステル化された1つ以上の末端ヒドロキシ部分を有するアルコール部分を含有する。
【0363】
HVLCMを形成するためにエステル化され得る好適なカルボン酸の非限定的な例としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ε-ヒドロキシカプロン酸、セリン、並びに任意の対応するラクトン又はラクタム、トリメチレンカーボネート、及びジオキサノンなどが挙げられる。ヒドロキシ含有酸は、それ自体、それらのヒドロキシ部分と、材料中の他のカルボン酸部分と同じであってもよく又は異なっていてもよいさらなるカルボン酸との反応を通して、さらにエステル化されていてもよい。好適なラクトンとしては、限定するものではないが、グリコリド、ラクチド、ε-カプロラクトン、ブチロラクトン、及びバレロラクトンなどが挙げられる。好適なカーボネートとしては、限定するものではないが、例えばトリメチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0364】
エステル又は混合エステルのアルコール部分は、2~20個のヒドロキシ基を有するポリヒドロキシアルコールから誘導され得、上記に示したとおり、1~20個のポリオール分子をエーテル化することにより形成することができる。好適なアルコール部分としては、以下のものから1つ以上の水素原子を除去することによって誘導されるものが挙げられる:単官能性C1-C20アルコール、二官能性C1-C20アルコール、三官能性アルコール、ヒドロキシ含有カルボン酸、ヒドロキシ含有アミノ酸、リン酸含有アルコール、四官能性アルコール、糖アルコール、単糖及び二糖、糖酸、並びにポリエーテルポリオール。より具体的には、アルコール部分は、以下の1つ以上を含み得る:ドデカノール、ヘキサンジオール、より詳細には1,6-ヘキサンジオール、グリセロール、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、セリン、ATP、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、スクロース、グルクロン酸、1~10個のグリセロール単位を含有するポリグリセロールエーテル、1~20個のエチレングリコール単位を含有するポリエチレングリコール。
【0365】
特定の例において、HVLCMのエステル又は混合エステルのカルボン酸部分のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つのオキシ部分を含む。さらにより特定の例において、カルボン酸部分のそれぞれは、少なくとも1つのオキシ部分を含む。
【0366】
別の特定の例において、エステル又は混合エステルのカルボン酸部分の少なくとも1つは、2~4個の炭素原子を含む。さらにより特定の例において、エステル又は混合エステルのカルボン酸部分のそれぞれは、2~4個の炭素原子を含有する。
【0367】
別のより特定の例において、エステル又は混合エステルのカルボン酸部分の少なくとも1つは、2~4個の炭素原子を有し、少なくとも1つのオキシ部分を含む。別のより特定の例において、エステル又は混合エステルのカルボン酸部分のそれぞれは、2~4個の炭素原子を有し、少なくとも1つのオキシ部分を含む。
【0368】
特定の例において、HVLCMは、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、又は糖アルコール部分と1つ以上のアルカン酸部分とのいくつかの他のエステルであり得る。
【0369】
特定の例において、HVLCMは、以下からなる群から選択される構造を有する:
【0370】
【化1】
(式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、及びアシルオキシ置換アルカノイルからなる群から独立して選択され;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8の少なくとも3つは水素以外であり;
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8がアセチル及びイソブチリルからなる群から選択される場合、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8の少なくとも3つはアセチルである);
【0371】
【化2】
(式中、R1、R2、及びR3は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、及びアシルオキシ置換アルカノイルからなる群から独立して選択され、nは1~20である);
【0372】
【化3】
(式中、nは4~8の整数であり、R1及びR2は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、及びアシルオキシ置換アルカノイルからなる群から独立して選択される);
【0373】
【化4】
【0374】
【化5】
(式IV及びV中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、及びアシルオキシ置換アルカノイルからなる群から独立して選択される);
【0375】
【化6】
【0376】
【化7】
(式VI及びVII中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、及びアシルオキシ置換アルカノイルからなる群から独立して選択される);
【0377】
【化8】
(式中、R1、R2、R3、及びR4は、水素、アルカノイル、ヒドロキシ置換アルカノイル、及びアシルオキシ置換アルカノイルからなる群から独立して選択される)。
【0378】
式I~VIIIのそれぞれにおいて、アルカノイル基、ヒドロキシ置換アルカノイル基、及びアシルオキシ置換アルカノイル基の1つ以上は、カルボニル炭素を含む2~6個の炭素原子を有するアルカノイル部分を含み得る。さらに、別のより特定の例において、式I~VIIIのそれぞれは、少なくとも1つのヒドロキシ置換又はアシルオキシ置換アルカノイル部分を含む。さらにより特定の例において、これらのヒドロキシ置換又はアシルオキシ置換アルカノイル部分の少なくとも1つは、カルボニル炭素を含む2~6個の炭素原子を有するアルカノイル部分を含む。
【0379】
HVLCMのアシルオキシ置換基を形成するアシル基は、用語「アシル」の一般的に受け入れられている定義に従ってカルボン酸から誘導される任意の部分であり得る。より具体的には、組成物のアシル基は、R9CO-の形態であってもよく、ここでR9は、任意選択的に、2~6個の炭素原子のオキシ置換アルキルであってよい。このオキシ置換は、ヒドロキシ置換、又はさらなるアシル部分による置換の形をとり得る。例えば、R9は、1つの酸のヒドロキシと別の酸のカルボキシとの間のエステル結合によって連結されたオキシ置換カルボン酸のオリゴマーであり得る。さらに特定の例において、R9は、1~5個のラクチド単位又はグリコリド単位を含み得、ここでラクチド単位は、共にエステル化された2つの乳酸部分を含み、グリコリド単位は、共にエステル化された2つのグリコール酸部分を含む。あるいは、R9は、混合されたラクチド単位及びグリコリド単位を含んでいてもよく、又は、ラクチド単位又はグリコリド単位の存在を伴わず、混合された乳酸及びグリコール酸を含んでいてもよい。
【0380】
特定のHVLCM材料としては、式II又はIIIによる成分が挙げられ、式中、R1、R2、及びR3は、独立して、ラクトイル、ポリラクトイル、ε-カプロイル、ヒドロキシアセチル、又はポリヒドロキシアセチルであり、特に、ポリラクトイル及びε-カプロイル、又はポリラクトイル及びポリヒドロキシアセチルである。
【0381】
比較的小さな鎖(2~6個の炭素原子)のオキシ置換カルボン酸部分をエステル又は混合エステルにおいて使用することが有利である。これらの酸部分が、オリゴマーエステル(すなわち、後続のカルボキシと前のオキシとのエステル化を介して前の酸部分に結合した後続の酸部分)の形態で存在する場合、材料がより親水性であるため、材料の加水分解は、6個超の炭素原子で作製されたオリゴマーの場合よりもかなり容易である。一般的に、薬物送達のためには、HVLCMが非水溶性であることが望ましいが、やや親水性であってもよい。一般的に、より多くの親水性単位(より高いO:C比により決定される)で合成されたHVLCMは、より急速に水を吸収し、より迅速に分解することが予想される。例えば、4モルのグリコリドを1モルのグリセロールに共有結合的に連結することによって作製されたHVLCMは、2モルのグリコリドと2モルのラクチドを1モルのグリセロールに共有結合的に連結することによって作製されたHVLCMよりも、急速に水を吸収し、迅速に分解することが予想される。同様の増加は、より柔軟な分子及び自由体積論(free volume argument)に基づくより分岐した球状の分子についても予想され得る。柔軟で分岐した分子の使用はまた、LVLCMの粘度を低下させるという利点も有し得る。異なる鎖長のカルボン酸及び/又はポリオールを使用し、且つオキシ置換を有するカルボン酸を使用することにより、結果として得られるエステルの親水性及び溶解性の程度の正確な制御が可能になる。これらの材料は、in vivoでの溶解に対して十分に耐性があるため、in vivoでのオキシ結合加水分解を伴うか又はそれが後続する、運ばれた麻酔剤の体内への徐放を提供することができる。
【0382】
さらにより特定の例において、HVLCMは、2:6のアセテート酸部分とイソブチレート酸部分との比を有するスクロースのアセテートエステル及びイソブチレートエステルを除外する。しかし、2:6のアセテート部分とイソブチレート部分との比を有するイソ酪酸酢酸スクロースエステルは、エアロゾル製剤における使用の範囲内には包含される。この材料は、米国特許第2,931,802号に記載される手順に従って作製することができる。
【0383】
一般的に、好適なHVLCMエステルは、結果として得られるエステルのアルコール部分を形成する1つ以上のアルコール、特に1つ以上のポリオールと、結果として得られるエステルの酸部分を形成する1つ以上のカルボン酸、ラクトン、ラクタム、カーボネート、又はカルボン酸の無水物とを反応させることによって作製することができる。エステル化反応は、単に加熱するだけで行うことができるが、いくつかの例では、強酸又は強塩基エステル化触媒の添加を用いてもよい。あるいは、2-エチルヘキサン酸第一スズなどのエステル化触媒を用いてもよい。加熱される反応混合物は、触媒の有無に関わらず、撹拌しながら加熱され、その後、例えば真空下で乾燥させて任意の未反応の出発物質を除去し、液体製品を生成する。イソ酪酸酢酸スクロースは、米国特許第2,931,802号に記載されている手順に従うことにより作製することができる。
【0384】
一部の例では、目的の組成物は、イソ酪酸酢酸スクロースを含む。これらの場合、イソ酪酸酢酸スクロースは、ブピバカイン組成物の重量に対して、10重量%~95重量%、10重量%~90重量%、15重量%~85重量%、20重量%~80重量%、25重量%~75重量%、30重量%~70重量%、又は35重量%~65重量%の量で組成物中に存在し得る。例えば、イソ酪酸酢酸スクロースは、ブピバカイン組成物の重量に対して、約10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、70重量%、71重量%、72重量%、73重量%、74重量%、75重量%、76重量%、77重量%、78重量%、79重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%の量で組成物中に存在し得る。特定の場合、イソ酪酸酢酸スクロースは、ブピバカイン組成物の重量に対して60重量%~70重量%のレベルで組成物中に存在する。
【0385】
一部の例では、対象組成物を製剤化するために使用されるイソ酪酸酢酸スクロース中に過酸化物が存在する。上記のとおり、「存在する」という用語は、過酸化物がゼロを上回る量でイソ酪酸酢酸スクロース中に存在する(例えば、少なくとも単一の過酸化物の分子がイソ酪酸酢酸スクロース中に存在する)ことを特定するために使用される。一部の例では、過酸化物は、200ppm未満、195ppm未満、190ppm未満、185ppm未満、180ppm未満、175ppm未満、170ppm未満、165ppm未満、160ppm未満、155ppm未満(150ppm未満を含む)のレベルでイソ酪酸酢酸スクロース中に存在する。例えば、対象組成物(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物)は、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、6ppm、7ppm、8ppm、9ppm、10ppm、11ppm、12ppm、13ppm、14ppm、15ppm、16ppm、17ppm、18ppm、19ppm、20ppm、21ppm、22ppm、23ppm、24ppm、25ppm、26ppm、27ppm、28ppm、29ppm、30ppm、31ppm、32ppm、33ppm、34ppm、35ppm、36ppm、37ppm、38ppm、39ppm、40ppm、41ppm、42ppm、43ppm、44ppm、45ppm、46ppm、47ppm、48ppm、49ppm、50ppm、51ppm、52ppm、53ppm、54ppm、55ppm、56ppm、57ppm、58ppm、59ppm、60ppm、61ppm、62ppm、63ppm、64ppm、65ppm、66ppm、67ppm、68ppm、69ppm、70ppm、71ppm、72ppm、73ppm、74ppm、75ppm、76ppm、77ppm、78ppm、79ppm、80ppm、81ppm、82ppm、83ppm、84ppm、85ppm、86ppm、87ppm、88ppm、89ppm、90ppm、91ppm、92ppm、93ppm、94ppm、95ppm、96ppm、97ppm、98ppm、99ppm、100ppm、101ppm、102ppm、103ppm、104ppm、105ppm、106ppm、107ppm、108ppm、109ppm、110ppm、111ppm、112ppm、113ppm、114ppm、115ppm、116ppm、117ppm、118ppm、119ppm、120ppm、121ppm、122ppm、123ppm、124ppm、125ppm、126ppm、127ppm、128ppm、129ppm、130ppm、131ppm、132ppm、133ppm、134ppm、135ppm、136ppm、137ppm、138ppm、139ppm、140ppm、141ppm、142ppm、143ppm、144ppm、145ppm、146ppm、147ppm、148ppm、149ppm、150ppm、151ppm、152ppm、153ppm、154ppm、155ppm、156ppm、157ppm、158ppm、159ppm、160ppm、161ppm、162ppm、163ppm、164ppm、165ppm、166ppm、167ppm、168ppm、169ppm、170ppm、171ppm、172ppm、173ppm、174ppm、175ppm、176ppm、177ppm、178ppm、179ppm、180ppm、181ppm、182ppm、183ppm、184ppm、185ppm、186ppm、187ppm、188ppm、189ppm、190ppm、191ppm、192ppm、193ppm、194ppm、195ppm、196ppm、197ppm、198ppm又は199ppmのレベルで存在する過酸化物を有するイソ酪酸酢酸スクロースを用いて調製される。
【0386】
これに関して、ポリオールは、それがカルボン酸のエステル化の基質、特にラクチド、グリコリド、又は他のエステル化されるヒドロキシ置換カルボン酸のオリゴマーのエステル化の基質を提供するという意味において、オリゴマー化開始剤としてみなすことができる。
【0387】
特定の例において、HVLCMを、粘度低下溶媒と混合して低粘度液体担体材料(LVLCM)を形成することが可能であり、次いでこれを、投与前に、送達すべき1種以上の麻酔剤と混合することができる。これらの溶媒は、水溶性、非水溶性、又は水混和性であり得、例えば、アセトン、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、N-(ベータヒドロキシエチル)ラクタミドブチレングリコール、カプロラクタム、カプロラクトン、コーン油、デシルメチルスルホキシド、ジメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、エタノール、酢酸エチル、乳酸エチル、オレイン酸エチル、グリセロール、グリコフロール(テトラグリコール)、ミリスチン酸イソプロピル、酢酸メチル、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン、MIGLYOL(登録商標)(カプリル酸及び/又はカプリン酸とグリセロール又はアルキレングリコールとのエステル、例えば、MIGLYOL(登録商標)810又は812(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、MIGLYOL(登録商標)818(カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド)、MIGLYOL(登録商標)829(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリド)、MIGLYOL(登録商標)840(プロピレングリコールジカプリレート/カプレート))、オレイン酸、ピーナッツ油、ポリエチレングリコール、プロピレンカーボネート、2-ピロリドン、ゴマ油、SOLKETAL([±]-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール)、テトラヒドロフラン、TRANSCUTOL(登録商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル、カルビトール)、トリアセチン、クエン酸トリエチル、フタル酸ジフェニル、並びにこれらの組み合わせなどを挙げることができる。さらに、組成物が、例えば局所適用のためにエアロゾルとして適用される場合、溶媒は、1種以上の噴射剤、例えば、トリクロロフルオロメタン及びジクロロフルオロメタンのようなCFC噴射剤、テトラフルオロエタン(R-134a)のような非CFC噴射剤、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(R-227)、ジメチルエーテル、プロパン、及びブタンであってもよく、又はこれらを含んでいてもよい。
【0388】
特に好適な溶媒及び/又は噴射剤としては、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、ジメチルスルホキシド、エタノール、乳酸エチル、グリセロール、グリコフロール(テトラグリコール)、N-メチル-2-ピロリドン、MIGLYOL(登録商標)810、ポリエチレングリコール、プロピレンカーボネート、2-ピロリドン、及びテトラフルオロエタンなどが挙げられる。
【0389】
他の可能な溶媒としては、パーフルオロデカリン、パーフルオロトリブチルアミン、メトキシフルラン、グリセロールホルマール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジグライム、及びジメチルイソソルビドなどが挙げられる。
【0390】
組成物が麻酔剤を投与するためのLVLCMとして使用される場合、組成物は、HVLCMが可溶である溶媒を含有するべきである。特定の例では、麻酔剤も上記溶媒に可溶性である。なおさらなる例において、溶媒は、第1の麻酔剤が可溶である第2の麻酔剤である。溶媒は、好ましくは非毒性であり、あるいは生体適合性である。
【0391】
特定の例では、溶媒は投与時に体液又は他の水性環境に迅速に拡散し、組成物を凝固させ及び/又は組成物がより粘性になるように、少なくとも水溶性である。いくつかの例では、溶媒は、組成物からの溶媒の拡散、及びこれに対応する組成物の粘度の増加が遅くなるように、水又は体液と完全には混和しない。この特性を少なくともある程度有する好適な溶媒としては、ベンジルベンゾエート、MIGLYOL(登録商標)810、ベンジルアルコール、及びクエン酸トリエチルなどが挙げられる。ベンジルアルコールは、麻酔剤でもあるため、特に好適であり得る。
【0392】
1,6-ヘキサンジオール又はグリセロールのエステルがHVLCMとして使用される場合、いくつかの可能な溶媒は、エタノール、N-メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、及びPEG400である。
【0393】
溶媒は、典型的には、組成物の総重量(重量%)に対して99.7重量パーセント~0.5重量パーセント、95パーセント~1重量%、75~10重量%、又は50~15重量%の範囲内の量で組成物に添加される。溶媒は、典型的には、55パーセント~10重量%の範囲内の量で組成物中に存在する。
【0394】
なおさらなる例において、組成物はHVLCMと混和性ではない材料を含み、その結果、単独で又はHVLCM用の溶媒と組み合わせてHVLCMと組み合わせた場合、結果として得られる組成物はエマルションを形成する。このようなエマルションは、水若しくはグリセロール中で乳化されたSAIB/MIGLIOL(登録商標)混合物の場合のように、HVLCMを分散相中に含んでいてもよく、又は、これらは、HVLCM中で乳化された水溶液若しくは水非混和性溶媒中のHVLCMの溶液の場合のように、HVLCMを連続相の成分として含んでいてもよい。
【0395】
一部の例では、送達ビヒクル又はシステムは、ポリオルトエステルポリマー及び極性非プロトン性溶媒を含む。また、活性剤の投与のための低粘度送達システムも開示される。いくつかの例において、低粘度送達システムは、ポリオルトエステルポリマー、極性非プロトン性溶媒及びトリグリセリド粘度低下剤を含む溶媒を含む。
【0396】
本明細書中で提供される組成物のために有用なポリオルトエステルは、一般的に、ジケテンアセタールとジオールとの反応から生じる交互残基で構成され、ここで、ジケテンアセタール由来残基の各隣接ペアは、反応したジオールの残基で分離される。ポリオルトエステルは、アルファ-ヒドロキシ酸含有サブユニット(すなわちアルファ-ヒドロキシ酸又はその環状ジエステルから誘導されるサブユニット)、例えば、グリコリド、ラクチド又はそれらの組み合わせを含むサブユニット(すなわちポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(全ての比のラクチドとグリコリド、例えば75:25、65:35、50:50等を含む))を含み得る。このようなサブユニットは、潜在的酸サブユニットとも呼ばれ;これらの潜在的酸サブユニットはまた、それらの末端ヒドロキシル基により、本明細書で使用されるより一般的な「ジオール」分類の範囲内でもある。
【0397】
ポリオルトエステルは、例えば、米国特許第4,549,010号及び第5,968,543号に記載されるとおりに調製することができる。本明細書中で提供される組成物における使用に好適な例示的なポリオルトエステルは、米国特許第8,252,304号に記載されている。ポリオルトエステルは、米国特許第8,252,305号及び第10,213,510号に記載されている型のものであってもよく、及び/又はこれらの文献に記載されているとおりに作製されてもよく、これら文献は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0398】
サブユニットR1を含むアルファ-ヒドロキシ酸のモル百分率は、一般的に、総ジオール成分(以下に提供されるR1及びR3)の0~20モル%である。1つ以上の例において、ポリオルトエステル製剤中のアルファ-ヒドロキシ酸含有サブユニットのモル百分率は、少なくとも0.01モルパーセントである。ポリマー中のアルファ-ヒドロキシ酸含有サブユニットの例示的なパーセンテージは、0~50モルパーセント、又は0~25モルパーセント、又は0.05~30モルパーセント、又は0.1~25モルパーセントである。例えば、一例では、ポリマー中のアルファ-ヒドロキシ酸含有サブユニットのパーセンテージは、0~50モルパーセントである。別の例において、ポリマー中のアルファ-ヒドロキシ酸含有サブユニットのパーセンテージは、0~25モルパーセントである。さらに別の特定の例において、ポリマー中のアルファ-ヒドロキシ酸含有サブユニットのパーセンテージは、0.05~30モルパーセントである。さらに別の例において、ポリマー中のアルファ-ヒドロキシ酸含有サブユニットのパーセンテージは、0.1~25モルパーセントである。例示として、アルファ-ヒドロキシ酸含有サブユニットのパーセンテージは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、24、26、27、28、29又は30モルパーセントであり得、任意の1つのより低いモル百分率数と任意のより高いモル百分率数との組み合わせによって形成される、それらの中に存在する任意の及び全ての範囲を含む。
【0399】
例示的なポリオルトエステルは、1000Da~200,000Da、例えば2,500Da~100,000Da又は3,500Da~20,000Da又は4,000Da~10,000Da又は5,000Da~8,000Daの重量平均分子量を有する。例示的な分子量(Da)は、2500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、120,000、150,000、175,000及び200,000、並びにそれらの中の範囲であり、ここで例示的な範囲は、上記の任意の1つのより低い分子量と、上記で示される、選択されたより低い分子量に対する任意の1つのより高い分子量とを組み合わせることにより形成される範囲を含む。
【0400】
送達システム中のポリオルトエステルに関連する1つの特定の例において、ポリオルトエステルは、2,500ダルトン~10,000ダルトンの分子量を有する。
【0401】
いくつかの例において、組成物は、組成物の40重量%~75重量%、40重量%~60重量%、45重量%~55重量%、65重量%~75重量%、又は約40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%又は75重量%を占める。
【0402】
組成物に選択された特性を付与するために、多数の好適な添加剤を組成物に含めることができる。例えば、それらの添加剤としては、よりコヒーレントな(coherent)固体インプラント又はより高い粘度を有する組成物を提供して固化する間にそれが所定の位置に保持されるように、少量の生分解性熱可塑性ポリマー、例えばポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド又はそれらのコポリマーを含み得る。このような熱可塑性ポリマーは、Dunnらの米国特許第4,938,763号に開示されている。
【0403】
任意選択的に、細孔形成剤を組成物に含めることができる。細孔形成剤は、水又は体液に実質的に可溶であり、インプラント部位において非ポリマー担体材料及び/又はインプラントの固体マトリックスから周囲の体液に放散する任意の有機又は無機の薬学的に許容される物質であり得る。細孔形成剤は、好ましくは、有機溶媒に不溶性であり、非ポリマー担体材料と均一な混合物を形成することができる。細孔形成剤は、水溶性物質に急速に分解する水非混和性物質でもあり得る。特定の組成物において、細孔形成剤は、非ポリマー担体及び有機溶媒と混合して組み合わせられる。組成物中で使用し得る好適な細孔形成剤としては、例えば、スクロース及びデキストロースなどの糖類、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムなどの塩類、ヒドロキシルプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール及びポリビニルピロリドンなどのポリマーが挙げられる。塩又は糖などの、規定の孔径を提供する固体結晶が好ましい。
【0404】
上記のとおり、様々な添加剤を組成物に任意選択的に添加して、その特性を改変し、特にそこに含まれる麻酔剤に関する組成物の放出特性を改変することができる。添加剤は、組成物に所望の特性を付与するのに十分な任意の量で存在し得る。使用される添加剤の量は、一般的に、添加剤の性質と達成すべき効果の関数であり、当業者により容易に決定され得る。好適な添加剤は、米国特許第5,747,058号に記載されており、その全内容は参照により本明細書中に組み込まれる。より具体的には、好適な添加剤としては、水、生分解性ポリマー、非生分解性ポリマー、天然油、合成油、炭水化物又は炭水化物誘導体、無機塩、BSA(ウシ血清アルブミン)、界面活性剤、有機化合物(例えば糖)、及び有機塩(例えばクエン酸ナトリウム)が挙げられる。一般に、水溶性が低いほど(すなわち、より親油性であるほど)、添加剤は、添加剤を含まない同じ組成物と比較して、麻酔剤の放出速度をより低下させるであろう。さらに、組成物の強度又は多孔度などの特性を増加させる添加剤を含むことが望ましい場合がある。
【0405】
添加剤の添加を用いて麻酔剤の送達時間を延長し、組成物を、より長期間の投与を必要とするか又はこれに対応する医療用途に適するようにすることもできる。この点に関して好適な添加剤としては、米国特許第5,747,058号及び第5,736,152号に開示されているものが挙げられる。特に、この目的に好適な添加剤としては、セルロース系ポリマー及び生分解性ポリマーなどのポリマー添加剤が挙げられる。好適なセルロース系ポリマーとしては、セルロースアセテート、セルロースエーテル、及びセルロースアセテートブチレートが挙げられる。好適な生分解性ポリマーとしては、ポリラクトン、ポリ無水物、及びポリオルトエステル、特に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、及びこれらのコポリマーなどが挙げられる。
【0406】
存在する場合、添加剤は、典型的には、組成物の総重量に対して0.01重量パーセント~20重量パーセント、より詳細には、0.1重量パーセント~20重量パーセントの範囲内の量で組成物中に存在し、より典型的には、1、2、又は5重量パーセント~10重量パーセントの範囲内の量で組成物中に存在する。緩衝液などの特定の添加剤は、組成物中に少量しか存在しない。
【0407】
以下のカテゴリは、本組成物中で利用し得る添加剤のクラスの非限定的な例である。
【0408】
添加剤としては、生分解性ポリマー及びオリゴマーなどが挙げられる。上記のポリマーを使用して、送達すべき麻酔剤の放出プロファイルを変更し、組成物に完全性を加え、あるいは組成物の特性を改変することができる。好適な生分解性ポリマー及びオリゴマーの非限定的な例としては:ポリ(ラクチド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリレート、ポリ(ホスファジン)、ポリ(ホスホエステル)、ポリエステルアミド、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、分解性ポリウレタン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリアルキレンスクシネート、ポリ(リンゴ酸)、キチン、キトサン、及びコポリマー、ターポリマー、酸化セルロース、又は上記の材料の組み合わせ若しくは混合物などが挙げられる。
【0409】
ポリ(α-ヒドロキシ酸)の例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(DL-乳酸)及びポリ(L-乳酸)、並びにそれらのコポリマーなどが挙げられる。ポリラクトンの例としては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)及びポリ(γ-ブチロラクトン)などが挙げられる。
【0410】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、組成物が生分解性ポリマーを含む場合、対象への投与後に任意の含まれている溶媒が材料から拡散するにつれて、ポリマーの一部が組成物の表面で沈殿又は凝固し得ると考えられる。従って、ポリマーは、麻酔剤(1種又は複数種)の放出に影響を与える放出改質剤として添加されてもよく、又は予め形成されたミクロスフェア、インプラント、若しくは粉砕ポリマー粒子を含む組成物の一部として添加されてもよい。ポリマーの沈殿又は凝固は、このような組成物の液体コアを少なくとも部分的に取り囲む膜(skin)を形成する。この膜は多孔性であり、溶媒がそれを通って周囲の組織中へ拡散し続けることを可能にする。溶媒放出の速度及び膜の形成の程度、並びにその多孔度は、組成物中で使用される溶媒及びポリマーの量及び種類によって制御することができる。
【0411】
組成物と共に使用するための他の添加剤は、非生分解性ポリマーである。添加剤として使用し得る非浸食性ポリマーの非限定的な例としては、ポリアクリレート、エチレン-ビニルアセテートポリマー、セルロース及びセルロース誘導体、アシル置換セルロースアセテート及びその誘導体、非浸食性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリビニル(イミダゾール)、クロロスルホン化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、並びにポリエチレンなどが挙げられる。
【0412】
好ましい非生分解性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、エチレンビニルアセテート、ポリエチレングリコール、セルロースアセテートブチレート(「CAB」)及びセルロースアセテートプロピオネート(「CAP」)などが挙げられる。
【0413】
本組成物中で使用し得る添加剤のさらなるクラスは、天然及び合成の油脂である。動物由来の又は堅果の植物種子由来の油としては、典型的には、脂肪酸、主にオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びリノール酸のグリセリドが挙げられる。通例、分子がより多くの水素を含むほど、油の粘度はより高くなる。
【0414】
好適な天然油及び合成油の非限定的な例としては、植物油、ピーナッツ油、中鎖トリグリセリド、大豆油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、ウイキョウ油、ツバキ油、コーン油、ヒマシ油、綿実油、及び、粗又は精製のいずれかの大豆油、及び中鎖脂肪酸トリグリセリドなどが挙げられる。
【0415】
脂肪は、典型的には、ステアリン酸及びパルミチン酸などの高級脂肪酸のグリセリルエステルである。このようなエステル及びそれらの混合物は、室温で固体であり、結晶構造を示す。ラード及び獣脂はその例である。一般的に、油脂は、非ポリマー担体系の疎水性を高め、分解及び水取り込みを遅らせる。
【0416】
上記の徐放性送達システムのいずれかを、本方法における使用に好適な、液剤、スプレー剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、スラリー剤、オイル剤、エマルション剤、マイクロエマルション剤、固形剤、硬膏剤、フィルム剤、粒子剤、微粒子剤、粉末剤、又は他の適切な形態の医薬組成物として製剤化することができる。このような組成物において、麻酔剤(例えば、第1の麻酔剤)は、所望の効果を達成するための有効量を治療すべき対象に送達するのに十分な量で含まれる。組成物中に組み込まれる麻酔剤の量は、最終的な所望の放出期間及びプロファイル、並びに意図される効果のために必要とされる麻酔薬の濃度によって決まる。
【0417】
可溶性麻酔剤及び不溶性麻酔剤は両方とも、徐放性送達のために非ポリマー担体材料を用いて分配することができる。さらに、組成物は、改変された特性、例えばより速い解速度又はより遅い分解速度を有する送達マトリックスを提供するために、ポリマー賦形剤と共にさらに、製剤化され得る。結果として得られた組成物は、当技術分野で公知の技術に従って、ミクロスフェアに、若しくは巨視的インプラントに、又は他の形状及びサイズに形成することができる。あるいは、その中に麻酔剤(1種又は複数種)が組み込まれた、予め形成されたミクロスフェア、インプラント、又はポリマー粒子を、非ポリマー担体と組み合わせることができる。
【0418】
ミクロスフェアは、当技術分野で公知の多数の方法、並びに米国特許第6,291,013号及び第6,440,493号に記載される方法によって調製することができる。ポリマー粒子を、溶融押出、造粒、溶媒混合、吸収、若しくは同様の技術を用いて形成することも可能であり、又は麻酔剤をイオン交換樹脂などのポリマーマトリックスに吸着させることもできる。結果として得られた材料は、好適な非ポリマー担体材料と組み合わせた場合、非経口的に投与することができる。他の例において、麻酔剤は、リン酸カルシウム又はスクロースなどの非ポリマー材料と組み合わせて、分解を延長する層状化/バリア特性を提供することができる。非ポリマー担体は、その後二次バリアを形成し、高められた送達特性を提供する。非ポリマー担体相は、選択された用途の特定の要件に従って、他の生物学的に活性な物質を含んでいてもよく、又は含んでいなくてもよい。これらの他の生物学的に活性な薬剤は、任意の好適な治療用医薬及び/又は予防用医薬であり得るが、但し、添加される物質は、当技術分野で公知の技術に従うミクロスフェア又はインプラントへの組み込みに適したものである。
【0419】
一部の例では、組成物は、関連の方法と共に、例えば術後疼痛の治療のために、「カイン」分類のアミド型又はアニリド型の局所麻酔薬及び非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含む。一部の例では、徐放性送達ビヒクルは、ポリオルトエステル、アミド型局所麻酔薬及び非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含む半固体ポリマー製剤の形態のポリマー製剤である。いくつかの例において、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、エノール酸NSAIDである。例示的なエノール酸NSAIDとしては、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、及びイソキシカムなどが挙げられる。特定の例では、エノール酸NSAIDはメロキシカムである。特定の場合、組成物は以下のものを含む:1~5重量%のブピバカイン;0.005~0.125重量%のメロキシカム;任意選択的に、マレイン酸;5~12重量%のジメチルスルホキシド又はN-メチルピロリドン、10~40重量%のトリアセチン;及び55~67重量%のポリオルトエステル(例えば、Mw2.5~10kDaを有する)。
【0420】
上記の組成物の全ては、標的部位において持続的局所麻酔を提供するために、本開示の方法において使用することができる。特に、組成物は、液剤、スプレー剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤、スラリー剤、オイル剤、エマルション剤、マイクロエマルション剤、固形剤、硬膏剤、フィルム剤、粒子剤、微粒子剤、粉末剤又は任意の他の好適な医薬組成物形態として製剤化し、その後、局所、眼部、経皮的、非経口(例えば、注射、インプラント等)などの送達技術などを介して対象に投与することができる。麻酔薬及び薬学的に許容される非ポリマー担体を含む組成物は、初期バーストを伴わない対象への投与後の持続的局所麻酔並びに投与後少なくとも24時間、好ましくは投与後36~48時間、及びより好ましくは投与後48~72時間の持続時間を特徴とする麻酔効果を提供するために使用される。特定の例において、局所麻酔の発現は、対象への投与の2時間以内、好ましくは投与の1時間以内、及び一部の例では対象への投与の30分以内に起こる。
【0421】
一部の例では、本開示の組成物は、創傷の治療における使用に好適である。非ポリマー担体系により、滴下、噴霧、塗布、展延、成形(molding)などの極めて簡単な適用技術を用いて、あるいは液体、スプレー、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、スラリー、オイル、エマルション、マイクロエマルション、柔軟な固体若しくは硬膏、フィルム、粒子、微粒子、又は粉末の組成物を手で扱って創傷内へと入れて、麻酔剤(1種又は複数種)を、創傷内に直接及び/又は創傷に隣接して、創傷に容易に適用することが可能になる。従って、本組成物は、任意の大きさ又は形の創傷に使用することが可能であり、より優れた保持及び有効性のために創傷の全領域にわたる麻酔剤(1種又は複数種)の均一な分配を提供する。このような方法を用いて治療することができる創傷は、最も表面的なものから最も深いものまで、表面的なものから切開したものまで、及び外科的なもの(あるいは意図的なもの)から偶発的なものまでにわたり得る。組成物を注射する場合、それは創傷に沿って全ての側面(all side)又は境界の外側にトレイリング注入(trailing injection)を用いて、皮下腔に適用され得る。組合せアプローチを利用することも可能であり、これは例えば、組成物が、例えば創傷(sound)の外科的縫合の前に創傷内に直接配置され、さらに創傷に沿って配置されるものである。特に好ましい例において、本開示の方法は、術後切開痛の治療のための局所麻酔薬としての本組成物の使用を含む。この方法における本組成物の使用は、このような術後疼痛を治療するための全身性麻薬性鎮痛薬の投与などの補助療法を提供する必要性を回避又は少なくとも緩和し得る。従って、本組成物は、治療を行わなかった場合は身体を衰弱させる可能性があり、且つ手術後3~5日間の疼痛治療を必要とし得る、大手術(例えば、開胸術、大動脈修復、腸切除術)、中手術(例えば、帝王切開、子宮摘出術及び虫垂切除術)、並びに小手術(腹腔鏡検査、関節鏡検査、及び生検処置)などのあらゆる種類の医療処置に伴う術後疼痛を治療するために使用することができる。
【0422】
したがって、本明細書中に記載される組成物は、多種多様な方法を用いる本方法の実施において投与することができる。例えば、組成物は、局所的に、眼に、全身的に(例えば、粘膜的に(経口的に、直腸的に、膣的に、又は経鼻的に)、非経口的に(静脈内に、皮下的に、筋肉内に、又は腹腔内に)等に投与され得る。組成物は、注射、滴下、スプレー浸漬、エアロゾル、又はコーティングアプリケーターを介して適用することができる。組成物のエアロゾル若しくはミストを、例えば、局所投与のためのエアロゾル噴射剤を用いて、又は、例えば、経鼻投与若しくは経口粘膜投与に適したネブライザーを使用して投与することができる。
【0423】
好ましくは、組成物は、液剤として注射により、又はエアロゾル剤、ペースト剤若しくはエマルション剤として投与される。エアロゾル剤として使用される場合、エアロゾル溶液中に存在する任意の溶媒は、典型的には、適用すると蒸発し、組成物を薄膜としてセットアップすることを可能にする。あるいは、エアロゾル又はエマルジョンを、無溶媒で調製することもできる。この状況において、エアロゾル噴射剤は溶媒としても機能し得る。エアロゾル及びエマルションの形成は、当業者に公知の技術を用いて達成することができる。例えば、Ansel, H.C. et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 第6版 (1995)を参照されたい。
【0424】
上記の使用に加えて、本組成物は、浸透圧ポンプを介して投与することができる。一例において、デバイスは、対象の組織中に埋め込まれるように設計され、且つ経時的な徐放を行うように設計される。
【0425】
望ましくは押出生分解性ポリマー製の多孔質チューブ又は非多孔質チューブを用いて、組成物を投与することも可能である。チューブは、組成物の特徴及び所望の放出特性に応じて、異なる多孔度で作製することができる。組成物はチューブ内に挿入され、チューブの端部は開いたままにされていてもよく、生物学的に活性な化合物がチューブの端部から拡散するのを可能にし、又はさらなる多孔質ポリマー又は非多孔質ポリマーで閉鎖されていてもよい。多孔質エンドキャップ及び多孔質チューブは、活性化合物が細孔を通過して経時的に拡散することを可能にする。非多孔質エンドキャップ、並びに非多孔質チューブは、ポリマーに可溶な麻酔剤がその中を通過して周囲の組織中へと拡散することを可能にする。麻酔薬のための溶媒ではないが生分解性である非多孔質材料は、麻酔薬が十分に分解するとそれらを放出する。組成物は、投与の準備が整うまで多成分系として調製及び保存され得る。異なる成分の数は、部分的には、組成物の特性によって決まる。投与前に、これらの成分を、例えば、均一な組成物を得るために組み合わせて混合し、これをその後対象に投与することができる。溶媒又は添加剤を上記成分の1つ若しくは全てに対して加えてもよく、又は別の成分を形成してもよく、これも投与前に他の成分と混合される。組成物を多成分混合物に分離することにより、各成分の保存条件を最適化し、経時的な成分間の任意の有害な相互作用を最小限に抑えることが可能となる。その結果、保存安定性が高まる。
【0426】
一部の例では、本開示の組成物は、希釈を必要としない。「希釈」という用語は、本明細書中でその従来の意味において使用され、組成物の1つ以上の成分の濃度を低減するための、例えば組成物中の活性剤成分の濃度を低減するための成分(例えば、溶媒などの流動成分)の添加を指す。一部の例では、対象組成物は、水又は他の溶媒で希釈されない。
【0427】
一部の例では、本開示の組成物は、さらなる混合を必要としない。「さらなる混合」という表現は、本明細書中でその従来の意味において使用され、組成物を処理して、成分の均一な、均質な又は使用可能な混合物を生成するさらなるステップを指す。特定の場合、組成物は、使用前の撹拌を全く必要としない。他の例では、組成物は、使用前のサンプル容器の振盪又は反復的反転を全く必要としない。
【0428】
本開示はまた、徐放性薬物送達製剤の安定性及び安全性を改善するための複数の戦略にも関する。この戦略は、滅菌の改善、光誘導性分解の防止、不活性容器のクロージャー、及び低い金属含有量を包含する。
【0429】
いくつかの態様において、本開示は、低量の2,6-ジメチルアニリン(式I):
【0430】
【化9】
を有する徐放性薬物送達製剤に関する。
【0431】
一部の例では、2,6-ジメチルアニリンは、500ppm未満、例えば300ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、15ppm未満、12ppm未満、10ppm未満、又は5ppm未満のレベルで薬物送達製剤中に存在する。いくつかの例において、2,6-ジメチルアニリンは、0.2ppm~500ppm、例えば0.3ppm~200ppm、0.4ppm~100ppm、0.5ppm~10ppm、又は2ppm~8ppmのレベルで薬物送達製剤中に存在する。例えば、組成物(例えば、ブピバカイン、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールを含むブピバカイン組成物)中の2,6-ジメチルアニリンは、1ppm~10ppm、10ppm~20ppm、20ppm~30ppm、30ppm~40ppm、40ppm~50ppm、50ppm~60ppm、60ppm~70ppm、70ppm~80ppm、80ppm~90ppm、90ppm~100ppm、100ppm~110ppm、110ppm~120ppm、120ppm~130ppm、130ppm~140ppm、140ppm~150ppm、150ppm~160ppm、160ppm~170ppm、170ppm~180ppm、180ppm~190ppm、190ppm~200ppm、200ppm~210ppm、210ppm~220ppm、220ppm~230ppm、230ppm~240ppm、240ppm~250ppm、250ppm~260ppm、260ppm~270ppm、270ppm~280ppm、280ppm~290ppm、290ppm~300ppm、300ppm~310ppm、310ppm~320ppm、320ppm~330ppm、330ppm~340ppm、340ppm~350ppm、350ppm~360ppm、360ppm~370ppm、370ppm~380ppm、380ppm~390ppm、390ppm~400ppm、400ppm~410ppm、410ppm~420ppm、420ppm~430ppm、430ppm~440ppm、440ppm~450ppm、450ppm~460ppm、460ppm~470ppm、470ppm~480ppm、480ppm~490ppm、490ppm~500ppmのレベルで存在し得る。
【0432】
一部の例では、本開示は、低量の活性医薬剤のN-オキシドを有する組成物に関する。例えば、活性医薬剤のN-オキシドは、組成物の重量に対して1重量%未満、例えば0.7重量%未満、0.5重量%未満、又は0.4重量%未満のレベルで組成物中に存在し得る。いくつかの例において、活性医薬剤のN-オキシドは、組成物の重量に対して0.01重量%~1重量%、例えば0.05重量%~0.4重量%、0.1重量%~0.4重量%、又は0.1重量%~0.2重量%のレベルで組成物中に存在する。活性医薬剤のN-オキシドのレベルが高すぎる場合、組成物の有効性が低下する可能性があり、これが問題となり得る。いくつかの態様において、本開示は、低量のブピバカインN-オキシド(式II):
【0433】
【化10】
を有する徐放性薬物送達製剤に関する。
【0434】
一部の例では、ブピバカインN-オキシドは、組成物の重量に対して1重量%未満、例えば0.7重量%未満、又は0.4重量%未満のレベルで組成物中に存在する。いくつかの場合、ブピバカインN-オキシドは、組成物の重量に対して0.01重量%~1重量%、例えば0.05重量%~0.4重量%、又は0.1重量%~0.2重量%のレベルで組成物中に存在する。
【0435】
一部の例では、組成物は、低レベルの過酸化物を有する成分から作製される。例えば、本組成物は、活性医薬剤;200ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有するイソ酪酸酢酸スクロースを含む高粘度液体担体材料(HVLCM);及び有機溶媒を組み合わせることにより作製することができる。いくつかの例において、イソ酪酸酢酸スクロースは、100ppm未満、例えば80ppm未満又は60ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有する。一部の例では、イソ酪酸酢酸スクロースは、1ppm~100ppm、例えば2ppm~80ppm、又は3ppm~60ppmのレベルで存在する過酸化物を有する。
【0436】
一部の例では、本組成物は、活性医薬剤;イソ酪酸酢酸スクロースを含む高粘度液体担体材料(HVLCM);及び100ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有する有機溶媒、例えば、ベンジルアルコールを組み合わせることによって作製することができる。いくつかの例において、有機溶媒は、85ppm未満、例えば10ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有する。一部の例では、有機溶媒は、1ppm~90ppm、例えば2ppm~85ppm、又は3ppm~10ppmのレベルで存在する過酸化物を有する。
【0437】
一部の例では、対象組成物中の分解生成物(例えば2,6-ジメチルアニリン、ブピバカインN-オキシド)の量は、UV検出を有するHPLCにより測定することができる。他の場合において、2,6-ジメチルアニリンの量は、核磁気共鳴(NMR)分光法により決定される。他の例において、2,6-ジメチルアニリンの量は、ガスクロマトグラフィー(例えば、ガスクロマトグラフィー-質量分析、GCMS)により決定される。一部の例では、2,6-ジメチルアニリンの量は、液体クロマトグラフィー(例えば、液体クロマトグラフィー-質量分析、LCMS)により決定される。別段に特定されない限り、特許請求の範囲において記載される2,6-ジメチルアニリンの量は、LCMSにより決定される。いくつかの例では、2,6-ジメチルアニリンの量は、FIJALEK et al., Journal of Pharamaceutical and Biomedical Amalysis, 37:913-918 (2005)に記載されているとおり、電気化学的検出により測定することが可能であり、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0438】
一部の例では、過酸化物の量は、電位差滴定、例えばヨウ素滴定により測定される。過酸化物の量を測定するための他の技術としては、例えば、ボルタンペロメトリック法、分光光度法(例えば、炭酸水素コバルトと400nmで測定された吸光度、シュウ酸チタンと260nmで測定された吸光度、又はペルオキシダーゼ酵素と596nmで測定された吸光度を使用する)、蛍光光度法、蛍光相関分光法(FCS)、化学発光、電気化学、イオンクロマトグラフィー(IC)、及び共鳴光散乱(RLS)などが挙げられる。別段に特定されない限り、特許請求の範囲において記載される過酸化物の量は、炭酸水素コバルトと400nmで測定された吸光度を用いた分光光度法により決定される。
【0439】
一態様において、本開示は、許容できないレベルの分解生成物、例えば遺伝毒性の不純物などの形成を伴わない徐放性薬物送達製剤の滅菌に関する。
【0440】
一部の例では、ガンマ線照射が、分解生成物(例えば既知の遺伝毒性分解物である2,6-ジメチルアニリンなど)のレベルを著しく増加させるため、許容可能な滅菌法ではないことが発見された。ガンマ線照射は酸化反応を伴うが、2,6-ジメチルアニリンの形成は加水分解反応を包含するため、ガンマ線照射の結果としての2,6-ジメチルアニリンの形成は、驚くべきことであった。
【0441】
代替的滅菌技術の評価を、12重量%ブピバカイン、66重量%イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、及び22重量%ベンジルアルコール(「製剤A」)からなる例示的な製剤を用いて行った。滅菌技術は以下のものを含んでいた:乾熱滅菌、蒸気滅菌、及び濾過滅菌とそれに続く無菌処理。その評価は以下のとおりに結論づけられた:
【0442】
- 一部の例では、滅菌するための乾熱の使用は、乾熱滅菌温度が製品の引火点を超えており、製品を長期間高温に曝露することが必要であったため、許容可能ではなかった。製剤Aの引火点は116℃(密閉カップ)であり;典型的な滅菌サイクルは170℃で2時間以上である。製品をこの温度に加熱するために予防策を採ることもできるが、人員及び工場の安全のため、リスクは正当化されなかった。さらに、いくつかの例において、フルオロカーボンコーティングされたストッパーは、典型的な乾熱滅菌(例えば250℃で≧30分間)に耐えることができない。
【0443】
- 製剤Aを滅菌するための蒸気の使用は、製剤が非水性であるため許容可能ではなかった。蒸気滅菌は、飽和蒸気を高圧で使用し、細胞を変性させる。バイアル中の水性製品は、製剤中の水を用いて、容器のヘッドスペース内にこの蒸気及び圧力を創出し、内容物を滅菌する。さらに、蒸気滅菌温度は製品の引火点を超えており、乾熱滅菌について記載したのと同じ安全性の問題を生じさせる。
【0444】
- 製剤Aに対する濾過滅菌とそれに続く無菌処理の使用は、製品を損なうことなく、当該製品に10-3を上回る滅菌保証レベルを提供するため、許容可能である。さらに、製剤Aの固有の抗菌活性は、濾過前バイオバーデンが一貫して低くなることを保証し、これにより、安全な濾過滅菌結果を保証する。
【0445】
従って、例示的な製剤を製造するための最適な滅菌方法は、濾過滅菌とそれに続く無菌処理である。本明細書中で使用される場合、「無菌処理」は、無菌条件下で処理することを意味する。無菌処理は、製品が現在のISO要件に適合するのに十分な線量(例えば20kGy~25kGyのガンマ線照射)で電離放射線を受けた場合に生じ得る製品分解及び毒性のリスクを排除する。一部の例では、対象組成物は無菌である。本明細書中で使用される「無菌」という用語は、バイオバーデンが低く、有効に無菌であり、例えば、微生物(例えば、細菌及びウイルス)を含まず、例えば、本明細書の出願日における現在の米国薬局方(USP)/欧州薬局方(EP)無菌試験法に適合することを意味する。滅菌は、バイオバーデンを有効な無菌レベルに低減する工程である。
【0446】
一部の例では、対象組成物は、非発熱性である。
【0447】
滅菌技術の選択として無菌処理を確定することに加えて、製造中の2,6-ジメチルアニリンの形成を最小限に抑えるための最適な調合温度及び充填温度を特定する処理研究を行った。
【0448】
一部の例では、本開示の方法は、対象組成物を処理することを含む。特定の例に従って対象組成物を処理する方法は、1種以上の活性剤(例えば、下記の麻酔薬、NSAID等)を有する組成物を濾過すること、及び組成物を無菌的に処理することを含む。この場合、組成物は(以下により詳細に記載されるとおり)、0.1nm~1000nm、例えば0.5nm~950nm、例えば1nm~900nm、例えば10nm~800nm、例えば25nm~750nm、例えば50nm~500nmの、異なる孔径を有するフィルターを用いて濾過することが可能であり、100nm~400nmの孔径を有するフィルターによる濾過を含む。組成物は、陽圧、陰圧又は大気圧下で濾過することができる。組成物を加熱しながら組成物を濾過してもよい。いくつかの例において、組成物は、濾過中に、1℃以上まで、例えば2℃以上まで、例えば3℃以上まで、例えば4℃以上まで、例えば5℃以上まで、例えば10℃以上まで、例えば15℃以上まで、例えば20℃以上まで加熱され、25℃以上までの加熱を含む。一部の例では、組成物は、濾過中に10℃~75℃、例えば15℃~70℃、例えば20℃~65℃、例えば25℃~60℃、例えば30℃~55℃(40℃~50℃を含む)の温度に加熱される。
【0449】
一部の例では、組成物の無菌処理は、ガス雰囲気下で組成物を容器に充填することを含む。いくつかの例において、ガス雰囲気は不活性ガスを含む。目的の不活性ガスとしては、限定するものではないが、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、及び二酸化炭素又はそれらの組み合わせなどを挙げることができる。いくつかの例において、気体の量は、容器のヘッドスペースを満たすのに十分である。「ヘッドスペース」という用語は、本明細書中でその従来の意味において使用され、組成物の界面と、容器の開口部又はクロージャーの界面(例えば、容器がストッパーで密閉されている場合)との間における容器中の体積を指す。容器のヘッドスペース中の不活性ガス雰囲気のガス圧は、0.001トル以上、例えば0.005トル以上、例えば0.01トル以上、例えば0.05トル以上、例えば0.1トル以上、例えば0.5トル以上、例えば1トル以上、例えば5トル以上、例えば10トル以上、例えば25トル以上、例えば50トル以上、例えば100トル以上、例えば250トル以上、例えば500トル以上、例えば760トル以上(1000トル以上を含む)であり得る。
【0450】
一部の例では、組成物の無菌処理は、容器をクロージャーで閉鎖することを含む。いくつかの例において、クロージャーは、(以下でより詳細に記載されるとおり)対象組成物の成分に対して不活性である化合物から形成される(又はその化合物でコーティングされる)。一部の例では、クロージャーは、容器と共に流体シールを形成する。他の例において、クロージャーは、容器と共に流体シール及び気体シールを形成する。
【0451】
一部の例では、光(例えば、模擬日光、日光、UV光、及び可視光)に対する曝露が、徐放性薬物送達製剤において分解生成物の形成をもたらし得ることが発見された。
【0452】
また、一部の例では、琥珀色のガラス製品中での徐放性薬物送達製剤の保存が、2,6-ジメチルアニリンのレベルを高めることも発見された。琥珀色のガラス製品中の酸化鉄は酸化反応に関連するが、2,6-ジメチルアニリンの形成は加水分解反応を包含するため、琥珀色のガラス製品の結果としての2,6-ジメチルアニリンの形成は驚くべきことであった。
【0453】
一部の例では、光誘導性分解は、製品を適切な耐光性カートン中で保存することによって防止される。
【0454】
一部の例では、薬物送達製剤は、耐光性容器中に保存される。いくつかの例において、耐光性容器は、保護耐光性コーティング、例えば、RAY-SORB(登録商標)コーティングを含む。いくつかの例において、対象耐光性容器は、200nm~800nm、例えば225nm~775nm、例えば250nm~750nm、例えば275nm~725nm、例えば300nm~700nm、例えば325nm~675nm、例えば350nm~650nm、例えば375nm~625nm(400nm~600nmを含む)の波長を有する光に対する対象組成物の曝露を防止することによって、光誘導性分解を低減するか又は排除するように構成される。特定の場合、耐光性容器は、光曝露の低減が望ましい波長における光学密度が、0.5以上、例えば1以上、例えば1.5以上、例えば2.0以上、例えば2.5以上、例えば3.0以上、例えば3.5以上、例えば4.0以上、例えば4.5以上、例えば5.0以上、例えば5.5以上、例えば6.0以上、例えば6.5以上(7.0以上の光学密度を含む)である。特定の例において、耐光性容器は、光曝露の低減が望ましい波長の光を完全に通さない(すなわち、容器の壁を光が通過しない)。
【0455】
いくつかの例において、シリコーン処理されたストッパーがシリコーンオイルを徐放性薬物送達製剤中に浸出させることが発見された。一部の例では、用量単位の対象組成物は、組成物の成分に対して、例えば、組成物中に存在する有機溶媒(例えば、ベンジルアルコール)に対して実質的に不活性なクロージャー(例えば、ストッパー、蓋又はキャップ)を有する容器中に保存される(例えば、ロードされ、これらから分配される)。本明細書で使用される「実質的に不活性」とは、対象組成物がクロージャーから浸出しないか、又はクロージャーと反応しないことを意味する(すなわち、組成物とクロージャーとの間の接触は、組成物における分解又は望ましくない副生成物の形成又は存在をもたらさない)。いくつかの例において、クロージャーは、1時間以上、例えば2時間以上、例えば6時間以上、例えば12時間以上、例えば24時間以上、例えば1週間以上、例えば1ヶ月以上、例えば6ヶ月以上、例えば1年以上(10年以上を含む)接触した場合でも、組成物との反応性を示さない。いくつかの例において、目的のクロージャーは、フッ素化ポリマーを含む。一部の例では、クロージャーは、フッ素化ポリマーから形成される。他の例において、クロージャーは、フッ素化ポリマーでコーティングされる。目的のフッ素化ポリマーとしては、限定するものではないが、エチレン-テトラフルオロエチレン、パーフルオロシクロアルケン(PFCA)、フッ化ビニル(フルオロエチレン、VF1)、フッ化ビニリデン(1,1-ジフルオロエチレン、VDF、VF2)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の群から選択される1種以上のモノマーから形成されるフルオロポリマーなどを挙げることができる。例えば、クロージャーは、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、過フッ素化エラストマー(FFPM/FFKM)、フルオロカーボンクロロトリフルオロエチレンフッ化ビニリデン(FPM)、フルオロエラストマーテトラフルオロエチレンプロピレン(FEPM)、パーフルオロポリエーテル(PFPE)又はパーフルオロスルホン酸(PFSA)から形成することができる。特定の場合、クロージャーは、シリコーンを含まない。
【0456】
一部の例では、ストッパーは、ガラス容器(例えば、ガラスバイアル)、例えば10mL USPタイプIガラスバイアルと対になる。いくつかの例において、ガラスバイアルはパイレックス(登録商標)ガラス、ホウ素シリカガラス又は他の種類のガラスである。特定の例において、ガラスバイアルは、鉄を含有しないガラス材料から形成される。
【0457】
一部の例では、有機溶媒、例えば22重量%ベンジルアルコールの存在により、有機溶媒に対して化学的に耐性のあるストッパーの選択が必要となった。
【0458】
一部の例では、本開示は、シリコーンオイルを含まない投与システムを提供する。
【0459】
一部の例では、本開示は、ガンマ線照射に曝露された場合にフッ化物イオンを放出することができるフルオロカーボンコーティングされたストッパーを提供する。その結果、いくつかの例において、投与システムはガンマ線照射に曝露されない。
【0460】
一部の例では、本開示は、徐放性薬物送達製剤における金属含有量の制御を含む。
【0461】
原料の供給源から調合、充填、及び容器(例えば、ストッパーを備えたガラスバイアル)への保存までの、徐放性薬物送達製剤の製造は、最終製品中の金属を最小限に抑えるような方法で行うことができる。一部の例では、金属含有量はスチール製調合タンクを使用することによって最小限に抑えられる。いくつかの例において、金属含有量はシリコーンチューブを使用することによって最小限に抑えられる。一部の例では、金属含有量は、フルオロカーボンコーティングされたストッパーを使用することによって最小限に抑えられる。
【0462】
一部の例では、組成物は、5ppm未満のレベル、例えば4ppm未満、又は3ppm未満のレベルで存在する金属を含む。いくつかの例において、組成物は、0.1ppm~4ppm、例えば0.05ppm~3ppm又は0.1ppm~2ppmのレベルで存在する金属を含む。当業者であれば、金属含有量が、任意の形態の金属、例えば元素状又はイオン化された形態の金属などを含むことを理解するであろう。
【0463】
一部の例では、本開示は、低水分含有量を有する組成物に関する。例えば、水は、組成物の重量に対して0.5重量%未満、例えば0.4重量%未満、又は組成物の重量に対して0.3重量%未満のレベルで存在し得る。水は、組成物の重量に対して0.03重量%~0.4重量%、例えば0.05重量%~0.35重量%、0.08重量%~0.3重量%のレベルで組成物中に存在し得る。
【0464】
理論に束縛されるものではないが、一部の例では、水分含有量は、組成物中で起こる加水分解の量に影響を与えると考えられる。いくつかの例において、イソ酪酸酢酸スクロース及びベンジルアルコールは、加水分解反応を受けてベンジルアセテート及び/又はベンジルイソブチレートを形成する。ベンジルアセテート及び/又はベンジルイソブチレートの形成は、ベンジルアルコール及びイソ酪酸酢酸スクロースを含むビヒクル組成物中ではベンジルアセテート及び/又はベンジルイソブチレートの顕著な形成が生じないという点で、驚くべきことである。ブピバカインは、エステル交換を触媒してベンジルアセテート及び/又はベンジルイソブチレートを形成すると考えられる。ベンジルアセテート及び/又はベンジルイソブチレートの形成は、それが沈殿につながるため、潜在的に問題となる可能性がある。水分含有量を低く保持することは、ベンジルアセテート及びベンジルイソブチレート形成の量を低減すると考えられている。水分含有量は、例えば、水分含有量が低い成分を使用する、閉鎖された容器中で成分を保存する、使用前にフィルターを乾燥滅菌する、不活性ガス(例えば、窒素)を使用して組成物を滅菌フィルターに通す、調合中及び容器内での保存中に不活性ガス(例えば、窒素)ヘッドスペースを使用するなどのいくつかの技術により、低く抑えることができる。
【0465】
上記に鑑み、一部の例では、本開示は、低ベンジルアセテート含有量を有する組成物を含む。例えば、ベンジルアセテートは、100mg/mL未満、例えば90mg/mL未満、80mg/mL未満、70mg/mL未満、60mg/mL未満、50mg/mL未満、40mg/mL未満、30mg/mL未満、20mg/mL未満、15mg/mL未満、又は10mg/mL未満のレベルで存在し得る。ベンジルアセテートは、0.1mg/mL~80mg/mL、例えば0.5mg/mL~40mg/mL、1mg/mL~20mg/mL又は1mg/mL~15mg/mLのレベルで組成物中に存在し得る。いくつかの例において、ベンジルアセテートは、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、25mg/mL、26mg/mL、27mg/mL、28mg/mL、29mg/mL、30mg/mL、31mg/mL、32mg/mL、33mg/mL、34mg/mL、35mg/mL、36mg/mL、37mg/mL、38mg/mL、39mg/mL、40mg/mL、41mg/mL、42mg/mL、43mg/mL、44mg/mL、45mg/mL、46mg/mL、47mg/mL、48mg/mL、49mg/mL、50mg/mL、51mg/mL、52mg/mL、53mg/mL、54mg/mL、55mg/mL、56mg/mL、57mg/mL、58mg/mL、59mg/mL、60mg/mL、61mg/mL、62mg/mL、63mg/mL、64mg/mL、65mg/mL、66mg/mL、67mg/mL、68mg/mL、69mg/mL、70mg/mL、71mg/mL、72mg/mL、73mg/mL、74mg/mL、75mg/mL、76mg/mL、77mg/mL、78mg/mL、79mg/mL、80mg/mL、81mg/mL、82mg/mL、83mg/mL、84mg/mL、85mg/mL、86mg/mL、87mg/mL、88mg/mL、89mg/mL、90mg/mL、91mg/mL、92mg/mL、93mg/mL、94mg/mL、95mg/mL、96mg/mL、97mg/mL、98mg/mL、99mg/mL又は100mg/mLの量で組成物中に存在する。
【0466】
一部の例では、本開示は、低ベンジルイソブチレート含有量を有する組成物を含む。例えば、ベンジルイソブチレートは、50mg/mL未満、例えば40mg/mL未満、30mg/mL未満、20mg/mL未満、10mg/mL未満、又は8mg/mL未満のレベルで存在し得る。ベンジルイソブチレートは、0.1mg/mL~40mg/mL、例えば0.5mg/mL~30mg/mL、1mg/mL~10mg/mL又は1mg/mL~8mg/mLのレベルで組成物中に存在し得る。一部の例では、ベンジルイソブチレートは、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、25mg/mL、26mg/mL、27mg/mL、28mg/mL、29mg/mL、30mg/mL、31mg/mL、32mg/mL、33mg/mL、34mg/mL、35mg/mL、36mg/mL、37mg/mL、38mg/mL、39mg/mL、40mg/mL、41mg/mL、42mg/mL、43mg/mL、44mg/mL、45mg/mL、46mg/mL、47mg/mL、48mg/mL、49mg/mL又は50mg/mLの量で組成物中に存在する。
【0467】
理論に束縛されるものではないが、一部の例では、組成物中の過酸化物の量は、N-オキシド形成量に影響を与える可能性があると考えられている。過酸化物の量の低減は、N-オキシド形成量を低下させると考えられている。組成物中の過酸化物の量は、例えば、過酸化物含有量が低い成分を使用すること、組成物を光から保護すること、組成物が入れられた容器中のヘッドスペースを最小限に抑えること、及び、例えば15℃~30℃、例えば室温などの低温で組成物を保存することなどのいくつかの技術によって低く抑えることができる。
【0468】
一部の例では、本組成物は、過酸化物含有量が低いHVLCM(例えば、イソ酪酸酢酸スクロース)で作製される。例えば、HVLCMは、200ppm未満、例えば100ppm未満、80ppm未満又は60ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有し得る。いくつかの例において、HVLCMは、1ppm~100ppm、例えば2ppm~80ppm、又は3ppm~60ppmのレベルで存在する過酸化物を有する。
【0469】
一部の例では、本組成物は、過酸化物含有量が低い有機溶媒(例えば、ベンジルアルコール)で作製される。例えば、有機溶媒は、100ppm未満、例えば85ppm未満又は10ppm未満のレベルで存在する過酸化物を有し得る。いくつかの例において、有機溶媒は、1ppm~90ppm、例えば2ppm~85ppm、又は3ppm~10ppmのレベルで存在する過酸化物を有する。
【0470】
他の態様において、本開示は、粒子状物質をほとんど又は全く有さない活性薬剤組成物(例えば、ブピバカイン組成物)に関する。一部の例では、粒子状物質は、100ppm未満、95ppm未満、90ppm未満、85ppm未満、80ppm未満、75ppm未満、70ppm未満、65ppm未満、60ppm未満、55ppm未満(50ppm未満を含む)のレベルで組成物中に存在する。例えば、粒子状物質は、1ppm、2ppm、3ppm、4ppm、5ppm、6ppm、7ppm、8ppm、9ppm、10ppm、11ppm、12ppm、13ppm、14ppm、15ppm、16ppm、17ppm、18ppm、19ppm、20ppm、21ppm、22ppm、23ppm、24ppm、25ppm、26ppm、27ppm、28ppm、29ppm、30ppm、31ppm、32ppm、33ppm、34ppm、35ppm、36ppm、37ppm、38ppm、39ppm、40ppm、41ppm、42ppm、43ppm、44ppm、45ppm、46ppm、47ppm、48ppm、49ppm、50ppm、51ppm、52ppm、53ppm、54ppm、55ppm、56ppm、57ppm、58ppm、59ppm、60ppm、61ppm、62ppm、63ppm、64ppm、65ppm、66ppm、67ppm、68ppm、69ppm、70ppm、71ppm、72ppm、73ppm、74ppm、75ppm、76ppm、77ppm、78ppm、79ppm、80ppm、81ppm、82ppm、83ppm、84ppm、85ppm、86ppm、87ppm、88ppm、89ppm、90ppm、91ppm、92ppm、93ppm、94ppm、95ppm、96ppm、97ppm、98ppm、99ppm、100ppmのレベルで組成物中に存在し得る。特定の場合、組成物は粒子状物質を有さず、すなわち、0ppmの粒子状物質を有する。
【0471】
また製剤の安定性は、保存条件によっても決まる。高温保存は、典型的には分解を増加させる。一部の例では、低温保存は、沈殿を引き起こす可能性がある。このため、本開示の組成物は、典型的には、15℃~30℃、例えば20℃~25℃の温度で保存される。
【0472】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、2,6-ジメチルアニリンは、本明細書中に開示されるレベルで存在し、例えば、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、2,6-ジメチルアニリンは500ppm未満のレベルで存在し得る。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、2,6-ジメチルアニリンは、保存前の初期レベルに対して、10倍未満、例えば8倍未満、6倍未満、4倍未満、又は2倍未満のレベルで存在し、例えば、保存前の初期レベルに対して1倍~10倍、例えば2倍~6倍、又は2倍~4倍のレベルで存在する。
【0473】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、2,6-ジメチルアニリンは、本明細書中に開示されるレベルで存在する。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、2,6-ジメチルアニリンは、保存前の初期レベルに対して10倍未満、例えば8倍未満、6倍未満、4倍未満、又は2倍未満のレベルで存在し、例えば、保存前の初期レベルに対して1倍~10倍、例えば2倍~6倍、又は2倍~4倍のレベルで存在する。
【0474】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、活性医薬剤のN-オキシドは、本明細書中に開示されるレベルで、例えば、組成物の重量に対して1重量%未満のレベルで存在する。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、活性医薬剤のN-オキシドは、保存前の初期レベルに対して2倍未満、又は1.5倍未満のレベルで存在し、例えば、保存前の初期レベルに対して1倍~2倍又は1倍~1.5倍のレベルで存在する。
【0475】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、活性医薬剤のN-オキシドは、本明細書中に開示されるレベルで、例えば、組成物の重量に対して1重量%未満のレベルで存在する。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、活性医薬剤のN-オキシドは、保存前の初期レベルに対して2倍未満又は1.5倍未満のレベルで存在し、例えば、保存前の初期レベルに対して1倍~2倍又は1倍~1.5倍のレベルで存在する。
【0476】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、金属は、本明細書中に開示されるレベルで、例えば5ppm未満のレベルで存在する。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、金属は、本明細書中に開示されるレベルで存在する。
【0477】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、水は、本明細書中に開示されるレベルで、例えば、組成物の重量に対して0.5重量%未満のレベルで存在する。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、水は、本明細書中に開示されるレベルで存在する。
【0478】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、ベンジルアセテートは、本明細書中に開示されるレベルで、例えば100mg/mL未満のレベルで存在する。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、ベンジルアセテートは、保存前の初期レベルに対して20倍未満、又は15倍未満、例えば、保存前の初期レベルに対して1倍~20倍、又は2倍~15倍のレベルで存在する。
【0479】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、ベンジルアセテートは、本明細書中に開示されるレベルで、例えば100mg/mL未満のレベルで存在する。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、ベンジルアセテートは、保存前の初期レベルに対して20倍未満、又は15倍未満のレベルで存在し、例えば、保存前の初期レベルに対して1倍~20倍、又は2倍~15倍のレベルで存在する。
【0480】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、ベンジルイソブチレートは、本明細書中に開示されるレベルで、例えば50mg/mL未満のレベルで存在する。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、ベンジルイソブチレートは、保存前の初期レベルに対して10倍未満、又は8倍未満のレベルで存在し、例えば、保存前の初期レベルに対して1倍~10倍、又は2倍~8倍のレベルで存在する。
【0481】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間保存される場合、ベンジルイソブチレートは、本明細書中に開示されるレベルで、例えば50mg/mL未満のレベルで存在する。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間保存される場合、ベンジルイソブチレートは、保存前の初期レベルに対して、10倍未満、又は8倍未満のレベルで存在し、例えば、保存前の初期レベルに対して1倍~10倍、又は2倍~8倍のレベルで存在する。
【0482】
一部の例では、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、25℃/60%RHで20ヶ月間又は36ヶ月間保存される場合、イソ酪酸酢酸スクロースは、本明細書中に開示されるレベルで、例えば、組成物の重量に対して30重量%~80重量%のレベルで存在する。いくつかの例において、組成物が、密封された正立した透明なガラスバイアル中で、40℃/75%RHで20ヶ月間保存される場合、イソ酪酸酢酸スクロースは、本明細書中に開示されるレベルで、例えば、組成物の重量に対して30重量%~80重量%のレベルで存在する。
【0483】
一部の例では、活性医薬剤の分解は、2,6-ジメチルアニリンの形成をもたらし得る。例えば、活性医薬剤は、ブピバカイン、リドカイン、ロピバカイン(ropivicaine)、エチドカイン、メピバカイン、ピロカイン、又はそれらの塩から選択される少なくとも一員であり得る。
【0484】
一部の例では、活性医薬剤は、組成物の重量に対して、1重量%~25重量%、例えば5重量%~20重量%、10重量%~15重量%、又は約12重量%の量で組成物中に存在する。
【実施例
【0485】
以下の実施例は、例示の目的のみのために提供され、本発明の範囲を限定することを全く意図するものではない。
【0486】
実施例1
関節鏡下肩手術後の患者における術後疼痛コントロールについての製剤Aの有効性及び安全性を評価するために、無作為化二重盲検実薬及びプラセボ対照試験を行った。
【0487】
目的
目的は、有効性、薬物動態(PK)、及び安全性評価に基づいて、待機的関節鏡下肩手術を受けている患者の肩峰下腔に投与される、術後疼痛コントロールのための製剤Aの最適用量を同定することであった。
【0488】
方法
この研究は、待機的関節鏡下肩手術を受けている患者における疼痛強度(PI)、PK、安全性、及び医療経済の術後評価を伴う、製剤Aの並行群、無作為化、二重盲検、実薬及びプラセボ対照の用量応答試験であり、最大14日間のスクリーニング期間、7日間の術後期間、14日目のEOT来院、及び6ヶ月後のフォローアップ来院を含む。
【0489】
【表1】
【0490】
手術の1~14日前に患者をスクリーニングし、その時にインフォームドコンセントを得た。手術を行い、0日目に治験薬を投与した。治験は、それぞれ3つの治療群(a、b及びc)を有する2つの連続コホートに分けるように計画された。スクリーニング後、第1の患者は、コホート1における治療群:1a) 5mL製剤A(660mgブピバカイン)肩峰下投与;1b) 5mLプラセボ肩峰下投与;及び1c) 20mLの標準ブピバカイン塩酸塩(HCl)0.25%w/v(50mgブピバカイン)を肩峰下に投与、へと2:1:1に無作為化された。コホート1の完了後、データを分析し、この治験総括報告書(CTR)に示された有効性、安全性及びPK結果に基づいて、第2コホート(コホート2)を開始するかどうか、及び新たな患者を募集して、より高い用量の製剤Aで治療するかどうかに関して決定した:2a) 7.5mL製剤A(990mgブピバカイン)を肩峰下に投与;2b) 7.5mLのプラセボを肩峰下に投与;2c) 20mL標準ブピバカインHCl(50mgブピバカイン)を肩峰下に投与。データレビュー委員会は、製剤Aの7.5mLへの用量の増加は、有効性において臨床的に有意な改善をもたらすとは予想されないと提言した。従って、治験には、7.5mLのコホート2は含まれなかった。
【0491】
全ての患者は、バックグラウンド治療としてパラセタモール(4グラム/日;体重<66kgについては、最初の72時間は2グラム/日)の投与を受けた。十分な疼痛緩和が得られなかった場合、患者には、静脈内に又は経口的に投与されるモルヒネ(1時間間隔の経口モルヒネ10mgからなる)の形態のレスキュー薬、あるいは経口服用に耐えられない場合、5分間隔で静脈内(IV)モルヒネ2gのレスキュー薬の投与を受けることが許可された。72時間後、被験者は、必要に応じてパラセタモール及び経口モルヒネを受けることが許可された。患者は、電子日記(eDiary)に疼痛強度並びにレスキュー薬を記録した。
【0492】
包含/除外の診断及び主な基準
肩峰下インピンジメント症候群及び磁気共鳴画像法(MRI)で確証された無傷の回旋筋腱板を有し、全身麻酔に適していた被験者は、包含に適格であった。他の肩病理を有していた患者、又は重篤な医学的状態を有していた患者又は治験薬に耐えられなかった患者は除外された。
【0493】
製剤A、用量及び投与方法:
1バイアル当たり9.0mL製剤A(132mgブピバカイン/mL)。手術後、5mL製剤A(660mgブピバカイン)(コホート1)を、関節鏡ポータルの1つを介して、又は直接関節鏡視下で針先の位置が肩峰下腔(suvacromial space)内にあることを確認して無傷の皮膚を通して注射することによって、肩峰下腔内に投与した。製剤Aは、手術完了後に1回だけ投与された。
【0494】
基準組成物、用量及び投与方法:
この治験はプラセボ対照であり、実薬対照治療群(active comparator arm)を有していた。プラセボ(5mL)は、製剤Aの場合と同じ方法を用いて投与された。実薬対照は、標準ブピバカインHCl(20mLの2.5mg/mL)であり、単回用量として肩峰下投与された。
【0495】
評価基準
有効性
主要評価項目:この研究は、2つの主要評価項目を有していた。主要有効性評価項目は以下のとおりであった:11ポイント数値評価尺度(NRS)によって測定された、術後1~72時間の期間にわたる運動時PI曲線下面積(AUC);及び手術後0~72時間のオピオイドレスキュー鎮痛の総使用。主要評価項目を満たすためには、プラセボと比較した運動時PIの非劣性、並びにオピオイド鎮痛の総使用における優位性が示される必要性があった。NRSスケールで報告される「運動時」PIは、連続変数の記述統計を使用して、治療群及び時間ごとにまとめられた。
【0496】
副次的評価項目:最初のオピオイドレスキュー薬の使用までの時間;術後0~7日目のオピオイド関連症状苦痛尺度(ORSDS)スコア;術後1~72時間の期間にわたる安静時PI AUC;術後4日目の患者の疼痛治療満足度スコア;術後1日目、2日目、3日目、4日目及び7日目に退院可能(麻酔後退院スコアリングシステム[PADS]による)であった患者の割合;並びに術後14日目までに職場に復帰した患者の割合。最初のオピオイドレスキュー薬使用までの時間は、治験薬物投与時から最初のオピオイド使用時までの期間として定義された。
【0497】
薬物動態
ブピバカインPK(ブピバカインの最大濃度を含む)の評価のため、製剤A群及び標準ブピバカインHCl群について、総ブピバカイン血漿濃度及び遊離ブピバカイン血漿濃度を測定した。さらに、これらの2つの群において、アルファ1酸糖タンパク質(AAG)血漿濃度を遊離ブピバカイン濃度との相関関係について測定した。
【0498】
薬物動態/薬力学(PK/PD)関係は、中枢神経系(CNS)毒性モニタリング及び心臓モニタリングの一部として評価することとした。PKプロファイリングに選択されなかった患者については、重篤な有害事象(SAE)または重篤な非SAEの基準を満たす心臓事象又はCNS事象が発生した場合、できるだけ事象の付近でPK分析用の血液サンプルを取得することとした。
【0499】
安全性
有害事象の発生率(AE);ブピバカイン関連CNS副作用の発生率;臨床検査;バイタルサイン;12誘導ECG;及び身体検査。
【0500】
他の評価
7日目及び14日目、並びに6ヶ月のフォローアップ来院時の、手術創における創傷治癒及び組織状態の治験責任医師による評価。肩のMRI、並びにConstant-Murleyスコアを用いた肩の機能評価は、6ヶ月のフォローアップ来院で実施されることになっていた。
【0501】
結果
主要有効性評価項目
術後1~72時間の期間にわたる運動時平均PI AUC(ITT集団)を表1.1にまとめる。製剤A群は、術後1~72時間の期間、プラセボに対して統計的に優位であることが示された(p値:0.012)。ITT集団についての経時的な運動時PIは、図1に示される。
【0502】
【表2】
【0503】
プラセボで治療された被験者よりも有意に少ないオピオイドレスキュー薬が、製剤Aで治療された被験者により服用された(表1.2)。治療後0~72時間のオピオイドの累積IVモルヒネ等価用量の中央値は、製剤A群については4.0mg、プラセボ群については12.0mgであった(p=0.0130)。累積用量の中央値は、ブピバカインHCl群については8.0mgであった。術後オピオイドレスキュー薬の使用は、事前に指定された正常性の仮定を満たしていなかったため、ノンパラメトリックに分析された。手術後72時間の間にオピオイドフリーのままであった被験者のパーセンテージもまた、プラセボ群よりも製剤A群において有意に高かった:39.6%対16.0%(P=0.027)。ブピバカインHCl群においてオピオイドを控えた割合は27.6%であった。
【0504】
【表3】
【0505】
副次的有効性変数
製剤Aによる治療は、プラセボと比較して、オピオイドレスキュー薬の最初の術後使用までの時間を有意に延長した(表1.3)。最初の使用までの時間の中央値は、製剤A群については12.4時間、プラセボ群については1.2時間であった(p=0.0137)。最初の使用までの時間の中央値は、ブピバカインHCl群については1.4時間であった。
【0506】
【表4】
【0507】
0日目~7日目のOR-SDSスコアの比較は、治療群間(製剤A対プラセボ及び製剤A対標準ブピバカインHCl)の統計的に有意な差については全く明らかにしなかった。
【0508】
全体として、81人の患者(ITT集団中の患者の75.7%)が0日目~3日目の期間において少なくとも1つのオピオイド関連副作用を経験し、全てのオピオイド関連副作用を経験した患者の頻度及び数は、全ての治療群にわたり類似していた。眠気、疲労感及びめまいは、0日目~3日目の期間において総(ITT)集団について記録された最も頻繁なオピオイド関連症状であった。
【0509】
表1.4は、ITT集団についての、術後1~72時間の安静時PI正規化AUCについてまとめる。運動時PIと同様に、製剤Aは、プラセボと比較して、72時間にわたりPIを有意に低下させた。製剤AとブピバカインHCl間の差は有意ではなかった。
【0510】
【表5】
【0511】
4日目に、患者の大部分は、手術のために彼らが受けた疼痛治療に満足していたか(患者の59.8%)、又は非常に満足していた(患者の27.1%)。1人の患者のみが、彼女の疼痛治療(製剤A群中)に非常に不満であり、4人の患者(製剤A群中3人、標準ブピバカインHCl群中1人)が不満であった。
【0512】
治療群間で患者の疼痛満足度スコア(手術後4日目に実施された)に統計的に有意な差はなかった;プラセボに対する製剤A(p値:0.995)、及び標準ブピバカインHClに対する製剤A(p値0.699)。
【0513】
いずれの日も、患者の在宅準備において治療群間に統計的に有意な差はなかった。プラセボに対する製剤A及び標準ブピバカインHClに対する製剤Aのペアワイズ比較のオッズ比は、1日目(午後)は、1.894(CI:0.693;5.177、p値:0.213)及び1.240(CI: 0.457;3.366、p値 0.673)、2日目(午後)は、2.654(CI:0.948;7.428、p値:0.063)及び1.137(CI: 0.419; 3.089、p値 0.801)であった。
【0514】
また、14日後に職場に復帰した患者の数においても、治療群間に統計的に有意な差はなかった。プラセボに対する製剤A及び標準ブピバカインHClに対する製剤Aのペアワイズ比較のオッズ比は、14日目に1.210(CI: 0.325; 4.498、p値: 0.776)及び1.505(CI: 0.358; 6.329、p値0.577)であった。
【0515】
薬物動態
関節鏡下肩峰下除圧を受けている患者における総ブピバカイン血漿濃度及び遊離(非結合)ブピバカイン血漿濃度は、5.0mL製剤A(660mgブピバカイン)の投与又は20mL標準ブピバカインHCl(50mgブピバカイン)の投与のいずれかの後に測定した。非コンパートメント法を用いて、以下のPKパラメータを、各化合物の血漿濃度から計算した:最後に測定された濃度までの血漿濃度対時間曲線下面積(AUCt)、無限大まで外挿された血漿濃度対時間曲線下面積(AUCinf)、最大濃度(Cmax)、その発生時間(tmax)、及びみかけの終末相消失半減期(t1/2)。製剤Aの持続放出特性により、ブピバカイン血漿濃度は比較的ゆっくりと増加し、総ブピバカイン及び遊離ブピバカインの両方の持続プロファイル(extended profile)が観察された。投与後96時間では、製剤A群の大半の患者において測定可能な血漿濃度が依然として存在する。全時点において、ブピバカインHCl血漿濃度は、製剤A群における血漿濃度よりもかなり低かった。ブピバカインの平均血漿タンパク質結合は約5.2%であり;遊離ブピバカイン血漿濃度は、一般的に、総ブピバカインの血漿濃度と平行していた。総ブピバカイン及び遊離ブピバカインの両方のCmaxには大きな個体間変動があった。総ブピバカイン及び遊離ブピバカインの最高個別Cmax値は、それぞれ1.320mg/L及び0.074mg/Lであった。注:表1.5は、絶対最小値、絶対最大値ではなく、Cmaxの幾何平均、±68パーセンタイルについて示す。
【0516】
現在の研究におけるブピバカインの平均Cmax及びAUCは、過去の研究から予想されたよりもかなり低かった。可変量の投与用量が、投与と創傷の閉鎖の間に創傷から漏れ出た可能性があり、おそらくブピバカインに対する曝露を有意に低下させた。
【0517】
観察された最も高いブピバカイン血漿濃度においても、任意の心血管パラメータ(QTcF、QTcB及びQRS)に対して、総ブピバカイン又は遊離ブピバカインのいずれも明らかな影響はなかった。少数の報告されたCNS副作用は、遊離ブピバカインのCmax又はtmaxのいずれとも相関関係を有していなかった。製剤A又は標準ブピバカインと関連していたブピバカイン濃度に従う総ブピバカイン及び遊離ブピバカイン血漿濃度の幾何平均は、図2に示される。
【0518】
図3は、製剤Aについての遊離ブピバカイン対総ブピバカインの全ての個々の血漿濃度の相関関係を示す。遊離ブピバカイン血漿濃度は、総ブピバカイン濃度に比例して増加する。回帰直線の傾きは、全時点及び全患者にわたる平均遊離画分(5.2%)を示す。またこのプロットは、ブピバカインの遊離画分の高い個体間変動も示し、これは、高い総ブピバカイン濃度が必ずしも高い遊離ブピバカイン濃度を意味するとは限らず、またその逆も同様であることを意味する。製剤A又は標準ブピバカインに従う総ブピバカイン及び遊離ブピバカインの血漿PKパラメータの概要は、表1.5に示される。
【0519】
【表6】
【0520】
安全性
治験において死亡例はなく、6人の患者が1つのSAEを経験した(1つの妊娠症例がSAEとして報告された)。1つのSAE(肺動脈高血圧症、製剤Aによる治療の113日後に報告された)は、治験薬に関連していると考えられた。全体として、37人の患者(34.6%)が少なくとも1つのTEAE(合計で65のTEAEが報告された)を経験し、その大部分は軽度又は中等度の強度であった。9人の患者(8.4%)が治療に関連していると考えられるTEAEを報告したが、治療群間で顕著な差はなかった。最も一般的に報告されたTEAE(表1.6参照)は、以下の器官別大分類(SOC)の範囲内であった:神経系障害;臨床検査(Investigations):及び胃腸障害。最も一般的に報告された事象(基本語による)は、吐き気、頭痛及び筋骨格痛であった(それぞれ患者の4.7%)。TEAEにより離脱した患者はいなかった。0日目から3日目の間に、安全性集団中の3人の患者が6つのCNS TEAEを報告した。
【0521】
各治療群における患者の大部分は、治験全体を通して、正常であるか又は異常であるが臨床的に有意ではないかの血液学パラメータ値及び臨床化学パラメータ値を有していた。4人の患者について、臨床的に有意な臨床化学異常が報告され(プラセボ群において2人、製剤A群及び標準ブピバカインHCl群でそれぞれ1人);増加又は減少の大部分は、外科的侵襲を実施した後に予想され得たものと一致していた。これらは、大きな安全性の懸念ではないと評価された。
【0522】
スクリーニングから7日目までのいずれの日においても、血圧及び心拍数の平均及び中央値に重大な差はなかった。製剤Aは、ECGパラメータに対して有意な影響を与えなかった。
【0523】
手術部位治癒及び/又は局所組織状態は、7日目、EOT時及び6ヶ月のフォローアップ来院時に検査した全ての患者において、予想されたとおりであった。治験全体を通して、予期せぬ手術部位治癒を経験したと記録された患者はいなかった。
【0524】
分析された患者の大多数について、6ヶ月のフォローアップで実施したMRIスキャンから得られたMRI結果は、外科手術侵襲注射のいずれかと一致したベースラインからの変化を反映していた;製剤A群と標準ブピバカイン群との間に顕著な差はなかった。
【0525】
【表7】
【0526】
結論
有効性
- プラセボに対する製剤Aの優位性は、術後1~72時間の運動時平均PIについて示された。標準ブピバカインHClに対する優位性は満たされなかった。
- 製剤A治療群についての0~72時間におけるレスキュー鎮痛の総使用は、プラセボに対しては統計的に優位であったが、標準ブピバカインHClに対しては優位ではなかった。ブピバカインHClに対する統計的有意性の欠如は、研究の規模が小かったこと、並びにバックグラウンド及びレスキュー鎮痛の影響の結果であった可能性がある。ブピバカインHCl群の被験者は、製剤A群の2倍(中央値量に基づく)のオピオイドレスキュー薬を使用した。
- 全体として、製剤Aは、プラセボに対して、鎮痛効果及びオピオイド節約効果を示した。
- 副次的有効性評価項目は、術後1~72時間の安静時PIを除いて、統計的有意性に達しなかった。副次的有効性分析は、主要評価項目分析の結果を裏付けた。
【0527】
薬物動態
- PKプロファイルは、投与後約6時間の中央値Tmaxを有する長時間持続する血漿濃度を提供する製剤Aの持続放出特性を裏付けた。対照的に、標準ブピバカインと関連していた血漿濃度は、全ての時点で、製剤Aにおける血漿濃度よりもかなり低かった。非結合ブピバカインの平均パーセンテージは、同等の研究についての文献から公知の値と同様であった。
- 総ブピバカイン及び遊離ブピバカインの最高個別血漿濃度は、潜在的なCNS及び/又は心血管系の副作用の発生に関して報告された濃度よりもかなり低かった。AAG血漿濃度は、手術後に予想されたとおりに増加し、非結合ブピバカインのパーセンテージのわずかな減少を生じた。
- 観察された最も高いブピバカイン血漿濃度においても、任意の心血管パラメータ(QTcF、QTcB及びQRS)に対して、総ブピバカイン又は遊離ブピバカインのいずれかの明らかな影響はなかった。
【0528】
安全性
- 治療創発有害事象の発生率及び重症度は、全ての治療群で類似しており、6ヶ月のフォローアップでは機能的な差又はX線写真上の差は認められなかった。
- 製剤Aは安全で忍容性が良好であり、6ヶ月のフォローアップでは長期の安全性シグナルは観察されなかった。
- 死亡例はなく、この治験におけるSAEの発生率は低かった。1つのSAEが治験薬に関連していると考えられた(製剤A群中)。
- 全身安全性の点では、製剤A、標準ブピバカインHCl及びプラセボは、一般に安全で忍容性が良好であった。ブピバカイン関連副作用に関して、治療群間に顕著な差はなかった。これは、遊離ブピバカインの濃度が、報告されたCNS毒性閾値レベルの下限値未満又は下限値のままであったことを示唆している。さらに、報告されたCNS副作用は、遊離ブピバカインのCmax又はtmaxのいずれとも相関しなかった。
- ECGパラメータに対する製剤Aの影響はなかった。
- 肩機能テスト(Constant-Murleyスコア)における変化に関しては、ベースラインから6ヶ月のフォローアップまで、治療群間に臨床的に有意な差はなかった。
- 創傷治癒及び局所組織状態に関しては、治療群間に差はなかった。
【0529】
実施例2
関節鏡下肩峰下除圧を受けている患者における肩峰下腔に投与された5.0mLの製剤A治療効果を調査するために治験を行った。この治験は、一般的な臨床診療当たり、必要に応じて経口オピオイドによる鎮痛補助を受ける患者における、プラセボと比較した製剤Aの全身安全性及び局所安全性についてさらに研究した。
【0530】
目的
主要目的 - 鎮痛有効性について調査し、整形外科手術モデルにおける、プラセボと比較した製剤Aの安全性プロファイルを特徴付ける。
【0531】
副次的目的 - 整形外科手術モデルにおける、プラセボと比較した製剤Aによるオピオイド関連有害事象(AE)の頻度の低下について調査する。
【0532】
方法
この研究は、関節鏡下肩手術を受けている被験者における、5.0mLの製剤A単回投与の無作為化、二重盲検、多施設、プラセボ対照、並行群試験であった。記録された疼痛及び補助鎮痛(有効性評価項目)、並びにAE、手術部位治癒、局所組織状態、臨床検査、身体検査及びバイタルサイン(安全性評価項目)について被験者を評価した。
【0533】
【表8】
【0534】
被験者数:60人の被験者が本研究に登録された。本研究に登録された60人の被験者全員が、製剤A又はプラセボの用量の少なくとも一部の投与を受け、修正治療意図(MITT)集団及び安全性集団に含められた。58人の被験者がプロトコルごとの集団に含められた(製剤A又はプラセボの完全な投与を受け、手術要件及び麻酔要件を満たし、成功裏に手術を受け、少なくとも1つの投与後疼痛強度が記録された被験者)。
【0535】
診断及び包含の基準:病歴、身体検査、12誘導心電図(ECG)及び臨床検査に基づく米国麻酔学会(ASA)による術前身体状態分類がP1又はP2であり;収縮期血圧≦139mmHg及び拡張期血圧≦89mmHgであり;医学的に許容可能な避妊法を使用する意思を有し、且つ激しい活動を控え、書面による同意を提供する意思がある、肩峰下インピンジメントの臨床症候群を有し、関節鏡下肩手術が予定されている18歳から65歳までの男性及び女性被験者は、この研究に参加する資格があった。
【0536】
除外基準:以下の条件を有する被験者;肩甲上腕関節炎を有する;磁気共鳴画像法(MRI)により診断された主要又は全厚回旋筋腱板断裂を有する;研究対象の肩の以前の関節鏡下手術又は直視下手術を有する;コルチコステロイドの>3ヶ月間の連続使用を必要とする慢性疼痛状態を有する;線維筋痛症を有する;関節リウマチを有する;血清反応陰性炎症性関節症を有する;計算クレアチニンクリアランス<30mL/分;妊娠中または授乳中である;手術から7日以内に3日間以上1日当たり20mg超のヒドロコドン(又は等価物)の投与を受けていた;オピオイド耐性である;手術から24時間以内に非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用が必要であった;抗けいれん薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、又はモノアミンオキシダーゼ阻害剤の常用;QTc間隔を手術から7日以内又は薬物半減期の5倍のいずれか長い方に延長することが知られている薬物の常用;アミド型局所麻酔剤又はモルヒネ若しくは他のオピオイドに対する既知の過敏症;オピオイドの使用に禁忌の状態;オピオイド、違法薬物の乱用又はアルコール依存症が既知であるか又はこれらの疑いがある;手術後30日以内の別の治験への参加;治験責任医師の判断によると適切ではない。
【0537】
手術要件:以下の要件が満たされなかった場合、被験者は治験薬の投与を受けないこととした:インデックスプロシージャ(index procedure)が、関節鏡下で実施された肩峰下除圧であった;他の処置が、肩甲上腕関節の検査、滑膜切除術、遊離体の除去(removal or loose body)、関節軟骨の軽微なデブリードマン、回旋筋腱板の軽微なデブリードマン又は軽微な修復、遠位鎖骨切除術、滑液包切除術、烏口肩峰靭帯及び肩峰下骨棘の切除を含んでいた;関節嚢における治験薬の漏出及びトラップを可能とし得る肩峰下腔と肩甲上腕関節との間の任意の導管は回避することとした;肩の不安定性についての処置は許可されなかった;上腕二頭筋腱固定術又は腱切除術は許可されなかった。
【0538】
麻酔要件:関節鏡下肩手術は、静脈内(IV)フェンタニル又は等価物を使用して、プロポフォール誘導による全身麻酔下で行われた;肩手術中の創傷灌流または神経ブロックのための局所麻酔薬の使用は許可されなかった;肩手術中のNSAIDSの使用は許可されなかった;出血の低減のためエピネフリンを灌流溶液中で使用することが可能であった;全身麻酔中に使用される短時間作用型オピオイドは制限されなかった;疼痛に対して予防的に与えられる術後オピオイドは許可されなかった;全身麻酔用に使用される制吐薬は制限されず、術後制吐薬は予防的には与えられなかった。
【0539】
製剤A:関節鏡下肩手術の完了時に、単回用量の5.0mL製剤A(132mg/mL、660mgブピバカイン)を肩峰下腔に注射した。この製剤は、滅菌溶液として一緒に投与される3つの成分(イソ酪酸酢酸スクロース66重量%、ベンジルアルコール22.0重量%、及びブピバカイン塩基12.0重量%)を含む。
【0540】
基準療法、用量及び投与方法:関節鏡下肩手術の完了時に、単回用量の5.0mLプラセボ組成物を肩峰下腔に注射した。
【0541】
治療期間:この研究は、被験者1人当たりの期間が約4週間であると予想された。この期間は、14日間のスクリーニング期間、手術当日の単回用量投与、及び14日間のフォローアップ期間を含んでいた。
【0542】
評価基準
有効性の評価:「運動時」肩疼痛強度:術後疼痛緩和のための補助鎮痛の使用。
安全性の評価:AEの頻度及び重症度;手術部位治癒及び局所組織状態評価;臨床検査(化学、血液学および尿検査);身体検査、ECG及びバイタルサイン。
【0543】
統計的方法
無作為化:患者は製剤A又はプラセボに無作為化(2対1の比)される。
共主要有効性評価項目:
投与後0~72時間の期間にわたり正規化された運動時平均疼痛強度曲線下面積(AUC)及び、投与後0~72時間の期間中の平均総IVモルヒネ等価用量。
【0544】
結果
有効性の結果
投与後0~72時間にわたる疼痛強度正規化AUC
0~72時間にわたる疼痛強度正規化AUCを、治療群及び治験実施施設を因子とし且つ年齢を共変量としたANCOVAを用いて、治療群間で比較した。統計的に有意ではないが、0~72時間にわたる疼痛強度正規化AUCにおいて、製剤A群を支持する傾向があった。LS平均は、製剤A群については5.33であり、プラセボ群については5.97であった。製剤A群における疼痛スコアは、プラセボ群における疼痛スコアよりも一貫して低く、これらの群間の平均差は、最初の24時間に最も顕著であった(以下の表2.1)。
【0545】
【表9】
【0546】
投与後0~72時間にわたる累積IVモルヒネ等価用量
オピオイドレスキュー鎮痛累積IVモルヒネ等価用量は、以下の表2.2における治療によって示される。0~72時間にわたる累積モルヒネ等価用量を、治療群及び治験実施施設を因子とし且つ年齢を共変量としたANCOVAを用いて、治療群間で比較した。統計的に有意ではないが、0~72時間にわたる累積IVモルヒネ等価用量において、5.0mL製剤A群を支持する傾向があった。LS平均は、5.0mL製剤A群については44.27であり、プラセボ群については54.51であった。
【0547】
【表10】
【0548】
副次研究評価項目について、運動時疼痛強度正規化AUC(0~48時間)、平均総IVモルヒネ等価オピオイド用量(0~48時間)、及び最初のオピオイド投与までの時間を、2つの治療群間で観察した。0~48時間にわたる疼痛強度正規化AUCにおいて、5.0mL製剤A群を支持する傾向があった。0~24時間、0~48時間、0日目~14日目、及び24~48時間にわたる累積モルヒネ等価用量は、全時点について5.0mL製剤A群を支持する傾向を示した。
【0549】
運動時疼痛強度
0~48時間、0~最後の時間、0~24時間、0~36時間、0~96時間、24~48時間、36~72時間、48~72時間及び72~96時間にわたる疼痛強度正規化AUCについて、分析を行った。疼痛強度正規化AUCを、治療群及び治験実施施設を因子とし且つ年齢を共変量としたANCOVAを用いて、治療群間で比較した(図4)。統計的に有意ではないが、疼痛強度正規化AUCにおいて、全時点で5.0mL製剤A群を支持する傾向があった。MITT被験者セットについては、全時点において、LS平均はプラセボ群よりも5.0mL製剤A群の方が低かった。図5Aは、投与後の複数の時点における、製剤Aを投与されたMITTセットにおける被験者による運動時平均疼痛強度を、プラセボを投与された被験者と比較して表す。図5Bは、投与後の複数の時点における、製剤Aを投与されたPPセットにおける被験者による運動時平均疼痛強度を、プラセボを投与された被験者と比較して表す。
【0550】
累積モルヒネ等価用量
0~48時間、0日目~14日目、0~24時間、24~48時間及び48~72時間にわたる累積モルヒネ等価用量について分析を行った。累積モルヒネ等価用量を、治療群及び治験実施施設を因子とし且つ年齢を共変量としたANCOVAを用いて、治療群間で比較した(図6)。統計的に有意ではないが、全時点について、累積モルヒネ等価用量において、5.0mL製剤A群を支持する傾向があった。
【0551】
MITT被験者セットについては、48~72時間を除く他の全ての時点で、LS平均は、プラセボ群よりも5.0mL製剤A群で低かった。PP被験者セットの場合、0~72時間、0~48時間及び0~24時間について、LS平均は、プラセボ群よりも5.0mL製剤A群で低かった。
【0552】
最初のオピオイド使用までの時間
2つの治療群を比較するため、最初のオピオイド使用までの時間を、ログランク検定を用いて分析した。MITT被験者セット(プラセボの0.48時間と比較して製剤A 5.0mLでは0.43時間)及びPP被験者セット(プラセボの0.50時間と比較して製剤A 5.0mLで0.42時間)についての、最初のオピオイド使用までの時間の中央値は統計的に有意ではなかった。図7は、投与後の複数の時点における、プラセボを投与された被験者と比較した、製剤Aを投与されたMITTセットにおける累積モルヒネ等価用量を表す。
【0553】
有効性の結論
主要研究評価項目については、この研究において統計的に有意な治療効果は見られなかったが、プラセボと比較して、5.0mL製剤A群において疼痛スコア及びオピオイド使用の低下の兆候があった。投与後0~72時間にわたるLS運動時平均疼痛強度AUCは、プラセボの5.97と比較して、5.0mL製剤A群では5.33であった。この差は、サンプルサイズ計算に使用された推定値よりも低かった(推定平均の1.9と比較して、観察された平均差は0.64)。しかし、この統計分析の推論的側面は、本研究が探索的性質のものであることが意図されていたため、この研究において最も重要ではなかった。治療群間の累積モルヒネ等価用量の差は、統計的に有意ではなかった。0~72時間にわたるLS平均累積モルヒネ等価用量は、プラセボ群の54.51と比較して、5.0mL製剤A群では44.27であった。両方の主要評価項目について、プラセボと比較した差は、術後最初の6~10時間で最も顕著であった。
【0554】
副次研究評価項目に関して、運動時疼痛強度正規化AUC(0~48時間)、平均総モルヒネ等価オピオイド用量(0~48時間)、及び最初のオピオイド投与までの時間については、2つの治療群間で統計的に有意な差は観察されなかった。0~48時間にわたる疼痛強度正規化AUCにおいては、5.0mL製剤A群を支持する傾向があった。0~24時間、0~48時間、0日目~14日目、24~48時間及び48~72時間にわたる累積モルヒネ等価用量は統計的に有意ではなかったが、全時点について、5.0mL製剤A群を支持する傾向があった。最初のオピオイド使用までの時間の中央値は統計的に有意ではなかった。
【0555】
安全性の結果
60人の被験者全員が、彼らが割り当てられた治療の少なくとも一部を受け、安全性分析に含められた。等しい割合の被験者(5.0mL製剤A群で38人(95.0%)の被験者、プラセボ群で19人(95.0%)の被験者)が、少なくとも1つのAEを経験した。5.0mL製剤A群における17人(42.5%)の被験者は、プラセボ群における7人(35.0%)の被験者と比較して、少なくとも1つのAEを最大関連度の関連性で経験した。大部分のAEは強度が軽度又は中等度であった。5.0mL製剤A群における8人(20.0%)の被験者は、プラセボ群における5人(25.0%)の被験者と比較して、少なくとも1つのAEを最大重症度の重度で経験した。報告されたTEAEの重症度は、2つの治療群間で類似していた。5.0mL製剤A群における最も一般的なAEは、便秘、吐き気、嘔吐、めまい、感覚異常及び傾眠であった。プラセボ群において、最も一般的なAEは、便秘、吐き気、めまい及び傾眠であった。一般的に、高頻度で発症したTEAEは、2つの治療群間で類似していた。研究のどの時点においても、オピオイド関連TEEE(便秘、めまい、眠気、吐き気、呼吸抑制、尿閉、又は嘔吐)の頻度に統計的に有意な差又は傾向はなかった。この研究中に報告されたSAEは1つだけであった。この事象は発熱であり、5.0mL製剤A群における被験者03-007により報告された。この事象は、軽度であり、治験薬と関連している可能性は低いとみなされた。5.0mLの製剤A投与は、血液学データ、生化学データ及び尿検査データのレビュー、バイタルサイン評価、並びに身体検査所見及び併用薬使用の評価に基づくと、安全且つ忍容性が良好であった。全ての被験者は、予想されたとおり、14日目に手術部位治癒および局所組織状態を有した。器官別大分類及び基本語によるTEAEは、以下の表2.3に器官別大分類ごとにまとめられる。
【0556】
【表11】
【0557】
>7.5%の被験者が経験したTEAEの概要は、基本語及び治療群ごとに、以下の表2.4に示される。7.5%にはより小さな治療群において少なくとも2人の被験者によって経験されたTEAEが含まれるため、7.5%をTEAEの頻度を概観するために選択した。5.0mL製剤A群における最も一般的なAEは、便秘、吐き気、嘔吐、めまい、感覚異常及び傾眠であった。プラセボ群において、最も一般的なAEは、便秘、吐き気、めまい及び傾眠であった。一般的に、高頻度で発症したTEAEは、2つの治療群間で類似していた。
【0558】
【表12】
【0559】
結論
この研究における有効性データは、プラセボと比較して、5.0mLの製剤A投与を受けるように無作為化された被験者における疼痛スコア(運動時平均疼痛強度AUC(曲線下の時間を正規化、術後0~72時間の期間中)により測定された)の一貫した低下を示した。プラセボと比較して、5.0mLの製剤A投与を受けるように無作為化された被験者におけるオピオイド使用(術後3日間で服用されたオピオイドの量により測定された)の低下も存在した。これらの低下は統計的に有意ではなかった。疼痛スコア及びオピオイド使用に関連する所見は、術後最初の6~10時間の間に最も顕著であった。AEの発生率、バイタルサイン及び検査所見の異常は、5.0mLの製剤A投与が安全であることを示し、離脱がないこと及び軽度の性質のAEは、5.0mLの製剤A投与がこの患者集団において十分に忍容されることを示す。
【0560】
実施例3
関節鏡下肩峰下除圧を受けている患者における肩峰下腔下腔へのブピバカイン組成物の投与を研究するため、臨床試験を行った。この研究はさらに、患者における、プラセボと比較したブピバカイン組成物の全身安全性及び局所安全性を調査した。
【0561】
これらの研究において使用されたブピバカイン組成物(製剤A)は、透明な、淡黄色~褐色の液体であり、様々な手術後の術後鎮痛剤としての使用が意図される。ブピバカイン組成物は、完全にエステル化された糖誘導体からなる徐放性マトリックス中にブピバカイン塩基を含有する。この研究において、製剤Aの目的は、数日間にわたるブピバカインの持続的な局所放出を提供することにより効果的な術後局所鎮痛を提供することである。この製剤は、滅菌溶液として一緒に投与される3つの成分(イソ酪酸酢酸スクロース66重量%、ベンジルアルコール22.0重量%、及びブピバカイン塩基12.0重量%)を含む。
【0562】
【表13】
【0563】
目的
主要目的 - 肩峰下除圧を伴う待機的関節鏡下肩手術を受けている被験者における皮下又は肩峰下腔に投与された製剤A(ブピバカイン、ベンジルアルコール、イソ酪酸酢酸スクロース)の有効性を決定すること。
【0564】
副次的目的 - 肩峰下除圧を伴う関節鏡下肩手術を受けている被験者における皮下又は肩峰下腔に投与された製剤A(ブピバカイン、ベンジルアルコール、イソ酪酸酢酸スクロース)の安全性及び忍容性を決定すること。
【0565】
研究目的は、コホート1及びコホート2のそれぞれについて具体的に定義された。
【0566】
方法
この研究は、回旋筋腱板修復を受けている患者における皮下又は肩峰下ブピバカインの有効性及び安全性の無作為化、二重盲検、プラセボ対照研究であり、送達システムとしての製剤A(ブピバカイン、ベンジルアルコール、イソ酪酸酢酸スクロース)の安全性及び忍容性を評価するための研究であった。全ての被験者における手術は、標準的な局所診療に従って局所麻酔又は全身麻酔下で行った。
【0567】
この研究は、2つの別々の連続するコホート(コホート1及びコホート2)において行われた。ほぼ同数の被験者を、各コホートに順番に登録することとした。研究期間は、スクリーニング、クリニックへの入院及び手術(0日目)、術後評価、クリニックからの退院、及び14日目までのフォローアップを含む最大21日間であった。
【0568】
被験者は、1日目と2日目にはクリニック又は自宅で、3日目にはクリニックで、4日目~7日目には手術及び治療後の電話で評価された。被験者は、フォローアップ評価及び血漿採取のため14日目に戻った。被験者は、0日目~7日目に、疼痛強度(PI)、併用薬、有害事象(AE)、及びレスキュー鎮痛を日記カードに記録した。被験者はまた、14日目までAE及び併用薬についても記録した。
【0569】
コホート1
手術直前に、45人の被験者が1:1:1の比(治療群1、治療群2、治療群3)で無作為に割り当てられ、以下の治療のうちの1つを受けた:
【0570】
治療群1:創傷閉鎖前に、5.0mLのプラセボ組成物を肩峰下腔に注射した。創傷閉鎖後、5.0mLの製剤Aの全量を、切開線の両側に沿って2回の後続の皮下注射として投与した。ブピバカインの総量は660mgであった。
【0571】
治療群2:創傷閉鎖前に、5.0mLの製剤Aを肩峰下腔に注射した。創傷閉鎖後、5.0mLのプラセボ組成物の全量を、切開線の両側に沿って2回の後続の皮下注射として投与した。ブピバカインの総量は660mgであった。
【0572】
治療群3:創傷閉鎖前に、5.0mLのプラセボ組成物を肩峰下腔に注射した。創傷閉鎖後、5.0mLのプラセボ組成物の全量を、切開線の両側に沿って2回の後続の皮下注射として投与した(プラセボ組成物の総送達量は10.0mLであった)。
【0573】
全ての治療群について、処置が関節鏡下で行われた場合、治験薬の皮下用量を、全ての関節鏡ポータルの周囲に均等に投与した。
【0574】
コホート2
コホート1の完了時に、コホート2への被験者の登録を開始した。手術直前に、45人の被験者が1:1の登録比(治療群4及び治療群5)で無作為に割り当てられ、以下の治療のうちの1つを受けた:
【0575】
治療群4:創傷閉鎖中に、5.0mLのプラセボ組成物を肩峰下腔に注射した。
【0576】
治療群5:創傷閉鎖中に、5.0mLの製剤Aを肩峰下腔に注射した。
【0577】
研究中、コホート2において投与される薬物の量を、7.5mL(990mgブピバカイン)から5.0mL(660mgブピバカイン)へと変更した。しかし、4人の被験者には治療4a(7.5mLプラセボ組成物)が投与され、3人の被験者には治療5a(7.5mL製剤A)が投与された。
【0578】
本研究の二重盲検部分においてPK(薬物動態)測定値を得るために、1つの参加センターにおいて、9人の被験者が、プラセボ組成物又は5.0mLの製剤A投与を受けるように無作為化された。これらの9人の被験者のうち、4人は5.0mLの製剤A投与を受け、5人はプラセボ組成物の投与を受けた。本研究の二重盲検部分の完了時に、追加PKサブ研究プロトコルを実施し、最大14人のさらなるPK被験者を登録して、肩峰下に5.0mLオープンラベル製剤Aを投与した。5.0mLの製剤A投与を受けた18人のPK被験者についての全体的なPK結果を、以下でより詳細に論じる。
【0579】
投与用の治験薬の調製
この治験薬は、製剤A又はプラセボ組成物のいずれかの10.0mLバイアルから5.0mLの治験薬を吸引するために使用した5mLシリンジで投与された。
【0580】
術後レスキュー鎮痛
術後レスキュー鎮痛は、要求に応じて処方されることになっていた。全てのレスキュー鎮痛剤の時間、名称、及び用量は、研究期間全体を通して、全ての被験者により紙又は電子日記のいずれかに記録された。手術創痛のために服用された鎮痛薬と他の適応症のために服用された鎮痛薬とは区別された。疼痛強度(PI)評価は、毎回、被験者からレスキュー鎮痛薬が要求される直前に完了した。
【0581】
被験者基準
被験者数:少なくとも72人の評価可能な被験者を確保するために計画された登録は90人の被験者であった(各コホートにおいて約36人の被験者、コホート1の各治療群において12人の被験者、コホート2の各治療群において18人の被験者)。合計40人の被験者がコホート1に登録され;14人が治療1に、10人が治療2に、16人が治療3に登録された。全40人の被験者がコホート1を完了した。合計52人の被験者がコホート2に登録され;4人が治療4aに、24人が治療4に、3人が治療5aに、21人が治療5に登録された。50人の被験者がコホート2を完了した。治療4における1人の被験者及び治療5aにおける1人の被験者は自発的に離脱した。
【0582】
本研究の二重盲検部分の完了時に、追加のPKサブ研究プロトコルを実施し、14人のさらなるPK被験者を登録して、肩峰下に5.0mLオープンラベル製剤Aを投与した。
【0583】
診断及び主な包含の基準
待機的回旋筋腱板修復を受けた、全般的に健康で、包含及び除外の基準を全て満たす18歳以上の男性及び女性は、本研究に参加する資格があった。
【0584】
治療期間:被験者は単回用量の治験薬の投与を受けた。研究期間は、スクリーニング、クリニックへの入院及び手術(0日目)、術後評価、クリニックからの退院、及び14日目までのフォローアップを含む最大21日間であった。
【0585】
評価基準
有効性
有効性は、被験者の日記(0日目~7日目)に収集されたPI及び疼痛コントロールの被験者の自己評価、修正簡易疼痛調査票(Modified Brief Pain Inventory)(1日目~7日目)、及び被験者の併用レスキュー鎮痛薬の使用(0日目~14日目)を使用して評価された。
【0586】
主要有効性評価項目は、0日目から7日目に収集された運動時PI、安静時PIであり、疼痛コントロール不良(1)、可(fair)(2)、良好(3)、非常に良好(4)、優良(5)であった。副次的有効性評価項目は、最悪及び最小の疼痛スコア、レスキュー鎮痛使用、機能、全体的な治療満足度、及び経時的な個別PIであった。
【0587】
安全性
安全性評価は、以下を含んでいた:AE;化学、血液学、尿検査などの臨床検査の評価;血清妊娠検査(該当する場合);バイタルサインの定期的モニタリング;12誘導心電図(ECG);併用薬;及び身体検査。評価には、手術部位治癒及び局所組織状態も含まれていた。
【0588】
統計的方法
別段に記載されない限り、全ての統計的検定は、5%有意水準で両側検定を使用して実施した。いずれの分析についても多重度調整は行われなかった。プロトコルごとの(PP)集団には、手術を成功裏に受け、治験薬の投与を受け、1つ以上の術後時点で記録された疼痛評価に関する術後データを有していた全ての被験者が含まれる。全ての有効性評価項目の概要表及び統計分析は、PP集団に基づく。安全性の概要は、任意の量の治験薬の投与を受けた全ての無作為化被験者を含む安全性集団に基づく。
【0589】
以下の治療群についてのデータを決定した:
- 治療1 (製剤A皮下)
- 治療2 (製剤A肩峰下)
- 治療5 (製剤A肩峰下)
- 製剤A (治療2及び5)
- 治療5a (7.5mL製剤A)
- 以下を含むプールされたプラセボ:
- 治療3 (10.0mLプラセボ組成物)
- 治療4 (5.0mLプラセボ組成物)
- 治療4a (7.5mLプラセボ組成物)
【0590】
最も興味深い比較は、治療5とプールされたプラセボとの比較であった。製剤A、治療2、及び治療1とプールされたプラセボとの比較の有意性も決定した。
【0591】
各治療群について、治療創発性AEの発生率(数及びパーセント)を、ICH国際医薬用語集(Medical Dictionary for Regulatory Activities)(MedDRA)バージョン8.0器官別大分類及び基本語に従って決定した。0日目に発症したAEについては、別個の全体的な発生率が決定された。AEの最悪の重症度及びそれらの研究薬との関係も決定された。
【0592】
被験者の日記で確認された、予想された事象:吐き気/嘔吐、眠気、そう痒、便秘、めまい、耳鳴り、味覚障害及び感覚異常について、別個の全体的な発生率の概要が決定された。
【0593】
修正簡易疼痛調査票の具体的な安全性評価を、研究日及び治療ごとに表にした。全研究日にわたる発生率もまた、治療ごとに決定した。
【0594】
手術部位治癒及び局所組織状態評価についてまとめ、各治療群についての経時的な被験者発生率(数及びパーセント)により表にした。
【0595】
スクリーニング身体検査結果からの異常又は変化を判定した。各収集時点における、各治療群についてのバイタルサインを記述的に列挙した。ベースライン(投与前)バイタルサインからの変化を、各治療及び予定された間隔についてまとめた。スクリーニング及び予定外のECGが使用された。
【0596】
結果
有効性の結果
運動中及び安静時の主要評価項目PIスコア(AUC/120時間)を、表3.1及び表3.2にそれぞれ治療群ごとにまとめた。製剤A治療群における平均PI運動値は、プールされたプラセボ群における5.22と比較して、5.47、3.27、及び5.12(それぞれ治療1、2、及び5)であった。治療2は、平均値が最も低かった(疼痛が最も少なかった)。プールされたプラセボ群との比較は、治療2がプールされたプラセボよりも有意に優れていたことを示した(治療差= -1.95、95%CI = -3.59~-0.31、P = 0.02)。製剤A群は、プールされたプラセボよりも数値的に優れていた(治療差= -1.03、95%CI = -2.14~0.09)。この差は統計的有意性に達しなかった(P=0.072)。安静中の平均PIについて、治療2、治療5、及び製剤Aはプールされたプラセボよりも数値的に優れていた。これらの差は統計的有意性に達しなかった。
【0597】
【表14】
【0598】
【表15】
【0599】
他の主要有効性変数は、研究日及び治療ごとの疼痛コントロールであり、PP集団についての数値スコア(1=不良、5=優秀)を用いて評価した。1日目~7日目の平均疼痛コントロールスコアは、表3.3に治療群ごとにまとめられる。統計的比較は、製剤A対プールされたプラセボに限定された。統計的に有意な差が観察されたのは1日目のみ(P=0.008)であり、ここで製剤A治療群及びプールされたプラセボ治療群は、それぞれ3.3及び2.5の平均疼痛コントロールスコアを有していた;この研究の安静中に、統計的に有意な差は観察されなかった(2日目~7日目)。
【0600】
【表16】
【0601】
累積IVモルヒネ等価用量として表されるオピオイドレスキュー薬は、0~5日目について表3.4にまとめられる。オピオイドレスキュー鎮痛累積モルヒネ等価用量についての製剤A治療群における平均値は、プールされたプラセボ群における55.27と比較して、70.30、24.96、及び42.74(それぞれ治療1、2、及び5)であった。治療2は、平均値が最も低かった(累積モルヒネ等価用量が最も少なかった)。プールされたプラセボ群と比較して、治療2はプールされたプラセボよりも数値的に優れていた;その差は統計的有意性に達しなかった(P = 0.147)。
【0602】
【表17】
【0603】
製剤A治療群(治療1、2、及び5)、並びにプールされたプラセボ群においては、全ての被験者がレスキュー鎮痛を要求した。
【0604】
他の全ての副次的評価項目(最悪及び最小の疼痛スコア、機能、全体的な治療満足度、及び経時的な個別のPI)は、有意な結果を全く示さなかった。
【0605】
経時的なPIの事後分析を、2つのコホートについて別々に行った。コホート1においては、製剤Aの肩峰下治療群(治療2)はプラセボ群(治療3)と比較して運動時PIがより低く、製剤A皮下治療群(治療1)とプラセボ群(治療3)との間で差は観察されなかった。コホート2では、製剤A肩峰下治療群(治療5)において、プラセボ(治療4)と対比して運動時PIの低下は観察されなかった。コホート1の治療群とコホート2の治療群との間で、オピオイドレスキュー鎮痛使用における差は観察されなかった。
【0606】
図8は、コホート1とコホート2について別々に分析された経時的平均PI運動を示す。この図は、コホート1に関して、治療2(5.0mL製剤A肩峰下)についての運動時平均PIスコアが、プラセボ(治療3)についての運動時平均PIスコアよりも低かったことを実証する。治療1(5.0mL製剤A皮下)とプラセボ(治療3)との間で運動時PIスコアにおける差は観察されなかった。コホート2では、プラセボ(治療5)に対して治療4(製剤A、肩峰下)では運動時PIの低下は観察されなかった。
【0607】
肩甲上腕の病態が最小限であるか又はその病態を全く有さない両コホート由来の被験者に対して、サブグループ分析を実施した。因子として研究センター及び治療群を含む事前指定ANOVAモデルを用いて、プールされた肩峰下活性治療群とプールされたプラセボとの間の差について検定した。実薬及びプラセボについての運動時平均疼痛強度AUC(72時間にわたる)は、それぞれ3.6及び6.1であった。これに対応する運動時平均疼痛強度AUCにおける差(72時間にわたる、実薬-プラセボ)は、-2.6(95%CI:(-4.1、-1.1))であった。この結果は統計的に有意であり(p=0.0012)、疼痛の41.8%の低下を示して(一方、ITT分析は16.5%の低下を示した)、積極的肩峰下治療を支持する鎮痛利益を裏付けている。
【0608】
図9は、肩甲上腕の病態が最小限であるか又はその病態を全く有さない被験者のサブグループにおける経時的なPI運動を示す。これは、プラセボ(治療3及び4)と比較して、製剤Aの肩峰下投与(治療2及び5)を用いたそれらの治療群における鎮痛の増加を実証する。製剤Aの皮下投与を用いた治療1は、プラセボ(治療3及び4)と比較してPI運動の低下を示さなかった。
【0609】
実薬及びプラセボについての平均総モルヒネ等価用量は、それぞれ33.5及び56.9であった。これに対応する(プラセボ-実薬)の平均における差は23.4(95%CI:(-1.1、47.9))であった。この結果は、オピオイド使用の41.1%の低下を表して(一方、ITT分析は16.1%を示した)積極的な肩峰下治療を支持したが、統計的に有意ではなかった。
【0610】
安全性の結果
AEの全体的な頻度は、治療群間で類似していた。最も一般的に報告された治療創発性AEは、吐き気、傾眠、そう痒、及び便秘であった。治療創発性AEの大部分は重症度が軽度又は中等度であった。AEによる死亡又は中止はなかった。治療群4において1つの重篤なAEが発生し(術後疼痛)、これは強度が重度であり、治験責任医師は、治験薬とは無関係であるとみなした。目的の特定の安全性評価の分析は、オピオイド関連の安全性の問題を全く示さなかった。
【0611】
治療ごとの治療創発性有害事象(TEAE)の概要を表3.5に示す。
【0612】
【表18】
【0613】
結論
製剤Aは、局所的な術後鎮痛を延長するために特に製剤化された注射溶液であり、様々な手術後の術後鎮痛剤としての使用が意図される。各ミリリットルの製剤Aは、132mg/mLのブピバカインに相当する12重量%ブピバカインを含有する。PI運動の主要有効性評価項目は、治療2(製剤A肩峰下)においては、プールされたプラセボ群(治療3、4a及び4)と比較して有意に優れており、治療1(製剤A、皮下)、治療5(製剤A)、及び製剤A(治療2及び5、それぞれ製剤A肩峰下及び製剤A)においては、プールされたプラセボ群(治療3、4a及び4)と比較して有意に優れていなかったことが示された。コホート1における事後分析の結果は、製剤A肩峰下治療群(治療2)が、プラセボ群(治療3)と比較して運動時PIが低く、製剤Aの皮下治療群(治療1)とプラセボ群(治療3)との間で差は観察されなかったことを示した。肩甲上腕の病態が最小限であるか又はその病態を全く有さない両コホートからの被験者に対して実施されたサブ解析において、製剤Aの肩峰下投与を用いた治療群(治療2及び5)は、プラセボ(治療3及び4)と比較して運動時PIがより低かった。製剤Aの皮下投与を用いた治療1は、プラセボと比較して運動時PIの低下を示さなかった。AEの全体的な頻度は、治療群間で類似していた。
【0614】
実施例4
浸潤用途のための製剤A
警告:不注意な血管内注射から生じる潜在的な有害な塞栓の影響のリスク
不注意な血管内注射により、製剤Aの液滴が、肺毛細血管床及び他の毛細血管床に蓄積される可能性がある。製剤Aは、関節鏡下肩手術の終了時に肩峰下腔内に投与すること。製剤Aを注射する前に、直接関節鏡下可視化を用いて針先の適切な配置を確認しなければならない。
【0615】
効能・効果
製剤Aはアミド局所麻酔薬を含み、関節鏡下肩峰下除圧後72時間まで術後鎮痛を生じるための、直接関節鏡下可視化下での肩峰下腔内への投与に適応される。
【0616】
使用の制限
軟組織外科手術を含む他の外科手術、関節内投与のための整形外科手術を含む他の整形外科手術、及び骨手術において、又は脳幹脊髄神経遮断又は末梢神経遮断に使用される場合、安全性及び有効性は確立されていない。
【0617】
用法・用量
一部の例では、製剤Aは、単回用量投与にのみ意図される。
製剤Aを、局所麻酔薬又は他の薬若しくは希釈剤で希釈しないこと、又はこれらと混合しないこと。
他のブピバカイン製剤から製剤Aに変換しないこと。置換しないこと。
製剤Aの投与後168時間以内の局所麻酔薬のさらなる使用は避けること。
推奨用量は660mg(5mL)である。
【0618】
剤形・含量
製剤A(ブピバカイン溶液)
5mL単回投与バイアル、660mg/5mL(132mg/mL)
【0619】
禁忌
任意のアミド局所麻酔薬又は製剤Aの他の成分に対する既知の過敏症(例えば、アナフィラキシー反応及び重篤な皮膚反応)を有する患者には使用しないこと。
産科の傍頸管ブロック麻酔を受けている患者には使用しないこと。
【0620】
警告及び注意事項
未承認の関節内使用による関節軟骨壊死のリスク:イヌにおいて関節内投与後に製剤A及び製剤Aビヒクルの影響を評価する研究は、関節軟骨壊死について実証した(5.2、13.2)。
【0621】
全身毒性のリスク:ブピバカインの注射後、心血管バイタルサイン及び呼吸バイタルサイン(通気の適切性)並びに患者の意識状態の注意深く且つ持続的なモニタリングを行うべきである(5.3)。
【0622】
メトヘモグロビン血症:局所麻酔薬使用に関連して、メトヘモグロビン血症の症例が報告されている。これらのリスクの管理に関するさらなる詳細については、添付文書全体を参照のこと(5.4)。
【0623】
関節内注入による軟骨溶解:関節鏡下外科手術及び他の外科手術の後の製剤Aを含む局所麻酔薬の関節内注入は未承認の使用であり、このような注入を受けている患者における軟骨溶解の市販後報告が存在している(5.5)。
【0624】
有害反応
肩手術における製剤Aの投与後に、10%以上且つ対照を上回る発生率で報告された有害反応は、めまい、味覚障害、排尿障害、頭痛、知覚鈍麻、感覚異常、耳鳴り、及び嘔吐であった(6.1)。
【0625】
軟組織外科手術における製剤Aの投与後に10%以上且つ対照を上回る発生率で報告された有害反応は、貧血、徐脈、便秘、C反応性タンパク質増加、下痢、めまい、味覚障害、頭痛、吐き気、術後挫傷(打撲傷)、手術疼痛、そう痒、発熱、傾眠、手術部位出血、目に見える打撲傷、及び嘔吐であった(6.1)。
【0626】
特定集団における使用
中等度から重度の肝障害:投薬の低減及びブピバカイン毒性についてのモニタリングの増加を検討すること。
【0627】
1 効能・効果
製剤Aは、直接関節鏡下可視化下で肩峰下腔内に投与して関節鏡下肩峰下除圧後72時間まで術後鎮痛を生じるため、成人において適応される。
【0628】
使用の制限
軟組織外科手術を含む他の外科手術、関節内投与のための整形外科手術を含む他の整形外科手術、及び骨手術において、又は脳幹脊髄神経遮断又は末梢神経遮断に使用される場合、安全性及び有効性は確立されていない。
【0629】
製剤Aは、18歳未満の患者における使用については研究されていない。
【0630】
2 用法・用量
2.1 重要な用法・用量の情報
- 製剤Aは、単回用量投与にのみ意図される。
【0631】
- 製剤Aを、局所麻酔薬又は他の薬物若しくは希釈剤で希釈しないこと、又はこれらと混合しないこと。
【0632】
- ブピバカインの投与に関連して重篤な、致死的な有害反応の潜在的なリスクがあるため、製剤Aは、神経毒性又は心毒性の証拠を示す患者を迅速に治療するために訓練された人材及び装置が利用可能な状況において投与すべきである。
【0633】
- 異なるブピバカインの製剤は、たとえミリグラム投与量が同じであっても、製剤Aと生物学的に同等ではない。任意の他のブピバカインの製剤から製剤Aへと投薬を変えることはできず、逆もまた同様である。置き換えないこと。
【0634】
- 局所麻酔薬の毒性の影響は相加的である。製剤Aの投与後168時間以内の局所麻酔薬のさらなる使用は避けること。
【0635】
- 製剤Aの血管内投与は避けること。ブピバカイン及び他のアミド含有製品の偶発的な血管内注射後にけいれん及び心停止が起こっている。
【0636】
- 製剤Aは、以下の投与経路には適応されない。
【0637】
- 硬膜外
- くも膜下腔内
- 血管内
- 関節内使用[非臨床的毒物学(0)を参照]
- 局所的神経遮断
- 投与領域における深く且つ完全な感覚ブロックを必要とする、切開前又は術前の局所領域麻酔技術
【0638】
2.2 推奨用量
この研究について、製剤Aの推奨用量は660mg(5mL)である。
【0639】
2.3 調製、投与及び投薬方法
- 製剤Aは即時使用可能であり、希釈又は混合を必要としない。
【0640】
- 投与前に、大口径針(16ゲージ又はそれより大きい)を使用して製剤Aを5mLシリンジに吸引する。シリンジが充填されたら、大口径針を捨てる。
【0641】
- 手術の終了時に、18ゲージ又はそれより大きい口径の針を使用して、5mL用量の製剤A全部を肩峰下腔内へ投与する。上記の針を、既存の関節鏡ポート又は無傷の皮膚を通して挿入し、肩峰下腔に到達することができる。直接関節鏡下可視化により、肩峰下腔内の正確な針先の配置を確認する。
【0642】
- 製剤Aを、肩甲上腕関節内腔に投与しないこと。
【0643】
2.4 適合性の検討
製剤Aは、以下に適合する:
- 一般的にインプラント可能な材料、例えばポリプロピレン及びポリエステル
- シルク縫合糸、ナイロン縫合糸、ガット縫合糸、ポリプロピレン縫合糸、ポリジオキサノン縫合糸、及びポリグリコール酸縫合糸
【0644】
3 剤形・含量
製剤A(ブピバカイン溶液)は、透明なガラスバイアル中の、無菌で非発熱性の、透明な淡黄色~琥珀色の溶液である。
【0645】
- 5mL単回投与バイアル:660mg/5mL(132mg/mL)
【0646】
4 禁忌
製剤Aは、以下の者には禁忌である:
- 任意のアミド局所麻酔薬又は製剤Aの他の成分に対する既知の過敏症(例えば、アナフィラキシー反応及び重篤な皮膚反応)を有する患者。
- 産科の傍頸管ブロック麻酔を受けている患者。この技術によるブピバカインHClの使用は、胎児の徐脈及び死亡をもたらした。
【0647】
5 警告及び注意事項
5.1 不注意な血管内注射から生じる潜在的な有害な塞栓の影響のリスク
不注意な血管内注射により、製剤Aの液滴が、肺毛細血管床及び他の毛細血管床に蓄積される可能性がある。製剤Aは、関節鏡下肩手術の終了時に肩峰下腔内へ投与すること。製剤Aを注射する前に、直接関節鏡下可視化を使用して、針先の適切な配置を確認しなければならない。
【0648】
5.2 未承認の関節内使用による関節軟骨壊死のリスク
肩峰下除圧以外の外科手術における製剤Aの安全性及び有効性は確立されておらず、製剤Aは、関節内注射による使用に承認されていない。イヌにおいて関節内投与後に製剤A及び製剤Aビヒクルの影響を評価する研究は、関節軟骨壊死について実証した[非臨床的毒物学(0)を参照]。
【0649】
5.3 全身毒性のリスク
製剤Aの意図されない血管内注射は、例えば、進行して最終的には呼吸停止に至るCNS抑制又は心肺機能低下及び昏睡などの全身毒性を伴う可能性がある。製剤Aを注射する前に、直接関節鏡下可視化を使用して、肩峰下腔における針先の適切な配置を確認しなければならない。
【0650】
ブピバカインの安全性及び有効性は、適切な投与量、正確な技術、十分な予防策、及び非常事態に対する準備によって決まる。ブピバカインの注射後、心血管バイタルサイン及び呼吸バイタルサイン(通気の適切性)並びに患者の意識状態の注意深く且つ持続的なモニタリングを行うべきである。
【0651】
中枢神経系(CNS)毒性の可能性のある初期兆候は、落ち着きのなさ、不安、支離滅裂な発言、意識朦朧、口及び唇のしびれ及びうずき、金属味、耳鳴り、めまい、かすみ目、振戦、攣縮、CNS抑制、又は眠気である。全身毒性、任意の原因から生じる呼吸低下、及び/又は感受性の変化の適切な管理の遅れは、アシドーシス、心停止、及びおそらくは死亡の発生につながり得る。
【0652】
製剤Aの投与後168時間以内の局所麻酔薬のさらなる使用は避けること。反復用量のブピバカインの注射は、薬物又はその代謝産物の遅い蓄積に起因するか、又は遅い代謝分解に起因する血漿レベルの顕著な増加を引き起こし得る。血液レベルの上昇に対する耐性は、患者の状態により変動する。衰弱した、高齢の、又は急性疾患の患者においては、全身毒性についてのモニタリングの増加を検討すること。
【0653】
5,4 メトヘモグロビン血症
局所麻酔薬使用に関連して、メトヘモグロビン血症の症例が報告されている。全ての患者はメトヘモグロビン血症のリスクを有するが、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏症、先天性又は特発性のメトヘモグロビン血症、心臓障害又は肺障害を有する患者、6ヶ月未満の乳幼児、及び酸化剤又はそれらの代謝産物に対する同時曝露は、上記の状態の臨床症状の発生の影響を受けやすい[薬物相互作用(0)を参照のこと]。これらの患者に局所麻酔薬を使用しなければならない場合、メトヘモグロビン血症の症状及び兆候についての緊密なモニタリングが推奨される。
【0654】
メトヘモグロビン血症の兆候は、曝露後直ぐに生じる可能性もあれば、数時間遅れる可能性もあり、チアノーゼ性皮膚変色及び/又は血液の異常な呈色を特徴とする。メトヘモグロビンレベルは上昇し続ける可能性があり;従って、てんかん発作、昏睡、不整脈、及び死亡などのより重篤な中枢神経系有害作用及び心血管有害作用を回避するため、緊急治療が必要とされる。任意の酸化剤を中止すること。兆候及び症状の重症度に応じて、患者は、支持療法、すなわち、酸素療法、水分補給に応答し得る。より重篤な臨床症状は、メチレンブルー、交換輸血、又は高圧酸素による治療を必要とし得る。
【0655】
5.5 局所麻酔薬の関節内注入による軟骨溶解
関節鏡下外科手術及び他の外科手術後の、ブピバカインを含む局所麻酔薬の関節内注入は未承認の使用であり、このような注入を受けている患者における軟骨溶解の市販後報告が存在している。報告された軟骨溶解の症例の大部分は肩関節に関するものであり;肩甲上腕軟骨溶解の症例は、エピネフリンを含む局所麻酔薬及びエピネフリンを含まない局所麻酔薬の関節内注入後48~72時間の小児患者及び成人患者において記載されている。より短い注入期間が、軟骨溶解に関連しているか否かを判定するには情報が不十分である。関節痛、凝り、及び動きの低下などの症状の発生の時間は変動し得るが、早ければ手術後2ヶ月目に開始し得る。現在、軟骨溶解に対する有効な治療はなく;軟骨溶解を経験した患者は、さらなる診断手段及び治療手段を必要とし、一部の患者は、関節形成又は人工肩関節置換術を必要とした。
【0656】
5.6 肝障害を有する患者における毒性のリスク
ブピバカインなどのアミド局所麻酔薬は肝臓により代謝されるため、製剤Aで治療される中等度から重度の肝障害を有する患者においては、投薬の低減及びブピバカイン全身毒性についてのモニタリングの増加を検討すること[特定集団における使用(0)を参照]。
【0657】
5.7 心血管機能障害を有する患者における使用のリスク
心血管機能障害(例えば、低血圧、心ブロック)を有する患者における製剤Aの使用を検討する場合、これらの患者は、ブピバカインにより生じる房室(AV)伝導の延長と関連する機能変化を補償することができない場合があるため、注意を要する。投薬の低減を検討すること。血圧、心拍数、及びECG変化について、患者を注意深くモニターすること。
【0658】
6 有害反応
ブピバカイン塩酸塩に対する以下の有害反応は、処方情報の他の節における他の箇所に記載されている:
- 血管内注射による全身毒性[警告及び注意事項(0.3)を参照]
- メトヘモグロビン血症[警告及び注意事項(5.4)を参照]
- 関節内注入による軟骨溶解[警告及び注意事項(0.5)を参照]
- 心血管系反応[警告及び注意事項(0.7)を参照]
【0659】
6.1 臨床試験経験
臨床試験は多種多様な条件下で行われるため、薬物の臨床試験において観察される有害反応率は、別の薬物の臨床試験において観察される割合と直接比較することはできず、実際に観察される割合を反映し得ない。
【0660】
2.5mL~5mLの用量の製剤Aの安全性を、10件の無作為化、二重盲検、対照試験において評価した。全体として、製剤A 5mL(推奨用量)が、臨床試験において、浸潤指示書の推奨方法を含む様々な投与方法を用いて、合計735人の患者に投与された。3件の試験はブピバカインHClと対照し、2件の試験はブピバカインHCl及びビヒクルプラセボと対照し、5件の試験はビヒクルプラセボと対照した。さらなる47人の患者を、ブピバカインHCl対照試験の1つにおいて、生理食塩水プラセボで治療した。評価された外科手術は、鼠径ヘルニア修復術、肩の肩峰下除圧術、腹部子宮摘出術、開腹術、腹腔鏡下胆嚢摘出術、及び腹腔鏡支援結腸切除を含んでいた。
【0661】
肩外科手術
肩手術中に投与される製剤Aの安全性を評価する3つの研究が存在していた。上記の実施例1に対応する研究1において、3つの治療:製剤A、ビヒクルプラセボ、又はブピバカインHClのうちの1つを、手術の終了時に肩峰下腔内に投与した。表4.1は、研究1に由来する一般的に報告された有害反応を示す。
【0662】
【表19】
【0663】
上記の実施例2及び3にそれぞれ対応する研究2及び研究3において、手術の終了時に、患者の肩峰下腔内に、製剤A又はビヒクルプラセボのいずれかを投与した。表4.2は、研究2及び3に由来する一般的に報告された有害反応を示す。
【0664】
【表20】
【0665】
肩外科手術における製剤Aの投与後の、まれな有害反応(2%未満の発生率であり、且つブピバカインHCl又はビヒクルプラセボのいずれかと比較して高頻度)は、狭心症、眼瞼けいれん、心電図T波振幅減少、心電図T波反転、疲労、変形性関節症、手術による吐き気、手術疼痛、及び肺動脈性高血圧であった。
【0666】
肩MRI、肩の身体検査、及び創傷治癒の評価からなるさらなるフォローアップ安全性データを、研究1においては6ヶ月で、研究2においては18ヶ月で収集した。研究3において治療された患者については、特定の長期フォローアップ評価は存在しなかった;しかし、治療責任医師らは、フォローアップ調査における軟骨溶解の症例について全く報告しなかった。3つの研究全てにおいて予想されたとおり、全ての外科的切開部が治癒していたことが見出された。表4.3は、研究1についてのMRI及び身体検査の結果を示す。表4.4は、研究2についてのMRI及び身体検査の結果を示す。
【0667】
【表21】
【0668】
【表22】
【0669】
軟組織外科手術
鼠径ヘルニア修復(ヘルニア根治手術)を受けている患者における製剤Aの安全性を評価する2つの研究が存在していた。これらの研究における患者に、製剤A(5mL)又はビヒクルプラセボのいずれかを投与した;2.5mLは鼠経管床に投与し、2.5mLは皮下腔に投与した。表4.5は、これらの研究に由来する、一般的に報告された有害反応を示す。
【0670】
【表23】
【0671】
腹腔鏡下手術、腹腔鏡支援手術、又は開腹手術における製剤Aの安全性を評価する5つの研究が存在していた。
【0672】
腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けている患者における2つの研究において、手術の終了時に、製剤A又はブピバカインHClを腹腔鏡ポート切開部に投与した。これらの研究の1つにおいて、ある患者のサブセットは、製剤A又は生理食塩水プラセボのいずれかを受けた。腹腔鏡支援結腸切除術を受けている患者の研究において、手術の終了時に、製剤A又はビヒクルプラセボを、主にハンドポート切開部に投与した。開腹術を受けている患者の研究において、手術の終了時に、製剤A又はブピバカインHClを、外科的切開部の全長に投与した。表4.6は、これらの4つの研究に由来する、一般的に報告された有害反応を示す。表4.7及び表4.8は、それぞれ、生理食塩水プラセボ対照群を含む腹腔鏡下胆嚢摘出術研究に由来する、手術部位有害反応及び早期中枢神経系(CNS)関連有害反応を示す。
【0673】
【表24】
【0674】
【表25】
【0675】
【表26】
【0676】
総腹部子宮摘出術を受けている患者の研究において、手術の終了時に、製剤A、ビヒクルプラセボ、又はブピバカインHClを、外科的切開部に投与した。表4.9は、この研究に由来する、一般的に報告された有害反応を示す。
【0677】
【表27】
【0678】
軟組織外科手術における製剤Aの投与後のまれな有害反応(2%未満の発生率であり、且つブピバカインHCl又はプラセボのいずれかと比較して高頻度)は、以下のとおりであった:適用部位刺激、心房細動、薬疹、心電図QT延長、げっぷ、紅斑、過剰肉芽組織、疲労、生殖器痛、心拍数増加、しゃっくり、知覚鈍麻、味覚鈍麻、切開部位蜂巣炎、切開部位びらん、切開部位知覚鈍麻、切開部位炎症、切開部位浮腫、切開部位疼痛、切開部位発疹、平均動脈圧増加、尿意切迫、寝汗、過剰摂取、動悸、処置による高血圧、全身そう痒、全身発疹、血清腫、洞性頻脈、皮膚変色、耳鳴り、及び創傷出血。
【0679】
7 薬物相互作用
製剤Aを、局所麻酔薬又は他の薬物若しくは希釈剤で希釈しないこと、又はこれらと混合しないこと。製剤Aの投与後168時間以内の局所麻酔薬のさらなる使用は避けること。
【0680】
7.1 メトヘモグロビン血症に関連する薬
製剤Aを投与される患者は、他の局所麻酔薬を含み得る以下の薬物に同時に曝露される場合、メトヘモグロビン血症を発症するリスクが増大する[警告及び注意事項(0)を参照]。
【0681】
【表28】
【0682】
8 特定集団における使用
8.1 妊娠
リスク概要
妊婦においては、製剤Aを用いて行った研究は存在しなかった。動物研究では、ブピバカインを、器官形成中の妊娠ウサギに、660mgブピバカインの製剤Aの最大推奨ヒト用量の0.6倍の皮下投与した場合、胚・胎児致死性に留意した。660mgブピバカインの製剤Aの最大推奨ヒト用量の0.6倍でのラット出生前及び出生後発達研究(着床から離乳までの投薬)においては、仔(pup)の生存率の低下が観察された。動物データに基づいて、胎児に対する潜在的なリスクについて妊婦に助言する[データ参照]。
【0683】
適応集団についての主要な先天性欠損症及び流産の背景リスクは未知である。しかし、米国の主要な先天性欠損症の一般的な集団における背景リスクは、臨床的に認識された妊娠の2%~4%であり、流産の背景リスクは15%~20%である。
【0684】
臨床的検討
陣痛又は分娩
ブピバカインは、産科の傍頸管ブロック麻酔には禁忌である。製剤Aは、この技術を用いては研究されていないが、産科の傍頸管ブロック麻酔のためのブピバカインの使用は、胎児の徐脈及び死亡をもたらした。ブピバカインは、胎盤を迅速に通過することが可能であり、硬膜外ブロック麻酔、尾部ブロック麻酔、又は外陰部ブロック麻酔に使用される場合、様々な程度の母体毒性、胎児毒性、及び新生児毒性を引き起こし得る(製剤Aは、これらの用途に適応ではない)。毒性の発生率及び程度は、実施される手術、使用される薬のタイプ及び量、並びに薬物投与の技術によって決まる。産婦、胎児、及び新生児における有害反応は、中枢神経系、末梢血管の調整、及び心臓機能の変化を伴う。
【0685】
データ
動物データ
ブピバカイン塩酸塩は、臨床的に関連した用量で妊娠ラット及びウサギに皮下投与された場合、発生毒性を生じさせた。
【0686】
器官形成の期間中(着床から硬口蓋の閉鎖まで)、ブピバカイン塩酸塩を、4.4、13.3、及び40mg/kgの用量でラットに皮下投与し、1.3、5.8、及び22.2mg/kgの用量でウサギに皮下投与した。高用量は、mg/m2体表面積(BSA)ベースで660mg/日の1日最大推奨ヒト用量(MRHD)の約0.6倍である。母体死亡率の増加を引き起こした高用量では、ラットにおける胚胎児影響は観察されなかった。ウサギにおいては、母体毒性の不存在下に、高用量で胚胎児死亡の増加が観察され、胎児無有害作用レベル(No Observed Adverse Effect Level)はBSAベースでMRHDの約0.2倍であった。
【0687】
4.4、13.3、及び40mg/kgの皮下用量で行ったラットの出生前及び出生後発達研究(着床から離乳までの投薬)において、高用量で仔の生存率の低下が観察された。高用量は、BSAベースで660mg/日の1日MRHDの約0.6倍である。
【0688】
8.2 授乳
リスク概要
製剤Aは、授乳中の母親においては研究されていない。ブピバカインは、血漿中で製剤Aの投与後168時間まで持続することが可能であり[臨床薬理学(0)を参照)]、製剤Aの賦形剤であるベンジルアルコールは、12時間まで持続し得る。ブピバカイン及びベンジルアルコールは両方とも、母乳中に分泌されることが報告されている。母乳育児の発達上及び健康上の利点は、製剤Aに対する母親の臨床的必要性、及び製剤A又は基礎となる母体状態から母乳で育てられる乳幼児に対して及ぼされる任意の潜在的な有害作用と共に検討されるべきである。
【0689】
8.3 小児への使用
18歳未満の小児患者における製剤Aの安全性及び有効性は確立されていない。
【0690】
8.4 高齢者への使用
製剤A臨床研究に登録された患者の総数(N=1463)のうち、167人の患者は65歳超であり、32人の患者は75歳超であった。
【0691】
ブピバカイン臨床研究において、高齢の成人患者と若年の成人患者との間で様々な薬物動態パラメータにおける差が観察されている。ブピバカインは、実質的には腎臓により分泌されることが知られており、ブピバカインに対する有害反応のリスクは、腎機能障害を有する患者においてより高い可能性がある。高齢の患者は腎機能が低下している可能性が高いため、用量選択には注意を払う必要性があり、腎機能をモニターすることが有用であり得る。高齢の患者は、低用量の製剤Aを必要とし得る。製剤Aを高齢の患者に投与する場合、局所麻酔薬の全身毒性についてのモニタリングの増加を検討すること。
【0692】
8.5 肝障害
ブピバカインのようなアミド型局所麻酔薬は肝臓により代謝されるため、これらの薬物は、肝障害を有する患者においては注意深く使用するべきである。重篤な肝障害を有する患者は、通常は局所麻酔薬を代謝することができないため、毒性の血漿濃度、及び潜在的に局所麻酔薬の全身毒性を発症するリスクが高い。肝機能障害を有する患者における製剤Aの使用を検討する場合には注意を要し、投薬の低減を検討すること。中等度から重度の肝障害を有する患者においては、製剤Aを投与する場合、局所麻酔薬の全身毒性についてのモニタリングの増加を検討すること。
【0693】
8.6 腎障害
ブピバカインは、実質的に腎臓により分泌されることが知られており、この薬に対する有害反応のリスクは、腎機能障害を有する患者においてより高い可能性がある。腎機能障害を有する患者における製剤Aの使用を検討する場合には、注意を要する。腎機能障害を有する患者に製剤Aを投与する場合、局所麻酔薬の全身毒性についてのモニタリングの強化を検討すること。
【0694】
10 過剰投与
局所麻酔薬に由来する緊急事態は、一般的に、局所麻酔薬の治療的使用中に遭遇する高い血漿濃度、又は局所麻酔薬溶液[警告及び注意事項(0)を参照]の意図されない血管内注射に関連している。
【0695】
臨床研究プログラムにおいて、2850ng/mLの最大血漿濃度(Cmax)が報告された。高いブピバカイン血漿濃度を有する患者においては、明らかなブピバカイン関連有害反応又は臨床的続発症は観察されなかった。
【0696】
11 説明
製剤A(ブピバカイン溶液)は、無菌で非発熱性の、透明な、淡黄色~琥珀色の、浸潤用の溶液である。時間がたつにつれて、溶液色は、淡黄色~琥珀色の範囲内で濃くなる。色の範囲は、製剤の効力の変化とは関連していない。製剤Aは、ブピバカイン(132mg/mL)、ベンジルアルコール、及びイソ酪酸酢酸スクロースを含む。
【0697】
アミド型局所麻酔薬であるブピバカインは、1-ブチル-N-(2,6-ジメチルフェニル)-2-ピペリジンカルボキサミドである。これは、分子量288.43g/molを有する白色の結晶粉末である。ブピバカインの構造は、以下に示される:
【0698】
【化11】
【0699】
ブピバカインは、132mg/mLの濃度で製剤A中に存在する。
【0700】
12 臨床薬理学
12.1 作用機序
ブピバカインは、おそらくは神経における電気的興奮の閾値を高め、神経インパルスの伝播を遅らせ、活動電位の上昇率を低下させることにより、神経インパルスの生成及び伝導をブロックする。一般的に、麻酔の進行は、影響を受ける神経線維の直径、髄鞘形成及び伝導速度に関連している。臨床的には、神経機能喪失の順序は、以下のとおりである:(1) 疼痛、(2) 温度、(3) 触覚、(4) 固有受容、及び(5) 骨格筋の調整である。
【0701】
12.2 薬力学
ブピバカインの全身吸収は、心血管系及び中枢神経系に影響を与える。治療用量により達成される血液濃度では、心臓伝導、興奮性、不応性、収縮性、及び末梢血管抵抗性の変化は最小限である。しかし、毒性の血液濃度は、心臓伝導及び興奮性を抑制し、これが房室ブロック、心室性不整脈及び心停止につながる可能性があり、時には死に至る。さらに、心筋収縮性が低下し、末梢血管拡張が起こり、心拍出量及び動脈血圧の低下をもたらす。これらの心血管の変化は、ブピバカインの液体製剤の意図されない血管内注射後に起こる可能性が高い。
【0702】
全身吸収後、局所麻酔薬は、中枢神経系の刺激、抑制又はその両方を生じることができる。明らかな中枢刺激は、通常、落ち着きのなさ、振戦及び震えとして現れ、けいれんへと進行し、その後抑鬱及び昏睡が続き、最終的には呼吸停止へと進行する。しかし、局所麻酔薬は、延髄及び高次中枢に一次抑制作用を及ぼす。抑制段階は、前の興奮段階を伴うことなく生じ得る。
【0703】
12.3 薬物動態
製剤Aの手術創への浸潤は、168時間持続し得るブピバカインの血漿レベルをもたらす。製剤Aの投与後のブピバカインの全身血漿レベルは、局所有効性とは相関していない。
【0704】
吸収
ブピバカインの全身吸収率は、投与される薬物の総用量、投与経路、及び投与部位の血管分布によって決まる。関節鏡下肩峰下除圧手術における製剤Aの単回投与浸潤後のブピバカインの薬物動態パラメータは、表4.10に示される。
【0705】
【表29】
【0706】
分布
投与経路に応じて、ブピバカインは全ての体組織にある程度分布し、肝臓、肺、心臓、及び脳などの高度に灌流される器官においては、高濃度で見いだされる。
【0707】
ブピバカインは、受動拡散により胎盤を通過すると考えられる。拡散の速度及び程度は、(1) 血漿タンパク質結合の程度、(2) イオン化の程度、及び(3) 脂溶性の程度により決定される。局所麻酔薬の胎児/母体比は、遊離した、非結合の薬物のみが胎盤通過に利用可能であるため、血漿タンパク質結合の程度に反比例すると考えられる。高いタンパク質結合能(95%)を有するブピバカインは、低い胎児/母体比(0.2~0.4)を有する。胎盤通過の程度は、薬物のイオン化及び脂溶性の程度によっても決まる。ブピバカインなどの脂溶性の非イオン化薬物は、母体の血液循環から胎児の血液に容易に入る。
【0708】
排出
関節鏡下肩峰下除圧を受けた成人における製剤A投与後のブピバカインの平均半減期は16.4~26.1時間である。
【0709】
代謝
ブピバカインなどのアミド型局所麻酔薬は、主に肝臓において、グルクロン酸との結合を介して代謝される。ピペコロキシリジン(pipecoloxylidine)は、ブピバカインの主な代謝産物である。組織分布からの薬物の排出は、主に、ピペコロキシリジンを、それが代謝される肝臓に運ぶための血液循環における結合部位の利用可能性によって決まる。
【0710】
排泄
腎臓は、大部分の局所麻酔薬及びそれらの代謝産物の主な排泄器官である。尿排泄は、尿灌流及び尿のpHに影響を及ぼす因子の影響を受ける。6%のブピバカインのみが変化せずに尿中に排泄される。
【0711】
特定集団
肝障害
製剤Aの薬物動態は、肝障害を有する患者において評価されていない[警告及び注意事項(0)及び特定集団における使用(0)を参照]。
【0712】
腎障害
製剤Aの薬物動態は、腎機能障害を有する患者においては評価されていない[特定集団における使用(0)を参照]。
【0713】
高齢の患者
製剤Aの薬物動態は、高齢の患者においては評価されていない。
【0714】
高齢の患者は、ブピバカインHClの投与後、若年の患者よりも高いピーク血漿濃度を示した。総血漿クリアランスは、これらの患者において低下した[特定集団における使用(0)を参照]。
【0715】
13 非臨床毒物学
13.1 発がん性、変異原性、生殖能力障害
発がん性
ブピバカイン塩酸塩の発がん可能性を評価するための動物における長期研究は行われていない。
【0716】
変異原性
ブピバカインは、in vitro細菌復帰突然変異アッセイ(Amesアッセイ)、in vitro染色体異常アッセイ(ヒト末梢血リンパ球、及びin vivoラット小核アッセイ)において陰性であった。
【0717】
生殖能力障害
ブピバカインが妊孕性に与える影響は決定されていない.
【0718】
13.2 動物毒性学及び/又は薬理学
イヌモデルにおいて、製剤A又は製剤Aビヒクルの単回投与の関節内注射後に、関節軟骨の壊死が観察された。
【0719】
14 臨床研究
製剤Aの有効性を、開放腹腔鏡下腹部手術、腹部子宮摘出、鼠径ヘルニア修復、及び開放関節鏡下肩手術を受けている患者における10件の適切かつ十分に対照された研究において評価した。肩手術を受けている患者(以下に詳細に記載される)において行われた3件の研究のうちの1つにおいて有効性の十分な証拠が示され、評価した軟組織手術においては全く示されなかった。
【0720】
研究1
研究1は、無傷の回旋筋腱板を有する関節鏡下肩峰下除圧手術を受けている107人の患者における無作為化、多施設、評価者盲検、プラセボ対照(ビヒクル)臨床試験であった。関連手術は、肩甲上腕関節の検査、遠位鎖骨切除、滑液包切除術、滑膜切除術、遊離体の除去、烏口肩峰靭帯及び肩峰下骨棘の切除、回旋筋腱板のデブリードマン、並びに関節軟骨の軽微なデブリードマンを含んでいた。この研究中に、開腹手術は行われなかった。平均年齢は50歳(21~70歳)であり、治療を受けた患者の60%は女性であり、96%は白人であり、2%はヒスパニック系であり、1%はアジア系であり、1%はその他であった。
【0721】
患者を、製剤A、ビヒクルプラセボ、又はブピバカインHCl 50mgを受けるように2:1:1で無作為化し、全ての患者が全身麻酔を受けた。鎮痛薬の前投薬又は局所麻酔薬は投与されなかった。製剤A及びビヒクルプラセボは、手術の終了時に、関節鏡ポータルの1つを通して、肩峰下腔内への単回注射として直接関節鏡下可視化下で投与された。ブピバカインHCl 50mgを、単回投与として肩峰下に投与した。術後、72時間を通して、患者は体重に応じて6時間毎にアセトアミノフェン500mg又は1000mgを受け、必要に応じて、2mg IV又は10mg経口のいずれかのモルヒネレスキュー薬が許可された。疼痛強度は、72時間までの複数の時点で0~10の数値評価尺度(NRS)を用いて患者により評価された。
【0722】
主要評価項目は、手術後最初の72時間にわたり特定の間隔で収集された運動時平均疼痛強度スコアの正規化曲線下面積(nAUC)、及び72時間を通した総オピオイドレスキュー鎮痛(IVモルヒネ等価用量)であった。この臨床研究において、製剤A 5mLは、プラセボと比較して、72時間にわたり、0~10のNRSスケールで1.3ポイントの平均疼痛強度の有意な低下を示した(図10)。
【0723】
製剤A治療群(4mg)についての、0~72時間のオピオイドレスキュー鎮痛(IVモルヒネ等価用量)の総使用の中央値は、プラセボ治療群(12mg)についての中央値よりも統計的に低かった。ブピバカイン治療群におけるオピオイドレスキュー鎮痛の使用の中央値は8mgであった。
【0724】
研究2
研究2は、関節鏡下肩峰下除圧、肩甲上腕関節の検査、滑膜切除術、遊離体の除去、関節軟骨の軽微なデブリードマン、回旋筋腱板の軽微なデブリードマン又は軽微な修復、開放遠位鎖骨切除術、滑液包切除術、並びに烏口肩峰靭帯及び肩峰下骨棘の切除を受けている60人の患者における無作為化、二重盲検、プラセボ対照(ビヒクル)臨床試験であった。平均年齢は48歳(27~68歳)であり、治療を受けた患者の55%は女性であり、95%は白人であり、2%はアジア人であり、2%はその他であった。
【0725】
患者は、製剤A又はビヒクルプラセボを受けるように2:1に無作為化され、全ての患者が全身麻酔を受けた。術後、患者は、必要に応じて、3mg IV又は10mg~15mg経口のいずれかのモルヒネレスキュー薬、又はアセトアミノフェンが許可された。疼痛強度は、72時間までの複数の時点で、0~10の数値評価尺度(NRS)を用いて患者により評価された。
【0726】
主要評価項目は、72時間を通した運動時平均疼痛強度AUC、及び72時間を通した総オピオイドレスキュー鎮痛(IVモルヒネ等価用量)であった。いずれの主要評価項目においても、製剤Aとビヒクルプラセボ治療群との間で統計的に有意な差はなかった(図11)。
【0727】
研究3
研究3は、回旋筋腱板修復、肩峰下除圧、肩関節唇の修復又はデブリードマン、及び二頭筋腱修復などの様々な肩外科手術を受けている92人の患者における無作為化、二重盲検、プラセボ対照(ビヒクル)及びオープンラベルPK臨床試験であった。患者の大部分は関節鏡下手術を受けた;しかし、6人の患者は関節鏡下手術と開放手術の組み合わせを受けた。平均年齢は54歳(20~82歳)、治療を受けた患者の59%は男性であり、87%は白人であり、8%はアフリカ系アメリカ人であり、3%はその他であり、2%はアジア人であった。
【0728】
同数の患者を2つのコホートに無作為化した。コホート1における製剤A又はビヒクルプラセボの投与経路は、肩峰下注射若しくは皮下注射又はその組み合わせであった。コホート2においては、製剤A又はビヒクルプラセボを、肩峰下腔内への直接関節鏡下可視化下の注射を介して投与した。手術は、局所麻酔下又は全身麻酔下のいずれかで完了した。術後、患者は、必要に応じて、モルヒネIV、オキシコドン経口、又はアセトアミノフェン経口を許可された。
【0729】
主要評価項目は、120時間を通した運動時及び安静時平均疼痛強度、並びに7日目を通した疼痛コントロールであった。いずれの主要評価項目においても、製剤A治療群とビヒクルプラセボ治療群との間で統計的に有意な差はなかった(図12)。
【0730】
16 供給/保存及び取扱い方法
製剤A(ブピバカイン溶液)は、単回投与バイアルで利用することができる。製剤Aは、ガラスバイアル中の、無菌、非発熱性の、透明な、淡黄色~琥珀色の溶液である。
【0731】
10単位カートン中にパッケージされた5mL単回投与バイアル、660mg/5mL(132mg/mL)。
【0732】
保存
製剤Aのバイアルは、20℃~25℃(68°F~77°F)の制御された室温で保存されるべきであり、15℃~30℃(59°F~86°F)まで逸脱が許される[USP Controlled Room Temperatureを参照]。バイアルは、使用時まで光から保護され、カートン中で保持されるべきである。
【0733】
取扱い
粒子状物質を含む溶液を決して投与しないこと。
オートクレーブしないこと。
希釈しないこと。
任意の未使用部は適切な方法で捨てること。
【0734】
17 患者相談情報
患者は、ブピバカイン含有製品が、浸潤部において感覚又は運動活性の一時的な喪失を引き起こす可能性があることを予め通知されるべきである。医師は、製剤Aの添付文書における有害反応を含む他の情報について、患者と話し合うべきである。
【0735】
実施例5
ガンマ線照射線量漸増研究を行い、この研究では、遺伝毒性分解物である2,6-ジメチルアニリンのレベルが照射線量の関数として増加した。製剤を、0、10、20、又は35kGyに曝露した。製剤は、12重量%ブピバカイン、66重量%SAIB、及び22重量%ベンジルアルコールで構成された(「製剤A」)。
【0736】
以下で論じるとおり、製品の低レベルの照射(10kGy)であっても、著しい量の2,6-ジメチルアニリンが生成した。
【0737】
概要
10、20、及び35kGyのノミナル曝露量(nominal exposures)でのガンマ線照射による最終滅菌後の製剤Aは、色の変化(淡黄色から黄色)、主要分解物であるブピバカインN-オキシドの0.27%から0.43~0.53%への増加、分解物である2,6-ジメチルアニリン(2,6-DMA)の非検出レベルから0.02~0.08%(又は75~302百万分率、すなわちppm)への増加、及び未知の薬物関連分解物ピークの2ピークから4~12ピークへの増加を示し、一方、効力は、逆相HPLCにより決定されたとおり、98.9%から96.1~97.1%へと低下した。
【0738】
0、10、20、及び35kGyにおける製剤Aの安定性を、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで最大20ヶ月間モニターした。製剤色は25℃/60%RHで黄色から褐色へと濃色化し続け、40℃/75%RHではより濃い褐色となった。25℃/60%RHで20ヶ月後の、異なる照射群についてのHPLCからのデータは、対応する初期T=0時点からの効力のわずかな低下、ブピバカインN-オキシドのわずかな増加(0.09~0.19%)、2,6-DMAの有意でない増加、及び分解物の総量のわずかな増加(0.09~0.17%)を示した。対照及び10kGy曝露製剤は、20kGy曝露製剤及び35kGy曝露製剤の未知の検出ピーク数と比較して、未知の検出ピーク数のわずかな増加を示した。
【0739】
目的
この研究の目的は、異なる曝露レベルのガンマ線照射が製剤Aの安定性に与える影響を評価することであった。ガンマ線照射の目標ノミナル線量レベルは10、20、及び35kGyであり、対照には照射しなかった(0kGy)。
【0740】
背景及び序論
製剤Aの組成は、それぞれ12/66/22の%w/w比のブピバカイン塩基/イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)/ベンジルアルコール(BA)であった。無濾過ロットを200本のバイアルに充填し、非シリコーン処理テフロン(登録商標)ストッパーでキャップし、アルミニウム圧着シールで密封した。200本のバイアルをさらに、それぞれ50本のバイアルの4つの群に分けた。1つの群は照射せず、残りの3つの群は、それぞれ10kGy、20kGy、35kGyのガンマ線照射により最終滅菌した。4つの群は全て、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで、正立位で安定に置いた。活性ロット類似しているガンマ線照射条件に曝露されたプラセボロットを使用して賦形剤に関連する不純物を同定し、したがってこれらを、薬物関連分解物の計算から除外した。
【0741】
ガンマ照射線量漸増の影響を、目視法及びEP(欧州薬局方)2.2.2(着色度)、並びにHPLCにより評価した。25℃/60%RHで6ヶ月及び20ヶ月において、並びに40℃/75%RHで3ヶ月及び20ヶ月において、安定性サンプルについて試験を行った。ブピバカイン/イソ酪酸酢酸スクロース/ベンジルアルコールの組成物は、ガンマ線照射前に淡黄色の着色を示した。EP 2.2.2による目視検査及び特性決定を行って、組成物がより濃い黄色~褐色の着色を形成する程度を評価した。
【0742】
2,6-DMAは、ブピバカイン中のアミド結合の加水分解による原薬又は製剤の分解から生じる潜在的な遺伝毒性分解物である。2,6-DMAはブピバカインの応答因子(RF)とは異なる応答因子を示すため、システム適合性(SYS)溶液注入に由来するその相対応答因子(RRF)を適用して、ピーク面積正規化による%2,6-DMA値を、ブピバカイン塩基に対するppmとして表される2,6-DMAに変換した。
【0743】
範囲
0kGy(対照)、10kGy(9.1min-10.1max)、20kGy(19.2min-220max)、及び35kGy(31.7min-36.0max)のレベルのガンマ線照射に対する曝露後の製剤Aについて、物理的及び化学的安定性データを生成した。非照射製剤Aサンプル及びガンマ線照射した製剤Aサンプルの安定性を、最大20ヶ月間、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで決定した。製品を、目視の外観、目視の色、効力及び分解生成物について特性評価した。プラセボバイアルを、活性剤(active)の場合と同じ条件下で保存し、活性な製剤Aにおいて形成し得る潜在的な賦形剤関連分解物を同定するために試験した。これらのプラセボ賦形剤の分解物は、製剤Aの分解生成物計算から除外した。
【0744】
装置、材料及び分析方法
本研究において使用した装置及び材料は、以下の表5.1に列挙される。
【0745】
【表30】
【0746】
結果及び考察
外観(透明度)
T=0において、並びに25℃/60%RH及び40℃/75%RHの両方で最大20ヶ月間保存したときに、非照射製剤A及び照射した製剤Aについて、溶液透明度の顕著な変化はなかった。
【0747】
着色度
製剤Aを、異なるターゲット照射レベル(0、10、20、及び35kGy)に曝露した。表5.2は、ガンマ線照射処理による、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで最大20ヶ月間保存した後の製剤色の変化についての結果をまとめる。
【0748】
【表31】
【0749】
ガンマ線照射の影響
この結果は、ガンマ線照射が、製剤中の色を淡黄色(非照射製剤)から黄色(照射に曝露)へと増加させ、各照射レベルが高いほど、より濃い黄色を生じさせたことを示す。
【0750】
25℃/60%RH及び40℃/75%RHでの保存の影響
4群の製剤全てについて、いずれの保存条件でも着色度は時間と共に増加し、加速条件(40℃/75%RH)は、25℃/60%RHでの保存の場合より速く製剤の色を濃くした。
【0751】
20ヶ月間の保存後:
- 非照射製剤は、25℃/60%RHでは淡黄色(BY3)からより濃い黄色(>BY1)へと、40℃/75%RHでは濃褐色(<BX)へと色を変化させた。
- 10kGy曝露製剤は、25℃/60%RHでは黄色(BY1)から褐色(<BO)へと、40℃/75%RHでは濃褐色(BX)へと色を変化させた。
- 20kGy曝露製剤は、25℃/60%RHではより濃い黄色(>BY1)から褐色(<BO)へと、40℃/75%RHでは濃褐色(BX)へと色を変化させた。
- 35kGy曝露製剤は、25℃/60%RHではより濃い黄色(>BY1)から褐色(BO)へと、40℃/75%RHでは濃褐色(BX)へと色を変化させた。
【0752】
効力
ガンマ線照射が製剤Aの安定性に与える影響
表5.3に示されるとおり、T=0における製剤Aの効力(%LS)は、ガンマ線照射により影響を受けた。製剤Aの%LSは、0、10、20、及び35kGyのターゲット照射後に、それぞれ98.9%、97.1%、96.1%及び96.2%であった。
【0753】
【表32】
【0754】
25℃/60%RH及び40℃/75%RHでの安定性
25℃/60%RHで20ヶ月間保存した後、非照射製剤A群及び3つの照射製剤群については、それらの対応するT=0%LS値と比較して、%LSの有意な変化は観察されなかった。40℃/75%RHで20ヶ月保存した後(市販製品は、これらの条件下では保存されないであろう)、非照射製剤の効力は98.9%から97.3%に低下したが、一方、ガンマ線照射群については有意な効力変化はなかった。
【0755】
分解生成物
照射がT=0における製剤Aに与える影響
主要分解物であるブピバカインN-オキシドは、ブピバカイン中のアミン基の酸化により形成される。表5.3は、2,6-DMA及びブピバカインN-オキシドの量、並びに4つの製剤群全てについてのガンマ線照射処理から生じる未知の検出ピークの総数を列挙する。
【0756】
2,6-DMA
結果は、非照射製剤Aサンプルについて、2,6-DMAがHPLCにより検出されなかったことを示す。しかし、照射レベルが増加するにつれて、平均%2,6-DMAは、10kGy曝露で0.02%(75ppm)、20kGy曝露で0.05%(189ppm)、35kGy曝露で0.08%(302ppm)まで増加した。
【0757】
ブピバカインN-オキシド
またT=0での照射処理も、%ブピバカインN-オキシドを、10、20及び35kGyに曝露されたサンプルについて、それぞれ0.27%から0.43%、0.51%及び0.53%へと増加させた。ブピバカインN-オキシドの存在は、保持時間を真正材料(authentic material)とマッチングすることにより確認された。
【0758】
未知の検出ピークの総数
照射処理は、未知の分解ピークの総数(各≦0.1%)を、0kGyで2ピークから10、20及び35kGyでそれぞれ4、9、及び12ピークへと増加させた。
【0759】
総分解生成物
照射処理は、%総分解生成物を、0.33%(非照射)から0.61%(10kGy曝露)、0.87%(20kGy曝露)、及び0.94%(35kGy曝露)へと増加させた。
【0760】
照射が25℃/60%RHにおける製剤Aの安定性に与える影響
【0761】
2,6-DMA
2,6-DMAは、25℃/60%RHで最大20ヶ月間、非照射製剤Aサンプル中で検出されなかった(表5.3)。照射サンプル中の2,6-DMAのレベルは、25℃/60%RHで最大20ヶ月間の安定性の間、有意には変化しなかった。
【0762】
ブピバカインN-オキシド
25℃/60%RHで20ヶ月間保存した後、各群について、ブピバカインN-オキシドが約0.1~0.2%わずかに増加した(表5.3)。
【0763】
総分解生成物
25℃/60%RHで20ヶ月後、4つの群のそれぞれにおいて、T=0での対応する値と比較して、分解生成物の総量が約0.1~0.2%わずかに増加した。
【0764】
照射が40℃/75%RHにおける製剤Aの安定性に与える影響
【0765】
2,6-DMA
40℃/75%RHで3ヶ月後の非照射製剤Aサンプルには、検出可能な量の2,6-DMAがなかった(表5.3)。40℃/75%RHで20ヶ月後、非照射サンプルは0.01%(38ppm)の2,6-DMAを有していた。サンプルの3つの照射群について、2,6-DMAは、40℃/75%RHでの保存中にそれらの各T=0値からわずかに増加した(0.01~0.02%)。40℃/75%RHで20ヶ月後の2,6-DMAの最終レベルは、10kGy曝露サンプル中で0.04%(151ppm)、20kGy曝露サンプル中で0.07%(264ppm)、及び35kGy曝露サンプル中で0.09%(340pm)であった。
【0766】
ブピバカインN-オキシド
主要分解物であるブピバカインN-オキシドは、40℃/75%RHで20ヶ月間保存した後、非照射サンプル中で0.27%から0.79%に増加し、10kGy曝露サンプル中で0.43%から0.72%に増加した(表5.3)。40℃/75%RHで20ヶ月後、20kGy照射サンプル及び35kGy照射サンプルのブピバカインN-オキシドレベルに有意な変化はなかった。
【0767】
総分解生成物
このデータは、%総分解物が、40℃/75%RHで20ヶ月後、非照射サンプルについては0.33%から0.99%に増加し、10kGy照射サンプルについては0.61%から1.01%に増加したことを示した。総分解物は、40℃/75%RHで20ヶ月後、20kGy照射サンプルについては同じままであり、35kGy照射サンプルについてはわずかに低下したように見えた。
【0768】
20ヶ月における効力及び分解生成物
【0769】
25℃/60%RH及び40℃/75%RHの両方で20ヶ月間保存された製剤Aサンプルの4つの群全ても、HPLCにより効力及び分解生成物について分析した。製剤Aの4つの群における%LSブピバカイン、%2,6-DMA、%ブピバカインN-オキシド、及び%総分解物における類似の傾向が、HPLCにより観察された。
【0770】
結論
ガンマ線照射曝露レベル並びに保存条件(温度及び時間)は、製剤Aの溶液着色度及び化学的安定性の両方に影響を与えた。製剤色は、淡黄色(照射前)から黄色(照射範囲10~35kGy)、及び褐色/濃褐色(典型的な安定性保存条件下)に変化した。許容可能なブピバカイン効力安定性(%LS)は、非照射サンプル及び照射サンプルの両方について、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで最大20ヶ月間観察された。ガンマ線照射処理は、潜在的な遺伝毒性分解物2,6-DMAを誘導した。
【0771】
実施例6
製剤Aを、以下の工程により無菌的に作製した:
1. ベンジルアルコールを混合タンクに加え、40℃に(55℃を超えないように)加熱する。
2. 軽いボルテックス下でベンジルアルコールを混合しながら、予め秤量したブピバカイン塩基を添加する。
3. 15分以上混合する。
4. SAIBを約60℃に(93℃を超えないように)加熱する。
5. SAIBを秤量する。
6. 45分以上混合する。
7. インプロセス効力及びバイオバーデン試験を実施する。
8. タンクを窒素ガスで加圧し、混合物を、ツインシリーズ、30"、0.22fLm、滅菌グレードフィルターに強制的に通す。
9. 製品を10mLガラスバイアルに充填する。
10. 窒素環境下にて、バイアルを20mmストッパーで栓をする。
11. バイアルを20mmアルミニウム圧着キャップでキャップする。
12. 各バイアルを検査する。
13. 適宜ラベルしパッケージする。
【0772】
結果として得られた製剤の2つのロットは、表6.1及び表6.2に示されるとおり、優れた安定性を有していた。
【0773】
【表33】
【0774】
【表34】
【0775】
実施例7
製剤Aを窒素雰囲気下でガラスバイアル中に充填した。バイアル中のヘッドスペース中の酸素含有量を検定した。
【0776】
データを、Lighthouse Instruments社のヘッドスペース酸素分析装置モデルFMS-760上で収集した。データの概要は以下の表7.1に示され、これは各ロットの平均、標準偏差、及び%RSD(重量%酸素)を示す。BORはランの開始時(Beginning of Run)、MORはランの中間時(Middle of Run)、EORはランの終了時(End of Run)で、充填ラン中にいつバイアルが分析のために引き出された(pulled)かを示している。
【0777】
【表35】
【0778】
実施例8
ICH Q1B産業ガイダンス:「新原薬及び新製剤の光安定性試験」による加速光に対する曝露後に製剤Aにおいて形成される、外観、液体の着色度、アッセイ、及び分解生成物(2,6-ジメチルアニリンを含む)を決定するための研究を行った。
【0779】
実験
加速光条件については、ICH Q1Bガイダンスのオプション2に従った。オプション2は、同一のサンプルをクールホワイトの蛍光灯と近紫外ランプの両方に曝露すべきであると記載している。制御光の供給源は以下のとおりであった:ISO 10977(1993)で指定されているもの類似している出力を生成するように設計されたクールホワイトの蛍光灯;及び320nm~400nmのスペクトル分布を有し、350nm~370nmの間に最大エネルギー放出を有する近紫外線蛍光ランプ;UVのかなりの割合は、320~360nmのバンド及び360~400nmのバンドの両方にあるべきである。サンプルを、120万ルクス時以上の総照明(overall illumination)と200ワット時/平方メートル以上の総近紫外線エネルギーを与える光に曝露した。
【0780】
それぞれ互いに並べて配置された、各ロット由来の3セットのサンプルを、以下の加速光条件に曝露した:
1) 非保護のバイアルは、直接照射された。
2) 保護バイアルは、アルミホイルで包まれた。これらを暗対照として使用し、観察された総変化に対する熱誘導変化の寄与を評価した。
3) 保護バイアルは、二次容器又はカートンの中に入れた。これらのカートンは、10本のバイアルを保持し(2x5構成、プラスチック製の仕切板で2列を隔てる)、おおよその寸法が2.25x2.25x5.625インチで厚さ0.020インチのホワイトクレイコーティングされた合板で構成される。これらのカートンはRoyal Paper Box Company(カリフォルニア州モンテベロ)製で、この会社は、Clearwater Paper Corporaion(ワシントン州スポケーン)から、そのCandesce CISストックを用いた合板材料を調達した。
【0781】
サンプルは光源に対して水平に置かれた。
【0782】
安定性の結果
表8.1及び8.2は、製剤Aの2つの異なるロットについての光安定性の結果を示す。表8.1及び8.2のデータは、2,6-ジメチルアニリンの量が、非保護のバイアル中で36.1~54.1ppmであり、10ppmの仕様限界をはるかに超えていることを示す。アルミホイルで包んだバイアルは、0.4~0.6ppmの2,6-ジメチルアニリンを有していた。カートン中の保護バイアルは、1.4~1.7ppmの2,6-ジメチルアニリンを有していた。
【0783】
ブピバカインN-オキシド分解生成物は、非保護バイアル中では0.2%に増加したが、アルミホイルで包まれたバイアル及びカートンで保存されたバイアル中では定量限界未満のままであった。
【0784】
平均ブピバカインアッセイ値は、カートン中で保存されたバイアルにおいては、非保護のバイアルと比較して1.0~1.2%高かった。
【0785】
表8.1及び8.2の結果は、カートンが、製剤Aを光誘導性分解から十分に保護することが可能であり、このため当該製剤が仕様範囲内のままであることを示している。
【0786】
【表36】
【0787】
【表37】
【0788】
実施例9
製剤Aを、電気化学的検出により2,6-ジメチルアニリンについて試験した。分析のため、1アリコートの製剤を水性緩衝液/メタノール/アセトニトリル希釈剤で250倍に希釈した。サンプルの可溶化後、電気化学検出器を用いた分析のため、小アリコートをHPLCバイアル中に移す。
【0789】
電気化学的検出を用いて、琥珀色及び赤色の着色ガラス製品が、水性緩衝液/メタノール溶液中で3ng/mLの濃度の2,6-ジメチルアニリン(2,6-dimethylaniniline)参照標準の安定性に与える影響について調べる一連の実験を行った。
【0790】
実験1では、2,6-ジメチルアニリンを、透明な無色のガラス製100mL全量フラスコ中で3ng/mLの濃度で調製した。アリコートを透明なHPLCガラスバイアル中に移し、外部標準に対してアッセイした。2,6-ジメチルアニリンの3つの注入液は、一貫してほぼ3ng/mLであった。
【0791】
実験2では、透明な無色のガラス製100mL全量フラスコ中で調製した3ng/mLの2,6-ジメチルアニリン溶液を、アンバーHPLCバイアルに移した。アンバーガラスHPLCバイアルから注入された4つのサンプルは、実験1の結果よりも約8~12倍高い2,6-ジメチルアニリン含有量を有していた。
【0792】
実験3では、2,6-ジメチルアニリンを、光から保護するためのRAY-SORB(登録商標)コーティングを有する赤色ガラス100mL全量フラスコ中で3ng/mLの濃度で調製した。1アリコートを透明なHPLCガラスバイアル中に移し、外部標準に対してアッセイした。サンプル注入は、実験1と同じ2,6-ジメチルアニリン濃度値を有していた。
【0793】
実験4では、RAY-SORB(登録商標)でコーティングされた赤色ガラス100mL全量フラスコ中で調製された3ng/mLの2,6-ジメチルアニリン溶液を、アンバーHPLCバイアルに移した。アンバーガラスHPLCバイアルから注入されたサンプルは、実験1及び実験3の結果よりも約5倍高い2,6-ジメチルアニリン含有量を有していた。
【0794】
これらの実験から得られた結論は、2,6-ジメチルアニリンと反応して、2,6-ジメチルアニリン溶液が透明ガラスHPLCバイアル中に保存される場合よりも高い濃度の2,6-ジメチルアニリンを生じる、アンバーガラスHPLCバイアルに由来するいくつかの成分が存在するということである。
【0795】
【表38】
【0796】
表9.2は、Waters Corporation製の透明ガラスHPLCバイアル及びアンバーガラスHPLCバイアルの典型的な組成を列挙する。金属酸化物、特に酸化鉄及び酸化チタンの使用は、ガラスに琥珀色を付与する。アンバーガラスHPLCバイアル中のこれらの金属の存在は、分析的に測定された2,6-ジメチルアニリンの量が、アンバーHPLCバイアル中では、透明な無色のバイアルと比較して著しく高いことの、可能性の高い理由である(実験2及び4、表9.1)。この実験の結果は、(不純物/分解物を低減するために)製品を光から保護するための最良の方法が、製剤をアンバーガラスバイアル中に充填するのではなく、箱又はカートン中にパッケージされた透明バイアル中に製剤を充填することであることを示唆している。
【0797】
【表39】
【0798】
実施例10
概要
この研究の目的は、製剤Aと、West Pharmaceutical Services (West)製の3つの異なるタイプのコーティングされたセラム20mm、4432/50グレークロロブチルゴムストッパーとの適合性を評価することであった。この研究の結果は、上面と底面にFluroTec(登録商標)がコーティングされたストッパー(Westの型番19700038(図面No. WS-792))の選択を支持する。
【0799】
背景
製剤Aをバイアルに充填し、一次クロージャーシステムの一部として20mm、テフロン(登録商標)面、West製の4432/50グレークロロブチルゴムセラムストッパー(型番10144806)で塞いだ。テフロン(登録商標)面は製剤と接触していた。製造工程はスモールスケールで、ストッパーを手動でバイアルに挿入し、圧着シールした。このストッパーは、ストッパーの上面及びエッジが潤滑されていないため、商業施設における高速充填ラインでの使用を可能にするためにはシリコーン処理する必要がある。ストッパーの標準的なシリコーン処理工程は、シリコーンオイルが製剤Aに容易に溶解するため、抽出性シリコーンオイルを最終製品に導入させる可能性がある。このため、West製の3つの他の種類の化学的に耐性のストッパーが、商業規模の設備における使用のためにより適切であり、上面及び底面の両方に多様なコーティングを有するためシリコーン処理を必要としないであろうと評価された。
【0800】
研究用に選択した第1のセラムストッパーを、FluroTecで両面コーティングした(West型番19700038(20mm、4432/50グレークロロブチルゴム;図面No.WS-792))。FluroTecフィルムを、ストッパーの成形工程中にストッパーの上(フランジ)面及び底(プラグ)面に適用した。FluroTecフィルムは、有機ストッパー抽出物及び無機ストッパー抽出物に対する効果的なバリアを提供し、製剤とクロージャーとの間の相互作用を最小限に抑える。また修飾エチレン-テトラフルオロエチレンン(ETFE)コポリマーで作製された専用のフルオロカーボンフィルムも、製剤の収着を低減する。さらに、FluroTecフィルムの低い表面エネルギーは、ストッパーのシリコーン処理を不要とするのに十分な潤滑性を提供し、このため潜在的な汚染源を排除する。
【0801】
本研究において使用した第2及び第3の種類のセラムストッパーは、B2コーティングと呼ばれる、Westから入手可能な別の種類のコーティングを有していた。B2コーティングは、ゴムストッパーの表面に適用される架橋性高分子量ポリジメチルシロキサンコーティングである。B2コーティング処理は、シリコーンオイルの薬液への移動を最小限に抑える。またB2コーティング処理は、製品の製造を容易にするための従来のシリコーン処理の必要性も排除する。この研究において評価されたB2コーティングされたストッパーは、上面のみが最大レベル(レベル4)にコーティングされ、底面はコーティングされていなかった(レベル0)。この研究において、ストッパーに適用されるコーティングの種類を記載するために使用されるWest社の命名はB2-40である。このB2-40コーティングは、底(プラグ)面にテフロン(登録商標)コーティング又はFluroTecコーティングのいずれかを有するストッパーに適用された。テフロン(登録商標)コーティングとFluroTecコーティングは類似しているが、同一のフッ素化コポリマーではない。上部にB2-40、底部にテフロン(登録商標)を有するストッパーは、West社の型番10144942(20mm、4432/50グレークロロブチルゴム、図面No. WS-577)であり、上部にB2-40、底部にFluroTecを有するストッパーは、West社の型番19700022(20mm、4432/50グレークロロブチルゴム、図面No. WS-791)である。抽出性シリコーンオイルの量はB2処理で有意に低下したが、依然として測定可能な抽出物が存在していた。ストッパーをまとめて洗浄及び滅菌したため、ストッパー上部のB2-40コーティングは、他のストッパーの底部と無作為に接触する。従って、これらのB2-40コーティングされたストッパーのFluroTec及びテフロン(登録商標)のプラグ面上にシリコーンオイルが移行し、このようにして製品中に移行する可能性があった。
【0802】
実験方法
製剤組成及び容器/クロージャーシステム
製剤Aを、12%w/wのブピバカイン塩基、66%w/wのSAIB、及び22%w/wのベンジルアルコールで調製した。ロットを濾過し、約600個のタイプ1 10mLガラスバイアルに充填した(各約8mL)。
【0803】
約200本のバイアルを、West製の3つの異なる種類の20mmストッパーのそれぞれで塞いだ。表10.1は、パッケージ製品の各セットのロット情報についてまとめる。アルミニウム圧着シールを使用して製品を密封した。予想される無菌製造工程をシミュレートするために、充填され、塞がれたバイアルは、ガンマ線照射により最終滅菌されなかった。
【0804】
【表40】
【0805】
安定性手順
93個の、各種のストッパーを有する製品が充填されたバイアルにラベルを付け、二次容器(段ボールカートン)中にパッケージし、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで、倒立させて安定に置いた。
【0806】
安定性研究のための分析試験は、外観、アイデンティティ、効力及び関連物質/分解生成物を含んでいた。アイデンティティ試験は、初期時点でのみ実施した。
【0807】
初期時点では、3個のバイアルではなく2個のバイアルをアッセイ及び分解物試験に使用した。これは、この研究におけるデータの質に影響を与えなかった。
【0808】
この研究は、25℃/60%RHで最大12ヶ月間の試験を行うことを意図して設定されたが、6ヶ月間の安定性サンプルの分析後に研究は中止された。RH25℃/60%RH及び40℃/75%RHの両方における最大6ヶ月間の安定性データは、製剤Aと3つの異なるストッパーとの適合性についての結論を導き出すのに十分であるとみなされた。
【0809】
目視外観試験は初期及び1ヶ月においてのみ実施され、粒子状物質試験(USP <788>)は1ヶ月及び3ヶ月においてのみ実施された。アッセイサンプルの調製中の実施(practice)は、微粒子を含まない透明な溶液を目視で確認することであった。これらの観察結果は予想通りであったため、文書で記録しなかった。
【0810】
褐黄色のEP 2.2.2色標準(BYシリーズ、Fluka製の2mLアンプル)を用いた目視の色評価試験を、初期及び(25℃/60%RH及び40℃/75%RHで)1ヶ月において追加した。この試験は、サンプルの色がセットの中で最も濃いBY1よりも濃くなったため、1ヶ月後に中止した。試験は1人の分析者により行われ、第2の分析者により目視の色評価が確認された。試験を行うため、1mLの製剤を透明な1.8mL HPLCガラスバイアル中に移し、それを周囲実験室光下で、2mLガラスアンプル中の市販の色標準に対して測定した。標準物質用の2mLアンプル(9.53mm)の内径又は光路長は、サンプルに使用された1.8mLガラスバイアル(10.03mm)の内径又は光路長と本質的に同じであった。
【0811】
結果及び考察
表10.2及び10.3は、3つの異なるタイプのストッパーについての結果を列挙する。試験は、目視の外観、EP 2.2.2(褐黄色、BYシリーズ)による溶液色、HPLCによるアッセイ及び分解物、並びに顕微鏡法による粒子状物質(USP<788>)を含んでいた。ストッパーデータの比較を容易にするため、表10.4は、平均%LSブピバカイン、初期値に対する%残存ブピバカイン、%ブピバカインN-オキシド及び総%分解物についてまとめる。
【0812】
【表41】
【0813】
【表42】
【0814】
【表43】
【0815】
外観及び溶液色
異なるタイプのストッパーを有するサンプル全ての目視の外観は、初期は「透明な淡黄色の液体」、25℃/60%RHで1ヶ月では「透明な褐黄色の液体」、40℃/75%RHで1ヶ月では「透明な褐黄色の液体」であった。EP 2.2.2 BY色標準(BY7からBY1へと色が増加する)を使用すると、初期のサンプルは全てBY5よりも濃く、25℃/60%RHで1ヶ月においてBY3、40℃/75%RHで1ヶ月においてBY2であった。製品の色は、保存温度及び保存時間の関数として増加した。ストッパーの異なるタイプは、製品の目視の外観に影響を与えなかった。
【0816】
粒子状物質
粒子状物質を顕微鏡法(USP<788>)で試験し、25℃/60%RHで3ヶ月及び6ヶ月(表10.2)、40℃/75%RHで1、3、及び6ヶ月(表10.3)において、3つのタイプのストッパー間でデータは類似していた。データは、≧10μm:≦3000粒子/バイアル及び≧25μm:≦300粒子/バイアルの小容量非経口仕様を有意に下回った。
【0817】
アッセイ及び分解物
%LSブピバカインデータは、25℃/60%RH及び40℃/75%RHの両方で6ヶ月後の、ストッパーのタイプのそれぞれについて類似していた。ブピバカインN-オキシド(主要な製品分解物)は、ストッパーのそれぞれについて、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで同様のわずかな経時的増加を示した。RRT 0.24、0.28、及び0.30における未知の分解物プロファイルは、3タイプのストッパー全てについて、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで6ヶ月間を通して同じであった。
【0818】
表10.4にまとめられるデータの概説は、ストッパー間で製剤安定性の差がないことを示す。
【0819】
結論
結論として、3つのストッパーは、製剤Aと類似している物理的及び化学的性能を有していた。B2-40処理は、従来のシリコーン処理よりも制御された、より少量のシリコーンを適用する方法であるが、ベンジルアルコールが存在するために、いくらかの抽出性シリコーンが製剤中に溶解する可能性が依然として存在する。従って、B2を含む任意のタイプのシリコーンの使用を回避するため、FluroTec/FluroTecストッパーを求めることが推奨される。
【0820】
実施例11
イソ酪酸酢酸スクロースを、以下のとおりに金属含有量について試験した。サンプルは、110℃に設定されたブロックダイジェスター上で1時間、2mL硝酸及び0.5mL塩酸と混合した0.1g秤量部分を用いて調製した。冷却後、0.5mLの30%過酸化水素を加え、温浸を30分間再開した(材料は溶解したように見えた)。冷却後、内部標準溶液を加え、精製水で希釈し、ICP-MS分析用の溶液を20g生成した。結果は以下に示される:
【0821】
【表44】
【0822】
製剤Aを、スチール製調合タンクを用いて調合した。シリコーンチューブを使用して製剤Aを移した。製剤Aをガラスバイアルに充填し、次いでこれをフルオロカーボンコーティングされたストッパーで密封した。
【0823】
製剤Aを、以下のとおりに金属含有量について試験した。サンプルは、2mL硝酸、1mL塩酸、及び1mLフッ化水素酸と混合した0.2g秤量部分を用いて調製し、次いで密閉容器マイクロ波システムで温浸した(材料は溶解したように見えた)。冷却後、内部標準溶液を添加し、精製水で希釈し、ICP-MS分析用の溶液を50g生成した。結果は以下に示される:
【0824】
【表45】
【0825】
実施例12
製剤A及びプラセボ組成物を、水分含有量について評価した。この研究における製剤Aは、上記のとおり、12%w/wブピバカイン、66%w/wイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、及び22%w/wベンジルアルコールを含んでいた。プラセボ組成物は、75%w/wイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、及び25%w/wベンジルアルコールで構成された。
【0826】
製剤A及びプラセボ組成物の無菌調製中に使用されるフィルターは、残留水分含有量を含み得、検出可能な量の水を有する組成物をもたらす。調製されたブピバカイン組成物で水分含有量が最小限に抑えられるか、又は全く存在しないことを確実にするため、無菌調製中に使用されるフィルターは、1) 注射用加圧滅菌水を用いてフィルターのバブルポイントを測定することにより完全性について試験され;2) 窒素で50psiにて5分以上パージしてフィルター中の任意の残留水が除去され;3) ブピバカイン組成物(例えば、12%w/wブピバカイン又はプラセボ組成物を含む製剤A)が、上記フィルターを通してフラッシュされ、濾液が廃棄される。この例では、サンプル組成物をバイアル中に収集する前に、6リットル以上の製剤Aを、フィルターを通してフラッシュした。
【0827】
収集工程の開始時、中間時及び終了時に、収集されたサンプルバイアル中の水分含有量を評価した。収集されたサンプルバイアルの水分含有量を、フィルターを通してフラッシュされた濾液中のブピバカイン組成物の水分含有量と比較した。前のサンプル調製ラン中に収集されたサンプルバイアルから得られた過去の水分含有量も比較した。
【0828】
方法
材料
1) プラセボ組成物
調製フィルターフラッシュ(1L、2L、3L、4L、5L、及び6L)、並びにランの開始時、中間時及び終了時由来のバイアル。
2) 製剤A - サンプル1
調製フィルターフラッシュ(1L、2L、3L、4L、5L、及び6L)、並びにランの開始時、中間時及び終了時由来のバイアル。
3) 製剤A - サンプル2
調製フィルターフラッシュ(1L、2L、3L、4L、5L、6L、7L、8L、9L、及び10L);並びにランの開始時、中間時及び終了時由来のバイアル。
4) 製剤A由来のバイアル:A1、B1、C1、D1、E1、F1、G1、及びH1、並びにI1。
5) プラセボ組成物A由来のバイアル。
【0829】
水分含有量試験
サンプルを、EM Science Aquastar C3000電量滴定装置を用いて、USP<921>、方法1cに従って試験した。製剤の粘度が高いため、サンプルは、電量滴定滴装置に導入する前にメタノールで希釈する必要があった。約0.5gの製剤A又はプラセボ組成物を、10mLバイアル中に正確に秤量した。ほぼ同量のメタノールを添加し、重量を正確に記録した。サンプル、例えば製造ラインフラッシュが大量の水を有することがわかっていた場合は、比例的により多くのメタノールをサンプルと混合した。次いで、各バイアルを密封し、少なくとも30秒間激しく振盪した。
【0830】
約0.5gのサンプル/メタノール混合物を液体注入により電量滴定装置に送達した。サンプルを送達するために使用したシリンジを、注入の前後に秤量し、アッセイされた量を決定した。
【0831】
結果
プラセボ組成物
表12.1は、プラセボ組成物についての、6つの1リットル調製フィルターフラッシュの水分含有量の結果についてまとめる。各1リットルのフラッシュを、典型的には二連で試験した;結果は極めて一貫した。第1の1リットルの製品フラッシュは、本質的に全て水であった。後続のフラッシュは、第6リットルまでに、水分含有量を約0.58%まで着実に低下させた。表12.2は、充填工程の開始時、中間時、及び終了時から収集されたバイアル中の最終プラセボ組成物の水分含有量を示す。各バイアルを二連でアッセイし、結果は極めて一貫していた。表12.2における平均バイアル水分含有量の結果は、充填の開始時については約0.35%、中間時については0.19%、及び充填の終了時については0.30%であった。
【0832】
【表46】
【0833】
【表47】
【0834】
製剤A - サンプル1
表12.3は、製剤Aについての、6つの1リットル調製フィルターフラッシュの水分含有量の結果についてまとめる。試験は、プラセボ組成物の場合と同じ方法で行った。第1の1リットルの製品フラッシュは、本質的に全て水であった。後続のフラッシュは、第6リットルまでに、水分含有量を約1.06%まで着実に低下させた。表12.4は、充填工程の開始時、中間時、及び終了時から収集されたバイアル中の最終製品の水分含有量を示す。表12.4における平均バイアル水分含有量の結果は、充填の開始時については約0.35%、中間時については0.11%、及び充填の終了時については0.11%であった。
【0835】
【表48】
【0836】
【表49】
【0837】
製剤A - サンプル2
評価の目的は、フラッシュの最後のリットル間の水分含有量が、充填工程の開始時由来のバイアルにおいて得られた値とより一貫し得るかどうかについて調べることであった。製剤A、サンプル2の場合、窒素圧を50psiから55psiへと増加させ、5分間以上フィルターを通して吹き付けた。さらに、前のロットのような6リットルではなく10リットルの製剤を、フィルターを通してフラッシュした。
【0838】
製剤A、サンプル2についての、これらの10リットルのフラッシュの水分含有量は、表12.5に示される。第1の1リットルのフラッシュは、約2.41%の水で開始した。これは、99%超が水であったプラセボ組成物及び製剤A、サンプル1(それぞれ表12.1及び12.3)とは対照的であった。サンプル2について、フィルターの窒素パージステップの圧力を増加させたことにより、そのフィルターを通して製品をフラッシュする前に、フィルター中の水が少なくなった。水分含有量はフラッシュ回数とともに着実に低下し、第10の1リットルフラッシュで0.39%の水が検出された。表12.6は、充填工程の開始時、中間時、及び終了時から収集されたバイアル中の最終製品の平均水分含有量が、それぞれ0.20%、0.08%、及び0.06%であったことを示す。
【0839】
【表50】
【0840】
【表51】
【0841】
データは、準備工程における変更(窒素圧力の増加及びより大量の製品フラッシュ)が、製剤Aの水分含有量を低下させるのに有効であったことを示すが、充填されたバイアルの結果は、前の乾燥工程と実質的に異なるようには見えなかった。
【0842】
ICH及び製剤Aの先行臨床ロット(Prior Clinical Lot)
表12.7は、以前に製造された4つのICHロット(それぞれ5mL及び7.5mLの充填サイズを有する)並びに2つの臨床ロット(製剤A及びプラセボ)の水分含有量の結果についてまとめる。これらのロットを、フィルターの窒素パージを50psiで5分以上行い、6L以上の製品のフラッシュを行って製造した。各ロット由来の2つ又は4つのバイアルについて試験した。%水分含有量は、試験時に約3~4年の古さであったこれらの過去(historical)ロットについては、約0.13%~0.34%であった。
【0843】
【表52】
【0844】
結論
製剤A中の水分含有量を低下させるか又は完全に排除するため、窒素パージ圧を5分以上、又はそれ以上水が観察されなくなるまで50psiから55psiに増加させることができる。バイアル充填ステップの前にフィルターを通してフラッシュされる組成物の総量は、6リットル以上のままとすることが推奨される。
【0845】
実施例13
製剤A、一次ロット及び支持的安定性ロットについての、25°/60%RHで36ヶ月における着色度を、製造日から約52ヶ月後に決定された水分含有量と比較し、これら2つのパラメータ間に相関関係が存在するかどうかを調べた。さらに、製剤Aの臨床ロットについて、25°/60%RHで36ヶ月における着色度を、製造後34ヶ月で決定されたその水分含有量と比較した。
【0846】
方法
材料
1) 製剤A - 一次安定性サンプル:PS-A、PS-B、PS-C及びPS-D(5mL充填)
2) 製剤A - 支持的安定性サンプルSS-A、SS-B、SS-C及びSS-D(7.5mL充填)
3) 製剤A - 臨床サンプル:CS-A
【0847】
水分含有量試験
サンプルを、EM Science Aquastar C3000電量滴定装置を用いて、USP<921>、方法1cに従って試験した。製剤の粘度が高いため、サンプルは、電量滴定滴装置に導入する前にメタノールで希釈する必要があった。約0.5gの製剤Aを、10mLバイアル中に正確に秤量した。ほぼ同量のメタノールを添加し、重量を正確に記録した。次いで、各バイアルを密封し、少なくとも30秒間激しく振盪した。約0.5gのサンプル/メタノール混合物を液体注入により電量滴定装置に送達した。サンプルを送達するために使用したシリンジは、注入の前後に秤量し、アッセイされた量を決定した。1つのICH安定性ロット当たり2本のバイアルを水分含有量について試験し、他方、製剤A臨床サンプルCS-A由来の4本のバイアルを試験した。
【0848】
液体の着色度
サンプルは、製剤A一次安定性サンプル組成物、製剤A支持的安定性サンプル組成物及び製剤A臨床サンプル組成物について、36ヶ月の時点で試験した。色は、正立及び倒立の両方で保存されたサンプルについて決定された。製剤A臨床サンプルCS-Aだけは、バイアルを倒立させて保存した。
【0849】
結果
表13.1は、倒立及び正立の向きで、25℃/60%RHで保存されたサンプルについて、36ヶ月時点における徐放性ブピバカイン組成物の液体の着色度の結果についてまとめる。倒立の向きでのみ保存された36ヶ月でのサンプルCS-Aの色データも含まれる。組成物間の色の結果は類似しており、結果の大部分は5x BY1~6x BY1であった。製剤Aについての色の結果は、保存中のバイアルの向きが色に影響を及ぼさなかったことを示す。製剤A臨床サンプルCS-Aは、6x BY1として記載された。
【0850】
表13.1に含まれるのは、製剤Aの組成物の水分含有量であり、36ヶ月の安定性時点で色評価を行った約16ヶ月後に測定された。製剤Aの組成物について、水分含有量は約0.13%~0.34%であった。さらに、製剤A臨床サンプルCS-Aについての水分含有量を、36ヶ月の時点で色を判断した約2ヶ月前に測定した。製剤A臨床サンプルCS-Aは、約0.13%の水を有していた。
【0851】
図13は、表13.1における各サンプルについての水分含有量及び着色を表す。図13に見られるように、約0.15%の水で、色は4x-5x BY1~6x BY1であり;約0.23%の水で、色は5x BY1~6x BY1であり;約0.34%の水で、色は5x BY~5x-6x BY1であった。
【0852】
図13に示され、且つ表13.1にまとめられている結果に基づくと、製剤Aの色は、およそ0.13%~0.34%の範囲内の水分含有量の増加と共に濃くはならない。
【0853】
【表53】
【0854】
実施例14
イソ酪酸酢酸スクロース又はベンジルアルコールに由来する過酸化物が製剤A及びプラセボ組成物に及ぼす影響を評価した。この研究における製剤Aは、上記のとおり、12%w/wブピバカイン、66%w/wイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、及び22%w/wベンジルアルコールを含む。プラセボ組成物は、75%w/wイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)、及び25%w/wベンジルアルコールで構成された。徐放性ブピバカイン組成物中のブピバカインN-オキシドは、ブピバカインと過酸化物との間の酸化反応により形成され得る。
【0855】
方法
数ロットのイソ酪酸酢酸スクロースについての過酸化物含有量を、ヨウ素滴定を伴う電位差滴定によって決定した。製剤Aのサンプル中のブピバカインN-オキシドレベルを、UV検出を有するHPLCを用いて決定した。製剤Aの一次安定性サンプル組成物、臨床サンプル、及び2つの最適化サンプル組成物を、150Lのスケールで調製した。加熱研究用に使用したサンプルは、2.5Lのスケールで調製した。加熱研究では、調製中の温度の影響を評価した。
【0856】
結果
25℃/60%RHで安定性させた製剤A中のブピバカインN-オキシドのレベル、及び製剤Aのサンプルを調製するために使用したSAIB組成物中の過酸化物含有量は、表14.1に列挙される。表14.1におけるブピバカインN-オキシドデータは、サンプルの各セットについての、最も長く得られる安定性時点に関するものである。これらは、2つの最適化ロットについての3ヶ月から、製剤Aの4つの一次安定性サンプル(それぞれ5mL及び7.5mLまで充填)及び製剤Aの臨床サンプルについての最大36ヶ月までにわたる。
【0857】
【表54】
【0858】
表14.2は、調製中の温度の影響を評価した加熱研究から得られた過酸化物含有量の結果についてまとめる。
【0859】
【表55】
【0860】
図14は、SAIB過酸化物含有量データ対ブピバカインN-オキシドレベルデータにフィッティングした線形回帰直線を示す。線形回帰式に基づいて、ブピバカインN-オキシドの1.0%の規格限界はSAIB中の296.4ppm過酸化物に対応することが推定される。ブピバカインN-オキシドについて1.0%の限界を確実に超えないようにするために、目標過酸化物含有量を、0.8%ブピバカインN-オキシドに対応する値に調整することができる。この過酸化物含有量の値は、図14の式を用いて232.5ppmと計算される。
【0861】
ベンジルアルコール中の過酸化物不純物から生じ得るブピバカインN-オキシドの割合を決定するために、表14.3に列挙した製剤Aのサンプルの調製において使用したベンジルアルコールロットを調べた。表14.3は、ベンジルアルコール組成物を、それらの決定された過酸化物価(PV)と共に列挙する。全てのベンジルアルコール組成物は、0.5未満の過酸化物価を有していた。過酸化物価は、PVに17を乗じることにより、過酸化水素として表される過酸化物含有量に変換することができる。これにより、ベンジルアルコールロット全てについて、<8.5ppmとの過酸化物含有量データが得られる。製剤AのサンプルはベンジルアルコールとSAIBとを1:3w/w比で含むため、ブピバカインをブピバカインN-オキシドに酸化することに寄与し得るベンジルアルコールの有効過酸化物含有量は、SAIBの過酸化物含有量の3分の1である。この計算により、表14.3に列挙される製剤Aのサンプルにおいて使用したベンジルアルコールの各ロットは、ブピバカインN-オキシドの形成に、有効に<2.8ppm(8.5ppm割る3で2.8ppm)の寄与をしていた。ベンジルアルコール由来の過酸化物含有量への最大寄与は、85ppmを3で割った値、すなわち28ppmである。
【0862】
【表56】
【0863】
実施例15
製剤Aの様々なバッチの安定性を研究した。これらの例示的なバッチの結果は、表15.1及び15.2並びに図15~23にまとめられる。この研究における製剤Aのサンプルの安定性を、UV検出を有するHPLCを用いてアッセイした。
【0864】
製剤Aのサンプル(5mL)を、光安定性について試験した。製剤Aの4つの異なるサンプルロット(11A~11C)について特性評価し、表15.1及び15.2にまとめた。製剤Aの各サンプルの光安定性を、3つの異なる条件:1) 光保護されていない;2) ホイルを使用して光保護されている;3) 光保護され且つパッケージ化されている、の下で研究した。試験したサンプルのそれぞれにより示された色、並びにサンプルの着色度は、表15.1及び15.2にまとめられる。さらに、表15.1及び15.2は、ラベル強度並びに試験したサンプル中のベンジルアセテート及びベンジルイソブチレートの存在についてまとめる。
【0865】
図15は、36ヶ月間にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットのラベル強度を表す。温度25℃及び相対湿度60%における各サンプルについて、ラベル強度を測定した。
【0866】
図16は、36ヶ月間にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットにおける、ブピバカインのN-オキシドの存在の変化(%ブピバカインN-オキシドで測定)を表す。サンプル中のブピバカインN-オキシドの量を、温度25℃及び相対湿度60%における各サンプルについて測定した。
【0867】
図17は、18ヶ月間にわたる(18ヶ月目~36ヶ月目)、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットにおける2,6-ジメチルアニリンの存在(ppmで測定)を表す。サンプル中の2,6-ジメチルアニリンの量を、温度25℃及び相対湿度60%で保存された各サンプルについて測定した。図18は、3つの異なる温度(25℃、30℃及び40℃)並びに2つの異なる相対湿度(60%RH、75%RH)で6ヶ月間保存された製剤Aのサンプルにおける2,6-ジメチルアニリンの存在を表す。
【0868】
図19は、36ヶ月間にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットにおける、ベンジルアセテート(mg/mLで測定)の存在を表す。温度25℃及び相対湿度60%で保存された各サンプルについて、サンプル中のベンジルアセテートの量を測定した。図20は、3つの異なる温度(25℃、30℃及び40℃)並びに2つの異なる相対湿度(60%RH、75%RH)で6ヶ月間保存された製剤Aのサンプルにおける、ベンジルアセテートの存在を表す。
【0869】
図21は、36ヶ月間にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットにおけるベンジルイソブチレート(mg/mLで測定)の存在を表す。温度25℃及び相対湿度60%で保存された各サンプルについて、サンプル中のベンジルイソブチレートの量を測定した。図22は、3つの異なる温度(25℃、30℃及び40℃)並びに2つの異なる相対湿度(60%RH、75%RH)で6ヶ月間保存された製剤Aのサンプルにおける、ベンジルイソブチレートの存在を表す。
【0870】
図23は、36ヶ月間にわたる、製剤Aのサンプルの4つの一次(5mL)ロット及び4つの二次(7.5mL)ロットにおけるパーセントSAIBの変化を表す。温度25℃及び相対湿度60%で保存された各サンプルについて、製剤AのサンプルのパーセントSAIBの変化を測定した。
【0871】
【表57】
【0872】
【表58】
【0873】
実施例16
様々な量のSAIB及び溶媒を有するブピバカイン製剤のin vitro溶解プロファイルの比較(N=3又は4)
溶解プロファイルを比較するため、12%w/wブピバカインを有するがイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)/溶媒の比が異なる製剤を、以下の方法及び材料に記載されるとおりに作製し、試験した。表16.1は、試験した製剤の組成の概要である。
【0874】
【表59】
【0875】
表16.1に示される製剤についてのブピバカインのin vitro放出を、以下の方法及び材料に記載される方法に従って評価した。図24は、対照製剤(N=4)、-30%SAIB製剤(N=3)、-40%SAIB製剤(N=3)、-50%SAIB製剤(N=4)、-70%SAIB製剤(N=3)、及び-90%SAIB製剤(N=3)の平均累積放出を示す。
【0876】
図24は、対照の累積放出プロファイルが、-30%、-40%、及び-50%SAIB製剤の累積放出プロファイルと類似していることを示す。対照の累積放出プロファイルは、-70%及び-90%SAIB製剤の累積放出プロファイルよりも速い。対照から得られた平均溶解データを基準として用いて、-30%、-40%、-50%、-70%及び-90%SAIB製剤について、類似性因子f2及び差分因子f1を計算した。f1因子及びf2因子の説明については、以下を参照されたい。表16.2に示されるとおり、-30%、-40%、及び-50%のSAIB製剤は、それらが対照と比較して異ならないことを示し得るf1因子及びf2因子を有していた。
【0877】
【表60】
【0878】
様々な量のSAIB及び溶媒を有するブピバカイン製剤のin vitro溶解プロファイルの比較(N=12)
溶解プロファイルを比較するために、12%w/wブピバカインを有するがイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)/溶媒の比が異なる製剤を、以下に記載のとおりに作製し、試験した。表16.3は、試験した製剤の組成の概要である。
【0879】
【表61】
【0880】
表16.3に示される製剤についてのブピバカインのin vitro放出を、以下の方法及び材料に記載される方法に従って評価した。図25は、対照製剤(N=12)、+20%SAIB製剤(N=12)、-20%SAIB製剤(N=12)、及び-70%SAIB製剤(N=12)の平均累積放出を示す。
【0881】
図25は、対照の放出プロファイルが+20%SAIB製剤及び-20%SAIB製剤の放出プロファイルと類似していることを示す。対照の累積放出プロファイルは、-70%SAIB製剤の累積放出プロファイルより速い。対照から得られた平均溶解データを基準として用いて、+20%、-20%、及び-70%SAIB製剤について、類似性因子f2及び差分因子f1を計算した。f1因子及びf2因子の説明については、以下を参照されたい。表16.4に示されるとおり、+20%SAIB製剤及び-20%SAIB製剤は、それらが対照と比較して異ならないことを示し得るf1因子及びf2因子を有していた。
【0882】
【表62】
【0883】
可変加熱で作製されたブピバカイン製剤のin vitro溶解プロファイルの比較
溶解プロファイルを比較するため、対照製剤及び熱ストレスを受けたSAIB製剤を、以下の方法及び材料に記載されるとおりに作製し、試験した。対照及び熱ストレスを受けたSAIB製剤は両方とも、名目上、12%w/wブピバカイン、22%w/wベンジルアルコール、及び66%w/wSAIBで構成されていた。
【0884】
上記の製剤についてのブピバカインのin vitro放出を、以下に記載する方法に従って評価した。図26は、対照製剤(N=12)及び熱ストレスを受けたSAIB製剤(N=12)の平均累積放出を示す。
【0885】
図26における熱ストレスを受けたSAIB製剤と対照との比較は、両製剤が、1時間~18時間までは類似していたことを示す。24時間から開始する、熱ストレスを受けたSAIB製剤の放出プロファイルは、72時間で約66%の薬物放出に達すると、水平になる。
【0886】
方法及び材料
In vitroでのブピバカインの累積放出
In vitroでの製剤からのブピバカインの累積放出を以下のとおりに決定した。
【0887】
材料
熱ストレスを受けた製剤以外のブピバカイン製剤は、適切な量のブピバカインを適切な量のベンジルアルコール(BA)中で溶解させ、適切な量のイソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)を添加し、約35℃で45分以上撹拌することによって調製した。熱ストレスを受けたSAIB製剤については、使用前に225℃のオーブン中で4時間SAIBを予め加熱したことを除いて、同じ工程に従った。予め加熱したSAIBの一部を試験し、98%のSAIBが残存していることがわかった。
【0888】
溶解試験
USP装置IIを用いて、溶解を測定した。約0.5mLの各製剤を、カニューレを介してロードし、900mL±5mLの37±0.5℃溶解媒体(pH7.4±0.05のリン酸緩衝液と0.03%ラウリル硫酸ナトリウム)中にシリンジ注入した。USP装置IIを50RPMに設定し、サンプルを、1、4、8、12、18、24、36、48、及び72時間で収集した。1時点当たりの1サンプル当たりレプリケート数(N)は、上記のとおり異なっていた。収集したサンプルを、HPLCによりブピバカイン含有量についてアッセイした。
【0889】
統計分析
差分因子(f1)及び類似性因子(f2)アプローチ(FDA 産業界のためのガイダンス“Dissolution Testing of Immediate Release Solid Oral Dosage Forms” 1997年8月)を用いて、溶解プロファイル比較を行った。差分因子は、各時点における2つの曲線間のパーセント差を計算し、且つ2つの曲線間の相対誤差の測定値であって、等式1に示されるとおりである:
【0890】
【数1】
【0891】
等式1において、Rt及びTtは、各溶解時点tにおいて基準ロット及び試験ロットからそれぞれ得られた平均溶解結果を表し、nは、溶解時点の数を表す。
【0892】
類似性因子(f2)は、平方和誤差の対数逆数平方根変換であり、且つ2つの曲線間の溶解パーセントの類似性の測定値であって、等式2に示されるとおりである:
【0893】
【数2】
【0894】
等式2における用語は、等式1に定義されるとおりである。f2の値は0~100であり得、f2が大きいほど、基準品と試験品との間の類似性が高いことを示す。f2値50は、各時点における平均差10%に対応する。
【0895】
2つの曲線が類似しているとみなされるためには、f1値が0に近く、f2値が100に近くなければならない。一般的に、0~15のf1値及び50~100のf2値は、2つの曲線の同一性又は同等性、ひいては試験品と基準品の性能の同一性又は同等性を確実にする。
【0896】
実施例17
待機的外来患者腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けている被験者における5mL製剤Aの安全性及び有効性を評価する、無作為化、並行群、二重盲検、生理食塩水プラセボ対照及びブピバカインHCl実薬対照臨床試験を行った。この研究では、製剤Aは上記のとおりに調製され、滅菌溶液として一緒に投与される3つの成分(イソ酪酸酢酸スクロース66重量%、ベンジルアルコール22.0重量%、及びブピバカイン塩基12.0重量%)を含む。
【0897】
方法
この治験は、以下:1) 無作為化、並行群、二重盲検、プラセボ対照研究(パート1)及び無作為化、並行群、二重盲検、ブピバカインHCl実薬対照研究(パート2)を含んでいた。この治験は、待機的外来患者腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けている被験者における、送達システムとしての製剤A(ブピバカイン、ベンジルアルコール、イソ酪酸酢酸スクロース)の有効性及び安全性について評価した。
【0898】
パート1では、被験者は、製剤A又は生理食塩水プラセボの2つの治療のうちの1つを受けるように名目上1:1の比で無作為化された。パート2では、被験者は、製剤A又はブピバカインHClの2つの治療のうちの1つを受けるように1:1の比で無作為化された。
【0899】
この研究は、2つの別々のパート(パート1及びパート2)として実施された。パート1については、92人の被験者が無作為化され、手術の終了時に、5mLの製剤A又は生理食塩水プラセボのいずれかを、鈍い先端のアプリケーターで腹腔鏡下ポート切開部に直接点滴注入することにより治療された。パート2については、被験者は、鈍い先端アプリケーターで腹腔鏡下ポート切開部に直接点滴注入される5mLの製剤A、又は22ゲージ針でポート切開部の縁に浸潤される15mL(75mg)ブピバカインHCl 0.5%の投与を受けるように1:1の比で無作為化された。
【0900】
被験者は1日目に手術を受け、その間、手術の終了時に、麻酔をかけられたまま製剤A、プラセボ又はブピバカインHClの単回用量を投与された。
【0901】
全ての被験者は、レスキュー薬の使用を通じて十分な疼痛緩和を利用することができた。麻酔後ケアユニット(PACU)にいる間、被験者は、突出痛に対する要求に応じて、IVフェンタニル12.5~25μgを投与された。退院時に、被験者は、軽度から中等度の疼痛のためのアセトアミノフェン500mg錠剤及び中等度から重度の疼痛のためのオキシコドン5mg即時放出錠剤の処方箋を提供された。被験者は、治験実施施設の治験責任医師又は研究スタッフから提供された書面による投薬指示に従って、必要に応じてこれらの薬物を自己投与した。
【0902】
被験者には、手術後に指定されたデータを記録する電子日記(LogPad)が発行された。
【0903】
この研究のパート1においては、合計で92人の患者が製剤A又は生理食塩水プラセボを投与された。45人の患者が5mL製剤Aを投与され、47人の患者がプラセボの投与を受けた。この研究のパート2については、296人の患者が製剤A又は実薬対照のブピバカインHClで治療された。148人の患者が5mLの製剤Aを投与され、148人の患者が実薬対照のブピバカインHClの投与を受けた。
【0904】
製剤A、用量及び投与方法
パート1及びパート2では、試験品に無作為化された被験者に、外科的切開部に直接点滴注入することにより5mL製剤A(132mg/mLブピバカイン塩基、合計660mg)が投与された。5mL製剤Aを、プロトコルで指定された投与スケジュールに従って4つのポート間で分割し、全ての外科的切開部をカバーした。必要に応じて、製剤Aの点滴注入前に筋膜を閉鎖した。製剤Aを、皮膚閉鎖の直前に鈍い先端のシリンジチップアプリケーターを介して切開部に点滴注入した。投与後、皮膚を、表皮下縫合糸及びシアノアクリレート皮膚接着剤又はSteri-Strips(商標)を用いて、標準的な方法で閉鎖した。
【0905】
基準対照薬、用量及び投与方法
パート1
パート1では、生理食塩水-プラセボに無作為化された被験者に、外科的切開部に直接点滴注入することにより、滅菌正常生理食塩水5mL(0.9%塩化ナトリウム注射、USP)が投与された。5mLのプラセボを、プロトコル指定の投与スケジュールに従って4つのポート間で分割し、全ての外科的切開部をカバーした。必要に応じて、プラセボ組成物の点滴注入前に筋膜を閉鎖した。プラセボ組成物を、皮膚閉鎖の直前に、鈍い先端のシリンジチップアプリケーターを介して切開部に点滴注入した。投与後、皮膚を、表皮下縫合糸及びシアノアクリレート皮膚接着剤又はSteri-Strips(商標)を用いて、標準的な方法で閉鎖した。
【0906】
パート2
パート2では、実薬対照に無作為化された被験者に、22ゲージ針を用いた外科的切開部の縁への浸潤によって、ブピバカインHCl 0.5% 15mL(75mg;エピネフリンなし)が投与された。15mLのブピバカインHCl組成物を、プロトコルで指定された投与スケジュールに従って4つのポート間で分割し、全ての外科的切開部をカバーした。ブピバカインHCl実薬対照組成物の投与前に、必要に応じて筋膜を閉鎖した。浸潤後、皮膚を、表皮下縫合糸及びシアノアクリレート皮膚接着剤又はSteri-Strips(商標)を用いて、標準的な方法で閉鎖した。
【0907】
有効性分析
主要
パート1及びパート2についての主要有効性評価項目は、以下のとおりであった:
パート1:以前のレスキュー薬の使用について調整され、反復測定の混合効果ANOVAモデル(MMRM)により分析された、被験薬投与後0~72時間の予定された時点で測定された運動時疼痛強度。
パート2:以前のレスキュー薬の使用について調整され、反復測定の混合効果ANOVAモデル(MMRM)により分析された、被験薬投与後0~48時間の予定された時点で測定された運動時疼痛強度。
【0908】
結果
有効性の結果
主要評価項目
主要有効性評価項目は、以前のレスキュー薬の使用について調整された、試験組成物の投与後0~72時間(パート1)及び0~48時間(パート2)の予定された時点で測定された運動時疼痛強度であった。パート1については、比較は、製剤A(パート1の被験者のみ)と生理食塩水プラセボとの間の比較であり、パート2については、比較は、製剤A(パート2被験者のみ)とブピバカインHClとの間の比較であった。主要評価項目分析の結果は、以下の表17.1にまとめられる。
【0909】
【表63】
【0910】
安全性の結果
この治験では、死亡者はいなかった。9人の治療を受けた被験者(6人は製剤A、3人はブピバカインHCl)が、治療創発性の重篤な有害事象(SAE)を経験したが、これらは全て、治験薬投与とは無関係であると考えられた。表17.2は、安全性データについてまとめる。
【0911】
【表64】
【0912】
実施例18
様々な創傷サイズの様々な一般的な手術を受けている患者における、5mL製剤A(132mg/mL、660mgブピバカイン)の国際第3相、多施設、無作為化、二重盲検、並行群試験を行った。
【0913】
方法
本研究は、様々な創傷サイズの様々な一般的な手術を受けている患者における、5mL製剤Aの安全性、有効性(efficacy)、有効性(effectiveness)、及び薬物動態(PK)を評価する、国際的、多施設、無作為化、二重盲検、並行群対照試験であった。全ての手術は待機的であり、緊急性はなく、以下に同定される状態に適応された。
【0914】
無作為化は、手術(コホート)ごと及び臨床部位ごとに階層化された。コホートは以下のとおりであった:
【0915】
コホート1:開腹術。約50人の患者が、5mL製剤A又はブピバカインHCl 30mL 0.5%溶液のいずれかの投与を受けるように、それぞれ3:2の比で無作為化された。このコホートは、肝臓、小腸、胃、脾臓、胆嚢、又は結腸の切除のための開腹術を受けている患者を含んでいた。
【0916】
コホート2:腹腔鏡下胆嚢摘出術。約50人の患者が、5mL製剤A又はブピバカインHCl 30mL 0.5%溶液のいずれかの投与を受けるように、それぞれ3:2の比で無作為化された。
【0917】
コホート3:腹腔鏡補助下結腸切除術。約204人の患者が、5mL製剤A又はビヒクルプラセボ5mLのいずれかの投与を受けるように、それぞれ3:2の比で無作為化された。このコホートは、結腸癌、憩室炎、又はポリープのための、計画されたストーマの形成又は閉鎖を伴わない腹腔鏡補助下結腸切除術を受けている患者を含んでいた。左側及びシグモイド結腸切除術については、気腹法及び体内法を使用して、腹部を探索し、結腸を動かし、重要構造を特定し、血管茎を結紮した。
【0918】
実薬対照、用量及び投与方法
実薬対照治療群(コホート1及び2)においては;30mLのブピバカインHCl 0.5%溶液(5mg/mL、150mgブピバカイン)を、皮下針を用いた浸潤により切開周辺組織に投与した。
【0919】
製剤A、用量及び投与方法
製剤A(132mg/mL、上記の660mgブピバカイン)及びビヒクルプラセボ治療群については、Luer LockフィッティングでTunneltip(商標)灌注カテーテルに接続されたNORM-JECT(登録商標) 5mL Luer Lockシリンジを用いて、5mLの各組成物を引き出して投与した。付属のTunneltip灌注カテーテルは柔軟性があり、長さ15cm、直径2mmで、創傷長の測定及び点滴注入の制御のため、滑らかな丸みを帯びた先端と目盛り付きセンチメートルマーキングの印を備えていた。カテーテル内のデッドスペースを占めるため、施設は、提供された16ゲージ針を備えたシリンジ中に5.5mLの治験品を吸引するように指示された。施設は、各組成物の5mLの投与を確実にするために、一旦接続されたら、シリンジ及びカテーテルから過剰な空気及び治験品をパージするように指示された。シリンジ、針、及びカテーテルは、無菌で個別にパッケージされて供給された。
【0920】
腹腔鏡ポータル(laparoscopic portal)の場合、各組成物を、灌注カテーテルを通して及び/又はシリンジチップによりオープンポート切開部に直接投与した。次いで、投与後にポート切開部を縫合糸で閉鎖した。線状切開の場合、腹膜を閉鎖し、皮下腔における止血を確保した後、創傷に灌注カテーテルを入れ、表皮下縫合によりカテーテル上で皮膚層を閉鎖した。その後、各組成物の入ったシリンジをカテーテルに取り付け、カテーテルをゆっくりと抜き取りながら、被験薬を徐々に注射した。このようにして、各組成物(例えば、製剤A又はビヒクル対照)は、薬物の漏出を最小限に抑えながら切開部の長さに沿って均等に分配された。最終縫合を用いて、カテーテルが引き抜かれた空間を閉鎖した。創傷長1センチメートル当たりに送達される容量を、灌注カテーテル上のセンチメートルマーキングを用いて測定された切開部長さに基づいて計算した。
【0921】
コホート1では、製剤Aの5mL用量全体が開腹術の切開部中に均等に分配された。コホート2では、大きなポート切開部は、小さなポート切開部よりも大容量の製剤A投与を受けた。コホート3では、一般的に、切除及び吻合のために結腸を露出させるための5~10cmの線状切開部(ハンドポート)が存在した。製剤Aの約80~90%は、灌注カテーテル法を用いてハンドポートに点滴注入された。被験薬の残りの10~20%は、腹腔鏡下ポート切開部に直接点滴注入された。
【0922】
創傷由来の生成物の浸潤を回避するため、点滴注入は、表皮下縫合(ステープルなし)及びSteri-Stripで皮膚を堅固に閉鎖した後に実施された。治験品を入れた領域には、ドレーンは配置されなかった。
【0923】
結果
有効性
製剤Aの有効性を対照と比較して評価するために、2つの共主要評価項目が選択された:1) 0~72時間にわたる運動時疼痛強度の時間正規化AUC、及び2) IVモルヒネ当量として表される、0~72時間にわたり服用されたレスキューオピオイドの総量。主要疼痛評価項目は、0~72時間にわたる運動時疼痛の時間正規化AUCとして定義された。AUCは、予定された運動時疼痛強度スコア(LogPadデバイスに電子的に記録される)、並びに術後疼痛緩和のためにレスキューオピオイドが投与されるたびに記録された疼痛スコアの両方を用いて、台形法により計算された。
【0924】
表18.1は、主要評価項目の0~72時間のAUC、並びに副次的評価項目の0~48時間のAUCについてまとめる。さらに、治療効果の期間を評価するために、日ごとのAUCが示された。
【0925】
【表65】
【0926】
図27~29は、各コホートについての、疼痛評価の予定時刻に対する運動時平均疼痛強度±標準誤差(SEM)の折れ線グラフを示す。これらの図から、コホート1及び3は、両コホートとも結腸切除術又は他の腹部の大手術を含んでいたため、その初期疼痛強度は類似し、疼痛スコア7~8であったことがわかり、重度の疼痛であったとみなされた。コホート2は、初期疼痛スコアがより低く5~6であり、中等度から重度の疼痛と考えられた。3つのコホート全てにおいて、運動時平均疼痛強度は術後3日間かけて2~3単位低下し、コホート1及び3は中等度の疼痛レベルに達したが、コホート2は軽度の疼痛レベルに低下した。コホート1及び2は治療群の早期分離を示し、これは72時間の期間中ずっと維持された。コホート3では、治療群の分離がほとんどなく、主要評価項目で観察された比較的小さな治療効果と一致していた。
【0927】
運動時疼痛強度の事前指定感度分析
事前指定感度分析は反復測定混合モデルであり、表18.2にまとめられる。
【0928】
【表66】
【0929】
レスキュー薬の使用
第2の共主要評価項目は、異なるオピオイドをモルヒネ当量に変換するための標準変換因子を用いてミリグラム単位のIVモルヒネ当量として表される、0~72時間にわたって投与されたオピオイドの平均総量であった。
【0930】
表18.3は、第2の共主要評価項目に関する結果についてまとめる。
【0931】
【表67】
【0932】
薬物動態
血漿PKサンプルは、総ブピバカイン濃度の決定についてのみ分析され、いずれのサンプルも遊離薬物濃度の決定については分析されなかった。表18.4は、3つのコホート全てのPKパラメータについてまとめる。血漿ブピバカイン濃度対治療後時間のグラフは、図30~32に示される。
【0933】
【表68】
【0934】
安全性評価
治験全体を通して、患者の安全性は、投与後3日間のAE、バイタルサイン、日常的な臨床検査、及びホルターモニタリング(すなわち、心電図の連続記録)の伝統的な評価により、注意深くモニターされた。ブピバカインの毒性作用は心血管系及び神経系の2つの身体系に現れるため、心血管系及び神経学的AEに特別な注意が払われた。さらに、治験の30日間にわたり手術創状態及び治癒をモニターするため、特別な評価が行われた。
【0935】
表18.5は、コホートごとの全体的な有害経験についてまとめる。
【0936】
【表69】
【0937】
バイタルサインに対する一貫した治療関連の影響はなかった。血清化学パラメータ及び血液学的パラメータの変化は、大手術後に予想されるものであり、治療群間で一貫した差はほとんどなかった。心臓安全性は、手術の約1時間前に開始する、投与後72時間のホルターモニタリングを用いて注意深く調べられた。さらに、スクリーニング来院後に、ベースライン24時間の外来ホルターモニタリングが行われた。ホルターデータの慎重な分析及びQTc間隔とブピバカイン血漿濃度との相関関係は、製剤AによるQTc延長の証拠を全く明らかにしなかった。ホルターの記録は不整脈についてさらに分析され、いずれの記録においても心室頻拍の症例は検出されなかった。
【0938】
製剤Aは、5mL(660mg)の用量で様々な腹部手術創に点滴注入された場合に忍容性が良好であり、AE、臨床検査、及び集中的なホルターモニタリングによって評価されるような、全身性ブピバカイン毒性の証拠は存在しなかったと結論付けられた。術後挫傷の発生率の増加を除き、製剤Aの組織忍容性は、ブピバカインHClと比較しても劣らない。
【0939】
実施例19
二重盲検、プラセボ対照薬力学的および薬物動態学的用量応答研究を、開放鼠径ヘルニア修復を受けている患者の創傷に直接点滴注入された製剤Aのために実施した。この研究では、製剤Aは上記のとおりに調製され、滅菌溶液として一緒に投与される3つの成分(イソ酪酸酢酸スクロース66重量%、ベンジルアルコール22.0重量%、及びブピバカイン塩基12.0重量%)を含む。
【0940】
目的
開放鼠径ヘルニア修復を受けている患者において創傷に点滴注入された製剤Aの用量応答有効性、薬物動態、安全性及び忍容性を調べること。
【0941】
方法
研究設計
これは、第II相、多施設、無作為化、二重盲検のプラセボ対照、並行群、用量発見研究であった。
【0942】
参加者
患者は18~65歳の男性又は女性であり、全身麻酔下で待機的開放片側テンションフリーリヒテンシュタイン型鼠径ヘルニア修復を受ける予定であった。患者は、病歴、身体検査、12誘導心電図(ECG)、及び臨床検査に基づいて、研究参加前に健康であった。全ての患者は、≦160mmHgの収縮期血圧(BP)及び≦95mmHgの拡張期BPを有し、研究期間を通して及び研究完了後1週間、医学的に許容される避妊法を使用し、研究期間を通して激しい活動を控え、研究期間を通して所定の運動レベルへの変更を避け、また、任意の研究に特異的な手順を実行する前に、承認されたインフォームドコンセントフォームを読み、理解し、意思疎通し、自発的に署名しなければならなかった。
【0943】
患者は、妊娠中又は授乳中であった場合;患者の参加能力を制限し得る瘢痕組織を有する以前の腹部手術を受けていた場合;臨床的に有意な肝臓、胃腸、腎臓、血液学、泌尿器科、神経学的、呼吸器系、内分泌系、若しくは心血管系の異常、精神障害、又は研究中の疾患とは無関係の急性感染症を有していた場合;結合組織障害(全身性エリテマトーデス、強皮症、混合結合組織疾患)を有していた場合;あるいはブピバカイン、又はベンジルアルコール(BA)に対して既知の感受性を有していた場合は、除外された。研究結果の実施又は解釈を妨げる可能性のある、研究登録前6ヶ月以内のアルコール依存症又は違法薬物使用、他の適応症(1つ又は複数)に対する鎮痛薬の現在の使用又は常用、トリプチリン若しくはイミプラミン抗うつ薬、又はモノアミンオキシダーゼ阻害剤の現在の使用又は常用、あるいは、治療前7日以内に開始され、本研究全体を通した任意の処方薬又は市販薬(避妊薬を除く)の使用が既知であるか又はこれらの疑いのある患者は除外され、同様に、同時に又は登録から30日以内に別の臨床研究に参加した患者、及びこの研究手順に従う意思がない、または遵守できない患者も除外された。
【0944】
介入
鼠径ヘルニア手術を、全身麻酔下で標準的な局所診療に従って実施した。患者は、2.5mL若しくは5.0mLの製剤A(12.0重量%、132mg/mLブピバカイン)、又は2.5mL若しくは5.0mLのプラセボの投与を受けるように無作為化された。全ての治療は、創傷閉鎖中に投与され、鼠径管及び腹壁層全体に徐々に点滴注入されて創傷の全ての生表面を覆い、腱膜下腔及び皮下腔を満たしていた。
【0945】
アウトカムメジャー
安静時及び運動時の疼痛強度を、0日目の薬物投与の1、2、3、4、6、8、10、及び12時間後に、1日目から4日目の午前8時、午後12時、午後4時、及び午後8時に、5日目の午前8時に、0日目から14日目の任意のレスキュー薬を投与する前に、数値評価尺度([NRS] 0=痛みなし;10=可能性のある最悪の疼痛)を用いて評価した。修正簡易疼痛調査票は、1日目から5日目に、1日1回午後12時に完了した。術後鎮痛は、推奨されるガイドラインに従って処方され、本研究を通してレスキュー薬の使用、併用薬、及び有害事象(AE)が記録された。手術から患者のモビリゼーションまでの時間、典型的な排便パターン、手術前の最後の排便、及び治療後の排便回数を測定した。最低32人の患者について、0日目には、-5分、並びに1、2、3、4、8、及び12時間で、1日目から4日目、及び7日目には、0日目の治療が投与された日とほぼ同じ時間に、薬物動態分析のために血液サンプルを収集した。手術部位治癒及び局所組織状態は、必要に応じて、1日目から4日目、7日目、及び14日目のフォローアップ来院で評価された。修正簡易疼痛調査票の一部として実施された特定の安全性評価には、吐き気/嘔吐、眠気、そう痒、便秘、めまい、耳鳴り、味覚障害、及び感覚異常が含まれていた。バイタルサインは、スクリーニング時に、治療投与の前及び直後の0日目に、その後、8時間の評価時点又は退院(いずれか最初に起こった方)まで1時間ごとに、並びに1日目から3日目、及び14日目に記録された。身体検査及び安全性臨床検査アッセイは、スクリーニング時及び14日目に実施された。12誘導ECGは、スクリーニング時、及び全ての臨床的に有意な異常(例えば、徐脈エピソード)を評価及び記録することが臨床的に示唆された場合に実施した;2つの研究センターは、手術後、実施可能になるとすぐに24時間の連続ECGモニタリングを実施し、臨床的に示唆された場合、12誘導ECGを実施した。患者は、身体検査、手術部位治癒及び局所組織状態の評価、並びに有害事象及び併用薬データの収集のための3ヶ月及び6ヶ月のフォローアップ来院のためにクリニックに戻った。
【0946】
サンプルサイズ
合計120人の評価可能な患者(各コホート内の積極的治療を支持する3:1に無作為化された1コホート当たり60人の患者)を得るために、約144人の患者が本研究に無作為化された。相対的治療効果0.67(プラセボ5.0mL群と製剤A 5.0mL群との間)が、80%の検出力及び5%の有意水準で、1~72時間の期間にわたる運動時平均疼痛強度曲線下面積(AUC)に基づいて検出された。
【0947】
無作為化
手術前に、適格な患者を、以下の4つの治療のうちの1つを受けるように無作為に割り当てた:製剤A 5.0mL(660mgのブピバカイン)、製剤A 2.5mL(330mgのブピバカイン)、プラセボ5.0mL、又はプラセボ2.5mL。各無作為化患者は、コホートメンバーシップ(コホート1又はコホート2;以下に定義される1コホート当たり60人の無作為化患者)及び治療群(積極的治療を支持する3:1の無作為化)を含む無作為化番号を受けた。プラセボ群(2.5mL及び5.0mL)を先験的にプールし、統計分析力を潜在的に高めた。
【0948】
2つのコホートは以下の通りであった:
- コホート1:患者は、2.5mLの製剤A又は2.5mLのプラセボのいずれかの投与を受けるように無作為化された。
- コホート2:患者は、5.0mLの製剤A又は5.0mLのプラセボのいずれかの投与を受けるように無作為化された。
【0949】
この無作為化スキームは、以下のとおりに3つの異なる治療群を生じた:
- 治療群1:製剤A 2.5mL(330mgのブピバカイン);
- 治療群2:製剤A 5.0mL(660mgのブピバカイン);
- 治療群3:無作為に割り当てられたプラセボ2.5mL又は5.0mL。
【0950】
患者数
計画された患者数
120人の評価可能な患者を得るために、最大144人の患者が登録された。
【0951】
分析された患者
135人の患者が登録され、124人が以下のとおりに無作為化された:製剤A 2.5mL、N=45;製剤A 5.0mL、N=47;プラセボ、N=32。4人の患者が本研究を中止した(製剤A 2.5mL、N=3;プラセボ、N=1);従って、120人の患者が本研究を完了し、有効性評価可能な集団を構成した:製剤A 2.5mL、N=42;製剤A 5.0mL、N=47;プラセボ、N=31。安全性/プロトコルごとの(PP)集団は、123人の患者(製剤A 2.5mL、N=44;製剤A 5.0mL、N=47;プラセボ、N=32)を含み、治療意図(ITT)集団は、122人の患者(製剤A 2.5mL、N=43;製剤A 5.0mL、N=47;プラセボ、N=32)を含んでいた。
【0952】
診断及び主な包含の基準
全身麻酔下で待機的開放片側テンションフリーリヒテンシュタイン型鼠径ヘルニア修復を受ける予定であった、全般的に健康な、18~65歳の男性及び女性の患者。
【0953】
治療期間
治療は、手術当日(0日目)に一度に投与された。
【0954】
評価基準
有効性
2つの共主要有効性評価項目があった:術後1~72時間の期間にわたる運動時平均疼痛強度正規化AUC、及び研究中にオピオイドレスキュー薬の投与を受けた患者の割合。主要帰無仮説は、運動時平均疼痛強度正規化AUC又はオピオイドレスキュー薬に関して、治療群間で差はないというものであった。副次的有効性評価項目は、以下を含んでいた:手術後1~48時間の期間にわたる平均疼痛強度正規化AUC、オピオイド薬使用までの手術後時間、全体的な治療満足度、研究中の鎮痛レスキューのための、モルヒネ当量に変換された平均総オピオイド用量、及び平均の機能的活動(1日目~5日目)。探索的分析は、1~24時間、1~96時間、及び1~120時間の正規化平均疼痛強度AUC(運動時及び安静時)の計算を含んでいた(最終観察繰越[LOCF]法を使用)。
【0955】
薬物動態
血漿サンプルは、薬物動態学的評価のために選択された1つの研究センターにおいて、患者のサブセットで収集された。
【0956】
安全性
安全性の結果には、AE、手術部位治癒及び局所組織状態評価、ECG、臨床検査、バイタルサイン、及び身体検査が含まれていた。
【0957】
統計的方法
主要評価項目
平均疼痛強度AUCを、因子として治療群及び治験実施施設を含む分散分析(ANOVA)モデルを用いて治療群間で比較した。ダネット(Dunnett)検定を使用して、プラセボ群(総計)と2つの製剤A用量のペアワイズ比較を行った。オピオイドレスキュー薬の投与を受けた患者の割合を、コクラン・マンテル・ヘンツェル(Cochran-Mantel-Haenszel)(CMH)検定を用いて分析した。
【0958】
副次的評価項目
オピオイド使用までの時間を、ログランク検定を用いて分析した。Cox比例ハザードモデルは、ハザード比とその95%信頼区間(CI)を推定するためにも使用した。
【0959】
用量応答
有効性用量応答の定量化を、疼痛強度の関数として3つの治療群(プラセボ[総計]、並びに製剤A 2.5mL及び5.0mL)間の単調関係を検査することによって調べた。ステップダウンアプローチを使用して、比較の多重度に対処した。
【0960】
結果
有効性の結果
主要瞬間疼痛評価項目についての有効性の結果は、表19.1にまとめられる。製剤Aの5mL用量は、プラセボと比較して非常に有意である一方、2.5mL製剤Aは、有意性には達しなかったが、疼痛強度AUCはプラセボよりも低かった。プラセボに対して両活性用量の製剤Aを支持する、1~72時間の安静時平均疼痛強度正規化AUCの低下が観察されたが、統計的に有意ではなかった。
【0961】
【表70】
【0962】
プラセボと対比して、製剤Aにより1~48時間の運動時平均疼痛強度正規化AUCが改善され、5.0mLの製剤A(平均[SEM]、2.52[0.19])とプラセボ(3.86 [0.31])との間に統計的に有意な差(p=0.0007)が観察され、プラセボに対して、2.5mL製剤Aによる有意性を支持する傾向(3.18[0.24])があった(p=0.0654)。さらに、1~48時間の安静時平均疼痛強度正規化AUCは、プラセボに対して、5.0mLの製剤Aによる有意な改善を支持する傾向があった(平均[SEM]、1.54[0.13]対2.18[0.23];p=0.0515)が、2.5mLの製剤A(2.15 [0.22])とプラセボとの差は、統計的に有意ではなかった。
【0963】
5.0mL製剤A群中では約53.2%(25/47;95%CI:38.1%、67.9%)の患者において、2.5mL製剤A群中では72.1%(31/43;95%CI:56.3%、84.7%)の患者において、プラセボ群中では71.9%(23/32;95%CI:53.3%、86.3%)の患者において、術後オピオイドレスキュー鎮痛が使用され;ITT集団では、5.0mLの製剤Aとプラセボ間の差は、統計的有意性に近づいていた(p=0.0909)。
【0964】
最初のオピオイド使用までの時間の中央値は、5.0mLの製剤A(131.8時間;95%CI:31.9、未定義)で最大であり、続いて2.5mLの製剤A(10.8時間;95%CI:1.1、52.7)、その後プラセボ(2.7時間;95%CI:1.1、25.3)であり;5.0mLの製剤Aとプラセボ間の差は、統計的に有意であった(p=0.0174)。
【0965】
治療後0~72時間で服用されたレスキュー薬のIVモルヒネ等価用量は、表19.2にまとめられる。プラセボと比較して、製剤A 5mLの場合のレスキュー薬の使用は有意に低かったが、2.5mL用量の製剤は、統計的有意性に達しなかった。
【0966】
【表71】
【0967】
各治療群における大部分の患者(>90%)は、満足していたか又は非常に満足しており、各機能的活動の平均スコアは3つの治療群全てにおいて1日目から5日目に改善した。
【0968】
5.0mLの製剤Aでは、プラセボに対して、1時間~最後までの運動時平均疼痛強度正規化AUCの統計的に有意な改善が観察された(平均[SEM]、それぞれ2.27[0.18] vs. 3.03 [0.25];p=0.0211)が、製剤A 2.5mL(2.96 [0.25])では、プラセボに対して有意な改善は観察されなかった。同様に、1~24時間、1~96時間、1~120時間の運動時疼痛強度の正規化平均AUCは、5.0mLの製剤A(平均[SEM]、それぞれ2.21[0.21]、2.37[0.18]、及び2.30[0.18])で最も低く、続いて2.5mLの製剤A(それぞれ2.85[0.25]、3.04[0.26]、及び2.93[0.26])、そして最後がプラセボ(それぞれ4.05[0.31]、3.31[0.29]、及び3.03 [0.28])であった。
【0969】
薬物動態学的結果
ブピバカインの血漿濃度は、投与された用量に比例して増加し、製剤A投与の時に薬物送達のバーストは観察されなかった。ブピバカインの観察された平均(SEM)薬物動態パラメータは、表19.3に列挙される。
【0970】
【表72】
【0971】
安全性の結果
ここで報告された安全性の結果は、安全性集団について言及する。安全性集団(N=123)における最も一般的なAE(少なくとも1つの治療群において>10%の発生率)は、傾眠、便秘、めまい、そう痒、徐脈、頭痛、術後出血、術後創傷合併症、吐き気、及び味覚障害を含んでいた。修正簡易疼痛調査票からの有害事象(すなわち、吐き気/嘔吐、眠気、そう痒、便秘、めまい、耳鳴り、金属味、つま先または指のしびれまたはうずき)が各治療群で報告された。おそらく治療に関連しているか治療に関連している可能性がある全てのAEの発生率は、2.5mL製剤A群で18.2%(8/44)、5.0mL製剤A群で27.7%(13/47)、プラセボ群で28.1%(9/32)であり、全て重症度は軽度又は中等度であった。
【0972】
2つの安全性分析を実施した:当初の分析は、重症度の欠測データを軽度として補完し、アドホック分析では重症度の欠測データを重度であると補完した。両方の分析において、大部分のAE(当初の分析については>95%、アドホック分析については>70%)は、重症度が軽度または中等度であった。当初の分析においては、各製剤A群における2人の患者、プラセボ群における0人の患者が、アドホック解析においては、製剤Aで治療された患者21人及びプラセボで治療された患者10人が、重篤な有害事象を経験したか、又は重篤な有害事象を補完された。重篤な有害事象は、製剤A 2.5mL、製剤A 5.0mL、及びプラセボで治療された患者それぞれの、6.8%(3/44)、4.3%(2/47)、及び3.1%(1/32)において報告された;1つの事象(血管迷走神経性失神)は製剤A治療に関連している可能性があると考えられた。重篤な有害事象には、急性冠動脈症候群、血管迷走神経性失神、失神、及び術後創傷合併症が含まれていた。死亡やその他の顕著な有害事象はなかった。
【0973】
神経系有害事象が、製剤A 2.5mL、製剤A 5.0mL、及びプラセボで治療された患者それぞれの、29人(66%)、25人(53%)、及び23人(72%)で報告された。心臓有害事象は、製剤A 2.5mL、製剤A 5.0mL、及びプラセボのそれぞれで治療された、10人(23%)、15人(32%)、及び7人(22%)の患者により経験された。プラセボを含む全ての用量群の患者の間で、全身麻酔からの回復中に、5つの血管迷走神経性失神エピソードがあった。心血管系原因の失神は除外された。
【0974】
臨床的に有意な検査所見の異常はまれであり、2.5mL製剤A群におけるスクリーニング時の1回の陽性の尿糖検査、及びプラセボ群における14日目の1回の高いクレアチンキナーゼ血中濃度からなっていた。心拍数(HR)、BP、呼吸数、体温、および身体検査(修復すべき胃腸ヘルニアを除く)所見は、全ての治療群において、スクリーニングから14日目まで類似していた。手術部位は予想どおりに治癒し、局所組織状態は、評価された全ての時点で、各治療群の≧95%の患者において予想どおり/正常であった。
【0975】
ECG上では、製剤Aは、HR期間について補正されたHR、PR、QRS、及びQT間隔において、任意の臨床的に関連する変化をもたらさなかった。12誘導ECGの規則的なセットにおけるQTcFの結果は、2.5mL製剤A用量群では+2ms補正され、5.0mL製剤A用量群では-8ms補正された、ベースラインプラセボからの平均変化(製剤Aが心臓の脱分極又は再分極に影響を与えたという何のシグナルも示さないであろう変化)を示した。しかし、ECGのテレメトリーセットにおいて、2.5mL及び5.0mLの製剤Aについての、ベースラインから12時間までのQTcF期間の平均変化は、それぞれ+15ms及び+9msであり、ベースラインから24時間まではそれぞれ+8ms及び-11msであった。これらのデータは、おそらく、製剤Aの直接的な効果ではなく、パワーの欠如、併用する全身麻酔、及びQTc期間の大きな自発的変動性に起因する可能性が高い、QTcF期間の非用量関連の増加を示した。
【0976】
6ヶ月間のフォローアップ期間中、AEは、プラセボ群(42.3%)又は2.5mL製剤A群(58.3%)と比較して、5.0mL製剤A群(35.7%)においてより少なかった。大部分のAEは、重症度が軽度又は中等度であった。重篤なAEは、2.5mL製剤A群で11.1%、プラセボ群で7.7%の割合で報告された;5.0mL製剤A群では、重篤なAEは報告されなかった。術後創傷合併症は、患者の>10%で報告された唯一のAEであり、2.5mL製剤A群においては患者の7人(19.4%)、プラセボ群においては患者の3人(11.5%)に発生した。6ヶ月において、手術部位治癒及び局所組織状態は、全ての患者において、予想どおり/正常であった。
【0977】
結論
創傷に直接点滴注入された5.0mLの製剤A(660mgブピバカイン)は、待機的な、開放、片側、テンションフリーの、鼠径ヘルニア修復を受けた患者の疼痛の管理において、安全且つ有効であった。2.5mLの製剤A(330mgブピバカイン)は、鼠径ヘルニア修復における疼痛管理に十分に有効であることが実証されなかった。5.0mLの製剤A(660mg)は、術後48時間及び72時間、プラセボと比較して、運動時平均疼痛強度正規化AUCを有意に改善した。5.0mLの製剤A(660mg)で治療された患者は、48時間及び72時間の間、プラセボと比較して、有意に少ない術後オピオイドレスキュー薬を必要とした。本研究期間にわたり、5.0mLの製剤A(660mg)は、プラセボと比較して、最初のオピオイド使用までの時間を有意に延長した。
【0978】
2.5mL製剤A(330mg)群における有効性評価項目は、プラセボと統計的に有意に異ならなかった。しかし、1~48時間の運動時平均疼痛強度正規化AUC及び2日目に服用されたMEDDで、プラセボに対する有意差を支持する傾向が観察された。全体的な疼痛治療に対する患者の満足度は、各治療群で観察され、本研究期間全体を通して持続した。機能的活動は、全ての治療群において経時的に改善した。ブピバカインの薬物動態は用量比例することが観察され、製剤Aの投与後に薬物放出バーストは観察されなかった。
【0979】
大部分のAEは、重症度が軽度又は中等度であり、死亡又は他の有意なAEは発生しなかった。6ヶ月のフォローアップ期間中、2.5mLの製剤A(330mg)及びプラセボで治療された患者において、同様の発生率で重篤なAEが報告されたが、5.0mLの製剤A(660mg)で治療された患者では報告されなかった。心血管系毒性のアクティブモニタリングは、製剤Aに対する単回の一時的な(episodic)曝露と心臓事象との間に因果関係が存在しなかったことを示唆している。便秘、吐き気、そう痒、耳鳴り、傾眠、めまい、頭痛、味覚異常、及び感覚異常は、プラセボと比較して、5.0mLの製剤A(660mg)でそれほど頻繁には報告されなかった;しかし、術後出血、術後創傷合併症、及び徐脈は、プラセボと比較して、5.0mLの製剤A(660mg)でより頻繁に報告された。
【0980】
5.0mLの製剤A(660mg)に関連するオピオイドレスキュー用量の低下は、プラセボと比較して、めまい、吐き気、及び嘔吐を含むオピオイド関連AEの発生率を低下させ、便秘の発生率を有意に低下させた。バイタルサイン又は身体検査の経時的な変化は最小限であった。異常な若しくは予想外の手術部位治癒又は組織評価、あるいは臨床的に有意な検査所見の異常がまれに観察され、発生率は治療群間で類似していた。ECG上では、製剤Aは、HR、PR、QRS、又はQTc期間における任意の臨床的に関連する変化を実証しなかった。しかし、QTcF延長が観察されたが、これは用量依存性ではなく、小さなサンプルサイズ、併用全身麻酔、及びQTc期間の大きな自発的変動性に起因する可能性が高かった。この研究は、製剤Aのより低い用量(2.5mL[330mg])又はより高い用量(5.0mL[660mg])用量のいずれについても、明確で一貫したECGの影響を実証せず、用量が高いほど、患者をより高い有害な心血管系作用のリスクに曝すわけではないことを示唆していた。
【0981】
実施例20
待機的開放鼠径ヘルニア修復を受けている患者の創傷に直接点滴注入された製剤Aの薬物動態(PK)、安全性、忍容性及び有効性を調べるため、患者盲検の第II相研究を行った。手術的処置は全身麻酔下で実施した。この研究では、製剤Aは上記のとおりに調製され、滅菌溶液として一緒に投与される3つの成分(イソ酪酸酢酸スクロース66重量%、ベンジルアルコール22.0重量%、及びブピバカイン塩基12.0重量%)を含む。この製剤を使用する目的は、数日間にわたってブピバカインをゆっくりと放出することにより、長期の局所鎮痛を提供することである。
【0982】
目的
主要目的 - 待機的開放鼠径ヘルニア修復を受けている患者の創傷に直接点滴注入された徐放性ブピバカイン組成物(すなわち、上記のとおりブピバカイン、ベンジルアルコール、イソ酪酸酢酸スクロースを含有する製剤A)の薬物動態を調べること。
【0983】
副次的目的 - 待機的開放鼠径ヘルニア修復を受けている患者の創傷に直接点滴注入された製剤Aの安全性、有効性および忍容性を調べること。
【0984】
方法
本研究は、開放鼠径ヘルニア修復患者における送達システムとしての製剤Aの薬物動態、安全性、忍容性及び有効性を評価するためのパイロット、患者盲検、第II相研究であった。この研究では、製剤Aの創傷への直接点滴注入を調査し、患者は2つの治療群に登録されていた。
【0985】
治療群1 - 創傷閉鎖中に、2.5mLの製剤Aを、ほぼ等量で、上部、内側及び下部腱膜下腔内に局所的に入れた。外腹斜筋腱膜の閉鎖後(且つ皮膚閉鎖前)に、さらなる2.5mLの製剤Aを、縫合された外腹斜筋腱膜の長さに沿って局所的に入れた。創傷に点滴注入された製剤Aの総送達量は5.0mLであった。
【0986】
治療群2 - 外腹斜筋腱膜の閉鎖後(且つ皮膚閉鎖前)に、5.0mLの製剤Aを、縫合された外腹斜筋腱膜の長さに沿って局所的に入れた。創傷に点滴注入された製剤Aの総送達量は5.0mLであった。
【0987】
患者数:計画された患者 - 最大12人の患者、1群当たり5人の評価可能な患者を達成するため1治療群当たり6人;研究に入った患者 - 12人の患者、1治療群当たり6人;研究を完了した患者 - 12人の患者、1治療群当たり6人。
【0988】
患者を研究に含めるための診断及び主な基準:この研究集団は、全身麻酔下で鼠径ヘルニアの開放修復を受けている男性及び女性の患者を含んでいた。
【0989】
治療期間
この研究期間は、最大21日間続いた。
【0990】
評価基準:
有効性:1日当たりの疼痛強度(数値評価尺度)、1日当たりのオピオイドレスキュー鎮痛及び1日当たりの総鎮痛。修正簡易疼痛調査票を用いて、1日当たりの疼痛コントロール、最悪の疼痛、最小の疼痛、機能の分析、治療満足度及び経時的な個々の疼痛強度を評価した。
【0991】
安全性:有害事象(AE)、創傷治癒及び局所組織状態、臨床検査、身体検査及びバイタルサイン。修正簡易疼痛調査票はまた、吐き気、嘔吐、眠気、そう痒、便秘、めまい、耳鳴り、味覚障害、感覚異常(parasthesia)及び治験薬の注射後の排便回数を含む、特定の安全性評価についても記録した。
【0992】
薬物動態:血液サンプルを収集した全ての患者のデータに対して、非コンパートメントPK分析を実施した。
【0993】
統計的方法
目的は、各群において5人の評価可能な患者が治療を完了することであり、この研究のためのサンプルサイズ計算として使用した。
【0994】
各時点において血漿ブピバカイン濃度についてまとめ、WinNonLinを用いてデータを評価した。最大血漿濃度(Cmax)、Cmaxに達するまでに要した時間(Tmax)、及び曲線下面積(AUC)のパラメータを、線形台形規則を用いて治療群ごとにまとめ、線形一般法を用いて比較した。
【0995】
予定時点における平均疼痛強度スコアのプロットを用いて、両治療群を同時に評価した。修正簡易疼痛調査票データは、AUCを用いてまとめられた疼痛コントロール、最悪の疼痛および最小の疼痛により、治療群ごとにまとめられた。全ての疼痛評価データは、治療群ごとにまとめられた。
【0996】
全てのオピオイド含有薬物をモルヒネ当量にコード化し、総モルヒネ当量の1日用量を各日について計算した。0日目~5日目、6日目~14日目及び全体(0日目~14日目)の、1日当たりに服用されたレスキュー鎮痛錠剤の平均数を計算し、治療群ごとにまとめた。0日目~5日目にレスキュー鎮痛を要求しなかった患者の割合を、治療群ごとにまとめた。
【0997】
治療創発性AE及び重篤な有害事象(SAE)の全体的な発生率(数及びパーセンテージ)を治療群ごとにまとめた。AEの発生率は、各MedDRA器官別大分類及び基本語について、最大重症度及び治験薬との関係の点からも評価された。修正された短い疼痛調査票により記録された各一般的な安全性事象を報告した患者の割合を、治療群ごとにまとめた。手術部位治癒及び局所組織状態データを列挙し、治療群ごとにまとめた。
【0998】
バイタルサインデータ、ベースラインからの変化、並びに各身体系における異常な所見を有する患者の数及び割合を、治療群ごとに各来院においてまとめた。典型的な腸機能に関するデータをまとめ、各24時間の期間における腸機能の数を治療群ごとにまとめた。服用された併用薬は、ATC及びWHOの薬物コードを用いて、治療群ごとにまとめられた。
【0999】
臨床検査データを列挙し、性別特異的正常範囲と比較し、スクリーニングから研究終了までの任意の変化を計算した。観測されたデータ及びスクリーニングからの変化を、治療群ごとにまとめた。ベースラインから治療終了までの、異常に低い/正常/異常に高い値の間の血液学及び生化学パラメータのシフト表を治療群ごとに作成した。臨床的に有意であるとみなされる異常値を有する患者の割合を、治療群間で比較した。
【1000】
結果
有効性の結果
製剤Aが、腱膜下腔内に及び外腹斜筋腱膜に沿って点滴注入された治療群1においては、安静時平均疼痛強度スコアは、0~1日目にかけては同様のレベルのままであり、2日目に低下し始めた。製剤Aが外腹斜筋腱膜に沿って点滴注入されたのみの治療群2においては、0日目から1日目に平均疼痛強度スコアがわずかに増加し、その後2~3日目に疼痛レベルが低下した。全体として、2~5日目の平均疼痛強度スコアは、治療群2の患者では治療群1の患者よりも一貫して高く、疼痛強度AUCも、治療群2の患者で高かった(表20.1)。
【1001】
【表73】
【1002】
同様のパターンが、運動時疼痛強度スコアについて見られた。大部分の患者が、製剤Aの創傷への点滴注入から良好、非常に良好又は優良な疼痛コントロールを経験し、治療群2における2人の患者のみが、可(fair)の疼痛コントロールを経験した。疼痛コントロールAUC値を比較した場合、治療群間で顕著な差は見られなかった。最悪の疼痛スコアは、治療群2においては1日目に比較的高かったが、2日目までには、治療群間に顕著な差はなかった。術後疼痛が歩行能力、社会的交流、睡眠維持及び咳に与える影響は、1日目には治療群2においてより高かったが、2日目までには、ほとんどのパラメータについて2群間で同等であった。大部分の患者は、製剤Aによる治療に満足していたか又は非常に満足しており、治療群2(すなわち、製剤Aが外腹斜筋腱膜に沿って点滴注入されたのみ)における2人の患者のみが、治療に幾分不満であったか、又は幾分かしか満足しなかった。評価した他の有効性パラメータについて、2つの群間に差は見られなかった。
【1003】
製剤Aが外腹斜筋腱膜に沿ってだけでなく腱膜下腔内にも点滴注入された治療群1における患者と比較して、製剤Aが外腹斜筋腱膜に沿って点滴注入されたのみの治療群2においてはより多くの患者が、0日目~5日目の間にレスキュー鎮痛を要求した。しかし、治療群2における患者は、0日目~5日目にかけてのみレスキュー鎮痛を要求したが、治療群1における1人の患者は、6日目~14日目の間にレスキュー鎮痛を要求した。
【1004】
【表74】
【1005】
本研究中に使用されたオピオイド鎮痛を、静脈内モルヒネ当量の1日用量(MEDD)単位に変換し、結果として得られた補助的なオピオイド鎮痛使用を以下の表にまとめる。術後最初の24時間の間に、治療群2の患者は治療群1の患者よりも多くのオピオイド療法を要求した。しかし、この24時間の期間後、治療群2の患者のいずれも追加のオピオイド鎮痛を要求しなかったが、治療群1の一部の患者は1~5日目にオピオイド鎮痛を要求した。
【1006】
【表75】
【1007】
安全性の結果
AEの発生率は、治療群間で同等であった。1治療群当たり2人以上の患者で報告された唯一のAEは、術後出血(6人の患者のうち3人)及び吐き気(6人の患者のうち2人)であった。手術の翌日に両治療群にわたって吐き気が経験されたが、術後出血は治療群1における患者のみによって経験された。眠気及び便秘は、本研究の最初の2日以内に個々の患者により報告された。全てのAEの重症度は軽度(治療群2における6人の患者のうち3人)又は中等度(治療群1における6人の患者のうち4人)であり、いずれも本試験治療に関連しているとは考えられなかった。
【1008】
本研究中に死亡又は離脱はなかった。1人の患者のみが重篤な有害作用(SAE)を経験した(治療群1の患者における鼠径ヘルニアの再発を含む)。SAEは本試験治療に関連しているとは見なされず、研究の過程で解消された。
【1009】
製剤Aの、5.0mLの用量での創傷への直接投与は、臨床検査、バイタルサイン又は身体検査パラメータについて安全性の懸念を生じさせなかった。さらに、製剤Aの使用は創傷治癒を損なうようには見えなかったが、12人の患者のうち3人について、異常な局所組織状態が記録された。製剤Aの、腱膜下腔への及び外腹斜筋腱膜に沿った投与は、正常な腸機能へのわずかにより速い復帰と関連していたように見えた。
【1010】
薬物動態の結果
定量化可能な血漿ブピバカイン濃度が、製剤A投与の1~4時間以内に観察され、両方の治療群において、約12~24時間で最大濃度まで徐々に増加した。持続レベル(100~400ng/mL)は、一般に48~72時間の期間維持され、その後濃度が単一指数的に低下し始めた。
【1011】
本研究では、2つの治療群は薬物投与方法に関して異なっていたが、投与された薬物の総量は両群について5.0mLであった。2つの群間のブピバカインの全体的な薬物動態パラメータは類似しており、群2(創傷浸潤物としての全量)においてはやや高い変動性を有していた。
【1012】
投与された実際の用量について補正し、1mL用量に正規化した後、血漿ブピバカイン濃度はほぼ重畳可能であるように見えた。
【1013】
結論
ブピバカインの薬物動態は、この研究において評価された2つの群間で類似していた。この研究は、5.0mLの用量で、腱膜下腔内に及び外腹斜筋腱膜に沿って点滴注入された製剤A(治療群1)、又は外腹斜筋腱膜に沿って点滴注入されただけの製剤A(治療群2)が、いずれも忍容性が良好であり、臨床的に有意なAEをもたらさなかったことを示した。製剤Aの腱膜下腔内及び外腹斜筋腱膜に沿った点滴注入(治療群1)は、特に1日目に、疼痛強度スコア、並びに疼痛が歩行能力、社会的交流、覚醒維持能力(ability to stay awake)及び咳を妨げた時間の量に関して、より良好な有効性を示した。全体的な疼痛コントロールおよび治療による満足度の患者の評価は、製剤Aが外腹斜筋腱膜に沿って点滴注入されたのみの場合(治療群2)と比較して、製剤Aが、腱膜下腔内及び外腹斜筋腱膜に沿って点滴注入された場合(治療群1)により高かった。製剤Aの、腱膜下腔内への及び外腹斜筋腱膜に沿った点滴注入(治療群1)は、術後最初の数日間の補助的なレスキュー鎮痛及びオピオイド鎮痛に対する要求の低下と関連していた。
【1014】
実施例21
待機的開放鼠径ヘルニア修復を受けている被験者において皮下又は腱膜下腔内に投与された製剤Aの有効性、忍容性及び安全性を調べるために、無作為化、二重盲検、プラセボ対照研究を行った。この研究において、製剤A及びプラセボは上記のとおりに調製され、以下にまとめられる:
【1015】
【表76】
【1016】
目的
主要目的 - 主要目的は、待機的開放鼠径ヘルニア修復を受けている被験者において皮下または腱膜下腔に投与された製剤Aの有効性を決定することであった。
【1017】
副次的目的 - 副次的目的は、待機的開放鼠径ヘルニア修復を受けている被験者において皮下又は腱膜下腔内に投与された製剤Aの安全性及び忍容性を決定することであった。
【1018】
投与方法がコホート1とコホート2との間で異なっていたため、研究目的はコホートごとに具体的に定義された。
【1019】
方法
これは、待機的開放鼠径ヘルニア修復を受けている被験者において、注射により腱膜下腔内に投与されるか又は皮下投与される、腱膜下腔及び皮下腔全体に点滴注入された製剤Aの有効性を調べるための、また送達システムとしての製剤Aの安全性及び忍容性を評価するための、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、第2相研究であった。
【1020】
この研究は、2つの別々の連続するコホート(コホート1及びコホート2、以下にまとめられる)において行われた。ほぼ同数の被験者が、各コホートに順番に登録されることになっていた。研究期間は最大21日間で、スクリーニング、クリニックへの入院及び手術(0日目)、術後評価、クリニックからの退院、及び14日目までのフォローアップを含んでいた。
【1021】
被験者は1日目、2日目、4日目、及び5日目に電話で評価され、3日目及び14日目にクリニックに戻った(フォローアップ)。被験者は、0日目から5日目まで、疼痛強度(PI)、併用薬、有害事象(AE)、及びレスキュー鎮痛を日記カードに記録した。被験者はまた、14日目までAE及び併用薬についても記録した。
【1022】
コホート1
手術直前に、最初の45人の被験者を、以下の治療のうちの1つを受けるように1:1:1の比で無作為に割り当てた:
【1023】
治療群1:創傷閉鎖前に、5.0mLのプラセボを、上部、内側及び下部腱膜下腔内に注射した。創傷閉鎖後、製剤Aを切開線の両側に沿って2回の後続の皮下注射として投与した(切開部全長が4~6cmであることが推奨された)。製剤Aの総送達量は5.0mLであった。
【1024】
治療群2:創傷閉鎖前に、5.0mLの製剤A(12.0重量%、132mg/mLブピバカイン)を、上部、内側及び下部腱膜下腔内に注射した。創傷閉鎖後、プラセボを、切開線の両側に沿って2回の後続の皮下注射として投与した(切開部全長が4~6cmであることが推奨された)。プラセボの総送達量は5.0mLであった。
【1025】
治療群3:創傷閉鎖前に、5.0mLのプラセボを、上部、内側及び下部腱膜下腔内に注射した。創傷閉鎖後、プラセボを、切開線の両側に沿って2回の後続の皮下注射として投与した(切開部全長が4~6cmであることが推奨された)。プラセボの総皮下送達量は5.0mLであった。プラセボの総送達量は10.0mLであった。
【1026】
コホート2
手術の直前に、第2群の45人の被験者を、以下の治療のうちの1つを受けるように1:1の登録比で無作為に割り当てた:
【1027】
治療群4:創傷閉鎖中に、5.0mLのプラセボを、鼠径管及び腹壁層全体に徐々に点滴注入して創傷の全ての生表面を覆い、腱膜下腔及び皮下腔を満たした。
【1028】
治療群5:創傷閉鎖中に、5.0mLの製剤Aを、鼠径管及び腹壁層全体に徐々に点滴注入して創傷の全ての生表面を覆い、腱膜下腔及び皮下腔を満たした(治療5aを含むコホート2aについては、7.5mLが指定された)。
【1029】
被験者数:鼠径ヘルニアの外来開放修復を受ける予定の72人の評価可能な被験者を確保するために、計画された登録は90人の被験者であった。90人の被験者が、各コホートにおいて45人の被験者へと均等に分割されることになっていた。
【1030】
最終目標は、少なくとも72人の評価可能な被験者が研究を完了することであった(各コホートで36人の被験者、コホート1の各治療群で12人の被験者、コホート2の各治療群で18人の被験者)。
【1031】
合計45人の被験者がコホート1に登録され;13人が治療1に、18人が治療2に、14人が治療3に登録された。45人の被験者全員がコホート1を完了した。合計44人の被験者がコホート2に登録され;21人が治療4に、1人が治療5aに、22人が治療5に登録された。41人の被験者がコホート2を完了し;治療4では1人の被験者、治療5では2人の被験者がフォローアップ不能になった。
【1032】
患者を研究に含めるための診断及び主な基準:この研究集団は、長さ4~6cmの切開を要する鼠径ヘルニアの外来開放修復を受ける予定であり、健康で18歳超の男性及び女性の被験者を含んでいた。
【1033】
試験品、用量及び投与方法:
コホート1
治療1:10.0mLバイアルの製剤A(12.0重量%)を使用して、5.0mL皮下注射のための5.0mLシリンジを充填した。
治療2:10.0mLバイアルの製剤A(12.0重量%)を使用して、上部、内側及び下部腱膜下腔への5.0mLの注射のための5.0mLシリンジを充填した。
【1034】
コホート2
治療5a: 10.0mLバイアルの製剤A(12.0重量%)を使用して10.0mLシリンジを充填し、7.5mLを腱膜下腔及び皮下腔に点滴注入する。
治療5:10.0mLバイアルの製剤A(12.0重量%)を使用して、10.0mLシリンジを充填し、5.0mLを腱膜下腔及び皮下腔に点滴注入する。
【1035】
基準療法、用量及び投与方法
コホート1
治療1:上部、内側及び下部腱膜下腔への5.0mLの注射のため、10.0mLバイアルのプラセボを使用して、5.0mLシリンジに吸引した。
治療2:5.0mL皮下注射のため、10.0mLバイアルのプラセボを使用して、5.0mLシリンジに吸引した。
治療3:5.0mL皮下注射のため、並びに上部、内側及び下部腱膜下腔への5.0mLの注射のため、10.0mLバイアルのプラセボを使用して、5.0mLシリンジに吸引した。
【1036】
コホート2
治療4:10.0mLバイアルのプラセボ(12.0重量%)を使用して、10.0mLシリンジに吸引し、5.0mLを腱膜下腔及び皮下腔に点滴注入した。
【1037】
治療期間
被験者は、単回用量の製剤Aの投与を受けた。この研究期間は、スクリーニング、クリニックへの入院及び手術(0日目)、術後評価、クリニックからの退院、及び14日目までのフォローアップを含む最大21日間であった。
【1038】
評価基準
有効性:有効性は、被験者の日記(0日目~5日目)に収集された被験者のPI及び疼痛管理の自己評価、修正簡易疼痛調査票(1日目~5日目)、及び被験者の併用レスキュー鎮痛薬の使用(0日目~14日目)を使用して評価した。主要有効性評価項目は、PI及び疼痛コントロールであった。副次的有効性評価項目は、最悪及び最小の疼痛スコア、レスキュー鎮痛使用、機能、全体的な治療満足度、及び経時的な個々のPIスコアであった。
【1039】
安全性:安全性評価には、AE、化学、血液学、尿検査などの臨床検査の評価、血清妊娠検査(該当する場合)、バイタルサインの定期的なモニタリング、12誘導心電図(ECG)、併用薬、及び身体検査が含まれていた。評価には、手術部位治癒及び局所組織状態も含まれていた。
【1040】
統計的方法
表及びリストを、SASバージョン8.2を使用して作成した。症例報告フォーム(CRF)で収集された全ての有効性及び安全性データは、治療群、部位、被験者番号、日付、及び時間順にリスト中で示された。治療群ごとのデータ概要が示された。連続変数については、データは、治療群ごとに被験者数(n)、平均、標準偏差(SD)、中央値、最小値、及び最大値でまとめられた。カテゴリ変数については、データは、治療群ごとに、各カテゴリの被験者の数及び割合で表化した。
【1041】
統計的検定は、5%有意水準の両側検定を用いて実施した。この第2相試験の探索的性質のため、いずれの分析についても多重度調整は行われなかった。
【1042】
最も興味深い比較は、治療5とプールされたプラセボとの比較であった。製剤A、治療2及び治療1とプールされたプラセボとの比較の有意性も報告された。
【1043】
各治療群について、ICH国際医薬用語集(MedDRA)バージョン8.0の器官別大分類及び基本語による治療創発性AEの発生率(数及びパーセント)が報告された。0日目に発症したAEについて、別の全体的な発生率の概要が示された。
【1044】
修正簡易疼痛調査票の具体的な安全性評価を、研究日及び治療ごとに表化した。全研究日数にわたる発生率も、治療ごとにまとめられた。
【1045】
手術部位治癒及び局所組織状態評価をまとめ、各治療群についての経時的な被験者発生率(n及びパーセント)ごとに表化した。
【1046】
全ての臨床検査結果を、被験者、臨床検査パネル及びパラメータ、並びに収集時間ごとに列挙した。
【1047】
スクリーニング身体検査結果に由来する異常又は変化は、リスト中に示した。
【1048】
バイタルサインを、各治療群について、各収集時点で記述的に列挙した。ベースライン(投与前)のバイタルサインからの変化を、各治療及び予定された間隔についてまとめた。これらの概要において、反復読み出し(Repeat readings)は用いられなかった。
【1049】
スクリーニング及び予定外のECGがリスト中で示された。
【1050】
結果
有効性の結果:
プロトコルごとの(PP)集団分析の結果は、主要評価項目の運動中PIについて、製剤A治療群が、プールされたプラセボ群よりも有意には優れていなかったことを示した。治療1(5.0mL製剤A、皮下)及び2(5.0mL製剤A、腱膜下)は、プラセボより数値的に優れていたが、これらの差は、統計的有意性に達しなかった。主要評価項目の安静時PIについて、同様の結果が観察された。唯一の統計的に有意な差は、治療5(5.0mL製剤A)において、プールされたプラセボ(P=0.014)と比較してより高いPIを示した。副次的評価項目の分析において、最初のレスキュー鎮痛までの時間は、治療2(5.0mL製剤A、腱膜下)の場合が、プールされたプラセボの場合より有意に長かった(P=0.009)。
【1051】
経時的なPIの事後分析を、2つのコホートについて別々に行った。コホート1において、疼痛評価は、3つの治療群間で有意に異なってはいなかった。製剤Aの腱膜下治療群及び皮下治療群は、評価期間中に、プラセボと比較してより少ないオピオイド使用を要求した。コホート2では、プラセボと対比した製剤A治療群において、全体的な累積オピオイドレスキュー薬の使用の低下の傾向は観察されなかった。
【1052】
安全性の結果:
有害事象(AE)の全体的な頻度は、治療群間で類似していた。最も一般的に報告された治療創発性AEは、吐き気(合計46事象;治療1において6、治療2において10、治療5において12、治療5aにおいて1、及びプールされたプラセボにおいて17)、めまい(合計42事象;治療1において4、治療2において5、治療5において13、治療5aにおいて0、及びプールされたプラセボにおいて20)、便秘(合計40事象;治療1において5、治療2において7、治療5において15、治療5aにおいて0、及びプールされたプラセボにおいて13)、並びに傾眠(合計38事象;治療1において4、治療2において2、治療5において13、治療5aにおいて1、及びプールされたプラセボにおいて18)であった。治療創発性AEの大部分は、重症度が軽度又は中等度であった。AEによる死亡又は中止はなかった。3つの重篤な有害事象(SAE)(血管迷走神経性失神、起立性低血圧症、及び乏尿)が起こった;これらの事象は全て、強度が中等度であり、いずれも治験責任医師により治験薬と関連しているとはみなされなかった。
【1053】
目的の具体的な安全性評価の分析は、オピオイド関連の安全性の問題について全く示していなかった。全ての治療群において、約50%の被験者により吐き気、傾眠、めまい、及び便秘が報告された。嘔吐、耳鳴り、そう痒、味覚障害、及び感覚異常も高頻度で起こった。製剤A治療群とプールされたプラセボ治療群との間で、これらの事象の発生の頻度においていくつかの差があった。嘔吐は、プラセボ群では3人の被験者(3/35、8.6%)において生じたのと比較して、製剤A治療群では7人の被験者(7/40、17.5%)において生じ;味覚障害は、プラセボ群では6人の被験者(6/35、17.1%)において生じたのと比較して、製剤A治療群では3人の被験者(3/40、7.5%)において生じ;感覚異常は、プラセボ群では7人の被験者(7/35、20.0%)において生じたのと比較して、製剤A治療群では4人の被験者(4/40、10.0%)において生じた。
【1054】
目的の具体的な安全性評価の事後分析は、コホート1において、製剤Aの治療によるオピオイド関連副作用の発生率の低下を示した。神経系障害のめまい及び傾眠の頻度は、プラセボと比較して、製剤A治療群においてより少なかった。具体的には、めまいの頻度は、プラセボ群では64.3%であり、製剤A腱膜下治療群(治療2)では27.8%であり、製剤A皮下治療群(治療1)では30.8%であった。傾眠の頻度は、プラセボ群では50.0%、製剤A腱膜下治療群(治療2)では11.1%、製剤A皮下治療群(治療1)では30.8%であった。このオピオイド関連副作用の発生率の低下は、プラセボと比較した、製剤A治療群におけるオピオイド使用の低下と相関関係を有する。
【1055】
結論
主要特定分析(primary specified analysis)は、プラセボより数値的には優れていたが、有効性の全体的な仮説に対する統計的裏付けを提供しなかった。コホート1における事後分析の結果は、オピオイド関連副作用の頻度が、プラセボと比較して、製剤A治療群において低下したことを示し、これは、プラセボ群と比較した、製剤A治療群におけるオピオイド使用の低下と一致していた。さらに、これらの事後分析は、プラセボ群と比較して、製剤A腱膜下治療群における最初の術後日以内の疼痛の低下を示したが、製剤A皮下治療群とプラセボ群との間に、疼痛スコアにおける差は観察されなかった。
【1056】
このように説明された本発明、当業者には明らかであろうその変形及び改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
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図20
図21
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図23
図24
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図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
【国際調査報告】