(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】黄色ブドウ球菌のα毒素を標的とした抗原結合たんぱく質およびその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240118BHJP
C07K 16/12 20060101ALI20240118BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240118BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240118BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240118BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240118BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240118BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240118BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240118BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240118BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240118BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20240118BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240118BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240118BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240118BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20240118BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/12
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 R
A61P31/04
A61P39/02
A61K39/395 L
A61K47/68
A61K48/00
A61K35/12
G01N33/569 E
G01N33/531 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542502
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 CN2022071382
(87)【国際公開番号】W WO2022148480
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】202110033695.3
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523263555
【氏名又は名称】星濟生物(蘇州)有限公司
【氏名又は名称原語表記】STARMAB BIOLOGICS (SUZHOU) CO., LTD
(71)【出願人】
【識別番号】523332574
【氏名又は名称】星濟生物(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】STARMAB BIOLOGICS (SHANGHAI) CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安 毛 毛
(72)【発明者】
【氏名】邱 熙 然
(72)【発明者】
【氏名】陳 思 敏
(72)【発明者】
【氏名】郭 詩 雨
(72)【発明者】
【氏名】李 博 華
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
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4B065AA94Y
4B065AB01
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4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC32
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC371
4C084ZC372
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA25
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC23
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB35
4C087ZC37
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本出願は、生物医薬分野に関し、黄色ブドウ球菌α毒素に特異的に結合し、その生物学的活性を中和することができる、単離された抗原結合たんぱく質およびその誘導たんぱく質を開示する。本出願は、黄色ブドウ球菌感染症の治療および/または予防の分野における、上記の単離された抗原結合たんぱく質およびその誘導たんぱく質の応用も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗原結合たんぱく質であって、HCDR3を含み、前記HCDR3はSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 26に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、HCDR2を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 52またはSEQ ID NO: 27に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項3】
請求項2に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記HCDR2はSEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 15に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、HCDR1を含み、前記HCDR1はSEQ ID NO: 53またはSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項5】
請求項4に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記HCDR1はSEQ ID NO: 3またはSEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、前記HCDR1はSEQ ID NO: 53またはSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 52またはSEQ ID NO: 27に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 26に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項7】
請求項1-6のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、前記HCDR1はSEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 16およびSEQ ID NO: 28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 15およびSEQ ID NO: 27のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO: 26のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項8】
請求項1-7のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、下記いずれか1つの群から選ばれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み:
1)前記HCDR1はSEQ ID NO: 3に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 1に示されるアミノ酸配列を含み;
2)前記HCDR1はSEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 15に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 14に示されるアミノ酸配列を含み;および
3)前記HCDR1はSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 27に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 26に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項9】
請求項4-8のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、H-FR1を含み、前記H-FR1のC末端が前記HCDR1のN末端と直接または間接的に結合し、且つ前記H-FR1はSEQ ID NO: 54に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項10】
請求項9に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記H-FR1はSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項11】
請求項4-10のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、H-FR2を含み、前記H-FR2は前記HCDR1とHCDR2の間に位置し、且つ前記H-FR2はSEQ ID NO: 55またはSEQ ID NO: 56に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項12】
請求項11に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記H-FR2はSEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 30およびSEQ ID NO: 34のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項13】
請求項2-12のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、H-FR3を含み、前記H-FR3は前記HCDR2と前記HCDR3の間に位置し、且つ前記H-FR3はSEQ ID NO: 57またはSEQ ID NO: 58に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項14】
請求項13に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記H-FR3はSEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 31およびSEQ ID NO: 35のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項15】
請求項1-14のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、H-FR4を含み、前記H-FR4のN末端が前記HCDR3のC末端と結合し、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 59に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項16】
請求項15に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記H-FR4はSEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 32およびSEQ ID NO: 36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項17】
請求項1-16のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、H-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み、前記H-FR1はSEQ ID NO: 54に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 55またはSEQ ID NO: 56に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 57またはSEQ ID NO: 58に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 59に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項18】
請求項1-17のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、H-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み、前記H-FR1はSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 30およびSEQ ID NO: 34のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 31およびSEQ ID NO: 35のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 32およびSEQ ID NO: 36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項19】
請求項1-18のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、下記いずれか1つの群から選ばれるH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み:
1)前記H-FR1はSEQ ID NO: 4に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 5に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 6に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 7に示されるアミノ酸配列を含み;
2)前記H-FR1はSEQ ID NO: 8に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 9に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 10に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 11に示されるアミノ酸配列を含み;
3)前記H-FR1はSEQ ID NO: 17に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 18に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 19に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 20に示されるアミノ酸配列を含み;
4)前記H-FR1はSEQ ID NO: 8に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 21に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 22に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 23に示されるアミノ酸配列を含み;
5)前記H-FR1はSEQ ID NO: 29に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 30に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 31に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 32に示されるアミノ酸配列を含み;および
6)前記H-FR1はSEQ ID NO: 33に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 30に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 35に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 36に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項20】
請求項1-19のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、VHを含み、前記VHはSEQ ID NO: 60またはSEQ ID NO: 61に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項21】
請求項20に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記VHはSEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 37およびSEQ ID NO: 38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項22】
請求項1-21のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、VHHを含む。
【請求項23】
請求項22に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記VHHはSEQ ID NO: 60またはSEQ ID NO: 61に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項24】
請求項22-23のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記VHHはSEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 37およびSEQ ID NO: 38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項25】
請求項1-24のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、抗体重鎖定常領域を含む。
【請求項26】
請求項25に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記抗体重鎖定常領域はヒトIgG定常領域から由来する。
【請求項27】
請求項25-26のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記抗体重鎖定常領域はヒトIgG1定常領域から由来する。
【請求項28】
請求項25-27のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記抗体重鎖定常領域はSEQ ID NO: 39に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項29】
請求項1-28のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、SEQ ID NO: 62、SEQ ID NO: 63、SEQ ID NO: 64、SEQ ID NO: 68、SEQ ID NO: 69およびSEQ ID NO: 70のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項30】
請求項1-29のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、抗体又はその抗原結合断片を含む。
【請求項31】
請求項30に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記抗原結合断片はFab、Fab’、Fv断片、Bs-Fv、F(ab’)
2、F(ab)
2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含む。
【請求項32】
請求項30-31のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全ヒト化抗体から選ばれる1種または複数種である。
【請求項33】
請求項1-32のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、黄色ブドウ球菌α毒素に特異的に結合できる。
【請求項34】
請求項1-33のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、黄色ブドウ球菌α毒素の生物学的活性を中和できる。
【請求項35】
請求項1-34のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、疾患及び/または症状およびその合併症を予防及び/または治療できる。
【請求項36】
請求項35に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記疾患及び/または症状およびその合併症は黄色ブドウ球菌α毒素により引き起こされ、または媒介される。
【請求項37】
請求項35-36のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質において、前記疾患及び/または症状およびその合併症は菌血症および/または敗血症を含む。
【請求項38】
ポリペプチド分子において、請求項1-37のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質を含む。
【請求項39】
請求項38に記載のポリペプチド分子において、融合たんぱく質を含む。
【請求項40】
請求項38-39のいずれか1項に記載のポリペプチド分子において、2つ以上の請求項1-37のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質と、2つ以上の請求項1-37のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質および請求項25-28のいずれか1項に記載の抗体重鎖定常領域からなる融合たんぱく質とを含む。
【請求項41】
請求項38-40のいずれか1項に記載のポリペプチド分子において、SEQ ID NO: 65、SEQ ID NO: 66およびSEQ ID NO: 67のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項42】
請求項1-37のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質を含む、免疫複合体。
【請求項43】
請求項1-37のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質または請求項38-41のいずれか1項に記載のポリペプチド分子をコードする、核酸分子。
【請求項44】
請求項43に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項45】
請求項43に記載の核酸分子または請求項44に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項46】
請求項1-37のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質、請求項38-41のいずれか1項に記載のポリペプチド分子、請求項42に記載の免疫複合体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載のベクターおよび/または請求項45に記載の細胞、および任意選択の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項47】
請求項1-37のいずれか一項記載の単離された抗原結合たんぱく質を調製する方法であって、前記抗原結合たんぱく質を発現する条件下で、請求項45に記載の細胞を培養することを含む、方法。
【請求項48】
請求項1-37のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質、請求項38-41のいずれか1項に記載のポリペプチド分子、請求項42に記載の免疫複合体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載のベクター、請求項45に記載の細胞および/または請求項46に記載の医薬組成物の、疾患および/または症状およびその合併症を予防および/または治療するための薬物の製造における、応用。
【請求項49】
請求項48に記載の応用において、前記疾患および/または症状及びその合併症は黄色ブドウ球菌により引き起こされ、または媒介される。
【請求項50】
請求項48-49のいずれか1項に記載の応用、前記疾患および/または症状及びその合併症には敗血症および/または菌血症が含まれる。
【請求項51】
請求項1-37のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質、請求項38-41のいずれか1項に記載のポリペプチド分子、請求項42に記載の免疫複合体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載のベクター、請求項45に記載の細胞および/または請求項46に記載の医薬組成物は、単独でまたは他の薬物と組み合わせて使用される。
【請求項52】
試料における黄色ブドウ球菌α毒素の検出方法において、請求項1-37のいずれか1項に記載の的単離された抗原結合たんぱく質、請求項38-41のいずれか1項に記載の的ポリペプチド分子、請求項42に記載の免疫複合体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載のベクター、請求項45に記載の細胞および/または請求項46に記載の医薬組成物を投与することを含む。
【請求項53】
試料における黄色ブドウ球菌α毒素を検出する試薬または試薬キットにおいて、請求項1-37のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質、請求項38-41のいずれか1項に記載のポリペプチド分子、請求項42に記載の免疫複合体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載のベクター、請求項45に記載の細胞および/または請求項46に記載の医薬組成物を含む。
【請求項54】
請求項1-37のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質、請求項38-41のいずれか1項に記載のポリペプチド分子、請求項42に記載の免疫複合体、請求項43に記載の核酸分子、請求項44に記載のベクター、請求項45に記載の細胞および/または請求項46に記載の医薬組成物の、試料における黄色ブドウ球菌α毒素の存在および/または含量を検出する試薬キットの製造における、応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、生物医薬分野に関し、具体的には黄色ブドウ球菌のα毒素を標的とした抗原結合たんぱく質に関する
【背景技術】
【0002】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、ブドウ球菌属に属し、重要なグラム陽性病原菌であり、市中呼吸器感染症、皮膚および軟部組織感染を引き起こし、院内の人工呼吸器関連肺炎、手術および各種侵襲的操作(例えば気管切開、静脈カテーテル挿入など)後の各種感染を引き起こすこともある。2019年の中国薬剤耐性監視ネットワーク(http://www.carss.cn/)のデータによると、黄色ブドウ球菌の臨床検出率が全病原菌の中で4位にランクされ、G+病原菌の検出率では1位にランクされている。抗菌薬の継続的な開発と大量の適用により、黄色ブドウ球菌は絶えず変異し、薬剤耐性現象はますます深刻になっている。
【0003】
α毒素は、黄色ブドウ球菌によって放出されるもっとも主要な外毒素であり、そのうち、α毒素(alpha hemolysis,Hla)は、その発病過程において最も重要な役割を果たしている。α毒素は黄色ブドウ球菌のHLA遺伝子によってコードされる分泌毒素たんぱく質であり、ほぼすべての菌株で発現され、黄色ブドウ球菌の病原性に影響を与える最も重要な毒性因子である。α毒素は、宿主細胞膜におけるコレステロールおよびスフィンゴミエリンと結合して七量体を形成し、その後折り畳まれて直径約1.5nmのβバレル膜貫通構造を形成し、宿主の赤血球および他の組織細胞を急速に溶解する。その同時、α毒素は感染組織内の白血球を破壊し、宿主が感染した黄色ブドウ球菌を除去するのを邪魔することもできる。宿主の免疫システムと抗生物質の作用で、感染部位での黄色ブドウ球菌は大量のα毒素を放出し、それらが血液に入ると、宿主の免疫システムを活性化して過剰な炎症因子を放出し、敗血症を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、抗生物質に対する黄色ブドウ球菌の耐性の増加により、黄色ブドウ球菌感染症の問題が複雑になっており、黄色ブドウ球菌感染症の臨床治療においては、低分子抗感染症薬では毒素による身体損傷や敗血症をうまく治療できないため、黄色ブドウ球菌感染症を診断および治療するための効果的な代替方法を開発することが急務となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本出願が黄色ブドウ球菌α毒素を標的とした単離された抗原結合たんぱく質を提供し、1)黄色ブドウ球菌α毒素に特異的結合でき;2)黄色ブドウ球菌α毒素の生物学的活性を中和でき;3)黄色ブドウ球菌感染により引き起こされる疾患や症状に対して薬力学的効果があり;4)生物的機能が現在開示されている黄色ブドウ球菌抗体分子より優れることから選ばれる1種または複数種の性質を有する。本出願はさらに、前記単離された抗原結合たんぱく質をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、前記抗原結合たんぱく質を含む免疫複合体、医薬組成物、前記単離された抗原結合たんぱく質を調製する方法および本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質の応用を提供する。
【0006】
一方、本発明は単離された抗原結合たんぱく質であって、HCDR3を含み、前記HCDR3はSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 26に示されるアミノ酸配列を含む。
【0007】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はHCDR2を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 52またはSEQ ID NO: 27に示されるアミノ酸配列を含む。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記HCDR2はSEQ ID NO: 2またはSEQ ID NO: 15に示されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はHCDR1を含み、前記HCDR1はSEQ ID NO: 53またはSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記HCDR1はSEQ ID NO: 3またはSEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、前記HCDR1はSEQ ID NO: 53またはSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 52またはSEQ ID NO: 27に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 26に示されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、前記HCDR1はSEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 16およびSEQ ID NO: 28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 15およびSEQ ID NO: 27のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO: 26のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質は下記いずれか1つの群から選ばれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み:
1)前記HCDR1はSEQ ID NO: 3に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 1に示されるアミノ酸配列を含み;
2)前記HCDR1はSEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 15に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 14に示されるアミノ酸配列を含み;および
3)前記HCDR1はSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 27に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 26に示されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR1を含み、前記H-FR1のC末端が前記HCDR1のN末端と直接または間接的に結合し、且つ前記H-FR1はSEQ ID NO: 54に示されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記H-FR1はSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR2を含み、前記H-FR2は前記HCDR1とHCDR2の間に位置し、且つ前記H-FR2はSEQ ID NO: 55またはSEQ ID NO: 56に示されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
幾つかの実施形態において、前記H-FR2はSEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 30およびSEQ ID NO: 34のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR3を含み、前記H-FR3は前記HCDR2と前記HCDR3の間に位置し、且つ前記H-FR3はSEQ ID NO: 57またはSEQ ID NO: 58に示されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
幾つかの実施形態において、前記H-FR3はSEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 31およびSEQ ID NO: 35のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR4を含み、前記H-FR4のN末端が前記HCDR3のC末端と結合し、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 59に示されるアミノ酸配列を含む。
【0021】
幾つかの実施形態において、前記H-FR4はSEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 32およびSEQ ID NO: 36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み、前記H-FR1はSEQ ID NO: 54に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 55またはSEQ ID NO: 56に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 57またはSEQ ID NO: 58に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 59に示されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み、前記H-FR1はSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 30およびSEQ ID NO: 34のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 31およびSEQ ID NO: 35のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 32およびSEQ ID NO: 36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質は下記いずれか1つの群から選ばれるH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み:
1)前記H-FR1はSEQ ID NO: 4に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 5に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 6に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 7に示されるアミノ酸配列を含み;
2)前記H-FR1はSEQ ID NO: 8に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 9に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 10に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 11に示されるアミノ酸配列を含み;
3)前記H-FR1はSEQ ID NO: 17に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 18に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 19に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 20に示されるアミノ酸配列を含み;
4)前記H-FR1はSEQ ID NO: 8に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 21に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 22に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 23に示されるアミノ酸配列を含み;
5)前記H-FR1はSEQ ID NO: 29に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 30に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 31に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 32に示されるアミノ酸配列を含み;および
6)前記H-FR1はSEQ ID NO: 33に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR2はSEQ ID NO: 30に示されるアミノ酸配列を含み、前記H-FR3はSEQ ID NO: 35に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 36に示されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はVHを含み、前記VHはSEQ ID NO: 60またはSEQ ID NO: 61に示されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
幾つかの実施形態において、前記VHはSEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 37およびSEQ ID NO: 38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はVHHを含む。
幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 60またはSEQ ID NO: 61に示されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 37およびSEQ ID NO: 38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質は抗体重鎖定常領域を含む。
【0030】
幾つかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域はヒトIgG定常領域から由来する。
幾つかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域はヒトIgG1定常領域から由来する。
【0031】
幾つかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域はSEQ ID NO: 39に示されるアミノ酸配列を含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 62、SEQ ID NO: 63、SEQ ID NO: 64、SEQ ID NO: 68、SEQ ID NO: 69およびSEQ ID NO: 70のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質は抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0034】
幾つかの実施形態において、前記抗原結合断片はFab、Fab’、Fv断片、Bs-Fv,F(ab’)2、F(ab)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含む。
【0035】
幾つかの実施形態において、前記抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および完全ヒト化抗体から選ばれる1種または複数種である。
【0036】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質は黄色ブドウ球菌α毒素に特異的に結合できる。
【0037】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質は黄色ブドウ球菌α毒素の生物学的活性を中和できる。
【0038】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質は疾患及び/または症状およびその合併症を予防及び/または治療できる。
【0039】
幾つかの実施形態において、前記疾患及び/または症状およびその合併症は黄色ブドウ球菌α毒素により引き起こされ、または媒介される。
【0040】
幾つかの実施形態において、前記疾患及び/または症状およびその合併症は菌血症および/または敗血症を含む。
【0041】
一方、本出願はさらに、前記単離された抗原結合たんぱく質を含むポリペプチド分子を提供する。
【0042】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド分子は融合たんぱく質を含む。
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド分子は2つ以上の前記単離された抗原結合たんぱく質および抗体重鎖定常領域とともに形成された融合たんぱく質を含む。
【0043】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド分子はSEQ ID NO: 65、SEQ ID NO: 66およびSEQ ID NO: 67のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0044】
一方、本出願はさらに、前記単離された抗原結合たんぱく質を含む免疫複合体を提供する。
【0045】
一方、本出願はさらに、前記単離された抗原結合たんぱく質または前記ポリペプチド分子をコードする核酸分子を提供する。
【0046】
一方、本出願はさらに、前記核酸分子を含むベクターを提供する。
一方、本出願はさらに、前記核酸分子または前記ベクターを含む細胞を提供する。
【0047】
一方、本出願はさらに、前記単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクターおよび/または前記細胞,および任意選択の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0048】
一方、本出願はさらに、前記単離された抗原結合たんぱく質を調製する方法であって、前記抗原結合たんぱく質を発現する条件下で、前記細胞を培養することを含む方法を提供する。
【0049】
一方、本出願はさらに、前記単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物の、疾患および/または症状およびその合併症を予防および/または治療するための薬物の製造における応用を提供する。
【0050】
幾つかの実施形態において、前記疾患及び/または症状およびその合併症は黄色ブドウ球菌α毒素により引き起こされ、または媒介される。
【0051】
幾つかの実施形態において、前記疾患及び/または症状およびその合併症は敗血症および/または菌血症を含む。
【0052】
一方、本出願に記載の抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物は、単独でまたは他の分子と組み合わせて使用される。
【0053】
一方、本出願はさらに、試料における黄色ブドウ球菌α毒素の検出方法であって、前記単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物を使用することを含む検出方法を提供する。
【0054】
一方、本出願はさらに、試料における黄色ブドウ球菌α毒素を検出する試薬または試薬キットであって、前記単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物を含む試薬または試薬キットを提供する。
【0055】
一方、本出願はさらに、前記単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記免疫複合体、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞および/または前記医薬組成物の、試料における黄色ブドウ球菌α毒素の存在および/または含量を検出する試薬キットの製造における応用を提供する。
【0056】
当業者は、以下の詳細な説明から本出願の他の態様および利点を容易に認識することができる。以下の詳細な説明では、本出願の例示的な実施形態のみを示し、説明する。当業者に理解されるように、本出願の内容により、当業者は、本出願が関連する発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された具体的な実施形態に変更を加えることができる。相応に、本出願の図面および明細書の説明は、単なる例示的なものであり、限定的なものではない。
【0057】
図面の簡単な説明
本出願に関連する本発明の具体的な特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。本出願に関連する発明の特徴および利点は、以下に詳細に説明する例示的な実施形態および添付の図面を参照することにより、よりよく理解することができる。図面に対する簡単な説明は以下のようである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、ELISA測定により黄色ブドウ球菌α毒素たんぱく質に対する本出願に記載の抗原結合たんぱく質の結合能力の検出を示す。
【
図2】
図2は、組換え黄色ブドウ球菌α毒素の溶血活性に対する本出願に記載の抗原結合たんぱく質の中和効果を示す。
【
図3】
図3は、黄色ブドウ球菌α毒素によるマウス敗血症に対する本出願に記載の抗原結合たんぱく質の治療効果を示す。
【
図4】
図4は、黄色ブドウ球菌α毒素によるマウス菌血症に対する本出願に記載の抗原結合たんぱく質の治療効果を示す。
【
図5】
図5は、ELISA測定により黄色ブドウ球菌α毒素たんぱく質に対する本出願に記載の抗原結合たんぱく質の結合能力の検出を示す。
【
図6】
図6は、組換え黄色ブドウ球菌α毒素の溶血活性に対する本出願に記載の抗原結合たんぱく質の中和効果を示す。
【
図7】
図7は、黄色ブドウ球菌α毒素によるマウス敗血症に対する本出願に記載の抗原結合たんぱく質の治療効果を示す。
【
図8】
図8は、黄色ブドウ球菌α毒素によるマウス菌血症に対する本出願に記載の抗原結合たんぱく質の治療効果を示す。
【
図9】
図9は、黄色ブドウ球菌α毒素の溶血活性に対する本出願に記載の四価抗原結合たんぱく質の中和効果を示す。
【
図10】
図10は、黄色ブドウ球菌α毒素の溶血活性に対する本出願に記載の四価抗原結合たんぱく質の中和効果を示す。
【
図11】
図11は、黄色ブドウ球菌α毒素の溶血活性に対する本出願に記載の四価抗原結合たんぱく質の中和効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
発明を実施するための形態
以下、特定の具体的な実施例に基づき本出願の実施形態を説明する。当業者が本明細書が開示している内容により本発明の利点および効果を容易に理解できる。
【0060】
用語定義
本願において、用語「黄色ブドウ球菌」は、「Staphylococcus aureus」、「S. aureus」と互換可能に使用でき、これらは、一般にグラム陽性菌に属する。本出願において、当該用語は、あらゆる種類および形態の黄色ブドウ球菌およびその変異体、相同体、および機能的に活性な断片を網羅する。
【0061】
本出願において、用語「黄色ブドウ球菌α毒素」は「α毒素」、「α溶血素」、「溶血素A」、「Hla」、「溶血素A毒素」とも呼ばれ、黄色ブドウ球菌が産生する孔形成たんぱく質溶血素を一般に指す。本出願において、前記黄色ブドウ球菌のα毒素には、野生型黄色ブドウ球菌α毒素およびその変異体、誘導体、相同体、組換えたんぱく質、モノマー、オリゴマーなどの形態が含まれ得る。前記オリゴマー形態には、α毒素の単量体とは異なる形態、例えば二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体など、またはヘプタマープレポア形態のα毒素などの多量体形態が含まれ得る。
【0062】
本出願において、用語「単離された」は、一般に、人工的手段によって自然状態で得られたことを意味する。自然界に特定の「分離された」物質または成分が現れる場合、それが存在する自然環境が変化したか、または自然環境から物質が分離されたか、またはその両方である可能性がある。例えば、ある動物生体に、単離されていないポリヌクレオチドまたはポリペプチドが天然に存在し、この天然に存在する状態で単離された高純度の同一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されたと呼ばれる。用語「単離された」は、人工または合成物質の混合物、または物質の活性に影響を与えない他の不純物質の存在を排除しない。
【0063】
本出願において、用語「単離された抗原結合たんぱく質」は、通常、天然に存在する状態から離れた、抗原結合能力を有するたんぱく質を指す。当該「単離された抗原結合たんぱく質」は、抗原結合部分、および任意選択で、抗原結合部分が抗原への結合を促進する立体構造を取ることを可能にするフレームワークまたはフレームワーク部分を含み得る。抗原結合たんぱく質は、例えば、抗体由来のたんぱく質フレームワーク領域(FR)、あるいは移植されたCDRまたはCDR誘導体を有する代替たんぱく質フレームワーク領域または人工フレームワーク領域を含み得る。このようなフレームワークには、例えば抗原結合たんぱく質の三次元構造を安定化させるために変異が導入された抗体由来のフレームワーク領域、及び例えば生体適合性ポリマーを含む完全に合成されたフレームワーク領域が含まれるが、これらに限定されない。例えばKorndorferら、2003,Proteins:Structure,Function,andBioinformatics,53(1):121-129(2003); Roqueら, Biotechnol. Prog. 20:639-654(2004)を参照する。抗原結合たんぱく質の実例として、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、単鎖抗体、二機能抗体、三機能抗体、四機能抗体、Fab、Fab’、Fv断片、Bs-Fv、F(ab’)2、F(ab)2、scFv、di-scFv、dAb、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、またはIgG4抗体およびその断片を含むが、これらに限定されない。
【0064】
本出願において、用語「CDR」は「相補性決定領域」とも呼ばれ、通常、抗体の可変ドメイン内の領域を指し、その配列が高度可変であり、および/または構造的に定義されたループを形成する。通常、抗体は6つのCDR を含み、VHに3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、VLに3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)である。幾つかの実施形態において、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の非存在下でも、その機能が正常かつ安定であり得る。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993); Sheriff et al, Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照する。抗体CDRは、CCG、Kabat、AbM、Chothia、IMGT、Kabat/Chothiaの総合的な考慮など、さまざまなコーディングシステムによって決定できる。これらコーディングシステムは本分野で周知されるもので、具体的にはhttp://www.bioinf.org.uk/abs/index.html#kabatnumを参照する。例えば、前記抗原結合たんぱく質のアミノ酸配列の番号付けは、IMGT番号付けスキーム(IMGT, the international ImMunoGeneTics information system@imgt.cines.fr;http://imgt.cines.fr;Lefrancら, 1999, Nucleic Acids Res. 27: 209-212;Ruizら、2000 Nucleic Acids Res. 28: 219-221;Lefrancら、 2001, Nucleic Acids Res. 29:207-209;Lefrancら、2003, Nucleic Acids Res. 31: 307-310;Lefrancら、2005, DevComp Immunol 29: 185-203)により決定できる。例えば、前記抗原結合たんぱく質のCDRはKabat番号付けシステムにより決定できる(例えば、Kabat EA &Wu TT(1971)Ann NY AcadSci 190:382-391とKabat EA et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest, FifthEdition,U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.91-3242を参照する)。
【0065】
本出願において、用語「FR」は一般に、フレームワーク領域として知られる、抗体可変ドメインのより高度に保存された部分を指す。通常、天然重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFR領域を含み、つまりVHに4つ(H-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4)およびVLに4つ(L-FR1、L-FR2、L-FR3およびL-FR4)を含む。
【0066】
本出願において、用語「可変ドメイン」と「可変領域」互換可能に使用でき、通常、抗体重鎖および/または軽鎖の一部を指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ「VH」と「VL」と称することができる(またはそれぞれ「VH」と「VL」と称する)。これらのドメインは通常、抗体の最も変化が大きい部分(同じタイプのその他の抗体に対して)であり、且つ抗原結合部位を含む。
【0067】
本出願において、用語「可変」は一般に、抗体間で可変ドメインの特定のセグメントが配列において実質的に異なる可能性があることを指す。可変ドメインは、抗原結合を媒介して、特定抗体の、その特定抗原に対する特異性を決定する。しかし、可変性は可変ドメイン全体に均等に分布しているわけではない。通常、軽鎖および重鎖可変ドメインの超可変領域(CDRまたはHVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインにおけるより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFR領域を含み、通常、βプリーツシート構造を採用し、環状連結を形成すると共に場合によってβプリーツシート構造の一部を形成する。各鎖におけるCDRは、FR領域により非常に近い距離で保持されており、且つ他方の鎖におけるCDRと一緒に抗体の抗原結合部位の形成を促進する(Kabat et al, Sequences of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照する)。
【0068】
本出願において、用語「抗体」は通常、免疫グロブリンまたはその断片またはその誘導体を指し、インビトロまたはインビボでの産生を問わず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。当該用語には、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多重特異性、非特異性、ヒト化、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異および移植抗体が含まれるが、これらに限定されない。「無傷抗体」など、用語「無傷」によって修飾されない限り、本発明の目的のために、用語「抗体」はまた、例えば、Fab、F(ab')2、Fv、scFv、Fd、dAbなどの抗体断片、および抗原結合機能を保持する(例えば、黄色ブドウ球菌α毒素に特異的に結合する)他の抗体断片を含む。通常、そのような断片には抗原結合ドメインが含まれる。基本的な4本鎖抗体ユニットは2本の同じ軽(L)鎖と2本の同じ重(H)鎖により構成されるヘテロ四量体糖たんぱく質である。IgM抗体は5の基本的なヘテロ四量体ユニット及びJ鎖と呼ばれるその他のポリペプチドからなり、且つ10の抗原結合部位を含み、一方、IgA抗体はJ 鎖と結合し重合して多価集合体を形成できる2-5の基本的な4鎖ユニットを含む。IgGの場合、4本鎖ユニットは通常約150,000ダルトンである。各L鎖はジスルフィド共有結合によってH鎖に結合され、2つのH鎖はH鎖のアイソタイプに依存する1つ以上のジスルフィド結合によって互いに連結される。各HとL鎖は規則的な間隔の鎖間ジスルフィド架橋を更に有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を持ち、α及びγ鎖に対してそれぞれ3つの定常ドメイン(CH)、μとεアイソタイプに対して4つのCHドメインが続く各L鎖はN末端に可変ドメイン(VL)を有し、その他端に定常ドメインを有する。VLはVHと対応し、CLは重鎖の第1定常ドメイン(CH1)に対応する。特定のアミノ酸残基は軽鎖と重鎖可変ドメインとの間に界面が形成されると考えられる。VHとVLが対となり、1つの抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性について、例えば、Basic and Clinical Immunology, 8th Edition, Daniel P. Sties, Abba I. Terr and Tristram G. Parsolw (eds), Appleton & Lange, Norwalk, Conn., 1994,71ページ及び第6章を参照する。任意の脊椎動物種由来のL鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κおよびλと呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの1つに分類することができる。免疫グロブリンは、重鎖(CH)定常ドメインのアミノ酸配列によって、異なるクラス又はアイソタイプに割り当てることができる。現在、免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5種類があり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。
【0069】
本出願において、用語「抗原結合断片」は通常、抗原(例えば、黄色ブドウ球菌α毒素)に特異的に結合する能力を有する1つ以上の断片を指す。本出願において、前記抗原結合断片はFab、Fab’、F(ab)2、Fv断片、F(ab’)2、scFv、di-scFvおよび/またはdAbを含み得る。
【0070】
本出願において、用語「Fab」は一般に抗体の抗原結合断片を指す。上述したように、パパインで無傷の抗体を消化できる。抗体がパパインで消化されてから、2つの同一の抗原結合断片、つまり「Fab」断片と残りの「Fc」断片(つまりFc領域で上記と同様)が産生される。Fab断片は、完全なL鎖及び重鎖の可変領域、並びに当該H鎖(VH)の第1定常領域(CH1)から構成され得る。
【0071】
本出願において、用語「Fab′断片」は通常、ヒトモノクローナル抗体の一価の抗原結合断片を指し、当該断片はFab断片よりわずかに大きい。例えば、Fab′断片はすべての軽鎖、すべての重鎖の可変ドメイン、および重鎖のすべてまたは一部の第1および第2の定常ドメインを含み得る。例えば、Fab′断片は重鎖の220-330のアミノ酸残基一部またはすべてを含み得る。
【0072】
本出願において、用語「F(ab')2」は通常、無傷抗体のペプシン消化によって生成される抗体断片を指す。F(ab')2断片には、ジスルフィド結合によって結合される2つのFab断片と、ヒンジ領域の一部が含まれる。F(ab')2断片は二価の抗原結合活性を有し、抗原を架橋することができる。
【0073】
本出願において、用語「Fv断片」は通常、ヒトモノクローナル抗体の一価の抗原結合断片を指し、すべてまたは一部の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、且つ重鎖定常領域および軽鎖定常領域を欠いている。重鎖可変領域と軽鎖可変領域は例えばCDRを含む。例えば、Fv断片には、重鎖および軽鎖の約110のアミノ酸のすべてまたは一部のアミノ末端可変領域が含まれる。
【0074】
本出願において、用語「scFv」は通常、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片と重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片とを含む融合たんぱく質を指し、ただし、前記軽鎖と重鎖可変領域は(例えば、短い可撓性ポリペプチドリンカーなど合成されたリンカーを介して)隣接しており、単鎖ポリペプチドとして発現することができ、且つ前記scFvは、それが由来する無傷の抗体の特異性を保持する。特に断りのない限り、本明細書で使用されるように、scFvは、任意の順序で(例えば、ポリペプチドのN末端及びC末端に対して)前記VL及びVH可変領域を有してもよく、scFvは、VL-リンカー-VHを含んでもよく、またはVH-リンカー-VLを含んでもよい。
【0075】
本出願において、用語「dAb」は通常、VHドメイン、VLドメインを有し、またはVHドメインあるいはVLドメインを有する抗原結合断片であり、例えばWardら(Nature,1989Oct 12;341(6242):544-6)、Holtら,Trends Biotechnol.,2003,21(11):484-490;および例えばWO 06/030220、WO 06/003388およびDomantisLtdの他の開示された特許出願を参照する。用語「dAb」は通常sdAbを含む。用語「sdAb」は通常単一ドメイン抗体を指す。単一ドメイン抗体は通常、抗体重鎖可変領域(VHドメイン)または抗体軽鎖可変領域(VL)のみからなる抗体断片を指す。
【0076】
本出願において、用語「VHH」は通常、ラクダ科(ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカなど)の重鎖抗体由来の可変抗原結合ドメインに関する(Nguyen V.K.ら,2000,The EMBO Journal,19,921-930;Muyldermans S.,2001,J Biotechnol.,74,277-302および概説、Vanlandschoot P.ら,2011,Antiviral Research 92,389-407を参照)。VHHはナノボディ(Nanobody)(Nb)とも称する。
【0077】
本出願において、用語「モノクローナル抗体」は通常、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。一般的に、モノクローナル抗体は単一の抗原部位に対して高度の特異性を有する。且つ、通常のポリクローナル抗体製剤(普通、異なる決定基に対応する異なる抗体を有する)とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原における単一の決定基に対応する。これらの特異性の他に、モノクローナル抗体の優位性は、ハイブリドーマの培養によって合成でき、その他の免疫グロブリンに汚染されないことである。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団により得られた抗体の特徴を示し、任意の特定方法による抗体の産生を要請すると解釈するものではない。例えば、本出願で使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞内で産生することができ、または組換えDNA法によって産生することができる。
【0078】
本出願において、用語「キメラ抗体」は、一般に、その可変領域が1つの種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体を指す。通常、可変領域はげっ歯類などの実験動物の抗体(「親抗体」)に由来し、定常領域はヒト抗体に由来し、故に得られるキメラ抗体が親(例えばアルパカ由来の)抗体と比べ、ヒト個体において有害免疫応答を誘発する可能性が低下する。
【0079】
本出願において、用語「ヒト化抗体」は通常、非ヒト抗体(例えばアルパカ抗体)のCDR領域以外のアミノ酸の一部または全部が、ヒト免疫グロブリンに由来する対応のアミノ酸で置換された抗体を指す。CDR領域では、特定の抗原に結合する抗体の能力を保持している限り、アミノ酸の小さな付加、欠失、挿入、置換または修飾も許容されるヒト化抗体は任意選択で、ヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部を含む。「ヒト化抗体」は、元の抗体と類似する抗原特異性を保持する。非ヒト(例えば、アルパカ)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最低限に含むキメラ抗体であり得る。場合によって、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)のCDR領域残基を、望ましい特性、親和性、および/または能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)(例えばアルパカ、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類動物)のCDR領域の残基で置換することができる。場合によって、ヒト免疫グロブリンのFR領域残基は、対応する非ヒト残基で置換することができる。さらに、ヒト化抗体は、受容体抗体またはドナー抗体には存在しないアミノ酸修飾を含むことができる。これらの修飾は、結合親和性などの抗体の性能をさらに改善するために行うことができる。
【0080】
用語「完全ヒト化抗体」は通常ヒト免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。マウス、マウス細胞、またはマウス細胞由来のハイブリドーマで産生される場合、完全ヒト化抗体はマウス糖鎖を含むことがある。同様に、「マウス抗体」または「ラット抗体」は、それぞれマウスまたはラットの免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、ヒトにおいて、ヒト免疫グロブリン生殖系列配列を有するトランスジェニック動物において、ファージディスプレイまたはその他の分子生物学的方法によって作製され得る。抗体を作製するために使用できる例示的な技術は、米国特許6,150,584、6,458,592、6,420,140に記載されている。ライブラリを使用するなど、他の技術は当技術分野で周知されている。
【0081】
本出願において、用語「ポリペプチド分子」、「ポリペプチド」、「ペプチド」は互換可能に使用でき、一般にアミノ酸残基のポリマーを指す。用語「融合たんぱく質」は、一般に、共有結合した少なくとも2つの部分を有するポリペプチドを指す。その各部分は異なる特性を持つポリペプチドであり得る。この特性は、インビトロ活性またはインビボ活性などの生物学的特性であり得る。この特性は、例えば標的分子への結合、反応の触媒作用などの単純な化学的または物理的特性でもあり得る。これら2つの部分は、単一のペプチド結合またはペプチドリンカーによって直接結合できる。
【0082】
本出願において、用語「核酸分子」は通常、単離された形態の任意の長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、あるいは自然環境から単離されたか人工合成された類似体を指す。
【0083】
本出願において、用語「ベクター」は通常、あるたんぱく質をコードするポリヌクレオチドを挿入し、たんぱく質を発現させることができる核酸送達ツールを指す。ベクターは、宿主細胞を形質転換、形質導入、またはトランスフェクトすることにより、それが担持する遺伝物質エレメントを宿主細胞内で発現させることができる。例示すると、ベクターには、プラスミド;ファージミド;コスミド;例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来の人工染色体(PAC)のような人工染色体;例えばλファージ又はM13ファージのようなファージ、及び動物ウイルス等が含まれる。ベクターとして用いられる動物ウイルスの種類には、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えばSV40)がある。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択要素及びレポーター遺伝子が含まれる発現を制御する複数の要素を含み得る。また、ベクターは、複製開始部位を含んでいてもよい。ベクターは、例えばウイルス粒子、リポソーム又はタンパク膜のような細胞への進入を助ける成分を更に含む可能性があるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
本出願において、用語「細胞」は、一般に、本発明に記載の核酸分子または本発明に記載のベクターを含む、被験者のプラスミドまたはベクターのレシピエントであり得る、またはすでにであった単一細胞、細胞株または細胞培養物を指す。細胞は、単一細胞の子孫を含み得る。自然、偶発的、または意図的な突然変異により、子孫は元の親細胞と(全DNA相補体の形態またはゲノムのいずれかにおいて)必ずしも完全に同一であるとは限らない。細胞は、インビトロで、本出願のベクターでトランスフェクトさせた細胞を含み得る。細胞は、細菌細胞(例えば大腸菌)、酵母細胞、またはCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、LNCAP細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、COS-1細胞、NS0細胞など、他の真核細胞であり得る。
【0085】
本出願において、用語「免疫複合体」は、一般に、前記他の試薬(例えば、化学療法剤、放射性元素、細胞増殖抑制剤および細胞毒性剤)が前記抗体又はその抗原結合断片と(例えば、結合分子によって共有結合する)コンジュゲートして形成された複合体を指し、当該複合体は、前記抗体又はその抗原結合断片を標的細胞上の抗原に特異的に結合させることにより、前記他の試薬を標的細胞(例えば、腫瘍細胞)に送達することができる。
【0086】
本出願において、用語「医薬組成物」は通常、疾患または症状を予防/治療するための組成物を指す。前記医薬組成物は、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質、本出願に記載の核酸分子、本出願に記載のベクターおよび/または本出願に記載の細胞、および任意選択の薬学的に許容されるアジュバントを含み得る。また、前記医薬組成物はさらに1種または複数種の(薬学的に有効な)担体、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤および/または防腐剤の適切な製剤を含んでもよい。好ましくは、組成物の許容される成分は、使用される用量および濃度において受容者に対して無毒である。本発明の医薬組成物は液体組成物、凍結組成物、および凍結乾燥組成物を含むが、これらに限定されない。
【0087】
本出願において、用語「薬学的に許容される担体」は、一般に、使用される用量および濃度において、曝露される細胞または哺乳動物に対して無毒である薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含む。生理学的に許容される担体には、例えば、緩衝剤、抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、たんぱく質、親水性ポリマー、アミノ酸、単糖類、二糖類および他の炭水化物、キレート剤、糖アルコール、ナトリウムなどの塩形成対イオンおよび/または非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0088】
本出願において、用語「特異的に結合する」または「特異的」は、一般に、標的と抗体との結合などの測定可能で再現性のある相互作用を指し、生体分子を含む分子の不均質集団の存在下で標的の存在を決定できる。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易に、および/またはより長い期間、その標的に結合する抗体であり得る。幾つかの実施形態において、抗体は、異なる種のたんぱく質間で保存されているたんぱく質上のエピトープに特異的に結合する。幾つかの実施形態において、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、これは必須ではない。
【0089】
本出願において、用語「被験者」は一般に、ヒト、または猫、犬、馬、豚、牛、羊、ウサギ、マウス、ラット、またはサルを含むがこれらに限定されない非ヒト動物を指す。
【0090】
本出願において、係るたんぱく質、ポリペプチドおよび/またはアミノ酸配列は、少なくとも当該たんぱく質またはポリペプチドと同じまたは類似の機能を有する変異体または相同体を含むものと理解されるべきである。
【0091】
本出願において、前記変異体は、例えば、前記たんぱく質および/または前記ポリペプチド(例えば、黄色ブドウ球菌α毒素に特異的に結合する抗体またはその断片)のアミノ酸配列において、1つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失、または付加されることによって得られるたんぱく質またはポリペプチドであり得る。例えば、前記機能的変異体は、少なくとも1、例えば1-30、1-20または1-10、更に例えば1、2、3、4または5のアミノ酸の置換、欠失および/または插入によってアミノ酸改変を有するたんぱく質またはポリペプチドを含み得る。前記機能的変異体は、改変(例えば、置換、欠失、または付加)前の前記たんぱく質または前記ポリペプチドの生物学的特性を実質的に保持できる。例えば、前記機能的変異体は改変前の前記たんぱく質または前記ポリペプチドの少なくとも60%、70%、80%、90%、または100%の生物学的活性(例えば抗原結合能力)を保持できる。例えば、前記置換は保存的置換であり得る。
【0092】
本出願において、前記相同体は前記たんぱく質および/または前記ポリペプチド(例えば、黄色ブドウ球菌α毒素に特異的に結合する抗体またはその断片)のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または更に高い)の配列相同性を有するたんぱく質またはポリペプチドであり得る。
【0093】
本出願において、前記相同性は通常、2つ以上の配列間の近似性、類似性、または関連性を指す。「配列相同性パーセント」の計算方法として、比較ウィンドウ内でアラインメントされる2つの配列を比較し、同じ核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同じアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet )が両方の配列に存在する位置の数を決定することにより、一致する位置の数を得、一致する位置の数を比較ウィンドウ内の全位置の数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、結果に100を乗算して、配列相同性パーセントを算出する。配列相同性パーセントを決定するためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用するなど、当技術分野で知られている様々な方法で実現することができる。当業者は、比較される配列の全長または標的配列の領域内で最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントする適切なパラメータを決定することができる。前記相同性はFASTAとBLASTにより測定してもよい。FASTAアルゴリズムの説明は、W.R.PearsonとD.JLipmanの「生物学的配列比較のための改善されたツール」米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.),85:2444-2448,1988;およびD.JLipmanとW.R.Pearson的「迅速かつ高感度のたんぱく質類似性検索」,Science,227:1435-1441,1989を参照する。BLASTアルゴリズムの説明は、S.Altschul、W.Gish、W.Miller、E.W.MyersとD.Lipmanの「基本的な局所アライメント検索ツール」、分子生物学ジャーナル215:403-410,1990を参照する。
【0094】
本出願において、用語「含む」は通常、「備える」、「含有」「包含」を意味する。場合によって、「である」、「からなる」を意味する。
【0095】
本出願において、用語「約」一般に、指定値の上下0.5%-10%の範囲で変化することを意味、例えば指定値の上下0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%の範囲で変化する。
【0096】
発明の詳細な説明
単離された抗原結合たんぱく質
抗体のCDRは相補性決定領域とも称し、可変領域の一部である。当該領域のアミノ酸残基は、抗原または抗原のエピトープと接触することがある。抗体CDRは、CCG、Kabat、Chothia、IMGT、AbM、Kabat/Chothiaの総合的な考慮など、さまざまなコーディングシステムによって決定できる。これらコーディングシステムは本分野で周知されるもので、具体的にはhttp://www.bioinf.org.uk/abs/index.html#kabatnumを参照する。当業者は、抗体の配列および構造により、異なるコーディングシステムを使用して、CDR領域を決定することができる。コーディングシステムにより、CDR領域は異なることがある。本出願において、CDRは、任意のCDR分割方法に従って分割されたCDR配列を包含し;また、1つ以上のアミノ酸が置換、欠失、及び/又は付加された前記CDRのアミノ酸配列の変異体も包含される。例えば1-30、1-20または1-10,さらに例えば1、2、3、4、5、6、7、8または9のアミノ酸が置換、欠失および/または插入され;さらにその相同体も含み、前記相同体は前記CDRのアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%または更に高い)の配列相同性を有するアミノ酸配列であり得る。幾つかの実施形態において、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質はChothiaコーディングシステムにより定義される。
【0097】
一方、本出願はHCDR3を含む単離された抗原結合たんぱく質を提供する。幾つかの実施形態において、前記HCDR3はSEQ ID NO: 1に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記HCDR3はSEQ ID NO: 14に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記HCDR3はSEQ ID NO: 26に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0098】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はさらにHCDR2を含み得る。幾つかの実施形態において、前記HCDR2はSEQ ID NO: 52に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0099】
幾つかの実施形態において、前記HCDR2はSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記HCDR2はSEQ ID NO: 15に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記HCDR2はSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0100】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はさらにHCDR1を含み得る。幾つかの実施形態において、前記HCDR1はSEQ ID NO: 53に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0101】
幾つかの実施形態において、前記HCDR1はSEQ ID NO: 3に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記HCDR1はSEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記HCDR1はSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0102】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はさらにHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み得る。例えば、前記HCDR1はSEQ ID NO: 53またはSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2はSEQ ID NO: 52またはSEQ ID NO: 27に示されるアミノ酸配列を含み得、且つHCDR3はSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 14またはSEQ ID NO: 26に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0103】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、前記HCDR1はSEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 16およびSEQ ID NO: 28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 15およびSEQ ID NO: 27のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO: 26のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0104】
例えば、前記HCDR1はSEQ ID NO: 3に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 1に示されるアミノ酸配列を含む。
【0105】
例えば、前記HCDR1はSEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 15に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 14に示されるアミノ酸配列を含む。
【0106】
例えば、前記HCDR1はSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO: 27に示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3はSEQ ID NO: 26に示されるアミノ酸配列を含む。
【0107】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 37およびSEQ ID NO: 38に示されるアミノ酸配列から選ばれる少なくとも1つのCDRを含み得、前記CDRは任意方法で分割して得られたCDRを含み得、下記表に示される分割方法で得られたCDRに限定されない。いずれの方法で分割されたCDRは、配列がSEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 37またはSEQ ID NO: 38と同一であれば、すべて本出願の請求項の保護範囲にある。
【0108】
例えば、表1に示される方法でSEQ ID NO: 12またはSEQ ID NO: 13に示されるアミノ酸配列を分割し、本出願による単離された抗原結合たんぱく質は下記表に示されるCDRを含み得る。
【0109】
【0110】
例えば表2に示される方法でSEQ ID NO: 24またはSEQ ID NO: 25に示されるアミノ酸配列を分割し、本出願による単離された抗原結合たんぱく質は下記表に示されるCDRを含み得る。
【0111】
【0112】
例えば表3に示される方法でSEQ ID NO: 37またはSEQ ID NO: 38に示されるアミノ酸配列を分割し、本出願による単離された抗原結合たんぱく質は下記表に示されるCDRを含み得る。
【0113】
【0114】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はVHHを含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHのCDR3はSEQ ID NO: 1に示されるアミノ酸配列を含み得、前記VHHのCDR2はSEQ ID NO: 2に示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記VHHのCDR1はSEQ ID NO: 3に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHのCDR3はSEQ ID NO: 14に示されるアミノ酸配列を含み得、前記VHHのCDR2はSEQ ID NO: 15に示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記VHHのCDR1はSEQ ID NO: 16に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHのCDR3はSEQ ID NO: 26に示されるアミノ酸配列を含み得、前記VHHのCDR2はSEQ ID NO: 27に示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記VHHのCDR1はSEQ ID NO: 28に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0115】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR1を含み得、前記H-FR1のC末端は前記HCDR1のN末端と直接または間接的に結合できる。幾つかの実施形態において、前記H-FR1はSEQ ID NO: 54に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0116】
幾つかの実施形態において、前記H-FR1はSEQ ID NO: 4に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR1はSEQ ID NO: 8に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR1はSEQ ID NO: 17に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR1はSEQ ID NO: 29に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR1はSEQ ID NO: 33に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0117】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR2を含み得、前記H-FR2は前記HCDR1と前記HCDR2の間に位置できる。幾つかの実施形態において、前記H-FR2はSEQ ID NO: 55に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR2はSEQ ID NO: 56に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0118】
幾つかの実施形態において、前記H-FR2はSEQ ID NO: 5に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR2はSEQ ID NO: 9に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR2はSEQ ID NO: 18に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR2はSEQ ID NO: 21に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR2はSEQ ID NO: 30に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR2はSEQ ID NO: 34に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0119】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR3含み得、前記H-FR3は前記HCDR2と前記HCDR3の間に位置できる。幾つかの実施形態において、前記H-FR3はSEQ ID NO: 57に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR3はSEQ ID NO: 58に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0120】
幾つかの実施形態において、前記H-FR3はSEQ ID NO: 6に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR3はSEQ ID NO: 10に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR3はSEQ ID NO: 19に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR3はSEQ ID NO: 22に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR3はSEQ ID NO: 31に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR3はSEQ ID NO: 35に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0121】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR4を含み得、前記H-FR4のN末端は前記HCDR3のC末端と結合できる。幾つかの実施形態において、前記H-FR4はSEQ ID NO: 59に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0122】
幾つかの実施形態において、前記H-FR4はSEQ ID NO: 7に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR4はSEQ ID NO: 11に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR4はSEQ ID NO: 20に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR4はSEQ ID NO: 23に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR4はSEQ ID NO: 32に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記H-FR4はSEQ ID NO: 36に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0123】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み得る。例えば、前記H-FR1はSEQ ID NO: 54に示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR2はSEQ ID NO: 55またはSEQ ID NO: 56に示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR3はSEQ ID NO: 57またはSEQ ID NO: 58に示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 59に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0124】
幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み得、前記H-FR1はSEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR2はSEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 30およびSEQ ID NO: 34のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み得、前記H-FR3はSEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 31およびSEQ ID NO: 35のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記H-FR4はSEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 32およびSEQ ID NO: 36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0125】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質のH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4はそれぞれ順次SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 6およびSEQ ID NO: 7に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質のH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4はそれぞれ順次SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 10およびSEQ ID NO: 11に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質のH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4はそれぞれ順次SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19およびSEQ ID NO: 20に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質のH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4はそれぞれ順次SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 22およびSEQ ID NO: 23に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質のH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4はそれぞれ順次SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 31およびSEQ ID NO: 32に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質のH-FR1、H-FR2、H-FR3およびH-FR4はそれぞれ順次SEQ ID NO: 33、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 35およびSEQ ID NO: 36に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0126】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はVHを含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHはSEQ ID NO: 60に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHはSEQ ID NO: 61に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0127】
幾つかの実施形態において、前記VHはSEQ ID NO: 12に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHはSEQ ID NO: 13に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHはSEQ ID NO: 24に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHはSEQ ID NO: 25に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHはSEQ ID NO: 37に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHはSEQ ID NO: 38に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0128】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はVHHを含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 60に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 61に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0129】
幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 12に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 13に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 24に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 25に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 37に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 38に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0130】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質は抗体重鎖定常領域を含み得る。幾つかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域は、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEを含む任意の免疫グロブリンの重鎖定常領域から由来することができる。例えば、前記抗体重鎖定常領域はヒトIgG重鎖定常領域から由来できる。幾つかの実施形態において、前記免疫グロブリンの重鎖定常領域はその変異体を含む。幾つかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域はヒトIgG1-4のいずれかの重鎖定常領域から由来できる。幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質はヒトIgG1重鎖定常領域から由来できる。例えば、前記ヒトIgG1重鎖定常領域はSEQ ID NO: 39に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 62に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 63に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 64に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 68に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 69に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 70に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0131】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質は抗体またはその抗原結合断片を含み得る。
【0132】
幾つかの実施形態において、前記抗原結合断片はFab、Fab’、Fv断片、F(ab’)2、F(ab)2、scFv、bs-Fv、di-scFvおよび/またはdAbを含み得る。
【0133】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質はVHHを含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 60に示されるアミノ酸配列を含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 61に示されるアミノ酸配列含み得る。
【0134】
幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 12に示されるアミノ酸配列含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 13に示されるアミノ酸配列含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 24に示されるアミノ酸配列含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 25に示されるアミノ酸配列含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 37に示されるアミノ酸配列含み得る。幾つかの実施形態において、前記VHHはSEQ ID NO: 38に示されるアミノ酸配列含み得る。
【0135】
本出願において、前記抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体および/または完全ヒト化抗体を含み得る。
【0136】
例えば、前記ヒト化抗原結合たんぱく質のVHはSEQ ID NO: 13に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記ヒト化抗原結合たんぱく質のVHはSEQ ID NO: 25に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記ヒト化抗原結合たんぱく質のVHはSEQ ID NO: 38に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0137】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質は四価抗原結合たんぱく質および/または四価抗原結合たんぱく質Fc融合たんぱく質を含み得る。例えば、抗α毒素抗原結合たんぱく質可変領域をコードする2つの配列(例えば、本出願に記載される2つのhuA3分子もしくは2つのhuG1分子、または1つのhuA3分子および1つのhuG1分子;例えば、本出願に記載される2つのA3分子または2つのG1分子または1つのA3分子および1つのG1分子)を直列接続して、ヒトIgG1 Fc断片と融合させることができる。例えば、1つ目のVHHのC末端を2つ目のVHHのN末端に接続し、2つ目のVHHのC末端をFcフラグメントのN末端に接続して、二価のFc融合たんぱく質を得ることができ、二価のFc融合たんぱく質をプラスミドにサブクローニングし、組換え発現のために細胞にトランスフェクトすると、本出願に記載される四価の抗原結合たんぱく質を得ることができる。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はhuA3-huG1-Fc抗原結合たんぱく質を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はhuA3-huA3-Fc抗原結合たんぱく質を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はhuG1-huG1-Fc抗原結合たんぱく質を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 65に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 66に示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば、前記単離された抗原結合たんぱく質はSEQ ID NO: 67に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0138】
なお、本出願に記載される単離された抗原結合たんぱく質は、1つまたは複数の保存的配列修飾を有する重鎖および/または軽鎖配列を含み得る。「保存的配列修飾」とは、顕著に抗体の結合特性に影響または変化を与えないアミノ酸修飾を指す。このような保存的修飾は、アミノ酸の置換、付加および欠失を含む。本分野で既知の標準技術によって、例えば部位特異的変異やPCRを介する誘導変異により、修飾を本発明の抗体に導入してもよい。保存的なアミノ酸の置換は、類似の側鎖を有するアミノ酸残基でアミノ酸残基を置き換える置換である。本分野では、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーがすでに周知されているこれらのファミリーは、アルカリ性側鎖を含有するアミノ酸(たとえば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(たとえば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(たとえばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(たとえばチロシン、 フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。幾つかの実施形態において、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質のCDR領域における1つまたは複数のアミノ酸残基は、ほかの同じ側鎖ファミリーのアミノ酸残基で置き換えることができる。当業者に周知されるように、いくつかの保存的配列修飾が抗原結合を破壊することはない。例えば、Brummell et al., (1993) Biochem 32:1180-8; de Wildt et al., (1997) Prot. Eng. 10:835-41; Komissarov et al., (1997) J. Biol. Chem. 272:26864-26870; Hall et al., (1992) J. Immunol. 149:1605-12; Kelley and O'Connell (1993) Biochem.32:6862-35; Adib-Conquy et al., (1998) Int. Immunol.10:341-6 and Beers et al., (2000) Clin. Can. Res. 6:2835-43を参照する。
【0139】
本明細書に記載の黄色ブドウ球菌α毒素抗原結合たんぱく質は、当技術分野で知られている様々な検出方法によって同定、スクリーニング、または特性づけることができる。
【0140】
例えば、本出願の抗原結合たんぱく質または融合たんぱく質の抗原結合活性は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、イムノブロット(例えば、ウェスタンブロット)、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、免疫組織化学、免疫蛍光などの公知の方法によって試験することができる。
【0141】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質は黄色ブドウ球菌α毒素に特異的に結合できる。幾つかの実施形態において、前記単離された抗原結合たんぱく質と黄色ブドウ球菌α毒素との結合はELISA法により検出できる。例えば、本出願に記載の抗原結合たんぱく質は約0.010μg/mL以下、約0.009μg/mL以下、約0.008μg/mL以下、約0.007μg/mL以下、約0.006μg/mL以下、約0.005μg/mL以下、約0.004μg/mL以下、約0.003μg/mL以下、約0.002μg/mL以下および約0.001μg/mL以下のEC50値で黄色ブドウ球菌α毒素と結合できる。
【0142】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質は黄色ブドウ球菌α毒素の生物学的活性を中和できる。例えば、ウサギ赤血球を黄色ブドウ球菌α毒素と抗原結合たんぱく質に加え、マイクロプレートリーダーを用いて抗溶血活性を測定することができる。例えば、本出願に記載の抗原結合たんぱく質は約200ng以下、約100ng以下、約75ng以下、約60ng以下、約50ng以下、約45ng以下、約40ng以下、約35ng以下の量で18.75ngの組換え黄色ブドウ球菌α毒素を完全に中和することができる。
【0143】
本出願において、前記単離された抗原結合たんぱく質は、疾患及び/または症状およびその合併症を予防及び/または治療できる。幾つかの実施形態において、前記疾患及び/または症状およびその合併症は黄色ブドウ球菌α毒素により引き起こされ、または媒介できる。幾つかの実施形態において、前記疾患及び/または症状およびその合併症は敗血症および/または菌血症を含み得る。
【0144】
ポリペプチド分子、核酸分子、ベクター、細胞、免疫複合体および医薬組成物
一方、本出願は、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質を含み得るポリペプチド分子を提供する。
【0145】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド分子は融合たんぱく質を含み得る。幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド分子は融合たんぱく質であり得る。
【0146】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド分子は2つ以上の本出願のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質と、2つ以上の本出願のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質および抗体重鎖定常領域からなる融合たんぱく質とを含む。
【0147】
例えば、前記ポリペプチド分子は2つの抗原結合ドメインおよび抗体重鎖定常領域を含み得る。そのうち、第1抗原結合ドメインは本出願のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質を含み得、第2抗原結合ドメインは本出願のいずれか1項に記載の単離された抗原結合たんぱく質を含み得る。
【0148】
幾つかの実施形態において、前記ポリペプチド分子はSEQ ID NO: 65、SEQ ID NO: 66およびSEQ ID NO: 67のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0149】
一方、本出願は、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質をコードすることができる、単離された核酸分子を提供する。例えば、それが、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、インビトロで増幅された、(ii)例えばクローニングによって、遺伝子組換えで生成された、(iii)例えば酵素開裂とゲル電気泳動分画によって精製された、または(iv)例えば化学的合成などの合成によって産生または合成されたものである。
【0150】
一方、本出願は、本出願に記載の核酸分子を含み得るベクターを提供する。また、前記ベクターは、例えば適切な宿主細胞において適切な条件下で当該ベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などの他の遺伝子も含み得る。さらに、前記ベクターは、適切な宿主においてコード領域の適切な発現を可能にする発現制御要素も含み得る。このような制御要素は当業者に周知であり、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子転写またはmRNA翻訳などを調節する他の制御要素が含まれ得る。前記ベクターは、宿主細胞を形質転換、形質導入、またはトランスフェクトすることにより、それが担持する遺伝物質エレメントを宿主細胞内で発現させることができる。前記ベクターには、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、または例えば遺伝子工学において一般的に使用される他のベクターが含まれ得る。例えば、前記ベクターは発現ベクターである。また、前記ベクターは、例えばウイルス粒子、リポソーム又はタンパク膜のような細胞への進入を助ける成分を更に含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0151】
一方、本出願は、本出願に記載の核酸分子または本出願に記載のベクターを含み得る細胞を提供する。幾つかの実施形態において、各種またはそれぞれの宿主細胞は1つまたは1種の本出願に記載の核酸分子またはベクターを含み得る。幾つかの実施形態において、各種またはそれぞれの宿主細胞は複数(例えば2つ以上)または複数種(例えば2種以上)の本出願に記載の核酸分子またはベクターを含み得る。例えば、本出願に記載のベクターを、例えば、植物から由来する細胞、真菌または酵母細胞などの真核細胞など、前記宿主細胞に導入することができる。幾つかの実施形態において、前記細胞は細菌細胞(例えば大腸菌)、酵母細胞、またはCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、LNCAP細胞、HeLa細胞、293T細胞、COS-1細胞、SP2/0細胞、NS0細胞または骨髄腫細胞など、他の真核細胞であり得る。例えばエレクトロポレーション法、lipofectineトランスフェクト、lipofectaminトランスフェクト等、本領域で周知の方法で、本出願に記載のベクターを前記宿主細胞に導入することができる。
【0152】
一方、本出願は、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質を含み得る免疫複合体を提供する。
【0153】
幾つかの実施形態において、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質またはその断片を、化学療法剤、毒素、免疫療法剤、イメージングプローブ、分光プローブなどの別の薬剤に結合させることができる。当該結合は、1 つまたは複数の共有結合または非共有結合による相互作用を介することができ、キレート化を含むことができる。当分野で知られている様々なリンカーを使用して、免疫複合体を形成することができる。さらに、免疫複合体は、免疫複合体をコードするポリヌクレオチドによって発現され得る融合たんぱく質の形態で提供することができる。前記免疫複合体はさらに例えば抗体-薬物複合体(ADC)を含むこともできる。適切な薬物には、細胞毒素、アルキル化剤、DNA副溝結合分子、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤、熱ショックたんぱく質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質および抗有糸分裂剤を含み得る。ADC において、抗体と治療剤は、ペプチドリンカー、ジスルフィドリンカー、またはヒドラゾンリンカーなどを切断可能なリンカーによって架橋できる。
【0154】
一方、本出願はさらに、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質、本出願に記載のポリペプチド分子、本出願に記載の免疫複合体、本出願に記載の核酸分子、本出願に記載のベクターおよび/または本出願に記載の細胞、および任意選択の薬学的に許容される担体を含み得る医薬組成物を提供する。
【0155】
幾つかの実施形態において、前記医薬組成物はさらに1種または複数種の(薬学的に有効な)アジュバント、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤および/または防腐剤の適切な製剤を含んでもよい。好ましくは、組成物の許容される成分は、使用される用量および濃度において受容者に対して無毒である。本発明の医薬組成物は液体組成物、凍結組成物、および凍結乾燥組成物を含むが、これらに限定されない。
【0156】
幾つかの実施形態において、前記医薬組成物は2つ以上の活性化合物を含み得、前記活性化合物は一般に、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する活性化合物である。このような薬物の種類および有効量は、例えば、製剤に存在する拮抗剤の量および種類、ならびに被験者の臨床パラメータに依存できる。
【0157】
幾つかの実施形態において、前記薬学的に許容される担体には、薬物投与に適合するあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、等張化剤および吸収遅延剤が含まれ、一般に安全で無毒である。
【0158】
幾つかの実施形態において、前記医薬組成物は、非経口、経皮、腔内、動脈内、髄腔内および/または鼻腔内投与、または組織への直接注射を含み得る。例えば、前記医薬組成物は、注入または注射によって患者または被験者に投与することができる。幾つかの実施形態において、前記医薬組成物の投与は、例えば静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所または皮内など、様々な方法で行うことができる幾つかの実施形態において、前記医薬組成物は中断することなく投与することができる。中断のない(または連続的な)投与は、例えばWO2015/036583に記載されているように、患者に装着される小型ポンプシステムにより実現され、患者の体内に流入する治療剤を測定することができる。
【0159】
調製方法
一方、本出願は、前記単離された抗原結合たんぱく質を調製する方法を提供する。前記方法は、前記抗原結合たんぱく質を発現する条件下で、本出願に記載の宿主細胞を培養することを含む。例えば、当業者に周知される適切な培地、適切な温度および適切な培養時間などの方法を利用できる。
【0160】
モノクローナル抗体を産生するのに適するいかなる方法を、本出願の抗原結合たんぱく質を産生するために使用することができる。例えば、結合したまたは天然に存在する黄色ブドウ球菌α毒素またはその断片を用いて動物に免疫を起こらせることができる。アジュバント、免疫刺激剤、免疫強化のための反復接種を含む適切な免疫接種方法を使用することができ、1つまたは2つ以上の方法を使用することができる。幾つかの実施形態において、免疫化されたアルパカ末梢血リンパ球を抽出することで、細胞の核酸断片を抽出してベクターにクローニングし、ファージ表面ディスプレイシステムにより黄色ブドウ球菌α毒素に対する単離された抗原結合たんぱく質をスクリーニングし、濃縮する。
【0161】
任意適切な形態の黄色ブドウ球菌α毒素も免疫原(抗原)として、黄色ブドウ球菌α毒素に特異的な非ヒト抗体を産生し、抗体の生物学的活性をスクリーニングするために使用することができる。例えば、誘発免疫原は、天然のホモ二量体、または単一/複数のエピトープ含有ペプチドを含む全長黄色ブドウ球菌α毒素であり得る。免疫原は、単独で使用することもできるし、当分野で公知の1種または複数種の免疫原性増強剤と組み合わせて使用することもできる。
【0162】
方法および応用
一方、本出願は前記単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞、前記免疫複合体および/または前記医薬組成物の、疾患および/または症状およびその合併症を予防および/または治療するための薬物の製造における応用を提供する。
【0163】
一方、本出願はさらに、必要とする被験者に本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞、前記免疫複合体および/または前記医薬組成物を投与することを含む、疾患および/または症状およびその合併症を予防および/または治療する方法を提供する。
【0164】
本出願において、疾患および/または症状を予防および/または治療するために、前記単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞、前記免疫複合体および/または前記医薬組成物は、単独でまたは他の薬物と組み合わせて使用できる。幾つかの実施形態において、前記他の薬物は抗菌作用を有する現在知られている任意の薬物であり得る。前記疾患及び/または症状は黄色ブドウ球菌感染または他の感染により引き起こされる関連疾患であり得る。
【0165】
本出願において、前記投与は、例えば静脈内、腫瘍内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所または皮内など、様々な方法で行うことができる。
【0166】
一方、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞、前記免疫複合体および/または前記医薬組成物は、疾患および/または症状の予防および/または治療に使用できる。
【0167】
本出願において、前記疾患及び/または症状は黄色ブドウ球菌α毒素により引き起こされ、または媒介できる。
【0168】
本出願において、前記疾患及び/または症状は黄色ブドウ球菌により引き起こされ、または媒介される疾患及び/または症状の合併症であり得る。
【0169】
本出願において、前記疾患及び/または症状およびその合併症には、細菌感染症が含まれる。
【0170】
本出願において、前記疾患及び/または症状およびその合併症は菌血症および/または敗血症を含む。
【0171】
幾つかの実施形態において、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞、前記免疫複合体および/または前記医薬組成物は、単独でまたは他の薬物と組み合わせて使用できる。
【0172】
一方、本出願はさらに、試料における黄色ブドウ球菌α毒素の検出方法であって、前記単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞、前記免疫複合体および/または前記医薬組成物を投与することを含む検出方法を提供する。
【0173】
幾つかの実施形態において、前記試料における黄色ブドウ球菌α毒素の検出方法はインビトロ方法であり得る。例えば、本出願に記載の単離された抗原結合たんぱく質をエクスビボ試料と接触させ、試料における黄色ブドウ球菌α毒素の存在および/または含量を検出する。幾つかの実施形態において、前記試料における黄色ブドウ球菌α毒素の検出方法は治療目的ではない。幾つかの実施形態において、前記試料における黄色ブドウ球菌α毒素の検出方法は診断方法ではない。
【0174】
一方、本出願はさらに、試料における黄色ブドウ球菌α毒素を検出する試薬または試薬キットであって、前記単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞、前記免疫複合体および/または前記医薬組成物を含む試薬または試薬キットを提供する。
【0175】
一方、本出願はさらに、前記単離された抗原結合たんぱく質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞、前記免疫複合体および/または前記医薬組成物の、試料における黄色ブドウ球菌α毒素の存在および/または含量を検出する試薬キットの製造における応用を提供する。
【0176】
以下の実施例は、理論に限定されるものではなく、単に本出願の抗原結合たんぱく質、その調製方法及び応用等を説明するためのものであり、本出願の発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0177】
実施例1 アルパカを免疫するための黄色ブドウ球菌α毒素の組換え発現
調製した黄色ブドウ球菌α毒素でアルパカを4回皮下免疫した。免疫プロセスを表4に示す。
【0178】
【0179】
実施例2 黄色ブドウ球菌α毒素抗原結合たんぱく質のライブラリーの構築とスクリーニング
免疫されたアルパカの末梢血リンパ球100mlを採取し、Qigen 社の試薬キットを使用して細胞の総RNAを抽出した。逆転写キット(Qigen)を使用して、RNAをcDNAに逆転写した。PCRにより抗体をコードする可変領域核酸断片を増幅した。制限酵素SfilI(Takara)でPCR産物とクローニングベクターpComb3Xssを酵素切断し、T4リガーゼを用いてクローニングベクターをファージベクターpComb3Xssにライゲーションした。次いで、生成物を大腸菌エレクトロポレーションコンピテント細胞Top10に電気形質転換した。
【0180】
実施例3 黄色ブドウ球菌α毒素抗原結合たんぱく質に対するパニング
α-毒素融合たんぱく質で96ウェルプレートをコーティングし、4℃で一晩保存した。翌日に5%のBSAでブロックし、100 μLのファージを加えた。室温で1h作用させ、PBSTでパニングして非結合ファージを除去した。最後に、トリエチルアミン基でα毒素に特異的に結合したファージを解離させ、対数増殖期にある大腸菌TG1に感染させ、次のスクリーニングのためにファージを生成、精製した。同じスクリーニングプロセスを3-4回繰り返した。これにより、陽性クローンが濃縮され、ファージディスプレイ技術を使用して抗体ライブラリー内のα毒素特異的抗体をスクリーニングするという目的が達成された。
【0181】
実施例4 ファージの酵素結合免疫法(ELISA)による特異的単一の陽性クローンのスクリーニング
得られた黄色ブドウ球菌α毒素結合陽性のファージを大腸菌に感染させてプレートに塗布した。次いで、210の単一コロニーを選択し、それぞれ培養してファージを生成および精製した。α-毒素融合たんぱく質で96ウェルプレートをコーティングし、4℃で一晩保存し、得られた試料ファージ(対照群はブランクファージ)を加え、室温で1時間反応させた。洗浄してから、マウス抗HAタグ抗体を加え、室温で1時間反応させた。洗浄してから、ヤギ抗マウスHRP抗体(北京鼎国生物科技有限公司)を加え、室温で1時間反応させた。洗浄してから、TMB発色液を加え、波長405nmでの吸光度を読み取った。試料ウェルのOD値が対照ウェルのOD値より3倍を超えた場合、陽性クローンウェルとマークした。プラスミドを抽出し、また配列測定のために、陽性クローンウェル内の細菌を100μLのアンピシリンを含むLB液に移して培養した。最後に、抗原結合たんぱく質の配列を得た。
【0182】
そのうち、測定された前記抗原結合たんぱく質の配列は以下のようである。
A3 SEQ ID NO: 12
QVQLVESGGGLVQAGGSLTLSCVASGFTFSRHGMTWVRQAPGKELDYVGEINIPGDDVDYDISVKGRFTISRDNAKNTVYLHMTNLKVEDTATYWCAQAGENMRLVTRRQGTQVTVST
G1 SEQ ID NO: 24
QVQLVESGGDLVQPGGSLTLACEASGFTISSTGMTWVRQAPGKELDWVGDINIPGTDTDYDISVKGRFTISKDHAKNTVYLQMTSLRPEDTAIYYCAKQGANLRQGVQSPGTLVTVSS
F6 SEQ ID NO: 37
QVQLVESGGGLAQPGGSLRLSCEASGSTLDSYTVAWFRQAPGKEREGVSCASRSGASTNYANSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNSLKPEDTGVYYCAAYRNFGNFCVMGRYEYDEWGQGTQVTVSS
ただし、下線部分は、Chothia番号付けスキームを使用して分割されたCDR領域を示す。
【0183】
実施例5 Expi293細胞におけるFc融合抗原結合たんぱく質の発現と精製
配列測定と分析により得られた抗原結合たんぱく質A3、G1およびF6の可変領域コーディング配列をそれぞれヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)のFc断片と融合し、発現ベクターPCDNA3.4にサブクローニングした。Expi293細胞にPEIをトランスフェクトし組換え発現して、7日後に細胞上清を収集し、ProteinA磁気ビーズを使用して精製した。純度95%以上の抗原結合たんぱく質を収集し、A3-Fc抗原結合たんぱく質、G1-Fc抗原結合たんぱく質およびF6-Fc抗原結合たんぱく質を得た。そのうち、A3-Fc抗原結合たんぱく質のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 62に示され、G1-Fc抗原結合たんぱく質のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 63に示され、F6-Fc抗原結合たんぱく質のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 64に示される。
【0184】
実施例6 ELISAによる抗原結合たんぱく質と黄色ブドウ球菌α毒素の結合検出
黄色ブドウ球菌α毒素たんぱく質をPBS緩衝液で1μg/mLに希釈し、ウェルあたり100μLで96ウェルプレート(Thermo)をコーティングし、4℃で一晩インキュベートし、翌日96ウェルプレートを取り出して、PBST(0.5%のPBSを含む)でプレートを洗浄し、毎回1min浸漬した後、残りの水を完全に乾燥させた。5%のBSAを含むPBST 200μLを試料ウェルに加え、37℃で1時間ブロックし、その後プレートをPBSTで洗浄し、ウェル内の水を乾燥させた。被験試料100μLをそれぞれ96ウェルプレートに加え、4℃で一晩インキュベートした。96ウェルプレートを取り出し、PBSTでプレートを洗浄してから、ヤギ抗ヒトIgG二次抗体(thermo,31413,Goat anti-Human IgG Fc Cross-Adsorbed Secondary Antibody,HRP)100μLを各ウェルに添加し、37℃で1hインキュベートした。さらにPBSTで5回洗浄し、100μLの基質溶液(Substrate Solution,Invitrogen)を各ウェルに添加し、37℃で10minインキュベートし、各ウェルに1mol の硫酸50μLを加えて反応を停止させた後、マイクロプレートリーダー(Multiskcin FC,Thermo)で波長450nmでの吸光度を検出した。ヒトIgGを陰性対照とした。
【0185】
A3-Fc抗原結合たんぱく質、G1-Fc抗原結合たんぱく質、F6-Fc抗原結合たんぱく質と黄色ブドウ球菌α毒素の結合検出結果を
図1に示し、結果によると、上記3種類の抗原結合たんぱく質は黄色ブドウ球菌のα毒素に対して強い親和性を有することが判明され、そのうち、A3-Fc抗原結合たんぱく質のEC
50値は0.009μg/mLであり、G1-Fc抗原結合たんぱく質のEC
50値は0.007μg/mLであり、F6-Fc抗原結合たんぱく質のEC
50値は0.003μg/mLである。
【0186】
実施例7 抗原結合たんぱく質による黄色ブドウ球菌α毒素の溶血活性中和評価
AR-301はアリディス・ファーマスーティカルズが開発したα毒素を標的とした完全ヒト型抗体医薬品(Salvecin,tosatoxumab)である。α毒素によるウサギ赤血球溶血モデルを用いて、AR301の、黄色ブドウ球菌α毒素の溶血活性に対する中和作用を評価し、18.75ngの組換え黄色ブドウ球菌α毒素たんぱく質と抗原結合たんぱく質またはAR-301を一定の比率で混合し、96ウェルプレート(Thermo)に加え、37℃で10minインキュベートし、5%のウサギ赤血球を加え、37℃で1hインキュベートした。試料を3000rpmで5min遠心分離し、マイクロプレートリーダー(Multiskcin FC,Thermo)を用いて波長405nmでの吸光度を検出し、抗溶血活性を測定した。
【0187】
上記α毒素によるウサギ赤血球溶血モデルを用いて、黄色ブドウ球菌α毒素に対するA3-Fc抗原結合たんぱく質、G1-Fc抗原結合たんぱく質およびF6-Fc抗原結合たんぱく質の中和作用を検出した結果を
図2に示す。結果によると、18.75ngの組換えα-毒素に対して、50ngのA3-Fc抗原結合たんぱく質(A)、G1-Fc抗原結合たんぱく質(B)、およびF6-Fc抗原結合たんぱく質(C)は完全な中和作用を有し;50ngの対照抗体AR-301は18.75ngの組換え黄色ブドウ球菌α毒素(D)を完全に中和できず、本発明により開示されるA3-Fc抗原結合たんぱく質、G1-Fc抗原結合たんぱく質およびF6-Fc抗原結合たんぱく質の黄色ブドウ球菌α毒素に対する中和効果は、対照抗体AR-301よりも有意に優れている。
【0188】
実施例8 黄色ブドウ球菌α毒素によるマウス敗血症モデルの再現と抗原結合たんぱく質の薬力学的効果の評価
あらかじめC57BL/6マウスに異なる用量の抗原結合たんぱく質を注射し、30min後、2.5μgの黄色ブドウ球菌α毒素組換えたんぱく質を尾静脈に注射し、ヒトIgGを対照として使用した。マウスの生存時間を観察した。
【0189】
黄色ブドウ球菌α毒素によるマウス敗血症モデルを用いて、A3-Fc抗原結合たんぱく質、G1-Fc抗原結合たんぱく質およびF6-Fc抗原結合たんぱく質の治療効果を試験した結果を
図3に示す。結果によると、本出願に記載のA3-Fc抗原結合たんぱく質(187.5μg/kg,A)、G1-Fc抗原結合たんぱく質(125μg/kg,B)およびF6-Fc抗原結合たんぱく質(250μg/kg,C)の3種類の抗原結合たんぱく質は完全な保護作用を有する。
【0190】
実施例9 黄色ブドウ球菌感染によるマウス菌血症モデルの再現と抗原結合たんぱく質の治療効果の評価
黄色ブドウ球菌USA300を-80度の冷蔵庫から活性化し、TSA培地で2世代活性化し、2ml TSBに接種し12h培養した。PBSで3回洗浄してから6×107CFUマウスの尾静脈に感染させた。感染の2h後に抗原結合たんぱく質を注射し、ヒトIgGを対照としてマウスの生存を観察した。
【0191】
黄色ブドウ球菌によるマウス菌血症モデルを用いて、A3-Fc抗原結合たんぱく質とG1-Fc抗原結合たんぱく質おの抗感染薬力学的効果を評価した結果を
図4に示す。結果によると、A3-Fc抗原結合たんぱく質とG1-Fc抗原結合たんぱく質は、黄色ブドウ球菌によるマウス菌血症モデルに対して有意な保護作用を有し、且つ薬力学的効果は対照抗体AR-301より優れている。
【0192】
実施例10 黄色ブドウ球菌α毒素抗原結合たんぱく質のヒト化
NCBIデータベースのアラインメント( https://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)によりラクダ抗体に最も近いヒトgermline配列をテンプレートとして選択し、A3、G1及びF6をヒト化し、抗原結合たんぱく質の翻訳後修飾部位を最適化した。
【0193】
そのうち、得られた抗原結合たんぱく質のヒト化配列は以下のとおりである:
huA3 SEQ ID NO: 13
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSRHGMTWVRQAPGKGLEYVGEINIPGDDVDYDISVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARAGENMRLVTRGQGTLVTVSS
huG1 SEQ ID NO: 25
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTISSTGMTWVRQAPGKGLEWVGDINIPGTDTDYDISVKGRFTISKDHAKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAKQGANLRQGVQGQGTLVTVSS
huF6 SEQ ID NO: 38
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGSTLDSYTVAWVRQAPGKGLEWVSCASRSGASTNYANSVKGRFTISRDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAAYRNFGNFCVMGRYEYDEWGQGTLVTVSS
ただし、下線部分は、Chothia番号付けスキームを使用して分割されたCDR領域を示す。
【0194】
上記抗原結合たんぱく質huA3、huG1およびhuF6の可変領域コーディング配列をそれぞれヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)のFc断片と融合し、発現ベクターPCDNA3.4にサブクローニングした。Expi293細胞にPEIをトランスフェクトし組換え発現して、7日後に細胞上清を収集し、ProteinA磁気ビーズを使用して精製した。純度95%以上の抗原結合たんぱく質を収集し、huA3-Fc抗原結合たんぱく質、huG1-Fc抗原結合たんぱく質およびhuF6-Fc抗原結合たんぱく質を得た。上記各抗原結合たんぱく質のヒト化配列は以下のとおりである:
huA3-Fc SEQ ID NO: 68
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS
GFTFSRHGMTWVRQAPGKGLEYVGEI
NIPGDDVDYDISVKGRFTISRDNAKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARAGENMRLVTRGQGTLVTVSSEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
huG1-Fc SEQ ID NO: 69
QVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTISSTGMTWVRQAPGKGLEWVGDINIPGTDTDYDISVKGRFTISKDHAKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAKQGANLRQGVQGQGTLVTVSSEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
huF6-Fc SEQ ID NO: 70
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGSTLDSYTVAWVRQAPGKGLEWVSCASRSGASTNYANSVKGRFTISRDNSKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCAAYRNFGNFCVMGRYEYDEWGQGTLVTVSSEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
実施例6の方法で上記抗原結合たんぱく質と黄色ブドウ球菌α毒素の結合活性を検出した。実験結果を
図5に示し、上記3種類の抗原結合たんぱく質は黄色ブドウ球菌のα毒素に対して強い親和性を有することが判明され、ただし、huA3-Fc抗原結合たんぱく質のEC
50値は0.005970μg/mLであり、huG1-Fc抗原結合たんぱく質のEC
50値は0.006353μg/mLであり、huF6-Fc抗原結合たんぱく質のEC
50値は0.002721μg/mLである。
【0195】
実施例7のα毒素によるウサギ赤血球溶血モデルを用いて、上記抗原結合たんぱく質の、黄色ブドウ球菌α毒素の溶血活性に対する中和作用を評価した。実験結果は
図6に示され、huA3-Fc,huG1-Fc,huF6-Fcの黄色ブドウ球菌α毒素に対する中和作用はいずれも対照抗体AR-301より有意に優れている。
【0196】
黄色ブドウ球菌α毒素によるマウス敗血症モデルを利用して抗原結合たんぱく質の薬力学的効果を評価した。あらかじめC57BL/6マウスに異なる用量の抗原結合たんぱく質を注射し、30min後、2.5μgの黄色ブドウ球菌α毒素組換えたんぱく質を尾静脈に注射し、ヒトIgGを対照として使用した。マウスの生存時間を観察した。黄色ブドウ球菌α毒素によるマウス敗血症モデルを用いて、huA3-Fc抗原結合たんぱく質とhuG1-Fc抗原結合たんぱく質の治療効果を試験した結果を
図7に示す。結果によると、本出願に記載のA3-Fc抗原結合たんぱく質、G1-Fc抗原結合たんぱく質の3種類の抗原結合たんぱく質の保護作用はいずれもAR301より優れている。
【0197】
黄色ブドウ球菌感染によるマウス菌血症モデルを利用して抗原結合たんぱく質の治療効果の評価した。黄色ブドウ球菌USA300を-80度の冷蔵庫から活性化し、TSA培地で2世代活性化し、2ml TSBに接種し12h培養した。PBSで3回洗浄してから6×10
7CFUマウスの尾静脈に感染させた。感染の2h後に抗原結合たんぱく質を注射し、ヒトIgGを対照としてマウスの生存を観察した。黄色ブドウ球菌によるマウス菌血症モデルを用いて、huA3-Fc抗原結合たんぱく質とhuG1-Fc抗原結合たんぱく質の抗感染薬力学的効果を評価した結果を
図8に示す。結果によると、huA3-Fc抗原結合たんぱく質とhuG1-Fc抗原結合たんぱく質は、黄色ブドウ球菌によるマウス菌血症モデルに対して有意な保護作用を有し、且つ薬力学的効果は対照抗体AR-301より優れている。
【0198】
実施例11 四価黄色ブドウ球菌α毒素抗原結合たんぱく質のFc融合たんぱく質の調製
2つの抗黄色ブドウ球菌α毒素抗原結合たんぱく質配列(例:2つのhuA3分子、2つのhuG1分子、または1つのhuA3分子とhuG1分子)とヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fcをコードする核酸断片を直列接続し、且つpcDNA3.4プラスミドにサブクローニングし、実施例5の方法で発現、精製した。組換え発現して得られた分子は黄色ブドウ球菌α毒素との結合ドメインが4つあるため、四価抗黄色ブドウ球菌α毒素Fc抗原結合たんぱく質と呼ばれる。そのうち、huA3-huA3-Fc抗原結合たんぱく質のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 65に示され、huG1-huG1-Fc融合たんぱく質のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 66に示され、huA3-huG1-Fc抗原結合たんぱく質のアミノ酸配列はSEQ ID NO: 67に示される。
【0199】
実験例7の黄色ブドウ球菌α毒素によるウサギ赤血球溶血モデルを用いて、四価huA3-huG1-Fc抗原結合たんぱく質、huA3-Fc抗原結合たんぱく質およびhuG1-Fc抗原結合たんぱく質の黄色ブドウ球菌α毒素に対する中和作用を試験し、結果を
図9に示す。結果によると、18.75ngの組換え黄色ブドウ球菌α毒素に対して、同じ用量の四価huA3-huG1-Fc融合たんぱく質の中和効果は、二価huA3-Fc抗原結合たんぱく質とhuG1-Fc抗原結合たんぱく質より優れている。
【0200】
実験例7の黄色ブドウ球菌α毒素によるウサギ赤血球溶血モデルを用いて、四価huA3-huA3-Fc抗原結合たんぱく質とhuA3-Fc抗原結合たんぱく質の黄色ブドウ球菌α毒素に対する中和作用を試験し、結果を
図10に示す。結果によると、18.75ngの組換え黄色ブドウ球菌α毒素に対して、同じ用量の四価huA3-huA3-Fc融合たんぱく質の中和効果は、二価huA3-Fc抗原結合たんぱく質より優れている。
【0201】
実験例7の黄色ブドウ球菌α毒素によるウサギ赤血球溶血モデルを用いて、四価huG1-huG1-Fc抗原結合たんぱく質とhuG1-Fc抗原結合たんぱく質の黄色ブドウ球菌α毒素に対する中和作用を試験し、結果を
図11に示す。結果によると、18.75ngの組換え黄色ブドウ球菌α毒素に対して、同じ用量の四価huG1-huG1-Fc融合たんぱく質の中和効果は、huG1-Fc抗原結合たんぱく質より優れている。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0179
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0179】
実施例2 黄色ブドウ球菌α毒素抗原結合たんぱく質のライブラリーの構築とスクリーニング
免疫されたアルパカの末梢血リンパ球100mlを採取し、Qiagen 社の試薬キットを使用して細胞の総RNAを抽出した。逆転写キット(Qiagen)を使用して、RNAをcDNAに逆転写した。PCRにより抗体をコードする可変領域核酸断片を増幅した。制限酵素SfilI(Takara)でPCR産物とクローニングベクターpComb3Xssを酵素切断し、T4リガーゼを用いてクローニングベクターをファージベクターpComb3Xssにライゲーションした。次いで、生成物を大腸菌エレクトロポレーションコンピテント細胞Top10に電気形質転換した。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0180
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0180】
実施例3 黄色ブドウ球菌α毒素抗原結合たんぱく質に対するパニング
α-毒素融合たんぱく質で96ウェルプレートをコーティングし、4℃で一晩保存した。翌日に5%のBSAでブロックし、100 μLのファージを加えた。室温で1h作用させ、PBSTでパニングして非結合ファージを除去した。最後に、トリエチルアミンでα毒素に特異的に結合したファージを解離させ、対数増殖期にある大腸菌TG1に感染させ、次のスクリーニングのためにファージを生成、精製した。同じスクリーニングプロセスを3-4回繰り返した。これにより、陽性クローンが濃縮され、ファージディスプレイ技術を使用して抗体ライブラリー内のα毒素特異的抗体をスクリーニングするという目的が達成された。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0181
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0181】
実施例4 ファージの酵素結合免疫法(ELISA)による特異的単一の陽性クローンのスクリーニング
得られた黄色ブドウ球菌α毒素結合陽性のファージを大腸菌に感染させてプレートに塗布した。次いで、210の単一コロニーを選択し、それぞれ培養してファージを生成および精製した。α-毒素融合たんぱく質で96ウェルプレートをコーティングし、4℃で一晩保存し、得られた試料ファージ(対照群はブランクファージ)を加え、室温で1時間反応させた。洗浄してから、マウス抗HAタグ抗体を加え、室温で1時間反応させた。洗浄してから、ヤギ抗マウスHRP抗体(北京鼎国生物科技有限公司)を加え、室温で1時間反応させた。洗浄してから、TMB発色液を加え、波長450nmでの吸光度を読み取った。試料ウェルのOD値が対照ウェルのOD値より3倍を超えた場合、陽性クローンウェルとマークした。プラスミドを抽出し、また配列測定のために、陽性クローンウェル内の細菌を100μLのアンピシリンを含むLB液に移して培養した。最後に、抗原結合たんぱく質の配列を得た。
【国際調査報告】