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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ポリマーブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20240118BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240118BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08L101/00
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542549
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2022050106
(87)【国際公開番号】W WO2022152598
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】2100551.7
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513224434
【氏名又は名称】フロレオン・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FLOREON TECHNOLOGY LTD
【住所又は居所原語表記】AURA INNOVATION CENTRE,BRIDGEHEAD BUSINESS PARK,MEADOW ROAD HESSLE HU13 0GD UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ギル,アンドルー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AA003
4J002BB053
4J002BB153
4J002BP013
4J002CF003
4J002CF191
4J002CF192
4J002CK023
4J002CL003
4J002FD016
4J200AA04
4J200BA17
4J200EA11
(57)【要約】
具体的には植物性物質のような天然又は持続可能な資源に由来するポリ乳酸(PLA)である脂肪族ポリエステルを(重量パーセントで)主に含むポリマーブレンド及び組成物である。本ブレンド及び組成物は、特定のポリエステルをさらに含む、主として持続可能な資源から同様に由来する更なる成分を含有する。具体的には、本ブレンド及び組成物は、ポリ-LD-ラクチド(PLA)及びポリ-D-ラクチドPDLA)を含む別々の形態のポリラクチドを含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
70から94.5重量%のポリ-DL-ラクチド;
0.5から10重量%のポリ-D-ラクチド;及び
5から20重量%の熱可塑性エラストマー
を含むポリマーブレンド。
【請求項2】
前記ポリ-DL-ラクチド及びポリ-D-ラクチドを合わせて、80重量%以上含む、請求項1記載のポリマーブレンド。
【請求項3】
前記ポリ-DL-ラクチド及びポリ-D-ラクチドが植物又は天然に存在する有機物に由来する、請求項1又は2記載のポリマーブレンド。
【請求項4】
前記ポリ-DL-ラクチドが、重量%でD-ラクチド単位よりもL-ラクチド単位を多く含む、請求項1乃至3のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項5】
前記ポリ-DL-ラクチド及び/又はポリ-D-ラクチドが99%L以上の光学純度を含む、請求項1乃至4のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項6】
前記ポリ-DL-ラクチドが70~90重量%;72~88重量%;74~86重量%又は76~84重量%で含有される、請求項1乃至5のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項7】
前記ポリ-D-ラクチドが1~9重量%;1.5~8.5重量%;2~8重量%又は4~8重量%で含有される、請求項1乃至6のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項8】
前記熱可塑性エラストマーが6~20重量%;8~20重量%;10~20重量%;12~18重量%又は13~17重量%で含有される、請求項1乃至7のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項9】
重量%の残余がポリ-DL-ラクチドである、請求項1乃至8のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項10】
前記熱可塑性エラストマーが
・スチレン系ブロックコポリマー
・ポリオレフィンエラストマー
・加硫剤
・ポリウレタン
・コポリエステル
・ポリアミド
・ポリエーテルブロックアミド(PEBA)
のいずれか1種またはそれらの組み合わせである、請求項1乃至9のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項11】
前記ポリ-DL-ラクチドを75~84重量%;
前記ポリ-D-ラクチドを4~8重量%;そして
前記熱可塑性エラストマーがポリエーテルボックアミドであって12~17重量%
で含む、請求項1乃至10のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項12】
前記ポリ-DL-ラクチドを75~84重量%;
前記ポリ-D-ラクチドを4~8重量%;そして
前記熱可塑性エラストマーがポリエーテルボックアミドであって12~17重量%
からなる、請求項1乃至11のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項記載のポリマーブレンド;及び
・充填剤
・相溶化剤
・加工助剤
のいずれか1種又はそれらの組み合わせ
を含む、ポリマーベースの組成物。
【請求項14】
前記充填剤が
・鉱物系充填剤、
・炭酸カルシウム、
・タルク、
・ガラス繊維、
・ケイ酸塩、
・ケイ酸カルシウム材料
のいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記相溶化剤が
・スチレン-アクリル系多官能性エポキシドオリゴマー
・スチレン-アクリロニトリル-メタクリル酸グリシジルランダムターポリマー
・メタクリル酸グリシジル、
・無水マレイン酸、
・フェニルジイソシアナート
のいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む、請求項13又は14記載の組成物。
【請求項16】
前記加工助剤が
・PTFE粉末、
・アミドワックス、
・米ぬかワックス、
・エチレンビスステアロアミド、
・二酸化ケイ素
のいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む、請求項13から15のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
70から94.5重量%のポリ-DL-ラクチドを、0.5から10重量%のポリ-D-ラクチド及び5から20重量%の熱可塑性エラストマーと混合して、ポリマーブレンドを作成する工程を含む、ポリマーブレンドを製造するための方法。
【請求項18】
前記混合工程に先立ち、前記ポリ-DL-ラクチドのペレットを70から95℃又は80から85℃の範囲の温度で攪拌する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ペレットを攪拌する工程が、当該温度範囲においてドラム内でペレットを回転させる工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
請求項1乃至16のいずれか一項記載のポリマーブレンド又はポリマー組成物を、
・押出し;
・射出成形;
・ブロー成形;
・熱成形
のいずれか1種又はそれらの組み合わせによって加工する工程を含む、
プラスチック製品を作成するためのポリマー加工の方法。
【請求項21】
前記ポリマーブレンド又はポリマー組成物を加工する工程の後に、そのプラスチック製品をアニーリングする工程をさらに含む、請求項20記載のポリマー加工の方法。
【請求項22】
前記アニーリング工程が、前記プラスチック製品を50℃から140℃又は60℃から130℃の範囲の温度で加熱して結晶化を誘導することを含む、請求項21記載のポリマー加工の方法。
【請求項23】
請求項17乃至20のいずれか一項記載の方法を含む、3Dプリンティングに好適なプラスチックフィラメントを作成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーブレンド、及び、排他的ではないものの具体的には、有機材料及び任意選択的には植物ベースの材料に主として由来する、生物分解性で好ましくは堆肥化可能なポリマーブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸(PLA)は、一般に、植物性物質、そして具体的には植物由来の糖のような持続可能な資源から得られる生物分解性且つ堆肥化可能なポリマーと見なされている。COフットプリント、生物分解性及び陸上及び海洋生物に対する一般的な影響を含む多くの態様において、PLAは、より汎用的な石油系ポリマーに比べて、包装、プラスチック製品、繊維などの商業用の用途にとってより魅力的である。特に、PLAは、現在容易に、大量に入手可能であり、そして植物原料から低炭素フットプリントプロセスを経由して商業的且つ持続可能に生産されている。
【0003】
PLAは、熱可塑的な方法、又は元のモノマーへの加水分解的クラッキングのいずれかによりリサイクルされ得る。PLAは、低分子量のオリゴマーへの初期加水分解、次いで、微生物による最終的分解を含む2段階のプロセスを介して、合理的に迅速な生分解を受ける。
【0004】
しかし、室温付近では、PLAは、特に低い衝撃強度及び不十分な靭性を含む多くの不利益となる物理的及び機械的特性を有する。PLAは、硬い物体との衝突のような高い接触力が発生し得る多くの特定の用途に対して、あまりにも脆いと一般的に考えられている。PLAの衝撃強度を増加させるための既存のアプローチは、より高い衝撃強度のポリマーとブレンドすることに焦点を当てており、結果として得られるブレンドは、それぞれの構成物の平均となる耐衝撃性を有する。PLAとポリカーボネートの樹脂組成物は、改良された流動特性、衝撃強度及び耐熱性を達成した。しかし、ポリカーボネートは一般的に石油由来であり、環境負荷を増加させる。PLAの靭性及び結晶化を改善するための別のアプローチは、ブロックコポリマー化、核形成及び/又は可塑化並びに化学的改質を含んでいる。化学的改質は複雑となる可能性があり、典型的には、環境に優しくない触媒及びその他のモノマーを必要とする。可塑剤はまた、PLAの結晶化速度及び耐衝撃性を改善するために使用されている。しかし、可塑剤は、他の化学的な駆動力によって異なる領域又は表面に移行する傾向があり、それはブレンドの一般的な脆化をもたらす。
【0005】
国際公開公報第2016/086318号は、靭性、延性、剛性及び耐薬品性を改善する試みの中で、ポリアミドポリマー、ポリエステル及びエポキシ系相溶化剤を含むポリマーブレンドを記載している。
【0006】
国際公開公報第2014/053878号は、衝撃強度を改善するためのイソソルビド系コポリマーを用いたPLAベースのブレンドを記載している。
【0007】
国際公開公報第2014/115029号も、ニート又はバージンPLAに比較して衝撃強度を改善する試みの中で、PLAをベースとしたブレンドを記載している。記載されているブレンドは、充填剤、造核剤及び/又は鎖延長剤を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、所望の環境認証、並びに重要な物理的及び機械的特性、具体的には靭性、延性、剛性、耐衝撃性及び耐薬品性を含む特性を併せ持つ、生物分解性且つ好ましくは堆肥化可能で持続可能なポリマーブレンドのニーズは未だに残存している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、具体的には植物性物質のような天然又は持続可能な供給源に由来するポリ乳酸(PLA)である脂肪族ポリエステルを(重量パーセントで)主として含む、ブレンド及び組成物を提供する。本ブレンド及び組成物は、更なる特定のポリエステルを含む主として持続可能な資源に同様に由来する更なる成分を含む。具体的には、本ブレンド及び組成物は、ポリ-LD-ラクチド(PLA)及びポリ-D-ラクチド(PDLA)を含む別々の形態のポリラクチドを含む。
【0010】
従来の商業的合成プロセスによれば、本明細書に言及されるポリ-LD-ラクチド(PLA)は、L-D-ラクチドとD-ラクチドのラセミ混合物として得られるものであり、非晶質材料であるポリ-DL-ラクチドを生成する。このPLAは、理解されるように、ポリマー鎖のD-ラクチド単位よりもL-ラクチド単位を多く含む。
【発明の効果】
【0011】
本ブレンドは、(ポリ-LD-ラクチド(PLA)とは)別の成分及び出発物質として、実質的に純粋なラセミ体ポリ-D-ラクチド(PDLA)をさらに含む。前記ブレンドは、バージン又は高純度のPLAと比較して衝撃強度を増加させるための別の熱可塑性エラストマーをさらに含有する。本発明者らは、熱可塑性エラストマーのみの添加では、高純度PLAに比較してわずかな衝撃強度の増加しか提供されないことを見出した。しかし、PLAと熱可塑性エラストマーが、第3の構成物としてポリ-D-ラクチドとさらにブレンドされると、造核剤として作用するPDLは、結晶化を有意に改善し(成形の時点で)、その結果、二成分ブレンドに比較して衝撃強度を有意に増加させる。具体的には、本明細書に記載される組成物では、例えば、熱可塑性エラストマーが典型的にはPEBAX(商標)と呼ばれるポリエーテルブロックアミド(PEBA)であるとすると、衝撃強度は、前記二成分ブレンドに対して6倍以上に増加する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましくは、本ブレンドは、70%、80%、又は90%を超える再生可能な炭素含有量を有する熱可塑性エラストマー、及び/又は70%、80%、又は90%を超えるバイオベースの、再生可能若しくはリサイクル可能な量を有する熱可塑性エラストマーを含む。好ましくは、本ブレンドの最大重量%は、生物分解性の成分から形成されるか、又は生物分解性成分を含む。任意選択的に、本ブレンドの最大以外の重量%の成分は非分解性である。任意選択的に、非分解性である本ブレンドの唯一の成分は、熱可塑性エラストマーである。
【0013】
本発明の第一の態様によれば、ポリ-DL-ラクチドを70から94.5重量%;ポリ-D-ラクチドを0.5から10重量%;及び熱可塑性エラストマーを5から20重量%含むポリマーブレンドが提供される。
【0014】
好ましくは、前記ポリマーブレンドは更に、ポリ-DL-ラクチド及びポリ-D-ラクチドを合わせて80重量%以上含む。
【0015】
好ましくは、前記ポリ-DL-ラクチド及びポリ-D-ラクチドは、植物又は天然に存在する有機物に由来する。好ましくは、ポリ-DL-ラクチド及び/又はポリ-D-ラクチドは、植物の糖又はデンプンに由来する。
【0016】
好ましくは、前記ポリ-DL-ラクチドは、D-ラクチド単位に比較してL-ラクチド単位を重量%でより多く含む。
【0017】
好ましくは、前記ポリ-DL-ラクチド及び/又はポリ-D-ラクチドは、99%L以上の光学純度を含む。
【0018】
好ましくは、前記ポリ-DL-ラクチドは、70~90重量%;72~88重量%;74~86重量%又は76~84重量%で含有される。
【0019】
好ましくは、前記ポリ-D-ラクチドは、1~9重量%;1.5~8.5重量%;2~8重量%又は4~8重量%で含有される。
【0020】
好ましくは、前記熱可塑性エラストマーは6~20重量%;8~20重量%;10~20重量%;12~18重量%又は13~17重量%で含有される。
【0021】
好ましくは、重量%の残余は前記ポリ-DL-ラクチドである。具体的には、本ポリマーブレンドは、合計100重量%となるように残余部分を埋め合わせるポリ-DL-ラクチドを含む。
【0022】
任意選択的に、前記熱可塑性エラストマーは、スチレンブロックコポリマー;ポリオレフィンエラストマー;加硫剤;ポリウレタン;コポリエステル;ポリアミド;ポリエーテルブロックアミド(PEBA)のいずれか1種又はそれらの組み合わせである。
【0023】
任意選択的に、前記ブレンドは、ポリ-DL-ラクチドを75~84重量%;ポリ-D-ラクチドを4~8重量%;そして熱可塑性エラストマーがポリエーテルボックアミドであって12~17重量%で含む。
【0024】
任意選択的に、前記ブレンドは、ポリ-DL-ラクチドを75~84重量%;ポリ-D-ラクチドを4~8重量%;そして熱可塑性エラストマーがポリエーテルボックアミドであって12~17重量%からなる。
【0025】
好ましくは、前記ポリ-DL-ラクチドは、ブレンド中の最大重量%成分である。最大重量%成分への言及は、ブレンド中に存在する任意の成分の質量/重量に比較したポリ-DL-ラクチドの質量/重量を包含する。
【0026】
本発明の更なる態様によれば、本明細書で権利請求されるポリマーブレンド;及び充填剤、相溶化剤、加工助剤のいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む、ポリマーベースの組成物が提供される。
【0027】
任意選択的に、前記組成物は、鉱物系充填剤、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム材料のいずれか1種又はそれらの組み合わせをさらに含む。
【0028】
任意選択的に、前記相溶化剤は、スチレン-アクリル系多官能性エポキシドオリゴマー、スチレン-アクリロニトリル-メタクリル酸グリシジルランダムターポリマー、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸、フェニルジイソシアナートのいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む。
【0029】
任意選択的に、前記加工助剤は、PTFE、又は表面摩擦低減成分のいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む。そのような添加剤は、スカッフィング及びスクラッチングを低減し、最終物品の充填性(packing)及び嵌め外し性(de-nesting)を改善するのに加えて、成形及び押し出しを介した加工を容易にするように構成される。加工助剤は、PLA又は他のプラスチックベースのブレンドと共に一般的に使用される、ワックス、潤滑剤などを含んでもよい。加工助剤の一例としては、Incromax(商標) 100(Croda International plc, Goole, UK)が挙げられる。任意選択的に、加工助剤は、0.1から1.0重量%で含有されてもよい。他の好適なワックスとしては、米ぬかワックス又はエチレンビスステアロアミド又は二酸化ケイ素が挙げられる。
【0030】
本発明の更なる態様によれば、70から94.5重量%のポリ-DL-ラクチドを、0.5から10重量%のポリ-D-ラクチド及び5から20重量%の熱可塑性エラストマーと混合して、ポリマーブレンドを作成する工程を含む、ポリマーブレンドを製造するための方法が提供される。
【0031】
任意選択的に、本方法によれば、前記混合工程に先立ち、前記ポリ-DL-ラクチドのペレットを70から95℃又は80から85℃の範囲の温度で攪拌する。
【0032】
任意選択的に、前記ペレットを攪拌する工程は、当該温度範囲においてドラム内でペレットを回転させる工程を含む。
【0033】
本発明の更なる態様によれば、本明細書で権利請求されるポリマーブレンド又はポリマー組成物を、押出し、射出成形、ブロー成形、熱成形のいずれか1種又はそれらの組み合わせによって加工する工程を含む、プラスチック製品を作成するためのポリマー加工の方法が提供される。
【0034】
本発明の更なる態様によれば、ポリマー加工(すなわち、二次成型(forming)、成形又は押出)の工程の後に、プラスチック製品又は物品をアニーリングする工程をさらに含む、本明細書に記載され、権利請求されるポリマー加工により物品を製造するための方法が提供される。
【0035】
任意選択的に、アニーリングする工程は、プラスチック製品又は物品を50℃から140℃又は60℃から130℃の範囲の温度で加熱して結晶性を誘導することを含む。
【0036】
本発明の更なる態様によれば、本明細書で権利請求される方法を含む、3Dプリンティングに好適なプラスッチックフィラメントを作成する方法が提供される。
【0037】
本発明の好ましい実施態様の詳細な説明
【実施例
【0038】
使用される材料
適切に加工された場合、結晶化するように設計されている、射出成形用ポリ-L-乳酸の高光学純度グレードであるIngeo(商標) 3260HP(NatureWorks LLCより入手)を使用して開発を行った。造核剤として、Luminy(商標) D070又はLuminy(商標) D120(Total Corbion社製PLA)(それぞれ相対的に低分子量及び高分子量を有する、光学純度99.5重量%のポリ-D-乳酸グレード)を使用した。Arkema Inc.から入手可能なPEBAX(商標) 2533 SA01(ポリエーテルブロックアミド)、いずれもHEXPOL TPE GmbHから入手可能なDryflex Green(商標) OFB52224 N(再生可能炭素含有量81%を有する熱可塑性エラストマー)、Dryflex Green(商標) SC 52273 N(バイオベース含有量82%を有する熱可塑性エラストマー)、又はGreenflex(商標) ML50(エチレン酢酸ビニルコポリマー)を非分解性エラストマー改質剤として使用した(Versalis S.p.A製)。
【0039】
混合手順
一連の配合物は、マトリックスポリマーとして高光学純度を有する射出成型グレードのポリ-L-乳酸(Ingeo 3260HP)、衝撃強度増強剤として非分解性エラストマー、及び造核剤としてポリ-D-乳酸(Luminy D070若しくはD120)を配合して製造した。ブレンドの詳細を表1にまとめる。すべてのブレンドの再生可能(植物ベース)含有量は、PLA含有量に基づき最小85重量%であった。高耐衝撃性が求められる耐久性用途に使用される場合、PLAベースの材料は(化学的又は機械的のいずれかで)リサイクルされることが期待され、その場合、食品廃棄物の回収及び処分を容易にするように設計された堆肥化可能性はもはや有益なことではない。
【表1】
【0040】
ポリ乳酸をベースとするコンパウンドの調製にとって典型的である二軸押し出し機を使用してコンパウンドを調製した。供給部では175℃、続く混合領域では180℃の典型的な温度プロファイルを用い、必要な場合若干の修正を加えて、安定したスループットを達成した。DPLA(Luminy D070、D120)を利用した配合物では、溶融温度とダイス温度はさらに増加させる必要があったが、210℃を超えていなかった。ストランドは、冷却水槽に通し、ペレット化の前にエアナイフを用いて乾燥させた。各材料は、使用前に真空下、60℃で24時間乾燥させて、吸湿(moisture pickup)を最小限にするためにホッパーに迅速に移送した。
【0041】
引張及び衝撃特性の分析のために、適切な寸法のサンプルを、Boy22M射出成形機を使用し、溶融温度を170℃から200℃の間、金型温度を約23℃として成形した。ASTMD256(Izod/ISO 180に相当)に則り、2Jハンマーを備えたCeast Resil Impact Juniorを使用して、耐衝撃性を測定した。サンプルは、試験前に周囲条件で少なくとも48時間放置して順応させた後、物理的特性を求めた。
【0042】
更なる実験では、ブレンド6を標準条件を用いて射出成形し、空気循環オーブン中の金属トレイ上に80℃で2時間置き、その後48時間周囲に順応させた後、耐衝撃性について再度試験した。
【0043】
非分解性ブレンドの性能結果
すべての配合物の衝撃及び引張特性を評価、比較した。すべての場合において、PLAに非分解性エラストマーを添加すると、耐衝撃性の増加をもたらし、特にPEBAX(商標登録)については、造核剤として使用されたDPLAと組み合わせた場合に耐衝撃性の増加をもたらした。非改質のPLAに対する典型的なノッチ付きIzod衝撃値(ISO 180)は、2と4kJ/mの間である(関連する特許出願で報告されており、この課題に対して公開されたデータによって証明されている)ところ、すべてのサンプルがこの値を超えることが見出された。DPLAと最大15%の添加レベルでのPLAとの組み合わせはよく知られており、これらの材料を混合するとき、衝撃強度の有意な改善の証拠は、典型的には観察されない。それぞれのブレンドの引張及び衝撃特性を表2に報告する。
【表2】
【0044】
PEBAXと、重量でPEBAXの15%のPLAと組み合わせると、PLAの耐衝撃性は7.41kJ/mと記録され、これはPLA単独では典型的には4kJ/m未満である耐衝撃性に対する有意な改善である。PEBAXの含有量を15重量%に保ち、且つ6重量%のPLAをDPLAで置き換えた場合(ブレンド4)、衝撃強度にはるかに顕著な増加が観察され、17.43の値に達する。このブレンドは、より高い分子量のDPLA(Luminy D120)を用いても調製した(ブレンド6)。ブレンド6のサンプルは、最初に成形しこのアプローチに従って試験し、次いで他のサンプルも同様に試験し、同じ特性を有することが見出された。また、ブレンド6のサンプルを成形し、80℃で2時間、空気循環オーブン中の金属トレイ上に平らに置き、次いで48時間周囲に順応させた後に耐衝撃性について再度試験した。このような方法で材料を加熱することはPLAに結晶化を誘導し、PLAマトリックスの性能をベースとして典型的には約150℃の熱たわみ温度の上昇をもたらすことが知られている。このサンプルの耐衝撃性を再び試験したところ、耐衝撃性は20.45kJ/mの数値に増加していたことが見出され、衝撃サンプルは試験中に完全に壊れることなく曲がり始め、破壊力学が変化したこと及びより延性のある材料であることが示された。
【0045】
PLAのみを組み合わせた他のエラストマー(部分的にバイオベースの熱可塑性エラストマーをベースとしたブレンド2及び3)も、衝撃特性に若干の改善をもたらすことが見出されたが、それでもDPLA/PEBAXの組み合わせで達成された数値には及ばない。PLA、DPLA及びエラストマー材料(エチレン酢酸ビニルコポリマーである、Greenflex ML50)を含有する更なる配合(ブレンド5)も、難燃剤を用いて又は用いずに評価し、衝撃性能を比較した。EVAを用いたコンパウンド化が、PLAの耐衝撃性を増加させる効果的な方法として報告されている。この場合、達成された衝撃強度の改善は軽微であり、その効果が、PLLA、PDLA及びPEBAXの組み合わせに特有であることを示している。これに対する可能な説明は、PLLA及びPDLAが水素結合を介して相互作用し、標準的なPLAの融点よりもはるかに高い融点を有する「ステレオコンプレックス(stereo complex)」(それぞれ160~170℃と230℃)を形成する傾向である。PEBAXを添加すると、そのステレオコンプレックスとPEBAXとの間の水素結合を介してか、又はPEBAXがその中に分散されて、より秩序だち、密に充填されるPLAマトリックスを介して、これまで観察されていない相互作用をもたらすことができる。結晶化した材料における衝撃強度の強力な改善は、分散されているらしいPEBAXドメイン中で、PLAは、より秩序だったPLA相を形成しているが、変化した破壊力学をもたらす良好な界面適合性を有するという理論に対して更なる証拠を与える。
【0046】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、現在記載されている主題に係る当業者に共通に理解されているのと同じ意味を有する。
【0047】
特に示されていない限り、「重量%」に対する言及は、ブレンドの総質量に対する成分の質量分率を指す。
【0048】
例えば、濃度範囲、百分率範囲又は比率範囲などの値の範囲が提供される場合、その範囲の上限値と下限値との間及びその記載範囲内のその他の記載値又は介在値であって、下限の単位の10分の1までの各介在値は、文脈によって明確に指示されない限り、記載された主題中に包含されると理解される。これらのより狭い範囲の上限及び下限は独立してその狭い範囲に含まれてもよく、そしてそのような実施態様もまた、その言及された範囲において特に除外された限定に従うことを条件として、記載された主題中に包含される。記載範囲が上下限の一方又は両方を含む場合、それらの包含される上下限のいずれか又は両方を除く範囲も、記載された主題に包含される。
【0049】
本明細書において上記又は他の場所で使用される用語「a」及び「an」は、列挙された成分の「1つ以上」を指すことが理解されるべきである。特に断りのない限り、単数形の使用が複数形を包含することは、当業者には明らかであろう。したがって、用語「a」、「an」及び「少なくとも1つの」は、本出願においては互換的に使用される。
【0050】
特に示されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、サイズ、重量、反応条件などの特性を表すすべての数字は、すべての事例において用語「約」によって修飾されるものとして理解される。したがって、それと反対のことが示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、現在の主題によって得られることが求められている所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁数に照らし、そして通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0051】
本出願全体を通して、様々な実施態様の記載は「含む」という語を使用する。しかし、或る実施態様が「本質的に~からなる」又は「~からなる」という言語を使用して代替的に記載できる場合があることは当業者には理解されるであろう。
【0052】
本主題はこのように記載されているが、同内容が多くの方法で修正又は変更され得ることは明らかであろう。そのような修正及び変更は、本主題の精神及び範囲からの逸脱とはみなされず、そしてすべてのそのような修正及び変更は、次の特許請求の範囲内に包含されることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
70から94.5重量%のポリ-DL-ラクチド;
0.5から10重量%のポリ-D-ラクチド;及び
5から20重量%の熱可塑性エラストマー
を含むポリマーブレンド。
【請求項2】
前記ポリ-DL-ラクチド及びポリ-D-ラクチドを合わせて、80重量%以上含む、請求項1記載のポリマーブレンド。
【請求項3】
前記ポリ-DL-ラクチド及びポリ-D-ラクチドが植物又は天然に存在する有機物に由来する、請求項1又は2記載のポリマーブレンド。
【請求項4】
前記ポリ-DL-ラクチドが、重量%でD-ラクチド単位よりもL-ラクチド単位を多く含む、請求項1乃至3のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項5】
前記ポリ-DL-ラクチド及び/又はポリ-D-ラクチドが99%L以上の光学純度を含む、請求項1乃至4のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項6】
前記ポリ-DL-ラクチドが70~90重量%;72~88重量%;74~86重量%又は76~84重量%で含有される、請求項1乃至5のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項7】
前記ポリ-D-ラクチドが1~9重量%;1.5~8.5重量%;2~8重量%又は4~8重量%で含有される、請求項1乃至6のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項8】
前記熱可塑性エラストマーが6~20重量%;8~20重量%;10~20重量%;12~18重量%又は13~17重量%で含有される、請求項1乃至7のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項9】
重量%の残余がポリ-DL-ラクチドである、請求項1乃至8のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項10】
前記熱可塑性エラストマーが
・スチレン系ブロックコポリマー
・ポリオレフィンエラストマー
・加硫剤
・ポリウレタン
・コポリエステル
・ポリアミド
・ポリエーテルブロックアミド(PEBA)
のいずれか1種またはそれらの組み合わせである、請求項1乃至9のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項11】
前記ポリ-DL-ラクチドを75~84重量%;
前記ポリ-D-ラクチドを4~8重量%;そして
前記熱可塑性エラストマーがポリエーテルブロックアミドであって12~17重量%
で含む、請求項1乃至10のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項12】
前記ポリ-DL-ラクチドを75~84重量%;
前記ポリ-D-ラクチドを4~8重量%;そして
前記熱可塑性エラストマーがポリエーテルブロックアミドであって12~17重量%
からなる、請求項1乃至11のいずれか一項記載のポリマーブレンド。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項記載のポリマーブレンド;及び
・充填剤
・相溶化剤
・加工助剤
のいずれか1種又はそれらの組み合わせ
を含む、ポリマーベースの組成物。
【請求項14】
前記充填剤が
・鉱物系充填剤、
・炭酸カルシウム、
・タルク、
・ガラス繊維、
・ケイ酸塩、
・ケイ酸カルシウム材料
のいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記相溶化剤が
・スチレン-アクリル系多官能性エポキシドオリゴマー
・スチレン-アクリロニトリル-メタクリル酸グリシジルランダムターポリマー
・メタクリル酸グリシジル、
・無水マレイン酸、
・フェニルジイソシアナート
のいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む、請求項13又は14記載の組成物。
【請求項16】
前記加工助剤が
・PTFE粉末、
・アミドワックス、
・米ぬかワックス、
・エチレンビスステアロアミド、
・二酸化ケイ素
のいずれか1種又はそれらの組み合わせを含む、請求項13から15のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
70から94.5重量%のポリ-DL-ラクチドを、0.5から10重量%のポリ-D-ラクチド及び5から20重量%の熱可塑性エラストマーと混合して、ポリマーブレンドを作成する工程を含む、ポリマーブレンドを製造するための方法。
【請求項18】
前記混合工程に先立ち、前記ポリ-DL-ラクチドのペレットを70から95℃又は80から85℃の範囲の温度で攪拌する、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ペレットを攪拌する工程が、当該温度範囲においてドラム内でペレットを回転させる工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
請求項1乃至16のいずれか一項記載のポリマーブレンド又はポリマー組成物を、
・押出し;
・射出成形;
・ブロー成形;
・熱成形
のいずれか1種又はそれらの組み合わせによって加工する工程を含む、
プラスチック製品を作成するためのポリマー加工の方法。
【請求項21】
前記ポリマーブレンド又はポリマー組成物を加工する工程の後に、そのプラスチック製品をアニーリングする工程をさらに含む、請求項20記載のポリマー加工の方法。
【請求項22】
前記アニーリング工程が、前記プラスチック製品を50℃から140℃又は60℃から130℃の範囲の温度で加熱して結晶化を誘導することを含む、請求項21記載のポリマー加工の方法。
【請求項23】
請求項17乃至20のいずれか一項記載の方法を含む、3Dプリンティングに好適なプラスチックフィラメントを作成する方法。
【国際調査報告】