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特表2024-503442塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態
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  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図1
  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図2
  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図3
  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図4
  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図5
  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図6
  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図7
  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図8
  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図9
  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図10
  • 特表-塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】塩メタセシスによるニコチンアミドリボフラノシド塩の製造方法、そのトシレート塩の結晶形態及びそのクロリド:ヨージド塩の共結晶化した形態
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/048 20060101AFI20240118BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240118BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20240118BHJP
【FI】
C07H19/048
A61K31/706
A61P3/02 104
A61P3/04
A61P25/28
A23L33/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542582
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2022051085
(87)【国際公開番号】W WO2022157173
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】21152346.9
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21182329.9
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522023912
【氏名又は名称】バイオシント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シャベルト
(72)【発明者】
【氏名】ウルス シュピッツ
(72)【発明者】
【氏名】アイゼル ゾイデミル
(72)【発明者】
【氏名】イーリス ツィマーマン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD23
4B018ME01
4B018ME14
4B018MF10
4B018MF14
4C057AA09
4C057AA14
4C057BB02
4C057CC03
4C057DD01
4C057LL05
4C086AA01
4C086AA04
4C086EA11
4C086GA02
4C086GA08
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZA70
4C086ZC24
(57)【要約】
本発明は、ニコチンアミドリボフラノシド塩、特に、結晶性ニコチンアミドリボフラノシド塩を製造する方法であって、ニコチンアミドリボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミドリボフラノシドハイドロゲンタルトレートを塩メタセシスにかけ、ニコチンアミドリボフラノシド塩を提供することを含む塩メタセシスを介した方法に関する。別の方法では、アシル化ニコチンアミドリボフラノシドハイドロゲンマレート又はアシル化ニコチンアミドリボフラノシドハイドロゲンタルトレートを塩メタセシスにかけ、その後に脱アシル化が続いて、ニコチンアミドリボフラノシド塩を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法であって、以下の工程(A):
(A)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートを対イオン交換を含む塩メタセシスにかけ、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供すること、
を含む、方法。
【請求項2】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法であって、以下の工程(A)及び(B):
(A)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートを対イオン交換を含む塩メタセシスにかけ、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供すること;
(B)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を脱アシル化し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供すること、
を含み、前記工程(A)及び(B)が同時に実施されるか、あるいは工程(B)が工程(A)に続いて実施される、方法。
【請求項3】
前記アシルは、アルキルカルボニル、アリールカルボニル及びヘテロアリールカルボニルから、好ましくはC1-10アルキルカルボニル及びベンゾイルから独立して選択され、より好ましくはアセチルであって、前記アシルは、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)及びSON(C1-6アルキル)、から選択される一又は複数の置換基で任意に、独立して置換される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ハイドロゲンマレートは、D-、L-又はDL-ハイドロゲンマレートであるか、あるいは前記ハイドロゲンタルトレートが、D-、L-又はDL-ハイドロゲンタルトレートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、結晶塩の形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、酸と反応する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸のpKは、2以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対イオン交換を介して工程(A)において得られる前記塩の対イオンは、
無機イオン;
カルボキシレートであって、カルボキシル、ヒドロキシル、チオ、ケト、アミノ、モノC1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキレン及びジ(C1-6アルキル)アミノから成る群から独立して選択される、一又は複数の置換基で任意に置換されるカルボキシレート;
1-12アルキルスルホネート;又は
アリールスルホネートであって、前記アリール部分は、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、モノC1-6アルキル及びジ(C1-6アルキル)アミノ、ハロゲン及びC1-6アルキルから成る群から独立して選択される、一又は複数の置換基で任意に置換されるアリールスルホネート、
から成る群から選択される方法であって、
前記対イオンがハイドロゲンタルトレート又はハイドロゲンマレートではない、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記無機イオンは、ブロミド、クロリド、ヨージド、ハイドロゲンスルフェート、スルフェート、ジヒドロゲンホスフェート、モノハイドロゲンホスフェート、ホスフェート、から成る群から選択され;
前記カルボキシレートは、ホーメート、アセテート、オキサレート、マロネート、スクシネート、フマレート、マレエート、シトレート、アスコルベート、α-ケトグルタレート、グルクロネート、ベンゾエート及びサリチレートから成る群から選択され;
前記C1-12アルキルスルホネートは、メシレート及びカムシレートから成る群から選択され;及び
前記アリールスルホネートは、ベシレート及びトシレートから成る群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対イオンは、クロリド及びブロミド、好ましくはクロリドから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記塩メタセシスは、(i)メタノール、エタノール、プロパノール若しくはブタノール又は2つ以上のそれらの混合物から成る群から選択されるアルコール中で実施され、前記アルコール又は前記混合物が任意に水を含むか、あるいは(ii)メタノール、エタノール、プロパノール若しくはブタノール又は2つ以上のそれらの混合物を含む溶媒中で実施され、前記溶媒又は前記アルコールが任意に水を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(A)より前に以下の工程(X):
(X)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドの塩及び対イオンを、前記対イオンは、Cl、Br、I、CFSO 、n-CSO 、FSO 及びClO から成る群から選択されるが、対イオンとしてハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレートを用いる対イオン交換を含む塩メタセシスにかけ、工程(A)において用いられるニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートを提供すること、
を含む、請求項1又は請求項1に従属する請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(A)の前に以下の工程(Y):
(Y)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドの塩及び対イオンを、前記対イオンは、Cl、Br、I、CFSO 、n-CSO 、FSO 及びClO から成る群から選択されるが、対イオンとしてハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレートを用いる対イオン交換を含む塩メタセシスにかけ、工程(A)において用いられるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートを提供すること、
を含む、請求項2又は請求項2に従属する請求項3~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートの結晶形態。
【請求項15】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NRから、あるいはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩AcONRからニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NRを製造する方法であって、以下の工程(A):
(A)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NR又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩AcONRを酸Hにかけ、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NR及びH、前記HのpK<HのpKであるが、を提供すること、
を含む、方法。
【請求項16】
工程(A)に記載の前記対イオン交換において、1つより多い対イオンが使用される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法;又は前記工程(A)において1つより多い酸Hが使用される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記2つの対イオンが使用される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対イオンは、クロリド及びヨージドから選択される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩であって、前記塩のアニオンがクロリド及びヨージドを含むか、あるいは、から成る、共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩。
【請求項20】
前記クロリドのヨージドに対するモル比は、5:1、3:1、2:1、1.5:1又は1:1である、請求項19の共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩。
【請求項21】
前記クロリドのヨージドに対するモル比は、2:1であって、実質的に表11において±0.2°2θで提供されているような、あるいは図11において提供されているようなピークを有する粉末X線回析パターンに特徴付けられる、請求項19又は20の共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩。
【請求項22】
栄養補助食品又は医薬組成物であって、請求項19~21のいずれか一項の共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を含む、栄養補助食品又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート(nicotinamide-β-D-ribofuranoside hydrogen malate)、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレート(hydrogen tartrate)、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド(nicotinamide-2,3,5-tri-O-acyl-β-D-ribofuranoside)ハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートからニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド(chloride)などのニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を製造する方法に関する。本発明の方法により、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を単純な方法で、かつ高収率、高純度及び高立体選択性で得ることができる。当該方法はまた、共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド(クロリド、ヨージド(iodide))の調製もできる。
【背景技術】
【0002】
ニコチンアミドリボシド(NR又はNR、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド;CAS番号1341-23-7)
【化1】
は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD/NADH)及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP/NADPH)の前駆体である。さらに、ニコチンアミドリボシドはナイアシン(niacin)(ビタミンB3)の等価物である。
【0003】
ニコチンアミドリボシドは、肝臓及び骨格のNADレベルを増加させ、高脂肪の食事を与えられたマウスにおける体重の増加を妨げることが報告されている。また、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスモデルにおいて、大脳皮質におけるNAD濃度を増加させ、認知力低下を抑制する。これらの理由によって、ニコチンアミドリボシド塩は、栄養補助食品及び医薬組成物で用いるために提案されている。
【0004】
NR塩の合成及び取り扱いは、他のヌクレオシドと比較して、相対的に不安定なグリコシド結合のために困難である。今まで、NRのブロミド(bromide)及びクロリド塩のみが結晶塩の形態で記述されてきた。結晶性ブロミド塩は、有毒であって、それ故に食品添加物としての使用には適さないが、化学合成における出発物質として使用可能であり、かつ使用されている。その一方で、結晶性クロリド塩は、栄養補助食品において、かつ薬学的に有効な成分として便利に使用されている。
【0005】
NR塩の現在の製造方法は、しばしば低収率をもたらし、大規模生産にとって大きな課題である。さらに、これらの方法は、しばしば少ない立体選択性に悩まされ、NRのα及びβアノマーの混合物の形成という結果になる。β形態のみが生物学的に活性であるため、これは、特定の使用に関して大変望ましくない。NR塩の既知の製造方法のさらなる欠点には、高価な試薬の使用、それによって当該方法を商業生産にとって非経済的なものにすることが挙げられる。加えて、頻繁に使用されるイオン交換体は、低い交換容量を有しており、それ故にNR塩の大量生産のために好ましくない。また、大量の溶媒の使用は、NR塩の望ましくない加水分解を促進する。従って、NRクロリドなどのNR塩を調製するための従来技術分野における既知の方法は、特に、大規模な商業生産に適用する場合に、欠点を有する。
【0006】
WO2017/218580は、イオン交換クロマトグラフィー又は塩交換反応及び沈殿を介して、ニコチンアミドリボシド塩の薬学的に許容される対イオンを別の薬学的に許容される対イオン、例えばクロリドアニオンに置換し、望ましいNRの塩及び薬学的に許容される対イオン、例えばNRクロリド塩を与えることを含む、ニコチンアミドリボシド塩の調製のための合成方法を開示している。WO2015/186068は、結晶性のニコチンアミド-β-D-リボシドクロリドを提供するための、イオン交換反応におけるナトリウムメチレート(methylate)とのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフレート(triflate)の反応を開示している。さらに、CN108774278は、塩基を用いるニコチンアミドトリアセチルリボフラノシドトリフレートの脱アセチル化、その後に酸との脱アセチル化された生成物の処理が続き、対応する塩生成物をもたらすことを開示している。
【0007】
発明の目的
上記を考慮して、当技術分野において、商業規模で、高収率、高純度及び高立体選択性で、単純かつコスト効率の良い方法でニコチンアミドリボフラノシド塩、特に、クロリド塩などの薬学的に許容されるニコチンアミドリボフラノシドの塩を製造する方法が必要である。
【発明の概要】
【0008】
驚いたことに、この目的は、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートを出発物質として、好ましくは結晶形態において使用し、これらのハイドロゲンマレートの塩又はハイドロゲンタルトレートの塩を所定のアニオン、例えばクロリドアニオンを用いて対イオン交換を含む塩メタセシスにかけ、望ましいニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩、例えばニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド塩を提供することによって達成され得ることを発見した。
【0009】
この方法は、単純かつコスト効率が良く、望ましいニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩、例えばニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド塩を高収率、高純度及び高立体選択性で獲得する。さらに、望ましいニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩は、結晶形態において有利に得られ、結晶塩は、栄養的及び薬学的適用において特に有用である。
【0010】
別の方法では、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、望ましいニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供するために、塩メタセシスにかけられ、アシル基が開裂される。
【0011】
第1の態様によれば、本発明は、以下の工程(A):
(A)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートを対イオン交換を含む塩メタセシスにかけ、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供すること、
を含む、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関する。
【0012】
第2の態様によれば、本発明は、以下の工程(A)及び(B):
(A)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートを対イオン交換を含む塩メタセシスにかけ、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供すること;
(B)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を脱アシル化して、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供すること、
を含む、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関連しており、前記工程(A)及び(B)は、同時に実施されるか、あるいは工程(B)は、工程(A)に続いて実施される。
【0013】
好ましい実施形態は、添付された特許請求の範囲において規定される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、添付された図面によってさらに説明され:
図1】結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンマレートの粉末X線パターンを示す;
図2】結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートの粉末X線パターンを示す;
図3】結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンマレートの粉末X線パターンを示す;
図4】結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレート一水和物の粉末X線パターンを示す;
図5】結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートの粉末X線パターンを示す;
図6】結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンタルトレートの粉末X線パターンを示す;
図7】結晶性ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートの粉末X線パターンを示す;
図8】結晶性ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートの粉末X線パターンを示す;
図9】結晶性無水ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートの粉末X線パターンを示す;
図10】結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートの粉末X線パターンを示す;及び
図11】共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド(クロリド、ヨージド)の粉末X線パターンを示し、前記クロリド及びヨージドは、2:1のモル比で存在する。{それぞれ、X軸:位置[°2θ](銅(Cu);Y軸:カウント)}。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の様々な態様は、今から添付の図を参照してより詳細に説明される。
【0016】
第1及び第2の態様:本発明による方法
第1の態様によれば、本発明は、対イオン交換を含む塩メタセシスを介したアニオンYによって、以下の式
【化2】
の化合物におけるアニオンX=ハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレートを置換し、NRを提供することにより、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を調製する方法に関する。好ましくは、アニオンYはクロリドである。しかしながら、方法は、それに限定されない。
【0017】
その結果、第1の態様において、本発明は、以下の工程(A):
(A)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートを対イオン交換を含む塩メタセシスにかけ、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供すること、
を含む、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関する。
【0018】
第2の態様によれば、以下の式
【化3】
のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、塩メタセシスにかけられ、アニオンYを介してXを交換する。反応条件によっては、一実施形態において、工程(A)及び(B)は同時に進行してもよく、すなわち、アシル基は、望ましいニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NRを形成するために同時に開裂されてもよい。別の実施形態において、工程(B)は、工程(A)に続いて実施される。好ましくは、アニオンYはクロリドである。しかしながら、方法はそれに限定されない。
【0019】
その結果、第2の態様において、本発明は、以下の工程(A)及び(B):
(A)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートを対イオン交換を含む塩メタセシスにかけ、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を提供すること;及び
(B)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を脱アシル化し、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩を提供すること、
を含む、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の製造方法に関連しており、前記工程(A)及び(B)は、同時に実施されるか、あるいはは工程(B)は、工程(A)に続いて実施される。
【0020】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩に関連して用いられる「アシル」という用語は、アルキルカルボニル、アリールカルボニル及びヘテロアリールカルボニル、好ましくはC1-10アルキルカルボニル及びベンゾイルから独立して選択され、より好ましくはアセチルであるアシル基を意味し、前記アシル基は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)及びSON(C1-6アルキル)、から選択される一又は複数の置換基で任意に、独立して置換される。
【0021】
好ましくは、ハイドロゲンマレートは、D-、L-又はDL-ハイドロゲンマレートである。さらに、好ましくはハイドロゲンタルトレートは、D-、L-又はDL-ハイドロゲンタルトレートである。有利には、D-、L-若しくはDL-ハイドロゲンマレート又はD-、L-若しくはDL-ハイドロゲンタルトレートは、βアノマーに関して高純度及び高立体選択性で提供されることができる。
【0022】
さらに、本発明の第1の態様による方法の工程(A)において使用される塩、すなわち、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレート又はその両方は、結晶塩であってもよい。同様に、本発明の第2の態様による方法の工程(A)において使用される塩、すなわち、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレート又はその両方は、結晶塩であってもよい。本発明の中で、βアノマーに関して特に高純度及び高立体選択性である結晶性NR塩の製造を可能にさせるため、結晶塩の使用が好ましい。
【0023】
本明細書中で用いられるとき、「塩メタセシス」という用語は、「二重置換反応(double replacement reaction)」、「二重置換反応(double displacement reaction)」又は「複分解反応」などの用語と同義に使用される。2つの異なる塩の間で対イオンを交換するための塩メタセシスは、既知の技術である。「塩メタセシス」という用語は、β-ニコチンアミドリボシドのアニオンがイオン交換体を用いるイオン交換によって別のアニオンに交換されることを意味するものではないということを理解すべきである。従って、工程(A)において規定される本発明による方法は、イオン交換体によるアニオン交換を除外する。しかしながら、方法は、工程(A)の前、又は工程(A)の後の任意の反応ステップにおいて、イオン交換体が使用されるということを除外しない。
【0024】
工程(A)は反応を規定し、前記第1の塩、すなわち、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NR又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩AcONRは、適当な化合物を用いる塩メタセシスにかけられ、アニオンYを提供し、化合物はカチオンCat及び前記アニオンYを含むCatであるが、対イオン交換、すなわち、YによるNR又はAcONR中のXの交換を介してニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NR又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩AcONR及びCatを提供する。これらの反応は、下記の方程式によって要約され:

NR + Cat → NR + Cat

AcONR + Cat → AcONR + Cat

前記化合物Catは適切な塩又は適切な酸であってもよい。
【0025】
上記の反応のような塩メタセシス反応の駆動力(driving force)は、より安定な塩の形成だけでなく、例えば、形成されたNR及びCatのうちの1つ又は形成されたAcONR及びCatのうちの1つの沈殿による、反応の化学平衡からの生成物の除去であってもよい。従って、生成物への反応を促進するために、遊離物(educt)は、互いに、あるいは溶媒への溶解性を考慮して、それぞれ、好ましいエネルギーを考慮して選択されるべきである。
【0026】
好ましい実施形態において、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはハイドロゲンタルトレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはハイドロゲンタルトレートは、酸、例えば有機酸又は無機酸と反応し、アニオン交換をもたらす。その結果、この実施形態において、CatはHである。酸は、好ましくは強酸である。本明細書中で用いられるとき、「強酸」という用語は、酸がリンゴ酸又は酒石酸よりも強い酸であるということを意味する。好ましくは、前記強酸は、2以下、さらに好ましくは1以下又はいっそう好ましくは0以下のpKを有する。
【0027】
好ましくは、酸Cat=Hは、出発物質ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはハイドロゲンタルトレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはハイドロゲンタルトレートと比較してモル過剰の状態で使用される。好ましくは、1.1モル当量(equivalents)より多い酸Hが使用され、さらに好ましくは、少なくとも1.2又は少なくとも1.3又は少なくとも1.4又は少なくとも1.5当量である。
【0028】
CatがHである、すなわち、酸Hが対イオン交換のために使用される場合、第2の態様による方法における工程(A)及び(B)は、通常は同時に進行する、すなわち、出発物質ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレート及び/又は形成されたニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩におけるアシル基の開裂及び望ましいニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の形成は、同時に進行することができる。
【0029】
CatがHではない、すなわち、酸Hではなく、塩Catが本発明の第2の態様による方法において使用される場合、工程(A)及び(B)は、通常は連続的段階で進行する、すなわち、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩からのアシル基の開裂(工程(B))は、メタセシスによるニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩の形成(工程(A))の後に実施される。アシル基の開裂は、当技術分野において既知の方法に従って、例えば、工程(A)において得られたニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩を、ハイドロゲンブロミド、ハイドロゲンクロリド、ハイドロゲンヨージド若しくは硫酸などの酸に又はアンモニアなどの塩基にかけることによって実施されることができる。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、工程(A)において得られたニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩は、工程(B)において脱アシル化される前に単離及び精製されてもよい。代替方法として、工程(A)のニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩は、工程(B)における脱アシル化の前に精製されなくてもよい。
【0031】
本発明に従って、対イオン交換を介して工程(A)において得られた塩の対イオン(Y)は、
無機イオン;
カルボキシレートであって、カルボキシル、ヒドロキシル、チオ、ケト、アミノ、モノC1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキレン及びジ(C1-6アルキル)アミノから成る群から独立して選択される1又は複数の置換基で任意に置換されるカルボキシレート;
1-12アルキルスルホネート;又は
アリールスルホネートであって、前記アリール部分は、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、モノ-C1-6アルキル及びジ(C1-6アルキル)アミノ、ハロゲン及びC1-6アルキルから成る群から独立して選択される1又は複数の置換基で任意に置換されるアリールスルホネート、
から成る群から選択されることが可能であって、前記Yがハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレートではない。
【0032】
無機イオンは、ブロミド、クロリド、ヨージド、ハイドロゲンスルフェート(hydrogen sulfate)、スルフェート(sulfate)、ジヒドロゲンホスフェート(dihydrogen phosphate)、モノハイドロゲンホスフェート(monohydrogen phosphate)、ホスフェート(phosphate)、から成る群から選択されることが可能であって;
カルボキシレートは、ホーメート(formate)、アセテート(acetate)、オキサレート(oxarate)、マロネート(malonate)、スクシネート(succinate)、フマレート(fumarate)、マレエート(maleate)、シトレート(citrate)、アスコルベート(ascorbate)、α-ケトグルタレート(α-ketoglutarate)、グルクロネート(glucuronate)、ベンゾエート(benzoate)及びサリチレート(salicylate)から成る群から選択されることが可能であって;
1-12アルキルスルホネートは、メシレート(mesylate)及びカムシレート(camsylate)から成る群から選択されることが可能であって;及び
アリールスルホネートは、ベシレート(besylate)及びトシレート(tosylate)から成る群から選択されることができる。
【0033】
好ましくは、対イオンYは、クロリド及びブロミドから、好ましくは塩メタセシスによって対イオン交換をもたらすために用いられるハイドロゲンクロリド又はハイドロゲンブロミドから選択される。より好ましくは、対イオンはクロリド、特に、塩メタセシスによって対イオン交換をもたらすために用いられるハイドロゲンクロリドである。
【0034】
塩メタセシスは、溶媒を用いずに、すなわち、固体ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩又は固体ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩の例えば、液体塩又は液体酸を用いた塩メタセシスを介して実施されることができる。しかしながら、工程(A)における塩メタセシスは、好ましくは溶媒の存在下で実施される。
【0035】
下記において、上記に規定された塩メタセシス反応を実施するための4つの好ましい実施形態が説明されている。
【0036】
実施形態I:溶媒は、NR(又はAcONR)及びCatが両方とも前記溶媒中に可溶であるように選択される、しかしながら、工程(A)において得られたNR(又はAcONR)は、前記溶媒中に不溶であって、沈殿するのに対して、Catは可溶である。この場合には、NR(又はAcONR)は、濾過によって単離されることができる。
【0037】
実施形態II:溶媒は、NR(又はAcONR)及びCatが両方とも前記溶媒中に可溶であるように選択される、しかしながら、工程(A)において得られたNR(又はAcONR)は、前記溶媒中に可溶であるのに対して、Catは不溶であって、沈殿する。この場合には、NR(又はAcONR)は、既知の技術によって上澄みから単離されることができる。
【0038】
実施形態III:溶媒は、工程(A)のNR及びNR(又はAcONR及びAcONR)が両方とも前記溶媒中に溶解しないのに対して、Cat及びCatが両方とも可溶であるように選択される。この場合には、NR(又はAcONR)は、例えば、濾過によって単離されることができる。実施形態IIIは、Catが上記に規定されたような酸であって、好ましくは、溶媒がアルコールである場合に、特に良好な結果を与える。
【0039】
実施形態IV:溶媒は、工程(A)のNR及びNR(又はAcONR及びAcONR)が前記溶媒中に可溶であるのに対して、Cat及びCatが不溶であるように選択される。NR(又はAcONR)は、例えば、その後、既知の技術によって上澄みから単離されることができる。
【0040】
好ましくは、本発明による方法の工程(A)において用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール(例えば、n-プロパノール、iso-プロパノール)若しくはブタノール(例えば、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール)又は2つ以上のそれらの混合物から成る群から選択されるアルコールであって、前記アルコール又はアルコールの混合物が任意に水を含む。
【0041】
結果的に、工程(A)において規定された塩メタセシス反応に用いられる溶媒を適切に選択することによって、望ましい塩が得られ、かつ単離されることができる。
【0042】
好ましくは、工程(A)において、任意に水を含む、上記に規定された一又は複数のアルコールにおけるニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートの懸濁液及び適切な酸は、互いに結合し、工程(A)を実施する、すなわち、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩(ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩をもたらすために既に脱アシル化されていてもよい)が対イオン交換によって形成され、通常は、例えば、濾過によって単離され得るように沈殿する。
【0043】
単離されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩は、一般的に、βアノマーに関して結晶形態、高純度及び高立体選択性で得られる。従って、結晶化合物は、イオン交換体を使用すること又は複雑な精製法及び/又は結晶化法を使用することを必要とせずに、塩メタセシス反応で直接に得られる。これは、例えば、化合物が通常、非晶形で得られ、望ましい純度及び立体異性体を得るために、その後の工程において結晶化する必要がある場合のイオン交換体を介した対イオン交換と比較した、本発明に従った方法の大きな利点である。上記にもかかわらず、本発明の方法によって得られる生成物は、必要に応じて、結晶化工程によってさらに精製され得ると考えられる。
【0044】
好ましくは、工程(A)による塩メタセシス反応は、周囲温度(ambient temperature)、すなわち、5から60℃までの範囲において、好ましくは10~40℃の温度で実施される。
【0045】
NRD-、L-若しくはDL-ハイドロゲンマレート若しくはNRD-、L-若しくはDL-ハイドロゲンタルトレート又はAcONRD-、L-若しくはDL-ハイドロゲンマレート若しくはAcONRD-、L-若しくはDL-ハイドロゲンタルトレートの製造は、以下本明細書中でより詳細に説明されている。
【0046】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはハイドロゲンタルトレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート若しくはハイドロゲンタルトレートの調製
工程(A)において出発物質として用いられるニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレートの塩若しくはハイドロゲンタルトレートの塩又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレートの塩若しくはハイドロゲンタルトレートの塩は、ハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレートとのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート(nonaflate)、フルオロスルホネート(fluorosulfonate)若しくはペルクロレート(perchlorate)又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネート若しくはペルクロレートの対イオン交換を含む塩メタセシスによって製造される。
【0047】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドは、周知の化合物(CAS番号78687-39-5)である。例えば、Leeらは、その化学合成法を開示している(Chem.Commun.,1999,729-730)。前記参考文献はまた、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドの前駆体としてのニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミドの調製も開示している。
【0048】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフレートもまた、周知の化合物(CAS番号445489-49-6)である。ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフレート及びニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートは、例えば、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)の存在下におけるアセトニトリル中で、ニコチンアミドをテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノース(tetra-O-acyl-β-D-ribofuranose)と反応させ、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフレートを提供することによって調製されることができる。次に、アシル基は、既知の方法に従って開裂され、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトリフレートを提供することができる(例えば、Makarovaら:「Syntheses and chemical properties of β-nicotinamide riboside and its analogues and derivatives」、Beilstein J Org Chem 2019、15:401-430;Tanimoriら、「An Efficient Chemical Synthesis of Nicotinamide Riboside(NAR)and Analogues」、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12(2002)1135-1137を参照)。
【0049】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドノナフレート及びニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドノナフレート、それぞれニコチンアミド-β-D-リボフラノシドペルクロレート及びニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドペルクロレートは、トリメチルシリル ノナフルオロブタンスルホネート(CAS番号68734-62-3)、それぞれトリメチルシリル ペルクロレート(CAS番号18204-79-0)の存在下におけるアセトニトリルなどの溶媒中で、ニコチンアミドをテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースと反応させ、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドノナフレート、それぞれペルクロレートを提供することによって調製されることができる。次に、アシル基は、既知の方法に従って開裂され、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドノナフレート、それぞれペルクロレートを提供することができる。
【0050】
ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド及びニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドヨージド及びニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、それぞれニコチンアミド-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネート及びニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネートは、トリメチルシリルクロリド(CAS番号75-77-4)、トリメチルシリルヨージド(CAS番号16029-98-4)、それぞれトリメチルシリルフルオロスルホネート(CAS番号3167-56-4)の存在下におけるアセトニトリルなどの溶媒中で、ニコチンアミドをテトラ-O-アシル-β-D-リボフラノースと反応させ、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ヨージド及びフルオロスルホネートを提供することによって調製されることができる。次に、アシル基は、既知の方法に従って開裂され、それぞれ、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド、ヨージド及びフルオロスルホネートを提供することができる。
【0051】
ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドクロリド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドヨージド、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドトリフルオロメタンスルホネート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドノナフルオロブタンスルホネート、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドフルオロスルホネート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドペルクロレートは、既知であるか、それとも上述のような第2の態様による方法の工程(A)において用いられるそれぞれのハイドロゲンマレート及びハイドロゲンタルトレートを製造するために、既知の方法に従って調製されることができる。
【0052】
本発明による方法の工程(A)において用いられるハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレートを得るために、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネート若しくはペルクロレート又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドブロミド、クロリド、ヨージド、トリフレート、ノナフレート、フルオロスルホネート若しくはペルクロレートは、塩メタセシス反応において、ハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレートの塩と反応することができる。
【0053】
そのアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩などは、特に有用であって、例えば、トリエチルアンモニウム塩又はトリブチルアンモニウム塩である。
【0054】
本明細書中で用いられるとき、「ハイドロゲンマレート」という用語は、モノカルボキシレートを意味する。好ましくは、ハイドロゲンマレートは、D-、L-又はDL-立体異性体である。本明細書中で用いられるとき、「ハイドロゲンタルトレート」は、モノカルボキシレートを意味する。好ましくは、ハイドロゲンタルトレートイオンは、D-、L-又はDL-立体異性体である。
【0055】
ハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレートのNR又はAcONR D-、L-又はDL-立体異性体の調製は、本発明による方法が高収率で、かつ結晶形態で、これは、塩の取り扱い及びさらなる処理を考慮して特に有利であるが、これらの化合物を有益に提供することを可能にさせるため、有利である。
【0056】
通常は、結晶化合物は、すでにイオン交換体を使用すること又は複雑な精製法及び/又は結晶化法を使用することを必要とせずに、塩メタセシス反応で直接に得られる。例えば、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド(NRBr)から出発し、下記の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート及びニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、非常に高い純度で塩メタセシスを介して得られる:
【表1】
【0057】
好ましい実施形態において、第1の態様による方法の工程(A)において用いられる結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレートは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンマレートである。この化合物は、実質的に以下の表1において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図1において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられることができる:
【表2】
【0058】
さらに好ましい実施形態において、第1の態様による方法の工程(A)において用いられる結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレートは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートである。この化合物は、実質的に以下の表2において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図2において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられることができる:
【表3】
【0059】
さらに好ましい実施形態において、第1の態様による方法の工程(A)において用いられる結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレートは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンマレートである。この化合物は、実質的に以下の表3において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図3において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられることができる:
【表4】
【0060】
さらに特に好ましい実施形態において、第1の態様による方法の工程(A)において用いられる結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレート一水和物である。この化合物は、実質的に以下の表4において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図4において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられることができる:
【表5】
【0061】
さらに好ましい実施形態において、第1の態様による方法の工程(A)において用いられる結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートである。この化合物は、実質的に以下の表5において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図5において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられることができる:
【表6】
【0062】
さらに好ましい実施形態において、第1の態様による方法の工程(A)において用いられる結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンタルトレートである。この化合物は、実質的に以下の表6において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図6において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられることができる:
【表7】
【0063】
さらに好ましい実施形態において、第2の態様による方法の工程(A)において用いられる結晶性ニコチンアミド-2,3,5-トリアセチル-O-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、ニコチンアミド-2,3,5-トリアセチル-O-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートである。この化合物は、実質的に以下の表7において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図7において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられることができる:
【表8】
【0064】
さらに好ましい実施形態において、第2の態様による方法の工程(A)において用いられる結晶性ニコチンアミド-2,3,5-トリアセチル-O-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、ニコチンアミド-2,3,5-トリアセチル-O-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートである。この化合物は、実質的に以下の表8において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図8において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられることができる:
【表9】
【0065】
さらに好ましい実施形態において、第1の態様による方法の工程(A)において用いられる結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンタルトレートは、無水ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートである。この化合物は、実質的に以下の表9において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図9において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられることができる:
【表10】
【0066】
さらに好ましい実施形態において、本発明による方法において得られる結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩は、結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートである。この化合物は、実質的に以下の表10において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図10において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられることができる:
【表11】
【0067】
対イオン交換のために酸を用いるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩、それぞれニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩の塩メタセシス
本発明の発明者らは、上記の反応スキームが

NR + Cat → NR + Cat
AcONR + Cat → AcONR + Cat

CatがHであって、Hがリンゴ酸又は酒石酸より強い酸である場合に、NR塩を調製するために、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NR、それぞれニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩AcONRのさらなる塩に一般化され得るということをさらに開示している。
【0068】
その結果、別の態様において、本発明は、以下の工程(A):
(A)ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NRXを酸Hにかけ、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NR及びHを提供すること、前記HのpK<HのpKであること、
を含む、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NRからニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NRを製造する方法に関する。
【0069】
その後の工程において、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NRは、既知の方法に従って単離されることができる。
【0070】
工程(A)による反応は、NRが用いられる溶媒中でNRXより低い可溶性である場合に、さらに支持されることができる。
【0071】
反応はまた、出発物質としてニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩AcONRを用いて実施されることができ、前記脱アシル化が同時に行われる。
【0072】
従って、さらなる態様によれば、本発明は、以下の工程(A):
(A)ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩AcONRを酸Hにかけ、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NR及びHを提供すること、前記HのpK<HのpKであること、
を含む、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩AcONRからニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NRを製造する方法に関する。
【0073】
その後の工程において、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NRは、既知の方法に従って単離されることができる。
【0074】
AcONRXにおけるアシルは、上記に規定されるような定義を有しており、すなわち、アシルは、アルキルカルボニル、アリールカルボニル及びヘテロアリールカルボニルから、好ましくはC1-10アルキルカルボニル及びベンゾイルから独立して選択され、より好ましくはアセチルであって、前記アシルは、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6チオアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、NH(C1-6アルキル)、N(C1-6アルキル)及びSON(C1-6アルキル)から選択される一又は複数の置換基で任意に、独立して置換される。
【0075】
上記に開示されたように、好ましくは、反応は、メタノール、エタノール、プロパノール(例えば、n-プロパノール、iso-プロパノール)、若しくはブタノール(例えば、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert.-ブタノール)又は2つ以上のそれらの混合物から成る群から選択されるアルコール中で実施され、前記アルコール又はアルコールの混合物が任意に水を含む。
【0076】
好ましくは、工程(A)において、上記に規定された、任意に水を含む一又は複数のアルコール中で、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩の懸濁液及び適切な酸は、互いに結合し、工程(A)を実施する、すなわち、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩が対イオン交換によって形成され、通常は、例えば、濾過によって単離できるように沈殿する。
【0077】
好ましくは、酸Hは、出発物質ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩NRX又はニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシド塩AcONRと比較してモル過剰の状態で使用される。好ましくは、1.1モル当量より多い酸Hが使用され、さらに好ましくは、少なくとも1.2又は1.3又は1.4又は1.5当量である。
【0078】
例示的に言及されたことは、ニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボフラノシドトリフレートから出発するニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートの調製であって、p-トルエンスルホン酸(pK=-2.8)に、同様にかけると、前記トリフルオロメタンスルホン酸(triflic acid)(pK=0.23)が形成される。
【0079】
さらに例示的に言及されたことは、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートから出発するニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリド又はニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドの調製であって、塩酸(pK=-6)又は臭化水素酸(pK=-8.9)に、同様にかけると、前記p-トルエンスルホン酸(pK=-2.8)が形成される。
【0080】
対イオン交換のために1つより多い対イオンを用いる、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレート、それぞれニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アシル-β-D-リボフラノシドハイドロゲンマレート又はハイドロゲンタルトレートの塩メタセシス
第1の態様又は第2の態様の特定の実施形態において、本発明は方法を開示しており、前記工程(A)による対イオン交換において、1つより多い対イオンが使用される。
【0081】
好ましくは、第1の態様の一実施形態において、工程(A)による対イオン交換では、1つより多い対イオンが使用される。
【0082】
一実施形態において、2つの対イオンが使用される。
【0083】
特に好ましい実施形態において、対イオンは、クロリド及びヨージドから選択される。
【0084】
本発明者らは、驚いたことに、結果として生じる結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩において、クロリド及びヨージドが共結晶化するということを発見した。
【0085】
本開示において用いられるとき、「共結晶化」という用語は、1つより多い対イオンが、形成されたニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の結晶格子中に組み込まれるということを意味する。
【0086】
さらに驚いたことに、本発明の発明者らは、工程(A)による対イオン交換反応において用いられるクロリドのヨージドに対する比によって決まり、異なるクロリドのヨージドに対する比が、結果として生じる共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩に設定され得るということを発見した。
【0087】
特に、本発明は、共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド(クロリド/ヨージド)塩を開示し、前記クロリドのヨージドに対するモル比は、5:1、3:1、2:1、1.5:1及び1:1である。
【0088】
本明細書中で称されるとき、「クロリドのヨージドに対する比」という用語は、例えば、クロリドのヨージドに対する比が2:1の場合は、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリドの結晶格子において、すべての3番目のクロリドがヨージドに置換されているということを意味する。従って、比は、モル比に関する数値的比率である。
【0089】
例示的に特徴付けられることは、共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド(クロリド/ヨージド)であって、前記クロリド及びヨージドが2:1の比で存在し、以下の表11において、±0.2°2θで提供されるように、あるいは図11において提供されるように、実質的にピークを有する粉末X線回折パターンによって例示的に特徴付けられる:
【表12】
【0090】
その結果、本発明はまた、共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩の結晶形態にも関連しており、前記塩のアニオンがクロリド及びヨージドを含むか、あるいはから成る。
【0091】
実施形態において、クロリドのヨージドに対するモル比は、5:1、3:1、2:1、1.5:1及び1:1である。それぞれの結晶のX線回折パターンは、非常に類似しており、個別のピークの強度のみが異なる。
【0092】
一実施形態において、本発明は、実質的に表11において±0.2°2θで提供されるような、あるいは図11において提供されるようなピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド(クロリド、ヨージド)に関する。
【0093】
共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド(クロリド、ヨージド)は、医薬組成物の栄養補助食品に使用されることができる。
【0094】
その結果、本発明はまた、共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド(クロリド、ヨージド)を含む栄養補助食品又は医薬組成物に関する。
【0095】
下記の実施例は、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0096】
出発物質の調製
実施例1:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドからのニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレート及びニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンタルトレートの調製
実施例1a:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレート
3.90gのL-酒石酸(26.0mmol)は、10mlのメタノール中に撹拌しながら溶解した。無色の溶液は、氷浴で冷却され、3.64mlのトリエチルアミン(26.1mmol)が添加された。わずかに黄色がかった溶液のpHは、おおよそ4~4.5であった。このようにして、15mlの1.73モルのTEA・L-ハイドロゲンタルトレート(TEA=トリエチルアミン)溶液が調製された。
【0097】
5.8gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミド(NR・Br)は、3.5mlの水中に室温で撹拌しながら溶解した。10mlのメタノールが添加された。10mlの上記で調製されたトリエチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレート溶液は、透明無色の溶液に添加された。白色生成物が沈殿し始める。
【0098】
懸濁液は、室温でさらに1時間撹拌された。生成物は、濾過され、メタノールで洗浄され、35℃で真空乾燥した。6.62g(95%)の白色結晶性粉末が得られた;mp:129-130℃;IC:残留ブロミド 0.20%。固体は、必要に応じて、水メタノール(aqueous methanol)から再結晶してもよい。
【0099】
H-NMR(400MHz、DO):3.82(dd、1H、H5’)、3.97(dd、1H、H5’)、4.28(t、1H、H3’)、4.38-4.45(m、2H、H4’、H2’)、4.41(s、2H、2xCHOH、H-タルトレート)、6.17(d、1H、H1’)、8.20(t、1H、H5)、8.90(d、1H、H4)、9.19(d、1H、H6)、9.52(s、1H、H2)。不純物:<1mol%ニコチンアミド;1.2mol%TEA塩:1.19(t、9H)、3.11(q、6H)。溶媒:7.3mol%メタノール:3.25(s、3H)。
【0100】
13C-NMR(100MHz、DO):60.2(C5‘)、69.7(C3‘)、72.8(2xCHOH、H-タルトレート)、77.4(C2‘)、87.6(C4‘)、99.9(C1‘)、128.4(C5)、133.9(C3)、140.4(C2)、142.6(C6)、145.6(C4)、165.8(CONH2)、176.3(2xCOO、H-タルトレート)。不純物:8.2、46.6(TEA)。溶媒:48.9(メタノール)。
【0101】
XRD:結晶質(図5参照)
【0102】
実施例1b:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンタルトレート
下記の表の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩は、上記の方法に類似的に調製された:
【表13】
【0103】
実施例2:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドからのニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレート、D-ハイドロゲンマレート、ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンマレート及びD-ハイドロゲンタルトレートの調製
実施例2a:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレート
5.8gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドは、撹拌すると、10mlのメタノール中に懸濁された。10mlの1.73モルのトリエチルアンモニウム L-ハイドロゲンマレート溶液が添加された。懸濁液は、固体が完全に溶解するまで加熱された。冷却後、白色の固体が沈殿した。懸濁液は、30分間撹拌され、その後、ろ過された。残留物は、メタノールで洗浄され、35℃で真空乾燥した。4.15g(62%)の白色結晶性粉末が得られた。Mp:116.5-117℃.IC:残留ブロミド0.10%。生成物は、必要に応じて、メタノールから再結晶してもよい。
【0104】
H-NMR(400MHz、DO):2.53(dd、1H、CH、H-マレート)、2.72(dd、1H、CH、H-マレート)、3.81(dd、1H、H5’)、3.97(dd、1H、H5’)、4.28(t、1H、H3’)、4.29(dd、1H、CHOH、H-マレート)、4.38-4.45(m、2H、H4’、H2’)、6.17(d、1H、H1’)、8.20(t、1H、H5)、8.90(d、1H、H4)、9.19(d、1H、H6)、9.52(s、1H、H2)。不純物:<1mol%ニコチンアミド;0.7mol%TEA塩:1.19(t、9H)、3.11(q、6H)。溶媒:6.3mol%メタノール:3.25(s、3H)。
【0105】
13C-NMR(100MHz、DO):40.0(CH、H-マレート)、60.2(C5‘)、68.5(CHOH、H-マレート)、69.7(C3‘)、77.4(C2‘)、87.7(C4‘)、99.9(C1‘)、128.4(C5)、133.9(C3)、140.4(C2)、142.6(C6)、145.6(C4)、165.7(CONH2)、176.3(COO、H-マレート)、179.0(COO、H-マレート)。溶媒:48.9(メタノール)。
【0106】
XRD:結晶質(図2参照)
【0107】
実施例2b:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンマレート、実施例2c:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド DL-ハイドロゲンマレート及び実施例2d:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレート
下記の表の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド塩は、上記の方法に類似的に調製された:
【表14】
【0108】
実施例3:水からのニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレートの再結晶によるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレート一水和物の調製
図9のXRDを有する2.0gのニコチンアミド-β-D-リボフラノシド D-ハイドロゲンタルトレート(本明細書中で無水物と呼ばれる)は、9mlの水中に溶解した。70mlのメタノールは、無色の溶液に攪拌しながら添加された。約1分後、白い結晶が沈殿した。1時間後、形成された懸濁液が濾過された。残留物は、メタノールで洗浄され、35℃で真空乾燥した。1.54g(77%)の白色結晶性粉末の一水和物が得られた。含水率:4.24%(カール・フィッシャー法(K.Fischer)によって決定された);Mp.:115-116℃;IC:残留ブロミド:<0.01%。XRD:結晶質(図4参照)。
【0109】
実施例4:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド-2,3,5-トリアセテート(nicotinamide-β-D-ribofuranoside-2,3,5-triacetate)ブロミドからの塩メタセシスを介したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド-2,3,5-トリアセテート L-ハイドロゲンタルトレート及びニコチンアミド-β-D-リボフラノシド-2,3,5-トリアセテート D-ハイドロゲンタルトレートの調製
実施例4a:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド-2,3,5-トリアセテート L-ハイドロゲンタルトレート
3.90gのL-酒石酸は、撹拌すると、10mlのメタノール中に溶解した。溶液が0~5℃に冷却された。3.64mlのトリエチルアミンが添加された。pH値は4.1であった。15mlの1.73モルのトリエチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレート溶液が得られた。
【0110】
8.0gのニコチンアミド-2,3,5-トリ-O-アセチル-β-D-リボシドブロミドは、撹拌すると、メタノール10ml中に懸濁された。10mlの上記で生成されたトリエチルアンモニウム L-ハイドロゲンタルトレート溶液が添加された。白色結晶性粉末がゆっくりと沈殿し始めた。濾過後に得られた残留物は、35℃で真空乾燥した。6.00g(65.2%)の白色結晶性粉末が得られた。Mp.128℃;IC:残留ブロミド<0.1%。
【0111】
H-NMR(400MHz、DO):2.08、2.12、2.15(3xs、3x3H、COCH)、4.43(s、2H、2xCHOH、H-タルトレート)、4.52(m、2H、H5’)、4.88(m、1H、H4’)、5.44(t、1H、H3’)、5.55(dd、1H、H2’)、6.58(d、1H、H1’)、8.27(t、1H、H5)、8.99(d、1H、H4)、9.20(d、1H、H6)、9.43(s、1H、H2)。不純物:<0.1mol%ニコチンアミド;0.6mol%TEA塩:1.21(t、9H)、3.13(q、6H)。溶媒:2mol%メタノール:3.27(s、3H)。
【0112】
13C-NMR(100MHz、DO):19.8、19.9、20.2(3xCOCH)、62.6(C5‘)、69.4(C3‘)、72.8(2xCHOH、H-タルトレート)、76.3(C2‘)、82.6(C4‘)、97.3(C1‘)、128.6(C5)、134.2(C3)、140.4(C2)、143.1(C6)、146.2(C4)、165.5(CONH2)、172.3、172.4、173.3(3xCO)、176.3(2xCOO、H-タルトレート)。
【0113】
XRD:結晶質(図7参照)。
【0114】
実施例4b:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシド-2,3,5-トリアセテート D-ハイドロゲンタルトレート
生成物は、D-酒石酸を用いて実施例4aに類似的に調製された。XRDは図8に示されている。
【0115】
実施例5:硫酸を用いるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド-2,3,5-トリアセテート L-ハイドロゲンタルトレートの脱アシル化及びトリエチルアミンを用いる中和
メタノール中の希硫酸の調製:27gのメタノールが0℃に冷却された。3.00gの硫酸は、攪拌しながら添加され、10%メタノール硫酸(methanolic acid)をもたらした。
【0116】
ニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L-ハイドロゲンタルトレートの脱アシル化:3.00gのニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテート L-ハイドロゲンタルトレートは、撹拌しながら、15mlのメタノール中に懸濁された。11.7gの上記のメタノール硫酸の添加後に、黄色がかった溶液が生成された。室温で5日間撹拌した後に、薄層クロマトグラフィーによって検出されたように、生成物及び不純物としてニコチンアミドのみが存在した。
【0117】
トリエチルアミンと中和した後のニコチンアミド-β-D-リボシド(nicotinamide-β-D-riboside)L-ハイドロゲンタルトレートへの変換:1.1mlのトリエチルアミンは、pHを約3.5に調整するために、上記溶液に添加された。0.85gのL-酒石酸が添加された。0.8mlのトリエチルアミンの添加後に、生成物は結晶化し始めた。懸濁液は、さらに1時間撹拌され、その後、冷蔵庫において12時間保管された。形成された結晶は、濾別され(filtered off)、イソプロパノールで洗浄され、30℃で真空乾燥した。126-127℃の融点を有する1.01g(44.2%)の白色結晶性粉末が得られた。
【0118】
H-NMR(400MHz、DO):3.82(dd、1H、H5’)、3.96(dd、1H、H5’)、4.27(t、1H、H3’)、4.37-4.45(m、2H、H4’、H2’)、4.42(s、2H、2xCHOH、H-タルトレート)、6.17(d、1H、H1’)、8.20(t、1H、H5)、8.90(d、1H、H4)、9.19(d、1H、H6)、9.52(s、1H、H2)。不純物:3mol%ニコチンアミド:7.85(m、1H)、8.56(m、1H)、8.77(d、1H)、9.00(s、1H);3.4mol%TEA塩:1.18(t、9H)、3.11(q、6H)。溶媒:11.3mol%メタノール:3.25(s、3H)。
【0119】
13C-NMR(100MHz、DO):60.2(C5‘)、69.7(C3‘)、72.8(2xCHOH、H-タルトレート)、77.4(C2‘)、87.6(C4‘)、99.9(C1‘)、128.4(C5)、133.9(C3)、140.4(C2)、142.6(C6)、145.6(C4)、165.8(CONH2)、176.3(2xCOO、H-タルトレート)。不純物:8.2、46.6(TEA塩)。溶媒:48.9(メタノール)。
【0120】
ニコチンアミドリボシドハイドロゲンマレートの結晶塩及びハイドロゲンタルトレートの結晶塩からのニコチンアミドリボシドのブロミド塩、クロリド塩及びp-トシレート塩の調製
実施例6:ニコチンアミド-β-D-リボシドブロミドの調製
実施例6a:出発物質としてニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンマレート及び塩メタセシスを介したイオン交換のために氷酢酸中のハイドロゲンブロミドを用いるニコチンアミド-β-D-リボシドブロミドの調製
5g(12.88mmole)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートは、室温で20mlのメタノール中に懸濁された。4.74g(19.3mmole,1.5equiv.)の氷酢酸(33.3%)中のハイドロゲンブロミド溶液は、1時間以内に白色懸濁液に滴下された。酸の添加中、透明な溶液が生じ、酸の添加が終了した後に生成物が沈殿し始めた。結果として生じる懸濁液は、室温で1時間撹拌され、その後に氷水で冷却しながらさらに1時間撹拌された。得られた結晶の形態における白色固体は、濾別され、その後に14mlのイソプロパノール及び14mlのアセトンで洗浄された。117℃の融点を有する、3.68g(85.3%)の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドが得られた。融点およびIRデータは、既知の方法によって合成されたそれぞれの参考例のデータと一致した。
【0121】
H-NMR(400MHz、DO):3.87(dd、1H、H5’)、4.01(dd、1H、H5’)、4.34(m、1H、H3’)、4.44(q、1H、H4’)、4.52(t、1H、H2’)、6.23(d、1H、H1’)、8.27(t、1H、H5)、8.96(dt、1H、H4)、9.24(d、1H、H6)、9.56(s、1H、H2)。不純物:<1mol%ニコチンアミド;<0.5mol%リンゴ酸。溶媒:2.3mol%メタノール。
【0122】
13C-NMR(100MHz、DO):60.3(C5‘)、69.8(C3‘)、77.4(C2‘)、87.7(C4‘)、100.0(C1‘)、128.5(C5)、134.0(C3)、140.4(C2)、142.7(C6)、145.7(C4)、165.8(CONH)。
【0123】
実施例6b:出発物質としてニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンマレート及び塩メタセシスを介したイオン交換のために臭化水素酸水溶液を用いるニコチンアミド-β-D-リボシドブロミドの調製
5g(12.88mmole)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートは、室温で20mlのメタノール中に懸濁された。3.25g(19.3mmole、1.5equiv.)の臭化水素酸水溶液(濃度48%)は、20分以内に白色懸濁液に滴下された。酸の添加中、透明な溶液が生じ、酸の添加が終了した後に生成物が沈殿し始めた。結果として生じる懸濁液は、室温で10分間撹拌され、その後に氷水で冷却しながらさらに2時間撹拌された。得られた結晶の形態における白色固体は、濾別され、その後に14mlのイソプロパノール及び14mlのアセトンで洗浄された。白色結晶形態において117℃の融点を有する、3.58g(83%)の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドが得られた。融点およびNMRデータは、実施例6aのそれぞれのデータと一致した。
【0124】
実施例7:出発物質としてニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンマレート及び塩メタセシスを介したイオン交換のためにハイドロゲンクロリドを用いるニコチンアミド-β-D-リボシドクロリドの調製
5g(12.88mmole)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートは、20mlのメタノール中に懸濁された。3.20ml(19.4mmole、1.5equiv.)のエタノール中のハイドロゲンクロリド(6.7mole/kg)溶液は、1時間以内に添加された。酸の添加中、透明な溶液が生じ、酸の添加が終了した後に生成物が沈殿し始めた。結果として生じる懸濁液は、室温で1時間撹拌され、その後に氷水で冷却しながらさらに1時間撹拌された。得られた結晶の形態における白色固体は、濾別され、その後に14mlのイソプロパノール及び14mlのアセトンで洗浄された。113℃の融点を有する、2.88g(76.9%)の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリドが得られた。XRDは、既知の方法によって合成された参考例のXRDと一致した。
【0125】
実施例8:出発物質としてニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンマレート及び塩メタセシスを介したイオン交換のためにp-トルエンスルホン酸を用いるニコチンアミド-β-D-リボシドトシレートの調製
50g(128.8mmole)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートは、250mlのメタノール中に懸濁された。36.8g(193mmole、1.5equiv.)のp-トルエンスルホン酸(一水和物として)が添加された。透明な溶液が得られた。溶媒は、40℃で、真空の状態で部分的に蒸発し、そこで、生成物が沈殿し始めた。500mlのエタノールが残留物に添加された。結果として生じる懸濁液は、室温で1時間撹拌された。得られた結晶の形態における白色固体は、濾別され、その後に140mlのイソプロパノール及び140mlのアセトンで洗浄された。124℃の融点を有する、49.8g(90.7%)の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートが得られた。
【0126】
H-NMR(400MHz、DO):3.81(dd、1H、H5’)、3.96(dd、1H、H5’)、4.27(m、1H、H3’)、4.40(m、2H、H4’、H2’)、6.13(d、1H、H1’)、8.12(t、1H、H5)、8.80(dt、1H、H4)、9.13(d、1H、H6)、9.46(s、1H、H2);トシレート:2.26(s、3H、CH3)、7.21(d、2H)、7.52(d、2H)。不純物:<1mol%ニコチンアミド;リンゴ酸は見えない!溶媒:1mol%メタノール、0.3mol%エタノール。
【0127】
13C-NMR(100MHz、DO):60.2(C5‘)、69.8(C3‘)、77.4(C2‘)、87.7(C4‘)、99.9(C1‘)、128.3(C5)、133.7(C3)、139.5(C2)、142.3(C6)、145.5(C4)、165.5(CONH2);トシレート:20.5(CH3)、125.3(2C)、129.4(2C)、140.2、142.5。
【0128】
XRD:結晶質(図10
【0129】
DSC:129から132℃までのピーク
【0130】
メタノールへの溶解性
1gのNR・Brが溶解のために50mlのメタノールを必要とし、1gのNR・Clが溶解のために40mlのメタノールを必要とする一方で、1gのNR・p-トシレートは、15mlのメタノールのみを必要とする。NR・Clと比較した、NR・p-トシレートのより優れた溶解性は、溶解性が必要である場合の利用のために有利であると考えられる。
【0131】
実施例9:ニコチンアミド-β-D-リボシドブロミドの調製
実施例9a:出発物質としてニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレート及びイオン交換のために氷酢酸中のハイドロゲンブロミドを用いるニコチンアミド-β-D-リボシドブロミドの調製
5g(12.37mmole)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートは、室温で25mlのメタノール中に懸濁された。氷酢酸中の4.55g(18.6mmole、1.5equiv.)のハイドロゲンブロミド溶液(33.3重量%)は、1時間以内に白色懸濁液に滴下された。懸濁液は、室温で3時間撹拌され、その後に氷水で冷却しながらさらに1時間撹拌された。得られた結晶の形態における白色固体は、濾別され、その後に14mlのイソプロパノール及び14mlのアセトンで洗浄された。118℃の融点を有する、3.20g(77.2%)の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドが得られた。この生成物は、実施例6からの生成物と一致した。
【0132】
実施例9b.出発物質としてニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレート及び塩メタセシスを介したイオン交換のために臭化水素酸水溶液を用いるニコチンアミド-β-D-リボシドブロミドの調製
反応は、実施例6bに類似的に実施された。収率79.4%。融点117~118℃。この生成物は、実施例9aからの生成物と一致した。
【0133】
実施例10:出発物質としてのニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレート及び塩メタセシスを介したイオン交換のために塩酸を用いるニコチンアミド-β-D-リボシドクロリドの調製
5g(12.37mmole)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートは、20mlのメタノール中に懸濁された。1.75ml(18.5mmole、1.5equiv.)の塩酸(32.5%)は、1時間以内に添加された。酸の添加中、透明な溶液が生じ、酸の添加が終了した後に生成物が沈殿し始めた。結果として生じる懸濁液は、室温で1時間撹拌され、その後に氷水で冷却しながらさらに1時間撹拌された。得られた結晶の形態における白色固体は、濾別され、その後に14mlのイソプロパノール及び14mlのアセトンで洗浄された。114℃の融点を有する、1.91g(53.1%)の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリドが得られた。この生成物は、実施例7からの生成物と一致した。
【0134】
実施例11:出発物質としてニコチンアミド-β-D-リボシド L-ハイドロゲンタルトレートを用いるニコチンアミド-β-D-リボシドトシレートの調製
5g(12.37mmole)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンタルトレートは、20mlのメタノール中に懸濁された。3.54g(18.6mmole、1.5equiv.)のp-トルエンスルホン酸(一水和物として)が添加された。透明な溶液が得られた。溶媒は蒸発し、5mlのメタノールが油状の残留物に添加された。20mlのイソプロパノールの添加後に、生成物は、沈殿し始めた。結果として生じる懸濁液は、室温で1時間撹拌された。得られた結晶の形態における白色固体は、濾別され、その後に15mlのイソプロパノール及び15mlのアセトンで洗浄された。120℃の融点を有する、4.33g(82.2%)の結晶性ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートが得られた。XRDは、実施例8からの生成物のXRDと一致した。
【0135】
実施例12:ニコチンアミドリボシドトシレートの調製
実施例12a:メタノール中のトリアセチルニコチンアミドリボシドのトリフレート塩からのニコチンアミドリボシドトシレートの調製
4g(7.54mmole)のニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3,5-トリアセテートトリフレートは、室温で6mlのメタノール中に溶解した。1.74g(9.05mmol;1.2equiv.)のp-トルエンスルホン酸(一水和物として)が添加された。黄色の溶液は、室温で一晩中攪拌され、前記遊離物が沈殿し始めた。固体は、濾別され、イソプロパノールで2回洗浄された。収量1.22g(38%)、融点:126℃。
【0136】
H-NMR(400MHz、DO):3.80(dd、1H、H5’)、3.94(dd、1H、H5’)、4.26(m、1H、H3’)、4.38(m、2H、H4’、H2’)、6.12(d、1H、H1’)、8.08(t、1H、H5)、8.78(dt、1H、H4)、9.11(d、1H、H6)、9.42(s、1H、H2);トシレート:2.23(s、3H、CH3)、7.17(d、2H)、7.49(d、2H)。不純物:<1mol%ニコチンアミド。溶媒:0.5mol%メタノール、0.1mol%iso-プロパノール。
【0137】
13C-NMR(100MHz、DO):60.2(C5‘)、69.8(C3‘)、77.5(C2‘)、87.7(C4‘)、99.9(C1‘)、128.3(C5)、133.8(C3)、139.5(C2)、142.2(C6)、145.4(C4)、165.4(CONH2);トシレート:20.5(CH3)、125.3(2C)、129.4(2C)、140.1、142.5。
【0138】
実施例12b: エタノール中のトリアセチルニコチンアミドリボシドのトリフレート塩からのニコチンアミドリボシドトシレートの調製
4g(7.54mmole)のニコチンアミド-β-D-リボシド-2,3-5-トリアセテートトリフレートは、室温で12mlのエタノール中に溶解した。2.90g(15.1mmole;2equiv.)p-トルエンスルホン酸(一水和物として)が添加された。黄色の溶液は、室温で一晩中撹拌され、そこで、遊離物が沈殿し始めた。固体は、濾別され、イソプロパノールで2回洗浄された。収量2.03g(63%)、融点:102℃。
【0139】
H-NMR(400MHz、DO):3.78(dd、1H、H5’)、3.93(dd、1H、H5’)、4.24(m、1H、H3’)、4.36(m、2H、H4’、H2’)、6.10(d、1H、H1’)、8.06(t、1H、H5)、8.73(dt、1H、H4)、9.08(d、1H、H6)、9.40(s、1H、H2);トシレート:2.21(s、3H、CH3)、7.14(d、2H)、7.47(d、2H)。不純物:4mol%ニコチンアミド及び糖類領域(sugar region)における不純物。溶媒:2.7mol%エタノール、8.5mol%iso-プロパノール、4.4mol%アセトン。
【0140】
13C-NMR(100MHz、DO):60.2(C5‘)、69.8(C3‘)、77.5(C2‘)、87.7(C4‘)、99.9(C1‘)、128.3(C5)、133.6(C3)、139.5(C2)、142.2(C6)、145.4(C4)、165.3(CONH2);トシレート:20.5(CH3)、125.3(2C)、129.4(2C)、140.1、142.4.
【0141】
実施例13a:共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド(クロリド、ヨージド)の調製、前記クロリド及びヨージドが1.5:1の比率で存在する
5g(12.88mmole)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートは、250mlの丸底フラスコにおいて、室温で1.9ml(14.4mmole)のHI(水中で57%)(1.1当量)及びエタノール(0.56当量)中で7.8ml(7.2mmole)の0.92N HClに溶解した。10mlのメタノール及び26mlのエタノールの添加によって、明るい黄色のエマルションが生成され、3mlのメタノールの添加によって、ほぼ完全に再溶解した。非常に遅い結晶化が始まった(結晶化速度は、種晶(seed crystals)の添加によって加速することができる)。懸濁液は、さらに60mlのエタノールで希釈され、冷蔵庫内で一晩保管された。淡黄色の懸濁液は濾過され、得られた固体はエタノールで3度洗浄された。固体は、25℃で真空乾燥した。収量:2.32gの黄色の微結晶性粉末;融点104℃。
【0142】
H-NMR(400MHz、DO):3.87(dd、1H、H5’)、4.01(dd、1H、H5’)、4.34(m、1H、H3’)、4.43(q、1H、H4’)、4.51(t、1H、H2’)、6.23(d、1H、H1’)、8.27(t、1H、H5)、8.95(dt、1H、H4)、9.25(d、1H、H6)、9.55(s、1H、H2)。不純物:<0.5mol%ニコチンアミド;<0.2mol%リンゴ酸。溶媒:0.7mol%エタノール。
【0143】
13C-NMR(100MHz、DO):60.3(C5‘)、69.8(C3‘)、77.4(C2‘)、87.7(C4‘)、100.0(C1‘)、128.5(C5)、134.0(C3)、140.4(C2)、142.7(C6)、145.7(C4)、165.8(CONH2).
【0144】
下記の表は、出発物質として用いられるニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレートが本発明の第1の態様において規定されるような方法の工程(A)に従って、HCl(水中で32.5重量%、それぞれエタノール中で1N HCl)及びHI(水中で57重量%)の混合物にかけられる場合の結果を示す:
【表15】
【0145】
表は、結晶中のヨージド含有量が、対イオン交換に用いられる溶液中のヨージド含有量と相互に関連があるということを示している。しかしながら、一般的な傾向は、クロリド含有量と比較して、溶液中に存在するよりも少ないヨージドが結晶格子内に取り込まれるということである。
【0146】
下記の表は、1℃/minの加熱速度で測定された融点を示す:
【表16】
【0147】
下記の表は、メタノール中のニコチンアミド-β-D-リボフラノシド L-ハイドロゲンマレート及びニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリドと比較した、共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド(クロリド/ヨージド)のgあたりのmL溶媒中の溶解度を示す:
【表17】
【0148】
共結晶した塩の溶解性は、純粋なクロリドのそれよりも優位に優れている。溶解度は、ヨージド含有量を増加させるにつれて増加する。その結果、共結晶化したニコチンアミド-β-D-リボフラノシド(クロリド/ヨージド)は、クロリド/ヨージド比によって決まるオーダーメイドの(tailor-made)溶解度を可能にするはずである。これは、応用の観点から有利である。
【0149】
実施例14:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートからのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドブロミドの調製
実施例12aに従って調製された1.5g(3.52mmole)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートは、50ml丸底フラスコにおいて、7.5mlメタノール中に懸濁された。1.25ml(7.14mmole)のHBr(氷酢酸中で33%)は、室温で添加された。懸濁液が溶解し始めた。残りの固体は、わずかに加温すると溶解した。生成物が沈殿し始めた。懸濁液は、室温で1時間撹拌された。白色の懸濁液は濾過され、得られた固体は、2mlのメタノールで洗浄され、その後に5mlのメタノール及びエタノールの1:1の混合物で洗浄され、最後に5mlのエタノールで洗浄された。固体は、25℃で真空乾燥した。収量:0.77g(65.3%)の白色結晶性固体;融点120.5℃。
【0150】
H-NMR(400MHz、D2O):3.87(dd、1H、H5’)、4.01(dd、1H、H5’)、4.33(m、1H、H3’)、4.44(q、1H、H4’)、4.50(t、1H、H2’)、6.23(d、1H、H1’)、8.26(t、1H、H5)、8.95(dt、1H、H4)、9.24(d、1H、H6)、9.56(s、1H、H2)。不純物:<0.1mol%ニコチンアミド;<0.1mol%残留トシレート。溶媒:0.7mol%メタノール。
【0151】
13C-NMR(100MHz、DO):60.3(C5‘)、69.8(C3‘)、77.4(C2‘)、87.7(C4‘)、100.0(C1‘)、128.5(C5)、134.0(C3)、140.4(C2)、142.7(C6)、145.7(C4)、165.8(CONH2)。
【0152】
実施例15:ニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートからのニコチンアミド-β-D-リボフラノシドクロリドの調製
実施例12aに従って調製された1.5g(3.52mmole)のニコチンアミド-β-D-リボフラノシドトシレートは、50mlの丸底フラスコにおいて、6mlのメタノール中に懸濁された。懸濁液は、60℃に加熱され、そこで、固体が完全に溶解した。1.00ml(10.6mmole)のHCl32.5%が添加された。シーディング(seeding)すると、生成物が沈殿し始めた。懸濁液が室温で3時間撹拌された。白色懸濁液は、濾過され、得られた固体はそれぞれ2mlのエタノールで3度洗浄された。固体は、25℃で真空乾燥した。収量:0.57g(55.8%)の白色結晶性固体;融点119℃。
【0153】
H-NMR(400MHz、D2O):3.84(dd、1H、H5’)、4.00(dd、1H、H5’)、4.30(m、1H、H3’)、4.42(q、1H、H4’)、4.46(t、1H、H2’)、6.20(d、1H、H1’)、8.22(t、1H、H5)、8.92(dt、1H、H4)、9.21(d、1H、H6)、9.54(s、1H、H2)。不純物:<0.1mol%ニコチンアミド;0.9mol%残留トシレート。溶媒:0.6mol%メタノール。
【0154】
13C-NMR(100MHz、DO):60.3(C5‘)、69.8(C3‘)、77.4(C2‘)、87.7(C4‘)、100.0(C1‘)、128.5(C5)、134.0(C3)、140.4(C2)、142.7(C6)、145.7(C4)、165.8(CONH2)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】