(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】極薄膜の製造
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20240118BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240118BHJP
B01D 69/04 20060101ALI20240118BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20240118BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20240118BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D69/00
B01D69/04
B01D69/06
B01D69/10
B01D69/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542594
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022012102
(87)【国際公開番号】W WO2022155190
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パジリエリ、スティーブン、エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】アリスメイル、ザイナブ、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ハラレ、アーデッシュ
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA06
4D006MA31
4D006MB06
4D006MC02
4D006MC03
4D006PA01
4D006PB66
4D006PC80
(57)【要約】
基板に適用された金属箔を含む水素選択性膜。水素選択性膜を製造するためのシステム及び方法は、基板に金属箔を適用するステップと、前記金属箔をアニールするステップと、前記基板上の前記アニールされた金属箔に水素透過性金属を適用するステップと、前記水素透過性金属と前記アニールされた金属箔をアニールして、前記水素透過性金属と前記金属箔の合金を得るステップとを備える。欠陥を有する水素選択性膜を修復するためのシステム及び方法は、前記水素選択性膜の膜材料の外表面に金属箔を適用するステップと、前記金属箔と前記膜材料の金属をアニールして金属箔と前記金属の合金を形成し、前記欠陥を修復するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素選択性膜の製造方法であって、
金属箔を基板に適用するステップと、
前記基板上の前記金属箔をアニールして、前記基板上にアニールされた金属箔を得るステップと、
前記基板上の前記アニールされた金属箔に水素透過性金属を適用するステップと、
前記水素透過性金属と前記アニールされた金属箔をアニールして、前記水素透過性金属と前記金属箔との合金を得るステップであって、前記水素選択性膜は、前記基板上に配置された合金を含む、ステップと、を備える、
方法。
【請求項2】
前記金属箔は、150ナノメートル(nm)未満の厚さを有する金箔を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属箔は、金箔、銀箔、白金箔、又は銅箔であり、
前記金属箔の厚さは、200nm未満であり、
前記基板は、多孔質である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板は、管状支持体又は平面状支持体を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属箔を適用するステップは、手又は工具を用いて、前記金属箔を前記基板に押し付けるステップを含み、
前記基板は、水素透過性であり、
前記基板は、前記水素選択性膜の膜支持体である、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板上の前記金属箔をアニールして、前記アニールされた金属箔を得るステップは、少なくとも500℃の温度で少なくとも5時間行われる、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属箔は、金箔を含み、
前記水素透過性金属は、パラジウムを含み、
前記合金は、金とパラジウムの合金を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水素透過性金属と前記アニールされた金属箔とをアニールして、前記合金を得るステップは、少なくとも500℃の温度で少なくとも5時間行われ、
前記水素透過性金属は、パラジウムを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
水素選択性膜の製造方法であって、
第1の金属を含む金属箔を基板に適用するステップと、
前記基板上の前記金属箔をアニールして、前記基板上にアニールされた金属箔を得るステップと、
第2の金属を含む水素透過性金属を前記アニールされた金属箔に適用するステップと、 前記水素透過性金属と前記アニールされた金属箔をアニールして、前記第1の金属と前記第2の金属の合金を得るステップであって、前記水素選択性膜は、前記基板上に配置された前記合金を含む、ステップと、を備える、
方法。
【請求項10】
前記第1の金属を含む前記金属箔は、金、銀、白金、又は銅を含み、
前記基板は、水素透過性である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記金属箔は、200ナノメートル(nm)未満の厚さを有し、
前記基板は、多孔質であり、
前記基板は、前記水素選択性膜の膜支持体である、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記基板は、管状であり、
前記金属箔を適用するステップは、前記金属箔を前記基板の周囲に放射状に巻き付けるステップを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の金属を含む前記水素透過性金属は、パラジウムを含み、厚さが200ナノメートル(nm)未満である、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の金属は、金を含み、
前記第2の金属は、パラジウムを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
欠陥を有する水素選択性膜を修復する方法であって、
欠陥を有する前記水素選択性膜の膜材料の外表面に金属箔を適用するステップであって、前記膜材料は、水素選択性であり、前記欠陥を有する金属を含む、ステップと、
前記金属箔と前記金属をアニールして、前記金属箔と前記金属の合金を形成し、前記欠陥を修復するステップと、
前記修復をテストするステップと、を備える、
方法。
【請求項16】
前記水素選択性膜は、膜支持体を含み、
前記膜材料は、前記水素選択性膜の外側層を含み、
前記金属箔は、金箔、銀箔、白金箔、又は銅箔を含み、
前記金属箔を適用するステップは、前記欠陥を覆う、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記修復をテストするステップは、前記水素選択性膜の前記膜材料及び膜支持体を通る水素以外のガスの漏れをチェックするステップを含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記合金を形成することによって、前記欠陥を修復するステップを含み、
前記欠陥は、前記膜材料のピンホールを含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記欠陥を修復するステップは、前記ピンホールを前記合金で埋めるステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アニールは、少なくとも500℃の温度で少なくとも5時間行うことを含み、
前記欠陥を修復するステップは、前記合金で前記ピンホールを塞ぐことを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記金属は、パラジウム又はパラジウム合金を含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記金属箔は、金金属箔を含む、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記合金は、金とパラジウムの合金を含む、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アニールは、少なくとも550℃の温度で少なくとも10時間行うことを含む、
請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本出願は、2021年1月12日に出願された米国特許出願第17/147,330号に対する優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、水素選択性膜に関する。
【背景技術】
【0003】
水素は混合ガス流から分離することができる。場合によっては、分離された水素は下流プロセスの原料又は流通用の製品にすることができる。水素は、不純物を除去するために処理されてもよい。水素は、圧力スイング吸着(PSA)、低温蒸留、膜分離などのいくつかの技術を通じて精製できる。
【0004】
水素選択性膜は、混合ガス流から水素を分離して高純度の水素を生成するために利用できる。例えば、パラジウム又はパラジウム合金の薄いフィルムとしての膜を、水素を分離するために使用することができる。
【0005】
膜を介した水素分離の原動力は、圧力勾配であってもよい。例えば、水素を含む高圧供給ガス混合物を、気密に封止された膜の片側に、反対側では比較的低い圧力を維持しながら、適用することができる。
【発明の概要】
【0006】
一態様は、金属箔を基板に適用するステップと、基板上の金属箔をアニールして基板上にアニールされた金属箔を得るステップと、基板上のアニールされた金属箔に水素透過性金属を適用するステップとを含む、水素選択性膜の製造方法に関する。この方法は、水素透過性金属及びアニールされた金属箔をアニールして、水素透過性金属と金属箔との合金を得るステップを含む。水素選択性膜は、基板上に配置された合金を含む。
【0007】
別の態様は、第1の金属を含む金属箔を基板に適用するステップと、基板上の金属箔をアニールして基板上にアニールされた金属箔を得るステップと、第2の金属を含む水素透過性金属をアニールされた金属箔に適用するステップとを含む、水素選択性膜の製造方法である。この方法は、水素透過性金属及びアニールされた金属箔をアニールして、第1の金属と第2の金属との合金を得るステップを含む。水素選択性膜は、基板上に配置された合金を含む。
【0008】
さらに別の態様は、欠陥を有する水素選択性膜を修復する方法に関する。この方法は、欠陥を有する水素選択性膜の膜材料の外表面に金属箔を適用するステップを含む。膜材料には、水素選択性であり欠陥を有する金属が含まれる。この方法は、欠陥を修復するために金属箔と金属をアニールして金属箔と金属の合金を形成し、次いで修復をテストするステップを含む。
【0009】
1つ以上の実装の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載される。他の特徴及び利点は、説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、水素選択性膜の製造において管状基板の周囲に巻き付けられた金属箔を示す図である。
【
図2】
図2は、水素選択性膜の製造において管状基板の周囲に巻き付けられた金属箔を示す図である。
【0011】
【
図3】
図3は、水素選択性膜の製造方法のブロックフロー図である。
【0012】
【
図4】
図4は、欠陥を有する水素選択性膜を修復する方法のブロックフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、水素選択性膜を対象とする。膜を形成するには、金属箔を基板(支持体)上に押し付けて(プレスして)アニールすることによって、高純度の金属箔(例えば、非多孔質)を、水素透過性の基板(例えば、管状又は平面状)に直接適用する。多孔質の基板はセラミック又は金属であってもよい。金属箔は、ゴールドフォイル(金箔)などの金属フィルムであってもよい。金属箔(例えば、金)は、200ナノメートル(nm)未満又は100nm未満の厚さを有してもよい。適用された金属箔のアニール後、水素透過性金属(例えば、パラジウム)の薄層が、基板上のアニールされた金属箔上に適用され(例えば、厚さ200nm未満でコーティング)、アニールされて合金(例えば、パラジウム-金合金)を形成することができ、合金は、水素透過性があり、硫化水素に対して耐性があり、熱安定性と化学的安定性を備える。合金は、膜材料と見なすことができ、例えば400nm未満の厚さを有する。これは、膜材料の厚さが1ミクロン(μm)を超える、例えば5μmから10μmであり、高価な貴金属(例えば、パラジウム)を多量に組み込んだ他の水素選択性膜とは対照的である。本技術の実施形態では、パラジウム又はパラジウム合金膜を金属箔(例えば、金)で覆い、アニールすることによって、既存のパラジウム又はパラジウム合金膜の表面上の欠陥又は細孔を塞ぐためにも使用することができる。
【0014】
したがって、実施形態は、水素選択性膜を製造又は修復するために金属箔を利用することに関するものであってもよい。膜には金属箔が組み込まれている。金属箔は、極薄ゴールドフォイル(ゴールドホイル)であってもよいし、極薄金属シートであってもよい。金属箔としては、例えば、金、銀、白金、銅等が挙げられる。金属箔は、極薄(例えば、200nm未満)であることに加えて、所与の金属において高純度(例えば、純度99.9%以上)であってもよい。
【0015】
金は、銀、プラチナ、銅よりも展性が高いため、より薄い金属シートが得られる。本明細書の実施形態は、金属箔のシート(例えば、金箔又はゴールドフォイル)を適用して基板を覆い、連続した非多孔質膜を形成することができる。示したように、金属箔の厚さは、例えば、200nm未満、150nm未満、又は100nm未満であってもよい。
【0016】
基板は膜支持体として分類することができる。基板は、通常、水素透過性の基板であってもよい。基板又は膜支持体は、多孔質セラミック、多孔質金属、水素透過性金属、又は水素透過性ポリマー、あるいはそれらの任意の組み合わせであってもよい。基板は、例えば、管状、平面状、あるいは不規則な形状であってもよい。
【0017】
上述したように、基板を金属箔で覆うために、金属箔を基板に適用し、アニールしてもよい。アニールは、空気、窒素、水素などのガス中で行うことができる。ガスは加圧されてもよい。一方、アニールは真空下で行うこともできる。
【0018】
次に、パラジウム(及び追加の金属)をゴールドフォイル(アニールされた)上に適用し、空気又は水素中で、高温でアニールして、特定のガス分離能力と改善された特性を備えた合金(例えば、パラジウム-金)を形成することができる。例えば、特定のパラジウム-金合金は水素透過性が高く、硫化水素(H2S)に耐性がある。本発明の技術の別の態様は、既存のパラジウム又はパラジウム合金膜を金箔で覆いアニールすることによって、膜の表面上の欠陥又は細孔を塞ぐことを含んでもよい。新規製作であろうと修復であろうと、膜が形成されると、例えばガスケットやグラファイトフェラル(Graphite ferrule)を備えたコンプレッションフィッティングなどの従来の技術を利用して、膜をガス分離デバイス内に封止(シール)することができる。
【0019】
図1及び
図2は、水素選択性膜の製造において管状基板102の周囲に巻き付けられた金属箔100を示す。
図1は、基板102の周囲に完全に巻き付けられる過程において、基板102の周囲に部分的に巻き付けられた金属箔100を示す。
図2は、時間的に後のものであり、基板102の周囲に巻き付けられた金属箔100を示す。1つ又は複数の金属箔100のシートが管状基板102の周りに巻き付けられてもよい。管状基板102は、管状支持体又は管状膜支持体と呼ばれることがある。
図1-2は管状基板を示しているが、本技術は平面状又は他の幾何学的形状を有する基板にも適用可能である。
【0020】
管状基板102は壁104と内部空洞106を有する。壁104は基板材料であり、典型的には多孔質であり得る。管状基板102は、一般に、水素透過性基板とすることができる。壁104は、特定の壁厚を有してもよい。壁104は、特定の外径及び/又は特定の内径を有してもよい。内部空洞106は、ボア(穴)又はルーメン(内腔)と見なし得る。内部空洞106は、形成される水素選択性膜の内腔であってもよい。
【0021】
水素選択性膜の製造において、金属箔100は、基板壁104の外側表面108(外径)に適用される(そして、その上に巻き付けられるように示されている)。外側表面108は、管状基板102の外側表面又は外表面でもあり得る。
【0022】
特定の実施形態では、金属箔100は、150nm未満又は100nm未満の厚さを有する金箔である。金属箔(例えば、金箔)のシートは、包むことによって水素透過性基板102上に適用され、手又は工具を用いて金属箔100を基板102上に押し付けられて適用されてもよい。金属箔100は、その基板(典型的には紙)から、例えばブラシを利用して、膜基板102上に転写されてもよい。実装によっては、続いて、先端がメノウのバニシングツール(agate-tipped burnishing tool)を使用して、基板102の表面108上の薄いフォイル(ホイル)を平滑にして、密着性を高めることができる。適用される金属箔100が複数のシートの場合、シートの累積厚さは、例えば、200nm未満、150nm未満、又は100nm未満であってもよい。さらに、金属箔100は、金属箔100が200(
図2参照)で重なって貼り付くように適用されてもよい。換言すれば、金属箔100の重なり合う端部202、204(参照番号200で示す)は、互いに貼り付く可能性がある。第1の(外側)端部202は、第2の(内側)端部204と重なっている。端部202と端部204は、互いにくっつくことができる。その後、(例えば、空気中で)加熱すると、金属箔100はそれ自体が拡散接合してハーメチックシール(気密シール)を形成することができる。換言すれば、2つの重なり合う部分202、204は、互いに拡散接合してハーメチックシールを形成することができる。
【0023】
この重なり部分202、204を拡散接合するための加熱は、基板102に適用された金属箔100のアニールの際に行ってもよい。基板102上の金属箔100のアニールは、例えば、少なくとも550℃(又は少なくとも600℃)の温度で、又は、500℃から700℃の範囲の温度で、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、又は少なくとも16.5時間、又は6時間から24時間の範囲の期間で、行ってもよい。実装によっては、アニールは空気中で行われる。アニールは、例えば、オーブン(例えば、工業用オーブン)又は炉(例えば、直火式ヒーター)内で行われてもよい。下層の基板102に適用された金属箔100を有する構造体が、オーブン又は炉内に配置され、特定の期間でアニール温度にさらされてもよい。
【0024】
巻き付けてプレスしアニールして、金属箔100フィルムを多孔質支持体102の表面108上に形成した後、パラジウムなどの水素透過性金属をアニールした金属箔100フィルム上に適用してもよい。物理蒸着(例えば、マグネトロンスパッタリング又は電子ビーム蒸着)、化学蒸着、無電解めっき、又は電気めっきなどの金属蒸着技術を使用して、アニールされた金属箔100フィルムを、パラジウムなどの水素透過性金属の薄層(例えば、200nm未満)でコーティングすることができる。薄層の水素透過性金属(不図示)は、アニールされた金属箔100の外側表面206に適用されてもよい。パラジウム箔又はパラジウム合金箔もまた適用されてもよい。
【0025】
得られた二層フィルムである、水素透過性金属(例えば、パラジウム)とその下にあるアニールされた金属箔100(例えば、金)との組み合わせが、その後アニールされる。このアニールは、水素透過性金属のアニールと金属箔100フィルムの再アニールである。二層フィルムのアニール条件は、金属箔100の初期アニールの条件と同様であってもよい。この二層フィルム(例えば、アニールされた金属箔100の層上の水素透過性金属の層)のアニールは、例えば、少なくとも550℃(又は少なくとも600℃)の温度で、6時間から24時間の範囲の期間で実行されてもよい。アニール温度は500℃から700℃の範囲であってよい。アニールの期間は、少なくとも5時間、少なくとも12時間、又は少なくとも16.5時間であってもよい。示したように、アニールは、例えばオーブン又は炉内で実行することができる。
【0026】
パラジウムのような水素透過性金属の場合、二層のアニール中にパラジウム合金を形成することができる。金属箔100が金箔である場合、パラジウム合金はパラジウム-金合金とすることができる。実装では、パラジウム合金は、より高い水素透過性及び/又はより優れた熱的及び化学的安定性など、純粋なパラジウムよりも優れた特性を有することができる。合金に追加の合金材料(又は追加元素)が必要な場合や、膜内の欠陥を封止するために、パラジウム合金の上に金属箔の追加層を適用してもよい(再度アニールを受ける構造)。
【0027】
最後に、アニールに関して、金属箔100の初期アニールは、金属箔100がそれ自体と重なり合う箇所200で金属箔100自体に拡散接合して漏れを封止するような温度及び期間で実施してもよい。アニールプロセスはまた、金属箔100が剥がれ落ちないように、金属箔100が基板に結合することを促進することもできる(又は、膜の修復又は処理において、金属箔が既存のパラジウムフィルム上に適用される場合、金属箔がパラジウム又はパラジウム合金に結合することを促進することもできる)。アニールは空気中で行ってもよい。前述の二層(二重層)又は多層のその後のアニールは、例えば、空気又は水素下、高温及び高圧(例えば、少なくとも550℃及び少なくとも30バール)で実行されて、均質な合金(例えば、Pd-Au合金)フィルムを形成することもできる。再度、このアニール温度及び期間は、例えば、500℃から700℃で6時間から24時間であってもよい。
【0028】
要約すると、水素選択性膜は、金属箔を基板に適用し、金属箔をアニールし、水素透過性金属をアニールされた金属箔に適用し、その後アニールすることによって形成することができる。水素選択性膜は、ガス混合物から水素を分離するために利用することができる。例えば、膜は、膜の周りにハーメチックシールを形成するために、グラファイトフェラルを備えたコンプレッションフィッティングなどを介してガス搬送ラインに結合されてもよい。作動のために膜を接続及び封止する他の形態も適用可能である。さらに、さまざまなシステムが水素選択性膜を使用することができる。
【0029】
薄く、一般的に欠陥のない水素分離膜は有益であり得る。水素を効率的に分離・精製することは、水素製造、精製、化学製品製造、アンモニア製造、製鉄、半導体製造などの産業プロセスに有利となり得る。水素を回収するための費用対効果の高い膜は、そのような実施の経済的及び環境的なサステナビリティ(持続可能性)を高める可能性がある。高い透過性と高い分離係数を備えた水素分離膜(水素選択性膜)は、産業用モジュールの需要を満たすために、サイズ(長さ及び表面積など)と量の両方をスケールアップできる。
【0030】
示されているように、本明細書に開示される本技術の実施形態は、水素分離(水素選択性)膜の製造に利用される高価な金属(例えば、パラジウム)の量を実質的に削減することができ、したがって望ましい可能性がある。対照的に、パラジウム及びパラジウム合金で構成される自立型金属膜及び支持された薄いフィルムの膜は、膜内の欠陥(ピンホールなど)の数を減らすために、一般に1μmより厚く、典型的には5μmから10μmの厚さである。さらに、本実施形態のより薄い膜は、材料コストの節約に加えて、膜を通る水素流量(拡散速度)が一般に膜の厚さに反比例するため、性能も向上させることができる。さらに、製造技術は拡張可能であり、産業規模の水素分離モジュールに組み込むための大きな膜表面積を製造することができる。
【0031】
支持された薄いフィルムのパラジウム膜は、蒸着又はメッキなどによって多孔質基板上にパラジウムを直接コーティングすることによって製造することができる。しかしながら、基板(支持体)の細孔を覆うためには、最大の細孔を橋渡すのに十分な量のパラジウム金属が堆積される。対照的に、本明細書の実施形態は、パラジウムが基板に直接適用されるのではなく金属箔に適用されるため、より少量(例えば、はるかに少量)のパラジウムを適用することができる。連続フォイルとしての金属箔が(パラジウムの代わりに)基板に直接適用される。極薄の金属箔が細孔をわたり細孔を覆う。したがって、(金属上に)堆積できるパラジウムの量は通常よりも少なくなる。さらに、金属表面は導電性であるため、適用された極薄金属フィルムの存在により、電気めっきを利用したパラジウム及びパラジウム合金の堆積を容易にすることができる。電気めっきは、パラジウムとその後の別の金属との逐次堆積、又はパラジウムと別の金属との共堆積などによって行ってもよい。支持された薄いフィルムのパラジウム膜(水素選択性膜)の製造において、多孔質基板上、又は多孔質基板上に形成されたアニールされた金属箔(例えば、金)上にパラジウムをコーティングする技術には、物理蒸着(例えば、スパッタリング又は電子ビーム蒸着)、化学蒸着、無電解めっき、及び電気めっきなどが含まれてもよい。
【0032】
パラジウムベース(Pdベース)の膜は、高い選択性と良好な透過性を実証している。しかし、295℃未満で水素が存在すると、純粋なパラジウム膜は脆くなり、β-水素化物相転移により断裂しやすくなることがある。水素脆化の影響を軽減するために、Pdベースの膜は、金(Au)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、又はインジウム(In)と合金化されることがよくある。合金化することでパラジウム(Pd)の使用量が減り、物理的強度が高まる。さらに、Pd合金膜に対する主な課題は、高温で使用され、膜を汚染することのできる、硫化水素(H2S)及び硫化カルボニル(COS)などの硫黄(S)-含有化合物の存在である。PdをCu、Au、Pt、又はIn/Ruと合金化すると、膜の耐硫黄性が向上する。膜の水素透過性、化学的及び熱的安定性も、PdをAg、Cu、Au、Pt、In、Ru、Y、Rhなどの元素と合金化することによって高めることができる。本明細書の実施形態は、二元、三元、四元などのPd合金に対応することができる。本技術の実装により、多孔質支持体の品質が支持体上に製造されたパラジウム合金膜の品質に及ぼす影響を低減することができる。上記のとおり、極薄の金属箔が通常、大きな欠陥や粗い表面を橋渡しして覆うからである。対照的に、金属箔を支持体に直接適用していない場合は、追加の加工コストが発生する可能性がある。換言すれば、多孔質支持体のそのような大きな欠陥及び粗い表面は、典型的には、選択的パラジウム又はパラジウム合金層を支持体に直接堆積する前に、欠陥の少ないより滑らかな表面を生成するように修復することができる。
【0033】
要約すると、実装では、細孔を覆い、細孔を機密に封止(シール)するためにアニールされる極薄(例えば厚さ100nm未満)の金属フォイル(箔)を適用することによって、多孔質支持体上に薄い、一般に欠陥のない膜を作製することができる。次に、極薄のパラジウム層が薄い金属層上に堆積され、金属箔とパラジウム層との間の金属の相互拡散を促進するためにアニールによって、パラジウム合金が形成される。この技術は、膜の製造に使用される高価な材料(例えば、パラジウムや金)の量を減らすことによって膜のコストを削減することができる。実装では、膜の厚さが減少するため、膜の性能も向上する可能性がある。いくつかの実施形態では、典型的な最先端の支持された薄いフィルムのパラジウム膜の厚さの約1/10から1/100の膜を得ることができる。ここでも、特定の実装では、金箔を管状多孔質アルミナ基板上に直接適用し、その後、基板上に配置された金箔をアニールする。その後、アニールされた金箔にパラジウムの層が適用され、得られた二重層がアニールされて、Pd-Au合金が形成される。このPd-Au合金膜の組成としては、Auの重量%が例えば5%から45%とすることができる。組成物には、少量又は微量のパラジナイト(酸化パラジウム、PdO)、及びフィルム中に依然として存在する少量又は微量の残留元素Au及びPdが含まれる場合がある。組成は、例えばX線回折によって確認することができる。
【0034】
述べてきたように、Pd又はPd合金を適用する前に、金属箔を多孔質基板に直接適用して基板を覆うことができる。非常に薄いフィルムとしての金属箔は、基板の細孔を覆い、封止(シール)することができる。したがって、膜を形成するために適用される高価な貴金属(Pd)の量を、他の製造された最先端の水素選択性膜よりも少なくすることができる。以下で述べるように、実装ではまた、修復時に覆われ封止される既存の膜又は既存の金属フィルムの欠陥、ピンホール又は細孔に対処することも提供する。
【0035】
金属箔(例えば、Au)のアニール、及びその後の、アニールされた金属箔とアニールされた金属箔に適用された追加の金属(例えば、Pd)との多層のアニールに関しては、空気中で行われるアニールが効果的であり、特定の実装では、他のアニール雰囲気又はガスと比較して処理コストが削減される。しかしながら、アニールは、不活性雰囲気、水素雰囲気、又は真空下などで行われてもよい。
【0036】
一実施形態は、水素透過性の膜支持体(例えば、多孔質)を有する水素選択性膜である。膜支持体(例えば、管状、平面状など)は、セラミック、金属、ポリマー、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。水素選択性膜は、膜支持体上に配置された合金を含む。合金には、第1の金属と第2の金属との合金が含まれる。第1の金属(例えば、金)は、膜支持体上に直接配置され、アニールされた金属箔(例えば、金箔)からのものである。第2の金属(例えば、パラジウム)は、アニールされた金属箔上に配置された水素透過性金属(例えば、パラジウム)からのものである。合金(例えば、金パラジウム合金)は、下にある既にアニールされた金属箔上に配置された水素透過性金属の結果として生じる二重層構造をアニールすることによって形成される。合金の厚さは400nm未満とすることができる。合金は、下にある支持体上の膜材料であってもよい。したがって、膜支持体を含まない水素選択性膜の部分は、400nm未満の厚さにすることができる。
【0037】
図3は、水素選択性膜を製造する方法300である。この方法は、参照番号302で示すように、基板を受領してもよい。基板は、水素選択性膜の膜支持体であってもよい。基板は水素透過性であってもよく、多孔質であってもよい。基板は、管状支持体、平面状支持体、又は別の幾何学的形状又は不規則な形状を有する支持体であってもよい。基板は、セラミック、金属、ポリマー、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。基板(膜支持体)は、多孔質セラミック、多孔質金属、水素透過性金属、水素透過性ポリマー、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0038】
ブロック304において、この方法は、基板に金属箔を適用することを含む。金属箔は基板に直接適用されてもよい。適用された金属箔は、基板の少なくとも一部を覆うことができる。金属箔(例えば、金属箔シート)は、基板を覆って、ほぼ連続した非多孔質膜を形成することができる。金属箔は、200nm未満などの極薄であってもよい。 金属箔は、極薄金属フォイル、極薄金属シートとも呼ばれる。金属箔は、400nm未満、200nm未満、150nm未満、又は100nm未満の厚さを有することができる。金属箔は、例えば、金(例えば、ゴールドフォイル)、銀、白金、又は銅であってもよい。金属箔としては、金箔、銀箔、白金箔、銅箔などが挙げられる。金属箔は、所与の金属の99.9重量パーセント(wt%)を超えるなど、高純度であってもよい。例えば、金箔は少なくとも99.9重量%が金であってもよい。適用される金属箔の複数のシートの場合、シートの累積厚さは、例えば、400nm未満、200nm未満、150nm未満、又は100nm未満とすることができる。
【0039】
金属箔を基板に貼り付けるには、金属箔は、その基板(例えば、紙)から膜基板上に転写することができる。金属箔の適用には、手又は工具(例えば、ブラシ)を用いて金属箔を基板に押し付ける(プレスする)ことが含まれてもよい。次に、実装によっては、別のツール(例えば、先端がメノウのバニシングツール)を使用して、基板の表面上の金属箔(薄いフォイル)を滑らかにして、密着性を向上させてもよい。管状膜支持体としての基板の場合、金属箔の適用は、金属箔を基板の周りに放射状に巻き付けることを含んでもよく(例えば、
図1参照)、金属箔の2つの端部が重なってもよい(例えば、
図2参照)。
【0040】
ブロック306において、この方法は、基板上の金属箔をアニールして、基板上にアニールされた金属箔を得ることを含む。金属箔をアニールするために、金属箔及びその下にある基板をオーブン又は炉内に配置してもよい。アニールは、空気、窒素、又は水素中で行ってもよい。ガスは加圧されてもよい。一方で、アニールは真空下で行うこともできる。アニールは不活性雰囲気中で行ってもよい。アニールされた金属箔を得るために基板上の金属箔のアニールは、少なくとも500℃の温度で少なくとも5時間行われてもよい。アニール温度は、例えば、少なくとも550℃、少なくとも600℃、あるいは500℃から700℃の範囲であってもよい。アニール時間は、例えば、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、もしくは少なくとも16.5時間、あるいは6時間から24時間の範囲であってもよい。基板が管状である実装では、アニールにより熱を与えて、前述の2つの重なり合う端部を互いに拡散接合させ、基板の周囲の放射状のアニールされた金属箔を気密に封止(シール)することができる。
【0041】
ブロック304及び306に関しては、金属箔を基板上に直接適用及びアニールすることにより、適用される水素透過性金属の量又は厚さを減少させることができる。換言すれば、極薄金属箔は、一般に水素透過性金属が基板に直接適用されないように、基板を効果的に準備することができる。対照的に、水素透過性金属を基板に直接適用した例(アニールされた金属箔を介在させない)では、より多くの水素透過性金属を使用する可能性がある。
【0042】
ブロック308において、この方法は、基板上のアニールされた金属箔に水素透過性金属を適用することを含む。したがって、水素透過性金属の厚さは、水素透過性金属が基板上のアニールされた金属箔に適用されるのではなく基板に直接適用される場合よりも薄くすることができる。実装では、水素透過性金属(例えば、パラジウム)の薄層(例えば、厚さ200nm未満)が、アニールされた金属箔の外表面上に適用(例えば、コーティング、堆積、メッキなど)される。水素透過性金属としては、例えば、パラジウム又はパラジウム合金が挙げられる。物理的気相成長法(例えば、マグネトロンスパッタリング又は電子ビーム蒸着)、化学蒸着、無電解めっき、又は電気めっきなどの金属蒸着技術を使用して、水素透過性金属を、基板上に配置されアニールされた金属箔に適用することができる。水素透過性金属の2つ以上の層を適用してもよい。
【0043】
ブロック310において、この方法は、水素透過性金属及びアニールされた金属箔をアニールして、水素透過性金属及び金属箔の合金を得ることを含み、製造される水素選択性膜(参照番号312で示される)は、基板上に配置される合金を含む。アニール条件は、上述した金属箔のアニール(ブロック306)のアニール条件と類似又は同一であってもよい。ブロック310で形成された合金は、膜材料とみなされてもよく、例えば、800nm未満又は400nm未満の厚さを有する。金属箔が金箔であり、水素透過性金属がパラジウム又はパラジウム合金である実装では、ブロック310でのアニールによって形成される合金には、金とパラジウムの合金が含まれる。実装によっては、合金は、金及びパラジウムに加えて、合金中に金属を含んでもよい。ブロック310におけるアニールにより、水素選択性膜312が得られる。
【0044】
一実施形態は、水素選択性膜を製造する方法である。この方法は、第1の金属である金属箔を基板に適用することを含む。基板は水素透過性であってもよい。基板は多孔質であってもよい。基板は、水素選択性膜の膜支持体であってもよい。特定の実装では、基板は管状又は円筒形であり、金属箔を適用することは、金属箔を基板の周りに放射状に巻き付けることを含む。第1の金属である金属箔としては、例えば、金、銀、白金、銅などが挙げられる。実装では、金属箔は200nm未満の厚さを有する。この方法は、基板上の金属箔をアニールして、基板上にアニールされた金属箔を得ることを含む。次に、アニールされた金属箔に、第2の金属を含む水素透過性金属を適用する。実装では、第2の金属を含む水素透過性金属はパラジウムを含み、200nm未満の厚さを有する。この方法は、水素透過性金属及びアニールされた金属箔をアニールして、第1の金属と第2の金属(例えば、パラジウム又はパラジウム合金)との合金を得ることを含み、製造される水素選択性膜は、基板上に配置された合金を含む。実装によっては、第1の金属は金であり、第2の金属はパラジウムであるか、パラジウムを含む。温度、期間、雰囲気などのアニール条件は、前述したとおりであってもよい。
【0045】
別の実施形態は、基板に金属箔を適用することを含む、水素選択性膜を製造する方法である。金属箔の貼り付けには、手又は工具を用いて金属箔を基板に押し付けることが含まれてもよい。基板は管状支持体であっても平面状支持体であってもよい。基板は多孔質であってもよい。基板は水素透過性であってもよい。基板は、水素選択性膜の膜支持体であってもよい。金属箔としては、例えば、金箔、銀箔、白金箔、銅箔などが挙げられる。特定の実装では、金属箔は、金を含むか又は金箔である。金属箔は、例えば、200nm未満又は100nm未満の厚さであってもよい。この方法は、基板上の金属箔をアニールして、基板上にアニールされた金属箔を得ることを含む。アニールされた金属箔を得るために基板上の金属箔をアニールすることは、例えば、少なくとも500℃の温度で少なくとも5時間実行されてもよい。この方法は、基板上のアニールされた金属箔に水素透過性金属(例えば、パラジウムを含む)を適用することを含む。この方法は、水素透過性金属とアニールされた金属箔をアニールして、水素透過性金属と金属箔の合金を得ることを含み、水素選択性膜は基板上に配置された合金を含む。実装によっては、水素透過性金属はパラジウムを含み、合金は金とパラジウムの合金を含む。実装では、水素透過性金属及びアニールされた金属箔をアニールして合金を得ることは、少なくとも500℃の温度で少なくとも5時間行われる。
【0046】
述べてきたように、実施形態は、最初に、ガスに対して不透過性の金属箔の非常に薄いフィルム(例えば、厚さ100nm未満)を基板に直接適用してもよい。次に、金属箔をアニールしてもよい。続いて、特定のガス(例えば、水素)に対して透過性のある材料(例えば、パラジウム)の層が、アニールされた金属箔フィルムに適用される。次に、材料層とその下にあるアニールされた金属箔フィルムとを含む構造体がアニールされる。この後者のアニールの実装によっては、Pd-Au合金の水素透過性層が、合金(例えば、パラジウム-金)を生成するためのアニールによって形成される。利点は、従来のものよりもはるかに薄い膜を製造できることであり、これにより、安価であり、水素透過性が高いという二重の利点を得ることができる。さらに、実装では、金属箔又はフィルムの幅の狭いストリップを適用する代わりに、比較的大きい(表面積)金箔の単一の非多孔質シートを利用して、多孔質膜支持体の表面の大部分又はすべてを覆うことができ、それによって、接合部をシールする必要がある重なりの数を減らすことができる。
【0047】
非常に薄く高純度の金属箔製品は容易に市販されている。対照的に、大きな表面積の自立型パラジウム又はパラジウム合金の薄いフィルムは、通常、冷間圧延、マグネトロンスパッタリング、無電解めっきなどの高価で労働集約的な技術を利用して製造される。このような技術によって形成される欠陥のないパラジウム膜の厚さの下限は、例えば約1μmから5μmであるが、厚さ200nm未満又は100nm未満の安価な金属箔は、スタンピングで製造されるのが一般的であり、市販されている。さらに、金、銅、銀はパラジウムやパラジウム合金よりも展性が高くなる。したがって、金、銅、銀の極薄フォイル(金属箔)は、これらの箔が表面に容易に適合することができるため、形状を維持しながら表面に貼り付けることがより容易となり得る。対照的に、パラジウム又はパラジウム合金の薄いフィルムは、薄いフィルムの厚さ及び/又は延性の欠如により、多孔質基板の表面に容易に付着しないことがある。そのため、パラジウム又はパラジウム合金の薄いフォイルを多孔質基板の表面に均一に適用することがより困難になる場合がある。
【0048】
厚さ1μm未満のパラジウム及びパラジウム合金の連続したピンホールのない大きな表面積のフィルムを製造することは、困難な場合がある。さらに、このようなフィルムを、フィルムの欠陥を観察することなく、多孔質金属又は金属酸化物基板などの水素透過性材料上に堆積又は適用することもまた(物理的及び化学的蒸着、無電解めっき、又は電気めっきなどの周知の方法を利用する場合を含む)困難であろう。実際、これらの堆積方法では、連続して細孔を効果的に封止(シール)するためには、コーティングの厚さが平均細孔径の数倍でなければならないことが一般的に認められている。逆に、極薄のフォイル(箔)を表面に適用することによって、薄い金属箔はすでに一般的に連続しており、典型的には橋渡すことができるため、本明細書の実施形態は、固体材料の厚い層を構築して孔をブロックするという問題を回避又は軽減することができる。金属箔は展性があるため、既存のパラジウムフィルムの欠陥の上に適用するのがより容易又はより効果的であり、フォイルの端の周りのパラジウムによく付着し、それによってアニール時にピンホールを封止する。別の利点は、実施形態が非導電性表面(多孔質セラミック膜基板など)を導電性にすることができ、これにより金属フィルム上に追加のコーティング(例えばパラジウム)を電気めっきすることが可能になることである。有利なことに、導電性表面上にパラジウムを電気めっきすると、膜フィルムの堆積によく使用される無電解めっき堆積法を促進するために触媒で非導電性表面を活性化する必要がなくなる。最後に、水素選択性膜材料を得る(形成する)ために適用された金属箔と水素透過性金属との前述の合金は、三元パラジウム合金(例えば、Pd-Pt-Au)などの異なる組成での3つ以上の金属を含み得る。さらに、これらの合金の製造の実装では、スパッタリングなどの特定の複雑な技術を回避することができ、その代わりに、共蒸着(例えば、Pd-Pt)によって合金をより容易に製造し、その後、金属箔(例えば、ゴールドフォイル)と組み合わせてアニールすることができる。さらに、このようなものは、制御された方法で、厚さ及び組成を変化させて製造することを容易にすることができる。
【0049】
既存の支持された薄いフィルムのパラジウム膜は、パラジウム膜材料のピンホールなどの欠陥を処理するために、本技術の特定の実施形態を介して修復することができる。例えば、欠陥を覆うために、既存の水素選択性の薄いフィルムの膜であるパラジウム又はパラジウム合金に金属箔(例えば、金箔)を適用することができる。次に、金属箔を適用した膜をアニールして欠陥を埋める。金属箔としては、例えば、金箔、銀箔、白金箔、銅箔などが挙げられる。金属箔は、200nm未満、150nm未満、又は100nm未満の厚さを有してもよい。述べてきたように、適用された金属箔及びその下にあるパラジウム又はパラジウム合金は(例えば空気中で)アニールされてもよい。アニール条件は、例えば、少なくとも550℃(又は少なくとも600℃)で少なくとも12時間、又は少なくとも16.5時間であってもよい。実装によっては、金属箔の単一のシート又は層が適用される。他の実装では、複数のシート又は層の金属箔が適用される。複数の金属箔シートを適用する場合、その構造体のアニールは、各金属箔シートを適用した後、又は複数の金属箔シートを適用した後に実行してもよい。最後に、複数の金属箔が適用されるか、又は複数の金属箔シートが適用される場合、金属箔の累積厚さは、400nm未満、300nm未満、200nm未満、又は150nm未満であってもよい。特定の実装では、金属箔は金箔である。したがって、アニールによりパラジウム-金合金が形成されたり、既存のパラジウム合金に金箔が組み込まれたりする場合がある。
【0050】
以下の修復例では、純Pd膜上に金箔(ゴールドフォイル)が適用されている。他の修復では、Pd-Pt(例えば、Pt含有量が5wt%から30wt%の範囲)又はPd-Ru(例えば、Ru含有量が0.3重量%から10重量%の範囲)、又はパラジウムとの他の合金などのバイメタルパラジウム合金膜に金箔を適用することもできる。バイメタル膜は、無電解メッキ、電気メッキ、スパッタリング、又は化学蒸着などの合成方法を利用して製造することができる。また、ゴールドフォイルと同様に、極薄銅フォイル、極薄銀フォイル、又は極薄白金フォイルを、純パラジウム又はパラジウム合金フィルム上に適用することにより二元合金又は三元合金膜を作製する際に利用することができる。
【0051】
図4は、欠陥を有する水素選択性膜を修復(処理)する方法400である。この方法は、参照番号402で示すように、水素選択性膜を受領してもよい。水素選択性膜は、膜支持体を有することができる。膜支持体は、例えば、平面状又は管状であってもよい。実装によっては、水素選択性膜は管状膜である。水素選択性膜は、膜支持体上に配置された膜材料を有していてもよい。欠陥は、例えば、膜材料を通ってガス(所望の水素以外)が漏れるピンホールであってもよい。
【0052】
ブロック404において、この方法は、金属箔を適用する(ブロック406)などの修復のために、水素選択性膜を固定することを含む。例えば、水素選択性膜は、万力(vice)又は他の構造にクランプ又は固定されてもよい。管状膜の場合、ピペットで膜を保持できる。いくつかの実施形態では、管状膜はロッド上に配置され、ブロック406で金属箔を適用するためなど、必要に応じて自由に回転することができる。場合によっては、水素選択性膜は、ブロック408において、アニールのために水素選択性膜をオーブン又は炉内に配置するために、必要に応じて固定装置から取り外されてもよい。
【0053】
ブロック406において、この方法は、欠陥を有する水素選択性膜の膜材料の外表面に金属箔を適用することを含む。膜材料は、水素選択性があり、欠陥を有する金属(例えば、パラジウム又はパラジウム合金)である。膜材料は、水素選択性膜の外側層であってもよい。金属箔を適用することで欠陥を覆うことができる。金属箔としては、例えば、金金属箔、銀金属箔、白金金属箔、銅金属箔などが挙げられる。複数の金属箔を適用してもよい。
【0054】
ブロック408で、この方法は、金属箔及び金属をアニールして、金属箔と金属の合金を形成し、欠陥を修復することを含む。したがって、この方法は、合金を形成することによって欠陥を修復することを含んでもよい。アニールは、少なくとも500℃、少なくとも550℃、又は少なくとも600℃の温度で実行されてもよい。アニールは、少なくとも5時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、又は少なくとも16時間実行されてもよい。
【0055】
アニール後、オプションとして、ブロック406に戻り、追加の金属箔を適用し、ブロック408で構造体を(再度)アニールすることができる。このような反復を複数回実行することができる。追加の金属箔に対する追加のアニール(ブロック408)と組み合わせた追加の金属箔(ブロック406)の反復は、例えば、欠陥又は漏れが実証されたブロック410のテストに応じて実施されてもよい。
【0056】
欠陥としては、例えば、欠陥を有する水素選択性膜の膜材料である金属(例えば、パラジウム又はパラジウム合金)のピンホールが挙げられる。欠陥の修復には、アニールを介して形成された合金でピンホールを埋めることが含まれてもよい。欠陥の修復には、ピンホールを合金で塞ぐことが含まれてもよい。修復される欠陥には、隙間や細孔、又はその他の不規則性(凹凸)が含まれてもよい。
【0057】
実装によっては、欠陥を有する膜材料はパラジウム又はパラジウム合金であり、金属箔は金金属箔であり、アニール(ブロック408)で形成される合金は金とパラジウムの合金を含む。追加の金属を金パラジウム合金に合金化してもよい。
【0058】
ブロック408でのアニールにより、参照番号412で示される修復された水素選択性膜が得られる。しかしながら、ブロック410で示されるように、修復された水素選択性膜はテストを受けてもよい。ブロック410でのテストで実質的な欠陥が残っていることが示された場合、水素選択性膜は再びブロック406及び408の処理を受けてもよい。
【0059】
ブロック410で、この方法は、修復をテストすることを含む。修復のテストには、膜材料及び膜支持体を通る水素以外のガスの漏れを検査することが含まれてもよい。ガスは、例えば、窒素又はアルゴンであり、圧力下で適用される。実装では、膜内腔(内径)をガス(例えば、窒素、アルゴンなど)で加圧し、膜を水に浸して、膜材料(フィルム)のピンホールから出現する気泡を観察してもよい。
【0060】
一実施形態は、欠陥を有する水素選択性膜を修復する方法である。この方法は、欠陥を有する水素選択性膜の膜材料の外表面に金属箔(例えば、金金属を含む)を適用することを含み、金属箔を適用することで欠陥を覆うことができる。金属箔は、金箔、銀箔、白金箔、銅箔などであってもよい。金属箔は金であってもよいし、金を含んでもよい。膜材料には、水素選択性があり、欠陥を有する金属(例えば、パラジウム又はパラジウム合金)が含まれる。この方法は、金属箔と金属をアニールして、金属箔と金属の合金を形成し、欠陥を修復することを含む。特定の実装では、合金には金とパラジウムが含まれる。合金は、金とパラジウムの合金であってもよい。合金は、金、パラジウム、及び別の金属の合金であってもよい。他の合金も適用可能である。この方法は、合金を形成することによって欠陥を修復することができる。実装では、アニールは、少なくとも500℃の温度で少なくとも5時間、又は少なくとも550℃の温度で少なくとも10時間行われる。水素選択性膜は膜支持体を含むことができ、膜材料は水素選択性膜の外側層を含む。欠陥には、膜材料のピンホールが含まれてもよい。欠陥の修復には、ピンホールを合金で覆う、埋める、又は塞ぐことが含まれてもよい。この方法には、修復をテストすることが含まれる。修復のテストには、水素選択性膜の膜材料及び膜支持体を通る水素以外のガスの漏れを検査することが含まれてもよい。
【0061】
実施例
【0062】
多孔質アルミナ基板上に支持された薄いフィルムのパラジウム膜(欠陥を有する)を修復した。欠陥には、膜を通る水素以外のガスの流れを引き起こすピンホールが含まれており、これは漏れとして特徴付けることができる。漏れや漏れ速度をチェックするためのテストガスとして窒素を使用することができる。修復は、金箔、アニール、漏れのチェックに依拠した。この修復では、金を適用するたびに漏れ率が減少することが実証された。多孔質アルミナ基板上の支持された薄いフィルムのパラジウム膜に金箔を適用するたびに、膜の漏れ率が減少した。膜を通過する窒素漏洩率は、金箔を1層適用すること、空気中で600℃で12時間又は16.5時間アニールすることから構成される一連のステップごとに減少した。膜を通過する窒素の漏洩率と水素の流量は、典型的な膜の動作温度(例えば、450℃から600℃の範囲)で確認してもよい。
【0063】
実施例では、無電解メッキを利用して、多孔質アルミナチューブを薄い(厚さ~5μm)パラジウムフィルムでコーティングすることによって、支持された薄いフィルムのパラジウム膜を製造した。パラジウムフィルムは多孔質アルミナチューブの外表面を完全に覆っていたが、前述したように、フィルムには、ガスがフィルムを透過するピンホールの形の欠陥が含まれていた。チューブを使い捨てのプラスチックピペットの端に取り付けて膜をしっかりと保持し、同時に金箔のシートをパラジウムフィルムの表面に貼り付けた(膜をロッドの上に置き、金属箔を貼り付けている間、自由に回転させることもできた。)。アニールは500℃の温度で5時間行われたが、金がパラジウムに十分に接着していなかったため、支持された薄いフィルムのパラジウム膜の上に金箔を適用するには不十分であることがわかった。前述したように、600℃の温度と12時間の持続時間により、はるかに良好な接着が得られた。追加の金の層を膜の表面に適用し、先端がメノウのバニシングツールを使用してそっとこすった。膜を再び空気中で、600℃で16.5時間アニールし、炉冷させた。金箔を貼り付けてアニールした後、膜の内腔(内径)をアルゴンで加圧し、膜を水に浸して、膜のピンホールから発生する気泡を観察した。金箔を貼り付けてアニールするたびに、ピンホールの数とサイズが減少した。
【0064】
多くの実装が説明されている。それにも関わらず、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な改変を行うことができることが理解されるであろう。
【国際調査報告】