(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ポリペプチドの骨特異的送達法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/663 20060101AFI20240118BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240118BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240118BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240118BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240118BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240118BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240118BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K31/663
A61P35/00
A61P19/08
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/04
A61K47/68
A61K47/64
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 L
A61K39/395 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543156
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 US2022012982
(87)【国際公開番号】W WO2022159492
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510166102
【氏名又は名称】ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM MARSH RICE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】6100 Main Street,Houston,TX 77005, United States of America
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シャオ ハン
(72)【発明者】
【氏名】チャン シャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA94
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC09
4C076CC27
4C076EE41
4C076FF67
4C084AA19
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4C084MA05
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4C084MA23
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4C084NA13
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4C084ZA96
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4C085BB44
4C085CC22
4C085CC23
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4C085EE03
4C085EE05
4C085GG01
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA22
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4C086MA35
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4C086MA43
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA06
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、骨標的化ポリペプチドコンジュゲートを投与することによって、骨がん、がんの骨転移、又は骨粗しょう症などの骨疾患を治療するための方法を提供する。この骨標的化ポリペプチドコンジュゲートは、骨標的化抗体コンジュゲートであり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における骨腫瘍を治療又は予防する方法であって、抗体にコンジュゲートされたビスホスホネート(BP)を含む有効量の骨標的化コンジュゲートを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記対象が、骨がん又は骨転移を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨がんが、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記骨転移が、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記BPが、負に帯電している、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記BPが、アレンドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート、リセドロネート、メドロン酸、アミノメチレンビスホン酸、クロドロネート、エチドロネート、チルドロネート、イバンドロネートポミドロネート、ネリドネート、オルパドロネート、又はオキシドロネートである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記BPが、アレンドロネート(ALN)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がんである、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記乳がんが、HER2陰性乳がんである、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記乳がんが、HER2陽性乳がんである、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、単一ドメイン抗体、又はナノボディである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、抗HER2抗体、抗CD99抗体、抗IGF-IR抗体、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4抗体、抗Siglec-15抗体、抗RANKL抗体、又は抗TGFβ抗体である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、抗HER2抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、トラスツズマブ(ハーセプチン)、ペルツズマブ(パージェタ)、又はアテゾリズマブである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が、トラスツズマブである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
骨標的化コンジュゲートが、トラスツズマブにコンジュゲートされたアレンドロネートを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、抗M-CSF抗体ではない、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記BPが、前記抗体のFc領域上のN-グリカンにコンジュゲートされない、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記BPが、pClickコンジュゲーション、NHS-エステルケミストリー、又はシステインケミストリーを使用して、前記抗体に部位特異的にコンジュゲートされている、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記BPが、pClickコンジュゲーションを使用して、前記抗体に部位特異的にコンジュゲートされている、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記BPが、前記抗体のCH2-CH3接合部にコンジュゲートされている、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記BPが、4-フルオロフェニルカルバメートリジン(FPheK)を使用して、前記抗体にコンジュゲートされている、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
FPheKが、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)からのプロテインAのBドメインの断片(FBタンパク質)に結合されている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
pClickコンジュゲーションが、アジド官能性部分を含む抗体の、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)で官能化されたBPとのコンジュゲーションを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記骨標的化コンジュゲートが、骨腫瘍ニッチにおける治療用抗体の濃度の増加をもたらし、前記骨におけるがん発生を阻害し、かつ/又は他臓器への二次転移を制限する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記骨標的化コンジュゲートが、微小転移誘発性溶骨性病変の減少をもたらす、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
追加の抗がん療法を更に行うことを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記追加の抗がん療法が、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、又はサイトカイン療法を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記追加の抗がん療法が、免疫療法又は化学療法を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
がんを有する対象における骨腫瘍の治療又は予防のための、抗体にコンジュゲートされたビスホスホネート(BP)を含む骨標的化コンジュゲートの使用。
【請求項32】
前記対象が、骨がん又は骨転移を有する、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記骨がんが、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記骨転移が、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである、請求項32に記載の使用。
【請求項35】
前記BPが、負に帯電している、請求項31~34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
前記BPが、アレンドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート、リセドロネート、メドロン酸、アミノメチレンビスホン酸、クロドロネート、エチドロネート、チルドロネート、イバンドロネートポミドロネート、ネリドネート、オルパドロネート、又はオキシドロネートである、請求項31~35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
前記抗体が、抗HER2抗体である、請求項31~36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記抗HER2抗体が、トラスツズマブである、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記BPが、前記抗体のCH2-CH3接合部にコンジュゲートされている、請求項31~38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項40】
前記BPが、pClickコンジュゲーション、NHS-エステルケミストリー、又はシステインケミストリーを使用して、前記抗体に部位特異的にコンジュゲートされている、請求項31~39のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記BPが、4-フルオロフェニルカルバメートリジン(FPheK)を使用して、前記抗体にコンジュゲートされている、請求項31~40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
対象における骨疾患を治療又は予防する方法であって、1つ以上のポリペプチドにコンジュゲートされたビスホスホネート(BP)を含む有効量の骨標的化コンジュゲートを前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記骨疾患が、骨粗しょう症、骨軟化症、歯周炎、関節リウマチ、代謝性骨疾患、副甲状腺障害、ステロイド誘発性骨粗しょう症、化学療法誘発性骨量減少、閉経前骨量減少、脆弱性及び再発性骨折、腎性骨異栄養症、骨感染症、又はパジェット病である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記骨疾患が、骨がん又は骨転移である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記骨がんが、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記骨転移が、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記BPが、負に帯電している、請求項42~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記BPが、アレンドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート、リセドロネート、メドロン酸、アミノメチレンビスホン酸、クロドロネート、エチドロネート、チルドロネート、イバンドロネートポミドロネート、ネリドネート、オルパドロネート、又はオキシドロネートである、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記BPが、アレンドロネート(ALN)である、請求項42~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がんである、請求項46~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記乳がんが、HER2陰性乳がんである、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記乳がんが、HER2陽性乳がんである、請求項46~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記1つ以上のポリペプチドが、アドレナリンアゴニスト、抗アポトーシス因子、アポトーシス阻害剤、サイトカイン受容体、サイトカイン、サイトトキシン、赤血球生成剤、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、糖タンパク質、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、キナーゼ、キナーゼ阻害剤、神経成長因子、ネトリン、神経活性ペプチド、神経活性ペプチド受容体、神経原性因子、神経原性因子受容体、ニューロピリン、神経栄養因子、ニューロトロフィン、ニューロトロフィン受容体、N-メチル-D-アスパルテートアンタゴニスト、プレキシン、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質デカルボキシラーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質キナーゼ阻害剤、タンパク質分解タンパク質、タンパク質分解タンパク質阻害剤、セマフォリン、セマフォリン受容体、セロトニン輸送タンパク質、セロトニン取り込み阻害剤、セロトニン受容体、セルピン、セルピン受容体、又は腫瘍抑制剤を含む、請求項42~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記1つ以上のポリペプチドが、抗体を含む、請求項42~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記抗体が、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、単一ドメイン抗体、又はナノボディである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記抗体が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項54~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記抗体が、抗HER2抗体、抗CD99抗体、抗IGF-IR抗体、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4抗体、抗Siglec-15抗体、抗RANKL抗体、又は抗TGFβ抗体である、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記抗体が、抗HER2抗体である、請求項54~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記抗体が、トラスツズマブ(ハーセプチン)、ペルツズマブ(パージェタ)、又はアテゾリズマブである、請求項54~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記抗体が、トラスツズマブである、請求項54~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
骨標的化コンジュゲートが、トラスツズマブにコンジュゲートされたアレンドロネートを含む、請求項42~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記抗体が、抗M-CSF抗体ではない、請求項54~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記BPが、前記抗体のFc領域上のN-グリカンにコンジュゲートされない、請求項54~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記BPが、pClickコンジュゲーション、NHS-エステルケミストリー、又はシステインケミストリーを使用して、前記1つ以上のポリペプチドに部位特異的にコンジュゲートされている、請求項42~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記BPが、pClickコンジュゲーションを使用して、前記1つ以上のポリペプチドに部位特異的にコンジュゲートされている、請求項42~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記BPが、前記抗体のCH2-CH3接合部にコンジュゲートされている、請求項54~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記BPが、4-フルオロフェニルカルバメートリジン(FPheK)を使用して、前記1つ以上のポリペプチドにコンジュゲートされている、請求項42~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
FPheKが、スタフィロコッカス・アウレウスからのプロテインAのBドメインの断片(FBタンパク質)に結合されている、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
pClickコンジュゲーションが、アジド官能性部分を含む抗体の、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)で官能化されたBPとのコンジュゲーションを含む、請求項65~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記骨標的化コンジュゲートが、骨腫瘍ニッチにおける治療用抗体の濃度の増加をもたらし、前記骨におけるがん発生を阻害し、かつ/又は他臓器への二次転移を制限する、請求項54~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記骨標的化コンジュゲートが、微小転移誘発性溶骨性病変の減少をもたらす、請求項44~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
追加の抗がん療法を更に行うことを含む、請求項44~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記追加の抗がん療法が、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、又はサイトカイン療法を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記追加の抗がん療法が、免疫療法又は化学療法を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
対象における骨疾患の治療又は予防のための、1つ以上のポリペプチドにコンジュゲートされたビスホスホネート(BP)を含む骨標的化コンジュゲートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2021年1月19日出願の米国仮出願第63/138,972号の優先権の利益を主張し、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究又は開発に関する声明
本発明は、国防省によって授与された承認W81XWH-16-1-0073及びW81XWH-21-1-0789の下、政府支援を受けてなされたものである。政府は、本発明において、ある特定の権利を有する。
【0003】
1.分野
本開示は、一般に、分子生物学の分野に関する。より具体的には、抗体の部位特異的送達の方法に関する。
【背景技術】
【0004】
2.関連技術
モノクローナル抗体、抗体-薬物コンジュゲート、二重特異性抗体、チェックポイント阻害剤、及び他を使用するものを含む、抗体に基づく療法は、様々ながんを治療するそれらの力量の観点において、臨床的潜在性が認識されている1~4。それにもかかわらず、ほとんどの治療用抗体がそれらの標的に対して高い親和性を有するという事実にもかかわらず、正常な組織におけるこれらの同じ標的の存在は、健康な細胞において許容することができない「オンターゲット」毒性を誘発することなくそれらの標的を攻撃する治療剤の能力を劇的に制限する場合がある5~7。更に、脳又は骨などのいくつかの組織への治療用抗体の送達レベルの低さは、これらの組織における疾患の治療において、それらの有効性を顕著に制限し得る8。したがって、抗体の抗原及び組織特異性の両方を向上することは、最終的にがんの臨床治療のための抗体療法の有効性を変化させる可能性が高い。
【0005】
転移性乳がん(BCa)の初期診断を受けた患者の半数が、骨転移を発症する9。骨格転移のみを有する患者は、通常、重要な臓器転移を有する患者よりも良好な予後を有する9、10。更に、骨転移は、脊髄圧迫、病理学的骨折、及び高カルシウム血症などの重篤な症状に関連付けられる11。分子機序の理解の深さ12、13にもかかわらず、がん細胞を排除することができる有効な療法は、依然として不足している14。骨は、播種性転移の最終的な目的地ではない。最近のゲノム分析によって、頻繁な「転移の繰り返し(metastasis-to-metastasis)」の播種が明らかになっている15~17。骨のみの転移のうちの3分の2以上が、その後の他臓器への二次転移を発症し、最終的には、患者の死をもたらす9、10。実際、骨ではない臓器で最初に同定されたいくつかの転移は、実際には無症状の骨微小転移(BMM)からの播種の結果である。これは明らかに、がん細胞が最初に骨に到達し、次いで、骨及び他の部位の両方でより明白な転移を確立することを可能にする、より攻撃的な表現型を獲得した結果である18。したがって、BMMが骨組織及び骨ではない組織の両方でより明白な転移を確立するのを防止するための戦略に対する必要性は、満たされていない。
【0006】
ターゲティングされた抗体療法及び免疫療法は、現在、転移性乳がんを治療するための新しい手段として台頭しているが、骨転移を有する患者におけるこれらの薬剤の性能は、失望的である。例えば、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)を標的とするトラスツズマブ(ハーセプチン)及びペルツズマブ(パージェタ)抗体は、アジュバント及び転移性環境で患者を治療するために使用されている。多くのBCa患者が、これらの治療の恩恵を受けているが、骨転移を有するBCa患者の多数において、疾患は、1年以内に進行し、長い寛解を経験する患者はほとんどいない19~22。転移性トリプルネガティブBCaを有する患者においてアテゾリズマブを試験する別の第III相臨床試験では、無増悪生存期間は、プラセボ群よりもアテゾリズマブ群で顕著に長かった。しかしながら、骨転移を有するBCa患者の間では、アテゾリズマブ治療群とプラセボ群との間で、進行又は死亡のリスクについて顕著な差は観察されなかった23。したがって、骨転移を有するBCa患者の転帰を改善する療法が高く望まれている。
【発明の概要】
【0007】
概要
ある特定の実施形態では、本開示は、対象における骨疾患を治療又は予防するための方法であって、ポリペプチド又はタンパク質にコンジュゲートされたビスホスホネート(BP)を含む有効量の骨標的化コンジュゲートを対象に投与することを含む、前記方法を提供する。一実施形態では、本開示は、対象における骨腫瘍を治療又は予防するための方法であって、抗体にコンジュゲートされたビスホスホネート(BP)を含む有効量の骨標的化コンジュゲートを対象に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0008】
ある特定の態様では、骨疾患は、骨粗しょう症、骨軟化症、歯周炎、関節リウマチ、代謝性骨疾患、副甲状腺障害、ステロイド誘発性骨粗しょう症、化学療法誘発性骨量減少、閉経前骨量減少、脆弱性及び再発性骨折、腎性骨異栄養症、骨感染症、又はパジェット病である。本明細書で提供される方法及び組成物は、皮質骨及び/若しくは海綿骨量減少を低減し、皮質骨及び/若しくは海綿骨のミネラル含有量減少を低減し、骨の生体力学的耐性を改善し、骨形成を増加させ、並びに/又は骨吸収を低減するために使用することができる。
【0009】
いくつかの態様では、対象は、骨がん又は骨転移を有する。特定の態様では、骨がんは、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である。ある特定の態様では、骨転移は、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである。特定の態様では、骨転移は、乳がん骨転移である。いくつかの態様では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。ある特定の態様では、乳がんは、HER2陰性乳がんである。他の態様では、乳がんは、HER2陽性乳がんである。
【0010】
ある特定の態様では、BPは、負に帯電している。いくつかの態様では、BPは、アレンドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート、リセドロネート、メドロン酸、アミノメチレンビスホン酸(aminomethylene bisphonic acid)、クロドロネート、エチドロネート、チルドロネート、イバンドロネートポミドロネート、ネリドネート、オルパドロネート、又はオキシドロネートである。特定の態様では、BPは、アレンドロネート(ALN)である。
【0011】
いくつかの態様では、BPは、アドレナリンアゴニスト、抗アポトーシス因子、アポトーシス阻害剤、サイトカイン受容体、サイトカイン、サイトトキシン、赤血球生成剤、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、糖タンパク質、成長因子、成長因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、キナーゼ、キナーゼ阻害剤、神経成長因子、ネトリン、神経活性ペプチド、神経活性ペプチド受容体、神経原性因子、神経原性因子受容体、ニューロピリン、神経栄養因子、ニューロトロフィン、ニューロトロフィン受容体、N-メチル-D-アスパルテートアンタゴニスト、プレキシン、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質デカルボキシラーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質キナーゼ阻害剤、タンパク質分解タンパク質、タンパク質分解タンパク質阻害剤、セマフォリン、セマフォリン受容体、セロトニン輸送タンパク質、セロトニン取り込み阻害剤、セロトニン受容体、セルピン、セルピン受容体、又は腫瘍抑制剤にコンジュゲートされる。
【0012】
いくつかの態様では、抗体は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、単一ドメイン抗体、又はナノボディである。ある特定の態様では、抗体は、免疫チェックポイント阻害剤である。特定の態様では、抗体は、抗HER2抗体、抗CD99抗体、抗IGF-IR抗体、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4抗体、抗Siglec-15抗体、抗RANKL抗体、又は抗TGFβ抗体である。特定の態様では、抗体は、トラスツズマブ(ハーセプチン)、ペルツズマブ(パージェタ)、又はアテゾリズマブなどの抗HER2抗体である。特定の態様では、抗体は、トラスツズマブである。いくつかの態様では、骨ターゲティングコンジュゲートは、トラスツズマブにコンジュゲートされたアレンドロネートを含む。ある特定の態様では、抗体は、抗M-CSF抗体ではない。
【0013】
ある特定の態様では、BPは、抗体のFc領域上のN-グリカンにコンジュゲートされない。いくつかの態様では、BPは、pClickコンジュゲーション、NHS-エステルケミストリー、又はシステインケミストリーを使用して、抗体に部位特異的にコンジュゲートされる。特定の態様では、BPは、pClickコンジュゲーションを使用して、抗体に部位特異的にコンジュゲートされる。いくつかの態様では、BPは、抗体のCH2-CH3接合部にコンジュゲートされる。いくつかの態様では、BPは、4-フルオロフェニルカルバメートリジン(FPheK)を使用して、抗体にコンジュゲートされる。特定の態様では、FPheKは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)からのプロテインAのBドメインの断片(FBタンパク質)に結合される。特定の態様では、pClickコンジュゲーションは、アジド官能性部分を含む抗体の、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)で官能化されたBPとのコンジュゲーションを含む。
【0014】
ある特定の態様では、骨標的化コンジュゲートは、骨腫瘍ニッチにおける治療用抗体の濃度の増加をもたらし、骨におけるがん発生を阻害し、かつ/又は他臓器への二次転移を制限する。いくつかの態様では、骨標的化コンジュゲートは、微小転移誘発性溶骨性病変の減少をもたらす。
【0015】
追加の態様では、方法は、追加の抗がん療法を更に行うことを含む。いくつかの態様では、追加の抗がん療法は、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、又はサイトカイン療法を含む。特定の態様では、追加の抗がん療法は、免疫療法又は化学療法を含む。
【0016】
更なる実施形態は、がんを有する対象における骨腫瘍の治療又は予防のための、抗体にコンジュゲートされたビスホスホネート(BP)を含む骨標的化コンジュゲートの使用を提供する。
【0017】
いくつかの態様では、対象は、骨がん又は骨転移を有する。特定の態様では、骨がんは、ユーイング肉腫、骨肉腫、又は軟骨肉腫である。ある特定の態様では、骨転移は、乳がん、骨髄腫、腎がん、肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、又は膀胱がんからのものである。特定の態様では、骨転移は、乳がん骨転移である。いくつかの態様では、乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。ある特定の態様では、乳がんは、HER2陰性乳がんである。他の態様では、乳がんは、HER2陽性乳がんである。
【0018】
ある特定の態様では、BPは、負に帯電している。いくつかの態様では、BPは、アレンドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート、リセドロネート、メドロン酸、アミノメチレンビスホン酸、クロドロネート、エチドロネート、チルドロネート、イバンドロネートポミドロネート、ネリドネート、オルパドロネート、又はオキシドロネートである。特定の態様では、BPは、アレンドロネート(ALN)である。
【0019】
いくつかの態様では、抗体は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、単一ドメイン抗体、又はナノボディである。ある特定の態様では、抗体は、免疫チェックポイント阻害剤である。特定の態様では、抗体は、抗HER2抗体、抗CD99抗体、抗IGF-IR抗体、抗PD-L1、抗PD-1、抗CTLA4抗体、抗Siglec-15抗体、抗RANKL抗体、又は抗TGFβ抗体である。特定の態様では、抗体は、トラスツズマブ(ハーセプチン)、ペルツズマブ(パージェタ)、又はアテゾリズマブなどの抗HER2抗体である。特定の態様では、抗体は、トラスツズマブである。いくつかの態様では、骨標的化コンジュゲートは、トラスツズマブにコンジュゲートされたアレンドロネートを含む。ある特定の態様では、抗体は、抗M-CSF抗体ではない。
【0020】
ある特定の態様では、BPは、抗体のFc領域上のN-グリカンにコンジュゲートされない。いくつかの態様では、BPは、pClickコンジュゲーション、NHS-エステルケミストリー、又はシステインケミストリーを使用して、抗体に部位特異的にコンジュゲートされる。特定の態様では、BPは、pClickコンジュゲーションを使用して、抗体に部位特異的にコンジュゲートされる。いくつかの態様では、BPは、抗体のCH2-CH3接合部にコンジュゲートされる。いくつかの態様では、BPは、4-フルオロフェニルカルバメートリジン(FPheK)を使用して、抗体にコンジュゲートされる。特定の態様では、FPheKは、スタフィロコッカス・アウレウスからのプロテインAのBドメインの断片(FBタンパク質)に結合される。特定の態様では、pClickコンジュゲーションは、アジド官能性部分を含む抗体の、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)で官能化されたBPとのコンジュゲーションを含む。
【0021】
ある特定の態様では、骨標的化コンジュゲートは、骨腫瘍ニッチにおける治療用抗体の濃度の増加をもたらし、骨におけるがん発生を阻害し、かつ/又は他臓器への二次転移を制限する。いくつかの態様では、骨標的化コンジュゲートは、微小転移誘発性溶骨性病変の減少をもたらす。
【0022】
追加の態様では、使用は、追加の抗がん療法を更に含む。いくつかの態様では、追加の抗がん療法は、手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、免疫療法、又はサイトカイン療法を含む。特定の態様では、追加の抗がん療法は、免疫療法又は化学療法を含む。
【0023】
本明細書に記載のいずれの方法又は組成物も、本明細書に記載の任意の他の方法又は組成物に関して実施することができることが企図される。例えば、1つの方法によって合成された化合物を、異なる方法による最終化合物の調製に使用することができる。
【0024】
本開示の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な記載から明らかになるであろう。しかしながら、本開示の趣旨及び範囲内の様々な変更及び修正が、この詳細な記載から当業者には明らかになるので、本開示の特定の実施形態を示しているが、詳細な記載及び特定の例は、例示としてのみ与えられていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の態様を更に実証するために含まれる。本発明は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な記載と組み合わせて、これらの図面のうちの1つ以上を参照することによって、より良好に理解され得る。
【0026】
【
図1】
図1A~
図1L:(A)治療用抗体は、骨ヒドロキシアパタイトマトリックスに結合するビスホスホネート分子のpClickコンジュゲーションによって、骨に部位特異的に送達することができる。(B)クマシー青色染色(左)及び蛍光スキャナ(右)によって視覚化した、還元及び非還元条件下でのTras、Tras-ALN、及びそれらの近赤外線(NIR)フルオロフォアコンジュゲートのSDS-PAGE分析、(C)Tras及びTras-ALNの質量分析の分析。(D)BT474(HER2+++)、SK-BR-3(HER2+++)、MDA-MB-361(HER2++)、及びMDA-MB-468(HER2)細胞へのTras及びTras-ALN結合のフローサイトメトリープロファイル。(E~G)BT474、MDA-MB-361、及びMDA-MB-468細胞に対するTras及びTras-ALNのインビトロ細胞傷害性。(H)未修飾Tras及びTras-ALNコンジュゲートの差次的な骨標的化能力。C57/BL6マウスからの非脱石灰化骨切片を、50μg/mLのTras又はTras-ALNとともに一晩インキュベートし、続いてフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗ヒトIgG及び4μg/mLのキシレノールオレンジ(XO、骨を標識することが知られている)で染色した(スケールバー、200μm)。(I~J)ヒドロキシアパタイト(HA)及び天然骨へのTras及びTras-ALNの結合動態。(K)Cy7.5標識Tras及びTras-ALNの後眼窩注射の24時間、96時間、又は168時間後、MDA-MB-361腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウスの下肢のエクスビボ蛍光画像。IIA注射を介して、ヌードマウスの右肢に腫瘍細胞を接種した。(L)FITC標識抗ヒトIgG(緑色)、RFP(赤色)、及びDAPI(青色)で、生体分布研究からの非脱石灰化骨切片を染色した(スケールバー、100μm)。
【
図2】
図2A~
図2N:Tras-ALNは、骨における乳がん微小転移を阻害する。(A)ヌードマウスの右後肢に、MDA-MB-361細胞をIIA注射し、続いてPBS、ALN(PBS中10μg/kgの後眼窩静脈洞、週2回)、Tras(滅菌PBS中1mg/kgの後眼窩静脈洞、週2回)、及びTras-ALNコンジュゲート(Trasと同じ)で治療した。毎週の生物発光撮像によって、腫瘍負荷を監視した。(B)(A)に記載されるように治療したマウスにおける、MDA-MB-361腫瘍の平均発光強度の倍率変化、TrasをTras-ALNと比較する二元配置分散分析。(C)(A)に記載されるように治療したマウスにおける、HER2陽性MDA-MB-361腫瘍の個々の発光強度の倍率変化。(D)(A)に記載されるように治療したマウスの安楽死までの時間のカプランマイヤープロット。各個々のマウスの全身のBLIシグナルが、10
7光子秒
-1に到達したことをエンドポイントと見なした。(E)経時的な腫瘍担持マウスの体重変化。(F)腫瘍移植の82日後、PBS、ALN、Tras、又はTras-ALNで治療した群の、仰臥位でのMicroCT走査。(G)骨体積密度(BV/TV)の定量的分析。(H)海綿の厚さの定量的分析(Tb.Th)。(I)海綿骨ミネラル密度(BMD)の定量的分析。(J)各群からの脛骨/大腿骨の代表的な長手方向の矢状面での、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色切片。T:腫瘍;B:骨;BM:骨髄。(K)各群からの骨切片のHER2及びTRAP染色の代表的な画像。(L)各群の腫瘍-骨界面で計算した、画像毎の破骨細胞数((K)のピンク色の細胞を破骨細胞陽性細胞と見なした)。(M)(A)に記載されるように治療したマウスの、血清TRAcP 5bレベル。(N)(A)に記載されるように治療したマウスの、血清カルシウムレベル。
****P<0.0001、
***P<0.001、
**P<0.01、
*P<0.05、及びn.s.=P>0.05。
【
図3】
図3A~
図3C:(A)Tras(上)又はTras-ALN(下)で治療したマウスの様々な臓器で観察された二次転移。(B)円グラフは、Tras(滅菌PBS中1mg/kgの後眼窩、週2回)、及びTras-ALNコンジュゲート(Trasと同じ)で治療したマウスの様々な臓器で観察された、転移の頻度を示す。(C)Tras及びTras-ALN治療マウスから生じた転移を測定した、他の骨を含む異なる臓器における生物発光シグナル強度の定量化。p値は、一元配置分散分析に基づく。
*P<0.05及びn.s.=P>0.05。
【
図4】
図4A~
図4E:HER2陰性モデルにおけるTras及びTras-ALNのインビボ比較。(A)生物発光撮像によって、毎週、腫瘍負荷を監視し、(B)対象領域で検出された放射輝度によって定量化した。(C)(A)に記載されるように治療したマウスにおける、HER2陰性MCF-7腫瘍の個々の発光強度の倍率変化。(D)(A)に記載されるように治療したマウスの殺傷までの時間のカプランマイヤープロット。各個々のマウスの全身のBLIシグナルが、10
7光子秒
-1に到達したことをエンドポイントと見なした。(E)経時的な腫瘍担持マウスの体重変化。
****P<0.0001、
*P<0.05、及びn.s.=P>0.05。
【
図6】ssFB-FPheKのESI-MSスペクトル。
【
図7】Tras-アジドのESI-MSスペクトル。
【
図8】
図8A~
図8H:BT474細胞へのTras結合。Trasの濃度を増加させながら、BT474細胞をインキュベートし、方法に記載されるように処理し、フローサイトメーターで蛍光を測定した。以下のように、KDを決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
【
図9】
図9A~
図9H:BT474細胞へのTras-ALN結合。Tras-ALNの濃度を増加させながら、BT474細胞をインキュベートし、方法に記載されるように処理し、フローサイトメーターで蛍光を測定した。以下のように、KDを決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
【
図10】
図10A~
図10H:SK-BR-3細胞へのTras結合。Trasの濃度を増加させながら、SK-BR-3細胞をインキュベートし、方法に記載されるように処理し、フローサイトメーターで蛍光を測定した。以下のように、KDを決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
【
図11】
図11A~
図11H:SK-BR-3細胞へのTras-ALN結合。Trasの濃度を増加させながら、SK-BR-3細胞をインキュベートし、方法に記載されるように処理し、フローサイトメーターで蛍光を測定した。以下のように、KDを決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab]。
【
図12】共焦点顕微鏡法によって可視化した、BT-474、SK-BR-3、及びMDA-MB-468細胞におけるTra-ALNの結合。培地中30nMのTras-ALNとともに、細胞を37℃で30分間インキュベートし、DilC18(赤色蛍光)及びHoechst核染色(青色蛍光)で染色した。
【
図13-1】
図13A~
図13D:主臓器のエクスビボ蛍光画像。後眼窩注射Cy7.5標識(A)Tras及び(B)Tras-ALNの96時間後の、MDA-MB-361腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウスの心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、脳。
【
図13-2】
図13A~
図13D:主臓器のエクスビボ蛍光画像。(C)後眼窩注射Cy7.5標識Tras及びTras-ALNの72時間後の、腫瘍を担持するマウスMDA-MB-361腫瘍の心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、及び骨。
【
図13-3】
図13A~
図13D:主臓器のエクスビボ蛍光画像。(D)Tras及びTras-ALNの薬物動態プロファイル。腫瘍を担持する無胸腺ヌードマウス(手術の3ヶ月後)に、PBS中1mg/kgのTras及びTras-ALNを後眼窩注射した。ELISAによって、血清中の抗体濃度を決定した(データは、3つの独立した反復の平均±SDを表す)。
【
図14】Tras及びTras-ALNの骨生体内分布のためのエクスビボ蛍光画像分析。Cy7.5標識Tras及びTras-ALNの後眼窩注射の24時間後、96時間後、又は168時間後。骨を収集し、分析した。
図1Kから、量データを要約した。Tras治療マウスからの腫瘍のないシグナルは、ブランクと見なした。以下のように、相対シグナルを計算した。後肢からのシグナル-(Tras治療群からの)腫瘍のない後肢からのシグナル。
【
図15】Tras-ALNは、骨における乳がん微小転移を阻害する。ヌードマウスの右後肢に、MDA-MB-361細胞をIIA注射し、続いてPBS、ALN(PBS中10μg/kgの後眼窩静脈洞、週2回)、Tras(滅菌PBS中1mg/kgの後眼窩静脈洞、週2回)、及びTras-ALNコンジュゲート(Trasと同じ)で治療した。生物発光撮像によって、腫瘍負荷を週2回監視した(6、20、33、48、及び68日目の撮像データを選択して、
図2Aに示した)。
【
図16】
図16A~
図16B:全身BLI定量化。(A)全身で検出された放射輝度によって定量化した各治療群からのBLI。(B)
図2Aに記載されるように、異なる治療群の個々の全身発光強度。****P<0.0001。
【
図17】
図17A~
図17D:Tras及びTras-ALN治療群の後肢におけるBLIシグナルが定量化され、示されている。(A)(
図2Aに記載の)Tras及びTras-ALNで治療したマウスにおける、後肢の平均発光強度の倍率変化、TrasをTras-ALNと比較する二元配置分散分析。(B)Tras及びTras-ALN治療群の後肢の個々の発光強度の倍率変化。(C)Tras及びTras-ALN治療群から定量化した後肢の平均BLI。(D)Tras及びTras-ALN治療群の個々の発光強度。****P<0.0001。
【
図18】MicroCTに基づく骨の3Dレンダリング。皮質骨、画像は、広範囲の皮質骨破壊を示す。海綿骨、画像は、海綿破壊を示す。下部パネル(成長プレート)、画像プレートは、成長プレートでの骨量減少を示す。
【
図20】
図20A~
図20E:二次転移のインビボ定量化。(A)様々な治療群のマウスの全身及び後肢におけるBLIシグナルが定量化され、示されている。以下のように、二次転移を決定した:全身及び後肢(赤丸によって示される)におけるBLIシグナルを定量化した。各時点において、推奨される手順及び製造業者の設定に従って、IVIS Lumina II(Advanced Molecular Vision)を使用して、週2回動物を撮像した。シグナルが「飽和発光画像」を示唆した群については、(画像下に示した)より短い時間の間走査する。以下のように、二次転移を計算した:全身におけるBLIシグナル強度-後肢におけるBLIシグナル強度。(B)(
図2A)に記載されるように治療したマウスにおける、二次転移の平均発光強度の倍率変化、TrasをTras-ALNと比較する二元配置分散分析。(C)Tras及びTras-ALN治療群における、二次転移の個々の発光強度の倍率変化。(D)Tras及びTras-ALN治療群からの定量化した二次転移の平均BLI。(E)Tras及びTras-ALN治療群の個々の発光強度。****P<0.0001。
【
図21】Tras(上)又はTras-ALN(下)で治療したマウスの様々な臓器で観察された二次転移。
【
図22】
図22A~
図22C:HER2陰性モデルにおけるTras及びTras-ALNのインビボ比較。ヌードマウスの右後肢に、MCF-7細胞をIIA注射し、続いてTras(滅菌PBS中1mg/kgの後眼窩静脈洞、週2回)、及びTras-ALNコンジュゲート(Trasと同じ)で治療した。(A)生物発光撮像によって、腫瘍負荷を週2回監視した(4、12、19、29、及び42日目の撮像データを選択して、
図4Aに示した。(B)全身で検出された放射輝度によって定量化した各治療群からのBLI。(C)Tras及びTras-ALN治療群の個々の全身発光強度。****P<0.0001。
【
図23】
図23A~
図23D:Tras及びTras-ALN治療群のMCF-7モデルの後肢におけるBLIシグナルが定量化され、示されている。(A)(
図4Aに記載の)Tras及びTras-ALNで治療したマウスにおける、後肢の平均発光強度の倍率変化、TrasをTras-ALNと比較する二元配置分散分析。(B)Tras及びTras-ALN治療群の後肢の個々の発光強度の倍率変化。(C)Tras及びTras-ALN治療群からの定量化した後肢の平均BLI。(D)Tras及びTras-ALN治療群の個々の発光強度。****P<0.0001。
【
図24】
図24A~
図24B:MCF-7HER2陰性モデルに対するTras-ALNの効果:血清TRACP 5b及びカルシウムレベル分析。(A)実験終了時のTras及びTras-ALNにおける血清TRACP 5b濃度(*P<0.05)。(B)実験終了時のTras及びTras-ALN群における血清カルシウム濃度(*P<0.05)。
【
図25】
図25A~
図25E:二次転移のインビボ定量化。(A)様々な治療群のマウスの全身及び後肢におけるBLIシグナルが定量化され、示されている。以下のように、二次転移を決定した:全身及び後肢(赤丸によって示される)におけるBLIシグナルを定量化した。各時点において、推奨される手順及び製造業者の設定に従って、IVIS Lumina II(Advanced Molecular Vision)を使用して、週2回動物を撮像した。シグナルが「飽和発光画像」を示唆した群については、(画像下に示した)より短い時間の間走査する。以下のように、二次転移を計算した:全身におけるBLIシグナル強度-後肢におけるBLIシグナル強度。(B)
図22に記載されるように治療したマウスにおける、二次転移の平均発光強度の倍率変化、TrasをTras-ALNと比較する二元配置分散分析。(C)Tras及びTras-ALN治療群における、二次転移の個々の発光強度の倍率変化。(D)各治療群からの定量化した二次転移の平均BLI。(E)Tras及びTras-ALN治療群の個々の発光強度。****P<0.0001。
【
図26】
図26A~
図26B:MCF-7細胞株における多臓器転移に対するTras-ALN効果。(A)Tras又はTras-ALNで治療したマウスの様々な臓器で観察された転移。(B)円グラフは、Tras及びTras-ALN治療群の様々な臓器で観察された転移の頻度を示す。
【
図27】
図27A~
図27C:骨転移及び原発腫瘍の両方を有するマウスに対するTras-ALNの治療効果。(A)IIA注射を使用して、ルシフェラーゼ標識MDA-MB-361細胞を右後肢に注射した。非ルシフェラーゼ標識MDA-MB-361細胞を、同じマウスの乳房脂肪体に接種した。次いで、PBS(n=5)、Tras(滅菌PBS中1mg/kgの後眼窩静脈洞、n=7)、及びTras-ALN(Trasと同じ、n=7)でマウスを治療した。生物発光撮像(BLI)によって、後肢の腫瘍負荷を監視した。ノギスを使用して、乳房脂肪体の腫瘍負荷を測定した。(B)(A)に記載されるように治療したマウスにおける平均発光強度の後肢腫瘍倍率変化、Tras及びTras-ALN群の後肢腫瘍を比較する二元配置分散分析。(C)(A)に記載されるように治療したマウスにおける平均発光強度の乳房脂肪体腫瘍倍率変化、Tras及びTras-ALN群の乳房脂肪体腫瘍を比較する二元配置分散分析。*P<0.05、n.s.は、P>0.05を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
例示的な実施形態の説明
過去20年間にわたり、抗体に基づく療法は、がん治療において大きな価値を有するものであることが証明されてきた。これらのバイオ医薬品の臨床的成功にもかかわらず、骨微小環境における標的に到達することは、骨組織の比較的低い血管形成及び薬物浸透を損なう物理的障壁の存在に起因して、おそらく困難であると証明されている。骨における治療薬物の有効濃度を確保しようとする試みは、避けられないことに、他の組織においても同様に高濃度をもたらし、多くの場合、有害な全身作用又は副作用を生じ、それによって薬物の使用を制限又は排除する場合がある24、25。この場合、受動的ターゲティングの潜在的利益が失われる。
【0028】
したがって、ある特定の実施形態では、本開示は、骨標的化部分のコンジュゲーションを介して、抗体などの治療用ポリペプチドを骨に特異的に送達することを可能にする革新的な骨標的化(BonTarg)技術を提供する。生じた骨標的化抗体は、骨転移ニッチを特異的に標的として、骨微小転移を排除し、骨病変からの多臓器転移の播種を防止することもできる。骨ヒドロキシアパタイトマトリックスに固有の高いミネラル濃度を利用して、ビスホスホネート(BP)コンジュゲーションは、骨粗しょう症、原発性及び転移性骨新生物、並びに他の骨障害の治療手段として、骨への小分子薬物、撮像プローブ、核医薬品、及びナノ粒子の選択的送達に使用されている24、26~30。負に帯電したBPは、硬質の骨の主要な構成成分であるヒドロキシアパタイト(HA)などのミネラル化された正に帯電した骨マトリックスに対して高い親和性を有し、骨への優先的結合をもたらす。したがって、ある特定の態様では、本方法は、pClickコンジュゲーション技術を使用して、アレンドロネート(ALN)などのBP薬物を、HER2標的化モノクローナル抗体トラスツズマブ(Tras)などの抗体に部位特異的に結合させることを含む31。本研究は、内腸骨動脈内(IIA)注射に基づく2つの異種移植片モデルにおいて、生じるトラスツズマブ-アレンドロネートコンジュゲート(Tras-ALN)が、骨転移ニッチにおける治療用抗体の濃度を顕著に向上させ、骨におけるがん発生を阻害し、他臓器への二次転移を制限することを示した。骨に対する治療用抗体のこの種類の特異的送達は、骨関連疾患に対する抗体療法の幅及び効力の両方を向上する潜在性を有する。
【0029】
I.定義
本明細書で使用される場合、特定の構成成分に関して「本質的に含まない」は、特定の構成成分のいずれも、意図的に組成物へと製剤化されておらず、かつ/又は汚染物質としてのみ存在するか若しくは微量のみ存在することを意味するように本明細書で使用される。したがって、組成物の任意の意図しない汚染物質から生じる特定の構成成分の総量は、0.05%をはるかに下回り、好ましくは0.01%未満である。最も好ましくは、標準的な分析方法では特定の構成成分の量を検出することができない組成物である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「1つ(a)」又は「1つ(an)」は、1つ以上を意味し得る。本明細書で特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」という単語とともに使用される場合、単語「1つ(a)」又は「1つ(an)」は、1つ又は1つ以上を意味し得る。
【0031】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢のみを指すことが明示的に示されるか、又は選択肢が互いに排他的であることのない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢及び「及び/又は」のみを指す定義を支持する。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2の、又はそれ以上を意味し得る。
【0032】
「約」という用語は、一般に、記載の値を測定するための標準的な分析技術を使用して決定される、記載の値の標準偏差内であることを意味する。用語はまた、記載の値のプラス又はマイナス5%を指すことによって使用され得る。
【0033】
「有効量」又は「治療上有効な」という語句は、所望の結果を生じるのに十分な薬物又は薬剤の投薬量を意味する。所望の結果は、投薬のレシピエントにおける主観的若しくは客観的な改善、肺成長の増加、肺修復の増加、組織浮腫の低減、DNA修復の増加、アポトーシスの減少、腫瘍サイズの減少、がん細胞の成長速度の減少、転移の減少、又は上の任意の組み合わせであり得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン、特異的結合能力を維持するその誘導体、及び免疫グロブリン結合ドメインに相同であるか又は大部分相同である結合ドメインを有するタンパク質を指す。これらのタンパク質は、天然源に由来してもよいか、又は部分的若しくは完全に合成的に産生されてもよい。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、ヒトクラスのうちのいずれかを含む、任意の免疫グロブリンクラスのメンバー:IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEであり得る。抗体は、二重特異性抗体であり得る。例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物とともに使用される抗体は、IgGクラスの誘導体である。抗体という用語はまた、抗原結合抗体断片を指す。そのような抗体断片の例としては、限定されないが、Fab、Faby、F(aby)2、scFv、Fv、dsFvダイアボディ、及びFd断片が挙げられる。抗体断片は、任意の手段によって産生され得る。例えば、抗体断片は、そのままの抗体の断片化によって酵素的若しくは化学的に産生され得、部分抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に産生され得るか、又は完全に若しくは部分的に合成的に産生され得る。抗体断片は、任意選択的に、一本鎖抗体断片であり得る。代替的に、断片は、例えば、ジスルフィド結合によって一緒に連結される複数の鎖を含み得る。断片はまた、任意選択的に、多分子複合体であり得る。機能的抗体断片は、典型的には、少なくとも約10個のアミノ酸を含み、より典型的には、少なくとも約200個のアミノ酸を含むであろう。
【0035】
「対象」及び「患者」は、霊長類、哺乳類、及び脊椎動物などのヒト又は非ヒトのいずれかを指す。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0036】
本明細書で使用される場合、疾患、障害、又は医学的状態に関して使用される場合、「治療する」、「治療」、「治療すること」、又は「改善」という用語は、状態の療法的治療を指し、その目的が、症状又は状態の進行又は重症度を逆転させること、緩和すること、改善すること、阻害すること、減速させること、又は停止させることである。「治療すること」という用語は、状態の少なくとも1つの有害作用又は症状を低減又は緩和することを含む。1つ以上の症状又は臨床マーカーが低減される場合、治療は、一般に「有効」である。代替的に、状態の進行が低減又は停止される場合、治療は、「有効」である。すなわち、「治療」は、症状又はマーカーの改善だけでなく、治療の不在下で予想されるであろう症状の進行又は悪化の停止又は少なくとも減速も含む。有益な又は所望の臨床結果としては、限定されないが、1つ以上の症状の緩和、欠損の程度の減少、腫瘍又は悪性腫瘍の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、腫瘍成長及び/又は転移の遅延又は減速、並びに治療の不在下で予想されるものと比較した寿命の増加が挙げられる。
【0037】
II.骨標的化抗体コンジュゲート
本開示は、抗体への、ビスホスホネートなどの骨標的化部分のコンジュゲーションに関する。いくつかの態様では、骨標的化物質は、CH2-CH3接合部などの、抗原結合部位及びFc受容体結合部位から遠い部位において抗体にコンジュゲートされ得る。
【0038】
ビスホスホネートは、中央(ジェミナル)炭素(P-C-P骨格)に結合した2つのホスホネート基を含有する合成化合物であり、多発性骨髄腫を含むいくつかの代謝性及び腫瘍誘発性骨疾患における骨吸収を防止するために使用される。ビスホスホネート治療は、患者の生存率の増加に関連付けられており、これは、これらの化合物が腫瘍細胞に直接的な効果を有することを示している。ビスホスホネートは、中央のジェミナル炭素に結合した2つの追加の鎖を含有し得る。これらの2つの側鎖の存在は、ビスホスホネート骨格への多数の置換を可能にし、したがって、異なる薬理学的特性を有する様々な類似体の開発を可能にする。例示的なビスホスホネートとしては、限定されないが、アレンドロネート、ゾレドロネート、パミドロネート、リセドロネート、メドロン酸、アミノメチレンビスホン酸、クロドロネート、エチドロネート、チルンドロネート(tilundronate)、又はイバンドロネートが挙げられる。
【0039】
ある特定の態様では、骨標的化物質は、部位特異的コンジュゲーション方法によって抗体にコンジュゲートされ得る。1つの方法では、反応性チオール基を提供し、免疫グロブリンの折り畳み及び組み立てを妨げず、抗原結合を変化させることもない操作されたシステイン置換を軽鎖及び重鎖上の位置に含むシステインケミストリーによって、抗体はコンジュゲートされる(その全体が参照により本明細書に援用される、Junutula et a.,2008)。別の方法では、コンジュゲーション方法は、ホルミルグリシン生成酵素によって認識される6アミノ酸コンセンサス配列を使用する、組換えタンパク質へのアルデヒド基の部位特異的導入を含む(その全体が参照により本明細書に援用される、Carrico et al.,2007)。この遺伝子的にコードされた「アルデヒドタグ」は、His6タグ以下であり、多数のタンパク質標識用途に利用することができる。いくつかの態様では、部位特異的コンジュゲーション方法は、変異型ベータ1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(その全体が参照により本明細書に援用される、Boeggeman et al.,2009)又はトランスグルタミナーゼ媒介性部位特異的コンジュゲーションなどの、変異型グリコシルトランスフェラーゼを使用する抗体の再モデル化Fc N-グリカンを含む。特定の態様では、部位特異的コンジュゲーションは、ジスルフィド架橋の使用を含む(その全体が参照により本明細書に援用される、Zhang et al.,2016)。ある特定の態様では、部位特異的コンジュゲーション方法は、非正準アミノ酸の組み込みを含む(Leisle et al.,2015、その全体が参照により本明細書に援用される)。例えば、骨標的化物質は、親和性化合物を使用する近接誘発性部位特異的コンジュゲーションを含むpClick技術を使用して、抗体にコンジュゲートされ得る(その全体が参照により本明細書に援用される、WO2019/217900)。pClickは、抗体操作及びいかなる化学的又は酵素的処理も必要としない部位特異的技術である。pClick方法は、骨標的化部分と抗体との間の部位特異的共有結合形成を可能にすることができる。特定の態様では、骨標的化抗体コンジュゲートは、ポリマー骨格を含まない。特定の態様では、骨標的化部分は、抗体のFcドメインのN-グリカンにコンジュゲートされない。
【0040】
具体的には、本方法は、ncAAと、リジン又はシステインなどの近くの抗体残基との間の近接誘発性反応性を含み得る。pClickは、抗体操作を実施することなく、骨標的化部分と、抗体の定義されたリジンなどの残基との間の共有結合形成を可能にし得る。
【0041】
コンジュゲートされた本抗体は、撮像剤又は診断剤に更にコンジュゲートされ得る。
【0042】
本明細書で使用される「治療剤」は、疾患又は健康関連状態の治療上の利益を得る目的で対象に投与することができる、任意の薬剤を指す。例えば、治療剤にコンジュゲートされた抗体は、腫瘍のサイズを低減するか、腫瘍の局所侵襲性を低減若しくは阻害するか、又は転移の発生のリスクを低減する目的で、対象に投与され得る。
【0043】
本明細書で使用される「診断剤」又は「撮像剤」(互換的に言及される)は、対象における疾患又は健康関連状態を診断する目的で対象に投与することができる、任意の薬剤を指す。診断は、疾患が存在するかどうか、疾患が進行しているかどうか、又は疾患状態の任意の変化を決定することを含み得る。
【0044】
治療剤又は診断剤は、小分子、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド、抗体、抗体断片、DNA、又はRNAであり得る。
【0045】
A.製剤及び投与
本開示は、ビスホスホネートなどの骨標的化物質にコンジュゲートされた抗体を含む、薬学的組成物を提供する。そのような組成物は、予防有効量又は治療有効量の抗体若しくはその断片、又はペプチド免疫原、及び薬学的に許容される担体を含む。特定の実施形態では、「薬学的に許容される」という用語は、動物、より具体的にはヒトにおいて使用するために、連邦政府又は州政府の規制当局によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般的に認められた薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬とともに投与される希釈剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのような薬学的担体は、無菌液体、例えば、水及び油であってもよく、石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む。薬学的組成物が静脈内投与される場合、特定の担体は水である。生理食塩水溶液及びデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液も、液体担体として、特に注射用溶液に用いることができる。他の好適な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0046】
所望な場合、組成物はまた、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することができる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。経口製剤は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの医薬グレードの標準的な担体を含み得る。好適な薬学的薬剤の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、患者に適切に投与するための形態を提供するのに好適な量の担体と一緒に、好ましくは精製された形態の、予防有効量又は治療有効量の抗体又はその断片を含有するであろう。製剤は、経口、静脈内、動脈内、口腔内、鼻腔内、噴霧、気管支吸入であり得るか、又は機械的換気によって送達され得る投与モードに適合するべきである。
【0047】
開示のもののような抗体が、ポックスウイルス感染のリスクのある対象においてインビボで産生される場合、活性ワクチンも想定される。そのようなワクチンは、非経口投与のために製剤化され得、例えば、皮内、静脈内、筋肉内、皮下、又は更には腹腔内経路を介して注射するために製剤化され得る。皮内経路及び筋肉内経路による投与が企図される。代替的に、ワクチンは、例えば、点鼻、吸入、又はネブライザーによる、粘膜への局所経路によって直接投与され得る。薬学的に許容される塩としては、酸性塩と、例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸とで形成されるものが挙げられる。遊離カルボキシル基で形成される塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄などの無機塩基と、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基とから誘導され得る。
【0048】
人工的に獲得した受動免疫として知られている抗体の受動的移行は、一般に、静脈内又は筋肉内注射の使用を伴うであろう。抗体の形態は、静脈内(IVIG)又は筋肉内(IG)使用のためにプールされたヒト免疫グロブリンとしての、免疫化されているか又は疾患から回復中のドナーからの高力価のヒトIVIG又はIGとしての、及びモノクローナル抗体(MAb)としての、ヒト又は動物の血漿又は血清であり得る。そのような免疫は、一般に短期間しか持続せず、過敏症反応、及び特に非ヒト由来のガンマグロブリンからの血清病の潜在的なリスクも存在する。しかしながら、受動的免疫は、即時保護を提供する。抗体は、注射に好適な担体、すなわち、滅菌及び注射可能な担体中に製剤化されるであろう。
【0049】
一般に、本開示の組成物の成分は、例えば、活性剤の量を示すアンプル又はサシェなどの気密容器内の乾燥した凍結乾燥粉末又は水を含まない濃縮物として、単位剤形で別々に又は一緒に混合されて供給される。組成物が注入によって投与されるものである場合、医薬グレードの滅菌水又は生理食塩水を含有する注入ボトルを用いて分配され得る。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0050】
本開示の組成物は、中性又は塩の形態として製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどのアニオンを用いて形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどのカチオンを用いて形成されるものが挙げられる。
【0051】
B.過剰増殖性疾患
過剰増殖性疾患は、細胞が制御不能に再生し始めることを引き起こす任意の疾患に関連付けられる場合があるが、原型的な例は、がんである。がんの重要な要素のうちの1つは、細胞の正常なアポトーシスサイクルが中断されることであり、したがって、細胞の成長を中断する薬剤は、これらの疾患を治療するための治療剤として重要である。本開示では、骨標的化抗体コンジュゲートを使用して、骨がん及び骨に転移するがんなどの様々な種類のがんを治療することができる。
【0052】
本開示の化合物で治療することができるがん細胞としては、限定されないが、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、膵臓、精巣、舌、子宮頸部、又は子宮からの細胞が挙げられる。加えて、がんは、これらに限定されないが、具体的には、以下の組織学的種類のものであり得る:新生物、悪性;がん;がん、未分化;巨細胞及び紡錘細胞がん;小細胞がん;乳頭状がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;毛様体がん;移行細胞がん;乳頭状移行細胞がん;腺がん;ガストリノーマ、悪性;胆管がん;肝細胞がん;複合的な肝細胞がん及び胆管がん;海綿状腺がん;腺様嚢胞がん;腺腫性ポリープの腺がん;腺がん、家族性多発性大腸腺腫症;固形がん;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞上皮がん;乳頭状腺がん;嫌色素性細胞がん;好酸性がん;酸親和性腺がん;好塩基球がん;透明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞性腺がん;乳頭状及び濾胞性腺がん;非被包性硬化がん;副腎皮質がん;子宮内膜がん;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘表皮がん;嚢胞線がん;乳頭状嚢胞腺がん;乳頭状漿液性嚢胞腺がん;粘液性嚢胞性腺がん;粘液腺がん;印環細胞がん;浸潤性導管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;パジェット病、乳房;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生を伴う腺がん;胸腺腫、悪性;卵巣間質性腫瘍、悪性;莢膜細胞種、悪性;顆粒膜細胞腫瘍、悪性;男性胚腫、悪性;セルトリ細胞がん;ライディッヒ細胞腫瘍、悪性;脂肪細胞腫瘍、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ、悪性;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性メラノーマ;無色素性メラノーマ;表在拡大型メラノーマ;巨大色素性母斑におけるマリグ(malig)メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児型横紋筋肉腫;肺胞性横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;がん肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎児性がん;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛がん;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉系軟骨肉腫;骨の巨大細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;グリオーマ、悪性;上衣腫;星細胞腫;原形質星細胞腫;原線維性星細胞腫;星芽腫;膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起神経膠芽細胞腫;神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経原腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;並びに有毛細胞白血病。ある特定の態様では、腫瘍は、骨肉腫、血管肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、ユーイング肉腫、膠芽腫、神経芽腫、又は白血病を含み得る。
【0053】
C.治療の方法
特に、対象(例えば、ヒト対象)におけるがんの治療に使用され得る組成物が、本明細書に開示される。上記の組成物は、哺乳類(例えば、げっ歯類、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコなど)に、有効量、すなわち、治療される対象において所望の結果を生じることが可能である(例えば、がん性細胞のアポトーシスを引き起こすか、又は細菌細胞を殺傷する)量で投与されることが好ましい。本開示の方法で利用される組成物の毒性及び治療有効性は、標準的な薬学的手順によって決定することができる。医学及び獣医学分野で周知であるように、任意の1匹の動物の投薬量は、対象のサイズ、体表面積、体重、年齢、投与される特定の組成物、投与時間及び投与経路、一般的な健康、感染症又はがんの臨床症状、並びに同時に投与される他の薬物を含む、多くの要因に依存する。本明細書に記載の組成物は、典型的には、血液学的パラメータ(全血球数(CBC))、又はがん細胞成長若しくは増殖の低減を同定することによってアッセイして、細菌細胞の成長若しくは増殖を阻害するか、バイオフィルムの成長を阻害するか、又はがん性細胞の死を誘発する(例えば、がん細胞のアポトーシスを誘発する)投薬量で投与される。
【0054】
本開示の治療方法(予防治療を含む)は、一般に、その必要のある、哺乳類、特にヒトを含む対象に、治療有効量の本明細書に記載の組成物を投与することを含む。そのような治療は、疾患、障害、又はその症状に罹患しているか、有するか、感受性があるか、又はそのリスクのある対象、特にヒトに好適に行われるであろう。これらの「リスクのある」対象の決定は、対象又は医療提供者の診断試験又は意見による任意の客観的又は主観的決定(例えば、遺伝子検査、酵素又はタンパク質マーカー、マーカー(本明細書で定義される)、家族歴など)によって行われ得る。
【0055】
一実施形態では、本開示は、治療の進行を監視する方法を提供する。方法は、対象が、治療量の本明細書に記載の組成物を投与されている、がん(例えば、白血病)に関連付けられる障害又はその症状に罹患しているか又は感受性がある対象における、診断マーカー(例えば、限定されないが、CD34、CD38、CD90、及びCD117を含み得る)又は診断測定(例えば、スクリーニング、アッセイ)として、細胞表面タンパク質を用いる血液学的パラメータ及び/又はがん幹細胞(CSC)分析の変化のレベルを決定するステップを含む。方法で決定されるマーカーのレベルは、対象の疾患状態を確立するために、健康な正常対照又は他の罹患している患者のいずれかにおけるマーカーの既知のレベルと比較され得る。好ましい実施形態では、対象におけるマーカーの第2のレベルは、第1のレベルの決定より後の時点で決定され、2つのレベルを比較して、疾患の経過又は治療の有効性が監視される。ある特定の好ましい実施形態では、対象におけるマーカーの治療前レベルは、本明細書に記載の方法に従って治療を開始する前に決定され、次いで、マーカーのこの治療前レベルを、治療を開始した後の対象におけるマーカーのレベルと比較して、治療の有効性が決定され得る。
【0056】
D.追加の療法
ある特定の実施形態では、本実施形態の組成物及び方法は、第2の又は追加の療法と組み合わせた骨標的化抗体コンジュゲートを含む。そのような療法は、骨腫瘍を伴う任意の疾患の治療に適用され得る。例えば、疾患は、骨がん又は骨転移であり得る。
【0057】
ある特定の実施形態では、本実施形態の組成物及び方法は、少なくとも1つの追加の療法と組み合わせた骨標的化抗体コンジュゲートを含む。追加の療法は、放射線療法、手術(例えば、腫瘍摘出手術及び乳房切除)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、又は前述の組み合わせであり得る。追加の療法は、アジュバント療法又はネオアジュバント療法の形態であり得る。
【0058】
併用療法を含む方法及び組成物は、治療又は保護効果を向上し、かつ/又は別の抗がん療法若しくは抗過剰増殖療法の治療効果を増加する。治療及び予防の方法及び組成物は、がん細胞の殺傷及び/又は細胞過剰増殖の阻害などの所望の効果を達成するのに有効な組み合わせた量で提供され得る。このプロセスは、細胞を、抗体又は抗体断片、及び第2の療法の両方と接触させることを含み得る。組織、腫瘍、又は細胞を、薬剤(すなわち、抗体若しくは抗体断片、又は抗がん剤)のうちの1つ以上を含む1つ以上の組成物若しくは薬理学的製剤と接触させてもよいか、又は組織、腫瘍、及び/若しくは細胞を、2つ以上の別個の組成物若しくは製剤と接触させることによるものであり得、1つの組成物が、1)抗体若しくは抗体断片、2)抗がん剤、又は3)抗体若しくは抗体断片、及び抗がん剤の両方を提供する。また、そのような併用療法は、化学療法、放射線療法、手術療法、又は免疫療法と同時に使用され得ることが企図される。
【0059】
「接触させる」及び「曝露させる」という用語は、細胞に適用される場合、本明細書では、治療構築物及び化学療法剤又は放射線療法剤が、標的細胞に送達されるか、又は標的細胞と直接並置して配置されるプロセスについて記載するために使用される。細胞殺傷を達成するために、例えば、両方の薬剤は、細胞を殺傷するか、又は細胞が分裂するのを防止するのに有効な組み合わせた量で細胞に送達される。
【0060】
阻害抗体は、抗がん治療と比較して、その前、その間、その後、又は様々な組み合わせで投与され得る。投与は、同時~数分~数日~数週間の範囲の間隔であり得る。抗体又は抗体断片が、抗がん剤とは別々に患者に提供される実施形態では、一般に、2つの化合物が、依然として患者に有利な複合効果を発揮することが可能であるように、各送達時間の間に顕著な期間が過ぎてしまわないことが確認されるであろう。そのような場合、互いに約12~24又は72時間以内、より具体的には、互いに約6~12時間以内に、抗体療法及び抗がん療法が患者に提供され得ることが企図される。いくつかの状況では、治療期間を顕著に延長することが望ましい場合があり、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6、又は7)~数週間(1、2、3、4、5、6、7、又は8)が経過する。
【0061】
ある特定の実施形態では、治療過程は、1~90日又はそれ以上続くであろう(このそのような範囲は、介在する日数を含む)。1つの薬剤は、1日目~90日目のうちの任意の日(このそのような範囲は、介在する日を含む)又はそれらの任意の組み合わせに投与され得、別の薬剤は、1日目~90日目のうちの任意の日(このそのような範囲は、介在する日を含む)又はそれらの任意の組み合わせに投与されることが企図される。1日(24時間の期間)以内に、患者は、薬剤のうちの1つ又は複数の投与を受ける場合がある。更に、治療過程の後、抗がん治療が投与されない期間が存在することが企図される。この期間は、患者の予後、体力、健康などの状態に応じて、1~7日、及び/又は1~5週間、及び/又は1~12ヶ月若しくはそれ以上続き得る(このそのような範囲は、介在する日数を含む)。治療サイクルは、必要に応じて繰り返されるであろうことが予想される。
【0062】
一部の実施形態では、追加の療法は、小分子酵素阻害剤又は抗転移剤の投与である。一部の実施形態では、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、抗吐き気剤などの、治療の副作用の発生及び/又は重症度を軽減することが意図される薬剤)の投与である。一部の実施形態では、追加の療法は、放射線療法である。一部の実施形態では、追加の療法は、手術である。一部の実施形態では、追加の療法は、放射線療法と手術との組み合わせである。一部の実施形態では、追加の療法は、ガンマ線照射である。一部の実施形態では、追加の療法は、PBK/AKT/mTOR経路を標的とする療法、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、及び/又は化学抗がん剤(chemopreventative agent)である。追加の療法は、当該技術分野で既知の化学療法剤のうちの1つ以上であり得る。
【0063】
様々な組み合わせが用いられ得る。以下の例では、骨標的化抗体コンジュゲートは、「A」であり、抗がん療法は、「B」である:
【0064】
本実施形態の任意の化合物又は療法を患者に投与することは、存在する場合、薬剤の毒性を考慮して、そのような化合物を投与するための一般プロトコルに従うであろう。したがって、一部の実施形態では、併用療法に起因する毒性を監視するステップが存在する。
【0065】
1.化学療法
本実施形態に従って、多種多様な化学療法剤が使用され得る。「化学療法」という用語は、がんを治療するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」は、がんの治療において投与される化合物又は組成物を意味するために使用される。これらの薬剤又は薬物は、細胞内のそれらの活性モード、例えば、それらが細胞周期に影響を与えるかどうか、及びどの段階で影響を与えるかによって分類される。代替的に、薬剤は、DNAを直接架橋する能力、DNAにインターカレートする能力、又は核酸合成に影響を与えることによって染色体異常及び有糸分裂異常を誘発する能力に基づいて、特徴評価され得る。
【0066】
化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロスホスファミド(cyclosphosphamide)などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチイレンエチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンギスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホマイド、メクロレタミン、酸化メクロレタミン塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミドなどのナイトロジェンマスタード及びウラシルマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロスレア(nitrosurea);エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンガンマlI及びカリケアミシンオメガI1);ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連するクロモプロテインエンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、オートラルナイシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラルナイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝物質;デノプテリン、プテロプテリン、及びトリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、及びテストラクトンなどのアンドロゲン;ミトタン及びトリロスタンなどの抗副腎;フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシン及びアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSKポリサッカリド複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメトルヒオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン(plicomycin)、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、並びに上のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。
【0067】
2.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広く使用されている他の因子としては、γ線、X線、及び/又は放射性同位体の腫瘍細胞への直接送達として一般的に知られているものが挙げられる。マイクロ波、プロトンビーム照射(米国特許第5,760,395号及び同第4,870,287号)、及びUV照射などの他の形態のDNA損傷因子も企図される。これらの因子の全てが、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製及び修復、並びに染色体の組み立て及び維持に対する広範囲の損傷に影響を及ぼす可能性が最も高い。X線の線量範囲は、長期間(3~4週間)にわたって、50~200レントゲンの1日用量から2000~6000レントゲンの単回用量までの範囲である。放射性同位体の線量範囲は広く変動し、同位体の半減期、放出される放射線の強度及び種類、並びに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0068】
3.免疫療法
当業者は、追加の免疫療法が、実施形態の方法と組み合わせで、又は同時に使用され得ることを理解するであろう。がん治療の文脈において、免疫療法剤は、一般に、がん細胞を標的とし、破壊するために、免疫エフェクター細胞及び分子の使用に依存する。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))が、そのような例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに特異的な抗体であり得る。抗体単独は、治療のエフェクターとして機能することができるか、又は実際に細胞殺傷に影響を及ぼすように他の細胞を動員することができる。抗体はまた、薬物又は毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートされ得、標的化剤として機能し得る。代替的に、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的又は間接的に相互作用する表面分子を担持するリンパ球であり得る。様々なエフェクター細胞としては、細胞傷害性T細胞及びNK細胞が挙げられる。
【0069】
抗体-薬物コンジュゲートは、がん治療薬の開発への画期的なアプローチとして浮上している。がんは、世界的に主要な死因のうちの1つである。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、細胞殺傷薬物に共有結合しているモノクローナル抗体(MAb)を含む。このアプローチは、抗原標的に対するMAbの高い特異性を非常に強力な細胞傷害性薬物と組み合わせ、ペイロード(薬物)を腫瘍細胞に送達する「アーム型」MAbを生じ、抗原のレベルを豊富にする(Carter et al.,2008、Teicher 2014、Leal et al.,2014)。薬物の標的化送達はまた、正常な組織における曝露を最小限に抑え、毒性の減少及び治療指数の改善をもたらす。2011年のADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)及び2013年のKADCYLA(登録商標)(トラスツズマブエムタンシン又はT-DM1)の2つのADC薬物のFDAによる承認によって、このアプローチが妥当であると認められた。現在、様々な段階の臨床試験中である、がん治療のための30以上のADC薬物候補が存在する(Leal et al.,2014)。抗体操作及びリンカーペイロード最適化がより一層成熟するにつれて、新しいADCの発見及び開発は、このアプローチに好適である新しい標的の同定及び検証、並びに標的化MAbの生成への依存が増加している(Teicher 2009)。ADC標的の2つの基準は、腫瘍細胞における上方制御/高レベルの発現、及び堅牢な内在化である。
【0070】
免疫療法の一態様では、腫瘍細胞は、標的とすることが容易である、すなわち、大部分の他の細胞に存在しない、いくつかのマーカーを担持する必要がある。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのうちのいずれも、本実施形態の文脈における標的化に好適であり得る。一般的な腫瘍マーカーとしては、CD20、がん胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erbB、及びp155が挙げられる。免疫療法の代替的な態様は、抗がん効果を免疫刺激効果と組み合わせることである。また、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、ガンマ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカイン、及びFLT3リガンドなどの成長因子を含む免疫刺激分子が存在する。
【0071】
現在調査中又は使用中の免疫療法の例としては、免疫アジュバント、例えば、Mycobacterium bovis、Plasmodium falciparum、ジニトロクロロベンゼン、及び芳香族化合物(米国特許第5,801,005号及び同第5,739,169号、Hui and Hashimoto,1998、Christodoulides et al.,1998)、サイトカイン療法、例えば、インターフェロンα、β、及びγ、IL-1、GM-CSF、及びTNF(Bukowski et al.,1998、Davidson et al.,1998、Hellstrand et al.,1998)、遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2、及びp53(Qin et al.,1998、Austin-Ward and Villaseca,1998、米国特許第5,830,880号及び同第5,846,945号)、並びにモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2、及び抗p185(Hollander,2012、Hanibuchi et al.,1998、米国特許第5,824,311号)が挙げられる。1つ以上の抗がん療法が、本明細書に記載の抗体療法とともに用いられ得ることが企図される。
【0072】
一部の実施形態では、免疫療法は、免疫チェックポイント阻害剤であり得る。免疫チェックポイントは、シグナル(例えば、共刺激分子)を上げるか、又はシグナルを下げるかのいずれかである、免疫系の分子である。免疫チェックポイント遮断によって標的とされ得る阻害チェックポイント分子としては、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(CD276としても知られている)、B及びTリンパ球減衰因子(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、CD152としても知られている)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、プログラム死1(PD-1)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、並びにT細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)が挙げられる。特に、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1軸及び/又はCTLA-4を標的とする。
【0073】
免疫チェックポイント阻害剤は、小分子、組換え形態のリガンド若しくは受容体などの薬物であり得るか、又は特にヒト抗体などの抗体であり得る(例えば、両方が参照により本明細書に援用される、国際特許公開第2015/016718号、Pardoll,Nat Rev Cancer,12(4):252-64,2012)。免疫チェックポイントタンパク質又はその類似体の既知の阻害剤が使用され得、特に、抗体のキメラ化、ヒト化、又はヒト形態が使用され得る。当業者であれば分かるように、代替名及び/又は等価名は、本開示で言及される特定の抗体のために使用され得る。そのような代替名及び/又は等価名は、本発明の文脈において互換的である。例えば、ランブロリズマブは、MK-3475及びペムブロリズマブという代替名及び等価名でも知られている。
【0074】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1のそのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PD-1リガンド結合パートナーは、PDL1及び/又はPDL2である。別の実施形態では、PDL1結合アンタゴニストは、PDL1のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PDL1結合パートナーは、PD-1及び/又はB7-1である。別の実施形態では、PDL2結合アンタゴニストは、PDL2のその結合パートナーへの結合を阻害する分子である。特定の態様では、PDL2結合パートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はオリゴペプチドであり得る。例示的な抗体は、全て参照により本明細書に援用される、米国特許第8735553号、同第8354509号、及び同第8008449号に記載されている。全て参照により本明細書に援用される、米国特許出願第2014/0294898号、同第2014/022021号、及び同第2011/0008369号に記載のものなどの、本明細書で提供される方法で使用するための他のPD-1軸アンタゴニストは、当該技術分野で既知である。
【0075】
一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)である。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びCT-011からなる群から選択される。一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPDL1又はPDL2の細胞外部分又はPD-1結合部分を含む、イムノアドヘシン)である。一部の実施形態では、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。MDX-1106-04、MDX-1106、ONO-4538、BMS-936558、及びOPDIVO(登録商標)としても知られているニボルマブは、WO2006/121168に記載の抗PD-1抗体である。MK-3475、Merck3475、ランブロリズマブ、KEYTRUDA(登録商標)、及びSCH-900475としても知られているペムブロリズマブは、WO2009/114335に記載の抗PD-1抗体である。CT-011は、hBAT又はhBAT-1としても知られ、WO2009/101611に記載されている抗PD-1抗体である。B7-DCIgとしても知られているAMP-224は、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載のPDL2-Fc融合可溶性受容体である。
【0076】
本明細書で提供される方法において標的とされ得る別の免疫チェックポイントは、CD152としても知られている細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)である。ヒトCTLA-4の完全なcDNA配列は、Genbank受託番号L15006を有する。CTLA-4は、T細胞の表面上に見られ、抗原提示細胞の表面上のCD80又はCD86に結合した場合、「オフ」スイッチとして作用する。CTLA4は、ヘルパーT細胞の表面上に発現され、T細胞に阻害シグナルを伝達する、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA4は、T細胞共刺激タンパク質であるCD28に類似し、両方の分子は、抗原提示細胞上のCD80及びCD86(それぞれ、B7-1及びB7-2とも呼ばれる)に結合する。CTLA4は、T細胞に抑制性シグナルを伝達し、一方、CD28は、刺激性シグナルを伝達する。細胞内CTLA4は、制御性T細胞にも見出され、それらの機能に重要であり得る。T細胞受容体及びCD28を介したT細胞の活性化は、B7分子の抑制性受容体であるCTLA-4の発現の増加をもたらす。
【0077】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、又はキメラ抗体)、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、又はオリゴペプチドである。
【0078】
本方法における使用に好適な抗ヒトCTLA-4抗体(又は、それに由来するVH及び/又はVLドメイン)は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成され得る。代替的に、当該技術分野で認識されている抗CTLA-4抗体が使用され得る。例えば、US8,119,129、WO01/14424、WO98/42752;WO00/37504(トレメリムマブ、以前チシリムマブとしても知られているCP675,206)、米国特許第6,207,156号、Hurwitz et al.(1998)Proc Natl Acad Sci USA 95(17):10067-10071;Camacho et al.(2004)J Clin Oncology 22(145):Abstract No.2505(抗体CP-675206);及びMokyr et al.(1998)Cancer Res 58:5301-5304に開示の抗CTLA-4抗体は、本明細書に開示の方法で使用され得る。前述の刊行物の各々の教示は、参照により本明細書に援用される。これらの技術分野で認識されているCTLA-4への結合に対する抗体のうちのいずれかと競合する抗体も使用することができる。例えば、ヒト化CTLA-4抗体は、全て参照により本明細書に援用される、国際特許出願第2001/014424号、同第2000/037504号、及び米国特許第8,017,114号に記載されている。
【0079】
例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1、MDX-010、MDX-101、及びYervoy(登録商標)としても知られている)又はその抗原結合断片及びバリアントである(例えば、WOO1/14424を参照されたい)。他の実施形態では、抗体は、イピリムマブの重鎖及び軽鎖のCDR又はVRを含む。したがって、一実施形態では、抗体は、イピリムマブのVH領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメイン、並びにイピリムマブのVL領域のCDR1、CDR2、及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と同じCTLA-4上のエピトープとの結合に対して競合し、かつ/又はそれに結合する。別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列同一性(例えば、イピリムマブと少なくとも約90%、95%、又は99%の可変領域同一性)を有する。
【0080】
CTLA-4を調節するための他の分子としては、全て参照により本明細書に援用される、米国特許第5844905号、同第5885796号、及び国際特許出願第1995/001994号及び同第1998/042752号に記載のものなどのCTLA-4リガンド及び受容体、並びに参照により本明細書に援用される、米国特許第8329867号に記載のものなどのイムノアドヘシンが挙げられる。
【0081】
4.手術
がんを有する人のおよそ60%は、予防、診断、又は病期分類、治癒、及び緩和手術を含む、何らかの種類の手術を受けるであろう。治癒的手術としては、がん性組織の全部又は一部を物理的に除去、切り取り、かつ/又は破壊する切除が挙げられ、本実施形態の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、及び/又は代替療法などの他の療法と同時に使用され得る。腫瘍切除は、腫瘍の少なくとも一部分の物理的除去を指す。腫瘍切除に加えて、手術による治療としては、レーザー手術、凍結手術、電気手術、及び顕微鏡によって制御される手術(モーズ手術)が挙げられる。
【0082】
がん性細胞、組織、又は腫瘍の一部分又は全部を切り取ると、身体に空洞が形成され得る。治療は、灌流、直接注射、又は追加の抗がん療法による領域の局所適用によって達成され得る。そのような治療は、例えば、1、2、3、4、5、6、若しくは7日毎、又は1、2、3、4、及び5週間毎、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12ヶ月毎に繰り返され得る。これらの治療も同様に、変動する投薬量のものであり得る。
【0083】
5.他の薬剤
他の薬剤を本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用して、治療の治療有効性を改善することができることが企図される。これらの追加の薬剤としては、細胞表面受容体及びGAP接合部の上方制御に影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤及び分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘発剤に対する過剰増殖性細胞の感受性を増加させる薬剤、又は他の生物学的薬剤が挙げられる。GAP接合部の数を上昇させることによる細胞間シグナル伝達の増加は、隣接する過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖性効果を増加させるであろう。他の実施形態では、細胞増殖抑制剤又は分化剤を本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用して、治療の抗過剰増殖有効性を改善することができる。細胞接着の阻害剤は、本実施形態の有効性を改善することが企図される。細胞接着阻害剤の例は、局所接着キナーゼ(FAK)阻害剤及びロバスタチンである。過剰増殖性細胞のアポトーシスに対する感受性を増加させる、抗体c225などの他の薬剤を本実施形態のある特定の態様と組み合わせて使用して、治療有効性を改善することができることが、更に企図される。
【0084】
III.キット
実施形態の様々な態様では、治療剤、並びに/又は他の治療剤及び送達剤を含有する、キットが想定される。一部の実施形態では、本実施形態は、実施形態の抗体組成物を調製及び/又は投与するためのキットを企図する。キットは、本実施形態の薬学的組成物のうちのいずれかを含有する1つ以上の密封バイアルを備え得る。キットは、例えば、本実施形態の構成成分を調製、製剤化、及び/若しくは投与するか、又は本発明の方法の1つ以上のステップを実施するための、コンジュゲート抗体、並びに試薬を含み得る。一部の実施形態では、キットはまた、エッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、又はチューブなどのキットの構成要素と反応しないであろう容器である、好適な容器を備え得る。容器は、プラスチック又はガラスなどの滅菌可能な材料から作製され得る。
【0085】
キットは、本明細書に記載された方法の手順ステップを概説する指示書を更に含み得、本明細書に記載のものと実質的に同じ手順に従うか、又は当業者に既知である。指示書情報は、コンピュータを使用して実行される場合に薬学的有効量の治療剤の送達の実際の又は仮想の手順を表示させる機械可読指示を含有するコンピュータ可読媒体内に存在する場合がある。
【実施例】
【0086】
IV.実施例
以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を実証するために含まれている。以下の実施例に開示の技術は、本開示の実施において十分に機能することが発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい態様を構成すると見なすことができることが、当業者に理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、依然として本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく類似の又は同様の結果を得ることができることを理解するべきである。
【0087】
実施例1-骨転移のための抗体
BonTargを使用する第1の骨標的化抗体の開発
BP分子へのコンジュゲーションを介して骨に治療用抗体を特異的に送達する可能性を調べるために、HER2標的化抗体トラスツズマブ(Tras)及びBP薬物アレンドロネート(ALN)を使用してモデルを設計した。ALNは、骨標的化物質として、並びに骨粗しょう症及び骨転移を治療するためのレジメンとして使用される、第2世代のBP薬物である
31。ALNコンジュゲーションが抗体の治療有効性を損なわないことを確実にするために、pClickと呼ばれる新規の近接誘発性抗体コンジュゲーション戦略を用いた
31。pClick技術は、穏やかな条件下で天然抗体へのペイロードの部位特異的結合を可能にし、したがって、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)の活性化を担う受容体である抗原受容体又はFcγRIII受容体への結合の破壊を最小限に抑える。pClick技術は、抗体操作にも、ほとんどの治療用抗体の生成を特徴とするUV/化学/酵素処理にも依存しない。トラスツズマブ-アレンドロネートコンジュゲート(Tras-ALN)を調製するために、pClickを使用して、アジド官能性部分を含有するTrasを生成し、続いて、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)官能化ALNと反応させた(
図1A、及び
図5~
図8)。生じたTras-ALNを脱塩カラムで更に精製し、SDS-PAGE及びESI-MSによって完全に特徴評価した(
図1B、
図1C)。コンジュゲートされていない重鎖又は分解生成物はSDS-PAGEで明らかにならず、95%超のカップリング効率が示された。ESI-MS分析はまた、重鎖の95%超がALN分子とコンジュゲートされたことを明らかにした。
【0088】
ALNに対する抗体コンジュゲーションは、抗原結合及び特異性を保持する
抗原結合親和性及び特異性に対するALNコンジュゲーションの効果を調査するために、HER2陽性細胞株及びHER2陰性細胞株のフローサイトメトリー分析によって、Tras及びTras-ALNの結合親和性を評価した。
図1Dは、Tras及びTras-ALNの両方が、HER2発現細胞株BT474、SK-BR-3、及びMDA-MB-361に対して強い結合親和性を有するが、HER2陰性細胞株MDA-MB-468に対しては強くないことを明らかにし、抗体特異性が、ALNコンジュゲーションによって変化しなかったことを示唆している(表1)。HER2陽性細胞への結合についてのKd値は、Tras及びTras-ALNについて同様の範囲内であり(それぞれ、BT474、3.0対3.8nM;SK-BR-3、2.3対3.0nM)、ALNコンジュゲーションが、抗原結合の強度に影響を及ぼさないことを示している(
図8~
図11)。共焦点蛍光撮像は、Tras-ALNが、抗原結合及び特異性を保持していることを更に確認している(
図12)。HER2陽性BT474及びSK-BR-3細胞、並びにHER2陰性MDA-MB-468細胞を、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識Tras-ALNとともに30分間インキュベートした。共焦点撮像は、細胞表面に関連する蛍光が、HER2陽性BT474及びSK-BR-3細胞でのみ呈され、HER2陰性MDA-MB-468細胞では呈されないことを示している(
図12)。したがって、TrasのALN修飾は、その抗原結合親和性及び特異性に影響を及ぼさない。次に、HER2発現乳がん細胞及びHER2陰性乳がん細胞に対する選択的細胞傷害性について、Tras-ALNコンジュゲートを試験した。
図1E、
図1F、
図1G、及び表1に示されるように、Tras-ALNコンジュゲートは、HER2陽性BT-474細胞(2.3±0.7μg/mlのEC
50)及びMDA-MB-361(78±21μg/mlのEC
50)に対する細胞傷害活性を呈し、Tras(1.4±0.9μg/mlのEC
50及び57±10μg/mlのEC
50)のものと区別不能である。いずれの抗体も、HER2陰性MDA-MB-468細胞を殺傷しない(EC
50>500μg/ml)。これらの結果は、負に帯電した部分ALNのコンジュゲーションが、Tras抗体の抗原結合及びインビトロ抗腫瘍細胞活性を維持することを示している。
【0089】
インビトロ及びインビボでのTras-ALNによる骨転移ニッチ標的化の向上
次に、骨組織を標的とするTras-ALNコンジュゲートの能力を調べた。C57BL/6マウスからの非脱石灰化骨切片を、50μg/mLのTras又はTras-ALNコンジュゲートとともに4℃で一晩インキュベートし、続いてFITC標識抗ヒトIgGで標識した。共焦点レーザー走査顕微鏡を介して撮像する前に、これらの骨切片を、4μg/mLのキシレノールオレンジ(XO、骨を標識することが知られている)で30分間更に染色した。FITCシグナルは、Tras-ALNコンジュゲートで染色した切片で観察されたが、非修飾Trasで染色した切片では観察されなかった(
図1H)。更に、Tras-ALNシグナルの局在化は、XOシグナルと良好に相関し、Tras-ALNによる骨の特異的標的化を確認した。Tras-ALNコンジュゲートの結合と未修飾Trasの結合との間の親和性の差を定量化するために、Tras-ALN及びTrasを、ヒドロキシアパタイト又は天然骨とともにインキュベートした。
図1I及び
図1Jに示されるように、未修飾Trasは、HA又は天然骨への結合をわずかのみ呈した。インキュベーション時間を増加させた場合でさえ、Trasの結合親和性は顕著に変化しなかった。対照的に、およそ80%~90%のTras-ALNは、それぞれ、2時間及び10時間後にHA及び天然骨に結合した。
【0090】
ALNコンジュゲートTrasのインビトロ骨標的化能力による後押しを受けて、腫瘍異種移植片モデルを使用して、Tras-ALNコンジュゲートを用いたインビボ生体内分布研究を実行した。インビボでの抗体の検出を容易にするために、Tras及びTras-ALNを最初にシアニン7.5(Cy7.5)-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルとコンジュゲートした。SDS-PAGEを使用して、生じたCy7.5標識コンジュゲートを分析した。予想通り、蛍光は、Cy7.5標識コンジュゲートにのみ関連した(
図1B)。BPの重要な特徴は、骨転移性微小環境の比較的低いpHに起因して、骨転移へのビスホスホネートの取り込みが、健康な骨組織よりもはるかに高いことである
32~35。ALN-Trasが骨転移を特異的に標的とし、したがって、正常な骨組織に対する、標的に対する毒性を最小限に抑えることができるかどうかを調査するために、ALN-Trasの標的化特性を骨腫瘍モデルにおいて評価した。ヌードマウスの右後肢への、ルシフェラーゼ及び赤色蛍光タンパク質(RFP)で標識されたMDA-MB-361細胞の内腸骨動脈内(IIA)注射を使用することによって、骨微小転移モデルを作製した。IIA注射は、骨の微小転移を確立するために最近開発された新規技術である。方法は、組織損傷を引き起こすことなく、後肢骨へのがん細胞の選択的送達を可能にする
36~38。この技術は、いくつかの低悪性細胞が最終的に骨をコロニー化し、かつ多数のがん細胞が骨を特異的にコロニー化するのに十分な時間を与え、それによって初期段階で微小転移を豊富にすることを可能にする。これによって、微小転移の迅速な検出及び堅牢な定量化が可能になる。微小転移の確立に続いて、Tras又はTras-ALN(1mg/kg)で治療した。抗体又は抗体コンジュゲートの投与の24、96、又は168時間後に、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、肺、及び骨を含む主要な臓器を取り出し、Caliper IVIS Lumina II撮像機を使用して分析した(
図1K及び
図13)。顕著なことに、抗体の注射の96時間後のエクスビボ蛍光画像によって、Cy7.5標識Trasと比較して、骨内にCy7.5標識Tras-ALNの明確な蓄積が確認された(
図1K及び
図14)。更に、がんを担持する骨へのTras-ALNの取り込みは、健康な骨組織への取り込みよりも顕著に高かった。これは、BP分子が、酸性腫瘍環境で骨マトリックスに優先的に結合するという以前の観察と一致する
39。別々の研究では、標識されていないTras-ALN(1mg/kg)を、右後肢にMDA-MB-361腫瘍を担持するヌードマウスに投与した。この研究からの骨切片も、FITC標識抗ヒトIgG、RFP、及びDAPIで染色した。FITCシグナルは、MDA-MB-361腫瘍を有する右脚からの切片でのみ観察された。腫瘍のない左脚では、FITCシグナルは検出されなかった(
図1L)。顕著なことに、FITCシグナルは、MDA-MB-361細胞の赤色蛍光と十分に相関しており、Tras-ALNコンジュゲートが、健康な骨ではなく、骨転移部位を選択的に標的とすることを示唆している。これらの結果は、ALNコンジュゲーションが、骨転移部位における治療用抗体の送達及び濃度を顕著に向上することができることを実証している。
【0091】
次に、抗体の薬物動態及びFcRn結合に対するALNコンジュゲーションの効果を評価した。PBS中1mg/kgのTras及びTras-ALNの単回投与を後眼窩に注射し、血清を定期的に7日間収集し、トラスツズマブELISAキットによって分析した。Tras及びTras-ALNの両方の血清濃度は減少し、顕著差を示さなかった(
図13)。次に、FcRn結合に対するALNコンジュゲーションの効果を決定した。ALNコンジュゲーションが、pH6.0でのFcRn結合に明らかな効果を有しないことが見出された(表4)。
【0092】
骨微小転移に対するTras-ALNの治療有効性の向上
骨標的化トラスツズマブが、骨における乳がんの微小転移を治療するための新規の治療アプローチを表すかどうかを決定するために、異種移植片研究をヌードマウスで実行した。内腸骨動脈内(IIA)注射を使用して、ヌードマウスの右後肢に、ホタルルシフェラーゼで標識された5×10
5のMDA-MB-361細胞を接種した。IIA注射の5日後、後眼窩注射を介して、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ALN(10μg/kg)、Tras(1mg/kg)、又はTras-ALN(1mg/kg)でマウスを治療した。
図2A及び
図15に示されるように、PBS及びALN治療マウスにおける微小転移は急速に蓄積したが、Tras及びTras-ALN治療マウスにおける病変の発生は遅延した。全身の生物発光撮像(BLI)シグナルは、Tras-ALNでの治療が、Tras治療マウスで見られるものと比較して、微小転移進行のより顕著な阻害を生じたことを示唆した(
図16A及び
図16B)。6日目から87日目までのBLIの増加は、Tras-ALN治療群が、Tras治療群と比較して、腫瘍サイズの倍数増加が少なかったことを示した(Tras対Tras-ALN:1965.1±798.3対42.6±23.4、
図2B及び
図2C)。骨転移が後肢に構築されたので、後肢におけるBLIシグナルに対するTras-ALNの効果も定量化した。全身BLIシグナルと同様に、Tras-ALN治療群は、BLIシグナル強度が低く、後肢の倍数増加が少なかった(
図17)。更に、Tras-ALN治療マウスの生存率は、PBS、ALN、及びTras治療マウスのものと比較して著しく向上し、インビボでのHER2陽性細胞に対するTras-ALNの有効性を実証している(
図2D)。更に、治療したマウスのうちのいずれにおいても、不健康の徴候としての体重減少は観察されず、骨標的化抗体に関連付けられる毒性が存在しないことを示唆している(
図2E)。
【0093】
これらの結果は、マイクロコンピューティング断層撮影(microCT)データ及び組織学によって更に確認され、これは、骨標的化抗体が、溶骨性病変の数及び程度の両方を減少させることができるという発見を強調している。
図2F及び
図18に示されるように、PBS、ALN、及びTras治療群からの大腿骨は、骨質量の顕著な減少を呈したが、Tras-ALN治療群の骨量減少は大幅に低減された。定量的分析は、Tras治療群と比較して、Tras-ALN治療群が顕著により高い骨体積(
図2G、6B:BV/TV(%)、35.08±2.65対56.67±1.02、p=0.0005)、より太い海綿骨(
図2H、Tb.Th(mm)、0.061±0.003対0.094±0.002、p=0.003)、及びより高い海綿骨ミネラル密度(
図2I、BMD(mg/mm
3)、101.16±12.24対165.94±12.84、p=0.035)を有することを明らかにした。
【0094】
また、骨切片の組織型測定分析によって、腫瘍サイズを分析した。PBS治療群及びALN治療群からの脛骨及び大腿骨は、高い腫瘍負荷を有した(
図2J)。Tras治療は、腫瘍負荷をわずかに低減したが、低減は、統計的に顕著ではなかった。対照的に、Tras-ALN治療群では、腫瘍負荷の顕著な低減が観察された。一般に、骨マトリックスは、高い腫瘍負荷を有する骨において破壊されるが、Tras-ALN治療群における、より少ない腫瘍負荷を有する骨は、そのままの骨マトリックスを呈することが、様々な治療群からの骨試料の組織学的検査によって明らかである。また、HER2免疫組織化学(IHC)によって、腫瘍負荷の低減が確認された。
図2Kに示されるように、HER2陽性乳がん細胞の数は、個々の腫瘍細胞によるHER2発現が変化しなかったにもかかわらず、Tras-ALN治療マウスにおいて劇的に減少した。これは、Tras-ALNでの長期治療が、MDA-MB-361細胞によるHER2発現に効果を有しないことを示唆している。
【0095】
腫瘍誘発性溶骨性骨破壊のTras-ALN阻害を調べるために、骨試料における骨吸収性、酒石酸耐性、酸性ホスファターゼ陽性多核破骨細胞を調べた(
図2K)。酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)染色によって、Tras治療マウスと比較して、Tras-ALN治療マウスでは、侵食された骨表面を包む破骨細胞(ピンク色の細胞)の数の低減が同定された(
図2K、
図2L、及び
図19)。骨吸収の指標である、血清TRAcP 5b及びカルシウムレベルも、実験エンドポイントで測定した。Tras-ALN治療群では、骨吸収の顕著に高い低減が観察された(
図2M及び
図2N)。総合すると、これらの結果は、治療用抗体のビスホスホネート修飾が、微小転移誘発性溶骨性病変の発生を遅らせる能力を顕著に向上したことを示している(表2)。
【0096】
原発腫瘍及び二次腫瘍の両方の存在下でのTras-ALNの治療有効性を更に評価するために、乳房脂肪体及びIIA注射の両方を使用して、異種移植片研究をヌードマウスで実行した。右後肢に接種した細胞には、ルシフェラーゼ標識MDA-MB-361細胞(2×10
5)を使用した。乳房脂肪体注射には、非標識MDA-MB-361細胞(1×10
6)を注射した。注射の6日後、マウスをTras(1mg/kg)及びTras-ALN(1mg/kg)で治療した。原発腫瘍進行及び骨転移を、それぞれ、腫瘍サイズ測定及び生物発光によって監視した。Tras治療群と比較して、Tras-ALNは、後肢における腫瘍成長の防止に顕著な効果を有した(
図27A~
図27B)。しかしながら、乳房脂肪体腫瘍では顕著な成長差はなかった(
図27C)。これらの結果は、野生型Trasと比較して、Tras-ALNが、骨転移に対してより良好な治療効果を有するが、原発腫瘍に対しては同様の効果を有することを示唆した。
【0097】
Tras-ALNは、骨病変からの多臓器転移を阻害する
症例のうちの3分の2超では、骨転移は、骨格に限定されず、むしろ他臓器へのその後の転移を引き起こす
9、10。早期の骨コロニー化を調査するために、IIA注射を使用したが、これらの骨病変が8~12週間にわたって進行するにつれて、転移は、追加の骨、肺、肝臓、腎臓、及び脳を含む他臓器に現れ始める。したがって、HER2陽性MDA-MB-361がん細胞の他臓器への転移を低減するTras-ALNの能力を調査した。前のように、ホタルルシフェラーゼで標識された5×10
5のMDA-MB-361細胞を、IIA注射を介してヌードマウスの右後肢に導入し、続いてTras(1mg/kg)及びTras-ALN(1mg/kg)で治療した。次いで、腫瘍細胞注射後、週2回、マウスを全身BLIに供した。全身及び後肢BLIシグナルを定量化し、
図20Aに示した。様々な臓器における二次転移を、以下のように計算した:全身におけるBLIシグナル-後肢におけるBLIシグナル。
図20に示されるように、Tras治療群では、10
6光子秒
-1までの臓器BLIシグナルに時間依存的な増加があった。また、Tras-ALN治療群の臓器におけるBLIシグナル蓄積に顕著な阻害が存在した(P<0.0001)。研究のエンドポイントで、マウスを安楽死させ、生物発光撮像のために臓器を採取した。Tras-ALN群における右後肢(42.9%)及び肝臓(14.3%、
図3A、
図3B、及び
図21)と比較して、Tras治療群において、右後肢(100%)、心臓(20%)、肝臓(80%)、脾臓(40%)、肺(60%)、腎臓(60%)、及び脳転移(40%)のはるかに高いレベルが観察された。Tras-ALN治療マウスでは、肺、脾臓、腎臓、及び脳などの他臓器に転移はなかった。本発明者らのデータは、骨標的化抗体が、未修飾抗体と比較して、初期の骨微小転移の伝播から生じる多臓器転移を顕著に阻害することができることを示した。Tras-ALNで治療したマウスは、他の治療群のマウスよりも他臓器への少ない転移を呈し、「転移の繰り返しの播種」を阻害する骨標的抗体の能力を確立した。
【0098】
(表1)乳がん上皮細胞株に対するTras及びTras-ALNの効力及び細胞表面反応性
略語:MFI、蛍光強度中央値。結合は、PBS対照に対する蛍光中央値の平均倍率増加として決定した。
【0099】
(表2)複数のアッセイにおける異なる治療群の比較(MDA-MB-361モデル)
略語:ANOVA、分散分析;BLI、生物発光撮像;TRAP、酒石酸耐性酸ホスファターゼ。
a実験過程にわたる全身におけるBLIのシグナル強度。
b治療後のBLIのシグナル強度倍率増加(87日目のBLI/6日目のBLI)。
C実験終了時にTRAP染色した脛骨/大腿骨切片からの破骨細胞数測定値。
d実験終了時の血清TRACP 5b濃度。
e実験終了時の血清カルシウム濃度。
f実験過程にわたる体重進行。
g10
7超のマウスBLI強度は、エンドポイントに到達したと見なした。
a、bは、二元配置反復測定分散分析、続いてSidakの多重比較検定を使用して、統計的に分析した。
c、d、e、fは、一元配置分散分析、続いてTukeyの多重比較検定を使用することによって分析した。
gは、ログランク検定を使用することによって分析した。****P<0.0001、***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05、NSは、P>0.05を表す。
【0100】
(表3)複数のアッセイにおけるTras及びTras-ALN群の比較(MCF7モデル)
略語:ANOVA、分散分析;BLI、生物発光撮像;TRAP、酒石酸耐性酸ホスファターゼ。
a実験過程にわたる全身のBLIのシグナル強度。
b治療後のBLIのシグナル強度倍率増加(68日目のBLI/6日目のBLI)。
c実験終了時の血清カルシウム濃度。
d実験終了時の血清TRACP 5b濃度。
e実験過程にわたる体重進行。
f10
7超のマウスBLI強度は、エンドポイントに到達したと見なした。
a、bは、二元配置反復測定分散分析、続いてSidakの多重比較検定を使用することによって、統計的に分析した。
c、d、eは、一元配置分散分析、続いてTukeyの多重比較検定を使用することによって分析した。
fは、ログランク検定を使用することによって分析した。****P<0.0001、*P<0.05、NSは、P>0.05を表す。
【0101】
【0102】
HER2陰性モデルにおけるTras-ALNの治療有効性の向上
それにもかかわらず、HER2陰性患者において見られる最小残存疾患の実質的な部分は、HER2シグナル伝達に起因し得ることを、以前の報告は示している
40、41。また、HER2シグナル伝達は、HER2陰性細胞のサブ集団における幹細胞特性を媒介し得ることが報告され、これは、抗HER2治療が、HER2陽性乳がん及びHER2陰性乳がんの両方の骨転移を根絶することが可能であり得る可能性を高める
42。したがって、HER2陽性ではないが、特に骨においてHER2上方制御を呈する乳がん細胞を使用して、Tras-ALNの治療効果を評価した。内腸骨動脈内(IIA)注射を使用して、MCF-7(HER2-、ER+)がん細胞を後肢骨に送達し
36、38、続いて、Tras又はTras-ALNで治療した(群当たり7匹のマウス、1mg/kg)。マウスを週2回撮像し、全身及び後肢及びのシグナル強度を定量化した。
図4、
図22、及び
図23に示されるように、Tras-ALNでの治療は、Tras治療マウスにおいて見られるよりも腫瘍成長のより顕著な阻害を生じ、インビボでのHER2陰性細胞に対するTras-ALNの有効性を実証している(p<0.005)。一方、血清TRACP 5b(4.41±1.12U/L、p<0.05)及び血清カルシウム(10.36±0.53mg/dL、p<0.05)レベルの顕著な低減が、Tras-ALN治療群において観察された(
図24)。HER2+モデルと同様に、様々な臓器における二次転移も、研究過程にわたってBLIシグナルの顕著な低減(P<0.0001)を呈した(
図25)。次に、骨病変からの多臓器転移を阻害するTras-ALNの能力を、エクスビボでも評価した。68日目に、Tras-ALN治療マウスの右後肢(50%)、肺(50%)、及び脳(50%、
図26)に見出される値と比較して、Tras治療群において右後肢(83.4%)、肝臓(33.4%)、肺(83.4%)、及び脳(66.7%)に転移性細胞が観察された。これらのデータは、骨標的化Tras-ALNコンジュゲートが、HER2陰性骨微小転移から明白な骨転移への進行を防止すること、並びにHER2陰性細胞の他臓器への二次転移をブロックすることに有用であり得ることを示唆している(表3)。
【0103】
したがって、骨標的化部分のコンジュゲーションを使用して、抗原及び骨特異性の両方を有する抗体の調製を可能にする革新的な骨標的化(BonTarg)技術を開発することができることが示された。データは、骨標的化ビスホスホネート分子であるアレンドロネート(ALN)での治療用HER2抗体トラスツズマブ(Tras)の修飾が、他の組織と比較して、骨転移ニッチ内でコンジュゲート局在化の向上をもたらし、このことは、骨標的化抗体が骨転移を有する患者に標的療法の向上を提示するという興味深い可能性を高めている。骨組織に対するALNの親和性は、治療用抗体の送達を妨げる骨微小環境における物理的及び生物学的障壁を克服するのを助け、それによって骨においてTrasが豊富になり、保持される。Tras-ALNコンジュゲートは、骨腫瘍部位の低いpHに起因して、健康な骨組織と比較して、骨転移ニッチにおいてより高い濃度に到達することができる50。
【0104】
骨標的化部分を用いる部位特異的修飾の使用を介して、BonTarg技術は、骨転移部位への治療用抗体の特異的送達のための革新的なプラットフォームを提示する。生じた骨標的化抗体は、乳がん微小転移の治療において、及び最初の骨病変からの二次転移伝播の防止において、改善されたインビボ治療有効性を呈する。骨ニッチへの生物学的医薬品のこの種類の精密な送達は、骨関連疾患を治療するための有望な道筋を表している。微視的なBCa骨転移の治療における、本発明者らの骨を標的とするHER2抗体の治療プロファイルの向上は、他の転移性がん及び骨疾患の治療に対するBonTarg戦略の拡張を告げるであろう。
【0105】
実施例2-材料及び方法
Tras-ALNコンジュゲートの構築
固相ペプチド合成を介して、ssFB-FPheKペプチドのC末端に非正準アミノ酸アジド-Lysを組み込んだ(
図6)。HPLC精製後、ペプチドを6Mの尿素で変性させ、段階的に透析して尿素を除去し、ペプチドを再び折り畳むことを可能にした。PBS(pH8.5)への緩衝液交換後、32当量のssFB-アジドペプチドを、PBS(pH8.5)緩衝液中のTras(Syd labsからのBS046D)とともに37℃で2日間共インキュベートした。次いで、PD-10脱塩カラムを介してTras-アジドコンジュゲートを精製して、過剰なssFB-アジドを除去した。ESI-MSによって、Tras-アジドコンジュゲートを特徴評価した。ESI-MS:予想値53564、実測値:53558(
図7)。10当量のBCN-ALNを室温で一晩溶液に添加して、コンジュゲート上のアジド基と選択的に反応させた。最後に、PD-10脱塩カラムを介してALN標識抗体コンジュゲートを精製して、過剰なALN-BCNを除去した。ESI-MSによって、コンジュゲートを特徴評価した。ESI-MS:予想値53988、実測値:53984(
図1C)。
【0106】
細胞株
ATCCの指示に従って、MDA-MB-361、MCF-7、BT474、SK-BR-3、及びMDA-MB-468細胞株を培養した。ホタルルシフェラーゼ及びGFPで標識したMDA-MB-361及びMCF7細胞株を、前述のように生成した51。
【0107】
HA結合アッセイ
簡潔には、Eppendorfチューブ中の1mLのPBSにTras又はALN-Trasを希釈した。ヒドロキシアパタイト(15当量、15mg)を添加し、生じた懸濁液を37℃、220rpmで振盪させた。対照として、ヒドロキシアパタイトを含まない試料を使用した。0.25、0.5、1、2、4、及び8時間後、懸濁液を遠心分離し(3000rpm、3分)、Nanodropによって、280nmでの上清の吸光度を測定した。HAへの結合パーセントを以下のように計算した。式中、ODは、光学密度を表す。
[(ODHAを含まない-ODHAを含む)/(ODHAを含まない)]×100%。
【0108】
天然骨結合アッセイ
マウスの長骨を小断片へと切断し、蒸留H2O及び無水エタノールで洗浄し、次いで室温で一晩乾燥させた。結合研究のために、Eppendorfチューブ中の1mLのPBSにTras又はALN-Trasを希釈した。30mgの乾燥骨断片をチューブに添加し、生じた懸濁液を37℃、220rpmで振盪させた。対照として、骨断片を含まない試料を使用した。0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、及び8.0時間後、懸濁液を遠心分離し(3000rpm、5分)、Nanodropによって、280nmでの上清の吸光度を測定した。天然骨への結合パーセントを以下の式に従って計算した。式中、ODは、光学密度を表す。
[(OD天然骨を含まない-OD天然骨を含む)/(OD天然骨を含まない)]×100%。
【0109】
Tras及びTras-ALNのインビトロ細胞傷害性
SK-BR-3、BT474、及びMDA-MB-468細胞を、200μLの培養培地中2×103細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、一晩インキュベートして、付着させた。次いで、培養培地を除去し、培養培地に溶解させた異なる濃度のTras及びTras-ALNに置き換え、次いで、4日間インキュベートした。次いで、20μLのMTT溶液(5mg/mL)を各ウェルに添加し、更に4時間インキュベートした。培地を吸引し、150μLのDMSOを各ウェルに添加した。マイクロプレートリーダー(TecanによるInfinite M Plex)によって、570nmでの吸光度を測定して、生細胞を定量化した。
【0110】
フローサイトメトリー
96ウェルプレート中に、がん細胞(3×103)を再懸濁し、30μg/mLのTras及びTras-ALNで、4℃で30分間染色した。染色後、細胞をPBSで2回洗浄し、次いでフルオレセイン(FITC)AffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)(コード:109-095-003、Jackson Immunology)とともに、4℃で30分間更にインキュベートした。BD FACSVerse(BD Biosciences)を使用して、蛍光強度を決定した。
【0111】
Kd値の決定
HER2に対するTras-ALNの機能的親和性を、報告通りに決定した52。簡潔には、2×105のSK-BR-3、BT474、MDA-MB-361、又はMDA-MB-468細胞を、Tra及びTras-ALNの濃度を増加させながら、氷上で4時間インキュベートした。結合していない材料を洗い流した後、フルオレセイン(FITC)AffiniPureヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson Immunology)を使用して、結合した抗体を検出した。ヨウ化プロピジウム(Molecular Probes、Eugene、OR)染色後、蛍光強度について細胞を分析した。飽和曲線の線形部分を使用して、抗体濃度の逆関数として中央蛍光値の逆数をプロットするLineweaver-Burk方法を使用して、解離定数、KDを計算した。以下のように、KDを決定した:1/F=1/Fmax+(KD/Fmax)(1/[Ab])、式中、Fが、バックグラウンドを差し引いた中央蛍光値に対応し、Fmaxは、プロットから計算した。
【0112】
共焦点撮像
8ウェル共焦点撮像チャンバープレート中約80%のコンフルエンシーまで、がん細胞を成長させた。30nMのTras-FITCとともに細胞を30分間インキュベートし、次いで、4%のパラホルムアルデヒドで15分間固定した。細胞をPBS(pH7.4)で3回洗浄し、次いで、DiIC18(3)(Marker Gene Technologies,Inc.)とともに20分間、及びHoechst33342(カタログ番号H1399、Life Technologies(商標))とともに5分間インキュベートした。次いで、細胞をPBS(pH7.4)で3回洗浄し、共焦点撮像に使用した。405/488/561/638nmのレーザーを装備したNikon A1R-si Laser Scanning Confocal Microscope(日本)を使用して、細胞の共焦点蛍光画像を得た。
【0113】
骨の凍結切片への結合
C57BL/6マウスからの非脱石灰化長骨切片を、50μg/mLのTras又はTras-ALNとともにインキュベートし、4℃で一晩コンジュゲートし、続いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗ヒトIgGを用いて、室温で60分間染色した。PBSで3回洗浄した後、キシレノールオレンジ(XO)(原液:2mg/ml、希釈1:500、希釈緩衝液:PH6.5のPBS)とともに、37℃で30分間標本をインキュベートした。PBSで3回洗浄した後、Hoechst33342(原液10mg/ml、希釈1:2000)で10分間標本を染色した。次いで、スライドをPBSで洗浄し、空気乾燥させ、(ThermoFisherからの)Prolong(商標)金退色防止封入剤を用いて密封した。
【0114】
Tras-ALNのインビボ評価
内腸骨動脈内注射及びIVIS撮像を前述のように実施した53。注射の5日後、動物を4つの群:PBS治療対照、ALN(BPを含まないものの代表、PBS中10μg/kgの後眼窩注射、週2回)、Tras(滅菌PBS中1.0mg/kgの後眼窩注射、週2回)、及びTras-ALNコンジュゲート(Trasと同じ)へと無作為化した。注射後、推奨される手順及び製造業者の設定に従って、IVIS Lumina II(Advanced Molecular Vision)を使用して、週2回動物を撮像した。110日目に、マウスを麻酔し、心臓穿刺によって血液を収集し、その後安楽死させた。更なる試験のために、腫瘍を担持する脛骨、心臓、肝臓、脾臓、肺、脳、及び腎臓を収集した。
【0115】
エクスビボでの転移の繰り返しの分析
酸素中2.5%のイソフルランでマウスを麻酔し、後眼窩にルシフェリンを注射した。次いで、マウスを安楽死させ、心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、脳、及び脛骨を収集した。これらの臓器のエクスビボ生物発光及び蛍光撮像を、IVIS Luminaで直ちに実施した。
【0116】
骨組織学及び免疫組織化学
10%のホルマリン中で1週間、採取した長骨を固定し、次いで、12%のEDTA中4℃で2週間、脱石灰化させた。標準的な手順を使用して、標本をパラフィンに包埋した。これらのブロックから、5μmの切片を切り出し、スライドガラス上に収集した。切片をオーブンで一晩(37℃)乾燥させ、次いで、キシレン溶液中で10分間、パラフィン除去した。従来の方法を介して、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色を実施した。製造業者のプロトコルに従って、HRP/DAB ABC IHCキット(abcam)を使用して、脱石灰化パラフィン包埋組織切片に対して、免疫組織化学分析を実施した。
【0117】
X線写真分析
脛骨を解剖し、固定し、6.64μm/ピクセルの解像度のマイクロコンピュータ断層撮影(micro-CT、Skyscan1272、Aartselaar,Belgium)によって走査した。未修正画像をNReconnで再構築し、対象領域(ROI)を使用して、CTan(SkyScan、Aartselaar,Belgium)で分析した。分析した骨パラメータは、海綿の厚さ(Tb.Th)、骨体積分率(BV/TV)、骨ミネラル密度(BMD)、及びBS/BV(骨表面/骨体積比)を含んだ。
【0118】
生体内分布
内腸骨動脈内注射を介して、雌の無胸腺ヌードマウス(体重=13~15g)に、MDA-MB-361細胞を導入した。3ヶ月後、腫瘍を担持するヌードマウスに、後眼窩注射によってCy7.5標識Tras及びTras-ALN(1mg/kg)を投与した。注射の24時間、96時間、又は168時間後、心臓、肝臓、脾臓、腎臓、肺、及び骨腫瘍組織を含む主要な臓器を取り出した。Caliper IVIS Luminaインビボ撮像機(Caliper Life Science、Boston,MA,USA)を使用することによって、臓器及び骨腫瘍組織における蛍光強度を半定量的に決定した。Tras-ALN治療マウスからの骨を固定し、切片化して、生体内分布を更に評価した。
【0119】
別々の研究では、後眼窩注射を介して、右後肢にMDA-MB-361腫瘍を担持するヌードマウスに、標識されていないTras-ALN(1mg/kg)を投与した。48時間後、Tras-ALN治療マウスからの長骨を単離し、脱石灰化することなく直ちに切片化した。次いで、骨切片を固定し、抗RFP(ウサギ)抗体(1:200、Rocklandから購入)とともに4で一晩インキュベートし、続いて、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗ヒトIgG(1:100、Jackson Immunologyから購入)及びAlexa Fluor(登録商標)555AffiniPureロバ抗ウサギIgG(H+L)(1:200、Thermo Fisherから購入)で、室温で120分間染色した。(Thermo Fisherからの)DAPIを含むProlong(商標)金退色防止封入剤を用いて切片を封入し、カバースリップで密封し、次いで、共焦点撮像に使用した。
【0120】
薬物動態分析及びFcRn結合アッセイ
PBS中1mg/kgのTras及びTras-ALNの単回投与を無胸腺ヌードマウスに後眼窩注射し、血清を定期的に7日間収集し、トラスツズマブELISAキット(Lab Bioreagents)によって分析した。マニュアルに従ってLUMIT(商標)FcRn結合免疫アッセイキット(Promega)を使用して、FcRn結合を決定した。
【0121】
血清中のTRAP及びカルシウムレベルの定量化
終末時点で、心臓穿刺によって血液を収集し、3,000rpmで15分間遠心分離して、血清を得た。マウスACP5/TRAP ELISAキット(カタログ番号IT5180、GBiosciences)を使用することによって、破骨細胞由来TRACP 5bの濃度を測定した。カルシウム検出キット(カタログ番号DICA-500、Bioassays)を使用して、比色測定的に血清カルシウムレベルを測定した。
【0122】
統計的方法
データを平均プラス又はマイナスSEMとして提示し、GraphPad Prismソフトウェアバージョン6(GraphPad software、San Diego,CA)を使用して、統計的に分析する。時間経過にわたって収集した全てのデータには、二元配置分散分析、続いてSidakの多重比較を使用した。Micro-CTデータには、一元配置分散分析、続いてTukeyの多重比較を使用した。多臓器転移データには、対応のないスチューデントt検定を使用した。P<0.05は、統計的有意性を表すと見なした。
【0123】
BCN-ALNの合成
BCN-PNP(ENDO)(31.5mg)及びDIPEA(38.7mg)を1mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、続いて27.4mgの(脱イオン水0.3mLに溶解させた)ALNを混合物に滴加した。生じた混合物を4時間撹拌した。酢酸エチル(1mL)を反応溶液に添加し、生じた沈殿物を濾過し、酢酸エチルで3回すすいだ。逆相カラムクロマトグラフィーによって、生成物を精製した。MSによって、BCN-ALNの構造を確認した。ESI-MS[M-H]-:C15H25NO9P2での計算値424.1、実測値:424.1(
図5)。
【0124】
ssFB-FPheKペプチドの固相合成
Fmocに基づくペプチド合成のプロトコルに従って、ssFBペプチドを合成した。アミノ酸配列:FNKEQQNAFYEILHLPNLNXEQRNAFIQSLKDDPS-AzK(X=MMT-Lys)(配列番号1)。固体支持体として、Rink Amide MBHA樹脂を使用した。DMF中25%のピペリジンを使用して、Fmoc保護基を除去した。生成物をDMFで5回洗浄した後、アミド結合形成のために、DMF中の予め活性化させたHATU/Fmoc-アミノ酸混合物を反応容器に添加した。次いで、同じ反応サイクルを介して、次のアミノ酸をビーズに結合させた。ペプチド合成が完了したら、N末端を無水酢酸によってキャップした。FPheKをペプチドに組み込むために、10%の酢酸(AcOH:TFE:DCM=1:2:7)を使用して、最初にMMT保護基を選択的に除去した。その後、2当量の4-フルオロフェニルクロロホルメート及び4当量のDIEAを反応容器に添加して、FPheK形成のために、Lys側鎖上の露出した遊離アミンと反応させた。反応が完了したら、適切な量のTFA及びスカベンジャー(水、アニソール、トリイソプロピルシラン)を容器に添加して、ペプチドを樹脂から切断し、全ての保護基を除去しクエンチした。次いで、氷冷エーテルの添加によってペプチドを沈殿させ、HPLCによって精製し、凍結乾燥させた。ESI-MS[M+H]+:計算値4524、実測値:4524(
図6)。
【0125】
本明細書に開示及び請求される全ての方法は、本開示に照らして、過度の実験なしに作製及び実施することができる。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態に関して説明されてきたが、当業者には、本明細書に記載の方法及びステップ又は方法の一連のステップに、本発明の概念、趣旨及び範囲から逸脱することなく、変形例が適用され得ることが明らかであろう。より具体的には、化学的及び生理学的の両方で関連する特定の薬剤を、本明細書に記載の薬剤と置き換えることができ、一方で、同じ又は同様の結果が達成され得ることが明らかであろう。当業者にとって明らかなそのような全ての類似の置き換え及び修正は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨、範囲、及び概念内にあると見なされる。
【0126】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書に記載されたものを補足する例示的な手順又は他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に援用される。
【配列表】
【国際調査報告】