(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】シロスタゾールを含む組成物の脳血管疾患への応用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4152 20060101AFI20240118BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240118BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K31/4152
A61P9/10
A61P43/00 121
A61K31/4709
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543219
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 CN2022073910
(87)【国際公開番号】W WO2022161376
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110122555.3
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523266350
【氏名又は名称】ニューロドーン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホア、ヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チェンピン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ロン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、シーパオ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086BC62
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA36
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明により、脳血管疾患、特に虚血性脳血管疾患を治療するための薬剤の調製における、シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩とエダラボンとを含む組成物の応用が提供される。実験結果に示されるように、ラットの局所脳虚血再灌流障害に対して尾静脈にシロスタゾール1~15mg/kg又はエダラボン1.67~8.33mg/kgを投与することで、MCAOラット神経性欠損を有意に改善し、脳梗塞の面積を減少することができ、また上記の用量範囲内で(シロスタゾール:エダラボンは、質量比で1:5~5:1である)薬剤を組合せば、相乗効果が図れる。また、マウスの局所性脳虚血再灌流障害に対して尾静脈にシロスタゾール3.33~16.67mg/kg又はエダラボン3.33~16.67mg/kgを投与することで、神経性欠損を有意に改善し、脳梗塞の面積を減少することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロスタゾール、その誘導体、その薬学的に許容される塩、又はそのプロドラッグ分子である成分(I)と、
エダラボン、又はエダラボンを有効成分とする薬剤である成分(II)と、を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:10~10:1であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:10~5:1であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:5~10:1であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:5~5:1であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:2.5~2.5:1であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:1~2.5:1であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:1、5:1、2.5:1、1:2.5及び/又は1:5であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物と、薬学的に許容される添加物とを含むことを特徴とする、薬剤。
【請求項10】
脳血管疾患を予防及び/又は治療するための医薬品の調製における、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物又は請求項9に記載の薬剤の使用であって、
好ましくは、前記脳血管疾患が虚血性脳血管疾患であり、
好ましくは、前記虚血性脳血管疾患が虚血性脳卒中である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
本出願は、2021年1月29日に中国国家知識産権局に出願された中国特願第202110122555.3号の「シロスタゾールを含む組成物の脳血管疾患への応用」に基づく優先権を主張するものであり、その全内容は参照としてここに援用される。
【0002】
本発明は薬学の分野に属し、脳血管疾患、特に虚血性脳血管疾患を治療するための薬剤の調製におけるシロスタゾールとエダラボンの組成物の応用に関する。
【背景技術】
【0003】
脳血管疾患(cerebrovascular disease、CVD)とは、各種の脳血管疾患に起因した脳病変を指し、その発症過程により急性脳血管疾患(脳卒中)と慢性脳血管疾患に分けられる。急性脳血管疾患としては、一過性脳虚血発作、脳血栓症、脳塞栓症、高血圧脳病、脳出血及びクモ膜下出血などが挙げられる。慢性脳血管疾患としては、脳動脈硬化症、脳血管性認知症、脳動脈盗血症候群、パーキンソン病などが挙げられる。虚血性脳卒中(Stroke)とは、脳への血液供給動脈(頚動脈及び椎骨動脈)の狭窄や閉塞、及び脳への血液供給不足によって生じる脳組織の壊死の総称である。脳虚血には、一過性脳虚血発作(TIA)、可逆性虚血性神経障害(RIND)、進行性脳卒中(SIE)及び完全脳卒中(CS)に分けられる4つのタイプが含まれる。TIAには脳梗塞が認められないが、RIND、SIE及びCSには程度の異なる脳梗塞が認められた。
【0004】
シロスタゾール(cilostazol)は血小板凝集を抑制するための薬で、日本の大塚製薬株式会社によって最初に開発・合成され、また、1988年に日本で発売され、1999年5月に米国FDAの承認を取得し、1996年に中国に輸入された。シロスタゾールは3型ホスホジエステラーゼ(Phosphodiesterase3、PDE3)に対する選択的な阻害剤で、シロスタゾールの血漿タンパク質への結合率がおよそ95%であり、比較的に安定したプロトタイプで存在するものが大半である。シロスタゾールは、広域なの薬理活性を持ち、例えば、末梢血栓性疾患や間欠性跛行などの多くの疾患に対して臨床的価値を有する。そして、シロスタゾールは、抗血小板作用及び血管拡張作用を有することで、循環ショックや冠動脈再狭窄を予防することができる。研究にによると、PDE3は循環系におけるcAMPの分解を阻害し、血小板及び血管平滑筋内のcAMPを上昇させ、血小板の形成に抑制し、かつ血管平滑筋細胞の増殖も促進できることが示されている。シロスタゾールは主に、アラキドン酸、アデノシン二リン酸、エピネフリン、コラーゲン、フィブリナーゼという因子に影響を与えることによって、血小板の分解を阻害する。現在、頚動脈血栓の患者に対してシロスタゾールの治療を行うことが専門家により推奨されていて、これにより、脳虚血の治療又は予防が可能になる。また、PDE3は一酸化窒素シンターゼ(NOS)の生成を阻害し、それによって一酸化窒素(NO)の生成を減少させることができる。
【0005】
シロスタゾールの構造式は次の通りである。
【0006】
【0007】
エダラボン(Edaravone)(化学名:3-メチル-1-フエニル-2-ピラゾリン-5-オン)は、市販されている神経保護剤である(YakugakuZasshi.2004、124(3):99-111)。研究によると、エダラボンは、抗酸化活性を有し、脳虚血再灌流動物の神経欠損症状を大幅に改善し、梗塞サイズを縮小し、脳損傷の程度を低減し、脳浮腫を軽減し、損傷した脳組織における脂質過酸化を抑制できるということが示された。
【0008】
【0009】
以上のように、脳血管疾患、特に虚血性脳血管疾患の治療へのシロスタゾールとエダラボンとの組成物の応用を提供することは、実用上で重要な意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、脳血管の治療薬の調製における、シロスタゾール又はその薬学的に許容される塩とエダラボンとを含有する薬剤組成物の応用を提供することを目的とする。これらの薬剤を併用することで、脳血管疾患に対する治療効果を相乗的に上げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的を実現するために、本発明は以下の技術案を提供する。
【0012】
第1の側面によれば、本発明は、以下の成分:
シロスタゾール、その誘導体、その薬学的に許容される塩又はそのプロドラッグ分子である成分(I)と、
エダラボン、又はエダラボンを有効成分とする薬剤である成分(II)とを含む組成物を提供する。
【0013】
本発明のいくつかの具体的な実施形態においては、前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:10~10:1である。
【0014】
本発明のいくつかの具体的な実施形態においては、前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:10~5:1である。
【0015】
本発明のいくつかの具体的な実施形態においては、前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:5~10:1である。
【0016】
本発明のいくつかの具体的な実施形態においては、前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:5~5:1である。
【0017】
本発明のいくつかの具体的な実施形態においては、前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:2.5~2.5:1である。
【0018】
本発明のいくつかの具体的な実施形態においては、前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:1~2.5:1である。
【0019】
本発明のいくつかの具体的な実施形態においては、前記成分(I)と前記成分(II)との重量比が1:1、5:1、2.5:1、1:2.5及び/又は1:5である。
【0020】
また、第2の側面によれば、本発明は、前記の組成物と薬学的に許容される添加物とを含む薬剤を提供する。
【0021】
さらに、第3の側面によれば、本発明は、脳血管疾患の予防及び/又は治療の薬剤の調製における、前記組成物又は前記薬剤の使用であって、
好ましくは、前記脳血管疾患が虚血性脳血管疾患であり、
好ましくは、前記虚血性脳血管疾患が虚血性脳卒中である使用も提供する。
【0022】
本発明の薬剤の組み合わせは、脳血管の薬剤の調製に応用することができる。その中、脳血管疾患は虚血性脳血管疾患であることが好ましく、虚血性脳卒中であうことがより好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、動物(ラット、マウス)での薬効試験の結果に示されるように、シロスタゾールとエダラボンとを併用することにより、脳血管疾患に対する薬効を相乗的に上げることが図れるという有利な効果がある。
【0024】
本発明の実験結果により、ラットの局所脳虚血再灌流障害モデルの尾静脈にシロスタゾール1~15mg/kg又はエダラボン1.67~8.33mg/kgを投与することで、MCAOラット神経性欠損を有意に改善し、脳梗塞の面積を減少することができ、また上記の用量範囲内で(シロスタゾール:エダラボンの質量比が1:5~5:1である)薬剤を組合せば、相乗効果が図れることを発見した。マウスの局所性脳虚血再灌流障害に対して尾静脈にシロスタゾール3.33~16.67mg/kg又はエダラボン3.33~16.67mg/kgを投与することで、神経性欠損を有意に改善し、脳梗塞の面積を減少することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明には、シロスタゾールを含む組成物の脳血管疾患への応用が開示されているが、当業者であれば、本明細書の内容を参考し、プロセスパラメータを適当に改良して本発明を実現し得る。なお、全ての類似な置換及び変更が当業者にとって自明であり、それらは本発明に含まれたものとみなされることに留意する必要がある。本発明に係る方法及び応用を好適な実施例を用いて説明したが、当業者であれば、本発明の技術を実施及び適用するために、本発明の内容、思想、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載した方法及び応用を修正又は適切な変更及び組み合わせを行い得ることが明らかである。
【0026】
本発明で提供されるシロスタゾールを含む組成物の脳血管疾患への応用に使用される原材料及び試薬のいずれも市場から購入することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を参照しながら、さらに本発明に説明する。
【0028】
実施例1 シロスタゾールとエダラボンとの組成物の局所脳虚血再灌流障害への保護効果に関する研究1
【0029】
1.材料と方法
1.1 被験動物
Sprague-Dawley(SD)ラット、雄、SPFグレード、体重250-280g。
【0030】
1.2被験薬剤
【0031】
【0032】
1.3 実験方法
1.3.1 動物の群分けと投与
被験動物を、4つの群:シロスタゾール群(1mg/kg)、エダラボン群(5mg/kg)、シロスタゾールとエダラボンとの組成物群(6mg/kg、シロスタゾール:エダラボン=1:5、シロスタゾール1mg/kg+エダラボン5mg/kg)及びモデル群に分けた。脳虚血モデルを作成した後、動物を一重盲検法により等しい確率で各群に割り当てた。動物には再灌流直後に静脈内に薬剤を1回投与したが、モデル群の動物には等量の生理食塩水を投与した。脳虚血後24時間に、動物を犠牲にし、脳を取り出し、染色し、写真を撮って脳梗塞の範囲を測定した。
【0033】
1.3.2 局所脳虚血再灌流モデルの作成
頚内動脈縫合法により、ラット局所脳虚血再灌流モデルを作成した。麻酔したラットの手足と頭を輪ゴムで縛り(後肢は膝関節の上、前肢は手首関節の下に固定される)、動物を手術台に仰臥位で固定し、動物用シェーバーで頭から胸部までの毛を剃り、皮膚をアルコールで消毒した。頚部を正中線で切開し、皮下組織を鈍的に剥離した。頚の前三角の表面にある薄い筋膜を剥離し、下端-鎖骨舌骨筋の下端を引き出し、この筋肉と平行に縦に脈動する動脈が見え、動脈の殻を開いて右頚動脈分岐部を露出させ、右総頚動脈、外頚動脈、内頚動脈を剥離し、迷走神経を穏やかに剥離し、外頚動脈を結紮して切断した。総頚動脈の近位端を閉塞し、外頚動脈結紮の遠位端から切開し、塞栓線を挿入し、総頚動脈の分岐部を通って内頚動脈に入り、その後、抵抗が感じるとことまでゆっくりと挿入し(分岐部から約20mm)、中大脳動脈への血液供給がすべて遮断された。糸で外頚動脈の切開口の下に塞栓線をわずかに固定し、総頚動脈の近位端で閉塞している糸を緩め、創に滅菌生理食塩水を浸したガーゼで被覆させ、ラットを加温パッドに置いて保温した。右側で2.0時間の脳虚血後、塞栓線をゆっくり引き抜くことにより血液供給を回復して再灌流を行い、固定された塞栓線の糸で外頚動脈を結紮し、皮膚を縫合し、消毒した。ラットを清潔な飼料中に置いて、麻酔から覚めるまで通常状態と呼吸を観察し、飼料と水を給与し、通常の方法によって飼育した。
【0034】
1.3.3脳梗塞範囲の測定
動物の神経性欠損症状を評価した後、CO2により致死させ、斬首後、脳を取り出し、嗅球、小脳、及び下位脳幹を取り除いた。生理食塩水で脳表面の血液を洗浄し、表面上の残りの水を吸収し、-20℃に20min置き、取り出し直後に視線面に垂直な交差面で2mmおきに冠状切片を切り出した後、1%TTC溶液中に染色を行った(37℃、30min)。正常脳組織は暗赤色に染まり、虚血脳組織は淡く染まった。生理食塩水で洗浄後、脳切片を正面から後ろ側の順に一列に迅速に並べ、表面の残りの水を吸収し、表面を乾燥させ、次に、写真撮影した。
【0035】
脳梗塞の面積の計算:Image Jソフトウエアで写真の処理を行い、以下の式に従って左脳の対応する面積及び右脳の非梗塞領域の面積を求め、梗塞範囲の割合を算出した。
【0036】
梗塞体積の計算方法:
V=t(A1+A2+A3+……+An)
ただし、tは切片の厚さ、Aは梗塞面積である。
【0037】
%I=100%×(VC-VL)/VC
ただし、%Iは梗塞体積の割合、VCは対象側(左半球)の脳体積、VLは梗塞側(右半球)非梗塞領域の体積である。
【0038】
1.3.4組成物の相乗性の分析
金正均の式q=E(a+b)/(Ea+Eb-Ea×Eb)に従って、組成物におけるシロスタゾールとエダラボンが相乗作用を有するか否かを評価した。式中、E(a+b)は併用薬剤の有効率であり、Ea、EbはそれぞれA薬(シロスタゾール)、B薬(エダラボン)が単独投与された場合の有效率である。E投与群=(Xモデル-X投与)/Xモデル、ただし、Xは脳梗塞範囲の値である。q値が0.85~1.15の範囲内にある場合は、二つの薬剤の併用が単の相加作用を有することを表し、q値>1.15である場合は、二つの薬剤の併用が相乗作用を有することを表し、q値<0.85である場合は、二つの薬剤の併用が拮抗作用を有することを表す。
【0039】
1.4 データの統計
実験データは平均値±標準偏差(Mean±SD)で表された。各群間の差異を一元配置分散分析によって分析し、群間の比較をLSD法で検定した。P<0.05は、有意差があることと定義される。
【0040】
2.実験結果
脳梗塞の範囲への影響を表1に示す。実験結果、エダラボン5mg/kg及び組成物(シロスタゾール1mg/kg+エダラボン5mg/kg)の投与により動物における脳梗塞の範囲を有意に減少する(p=0.012、p=0.000)ことができ、シロスタゾール1mg/kgの投与により脳虚血障害を改善する傾向が見られたが、統計的に差異がなかった(p=0.08)。相乗性の計算結果は、q=1.33となり、二つの薬剤の併用が相乗作用を生じたことを示した。
【0041】
【0042】
実施例2 シロスタゾールとエダラボンとの組成物の局所脳虚血再灌流障害への保護効果に関する研究2
【0043】
1.材料と方法
1.1 被験動物
Sprague-Dawley(SD)ラット、雄、SPFグレード、体重250-280g。
【0044】
1.2 被験薬剤
シロスタゾール及びエダラボンは実施例1と同様であった。
【0045】
1.3 実験方法
被験動物を、4つの群:シロスタゾール群(5mg/kg)、エダラボン群(5mg/kg)、シロスタゾールとエダラボンとの組成物群(10mg/kg、シロスタゾール:エダラボン=1:1、シロスタゾール5mg/kg+エダラボン5mg/kg)及びモデル群に分けた。脳虚血モデルを作成した後、動物を一重盲検法により等しい確率で各群に割り当てた。動物には再灌流直後に静脈内に薬剤を1回投与したが、モデル群の動物には等量の生理食塩水を投与した。脳虚血後24時間に、動物を犠牲にし、脳を取り出し、染色し、写真を撮って脳梗塞の範囲を測定した。
【0046】
局所脳虚血再灌流モデルの作成、脳梗塞の範囲の測定、組成物の相乗性の分析、及びデータの統計方法は、実施例1と同様であった。
【0047】
2.実験結果
脳梗塞の範囲への影響を表2に示す。実験結果から、シロスタゾール5mg/kg、エダラボン5mg/kg及び組成物(シロスタゾール5mg/kg+エダラボン5mg/kg)の投与により動物における脳塞栓の範囲を有意に減少できた(p=0.025、p=0.008、p=0.000)ことが示された。相乗性の計算結果は、q=1.47となり、二つの薬剤の併用が相乗作用を生じたことを示した。
【0048】
【0049】
実施例3 シロスタゾールとエダラボンとの組成物の局所脳虚血再灌流障害への保護効果に関する研究3
【0050】
1.材料と方法
1.1被験動物
Sprague-Dawley(SD)ラット、雄、SPFグレード、体重250-280g。
【0051】
1.2 被験薬剤
シロスタゾール及びエダラボンは実施例1と同様であった。
【0052】
1.3 実験方法
被験動物を、4つの群:シロスタゾール群(15mg/kg)、エダラボン群(3mg/kg)、シロスタゾールとエダラボンとの組成物群(18mg/kg、シロスタゾール:エダラボン=5:1、シロスタゾール15mg/kg+エダラボン3mg/kg)及びモデル群に分けた。脳虚血モデルを作成した後、動物を一重盲検法により等しい確率で各群に割り当てた。動物には再灌流直後に静脈内に薬剤を1回投与したが、モデル群の動物には等量の生理食塩水を投与した。脳虚血後24時間に、動物を犠牲にし、脳を取り出し、染色し、写真を撮って脳梗塞の範囲を測定した。
【0053】
局所脳虚血再灌流モデルの作成、脳梗塞の範囲の測定、組成物の相乗性の分析、及びデータの統計方法は、実施例1と同様であった。
【0054】
2.実験結果
脳梗塞の範囲への影響を表3に示す。実験結果から、シロスタゾール15mg/kg、エダラボン3mg/kg及び組成物(シロスタゾール15mg/kg+エダラボン3mg/kg)の投与により動物における脳塞栓の範囲を有意に減少できた(p=0.007、p=0.029、p=0.000)ことが示された。相乗性の計算結果は、q=1.38となり、二つの薬剤の併用が相乗作用を生じたことを示した。
【0055】
【0056】
実施例4 シロスタゾール/エダラボン(1:5、1:2.5、1:1)の局所脳虚血再灌流障害に対する作用
【0057】
1. 材料と方法
1.1 被験動物
Sprague-Dawley(SD)ラット、雄、SPFグレード、体重250-280g。
【0058】
1.2 被験薬剤
シロスタゾール及びエダラボンは実施例1と同様であった。
【0059】
1.3 実験方法
被験動物を、4つの群:モデル群及び3つのシロスタゾール/エダラボン組成物群(1:5群、シロスタゾール1.67mg/kg+エダラボン8.33mg/kg;1:2.5群、シロスタゾール2.86mg/kg+エダラボン7.14mg/kg;1:1群、シロスタゾール5mg/kg+エダラボン5mg/kg。各組成物の投与用量の合計が10mg/kgであった)に分けた。脳虚血モデルを作成した後、動物を一重盲検法により等しい確率で各群に割り当てた。動物には再灌流直後に静脈内に薬剤を1回投与したが、モデル群の動物には等量の生理食塩水を投与した。脳虚血後24時間に、動物を犠牲にし、脳を取り出し、染色し、写真を撮って脳梗塞の範囲を測定した。
【0060】
局所脳虚血再灌流モデルの作成、脳梗塞の範囲の測定、及びデータの統計方法は、実施例1と同様であった。
【0061】
2.実験結果
脳梗塞の範囲への影響を表4に示す。実験結果から、シロスタゾール/エダラボン1:5、1:2.5及び1:1の併用投与により動物における脳塞栓の範囲を有意に減少できた(p<0.001)ことが示された。
【0062】
【0063】
実施例5 シロスタゾール/エダラボン(1:1、2.5:1、5:1)の局所脳虚血再灌流障害に対する作用
【0064】
1. 材料と方法
1.1 被験動物
Sprague-Dawley(SD)ラット、雄、SPFグレード、体重250-280g。
【0065】
1.2 被験薬剤
シロスタゾール及びエダラボンは実施例1と同様であった。
【0066】
1.3 実験方法
被験動物を、4つの群:モデル群及び3つのシロスタゾール/エダラボン組成物群(1:1群、シロスタゾール5mg/kg+エダラボン5mg/kg;2.5:1群、シロスタゾール7.14mg/kg+エダラボン2.86mg/kg;5:1群、シロスタゾール8.33mg/kg+エダラボン1.67mg/kg。各組成物の投与用量の合計が10mg/kgであった)に分けた。脳虚血モデルを作成した後、動物を一重盲検法により等しい確率で各群に割り当てた。動物には再灌流直後に静脈内に薬剤を1回投与したが、モデル群の動物には等量の生理食塩水を投与した。脳虚血後24時間に、動物を犠牲にし、脳を取り出し、染色し、写真を撮って脳梗塞の範囲を測定した。
【0067】
局所脳虚血再灌流モデルの作成、脳梗塞の範囲の測定、及びデータの統計方法は、実施例1と同様であった。
【0068】
2.実験結果
脳梗塞の範囲への影響を表5に示す。実験結果から、シロスタゾール/エダラボン1:1、2.5:1及び5:1の併用投与により動物における脳塞栓の範囲を有意に減少できた(p=0.000、p=0.000、p=0.001)ことが示された。
【0069】
【0070】
実施例6 シロスタゾール/エダラボン(1:5、1:2.5、1:1)のマウスにおける局所脳虚血再灌流障害に対する作用
【0071】
1. 材料と方法
1.1 被験動物
C57BL/6Jマウス、雄、SPFグレード、8週齢。
【0072】
1.2 被験薬剤
シロスタゾール及びエダラボンは実施例1と同様であった。
【0073】
1.3 実験方法
被験動物を、4つの群:モデル群及び3つのシロスタゾール/エダラボン組成物群(1:5群、シロスタゾール3.33mg/kg+エダラボン16.67mg/kg;1:2.5群、シロスタゾール5.71mg/kg+エダラボン14.29mg/kg;1:1群、シロスタゾール10mg/kg+エダラボン10mg/kg。各組成物の投与用量の合計が20mg/kgであった)に分けた。脳虚血モデルを作成した後、動物を一重盲検法により等しい確率で各群に割り当てた。動物には再灌流直後に静脈内に薬剤を1回投与したが、モデル群の動物には等量の生理食塩水を投与した。脳虚血後24時間に、動物を犠牲にし、脳を取り出し、染色し、写真を撮って脳梗塞の範囲を測定した。
【0074】
局所脳虚血再灌流モデルの作成:内頚動脈縫合法により、マウスにおける局所脳虚血再灌流モデルを作成した。麻酔したマウスを仰臥位で手術台に固定した。頚部を正中線で切開し、皮下組織を鈍的に剥離した。右側の総頚動脈、外頚動脈、内頚動脈を剥離した。外頚動脈より塞栓線を挿入し、総頚動脈の分岐部を通って内頚動脈に入り、その後、抵抗が感じるとことまでゆっくりと挿入し(分岐部から約10mm)、中大脳動脈への血液供給がすべて遮断された。右側脳虚血60min後に、塞栓線をゆっくり引き抜くことにより血液供給を回復して再灌流を行った。マウスを清潔な飼料中に置いて、麻酔から覚めるまで通常状態と呼吸を観察し、飼料と水を加え、従来の方法によって飼育した。
【0075】
脳塞栓の範囲の測定及びデータの統計方法は実施例1と同様であった。
【0076】
2.実験結果
脳梗塞の範囲への影響を表6に示す。実験結果から、シロスタゾール/エダラボン1:5、1:2.5及び1:1の併用投与により動物における脳塞栓の範囲を有意に減少できた(p<0.001、p<0.012、p<0.001)ことが示された。
【0077】
【0078】
実施例7 シロスタゾール/エダラボン(1:1、2.5:1、5:1)のマウスにおける局所脳虚血再灌流障害に対する作用
【0079】
1. 材料と方法
1.1 被験動物
C57BL/6Jマウス、雄、SPFグレード、8週齢。
【0080】
1.2 被験薬剤
シロスタゾール及びエダラボンは実施例1と同様であった。
【0081】
1.3 実験方法
被験動物を、4つの群:モデル群及び3つのシロスタゾール/エダラボン組成物群(1:1群、シロスタゾール10mg/kg+エダラボン10mg/kg;2.5:1群、シロスタゾール14.29mg/kg+エダラボン5.71mg/kg;5:1群、シロスタゾール16.67mg/kg+エダラボン3.33mg/kg。各組成物の投与用量の合計が20mg/kgであった)に分けた。脳虚血モデルを作成した後、動物を一重盲検法により等しい確率で各群に割り当てた。動物には再灌流直後に静脈内に薬剤を1回投与したが、モデル群の動物には等量の生理食塩水を投与した。脳虚血後24時間に、動物を犠牲にし、脳を取り出し、染色し、写真を撮って脳梗塞の範囲を測定した。
【0082】
局所脳虚血再灌流モデルの作成は実施例6と同様で、脳塞栓の範囲の測定及びデータの統計方法は実施例1と同様であった。
【0083】
2.実験結果
脳梗塞の範囲への影響を表7に示す。実験結果から、シロスタゾール/エダラボン1:1、2.5:1及び5:1の併用投与により動物における脳塞栓の範囲を有意に減少できた(p<0.001)ことが示された。
【0084】
【0085】
以上、本発明で提供されるシロスタゾールを含む組成物の脳血管疾患への応用について詳細に説明した。本発明の原理と実施形態は、本明細書が特定の例を使用して説明され、以上の実施例における説明は本発明の方法と要旨を理解するためにのみ使用されるものである。なお、当業者にとって、本発明の原理から逸脱せずに本発明に幾つの改良や修飾を加える可能性があるが、それらの改良及び修飾も本発明の特許範囲に収まることに留意する必要がある。
【国際調査報告】