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特表2024-503503認知機能障害を治療するためのマイクロRNA 195組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】認知機能障害を治療するためのマイクロRNA 195組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20240118BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240118BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240118BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20240118BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20240118BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240118BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61P25/28
A61P43/00 111
A61P37/02
A61P25/00
A61P43/00 105
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K31/4422
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543342
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 US2022012922
(87)【国際公開番号】W WO2022159452
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】63/139,083
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518399047
【氏名又は名称】ユナイテッド ステイツ ガバメント アズ リプレゼンテッド バイ ザ デパートメント オブ ベテランズ アフェアーズ
【氏名又は名称原語表記】UNITED STATES GOVERNMENT AS REPRESENTED BY THE DEPARTMENT OF VETERANS AFFAIRS
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ ドンミン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC24
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA24
4C086MA41
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZB07
4C086ZB21
4C086ZC41
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA08
4C087CA12
4C087MA05
4C087MA22
4C087MA24
4C087MA41
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA15
4C087ZA16
4C087ZB07
4C087ZB21
4C087ZC41
(57)【要約】
本開示は、対象の軽度認知機能障害を治療する組成物及び方法に関する。方法はまた、治療を必要としている対象に、有効量のmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアントを投与することを含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の認知機能障害を治療する方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記miR-195-5pを含む組成物の前記投与前に、前記対象から得られた試料内のmiR-195-5pの発現レベルを判定することを更に含み、前記miR-195-5pの発現レベルが、参照試料と比較してより低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照試料が、認知機能障害を有しない対象又は認知機能障害を有すると診断されていない対象から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象の認知機能障害を治療する方法であって、
前記対象に、miR-195-5pを含む組成物を投与することを含み、前記対象が、
i)前記対象から得られた試料内で、miR-195-5pの発現レベルを判定すること、及び
ii)前記対象から得られた前記試料内の前記miR-195-5pの前記発現レベルを、参照試料内のmiR-195-5pの発現レベルと比較することによって、認知機能障害と診断されており、
前記対象から得られた前記試料内の前記miR-195-5pのより低い発現レベルが、前記対象の認知機能障害を示す、方法。
【請求項5】
前記参照試料が、前記認知機能障害を有しない対象又は前記認知機能障害を有すると診断されていない対象から得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
対象の認知機能障害の1つ以上の症状を寛解させる方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項7】
対象のシナプトジャニン1(synj1)の活性又は発現を低減する方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項8】
対象のシナプトジャニン1(synj1)の活性又は発現を阻害する方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項9】
対象のアミロイドβタンパク質(Aβ)クリアランスを増加させる方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項10】
対象の、タウ過剰リン酸化の外傷性脳損傷(TBI)誘導性上昇を低減する方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項11】
対象のアミロイドプラーク負荷を低減する方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項12】
対象のタウ過剰リン酸化を低減する方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項13】
対象のIL-6又はTNFα放出を低減する方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項14】
対象のリン酸化タウ産生を減少させる方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項15】
対象の虚血誘導性ミクログリア機能不全及びニューロン損傷を治療又は緩和する方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項16】
対象のアルツハイマー病関連リソソーム異常をレスキューする方法であって、前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項17】
前記認知機能障害が、アルツハイマー病、軽度認知機能障害、レビー小体型認知症(LBD)、前頭側頭型認知症(FTD)、血管性認知症、混合性認知症、又はダウン症候群である、請求項1~6に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、投与ステップの前に、治療を必要としていると特定される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、ヒトである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記miR-195-5p又はその前記断片若しくはバリアントが、全身投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
miR-195-5p又はその前記断片若しくはバリアントが、ベクター内に位置する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ベクターが、プラスミド、コスミド、ファージミド、又はウイルスベクターである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ベクターが、脂質、脂質エマルション、リポソーム、ナノ粒子、又はエクソソームを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
miR-195-5p又は前記断片若しくはバリアントが、脂質、脂質エマルション、リポソーム、ナノ粒子、又はエクソソーム内に含まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、又は単純ヘルペスウイルスである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記miR-195-5pが、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含むhsa-miR-195-5pである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
以下からなる群から選択される化合物を含む治療有効量の組成物を投与することを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項28】
方法であって、
(a)血漿、血清、又は脳脊髄液試料を対象から得る又は得ていることと、
(b)前記血漿、血清、又は脳脊髄液試料内のmiR-195-5pの発現レベルを測定することと、
(c)前記miR-195-5pのレベルが、対照試料内のmiR-195-5pのレベルよりも低いときに、前記対象が、miR-195-5pを含む組成物での治療を必要としていると特定することと、
(d)治療を必要としていると特定された前記対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む組成物を投与することと、を含む、方法。
【請求項29】
前記対象が、認知機能障害を有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記認知機能障害が、アルツハイマー病、軽度認知機能障害、レビー小体型認知症(LBD)、前頭側頭型認知症(FTD)、血管性認知症、脳血管疾患、虚血性、混合性認知症、又はダウン症候群である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記miR-195-5pを含む組成物が、全身投与、鼻腔内投与、又は髄腔内投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記miR-195-5pが、ベクター内に位置する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ベクターが、プラスミド、コスミド、ファージミド、又はウイルスベクターである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ベクターが、脂質、脂質エマルション、リポソーム、ナノ粒子、又はエクソソームを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記miR-195-5pが、脂質、脂質エマルション、リポソーム、ナノ粒子、又はエクソソーム内に含まれる、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、又は単純ヘルペスウイルスである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記ベクターが、脂質、脂質エマルション、リポソーム、ナノ粒子、又はエクソソームを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
以下からなる群から選択される化合物を含む治療有効量の組成物を投与することを更に含む、請求項28に記載の方法。
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項39】
対象を認知機能障害と診断する方法であって、
a)前記対象から得られた試料内のmiR-195-5pの発現レベルを測定することと、
b)前記miR-195-5pの発現レベルが、参照試料のmiR-195-5pの発現レベルよりも低い場合、前記対象が前記認知機能障害を有すると判定することであって、対応する参照値が、健常対象のmiR-195-5pの発現レベルの平均値である、判定することと、
c)前記対象を前記認知機能障害のために治療することと、を含む、方法。
【請求項40】
前記miR-195-5pの発現レベルが、定量的PCRによって判定される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象を前記認知機能障害のために治療するステップが、前記対象に、miR-195-5pを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
対象が認知機能障害を有するかを判定する方法であって、
a)前記対象から得られた試料内のmiR-195-5pの発現レベルを検出することと、
b)前記対象からの前記試料内の前記miR-195-5pの発現レベルを、参照試料からのmiR-195-5pの発現レベルと比較することと、
c)前記対象の試料内の前記miR-195-5pの発現レベルが、参照試料からの前記miR-195-5pの発現レベルと同じである若しくはそれよりも高いときに、前記対象が認知機能障害を有しないと判定すること、又は前記対象の試料内の前記miR-195-5pの発現レベルが、前記参照試料からの前記miR-195-5pのレベルよりも低いときに、前記対象が認知機能障害を有すると判定することと、を含む、方法。
【請求項43】
前記認知機能障害と診断された前記対象に、miR-195-5pを含む治療有効量の組成物を投与することを更に含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記試料が、血清、脳脊髄液、又は血漿である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月19日に出願された米国特許仮出願第63/139,083号の優先権を主張する。この以前に出願された出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する声明
本発明は、United States Department of Veterans Affairsによって授与されたBX003380に基づき、政府支援で作製された。政府は、本発明において、ある権利を有する。
【0003】
配列表の援用
本出願は、配列表を含有し、配列表は、本出願の出願と同時にEFS-Webを介して提出され、「37759_0347P1_Sequence_Listing.txt」というファイル名を含有し、これは、サイズが4,096バイトであり、2022年1月5日に作成され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病(AD)などの神経変性障害は、普及した増大している問題である。神経変性障害は、ニューロンに影響する状態に関連し、ニューロンは、これらの障害において損傷又は破壊され得る。ニューロンは、典型的には、再生することができないため、これらの状態は、しばしば、不可逆的な問題を導き、認知機能、運動機能、又は両方の問題をもたらす。
【0005】
老化の最も普及した神経変性疾患であるアルツハイマー病は、より高齢の米国人の8人のうちの1人に発症している。最近の証拠は、(ADの90%を占める)散発性ADが、Aβクリアランスの機能障害によって引き起こされる可能性があることを示している。軽度認知機能障害(MCI)は、わずかな減少が、認知機能、例えば、記憶(すなわち、健忘MCI)、又は思考若しくは言語能力(又は非健忘MCI)において見られる状態である。MCIにおいて見られる変化は、顕著であるが、概して、罹患者の日常活動を妨害せず、介護生活を必要とせず、このため、MCIは、認知症とは区別される。
【0006】
あるカルシウムチャネル遮断薬は、神経変性障害を治療するための手法を示唆する特徴を有する。しかしながら、あいにく、カルシウムチャネル遮断薬は、いくつかの副作用を示し、これらの副作用は、神経変性疾患の治療において不利である。したがって、有効でありより少ない毒性の治療薬が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
対象の認知機能障害を治療する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0008】
対象の認知機能障害を治療する方法であって、対象に、miR-195-5pを含む組成物を投与することを含み、対象が、i)対象から得られた試料内で、miR-195-5pの発現レベルを判定すること、及びii)対象から得られた試料内のmiR-195-5pの発現レベルを、参照試料内のmiR-195-5pの発現レベルと比較することによって、認知機能障害と診断されており、対象から得られた試料内のmiR-195-5pのより低い発現レベルが、対象の認知機能障害を示す、方法が、本明細書に開示される。
【0009】
対象の認知機能障害の1つ以上の症状を寛解させる方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0010】
対象のシナプトジャニン1(synj1)の活性又は発現を低減する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0011】
対象のシナプトジャニン1(synj1)の活性又は発現を阻害する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0012】
対象のアミロイドβタンパク質(Aβ)クリアランスを増加させる方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0013】
対象の、タウ過剰リン酸化の外傷性脳損傷(TBI)誘導性上昇を低減する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0014】
対象のアミロイドプラーク負荷を低減する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0015】
対象のタウ過剰リン酸化を低減する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0016】
対象のIL-6又はTNFα放出を低減する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0017】
対象のリン酸化タウ産生を減少させる方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0018】
対象の虚血誘導性ミクログリア機能不全及びニューロン損傷を治療又は緩和する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0019】
対象のアルツハイマー病関連リソソーム異常をレスキューする方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0020】
方法であって、(a)脳脊髄液試料を対象から得る又は得ていることと、(b)脳脊髄液試料内のmiR-195-5pの発現レベルを測定することと、(c)miR-195-5pのレベルが、対照試料内のmiR-195-5pのレベルよりも低いときに、対象が、miR-195-5pを含む組成物での治療を必要としていると特定することと、(d)治療を必要としていると特定された対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む組成物を投与することと、を含む、方法が、本明細書に開示される。
【0021】
方法であって、(a)血漿又は血清試料を対象から得る又は得ていることと、(b)血漿又は血清試料内のmiR-195-5pの発現レベルを測定することと、(c)miR-195-5pのレベルが、対照試料内のmiR-195-5pのレベルよりも低いときに、対象が、miR-195-5pを含む組成物での治療を必要としていると特定することと、(d)治療を必要としていると特定された対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む組成物を投与することと、を含む、方法が、本明細書に開示される。
【0022】
対象を認知機能障害と診断する方法であって、a)対象から得られた試料内のmiR-195-5pの発現レベルを測定することと、b)miR-195-5pの発現レベルが、参照試料のmiR-195-5pの発現レベルよりも低い場合、対象が当該認知機能障害を有すると判定することであって、対応する参照値が、健常対象のmiR-195-5pの発現レベルの平均値である、判定することと、c)対象を当該認知機能障害のために治療することと、を含む、方法が、本明細書に開示される。
【0023】
対象が認知機能障害を有するかを判定する方法であって、a)対象から得られた試料内のmiR-195-5pの発現レベルを検出することと、b)対象からの試料内のmiR-195-5pの発現レベルを、参照試料からのmiR-195-5pの発現レベルと比較することと、c)対象の試料内のmiR-195-5pの発現レベルが、参照試料からのmiR-195-5pの発現レベルと同じである若しくはそれよりも高いときに、対象が認知機能障害を有しないと判定すること、又は対象の試料内のmiR-195-5pの発現レベルが、参照試料からのmiR-195-5pのレベルよりも低いときに、対象が認知機能障害を有すると判定することと、を含む、方法が、本明細書に開示される。
【0024】
本発明の組成物及び方法の他の特徴及び利点は、以下の説明、図面、及び特許請求の範囲に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】miR-195が、APOE制御的synj1発現に関与する最上位miRNA候補として特定されることを示す。図1Aは、miR-195を、4つの群のうちで共通して共有されるmiRNAとして示すベン図を示し、4つの群は、ヒトROSMAPデータセットにおける、ApoE4+キャリアとApoE4-キャリアとの間の差次的に発現されるmiRNA、マウスmiRNAアレイ研究における、ApoE4+とApoE4-との間の差次的に発現されるmiRNA、ROSMAPにおける、synj1 mRNAと負相関するmiRNA、及びmultiMiRデータベースによって、synj1 mRNAを標的とすると予測されるmiRNAである。サブ群のうちで重複するmiRNAの数が示される(赤い数字)。
図1B】miR-195が、APOE制御的synj1発現に関与する最上位miRNA候補として特定されることを示す。図1Bは、ROSMAPデータセットにおける、ApoE4+キャリアとApoE4-キャリアとの間のmiR-195レベルの差、及び雌性ApoE4+キャリアと雌性ApoE4-キャリアとの間のmiR-195レベルの差、並びにマウスApoE4+処置ニューロンとマウスApoE4-処置ニューロンとの間のmiR-195レベルの差の対数倍率変化(LogFC)及びp値を示す。
図1C】miR-195が、APOE制御的synj1発現に関与する最上位miRNA候補として特定されることを示す。図1Cは、ROSMAPデータベースのヒト対象のmiR-195とsynj1 mRNAとの間の相関の解析を示す。
図2A】ヒト脳及びCSF試料内の脳miR-195レベルの低減が、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図2Aは、ApoE4+/-対象(CDR0.5~1)のヒト頭頂皮質組織内の(Log2倍率変化として提示される)miR-195の量が、ApoE4-/-対象のものよりも低かったことを示す。N=17~18/群、log2FC倍率変化:ApoE4-/- 0.054±0.113対ApoE4+/- -0.570±0.178、独立試料t検定での**p<0.01。
図2B】ヒト脳及びCSF試料内の脳miR-195レベルの低減が、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図2Bは、正常老化からMCI及び早期ADへのAD疾患進行に伴う、(Log2倍率変化として提示される)miR-195レベルの低減のパターンを示す。N=12~19/群、log2FC:CDR0の対象の1.626±0.696対CDR0.5のMCI患者の0.242±0.104対CDR1のAD対象の-0.663±0.135、ANOVA検定での*p<0.05、****p<0.0001。
図2C】ヒト脳及びCSF試料内の脳miR-195レベルの低減が、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図2Cは、CSF miR-195レベルとMMSEスコアとの間の正相関を示す(r=0.455、p=0.029、N=23)。
図2D】ヒト脳及びCSF試料内の脳miR-195レベルの低減が、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図2Dは、CSF miR-195レベルと総タウレベルとの間の負相関を示す(r=-0.408、p=0.04、N=23)。
図3A】miR-195発現が、ApoE4マウスの海馬脳組織及び培養一次ニューロン内で低減され、miR-195レベルを調節することが、シナプトジャニン1発現を制御することを示す。図3Aは、miR-195のレベルが、12か月齢のApoE4海馬脳組織内で(log2FC:-0.283±0.069)、ApoE3マウスのもの(log2FC:-0.036±0.034)と比較して低減されたことを示す。N=11~13/雄及び雌の両方を有する群、ANOVA検定での**p=0.0096。miR-195レベルの名目低減は、ApoE-/-脳内で、統計的有意性なく見られた(log2FC:-0.125±0.067、p=0.48)。
図3B】miR-195発現が、ApoE4マウスの海馬脳組織及び培養一次ニューロン内で低減され、miR-195レベルを調節することが、シナプトジャニン1発現を制御することを示す。図3Bは、ApoE4-CMで処置されたApoE-/-ニューロン内のmiR-195のレベル(log2FC=-0.314±0.073)が、ApoE3-CMで処置されたもののレベル(log2FC:0.184±0.094)と比較して低減されたことを示す。N=5/群、独立試料t検定での**p=0.003。
図3C】miR-195発現が、ApoE4マウスの海馬脳組織及び培養一次ニューロン内で低減され、miR-195レベルを調節することが、シナプトジャニン1発現を制御することを示す。図3Cは、ApoE3-CM処置ニューロンとApoE4-CM処置ニューロンとの間のmiR-195発現レベルの差が、RAPの存在下で消失したことを示す。ApoE3-CMの存在下でのRAPの処置は、miR-195レベルの低減(log2FC:-1.648±0.125、p<0.0001)を導いたが、ApoE4-CM処置状態において、miR-195レベルは、ベースラインにおいてはるかにより低く、RAP処置の存在下で改善の傾向があった(ApoE4 CM+BSA log2FC:-3.193±0.144対ApoE4 CM+RAP log2FC:-2.678±0.054、p=0.052)。N=3/群、一元配置ANOVA検定による****p<0.0001。
図3D】miR-195発現が、ApoE4マウスの海馬脳組織及び培養一次ニューロン内で低減され、miR-195レベルを調節することが、シナプトジャニン1発現を制御することを示す。図3Dは、synj1タンパク質レベルが、ApoE-/-海馬ニューロン内で、ApoE4-CMの存在下で、miR-195過剰発現で低減されたが、miR-374過剰発現で低減されなかったことを示す。N=4/群、miR-195でのsynj1レベル:対照の62.87±4.48%、**p=0.001;miR-374でのsynj1レベル:対照の102.4±7.77%、p=0.93。
図4A】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図4Aは、ApoE4+/+スクランブル注射、ApoE4+/+ miR-195注射、ApoE3+/+スクランブル注射、及びApoE3+/+ miR-195注射の4つのマウス群における、選好指標=(新規物体探索時間)/(新規物体探索時間+慣れた物体探索時間)、及び識別指標=(新規物体探索時間-慣れた物体探索時間)/(新規物体探索時間+慣れた物体探索時間)を示す。N=19~23/雄及び雌の両方を有する群、ANOVA検定での*p<0.05。
図4B】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図4Bは、KIマウス海馬内のpTauのレベルを示す。N=8/雄及び雌の両方を有する群、ANOVA検定での*p<0.05 **p<0.01。
図4C】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図4Cは、ApoE4+/+ FAD雄性スクランブル注射、ApoE4+/+ FAD雄性miR-195注射、ApoE4+/+ FAD雌性スクランブル注射、ApoE4+/+ FAD雌性miR-195注射、ApoE3+/+ FAD雄性スクランブル注射、ApoE3+/+ FAD雄性miR-195注射、ApoE3+/+ FAD雌性スクランブル注射、及びApoE3+/+ FAD雌性miR-195注射の8つのマウス群における、選好指標及び識別指標を示す。N=6~10/群、ANOVA検定での*p<0.05。
図4D】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図4D及び図4Eは、EFADマウス海馬内のpTau(図4D)及びオリゴマーAβ42図4E)のレベルを示す。N=6/雄及び雌の両方を有する群、ANOVA検定での*p<0.05 ***p<0.001 ****p<0.00001。
図4E】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図4D及び図4Eは、EFADマウス海馬内のpTau(図4D)及びオリゴマーAβ42図4E)のレベルを示す。N=6/雄及び雌の両方を有する群、ANOVA検定での*p<0.05 ***p<0.001 ****p<0.00001。
図4F】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図4Fは、EFADマウス海馬内のアミロイドプラーク負荷を示す。アミロイドプラークロードは、ApoE4+/+ FADスクランブル注射、ApoE4+/+ FAD miR-195注射、ApoE3+/+ FADスクランブル注射、及びApoE3+/+ FAD miR-195注射の4つのマウス群において、脳領域の1mm2当たりのプラークの面積として測定される密度と、プラーク/μm2の総数とによって定量化される。N=3/群、ANOVA検定での*p<0.05 **p<0.01。
図5A】miR-195の過剰発現が、ApoE4 iPSC由来脳細胞内のリソソーム異常をレスキューすることを示す。図5Aは、スクランブル対照(ctrl)、miR-195、及びmiR-195阻害剤(miR inh)の様々な条件を有する、ApoE4+/+正常老化(NA)及びApoE4+/+ AD対象のiPSC由来ニューロン及びアストロサイト共培養物の、サイズによるリソソームの定量化を示す。代替として、ApoE3+/+及びApoE4+/+ N=3~6/条件である。
図5B】miR-195の過剰発現が、ApoE4 iPSC由来脳細胞内のリソソーム異常をレスキューすることを示す。図5Bは、各実験条件におけるニューロンのリソソームの平均サイズ、及びリソソームサイズ/細胞の分布の定量化(これらは、直径0~10μm、10~20μm、20~30μm、及び30μm超によって測定される)、並びに各細胞内のリソソームの数の定量化(これは、1つ~5つ、6つ~10個、11個~15個、16個~20個、及び20超個のリソソーム/細胞によって群化される)を示す。
図5C】miR-195の過剰発現が、ApoE4 iPSC由来脳細胞内のリソソーム異常をレスキューすることを示す。図5Cは、各実験条件における60個~90個のニューロン(MAP-2+)のサイズによるリソームの定量化(これは、面積μm2によって測定される)、リソソームサイズ/細胞の分布の定量化(これは、直径0~10μm、10~20μm、20~30μm、及び30μm超によって測定される)、及び各細胞内のリソソームの数の定量化(これは、1つ~5つ、6つ~10個、11個~15個、16個~20個、及び20超個のリソソーム/細胞によって群化される)を示す。ANOVA検定での****p<0.00001。
図6A】miR195が、APOE制御的synj1発現に関与する最上位miRNA候補として特定されることを示す。図6Aは、マイクロアレイ解析における、ApoE3又はApoE4条件培地(CM)処置ApoE-/-海馬ニューロン間の30個の差次的発現miRNAのうち、15個が、ApoE4条件において下方制御されることを示す。
図6B】miR195が、APOE制御的synj1発現に関与する最上位miRNA候補として特定されることを示す。図6Bは、ヒト及びマウスmultiMiRデータベースを使用する、synj1 mRNAにおいて標的とされるmiR-195の予測スコアを示す。
図7A】ヒト脳及びCSF試料内の脳miR-195レベルの低減が、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図7Aは、雌性対象のmiR-195レベルの有意な低減が、雄性対象と比較して見られ(雄性対象のlog2FC:0.284±0.141対雌性対象のlog2FC:-0.343±0.123、p=0.008)、また、差が、雄性ApoE4-/-対象対雌性ApoE4+/-対象の間で認められた(雄性ApoE4-/-対象のlog2FC:0.340±0.120対雌性ApoE4+/-対象のlog2FC:-0.598±0.175、p=0.02)ことを示す。
図7B】ヒト脳及びCSF試料内の脳miR-195レベルの低減が、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図7Bは、synj1 mRNAレベルの相互上昇が、ApoE4+/-対象において、ApoE4-/-対象のレベルと比較して見られた(log2FC:ApoE4-/- 1.073±0.286対ApoE4+/- 2.093±0.310、p=0.02)ことを示す。
図7C】ヒト脳及びCSF試料内の脳miR-195レベルの低減が、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図7Cは、CDR0.5~1を有するApoE4-/-キャリアの脳miR-195レベルとPIP2レベルとの間の正相関(r=0.472 p=0.048、N=18)を示し、CDR0~1の対象において、ApoE遺伝子型にかかわらず、正相関傾向(r=0.283 p=0.06)を示す。
図7D】ヒト脳及びCSF試料内の脳miR-195レベルの低減が、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図7Dは、CDR0.5~1のコホートの脳miR195とBACE-1発現との間の負相関(r=-0.52 p=0.004)を示す。
図8A】脳miR-195レベルの低減が、ヒト脳及びCSF試料内で、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図8Aは、ApoE4+/-対象(CDR0.5~1)のヒト頭頂皮質組織内のmiR-374の量が、ApoE4-/-対象のものよりも低かったことを示す。N=17~18/群、log2FC:ApoE4-/- 0.285±0.105対ApoE4+/- -0.306±0.171、独立試料t検定での**p<0.01。しかしながら、疾患進行に伴って、miR-374レベルの一過性上昇が、MCI期においてあったが、有意差は、CDR0(正常老化)のコホートとCDR1(早期AD)のコホートとの間で見られなかった(log2FC:CDR0の対象の-1.160±0.830対CDR0.5のMCI患者の0.299±0.098、p=0.04)。
図8B】脳miR-195レベルの低減が、ヒト脳及びCSF試料内で、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図8Bは、ApoE4+/-対象において見られたより高いmiR-155レベル(log2FC:ApoE4-/- -2.275±0.280対ApoE4+/- -1.107±0.451、p=0.035)を示す。
図8C】脳miR-195レベルの低減が、ヒト脳及びCSF試料内で、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連することを示す。図8Cは、CSF miR-195レベルとCSFカルジオリピンレベルとの間の正相関を示す(r=0.684、p=0.0003、N=23)。
図9A】miR-195発現が、ApoE4マウスの海馬脳組織及び培養一次ニューロン内で低減され、miR-195レベルを調節することが、シナプトジャニン1発現を制御することを示す。図9Aは、miR-374のレベルが、12か月齢のApoE4海馬脳組織内で(Log2FC -0.455±0.098)、ApoE3マウスのもの(Log2FC -0.026±0.050、p=0.02)と比較して低減されたことを示す。miR-374レベルの名目低減は、ApoE-/-マウス脳内で見られたが、統計的有意性は見られなかった(Log2FC -0.197±0.124、p=0.40)。N=8~10/群。名目差が、ApoE4 CMで処置されたニューロン内のmiR-374レベル(log2FC:-0.037±0.245)において、ApoE3 CMで処置されたもの(log2FC:0.328±0.254、p=0.33)と比較して認められたが、統計的有意性は、試料のうちの大きい変動に起因して認められなかった。N=5/群。
図9B】miR-195発現が、ApoE4マウスの海馬脳組織及び培養一次ニューロン内で低減され、miR-195レベルを調節することが、シナプトジャニン1発現を制御することを示す。図9Bは、miR-195又はmiR-374を過剰発現するニューロン内のdynタンパク質レベルの変化がない(miR-195過剰発現 対照の97.7%;miR-374過剰発現 対照の107.2%)ことを示す。N=4/群。ウェスタンブロット研究の代表的な例が示される。
図9C】miR-195発現が、ApoE4マウスの海馬脳組織及び培養一次ニューロン内で低減され、miR-195レベルを調節することが、シナプトジャニン1発現を制御することを示す。図9Cは、ApoE3+/+又はApoE4+/+ニューロン内のmiR-195の過剰発現が、synj1 mRNAレベルを低減したことを示す。ApoE4+/+ニューロンは、miR-195の過剰発現での、synj1 mRNAレベルのより劇的な変化を、ApoE3+/+と比較して示した(miR-195を有するApoE3+/+ log2FC:-1.084±0.035対miR-195を有するApoE4+/+ log2FC:-7.751±0.043)。独立試料t検定での****p<0.0001。
図9D】miR-195発現が、ApoE4マウスの海馬脳組織及び培養一次ニューロン内で低減され、miR-195レベルを調節することが、シナプトジャニン1発現を制御することを示す。図9Dは、ApoE3+/+又はApoE4+/+ニューロン内のmiR-195の過剰発現が、synj1タンパク質レベルを低減したことを示す。同様に、ApoE4+/+ニューロンは、miR-195の過剰発現での、synj1タンパク質レベルのより劇的変化を、ApoE3+/+ニューロン内の変化と比較して示した(miR-195を有するApoE3+/+ 対照の70.9±21.2%対miR-195を有するApoE4+/+ 対照の48.0±9.84%)。独立試料t検定での**p=0.01。
図10A】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図10Aは、synj1 mRNAのレベル及びタンパク質レベルが、miR-195過剰発現を有するApoE4+/+マウス脳内で低減されることを示す。ApoE4+/+スクランブル対照対ApoE4+/+ miR-195:synj1 mRNA Log2FC 0.52対-1.29、**p=0.0005。synj1タンパク質 対照の77.7対56.4%、**p=0.006。synj1 mRNA及びタンパク質レベルの、より少ない程度の低減の傾向が、miR-195過剰発現を有するApoE3+/+マウス脳内で見られた。
図10B】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図10Bは、ApoE4+/+又はApoE3+/+脳内のmiR-195過剰発現での、内因性マウスAβ40又はAβ42レベルの有意な変化が観察されなかったことを示す。
図10C】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図10Cは、ApoE4+/+又はApoE3+/+マウス脳内のmiR-195の過剰発現での、ApoEレベルの有意な変化が存在しなかったことを示す。しかしながら、ApoEレベルは、miR-195の過剰発現後のApoE3+/+マウス脳内で、ApoE4+/+対照又はmiR-195注射マウスのものと比較してはるかにより高い。ANOVA検定での*p<0.05。
図10D】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図10Dは、ウイルス操作後のApoE4+/+及びApoE3+/+マウス脳の両方内の上昇したmiR-195レベルが、qPCRによって確認されることを示す。ANOVA検定での*p<0.05、****p<0.00001。
図10E】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図10Eは、miR-195操作を有しない又は有するE4FAD及びE3FADマウス脳内のpTau、総タウ、synj1タンパク質、及びβ-アクチンのウェスタンブロット解析の代表的な例が示されることを示す。
図10F】miR-195の過剰発現が、ApoE4マウスモデルにおいて、認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させることを示す。図10Fは、有意な変化が、miR-195操作を有しない又は有するE4FAD及びE3FADマウス脳内の可溶性Aβ40及びAβ42レベルにおいて見られないことを示す。しかしながら、E4FADマウス脳は、miR-195操作にかかわらず、E3FADマウスにおけるレベルと比較して、より高いレベルの可溶性Aβ40を示す。
図11A】miR-195の過剰発現が、ApoE4 iPSC由来脳細胞内のリソソーム異常をレスキューすることを示す。図11Aは、対照、miR-195、又はmiR-195阻害剤トランスフェクション後のiPSC由来ニューロン及びアストロサイト共培養物内のpTau染色(AT8)の代表的な例を示す。下部パネルで示される免疫蛍光強度の定量化。ANOVA検定での*p<0.05。
図11B】miR-195の過剰発現が、ApoE4 iPSC由来脳細胞内のリソソーム異常をレスキューすることを示す。図11Bは、スクランブル対照(ctrl)又はmiR-195トランスフェクションを有する、ApoE3+/+正常老化(NA)及びApoE4+/+ AD対象からのiPSC由来脳細胞培養物のpTau及びsynj1タンパク質レベルのウェスタンブロット解析を示す。
図11C】miR-195の過剰発現が、ApoE4 iPSC由来脳細胞内のリソソーム異常をレスキューすることを示す。図11Cは、ApoE3+/+正常老化(NA)及びApoE4+/+ AD対象からの培養iPSC由来アストロサイト内のmiR-195レベルを示す。独立試料t検定での**p<0.01。
図11D】miR-195の過剰発現が、ApoE4 iPSC由来脳細胞内のリソソーム異常をレスキューすることを示す。図11Dは、iPSC由来ニューロン及びアストロサイト共培養物の、ニューロンマーカーMAP-2(赤色蛍光)、アストロサイトマーカーGFAP(緑色蛍光)、及びDAPI(青色蛍光)の免疫蛍光共染色、並びにアストロサイトマーカーGFAP(緑色蛍光)、リソソーム(Lysotracker:赤色蛍光)、及びDAPI(青色蛍光)の免疫蛍光共染色の代表的な例を示す。各実験条件における、60個~90個のアストロサイト(GFAP+)の、サイズによるリソソームの定量化(これは、面積μm2によって測定される)。ANOVA検定での*p<0.05、***p<0.001、****p<0.00001。
図11E】miR-195の過剰発現が、ApoE4 iPSC由来脳細胞内のリソソーム異常をレスキューすることを示す。図11Eは、1アストロサイト当たりのリソソームサイズの分布の定量化(これは、直径0~10μm、10~20μm、20~30μm、及び30μm超によって測定される)、及び各アストロサイト内のリソソームの数の定量化(これは、1つ~5つ、6つ~10個、11個~15個、16個~20個、及び20個超のリソソーム/細胞によって群化される)を示す。
図11F】miR-195の過剰発現が、ApoE4 iPSC由来脳細胞内のリソソーム異常をレスキューすることを示す。図11Fは、synj1+/++対照、synj1+/++miR-195、synj1-/-+対照、及びsynj1-/-+miR-195の各実験条件における、70個~100個のニューロン(MAP2+)の、サイズによるリソソームの定量化(これは、面積μm2によって測定される)を示す。ANOVA検定での****p<0.00001。
図12A】アストロサイトに由来するエクソソーム内のmiR-195の虚血誘導性変化を示す。図12Aは、miR-195レベルの低減の傾向が、ApoE3/3由来エクソソーム内のレベルと比較して、ApoE4/4由来エクソソーム内であり、虚血状態においてよりそうであったことを示す。
図12B】アストロサイトに由来するエクソソーム内のmiR-195の虚血誘導性変化を示す。ApoE4/4アストロサイトのエクソソーム内の(図12B)pTau及び(図12C)synj1のレベルは、ApoE3/3由来エクソソーム内のものよりも高い傾向があり、虚血状態においてよりそうであった。N=3。
図12C】アストロサイトに由来するエクソソーム内のmiR-195の虚血誘導性変化を示す。ApoE4/4アストロサイトのエクソソーム内の(図12B)pTau及び(図12C)synj1のレベルは、ApoE3/3由来エクソソーム内のものよりも高い傾向があり、虚血状態においてよりそうであった。N=3。
図13A】ミクログリア内のmiR-195の過剰発現を示す。図13Aは、ミクログリア内のmiR-195の過剰発現が、pdcd4及びsmad7の発現のLPS誘導性増加を阻害することを示す。*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001、N=8。
図13B】ミクログリア内のmiR-195の過剰発現を示す。図13Bは、ミクログリア内のmiR-195の過剰発現が、LPS誘導性IL-6及びTNFα放出を減衰させることを示す。*p<0.05。N=4。
図13C】ミクログリア内のmiR-195の過剰発現を示す。図13Cは、ミクログリア内のmiR-195の過剰発現が、抗炎症応答を、増加したil10a遺伝子発現で増強することを示す。*p<0.05、***p<0.001、N=8。
図13D】ミクログリア内のmiR-195の過剰発現を示す。図13Dは、エクソソームmiR-195レベルを示す。
図13E】ミクログリア内のmiR-195の過剰発現を示す。図13Eは、様々なエクソソームの存在下でのLPS処置BV2細胞内のIL-6及びTNFαレベルを示す。*p<0.05。N=4。
図14A】エクソソームmiR-195は、ミクログリア及びニューロン内の虚血誘導性変化をレスキューすることができることを示す。図14Aは、IL-6のレベルが、ApoE4/4由来エクソソームに曝露された虚血性ApoE4/4/ミクログリア内でより高かったが、ApoE4/4過剰発現miR-195アストロサイト由来エクソソームに曝露されたときに有意に低減されたことを示す。
図14B】エクソソームmiR-195は、ミクログリア及びニューロン内の虚血誘導性変化をレスキューすることができることを示す。図14Bは、虚血性ApoE4/4ニューロン内のpTauのレベルが、miR-195過剰発現アストロサイトに由来するエクソソームの存在下で有意に低減されたことを示す。N=4~5。*p<0.05、**p<0.01。
図15A】E4FADマウス脳内のmiR-195過剰発現での、ミクログリア特異的遺伝子プロファイルの変化を示す。図15Aは、クラスター遺伝子マーカー発現に基づくクラスター割り当てによって着色された、対照及びmiR-195(処置)を有するEFADから選別された脳細胞のtSNE(t分布型確率的近傍埋め込み)プロット(1条件当たりN=4つのプールマウス)を示す。クラスター0は、ミクログリアエンリッチクラスターである。
図15B】E4FADマウス脳内のmiR-195過剰発現での、ミクログリア特異的遺伝子プロファイルの変化を示す。図15Bは、遺伝子セット重複のフィッシャー正確検定による、クラスター特異的DEGでエンリッチされた最上位GO経路を示す。
図15C】E4FADマウス脳内のmiR-195過剰発現での、ミクログリア特異的遺伝子プロファイルの変化を示す。図15Cは、ミクログリアクラスター(C0)のサブクラスタリングが、3つの主要なサブセットを特定したことを示す。
図15D】E4FADマウス脳内のmiR-195過剰発現での、ミクログリア特異的遺伝子プロファイルの変化を示す。図15Dは、GO経路エンリッチメント解析が、各ミクログリアサブクラスター内の異なる遺伝子シグネチャーを示唆することを示す。
図15E】E4FADマウス脳内のmiR-195過剰発現での、ミクログリア特異的遺伝子プロファイルの変化を示す。図15Eは、サブクラスターDEGでエンリッチされた最上位GO経路の研究が、miR-195過剰発現が、Mic.C0及びMic.C2サブクラスター内の自然免疫系及びエフェクター応答、並びにMic.C1サブクラスター内の翻訳及びリボソーム活性を下方制御し、3つのサブクラスター内の酸化的リン酸化及びATP代謝プロセスに関与する遺伝子を上方制御することを示唆することを示す。
図16A】低減されたmiR-195発現及び増加したsynj1発現を有するAPOE4+ミクログリアが、食作用活性の機能障害及びリソソーム拡大で出現し、食作用活性の機能障害及びリソソーム拡大が、synj1ハプロ不全によってレスキューされ得ることを示す。図16Aは、APOE4+/+ミクログリア対APOE3+/+ミクログリア内のmiR-195レベルを示し、結果は、log2FCとして提示され、***p=0.0005、N=3である。
図16B】低減されたmiR-195発現及び増加したsynj1発現を有するAPOE4+ミクログリアが、食作用活性の機能障害及びリソソーム拡大で出現し、食作用活性の機能障害及びリソソーム拡大が、synj1ハプロ不全によってレスキューされ得ることを示す。図16Bは、APOE4+/+ synj1+/+及びsynj1+/-ミクログリア対APOE3+/+ synj1+/+及びsynj1+/-ミクログリア内のsynj1タンパク質発現を示し、結果は、100%をAPOE3+/+ synj1+/+細胞内のsynj1レベルとして、対照の%として提示される。*p<0.05。N=3。
図16C】低減されたmiR-195発現及び増加したsynj1発現を有するAPOE4+ミクログリアが、食作用活性の機能障害及びリソソーム拡大で出現し、食作用活性の機能障害及びリソソーム拡大が、synj1ハプロ不全によってレスキューされ得ることを示す。図16Cは、APOE4+/+(円形及び四角形曲線)synj1+/+(実線曲線)及びsynj1+/-(破線曲線)ミクログリア対APOE3+/+(三角形曲線)synj1+/+(実線曲線)及びsynj1+/-(破線曲線)ミクログリア内のミエリン取り込みアッセイを示す。X軸は、(時間での)インキュベーション時間を表し、Y軸は、蛍光シグナルの量(細胞内に取り込まれるミエリン)を表す。APOE4+/+synj1+/+ミクログリア内のミエリン取り込みの機能障害は、synj1ハプロ不全(APOE4+/+synj1+/-)によってレスキューされる。APOE4+/+synj1+/+シグナルは、他の群よりも統計的に低いことに留意されたい(*p<0.05)。データは、3つ以上の独立した実験の代表的なデータである。
図17A】ミクログリア内のmiR-195の過剰発現が、pdcd4及びsmad7の発現のLPS誘導性増加を阻害し、*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001、N=8であり(図17A);LPS誘導性IL-6及びTNFα放出を減衰させ、*p<0.05.N=4であり(図17B);抗炎症応答を、増加したil10a遺伝子発現で増強し、*p<0.05、***p<0.001、N=8である(図17C)ことを示す。
図17B】ミクログリア内のmiR-195の過剰発現が、pdcd4及びsmad7の発現のLPS誘導性増加を阻害し、*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001、N=8であり(図17A);LPS誘導性IL-6及びTNFα放出を減衰させ、*p<0.05.N=4であり(図17B);抗炎症応答を、増加したil10a遺伝子発現で増強し、*p<0.05、***p<0.001、N=8である(図17C)ことを示す。
図17C】ミクログリア内のmiR-195の過剰発現が、pdcd4及びsmad7の発現のLPS誘導性増加を阻害し、*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001、N=8であり(図17A);LPS誘導性IL-6及びTNFα放出を減衰させ、*p<0.05.N=4であり(図17B);抗炎症応答を、増加したil10a遺伝子発現で増強し、*p<0.05、***p<0.001、N=8である(図17C)ことを示す。
図18A】ミクログリア内へのエクソソームmiR-195取り込みが、炎症応答を調節することを示す。図18Aは、エクソソームmiR-195が、E4アストロサイト内のmiR-195の過剰発現で増加することを示す。
図18B】ミクログリア内へのエクソソームmiR-195取り込みが、炎症応答を調節することを示す。図18Bは、エクソソームを有するLPS処置ミクログリア内のIL-6及びTNFαレベル(miR-195過剰発現を有しない又は有する培養APOE3/3又は4/4アストロサイトからのADE)を示す。*p<0.05。N=4。
図19A】脳及び血清エクソソームmiR-195レベルの評価の結果を示す。図19Aは、9~10か月齢のApoE3 synj1+/+及びsynj1+/-マウス並びにApoE4 synj1+/+及びsynj1+/-マウスの脳及び血清エクソソーム内のmiR-195のレベルを示す。*p<0.05、***p<0.001。N=3。
図19B】脳及び血清エクソソームmiR-195レベルの評価の結果を示す。図19Bは、血清エクソソームmiR-195のレベルが、Cpd#6又はCpd#9処置5xFADマウスにおいて、ビヒクル対照と比較して有意に上昇したことを示す。*p<0.05、**p<0.01。N=6~8/群。
図19C】脳及び血清エクソソームmiR-195レベルの評価の結果を示す。図19Cは、薬物処置コホートにおいて、血清エクソソームmiR-195レベルが、脳エクソソームmiR-195と正相関し、NOR選好指標(0~1)及びY迷路SAPスコア(0~1)によって測定された場合、認知パフォーマンスと正相関し、脳不溶性pTau及びsynj1タンパク質レベルと逆相関することを示す。*p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、本明細書に含まれる、以下の本発明の詳細な説明、図、及び実施例を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0027】
本発明の組成物及び方法を開示し、説明する前に、それらは、特に明記しない限り、特定の合成方法に限定されず、特に明記しない限り、特定の試薬(当然、変化し得るため)に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、限定することが意図されないことも理解されるべきである。本明細書に記載される方法及び材料と類似の又は均等ないずれかの方法及び材料が、本発明の実施又は試験において使用され得るが、例示的な方法及び材料が、ここで記載される。
【0028】
更に、特に明記されない限り、本明細書に示される任意の方法が、そのステップが特定の順序で実施されることを要求するものとして解釈されることは決して意図されないことが理解されるべきである。したがって、方法の請求項が、そのステップが従う順序を実際に列挙していないか、又は特許請求の範囲若しくは説明において、ステップが特定の順序に限定されるべきであると具体的に記述されない場合、いかなる点においても、順序が推論されることは決して意図されない。これは、ステップ又は操作フローの配置、文法的な構成若しくは句読点に由来する明白な意味、及び明細書に記載される態様の数若しくはタイプに関する論理事項を含む、解釈のための任意の可能な非明示的根拠について保持される。
【0029】
本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用される方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前に専らそれらの開示のために提供されている。本明細書におけるいかなるものも、本発明が先行発明によってそのような公開に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、本明細書で提供される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、独立して確認することができる。
【0030】
本明細書に述べられる全ての刊行物及び特許出願は、本発明が関連する技術分野の当業者のレベルの指標である。全ての刊行物及び特許出願は、各個々の刊行物又は特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されたときと同じ程度に、本明細書において参照により組み込まれる。
【0031】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明白に指定しない限り、複数の言及を含む。
【0032】
本明細書で使用される「又は」という用語は、特定のリストの任意の1つのメンバーを意味し、そのリストのメンバーの任意の組み合わせも含む。
【0033】
本明細書の説明及び特許請求の範囲全体にわたって、「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」などの単語の変形は、「含むが、これらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味し、例えば、他の添加剤、構成要素、整数、又はステップを除外することは意図されていない。特に、1つ以上のステップ又は動作を含むと記載される方法において、各ステップが(このステップが、「からなる」などの限定用語を含まない限り)列挙されるものを含むことが具体的に企図され、これは、各ステップが、例えば、このステップにおいて列挙されない他の添加剤、構成要素、整数、又はステップを除外することは意図されていないことを意味する。
【0034】
本明細書では、範囲は、「約」又は「およそ」ある特定の値から、及び/又は「約」又は「およそ」別の特定の値までのように表現され得る。そのような範囲が表されるときに、更なる態様は、1つの特定の値から、かつ/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」又は「およそ」の使用により近似値として表される場合、特定の値が更なる態様を形成することを理解されたい。更に、範囲の各終点は、他の終点と関連して、及び他の終点とは独立して、両方とも重要であることが理解されよう。本明細書に開示されるいくつかの値が存在し、各値は、値自体に加えて、その特定の値を「約」として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されることも理解されたい。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13、及び14もまた開示される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「任意選択的な」又は「任意選択的に」という用語は、その後に説明される事象又は状況が生じてもよく、又は生じなくてもよいことを意味し、この説明には、当該事象又は状況が生じる場合、及び生じない場合が含まれることを意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、投与の標的、例えば、ヒトを指す。したがって、開示される方法の対象は、脊椎動物、例えば、哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、又は両生類であることができる。「対象」という用語はまた、飼い慣らされた動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ショウジョウバエなど)を含む。いくつか態様では、対象は、哺乳動物である。別の態様では、対象は、ヒトである。この用語は、特定の年齢又は性別を示さない。したがって、成人、子供、青年期及び新生児の対象、並びに雌雄を問わない胎児が包含されることが意図される。
【0037】
「対象」又は「それを必要としている対象」又は「患者」という用語は、本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、治療される基礎疾患又は障害と診断されている患者を指す。対象は、現在、疾患若しくは障害に関連する症状を経験していてもよく、又は過去に症状を経験していてもよい。加えて、「それを必要としている対象」は、特定の疾患を発症するリスクがある患者であってもよく、又は疾患の生理学的系のうちの1つ以上を報告するが、この疾患の診断がなされていなくてもよい患者にであってもよい。非限定的な例として、本出願の目的で、「それを必要としている対象」は、現在の総体症状にかかわらず、現在、認知機能障害と診断されている患者、又は過去に、認知機能障害と診断された患者を含み得る。「それを必要としている対象」はまた、認知欠損を示しているが、特定の疾患又は障害と診断されていない患者を含むことができる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、疾患又は障害に罹患している対象を指す。「患者」という用語は、ヒト及び獣医学的対象を含む。開示される方法のいくつかの態様では、「患者」は、例えば、投与ステップより前に、認知機能障害のための治療の必要があると診断されている。
【0039】
本明細書で使用される場合、「治療すること」又は「治療」という用語は、特定の疾患、障害、及び/若しくは状態、又は他の望ましくない症状を、部分的又は完全に、緩和する、寛解させる、軽減する、その発病を遅延させる、その進行を阻害若しくは遅くする、その重症度を低減する、かつ/又はその1つ以上の症状若しくは特徴の発生率を低減する、あるいはそうでなければ、その進行を防止する、妨げる、遅らせる、又は逆転させることを指す。治療は、疾患、障害、及び/若しくは状態に関連する病的状態を発症するリスクを減少させる目的のために、疾患、障害、及び/若しくは状態の徴候を示さない対象、及び/又は疾患、障害、及び/若しくは状態の初期徴候のみを示す対象に投与され得る。例えば、疾患、障害、及び/又は状態は、認知機能障害であることができる。
【0040】
本発明の剤形に言及して、「投与する」、「投与すること」、又は「投与」という用語は、剤形を、治療を必要としている対象の系内に導入する行為を指す。本発明の剤形が、1つ以上の他の活性剤と(それらのそれぞれの剤形で)組み合わせて与えられるときに、「投与」及びその変形はそれぞれ、剤形及び他の活性剤の同時かつ/又は順次の導入を含むと理解される。記載される剤形のうちのいずれかの投与は、並行投与、同時投与、又は順次投与を含む。いくつかの状況では、療法は、ほぼ同時に、例えば、互いに約数秒~数時間以内に施される。
【0041】
本明細書に記載される化合物の「治療有効」量は、典型的には、所望の効果を達成するのに十分な量であり、疾患状態の性質及び重症度、並びに化合物の効能に従って変動し得る。活動性疾患の治療のための濃度とは異なる濃度が、予防のために使用され得ることを理解されよう。治療利益は、改善が患者において観察されるが、患者が依然として基礎障害に罹患し得るような、基礎障害に関連する生理学的症状のうちの1つ以上の寛解で達成される。治療有効量は、状態若しくは疾患の症状の完全な解消、状態若しくは疾患の症状の重症度の低減、又は状態若しくは疾患の症状の進行の遅延をもたらす、対象に投与される組成物の量であってもよい。本明細書に記載の方法はまた、投薬を最適化するためのモニタリングステップを含み得る。本明細書に記載される組成物は、状態若しくは疾患(例えば、認知機能障害)の防止的治療として、又はその進行を遅延させる若しくは遅くするために投与され得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「疾患」又は「障害」又は「状態」という用語は、互換的に使用され、体の状態又は臓器のうちのいくつかの状態におけるいずれかの変更であって、機能のパフォーマンスを阻止若しくは妨害し、かつ/又は不快感、機能不全、窮迫、若しくは更には死などの症状を、罹患した人若しくは人と接触するものに引き起こす、変更を指す。疾患又は障害又は状態はまた、ジステンパー、病的な状態、病気、病弊、障害、病、疾病、愁訴、罹患に関し得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「正常」という用語は、認知機能障害を有しない個体、試料、又は対象を指す。
【0044】
「ベクター」又は「構築物」という用語は、ベクター配列が連結されている別の核酸を細胞内に輸送することが可能な核酸配列を指す。「発現ベクター」という用語は、細胞による発現に好適な形態の(例えば、転写調節エレメントに連結されている)遺伝子構築物を含有するいずれかのベクター(例えば、プラスミド、コスミド、又はファージ染色体)を含む。「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターの一般的に使用される形態であるため、互換的に使用される。また、本発明は、均等な機能を果たす他のベクターを含むことが意図されている。
【0045】
「発現ベクター」という用語は、ベクターが動作可能に連結されている遺伝子の発現を指示することが可能であるベクターを本明細書で指す。組換えDNA技法において有用な一般的な発現ベクターは、しばしば、プラスミドの形態にある。組換え発現ベクターは、宿主細胞内の酸の発現に好適な形態の、本明細書に開示される核酸を含むことができる。換言すれば、組換え発現ベクターは、1つ以上の制御エレメント又はプロモーターを含むことができ、これは、発現される核酸配列に動作可能に連結されている発現のために使用される宿主細胞に基づいて選択され得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「相乗的組成物」という用語は、miR-195、miR-195の断片、miR-195のバリアント、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアント、あるいはmiR-195-3p又はその断片若しくはバリアント、及び追加の治療剤の組み合わせの適用を指す。相乗的に有効な量とは、各構成要素の量であって、組み合わせて、例えば、シナプトジャニン1(synj1)の活性若しくは発現の低減若しくは阻害、Aβクリアランスの増加、タウ過剰リン酸化の外傷性脳損傷(TBI)誘導性上昇の低減、アミロイドプラーク負荷の低減、タウ過剰リン酸化の低減、又はアルツハイマー病関連リソソーム異常のレスキューにおいて有効であり、いずれかの構成要素単独よりも大きい応答をもたらす、量を指す。
【0047】
本明細書で使用される「調節する」、「調節すること」、及び「調節」は、活性又は機能又は数の変化を意味する。変化は、活性、機能、又は数の増加又は減少、増強、又は阻害であってもよい。
【0048】
「変更する」又は「調節する」という用語は、本明細書で互換的に使用され得、例えば、細胞内のヌクレオチド配列の発現を指し、本明細書に記載される方法を適用した後の、細胞内のヌクレオチド配列の発現のレベルが、方法を適用する前の、細胞内のその発現と異なることを意味する。
【0049】
「促進する」、「促進」、及び「促進すること」とは、活性、応答、状態、疾患、又は他の生物学的パラメータの増加を指す。これは、活性、応答、状態、又は疾患の開始を含むことができるが、これらに限定されない。これはまた、例えば、天然又は対照レベルと比較して、活性、応答、状態、又は疾患の10%増加を含み得る。したがって、いくつかの態様では、増加又は促進は、天然又は対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%以上、又はそれらの間のいずれかの量の促進であることができる。いくつかの態様では、増加又は促進は、天然又は対照レベルと比較して、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、又は90~100%である。いくつかの態様では、増加又は促進は、天然又は対照レベルと比較して、0~25、25~50、50~75、又は75~100%以上、例えば、200、300、500、又は1000%以上である。いくつかの態様では、増加又は促進は、天然又は対照レベルと比較して、100パーセント超、例えば、天然又は対照レベルと比較して、100、150、200、250、300、350、400、450、500%以上であることができる。本明細書で使用される場合、促進することとはまた、亢進することを意味することができる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「阻害する」又は「阻害すること」又は「低減すること」という用語は、活性、応答、状態、疾患、又は他の生物学的パラメータの低減又は減少を指す。これは、活性、応答、状態、又は疾患の開始を含みことができるが、これらに限定されない。これはまた、例えば、天然又は対照レベルと比較して、活性、応答、状態、又は疾患の10%減少を含み得る。したがって、いくつかの態様では、減少又は低減は、天然又は対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%以上、又はそれらの間のいずれかの量の促進であることができる。いくつかの態様では、減少又は低減は、天然又は対照レベルと比較して、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、又は90~100%である。いくつかの態様では、減少又は低減は、天然又は対照レベルと比較して、0~25、25~50、50~75、又は75~100%以上、例えば、200、300、500、又は1000%以上である。いくつかの態様では、減少又は低減は、天然又は対照レベルと比較して、100パーセント超、例えば、天然又は対照レベルと比較して、100、150、200、250、300、350、400、450、500%以上であることができる。
【0051】
ハイフン及び数字が後に続く「mir」という接頭辞は、しばしば、マイクロRNAを指すために使用される。pre-miRNAを成熟形態から大文字によって区別することが一般的であり、このため、「mir-」という略語は、pre-miRNAに対応し、「miR-」という略語は、成熟マイクロRNAが言及されることを示す。種に言及する略語は、しばしば、前に使用され、したがって、例えば、「hsa」とは、Homo sapiensのヒトマイクロRNAを指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」及び「アミノ酸同一性」という用語は、開示される抗体、バリアント、又は断片のうちのいずれか内にあり得る20個の自然発生アミノ酸又はいずれかの非自然類似体のうちの1つを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「アミノ酸」とは、自然発生アミノ酸及び合成アミノ酸の両方を意味する。例えば、ホモフェニルアラニン、シトルリン、及びノルロイシンは、本発明の目的で、アミノ酸と考えられる。「アミノ酸」はまた、プロリン及びヒドロキシプロリンなどのアミノ酸残基を含む。側鎖は、(R)又は(S)構成のいずれかであり得る。いくつかの態様では、アミノ酸は、D又はL構成である。非自然発生側鎖が使用される場合、非アミノ酸置換基が、例えば、インビボ分解を防止する又は遅らせるために使用され得る。
【0053】
「断片」という用語は、参照ペプチドと実質的に同一であり、参照ペプチドの生物学的活性を保持するペプチドの一部分(例えば、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個などのアミノ酸)を指すことができる。いくつかの態様では、断片又は部分は、本明細書に記載される参照ペプチドの生物学的活性の少なくとも50%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を保持する。更に、参照ペプチドの断片は、参照ポリペプチドの連続又は隣接部分であることができる(例えば、10アミノ酸長であるペプチドの断片は、このペプチド内のいずれかの2~9個の隣接残基であることができる)。
【0054】
「バリアント」とは、1つ以上のN及び/又はC末端アミノ酸残基の単純な欠失以外の、参照配列とのある様式での差を意味することができる。バリアントが、アミノ酸残基の置換を含む場合、置換は、保存的又は非保存的と考えられ得る。保存的置換は、以下の群、Ser、Thr、及びCys;Leu、Ile、及びVal;Glu及びAsp;Lys及びArg;Phe、Tyr、及びTrp;並びにGln、Asn、Glu、Asp、及びHis内のものである。バリアントは、少なくとも1つの置換及び/又は少なくとも1つの付加を含むことができ、また、少なくとも1つの欠失があり得る。バリアントはまた、1つ以上の非自然発生残基を含むことができる。例えば、バリアントは、セレノシステイン(例えば、セレノ-L-システイン)を、システインの位置を含むいずれかの位置において含み得る。多くの他の「非自然」アミノ酸置換基が、当該技術分野で既知であり、市販の供給源から入手可能である。非自然発生アミノ酸の例としては、D-アミノ酸、システインの硫黄原子に結合したアセチルアミノメチル基を有するアミノ酸残基、ペグ化アミノ酸、及び式NH2(CH2nCOOHのオメガアミノ酸であって、式中、nが、2つ~6つの中性非極性アミノ酸、例えば、サルコシン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、及びノルロイシンである、オメガアミノ酸が挙げられる。フェニルグリシンは、Trp、Tyr、又はPheに対して置換し得、シトルリン及びメチオニンスルホキシドは、中性非極性であり、システイン酸は、酸性であり、オルニチンは、塩基性である。プロリンは、ヒドロキシプロリンで置換され得、プロリンの特性を付与する立体構造を保持し得る。
【0055】
上記の開示は、理解の明快の目的で、例示及び例によって若干詳細に説明されているが、ある変化及び修正が、添付の特許請求の範囲内で実施されてもよい。
【0056】
本明細書に記載される化合物は、(「神経変性障害」又は「神経変性疾患」とも本明細書で称される)認知機能障害、例えば、アルツハイマー病、他の認知症(例えば、血管性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(LDB)、又は混合性認知症)、軽度認知機能障害(MCI)、虚血性状態(例えば、血管性認知症、脳血管疾患、及び他の虚血性プロセス)、及びダウン症候群において見出されるものを治療するために使用され得る。本明細書に記載される化合物は、外傷性脳損傷(TBI)を治療するために使用され得る。TBIと、アルツハイマー病(AD)と認知症との間の関係がある。TBIを患う人々は、遅発性神経変性及びADを発症する可能性が2~4倍より多くある。
【0057】
アルツハイマー病(AD)は、β-アミロイドペプチド(Aβ)と、過剰リン酸化タウからなる神経原線維濃縮体と、を含有する老人斑によって、神経病理学的に特徴付けられる。Aβの過剰産生又はAβのクリアランスの機能障害のいずれかが、Aβ蓄積を導き得る。最近の証拠は、(AD症例の90%を占める)遅発性AD症例が、Aβクリアランスの全体的な機能障害と相関することを示唆している。更に、いくつかの研究は、エンドソーム/リソソームネットワークの病理学的変化を報告しており、この病理学的変化は、アルツハイマー病が進行するにつれて、ニューロン内で発症し、エンドサイトーシスの調節不全及びリソソームクリアランス機構の進行性不全を含む。また、リソソームタンパク質クリアランス不全と神経変性の機構との間の密接な関係が、十分に記述されている。
【0058】
エンドソーム異常は、最も早期のAD病的状態のうちの1つと考えられ、synj1の増加した機能は、早期エンドソームの拡大に関連する。シナプトジャニン1(synj1)は、脳及びシナプス内の主要なホスホイノシトールビスホスフェート(PIP2)分解酵素である。最も重要には、synj1の下方制御が、Aβ取り込み及びリソソーム輸送を増加させ、それによって、Aβクリアランスを刺激することが見出されている。更に、synj1の低減は、ADトランスジェニックマウスモデルにおいて、アミロイド誘導性神経病理学的変化及び行動欠損を減衰させる。
【0059】
Alzheimer’s Associationは、65歳以上の人々の15~20%がMCIに罹患すると推定する。MCIを導くリスク因子は、認知症及びアルツハイマー病(AD)についてのものと類似であると考えられ、これらは、高齢、心血管疾患(又はそれを導くリスク因子)、及び/又は認知症若しくはADの家族歴を含む。加えて、MCIを有する個体は、MCIに罹患していない個体よりも、AD又は認知症を発症するリスクが増加する。ApoE4遺伝子のキャリアである人々はまた、MCI及び/又はADを発症するリスクがより高いと考えられる。本発明の化合物は、ApoE4遺伝子を保有する患者、MCIを有する患者、及び/又は前臨床又は活動性ADを有する患者を治療するために使用され得る。
【0060】
ダウン症候群(DS)は、米国において、約700人の出生毎に1回発生し、染色体21の少なくとも一部分の余分なコピーによって引き起こされる。シナプトジャニン1は、おそらく、その遺伝子であるSYNJ1がヒト染色体21上に位置すると考えられるため、ダウン症候群に関与すると示されている。DSに罹患した個体は、一般的に、アルツハイマー病を発症する。
【0061】
また、外傷性脳損傷(TBI)が、本明細書に開示される化合物のうちのいずれかによって治療され得る。Centers for Disease Controlによれば、TBIを患う者は、米国救急室において250万回、2010年に見られた。ヒトTBI症例の神経病理学的研究は、神経変性プロセスに関連する神経原線維濃縮体及びアミロイドプラークの発症を記載している。
【0062】
いずれの1つの理論にも束縛されないが、データは、ApoEタンパク質が、爆風TBIに応答した脳リン脂質ホメオスタシスの変化を制御すること、及びApoE4アイソフォームが、このプロセスにおいて機能不全であることを示唆している。synj1の下方制御は、爆風誘導性リン脂質調節不全をレスキューし、ApoE4キャリアのタウ過剰リン酸化の発症を防止することが示されている。
【0063】
組成物
認知機能障害の治療のための組成物が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、標的遺伝子は、シナプトジャニン1(synj1)遺伝子であることができる。いくつかの態様では、試料は、増加したレベルのシナプトジャニン1(synj1)を発現することができる。いくつかの態様では、試料は、減少したレベルのmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを発現することができる。いくつかの態様では、試料は、減少したレベルのmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pバリアントを発現することができる。いくつかの態様では、組成物は、miR-195と、表1及び2に開示される化合物のうちのいずれかと、を含むことができる。いくつかの態様では、組成物は、相乗的組成物であることができる。
【0064】
いくつかの態様では、認知機能障害は、アルツハイマー病、軽度認知機能障害、レビー小体型認知症(LBD)、前頭側頭型認知症(FTD)、虚血性状態(例えば、血管性認知症、脳血管疾患、及び他の虚血性プロセス)、混合性認知症、又はダウン症候群であることができる。いくつかの態様では、認知機能障害は、外傷性脳損傷に関連し得る。
【0065】
マイクロRNA(miRNA)は、通常、約20個~25個のヌクレオチドのモノカテナリーRNA分子であって、特定の遺伝子の発現を、miRNAの転写後サイレンシングによって制御する能力を有し、miRNAが、相補的である領域内のメッセンジャーRNAに連結する結果として、対合が、メッセンジャーRNAの分解を導く、モノカテナリーRNA分子である。マイクロRNAは、ゲノム内でコードされ、既知のように、最初は、pri-miRNAとして形成され、pri-miRNAは、ビカテナリーRNAの長い分子であり、ビカテナリーRNAは、ヘアピンを分子の内部領域間の相補性によって形成する能力を有する。いわゆる前駆体マイクロRNAであるpre-miRNAは、pri-miRNAがドローシャ酵素によって処理されたときに形成され、ドローシャ酵素は、ヘアピンの塩基、すなわち、不対末端を切断又は排除する。pre-miRNAは、核から細胞質に輸送され、細胞質において、pre-miRNAは、ダイサー酵素によって断片化され、ダイサー酵素は、pre-miRNAを20個~25個のヌクレオチドの最終長に切断し、その後、得られた二本鎖が分離され、2つのモノカテナリーRNAをもたらし、それらのうちの1つは、成熟マイクロRNAであり、成熟マイクロRNAは、RISC複合体内に組み込まれたそのサイレンシング作用を実行する。
【0066】
miR-195は、ストレス誘導性であるmiR-15/107ファミリーメンバーのうちの1つである。miR-15/107群のメンバーは、類似の配列AGCAGCを、AGCx2 miRNAと称される成熟miRNAの5’末端近くに有する。ヒトmiR-195遺伝子は、イントロン7に起源をもち、イントロン7は、未知の機能タンパク質をコードするmRNA遺伝子AK098506の染色体17p13.1上かつ逆鎖上に位置する。miRBase(http://mirbase.org/)を使用して判定された、miR-195の予測ステムループ構造は、miR-195の予測ステムループ構造の配列及び構造について、参照により本明細書に組み込まれる、Yu et al,Onco Targets Ther.2018;11:7109-7123に示されている。(「ステムループ」とも称される)miR-195配列は、AGCUUCCCUGGCUCUAGCAGCACAGAAAUAUUGGCACAGGGAAGCGAGUCUGCCAAUAUUGGCUGUGCUGCUCCAGGCAGGGUGGUG(配列番号4)である。miR-195ヘアピンは、「ガイド鎖」miR-195-5p(これは、配列UAGCAGCACAGAAAUAUUGGC;配列番号1を有する)、及び姉妹「パッセンジャー」鎖miR-195-3p(これは、配列CCAAUAUUGGCUGUGCUGCUCC;配列番号2を有する)を生じさせる。
【0067】
いくつかの態様では、miR-195は、hsa-miR-195であることができる。いくつかの態様では、miR-195-5pは、hsa-miR-195-5pであることができる。いくつかの態様では、miR-195-5pは、ヌクレオチド配列UAGCAGCACAGAAAUAUUGGC(配列番号1)を含むことができる。いくつかの態様では、miR-195-3pは、hsa-miR-195-3pであることができる。いくつかの態様では、miR-195-3pは、ヌクレオチド配列CCAAUAUUGGCUGUGCUGCUCC(配列番号2)を含むことができる。
【0068】
いくつかの態様では、miR-195-5pは、ヌクレオチド配列UAGCAGCACAGAAAUAUUGGC(配列番号1)からなることができる。いくつかの態様では、miR-195-3pは、ヌクレオチド配列CCAAUAUUGGCUGUGCUGCUCC(配列番号2)からなることができる。いくつかの態様では、組成物は、miR-195に由来する配列からなることができる。いくつかの態様では、組成物は、miR-195に由来する配列からなることができ、miR-195に由来する配列は、miR-195と比較して、増加した安定性を有する。
【0069】
miR-195、miR-195-5p、及びmiR-195-3pの断片が、本明細書に開示される。本明細書で使用される場合、「断片」という用語は、全長miR-195、miR-195-5p(配列番号1)、又はmiR-195-3p(配列番号2)の一部分を指す。断片のサイズは、変動し得、機能断片を含まなければならず、すなわち、断片は、本明細書に記載されるように、synj1の活性若しくは発現を調節することができなければならず、又はかつsynj1発現細胞に対する治療有用性を有しなければならない。典型的には、断片は、少なくともシード領域配列AGCAGCA(配列番号3)を含むことができる。いくつかの態様では、断片は、少なくともシード領域配列AGCAGCA(配列番号3)を含むことができる。
【0070】
また、miR-195、miR-195-5p、及びmiR-195-3pのバリアントが、本明細書に開示される。(miR-195バリアントとも本明細書で称される)miR-195のバリアント、miR-195-5pのバリアント、及びmiR-195-3pのバリアントは、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの配列とそれぞれ実質的に類似であるヌクレオチド配列、及びそれらに由来する前駆体又は配列を含むことができる。miR-195、miR-195-5p、及びmiR-195-3pバリアントは、機能断片を含まなければならず、すなわち、miR-195、miR-195-5p、及びmiR-195-3pバリアントは、本明細書に記載されるように、synj1の活性若しくは発現を調節することができなければならず、又はかつsynj1発現細胞に対する治療有用性を有しなければならない。典型的には、miR-195、miR-195-5p、及びmiR-195-3pバリアントは、miR-195の少なくともシード領域配列AGCAGCA(配列番号3)を含むことができる。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、及びmiR-195-3pバリアントは、少なくともシード領域配列AGCAGCA(配列番号3)を含むことができる。
【0071】
いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pバリアントは、miR-195シード領域配列を含む、miR-195配列若しくはその断片、miR-195-5p配列若しくはその断片、又はmiR-195-3p配列若しくはその断片と実質的に類似であるヌクレオチド配列を含む。miR-195、miR-195-5p、及びmiR-195-3pバリアントはまた、本明細書に開示されるmiRNAの配列と実質的に類似であるヌクレオチド配列を含むことができる。「バリアント」とは、N及び/又はC末端ヌクレオチドの単純な欠失以外の、参照配列とのある様式での差を意味することができる。加えて又は代替として、バリアントは、少なくとも1つの置換及び/又は少なくとも1つの付加を含むことができ、また、少なくとも1つの欠失があり得る。いくつかの態様では、投与されるバリアントmiRNAは、miR-195-5p(配列番号1)、miR-195-3p(配列番号2)、又はmiR-195(配列番号4)の配列と少なくとも80%の配列同一性を示す配列を含むことができる。いくつかの態様では、投与されるmiRNAは、配列番号1、配列番号2、又は配列番号4)と少なくとも90%の配列同一性を示す配列を含むことができる。いくつかの態様では、投与されるmiRNAは、配列番号1、配列番号2、又は配列番号4)と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を示す配列を含むことができる。代替として又は加えて、バリアントは、修飾を含むことができ、例えば、非自然残基を、miR-195配列、miR-195-5p配列、又はmiR-195-3p配列に対して1つ以上の位置において含むことができる。いくつかの態様では、バリアントは、miRNAの最後のヌクレオチドが変化する配列であることができる。いくつかの態様では、バリアントは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は少なくとも3つの置換を、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの5’末端において含む配列であることができる。いくつかの態様では、ヌクレオチド置換は、参照配列に対するヌクレオチド置換であって、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらのバリアントの安定性を増加させる、ヌクレオチド置換を含むことができる。いくつかの態様では、ヌクレオチド置換は、ナノ粒子を形成するためのポリマー又はコポリマーへのmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらのバリアントのコンジュゲーションを可能にするものであることができる。ヌクレオチド置換は、1つ又は2つの塩基の置換であることができる。いくつかの態様では、ヌクレオチド置換は、3つの塩基の置換であることができる。欠失及び挿入は、1つ~約3つの塩基を含むことができる。
【0072】
置換、欠失、挿入、又はそれらのいずれかの組み合わせは、最終の誘導体又はバリアントに到達するために使用され得る。概して、これらの変化は、分子の変更を最小化するために、いくつかのヌクレオチド上で行われる。しかしながら、より大きい変化が、ある状況において許容され得る。
【0073】
概して、個々のバリアント配列間のヌクレオチド同一性は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%であることができる。したがって、「バリアント配列」は、本発明の親又は参照配列と、指定される同一性を有するものであることができ、生物学的機能を共有し、生物学的機能の共有は、親配列の特異性及び/又は活性の少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を含むが、これらに限定されない。例えば、「バリアント配列」は、本発明の親又は参照配列と比較して、1つ、2つ、3つ、又は4つのヌクレオチド塩基変化を含有する配列であって、親配列の生物学的機能、特異性、及び/又は活性を共有又は改善する、配列であることができる。いくつかの態様では、親又は参照配列は、195であることができる。
【0074】
いくつかの態様では、本明細書に開示される配列のうちのいずれかは、親又は参照配列と比較して、単一ヌクレオチド変化を含むことができる。いくつかの態様では、本明細書に開示される配列のうちのいずれかは、親又は参照配列と比較して、少なくとも2つのヌクレオチド変化を含むことができる。個々のバリアント配列間のヌクレオチド同一性は、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%であることができる。したがって、「バリアント配列」は、本発明の親配列と、指定される同一性を有するものであることができ、生物学的機能を共有し、生物学的機能の共有は、親配列の特異性及び/又は活性の少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を含むが、これらに限定されない。バリアント配列はまた、親配列の特異性及び/又は活性の少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を共有することができる。
【0075】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるmiR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195のアミノ酸配列は、本明細書に開示されるmiR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195配列のうちのいずれかとある程度の同一性又は相同性を有するペプチド配列を含むことができる。同一性の程度は、変動し得、当業者に既知の方法によって判定され得る。「相同性」及び「同一性」という用語はそれぞれ、2つのポリペプチド配列間の配列類似性を指す。相同性及び同一性はそれぞれ、各配列内の位置を比較することよって判定され得、各配列内の位置は、比較の目的で、アライメントされ得る。比較される配列内の位置が、同じアミノ酸残基によって占有されているときに、ポリペプチドは、この位置において同一であると称され得、均等な部位が、同じアミノ酸(例えば、同一のアミノ酸)又は類似のアミノ酸(例えば、立体及び/又は電子的性質において類似のアミノ酸)によって占有されているときに、分子は、この位置において相同であると称され得る。配列間の相同性又は同一性の百分率は、配列によって共有される一致する又は相同な位置の数の関数である。本明細書に記載されるデコイペプチド又はポリペプチドは、配列番号1、2、又は4のうちの1つ以上であるデコイペプチド又はポリペプチドと少なくとも又は約25%、50%、65%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性又は相同性を有することができる。
【0076】
また、表1及び表2に記載の化合物が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本明細書に記載される組成物は、表1又は表2に開示される化合物のうちの1つ以上を更に含むことができる。表1及び2の化合物は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかにおいて有用であることができる。
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
本明細書に記載される方法のうちのいずれかにおいて有用な追加の化合物は、表2に開示される。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
方法
認知機能障害を有する対象を診断する方法が、本明細書に開示される。また、認知機能障害を有する対象を診断及び治療する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象から得られた試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルを測定することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、対象から得られた試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pバリアントの発現レベルを測定することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルが、参照試料のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルよりも低い場合、対象が当該認知機能障害を有すると判定することを含むことができ、対応する参照値は、健常対象のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルの平均値である。いくつかの態様では、方法は、対象を当該認知機能障害のために治療することを含むことができる。いくつかの態様では、対象を当該認知機能障害のために治療するステップは、対象に、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを含む治療有効量の組成物を投与することを含む。いくつかの態様では、対象を当該認知機能障害のために治療するステップは、対象に、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む。いくつかの態様では、組成物は、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3pと配列少なくとも90%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含むことができる。
【0083】
対象が認知機能障害を有するかを判定する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象から得られた試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルを検出することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、対象からの試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルを、参照試料からのmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルと比較することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、対象から得られた試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pバリアントの発現レベルを検出することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、対象からの試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pバリアントの発現レベルを、参照試料からのmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pバリアントの発現レベルと比較することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、対象の試料内のmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pの発現レベルが、参照試料からのmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pの発現レベルと同じである若しくはそれよりも高いときに、対象が認知機能障害を有しないと判定すること、又は対象の試料内のmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pの発現レベルが、参照試料からのmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pのレベルよりも低いときに、対象が認知機能障害を有すると判定することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、当該認知機能障害と診断された対象に、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを含む治療有効量の組成物を投与することを更に含むことができる。いくつかの態様では、方法は、当該認知機能障害と診断された対象に、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを更に含むことができる。いくつかの態様では、組成物は、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pと配列少なくとも90%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含むことができる。
【0084】
方法であって、(a)脳脊髄液試料を対象から得る又は得ていることと、(b)脳脊髄液試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルを測定することと、(c)miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルが、対照試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルよりも低いときに、対象が、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを含む組成物での治療を必要としていると特定することと、(d)治療を必要としていると特定された対象に、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3pを含む組成物を投与することと、を含む、方法が、本明細書に更に開示される。いくつかの態様では、対象は、認知機能障害を有する。
【0085】
また、方法であって、(a)血漿又は血清試料を対象から得る又は得ていることと、(b)血漿又は血清試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルを測定することと、(c)miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルが、対照試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルよりも低いときに、対象が、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを含む組成物での治療を必要としていると特定することと、(d)治療を必要としていると特定された対象に、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3pを含む組成物を投与することと、を含む、方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、対象は、認知機能障害を有する。
【0086】
また、対象の認知機能障害を治療する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを含む組成物を投与することを含むことができ、対象は、i)対象から得られた試料内で、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルを判定すること、ii)対象から得られた試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルを、参照試料からのmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルと比較することによって、認知機能障害と診断されており、対象から得られた試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのより低い発現レベルは、対象の認知機能障害を示す。いくつかの態様では、参照試料は、当該認知機能障害を有しない対象又は当該認知機能障害を有すると診断されていない対象から得られ得る。
【0087】
対象の自然免疫系又はエフェクター応答を下方制御する方法であって、対象に、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0088】
対象の認知機能障害を治療する方法であって、対象に、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、miR-195を含む組成物の投与前に、対象から得られた試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルを判定することを更に含むことができ、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルは、参照試料と比較してより低い。いくつかの態様では、参照試料は、認知機能障害を有しない対象又は認知機能障害を有すると診断されていない対象から得られ得る。
【0089】
対象が認知機能障害を患うと判定することは、参照値と比較して、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのより低い発現レベルに基づいて行われ得る。対象が認知機能障害を患うと判定することは、参照値と比較して、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pバリアントのより低い発現レベルに基づいて行われ得る。
【0090】
いくつかの態様では、認知機能障害を患う対象及び対照対象から測定されたmiRNAの相対的レベル間の厳密な比較を確立するために、測定された試料のmiRNAの発現レベルを比較するための参照値又は対照値を確立することが重要である。本明細書で使用される場合、参照値及び対照値という用語は、同義であると理解される。当該対照値は、様々な様式で、例えば、症例と対照との比較であることができる以前の研究から得られ得る。いくつかの態様では、参照値は、健常個体における統計的研究において得られる、当該miRNAの発現のレベルの平均値であると考えられる。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pは、その発現のレベルの値が、健常個体における発現の平均レベルの半分以下であるときに、参照値よりも低い値を有すると考えられ得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pは、その発現のレベルの値が、年齢一致個体における発現の平均レベルの半分以下であるときに、参照値よりも低い値を有すると考えられ得る。
【0091】
いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現の平均レベルの判定は、当業者が使用可能であるいずれかの既知の方法を使用して、例えば、算術平均を計算することによって達成され得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現の平均レベルの判定は、有効な重複物の平均を比較することによる計算によって達成され得、有効な重複物の平均は、マイクロアレイの一部分を形成する相補的プローブでのハイブリダイゼーション研究におけるそれらの平均実験値を参照して得られる。
【0092】
いくつかの態様では、また、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現のレベルが、その参照値よりも少なくとも4倍低いときに、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pは、参照値よりも低い値を有することができると判定され得る。また、他の値が、参照値として選択され得、例えば、例えば、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの、健常個体から75パーセンタイル値のレベルが選択され得る。
【0093】
いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現レベルは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって判定され得る。
【0094】
対象の認知機能障害の1つ以上の症状を寛解させる方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含むことができる。
【0095】
対象のシナプトジャニン1(synj1)の活性又は発現を低減する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含むことができる。
【0096】
対象のシナプトジャニン1(synj1)の活性又は発現を阻害する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含むことができる。
【0097】
対象のアミロイドβタンパク質(Aβ)クリアランスを増加させる方法であって、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0098】
対象の、タウ過剰リン酸化の外傷性脳損傷(TBI)誘導性上昇を低減する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含むことができる。
【0099】
対象のアミロイドプラーク負荷を低減する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含むことができる。
【0100】
対象のタウ過剰リン酸化を低減する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含むことができる。
【0101】
対象のIL-6又はTNFα放出を低減する方法が、本明細書に開示される。対象のIL-6又はTNFα放出を低減する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。対象のIL-6又はTNFα放出を低減する方法であって、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0102】
対象の減少したリン酸化タウ産生の方法が、本明細書に開示される。対象のリン酸化タウ産生を減少させる方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。対象のリン酸化タウ産生を減少させる方法であって、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0103】
対象の虚血誘導性ミクログリア機能不全及びニューロン損傷を治療する方法が、本明細書に開示される。対象の虚血誘導性ミクログリア機能不全及びニューロン損傷を治療する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。対象の虚血誘導性ミクログリア機能不全及びニューロン損傷を治療する方法であって、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0104】
対象のアルツハイマー病関連リソソーム異常をレスキューする方法が、本明細書に開示される。対象のアルツハイマー病関連リソソーム異常をレスキューする方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。対象のアルツハイマー病関連リソソーム異常をレスキューする方法であって、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0105】
対象のpdcd4及びsmad7の発現を減少させる方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。対象のpdcd4及びsmad7の発現を減少させる方法であって、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0106】
対象の、pdcd4及びsmad7の発現を減少させ、il10a発現を増加させる方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。対象の、pdcd4及びsmad7の発現を減少させ、il10a発現を増加させる方法であって、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0107】
対象の、pdcd4及びsmad7の発現のLPS誘導性増加を防止する方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。対象の、pdcd4及びsmad7の発現のLPS誘導性増加を防止する方法であって、対象に、miR-195-5p、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0108】
対象の、pdcd4及びsmad7の発現のLPS誘導性増加を防止し、il10a発現を増加させる方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される、対象の、pdcd4及びsmad7の発現のLPS誘導性増加を防止し、il10a発現を増加させる方法であって、対象に、miR-195-5p、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0109】
対象のリポ多糖誘導性炎症促進性サイトカイン放出を減衰させる方法であって、対象に、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。対象のリポ多糖誘導性炎症促進性サイトカイン放出を減衰させる方法であって、対象に、miR-195-5p、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0110】
対象の自然免疫系又はエフェクター応答関与する1つ以上の遺伝子を下方制御する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、自然免疫系又はエフェクター応答関与する1つ以上の遺伝子は、図15A図15Eのうちのいずれかの経路のうちの1つ以上に関与し得る。
【0111】
対象の、ミクログリアクラスター内のミトコンドリア及びシナプス機能に関与する遺伝子を上方制御する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、ミクログリアクラスター内のミトコンドリア及びシナプス機能に関与する1つ以上の遺伝子は、図15A図15Eのうちのいずれかの経路のうちの1つ以上に関与し得る。
【0112】
対象の、酸化的リン酸化又はATP代謝プロセスに関与する1つ以上の遺伝子を上方制御する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p若しくはそれらのバリアント及び断片と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む治療有効量の組成物を投与することを含むことができる。いくつかの態様では、酸化的リン酸化又はATP代謝プロセスに関与する1つ以上の遺伝子は、図15A図15Eのうちのいずれかの経路のうちの1つ以上に関与し得る。
【0113】
認知機能障害を有する対象の認知機能障害治療の有効性若しくは効力を評価若しくはモニタリングする方法、又は認知機能障害を有すると疑われる対象の認知機能障害を診断する方法が、本明細書に開示される。方法は、試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルを測定することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、本明細書に開示される組成物のうちのいずれかでの初期治療前の、試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルを判定することができる。いくつかの態様では、方法は、本明細書に開示される組成物のうちのいずれかでの治療後のいずれかのときの、試料内のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルを判定することができる。いくつかの態様では、方法は、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルが、本明細書に開示される組成物のうちのいずれかでのいずれかの治療後に、本明細書に開示される組成物のうちのいずれかでの治療のうちのいずれかの前のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルよりも高いときに、認知機能障害治療が有効であると特定することを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルが、本明細書に開示される組成物のうちのいずれかでのいずれかの治療後に、本明細書に開示される組成物のうちのいずれかでの治療のうちのいずれかの前のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルよりも低いときに、認知機能障害治療が有効でないと特定することを含むことができる。
【0114】
いくつかの態様では、方法は、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを含む治療有効量の組成物を投与することと、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを含む組成物の投与前に、その投与後に、又はその投与中に、対象に、表1又は表2の化合物のうちのいずれかの治療有効量の化合物を投与することとを含む。いくつかの態様では、方法はまた、標準治療療法の施しを含むことができる。
【0115】
いくつかの態様では、認知機能障害は、アルツハイマー病、軽度認知機能障害、レビー小体型認知症(LBD)、前頭側頭型認知症(FTD)、虚血性状態(例えば、血管性認知症、脳血管疾患、及び他の虚血性プロセス)、混合性認知症、又はダウン症候群であることができる。いくつかの態様では、認知機能障害は、外傷性脳損傷であることができる。
【0116】
いくつかの態様では、治療を必要としている対象は、投与ステップより前に又は投与ステップ前に、認知機能障害と診断されている。
【0117】
いくつかの態様では、対象は、ヒトであることができる。
【0118】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかにおいて、検出されるmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3p発現レベルは、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pと少なくとも90%の配列同一性を含む配列であることができる。
【0119】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかにおいて、投与されるmiR-195は、miR-195と少なくとも80%の配列同一性を含む配列を含むことができる。
【0120】
いくつかの態様では、miR-195、又はmiR-195と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、全身投与又は髄腔内投与され得る。
【0121】
いくつかの態様では、miR-195、又はmiR-195と配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、鼻腔内投与され得る。
【0122】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかにおいて、投与されるmiR-195-5pは、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアントと少なくとも80%の配列同一性を含む配列を含むことができる。
【0123】
いくつかの態様では、miR-195-5p、又はmiR-195-5pと配列少なくとも90%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、全身投与又は髄腔内投与され得る。
【0124】
いくつかの態様では、miR-195-5p、又はmiR-195-5pと配列少なくとも90%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、鼻腔内に投与され得る。
【0125】
いくつかの態様では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかにおいて、投与されるmiR-195-3pは、miR-195-3p又はその断片若しくはバリアントと少なくとも80%の配列同一性を含む配列を含むことができる。
【0126】
いくつかの態様では、miR-195-3p、又はmiR-195-3pと配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、全身投与又は髄腔内投与され得る。
【0127】
いくつかの態様では、miR-195-3p、又はmiR-195-3pと配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、鼻腔内投与され得る。
【0128】
いくつかの態様では、miR-195-5pは、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含むhsa-miR-195-5pであることができる。いくつかの態様では、miR-195-3pは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列を含むhsa-miR-195-3pであることができる。いくつかの態様では、miR-195は、配列番号5に記載のヌクレオチド配列を含むhsa-miR-195であることができる。
【0129】
いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらのバリアントの投与を含むことができる。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片の投与を含むことができる。
【0130】
いくつかの態様では、試料は、脳脊髄液、脳組織、血清、又は血漿であることができる。
【0131】
いくつかの態様では、試料は、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3pを含む組成物の投与前に、参照試料と比較して、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3pの低減された発現を有し得る。
【0132】
いくつかの態様では、試料は、対象(例えば、対象からの脳脊髄液試料)から得られ得、試料内のmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3pの発現のレベルは、参照試料と比較され得る。参照試料又は対照試料又は参照細胞は、認知機能障害を有しない対象からのものであることができ、概して、細胞又は試料と同じタイプであることができる。いくつかの態様では、参照試料は、対象からの正常試料又は細胞であることができ、認知機能障害を有すると疑われる対象からの組織又は細胞が得られる。参照試料は、同じ対象からのものであることができるが、そうであることは必要とされない。いくつかの態様では、参照試料は、比較されている特定の認知機能障害を有しないことが確立されている又は既知である異なる対象から提供され得る。いくつかの態様では、参照試料は、試料が比較されている対象と、性別が一致する、年齢が一致する、かつ/又は人種が一致するものことができる。いくつかの態様では、参照試料は、いくつかの個体からのmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3pの発現レベルから得られる(使用される試料又は細胞の数の尺度としての)平均発現レベルであることができ、アッセイされている細胞と同じ組織学的タイプが、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p発現レベルを測定するために使用され、平均発現又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p発現レベルを得るために使用される個体の全てが、認知機能障害を有しない。この場合、個体は、異なる年齢群、人種、及び性別からのものであることができる。代替として、個体は、同じ年齢群、人種、及び/又は性別からのものであることができる。
【0133】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、1つ以上の遺伝子の発現又は発現レベルを判定又は検出する文脈で使用されるときに、遺伝子の転写を判定若しくは検出すること(すなわち、mRNAレベルを判定すること)、及び/又は遺伝子の翻訳を判定若しくは検出すること(例えば、産生されるタンパク質を判定又は検出すること)を指すことができる。遺伝子の発現レベルを判定することとは、遺伝子が発現されているか否かを判定することを意味し、発現されている場合、相対的程度を判定することを意味する。本明細書に開示される1つ以上の遺伝子の発現レベルは、直接(例えば、イムノアッセイ、質量分析)又は間接的に(例えば、タンパク質又はペプチドのmRNA発現を判定する)判定され得る。質量分析の例としては、EI、CI、MALDI、ESIなどのイオン化源、及びQuad、イオントラップ、TOF、FT、若しくはそれらの組み合わせなどの解析、分光測定、同位体比質量分析(IRMS)、熱イオン化質量分析(TIMS)、スパーク源質量分析、多重反応モニタリング(MRM)、又はSRMが挙げられる。これらの技法のうちのいずれかが、前分画又はエンリッチメント方法と組み合わせて実施され得る。イムノアッセイの例としては、イムノブロット、ウェスタンブロット、酵素結合イムノソルバントアッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイが挙げられる。抗原のレベルの検出及び判定のために抗体を使用するイムノアッセイ方法は、当該技術分野で既知である。抗体は、スティック、プレート、ビーズ、マイクロビーズ、又はアレイなどの固体支持体上に固定化され得る。
【0134】
本明細書に記載される遺伝子のうちの1つ以上の発現レベルはまた、組織試料内の1つ以上の遺伝子についてのmRNA発現を判定することによって間接的に判定され得る。RNA発現方法は、遺伝子の全て又は一部分をコードする転写産物にハイブリダイゼーションする標識プローブを使用する、細胞mRNAの抽出及びノーザンブロッティング、遺伝子特異的プライマーを使用する、mRNAの増幅、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、並びに逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、続いて、多様な方法による遺伝子産物の定量的検出;細胞からのRNAの抽出、続いて、標識、次いで、インサイツハイブリダイゼーションにおける、遺伝子をコードするcDNA又はオリグニオヌクレオチドのプローブとしての使用;RNAシークエンシング;及びレポーター遺伝子の検出を含むが、これらに限定されない。
【0135】
タンパク質発現レベルを測定する方法は、ウェスタンブロット、イムノブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光、蛍光偏光、リン光、免疫組織化学解析、マイクロサイトメトリー、マイクロアレイ、顕微鏡法、蛍光活性化細胞選別(FACS)、及びフローサイトメトリーを含むが、これらに限定されない。方法はまた、特定のタンパク質特性ベースのアッセイベースを含むことができ、これは、酵素活性又は他のタンパク質パートナーとの相互作用を含むが、これらに限定されない。また、結合アッセイが使用され得、当技術分野で周知である。例えば、BIAcoreマシンが、2つのタンパク質間の複合体の結合定数を判定するために使用され得る。1つのタンパク質の別のタンパク質への結合を判定又は検出するための他の好適なアッセイは、イムノアッセイ、例えば、ELISA及びラジオイムノアッセイを含む。分光の変化をモニタリングすることによって結合を判定することが、使用されてもよく、又はタンパク質の光学特性が、蛍光、紫外線吸収、円形二色性、若しくは核磁気共鳴(NMR)を介して判定されてもよい。代替として、特定の抗体を使用するイムノアッセイが、腫瘍細胞上の特定のタンパク質の上の発現を検出するために使用され得る。
【0136】
本明細書で使用される場合、「参照」、「参照発現」、「参照試料」、「参照値」、「対照」、及び「対照試料」という用語などは、1つ以上の遺伝子又はタンパク質又はマイクロRNAの試料又は発現レベルの文脈で使用されるときに、参照標準であって、参照が、異なる組織(すなわち、同じ組織でないが、複数の組織)のうち、一定のレベルで発現され、実験条件によって影響されず、所定の疾患状態の(例えば、認知機能障害を患わない)試料内のレベルを示す、参照標準を指す。参照値は、疾病又は所定のタイプ若しくは重症度の疾病を表さない、所定の標準値又は一連の所定の標準値であることができる。
【0137】
参照発現は、認知機能障害又は所定の重症度若しくはタイプの認知機能障害を患わない対象又は対象プールからの参照試料内の、本明細書に記載される1つ以上の遺伝子又はタンパク質又はマイクロRNAのレベルであることができる。いくつかの態様では、参照値は、認知機能障害を患っていない1つ以上の対象の組織内の、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子又はタンパク質又はマイクロRNAのレベルであることができる。
【0138】
本明細書に開示される1つ以上の遺伝子又はタンパク質又はマイクロRNAの発現レベルを判定することは、遺伝子又はタンパク質又はマイクロRNAが、対照若しくは参照試料と比較して、上方制御されている若しくは増加しているかを判定すること、対照若しくは参照試料と比較して、下方制御されている若しくは減少している(例えば、低い)かを判定すること、又は対照若しくは参照試料と比較して、変化していないかを判定することを含むことができる。本明細書で使用される場合、「上方制御された:及び「増加した発現レベル」又は「発現の増加したレベル」という用語は、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子又はタンパク質又はマイクロRNAに対応する、発現された配列であって、配列の量の程度が、参照試料又は「正常」対照と比較して、発現の増加したレベル(例えば、高い)を示す、配列を指す。例えば、「上方制御された」及び「増加した発現レベル」又は「発現の増加したレベル」という用語は、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子に対応する、発現された配列であって、配列の量の程度が、参照試料又は「正常」対照からの同じmRNAの発現と比較して、タンパク質及び/又はmRNAのうちの1つ以上の発現の増加したレベルを示す、配列を指す。「増加した発現レベル」とは、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%以上、例えば、20%、30%、40%、若しくは50%、60%、70%、80%、90%以上、又は1倍超、最大2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍以上の、発現の増加を指す。本明細書で使用される場合、「下方制御された」、「発現の減少したレベル」、又は「減少した発現レベル」という用語は、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子又はタンパク質又はマイクロRNAに対応する、発現された配列であって、配列の量の程度が、参照試料又は「正常」対照と比較して、発現の減少したレベルを示す、配列を指す。例えば、「下方制御された」、「発現の減少したレベル」、又は「減少した発現レベル」という用語は、本明細書に開示される1つ以上の遺伝子に対応する、発現された配列であって、配列の量の程度が、参照試料又は「正常」対照からの同じmRNAの発現と比較して、1つ以上のタンパク質及び/又はmRNAの発現の減少したレベルを示す、配列を指す。「発現の減少したレベル」とは、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%以上、例えば、20%、30%、40%、若しくは50%、60%、70%、80%、90%以上、又は1倍超、最大2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍以上の、発現の減少を指す。
【0139】
いくつかの態様では、認知機能障害治療の効力が判定され得る。miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルは、認知機能障害治療の効力についてのバイオマーカーとして役立ち得る。例えば、治療後の細胞内のmiR-195-5pのレベルは、治療前の細胞内のmiR-195-5pのレベルよりも高いことがあり、次いで、治療は有効であると考えられ得る。いくつかの態様では、方法は、対象に、miR-195-5pを含む組成物を対象に投与した後に、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pのレベルを測定することを更に含むことができる。
【0140】
いくつかの態様では、シナプトジャニン1の相対的レベルが測定され得る。高い又は増加したレベルのシナプトジャニン1は、低いレベルのmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3pに対応する。
【0141】
いくつかの態様では、認知機能障害のための治療の効力が判定され得る。miR-195、miR-195-5p、miR-195-3pのレベルは、認知機能障害のための治療の効力についてのバイオマーカーとして役立ち得る。例えば、試料内のmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3pのレベルは、それぞれ、治療前の試料内のmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3pのレベルよりも高いことがあり、次いで、治療は有効であると考えられ得る。
【0142】
いくつかの態様では、miR-195は、hsa-miR-195であることができる。いくつかの態様では、miR-195は、ヌクレオチド配列UAGCAGCACAGAAAUAUUGGC(配列番号5)を含むことができる。いくつかの態様では、組成物は、miR-195に由来する配列を含むことができる。いくつかの態様では、miR-195-5pは、hsa-miR-195-5pであることができる。いくつかの態様では、miR-195-5pは、ヌクレオチド配列UAGCAGCACAGAAAUAUUGGC(配列番号1)を含むことができる。いくつかの態様では、miR-195-3pは、hsa-miR-195-3pであることができる。いくつかの態様では、miR-195-3pは、ヌクレオチド配列CCAAUAUUGGCUGUGCUGCUCC(配列番号2)を含むことができる。
【0143】
細胞内のシナプトジャニン1遺伝子の発現を抑制する方法が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、方法は、細胞を、miR-195、その断片、又はそのバリアントと接触させることを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、細胞を、miR-195-5p、その断片、又はそのバリアントと接触させることを含むことができる。いくつかの態様では、方法は、細胞を、miR-195-3p、その断片、又はそのバリアントと接触させることを含むことができる。いくつかの態様では、シナプトジャニン1遺伝子は、膜ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスフェートのレベルを制御するホスホイノシチドホスファターゼをコードし、それによって、参照試料と比較して、細胞内のシナプトジャニン1遺伝子の発現を抑制する。いくつかの態様では、細胞は、脳細胞であり得る。方法は、細胞を、治療有効量のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pと接触させることを含むことができる。
【0144】
細胞を、miR-195、その断片又はバリアント、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアント、miR-195-3p、その断片又はバリアント、あるいはmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの発現又は活性を刺激又は亢進することが可能な分子と接触させることは、当該技術分野で既知のいずれかの方法によって達成され得る。いくつかの態様では、細胞とmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pとを接触させることは、インビボで発生する。miR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pの発現若しくは活性を刺激若しくは亢進することが可能な分子、又は分子は、細胞と直接接触させてもよく、例えば、認知機能障害の1つ以上の症状関連する細胞に直接適用されてもよく、又は代替として、例えば、分子を対象の血流内に注射し、次いで、血流が、分子を、認知機能障害の1つ以上の症状関連する細胞に運ぶことによって、細胞と間接的に組み合わされてもよい。更に、試料は、対象から除去され得、試料の少なくとも一部分を対象に戻す前に、miR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pの発現若しくは活性を刺激若しくは亢進することが可能な分子とインビトロで組み合わされ得る。例えば、試料は、血液、血清、血漿、又は脳脊髄液試料であることができ、血液、血清、血漿、又は脳脊髄液試料は、対象から除去され得、血液、血清、血漿、又は脳脊髄液の少なくとも一部分を対象に注射し戻す前に、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pと組み合わされ得る。
【0145】
本明細書に記載される組成物は、治療有効量の、本明細書に記載される、miR-195、その断片又はバリアント、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアント、あるいはmiR-195-3p、その断片又はバリアントを含むように製剤化され得る。治療的投与は、予防的適用を包含する。遺伝子試験及び他の予後方法に基づいて、患者を診察する医師は、患者が、あるタイプの認知機能障害への臨床的に判定された素因又は増加した易罹患性(いくつかの場合、大きく増加した易罹患性)を有する場合、予防的投与を選択することができる。
【0146】
本明細書に記載される組成物は、多様な組み合わせで製剤化され得る。miR-195、その断片又はバリアント、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアント、あるいはmiR-195-3p、その断片又はバリアントと、表1及び表2の化合物のうちのいずれかとの特定の組み合わせは、多くの因子、例えば、特定のタイプ及び重症度の認知機能障害に従って変動し得る。
【0147】
本明細書に記載される組成物は、対象(例えば、ヒト患者)に、臨床疾患の発病を遅延させる、低減する、又は好ましくは、防止するのに十分な量で投与され得る。したがって、いくつかの態様では、患者は、ヒト患者であることができる。いくつかの態様では、ヒト対象又は患者は、小児又は成人であることができる。治療的適用において、組成物は、認知機能障害を既に有する又は認知機能障害と既に診断された対象(例えば、ヒト患者)に、徴候若しくは症状を少なくとも部分的に改善するのに、又は状態の症状、その合併症、及び結果の進行を阻害する(好ましくは、抑止する)のに十分な量で投与される。これを達成するのに適切な量は、「治療有効量」として定義される。組成物(例えば、薬学的組成物)の治療有効量は、治癒を達成する量であって、転帰が、達成され得るいくつかのもののうち、1つのみである、量であることができる。上記のように、治療有効量は、治療を提供する量であって、治療において、認知機能障害の発病又は進行が、遅延する、妨げられる、若しくは防止されるか、又は認知機能障害若しくは認知機能障害の症状が寛解する、量を含む。症状のうちの1つ以上は、より少ない重度であり得る。回復は、治療された個体において加速され得る。
【0148】
本明細書に記載される組成物は、治療有効量のmiR-195、その断片又はバリアント、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアント、あるいはmiR-195-3p、その断片又はバリアントを、単独で又は表1及び表2に開示される化合物のうちの1つ以上と組み合わせて含むように製剤化され得る。いくつかの態様では、miR-195、その断片又はバリアント、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアント、あるいはmiR-195-3p、その断片又はバリアントは、薬学的製剤内に含有され得る。いくつかの態様では、薬学的製剤は、単位投与量製剤であることができる。
【0149】
哺乳類(例えば、ヒト)に適用される、本明細書に開示される方法において使用される、miR-195、その断片又はバリアント、miR-195-5p又はその断片若しくはバリアント、あるいはmiR-195-3p、その断片又はバリアント、並びに表1及び表2に記載される化合物のうちのいずれかの治療有効量又は投与量は、年齢、体重、性別の個体差、投与される他の薬物、及び担当臨床医の判断を考慮して、当業者によって判定され得る。必要とされる投与量の変動が予想され得る。投与量レベルの変動は、最適化のための標準の経験的経路を使用して調整され得る。患者に投与される薬学的組成物の特定の投与量は、多様な考慮事項(例えば、認知機能障害症状の重症度)、対象の年齢及び身体的特徴、並びに当業者に既知の他の考慮事項に依存する。投与量は、当業者に既知の臨床的手法を使用して確立され得る。
【0150】
本明細書で提供されるいずれかの組成物での治療の期間は、例えば、短くても1日から、長くても宿主の寿命(例えば、多年)までのいずれかの時間の長さであることができる。例えば、組成物は、(例えば、4週間~多くの月又は多年間)週1回、(例えば、3~12か月間又は多年間)月1回、又は5年、10年以上の期間、年1回投与され得る。また、治療の頻度は可変であり得ることに留意されたい。例えば、本組成物は、1日、1週、1か月、又は1年に1回(又は2回、3回など)投与され得る。
【0151】
miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3p(それらの断片及びバリアントを含む)を含む組成物は、対象に、約又は少なくとも約0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1500、2000、2500、3000μg若しくはmg、又は0.5μg若しくはmg~3000μg若しくはmgのいずれかの範囲の1つ以上の用量で投与され得る。指定される量は、平均1日、平均1週、若しくは平均1か月用量として投与される量であってもよく、又は指定される量は、mg/kgで表されてもよく、kgは、患者の体重を指し、mgは、上記で指定される。他の実施形態では、指定される量は、上記のいずれかの数であるが、(腫瘍サイズ又は患者表面積に対して)mg/m2として表される。臨床医は、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの有効量、すなわち、対象の又は細胞内の、内因性miR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3p発現レベルを増加させる、シナプトジャニン1活性若しくは発現を減少させる、アミロイドβタンパク質クリアランスを増加させる、アミロイドプラーク負荷を減少させる若しくは低減する、タウ過剰リン酸化を減少させる若しくは低減する、又はアルツハイマー病関連リソソーム異常をレスキューするために必要とされる、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアントの量を、対象のサイズ及び体重、疾患浸透の程度、対象の年齢、健康、及び性別、投与経路、並びに投与が局所又は全身投与であるかなどの因子を考慮して、容易に判定することができる。
【0152】
いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p(それらの断片及びバリアントを含む)の投与量は、表1及び表2に開示される化合物のうちの1つ以上と組み合わされたときに、より少なくてもよい。
【0153】
本明細書に開示される組成物の総有効量は、対象に、単一用量として、ボーラスとして若しくは比較的短い期間にわたる注入によってのいずれかで投与されてもよく、又は分割治療プロトコルを使用して投与されてもよく、分割治療プロトコルにおいて、複数の用量が、より長い期間にわたって投与される。代替として、血液中の治療有効濃度を維持するのに十分な連続静脈内注入もまた、本開示の範囲内である。
【0154】
本明細書に記載される組成物は、療法を必要としている対象に、他の治療様式とともに投与され得る。例えば、本明細書に開示する方法において、本明細書に記載される組成物は、療法を必要としている対象に、他の治療様式とともに投与され得る。miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアントは、他の薬剤又はレジメンでの治療より前に、それでの治療と同時に、又はそれでの治療後に与えられ得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアントは、表1及び表2に記載される化合物のうちの1つ以上、若しくはmiR-195発現レベルを増加させる1つ以上の薬物、又は両方の組み合わせの投与より前に、その投与と同時に若しくはその投与中に、又はその投与後に与えられ得る。例えば、miR-195若しくはそのバリアント単独、又は表1及び表2に開示される化合物のうちのいずれかと一緒のmiR-195若しくはそのバリアントは、認知機能障害を治療するために使用される標準療法とともに投与され得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアントは、表1及び表2に記載される化合物のうちの1つ以上又はそれらの組み合わせと一緒に投与又は使用され得る。
【0155】
いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアント、並びに表1及び表2に開示される化合物のうちの1つ以上は、共製剤化され得る。本明細書に記載される組成物は、治療有効量のmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを、表1及び表2に開示される化合物のうちの1つ以上と組み合わせて含むように製剤化され得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアント、並びに表1及び表2に開示される1つ以上の化合物を、ナノ粒子内で共製剤化され得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアントは、薬学的製剤内に含有され得る。いくつかの態様では、薬学的製剤は、単位投与量製剤であることができる。
【0156】
いくつかの態様では、本明細書に開示される治療方法はまた、治療有効量の免疫療法、幹細胞移植、又はそれらの組み合わせの施しを含むことができる。開示される併用療法は、1つ以上の薬学的組成物として施され得、別個の場合、任意の順序で同時に又は順次施され得る。
【0157】
いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物のうちのいずれかは、1つ以上の免疫療法剤又は免疫調節剤と一緒に投与され得る。本明細書で使用される場合、「免疫調節」及び「免疫調節剤」という用語は、免疫系応答を所望の免疫系応答へ改変する(例えば、強化する)構成要素(例えば、タンパク質、ペプチド、薬理学的及び/又は免疫学的薬剤)を指す。免疫調節物質はまた、アジュバントであることができる。免疫調節物質は、免疫系応答を特異的に又は非特異的に増強する治療剤であり得る。免疫調節物質又は免疫調節剤の例として、サイトカイン、インターロイキン、ケモカイン、又は免疫系応答の増加を提供するいずれかのタンパク質、ペプチド、薬理学的若しくは免疫学的薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。免疫療法剤の例としては、抗体療法、サイトカイン療法、及び併用免疫療法が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、免疫調節剤は、抗アミロイド抗体又は抗タウ抗体であることができる。本明細書に記載される組成物は、疾患のための併用療法であることができる。
【0158】
miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアントは、「併用」療法として投与され得る。例えば、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はそれらの断片若しくはバリアントは、必要としている対象に、表1及び表2に開示される化合物のうちのいずれか若しくはそれらのいずれかの組み合わせの投与より前に、表1及び表2に開示される化合物のうちの当該いずれか若しくはそれらのいずれかの組み合わせの投与と同時に(同時投与)、又はすぐにその後に提供され得ることを理解されたい。
【0159】
薬学的組成物
本明細書に開示されるように、本明細書に記載される、miR-195と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物がある。いくつかの態様では、miR-195は、経口又は親投与のために製剤化され得る。本明細書に開示されるように、本明細書に記載される、miR-195-5pと、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物がある。いくつかの態様では、miR-195-3pは、経口又は親投与のために製剤化され得る。いくつかの態様では、親投与は、静脈内、皮下、鼻腔内、筋肉内、又は直接注射である。組成物は、様々な投与経路のいずれかによる投与のために製剤化することができ、1つ以上の生理学的に許容される賦形剤を含んでいてもよく、これは投与経路に応じて様々であってもよい。本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、「担体」又は「希釈剤」とも称され得るものを含む、任意の化合物又は物質を意味する。薬理学的及び生理学的に許容される組成物を調製することは、当該技術分野では日常的であると考えられ、したがって、当業者は、必要に応じて、多数の当局に指導を求めることができる。
【0160】
組成物は、対象に直接投与され得る。概して、組成物は、組成物の送達を容易にするために、薬学的に許容される担体(例えば、生理食塩水又は緩衝生理食塩水溶液)中に懸濁させることができる。好適な送達ビヒクル(例えば、ポリマー微粒子又は植込み型デバイス)内への組成物のカプセル封入は、送達の効率を増加させ得る。
【0161】
組成物は、非経口又は非非経口投与のために、様々な様式で製剤化され得る。好適な場合、経口製剤は、錠剤、丸薬、カプセル、又は粉末の形態をとることができ、これらは、腸溶コーティングされてもよく、又は別法で保護されてもよい。また、持続放出製剤、懸濁液、エリキシル剤、及びエアロゾルなどが使用され得る。
【0162】
薬学的に許容される担体及び賦形剤(例えば、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、及びグリコール、(石油、動物、植物、又は合成起源のものを含む)油、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステレート、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、及びエタノールなど)が組み込まれ得る。組成物は、滅菌などの従来の薬学的便法に供され得、従来の薬学的添加剤、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤又は乳化剤、浸透圧を調整するための塩、及び緩衝液などを含有し得る。好適な薬学的担体及びそれらの製剤は、参照により本明細書に組み込まれる、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は、いずれの事象でも、患者への適切な投与のための適切な剤形を調製するように、有効量の組成物を、好適な量の担体と一緒に含有する。
【0163】
本明細書に開示される薬学的組成物は、経口投与又は非経口投与のために調製され得る。非経口投与のために調製される薬学的組成物は、静脈内(又は動脈内)、筋肉内、皮下、腹腔内、経粘膜(例えば、鼻腔内、膣内、又は直腸)、又は経皮(例えば、局所)投与のために調製されるものを含む。また、エアロゾル吸入が使用され得る。したがって、組成物は、非経口投与のために調製され得、これは、許容される担体中に溶解又は懸濁したmiR-195を含み、許容される担体は、水性担体、例えば、水、緩衝水、生理食塩水、及び緩衝生理食塩水(例えば、PBS)などを含むが、これらに限定されない。含まれる賦形剤のうちの1つ以上は、pH調節剤及び緩衝剤、張力調整剤、湿潤剤、洗剤などの生理学的状態に近似させるのを助けることができる。組成物が、固体成分(経口投与のためのものであり得る)を含む場合、賦形剤のうちの1つ以上は、結合剤又は充填剤として機能することができる(例えば、錠剤、カプセルなどの製剤化のために)。
【0164】
薬学的組成物は、滅菌されてもよく、従来の滅菌技術によって滅菌されてもよく、又は滅菌濾過されてもよい。水溶液は、そのまま使用するために包装されてもよく、又は本開示によって包含される凍結乾燥された凍結乾燥調製剤を、投与前に滅菌水性担体と合わせてもよい。薬学的組成物のpHは、典型的には、3~11(例えば、約5~9)、又は6~8(例えば、約7~8)であろう。固体形態で得られた組成物は、複数の単回投与単位で包装されてもよく、各々が所定量の上述の1つ以上の薬剤を含む(例えば、錠剤又はカプセルの密封された包装)。
【0165】
いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、全身投与され得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、静脈内投与され得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、髄腔内投与され得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、鼻腔内投与され得る。いくつかの態様では、薬学的組成物は、全身投与、静脈内投与、鼻腔内投与、又は髄腔内投与のために製剤化され得る。いくつかの態様では、組成物は、脂質エマルション内で製剤化され得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、脂質エマルション、リポソーム、ナノ粒子、エクソソーム内での、又はウイルスベクター内での送達のために製剤化され得る。リポソームは、単層膜、多重膜、又は多胞性リポソームであることができる。多種多様なリポソーム及びエクソソームが使用され得る。例えば、いくつかの態様では、シリコーンナノ粒子が、miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pを細胞に送達するために使用され得る。いくつかの態様では、ナノベクターが、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを対象に送達するために使用され得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを含む組成物は、血液脳関門をバイパスするための脊髄のくも膜下腔中への注射によって、脳脊髄液中に投与され得る。
【0166】
いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、核酸によってコードされ得る。核酸は、1つ以上の細胞内にトランスフェクトされ得る。トランスフェクションは、エレクトロポレーション又はウイルスベクターとのインキュベーションを含むことができる。いくつかの態様では、核酸は、ベクター内に位置し得る。いくつかの態様では、ベクターは、プラスミド、コスミド、ファージミド、又はウイルスベクターであることができる。いくつかの態様では、ベクターは、脂質、脂質エマルション、リポソーム、ナノ粒子、又はエクソソームを含むことができる。いくつかの態様では、核酸は、脂質、脂質エマルション、リポソーム、ナノ粒子、又はエクソソーム内に含まれ得る。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、又は単純ヘルペスウイルスであることができる。いくつかの態様では、ベクターは、脂質、脂質エマルション、リポソーム、ナノ粒子、又はエクソソームを含みことができる。
【0167】
ナノ粒子。本明細書に記載される組成物は、1つ以上のナノ粒子を含むことができる。本明細書に開示されるナノ粒子組成物は、コンジュゲートした又は封入された、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも90%の配列同一性を含むポリヌクレオチドの、血液脳関門をわたる送達を亢進するために使用され得る。(「ナノ担体」という用語と互換的に使用される)ナノ粒子の例は、例えば、米国特許公開第2010/0233251号に見出され得る。ナノ担体の例としては、1つ以上のポリマーを含むナノ担体が挙げられるが、これに限定されない。いくつかの態様では、1つ以上のポリマーは、水溶性非接着性ポリマーであることができる。いくつかの態様では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリエチレンオキシド(PEO)であることができる。いくつかの態様では、ポリマーは、ポリアルキレングリコール又はポリアルキレンオキシドであることができる。いくつかの態様では、1つ以上のポリマーは、生分解性ポリマーであることができる。いくつかの態様では、1つ以上のポリマーは、生体適合性ポリマーであることができ、生体適合性ポリマーは、水溶性非接着性ポリマー及び生分解性ポリマーのコンジュゲートであることができる。いくつかの態様では、生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、又はポリ(乳酸/グリコール酸)(PLGA)であることができる。いくつかの態様では、ナノ担体は、PEG-PLGAポリマーから構成され得る。
【0168】
いくつかの態様では、ナノ担体は、自己組織化によって形成され得る。自己組織化とは、構成要素を使用する、ナノ担体の形成のプロセスであって、構成要素が、自己を予測可能な様式で配向して、ナノ担体を予測可能かつ再現可能に形成する、プロセスを指す。いくつかの態様では、ナノ担体は、両親媒性生体材料を使用して形成され得、両親媒性生体材料は、自己を互いに対して配向して、予測可能な寸法、構成物、及び構成物の配置のナノ担体を形成する。いくつかの態様では、ナノ担体は、微粒子、ナノ粒子、又はピコ粒子であることができる。いくつかの態様では、微粒子、ナノ粒子、又はピコ粒子は、自己組織化のものであることができる。
【0169】
いくつかの態様では、ナノ担体は、正ゼータ電位を有することができる。いくつかの態様では、ナノ担体は、正味正電荷を中性pHで有することができる。いくつかの態様では、ナノ担体は、1つ以上のアミン部分を、ナノ担体の表面において含むことができる。いくつかの態様では、アミン部分は、一級、二級、三級、又は四級アミンであることができる。いくつかの態様では、アミン部分は、脂肪族アミンであることができる。いくつかの態様では、ナノ担体は、アミン含有ポリマーを含むことができる。いくつかの態様では、ナノ担体は、アミン含有脂質を含むことができる。いくつかの態様では、ナノ担体は、正電荷を中性pHで有することができるタンパク質又はペプチドを含むことができる。いくつかの態様では、ナノ担体は、ラテックス粒子であることができる。いくつかの態様では、1つ以上のアミン部分をナノ担体の表面上に有するナノ担体は、正味正電荷を中性pHで有することができる。
【0170】
ナノ粒子は、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドの送達を援助することができる。送達は、特定の目的部位、例えば、脳細胞、前頭側頭皮質細胞への送達であることができる。いくつかの態様では、ナノ粒子は、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドの徐放をもたらして、治療応答を亢進及び/又は延長することができる。いくつかの態様では、ナノ粒子は、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドと会合することができる。会合は、例えば、ナノ粒子が、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドと結合又はコンジュゲートすることができる、会合であることができる。「結合した」及び「コンジュゲートした」という用語は、ナノ粒子と、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドとの間の化学結合があることを意味する。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、ナノ粒子内に封入又はカプセル封入され得る。いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、水/油/水エマルション方法によって、ナノ粒子内に封入され得る。いくつかの態様では、ナノ粒子は、ポリ(ラクチドコグリコリド)(PLGA)であることができる。重合のために使用されるラクチド対グリコリドの比に依存して、異なる形態のPLGAが、得られ得、使用され得る。これらの形態は、典型的には、使用されるモノマー比に関して特定される(例えば、PLGA 75:25は、組成が75%の乳酸及び25%のグリコール酸であることができるコポリマーを特定する)。異なる比、例えば、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80、10:90、並びにこれらの比を超える数字及びこれらの比間の数字が、本発明で使用され得る。好適なナノ粒子の追加の例としては、キトシン、リン酸カルシウム、E.Coliなどの様々な細菌の脂質、マイコバクテリア、レプトスピラ、及びそれらの混合物が挙げられる。一例では、組成物は、約180mgのPLGAを、約5mgのmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pに(又は約36mgのPLGAを、それぞれ1mgのmiR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pに)混合して導出され得る。miR-195、miR-195-5p、又はmiR-195-3pの封入(カプセル封入)効率は、変動し得る。いくつかの態様では、ナノ粒子は、封入において使用されるmiR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも90%の配列同一性を含むポリヌクレオチドの合計量に基づいて計算して、50~55%封入/カプセル封入され得る。封入された、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも90%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、封入/カプセル封入された、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドと、未封入/未カプセル封入の、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドとの混合物として投与されてもよく、あるいは封入/カプセル封入された、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、更に精製されてもよい。
【0171】
いくつかの態様では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、コポリマーにコンジュゲートすることができる。従来のコポリマーは、世界中の多数の研究所において使用されており、いくつかの臨床治験においても使用されている。(全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,037,883号を参照されたい)。例えば、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(HPMA)コポリマーは、(1)生体適合性であり、十分に確立された安全性プロファイルを有し、(2)水溶性であり、低分子量(遊離非結合)薬物と比較して好ましい薬物動態を有し、(3)優れた化学柔軟性を有する(すなわち、異なる側鎖を含有するモノマーは、容易に合成され得、それらの構造内に組み込まれ得る)。しかしながら、HPMAポリマーは、分解性でなく、HPMAポリマーの分子量は、生体適合性を持続させるために、腎閾値未満に保たれるべきである。これは、EPR(血管透過性及び滞留性亢進)効果を介する、固形腫瘍内のHPMAポリマーの血管内半減期及び蓄積を制限する。
【0172】
骨格分解性HPMAコポリマー担体は、HPMAに関連する制限を克服するために使用され得る。コポリマー担体は、酵素的に分解可能な配列(すなわち、カテプシンB、マトリックスマタロプロテイナーゼなどによる酵素的に分解可能な配列)を、主鎖(すなわち、ポリマー骨格)及び酵素的に分解可能な側鎖(すなわち、薬物放出のための側鎖)内に含有することができる。(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第13/583,270号を参照されたい)。細胞のリソソーム区画に到達すると、薬物は放出され得、同時に、ポリマー担体は、腎閾値未満である分子に分解され得、対象から排除され得る。したがって、増加した分子量を有するジブロック又はマルチブロック生分解性コポリマーが生成され得る。これは、本明細書に開示されるコポリマー-miR-195、-miR-195-5p、又は-miR-195-3p治療コンジュゲートの血液循環時間を更に亢進することができる。更に、米国特許第4,062,831号は、一連の水溶性ポリマーを記載しており、米国特許第5,037,883号は、多様なペプチド配列を記載しており、それらの両方は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0173】
いくつかの事例では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも90%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、開示される方法において投与されたHPMAコポリマーにコンジュゲートすることができ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10個のHPMAコポリマーを含むことができる。いくつかの事例では、各HPMAコポリマーは、酵素的に分解可能なペプチドを介して接続され得る。
【0174】
いくつかの事例では、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドは、開示される方法において投与されたHPMAコポリマーにコンジュゲートすることができ、リンカーも含むことができる。いくつかの態様では、リンカーは、ペプチドリンカーであることができる。
【0175】
ベクターは、プラスミド、コスミド、及びウイルス(例えば、バクテリオファージ、動物ウイルス、及び植物ウイルス)、並びに人工染色体(例えば、YAC)を含むことができる。ベクターは、標的分子を含むことができる。標的分子は、所望の核酸を、対象の体内の特定の臓器、組織、細胞、又は他の場所に向けるものである。概して、ベクターは、適切な調節エレメント(例えば、プロモーター、終止コドン、及びポリアデニル化シグナル)と会合したときに、複製をもたらす。当該技術分野で通例使用されるベクターの例として、プラスミド及びウイルスが挙げられる。「ベクター」という用語は、発現ベクターを含み、転写されることが可能な遺伝子産物の少なくとも一部分をコードする核酸配列を含有するベクターを指す。多様な様式が、発現ベクターを細胞内に導入するために使用され得る。いくつかの態様では、発現ベクターは、ウイルス、又はウイルスゲノムに由来する操作されたベクターを含む。本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、制御領域を含むベクターである。多様な宿主/発現ベクター組み合わせが、本明細書に開示される核酸配列を発現するために使用され得る。発現ベクターの例として、例えば、バクテリオファージ、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、及び他のウイルス(例えば、アデノウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)に由来するプラスミド及びウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ベクター及び発現系は、市販されており、当業者に既知である。
【0176】
製造物品
本明細書に記載される組成物は、好適な容器内に包装され得、容器は、例えば、認知機能障害を治療するための療法又は本明細書に開示される方法のうちのいずれかとしての使用のためのものと標識される。したがって、少なくとも、本明細書に記載される、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドと、使用説明書と、を含む、包装製品(例えば、貯蔵、出荷、又は販売のために、濃縮されて又は使用準備済みの濃度で包装された、本明細書に記載される組成物を収容する滅菌容器)及びキットはまた、本開示の範囲内である。製品は、本明細書に記載される組成物を収容する容器(例えば、バイアル、ジャー、ボトル、又はバッグなど)を含むことができる。加えて、製造物品は、例えば、包装材料、使用説明書、シリンジ、緩衝液、又は予防若しくは治療が必要とされる状態を治療又はモニタリングするための他の対照試薬を更に含み得る。製品はまた、レジェンド(例えば、製品の使用を説明する、印刷された標識若しくは添付文書、又は他の媒体(例えば、音声又はビデオテープ))を含み得る。レジェンドは、容器に付随する(例えば、容器に添付される)ことができ、容器内の化合物が投与されるべき様式(例えば、投与頻度及び投与経路)、そのための適応症、及び他の使用を説明することができる。化合物は、投与準備済みである(例えば、用量に適切な単位で存在する)ことができ、薬学的に許容されるアジュバント、担体、又は他の希釈剤を含み得る。代替として、化合物は、濃縮形態で、希釈剤及び希釈のための説明書と一緒に提供され得る。
【0177】
いくつかの態様では、キットは、miR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pに由来する分子、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチド;miR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pに由来する1つ以上の分子、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドをコードする核酸配列を含む発現ベクター;試料を脳脊髄液試料から調製するための試薬のうちの1つ以上を含むことができる。キットは、1つ以上の薬学的に許容される担体を含むことができる。加えて、miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドの投与のためのデバイス又は材料(例えば、シリンジ(miR-195、miR-195-5p、miR-195-3p、又はmiR-195、miR-195-5p、若しくはmiR-195-3pとそれぞれ配列少なくとも80%の配列同一性を含むポリヌクレオチドを有するプレフィルドシリンジ)、針、リポソームなど)もまた含まれ得る。
【実施例
【0178】
実施例1:マイクロRNA-195-5pは、アルツハイマー病の病因におけるApoE4誘導性認知欠損及びリソソーム異常をレスキューする。
要約。脳ホスホイノシトールビホスフェート(PIP2)ホメオスタシスにおけるアポリポタンパク質E4(ApoE4)特異的変化と、アルツハイマー病(AD)を発症する易罹患性との間の関連を、本明細書に記載する。miR-195-5pを、ApoE/PIP2経路に関与する最上位マイクロRNA候補として、ヒトROSMAPデータセット及びマウスマイクロアレイ研究におけるmiRNAプロファイルを使用して特定した。更なる検証研究は、miR-195-5pのレベルが、軽度認知機能障害(MCI)又は早期ADの臨床診断を有するApoE4+/-患者のヒト脳組織内で、ApoE4-/-対象と比較して有意により低いことを実証している。加えて、脳miR-195-5pレベルは、正常老化から早期ADへの疾患進行に伴って低減され、MCI対象の脳脊髄液(CSF)miR-195-5pレベルは、精神状態短時間検査(MMSE)によって測定された場合、認知パフォーマンスと正相関し、CSFタウレベルと負相関し、これは、認知への潜在的な影響を有するADの早期発症へのmiR-195-5pの関与を示唆する。miR-195-5pレベルの類似の差が、ApoE4+/+マウス海馬脳組織及び培養ニューロン内で、ApoE3+/+対応物と比較して見られる。過剰発現miR-195-5pは、脳PIP2分解酵素である、その最上位予測標的シナプトジャニン1(synj1)の発現レベルを低減する。更に、上昇したmiR-195-5pは、ApoE4+/+マウスの認知欠損、アミロイドプラーク負荷、及びタウ過剰リン酸化を寛解させる。加えて、上昇したmiR-195-5pは、ApoE4+/+ AD対象の誘導性多能性幹細胞(iPSC)由来脳細胞内のAD関連リソソーム異常をレスキューし、miR-195-5pを阻害することは、これらの表現型を悪化させる。まとめると、本明細書に記載されるデータは、ApoE4関連脳PIP2ホメオスタシス不全、認知欠損、及びAD病的状態において標的とされるmiR-195-5pの制御機構を提供する。
【0179】
序文。アポリポタンパク質E4(ApoE4)アレルは、アルツハイマー病(AD)についての主要なリスク因子として特定されている(Mayeux R.,Annu Rev Neurosci 2003)。多数の研究は、ApoE4が、Aβクリアランス(Fagan AM et al.,Neurobiology of disease 2002、Jiang Y et al.,Acta Neurochir Suppl 2008、Jordan Jet al.The Journal of neuroscience 1998、Ma J et al.,Nature 1994、Sharman MJ et al.,Journal of Alzheimer’s disease 2010、Yang DS et al.,Journal of neurochemistry 1997、及びFagan AM et al.,Neurobiology of disease 2002)、神経原線維濃縮体負荷(Oyama F et al.,Brain research Molecular brain research 1995、Shi Y et al.,Nature 2017、Tiraboschi P et al.,Neurology 2004、及びWang Yet al.,Nat Rev Neurosci 2016)、シナプス形成及びシナプス可塑性(Love S et al.,Neurobiology of aging 2006、Nathan BP et al.,Science 1994、Teter B et al.,Journal of neurochemistry 1999、及びTrommer BL et al.,Neuroreport 2004)、グリア活性化及び神経炎症(Keren-Shaul H et al.,Cell 2017、Yeh FLet al.,Neuron 2016、及びZhu Yet al.,Glia 2012)をもたらすことを示唆している。また、ApoEタンパク質は、脂質代謝及びニューロンホメオスタシスにおいて重要な役割を果たす(Huang Y et al.,Neurobiology of disease 2014)。先行研究は、死後AD脳内の脳膜リン脂質組成、代謝、及び選択された酵素活性の明確な変更を明らかにしており(Pettegrew JW et al.,Neurochemical research 2001、Mandal PKet al.,Neurochemical research 2004、Kanfer JN et al.,Neurochemical research 1993、Kanfer JN et al.,J Lipid Mediat Cell Signal 1996、及びChan RB et al.,J Biol Chem 2012)、これは、ApoE4によって悪化し得る(Klunk WE et al.,Neurobiology of aging 1998)。ApoEタンパク質は、脳ホスホイノシトールビホスフェート(PIP2)ホメオスタシスの重要な決定因子であり、ApoE4アイソフォームは、このプロセスにおいて機能不全であり、これは、ADにおける認知低下の増加した易罹患性に寄与することが報告されている(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015)。また、脳PIP2レベルは、PIP2分解酵素であるシナプトジャニン1(synj1)の増加した発現に起因して、ApoE4脳及びニューロン内でより低いことが示されている(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015)。
【0180】
PIP2及びsynj1の機能的役割は、AD病因において示されている(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015、Berman DE et al.,Nat Neurosci 2008、Voronov SV et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2008、McIntire LB et al.,The Journal of neuroscience 2012、Zhu L et al.,The Journal of biological chemistry 2013、Cao J et al.,Sci Rep 2017、及びMiranda AM et al.,Cell Rep 2018)。例えば、synj1の増加した発現は、初期エンドソーム拡大(Cossec JC et al.,Human molecular genetics 2012)、及びADにおけるApoE4関連認知欠損(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015)に関連する。synj1の低減は、ADにおけるいくつかの有益な効果、例えば、リソソーム分解経路を介するAβクリアランスの加速(Zhu L et al.,The Journal of biological chemistry 2013)、タウ過剰リン酸化の軽度外傷性脳損傷(TBI)誘導性上昇の寛解(Cao J et al.,Sci Rep 2017)、及びApoE4関連認知機能障害のレスキュー(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015)を提供する。しかしながら、ApoE4を脳PIP2/synj1経路に関連付け、認知機能に影響する分子シグナル伝達機構は、依然として理解されていない。ApoE4脳内の増加したsynj1レベルは、部分的に、効率的なsynj1 mRNA分解の不全に起因する(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015)。mRNA安定性は、しばしば、mRNAの3’-UTR領域に結合するマイクロRNA(miRNA)によって制御される(Fabian MR et al.,Annu Rev Biochem 2010)。脳synj1発現が、ApoEアイソフォームによって、miRNA調節を介して差次的に制御され得るかを評価した。
【0181】
いくつかのmiRNAは、様々なADプロセスにおいて以前に示されている(Wang M et al.,Frontiers in genetics 2019)。また、AD対象と正常老化対照との間の様々な脳miRNAレベルの変化が報告されている(Goodall EF et al.,Frontiers in cellular neuroscience 2013、及びLukiw WJet al.,Neuroreport 2007)。Religious Orders Study and Rush Memory and Aging Project(ROSMAP)からの既存のmiRNAデータセット(Bennett DA et al.,Neuroepidemiology 2005、及びA Bennett D et al.,Current Alzheimer Research 2012)を、ApoE4+及びApoE4-皮質ニューロンにおいて実行されたmiRNAアレイ研究と組み合わせて使用した。mirDBを含む複数のバイオインフォマティクスデータベースによって予測された場合、miRNA、miR-195は、ApoE4+キャリアとApoE4-キャリアとの間で差次的に発現され、synj1 mRNAを標的とすると特定された(Wong N et al.,Nucleic acids research 2015、及びWang X,Bioinformatics 2016)。miR-195レベルの変化を、死後ヒト及びマウス脳組織、並びに培養ニューロンを使用して更に検証する。更に、miR-195の制御役割を、ApoE4関連脳PIP2ホメオスタシス不全、認知欠損、及びAD病的状態において特徴付けた。
【0182】
材料及び方法。ヒトmiRNA発現プロファイル及びデータ前処理。miRNA発現プロファイルを、ROSMAP研究からダウンロードした(Synapse doi:10.7303/syn3388564)。50%未満の試料内の、95%未満のコールレート及び15未満の絶対値を有するmiRNAを除去した。miRNA発現値を、分散安定化正規化法を使用して正規化した。カートリッジを、バッチとして指定し、Rパッケージsva(V3.20.0)におけるCombat機能で補正した。データ前処理により、511個の試料内の309個のmiRNAを得た。また、前処理されたRNA-seq FPKM遺伝子発現存在量データを、ROSMAP研究からダウンロードした(Synapse doi:10.7303/syn3388564)。少なくとも10%の試料内の、少なくとも1つのFPKMを有する遺伝子を選択し、次いで、データを、バッチ、PMI、及びRINスコアを含む交絡因子について補正した。前処理された遺伝子発現プロファイルは、16,235個の遺伝子及び619個の試料を含有する。
【0183】
差次的発現及びmiRNA-遺伝子相関解析。差次的発現解析を、111個のAPOE4-/-(ε3/3)キャリアと24個のAPOE4+/-(ε3/4)キャリアとの間のmiRNAにおいて、Rパッケージlimma(V3.34.0)を使用して実行した(Smyth GK,Stat Appl Genet Mol Biol 2004)。複数の試験を、ベンジャミニ-ホッホベルグ(BH)FDR法を使用して調整した。相関解析を、miRNAと遺伝子との間で、スピアマン相関検定を使用して実行した。また、miRNA-遺伝子相関を、AD診断、性別、及びAPOE遺伝子型のサブ群のそれぞれにおいて検査した。
【0184】
マウス一次ニューロン試料のmiRNAアレイ研究。胚性17日齢のApoE-/-皮質ニューロンを、7日間、インビトロで、ApoE3及びApoE4一次アストロサイト培養物に由来する条件培地の存在下で培養した(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015、及びZhu L et al.,J Biol Chem 2013)(N=3/群)。miRNAを、miRCURY抽出キット(Exiqon Inc.)を使用して抽出し、次いで、miRCURY LNA microRNA Hi-Power Labeling kit,Hy3/Hy5を使用して標識し、miRCURY LNA microRNA Arrayにおいてハイブリダイゼーションした。対照スパイクインオリゴヌクレオチドを使用する品質評価は、予想される範囲のシグナルを生成した 標識に成功したことを示した。グローバルLowess回帰アルゴリズムを使用するバックグラウンド補正後の定量化シグナルの正規化に続いて、教師なし及び教師ありデータ解析を実行した。マイクロRNAプロファイリングは、ApoE3処置ニューロン対ApoE4処置ニューロン内で差次的に発現されるマイクロRNAのサブセットを特定した。
【0185】
miRNA標的予測。miRNAの標的を、14個の異なるデータベースからの約5000万個のヒト及びマウスデータ従うmiRNA-標的相互作用データベースであるRパッケージmultiMiR(V2.2.0)で予測した(Ru Yet al.,Nucleic acids research 2014)。
【0186】
ヒト脳及びCSF試料調製。等量の、NIH脳及び組織リポジトリ(NBTR)からの死後ヒト頭頂皮質脳組織(正味重量で50μg)、並びにJames J Peters VAMC研究(「Markers of Transition to AD in the Veterans with MCI」)に登録された軽度認知機能障害(MCI)対象及びIcahn School of Medicine at Mount Sinai(ISMMS)AD Research Centerの参加者からの脳脊髄液(正味重量で1ml)を、研究のために使用した。
【0187】
動物モデル。5xFADバックグラウンドを有しないヒトApoE4+/+若しくはApoE3+/+ノックイン(KI)マウスモデル(Grootendorst J et al.,Behavioural brain research 2005、Rodriguez GA et al.,Learn Mem 2013、及びWang C et al.,Neurobiology of disease 2005)、又は5xFADバックグラウンドを有するヒトApoE4+/+若しくはApoE3+/+ KIマウスモデル(Balu D et al.,Neurosci Lett 2019、及びTai LM et al.,J Lipid Res 2017)の遺伝子型を同定した(Zhong L et al.,Mol Neurodegener 2016)。生物学的変数としての性別を考慮して、雄性マウス及び雌性マウスの両方を、実験において含めた。
【0188】
リン脂質解析。試料を、脂質抽出に供し、続いて、アニオン交換HPLCによる定量化を行った(Zhu L et al.,The Journal of biological chemistry 2013、及びNasuhoglu C et al.,Anal Biochem 2002)。
【0189】
マウスニューロン及びヒトiPSC培養物。一次皮質ニューロンを培養し(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015、及びZhu L et al.,J Biol Chem 2013)、その後、共焦点顕微鏡法解析(Zeiss LSM)のために固定及び染色した(Berg I et al.,Nat Protoc 2010)。いくつかの条件において、ウシ血清アルブミン(BSA)又は受容体関連タンパク質(RAP)を、培養培地中に含めた(N=3/群)。代替として、培養ニューロンを、アデノ随伴ウイルス2(AAV2)含有miR-195-5p若しくはmiR-374、又はスクランブル対照で、5日間トランスフェクトし、その後、解析に供した。ApoE4+/+及びApoE3+/+ iPSCを、二重SMAD阻害、続いて、神経ロゼット選択、及び20ng/mlのFGF2曝露による前脳特異的パターニングによって、神経前駆細胞(NPC)に分化させた(Bowles KR et al.,PloS one 2019、及びTcw J et al.,Stem cell reports 2017)。これらのNPCを、MACSによって、CD271-/CD133+について精製し(Bowles KR et al.,PloS one 2019)、皮質ニューロン(Bardy C et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015、及びPaquet D et al.,Nature 2016)、及びアストロサイトの均質な集団(Tcw J et al.,Stem cell reports 2017、及びShaltouki A et al.,Stem Cells 2013)に分化させ、その後、ウイルストランスフェクション及び共焦点顕微鏡法解析に供した。代替として、synj1+/+又はsynj1-/-遺伝子型を有するApoE4+/+及びApoE3+/+ KIマウスに由来するマウス皮質ニューロンを、ApoE4+/+及びApoE3+/+ iPSC由来純粋アストロサイトと共培養した。いくつかの実験において、培養ニューロンを、AAV2含有miR-195-5p、スクランブル対照、又はmiR-195-5pの標的mRNAへのその結合を特異的に防止するmiR195阻害剤でトランスフェクトし、その後、iPSC由来アストロサイトと共培養した。次いで、培養iPSC由来ニューロン及びアストロサイトを、lysotracker redと、様々な期間インキュベートし、その後、固定し、共焦点顕微鏡解析(Zeiss)のために、pTau及び核マーカーDAPI(青色)について二重染色した。N=4~5/条件。
【0190】
脳定位注射及び行動研究。5xFADバックグラウンドを有しない(N=19~23/群)又は5xFADバックグラウンドを有する(N=15~17/群)8~9週齢の雄性及び雌性ApoE3+/+及びApoE4+/+ KIマウスを、脳定位固定装置内に配置し、AAV2又はスクランブルウイルスを、両側海馬脳領域の背側CA1領域内に、加圧注射を使用して投与した(Labonte B et al.,Nat Med 2017、及びPassini MA et al.,The Journal of neuroscience 2006)。注射量(0.5~2.0μl)を、組織損傷を回避するために、10分間にわたって送達した。ウイルス送達の6~9か月後に、マウスを、NORタスクで試験した(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015、Elder GA et al.,J Neurotrauma 2012、及びHowlett DR et al.,Brain Res 2004)。マウスを、遺伝子型及び性別についてランダム化し、行動データ収集及び解析、手術操作、並びに試料収集にわたって盲検化した。合計探索時間が、4秒未満であった場合、又は動物が、行動試験を確実に完了することを妨げる疾病を有した場合、動物を行動解析から除外した。
【0191】
脳及びニューロン試料調製及び生化学解析。瞬間凍結マウス半脳又は培養ニューロンを、溶解緩衝液中で回収し(Lane RF et al.,The Journal of neuroscience 2010)、段階的可溶化を介して処理し(Lane RF et al.,The Journal of neuroscience 2010、及びKawarabayashi T et al.The Journal of neuroscience 2001)、続いて、SDS-PAGEを行って、synj1、dyn1、holoAPP、及びCTFのレベルを判定した。Aβ42、Aβ40、pTau、タウ、及びApoEのレベルを、高感度ELISAキットを使用して判定した。いくつかの組織を使用して、miRNA及びRNAを抽出し、続いて、qPCR及びRNA-seq解析を行った。いくつかの動物は、アミロイドプラーク、synj1、及びpTauの免疫組織化学染色のために、灌流、続いて、脳組織切片を受けた。
【0192】
miR-195-5p処置マウスについての差次的遺伝子発現解析。マウス脳から収集されたRNA-seq試料を、Illumina HiSeqプラットフォームにおいてプロファイリングした。生成されたリードの品質管理を、FASTQC(0.11.8)を使用して実行した。生シークエンシングリードを、GRCm38マウスゲノム(リリース95)に、starアライナ(V2.5.0b)を使用してアライメントした。リードアラインメントに続いて、遺伝子発現を、Ensembl遺伝子モデルGRCm38.95に基づいて、FeatureCountsを使用して、遺伝子レベルで定量化した(Liao Y et al.,Bioinformatics 2014)。試料内の100万当たり少なくとも1カウント(CPM)を有する遺伝子を、発現されたと考え、したがって、更なる解析のために保持した。M値正規化法のトリム平均(Robinson MD et al.,Genome Biol 2010)を使用して、シークエンシングライブラリサイズ差について調整した。次いで、差次的発現解析を、品質管理及び正規化された遺伝子発現データにおいて、Rパッケージlimma(V3.34.0)を使用して実行した。比較を、性別及びAPOE遺伝子型によって層別化された、miR195処置試料とスクランブル対照試料との間で実施した。複数の試験を、BH FDR法を使用して調整した。
【0193】
機能エンリッチメント解析。機能エンリッチメント解析を、ヒトROSMAPデータセットにおけるmiRNAと有意に相関する遺伝子、目的の各miRNAの予測標的遺伝子、及びmiR195-5p処置マウスRNA-seqデータセットから特定された差次的発現遺伝子について実施した。これらの遺伝子を、分子シグネチャーデータベース(MSigDB v6.1)に対して、フィッシャー正確検定及び遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を使用してクエリーした(Subramanian A et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2005)。
【0194】
抗体及び試薬。抗synj1(ウサギポリクローナルAb、Novus、RRID:AB_11047653)、抗pTau AT8及びタウ-5(ThermoFisher、RRID:AB_223647及び10980631)、抗Rab5(Santa Cruz Biotechnology、RRID:AB_628191)、抗βアクチン及びチューブリン(Santa Cruz Biotechnology、RRID:AB_476697及び477498)、抗holoAPP MAB348及び6E10(Millipore RRID:AB_94882及び564201)、抗βアミロイド(Cell Signaling Technology、RRID:AB_2056585)、抗MAP2(Abcam、RRID:AB_297885)、のための抗ダイナミンクローン41(BD bioscience、RRID:AB_3976413)、抗マウス及びウサギHRP(ThermoFisher、RRID:AB_2556542及び2540618)、Texas-Red及びAlexa555コンジュゲート抗マウス及びウサギIgG(ThermoFisher、RRID:AB_10374713、10983944、2535987、及び1090271)を購入した。AAV2含有miR-195-5p、miR-374、スクランブル対照、及びmiR-195阻害剤を、産生し入手可能な詳細な配列情報(Am00100、Amm1017200、及びAmm3026700)を、ABM Inc.から得た。特定のmiRNAのためのmiRNA抽出キット及びqPCRプローブを、Exiqon Inc.から購入した。また、アクチン(Hs1060665_g1)、synj1(Hs00953234_m1及びMm01210539_m1)、gapdh(Mm99999915_g1)、RNU6B(NR_002752)、18s及び45s(4331182、Mm03928990_g1)のためのqPCRプローブを、ThermoFisherから購入した。
【0195】
統計解析。各実験の試料サイズを、統計的に有意な結果を達成するために必要とされる群サイズの判定を可能にする以前の類似の研究から導出された冪乗計算に基づいて選択した。対照を含む実験は、ランダムに割り当てられた群において実行した。実験者は、実験を実施する間、動物の実験条件に対して盲検化された。定量化が完了した後に、条件を明らかにした。miR-195-5p及びmiR-374のレベルを、U6及びRNU6B(内部対照)に正規化し、synj1 mRNAを、GAPDH及び18sに正規化し、次いで、対照と比較して、Log2倍率変化として表した。synj1、dyn1、pTau、タウ、及びholoAPPのレベルを、β-アクチンレベルに正規化し、対照の百分率として表した。絶対Aβ42、Aβ40、pTau、タウ、及びApoE濃度を、ELISAによって定量的に判定し、対照の百分率として表した。独立試料t検定を使用して、有意平均差(有意性についての閾値をp<0.05に設定)を判定した。ANOVA及び事後検定を使用して、多重比較のための群差を判定した。ピアソン相関係数を計算して、2つの変数間の線形関係を判定した。等分散性を、統計的比較のために確認した。独立試料t検定を使用し、比較群の等分散性が同じでなかったときに、ウエルチ補正を適用した。統計解析は、Prism 8.0を使用して実行した。
【0196】
結果。miR-195を、APOE制御的synj1発現に関与する最上位候補miRNAとして特定する。最初に、差次的発現解析を、ROSMAPデータセットにおけるヒトmiRNAプロファイル上のApoE4-/-(ε3/ε3;N=111)キャリアとApoE4+/-(ε3/ε4;N=24)キャリアとの間で実行した。16個の有意に差次的に発現されたmiRNA(p<0.05)を特定し、それらのうちの12個は、ApoE4+/-キャリアにおいて、低減された発現を有した(図1A)。並行して、ApoE3又はApoE4条件培地(CM)で処置されたApoE-/-海馬ニューロンのmiRNAアレイ研究を実行した(図1A)。30個の有意に差次的に発現されたmiRNA(p<0.05)を特定し、それらのうちの15個は、ApoE4処置条件下で、低減された発現を有した(図6A)。これらのmiRNAのうち、miR-195は、ApoE4+条件とApoE4-条件との間の差次的発現miRNAであり、これは、ヒトデータセットとマウスデータセットとの間で共通して共有される(hsa-miR-195-5p及びmmu-miR-195a-5p;図1B)。また、別のmiRNAであるmiR-155を、ヒトデータセット及びマウスデータセットの両方において特定する(hsa-miR-155及びmmu-miR-155-5p)が、逆の傾向(ヒトApoE4+/-キャリアにおいてより高く、マウスApoE4処置条件においてより低い)で特定する。
【0197】
次に、synj1 mRNAと推定的に結合するmiRNAの予測を、14個のコンパイルされたmultiMiRデータベースを使用して実行した(Ru Y,et al.Nucleic acids research 2014;42(17):e133-e133)。synj1 mRNAにおいて標的とされる合計392(ヒト)個/194(マウス)個のmiRNA(図1A)から、miR-195-5pを、ヒトmirDBデータベースにおける最上位候補として予測した(Wong N et al.,Nucleic acids research 2015、及びWang X,Bioinformatics 2016)(予測スコア:99.9/100)。また、miR-195を、elmmo(予測スコア:0.80/1)及びdiana_micro(予測スコア:0.79/1)などのいくつかの他のデータベース(図6B)における、synj1において標的とされる最上位候補miRNAとして予測した。
【0198】
更に、ROSMAPデータセットにおけるsynj1 mRNAとmiRNAとの間の相関を、スピアマン相関検定を使用して検査した。miR-195-5pは、ヒト対象のsynj1 mRNAレベルと負相関する(図1C:r=-0.115、p=0.0093)。類似して、miR-195-5pとsynj1 mRNAレベルとの間の負相関が、雌性対象において見られる(r=-0.167、p=0.0026)及びApoE3+/+キャリア(r=-0.127、p=0.027)。負相関傾向が、ApoE4+/-キャリアにおいても見られるが、統計的有意性はなく(r=-0.178、p=0.057)、これは、ApoE4アレルの存在下でのmiR-195とsynj1との間のネットワーク制御の衰弱又は混乱の可能性を示唆する。別個に、miR-374bもまた、synj1 mRNAと負相関を示した(r=-0.09、p=0.04)。加えて、mmu-miR-374b-5pは、ApoE3処置条件とApoE4処置条件との間で差次的に発現されるが、ヒトApoE4+/-キャリアとApoE4-/-キャリアとの間のhsa-miR-374-5pレベルの差は、統計的に有意でない(p=0.188)。
【0199】
分子経路をより良好に理解するために、miR-195-5pが制御する、ROSMAPデータセットにおける、予測miR-195-5p標的遺伝子の機能及びmiR-195-5pと有意に相関するものの機能を調査した。標的遺伝子及びmiR-195-5pと負相関する遺伝子についての最上位のエンリッチされた機能は、ニューロン及びシナプス機能の制御、ニューロン新生、及び分化を含み、miR-195-5pと正相関する遺伝子の機能は、循環系及び脈管構造発達においてエンリッチされる。
【0200】
まとめると、これらの結果は、ApoE-synj1-PIP2経路の制御における最上位候補miRNAとしてのmiR-195-5pの役割を示す。
【0201】
脳miR-195-5pレベルの低減は、ApoE4遺伝子型、疾患進行、及び認知低下に関連する。ApoE4+/-キャリアとApoE4-/-キャリアとの間のmiR-195の差次的発現パターンを検証するために、miR-195-5pレベルを、ヒト脳組織及びCSF試料内で検査した。miR-195-5pレベルは、0.5~1の臨床的認知症尺度(CDR)スコアを有するApoE4+/-軽度認知機能障害(MCI)及び早期AD対象に由来する頭頂皮質組織内で、ApoE4-/-ドナーにおけるレベルと比較して低減されたことが見出された(図2A)。興味深いことに、miR-195-5pレベルの低減のパターンは、正常老化からMCI及び早期ADへの疾患進行と伴って観察され(図2B)、これは、早期AD発症におけるPIP2及びホスホイノシトール(PI)変化で以前に見られたもの(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015)と類似であった。miR-195-5pの有意な低減は、雌性対象において、雄性対象と比較して見出され(図7A)、差が、雄性ApoE4-/-対象対雌性ApoE4+/-対象の間にも認められた。一貫して、synj1 mRNAレベルの相互上昇が、ApoE4+/-対象において、ApoE4-/-対象におけるレベルと比較して観察された(図7B)。正相関が、CDR0.5~1を有するApoE4-/-キャリアの脳miR-195-5pレベルとPIP2レベルとの間で認められ、正相関傾向が、ApoE遺伝子型にかかわらず、CDR0~1の対象において見られた(図7C)。相関関係は、脳miR-195-5pと、他のリン脂質種、例えば、PI及びホスホイノシトールホスフェート(PIP)との間で見られなかった。相関は、脳miR-195-5pと、他の変数、例えば、死後間隔(PMI)及び年齢との間で見られなかった。負相関が、CDR0.5~1のコホートの、脳miR195と、miR-195の別の既知の標的であるベータセクレターゼ1(BACE-1)(Zhu HC et al.,Brain Res Bull 2012)発現との間で観察された(図8D)。しかしながら、miR-195レベルとAβレベルとの間の相関は観察されなかった。
【0202】
ヒトmiR-374レベルの統計的有意差が、ApoE4+/-対象とApoE4-/-対象との間であった(hsa-miR374-5p;図8A)。しかしながら、疾患進行に伴うmiR-374レベルの有意な変化は、MCI期における一過性上昇を除いてなかった(図8A)。ROSMAPデータと一貫して、ApoE4+/-対象のヒトmiR-155レベルの統計的有意差及びより高いレベルが観察された(hsa-miR155-5p;図8B)。有意差は、miR-155レベルにおいて、疾患進行に伴って見られなかった。また、有意差は、miR-195-5p又はmiR-374レベルにおいて、正常老化又は進行したAD(CDR0又は3以上)のいずれかのApoE4+/-対象とApoE4-/-対象との間で見られなかったが、これは、ApoE4遺伝子型による早期疾患発症及び加速へのmiR-195-5pの機能的関与を示唆する。
【0203】
CDR0.5(臨床検査及び神経心理学的評価によって定義されたMCI)を有するMCI対象のコホートからの脳脊髄液(CSF)試料を使用して、CSF miR-195-5pレベルは、精神状態短時間検査によって測定された認知パフォーマンスと正相関し(MMSE、図2C)、総タウレベルと負相関する(図2D)ことが見出された。CSF PIP2レベルは、検出可能な範囲未満であり、正相関が、CSFカルジオリピンとmiR-195-5pとの間に見られた(図8C)が、これは、ミトコンドリア機能へのmiR-195-5pの潜在的な関与を示唆する(Monteiro-Cardoso VF et al.,Journal of Alzheimer’s disease 2015、及びChicco AJ,et al.,American journal of physiology Cell physiology 2007)。
【0204】
まとめると、これらの結果は、脳及びCSF miR-195-5pレベルの低減が、早期AD発症中のApoE4遺伝子型、認知低下、及びタウ病的状態に関連することを示す。
【0205】
miR-195-5p発現は、ApoE4マウス脳及び培養ニューロン内で低減される。次に、miR-195-5pレベルの差が、マウスモデル及び一次ニューロン内で再現され得るかを調査した。miR-195-5pのレベルは、12か月齢のApoE4+/+マウス脳内で、ApoE3+/+マウスと比較してより低いこと(図3A)が見出された。miR-195-5pレベルの名目低減は、ApoE-/-脳内で見られた。類似して、miR-374は、ApoE4+/+マウス脳内で、ApoE3条件及びApoE-/-マウスの名目低減と比較して減少した(図9A)。培養ApoE-/-海馬ニューロン内で、miR-195-5pのレベルは、アストロサイトからのApoE4 CMで、ApoE3 CMを有するものと比較して一貫してより低かった(図3B)。名目差が、ApoE4 CMで処置されたニューロン内のmiR-374レベルにおいて、ApoE4 CMで処置されたものと比較して認められたが(図9A)、試料のうちの大きい変動に起因して、統計的有意性を達成することができなかった。
【0206】
ApoE受容体の阻害剤であるApoE受容体関連タンパク質(RAP)の処置(LaDu MJ et al.,Neurochemistry international 2001、及びQiu Z et al.,J Biol Chem 2004)は、miR-195-5pの差次的発現パターンを、対照(BSA:ウシ血清アルブミン)に対して消失させた。ApoE3-CMの存在下でのRAP処置は、miR-195-5pレベルの低減を導き(図3C)、ApoE4-CM処置条件下において、miR-195-5pレベルは、ベースラインにおいてはるかにより低く、RAP処置後に改善の傾向があった。これらの結果は、アストロサイト由来ApoEが、ニューロン上のApoE受容体に結合して、ニューロンmiR-195-5pの変化を導く可能性があり、ApoE4が、ニューロンmiR-195-5p発現への機能喪失効果を示すことを示唆する。
【0207】
次に、ApoE4条件におけるmiR-195-5pの上方制御が、miR-195-5pの予測標的遺伝子であるsynj1の発現レベルを調節することができるかを判定した。miR-374ではなく、miR-195-5pの過剰発現は、ApoE4 CMで処置されたApoE-/-ニューロン内のsynj1タンパク質レベルを有意に低減した(図3D;miR-195-5pでのsynj1レベル:対照の62.87±4.48%、p=0.001;miR-374でのsynj1レベル:対照の102.4±7.77%、p=0.93)。変化は、別のエンドサイトーシスアダプタータンパク質であるダイナミン1の発現レベルにおいて見られなかった(dyn1;図9B)が、これは、synj1発現へのmiR-195-5pの特異的効果を示唆する。類似して、ApoE3+/+又はApoE4+/+ニューロン内のmiR-195過剰発現は、synj1発現低減を、mRNA及びタンパク質レベルの両方においてもたらした(図9C及び図9D)。ApoE4+/+ニューロンは、miR-195-5pの過剰発現で、synj1 mRNA(miR-195-5pを有するApoE3+/+ log2FC:-1.084±0.035対miR-195-5pを有するApoE4+/+ log2FC:-7.751±0.043;図9C)、及びタンパク質レベル(miR-195-5pを有するApoE3+/+ 対照の70.9±21.2%対miR-195-5pを有するApoE4+/+ 対照の48.0±9.84%;図9D)において、ApoE3+/+ニューロンよりも劇的な変化を示したが、これは、おそらく、ApoE4+/+細胞内のはるかにより低いベースラインレベルにより、ApoE4+/+細胞が、miR-195-5p操作により感受性があったことに起因したことに留意されたい。
【0208】
miR-195-5pの過剰発現は、ApoE4マウスモデルの認知欠損をレスキューし、AD関連病的状態を寛解させる。次に、過剰発現miR-195-5pが、ApoE4関連認知機能不全をインビボでレスキューすることができるかを、ADトランスジェニックバックグラウンドを有しない又は有するApoE4+/+及びApoE3+/+ KIマウスを使用して判定した。雄性ヒトApoE4+/+ KIマウスが、新規物体認識(NOR)試験によって測定された場合、記憶機能障害を示し、新規物体と慣れた物体とを区別することができなかったことが以前に実証された26。ここで、ApoE4+/+ KIマウスは、新規物体を探索する時間が、ApoE3+/+ KIマウスよりも少ないことが見出された(図4A 選好指標:ApoE4+/+対ApoE3+/+スクランブル対照:42.9%対61.7%、p=0.032)が、これは、以前の観察26と一貫する。この欠損は、ApoE4+/+ KIマウスのmiR-195-5p両側海馬のウイルス送達によって完全に消失した(図4A、ApoE4+/+スクランブル対照と比較して、61.5%、p=0.023)。しかしながら、統計的有意差は、スクランブルとmiR-195-5p過剰発現ApoE3+/+動物との間で見られなかった。また、新規物体対慣れた物体についての探索時間の差を使用する識別指標研究(Antunes M et al.,Cognitive processing 2012)は、一貫した結果を示し、結果は、ApoE4+/+ KIマウスの識別行動の機能障害が、miR-195-5p過剰発現によって完全にレスキューされた(図4A 識別指標:ApoE4+/+対ApoE3+/+スクランブル対照:-0.144対0.234、p=0.033;ApoE4+/+スクランブル対照対ApoE4+/+ miR-195-5p:-0.144対0.231、p=0.024)ことを示唆した。探索時間の総量は、群のうち、同等であった。
【0209】
過剰発現miR-195はまた、ApoE4マウス脳内の脳ホスホ-タウ(pTau)レベルを低減した(図4B;ApoE4+/+スクランブル対照対ApoE4+/+ miR-195-5p:対照の81.3対39.1%、p=0.04)。一貫して、synj1 mRNAのレベル及びタンパク質レベルが、miR-195-5p過剰発現を有するApoE4+/+マウス脳内で低減された(図10A)。pTau、synj1 mRNA、及びタンパク質レベルの低減の傾向が、より少ない程度でなく、miR-195-5p過剰発現を有するApoE3+/+マウスにおいて見られた。有意な変化は、内因性Aβ40、Aβ42、又はApoEレベルにおいて、ApoE4+/+又はApoE3+/+マウス脳内のmiR-195-5pの過剰発現で見られなかった(図10B及び図10C)。qPCRは、ウイルス操作後に、上昇したmiR-195-5pレベルを確認した(図10D)。
【0210】
類似の実験を、AD関連病理学的神経炎症性行動表現型が4~8か月齢で出現した、5xFADバックグラウンドを有するApoE4+/+又はApoE3+/+マウスモデルにおいて実行した(Balu D et al.,Neurosci Lett 2019、及びTai LM et al.,J Lipid Res 2017)。性的二形応答が、これらのマウスモデルにおいて認められ、雄性ApoE4+/+FADマウスが、miR-195-5p操作に最も感受性があった(図4C 選好指標:ApoE4+/+FADスクランブル対照対miR-195-5p:37.8%対63.1%、p=0.01;識別指標:ApoE4+/+スクランブル対照対miR-195:-0.245対0.262、p=0.016)。また、p-Tau低減が、miR-195-5p過剰発現を有するApoE4+/+FADマウスにおいて観察された(図4D及び図10E)。類似の変化が、ApoE4+/+FAD miR-195-5p過剰発現マウス脳内の総タウレベルにおいて見られた。ApoE4+/+及びApoE3+/+FADマウス脳内の、ELISAによって測定された脳オリゴマーAβ42図4E)、並びにプラーク数及びプラーク密度によって判定されたアミロイドプラーク負荷(図4F)の劇的低減が、miR-195-5p過剰発現で見出された。しかしながら、有意な変化は、miR-195-5p過剰発現後に、可溶性Aβ40、Aβ42図10F)、holo-APP、又はBACE-1のレベルにおいて見られなかった。
【0211】
また、miR-195-5p過剰発現が、EFADマウス脳内の遺伝子発現パターン及び下流経路の変化を導くかを検査した。同様に、最も差次的に発現された遺伝子(DEG)は、ニューロン、シナプス、及び免疫機能の制御においてエンリッチされる。更なるGSEA研究Subramanian A,et al.Proc Natl Acad Sci USA 2005;102(43):15545-15550)は、miR-195-5p過剰発現によって混乱した最上位経路が、ミトコンドリア機能関連経路であると示唆したが、これは、miR-195-5pと負相関する遺伝子についてのエンリッチされた最上位経路が、ミトコンドリア機能に関与するという、ヒト脳データセットにおける研究と一貫する。
【0212】
まとめると、これらの結果は、ADバックグラウンドを有しないApoE4マウスモデル及びADバックグラウンドを有するApoE4マウスモデルの上昇したmiR-195-5pレベルが、ApoE4及びAD関連認知欠損及び病理学的変化をレスキューすることができることを示唆する。
【0213】
ApoE4 AD対象のiPSC由来脳細胞内のmiR-195エンドリソソーム異常の過剰発現。次に、miR-195-5pレベルを操作することが、AD関連病的状態を寛解させることができるかを、ApoE4+/+ AD対象及びApoE3+/+正常老化対象からのヒト誘導性多能性幹細胞(hiPSC)由来ニューロン及びアストロサイト共培養物を使用して調査した(TCW et al.,bioRxiv;https://doi.org/10.1101/713362)。ベースラインにおいて、ApoE4+/+ニューロン(ヒトiPSC又はマウス)は、ApoE3+/+対応物と比較して、各細胞内の拡大したリソソーム及びリソソームの増加した数を示した(図5A図5C)。面積によって測定されたリソソームの平均サイズは、ApoE4+/+ニューロン内で163.5μm2対ApoE3+/+ニューロン内で90.4μm2であった(図5C、p<0.00001)。46.7%のApoE4+/+ニューロンが、10~20μmの範囲のリソソームの直径を有し、66.1%のApoE3+/+ニューロンが、0~10μmの範囲のリソソームの直径を有した。18.4%のApoE4+/+ニューロンが、10個超のリソソーム/細胞を有し、1.6%のApoE3+/+ニューロンが、10個超のリソソーム/細胞を有した。ApoE4+/+ニューロン内のmiR-195の過剰発現は、リソソームサイズの有意な低減を導いた(109.9μm2、p<0.00001)。miR-195過剰発現後のApoE4+/+ニューロン内のリソソームの直径及び1細胞当たりのリソソームの数(0~10μmの範囲の直径を有する53.3%のニューロン;10個超のリソソーム/細胞を有する1.7%のニューロン)はまた、ベースラインにおいて、ApoE3+/+ニューロン内のリソソーム表現型へシフトした。対照的に、miR-195阻害剤での処置は、ApoE4+/+ニューロンのリソソーム表現型を悪化させ(平均サイズ:205.4μm2、p<0.00001)、1細胞当たりのリソソームの数を増加させた(30μm超のリソソームの直径を有する40%のニューロン;10個超のリソソーム/細胞を有する25%の細胞)。有意差は、miR-195-5p過剰発現又は阻害で処置されたApoE3+/+ニューロン内で、ベースラインと比較して見られなかった。蛍光染色(図11A)及びELISA(図11B)によって実証された場合、pTauレベルは、過剰発現miR-195-5pで低減され、miR-195-5p阻害で増加した。
【0214】
miR-195-5pレベルはまた、ApoE4+/+ AD対象からの培養iPSC由来アストロサイト内で、ApoE3+/+正常老化(NA)iPSC由来アストロサイト内のものと比較してより低かった(図11C、p=0.002)。リソソームへのmiR-195-5p阻害剤の効果はまた、ApoE4+/+アストロサイト内で見られ得、ApoE4+/+アストロサイトは、リソソームの平均サイズの有意な増加を有し(図11D、対照対miR-195-5p阻害剤処置 36.5μm2対67.7μm2、p<0.00001;図11E 30μm超のリソソームの直径を有する8.3%の対照アストロサイト対17.6%のmiR-195-5p阻害剤処置)。しかしながら、有意差は、miR-195-5p処置ApoE4+/+アストロサイトのリソソームにおいて、対照と比較して見られなかったか、又はApoE4+/+アストロサイトとApoE3+/+アストロサイトとの間で、ベースラインにおいて見られなかった。
【0215】
類似の実験を、ApoE4+/+ iPSC由来アストロサイトと共培養されたマウスsynj1+/+及びsynj1-/-ニューロンを使用して、miR-195-5p過剰発現の存在又は非存在下で実行した。synj1の遺伝子ノックアウトは、リソソーム表現型への、miR-195-5pの過剰発現と類似の効果を示したことが見出された。リソソームの平均サイズは、synj1+/+ニューロン内で101.5μm2対synj1-/-ニューロン内で77.0μm2であった(図11F、p<0.00001)。miR-195過剰発現で、リソソームのサイズは、synj1+/+ニューロン内で75.8μm2に低減された(p<0.00001)。しかしながら、synj1-/-ニューロン内のmiR-195-5pの過剰発現は、いずれの相加効果も示さなかった(69.7μm2)が、これは、miR-195-5pが、実際に、その標的遺伝子であるsynj1を介して作用して、AD関連リソソーム異常をレスキューすることを示唆する。
【0216】
まとめると、これらの結果は、ヒトiPSC由来ApoE4+/+ AD脳細胞内の上昇したmiR-195-5pレベルが、リソソーム異常をレスキューすることができ、miR-195-5pの阻害が、これらの表現型を悪化させ得ることを示す。
【0217】
考察。ADは、複雑な多因子神経変性プロセスであり、証拠の蓄積は、AD病因におけるmiRNAの重要性を示す。本明細書に記載される研究は、ApoE4関連病的状態へのmiRNA、miR-195-5pの機能的関与を特徴付ける。より重要なことに、これらのデータは、AD発症に寄与するApoE4遺伝子型関連認知及びリソソーム異常におけるmiR-195-5pの制御役割を明らかにする。
【0218】
脳miRNAの調節不全は、ADのヒト対象及びマウスモデルにおいて記載されており、Aβ依存性及びAβ非依存性経路の関与が提唱されている(Goodall EF et al.,Frontiers in cellular neuroscience 2013、Lukiw WJ et al.,Neuroreport 2007、及びSierksma A et al.,Mol Neurodegener 2018)。本明細書に記載される研究は、AD発症中のmiR-195-5p低減を実証し、これは、早期疾患進行と相関するが、ADの進行期と相関しない。ApoE4遺伝子型は、miR-195-5p低減を加速し、これは、認知低下及び増加したタウ病的状態と一致する、(図2)。ホスホイノシトール(PI)代謝産物の変化のパターンは、正常老化から早期ADへの疾患転換と相関した(Zhu L et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015)。本明細書に開示される結果は、miR-195-5p変化が脳PIP2レベルの変更と一致することを更に示す(図7C)。これらの知見は、miR-195-5pレベルを代替バイオマーカーとして使用して、脳PIP2ホメオスタシス及び認知パフォーマンスをモニタリングし、早期AD発症及び進行を検出することを強調する。
【0219】
ヒトデータセット及びマウストランスクリプトームデータセットの機能エンリッチメント研究は、神経及びシナプス機能、ニューロン新生、及び分化の制御におけるmiR-195-5pの役割を示す。データは、miR-195-5pレベルをインビボで回復することが、ApoE4関連認知欠損をレスキューし(図4A及び図4C)、アミロイドプラーク負荷(図4E及び図4F)及びpTauレベル(図4B及び図4D)を寛解させ、培養ヒトiPSC由来脳細胞内のリソソーム異常を改善する(図5)ことを示す。ApoE KIマウスモデルの内因性マウスAβの低減(図10B)又はEFADマウスの可溶性Aβレベルの低減(図10F)は見出されなかったが、オリゴマーAβレベル及びプラーク負荷の劇的減少が、miR-195-5pの過剰発現で観察された(図4E及び図4F)。加えて、負相関が、ヒト脳組織内のmiR-195とBACE1発現との間で見出された(r=-0.516、p=0.004;図7D)が、これは、以前の報告(Zhu HC et al.,Brain Res Bull 2012)と一貫する。しかしながら、BACE-1レベルの変化は、miR-195-5p過剰発現で見られなかった。まとめると、これらのデータは、synj1低減がAβのリソソームクリアランスを加速するという以前の報告(Zhu L et al.,J Biol Chem 2013)で示されているように、miR-195-5pが、Aβ産生の代わりに、Aβクリアランスを制御する可能性が最もあり、リソソーム機能の回復が、これらのプロセスを容易にし得ることを示唆する。
【0220】
また、pTauレベルの制御におけるmiR-195-5pの機能的役割が示され(図4、並びに図11A及び図11B)、これは、synj1の下方制御が、軽度TBI誘導性タウ過剰リン酸化を防止するという最近の知見(Cao J et al.,Sci Rep 2017)と一貫する。タウのエクソソーム分泌は、miRNAによって制御され得るタウ拡散において重要な役割を果たし得ることが以前に報告された(Asai H et al.,Nat Neurosci 2015)。miR-195-5pは、リソソーム経路を介するクリアランスの機能障害及び/又はエクソソーム分泌経路を介する拡散の加速に二次的なタウ病的状態の調節において重要な役割を果たし得る。
【0221】
結果は、ApoEアイソフォームによるmiR-195-5p発現の差次的制御が、ニューロン上のApoE受容体への結合を介して媒介され、ApoE4遺伝子型は、miR-195-5pレベルを制御する能力を失うことを示す(図3C)。加えて、ApoE4のようにより低いmiR-195-5p発現を有するApoE-/-を示すこれらのデータ(図3A)は、増加したsynj1 mRNA及びタンパク質発現を導く、miR-195-5p発現へのApoE4の機能喪失効果を更に支持する。synj1-/-ニューロン内のmiR-195-5pの過剰発現は、リソソーム拡大へのいずれの相加効果も示さず(図11F)、これは、miR-195が、その標的遺伝子であるsynj1を介して、AD関連表現型をレスキューするという概念を更に強化する。ApoE4+/-キャリアは、ApoE4-/-対象よりも、miR-195-5p操作への高い感受性を示し(図4及び図10図5及び図11)、おそらく、これは、はるかにより低いベースラインmiR-195-5pレベルに起因することに留意されたい。更に、ApoE4+/-条件とApoE4-/-条件との間のmiR-195-5pレベルの差は、ニューロン内で、かつアストロサイトなどの他の脳細胞内で見られる(図11C)。miR-195-5pの細胞型特異的変化は、疾患病因の異なる態様に寄与し得る。これらのデータは、ニューロンmiR-195-5pレベルの低減が、認知及びシナプス機能不全に寄与し、アストロサイトmiR-195-5pレベルの低減が、タウ蓄積及び拡散の加速を導く、分泌経路の異常において役割を果たすことを示す。
【0222】
また、miR-195-5p発現への性的影響を検査した。ROSMAPデータセットにおいて、ApoE4+/-キャリアとApoE4-/-キャリアとの間のmiR-195-5pレベルの差は、脳PIP2ホメオスタシスへの性別特異的効果の以前の報告(Zhu Let al.,Proc Natl Acad Sci USA 2015)と類似して、雌性対象において存続する(図1B)。また、性的二形性が、miR-195-5p発現において認められ、雌性対象において、特に、ApoE4-/-キャリアにおいて、はるかに低いレベルで認められる(図7A)。EFADマウスはまた、miR-195-5p操作への性的二形応答を示し、改善された認知機能及び低減されたオリゴマーAβレベルは、雄性EFADマウスにおいて示されるが、雌性EFADマウスにおいて示されない(図4C及び図4E)。また、miR-195-5p発現及びsynj1 mRNAレベルの年齢関連変化が、ApoE KI及びEFADマウス脳内で認められており、差次的発現は、ApoE4+/+マウスとApoE4-/-マウスとの間でより顕著であり、より若い年齢と比較して、12か月齢でより顕著であり、EFADマウスのmiR-195-5pの差は、4か月齢で既に明らかであり、これは、ApoE遺伝子型関連miR-195-5p変化が、老化及び/又はAD病的状態の出現によって悪化され得ることを示唆する。
【0223】
ADは、多面的疾患プロセスとして出現するが、ネットワーク及び経路の調節不全を複数のレベルで回復させるために特定のmiRNAを標的とすることは、将来の薬物開発のための有望な手段を提供し得る。ApoE4に向けられた治療戦略は、いくつかの前臨床及び臨床研究において、例えば、免疫療法、アンチセンスオリゴヌクレオチド治療、遺伝子編集、ApoE発現の調節因子、及びApoE脂質化を亢進し、その構造を補正し、受容体結合を競合し、ApoE-Aβ相互作用を阻害するための小分子において探求されており、積極的に探求されている(Cao J et al.,Mol Neurodegener 2018、及びWilliams T et al.,Mol Neurodegener 2020)。ここでの知見は、ApoE4病原性機能を、miRNA miR-195-5pによって、脳PIP2脂質シグナル伝達経路を介して調節し、Aβ及びタウ病的状態への影響に加えて複数の有益な効果を有する治療方向を示す。
【0224】
要約すると、これらの研究は、脳miR-195-5p発現のApoE4遺伝子型特異的変化と、脳リン脂質調節不全、認知欠損、リソソーム異常、及びタウ病的状態を含むAD関連表現型との間の機構的関連を示す。これらの研究はまた、特定のmiRNA miR-195-5pを標的とするための治療戦略を提供する。
【0225】
略語。AAV2:アデノ随伴ウイルス2;AD:アルツハイマー病;ApoE:アポリポタンパク質E;BH:ベンジャミニ-ホッホベルグ;BSA:ウシ血清アルブミン;CSF:脳脊髄液;DEG:差次的発現遺伝子;FDR:偽発見率;FGF2:線維芽細胞成長因子2;FPKM:100万個のマッピングされたリード当たりの転写産物の1キロベース当たりの断片;GSEA:遺伝子セットエンリッチメント解析;hiPSC:ヒト誘導性多能性幹細胞;HPLC:高速液体クロマトグラフィーiPSC:誘導性多能性幹細胞;KI:ノックイン;MCI:軽度認知機能障害;miRNA:マイクロRNA;NBTR:NIH脳及び組織リポジトリ;NPC:神経前駆細胞;PI:ホスホイノシトール;PIP:ホスホイノシトールモノホスフェート;PIP2:ホスホイノシトールビホスフェート;PMI:死後間隔;RAP:受容体関連タンパク質;RIN:RNA完全性数;ROSMAP:Religious Orders Study and Rush Memory and Aging Project;synj1:シナプトジャニン1;TBI:外傷性脳損傷;TMM:M値のトリム平均。
【0226】
実施例2:マイクロRNA-195-5pは、ミクログリア機能を制御する抗炎症性miRNAであり、虚血誘導性ミクログリア機能不全及びニューロン損傷を緩和することができる。
ApoE3及びApoE4 iPSC由来アストロサイトを、3日間インキュベートし、その後、ナトリウムハイドロサルファイト(Na2S2O4)で、1時間処理して、虚血を誘導し、続いて、エクソソームの収集のために血清不含有培地中に一晩変えた。次いで、エクソソーム含有物を特徴付け、虚血状態に由来するエクソソーム内のmiR-195-5pレベルが、対照条件におけるものよりも有意に低く、エクソソームsynj1及びpTauレベルの相互的増加が見出された(図12)。
【0227】
図12に示されるように、ApoE4エクソソーム内のmiR-195-5pの量は、ApoE3/3エクソソーム内のものよりも少なく、虚血状態において更に低減された。対照的に、ApoE4/4のエクソソーム(+/-虚血状態)内のpTau及びsynj1のレベルは、対照のものよりもはるかに高い(100%を、虚血状態を有しないApoE3/3対照として、対照の百分率として提示される)。
【0228】
また、ミクログリア内のmiR-195-5pの過剰発現は、pdcd4及びsmad7の発現のLPS誘導性増加を阻害し、LPS誘導性炎症促進性サイトカイン放出を減衰させ、抗炎症遺伝子発現を増強することが見出された(図13)。例えば、BV2細胞内での一晩の(0.2μg/mlの)LPS処置は、pdcd4及びsmad7の増加した発現(図13A)、並びにil10raの低減された発現(図13C)を導く。しかしながら、miR-195-5pの過剰発現は、LPSの存在下で、pdcd4及びsmad7の発現レベルを劇的に低減し、il10a発現を増加させる。miR-195-5pの過剰発現はまた、LPS誘導性炎症促進性サイトカイン放出を減衰させる(IL-6及びTNFα;図13B)。興味深いことに、APOE4/4アストロサイトに由来するエクソソーム(ADE)は、APOE3/3からのADEと比較してより少ないmiR-195-5pを含有し(図13D)、iPSC由来アストロサイト内のmiR-195-5pの過剰発現は、エクソソーム内の増加したmiR-195レベルを導き、これは、LSP誘導性炎症促進性サイトカイン放出を減衰させることができる(図13E)。これらの実験のために、精製エクソソームは、エクソソームマーカーであるALIXによって検出されたmiR-195過剰発現を有する/有しないヒトAPOE3/3及び4/4 iPSC由来アストロサイトに由来した。蛍光標識エクソソームは、IBA1+ミクログリア細胞によって取り込まれた。まとめると、これらの結果は、ミクログリア機能の制御における抗炎症性miRNAとしてのmiR-195の役割を支持する。
【0229】
Na224誘導性虚血状態に曝露されたApoE4ミクログリア又はニューロンを、miR-195を過剰発現するApoE4アストロサイトに由来するエクソソームで処置することは、炎症促進性サイトカインIL-6放出を低減し、pTau産生を減少させた(図14)。これらのデータは、虚血誘導性ミクログリア機能不全及びニューロン損傷の緩和におけるエクソソームmiR-195の治療的役割を示す。
【0230】
実施例3:マイクロRNA-195-5pは、アルツハイマー病におけるミクログリア機能及び神経炎症を制御する
E4FADマウス脳内のmiR-195-5p過剰発現での、ミクログリア特異的遺伝子プロファイルの変化。miR-195-5p過剰発現を有するEFADマウス脳scRNA-seq解析を実行した(図15;N=4つのプールマウス/条件)。単一細胞懸濁液を、調製し、10X Genomics Chromiumプラットフォームで処理した。品質管理(QC)後に、遺伝子レベルUMIデータを、規則化された負の二項回帰解析によって正規化した(Hafemeister,C.& Satija,R.Genome Biology 20,296,(2019))。2つ以上の細胞内で検出された遺伝子、並びに200個~4,000個の遺伝子のシークエンシングリード及び50%未満のミトコンドリアリードレートを有する細胞を選択した。これにより、更なる解析のための合計26,332個の細胞及び18,834個の遺伝子のデータセットを得た。次に、線形次元低減を、最初に、主成分解析(PCA)を使用して実行した。JackStraw置換手順によって判定された場合の有意な主成分を、Seuratのグラフベースのクラスタリング手法を使用する細胞クラスタリングのために選択した(Butler,A.,et al.Nature Biotechnology 36,411,(2018))。正規化されたデータセットを、t分布型確率的近傍埋め込み(t-SNE;図15A及び図15C)(van der Maaten,L.& Hinton,G.Machine Learning 87,33-55(2012))又は次元低減のための均一マニホールド近似投影(Uniform Manifold Approximation and Projection for Dimension Reduction、UMAP)(McInnes,L.,Healy,J.& Melville,J.arXiv 1802.03426(2018))を使用して、2D空間上に投影した。scRNA-seqデータにおけるダブレットアーチファクトを特定及び除去するために、Seuratとインターフェースするように実装されたRパッケージであるDoubletFinder(McGinnis,C.S.,et al.Cell systems 8,329-337(2019))を使用した。予測ダブレットをクラスターから除去した後に、クラスターマーカー遺伝子を観察し、既知の遺伝子マーカーの発現パターンを解析して、クラスターを、興奮性ニューロン(Ex;NRGNによってマークされる)、阻害性ニューロン(In;GAD1)、アストロサイト(Ast;AQP4、GFAP)、オリゴデンドロサイト(Oli;PLP1、MBP)、ミクログリア(Mic;CSF1R、CD74)、オリゴデンドロサイト前駆細胞(Opc;VCAN)、及び内皮細胞(End;FLT1)の主要な細胞型にアノテートした。試料群間のクラスター特異的シグネチャー又は差次的発現遺伝子(DEG)を特定するために、ウィルコクソン順位和検定などのノンパラメトリック検定を使用した。ディープニューラルネットワークベースの単一細胞クラスタリング手法であるDESC(Li,X.et al.bioRxiv,530378(2019))を使用することによって、12個の細胞クラスターを特定し、12個の細胞クラスターを、ミクログリア(C0)、アストロサイト(C1)、ニューロン(C3)、及びオリゴデンドロサイト(C2)を含む既知の主要な脳細胞タイプにアノテートした(図15A)。クラスター特異的DEGの最上位GO経路エンリッチメント研究は、miR-195-5p過剰発現が、ミクログリアクラスター(C0)内のミトコンドリア及びシナプス機能に関与する遺伝子を上方制御することを示唆する(図15B)。ミクログリアクラスター(C0)のサブクラスタリングは、3つの主要なサブセット(図15C)を特定し、3つの主要なサブセットは、各ミクログリアサブクラスター内で異なる遺伝子シグネチャーを有した(図15D)。例えば、サブクラスターMic.C0は、細胞死の制御及びサイトカインへの応答に関与する遺伝子についてエンリッチされ、サブクラスターMic.C1は、MHCクラスIIタンパク質複合体、骨髄性白血球活性化、及び空胞についてエンリッチされ、サブクラスターMic.C2は、NADHデヒドロゲナーゼ活性についてエンリッチされた。サブクラスターDEGでエンリッチされた最上位GO経路の研究は、miR-195-5pが、Mic.C0及びMic.C2ミクログリアサブクラスター内の自然免疫系及びエフェクター応答、並びにMic.C1サブクラスター内の翻訳及びリボソーム活性を下方制御し、3つのサブクラスター内の酸化的リン酸化及びATP代謝プロセスに関与する遺伝子を上方制御することを示唆する。これらのデータは、ADにおけるミクログリア機能及び神経炎症の制御におけるmiR-195-5pの役割を示す。
【0231】
低減されたmiR-195レベル及び増加したsynj1発現を有するAPOE4+ミクログリアは、食作用活性の機能障害及びリソソーム拡大で出現し、食作用活性の機能障害及びリソソーム拡大は、synj1低減によってレスキューされる。APOE4+ニューロン及びアストロサイト内のmiR-195レベルは、APOE3+細胞内のものと比較して、増加したsynj1発現で低減される(Cao,J.et al.Molecular psychiatry,(2020))。データは、miR195レベルが、より高いsynj1タンパク質発現レベルで、培養APOE4+ミクログリア内で、APOE3+ミクログリア内のものと比較してより低いことを更に示唆する(図16A及び図16B)。PHrodoコンジュゲートミエリンを使用して、ミクログリア食作用活性を判定すると、APOE3+/+synj1+/+ミクログリアと比較して、APOE4+/+synj1+/+ミクログリアは、ミエリン取り込みの低減された量で出現すること、及びこれらの表現型は、インキュベーションの最初の6時間で最も顕著であり、研究の72時間にわたって依然として一定であることが見出されたが、これは、これらのミクログリア内の食作用活性の機能障害を示唆する(図16C)。加えて、ミクログリア内で採取されたミエリンの分解の勾配は、APOE4+/+synj1+/+ミクログリア内で、APOE3+/+synj1+/+ミクログリアのものよりも遅かった。更に、リソソーム拡大が、ヒトiPSC由来AD APOE4+/+ニューロン及びアストロサイト共培養物における観察と類似して、培養APOE4+/+synj1+/+ミクログリア内で観察された(図16B及びCao,J.et al.Molecular psychiatry,(2020)。これらの表現型は、synj1ハプロ不全(図16C APOE4+/+synj1+/-ミクログリアについて黒色破線曲線)でレスキューされ得、有意差は、APOE3+/+synj1+/+遺伝子型のミクログリア培養物とAPOE3+/+synj1+/-遺伝子型のミクログリア培養物との間で見られない。これらの知見は、APOE4誘導性ミクログリア機能不全におけるmiR-195/synj1の制御役割を示唆する。
【0232】
ミクログリア内のmiR-195-5pの過剰発現は、LPS誘導性炎症促進性応答を阻害し、抗炎症応答を増強する。結果は、ミクログリア内のmiR-195-5pの過剰発現が、炎症性遺伝子であるpdcd4及びsmad7の発現のLPS誘導性増加を阻害し、LPS誘導性炎症促進性サイトカイン放出を減衰させ、抗炎症性遺伝子発現を増強することを示す。結果はまた、BV2細胞内の一晩の(0.2μg/mlの)LPS処置が、pdcd4及びsmad7の増加した発現(図17A)、並びにil10raの低減された発現(図17C)を導くことを示す。しかしながら、miR-195-5pの過剰発現は、LPSの存在下で、pdcd4及びsmad7の発現レベルを低減し、il10a発現を増加させる。miR-195-5pの過剰発現はまた、LPS誘導性炎症促進性サイトカイン放出を減衰させる(IL-6及びTNFα、図17B)。
【0233】
また、APOE4/4アストロサイトに由来するエクソソーム(ADE)は、APOE3/3からのADE内のmiR-195-5pレベルよりもはるかに低いmiR-195-5pレベルを含有し、miR-195-5pの過剰発現は、エクソソームmiR-195-5pレベルを増加させた(図18A)が、これは、LSP誘導性炎症促進性サイトカイン放出を減衰させることができる(図18B)。培養ミクログリア内への蛍光標識エクソソームの取り込みの写真は、ミクログリア内へのエクソソームmiR-195取り込みが、炎症応答を調節することを示す。miR-195過剰発現を有するヒトAPOE3/3及び4/4 iPSC由来アストロサイト及びmiR-195過剰発現を有しないヒトAPOE3/3及び4/4 iPSC由来アストロサイトに由来する精製エクソソームを、エクソソームマーカーであるALIXによって検出した。蛍光標識エクソソームは、IBA1+マウスE3FAD又はE4FADミクログリアによって取り込まれた。まとめると、これらの結果は、ミクログリア機能の調節における抗炎症性miRNAとしてのmiR-195-5pの役割を支持する。
【0234】
実施例4:脳ApoE-synj1-PIP2経路についての標的エンゲージメントバイオマーカーとしてのエクソソームmiR-195-5pの役割
本明細書に開示されるように、synj1ハプロ不全マウス(ApoE3 synj1+/-及びApoE4 synj1+/-)及びsynj1低下剤(SynaptoCpd #9及びCpd #6)で処置されたマウスの脳及び血清試料のエクソソーム画分を検査するために、研究を実行した。エクソソームを、スクロース勾配分画法を使用して精製し、エクソソーム画分の純度を、ALIXなどのエクソソームタンパク質マーカーのウェスタンブロット解析、及びヒトiPSC由来アストロサイト培養物による蛍光タグ付きエクソソームの取り込み研究によって評価した。結果は、脳及び血清エクソソームmiR-195-5pレベルが、ApoE4 synj1+/+マウスにおいて、ApoE3 synj1+/+マウス比較して低かったことを示す。synj1ハプロ不全マウスにおいて、ApoE4 synj1+/-マウスの脳及び血清試料内の有意に増加したエクソソームmiR-195-5pがあった(図19A)。また、血清及び脳エクソソームmiR-195-5pレベルは、Cpd#6又はCpd#9処置マウスにおいて、対照と比較してはるかに高いことが見出された(図19B)。加えて、血清エクソソームmiR-195-5pレベルは、薬物処置マウスコホートにおいて、脳エクソソームmiR-195-5pレベル及び認知パフォーマンス(NOR選好指標及びY迷路SAPスコア)と正相関し、脳不溶性pTau及びsynj1タンパク質レベルと逆相関した(図19C)。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
【配列表】
2024503503000001.app
【国際調査報告】