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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】疎水性セルロース系繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/12 20060101AFI20240118BHJP
   D06M 15/267 20060101ALI20240118BHJP
   D06M 11/56 20060101ALI20240118BHJP
   D06M 11/57 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
D06M13/12
D06M15/267
D06M11/56
D06M11/57
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544081
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 IB2022050334
(87)【国際公開番号】W WO2022157609
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202121003117
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512082772
【氏名又は名称】グラシム インダストリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジュイカー,ヴィスヴァジト チャンドラカント
(72)【発明者】
【氏名】ワッグメア,ニーレシュ グルリン
(72)【発明者】
【氏名】ジャンガム,クンダン サンバージー
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031AA12
4L031BA13
4L033AA02
4L033AB01
4L033AC03
4L033BA09
4L033CA19
(57)【要約】
本開示は、疎水性再生セルロース系繊維を調製するための連続法に関する。前記方法は、未乾燥のセルロース系繊維を、セルロースの重量に基づいて0.05~2.5重量%のアルキルケテンダイマーを含む疎水性組成物で処理することを含む。前記アルキルケテンダイマーは、式Iを有する:
【化1】

(式中、RおよびRはいずれも8~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、且つ飽和または不飽和、直鎖または分岐のいずれでもよい)。前記疎水性組成物は、セルロースの重量に基づいて0.02~1重量%のカチオン性ポリマーをさらに含む。前記疎水性組成物で処理した後、処理した繊維に乾燥工程を施して、疎水性再生セルロース繊維を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性セルロース系繊維を調製するための連続法であって、疎水性再生セルロース系繊維が、スレッジ試験(ANSI/ASTM D 1894-78)に従って測定される、少なくとも7.0N(力のピーク)の繊維-繊維の摩擦を有するように、
未乾燥のセルロース系繊維を、以下を含む疎水性組成物で処理することと:
- セルロースの重量に基づいて0.05~2.5重量%のアルキルケテンダイマー、当該アルキルケテンダイマーは式Iを有する:
【化1】

(式中、R1およびR2はいずれも8~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、且つ飽和または不飽和、直鎖または分岐のいずれでもよい);
- セルロースの重量に基づいて0.02~1重量%のカチオン性ポリマー、
その後、処理した繊維を乾燥させて、疎水性再生セルロース繊維を形成することと、
を含む、
連続法。
【請求項2】
前記カチオン性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)およびカチオン性デンプンからなる群から選択される高分子第四級アンモニウム化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疎水性組成物は、セルロースの重量に基づいて0.01~0.5重量%の金属塩をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記金属塩は、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理は、30秒から5分の期間にわたって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記疎水性組成物は、0.2~1.5%の範囲の量で前記アルキルケテンダイマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記疎水性組成物は、0.08~0.6%の範囲の量で前記カチオン性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記疎水性組成物は、0.04~0.35%の範囲の量で前記金属塩を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項9】
前記疎水性再生セルロース系繊維は、7.0~14.0N(力のピーク)の範囲の繊維-繊維の摩擦を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
疎水性再生セルロース系繊維であって、その上に吸着された疎水性組成物を含み、
前記疎水性再生セルロース系繊維が、スレッジ試験(ANSI/ASTM D 1894-78)に従って測定される、少なくとも7.0N(力のピーク)の繊維-繊維の摩擦を有するように、前記疎水性組成物は以下を含む、疎水性再生セルロース系繊維:
- セルロースの重量に基づいて0.05~2.0重量%のアルキルケテンダイマー、当該アルキルケテンダイマーは式Iを有する:
【化2】

(式中、R1およびR2はいずれも8~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、且つ飽和または不飽和、直鎖または分岐のいずれでもよい);および
- 0.08~0.5重量%のカチオン性ポリマー。
【請求項11】
前記疎水性再生セルロース系繊維は、7.0~12.0N(力のピーク)の範囲の繊維-繊維の摩擦を有する、請求項10に記載の疎水性再生セルロース系繊維。
【請求項12】
前記疎水性再生セルロース系繊維は、8.5~11.0N(力のピーク)の範囲の繊維-繊維の摩擦を有する、請求項11に記載の疎水性再生セルロース系繊維。
【請求項13】
前記カチオン性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)およびカチオン性デンプンからなる群から選択される高分子第四級アンモニウム化合物である、請求項10に記載の疎水性再生セルロース系繊維。
【請求項14】
前記疎水性組成物は、セルロースの重量に基づいて0.01~0.5重量%の金属塩をさらに含む、請求項10に記載の疎水性再生セルロース系繊維。
【請求項15】
前記金属塩は、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムからなる群から選択される、請求項13に記載の疎水性再生セルロース系繊維。
【請求項16】
前記疎水性組成物は、0.2~1.5%の範囲の量で前記アルキルケテンダイマーを含む、請求項10に記載の疎水性再生セルロース系繊維。
【請求項17】
前記疎水性組成物は、0.08~0.6%の範囲の量で前記カチオン性ポリマーを含む、請求項10に記載の疎水性再生セルロース系繊維。
【請求項18】
前記疎水性組成物は、セルロースの重量に基づいて0.04~0.25重量%の金属塩を含む、請求項14または15に記載の疎水性再生セルロース系繊維。
【請求項19】
請求項10に記載の疎水性再生セルロース系繊維を含む製品。
【請求項20】
前記製品は多層物品であり、前記疎水性再生セルロース系繊維を含む最上層を含む、請求項19に記載の製品。
【請求項21】
前記製品は、衛生製品、医療製品、包装物品、紙、湿式不織布、織物製品、不織布、および濾材からなる群から選択される、請求項19または20に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本開示は、疎水性再生セルロース系繊維および当該疎水性再生セルロース系繊維を製造するための連続法に関する。具体的には、本開示は、所望の摩擦特性を有する疎水性再生セルロース系繊維に関する。
【0002】
〔背景〕
天然セルロース系繊維、およびビスコース、モダール、リヨセルなどの人造セルロース系繊維(MMCF)は、その構造中に多数の水酸基が存在するため親水性であるが、ナイロンおよびポリエステルなどの合成繊維は永久的に疎水性である。セルロース系繊維のこの親水性傾向は、その用途を制限している。例えば、現在の衛生用品市場では、ポリプロピレンおよびポリエステルがその疎水性により主に使用されている。前記合成繊維は環境に優しいものではないが、セルロース系繊維は環境に優しい原料から作られており、生分解性がある。そのため、持続可能性の観点から、セルロース系繊維および人工セルロース系繊維は魅力的なものとなりつつあり、現在ではより多くの分野でセルロース系繊維の使用に焦点が移りつつある。
【0003】
撥水性を付与するために、織物の段階で多くのさまざまな疎水剤/組成物が現在使用されており、例えば、シリコーン化学(トリメトキシベース)、アルキルウレタンベース、フルオロカーボンベース、ナノテクノロジーベースなどである。これらの化学物質は織物の段階で適用され、高価であるか、または繊維への適用には適していない。また、排水として排出される場合、それらの中には環境に有害なものもある。
【0004】
US20140315461A1は、疎水性物質を含むセルロース系繊維を開示している。前記疎水性物質は、アルキルケテンダイマー(AKD)であってもよくまたは置換されたコハク酸無水物もしくはグルタル酸無水物などの置換環状ジカルボン酸無水物であってもよい。得られた疎水性繊維は嵩高で且つ非常に柔らかい。
【0005】
WO2013/067555Alは、疎水性物質を含むセルロース系繊維を開示している。前記疎水性物質は、アルキルケテンダイマー(AKD)であってもよくまたは置換されたコハク酸無水物もしくはグルタル酸無水物などの置換環状ジカルボン酸無水物であってもよい。得られた繊維は、未処理の繊維の油分取り込み量より少なくとも2倍高い油分取り込み量を有する。
【0006】
〔概要〕
本開示は、疎水性再生セルロース系繊維を調製するための連続法に関する。特に、開示された方法は、セルロースの重量に基づいて0.05~2.5重量%のアルキルケテンダイマーと、セルロースの重量に基づいて0.02~1重量%のカチオン性ポリマーとを含む疎水性組成物で未乾燥のセルロース系繊維を処理することを含み、前記アルキルケテンダイマーは式Iを有する:
【化1】

(式中、RおよびRはいずれも8~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、且つ飽和または不飽和、直鎖または分岐のいずれでもよい)。この処理に続いて、処理した繊維を乾燥させて疎水性再生セルロース繊維を形成する乾燥工程が行われる。
【0007】
疎水性再生セルロース系繊維もまた開示される。前記疎水性再生セルロース系繊維は、その上に吸着された疎水性組成物を含む。疎水性組成物は、セルロースの重量に基づいて約0.05~2.0重量%のアルキルケテンダイマーを含み、当該アルキルケテンダイマーは式Iを有する:
【化2】

(式中、RおよびRはいずれも8~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、且つ飽和または不飽和、直鎖または分岐のいずれでもよい)。前記疎水性組成物は、約0.08~0.5重量%のカチオン性ポリマーをさらに含む。疎水性再生セルロース系繊維は、スレッジ試験(ANSI/ASTM D 1894-78)に従って測定される、少なくとも7.0N(力のピーク)の繊維-繊維の摩擦を有する。
【0008】
〔図面の簡単な説明〕
図1A図1B図1Cおよび図1Dは、それぞれ、第1週、第2週、第3週および第4週における、土壌分解を受けたときの通常のVSF(ビスコースステープルファイバー)織物のカメラ画像を示す。
【0009】
図2A図2B図2Cおよび図2Dは、それぞれ、第1週、第2週、第3週および4週における、土壌分解を受けたときの100%疎水性VSF織物のカメラ画像を示す。
【0010】
図3A図3Bおよび図3Cは、それぞれ、第1週、第2週および第3週における、土壌分解を受けたときの通常のVSF織物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0011】
図4A図4Bおよび図4Cは、それぞれ、第1週、第2週および第3週における、土壌分解を受けたときの100%疎水性VSF織物のSEM画像を示す。
【0012】
〔詳細な説明〕
本開示の原理の理解を促進する目的で、ここで実施形態を参照し、特定の言語を使用して実施形態を説明する。それにもかかわらず、本開示の範囲の限定はそれによって意図されるものではなく、開示された組成物および方法におけるそのような変更およびさらなる改変、ならびに本開示の原理のそのようなさらなる適用は、本開示が関連する技術分野の当業者に通常生じるであろうものとして企図されることが理解されるであろう。
【0013】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、本開示の例示および説明であり、本開示を限定することを意図するものではないことが当業者には理解されよう。
【0014】
本明細書全体にわたる「1つの実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」または類似の言語への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる「1つの実施形態において」、「一実施形態において」という語句、および類似の言語の出現は、必ずしもそうではないが、すべてが同じ実施形態を指す場合がある。
【0015】
その最も広い範囲において、本開示は、疎水性再生セルロース系繊維を調製するための連続法に関する。具体的には、開示された方法は、未乾燥のセルロース系繊維を、以下を含む疎水性組成物で処理することを含む:
- セルロースの重量に基づいて0.05~2.5重量%のアルキルケテンダイマー、当該アルキルケテンダイマーは式Iを有する:
【化3】

式中、RおよびRはいずれも8~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、且つ飽和または不飽和、直鎖または分岐のいずれでもよい;
- セルロースの重量に基づいて0.02~1重量%のカチオン性ポリマー。
【0016】
この処理に続いて、処理した繊維を乾燥させて疎水性再生セルロース繊維を形成する乾燥工程が行われる。
【0017】
疎水性再生セルロース系繊維もまた開示される。前記疎水性再生セルロース系繊維は、その上に吸着された疎水性組成物を含む。前記疎水性組成物は、セルロースの重量に基づいて約0.05~2.0重量%のアルキルケテンダイマーを含み、当該アルキルケテンダイマーは式Iを有する:
【化4】

(式中、RおよびRはいずれも8~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、且つ飽和または不飽和、直鎖または分岐のいずれでもよい)。前記疎水性組成物は、約0.08~0.5重量%のカチオン性ポリマーをさらに含む。疎水性再生セルロース系繊維は、スレッジ試験(ANSI/ASTM D 1894-78)に従って測定される、少なくとも7.0N(力のピーク)の繊維-繊維の摩擦を有する。
【0018】
開示された疎水性組成物によるセルロース系繊維の処理は、繊維の摩擦特性を所望の範囲に維持しながら、セルロース系繊維上に疎水性部分を導入することが、本発明者らによって見出された。特に、アルキルケテンダイマーを含む疎水性組成物で再生セルロース系繊維を処理すると、繊維-繊維の摩擦が非常に低い非常に柔らかい繊維が得られることが判明した。このため、得られた疎水性繊維は、様々な不織布物品または織物の製造のための通常の機械での処理には適していなかった。開示された組成物および方法により、市販グレードのビスコース繊維と同様またはそれに近い摩擦特性を有する疎水性再生セルロース系繊維を実現することができる(すなわち、疎水性物質で処理することなく)。従って、開示された疎水性繊維は、様々な不織布物品または織物の製造のための通常の機械で処理することができる。
【0019】
一態様によれば、開示された方法により、スレッジ試験(ANSI/ASTM D 1894-78)に従って測定される、少なくとも7.0N(力のピーク)の繊維-繊維の摩擦を有するセルロース系繊維が得られる。一実施形態によれば、得られるセルロース系繊維は、7~14Nの範囲の繊維-繊維の摩擦を有する。
【0020】
一実施形態によれば、疎水性組成物は、エマルジョンの形態である。さらに別の実施形態によれば、疎水性組成物は、15~35%、好ましくは20~30%の範囲の固形成分含有量を有する。
【0021】
一実施形態によれば、アルキルケテンダイマーは式Iを有する:
【化5】

(式中、RおよびRはいずれも8~40個の炭素原子を有する炭化水素基であり、且つ飽和または不飽和、直鎖または分岐のいずれでもよい)。さらに別の実施形態によれば、疎水性組成物は、セルロースの重量に基づいて0.05~2.5%の範囲の量でアルキルケテンダイマーを含む。好ましくは、疎水性組成物は、セルロースの重量に基づいて0.2~1.5%の範囲の量でアルキルケテンダイマーを含む。アルキルケテンダイマー溶液は、HERCON 196(Solenis,インド)、NTP AKDエマルジョン(New tech polymers,インド)、Novasize-1500 AKD(NNOWETA,インド)、25%AKDエマルジョン(Weifang great land chemicals co., ltd.,中国)などの任意の商業的供給源から取得することができる。
【0022】
一実施形態によれば、カチオン性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)およびカチオン性デンプン(Everest Starch India Pvt. Ltd.)からなる群から選択される高分子第四級アンモニウム化合物である。一実施形態によれば、疎水性組成物は、セルロースの重量に基づいて0.02~1重量%、好ましくはセルロースの重量に基づいて0.08~0.6重量%の範囲の量で、ポリDADMAC(ROSSARI BIOTECH LIMITEDによるHifix Nfi)などのカチオン性ポリマーを含む。
【0023】
一実施形態によれば、疎水性組成物は、金属塩をさらに含む。本発明者らは、前記アルキルケテンダイマーおよびカチオン性ポリマーが金属塩とさらに組み合わされる場合、前記組み合わせがさらなる相乗効果をもたらし、それにより、より高い生産性を有する不織布製品を製造するのに適した、改善された摩擦特性および疎水性が処理された繊維に付与されることを見出した。
【0024】
一実施形態によれば、金属塩は、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムからなる群から選択される。一実施形態によれば、疎水性組成物は、セルロースの重量に基づいて0.01~0.5重量%、好ましくはセルロースの重量に基づいて0.04~0.35%の金属塩(例えば、硫酸アルミニウムなど)を含む。
【0025】
前記疎水性組成物は、アルキルケテンダイマー、カチオン性ポリマーおよび任意に金属塩を、所望のパーセンテージで混合することにより調製される。
【0026】
一実施形態によれば、再生セルロース系繊維は、ビスコース繊維、モダール繊維、リヨセル繊維、顔料染色繊維、着色ドープ染色繊維、ショートカット繊維、トリローバル/マルチローバル繊維および材料組込み繊維からなる群から選択される。ここで、材料組込み繊維には、金属、金属酸化物、難燃剤、イオン交換樹脂、高分子添加剤、カーボンブラックの内の1種以上を含むセルロース系繊維が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
一実施形態によれば、前記処理は、所定の時間にわたって、疎水性組成物を未仕上げ繊維上に注ぐかまたは噴霧することによって実施される。さらに別の実施形態によれば、前記処理は、30秒~5分間、好ましくは1~2分間の期間にわたって行われる。
【0028】
前記処理は、繊維へのスピン仕上げの適用など、様々な再生セルロース系繊維の商業的製造に使用される任意の従来の装置において実施することができる。
【0029】
開示する疎水性再生セルロース系繊維を含む製品もまた開示される。一実施形態によれば、前記製品は多層物品であり、前記疎水性再生セルロース系繊維を含む最上層またはシートを含む。一実施形態によれば、製品は、衛生製品、医療製品、紙、湿式不織布、織物製品、包装物品、不織布、濾材などからなる群から選択される。
【0030】
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例を示す。これらの実施例は例示のみを目的とするものであり、示された正確な組成物、調製方法および実施形態は本発明を限定するものではなく、あらゆる明らかな改変は当業者に明らかであろう。
【0031】
〔実施例〕
特性評価方法
1)スレッジ試験(ANSI/ASTM D 1894-78):この方法は、繊維の摩擦特性の測定に用いられる。この試験は、特に、繊維/繊維の摩擦およびスクループの程度(スティック/スリップ現象)の測定に適用できる。
【0032】
繊維-繊維の摩擦の測定用:エメリー紙で覆ったベッドの上に被試験基材のサンプルを置き、その上に同じサンプルをより小さくしたものを置く。エメリー紙で覆ったブロックをより小さい方のサンプルの上に正確に置き、加重をかける。ブロックにワイヤーを取り付け、インストロン装置を作動させる。ブロックおよび上部のサンプルを動かすのに必要なワイヤー上の力がロードセルによって測定され、荷重に対する力のグラフがプロットされる。
【0033】
繊維-金属の摩擦の測定用:第2の基材のサンプルを使用する代わりに、加重クロム鋼スレッジを摩擦面として使用すること以外は、試験は繊維-繊維の摩擦の場合と同様に実施する。
【0034】
どちらの方法も、約5%の精度で試験結果が得られる。通常、1試料につき5回の測定を行い、その平均値を引用する。さらに、スレッジを前進させるには、繊維表面が柔らかいほど小さな力が必要であり、繊維が硬いほど大きな力が必要である。同様に、「スクループ」および「力のピーク」は、繊維の凝集力を規定する。値が小さいほど、繊維はより柔らかく且つ滑りやすい。
【0035】
2)リキッドストライクスルー試験法(EDANA/INDA規格WSP70.3):この試験は、既知の体積の液体が、下にある乾燥した標準吸収パッドと接触している不織布を通過するのにかかる時間を測定するために使用される。試験片を試験機の上に置き、その上に所定量の試験液を注ぐ。試験片が液体を完全に吸収するまでの時間を測定する。これが、リキッドストライクスルー時間である。
【0036】
3)ウェットバック試験(EDANA/INDA規格WSP80.10によるウェットバック):ウェットバック試験は、乳児の体重程度の荷重をサンプルにかけることで実施する。再湿潤後のサンプルの重量を測定する。これが、ウェットバック値である。
【0037】
4)リキッドウィッキング速度(方法:-ISO9073):リキッドウィッキング試験は、垂直ストリップウィッキング試験に従って測定される水の輸送速度を測定するために使用される。布のストリップの一端を垂直に固定し、反対側の端を蒸留水を含む皿の中にぶら下げる。1分、5分、および10分の間隔で、ストリップに沿って水が運ばれた高さを測定し、センチメートル(cm)単位で報告する。ウィッキング値が高いほど、液体の水を輸送する能力が高いことを示す。
【0038】
5)スプレーテスト(織物のスプレーテスト評価の撥水性(IS390:1975:RA2013):この試験は、「濡れに対する抵抗力」を測定し、織物が、雨の形で織物に接触する水を吸収する能力によって決定される。
【0039】
6)生分解性試験:試験土壌を調製するため、肥沃な庭土、牛糞堆肥および砂を重量比で2:1:1の割合で十分に混合して堆肥を調製した。混合物をふるいに通し、含水率を25~27%に調整した。
【0040】
比較例1:20グラムの湿潤(乾燥繊維基準で100%の水分)未仕上げ(仕上げを適用していない)ビスコースステープルファイバーを適用のために採取した。活性基準で1%のフルオロカーボンエマルジョン(「Nuva N2114 Archoma」)を含む200mlの水を、材料と液体との比率(MLR)-1:20を用いて、2分間、繊維上に注いだ/スプレーした。さらに、このフルオロカーボン適用繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御し(繊維上にフルオロカーボン1%)、続いて、オーブン内で、130℃で20分間乾燥させた。
【0041】
得られた繊維は非常に優れた疎水性を示し、且つ前記繊維の摩擦特性は、標準ビスコース(市販グレード)繊維と比較して大きく影響を受けたことが観察された。
【0042】
実施例1:
【表1】

20グラムの湿潤(乾燥繊維基準で100%の水分)未仕上げ(仕上げを適用していない)ビスコースステープルファイバー(VSF)を適用のために採取した。活性(固形分)基準で1%の疎水性組成物-INV1を含む200mlの水を、MLR-1:20を用いて、2分間、繊維上に注いだ/スプレーした。さらに、この処理繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上にINV1%)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。
【0043】
得られた繊維は良好な疎水性を示し、且つ前記繊維の摩擦特性は標準ビスコース(市販グレード)繊維に匹敵することが見出されたことが確認された。
【0044】
実施例2:20グラムの湿潤(乾燥繊維基準で100%の水分)未仕上げ(仕上げを適用していない)ビスコースステープルファイバーを適用のために採取した。活性(固形分)基準で0.5%のINV1を含む200mlの水を、MLR-1:20を用いて、2分間、繊維上に注いだ/スプレーした。さらに、この処理繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上にINV1 0.5%)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。
【0045】
得られた繊維は中程度の疎水性を示し、且つ前記繊維の摩擦特性は標準ビスコース(市販グレード)繊維に匹敵することが見出されたことが確認された。
【0046】
実施例3:20gmの湿潤(乾燥繊維基準で水分100%)未仕上げ(仕上げを適用していない)ビスコースステープルファイバーを適用のために採取した。活性(固形分)基準で0.25%のINV1を含む200mlの水を、MLR-1:20を用いて、2分間、繊維上に注いだ/スプレーした。さらに、この処理繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上にINV1 0.25%)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。
【0047】
得られた繊維は低い疎水性を示し、且つ前記繊維の摩擦特性は標準ビスコース(市販グレード)繊維に匹敵することが見出されたことが確認された。
【0048】
実施例4:20gmの湿潤(乾燥繊維基準で水分100%)ダル不織布未仕上げ(仕上げを適用していない)ビスコースステープルファイバーを適用のために採取した。活性(固形分)基準で1%のINV1を含む200mlの水を、MLR-1:20を用いて、2分間、繊維上に注いだ/スプレーした。さらに、この処理繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上にINV1 1%)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。
【0049】
得られた繊維は、良好な疎水性、および標準不織布ビスコース(市販グレード)繊維に匹敵する摩擦特性を示すことが確認された。
【0050】
実施例5:20mgの湿潤(乾燥繊維基準で水分100%)未仕上げ(仕上げを適用していない)Birla excel(リヨセル)ステープルファイバーを適用のために採取した。活性(固形分)基準で1%のINV1を含む200mlの水を、MLR-1:20を用いて、2分間、繊維上に注いだ/スプレーした。さらに、この処理繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上にINV1 1%)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。
【0051】
得られた繊維は良好な疎水性を示し、且つ前記繊維の摩擦特性は標準的なBirla excel(リヨセル市販グレード)繊維に匹敵することが見出されたことが確認された。
【0052】
実施例6:20gmの湿潤(乾燥繊維基準で100%の水分)未仕上げ(仕上げを適用していない)ドープ染色ビスコースステープルファイバーを適用のために採取した。活性(固形分)基準で1%のINV1を含む200mlの水を、MLR-1:20を用いて、2分間、繊維上に注いだ/スプレーした。さらに、この処理繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上にINV1 1%)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。
【0053】
得られた繊維は良好な疎水性を示し、且つ前記繊維の摩擦特性は標準的なドープ染色(市販グレード)繊維に匹敵することが見出されたことが確認された。
【0054】
表2は、繊維の疎水性を24時間観察することによる、上記比較例1及び実施例1~6において得られた繊維の疎水性評価を示す。疎水性評価が高いほど、繊維の疎水性特性が高い。ここで、繊維が吸水せずに24時間水上に浮く場合、その結果、当該繊維には、評価10が与えられる。
【0055】
【表2】

表3は、上記比較例1および実施例1~6において得られた繊維の摩擦特性を示す。
【0056】
【表3】

以下の実施例は、所望の摩擦特性を有する疎水性セルロース系繊維を得ることにおける、カチオン性ポリマーおよび金属塩の役割を示している。
【0057】
実施例7:20gmの湿潤(乾燥繊維基準で100%の水分)未仕上げ(仕上げを適用していない)ビスコースステープルファイバーを適用のために採取した。活性(固形分)基準で1%のINV1を含む200mlの水を、MLR-1:20を用いて、2分間、繊維上に注いだ/スプレーした。さらに、この処理繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上にINV1 1%)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。乾燥繊維を冷水で洗浄して(ちょうど2分間浸漬し、次いですすぎ)、金属塩およびカチオン性ポリマーを除去し、再びオーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。
【0058】
得られた繊維は良好な疎水性を示し、繊維は非常に柔らかいことが確認された。
【0059】
以下の表4は、カチオン性ポリマーおよび金属塩を洗浄した後に得られた繊維の摩擦特性を示している。
【0060】
【表4】

実施例8:実施例7からの洗浄済み繊維を、0.1%硫酸アルミニウム水溶液および0.16%ポリDADMACで処理した。ここで、実施例7からの水洗乾燥ビスコースステープルファイバー10gmを適用のために採取した。200mlの0.1%硫酸アルミニウム水溶液および0.16%ポリDADMACを、MLR-1:20を用いて、2分間、繊維上に注いだ/スプレーした。さらに、この硫酸アルミニウムおよびポリDADMACを適用した繊維を、パディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上に0.1%硫酸アルミニウム+0.16ポリDADMAC)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。
【0061】
得られた乾燥繊維は、実施例7における水洗繊維と比較して、摩擦特性が改善された良好な疎水性を示すことが観察された。以下の表5は、実施例7において得られた繊維の摩擦特性および金属塩で処理した後に得られた繊維の摩擦特性を示している。
【0062】
【表5】

上記実施例8は、実施例7からの繊維を金属塩および高分子カチオン添加剤で処理することにより、繊維における繊維-繊維の摩擦が著しく増大することを示す。実施例9~11は、金属塩(硫酸アルミニウム)および高分子カチオン化合物(ポリDADMAC)を個別におよび組み合わせて有するAKDを含む疎水性組成物で、繊維を処理した場合の結果を示す。
【0063】
実施例9:20gmの湿潤(乾燥繊維基準で水分100%)未仕上げ(仕上げを適用していない)ビスコースステープルファイバー(VSF)を適用のために採取した。活性基準で1%のAKD溶液(商業的供給源から取得-Novasize-1500AKD)および0.1%の硫酸アルミニウムを含む200mlの水を、2分間、繊維上に注ぎ/スプレーし(MLR1:20)、さらに、この処理繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上に1%のAKD溶液および0.1%の硫酸アルミニウム)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。得られた繊維は良好な疎水性を示し、および繊維の摩擦特性を表5において説明する。
【0064】
実施例10:20gmの湿潤(乾燥繊維基準で100%の水分)未仕上げ(仕上げを適用していない)ビスコースステープルファイバー(VSF)を適用のために採取した。活性基準で1%のAKD溶液(商業的供給源から取得-Novasize-1500AKD)および活性基準で0.16%のポリDADMAC(高分子カチオン添加剤)を含む200mlの水を、2分間、繊維上に注いだ/スプレーした(MLR1:20)。さらに、この処理繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上に1%のAKD溶液および0.16%のポリDADMAC)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。得られた繊維は良好な疎水性を示し、および前記繊維の摩擦特性を表5において説明する。
【0065】
実施例11:20gmの湿潤(乾燥繊維基準で100%の水分)未仕上げ(仕上げを適用していない)ビスコースステープルファイバー(VSF)を適用のために採取した。活性基準で1%のAKD溶液(商業的供給源から取得-Novasize-1500AKD)、0.1%の硫酸アルミニウム、および活性基準で0.16%のポリDADMACを含む200mlの水を、2分間、繊維上に注いだ/スプレーし(MLR1:20)、この処理繊維をパディングマングルに通して、乾燥繊維基準で100%に最終水分を制御した(繊維上に1%のAKD溶液、0.1%の硫酸アルミニウム、および0.16%のポリDADMAC)。その後、繊維を、オーブン内で、105℃で20分間乾燥させた。得られた繊維は良好な疎水性を示し、および前記繊維の摩擦特性を表5において説明する。
【0066】
【表6】

実施例12:ビスコースステープルファイバーを商業ライン(連続ビスコース製造ライン)で製造した。ここでは、実施例4において記載した手順に従って、疎水性組成物を、未仕上げ繊維(仕上げを適用していない繊維)に乾燥前に塗布した。繊維の水分レベルは、実施例4に従ってINV1エマルジョンの適用前後で維持した。得られた繊維は、11.08Nの摩擦力および3.14Nのスクループを伴い、10の良好な疎水性評価を示したことが確認された。
【0067】
さらに、この繊維を、ハイドロエンタングルメント法を用いて不織布化して、織物段階での疎水性能を見た。得られた織物は、実施例4と同様、評価10の疎水性性能を示した。さらに、この織物を、さまざまなパラメータについて試験した。以下の表6は、得られた疎水性織物の特性を、本発明の疎水性組成物で処理することなく標準ビスコースステープルファイバーから得られた従来のビスコース織物(50gsmを有するスパンレース織物)に対して示す。
【0068】
【表7】

表7は、疎水性繊維から得られた織物は、接触角>90°であり、通常のビスコースが2.6秒であることと比較すると、リキッドストライクスルー時間が160秒であるなど、望ましい疎水特性を示すことを示している。疎水性繊維においては、いくつかの不織布用途において使用するための重要な特性の1つであるウィッキングが観察されない。
【0069】
さらに、開示された繊維から調製した不織布を、通常のビスコースステープルファイバーから得られた織物と比較して、土壌の生分解について試験した。図1A図1B図1Cおよび図1Dは、それぞれ、第1週、第2週、第3週および第4週における、通常のVSF織物のカメラ画像を示す。図2A図2B図2Cおよび図2Dは、それぞれ、第1週、第2週、第3週および第4週における、100%疎水性VSF織物のカメラ画像を示す。図3A図3Bおよび図3Cは、それぞれ、第1週、第2週および第3週における、通常のVSF織物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図4A図4Bおよび図4Cは、それぞれ、第1週、第2週および第3週における、100%疎水性VSF織物のSEM画像を示す。
【0070】
4週間でほぼ完全に分解することが確認された。走査型電子顕微鏡はまた、3週間で繊維の構造が失われることを確認し、第4週目にはサンプルは試験に使用できなくなった。
【0071】
〔産業上の利用可能性〕
開示された方法は、疎水性組成物で処理されていない再生セルロース系繊維と同様の摩擦特性を維持しながら、再生セルロース繊維に疎水性を付与する。
【0072】
開示された疎水性再生セルロース系繊維の摩擦特性のおかげで、当該繊維は既存の不織布紡績機で、任意の追加の設備や機械における変更なしに容易に紡績することができる。この繊維を紡糸機で紡糸するためには、ほぼ全ての紡糸機を標準繊維のように設計および最適化して、最大限の生産量を得る必要がある。そのためには、繊維の凝集力が標準ビスコース繊維(市販グレードの仕上げ繊維)通りである必要がある。繊維の凝集力は、高速でのカード操作、機械からのウェブの取り出し、ウェブの完全性、ウェブの敷設および最終織物における強度を達成するために重要である。凝集力が低いと、カード中の繊維の動きが制御できなくなり、斑状のウェブ、ウェブの伸びおよび後続のスパンレース処理またはニードルパンチ処理に移行する際にウェブの切断を引き起こす可能性がある。前記繊維は、標準的な未処理繊維と比較して凝集力を有するため、前記繊維の処理のために機械における変更は必要ない。
【0073】
開示された方法は、疎水性合成繊維を必要とする用途において生分解性セルロース系繊維を使用することを可能にする。さらに、この方法はFDAによって認可された化学薬品を使用しており、環境的に安全である。従って、本製法はカーボンフットプリントが著しく低く、環境に優しい。
【0074】
開示された方法は連続法であり、コスト効率が高い。疎水性は繊維の段階で達成できるため、織物の段階で他の疎水剤のいずれかを使用する必要はない。さらに、疎水性だけでなく所望の摩擦特性も、布地製造の様々な段階を通じて一貫したままである。
【0075】
開示された疎水性繊維は、綿、標準ビスコースステープルファイバー、リヨセル、合成繊維(例えば、ポリエステル繊維またはポリプロピレン繊維)、ポリ乳酸(PLA)などのような他の繊維とブレンドすることができる。開示された繊維は、病院で使用するための、マスク、タオル、およびベッドシーツまたはベッドライナー;おむつ、個人のヘルスケア、衛生などの衛生製品、および農業用カバー;スポーツウェア、カバー、キャップなど;食品産業における包装または撥水性を必要とする包装;疎水性ワイプなどを製造するために使用することができる。
【0076】
さらに、開示された疎水性繊維は、綿、標準ビスコースステープルファイバー、リヨセル、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、合成繊維(例えば、ポリエステル繊維またはポリプロピレン繊維)、または天然繊維および/または合成繊維の組合せなどの広範な材料から、個人の衛生製品、特に生理用ナプキンの適切な不織布最上層を製造するために使用することができる。開示された繊維のウェットバック(再湿潤)、リキッドストライクスルー時間、接着強度などのような技術的パラメータは、繊維がそのような製品の最上層またはシートを形成するために使用できることを示している。さらに、開示された繊維によって形成された前記最上層は、液体に対して透過性を維持し、しかも非吸収性であり、生分解性の要件を満たすことが観察された。従って、衛生用品の最上層を形成するために開示された繊維を使用することにより、身体が乾燥した状態に保たれ、それにより身体の汚れを減らし、着用者にとってより快適な感触が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1A】第1週、第2週、第3週および第4週における、土壌分解を受けたときの通常のVSF(ビスコースステープルファイバー)織物のカメラ画像を示す。
図1B】第1週、第2週、第3週および第4週における、土壌分解を受けたときの通常のVSF(ビスコースステープルファイバー)織物のカメラ画像を示す。
図1C】第1週、第2週、第3週および第4週における、土壌分解を受けたときの通常のVSF(ビスコースステープルファイバー)織物のカメラ画像を示す。
図1D】第1週、第2週、第3週および第4週における、土壌分解を受けたときの通常のVSF(ビスコースステープルファイバー)織物のカメラ画像を示す。
図2A】第1週、第2週、第3週および4週における、土壌分解を受けたときの100%疎水性VSF織物のカメラ画像を示す。
図2B】第1週、第2週、第3週および4週における、土壌分解を受けたときの100%疎水性VSF織物のカメラ画像を示す。
図2C】第1週、第2週、第3週および4週における、土壌分解を受けたときの100%疎水性VSF織物のカメラ画像を示す。
図2D】第1週、第2週、第3週および4週における、土壌分解を受けたときの100%疎水性VSF織物のカメラ画像を示す。
図3A】第1週、第2週および第3週における、土壌分解を受けたときの通常のVSF織物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図3B】第1週、第2週および第3週における、土壌分解を受けたときの通常のVSF織物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図3C】第1週、第2週および第3週における、土壌分解を受けたときの通常のVSF織物の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図4A】第1週、第2週および第3週における、土壌分解を受けたときの100%疎水性VSF織物のSEM画像を示す。
図4B】第1週、第2週および第3週における、土壌分解を受けたときの100%疎水性VSF織物のSEM画像を示す。
図4C】第1週、第2週および第3週における、土壌分解を受けたときの100%疎水性VSF織物のSEM画像を示す。
図1A-2D】
図3A-4C】
【国際調査報告】