(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】非相反ビームステアラブルメタサーフェス
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/36 20060101AFI20240118BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20240118BHJP
H01Q 21/08 20060101ALI20240118BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01Q3/36
H01Q13/08
H01Q21/08
H01Q1/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550335
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 CA2020051514
(87)【国際公開番号】W WO2022094686
(87)【国際公開日】2022-05-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523171582
【氏名又は名称】ラティス・インテリジェンス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LATYS INTELLIGENCE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タラバティ,サジャド
(72)【発明者】
【氏名】エレフテリアデス,ジョージ・ブイ
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA09
5J021AB06
5J021FA06
5J021GA01
5J021GA05
5J021GA08
5J021JA02
5J045AA02
5J045AA21
5J045DA10
5J045FA02
5J045JA17
5J046AA04
5J046AB03
5J046AB13
5J046UA02
(57)【要約】
本発明は、全二重非相反ビームステアリング透過位相勾配メタサーフェスを提示する。メタサーフェスは、2つの誘電体層の間に介装された導体層を備える。誘電体層の各々に、複数のメタ原子が埋め込まれている。メタ原子の各々は、位相シフタと、アンテナ素子とを備える。メタサーフェスは、メタサーフェスの表面において電磁波を受信すると、受信した波動の周波数と同一の周波数を有する波動を、空間内の異なる方向へと送信するように機能する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームステアリング用のメタサーフェスであって、
2つの誘電体層の間に介装された導体層と、
前記誘電体層の各々に電気的に接続された少なくとも1つのメタ原子と
を備え、
前記少なくとも1つのメタ原子は、少なくとも1つの非相反チューナブル位相シフタと、少なくとも1つのアンテナ素子とを備え、
或る周波数を有する入射電磁信号が前記メタサーフェスにおいて受信されたとき、前記メタサーフェスは、前記入射波の前記周波数と同一の周波数を有する波動を送信する、メタサーフェス。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアンテナ素子は、少なくとも1つのパッチ放射体を備える、請求項1に記載のメタサーフェス。
【請求項3】
DCおよびRFバイアスフィードが、前記導体層内に埋め込まれている、請求項1に記載のメタサーフェス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのメタ原子は、前記送信波の少なくとも1つの特性を制御するために変調信号でバイアスされる、請求項1に記載のメタサーフェス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの特性は、送信または受信の角度を含む、請求項4に記載のメタサーフェス。
【請求項6】
前記少なくとも1つのメタ原子に電気的に接続された周囲回路をさらに備える、請求項5に記載のメタサーフェス。
【請求項7】
前記周囲回路は、少なくとも1つの180°位相シフタ、少なくとも1つのバラクタダイオード、少なくとも1つのチョークインダクタンス、および少なくとも1つのデカップリングコンデンサを備える、請求項6に記載のメタサーフェス。
【請求項8】
前記少なくとも1つのチョークインダクタンスおよび前記少なくとも1つのデカップリングコンデンサは、前記入射電磁波の漏れを防止し、前記メタサーフェスの前記誘電体層の各々における前記変調信号を切り離す、請求項7に記載のメタサーフェス。
【請求項9】
ビームステアリング用のメタサーフェスシステムであって、
2つの誘電体層の間に介装された導体層と、
前記誘電体層の各々に電気的に接続されたメタ原子のアレイと
を備え、
前記メタ原子のアレイは、少なくとも1つの非相反チューナブル位相シフタと、少なくとも1つのアンテナ素子とを備え、
或る周波数を有する入射電磁信号が前記メタサーフェスにおいて受信されたとき、前記メタサーフェスは、前記入射波の前記周波数と同一の周波数を有する波動を送信する、メタサーフェスシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアンテナ素子は、少なくとも1つのパッチ放射体を備える、請求項9に記載のメタサーフェスシステム。
【請求項11】
DCおよびRFバイアスフィードが、前記導体層内に埋め込まれている、請求項9に記載のメタサーフェスシステム。
【請求項12】
前記メタ原子のアレイは、前記送信波の少なくとも1つの特性を制御するために変調信号でバイアスされる、請求項9に記載のメタサーフェスシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの特性は、送信または受信の角度を含む、請求項12に記載のメタサーフェスシステム。
【請求項14】
前記メタ原子のアレイに電気的に接続された周囲回路をさらに備える、請求項13に記載のメタサーフェスシステム。
【請求項15】
前記周囲回路は、少なくとも1つの180°位相シフタ、少なくとも1つのバラクタダイオード、少なくとも1つのチョークインダクタンス、および少なくとも1つのデカップリングコンデンサを備える、請求項14に記載のメタサーフェスシステム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのチョークインダクタンスおよび前記少なくとも1つのデカップリングコンデンサは、前記入射電磁波の漏れを防止し、前記メタサーフェスの前記誘電体層の各々における前記変調信号を切り離す、請求項15に記載のメタサーフェスシステム。
【請求項17】
メタサーフェスを用いたビームステアリングの方法であって、
時間変化変調信号でメタ原子をバイアスすること
を含み、
前記変調信号が、少なくとも1組の勾配位相シフトを受け、
前記変調信号が、次いで、少なくとも1つのバラクタをバイアスして非相反位相シフトを生じさせる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
以下は、波動工学および電磁波放射制御のためのメタサーフェスの分野に関する。具体的には、本発明は、全二重ビームステアリングのための電磁波の制御および調整のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
無線電気通信システムの絶え間ない進歩が、波動工学および放射制御の分野における改善を要求している。
【0003】
非相反放射は、送信ビームが受信ビームと異なる電磁波放射を指す。典型的には、フェライト系材料が、非相反性の実現に使用されてきた。しかしながら、フェライト系材料は、重く、高価であり、プリント回路基板技術と互換性がない。さらに、高周波、すなわち5G、6G、および将来の世代の電気通信用途に、適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の目的は、上述の欠点のうちの少なくともいくつかを克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
一実施形態において、メタサーフェスが提供される。メタサーフェスは、2つの誘電体層の間に介装された導体層を備える。誘電体層の各々に、メタ原子が埋め込まれている。メタ原子の各々は、電磁波がメタサーフェスの表面において受信されると、メタサーフェスが、受信した波動の周波数と同一の周波数を有する波動を、空間内の異なる方向に向かって送信するように、位相シフタおよびアンテナ素子を備える。
【0006】
別の実施形態においては、メタサーフェスシステムが提供される。メタサーフェスシステムは、2つの誘電体層の間に介装された導体層を備える。誘電体層の各々に、複数のメタ原子が埋め込まれている。複数のメタ原子のうちの各々のメタ原子は、周囲回路を備える。周囲回路は、少なくとも1つのバラクタ、インダクタ、および/またはコンデンサに電気的に接続された少なくとも1つの伝送線路ベースのインターコネクタに電気的に接続された少なくとも1つのマイクロストリップパッチ放射体から構成されてよい。
【0007】
さらに別の実施形態においては、メタサーフェスを用いたビームステアリングの方法が提供される。本方法は、時間変化変調信号でメタ原子をバイアスすることを含み、変調信号が、少なくとも1組の勾配位相シフトを受け、変調信号が、次いで、少なくとも1つのバラクタをバイアスして非相反位相シフトを生じさせる。
【0008】
図面の簡単な説明
次に、いくつかの実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】勾配非相反位相シフトメタ原子のアレイによって形成されたメタサーフェスシステムの概略図を示している。
【
図2】透過非相反位相シフトメタ原子の概略図を示している。
【
図3】非相反位相シフトメタ原子によって形成されたメタサーフェスシステムの分解図を示している。
【
図4】
図3に示したメタサーフェスの拡大図を示している。
【
図5】非相反位相シフトメタ原子の回路モデルを示している。
【
図6】メタサーフェスおよび接続回路の写真を示している。
【
図7】メタサーフェスおよび接続回路の別の写真を示している。
【
図8】非相反放射ビームメタサーフェスの実験設備の概略図を示している。
【
図9】全二重ビームステアリング機能を実証する全波シミュレーション結果を示している。
【
図10】実験測定の結果を示すチャートを示している。
【
図11】非相反ビームステアラブルメタサーフェスの適用の可能性を示す概略図を示している。
【
図12a】受信状態における非相反位相シフトメタ原子の動作を示している。
【
図12b】送信状態における非相反位相シフトメタ原子の動作を示している。
【
図13a】奇数励起に関するパッチ放射体による波動放射を示している。
【
図13b】偶数励起に関するパッチ放射体による波動伝達を示している。
【
図14a】非相反位相シフトメタ原子内の偶数時間高調波の伝播の概略図を示している。
【
図14b】非相反位相シフトメタ原子内の偶数時間高調波の伝播の全波シミュレーション結果を示している。
【
図15a】非相反位相シフトメタ原子内の奇数時間高調波の伝播の概略図を示している。
【
図15b】非相反位相シフトメタ原子内の奇数時間高調波の伝播の全波シミュレーション結果を示している。
【
図16a】位相時間変調メタ原子における非相反位相シフトを示している。
【
図16b】位相時間変調メタ原子の分散図の概略図を示している。
【
図17】非相反位相シフトメタ原子の分散図の概略図を示している。
【
図18】非相反位相シフトメタ原子の動作原理を示している。
【
図23】全波シミュレーションおよび実験結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明は、全二重非相反ビームステアリング透過位相勾配メタサーフェスを提示する。メタサーフェスを、ソースアンテナの上に配置して、ソースアンテナの放射パターンを変換し、送信状態および受信状態について異なる放射パターンを導入することができる。メタサーフェスは、指向性であり、それぞれ異なり、かつ非対称である送信および受信放射ビーム、ならびにチューン可能なビーム形状を備える。さらに、これらのビームを、変調位相を変更することによってステアすることができる。すべての望ましくない時間高調波が、各々の単位セルにおいて抑制され、ポイントツーポイント全二重通信などの実際の用途にとって最も重要な高い変換効率がもたらされる。
【0011】
ここで図面を参照すると、
図1が、メタサーフェス100の構造を示している。メタサーフェス100は、一般に、時間変調メタ原子101のアレイから構成される。メタ原子101は、波動受信、非相反ビームステアリングのための非相反位相シフト、不要な時間高調波のフィルタリング、および波動放射などの動作を実行する。構造100は、電磁波の透過受信および再放射、ならびに望ましくない時間高調波のフィルタリングを達成する。ツイン時間変調メタ原子101が、望ましくない時間高調波の励起を本質的に妨げ、例えばポイントツーポイント全二重電気通信などの実際の用途にとって最も重要な高い変換効率をもたらす。一例において、受信放射ビーム(RX)102が、メタ原子101のアレイに入力される。メタ原子101は、変調位相を変更することによって放射ビーム102をステアすることができるが、送信ビーム103の周波数は、受信ビーム102の周波数と同じままである。任意の送信または受信角度が可能であり、必要に応じて制御可能であることを、理解できるであろう。
【0012】
図2が、単位セルメタ原子101の概略図を示している。具体的には、
図2は、透過非相反位相シフト放射メタ原子を示している。これは、位相シフタ105を介して相互接続された2つのアンテナ素子を用いて構成される。メタ原子101は、2つのアンテナ素子104を備える。アンテナ素子104は、電磁波102、103を送信および受信する。アンテナ素子は、パッチ放射体、または他の適切なアンテナを含むことができる。さらに、メタ原子101は、位相シフタ105を備える。位相シフタ105は、好ましくは、チューン可能な非相反位相シフタである。メタ原子101を、時間変調メタ原子におけるラウンドトリップ光遷移における非相反位相シフトを利用することができ、周波数変化をもたらさないため、ツイン時間変調メタ原子と見なすことができる。したがって、順方向の入射波102の周波数は、逆方向の送信波103の周波数と同じである。
【0013】
図3が、4×4のツイン時間変調メタ原子101を備える完位相勾配メタサーフェス100の全体の概略図を示している。
図3に提示の実施形態は、メタ原子の4×4アレイを示しているが、1×2、2×1、3×2、5×10、AxB、またはAxA(AおよびBは、任意の正の整数)などの任意のサイズのアレイが可能である。メタサーフェス100は、2つの誘電体層106の間に介装された導体層107を備える。誘電体層106の各々に、複数のメタ原子101が埋め込まれている。メタ原子101の各々は、位相シフタ105と、アンテナ素子104とを備える。位相シフタ105は、非相反180°位相シフタ105aまたは勾配位相シフタ105bなどの任意の適切な位相シフタであってよい。メタサーフェスは、変調入力素子108をさらに備えてもよい。
【0014】
図4が、
図3に示した単一の単位セルメタ原子101の拡大図を示している。アレイ内の各々のメタ原子101は、メタサーフェス100の性能を向上させる回路素子を有する周囲回路109を備えることができる。メタサーフェス100は、多層構造である。導体層107が、2つの誘電体層106を互いに隔てている。誘電体層106の各々に、複数のメタ原子101が埋め込まれている。位相シフタ105およびアンテナ素子104を含むメタ原子101が、誘電体層106に埋め込まれている。周囲回路109は、少なくとも1つのバラクタ、インダクタ、および/またはコンデンサに電気的に接続された少なくとも1つの伝送線路ベースのインターコネクタに電気的に接続された少なくとも1つのマイクロストリップパッチ放射体から構成されてよい。回路素子が、メタサーフェスの機能を強化または最適化するために修正、変更、または改造されてもよいことを、理解できるであろう。
【0015】
導体層は、随意により、ビアまたは相互接続110を備えることができる。相互接続110は、第1の周波数における相殺的干渉およびにおける相殺的干渉のためのものである。
【0016】
図5が、第1のメタサーフェス100b内の第1のメタ原子101aを第2の反対側のメタサーフェス100b内の第2のメタ原子101bに接続した回路を示す等価回路モデルを示している。この実施形態において、メタ原子101は、2つのマイクロストリップパッチ放射体104、1つの伝送線路ベースのインターコネクタ、4つのバラクタ、4つのインダクタ、8つのコンデンサ、および2つのメタ原子を互いに隔てる金属シートから構成される。
【0017】
パッチ放射体104の等価回路モデルは、2つのインダクタを2つのコンデンサおよび1つの抵抗と並列に有するRCL回路から構成されてよい。任意の適切なアンテナ素子104が可能であることに留意されたい。周囲回路109は、2つのパッチ放射体に加えて、例えば、2つの180°位相シフタ、位相φ1およびφ2をそれぞれ有する2つの位相シフタ、4つのバラクタダイオードDvar、4つのチョークインダクタLchk、および8つのデカップリングコンデンサCcplを含むことができる。インダクタンスLchkおよびキャパシタンスCcplは、入射波の変調経路への漏れを効率的に防止し、単位セルの上側および下側の2つの変調信号(180°の位相差を有する)を分離する。
【0018】
図5は、単位セルの等価回路を示している。単位セルは、第1のメタ原子において受信される変調信号(Ω)でバイアスされる。変調信号を、送信の角度を制御するために使用することができる。変調信号は、第1の勾配位相シフタに関してφ
1の位相シフトを受ける一方で、第2の勾配位相シフタに関してφ
2の位相シフトを受ける。次いで、変調信号がバラクタD
varをバイアスし、所望の非相反位相シフトを生成する。入射ビームは、アンテナ素子104aで受信され、次いで位相シフトを受け、メタサーフェスの反対側100bへと放射される。同様に、入射ビームは、アンテナ素子104bで受信される場合、位相シフトを受け、メタサーフェスの反対側100aへと放射される。勾配位相シフタφ
1またはφ
2などの非相反位相シフタ105は、入射波について、メタサーフェスのいずれの側から受信されたかに応じて異なる処理をもたらす。ビームステアリングが、非相反チューナブル位相シフタを使用することによって達成される。
【0019】
送信ビームの周波数が入射ビームの周波数に等しいことが適切である。入射ビームおよび送信ビームの周波数が異なる場合、受信機における複雑さ、またはチャネル干渉などの望ましくない影響が存在し得る。
【0020】
図6が、メタサーフェス100および接続回路の写真を示している。変調信号Ωが、SubMiniature version A(SMA)コネクタなどのRF同軸コネクタを介してメタサーフェスに供給される。この実施形態において、メタサーフェスは、8つの勾配位相シフタを含み、すなわち非相反ビームステアリングに必要な変調位相シフトを提供する各側の4つの位相シフタを含む。加えて、各々の勾配位相シフト変調信号の位相シフトバージョンを達成するために、8つの180°位相シフタ(π)が利用される。
図6は、製造されたプロトタイプの上面図を示しており、
図7が、底面図を示している。所望の平均静電容量(平均誘電率)を達成するために、DC信号がバラクタに印加される。バイアスティー111が、DCバイアスと変調信号108とを分離するために使用される。
【0021】
接続回路は、バイアスティー111をさらに含むことができる。バイアスティーは、RF回路をバイアスするためにDC電流または電圧を供給するために使用されるコンポーネントである。バイアスティー111は、3ポートデバイスである。この実施形態において、RF変調信号は、バイアスティー111のポート1に入射する。DCバイアス112が、バイアスティー111のポート3に印加される。RF+DC信号からなる変調信号108が、メタサーフェス100へとバイアスティー111を通過する。
【0022】
一実施形態においては、合計で64個のSMV1247-079LFバラクタ(Dvar)、Lchk=20nHの64個のインダクタ、およびCcpl=5pFの128個のデカップリングコンデンサが使用される。メタサーフェスは、3層回路、すなわち1つの導体層および高さ50ミルのRogers RO3210で作られた2つの誘電体層として製造される(d=100ミル)。
【0023】
図8が、非相反放射ビームメタサーフェスの実験的実証を示す概略図を示している。測定設備は、2つの信号発生器、スペクトルアナライザ、およびDC電源からなる。実験的実証の結果を
図9に示す。
図9は、時間変調勾配透過メタサーフェスの全二重角度対称/非対称ビームステアリング機能を実証する全波シミュレーション結果をプロットしている。この図において、4つの異なる勾配プロファイル、すなわちA、B、C、およびDが考慮される。
【0024】
図10が、製造された非相反放射ビームメタサーフェスの散乱パラメータをプロットしている。この図は、3つの異なる周波数、すなわちwi-Ω、wi、およびwi+Ωを強調している。2つの時間高調波wiおよびwi+Ωが、構造の通過帯域内にある一方で、wi-Ωは、構造の阻止帯域内にあり、抑制されている。S11パラメータは、順方向反射係数を指し、S21パラメータは、順方向透過係数を指す。
図10は、変調周波数において、ビームが完全に透過し、ビームがまったく反射されないことを示している。さらに、透過波の周波数は、受信波の周波数と同一である。
【0025】
図11が、非相反ビームステアリングメタサーフェスの適用を示している。例えば、メタサーフェスは、衛星アンテナなどのアンテナに適用されてよく、メタサーフェスの下側における受信波を、周波数を変化させることなくメタサーフェスの上側の衛星アンテナに向かって透過させる。送信モードにおいて、メタサーフェスの上部の衛星アンテナからの放射波は、周波数を変化させることなくメタサーフェスの下側へと透過し、地球に向かって再放射される。受信および送信ビームは、必要に応じてステアされてよい。これは、電気通信分野の用途に関してきわめて実用的であり、5G、6G、および将来の世代の電気通信用途を可能にすることができる。
【0026】
メタサーフェスは、波動の同時の送信および受信が異なる角度で実行される全二重送信を実現する機会を与える。この構造をアンテナ用のレドームとして使用できるように、透過状態において非相反ビーム動作を達成するための機構が提案される。入射波と送信波とが、同じ周波数を共有する。時間変調メタ原子における周波数-位相遷移が、放射非相反位相シフタを実現するために使用される一方で、すべての望ましくない時間高調波は抑制される。
【0027】
本提案の構造の帯域幅拡張に固有の制限が存在しないことに留意されたい。本提案のメタ原子の周波数帯域幅を、マイクロストリップパッチ素子の帯域幅拡張のためのエンジニアリング手法を使用することによって、拡張することができる。本提案のツインメタ原子トポロジにおいて、望ましくない高調波の抑制は、構造の狭帯域動作に関連しない。アーキテクチャ全体が同じやり方で動作し、すなわち2つの所望の時間高調波のみが構造の通過帯域内に入り、他のすべての望ましくない高調波が阻止帯域内に入るように、広帯域パッチ素子を使用すると同時に変調周波数を高めることができることを、理解できるであろう。
【0028】
図12aが、受信状態における非相反位相シフトメタ原子の動作を示している。
図12bが、送信状態における非相反位相シフトメタ原子の動作を示している。
【0029】
図13aが、奇数励起に関するパッチ放射体による波動放射を示している。
図13bが、偶数励起に関するパッチ放射体による波動伝達を示している。
【0030】
図14aが、非相反位相シフトメタ原子内の偶数時間高調波の伝播の概略図を示している。
図14bが、非相反位相シフトメタ原子内の偶数時間高調波の伝播の全波シミュレーション結果を示している。
【0031】
図15aが、非相反位相シフトメタ原子内の奇数時間高調波の伝播の概略図を示している。
図15bが、非相反位相シフトメタ原子内の奇数時間高調波の伝播の全波シミュレーション結果を示している。
【0032】
図16aが、位相時間変調メタ原子における非相反位相シフトを示している。
図16bが、位相時間変調メタ原子の分散図の概略図を示している。
【0033】
図17が、非相反位相シフトメタ原子の分散図の概略図を示している。
図18が、非相反位相シフトメタ原子の動作原理を示している。
【0034】
図19~
図27が、非相反放射ビームメタサーフェスの非相反角度非対称送信および受信放射パターンについての全波シミュレーションおよび実験結果をプロットしている。この実験的実施形態において、特定の送信放射角度(θ
TX=45°)における送信放射パターンと受信放射パターンとの間の実験的分離は約15.8dBであり、特定の受信放射角度(θ
RX=-27°)における分離は約10.4dBである。より高い分離レベルを達成するために、変調パラメータを変更することができ、あるいはツインメタ原子の数を増やすことによって、より指向性のメタサーフェスを使用することができる。表1が、本開示の非相反ビームステアラブルメタサーフェス性能の概要を示している。
【0035】
【0036】
本発明を特定の具体的な実施形態を参照して説明したが、添付の特許請求の範囲に概説される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、そのさまざまな修正が当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】