(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ナマコ生殖腺抽出物を含む組成物、ナマコ卵巣抽出物から由来した化合物、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07J 71/00 20060101AFI20240118BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20240118BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240118BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240118BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240118BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240118BHJP
A61K 35/616 20150101ALI20240118BHJP
【FI】
C07J71/00 CSP
A61K31/58
A61P3/06
A61P3/10
A61P3/04
A61P25/28
A61K35/616
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559958
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2021018696
(87)【国際公開番号】W WO2022124840
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0172701
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523213848
【氏名又は名称】バイオインフォーマティックス アンド モレキュラー デザイン リサーチ センター
(71)【出願人】
【識別番号】523223434
【氏名又は名称】ベンシック バイオ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】ノ キョン テ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ソクキュ
(72)【発明者】
【氏名】リ ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】チャン アラ
(72)【発明者】
【氏名】ソン ズキョン
(72)【発明者】
【氏名】ノ チン ファン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジウォン
(72)【発明者】
【氏名】アン ソヒ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C087
4C091
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA13
4C086MA01
4C086MA04
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4C086ZA70
4C086ZB11
4C086ZC33
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4C087BB61
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4C087CA06
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4C087ZC33
4C087ZC35
4C091AA02
4C091BB02
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE06
4C091FF02
4C091FF06
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
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4C091MM04
4C091NN12
4C091PA02
4C091PA05
4C091PB04
4C091QQ07
4C091QQ15
4C091QQ17
4C091RR13
(57)【要約】
本発明は、ナマコ生殖腺抽出物、望ましくは卵巣抽出物から分離した新規サポニン化合物、ナマコ生殖腺抽出物またはナマコ生殖腺抽出物から分離した化合物の新規の用途を提供する。本発明は、ナマコ生殖腺、望ましくは卵巣抽出物またはナマコ生殖腺、望ましくは卵巣抽出物から分離した化合物を含む、肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つ以上の疾患を治療または予防する効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式S1、S2、S3、S4またはS9で表される化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項2】
前記化合物がナマコの卵巣から抽出または分離したものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つの疾患の予防または治療用組成物であって、
ナマコ生殖腺抽出物またはナマコ生殖腺から由来したサポニン化合物を有効成分として含む、組成物。
【請求項4】
前記ナマコ生殖腺がナマコの卵巣である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ナマコ生殖腺抽出物は、ナマコ生殖腺を45~85%(V/V)エタノール水溶液を溶媒として抽出したものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記ナマコ生殖腺抽出物は、ナマコ生殖腺を48~55%(V/V)エタノール溶媒で抽出したものである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナマコ生殖腺抽出物は、ナマコ生殖腺を48~55%(V/V)エタノール水溶液で抽出した抽出物を、ブタノールを溶媒として分画したブタノール分画物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記サポニン化合物が、下記の化学式S1、S2、S3、S4、S5、S6、S8及びS9からなる群より選択されたいずれか一つ以上を含む、請求項3に記載の組成物。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【請求項9】
前記ナマコ生殖腺抽出物またはナマコ生殖腺から由来したサポニン化合物が、PPARγ、FAS、aP2、及びC/EBPαからなる群より選択されたいずれか一つ以上のタンパク質の発現を抑制する、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記ナマコ生殖腺抽出物またはナマコ生殖腺から由来したサポニン化合物が、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化を抑制するかまたは細胞内の脂肪蓄積を抑制する、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
ナマコ生殖腺抽出物の肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つ以上の疾患の予防または治療効果を改善する方法であって、
下記の化学式S1、S2、S3、S4、S5、S6、S8及びS9からなる群より選択されたいずれか一つ以上のサポニン化合物を増加させる、方法。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【請求項12】
前記ナマコ生殖腺抽出物がナマコ卵巣抽出物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法では、ナマコ卵巣を48~55%(V/V)エタノール水溶液で抽出し、抽出物からブタノール分画を収得する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月10日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0172701号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。本発明は、ナマコ生殖腺抽出物の新規の用途、望ましくはナマコ生殖腺抽出物の抗肥満、抗糖尿、脂質異常症の改善、及び/または炎症性疾患の改善の用途に関し、ナマコ生殖腺抽出物から分離した新たな化合物、または前記化合物の用途、望ましくは抗肥満、抗糖尿、脂質異常症の改善、及び/または炎症性疾患の改善の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ナマコ(sea cucumber、学名Stichopus japonicus)は、アジア国家、特に中国、日本及び韓国で重要な食材料として使われる伝統的な海産物である。ナマコから分離した多様な生理活性物質が存在する。特に、コラーゲンペプチド、多糖類などは多様な生物学的活性を示すことが知られている。ナマコの卵巣は海鼠子と称され、珍味として有名である。
【0003】
一方、脂肪細胞では、脂肪分解(lipolysis)と脂肪生成(adipogenesis)を通じて脂質代謝が起き、脂肪生成の際、脂肪前駆細胞が増殖と分化過程を経て成熟脂肪細胞に分化し、最終的に細胞内に脂肪が蓄積されるようになる。前記脂肪細胞の分化過程を誘導する転写因子として、PPARγ(Peroxisome Proliferator Activated Receptor γ)及びC/EBPα(CCAAT enhancer binding proteinα)などが報告されている。前記転写因子は、脂肪細胞の分化過程のうちの異なる時点で発現が誘導され、相互作用を通じて脂肪細胞特異遺伝子の発現を調節し、脂肪代謝の活性化と脂肪細胞分化を漸進的に誘導する。これらは肥満を誘導する脂質合成(lipogenesis)及び脂肪生成(adipogenesis)に関与すると知られている。
【0004】
脂質異常症は、高脂血症、高コレステロール血症、高中性脂肪血症を含む疾患名である。これは、血中に総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪が増加した状態であるか、または、HDLコレステロールが減少した状態である。血液検査を通じて、総コレステロール200mg/dL以下、LDLコレステロール130mg/dL以下、HDLコレステロール60mg/dL以上、中性脂肪150mg/dL以下を基準にして一つでも異常があれば、脂質異常症と診断する。脂質異常症に対する診断は、広く通用されている米国のNCEP(National Cholesterol Education Program)に従って総コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL:low density lipoprotein)コレステロール、高密度リポタンパク質(HDL:high density lipoprotein)コレステロール、中性脂肪(triglyceride)などの脂質指標を通じて診断している。
【0005】
2型糖尿病は、インスリン抵抗性と膵β細胞の機能異常、及びこれによる血糖上昇を特徴とする代謝性疾患であり、疾患の発生は複合的な遺伝的傾向を見せる。2型糖尿病の発生には多様な遺伝子の多形性が関与しているという研究結果が多く報告されている。特に、PPARγ遺伝子は、インスリン抵抗性との関連性が重要であると見なされる遺伝子である。PPARγは、脂肪細胞に特異的であり、脂肪細胞の分化及び脂肪酸代謝に関与し、糖尿病治療剤であるチアゾリジンジオンがリガンドとして知られているため、2型糖尿病及び肥満症と関連性のある原因遺伝子である可能性が指摘されている。
【0006】
特に、脂質活性化転写因子であるPPARγは、免疫系で多くの機能を有するが、この転写因子の抑制を通じて炎症及び抗炎症反応を調節できることが知られており、これを通じて炎症性腸疾患、関節リウマチの治療に関与することが知られている(PPARγ in immunity and inflammation:cell types and diseases、Biochimica et Biophysica Acta 1771(2007)1014-1030)。
【0007】
しかし、抗肥満、糖尿病または脂質異常症の関連疾患の予防または治療、若しくは炎症の改善または治療などの効果に優れ、安全な物質についての報告は未だ不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、ナマコから分離した新たな化合物、特にサポニン化合物を提供することである。本発明が解決しようとする課題は、ナマコ生殖腺抽出物、望ましくは卵巣抽出物、前記抽出物から由来したサポニン化合物の抗肥満、抗糖尿、脂質異常症の改善、及び/または炎症性疾患の改善などの疾患の予防または治療のための新規の用途を提供することである。また、ナマコ生殖腺抽出物、または前記抽出物から由来したサポニン化合物を含む肥満、糖尿病、または炎症性疾患の治療または予防用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は下記の化学式S1、S2、S3、S4及び/またはS9で表される新規化合物を提供する。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【0010】
前記化合物は、自然から由来したものであってもよく、化学的合成方法で合成されたものであってもよく、収得する過程は特に制限されない。本発明の一実施形態において、前記化合物は、ナマコ生殖腺から抽出または分離することができ、望ましくはナマコの卵巣から抽出または分離可能である。
【0011】
本発明の他の実施形態は、ナマコ生殖腺抽出物、またはナマコ生殖腺から由来したサポニン化合物を有効成分として含む、肥満、炎症、糖尿、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つ以上の疾患の予防または治療用組成物を提供する。望ましくは、前記糖尿は2型糖尿であり得る。
【0012】
前記ナマコ卵巣抽出物は、ナマコの生殖器である卵巣を溶媒で抽出したものを意味する。ナマコ生殖腺は、成熟するにつれて精巣は乳白色に、卵巣は紅色に変わると知られている。本発明は、ナマコ生殖腺のうち、望ましくは卵巣抽出物を用いることができる。前記溶媒としては、水、C1~C4の低級アルコール、またはこれらの混合溶媒を使用し得、望ましくは、エタノールまたはエタノール水溶液を使用することが望ましい。前記溶媒を使用したとき、特に有効成分の抽出収率に優れ、本発明の目的達成に有利である。本発明の抽出物は、通常の動物を抽出対象にした抽出物の製造方法で製造されたものであり得、具体的には冷浸抽出法、温浸抽出法または熱抽出法などが挙げられ、通常の抽出機器、超音波粉砕抽出器または分画器を用い得る。望ましくは前記ナマコ生殖腺抽出物、望ましくは卵巣抽出物は、45~85%(V/V)エタノール水溶液を溶媒として抽出し、より望ましくは、前記ナマコ卵巣を48~55%(V/V)エタノール水溶液を溶媒として、または75~83%(V/V)エタノール水溶液を溶媒として抽出し得る。前記溶媒を使用したとき、本発明の目的達成に有利である。
【0013】
さらに他の実施形態において、前記ナマコ生殖腺、望ましくは卵巣は、抽出物を分画する過程を経て、これから収得されたナマコ卵巣分画物も本発明の範囲に含まれ得る。望ましくは、ナマコ卵巣をエタノール水溶液で抽出した抽出物を分画し得、望ましくは前記エタノール水溶液は45~85%(V/V)エタノール水溶液であり得る。前記分画物は、望ましくは、ナマコ卵巣抽出物をブタノールを溶媒として分画し得る。前記分画物は、ナマコ卵巣抽出物を蒸留水などに懸濁させた後、分液漏斗などを使用してヘキサン、メチレンクロライド、エチルアセテート、ブタノール、水またはこれらの組み合わせによって得られ、望ましくは、本発明の目的上、前記ナマコ卵巣抽出物はブタノールで分画し得る。前記分画化は、当業界で通常用いられる分画化方法で実施可能である。
【0014】
前記製造された抽出物または前記分画過程を行って収得した分画物は、以後濾過するか、若しくは、濃縮または乾燥過程を経て溶媒を除去し得、濾過、濃縮及び乾燥をすべて行ってもよい。具体的には、前記濾過は濾過紙を用いるかまたは減圧濾過器を用いて行われ、前記濃縮は減圧濃縮器、一例として回転式蒸発器を用いて減圧濃縮し、前記乾燥は、一例として凍結乾燥法で行い得る。
【0015】
前記抽出物または分画物は、体脂肪減少効果が優れ、脂肪細胞分化の抑制活性が優れ、炎症改善効果が優れ、コレステロール減少効果が優れ、糖尿病治療または改善効果が優れる。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記ナマコ生殖腺、望ましくは卵巣抽出物は、下記の化学式S1、S2、S3、S4、S5、S6、S8及びS9からなる群より選択されたいずれか一つ以上を、望ましくはS3、S4、S5、S6及びS8からなる群より選択されたいずれか一つ以上のサポニン化合物を含む。望ましくは、前記ナマコ卵巣抽出物から分離した下記の化合物は、肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つ以上の疾患の治療または予防効果を奏することができる。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0017】
前記ナマコ生殖腺、望ましくは卵巣抽出物、またはナマコ卵巣から由来したサポニン化合物は、PPARγ(Peroxisome Proliferator Activated Receptor γ)、FAS(FS-7-Associated Surfaceantigen)、aP2(Adipocyte Protein 2)、及びC/EBPα(CCAAT/Enhancer-binding Protein α)からなる群より選択されたいずれか一つ以上のタンパク質の発現を抑制することができる。
【0018】
ナマコ生殖腺、望ましく卵巣抽出物、またはナマコ卵巣から由来したサポニン化合物は、脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化を抑制するか、または、細胞内の脂肪蓄積を抑制することができる。または、糖尿を抑制する効果を奏することができる。
【0019】
前記ナマコ生殖腺、望ましくは卵巣抽出物、またはナマコ卵巣から由来したサポニン化合物は、個体の体重減少、血中異常脂質の減量、脂質代謝異常の緩和などのための用途で、炎症の抑制または改善のための用途で、若しくは糖尿の治療または改善のための用途で使用することができる。
【0020】
本発明の一実施形態は、ナマコ生殖腺、望ましくは卵巣の抽出物またはナマコ卵巣から由来したサポニン化合物を、それを必要とする個体に処理して体内の脂肪蓄積を抑制、改善または緩和するか、体重を減量するか、血中異常脂質を減少するか、若しくは個体の体脂肪蓄積を抑制する方法、炎症の改善または抑制方法、若しくは糖尿病の治療または改善方法を提供することができる。
【0021】
本発明の一実施形態は、以下の段階を含む個体の体脂肪蓄積抑制用組成物、個体の脂質異常症治療または改善用組成物、個体の炎症関連疾患の治療または改善用組成物、若しくは糖尿病治療または改善用組成物を製造する方法を提供することができる。
S1)ナマコから生殖腺、望ましくは卵巣を分離する段階;
S2)S1)段階で分離したナマコ生殖腺を溶媒で処理する段階、望ましくは、エタノール溶媒、より望ましくは45~85%(V/V)エタノール水溶液溶媒で処理する段階;
S3)ナマコ生殖腺を溶媒で処理した後、常温で24時間撹拌する段階;及び
S4)濾過した後、濾過された溶液を減圧濃縮してナマコ抽出物を得る段階。
【0022】
本発明の一具現例は、本願に記載されたナマコ生殖腺抽出物を含む肥満の改善または治療用の食品または医薬品、糖尿病(特に、2型糖尿病)の改善または治療用の食品または医薬品、脂質異常症(例えば、高脂血症、高コレステロール血症、高中性脂肪血症)の改善または治療用の食品または医薬品、炎症(例えば、炎症性腸疾患、関節リウマチ)の改善または治療用の食品または医薬品を提供することができる。
【0023】
前記食品または医薬品は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、業界で一般に使用される賦形剤、添加剤などを制限なく含み得る。
【0024】
本発明の一具現例は、ナマコ卵巣抽出物を処理することで、それを必要とする個体におけるPPARγ、FAS、aP2、及びC/EBPαからなる群より選択されたいずれか一つ以上のタンパク質の発現を抑制する方法を提供することができる。
【0025】
本発明の一実施形態による前記組成物は、本発明のナマコ生殖腺、望ましくは卵巣抽出物、またはナマコ生殖腺、望ましくは卵巣から由来したサポニン化合物の肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つ以上の疾患の治療、予防、及び/または改善などのための新規用途が適用可能な分野であれば制限なく使用することができ、望ましくは薬剤学的組成物または食品組成物の形態で提供できる。望ましくは、前記食品組成物は、健康機能食品組成物で提供され得る。
【0026】
本発明の組成物が薬剤学的組成物として製造される場合、本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体を含む。本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されない。本発明の薬剤学的組成物は、上記の成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含み得る。前記薬剤学的に許容される担体は、非制限的な例示であり、これら種類に限定されない。本発明の薬剤学的組成物は、経口または非経口で投与でき、望ましくは経口投与方式で適用される。本発明の薬剤学的組成物の好適な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食餌、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様に処方可能である。本発明の薬剤学的組成物の望ましい投与量は、成人基準で0.001~100mg/kg範囲内である。本発明の薬剤学的組成物は、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者が容易に実施可能な方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化することで、単位用量形態で製造されるかまたは多用量容器内に充填して製造可能である。このとき、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液、シロップ剤または乳化液の形態であるか、若しくは、エキス剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態であり得、分散剤または安定化剤をさらに含み得る。
【0027】
本発明の組成物が食品組成物で製造される場合、食品製造時に通常添加される成分を含み、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味料及び香味剤を含む。炭水化物の例としては、ブドウ糖、果糖などの単糖類;マルトース、スクロース、オリゴ糖などの二糖類;デキストリン、シクロデキストリンなどの多糖類のような通常の糖、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールが挙げられる。香味剤としては、ステビア抽出物のような天然香味剤、またはサッカリンなどの合成香味剤を使用し得る。
【0028】
本発明の一実施形態は、前記化学式S1、S2、S3、S4、S5、S6、S8及びS9からなる群より選択されたいずれか一つ以上のサポニン化合物を、望ましくはS3、S4、S5、S6及びS8からなる群より選択されたいずれか一つ以上のサポニン化合物を増加させることで、ナマコ生殖腺、望ましくは卵巣抽出物の肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つ以上の疾患の予防または治療効果を改善する方法を提供する。本発明で記載された前記サポニン化合物を収得する方法をすべて適用可能であり、望ましくは前記方法として、ナマコ生殖腺、望ましくは卵巣をエタノール水溶液で抽出し、抽出物からブタノール分画を収得する方法を適用し得、望ましくは45~85%(V/V)エタノール水溶液で抽出し、抽出物からブタノール分画する方法を適用し得る。
【0029】
本発明の一具現例は、ナマコ生殖腺抽出物またはナマコ生殖腺から由来したサポニン化合物を、それを必要とする個体に有効量投与する段階を含む、肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つの疾患を治療または改善する方法を提供する。本発明で記載されたナマコ生殖腺から由来したサポニン化合物は、前記化学式S1、S2、S3、S4、S5、S6、S8及びS9からなる群より選択されたいずれか一つ以上を含むと理解される。他の具現例は、それを必要とする個体に対してナマコ生殖腺抽出物またはナマコ生殖腺から由来したサポニン化合物を増加させることで、肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つの疾患を治療または改善する方法を提供することができる。他の具現例は、ナマコ生殖腺抽出物またはナマコ生殖腺から由来したサポニン化合物、及び薬剤学的に許容される担体を含む、肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つの疾患の治療または改善用組成物を提供することができる。他の具現例は、ナマコ生殖腺抽出物またはナマコ生殖腺から由来したサポニン化合物の、肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つの疾患を治療または改善するための用途を提供することができる。他の具現例は、ナマコ生殖腺抽出物またはナマコ生殖腺から由来したサポニン化合物を、それを必要とする個体に有効量投与する段階を含む、体内PPARγ、FAS、aP2、及びC/EBPαからなる群より選択されたいずれか一つ以上のタンパク質の発現を抑制する方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、従来知られていない新規のサポニン化合物を提供する。
【0031】
本発明は、ナマコ生殖腺、望ましくは卵巣抽出物またはそれから分離したサポニン化合物の新たな用途を提案する。本発明を通じて、ナマコ生殖腺、望ましくは卵巣抽出物がナマコの他の部位に比べて優れた抗肥満効果、体重減少の効果、糖尿病の治療または改善効果、抗炎症効果、脂質異常症の予防、改善、または治療効果などを有することを確認した。本発明によれば、肥満、炎症、糖尿病、及び脂質異常症からなる群より選択されたいずれか一つ以上の疾患の予防、改善または治療効果を奏することができる。
【0032】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ナマコ卵巣抽出物及び卵巣を除いた内臓に対してエタノール濃度を変化させて得た抽出物を、3T3-L1細胞に処理した後、細胞の生存率を確認した結果である。
【
図2a】ナマコ抽出物の脂肪細胞の分化及び脂肪蓄積の抑制効果を示した図である。
【
図2b】試料1-4を処理した後、確認したO.D.値を示した図である。
【
図3a】ナマコ抽出物の部位及び濃度に応じた脂肪細胞分化関連タンパク質の分析結果であり、タンパク質の発現程度を示した結果である。
【
図3b】ナマコ抽出物の部位及び濃度に応じた脂肪細胞分化関連遺伝子の分析結果であり、mRNA発現に及ぼすナマコ抽出物の効果を確認した結果のグラフである。
【
図4a】ナマコ抽出物の脂肪細胞分化を示す写真である。
【
図4b】脂肪蓄積の抑制効果(25、50μg/ml)を示すグラフである。
【
図5】脂肪細胞分化過程に関与するタンパク質PPARγ、FAS、aP2、C/EBPαの発現に及ぼすナマコ抽出物の効果を確認した結果である。ナマコ卵巣抽出物がタンパク質を抑制することを確認した。
【
図6】ナマコ卵巣抽出物の抽出及び分画を通じて化合物を分離した過程を示した図である。
【
図7】ナマコ卵巣抽出物から分離した化合物が3T3-L1細胞生存率に及ぼす影響を示した図である。
【
図8a】ナマコ卵巣抽出物から分離した化合物を処理し、3T3-L1細胞の脂肪分化終了後、オイルレッドO染色を通じて脂肪蓄積程度を分析した結果を示した図である。
【
図8b】分化した3T3-L1細胞を示した図である。
【
図8c】500nmで測定したオイルレッドOの光学密度(O.D.)を示した図である。2.5、5μg/ml濃度でそれぞれ処理した。データは平均±標準偏差(SD)で表される。*、**、及び***はそれぞれ、分化した対照群(MDI)と比較したとき、p<0.05、p<0.01、及びp<0.001を示す。
【
図9】S1-S6、S8-S9化合物をそれぞれ処理したとき、分化した3T3-L1細胞の脂肪生成関連タンパク質レベルを示した図である。
【
図10】ナマコ卵巣抽出物及びナマコの卵巣を除いた内臓抽出物に対し、グルコース取り込み率を確認した結果である。
【
図11】ナマコ卵巣抽出物の抽出条件別のグルコース取り込み率を確認した結果である。
【
図12】ナマコの卵巣抽出物から分離したサポニン化合物のグルコース取り込み率を確認した結果である。
【
図14】高カロリー食摂取マウスに抽出物を処理した後、確認された最終体重を示した図である。
【
図15】HE染色を通じて確認された白色脂肪細胞のサイズ変化の結果である。
【
図16】総コレステロールに対するHDLの含量を示した結果である。
【
図17】総コレステロールの減少効果を確認した結果である。
【
図18】中性脂肪の減少効果を確認した結果である。
【
図19】抽出物処理群のPPARγ発現の減少効果を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の理解を補助するため、実施例などを挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されるものではない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0035】
I.実験例1-ナマコの部位別抽出物の効果の確認
1.試料抽出
(1)抽出部位及び溶媒濃度
【0036】
【0037】
ナマコは、卵巣と、卵巣を除いた内臓とに分けて抽出した。乾燥した状態のナマコの卵巣と内臓に50%エタノールと80%エタノールをそれぞれ20倍数で加え、常温で24時間撹拌して抽出した。その後、濾過及び減圧濃縮過程を通じてナマコ卵巣及び内臓抽出物を得た。
【0038】
2.ナマコ抽出物の脂肪細胞の分化抑制能の評価
(1)実験材料及び方法
【0039】
試薬及び材料は、以下の通りである。
3T3-L1細胞(ATCC、CL-173)、DMEM(高グルコース)(Gibco)、ウシ胎児血清(FBS)(Gibco)、ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(Gibco)、リン酸緩衝液(PBS)(Gibco)、RIPA(Radio-Immunoprecipitation Assay)バッファー(Thermo Scientific)、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo Scientific)、PVDF膜(Bio-rad)、1次抗体(PPARγ(Santa cruz)、C/EBPα(cell signaling)、FAS(cell signaling)、aP2(cell signaling)、β-アクチン(Santa cruz)、オイルレッドO粉末(sigma)、MTT粉末(sigma)を使用した。
(2)細胞生存率の測定
【0040】
3T3-L1細胞を1×104cells/wellの濃度で96ウェルプレートに分注して一日培養した後、6種の抽出物を100-200μg/mlの濃度で処理した。24時間後、MTT粉末を5mg/mlの濃度でPBSに溶かして濾過し、細胞を20μlずつ分注して2時間培養した。培地を除去した後、200μlのDMSOを分注し、570nmで吸光度を測定して細胞生存率を測定した。
(3)3T3-L1脂肪前駆細胞の培養及び脂肪細胞の分化
【0041】
3T3-L1細胞は、10%ウシ血清(CS)とペニシリンストレプトマイシングルタミンが添加された高グルコースDMEM培地で培養し、2~3日毎に継代培養した。3T3-L1細胞を6ウェルプレートに4×105cells/wellの濃度で分注し、2日間培養した後、ウシ血清の代わりに、10%FBSが含まれた培地にデキサメタゾン、インスリン、及び3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)が添加されたMDI培地で交換した。2日後、インスリンが含まれた培地で交換し、さらに2日毎に培地を交換して分化を誘導した。ナマコ抽出物は、培地交換の30分後に200μg/mlの濃度で処理した。
(4)オイルレッドO染色
【0042】
分化が完了した3T3-L1細胞を4%ホルムアルデヒドで1時間固定した後、0.5%オイルレッドO染色溶液を用いて脂肪を染色して分化程度を確認した。脂肪分化の定量的な分析のため、細胞に染色された染色薬を100%イソプロピルアルコールで溶かし、500nmで吸光度を測定した。
(5)定量リアルタイム(qRT)-PCR
【0043】
プライマー配列を表2に示した。
【0044】
【0045】
ナマコ抽出物が脂肪分化関連遺伝子の発現に及ぼす影響を調べるため、関連遺伝子のmRNA発現程度をqRT-PCRを用いて確認した。分化が完了した3T3-L1細胞をPBSを用いてすくい取った後、Rneasy mini kit(Qiagen)を用いて抽出した。抽出されたRNAの1μgでcDNA(ReverTra Ace qPCR RT Master Mix、FSQ-201、TOYOBO)を合成し、SYBRグリーン方式でRT-PCRを実施した。PCR条件は、プレ変性(95℃、1分)、95℃、15秒、そして60℃、15秒で40サイクルを行った。使用されたプライマー配列は、表2のようである。
(6)ウェスタン・ブロッティング
【0046】
ナマコ抽出物が脂肪細胞分化関連タンパク質の発現に及ぼす影響を調べるため、ウェスタン・ブロット法を通じて関連タンパク質の発現を確認した。分化が完了した3T3-L1細胞をPBSで洗浄した後、RIPAバッファーで溶解した後、SDS-PAGEを通じて分子量別にタンパク質を分離した。その後、PVDF膜に転写し、5%スキムミルクを用いて30分間ブロッキングした。その後、1次抗体と反応させた後、2次抗体を付けてECL溶液を使用してタンパク質の発現を確認した。
(7)統計
【0047】
結果の統計分析はグラフパッドプリズム7ソフトウェア(San DIego、CA、USA)を用いて行い、各グループ間の有意な差は一元配置分散分析(One-way ANOVA)を通じて分析した。(p<0.05)
【0048】
3.実験結果
(1)細胞生存率
【0049】
3T3-L1細胞の生存率に及ぼすナマコ抽出物の影響を調べた結果、それぞれの条件によって抽出された6個のナマコ抽出物すべてにおいて、200μg/mlまで非処理群との有意な差を見せなかった。
ナマコ抽出物を処理した後の3T3-L1細胞の生存率を
図1に示した。
(2)オイルレッドO染色の結果
【0050】
ナマコ抽出物が3T3-L1細胞の脂肪分化に及ぼす影響を調べるため、オイルレッドO染色を通じて脂肪の蓄積程度を分析した結果、ナマコ卵巣の50%及び80%エタノール抽出物を処理した細胞において染色程度が減少し、脂肪蓄積が減少する効果を見せた。また、このような効果を定量的に示すため、細胞に染色されたオイルレッドOを100%イソプロピルアルコールで溶かして吸光度を測定した結果、ナマコ卵巣の50%及び80%エタノール抽出物を処理した細胞において有意に吸光度が減少し、脂肪の蓄積が減少したことを確認した。
【0051】
すなわち、ナマコの他の臓器に比べてナマコ卵巣抽出物が有意な脂肪蓄積の抑制効果を有することを確認した。
【0052】
図2にナマコ抽出物の脂肪細胞の分化及び脂肪蓄積の抑制効果を示した。
図2から確認できるように、処理群3及び4(卵巣抽出物)は処理群1及び2に比べて脂肪が少なく蓄積され、O.D.値が処理群1及び2の略半分水準に過ぎなかった。
(3)脂肪細胞分化関連遺伝子及びタンパク質の分析
【0053】
脂肪細胞分化過程において重要な役割をすると知られているPPARγ、FAS、aP2、C/EBPαのタンパク質及びmRNAの発現に及ぼすナマコ抽出物の効果を確認した結果、上記の実験と同様に、ナマコ卵巣の50%及び80%エタノール抽出物を処理した細胞においてタンパク質の発現が減少したことを確認できた。また、mRNAの発現も、ナマコの他の内臓部位に比べてナマコ卵巣の50%及び80%エタノール抽出物を処理した細胞で有意に減少したことを確認できた。このような結果を総合してみたとき、ナマコ抽出物は、脂肪分化に関連する遺伝子及びタンパク質の発現を調節することで脂肪分化を抑制すると見られる。
図3a及び
図3bに、ナマコ抽出物の脂肪分化関連遺伝子及びタンパク質の発現抑制効果の結果を示した。
【0054】
それぞれの条件によって抽出されたナマコ抽出物の脂肪分化抑制効果を比較したとき、最も効果の良い抽出条件は、ナマコ卵巣の50%(試料名:SJ-O-D1-50)または80%エタノール抽出物(試料名:SJ-O-D1-80)と確認された。すなわち、処理群3及び4は、脂肪分化に関連する遺伝子発現を抑制する効果が卓越している。
【0055】
II.実験例2-溶媒条件による抽出物の効果、分画物の効果の検証
1.実験材料及び方法
(1)ナマコ試料の準備
【0056】
【0057】
(2)試薬及び材料
I-2-(1)の項目と同様に準備した。
【0058】
(3)3T3-L1脂肪前駆細胞の培養及び脂肪細胞の分化
【0059】
3T3-L1細胞は、10%ウシ血清とペニシリンストレプトマイシングルタミンが添加された高グルコースDMEM培地で培養し、2~3日毎に継代培養した。3T3-L1細胞を6ウェルプレートに4×105cells/wellの濃度で分注し、2日間培養した後、ウシ血清の代わりに、10%FBSが含まれた培地にデキサメタゾン、インスリン、及び3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)が添加されたMDI培地で交換し、ナマコ抽出物はMDI培地交換の30分後に処理した。2日後、インスリンが含まれた培地で交換し、さらに2日毎に新たな培地で交換して分化を誘導した。
(4)オイルレッドO染色
【0060】
分化が完了した3T3-L1細胞を4%ホルムアルデヒドで1時間固定した後、0.5%オイルレッドO染色溶液を用いて脂肪を染色して分化程度を確認した。脂肪分化の定量的な分析のため、細胞に染色された染色薬を100%イソプロピルアルコールで溶かし、500nmで吸光度を測定した。
(5)ウェスタン・ブロッティング
【0061】
ナマコ抽出物が脂肪細胞分化関連タンパク質の発現に及ぼす影響を調べるため、ウェスタン・ブロット法を通じて関連タンパク質の発現を確認した。分化が完了した3T3-L1細胞をPBSで洗浄した後、RIPAバッファーで溶解した後、SDS-PAGEを通じて分子量別にタンパク質を分離した。その後、PVDF膜に転写し、5%スキムミルクを用いて30分間ブロッキングした。その後、1次抗体と反応させた後、2次抗体を付けてECL溶液を使用してタンパク質の発現を確認した。
(6)統計
【0062】
結果の統計分析はグラフパッドプリズム7ソフトウェア(San DIego、CA、USA)を用いて行い、各グループ間の有意な差は一元配置分散分析(One-way ANOVA)を通じて分析した。(p<0.05)
【0063】
2.実験結果
(1)抽出物及び分画物の製造過程
【0064】
ナマコの卵巣を除いた内臓、卵巣をそれぞれ次のように抽出してエタノール抽出物を得た。乾燥したナマコ卵巣に30%EtOH、50%EtOHまたは80%EtOHを20倍数で加えた後、24時間撹拌し、同一に濾過した後、濃縮した。
【0065】
ナマコ卵巣抽出物の分画物は、次のような方法で得た。
【0066】
濃縮されたナマコ卵巣抽出物に蒸留水を加えて懸濁させた後、同量のn-ヘキサンを加えて振った後静置した。層分離が完了した後、n-ヘキサン層を分離し濃縮した。残った懸濁液に水飽和ブタノールを加えて振った後、十分に静置し、層分離が完了した後、水飽和ブタノール層を分離して濃縮した。
(2)オイルレッドO染色の結果
【0067】
ナマコ抽出物が3T3-L1細胞の脂肪分化に及ぼす影響を調べるため、それぞれのナマコ抽出物を25と50μg/ml(6番試料10、25μg/ml)の濃度で分化培地とともに48時間処理して実験を行った。オイルレッドO染色を通じて脂肪の蓄積程度を分析した結果、1番試料を除いたすべての試料で有意な脂肪蓄積の抑制効果を見せた。(
図4a及び
図4b)
(3)脂肪細胞分化、血中脂質、及び炎症関連タンパク質の分析
【0068】
脂肪細胞の分化過程には多様なタンパク質が関与し、このようなタンパク質を抑制したとき、脂肪の分化及び蓄積が抑制される。主な関連タンパク質であるPPARγ、FAS、aP2、C/EBPαの発現に及ぼすナマコ抽出物の効果を確認した結果、上述した実験と同様に、1番試料を除いた5つの試料で脂肪分化関連タンパク質の発現が減少したことを、二回の独立的な実験を通じて確認できた。このような結果を総合してみたとき、ナマコ抽出物は脂肪分化に関連するタンパク質の発現を抑制し、このような抑制効果が脂肪の分化及び蓄積を抑制すると見られる。
【0069】
本実験を通じてそれぞれの条件で抽出したナマコ抽出物が有する脂肪細胞分化及び脂肪蓄積の抑制効果を実験した結果、25と50μg/ml濃度で濃度依存的な脂肪蓄積の抑制効果が確認できた。このような効果は、PPARγ、FAS、aP2、C/EBPαのような脂肪細胞分化及び脂肪蓄積に関連するタンパク質の発現を抑制して脂肪細胞への分化過程を調節したと考えられ、ナマコのエタノール抽出物が有意な脂肪細胞分化の抑制効果を有していると見られる。PPARγの場合、炎症性疾患と相関関係のあるファクターであり、FASの場合、脂肪酸の生合成に関与する酵素であって、血中中性脂肪の濃度とSREBP-1(脂肪と肝管組のコレステロールと脂肪酸と合成を調節する転写因子)を調節する酵素と知られている。したがって、これらタンパク質の発現抑制を通じて脂質異常症及び炎症の改善効果を奏することができる。
【0070】
III.実験例3-ナマコ卵巣抽出物から分離した化合物の効果
1.新規サポニン5種及び従来報告されているサポニン化合物3種の分離、構造同定
【0071】
下記の方法により、ナマコ卵巣抽出物のブタノール分画物から化学式S1、S2、S3、S4、S5、S6、S8及びS9に該当する化合物を分離した。抽出物から活性成分を単離するため、活性誘導分画法(activity-guided fractionation)によって分離、精製を行った。ナマコ卵巣の水飽和ブタノール分画から活性成分を分離するため、各種のカラムクロマトグラフィーを施し、8種のサポニン成分を分離/精製した。
【0072】
【0073】
具体的な分離/精製の方法は、次のようである。
1)上記のように収得したナマコ卵巣のブタノール分画物を逆相カラムクロマトグラフィーを通じて小分画に分けた。
2)100%蒸留水に50%メタノールで溶出させて多糖類を除去した後、60%メタノール及び70%メタノールの分画1及び2をそれぞれ得た。
3)60%メタノール分画は、分取(preparative)LCを通じて30%ACNで溶出し、サポニン1を得た。
4)60%メタノール分画は分取LCを通じて30%ACNで溶出し、サポニン1を得た。
5)70%メタノール分画1は、逆相カラムクロマトグラフィーを通じて4個の小分画にさらに分け、そのうちの1番小分画を分取LCを通じて30%ACNで溶出し、サポニン2を得た。
6)2番小分画を分取LCを通じて32%ACNで溶出し、サポニン3及び9をそれぞれ得た。
7)3番小分画は、順相カラムクロマトグラフィーを通じてMC:MeOH=3:1、2:1、1:1分画にさらに分け、そのうちのMC:MeOH=2:1分画は再度分取LCを通じて35%ACNで溶出し、サポニン4及び5をそれぞれ得た。
8)70%メタノール分画2は、順相カラムクロマトグラフィーを通じてMC:MeOH=7:1、5:1、3:1分画に分け、そのうちのMC:MeOH=3:1分画は再度分取LCを通じて35%~40%ACNで溶出し、サポニン6及び8をそれぞれ得た。
これらのうち、それぞれサポニン-1、2、3、4及び9に該当する化学式S1、S2、S3、S4及びS9に該当する化合物が新規化合物と確認され、サポニン-5、6及び8がそれぞれホロトキシンD1、ホロトキシンB、ホロトキシンAの化学構造と確認された。
【0074】
2.実験結果
(1)細胞生存率
【0075】
総8種の単一化合物が3T3-L1細胞の生存率に及ぼす影響を調べるため、それぞれの単一化合物を2.5-5μg/ml濃度で処理して細胞生存率を確認した。その結果、殆どの試料で有意な変化が現れないことを確認できた。S3、S4、S5の試料において、2.5μg/mlの濃度で有意に減少したが、約80%以上の細胞生存率を見せた。
(2)オイルレッドO染色の結果
【0076】
ナマコ卵巣抽出物内の単一化合物が3T3-L1細胞の脂肪分化に及ぼす影響を調べるため、総8個の化合物を2.5及び5μg/mlの濃度で分化培地とともに48時間処理した。分化終了後、オイルレッドO染色を通じて脂肪の蓄積程度を分析した結果、S1、S2の試料ではすべての濃度で有意な差を見せなかったが、S3-S9を処理したとき、2.5、5μg/mlの濃度で有意に脂肪蓄積が減少したことを確認できた。S3の試料は、1μg/mlから5μg/mlまで約16、40、80%脂肪蓄積を抑制して、濃度依存的に脂肪分化抑制効能を有する傾向を見せた。S4-S8の試料は、2.5μg/mlで分化させない細胞水準に脂肪蓄積が抑制されたことを確認できた。
(3)脂肪細胞分化関連タンパク質の分析
【0077】
上述した単一化合物の脂肪蓄積の抑制効能の機序を把握するため、脂肪生成関連タンパク質であるFAS、PPARγ、C/EBPα、FABP4のタンパク質の発現程度を確認した。その結果、S1、S2処理3T3-L1細胞では、何も処理していない対照に比べて有意なタンパク質の発現差がなかったが、S3、S4、S5を処理した細胞では、2.5μg/ml処理細胞から関連タンパク質の発現が確実に減少したことが確認され、1μg/ml処理細胞でも対照群に比べて確実に減少したことが確認できた。次いで、S6、S8、S9を処理した細胞におけるタンパク質の発現を確認した結果、対照群に比べてS6及びS8で明らかなタンパク質の発現の減少を確認できた。したがって、このような結果を総合してみたとき、単一化合物S3-S6、S8が脂肪生成関連タンパク質の発現抑制を通じて脂肪細胞の分化及び脂肪蓄積を抑制すると見られる。
【0078】
本実験を通じて、ナマコ卵巣抽出物内の単一化合物の脂肪細胞の分化及び脂肪蓄積の抑制効果を確認した。上述した抽出物の実験結果と同様に、脂肪生成関連タンパク質であるFAS、PPARγ、C/EBPα、FABP4の発現を有意に減少させ、このようなタンパク質の抑制を通じて脂肪細胞の分化を抑制すると見られる。
<NMRデータ>
【0079】
下記の表4~表9は、ナマコ卵巣抽出物から分離した化合物のうちのS1-S4及びS9の13C及び1H NMR化学シフトの結果を示している。これを通じてS1-S4及びS9は新たに分離したサポニン化合物であることを確認した。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
前記NMRデータを通じて、S1-S4及びS9が新規サポニン化合物であることを確認した。
【0087】
IV.実験例4-ナマコ卵巣抽出物の抗糖尿効果の確認
1.実験材料及び方法
(1)試薬及び材料
【0088】
3T3-L1細胞(ATCC、CL-173)、DMEM(高グルコース)(Welgene)、ウシ胎児血清(FBS)(MPBio)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Welgene)、ダルベッコリン酸緩衝液(DPBS)(Welgene)、トリプシン-EDTA(Welgene)、仔ウシ血清(BCS)(Welgene)、グルコース取り込み検査キットUptake-Glo(Promega)
(2)3T3-L1脂肪前駆細胞の培養及び脂肪細胞の分化
【0089】
3T3-L1細胞は、10%ウシ血清とペニシリン-ストレプトマイシンが添加された高グルコースDMEM培地で培養し、2~3日毎に継代培養した。3T3-L1細胞を96ウェルプレートに2×104cells/wellの濃度で分注し、3日間培養した後、ウシ血清の代わりに、10%FBSが含まれた培地にデキサメタゾン、インスリン、及び3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)が添加されたMDI培地で交換した。2日後、インスリンが含まれた培地で交換し、さらに2日毎に培地を交換して分化を誘導した。
(3)グルコース取り込み検査
【0090】
分化が完了した3T3-L1細胞を16時間飢餓状態(starvation)にした後、無血清培地にナマコ抽出物を25、50μg/mLの濃度で6時間処理した。培養上清液を回収し、3T3-L1細胞にグルコース取り込み検査キットUptake-Gloを用いてグルコース輸送活性程度をルミノメーター(Luminometer)を用いて測定した。
【0091】
2.実験結果
(1)ナマコ卵巣抽出物の細胞へのグルコース取り込み(muscle glucose uptake)程度の確認結果
【0092】
図10から確認できるように、ナマコ卵巣抽出物の細胞内グルコース取り込み率が著しく優れる。
図10は、ナマコ卵巣抽出物及びナマコの卵巣を除いた内臓抽出物に対し、グルコース取り込み率を確認した結果である。
図11は、ナマコ卵巣抽出物の抽出条件別のグルコース取り込み率を確認した結果である。すべての濃度において、対照群に対べてグルコース取り込み率が優秀であった。特に、従来糖尿治療剤として用いられるロシグリタゾン(Rosiglitazone)よりさらに増加したグルコース取り込み効率を有することが確認され、ナマコ卵巣抽出物が優れた抗糖尿効果を有することが分かった。
【0093】
下記の表10から確認できるように、ナマコ卵巣抽出物は未処理群に比べてグルコース取り込み率が増加し、特に、1.24倍増加するロシグリタゾンに比べて、ナマコ卵巣抽出物は全体濃度において遥かに高い水準の取り込み率(1.29倍、1.43倍、1.35倍)を見せた。
【0094】
【0095】
上記の結果から、ナマコ卵巣の抽出物処理により、増加したグルコース取り込み効率を有することを確認した。
【0096】
V.実験例5-ナマコ卵巣抽出物から分離したサポニン化合物の抗糖尿効果の確認
1.実験方法
(1)試薬及び材料
【0097】
IV-1-(1)の項目と同様に準備した。
(2)3T3-L1脂肪前駆細胞の培養及び脂肪細胞分化
【0098】
3T3-L1細胞は、10%ウシ血清とペニシリン-ストレプトマイシンが添加された高グルコースDMEM培地で培養し、2~3日毎に継代培養した。3T3-L1細胞を96ウェルプレートに2×104cells/wellの濃度で分注し、3日間培養した後、ウシ血清の代わりに、10%FBSが含まれた培地にデキサメタゾン、インスリン、及び3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)が添加されたMDI培地で交換した。2日後、インスリンが含まれた培地で交換し、さらに2日毎に培地を交換して分化を誘導した。
(3)グルコース取り込み検査
【0099】
分化が完了した3T3-L1細胞を16時間飢餓状態(starvation)にした後、無血清培地にナマコ由来の単一化合物を2.5μg/mLの濃度で6時間処理した。培養上清液を回収し、3T3-L1細胞にグルコース取り込み検査キットUptake-Gloを用いてグルコース輸送活性程度をルミノメーターを用いて測定した。
得られたサポニン化合物を対象に抗糖尿効果を確認した。
【0100】
2.実験結果
【0101】
図12は、ナマコの卵巣抽出物から分離したサポニン化合物のグルコース取り込み率を確認した結果である。
図12から確認できるように、未処理群のグルコース取り込み率を100%としたとき、すべての化合物が100%以上の 取り込み率を示した。このような結果から、分離した化合物は未処理群に比べてグルコース取り込み率を増加させることが分かり、それぞれ抗糖尿効果を有することが分かった。
下記の表11は、対照群に対比したグルコース取り込み率の程度を示したフォールドチェンジ値である。ロシグリタゾンと同じ水準のグルコース取り込み率も見せている。
【0102】
【0103】
VI.実験例6-ナマコ卵巣抽出物のイン・ビボ実験
[体重減少効果(抗肥満用途)]
1.実験方法
(1)実験動物群の情報
【0104】
C57BL/6雄マウス(5週齢)、各群当たり10匹ずつ総50匹を対象にして実験を行った。通常食群を除いた他の群には高脂肪食を与えた。
1)ノーマル(通常食群)
2)HFD(高脂肪食群)
3)HFD+0.05%ナマコ卵巣抽出物(SCOE)
4)HFD+0.1%ナマコ卵巣抽出物(SCOE)
5)HFD+0.2%ナマコ卵巣抽出物(SCOE)
(2)飼育条件
【0105】
抽出物は餌を調剤して食事を通じて与え、8週間実験を行った。体重は週1回測定し、週3回摂餌量を測定した。
2.実験結果
【0106】
図13及び
図14は、高カロリー食摂取マウスの体重変化及び最終確認された体重を観察した結果である。
図13から、ナマコ卵巣抽出物(50%エタノール)を処理した群は、8週まで確認した結果、体重増加率が未処理群に比べて遥かに減少したことが分かる。
図14から確認できるように、HFDで示されたナマコ卵巣抽出物未処理群と比べて、最終体重が減少したことが分かる。
【0107】
[白色脂肪組織の減少効果(抗肥満用途)]
1.実験方法
(1)脂肪組織のHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色
【0108】
ヘマトキシリンは、塩基性/陽イオン性物質であり、核(陰イオン)を濃い青や紫色に染色する。エオジンは、酸性/陰イオン性物質であり、細胞質(陽イオン)を赤色やピンク色に染色する。
HE染色の過程は、以下のようである。
脱パラフィン→脱水→ヘマトキシリン→分別→ブルーイング→エオジン→脱水→透徹→封入
(2)脂肪組織のうちの白色脂肪は肥満及び過体重に関連し、本実験ではHE染色で副睾丸白色脂肪の脂肪蓄積を組織学的に分析して白色脂肪組織の組織サイズを確認した。
2.結果
【0109】
図15は、HE染色を通じて確認された白色脂肪細胞のサイズ変化の結果である。
高カロリー食が与えられる場合(HFD)、肥満に関連する白色脂肪細胞のサイズが著しく大きくなり、そこにナマコ卵巣抽出物が投与される場合(HFD+SOCE0.05%、HFD+SOCE0.1%、HFD+SOCE0.2%)、脂肪細胞のサイズが顕著に減少したことが確認された。このことから、ナマコ卵巣抽出物の処理によって脂肪細胞のサイズ減少、抗肥満効果などが得られることを確認した。
【0110】
[血中総コレステロール及び中性脂肪の減少確認(高脂血症、メタボリックシンドロームの改善)]
1.実験方法
【0111】
(1)血中総コレステロール対比高密度リポタンパク質の含量(HDL/TC)
血液検体200μlに沈降試薬200μlを入れた後、十分に混合して室温で5分間放置する。5分後、3000rpmで10分間遠心分離し、遠心分離した上清液100μlに酵素溶液を3mlずつ入れて混合する。37℃の恒温水槽で5分間反応させる。盲検を対照とし、500nm波長で吸光度を測定する。
HDL-C(mg/dl)=(検体の吸光度/標準の吸光度)×100(mg/dl)
(2)血中総コレステロール(total cholesterol、TC)
盲検用/標準用/検体用試験管をそれぞれ準備する。血液検体20μlに酵素溶液を3mlずつ入れて十分に混合する。37℃の水槽で5分間反応させる。盲検を対照とし、505nm波長で標準及び検体の吸光度を測定する。
総コレステロール(mg/dl)=(検体の吸光度/標準の吸光度)×標準液の濃度
(3)血中中性脂肪(triglyceride、TG)
盲検用/標準用/検体用試験管をそれぞれ準備する。血液検体20μlに酵素溶液を3mlずつ入れて十分に混合する。37℃の水槽で5分間反応させる。盲検を対照とし、550nm波長で標準及び検体の吸光度を測定する。
中性脂肪量(mg/dl)=(検体の吸光度/標準の吸光度)×300(mg/dl)
(標準液の中性脂肪量:300mg/dl)
【0112】
2.結果
【0113】
図16~
図18は、それぞれ総コレステロールに対するHDLの含量、総コレステロールの減少効果を確認した結果、中性脂肪の減少効果を確認した結果を示している。これら結果から、ナマコ卵巣抽出物処理群は血中コレステロール及び中性脂肪が減少する効果を見せることを確認した。特に、ここで注目すべきことは、総コレステロール数値が減少したにもかかわらず、HDL数値は増加したということである。このような結果を通じて脂質異常症の治療に効果を有することが分かる。
【0114】
また、前記抽出物を用いて炎症の調節、特に炎症性腸疾患及び/または関節リウマチに関与すると知られたPPARγの発現を確認した結果、高カロリー食摂取に対比してPPARγが減少する効果を確認できた。このような結果は、
図19から確認できる。これを通じて、ナマコ卵巣抽出物は炎症抑制効果も奏することを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、ナマコ卵巣抽出物を含む体重減少用組成物、肥満抑制用組成物、抗糖尿組成物、抗炎症用組成物、脂質異常症改善用組成物を提供することができる。本発明の組成物は、体重減少方法、肥満抑制方法、糖尿の治療または改善方法、炎症の治療または改善方法、脂質異常症の治療または改善方法を提供することができる。
【配列表】
【国際調査報告】