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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】新規ペプチドおよびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20240118BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C07K14/47 ZNA
A61P3/04
A61K38/16
A61P3/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562446
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2021019658
(87)【国際公開番号】W WO2022139487
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0180639
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523236515
【氏名又は名称】メディアンドジーン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】シン ミン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン イン ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】パク チャン
(72)【発明者】
【氏名】イ ス ヨン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA19
4C084NA14
4C084ZA70
4C084ZC35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、IF1タンパク質由来ペプチドおよびその医薬用途に関し、前記ペプチドは、肥満動物モデルで食欲を抑制し、脂肪細胞の脂質蓄積および分化を阻害し、糖尿動物モデルではインスリン分泌を促進し、耐糖能を改善するので、抗肥満および抗糖尿用途に有用に使用できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1または2で表されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドを有効成分として含む肥満の予防または治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記組成物は、食欲を抑制する、請求項2に記載の肥満の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
前記食欲の抑制は、AgRP(agouti-related protein)またはNPY(neuropeptide Y)ペプチド抑制によるものである、請求項3に記載の肥満の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記組成物は、脂肪細胞の脂質蓄積および分化を抑制する、請求項2に記載の肥満の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
前記組成物は、脂肪組織内熱発生とエネルギー恒常性を活性化させるUCP-1(uncoupling protein-1)遺伝子の発現を増加させる、請求項2に記載の肥満の予防または治療用薬学組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のペプチドを有効成分として含む糖尿病または糖尿合併症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記組成物は、インスリン分泌を促進する、請求項7に記載の糖尿病または糖尿合併症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記組成物は、耐糖能を改善する、請求項7に記載の糖尿病または糖尿合併症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
請求項2に記載の組成物を治療が必要な個体に投与する段階を含む肥満の治療方法。
【請求項11】
請求項7に記載の組成物を治療が必要な個体に投与する段階を含む糖尿病または糖尿合併症治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体タンパク質に由来する新規ペプチドおよびその抗肥満、抗糖尿用途に関する。
【背景技術】
【0002】
病気の治療および予防に使用される医薬品は、化学物質からなる医薬品とバイオ医薬品とに分けられる。バイオ医薬品は、ホルモン、抗体などで構成されるタンパク質医薬品が主になっており、さらに遺伝体などで構成される。低分子物質からなる化学物質中心の医薬品とは異なって、バイオ医薬品は、高分子物質が大部分であるから、そのサイズから始まる多様な問題点が発生する。代表的に、大きいサイズに応じたターゲット物質へのアクセス性の低下と自己免疫反応などのような活性の観点の問題点と、サイズが大きくなるにつれて生産するのにかかる複雑度が上昇し、これによる費用および時間所要の増加のような産業的問題点がある。これは、タンパク質の機能に主要な影響を及ぼす活性部位以外にも、付随的な構造物が構成要素として存在するので起こる現象であり、タンパク質の主要活性部位を探知すると、生体内機能は維持しつつ、タンパク質医薬品のサイズを減らすことができるので、タンパク質医薬品の様々な副作用と費用の観点から相当な改善を達成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような状況下で、本発明者らは、生体内で発現するIF1(ATPase inhibitory factor 1)タンパク質の機能改善のためにIF1タンパク質に由来するペプチドの発明に集中した。その結果、肥満と糖代謝を含んで代謝障害改善効果を示すIF1由来新規ペプチドを発見した。
【0004】
したがって、本発明の目的は、前記新規ペプチドおよびその医薬用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、生体タンパク質に由来する配列番号1または2で表されるアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。
【0006】
IF1(ATPase inhibitory factor 1)は、細胞内で発現してミトコンドリア膜に存在するATPaseに結合して回転運動を妨害し、その結果、電子伝達系によるATP合成/分解を妨害し、細胞内エネルギー調節およびミトコンドリア恒常性に影響を及ぼす主要なタンパク質と知られている。
【0007】
本発明者は、IF1タンパク質(配列番号3および4)から新規の機能性を有するペプチドを探すために研究し、抗肥満および抗糖尿活性を有する配列番号1および2のペプチドを発掘した。
【0008】
本発明の他の態様は、前記ペプチドを有効成分として含む肥満の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0009】
本発明において使用される用語「予防」は、本発明による薬学組成物の投与により疾患の進行を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0010】
本発明において使用される用語「治療」は、本発明による薬学組成物の投与により疾患の症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味する。
【0011】
本発明者らは、IF1タンパク質に由来するペプチド(以下、機能性ペプチドという)の生理活性を確認するために、マウスに高脂肪食と機能性ペプチドを共に投与したり(肥満予防実験)、肥満を誘導したマウスに高脂肪食と機能性ペプチドを共に投与した(肥満治療実験)。
【0012】
該投与結果、マウスに高脂肪食と機能性ペプチドを共に投与すると、対照群に比べて体重増加が抑制されることを確認し(図1C)、肥満を誘導したマウスに高脂肪食と機能性ペプチドを共に投与すると、体重増加が抑制され、実験終了時点ではかえって体重が減少したことを確認した(図1Aおよび1B)。
【0013】
したがって、前記組成物は、肥満の予防および治療の両方に有用に使用できる。
【0014】
なお、前記機能性ペプチドは、脂肪細胞の脂質蓄積と分化を抑制し、これは、脂肪細胞で脂肪分化の指標であるPPARγ(peroxisome proliferator- activated receptor gamma)、アディポネクチン(adiponectin)、FABP4(fatty acid-binding protein 4)、C/EBPα(CCAAT/enhancer-binding protein alpha)およびLPL(lipoprotein lipase)遺伝子の発現を抑制することによって達成される。
【0015】
また、機能性ペプチドは、食欲を抑制し、これは、視床下部細胞で食欲を促進するペプチドであるAgRP(agouti-related protein)およびNPY(neuropeptide Y)の発現を抑制することによって達成することができる。
【0016】
したがって、前記肥満の予防または治療用組成物は、脂肪細胞の分化抑制および食欲抑制を通じて抗肥満効果を示すことができる。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、前記機能性ペプチドを有効成分として含む糖尿病または糖尿合併症の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0018】
本発明者らは、機能性ペプチドの生理活性をさらに確認するために、肥満誘導マウスおよび2型糖尿病マウスを禁食させた後、ブドウ糖溶液を注射して、耐糖能検査を実施した。その結果、機能性ペプチドの投与により血糖値が減少し(図4および図5A、5B)、インスリン分泌が増加することを確認した(図5E)。
【0019】
したがって、前記糖尿病の予防または治療用組成物は、耐糖能改善およびインスリン分泌促進を通じて抗糖尿効果を示すことができる。
【0020】
糖尿合併症は、長期間の高血糖状態によって血管壁が損傷して現れる心筋梗塞、脳卒中、網膜症、腎不全などの合併症をいう。高血糖状態を改善すると、糖尿合併症を改善することができるので、本発明の機能性ペプチドは、糖尿合併症の予防または治療用途に使用できる。
【0021】
なお、本発明の薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含む形態で製造することができ、前記担体は、非自然発生担体(non-naturally occurring carrier)を含んでもよい。
【0022】
具体的には、前記薬学組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用できる。
【0023】
本発明において、前記薬学組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。製剤化する場合には、普通使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0024】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。
【0025】
経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。
【0026】
前記薬学組成物は、滅菌注射用水性または油性懸濁液であり、滅菌注射用製剤の形態でありうる。この懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、ツイン80)および懸濁化剤を使用して本分野に公知となった技術により剤形化することができる。滅菌注射用製剤は、また、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液(例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液)でありうる。許容的に使用できるビヒクルおよび溶媒としては、マンニトール、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。また、滅菌不揮発性オイルが、通常、溶媒または懸濁化媒質として使用される。このような目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含んで刺激性が少ないいかなる不揮発性オイルも使用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸が薬剤学的に許容される天然オイル(例えば、オリーブ油またはひまし油)、特にこれらのポリオキシエチル化したものと同様に注射製剤に有用である。
【0027】
本発明による薬学組成物の非経口投与は、目的とする治療が局所適用で接近が容易な部位または器官と関連があるとき、特に有用である。本発明の化合物を局所投与するための担体としては、これらに限定されるものではないが、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が含まれる。
【0028】
本発明の薬学組成物に含まれた前記有効成分の含有量は、特にこれに制限されないが、最終組成物の全重量を基準として0.0001~50重量%、より好ましくは、0.01~10重量%の含有量で含んでもよい。
【0029】
本発明の他の態様は、前記肥満の予防または治療用薬学的組成物を治療が必要な個体に投与する段階を含む肥満の治療方法、前記糖尿病または糖尿合併症の予防または治療用薬学組成物を治療が必要な個体に投与する段階を含む糖尿病または糖尿合併症の治療方法を提供する。
【0030】
本発明の治療方法は、前述した薬学組成物を用いるので、この両方に共通した内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0031】
薬学的組成物の投与方法は、上記で記載したように、経口または非経口的に投与することができ、薬学的組成物の投与量は、治療専門家により判断可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、生体タンパク質由来ペプチドおよびその医薬用途に関し、前記ペプチドは、肥満動物モデルで食欲を抑制し、脂肪細胞の脂質蓄積と分化を阻害し、糖尿動物モデルではインスリン分泌を促進し、耐糖能を改善するので、抗肥満および抗糖尿の用途に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1のAは、高脂肪食で肥満が誘導されたマウスモデルにIF1由来ペプチド(以下、機能性ペプチドという)を6週間投与しつつ、体重変化を確認した結果であり、Bは、6週間投与した後、最終体重を確認した結果であり、C~Eは、マウスに高脂肪食と機能性ペプチドを一緒に投与した後、それぞれ投与期間中に全体体重変化量の割合(C)、投与期間中に食事摂取効率(D)および投与期間中に一日食事摂取量(E)を確認した結果である:control:対照群;およびpeptide:機能性ペプチド投与群(以下、図面でも同一)。
図2図2は、マウスに高脂肪食と機能性ペプチドを30日間一緒に投与した後、血清中の中性脂肪レベル(A)、血清中の遊離脂肪酸レベル(B)、脂肪組織における脂肪球が占める面積(C)および脂肪組織においてUCP-1発現変化(D)を確認した結果であり、Eは、肥満が誘導されたマウスに高脂肪食と機能性ペプチドを6週間一緒に投与した後、脂肪組織においてUCP-1発現変化を確認した結果である。
図3図3のAは、脂肪細胞の分化過程に機能性ペプチドを処理した後、脂肪分化および生長に関する遺伝子の発現変化を確認した結果であり、BおよびCは、視床下部細胞にそれぞれマウス由来およびヒト由来機能性ペプチドを処理した後、食欲促進遺伝子の発現変化を確認した結果である。
図4図4は、高脂肪食で肥満が誘導されたマウスモデルを絶食させた後、ブドウ糖溶液を注射して全体血糖変化量を確認した結果である。
図5図5のAは、2型糖尿病マウスモデルを絶食させた後、ブドウ糖溶液を注射して血糖値を確認した結果であり、Bは、全体血糖変化量を定量した結果であり、Cは、前記マウスから分離した膵臓の重さを測定した結果であり、Dは、膵臓の重さをマウス体重で補正した結果値を比較した結果であり、Eは、血中インスリン濃度を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、1つ以上の具体例を実施例に基づいてより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、1つ以上の具体例を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1:IF1由来ペプチドの分離および精製
IF1タンパク質とIF1由来ペプチド(以下、機能性ペプチドという;配列番号1または2)コーディング配列をそれぞれpGEX-4T-1およびpet28aベクターに配列を挿入させた。前記ベクターを発現用大腸菌菌株であるBL21(DE3)に形質転換(transformation)させて、安定的にIF1および機能性ペプチドを発現する細胞モデルを確立した。当該大腸菌細胞を培養した後、1mM IPTG(Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside)を処理してタンパク質発現を誘導した。その後、遠心分離、超音波粉砕(sonication)過程を通じて得られた溶液を親和性クロマトグラフィー(affinity chromatography)で分離してIF1および機能性ペプチドを分離し、Snakeskin dialysis tubingを用いてpH7.4のPBS溶液で塩の濃度を合わせて純度を高めて精製した。対照群に使用したGSTは、pet28aベクターの代わりに、pGEX-4T-1ベクターを使用して生産した。
【0036】
IF1タンパク質および機能性ペプチドの配列を下記表1に記載した。
【0037】
【表1】
【0038】
実施例2:機能性ペプチドの抗肥満効果の分析
2-1.肥満マウスモデルの製作
オリエントバイオ(ORIENT BIO)から4週齢の雄C57BL/6Jの分譲を受け、1週間正常食(Normal diet chow;ND)を提供して適応する時間を経た。この際、実験期間全体飼育環境で飼育空間の温度は18~24℃、湿度は50~60%を常時維持し、適応期間および実験期間ともに自由給食を実施した。適応期間を経たマウスは、肥満予防実験群と肥満治療実験群とに分けて各目的に合うように飼育した。正常食および高脂肪食は、下記の表2のように製造して提供した。
【0039】
【表2】
【0040】
-肥満予防実験群:対照群と実験群とに分けて、それぞれ次のような条件で30日間飼育した。
対照群:高脂肪食(High fat diet;HFD)+PBS投与(n=10)
実験群:高脂肪食(HFD)+機能性ペプチド投与(n=10)
-肥満治療実験群:1週間の適応期後に8週間高脂肪食(表1参照)を提供して肥満を誘導し、対照群と実験群とに分けて、それぞれ次のような条件で6週間飼育した。
対照群:高脂肪食(HFD)+PBS投与(n=10)
実験群:高脂肪食(HFD)+機能性ペプチド投与(n=10)
【0041】
2-2.機能性ペプチドの抗肥満効果
実施例2-1の実験条件によって実験期間中に毎日1回腹腔注射を通じてPBSとペプチドを投与した。これに該当する条件は、次の通りである。
対照群:PBS腹腔注射(下記の機能性ペプチド溶液に対応する体積)
実験群:機能性ペプチド腹腔注射(5mg/kg)
【0042】
実験期間中にすべてのマウスの体重を測定し、高脂肪食の摂取による体重変化を観察した。その結果、肥満治療実験群の機能性ペプチド投与群においてペプチドを投与してから1週間が経過した時点から体重増加抑制効果が現れることを確認し、このような体重増加抑制現象は、実験終了時点まで持続した(図1A)。最終実験終了時点の体重を比較した結果、対照群は、高脂肪食による体重増加で肥満が急激に誘導されたが、機能性ペプチド投与群は、かえって体重減少効果を示した(図1B)。
【0043】
肥満予防実験群でも、全体実験期間中に機能性ペプチド投与群において体重変化率が低い水準を示し(図1C)、食事効率比(体重増加量を食事摂取量で割った比率、Food Efficiency Ratio)(図1D)および一日食事摂取量も、機能性ペプチド投与群において減少したことを確認し(図1E)、機能性ペプチドの効果的な抗肥満効能を確認した。
【0044】
該実験終了後、肥満予防および肥満治療実験群のマウスを12時間絶食させ、組織を分離して保管し、血清を分離した。血清内脂質指標を分析した結果、対照群に比べて、機能性ペプチド投与群において遊離脂肪酸(図2A)と中性脂肪(図2B)の減少を確認した。
【0045】
また、脂肪組織をH&E(Hematoxylin and Eosin)染色および免疫染色で観察した結果、機能性ペプチドの投与により脂肪球が占める面積が15%減少し、機能性ペプチドが脂質蓄積を防止することを確認した(図2C)。脂肪組織内熱発生とエネルギー恒常性活性因子であるUCP-1(uncoupling protein-1)の発現量も、機能性ペプチド投与群において355%増加した(図2D)。
【0046】
肥満治療実験群から得られた脂肪組織の免疫染色を通じて観察した結果、肥満予防実験群の結果と同様に、UCP-1の発現量が263%増加することを観察し(図2E)、機能性ペプチドによる抗肥満効果が脂質蓄積およびエネルギー代謝活性化を含むことを確認した。
【0047】
2-3.機能性ペプチドの抗肥満効果作用機序の分析
3T3-L1脂肪細胞を脂肪に分化させるために、1次分化培地(DMEM、10%FBS(Fetal Bovine Serum)、1% Antibiotics、0.5mM 3-isobutyl-1-methylxanthine、1uM dexametahasone、10μg/ml Insulin)で2日、2次分化培地(DMEM、10%FBS、1%Antibiotics、10μg/ml Insulin)で6日、総8日間培養して分化を誘導した。この際、培地に各物質(対照群:PBS、実験群:機能性ペプチド100nM)を分化期間中に添加して使用した。
【0048】
該実験結果、脂肪分化の指標であるPPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor gamma)、アディポネクチン(adiponectin)、FABP4(fatty acid-binding protein 4)、C/EBPα(CCAAT/enhancer-binding protein alpha)およびLPL(lipoprotein lipase)遺伝子レベルが全て機能性ペプチド処理群において減少したことを確認し、機能性ペプチドが脂肪分化を調節して抗肥満効果を示すことが分かった(図3A)。
【0049】
また、mHypoE-N41視床下部細胞で機能性ペプチドによる食欲調節効果を確認するために、視床下部細胞にPBS(対照群)とマウス由来機能性ペプチド100nM(実験群)を24時間処理した。該実験終了後、細胞を回収して食欲を促進すると知られたAgrp(agouti-related peptide)とNPY(neuropeptide Y)遺伝子のレベルを観察した結果、Agrp遺伝子は、対照群に比べて、50.2%減少、NPY遺伝子は、48.8%が減少し、また、機能性ペプチドが食欲抑制作用を有することを確認した(図3B)。
【0050】
同様に、視床下部細胞にPBS(対照群)とヒト由来機能性ペプチド100nM(実験群)を24時間処理して食欲関連因子の遺伝子レベルを観察した結果、Agrp遺伝子は、対照群に比べて47.5%減少、NPY遺伝子は、59.6%が減少し、human peptideによる食欲抑制作用を確認した(図3C)。
【0051】
本実施例の結果を通じて、機能性ペプチドの抗肥満効果を最終検証した。
【0052】
実施例3:機能性ペプチドの糖代謝関連効能の分析
3-1.2型糖尿病マウス(db/db)モデルの飼育
機能性ペプチドの糖代謝関連効果を確認するために、2型糖尿病マウス(db/db)を使用した。2型糖尿病マウスに該当するdb/dbモデルは、食事調節を担当するレプチン受容体に遺伝子変異を誘発した動物モデルでインスリン信号経路および満腹感調節が不可能で、肥満が誘導される糖尿病の代表的なモデルである。
【0053】
中央実験動物(Central Lab)から8週齢の雄C57BLKS/6J-db/m+(Hetero変異)、C57BLKS/6J-db/db(Homo変異)マウスの分譲を受け、1週間正常食(Normal diet chow;ND)を提供して適応する時間を経た。この際、実験期間全体飼育環境で飼育空間の温度は18~24℃、湿度は50~60%を常時維持し、適応期間および実験期間ともに自由給食を実施した。
【0054】
3-2.機能性ペプチドの糖代謝改善効能の分析
適応期間を経たマウスを対照群と実験群とに分けて、それぞれ次のような条件で44日間飼育した。正常食は、前記表1のように製造して提供した。
db/m+対照群:正常食(ND)+PBS腹腔投与(n=10)
db/db対照群:正常食(ND)+PBS腹腔投与(n=10)
db/db実験群:正常食(ND)+機能性ペプチド(5mg/kg)腹腔投与(n=10)
【0055】
実験期間44日が終了した後、マウスを14時間絶食させた後、安楽死させ、その後、解剖してさらなる分析のために組織を採取した。また、血液を採集して、遠心分離で血清を分離し、分析した。
【0056】
具体的には、機能性ペプチドの糖代謝改善効能を評価するために、肥満による耐糖能障害と遺伝子変異による耐糖能障害改善効果を耐糖能検査を通じて確認した。
【0057】
まず、実験終了時点に実施例2-1の肥満予防マウスモデルを12時間絶食させ、腹腔注射でブドウ糖20%溶液を注入して、血液内血糖値の変化を観察した。この際、ブドウ糖溶液の注射30分前に実施例3-1のように各グループに該当する物質を注射した。血糖値の変化を確認した結果、ブドウ糖注射30分後から血糖レベルが機能性ペプチド投与群において減少することが分かった。全体血糖変化量を定量した結果(血糖値×時間;GLUAUC)でも、機能性ペプチドによる血糖値の減少を確認し(図4)、機能性ペプチドが糖代謝を改善する効果があることを確認した。
【0058】
実施例3-1の糖尿病マウスモデルを12時間絶食させ、腹腔注射でブドウ糖20%溶液を注入して、血液内血糖値の変化を観察した。この際、ブドウ糖溶液の注射30分前に実施例3-1のように各グループに該当する物質を注射した。血糖値の変化を確認した結果、ブドウ糖注射60分、90分、120分後に、血糖レベルが、db/db対照群に比べて、機能性ペプチド投与群において有意に減少することが分かった。また、全体血糖変化量を定量した結果(血糖値×時間;GLUAUC)でも、機能性ペプチドによる血糖値の減少を確認し(図5B)、機能性ペプチドが糖代謝を改善する効果があることを確認した。
【0059】
糖尿病から始まるホルモン分泌の変化および障害を観察するために、前記実施例3-1の糖尿病マウスモデルから分離した組織を分析し、ホルモン分泌に主要な役割をする膵臓の重さと糖の吸収を誘導するインスリンホルモンの血液内濃度を特定的に検査した。
【0060】
該検査結果、膵臓の重さ(図5C)とこれを体重で補正した値(図5D)は、いずれも、機能性ペプチド投与群において増加したことを確認し、機能性ペプチドがホルモン分泌システムに肯定的な影響を及ぼすことを確認した。また、機能性ペプチド投与群において血中インスリン分泌が高まったことが示され、機能性ペプチドによりホルモン分泌が促進されたことが分かった(図5E)。総合すれば、機能性ペプチドが代謝に肯定的な影響を及ぼすことを最終検証した。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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【国際調査報告】