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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】α-1062グルコネートの固体形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/06 20060101AFI20240118BHJP
   C07C 59/105 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240118BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20240118BHJP
   A61J 1/03 20230101ALI20240118BHJP
【FI】
C07D491/06
C07C59/105 CSP
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/30
A61P25/32
A61P25/08
A61P25/18
A61K31/55
A61J1/03 370
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565641
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 CA2022050046
(87)【国際公開番号】W WO2022150917
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】21151412.0
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21152317.0
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523265641
【氏名又は名称】アルファ コグニション インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】フレッド ディー.サンシリオ
【テーマコード(参考)】
4C047
4C050
4C086
4H006
【Fターム(参考)】
4C047AA22
4C047AA24
4C047BB04
4C047BB11
4C047CC13
4C050AA02
4C050AA07
4C050BB09
4C050CC16
4C050EE01
4C050FF01
4C050GG03
4C050HH01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB22
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA59
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA15
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZC20
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
(57)【要約】
本発明は、α-1062グルコネートの結晶形態に関する(スキームI(I))。一態様において、本発明は、α-1062グルコネート(形態A)の結晶性固体形態に関連しており、前記結晶性形態は、粉末X線回析パターンにおいて、3.61、10.98、14.41及び18.44±0.2°2θに顕著なピークを有する。さらに、本発明は、結晶形態及び前記結晶形態を含む組成物を製造するための方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-1062グルコネートの結晶性固体形態(形態A)であって、前記結晶形態は、粉末X線回析パターンにおいて、3.61、10.98、14.41及び18.44±0.2°2θに顕著なピークを有する、結晶性固体形態。
【請求項2】
前記結晶形態は、粉末X線回析パターンにおいて、15.20、17.31、17.79、22.77、23.64、24.88及び34.31±0.2°2θに1又は複数の追加の顕著なピークを有する、請求項1に記載の結晶性固体形態。
【請求項3】
前記結晶形態は、粉末X線回析パターンにおいて、3.61、10.98、13.80、14.41、14.56、15.08、15.20、17.02、17.31、17.79、18.44、19.24、20.18、20.91、21.22及び22.40±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも5つ以上の顕著なピークを有する、請求項1又は2のいずれか一項に記載の結晶性固体形態。
【請求項4】
前記結晶形態は、粉末X線回析パターンにおいて、7.25及び/又は12.67±0.2°2θにピークを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶性固体形態。
【請求項5】
前記結晶形態は、10.98、14.41、17.31、18.44及び22.40±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも3つ以上の顕著なピークを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶性固体形態。
【請求項6】
前記3つのピークは、前記5つのピークのうち透過モードの分析を用いて得られた粉末X線回析パターンにおいて、最も高い相対強度を有する、請求項5に記載の結晶性固体形態。
【請求項7】
前記結晶形態は、3.61、7.25、10.98、14.56及び22.40±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも3つ以上の顕著なピークを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶性固体形態。
【請求項8】
前記3つのピークは、前記5つのピークのうち反射モードの分析を用いて得られた粉末X線回析パターンにおいて、最も高い相対強度を有する、請求項7に記載の結晶性固体形態。
【請求項9】
前記ピークは、透過モードの粉末X線回析分析を用いて決定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の結晶性固体形態。
【請求項10】
前記結晶形態は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて評価される際に、116~120℃の温度で融解の開始を示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の結晶性固体形態。
【請求項11】
前記結晶形態は、約117℃の温度で融解の開始を示す、請求項10に記載の結晶性固体形態。
【請求項12】
前記結晶形態は、熱重量測定(TGA)を用いて評価される際に、DSCを用いて融解の開始前に<0.5%の重量の損失を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の結晶性固体形態。
【請求項13】
前記結晶形態は、DSCを用いて融解の開始前に<0.3%又は<0.2%の重量の損失を示す、請求項12に記載の結晶性固体形態。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の結晶性固体形態(形態A)を含む製剤であって、前記製剤は、α-1062グルコネートの一又は複数の追加の結晶性固体形態(形態B、C及び/又はD)を本質的に含まないか、あるいはごくわずかなレベルで含み、前記追加の結晶性固体形態は、
a. 形態B、ここで、前記形態Bは、粉末X線回析パターンにおいて、10.69、17.17、21.00及び24.67±0.2°2θに顕著なピークを有する、
b. 形態C、ここで、前記形態Cは、粉末X線回析パターンにおいて、3.90、9.74、10.35及び21.43±0.2°2θに顕著なピークを有する、
c. 形態D、ここで、前記形態Dは、粉末X線回析パターンにおいて、3.76、10.16、14.77及び19.03±0.2°2θに顕著なピークを有する、
から成る群から選択される、製剤。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の結晶性固体形態(形態A)を含む製剤であって、前記製剤は、請求項9に記載の一又は複数の追加のα-1062グルコネートの結晶性固体形態(形態B、C及び/又はD)をさらに含む、製剤。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の結晶性固体形態(形態A)を含む医薬組成物及び/又は請求項14又は15のいずれか一項に記載の製剤であって、前記組成物は、一又は複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、組成物。
【請求項17】
前記組成物は、前記組成物と接触する大気中水分を減らすように包装されている、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記包装は、アルミニウム箔のブリスター包装(Alu-Alu)、アルミニウム層付き高分子フィルムによる包装、及び/又は乾燥剤の使用による包装である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物は、経口又は経粘膜投与に適している、請求項16~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
認知障害及び/又はコリン欠乏障害と関連している脳疾患の治療に用いる請求項16~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記脳疾患が、コリン作動性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、統合失調症、てんかん、脳卒中、ポリオ、神経炎、ミオパシー、低酸素症後の脳の酸素及び栄養素欠乏症、無酸素症、窒息症、心停止、慢性疲労症候群、中毒、麻酔、脊髄障害、中枢炎症性障害、自閉症、レット症候群、術後のせん妄、神経障害性疼痛、アルコール及び薬物の乱用、中毒性のアルコール及び/又はニコチン渇望及び放射線治療の影響を含む脳疾患から成るグループから選択される、請求項20に記載の目的で用いるための組成物。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか一項に記載の結晶性固体形態を調製するための方法であって、α-1062のグルコン酸塩を有機溶媒と接触させること、スラリーを形成し、その後にろ過すること、及び/又はスラリーを乾燥させること、結晶性固体形態を得ること、を含む、方法。
【請求項23】
前記有機溶媒が、メチルエチルケトン(MEK)、1,4-ジオキサン(ジオキサン)、エチルアセテート(EtOAc)及びテトラヒドロフラン(THF)から成るリストから選択される、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の固体形態の分野及びその調製方法に関する。本発明は、α-1062グルコネートの結晶性固体形態に関する。一態様において、α-1062グルコネートの結晶性固体形態(形態A)に関連しており、前記結晶形態は、粉末X線回析パターンにおいて、3.61、10.98、14.41及び18.44±0.2°2θに顕著なピークを有する。さらに、本発明はまた、結晶形態及び前記結晶形態を含む組成物の製造方法にも関連している。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(AD)は、高齢者の間で最も一般的な認知症の種類である。それは、注意力、意味記憶、抽象的思考及び他の認知機能の障害を含む、進行性の記憶喪失を特徴とする。病気を緩和させる可能性のあるいくつかの実験的治療は、現在研究中であり、最も顕著なものは、細胞外のβ-アミロイドオリゴマー及びプラーク、並びに細胞内のタウタンパク質などのタンパク質の異常な蓄積を標的とする抗体に関する。しかしながら、β-アミロイドを標的とした抗体療法の近年の第III相臨床研究は、十分な治療効果を示すことができなかった。
【0003】
ADのもう一つの初期マーカーは、病気の経過中にコリン作動性ニューロンの喪失が増大し、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)の密度が低下することである。それ故に、コリン作動性伝達の増強によるコリン作動性の向上は、認知機能を改善する対症療法であると考えられている。この目的で認可されている薬品は、タクリン、ドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンである。すなわち、これらはアセチルコリンエステラーゼ(AChE)及び程度の差はあるが、ブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)という酵素の阻害剤であり、通常、コリン作動性伝達物質であるアセチルコリン(ACh)を代謝し、それによって不活性化する。これらの薬品の作用によって脳内のコリン作動性機能が増進すると、ADの状態で認知力が向上し、さまざまな行動的側面が改善する。
【0004】
ガランタミンは、第3級アミドであり、いくつかの球根植物中に自然に存在する。AChEの阻害に加えて、ガランタミンはまた、nAChRの非競争的アロステリック調節によってコリン作動性活性も高める。それは、2000年にADの薬品として導入され、現在では、70を超える国で承認されている。表示は、一般に「軽度から中程度のアルツハイマー型認知症」である。それは現在、アメリカにおいてラザダイン(Razadyne)(登録商標)として、他の場所でレミニール(Reminyl)(登録商標)として販売されている。
【0005】
しかしながら、リバスチグミン及びドネペジルと対照的に、ガランタミンは、人間の脳内で血しょう中と比較して有意に濃縮しない。これは、ガランタミンが植物性アルカロイドであり、ADの薬品として使われている前記他の2つのコリンエステラーゼ阻害剤よりも親油性が低く、これ故に、安定した状態においてやや低い脳と血液の濃度比(BBCR<2)のみを示すためである。
【0006】
他のコリンエステラーゼ阻害剤と同様に、ガランタミンは、臨床的に有意なレベルの、吐き気、嘔吐及び下痢を含む胃腸の(GI)副作用を有する。患者を適応させるために、コリンエステラーゼ阻害剤は、度々低用量(非有効量)で初期投与され、その後に、患者が許容できるレベルのGI副作用として経験したものに調整され、すべてではないとしてもほとんどの患者は、治療を最も治療効果のあるレベルで受けられないという可能性が高い。
【0007】
ガランタミンなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の親油性を高め、それらの血液脳関門の通過を改善するため、EP1940817、WO2009/127218及びUS2009/0253654に記述されているように、疎水性側鎖が基本的なアルカロイド構造に付加された。
【0008】
従って、ガランタミンの疎水性を高めるために、ガランタミンのプロドラッグα-1062(GLN-1062又はMemogain(登録商標)としても知られている)は、ガランタミンの安息香酸エステル(benzoic ester)として開発された。α-1062は、カルボキシルエステラーゼによって切断され、ガランタミンが放出されるまで実質的に薬理活性を示さない。α-1062の静脈内、鼻腔内、口腔内及び舌下投与は、ガランタミンの静脈内及び経口投与よりもα-1062及びガランタミンのより高い脳内濃度を迅速に達成し、比例して、より高い脳:血液の濃度比を有するという動物実験からの十分な証拠がある。α-1062は、脳へのガランタミンの輸送を向上させ、GI副作用を軽減し、それ故に現在、ADに使用可能である他の薬品に対する利点がある。
【0009】
WO2014/016430は、例えば、乳酸塩、グルコン酸塩、マレイン酸塩及び糖酸塩(saccharate salts)を含む、α-1062の様々な製剤及び塩に加えて、鼻腔内、口腔内及び舌下モードを介したアルファ-1062(α-1062)の経粘膜投与を開示している。WO2014/016430はまた、α-1062のグルコン酸塩を製造する2つの方法を教授し、これらの方法から得られた固体形態の粉末X線回析パターンも提供している。
【0010】
WO2014/016430において記述されているα-1062グルコン酸塩(gluconate salts)は、水中で10%体積当たりの質量(w/v)を超える溶解性を示す。良好な可溶性を示すにもかかわらず、これらのグルコン酸塩は、溶液中で準安定であり、完全に溶解した均一溶液は、沈殿物が消失するまで水性混合物を、例えば、50℃>に加温することによってのみ回収される。それ故に、そのような製剤において、沈殿物のシーディング(seeding)を減少させる又は回避する予防措置をとらなければならない。
【0011】
α-1062の固体形態及び製剤が、当技術分野で周知であるにもかかわらず、製剤及び医学的投与のための可溶及び/又は安定な形態を提供するために、α-1062を調製及び/又は製剤化する改善された、あるいはより効果的な手段にさらなる開発は必要とされる。
【発明の概要】
【0012】
従来技術に照らして、本発明の基礎となる技術的な課題は、α-1062の可溶及び/又は安定な形態を提供するための改善された又は代替手段の提供であった。
【0013】
この課題は、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項によって提供される。
【0014】
従って、一態様において、本発明は、α-1062グルコネートの結晶性固体形態(形態Aと称される)に関する。
【0015】
α-1062グルコネート(図1)は、薬剤の(pharmaceutical)製剤原料(drug substance)として開発及び使用されている。多くの有機製剤原料は、多形、疑似多形(水和物/溶媒和物)又は非晶形のような固体で存在することが可能であり、それぞれ異なる物理化学的性質を有する。これらの製剤原料の物理化学的性質は、製剤原料の可溶性(solubility)、溶解性(dissolution)、安定性及び生物学的利用能に影響を及ぼし、製剤原料の開発及び性能に極めて重要である。従って、3ロットのα-1062グルコネート(表1)について多形の研究を実施し、その安定な固体形態(多形)を調査及び同定し、他の水和物/溶媒和物(疑似多形)とされるものとの相対関係及び相互変換を決定した。
【0016】
物質の特性評価に使用可能である多種多様の分析技術のいくつかは、多形の物質の決定及び解明のために最も決定的である。これらの方法には、X線回析(単結晶及び粉末回析[XRPD]);熱分析(熱重量分析[TGA]及び示差走査熱量測定[DSC]);並びに振動分光法(赤外線[FTIR]、近赤外線[FT-NIR]及びラマン)が挙げられる。
【0017】
多形を決定のために好ましい技術は、X線回析である。それ故に、α-1062グルコネートの結晶形態の同定及び放出は、透過モードのXRPDパターンにおいて発見される2θ位置の顕著なピークを使用可能であり得る。
【0018】
様々な溶媒及び結晶化条件(表5)並びにその後のXRPD分析を利用するこれらの多形の研究中に、7つの独自の結晶質の物質が観測及び単離され、形態A、B、C、D並びに物質E、F及びG(図6)と名付けられる。非晶質物もまた、観測されている。
【0019】
同定された固体形態のそれぞれに対する詳細な説明は、以下に提示されている。(例えば、表8において、形態A~Dに関して顕著なピークのオーバーレイが示されている。)
【0020】
相対湿度ストレス(表7)と共に、水分活性(a)スラリー(表6)は、α-1062グルコネートの水和物の安定の領域を規定するために使用された。データは、0.12aより低い水分活性では、最も安定な形態は、無水形態Aであるということを示す。水分活性が約0.5aに上昇すると、最も安定な形態は、一水和物形態Cである。水分活性が約0.5aを超えると、最も安定な形態は、四水和物形態Bとなる。形態Dは、評価された任意の条件で安定でないと思われ、保存湿度によって決まる他の依存性形態に容易に変換する。
【0021】
同定された形態の概要は、以下に提示されている:
・形態Aは、無水の結晶性物質であり、117℃付近で同時に起こる融解/分解の開始を有する。形態Aは、43%RH(RT)で、固体の状態で動力学的に安定であると思われ、その条件で5日間まで持続した。
・形態Bは、四水和物結晶格子を形成する。格子水サイトのうち少なくとも1つは、不安定であり、完全には水和されず、通常約3.6~3.9の水分子で存在する。
・形態Cは、一水和物結晶格子を形成する。格子水サイトは、不安定であり、完全には水和されず、通常約0.4~0.5の水分子で存在する。
・形態Dは、熱力学的に安定でない二水和物結晶格子を形成し、保管RH条件に関連して、他のより安定な水和物に容易に変換する。
・物質E及びFは、未同定の分解生成物であると思われ、ジクロロメタンが結晶化溶媒として使用される場合に生成される。
・物質Gは、知られていないが、準安定性の水和物の疑いがある。物質Gは、THF又は1,4-ジオキサンのどちらか一方から蒸発することによって単離されることができる。保管すると、形態Bへの部分的な変換が観測された。
【0022】
これらの研究中に発見されたデータに基づいて、無水形態Aは、その形態及び安定性を維持するために適切な温度及び湿度の条件下で保管されており、医薬品の製剤及び製造に用いられる製剤原料として最適であると思われる。それ故に、本発明は、α-1062グルコン酸塩の複数の新規な固体形態を開示する。従って、本発明は、いくつかの実施形態において、α-1062グルコネートの水和物形態の発見に基づいており、いくつかの実施形態において、無水形態Aと比較して、相対的に水中でより低い可溶性のために回避される。本発明は、いくつかの実施形態において、α-1062グルコネートの複数の固体形態、それぞれが、特徴的性質を有する、の予期せぬ発見及び薬剤開発に最適と思われる形態Aの同定に関する。
【0023】
形態A:
一態様において、本発明は、α-1062グルコネート(形態A)の結晶性固体形態に関連しており、前記結晶形態は、粉末X線回析パターンにおいて、3.61、10.98、14.41及び18.44±0.2°2θに顕著なピークを有する。
【0024】
これらの4つのピークは、以下に提示されている顕著なピークリストから選択され、形態B~D又は物質E~GのXRPDパターンにおける顕著なピークと十分な重複を示さないように思われる。それ故に、一実施形態において、形態Aは、対応する粉末X線回析パターンを比較すると、例えば、上記のような、あるいは図8又は表8のような一又は複数の顕著なピークを用いて確実に区別されることができる。一実施形態において、粉末X線回析パターンにおけるこれらのピークの存在は、形態Aを同定及び/又は以前に当技術分野において記述されている、例えば、WO2014/016430において記述されている固体形態から形態Aを区別するために使用されることができる。
【0025】
一実施形態において、形態Aは、粉末X線回析パターンにおいて、15.20、17.31、17.79、22.77、23.64、24.88及び34.31±0.2°2θに一又は複数の追加の顕著なピークを有する。以下に概説されているように、これらのピークは、顕著なピークのリストから選択され、形態B~D又は物質E~GのXRPDパターンにおける顕著なピークと十分な重複を示さないように思われる。
【0026】
一実施形態において、形態Aは、粉末X線回析パターンにおいて、3.61、10.98、13.80、14.41、14.56、15.08、15.20、17.02、17.31、17.79、18.44、19.24、20.18、20.91、21.22及び22.40±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも5つの顕著なピークを有する。
【0027】
このピークのリストは、形態Aの表8からの顕著なピークのリストを表している。通常は、任意の調製において形態Aの存在を決定するために、このリストからすべてのピークが検出される必要はない。本発明によれば、例えば、いくつかの実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上のピークは、好ましくは比較的高い信号強度を有し、任意の結晶形態を決定するために使用されることができる。例えば、4、5、6、7、8、9つ又は10つの最も強いピークは、任意の結晶形態を同定するために使用されることができる。一実施形態において、形態Aなどの任意の結晶形態の十分な同定は、少なくとも4つの顕著なピークの存在がXRPD比較に基づいて決定されることができる場合に達成される。
【0028】
通常は、顕著なXRPDピークは、XRPDパターンにおいて観測される最も強い低角度の、重複しないピークである。いくつかの実施形態において、「顕著なピーク」は、粉末X線回析パターンにおいて、好ましくは≧20%の相対強度、好ましくは≧30%の相対強度、より好ましくは≧40%の相対強度を有する。しかしながら、相対強度の値は、装置又は分析モードによって変化する可能性があり、本明細書中に記述されている固体形態に本質的に限定するものではない。
【0029】
一実施形態において、形態Aは、粉末X線回析パターンにおいて、7.25及び/又は12.67±0.2°2θにピークを有する。これらのピークは、顕著なピークとして上記のピークと比較して、相対的に低い強度である。しかしながら、7.25及び/又は12.67±0.2°2θのピークは、形態B~D又は物質E~Gの他のすべてのパターンには存在しないように思われる。
【0030】
一実施形態において、ピークは、透過モードにおける粉末X線回析分析を用いて決定される。
【0031】
一実施形態において、形態Aは、粉末X線回析パターンにおいて、10.98、14.41、17.31、18.44及び22.40±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも3つのピークを有する。一実施形態において、前記3つのピークは、透過モードにおける分析を用いて得られた粉末X線回析パターンにおいて、最も高い相対強度を有する5つのピーク内にある。一実施形態において、これらの5つのピークは、以下の実施例において概説されているように、透過モードを用いるXRPDパターンにおける最も強いピークである。
【0032】
一実施形態において、ピークは、反射モードにおける粉末X線回析分析を用いて決定される。
【0033】
一実施形態において、形態Aは、粉末X線回析パターンにおいて、3.61、7.25、10.98、14.56及び22.40±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも3つの顕著なピークを有する。一実施形態において、前記3つのピークは、好ましくは反射モードにおける分析を用いて得られた粉末X線回析パターンにおいて、最も高い相対強度を有する5つのピーク内にある。一実施形態において、これらの5つのピークは、以下の実施例において概説されているように、反射モードを用いるXRPDパターンにおける最も強いピークである。
【0034】
一実施形態において、形態Aは、粉末X線回析パターンにおいて、3.61、7.25、10.98、14.56及び22.40±0.2°2θから成るリストから選択される一又は複数のピークを有する。これらのピークはまた、反射モードを用いるXRPDパターンからも観測可能である。
【0035】
一実施形態において、形態Aは、粉末X線回析パターンにおいて、14.41及び14.56、15.08及び15.20及び24.88及び25.09±0.2°2θから成るリストから選択される一又は複数のダブレットを有する。これらのダブレットは、形態Aを同定及び形態Aを他の形態から任意に区別するために使用されることができる。
【0036】
下記は、透過モードにおいて収集される形態Aに関して通常、観測されるXRPDパターンの表である。
【0037】
形態Aのピークリスト:ピークリストは、図8に従って、形態Aの粉末X線回析パターンから決定された。2θ°の精度は、小数点第2位で提供されており、バッチ又は装置によって決まるいくらかの変動がはっきりと認められることができる。
【表1】
*いくつかの実施形態において、ピークは、XRPDパターンにおいて観測される顕著なピークとみなされることができる。
【0038】
一実施形態において、形態Aは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて評価された場合に、116~120℃の温度で、好ましくは約117℃で融解の開始を示す。
【0039】
一実施形態において、形態Aは、熱重量測定(TGA)を用いて評価された場合に、DSCを用いて融解の開始前に<1%、好ましくは<0.5%、より好ましくは<0.3%又は<0.2%未満の重量の減少を示す。
【0040】
当業者に知られているように、融解温度及び重量の減少の規定された性質は、特定の固体形態を同定するために使用されることができる。以下で詳細に記述されているように、DSC及びTGA分析は、本明細書中に記述されている固体形態の明確な特徴を決定するために用いられた。
【0041】
一実施形態において、形態Aは、水中で100mg/mlを超える、好ましくは、120mg/mlを超える、より好ましくは約123mg/mlの溶解度を示す。水中での溶解性を決定する方法は、当業者に知られており、過度の負担なしに実施されることができる。それ故に、形態Aは、予期せぬ良好な水溶解度を示す。
【0042】
一実施形態において、形態Aは安定であり、75%未満、好ましくは50%未満の相対湿度(RH)で保管され、より好ましくは、形態Aが約43%以下のRHで安定である場合に、形態B~D又は物質E~Gのうちのいずれか1つに変換しないか、あるいは、ごくわずかな変換を示す。
【0043】
以下の実施例において説明されているように、形態Aは、約75%RHを超えると吸湿性を示す。0.57%の重量の増加が、5から75%RHまでに観測された。重量は、75%RHを超えると有意に増加し、75から85%RHまで2.97%の重量の増加を有し、85から95%RHまで追加の8.7%の重量が増加した。データは、85%RHを超える場合に、形態Aが形態Bに変換したということを示唆する。注目すべきことは、DVS実験が完了し、脱水され、形態Aに戻ったら、物質が5%で保持された点である。それ故に、形態Aは、75%未満のRH値で低い吸水性を有する。
【0044】
形態Aは、α-1062グルコン酸塩の有利な形態を示す。低湿度下で(好ましくは、約43%RH又は43%RH未満で、あるいは0.12a未満の低い水分活性で)保管された場合のその高い安定性及び水中での良好な可溶性のために、それは、医薬品の調製のための理想的な形態を示す。形態Aは、形態B~Dと比較して、水中で改善された可溶性を有するが、好ましくは、いくつかの実施形態において、形態B~Dもまた、水中で良好な可溶性を有し、製剤に適することができる。疑似多形水和物形態B~Dは、低湿度で保管された場合に、形態Aに変換する傾向にあり、それによって、特異な多形形態を維持すること、このことは、調合薬の調製及び製剤の極めて重要な部分であるが、信頼性の高い過程、それによって、形態Aは最適な形態であるように思われる。
【0045】
形態B:
別の態様において、本発明は、形態Bと名付けられたα-1062グルコネートの結晶性固体形態に関する。
【0046】
それ故に、本発明は、α-1062グルコネート(形態B)の結晶性固体形態と関連しており、前記結晶形態は、粉末X線回析パターンにおいて、10.69、17.17、21.00及び24.67±0.2°2θに顕著なピークを有する。
【0047】
これらの4つのピークは、以下に提示されている顕著なピークのリストから選択され、形態A、C若しくはD又は物質E~GのXRPDパターンにおける顕著なピークと十分な重複を示さないように思われる。それ故に、一実施形態において、形態Bは、対応する粉末X線回析パターンを比較すると、例えば、上記のような、あるいは図14又は表8のような一又は複数の顕著なピークを用いて確実に区別されることができる。一実施形態において、粉末X線回析パターンにおけるこれらのピークの存在は、以前に当技術分野において、例えば、WO2014/016430において記述されている固体形態から形態Bを区別するために使用されることができる。
【0048】
一実施形態において、形態Bは、粉末X線回析パターンにおいて、10.69、12.92、13.26、14.56、16.45、17.17及び21.00±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも5つの顕著なピークを有する。このピークリストは、形態Bの表8からの顕著なピークのリストを表している。
【0049】
一実施形態において、形態Bは、粉末X線回析パターンにおいて、10.69、16.45、17.17、21.00及び24.67±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも3つの顕著なピークを有する。このピークリストは、形態Bの表8から5つの最も強いピークのリストを表している。
【0050】
通常は、任意の調製において形態Bの存在を決定するために、このリストからすべてのピークが検出される必要はない。本発明によれば、例えば、いくつかの実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上のピークは、好ましくは比較的高い信号強度を有し、任意の結晶形態を決定するために使用されることができる。例えば、4、5、6、7、8、9つ又は10つの最も強いピークは、任意の結晶形態を同定するために使用されることができる。一実施形態において、形態Bなどの任意の結晶形態の十分な同定は、少なくとも4つの顕著なピークの存在がXRPDの比較に基づいて決定されることができる場合に達成される。
【0051】
一実施形態において、形態Bは、粉末X線回析パターンにおいて、12.92及び/又は15.46±0.2°2θにピークを有する。これらのピークは、顕著なピークとして上記のピークと比較して、相対的に低い強度である。しかしながら、12.92及び/又は15.46±0.2°2θのピークは、形態A、C若しくはD又は物質E~Gの他のすべてのパターンには存在しないように思われる。
【0052】
一実施形態において、形態Bは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて評価された場合に、60~70℃の温度で、好ましくは約66℃で融解の開始を示す。一実施形態において、形態Bは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて評価された場合に、110~120℃の温度で、好ましくは約114℃で第2の融解の開始を示す。一実施形態において、形態Bは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて評価された場合に、148~156℃の温度で、好ましくは約152℃で第3の融解の開始を示す。
【0053】
一実施形態において、形態Bは、熱重量分析(TGA)を用いて評価された場合に、114℃まで、3~4%、より好ましくは約3.3%の重量の減少を示す。一実施形態において、形態Bは、熱重量分析(TGA)を用いて評価された場合に、147℃まで、5~6%、より好ましくは約5.2%の重量の減少を示す。一実施形態において、形態Bは、水中で良好な可溶性を有し、薬剤の製剤及び投与に適することができる。
【0054】
形態Bのピークリスト:ピークリストは、図14に従って、形態Bの透過粉末X線回析パターンから決定された。2θ°の精度は、小数点第2位で提供されており、バッチ又は装置によって決まるいくらかの変動がはっきりと認められることができる。
【表2】
*いくつかの実施形態において、ピークは、XRPDパターンにおいて観測される顕著なピークとみなされることができる。
【0055】
形態C:
別の態様において、本発明は、形態Cと名付けられたα-1062グルコネートの結晶性固体形態に関する。
【0056】
それ故に、本発明は、α-1062グルコネート(形態C)の結晶性固体形態と関連しており、前記結晶形態は、粉末X線回析パターンにおいて、3.90、9.74、10.35及び21.43(任意に15.66及び/又は23.90もまた)±0.2°2θに顕著なピークを有する。
【0057】
これらの4つのピークは、以下に提示されている顕著なピークのリストから選択され、形態A、B若しくはD又は物質E~GのXRPDパターンにおける顕著なピークと十分な重複を示さないように思われる。それ故に、一実施形態において、形態Cは、対応する粉末X線回析パターンを比較すると、例えば、上記のような、あるいは図20又は表8のような一又は複数の顕著なピークを用いて確実に区別されることができる。一実施形態において、粉末X線回析パターンにおけるこれらのピークの存在は、以前に当技術分野において、例えば、WO2014/016430において記述されている固体形態から形態Cを区別するために使用されることができる。
【0058】
一実施形態において、形態Cは、粉末X線回析パターンにおいて、3.90、9.74、10.35、10.65、13.35、15.01、15.66、16.08、16.46、17.43、19.77、21.43、及び22.32±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも5つの顕著なピークを有する。このピークリストは、形態Cの表8からの顕著なピークのリストを表している。
【0059】
一実施形態において、形態Cは、粉末X線回析パターンにおいて、10.35、13.35、15.01、16.08及び16.46±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも3つの顕著なピークを有する。このピークリストは、形態Cの表8から5つの最も強いピークのリストを表している。
【0060】
通常は、任意の調製において形態Cの存在を決定するために、このリストからすべてのピークが検出される必要はない。本発明によれば、例えば、いくつかの形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上のピークは、好ましくは比較的高い信号強度を有しており、任意の結晶形態を決定するために使用されることができる。例えば、4、5、6、7、8、9つ又は10つの最も強いピークは、任意の結晶形態を同定するために使用されることができる。一実施形態において、形態Cなどの任意の結晶形態の十分な同定は、少なくとも4つの顕著なピークの存在がXRPDの比較に基づいて決定されることができる場合に達成される。
【0061】
一実施形態において、形態Cは、粉末X線回析パターンにおいて、7.85±0.2°2θにピークを有する。このピークは、顕著なピークとして上記のピークと比較して、相対的に低い強度である。しかしながら、7.85±0.2°2θのピークは、形態A、B若しくはD又は物質E~Gの他のすべてのパターンには存在しないように思われる。
【0062】
一実施形態において、形態Cは、示差走査熱量測定(DSC)を用いて評価された場合に、115~125℃の温度で、好ましくは約119℃で融解の開始を示す。
【0063】
一実施形態において、形態Cは、熱重量分析(TGA)を用いて評価された場合に、121℃まで、0.5~1.5%、好ましくは約0.9%の重量の減少を示す。
【0064】
一実施形態において、形態Cは、水中で良好な可溶性を有し、薬剤の製剤及び投与に適することができる。
【0065】
形態Cのピークリスト:ピークリストは、図20に従って、形態Cの透過粉末X線回析パターンから決定された。2θ°の精度は、小数点第2位で提供されており、バッチ又は装置によって決まるいくらかの変動がはっきりと認められることができる。
【表3】
*いくつかの実施形態において、ピークは、XRPDパターンにおいて観測される顕著なピークとみなされることができる。
【0066】
形態D:
別の態様において、本発明は、形態Dと名付けられたα-1062グルコネートの結晶性固体形態に関する。
【0067】
それ故に、本発明は、α-1062グルコネート(形態D)の結晶性固体形態に関連しており、前記結晶形態は、粉末X線回析パターンにおいて、3.76、10.16、14.77及び19.03(任意に17.96、18.86及び/又は28.14もまた)±0.2°2θに顕著なピークを有する。
【0068】
これらの4つのピークは、以下に提示されている顕著なピークのリストから選択され、形態A~C又は物質E~GのXRPDパターンにおける顕著なピークと十分な重複を示さないように思われる。それ故に、一実施形態において、形態Dは、対応する粉末X線回析パターンを比較すると、例えば、上記のような、あるいは図28又は表8のような一又は複数の顕著なピークを用いて確実に区別されることができる。一実施形態において、粉末X線回析パターンにおけるこれらのピークの存在は、以前に当技術分野において、例えば、WO2014/016430において記述されている固体形態から形態Dを区別するために使用されることができる。
【0069】
一実施形態において、形態Dは、粉末X線回析パターンにおいて、3.76、10.16、13.35、13.75、14.77、16.27、16.70、17.24、17.96、18.86、19.03、19.87及び20.15、21.21±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも5つの顕著なピークを有する。このピークリストは、形態Dの表8からの顕著なピークのリストを表している。
【0070】
一実施形態において、形態Dは、粉末X線回析パターンにおいて、3.76、10.16、13.35、14.77及び19.03±0.2°2θから成るリストから選択される少なくとも3つの顕著なピークを有する。このピークリストは、形態Dの表8から5つの最も強いピークのリストを表している。
【0071】
通常は、任意の調製において形態Dの存在を決定するために、このリストからすべてのピークが検出される必要はない。本発明によると、例えば、いくつかの実施形態において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10つ又はそれ以上のピークは、好ましくは比較的高い信号強度を有しており、任意の結晶形態を決定するために使用されることができる。例えば、4、5、6、7、8、9つ又は10つの最も強いピークは、任意の結晶形態を同定するために使用されることができる。一実施形態において、形態Dのような任意の結晶形態の十分な同定は、少なくとも4つの顕著なピークの存在がXRPDの比較に基づいて決定されることができる場合に達成される。
【0072】
一実施形態において、形態Dは、粉末X線回析パターンにおいて、7.53及び/又は12.09±0.2°2θにピークを有する。これらのピークは、顕著なピークとして上記のピークと比較して、相対的に低い強度である。しかしながら、7.53及び/又は12.09±0.2°2θのピークは、形態A~C又は物質E~Gの他のすべてのパターンには存在しないように思われる。
【0073】
一実施形態において、形態Dは、準安定形態である。以下の実施例において説明されているように、形態Dは、相対湿度≧52%RHで長時間さらされると、最終的に形態Bに変換し、あるいは相対湿度<52%RHでさらされることで形態Cに変換する。一実施形態において、形態Dは、水中で良好な可溶性を有し、薬剤の製剤及び投与に適することができる。
【0074】
形態Dのピークリスト:ピークリストは、図28に従って、形態Dの透過粉末X線回析パターンから決定された。2θ°の精度は、小数点第2位で提供されており、バッチ又は装置によって決まるいくらかの変動がはっきりと認められることができる。
【表4】
*いくつかの実施形態において、ピークは、XRPDパターンにおいて観測される顕著なピークとみなされることができる。
【0075】
調製:
別の態様において、本発明は、本明細書中に記述されているように、結晶性固体形態Aを含む調製に関連しており、前記調製は、α-1062グルコネートの一又は複数の追加の結晶性固体形態(形態B、C及び/又はD又は物質E~Gなど)を本質的に含まないか、あるいは、ごくわずかなレベルで含む。
【0076】
一実施形態において、調製は、
i. 形態B、ここで、前記形態Bは、本明細書中に記述されているように、好ましくは、粉末X線回析パターンにおいて、10.69、17.17、21.00及び24.67±0.2°2θに顕著なピークを有する、
ii. 形態C、ここで、前記形態Cは、本明細書中に記述されているように、好ましくは、粉末X線回析パターンにおいて、3.90、9.74、10.35及び21.43±0.2°2θに顕著なピークを有する、及び、
iii. 形態D、ここで、前記形態Dは、本明細書中に記述されているように、好ましくは、粉末X線回析パターンにおいて、3.76、10.16、14.77、及び19.03±0.2°2θに顕著なピークを有する、
から成る群から選択される一又は複数の追加の結晶性固体形態を本質的に含まないか、あるいは、ごくわずかなレベルで含む。
【0077】
実施例において詳細に記述されているように、形態Aは、無水であり、適切な条件で維持される場合に、形態A~Dの中で最も安定であるように思われる。それ故に、形態Aは、本質的に「純粋な」形態又は一又は複数の追加の結晶性固体形態B~D及び/又は物質E~Gを本質的に含まないか、あるいは、ごくわずかなレベルで含む形態で維持されることができる。
【0078】
本明細書中に記述されている実施例から、形態A(無水物)は、約0.12a(12%RH)未満の低い水分活性で最も安定な形態であるように思われる。さらに、形態Aは、43%RH(RT)で固体の状態で動力学的に安定と思われ、その条件で5日間まで持続した。この水分活性を超えると、約0.5aまで、形態Aは、形態C(一水和物)に変換する。0.5aを超えると、形態B(四水和物)が形成される。形態D(二水和物)は、約75%RHでの暴露から、あるいは乾燥させることによってのみ観測された。形態Dは、任意の評価された条件で安定しないと思われ、保存湿度によって決まる他の形態に容易に変換する。
【0079】
それ故に、本発明は、形態B~Gを含まないか、あるいはそれらを低い又はごくわずかなレベルで含む形態Aの調製に関連しており、それによって、「純粋な」形態Aの組成物又は水分含量によって移行する可能性のある組成物を含有している。最も好ましい形態は、疑似多形水和物形態への(有意な)変換を含まない、本質的に安定な無水形態中に形態Aを含む組成物である。
【0080】
方法:
別の態様において、本発明は、結晶性固体形態Aを調製するための方法に関連しており、α-1062グルコネートを有機溶媒と接触させることを含んでおり、好ましくは、メチルエチルケトン(MEK)、1,4-ジオキサン(dioxane)、エチルアセテート(EtOAc)及びテトラヒドロフラン(THF)から成るリストから選択され、好ましくは、スラリーを形成し、その後にろ過及び/又はスラリーを乾燥させ、結晶性固体形態を得る。
【0081】
一実施形態において、方法は、α-1062グルコネートと溶媒を混ぜ合わせ、適切な結晶化条件下で、塩の結晶化を誘導することを含む。
【0082】
一実施形態において、結晶化条件は、α-1062のグルコン酸(gluconate)塩を溶媒と接触させ、スラリー及び/又は懸濁液を形成することを含む。
【0083】
一実施形態において、α-1062グルコネートは、固体形態で提供される。α-1062グルコネートを調製する好ましい方法は、以下の実施例において開示される。
【0084】
好ましくは、α-1062グルコネートの固体形態は、スラリー及び/又は懸濁液を作成するために混合される。任意に、スラリーを攪拌及び/又は加熱してもよい。好ましい一実施形態において、スラリーは、15~25℃の温度で、より好ましくは、約20℃のような18~22℃の間で形成及び攪拌される。一実施形態において、スラリーは、室温で、例えば、一般的な実験室条件下で形成及び攪拌される。
【0085】
一実施形態において、形態Aを形成するための方法は、α-1062グルコネートを含む懸濁液及び/又はスラリーを形成するために有機溶媒を用いることを含む。
【0086】
一実施形態において、形態Aを形成するための方法は、懸濁液及び/又はスラリーを形成するために水を含まずに有機溶媒を用いることを含む。
【0087】
一実施形態において、α-1062グルコネートの形態Aを形成するための方法は、懸濁液及び/又はスラリーを形成するために溶媒として、ブタノンとしても知られているメチルエチルケトン(MEK)を用いることを含む。
【0088】
以下の実施例において記述されているように、本発明者らは、α-1062グルコネート及びMEKを20℃で用いてスラリーを形成すると、黄色がかった、ベージュ又は明るいオレンジの懸濁液が形成され、攪拌の間中ずっとその視覚的特性及び濃度が維持されることを観測した。固体形態のろ過及び乾燥は、上記及び以下の実施例において概説されている形態Aの粉末X線回析パターンによって規定された、形態Aを含む明るい黄色/オレンジ色の固形物を生産した。
【0089】
それ故に、一実施形態において、本発明は、結晶性固体形態Aを調製する方法に関連しており、本明細書中に記述されているように、α-1062グルコネートをMEKと接触させ、スラリーを形成し、スラリーをろ過及び/又は乾燥させ、結晶性固体形態を得ることを含む。
【0090】
それ故に、一実施形態において、本発明は、結晶性固体形態Aを調製する方法に関連しており、本明細書中に記述されているように、α-1062グルコネートをMEKと接触させ、スラリーを形成し、スラリーを15~25℃の間の温度で、好ましくは約20℃で攪拌し、MEKを除去するためにスラリーをろ過し、ろ過を介して得られた固体形態をMEKで任意に洗浄し、ろ過を繰り返し、スラリーを乾燥させ、形態Aを得ることを含む。好ましい一実施形態において、スラリーを形成するために用いられる溶媒は、水を含まないMEKである。
【0091】
α-1062グルコネートの本明細書中で記述されている疑似多形水和物形態(形態B~D)を生産する方法もまた、本明細書中で開示されており、α-1062グルコネートをMEK及び水と接触させ、スラリーを形成し、スラリーをろ過及び/又は乾燥させ、結晶性固体形態を得ることを含む。
【0092】
以下の実施例において記述されているように、本発明者らは、α-1062グルコネート及び20℃で水と混合されたMEKを用いて再スラリーを形成すると、黄色又はオレンジ色の懸濁液が形成され、攪拌の間中ずっと濃厚懸濁液になるということを観測した。固体形態のろ過は、困難で、比較的時間がかかった。物質の乾燥は、上記及び以下の実施例において概説されている形態B~Dの粉末X線回析パターンによって規定された水和物形態を有する、オレンジ色の固形物を生産した。形態B~Dは、本明細書中に記述されているように、大気中の水分による形態間の移行によって生産されることができる。
【0093】
形態Aが提示する性質としては、例えば、いくつかの実施形態において、他の形態よりも優れた熱力学の安定性、より高い結晶化度及び/又はより高い可溶性が挙げられるため、形態Aは、多くの有用性のために形態B~Dと比較して有利である。
【0094】
多数の要因が結晶化条件に影響を及ぼし、それらは、当業者によく知られている。それ故に、結晶化の代替手段を使用してもよい。そのような要因としては、例えば、溶液中の塩の濃度(結晶化溶液)、任意には、結晶化溶液の初期温度と最終温度の間の差、任意には、冷却速度、任意には、溶液の気加速度、潜在的なシーディング、潜在的な過飽和比及び/又は任意には、沈殿剤の存在が挙げられる。本明細書中で提示されている開示からの指針を用いて、当業者は、過度の実験なしに、一又は複数の適切な因子を選択及び/又は調製し、本明細書中に記述されている形態A~Dの1つを提供するための結晶化条件に到達することができる。
【0095】
医薬組成物及び医学的用途:
別の態様において、本発明は、本明細書中に記述されているように、結晶性固体形態Aを含む医薬組成物及び/又は本明細書中に記述されているように、形態Aを有する調製物に関連しており、前記組成物は、一又は複数の薬学的に許容される賦形剤を追加的に含む。医薬品賦形剤は、当業者に知られており、例えば、医学的適応、患者、投与経路、投与量及び製剤によって選択されることができる。
【0096】
一実施形態において、本発明の医薬組成物及び/又は本発明の調製物は、本明細書中に記述されているように、結晶性固体形態Aを含み、前記組成物と接触する大気中水分を減らすように包装されている。適切な包装が当業者に知られている。いくつかの実施形態において、アルミニウム箔のブリスター包装(Alu-Alu)、アルミニウム層付き高分子フィルムによる包装、及び/又は乾燥剤の使用による包装が使用される。
【0097】
一実施形態において、医薬組成物は、経口又は経粘膜投与に適している。
【0098】
一実施形態において、医薬組成物は、認知機能障害と関連している脳疾患の治療で用いる。さらに、本発明は、それを必要としている患者に本発明の組成物又は調製物を投与することを含む、認知機能障害と関連している脳疾患を治療するための方法に関連している。
【0099】
一実施形態において、脳疾患は、コリン欠乏障害と関連している。一実施形態において、組成物は、ニコチン性アセチルコリン受容体感作物質として使用されるか、あるいは、に用いる。
【0100】
一実施形態において、脳疾患は、コリン作動性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、統合失調症、てんかん、脳卒中、ポリオ、神経炎、ミオパシー、低酸素症後の脳の酸素及び栄養素欠乏症、無酸素症、窒息症、心停止、慢性疲労症候群、中毒、麻酔、脊髄障害、中枢炎症性障害、自閉症、レット症候群、術後のせん妄、神経障害性疼痛、アルコール及び薬物の乱用、中毒性のアルコール及び/又はニコチン渇望及び放射線治療の影響を含む脳疾患から成るグループから選択される。
【0101】
本発明のさらなる態様は、キット又はキットの一部に関連しており、本明細書中に記述されているように、形態Aの調製物及び医薬組成物を調製することに有用である一又は複数の他の成分を含む。好ましくは、形態Aは、前記固体形態と接触する大気中水分を減少させるように包装及び/又は調製される。
【0102】
いくつかの実施形態において、そのようなキットは、α-1062グルコネートの患者への投与のために溶液又は他の製剤を調製するために、水などの一又は複数の追加の溶媒を含んでもよい。
【0103】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記述されているように、形態Aは、当技術分野において記述されているα-1062グルコネートの他の固体形態と比較して、水中でより高い可溶性及び保管時に改善された安定性を示す。
【0104】
一実施形態において、本明細書中に記述されているように、形態Aは、溶液中での製剤のため、好ましくは経粘膜投与のために調製される。
【0105】
一実施形態において、本明細書中に記述されているように、形態Aは、舌下錠若しくはバッカル錠又はフィルム製剤などの口腔内に投与するための、好ましくは経粘膜投与のための錠剤に製剤するために調製される。
【0106】
経粘膜投与の好ましいが、非限定的な様式は、好ましくは治療効果のある量のα-1062グルコネートの、経口投与、鼻腔内投与、舌下投与又は口腔投与から選択される。本明細書中に記述されている形態Aの向上した可溶性は、驚くべき、かつ有益な発展を示す。高い可溶性は、より高い濃度の化合物がより少量で投与されることを可能にし、それによって、例えば、経粘膜投与を介した投与をさらに増進する。
【0107】
好ましい経粘膜投与は、要因の組み合わせによる輸送の有益な様式を示す。向上した可溶性は、より高い濃度のα-1062を投与することができるようにし、それによって、より大量の切断後の活性物質(ガランタミン)が脳内で、活性化することを可能にする。α-1062の輸送は、(脳内のα-1062自体又はプロドラッグの切断後の脳内のガランタミンレベルのどちらか一方によって測定される)ガランタミンと比較して改善され、それによって、従来可能であったよりも、ガランタミンがより効果的に脳に供給されることを可能にする。α-1062のプロドラッグの性質は、グルコン酸塩の経粘膜適用によって有益な方法で利用及び増進される。本明細書中に記述されているように、形態Aは、その高い可溶性によって、これらの投与の様式をさらに増強する。
【0108】
それ故に、本発明はまた、患者における認知機能障害と関連している脳疾患を治療する方法にも関連しており、方法は、治療効果のある量のα-1062グルコネートを、それを必要としている患者に投与することを含む。
【0109】
一実施形態において、α-1062のグルコン酸塩は、0.1~200mg、1~100mg、好ましくは2~40mgの投薬量で、好ましくは1日に1~3回、より好ましくは1日に2回、及びさらにより好ましくは1日に1回だけ投与される。
【0110】
一実施形態において、α-1062のグルコン酸塩は、鼻腔内に、口腔に、舌下に、好ましくは2~40%体積当たりの質量(w/v)の溶液として、例えば、20~100マイクロリットルの量で、好ましくは単回(鼻腔内又は経口(舌下/口腔))スプレー事象において、例えば、1日に1~3回投与される。
【0111】
一実施形態において、治療される脳疾患はアルツハイマー病であって、結晶形態1のα-1062のグルコン酸塩又は結晶形態1から得られたα-1062のグルコン酸塩は、鼻腔内に、口腔に又は舌下に、約10%体積当たりの質量(w/v)の溶液として、20~100マイクロリットル、例えば、約50マイクロリットルの量で、1~3回、好ましくは単回投与事象において、1日に2回投与される。
【0112】
一実施形態において、経粘膜適用は、霧吹き(atomizer)、噴霧器(sprayer)、ポンプスプレー、スポイト、スクイーズチューブ、スクイーズボトル、ピペット、アンプル、鼻カニューレ、定量投与装置、鼻スプレー吸入器、鼻持続的陽圧装置、及び/又は呼吸作動式双方向性輸送装置などの適切な定量投与装置を用いて、治療効果のある量の結晶形態1のα-1062のグルコン酸塩又は結晶形態1から得られたα-1062のグルコン酸塩を投与することによって実施される。
【0113】
一実施形態において、舌下投与は、治療効果のある量の形態Aのα-1062のグルコン酸塩又は形態Aから得られたα-1062のグルコン酸塩を舌の下に投与することによって、舌の下に一又は複数滴の溶液又は凍結乾燥された粉末若しくはエマルションの形態における微粒子の量を設置することによって、あるいは舌下錠又はフィルム製剤を使用することによって及び/又は形態Aのα-1062のグルコン酸塩又は形態Aから得られたα-1062のグルコン酸塩を含む前もって選択された体積の液体組成物を舌の底面に噴霧することによって実施される。
【0114】
一実施形態において、口腔投与は、治療効果のある量の形態Aのα-1062のグルコン酸塩又は形態Aから得られたα-1062のグルコン酸塩を粉末若しくはエマルション、又は錠剤若しくはフィルム製剤、又は口腔内崩壊錠若しくは口内分散性錠(ODT)などを介して、頬と歯茎の間の口の内側の口腔前庭に投与することによって実施される。
【0115】
発明の詳細な説明
本発明は、α-1062のグルコン酸塩の安定な、結晶形態に関する。それ故に、本発明は、α-1062グルコネートの結晶性固体形態(形態A)に関連しており、前記結晶形態は、粉末X線回析パターンにおいて、3.61、10.98、14.41及び18.44±0.2°2θに顕著なピークを有する。
【0116】
製剤原料:
本発明の医薬物質は、α-1062(Memogain(登録商標)、GLN-1062、PubChem CID 44240142、ガランタミンベンゾエート(benzoate)、CAS:224169-27-1としても知られている)である。本発明において使用された塩は、α-1062のグルコン酸塩である。図1は、α-1062グルコネートの化学構造を提供している。
【0117】
化学名(IUPAC、LexiChem 2.6.6によって算出された):[(1S,12S,14R)-9-メトキシ-4-メチル-11-オキサ-4-アザテトラシクロ[8.6.1.01,12.06,17]ヘプラデカ-6(17),7,9,15-テトラエン-14-イル]ベンゾエート。
【0118】
遊離塩基の分子式:C2425NO;グルコン酸の分子式:C12;遊離塩基の分子量:391.47g/mol;α-1062グルコネートの分子量:587.61g/mol;換算係数:1mg base=1.501mg salt。
【0119】
3つのキラル中心がガランタミンベンジルエステルカチオン中に存在し、4つのキラル中心がグルコネートアニオン中に存在する。グルコン酸塩は、白色から淡黄色の粉末である。
【0120】
いくつかの動物種における前臨床試験からα-1062の静脈内投与、鼻腔内投与、舌下投与又は口腔投与は、ガランタミンの経口投与よりも高いガランタミンの脳内濃度を迅速に達成し、比例して、より高い脳:血液の濃度比を有するという十分な証拠が存在する。前臨床及び臨床第1相試験においてもたらされたデータは、ガランタミンの確立された経口経路による投与と比較して、α-1062の投与によって、改善された忍容性を含んだより優れた有効性(効能)が達成可能であるということを示唆する。
【0121】
本発明は、現在、新規の、有用性のあるα-1062の結晶形態を提供しており、医薬品用に適している。
【0122】
固体形態:
本明細書中では、非晶体とは、固体における製剤原料分子の無秩序な配列のために結晶質でない。
【0123】
本明細書中では、多形とは、物質の固体の性質に影響を及ぼし得る結晶格子において、分子の異なる配列/構造を示す複数の結晶形態における製剤原料の存在である。例えば、本明細書中に記述されているように、形態Aは、α-1062グルコネートの多形とみなされることができる。
【0124】
本明細書中では、疑似多形とは、製剤の原料と結晶格子中で結合した溶媒和物/水和物を含む結晶形態における製剤原料の存在である。例えば、水和物形態B~Dは、α-1062グルコネートの疑似多形とみなされることができる。
【0125】
本明細書中では、水和物とは、結晶格子中に水分子を含む結晶形態である。多形及び非晶質固体に加えて、あり得る固体の他の例は、溶媒和物及び水和物である。水は多くの加工段階に適用されるため、水和物は、薬学において頻繁に遭遇する溶媒和物である。APIsは、水にさらされた場合に、水和物を形成することができ、水和物は、高温又は低湿度下でそれらの水を喪失する可能性がある。
【0126】
本明細書中では、好ましくは、結晶質とは、規則正しい、長距離分子構造を有する物質を意味する。結晶形態の結晶化度は、例えば、粉末X線回析、水分吸着、示差走査熱量測定、溶液熱量測定、溶解特性を含む多くの技術によって決定されることができる。
【0127】
結晶性有機化合物は、三次元空間において、周期的配列に配置されている多数の原子から成る。構造上の周期性は、通常、ほとんどの分光学的プローブ(例えば、X線回析、赤外線及び固体NMR)によって、鋭い、明確なスペクトル特性のようなはっきりと異なる物理的特性を明示する。X線回析(XRD)は、固体の結晶化度を決定する最も精度の高い方法の1つであると認識されている。結晶は、ブラッグの法則によって予測されているように、格子面間隔と一致している特定の角度で生じる明確な回析極大値をもたらす。一方で、非晶質物は、長距離秩序を有さない。それらは、液体のように、分子間で頻繁に追加の体積を保持する。長距離秩序の繰り返し結晶格子が欠如しているために、非晶体は、通常、広範で、拡散したハローを伴う特徴のないXRDパターンを明らかにする。
【0128】
結晶形態は、多くの薬学的応用において好まれている。結晶形態は、一般に、同じ物質の非晶形よりも熱力学的に安定である。この熱力学的な安定性は、好ましくは結晶形の改善された物理的安定性において反映される。結晶質固体における分子の規則正しいパッキングは、好ましくは化学的不純物の混入を拒絶する。これ故に、結晶質物は、一般に、それらの同等の非晶質物よりも高い化学的純度を保有する。結晶質固体における包装は、一般に、明確に定義された格子点位置に分子を拘束し、化学反応のための必須条件である分子運動性を低下させる。これ故に、結晶質固体は、ごくわずかな注目すべき例外を除いて、ほぼ同一の分子組成の非晶質固体よりも化学的に安定である。好ましくは、本出願において開示されているα-1062グルコネートの結晶形態は、本明細書中に開示されている一又は複数の有利な化学的及び/又は物理的特性を保有する。
【0129】
本明細書中では、安定という用語は、化学的安定性又は多形の安定性のどちらか一方に関連し得る。多形の安定性は、適切な保管の条件下で、その特定の結晶状態において残っている多形の可能性を参照する。例えば、安定な多形は、少なくとも約95質量%、好ましくは少なくとも約98質量%、より好ましくは少なくとも約99質量%又はそれ以上の結晶形態を維持しており、つまり、指示された期間、指示された条件下で保管後、形態は、変化しないままである。本発明の文脈において、α-1062グルコネートの形態Aは、例えば、複数ヶ月間、室温で、かつ約43%RHで、あるいは約43%未満で、あるいは0.12a未満などの低い水分活性で保管の条件下で、良好な安定性を示すように思われる。いくつか実施形態において、形態Aは、良好な化学的安定性を示す。つまり、形態Aのようなα-1062グルコネートは、適切な条件下で保管後に、異なる化学構造に変換しないか、あるいは、ごくわずかに変換することを示す。
【0130】
粉末X線回析(PXRD):
粉末X線回析(PXRD)とは、結晶性物質の回析パターンを測定する。それぞれの医薬品有効成分(API)は、その結晶格子の構造によって決まる特有のパターンを生じさせることができる。それぞれの多形、疑似多形、多形塩又は共結晶性物質は、それ自体の特有のパターンを有することができる。この理由から、APIのPXRDは、結晶性物質及び任意の形態変換の存在又は欠如を評価するために、管理された条件において実施されることができる。
【0131】
PXRDはまた、例えば、保管又は安定性の研究中に発生した製剤における結晶形態において、もしあれば、変化を決定するためにも使用されることができる。それ故に、結晶形態の同定は、任意の結晶形態に関して検出可能な回析ピークの存在を頼りにする。さらに、APIのピークは、任意の結晶質の賦形剤のピークから区別できなければならず、組成物は製剤後を評価されるべきである。PXRDはまた、純粋なAPIの結晶化度の定性的な、かつ時として定量的な評価としても使用されることができる。当業者は、過度の努力なしに、PXRDパターンを評価し、任意のAPIの結晶形態の特性を特徴づけるために使用され得る適切なピークの存在及び/又は欠如を同定することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、PXRD分析によって決定されたピークは、以下の実施例において提示されているそれらと本質的に同一である。PXRDに関して「本質的に同じ」という用語は、ピーク位置及びピークの相対強度における変動性を考慮に入れるということを意味する。例えば、2θの値の典型的な精度は、±0.2°2θの範囲内にある。
【0133】
本明細書中では、特性XRPDピークとは、その物質の他の結晶形態からそれを区別するために、統計的に証明されることができる物質の結晶形態のXRPDパターンからの代表的なピークのサブセットである。物質のすべての結晶多形が、必ずしも特性ピークを有するとは限らない。
【0134】
本明細書中では、顕著なXRPDピークとは、XRPDパターンにおいて観測される最も強い、低角度の、非重複のピークである。いくつかの実施形態において、「顕著なピーク」は、粉末X線回析パターンにおいて、好ましくは≧20%の相対強度、好ましくは≧30%の相対強度、より好ましくは≧40%の相対強度を有する。
【0135】
本明細書中では、代表的なXRPDのピークとは、繰り返される試料及び測定中に粒子の大きさ/形状又は好ましい配向性からバイアスを統計的に示さない物質の結晶形態のXRPDパターンからのピークである。
【0136】
本明細書中では、好ましい配向性とは、粒子の大きさ/形状及び使用されたパターン収集技術によって、収集中に物質の粒子を無作為に適応させ、統計的に一貫性のある強度を有するパターンを得ることが非常に困難又は不可能である場合のXRPD分析において観測される現象である。
【0137】
上述の粉末X線回析パターンの相対強度及び顕著なピークに関して、提供された相対強度の値は、言及された顕著なピーク又は特性ピークの同定の制限を目的とする。当業者に知られているように、相対ピーク強度は、いくつかの装置間の変動性、バッチ間の変動性を、結晶化度、好ましい配向性、試料調製による変動性と同様に示し、そのようなものとして、粉末X線回析パターンにおけるピークの強度の指標として、かつ定性的な尺度のみであるが、限定的な定義ではないものとして提供される。
【0138】
従って、本発明を規定する文脈における「顕著なピーク」という用語は、上記で提供されたそれぞれの相対強度に限定されるものではなく、任意の一又は複数のそれぞれのピークが、任意のα-1062グルコネートの形態の顕著なピークとして決定されることができる。好ましくは、少なくとも、1、2、3つ又は4つの顕著なピークは、結晶形態を特徴づけるために使用され、他の実施形態において、少なくとも、5、6、7、8、9つ又は10の顕著なピークが使用されることができる。それ故に、顕著なピークはまた、任意の結晶形態に固有なピークに限定されるものではなく、むしろピークは、PXRDパターンからの多数の他のピークと任意に組み合わせ、結晶形態を同定するために使用されることができる。本発明の文脈において、結晶形態A~Dは、多数の顕著なピークを共有することができるが、任意の2つの形態を区別するために使用され得る互いにはっきり分かれているピークも示す。いくつかの実施形態において、本発明の実施形態において言及される顕著なピークはまた、特性ピーク及び/又は代表的なピークであってもよい。
【0139】
分析技術及び用語:
本明細書中では、ATR(減衰全反射)とは、FTIRデータ収集技術であって、少量の固体又は液体試料が、試料のスペクトルを測定するために使用されるエバネセント波を発生させる試料を通って、IRビームが内部に反射できるようなATR結晶と直接接触して設置される。
【0140】
本明細書中では、DSC(示差走査熱量測定)とは、制御された温度の変化を含む物理的又は化学的変化を受ける試料において発生する熱エネルギー変化の評価のための熱力学的手法である。
【0141】
本明細書中では、DVS(動的蒸気吸着収着)とは、制御された条件下で試料による溶媒の吸収速度及び吸収量を測定するための重量法である。
【0142】
本明細書中では、FTIR(フーリエ変換赤外線分光法)とは、物質の同定及び特性評価のために製薬業界において広範に使用されているシンプル及び信頼性の高い技術である。物質の官能基は、強度及び周波数(frequency)の両面で特徴のある振動バンドを生じさせるため、赤外線スペクトルは、物質の同定のため使用されることができる。
【0143】
本明細書中では、NMR(核磁気共鳴)とは、試料が強い磁場中に設置され、NMR活性核が試料の周波数特性で電磁放射線を吸収する技術である。最も一般的な種類は、プロトン(1H)NMR及び炭素(13C)NMRである。
【0144】
本明細書中では、TGA(熱重量分析)とは、時間及び/又は温度の関数として試料の質量の変化を測定する熱重量測定法である。
【0145】
本明細書中では、XRPD(粉末X線回析)とは、適切な位相又は多形が存在するということを確認するための結晶性物質の同定及び特性評価のための技術である。技術は、分析のための透過モード又は反射モードのどちらか一方において試料を測定するために使用されることができる。
【0146】
本明細書中では、RH(相対湿度)とは、任意の温度で水の平衡蒸気圧に対する水蒸気の分圧の比を指す。RHを決定するために、湿度計は、空気の湿度を測定するために使用されることができる。相対湿度は百分率で表され;百分率が高いほど、空気と水の混合物の湿度が高いことを意味する。
【0147】
組成物及び投与:
本明細書中の「有効成分」又は「API」という用語は、関連のある薬物分子(例えば、α-1062)と同様に、望ましい薬理学的又は生理学的効果を誘導するその薬学的に許容される及び治療効果のある塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝物、エナンチオマー、多形、類似物などを指す。「活性」、「活性剤」、「活性物質」のような用語は、「有効成分」に対して同義的に使用されることができる。本出願の文脈において、α-1062は、酵素的切断の前に活性そのものではないが、APIとみなされ、それは、調製及び/又は製剤化されるプロドラッグ分子である。
【0148】
「有効量」又は「治療効果のある量」という用語は、同じ意味で使用され、患者に投与された場合に、感知できる生物学的応答を引き出すために十分である、薬品(例えば、α-1062)の量(amount)又は量(quantity)を意味するように規定される。正確な治療用量は、患者の年齢及び状態、治療される状態の性質によって決まり、担当医師の最終的な裁量であるということが理解されている。
【0149】
医薬組成物は、一又は複数の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含有することができる。「賦形剤」という用語は、例えば、希釈剤、崩壊剤、担体及び医薬品のようなものなどの薬理学的に不活性な成分を意味する。医薬組成物の調製において有用な賦形剤は、一般に安全で無毒であって、人間と同様に、獣医の製薬学的用途に許容される。賦形剤への言及は、1つの賦形剤及び1つより多い賦形剤の両方を含有する。いくつかの実施形態において、賦形剤は、「wt%」、すなわち「質量百分率」に従って明細書中に記述されている。
【0150】
本明細書中では、「投与する」又は「投与」とは、例えば、本発明の結晶形態又はその医薬組成物の形態において、認知機能障害と関連している脳疾患の予防又は治療の目的で、有機体(organism)へのAPIの輸送を指す。
【0151】
適切な投与経路には、特に限定されないが、経口、直腸、経粘膜若しくは腸内投与、又は筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内若しくは眼内注射を挙げることができる。好ましい投与経路は、経粘膜投与又は静脈内注射である。
【0152】
本発明の医薬組成物は、当技術分野において周知の過程によって、例えば、従来の混合、溶解、整粒、糖衣錠製造、すりつぶし、乳化、カプセル化、封入、溶解又は凍結乾燥の過程によって製造されることができる。本発明に従って用いるための医薬組成物は、本発明の結晶を薬学的に用いられる製剤に加工することを容易にする賦形剤及び助剤を含む一又は複数の生理学的に許容される担体を用いて、従来の方式で製剤化されることができる。適切な製剤は、選択された投与経路によって決まる。
【0153】
注射又は経粘膜投与のために、本発明の結晶又はその医薬組成物は、水溶液中で、好ましくはハンクス溶液、リンガー溶液又は生理食塩緩衝液(physiological saline buffer)などの生理学的に相溶性のある緩衝液中で製剤化されることができる。経粘膜投与のために、浸透されるためのバリアに適した浸透剤が製剤において使用される。そのような浸透剤は、一般に当技術分野において知られている。
【0154】
経口投与のために、本発明の結晶又はその医薬組成物は、本発明の結晶を当技術分野において周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって製剤化されることができる。そのような担体は、本発明の結晶が患者による経口摂取のために、錠剤、丸薬、トローチ剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして製剤化されることを可能にする。経口用の医薬品は、固体賦形剤を用いて、任意に結果として生じる混合物をすりつぶし、必要に応じて、錠剤又は糖衣錠の核を得るために他の適切な助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して、製造されることができる。有用な賦形剤は、特に、糖、デンプン及び他の物質のような充填剤である。必要に応じて、崩壊剤は添加されることができる。
【0155】
吸入による投与のために、本発明の結晶又はその医薬組成物は、加圧パック又はネブライザー及び適切な推進剤、例えば、これらに限定されるものではないが、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン又は二酸化炭素を用いて、エアゾールスプレーの形態において都合よく供給される。加圧エアロゾルの場合には、投薬ユニットは、計量された量を供給するためのバルブを提供することによって制御されることができる。例えば、吸入具又は吸入器で用いるゼラチンのカプセル及びカートリッジは、本発明の結晶又はその医薬組成物の混合粉末及び乳糖又はデンプンのような適切な粉末原料を含んで製剤化されることができる。
【0156】
本発明の結晶又はその医薬組成物はまた、例えば、ボーラス注入又は持続注入による非経口投与用に製剤化されることもできる。注射のための製剤は、単位剤形において、例えば、アンプル又は複数回投与容器において、防腐剤を添加されて、提示されることができる。組成物は、油性又は水性賦形剤において、懸濁液、溶液又はエマルションのような形態をとることができ、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤のような製剤物質を含んでもよい。
【0157】
非経口投与のための医薬組成物は、本発明の結晶又はその医薬組成物の可溶形の水溶液を含有する。さらに、本発明の結晶又はその医薬組成物の懸濁液は、親油性の担体中で調合されることができる。適切な親油性の担体としては、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチル及びトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル又はリポソームなどの物質が挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含んでもよい。任意に、懸濁液はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、本発明の結晶又はその医薬組成物の溶解度を増加させる適切な安定剤及び/又は薬剤を含んでもよい。その代わりに、有効成分は、使用前に適切な賦形剤、例えば、滅菌したパイロジェンフリーの水(sterile, pyrogen-free water)を含む構成のための粉末形態であってもよい。
【0158】
本発明の結晶又はその医薬組成物はまた、例えば、ココアバター又は他のグリセリドのような従来の座薬の基剤を用いて、座薬又は停留かん腸のような直腸用組成物に製剤化されることもできる。
【0159】
本発明よると、好ましい投与様式は、経粘膜投与である。「経粘膜投与」という用語は、
粘膜を通過する、あるいは粘膜を横断する医薬品の進入に関する。本発明の経粘膜投与経路は、好ましくは鼻腔内、口腔及び/又は舌下である。
【0160】
経鼻又は鼻腔内投与とは、鼻腔への任意の形態の適用に関する。鼻腔は、血管がよく通っている薄い粘膜によって覆われている。それ故に、薬物分子は、初回通過肝代謝及び腸内代謝を受けることなく、単一の上皮細胞層を横切って速やかに伝達されることができる。従って、鼻腔内投与は、例えば、錠剤やカプセル剤の経口投与、これは、胃腸(gut)及び/又は肝臓における広範囲な分解につながっているが、の代用として使用される。
【0161】
口腔投与とは、頬粘膜を横断した吸収をもたらす任意の形態の適用に関連しており、好ましくは頬の内側、歯の表面、又は頬のそばの歯茎の吸収に関する。舌下投与とは、舌の下への投与を指し、それによって、化学物質が舌の下の粘膜と接触し、それを介して拡散する。
【0162】
口腔投与及び/又は舌下投与に適した医薬組成物は、追加の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含んでいてもよい。活性剤は、pH調整、防腐剤、粘度調整剤、吸収促進剤、安定剤、溶媒及び担体ビヒクル(carrier vehicles)として機能するいくつか又はすべての種類の成分である物質と物理的に配合されることができる。このような薬剤は、医薬組成物の固体又は液体のいずれかの形態で存在することができる。
【0163】
治療効果のある量及び適切な投与様式の決定は、特に、本明細書中に提供されている詳細な開示を踏まえると、当業者の能力の範囲内である。投与される組成物の量は、当然のことながら、治療される対象者、苦痛の重症度、投与の方法、処方医師の判断などによって決まるだろう。
【0164】
組成物は、必要に応じて、FDA認可キットのような、これは、有効成分を含有する剤形を含んでもよいが、パック又はディスペンサー装置において提示されることができる。パック又はディスペンサー装置には、投与に関する説明書が添付してあってもよい。パック又はディスペンサーはまた、薬剤の製造、使用又は販売を規制する行政機関によって規定された形状の容器と関連している掲示も、この掲示は、組成物の形態又は人間若しくは獣医学的投与の機関による承認を反映しているが、添付してあってもよい。そのような掲示は、例えば、処方薬に関して米国食品医薬品局によって承認された表示又は承認された添付書類であってもよい。相溶性のある医薬担体において製剤化された本発明の結晶を含む組成物はまた、調製され、適切な容器に入れられ、指示された条件の治療に関して表示されることもできる。好適な条件は、認知機能障害に関連する脳疾患であって;好ましくは本明細書中に開示されているもの、特にAD及びPDである。
【0165】
方法:
本明細書中に提供されている開示に基づき、当業者は、過度の努力なしに、本発明の結晶形態を製造することができる。いくつかの実施形態において、結晶性固体形態Aを調製する方法は、α-1062グルコン酸塩を有機溶媒、好ましくはMEKと接触させ、スラリーを形成し、その後にスラリーを攪拌、ろ過及び乾燥させ、結晶性固体形態を得ることを含む。
【0166】
有機溶媒は、揮発性の炭素系化学物質の一種であって、一又は複数の他の化学物質を溶解又は分散させることができる。一般的な有機溶媒は、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ケトン、アミン、エステル、アルコール、アルデヒド及びエーテルとして分類される。スラリー化の際に好ましい溶媒であるブタノンはまた、メチルエチルケトン(MEK)としても知られており、式CHC(O)CHCHを有する有機化合物である。MEKは、バタースコッチ及びアセトンを連想させる鼻を刺すような、甘い匂いを有するケトンである。それは、大規模に、工業的に製造され、水に溶解し、工業用溶剤として一般に使用されている。1,4-ジオキサン(ジオキサン)、酢酸エチル(EtOAc)及びテトラヒドロフラン(THF)もまた、有用である。
【0167】
製薬業界における標準的な技術に属しているスラリーの調製、ろ過及び乾燥のための方法は、当業者に知られており、実験室規模又は工業規模で使用されることができる。
【0168】
本発明の結晶形態又は多形はまた、本明細書中に開示されているそれらの代替手段を用いて製造されることもできる。当業者は、任意の結晶形態を製造するために条件を調整することができる。一般に、多形の生成は、冷却結晶化、蒸発又は逆溶媒結晶化(antisolvent crystallization)を介して、単一溶媒又は混合溶媒から物質を結晶化することによって実施される。さらに、加熱及び冷却速度、結晶化温度、蒸発速度、過飽和度、攪拌速度、媒体のpHは、晶析プロセス、ひいては形成される多形に影響を与え得る変数である。本明細書中に記述された驚くべき結晶形態を同定した後に、当業者は、本明細書中に記述されている形態を再現するために、これらの因子を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0169】

本発明は、本明細書中に開示されている図の方法によって明示される。図は、本発明の潜在的に好ましい、非限定的な実施形態の記述に関するサポートを提供する。
図1】α-1062グルコネートの化学構造
図2】α-1062グルコネート研究ロットのXRPDパターン
図3】α-1062グルコネート、ロットQCL-PLC-I-96とオーバーレイされた純粋な相とのXRPDパターンの比較
図4】α-1062グルコネート、ロットQCL-PLC-I-96と拡大図のオーバーレイされた純粋な相とのXRPDパターン比較
図5】α-1062グルコネート、ロットQCL-PLC-I-96、形態A+B+Dのサーモグラム
図6】XRPDパターン
図7】形態Aの試験的な指標化溶液:α-1062グルコネート、ロットCA19-1144
図8】形態Aの観測されたXRPDピーク:α-1062グルコネート、ロットCA19-1144
図9】形態Aの透過及び反射XRPDパターンのオーバーレイ
図10】形態AのATR FTIRスペクトル:α-1062グルコネート、ロット2455_RD-00017-002
図11】形態Aのサーモグラム:α-1062グルコネート、ロットCA19-1144
図12】形態AのDVS等温線:α-1062グルコネート、ロットCA19-1144
図13】形態Bの試験的な指標化溶液:α-1062グルコネート、試料8235-85-01
図14】形態Bの観測されたXRPDピーク:α-1062グルコネート、試料8235-85-01
図15】形態BのATR FTIRスペクトル:α-1062グルコネート、試料8296-41-01
図16】形態Bのサーモグラム:α-1062グルコネート、試料8235-82-08
図17】形態BのDVS等温線:α-1062グルコネート、試料8235-82-08
図18】形態BのDVS等温線:α-1062グルコネート、水分含量を補正された、試料8235-82-08
図19】形態Cの試験的な指標化溶液:α-1062グルコネート、試料8235-87-02
図20】形態Cの観測されたXRPDピーク:α-1062グルコネート、試料8235-87-02
図21】形態CのATR FTIRスペクトル:α-1062グルコネート、ロット2455_RD-00049-001
図22】形態Cのサーモグラム:α-1062グルコネート、試料8235-87-02
図23】形態CのDSCサーモグラム:α-1062グルコネート形態C、試料8296-08-01
図24】形態CのDVSデータ:α-1062グルコネート、試料8235-92-11
図25】形態CのDVS等温線:α-1062グルコネート、水分含量を補正された、試料8235-92-11
図26】形態DのXRPDパターン:α-1062グルコネート、試料8235-86-01
図27】形態Dの試験的な指標化溶液:α-1062グルコネート、試料8235-86-01
図28】形態Dの観測されたXRPDピーク:α-1062グルコネート、試料8235-86-01
図29】形態DのATR FTIRスペクトル:α-1062グルコネート、試料8235-86-01
図30】物質EのXRPDパターン、試料8235-76-04
図31】物質Eのサーモグラム、試料8235-76-04
図32】物質FのXRPDパターン、試料8235-76-07
図33】物資GのXRPDパターン、試料8235-100-02
図34】非結晶質のα-1062グルコネート、試料8235-92-10のXRPDパターン
図35】非結晶質のα-1062グルコネート、試料8235-92-10の循環(Cyclic)DSC
【実施例
【0170】
本発明は、本明細書中に開示された実施例の方法によって実証される。実施例は、本発明の潜在的に好ましい、非限定的な実施形態の詳細な説明に関する技術的なサポートを提供する。
【0171】
研究材料:
α-1062グルコネート(ガランタミンベンジルエステルグルコネート)の3つのロットは、これらの研究を開始するために使用された(表1)。XRPD分析(図2)は、ロットCA19-1144及びCA19-0673が類似していることを示す。ロットQCL-PLC-I-96は、類似のピークを有することが発見されているが、多くの追加のピークも含まれ、混合物も示している。
【0172】
以下に記述されているその後の研究は、ロットCA19-1144及びCA19-0673が形態Aと同定されることを決定し、ロットQCL-PLC-I-96を形態A、B及びDの混合物であると決定した(図3及び4)。QCL-PLC-I-96物質の熱分析(図5)は、121℃まで3.6%の重量の減少を示し、69℃で開始する広範な吸熱、119℃で開始する最終の吸熱を示した。3ロットの特性詳細は、表0から4で提供されている。連続性に関して、ロットCA19-1144は、形態Aの代表と仮定され、さらに以下で考察される。
【0173】
多形スクリーニング及び安定性:
多形スクリーニング研究は、α-1062グルコネートの可能性のある様々な固形物の存在を調査及び同定するために開始された。この研究では、出発物質としてロットCA19-1144を使用し、研究中に生成した物質を分離及び研究するために、様々な溶媒系及び条件を利用した(表5)。様々な物質は、XRPDによって分析され、様々な固体形態は図示されるように同定された(図6)。
【0174】
α-1062グルコネートの4つの純粋な結晶形態の安定性を調査するために、相対湿度ストレス(表7)と共に、様々な混合水性/有機溶媒系(表6)を用いる水分活性(a)スラリーが使用され、α-1062グルコネートの所定の水和物の安定性の領域を規定した。各溶媒系における各試料のスラリーは、一定期間研究され、最も安定な形態への相互変換が決定された。
【0175】
これらの研究から、形態A(無水物)は、約0.12%a(12%RH)未満の低い水分活性で最も安定な形態であることを発見した。この水分活性を超えると、約0.5aまで、形態A、無水物は、安定な形態であるように思われる形態C(一水和物)に変換する。0.5aを超えると、形態B(四水和物)が形成され、最も安定な形態となる。形態D(二水和物)は、約75%RHでさらされてから、あるいは乾燥によってのみ観測された。形態Dは、任意の評価された条件で安定と思われず、保管の湿度によって決まる他の従属形態(dependent Forms)に容易に変換する。
【0176】
物質の特性評価:
形態A:α-1062グルコネート、ロットCA19-1144(表2)。形態Aは無水物である。形態Aは、0.12a(12%RH)を超える水分活性を有する溶媒系において、水和物形態に変換することが発見された。それにもかかわらず、形態Aは、43%RH(RT)での固体状態において動力学的に安定と思われ、その状態で5日間まで持続した。
・XRPD(図7)。形態Aの粉末X線回析パターンは、単一の単純斜方晶系単位格子(a single primitive orthorhombic unit cell)によってうまく指標化され、暫定的な結晶単位格子パラメーター及びパターンが単一の結晶相を代表するという強力な証拠によって結晶形態のしっかりとした記述を提供する。指標結果から計算された688Åの式単位体積(formula unit volume)は、1.419g/cmの計算密度をもたらす。糖類は,多数の水素結合のために密集することが知られている。
・形態AのXRPDパターン(図8)を表にすると、強調のための陰影付きの最も顕著なピークを含む、観測されたピーク位置及び強度が一覧表示される。板状の性質の物質のために、反射モードにおけるゼロバックグラウンドマウントの使用は、透過モードのパターンと比較して、形態Aにおける好ましい配向の存在をもたらす(図9)。
・溶液NMRスペクトルは、化学構造と一致しており、1:1の化学量論的塩と一致している1mol/molのグルコン酸を含む。
・試料2455_RD-00017-002のATR収集モードを用いるFTIRスペクトル分析は、α-1062グルコネートの無水形態Aの構造と一致しているFTIRスペクトル(図10)をもたらす。
・熱分析(図11)。TGAサーモグラフは、121℃まで0.17%の重量の減少を示す。DSCにおいて、融解と一致している、117℃で開始する単一の吸熱が観測された。融解後に観測された重量の減少に基づいて、分解が起こる可能性が高い。融解(125℃)をちょうど超えるまで物質を加熱し、その後に冷却すると、非晶質物をもたらした。
・動的蒸気吸着収着(The dynamic vapor sorption)(DVS)等温線(図12)は、形態Aが75%RHを超えると有意な吸湿性を示すということを指摘する。5から75%RHまで0.57%の重量の増加が観測された。75%RHを超えると重量は有意に増加し、75から85%RHまで2.97%の重量が増加し、85から95%RHまで追加の8.7%の重量が増加した。脱離時に得られた安定なプラトーを含む、ヒステリシスが観測され、物質が水和形態に変換される可能性が高いということを示唆している。安定なプラトー内に得られた重量は、3mol/molより多い水の増加と一致し、形態Aは85%RHを超える場合に、形態Bに変換したということを示唆している。DVS実験から回収された物質は、形態A+形態Bのマイナーピークとして同定された;しかしながら注目すべきは、DVS実験が完了すると、物質は5%RHで保持され、回収及び試験が実施される前に部分的に脱水されて形態Aに戻った可能性が高いということである。
・様々な溶媒中の形態Aについての溶解度研究(表9)が実施され、高い水溶性を示す結果を表にした。
【0177】
形態B:α-1062グルコネート、試料8235-82-08(表10)。形態Bは四水和物結晶格子である。結晶格子における4つの水の部位の少なくとも1つは多少不安定であると思われる。DVSのデータは、形態Bが15~85%RHの範囲の相対湿度において、約3.6~3.9mol/molの水を含むことができるということを示唆している。形態Bは、0.52a(52%RH)を超える水分活性を有する溶媒系中で観測され、0.52a(52%RH)未満及び0.31a(31%RH)を超えると、形態Cと平衡にあった。
・XRPD(図13)。XRPDパターンは、単一の単純斜方晶系単位格子によって、うまく指標化された。指標結果から計算された772Åの式単位体積は、形態Aより84Åだけ大きい。形態Aと比較して、過剰体積は、最大4mol/molまでの水を収容するために十分であり、1.420g/cmの計算密度をもたらす。
・形態BのXRPDパターン(図14)を表にすると、強調のための陰影付きの最も顕著なピークを含む、観測されたピーク位置及び強度が一覧表示される。
・形態B(試料8296-34-01)を57%RHで4日間保持し、XRPD及び電量カール・フィッシャー(KF)滴定により分析した。結果として生じたサンプルは、形態Bのままであって、10.2%の水(~3.7mol/molの水に相当)を含み、指標結果と一致した。
・溶液NMRスペクトルは、化学構造と一致しており、1:1の化学量論的塩と一致している1mol/molのグルコン酸を含む;残留有機溶媒(MEKなど)は観測されなかった。
・試料8296-41-01のATR収集モードを用いるFTIRスペクトル分析は、α-1062グルコネートの形態Bの構造と一致しているFTIRスペクトル(図15)をもたらす。
・熱分析(図16)。TGAサーモグラフは、114℃まで3.3%の重量の減少を示し、147℃まで5.2%の追加の重量の減少を示す。DSCにおいて、脱溶媒和と一致している、66℃で開始する広範な吸熱(TGAにおける重量の減少と同時に起こる)が観測される。115℃で開始する第2の吸熱が観測され、その後に152℃で弱い吸熱が続く。
・形態Bの試料を40~75℃で10分間より長く加熱し、XRPDにより分析した結果、部分的な脱水並びに形態D及びCの混合物(どちらも水和物とされているが、それぞれは、より低い水和状態で)への変換並びに追加のピークをもたらした。
・形態Bは、1日後、0%RHで形態Aに脱水することが示された(表7)。
・動的蒸気吸着収着(DVS)等温線(図17)は、50%RHから収集し始めた(データ取得前の水和の喪失による変換を回避するため)。形態Bは、限定的な吸湿性を示した;50から90%RHまで1.5%の重量の増加を有する。脱離時には、95から15%RHまで1.8%の重量の減少が観測され、その後に15から5%RHまで6.8%の重量の減少が続いた。DVSデータは、57%RHでKFによって測定された含水量で補正された(図18)。形態Bの3.6~3.9mol/molの間の水の安定したプラトーは、15~85%RHの間にはっきりと表れている。DVS実験から回収された物質は無水形態Aと同定された。
【0178】
形態C:α-1062グルコネート、試料8235-87-02(表11)。形態Cは、約0.4~0.5mol/molの水のみで占有される一水和物結晶格子であると決定された。形態Cは、水分活性が0.12~0.31a(12~31%RH)の間の溶媒系中で観測され、0.31aw(31%RH)を超えると、かつ0.52a(52%RH)未満で形態Bと平衡にあった。
・XRPD(図19)。XRPDパターンは、単一の単純単斜晶系単位格子によって、うまく指標化された。指標結果から計算された706Åの式単位体積は、形態Aより18Åだけ大きい。形態Aと比較して、過剰体積は、最大1mol/molまでの水を収容するために十分であり、1.425g/cmの計算密度をもたらす。
・形態CのXRPDパターン(図20)を表にすると、強調のための陰影付きの最も顕著なピークを含む、観測されたピーク位置及び強度が一覧表示される。
・形態C(試料8296-34-02)を11%RHで4日間保持し、XRPD及び電量カール・フィッシャー(KF)滴定により分析した。結果として生じたサンプルは、形態Cのままであって、1.3%の水(~0.4mol/molの水に相当)を含有した。
・試料2455_RD-00049-001のATR収集モードを用いるFTIRスペクトル分析では、α-1062グルコネートの形態Cの構造と一致しているFTIRスペクトル(図21)をもたらす。
・熱分析(図22)。TGAサーモグラフは121℃まで0.9%の重量の減少を示す。DSCにおいて、119℃で開始する吸熱が観測される。
・形態C(試料8235-93-04)を11%RHで7日間保持し、比較のためにXRPD及びDSCにより分析した(試料8296-08-01)。結果として生じたサンプルは、形態Cのままであって、DSCにおいて、129℃で開始する単一の鋭い吸熱が観測される(図23)。
・形態C(試料8235-93-02)を真空下の45℃で3時間保管し、XRPDにより分析した。結果として生じたサンプルは、少量の形態Aの存在を含んだ形態Cのままであった。
・動的蒸気吸着収着(DVS)等温線(図24、試料8235-92-11)は、形態Cが75%RHを超えると有意な吸湿性を示すということを指摘する。試料は、5から75%RHまで有意な重量の増加を示さなかったが、75から95%RHまで4.6%の重量の増加が観測された。脱離時には、95から75%RHまで1.5%の重量の減少が観測された。DVSデータは、11%RHでKFによって測定された含水量で補正された(図25)。試料は、~1.4mol/molの水分を保持した。DVS実験から回収された物質は、XRPDによって形態C及びBの混合物と同定された。
【0179】
形態D:α-1062グルコネート、試料8235-86-01(表12)。形態Dは、熱力学的に安定ではなく、時間と共に、RH条件によって決まる他のより安定な水和物に最終的に変換する二水和物結晶格子であると決定された。形態Dは、約75%RHで形態Aの暴露によって形成される。純粋な形態Dを単結晶相として生成するための試みは、少量の形態A又は形態Bのどちらか一方が混入している混合物をもたらした。
・XRPD(図26~27)。XRPDパターンは、形態D及び形態Aのマイナーピークの混合物を示す。12.68、18.43及び20.91°(2θ)付近の小さなピークは形態Aと一致し、指標化中に意図的に無視された。形態Dは、単一の単純斜方晶系単位格子によって、残りのピークからうまく指標化された。指標結果から計算された733Åの式単位体積は、形態Aより45Åだけ大きい。形態Aと比較して、過剰体積は、最大2mol/molまでの水を収容するために十分であり、1.413g/cmの計算密度をもたらす。
・形態DのXRPDパターン(図28)を表にすると、強調のための陰影付きの最も顕著なピークを含む、観測されたピーク位置及び強度が一覧表示される。
・試料8235-86-01のATR収集モードを用いるFTIRスペクトル分析は、α-1062グルコネートの形態Dの構造と一致しているFTIRスペクトル(図29)をもたらす。
・形態D及び微量の形態B(8235-34-03)の試料を75%RHで1日間(転化を制限するため)保持し、XRPD及び電量カール・フィッシャー(KF)滴定により分析した。試料は、形態Bがわずかに増加しただけであって、全体としては、初期構成と同様のままであった。試料は、4.3%の水、すなわち~1.5mol/molの水を含有した。
・水分活性スラリー及び相対湿度ストレス研究(表6~7)は、形態Dは評価されたすべての条件下で準安定形態であって、相対湿度≧52%RHに長期間さらされると最終的に形態Bに変換するか、あるいは相対湿度<52%RHで形態Cに変換するということを示唆する。
【0180】
物質E:試料8235-76-04(表13)。ジクロロメタン(DCM)溶液の蒸発から生成された物質は、α-1062グルコネートと一致していない。
・XRPD(図30)。XRPDパターンは、指標化された(提供されていない)が、体積はα-1062グルコネート分子を含むために十分ではなく、これが遊離塩基又は分解生成物であることを示唆している。
・溶液NMRスペクトルは、非化学量論量のグルコネートを含む。スペクトル中には、2つの分子種が存在している。また、0.6mol/molのDCMが観測される。NMRスペクトルは、塩と一致していない。
・熱分析(図31)。TGAにおいて、101℃まで1.6%の重量の減少が観測された。DSCにおいて、複数の吸熱事象が観測された。
【0181】
物質F:試料8235-76-07(表14)。ジクロロメタン(DCM)スラリーの蒸発から生成された分解生成物である可能性が高い。
・XRPD(図32)。XRPDパターンは、指標化された(提供されていない)が、体積は、α-1062遊離塩基又はその塩のどちらか一方を含むために十分でなく、これが単純なグルコン酸塩又は分解生成物であることを示唆している。
【0182】
物質G:α-1062グルコネート、試料8235-87-01及び8235-100-02(表15)。物質Gは、1,4-ジオキサン及びTHFの両方の蒸発実験から観測されている。物質は、単離時にろう質(waxy)であったが、至る所に分散した細い針状を含有した。
・試料8235-100-02のXRPD(図33)は、そのろう質の特質のために多くの非結晶質の性質を示す。5週間後の8235-87-01の再分析は、試料が部分的に形態Bに変換することを示した(最初のパターン中に少量の形態Bの証拠が存在した)。自然変換に基づいて、物質Gは、その条件下で形態Bと準安定である。任意の水分活性スラリー又は相対湿度研究中に、材料Gは観測されなかった。
【0183】
非結晶質:α-1062グルコネート。試料8235-76-13(表16)は、メタノールの遅い蒸発から観測されている(表5)。α-1062グルコネートの合成中、材料は、溶液から容易に結晶化せず、シードされ(be seeded)なければならない。通常は、油分及び粘着性のあるフィルムが最初に生成され、その後、時間と共に核となる。
・試料8235-76-13は、13日後に形態B及びCの混合物に自然に結晶化した。
・メルトクエンチを介して生成された非晶質物のXRPD(図34)は、5週間後も非結晶質のままであることが観測された。有意な不純物の増加は、H NMRによって観測されなかった。
・熱分析(図35)。非晶質固体のガラス転移(T)温度を決定するために、循環(cyclic)DSCを実施した。ガラス転移温度は、41℃付近であると決定された。加熱を続けると、核生成を含まず、分解が観測された。
【0184】
表:
表1:研究材料(α-1062グルコネート)
【表5】
【0185】
表2:α-1062グルコネート、ロットCA19-1144の特性評価
【表6】
【0186】
表3:α-1062グルコネート ロットQCL-PLC-I-96の特性評価
【表7】
【0187】
表4:α-1062グルコネート ロットCA19-0673の特性評価
【表8】
【0188】
表5:α-1062グルコネート(ロットCA19-1144[形態A]を用いる)の多形スクリーン
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【0189】
表6:α-1062グルコネートのスラリーの水分活性
【表10-1】
【表10-2】
【0190】
表7:α-1062グルコネート試料の相対湿度ストレス
【表11】
【0191】
表8:形態A、B、C及びDであるα-1062グルコネートのXRPD顕著なピークのオーバーレイ、発見された結晶形の典型的な顕著な2シータ(2θ)ピーク位置
【表12】
【0192】
表9:形態A:α-1062グルコネート、ロットCA19-1144のおおよその周囲溶解度
【表13】
【0193】
表10:形態B:α-1062グルコネートの特性評価
【表14】
【0194】
表11:形態C:α-1062グルコネートの特性評価
【表15】
【0195】
表12:形態D:α-1062グルコネートの特性評価
【表16】
【0196】
表13:物質Eの特性評価
【表17】
【0197】
表14:物質Fの特性評価
【表18】
【0198】
表15:物質Gの特性評価
【表19】
【0199】
表16:非結晶質のα-1062グルコネートの特性評価
【表20】
【0200】
α-1062グルコネートの再処理:
α-1062グルコネート(CA19-0673)は、複数の潜在的に不溶性な多形又は疑似多形を製造できるかどうかを決定するために再処理及び評価された。
【0201】
実験1:
α-1062グルコネート(CA19-0673)を20℃で、MEK/HO中で再スラリー化した。5.6gのα-1062グルコネートを19.3gのMEK+1.9gのHO中で使用した。4.1gのMEKと共にろ過ケーキ(filter cake)を洗浄し、再ろ過し、乾燥する前に、スラリーを30分間攪拌した。
【0202】
反応混合物は黄色からオレンジ色であった。懸濁液は、最初は比較的薄かったが、その後、より長時間攪拌すると、より粘度が高まった。30分後、攪拌及びフィルターへの移行が困難である、非常に粘度の高いペースト状の懸濁液が得られた。懸濁液は、粘度が高すぎると判断され、それ故に製造に不適切であった。単離された物質は、わずかに黄色がかっていた(白色から淡黄色)。
【0203】
実験2:
α-1062グルコネート(CA19-0673)を20℃で、MEK/HO中で再スラリー化した。5.6gのα-1062グルコネートを38.6gのMEK+3.8gのHO中で使用した。8.2gのMEKと共にろ過ケーキを洗浄し、再ろ過し、乾燥する前に、スラリーを30分間攪拌した。反応混合物は黄色からオレンジ色であった。懸濁液は、最初は比較的薄かったが、その後、長時間攪拌していると、粘度が高まった。30分後、懸濁液が得られたが、実験1の状態より著しく粘度が低く、攪拌及びフィルターへの移し替えが容易に可能であった。物質をMEK中で洗浄し、約2時間、30℃/20mbarで、回転子(rotator)において乾燥した。
【0204】
単離された物質は、バッチCA19-0673と同程度の色であった。HPLCにおける相対保持時間(RRT)は、以前の測定値と一致しており、約90%の回収率が得られた。乾燥製品を測定することによって、粉末X線回析スペクトルが得られた。当該パターンから、形態A及び一又は複数の形態B~Dを含む複数の型の混合物、おそらく形態A、B及びCの混合物であることが明らかになった。
【0205】
実験3
α-1062グルコネート(CA19-0673)を20℃で、水を含まないMEK中で再スラリー化した。5.6gのα-1062グルコネートを38.6gのMEK中で使用した。スラリーは、乾燥する前に30分間攪拌された。
【0206】
反応混合物は、以前の実験よりも明るい淡黄色であった。懸濁液は、攪拌すると一定の粘度になった。30分後、懸濁液が得られたが、実験1の状態より著しく粘度が低く、攪拌及びフィルターへの移し替えが容易に可能であった。物質を約2時間、30℃/20mbarで、回転子において乾燥した。
【0207】
単離された物質は、バッチCA19-0673と同程度の色であった。HPLCにおける相対保持時間(RRT)は、以前の測定値と一致しており、約95%の回収率が得られた。乾燥製品を測定することによって、粉末X線回析スペクトルが得られた。パターンは、図8において示されるように、形態Aに対応した。
【0208】
α-1062グルコネートの合成:
α-1062のグルコン酸塩は、下記の以前に確立された一般的なスキームに従って生み出された:
【0209】
【化1】
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【国際調査報告】