(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】改良された潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 125/02 20060101AFI20240118BHJP
C10M 133/16 20060101ALI20240118BHJP
C10M 133/56 20060101ALI20240118BHJP
C10M 129/16 20060101ALI20240118BHJP
C10M 145/28 20060101ALI20240118BHJP
C10M 135/10 20060101ALI20240118BHJP
C10M 129/08 20060101ALI20240118BHJP
C10M 127/00 20060101ALI20240118BHJP
C10N 20/06 20060101ALN20240118BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
C10M125/02
C10M133/16
C10M133/56
C10M129/16
C10M145/28
C10M135/10
C10M129/08
C10M127/00
C10N20:06
C10N30:06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023567083
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 AU2021051127
(87)【国際公開番号】W WO2022155699
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523274078
【氏名又は名称】グラフェン マニュファクチャリング グループ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GRAPHENE MANUFACTURING GROUP LTD
【住所又は居所原語表記】90 Staghorn Street, Enoggera, Queensland, Australia
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコル クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】シャイヴェ ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ナンジュンダン アショク クマール
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA04C
4H104BA07A
4H104BA10C
4H104BB04C
4H104BB08C
4H104BE11C
4H104BF03C
4H104BG06C
4H104CB15C
4H104DA02A
4H104EA07C
4H104EA08C
4H104LA03
(57)【要約】
基油又は完全形成潤滑油と、該基油又は該完全形成潤滑油中に分散した、炭素含有ガス由来のグラフェンナノ粒子とを含む潤滑油組成物が本明細書において開示される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油又は完全形成潤滑油と、
前記基油又は前記完全形成潤滑油中に分散した、炭素含有ガス由来のグラフェンナノ粒子と、
を含む、潤滑油組成物。
【請求項2】
前記グラフェンナノ粒子が、約0.001重量%~最大約20重量%の量で存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記グラフェンが、Fe、Co、Cu、Mo、Ni、Si及びそれらの酸化物からなる群から選択される金属不純物及び半金属不純物を実質的に含まない、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記潤滑油組成物が、酸化グラフェン及び/又は還元型酸化グラフェンを実質的に含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記グラフェンナノ粒子が、約2nm~最大約250nmのサイズを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記グラフェンナノ粒子が、プレートレット又はフレークの形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記グラフェンナノ粒子が多層グラフェンから形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記グラフェンナノ粒子が多層グラフェンからなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物が分散剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記分散剤が約0.05重量%~最大約2重量%の量で存在する、請求項9に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記分散剤が、ポリイソブチレンスクシンイミド、(2-メトキシメチルエトキシ)プロパノール、オクタデカン酸,α-ヒドロ-ω-ヒドロキシポリ(オキシ1,2-エタンジイル)との12-ヒドロキシ-ポリマー、接触改質分留装置,スルホン化,ホルムアルデヒドとのポリマー,ナトリウム塩、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),a-スルホ-w-[2,4,6-トリス(1-フェニルエチル)フェノキシ]-アンモニウム塩、トリスチリルフェノールエトキシレート、アルコールのポリアルキレンオキシド誘導体、プロパン-1,2-ジオール、基油、鉱油、ナフサ及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9又は10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
炭素含有ガス由来のグラフェンナノ粒子を基油又は完全形成潤滑油中に分散させることを含む、潤滑油組成物の製造方法。
【請求項13】
炭素含有ガス由来のグラフェンナノ粒子を準備することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グラフェンナノ粒子を分散させる工程が、
前記基油又は前記完全形成潤滑油中にグラフェンナノ粒子の入った混合物を形成することと、
前記混合物を高剪断混合に供することと、
を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記高剪断混合を約40,000s
-1~約60,000s
-1の剪断速度で行う、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物を高剪断混合に供する工程を約5分間~約72時間にわたって行う、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物に分散剤を添加することを更に含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
炭素含有ガスからグラフェンナノ粒子を生成することを更に含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項12~18のいずれか一項に記載の方法に従って形成された潤滑油組成物。
【請求項20】
請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑油組成物の濃縮物又は完成潤滑油としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素含有ガス由来のグラフェンを含む基油を含む改良された潤滑油組成物及びかかる潤滑油組成物を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油は、例えば摩擦及び摩耗を低減し、機械部品間の熱伝達を改善し、腐食を低減し、機械部品に対する熱保護を与えることによって摩耗を軽減するために機械装置において重要である。
【0003】
機械部品に対する保護の強化をもたらすために、向上した特性、例えば増大した潤滑性及び/又は摩擦係数を有する潤滑油を提供することが望ましい。
【0004】
本発明の目的は、従来技術の1つ以上の欠点に対処する、及び/又は有用な代替手段を提供することである。
【0005】
本明細書における任意の従来技術への言及は、従来技術が当業者の一般的な知識の一部をなすことを認めるものでも、又はいかなる形で示唆するものでもなく、またそのように解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様において、
基油又は完全形成潤滑油と、
基油又は完全形成潤滑油中に分散した、炭素含有ガス由来のグラフェンナノ粒子と、
を含む、潤滑油組成物が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様において、炭素含有ガス由来のグラフェンナノ粒子を基油又は完全形成潤滑油中に分散させることを含む、潤滑油組成物を作製する方法が提供される。
【0008】
一実施の形態において、潤滑油組成物は潤滑油濃縮物である。別の実施の形態において、潤滑油組成物は完成潤滑油である。
【0009】
実施の形態において、グラフェンナノ粒子は、約0.001重量%以上の量で存在する。グラフェンナノ粒子は、約0.01重量%以上の量で存在するのが好ましい。グラフェンナノ粒子は、約0.1重量%以上の量で存在するのがより好ましい。グラフェンナノ粒子は、約1重量%以上の量で存在するのがさらに好ましい。グラフェンナノ粒子は、約10重量%以上の量で存在するのがさらにより好ましい。
【0010】
実施の形態において、グラフェンナノ粒子は、最大約20重量%の量で存在する。しかしながら、幾つかの実施の形態において、グラフェンナノ粒子は最大約10重量%、2重量%、1重量%又は0.01重量%の量で存在する。例えば、1つ以上の形態において、組成物は、グラフェンナノ粒子を0.001重量%~最大0.01重量%、又は0.01重量%~最大1重量%、又は0.1重量%~最大1重量%、又は1重量%~最大2重量%、又は2重量%~最大10重量%、又は10重量%~20重量%の量で含み得る。
【0011】
当業者は、グラフェンナノ粒子の重量割合が、意図する用途、例えば潤滑油組成物が濃縮物の形態であるか、又は完全形成潤滑油の形態であるかによって異なることを理解するであろう。
【0012】
実施の形態において、グラフェンは、金属不純物及び半金属不純物を実質的に含まない。一形態において、金属不純物又は半金属不純物はFe、Co、Cu、Mo、Ni、Si及びそれらの酸化物からなる群から選択される。実質的に含まないとは、金属不純物又は半金属不純物の合計が1ppm未満であることを意味する。金属不純物又は半金属不純物の合計が1ppb未満であるのが好ましい。さらに好ましくは、金属不純物又は半金属不純物は検出限界未満である。
【0013】
実施の形態において、潤滑油組成物は、酸化グラフェン及び/又は還元型酸化グラフェンを実質的に含まない。実質的に含まないとは、グラフェンナノ粒子が、酸化グラフェン及び/又は還元型酸化グラフェンをグラフェンの1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下、最も好ましくは検出限界未満の量で含むことを意味する。
【0014】
実施の形態において、グラフェンナノ粒子は、約2nm~最大約250nmのサイズを有する。
【0015】
実施の形態において、グラフェンナノ粒子は、プレートレット若しくはフレークを含む、プレートレット若しくはフレークから実質的になる、プレートレット若しくはフレークからなる、又はプレートレット若しくはフレークの形態である。
【0016】
実施の形態において、グラフェンナノ粒子は、グラフェンの複数の層を含む、グラフェンの複数の層から実質的になる、グラフェンの複数の層からなる、又はグラフェンの複数の層から形成される。
【0017】
実施の形態において、潤滑油組成物は分散剤を更に含む。他の形態においては、潤滑油組成物は分散剤を含まない。分散剤が存在する実施の形態においては、分散剤が約0.001重量%~最大約2重量%の量で存在することが好ましい。
【0018】
上記実施の形態の一形態において、分散剤がポリイソブチレンスクシンイミド、(2-メトキシメチルエトキシ)プロパノール、オクタデカン酸,α-ヒドロ-ω-ヒドロキシポリ(オキシ1,2-エタンジイル)との12-ヒドロキシ-ポリマー(octadecanoic acid, 12-hydroxy-polymer with alpha-hydro-omega-hydroxypoly (oxy1,2-ethanediyl)、接触改質分留装置,スルホン化,ホルムアルデヒドとのポリマー,ナトリウム塩(catalytic reformer fractionator, sulfonated, polymers with formaldehyde, sodium salts)、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),a-スルホ-w-[2,4,6-トリス(1-フェニルエチル)フェノキシ]-アンモニウム塩(Poly(oxy-1,2-ethanediyl), a-sulfo-w-[2,4,6tris(1-phenylethyl) phenoxy]-ammonium salt)、トリスチリルフェノールエトキシレート、アルコールのポリアルキレンオキシド誘導体、プロパン-1,2-ジオール、ナフサ、基油、鉱油、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0019】
第2の態様の実施の形態において、方法は、炭素含有ガス由来のグラフェンナノ粒子を準備することを含む。
【0020】
第2の態様の実施の形態において、グラフェンナノ粒子を分散させる工程は、
基油又は完全形成潤滑油中にグラフェンナノ粒子の入った混合物を形成することと、
混合物を高剪断混合に供することと、
を含む。
【0021】
上記実施の形態の一形態において、高剪断混合を約40,000s-1~約60,000s-1の剪断速度で行う。
【0022】
上記実施の形態の一形態において、混合物を高剪断混合に供する工程を約5分間~約72時間にわたって行う。
【0023】
第2の態様の実施の形態において、方法は、混合物に分散剤を添加することを更に含む。
【0024】
第2の態様の実施の形態において、方法は、炭素含有ガスからグラフェンナノ粒子を生成することを更に含む。
【0025】
本発明の第3の態様においては、本発明の第2の態様の方法、及び/又はその実施の形態、及び/又はその形態に従って形成された潤滑油組成物が提供される。
【0026】
本発明の第4の態様においては、潤滑油濃縮物又は完成潤滑油としての本発明の第1の態様若しくは第3の態様、及び/又はその実施の形態、及び/又はその形態による潤滑油組成物の使用が提供される。
【0027】
本明細書に記載された特徴のいずれかを、本発明の範囲内で本明細書に記載された他の特徴のいずれか1つ以上と任意の組合せで組み合わせることができる。
【0028】
本発明の好ましい特徴、実施形態及び変形形態は、当業者が本発明を実施するのに十分な情報を提供する以下の詳細な説明から読み取ることができる。詳細な説明は、先の発明の概要の範囲をいかなる形でも限定するものではないとみなされる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
本発明は、炭素含有ガス由来のグラフェンが中に分散した基油又は完全形成潤滑油を含む潤滑油組成物及びかかる潤滑油組成物を形成する方法に関する。本発明者らは、炭素含有ガス由来のグラフェンの使用により、他の方法で製造されたグラフェン、例えばグラファイトに由来するグラフェンと比較して、基油又は完全形成潤滑油へのグラフェンのより長く、より良好な分散が可能となることを見出した。
【0030】
本発明者らは、本発明の潤滑油組成物が、改善された摩耗保護、熱伝達、機械的熱保護の1つ以上を示し、機械部品の腐食を低減することを見出した。
【0031】
炭素含有ガス由来のグラフェンは、グラファイトから製造されたグラフェンとは異なる。グラファイトからグラフェンを製造する典型的なアプローチとしては、グラファイトのマイクロメカニカル剥離等の物理的プロセス又は改良ハマー法等の化学的プロセスが挙げられる。
【0032】
グラファイトの剥離では、グラファイトからグラフェン層を剥がすことによってグラフェンを生成する。この方法に関する問題の1つは、得られるグラフェンが親グラファイト中に存在する任意の不純物を含むことであり、かかる不純物としては、Fe、Co、Cu、Mo、Ni及びSi(及びそれらの酸化物)が挙げられる。これらの不純物の存在は、基油へのグラフェンの分散及び得られる潤滑油組成物の機能に悪影響を及ぼし、場合によっては機械的操作及び金属構成部品に有害となる恐れがあるため、潤滑油組成物には望ましくない。
【0033】
改良ハマー法は、グラファイトから酸化グラフェン(GO)への化学酸化を伴う。次いで、酸化グラフェンを還元型酸化グラフェン(rGO)へと化学的に還元することができる。簡潔に述べると、この方法は、例えば過マンガン酸カリウム、硫酸及び過酸化水素を含み得る酸化溶液でグラファイトを処理して、グラファイトを酸化グラフェンに変換することを含む。酸化グラフェンは、ヒドロキシル基、エポキシ基及びカルボキシル基等の酸化官能基を含む。酸化グラフェンを、続いて当業者に既知の方法、例えば化学的プロセス、熱的プロセス又は電気化学的プロセスを用いてrGOに還元することができる。この還元プロセスは、酸化官能基の全体的な密度を下げるのに適しているが、得られるrGOは、依然として酸化官能基を含んだままである。潤滑油組成物における酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン又はこれらの酸化官能基の存在は、基油へのグラフェンの分散及び得られる潤滑油組成物の機能に悪影響を及ぼし、場合によっては機械的操作及び金属構成部品に有害となる恐れがあるため、潤滑油組成物には望ましくない。
【0034】
さらに、グラファイトからグラフェン/GO/rGOへの変換を促進する様々な化学試薬の使用によっても、得られるグラフェン/GO/rGOに化学的不純物が添加され、これらも同様に、例えば上に示した理由から潤滑油に悪影響を及ぼすため、潤滑油組成物には望ましくない。
【0035】
不純物の問題に加えて、これらの方法では多くの場合、粒径及び層厚の点で得られるグラフェン/GO/rGOの最終サイズが殆ど制御されず、広範な粒径を有する多層グラフェン/GO/rGOの形態となることが多い。
【0036】
上記とは対照的に、炭素含有ガス由来のグラフェンは、高純度である。これらの不純物がないことから、これらの不純物がある場合に潤滑油組成物に及ぼし得る悪影響が回避される。
【0037】
潤滑油組成物は、基油(例えば1つ以上の鉱物基油、半合成基油、完全合成基油又はそれらの混合物であってもよく、グループ1、グループ2、グループ3、グループ4、グループ5の基油としても知られる)又は完全形成潤滑油と、意図する用途に応じて、通例では0.001重量%~最大0.01重量%、又は0.01重量%~最大1重量%、又は0.1重量%~最大1重量%、又は1重量%~最大2重量%、又は2重量%~最大10重量%、又は10重量%~20重量%の量のグラフェンとの混合物を形成することによって形成することができる。グラフェンは通例では、約2nm~最大約250nmの範囲のサイズを有し、フレーク又はプレートレットの形態を示す、グラフェンナノ粒子の形状である。
【0038】
概して、潤滑油濃縮物が所望される場合、グラフェンは0.001重量%~最大0.01%、0.01重量%~最大1%、0.1重量%~最大1重量%、1重量%~最大2重量%、2重量%~最大10重量%、10重量%~最大20重量%の量で存在することができる。このような場合、潤滑油濃縮物は、希釈して完成潤滑油を形成する前に一定期間にわたって保存してもよい。グラフェンが高濃度であり、潤滑油濃縮物を使用前に一定期間にわたって保存することがあるため、基油へのグラフェンの分散性が重要である。炭素含有ガス由来のグラフェンの利点は、その高い純度のために、所与の重量分率について、潤滑油組成物が、より純度の低い供給源に由来するグラフェンと比較してグラフェン粒子負荷が高いことであり、例えば炭素含有ガス由来のグラフェンは、同じか又はより高い粒子負荷を達成するのに、場合により他のグラフェンよりも最大で100分の1の量で使用することができ、これが潤滑油組成物の特性の向上に寄与する。
【0039】
潤滑油濃縮物は、潤滑油濃縮物の基油と同じであっても又は異なっていてもよい1つ以上の基油で希釈して、完成潤滑油を形成することができる。
【0040】
代替的には、完成潤滑油が所望される場合、グラフェンは0.001重量%~最大0.01%、0.01重量%~最大1%、0.01重量%~最大1%、1重量%~最大2重量%、2重量%~最大10重量%、10重量%~20重量%の量で存在することができる。
【0041】
いずれの場合も、グラフェンを基油に添加し、高剪断混合に供して、グラフェンを基油中に懸濁させる。本発明者らは、少なくとも40,000s-1の剪断速度での混合が、グラフェンを基油中に分散させるのに有益であることを見出した。高剪断混合は、グラフェンの性質、基油のタイプ及び添加剤の存在に応じて約5分間~約72時間にわたって行うことができる。
【0042】
分散液の安定性又は均一性を高め、製品の貯蔵寿命を伸ばすために分散剤を使用してもよい。分散剤を使用する場合、通例、約0.001重量%~最大約2重量%の量で添加される。様々な好適な分散剤、例えばイオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤、ポリマー、コポリマー及びそれらの混合物を使用することができる。好適な分散剤としては、ポリイソブチレンスクシンイミド、(2-メトキシメチルエトキシ)プロパノール、オクタデカン酸,α-ヒドロ-ω-ヒドロキシポリ(オキシ1,2-エタンジイル)との12-ヒドロキシ-ポリマー、接触改質分留装置,スルホン化,ホルムアルデヒドとのポリマー,ナトリウム塩、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),a-スルホ-w-[2,4,6-トリス(1-フェニルエチル)フェノキシ]-アンモニウム塩、トリスチリルフェノールエトキシレート、アルコールのポリアルキレンオキシド誘導体、プロパン-1,2-ジオール、ナフサ、又はDYSPERBYK 194N、DYSPERBYK 192、DYSPERBYK 199、DYSPERBYK 2013、DYSPERBYK 2015、Triton X-100、Brij L23、Brij O10、Ecoteric T20、Hydrapol RP40、Hydrapol RP90、Tersperse 2020、Tersperse 2218、Tersperse 2218、Tersperse 2288、Tersperse 2500、Tersperse 2510等の市販の分散剤、及び上記のものの組合せが挙げられる。
【実施例1】
【0043】
鉱物基油、半合成基油及び完全合成基油と0.001重量%~最大0.01%、0.01重量%~最大1%、0.01重量%~最大1%、1重量%~最大2重量%、2重量%~最大10重量%、10重量%~20重量%の範囲の重量%の炭素含有ガス由来のグラフェンとを高剪断ミキサーを用いて混合することによって潤滑油濃縮物を調製した。次いで、潤滑油濃縮物を、初期濃度及び最終目標濃度に応じた完成潤滑油の0.001重量%~最大0.01%、0.01重量%~最大1%、0.01重量%~最大1%、1重量%~最大2重量%、2重量%~最大10重量%、10重量%~20重量%の最終グラフェン濃度まで希釈した。
【0044】
次いで、完成潤滑油を改良ASTM 4ボール摩耗試験に供し、グラフェンを含まない同じ基油又は完全形成潤滑油単独の結果と比較した。結果を下記表1に示す。
【0045】
【実施例2】
【0046】
本実施例では、分散剤の非存在下で高剪断ミキサーを用いてグループ3及びグループ4の基油と0.01重量%のグラフェンとを混合することによって得られた実験結果を報告する。
【0047】
グラフェンは多層グラフェンであり、粒径は2nm~250nmの範囲であった。
【0048】
下記表2から、グラフェンの添加がグループ3及びグループ4の基油の両方のCOF(摩擦係数)の顕著な改善をもたらしたことが示される。
【0049】
【実施例3】
【0050】
本実施例では、分散剤の存在下で高剪断ミキサーを用いてShell社の市販の油と0.01重量%のグラフェンとを混合することによって得られた実験結果を報告する。
【0051】
グラフェンは多層グラフェンであり、粒径は2nm~250nmの範囲であった。
【0052】
下記表3から、グラフェンの添加がshell社の市販の油のCOF(摩擦係数)の顕著な改善をもたらしたことが示される。
【0053】
【0054】
ポリイソブチレンスクシンイミド、(2-メトキシメチルエトキシ)プロパノール、オクタデカン酸,α-ヒドロ-ω-ヒドロキシポリ(オキシ1,2-エタンジイル)との12-ヒドロキシ-ポリマー、接触改質分留装置,スルホン化,ホルムアルデヒドとのポリマー,ナトリウム塩、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),a-スルホ-w-[2,4,6-トリス(1-フェニルエチル)フェノキシ]-アンモニウム塩、トリスチリルフェノールエトキシレート、アルコールのポリアルキレンオキシド誘導体、プロパン-1,2-ジオールを含む様々な分散剤を用いて実験を繰り返した。いずれの場合も、実験は同様の結果をもたらした。
【0055】
当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの実施形態及び変形形態を行うことができることを理解するであろう。本明細書全体を通して、「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。このため、本明細書全体を通して様々な箇所に現れる「一実施形態において」又は「実施形態において」という表現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造又は特性は、1つ以上の組合せにおいて任意の好適な形で組み合わせることができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油又は完全形成潤滑油と、
前記基油又は前記完全形成潤滑油中に分散した、炭素含有ガス由来のグラフェンナノ粒子と、
を含む、潤滑油組成物
であって、
前記グラフェンナノ粒子が、前記潤滑油組成物の総重量に対して、約0.001重量%~最大約0.01重量%の量で存在する、潤滑油組成物。
【請求項2】
高剪断混合を用いて前記グラフェンナノ粒子を前記基油又は前記完全形成潤滑油中に分散して得られる、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記グラフェンが、Fe、Co、Cu、Mo、Ni、Si及びそれらの酸化物からなる群から選択される金属不純物及び半金属不純物を実質的に含まない、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記潤滑油組成物が、酸化グラフェン及び/又は還元型酸化グラフェンを実質的に含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記グラフェンナノ粒子が、約2nm~最大約250nmのサイズを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記グラフェンナノ粒子が、プレートレット又はフレークの形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記グラフェンナノ粒子が多層グラフェンから形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記グラフェンナノ粒子が多層グラフェンからなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物が分散剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記分散剤が約0.05重量%~最大約2重量%の量で存在する、請求項9に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記分散剤が、ポリイソブチレンスクシンイミド、(2-メトキシメチルエトキシ)プロパノール、オクタデカン酸,α-ヒドロ-ω-ヒドロキシポリ(オキシ1,2-エタンジイル)との12-ヒドロキシ-ポリマー、接触改質分留装置,スルホン化,ホルムアルデヒドとのポリマー,ナトリウム塩、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル),a-スルホ-w-[2,4,6-トリス(1-フェニルエチル)フェノキシ]-アンモニウム塩、トリスチリルフェノールエトキシレート、アルコールのポリアルキレンオキシド誘導体、プロパン-1,2-ジオール、基油、鉱油、ナフサ及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9又は10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
炭素含有ガス由来のグラフェンナノ粒子を基油又は完全形成潤滑油中に分散させることを含む、潤滑油組成物の製造方法であって、
前記グラフェンナノ粒子が、前記潤滑油組成物の総重量に対して、約0.001重量%~最大約0.01重量%の量で存在する、方法。
【請求項13】
炭素含有ガス由来のグラフェンナノ粒子を準備することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記グラフェンナノ粒子を分散させる工程が、
前記基油又は前記完全形成潤滑油中にグラフェンナノ粒子の入った混合物を形成することと、
前記混合物を高剪断混合に供することと、
を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記高剪断混合を約40,000s
-1~約60,000s
-1の剪断速度で行う、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物を高剪断混合に供する工程を約5分間~約72時間にわたって行う、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物に分散剤を添加することを更に含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
炭素含有ガスからグラフェンナノ粒子を生成することを更に含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項12~18のいずれか一項に記載の方法に従って形成された潤滑油組成物。
【請求項20】
請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑油組成物の濃縮物又は完成潤滑油としての使用。
【国際調査報告】