(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(54)【発明の名称】安全性機能を伴う有線受信機のための電磁波干渉キャンセル
(51)【国際特許分類】
H04B 1/10 20060101AFI20240118BHJP
H04L 25/04 20060101ALI20240118BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20240118BHJP
H04L 25/03 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H04B1/10 L
H04L25/04
H04L25/02 V
H04L25/03 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568159
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 US2022011325
(87)【国際公開番号】W WO2022159270
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523273691
【氏名又は名称】アクスワン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ケニス テット ジン
(72)【発明者】
【氏名】タカトリ, ヒロシ
(72)【発明者】
【氏名】ロー, ウィリアム
【テーマコード(参考)】
5K029
5K052
【Fターム(参考)】
5K029AA02
5K029DD24
5K029HH05
5K029LL01
5K052AA01
5K052BB11
5K052DD04
5K052EE01
5K052FF32
5K052FF33
5K052GG48
(57)【要約】
本開示の実施形態は、有線リンク上のRFIノイズの自然の性質を利用する。システム内の差動RFIノイズが、ケーブル上のコモンモードノイズとある程度の相関を有するため、RFIノイズの複製は、コモンモードノイズについての情報に基づいて、適応型フィルタによって再生され得る。複製RFIは、データ決定回路網またはスライサに先立って、イコライザ出力から差し引かれる。本方法では、本システムは、高価なケーブルを要求せず、イコライザも、RFIノッチフィルタに起因する付加的な損失を被らない。RFIが、検出および軽減され得るため、本情報はまた、安全性システムに結合され、高EMI条件下での機能上の安全性を増加させることもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド伝送を使用する有線通信のための受信機チップであって、前記受信機チップは、
有線リンクを経由して伝送される入力信号を受信するように構成される、ベースバンド受信機であって、前記入力信号は、デジタルデータを用いてエンコードされ、前記ベースバンド受信機は、前記受信された入力信号から前記デジタルデータを復元する、ベースバンド受信機と、
前記ベースバンド受信機に結合される、EMIキャンセル回路網と
を備え、
前記EMIキャンセル回路網は、前記受信された入力信号からEMIキャンセル信号を生産し、前記EMIキャンセル信号は、前記受信された入力信号内のEMIに基づき、
前記ベースバンド受信機は、前記EMIキャンセル回路網から前記EMIキャンセル信号を受信し、前記EMIキャンセル信号に基づいて、前記デジタルデータを復元することへの前記EMIの影響を低減させる、受信機チップ。
【請求項2】
前記EMIキャンセル信号は、前記受信された入力信号内の前記EMIの推定である、請求項1に記載の受信機チップ。
【請求項3】
前記入力信号は、差動入力信号を備え、コモンモードノイズは、前記差動入力信号内の結合されたノイズを誘発し、前記EMIキャンセル回路網は、前記差動入力信号から前記結合されたノイズを抽出する、請求項1に記載の受信機チップ。
【請求項4】
前記有線リンクは、前記差動入力信号を搬送する、ツイスト対を備える、請求項3に記載の受信機チップ。
【請求項5】
前記ベースバンド受信機は、コモンモードチョークを備え、前記コモンモードチョークの出力は、前記EMIキャンセル回路網の入力に結合される、請求項3に記載の受信機チップ。
【請求項6】
前記差動入力信号を受信し、前記ベースバンド受信機および前記EMIキャンセル回路網の両方に前記差動入力信号を提供する、2つの外部ピンをさらに備える、請求項3に記載の受信機チップ。
【請求項7】
前記入力信号は、差動入力信号を備え、前記EMIキャンセル回路網は、
前記差動入力信号からコモンモード信号を抽出する、コモンモード感知回路と、
前記コモンモード信号から前記EMIキャンセル信号を生産する、適応型フィルタと、
前記ベースバンド受信機から前記適応型フィルタまでのフィードバックループと
を備える、請求項1に記載の受信機チップ。
【請求項8】
前記EMIキャンセル回路網は、前記抽出されたコモンモード信号を差動形態に変換する、請求項7に記載の受信機チップ。
【請求項9】
前記コモンモード感知回路は、アナログ回路であり、前記適応型フィルタは、デジタルフィルタであり、前記EMIキャンセル回路網はさらに、
前記アナログコモンモード感知回路と前記デジタル適応型フィルタとの間に結合される、1ビットのアナログデジタル変換器(ADC)を備える、請求項7に記載の受信機チップ。
【請求項10】
前記ベースバンド受信機は、前記デジタルデータのデータ伝送ボーレートに基づく周波数においてサンプリングする、ADCを備え、前記EMIキャンセル回路網内の前記ADCは、前記ベースバンド受信機内の前記ADCの前記周波数に対してオーバーサンプリングするが、前記ベースバンド受信機内の前記ADCよりも低い分解能を有する、請求項9に記載の受信機チップ。
【請求項11】
前記EMIキャンセル回路網内のADCは、
前記同一の周波数においてサンプリングされるが、相互に対して、位相においてオフセットされ、N≧2である、N個の並列ADCを備える、請求項10に記載の受信機チップ。
【請求項12】
前記デジタル適応型フィルタは、
前記N個の並列ADCからサンプルを受信する、N個のFIRフィルタと、
前記N個のFIRフィルタからの出力を加算する、加算器と
を備える、請求項11に記載の受信機チップ。
【請求項13】
前記適応型フィルタによって生産される前記EMIキャンセル信号は、前記受信された入力信号内の前記EMIの推定である、請求項7に記載の受信機チップ。
【請求項14】
前記ベースバンド受信機は、
イコライザと、
前記イコライザの出力から前記EMIキャンセル信号を差し引く、回路網と
を備える、請求項13に記載の受信機チップ。
【請求項15】
前記フィードバックループは、(a)前記イコライザの前記出力から前記EMIキャンセル信号を引いたものと、(b)前記復元されたデジタルデータに関する基準レベルのセットとの間の差異に基づいて、誤差信号を生産する、請求項14に記載の受信機チップ。
【請求項16】
前記ベースバンド受信機は、
前記復元されたデジタルデータ内の誤差を補正する、前方誤差補正を備え、前記適応型フィルタは、前記前方誤差補正が誤差を補正する際の有効性を喪失する前に、EMIのバーストに適応させる、請求項7に記載の受信機チップ。
【請求項17】
ベースバンド伝送を使用する有線通信の方法であって、前記方法は、
有線リンクを経由して伝送される入力信号を受信することであって、前記入力信号は、デジタルデータを用いてエンコードされる、ことと、
前記受信された入力信号からEMIキャンセル信号を生産することであって、前記EMIキャンセル信号は、前記受信された入力信号内のEMIに基づく、ことと、
前記受信された入力信号から前記デジタルデータを復元することであって、前記復元することは、前記EMIキャンセル信号を使用し、前記デジタルデータを復元することへの前記EMIの影響を低減させることを含む、ことと
を含む、方法。
【請求項18】
前記EMIキャンセル信号は、前記受信された入力信号内の前記EMIの推定である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記入力信号は、差動入力信号を備え、コモンモードノイズは、前記差動入力信号内の結合されたノイズを誘発し、前記EMIキャンセル信号を生産することは、前記差動入力信号から前記結合されたノイズを抽出することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記入力信号は、差動入力信号を備え、前記EMIキャンセル信号を生産することは、
前記差動入力信号からコモンモード信号を抽出することと、
前記EMIキャンセル信号を生産するために、前記コモンモード信号を適応型フィルタリングすることと、
前記デジタルデータを復元するステップから前記適応型フィルタにフィードバックを提供することと
を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ベースバンド伝送を使用する有線通信のための受信機チップであって、前記受信機チップは、
有線リンクを経由して伝送される入力信号を受信するように構成される、ベースバンド受信機であって、前記入力信号は、デジタルデータを用いてエンコードされ、前記ベースバンド受信機は、前記受信された入力信号から前記デジタルデータを復元する、ベースバンド受信機と、
前記受信された入力信号からEMI検出信号を生産する、EMI監視回路網であって、前記EMI検出信号は、前記受信された入力信号内のEMIの存在を示す、EMI監視回路網と、
前記EMI監視回路網および前記ベースバンド受信機に結合される、安全性回路網であって、前記安全性回路網は、前記EMI検出信号がEMIの存在を示すことに応じて、前記ベースバンド受信機の動作を改変する、安全性回路網と
を備える、受信機チップ。
【請求項22】
前記ベースバンド受信機は、適応型であり、前記安全性回路網は、前記EMI検出信号がEMIの前記存在を示すことに応じて、前記ベースバンド受信機の適応を停止する、請求項21に記載の受信機チップ。
【請求項23】
前記安全性回路網は、前記EMI検出信号がEMIの前記存在をもはや示していないことに応じて、前記ベースバンド受信機の適応を開始する、請求項22に記載の受信機チップ。
【請求項24】
前記安全性回路網は、前記EMI検出信号がEMIの前記存在をもはや示していないことに応じて、前記ベースバンド受信機の適応を可能にする、請求項22に記載の受信機チップ。
【請求項25】
前記安全性回路網はさらに、前記EMI検出信号がEMIの前記存在を示すことに応じて、アラートを発生させる、請求項21に記載の受信機チップ。
【請求項26】
前記安全性回路網は、前記EMI検出信号がEMIの前記存在を示すこと、および前記ベースバンド受信機がデジタルデータ復元の容認不可能な品質を示すことに応じて、前記有線リンクのシャットダウンを開始する、請求項21に記載の受信機チップ。
【請求項27】
前記安全性回路網は、状態機械を実装する、請求項21に記載の受信機チップ。
【請求項28】
前記状態機械は、前記有線リンクを経由した正常伝送のためのNORMAL状態と、前記ベースバンド受信機の適応を一時停止するためのPAUSE状態とを含む、請求項27に記載の受信機チップ。
【請求項29】
前記状態機械はさらに、前記ベースバンド受信機の適応を強制するためのTRAIN状態を含む、請求項28に記載の受信機チップ。
【請求項30】
前記状態機械の状態遷移は、伝送品質が容認可能かどうか、EMIが存在するかどうか、およびEMIキャンセルが十分であるかどうかを示す、変数のセットに依存する、請求項27に記載の受信機チップ。
【請求項31】
前記ベースバンド受信機に結合される、EMIキャンセル回路網をさらに備え、前記EMIキャンセル回路網は、前記デジタルデータを復元することへの前記EMIの影響を低減させるために、前記ベースバンド受信機によって使用されるEMIキャンセル信号を生産する、請求項21に記載の受信機チップ。
【請求項32】
前記安全性回路網は、前記EMIキャンセル回路網がキャンセル限界近くで動作しているというインジケーションに応じて、前記ベースバンド受信機の動作を改変する、請求項31に記載の受信機チップ。
【請求項33】
前記EMI検出信号は、前記EMIキャンセル信号に基づく、請求項31に記載の受信機チップ。
【請求項34】
前記EMIキャンセル信号は、前記受信された入力信号内の前記EMIの推定である、請求項31に記載の受信機チップ。
【請求項35】
前記入力信号は、差動入力信号を備え、コモンモードノイズは、前記差動入力信号内の結合されたノイズを誘発し、前記EMIキャンセル回路網は、前記差動入力信号から前記結合されたノイズを抽出する、請求項31に記載の受信機チップ。
【請求項36】
前記入力信号は、差動入力信号を備え、前記EMIキャンセル回路網は、
前記差動入力信号からコモンモード信号を抽出する、コモンモード感知回路と、
前記コモンモード信号から前記EMIキャンセル信号を生産する、適応型フィルタと、
前記ベースバンド受信機から前記適応型フィルタまでのフィードバックループと
を備える、請求項31に記載の受信機チップ。
【請求項37】
ベースバンド伝送を使用する有線通信の方法であって、前記方法は、
有線リンクを経由して伝送される入力信号を受信することであって、前記入力信号は、デジタルデータを用いてエンコードされる、ことと、
前記受信された入力信号からEMI検出信号を生産することであって、前記EMI検出信号は、前記受信された入力信号内のEMIの存在を示す、ことと、
前記受信された入力信号から前記デジタルデータを復元することと、
前記EMI検出信号がEMIの存在を示すことに応じて、前記デジタルデータの復元を改変することと
を含む、方法。
【請求項38】
前記デジタルデータを復元することは、適応型であり、前記デジタルデータの復元を改変することは、前記EMI検出信号がEMIの前記存在を示すことに応じて、適応を停止することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記EMI検出信号がEMIの前記存在を示すことに応じて、アラートを発生させることをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記受信された入力信号からEMIキャンセル信号を生産することをさらに含み、前記EMIキャンセル信号は、前記受信された入力信号内のEMIに基づき、前記受信された入力信号から前記デジタルデータを復元することは、前記EMIキャンセル信号を使用し、前記デジタルデータを復元することへの前記EMIの影響を低減させることを含む、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(1.技術分野)
本開示は、概して、有線受信機における電磁波干渉の軽減に関する。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の説明)
我々が住む、このますますデジタル化が進む世界では、データの急増が、指数関数的に爆発的増加となっており、それに伴って、無線および有線通信の両方におけるデータレートを増加させる必要が出てきている。有線通信は、典型的には、電気的物理リンク等の媒体チャネルを経由してデジタル信号を送信する、ベースバンド伝送を使用し、伝送自体は、電気パルスの形態をとる。ベースバンド伝送が、事実上、広帯域であり、帯域幅全体を占有するため、その動作は、そのシグナリング速度が、高メガヘルツ(MHz)およびマルチギガヘルツ(GHz)レートに到達すると、種々の無線周波数(RF)、マイクロ波、およびレーダの範囲の中に侵入し始める。
【0003】
RFおよびマイクロ波帯域の中へのデジタルベースバンド伝送の本侵入の増加は、放出および耐性の両方の観点に対する電磁コンプライアンス(EMC)を満たす上での課題を提示する。殆どのデジタルデータ伝送は、2つの同じ結合された通信回線を解釈し、データシンボルを識別することに基づく、差動シグナリングの使用に起因して、無線周波数スペクトル内にあるときには無線周波数干渉(RFI)とも呼ばれる、電磁波干渉(EMI)に対して、あるレベルの固有のロバスト性を有する。放出の観点から、差動シグナリングは、シグナリングの反対位相に起因して、各通信回線の放出をキャンセルする。耐性の観点から、EMIエネルギーは、差動信号に関するコモンモードノイズとして現れるため、したがって、受信機は、干渉を被らない。
【0004】
しかしながら、伝送信号の品質は、信号経路に沿った差動成分内の非平衡から被られる大幅な信号減衰およびモード変換に起因して、急速に劣化し、より高いデータレートにおいて、EMCの問題の影響を受けやすい状態になり得る。EMCの問題は、遮蔽されていない伝送媒体内でより顕著な状態になる。
【0005】
RFIとしても公知の無線波の形態におけるEMIは、典型的には、搬送周波数周辺の変調された信号である。ベースバンド受信機は、搬送信号が、媒体の中に結合し、消滅しない場合、長い周期の高ビット誤差レートを被り得る。ベースバンド受信機が、適応型等化を使用する場合、長期に及ぶ干渉が、適応型イコライザをその最適な設定からドリフトさせ得る。したがって、RFIが停止した後、準最適な受信機の等化のため、ビット誤差が継続する周期が存在し得ることが、可能性として考えられる。
【0006】
長期に及ぶRFIはまた、破損されていない映像または他のデータの安定したストリームが、安全な動作を維持するために要求される、自律型運転等の安全性が重要な用途においても、安全性の問題を提示し得る。RFIまたは他のタイプのEMIの発現を検出し、それを補償することができるシステムが、全体的なシステムにあるレベルの機能上の安全性を追加する。
【0007】
有線リンクにおけるEMCの問題を軽減するための1つのアプローチは、高品質なケーブルを使用することである。しかしながら、これは、システムコストを増加させ、コスト重視のシステムにおいて、好ましいソリューションではない。また、自動車等の多くの用途において、高品質なケーブルを維持することは、技術的に困難である。これは、振動、反復的なケーブルの屈曲、老朽化による劣化、および温度変化等のシステム環境に起因する。
【0008】
別のアプローチは、インラインコモンモードチョークを設置することである。コモンモードチョーク(CMC)は、コモンモード信号を20~30dB低減させるために有効であり得る。しかしながら、これは、ケーブルによって差動信号にすでに変換されているEMIを低減させない。また、CMC自体が、コモンモード信号(例えば、RFIノイズ)を差動信号に変換する。これらは、CMCの有効性を限定する、欠点である。
【0009】
第3の方法は、ノッチフィルタの使用である。本方法は、イコライザ内の具体的な周波数のRFIノイズを減衰させる、ノッチフィルタを適用する。これは、RFIノイズの周波数検出およびそれに対する適応を要求する。しかしながら、ノッチフィルタもまた、同一の周波数において信号を減衰させる。したがって、ノッチフィルタが適用されるとき、ある程度の劣化(より低いSNR)が存在する。
【0010】
したがって、EMIの影響を低減させるためのより良好なアプローチに対する必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(要約)
本開示のある実施形態は、RFIノイズの自然の性質を利用する。システム内の差動RFIノイズが、ケーブル上のコモンモードノイズとある程度の相関を有するため、RFIノイズの複製は、コモンモードノイズについての情報が、抽出され得る場合、適応型フィルタによって再生され得る。複製RFIは、データ決定回路網またはスライサに先立って、イコライザ出力から差し引かれる。本アプローチでは、本システムは、高価なケーブルを要求せず、イコライザも、RFIノッチフィルタに起因する付加的な損失を被らない。RFIが、検出および軽減され得るため、本情報はまた、安全性システムに結合され、高EMI条件下での機能上の安全性を増加させることもできる。
【0012】
一側面では、有線通信のための受信機チップは、ベースバンド受信機と、ベースバンド受信機に結合される、EMIキャンセル回路網とを含む。ベースバンド受信機は、有線リンクを経由して伝送される、入力信号を受信する。入力信号は、デジタルデータを用いてエンコードされ、ベースバンド受信機は、受信された入力信号からデジタルデータを復元する。しかしながら、入力信号はまた、EMIも搬送し得る。EMIキャンセル回路網は、受信された入力信号からEMIキャンセル信号、例えば、EMIノイズの推定される複製を生産する。ベースバンド受信機は、EMIキャンセル信号を受信し、データ復元プロセスへのEMIの影響を低減させるために、EMIキャンセル信号を使用する。
【0013】
別の側面では、受信機チップは、EMI監視回路網と、安全性回路網とを含む。EMI監視回路網は、受信された入力信号からEMI検出信号を生産する。EMI検出信号は、受信された入力信号内のEMIの存在を示す。安全性回路網は、EMIが存在するかどうかに応じて、ベースバンド受信機の動作を改変する。
【0014】
EMIキャンセルおよびEMI検出の両方を実装する、受信機チップに関して、EMIキャンセル回路網およびEMI監視回路網は、重複している、または同一でさえあり得る。EMIキャンセルの一部として生産される信号は、有利なこととして、EMIの存在またはEMIの強度に基づく、安全性機能を実装するために使用され得る。EMI検出信号は、EMIキャンセル信号から導出され得る。例えば、EMIキャンセル信号が、閾値を超過する場合、EMI検出信号は、EMI検出済に設定されることができる。
【0015】
他の側面は、コンポーネント、デバイス、システム、改良例、方法、プロセス、アプリケーション、コンピュータ可読媒体、および上記のいずれかに関連する他の技術を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の実施形態は、付随の図面における実施例と併せて解釈されるとき、以下の詳細な説明および添付の請求項から、より容易に明白な状態になるであろう、他の利点および特徴を有する。
【0017】
【
図1A】
図1Aは、有線通信リンク上の電磁波干渉(EMI)を図示する、ブロック図である。
【0018】
【
図1B】
図1Bは、EMI軽減を伴う、ベースバンド受信機のブロック図である。
【0019】
【
図2A】
図2A-2Cは、EMI軽減を伴う、ベースバンド受信機の例示的実装のブロック図である。
【
図2B】
図2A-2Cは、EMI軽減を伴う、ベースバンド受信機の例示的実装のブロック図である。
【
図2C】
図2A-2Cは、EMI軽減を伴う、ベースバンド受信機の例示的実装のブロック図である。
【0020】
【
図3】
図3は、コモンモード感知回路網の例示的実装のブロック図である。
【0021】
【
図4A】
図4Aは、コモンセントロイドを伴う、2つの抵抗器群の物理レイアウトを示す。
【0022】
【
図4B】
図4Bは、2つのくし型抵抗器群の物理レイアウトを示す。
【0023】
【
図5】
図5は、異なる帯域幅の1次低域通過フィルタを通してフィルタリングされるような1GHzにおけるRFIパルス応答を示す。
【0024】
【
図6】
図6は、RFIバーストのキャンセルを示す。
【0025】
【発明を実施するための形態】
【0026】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
図および以下の説明は、例証のみとしての好ましい実施形態に関する。以下の議論から、本明細書に開示される構造および方法の代替実施形態が、請求される内容の原理から逸脱することなく採用され得る実行可能な代替案として、容易に認識されるであろうことに留意されたい。
【0027】
図1Aは、有線通信リンク100上の電磁波干渉(EMI)を図示する、ブロック図である。
図1Aに示される通信リンク100は、双方向性であり、有線リンク120によって接続される、2つの送受信機110A、110Bを含む。各送受信機110は、伝送機と、受信機とを含む。デジタルデータは、有線リンク120を経由して、一方の送受信機110A/Bから他方の送受信機110B/Aに伝送される。電磁波干渉(EMI)130は、物理媒体120の中に結合し得る。有線通信は、パルスを使用する媒体チャネル120を経由してデジタル信号を送信する、ベースバンド伝送を使用する。ベースバンド伝送が、事実上、広帯域であるため、高データレートの伝送は、RFおよびマイクロ波周波数の範囲に到達し得る。RF周波数におけるRFIを含む、EMI130が、伝送された信号の動作帯域幅内の種々のソースによって発生され得る。物理媒体120の中に結合される場合、これらは、それら自体が、受信機におけるノイズとして顕現するであろう。各受信機は、所望の信号およびノイズ(EMI)の組み合わせである、入力信号を受信する。受信機は、受信された入力信号からデジタルデータを復元する。
【0028】
図1Bは、本EMIの影響を軽減する受信機のブロック図である。受信経路は、送受信機110の受信部分である。これは、ベースバンド受信機130と、EMIキャンセル回路網140とを含む。ベースバンド受信機130は、有線リンク120から入力信号を受信し、エンコードされたデジタルデータを復元する。EMIキャンセル回路網140は、受信された入力信号から信号145を生産する。本信号145は、入力信号内のEMIに基づく。例えば、これは、入力信号内のEMIの複製または推定であり得る。ベースバンド受信機130は、信号145を使用し、デジタルデータを復元するためのプロセスに及ぼされるEMIの影響を軽減する。例えば、信号145が、EMIの複製である場合、これは、入力信号内のEMIをキャンセルするために使用され得る。便宜上、信号145は、EMIキャンセル信号と称されるであろう。
【0029】
本開示において説明される、EMIキャンセルアプローチは、多くのタイプの通信リンク100に適用されてもよい。例えば、リンク100は、双方向性または単方向性であってもよく、この場合では、各端末110は、伝送機のみ、受信機のみ、または伝送機および受信機の両方を含んでもよい。媒体120は、典型的には、電気ケーブルである。実施例は、同軸ケーブル、ツイスト対、並列対、およびバックプレーンを含む。ケーブル対は、遮蔽される、または遮蔽されなくてもよい。例示的データレートは、1G(Gbps)、2.5G、5G、10G、およびそれより高いものを含む。リンクの長さは、幅広く変動し得る。例えば、典型的な自動車のケーブル配線は、規格では、最大15メートルであるが、多くの実際の場合では、それよりも短い。通常のイーサネット(登録商標)は、最大100メートルまで規定される。所望の信号が、より長い長さにわたって、より多く減衰し、より長いケーブルが、望ましくない結合に対するより多くの機会を提示するため、ケーブルが長いほど、これは、より多くの影響を受けやすいことに留意されたい。多くの異なるプロトコル、例えば、1000BASE-T1、2.5GBASE-T1、5GBASE-T1、10GBASE-T1、1000BASE-T、2.5GBASE-T、5GBASE-T、10GBASE-T、およびMIPI APHYが、使用されてもよい。また、多くの異なる最終的な使用用途が、存在する。一実施例は、自動車のネットワーク化である。他の実施例は、産業用イーサネット(登録商標)、ならびに企業およびデータセンタを含む。今日の5G無線塔は、強力な無線ソースに近い、イーサネット(登録商標)および他のベースバンドを有し得る。企業およびデータセンタの収納庫に関して、セキュリティ用無線電話機および携帯電話が、干渉を引き起こし得る。RFIは、特に、自動車および産業用途に関して問題がある。航空用途は、別の例示的用途である。
【0030】
図2A-2Cは、EMI軽減を伴う、ベースバンド受信機の例示的実装のブロック図である。
図2Aは、ベースバンド受信機230のみを示す。
図2Bは、EMIキャンセル回路網240を追加しており、これは、大部分が破線の下方にあるが、ベースバンド受信器230は、破線の上方にある。
図2Cは、安全機能性を追加している。本実施例では、
図2A-2Cに示される機能性は、信号処理と、機能上の安全性250のための状態機械とを含む、アナログフロントエンド212およびデジタルバックエンド214を伴う、単一の混合信号受信機チップとして実装されるが、これは、要求されない。例えば、アナログ212およびデジタル214機能は、別個のチップ内で実装されてもよい。さらに、安全性機能250(
図2Cに示される)は、安全状態機械のソフトウェアバージョンを起動するCPU等の別のチップ内で実装されてもよく、CPUは、レジスタ書込を介して、適応制御装置258を制御し、インタラプトを得る(またはRFI検出信号256およびSNR259をポーリングする)。受信機は、ベースバンド受信機230のための入力ピンを有するが、EMIキャンセル240のための別個のピンを有せず、したがって、ピン計数を節約する。受信機は、差動シグナリングを使用し、したがって、着信信号は、差動信号対である。
【0031】
図2Aは、ベースバンド受信器230を示す。アナログ/混合信号のコンポーネントは、アナログ信号調整回路網231を含む。実施例は、パッシブおよびアクティブアナログフィルタ、低ノイズ増幅器(LNA)、プログラマブルゲイン増幅器(PGA)、線形減衰器、DCブロッキング、ベースライン変動補正回路、および信号クランピング回路を含む。この後、高分解能アナログデジタル変換器233が続き、これは、着信アナログ信号をデジタルバックエンドのためのデジタルに変換する。
【0032】
ADC233のサンプルレートは、通信リンクを経由するデータ伝送レートに依存する。サンプルレートは、例えば、125MHz~6GHzまたはそれよりも高いものまで、幅広く変動し得る。サンプルレートおよびデータ転送レートもまた、EMIの影響に関連する。例えば、受信機が、125MHzにおいて起動している場合、1GHzのRFIトーンからのEMIは、基本的な受信機の機能性によってフィルタ除去され、特別なEMIキャンセルを要求しないであろうが、50MHzトーンからのEMIは、下記に説明されるように、キャンセルを要求する可能性が高いであろう。逆に言えば、受信機が、6GHzにおいて起動している場合、1GHzのEMIは、問題がより多く、50MHzのEMIは、問題がより少ない。
【0033】
ADC233の後、受信機の等化のためのイコライザ236、例えば、フィードフォワードイコライザが続く。等化された出力は、次いで、受信された信号を量子化する、スライサ237を通して進行する。イコライザ236に関するフィルタ係数は、適応的であり、チャネル内の信号の歪みを元に戻すための設定に落ち着くように訓練される。デジタルデータが、前方誤差補正(FEC)コードで保護される場合、FEC回路網239は、スライサ237から外に出る、あるレベルのビット誤差を補正し得る。着信入力信号は、アナログ差動信号である。ADC233は、本着信アナログ差動信号をサンプリングされたデジタル形態に変換する。信号は、ADC233の入力までの差動であり、これは、その後のデジタル番号である。
【0034】
EMIノイズが、正常に受信された信号に干渉するとき、信号およびノイズの両方が、イコライザ236を通して流れ、EMIノイズは、イコライザ出力を歪曲するであろう。EMIに対処する従来のアプローチは、ノイズをノッチ除去するように、イコライザ236を適応させるためのものであるが、本ノッチ処理はまた、良好な信号も減衰させ、信号対ノイズ比(SNR)を低下させるであろう。
【0035】
図2Bは、付加的なEMIキャンセル回路網240を示す。EMI信号が、概して、それ自体が、主としてコモンモード信号として、およびより可能性が低いが、より問題になることとして、データ信号の伝搬に沿った種々のモード変換機構を通した差動信号としての2つの形態において、PHY受信機側への主データ伝送チャネル上に顕現する。モード変換のいくつかの実施例は、通信回線対における非平衡、コモンモードチョークにおける通信回線の一様ではない巻線、および一様ではない終端インピーダンスを含む。コモンモード信号として顕現されるEMIは、コモンモードチョーク(CMC)によって減衰され、差動シグナリング方法を使用して、受信機によって阻止され得る。しかしながら、差動信号として顕現されるEMIは、CMCによって抑制されず、チャネルからの信号の歪みに加えて、差動受信機への所望の伝送されたデータ信号上に重畳される誤差信号として存在する。
【0036】
専用の補助的なEMI感知受信機が、信号内のコモンモード移動を検出するために使用されてもよい。その機能は、コモンモード摂動のみを感知し、差動信号を阻止することによって、主受信機のものに相補的である。典型的な従来のソリューションでは、CMCは、アナログフロントエンド212への入力ピンの前に、チップから離れて位置する。EMI感知受信機は、コモンモード信号エネルギーがより大きいCMCの前で信号をタップするであろう。しかしながら、それは、EMI感知受信機のための1つ以上の専用ポートを要求し、これは、ピンおよびより多くの回路網を追加するであろう。
図2に示されるアプローチは、主信号ポートにおいて、EMIを直接感知し、同一のパッケージ内で、または同一のチップ上でモノリシックに実装される、主信号経路およびEMI信号経路の両方を有することによって、余剰感知ポートを排除する。これは、EMI信号を抽出する際に、高レベルの感度を要求する。より高い感度が、EMIキャンセルによって提供される場合、外部CMCもまた、不必要な状態になり得る。例えば、これは、遮蔽されていない伝送環境内で使用されるが、遮蔽された伝送媒体に関しては排除され得る。単一チップのソリューションはまた、経済的な利点および統合の容易性も提供する。
【0037】
図2Bでは、コモンモード感知回路網241は、例えば、電圧、電流、または電荷ドメイン内の2つの差動信号を加算することによって、主差動信号ポートにおけるコモンモード信号を抽出する。CMCが使用される場合、CMCは、典型的には、アナログフロントエンド212の前に位置し、コモンモード感知回路網241は、CMCの後で信号をタップする。
図3は、コモンモード感知回路網241の実施例のブロック図である。2つの差動信号は、電圧V
1およびV
2である。出力電圧V
Cは、以下によって求められる。
V
C=(V
1Z
2+V
2Z
1)/(Z
1+Z
2) (1)
インピーダンスZ
1およびZ
2は、パッシブおよび/またはアクティブ要素によって実装され得る。パッシブ要素は、限定ではないが、ポリもしくは拡散抵抗器、MiM(金属絶縁体金属)、またはフィンガMOM(金属酸化物金属)コンデンサであり得る。アクティブ要素は、三極管領域内でバイアスをかけられるトランジスタまたは高度に調和された電流源であり得る。
【0038】
インピーダンスZ1およびZ2が、同じである場合、出力Vc=(V1+V2)/2であり、これは、信号の正しい所望のコモンモードである。しかしながら、インピーダンスZ1およびZ2が、調和しない場合、コモンモード信号Vcは、誤差を有するであろう。検出が、主信号ポートにおいて行われるため、コモンモード抽出器241の検出要素Z1およびZ2の不調和に対する高い感度が存在する。最先端技術のプロセスにおいてさえ、体系的かつランダムな変動が存在する。1つの単純な実施例は、一様ではないドーピング密度、またはシリコンウエハ上の物理的な場所を横断して抵抗の変動を引き起こし得る、研磨に起因する線形(またはより高次)の勾配効果であろう。Z1およびZ2における差異が存在するとき、V1およびV2が、等しい振幅であるが、反対の位相を伴う、完全な差動信号であっても、本差動信号成分は、モード変換を通して、コモンモード信号として誤って現れ、したがって、コモンモード検出を破損させ得る。
【0039】
要求される高い感度を満たすための1つの方法は、それらを物理レイアウト内に、くし型および/またはコモンセントロイド方式において設置することによって、比例的かつ高度に調和される、高精度のパッシブまたはアクティブ要素を使用することによるものである。
図4Aは、チップ上の抵抗器の物理レイアウトを示し、配列は、コモンセントロイドを有する。コモンセントロイドは、「+」によって印が付けられている。xおよびyの寸法は、チップ表面に沿って垂直方向である。抵抗器R1は、回路内に接続され、インピーダンスZ
1を形成し、抵抗器R2は、同一の様式で接続され、インピーダンスZ
2を形成する。抵抗器R1の群が、抵抗器R2の群と同一のコモンセントロイドを有するため、チップを横断する変動は、2つの群間でキャンセルされる傾向があり、したがって、Z
1およびZ
2は、チップを横断する変動にもかかわらず、調和される。
図4Bは、物理レイアウトを示し、抵抗器R1およびR2は、物理レイアウトにおいて相互に組み合わせられている(交互されている)。本レイアウトはまた、チップを横断する変動に起因する、Z
1およびZ
2の不調和も低減させるであろう。
【0040】
図2Bに戻ると、いったんEMI信号が、オンチップコモンモード検出器241を使用して、コモンモード信号として、主入力ポートから抽出されると、これはさらに、信号遷移エッジに作用する、アナログ信号調整回路網242によって増幅および処理される。回路網242は、例えば、信号増幅、フィルタリング、およびクランピングを提供し得る。信号は、続いて、低分解能オーバーサンプリングADC243によってデジタル化される。ADC243は、ADC233に対してオーバーサンプリングする。すなわち、ADC243は、ADC233のサンプル毎に、複数のサンプルを生産する。例えば、ADC243は、ADC233のサンプルレートのN倍でサンプリングする、1ビットのADCであり得る。代替として、
図2Bに示されるように、ADC243は、それぞれが、ADC233と同一のレートにおいてサンプリングされるが、相互に対して1/Nサイクルだけオフセットされる、N個の1ビットのADCとして実装され得る。オーバーサンプリングに関して、N≧2である。ADC243は、ADC233と比較して、低分解能である。典型的には、低分解能ADC243は、1~3ビットの分解能を有するであろう。ADC243のデジタル化された出力は、バックエンド214内の下流のデジタル信号プロセッサ(DSP)が、EMIキャンセルに関する基準として使用する、タイミングまたは周波数の形態で、EMI情報を含有する。
【0041】
図2Bのアプローチは、EMI信号の線形電力および振幅情報を捕捉および維持することを試みるのではなく、むしろ、EMI信号の遷移またはエッジ情報上で処理し、それを伝達する。これは、EMIフロントエンド受信機の設計241-243を単純化する。EMIキャンセル分岐内のアナログ信号調整242は、大きな動的範囲にわたってEMI信号の線形性を維持することに依拠せず、信号遷移エッジ上で働き、その基本的な周波数情報を保持する。線形増幅を通して感知されたEMI信号の信号忠実性を保存することを試みる、EMI信号調整と比較して、
図2Bにおけるアナログフロントエンド241-243は、増幅器、フィルタ、および高分解能ADC等の高度線形アナログ回路を要求しない。これは、ひいては、電力および面積を節約し、システムの複雑性を低減させる。
【0042】
EMI受信機フロントエンド241-243の1つの可能性として考えられる実装は、感知されたコモンモード信号を差動信号に即座に変換することである。差動形式におけるアナログ信号処理242は、必然的に、基準としてのそのゼロ交差、ならびにより良好な電力供給の阻止を提供する。信号は、次いで、より単純な低ゲイン増幅器によって増幅され、可能性として、高速クランピングまたはリミッタ回路が続き、次いで、最終的に、オーバーサンプリングレートにおいて起動する、1つ以上の単一ビット量子化器によってサンプリングおよびデジタル化され得る。高度ディープサブミクロンシリコンプロセス技術の助けにより、マルチGHzにおいてクロック制御される、1ビットの低ノイズ量子化器が、達成可能であり、高い精度および電力効率を伴って、差動ゼロに近い低信号を再発生させ、それを完全なレールツーレールデジタルビットの中に増幅させることが可能である。
【0043】
RFI信号は、周波数において、よりコヒーレントである傾向があり、典型的には、近接性において、干渉するソースの搬送信号によって支配される。
図5は、1MHz~10GHzまでの種々のカットオフ周波数を伴う、単純なRC低域通過フィルタにかけられた、1GHzのRFIパルスの出力波形を描写する。最上部の波形510は、1nsの基本的な周期を伴う、1GHzのRFIパルスの入力波形である。波形521は、1MHzのRC低域通過フィルタによってフィルタリングされた後の出力である。波形522-525は、それぞれ、10MHz、100MHz、1GHz、および10GHzのRC低域通過フィルタによってフィルタリングされた後の出力である。信号電力は、低帯域幅出力において劣化し得るが、RFI信号の基本的な周波数は、維持される。同一のことが、固定されたチャネルを経由する、種々の周波数におけるRFI信号に関しても当てはまる。
【0044】
本周期性は、干渉しているコモンモード信号の周波数を単純に検出するために、RFI検出器を単純化するために利用されてもよい。1ビットまたは低分解能の量子化器は、遷移エッジを捕捉するために使用され得、適切なオーバーサンプリングレートが、着目RFI周波数の範囲を判定するために使用される。本情報は、次いで、正常な受信経路230内のDSPに基準信号として中継され得、干渉物の正確な電力は、例えば、下記に説明されるように、インテリジェントな信号処理を使用して、抽出およびキャンセルされ得る。
【0045】
図2Bでは、アナログ受信機241-243の出力は、EMI情報を含有する、サンプリングおよびデジタル化された信号を含有する。これらの信号は、適応型FIRフィルタ246にフィードされる。FIRフィルタの係数は、誤差信号の平均平方誤差を最小限にするように適応される。本実施例では、回路網247は、スライサ237の動作に基づいて、誤差信号248を発生させる。スライサ237は、入力信号を受信し、スライサによって使用される閾値に基づいて、入力を有限数の出力レベルにスライスする。入力信号と許可されるスライサの出力レベルとの間の差異は、誤差信号248である。
【0046】
図2Bでは、適応型FIRフィルタ246は、以下の通りに実装される。オーバーサンプリングADC243は、1/Nサイクルだけオフセットされる、N個のサンプルを生産する。これらのN個のデジタルストリームは、1/Nサイクルだけオフセットされたサンプルを伴って、N個のFIRフィルタ246A-Nによって受信される。N=1を含む、任意の値のNが、複雑性と性能をトレードオフするために使用され得る。例えば、N=4である場合、サンプルはそれぞれ、1/4サイクルだけオフセットされる。各FIRの出力は、追加され、次いで、イコライザ236の出力から差し引かれる。オーバーサンプリングは、RFIの周波数および位相が、ADC233クロックに対してある関係にあるとき、誤った適応を軽減する。N=2またはそれよりも高いとき、オーバーサンプリングは、サンプリングされた入力のうちの1つが、ゼロ交差に近い(したがって、より弱い信号である)場合には、少なくとも1つのFIR入力が、強い信号を有することを保証する。
【0047】
EMIキャンセル回路240は、サンプリングされたEMIノイズをEMIキャンセル信号245として複製し、次いで、スライサ237の中に進行する前に、これをイコライザ236出力の出力から差し引く。キャンセルが、イコライザ236の内側で行われないため、良好な信号は、減衰されるという影響を被らない。
【0048】
異なるタイプの適応が、適応成分イコライザ236およびFIR246に対して使用されてもよい。異なるタイプの適応成分もまた、使用されてもよい。1つのアルゴリズムは、最小平均平方誤差(MMSE)であり、これは、データスライサ入力における信号対ノイズ比(SNR)性能を最適化する。別のアルゴリズムは、ゼロ強制アルゴリズム(ZF)であり、これは、ノイズから独立して、シンボル間干渉(ISI)を除去する。これらのアルゴリズムの組み合わせは、ノイズおよびチャネル損失に依存する、システム性能の最適化のために使用されることができる。
【0049】
図2Bの実施例では、MMSEは、RFIキャンセラ240を適応させるために使用され、ZFは、ベースバンド受信機230を適応させるために使用される。ベースバンド受信器230およびEMIキャンセラ240が、同一のアルゴリズムを使用する場合、それらは、フィルタ係数を最適化するとき、相互に競合し得る。一方に対してMMSEを使用し、他方に対してZFを使用することは、競合を有意に低減させる、または排除する。したがって、システム性能は、厳しいRFI環境内で維持され得る。
【0050】
図6は、EMIキャンセルの動作を図示する。
図6は、経時的に、種々の信号の3つのプロット610、612、614を示す。本実施例では、信号は、4レベルの信号である。プロット610は、スライサ237の入力においてサンプリングされた信号を示す。信号は、4つの信号レベルの周囲に集中している。適切に等化されるとき、入力信号は、破線によって示される閾値611に対して、入力信号を比較すると、スライサ237によって、4つのレベルのうちの1つに適切に割り当てられ得る。第2のプロット612は、その中に結合されるEMIノイズを示す。本ノイズは、良好な信号を伴って、その中に結合されること以外に、それ自体では直接観測可能ではなく、参照のみのためにここに示されていることに留意されたい。第3のプロット614は、EMIキャンセラ240の出力であり、これは、EMIキャンセル信号である。
【0051】
2つのEMIバースト621、625が、存在する。第1のバースト621は、キャンセルされない一方、第2のバースト625は、キャンセルされる。キャンセルを伴わない場合、スライサへの入力610は、バースト621のための持続時間にわたって破損される。キャンセルを伴う場合、EMIバーストが、開始および終了するとき、フィルタを検出し、それを適応させるために、ある有限時間を要するため、破損は、バーストの開始626および終了627における短い周期にわたってのみ生じる。
【0052】
信号が、前方誤差補正(FEC)コードで保護される場合、バーストの開始626および終了627における破損は、補正され得る。FEC239は、限定された持続時間にわたってのみ、誤差を補正し得ることに留意されたい。したがって、FECのバースト保護能力およびEMIキャンセラ240の適応時間は、FECバースト保護が、EMIキャンセラの適応時間よりも長いように調和される。
【0053】
プロット614に示されるように、EMIキャンセラ240の出力は、システム内で容易に観察可能な信号である。本信号は、EMIの存在に関するプロキシとして使用され得、所与のリンクが、過剰なEMIに暴露されているという早期アラートを与えることによって、機能上の安全性を強化するために使用され得る。本早期アラートは、システムに、可能性として考えられる失敗を補償する(例えば、代替センサまたは他のコンポーネントに切り替える、システムを安全な状態にする等)ための時間を与えるであろう。他方、システムは、リンクが、場合によって、ある程度のEMIに暴露されるであろうため、間違ったアラートを作動するべきではない。
【0054】
図2Cは、受信機チップに安全機能性を追加している。本実施例では、安全性回路網250は、下記にさらに詳細に説明されるように、状態機械を実装するが、他のアプローチもまた、使用されてもよい。EMI検出信号256(例えば、下記の表2では、変数rfi_active)が、安全性回路網250への入力として提供される。監視回路網252は、閾値に対して比較することによって、EMIキャンセル信号245をEMI検出信号256に変換する。EMIキャンセル信号245が、閾値を上回る場合、EMI検出信号256が、設定される。状態機械250はまた、SNR259を入力(例えば、下記の表2では、変数good_SNRおよびlow_SNR)として取り込む。SNRは、誤差248の2乗から算出され、対応する変数は、閾値によって判定され得る。回路網258は、イコライザ236の適応を制御するために使用され、例えば、安全性回路網250からの制御信号257に基づいて、適応をオンまたはオフにする。
【0055】
図7は、状態機械250の状態図を示す。状態図は、以下の安全性機能を実装する。
・EMIが存在するとき、訓練しないようにイコライザ236内の適応型フィルタを一時的に停止し、したがって、ノイズの多い信号上で訓練しない。これは、ノイズの多いデータ上で適応させるときに生じる、SNRの劣化を低減させる。
・アラート(
図2Cでは「アラート」出力)を送信し、EMIが、EMIキャンセラ240が補償し得るものの限界を超過し得るという早期警告を与える。
・十分な程度までキャンセルされ得ないEMIノイズが、過剰な時間量にわたって存在し続ける場合、リンク(
図2Cでは、「drop_link」出力)を無効にし、誤ったデータの伝搬を防止する。
【0056】
図7の状態図は、表1に列挙される状態を使用する。
【表1】
【0057】
状態遷移は、表2に列挙および定義される変数によって支配される。
【表2】
【0058】
図7は、以下の通りに解釈される。各状態の内側の本文は、その状態に対して講じられるアクションを示す。NORMAL状態では、pauseは、0(偽)に設定され、retrainは、0に設定される、等である。PAUSE状態では、timer1、2、3が開始され、pauseが、1に設定され、retrainが、0に設定される、等である。状態遷移は、示される変数の組み合わせによってトリガされる。例えば、状態は、~good_SNR|rfi_activeに応じて、NORMALからPAUSEに遷移し、これは、(good_SNR=0 OR rfi_active=1)である。「|」は、ORを意味し、「*」は、ANDを意味し、「~」は、NOTを意味する。
【0059】
EMIを伴わない正常な動作では、状態機械は、NORMAL状態にある。いったんEMIアクティビティが、検出される(rfi_active=1)、または良好なSNRが、喪失される(good_SNR=0)と、状態機械は、PAUSE状態に移行する。ここでは、イコライザの適応は、ノイズの多いデータ上での訓練を防止するために一時停止される。
図2Cでは、これは、信号257を適応制御装置258に送信することによって達成され、これは、次いで、イコライザ236の適応をオフにする。あるtimer2の時間の後、不良SNRおよびEMIアクティビティが、もはや存在しない場合、状態機械は、NORMAL状態に戻るように進行する。そうでなければ、timer1が終了し、EMIアクティビティが、もはや存在しない場合、状態機械は、TRAIN状態に移行する。そうでなければ、timer3が、終了し、SNRが、低い場合、状態機械は、DROP状態に移行する。
【0060】
TRAIN状態では、EMIノイズは、存在するべきではなく、SNRが、良好ではないため、イコライザは、強制的に適応させられる。SNRが、本状態において低い場合、早期警告(アラート)が、送信されるであろう。EMIアクティビティが見られる場合、状態機械は、PAUSE状態に戻って移行する。そうでなければ、timer4が、終了し、SNRが、少なくとも低くない場合、状態機械は、NORMAL状態に移行する。そうでなければ、timer3が、終了した場合、状態機械はDROP状態に移行する。
【0061】
DROP状態では、リンクが、遮断され、誤ったデータが受信されないように防止する。
【0062】
安全性機能が、有限状態機械以外の技法を使用して実装され得ることに留意されたい。安全性機能はまた、EMIキャンセルから独立して実装されてもよい。その場合では、EMIを監視するために使用される回路網は、コンポーネント241-246、またはそれらのコンポーネントの単純化されたバージョンを含み得る。
図2Cでは、241-246に示される、回路網の多くは、EMIキャンセルおよび監視の両方のために使用される。
【0063】
詳細な説明は、多くの詳細を含有するが、これらは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、単に、異なる実施例を例証するものとして解釈されるべきである。本開示の範囲が、上記に詳細に議論されない他の実施形態を含むことを理解されたい。当業者に明白であろう、種々の他の修正、変更、および変形例が、添付の請求項において定義されるような精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される方法および装置の配列、動作、および詳細において行われてもよい。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項およびそれらの法的同等物によって判定されるべきである。
【国際調査報告】