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特表2024-503576実質的に等原子のFECO合金冷間圧延ストリップ又はシートの製造方法、実質的に等原子のFECO合金冷間圧延ストリップ又はシート、及びこれらから切り出された磁性部品
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  • 特表-実質的に等原子のFECO合金冷間圧延ストリップ又はシートの製造方法、実質的に等原子のFECO合金冷間圧延ストリップ又はシート、及びこれらから切り出された磁性部品 図1
  • 特表-実質的に等原子のFECO合金冷間圧延ストリップ又はシートの製造方法、実質的に等原子のFECO合金冷間圧延ストリップ又はシート、及びこれらから切り出された磁性部品 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】実質的に等原子のFECO合金冷間圧延ストリップ又はシートの製造方法、実質的に等原子のFECO合金冷間圧延ストリップ又はシート、及びこれらから切り出された磁性部品
(51)【国際特許分類】
   C22F 1/16 20060101AFI20240119BHJP
   C22C 30/02 20060101ALI20240119BHJP
   C22F 1/10 20060101ALI20240119BHJP
   C22C 19/07 20060101ALI20240119BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20240119BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20240119BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240119BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240119BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20240119BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240119BHJP
【FI】
C22F1/16 Z
C22C30/02
C22F1/10 E
C22C19/07 C
C21D6/00 C
C21D9/00 S
C22C38/00 303S
H01F41/02 Z
H01F1/147
C22F1/00 623
C22F1/00 622
C22F1/00 660C
C22F1/00 694A
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535033
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 IB2020061694
(87)【国際公開番号】W WO2022123297
(87)【国際公開日】2022-06-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512072614
【氏名又は名称】アペラム
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー・ヴェケルレ
(72)【発明者】
【氏名】レミ・バトネ
【テーマコード(参考)】
4K042
5E041
【Fターム(参考)】
4K042AA25
4K042BA12
4K042CA02
4K042CA03
4K042CA04
4K042CA05
4K042CA06
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA10
4K042CA12
4K042CA13
4K042CA14
4K042DA03
4K042DC02
4K042DC03
4K042DC04
4K042DE05
5E041AA05
5E041CA01
(57)【要約】
本発明は、実質的に等原子のFeCo合金冷間圧延ストリップ又はシート、及びこれらから切り出された磁性部品、並びにFeCo合金冷間圧延ストリップ又はシートを製造するための方法に関する。厚みは1.5~2.5mmで、以下の組成:47.0%≦Co≦51.0%;微量≦V+W≦3.0%;微量≦Ta+Zr≦0.5%;微量≦Nb≦0.5%;微量≦B≦0.05%;微量≦Si≦3.0%;微量≦Cr≦3.0%;微量≦Ni≦5.0%;微量≦Mn≦2.0%;微量≦O≦0.03%;微量≦N≦0.03%;微量≦S≦0.005%;微量≦P≦0.015;微量≦Mo≦0.3%;微量≦Cu≦0.5%;微量≦Al≦0.01%;微量≦Ti≦0.01%;微量≦Ca+Mg≦0.05%;微量≦希土類元素≦500ppm;鉄及び不純物である残部を有する、完全に再結晶した熱間圧延シート又はストリップが調製される。第1の冷間圧延工程は、70~90%の圧下率で実施され、ストリップ又はシートを厚み≦1mmにするために実施される。中間焼鈍は、走行中に実施され、ストリップ又はシートの部分再結晶をもたらし、速度(V)で走行し、有効長さ(Lu)の炉の有効ゾーンでの温度がTrc~900℃であり、ストリップ又はシートは、26℃.分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃.分であるような温度(T)に15秒~5分間その中に留まる。ストリップ又はシートは、少なくとも600℃/時で冷却される。焼鈍されたストリップ又はシートを冷間圧延する第2の工程は、60~80%の圧下率で、ストリップ又はシートを0.05~0.25mmの厚みにするために実施される。冷間圧延されたストリップ又はシートの最終焼鈍(Rf)は、完全な再結晶を達成するために実施され、続いて、100~500℃/時で冷却が実施される。本方法で製造されたストリップ又はシートから得られる磁気コア等の磁気部品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に等原子のFeCo合金の冷間圧延ストリップ又はシートの製造方法であって、
- 厚み(eHR)が1.5~2.5mmに含まれる熱間圧延シート又はストリップを調製することであり、その組成が、質量百分率で、以下:
* 47.0%≦Co≦51.0%、優先的には47.0%≦Co≦49.5%;
* 微量≦V+W≦3.0%;優先的には0.5%≦V+W≦2.5%;
* 微量≦Ta+Zr≦0.5%;
* 微量≦Nb≦0.5%、優先的には微量≦Nb≦0.1%;
* 微量≦B≦0.05%、優先的には微量≦B≦0.005%;
* 微量≦Si≦3.0%;
* 微量≦Cr≦3.0%;
* 微量≦Ni≦5.0%;優先的には微量≦Ni≦0.1%;
* 微量≦Mn≦2.0%;優先的には微量≦Mn≦0.1%;
* 微量≦C≦0.02%;優先的には微量≦C≦0.01%;
* 微量≦O≦0.03%;優先的には微量≦O≦0.01%;
* 微量≦N≦0.03%;優先的には微量≦N≦0.01%;
* 微量≦S≦0.005%;優先的には微量≦S≦0.002%;
* 微量≦P≦0.015;優先的には微量≦P≦0.007%;
* 微量≦Mo≦0.3%;優先的には微量≦Mo≦0.1%;
* 微量≦Cu≦0.5%;優先的には微量≦Cu≦0.1%;
* 微量≦Al≦0.01%;優先的には微量≦Al≦0.002%;
* 微量≦Ti≦0.01%;優先的には微量≦Ti≦0.002%;
* 微量≦Ca+Mg≦0.05%;優先的には微量≦Ca+Mg≦0.001%;
* 微量≦希土類元素≦500ppm;
* 鉄及び溶解することで発生する不純物である残部;
* 再結晶開始温度(Trc)及び100%再結晶した微細構造を有する前記ストリップ又はシート
からなる、熱間圧延シート又はストリップを調製することと、
- 次に、ストリップ又はシートの第1の冷間圧延工程(LAF1)を、1回又は複数のパスで70~90%、優先的には65~75%の全体圧下率(TR1)で実施して、ストリップ又はシートの厚み(e1)を1mm以下、優先的には0.6mm以下にすることと、
- 次に、ストリップ又はシートを焼鈍炉に通しながら中間焼鈍(R1)を実施して、ストリップ又はシートの部分再結晶をもたらすことであり、前記ストリップ又はシートが速度(V)で前記焼鈍炉に通され、部分再結晶化度が10~50%、優先的には15~40%、更に良好には15~30%であり、有効長さ(Lu)を有する炉の有効ゾーンにおけるストリップ又はシートの温度が、Trc~900℃、優先的には700~880℃に含まれ、ストリップ又はシートが有効ゾーン(Lu)において、26℃ 分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃ 分、優先的には50℃ 分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃ 分であるような温度(T)に15秒~5分間留まり、T及びTrcが℃単位、Luがm単位、Vがm/分単位で表され、ストリップ又はシートが炉の出口において少なくとも600℃/時、優先的には少なくとも1000℃/時、より優先的には少なくとも2000℃/時の速度で200℃以下の温度まで冷却される、ストリップ又はシートの部分再結晶をもたらすことと、
- 次に、焼鈍したストリップ又はシートの第2の冷間圧延工程(LAF2)を、1回又は複数のパスで60~80%、優先的には65~75%の全体圧下率で実施して、冷間圧延したストリップ又はシートの厚み(e2)を0.05~0.25mmにすることと、
- 次に、冷間圧延ストリップ若しくはシート、又はストリップから以前に切り出された部分を、中性若しくは還元性雰囲気中、又は真空中で、750~900℃、優先的には800~900℃、更に良好には850~880℃の温度にて、少なくとも30分間、優先的には少なくとも1時間、静止最終焼鈍(Rf)に供して、ストリップ若しくはシート又は切り出された部分の完全な再結晶化を得、続いて、100~500℃/時、優先的には200~300℃/時の速度で冷却することと
を特徴とする、方法。
【請求項2】
(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧0.8%、優先的には(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧1.0%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
微量≦Si≦0.1%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
微量≦Cr≦0.1%であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の冷間圧延工程(LAF1)の前に、少なくとも1つの追加の冷間圧延サイクル(LAFi)及び中間焼鈍(Ri)が実施されて、冷間圧延ストリップ又はシートを熱間圧延後の厚み(eHR)と第1の冷間圧延(LAF1)の入口厚みとの間の含まれる厚みとし、各追加焼鈍(Ri)中に、Trcと900℃との間に位置する炉の有効ゾーンにおけるストリップの通過時間が、ストリップ又はシートの全再結晶化をもたらし、中間焼鈍(Ri)が、ストリップの温度がTrcと900℃との間にある炉の長さLuのゾーンにおいて、10秒~10分、優先的には15秒~5分、更に良好には30秒と5分の間の通過時間を有し、続いて、炉の出口において、少なくとも600℃/時、優先的には少なくとも1000℃/時、より優先的には少なくとも2000℃/時の速度で、200℃以下の温度までストリップ又はシートが冷却され、ストリップ又はシートが、前記追加焼鈍(Ri)の最後の後に100%再結晶した微細構造を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
熱間圧延後、第1の冷間圧延(LAF1)の前に、800~1000℃に含まれる温度から、少なくとも600℃/秒、優先的には少なくとも1000℃/秒、より優先的には少なくとも2000℃/秒の速度で、熱間圧延ストリップ又はシートを室温まで冷却することにより、熱間圧延ストリップ又はシートが超急冷されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記超急冷が、熱間圧延の後に、中間的な再加熱なしに直接実施されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
焼鈍炉の雰囲気が、還元性雰囲気、優先的には純水素であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの追加の中間焼鈍が、焼鈍炉におけるストリップ又はシートの連続焼鈍であり、炉の有効ゾーンにおけるストリップ又はシートの温度が、Trc~900℃の間であり、ストリップが有効ゾーンに15秒~5分間留まること、並びに炉の出口におけるストリップ又はシートが、少なくとも600℃/時、優先的には少なくとも1000℃/時、より優先的には少なくとも2000℃/時の速度で、200℃以下の温度まで冷却されること、並びに少なくとも1つの追加の冷間圧延(LAFi)が、1回又は複数のパスで実行され、全体圧下率が少なくとも40%となることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
最終静止焼鈍(Rf)の後、金属が少なくとも700℃、最大900℃に達するように、ストリップ又はシートの追加の連続焼鈍が少なくとも10秒、最大1時間、優先的には10秒~20分実施され、続いて、少なくとも1000℃/時の速度で冷却することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
実質的に等原子のFeCo合金であって、
- その組成が、質量百分率で、
* 47.0%≦Co≦51.0%、優先的には47.0%≦Co≦49.5%;
* 微量≦V+W≦3.0%;優先的には0.5%≦V+W≦2.5%;
* 微量≦Ta+Zr≦0.5%;
* 微量≦Nb≦0.5%、優先的には微量≦Nb≦0.1%;
* 微量≦B≦0.05%、優先的には微量≦B≦0.005%;
* 微量≦Si≦3.0%;
* 微量≦Cr≦3.0%;
* 微量≦Ni≦5.0%;優先的には微量≦Ni≦0.1%;
* 微量≦Mn≦2.0%、優先的には微量≦Mn≦0.1%;
* 微量≦C≦0.02%;優先的には微量≦C≦0.01%;
* 微量≦O≦0.03%;優先的には微量≦O≦0.01%;
* 微量≦N≦0.03%;優先的には微量≦N≦0.01%;
* 微量≦S≦0.005%;優先的には微量≦S≦0.002%;
* 微量≦P≦0.015;優先的には微量≦P≦0.007%;
* 微量≦Mo≦0.3%;優先的には微量≦Mo≦0.1%;
* 微量≦Cu≦0.5%;優先的には微量≦Cu≦0.1%;
* 微量≦Al≦0.01%;優先的には微量≦Al≦0.002%;
* 微量≦Ti≦0.01%;優先的には微量≦Ti≦0.002%;
* 微量≦Ca+Mg≦0.05%;優先的には微量≦Ca+Mg≦0.001%;
* 微量≦希土類元素≦500ppm;
* 鉄及び溶解することで発生する不純物である残部
からなること、
- 合金の微細構造が、完全に再結晶されていること、及び
- 前記合金のテクスチャが、以下:
* 表面積又は体積を基準として、成分{001}<110>の8~20%、優先的には9~20%が、最大15°の配向不良であること;
* 表面積又は体積を基準として、成分{111}<112>の8~25%、優先的には9~20%が、最大15°の配向不良であること;
* 表面積又は体積を基準として、成分{111}<110>の5~15%、優先的には6~11%が、最大15°の配向不良であること;
* 材料の残りが、最大15°の配向不良である他のテクスチャ成分からなり、それぞれが面積又は体積を基準として最大15%に相当し、前記他のテクスチャ成分と成分{001}<110>、{111}<112>及び{111}<110>のいずれかとの重なりが、面積又は体積を基準として10%を超えないこと
を特徴とする、合金。
【請求項12】
(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧0.8%、優先的には(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧1.0%であることを特徴とする、請求項11に記載の合金。
【請求項13】
微量≦Si≦0.1%であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の合金。
【請求項14】
微量≦Cr≦0.1%であることを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の合金。
【請求項15】
実質的に等原子のFeCo合金から切り出された磁性部品であって、請求項11から14のいずれか一項に記載の合金のストリップ又はシートの切り出しから生じることを特徴とする、磁性部品。
【請求項16】
実質的に等原子のFeCo合金から作られた磁気コアであって、請求項15に記載の切り出された磁性部品から作られたことを特徴とする、磁気コア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料の冷間圧延ストリップ及びシート、並びにそのようなストリップ及びシートから切り出された部品の分野に関し、より詳細には、実質的に等原子のFeCo合金で作られたストリップ及びシートに関する。
【背景技術】
【0002】
実質的に等原子の(したがって、実質的に等しい質量及び原子量のFe及びCoを含有する)軟磁性FeCo合金から作られた磁性核は、多くの場合に約2%のVが添加され、電気工学におけるエネルギー変換の際に高い電力対質量又は電力対体積比が得られることが長い間知られてきた。熱放散の原因となる磁気損失をできるだけ減らすことを目的とする場合、先行のストリップ又はシートから切り出されたコアを形成するストリップの厚みを減らす必要があることが知られている。
【0003】
工業的慣例では、厚み約0.1mmで等原子FeCoの冷間圧延ストリップ及びシートを製造するのが一般的である。しかし、これらの材料に関連する磁気損失は、まだ十分に低減されていないと考えられている。新しい原料を使用し、インゴットの形態で金属を製造する際に1回以上の再溶解を行うことを通じ、残留元素及び介在物の点で高い純度のストリップ及びシートを製造することによって、更なる低減を達成することができる。このようにして、2Tの最大正弦波誘導(sinusoidal induction)に対して、0.1mm厚のストリップにおいて400Hzで25W/kg程度の低い磁気損失を得ることができる。しかし、このような製造方法は、通常の等原子FeCo合金と比較して、少なくとも1回の追加の再溶解が必要であるため、コストがかかる。
【0004】
例として、Table 1(表1)に要約した質量百分率での以下の組成を有する基準金属の試料において、以下の結果が観察される。言及されていない元素は、せいぜい溶解から生じた不純物(微量)として存在するだけであり、冶金的な影響はない。
【0005】
【表1】
【0006】
他の鋳物とは異なり、Ref1鋳物では、再溶解が実施されず、真空誘導溶解(VIM)のみが実施されたため、Fe-Co合金の通常の介在物分布が保持され、特にバナジウム、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムの酸化物等、並びにニオブ及びアルミニウムの窒化物、炭化ケイ素も保持されていた。試料の組成に限定したTable 1(表1)は、金属中に溶解している元素の一部を使用して、このような介在物の豊富さを説明することはできない。
【0007】
鋳物Ref2~Ref5の再溶解は、Nbを添加することなく、VIMによって最初に製造された鋳物に対して、真空アーク再溶解(VAR)によって実施されたが、その主な効果は、VIMに由来する金属マトリックスの安定析出物(酸化物、炭化物、窒化物)のかなりの部分を除去又は断片化し、更に真空を適用することでマトリックス中の非析出物不純物の一部(S、N、O)を直接除去するものだった。
【0008】
基準鋳物は、ブルーミング及びストリップミル(熱間圧延)によって、厚み2mmのストリップに熱間圧延され、次に、超急冷(hyper-quench)され、単一冷間圧延により厚み0.1mmにされた。
【0009】
このような最終状態の厚みにおいて、「回転機械」(ワッシャ)又は「変圧器」(テープ巻き付けトロイダルコア)のいずれの用途に関心があるかに応じて、36(外径)×30.5mm(内径)若しくは36(外径)×25mm(内径)という形式のワッシャ、又は30×20mm(それぞれ外径と内径)×10mm(トロイダルコア高さ、ストリップの幅に対応)という形式のテープ巻き付けトロイダルコアを製造することができる。
【0010】
すべての場合において、試験材料は、試料Ref1、Ref2、Ref3については850℃にて、試料Ref4及びRef5については880℃にて、純水素下で3時間熱処理された。熱処理後の冷却は、磁気性能を最適化するために、いずれの場合も250℃/時の速度で実施された。前記冷却速度で、(磁気特性を大きく左右する)第1の結晶磁気異方性定数K1が取り消される。
【0011】
テープ巻き付けトロイダルコアは単相又は三相変圧器磁心用途を代表するものであり、ワッシャはより詳細には高速回転する回転アクチュエータ用途を代表するものである。
【0012】
保磁力場Hc、2T及び400Hzでの損失、並びにワッシャとトロイダルコアとの間で観察された損失の増加の測定結果をTable 2(表2)にまとめた。
【0013】
【表2】
【0014】
再溶解の使用により、トロイダルコアの磁気損失が約30%減少することがわかり(巻き付けテープトロイダルコアのRef1とRef2又はRef3との比較)、これは多くの用途にとって非常に重要なことである。
【0015】
測定が圧延方向DLに沿ったトロイダルコアに対して実施されるかどうか、又は測定がワッシャに対して測定が実施される、したがってシートの全方向を使用して実施されるかどうかによって、磁気損失がトロイダルコアについて5~10%高くなることもわかる。上記のことは、圧延面における性能にある特定の異方性があることを示している。
【0016】
それに対して、最終焼鈍温度を850℃から880℃に上げると、一方ではRef2とRef4との比較、他方ではRef3とRef5との比較からわかるように、トロイダルコアとワッシャとの両方で磁気損失のレベルが著しく低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、冶金操作が連続する場合のように原料の選択により、コストのかかる製造を必要とせずに、400Hzでの2Tの誘導下で典型的に26.5W/kg以下の非常に低い磁気損失を得る手段を、等原子FeCo合金のストリップ又はシート及びそのようなストリップ又はシートから切り出した製品の製造者に提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的のために、本発明の主題は、実質的に等原子のFeCo合金の冷間圧延ストリップ又はシートの製造方法であって、
- 厚み(eHR)が1.5~2.5mmに含まれる熱間圧延シート又はストリップを調製することであり、その組成が、質量百分率で、以下:
* 47.0%≦Co≦51.0%、優先的には47.0%≦Co≦49.5%;
* 微量≦V+W≦3.0%;優先的には0.5%≦V+W≦2.5%;
* 微量≦Ta+Zr≦0.5%;
* 微量≦Nb≦0.5%、優先的には微量≦Nb≦0.1%;
* 微量≦B≦0.05%、優先的には微量≦B≦0.005%;
* 微量≦Si≦3.0%;
* 微量≦Cr≦3.0%;
* 微量≦Ni≦5.0%;優先的には微量≦Ni≦0.1%;
* 微量≦Mn≦2.0%、優先的には微量≦Mn≦0.1%;
* 微量≦C≦0.02%;優先的には微量≦C≦0.01%;
* 微量≦O≦0.03%;優先的には微量≦O≦0.01%;
* 微量≦N≦0.03%;優先的には微量≦N≦0.01%;
* 微量≦S≦0.005%;優先的には微量≦S≦0.002%;
* 微量≦P≦0.015;優先的には微量≦P≦0.007%;
* 微量≦Mo≦0.3%;優先的には微量≦Mo≦0.1%;
* 微量≦Cu≦0.5%;優先的には微量≦Cu≦0.1%;
* 微量≦Al≦0.01%;優先的には微量≦Al≦0.002%;
* 微量≦Ti≦0.01%;優先的には微量≦Ti≦0.002%;
* 微量≦Ca+Mg≦0.05%;優先的には微量≦Ca+Mg≦0.001%;
* 微量≦希土類元素≦500ppm;
* 鉄及び溶解することで発生する不純物である残部;
* 再結晶開始温度(Trc)及び100%再結晶した微細構造を有する前記ストリップ又はシート
からなる、熱間圧延シート又はストリップを調製することと、
- 次に、ストリップ又はシートの第1の冷間圧延工程(LAF1)を、1回又は複数のパスで70~90%、優先的には65~75%の全体圧下率(TR1)で実施して、ストリップ又はシートの厚み(e1)wp1mm以下、優先的には0.6mm以下にすることと、
- 次に、ストリップ又はシートが焼鈍炉に通しながら中間焼鈍(R1)を実施して、ストリップ又はシートの部分再結晶をもたらすことであり、前記ストリップ又はシートが速度(V)で前記焼鈍炉に通され、部分再結晶化度が10~50%、優先的には15~40%、更に良好には15~30%であり、有効長さ(Lu)を有する炉の有効ゾーンにおけるストリップ又はシートの温度が、Trc~900℃、優先的には700~880℃に含まれ、ストリップ又はシートが有効ゾーン(Lu)において、26℃ 分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃ 分、優先的には50℃ 分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃ 分であるような温度(T)に15秒~5分間留まり、T及びTrcが℃単位、Luがm単位、Vがm/分単位で表され、ストリップ又はシートは炉の出口において少なくとも600℃/時、優先的には少なくとも1000℃/時、より優先的には少なくとも2000℃/時の速度で200℃以下の温度まで冷却される、ストリップ又はシートの部分再結晶をもたらすことと、
- 次に、焼鈍したストリップ又はシートの第2の冷間圧延工程(LAF2)を、1回又は複数のパスで60~80%、優先的には65~75%の全体圧下率で実施して、冷間圧延したストリップ又はシートの厚み(e2)を0.05~0.25mmにすることと、
- 次に、冷間圧延ストリップ若しくはシート、又はストリップから以前に切り出された部分を、中性若しくは還元性雰囲気中、又は真空中で、750~900℃、優先的には800~900℃、更に良好には850~880℃の温度にて、少なくとも30分間、優先的には少なくとも1時間、静止最終焼鈍(Rf)に供して、ストリップ若しくはシート又は切り出された部分の完全な再結晶化を得、続いて、100~500℃/時、優先的には200~300℃/時の速度で冷却することと
を特徴とする、方法である。
【0019】
本発明の変形例によれば、(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧0.8%、優先的には(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧1.0%である。
【0020】
本発明の変形例によれば、微量≦Si≦0.1%である。
【0021】
本発明の変形例によれば、微量≦Cr≦0.1%である。
【0022】
本発明の変形例によれば、前記第1の冷間圧延工程(LAF1)の前に、少なくとも1つの追加の冷間圧延サイクル(LAFi)+中間焼鈍(Ri)が実施され、冷間圧延ストリップ又はシートが熱間圧延後の厚み(eHR)と第1の冷間圧延(LAF1)の入口厚みとの間の厚みに含まれ、各追加焼鈍(Ri)中に、Trcと900℃との間に位置する炉の有効ゾーンにおけるストリップの通過時間が、ストリップ又はシートの全再結晶化をもたらし、中間焼鈍(Ri)は、ストリップの温度がTrcと900℃との間にある炉の長さLuのゾーンにおいて、10秒~10分、優先的には15秒~5分、更に良好には30秒と5分の間の通過時間を有し、次いで、炉の出口において、少なくとも600℃/時、優先的には少なくとも1000℃/時、より優先的には少なくとも2000℃/時の速度で、200℃以下の温度までストリップ又はシートが冷却され、ストリップ又はシートは、前記追加焼鈍(Ri)の最後の後に100%再結晶した微細構造を有する。
【0023】
熱間圧延後、第1の冷間圧延(LAF1)の前に、800~1000℃の間に含まれる温度から、少なくとも600℃/秒、優先的には少なくとも1000℃/秒、より優先的には少なくとも2000℃/秒の速度で、熱間圧延ストリップ又はシートを室温まで冷却することにより、熱間圧延ストリップ又はシートは超急冷することができる。
【0024】
前記超急冷は、熱間圧延の後、いかなる中間的な再加熱なしに直接実施されてよい。
【0025】
焼鈍炉の雰囲気は、還元性雰囲気、優先的には純水素であってよい。
【0026】
少なくとも1つの追加の中間焼鈍は、焼鈍炉におけるストリップ又はシートの連続焼鈍であってよく、炉の有効ゾーンにおけるストリップ又はシートの温度は、Trc~900℃の間であり、ストリップは有効ゾーンに15秒~5分間留まり、炉の出口におけるストリップ又はシートは、少なくとも600℃/時、優先的には少なくとも1000℃/時、より優先的には少なくとも2000℃/時の速度で、200℃以下の温度まで冷却され、少なくとも1つの追加の冷間圧延(LAFi)は、1回又は複数のパスで実行され、全体圧下率は少なくとも40%となる。
【0027】
最終静止焼鈍(Rf)の後、金属が少なくとも700℃、最大900℃に達するように、ストリップ又はシートの追加の連続焼鈍が少なくとも10秒、最大1時間、優先的には10秒~20分実施されてもよく、続いて、少なくとも1000℃/時の速度で冷却してもよい。
【0028】
本発明は更に、実質的に等原子のFeCo合金であって、
- その組成が、質量百分率で、
* 47.0%≦Co≦51.0%、優先的には47.0%≦Co≦49.5%;
* 微量≦V+W≦3.0%;優先的には0.5%≦V+W≦2.5%;
* 微量≦Ta+Zr≦0.5%;
* 微量≦Nb≦0.5%、優先的には微量≦Nb≦0.1%;
* 微量≦B≦0.05%、優先的には微量≦B≦0.005%;
* 微量≦Si≦3.0%;
* 微量≦Cr≦3.0%;
* 微量≦Ni≦5.0%;優先的には微量≦Ni≦0.1%;
* 微量≦Mn≦2.0%、優先的には微量≦Mn≦0.1%;
* 微量≦C≦0.02%;優先的には微量≦C≦0.01%;
* 微量≦O≦0.03%;優先的には微量≦O≦0.01%;
* 微量≦N≦0.03%;優先的には微量≦N≦0.01%;
* 微量≦S≦0.005%;優先的には微量≦S≦0.002%;
* 微量≦P≦0.015;優先的には微量≦P≦0.007%;
* 微量≦Mo≦0.3%;優先的には微量≦Mo≦0.1%;
* 微量≦Cu≦0.5%;優先的には微量≦Cu≦0.1%;
* 微量≦Al≦0.01%;優先的には微量≦Al≦0.002%;
* 微量≦Ti≦0.01%;優先的には微量≦Ti≦0.002%;
* 微量≦Ca+Mg≦0.05%;優先的には微量≦Ca+Mg≦0.001%;
* 微量≦希土類元素≦500ppm;
* 鉄及び溶解することで発生する不純物である残部;
からなること、
- 合金の微細構造が、完全に再結晶されていること、及び
- 前記合金のテクスチャが、以下:
* 表面積又は体積を基準として、成分{001}<110>の8~20%、優先的には9~20%が、最大15°の配向不良であること;
* 表面積又は体積を基準として、成分{111}<112>cの8~25%、優先的には9~20%が、最大15°の配向不良であること;
* 表面積又は体積を基準として、成分{111}<110>の5~15%、優先的には6~11%が、最大15°の配向不良であること;
* 材料の残りが、最大15°の配合不良である他のテクスチャ成分からなり、それぞれが面積又は体積を基準として最大15%に相当し、前記他のテクスチャ成分と成分{001}<110>、{111}<112>及び{111}<110>のいずれかとの重なりが、面積又は体積を基準として10%を超えないこと
を特徴とするFeCo合金に関する。
【0029】
本発明の変形例によれば、(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧0.8%、優先的には(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧1.0%である。
【0030】
本発明の変形例によれば、微量≦Si≦0.1%である。
【0031】
本発明の変形例によれば、微量≦Cr≦0.1%である。
【0032】
本発明の更なる主題は、実質的に等原子のFeCo合金から切り出された磁性部品であって、上記のタイプの合金から作られたストリップ又はシートの切り出しから生じることを特徴とする磁性部品である。
【0033】
本発明の更なる主題は、実質的に等原子のFeCo合金から作られた磁気コアであって、上記のタイプの切り出された磁性部品から作られたことを特徴とする磁気コアである。
【0034】
理解されたように、本発明は、とりわけ、少なくとも2つの工程、すなわち少なくとも2つの冷間圧延パス又は少なくとも2つのグループの連続的冷間圧延パスにおける冷間圧延を含む一連のプロセス工程によって、ストリップ又はシートを得ることに基づいており、これらの2つのパス又はパスグループは、LAF1及びLAF2と呼ばれることになるが、2つのパス又は2つのパスグループ間で連続的に実行される部分再結晶のみの特定の中間焼鈍R1によって分離されている。2つのパス/パスグループの直後に、最終静止焼鈍がようやく実施され、後者により完全に再結晶したストリップが得られる。このような工程は、明確に定義された組成の合金に適用され、処理条件により、冷間圧延及び焼鈍ストリップ又はシート内部に、3つの所与のテクスチャ成分及び所定の比率に従った特定のテクスチャリングが創出される。
【0035】
また、部分再結晶のみをもたらす焼鈍によって分けられる2回の冷間圧延操作のシーケンスは、熱間圧延操作後及び以後の任意の処理がある場合はその処理によって、100%再結晶したストリップから開始しなければならない。
【0036】
このようなすべての特性は、ストリップ又はシートの極めて低い磁気損失をもたらす。
【0037】
以下の部分では、「冷間圧延工程」及びその圧下率に言及する場合、冷間圧延工程が、即座に連続して実行される複数のパスで実施され、したがっていかなる中間焼鈍もない場合を含むこと、及びこの「冷間圧延工程」の圧下率は、複数のパスが存在する場合には工程のすべてのパスの終了時に得られる全体の比率であることを理解する必要がある。
【0038】
本発明を適用すると、驚くべきことに、期待される性能を得るために、高い化学純度及び高い包括性(inclusivity)を有する金属を用意する必要はないが、それでもなお、同等の既存製品の性能よりも更に優れた性能を得るために、可能な限り低い濃度の不純物及び介在物から始めることが望ましい。
【0039】
上記のことは、一般的な原料を使用することができ、残留元素及び種々の不純物をほとんど含有しない新原料を使用する必要は必ずしもなく、ストリップ又はシートが得られるインゴットの製造中の複数回の再溶解は省くことができることを示唆する。当然、例外的に低い磁気損失を有するストリップ又はシートを得ることが望まれる場合、そのような操作は本発明による方法から除外されることはない。しかし、上記で定義した従来の基準に従って「低い」と考えられる磁気損失を得るためには、そのような操作はもはや必要ではない。
【0040】
ある特定の合金元素を比較的限られた量で添加することもできる、実質的に等原子のFeCo合金に適用される、本発明による一連の工程の使用は、成分{001}<110>、{111}<112>、及びおそらくより少ない程度ではあるが{111}<110>が、精度限界内で、成分のそれぞれについて正確な最大の配向不良(disorientation)を伴って存在する特定のテクスチャをもたらすことが判明している。
【0041】
驚くべきことに、そのようなテクスチャは、低い磁気損失を得るために、合金中の比較的高い濃度の不純物を許容し、不純物が低いレベルであり、低い磁気損失のみを得るために等原子のFeCo合金のストリップ及びシートの製造に使用される、先行技術の方法で必要であった程度であれば、更に特に低い磁気損失をもたらす。
【0042】
本発明は、以下の添付図面を参照する以下の説明を通じてよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】℃.分/m単位の量(T-Trc)/Vの関数として、2T 400Hzの磁場下での磁気損失及び様々な試料の再結晶率をW/kg単位で示すグラフである。
図2】2.6mの有効炉長さ(Lu)についての℃.分単位の量(T-Trc).Lu/Vの関数として、2T 400Hzの磁場下での磁気損失及び様々な試料の再結晶率をW/kg単位で示すグラフである。式中では、T及びTrcは℃単位で、Luはm単位で、Vはm/分単位で表される。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、以下の組成を有する実質的に等原子のFeCo合金を論じる。すべての百分率は質量百分率である。「微量」の存在に言及する場合、当該の元素は、全く存在しないか、又は原料の単純な溶解及び液体金属の生産から生じる不純物としてのみ存在し、濃度は、使用する測定装置による元素の検出可能性の限界である場合があることを理解するべきである。上記のことは、測定装置が元素のわずかな存在を示しながら、実際の濃度がゼロである場合を含む。
【0045】
Coの濃度は47.0~51.0%、優先的には47.0~49.5%に含まれる。
【0046】
このような濃度は、約2%のVを追加で含有する、FeCo合金では、約49%のCoと約49%のFeの等原子組成に必然的に近いものである。
【0047】
二元FeCo等原子合金は、驚くべきことに、非常に高い飽和磁化値JSAT(2,35T)と非常に低い結晶磁気異方性定数K1との両方を有することが知られており、最終焼鈍後の250℃/時(最も一般的には100~500℃/時、優先的には200~300℃/時)程度の冷却速度によって相殺するか、又は少なくとも大幅に減少することが可能である。低い又はゼロの結晶磁気異方性定数でさえも、直流又は低周波交流における合金の磁気特性を大きく左右する。
【0048】
V+Wの濃度は、微量~3.0%、優先的には0.5~2.5%に含まれる。
【0049】
V及び/又はWの存在は、700℃未満の弱化の程度を低下させることを意図しており、これにより、非常に優先的には熱間成形に続く超急冷の実施を可能にし、冷間圧延を視野に入れた金属の良好な延性を維持する。2%のVはまた、Vを有さないFeCoと比較して電気抵抗率を2倍にすることをも可能にし、その結果、低周波及びとりわけ中周波における磁気損失の大幅な低減をもたらし、したがって、電気技術的用途の全範囲、典型的には、低周波数地上波用途では数十Hz、典型的には、航空用途(発信機、変圧器、平滑化インダクタンス)では数百から数千Hzにわって、特に明らかな磁気損失の低減をもたらす。Vが2%以上では、及び最終焼鈍温度Rfによっては、合金の磁気性能にとって望ましくないα+γ二相域が生じる。Vが3.0%を超えると、最終焼鈍Rfの温度にかかわらず、非磁性オーステナイトγが形成され、その後、磁気性能は等原子FeCo合金の通常用途では明らかに平凡になる。したがって、実質的に同じ効果を持つV及び/又はWの添加は、V+Wの合計が前述の3.0%の制限を超える場合には推奨されない。
【0050】
TaとZrとの濃度の合計は、微量~0.5%に含まれる。
【0051】
TaとZrとは、VとWと同様に、秩序化の速度を遅くする。この点では、0.2%のTaの添加は、2%のV及びWと同じ効果を有する。しかし、Ta及びZrは電気抵抗率に影響を与えず、したがって、V及びWの添加は、本発明が関係する合金の意図する通常の使用には好ましい。
【0052】
V及びWの、他方ではTa及びZrの、秩序化率に対するそれぞれの効果を適切に考慮するために、これら2つの元素群の効果は、優先的には、式:
(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧0.8%、優先的には(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧1.0%
に従って重み付けされるべきである。
【0053】
ただし、上記のV+W及びTa+Zrの濃度の上限を満たす必要もある。
【0054】
Nbの濃度は、微量~0.5%、優先的には微量~0.1%に含まれる。
【0055】
Nbのこの可能な添加は、熱間成形された半製品の超急冷に先立つ可能な再加熱中の脆化相の出現を防止し、したって冷間圧延操作を成功させるために興味深いものとなり得る。しかし、Nbは結晶粒成長の強力な阻害剤であり、最終的な静止焼鈍Rf中の結晶粒成長をより困難にする。そのため、Nbの濃度が高すぎると、良好な磁気特性を得ることができなくなる。更に、NbはC、N及びOと容易に合わさって炭化物、窒化物、炭窒化物、又は酸化物を形成し、これは、結晶粒の成長を遅らせること、直接的に(ブロッホ壁を捕捉することにより)又は間接的に(結晶粒径を制限することにより)磁気特性を低下させることに寄与する。
【0056】
それによって、使用する方法、再溶解を伴う又は伴わない製造、超急冷前に可変的な時間の長さの加熱を行う、又は熱間成形直後に超急冷が実施される、限定的又は非限定的な、液体金属の酸化、窒化、浸炭を伴う製造に応じて、わずか100分の数%のNb、典型的に0.10%、例えば0.04%又は0.07%のNbが添加されもよい。0.5%を超えると、所望の磁気特性を得るうえで結晶粒成長阻害効果が過剰になる。
【0057】
Bの濃度は、微量~0.05%に含まれる。
【0058】
BはNbの役割と同様の役割を有するが、そのために脆化作用もあり、その存在も適宜制限される必要がある。
【0059】
Siの濃度は微量~3.0%、ある特定の場合には微量~0.1%に含まれる。
【0060】
Crの濃度は、微量~3.0%、ある特定の場合には微量~0.1%に含まれる。
【0061】
Si及びCrは、材料の電気抵抗率を著しく増加させるその能力が知られている。しかし、等原子FeCo合金の特定の場合、そのような機能はV、W、Ta、Zrによって提供されるか、又は既に提供されていることもある。また、Cr及びSiも、Vとは異なり、秩序化率を低下させないが、そのような低下は、本発明で使用する合金にとって非常に好ましいものである。
【0062】
したがって、Cr及びSiは、非常に高い電気抵抗率が所望される場合には、それぞれ最大3.0%の比率が許容されるが、Vの添加は、これまで述べてきたように他の有益な効果を伴うので、主に電気抵抗率の増加を得るために好ましいものである。より多くのCr又はSiを添加することは、得られたFe及びCoの濃度の低下により、飽和磁気誘導を低下させ、したがって高い出力質量比を有する材料の能力を低下させる。しかし、変圧器、アクチュエータ、発電機等の電気機械のサイズは、特に航空分野では、ジュール効果による加熱及び磁気コアの磁気損失により、制限されることも覚えておく必要がある。それでも、Si及び/又はCrの添加は、磁気損失を低減させる傾向があり、したがって動作周波数及び磁気誘導を増加させる。その結果、出力質量比を増大させるか、又は飽和磁気誘導の低下による悪影響を低減することができる。したがって、磁気損失の低減が非常に重要視されるある特定用途では、Si及び/又はCrの添加は、全体として有利になり得る。
【0063】
磁気損失の低減が特に求められない用途では、Cr及びSiをそれぞれ0.1%に制限することが推奨されており、このことは、多くの場合、製造時に前記元素の意図的な添加を単にしないことに対応している。
【0064】
Niの濃度は、微量~5.0%、優先的には微量~0.1%に含まれる。
【0065】
Niは強磁性元素であるが、飽和磁化JsatについてFe及びCoに比べて関心を引くところははるかに少なく、結晶磁気異方性定数K1を低減して抵抗率を増大する利点はない。一方、Niは延性を改善させ、冷間圧延については関心を引く可能性がある。5.0%までのNiの添加は許容されるが、多くの場合、Niを添加する必要はなく、0.1%という好ましい最大含有率が、単に原料中に存在するNiに対応することが多い。加えて、Niを添加しないことは、合金のコストを抑えることに寄与する。
【0066】
Mnの濃度は、微量~2.0%、優先的には微量~0.1%に含まれる。
【0067】
Mnは、Jsatの低下を除けば、特に有利な特性も不利な特性もなく、Jsat低下の効果を相殺する利点もない。最大2.0%の添加ができるが、優先的には原料の単純な溶解から得られた濃度で十分であるため、したがって好ましい最大値は0.1%である。
【0068】
Cの濃度は、微量~0.02%、優先的には微量~0.01%に含まれる。したがって、目的は、炭化物の析出がないように保証することであり、とりわけ、材料の使用時にブロッホ壁を捕捉して磁気特性を劣化させるC原子のクラスターの形成を防止することである。
【0069】
Sの濃度は50ppm(0.005%)を超えてはならない。なぜなら、Sは、熱間変態時にMnS等の硫化物の微細な析出物を形成する傾向があり、保磁場Hc(したがってヒステリシスによる損失)を増加させ、透磁率μを低下させることによって、したがって、磁性ヨークを磁化するのに必要なアンペア回数を増加させることによって、材料の磁気特性に非常に好ましくないものになるからであり、このことは、ジュール効果による巻線の加熱が増加し、機械の効率が悪化する方向に進むものである。Sの添加に好ましい効果はない。
【0070】
Pは、硫化物と同様に、ブロッホ壁と相互作用する(捕捉する)析出物であるリン化物(例えばVのリン化物)を形成する傾向があり、したがって、Sと同様に、磁気特性を劣化させる。Pの濃度は、最大150ppm(0.015%)、及び優先的には最大70ppm(0.007%)に制限される。
【0071】
MoはVと比較して秩序化を著しく低下させない。更に、Moは比較的高価であり、磁気モーメントを持たないので、Moの添加は飽和磁化(Jsat)を低下させる一方、材料の価格を上昇させる。合金中のMoの存在は、典型的には0.3%、及び優先的には最大0.1%に制限される。
【0072】
Cuは、Moと同様に、比較的高価であり、磁気モーメントを持たず、更に、鉄分豊富なマトリックス中で銅クラスターの形成を促す傾向があり、ブロッホ壁上で析出物として作用し、したがって磁気性能Hc及びμの悪化をもたらす。Cuの存在は、原料の賢明な選択及び意図的な添加の欠如により、典型的に合金中最大0.5%、及び優先的には最大0.1%に制限される。
【0073】
N及びOは、S及びPと同様に、化学的酸化剤であるため、非磁性沈殿物を形成しやすく、ブロッホ壁と不利に相互作用し、したがって、(Hcを増加させることにより)Hcを著しく悪化させ、(μを低下させることにより)μを著しく悪化させる。マトリックス中にN及びOが多いほど、前記元素が、高温時に、Fe、Co、Mn、V、W、Ta、Zr、Nb、Ti、Ca、Mg、Al、Si、La等の酸化し得る元素に遭遇するリスクは大きくなる。これらの元素はマトリックス中に非常に多量に存在する(Fe、Co等)か、又は不可避の残留物として存在する(Ca、Mg、Ti、Al等)。原料の真空溶解(VIM)、更にはインゴット又は電極の真空再溶解(VAR)又はスラグ再溶解(ESR)にもかかわらず、金属のごく一部が、数十ppmの酸化剤、例えばO及びN等と合わせられることを完全に防止することはできない。最大で300ppmのO及び300ppmのNの存在、優先的には最大100ppmのO及び最大100ppmのNの存在が許容される。
【0074】
Si、Mn、特にAl、Ti、Ca、Mg、又は希土類元素、例えばLaは、酸化剤、例えばO、N、S、更にはCと親和性が高く、その後、磁気特性を大きく損なう種々の析出物(酸化物、窒化物、硫化物、炭化物)を形成し得る。再溶解操作(VAR、ESR)により、このような析出物の数及び大きさを大幅に低減することができるが、当初に(例えばVIM処理から得られたインゴットにおいて)酸化され得る元素が多いほど、再溶解後、したがって材料の製造における最終段階まで、より多くの析出物が残ることになる。そのため、開始時点で析出物の存在をできる限り低減することが重要である。
【0075】
そのため、目標は、最大100ppmのAl(0.01%)、優先的には最大20ppmAl(0.002%)、最大100ppmのTi(0.01%)、優先的には最大20ppmのTi(0.002%)、最大50ppmのCa+Mg、優先的には最大10ppmのCa+Mgである。希土類元素を添加する場合、最大500ppmで、目標は最も特定すると、希土類元素の添加前に化学的酸素活性が非常に低いVIMによる液浴を得ることである。
【0076】
合金の残りは、Fe及び溶解から生じた不純物からなる。
【0077】
ある特定の元素について好ましいと考えられる濃度は、他の元素について好ましいと考えられる濃度とは無関係であることが理解されるべきである。言い換えれば、本発明から逸脱することなく、1つ又は複数の元素が好ましいその範囲にある一方で、他の元素が1つの範囲を有していてもその好ましい範囲にないこともある。
【0078】
合金の組成は、完全な再結晶化温度を与え、この温度は一般的に700℃程度であるのに対し、再結晶化の開始については(約500~600℃で生じる)復旧現象後に約600℃で始まる。ストリップが速度Vで焼鈍炉内を走行している間、材料が焼鈍炉の再結晶化ゾーン(言い換えれば、炉内温度が少なくとも600℃であるゾーン)に留まる時間(「有効時間」と称し、「t」で表される)を知ることが必要であり、有効時間は、実験的に測定するか、又は当業者に公知のモデルを用いて計算することにより決定ことができる。本発明の枠組み内では、材料が再結晶し始める臨界再結晶温度Trcは、Trc=600℃であると考えられる。再結晶のための(炉の)有効長Luは、Lu=V.tであり、走行ストリップの温度測定の際に当業者によってかなり容易に測定される。
【0079】
本発明によれば、出発点は、完全に従来からの鍛造及び/又は熱間圧延による成形パラメーターを用いて、従来の手段により、製造され(経済的な製造方法を維持することが所望され、製品の最終性能が通常の製品の性能と単に同等であり、通常の製品に対して特に改善されていない場合は再溶解なしで、又は目的が著しく良好な最終性能を得ることである場合は再溶解を行って製造され)、鋳造され、熱成形され、優先的には超急冷された、半完成品である。このような工程は、冷間圧延に適した半製品を調製して、等原子FeCo合金(したがって、元素周期表ですぐ隣にあるこれら2つの元素は、それぞれ非常によく似た原子質量(それぞれ55.8及び58.9g/mol)を有し、その組成は公知の等原子FeCo合金の組成と同等の組成を有するので、質量百分率及び原子百分率の両方でFeとほぼ同じ量のCoを含有する)のストリップ又はシートを得ることを目的としている。したがって、熱間成形半製品は、典型的に、厚みeHRが1.5~2.5mmに含まれ、典型的に2mm程度である、ストリップの形態で得られる。厚み2.5mmを超えると、超急速及び脆化秩序化を防止するために、超急冷によってさえも、十分に迅速に熱を取り出すことができなくなるリスクがある。
【0080】
熱間圧延の最後に、得られたストリップは、必ずしも必要ではないが、非常に優先的には、超急冷に付される必要がある。このような処理は、非常に大きな規模で、材料の秩序/無秩序変態を防止するために用いられ、材料はほぼ無秩序な構造状態のままであり、Trcを超える温度での熱間圧延によって得られるその構造状態と比較してほとんど変化せず、このために、冷間圧延されるのに十分な延性を有する。
【0081】
したがって、超急冷により、熱間ストリップは、次に、その厚みが2.5mm以下であればどのような厚みであっても、また、その組成が本発明で設定される範囲内であればどのような組成であっても、冷間圧延シーケンスの最終厚みまで問題なく確実に冷間圧延され得ることになる。
【0082】
超急冷は、圧延終了時のストリップの温度が十分に高く、熱間圧延設備がそれを可能にする場合には、熱間圧延の出口で、直接に、すなわちストリップの中間再加熱なしに行うことができ、そうでない場合には、秩序/無秩序変態温度より高い温度までストリップを再加熱した後に行うことができる。
【0083】
実際には、720℃~周囲温度で脆化秩序化が確立するので、超急冷を行うためには以下の2つの可能性がある:
- その熱間圧延後にまだ熱い金属を、熱間圧延設備の出口で、例えば水を用いて800~1000℃の温度から室温まで急激に(典型的には少なくとも200℃/秒、優先的には少なくとも1000℃/秒、より適切には少なくとも2000℃/秒で)冷却する;
- 又は、熱間圧延され、次にゆっくりと冷却され、したがって脆い金属を、800~1000℃に加熱してから、急激に、すなわち少なくとも200℃/秒、優先的には少なくとも1000℃/秒、より優先的には少なくとも2000℃/秒で、室温まで冷却する。
【0084】
このような処理はそれ自体、当業者に公知である。
【0085】
前記操作シーケンスの終了時には、金属は100%再結晶状態でなければないが、完全再結晶が1回の追加焼鈍又はシーケンスLAF1-R1-LAF2の前に実施される追加焼鈍によって得られる場合は除され、前記シーケンスは、これまで見てきたように、本発明の主要要素の1つである。
【0086】
ストリップの形態の等原子FeCo合金の熱間圧延は、ほとんどの場合、約900℃で実施され、次に、ストリップが巻き付け状態で滞留している間に、100%又はそれに近い再結晶が得られる。
【0087】
熱間圧延製品が巻き取られることが意図されないシートであり、予備試験で熱間圧延後に100%再結晶が組織的に得られないことが判明した場合、100%再結晶状態が確実に得られるように、熱間圧延前の加熱時間を調整するか、又は熱間圧延後の冷却を遅くすることによって、例えばシートをフード下に置くことによって、熱間圧延及びその付随操作の条件を調整することができる。
【0088】
熱間成形され、適切な場合、超急冷された、100%又はほぼ100%再結晶した製品から始めることは、本発明による少なくとも2つの冷間圧延工程と少なくとも1つの中間焼鈍とを後に実施することを可能にし、標準的な微細構造から始め、それに基づいて材料のテクスチャリングに対する後続操作の効果が予測可能であり制御可能であるようにする。
【0089】
熱間圧延及び適切な場合には、超急冷の後、後続の圧延操作におけるストリップ表面のミルスケール付着(mill scale incrustation)の防止のために、金属は、優先的には従来の様式で、熱間圧延されたストリップの化学的酸洗及び/又は機械的スケール除法に付される。このような操作は、ストリップの微細構造に影響を与えないため、本発明の要素ではない。
【0090】
次に、初期厚みeHRの100%再結晶半製品の最初の冷間圧延LAF1が、1回又は複数のパスで実施され、これにより最初の再結晶微細構造が破壊される。研磨は、最初のパスの前又は2つのパスの間に実施することができる。このように、半製品は、1mm以下の、優先的には0.6mm以下の、一般的には0.5mm~0.2mmに含まれる、典型的には0.35mmの、厚みe1になり、厚みe1は0.12mmまでになり得る。これは本発明によれば、70%~90%に含まれる第1の冷間圧延LAF1における全体圧下率TR1に相当する。
【0091】
次に、この半製品に対して、トンネル炉内で中間連続焼鈍R1が実施される。本発明によるこの中間焼鈍R1は、焼鈍炉の出口で、十分に高い強制冷却速度、すなわち少なくとも600℃/時、優先的には少なくとも1000℃/時、更により適切には少なくとも2000℃/時を得られるように、必ず連続的に実施される。この速度はストリップが巻き戻される場合にのみ達成され、したがって、静止焼鈍炉内ではストリップと同様にコイル形態にはならない。
【0092】
中間焼鈍R1は、合金が無秩序なフェライト相にあるような温度で実施される。上記のことは、温度が、合金の秩序/無秩序変態温度と合金のフェライト系/オーステナイト系変態温度との間に含まれることを意味する。Co濃度が47.0~51.0質量%に含まれる実質的に等原子のFe-Co合金、例えば本発明が関係する合金では、焼鈍炉の有効長における炉内雰囲気の温度は、実際には、Trc~950℃に含まれなければならない。Luは、炉の「有効長さ」であり、すなわち、炉を通過するストリップの経路の長さのうち、炉の雰囲気だけでなくストリップ自体が有効にTrcを超える温度にある長さである。これは、本発明による中間焼鈍R1のパラメーターの決定において、炉の入口及び出口に最も近い部分を無視することにつながり、この部分では、ストリップの通過が冶金学的に効率的であるために、有効温度が十分であることは確実でない。当業者であれば、ストリップの組成を知った上で、自由に使える炉内で、処理されたストリップの温度が温度Trcよりも実際に高くなる長さLuを、測定及び最新の実験によって決定する仕方を知っているであろう。
【0093】
焼鈍炉の雰囲気は、優先的には還元性雰囲気、したがって、純粋な水素又は中性の水素-中性ガス混合物(アルゴン又は窒素)からなる。中性雰囲気(例えばAr及び/又は窒素)も想定されるが、還元性雰囲気を有することにより、不要の空気入口又は中性ガスの不十分な純度があっても、以降の冷間圧延の適切な実行に有害であり得るストリップの表面酸化を引き起こすおそれがないことが保証される。
【0094】
焼鈍炉の有効長Luにおけるストリップの温度は、前述のように、再結晶開始温度Trc(本発明が対象とし且つ制限範囲内にある、ストリップの組成を考慮すると、適切な近似値として600℃に相当すると考えることができる)~900℃、優先的には700~900℃に含まれる。この温度は、より確実に部分再結晶を得るためのものであるが、本発明に関係するすべての合金組成に対して十分なものである。炉内雰囲気の有効温度は、ストリップが炉に入った後に加熱に可変的に長い時間がかかること、及び前記雰囲気の性質が加熱時間に影響し得ることも考慮に入れて、適宜選択しなければならない。純水素はこの観点から最も好ましい通常のガスであるが、強制対流方式を確立することで炉内の熱伝達を改善することができ、純水素よりも熱伝達に劣るが炉の運転安全性の観点から扱いやすいガス雰囲気を使用することができる。ヘリウムは水素よりも更に熱伝導がよく、安全上の問題も少ないが、ヘリウムは、はるかに高価であり、還元性もない。
【0095】
ストリップは前記温度範囲に15秒~5分間の期間、留まらなければならない。少なくとも、最も短い期間及び最も高いアニール温度R1の場合、上記は、900℃よりわずかに高い温度、例えば950℃を炉内雰囲気に課すことにつながることがある。当業者は、自分が加工している製品、その走行速度、及びその炉の正確な特性に応じて、炉内のどのような温度が、ストリップ自体が本発明による温度に達するのに適しているか、及び同じく本発明による期間、ストリップの部分再結晶のみを得るという目標にとって適しているかを、実験的に決定できるであろう。
【0096】
この中間焼鈍R1の後に得られる部分再結晶のみの比率は、10~50%、優先的には15~40%、より優先的には10~30%に含まれる必要がある。再結晶化度が低すぎると中間焼鈍R1が不要となる一方、再結晶化度が高すぎると最終製品の磁気損失が悪化する。
【0097】
ストリップが炉を通過する速度Vは、炉の長さを考慮して、炉の均質温度ゾーンにおける通過時間が10秒~10分、優先的には15秒~5分に含まれるように適合させることができる。いずれの場合も、Trc~900℃に含まれる温度での滞留時間は、特に熱伝達条件が最適でない場合、15秒超、更により適切には30秒超でなければならない。長さ1メートル程度の工業炉の場合、速度は0.1m/分超でなければならない。長さ30mの別のタイプの工業炉の場合、走行速度は2m/分超、優先的には7~40m/分でなければならない。一般に、当業者であれば、その利用可能な炉の長さに応じて走行速度を適合させる仕方を知っている。
【0098】
追加の条件は、後述する第2の冷間圧延LAF2に先立つ焼鈍R1において、以下の関係が満たされることであり、これによりストリップにその最終厚みe2が与えられる。
【0099】
26℃.分.m≦(T-CRT).Lu/V≦160℃.分
(TとTrcは℃単位、Luはm単位、V速度はm/分単位で表され、Trc=600℃は適切な近似値であること判明している)。
【0100】
優先的には、50℃ 分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃ 分(上記と同様にTrc=600℃)。
【0101】
これら2つの不等式は、中間焼鈍R1の時点で0.35mm以外のストリップの中間厚みe1、例えば0.3mm又は0.5mmの場合にも有効である。
【0102】
実に驚くべきことに、本発明で使用する合金で低い磁気損失(最大26.5W/kg程度)を得るためには、最終焼鈍後に目指す完全再結晶構造とは別に、中間焼鈍R1の終了時に、前述の再結晶率(10~50%、優先的には15~40%、更に適切には15~30%)で、ストリップの部分再結晶を得る必要があるだけであることがわかった。したがって、この目的のために、本発明による部分再結晶の中間焼鈍R1の間、ストリップに過剰量の熱を注入する必要はない。ただし、上記について満たすべき最低条件はある。そうでなければ、ストリップの有意な部分再結晶が得られず、中間焼鈍R1が無駄になるからである。部分再結晶が得られなければ、LAF1とLAF2が互いに直接続き、その結果、本発明の必須要素である部分再結晶の中間焼鈍R1なしに、複数のパスで実施される1回だけの冷間圧延しかなかった従来の場合と同等のケースになるだろう。
【0103】
本発明者等は、例えば、本発明に関係する合金のケースである、再結晶の開始(温度Trc)が約600℃で数分の焼鈍のために生じる合金のために、880℃での巻き付け型トロイダルコア上の最終焼鈍後、中間焼鈍R1の間、1mの有効長(Lu)を有する炉内で、3m/分の速度Vで、800℃の温度にて、中間厚みe1=0.35mmでストリップを走行させることにより、0.1mmの最終厚みe2において、2T/400Hzで26.5W/kg未満という低い磁気損失を得ることに成功した。このような焼鈍は、(T-Trc).Lu/V=67℃ 分(T及びTrcは℃単位、Luはm単位、Vはm/分単位)に相当し、したがって160℃ 分未満、且つ50℃ 分超であり、したがって本発明の好ましい要件に対応する。EBSD(電子線後方散乱回折)技法で測定した、中間焼鈍R1の終了時に得られた再結晶化分率は、40%であった。
【0104】
別の例では、本発明者等は、再結晶の開始(温度Trc)が約600℃で数分の焼鈍のために生じる合金のために、部分再結晶の中間焼鈍R1の間、2.3mの有効長(Lu)を有する炉内で、3.6m/分の速度で、840℃の温度にて、中間厚みe1=0.35mmでストリップを走行させることにより、0.1mmの最終厚みにおいて、2T/400Hzで26.5W/kg未満という低い磁気損失を得ることに成功した。このような焼鈍は、(T-Trc).Lu/V=153℃ 分に相当し、したがってこの場合も160℃ 分未満、且つ50℃ 分超となる。EBSD技法で測定した、中間焼鈍R1の終了時に得られた再結晶化分率は、47%であった。
【0105】
一方、2m/分の速度で行ったストリップの同じ焼鈍R1では、過剰な再結晶が生じ、最終状態では、値(T-Trc).Lu/V=276℃.分、したがって160℃.分超で、26.5W/kgを超える磁気損失が観察された。EBSD技法で測定した、中間焼鈍R1の終了時に得られた再結晶化分率は、72%であった。
【0106】
更に別の例では、本発明者等は、再結晶の開始が約600℃(Trc)で数分の焼鈍のために生じる合金のために、部分再結晶の中間焼鈍R1の間、4mの有効長(Lu)を有する炉内で、7m/分の速度で、860℃の温度にて、中間厚みe2=0.5mmでストリップを走行させることにより、最終厚みe2=0.1において、2T/400Hzで26.5W/kg未満という低い磁気損失を得ることに成功した。このような焼鈍は、(T-Trc).Lu/V=149℃ 分に相当し、したがって、160℃ 分未満、且つ50℃.分超となる。EBSD技法で測定した、中間焼鈍R1の終了時に得られた再結晶化分率は、25%であった。
【0107】
使用される連続処理炉は、任意のタイプのものであってよいことに留意されたい。特に、炉は、従来の抵抗炉若しくは熱放射炉、ジュール効果焼鈍炉、流動床焼鈍設備、又は任意の他のタイプの炉であってよい。
【0108】
炉の出口において、ストリップは、冷却中の全秩序-無秩序変態を防止するために、十分に高い速度で冷却されなければならない。しかし、本発明者等は、ほとんどの場合、以降、冷間圧延を問題なく行い得るために超急冷しなければならない厚み約2mmの熱間圧延ストリップとは対照的に、以後に再び冷間圧延されることが意図された薄い(0.12~0.6mmの)冷間圧延ストリップは、到達した低い程度の脆性が非常に優先的には熱間圧延後に実施される前述の超急冷を必要としないポイントまで、わずかな部分秩序化を受けるだけであることを見出して驚いた。
【0109】
本発明者等は、無秩序/秩序変態が完全でないことを条件として、上記の連続中間焼鈍の後、冷間圧延及び(特に剪断によって)切断されるストリップの能力が非常に良好になることを見出して驚いた。上記のことは、期せずして、このようなストリップは、ある程度の脆性を生じさせる部分的秩序化にもかかわらず、再び冷間圧延され得ることを意味する。
【0110】
無秩序/秩序変態が完全なものとならないように、200℃超の冷却速度は、少なくとも600℃/時、優先的には少なくとも1000℃/時、更に優先的には少なくとも2000℃/時でなければならない。したがって、強制対流又は冷却液の噴霧による冷却は、実際には、所望の最低速度を達成するために必要である。ストリップの温度が200℃まで低下すると、秩序/無秩序変態はもはや顕著には変化せず、200℃~周囲温度の冷却速度は、このような観点から、もはや重要ではない。
【0111】
冷却速度は、ストリップの厚みと利用可能な冷却手段を考慮して、理論的に可能な限り高くなり得る。しかし、実際には50,000℃/時を超えることは有用ではない。2,000℃/時~10,000℃/時の速度で通常十分であり、このような速度を得るためには、強制対流で通常十分である。
【0112】
更に、最後の冷間圧延の前に実施される焼鈍(すなわち中間焼鈍R1)は、℃単位で表されるストリップの温度T、m単位で表される炉の有効長Lu(炉のプラトー又は最高温度Tが数分の焼鈍のためのストリップの再結晶の開始温度Trcを超える長さ、温度Trcは本発明に関係するすべての合金について適切な近似値で600℃に等しいと考えられる)、m/分単位で表されるストリップ速度Vに応じて、以下の2つの不等式を満たすことが必要であり(第1の不等式の場合)、満たすこともできる(第2の不等式の場合):
* 26℃.分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃.分
* 及び優先的には、50℃.分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃.分。
【0113】
この理由は後述する。
【0114】
次に、連続中間焼鈍R1の後、第2の冷間圧延シーケンスLAF2が1つ又は複数のパスで実施され、これにより、典型的には、0.05~0.25mm、優先的には0.07~0.20mmに含まれる厚みe2がストリップに与えられる。e2は一般的に、冷間圧延ストリップについて意図された最終厚である。この第2の冷間圧延LAF2の圧下率TR2は、本発明によれば、60~80%、優先的には65~75%に含まれる。
【0115】
シーケンスLAF1-R1-LAF2が熱間圧延に続き且つ最終静止焼鈍Rfに先行する、2つの冷間圧延操作LAF1及びLAF2並びに中間焼鈍R1が、本発明の典型的な好ましいケースである場合、前述のように実施されるLAF1、R1及びLAF2に加えて、より多くの数の冷間圧延及び中間焼鈍操作が提供されてもよい。このような追加の冷間圧延及び中間焼鈍操作は、それぞれLAFi及びRiによって表されることがあり、本発明による熱間圧延及び冷却半製品から開始され実施される。したがって、上記のすべての操作は、本発明で必須のシーケンスLAF1-R1-LAF2に先行しなければならず、半製品は焼鈍Riの最後の後に100%再結晶化されなければならない。このことは、100%再結晶化した微細構造で本発明によるシーケンスLAF1-R1-LAF2が開始するように、上記シーケンスの前に冷間圧延及び焼鈍が実施されない場合に関して上記で示した理由による。
【0116】
LAF1-R1-LAF2の操作シーケンスの最も一般的な場合と比較して、追加のサイクルLAF1-R1が1つしかない場合もあるが、本発明は、LAF1-R1-LAF2に加えてそのような追加のサイクルLAF1-R1-LAF2が複数あり、すべてがLAF1の前に実施される場合にも及ぶと理解されるべきである。いずれの場合も、最後の冷間圧延LAF2の前に実施される焼鈍R1は、ストリップの最大温度T、炉の有効長さLu(炉のプラトー又は最大温度Tが温度Trcより高くなる長さ、数分の焼鈍のためのストリップの再結晶開始温度、ここでは600℃)に応じて、以下の条件で、ストリップ速度V(m/分単位)にて実施されなければならない:
* 26℃.分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃.分
* 優先的には、50℃.分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃.分。
【0117】
このようなプロセスの例は、2つの追加サイクルLAFi-Riを含み、この場合も先行の例の厚みeHRが2mmの熱間成形ストリップから出発し、まず、最大1.2mmのストリップ厚みei-no.1を得るために、少なくとも40%の速度TR(i=1)で第1の冷間圧延LAFi-no.1を実施し、次に、最後の中間焼鈍の後、したがってLAF1の前に、本発明によって要求されるようにシート又はストリップが完全に再結晶化され得ることをより確実にするために、いずれの場合にも金属が優先的には100%再結晶化されるように、Trc~900℃の温度がストリップに付される炉の有効ゾーンでの通過時間が10秒~10分、優先的には15秒~5分、更に適切には30秒~5分であることが必要である第1の中間焼鈍Ri-no.1を実施することであろう。中間焼鈍Ri-no.1の後に、1時間当たり600℃を超える速度、及び優先的には1時間当たり1000℃を超える速度、又は1時間当たり2000℃を超える速度で冷却する。実際には、10,000℃/時を超えることは有用ではなく、一般に2,000℃/時~3,000℃/時の速度で十分である。一般に、連続中間焼鈍(Ri又はR1)の後に冷間圧延を行う場合には、再び冷間圧延されるストリップの能力、及び有用である場合の切断の適合性に関連して、上記の理由により、このような急速冷却を行う必要がある。
【0118】
次に、最大0.96mmの厚みei-no.2まで少なくとも40%のTRi-no.2の比で、第2の冷間圧延LAFi-no.2が実施され、続いて、第2の中間焼鈍Ri-no.2、続いて、600℃/時超、優先的には1000℃/時超、更には2000℃/時超の速度で冷却が実施される。実際には、10,000℃/時を超えることは有用ではなく、一般に2000℃/時~3000℃/時の速度で十分である。Ri-no.2焼鈍は、Trc~900℃の温度がストリップにかけられる、炉の有効ゾーンの通過時間が、10秒~10分、優先的には15秒~5分の間、更により適切には30秒~5分に含まれなければならないという事実、更には焼鈍Ri-no.2の後に金属が100%再結晶されているという事実によって特徴付けられる。
【0119】
上記の段階で、本発明の典型的且つ義務的な以下の工程が続く:LAF1-R1-LAF2及びRf。
【0120】
第1の冷間圧延LAF1は、70~90%になるよう実施されるが、この場合は80%が選択され、その結果、ストリップの厚みe1は最大0.19mmとなる。したがって、Ri-no.2に由来する100%再結晶微細構造は破壊される。
【0121】
次に、部分再結晶焼鈍R1が実施され、続いて、600℃/時超、及び優先的には1000℃/時超、又は更には2000℃/時の速度で冷却が実施される。実際には、10,000℃/時を超えることは有用ではなく、一般に2000℃/時~3000℃/時の速度で十分である。焼鈍R1は、約600℃(すなわち、Trc)での数分の焼鈍のために再結晶の開始が起こる合金のための、有効長さ4m(Lu)の炉内で、12m/分の速度で、820℃の温度にて、中間厚みe1=最大0.19mmのストリップの走行によって特徴付けられる。このような焼鈍は、(T-Trc).Lu/V=73.3℃.分に相当し、したがって160℃.分未満、且つ50℃.分超となる。したがって、この焼鈍は、最終冷間圧延に先行する焼鈍R1のための前述の必要条件に適合している。
【0122】
次に、前記の例における4回目の冷間圧延である、冷間圧延LAF2が実施される。LAF2は、60~80%の圧下率を有する必要があり、ここでは70%が選択され、これにより、最終厚みe2が最大0.06mmであるストリップが製造される。
【0123】
最後に、全再結晶化の最終静止焼鈍Rfが実施され、典型的には還元性雰囲気中で850~890℃で数時間、例えば純水素中で880℃にて3時間実施され、続いて、100~500℃/時、優先的には200~300℃/時の速度で冷却が実施され、磁気結晶異方性定数K1が強力に低減されるか又は取り消される。
【0124】
したがって、2回のみの冷間圧延シーケンスを実施し、中間焼鈍R1(部分再結晶)を(上記で説明したように少なくとも600℃/時での)急冷で終了し、以下に詳述する完全再結晶Rfの最終静止焼鈍の前に、先に示した所望の最終厚みを達成することにつながる二重冷間圧延操作間の圧下率TRの分布を得ることで全く十分であると考えられる。
【0125】
一方、これまで述べてきたように、Rfの前に、関連する中間焼鈍及び急冷を伴う、冷間圧延シーケンスを2回より多く(先の例では4回)実施し、この場合も冷間圧延のそれぞれの圧下率を適切に配分することも考えられる。しかし、少なくとも経済的な観点からは、経験上必要以上に冷間圧延及び焼鈍シーケンスを増やさないことに利益があること、及び、最小限の2つの非常に特殊な冷間圧延シーケンスLAF1及びLAF2はまた、急速冷却が続く部分再結晶R1を伴う同じくらい特殊な連続中間焼鈍によって分離されたそれぞれ狭い範囲の圧下率TR1及びTR2に起因して、完全に再結晶して適切な場合には超急冷された熱間圧延半製品に対してLAF1が実施される、好ましい場合となることは明らかである。
【0126】
以下の条件:
- 26℃.分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃.分 (Trcは600℃に等しい);
- 優先的には50℃.分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃.分;
は、最終冷間圧延LAF2に先立つ連続焼鈍R1により満たされるべき条件であることが理解されるべきである。
【0127】
一方、この場合、再結晶は最後の追加焼鈍R1の後に完了すればよいので、単なる必須事項であるため、このような条件は必ずしも追加の中間焼鈍R1(存在する場合)によって満たされる必要はない。再結晶が他の追加焼鈍Ri(存在する場合)の後に完了することは単なる優先事項である。このような焼鈍は、実施されるとき、Trc~900℃の温度がストリップに果たされる炉の有効ゾーンの通過時間は、優先的には10秒~10分、優先的には15秒~5分、更に適切には30秒~5分に含まれることが必要である。
【0128】
必要なことは、LAF1の直前(したがって、最後の追加焼鈍Riの後)に100%再結晶した状態を有することである。
【0129】
例として、複数の中間焼鈍R1を含み、本発明による場合がある生産工程の連続について、以下のスキームを示すことができる。
【実施例1】
【0130】
2回の中間焼鈍Riを伴う場合:
2mmの厚みeHRまでの熱間圧延 - 50%の圧下率による1mmの厚みまでのLAFi-no.1 - 再結晶率100%の程度までのRi-no.1 - 50%の圧下率による0.5mmの厚みまでのLAFi-no.2 - 再結晶率100%の程度までのRi-no.2 - 70%の圧下率による0.15mmの厚みe1までのLAF1 - 10~40%の再結晶化率の程度のR1 - 圧下率66%による0.06mmの厚みe2までのLAF2 - 850℃における水素下での3時間静置Rfにより、全再結晶を実現する。
【実施例2】
【0131】
3回の中間焼鈍Riを伴う場合:
2.5mmの厚みeHRまでの熱間圧延 - 40%の圧下率による1.5mmの厚みまでのLAFi-no.1 - 再結晶率100%の程度までのRi-no.1 - 40%の圧下率による0.9mmの厚みまでのLAFi-no.2 - 再結晶率100%の程度までのRi-no.2 - 44%の圧下率による0.5mmの厚みまでのLAFi-no.3 - 再結晶率100%の程度までのRi-no.3 - 70%の圧下率による0.15mmの厚みe1までのLAF1 - 10~40%の再結晶化率の程度のR1 - 圧下率66%による0.06mmの厚みe2までのLAF2 - 850℃における水素下での3時間静置Rfにより、全再結晶を実現する。
【実施例3】
【0132】
2回の中間焼鈍Riを伴う場合:
1.5mmの厚みeHRまでの熱間圧延 - 40%の圧下率による0.9mmの厚みまでのLAFi-no.1 - 再結晶率100%の程度までのRi-no.1 - 44%の圧下率による0.5mmの厚みまでのLAFi-no.2 - 再結晶率100%の程度までのRi-no.2 - 70%の圧下率による0.15mmの厚みe1までのLAF1 - 10~40%の再結晶化率の程度のR1 - 66%の圧下率による0.06mmの厚みe2までのLAF2 - 850℃における水素下での3時間静置Rfにより、全再結晶を実現する。
【実施例4】
【0133】
中間焼鈍Riを伴う場合:
1.59mmの厚みeHRまでの熱間圧延 - 40%の圧下率による0.95mmの厚みまでのLAFi-no.1 - 再結晶率100%の程度までのRi-no.1 - 70%の圧下率による0.29mmの厚みe1までのLAF1 - 10~40%の再結晶化率の程度のR1 - 65%の圧下率による0.1mmの厚みe2までのLAF2 - 870℃における水素下での2時間静置Rfにより、全再結晶を実現する。
【0134】
すべての場合(2回以上のLAF冷間圧延シーケンス)において、最終厚みに達した材料は、ストリップ、又は予備切断及び成形した部品(変圧器の巻き付けテープトロイダルコア、ローター及びアクチュエータステーター)上で最終静止焼鈍Rfを受ける。このとき、ストリップを完全に再結晶し、オーステナイト領域には入らずにフェライト粒の成長を十分に進展させる。このようなフェライト粒の十分な成長は、低い磁気損失を得ることにつながるが、このような目的のためには時間が短すぎる連続焼鈍によってフェライト粒の十分な成長を得ることはできない。
【0135】
したがって、静止焼鈍Rfは、真空中又は非酸化性保護雰囲気下、したがって中性又は還元性保護雰囲気下で、例えば、窒素下、窒素-水素又はアルゴン-水素混合ガス下、アルゴン等の不活性ガス下、優先的には純水素下で、750~900℃、優先的には800~900℃、更に適切には850~880℃の温度にて、典型的に30分超、優先的には1時間超適用される。
【0136】
最終焼鈍Rfに続く冷却は、任意の速度で実施されてよいが、優先的には100℃/時~500℃/時、更により適切には200℃/時~300℃/時で実施されてよい。
【0137】
このような制限の理由は、冷却の目的が磁気結晶異方性定数K1を最適化することであること、及び、
- 徐冷の場合、秩序化された合金に対応する正の値K1が得られること;
- 非常に急速な冷却の場合、無秩序な合金に対応する負の値K1が得られること
による。
【0138】
最適な磁気特性は、K1が0に等しい場合、すなわち、前述の範囲にある最適化された冷却速度、したがって最も典型的には約250℃/時の場合に得られる。
【0139】
以下の実験を実施し、本発明の利点を実証した。
【0140】
Table 3(表3)は、使用した5つの合金の組成を、質量百分率で示したものである。合金1及び4を、新しい、したがって高価な原料から、1回のみの再溶解により製造した。他の合金2(これはTable 1(表1)において「Ref1」と表した合金であり、その組成は本発明で使用することができる組成に従う)、3及び5を、再溶解せずに、通常の原料から、したがって、できるだけ低コストで製造した。その結果、合金1中のMn、S、Ni、Cu、Nbの濃度は、前記元素の添加ではなく、原料の溶解及び液体金属の製造条件から得られたものであり、他の合金におけるこれらの同じ元素の濃度よりも低く、前記合金の場合において、非常に純度の高い原料が使用されたことを示している。これらの合金はすべて、本発明の要件に従う組成を有している。明示されていない元素は、せいぜい不純物の形態として存在するだけで、金属学的な効果はない。また、最終冷間圧延LAF2に先立つ中間焼鈍R1のパラメーターを決定することに関与する、その再結晶開始温度Trcを示したが、前述の通り、温度はすべて、本発明で使用される一般的な組成を有する合金の場合と同様に、600℃に非常に近い温度である。
【0141】
【表3】
【0142】
これらの合金から作られたインゴット(寸法200×500×2500mm)を熱間圧延し、次に超急冷した。超急冷を行わないと、2mm超の初期厚みを有する製品に対して冷間圧延を実施する場合に、ストリップが冷間圧延中に破損するリスクが高いことが経験上わかっている。
【0143】
このため、製品を引き続き800~1200℃の加熱に供し、100×350mmの断面及び数m長さを有する棒材の形態でブルーミングし、次に熱間切削し、非常にゆっくりと冷却した。その後、1200℃まで非常にゆっくりと(16時間)再加熱し、続いてストリップミルで熱間圧延を行い、16回の連続パスで製品の厚みを100mmから2mmに変えた。最後のパスは950℃で終了し、ウォータージェット下で約1000℃/秒程度の速度で超急冷を行い、次に、このようにして得た熱間ストリップの冷間巻き付けを実施した。
【0144】
ストリップの微細構造は、100%再結晶しており、初晶フェライトと、(950℃で初晶フェライトとの平衡状態にあった)オーステナイト相から急冷されたマルテンサイトとの混合物であり、その混合物に、オーステナイトから形成された変換物第2相フェライトが添加されている。
【0145】
その後、熱間ストリップは、単一冷間圧延又は中間焼鈍R1を伴う二重冷間圧延LAF1及びLAF2のいずれかを施し、冷間ストリップを得た。
【0146】
最後に、冷間ストリップに純水素下で最終静止焼鈍Rfを施し、続いて250℃/時で強制冷却した。
【0147】
本発明の利益を証明する、Table 3(表3)の合金1~5について実施した実験のパラメーターと結果をTable 4(表4)にまとめる。中間焼鈍は、有効加熱長2.3mの炉で実施した。
【0148】
【表4】
【0149】
合金5に関する表の最初の2行は、単一冷間圧延プロセスと比較して、二重冷間圧延プロセスの好ましい寄与(ここでは、ワッシャに対しては十分であるが、42℃.分の(T-Trc).LuZVについてトロイダルコアに対して不十分である)を明確に示している。表の3行目は、好ましい範囲である50~160℃.分の(T-Trc).Lu/Vの値に対応しており、この好ましい範囲にあることで、磁気損失を更に低減する(ここでは追加的に4%低減する)という追加の利益を示している。
【0150】
1回の圧延に関する試験は、再溶解が実施されたか否かにかかわらず、基準試験として考える。より具体的には、1回の圧延及びESRを施したインゴットで合金1に実施された試験は、2T及び400Hzで26.5W/kg以下の損失が望まれ、本ケースでは高価な再溶解を実施するコストで得られる、変圧器磁心材に典型的なものである。再溶解せずに1回の冷間圧延を行った合金2に対して実施した試験は、回転機械のローター用の材料に典型的なものである。いかなる中間焼鈍もないため、(T-Trc).Lu/Vの関係はこの場合意味をなさないので、Table 4(表4)の該当欄に「関連なし」と表現した。
【0151】
また、合金2に実施した試験に関して、焼鈍炉内の走行速度を3.4m/分から3.6m/分に上げることは、2T/400Hzでの損失を低減させ、ワッシャにおいて、ほぼ許容できるがまだ高すぎると考えられる27W/kgという値から、適切と考えられる25.8W/kgという値への変化があることは興味深いことである。上記の理由は、走行速度のこのような加速によって、(T-Trc).Lu/Vの値が、本発明が要求する最大値である160℃.分を下回るように変えたからである。上記のことは、前記パラメーターを検討することが適切であることを明確に示している。
【0152】
提示された実施は、再溶解がなく、原料の選択が特に慎重に行われるわけではないため、特に純度が高くない合金であっても、本発明の精密な条件が満たされる場合、中間焼鈍を伴う二重冷間圧延を行うことにより、従来の条件(850℃、3時間、更に適切には880℃、3時間又は860℃、2時間)下で実施される最終焼鈍の後に低い磁気損失を保持できることを示している。これにより、あらゆる種類の電気技術用途において、(等原子FeCo合金により達成することができる)高い出力質量比と、2T、400Hzにおいて、26.5W/kg程度の低い磁気損失、又はこの点で最も要求の厳しい用途では更に低い磁気損失の両方を必要とするが、本発明では、高純度原料及びESR又はVARインゴットを選択するという費用のかかる操作を必ずしも必要とせずに、このような結果を得ることが可能であることが判明している。
【0153】
このような実際の状態に対する説明は、以下に述べる経験に照らして次のようになり得る。
【0154】
Table 3(表3)の合金2、合金3及び合金5の組成を有する未溶解インゴットを使用し、これに従来は1100~1200℃のブルーミングによるインゴットの熱間変態を従来通り適用し、続いてストリップミルで1000~1200℃にて2mmの厚みまで熱間圧延し、次に、熱間圧延出口で1000℃/秒の冷却速度で900℃に超急冷した後、圧下率95%で単一冷間圧延により、又は0.35mm厚(圧下率82.5%)まで、次に0.1mm厚(圧下率71.4%)まで(したがって同様に全体圧下率95%)の二重冷間圧延により、厚み0.1mmまで冷間圧延し、2.3mの均質な有効加熱長さLuを有する炉内で、合金2の場合は3.6m/分、合金3の場合は4.4m/分、合金5の場合は4.2m/分のストリップ速度で840℃にて中間焼鈍を行った。これら3つのケースをTable 4(表4)に記載するが、すべて2T/400Hzで26.5W/kg未満の磁気損失を得るために用いることができる。
【0155】
他のすべての条件が同じであれば、二重冷間圧延(LAF1及びLAF2)及び中間焼鈍R1は、歪み硬化状態のストリップに著しく変化したテクスチャを与えるようであった。この著しいテクスチャの違いは、本発明で規定する条件下で実施した完全再結晶の最終焼鈍Rfの後でも、いかなる著しい変化もなく残っている。Table 5(表5)は、冷間圧延ストリップが単に歪み硬化状態にある場合、又は850℃で3時間の最終焼鈍後に完全再結晶状態にある場合において、理想配向に関して、3つのオイラー角にわたって最大15°の分散で計算したテクスチャ成分{hkl}<uvw>の体積分率(単位 %)を示す。中間焼鈍の場合、炉の有効長さLuは2.3mである。
【0156】
【表5】
【0157】
このような結果から、単一冷間圧延後の歪み硬化状態において、テクスチャの成分Aは、テクスチャの他の主要な成分B及びCと比べて著しく強く、典型的に2倍の強度を有していることが明らかである。一方、本発明による二重冷間圧延後では、3つの成分は互いに近い約8~14%の振幅を有する。上記のことは、3つの一連の試験で観察される。
【0158】
単一冷間圧延後に最終焼鈍を行った試験では、成分Aは歪み硬化状態よりも更に優勢であり(25%に対し40%)、成分B及びCよりも約8倍の強度である。一方、本発明による二重冷間圧延及び中間焼鈍では、成分A、B、及びCの比率は、歪み硬化状態での比率と比べてほとんど影響を受けず、これらの成分の振幅は互いに近いか又は非常に近いまま(それぞれ約7~16%)であり、成分Aはもはや必ずしも優位ではない。
【0159】
このような結果は、更に、本発明の冶金プロセス(部分再結晶をもたらす中間焼鈍を伴う二重冷間圧延範囲)を、最終製品(再結晶を完了する最終焼鈍後、典型的に850℃で3時間実施)上で、その主要テクスチャ成分の定量的特性決定によって、曖昧な部分なしに、明確に特定することができることを示している。
【0160】
実際、本発明のケースは、最終焼鈍Rfの後、EBSDによって特徴付けられた材料の微細構造のテクスチャが以下の通りであるという事実に対応するものである:
- 表面積又は体積基準で、8~20%、優先的には9~20%の{001}<110>成分が、最大15°の配向不良である(Table 5(表5)の成分A)。
- 表面積又は体積基準で、8~25%、優先的には9~20%の{111}<112>成分が、最大15°の配向不良(Table 5(表5)の成分B)。
- 表面積又は体積基準で、5~15%、優先的には6~11%の{111}<110>成分が、最大15°の配向不良(Table 5(表5)の成分C)。
- 材料の残部は、最大15°の配向不良を有する他のテクスチャ成分からなり、それぞれ表面積又は体積基準で最大15%となり、前記他のテクスチャ成分と、成分{001}<110>、{111}<112>、及び{111}<110>のいずれかとの重なりは、3つの成分のいずれかの表面積又は体積の10%を超えない。
【0161】
15°等のその結晶学的配向{hkl}<uvw>について特定される各テクスチャ成分の配向不良により、2つの異なる結晶学的成分が部分的に重なり得ることに留意すべきである(例えば、以下に引用する参考文献[1]~[5]参照)。したがって、所与のテクスチャ成分Xが材料の15%に近い(しかしそれより低い)割合を占めることが判明した場合、その15%の一部は、実際には、その結晶配向の一部を共有する主要成分A、B、Cのいずれか1つに由来している可能性がある。
【0162】
配向又はテクスチャ成分A、B、Cを残りの結晶配向又は少量テクスチャ成分Xと明確に区別し、したがって、成分A、B、Cの割合を本発明の有利な磁気特性と明瞭に関連付けることを所望する場合、これらの代表的な成分A、B、又はCを他の少量成分Xから十分に高い精度で分離できるようにする必要があり、したがって、これらの2種類の成分間の重なりが少ないことの基準を定義することが必要である。
【0163】
当業者に公知の詳細な結晶学的解析、例えば典型的に周知のEBSD技法(下記に列挙する参考文献[6]及び[7])は、ランダム分布とは明らかに異なるテクスチャ成分のそれぞれを特定し、成分間の可能な重なりの程度を決定するために用いることができる。本発明では、一方では成分A、B又はCのうちの1つと、他方ではテクスチャの少量成分Xとの間での結晶配向の重なりは、表面積又は体積の分率の10%を超えてはならないと定義する。
【0164】
例えば、理想成分(100)[001]の周りに15°の配向不良を有する成分A-{100}<011>の隣に、極めて近い配向不良を有する成分X-{hkl}<uvw>、例えば、(100)[001]に対して26.56°の角を形成する(したがって、26.56°<2x15°なので、重なりがある)理想成分(210)[001]の周りに15°の配向不良を有するX1 -{210}<011>を特定しようとする場合、A及びX1の結晶配向表面又は体積分率の重なりは、全表面又は体積分率の10%を超えてはならない。X1とAの実施例の本ケースにおいて、10%を超える重なりがある場合、Aからわずかに離れていて<10%の基準を満たす成分X2、例えば、(100)[001]に対して33.69度の角を形成する理想成分(320)[001]の周りに15°の配向不良を有するX2-{320}<011>を選択する。
【0165】
今述べた概念及び方法をよく理解するための参考文献は、特に以下の通りである:
(参考文献)
【0166】
検討対象の3つのテクスチャ成分は、単一冷間圧延から二重冷間圧延への変化に最も敏感であり、典型的に最終製品中の割合が最も高い成分であるため、本発明の最も特徴的な成分である。
【0167】
Table 3(表3)に示す組成を有する合金2を使用して、以前の試験と同じ手順を用いて、試験を実施した。前記合金に以下の処理を施した:
- 断面積200×800mmのインゴットのVARなしでの鋳造;
- 100%再結晶した2.0mmの厚みeHR[の]熱間ストリップを得るために、インゴットを950~1200℃の温度で熱間圧延し、続いて、約1000℃/秒の速度で冷却(超急冷)する;
- 0.35mm[の]厚みe1を有する冷間ストリップを得るために、熱間圧延シートを83%の圧下率で、前記超急冷熱間ストリップの冷間圧延LAF1を行う;
- 有効長さLuが2.3mのオーブン内で、純水素下、760~810℃の温度で、部分再結晶の中間焼鈍R1を連続的に実施する、
このオーブン内を試験に応じて可変速度V(2.3~6.5m/分)でストリップが通過し、有効ゾーンの温度Tも試験に応じて変化する最終焼鈍Rfの後における、2T及び400Hzでの磁気損失に対する量(T-Trc).Lu/Vの影響、及びEBSD(電子線後方散乱回折)法で測定した、R1後の再結晶の程度を評価することができ;焼鈍R1に続いて、2500℃/時の速度で室温まで冷却を行う;
- 0.10mm[の]最終厚みe2を有する冷間ストリップを得るために、71%の圧下率で冷間圧延LAF2を行う;
- 最終静止焼鈍Rfを純水素下で850℃の温度にて3時間行い、完全再結晶させ、続いて250℃/時の速度で室温まで冷却する。
【0168】
試験では、ストリップの速度V及び再結晶閾値Trc(600℃前後)の値を知った上で、(T-Trc).Lu/Vの値を考慮した。このケースでは、(炉内に熱電対を設置することで予め実験的に決定した)Luは、2.3mであり、本発明の範囲に含まれると考えられる量である。
【0169】
磁気損失は、0.1mm厚のワッシャ、及び25/36mm又は29.5/36mmの内径/外径で測定した。
【0170】
Table 6(表6)は、直流で測定した以下の磁気ヒステリシス特性を示す:連続焼鈍条件(温度T及びストリップの速度V)に応じた、最大磁場20Oeに対するサイクルの最大誘導Bm、最大磁場20Oeにおけるこの同じサイクルの残留磁気Br、Brと最大誘導との間の比Br/Bm、保磁力場Hc。表はまた、2T、400Hzで観測された磁気損失、及び(T-600).tuに等しい指標も示す。この指標は、中間焼鈍中に供給されるエネルギー量を代表し、材料の再結晶開始温度Trc(ここでは600℃)に関連して定義されている。Luは炉の「有効長さ」、すなわちストリップがTrcを超える温度にある炉内を通過するストリップの経路の長さであり、「有効時間」t(単位 分)は、ストリップが炉の有効長さ内に留まる時間の長さである。表はまた、本発明に特徴的な3つのテクスチャ成分(これに相当するもの)の表面積又は体積の割合も示す。
【0171】
【表6】
【0172】
図1及び図2は、LAF1の前に100%再結晶した実施について、2T及び400Hzでの磁気損失並びに試料の再結晶化率を、上で定義したようにそれぞれ量(T-600)/V及び(T-600).Lu/V(600℃はTrcの値である)の関数として示す。
【0173】
LAF2及びRf後の磁気損失は、他の条件がすべて同じであれば、(T-600)/V(Vはストリップの速度である)の量が低いほど低くなることがわかる(図1)。ストリップが作られるインゴットの複雑な製造に関連する原料の慎重な選択を必要とせずに26W/kg程度の損失を維持するという本発明の当初の目標内に留まるために、最大26.5W/kgの損失を得たい場合、前記特定の実施例について、26.5W/kg以下の磁気損失を得ることを所望する場合には、80℃ 分/mの(T -600)/V、優先的には60℃ 分/m(損失<26W/kgに対応する)の値を超えないことが非常に好ましい。このような(T-600)/Vの(R1中に金属に注入されるエネルギーに対して)比較的低い最大値は、R1後の比較的低い再結晶率と密接に関係しており、50%以下、優先的には40%以下、更に適切には30%以下と概算することができる。最良の例では、再結晶率は15~17%程度である。中間焼鈍が有用であるためには、10%、更に適切には15%の最低比率が必要である。
【0174】
Table 6(表6)の最初の実施例は、R1中に再結晶化度が40%であり、最終焼鈍後の2T、400Hzでの磁気損失が26W/kgであり、この値は許容される最大値26.5W/kgをわずかに下回っている。上記のことは、60~80℃.分/mの(T-600)/Vの値が、本ケースでは適したものであり得るが、最適ではないことを示している。
【0175】
許容可能であると考えられる最大値(T-600)/Vは、中間焼鈍温度760~810℃という縮小された範囲において、この一連の実施例に有効であることから、単なる指標に過ぎない。80℃ 分/m、優先的には60℃ 分/mという限界は、2.6mの有効長を有する連続焼鈍炉に対応する。しかし(図2)、この許容限界の計算は、次のように、以下に従って任意の有効長さLuに一般化することができる:(T-CRT).Lu/V≦60.Lu=160℃.分(Trc=600℃である)。したがって、検討される炉が3倍長い場合、160℃.分の限界は、厚み0.35mmのストリップに対して不変であり、炉の温度Tを下げるか、又は(T-Trc).Lu/V≦160℃.分を満たすようにストリップの速度Vを上げる必要があり、したがって焼鈍R1中にストリップを過剰に再結晶する必要はなく、最終厚み0.1mmでの磁気損失は、850℃で数時間焼鈍したワッシャ上で26.5W/kg以下となり、850℃超(ただし900℃未満)で実施すれば更によい。
【0176】
他の実施例は、有効長2.3mの炉で3.6~4.4m/分に変化する連続中間焼鈍を伴い、連続中間焼鈍中に840℃の炉の均質ゾーンの温度(したがって、上記で検討した第1の温度ゾーンより上)を伴う、同じ冶金範囲(同じ冷間圧延の圧下率、同じ熱間変態、及び熱間圧延後の同じ厚み)に従う、3つの異なる鋳物に関するTable 5(表5)に示されている。したがって、このような実施例について、先に引用したLu=2.6mの実施例に対して、(T-600).Lu/V<160℃/分を維持するためには、他のすべての条件が等しい場合、Luが減少すると連続焼鈍温度Tが必然的に増加しなければならないことがわかる。したがって、本発明の使用において、炉の有効長さLuを検討するために、第1の不等式を使用することができる。
【0177】
言い換えれば、実験的に且つ予期せずに、最後の冷間圧延に先立つ中間焼鈍R1の間、完全再結晶温度Trcを超えることが必要であり、これは記載した実施例に関係する合金の場合には600℃程度であるが、前記温度に到達すれば、過剰な再結晶を得ないように、金属に過度の総熱量を加えることは不要であることがわかる。このような要件は、中間焼鈍R1の温度と継続時間を組み合わせることで満たされ、後者のパラメーターは、所定の炉長に対する炉内の走行速度で表される。上記の条件下でパラメーター(T-Trc).Lu/Vを検討することにより、前記パラメーターを検討して、ストリップに適用される熱を定量化し、再結晶の動力学を仮定し、R1中に温度Trcを超えたとしても、R1によって与えられる再結晶速度が所定の範囲内に留まることを保証することが可能になる。
【0178】
最終冷間圧延LAF2に先立つ中間焼鈍R1が、ストリップが熱間圧延ストリップの厚みと冷間圧延ストリップの最終厚みとの間の中間厚みにあるときに再結晶を開始するのに不十分であれば、中間焼鈍R1は求められている冶金学的効果がなく、本発明が解決しようとする問題の観点から見て、あたかも中間焼鈍がなく、それらの最初に続く冷間圧延はまとめて単一冷間圧延工程を構成する単なる追加パスであるかのようにすべてが起こる。
【0179】
3回を超える冷間圧延シーケンスが実施され、したがって少なくとも2回の中間焼鈍Ri及びR1が実施される場合、最後の中間焼鈍R1、すなわち最終焼鈍Rfに先立つ最後の冷間圧延LAF2の前に実施される焼鈍は、Rf前の半製品の再結晶化度に関する本発明に要求される条件を満たす必要がある。
【0180】
磁気損失の測定値を、最も古典的な細構造特性のいくつか、例えば粒径、α又はγ繊維テクスチャの一部と関連付けようとすると、明らかな結果は得られない。しかし、二重冷間圧延によって得られるテクスチャ(Table 5(表5)参照)の増加した等方性が、このような改善に寄与しているという仮説を立てることができる。
【0181】
一方、経験上、中間焼鈍R1の後に、再結晶分率の影響が観察されることがわかっている。再結晶分率は高すぎてはならない。言い換えれば、Trcより大きい所定の温度Tに対して、焼鈍炉の有効長さLuにストリップが留まる時間は、以下の関係式で示されるように、長すぎてはならない:
26℃.分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃.分、
優先的には、50℃ 分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃ 分
これは本発明を遵守するための条件の1つである。
【0182】
ただし、再結晶は少なくてもよいが、ゼロであってはならない。
【0183】
LAF1、R1、LAF2及びRfに関して、Table 6(表6)における先行する本発明による実施例と同じ操作条件で、LAF1の前に完全に再結晶化していない試料(再結晶率35%)に対して試験を行った(Table 6(表6)の最終行)。この実施例から、本発明による実施例と比較して、テクスチャ成分{111}<112>が最終製品上ではるかに明白に優勢であること、おそらくテクスチャリングのより強い異方性のため磁気損失が増加すること、本発明に含まれる二重冷間圧延は十分に是正しなかったことが観察される。
【0184】
比較として、前の実施例と同じ条件で熱間圧延し冷却した合金2の試料に対して試験を実施した。試料は、単一冷間圧延シーケンスLAFを施し、試料を2.0mmから1.0mmに変化させ、続いて、以前の実施例と同じ条件で最終Rf焼鈍を行ったものである。
【0185】
最終静止焼鈍Rfの後、試料は27W/kg程度の磁気損失を有しており、したがって、この値は本発明の目的を満たすには高すぎると考えられる。
【0186】
上記のことは、二重圧延LAF1+LAF2が、中間焼鈍R1を伴い、非常に部分的な再結晶を引き起こし、本発明によって規定された条件下で実施され、他のすべての条件が同じであっても、金属の磁気損失を実質的に改善することを示している。再結晶のための最終静止焼鈍Rfの前に、主に歪み硬化された又は修復されたままのストリップは、他の条件が同じであれば、本発明により処理されたストリップの低い磁気損失を有さない。
【0187】
26℃.分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃.分、優先的には50℃.分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃.分という条件を満たすことにより、磁気損失を望ましいレベルまで引き下げるのに十分な再結晶化度が確実になる。
【0188】
記載した実施例において最終焼鈍である静止焼鈍Rfの後に、例えば静止焼鈍後に得られたストリップを切断する適合性を改善するために、他の熱処理又は熱機械処理を実施してもよいことは、このような処理が上記の予期される特性を劣化させない限り、排除されない。
【0189】
実際、これまで述べてきたように、最終静止焼鈍Rfは、冷間圧延ストリップから切り出した部品(例えば、ローター、ステーター、変圧器磁心要素等)に対して実施することができる。しかし、冷間圧延された静止焼鈍ストリップが切断される適合性が意図した用途にとって十分でないことが判明した場合、静止焼鈍Rfはコイル状冷間圧延ストリップに対して実施することができ、次に、ストリップを700~900℃の温度に10秒~1時間、優先的には10秒~20分かけて到達させる走行速度、長さ、炉の温度等の条件により、還元性雰囲気(優先的には純水素)下で、この時点では連続的に、静止焼鈍ストリップに新しい焼鈍を実施することができる。このような温度は無秩序フェライト領域に対応し、この温度に十分に急速な温度降下が始まる前に到達する必要がある。焼鈍は、比較的急速な冷却(少なくとも1000℃/時)で終了する。このような新しい焼鈍及びその後の冷却は、ストリップ材の切断される適合性を向上させ、最終部品(又はそのような最終部品の組立品)を高精度で又は困難な条件下で切断しなければならないある特定の用途にとって有利である。上記のものはストリップのテクスチャリングには影響を及ぼさない。900℃を超えると、相変態が起こり、特性が劣化する。
【0190】
より具体的には、最終部品が電気技術部品である場合、まず最終部品よりも大きな単位部品を重ね合わせ、それぞれを絶縁ワニスでコーティングし、接着により組み立てて多層組立品を形成するケースがある。前記多層組立品は、次にその正確な最終寸法に切断されるが、これは単位部品が優れた切断適合性を有している場合にのみ容易に行うことができ、ある特定の場合には、最後の連続焼鈍及びその後の冷却のみが実現することができる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に等原子のFeCo合金の冷間圧延ストリップ又はシートの製造方法であって、
- 厚み(eHR)が1.5~2.5mmに含まれる熱間圧延シート又はストリップを調製することであり、熱間圧延シート又はストリップの組成が、質量百分率で、以下:
* 47.0%≦Co≦51.0%;
* 微量≦V+W≦3.0%;
* 微量≦Ta+Zr≦0.5%;
* 微量≦Nb≦0.5%;
* 微量≦B≦0.05%;
* 微量≦Si≦3.0%;
* 微量≦Cr≦3.0%;
* 微量≦Ni≦5.0%;
* 微量≦Mn≦2.0%;
* 微量≦C≦0.02%;
* 微量≦O≦0.03%;
* 微量≦N≦0.03%;
* 微量≦S≦0.005%;
* 微量≦P≦0.015;
* 微量≦Mo≦0.3%;
* 微量≦Cu≦0.5%;
* 微量≦Al≦0.01%;
* 微量≦Ti≦0.01%;
* 微量≦Ca+Mg≦0.05%;
* 微量≦希土類元素≦500ppm;
* 鉄及び溶解することで発生する不純物である残部;
* 再結晶開始温度(Trc)及び100%再結晶した微細構造を有する前記ストリップ又はシート
からなる、熱間圧延シート又はストリップを調製することと、
- 次に、ストリップ又はシートの第1の冷間圧延工程(LAF1)を、1回又は複数のパスで70~90%の全体圧下率(TR1)で実施して、ストリップ又はシートの厚み(e1)を1mm以下にすることと、
- 次に、ストリップ又はシートを焼鈍炉に通しながら中間焼鈍(R1)を実施して、ストリップ又はシートの部分再結晶をもたらすことであり、前記ストリップ又はシートが速度で前記焼鈍炉に通され、部分再結晶化度が10~50%であり、有効長さLuを有する炉の有効ゾーンにおけるストリップ又はシートの温度が、Trc~900℃に含まれ、ストリップ又はシートが有効長さLuの有効ゾーンにおいて、26℃ 分≦(T-Trc).Lu/V≦160℃ 分であるような温度に15秒~5分間留まり、T及びTrcが℃単位、Luがm単位、Vがm/分単位で表され、ストリップ又はシートが焼鈍炉の出口において少なくとも600℃/時の速度で200℃以下の温度まで冷却される、ストリップ又はシートの部分再結晶をもたらすことと、
- 次に、焼鈍したストリップ又はシートの第2の冷間圧延工程(LAF2)を、1回又は複数のパスで60~80%の全体圧下率で実施して、冷間圧延したストリップ又はシートの厚み(e2)を0.05~0.25mmにすることと、
- 次に、冷間圧延ストリップ若しくはシート、又はストリップから以前に切り出された部分を、中性若しくは還元性雰囲気中、又は真空中で、750~900℃の温度にて、少なくとも30分間、静止最終焼鈍(Rf)に供して、ストリップ若しくはシート又は切り出された部分の完全な再結晶化を得、続いて、100~500℃/時の速度で冷却することと
を特徴とする、方法。
【請求項2】
(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧0.8%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
微量≦Si≦0.1%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
微量≦Cr≦0.1%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の冷間圧延工程(LAF1)の前に、少なくとも1つの追加の冷間圧延サイクル(LAFi)及び中間焼鈍(Ri)が実施されて、冷間圧延ストリップ又はシートを熱間圧延後の厚み(eHR)と第1の冷間圧延(LAF1)の入口厚みとの間の含まれる厚みとし、各追加焼鈍(Ri)中に、Trcと900℃との間に位置する炉の有効ゾーンにおけるストリップ又はシートの通過時間が、ストリップ又はシートの全再結晶化をもたらし、中間焼鈍(Ri)が、ストリップの温度がTrcと900℃との間にある炉の長さLuのゾーンにおいて、10秒~10分の間の通過時間を有し、続いて、炉の出口において、少なくとも600℃/時の速度で、200℃以下の温度までストリップ又はシートが冷却され、ストリップ又はシートが、前記追加焼鈍(Ri)の最後の後に100%再結晶した微細構造を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
熱間圧延後、第1の冷間圧延(LAF1)の前に、800~1000℃に含まれる温度から、少なくとも600℃/秒の速度で、熱間圧延ストリップ又はシートを室温まで冷却することにより、熱間圧延ストリップ又はシートが超急冷されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記超急冷が、熱間圧延の後に、中間的な再加熱なしに直接実施されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
焼鈍炉の雰囲気が、還元性雰囲気であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの追加の中間焼鈍が、焼鈍炉におけるストリップ又はシートの連続焼鈍であり、炉の有効ゾーンにおけるストリップ又はシートの温度が、Trc~900℃の間であり、ストリップが有効ゾーンに15秒~5分間留まること、並びに炉の出口におけるストリップ又はシートが、少なくとも600℃/時の速度で、200℃以下の温度まで冷却されること、並びに少なくとも1つの追加の冷間圧延(LAFi)が、1回又は複数のパスで実行され、全体圧下率が少なくとも40%となることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
最終静止焼鈍(Rf)の後、金属が少なくとも700℃、最大900℃に達するように、ストリップ又はシートの追加の連続焼鈍が少なくとも10秒、最大1時間、実施され、続いて、少なくとも1000℃/時の速度で冷却することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
実質的に等原子のFeCo合金であって、
合金の組成が、質量百分率で、
* 47.0%≦Co≦51.0%;
* 微量≦V+W≦3.0%;
* 微量≦Ta+Zr≦0.5%;
* 微量≦Nb≦0.5%;
* 微量≦B≦0.05%;
* 微量≦Si≦3.0%;
* 微量≦Cr≦3.0%;
* 微量≦Ni≦5.0%;
* 微量≦Mn≦2.0%;
* 微量≦C≦0.02%;
* 微量≦O≦0.03%;
* 微量≦N≦0.03%;
* 微量≦S≦0.005%;
* 微量≦P≦0.015;
* 微量≦Mo≦0.3%;
* 微量≦Cu≦0.5%;
* 微量≦Al≦0.01%;
* 微量≦Ti≦0.01%;
* 微量≦Ca+Mg≦0.05%;
* 微量≦希土類元素≦500ppm;
* 鉄及び溶解することで発生する不純物である残部
からなること、
- 合金の微細構造が、完全に再結晶されていること、及び
- 前記合金のテクスチャが、以下:
* 表面積又は体積を基準として、成分{001}<110>の8~20%が、最大15°の配向不良であること;
* 表面積又は体積を基準として、成分{111}<112>の8~25%が、最大15°の配向不良であること;
* 表面積又は体積を基準として、成分{111}<110>の5~15%が、最大15°の配向不良であること;
* 材料の残りが、最大15°の配向不良である他のテクスチャ成分からなり、それぞれが面積又は体積を基準として最大15%に相当し、前記他のテクスチャ成分と成分{001}<110>、{111}<112>及び{111}<110>のいずれかとの重なりが、面積又は体積を基準として10%を超えないこと
を特徴とする、合金。
【請求項12】
(V+W)/2+(Ta+Zr)/0.2≧0.8%であることを特徴とする、請求項11に記載の合金。
【請求項13】
微量≦Si≦0.1%であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の合金。
【請求項14】
微量≦Cr≦0.1%であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の合金。
【請求項15】
実質的に等原子のFeCo合金から切り出された磁性部品であって、請求項11又は12に記載の合金のストリップ又はシートの切り出しから生じることを特徴とする、磁性部品。
【請求項16】
実質的に等原子のFeCo合金から作られた磁気コアであって、請求項15に記載の切り出された磁性部品から作られたことを特徴とする、磁気コア。
【国際調査報告】