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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】複合材料を成形する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/44 20060101AFI20240119BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
B29C70/44
B29C43/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535822
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 FR2022050050
(87)【国際公開番号】W WO2022152999
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】2100363
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515306965
【氏名又は名称】ヘクセル ランフォルセマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペリヤ - コロン、パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥカーレ、ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ジマー、トマス
(72)【発明者】
【氏名】ポーティア、ジャン
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AC03
4F204AD16
4F204AG28
4F204AJ03
4F204AM28
4F204AR07
4F204FA01
4F204FA13
4F204FB01
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ37
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG28
4F205AJ03
4F205AM28
4F205AR07
4F205HA09
4F205HA23
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HK03
4F205HK04
4F205HM13
(57)【要約】
本発明は、特にプラスチックポリマー材料によって、互いに結合された強化繊維を含むプレートの形状を有する複合材料(I)を予備成形する方法に関するものである。特に、このような方法は、少なくとも以下のステップ:第2のチャンバ(4)の圧力P2を外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、第2のチャンバ(4)にガス(III)を導入し、こうして接触ゾーン(5)で複合材料(I)と2つの膜(1および2)との間の位置決めおよび接触の両方を維持しながら、上側膜(2)を下側膜(1)から距離を置いて局所的に維持するステップと、第1のチャンバ(3)に含まれるガス(III)を吸い取り、金型(20)の底部(21)に存在する成形面(22)全体にわたって下部膜(1)を押し付けるようにするステップとを含む、中間成形段階(b)を含む。本発明はまた、そのような方法を実施するのに適した装置に関するものでもある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料(I)をプレートの形態で予備成形する方法であって、前記複合材料(I)は、特にプラスチックポリマー材料によって、相互に結合された強化繊維を含み、前記方法は、以下の連続の段階を含む、すなわち、
(a)複合材料(I)を成形装置内に配置する段階であって、
(a1)金型(20)を提供するステップであって、前記金型(20)の非平面底部が、予備成形される前記複合材料(I)に与えられる形状に対応する成形面(22)を形成している、提供するステップと、
(a2)前記金型の前記底部(21)の上方に、予備成形される前記複合材料(I)が堆積される下側隔膜(1)と呼ばれる第1の隔膜と、前記複合材料(I)の上方に延在する上側隔膜(2)と呼ばれる第2の隔膜とを位置決めするステップであって、前記2つの隔膜(1および2)は、弾性変形可能であり、ガス(III)に対して不透過性であり、前記複合材料(I)が、前記成形面(22)の上方に配置される、位置決めするステップと、
(a3)前記2つの隔膜(1および2)を前記金型(20)と共に位置決めして、
前記金型(20)と前記下側隔膜(1)との間の、第1の可変体積(V1)を画定する第1の密閉チャンバ(3)と、
前記2つの隔膜(1および2)の間の、隔膜間体積と呼ばれる第2の可変体積(V2)を画定する第2の密閉チャンバ(4)であって、前記第2の密閉チャンバ(4)は、前記複合材料(I)を前記隔膜間体積(V2)内に収容する、前記第2の密閉チャンバ(4)と
を形成するステップと、
(a4)前記第2の密閉チャンバ(4)から前記ガス(III)を排出し、それによって前記隔膜間体積(V2)を減少させ、両方の隔膜(1および2)を前記複合材料(I)と接触させる、ステップと、
(a5)少なくとも1つの接触ゾーン(5)における前記成形面(22)上で、前記下側隔膜(1)の局所的な位置合わせを実行するステップであって、前記複合材料および前記2つの隔膜も、前記接触ゾーン(5)で接触する、実行するステップと
を含み、
前記配置する段階(a)は、得られた前記成形装置内に前記複合材料(I)を配置させ、前記成形装置自体は、大気圧に等しくすることができる外部圧力Pext下に配置され、前記成形装置内での前記複合材料の配置は、少なくとも1つの接触ゾーンにおいて、前記成形面上で前記下側隔膜が局所的に位置合わせされた状態で、両方が前記複合材料に接触している前記2つの隔膜によって前記複合材料が保持されていることに対応する、前記配置する段階と、
(b)中間成形段階であって、
前記第2のチャンバ(4)の圧力P2を前記外部圧力Pext、特に前記外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧よりも低く維持しながら、前記第2のチャンバ(4)にガス(III)を導入し、それによって前記接触ゾーン(5)で前記複合材料(I)と前記2つの隔膜(1および2)との間の前記位置合わせおよび前記接触の両方を維持しながら、前記上側隔膜(2)を前記下側隔膜(1)および前記複合材料(I)から距離を置いて局所的に維持する、ステップと、
前記第1のチャンバ(3)に含まれるガス(III)を排出して、前記金型(20)の底部(21)に存在する前記成形面(22)の全体にわたって前記下側隔膜(1)を押し付けるようにする、ステップと
を少なくとも含む、前記中間成形段階と、
(c)予備成形された複合材料(II)の所望の最終形状をもたらす最終成形・圧縮段階であって、前記最終成形・圧縮段階の間、加熱を行い、前記第2のチャンバ(4)に含まれるガス(III)を除去して、前記複合材料(I)と前記上側隔膜(2)との両方を前記下側隔膜(1)に押し付け、前記下側隔膜(1)自体は、前記金型(21)の底部、特に、成形面(22)に押し付けられ、前記第2のチャンバ(4)の前記圧力P2を低下させて、確実に圧縮を行う、前記最終成形・圧縮段階と、
(d)前記予備成形された複合材料(II)の冷却段階および型抜き段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法の全体を通して、少なくとも接触ゾーン(5)において、隔膜/複合材料アセンブリが前記成形面(22)上に載った状態で、前記2つの隔膜(1および2)と強化材料(I)との接触が維持されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a5)が、ステップ(a4)の後に、ガス(III)を前記第1のチャンバ(3)内に排気することによって実行され、その結果、その体積(V1)が減少して、前記下側隔膜(1)と前記成形面(22)との間に予備接触を確立する一方、前記第2のチャンバ(4)の前記体積(V2)は、一定に保たれることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記中間成形段階を通じて、ガス(III)の前記導入および前記排出は、前記圧力P1が前記圧力P2よりも低いままであり、前記圧力P2がそれ自体は外部圧力Pextよりも低く、特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧よりも低くなるように、前記第1のチャンバ(3)内の前記圧力P1および前記第2のチャンバ(4)内の前記圧力P2が制御および/または変更されるように実行されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記プラスチックポリマー材料を軟化させるために、前記中間成形段階(b)の全体を通じて、前記複合材料(I)を加熱することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチックポリマー材料を軟化させるために、前記中間成形段階の全体を通じて複合材料(I)を加熱する温度上昇ステップを含み、前記温度上昇ステップ中に、前記第1のチャンバ(3)および前記第2のチャンバ(4)の前記体積(V1およびV2)は、それらの増加を防止するように制御されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中間成形段階(b)は、前記第2のチャンバ(4)にガス(III)を導入し、前記第2のチャンバ(4)の圧力(P2)を前記外部圧力Pext、特に前記外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧よりも低く維持しながら、前記第1のチャンバ(3)に含まれる前記ガス(III)を排出して、前記金型(20)の前記底部(21)に存在する前記成形面(22)の全体にわたって前記下側隔膜(1)を押し付けるようにし、それによって前記隔膜間体積(V2)を増加させ、前記接触ゾーン(5)で前記複合材料(I)と前記2つの隔膜(1および2)との間の前記位置合わせおよび前記接触の両方を維持しながら、前記上側隔膜(2)を前記下側隔膜(1)から距離を置いて局所的に維持することによって実行されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のチャンバ(3)の前記体積(V1)の減少は、前記第2のチャンバ(4)の前記体積(V2)の増加と略等しいことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記中間成形段階(b)は、以下の連続ステップを含む、すなわち、
(b1)前記第2のチャンバ(4)にガス(III)を導入し、前記第2のチャンバ(4)の圧力P2を前記外部圧力Pext、特に前記外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧よりも低く維持しながら、前記第1のチャンバ(3)に含まれる前記ガス(III)を排出して、前記体積(V1)を減少させ、前記下側隔膜(1)を中間位置まで下降させるようにし、それによって前記隔膜間体積(V2)を増加させ、前記接触ゾーン(5)で前記複合材料(I)と前記2つの隔膜(1および2)との間の前記位置合わせおよび前記接触の両方を維持しながら、前記上側隔膜(2)を前記下側隔膜(1)から距離を置いて局所的に維持するステップと、
(b2)前記隔膜間体積(V2)を一定に維持しながら、前記第1のチャンバ(3)に含まれるガス(III)を排出して、前記金型(20)の前記底部(21)に存在する前記成形面(22)の全体にわたって前記下側隔膜(1)を押し付けるようにするステップと
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b1)において、前記第1のチャンバ(3)の前記体積(V1)の減少が、前記第2のチャンバ(4)の前記体積(V2)の増加と略等しいことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記中間成形ステップ(b)は、以下の連続ステップを含む、すなわち、
(b’1)前記第2のチャンバ(4)にガス(III)を導入し、前記第2のチャンバ(4)の圧力P2を前記外部圧力Pext、特に前記外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧よりも低く維持しながら、前記第1のチャンバ(3)に含まれる前記ガス(III)を排出して、その体積(V1)を減少させ、前記下側隔膜(1)を中間位置まで下降させるようにし、それによって前記隔膜間体積(V2)を増加させ、前記接触ゾーン(5)で前記複合材料(I)と前記2つの隔膜(1および2)との間の前記位置合わせおよび前記接触の両方を維持しながら、前記上側隔膜(2)を前記下側隔膜(1)から距離を置いて局所的に維持するステップと、
(b’2)前記第2のチャンバ(4)から前記ガス(III)を排出し、それによって前記隔膜間体積(V2)を減少させ、前記上側隔膜(2)を下降させ、両方の隔膜(1および2)を前記複合材料(I)と接触して配置させるようにするステップと、
(b’3)前記第2のチャンバ(4)にガス(III)を導入し、前記第2のチャンバ(4)の圧力(P2)を前記外部圧力Pext、特に前記外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧よりも低く維持しながら、前記第1のチャンバ(3)に含まれる前記ガス(III)を排出して、前記金型(20)の前記底部(21)に存在する前記成形面(22)の全体にわたって前記下側隔膜(1)を押し付けるようにし、それによって前記隔膜間体積(V2)を増加させ、前記接触ゾーン(5)で前記複合材料(I)と前記2つの隔膜(1および2)との間の前記位置合わせおよび前記接触の両方を維持しながら、前記上側隔膜(2)を前記下側隔膜(1)から距離を置いて局所的に維持するステップと
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b’1)および/またはステップ(b’3)において、前記第1のチャンバ(3)の前記体積(V1)の減少は、前記第2のチャンバ(4)の前記体積(V2)の増加と略等しいことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記下側隔膜(1)および前記上側隔膜(2)を徐々に下降させるために、ステップ(b’1)~(b’2)を、特に1~10回繰り返すことを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(a2)および(a3)において、両方の隔膜(1および2)は、水平に配置されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記冷却段階中に、前記金型(20)との摩擦を低減させるために、前記第1のチャンバ(3)内の圧力を増加させることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記プラスチックポリマー材料は、複合材料(I)の総重量の最大10%、好ましくは複合材料(I)の総重量の0.5%~10%、好ましくは複合材料(I)の総重量の2%~6%を構成することを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記プラスチックポリマー材料は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、熱可塑性部分と熱硬化性または熱架橋部分とを含むポリマー、およびそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記複合材料(I)は、特に織物および強化繊維の一方向シートから選択される繊維強化層の積層体を含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、またはセラミックス繊維であり、炭素繊維が特に好ましいことを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
複合材料(I)をプレートの形態に予備成形するための装置であって、
複合材料(I)を予備成形するための成形面(22)を画定する非平面底部(21)を有する金型(20)と、
下側隔膜(1)と呼ばれる第1の隔膜と、上側隔膜(2)と呼ばれる第2の隔膜であって、前記2つの隔膜(1および2)は、弾性変形可能であり、ガス(III)に対して不透過性であり、上下に配置され、前記金型の前記底部(21)の上方に延在する、前記第1の隔膜および第2の隔膜と、
前記2つの隔膜(1および2)および前記金型(20)と共に、
前記金型(20)と前記下側隔膜(1)との間の第1の密閉チャンバ(3)であって、第1の可変体積(V1)を画定する、第1の密閉チャンバ(3)と、
前記2つの隔膜(1および2)の間の第2の密閉チャンバ(4)であって、前記第2のチャンバ(4)は、隔膜間体積と呼ばれる第2の可変体積(V2)を画定し、予備成形される前記複合材料(I)を受け入れることを目的とした、第2の密閉チャンバ(4)と
を形成することを可能にする位置決め装置(9)であって、
前記第1および第2のチャンバ(3および4)はそれぞれ、出口弁(30および32)を備えており、前記チャンバ内に含まれるガス状媒体の出口を提供することを可能にし、前記出口弁(30および32)はそれぞれ、ガス状媒体流量・圧力調整器を備えた回路に接続され、関連するチャンバから前記ガス状媒体を排出することを可能にする、前記位置決め装置(9)と
を備える、前記装置において、
前記第2のチャンバ(4)は、入口弁(31)を備え、前記第2のチャンバ(4)へのガス状媒体の導入を可能にし、前記入口弁(31)は、ガス状媒体流量・圧力調整器を備えた回路に接続され、第2のチャンバ(4)へのガス状媒体の導入を可能にすることを特徴とする、装置。
【請求項21】
前記第1のチャンバ(3)は、入口弁(33)を備え、前記第1のチャンバ(3)へのガス状媒体の流入を可能にし、前記入口弁(33)は、ガス状媒体流量・圧力調整器を備えた回路に接続され、前記第1のチャンバ(3)へのガス状媒体の導入を可能にすることを特徴とする、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記第1のチャンバ(3)から前記第2のチャンバへガス(III)を循環させるための外部回路(34)を備えることを特徴とする、請求項20または21に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料を成形する方法およびその方法に適した装置の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、一連の強化繊維(特に、カーボンまたはアラミド)と、強化繊維同士の結合を少なくとも部分的に提供するポリマー材料と組み合わせて構成されている。複合材料は多くの場合、特に、航空、自動車、スポーツ、またはエネルギー分野で、多かれ少なかれ複雑な形状の複合部品の製造を目的としている。複合部品または複合物品の製造は、いわゆる「間接」プロセスと、いわゆる「直接」または「LCM」(液体複合成形)プロセスの2種類のプロセスによって実行され得る。
【0003】
間接プロセスでは、圧縮成形ステップによって所望の複合部品を製造するように成形された、ポリマー樹脂が予め含浸された複合材料として知られる複合材料が使用される。繊維状プリプレグ材料には、最終複合部品に対して所望の量の樹脂が含まれる。
【0004】
直接プロセスは、1つまたは複数の繊維状強化材が「ドライ」状態(つまり、最終マトリックスなし)で処理され、マトリックスとして使用される樹脂が、フォーム上に連続的に付けられる繊維状強化材の個別の層の各々の上に、例えば、繊維状強化材を含む金型への射出(「RTM」(樹脂トランスファー成形)プロセス)によって、繊維状強化材の厚さ全体への注入(「LRI」(液体樹脂注入)プロセスまたは「RFI」(樹脂フィルム注入)プロセス)によって、またはローラーまたはブラシによる手動コーティング/含浸によって、別々に処理されるという事実によって定義される。
【0005】
RTM、LRI、またはRFIプロセスでは、通常、所望の最終物品の形状のプリフォームを最初に製造する必要があり、次に、このプリフォーム(通常は層の積層体)に、マトリックスを構成することを目的として樹脂を含浸させる。樹脂は、圧力差と温度差を利用して射出または注入され、必要な樹脂の全量がプリフォームに含まれた後、アセンブリを高温に加熱して重合/架橋サイクルを完了させ、それによってそれを硬化させる。
【0006】
出発複合材料は、ドライであってもプリプレグであっても、平坦な表面を有し、プレートとしても知られる平坦な構造の形態で提供され、最終複合材部品の所望の形状に成形される必要がある。多くの場合、成形された複合材料は、プリフォームとしても知られる単一のプレートを形成するために事前に組み合わせられたいくつかの材料の層の積層体で構成される。従来技術における成形プロセスは、主に2つのタイプに分かれ、
図1に示されるように、金型を閉じる隔膜と組み合わせて、底部に非平面の成形面を備えたオープンモールドを使用し、単一隔膜プロセスとも呼ばれるプロセスと、
図2に示されるように、成形される複合材料が間に配置された2つの隔膜と組み合わせてオープンモールドを使用し、二重隔膜プロセスとも呼ばれるプロセスである。
【0007】
単一隔膜プロセスは、凸状の単一曲面部品の成形に適している。これらのプロセスは、多くの変形(特に、曲げおよび層間の滑り)の可能性を可能にする。しかしながら、それらの主な欠点の1つは、図1に示されるように、プロセスの最初のステップで形状を与えることを目的とした凸形状の上に単に配置される、予備成形される平らな複合材料の不均衡に関連している。さらに、この複合材料上の隔膜の位置合わせも、金型の形状における底部での隔膜の位置決めに影響を与える可能性がある。したがって、出発材料の位置決め、およびその結果としてのその変形が制御されず、結果として得られるプリフォームの機械的性能が低下する。さらに、そのようなプロセスでは、成形プロセス中に成形される材料の残りを制御することができず、二重曲率を有する形状を得ることは困難である。最後に、単一隔膜プロセスでは、所与の開始複合材料および形状に対して、プロセスの最適化の潜在的な源となり得る、プロセス中に調整できるパラメータがない。
【0008】
位置決めの問題を克服するために、いわゆる二重隔膜プロセスが開発された。減圧下で2つの隔膜を使用するこのような成形プロセスには、成形プロセス全体を通じて複合材料が確実に保持され、正確に位置決めされるという利点がある。また、横方向応力下での平面せん断変形によって複合材料を二重曲率形状に成形する可能性も提供する。
【0009】
この目的を達成するために、複合材料を2つの隔膜の間に配置し、2つの隔膜間に減圧をかけて、複合材料が成形前に所定の位置に確実に保持されるようにする。二重隔膜プロセスは、
図2に示されるように、平面材料が下側隔膜1上に配置された後、単一隔膜プロセスのように重力変位の影響を受けないため、層の位置 の制御と、
・自動化を実現する能力の向上と、
・特許文献1で提案されているように、2つの隔膜間に加えられる圧力を変化させることでプロセスを調整する可能性と、
・特に非対称構成の場合に、単一隔膜プロセスよりも複雑な形状の材料の成形に使用できる可能性と、
を提供する。実際、曲げ変形が常に支配的であるが、変形モードは、層内および層間の滑り、ならびに平面せん断にまで及び、二重曲率形状を得ることが可能になる。
【0010】
しかしながら、横方向の応力によって層間の滑りが制限され、単純な曲率の場合でも、結果として得られる成形材料に欠陥(例えば、しわ)が誘発される可能性があることが分かっている。実際、2つの隔膜間に真空に近い圧力を加えると、複合材料の圧縮が増加し、繊維の滑り能力が低下し、複合材料がいくつかの層の積層体の形態である場合には、層間の滑り能力が低下するため、成形中にしわが発生する。この現象を低減させるために、特許文献1は、プロセスの第1段階中に隔膜間空間に加えられる圧力を変化させ、最終成形・圧縮ステップ中に圧力を10mbar未満の値に下げる前に、より高い値(例では、500mbar)に維持することを提案した。しかしながら、このような調整によって欠陥が完全に除去されるわけではないが、減少は見られる。材料、厚さ、および所望の形状によっては、欠陥が残る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第9,259,859号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これに関連して、本発明は、従来技術で遭遇する成形上の問題を解決することを可能にする新しい成形プロセスおよび装置を提案する。発明者らは、より高い柔軟性を提供し、それによって単一隔膜プロセスと二重隔膜プロセスの両方の利点を享受できると同時に、それらの欠点を補うことを可能にするプロセスおよび装置を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、特にプラスチックポリマー材料によって、共に結合された強化繊維を含むプレートの形態の複合材料を予備成形する方法であって、予備成形される複合材料が、成形面を有する金型と下側隔膜との間に形成された第1の密閉チャンバを備えた成形装置内に配置され、前記第1のチャンバは、第1のモジュール体積V1を画定し、第2の密閉チャンバは、第1の隔膜と第1の隔膜の上方に配置された第2の隔膜との間に形成され、前記第2のチャンバは、隔膜間体積と呼ばれる第2のモジュール体積V2を画定し、複合材料はこの隔膜間体積V2内に収容される、方法に関するものである。本発明に係る方法は、中間成形段階(b)を含み、この中間成形段階(b)では、ガスが第2のチャンバに導入され、それによって上側隔膜が下側隔膜から局所的に距離を置いて維持される一方、第2のチャンバの圧力P2を成形装置の外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持し、下側隔膜を成形面に当接して配置する。
【0014】
本発明の目的は、複合材料をプレートの形態で予備成形する方法であって、前記複合材料は、特にプラスチックポリマー材料によって、互いに結合された強化繊維を含み、前記方法は、以下の連続段階:
(a)複合材料を成形装置内に配置する段階であって、以下のステップ:
(a1)予備成形される複合材料に与えられる形状に対応する成形面を画定する非平面底部を備えた金型を提供するステップと、
(a2)金型の底部の上方に、予備成形される複合材料が堆積される下側隔膜と呼ばれる第1の隔膜と、複合材料の上方に延在する上側隔膜と呼ばれる第2の隔膜とを配置するステップであって、前記2つの隔膜は、弾性変形可能であり、ガスに対して不透過性であり、前記複合材料は、成形面の上方に配置される、ステップと、
(a3)2つの隔膜を金型と共に位置決めして、
金型と下側隔膜との間の第1の密閉チャンバであって、第1のモジュール体積V1を画定する、第1の密閉チャンバと、
2つの隔膜の間の第2の密閉チャンバであって、前記第2のチャンバは、隔膜間体積と呼ばれる第2のモジュール体積V2を画定し、複合材料は、隔膜間体積V2内に収容される、第2の密閉チャンバと、
を形成するようにする、ステップと、
(a4)第2の密閉チャンバからガスを排出し、それによって隔膜間体積V2を減少させ、両方の隔膜が複合材料と接触するようにする、ステップと、
(a5)少なくとも1つの接触ゾーンにおける成形面に下側隔膜を局所的に取り付けるステップであって、複合材料および2つの隔膜も、前記接触ゾーンで接触する、ステップと、
を含み、
配置する段階は、こうして得られた成形装置内に複合材料の配置をもたらし、前記成形装置自体は、大気圧に等しくすることができる外部圧力Pext下に配置され、成形装置内での複合材料の配置は、少なくとも1つの接触ゾーンにおいて、成形面上で下側隔膜が局所的に位置合わせされた状態で、両方が複合材料に接触している2つの隔膜によって複合材料が保持されていることに対応する、段階と、
(b)中間成形段階であって、少なくとも以下のステップ:
第2のチャンバの圧力P2を外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、第2のチャンバにガスを導入し、それによって接触ゾーンで複合材料と2つの隔膜との間の位置合わせおよび接触の両方を維持しながら、上側隔膜を下側隔膜から距離を置いて局所的に維持する、ステップと、
第1のチャンバからガスを排出して、金型(20)の底部(21)の成形面(22)全体にわたって下側隔膜(1)を押し付けるようにする、ステップと、
を含む、中間成形段階と、
(c)予備成形された複合材料の所望の最終形状をもたらす最終成形・圧縮段階であって、最終成形・圧縮段階の間、加熱が行われ、その間、第2のチャンバに含まれるガスを除去して、複合材料と上側隔膜の両方を下側隔膜に押し付けるようにし、下側隔膜自体は、金型の底部(特に、成形面)に押し付けられ、圧力P2を低下させて、確実に圧縮するようにする、最終成形・圧縮段階と、
(d)予備成形された複合材料の冷却段階および型抜き段階と、
を含む、方法である。
【0015】
したがって、本発明に係るプロセスは、減圧下で複合材料を成形するために2つの隔膜を使用するハイブリッドプロセスである。それは、まず、従来技術の単一および二重隔膜成形の2つのプロセスのハイブリッド化を可能にし、複合材料平面の配置および維持は、2つの隔膜の存在によって確保され、この制御はプロセス全体を通じて継続され、なぜなら、プロセス全体を通じて、2つの隔膜は、少なくとも接触ゾーンのレベルで複合材料と接触した状態に維持され、そこで隔膜/複合材料アセンブリが成形面上に支持されるからである。位置決め段階(a)の終わりに、複合材料は2つの隔膜間で圧縮された状態に保たれ、ステップ(a4)に続いて、第2の隔膜間チャンバは有利にはその最小体積にあり、下側隔膜は、特に成形面の最も高いゾーンに対応する少なくとも1つの接触ゾーン上で成形面に当接する。続いて、中間成形(b)中に複合材料に加えられる機械的応力は、複合材料が配置される2つの隔膜間の第2のチャンバの体積を調整することによって変更され、それによって複合材料が成形中に受ける機械的応力が低減される。中間成形ステップ(b)において、本発明は、2つの隔膜が複合材料に及ぼす圧力を低減し、それによってしわのリスク、特に、曲げ変形による制御されない層間の滑りから生じるしわのリスクを低減/排除することを提供する。本発明に係る方法は、中間成形ステップ(b)(予備成形ステップとも呼ばれる)を提供し、その間に複合材料は、最適な(完璧な)品質を保証する動きの自由を取り戻す。しかしながら、その正しい位置決めは、上側隔膜と接触ゾーンの成形面上での支持によって加えられる圧力によって保証される。
【0016】
特に、中間成形段階(b)では、ガス状媒体が第2のチャンバに導入され、前記第2のチャンバの体積が増加すると同時に、圧力P2が外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持される。したがって、上側隔膜は、下側隔膜から局所的に距離を置いて保持される一方、接触ゾーンでは、複合材料と2つの隔膜との間の位置合わせと接触の両方が維持される。下側隔膜からその表面の一部にわたる上側隔膜のこの間隔は、中間成形段階(b)中に第2のチャンバに添加されるガス状媒体の存在によって達成される。特に、上側隔膜は、(接触ゾーンでの複合材料と2つの膜との間の位置合わせと接触の両方を維持しながら)複合材料からも局所的に離間している。
【0017】
本発明によれば、成形面上の補強材の接近および位置決めが制御される。補強材は、第1の隔膜が下降する際の動きに追従し、ほぼ完全かつ迅速に成形面に押し付けられる。一方、圧力P2を外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、中間成形段階(b)中に第2のチャンバの体積を増加させることにより、上側隔膜の下降は、補強材および下側隔膜に追従せず、その移動は、初期位置合わせに対応する接触ゾーンにおける多かれ少なかれ広い領域を除いて、下側隔膜との変位を有する。この中間成形段階(b)中に2つの隔膜間に維持される空間により、材料内の繊維により多くの動きの自由を与え、応力が最小限に抑えられ、最終的に成形された材料に欠陥が存在することが回避される。しかしながら、複合材料上の上側隔膜の接触領域に維持される支持体自体が下側隔膜上に載り、それ自体が成形面上に載置されることにより、複合材料を固定すべき位置に配置することが可能となり、複合材料が成形面上で滑るのを防止し、正しい形状が得られることを保証する。
【0018】
また、本発明に係る方法は、その実施中に変更できるパラメータの数を増やし、こうして特に材料および所望の最終形状に従って成形を調整することを可能にする。それは、自動化にも理想的に適している。
【0019】
本発明に係る方法では、ステップ(a5)が、ステップ(a4)の後に、ガスを第1のチャンバ内に排気することによって実行され、その結果、第1のチャンバの体積V1が減少して、下側隔膜と成形面との間に予備接触を確立する一方、第2のチャンバの体積V2は、一定に保たれる。
【0020】
前述の実施形態と組み合わせることができる別の一実施形態によれば、中間成形段階(b)を通じて、ガスの導入および排出は、圧力P1が圧力P2よりも低いままであり、圧力P2がそれ自体は外部圧力Pextよりも低く、特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧よりも低くなるように、第1のチャンバ内の圧力P1および第2のチャンバ内の圧力P2が制御および/または変更されるように実行される。
【0021】
本発明によれば、中間成形段階(b)全体を通じて、プラスチックポリマー材料を軟化させるために複合材料を加熱することができる。予備成形の補助として機能し得るこのような加熱の使用は、プラスチックポリマー材料の1つまたは複数の構成ポリマーの性質に従って当業者によって適合されるであろう。典型的には、40℃~250℃の範囲、特に70℃~200℃の温度での加熱が提供され得る。しかしながら、本発明に係る方法は、複合材料中に存在するポリマープラスチック材料に応じて、いわゆる冷間予備成形(室温、約25℃)を行うのにも完全に適合する。古典的には、従来技術のプロセスと同様に、成形および圧縮の最終段階は、複合材料中に存在するポリマープラスチックに応じて、特に40~250℃の範囲、特に70℃~200℃の温度の高温で実行される。
【0022】
プロセスのどの段階でも加熱を行うと、温度の上昇により材料の機械的特性、ガス体積、および圧力が変化する。したがって、隔膜間体積および/または第1のチャンバの体積を変化させることによって、第1のチャンバの体積をこれらの変更に対してよりよく適合させることが可能である。
【0023】
特定の実施形態によれば、本発明に係る方法は、プラスチックポリマー材料を軟化させるために、中間成形段階全体にわたって、複合材料の加熱が確実に行われるように、温度上昇ステップを含み、所望の加熱温度をもたらす温度上昇ステップ中に、第1のチャンバおよび第2のチャンバの体積V1およびV2は、体積の増加を回避するように制御される。
【0024】
本発明に係る方法の第1の代替実施形態によれば、中間成形段階(b)は、第2のチャンバにガスを導入し、第2のチャンバの圧力を外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、第1のチャンバに含まれるガスを吸引によって除去して、金型の底部に存在する成形面全体にわたって下側隔膜を押し付けるようにし、こうして隔膜間体積V2を増加させ、接触ゾーンで複合材料と2つの隔膜との間の位置合わせおよび接触の両方を維持しながら、上側隔膜と下側隔膜との間の距離を局所的に維持することによって実行される。有利には、第1のチャンバの体積V1の減少は、第2のチャンバの体積V2の増加と等しいか、または略等しい。本発明によれば、略等しいとは、プラスまたはマイナス5%、またはさらにプラスまたはマイナス2%に等しいことを意味する。
【0025】
本発明に係る方法の第2の代替実施形態によれば、中間成形段階(b)は、以下の連続ステップ:
(b1)第2のチャンバにガスを導入し、第2のチャンバの圧力P2を外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、第1のチャンバに含まれるガスを排出して、体積V1を減少させ、下側隔膜を中間位置まで下降させるようにし、こうして隔膜間体積V2を増加させ、接触ゾーンで複合材料と2つの隔膜との間の位置合わせおよび接触の両方を維持しながら、上側隔膜(2)を下側隔膜から距離を置いて局所的に維持するステップと、
(b2)隔膜間体積V2を一定に保持しながら、第1のチャンバからのガスを排出して、金型の底部の成形面全体に対して下側隔膜を押し付けるようにするステップと、
を含む。
【0026】
特に、ステップ(b2)は、成形される複合材料、第1の隔膜、および成形面上への第2の隔膜の遅延的ではあるが同時にメッキを行い、その後にステップ(c)が続く。
【0027】
有利には、本発明に係る方法の第2の代替実施形態でも、ステップ(b1)において、第1のチャンバの体積V1の減少は、第2のチャンバの体積V2の増加と等しいか、または略等しい。
【0028】
本発明に係る方法の第3の代替実施形態によれば、中間成形段階(b)は、以下の連続ステップ:
(b’1)第2のチャンバにガスを導入し、第2のチャンバの圧力P2を外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、第1のチャンバに含まれるガスを排出して、第1の体積V1を減少させ、下側隔膜を中間位置まで下降させるようにし、それによって隔膜間体積V2を増加させ、接触ゾーンで複合材料と2つの隔膜との間の位置合わせおよび接触の両方を維持しながら、上側隔膜を下側隔膜から距離を置いて局所的に維持するステップと、
(b’2)第2のチャンバからガスを排出し、それによって隔膜間体積V2を減少させ、上側隔膜を下降させ、両方の隔膜を複合材料と接触して配置させるようにするステップと、
(b’3)第2のチャンバにガスを導入し、第2のチャンバの圧力P2を外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、第1のチャンバに含まれるガスを排出して、金型の底部に存在する成形面全体にわたって下側隔膜を押し付けるようにし、こうして隔膜間体積V2を増加させ、接触ゾーンで複合材料と2つの隔膜との間の位置合わせおよび接触の両方を維持しながら、上側隔膜を下側隔膜から距離を置いて局所的に維持するステップと、
を含む。
【0029】
有利には、本発明に係る方法のこの第3の代替実施形態でも、ステップ(b’1)および/またはステップ(b’3)において、第1のチャンバの体積V1の減少は、第2のチャンバの体積V2の増加と等しいかまたは略等しい。
【0030】
本発明に係る方法を実行する第3の代替実施形態では、下側隔膜および上側隔膜を徐々に下降させるために、ステップ(b’1)~(b’2)を、特に例えば1~10回繰り返すことができる。
【0031】
本発明に係る方法では、実施形態または代替実施形態に関係なく、一般的に、ステップ(a2)およびステップ(a3)において、2つの隔膜が水平に配置される。これにより、プロセスの開始時に、下側隔膜上に置かれたプレート状複合材料の位置決めのより良好な制御が可能になる。以下の説明から理解されるように、単にチャンバを形成すること、したがって一方では隔膜間と、他方では下側隔膜と金型との間のシールを得ることからなるステップ(a3)中、水平位置は維持される。
【0032】
本発明に係る方法では、実施形態または代替実施形態に関係なく、一般的に、ステップ(a2)の終わりに、2つの隔膜は平らであるか、または自重によって誘発されるそれらの曲げ変形(面外)を最小限に抑えるように引き伸ばされる。しかしながら、隔膜は、弾性変形、さらには塑性変形の能力を維持するために、あまりにも重要な平坦な伸び(すなわち、前記隔膜の平面内)を避けて伸ばされる。この目的のために、各々の隔膜は引き伸ばされるが、その面伸びは5%未満であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る方法のすべての実施形態および代替実施形態と互換性のある一実施形態によれば、冷却段階中、特に金型との摩擦を低減するために、第1のチャンバ内の圧力を高めることができる。次に、第2のチャンバ内の圧力P2は、第1のチャンバ内の圧力P1よりも低くなり、第1のチャンバ内の圧力P1自体は、外部圧力Pext以下、特に、外部圧力Pextが大気圧(1.013bar)に等しい場合には大気圧以下である。特に、外部圧力Pextが大気圧に等しい場合、冷却段階中に、850mbarから大気圧(1.013bar)までの範囲の圧力P1を第1のチャンバ内で得ることができる。この圧力の増加は、第1のチャンバにガスを追加することによって、特に空気を追加することによって達成することができる。しかしながら、両方の隔膜は、複合材料と成形面に押し付けられたままになるため、体積V1とV2は一定に保たれる。
【0034】
本発明に係る方法は、複合部品の直接製造プロセスを目的とした、いわゆるドライ複合材料の成形に適している。特に、プラスチックポリマー材料は、複合材料の総重量の最大10%、好ましくはプレートの形態の複合材料の総重量の0.5~10%、好ましくは複合材料の総重量の2%~6%に相当する。本発明に係る方法は、10%を超えるより多くのプラスチック含有量を含むプリプレグ複合材料を成形するために使用することもできる。特に、この場合、プラスチックポリマー材料は、プレートの形態の複合材料の総重量の少なくとも20%、プレートの形態の複合材料の総重量の最大60%、好ましくはプレートの形態の複合材料の総重量の20%~40%を占めることができる。
【0035】
プレートの形態で存在する複合材料に関係なく、プラスチックポリマー材料は、特に、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、熱可塑性部分と熱硬化性または架橋部分とを含むポリマー、およびそれらの混合物から選択される。
【0036】
さらに、従来、複合材料は、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、またはセラミックス繊維、または当業者に知られている他の強化繊維から形成され、炭素繊維およびガラス繊維が特に好ましい。
【0037】
特定の実施形態によれば、実施例に顕著に当てはまるように、プレートの形態の複合材料は、繊維強化層の積層体を含み、前記繊維強化層は、特に織物および強化繊維の一方向層から選択される。この繊維強化層の積層体は、ポリマープラスチック材料および/または縫製または編みタイプの他の手段によって得られる均一な特性を有する。
【0038】
本発明はまた、複合材料をプレートの形態に予備成形するための装置であって、
予備成形される複合材料用の成形面を画定する非平面底部を有する金型と、
下側隔膜と呼ばれる第1の隔膜と、上側隔膜と呼ばれる第2の隔膜であって、前記2つの隔膜は、弾性変形可能であり、ガスに対して不透過性であり、上下に配置され。金型の底部の上方に延在する、第1の隔膜および第2の隔膜と、
2つの隔膜および金型と共に、
金型と下側隔膜との間の第1の密閉チャンバであって、第1の可変体積V1を画定する、第1の密閉チャンバと、
2つの隔膜の間の第2の密閉チャンバであって、前記第2のチャンバは、隔膜間体積と呼ばれる第2の可変体積V2を画定し、予備成形される複合材料を受け入れることを目的とした、第2の密閉チャンバと、
を形成することを可能にする位置決め装置であって、
第1および第2のチャンバはそれぞれ、出口弁を備えており、前記チャンバ内に含まれるガス状媒体の出口を確保することを可能にし、前記出口弁はそれぞれ、ガス状媒体流量・圧力調整器を備えた回路に接続され、関連するチャンバからガス状媒体が排出されることを可能にする、位置決め装置と、
を備える、装置において、
第2のチャンバは、入口弁を備え、第2のチャンバへのガス状媒体の導入を確実にすることができ、前記入口弁は、ガス状媒体流量・圧力調整器を備えた回路に接続され、第2のチャンバへのガス状媒体の確実に導入することができる、装置に関するものである。
【0039】
好ましい一実施形態によれば、第1のチャンバは、入口弁を備え、第1のチャンバへのガス状媒体の流入を可能にし、前記入口弁は、ガス状媒体流量・圧力調整器を備えた回路に接続され、第1のチャンバへのガス状媒体の導入を可能にする。このような装置により、特に、第1のチャンバ内の圧力を増加させることができ、特に冷却段階中の金型との摩擦を低減することができる。
【0040】
従来技術で提案されている成形装置では、出口弁は、2つのチャンバのレベルにのみ存在し、隔膜間空間および下側隔膜と金型の間の空間から空気を除去する機能を有する。したがって、両方のチャンバ内の圧力と体積は、成形中にのみ低減できる。本発明によれば、入口弁が、第2のチャンバ(隔膜間チャンバ)のレベル、さらには第1のチャンバ(下側隔膜と金型との間に位置するチャンバ)のレベルに追加されており、それによって関連するチャンバ内の体積および/または圧力を増大させることが可能となり、それによってプロセスを調節し、成形の中間段階中、さらには冷却中に材料に課される応力を低減することができる。
【0041】
本発明に係る装置のいずれにおいても、入口弁および出口弁の一部または全部は、様々な弁またはタップに対応し得る。同じチャンバに取り付けられた入口弁および出口弁が、実際には、チャンバ/外部回路の方向に入口モードまたは出口モードで弁を調節するために空気圧システムに接続された入口および出口を備える単一の弁であり得ることも可能である。
【0042】
いくつかの実施形態では、装置が、第1のチャンバから第2のチャンバへガスを循環させるための外部回路を含むことが予測され得る。このような構成により、両方のチャンバの体積を同時に変更することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】単一隔膜を用いた成形プロセス(いわゆる単一隔膜プロセス)において従来技術で使用される装置の断面図である。
図2】2つの重ね合わされた隔膜を用いた成形プロセス(二重隔膜プロセス)において従来技術で使用される装置の断面図である。
図3A】本発明に係る成形プロセスの実施に適合した、本発明に係る装置の断面図である。
図3B】第1のチャンバにはガス入口用の弁が備えられている、本発明に係る成形プロセスを実行するのに適した、本発明に係る別の装置の断面図である。
図4】2つのチャンバを形成し、2つの隔膜を金型上に保持するための接続装置を示す、本発明に係る成形装置の斜視図である。
図5図4に示される接続装置の様々な部分を示す部分斜視図である。
図6】第1の代替実施形態に係る、本発明に係るプロセスの様々なステップの図である。
図7】第2の代替実施形態に係る、本発明に係るプロセスの様々なステップの図である。
図8】第3の代替実施形態に係る、本発明に係るプロセスの様々なステップの図である。
図9】第1のチャンバから第2のチャンバへガスを循環させるための外部回路を備える、本発明に係る装置の断面図である。
図10】実施例1a~3で使用した金型の成形領域に存在する突出部の斜視図である。
図11】比較例1bで得られた予備成形材料を示し、欠陥を構成するしわの存在を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の様々な実施形態を説明する前に、いくつかの概念および用語を定義する。
【0045】
プレートの形態で存在する複合材料は、強化繊維とプラスチックポリマー材料をベースにした単一材料で構成することも、そのような材料の積層体に相当することもできる。複合出発材料は、平面であり、一定の厚さを有することができるものの、その幅と長さがその厚さよりもはるかに大きいという事実を反映してプレートと呼ばれる。特に、プレートの形態の材料は、それぞれ出発複合材料の厚さの少なくとも10倍、さらには少なくとも10~1000倍の幅および長さを有することができる。本発明の範囲内で、プレートの形態の複合出発材料は、特に0.2mm~50mm、好ましくは0.5mm~20mmの厚さを有する。
【0046】
従来技術において成形ステップに使用される任意の複合出発材料を本発明の範囲内で使用することができる。このような材料は、1つまたは複数の繊維強化層、特にガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、またはセラミックス繊維から選択される強化繊維の1つまたは複数の層を含み、カーボン繊維およびガラス繊維が特に好ましい。
【0047】
プレートの形態のこのような複合材料は、プラスチックポリマー材料によって共に結合された強化繊維のアセンブリによって、またはプラスチックポリマー材料を含む繊維強化層の積層体によって形成することができ、前記層は、プラスチックポリマー材料によって、および/または任意の他の適切な手段、特に縫製もしくは編み物によって、共に結合されている。
【0048】
特に、繊維状複合材料は、繊維強化層または繊維強化層の積層体を含み、特に以下から選択される:
・ポリマーバインダー、縫製、または編み物によって提供された構造的支持を有する一方向性シート;
・縫製または編み物によって結合された、一般的にノンクリンプファブリック(NCF)と呼ばれる、多軸補強材を構成する、様々な配向性を有する重ね合わされた一方向層のアセンブリ;
・C.Dufour、F.Boussu、P.Wang、D.Soulat、X.Legrand:“Analyse du comportement de renforts tisses interlock lors du procede de preformage[Analysis of the behavior of interlock woven reinforcements during the preforming process]”in the 21st Congres Francais de Mecanique[French Congress of Mechanics]、2013、5-6頁に記載されるような、特にタフタ、綾織、またはサテン補強を有する、経糸として知られる交差する糸の間に緯糸として知られる糸が挿入された、織り交ぜられた糸またはストランドの構造を有する布地(または織物)、または織り交ぜられたタイプの布地(または織物);
・絡み合いが挿入プロセスの結果ではない、織り交ぜられた糸またはロービングを有する構造を有する組紐。このような組紐は、特に、二軸、三軸、またはインターロックタイプとすることができる。特に、Boris Duchampの論文(https://www.theses.fr/197146112) Contribution a l’elaboration de preformes textiles pour le renforcement de reservoirs souples[Contribution to the development of textile preforms for the reinforcement of flexible cavities under the direction of Damien Soulat and Xavier Legrand(Damien SoulatとXavier Legrandの指導の下、柔軟な空洞の補強用繊維プリフォームの開発に貢献)-Lille 1、2016、および、M.Kowalski:“Developpement de croisements de raidisseurs composites[Development of composite stiffener crossings(複合補強材クロッシングの開発)]:Technology、Modelling and Optimization”、Thesis、University of Lille 1、2015、および、T.Liao、S.Adanur:“A novel approach to Three-dimensional modeling of interlaced fabric structures(インターレース布地構造の三次元モデリングへの新しいアプローチ)”、Text. Res. J.、68巻,841-847頁、1998を参照。
・ループを互いに織り交ぜて得られるニット。そのようなニットは、特に、ギャザーステッチ(または横編み)、キャストオフステッチ(または縦編み)、またはインターロックタイプのものとすることができる。インターロックニットは、ループの様々な層の間で、または反復可能な繰り返しの三次元パターンに基づいて規則正しい構造を作り出すことによって、厚さの中に織り交ざったループを有する他の2つの構造の変形例である。
【0049】
特に、複合材料Iは、先に定義したような繊維強化層の積層体と、プラスチックポリマー材料の少なくとも1つの多孔質層とを含む。このような多孔質ポリマー層は、特に、多孔質膜、グリッド、粉末コーティング、布地、または好ましくは不織布もしくはベールの形態であってもよい。
【0050】
特に、複合材料は、その面の各々にプラスチックポリマーの多孔質層を有する繊維強化層、または間にプラスチックポリマーの1つまたは複数の多孔質層が介在するいくつかの繊維強化層の積層体から構成することができる。複合材料に均一な特性を与えることは、本発明に係る装置内に配置される前に層間で層を結合することによって保証され、それによってその形状が保証される。繊維同士、さらには層同士の事前の結合は、存在するプラスチックポリマー材料の熱接着特性のみによって得ることも、縫製や編み物などの他の種類の結合を使用することによって得ることも完了することもできる。
【0051】
複合材料の例には、
・プラスチックポリマー(特に、不織布)の1つまたは複数の多孔質層をその面の各々に結合させた強化繊維の一方向シート、およびそれらの積層体からなる複合材料、
・少なくとも2つの異なる方向に向けられた強化繊維の数枚の一方向シートのアセンブリであって、一方向シートの間および表面上にプラスチックポリマー材料の1つまたは複数の多孔質層が存在し、前記アセンブリが縫製または編み物によって結合されているアセンブリ、
が含まれる。
【0052】
これらは、ドライ材料(すなわち、プラスチックポリマー材料は、複合材料の総重量の最大10%、好ましくは複合材料の総重量の0.5%~10%、そして好ましくはプレートの形態の複合材料の総重量の2%~6%に相当する)またはプリプレグとすることができる。
【0053】
このような材料は、特に特許出願または特許:欧州特許第1125728号明細書、米国特許第6,828,016号明細書、国際公開第00/58083号、国際公開第2007/015706号、国際公開第2006/121961号、米国特許第6,503,856号明細書、米国特許第2008/7435693号明細書、国際公開第2010/046609号、国際公開第2010/061114号および欧州特許出願公開第2 547 816号明細書、米国特許出願公開第2008/0289743号明細書、米国特許出願公開第2007/8361262号明細書、米国特許出願公開第2011/9371604号明細書、国際公開第2011/048340号、欧州特許第2547816号明細書、国際公開第2010/067003号、米国特許第8,361,262号明細書、米国特許第9,371,604号明細書、国際公開第2011/113751号および欧州特許第2491175号明細書、または米国特許第9,259,859号明細書に記載されている。
【0054】
「プラスチックポリマー材料」とは、熱の印加の有無にかかわらず、変形可能な任意のポリマーまたはポリマーの混合物を意味する。したがって、このようなプラスチックポリマー材料を含むプレートの形態の複合材料は、本発明に係る方法を適用することによって、所望の形状に変形および成形することができる。したがって、それは、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、熱可塑性部分と熱硬化性もしくは架橋部分とを含むポリマー、またはそのようなポリマーの混合物とすることができる。複合材部品の製造を目的として、複合材料の製造に従来使用されている任意のプラスチックポリマー材料が適している。熱硬化性ポリマーの例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂、およびこれらの樹脂の混合物が挙げられる。適切な熱可塑性ポリマーの例としては、ポリアミド(PA:PA6、PA12、PA11、PA6,6、PA6,10、PA6,12など)、ポリアミド(PA:PA6、PA12、PA11、PA6,6、PA6,10、PA6,12、...)、コポリアミド(CoPA)、ポリアミド-エーテルまたはエステルブロック(PEBAX、PEBA)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート-PET-、ポリブチレンテレフタレート-PBT-、...)、コポリエステル(CoPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアセタール(POM...)、ポリオレフィン(PP、HDPE、LDPE、LLDPE、...)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSU...)、ポリフェニレンスルホン(PPSU...)、ポリオレフィン(PP、HDPE、LDPE、LLDPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー(LCP)、フェノキシ、スチレン-ブタジエン-メチルメタクリレート(SBM)共重合体、メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート(MAM)などのブロック共重合体、およびそれらの混合物が含まれる。複合材料は、国際公開第2019/102136号に記載されているように、プラスチックポリマー材料として、部分的に架橋された、または部分的に架橋可能な熱可塑性ポリマーを含むプレートの形態とすることも可能である。いくつかの実施形態によれば、プレートの形態の複合材料のプラスチックポリマー材料は、熱可塑性ポリマー、熱可塑性部分を含むポリマー、またはそのようなポリマーの混合物からなる。
【0055】
「隔膜」とは、薄くて可撓性のある隔壁、言い換えれば可撓性のある膜を意味する。オープンモールドを使用する従来の成形プロセスでは、1つの隔膜(単一隔膜プロセス)または2つの重ねられた隔膜(二重隔膜プロセス)を使用して閉じられ、前記1つまたは複数の隔膜は、弾性変形を受ける可能性がある。隔膜が弾性変形を受ける可能性があるという事実は排他的ではなく、塑性変形も存在するという事実を排除するものではない。再利用可能な隔膜の場合、変形は、専ら弾性的である。使い捨ての単回使用の隔壁の場合、変形は、弾性可塑性(一部が弾性、一部が可塑性)となる可能性がある。したがって、そのような隔膜は必ずしもエラストマー材料で作られる必要はないが、Cytecのために出願された米国特許第9,259,859号に記載されているように、エラストマー材料で作られてもよい。隔膜は、特にゴム、ナイロン、またはシリコーンで作ることができる。本発明の方法および装置で使用できる隔膜のいくつかの例を表1に列挙する。
【0056】
【表1】
【0057】
破断時の伸び率および引張強さは、ASTM D882の規定に従って測定される。
【0058】
一般的に、厚さ10μm~3000μm、通常は50μm~100μmの隔膜を使用する必要がある。
【0059】
本発明の範囲内で使用される隔膜は、ガスに対する障壁を提供するため、ガスに対して不透過性であるものとして説明されている。言い換えれば、それらは非多孔質であり、その厚さをガスが通過することを許容せず、これにより密閉されたチャンバを得ることが可能になる。
【0060】
本発明に係る装置を図3A図3B、および図9に示す。図4および図5は、そのような装置の一例をより詳細に示している。
【0061】
図3Aは、出発複合材料Iが所定の位置に配置され、2つの隔膜1および2が金型20上に配置されて2つの密閉チャンバ3および4を形成した後の、本発明に係る装置を示す。金型20は、タンクまたはキャビティを画定し、その底部21に複合材料Iの成形面22を構成する形状面を有する。成形面22は、一定の厚さを有するものの、平面であり、当業者によってしばしば二次元的なものとして説明される初期複合材料Iとは対照的に、非平面かつ三次元の形状である。図示の例では、この成形面22は、金型20の底部21の中央まで延在する凸状の突出部23に対応する。図示の例では、図4に示されるように、金型の形状は正方形であり、この突出部23は対称であり、金型の対向する周壁25のうちの2つに平行な軸線を有する。このような突出部23の斜視図であるが、テーパ状の断面を有するものを図10に示す。成形面22に他の形状、例えば成形後に複合材料にU、C、L、またはV字形状を与える形状を提供することも可能である。いくつかのエンボス加工部を備えた他のより複雑な形状も、成形面22として提供することができる。
【0062】
本発明に係る装置の部分斜視図である図5に示されるように、金型20によって画定されるキャビティは、金型の上方に延在して型の周縁部26に取り付けられた第1の隔膜1によって閉じられる。配置装置により、第1の隔膜1と金型20との間に、第1のチャンバ3と呼ばれる密閉チャンバを作り出すことが可能になる。シールは、任意の適切な手段によって提供される。図4および図5に示される例では、ガスケット16が金型の周縁部26と隔膜1との間に設けられ、フレーム11が金型の周縁部26上に載置されて下側隔膜1をクランプするように隔膜1上に配置される。図示の例では、フレーム11上のフック18aと金型20の周壁25の外面上の締結具19aとを備えるクランプフックシステム17aが、隔膜1を金型20にクランプして固定するために使用される。図示の例では、ガスケット16の挿入を可能にするために、金型の周縁部26に溝15が設けられている。図示の例では、フレーム11の位置決めおよび位置合わせを容易にするために、金型の周縁部26に沿って係止部も設けられている。したがって、フレーム11の厚さは、2つの隔膜間の空間を画定し、成形される複合材料Iの厚さに応じて調整することができる。
【0063】
第1の隔膜1は、水平方向に延在し、この第1の隔膜1の上面1aに堆積される複合材料Iを支持し、所定の位置に保持することができる。
【0064】
第2の隔膜2は、第1の隔膜1の上方に延在し、複合材料Iはこれら2つの隔膜の間に位置する。したがって、第1の隔膜1は、下側隔膜と呼ばれ、第2の隔膜2は、上側隔膜と呼ばれる。図示の例では、上側隔膜2は、下側隔膜1と平行に延在するが、特に上側隔膜2については、水平面からずらして延在することが予想され得る。したがって、2つの隔膜1および2は、上下に配置され、金型20の底部21の上方、特に成形面22の上方に延在する。
【0065】
第1の隔膜1と同様に、位置決め装置により下側隔膜1と上側隔膜2の間に密閉チャンバを作り出すことができる。このチャンバは、第2のチャンバ4または隔膜間チャンバと呼ばれる。シールは、任意の適切な手段によって提供される。
図示の例では、フレーム11の上面と上側隔膜2との間にガスケット16が設けられ、上側隔膜2上にフレーム12が配置されてフレーム11を支持し、上側隔膜2をクランプしている。フレーム12上のフック18bと金型20の周壁25の外側の締結具19bとを含むクランプシステム17bは、上側隔膜2をクランプしてフレーム12を固定するために使用される。図示の例では、フレーム11の上面に溝15が設けられており、ガスケット16を挿入できるようになっている。フレーム11には、当接部も設けられており、フレーム12の位置決めと調整を可能にする。ボルトまたはタイクランプなどの他のクランプシステムも、締結具17aおよび/または17bの代わりに使用することができる。フレームは、隔膜を金型上に保持する。
【0066】
図示の例では、フレーム11および12と、ガスケット16およびクランプシステム17aおよび17bが、位置決め装置9を形成し、2つの密閉チャンバ3および4を形成する。
【0067】
フレーム11の厚さは2つの隔膜間の空間を画定し、それによって第2のチャンバ4の初期体積V2に影響を与える。このフレーム11の厚さは、成形される複合材料Iの厚さおよび最終的に所望の部品のサイズに応じて変えることができる。例えば、最大寸法が50cmの部品の場合、厚さは、わずか数センチメートル、またはそれ以下にすることができる。2mを超える部品については、取り扱いを容易にするため、またフレームの変形(自重によるたわみまたは反り)を防ぐために板厚を厚くする。
【0068】
図3Aに示される例では、いずれかのチャンバ内の圧力が変化する前の装置を示しており、したがって、装置の様々な要素が組み立てられた後のプロセスの開始時(ステップa3の終了時)において、下側隔膜1は、既に接触している可能性がある突出部23の頂部27から距離を置いて配置されている。同様に、上側隔膜2は、複合材料Iから距離を置いて配置され、これもまた既に接触している可能性がある。有利には、一方では上側隔膜2と補強材料Iとの間の最大距離、他方では下側隔膜1と金型20の底部21の最高部分(図示の例では突出部23の頂部27)との間の最大距離は、好ましくは最大20cmであり、好ましくは0.5cm~15cmの距離に相当するであろう。
【0069】
金型20は、金型20および下側隔膜1によって成形される第1のチャンバ3内に含まれる空気またはガス状媒体III(ガスIIIとも呼ばれる)の全部または一部を除去できる出口弁32を備える。したがって、下側隔膜1の可撓性および弾性の性質を考慮すると、この弁32は、第1のチャンバ3の最小体積に達したときに、第1のチャンバ3の体積V1を減少させること、さらにはその圧力P1を減少させることを可能にする。
【0070】
対照的に、隔膜間チャンバ4は、その内部に含まれる空気またはガス状媒体IIIの全部または一部の除去を可能にする出口弁30を備えるが、隔膜間チャンバ4内部に空気または別のガス状媒体IIIを追加することを可能にする入口弁31も備える。したがって、2つの隔膜1および2の可撓性および弾性特性を考慮すると、これらの弁は、第2の隔膜間チャンバ4の体積V2および/またはその圧力P2を変化させることを可能にする。特に、本発明の範囲内で、接触ゾーンを制御することによって、特に体積V1の減少を補償することによって複合材料Iに加えられる機械的応力を低減するために、プロセスのいくつかの段階で体積V2を増加させ、中間成形段階中に複合材料Iに追加の変形度を与えることが可能である。
【0071】
2つの隔膜1および2は、弾性変形可能、さらには塑性変形可能であるが、ガスIIIに対して不透過性であり、形成されたチャンバは、弁が閉位置にあるときにガス拡散を防止し、それによって、特にガスの抜き出しまたは注入ステップ中に、隔膜を介したガスの移動または漏れの存在によるガスの移動を防止し、したがって、チャンバ3および4の体積V1およびV2の適切な制御が弁によって達成される。
【0072】
図示の例では、前記弁30および31の通路は、2つの隔膜1および2の間に位置するフレーム11内に配置されている。
【0073】
比較すると、図1および図2は、それぞれ、従来技術の単一隔膜装置および二重隔膜装置を示しており、本発明の装置と共通の装置の部分には同じ符号を使用している。
【0074】
本発明に係る装置の一実施形態によれば、図3Bに示されるように、第1のチャンバ3は、ガス状媒体が前記チャンバ3に入ることができる入口弁33を備えることもできる。
【0075】
図示の例では、ガスIIIの出口弁32および入口弁33は、第1のチャンバ3のレベルで、金型20の底部21内かつ突出部23の両側に配置されている。しかしながら、第1のチャンバ3内では平衡が確立されるため、それらの位置決めは影響を及ぼさない。したがって、それらは、突出部23の同じ側に配置され得る。同様に、一方および/または他方は、底部21ではなく、金型20の周壁25に配置され得る。
【0076】
入口弁および出口弁により、第1および第2の隔膜1および2の変位を調節することが可能になり、それによって、第1および第2のチャンバ3および4の体積および/または圧力を変化させることができる。
【0077】
第1の隔膜1は、最初に複合材料Iの位置決めを制御し、重力変位中にその位置を維持するのに役立ち、成形ステップの進行度に影響を与える。隔膜間圧力P2が十分に低い場合には、第1のチャンバ3の最小体積V1が得られた後、第1の隔膜1は複合材料Iの圧縮に寄与する。第2の隔膜2は、成形プロセス全体を通じて複合材料Iを所定の位置に案内および保持するのに役立ち、成形およびその進行の制御において役割を果たす。隔膜間圧力P2が十分に低い場合には、第1のチャンバ3の体積V1が得られた後、上側隔膜2もまた、複合材料Iの圧縮に寄与する。
【0078】
第1および第2のチャンバ1および2へのガスの追加およびそこからのガスの除去により、これらのチャンバの体積の変化または圧力の変化が生じる可能性があることに留意すべきである。これらの変化は圧力に影響を及ぼし、それによって隔膜と複合材料にかかる機械的な力および応力に影響を及ぼし、それによって得られる予備成形複合材料の最終特性に影響を及ぼす。このチャンバに含まれる空間の体積を減らすことが(変形した材料間の接触、変形した材料と硬い材料の間の接触、変形した材料の伸びが小さい場合の張力の応答により)難しい場合、チャンバ内の圧力は主に体積に関連して減少することが強調されるべきである。対照的に、隔膜の下に1つまたは複数の圧縮可能な空間が存在する場合、または材料の張力の応答が弱いか、または伸びの可能性が大きい場合、チャンバの体積は主に圧力に関連して増加する。
【0079】
本発明に係る装置では、第2のチャンバ4内のガス入口弁31が圧力P2の増加の発生を可能にするとき、これにより複合材料Iの繊維および/または層を機械的に解放することが可能になり、それが体積V2の減少の発生を可能にするとき、複合材料Iと隔膜1および2にある程度の自由度を与え、様々な要素間の接触相互作用を調整する(特に摩擦を低減する)ことも可能になる。
【0080】
第2のチャンバ4からのガス出口弁30が圧力P2の減少を引き起こす場合、これにより複合材料Iを機械的に拘束することが可能となり(従来の二重隔膜ステップに従って)、体積V2の減少を引き起こす場合、これにより複合材料Iの成形に寄与することが可能となる。
【0081】
第1のチャンバ3のレベルでは、第1のチャンバ3からのガス出口弁32は、第1のチャンバ3の体積V1を減少させる主な機能を有し、これにより、成形面22の最終プレスまで成形プロセスを進めることが可能になる。
【0082】
第1のチャンバ3内のガス入口弁33は主に、圧力を下げて下側隔膜1を解放するために使用され、それにより、特に冷却中の摩擦を低減する。
【0083】
対照的に、図9は、第1のチャンバ3から第2のチャンバ4へガスIIIを循環させるための外部回路34を備える本発明に係る装置の場合を示す。特に、この回路は、第1のチャンバ3の出口弁32を第2のチャンバ4の入口弁31に接続する。これには、第1のチャンバ3から排出されたガスを第2のチャンバ4に再注入し、これにより、後述するように、プロセスの特定の段階の間、中間成形段階において、2つのチャンバの全体積を略一定に保持するという利点がある。
【0084】
典型的には、弁は、ガス状媒体流量・圧力調整器、特に空気圧調整器(図示せず)を備えた回路に接続されており、これにより、関連するチャンバ内の弁(出口または入口)の性質に応じて、ガス状媒体の抜き出しまたは注入が可能になる。したがって、回路は、関連する弁に接続されたガス注入ポンプまたはガス減圧ポンプ、または関連する弁が開位置にあるときの注入または吸引に適したその他の装置が含むことができる。
【0085】
本発明に係る装置は、本発明に係る方法に従って複合材料をプレートの形態に成形(または予備成形)するのに適している。
【0086】
いくつかの代替実施形態のステップが図6図8に示されている本発明に係る方法は、まず第一に、以下のステップ:
(a1)予備成形される複合材料Iに与えられる形状に対応する成形面22を画定する非平面底部を有する金型20を提供するステップと、
(a2)金型の底部21の上方に、予備成形される複合材料Iが堆積される下側隔膜1と呼ばれる第1の隔膜と、複合材料Iの上方に延在する上側隔膜2と呼ばれる第2の隔膜とを位置決めするステップであって、前記2つの隔膜1および2は、弾性変形可能であり、ガスIIIに対して不透過性であり、前記複合材料Iは、成形面22の上方に配置されるステップと、
(a3)2つの隔膜1および2を金型20と共に位置決めして、
金型20と下側隔膜1との間の第1の密閉チャンバ3であって、第1のモジュール体積V1を画定する、第1の密閉チャンバ3と、
2つの隔膜1および2の間の第2の密閉チャンバ4であって、前記第2のチャンバ4は、隔膜間体積と呼ばれる第2のモジュール体積V2を画定し、複合材料Iは、この体積V2内に収容される、第2の密閉チャンバ4と、
を形成するようにするステップとを含む位置決め段階(a)を含む(ステップ(a1)および(a2)は図示されない)。
【0087】
一般的に、ステップ(a2)では、上側隔膜1がまず金型20の上方に配置され、次に複合材料Iが、特にアライメントマークの使用を通じて、成形面22に対して所望の位置に配置され、最後に上側隔膜2が位置決めされる。また、2つの隔膜1および2を事前に配置して、複合材料が配置される第2のチャンバ4を形成し、アセンブリを金型20上に配置して第1のチャンバ3を形成し、任意の適切な保持またはクランプシステムに従ってアセンブリ全体を共に保持することも可能である。複合材料Iは、第1の隔膜1上に配置される前に、所望の寸法を有するべきであり、事前の切断が必要な場合があることが理解される。
【0088】
段階(a3)の終わりに、図3Aまたは図3Bに示されるように、複合材料が配置された装置が得られる。図示の例では、ステップ(a3)の後、上側隔膜2と複合材料Iとの間、および下側隔膜1と成形面22との間に接触はないが、様々な要素の初期位置決めおよび装置の寸法に起因して、これらの位置のいずれかでの接触が最初から発生する可能性がある。
【0089】
本発明に係る方法では、特に位置決め段階のステップ(a2)および(a3)中に、下側隔膜1上で複合材料Iが滑るのを回避しながら、複合材料Iの重力下降を促進するために、ステップ(a3)の終了時、またはさらにはステップ(a2)および(a3)の間でも、下側隔膜1が、またはさらには隔膜1および2の両方が水平に位置決めされる。
【0090】
本発明の範囲内で、二重隔膜プロセスと呼ばれる従来技術のプロセスの場合と同様に、この位置決め段階(a)は、以下のステップ:
(a4)第2の密閉チャンバ4に含まれるガスIIIを排出し、それによって隔膜間体積V2を減少させ、2つの隔膜1および2が両方とも複合材料Iと接触するようにするステップと、
(a5)少なくとも1つの接触ゾーン5における成形面22上で、下側隔膜1の局所的な位置合わせを行うステップであって、複合材料Iおよび2つの隔膜1および2も、前記接触ゾーン5で接触するステップと、
によって完了する。
【0091】
この位置合わせは、別個のステップに対応することができ、第1のチャンバ3内に含まれるガスを排気することによって得ることができ、これにより、図6に示される連続ステップ(a3)~(a5)に従って、事前に実行されるステップ(a4)が与えられると、体積V1が減少し、補強材を支える下側隔膜1と、上側隔膜2が下降する。また、好ましい一実施形態によれば、ステップ(a5)は、ステップ(a4)の後に、ガスIIIを第1のチャンバ3内に排気することによって実行され、その結果、体積V1が減少し、下側隔膜1と成形面22との間に予備接触を確立するようになる一方、第2のチャンバ4の体積V2は一定に保持される。第2のチャンバ4からのガスの排出は、出口弁30を開くことによって達成され、一方、第1のチャンバ3からのガスの排出は、出口弁32を開くことによって達成される。複合材料Iが2つの隔膜間で圧縮された後、体積V1が減少したときに所望の圧力レベルに達していない場合に、この減少が局所的な位置合わせに必要ならば、出口弁30を閉じるか、開いたままにしておくことができる。
【0092】
下側隔膜1は、最初から成形面22に接触することもできる。初期位置合わせは、ステップ(a3)の終了時に得られ、ステップ(a4)の終了時に維持される。また、ステップ(a3)の後、隔膜1が成形面22と接触している場合でも、ステップ(a4)中に隔膜1が成形面からわずかに浮き上がる可能性もあり、その場合には、その後の位置合わせステップ(a5)が必要となるであろう。
【0093】
実施形態に関係なく、位置合わせは、成形面22の最高部分に当接する下側隔膜1との間の事前接触に対応する。これは局所的な接触であり、中間成形段階の終了時に得られるものとは異なり、成形面全体にわたって押すことではない。成形面22にいくつかのエンボス部がある場合、いくつかの接触領域5で位置合わせが発生する可能性がある。
【0094】
ステップ(a5)の終了時点で、第2のチャンバ4の圧力P2は、第1のチャンバ3の圧力P1よりも低く、第1のチャンバ3自体は、外部圧力Pext(特に、外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低い。
【0095】
対照的に、ステップ(a4)は、2つの隔膜1および2の間に複合材料をしっかりと保持するために、隔膜間チャンバの体積V2を、特にその最小体積まで減少させることからなる。したがって、ステップ(a4)の終了時に、ひいては段階(a)の終了時に、複合材料Iは、2つの隔膜1および2の間で圧縮され、隔膜との接触面が最大となる。
【0096】
ステップ(a)の終了時点で、下側隔膜1と成形面22の最高部27との間の接触が接触ゾーン5において確立される。しかしながら、この接触ゾーン5では、ステップ(a4)の結果として、成形面22の最高部分27と接触して配置されるのは、下側隔膜1/複合材料I/上側隔膜2のアセンブリである。
【0097】
ステップ(a4)により、隔膜間チャンバ4内の圧力P2が多かれ少なかれ低下する可能性がある。ステップ(a4)の終了時およびステップ(a5)の終了時に、ひいては位置決め段階(a)の終了時に、複合材料Iは、2つの隔膜1および2の間にしっかりと保持され、それによって成形面22上での良好な位置決めが保証される。それにも関わらず、ステップ(a4)の終了時およびステップ(a5)の終了時、したがって位置決め段階(a)の終了時に、複合材料に過剰な応力を与えないように、隔膜間チャンバ4内の圧力P2が中間であることが好ましい。特に、外部圧力が大気圧に等しい場合、圧力P2は、600mbar~950mbarであることが好ましい。このような圧力により、複合材料I内の機械的応力、特に複合材料が複数の強化シートの積層体である最も一般的な場合の中間層のレベルでの機械的応力を制限することが可能になる。しかしながら、外部圧力が大気圧に等しい場合には、2mbar~1000mbarの範囲の圧力P2を与えることもできる。
【0098】
位置決め段階(a)の終了時に、それによって成形装置が構成され、材料がその中に配置され、その後、成形を開始することができる。成形装置/複合材料Iアセンブリは、Pextと呼ばれる装置の外部の圧力が大気圧(または1.013bar)に等しくなるように、周囲雰囲気中に配置することができる。成形装置/複合材料Iアセンブリをオートクレーブなどの可変圧力エンクロージャ内に配置することも可能である。説明の残りの部分で与えられる圧力は、成形装置/複合材料Iアセンブリが大気圧下に置かれる場合に特に適しているが、これらは、必要に応じて外部圧力に応じて当業者によって容易に変更することができる。
【0099】
位置決め段階(a)の後に、本発明に係る方法は、中間成形段階(b)を含み、その間に少なくとも以下のステップ:
圧力P2を外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、第2のチャンバ4にガスIIIを導入し、それによって接触ゾーン5で複合材料Iと2つの隔膜1および2との間の位置合わせおよび接触の両方を維持しながら、上側隔膜2を下側隔膜1および複合材料Iから距離を置いて局所的に維持するステップと、
第1のチャンバ3に含まれるガスIIIを排出して、金型20の底部21に存在する成形面22全体にわたって下側隔膜1を押し付けるようにするステップと、
が実行される。
【0100】
本発明の範囲内で、チャンバ4の体積の増加を可能にする圧力の制御および第2のチャンバ4へのガスの導入により、複合材料および隔膜にある程度の自由度を与え、複合材料を構成する繊維または層さえも機械的に解放することが可能になる。したがって、従来技術の二重隔膜プロセスと比較して、最終形状の材料上の欠陥を減らすことが可能である。
【0101】
しかしながら、第1の隔膜1/複合材料I/第2の隔膜2を少なくとも接触ゾーン5において接触状態に維持することによって、従来技術の二重隔膜の場合と同様に、複合材料の位置決めを制御することができ、所望の形状を達成することができる。プロセス全体を通して、特に中間成形段階(b)全体を通して、隔膜1および2の両方の接触は、少なくとも接触ゾーン5において複合材料Iと維持され、隔膜/複合材料アセンブリは、成形面22上に置かれる。成形面の最も高い領域では、複合材料Iと2つの隔膜1および2との間の位置合わせと接触の両方が維持され、これによって金型および成形面上の材料の位置決めが確保され、複合材料Iの重量によるずれが防止される。
【0102】
一般的に、ガスIIIの導入および排出は、第1のチャンバ3内の圧力P1および第2のチャンバ4内の圧力P2が制御および/または変更され、圧力P1が、それ自体、外部圧力Pext(特に、外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低い圧力P2よりも低く維持されるように実行される。
【0103】
加熱を使用すると、チャンバ内のガスの体積および/またはガス圧力、さらには複合材料が占める体積にさえ影響を及ぼす。一般的に、最終加熱温度には徐々に到達し、関係するチャンバの体積の増加を避けるために、この温度上昇中に、所望の最終温度に到達するまで、第1のチャンバまたはさらには第2のチャンバの体積が調節される。また、温度が所望の加熱温度まで上昇すると、出口弁32が作動することができ、第1のチャンバ3からガスを抜き出して体積V1を制御し、体積V1の増加を防止して、体積V1を略一定に保つことができる。同様に、出口弁30を作動させることができ、隔膜間チャンバ4からガスを抜き出して、体積V2を制御し、体積V2の増加を防止して、体積V2を略一定に保つことができる。
【0104】
加熱が行われると、チャンバ内のガスの体積および/またはガス圧力、または複合材料が占める体積にさえ影響を与える。一般的に、最終加熱温度には徐々に到達し、関連するチャンバの体積の増加を避けるために、この温度上昇中に所望の最終温度に達するまで第1のチャンバの体積、さらには第2のチャンバの体積が調節される。また、温度が所望の加熱温度まで上昇すると、出口弁32が作動することができ、第1のチャンバ3からガスを抜き出して体積V1を制御し、体積V1の増加を防止して、体積V1を略一定に保つことができる。同様に、出口弁30を作動させることができ、隔膜間チャンバ4からガスを抜き出して、体積V2を制御し、体積V2の増加を防止して、体積V2を略一定に保つことができる。
【0105】
図6に示される本発明の一実施形態によれば、上側隔膜2と下側隔膜1とを局所的に距離を置いて維持する第2のチャンバ4へのガスIIIの導入と、第1のチャンバ3内に含まれるガスIIIを排気して下側隔膜1を金型21の底部に押し付けることとを同時に行うことができる。この場合、中間成形段階は、第1のチャンバ3内に含まれるガスIIIを排気して金型の底部21に位置する成形面22に下側隔膜1を押し付けるようにする一方で、ガスIIIを第2のチャンバ4に導入し、第2のチャンバ4内の圧力P2を外部圧力Pext(特に、外部圧力Pextが大気圧に等しいときは大気圧)よりも低く維持することによって実行され、したがって、隔膜間体積V2を増加させ、上側隔膜2を下側隔膜1および複合材料Iから距離を置いて局所的に維持し、同時に、接触ゾーン5において、複合材料Iと隔膜1および2の両方との間の位置合わせおよび接触の両方を維持する。実際、重力の影響下で、複合材料Iは、その曲げ特性に従って、かつ接触ゾーン5の形状および表面に従って変形する。その結果、図6に示されるように、上側隔膜2と複合材料Iとの間に分離が生じ、複合材料Iの端部が上側隔膜2から遠ざかる。隔膜間チャンバ4の入口弁31と第1のチャンバ3の出口弁32を同時に開いた状態に保持することによって、複合材料Iを下側隔膜1上に配置する前に、ひいては最終成形・圧縮ステップ中に成形面上に配置する前に、複合材料Iにある程度の自由度を与えることが可能である。また、段階(b)が開始された後、圧力P2は、ほとんどの場合、この予備成形段階(b)中、上側隔膜2の変位を防ぐために略一定に保たれる。
【0106】
一般的に、本発明に係る方法では、チャンバ内のガス注入または吸引流量は、様々なパラメータ(特に、選択された弁、ガス循環回路内のパイプの直径、金型のサイズ、回路内の圧力降下など)に従って、当業者によって変更されるであろう。
【0107】
予備成形段階(b)の間、したがってこの段階の終了時でも、第1のチャンバ3の圧力P1は、第2のチャンバ4の圧力P2よりも低い。予備成形段階(b)の終了時には、予備成形圧力P1(b)は、一般的に2mbar~50mbarの範囲にある。
【0108】
この実施形態では、第1のチャンバ3の体積V1の減少は、第2のチャンバ4の体積V2の増加と等しくすることができるか、または略等しくすることができる。図6に示されるように、第2のチャンバ4の体積V2の増加が、第1のチャンバ3の体積V1の減少と比較して、特に5%~10%低いことも可能であり、その結果、成形面の特定の領域から距離を置いて留まるものの、上側隔膜2の金型の底部に向かう多かれ少なかれ顕著な移動が生じる可能性がある。
【0109】
図7に示される第2の代替実施形態によれば、中間成形段階(b)は、以下の連続ステップ:
(b1)第2のチャンバ4にガスIIIを導入し、第2のチャンバ4の圧力P2を外部圧力Pext(特に、外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、第1のチャンバ3に含まれるガスIIIを排出して、体積V1を減少させ、下側隔膜1を中間位置まで下降させるようにし、それによって隔膜間体積V2を増加させ、接触ゾーン5において複合材料Iと両方の隔膜1および2との間の位置合わせおよび接触の両方を維持しながら、上側隔膜2を下側隔膜1および複合材料Iから距離を置いて局所的に維持するステップと、
(b2)隔膜間体積V2を一定に保持しながら、第1のチャンバ3に含まれるガスIIIを排出して、それによって金型20の底部21に存在する成形面22全体にわたって下側隔膜1を押し付けるステップと、
を含むか、またはそれのみを含む。
【0110】
ここで再び、図7に示されるように、ステップ(b1)において、第1のチャンバ3の体積V1の減少は、第2のチャンバ4の体積V2の増加と等しくすることができるか、または略等しくすることができる。第2のチャンバ4の体積V2の増加は、第1のチャンバ3の体積V1の減少と比較して、特に5%~10%低くてもよい可能性もあり、その結果、上側隔膜2は、成形面の特定の領域から距離を置いて維持されているものの、金型の底部に向かって多かれ少なかれ顕著に移動する。上側隔膜2の変位は、チャンバ3と4の間の圧力平衡にも依存する。ステップ(b1)は、隔膜間チャンバ4のレベルで入口弁31と、第1のチャンバ3のレベルで出口弁32とを開いた状態に同時に保持することによって実行され、ステップ(b2)では、入口弁31を閉じ、出口弁を開いた状態に保持して、成形面上で下側隔膜1を押圧する。
【0111】
したがって、図7に示されるプロセスの場合、(ステップ(a5)からステップ(b1)に進んだ)下側隔膜1の移動に応じて、上側隔膜2が移動する。この場合、上側隔膜2は、ステップ(b)(特に、ステップ(b2))の進行中にますます変形して締め付けられ、その結果、第2のチャンバ4の圧力P2が変化する。有利には、体積V2は、段階(b)全体を通じて略一定に、または一定にさえ保たれる。
【0112】
ステップ(b1)の間、チャンバ内の圧力は、特に隔膜の機械的特性に依存する。ステップ(b2)において、下側隔膜1が成形面22と接触しているとき、第1のチャンバ3内の圧力P1は、2mbar~50mbarとすることができる。ステップ(c)において、上側隔膜2が複合材料Iと接触し、複合材料I自体が下側隔膜1に押し付けられ、下側隔膜1自体が成形面22に押し付けられるとき、第2のチャンバ4内の圧力P2は、2mbar~50mbarとすることができる。
【0113】
図8に示される第3の代替実施形態によれば、中間成形段階(b)は、以下の連続ステップ:
(b’1)第2のチャンバ4にガスIIIを導入し、第2のチャンバ4の圧力P2を外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、第1のチャンバ3に含まれるガスIIIを排出して、第1の体積V1を減少させ、下側隔膜1を中間位置まで下降させるようにし、こうして隔膜間体積V2を増加させ、接触ゾーン5において複合材料Iと両方の隔膜1および2との間の位置合わせおよび接触の両方を維持しながら、上側隔膜2を下側隔膜1および複合材料Iから距離を置いて局所的に維持するステップと、
(b’2)第2のチャンバ4に含まれるガスIIIを排出し、こうして隔膜間体積V2を減少させ、上側隔膜2を下降させ、2つの隔膜1および2を両方とも複合材料Iと接触して配置させるようにするステップと、
(b’3)第2のチャンバ4にガスIIIを導入し、第2のチャンバ4の圧力P2を外部圧力Pext(特に外部圧力Pextが大気圧に等しい場合には大気圧)よりも低く維持しながら、第1のチャンバ3に含まれるガスIIIを排出して、それによって金型20の底部21に存在する成形面22全体にわたって下側隔膜1を押し付け、こうして隔膜間体積V2を増加させ、接触ゾーン5において複合材料Iと両方の隔膜1および2との間の位置合わせおよび接触の両方を維持しながら、上側隔膜2を下側隔膜1から距離を置いて局所的に維持するステップと、
を含むか、またはそれのみを含む。
【0114】
ここで再び、ステップ(b’1)および/またはステップ(b’3)において、図8に示されるように、第1のチャンバ3の体積V1の減少は、第2のチャンバ4の体積V2の減少と等しくすることができるか、または略等しくすることができる。また、第2のチャンバ4の体積V2の減少は、第1のチャンバ3の体積V1の減少と比較して、特に5%~10%、小さくてもよく、その結果、成形面の特定の領域では距離を保ったままではあるが、上側隔膜2の金型の底部に向かって多かれ少なかれ顕著な移動が生じる可能性がある。上側隔膜2の変位は、チャンバ3と4の間の圧力平衡にも依存する。ステップ(b’1)は、入口弁31を隔膜間チャンバ4のレベルで、出口弁32を第1のチャンバ3のレベルで、開位置に同時に維持することによって実行される。次に、ステップ(b’2)において、これら2つの弁が閉じられ、第2のチャンバ4のレベルにある出口弁30が開き、上側隔膜2が複合材料I上に降下することが可能になる。ステップ(b’3)では、ステップ(b’1)と同様に、出口弁30が閉じられ、弁31および32が再び開く。
【0115】
図8の図に見られるように、ステップ(b’2)と(b’3)の間では、上側隔膜2は移動しないが、その後、ステップ(c)で複合材料が最終圧縮されるまで、ステップ(b’1)と(b’2)の繰り返しで、ステップ(b’3)で下方に移動し、場合によっては上方に移動する。
【0116】
ステップ(b’1)~(b’2)を、例えば1~10回繰り返すことにより、下側隔膜1が成形面22に押し付けられるまで、下側隔膜1、次いで上側隔膜2を徐々に下降させることができる。第3の代替実施形態によれば、中間成形段階(b)は、ステップ(b’1)~(b’2)の繰り返しと、それに続く最終ステップ(b’3)のみから構成することができる。繰り返しの回数は、各々のステップ(b’1)の終了時に得られる体積V1の減少に依存する。ステップ(b’1)中、接触ゾーン(複数可)5の成形領域上に既にある部分を除いて、第1の隔膜1は徐々に下降し、この接触ゾーンは徐々に広がる。ステップ(b’2)では、上側隔膜2と複合材料Iが下側隔膜1の動きに追従する必要があるが、図8に示されるように、ステップ(b’1)における下側隔膜1の下降には通常、補強材の下降が伴う。
【0117】
特に図8に示されるこの第3の代替実施形態では、一般的に、ステップ(b’1)中、P1<P2<Patmo、特に50mbar<P1<950mbarかつ50mbar<P2<Patmoであり、ステップ(b’2)中、50mbar<P1<950mbarかつ50mbar<P2<950mbarである。ステップ(b’3)において、チャンバ内の圧力は、特に、2mbar<P1<50mbarかつ50mbar<P2<950mbarとすることができる。
【0118】
一般的に、本発明に係る方法では、2つの隔膜は、プロセス全体を通じて下方にのみ移動する。しかしながら、特にガスが隔膜間の空間に追加される場合、上側隔膜2がわずかに上昇する可能性があることを排除するものではない。
【0119】
同様に、本発明に係る方法では、接触ゾーン5において、下側隔膜1と成形ゾーン22との間に接触6が維持され、下側隔膜1と複合材料Iとの間に接触7が維持され、複合材料Iと上側隔膜2との間に接触8が維持される。プロセスが進行するにつれて、様々な要素間のこの接触領域は、下側隔膜1/複合材料I/上側隔膜2のアセンブリが成形領域22全体にわたって完全に、さらにはそれ以上に押し付けられるまで拡大する。
【0120】
中間成形段階(b)の終了時には、代替の実施形態に関係なく、第1のチャンバ3内の圧力P1は、2mbar~50mbar、典型的には2mbar~5mbarの範囲にあることが有利である。
【0121】
本発明に係る方法は、使用される中間成形段階(b)に関係なく、以下のステップ:
予備成形された複合材料IIの所望の最終形状をもたらす最終成形・圧縮段階であって、最終成形・圧縮段階の間、加熱が行われ、その間に、第2のチャンバ4に含まれるガスIIIを除去して、複合材料Iと上側隔膜2の両方を下側隔膜1に押し付けるようにし、下側隔膜1自体は、金型21の底部(特に、成形面22)に押し付けられ、圧力P2を低下させて、確実に圧縮するようにする、最終成形・圧縮段階(c)と、
予備成形された複合材料IIの冷却段階および型抜き段階(d)と、
を含む。
【0122】
段階(c)の時点では、出口弁30が作動して隔膜間チャンバ4に含まれるガスIIIを排出し、それによって最小体積V2に達する。この体積が達成された後、圧力P2も低下する。最終成形・圧縮中、隔膜間チャンバ4内の圧力P2は、典型的には2mbar~50mbar、典型的には2mbar~5mbarの範囲にある。このような圧力に達した後、出口弁30を閉じることができる。通常は、ステップを確保するために吸引を維持する。
【0123】
成形面22および中間材料Iの寸法に応じて、ステップ(c)でプレスが得られるとき、下側隔膜1/複合材料I/上側隔膜2のアセンブリは、図6および図7の最後のステップに示されるように、成形面22のみまたはその一部を覆うことができるか、または金型の底部の平坦な部分または金型20の底部21全体さえも覆うことができ、これにより隔膜の破損の危険性が低減される。
【0124】
ステップ(c)中、第1のチャンバ3の出口弁32は、閉じることも、開いた状態を保持することもできる。最終成形・圧縮中、第1のチャンバ3の圧力P1は、通常、2mbar~50mbarの範囲であり、典型的には5mbarである。
【0125】
部品の固化を達成するために、複合材料を2つの隔膜間で圧縮し続けて所望の最終形状を達成する段階(c)で、減圧下での加熱を維持するのに必要な時間は、複合材料の厚さと、特にポリマー熱可塑性材料の性質に依存する。一般的に、段階(c)は、2分~5時間続く。その後、段階(c)で得られた形状を凍結させるために、型抜き前に冷却を行うことができる。この目的のために、加熱のスイッチを切るだけで、自然に室温に戻る。
【0126】
本発明に係る方法、特に実施される中間成形段階に関係なく、冷却段階中に、図3Bに示されるような装置を使用して、第1のチャンバ3のレベルで入口弁33を作動させることによって、第1のチャンバ3の圧力を上昇させることができる。このような圧力の増加、特に850mbar~大気圧の範囲の値に達すると、下側隔膜1と金型20との間の摩擦が減少し、それによって隔膜/複合材料アセンブリと金型との間の滑りが容易になり、欠陥のリスクがさらに低減される。この滑りは、金型と隔膜/材料アセンブリ間の熱膨張の違いによって発生する。
【0127】
得られた形状を冷却および凍結させた後、装置を外部圧力(特に大気圧)に戻した後、予備成形複合材料IIを金型から取り出すことができる。隔膜の性質が許せば、その後、装置は再利用できる。
【0128】
外部圧力Pextは、変化する可能性がある。外部圧力Pextがプロセス中に変化する場合、特に装置がオートクレーブ内に置かれる場合、外部圧力Pextの増加は、段階(b)および/または段階(c)の実施前に達成することができる。一方、一般的に、外部圧力Pextは、段階(b)および段階(c)のいずれかの前に外部圧力が増加したとしても、段階(b)および段階(c)を通じて一定に保持される。一例として、装置がオートクレーブ内に置かれる場合、外部圧力Pextは、1bar~20barの範囲の値に増加され、段階(b)および(c)中、または冷却段階中さえもこの値に維持することができる。例として上で与えられた圧力P1およびP2は、それに応じて変化することになる。
【0129】
前述の説明から、本発明に係る方法および装置は、大きな柔軟性を提供することが分かる。それらにより、プロセス全体を通じて、成形される複合材料Iの制御と位置決めの両方を保証することが可能になり、結果として、ずれのない所望の形状に従った成形が可能になる。対照的に、1つまたは複数の予備成形(b)段階中の下側隔膜1の下降中に隔膜間チャンバ4の体積を増加させる可能性により、複合材料の繊維に、または複合材料が積層体の形態である場合には複合材料の層にさえ、ある程度の自由度を与えることが可能になり、成形中に複合材料Iに過剰な機械的応力が課された場合に引き起こされるしわまたは他の欠陥を回避することが可能になる。したがって、本発明は、これらのパラメータを調整することによって、最適化への多くの潜在的な経路を提供する。
【0130】
さらに、本発明に係る方法および装置の実施は、2つの隔膜1および2の使用、および完全にコンピュータ化できるプロセスの様々なパラメータの制御によって、複合材料Iの配置の信頼性を考慮して、完全に自動化することができる。一般的に、本発明に係る方法を使用する成形サイクルは、加熱しない場合には5分~15分程度であり、加熱を使用する場合には1時間~12時間に達することもある。本発明に係る方法は、複合材料Iプリプレグを使用する場合に最終部品をもたらすことができる。複合材料が「ドライ」であると言われる場合、本発明に係る方法は、当業者によく知られている直接プロセスを実施することによって、所望の最終部品を得るために、次いでポリマーマトリックスと結合されるプリフォームをもたらす。
【実施例
【0131】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、決して限定するものではない。
【0132】
実施例では、各々がHexcel Corporationによって販売されるIMA 12K炭素繊維の一方向ウェブからなり、各々の面にProtechnic製の4g/mコポリアミド1R8繊維ウェブを組み合わせた複合材料の積層体を使用した。ポリマーベールは、国際公開第2010/046609号に従って一方向カーボンウェブと結合された。
【0133】
比較試験1a、1b、および1c、ならびに実施例1および2は、このような材料の16層の重ね合わせた層を用いて実施され、これらの層は、加熱しながら自動AFP堆積によって互いに接合されて、寸法750mm×450mm×3.1mmのプレートの形態の積層体Iを形成した。最終積層体I中のプラスチック(コポリアミド)の重量%は、積層体の重量に基づいて3.6%であった。
【0134】
すべての場合において、使用されている1つまたは複数の隔膜に関係なく、イギリスのAirtechによって販売されている厚さ75μmのIpplon DP1000ナイロン隔膜を使用した。
【0135】
中間および最終成形・圧縮ステップに使用した温度は170℃、型抜き温度は25℃であった。温度を1.5℃/分の速度で170℃まで上昇させ、6時間かかった。
【0136】
使用した金型20は、2000mm×1000mm×320mmの寸法を有するタンクの形態であった。金型の底部21の中央には、その長辺と平行に延び、成形面22に対応する突出部23があった。この突出部の形状と寸法を図10に示す。金型20と隔膜の間のシール、および2つの隔膜1および2が使用される場合には、閉じた隔膜間空間(第2のチャンバ4と呼ばれる)を形成するための2つの隔膜1および2の間のシールは、図4および図5に示されるように、2つのガスケット16の使用によって、かつフレーム11および12とクランプシステム17aおよび17bの重ね合わせによって確保された。単一の隔膜を使用する場合、金型20の周縁部26全体に沿って延在する1つのシールガスケット16のみが使用され、このガスケットは金型の縁部と隔膜との間に配置された。次に、図5のフレーム11に相当するフレームを隔膜上に配置し、締め付けた。
【0137】
比較例および本発明によれば、成形装置は周囲雰囲気にあるため、成形装置の外側の圧力は、大気圧(すなわち、1.013barまたは1013hPa)に等しかった。
【0138】
欠陥の有無を実証するための表面分析は、Creaform技術を使用した3Dスキャナーによって実行された。
【0139】
比較例1a
この比較例は、以前の単純な隔膜技術を使用して、ひいては図1に記載されるような装置を使用して実行された。積層体は、金型の底部にある突出部の頂部に直接配置された。それは突出部に対して対称に配置され、その結果、線を形成する突出部の頂部は、その2つの大きな面と平行に、それらの中央に延在した。それにもかかわらず、積層体のバランスを維持するのは困難であった。次いで、隔膜を頂部の上にわたって配置して、積層体を突出部の頂部に対して保持した。
【0140】
次いで、温度を170℃に上昇させ、続いて、金型と隔膜との間に含まれる空気を排気した。圧縮ステップは、5mbarの圧力および170℃の温度を30分間維持することによって実行された。その後、加熱を停止し、温度が室温に戻った後、得られた成形積層体を金型から取り出した。
【0141】
284750mmに相当する、得られたプリフォームの総表面積(つまり、内面と外面)が分析され、欠陥がまったくないことが示された。
【0142】
比較例1b
この比較例は、従来技術の二重隔膜を使用し、したがって図2に記載されるような装置を使用して実行された。比較例1aとは反対に、下側隔膜1を金型20の上方に配置して、それを閉じて第1のチャンバ3を形成するようにした。これを、金型の底部の突出部の頂部から2cmの距離に配置した。積層体Iは、突出部の頂部の上方に、この下側隔膜1のすぐ上に配置され、下側隔膜1を金型の底部にある突出部の頂部と接触させた。それは、突出部23に関して対称に配置され、線を形成する突出部の頂部がその2つの大きな面と平行に、それらの中央に延在するようにされた。それは、下側隔膜1によって所定の位置に保持された。次に、上側隔膜2をその上方に配置し、隔膜1と2の間に40mmの空間を設けて、第2のチャンバ4を形成する2つの隔膜間に積層体Iを捕捉した。次いで、図4および図5に示されるクランプシステム17aおよび17bを使用して、装置全体を所定の位置にロックした。次いで、プロセスは以下のように進行した:170℃の温度に加熱し、圧縮ステップの終了まで保持し、隔膜間チャンバ4内に5mbarの圧力が得られるまで、隔膜間空間に接続された出口弁30によって隔膜間チャンバ4に含まれる空気を排出し、これにより積層体の位置決めが固定され、突出部23から取り外された。次いで、この弁30を開いた状態に保持して圧力調整を維持した。
【0143】
金型と下側隔膜1との間に含まれる空気を、第1のチャンバ3に接続された出口弁32により7.5m/hの吸引速度で5mbarの圧力が得られるまで排気した。このようにして、隔膜/積層体アセンブリは、突出部23の形状に適合した。次いで、この5mbarの圧力および170℃の温度を30分間維持しながら、最終成形・圧縮段階を実施した。その後、加熱を停止し、温度が室温に戻った後、成形された積層体IIを金型から取り出した。
【0144】
プロセスの様々な段階における2つのチャンバ3および4内の体積および圧力を以下の表2にまとめる。
【0145】
【表2】
【0146】
実施例の表では、Patmo=大気圧、Vmold=プロセス開始時の下側隔膜と金型の間の空間内の空気の体積、Vx=第1のチャンバ(金型と下側隔膜の間に位置する)に関連する供給体積、V1min=最小体積V1、V2min=最小体積V2。
【0147】
285943mmに相当する、得られたプリフォームの全表面積(すなわち、外面101および内面102)を分析したところ、32812mmの面積、すなわち表面積の11.5%に相当するプリフォームIIの内面および外面の両方に欠陥が存在することが明らかになった。図11は、プリフォームIIの外面102上に存在する層200を示す。
【0148】
比較例1c
この比較例は比較例1bと同等であるが、まず第一に、圧力が5mbarではなく850mbarに達するまで空気が隔膜間空間に排気されたことが異なる。したがって、この修正は、米国特許第9,259,859号明細書の推奨に従っており、中間成形中の積層体の圧縮を制限し、それによって層相互の滑りを容易にすることが目的であった。
【0149】
プロセスの様々な段階における2つのチャンバ3および4内の体積および圧力を以下の表3にまとめる。
【0150】
【表3】
【0151】
この場合、分析されたプリフォームの総表面積は284247mmで、欠陥は14178mmの面積、つまり総表面積の5%に相当した。
【0152】
実施例1
実施例1は、図6に示されるプロセスに従って実行された。
【0153】
比較例1bと同様に、隔膜1、2および積層体1を位置決めした後、出口弁30を開くことにより、比較例1cと同様に、空気を隔膜間空間(第2のチャンバ4)に排出して圧力850mbarに達し、一方で入口弁31を閉じた。次に、出口弁30を閉じた。次いで、金型20と下側隔膜1によって形成された第1のチャンバ3内に含まれる空気を排気することによって(持続時間10秒未満)、隔膜1および2/積層体Iアセンブリの局所的な位置合わせを、突出部23の頂部27上で実行した。この吸引は、出口弁32を作動させることによって得られた。その後、入口弁31により第2の隔膜間チャンバ4に空気を注入しながら、下側隔膜1が突出部23と金型の底部21の両方に押し付けられるまで吸引を継続し、それによってチャンバ3および4の全体積を略一定に維持した(注入時間5分、注入流量7.5m/h)。第1のチャンバ3の最小体積に達した後、この第1のチャンバ3内の圧力は5mbarに等しかった。出口弁32が閉じられ、入口弁31も閉じられた。次いで、第2の隔膜間チャンバ4に含まれる空気を、このチャンバの最小体積に達して、5mbarの圧力が得られるまで、出口弁30によって排気した。したがって、最終成形・圧縮段階は、第1のチャンバ3と第2のチャンバ4の両方で5mbarの圧力で実行された。所要時間は30分であった。
【0154】
冷却および型抜きを比較例1aと同様に行った。
【0155】
プロセスの様々な段階におけるチャンバ3と4の両方の体積および圧力を以下の表4にまとめる。
【0156】
【表4】
【0157】
284750mmに相当する、得られたプリフォームの全表面積(すなわち、外面および内面)を分析したところ、欠陥がまったくないことが明らかになった。
【0158】
実施例2
実施例2は、図7に示されるプロセスに従って実行された。
【0159】
隔膜1および2/積層体1が突出部23の頂部27に配置されるまでのプロセスは、実施例1のプロセスと同一である。次に、金型20と下側隔膜1によって形成される第1のチャンバ3に含まれる空気の排気を、第1のチャンバ3内で850mbarの中間圧力と中間体積が得られるまで継続し、同時に入口弁31を介して第2の隔膜間チャンバ4に空気を注入し、第2のチャンバ4の体積を増加させることによって第1のチャンバ3の体積の減少を補償するようにした。したがって、圧力P2は、850mbarの略一定値に保持され、2つの隔膜は、それらの最も離れた領域において互いに約15cmの距離に局所的に保持された。次に、入口弁31を閉じ、下側隔膜1が突出部23と金型の底部21の両方に押し付けられるまで出口弁32からの排気を継続した。第1のチャンバ3の最小体積に達した後、この第1のチャンバ3内の圧力は5mbarに等しかった。出口弁32を閉じた。次に、第2の隔膜間チャンバ4に含まれる空気を、このチャンバの最小体積に達して、このチャンバで5mbarの圧力が得られるまで、出口弁30によって排気した。したがって、最終成形・圧縮ステップは、実施例1と同様に、第1のチャンバ3および第2のチャンバ4の両方において5mbarの圧力で実行された。
【0160】
冷却および型抜きを比較例1aと同様に実行した。
【0161】
プロセスの様々な段階におけるチャンバ3および4の両方の体積および圧力を、以下の表5にまとめる。
【0162】
【表5】
【0163】
実施例の表では、ΔVx=第2のチャンバ4(隔膜間空間)に関連する前進体積である。
【0164】
284750mmに相当する得られたプリフォームの全表面積(すなわち、外側および内側)を分析したところ、欠陥が全く無いことが明らかになった。
【0165】
実施例3
実施例3は、実施例2と同じプロセスに従って、同じ条件下ではあるが、異なる積層体上で実施された。積層体は16層ではなく96層で構成され、厚さ20mmのプレートとなった。
【0166】
ここでもまた、それにより製造されたプリフォームには欠陥は存在しなかった。
【0167】
実施例4
実施例4は、実施例1および2と同じ積層を実施したが、異なる形状を有する突出部の頂部に関して積層の位置をずらした。突出部の頂部は90°の角度を形成した。この場合、300mm×180mmのプレートを、線を形成する突出部の頂部がプレートを2つの平行なストリップ(1つは幅120mm、もう1つは幅60mm)に分割するように位置決めした。従来技術の単純な隔膜プロセスの実施では、プリフォームは変位し、積層体は初期位置と比較して47mm移動したが、欠陥は無かった。比較例1bまたは1cに係る二重隔膜プロセスを使用することにより、適切な位置決めが可能となり、それによって位置ずれを回避することができた。しかしながら、このプロセスでは欠陥が発生した。
【0168】
実施例2に記載したようなプロセスの実施により、位置ずれと欠陥の両方が生じなかった。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】