(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】接着可能な歯科矯正アセンブリ及び接着方法
(51)【国際特許分類】
A61C 7/16 20060101AFI20240119BHJP
A61K 6/30 20200101ALI20240119BHJP
【FI】
A61C7/16
A61K6/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539946
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 IB2021062504
(87)【国際公開番号】W WO2022144843
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ,ツァイ-ゾン
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ミン-ライ
【テーマコード(参考)】
4C052
4C089
【Fターム(参考)】
4C052JJ02
4C052JJ10
4C089AA10
4C089BA13
4C089BA14
4C089BB07
4C089BC02
4C089BC03
4C089BC05
4C089BC08
4C089BC12
4C089BD02
4C089BE02
(57)【要約】
歯科矯正器具、当該歯科矯正器具を製造及び固定する方法、並びに当該歯科矯正器具を含むキットが記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科矯正器具であって、
基部と、
前記基部上に配置された硬化性接着剤層と、を含み、
前記硬化性接着剤層が、第1の領域及び第2の領域を含み、
前記第1の領域が、1s
-1の剪断速度で約10Pa・s~約1,500,000Pa・sの粘度を有することによって特徴付けられる高粘度接着剤組成物を含み、
前記第2の領域が、1s
-1の剪断速度で約0.1Pa・s~約100Pa・sの粘度を有することによって特徴付けられる低粘度接着剤組成物を含み、
前記第1の領域が、前記第2の領域によって少なくとも部分的に取り囲まれており、
前記第1の領域及び前記第2の領域が、歯の表面に接触するように構成されており、
前記高粘度接着剤組成物の前記粘度が、前記低粘度接着剤組成物の前記粘度よりも高い、歯科矯正器具。
【請求項2】
前記高粘度接着剤組成物が、前記硬化性接着剤層が前記歯の表面に対して圧縮されるとき、0.2mmを超えて前記基部を越えて広がらない、請求項1に記載の歯科矯正器具。
【請求項3】
前記高粘度接着剤組成物が、前記高粘度接着剤組成物の重量に対して約50重量%~約86重量%の量で存在する充填剤を含む、請求項1又は2に記載の歯科矯正器具。
【請求項4】
前記高粘度接着剤組成物が、酸官能基を有する若しくは有しない1つ以上の不飽和モノマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項5】
前記高粘度接着剤組成物がペーストである、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項6】
前記高粘度接着剤組成物が、ヒュームドシリカ、シラン処理ガラス、シラン処理石英、シラン処理シリカ、及びこれらの組み合わせから選択される充填剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項7】
前記高粘度接着剤組成物が、28℃で少なくとも7000ダイン/cm
2の静的降伏応力によって特徴付けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項8】
前記高粘度接着剤組成物が、約0.38mm~約1.2mmの厚さを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項9】
前記硬化性接着剤層が、前記基部の断面側面図から見たときに、ガウス曲線、三角形、又は台形を表す形状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項10】
前記高粘度接着剤組成物が、前記基部に垂直な方向から見たときに、円形、多角形、又は四角形を表す形状である、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項11】
前記高粘度接着剤組成物が、前記硬化性接着剤層の体積の約40パーセント~約85パーセントである体積を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項12】
前記高粘度接着剤組成物が、前記基部の総面積の約20パーセント~約50パーセントにわたって広がっている、請求項1~11のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項13】
前記低粘度接着剤組成物が、流動性溶液又は流動性懸濁液である、請求項1~12のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項14】
前記低粘度接着剤組成物が、約0~約50重量%の充填剤量を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項15】
前記低粘度接着剤組成物が、ヒュームドシリカ、シラン処理ガラス、シラン処理石英、シラン処理シリカ、及びこれらの組み合わせから選択される充填剤を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項16】
前記低粘度接着剤組成物が、垂直流動試験によって測定した際、上部及び底部における前記接着剤組成物の厚さの差が約15%未満である流動によって特徴付けられる、請求項1~15のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項17】
前記低粘度接着剤組成物が、約0.06mm~約0.16mmの厚さを有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項18】
前記低粘度接着剤組成物が、前記基部に垂直な方向から見たときに、円環又は矩形環の形状である、請求項1~17のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項19】
前記低粘度接着剤組成物が、前記基部の総面積の約50パーセント~約80パーセントにわたって広がっている、請求項1~18のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項20】
前記低粘度接着剤組成物が、酸官能基を有する若しくは有しない1つ以上の不飽和モノマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項21】
前記高粘度接着剤組成物が、1s
-1の剪断速度で約100Pa・s~約13,000Pa・sの粘度によって特徴付けられる、請求項1~20のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項22】
前記低粘度接着剤組成物が、1s
-1の剪断速度で約0.1Pa・s~約10Pa・sの粘度によって特徴付けられる、請求項1~21のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項23】
前記高粘度接着剤組成物及び前記低粘度接着剤組成物が、粘度において、少なくとも10倍異なる、請求項1~22のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項24】
前記高粘度接着剤組成物が、前記低粘度接着剤組成物の平均厚さよりも大きい最大厚さを有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項25】
前記基部及び前記硬化性接着剤層から本質的になる、請求項1~24のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項26】
圧縮性マットを有しない、請求項1~25のいずれか一項に記載の歯科矯正器具。
【請求項27】
歯科矯正器具を歯の表面に固定するための方法であって、
請求項1~26のいずれか一項に記載の歯科矯正器具を準備することと、
前記歯科矯正器具を前記歯の表面に接触させることと、
硬化性接着剤層が前記歯の表面に対して圧縮されるように前記歯科矯正器具に圧力を加えることと、
前記硬化性接着剤層を硬化させて硬化接着剤を形成することと、を含む、方法。
【請求項28】
前記歯の表面が、大臼歯、犬歯又は小臼歯である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記歯科矯正器具に圧力を加えると、前記低粘度接着剤組成物が、前記基部の外周を越えて広がり、器具-歯接合部によって画定される点に対して凹状メニスカスを形成する、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記歯科矯正器具に圧力を加えると、前記高粘度接着剤組成物が、前記基部と前記歯の表面との間の間隙を実質的に充填する、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記高粘度接着剤組成物が、圧力を加えて硬化させた際に、前記基部の外周を0.2mmより大きく越えて広がらない、請求項27~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記高粘度接着剤組成物が、前記接着剤層が前記歯の表面に対して圧縮されるとき、前記基部の約50%~約100%を覆う、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記硬化が、接着強度試験によって測定して、少なくとも5.0MPaの接着強度を提供する、請求項27~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記硬化が、前記硬化性接着剤層に一定期間光を当てることを含む、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記歯科矯正器具を前記歯の表面に接触させる前に、前記歯の表面をフッ化物組成物で前処理することを更に含み、
前記前処理することが、前記フッ化物組成物を前記歯の表面に接触させることを含み、
前記フッ化物組成物が、
歯の表面にフッ化物を放出するのに有効なフッ化物放出組成物と、
架橋ポリ酸ポリマーと、
多価カチオン塩と、
薬学的に許容される緩衝剤と、
水と、を含む、請求項27~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記歯科矯正器具を前記歯の表面に接触させる前に、前記歯の表面をフッ化物組成物で前処理することを更に含み、
前記前処理することが、前記フッ化物組成物を前記歯の表面に接触させることを含み、
前記フッ化物組成物が、
銀-フッ化物組成物であって、
銀カチオン源と、
フッ化物アニオン源と、
ヨウ化物又はチオシアネートアニオン源と、
水と、を含む、銀-フッ化物組成物と、
硬化性樹脂組成物であって、
少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含む、硬化性樹脂組成物と、
を含む、請求項27~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記歯の表面をフッ化物組成物で前処理することを更に含み、
前記前処理することが、前記フッ化物組成物を前記歯の表面に接触させることを含み、
前記フッ化物組成物が、
カルボン酸亜鉛と、
アミン含有リガンドと、
前記フッ化物組成物の重量に対して少なくとも4重量%の量でフッ化物を提供するのに有効なフッ化物アニオン源と、
水と、含み、
前記フッ化物組成物が、少なくとも8のpHを有し、
前記フッ化物組成物が、約20~25℃の温度で均質な溶液である、請求項27~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1~26のいずれか一項に記載の歯科矯正器具と、
請求項27~37のいずれか一項に記載の工程を実行するように使用者に指示する一式の説明書と、を含む、キット。
【請求項39】
ブリスターパックの形態のパッケージを更に含む、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
パッケージを更に含み、前記歯科矯正器具が、前記パッケージ内に懸吊されている、請求項38又は39に記載のキット。
【請求項41】
請求項1~26のいずれか一項に記載の歯科矯正器具を製造する方法であって、前記方法が、
基部を準備することと、
前記基部上に硬化性接着剤層を形成することと、を含み、前記形成することが、
高粘度接着剤組成物を、第1の領域において前記基部に適用することと、
低粘度接着剤組成物を、第2の領域において前記基部に適用することと、を含み、
前記第1の領域が、前記第2の領域によって少なくとも部分的に囲まれている、方法。
【請求項42】
基部と、
高粘度接着剤組成物を内部に含む容器と、
低粘度接着剤組成物を内部に含む容器と、
請求項41に記載の工程を実行するように使用者に指示する一式の説明書と、を含む、キット。
【請求項43】
1つ以上の充填剤を含む1つ以上の容器を更に含む、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
前記一式の説明書が、前記高粘度接着剤組成物及び前記低粘度接着剤組成物のうちの1つ以上を1つ以上の充填剤と組み合わせるように使用者に更に指示する、請求項43に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
歪んだ顎及び位置が異常な歯は、多くの場合、歯科矯正器具で予防及び処置される。多くの状況において、器具は、接着剤で歯構造に一時的に接着される。器具が歯の表面に対して固定されるとき、器具基部と歯の表面との間の間隙を充填するためにしばしば使用される過剰な接着剤は、器具基部の周縁を越えて滲み出る。当該技術分野において「バリ(flash)」として知られている滲み出た接着剤は、硬化前に施術者によって手作業で除去されるが、この手順は時間がかかり、不完全な除去は構造的に問題になる場合がある。例えば、バリ除去中の器具の偶発的な動揺は、接着信頼性に悪影響を及ぼし得る。更に、過剰な接着剤の不完全な除去は、患者にとって不快であるだけでなく、細菌の蓄積を促進し、これが最終的に下にある歯構造を劣化させ、脱灰及び変色をもたらす可能性がある。
【0002】
Cinaderは、以前に、バリを軽減するための戦略を作り上げた(米国特許第10,492,890号を参照されたい)。Cinaderは、器具基部に圧縮性マットを組み込み、充填されていないか又はわずかに充填された接着剤でマットを浸漬することが、接着剤を浸出させて器具基部と歯の表面との間の間隙を充填し、器具を固定すると器具の縁の周囲にメニスカスを形成し、それによって、過剰な接着剤のバリ除去の必要性を排除するのに有効であることを発見した。
【0003】
進歩はしているとはいえ、効率的に接着し、バリの除去を回避し、製造コストを削減する器具を開発することへの継続的な関心が存在する。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、歯科矯正器具が記載される。歯科矯正器具は、基部と、基部上に配置された硬化性接着剤層とを含む。硬化性接着剤層は、第1の領域及び第2の領域を含み、第1の領域は第2の領域によって少なくとも部分的に取り囲まれており、第1の領域及び第2の領域は歯の表面に接触するように構成されている。第1の領域は、1s-1の剪断速度での10Pa・s~約1,500,000Pa・sの粘度によって特徴付けられる高粘度接着剤組成物を含み、第2の領域は、1s-1の剪断速度での約0.1Pa・s~約100Pa・sの粘度によって特徴付けられる低粘度接着剤組成物を含む。高粘度接着剤組成物は、低粘度接着剤組成物の粘度よりも高い粘度を有する。
【0005】
一実施形態では、歯の表面に歯科矯正器具を固定するための方法が記載される。この方法は、本明細書に記載される歯科矯正器具を準備することと、歯科矯正器具を歯の表面に接触させることと、硬化性接着剤層が歯の表面に対して圧縮されるように歯科矯正器具に圧力を加えることと、硬化性接着剤層を硬化させて硬化接着剤を形成することと、を含む。
【0006】
一実施形態では、本明細書に記載される歯科矯正器具を製造するための方法が記載される。この方法は、基部を準備することと、高粘度接着剤組成物を第1の領域において基部に適用すること、及び低粘度接着剤組成物を第2の領域において基部に適用することによって、硬化性接着剤層を形成することと、を含む。第1の領域は、第2の領域によって少なくとも部分的に取り囲まれている。
【0007】
一実施形態では、キットが記載される。キットは、本明細書に記載される歯科矯正器具と、歯科矯正器具を歯の表面に固定するための本明細書に記載される方法工程を実行するように使用者に指示する一式の説明書とを含む。
【0008】
一実施形態では、キットが記載される。キットは、基部と、本明細書に記載される高粘度接着剤組成物と、本明細書に記載される低粘度接着剤組成物と、本開示の歯科矯正器具を製造するために本明細書に記載される工程を実施するように使用者に指示する一式の説明書とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】非圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の側面図である。
【
図1B】圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の側面図である。
【
図1C】非圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の底面図である。
【
図1D】圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の底面図である。
【
図1E】非圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の上面図である。
【
図1F】圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の上面図である。
【
図2A】非圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の断面側面図である。
【
図2B】圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の断面側面図である。
【
図3A】非圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具具の断面側面図である。
【
図3B】圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の断面側面図である。
【
図4A】非圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の断面側面図である。
【
図4B】圧縮状態の硬化性接着剤層を有する本開示の歯科矯正器具の断面側面図である。
【
図5A】圧縮性マットを有する、本開示のものではない同等の歯科矯正器具の側面図である。
【
図5B】圧縮性マットを有する、本開示のものではない同等の歯科矯正器具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、優れた歯の接着を提供し、同時にバリの除去の必要性も排除するために、異なる接着剤の配置を使用する歯科矯正器具を目的とする。
【0011】
歯科矯正器具を歯に接着するために接着剤を使用することは一般的な方法である。接着剤は、一般に、器具の接着表面上にコーティングされる。器具が歯に取り付けられた後、接着剤は硬化されて強固な接着を作り出す。好適な歯科矯正用接着剤は、歯科矯正治療の過程を通して器具と歯との間の一貫した確実な接着を維持するために高い強度を提供しなければならず、これは2年以上持続し得る。しかしながら、接着剤接着は、治療の終わりに器具を取り外すことが過度に困難になるような強度であるべきではない。理想的な接着剤はまた、歯の上に器具を配置した後のドリフトを回避し、歯科矯正施術者による取り扱いを容易にするために、適切な程度の粘着性及び粘度を有するべきである。従来の歯科矯正用接着剤は、かなりの量の硬質充填剤、例えば石英又はシリカ充填剤が充填された重合性樹脂である。接着手順では、接着剤が隙間充填剤として機能する(すなわち、歯の表面と器具との間の全ての空間を占める)必要があるので、過剰な接着剤が、通常、器具の接着表面に適用される。換言すれば、歯の表面と器具の接着表面との間に不一致が存在する場合、接着剤は、器具と歯との間の空間を充填し、接着を維持し、食物を捕捉して歯垢を蓄積し得る空隙の形成を防止する。器具が歯に対して完全に固定されると、過剰な接着剤が基部の周囲に沿って滲み出る。「バリ」として知られるこの過剰な接着剤は、接着剤を硬化させる前に施術者によって手作業で除去される。接着剤のバリの存在は不利であり得る。バリの除去は、特に器具の偶発的な動揺が接着信頼性に悪影響を与え得るので、時間がかかる。更に、過剰な接着剤の不完全な除去は問題となる。不完全な除去は、特に、アクセスが制限される後方領域及びフック付き器具の後ろで特によく見られる。完全に除去されない場合、過剰な接着剤は、細菌蓄積のための部位を提供する。そのような細菌は、下にある歯構造を攻撃して分解し、歯の脱灰及び変色をもたらす可能性がある。更に、露出した接着剤表面は、食品又は飲料に汚染されやすい。最終的に、接着剤組成物中の硬質充填剤の存在は、接着剤が間接接着の場合に一旦硬化すると、接着剤の除去を困難にして、患者にとって不快になる。
【0012】
十分な充填剤量を有する接着剤は、より良好な歯の接着を提供するが、バリ除去を必要とすることが理解される。充填剤は、流動抵抗を増加させ(すなわち、粘度を増加させ)、これは、おそらく、間隙の構成により容易に形成されることに少なくとも部分的に起因して、より多くの接着剤が、器具-歯接合部と接触したままである(すなわち、歯科矯正器具と歯の表面との間の間隙を充填する)ことを可能にする。この隙間を埋めることは、かなりの曲率を有する歯構造、不規則な形状の歯、大臼歯などにとって特に重要である。しかしながら、滲み出た粘性接着剤(バリ)は、除去されなければならない凸形状を取り、除去されないバリは、汚染されやすく、虫歯を引き起こす細菌の蓄積のための環境を作り出す。
【0013】
充填剤をほとんど又は全く含まない接着剤は、除去される必要がない可能性がある凹状のメニスカス状の形状(「バリ」とはみなされない)で表されるより柔らかい接着剤(すなわち、より低い粘度)をもたらすことが更に理解される。しかしながら、低粘度接着剤は、歯科矯正器具と歯構造との間の間隙を十分に充填せず、その結果、歯の接着が不十分になり、器具の変位又は「ドリフト」につながる場合があり、完全な接着不良につながる場合さえある。更に、不十分に充填された間隙は、虫歯に寄与し得る食物物質を収容することになる。低粘度接着剤でバリを軽減しながら、歯科矯正器具と歯構造との間の間隙を適切に充填するための以前の解決策は、米国特許第10,492,890号に記載されるような圧縮性マットの使用によって達成されてきた。
【0014】
本開示の発明者らは、低粘度接着剤組成物によって少なくとも部分的に取り囲まれた高粘度接着剤組成物を有する硬化性接着剤層を組み込むことにより、歯科矯正器具を歯の表面に固定する際に低粘度接着剤組成物のみが滲み出ることを可能にしながら(バリの除去を必要としない)、十分な間隙充填が提供されることを発見した。高粘度接着剤組成物は、それを取り囲む低粘度接着剤組成物を効果的に移動させ、高粘度接着剤が基部を越えて滲み出る(バリを形成する;除去を必要とする)ことが防止される。更に、高粘度接着剤組成物は、基部と歯構造との間の接触面積を最大化するように分配される。加えて、接着剤層は、任意の期間にわたって任意の配向で基部から流動せず、完全な組み立て及び分配を可能にする。この巧妙な構造は、バリの除去を必要とせずに優れた接着強度を保証し、圧縮性マットの使用及び関連する製造コストを回避し、インチェアーでの準備を限定する。
【0015】
図1Aは、歯科矯正器具100の側面図を示している。歯科矯正器具100は、基部102と、その上に配置された硬化性接着剤層104とを含む。硬化性接着剤層104は、低粘度接着剤組成物108によって取り囲まれた高粘度接着剤組成物106を含む。硬化性接着剤層104は、非圧縮構成で、すなわち、歯科矯正器具100を歯の表面(図示せず)に押し付ける前の状態で示されている。特定の一実施形態では、歯科矯正器具100は、0.508mmの最大厚さで1.24mm
3の体積で存在し、基部の面積の24%を覆う高粘度組成物106と、0.238mmの平均厚さで1.84mm
3の体積で存在し、基部の面積の76%を覆う低粘度組成物108とを有する。
【0016】
図1Bは、圧縮状態にある、すなわち、歯科矯正器具100を歯の表面(図示せず)に押し付けた後の歯科矯正器具100の側面図を示す。示されるように、低粘度接着剤組成物108のみが基部102を越えて広がっている。特定の一実施形態では、歯科矯正器具100は、
図1Aにおいて上述したように、圧縮後に基部の面積の47%を覆う高粘度組成物106と、圧縮後に基部の面積の53%を覆う低粘度組成物108とを有する。
【0017】
図1Cは、非圧縮状態の歯科矯正器具100の底面図を示す。
【0018】
図1Dは、圧縮状態の歯科矯正器具100の底面図を示す。
【0019】
図1Eは、非圧縮状態の歯科矯正器具100の上面図を示す。
【0020】
図1Fは、圧縮状態の歯科矯正器具100の上面図を示す。示されるように、低粘度接着剤組成物108のみが基部102を越えて広がっている。
【0021】
図2Aは、歯科矯正器具200の断面側面図を示す。歯科矯正器具200は、基部202と、その上に配置された硬化性接着剤層204とを含む。硬化性接着剤層204は、非圧縮構成で示されている。示されるように、高粘度接着剤組成物206は、低粘度接着剤208よりも大きな体積を有する。特定の一実施形態では、歯科矯正器具200は、0.508mmの最大厚さで1.72mm
3の体積で存在し、基部の面積の32%を覆う高粘度組成物206と、0.508mmの最大厚さ及び約0.250mmの平均厚さで1.41mm
3の体積で存在し、基部の面積の68%を覆う低粘度組成物208とを有する。
【0022】
図2Bは、圧縮状態の歯科矯正器具200の断面側面図を示す。高粘度接着剤組成物206は、基部202の縁部に向かって広がるように示され、低粘度接着剤組成物206は、凹状構成で基部202の縁部を越えて広がるように示されている。高粘度接着剤組成物204が基部202の縁部に向かって広がる程度は、少なくとも使用される高粘度接着剤組成物の体積に依存する。特定の一実施形態では、歯科矯正器具200は、
図2Aにおいて上述したように、圧縮後に基部の面積の66%を覆う高粘度組成物206と、圧縮後に基部の面積の34%を覆う低粘度組成物208とを有する。
【0023】
図3Aは、歯科矯正器具300と同様であるが、配置された高粘度接着剤組成物306の体積(したがって、被覆面積)が異なる、非圧縮状態の歯科矯正器具300の断面側面図を示す。特定の一実施形態では、歯科矯正器具300は、0.381mmの最大厚さで2.67mm
3の体積で存在し、基部の面積の67%を覆う高粘度組成物306と、0.266mmの最大厚さ及び0.133mmの平均厚さで0.46mm
3の体積で存在し、基部の面積の33%を覆う低粘度組成物308とを有する。
【0024】
図3Bは、歯科矯正器具300と同様であるが、高粘度接着剤組成物306によって被覆された面積Aが異なる、圧縮状態の歯科矯正器具300の断面側面図を示す。特定の一実施形態では、歯科矯正器具300は、
図3Aにおいて上述したように、圧縮後に基部の面積の100%を覆う高粘度組成物306を有する。
【0025】
図4Aは、歯科矯正器具400と同様であるが、高粘度接着剤組成物406によって被覆された高さ及び面積が異なる、非圧縮状態の歯科矯正器具400の断面側面図を示す。特定の一実施形態では、歯科矯正器具400は、1.15mmの最大厚さで1.26mm
3の体積で存在し、基部の面積の24%を覆う高粘度組成物406と、0.56mmの最大厚さ及び0.33mmの平均厚さで1.87mm
3の体積で存在し、基部の面積の76%を覆う低粘度組成物408とを有する。
【0026】
図4Bは、歯科矯正器具200と同様であるが、高粘度接着剤組成物406によって被覆された面積Aが異なる、圧縮状態の歯科矯正器具400の断面側面図を示す。特定の一実施形態では、歯科矯正器具400は、
図4Aにおいて上述したように、圧縮後に基部の面積の47%を覆う高粘度組成物306と、圧縮後に基部の面積の53%を覆う低粘度組成物408とを有する。
【0027】
図5Aは、圧縮性材料510と、その中及び/又はその上に配置された接着剤506/508(高粘度接着剤及び/又は低粘度接着剤組成物)とを有する歯科矯正器具500の例を示す(本開示の一部ではない;米国特許第9,480,540号を参照されたい)。歯科矯正器具500は、非圧縮状態で示されている。圧縮性材料は、接着剤組成物がデバイスの基部502を越えて広がることを防止するために使用されてきた。本開示の歯科矯正器具は、本明細書に記載されるそのような圧縮性材料を有しない。
【0028】
図5Bは、非圧縮構成の圧縮性材料510を示す歯科矯正器具500の断面図である。
【0029】
定義
本明細書で使用される場合、「約」とは、所与の値の±10パーセントを意味する。例えば、約10とは、9~11を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「酸官能基」は、酸性水素(すなわち、約5未満のpKa)を有する官能基を指す。有機官能基、例えば、-CO2H、-P(O)(OH)2、-S(O)2OHなどは、「酸官能基」とみなされる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、直鎖又は分岐鎖の一価飽和炭素鎖、例えば、C1アルキルは、メチル(-CH3)であり、C2アルキルは、エチル(-CH2CH3)であり、C4アルキルは、ブチル(-CH2CH2CH2CH3)、sec-ブチル(-CH(CH-3)CH2CH3)、イソ-ブチル(-CH2CH(CH3)2)、又はtert-ブチル(-C(CH3)3)などであり得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」は、直鎖又は分岐鎖の二価飽和炭素鎖、例えば、C1アルキレンは、メチレン(-CH2-)であり、C2アルキレンは、エチレン(-CH2CH2-)であり、C4アルキレンは、-CH2CH2CH2CH2-、-CH(CH-3)CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、又は-C(CH3)2CH2-などであり得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「アルキル(アルキル)アクリレート(alkyl (alk)acrylate)」は、アルキルアクリレートエステル(すなわち、C(R1)(R1)=C(R2)C(O)O-アルキル)、式中、R1は任意であり(例えば、-H又はC1~4アルキル)、R2は-Hである)、又はアルキル置換アルキルアクリレートエステル(すなわち、C(R1)(R1)=C(R2)C(O)O-(アルキル)、式中、R1は任意であり(例えば、-H又はC1~4アルキル)、R2はアルキル(例えば、メチル(「メタ」))である)を指す。「ヒドロキシ置換(アルキル)アクリレート」は、式C(R1)(R1)=C(R2)C(O)O-R3)の化合物を指し、式中、R1、R2、又はR3のうちの少なくとも1つは、-OHで置換されたアルキルである。場合によっては、(アルキル)アクリレートは、二量体、例えば、C(R1)(R1)=C(CH3)C(O)O-R2OC(O)OC(CH3)=C(R1)(R1)であってもよく、式中、R2は連結基、例えば、C2~8アルキレンである。
【0034】
本明細書で使用される場合、「基部」は、歯構造と接触することが意図された歯科矯正器具の表面を指す。歯科矯正器具の基部は、金属、プラスチック、セラミック、又はこれらの組み合わせから構成されてもよい。
【0035】
本明細書で使用される場合、「不飽和」、「不飽和有機基」は、オレフィン単位を指す。オレフィンは、-C(R1)=C(R2)-であり、式中、R1及びR2は、任意のものであり、例えば、各R1は、H又はC1~6アルキルであり;各R2は、-C(O)(C1~6アルキル)、-CO2H、-O(C1~6アルキル)などである。「不飽和モノマー」という用語は、オレフィン単位を含む重合性化合物を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「圧縮性材料」又は「圧縮性マット」は、圧縮されたときに体積が減少する任意の非接着性材料、特に多孔質材料を指す。例示的な圧縮性材料としては、発泡体(例えば、セルロース、ガラス、ポリマー)、スポンジ、不織布、グラスウール、綿繊維、及びセルロース繊維が挙げられる。圧縮性材料の更なる例は、米国特許第10,492,890号及び米国特許第9,480,540号並びにそれらに記載されている参考文献に開示されており、それらの各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本開示の歯科矯正器具は、基部上に圧縮性材料を有しない。
【0037】
本明細書において使用される場合、「AとBとのうちの1つ以上」又は「少なくとも1つのAと少なくとも1つのBとのうちの1つ以上」などの語句において使用される「のうちの1つ以上」という語句は、組成物が、少なくとも1つのA、1つよりも多くのA、少なくとも1つのB、1つよりも多くのB、少なくとも1つのA及び少なくとも1つのB、1つよりも多くのA及び1つよりも多くのBを含んでもよいこと意味する。言い換えれば、この語句は、組成物が、少なくとも1つのAとBとを各々有しなければならないことを意味することを意図するものではない。
【0038】
本明細書で使用される場合、「歯科矯正器具」は、歯構造に接着されることが意図される任意のデバイス、例えば、歯科矯正ブラケット、バッカルチューブ、舌固定装置、歯科矯正バンド、開口器、ボタン、既製アタッチメント、及びクリートを指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「硬化性接着剤」は、例えば、加熱して重合又は化学的架橋を引き起こすことによって硬化又は固化することができる、充填剤を伴うか又は伴わない重合性成分(すなわち、樹脂)を含む組成物を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「硬化接着剤」は、硬化性接着剤から誘導される、充填剤を伴うか又は伴わない重合成分を含む組成物を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「高粘度接着剤組成物」は、硬化すると重合接着剤を提供する、1つ以上の重合性成分を有する組成物として定義される。重合性成分(すなわち、モノマー)の性質は、単独で、又は添加剤、例えば充填剤と組み合わせて、1s-1の剪断速度で約10Pa・s~約1,500,000Pa・sの粘度を提供する。高粘度接着剤組成物は、歯の表面又は歯のレプリカ表面、例えば、ストーンモデル又は石膏モデルに適用又は接着することができる(すなわち、インダイレクトボンディングのための)充填(例えば、複合)材料(例えば、歯科用又は歯科矯正用材料)である。高粘度接着剤組成物としては、例えば、歯科矯正用接着剤、セメント(例えば、グラスアイオノマーセメント、樹脂変性グラスアイオノマーセメント、及び/又は歯科矯正用セメント)、及び修復剤(例えば、修復充填材料)が挙げられる。高粘度接着剤組成物は、光重合性及び/又はレドックス重合性であってもよい。
【0042】
本明細書で使用される場合、「低粘度接着剤組成物」は、硬化すると重合接着剤を提供する、1つ以上のモノマーを有する組成物として定義される。重合性成分(すなわち、モノマー)の性質は、単独で、又は添加剤、例えば充填剤と組み合わせて、1s-1の剪断速度で約1Pa・s~約100Pa・sの粘度を提供する。低粘度接着剤組成物は、歯の表面又は歯の複製表面に適用又は接着することができる非充填材料又は軽充填材料(例えば、歯科用又は歯科矯正用材料)である。低粘度接着剤組成物としては、例えば、歯科用接着剤、プライマー(例えば、歯科矯正用プライマー)、ライナー、シーラント、及びコーティングが挙げられる。低粘度接着剤組成物は、光重合性及び/又はレドックス重合性であってもよい。
【0043】
本明細書で使用される場合、「層」は、基部の長さに平行な平面として定義される。構成要素が層の一部とみなされるためには、平面は層内の各構成要素を横断しなければならない。層を形成する組成物は、当該平面の上方及び/又は下方に延びてもよい。
【0044】
本明細書で使用される場合、低粘度接着剤組成物及び高粘度接着剤組成物の配置を定義する寸法に関して定義される「厚さ」は、歯科矯正器具の基部から組成物の最高点までの垂直距離として測定される。「最大厚さ」は、領域内で測定された最大距離を指す。「平均厚さ」は、領域全体にわたって測定された距離の平均を指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「樹脂」は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の重合性基を含む重合性成分を指す。例示的な重合性基としては、アクリレート基、エポキシ(オキシラン)基、及びビニルエーテル基が挙げられるが、これらに限定されない。樹脂は、多くの場合、放射線により誘導される重合若しくは架橋により、又はレドックス開始剤を使用することにより硬化され得る。「樹脂」という用語は、「重合性成分」及び「接着剤」と同義的に使用される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「降伏応力」は、材料を流動させるのに必要な最小応力である。
【0047】
歯科矯正器具
様々な実施形態では、歯科矯正器具が記載される。歯科矯正器具は、基部と、基部上に配置された硬化性接着剤層とを含むことができる。硬化性接着剤層は、第1の領域及び第2の領域を含むことができ、第1の領域は第2の領域によって少なくとも部分的に取り囲まれており、第1の領域及び第2の領域は歯の表面に接触するように構成されている。第1の領域は、1s-1の剪断速度での約10Pa・s~約1,500,000Pa・sの粘度によって特徴付けられる高粘度接着剤組成物を含むことができ、第2の領域は、1s-1の剪断速度での約0.1Pa・s~約100Pa・sの粘度によって特徴付けられる低粘度接着剤組成物を含む。高粘度接着剤組成物は、低粘度接着剤組成物の粘度よりも高い粘度を有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、歯科矯正器具は、本質的に基部及び硬化性接着剤層からなる。
【0049】
いくつかの実施形態では、歯科矯正器具は、圧縮性マットを除外してもよい。圧縮性マットは、基部の表面と歯構造との間の間隙を充填するために使用されてきた。圧縮性材料及びそれから製造されるマットは、例えば、米国特許第10,492,890号及び米国特許第9,480,540号に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、圧縮性マットは、発泡体、スポンジ、不織布、グラスウール、綿繊維、セルロース繊維、これらの組み合わせなどを含んでもよい。いくつかの実施形態では、圧縮性材料は、約0.2mm~約1mm、例えば、0.5mmの厚さを有してもよい。具体的な材料は、例えば、米国特許第4,605,402号;米国特許第4,865,596号;米国特許第5,614,570号;米国特許第6,027,795号;米国特許第6,645,618号;日本特許第JP63170437号;及びNachtら,”The microsponge:a novel topical programmable delivery system,”in Topical Drug Delivery Formulations,D.W.Osborn and A.H.Amman(Eds.),Marel Dekker,New York,pp.299-325(1990)、米国特許第5,770,636号(Wernsingら)並びに米国特許第5,817,704号(Shivelyら);例えば、Westermanら,British Journal of Sports Medicine,36:205-208(2002);米国特許第6,645,618号;米国特許第6,750,261号に記載されているような独立気泡発泡体に記載されており、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、圧縮性マットは、ポリプロピレンを含むか、又は本質的にそれからなってもよい。
【0050】
歯科矯正器具の基部
いくつかの実施形態では、基部は、約8.0mm2~約20mm2の面積を有し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、基部は、歯科矯正器具(例えば、舌側ブラケット、自己結紮式ブラケット、Rothブラケット、MBTブラケットなど)、バッカルチューブ、バンド、ボタン、スペーサ保持具、舌固定装置、ブラケット又はバッカルチューブのカスタムベースなどの基部であってもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、基部は、セラミック、コバルトクロム、複合材料、金、プラスチック、ステンレス鋼、チタン、又はこれらの組み合わせから選択される材料を含んでもよい。
【0053】
硬化性接着剤層
いくつかの実施形態では、硬化性接着剤層は、本明細書に記載される充填剤を更に含んでもよい。充填剤は、高粘度接着剤組成物、低粘度接着剤組成物、又はこれらの組み合わせ内に存在してもよい。多くの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、低粘度接着剤組成物中に存在する充填剤量より多い量の充填剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、高粘度接着剤は、低粘度接着剤と同一の樹脂に基づいてもよく、その組成は、高粘度接着剤組成物及び低粘度接着剤組成物について記載された粘度が達成されるように、存在する充填剤の量が異なる。他の実施形態では、高粘度接着剤及び低粘度接着剤は、異なる樹脂に基づき、すなわち、接着剤は、1つ以上の異なるモノマーを含むか、又はそれから誘導される。
【0054】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物及び低粘度接着剤組成物は、粘度において、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも12倍、少なくとも15倍、少なくとも18倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約8倍~約12倍、約10倍~約15倍などだけ異なり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、約0.3mm~約2.0mmの最大厚さで(非圧縮状態で)基部上に存在してもよい。例えば、高粘度接着剤組成物は、約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、若しくは2.0mmの最大厚さ、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約0.3~約0.5mm、約0.5~約1.6mmなどで基部上に存在してもよい。いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、約1.0mm3~約3.0mm3の体積で基部上に(非圧縮状態で)存在してもよい。例えば、高粘度接着剤組成物は、約1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、若しくは3.0mm3の体積で、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約1.2~約1.5mm3、約1.8~約2.8mm3などで基部上に存在してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、約0.2mm~約1.5mmの最大厚さで(非圧縮状態で)基部上に存在してもよい。例えば、低粘度接着剤組成物は、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、若しくは2.0mmの最大厚さ、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約0.3~約0.5mm、約0.5~約1.6mmなどで基部上に存在してもよい。いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、約0.3mm3~約2.0mm3の体積で基部上に(非圧縮状態で)存在してもよい。例えば、低粘度接着剤組成物は、約0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mm3の体積で、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約1.4~約1.9mm3、約0.4~約0.8mm3などで基部上に存在してもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物(非圧縮状態)の最大厚さ対低粘度接着剤組成物(非圧縮状態)の平均厚さの比は、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも11:1、少なくとも12:1、少なくとも13:1、少なくとも14:1、少なくとも15:1、少なくとも16:1、少なくとも17:1、少なくとも18:1、少なくとも19:1、少なくとも20:1、又は前述の値のいずれかの間の比、例えば、約2:1~約4:1、約12:1~約15:1などであってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、(非圧縮状態で)約20%~約75%の基部の面積を覆ってもよい。例えば、高粘度接着剤組成物は、(非圧縮状態で)約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約20%~約55%、約60%~約70%などの基部の面積を覆ってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、(非圧縮状態で)約25%~約80%の基部の面積を覆ってもよい。例えば、低粘度接着剤組成物は、(非圧縮状態で)約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、若しくは80%、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約30%~約40%、約45%~約80%などの基部の面積を覆ってもよい。低粘度接着剤組成物は、高粘度接着剤組成物によって占有されていない基部の面積の差を覆うことができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、基部の総面積は、約1:1、1:1.2、1:1.4、1:1.6、1:1.8、1:2、1:2.2、1:2.4、1:2.6、1:2.8、1:3、1:3.2、1:3.4、1:3.6、1:3.8、1:4、1:4.2、1:4.4、1:4.6、1:4.8、1:5の比、又は前述の値のいずれかの間の比、例えば、約1:1.6~約1:2.5、約1:3~約1:4などで、第1の領域(非圧縮状態の高粘度接着剤組成物を含む)及び第2の領域(非圧縮状態の低粘度接着剤組成物を含む)によって覆われてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、(圧縮後に)約40%~約100%の基部の面積を覆ってもよい。例えば、高粘度接着剤組成物は、(圧縮後に)約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約45%~約70%、約50%~約95%などの基部面積を覆ってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、(圧縮後に)約0%~約60%の基部の面積を覆ってもよい。例えば、低粘度接着剤組成物は、(圧縮後に)約0%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、若しくは60%、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約5%~約50%、約30%~約55%などの基部の面積を覆ってもよい。低粘度接着剤組成物は、高粘度接着剤組成物によって占有されていない基部の面積の差を覆うことができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物及び低粘度接着剤組成物は、任意の充填剤量、及びそれらの組成物の任意の組み合わせを含む、本明細書に記載される任意の組成物から選択され得る。例えば、高粘度接着剤は、3M Transbond(商標)XT Adhesive又は3M Transbond(商標)PLUS Color Change Adhesiveであってもよく、低粘度接着剤は、3M Transbond(商標)XT Primer、3M Clinpro Sealant又は3M Scotchbond Universal Adhesiveであってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、硬化性接着剤層内の高粘度接着剤及び低粘度接着剤のうちの少なくとも1つは、開始剤系を更に含んでもよい。開始剤系は、低粘度接着剤組成物、高粘度接着剤組成物、又はこれらの組み合わせ内に存在してもよい。いくつかの実施形態では、開始剤系は、1つ以上の光開始剤を含んでもよい。光開始剤は、接着剤組成物の重合(硬化)を開始する。光開始剤の例は、米国特許第5,545,676号及び米国特許第7,674,850号、米国特許第7,816,423号に記載されており、例えば、ジアリールヨードニウム塩、金属錯体塩などである。他の重合開始剤の例としては、ケトン、例えば、ベンジル、ベンゾイン、アシロイン、アシロインエーテルなどが挙げられる。重合開始剤の具体例としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(すなわち、IRGACURE651)及び2-メトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Ciba Specialty Chemicals Corp.,Tarrytown,NY)が挙げられる。いくつかの実施形態では、光開始剤は、硬化性接着剤層の重量に対して約0.01重量%~約10重量%の量で硬化性接着剤層中に存在してもよい。例えば、光開始剤は、硬化性接着剤層の重量に対して、約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、若しくは10.0重量%の量、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約5.0重量%~約8.0重量%、約0.1重量%~約3.5重量%などで存在してもよい。
【0065】
他の実施形態では、開始剤系はレドックス開始剤を含んでもよい。レドックス開始剤は、1つ以上のレドックス剤、すなわち、還元剤及び酸化剤を含んでもよい。還元剤と酸化剤とは、反応して、重合を開始することができるフリーラジカル種を生成し得る。好適なレドックス剤は、例えば、米国特許第7,173,074号及び米国特許第6,982,288号に見出すことができる。例えば、アスコルビン酸及びその塩、誘導体又は金属錯体が好適な還元剤であり、アミン(例えば、4-tert-ブチルジメチルアニリン;p-トルエンスルフィン酸塩及びベンゼンスルフィン酸塩)、チオ尿素(例えば、1-エチル-2-チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1-ジブチルチオ尿素及び1,3-ジブチルチオ尿素)、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、亜硫酸塩並びに亜ジチオン酸塩なども同様である。好ましい酸化剤としては、例えば、過硫酸及びその塩、アルキルアンモニウム塩、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル;ヒドロペルオキシド、例えばクミルヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、アミルヒドロペルオキシド)、遷移金属の塩、例えば、塩化コバルト(III)、塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、過リン酸及びその塩などが挙げられる。米国特許出願公開第2004/0122126号に開示されているような酵素も、レドックス開始剤として機能し得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、開始剤系は、1つ以上の増感剤(例えば、ケトン、クマリン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p-置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料、及びピリジニウム染料など)を更に含んでもよい。増感剤の具体例としては、カンファーキノン、グリオキサール、ビアセチル、3,3,6,6-テトラメチルシクロヘキサンジオン、3,3,7,7-テトラメチル-1,2-シクロヘプタンジオン、3,3,8,8-テトラメチル-1,2-シクロオクタンジオン、3,3,18,18-テトラメチル-1,2-シクロオクタデカンジオン、ジピバロイル、ベンジル、フリル、ヒドロキシベンジル、2,3-ブタンジオン、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、3,4-ヘキサンジオン、2,3-ヘプタンジオン、3,4-ヘプタンジオン、2,3-オクタンジオン、4,5-オクタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオンなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、開始剤系は、1つ以上の電子供与体、例えば、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、尿素、チオ尿素、フェロセン、スルホン酸(sulflnic acids)又はその塩、フェロシアニド塩、アルコルビン酸又はその塩、ジチオカルバミン酸又はその塩、キサントゲン酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、テトラフェニルボロン酸塩などを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、開始剤系は、1つ以上の水素供与体、例えばアミンを更に含んでもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、硬化性接着剤層は、グラスアイオノマーセメント、樹脂変性グラスアイオノマーセメント、又はそれらの組み合わせを更に含んでもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、硬化性接着剤層内の高粘度接着剤及び低粘度接着剤のうちの少なくとも1つは、1つ以上のフッ化物放出剤を更に含んでもよい。高粘度接着剤組成物及び/又は低粘度接着剤組成物内に1つ以上のフッ化物放出剤を組み込むことは、歯科矯正器具の下及びそのすぐ周囲の歯の表面へのフッ化物の送達を可能にし、それによって歯の表面を腐食から保護することができる。フッ化物放出剤の例としては、フルオロアルミノシリケートガラス、無機フッ化物塩、有機フッ素塩、フッ化物含有錯体などが挙げられる。具体的なフッ化物放出剤は、例えば、以下の開示に見出すことができる:米国特許第3,814,717号、米国特許第5,332,429号、米国特許第6,126,922号、及び国際特許公開第2000/69393号。いくつかの実施形態では、硬化性接着剤層は、硬化性接着剤層の重量に対して約0.1重量%~約85重量%の量で存在するフッ化物放出剤を含んでもよい。例えば、フッ化物放出剤は、硬化性接着剤層の重量に対して、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、若しくは85重量%の量で存在してもよく、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約20重量%~約30重量%、約45重量%~約60重量%などで存在してもよい。
【0069】
接着剤組成物
多くの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、本明細書に記載される樹脂及び充填剤を含む。多くの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、本明細書に記載される樹脂及び任意選択で充填剤を含む。高粘度接着剤樹脂及び低粘度接着剤樹脂は、同じ又は異なる重合性成分を含んでもよく、同じ樹脂を有する組成物は、充填剤の種類及び/又は量に基づいて異なってもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、高粘度接着剤樹脂及び低粘度接着剤樹脂は、独立して、酸官能基を有する若しくは有しない1つ以上の重合性成分、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0071】
酸官能基を有しない重合性成分としては、例えば、PEGDMA(分子量が約400のポリエチレングリコールジメタクリレート)、bisGMA、UDMA(ウレタンジメタクリレート)、GDMA(グリセロールジメタクリレート)、TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)、米国特許第6,030,606号(Holmes)に記載のようなbisEMA6、及びNPGDMA(ネオペンチルグリコールジメタクリレート)が挙げられる。他の例としては、国特許第6,187,836号(Oxmanら)及び米国特許第6,084,004号(Weinmannら)、米国特許第6,245,828号(Weinmannら)、米国特許第5,037,861号(Crivelloら)、及び米国特許第6,779,656号(Klettkeら)、米国特許第3,018,262号(Schroeder)、国際公開第01/51540号(Klettkeら)。米国特許第7,262,228号(Oxmanら)、並びにLee and Nevilleによる「Handbook of Epoxy Resins」、McGraw-Hill Book Co.,New York(1967)に列挙されているものなどのエポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-2-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、及びビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-メチル)アジペート、オクタデシレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシドール、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。これらの参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
酸官能基を有する重合性成分としては、例えば、α,β-不飽和酸性化合物、例えば、グリセロールホスフェートモノ(メタ)アクリレート、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシエチル)ホスフェート、((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシ)プロピルオキシホスフェート、(メタ)アクリルオキシヘキシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシヘキシル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシオクチルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシオクチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシデシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシデシル)ホスフェート、カプロラクトンメタクリレートホスフェート、クエン酸ジ-又はトリ-メタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリカルボキシル-ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリクロロリン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリスルホネート、ポリ(メタ)アクリレート化ポリホウ酸などを挙げることができ、これらは、固化性成分系の成分として使用してもよい。また、不飽和炭酸、例えば、(メタ)アクリル酸、芳香族(メタ)アクリレート化酸(例えば、メタクリレート化トリメリット酸)、及びそれらの無水物などのモノマー、オリゴマー、及びポリマーでもよい。これらの化合物のあるものは、例えば、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸との間の反応生成物として得ることができる。酸官能性成分及びエチレン性不飽和成分の両方を有するこの種の追加の化合物は、米国特許第4,872,936号(Engelbrecht)及び米国特許第5,130,347号(Mitra)に記載されている。例えば、米国特許公開第2004/0206932号(Abuelyamanら)に開示されるような重合性ビスホスホン酸;AA:ITA:IEM(例えば、米国特許第5,130,347号(Mita)の実施例11に記載されているようなAA:ITAコポリマーを十分な2-イソシアナトエチルメタクリレートと反応させてコポリマーの酸基の一部をペンダントメタクリレート基に変換することによって製造されたペンダントメタクリレートを有するアクリル酸:イタコン酸のコポリマー);並びに米国特許第4,259,075号(Yamauchiら)、米国特許第4,499,251号(Omuraら)、米国特許第4,537,940号(Omuraら、米国特許第4,539,382号(Omuraら)、米国特許第5,530,038号(Yamamotoら)、米国特許第6,458,868号(Okadaら)、並びに欧州特許出願公開第712,622号(Tokuyama Corp.)及び同第1,051,961(Kuraray Co.,Ltd.)に列挙されているものである。酸官能基を有する重合性成分の更なる例は、(メタ)アクリルオキシ基及び少なくとも1個の-O-P(O)(OH)x基(式中、x=1又は2であり、少なくとも1個の-O-P(O)(OH)x基及び少なくとも1個の(メタ)アクリルオキシ基は、C1~C4炭化水素基によって一緒に連結されている);少なくとも1個の(メタ)アクリルオキシ基及び少なくとも1個の-O-P(O)(OH)x基を含む第2の化合物(式中、x=1又は2であり、少なくとも1個の-O-P(O)(OH)x基及び少なくとも1個の(メタ)アクリルオキシ基は、C5~C12炭化水素基によって一緒に連結されている);酸官能基を有しないエチレン性不飽和化合物;開始剤系;並びに充填剤を含む。このような組成物は、例えば、米国特許出願公開第2007/0248927号(Luchterhandtら)に記載されている。米国特許第7,449,499号(Bradleyら)及び米国特許第7,452,924号(Aasenら);並びに米国特許出願公開第2005/0175966号(Falsafiら)、同第2009/0011388号(Bradleyら)、及び同第2009/0035728号(Aasenら)も参照されたい。これらの参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤樹脂及び低粘度接着剤樹脂は、独立して、不飽和モノマー(例えば、(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ置換(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシ置換(メタ)アクリル酸、ビニルエーテル)、エポキシ樹脂などから選択される重合性成分を含んでもよい。例えば、1つ以上の不飽和モノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリメタクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[1-(2-アクリルオキシ)]-p-エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及びトリスヒドロキシエチル-イソシアヌレートトリメタクリレート;(メタ)アクリルアミド(すなわち、アクリルアミド及びメタクリルアミド)、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス-(メタ)アクリルアミド、及びジアセトン(メタ)アクリルアミド;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(好ましくは、分子量200~500)のビス-(メタ)アクリレート、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)ジメタクリレート、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、CDMA(2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸と2-イソシアナトエチルメタクリレートとの反応生成物)、デカメチレンジメタクリレート、メタクリルオキシデシルホスフェート(MDP)及び他のアクリルホスフェート、アクリル酸及び他のアクリル酸、アクリル酸とイタコン酸のコポリマー、米国特許第4,652,274号(Boettcherら)に記載されているようなアクリレート化モノマーの共重合性混合物、米国特許第4,642,126号(Zadorら)に記載されているようなアクリレート化オリゴマー、及び米国特許第4,648,843号(Mitra)に記載されているようなポリ不飽和カルバモイルイソシアヌレート;並びにビニル化合物、例えば、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、及びジビニルフタレートから選択されてもよい。他の好適なフリーラジカル重合性化合物としては、例えば、国際公開第00/38619号(Guggenbergerら)、国際公開第01/92271号(Weinmannら)、国際公開01/07444号(Guggenbergerら)、国際公開第00/42092号(Guggenbergerら)に開示されているようなシロキサン官能性(メタ)アクリレート、並びに、例えば、米国特許第5,076,844号(Fockら)、米国特許第4,356,296号(Griffithら)、欧州特許第0373384号(Wagenknechtら)、欧州特許第0201031号(Reinersら)、及び欧州特許第0201778号(Reinersら)に開示されているようなフルオロポリマー官能性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリセロールモノ-又はジ-(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノ-又はジ-(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールモノ-、ジ-、及びトリ-(メタ)アクリレート;ソルビトールモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、又はペンタ-(メタ)アクリレート;並びに2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-エタクリルオキシプロポキシフェニル]プロパン(bisGMA)、PEGDMA(約400の分子量を有するポリエチレングリコールジメタクリレート)、UDMA(ウレタンジメタクリレート)、GDMA(グリセロールジメタクリレート)、TEGDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)、米国特許第6,030,606号(Holmes)に記載されているようなbisEMA6、及びNPGDMA(ネオペンチルグリコールジメタクリレート)が挙げられる。これらの参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0074】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤樹脂及び低粘度接着剤樹脂は、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)ジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、CDMA(クエン酸ジメタクリレート、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸と2-イソシアナトエチルメタクリレートとの反応生成物)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシルエチルメタクリレート、デカメチレンジメタクリレート、メタクリルオキシデシルホスフェート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、及びアクリル酸とイタコン酸とのコポリマーから独立して選択される1つ以上の重合性成分を独立して含んでもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤樹脂は、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)ジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、CDMA(クエン酸ジメタクリレート、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸と2-イソシアナトエチルメタクリレートとの反応生成物)、及びポリエチレングリコールジメタクリレートから選択される1つ以上の重合性成分を含んでもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤樹脂は、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)ジメタクリレート及びビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレートから選択される1つ以上の重合性成分を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、低粘度接着剤樹脂は、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)ジメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、2-ヒドロキシルエチルメタクリレート、デカメチレンジメタクリレート、メタクリルオキシデシルホスフェート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、及びアクリル酸とイタコン酸とのコポリマーから選択される1つ以上の重合性成分を含んでもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、低粘度接着剤樹脂は、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)ジメタクリレート及びビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレートから選択される1つ以上の重合性成分を含んでもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、低粘度接着剤樹脂は、トリエチレングリコールジメタクリレート及びビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレートから選択される1つ以上の重合性成分を含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態において、低粘度接着剤樹脂は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、デカメチレンジメタクリレート、メタクリルオキシデシルホスフェート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、及びアクリル酸とイタコン酸とのコポリマーから選択される1つ以上の重合性成分を含んでもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、低粘度接着樹脂は、水、アルコール溶媒、例えばエタノール、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、Transbond XT Adhesive(3M Unitek,Monrovia,CA)、Transbond PLUS Color Change Adhesive(3M Unitek,Monrovia,CA)及びTransbond Supreme LV Adhesive(3M Unitek,Monrovia,CA)の名称で販売されている1つ以上の接着剤組成物を含み得、それらのデバイス内の接着剤を含む。いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、Transbond XT Primer(3M Unitek,Monrovia CA)、Clinpro Sealant(3M ESPE,St.Paul,MN)、及びScotchbond Universal Adhesive(3M ESPE,St.Paul,MN)の名称で販売されている1つ以上の接着剤組成物を含み得、それらのデバイス内の接着剤を含む。あるいは、高粘度接着剤組成物及び低粘度接着剤組成物は、充填剤の種類及び/又は充填剤の量が異なるが、前述の接着剤組成物内に1つ以上の樹脂を独立して含んでもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、高粘度接着剤組成物の重量に対して約50重量%~約90重量%の量で存在する本明細書に記載される1つ以上の充填剤を含んでもよい。例えば、高粘度接着剤組成物は、高粘度接着剤組成物の重量に対して、約50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90重量%の量で、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約50重量%~約86重量%、約70重量%~約80重量%などで充填剤を含んでもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、低粘度接着剤組成物の重量に対して約0重量%~約65重量%の量で存在する本明細書に記載される1つ以上の充填剤を含んでもよい。例えば、低粘度接着剤組成物は、低粘度接着剤組成物の重量に対して、約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、若しくは65重量%の量で、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲の値、例えば、約25重量%~約35重量%、約10重量%~約20重量%などで充填剤を含んでもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、1s-1の剪断速度で約10Pa・s~約1,500,000Pa・sの粘度によって特徴付けられ得る。例えば、高粘度接着剤組成物は、1s-1の剪断速度で、約10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、12000、13000、14000、15000、20000、40000、60000、80000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、1500000Pa・sの粘度、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約500~約1000、約10000~約100000Pa・sなどによって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、1s-1の剪断速度で約1500Pa・s~約5000Pa・sの粘度によって特徴付けられ得る。例えば、高粘度接着剤組成物は、1s-1の剪断速度で、約1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、若しくは5000Pa・sの粘度、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約1800~約1900、約4000~約4100Pa・sなどによって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、0.1s-1の剪断速度で約4000Pa・s~約8000Pa・sの粘度によって特徴付けられ得る。例えば、高粘度接着剤組成物は、0.1s-1の剪断速度で、約4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、5000、5100、5200、5300、5400、5500、5600、5700、5800、5900、6000、6100、6200、6300、6400、6500、6600、6700、6800、6900、7000、7100、7200、7300、7400、7500、7600、7700、7800、7900、若しくは8000Pa・sの粘度、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約5000~約7000Pa・sなどの粘度によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、10s-1の剪断速度で約300Pa・s~約2000Pa・sによって特徴付けられ得る。例えば、高粘度接着剤組成物は、10s-1の剪断速度で、約300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、若しくは2000Pa・sの粘度、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約400~約600、約1500~約1700Pa・sなどの粘度によって特徴付けられ得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、1s-1の剪断速度で約0.1Pa・s~約100Pa・sの粘度によって特徴付けられ得る。例えば、低粘度接着剤組成物は、1s-1の剪断速度で、約0.1、0.5、1.0、5.0、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100Pa・sの粘度、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約40~約100、約1~約5、約0.1~約1Pa・sなどによって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、1s-1の剪断速度で約0.5Pa・s~約50Pa・sの粘度によって特徴付けられ得る。例えば、低粘度接着剤組成物は、1s-1の剪断速度で、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、68、若しくは50Pa・sの粘度、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約0.7~約1、約30~約40Pa・sなどによって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、0.1s-1の剪断速度で約0.5Pa・s~約50Pa・sの粘度によって特徴付けられ得る。例えば、低粘度接着剤組成物は、0.1s-1の剪断速度で、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、68、若しくは50Pa・sの粘度、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約0.7~約1、約30~約40Pa・sなどの粘度によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、10s-1の剪断速度で約0.5Pa・s~約50Pa・sの粘度によって特徴付けられ得る。例えば、低粘度接着剤組成物は、10s-1の剪断速度で、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、68、若しくは50Pa・sの粘度、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約0.7~約1、約20~約30Pa・sなどによって特徴付けられ得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、高粘度接着剤組成物及び低粘度接着剤組成物のうちの1つ以上は、本明細書に記載される充填剤を更に含んでもよい。当業者は、粘度調整充填剤を含めることによって組成物の粘度をどのように調整するかを理解するであろう。
【0087】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物はペーストであってもよい。ペーストは、本明細書において、硬化前に成形することができる、液体中に分散された固体の粘性塊として定義される。いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、Rheology Principles,Measurements,and Applications,C.I.Wに記載されている方法によって測定した際、少なくとも1000ダイン/cm2の降伏応力によって特徴付けられ得る。CW Macosko,VCH Publishers,Inc.,New York,1994,p.92を参照されたい。接着剤試験試料の降伏応力及び粘度の測定は、Rheometrics ARES制御歪みレオメーター(Advanced Rheometric Expansion System、Rheometric Scientific,Inc.,Piscataway,N.J.)などの適切な装置を用いて実施することができる。いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、約1000ダイン/cm2~約10000ダイン/cm2の降伏応力によって特徴付けられ得る。例えば、高粘度接着剤組成物は、28℃で、約1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、7200、7400、7600、7800、8000、8200、8400、8600、8800、9000、9200、9400、9600、9800、10000ダイン/cm2、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約7500~約8000、約7400~約9200ダイン/cm2などの静的降伏応力によって特徴付けられ得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、低粘度接着剤組成物は、流動性溶液又は流動性懸濁液である。それは適度な力で流動することができ、硬化前に成形することができない。本明細書に記載される低粘度接着剤組成物は流動性であるが、当該低粘度接着剤は、垂直流動試験(実施例4を参照)によって測定した際に、垂直に保持された基部から大幅に流動せず、基部を室温(23℃)で6時間及び40℃で5分間垂直に保持した後、基部と接触している硬化性接着剤層構成内の表面張力に起因して、上部及び底部における接着剤組成物の厚さの差は約15%未満である。
【0089】
第1の領域
多くの実施形態では、第1の領域は、本明細書に記載される任意の高粘度接着剤組成物を含んでもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、約0.3mm~約1.5mmの最大厚さを有する高粘度接着剤組成物を含み得る。例えば、高粘度接着剤組成物は、約0.3、0.32、0.34、0.36、0.38、0.40、0.42、0.44、0.46、0.48、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50mmの、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約0.38~約1.2mm、約0.60~約0.90mmなどの最大厚さを有し得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、第1の領域は、硬化性接着剤層の総体積の約40パーセント~約85パーセントである体積を有する高粘度接着剤組成物を含んでもよい。例えば、高粘度接着剤組成物の体積は、硬化性接着剤層の総体積に対する約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85パーセント、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約45~約55、約60~約75パーセントなどであってもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、基部の総面積の約20パーセント~約50パーセントにわたって広がっていてもよい。例えば、高粘度接着剤組成物を含む第1の領域は、約20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50パーセントの、又は前述の値のいずれかの間の値、例えば、約30~約40、約26~約48パーセントなどの基部の総面積の割合にわたって広がっていてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、基部の断面側面図から見たときに、ガウス曲線、三角形、又は台形を表す形状の高粘度接着剤組成物を含んでもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、第1の領域は、基部に対して垂直な方向から見たときに、円形、多角形、又は四角形を表す形状の高粘度接着剤組成物を含んでもよい。
【0095】
第2の領域
多くの実施形態では、第2の領域は、本明細書に記載される任意の低粘度接着剤組成物を含んでもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、第2の領域は、約0.05mm~約0.20mmの平均厚さを有する低粘度接着剤組成物を含み得る。例えば、低粘度接着剤組成物は、約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.12、0.14、0.16、0.18、0.20mmの、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約0.06~約0.16mm、約0.10~約0.14mmなどの平均厚さを有し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、第2の領域は、基部の総面積の約50パーセント~約80パーセントにわたって広がっている低粘度接着剤組成物を含んでもよい。例えば、低粘度接着剤組成物を含む第2の領域は、約50、55、60、65、70、75、80パーセントの、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約60~約70、約55~約75パーセントなどの基部の総面積の割合にわたって広がっていてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、第2の領域は、基部によって画定される平面から垂直な方向から見たときに、円環又は矩形環を表す形状の低粘度接着剤組成物を含んでもよい。
【0099】
充填剤
いくつかの実施形態では、充填剤は、非酸反応性(例えば、石英、サブミクロンシリカ、ジルコニア、サブミクロンジルコニア、非ガラス質微小粒子)、酸反応性(例えば、金属酸化物(例えば、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛)、ガラス(例えば、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス)、金属塩)、及びこれらの組み合わせから選択される無機材料であってもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、充填剤は、シラン処理ガラス、シラン処理石英、シラン処理ヒュームドシリカ、シラン処理シリカ、シラン処理ジルコニア、シラン処理セラミック、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、充填剤と接着剤ポリマー(樹脂)との接着を強化するために、充填剤の表面をカップリング剤で処理することができる。好適なカップリング剤としては、例えば、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、又は同類のものが挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態では、充填剤は、単峰性又は多峰性粒径分布を有する。最大粒径は、30μm未満であってもよい。例えば、最大粒径は、30未満、25未満、20未満、15未満、10未満、5未満、1未満、0.5未満、0.1未満、0.075未満、0.05未満、0.025μm未満、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約0.025~約0.5、約5~約1、約30~約10μmなどであってもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、充填剤は、石英、シリカ、窒化シリカ、長石、ホウケイ酸ガラス、カオリン、タルク、ジルコニア、チタニア、Zr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、Alから誘導されたガラス、長石、サブミクロンシリカ粒子、例えば商品名AEROSIL(例えば、OX50)で入手可能なもの、Degussa Corp(Akron,OH)からのシリカ、Cabot Corp(Tuscola,IL)からのシリカ、粉砕ポリカーボネート、ポリカプロラクトンのメタクリレート、ポリエポキシド、金属酸化物(例えば、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛)、ガラス(ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、金属塩、米国特許第4,503,169号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどの非ガラス質微小粒子、米国特許第5,695,251号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどのIow Mohs充填剤、又はこれらの組み合わせから選択され得る。他の好適な充填剤は、米国特許第6,387,981号、同第6,572,693号、国際公開第01/30305号、同第01/30306号、同第01/30307号、及び同第03/063804号(これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。好適なナノフィラーは、米国特許第7,090,721号、同第7,090,722号、同第7,156,911号、及び米国特許公開第2005/0256223号に記載されている(これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0104】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、高粘度接着剤組成物の重量に基づいて約1重量%~約85重量%の総量で存在する1つ以上の充填剤を含んでもよい。例えば、高粘度接着剤組成物は、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、若しくは85重量%で、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約50~約75重量%、約25~約60重量%などの総量で存在する1つ以上の充填剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、シラン処理ガラス、シラン処理石英、シラン処理シリカ、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、低粘度接着剤組成物は、約0重量%~約50重量%の総量で存在する1つ以上の充填剤を含んでもよい。例えば、低粘度接着剤組成物は、約0、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50重量%で、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約1~約5重量%、約2~約3重量%などの総量で存在する1つ以上の充填剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、シラン処理セラミック、シラン処理シリカ、二酸化チタン、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0106】
歯科矯正器具を固定するための方法
様々な実施形態では、歯の表面に歯科矯正器具を固定するための方法が記載される。この方法は、本明細書に記載される歯科矯正器具を準備することと、歯科矯正器具を歯の表面に接触させることと、硬化性接着剤層が歯の表面に対して圧縮されるように歯科矯正器具に圧力を加えることと、硬化性接着剤層を硬化させて硬化接着剤を形成することと、を含み得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、方法は、歯科矯正器具を歯の表面に接触させる前に、1つ以上の歯科矯正器具を予め既製のトレイに適用することを更に含んでもよい。既製のトレイは、対象の歯のカスタムレプリカであってもよく、対象の歯上に歯科矯正器具を正確に配置するのを支援してもよい。この技術は、一般にインダイレクトボンディングと呼ばれる。
【0108】
いくつかの実施形態では、低粘度接着剤組成物は、歯科矯正器具へ圧力を加えた際に、基部外周を越えて広がり、器具-歯接合部によって画定される点に対して凹状メニスカスを形成することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、基部外周を越えて広がった低粘度接着剤組成物を歯の表面から除去することを更に含んでもよい。低粘度接着剤組成物の除去は、ブラッシング、ワイピング、ピッキング、スクレイピング、リンス、又はこれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、最小限のバリを除去する必要はない。
【0109】
多くの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、歯科矯正器具に圧力を加えると、基部と歯の表面との間の間隙を少なくとも部分的に充填することができる。いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、歯科矯正器具に圧力を加えると、基部の総面積の約50パーセント~約100パーセントを覆うことができる。例えば、高粘度接着剤組成物は、約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100パーセントの、又は前述の値のうちのいずれかの間の範囲内の値、例えば、約75~約95、約80~約90パーセントなどの基部の総面積の割合を覆うことができる。歯の表面(例えば、大臼歯、犬歯、小臼歯など)の輪郭は、基部表面の輪郭と一致しない場合がある。高粘度接着剤組成物は、歯の表面へ圧力を加えた際に覆われる基部の面積に応じて、歯の表面と基部表面との間のあらゆる間隙を少なくとも部分的に充填するように機能し得る。基部被覆率は、使用される高粘度接着剤組成物の厚さ及び体積の選択に従って変更することができる。
【0110】
多くの実施形態では、高粘度接着剤組成物は、歯科矯正器具へ圧力を加えた際及び硬化性接着剤層を硬化させた際に、基部の外周を0.2mmより大きく越えて広がることはない。高粘度接着剤組成物は、基部の外周を、0.2mm未満、0.18未満、0.16未満、0.14未満、0.12未満、0.10未満、0.08未満、0.06未満、0.04未満、0.02未満、0mm、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約0~約0.10mm、約0.04~約0.14mmなどで超えて広がり得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、硬化は、本明細書に記載される接着強度試験によって測定して少なくとも5.0MPaの接着強度を提供し得る。いくつかの実施形態では、硬化は、少なくとも5.0、少なくとも6.0、少なくとも7.0、少なくとも8.0、少なくとも9.0、少なくとも10.0、少なくとも11.0、少なくとも12.0、少なくとも13.0、少なくとも14.0、少なくとも15.0、少なくとも16.0、少なくとも17.0、少なくとも18.0、少なくとも19.0、少なくとも20.0、少なくとも21MPa、又は前述の値のいずれかの間の範囲内の値、例えば、約8.0~約15.0MPa、約10.0~約20.0MPaなどの接着強度を提供し得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、方法は、歯科矯正器具を歯の表面に接触させる前に、以下に記載されるフッ化物組成物で歯の表面を前処理することを更に含んでもよい。
【0113】
フッ化物前処理
いくつかの実施形態では、フッ化物組成物は、以下を含み得る:
1)歯の表面にフッ化物を放出するのに有効なフッ化物放出組成物、架橋ポリ酸ポリマー、多価カチオン塩、薬学的に許容される緩衝剤、及び水;
2)銀カチオン源、フッ化物アニオン源、ヨウ化物又はチオシアネートアニオン源、及び水を含む銀-フッ化物組成物、並びに少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含む硬化性樹脂組成物;又は
3)カルボン酸亜鉛、アミン含有リガンド、フッ化物組成物の重量に対して少なくとも4重量%の量でフッ化物を提供するのに有効なフッ化物アニオン源、及び水を含み、フッ化物組成物は、少なくとも8のpHを有し、フッ化物組成物は、約20℃~25℃の温度で均質な溶液である。
【0114】
いくつかの実施形態では、方法は、上記1)に記載のフッ化物組成物で歯の表面を前処理することを更に含んでもよい。歯の表面を前処理するためのフッ化物組成物及び方法に関する更なる詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/048962号に見出すことができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、方法は、上記2)に記載のフッ化物組成物で歯の表面を前処理することを更に含んでもよい。フッ化物組成物及び歯の表面を前処理する方法に関する更なる詳細は、米国仮特許出願第62/956,008号及び同第62/968115号に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0116】
いくつかの実施形態では、方法は、上記3)に記載のフッ化物組成物で歯の表面を前処理することを更に含んでもよい。フッ化物組成物及び歯の表面を前処理する方法に関する更なる詳細は、米国仮特許出願第62/955,975号に見出すことができ、その内容は、その全体が参照により組み込まれる。
【0117】
歯科矯正器具を製造する方法
様々な実施形態では、本明細書に記載される歯科矯正器具を製造するための方法が記載される。この方法は、基部を準備することと、高粘度接着剤組成物を第1の領域において基部に適用すること、及び低粘度接着剤組成物を第2の領域において基部に適用することによって、硬化性接着剤層を形成することと、を含むことができ、第2の領域は、第1の領域を少なくとも部分的に取り囲む。
【0118】
いくつかの実施形態では、硬化性接着剤層を形成することは、最初に高粘度接着剤組成物を第1の領域において基部に適用し、続いて、低粘度接着剤組成物を第2の領域において基部に適用することを含んでもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物及び低粘度接着剤組成物のうちの1つ以上を適用することは、押出成形することを含み得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物及び低粘度接着剤組成物のうちの1つ以上を適用することは、積層造形(additive manufacturing)の実践を含み得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、高粘度接着剤組成物及び低粘度接着剤組成物のうちの1つ以上を適用することは、歯科医院における手動の適用を含んでもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、方法は、高粘度接着剤組成物及び低粘度接着剤組成物のうちの1つ以上を部分的に硬化させることを更に含んでもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、方法は、高粘度接着剤組成物及び低粘度接着剤組成物のうちの1つ以上を成形すること、又は過剰接着剤を基部から除去することを更に含んでもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、方法は、歯科矯正器具を本明細書に記載されるパッケージに包装することを更に含んでもよい。
【0125】
キット
使用のためのキット
様々な実施形態では、キットが記載される。キットは、本明細書に記載される歯科矯正器具と、歯科矯正器具を歯の表面に固定するための本明細書に記載される方法工程を実行するように使用者に指示する一式の説明書とを含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、キットは、歯科矯正器具を収容するためのパッケージを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、歯科矯正器具は、パッケージ内に懸吊されてもよい。パッケージは、ブリスターパックの形態であってもよい。パッケージは、歯科矯正器具を取り付けるためのマウントを更に含んでもよい。マウントは、硬化性接着剤層がパッケージの取り扱い時の変形に対して保護されるように歯科矯正器具を固定してもよい。いくつかの実施形態では、歯科矯正器具は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2019/175726号に記載されているパッケージ内にパッケージ化されてもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、キットは、2つ以上の歯科矯正器具を含んでもよい。
【0128】
製造キット
一実施形態では、キットが記載される。キットは、基部と、本明細書に記載される高粘度接着剤組成物を内部に含む容器と、本明細書に記載される低粘度接着剤組成物を内部に含む容器と、本開示の歯科矯正器具を製造するために本明細書に記載される方法工程を実施するように使用者に指示する一式の説明書とを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、キットは、2つ以上の基部を含んでもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、容器のうちの1つ以上は目盛りが付けられてもよい。目盛り付き区画は、使用者が、基部サイズ、歯構造などの因子に基づいて所望の接着剤組成物の量を変更することを可能にし得る。目盛り付き区画は更に、使用者が同じ容器から複数の基部に接着剤組成物を適用することを可能にし得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の押出装置を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、押出装置は、接着剤組成物容器と嵌合するように構成されてもよい。
【実施例】
【0132】
本開示の目的及び利点を以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例に記載の特定の材料及びその量並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0133】
材料:
HVA1-高粘度接着剤組成物#1:5~15%のビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)ジメタクリレート、5~15%のビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、70~80%のシラン処理石英、2%未満のシラン処理シリカ及びカンファーキノン開始剤系を含む。
【0134】
HVA2-高粘度接着剤組成物#2:5~15%の2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸と2-イソシアナトエチルメタクリレートとの反応生成物、5~15%のポリエチレングリコールジメタクリレート、1~10%のビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、35~45%のシラン処理ガラス、35~45%のシラン処理石英、1~5%のシラン処理シリカ及びカンファーキノン開始剤系を含む。
【0135】
LVA1-低粘度接着剤組成物#1:44%のビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)ジメタクリレート、44%のビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、11%のシラン処理セラミック、0.25%のカンファーキノン、1%のエチル4-ジメチルアミノベンゾエート、0.15%のジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート及び0.1%のブチル化ヒドロキシトルエン(約20~100Pa-sの粘度)を含む。
【0136】
LVA2-低粘度接着剤組成物#2:40~50%のトリエチレングリコールジメタクリレート、40~50%のビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、6%のシラン処理ヒュームドシリカ、5%未満のテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、0.5%未満の二酸化チタン、0.05%未満のローズベンガル染料、並びにカンファーキノン、第三級アミン、及びヨードニウム塩に基づく開始剤系(約0.5~5Pa-sの粘度)を含む。
【0137】
LVA3-低粘度接着剤組成物#3:15~25%の2-ヒドロキシエチルエーテルメタクリレート、15~25%のビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート、5~15%のデカメチレンジメタクリレート、1~10%のメタクリルオキシデシルホスフェート、2%未満のジメチルアミノエチルメタクリレート、1~5%のアクリル酸とイタコン酸とのコポリマー、5~15%のシラン処理シリカ、10~15%のエタノール、10~15%の水、及びカンファーキノン開始剤系(約0.1~1Pa-sの粘度)を含む。
【0138】
比較例で使用した不織マットは、直径約6ミクロンの個々の繊維を有するポリプロピレンから構成される圧縮性材料であった。
【0139】
粘度測定
高粘度接着剤の粘度を、制御歪みレオメーター(Model ARG2、TA Instruments,Eden Prairie,MN)を使用して試験した。接着剤試料を、2枚の平行なプレート(直径8mm)の間に0.15mmの間隙で配置した。粘度測定は、23対数の間隔の剪断速度ステップにおいて、25℃で0.01s
-1から開始して10s
-1までの剪断速度で行った。測定前に、試料を10s
-1で3分間予備剪断し、25℃で5分間平衡化させた。
【表1】
【0140】
低粘度接着剤の粘度を、制御歪みレオメーター(Model ARG2、TA Instruments,Eden Prairie,MN)を使用して試験した。接着剤試料を、2枚の平行なプレート(直径40mm)の間に0.50mmの間隙で配置した。粘度測定は、23対数の間隔の剪断速度ステップにおいて、25℃で0.01s
-1から開始して200s
-1までの剪断速度で行った。測定前に、試料を10s
-1で3分間予備剪断し、25℃で5分間平衡化させた。
【表2】
【0141】
比較例CE1:高粘度接着剤組成物#1(HVA1)を有するブラケット
比較例1は、3M(商標)Company(St.Paul,MN,USA)から市販されている市販製品3M(商標)SmartClip(商標)SL3 Self-Ligating Brackets with APC(商標)II Adhesive precoat(カタログ番号3004-301)であった。APC(商標)II接着剤は、HVA1と呼ばれる高粘度ペースト接着剤である。
【0142】
比較例CE2:高粘度接着剤組成物#2(HVA2)のみを有するブラケット
比較例2は、3M Company(St.Paul,MN,USA)から市販されている市販製品SmartClip(商標)SL3 with APC(商標)PLUS Adhesive precoat(カタログ番号5004-301)であった。APC(商標)PLUS接着剤は、HVA2と呼ばれる高粘度ペースト接着剤である。
【0143】
比較例CE3:低粘度接着剤組成物(LVA1)のみを有するブラケット
比較例3は、市販の歯科矯正ブラケットSmartClip(商標)SL3(3Mカタログ番号004-301)の基部を、材料の項で説明した低粘度接着剤(LVA1)でコーティングすることによって製造した。
【0144】
実施例1:低粘度接着剤(LVA1)によって取り囲まれた高粘度接着剤組成物#1(HVA1)を有するブラケット
実施例1は、比較例1の市販の3M(商標)SmartClip(商標)SL3 Self-Ligating Brackets with APC(商標)II Adhesive precoat(カタログ番号3004-301)を改変することによって製造した。ブラケットベースの周囲の高粘度ペースト接着剤(HVA1)を、カミソリの刃を使用して除去し、APC(商標)II接着剤を有するブラケット基部の内側中央部分を残した。次いで、低粘度接着剤(LVA1)を、HVA1の残りの内側部分の周りのブラケット基部に適用した。使用した低粘度接着剤(LVA1)は材料の項に記載した。HVA1の重量は4.2mg(68重量%、54体積%)であり、LVA1の重量は2.0mg(32重量%、46体積%)であった。
【0145】
実施例2:低粘度接着剤(LVA1)によって取り囲まれた高粘度接着剤組成物#2(HVA2)を有するブラケット
実施例2は、比較例2の市販のSmartClip(商標)SL3 with APC(商標)PLUS Adhesive precoat(カタログ番号5004-301)を改変することによって製造した。ブラケットベースの周囲の高粘度ペースト接着剤(HVA2)を、カミソリの刃を使用して除去し、APC(商標)PLUS接着剤を有するブラケット基部の内側中央部分を残した。次いで、低粘度接着剤(LVA1)を、HVA2の残りの内側部分の周りのブラケット基部に適用した。使用した低粘度接着剤(LVA1)は材料の項に記載した。HVA2の重量は4.2mg(68重量%、54体積%)であり、LVA1の重量は2.0mg(32重量%、46体積%)であった。
【0146】
接着手順
ウシの歯を洗浄し、唇側の歯の表面を露出させた円形ポリメチルメタクリレートディスクに部分的に包埋した。歯を穿孔し、エッチングし、TRANSBOND Plus Self Etching Primer(SEP)(3M Companyから市販、カタログ番号712-090)で3~5秒間下塗りし、空気を3秒間吹き付けて乾燥させた。プレコートしたブラケットをウシの歯に接着した。実施例1~2(外側領域にLVAを有する)及び比較例3(LVAのみを有する)では、歯にブラケットを固定する際に、接着剤のバリ(過剰)除去は必要なかった。しかしながら、HVAペースト接着剤のみを有する比較例1~2については、標準的な臨床ブラケット接着の実行に従って、ブラケットの基部の周りの過剰な接着剤のバリを除去した。Ortholux(商標)Luminous Curing Light(3M Company(St.Paul,MN,USA)から入手可能;カタログ番号704-460)を使用して、実施例1~2及び比較例1~3の全ての接着剤を光硬化させた。硬化光は、別段の記載がない限り、近心で3秒間、及び遠心で3秒間、例に照射した。
【0147】
剪断剥離接着強度試験手順
剪断剥離接着強度は、以下の標準化された方法を使用して、接着後15分又は接着後16~24時間のいずれかで測定した。最初に、QTEST/5ブランドの機械試験機(MTS Systems Corporation,Eden Prairie,Minn)に取り付けられた試験固定具に、歯肉タイウィングを上向きにして(別段の記載がない限り)、各接着試験片を取り付けた。直径0.020インチ(0.051センチメートル)の標準円形ワイヤを咬合側接着ウィングの下でループ状にし、試験機のクロスヘッドに取り付けた。最初のクロスヘッド位置を調節してワイヤをぴったりとさせた後、ブラケットが剥離されるまで毎分0.2インチ(毎分5ミリメートル)で上向きに平行移動させた。最大力を記録し、ブラケット基部の測定された表面積で割って、接着強度測定値を得た。報告された各接着強度値は、別段の記載がない限り、10回の反復測定の平均を表す。
【表3】
【0148】
実施例Ex.1及びEx.2は、市販の製品である比較例CE1及びCE2と比較して、許容可能な接着強度を示した。更に、実施例Ex.1及びEx.2はまた、周辺LVA1接着剤が低プロファイル/最小バリをもたらしたので、接着剤バリの除去の必要がないという利点を有した。
【0149】
実施例Ex.3:低粘度接着剤(LVA1)によって取り囲まれた高粘度接着剤#1(HVA1)を有するバッカルチューブ
実施例3は、市販の3M製品:Victory Series(商標)buccal tubes with APC(商標)II Adhesive precoat(3Mカタログ番号3066-4082)を改変することによって製造した。市販の製品上に既に存在する高粘度ペースト接着剤(HVA1)を、カミソリの刃を使用して基部の周囲の領域において部分的に除去し、HVA1(APC(商標)II接着剤)で覆われた基部の内側中央部分を残した。次いで、低粘度接着剤(LVA1)を、HVA1の残りの内側部分の周りの基部に適用した。使用した低粘度接着剤(LVA1)は材料の項に記載した。HVA1の重量は9.6mg(82重量%、72体積%)であり、LVA1の重量は2.1mg(18重量%、28体積%)であった。
【0150】
比較例CE4:高粘度接着剤#1(HVA1)を有するバッカルチューブ
比較例4は、市販の3M製品:Victory Series(商標)buccal tubes with APC(商標)II Adhesive precoat(3Mカタログ番号3066-4082)であった。この製品上に存在するAPC(商標)II接着剤は、HVA1と呼ばれる高粘度ペースト接着剤である。
【0151】
比較例CE5:低粘度接着剤(LVA1)を有するバッカルチューブ
比較例5は、市販の3M Victory Series(商標)バッカルチューブ(3Mカタログ番号066-4082)の基部を、材料の項で説明した低粘度接着剤(LVA1)のみでコーティングすることによって製造した。
【0152】
比較例CE6:不織布マットを備えた低粘度接着剤(LVA1)を有するバッカルチューブ
比較例6は、比較例CE5と同様にして製造したが、更に、材料の項に記載の不織布マットも基部の形状に切断し、バッカルチューブの基部上に設置した。不織布マットを、材料の項で記載した低粘度接着剤(LVA1)で完全に飽和させた。器具を固定すると、低粘度接着剤(LVA1)が滲み出して器具基部と歯の表面との間の間隙を充填し、基部の縁の周囲にメニスカスを形成し、それによって、過剰な接着剤バリの除去の必要性を排除した。
【0153】
接着手順において、実施例3(外側領域にLVAを有する)、比較例5(LVAのみを有する)及び比較例6(LVA及び不織布マット)については、接着剤バリ(過剰)の除去は必要なかった。しかしながら、HVAペースト接着剤のみを有する比較例4については、標準的な臨床ブラケット接着の実行に従って、バッカルチューブの基部の周りの過剰な接着剤のバリを除去した。表2のバッカルチューブの実施例に使用された硬化時間は、近心6秒及び咬合6秒であった。
【0154】
剪断-剥離接着強度試験手順において、表2のこれらのバッカルチューブの例は、フックを下向きにして剥離された。
【表4】
【0155】
実施例Ex.3は、市販の製品である比較例CE4と比較して、許容可能な接着強度を示した。更に、実施例Ex.3は、周辺LVA1接着剤が低プロファイル/最小バリをもたらしたので、接着剤バリの除去の必要がなかった。
【0156】
実施例Ex.4:低粘度接着剤(LVA1)によって取り囲まれた高粘度接着剤#1(HVA1)を有するロープロファイルブラケット
実施例4は、市販の3M製品:Victory Series(商標)Low Profile bracket with APC(商標)II Adhesive precoat(3Mカタログ番号3024-890)を改変することによって製造した。市販の製品上に既に存在する高粘度ペースト接着剤(HVA1)を、カミソリの刃を使用して基部の周囲の領域において部分的に除去し、HVA1で覆われた基部の内側中央部分を残した。次いで、低粘度接着剤(LVA1)を、HVA1の残りの内側部分の周りの基部に適用した。使用した低粘度接着剤(LVA1)は材料の項に記載した。HVA1の重量は3.5mg(69重量%、55体積%)であり、LVA1の重量は1.6mg(31重量%、45体積%)であった。
【0157】
垂直流動試験
実施例4の5つの複製物を製造し、接着剤の垂直流動について試験した。基部が垂直(水平に対して90度)になるようにブラケットを配置した。室温で6時間後、実施例4のブラケットのプロファイルを観察した。接着剤(HVA1又はLVA1)の流動は観察されず、ブラケットの上部対ブラケットの底部における接着剤の厚さに変化はなかった。次いで、実施例4のブラケットを40℃で5分間処理した(これも垂直位置で)。ここでも、(望ましくない)接着剤の流動は観察されなかった。更に、HVA1とLVA1との間の粘度差は、それらが分離したままであり、1つに混合しないほど十分に大きかった。
【0158】
比較例7:高粘度接着剤#1(HVA1)を有するロープロファイルブラケット
比較例7は、市販の3M製品:Victory Series(商標)Low Profile Brackets with APC(商標)II Adhesive precoat(3Mカタログ番号3024-890)であった。この製品上に存在するAPC(商標)II接着剤は、HVA1と呼ばれる高粘度ペースト接着剤である。
【0159】
比較例8:低粘度接着剤#1(LVA1)を有するロープロファイルブラケット
比較例8は、市販の歯科矯正ブラケットVictory Series(商標)Low Profile(3Mカタログ番号024-890)の基部を、材料の項で説明した低粘度接着剤(LVA1)でコーティングすることによって製造した。
【0160】
接着手順において、実施例4(外側/第2の領域にLVAを有する)及び比較例8(LVAのみを有する)では、接着剤のバリ(過剰)除去は必要なかった。しかしながら、HVAペースト接着剤のみを有する比較例7については、標準的な臨床ブラケット接着の実行に従って、ブラケットの基部の周りの過剰な接着剤のバリを除去した。剪断-剥離接着強度試験手順において、表3のこのブラケットのタイプは、歯肉タイウィングを下向きにして剥離された。
【表5】
【0161】
実施例Ex.4は、市販製品である比較例CE7と比較して、許容可能な接着強度を示した。更に、実施例Ex.4は、周辺LVA1接着剤が低プロファイル/最小バリをもたらしたので、接着剤バリの除去の必要がなかった。
【0162】
実施例Ex.5:低粘度接着剤(LVA2)によって取り囲まれた高粘度接着剤組成物#1(HVA1)を有するロープロファイルブラケット
実施例5は、市販の3M製品:Victory Series(商標)Low Profile bracket with APC(商標)II Adhesive precoat(3Mカタログ番号3024-875)を改変することによって製造した。市販の製品上に既に存在する高粘度ペースト接着剤(HVA1)を、カミソリの刃を使用して基部の周囲の領域において部分的に除去し、HVA1で覆われた基部の内側中央部分を残した。次いで、低粘度接着剤(LVA2)を、HVA1の残りの内側部分の周りの基部に適用した。HVA1の重量は4.0mg(68重量%、55体積%)であり、LVA2の重量は1.9mg(32重量%、45体積%)であった。
【0163】
比較例9:高粘度接着剤組成物#1(HVA1)を有するロープロファイルブラケット
比較例9は、市販の3M製品:APC II Victory Series(商標)Low Profile Brackets(3Mカタログ番号3024-875)であった。この製品上に存在するAPC(商標)II接着剤は、HVA1と呼ばれる高粘度ペースト接着剤である。
【0164】
比較例10:低粘度接着剤組成物#2(LVA2)を有するロープロファイルブラケット
比較例10は、市販の歯科矯正ブラケットVictory Series(商標)Low Profile(3Mカタログ番号024-875又は024-775)の基部を、3M Company(St.Paul,MN,USA)から市販されている3M CLINPROシーラントでコーティングすることによって製造した。3M CLINPROシーラントは、LVA2と呼ばれる低粘度接着剤である。
【0165】
接着手順において、実施例5(外側/第2の領域にLVAを有する)及び比較例10(LVAのみを有する)では、接着剤のバリ(過剰)除去は必要なかった。しかしながら、HVAペースト接着剤のみを有する比較例9については、標準的な臨床ブラケット接着の実行に従って、ブラケットの基部の周りの過剰な接着剤のバリを除去した。表4において、報告された剪断剥離接着強度試験値は、比較例9における10回の反復測定の平均、又は実施例5及び比較例10における8回の反復測定の平均を表す。
【表6】
【0166】
実施例Ex.5は、市販製品である比較例CE9と比較して、許容可能な接着強度を示した。更に、実施例Ex.5は、周辺LVA2接着剤が低プロファイル/最小バリをもたらしたので、接着剤バリの除去の必要がなかった。
【0167】
実施例Ex.6:低粘度接着剤(LVA3)によって取り囲まれた高粘度接着剤組成物#1(HVA1)を有するロープロファイルブラケット
実施例6は、市販の3M製品:Victory Series(商標)Low Profile bracket with APC(商標)II Adhesive precoat(3Mカタログ番号3024-890)を改変することによって製造した。市販の製品上に既に存在する高粘度ペースト接着剤(HVA1)を、カミソリの刃を使用して基部の周囲の領域において部分的に除去し、HVA1で覆われた基部の内側中央部分を残した。次いで、低粘度接着剤(LVA3)を、HVA1の残りの内側部分の周りの基部に適用した。使用した低粘度接着剤(LVA3)は、セルフエッチング接着剤:2.7のpHを有するScotchbond Universal Adhesive(3Mカタログ番号41528)であった。HVA1の重量は3.6mg(69重量%、55体積%)であり、LVA3の重量は1.6mg(31重量%、45体積%)であった。LVA3の適用後、エアシリンジを使用して溶媒を5秒間乾燥させた。接着手順において、TRANSBOND Plus Self Etching Primer(SEP)による歯のエッチング及び下塗りは省略した。
【0168】
比較例11:高粘度接着剤組成物#1(HVA1)を有するロープロファイルブラケット
比較例11は、市販の3M製品:Victory Series(商標)Low Profile Brackets with APC II Adhesive precoat(3Mカタログ番号3024-890)であった。この製品上に存在するAPC(商標)II接着剤は、HVA1と呼ばれる高粘度ペースト接着剤である。
【0169】
接着手順において、実施例6(外側/第2の領域にLVAを有する)では、接着剤のバリ(過剰)除去は必要なかった。しかしながら、HVAペースト接着剤のみを有する比較例11については、標準的な臨床ブラケット接着の実行に従って、ブラケットの基部の周りの過剰な接着剤のバリを除去した。剪断-剥離接着強度試験手順において、表5のブラケットのこのタイプ(表3で使用したものと同じ)は、歯肉タイウィングを下向きにして剥離された。
【表7】
【0170】
実施例Ex.6は、市販製品である比較例CE11と比較して、許容可能な接着強度を示した。実施例Ex.6は、低粘度接着剤LVA3の酸性機能の結果として、歯のエッチング/下塗りの必要性を排除した。更に、実施例Ex.6は、周辺の低粘度接着剤LVA3がロープロファイル/最小バリをもたらしたので、接着剤バリの除去の必要がなかった。
【0171】
等価物
当業者であれば、日常業務に過ぎない実験法を使用して、本明細書に具体的に記載した特定の実施形態に対する多数の等価物を認識している、又は見極めることができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【国際調査報告】