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  • 特表-VEGF調節ペプチド 図1
  • 特表-VEGF調節ペプチド 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】VEGF調節ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/54 20060101AFI20240119BHJP
   C07K 2/00 20060101ALI20240119BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240119BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20240119BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240119BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240119BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240119BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240119BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240119BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20240119BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240119BHJP
【FI】
C07K7/54 ZNA
C07K2/00
C07K19/00
A61K47/55
A61K47/60
A61K47/64
A61P43/00 111
A61P27/02
A61P9/10
A61P27/06
A61P17/06
A61P11/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K38/12
C07K14/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539989
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021087804
(87)【国際公開番号】W WO2022144401
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】20383169.8
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.BRIJ
3.PLURONIC
4.WINDOWS
5.SPAN
6.MYRJ
7.Veegum
(71)【出願人】
【識別番号】518328508
【氏名又は名称】アイディーピー ディスカバリー ファーマ, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エステバン マルティン サンティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】ネヴォラ ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】モレノ ラヒャ ミゲル ラモン
(72)【発明者】
【氏名】モンテネグロ アルセ マリア フェルナンダ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ロペス ホセ ネプトゥーノ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC20
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA25
4C084BA31
4C084BA41
4C084CA59
4C084DC50
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC751
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA31
4H045BA41
4H045BA57
4H045BA72
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA20
(57)【要約】
本発明は、14~50の長さを有し、配列番号1に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含むペプチド又はその医薬塩を提供する。ここで「m」、「n」、「p」及び「q」は整数を表し、0及び1から選択され、C末端は-C(O)Rに相当し、N末端は-NHRに相当し、ペプチドは、配列番号1のペプチド配列において位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+4」又は「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子とを連結する式(I)のリンカービラジカル「L」を任意に含む。本発明はまた、本発明のペプチドを含む融合タンパク質及び医薬組成物、並びに療法、特にVEGFレベルの上昇又は低下に起因する疾患の治療におけるそれらの使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
14~50の長さを有し、配列番号1:
(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q
(ここで、
「m」、「n」、「p」及び「q」は整数を表し、0及び1から選択され、
C末端は-C(O)Rに相当し、
N末端は-NHRに相当する)を含むペプチド又はその医薬塩であって、
該ペプチドが、配列番号1のペプチド配列において位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+4」又は「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子とを連結する、式(I):
-[(R-(R)-(R- (I)
(式中、
「a」及び「b」は同じか又は異なり、0又は1であり、
「c」は1~10で構成され、
及びRは、(C~C10)アルキル;ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキル;(C~C10)アルケニル;ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;並びにハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキニルからなる群より独立して選択されるビラジカルであり、
は-O-、C(=O)、C(=O)NR13、C(=O)O、S(=O)、S(=O)、NR14、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、-NR15-NR16-、-N=N-、-S-S-、及び3個~14個の成員を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択され、
環系がハロゲン、-OH、-NO、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル及び(C~C10)アルキル-O-からなる群より独立して選択される1つ以上のラジカルによって任意に置換される、既知の環系からなる群より選択されるビラジカルであり、
は-OH及び-NR1718からなる群より選択されるラジカルであり、
は-H及び(C~C20)アルキルからなる群より選択されるラジカルであり、
、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、-H及び(C~C10)アルキルからなる群より独立して選択されるラジカルである)のリンカービラジカル「L」を含み、
前記リンカーによって連結される配列番号1中のアミノ酸が、式(II):
【化1】
(式中、
19は(C~C10)アルキル、ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキニル、並びに3個~14個の成員を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択される、既知の環系からなる群より選択されるモノラジカルである)のアミノ酸に置き換えられる、ペプチド又はその医薬塩。
【請求項2】
請求項1に規定される配列番号1の配列のみからなる、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記配列番号1のペプチド配列において前記位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と前記位置「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子との間に前記式(I)のリンカービラジカル「L」を含む、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号2:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号3:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号4:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号5:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-(Lys)q、
配列番号6:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号7:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号8:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号9:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号10:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、
配列番号11:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、及び、
配列番号12:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、
からなる群より選択され、
ここで、太字及び下線で示したアミノ酸は、前記リンカービラジカル「L」の位置を指し、C末端は-C(O)Rに相当し、N末端は-NHRに相当する、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
「a」、「b」及び「c」が1である、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
及びRが(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より独立して選択されるビラジカルである、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
が(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より選択されるビラジカルである、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
19が(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より選択されるモノラジカルである、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項9】
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」及び「n」が同じであり、「p」及び「q」が同じであるか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」及び「n」が同じであり、「p」及び「q」が異なるか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」、「n」、「p」及び「q」が同じであるか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」、「n」、「q」が同じであり、「q」が異なる、請求項1~8のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項10】
Lが式(Ia):
-(CH-P-(CH-(Q)-(CH-(V)-(CH- (Ia)
(式中、
P、Q及びVは、それぞれ独立してO、S、NH、CONH、C(O)O、C~Cアルキレン、フェニレン等のアリーレン基、及びトリアゾーレン等のヘテロアリーレン基を含む群から選択され、ハロゲンによって任意に置換され、
y及びzは、それぞれ独立して1~10から選択される整数値であり、
a及びcは、それぞれ独立して0~10から選択される整数値であり、
b及びdは、それぞれ独立して0~3から選択される整数値である)である、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
Lが式(Ib):
-(CH)y-CH=CH-(CH)z- (Ib)
(式中、y及びzは同じか又は異なり、1~10から選択され、好ましくは独立して3~6から選択され、より好ましくは独立して3及び6から選択される整数値である)のものである、請求項1~10のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
19がメチル、又はフルオロメチル等のハロメチルである、請求項1~11のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項13】
C末端が-C(O)OH又は-C(O)NHに相当し、N末端が-NHに相当する、請求項1~12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項14】
配列番号14~配列番号21の配列からなる群より選択される配列を含むか又はそれからなり、好ましくは配列番号16又は配列番号17を含むか又はそれのみからなる、請求項1~13のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項15】
標識、薬物、細胞膜透過ペプチド又はポリエチレングリコールにコンジュゲートしている、請求項1~14のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項17】
治療有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載のペプチド若しくはその医薬塩、又は請求項16に記載の融合タンパク質を、許容可能な医薬添加剤及び/又は担体と共に含む医薬組成物。
【請求項18】
療法に使用される、14~50の長さを有し、配列番号1:
(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q
(ここで、
「m」、「n」、「p」及び「q」は整数を表し、0及び1から選択され、
C末端は-C(O)Rに相当し、
N末端は-NHRに相当し、
は-OH及び-NR1718からなる群より選択されるラジカルであり、
は-H及び(C~C20)アルキルからなる群より選択されるラジカルであり、
17及びR18は、-H及び(C~C10)アルキルからなる群より独立して選択されるラジカルである)の配列を含むペプチド若しくはその医薬塩であって、
該ペプチドが式(Ib):
-(CH)y-CH=CH-(CH)z- (Ib)
(式中、y及びzは同じか又は異なり、1~10から選択される整数値であり、好ましくは独立して3~6から選択され、より好ましくは独立して3及び6から選択される)のリンカービラジカル「L」を含み、
前記リンカービラジカル「L」が、配列番号1のペプチド配列において位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+4」又は「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子とを連結し、
前記リンカーによって連結される配列番号1中のアミノ酸が、式(II):
【化2】
(式中、R19は(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より選択されるモノラジカルである)のアミノ酸に置き換えられる、ペプチド若しくはその医薬塩、
又はその融合タンパク質又はそれらのいずれかを許容可能な医薬添加剤及び/又は担体と共に含む医薬組成物。
【請求項19】
VEGFレベルの上昇に起因する疾患の治療又は予防に使用される、請求項18に記載のペプチド、その医薬塩、その融合タンパク質又はそれらのいずれかを含む医薬組成物。
【請求項20】
前記疾患が糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性(AMD)又は緑内障等の失明障害;乾癬;慢性閉塞性肺疾患及び癌からなる群より選択される、請求項19に記載の使用のためのペプチド、その医薬塩、その融合タンパク質又はそれらのいずれかを含む医薬組成物。
【請求項21】
1つ以上の他の治療剤、又はそれらのバイオアベイラビリティを改善する、それらの代謝を低減及び/又は変更する、それらの排出を阻害する、及び/又はそれらの体内での分布を変更することができる作用物質と組み合わせた、請求項18~20のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド、その医薬塩、融合タンパク質又は医薬組成物。
【請求項22】
前記ペプチドが、
配列番号2:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号3:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号4:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号5:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-(Lys)q、
配列番号6:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号7:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号8:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号9:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号10:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、
配列番号11:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、及び、
配列番号12:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、
からなる群より選択され、
ここで、太字及び下線で示したアミノ酸は、前記リンカービラジカル「L」の位置を指し、C末端は-C(O)Rに相当し、N末端は-NHRに相当する、請求項18~21のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド、その医薬塩、融合タンパク質又は医薬組成物。
【請求項23】
C末端が-C(O)OH又は-C(O)NHに相当し、N末端が-NHに相当する、請求項18~22のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド、その医薬塩、融合タンパク質又は医薬組成物。
【請求項24】
前記ペプチドが、配列番号14~配列番号21の配列を含むか又はそれからなる群より選択され、好ましくは該ペプチドが配列番号16又は配列番号17を含むか又はそれのみからなる、請求項18~23のいずれか一項に記載の使用のためのペプチド、その医薬塩、融合タンパク質又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド及び療法の分野に関する。特に、本発明は、VEGFタンパク質を調節する能力を有するペプチドを提供する。このため、血管新生等のVEGFが重要な役割を果たすプロセスの調節に有用である。本発明はまた、本発明のペプチドを含む融合タンパク質及び医薬組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、胚形成、体成長、及び神経系の分化を含む正常な個体における幅広い基本的な生理的プロセスに決定的な役割を果たす。女性生殖器系においては、血管新生が卵胞ではその発育時に、黄体では排卵後に、胎盤では妊娠を確立及び維持するために起こる。血管新生はさらに、創傷及び骨折の治癒等の身体の修復プロセスの一環としても起こる。このため、血管新生の促進は、脈管化(vascularization)の確立又は拡張が望ましい状況において有用であり得る。しかしながら、血管新生は多くの病理プロセス、おそらく最も注目すべきは、腫瘍成長及び転移においても重要な要素である。というのも、腫瘍が成長するには新たな毛細血管の持続的な刺激を必要とすることからである。血管新生の影響を受ける他の病理プロセスとしては、特に毛細管における血管増殖に関連する病態、例えば糖尿病性網膜症、黄斑変性、関節症、乾癬、関節リウマチ、肺高血圧、慢性閉塞性肺疾患、肝疾患、腎疾患等が挙げられる(非特許文献1)。
【0003】
最近の研究から、内皮細胞特異的成長因子のファミリーである血管内皮成長因子(VEGF)が、その同族受容体と共に、内皮細胞の成長及び分化の刺激に主に関与することが示されている。これらの因子は、PDGFファミリーのメンバーであり、主に内皮受容体チロシンキナーゼ(RTK)を介して作用するようである。
【0004】
胚発生及び成人期の両方における血管形成の重要な様式である発芽型血管新生は既存の血管からの内皮細胞の伸長により新たな血管を形成する。内皮細胞は通常、静止状態であるため、VEGF等の刺激性サイトカインが血管新生の開始に必要とされる。VEGFは、それ自体が血管新生の主要調節因子と考えられ、内皮細胞を親血管から剥離させ、隣接する間質に移動させる。VEGFはHIF-1α及びHIF-2αの両方の直接的な転写標的であるため、低酸素がVEGF発現の主な調節因子である。Arnt突然変異体血管障害は、VEGF発現の減少を伴い、外因性VEGFがこれらの障害を救済することから、VEGF発現の減少が観察される血管異常の多くの原因である。
【0005】
血管閉塞性疾患は、依然として工業化社会における死亡及び罹患の最も重要な原因である。心筋梗塞、末梢動脈疾患(PAD)及び脳卒中等の終末期の治療は、通常は血管形成術等の緩和的介入、またPADの重症例における手足の切断に限られている。血管新生及び血管リモデリングを指示された形で誘導及び調節することができれば、虚血性血管疾患の治療における大きな進歩となる。
【0006】
一方、健康に劇的な影響を及ぼす無制御の血管新生の更なる例は、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性(AMD)、緑内障及び未熟児網膜症(ROP)を含む多くのヒト失明障害の中心的な病理学的要素となっている無制御の血管成長である。これらの疾患で観察される神経細胞死及び視力喪失は、病的新血管新生(neovascularization)を伴うことが多い、異常な漏出血管によって引き起こされる。総合すると、これらの疾患が視力喪失の最も一般的な原因であり、非常に効果的な血管新生抑制療法が工業化社会における失明の有病率に多大な影響を与えることが示唆される。実際に、VEGF阻害剤が臨床で首尾よく用いられ、滲出型(新生血管型)のAMDの治療における有効性を示していることから、新生血管眼疾患が血管新生を阻害する治療的有用性の最も明らかな例である。
【0007】
上記を踏まえると、プラスの形(すなわち、VEGFの刺激)又はマイナスの形(すなわち、VEGFの阻害)のいずれかで血管新生を調整する能力を有する分子を見出すことに多くの努力が注がれている。
【0008】
低酸素誘導因子(HIF)は、血管新生因子(例えば、VEGF及びFLT1)、グルコース輸送体(Glut-1及びGlut-3)、及びOの非存在下でのATPの産生に関与する解糖酵素を含む幾つかの遺伝子の転写活性化に関与する転写因子である(概要については、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4を参照されたい)。HIF転写因子ヘテロ二量体は、HIF-α及びHIF-βの2つのサブユニットから構成される。HIF-βは構成的に発現されるが、HIF-αの発現は、酸素レベルによって調節される。このため、正常酸素圧(すなわち、正常酸素)の存在下では、HIF-1αは、プロリルヒドロキシラーゼタンパク質(PHD)ファミリーのメンバー(PHD-1、PHD-2及びPHD-3)によって、2つの重要なプロリン残基(GenBankアクセッション番号NP_001521の402及び564)でヒドロキシル化される。ヒドロキシル化-HIF-1αは、続いてフォンヒッペルリンドウ(VHL)腫瘍抑制タンパク質と結合することができ、これがE3ユビキチンリガーゼ複合体を動員し、HIF-αタンパク質をプロテアソーム分解に導く。しかしながら、酸素がPHD酵素の律速補因子であるため、低酸素圧(すなわち、低酸素条件)では、プロリルヒドロキシラーゼは、HIF-αをヒドロキシル化することができない。結果として、VHL相互作用は起こらず、E3ユビキチンリガーゼ複合体は、HIF-1αをプロテアソーム分解に導くことができず、HIFの安定化が生じる。安定化HIF-1αは、続いてHIF-1βとヘテロ二量体を形成することができ、これが標的遺伝子中の低酸素応答因子(FIRE)の塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックスドメインと相互作用する。加えて、HIF-1阻害因子(FIH-1)によるHIF-αのC末端トランス活性化ドメイン(TAD)のアスパラギン残基(803位)のヒドロキシル化は、p300及びCBPトランス活性化因子との相互作用を妨げることによりHIFの転写活性を負に調節する。特許文献1は、本開示の配列番号36に相当する15アミノ酸の線状ペプチドを含むHIF-α由来のペプチドを開示しており、これがVEGF減少活性及び抗癌特性を有することを提唱しているが、特許文献1には主張されたこれらの特性を支持するいかなる実験データも含まれていない。一方、特許文献2及び特許文献3は、HIFとp300及びCBPトランス活性化因子との相互作用を調整するとされる環状ペプチドを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006038208号
【特許文献2】国際公開第2010034028号
【特許文献3】米国特許出願公開第2019225650号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Carmeliet P., 2003
【非特許文献2】Semenza GL. 2003; Nat. Rev. Cancer 3: 721-732
【非特許文献3】Paul SA, Simons JW, Mabjeesh NJ. 2004; J. Cell Physiol. 200: 20-30
【非特許文献4】Wang Guang l et al 1995, PNAS, 92(12): 5510-5514
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
残念ながら、VEGFに基づく療法は、血管新生を適切に調節するのに十分に効果的ではない。したがって、血管新生の調節に有効なVEGF抑制療法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、低酸素条件下でVEGFの発現を効率的に調節するペプチドを見出した。
【0013】
したがって、第1の態様において、本発明は、14アミノ酸~50アミノ酸の長さを有し、配列番号1:
(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q
(ここで、
「m」、「n」、「p」及び「q」は整数を表し、0及び1から選択され、
C末端は-C(O)Rに相当し、
N末端は-NHRに相当する)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含むペプチド又はその医薬塩であって、
該ペプチドが、任意に配列番号1のペプチド配列において位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+4」又は「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子とを連結する、式(I):
-[(R-(R)-(R- (I)
(式中、
「a」及び「b」は同じか又は異なり、0又は1であり、
「c」は1~10で構成され、
及びRは、(C~C10)アルキル;ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキル;(C~C10)アルケニル;ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;並びにハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキニルからなる群より独立して選択されるビラジカルであり、
は-O-、C(=O)、C(=O)NR13、C(=O)O、S(=O)、S(=O)、NR14、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、-NR15-NR16-、-N=N-、-S-S-、及び3個~14個の成員を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択され、
環系がハロゲン、-OH、-NO、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル及び(C~C10)アルキル-O-からなる群より独立して選択される1つ以上のラジカルによって任意に置換される、既知の環系からなる群より選択されるビラジカルであり、
は-OH及び-NR1718からなる群より選択されるラジカルであり、
は-H及び(C~C20)アルキルからなる群より選択されるラジカルであり、
、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、-H及び(C~C10)アルキルからなる群より独立して選択されるラジカルである)のリンカービラジカル「L」を含み、
リンカーによって連結されるアミノ酸が、式(II):
【化1】
(式中、
19は(C~C10)アルキル、ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキニル、並びに3個~14個の成員を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択される、既知の環系からなる群より選択されるモノラジカルである)のものである、ペプチド又はその医薬塩を提供する。
【0014】
下記に示すように、本発明の第1の態様のペプチドは、正常酸素条件と比較して低酸素条件下でVEGFの発現を効率的に調節する。特に、本発明の第1の態様のペプチドが線状である(すなわち、リンカービラジカル「L」を含まない)場合、VEGF値の増加が得られたことが示される。より具体的には、実施例1に示すように、配列番号13(18アミノ酸)は、低酸素条件下でVEGF発現を増加させることが示された(表2)。本発明者らは、それよりも短いバージョン、例えば配列番号36(15アミノ酸)及び配列番号37(14アミノ酸)の特性を更に調べ、サイズを小さくすることで線状ペプチドを不活性にするか、又はVEGF発現の上方調節を保持し得ることを見出した(表3)。したがって、特許文献1における提唱に反して、配列番号36がVEGF発現の調整に影響を及ぼさないことが本発明者らによって示された。
【0015】
驚くべきことに、本発明者らは、リンカービラジカルが含まれる場合に、本発明の第1の態様のペプチドの挙動が著しく変化し、VEGF発現の劇的な、場合によっては約50%の減少を引き起こすことを見出した。特に、実施例1に示すように、配列番号14~配列番号21等の本発明の第1の態様下の架橋ペプチドは、ヒト網膜色素上皮(すなわち、ARPE-19)細胞においてin vitroで非処理細胞に対して低酸素誘導条件下でVEGF発現の減少を誘導した。表2を参照されたい。さらに、かかる効果が他の2つの細胞株、すなわち乳癌細胞株及び不死化ケラチノサイト細胞株においても配列番号16について得られることが更に示された。表4を参照されたい。
【0016】
加えて、本発明者らは、実施例2の乳癌異種移植片マウスモデルで示されるように、VEGF減少効果がin vivoで血管新生の減少をもたらすことを更に実証した。実際に、免疫組織化学(ICH)によって決定されるように、配列番号17のペプチドは、処理した腫瘍において対照と比較してCD31発現(血管の内皮細胞のマーカー)の統計的に有意な減少をもたらした。
【0017】
このため、本発明者らは、配列番号1の配列を含むペプチドが配列番号1の配列にリンカービラジカル「L」を含む又は含まないことでVEGF発現、ひいては血管新生を調整し得ることを見出した。リンカーの非存在は、VEGF発現を増強し、ひいては血管新生を「増強」し得るペプチドをもたらし、リンカーの存在は、VEGF発現を減少させ、ひいては血管新生を「減少」させるペプチドをもたらす。
【0018】
上記ペプチド中のリンカービラジカルの存在によりVEGF発現に対するペプチドの調節効果を調整する可能性が報告されるのは初めてである。
【0019】
第2の態様において、本発明は、15アミノ酸~50アミノ酸の長さを有し、配列番号22:
(Arg)r-(Ser)s-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln-(Leu)t-(Pro)v
(ここで、
「r」、「s」、「t」及び「v」は整数を表し、0及び1から選択され、
C末端は-C(O)Rに相当し、
N末端は-NHRに相当する)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含むペプチド又はその医薬塩であって、
該ペプチドが、配列番号22のペプチド配列において式(I)のペプチド配列の位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+4」又は「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子とを連結する、式(I):
-[(R-(R)-(R- (I)
(式中、
「a」及び「b」は同じか又は異なり、0又は1であり、
「c」は1~10で構成され、
及びRは、(C~C10)アルキル;ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキル;(C~C10)アルケニル;ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;並びにハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキニルからなる群より独立して選択されるビラジカルであり、
は-O-、C(=O)、C(=O)NR13、C(=O)O、S(=O)、S(=O)、NR14、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、-NR15-NR16-、-N=N-、-S-S-、及び3個~14個の成員を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択され、
環系がハロゲン、-OH、-NO、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル及び(C~C10)アルキル-O-からなる群より独立して選択される1つ以上のラジカルによって任意に置換される、既知の環系からなる群より選択されるビラジカルであり、
は-OH及び-NR1718からなる群より選択されるラジカルであり、
は-H及び(C~C20)アルキルからなる群より選択されるラジカルであり、
、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、-H及び(C~C10)アルキルからなる群より独立して選択されるラジカルである)のリンカービラジカル「L」を含み、
リンカーによって連結されるアミノ酸が、式(II):
【化2】
(式中、
19は(C~C10)アルキル、ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキニル、並びに3個~14個の成員を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択される、既知の環系からなる群より選択されるモノラジカルである)のものである、ペプチド又はその医薬塩を提供する。
【0020】
下記に示すように、リンカービラジカルを組み込んだ本発明の第2の態様のペプチドは、血管新生を調節することもできる。特に、本発明の第2の態様のペプチドが、正常酸素条件下で得られるレベルに対して低酸素条件下でVEGFの発現を増加させ得ることが見出されている。
【0021】
このため、本発明の第2の態様のペプチドは、成長因子の減少が生じた状況においてVEGFのレベルを回復させるのに有用であり得る。また、その結果として、本発明の第2の態様のこれらのペプチドは、VEGFレベルの低下による血管新生の調節異常に起因する疾患の予防又は治療に適用することができる。
【0022】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1又は第2の態様において規定されるペプチドと、任意に細胞膜透過ペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。
【0023】
第4の態様において、本発明は、治療有効量の本発明の第1若しくは第2の態様において規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は本発明の第3の態様において規定される融合タンパク質を、許容可能な医薬添加剤及び/又は担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0024】
上記で説明したように、本発明のペプチドは、VEGFの発現を調節することができる。これによりVEGFの調節異常に関連する疾患の治療における本発明のペプチドの有用性が示される。VEGFは、血管新生プロセスにおいて中心的役割を果たすことが広く報告されている。このため、本発明のペプチドは、VEGF発現の調節因子として、血管新生プロセスを調整することもできる。VEGFの発現の増加により、血管新生が刺激され、VEGF発現が減少すると、血管新生プロセスが下方調節される。
【0025】
このため、第5の態様においては、本発明は、療法に使用される、本発明の第1若しくは第2の態様において規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は本発明の第3の態様において規定される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様において規定される医薬組成物を提供する。
【0026】
第6の態様においては、本発明は、VEGF発現レベルの調節異常に起因する疾患の治療又は予防に使用される、本発明の第1若しくは第2の態様において規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は本発明の第3の態様において規定される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様において規定される医薬組成物を提供する。本態様は代替的には、VEGF発現レベルの調節異常に起因する疾患を予防又は治療する方法であって、治療有効量の本発明の第1若しくは第2の態様において規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は本発明の第3の態様において規定される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様において規定される医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む、方法として構築することができる。本態様は代替的には、VEGF発現レベルの調節異常に起因する疾患の治療又は予防のための薬剤の製造における本発明の第1若しくは第2の態様において規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は本発明の第3の態様において規定される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様において規定される医薬組成物の使用として構築することができる。
【0027】
第7の態様においては、本発明は、特にVEGF発現レベルを調節することによる血管新生の調節異常に起因する疾患の治療又は予防に使用される、本発明の第1若しくは第2の態様において規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は本発明の第3の態様において規定される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様において規定される医薬組成物を提供する。本態様は代替的には、特にVEGF発現レベルを調節することによる血管新生の調節異常に起因する疾患を治療又は予防する方法であって、治療有効量の本発明の第1若しくは第2の態様において規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は本発明の第3の態様において規定される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様において規定される医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む、方法と言い換えることができる。本態様は代替的には、VEGF発現レベルを調節することによる血管新生の調節異常に起因する疾患の治療又は予防のための薬剤の製造における本発明の第1若しくは第2の態様において規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は本発明の第3の態様において規定される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様において規定される医薬組成物の使用として構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】非処理マウス(ビヒクル)及び皮下(SC)投与による配列番号17での処理後の乳房腫瘍組織の抗CD31抗体による免疫組織化学(IHC)染色を示す図である。
図2】非処理マウス(ビヒクル)及び皮下(SC)投与による配列番号17での処理後の乳房腫瘍組織の算出された相対CD31染色強度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願の明細書で使用される全ての用語は、特に記載のない限り、当該技術分野で既知の通常の意味で理解されるものとする。本願で使用される或る特定の用語の他のより具体的な定義を下記に説明するが、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して一様に適用されることが意図され、特に明白に説明されない限り、定義はより広い定義を与えるものである。
【0030】
本発明の目的上、所与の任意の範囲は、範囲の下端点及び上端点の両方を含む。
【0031】
本発明は、上記したように、配列番号1又は配列番号22と少なくとも85%の程度の同一性を有する配列を含むペプチドを提供する。
【0032】
本発明において、「同一性」という用語は、配列を最適にアラインメントした場合に2つの配列中で同一の残基のパーセンテージを指す。最適アラインメントにおいて、第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基によって占められる場合、配列はその位置に関して同一性を示す。2つの配列間の同一性のレベル(又は「パーセント配列同一性」)は、配列のサイズに対する配列に共通する同一位置の数の比率として測定される(すなわち、パーセント配列同一性=(同一位置の数/位置の総数)×100)。
【0033】
2つ以上の配列間で最適アラインメントを迅速に得て、同一性を算出するための多数の数学アルゴリズムが既知であり、多数の利用可能なソフトウェアプログラムに組み込まれている。かかるプログラムの例としては、特にアミノ酸配列分析のためのMATCH-BOXプログラム、MULTAINプログラム、GCGプログラム、FASTAプログラム及びROBUSTプログラムが挙げられる。好ましいソフトウェア分析プログラムとしては、ALIGNプログラム、CLUSTAL Wプログラム及びBLASTプログラム(例えば、BLAST 2.1、BL2SEQ及びそれ以降のバージョン)が挙げられる。
【0034】
アミノ酸配列分析については、ウェイトマトリックス(weight matrix)、例えばBLOSUMマトリックス(例えば、BLOSUM45マトリックス、BLOSUM50マトリックス、BLOSUM62マトリックス及びBLOSUM80マトリックス)、Gonnetマトリックス又はPAMマトリックス(例えば、PAM30マトリックス、PAM70マトリックス、PAM120マトリックス、PAM160マトリックス、PAM250マトリックス及びPAM350マトリックス)が同一性の決定に用いられる。
【0035】
BLASTプログラムは、選択配列をデータベース(例えば、GenSeq)中の複数の配列に対してアラインメントするか、又はBL2SEQを用いて2つの選択配列間でアラインメントするかのいずれかによって少なくとも2つのアミノ酸配列の分析をもたらす。BLASTプログラムは、好ましくはBLASTプログラム動作に組み込まれる、DUSTプログラム又はSEGプログラム等の低複雑性フィルタリング(low complexity filtering)プログラムによって修正するのが好ましい。ギャップ存在コスト(又はギャップスコア)を用いる場合、ギャップ存在コストは約-5~-15に設定するのが好ましい。同様のギャップパラメーターを必要に応じて他のプログラムと共に用いることができる。BLASTプログラム及びその基本原理は、例えばAltschul et al., "Basic local alignment search tool", 1990, J. Mol. Biol, v. 215, pages 403-410に更に記載されている。
【0036】
多重配列分析については、CLUSTAL Wプログラムを用いることができる。CLUSTAL Wプログラムは、望ましくは「ダイナミック(dynamic)」(対「ファスト(fast)」)設定を用いて実行される。アミノ酸配列は、配列間の同一性のレベルに応じてBLOSUMマトリックスの可変セットを用いて評価される。CLUSTAL Wプログラム及び操作の基本原理は、例えばHiggins et al., "CLUSTAL V: improved software for multiple sequence alignment", 1992, CABIOS, 8(2), pages 189-191に更に記載されている。
【0037】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、配列番号1に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するペプチドである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、配列番号1の配列のいずれかに対して100%の同一性を有するペプチドである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた一実施形態においては、同一性の程度を確認するためにアラインメントを行って同一の位置を決定する際に、リンカーによって連結された2つのアミノ酸残基は考慮されない。本発明の第1の態様の一実施形態においては、ペプチド又はその塩は、上記で規定されるような配列番号1の配列からなるものであり、任意に式(I)の「L」ビラジカルを含む。
【0038】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、配列番号22に対して85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するペプチドである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、配列番号22の配列のいずれかに対して100%の同一性を有するペプチドである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた一実施形態においては、同一性の程度を確認するためにアラインメントを行って同一の位置を決定する際に、リンカーによって連結された2つのアミノ酸残基は考慮されない。
【0039】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で過度の毒性、刺激、アレルギー応答等なしにヒト及び下等動物の組織と接触させた使用に好適であり、適切なベネフィット/リスク比に見合う塩を指す。薬学的に許容可能な塩は、当該技術分野で既知である。薬学的に許容可能な非毒性の酸付加塩の例は塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸等の無機酸、若しくは酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸若しくはマロン酸等の有機酸により、又はイオン交換等の当該技術分野で用いられている他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、クロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウムが挙げられる。代表的なアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。更なる薬学的に許容可能な塩としては、適切な場合に非毒性のアンモニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン及びアミンカチオンと、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオン及びアリールスルホン酸イオン等の対イオンを用いて形成されるものが挙げられる。
【0040】
(C~C10)アルキルという用語は、1個~10個の炭素原子を有する飽和直鎖又は分岐アルキル鎖を指す。例示的な非限定例はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル及びn-ヘキシルである。
【0041】
(C~C20)アルキルという用語は、1個~20個の炭素原子を有する飽和直鎖又は分岐アルキル鎖を指す。
【0042】
(C~C10)アルケニルという用語は、2個~10個の炭素原子を含有し、更に1つ以上の二重結合を含有する飽和直鎖又は分岐アルキル鎖を指す。例示的な非限定例はエテニル、プロペニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イル等である。
【0043】
(C~C10)アルキニルという用語は、2個~20個の炭素原子を含有し、更に1つ以上の三重結合を含有する飽和直鎖又は分岐アルキル鎖を指す。例としては、特にエチニル、1-プロピニル、2-ブチニル、1,3-ブタジエニル、4-ペンチニル及び1-ヘキシニルが挙げられる。
【0044】
「ハロゲン」という用語は、5つの化学的に関連した元素:フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)及びアスタチン(At)からなる周期表中の群を指す。
【0045】
(C~C10)ハロアルキルという用語は、同じであっても又は異なっていてもよい1個以上の、好ましくは1個~6個のハロゲン原子による(C~C10)アルキル基の1個以上の水素原子の置換えによって生じる基を指す。例としては、特にトリフルオロメチル、フルオロメチル、1-クロロエチル、2-クロロエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2-ブロモエチル、2-ヨードエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、3-フルオロプロピル、3-クロロプロピル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、4-フルオロブチル及びノナフルオロブチルが挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される「既知の」環系という用語は、化学的に実現可能であり、当該技術分野で既知である環系を指し、化学的に可能でない環系を除外することが意図される。
【0047】
本発明によると、環系が「独立した」環によって形成される場合、環系が2つ、3つ又は4つの環によって形成され、該環が1つの環の原子から他の環の原子への結合を介して結合することを意味する。「独立した」という用語は、環系が1つの環しか有しない実施形態も包含する。1つの環からなる既知の環系の例示的な非限定例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、フェニル及びシクロヘプテニルに由来するものである。
【0048】
本発明によると、環系が「完全に縮合した」環を有する場合、環系が2つ、3つ又は4つの環によって形成され、2個以上の原子が2つの隣接環に共通することを意味する。例示的な非限定例は1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1-ナフチル、2-ナフチル、アントリル又はフェナントリルである。
【0049】
本発明によると、環系が「部分的に縮合している」場合、環系が3つ又は4つの環によって形成され、該環の少なくとも2つが完全に縮合し(すなわち、2個以上の原子が2つの隣接環に共通する)、残りの環(複数の場合もある)が1つの環の原子から縮合環の1つの原子への結合を介して結合していることを意味する。
【0050】
特に記載のない限り、本発明のペプチドを形成するアミノ酸の1つ以上がL配置を有していても、又はD配置を有していてもよい。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の一実施形態においては、ペプチドを形成するアミノ酸の少なくとも1つがD-アミノ酸である。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチドを形成するアミノ酸の1つがD-アミノ酸である。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、リンカーによって連結されるアミノ酸の少なくとも1つがD-アミノ酸である。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、リンカーによって連結されるアミノ酸の一方がD-アミノ酸であり、他方がL-アミノ酸である。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、リンカーによって連結されるアミノ酸は、N末端に最も近いアミノ酸がD-アミノ酸であり、C末端に最も近いアミノ酸がL-アミノ酸であるようなものである。
【0051】
本発明のペプチドの構築に使用されるアミノ酸は有機合成によって調製するか、又は例えば天然源の分解若しくは天然源からの単離等の他の経路によって得ることができる。
【0052】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の一実施形態においては、ペプチドは、m及びnが同じであり、好ましくは1であるものである。代替的な実施形態においては、ペプチドは、m及びnが異なり、すなわちmが0であり、nが1であるものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチドは、p及びqが同じであり、好ましくは1であるものである。代替的な実施形態においては、ペプチドは、p及びqが異なり、すなわちpが1であり、qが0であるものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、m、n、p及びqが同じであり、特に1であるものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、m、n及びqは同じである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、m、n及びqは0を表し、pは1を表す。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、m、n及びpは同じである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、m、n及びpは1を表し、qは0を表す。
【0053】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチドは線状ペプチドである。本発明において、「線状ペプチド」という用語は、それが「L」ビラジカルを含まないことを意味する。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた別の実施形態においては、線状ペプチドはm、n、p及びqが同じであるものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた別の実施形態においては、線状ペプチドはm、n、p及びqが同じであり、1を表すものである。
【0054】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第2の態様の一実施形態においては、ペプチドは、r及びsが同じであるものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第2の態様の別の実施形態においては、ペプチドは、t及びvが同じであるものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第2の態様の別の実施形態においては、r及びsは1を表し、t及びvは0を表す。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第2の態様の別の実施形態においては、r及びsは0を表し、t及びvは1を表す。
【0055】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、式(I)のリンカービラジカルは、配列番号1のペプチド配列において位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子との間にある。
【0056】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチドは、
配列番号2:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号3:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号4:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号5:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-(Lys)q、
配列番号6:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号7:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号8:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号9:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号10:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、
配列番号11:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、及び、
配列番号12:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、
からなる群より選択され、
ここで、同じ(L-アミノ酸又はD-アミノ酸の両方)又は異なる配置を有する、太字及び下線のアミノ酸は、リンカービラジカル「L」の位置(i、i+7)を指し、C末端は-C(O)Rに相当し、N末端は-NHRに相当する。
【0057】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第2の態様の別の実施形態においては、式(I)のリンカービラジカルは、配列番号22のペプチド配列において位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子との間にある。
【0058】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第2の態様の別の実施形態においては、ペプチドは、
配列番号23:(Arg)r-(Ser)s-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln-(Leu)t-(Pro)v、
配列番号24:(Arg)r-(Ser)s-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln-(Leu)-(Pro)v、
配列番号25:(Arg)r-(Ser)s-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln-(Leu)t-(Pro)v、
配列番号26:Arg-Ser-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln、
配列番号27:Arg-Ser-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln、及び、
配列番号28:Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln-Leu-Pro、
からなる群より選択され、
ここで、同じ(L-アミノ酸又はD-アミノ酸の両方)又は異なる配置を有する、太字及び下線のアミノ酸は、リンカービラジカル「L」の位置(i、i+7)を指し、C末端は-C(O)Rに相当し、N末端は-NHRに相当する。
【0059】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、a=1である「L」リンカーを含むものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、b=1である「L」リンカーを含むものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、c=1である「L」リンカーを含むものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、a=b=c=1である「L」リンカーを含むものである。
【0060】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、R及びRが(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より独立して選択されるビラジカルである、「L」リンカーを含むものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、R及びRが同じか又は異なり、(C~C10)アルキルを表す、「L」リンカーを含むものである。
【0061】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、Rが-O-、C(=O)、C(=O)NR13、C(=O)O、S(=O)、S(=O)、NR14、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、-NR15-NR16-、-N=N-、-S-S-、及び3員~6員の1つの環からなる既知の環系であって、環が飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択され、
環系がハロゲン、-OH、-NO、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル及び(C~C10)アルキル-O-からなる群より独立して選択される1つ以上のラジカルによって任意に置換される、既知の環系からなる群より選択されるビラジカルである、「L」リンカーを含むものである。
【0062】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、Rが(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より選択されるビラジカルである、「L」リンカーを含むものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、Rが(C~C10)アルケニルである、「L」リンカーを含むものである。
【0063】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、R及びRが同じか又は異なり、(C~C10)アルキルを表し、Rが(C~C10)アルケニルである、「L」リンカーを含むものである。
【0064】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、R及びRが同じか又は異なり、(C~C10)アルキルを表し、Rが(C~C10)アルケニルであり、a=b=c=1である、「L」リンカーを含むものである。
【0065】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、R19が(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より選択されるものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、R19が(C~C10)アルキルモノラジカル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル若しくはブチル等の(C~C)アルキルモノラジカル、又は(C~C10)ハロアルキル、好ましくはハロメチル、例えばフルオロメチル等の(C~C)ハロアルキルモノラジカルであるものである。好ましい実施形態においては、R19はメチル基である。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、R、R及びR19が同じか又は異なり、(C~C10)アルキルを表し、Rが(C~C10)アルケニルであるものである。
【0066】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、Lはハロゲン、-OH、-COOH、-NH、-NO、C~Cアルキル及びC~Cアルケニルからなる群より選択される1つ以上の置換基によって任意に置換される、-O-、-S-、-SO-、NH-、-CO-、-NMe-、-NHCO-、-CONH-、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、直鎖又は分岐C~C-アルキレン基及び環状アルキレン基、並びにN、O及びSからなる群より選択される最大4個のヘテロ原子を有する5員~10員の複素環基から独立して選択される1つ以上の基によって1回又は2回以上中断されていてもよい、直鎖又は分岐C~C30炭化水素を有するビラジカルである。
【0067】
特定の実施形態においては、Lは式(Ia):
-(CH-P-(CH-(Q)-(CH-(V)-(CH- (Ia)
(式中、
P、Q及びVは、それぞれ独立してO、S、NH、CONH、C(O)O、C~Cアルキレン、フェニレン等のアリーレン基、及びトリアゾーレン等のヘテロアリーレン基を含む群から選択され、ハロゲンによって任意に置換され、
y及びzは、それぞれ独立して1~10から選択される整数値であり、
a及びcは、それぞれ独立して0~10から選択される整数値であり、
b及びdは、それぞれ独立して0~3から選択される整数値である)を有する。
【0068】
好ましい実施形態においては、このリガンドのリンカー(L)は、
-(CH-CH=CH-(CH- (Ib)
(式中、好ましくはy及びzは同じか又は異なり、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10を含む1~10から選択される整数値である。好ましくは、y及びzは、独立して3~6から選択される整数値、より好ましくは独立して3及び6から選択される整数値である)、
【化3】
(式中、好ましくはP及びVは、それぞれ独立してO及びSからなる群より選択され、また好ましくは、y及びzは1であり、好ましくは、aは1又は6~10から選択され、好ましくは、bは0又は1であり、好ましくは、cは0又は1であり、
式(Ic)の幾つかの特定の実施形態は、
-(CH-P-(CH-V-(CH- (Id1)
(式中、好ましくは、P及びVは、それぞれ独立してO及びSからなる群より選択され、また好ましくは、y及びzは1であり、aは6~10から選択され、好ましくは、aは8であり、幾つかの好ましい実施形態においては、式(Id1)のリガンドは、(Id1.1)及び(Id1.2):
-(CH-O-(CH-O-(CH- (Id1.1)
-(CH-S-(CH-S-(CH- (Id1.2)
から選択される)、
【化4】
(式中、好ましくは、P及びVは、それぞれ独立してO及びSからなる群より選択され、また好ましくは、y、a、c及びzは1であり、幾つかの好ましい実施形態においては、式(IIId2)のリガンドは、(Id2.1)及び(Id2.2):
【化5】
から選択される)である)、
【化6】
からなる群より選択され、式(Id1.1)、(Id1.2)、(Id2.1)、(Id2.2)、(Ie)及び(If)において、各nは1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10を含む1~10から独立して選択される整数値である。幾つかの好ましい実施形態においては、各nは3~6から独立して選択される整数値である。式(Ie)又は(If)のリガンドについて、各nは3~6から独立して選択される整数値であるのが好ましい。他の好ましい実施形態においては、各nは独立して1又は2から選択される。式(Id)のリガンドについて、各nは1であるのが好ましい。好ましい実施形態においては、リンカー(L)は、以上に規定される式:
-(CH-CH=CH-(CH- (Ib)
であり、
19は以上に規定されるように、(C~C10)アルキルモノラジカルであり、R19はメチル基であるのが好ましい。
【0069】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の一実施形態においては、ペプチドは以下のものである:
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」及び「n」が同じであり、「p」及び「q」が同じであるか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」及び「n」が同じであり、「p」及び「q」が異なるか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」、「n」、「p」及び「q」が同じであり、特に同じであり、1を表すか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」、「n」、「q」が同じであり、「q」が異なり、特にm=n=q=0及びq=1である。
【0070】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第2の態様の一実施形態においては、ペプチドは以下のものである:
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「r」及び「s」が同じであり、「t」及び「v」が同じであるか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「r」及び「s」が同じであり、1を表し、「t」及び「v」が同じであり、0を表すか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「r」及び「s」が同じであり、0を表し、「t」及び「v」が同じであり、1を表す。
【0071】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、Rが-OHである(すなわち、C末端が-C(O)OHである)ものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、Rが-NR1718であり、R17及びR18が同じ意味であるものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、N末端は-NHに相当する。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、本発明のペプチドのC末端及びN末端は、それぞれ-C(O)OH及び-NHである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、本発明のペプチドのC末端及びN末端は、それぞれ-C(O)NH及び-NHである。
【0072】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、本発明のペプチドのC末端及びN末端は、それぞれ-C(O)R及び-NHであり、ここで、Rは-NHR18を意味し、R18は(C~C10)アルキル、並びにハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキルからなる群より選択されるラジカルである。
【0073】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、本発明のペプチドのC末端及びN末端は、それぞれ-C(O)R及び-NHであり、ここで、Rは-NR1718を意味し、R17及びR18は(C~C10)アルキル、並びにハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキルからなる群より独立して選択されるラジカルである。
【0074】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、本発明のペプチドのC末端及びN末端は、それぞれ-C(O)OH及びNHRであり、ここで、Rは(C~C20)アルキル、並びにハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキルから選択される。
【0075】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1及び第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、R、R及びR19が同じか又は異なり、(C~C10)アルキルを表し、Rが(C~C10)アルケニルであるものである。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1及び第2の態様の別の実施形態においては、ペプチド又はその塩は、R、R及びR19が同じか又は異なり、(C~C10)アルキルを表し、Rが(C~C10)アルケニルであり、C末端が-C(O)OH及び-CONHから選択され、N末端が-NHであるものである。
【0076】
本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチドは、配列番号13~配列番号21の配列からなる群のいずれかから選択される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するものである:
【0077】
配列番号13
Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当する。
【0078】
配列番号1から得られる他の線状ペプチド配列は、本明細書において以下に示す配列番号36及び配列番号37である:
配列番号36:
Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg
配列番号37:
Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val
【0079】
注目すべきことに、配列番号37は、末端アルギニンを欠く点で配列番号36とは異なる。
【0080】
配列番号14
【化7】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当し、3位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0081】
配列番号15
【化8】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当し、5位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0082】
配列番号16
【化9】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当し、6位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0083】
配列番号17
【化10】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)OHに相当し、6位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0084】
注目すべきことに、配列番号16及び配列番号17は、配列番号16では-C(O)NHに相当し、配列番号17では-C(O)OHに相当するC末端の官能基においてのみ異なる。
【0085】
配列番号18
【化11】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当し、8位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0086】
配列番号19
【化12】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当し、5位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0087】
配列番号20
【化13】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当し、7位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0088】
配列番号21
【化14】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当し、8位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0089】
本発明の第1の態様の別の実施形態においては、ペプチドは、配列番号14~配列番号21等の配列番号13~配列番号21の配列のいずれかを含むか又はそれからなり、好ましくは配列番号14、配列番号16及び配列番号17、並びに配列番号19~配列番号21の配列のいずれかを含むか又はそれからなる群より選択されるものである。本発明の第2の態様の別の実施形態においては、ペプチドは、配列番号29~配列番号31からなる群のいずれかから選択される配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するものである:
【0090】
配列番号29
【化15】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当し、8位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0091】
配列番号30
【化16】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当し、10位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0092】
配列番号31
【化17】
ここで、N末端は-NHに相当し、C末端は-C(O)NHに相当し、3位のアミノ酸はD-アミノ酸であり、残りのアミノ酸はL-アミノ酸である。
【0093】
上記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第2の態様の別の実施形態においては、ペプチドは配列番号29~配列番号31からなる群より選択される。
【0094】
本発明の第1の態様によるペプチドを調製するプロセスは、以下を含む:
(1.a)ペプチドの対応するアミノ酸と、「i」及び「i+4」又は「i+7」と称されるアミノ酸に相当する式(III)の化合物及び式(IV)の化合物との縮合によるカップリング。化合物(III)及び化合物(IV)は、「「L」ビラジカル」を生成するために後続の環化工程に供されるものである:
【化18】
(式中、R19は上記で規定される通りであり、Z及びZは同じか又は異なり、(C~C10)アルケニルを表す);並びに、
(1.b)グラブス(第1又は第2世代)触媒を用いて溶液中で行われるZ及びZの閉環メタセシスを含む環化工程(Kim Young-Woo et al., "Synthesis of all-hydrocarbon stapled a-helical peptides by ring-closing olefin metathesis", Nature Protocols, 2011, 6(6), p. 761-771、Scott J. M. et al., "Application of Ring-Closing Metathesis to the Synthesis of Rigidified Amino Acids and Peptides", J. Am. Chem. Soc., 1996, v.118 (40), pp 9606-9614を参照されたい);又は代替的には、
(2a)「i」及び「i+4」又は「i+7」と称されるアミノ酸に相当する式(V)の化合物及び式(VI)の化合物を含む所要のアミノ酸の縮合によるカップリング。化合物(V)及び化合物(VI)は、「「L」ビラジカル」を生成するために後続の環化工程に供されるものである:
【化19】
(式中、R19は上記で規定される通りであり、Z及びZは同じか又は異なり、ハロゲン-SH、-NHR20、-OH、(C~C10)アルキル-SH、(C~C10)アルキル-OH、(C~C10)アルキル-NHR21、C(=O)OH、(C~C10)C(=O)OH、C(=O)NHR22、(C~C10)アルキル-C(=O)NHR23、OR24、C(=O)-ハロゲン、C(=O)-OR25、S(=O)-ハロゲン、S(=O)-OR26、S(=O)27からなる群より選択され、ここでR20、R21、R22、R23、R24、R25、R26及びR27は、水素、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニル、3個~14個の炭素原子を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択され、
環系はハロゲン、-OH、-NH、-SH、C(=O)-ハロゲン(C~C10)ハロアルキル及び(C~C10)アルキル-O-からなる群より独立して選択される1つ以上のラジカルによって任意に置換される、既知の環系からなる群より選択されるモノラジカルである);並びに、
(2b)ZラジカルとZラジカルとの間のカップリング反応を含む環化工程;又は代替的には、
(3a)ペプチドの対応するアミノ酸と、「i」及び「i+4」又は「i+7」と称されるアミノ酸に相当する式(VII)の化合物及び式(VIII)の化合物との縮合によるカップリング。化合物(VII)及び化合物(VIII)は、「「L」ビラジカル」を生成するために後続の環化工程に供されるものである:
【化20】
(式中、R19は上記で規定される通りであり、Z及びZの一方は(C~C10)アルキニルであり、他方は(C~C10)アルキルNである);並びに、
(3.b)1,4置換1,2,3-トリアゾール架橋を生成するCu(I)媒介ヒュスゲン1,3-双極子環付加反応(別名「クリック」反応)等の既知のプロトコルによるZラジカル及びZラジカルの縮合を含む環化工程(Kolb H.C. et al., "The growing impact of click chemistry on drug discovery", 2003, Drug Discov Today, 8(24):1128-1137を参照されたい)。
【0095】
本発明の第2の態様によるペプチドを調製するプロセスは、1つのアミノ酸のカルボン酸基又はC末端と別のアミノ酸のアミノ基又はN末端との縮合によるカップリングを含み、このカップリング反応を所望のペプチドが得られるまで必要とされる回数繰り返す。
【0096】
式(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、及び(VIII)の化合物は市販されており、既に形成されたペプチド配列の部分に縮合によってカップリングされる。これらの化合物は、ペプチドの適切な固相合成のためのビーズ、並びにカルボキシ、アミノ又は側鎖の保護基を保有し得る。化合物の例示的な非限定例は、特に2-(2’-プロペニル)アラニン、2-(3’-ブテニル)グリシン、2-(4’-ペンテニル)アラニン、2-(6’-ヘプテニル)アラニン、2-(7’-オクテニル)アラニン、アリル-グリシン、5-アジド-ノルバリン、及びα-プロパルギル-アラニンである。
【0097】
「カップリング」工程は、固相中でプロトコル「脱保護-洗浄-カップリング-洗浄」に従い、1つのアミノ酸のカルボン酸基と別のアミノ酸残基のアミノ基との縮合により、上記で規定されるアミノ酸及び式(III)~式(VIII)のα-α二置換(di-substituted)アミノ酸を使用して行うことができる。
【0098】
固相ペプチド合成の一般原理は、脱保護-洗浄-カップリング-洗浄のサイクルを繰り返すことである。固相に付着させたペプチドの遊離N末端アミンを、単一のN保護アミノ酸単位にカップリングする。次いで、この単位を脱保護し、新たなN末端アミンを露出させ、これに更なるアミノ酸を付着させることができる。アミノ酸はN末端及びC末端に反応性部分を有し、これにより合成時のアミノ酸カップリングが容易となる。多くのアミノ酸は、合成及びペプチド伸長の際に遊離末端又は他の側鎖基と相互作用し、収率及び純度に悪影響を及ぼす可能性がある反応性側鎖官能基も有する。側鎖反応性を最小限にして適当なアミノ酸合成を容易にするために、特異的なアミノ酸官能基に結合し、官能基の非特異的反応を阻止する、又は官能基を保護する化学基が開発されている。これらの保護基は天然に膨大に見られるが、以下の3つの基:N末端保護基、C末端保護基(主として液相合成に用いられる)及び側鎖保護基に分けることができる。
【0099】
ペプチドのカップリングのために、カルボキシル基が通常は活性化される。これは反応を加速するために重要である。2つの主な種類の活性化基:カルボジイミド及びトリアゾールが存在する。しかしながら、ペンタフルオロフェニルエステル(FDPP、PFPOH])及びBOP-Clの使用がペプチドの環化に有用である。
【0100】
精製した個々のアミノ酸を合成前にこれらの保護基と反応させ、その後ペプチド合成の特定の工程において選択的に除去する。
【0101】
本発明に用いることができる例示的な樹脂としては、(1)アルケニル樹脂(例えば、REM樹脂、ビニルスルホンポリマー結合樹脂、ビニル-ポリスチレン樹脂);(2)アミン官能化樹脂(例えば、アミジン樹脂、ポリマー結合型N-(4-ベンジルオキシベンジル)ヒドロキシルアミン、(アミノメチル)ポリスチレン、ポリマー結合型(R)-(+)-a-メチルベンジルアミン、2-クロロトリチルKnorr樹脂、2-N-Fmoc-アミノ-ジベンゾシクロヘプタ-1,4-ジエンポリマー結合樹脂、4-[4-(1-Fmoc-アミノエチル)-2-メトキシ-5-ニトロフェノキシ]ブチルアミドメチル-ポリスチレン樹脂、ポリマー結合型4-ベンジルオキシベンジルアミン、ポリマー結合型4-カルボキシベンゼンスルホンアミド、ポリマー結合型ビス(tert-ブトキシカルボニル)チオプソイド尿素、ジメチルアミノメチル-ポリスチレン、ポリマー結合型Fmoc-3-アミノ-3-(2-ニトロフェニル)プロピオン酸、N-メチルアミノメチル化ポリスチレン、PAL樹脂、Sieberアミド樹脂、ポリマー結合型tert-ブチルN-(2-メルカプトエチル)カルバメート、ポリマー結合型トリフェニルクロロメタン-4-カルボキサミド);(3)ベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂(例えば、ポリマー結合型2-クロロベンズヒドリルクロリド、ポリマー結合型HMPB-ベンズヒドリルアミン、ポリマー結合型4-メチルベンズヒドロール、ポリマー結合型ベンズヒドリルクロリド、ポリマー結合型ベンズヒドリルアミン);(4)Br官能化樹脂(例えば、ポリマー結合型4-(ベンジルオキシ)ベンジルブロミド、4-ブロモポリスチレン、臭素化PPOA樹脂、臭素化Wang樹脂、ポリマー結合型ブロモアセタール、ブロモポリスチレン、HypoGel(商標) 200 Br、ペプチド合成用のポリスチレンA-Br、ポリマー結合型臭化セレン、TentaGel HL-Br、TentaGel MB-Br、TentaGel S-Br);(5)クロロメチル樹脂(例えば、ポリマー結合型5-[4-(クロロメチル)フェニル]ペンチル]スチレン、ポリマー結合型4-(ベンジルオキシ)ベンジルクロリド、ポリマー結合型4-メトキシベンズヒドリルクロリド);(6)CHO官能化樹脂(例えば、(4-ホルミル-3-メトキシフェノキシメチル)ポリスチレン、(4-ホルミル-3-メトキシフェノキシメチル)ポリスチレン、ポリマー結合型3-ベンジルオキシベンズアルデヒド、ポリマー結合型4-ベンジルオキシ-2,6-ジメトキシベンズアルデヒド、ホルミルポリスチレン、HypoGel(商標) 200 CHO、インドール樹脂、ポリスチレンA-CH(OEt)、TentaGel HL-CH(OEt));(7)Cl官能化樹脂(例えば、ポリマー結合型ベンゾイルクロリド、(クロロメチル)ポリスチレン、Merrifield樹脂);(8)COH官能化樹脂(例えば、カルボキシエチルポリスチレン、HypoGel(商標) 200 COOH、ポリスチレンAM-COOH、TentaGel HL-COOH、TentaGel MB-COOH、TentaGel S-COOH);(9)Hypo-Gel樹脂(例えば、HypoGel(商標) 200 FMP、HypoGel(商標) 200 PHB、HypoGel(商標) 200 Trt-OH、HypoGel(商標) 200 HMB);(10)I官能化樹脂(例えば、ポリマー結合型4-ヨードフェノール、ヨードポリスチレン);Janda-Jel(商標)(JandaJel<au>-Rinkアミド、JandaJel-NH、JandaJel-Cl、JandaJel-4-メルカプトフェノール、JandaJel-OH、JandaJel-1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド、JandaJel-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド-[1,2-a]ピリミジン、JandaJel-モルホリン、JandaJel-ポリピリジン、JandaJel-トリフェニルホスフィン、JandaJel-Wang);(11)MBHA樹脂(3[4’-(ヒドロキシメチル)フェノキシ]プロピオン酸-4-メチルベンズヒドリルアミン樹脂、MBHA樹脂に結合させた4-(ヒドロキシメチル)フェノキシ酢酸ポリマー、ポリマー結合型HMBA-4-メチルベンズヒドリルアミン、ポリマー結合型4-メチルベンズヒドリルアミン塩酸塩Capacity(アミン));(12)NH官能化樹脂((アミノメチル)ポリスチレン、(アミノメチル)ポリスチレン、HypoGel(商標) 200 NH、ポリスチレンAM-NH、2-アミノエチル化ポリスチレンミクロスフェア、2-ブロモエチル化ポリスチロールミクロスフェア、2-ヒドロキシエチル化ポリスチロールミクロスフェア、TentaGel HL-NH、Tentagel M Br、Tentagel M NH、Tentagel M OH、TentaGel MB-NH、TentaGel S-NH、TentaGel S-NH);(13)OH官能化樹脂(例えば、ポリマー結合型4-ヒドロキシメチル安息香酸、ヒドロキシメチル樹脂、OH官能化Wang樹脂);(14)オキシム樹脂(例えば、ポリマー結合型4-クロロベンゾフェノンオキシム、ポリマー結合型ベンゾフェノンオキシム、ポリマー結合型4-メトキシベンゾフェノンオキシム);(15)PEG樹脂(例えば、ポリマー結合型エチレングリコール);(16)Boc-/Blzペプチド合成樹脂(例えば、Boc-Lys(Boc)-Lys[Boc-Lys(Boc)]-Cys(Acm)-b-Ala-O-PAM樹脂、Boc-Lys(Fmoc)-Lys[Boc-Lys(Fmoc)]-b-Ala-O-Pam樹脂、Boc-Lys(Boc)-Lys[Boc-Lys(Boc)]-Lys{Boc-Lys(Boc)-Lys[Boc-Lys(Boc)]}-b-Ala-O-PAM樹脂、Boc-Lys(Fmoc)-Lys[Boc-Lys(Fmoc)]-Lys[Boc-Lys(Fmoc)-Lys{Boc-Lys(Fmoc)]}-b-Ala-O-PAM樹脂、Boc-Lys(Boc)-Lys[Boc-Lys(Boc)]-Lys{Boc-Lys(Boc)-Lys[Boc-Lys(Boc)]}-Cys(Acm)-b-Ala-O-PAM樹脂、プレロード型PAM樹脂);(17)Fmoc-/t-Buペプチド合成樹脂(例えば、Fmoc-Lys(Fmoc)-Lys[Fmoc-Lys(Fmoc)]-b-Ala-O-Wang樹脂、Fmoc-Lys(Fmoc)-Lys[Fmoc-Lys(Fmoc)]-Lys{Fmoc-Lys(Fmoc)-Lys[Fmoc-Lys(Fmoc)]}-b-Ala-O-Wang樹脂、プレロード型TentaGel(商標) Sトリチル樹脂、プレロード型TentaGel(商標)樹脂、プレロード型トリチル樹脂、プレロード型Wang樹脂、アミノアルコールプレロード型トリチル樹脂);(19)チオール官能化樹脂(例えば、HypoGel(商標) 200 S-Trt、ポリスチレンAM-S-トリチル、TentaGel HL-S-トリチル、TentaGel MB-S-トリチル、TentaGel S-S-トリチル);及び(20)Wang樹脂(例えば、Fmoc-Ala-Wang樹脂、Fmoc-Arg(Pbf)-Wang樹脂、Fmoc-Arg(Pmc)-Wang樹脂、Fmoc-Asn(Trt)-Wang樹脂、Fmoc-Asp(OtBu)-Wang樹脂、Fmoc-Cys(Acm)-Wang樹脂、Fmoc-Cys(StBu)-Wang樹脂、Fmoc-Cys(Trt)Wang樹脂、Fmoc-Gln(Trt)-Wang樹脂、Fmoc-Glu(OtBu)-Wang樹脂、Fmoc-Gly-Wang樹脂、Fmoc-His(Trt)-Wang樹脂、Fmoc-Ile-Wang樹脂、Fmoc-Leu-Wang樹脂、Fmoc-Lys(Boc)-Wang樹脂、Fmoc-Met-Wang樹脂、Fmoc-D-Met-Wang樹脂、Fmoc-Phe-Wang樹脂、Fmoc-Pro-Wang樹脂、Fmoc-Ser(tBu)-Wang樹脂、Fmoc-Ser(Trt)-Wang樹脂、Fmoc-Thr(tBu)-Wang樹脂、Fmoc-Trp(Boc)Wang樹脂、Fmoc-Trp-Wang樹脂、Fmoc-Tyr(tBu)-Wang樹脂、Fmoc-Val-Wang樹脂)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
「保護基」(PG)は、分子中の反応性基に付着して、その反応性を遮断、低減又は阻止する原子団を指す。
【0103】
好適なアミノ保護基としては、メチルカルバメート、エチルカルバメート、9-フルオレニルメチルカルバメート(Fmoc)、9-(2-スルホ)フルオレニルメチルカルバメート、9-(2,7-ジブロモ)フルオレニルメチルカルバメート、2,7-ジ-t-ブチル-[9-(10,10-ジオキソ-10,10,10,10-テトラヒドロチオキサンチル)]メチルカルバメート(DBD-Tmoc)、4-メトキシフェナシルカルバメート(Phenoc)、2,2,2-トリクロロエチルカルバメート(Troc)、2-トリメチルシリルエチルカルバメート(Teoc)、2-フェニルエチルカルバメート(hZ)、1-(1-アダマンチル)-1-メチルエチルカルバメート(Adpoc)、1,1-ジメチル-2-ハロエチルカルバメート、1,1-ジメチル-2,2-ジブロモエチルカルバメート(DB-t-BOC)、1,1-ジメチル-2,2,2-トリクロロエチルカルバメート(TCBOC)、1-メチル-1-(4-ビフェニリル)エチルカルバメート(Bpoc)、1-(3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-1-メチルエチルカルバメート(t-Bumeoc)、2-(2’-及び4’-ピリジル)エチルカルバメート(Pyoc)、2-(N,N-ジシクロヘキシルカルボキサミド)エチルカルバメート、t-ブチルカルバメート(BOC)、1-アダマンチルカルバメート(Adoc)、ビニルカルバメート(Voc)、アリルカルバメート(Alloc)、1-イソプロピルアリルカルバメート(Ipaoc)、シンナミルカルバメート(Coc)、4-ニトロシンナミルカルバメート(Noc)、8-キノリルカルバメート、N-ヒドロキシピペリジニルカルバメート、アルキルジチオカルバメート、ベンジルカルバメート(Cbz)、p-メトキシベンジルカルバメート(Moz)、p-ニトロベンジルカルバメート、p-ブロモベンジルカルバメート、p-クロロベンジルカルバメート、2,4-ジクロロベンジルカルバメート、4-メチルスルフィニルベンジルカルバメート(Msz)、9-アントリルメチルカルバメート、ジフェニルメチルカルバメート、2-メチルチオエチルカルバメート、2-メチルスルホニルエチルカルバメート、2-(p-トルエンスルホニル)エチルカルバメート、[2-(1,3-ジチアニル)]メチルカルバメート(Dmoc)、4-メチルチオフェニルカルバメート(Mtpc)、2,4-ジメチルチオフェニルカルバメート(Bmpc)、2-ホスホニオエチルカルバメート(Peoc)、2-トリフェニルホスホニオイソプロピルカルバメート(Ppoc)、1,1-ジメチル-2-シアノエチルカルバメート、m-クロロ-p-アシルオキシベンジルカルバメート、p-(ジヒドロキシボリル)ベンジルカルバメート、5-ベンズイソオキサゾリルメチルカルバメート、2-(トリフルオロメチル)-6-クロモニルメチルカルバメート(Tcroc)、m-ニトロフェニルカルバメート、3,5-ジメトキシベンジルカルバメート、o-ニトロベンジルカルバメート、3,4-ジメトキシ-6-ニトロベンジルカルバメート、フェニル(o-ニトロフェニル)メチルカルバメート、フェノチアジニル-(10)-カルボニル誘導体、N’-p-トルエンスルホニルアミノカルボニル誘導体、N’-フェニルアミノチオカルボニル誘導体、t-アミルカルバメート、S-ベンジルチオカルバメート、p-シアノベンジルカルバメート、シクロブチルカルバメート、シクロヘキシルカルバメート、シクロペンチルカルバメート、シクロプロピルメチルカルバメート、p-デシルオキシベンジルカルバメート、2,2-ジメトキシカルボニルビニルカルバメート、o-(N,N-ジメチルカルボキサミド)ベンジルカルバメート、1,1-ジメチル-3-(N,N-ジメチルカルボキサミド)プロピルカルバメート、1,1-ジメチルプロピニルカルバメート、ジ(2-ピリジル)メチルカルバメート、2-フラニルメチルカルバメート、2-ヨードエチルカルバメート、イソボルニルカルバメート、イソブチルカルバメート、イソニコチニルカルバメート、p-(p’-メトキシフェニルアゾ)ベンジルカルバメート、1-メチルシクロブチルカルバメート、1-メチルシクロヘキシルカルバメート、1-メチル-1-シクロプロピルメチルカルバメート、1-メチル-1-(3,5-ジメトキシフェニル)エチルカルバメート、1-メチル-1-(p-フェニルアゾフェニル)エチルカルバメート、1-メチル-1-フェニルエチルカルバメート、1-メチル-1-(4-ピリジル)エチルカルバメート、フェニルカルバメート、p-(フェニルアゾ)ベンジルカルバメート、2,4,6-トリ-t-ブチルフェニルカルバメート、4-(トリメチルアンモニウム)ベンジルカルバメート、2,4,6-トリメチルベンジルカルバメート、ホルムアミド、アセトアミド、クロロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、トリフルオロアセトアミド、フェニルアセトアミド、3-フェニルプロパンアミド、ピコリンアミド、3-ピリジルカルボキサミド、N-ベンゾイルフェニルアラニル誘導体、ベンズアミド、p-フェニルベンズアミド、o-ニトロフェニルアセトアミド、o-ニトロフェノキシアセトアミド、アセトアセトアミド、(N’-ジチオベンジルオキシカルボニルアミノ)アセトアミド、3-(p-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド、3-(o-ニトロフェニル)プロパンアミド、2-メチル-2-(o-ニトロフェノキシ)プロパンアミド、2-メチル-2-(o-フェニルアゾフェノキシ)プロパンアミド、4-クロロブタンアミド、3-メチル-3-ニトロブタンアミド、o-ニトロシンナミド、N-アセチルメチオニン誘導体、o-ニトロベンズアミド、o-(ベンゾイルオキシメチル)ベンズアミド、4,5-ジフェニル-3-オキサゾリン-2-オン、N-フタルイミド、N-ジチアスクシンイミド(Dts)、N-2,3-ジフェニルマレイミド、N-2,5-ジメチルピロール、N-1,1,4,4-テトラメチルジシリルアザシクロペンタン付加物(STABASE)、5置換1,3-ジメチル-1,3,5-トリアザシクロヘキサン-2-オン、5置換1,3-ジベンジル-1,3,5-トリアザシクロヘキサン-2-オン、1置換3,5-ジニトロ-4-ピリドン、N-メチルアミン、N-アリルアミン、N-[2-トリメチルシリル)エトキシ]メチルアミン(SEM)、N-3-アセトキシプロピルアミン、N-(1-イソプロピル-4-ニトロ-2-オキソ-3-ピロリン-3-イル)アミン、第四級アンモニウム塩、N-ベンジルアミン、N-ジ(4-メトキシフェニル)メチルアミン、N-5-ジベンゾスベリルアミン、Nトリフェニルメチルアミン(Tr)、N-[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル]アミン(MMTr)、N-9-フェニルフルオレニルアミン(PhF)、N-2,7-ジクロロ-9-フルオレニルメチレンアミン、N-フェロセニルメチルアミノ(Fcm)、N-2-ピコリルアミノN’-オキシド、N-1,1-ジメチルチオメチレンアミン、N-ベンジリデンアミン、N-p-メトキシベンジリデンアミン、N-ジフェニルメチレンアミン、N-[(2-ピリジル)メシチル]メチレンアミン、N-(N’,N’-ジメチルアミノメチレン)アミン、N,N’-イソプロピリデンジアミン、N-p-ニトロベンジリデンアミン、N-サリチリデンアミン、N-5-クロロサリチリデンアミン、N-(5-クロロ-2-ヒドロキシフェニル)フェニルメチレンアミン、N-シクロヘキシリデンアミン、N-(5,5-ジメチル-3-オキソ-1-シクロヘキセニル)アミン、N-ボラン誘導体、N-ジフェニルボリン酸誘導体、N-[フェニル(ペンタカルボニルクロム-又はタングステン)カルボニル]アミン、N-銅キレート、N-亜鉛キレート、N-ニトロアミン、N-ニトロソアミン、アミンN-オキシド、ジフェニルホスフィンアミド(Dpp)、ジメチルチオホスフィンアミド(Mpt)、ジフェニルチオホスフィンアミド(Ppt)、ジアルキルホスホロアミデート、ジベンジルホスホロアミデート、ジフェニルホスホロアミデート、ベンゼンスルフェンアミド、o-ニトロベンゼンスルフェンアミド(Nps)、2,4-ジニトロベンゼンスルフェンアミド、ペンタクロロベンゼンスルフェンアミド、2-ニトロ-4-メトキシベンゼンスルフェンアミド、トリフェニルメチルスルフェンアミド、3-ニトロピリジンスルフェンアミド(Npys)、p-トルエンスルホンアミド(Ts)、ベンゼンスルホンアミド、2,3,6,-トリチメル-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Mtr)、2,4,6-トリメトキシベンゼンスルホンアミド(Mtb)、2,6-ジメチル-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Pme)、2,3,5,6-テトラメチル-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Mte)、4-メトキシベンゼンスルホンアミド(Mbs)、2,4,6-トリメチルベンゼンスルホンアミド(Mts)、2,6-ジメトキシ-4-メチルベンゼンスルホンアミド(iMds)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホンアミド(Pmc)、メタンスルホンアミド(Ms)、β-トリメチルシリルエタンスルホンアミド(SES)、9-アントラセンスルホンアミド、4-(4’,8’-ジメトキシナフチルメチル)ベンゼンスルホンアミド(DNMBS)、ベンジルスルホンアミド、トリフルオロメチルスルホンアミド及びフェナシルスルホンアミドが挙げられる。
【0104】
適切に保護されたカルボン酸の例としては、シリル、アルキル、アルケニル、アリール及びアリールアルキルで保護されたカルボン酸が更に挙げられるが、これらに限定されない。好適なシリル基の例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル等が挙げられる。好適なアルキル基の例としては、メチル、ベンジル、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、トリチル、t-ブチル、テトラヒドロピラン-2-イルが挙げられる。好適なアルケニル基の例としては、アリルが挙げられる。好適なアリール基の例としては、任意に置換されたフェニル、ビフェニル又はナフチルが挙げられる。好適なアリールアルキル基の例としては、任意に置換されたベンジル(例えば、p-メトキシベンジル(MPM)、3,4-ジメトキシベンジル、O-ニトロベンジル、p-ニトロベンジル、p-ハロベンジル、2,6-ジクロロベンジル、p-シアノベンジル)、並びに2-及び4-ピコリルが挙げられる。
【0105】
第3の態様においては、本発明は、本発明の第1又は第2の態様において規定されるペプチドを含む融合タンパク質を提供する。
【0106】
本発明において、「融合タンパク質」という用語は、本発明のペプチドを本来他の別個のタンパク質(複数の場合もある)に属する1つ以上のペプチドに接合するタンパク質を指す。
【0107】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1、第2又は第3の態様の一実施形態においては、ペプチド又は融合タンパク質は標識、薬物、細胞膜透過ペプチド又はポリエチレングリコール(PEG)等の部分にコンジュゲートしている。本発明のペプチド又は融合タンパク質に部分をコンジュゲートする日常的な合成プロトコルは既知である。
【0108】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1、第2又は第3の態様の別の実施形態においては、ペプチド又は融合タンパク質は、標識にコンジュゲートしている。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1、第2又は第3の態様の別の実施形態においては、標識はペプチド又は融合タンパク質のN末端又はC末端にコンジュゲートしている。
【0109】
本明細書で使用される「標識」は蛍光、電気伝導性、放射能、サイズ等を含む様々な方法によって検出することができる分子又は化合物である。標識は、例えば別のより低い特徴的な波長の光の励起に続いて特定の波長の光を発する蛍光標識のように、シグナルを発することが本質的に可能であり得る。代替的には、標識は本質的にシグナルを発することが可能ではないが、シグナルを発する別の化合物が結合することが可能なものであってもよい。この後者の状況の一例は、それ自体がシグナルを発しないが、標識されたアビジン又はストレプトアビジン分子に結合した場合に検出することができるビオチン等の標識である。この後者の種類の標識の他の例は、特定の受容体に特異的に結合するリガンドである。検出可能に標識された受容体をリガンドで標識されたユニット特異的マーカーに結合させ、かかるマーカーを可視化することが可能である。
【0110】
本発明に従って使用することができる標識としては、電子スピン共鳴分子、蛍光分子、化学発光分子、放射性同位体、酵素基質、酵素、ビオチン分子、アビジン分子、電荷移動分子、半導体ナノ結晶、半導体ナノ粒子、コロイド金ナノ結晶、リガンド、マイクロビーズ、磁性ビーズ、常磁性分子、量子ドット、色素原基質、親和性分子、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、ハプテン、抗原、抗体、抗体フラグメント及び脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
放射性同位体はフィルム又は電荷結合素子(CCD)を用いて検出することができ、リガンドは蛍光、化学発光又は酵素タグを有する受容体の結合によって検出することができ、マイクロビーズは電子又は原子間力顕微鏡検査を用いて検出することができる。
【0112】
標識とペプチドとのコンジュゲーションは、当業者に既知の日常プロトコルに従って行うことができる。
【0113】
別の実施形態においては、上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1若しくは第2の態様のペプチド又は本発明の第3の態様の融合タンパク質は、薬物にコンジュゲートしている。一実施形態においては、薬物はペプチド又はタンパク質のN末端にコンジュゲートしている。
【0114】
別の実施形態においては、上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1若しくは第2の態様のペプチド又は本発明の第3の態様の融合タンパク質は、PEGにコンジュゲートしている。一実施形態においては、PEGはペプチド又はタンパク質のN末端にコンジュゲートしている。
【0115】
「PEG」という用語は、ここではポリエチレングリコール及び1つのメトキシル化末端を有する誘導体等の誘導体、例えばメトキシ-ポリエチレングリコール/ポリエチレングリコールモノメチルエーテルについて同義的に使用される。これらの化合物をいずれも薬物の修飾に使用することができ、PEG鎖の一端の末端基が異なり、ヒドロキシル基がメトキシ基で修飾されていてもよいことが当業者に既知である。さらに、PEGをペプチドに特異的にカップリングするために、PEGのもう一方の端を特定の「活性化基」で修飾する必要があることが当業者に既知である。かかる活性化基についての概要は、Zalipsky, Bioconjugate Chem. 1995, 6, 150-165に示されている。コンジュゲーションに使用されるPEGの分子量は、得られるPEGコンジュゲートペプチドに必要とされる持続的な有効性の程度に応じて適切に変更することができる。1つのPEG分子の分子量は、5kDa~40kDa、例えば10kDa~30kDa又は20kDa~30kDaである。コンジュゲーションに使用されるPEG分子は線状、分岐状又は星型の形態を有し得る。
【0116】
上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1又は第2の態様の別の実施形態においては、ペプチドは、細胞膜透過ペプチドにコンジュゲートしている。
【0117】
本発明において、「細胞膜透過ペプチド」(「CPP」)という用語は、様々な分子カーゴ(ナノサイズの粒子から小化学分子及びDNAの大フラグメントまで)の細胞取込みを容易にする短ペプチドを指す。「カーゴ」をC(t)又はN(t)末端を介して、共有結合による化学的連結又は非共有結合的相互作用のいずれかによりペプチドに会合する。CPPの機能はカーゴを細胞内に送達することであり、このプロセスは一般に、エンドサイトーシスによって生じる。現在の使用は、CPPを介したカーゴ送達における細胞特異性の欠如及びそれらの取込み様式の不十分な理解のために制限されている。CPPは通例、高い相対存在量のリシン若しくはアルギニン等の正荷電アミノ酸を含有するか、又は極性/荷電アミノ酸及び非極性疎水性アミノ酸の交互パターンを含有する配列のいずれかを有するアミノ酸組成を有する。これら2つのタイプの構造は、それぞれポリカチオン性又は両親媒性と称される。第3のCPP群は、正味電荷の低い無極性残基のみを含有する疎水性ペプチドであるか、又は細胞取込みに不可欠な疎水性アミノ酸基を有する。CPPと本発明において提供されるペプチドとのコンジュゲーションは、固相合成又は溶液選択的キャッピング等の既知の日常プロトコルに従って行うことができる(Copolovici D. M. et al., "Cell-Penetrating Peptides: Design, Synthesis, and Applications", 2014, ACS Nano, 2014, 8 (3), pp 1972-1994を参照されたい)。上記又は下記に提示する実施形態のいずれかと任意に組み合わせた本発明の第1の態様の別の実施形態においては、細胞膜透過ペプチドはポリカチオン性CPP、ポリArg又は代替的にはペネトラチン(penetratine)である。
【0118】
第4の態様において、本発明は、医薬組成物を提供する。
【0119】
本明細書で使用される「治療有効量」という表現は、投与した場合に血流に入り、対処される疾患の1つ以上の症状の発症を予防するか、又は或る程度軽減するのに十分な化合物(すなわち、ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩)の量を指す。本発明に従って投与されるペプチドの特定の用量は当然ながら、投与される化合物、投与の経路、治療される特定の病態及び同様の考慮事項を含む、その事例を取り巻く特定の状況によって決まる。
【0120】
「薬学的に許容可能な」という用語は、医療用の組成物を調製するための製薬技術における使用に適した添加剤又は担体を指す。
【0121】
「添加剤及び/又は担体」という表現は、許容可能な材料、組成物又はビヒクルを指す。各構成成分は、組成物の他の成分に適合するという意味で薬学的に許容可能でなくてはならない。各構成成分はまた、過大な毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び非ヒト動物の組織又は器官と接触させた使用に好適であり、適切なベネフィット/リスク比に見合う必要がある。好適な許容可能な添加剤の例は溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散助剤若しくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤若しくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、滑沢剤等である。任意の従来の添加剤媒体が、例えば任意の望ましくない生物学的作用を生じるか、又は医薬組成物の任意の他の構成成分(複数の場合もある)と他の形で有害に相互作用することによって物質又はその誘導体と適合しない場合を除き、その使用は本発明の範囲内であることが企図される。
【0122】
本明細書に記載の医薬組成物の配合物は、薬理学の技術分野で既知の又は将来開発される任意の方法によって調製することができる。概して、かかる調製方法は、活性成分(ペプチド)を添加剤及び/又は1つ以上の他の副成分と合わせる工程と、次いで必要及び/又は所望に応じて、生成物を所望の単回又は複数回投与単位に成形及び/又は包装する工程とを含む。
【0123】
本発明の医薬組成物は、単回単位用量及び/又は複数の単回単位用量として大量に調製、包装及び/又は販売することができる。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個々の量である。
【0124】
本発明の組成物中の活性成分(すなわち、前の態様及び実施形態のいずれかで定義されるペプチド)、許容可能な添加剤及び/又は任意の付加的な成分の相対量は、治療される被験体の個性、大きさ及び/又は状態に応じ、更には組成物を投与する経路に応じて異なる。
【0125】
これらの組成物の製造に使用される許容可能な添加剤としては、不活性希釈剤、分散剤及び/又は造粒剤、界面活性剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、滑剤、及び/又は油が挙げられるが、これらに限定されない。かかる添加剤は、本発明の配合物に任意に含まれ得る。ココアバター及び坐剤蝋、着色料、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び着香剤等の添加剤が配合者の判断に従って組成物中に存在していてもよい。
【0126】
例示的な希釈剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉糖及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
例示的な造粒剤及び/又は分散剤としては、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類果肉(citrus pulp)、寒天、ベントナイト、セルロース及び木製品、天然海綿、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、シリケート、炭酸ナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン)(クロスポビドン)、ナトリウムカルボキシメチルデンプン(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(starch 1500)、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級アンモニウム化合物、並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
例示的な界面活性剤及び/又は乳化剤としては、天然乳化剤(例えば、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、蝋及びレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト(ケイ酸アルミニウム)及びVeegum(ケイ酸アルミニウムマグネシウム))、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル及びモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー及びカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween 80)、モノパルミチン酸ソルビタン(Span 40)、モノステアリン酸ソルビタン(Span 60)、トリステアリン酸ソルビタン(Span 65)、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン(Span 80))、ポリオキシエチレンエステル(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(Myrj 45)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシ化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシメチレン及びSolutol)、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、Cremophor)、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(Brij 30))、ポリ(ビニル-ピロリドン)、モノラウリン酸ジエチレングリコール、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、Pluronic F 68、ポロキサマー188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウム等、及び/又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
例示的な結合剤としては、デンプン(例えば、コーンスターチ及びデンプン糊);ゼラチン;糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、モラセス、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然及び合成ゴム(例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモスの抽出物、パンワールゴム(panwar gum)、ガッチゴム、イサポール(isapol)外皮の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum)及びカラマツアラビノガラクタン;アルギネート;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;蝋;水;アルコール;並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
例示的な防腐剤としては、酸化防止剤、キレート剤、抗微生物性防腐剤、抗真菌性防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤及び他の防腐剤を挙げることができる。例示的な酸化防止剤としては、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸及びエデト酸三ナトリウムが挙げられる。例示的な抗微生物性防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール及びチメロサールが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な抗真菌性防腐剤としては、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム及びソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルコール防腐剤としては、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート及びフェニルエチルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な酸性防腐剤としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸及びフィチン酸が挙げられるが、これらに限定されない。他の防腐剤としては、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant Plus、Phenonip、メチルパラベン、Germall 115、Germaben II、Neolone、Kathon及びEuxylが挙げられるが、これらに限定されない。或る特定の実施形態において、防腐剤は酸化防止剤である。他の実施形態において、防腐剤はキレート剤である。
【0131】
例示的な緩衝剤としては、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、リン酸水酸化カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、第二リン酸カリウム、第一リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱性物質除去水、等張食塩水、リンガー液、エチルアルコール及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
例示的な滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
例示的な油としては、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、クロフサスグリ種子、ルリチシャ、カデ、カモミール、キャノーラ、カラウェー、カルナウバ、ヒマシ、桂皮、ココアバター、ヤシ、タラ肝、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、アマニ、ゲラニオール、ヒョウタン(gourd)、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイナッツ、ラバンジン、ラベンダー、レモン、アオモジ、マカデミアナッツ、マロー、マンゴー種子、メドウフォーム種子、ミンク、ニクズク、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、パーム、パーム核、モモ核、ピーナッツ、ケシ種子、カボチャ種子、ナタネ、ぬか、ローズマリー、ベニバナ、ビャクダン、サザンカ(sasquana)、セイバリー(savoury)、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ及び小麦胚芽の油が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な油としては、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
非経口投与用の液体投薬形態としては、薬学的に許容可能なリポソームエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられるが、これらに限定されない。活性成分に加えて、液体投薬形態は当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物を含んでいてもよい。非経口投与のための或る特定の実施形態において、本発明のコンジュゲートを可溶化剤、例えばポリエトキシ化ヒマシ油(例えば、CREMOPHOR(商標))、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー及びそれらの組合せと混合する。
【0135】
注射用調製物、例えば滅菌注射用水性又は油性懸濁液は、既知の技術に従い、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて配合することができる。滅菌注射用調製物は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の、例えば1,3-ブタンジオール溶液としての滅菌注射用溶液、懸濁液又はエマルションであり得る。用いることができる許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンガー液、U.S.P.及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌不揮発性油が溶媒又は懸濁媒体として従来用いられている。この目的で、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激不揮発性油を用いることができる。加えて、オレイン酸等の脂肪酸が注射剤の調製に使用される。代替的には、調製物はリポソームの形態であってもよい。
【0136】
注射用配合物は、例えば細菌保持フィルターを通した濾過、又は使用前に滅菌水若しくは他の滅菌注射用媒体に溶解若しくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0137】
薬物の効果を持続させるために、皮下又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましいことが多い。これは、水溶性が低い結晶性又は非晶質物質の液体懸濁液を使用することによって達成することができる。この場合、薬物の吸収速度はその溶解速度に応じて異なり、溶解速度は結晶サイズ及び結晶形態によって異なり得る。代替的には、非経口的に投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油ビヒクルに溶解又は懸濁させることによって達成される。
【0138】
本発明のペプチドは、上記の1つ以上の添加剤とのマイクロカプセル化形態であってもよい。一実施形態においては、本発明のペプチドはリポソーム中に配合される。
【0139】
本発明のペプチド及び医薬組成物を併用療法に用いることができることが理解されよう。併用レジメンに用いられる療法(治療法又は処置)の特定の組合せには、所望の治療法及び/又は処置の適合性、並びに達成すべき所望の治療効果が考慮に入れられる。用いられる療法は、同じ目的で所望の効果を達成するものであっても、又は異なる効果(例えば、任意の有害作用の制御)を達成するものであってもよいことが理解されよう。
【0140】
本発明の医薬組成物は、単独で又は1つ以上の他の治療剤と組み合わせて投与することができる。「と組み合わせて」とは、作用物質を同時に投与するか、及び/又は共に送達されるように配合しなければならないことを意味することを意図するものではないが、これらの送達方法は本発明の範囲内である。組成物は1つ以上の他の所望の治療法又は医療処置と同時に、その前に又はその後に投与することができる。概して、各作用物質は、その作用物質について決定された用量及び/又はタイムスケジュールで投与される。付加的に、本発明は、ペプチド又は医薬組成物のバイオアベイラビリティを改善する、それらの代謝を低減及び/又は変更する、それらの排出を阻害する、及び/又はそれらの体内での分布を変更することができる作用物質と組み合わせたペプチド又は医薬組成物の送達を包含する。
【0141】
併用レジメンに用いられる療法の特定の組合せには、所望の治療法及び/又は処置の適合性、及び/又は達成すべき所望の治療効果が考慮に入れられる。用いられる療法は、同じ障害に対する所望の効果を達成するものであっても(例えば、本発明のペプチドを同じ障害の治療に使用される別の生物活性物質と同時に投与することができる)、及び/又は異なる効果(例えば、任意の有害作用の制御)を達成するものであってもよいことが理解されよう。この組合せで利用される生物活性物質を単一の組成物中で共に投与しても、又は異なる組成物中で別個に投与してもよいことが更に理解されよう。
【0142】
「と組み合わせて」という表現は、本発明のペプチドと、特に治療剤又はペプチドのプロファイル(バイオアベイラビリティ等)を改善する作用物質であり得る上述及び下述の更なる作用物質のいずれかとを(化学的-物理的相互作用により)コンジュゲートする可能性も包含する。
【0143】
第6及び第7の態様においては、本発明は、VEGF発現及び血管新生の調節異常に起因する疾患の予防又は治療に使用される、本発明の第1及び第2の態様のペプチド、第3の態様の融合タンパク質又は本発明の第4の態様の医薬組成物をそれぞれ提供する。本態様は代替的には、VEGF発現又は血管新生の調節異常に起因する疾患を予防又は治療する方法であって、治療有効量の本発明の第1又は第2の態様において規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は本発明の第3の態様において規定される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様において規定される医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を含む、方法として構築することができる。本態様は代替的には、VEGF発現又は血管新生の調節異常に起因する疾患の治療又は予防のための薬剤の製造における本発明の第1若しくは第2の態様において規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は本発明の第3の態様において規定される融合タンパク質、又は本発明の第4の態様において規定される医薬組成物の使用として構築することができる。「VEGF発現レベル」という用語は、VEGFタンパク質又はmRNAのレベルのいずれかを指す。本発明の一実施形態においては、本発明のペプチドは、VEGF mRNAの調節を促進する。本発明の別の実施形態においては、本発明のペプチドは、VEGFタンパク質の調節を促進する。タンパク質又はmRNAのレベルでVEGFの量を決定するための市販のキットがある。
【0144】
本発明の文脈において、血管新生の調節異常は、VEGF発現レベルの変化によるものである。このため、血管新生の調節異常がVEGF発現の増加に起因する疾患が存在する。かかる状況においては、ビラジカル「L」を含む本発明の第1の態様のペプチドは、VEGF発現を減少させることができるため、有用であり得る(下記に提示するデータを参照されたい)。このため、本発明の第6及び第7の態様の一実施形態においては、ペプチドは第1の態様によるものであり、上記に提示する実施形態のいずれかで規定されるリンカービラジカル「L」を含み、VEGFレベルの上昇に起因する疾患の治療又は予防に使用される。VEGFレベルの上昇に起因する疾患の例示的な非限定例は、特に糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性(AMD)、緑内障等の失明障害、乾癬、慢性閉塞性肺疾患及び癌である(Cameliet P. 2003)。
【0145】
本発明の第6及び第7の態様の好ましい実施形態は、ペプチドが第1の態様によるものであり、上記に提示する実施形態のいずれかで規定されるリンカービラジカル「L」を含み、癌の予防又は治療に使用される、本発明の第1及び第2の態様のペプチド、第3の態様の融合タンパク質又は本発明の第4の態様の医薬組成物に関する。本発明の第6及び第7の態様の関連の実施形態は、癌を治療又は予防する方法であって、治療有効量の本発明の第1及び第2の態様のペプチド、第3の態様の融合タンパク質又は本発明の第4の態様の医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含み、ペプチドが第1の態様によるものであり、上記に提示する実施形態のいずれかで規定されるリンカービラジカル「L」を含む、方法に関する。本発明の第6及び第7の態様の更なる関連の実施形態は、癌の予防又は治療のための薬剤の製造における本発明の第1及び第2の態様のペプチド、第3の態様の融合タンパク質又は本発明の第4の態様の医薬組成物の使用に関し、ペプチドが第1の態様によるものであり、上記に提示する実施形態のいずれかで規定されるリンカービラジカル「L」を含む。
【0146】
本明細書で使用される「癌」という用語には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、骨髄腫(例えば多発性骨髄腫)及び白血病(例えば急性骨髄性白血病)が含まれる。かかる癌のより具体的な例としては、乳癌、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌、膵癌、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝腫、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、腎癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、胃癌、黒色腫及び様々なタイプの頭頸部癌が挙げられる。
【0147】
より具体的な実施形態においては、ペプチドが第1の態様によるものであり、上記に提示する実施形態のいずれかで規定されるリンカービラジカル「L」を含む、本発明の第1及び第2の態様のペプチド、第3の態様の融合タンパク質又は本発明の第4の態様の医薬組成物は、1つ以上の抗癌剤と組み合わせて癌の治療又は予防に使用される。
【0148】
抗癌剤という用語は、化学療法剤、成長阻害剤、細胞毒性剤、抗ホルモン剤、放射線療法に使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤等及びそれらの任意の組合せを含み得るが、これらに限定されない。上記の抗癌剤は、本明細書に記載される環状ペプチド、融合タンパク質又は医薬組成物の前、同時又は後に投与することができる。2つ以上の薬物は、同じ組成物の一部を形成してもよく、又は同時に若しくは異なる時点で投与される別個の組成物として提供してもよい。
【0149】
他の特定の実施形態においては、ペプチドが第1の態様によるものであり、上記に提示する実施形態のいずれかで規定されるリンカービラジカル「L」を含む、本発明の第1及び第2の態様のペプチド、第3の態様の融合タンパク質又は本発明の第4の態様の医薬組成物は、抗VEGF治療又は光線力学的療法(PDT)等の1つ以上の標準治療薬と組み合わせて糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性(AMD)又は緑内障等の失明障害の治療又は予防に使用される。
【0150】
更なる特定の実施形態においては、ペプチドが第1の態様によるものであり、上記に提示する実施形態のいずれかで規定されるリンカービラジカル「L」を含む、本発明の第1及び第2の態様のペプチド、第3の態様の融合タンパク質又は本発明の第4の態様の医薬組成物は、コルチコステロイド又は他の免疫系調節剤等の1つ以上の標準治療薬と組み合わせて乾癬の治療又は予防に使用される。
【0151】
更なる特定の実施形態においては、ペプチドが第1の態様によるものであり、上記に提示する実施形態のいずれかで規定されるリンカービラジカル「L」を含む、本発明の第1及び第2の態様のペプチド、第3の態様の融合タンパク質又は本発明の第4の態様の医薬組成物は、気管支拡張剤又はコルチコステロイド等の1つ以上の標準治療薬と組み合わせて慢性閉塞性肺疾患の治療又は予防に使用される。
【0152】
他の状況においては、血管新生の調節異常は、VEGF発現の減少によるものである。このため、本発明の第6及び第7の態様の代替的な実施形態においては、ペプチドは、本発明の第1の態様下で提供される線状ペプチド又は本発明の第2の態様で提供されるもののいずれかであり、VEGFレベルの低下に起因する疾患の治療又は予防に使用される。本発明の第6及び第7の態様の更なる実施形態においては、本発明は、VEGFレベルの低下に起因する疾患を治療又は予防する方法であって、治療有効量の本発明の第1及び第2の態様のペプチド、第3の態様の融合タンパク質又は本発明の第4の態様の医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することを含み、ペプチドが本発明の第1の態様下で提供される線状ペプチド又は本発明の第2の態様で提供されるもののいずれかである、方法を提供する。更なる関連の実施形態においては、本発明は、VEGFレベルの低下に起因する疾患の治療又は予防のための薬剤の製造における、本発明の第1及び第2の態様のペプチド、第3の態様の融合タンパク質又は本発明の第4の態様の医薬組成物の、それを必要とする被験体に対する使用であって、ペプチドが本発明の第1の態様下で提供される線状ペプチド又は本発明の第2の態様で提供されるもののいずれかである、使用に関する。
【0153】
本発明の第1の態様下で提供される線状ペプチド又は本発明の第2の態様で提供されるもののいずれかは、低いVEGFレベルを上昇させ、VEGF産生を刺激する(データも下記に提示する)。血管新生及びVEGF発現レベルの低減に関連する疾患の例示的な非限定例は、特に肺線維症、虚血性組織傷害、胃潰瘍、腎症、骨量減少、運動ニューロン変性、慢性創傷、皮膚血管の脆弱性である(Manish B. et al., 2010)。
【0154】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」という単語及びこの単語の変化形は他の技術的特徴、添加物、構成成分又は工程を除外することを意図したものではない。さらに、「含む」という単語は、「のみからなる(consisting of)」という場合も包含する。本発明の付加的な目的、利点及び特徴が本明細書を検討することで当業者に明らかとなるか、又は本発明の実施によって理解され得る。以下の実施例は実例として提示され、本発明を限定することを意図したものではない。さらに、本発明は本明細書に記載される特定の好ましい実施形態の考え得る全ての組合せを包含する。
【実施例
【0155】
実施例1:ヒト網膜色素上皮(RPE)、ヒトケラチノサイト及びヒト乳癌細胞株における低酸素誘導条件での本発明のペプチドによるVEGFの調節
1. 材料及び方法
合成基本手順
材料は以下のように購入した:Fmoc保護α-アミノ酸(---);RinkアミドMBHA樹脂(Tianjin Nankai HECHENG S&T Co., Ltd);HBTU((2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、GL Biochem);N-メチルモルホリン(Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.);無水コハク酸(Aladdin);アセトニトリル(Xingke Chemical);ニンヒドリン(Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.);ピペリジン(Vertellus);ジメチルホルムアミド、DMF(Zhejiang jiangshan chemical co., Ltd);トリフルオロ酢酸、TFA(トリフルオロ酢酸、Solvay)、TIS(チオアニソール、Solvay)。
【0156】
簡潔に述べると、線状ポリペプチドを支持体としてのRinkアミドMBHA樹脂上でFmocベースSPPS(固相ペプチド合成)を用いて手動合成した。
【0157】
以下のプロトコルを用いた:
1. Fmoc保護基をDMF中の20%ピペリジンにより除去した。
2. 樹脂をDMFで5回洗浄した。
3. その後のFmoc保護アミノ酸をFmoc-AA(3当量)、HBTU(3当量)及びN-メチルモルホリン(6当量)を用いて45分間カップリングした。
4. 樹脂をDMFで5回洗浄した。カップリングをニンヒドリン試験によって確認した。
5. 工程1から繰り返す。
6. N末端を、無水コハク酸(10当量)及びN-メチルモルホリン(10当量)と反応させることによってキャッピングした。
【0158】
ペプチドを樹脂から切断し、溶液F(95%TFA、2.5%水、2.5%TIS)に曝露することによって脱保護し、凍結乾燥した。
【0159】
凍結乾燥したペプチドを、C18カラムを用いた逆相HPLCによって精製した(詳細については化合物の特性評価を参照されたい)。ペプチドをLC-MS-ESIによって同定した。全化合物の全質量スペクトルデータを下記表1に示す。
【0160】
材料は以下のように購入した:Fmoc保護α-アミノ酸(オレフィンアミノ酸Fmoc-[(S)-2-(4ペンテニル)アラニン]OH、Fmoc-[(R)-2-(4ペンテニル)アラニン]OH、Fmoc-[(S)-2-(7オクテニル)アラニン]OH、Fmoc-[(R)-2-(4ペンテニル)アラニン]OHを含む)、2-(6-クロロ-1-H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(TBTU)、樹脂、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリフルオロ酢酸(TFA)、1,2-ジクロロエタン(DCE)、グラブスRu(IV)触媒及びピペリジンは種々の供給業者から購入した。
【0161】
簡潔に述べると、線状ポリペプチドを、Fmoc固相ペプチド化学を用いて自動合成装置により合成した。オレフィンアミノ酸とのカップリングのみを、樹脂を反応器から取り出した後に前項に開示されるように手動で行った。
【0162】
閉環メタセシス反応を、Scott J. M.ら(Scott J. M. et al., "Application of Ring-Closing Metathesis to the Synthesis of Rigidified Amino Acids and Peptides", 1996, J. Am. Chem. Soc., 1996, 118 (40), pp 9606-9614)によって開示されるように、線状ペプチドを樹脂から切断した後に第1世代グラブス触媒により溶液中で行った。
【0163】
脱保護されたペプチドを、メチル-tert-ブチルエーテルにより4℃で沈殿させ、凍結乾燥した。
【0164】
凍結乾燥したペプチドを、AgilentのZORBAX 300SB-C18 5μm カラムを用いた逆相HPLCによって精製した(詳細については化合物の特性評価を参照されたい)。ペプチドをLC-MS-ESIによって同定した。全化合物の全質量スペクトルデータを下記表1に示す。
【0165】
HPLC条件:
配列番号13.化合物を、20分間で29%→39%のBの線形勾配(R.T.=10.2)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB80%:0.1%TFAを含むアセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95.16%;
配列番号14.化合物を、20分間で40%→50%のBの線形勾配(R.T.=6.5~7.8)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95%超;
配列番号15.化合物を、20分間で36%→46%のBの線形勾配(R.T.=9.2~10.3)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95%超;
配列番号16.化合物を、20分間で50%→60%のBの線形勾配(R.T.=10.3~10.9)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95%超;
配列番号17.化合物を、20分間で35%→55%のBの線形勾配(R.T.=12.5~13.1)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95%超;
配列番号18.化合物を、20分間で55%→75%のBの線形勾配(R.T.=8.5~9.3)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95%超;
配列番号19.化合物を、20分間で36%→46%のBの線形勾配(R.T.=9.9~10.4)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95%超;
配列番号20.化合物を、20分間で35%→45%のBの線形勾配(R.T.=9.8~10.4)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95%超;
配列番号21.化合物を、20分間で45%→55%のBの線形勾配(R.T.=13.2~14.4)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95.7%;
配列番号29.化合物を、20分間で38%→48%のBの線形勾配(R.T.=8.9~9.3)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95.13%;
配列番号30.化合物を、20分間で36%→46%のBの線形勾配(R.T.=12.4)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95.13%;
配列番号31.化合物を、20分間で28%→48%のBの線形勾配(R.T.=9.9~10.2)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプA:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプB:0.1%TFAを含む80%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード95.13%;
配列番号36.化合物を、25分間で23%→48%のAの線形勾配(R.T.=11.2)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプB:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプA:0.1%TFAを含む100%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード96.65%;
配列番号37.化合物を、25分間で24%→49%のAの線形勾配(R.T.=9.54)を用いたHPLC-RP(C-18カラム;ポンプB:0.1%TFAを含む100%HO;ポンプA:0.1%TFAを含む100%アセトニトリル)によって精製した。HPLCによる純度グレード96.42%;
【0166】
【表1】
【0167】
細胞株、細胞培養及び低酸素誘導条件
MDA-MB-231ヒト乳癌細胞株、HaCat不死化ヒトケラチノサイト細胞株及びARPE-19ヒト網膜色素上皮(RPE)細胞株は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、Manassas,VA,USA)から購入した。ヒト細胞はATCCガイドラインに従い、遺伝子型プロファイリングを用いて慣例的に認証した。ARPE-19細胞は、10%ウシ胎仔血清及び抗生物質を添加したHEPESを含むDMEM/F12培地中で維持した。MDA-MB-231及びHaCaTは、4.5グラム(gr)/Lグルコース、グルタミン及び2mMピルビン酸塩を含み、10%ウシ胎仔血清及び抗生物質を添加したDMEM培地中で維持した。
【0168】
低酸素は、CoClで処理したアッセイ細胞において効果的に誘導された。新鮮な0.4M CoClストック溶液を水中で調製し、MDA-MB-231については50μM、HaCaTについては200μM、ARPE-19細胞については300μMの濃度が得られるように培地に添加した。低酸素条件を模倣するために細胞をそれぞれのCoCl濃度で24時間インキュベートした。
【0169】
VEGFアッセイ
培養細胞の上清のVEGF含量は、VEGF-ELISA(Abcam;ab100662;Cambridge,UK)により、製造業者の使用説明書に従って測定した。ELISAの検出範囲は、8.23pg/ml~6000pg/mlであった。ELISAによりヒトVEGF-Aの全てのアイソフォームを検出する。アッセイを正常酸素条件及び低酸素条件にて非処理細胞で行い、24時間の時点で低酸素でのVEGF量と正常酸素でのVEGF量との比率を決定及び算出したところ、試験した各細胞株において1超となった。同じ手順を本発明のペプチドの存在下で用いた。
【0170】
リアルタイム定量的RT-PCR
指定の細胞からのRNAの抽出を、NZY全RNA単離キット(Nzytech,Lisboa,Portugal)を用いて行い、NZY First-Strand cDNA Synthesis Kit(Nzytech)を用いてcDNAを調製した。プライマーは、Primer Blastソフトウェア(NCBI)を用いて設計し、Thermo-Fisherから入手した。mRNA発現レベルを、SYBRグリーンマスターミックス(Applied Biosystems)を用いたqRT-PCR(QuantStudio 5 Real-Time PCR System、Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)によって評価し、β-アクチンに対して正規化した。以下のプライマーを本研究に用いた:β-アクチン(フォワード:5’-AGA AAA TCT GGC ACC ACA CC-3’(配列番号32);リバース:5’-GGG GTG TTG AAG GTC TCA AA-3’(配列番号33));VGFA(フォワード:5’-TAC TGC CAT CCA ATC GAG AC-3’(配列番号34);リバース:5’-GCA TGG TGA TGT TGG ACT-3’(配列番号35))。
【0171】
統計分析
RT-PCR実験を少なくとも2回繰り返した。VEGFアッセイについては、三連で行った3回の決定の平均±S.Dを算出した。統計的有意性は、Microsoft Windows用のSPPS統計ソフトウェア、リリース6.0(Professional Statistic,Chicago,IL,USA)にて平均の比較のためのマンホイットニー検定を用いて決定した。個々の比較は、スチューデントの対応のない両側t検定を用いて行った。有意性の基準は、全ての比較についてP<0.05とした。
【0172】
2. 結果
本研究の目的は、ARPE-19細胞株における低酸素誘導条件でのペプチドによるVEGFの調節を決定することであった。VEGFタンパク質(ELISAキットを使用)を非処理細胞において低酸素対正常酸素で算出し、活性の閾値を設定した。次いで、細胞を細胞培養培地に溶解した20μMの本発明の対応するペプチドの溶液単独(正常酸素条件)又はCoClの存在下(低酸素条件)で処理し、VEGFタンパク質量の比率を算出した。表2に報告するように、非処理細胞での比率よりも高いVEGFhyp/VEGFnorm比を示すペプチドをVEGFタンパク質の誘導剤とみなし、非処理細胞での比率よりも低いVEGFhyp/VEGFnorm比をもたらすペプチドをVEGFタンパク質の低減剤とみなした。
【0173】
【表2】
【0174】
【表3】
【0175】
結果から、本発明のペプチドがVEGFレベルを顕著に調整し得ることが示される。
【0176】
特に、本発明の第1の態様の線状ペプチドは、低酸素条件下でVEGF値を増加させた。驚くべきことに、本発明の第1の態様のペプチドがステープルを含む場合、VEGFに対するその挙動は著しく変化し、VEGFの約50%という劇的な減少を生じた。このため、本発明者らは、配列番号1の配列を含むペプチドが配列番号1の配列にリンカービラジカル「L」を含む又は含まないことでVEGF、ひいては血管新生を調整し得ることを見出した。リンカーの非存在は、VEGF発現を増強し、ひいては血管新生を「増強」するペプチドをもたらし、リンカーの存在は、VEGF発現を減少させ、ひいては血管新生を「減少」させるペプチドをもたらす。
【0177】
本発明の第2の態様のペプチドの場合、正常酸素条件下で得られるレベルに対して低酸素条件下でVEGFの発現を増加させ得ることが見出された。このため、本発明の第2の態様のペプチドは、成長因子の減少が生じた状況においてVEGFのレベルを回復させるのにも有用であり得る。
【0178】
この結果を確認するために、低酸素条件の誘導が正常酸素と比較してVEGFタンパク質発現の増加を誘導する細胞株であるヒト角膜実質細胞株及びMDA-MB-231細胞株において、配列番号16のペプチドを試験した。細胞を細胞培養培地に溶解した10μMの本発明のペプチドの溶液単独(正常酸素条件)又はCoClの存在下(低酸素条件)で処理し、VEGF量の比率を算出した。結果を表4に報告する。
【0179】
【表4】
【0180】
結果から、ARPE-19細胞で得られた結果と一致して、本発明のペプチドがVEGF比を減少させたことが示される。
【0181】
また、VEGF発現調節を正常酸素条件及び低酸素条件にて10μMの配列番号17のペプチドで24時間処理したARPE-19細胞においてRP-PCRによって決定した。結果を表5に報告する。
【0182】
【表5】
【0183】
細胞が低酸素条件にある場合、VEGF mRNAのレベルの明らかな増大が検出された。結果から、配列番号17のペプチドでの処理により、低酸素での非処理細胞と比較してmRNAレベルが顕著に低下したが、正常酸素においては僅かな低下しか検出されなかったことが示される。
【0184】
実施例2:in vivoでの血管新生の減少
1. 材料及び方法
MDA-MB-231細胞を100μlのDMEM中にて胸腺欠損マウスの乳腺脂肪体に接種した(2.5×10細胞/動物)。腫瘍が100mmの体積に達した時点で、動物を群に分け、s.c.投与によりビヒクルで週2回処理し(0.9%滅菌NaCl中の2%Tween-20、対照群)、s.c.投与により配列番号17で週2回処理した(処理群)。屠殺時に腫瘍を採取し、秤量し、ホルマリン固定した(24時間)。ホルマリン固定した腫瘍をパラフィン包埋組織ブロック用に処理し、分析のためにムルシア大学獣医学部生化学・分子生物学科A(Dept. Bioquimica y Biologia Molecular A, Facultad de Veterinaria, Universidad de Murcia)に送った。
【0185】
組織学及び免疫組織化学
ヘマトキシリン、エオシン、ジアミノベンジジン四塩酸塩及び過酸化水素は、Merck(Madrid,Spain)から入手した。マウスモノクローナル抗CD31抗体は、Novusから入手した。免疫組織化学においては、CD31が主に組織学的組織切片中の内皮細胞の存在を実証し、腫瘍における血管新生の程度を評価するために使用される。
【0186】
腫瘍をPBSで洗浄し、10%ホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋した。
【0187】
パラフィン包埋組織の連続切片に対してヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色を行った。免疫組織化学のために、パラフィン切片を脱パラフィンし、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)中で抗原賦活化に供した。組織の内因性ペルオキシダーゼを5%過酸化水素で不活性化した。スライドをブロッキングし、一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。次に、スライドをペルオキシダーゼとコンジュゲートした二次抗体と共にインキュベートし、特異的反応を0.2%ジアミノベンジジン四塩酸塩及び過酸化水素で発色させた。染色したスライドを、SCN400F Leicaスキャナーを用いてスキャンし、ImageJソフトウェアを用いて画像を分析した。
【0188】
2. 結果
CD31染色画像(図1)及び算出したCD31の相対強度(図2)から、処理した腫瘍において対照と比較して血管(血管新生)の有意な減少が示される。
【0189】
引用文献
Altschul et al., "Basic local alignment search tool", 1990, J. Mol. Biol, v. 215, pages 403-410.
Carmeliet P., "Angiogenesis in health and disease", Nature Medicine, 2003, 9, 653-660.
Copolovici D. M. et al., "Cell-Penetrating Peptides: Design, Synthesis, and Applications", 2014, ACS Nano, 2014, 8 (3), pp 1972-1994.
Higgins et al., "CLUSTAL V: improved software for multiple sequence alignment", 1992, CABIOS, 8(2), pages 189-191.
Kim Young-Woo et al., "Synthesis of all-hydrocarbon stapled a-helical peptides by ring-closing olefin metathesis", Nature Protocols, 2011, 6(6), p. 761-771.
Kolb H.C. et al., "The growing impact of click chemistry on drug discovery", 2003, Drug Discov Today, 8(24):1128-1137.
Manisha B. et al., "Angiogenesis: Future of pharmacological modulation", Indian J. Pharmacol., 2010, 42(1), pages 2-8.
Scott J. M. et al., "Application of Ring-Closing Metathesis to the Synthesis of Rigidified Amino Acids and Peptides", J. Am. Chem. Soc., 1996, v.118 (40), pp 9606-9614.
Zalipsky S., "Functionalized Poly(ethylene glycols) for Preparation of Biologically Relevant Conjugates", Bioconjugate Chemistry, 1995, 6 (2), 150-165.
【0190】
項目(Clauses)
完全を期すため、本発明の様々な態様を以下の番号付き項目に記載する。
項目1. 14~50の長さを有し、配列番号1:
(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q
(ここで、
「m」、「n」、「p」及び「q」は整数を表し、0及び1から選択され、
C末端は-C(O)Rに相当し、
N末端は-NHRに相当する)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含むペプチド又はその医薬塩であって、
該ペプチドが、任意に配列番号1のペプチド配列において位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+4」又は「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子とを連結する、式(I):
-[(R-(R)-(R- (I)
(式中、
「a」及び「b」は同じか又は異なり、0又は1であり、
「c」は1~10で構成され、
及びRは、(C~C10)アルキル;ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキル;(C~C10)アルケニル;ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;並びにハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキニルからなる群より独立して選択されるビラジカルであり、
は-O-、C(=O)、C(=O)NR13、C(=O)O、S(=O)、S(=O)、NR14、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、-NR15-NR16-、-N=N-、-S-S-、及び3個~14個の成員を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択され、
環系がハロゲン、-OH、-NO、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル及び(C~C10)アルキル-O-からなる群より独立して選択される1つ以上のラジカルによって任意に置換される、既知の環系からなる群より選択されるビラジカルであり、
は-OH及び-NR1718からなる群より選択されるラジカルであり、
は-H及び(C~C20)アルキルからなる群より選択されるラジカルであり、
、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、-H及び(C~C10)アルキルからなる群より独立して選択されるラジカルである)のリンカービラジカル「L」を含み、
リンカーによって連結されるアミノ酸が、式(II):
【化21】
(式中、
19は(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、並びに3個~14個の成員を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択される、既知の環系からなる群より選択されるモノラジカルである)のものである、ペプチド又はその医薬塩。
項目2. 項目1に規定される式(I)のリンカービラジカル「L」を任意に含む、配列番号1の配列のみからなる、項目1によるペプチド。
項目3. 配列番号1のペプチド配列において位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子との間に式(I)のリンカービラジカル「L」を含む、先の項目のいずれか1つによるペプチド。
項目4. 配列番号2:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号3:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号4:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-(Arg)p-(Lys)q、
配列番号5:(Leu)m-(Asp)n-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-(Lys)q、
配列番号6:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号7:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号8:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号9:Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg、
配列番号10:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、
配列番号11:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、及び、
配列番号12:Leu-Asp-Lys-Ala-Ser-Val-Met-Arg-Leu-Thr-Ile-Ser-Tyr-Leu-Arg-Val-Arg-Lys、
からなる群より選択され、
ここで、同じ(L-アミノ酸又はD-アミノ酸の両方)又は異なる配置を有する、太字及び下線で示したアミノ酸は、リンカービラジカル「L」の位置を指し、C末端は-C(O)Rに相当し、N末端は-NHRに相当する、先の項目のいずれか1つによるペプチド。
項目5. 「a」、「b」及び「c」が1である、先の項目のいずれか1つによるペプチド。
項目6. R及びRが(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より独立して選択されるビラジカルである、先の項目のいずれか1つによるペプチド。
項目7. Rが(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より選択されるビラジカルである、先の項目のいずれか1つによるペプチド。
項目8. R19が(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より選択されるモノラジカルである、先の項目のいずれか1つによるペプチド。
項目9. R、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」及び「n」が同じであり、「p」及び「q」が同じであるか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」及び「n」が同じであり、「p」及び「q」が異なるか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」、「n」、「p」及び「q」が同じであり、特に1であるか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「m」、「n」、「q」が同じであり、「p」が異なり、特にm=n=q=0及びp=1である、先の項目のいずれか1つによるペプチド。
項目10. C末端が-C(O)OH又は-C(O)NHに相当し、N末端が-NHに相当する、先の項目のいずれか1つによるペプチド。
項目11. 配列番号13~配列番号21の配列からなる群より選択されるペプチドに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する、先の項目のいずれか1つによるペプチド。
項目12. 標識、薬物、細胞膜透過ペプチド又はポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートしている、先の項目のいずれか1つによるペプチド。
項目13. 先の項目のいずれか1つに規定されるペプチドを含む融合タンパク質。
項目14. 治療有効量の項目1~12のいずれか1つに規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は項目13に規定される融合タンパク質を、許容可能な医薬添加剤及び/又は担体と共に含む医薬組成物。
項目15. 療法に使用される、項目1~12のいずれか1つに規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は項目13に規定される融合タンパク質、又は項目14に規定される医薬組成物。
項目16. VEGFの発現の調節異常に起因し、特にVEGFの発現の増加又は減少に起因する疾患の治療又は予防に使用される、項目1~12のいずれか1つに規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は項目13に規定される融合タンパク質、又は項目14に規定される医薬組成物。
項目17. VEGFの発現に基づく血管新生の調節異常に関連する疾患の治療又は予防に使用される、項目1~12のいずれか1つに規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は項目13に規定される融合タンパク質、又は項目14に規定される医薬組成物。
項目18. 15~50の長さを有し、配列番号22:
(Arg)r-(Ser)s-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln-(Leu)t-(Pro)v
(ここで、
「r」、「s」、「t」及び「v」は整数を表し、0及び1から選択され、
C末端は-C(O)Rに相当し、
N末端は-NHRに相当する)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する配列を含むペプチド又はその医薬塩であって、
ペプチドが任意に、配列番号21のペプチド配列において位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+4」又は「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子とを連結する式(I):
-[(R-(R)-(R- (I)
(式中、
「a」及び「b」は同じか又は異なり、0又は1であり、
「c」は1~10で構成され、
及びRは、(C~C10)アルキル;ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキル;(C~C10)アルケニル;ハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルケニル;(C~C10)アルキニル;並びにハロゲン、(C~C10)アルキル、-OR、-NR、-SR、-SOR10、-SO11及び-CO12からなる群より選択される1つ以上のラジカルによって置換された(C~C10)アルキニルからなる群より独立して選択されるビラジカルであり、
は-O-、C(=O)、C(=O)NR13、C(=O)O、S(=O)、S(=O)、NR14、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、-NR15-NR16-、-N=N-、-S-S-、及び3個~14個の成員を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択され、
環系がハロゲン、-OH、-NO、(C~C10)アルキル、(C~C10)ハロアルキル及び(C~C10)アルキル-O-からなる群より独立して選択される1つ以上のラジカルによって任意に置換される、既知の環系からなる群より選択されるビラジカルであり、
は-OH及び-NR1718からなる群より選択されるラジカルであり、
は-H及び(C~C20)アルキルからなる群より選択されるラジカルであり、
、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は-H及び(C~C10)アルキルからなる群より独立して選択されるラジカルである)のリンカービラジカル「L」を含み、
リンカーによって連結されるアミノ酸が式(II):
【化22】
(式中、
19は(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、及び3個~14個の成員を含む既知の環系であって、該系が1つ~3つの環を含み、
環のそれぞれが飽和、部分不飽和又は芳香族であり、
環が独立しているか、部分的又は完全に縮合しており、
既知の環系を形成する成員のそれぞれが-CH-、-CH-、-NH-、-N-、-SH-、-S-及び-O-からなる群より選択される、既知の環系からなる群より選択されるモノラジカルである)のものである、ペプチド又はその医薬塩。
項目19. 配列番号21の配列からなり、任意に項目18に規定される式(I)のリンカービラジカル「L」を含む、項目18によるペプチド。
項目20. 配列番号21のペプチド配列において位置「i」に位置するアミノ酸のα炭素原子と位置「i+7」に位置するアミノ酸のα炭素原子との間に式(I)のリンカービラジカル「L」を含む、先の項目18又は19によるペプチド。
項目21. 配列番号23:(Arg)r-(Ser)s-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln-(Leu)t-(Pro)v、
配列番号24:(Arg)r-(Ser)s-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln-(Leu)-(Pro)v、
配列番号25:(Arg)r-(Ser)s-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln-(Leu)t-(Pro)v、
配列番号26:Arg-Ser-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln、
配列番号27:Arg-Ser-Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln、及び、
配列番号28:Arg-Arg-Ser-Lys-Glu-Ser-Glu-Val-Phe-Tyr-Glu-Leu-Ala-His-Gln-Leu-Pro、
からなる群より選択され、
ここで、同じ(L-アミノ酸又はD-アミノ酸の両方)又は異なる配置を有する、太字及び下線で示したアミノ酸は、リンカービラジカル「L」の位置を指し、C末端は-C(O)Rに相当し、N末端は-NHRに相当する、先の項目18~20のいずれか1つによるペプチド。
項目22. 「a」、「b」及び「c」が1である、先の項目18~21のいずれか1つによるペプチド。
項目23. R及びRが(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より独立して選択されるビラジカルである、先の項目18~22のいずれか1つによるペプチド。
項目24. Rが(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より選択されるビラジカルである、先の項目18~23のいずれか1つによるペプチド。
項目25. R19が(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル及び(C~C10)アルキニルからなる群より選択されるモノラジカルである、先の項目18~24のいずれか1つによるペプチド。
項目26. R、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「r」及び「s」が同じであり、「t」及び「v」が同じであるか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「r」及び「s」が同じであり、1を表し、「t」及び「v」が同じであり、0を表すか、又は代替的には、
、R及びR19が(C~C10)アルキルであり、Rが(C~C10)アルケニルであり、「r」及び「s」が同じであり、0を表し、「t」及び「v」が同じであり、1を表す、先の項目18~25のいずれか1つによるペプチド。
項目27. C末端が-C(O)OH又は-C(O)NH、特に-C(O)NHに相当し、N末端が-NHに相当する、先の項目18~26のいずれか1つによるペプチド。
項目28. 配列番号29~配列番号31の配列からなる群より選択されるペプチドに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する、先の項目18~27のいずれか1つによるペプチド。
項目29. 標識、薬物、細胞膜透過ペプチド又はPEGにコンジュゲートしている、先の項目18~28のいずれか1つによるペプチド。
項目30. 先の項目18~29のいずれか1つに規定されるペプチドを含む融合タンパク質。
項目31. 治療有効量の項目18~29のいずれか1つに規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は項目30に規定される融合タンパク質を、許容可能な医薬添加剤及び/又は担体と共に含む医薬組成物。
項目32. 療法に使用される、項目18~29のいずれか1つに規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は項目30に規定される融合タンパク質、又は項目31に規定される医薬組成物。
項目33. VEGFの発現の調節異常に起因する疾患の治療又は予防に使用される、項目18~29のいずれか1つに規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は項目30に規定される融合タンパク質、又は項目31に規定される医薬組成物。
項目34. VEGFの発現レベルに基づく血管新生の調節異常に関連する疾患の治療又は予防に使用される、項目18~29のいずれか1つに規定されるペプチド若しくはその医薬塩、又は項目30に規定される融合タンパク質、又は項目31に規定される医薬組成物。
図1
図2
【配列表】
2024503597000001.app
【国際調査報告】