(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0747 20120101AFI20240119BHJP
【FI】
H01L31/06 455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540774
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2021086827
(87)【国際公開番号】W WO2022144209
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523246639
【氏名又は名称】レック ソーラー プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タン,ムージー
(72)【発明者】
【氏名】カルップスワミー,プリヤダルシニ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,シュー ユン
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 憲太
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA05
5F251CA15
5F251DA07
5F251GA04
(57)【要約】
シリコン基板と、シリコン基板の表面に配置された層状構造とを備え、層状構造が、非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含む第1の層であって、シリコン基板の表面に配置される第1の層と、非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含む第2の層であって、第1の層とシリコン基板の表面との間に挿入される第2の層とを含み、第1の層における結晶性材料の割合が、第2の層における結晶性材料の割合より大きい、太陽電池。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、前記シリコン基板の表面に配置された層状構造とを含む太陽電池であって、前記層状構造が、
非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含み、前記シリコン基板の前記表面に配置される第1の層と、
非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含み、前記第1の層と前記シリコン基板の前記表面の間に挿入される第2の層と、を含み、
前記第1の層における結晶性材料の前記割合は、前記第2の層における結晶性材料の前記割合より大きい、前記太陽電池。
【請求項2】
前記第1の層が前記第2の層に直接配置されている、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1の層の結晶性材料の前記割合が75%から100%の間であり、前記第2の結晶性材料の結晶性材料の割合が50%から75%の間である、請求項1または請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1及び前記第2の層の前記結晶性材料が、非晶質マトリックス内部に配置された複数の結晶領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記複数の結晶領域のそれぞれの最大の寸法が15nm未満である、請求項4に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記非晶質マトリックスが、前記結晶性材料と実質的に同じ化学組成を有する材料から形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第1の層の前記結晶性材料が、少なくとも部分的に、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つから形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第2の層の前記結晶性材料が、少なくとも部分的に、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つから形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記層状構造は、前記太陽電池の使用時に放射源に向くように構成された前記シリコン基板の前面に配置される、請求項7または請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第1及び第2の層が、15nm未満、任意選択で11nm未満の組み合わされた深さを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記層状構造が、
非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含み、前記第2の層と前記シリコン基板の前記表面との間に挿入される、第3の層、及び、
非晶質材料で形成されたパッシベーション層であって、前記第3の層と前記シリコン基板の前記表面との間に挿入される、前記パッシベーション層を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第3の層における結晶性材料の前記割合が、前記第2の層における結晶性材料の前記割合よりも少ない、請求項11に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記第3の層が5nm未満、好ましくは4nm未満、及び少なくとも1nmの深さを含み、前記パッシベーション層が3nm未満の深さを含む、請求項11または請求項12に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記層状構造の前記層のうちの少なくとも1つにおける前記結晶性材料が、前記それぞれの層の前記深さにわたって実質的に均一に分布している、請求項1から13のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記第1及び第2の層が、ドーパント原子を含むことによって決定される導電型で構成され、前記第1の層がドーパント原子の第1の濃度を有し、前記第2の層が前記第1の濃度よりも低いドーパント原子の第2の濃度を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項16】
請求項11に従属する場合、前記第3の層は、ドーパント原子を含むことによって決定される導電型で構成され、前記第3の層は、前記第2の層のドーパント原子の前記濃度よりも低いドーパント原子の濃度を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項17】
前記層状構造は、前記シリコン基板の前面に配置された前面の層状構造を画定し、前記第1及び第2の層は、それぞれ第1及び第2の前面層を画定し、前記太陽電池は、前記前面とは反対側の前記シリコン基板の裏面に配置された裏面の層状構造をさらに含み、
前記裏面の層状構造は、第1及び第2の裏面層を含み、それぞれが非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含み、前記第2の裏面層は、前記第1の裏面層と前記シリコン基板の前記裏面との間に挿入され、
前記第1の裏面層における結晶性材料の前記割合は、前記第2の裏面層における結晶性材料の前記割合より大きい、請求項1から16のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項18】
前記前面の層状構造の層の前記少なくとも1つが、導電型を有するように構成され、前記裏面の層状構造の前記層の少なくとも1つと反対の導電型である、請求項17に記載の太陽電池。
【請求項19】
前記シリコン基板が負の導電型で構成され、前記前面の層状構造の前記層の少なくとも1つが正の導電型で構成され、前記裏面の層状構造の前記層の少なくとも1つが負の導電型で構成されている、請求項17または請求項18に記載の太陽電池。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の複数の太陽電池を含み、前記複数の太陽電池が互いに電気的に結合されている、太陽電池モジュール。
【請求項21】
層状構造を含む太陽電池を製造するための方法であって、シリコン基板を設けること、前記シリコン基板の表面に層状構造を配置することを含み、前記層状構造は、非晶質マトリックスの内部に、それぞれある割合の結晶性材料を含む第1の層及び第2の層を含み、前記層状構造を配置するステップは、
前記シリコン基板の前記表面に前記第2の層を配置すること、及び
前記第1の層と前記シリコン基板の前記表面との間に前記第2の層が挿入されるように、前記第2の層に前記第1の層を配置すること、を含み、
前記第1及び前記第2の層を配置する方法は、前記第2の層の結晶性材料の前記割合よりも大きい結晶性材料の割合で前記第1の層を構成することを含む、前記方法。
【請求項22】
前記層状構造は、非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含む第3の層と、非晶質材料で形成されたパッシベーション層とを含み、前記第1及び第2の層を配置する前に、
前記シリコン基板の前記表面に前記パッシベーション層を配置すること、及び
前記パッシベーション層に前記第3の層を配置することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の層の結晶性材料の前記割合よりも少ない結晶性材料の割合で、前記第3の層を構成することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記層状構造を配置するステップが、蒸着プロセスを用いて前記シリコン基板の前記表面上に前記層状構造の前記層を順次堆積させることを含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記蒸着プロセスの少なくとも1つのパラメータを制御して、前記第1及び第2の層の結晶性材料の前記割合を決定することを含み、前記少なくとも1つのパラメータは、ガスの組成、ガスの流量、プラズマのパワーレベル、プラズマ温度、前記堆積チャンバの温度及び圧力の少なくとも1つを含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池、及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光から電気エネルギーを供給する太陽電池モジュールは、太陽電池/光電池のアレイを含み、それぞれが1つまたは複数の前面電極と裏面電極の間に配置された多重層半導体構造を備えている。
【0003】
基板は通常、エミッタ層とpn接合を形成し(すなわち、基板とエミッタ層の一方がn型材料で、もう一方がp型材料である)、太陽電池への光の入射に応答して電流の生成を容易にする。
【0004】
太陽電池はまた、基板のエミッタ層とは反対側の部分に配置された蓄積層を含むことができる。蓄積層は、基板から電荷キャリアを抽出するように配置された高度にドープされた層を形成する。蓄積層は、それが基板の前面に配置されるか裏面に配置されるかに応じて、前面表面場(FSF)または裏面表面場層(BSF)のいずれかであり得る。例えば、蓄積層が基板の裏側に配置される(すなわちBSFを画定する)場合、エミッタは基板の前側に配置されて前面接合の太陽電池を画定する。
【0005】
したがって、エミッタ層と蓄積層の一方は前面電極に電気的に接続され、エミッタ層と蓄積層の他方は裏面電極に接続される。エミッタ層と蓄積層は通常非晶質シリコン(a-Si)で形成され、一方で基板は結晶シリコン(c-Si)で形成され、ヘテロ接合技術(HJT)の太陽電池を画定する。
【0006】
このような太陽電池の効率を最大化するには、多重層構造の異なる層間の境界面に形成される可能性のある表面の欠陥の数を最小限に抑えることが重要である。これは、表面の欠陥が太陽電池の動作に悪影響を及ぼす可能性があるためである。例えば、電荷キャリアは、電極によって収集される代わりに、pn接合の近くに位置する欠陥の部位で再結合する。電荷キャリアの再結合は、太陽電池の光電変換効率を低下させる主な理由の1つである。
【0007】
表面の欠陥の悪影響を減らすことができる1つの方法は、太陽電池の内部で形成される境界面のパッシベーションによる。通常、これは、基板とエミッタ層及び蓄積層のそれぞれとの間に真性(すなわちドープされていない)半導体材料の層を形成することによって達成される。この真性層が存在することは、基板の表面における電荷キャリアの再結合を減少させ、それによって太陽電池の性能を改善する。
【0008】
真性層が存在することは有益ではあるが、太陽電池内部、例えば真性層とその上にあるエミッタ層との間にさらなる境界面を形成することにも至り、このことは、不純物が蓄積する別の場所を設け、それによって電荷キャリアの再結合を増加させる。真性層が厚すぎると、これはまた、電極への電荷キャリアの輸送を阻害することにより、太陽電池の抵抗率を増加し得る。
【0009】
さらに、真性層とドープされた半導体層との間の境界面は、導電率の急激な変化、及び/またはバンドギャップの変動をもたらし得る。結果として生じる境界面でのバンドの曲がりは、電荷キャリア再結合の別の原因である高密度の境界面状態につながる可能性がある。
【0010】
したがって、電荷キャリアの輸送特性を改善しながら、そのような太陽電池内部で電荷キャリアが再結合することの蔓延を減らす必要がある。
【発明の概要】
【0011】
第1の態様によれば、基板(例えば、シリコン基板)と、基板の表面に配置された層状構造とを含む太陽電池が提供され、層状構造は、
非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含み、基板の表面に配置される第1の層と、
非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含み、第1の層と基板の表面の間に挿入される第2の層とを含み、
第1の層における結晶性材料の割合は、第2の層における結晶性材料の割合より大きい。
【0012】
第1の層に高い濃度の結晶性材料を含めることにより、基板から離れた層状構造の抵抗率が低下する。このように、層状構造と太陽電池の電極との間の接触抵抗率を低減することができ、それによって太陽電池の曲線因子が増加する。逆に、第2の層の非晶質材料の濃度が高くなると、基板の表面に向かう光の吸収が増加し、それによって短絡電流(Isc)が増加し、そのため太陽電池の性能が向上する。
【0013】
任意選択の機能をこれより提示する。これらは、単独で、または任意の態様との任意の組み合わせで適用可能である。
【0014】
層、フィルム、領域、または基板などの要素が、要素の「上」、「隣接」、または「反対」にあると言及されるとき、それがそのさらなる要素の「直接上」、「直接隣接」「真反対」であり得るか、あるいは、1つまたは複数の介在する要素が存在する場合があることが理解されるであろう。対照的に、要素が別の要素の「直接上」、「直接隣接」、または「真反対」であると言及される場合、介在する要素は存在しない。
【0015】
第1の層は、第2の層に直接配置され得る。このようにすると、第1の層と第2の層との間の境界面で結晶性材料の濃度に明確な段階的変化があり得る。したがって、第1の層と第2の層との間に実質的に非晶質の層が配置されていなくてもよい。
【0016】
層状構造は、本明細書では第1及び第2の層を有すると定義され得るが、層状構造はまた、特定の実施形態において、2つ以上の層、例えば複数の層を含み得ることが理解される。層状構造の層は、隣接する層の間の結晶性材料の割合に明確な段階的変化を有する別個の層であり得ることが理解されるべきである。したがって、これらの別個の層の間に明確な境界が存在し得、各境界は、結晶性材料の割合の段階的変化によって画定される。
【0017】
層は、層状構造の層の少なくとも1つまたはそれぞれが、それらの深さ(複数可)にわたって測定されたときに実質的に濃度傾斜付きの構造組成を有することができるように構成され得る。このように、層の少なくとも1つまたは各層の構造組成は、基板から離れたときに結晶性材料の濃度が徐々に増加するように変化し得る。層は、第1の層の任意の深さにおける結晶化度の割合が、第2の層の任意の深さにおける結晶化度の割合より大きくなるように構成され得、これにより、層状構造の深さにわたって結晶化度の割合に相対的な変化がもたらされる。
【0018】
さらに、層状構造の層は複数の層を含むことができ、層状構造全体の結晶性材料の割合に明確な段階的変化がないように、それぞれが継続的に濃度傾斜の付けられた構造を有することを理解されたい。このように、(上述のような)明確な境界が継続的に濃度傾斜の付けられた層の間に存在しない場合があり、その代わりに、結晶性材料の割合が層状構造の厚さを通して徐々に変化し得る。さらに、いくつかの実施形態では、層状構造の1つまたは複数の層が別個の層であり得、同じ層状構造の1つまたは複数の他の層が連続的に濃度傾斜が付けられた層であり得ることも理解されたい。
【0019】
結晶性材料は、少なくとも1つの方向に長距離の整然性を示す材料として定義されることが理解されるであろう。したがって、そのような結晶性材料は、長い距離にわたって繰り返される単位セルに配置された原子から構成され、例えば、構成原子は並行する周期性を示す。
【0020】
対照的に、非晶質材料は、短距離の整然性を有することによって特徴付けられ、通常の配置を形成することができない要因のために、構成原子が無秩序でランダムな空間位置で結合している。
【0021】
単結晶性材料は、単一の連続結晶格子を有する、例えば内部粒界を持たない結晶性材料のみからなる材料として定義される。したがって、そのような単結晶性材料は、実質的に非晶質材料が存在しない結晶性材料のみからなる。多結晶性材料(別名多重結晶性材料)は、複数の微結晶または粒子から構成されている。各微結晶は、結晶構造を定める単位セルの原子の長距離に亘る整然性を示す。したがって、そのような多結晶性材料(及び多重結晶性材料)は、実質的に非晶質材料が存在しない結晶性材料のみからなる。単結晶性材料と多結晶性材料の両方が、実質的にすべての方向に長距離の整然性を示す。
【0022】
基板は、結晶シリコン(c-Si)から構成され得る。結晶シリコン基板は、連続結晶構造、例えば単結晶シリコンを含むことができる。あるいは、基板は、連続結晶構造、例えば多結晶(または多重結晶)シリコンの1つまたは複数の粒子を含むことができる。
【0023】
層状構造の第1及び第2の層に関して、これらの各層内の結晶性材料は、その結晶構造においてある程度の短距離及び/または中距離の整然性を示すが、少なくとも1つの方向での長距離の整然性を欠く準結晶構造を有するものとして定義されることが理解されるであろう。したがって、層状構造の第1及び第2の層のそれぞれは、少なくとも部分的に、結晶性材料が配置または埋め込まれた非晶質材料を含む。これは、結晶性材料のみからなる単結晶または多結晶性材料とは対照的である。
【0024】
第1及び第2の層のそれぞれの内部の材料は、非晶質マトリックス内に配置されるまたは埋め込まれた1つまたは複数の結晶領域を含むように構成することができる。例えば、結晶性材料は、非晶質材料のマトリックス内に配置された1つまたは複数の別個の結晶性粒子であるか、またはそれを含み得る。結晶領域の各々は、その結晶構造において、ある程度の長距離の整然性を示し得る。上記を考慮して、第1及び第2の層のそれぞれ(下に説明する第3の層と共に)は、それらが単結晶及び/または多結晶(別名多重結晶)材料で形成されないように構成され得ることが理解されよう。
【0025】
第1及び第2の層のそれぞれは、幅、長さ、及び深さで構成され得る。そのような各層は、その幅と長さが両方とも、その深さよりも実質的に大きくなるように、構成され得る。層の幅及び長さは、基板の表面の平面に整列した垂直方向で測定することができ、深さは、基板の表面の平面に垂直な方向で測定することができる。結晶性材料(例えば、複数の結晶領域)は、層の深さにわたって均一に分散することができる。
【0026】
結晶領域または粒子は、それらが実質的にすべてナノメートルのオーダーのサイズを有するように構成され得る(すなわち、結晶領域の実質的にすべてが、1000ナノメートル未満の寸法と測定される少なくとも1つの寸法を有する)。したがって、第1、第2、及び第3の層の少なくとも1つまたはそれぞれが、ナノ結晶性材料から形成され得る。例示的な実施形態では、実質的にすべての結晶領域または粒子は、少なくとも1つの寸法が約15nm未満、あるいは約10nm未満であるように構成され得る。
【0027】
例示的な構成によれば、実質的にすべての結晶領域または粒子は、少なくとも1つの寸法が約5nm未満であり得るように構成され得る。さらなる例示的な配置によれば、複数の結晶領域または粒子の実質的にすべてを、最大寸法が5nm未満になるように構成することができる。さらなる例示的な構成によれば、実質的にすべての結晶領域または粒子は、実質的にすべての寸法が約5nm未満と測定されるように構成され得る。
【0028】
上述のように、第1の層は、第2の層よりも高い割合または濃度の結晶性材料で構成される。各層内の結晶性材料の濃度は、それぞれの層の質量または体積分率として定義できることを理解されたい。
【0029】
例示的な実施形態によれば、第1の層における結晶性材料の割合は、75%から100%の間、あるいは70%から100%の間であってもよい。一実施形態では、第1の層の結晶性材料の割合は、一定の値であり得る。別の実施形態では、第1の層の結晶性材料の割合は変化し得、結晶化度の割合は基板から離れる方向に増加する。
【0030】
第2の層における結晶性材料の割合は、50%から75%の間、あるいは50%から70%の間であってもよい。一実施形態では、第2の層の結晶性材料の割合は、一定の値であり得る。別の実施形態では、第2の層の結晶性材料の割合は変化し得、結晶化度の割合は基板から離れる方向に増加する。
【0031】
例示的な実施形態では、第1の層は、75%から100%の間で変化する結晶性材料の割合を有することができ、第2の層は、50%から75%の間で変化する結晶性材料の割合を有することができ、結晶化度の割合は、基板から遠ざかる方向に、第1及び第2の層両方において増加する。この構成によれば、層状構造の結晶化度がその深さにわたって継続的に濃度傾斜付けされるように、第1及び第2の層の結晶化度の割合は層の間の境界面にわたって濃度傾斜付けされる。
【0032】
層状構造は、非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含む第3の層を含むことができる。第3の層は、第2の層と基板の表面との間に挿入され得る。層状構造は、第3の層と基板の表面との間に挿入され得るパッシベーション層をさらに含んでもよい。このように、第3の層は、第2の層とパッシベーション層との間に直接挿入することができる。
【0033】
パッシベーション層は、層状構造が配置される基板表面を不動態化するように構成され得る非晶質材料から形成され得る。例示的な実施形態によれば、パッシベーション層は、非晶質材料のみから形成され得る。
【0034】
層状構造の第3の層は、第1の層及び第2の層と同様に構成することができる。したがって、第3の層内部の結晶性材料は、その結晶構造においてある程度の短距離及び/または中距離の整然性を示すが、少なくとも1つの方向において長距離の整然性を欠く準結晶構造を有すると定め得る。第3の層は、単結晶性材料または多結晶性材料のいずれも構成しないように、結晶性材料が配置または埋め込まれた非晶質材料を少なくとも部分的に含むことができる。さらに、第3の層内部の材料は、前の数段落で説明したように、非晶質マトリックス内部に配置または埋め込まれた1つまたは複数の結晶領域を含むように構成することができる。
【0035】
第3の層における結晶性材料の割合は、第2の層における結晶性材料の割合よりも少ないか、または実質的に同じであり得る。より少ない割合の結晶性材料で第3の層を構成することにより、層に存在する非晶質材料の相対的な割合が増加する。このことは、基板表面のパッシベーションを維持しながら、パッシベーション層の厚さを減らすことができることを意味する。パッシベーション層の厚さを減少させると、層状構造の抵抗率をさらに減少させることができ、それによって太陽電池の曲線因子を増加させることができる。第3の層により多くの非晶質材料が存在すると、基板近くの光子の吸収がまた増加し、それによって太陽電池の性能が向上する。第3の層に、第2の層より低い割合の結晶性材料を設けることによって、結晶化度が徐々に変化し(例えば、層状構造を通じて)、隣接する層の間の抵抗率の差が減少する。そうでなければ、抵抗率の差は電荷キャリアの流れ(例えば、基板から太陽電池の電極まで)を制限し得る。
【0036】
例示的な構成によれば、第1及び第2の層のうちの少なくとも1つは、それらの深さ(複数可)にわたって組成上の勾配を有するように構成され得る。第3の層は、パッシベーション層との境界面での実質的に非晶質から、第2の層との境界面での少なくとも部分的に結晶質まで、その深さにわたって組成的に濃度傾斜が付けられていてもよい。第2の層は、第3の層との境界面におけるより低い結晶化度から、第1の層との境界面におけるより高い結晶化度まで、その深さにわたって組成的に濃度傾斜付けされ得る。第1の層は、第2の層との境界面におけるより低い結晶化度から、電極との境界面におけるより高い結晶化度まで、その深さにわたって組成的に濃度傾斜付けされ得る。
【0037】
例示的な構成によれば、太陽電池は、基板との境界面を形成する表面とは反対側の層状構造の表面に配置された電極を含み得る(例えば、その結果層状構造が基板と電極との間に挿入され得る)。透明導電性酸化物(TCO)は、第1の層と直接接触して配置されるように、電極と層状構造との間に挿入することができる。透明導電性酸化物及び電極はそれぞれ、層状構造、特に第1の層から電荷キャリアを抽出するように構成され得る。この状況では、より高い濃度の結晶性材料で第1の層を構成することにより、透明導電性酸化物層とのより良い電気的(例えば、オーミック)接触を創出し、層状構造からの電荷キャリアの抽出を増加させ、それによって、太陽電池の曲線因子を増大させる。
【0038】
層状構造の各層は、所定の化学組成を有する材料から形成され得る。層のそれぞれは、基板に堆積(または例えば拡散または注入)されてもよい。非晶質マトリックス材料は、結晶性材料の領域(複数可)と同じ材料、例えば同じ化学組成を有する材料から形成されてもよい。あるいは、結晶性材料の領域(複数可)は、非晶質マトリックス材料とは異なる材料で形成されてもよい。
【0039】
第1の層は、シリコン、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つを含む第1の材料から形成され得る。第2の層は、シリコン、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つを含む第2の材料から形成され得る。第3の層は、シリコン、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つを含む第3の材料から形成され得る。上記の層のそれぞれにおいて、シリコン、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)は、非晶質及び結晶形態で存在し得る。
【0040】
亜酸化ケイ素は、陽性元素(すなわちケイ素)が通常の酸化物(例えばSiO2)に対して過剰である酸化ケイ素のクラスを定めることが理解されるであろう。亜酸化ケイ素は、下にある非晶質シリコンへのいずれかの損傷を防ぐ比較的低温(例えば、300℃未満)での蒸着プロセスによって堆積することができる。
【0041】
亜酸化ケイ素及び/または炭化ケイ素を使用すると、純粋なシリコンで形成された同等の層と比較して、層の導電性及び透明性が向上する。
【0042】
パッシベーション層は、非晶質シリコン(a-Si)で形成することができる。あるいは、パッシベーションは、非晶質亜酸化ケイ素(SiOx)及び非晶質炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つで形成されてもよい。
【0043】
例示的な構成によれば、層状構造は、使用時に放射源(例えば、太陽)からの光が入射する基板の表面(例えば、太陽電池使用時に放射源に向くように構成された基板の前面)に配置され得る。この場合、第1の層、第2の層、第3の層及びパッシベーション層のそれぞれは、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つから形成されてもよい。基板の裏面は、基板の前面の反対側にあると理解され、使用中、入射光は、前面に当たった後に裏面に当たることに留意されたい。
【0044】
亜酸化ケイ素及び/または炭化ケイ素を含めることは、シリコンで形成された同等の構造と比較して、層状構造の透明度を高めるのに役立つ。吸収の違いは、これらの材料の異なるバンドギャップに起因し得る。さらに、第1の層の光の吸収を減少させることによって、SiOx/SiCはまた、短絡電流(Isc)を増加させ、したがって太陽電池の性能を増加させる。この効果は、少なくとも部分的には、基板前面の層状構造を通過することができ、それによって吸収されることなく通過できる光子の数が増加したことに起因する。これらの吸収されていない光子は、基板に到達する可能性がより高く、それにおいてこれらは太陽電池によって生成される光生成電荷キャリアの数に寄与することができる。
【0045】
例示的な配置によれば、それにおいて層状構造が、光が直接入射しない基板の表面(例えば、基板の裏面)に配置される。この場合、第1の層に亜酸化ケイ素及び/または炭化ケイ素を含めることは、非晶質シリコンで形成された同等の層と比較して、層の導電性を高めるので、特に有利であり得る。
【0046】
第1及び第2の層の亜酸化ケイ素及び/または炭化ケイ素材料は、層状構造と太陽電池の対応する電極との間の電荷キャリア輸送特性を向上させる。特に、亜酸化ケイ素及び/または炭化ケイ素は、第1の層と電極との間の電荷キャリアのトンネリングを増加させるために、それらの間の境界面でバンド曲がりを引き起こす。
【0047】
第3の層は、シリコン(Si)で形成することができる。シリコンは、非晶質及び結晶の形態の両方で存在し得る。パッシベーション層は、非晶質シリコンで形成することができる。第3の層のシリコンは、亜酸化ケイ素及び/または炭化ケイ素と比較して、基板のパッシベーションを増加させる。シリコンはまた、基板に近い光子の吸収を有利に増加させることができ、それは、太陽電池によって生成される光生成電荷キャリアの数を増加させる。
【0048】
上記から、基板と層状構造の両方が1つまたは複数の半導体材料から形成され得ることが理解されるであろう。半導体材料のそれぞれは、ドーパント原子を含むことによって決定される導電型で構成することができる。このようにして、ドープされたバルク材料の内部の過剰な電荷キャリアを増加させるために、それぞれの半導体材料のそれぞれを、決定された電荷を有する原子でドープすることができる。
【0049】
したがって、層状構造の層のうちの少なくとも1つは、ドーパント原子を含むことによって決定される導電型で構成することができる。第1の層は、ドーパント原子の第1の濃度で構成することができる。第2の層は、第1の層のドーパント原子の第1の濃度よりも低いドーパント原子の第2の濃度で構成することができる。第3の層は、第2の層におけるドーパント原子の第2の濃度よりも低いドーパント原子の第3の濃度で構成することができる。
【0050】
層状構造は、その深さにわたって測定したときにドーパント濃度の2つ以上の段階的変化を含むように構成することができる。第1のドーパント濃度の段階的変化は、第3の層と第2の層との間で発生し、一方で第2のドーパント濃度の段階的変化は、第2の層と第3の層との間の境界面で実現される。第3の層の比較的低いドーパント濃度は、基板の表面のパッシベーションを高めるのに役立つが、ドーパント濃度の連続的かつ漸進的な変化により、層状構造全体の抵抗率が徐々に減少し、それによって太陽電池の曲線因子が増加する。
【0051】
第1の層が太陽電池の電極に電気的に接続され得る例示的な構成では、(第2及び第3の層と比較して)第1の層のより高いドーパント濃度は、第1の層の内部及び/またはそれを通る電荷キャリア輸送の増加につながる。これにより、層状構造と電極との間の電気的接続が改善される。
【0052】
実施形態では、層状構造は、層状構造がその深さにわたって測定した場合に実質的に濃度傾斜付きの構造組成で構成されるように構成された複数の層を含むことができる。この場合、層状構造のドーパント濃度は、基板から遠ざかるにつれて徐々に増加し得る。
【0053】
ドーパント原子のイオン化状態が、ドープされた半導体材料の導電型を決定し得ることが理解されるであろう。例えば、半導体材料は、それぞれ正の導電型(p型)または負の導電型(n型)を示すように、正または負にドープされてもよい。決定された導電型(例えば、p型またはn型)を有する任意の層は、その層に向かって光生成電荷キャリア(例えば、電子及び正孔)を駆動する静電駆動力を生成するように構成され得る。例えば、p型材料は電子を引き付けて正孔を反発させ、n型材料は正孔を引き付けて電子を反発させる。場合によっては、半導体材料は(例えば、真性パッシベーション層などで)ドープされていなくてもよい。
【0054】
基板は、第1の導電型(例えば、n型)で構成することができ、層状構造は、第1の導電型と反対の第2の導電型(例えば、p型)で構成することができ、したがって基板と一緒にpn接合を形成する。そのような構成によれば、層状構造は、太陽電池のエミッタを画定することができる。
【0055】
pn接合でp型材料とn型材料の間に形成される境界面により、過剰な電子と正孔がそれぞれn型材料とp型材料に拡散する。電荷キャリアのこの相対的な移動により、pn接合に空乏領域(例えば、空間電荷領域)が形成される。熱平衡状態に達すると、空乏領域全体に、組み込みの電位差が形成される。
【0056】
太陽電池の動作中、基板に入射する光によって生成された複数の電子-正孔対は、pn接合に起因する組み込みの電位差によって生成された電界によって、電子と正孔に分離される。その後、分離した電子はn型半導体に移動(例えばトンネル)し、分離した正孔はp型半導体に移動する。したがって、基板がn型でエミッタがp型の場合、分離された正孔と電子はそれぞれエミッタと基板に移動する。したがって、電子は基板での多数キャリアとなり、正孔はエミッタでの多数キャリアとなる。
【0057】
例示的な構成によれば、基板は、p型単結晶シリコンウェーハと比較してより長い寿命の特性を示すn型単結晶シリコンウェーハから形成することができる。層状構造の層の少なくとも1つは、p型となるように少なくとも部分的にドープされた非単結晶性材料(例えば非晶質またはナノ結晶)を含むことができる。このような構成は、ヘテロ接合技術(HJT)タイプの太陽電池の形成に寄与し得、これは、2つの異なる材料を組み合わせてpn接合で電荷分離フィールドを作成するため、そのように定義されている。パッシベーション層は、エミッタと基板との間に真性層を形成するように、導電型を有さないように構成することができる。
【0058】
半導体材料がn型の場合、リン(P)、砒素(As)、及びアンチモン(Sb)などのV族元素の不純物を含む構成としてもよい。半導体材料がp型の場合、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)などのIII族元素の不純物を含んでいてもよい。
【0059】
あるいは、エミッタがn型で、基板がp型であり、それらの間にpn接合を形成する。この場合、太陽電池アセンブリの動作中に、分離された正孔と電子は、それぞれ基板とエミッタに移動する。
【0060】
別の例示的な構成によれば、層状構造は、基板と同じ第1の導電型(例えばn型)で構成することができる。したがって、層状構造は、基板から電荷キャリアを選択的にスクリーニングまたは抽出するように構成された、太陽電池のアキュムレータを画定することができる。実施形態では、基板はn型単結晶シリコンウェーハから形成され得、層状構造の各層は、n型になるように少なくとも部分的にドープされた非単結晶性材料を含み得る。パッシベーション層は、アキュムレータと基板との間に真性層を形成するように、導電型を有さないように構成することができる。
【0061】
決定された導電型で構成されるだけでなく、層状構造の層の少なくとも1つまたはそれぞれは、異なるドーパント濃度で構成されてもよい。第1の層は、第2及び/または第3の層よりも大きいドーパント原子の第1の濃度で構成することができる。第2の層は、第1の層よりも低く、第3の層よりも高いドーパント原子の第2の濃度で構成することができる。第3の層は、第1及び/または第2の濃度よりも低いドーパント原子の第3の濃度で構成することができる。このように、層状構造について、第1の層は高濃度ドープ層(p++、n++)を定義し、第2の層は中間ドープ層(p+、n+)を定義し、第3の層は低濃度ドープ層(p、n)を定義する。
【0062】
上述のように、ドープ層の各々は、光生成された電荷キャリア(例えば、電子及び正孔)をそれぞれの層に向かって駆動する静電駆動力を生成するように構成され得る。高濃度にドープされた層のドーピング濃度が増加すると、より強い静電気力が発生し、基板から離れるように移動する電荷輸送が増加する。例えば、高濃度ドープのp型材料(すなわち、p++)で形成された第1の層は、中間及び低濃度ドープのp型材料(すなわち、p+及びp)それぞれで形成されている第2及び第3の層と比較して、太陽電池内部の光生成された電荷キャリアに、より大きな引力を加えるように構成され得る。
【0063】
第1、第2、及び第3の層の少なくとも1つまたはそれぞれのドーパント濃度は、最大10%、任意選択に最大5%、任意選択に最大2%、及び任意選択に最大1%であり得る。
【0064】
実施形態では、第1及び第2の層は、合わせた深さが9nm未満になるよう構成されてもよい。第1の層と第2の層を合わせた深さは、少なくとも1nmであり得る。第1の層の深さは2nmであり得る。第2の層の深さは7nmであり得る。第3の層は、5nm未満の深さで構成され得る。第3の層の深さは、4nm未満であり得る。第3の層の深さは、少なくとも1nmであり得る。第3の層の深さは2nmであり得る。
【0065】
例示的な実施形態によれば、層状構造は、第1、第2、及び第3の層を含み、その各々は非晶質マトリックス内部に配列された結晶性材料の割合が次第に低くなる。層状構造は、第3の層と基板との間に1つまたは複数の追加の層、例えば第4、第5及び/または第6の層に挿入され、それぞれの結晶性材料の割合が徐々に低くなるか、または実質的に等しくなるように構成され得ることが理解されよう。さらに、追加の層のそれぞれは、ドーパント濃度が次第に低くなるか、または等しくなるように構成することができる。
【0066】
基板の表面は、太陽電池の使用時に放射源からの光が最初に入射する表面を定めることができる(すなわち、光は基板の反対側の表面に当たる前にこの表面に当たる)。したがって、表面は、基板の前面(すなわち、最前面)を画定することができる。別の構成によれば、表面は、太陽電池の使用時に放射源からの入射光に直接さらされないように構成することができる(すなわち、光が基板の反対側の表面に当たった後にこの表面に当たる)。したがって、表面は、基板の裏面(すなわち、最も後方)の表面を画定することができる。太陽電池は、前面が入射光にさらされ、裏面が反射光にさらされるように構成されてもよい。
【0067】
例示的な構成によれば、層状構造は、基板の前面に配置された前面の層状構造を定めることができ、第1及び第2の層がそれぞれ第1及び第2の前面層を画定するようにする。太陽電池は、前面とは反対側の基板の裏面に配置された裏面の層状構造をさらに含んでもよい。
【0068】
裏面の層状構造は、第1及び第2の裏面層を含むことができ、それぞれが非晶質マトリックスの内部に配置されたある割合の結晶性材料を含む。第2の裏面層は、第1の裏面層と基板の裏面との間に挿入され得る。第1の裏面層における結晶性材料の割合は、第2の裏面層における結晶性材料の割合より大きくてもよい。
【0069】
裏側の層状構造は、前の段落のいずれかで定義したように、前面の層状構造と同じ方法で構成することができる。例えば、裏面の層状構造の各層は、所定の化学組成を有する材料から形成され得る。第1及び/または第2の裏面層のそれぞれは、基板に堆積(または例えば拡散または注入)され得る。第1及び/または第2の裏面層は、少なくとも部分的に、または実質的に、亜酸化ケイ素及び炭化ケイ素のうちの少なくとも1つから形成され得る。
【0070】
裏面の層状構造は、第3の裏面層及びパッシベーション層を含んでもよい。第3の裏面層は、基板の裏面と第1及び第2の裏面層との間に挿入され得る。パッシベーションは、第3の裏面層と基板の裏面との間に挿入され得る。
【0071】
バックパッシベーション層は、基板の裏面をパッシベーションするように構成され得る非晶質シリコン(a-Si)から形成され得る。第3の層は、少なくとも部分的に、または実質的に、非晶質マトリックスの内部に配置された結晶性材料の濃縮物から形成され得る。第3の裏面層における結晶性材料の割合は、第2及び/または第1の層(複数可)における結晶性材料の割合より小さくてもよい。第3の裏面層は、シリコンで形成されてもよい。
【0072】
例示的な実施形態によれば、前面の層状構造の各層は、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つから形成され得る。これらの層はそれぞれ、同じ非晶質マトリックスに配置される亜酸化ケイ素(SiOx)及び/または炭化ケイ素(SiC)の結晶領域を各々含み、前面のパッシベーション層は、非晶質亜酸化ケイ素(SiOx)及び/または炭化ケイ素(SiC)で形成される。
【0073】
裏面の層状構造に目を向けると、第1及び第2の裏面層は、亜酸化ケイ素(SiOx)及び/または炭化ケイ素(SiC)の非晶質マトリックスに配置された結晶領域から形成され得、第3の裏面層及びパッシベーション層はそれぞれシリコンで形成することができる第3の裏面層は、シリコンの非晶質マトリックスに配置されたシリコンの結晶領域を含むことができ、裏面のパッシベーション層は実質的に非晶質シリコンから構成することができる。
【0074】
前面の層状構造の各層は、正または負の導電型(p型またはn型)で構成することができる。裏面の層状構造の各層は、正及び負の導電型(n型またはp型)の他方で構成されていてもよい。例示的な配置によれば、前面の層状構造の層は、負の導電型(n型)で構成することができる。裏面の層状構造の層は、正の導電型(p型)で構成されていてもよい。基板は、負の導電型(n型)で構成されてもよい。
【0075】
第1の裏面層は、第2及び/または第3の裏面層よりも大きいドーパント原子の濃度で構成することができる。第2の裏面層は、第1の裏面層のドーパント濃度よりも低く、第3の裏面層のドーパント濃度よりも高いドーパント原子の濃度で構成することができる。
【0076】
第3の裏面層は、第1及び/または第2の裏面層のそれぞれのドーパント濃度よりも低いドーパント原子の濃度で構成することができる。このようにすると、裏面の層状構造について、第1の裏面層は高濃度ドープ層を定義し、第2の裏面層は中間ドープ層を定義し、第3の裏面層は低濃度ドープ層を定義する。
【0077】
実施形態では、基板の前面(複数可)をテクスチャ加工して、でこぼこの表面に対応するか、またはでこぼこした特性を有するテクスチャ表面を形成することができる。この場合、基板の表面がテクスチャ化されているため、基板に入射する光の量が増加し、太陽電池の効率が向上し得る。
【0078】
層状構造は、第1の層の反対側に配置された反射防止層またはコーティングをさらに含んでもよい。反射防止層は、反射防止層と基板との間に少なくとも第1の層が挿入されるように配置され得る。反射防止層は、単一層状構造であっても多重層状構造であってもよい。反射防止層は、反射防止表面を設けるためにテクスチャ加工されたインジウムスズ酸化物(ITO)または遷移金属酸化物(TMO)などの透明導電性酸化物(TCO)から形成され得る。反射防止層は、太陽電池に入射する光の反射率を有利にも減少させ、所定の波長帯域の選択性を増加させ、それによって太陽電池の効率を増加させる。
【0079】
反射防止層は、透明導電性酸化物コーティングと基板との間に少なくとも第1の層が挿入されるように配置することができる。透明導電性酸化物コーティングは、第1の層に電気的に接続することができる。透明導電性酸化物コーティングは、層状構造のそれぞれの表面に配置された電極への横方向のキャリア輸送を増加させるように構成され得る。
【0080】
上述のように、太陽電池は、層状構造の反対側に配置され、太陽電池から光生成電荷キャリアを抽出するように構成された電極を含んでもよい。電極は、層状構造が電極と基板との間に挿入するように配置されてもよい。
【0081】
層状構造が基板の裏面(例えば最も裏側の面)に配置される場合、電極は層状構造の裏面に配置されて、太陽電池の裏面電極を画定することができる。
【0082】
層状構造が基板の前面(例えば最も前側の面)に配置される場合、電極は層状構造の前面に配置されて、太陽電池の前面電極を画定することができる。
【0083】
太陽電池が、基板の前面及び裏面にそれぞれ配置された前面の層状構造及び裏面の層状構造を含む場合、太陽電池は、前面の層状構造の前面に配置された前面電極、及び裏面の層状構造の裏面に配置された裏面電極を含むことができる。各電極は、前面及び裏面の層状構造のそれぞれの表面とオーム接触を形成するように構成され得る。
【0084】
前面及び裏面電極はそれぞれ、層状構造のそれぞれの表面に配置された複数のフィンガー電極を含むことができる。各フィンガー電極は、その幅よりも実質的に長い軸方向の長さで構成することができる。フィンガー電極の幅と軸方向の長さの両方を、層状構造のそれぞれの表面の平面で垂直方向に測定することができる。フィンガー電極は、層状構造の幅方向と平行である横方向に、延在することができる。
【0085】
複数の前面及び/または裏面フィンガー電極のそれぞれの内部のフィンガー電極は、フィンガー電極間に横方向に延びるスペースを画定するために、それぞれの表面にわたって離間され得る。フィンガー電極は、層状構造の長さ方向と実質的に平行である縦方向に間隔を空けて配置することができる。各複数のフィンガー電極は、互いに実質的に平行であってもよい。したがって、複数の裏面フィンガー電極は、平行で縦方向に離間した(例えば等間隔の)フィンガー電極のアレイを形成することができる。
【0086】
本明細書で使用される「導電性」及び「絶縁性」という用語は、それぞれ電気の伝導性及び電気の絶縁性を意味することを明確に意図していることを理解されたい。これらの用語の意味は、光起電力太陽電池デバイスの状況である、本開示の技術的状況という観点で、特に明白になる。「オーム接触」という用語が、非整流電気接合(すなわち、実質的に線形の電流-電圧(I-V)特性を示す2つの導体間の接合)を意味することが意図されていることも、理解されるであろう。
【0087】
例示的な構成によれば、太陽電池は、基板、基板の前面に配置された前面の層状構造、及び基板の裏面に配置された裏面の層状構造を含むことができる。前面の層状構造は、太陽電池の動作中に基板から電荷キャリアを抽出するように構成されている太陽電池の前面表面場(FSF)またはアキュムレータを画定することができる。アキュムレータは、前面電極に電気的に接続され、アキュムレータが前面電極と基板との間に配置されるように配置され得る。裏面の層状構造は、pn接合を形成するために基板の反対側に配置されるエミッタを画定することができる。
【0088】
代替的な例示的な構成によれば、太陽電池は、基板、基板の前面に配置された前面の層状構造、及び基板の裏面に配置された裏面の層状構造を含むことができる。前面の層状構造は太陽電池のエミッタを画定することができ、これはpn接合を形成するために基板の反対側に配置される。エミッタは、前面電極に電気的に接続され、エミッタが前面電極と基板との間に配置されるように配置され得る。裏面の層状構造は、基板の裏面に向かって、すなわち基板層と裏面電極との間に配置される裏面表面場を画定することができる。したがって、裏面表面場は、太陽電池の動作中に基板から電荷キャリアを抽出し、それらを裏面電極に転送するように構成することができる。
【0089】
第2の態様によれば、第1の態様による複数の太陽電池を含む太陽電池モジュールが提供される。複数の太陽電池は、互いに電気的に結合され得る。
【0090】
第3の態様によれば、第1の態様による太陽電池を製造するための方法が提供され、方法は、基板(例えば、シリコン基板)を設けること、及び基板の表面に層状構造を配置することを含み、層状構造を(例えば、シリコン基板に)配置するステップは、基板の表面に第1の層を配置すること、及び 第1の層を配置する前に、第1の層と基板の表面との間に第2の層を配置し、それがそれらの間に挿入されるようにし、第1の層と第2の層が非晶質マトリックスの内部に配置されるある割合の結晶性材料を各々含むことを含み、方法は、第2の層の結晶性材料の割合よりも大きい結晶性材料の割合で第1の層を構成することを含む。
【0091】
この方法は、第1及び第2の層を配置する前に、パッシベーション層及び第3の層を基板の表面に配置することを含んでもよい。第3の層は、非晶質マトリックス内部に配置されたある割合の結晶性材料を含むことができ、パッシベーション層は、非晶質材料から形成することができる。
【0092】
この方法は、第3の層を配置する前に、パッシベーション層を第3の層と基板の表面との間に挿入するように配置することを含むことができる。
【0093】
この方法は、第2の層の結晶性材料の割合よりも少ない結晶性材料の割合で、第3の層を構成することをさらに含んでもよい。
【0094】
層状構造を配置するステップは、蒸着プロセスを使用して基板の表面上に層を順次堆積させることを含むことができる。蒸着プロセスは、プラズマ増強化学蒸着プロセス(PECVD)であってもよい。有利なことに、層状構造の各層は、単一の連続プロセスの一部として同じ堆積方法を使用して堆積することができる。
【0095】
この方法は、蒸着プロセスの少なくとも1つのパラメータを制御して、層状構造の層のうちの少なくとも1つの層の構造、化学及びドーパント組成を決定することを含むことができる。蒸着プロセスパラメータは、ガスの組成及び/またはガスの流量を含むことができる。蒸着プロセスパラメータは、堆積チャンバの温度を定義することができる。ガスの組成は、二酸化炭素(CO2)、シリコン含有ガス(例えばシランSiH4)、及び水素(H2)のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0096】
この方法は、層のそれぞれにおける結晶性材料及び/または非晶質材料の濃度を決定するように、層状構造の層の構造組成を構成することを含むことができる。この方法は、層の少なくとも1つの内部の結晶領域のサイズを決定するように構造組成を構成することを含むことができる。この方法は、CO2ガスの流量、シリコン含有ガス(例えばSiH4)の流量、H2ガスの流量、プラズマのパワーレベル、プラズマ温度、及び堆積チャンバの温度及び/または圧力のうちの少なくとも1つを制御することを、層状構造の層の結晶性材料の濃度を決定するため含むことができる。
【0097】
この方法は、蒸着プロセスの少なくとも1つのパラメータを制御して、層状構造の層のうちの少なくとも1つの化学組成を決定することを含むことができる。この方法は、シリコン、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つを含む第1の材料で第1の層の化学組成を構成することを含み得る。この方法は、シリコン、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つを含む第2の材料で第2の層の化学組成を構成することを含み得る。この方法は、シリコン、亜酸化ケイ素(SiOx)及び炭化ケイ素(SiC)のうちの少なくとも1つを含む第3の材料で第3の層の化学組成を構成することを含み得る。上述の堆積パラメータ(例えば、CO2ガスの流量、シリコン含有のガス流量、H2ガスの流量、プラズマのパワーレベル、プラズマ温度、及び/または堆積チャンバの温度圧力)はまた、層状構造の各層の化学組成を決定するために制御され得ることが理解されるであろう。
【0098】
この方法は、層状構造の層の少なくとも1つが堆積される表面を前処理することを含むことができる。表面の前処理の方法は、水素ガス(H2)で表面をエッチングすることを含むことができ、これは、例えば、露出した表面から酸化シリコンをエッチング除去するために使用することができる。この方法は、表面を二酸化炭素(CO2)で処理することをさらに含んでもよい。
【0099】
この方法は、次の連続層を堆積する前に、層状構造の層の少なくとも1つをポストアニールすることをさらに含むことができる。ポストアニールステップは、層を堆積するために使用される同じ堆積チャンバの内部に層状構造が配置されている場合に実施することができる。
【0100】
この方法は、蒸着プロセスの少なくとも1つのパラメータを制御して、真性層、第3の層、第2の層、及び第1の層のうちの少なくとも1つの導電型を決定することを含むことができる。この方法は、層の導電型をp型またはn型に構成することを含むことができる。この方法は、実質的にドープされない(すなわち、真性)ように層の少なくとも1つを構成することを含むことができる。層のドーピングは、堆積チャンバへのドーパントガスの流量を制御することによって達成することができる。ドーパントガスは、p型ドーピング用のジボラン(B2H6)またはトリメチルボロン(B(CH3)3)などのホウ素含有ガスと、n型ドーピング用のホスフィン(PH3)などのリン含有ガスとを含むことができる。ドーパントガスの流量は、堆積チャンバに向けられるシリコンベースのガスの流量に対して制御することができる。
【0101】
この方法は、蒸着プロセスの少なくとも1つのパラメータを制御して、層状構造の層のうちの少なくとも1つのドーパント濃度を決定することを含むことができる。この方法は、第1の層を第1のドーパント濃度でドーピングし、第2の層を第2のドーパント濃度でドーピングし、第3の層を第3のドーパント濃度でドーピングすることを含んでもよい。第1、第2、及び第3のドーパント濃度を決定する方法は、上述のように、堆積チャンバへのドーパントガスの流量を制御することを含むことができる。
【0102】
この方法は、層状構造の第1の層に電極を配置することをさらに含んでもよい。層状構造は、裏面(例えば最も後ろの面)及び裏面の反対側にある前面(例えば最も前方面)を含むことができる。したがって、層状構造が基板の裏面に配置される場合、この方法は、層状構造の裏面に電極を配置して裏面電極を画定することを含むことができる。層状構造が基板の前面に配置される場合、この方法は、層状構造の前面に電極を配置して前面電極を画定することを含むことができる。
【0103】
電極は、複数のフィンガー電極を含むことができるので、方法は、複数のフィンガー電極を第1の層上に堆積させることを含むことができる。この方法は、層状構造の前面または裏面に電気伝導性材料を堆積させることを含むことができる。
【0104】
電気伝導性材料は、蒸着、めっき、印刷などを含む様々な方法によって堆積され得る。例えば、電気伝導性材料は、印刷された材料を含み得る。電気伝導性材料を堆積させる方法は、印刷可能な材料の印刷可能な前駆体を層状構造の表面上に印刷することを含むことができる。この方法は、焼成プロセスに従って印刷可能な前駆体を硬化させてフィンガー電極を形成することをさらに含んでもよい。
【0105】
この方法は、第1の層と電極との間に、少なくとも反射防止層、またはコーティング、及び/または透明導電性酸化物層、またはコーティングを配置することを含むことができる。この方法は、電極を堆積する前に、層状表面の第1の層上に反射防止及び/または透明導電性酸化物コーティングを堆積することを含んでもよい。反射防止及び/または透明導電性酸化物を堆積する方法は、コーティングすることがマグネトロンスパッタリング、または任意の他の適切な堆積方法を含むことができる。
【0106】
当業者は、相互に排他的である場合を除いて、上記の態様のいずれか1つに関して説明された特徴またはパラメータを他のいずれかの態様に適用できることを理解するであろう。さらに、相互に排他的である場合を除き、本明細書に記載の任意の機能またはパラメータは、任意の態様に適用でき、及び/または本明細書に記載の他の機能またはパラメータと組み合わせることができる。
【0107】
これより、図面を参照して、例示のみを目的として実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図2】
図1の太陽電池を形成する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0109】
本開示の態様及び実施形態を、添付の図面を参照して説明する。さらなる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。
【0110】
図1は、他の層の中でも、通常の使用中に放射源(例えば太陽)からの光が入射する第1(すなわち前面)の表面14と、前面14の反対側の第2(すなわち、裏面)の表面16とを含む半導体基板12を含む太陽電池10を概略的に示す。すなわち、前面14は、使用時に太陽に向くように構成することができ、一方で裏面16は、使用時に太陽から背を向けるように構成することができる。本実施形態では、基板12は結晶シリコン基板である。しかし、いくつかの代替的実施形態では、基板12はシリコン以外の半導体材料から形成されてもよいことを理解されたい。
【0111】
基板12は、太陽電池10を、基板12の前方(すなわち前面)にある前部18と、基板12の後方にある後部20とに分割する。太陽電池10に入射する光は、前部18、基板12、次いで後部20を通過する。
【0112】
太陽電池10は、裏面エミッタ太陽電池(特に、裏面エミッタヘテロ接合太陽電池10)である。このように、太陽電池10には、前面表面場50またはアキュムレータ50、及び基板12のいずれかの側に配置されたエミッタ52が設けられる。したがって、アキュムレータ50は前部18の一部を形成し、エミッタ52は後部20の一部を形成する。図示の実施形態によれば、基板12は、p型裏面エミッタ52とのpn接合を形成するn型単結晶シリコンウェーハである。
【0113】
前部18及び後部20のそれぞれは、別個の層状構造を画定するように配置された複数の層を含む。前部18(本明細書では前面の層状構造18とも呼ばれる)は、基板12の前面14と向かい合って配置され、後部20(本明細書では裏面の層状構造20とも呼ばれる)は、基板12の前面16と向かい合って配置される。
【0114】
前部18及び後部20の各層は、幅、長さ、及び深さで構成される。各層の幅及び長さは、基板12の前面14及び裏面16と整列する垂直方向で測定される。各層について、その幅及び長さは、基板12の前面14及び裏面16に垂直な方向で測定されるその深さよりも実質的に長い。
【0115】
太陽電池10は、アキュムレータ50の前面32に配置された前面電極30をさらに備える。前面TCOとも呼ばれる透明導電性酸化物(TCO)層(図示せず)も、前面32に設けられ、その間に挟まれる。裏面電極42はエミッタ52の裏面44に配置され、裏面TCOとも呼ばれる別のTCO層(図示せず)が裏面44に設けられ、裏面電極42とエミッタ52との間に挿入される。前面及び裏面のTCOは酸化インジウムスズ(ITO)で形成され、前面電極30及び裏面電極42は、銀で形成される。
【0116】
太陽電池10の前部18は、基板12に向かって移動する順に、第1の前面層22、第2の前面層24、第3の前面層26及び前面パッシベーション層28を含む。第1、第2、及び第3の前面層22、24、26はすべてn型であり、一緒になって太陽電池10のアキュムレータ50を画定する。
【0117】
第1、第2、及び第3の前面層22、24、26は、それぞれ3nm、7nm、及び2nmの深さを有する(
図1に示す垂直方向で測定される場合)。パッシベーション層28は、アキュムレータ50と基板12の前面14との間に挿入される。その深さは3nmである(
図1に示す垂直方向で測定される場合)。
【0118】
第1、第2及び第3の前面層22、24、26はすべて、異なる構造組成を有する。それらはそれぞれ、非晶質マトリックスの内部に配置された結晶性材料の領域を含む(すなわち、結晶性材料を画定する)。しかしながら、第1の層22は、第2及び第3の層24、26よりも大きい結晶性材料の割合を有する。第2の層24は、第3の層26よりも大きいが、第1の層22よりも少ない結晶性材料の割合を有する。第3の層26は、第1及び第2の層22、24の両方よりも少ない結晶性材料の割合を有する。前面パッシベーション層28は非晶質材料で形成される。
【0119】
第1、第2、及び第3の前面層22、24、26のそれぞれは、ナノ結晶性亜酸化ケイ素(nc-SiOx)から形成される。パッシベーション層28は、非晶質亜酸化ケイ素(SiOx)で形成される。
【0120】
上述のように、第1、第2及び第3の層22、24、26のそれぞれは、それぞれの材料の各々にドーパント原子を含めることによって決定されるn型導電性を有するように構成される。ただし、各層は異なるドーパント濃度で構成されている。第1の前面層22は、第2及び第3の層よりも高いドーパント濃度を有する。第2の前面層24は、第1の前面層よりも低く、第3の前面層よりも高いドーパント濃度を有する。最後に、第3の前面層26は、第1及び第2の層22、24の両方よりも低いドーパント濃度を有する。このようにして、第1の前面層22は、太陽電池10について、高濃度にドープされたアキュムレータ層(n++)を画定し、第2の前面層24は、中程度にドープされたアキュムレータ層(n+)を画定し、第3の前面層26は、低濃度にドープされたアキュムレータ層(n)を画定する。
【0121】
第3の前面層26から第1の前面層22へのドーピング濃度の漸進的な増加は、軽くドープされた第3の前面層26による基板12の前面14のパッシベーションを増加させる。第1の前面層22における高いドーピング濃度はまた、アキュムレータ50と前面電極30との間の良好なオーム接触を保証する。
【0122】
太陽電池10の後部20は、基板12に向かって移動する順に、第1、第2及び第3の裏面層34、36、38を含み、これらは一緒になって太陽電池10のエミッタ52を画定する。太陽電池10の裏面パッシベーション層40は、エミッタ52と基板12の裏面16との間に挿入される。
【0123】
前面パッシベーション層28と同様に、裏面パッシベーション層40は3nmの深さを有し、第1、第2及び第3の裏面層34、36、38はそれぞれ3nm、7nm及び2nmの深さを有する。
【0124】
前面の層状構造18と同様に、第1、第2及び第3の裏面層34、36、38はそれぞれ、非晶質マトリックス内部に配置された(すなわち、結晶性材料を画定する)結晶性材料の領域を含む。同様に、第1の層34は、第2及び第3の層36、38よりも大きい結晶性材料の割合を有する。第2の層36、第3の層38よりも大きいが、第1の層34よりも少ない結晶性材料の割合を有する。第3の層38は、第1及び第2の層34、36の両方よりも少ない結晶性材料の割合を有する。裏面パッシベーション層40は非晶質材料で形成される。
【0125】
第1及び第2の裏面層34、36は、ナノ結晶性亜酸化ケイ素(nc-SiOx)で形成される。しかし、前面の層状構造18とは対照的に、第3の裏面層及び裏面パッシベーション層40はそれぞれ、実質的に純粋なシリコン(Si)で形成される。
【0126】
第1、第2及び第3の裏面層34、36、38の各々は、それぞれの材料の各々にドーパント原子を含めることによって決定されるp型導電性を有するように、構成される。ただし、各層は異なるドーパント濃度で構成されている。第1の層34は、第2及び第3の層よりも高いドーパント濃度を有する。第2の層36は、第1の層34よりも低く、第3の層38よりも高いドーパント濃度を有する。最後に、第3の層38は、第1及び第2の層34、36の両方よりも低いドーパント濃度を有する。このようにすると、第1の裏面層34は、太陽電池10について、高濃度ドープエミッタ層(p++)を画定し、第2の裏面層36は中間ドープエミッタ層(p+)を画定し、第3の裏面層38は低濃度ドープエミッタ層(p)を画定する。
【0127】
図2は、上述のものなどの太陽電池を形成する方法100を示す。この方法は、太陽電池10の基板12を画定するために結晶シリコンウェーハを設ける第1のステップ102を含む。第2の方法ステップ104では、この方法は、基板12の前面14及び裏面16上にそれぞれ前面及び裏面パッシベーション層28、40を堆積することを含む。第3の方法ステップ106は、前面及び裏面の第3の層26、38をそれぞれ前面及び裏面パッシベーション層28、40上に堆積することを含む。第4のステップ108において、この方法は、第3の層26、38上にそれぞれ前面及び裏面の第2の層24、36を堆積することを含む。第5のステップ110において、この方法は、第2の層24、36上にそれぞれ前面及び裏面の第1の層22、34を堆積することを含む。
【0128】
第2から第5の方法ステップ102、104、106、108、110は、シリコンウェーハ基板12の前面14及び裏面16上に層を配置(または形成)することを含む。これは、例えば、堆積、拡散、ドーピング及び/または注入ステップを含むことができる。参照される層は、上述の太陽電池10の前部及び後部18、20を形成する層である(例えば、エミッタ、アキュムレータ、及びパッシベーション層など)。
【0129】
特に、方法ステップ3から5の106、108、110は、上で定義したように、アキュムレータ及びエミッタ50、52のドープされた半導体層を形成することを含む。これらのステップのそれぞれは、蒸着プロセス(例えば、PECVD)を使用して、対応する半導体材料を堆積及びドーピングすることを含む。概して、蒸着プロセスのパラメータは、組成(例えば、構造的及び/または化学的)及び各層のドーパント濃度を決定するように構成される。
【0130】
第6の方法ステップ112は、アキュムレータ50及びエミッタ52の前面及び裏面32、44上に、前面及び裏面TCO層をそれぞれ堆積することを含む。最後に、第7の方法ステップ114は、太陽電池10の前部18及び後部20の最外面に前面電極30及び裏面電極42を配置することを含む。
【0131】
前面層及び裏面層を形成するステップは、説明した方法に限定されないことを理解されたい。例えば、蒸着装置の設計に応じて、前面層の少なくとも1つまたはそれぞれを、裏面層の少なくとも1つまたはそれぞれの堆積の前に堆積させることができ、またはその逆も可能である。
本発明は上述の実施形態に限定されず、本明細書に記載の概念から逸脱することなく様々な変更及び改良を行うことができることが理解されるであろう。相互に排他的である場合を除き、特徴のいずれかを個別に、またはいずれかの他の特徴と組み合わせて使用することができ、本開示は、本明細書に記載の1つまたは複数の特徴のすべての組み合わせ及び副次的な組み合わせにまで及び、それらを含む。
【国際調査報告】