(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】材料堆積方法及びそれを用いて得られるマイクロシステム
(51)【国際特許分類】
H10N 30/853 20230101AFI20240119BHJP
H10N 30/06 20230101ALI20240119BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20240119BHJP
H10N 30/077 20230101ALI20240119BHJP
H10N 30/079 20230101ALI20240119BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
H10N30/853
H10N30/06
H10N30/87
H10N30/077
H10N30/079
H01L21/316 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541021
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2022050664
(87)【国際公開番号】W WO2022152804
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521408046
【氏名又は名称】ルクセンブルク インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー(リスト)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】アルチャミー,ナヴィーン
(72)【発明者】
【氏名】グランツォー,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ドフェ,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】グリンセク,セバスチャン
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058BC03
5F058BF46
5F058BH01
(57)【要約】
本発明は材料堆積方法に関し、それは:基板(2)を提供すること;基板(2)上に、化学溶液堆積CSDによってHfO
2の膜(4)を形成すること;HfO
2の膜(4)上にPbTiO
3の溶液を堆積させること;シード層(6)上にPb(Zr
x,Ti
1-x)O
3、ここで0≦x≦1、である層(8)を堆積させること;及びPb(Zr
x、Ti
1-x)O
3層(8)上に相互嵌合電極(10)を形成すること、を含む。本発明は、この堆積方法で得られる強誘電性のマイクロシステム(1)にも関する。実験は、このようなマイクロシステムのための、改善された疲労抵抗を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料堆積方法であって、
基板(2)を提供するステップと、
前記基板上に化学溶液を堆積させることによって、HfO
2の膜(4)を形成するステップと、
前記HfO
2の膜上にPbTiO
3の溶液のシード層(6)を堆積させるステップと、
前記シード層上にPb(Zr
x、Ti
1-x)O
3、ここで0≦x≦1、である層(8)を堆積させるステップと、
前記Pb(Zr
x、Ti
1-x)O
3層上に交互嵌合電極(10)を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記HfO
2の膜(4)は、少なくとも2層の堆積によって形成され、各々の層は、約15nmの厚さを有し、かつスピンコーティングによって堆積されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スピンコーティング作業は、2000~4000rpm、好ましくは3000rpmのスピードで、20~40秒間、好ましくは30秒間実施されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各層が形成された後、215℃で5分間の乾燥作業が実行されることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記HfO
2の膜(4)の堆積後、前記HfO
2の膜(4)は、700℃で90秒間、炉においてアニーリングされることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記HfO
2の化学溶液は、プロピオン酸における0.25Mのハフニウムアセチルアセトネートの溶液であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シード層は、2メトキシエタノール、または1-メトキシ-2-プロパノールを溶媒として使用し、任意選択でアセチルアセトンを調整剤として使用して準備されたPbTiO
3の前駆体溶液を、スピンコーティングによって堆積されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
x=0.53であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基板は、溶融シリカ基板であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記基板は、SiO
2の中間層を伴うシリコン基板であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記基板は、サファイア基板であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって、少なくとも部分的に得られた、強誘電性のマイクロシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロシステム製造の分野に関し、特に基板の上に構成要素を堆積させることによって得られる、電気活性(焦電性、圧電性、強誘電性、反強誘電性、電歪性、または誘電性)デバイスの製造に関する。
【0002】
特に本発明は、強誘電性の電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0003】
シリコン基板上の強誘電性のコンデンサは、一般的に金属下部電極、絶縁層、及び金属上部電極の、MIM構造として製造される。
【0004】
絶縁層の堆積プロセスによって生じる高温に耐えるよう、下部電極の材料(PtまたはAgPd)を選択しなければならない。
【0005】
絶縁層は、Pb(ZrxTi1-x)O3の膜(PZT)とすることができる。
【0006】
このようなコンデンサが、それらの特性を長期間維持すること(疲労に対する耐久性)を保証するために、金属電極の代わりに、導電性酸化物の電極を使用する場合がある。これらの電極は、金属電極と比較して低い導電性を有し、このようなコンデンサをスイッチングするために使用可能な周波数範囲を限定する。
【0007】
したがって、下部電極に使用する材料の選択は、非常に限定される。
【0008】
別の公知の構造は、平板電極(PE)で構成される。この構造は、通常はデバイスのスイッチングのために使用されない。しかしPE構造は、高温に耐えるために必要な電極材料の制約を受けない。
【0009】
スイッチング用途のためにPE構造を使用することを想定すると、PE構造が数百万サイクルを支持できることを保証する必要がある。
【0010】
文献は、このPE構造の特性を保証するための、いかなる技術的解決策も提供していない。
【0011】
デバイスのスイッチングのために使用されるPE構造は、任意の導電性基板を、PZT膜から電気的かつ化学的に絶縁させることが、さらに要求される。
【0012】
したがって、デバイスのスイッチングのためにPEを使用することを妨げる技術格差が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の困難に対処し、上述の技術格差を満たし、強誘電性のシステム及び製造方法を提供する。このシステムはPE構造を有し、そのより高い疲労抵抗のおかげで、スイッチング用途に信頼して使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題は:基板を提供すること;基板上の化学溶液堆積によってHfO2の膜を形成すること;HfO2の膜上にPbTiO3の溶液のシード層を堆積させること;シード層上にPb(Zrx,Ti1-x)、ここで0≦x≦1、である層を堆積させること;及びPb(Zrx,Ti1-x)O3の層上に相互嵌合電極を形成すること、を含んだ材料堆積法によって解決される。
【0015】
以下でさらに詳細に説明するように、本発明者は、溶液(化学溶液堆積(CSD:chemical solution deposition))として堆積されたHfO2の層を使用することで、平板電極を伴うマイクロシステムの疲労抵抗を向上させることを示している。CSDの柱状マイクロ構造及び平板電極の組み合わせは、疲労抵抗に対して有益であることを示す相乗効果を作り出す。
【0016】
このマイクロシステムは、MIM構造のマイクロシステムと類似した強誘電性の使用であるが、経済的な利点(製造方法、及びより広範な範囲の材料からの、選択の自由)を有する。
【0017】
好ましい実施形態によると、HfO2の膜は、少なくとも2層の堆積によって形成され、各々の層は、約15nmの厚さを有し、かつスピンコーティングによって堆積される。好ましい実施形態によると、スピンコーティング作業は、2000~4000rpm、好ましくは3000rpmのスピードで、20~40秒間、好ましくは30秒間で実施される。これらのパラメータは、良好な疲労抵抗、基板上におけるHfO2層の良好な接着、及びPZTの結晶配向(100)に悪影響を与えないこと、を可能にする。
【0018】
好ましい実施形態によると、各層が形成された後、215℃で5分間の乾燥作業が実行される。
【0019】
好ましい実施形態によると、その堆積後、HfO2の膜は、700℃で90秒間、炉の中でアニーリングされる。
【0020】
好ましい実施形態によると、HfO2の化学溶液は、プロピオン酸における0.25Mのハフニウムアセチルアセトネートの溶液である。
【0021】
好ましい実施形態によると、シード層は、2メトキシエタノール、または1-メトキシ-2-プロパノールを溶媒として使用し、任意選択でアセチルアセトンを調整剤として使用して準備されたPbTiO3の前駆体溶液を、スピンコーティングすることによって堆積される。
【0022】
好ましい実施形態によると、x=0.53であり、したがって、Pb(Zrx,Ti1-x)O3は、Pb(Zr0.53,Ti0.47)O3である。
【0023】
好ましい実施形態によると、基板は溶融シリカ基板である。
【0024】
好ましい実施形態によると、基板は、SiO2の中間層を伴うシリコン基板である。
【0025】
好ましい実施形態によると、基板はサファイア基板である。サファイアは、PZT膜上で、より低い圧縮応力を生じさせる傾向にあり、それは、クラックの危険が軽減されるので、より厚いPZTを構築することを可能にする。さらにサファイアは、より安定し、かつ低い導電性を有しており、非FETベースのFE-RAMために、より好適となる。
【0026】
本発明は、上述の方法によって少なくとも部分的に得られた、マイクロシステムにも関連する。以下で例示するように、分析は、本マイクロシステムが、他の材料または他の堆積方法を用いて得られたマイクロシステムとは、物理的に異なることを示している。
【発明の効果】
【0027】
HfO2の層は、マイクロシステムの厚さ及びその容量も大きくする。それは、いくつかの特定の用途(例えば電気エネルギー貯蔵のためのマイクロコンデンサ、無線周波数のチューニングなど)のために有利となる場合がある。
【0028】
シード層は、PZTの優先配向(100)を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】公知のデバイスと、本発明のデバイスとの間における、疲労実験の比較を示す図である。
【
図3】公知のデバイスと、本発明のデバイスとの間における、疲労実験の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、マイクロシステム1の断面図(ノンスケール)である。マイクロシステム1は、基板2上に膜の重ね合わせを備える。
【0031】
HfO2の膜4は、基板2上に(直接)堆積される。PbTiO3のシード層6は、HfO2の膜4上に(直接)堆積される。PZT層8は、シード層6上に構築される。電極10は、PZT層8上に形成される。層2、4、6、8のいずれも、電極を包含せず、または電極が挿置されない。
【0032】
基板2は、Siegert Wafer GmbH社の、500nm厚のSiウェハであってよい。
【0033】
HfO2の不動態被膜を、0.25MのHfO2溶液(プロピオン酸におけるハフニウムアセチルアセトネート)を使用したCSDによって堆積された、少なくとも2層で作ることができる。基板2は、表面活性化のためにホットプレート上で、350℃で加熱され得る。次にHfO2溶液を、3000rpmで30秒間、スピンコーティングし、その後215℃で5分間、乾燥することができる。この作業は、30nmのHfO2の膜の厚さを得るために、少なくとも1回繰り返すことができる。次にこの膜は、700℃で90秒間、急速熱アニーリング炉でアニーリングされ得る。
【0034】
PbTiO3(PT)のシード層6を、ルクセンブルク国特許出願第101884号明細書で広範に説明されているもの、すなわち2メトキシエタノール、または1-メトキシ-2-プロパノールを溶媒として、及びアセチルアセトンを調整剤として、準備することができる。
【0035】
PZT膜、好ましくはPb(Zr0.53,Ti0.47)O3を、シード層6上に堆積させることができる。PZT膜は、スピンコーティングによってシード層上に堆積される。代替として、堆積を、インクジェット印刷、スパッタリング、パルスレーザ堆積、MOCVDなどによって行うことができる。やはりルクセンブルク国特許出願第101884号明細書は、PZT膜の準備及び堆積の例示的な詳細を提供している。
【0036】
鉛(II)酢酸ナトリウム三水和物(99.5%、米国のSigma-Aldrich社)、チタニウム(IV)-イソプロポキシド(97%、米国のSigma-Aldrich社)、及びジルコニウム(IV)-プロポキサイド(プロパノール中に70%、米国のSigma-Aldrich社)を、PT及びPZT溶液の両方を準備するための溶液とし、2-メトキシエタノールを伴う化学量論比における前駆体として使用することができる。PT溶液を、3000rpmで30秒間、HfO2層上にスピンコーティングし、その後ホットプレート上において、乾燥及び熱分解を、それぞれ130℃及び350℃で行うことができる。最後の結晶化を、50℃/秒の空気中の加熱率で、急速熱アニーリング炉(仏国のAnnealsys社のAS-Master)において700℃で60秒間、実施することができる。次にPZT溶液は、同じ堆積ステップに従い、スピンコーティング、乾燥、及び熱分解される。その後に続く、いくつか(例えば4回)の堆積-乾燥-熱分解サイクル後に、50℃/秒の加熱率において、空気中に700℃で300秒間で結晶化が生じ、170nm以下の厚さのPZT膜をもたらすことができる。PZT堆積のための上述のステップを3回繰り返して、500nmの膜厚を実現することができる。このプロセスを、1.2μmまでの厚さのPZT層を作るために適合させることもできる。
【0037】
PZT層の上に、平板電極が形成される。特に、10μmの幅で約10μmの指部間距離である複数の指部を有する、交互嵌合電極(IDE)を形成することができる。IDEは、直接レーザ書き込み(Heidelberg Instruments社のMLA)を使用した、リフトオフフォトリソグラフィによって、パターン化される。次に、100nmの白金電極を、室温で直流スパッタリングすることができる。IDEの外形は、
図1に概略でのみ例示される。設計の正確な外形(個々の指部の幅、指部間の間隙幅、指部の数、各端部における接触パッドのサイズ)は、マイクロシステムの意図する用途に従って(特に要求されるサイクルスピードに従って)選択されることになる。
【0038】
本発明のマイクロシステムは、公知のシステムに対して実質的な改善を構成する。
図2及び
図3は、この改善を強調する。循環的に変化する外部電界が、電気極性を変化させるためにコンデンサ構造に適用された。この例において、150kV/mm及び200kV/mmの電界振幅それぞれで、100Hzの周波数が適用された。別の実験において、極性のスイッチングを誘導するために十分な振幅が、同じ結果をもたらすことを確認した(すなわち75kV/cm以上の振幅)。
【0039】
図2は、新しい状態、及び百万サイクル後(ドットライン)において、公知のMIM構造で測定された、強誘電性の極性ループの展開を示す。
【0040】
図3は、本発明によるHfO
2(CSD)層を伴うIDE構造の、同様のグラフを示す。
【0041】
図2及び
図3の両方は、最初の数サイクル中に類似したヒステリシス特性を示し、IDE構造を伴うデバイスの性能が、従来のMIM構造の性能と競合できることを表わす。
【0042】
百万回のサイクル後、MIMは顕著な劣化を示す。強誘電性用途のための、最も重要なパラメータである、ゼロ電界における残りの極性は、MIM構造を有するシステムにおいてほぼ消えている。対照的に、IDE構造の極性ヒステリシスの形状(
図3のドットライン)は、百万回のサイクルによって僅かだけ影響を受けており、デバイスは、同じ残りの極性を実質的に保っている。したがって、MIM構造を伴うコンデンサに基づいた任意のデバイスは、10
6回のスイッチングサイクル後に使用できない。その一方で、IDE構造及びHfO
2(CSD)層を伴うコンデンサに基づいたデバイスは、機能を保持する。
【0043】
図2及び
図3の結果は、様々な要求(周波数、振幅、及びサイクル数)を通して矛盾がない。さらに、疲労における改善は、PbTiO
3のシード層の存在とは無関係である。
【0044】
別の技術(例えば原子層堆積)によって堆積されたHfO2は、同じ疲労改善をもたらさない。
【0045】
このように、CSD技術によるHfO2の堆積は、IDEで作られたマイクロシステムの疲労抵抗の改善に対して信頼できる、と結論付けられる。
【0046】
上記で表わされた例示的な実施形態、ならびに様々な量及び数は、本発明を例示するために与えられる。当業者は、本発明の範囲が、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されること、及び、本方法の様々なステップにおける希釈量、温度、または時間期間の変更が、本発明の範囲を逸脱しないこと、を理解されたい。例えば、10%から20%までの希釈率、ステップの持続時間、温度、またはスピナのスピード、を変更したものが使用される場合がある。
【0047】
上記で言及された特定の用途が、強誘電性の電界効果トランジスタに関連する場合、本発明は、不揮発性RAM、焦電性の読み出しを伴うメモリ、高振幅の電界下における電気サイクルを使用した圧電性用途、など他の用途においても利点を提供する。
【国際調査報告】