(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】導体布を備える保護マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
A41D13/11 M
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541036
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2022050179
(87)【国際公開番号】W WO2022148796
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523254265
【氏名又は名称】アビバス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】モールマン, ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】エレツィアン, チャハン
(72)【発明者】
【氏名】ハロリ, オメル
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211CA02
3B211CB06
3B211CC00
3B211CD02
3B211CE01
3B211CE02
3B211CE03
(57)【要約】
本発明は、人によって着用されることで当該人の口と鼻を覆うように設計されたマスク本体であって、導電性の導体布(20)を備える第1の層を有しているマスク本体(10)と、電流が供給される電流結合構造体(30)とを備える保護マスクであって、電流によって導体布を流れる電流フローを発生させるように構成されている保護マスク(1)に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者によって着用されることでその人の口と鼻を覆うように設計されたマスク本体(10)を有する保護マスクであって、
前記マスク本体(10)は、導電性の導体布(20)を有する第1の層を有しており、
前記導体布(20)は金属化され、かつ炭素を含んでいる、
保護マスク(1)。
【請求項2】
前記導体布(20)を流れる電流フローを発生させるように電流が前記マスク本体(10)へと注入可能である電流結合構造体(30)を備えている、請求項1に記載の保護マスク(1)。
【請求項3】
相互におよび前記電流結合構造体へと電気接続される制御ユニット(31)および電気エネルギー源(32)を備えている、請求項2に記載の保護マスク(1)。
【請求項4】
少なくとも1つのハウジングを含み、
前記マスク本体に少なくとも1つのホルダが設けられ、
前記少なくとも1つのハウジングが、前記電気エネルギー源(32)および前記制御ユニットを取り囲み、かつ前記マスク本体(10)の前記少なくとも1つのホルダに取り付けられる、
請求項3に記載の保護マスク(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのハウジングが2つのハウジングを含み、前記少なくとも1つのホルダが2つのホルダを含む、請求項4に記載の保護マスク(1)。
【請求項6】
前記制御ユニット(31)と前記電気エネルギー源(32)が、前記電流結合構造体(30)を介してクロック制御により電流を前記マスク本体(10)へと送るように設計される、請求項3から5のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項7】
前記電流のサイクルが、約2秒~約10秒間、特に約5秒間持続する、請求項6に記載の保護マスク(1)。
【請求項8】
前記制御ユニット(31)と前記電気エネルギー源(32)が、前記電流結合構造体(30)を介して電流をガウス波の形でクロック制御により前記マスク本体(10)へと注入するように設計される、請求項6または7に記載の保護マスク(1)。
【請求項9】
前記制御ユニットに電気接続されたシグナルユニットを有しており、前記制御ユニットが、前記電気エネルギー源の容量が所定の最小容量値未満であるときには前記シグナルユニットを起動させるように設計されている、請求項3から8のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項10】
前記制御ユニットに電気接続されるとともに前記導体布に結合される湿度センサを有しており、前記制御ユニットが、前記湿度センサにより決定された湿度が所定のベース湿度値を上回るときには、前記電流結合構造体(30)を介して電流を前記マスク本体(10)に注入するように設計されている、請求項3から9のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項11】
前記電気エネルギー源がバッテリを含む、請求項3から10のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項12】
前記電気エネルギー源が光電池を含む、請求項3から11のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項13】
前記電気エネルギー源が、1つの領域に約0.5ボルト~約7ボルトの間、特に約3ボルトまたは約5ボルトの電圧を有する、請求項3から12のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項14】
前記マスク本体の前記導体布を通る電流のフローによって、電場、磁場、または電磁場を発生させることができるように構成される、請求項1から13のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項15】
前記電場、前記磁場、または前記電磁場が交互極性を有するように設計される、請求項14に記載の保護マスク(1)。
【請求項16】
前記電場、前記磁場、または前記電磁場をガウス波で発生させることができるように設計される、請求項14または15に記載の保護マスク(1)。
【請求項17】
前記導体布がポリアミドを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項18】
前記導体布が繊維を含んでおり、前記導体布が、該導体布の前記繊維に金属を積層することにより金属化される、請求項1から17のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項19】
前記金属が、銀、好ましくは少なくとも99%の銀などの実質的に純粋な銀を有している、請求項1から18のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項20】
前記導体布が、前記保護マスクの使用時にユーザの顔面に面する裏側を有しており、前記導体布が、該導体布の前記裏側で炭素繊維が交絡した銀積層ポリアミド繊維の不織布として設計される、請求項19に記載の保護マスク(1)。
【請求項21】
前記導体布が、銀積層ポリアミド繊維の第1の布層、および前記炭素の第2の布層を含む、請求項19に記載の保護マスク(1)。
【請求項22】
前記第1の布層および前記第2の布層が、接続層を介して相互に接続される、請求項21に記載の保護マスク(1)。
【請求項23】
前記接続層が接着層、特に熱溶融型接着層である、請求項22に記載の保護マスク(1)。
【請求項24】
前記導体布が、0.1ミリメートル~0.4ミリメートル、0.2ミリメートル~0.3ミリメートル、または0.26ミリメートル~0.272ミリメートルの厚さを有している、請求項1から23のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項25】
前記導体布が、少なくとも約8オーム、特に少なくとも約12オームの電気抵抗を有している、請求項1から24のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項26】
前記導体布の前記電気抵抗が最大で約50オームである、請求項25に記載の保護マスク(1)。
【請求項27】
前記マスク本体が、エアフィルタとして設計される第2の層を有している、請求項1から26のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項28】
前記マスク本体が、第1の層に従って構築される第3の層を有している、請求項1から27のいずれか一項に記載の保護マスク(1)。
【請求項29】
前記第2の層が、前記第1の層と前記第3の層との間に配置される、請求項28に記載の保護マスク(1)。
【請求項30】
前記第2の層が、前記マスク本体に取り外し可能に設けられる、請求項28または29に記載の保護マスク(1)。
【請求項31】
導体布、特に請求項1から30のいずれか一項に記載の保護マスクのマスク本体用の導体布を製造する方法であって、
(i)銀積層ポリアミド繊維の第1の布層を設けること、
(ii)炭素を含む第2の布層を設けること、
(iii)接続層を設けること、および
(iv)前記接続層により前記第1の布層を前記第2の布層に接続すること
を含む方法。
【請求項32】
前記接続層が接着層であり、工程(iv)において前記第1の布層が、前記接着層によって前記第2の布層に接着される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記接着層が熱溶融型接着層であり、工程(iv)が、前記熱溶融型接着層を加熱することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
工程(iv)が、2つのローラを介して前記第1の布層、前記第2の布層、および介在する前記接続層を搬送することを含む、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記2つのローラが、好ましくは膨張可能であり、特に制御された状態で膨張可能である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記2つのローラが、好ましくは前記第1の布層、前記第2の布層、および前記接続層を、1つの領域にて約10m/分~約20m/分の速度、特に約15m/分の速度で搬送するように構成される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
工程(iv)において、前記第1の布層、前記第2の布層、および前記接続層が、1つの領域にて約90℃~約200℃の温度、好ましくは1つの領域にて約140℃~約180℃の温度、特に約160℃の温度にさらされる、請求項31から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
保護マスク、具体的にレスピレータに対する、請求項31から37のいずれか一項に記載の方法によって製造された導体布の使用。
【請求項39】
前記導体布が、人の口と鼻を覆うように設計されたマスク本体に設けられる、請求項38に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスや細菌などの病原体に対する保護として使用される、導電性布を有する保護マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用フェイスマスクおよび粒子フィルタリングハーフマスクは、典型的にウイルスや細菌などの病原体に対する保護マスクとして使用される。
【0003】
医療用フェイスマスクは異物からの保護用に設計されており、通常はフィルタフリースによって、マスク着用者の周囲をとりわけ感染性飛沫への曝露から保護する。加えて、これらのマスクはマスク着用者自身も保護する。医療用フェイスマスクのフィット感によっては、着用者がフィルタフリースを介して息を吸って吐くだけでなく、呼吸気がマスクの縁部に誘引されてその縁部を通って漏出流として出る場合があるため、医療用フェイスマスクは、病原体を含有するエアロゾルまたは他の小粒子に対しては十分な保護をもたらさないことが多い。
【0004】
粒子フィルタリングハーフマスク(FFPマスクまたはフィルタリングフェイスピースマスク)には、典型的にマスクの着用者を粒子、飛沫、およびエアロゾルから保護するという目的がある。粒子フィルタリングハーフマスクの構造は様々である。例えば、呼気弁なしのマスクと呼気弁付きのマスクが存在する。呼気弁なしのマスクは、吸気と呼気の両方をフィルタリングするので自己保護と外部保護の両方をもたらすが、主に自己保護用に設計されている。弁付きのFFPマスクは、吸気しかフィルタリングしないため、限られた外部保護しかもたらさない。
【0005】
FFPマスクはまた、微細繊維で作られた帯電布も有する場合がある。この布は、1000分の1ミリメートルより小さな粒子を濾別するか、または静電気により保持することができる。多くの場合、このようなFFPマスクは、マスクグリッドを有する別の保護シェルを有しており、快適かつ確実な適合を可能にする。
【0006】
すべての公知の保護マスクでは、ウイルスおよび細菌の大半が布またはフィルタ中で生存したままである。そのため、かかるマスクは、しばらくした後に交換しなければならない。しかし定期的に交換を行っても、特にマスクの取扱いが適切でなければ、病原体がマスクから広がるおそれがある。加えて、布の微細繊維がいくつもの層状になっているため、呼吸がひどく損なわれるおそれもある。
【0007】
そのため、本発明の目的は、ウイルスや細菌などの病原体を効率的に排除または破壊するとともに、それらの拡散を低減または可能な限り完全に撲滅し、好ましくは着用時の快適性を改善する保護マスクを提唱することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、上記の目的は、独立請求項1に規定される保護マスク、および後述される本発明の種々の態様によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項および以下の記載から明白である。
【0009】
第1の態様では、本発明は、マスク本体と電流結合構造体とを有する保護マスクである。マスク本体は、着用者によって着用されることでマスク本体がその人の口および鼻を覆うように設計されている。マスク本体は、導電性の導体布を有する第1の層を有している。電流フローが導体布を通じて発生するように、電流結合構造体を介して電流をマスク本体へと注入することができる。
【0010】
「導体布」という用語は、例えば数ある材料の中でもポリアミドで作られた布地を指し、導電性である。この用語は、狭義では織布地を含む以外にも、織布地のあらゆる形態および不織布地も含む。具体的に、導体布は不織布であってもよい。布は、導電性繊維を含むことによって導電性とすることができる。代替的または付加的に、伝導性は、最初に金属でのコーティングによって増加させるか、または付与することができる。例えば金属は、純粋な銀もしくは高い割合の銀であるか、またはそれを有する場合がある。
【0011】
「繊維」という用語は、本発明の観点では、比較的短くて準線形である糸状の構造体のほか、ヤーン(yarn)やそれに類似するものなどのさらに長い構造体も含む。
【0012】
「電流結合構造体」という用語は、電気エネルギー源が電流を注入して電流を伝導性布に提供することができる要素または実施形態を指す。電流結合構造体は電流コネクタとして設計されるとともに、例えば、電気エネルギー源の極が掛止され得る2つの掛止要素を有することができる。また、例えば電気エネルギー源が導体布に接続される固定配線としても設計することができる。あるいは、導体布に直接適用されるバッテリまたは同様の電気エネルギー源の極とすることもできる。
【0013】
保護マスクまたはそのマスク本体に電流フローを能動的に発生させるために本発明の第1の態様の保護マスクを設計することによって、ウイルスや細菌などの病原体は、伝導性布において、または伝導性布を通して無害化することができる。特に、この電流フローによって、病原体のタンパク質または細胞壁を破壊することができる。電流フローの能動的な発生により、病原体の破壊において特に高い効率を確保することができる。例えば、試験では、5分未満などの比較的短い期間が経過しても、95%超など比較的大きな割合の病原体が、保護マスクの着用者またはユーザが電流フローによる影響を受けることなく無害であることが示されている。そのため、病原体を能動的に死滅または無力化させて、永続的または永久的に不活動のままとすることができる。
【0014】
対照的に、従来のマスクにおける病原体は、典型的にフィルタリングしかされず、依然としてマスクの布の中で活動し続ける。しかし、本保護マスクでは、病原体が口もしくは鼻から流出してすぐに、または口もしくは鼻に流入する前に無害化されるので、あらゆる形で病原体が広がるのを防止するか、またはその拡散を最小限に抑えることが可能となる。こうして、流出または流入する呼吸空気が滅菌される。さらに、本発明による保護マスクまたはマスク本体は、従来のマスクと比較して、頻繁に交換する必要はない。
【0015】
保護マスクは、電流結合構造体に電気接続される制御ユニットおよび電気エネルギー源を備えていてもよい。この電気接続は、例えば導管もしくはケーブルを介して直接、または他の構成要素を介して間接的に実現することができる。例えば、制御ユニットは、電気エネルギー源および電流結合構造体に直接電気接続されてもよく、そうすることで同時に、電気エネルギー源は制御ユニットを介して間接的に電流結合構造体に接続される。こうして、電気エネルギー源は、電流結合構造体を介して保護マスクに電流を供給することができる。制御ユニットは、必要に応じて導体布を流れる電流フローを制御するか、または電流供給を調節することができる。
【0016】
「電気エネルギー源」という用語は、電気エネルギーを電流の形で提供する供給源を意味する。これは、電流源または電圧源として設計することができる。好ましくは、電気エネルギー源は、好ましくは再充電可能であるバッテリ、例えば市販のバッテリを備えている。このようなバッテリによって、保護マスクの独立が容易で携帯可能な設計が可能になる。付加的または代替的に、電気エネルギー源は光電池を備えてもよい。かかる光電池を介して、電流結合構造体に電力供給を行うために電気を直接供給することができ、またはバッテリを光電池によって充電することができる。
【0017】
「制御ユニット」という用語は、導体布内での電流のフローを制御または誘発する電気式コントローラを指す場合がある。例えばこれは、電流フローのオンオフを切り替え、電流強度や電流の振幅などの電流フローの強度を設定し、または電流フローの形状を定めることができる。
【0018】
制御ユニットおよび電気エネルギー源は、マスク本体の外部に配置することができる。例えばこれらは、ケーブルにより保護マスクの電流結合構造体に接続され、ケーブルを介して電流を送る場合がある。このため、保護マスクの重量を減らすことができる。加えて、別個の電気エネルギー源は、マスク本体に締結されない場合、または保護マスクの一部ではない場合に、さらに高い容量または電力を有する場合がある。
【0019】
しかし、電気エネルギー源は、有利にはマスク本体の中または上に配置される。例えば、電気エネルギー源は、導体布に埋設されるか、または有利に交換可能な形でマスク本体に装着されるバッテリとして配することができる。あるいは、光を電気に変換するのに使用可能な光電池を備えていてもよい。
【0020】
好ましくは、保護マスクは少なくとも1つのハウジングを含み、マスク本体には、好ましくは少なくとも1つのホルダが設けられる。少なくとも1つのハウジングは、マスク本体の少なくとも1つのホルダに取り付けられる。この場合、少なくとも1つのハウジングは、少なくとも1つのホルダに着脱可能または取り外し可能に取り付けることができる。少なくとも1つのハウジングは、少なくとも1つのホルダに取り付けられたときに制御ユニットと電気エネルギー源を取り囲むか、または包む場合があり、このようにして、これら2つの構成要素は、少なくとも1つのハウジングと一体化されることで、マスク本体のホルダに取り外し可能に取り付けられる。このように、保護マスク全体を単体として設けることができ、このとき電気エネルギー源と制御ユニットが保護されるが、依然として必要に応じて交換可能または取り外し可能である。
【0021】
好ましくは、少なくとも1つのハウジングは2つのハウジングを含み、少なくとも1つのホルダは2つのホルダを含む。このため、制御ユニットを一方のハウジングに、電気エネルギー源を他方のハウジングに配置することができる。代替的に、2つのハウジングのうち一方は、制御ユニットまたは当該制御ユニットの構成要素、および電気エネルギー源または当該電気エネルギー源の構成要素を取り囲み、2つのハウジングのうち他方は、さらなる制御ユニットまたは当該制御ユニットのさらなる構成要素、およびさらなる電気エネルギー源または当該電気エネルギー源のさらなる構成要素を取り囲む場合がある。有利には、2つのホルダは、ハウジングとその内容物が保護マスク上でバランスよく分配されるようにマスク本体に配置され、こうすることでほぼ均一な重量分配を達成できる。例えば、2つのハウジングは、それぞれマスク本体の側方領域に配置されてもよい。これらの側方領域は、保護マスクの使用時に着用者またはユーザの耳の近くに位置付けることができる。
【0022】
好ましくは、制御ユニットと電気エネルギー源は、電流結合構造体を介してクロック制御により電流をマスク本体に注入するように設計される。「クロック制御(clocked)」という用語は、電流がマスク本体にパルスで注入されるという事実を指す場合がある。それにより、かかるパルスは、クロックパルスに相当し得る。電流のクロックパルスは、好ましくは約2秒~約10秒間、特に約5秒間持続する。クロック制御により電流をマスク本体に送ることによって、マスク本体または導体布にパルス化電流フローを発生させることができる。これにより、マスク本体中での病原体着用者に対する効率的な無害化を容易にすることができる。加えて、これにより電力消費量を削減できるので、保護マスクの実働時間を延ばすことができる。
【0023】
さらに、制御ユニットと電気エネルギー源は、電流結合構造体を介して様々なアンペア数の電流をマスク本体に注入するように設計されてもよい。電流強度は、典型的には導体布の電気抵抗、および電気エネルギー源が与える電圧により定められるか、または制限される。このように、マスク本体中の病原体を無害化する効率を、さらに改善することができる。
【0024】
具体的に、制御ユニットと電気エネルギー源は、付加的に電流結合構造体を介してクロック制御により電流をガウス波の形でマスク本体へと送るように設計することができる。このように電流は、地震波または衝撃波と同様にマスク本体に印加することができるので、マスク本体中のウイルスおよびその他の病原体を特に効率的に排除することが可能となる。
【0025】
好ましくは、保護マスクは、制御ユニットに電気接続されたシグナルユニットを有しており、このときに制御ユニットは、電気エネルギー源の容量が所定の最小容量値未満であるときにシグナルユニットを起動させるように設計されている。例えば、シグナルユニットは、光シグナルを発生させるのに使用可能なLEDなどの発光体を有してもよい。特に、電気エネルギー源の容量は、電気エネルギー源がバッテリとして設けられる場合に充電レベルであり得る。例えば、電気エネルギー源が与える電圧は、そのキャパシタンスを表す場合がある。したがって、最小容量値は、例えば電気エネルギー源が与える最小電圧の場合がある。電気エネルギー源またはバッテリが与える電圧が最小電圧を下回ると、制御ユニットはシグナルユニットを起動させる。こうしてシグナルユニットにより、マスクのユーザまたは着用者に対し、バッテリの充電レベルなど電気エネルギー源の容量を通知することができる。これにより、電力供給の中断または不十分な強さに起因して保護マスクの効果が意図せず低下するのを防止する。
【0026】
好ましくは、保護マスクは、制御ユニットに電気接続されるとともに導体布に結合される湿度センサを有しており、このとき制御ユニットは、湿度センサにより検出された湿度が所定のベース湿度値を上回るときに、電流結合構造体を介して電流をマスク本体に注入するように設計されている。ベース湿度値は、例えば、パーセント単位の相対湿度とすることができる。導体布内の湿度により、保護マスクが着用されているか否かの指標を得ることができる。ユーザは、目的どおりに保護マスクを着用すると、導体布を介して呼吸を行うので、導体布内の湿度が上昇する。このように、ユーザが保護マスクを着用してすぐに、導体布内の電流フローを自動的に開始することができる。手動でオンまたはオフを切り替える必要はない。
【0027】
好ましくは、電気エネルギー源はバッテリを含む。このバッテリによって、電気エネルギー源は携帯可能となるように効率的に設計することができる。保護マスクの電力消費量が比較的少ないので、バッテリを比較的小さくすることができ、バッテリをマスク本体に一体化することが可能になる。また、バッテリによって電気を簡便に長期で供給することもできる。
【0028】
好ましくは、電気エネルギー源は、1つの領域に約0.5ボルト~約7ボルトの間、特に約3ボルトまたは約5ボルトの電圧を有する。これにより、電気エネルギー源またはバッテリは、適切な電流フローをマスク本体に流すことが可能になる。特に、後述の導体布材料と組み合わせると、マスク本体中の病原体の効率的な排除を可能にする電流フローを発生させることができる。
【0029】
保護マスクは、好ましくはマスク本体の導体布を流れる電流のフローによって、電場、磁場、または電磁場(以降、総じて「場」と称する)を発生させるように設計される。この場は、導体布の材料または構造により決定される電気抵抗によって定めることができる。例えば、好適な電気抵抗は、後述の導体布の材料および構造を用いて決定することができる。
【0030】
上述の場は、電流フローに加えて、またはその代わりに、病原体、特に導体布に位置する病原体だけでなく、導体布に幾分近接している病原体を無害化することができる。同様に、この場は、病原体のタンパク質または細胞壁も破壊する。特にウイルスは、典型的には負に帯電されており、上述の場によって効率的に無害化することができる。このようにして病原体は死滅または無力化されて、永続的に不活動のままとなる。加えて、保護マスクとその着用者の顔面との間にある隙間に位置しており濾別されない病原体も、この場によって無害化される。こうして、特に効率的な病原体の破壊を達成できる。
【0031】
この観点から、保護マスクは、好ましくは電場、磁場、または電磁場が交互極性を有するように設計される。電場、磁場、または電磁場の交互極性は、例えば交流電流によって効率的に発生させることができる。あるいは、電流結合構造体における極性を周期的または連続的に変化させる回路によって発生させることができる。この場における極性の変化により、病原体をさらに効率的に、とりわけさらに完全に無害化することができる。例えば、個々の病原体が、他の構造体の保護下または他の構造体の背後で、場に到達するのを防止することができる。このように「隠れた(hidden)」病原体も、場の変化によって到達する可能性もある。
【0032】
好ましくは、電場、磁場、および/または電磁場は、ガウス波で発生させることができる。このように電流は、地震波または衝撃波と同様にマスク本体に印加することができるので、マスク本体中のウイルスおよびその他の病原体を特に効率的に排除することが可能となる。
【0033】
導体布は、ポリアミドを有するか、またはポリアミドから製造されてもよい。ポリアミド製の導体布は、柔らかく伸縮性とすることができるので、保護マスクの着用者に快適感を与え、こうして保護マスク着用の許容度を増すことができる。加えて、ポリアミドは、導体布の比較的丈夫で弾性のある設計を可能とすることができるので、保護マスクの機能性を確保または向上させることができる。導体布は、比較的高い電磁シールド性能を有することができる。
【0034】
導体布は、好ましくは電流の伝導性を上昇または調整するために金属化される。金属化に使用される金属は、例えば、銅、ニッケル、亜鉛、またはスズを有する場合がある。金属は、例えば伝導性、シールド性能、腐食防止、または耐摩耗性を改善するのに、必要に応じて好適に選択することができる。
【0035】
好ましくは、金属化に使用される金属は、銀、特に実質的に純粋な銀、または約99%純粋な銀を含むか、またはそれからなる。銀は、保護マスク中に存在する条件下で好適な電流フローを可能にする導電性を有する。加えて、銀は、電流フローがなくとも既に除菌効果を有することができる。このため、電気にさらされた銀は、二通りに病原体を無害化できるので、保護マスクの効率を高めることができる。
【0036】
例えば、導体布は、その表面に金属を添加することによって金属化することができる。代替的または相補的に、導体布は、好ましくは繊維を含んでおり、この場合に導体布は、導体布の繊維に金属、特に銀を積層することによって金属化される。繊維を有する導体布は、有利には不織布として設計することができる。かかる不織布は、概して長さが制限された繊維、それぞれ連続する繊維もしくはフィラメント、またはあらゆる種類および原料(origin)のチョップドヤーンで作られた構造体を表しており、これらの繊維は、何らかの形で一体的につなぎ合わされることで、不織布、繊維層、または繊維パイルをそれぞれ形成し、何らかの形で相互に接続される。典型的に不織布は、製織、製編、レース作製、編組、およびタフテッド製品の製造で生じるような、ヤーンの交絡または絡み合いによって形成される構造体を含まない。しかし、繊維を有する導体布は、不織布と他の構造体を混合した形態として設計することもできる。
【0037】
好ましくは、導体布は、炭素、特に炭素繊維を含む。炭素、具体的に炭素繊維は、導体布の重要な特性を調整するために使用できる。
【0038】
例えば、炭素または炭素繊維は、導体布の親水性または疎水性を調整または適合させるために導体布に設けることができる。具体的に、炭素または炭素繊維は比較的高い親水性を有していることから、銀積層ポリアミド繊維または他の繊維などの金属積層繊維のあらゆる望ましくない疎水特性によって、導体布全体に好適な親水性をもたらすことができる。これにより確実に、液体またはエアロゾルが導体布内で十分に浮遊したままとなり、こうしてマスク本体に存在するいずれの病原体も効率的に無害化することができる。
【0039】
炭素または炭素繊維はまた、導体布の電気抵抗を調整するためにも設けることができる。例えばこれは、とりわけ金属化された不織布、特に銀積層ポリアミド繊維製の不織布の場合のように、電気抵抗の不足を補うために使用できる。このため、病原体を効率的に無害化するのに使用可能な電流フローの発生をマスク本体中で可能にする整合された電気抵抗が、導体布に存在する場合がある。
【0040】
好ましい実施形態では、導体布は、保護マスクの使用時にユーザの顔面に面する裏面を有しており、このとき導体布は、導体布の裏面で炭素繊維が交絡した銀積層ポリアミド繊維の不織布として設計される。
【0041】
別の好ましい実施形態では、導体布は、銀積層ポリアミド繊維の第1の布層、および炭素の第2の布層を含む。炭素または炭素繊維に加えて、第2の布層は他の構成要素または繊維も含むことができる。
【0042】
「積層された(laminated)」という用語は、導体布の金属化の観点では、あらゆる好適な形態にある担体材料のコーティングを指す。金属すなわち銀は、担体材料として繊維すなわちポリアミド繊維に熱結合することができる。あるいは、この担体材料すなわち(ポリアミド)繊維は、電解槽中、金属すなわち銀でコーティングすることができる(電気めっき)。その他同様の好適なコーティングプロセスも使用可能であり、本明細書では積層として理解される。
【0043】
このように銀積層ポリアミド繊維を有する導体布により、特に病原体の排除に適合される効果と同時に、保護マスクの特に高い着用快適感を可能にする。このような導体布によって、適宜大きな電流フロー、または適宜大きな電場、磁場、もしくは電磁場を、マスクのほぼ全体の全表面にわたって発生させることで、病原体を呼吸空気から確実かつ効率的に排除するか、または呼吸空気を効率的に滅菌することができる。
【0044】
第1および第2の布層を設けることで、炭素を設けた銀-ポリアミド編組を特に効率的に、かつ目標を定めて提供することが可能となる。この場合、第1の布層と第2の布層は、好ましくは接続層を介して相互に接続される。このような接続により、導体布の効率的な製造が可能になる。具体的に、接続層は、好ましくは熱溶融型接着層などの接着層である。
【0045】
導体布は、好ましくは0.1ミリメートル(mm)~0.4mm、0.2mm~0.3mm、または0.26mm~0.272mmの厚さを有する。導体布の厚さは、マスク本体の電気抵抗に影響を及ぼす可能性がある。具体的に、導体布の材料に応じて導体布の好適な厚さを提供することによって、病原体の効率的な無害化を達成できるように好適な電気抵抗をもたらすことができる。加えて、使用される材料の種類に応じて、マスク本体の呼吸抵抗または呼吸容量を、適合された厚さによって調整することができる。上述の厚さ範囲は、裏面で炭素繊維が交絡した銀積層ポリアミド繊維で作られた不織布において特に有利である。
【0046】
好ましくは、導体布は、少なくとも約8オーム(Ω)、特に少なくとも約12Ωの電気抵抗を有している。このような電気抵抗体を用いて、病原体の無害化に適した電流フローの提供と同時に、比較的高程度の着用快適感を達成することができる。特に、上述の導体布の材料および設計を使用すると、指定された領域の電気抵抗が有利となる場合がある。
【0047】
この場合、導体布の電気抵抗は、好ましくは最大約50Ωである。このように制限された電気抵抗では、好適な電流フローがもたらされるのと同時に、一方では電流消費量が高くなりすぎないようにすることができる。特に、上述の領域に電圧を提供する電気エネルギー源またはバッテリを使用すると、好適な電流フローを発生させることができ、かつ好適なバッテリ寿命を達成することができる。例えば、好適なバッテリ寿命は少なくとも1日の場合がある。
【0048】
マスク本体は、エアフィルタとして設計された第2の層を有してもよい。第2の層は、N95、FFP2、FFP3、KN95、またはそれより上の規格のうち1つによるエアフィルタとすることができる。この第2の層により、安全性を高めることができる。このことは、保護マスクの着用者自身がウイルスに感染している場合、または着用者が感染者と接触し続けている場合に、特に有利な可能性がある。加えて、エアフィルタは認証に重要な可能性がある。しかし、エアフィルタはエアロゾルの濾過に特に重要である。導体布またはその中に発生した場は、エアフィルタ中に捕捉または固着されたエアロゾル中の病原体を無害化することができる。
【0049】
第2の層は、好ましくはマスク本体の中または上に取り外し可能に配置される。これにより、必要に応じて第2の層の挿入または取り外しが容易になる。こうして、例えば定期的に第2の層を容易に交換することができる。
【0050】
マスク本体は、第1の層に従って構築された第3の層を有してもよい。具体的に、第3の層は、第1の層と構造がほぼ同一であってもよく、より重要なこととして、導電性の導体布が設けられてもよい。この場合、保護マスクは、病原体を無害化する2層の導体布を有している。これにより、マスクの効率または有効性をさらに高めることができる。第1および第3の層は、有利には相互に電気結合される。こうしてこれらの層に、共通の電気エネルギー源および共通の制御ユニットによってまとめて電力供給することができる。
【0051】
有利には、第3の層は、第1の層に着脱可能に接続される。例えば、第1の層および第3の層は、スナップボタンによって相互に接続されてもよい。かかるスナップボタンまたは同様の要素により、2つの層を相互に効率的かつ都合良く締結すると同時に、この2つの層を電気結合することも可能になる。このようにして、電気エネルギー源によって2つの層に対しまとめて効率良く電力供給することができる。
【0052】
第2の層は、好ましくは第1の層と第3の層との間に配置される。このようにして、フィルタをきっちりと埋設することができ、フィルタに引っ掛かった病原体は、第1および第3の層によって無害化することができる。
【0053】
第2の態様では、本発明は、人によって着用されることで当該人の口と鼻を覆うように設計されたマスク本体を有する保護マスクである。マスク本体は、導電性の導体布を有する第1の層を有している。導体布は金属化されており、炭素を含んでいる。
【0054】
導体布を金属化して炭素を添加することによって、これら2つの材料間に電子フローを効率的に作り出すことができる。この目的のために、保護マスクを上述のように能動的に通電もしくは励起させるか、または受動的に電場、磁場、もしくは電磁場にさらすことができる。その結果、電子遷移(electron jumps)が存在する場合があり、これは非常に効果的かつ効率的な滅菌に寄与し得る。特に、マスク本体内に保持されたウイルスおよび他の病原体を効率的に排除することができる。具体的に保護マスクは、エアロゾルおよび他の布を呼吸空気からフィルタリングすると同時に、ウイルスおよび他の病原体を無害化することができる。これは、ウイルスが負に帯電されたタンパク質であるため、マスク本体内の電気エネルギーによって無害化され得るという事実を活用することができる。
【0055】
さらに、電気導体布に炭素を設けることにより、導体布の特性を必要に応じて調整することができる。
【0056】
例えば、炭素または炭素繊維は、導体布の親水性または疎水性を調整または適合させるために導体布に設けることができる。炭素は比較的高い親水性を有していることから、銀積層ポリアミド繊維などの金属化導体布のあらゆる望ましくない疎水性を低減し、導体布全体に適合した親水性をもたらすことができる。これにより確実に、液体またはエアロゾルが導体布内で十分に浮遊したままとなり、こうしてマスク本体に存在するいずれの病原体も効率的に無害化することができる。
【0057】
炭素または炭素繊維はまた、導体布の電気抵抗を調整するためにも設けることができる。例えばこれは、とりわけ金属化された不織布、特に銀積層ポリアミド繊維製の不織布の場合のように、電気抵抗の不足を補うために使用できる。このような不十分な抵抗は、例えば、保護マスク中で短絡電流および/または望ましくない高温を生じさせるおそれがある。しかし、導体布内の炭素によって、適合された電気抵抗が導体布に存在し得るので、マスク本体の静電荷またはマスク本体内の電流フローの発生が可能となり、それによって病原体、特にウイルスを効率的に無害化することができる。
【0058】
本発明の第2の態様の保護マスクおよび後述されるその好ましい実施形態により、本発明の第1の態様の保護マスクおよびその好ましい実施形態による上述の効果および利点を、効率的に実現することができる。
【0059】
本発明の第2の態様の保護マスクの一部の好ましい実施形態は下記に記載されており、その効果と利点は、下記で別途指定のない限り、本発明の第1の態様の保護マスクの対応する実施形態に相当する。
【0060】
好ましくは、導体布はポリアミドを含む。
【0061】
好ましくは、導体布は繊維を含んでおり、導体布は、導体布の繊維に金属を積層することによって金属化される。
【0062】
金属は、好ましくは銀、特に少なくとも99%の銀など実質的に純粋な銀を有している。
【0063】
好ましい実施形態では、導体布は、保護マスクの使用時にユーザの顔面に面する裏側を有しており、導体布は、導体布の裏側で炭素繊維が交絡した銀積層ポリアミド繊維の不織布として設計される。
【0064】
さらに好ましい実施形態では、導体布は、銀積層ポリアミド繊維の第1の布層、および炭素の第2の布層を備えている。この場合、第1の布層と第2の布層は、好ましくは接続層を介して相互に接続される。接続層は、好ましくは接着層、特に熱溶融型接着層である。
【0065】
このように銀積層ポリアミド繊維を有する導体布により、特に病原体の排除に適合される効果と同時に、保護マスクの特に高い着用快適感を可能にする。このような導体布によって、適宜大きな電流フロー、または適宜大きな電場、磁場、もしくは電磁場を、マスクのほぼ全体の全表面にわたって発生させることで、病原体を呼吸空気から確実かつ効率的に排除するか、または呼吸空気を効率的に滅菌することができる。
【0066】
好ましくは、導体布は、0.1ミリメートル~0.4ミリメートル、0.2ミリメートル~0.3ミリメートル、または0.26ミリメートル~0.272ミリメートルの厚さを有する。
【0067】
好ましくは、導体布は、少なくとも約8オーム、特に少なくとも約12オームの電気抵抗を有する。この場合、導体布の電気抵抗は、好ましくは最大で約50オームである。
【0068】
好ましくは、マスク本体は、エアフィルタとして設計された第2の層を有している。
【0069】
好ましくは、マスク本体は、第1の層に従って構築された第3の層を有している。この場合、第2の層は、好ましくは第1の層と第3の層との間に配置される。第2の層は、好ましくはマスク本体の中に取り外し可能に設けられる。
【0070】
第3の態様では、本発明は、導体布、特に保護マスクのマスク本体用の導体布の製造方法である。この方法は、(i)銀積層ポリアミド繊維の第1の布層を設ける工程と、(ii)炭素の第2の布層を設ける工程と、(iii)接続層を設ける工程と、(iv)接続層によって第1の布層を第2の布層に接続する工程とを含む。
【0071】
本発明による方法によって、導体布を特に効率的に製造することができる。
【0072】
好ましくは、接続層は、工程(iv)において接着層であり、第1の布層は、この接着層によって第2の布層に結合される。
【0073】
本明細書中で好ましくは、接着層は熱溶融型接着層であり、工程(iv)は、熱溶融型接着層を加熱することを含む。
【0074】
好ましくは、工程(iv)は、2つのローラを介して第1の布層、第2の布層、および介在する接続層を搬送することを含む。このようにして、これら3つの層に、制御された状態で圧力、および必要に応じて熱を加えることができる。これにより、3つの層の効率的で意図的な接続、および導体布の作製が可能になる。
【0075】
この場合、2つのローラは、好ましくは膨張させることができ、特に制御された状態で膨張させることができる。このようにして、接続層による第1および第2の布層の接続に適合した目標圧力をローラ間で特異的に生成することができる。
【0076】
2つのローラは、好ましくは第1の布層、第2の布層、および接続層を、1つの領域につき約10メートル/分(m/分)~約20m/分の範囲、特に約15m/分の速度で搬送するように構成される。
【0077】
好ましくは、工程(iv)において、第1の布層、第2の布層、および接続層は、1つの領域にて約90℃~約200℃の温度、好ましくは1つの領域にて約140℃~約180℃の温度、特に約160℃の温度にさらされる。
【0078】
第4の態様では、本発明は、保護マスク、特にレスピレータに対する、本発明による方法によって製造された導体布の使用である。この場合、導体布は、好ましくは人の口と鼻を覆うように設計されたマスク本体に設けられる。
【0079】
本発明による使用により、上述の効果と利点を達成することができる。
【0080】
本発明のさらなる有利な実施形態は、概略図を用いた以下の本発明の例示的実施形態の説明から明らかになる。特に、本発明による保護マスクは、実施形態の例を用いて添付図面を参照することで、以下でより詳細に記載される。図面では、次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図2】本発明による保護マスク中の導体布を示す図である。
【
図3】電力結合構造体として電力コネクタと、バッテリおよび制御ユニットそれぞれに対するプレースホルダとを有する、本発明による保護マスクを示す図である。
【
図4】マスク本体に取り付けられたハウジングを示す図である。
【
図5】マスク本体から取り外し可能であるハウジングを有する保護マスクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
実用上での理由から特定の表現が以下の説明に使用されるが、限定的なものとして理解されるべきではない。「右(right)」、「左(left)」、「下部(bottom)」、および「上部(top)」という語は、参照が行われる図面中の方向を表す。「内側(inward)」、「外側(outward)」、「より下(below)」、「より上(above)」、「左側(on the left)」、「右側(on the right)」などの表現は、図に示されるように、指定された部分の互いに対する配置、指定された部分の互いに対する動き、ならびに本発明およびその指定された部分の幾何学的中心に向かうか当該中心から離れる方向を説明するために使用される。この空間上の相対的情報は、図に示されるもの以外の他の位置および配向も含む。例えば、図に示される部分が反転されている場合、「より下」として記載される要素または特徴は、「より上」である。この用語は、上記で明示的に言及された語、それらの派生語、および同様の意味を有する語を含む。
【0083】
種々の態様および例証的実施形態についての図面および関連する説明において繰返しを避けるべく、特定の特徴は、様々な態様および例示的実施形態において総体的に理解されるべきである。本明細書または図中での一態様の省略は、その態様が関連する例示的実施形態で欠けていることを示唆するものではない。むしろ、このような省略は、明確さのために、かつ繰返しを回避するために行われる。この観点では、図の明瞭性を目的に参照番号が図に含まれているが直接関連する説明文では言及されていない場合、それらの説明については先の図の説明を参照されたい、という規定が、詳細な説明全体に適用される。図に直接関連するがその対応する図には含まれていない説明文にも参照符号が言及されている場合、先の図および後の図を参照されたい。2つ以上の図中の類似する参照符号は、類似または同一の要素を表す。
【0084】
図1は、本発明による保護マスクを示す図である。保護マスク1は、鼻と口を覆いながら人によって着用されることで、吸気と呼気を、保護マスクを介して清浄化することができる。保護マスクは、鼻と口を覆うマスク本体10を有する。マスク本体10は、導電性の導体布20で作られた第1の層を有してもよい。
【0085】
図2は、不織布で作られた第1の布層を含む導体布20を示す図である。この不織布は、ほぼ純粋な銀が積層されたポリアミド繊維を含む。さらに、導体布は、炭素繊維で作られた第2の布層と、不織布および第2の布層を接続する接続層とを備えている。この接続層は、熱溶融型接着層である。
【0086】
第2の布層の代わりに、不織布を逆側で炭素繊維と交絡させることもできる。
【0087】
導体布20は、厚さ約0.27mmであり、約15Ωの電気抵抗を有している。
【0088】
図3は、本発明による保護マスク1を示す図である。保護マスク1は、電力結合構造体として電力コネクタ30と、マスク本体10の第1の側方領域にバッテリプレースホルダ320または電気エネルギー源としてのバッテリ32用のプレースホルダと、マスク本体10の第2の反対側方領域に制御ユニットプレースホルダ310または制御ユニット31用のプレースホルダとを有している。バッテリ32、制御ユニット31、ならびにそれぞれのプレースホルダ310および320は、電力接続部30を介して導体布20に電気接続されることで、中に電流フローを発生させる。中間接続部33または中間線は、バッテリ32と制御ユニット31、またはそのプレースホルダ310と320を接続する。これにより、電流フローのオン/オフの切り替えおよびコントロールが可能になる。バッテリ32は、約5ボルトの電圧を有する。
【0089】
図4は、2つのハウジング35のうち1つの一例を示す図であり、ここでは、バッテリ32または制御ユニット31が、それぞれのプレースホルダ310と320に配置されている。ハウジング35は、それぞれ対応するホルダ25を介してマスク本体10に対し取り外し可能に配置される。電流フローは、導体布20内で、制御ユニットにより調節されたバッテリ32によって直接的に発生させられる。
【0090】
図5は、制御ユニット31を有するハウジング35を示す図である。マスク本体10は、ホルダ25に着脱可能に締結される。ハウジング35は、ホルダ25に着脱可能に締結することができる。このために、ホルダ25は、中にハウジングを挿入できる係止溝26を有している。加えて、ハウジング35をホルダ25に保持する磁気ユニット36が設けられる。ハウジング35は、そこから制御ユニット31を取り外すために開かれる場合がある。同様に、バッテリ32およびホルダ25のハウジング35は、マスク本体10の反対側方領域に設計される。
【0091】
本発明は、図面および付随する説明によって詳細に例証かつ記述されているが、このような例証および詳細な説明は、例証的かつ例示的なものとして理解されるべきであり、本発明を限定するものではない。本発明を不明瞭にしないために、周知の構造および技法は、特定の場合には詳細に示されることも記述されることもない場合がある。当業者であれば、後述の特許請求の範囲から逸脱することなく変更および修正を行うことができることが、理解される。具体的に、本発明は、明示的に記述された特徴の組合せから逸脱し得るあらゆる特徴の組合せを有する、さらなる例示的実施形態を網羅している。例えば、本発明は、バッテリと制御ユニットが別体であり、かつ電源コネクタ付きケーブルによってマスク本体に接続される形で実装されてもよい。
【0092】
本開示はまた、種々の実施形態に関して上記または下記で言及されるかまたは示される、あらゆる特徴の組合せを有する実施形態を含む。本開示はさらに、個々の特徴が他の特徴に関連して図に示されており、および/または上記もしくは下記で言及されていない場合であっても、図に個々の特徴も含む。図および本明細書に記載された実施形態の代替形態、ならびにそれらの特徴に対する個々の代替形態も、本発明の主題または開示された主題から除外される可能性もある。本開示は、特許請求の範囲または例示的実施形態に記載された特徴を排他的に含む実施形態、および追加の特徴を含む実施形態を含んでいる。
【0093】
さらに、「含む(comprise)」という表現およびその派生語は、他の要素または工程を除外するものではない。同様に、不定冠詞「a」または「an」、およびそれらの派生語は、複数を除外するものではない。特許請求の範囲に列挙されるいくつかの特徴の機能は、1つのユニットまたは1つの工程によって実行することができる。特定の手段が異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、それら手段の組合せを有利に使用できないことを意味するものではない。「実質的に(substantially)」、「およそ(approximately)」、「約(about)」などの用語は、特に特性または値と組み合わせて使用される場合、その特性またはその値も正確に定める。「およそ」および「約」という用語は、所与の数値または範囲に関連して使用される場合、所与の値または範囲の20%以内、10%以内、5%以内、もしくは2%以内の値または範囲を指す可能性がある。
【国際調査報告】