(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20240119BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240119BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240119BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240119BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/66 A
H01M4/62 Z
H01M4/139
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541252
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2021087668
(87)【国際公開番号】W WO2022148680
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バスクル, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】オドーニ, ルドヴィック
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】ルオー, エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベナール, ギャエル
(72)【発明者】
【氏名】マーシャ, レオ
(72)【発明者】
【氏名】サロモン, ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】アメストイ, ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017BB08
5H017BB16
5H017CC01
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE06
5H017EE09
5H017EE10
5H017HH03
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA18
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA24
5H050GA03
5H050GA08
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA24
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、電極の連続製造方法、それから得られる電極、及び前記電極を含む電気化学デバイスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセンブリの製造方法であって、
(i)少なくとも部分的に化学修飾された少なくとも片面を有する表面改質された金属箔(M)を提供すること;
(ii)電極形成組成物[組成物(C)]であって、
- 1,1-ジフルオロエチレン(VDF)由来の繰り返し単位を含む、0.5重量%以上20重量%未満、好ましくは15重量%未満の、少なくとも1種の半結晶性部分フッ素化ポリマー[ポリマー(F)]);
- 任意選択的に少なくとも1種の金属塩[塩(M)]を更に含み得る、2重量%以上40重量%未満の、100℃超、好ましくは125℃超、より好ましくは150℃超の沸点を特徴とする少なくとも1種の液体媒体[媒体(L)];
- 少なくとも50重量%の少なくとも1種の電極活性化合物[化合物(EA)];
- 任意選択的に、下記式に従う主鎖を含むポリマー[ポリマー(P)]:
-[(CH
2)
x-CHR
1-R
2)-
(式中、
xは、1~3の整数であり;
R
1は、水素又はメチル基であり;
R
2は、酸素原子又は式-OC(=O)R
3の基であり、R
3は、水素原子又はメチルである)
を含み、上記量が前記組成物(C)の総重量基準である、
組成物(C)を提供すること;
(iii)前記組成物(C)を混合装置内で50℃未満の温度で混合すること;
(iv)ステップ(iii)で得られた前記混合された組成物(C)を50~130℃に含まれる温度でダイ開口部を通して押し出して、組成物(C)のシートを提供すること;
(v)任意選択的に、ステップ(iv)で得られた組成物(C)の前記シートを積層して、50~300ミクロンの範囲の厚さを有するシートを提供すること;
(vi)ステップ(iv)又はステップ(v)で得られた組成物(C)の前記シートを、ステップ(i)で得られた前記表面改質金属箔(M)の少なくとも片面上に配置して、それによって前記組成物(C)からなる層(L1)で被覆された少なくとも片面の少なくとも一部を有する表面改質金属箔(F)を含むアセンブリを提供すること;
を含む方法。
【請求項2】
前記表面改質金属箔(M)が、表面層(SL)を有する金属箔であり、前記表面層(SL)が、化学修飾、化学エッチング、電気化学エッチング、電着、化学酸化プロセス、コーティング、コロナ放電からなる群から選択される表面処理によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティング処理が、バインダーと、導電性カーボン、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、活性炭繊維、非活性カーボンナノ繊維、金属フレーク、粉末金属、金属繊維、金属酸化物、及び導電性ポリマーからなる群から、好ましくはカーボン、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、活性炭繊維、非活性化カーボンナノ繊維からなる群から選択される粒子、とを含む組成物で前記表面をコーティングすることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
本発明の方法に適した前記金属箔(M)の前記表面の前記表面層(SL)の平均厚さが0.5nm~50μmの範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー(F)が、
- 少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも90モル%の、VDFに由来する繰り返し単位と、
- 0.01モル%~10モル%、好ましくは0.05モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~1.5モル%の、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1種の水素化モノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位と、
- 5モル%~12モル%、より好ましくは6モル%~10モル%の、少なくとも1種の部分的又は完全にフッ素化されたモノマー[モノマー(F
FH)]であって、VDFとは異なる[モノマー((F
FH)]と、
を含み、好ましくはこれらからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
モノマー(MA)がアクリル酸である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
液体媒体[媒体(L)]が、有機カーボネート、イオン液体(IL)、スルホン、又はそれらの混合物から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(i)少なくとも部分的に化学修飾された少なくとも片面を有する表面改質された金属箔(M)を提供すること;
(ii)電極形成組成物[組成物(C)]であって、
- 1,1-ジフルオロエチレン(VDF)由来の繰り返し単位を含む、0.5重量%以上20重量%未満、好ましくは15重量%未満の、少なくとも1種の半結晶性部分フッ素化ポリマー[ポリマー(F)]);
- 任意選択的に少なくとも1種の金属塩[塩(M)]を更に含み得る、2重量%以上40重量%未満の、100℃超、好ましくは125℃超、より好ましくは150℃超の沸点を特徴とする少なくとも1種の液体媒体[媒体(L)];
- 少なくとも50重量%の少なくとも1種の電極活性化合物[化合物(EA)];
- 任意選択的に、下記式に従う主鎖を含むポリマー[ポリマー(P)]:
-[(CH
2)
x-CHR
1-R
2)-
(式中、
xは、1~3の整数であり;
R
1は、水素又はメチル基であり;
R
2は、酸素原子又は式-OC(=O)R
3の基であり、R
3は、水素原子又はメチルである)
を含み、上記量が前記組成物(C)の総重量基準である、
組成物(C)を提供すること;
(iii)前記組成物(C)を混合装置内で50℃未満の温度で混合すること;
(iv)ステップ(iii)で得られた前記混合された組成物(C)を50~130℃に含まれる温度でダイ開口部を通して押し出して、組成物(C)のシートを提供すること;
(v)ステップ(iv)で得られた組成物(C)の前記シートを積層して、50~300ミクロンの範囲の厚さを有するシートを提供すること;
(vi)ステップ(iv)又はステップ(v)で得られた組成物(C)の前記シートを、ステップ(i)で得られた前記表面改質金属箔(M)の少なくとも片面上に配置して、それによって前記組成物(C)からなる層(L1)で被覆された少なくとも片面の少なくとも一部を有する表面改質金属箔(F)を含むアセンブリを提供すること;
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(vi)の終わりに得られた前記アセンブリをカレンダー加工するステップを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法で得られるアセンブリであって、
- 少なくとも1つの表面改質金属箔(M)と、
- 前記表面改質金属箔(M)の少なくとも1つの面に直接接着された、組成物(C)からなる少なくとも1つの層(L1)であって、前記組成物(C)が、
- 1,1-ジフルオロエチレン(VDF)由来の繰り返し単位を含む、0.5重量%以上20重量%未満、好ましくは15重量%未満の、少なくとも1種の半結晶性部分フッ素化ポリマー[ポリマー(F)]);
- 任意選択的に少なくとも1種の金属塩[塩(M)]を更に含み得る、2重量%以上40重量%未満の、100℃超、好ましくは125℃超、より好ましくは150℃超の沸点を特徴とする少なくとも1種の液体媒体[媒体(L)];
- 少なくとも50重量%の少なくとも1種の電極活性化合物[化合物(EA)];
- 任意選択的に、下記式に従う主鎖を含むポリマー[ポリマー(P)]:
-[(CH
2)
x-CHR
1-R
2)-
(式中、
xは、1~3の整数であり;
R
1は、水素又はメチル基であり;
R
2は、酸素原子又は式-OC(=O)R
3の基であり、R
3は、水素原子又はメチルである)
を含み、上記量が前記組成物(C)の総重量基準である、
アセンブリ。
【請求項11】
- 少なくとも1つの表面改質金属箔(M)と、
- 前記表面改質金属箔(M)の片面の少なくとも一部に直接接着された、組成物(C)からなる少なくとも1つの層(L1)であって、前記組成物(C)が、
- 1,1-ジフルオロエチレン(VDF)由来の繰り返し単位を含む、0.5重量%以上20重量%未満、好ましくは15重量%未満の、少なくとも1種の半結晶性部分フッ素化ポリマー[ポリマー(F)]);
- 任意選択的には少なくとも1種の金属塩[塩(M)]を更に含み得る、2重量%以上40重量%未満の、100℃超、好ましくは125℃超、より好ましくは150℃超の沸点を特徴とする少なくとも1種の液体媒体[媒体(L)];
- 少なくとも50重量%の少なくとも1種の電極活性化合物[化合物(EA)];
- 任意選択的に、下記式に従う主鎖を含むポリマー[ポリマー(P)]:
-[(CH
2)
x-CHR
1-R
2)-
(式中、
xは、1~3の整数であり;
R
1は、水素又はメチル基であり;
R
2は、酸素原子又は式-OC(=O)R
3の基であり、R
3は、水素原子又はメチルである)
を含み、上記量が前記組成物(C)の総重量基準である、
請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
- 少なくとも1つの表面改質金属箔(M)と、
- 前記表面改質金属箔(M)の2つの面の両方の少なくとも一部に直接接着された、組成物(C)からなる少なくとも1つの層(L1)であって、前記組成物(C)が、
- 1,1-ジフルオロエチレン(VDF)由来の繰り返し単位を含む、0.5重量%以上20重量%未満、好ましくは15重量%未満の、少なくとも1種の半結晶性部分フッ素化ポリマー[ポリマー(F)]);
- 任意選択的に少なくとも1種の金属塩[塩(M)]を更に含み得る、2重量%以上40重量%未満の、100℃超、好ましくは125℃超、より好ましくは150℃超の沸点を特徴とする少なくとも1種の液体媒体[媒体(L)];
- 少なくとも50重量%の少なくとも1種の電極活性化合物[化合物(EA)];
- 任意選択的に、下記式に従う主鎖を含むポリマー[ポリマー(P)]:
-[(CH
2)
x-CHR
1-R
2)-
(式中、
xは、1~3の整数であり;
R
1は、水素又はメチル基であり;
R
2は、酸素原子又は式-OC(=O)R
3の基であり、R
3は、水素原子又はメチルである)
を含み、上記量が前記組成物(C)の総重量基準である、
請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項13】
電極[電極(E)]である、請求項10~12のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項14】
- 正極と、
- 負極と、
- 前記正極と前記負極との間の膜と、
を含む二次電池であって、
前記正極及び前記負極のうちの少なくとも1つが請求項13に記載の電極(E)である、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月8日出願の欧州特許出願第21305021.4号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、電極の連続製造方法、それから得られる電極、及び前記電極を含む電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
現在まで、正極若しくは負極又はリチウム電池を製造するための技術は、フルオロポリマーバインダーを溶解し、それらを電極活物質及び全ての他の適切な成分と共に均質化して、金属集電体に塗布されるペーストを生成するために、N-メチル-2-ピロリドン(「NMP」とも呼ばれる)などの有機溶媒の使用を伴う。
【0004】
有機溶媒の役割は、典型的には、有機溶媒の蒸発時に電極活物質粒子をそれぞれ一緒に及び金属集電体に結合させるためにフルオロポリマーを溶解させることである。ポリマーバインダーは、電極活物質粒子を、これらの粒子が充電及び放電サイクル中の大量膨張及び収縮に化学的に耐えることができるように一緒に及び金属集電体に適切に結合させる必要がある。
【0005】
NMPはフルオロポリマーを溶解するために広く使用される溶媒であるものの、NMPの使用は人の健康と環境への影響の両方の観点から問題を引き起こす。
【0006】
更に、厚い電極の製造では、高含有量の溶媒が存在すると、前記溶媒の蒸発中に電極自体が破損して亀裂が形成される可能性がある。
【0007】
したがって、リチウム電池の開発には、より持続可能且つより低コストな製造プロセスを見出す必要があり、第1の要件は、電極の製造プロセスで使用される溶媒を削減するか、又はより好ましくは排除することである。
【0008】
したがって、近年、溶媒の非存在下で電極を製造するための代替のプロセスの必要性が感じられた。
【0009】
例えば、Seeba et.Al.Chemical Engineering Journal 402(2020)125551には、溶媒の量が大幅に削減された電極形成組成物が使用される、電極を製造するための押出に基づくコーティングプロセスが開示されている。コインセルでは良好な結果が得られ、溶媒キャスティングプロセスと溶媒削減押出プロセスとで得られた電極の間では電気化学的性能の点で有意な差は認められない。
【0010】
国際公開第2020/225041号パンフレットには、フッ素化ポリマーバインダー用の溶媒を含まない電極ペーストをアルミニウム又は銅上に押出成形し、続いて高温でプレスすることによって金属上にペーストを再分配して均一な電極を生成するステップを行うことによる電極の製造が開示されている。
【0011】
高い電気化学的性能を有し、バインダーを溶解するための溶媒が存在しないためリサイクルが不要である、すぐに電池に組み込むことができる電極を提供する連続又は半連続プロセスが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本出願人は、驚くべきことに、上述の技術的な問題が、本発明による方法によって解決できることを見出した。
【0013】
したがって、第1の態様では、本発明は、アセンブリの製造方法であって、
(i)少なくとも部分的に化学修飾された少なくとも片面を有する表面改質された金属箔(M)を提供すること;
(ii)電極形成組成物[組成物(C)]であって、
- 1,1-ジフルオロエチレン(VDF)由来の繰り返し単位を含む、0.5重量%以上20重量%未満、好ましくは15重量%未満の、少なくとも1種の半結晶性部分フッ素化ポリマー[ポリマー(F)];
- 任意選択的に少なくとも1種の金属塩[塩(M)]を更に含み得る、2重量%以上40重量%未満の、100℃超、好ましくは125℃超、より好ましくは150℃超の沸点を特徴とする少なくとも1種の液体媒体[媒体(L)];
- 少なくとも50重量%の少なくとも1種の電極活性化合物[化合物(EA)];
- 任意選択的に、下記式に従う主鎖を含むポリマー[ポリマー(P)]:
-[(CH2)x-CHR1-R2)-
(式中、
xは、1~3の整数であり;
R1は、水素又はメチル基であり;
R2は、酸素原子又は式-OC(=O)R3の基であり、R3は、水素原子又はメチルである)
を含み、上記量が前記組成物(C)の総重量基準である、
組成物(C)を提供すること;
(iii)前記組成物(C)を混合装置内で50℃未満の温度で混合すること;
(iv)ステップ(iii)で得られた混合された組成物(C)を50~130℃に含まれる温度でダイ開口部を通して押し出して、組成物(C)のシートを提供すること;
(v)任意選択的に、ステップ(iv)で得られた組成物(C)のシートを積層して、50~300ミクロンの範囲の厚さを有するシートを提供すること;
(vi)ステップ(iv)又はステップ(v)で得られた組成物(C)のシートを、ステップ(i)で得られた表面改質金属箔(M)の少なくとも片面上に配置して、それによって前記組成物(C)からなる層(L1)で被覆された少なくとも片面の少なくとも一部を有する表面改質金属箔(F)を含むアセンブリを提供すること;
を含む方法に関する。
【0014】
別の態様では、本発明は、上記方法で得られたアセンブリに関する。有利には、前記アセンブリは、
- 少なくとも1つの表面改質金属箔(M)、及び
- 前記表面改質金属箔(M)の少なくとも片面に直接接着された、上で定義された組成物(C)からなる少なくとも1つの層(L1)、
を含む。
【0015】
有利には、前記アセンブリは、電極[電極(E)]である。より好ましくは、前記電極(E)は、正極[電極(Ep)]又は負極[電極(En)]である。
【0016】
本発明の電極(E)は、電気化学デバイスで使用するのに特に適切である。
【0017】
適切な電気化学デバイスの非限定的な例には、二次電池、好ましくはアルカリ又はアルカリ土類二次電池が含まれる。より好ましくは、前記二次電池はリチウム二次電池である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書及び以下の特許請求の範囲内で使用される、例えば「ポリマー(P)」等のような表現における、式を特定する記号又は数字の周りの括弧の使用は、本文の残りから記号又は数字をより良く区別するという目的を有するにすぎず、これ故に、前記括弧は、省略することもできる。
【0019】
本発明の方法における使用に適した表面改質金属箔(M)は、2つの面を有しておりその少なくとも片面が少なくとも部分的に化学的に改質されている金属箔である。
【0020】
金属箔(M)の少なくとも片面は、表面層(SL)の形成を可能にする任意の表面処理によって少なくとも部分的に適切に改質することができる。
【0021】
表面層(SL)の性質は、改質される金属箔及び金属箔(M)に適用される表面処理に依存する。
【0022】
表面層(SL)の形成に適した表面処理には、化学修飾、化学エッチング、電気化学エッチング、電着、化学酸化プロセス、コーティング、コロナ放電からなる群から選択される任意の表面処理が含まれる。
【0023】
化学修飾、化学及び電気化学エッチング、電着、化学酸化プロセス、コーティング、及びコロナ放電は、本発明の方法で使用するための金属箔(M)上に表面層(SL)を得るために一般的に使用される別の表面処理である。
【0024】
化学エッチングは集電体の表面を効果的に粗くすることができ、これは電極と集電体との間の接着性及び界面導電性の改善に有利である。
【0025】
化学修飾は、酸などの化学薬品で処理することによって適切に得ることができる。
【0026】
コーティングは、電子伝導性の向上、電極に対する接着性、及び腐食の低減に関してより優れた性能を実現するために金属箔(M)の表面を改質するための別の効果的な方法である。腐食が軽減されると、電子伝導性が改善されることによって電極のペーストとの良好な接触が改善されることにより、電池の一般的な性能が改善されると期待される。
【0027】
適切なコーティング処理には、バインダーと、導電性カーボン、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、活性炭繊維、非活性カーボンナノ繊維、金属フレーク、粉末金属、金属繊維、金属酸化物、及び導電性ポリマーからなる群から選択される粒子とを含む組成物で表面をコーティングすることが含まれる。好ましいコーティング組成物は、カーボン、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、活性炭繊維、非活性化カーボンナノ繊維からなる群から選択される粒子を含むものである。
【0028】
本発明の方法に適した金属箔(M)の表面の表面層(SL)の平均厚さは、好ましくは0.5nm~50μmの範囲である。そのような厚さは、AFM(原子間力顕微鏡)やSEM(走査型電子顕微鏡)のような標準的な特性評価方法によって決定することができる。
【0029】
表面層(SL)の厚さは、金属箔表面に施される表面処理に大きく依存する。
【0030】
本発明では、集電体として使用される金属箔の性質は、それにより得られる電極が正極であるか又は負極であるかに依存する。本発明の電極が正極である場合、改質される金属箔は、典型的には、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、及びそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属、好ましくはAlを含み、好ましくはそれからなる。本発明の電極が負極である場合、改質される金属箔は、典型的には、ケイ素(Si)、又はリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、及びそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属、好ましくはCuを含む、好ましくはそれからなる。
【0031】
本発明で使用するための表面改質金属箔(M)を得るための金属箔の表面層の適切な改質は、例えば以下に開示されているものである:
- 酸化グラフェン層の形成に関するCARBON52(2013)128-136;
- クロメート化成皮膜法について記載されているJ.Mater.Chem.A,2016,4,395;
- KMnO4でアルミニウム表面を酸化することによるAl及びMnからの酸化物に関するInt.J.Electrochem.Sci.,10(2015)2324-2335;
- 数種類の粒子による表面処理が、これらの粒子を金属表面に付着させるポリマーバインダーを用いてアルミニウムに接着することによって得られる、欧州特許第3716378号明細書;
- 銅箔又はアルミニウム箔が、架橋した多糖ポリマーを介して箔に接着した炭素微粒子のフィルムによって保護される、米国特許出願公開第2014/0127574号明細書;
- 銅箔の表面にカーボン粒子が配置される、Electrochimica Acta 176(2015)604-609。
【0032】
本発明の特に好ましい実施形態は、表面改質金属箔(M)がアルミニウム箔であり、この箔の少なくとも片面が導電性炭素粒子の表面層(SL)で改質されている、アセンブリの製造方法に関する。
【0033】
本発明では、用語「1,1-ジフルオロエチレン」及び「1,1-ジフルオロエテン」及び「フッ化ビニリデン」は同義語として使用され、用語「ポリ-(1,1-ジフルオロエチレン)」及び「ポリフッ化ビニリデン」は同義語として使用される。
【0034】
表現「部分フッ素化フルオロポリマー」は、少なくとも1種のフッ素化モノマーと、任意選択的な少なくとも1種の水素化モノマーとに由来する繰り返し単位を含むポリマーを意味することを意図し、ここで、前記フッ素化モノマー及び前記水素化モノマーのうちの少なくとも1種は、少なくとも1個の水素原子を含む。
【0035】
「半結晶性」という用語は、本明細書では、ASTM D3418-08に従って測定される、2~90J/g、好ましくは5~60J/gの融解熱を有するポリマー(F)を示すことを意図する。
【0036】
有利には、前記ポリマー(F)は、0.05L/gより高く、より好ましくは0.12L/gより高く、更により好ましくは0.25L/gより高い固有粘度であることを特徴とし、固有粘度は、実験の部で詳述されているように、Ubbelhode粘度計を使用した、25℃でN,N-ジメチルホルムアミド中0.2g/dLの濃度での前記ポリマー(F)の溶液の落下時間として測定される。
【0037】
好ましくは、前記ポリマー(F)は、1,1-ジフルオロエチレン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び少なくとも1つのカルボン酸基を含む少なくとも1種の水素化モノマー[モノマー(MA)]に由来する繰り返し単位、及び/又は少なくとも1種の部分的又は完全にフッ素化されたモノマー[モノマー(FFH)]に由来する繰り返し単位を含み、前記モノマー(FFH)は、VDFとは異なる。
【0038】
用語「フッ素化モノマー」は、少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーを意味することを意図している。
【0039】
用語「水素化モノマー」は、少なくとも1つの水素原子を含み且つフッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーを意味することを意図している。
【0040】
表現「少なくとも1種のフッ素化モノマー」は、ポリマーが1種以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含み得ることを意味することを意図している。
【0041】
表現「フッ素化モノマー」は、複数形と単数形の両方を意図している。すなわち、それらは上で定義された1種と2種以上の両方のフッ素化モノマーを意味する。
【0042】
表現「少なくとも1種の水素化モノマー」は、1種以上の水素化モノマーに由来する繰り返し単位を意味することを意図している。
【0043】
表現「水素化モノマー」は、複数形と単数形の両方を意図している。すなわち、それらは上で定義された1種と2種以上の両方の水素化モノマーを意味する。
【0044】
好ましい実施形態によれば、前記ポリマー(F)は、
(I)VDFに由来する繰り返し単位と、
(II)少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位と、
を含み、より好ましくはこれらからなる。
【0045】
好ましくは、前記ポリマー(F)は、
- 少なくとも90モル%、好ましくは少なくとも95モル%、より好ましくは少なくとも97モル%の、VDFに由来する繰り返し単位と、
- 0.05モル%~10モル%、好ましくは0.1モル%~5モル%、より好ましくは0.2モル%~3モル%の、少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位と、
を含み、より好ましくはこれらからなる。
【0046】
好ましい実施形態によれば、前記ポリマー(F)は、
(I)VDFに由来する繰り返し単位と、
(II)少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位と、
(III)少なくとも1種のモノマー(FFH)に由来する繰り返し単位と、
を含み、より好ましくはこれらからなる。
【0047】
好ましくは、前記実施形態によれば、ポリマー(F)は、
- 少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも90モル%の、VDFに由来する繰り返し単位と、
- 0.01モル%~10モル%、好ましくは0.05モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~1.5モル%の、少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位と、
- 0.1モル%~15モル%、好ましくは0.5モル%~12モル%、より好ましくは1モル%~10モル%の、少なくとも1種のモノマー(FFH)と、
を含み、より好ましくはこれらからなる。
【0048】
有利には、この実施形態によるポリマー(F)は、0.25L/gより高く0.60L/gより低い固有粘度であることを特徴とし、固有粘度は、実験の部で詳述されているように、Ubbelhode粘度計を使用した、25℃でN,N-ジメチルホルムアミド中0.2g/dLの濃度での前記ポリマー(F)の溶液の落下時間として測定される。
【0049】
本発明の別の特に好ましい実施形態では、前記ポリマー(F)は、
- 少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも90モル%の、VDFに由来する繰り返し単位と、
- 0.01モル%~10モル%、好ましくは0.05モル%~5モル%、より好ましくは0.1モル%~1.5モル%の、少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位と、
- 5モル%~12モル%、より好ましくは6モル%~10モル%の、少なくとも1種のモノマー(FFH)と、
を含み、より好ましくはこれらからなる。
【0050】
有利には、この実施形態によるポリマー(F)は、0.25L/gより高く0.60L/gより低い固有粘度であることを特徴とし、固有粘度は、実験の部で詳述されているように、Ubbelhode粘度計を使用した、25℃でN,N-ジメチルホルムアミド中0.2g/dLの濃度での前記ポリマー(F)の溶液の落下時間として測定される。
【0051】
ポリマー(F)は、例えば、国際公開第2008/129041号パンフレットの教示に従って、VDFモノマーと、少なくとも1種のモノマー(MA)と、少なくとも1種のモノマー(FFH)との重合によって得ることができる。
【0052】
別の実施形態によれば、前記ポリマー(F)は、
(I)VDFに由来する繰り返し単位と、
(II)少なくとも1種のモノマー(FFH)に由来する繰り返し単位と、
を含み、より好ましくはこれらからなる。
【0053】
より好ましくは、前記ポリマー(F)は、
- 少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも85モル%、より好ましくは少なくとも90モル%の、VDFに由来する繰り返し単位と、
- 0.1モル%~15モル%、好ましくは0.5モル%~12モル%、より好ましくは1モル%~10モル%の、上で定義された少なくとも1種のモノマー(FFH)と、
を含む。
【0054】
有利には、この実施形態によるポリマー(F)は、0.05L/gより高く0.60L/gより低く、より好ましくは0.25L/gより低い固有粘度であることを特徴とし、固有粘度は、実験の部で詳述されているように、Ubbelhode粘度計を使用した、25℃でN,N-ジメチルホルムアミド中0.2g/dLの濃度での前記ポリマー(F)の溶液の落下時間として測定される。
【0055】
ポリマー(F)中の少なくとも1種のモノマー(MA)に由来する繰り返し単位の平均モルパーセントの決定は、任意の適切な方法によって行うことができる。特に、酸-塩基滴定法(例えば、アクリル酸含有量の決定に適よく適している)、NMR法(側鎖に脂肪族水素原子を含む上で定義されたモノマー(MA)の定量化に適切である)、ポリマー(F)製造中の全ての供給されたモノマー(MA)及び未反応の残留モノマー(MA)に基づく重量バランスを挙げることができる。
【0056】
有利には、前記モノマー(MA)は、以下の式(I)に従う:
【化1】
(式中、
R
1、R
2及びR
3は、互いに等しく又は異なり、水素原子、及びC
1~C
3炭化水素基から独立して選択され、R’
OHは、Hであるか、又は少なくとも1つのカルボキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部位である)。
【0057】
好ましくは、前記モノマー(MA)はアクリル酸(AA)である。
【0058】
好ましくは、前記モノマー(FFH)は、
- テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのC2~C8パーフルオロオレフィン;
- フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン、及びトリフルオロエチレンなどのVDFとは異なるC2~C8含水素フルオロオレフィン;
- CH2=CH-Rf0(式中、Rf0は、C1~C6パーフルオロアルキル基である);
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などの、クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C2~C6フルオロオレフィン;
- CF2=CFOX0
(式中、X0は、C1~C6フルオロ又はパーフルオロアルキル、例えばCF3、C2F5、C3F7;C1~C12アルキル基、1つ以上のエーテル基を有するC1~C12オキシアルキル基又はC1~C12(パー)フルオロオキシアルキル基、例えばパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基;基-CF2ORf2(Rf2はC1~C6フルオロ又はパーフルオロアルキル基、例えばCF3、C2F5、C3F7、又は1つ以上のエーテル基を有するC1~C6(パー)フルオロオキシアルキル基、例えば-C2F5-O-CF3である));
- CF2=CFOY0(式中、Y0は、C1~C12アルキル基又は(パー)フルオロアルキル基、C1~C12オキシアルキル基、又は1つ以上のエーテル基を有するC1~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、Y0は、その酸、酸ハライド、又は塩の形態でカルボン酸基又はスルホン酸基を含む);
- フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール;
を含む群の中で選択され、より好ましくはこれらからなる。
【0059】
より好ましくは、前記モノマー(FFH)は、フッ化ビニル(VF1)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、及びパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)を含む、好ましくはこれらからなる群において選択される。
【0060】
ポリマー(F)は、典型的には、この分野の当業者に知られている方法による乳化重合又は懸濁重合によって得ることができる。
【0061】
本発明の目的のために、「液体媒体[媒体(L)]」という用語は、大気圧下にて20℃で液体状態にある1つ以上の物質を含む媒体を示すことを意図する。
【0062】
媒体(L)は、典型的には、上で定義されたポリマー(F)を溶解するのに適した溶媒、すなわち、典型的にはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスファミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリエチル、リン酸トリメチル;及びそれらの混合物を含む極性溶媒を含まない。
【0063】
前記媒体(L)は、好ましくは、有機カーボネート、イオン液体(IL)、スルホン、又はこれらの混合物から選択される。
【0064】
本発明の第1の実施形態によれば、前記媒体(L)は、唯一の媒体(L)として少なくとも1つの有機カーボネートを含む。
【0065】
適切な有機カーボネートの非限定的な例としては、特に、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-メチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート及びこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
本発明の第2の実施形態によれば、前記媒体(L)は、唯一の媒体(L)として少なくとも1つのイオン液体(IL)を含む。
【0067】
「イオン液体(IL)」という用語は、本明細書では大気圧下で100℃未満の温度で液体状態で存在する、正に帯電したカチオンと負に帯電したアニオンとの組み合わせによって形成される化合物を示すことを意図する。
【0068】
イオン液体(IL)は、プロトン性イオン液体(ILp)、非プロトン性イオン液体(ILa)、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0069】
「プロトン性イオン液体(ILp)」という用語は、本明細書では、カチオンが1つ以上のH+水素イオンを含むイオン液体を示すことを意図する。
【0070】
1つ以上のH+水素イオンを含むカチオンの非限定的な例としては、特に、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、又はピペリジニウム環が挙げられ、正電荷を有する窒素原子はH+水素イオンに結合している。
【0071】
「非プロトン性イオン液体(ILa)」という用語は、本明細書では、カチオンがH+水素イオンを含まないイオン液体を示すことを意図する。
【0072】
イオン液体(IL)は、典型的には、カチオンとしてスルホニウムイオン、又はイミダゾリウム環、ピリジニウム環、ピロリジウム環、又はピペリジウム環(前記環は任意選択で窒素原子において置換されていてもよく、特には1~8の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよく、又炭素原子において特には1~30の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基によって置換されていてもよい)を含むものから選択される。
【0073】
本発明の第3の実施形態によれば、前記媒体(L)は、上記で定義される少なくとも1つの有機カーボネートと、上記で定義される少なくとも1つのイオン液体(IL)との混合物を含む。
【0074】
適切なスルホンの非限定的な例は、下記式のものである:
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、独立して:遊離水素、C
1~C
20アルキル基、直鎖C
1~C
6アルキル基のいずれかであるか、或いはR
1とR
2が一緒になったC
3~C
20シクロアルキル基又はC
6~C
30アリール基である)。
【0075】
より好ましくは、スルホンはスルホラン(テトラメチレンスルホン)である。
【0076】
任意選択的に、前記媒体(L)は、少なくとも1種の金属塩[塩(M)]を更に含む。
【0077】
前記塩(M)は、典型的には、
(a)MeI、Me(PF
6)
n、Me(BF
4)
n、Me(ClO
4)
n、Me(ビス(オキサラト)ボレート)
n(「Me(BOB)
n」)、MeCF
3SO
3、Me[N(CF
3SO
2)
2]
n、Me[N(C
2F
5SO
2)
2]
n、R
FがC
2F
5、C
4F
9、又はCF
3OCF
2CF
2であるMe[N(CF
3SO
2)(R
FSO
2)]
n、Me(AsF
6)
n、Me[C(CF
3SO
2)
3]
n、Me
2S
n
(これらの中のMeは金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeはLi、Na、K、Mg、Al、又はCsであり、更により好ましくはMeはLiであり、nは前記金属の価数であり、典型的にはnは1又は2である);
【化3】
(式中、R’
Fは、F、CF
3、CHF
2、CH
2F、C
2HF
4、C
2H
2F
3、C
2H
3F
2、C
2F
5、C
3F
7、C
3H
2F
5、C
3H
4F
3、C
4F
9、C
4H
2F
7、C
4H
4F
5、C
5F
11、C
3F
5OCF
3、C
2F
4OCF
3、C
2H
2F
2OCF
3及びCF
2OCF
3からなる群から選択される)、並びに
(c)それらの組み合わせ
からなる群から選択される。
【0078】
前記塩(M)は、前記媒体(L)によって有利に溶解される。
【0079】
これに関して、媒体(L)中の前記塩(M)の濃度は、有利には、少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05Mである。
【0080】
媒体(L)中の塩(M)の濃度は、有利には多くとも5M、好ましくは多くとも3M、より好ましくは多くとも2M、更により好ましくは多くとも1Mである。
【0081】
用語「電極活性化合物[化合物(EA)]」は、セルの動作中にイオン及び電子を吸収及び/又は放出することができる任意の無機又は有機電極活物質を意味することを意図する。
【0082】
「無機電極活物質」は、本明細書では、その構造に組み込むか又は挿入することができ、電気化学デバイスの充電段階及び放電段階中にそこからアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンを実質的に放出することができる任意の化合物を意味することを意図する。無機電極活物質は、好ましくは、リチウムイオンを組み込むか又は挿入し、及びそれを放出することができる。
【0083】
組成物(C)中の、及び結果として本発明のアセンブリの層(L1)中の無機電極活物質の性質は、これによって提供される最終アセンブリが正極[電極(Ep)]であるか又は負極[電極(En)]であるかに依存する。
【0084】
リチウムイオン二次電池用の正極を形成する場合、前記電極活物質は、式LiMQ2(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、V、及びQなどの遷移金属から選択される少なくとも1つの金属であり、Qは、O又はSなどのカルコゲンである)の複合金属カルコゲナイドを含むことができる。これらの中でも、式LiMO2(式中、Mは、上で定義されたものと同じである)のリチウム系複合金属酸化物を使用することが好ましい。これらの好ましい例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNixCo1-xO2(0<x<1)及びスピネル構造化LiMn2O4を挙げることができる。
【0085】
代替形態として、リチウムイオン二次電池のための正極を形成する場合には更に、無機電極活物質は、式M1M2(JO4)fE1-f(式中、M1は、リチウムであり、M1金属の20%未満に対応する別のアルカリ金属によって部分的に置換されていてもよく、M2は、Fe、Mn、Ni又はこれらの混合から選択される+2の酸化レベルの遷移金属であり、0を含めてM2金属の35%未満に対応する、+1~+5の酸化レベルの1つ以上の更なる金属によって部分的に置換されていてもよく、JO4は、任意のオキシアニオンであり、Jは、P、S、V、Si、Nb、Mo又はこれらの組み合わせのいずれかであり、Eは、フルオリド、ヒドロキシド又はクロリドアニオンであり、fは、通常0.75~1に含まれるJO4オキシアニオンのモル分率である)のリチウム化又は部分的にリチウム化された遷移金属オキシアニオン系電極活物質を含み得る。
【0086】
上で定義されたM1M2(JO4)fE1-f電極活物質は、好ましくは、ホスフェート系であり、規則正しい又は改質されたかんらん石構造を有し得る。
【0087】
より好ましくは、無機電極活物質は、式Li3-xM’yM’’2-y(JO4)3(式中、0≦x≦3であり、0≦y≦2であり、M’及びM’’は、同一であるか又は異なる金属であり、それらの少なくとも1つは遷移金属であり、JO4は、好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換され得るPO4であり、Jは、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組み合わせのいずれかである)を有する。より一層好ましくは、化合物(EA)は、式Li(FexMn1-x)PO4(式中、0≦x≦1であり、xは、好ましくは1である(即ち、式LiFePO4のリチウム鉄ホスフェート))のホスフェート系電極活物質である。
【0088】
好ましくは、前記無機電極活物質は、一般式(II)のリチウム含有複合金属酸化物から選択される
LiNixM1
yM2
zY2 (II)
(式中、M1及びM2は、互いに同じであり又は異なり、Co、Fe、Mn、Cr及びVから選択される遷移金属であり、
0.5≦x≦1であり、
y+z=1-xであり、
Yは、カルコゲンを示し、好ましくはO及びSから選択される)。
【0089】
正極無機電極活物質は、好ましくはYがOである式(II)の化合物である。
【0090】
好ましい実施形態では、M1は、Mnであり、M2は、Coである。
【0091】
別の好ましい実施形態では、M1は、Coであり、M2は、Alである。
【0092】
そのような活物質の例としては、LiNixMnyCozO2(本明細書では以下、NMCと呼ぶ)、及びLiNixCoyAlzO2(本明細書では以下、NCAと呼ぶ)が挙げられる。
【0093】
具体的には、LiNixMnyCozO2に関して、マンガン、ニッケル、及びコバルトの含量比を変動させて、電池の電力及びエネルギーの性能を調整することができる。
【0094】
本発明の特に好ましい実施形態において、無機活物質は、上で定義された式(II)(式中、0.5≦x≦1、0.1≦y≦0.5、及び0≦z≦0.5である)の化合物である。
【0095】
式(II)の適切な正極無機電極活物質の非限定的な例としては、特に以下のものが挙げられる:
LiNi0.33Mn0.33Co0.3302、
LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、
LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、
LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、
LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、及び
LiNi0.8Co0.2O2。
【0096】
特に有利であることが判明している無機活物質は、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、及びLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2である。
【0097】
リチウムイオン二次電池用の負極(En)を形成する場合、無機電極活物質は、好ましくは炭素系材料及び/又はケイ素系材料を含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、炭素系材料は、例えば、天然若しくは人工の黒鉛などの黒鉛、グラフェン、又はカーボンブラックであり得る。
【0099】
これらの材料は、単独で又はそれらの2つ以上の混合物として使用され得る。
【0100】
炭素系材料は、好ましくは、黒鉛である。
【0101】
ケイ素系化合物は、クロロシラン、アルコキシシラン、アミノシラン、フルオロアルキルシラン、ケイ素、塩化ケイ素、ケイ素、及び酸化ケイ素からなる群から選択される1つ以上であり得る。より具体的には、ケイ素系化合物は、酸化ケイ素又は炭化ケイ素であってよい。
【0102】
無機電極活物質中に存在する場合、少なくとも1種のケイ素系化合物は、無機電極活物質の総重量に対して1~50重量%、好ましくは5~20重量%の範囲の量で無機電極活物質中に含まれる。
【0103】
本発明の目的のためには「有機電極活物質」という用語は、n型、p型、又は双極型酸化還元挙動を示す有機分子又はポリマーを含む化合物を意味することを意図する。
【0104】
有機電極活性化合物のいくつかの具体的な例は、例えばTyler B.Schon,Bryony T.McAllister,Peng-Fei Li and Dwight S.Sefero,Chem.Soc.Rev.,2016,45,6345の表1に記載されている。
【0105】
好ましくは、電極活性化合物[化合物(EA)]は、無機電極活物質である。
【0106】
有利には、前記組成物(C)は、電極活性化合物(EA)の電子伝導性を付与又は改善することができる導電性化合物[化合物(CC)]を更に含む。
【0107】
それらの例としては:カーボンブラック、黒鉛微粉末、カーボンナノチューブ、グラフェン、若しくは繊維などの炭素質材料、又はニッケル若しくはアルミニウムなどの金属の微粉末若しくは繊維が挙げられ得る。
【0108】
前記化合物(CC)は、好ましくは、カーボンブラック又は黒鉛から選択される。
【0109】
明確にするために、化合物(CC)は、負極(En)について上述した炭素系材料とは異なる。
【0110】
好ましくは、前記化合物(CC)は、前記組成物(C)の総重量に基づいて、0.1重量%~15重量%、より好ましくは0.25~12重量%の量で前記組成物(C)中に存在する。
【0111】
有利には、前記組成物(C)は、以下の式に従う骨格を含む少なくとも1つのポリマー[ポリマー(P)]を更に含む:
-[(CH2)x-CHR1-R2)-
(式中、
xは1~3の整数であり、
R1は水素又はメチル基であり;
R2は、酸素原子又は式-OC(=O)R3の基であり、R3は、水素原子又はメチルである)。
【0112】
好ましくは、前記ポリマー(P)は、120℃よりも低い、より好ましくは100℃よりも低い、更により好ましくは90℃よりも低い融点(Tm)を有する。
【0113】
好ましくは、前記ポリマー(P)は、25℃より高い、より好ましくは30℃より高い、更により好ましくは40℃より高い融点(Tm)を有する。
【0114】
有利には、存在する場合、前記ポリマー(P)は、前記組成物(C)の総重量に基づいて、0.1重量%より高い、好ましくは0.5重量%より高い、より好ましくは1重量%より高い量で前記組成物(C)中に存在する。
【0115】
有利には、前記ポリマー(P)は、前記組成物の総重量に基づいて、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは8重量%未満の量で前記組成物(C)中に存在する。
【0116】
好ましい実施形態では、前記ポリマー(P)は、ポリアルキレンオキシド、特に例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリブチレンオキシド、及びポリ(ビニルエステル)、例えば、ポリ(酢酸ビニル)を含む、好ましくはこれらからなる群において選択される。
【0117】
好ましい実施形態では、本発明による組成物(C)は、
- 上で定義された少なくとも1種の塩(M)を任意選択的に含む、3~20重量%の上で定義された前記媒体(L);
- 2~14重量%の上で定義された前記ポリマー(F);
- 50~97重量%の上で定義された前記化合物(EA);
- 0.5~10重量%の前記化合物(C);及び
- 任意選択的な、3~5重量%の前記ポリマー(P);
を含み、
上記量は前記組成物(C)の総重量基準である。
【0118】
組成物(C)は、当業者に知られている方法によって有利に調製することができる。
【0119】
組成物(C)は、好ましくはペーストの形態で得られる。
【0120】
好ましい実施形態では、組成物(C)は、密閉されたスリーブ内で回転する2軸同方向回転かみ合い型スクリューを備えるニーダー又はミキサーなどの適切な混合装置で成分を混合することによって調製される。混合は、好ましくは室温で行われる。
【0121】
本発明の方法のステップ(iii)では、ステップ(ii)で得られる組成物(C)が、押出ステップを開始する前に50℃未満の温度で混合される。
【0122】
混合ステップ(iii)は、標準的な混合装置の中で行うことができる。
【0123】
混合ステップ(iii)後の組成物(C)は顆粒の形態であってもよく、これらの顆粒は、例えばミキサーの出口にリングを形成するように配置された丸いダイによって混合装置の出口で形成され、このダイは、出口ミキサーに配置された切断システムを備えている。
【0124】
本発明の別の実施形態では、混合ステップ(iii)は、押出ステップ(iv)と同じ装置内で行われ、ステップ(ii)で得られる組成物(C)は、フィーダーを通して供給され、50℃未満の温度に設定された押出機の第1のゾーンで混合され、次いで押出ステップ(iv)を受けることで、ダイ開口部を通して組成物(C)のシートを与える。
【0125】
混合ステップ(iii)及び押出ステップ(iv)のための装置は、好ましくは二軸押出機である。
【0126】
ステップ(iv)では、ステップ(iii)で得られた混合された組成物(C)がダイ、好ましくはフラットダイを通して搬送され、それによって組成物(C)のシートが得られる。
【0127】
押出機端部のダイは、好ましくは長方形の形状を有するダイである。
【0128】
ステップ(i)で提供される表面改質金属箔(M)上に配置される組成物(C)のシートの厚さは、適切に共積層するために、50~300ミクロンの範囲内にある必要がある。したがって、金属箔の表面上に配置する前に、組成物(C)のシートをステップ(v)で任意選択的に積層して、その厚さを50~300ミクロンの範囲の厚さに減らしてもよい。このように積層された組成物(C)のシートは、金属箔と共積層するステップを介して、金属箔の少なくとも一つの面に配置することができる。
【0129】
「共積層する」という用語は、電極を得るために金属箔の少なくとも一つの面上に組成物(C)のシートを積層することを指す。
【0130】
したがって、一実施形態では、本発明は、アセンブリの製造方法を提供し、前記方法は、
(i)少なくとも部分的に化学修飾された少なくとも片面を有する表面改質された金属箔(M)を提供すること;
(ii)上で定義された電極形成組成物[組成物(C)]を提供すること;
- 任意選択的な上で定義されたポリマー[ポリマー(P)];
(iii)前記組成物(C)を混合装置内で50℃未満の温度で混合すること;
(iv)ステップ(iii)で得られた混合された組成物(C)をダイ開口部を通して押し出して、組成物(C)のシートを提供すること;
(v)ステップ(iv)で得られた組成物(C)のシートを積層して、50~300ミクロンの範囲の厚さを有する組成物(C)のシートを提供すること;
(vi)ステップ(iv)で得られた組成物(C)のシートを、ステップ(i)で得られた表面改質金属箔(M)の少なくとも片面上に配置して、それによって前記組成物(C)からなる層(L1)で被覆された少なくとも片面の少なくとも一部を有する表面改質金属箔(F)を含むアセンブリを提供すること;
を含む。
【0131】
ステップ(vi)の終わりに得られるアセンブリの体積エネルギー密度を高めるために、このアセンブリをカレンダー加工するステップが更に行われてもよい。
【0132】
この製造方法は、連続プロセス、すなわち操作の期間全体が中断することなく行われるプロセスとすることができる。言い換えると、アセンブリがプロセスの実施全体を通じて中断することなく製造されることを意味する。したがって、ステップ(iii)、ステップ(iv)、ステップ(v)、及びステップ(vi)は、プロセスの継続時間全体を通じて中断することなく同時に実施することができる。これは、言い換えると、プロセスの継続時間の各瞬間に、組成物(C)の一部が混合ステップ(iii)を受けている一方で、組成物の別の一部が押出ステップ(iv)を受けており、別の一部がステップ(v)で積層されており、別の一部がステップ(vi)で組成物(C)のシートの形態で金属箔上に共積層されていることを意味する。この場合、プロセスの全ての任意選択的なステップ(例えば積層及びカレンダー加工のステップ)が存在する場合には、それらが連続的に行われることも理解される。
【0133】
本発明の方法により、
- 少なくとも1つの表面改質金属箔(M)と、
- 前記表面改質金属箔(M)の少なくとも片面の少なくとも一部に直接接着された、組成物(C)からなる少なくとも1つの層(L1)であって、前記組成物(C)が、
- 上で定義された少なくとも1種のポリマー(F)、
- 上で定義された少なくとも1種の液体媒体[媒体(L)]、
- 上で定義された少なくとも1種の化合物(EA)、
を含む層(L1)と、
を含むアセンブリを得ることが可能になる。
【0134】
本発明の一実施形態では、アセンブリは、
- 少なくとも1つの表面改質金属箔(M)と、
- 前記表面改質金属箔(M)の片面の少なくとも一部に直接接着された、組成物(C)からなる少なくとも1つの層(L1)であって、前記組成物(C)が、
- 上で定義された少なくとも1種のポリマー(F)、
- 上で定義された少なくとも1種の液体媒体[媒体(L)]、
- 上で定義された少なくとも1種の化合物(EA)、
を含む層(L1)と、
を含む。
【0135】
本発明の別の実施形態では、アセンブリは、
- 少なくとも1つの表面改質金属箔(M)と、
- 前記表面改質金属箔(M)の2つの面の両方の少なくとも一部に直接接着された、組成物(C)からなる少なくとも1つの層(L1)であって、前記組成物(C)が、
- 上で定義された少なくとも1種のポリマー(F)、
- 上で定義された少なくとも1種の液体媒体[媒体(L)]、
- 上で定義された少なくとも1種の化合物(EA)、
を含む層(L1)と、
を含む。
【0136】
したがって、前記実施形態によるアセンブリは、いわゆる両面アセンブリである。
【0137】
有利には、前記アセンブリは、電極[電極(E)]である。より好ましくは、前記電極(E)は、正極[電極(Ep)]又は負極[電極(En)]である。
【0138】
理論に束縛されることを望むものではないが、出願人は、本発明の方法が、少なくとも部分的に改質された少なくとも1つの表面を有する金属箔を使用することにより、連続的且つ非常に効率的なプロセスによって高性能電極を得ることを可能にすると考えている。
【0139】
本発明の電極(E)は、電気化学デバイスで使用するのに特に適切である。
【0140】
用語「電気化学デバイス」とは、正極と、負極とを含む電気化学セル/アセンブリであって、単層又は多層のセパレータが前記電極の1つの少なくとも1つの表面と接触している電気化学セル/アセンブリを意味することが本明細書で意図される。好適な電気化学デバイスの非限定的な例としては、とりわけ、二次電池、特に、リチウムイオン電池などのアルカリ若しくはアルカリ土類二次電池、並びにキャパシタ、特にリチウムイオン系キャパシタ及び電気二重層キャパシタ(「スーパーキャパシタ」)が挙げられる。
【0141】
「二次電池」という用語は、再充電可能電池を表すことが意図される。
【0142】
特に、本発明は、
- 正極と、
- 負極と、
- 前記正極と前記負極との間に、膜と
を含む二次電池であって、
正極及び負極のうちの少なくとも1つが本発明の電極(E)である二次電池に関する。
【0143】
用語「膜」は、電気化学デバイスにおいて異極性の電極を電気的に及び物理的に分離し、そしてそれらの間に流れるイオンに対して透過性である別個の、一般に薄い界面を意味することが本明細書では意図される。
【0144】
本発明では、膜は、電気化学デバイスのセパレータに一般的に使用される任意の電子絶縁性基材とすることができる。
【0145】
一実施形態では、膜は、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレンなど)又はそれらの混合物などのポリエステルからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む多孔質高分子材料である。
【0146】
特定の実施形態では、膜は、PVDFで、又は例えばSiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2などの無機ナノ粒子でコーティングされた多孔質高分子材料である。
【0147】
電池が組み立てられると、上記で定義される塩(M)を含む上記で定義される媒体(L)が、二次電池に更に追加され得ることが当業者には明らかであろう。前記媒体(L)及び前記塩(M)は、上記の組成物(C)について定義された媒体(L)及び塩(M)と同じである又は異なる。
【0148】
本発明の第1の実施形態によれば、膜はフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含み、前記ハイブリッドは、国際公開第2015/169834号パンフレットに開示されているようなプロセスによって得られる。
【0149】
本発明の一実施形態によれば、二次電池は、
- 正極[電極(Ep)]と、
- 負極と、
- 前記電極(Ep)と前記負極との間の、上に定義された膜と、
を含む。
【0150】
本発明のこの実施形態の二次電池の負極は、典型的には金属基材であり、好ましくは、リチウム又は亜鉛などの金属から製造される箔である。
【0151】
或いは、本発明のこの実施形態の二次電池の負極は、例えば国際公開第2017/017023号パンフレットに記載されているような電極であってよい。
【0152】
本発明の別の実施形態によれば、二次電池は、
- 正極と、
- 負極[電極(En)]と、
- 前記正極と前記電極(En)との間の、上に定義された膜と、
を含む。
【0153】
本発明の別の実施形態によれば、二次電池は、
- 正極[電極(Ep)]と、
- 負極[電極(En)]と、
- 前記電極(Ep)と前記電極(En)との間の、上に定義された膜と、
を含む。
【0154】
一実施形態によれば、本発明は、
- 正極[電極(Ep)]と、
- リチウム若しくは亜鉛などの金属から製造される負極又は国際公開第2017/017023号パンフレットに記載の負極から選択される負極と、
- 前記電極(Ep)と前記負極との間の、フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合材料を含む膜であって、前記ハイブリッドが、国際公開第2015/169834号パンフレットに開示されているものなどのプロセスによって得られる膜と、
を含む二次電池を提供する。
【0155】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0156】
本発明をこれから以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、その目的は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0157】
実験の部
原材料
ポリマー-1:25℃のDMF中で0.28L/gの固有粘度を有しTm=148℃であるVDF-AA(0.9モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
ポリマー-2:25℃のDMF中で0.117l/gの固有粘度を有しTmが154.2℃であるVDF-HFP(2.5モル%)-HFA(0.4モル%)ポリマー。
ポリマー(F-1):25℃のDMF中で0.32L/gの固有粘度を有しTm=127℃であるVDF-AA(0.5モル%)-HFP(6.5モル%)ポリマー。
カーボンブラック、Super(登録商標)C45及びSuper(登録商標)C65として市販。
黒鉛:75%SMG HE2-20(Hitachi Chemical Co.,Ltd)/25%TIMREX(登録商標)SFG 6。
NMC622:Umicore製
ビニレンカーボネート(VC)、Sigma Aldrichから市販。
媒体(L1):1MのLiPF6及び2重量%のVCを含有する、体積比で1/1のエチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート。
TSPI:3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート
DBTDL:ジブチルスズジラウレート
TEOS:(テトラエトキシシラン)Si(OC2H5)4
コーティングされたAl集電体:Showa Denko SDX(登録商標)-ZM、炭素コーティング
【0158】
方法
ポリマー-1、-2、及び(F-1)の固有粘度の決定
固有粘度(η)[dl/g]は、Ubbelhode粘度計を用い、ポリマーを約0.2g/dlの濃度でN,N-ジメチルホルムアミド中にそれぞれ溶解させることによって得られた溶液の25℃での落下時間に基づいて、以下の式を使用して測定した:
【数1】
(式中、
cは、ポリマー濃度[g/dl]であり;
η
rは、相対粘度、すなわち試料溶液の落下時間と、溶媒の落下時間との間の比であり、η
spは、比粘度、すなわちη
r-1であり、Γは実験因子であり、これらのポリマーについては3に相当する)。
【0159】
DSC分析
DSC分析は、ASTM D3418規格に従って実行され、融点(Tm)は、10℃/分の加熱速度で決定された。
【0160】
実施例1:本発明による正極の作製
以下で報告する量の下記成分を、室温℃で密閉ミキサーに導入した:
活物質:NMC622 80.75重量%
ポリマー(F-1):2.55重量%
カーボンブラック:1.7重量%
液体媒体(L1):15重量%
【0161】
次いで、この組成物を80℃~90℃の二軸押出機に供給し、この組成物のシートを、厚さ1300ミクロンのダイから出した。その後、幅4インチの電気式熱間圧延機(MTI Corporation MSK-HRP-01(登録商標))を使用して、2枚の保護ライナー(ポリ(エチレンテレフタレート)PET、厚さ125ミクロン)の間でV=20mm/秒の積層速度での連続したパスによりシートの厚さを薄くした。各通過の際、2本のロール間の距離は、前のパスで到達したシートの厚さの±20%だけ減らした。その結果、80℃~100℃の温度での連続した積層パスの回数に応じて、89ミクロン~100ミクロンの異なる厚さのシートが作製された。
【0162】
次に、本発明の電極組成物のこのシートを、コーティングされたAl集電体上に共積層した。共積層の条件は、積層に使用した条件と同じであったが、適切な電極厚さを得るためにロール間の距離を調整した。コーティングされた-Al集電体の片面に本発明の組成物シート1枚を共積層することにより、片面正極を作製した。同じ厚さの本発明の組成物シート2枚を、コーティングされた-Al集電体の各面に共積層することによって、両面正極も作製した。
【0163】
正極は、片面あたり4.2~5mAh/cm2の表面容量(ローディング量)を特徴とする。
【0164】
アノードの作製(国際公開第2017/017023号パンフレットによる):
MEK中のポリマー-1の溶液を40℃で調製し、次いで室温にした。次いで、このように得られた溶液に黒鉛を重量比95/5(黒鉛/ポリマー-1)で添加した。その後、液体媒体(L1)を溶液に添加した。重量比[m液体媒体(L1)/(m液体媒体(L1)+mポリマー-1)]×100は80%であった。
【0165】
その後、溶液混合物を、ロールツーロール機を使用して、銅集電体箔上に一定の厚さで広げた。厚さは、ナイフと金属集電体との間の距離によって制御した。片面及び両面コーティングで複数のローディング量を準備した。次に、溶媒を前記混合物から蒸発させ、それによって電極を得た。電極を最後にカレンダー加工した。その結果、電極の3つの異なる部分が得られた:第1の部分は、片面コーティング、5.26mAh/cm2、最終厚さ113ミクロンであり、第2の部分は、両面コーティング、片面あたり5.89mAh/cm2、最終厚さ238ミクロンであり、第3の部分は、両面コーティング、ローディング量4.89mAh/cm2、最終厚さ210ミクロンであった。
【0166】
国際公開第2015/169834号パンフレットによる膜の作製
ポリマー-2(40g)を60℃で275gのアセトンに溶解し、それによって12.7重量%の前記ポリマー-2を含有する溶液を得た。60℃で均質化した後、溶液は均一且つ透明であった。次いで、DBTDL(0.21g)を添加した。溶液を60℃で均質化した。TSPI(0.82g)をそれに添加した。DBTDLの量は、TSPIに対して10モル%であると計算された。TSPIはそれ自体、ポリマー-2に対して0.55モル%であるように計算した。TSPIのイソシアネート官能基をポリマー-2のヒドロキシル基と反応させるために溶液を約90分60℃に保った。
【0167】
次のステップで、液体媒体(L1)を、こうして得られた溶液に加えた。
【0168】
重量比[m(液体媒体(L1))/(m(液体媒体(L1))+m(ポリマー-2))]は80%であった。
【0169】
60℃での均質化後に、ギ酸を添加した。
【0170】
次いで、TEOSをそれに加えた。TEOSがSiO2に完全に変換すると仮定して、TEOSの量を重量比(m(SiO2)/m(ポリマー-2))から計算した。この比は10%であった。
【0171】
ギ酸の量は、次式:
n(ギ酸)/n(TEOS)=2.6
から計算した。
【0172】
全ての成分を、アルゴン雰囲気下でこうして得られた溶液混合物に供給した。この溶液混合物を、乾燥室(露点:-40℃)内でロールツーロール機を使用してPET基材上に一定の厚さで広げた。厚さは、ナイフとPETフィルムの間の距離によって制御された。
【0173】
溶媒は溶液混合物から急速に蒸発され、膜が得られた。数時間後、膜がPET基材から取り外された。このようにして得られた膜は、55μmの一定の厚さを有していた。
【0174】
実施例2:3つのパウチ型Liイオン電池セルの作製
4.5mAh/cm2のローディング量を特徴とする実施例1の本発明の片面正極(80℃で積層及び共積層)1つと、5.3mAh/cm2のローディング量を特徴とする片面負極1つと、上述した膜とを使用することによって、3つのパウチセルを組み立てた。
【0175】
正極の表面積は10.24cm2であり、負極の表面積は12.25cm2であった。
【0176】
異なるCレートでの3つのパウチセルの放電容量値を表1に示す。それらの全てが適切に動作し、再現性があることは明らかである。
【0177】
【0178】
実施例3:2つの高容量スタックセルの作製
実施例1の本発明の両面正極(100℃で積層及び共積層)4つと、両面3つと、片面アノード2つと、上記各正極及び負極の間にある8枚の膜とを組み立てることによって、2つの高容量セルを作製した。これらの電極は、それぞれ正極の表面積が16cm2、負極の表面積が17.22cm2になるように予め打ち抜かれていた。セル1及び2の電極のローディング量は異なっていた:セル1では4.2mAh/cm2(対4.9mAh/cm2の負極)、セル2では5.0mAh/cm2(対5.9mAh/cm2の負極)であった。
【0179】
異なるCレートでの2つの高容量セル(スタック)の放電容量値を表2に示す。それらの全てが適切に動作し、再現性があることは明らかである。
【0180】
【国際調査報告】