(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】血管インプラントおよび医療機器
(51)【国際特許分類】
A61F 2/90 20130101AFI20240119BHJP
A61F 2/95 20130101ALI20240119BHJP
A61F 2/07 20130101ALI20240119BHJP
【FI】
A61F2/90
A61F2/95
A61F2/07
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541260
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2021142230
(87)【国際公開番号】W WO2022148277
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】202110013051.8
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346171
【氏名又は名称】マイクロポート・ニューロテック(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザオ,ハンイ
(72)【発明者】
【氏名】ザン,ミアオ
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チンフェン
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097DD09
4C097DD10
4C267AA44
4C267AA54
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB05
4C267BB11
4C267BB26
4C267BB40
4C267BB63
4C267CC10
4C267GG21
4C267GG24
4C267GG33
(57)【要約】
血管インプラントおよび医療機器。血管インプラントは、2以上の織り合わせたワイヤー(130、132、134、136、138)から編組され、第1端(120、420)および第2端(110、410)を有する管状のインプラント主要部(100、400)を含み、第1端(120、420)および第2端(110、410)は、インプラント主要部の軸の2つの端部に位置する。第1端(120、420)は、複数のループバックリング(122、124、422、424)を含む。第2端(110)は、複数の第1接合部(112)を含み、そのいずれもワイヤー(130、132、134、136、138)のうちの少なくとも2つを接合することで形成される非侵襲性接合部である。2以上のワイヤー(130、132、134、136、138)のうちの少なくとも1つは、コアと、コアを囲むジャケットとを含む。血管インプラントの端部は、血管の壁に引き起こす損傷が少なく、インプラントは、向上した安定性および放射線不透過性を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のインプラント主要部を備え、
前記インプラント主要部は、2以上の織り合わせたワイヤーから編組され、前記インプラント主要部は、前記インプラント主要部の軸の2つの端部に位置する第1端および第2端を有し、
前記第1端は、複数のループバックリングを備え、
前記第2端は、複数の第1接合部を備え、前記複数の第1接合部のそれぞれは、少なくとも2つのワイヤーを接合することで形成される非侵襲性接合部であり、
前記2以上のワイヤーの少なくとも1つは、コアと、前記コアを囲むジャケットとを備え、前記コアは、白金、イリジウム、金、銀、タンタルおよびタングステンのうちの1つ、またはそれらの合金からなり、前記ジャケットは、ニッケルチタニウム合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム合金およびニッケルコバルト合金のうちの1以上からなる、血管インプラント。
【請求項2】
前記複数のループバックリングのうちの少なくとも1つには、その周囲に放射線不透過マーカーが設けられている、請求項1に記載の血管インプラント。
【請求項3】
コアと、前記コアを囲むジャケットとを備える各ワイヤーについて、前記コアの断面積は、対応するワイヤーの総断面積の15%~40%を占める、請求項1または2に記載の血管インプラント。
【請求項4】
前記インプラント主要部は、血管内に半径方向支持力を供給し、前記半径方向支持力は、0.03~0.12N/mmの数値範囲にあり、次式を満たし、
F=aNd
2θ
2
式中、aは定数、Nはワイヤー数、dは前記ワイヤーの径、θは前記インプラント主要部の中央区域でワイヤーが織り合わせられた角度である、請求項1または2に記載の血管インプラント。
【請求項5】
前記第1端は、複数の第1ループバックリングと、複数の第2ループバックリングとを備え、前記複数の第1ループバックリングおよび前記複数の第2ループバックリングは、周方向に交互に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項6】
前記第1および第2ループバックリングは、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿って等しい長さを有し、前記複数の第1ループバックリングまたは前記複数の第2ループバックリングには、その周囲に少なくとも1つの放射線不透過マーカーが設けられている、請求項5に記載の血管インプラント。
【請求項7】
前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第1ループバックリングの長さは、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第2ループバックリングの長さよりも長く、前記複数の第1ループバックリングには、その周囲に少なくとも1つの放射線不透過マーカーが設けられている、請求項5に記載の血管インプラント。
【請求項8】
前記第2端は、複数の第3ループバックリングをさらに備え、前記第1接合部および第3ループバックリングは、周方向に交互に配置されている、請求項6から7のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項9】
前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第1接合部の長さは、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第3ループバックリングの長さよりも長い、請求項8に記載の血管インプラント。
【請求項10】
前記複数の第1接合部および前記複数の第1ループバックリングは、前記血管インプラントの両端で左右対称に配置され、および/または前記複数の第3ループバックリングおよび前記複数の第2ループバックリングは、前記血管インプラントの前記両端で左右対称に配置される、請求項8に記載の血管インプラント。
【請求項11】
前記ループバックリングは、前記ワイヤーのうちの1つを円弧に折り返すことで形成され、前記円弧は、半円形、半楕円形、または半円状の構造である、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項12】
前記ループバックリングは、前記ワイヤーのうちの1つを折り返し、前記ワイヤーのうちの他のワイヤーに接着または溶接することで形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項13】
前記ループバックリングは、前記ワイヤーのうちの1つを折り返し、放射線不透過マーカーを介して前記ワイヤーのうちの他のワイヤーに接着または溶接することで形成され、前記放射線不透過マーカーは、放射線不透過性ばねまたは放射線不透過スリーブである、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項14】
前記ループバックリングは、ループ状バックワイヤーの端部をコイル状に巻き、ばね状の放射線不透過マーカーを形成した後に、他のワイヤーに接着または溶接することで形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項15】
前記第1接合部を形成するために使用される2つのワイヤーは、並置され、またはねじられた後に、溶接され、前記第1接合部の端部は、滑らかな溶接接合部である、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項16】
前記第1接合部を形成するために使用される2つのワイヤーは、並置され、またはねじられた後、管状ばねまたは円筒チューブを介して接着または溶接され、前記管状ばねまたは前記円筒チューブの端部は、滑らかなドーム形状エンドキャップで接着または溶接される、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項17】
前記インプラント主要部は、菱形状メッシュ開口部を有するメッシュ構造物を有し、前記メッシュ構造物は、12~32本の織り合わせたワイヤーから編組され、軸線方向に沿って前記ワイヤーによってインチ当たり10~75の交点が形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項18】
前記インプラント主要部は、菱形状メッシュ開口部を有するメッシュ構造物を有し、前記メッシュ構造物は、16~24本の織り合わせたワイヤーから編組され、軸線方向に沿って前記ワイヤーによってインチ当たり30~55の交点が形成される、請求項17に記載の血管インプラント。
【請求項19】
前記インプラント主要部の金属被覆率は、8%~25%の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項20】
前記コアの前記断面積は、前記ワイヤーの前記総断面積の20%~35%を占める、請求項3に記載の血管インプラント。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項に記載の前記血管インプラントと、
第2接合部を備える送達ロッドと、を備え、
前記第2接合部は、前記血管インプラントの前記第1接合部と取り外し可能なスナップ係合するように構成されている、医療機器。
【請求項22】
前記送達ロッドおよび前記血管インプラントの第2端を受け入れるためのルーメンをさらに備え、
前記血管インプラントの前記第2端および前記送達ロッドが、前記ルーメン内に受け入れられると、前記血管インプラントの前記第2端は、前記ルーメンによって拘束されるため、前記第2接合部とスナップ係合したままとなり、これにより、前記血管インプラントを前記送達ロッドに軸方向にロックし、または、
前記血管インプラントの前記第2端が前記ルーメンから開放されると、前記血管インプラントの前記第2端は、もはや前記ルーメンによって拘束されないため、前記第2接合部から取り外し可能となり、これにより、前記送達ロッドから前記血管インプラントは軸方向にロック解除される、請求項21に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の技術分野に関し、特に、血管インプラントおよび医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲介入法は、血管動脈瘤に対する処置を提供する。これには、ステント、コイルまたは動脈瘤閉塞装置などがあるが、これらに限定されない血管インプラントを、送達装置を使用して血管内の損傷部位へと送達することが通常含まれる。その後、送達ロッドが使用されて、インプラントの意図された形態を維持しつつ、血管インプラントを開放する。このようにして、インプラントは、その中で血管を拡張させることまたは動脈瘤を閉塞させることで治療効果を提供できる。
【0003】
このような血管インプラントの一種として、自己拡張編組ステントは、その良好な送達性能のおかげで、広範囲にわたる用途を見出してきた。従来の自己拡張編組ステントは、通常、多くのワイヤーから編まれているため、それらの端部において鋭利な端部を有するワイヤーが一般的に多数存在する。そのため、使用中に血管に損傷を与えるリスクを伴う。さらに、ワイヤーは一般的に緩く、ステントの構造的安定性を不十分にし、血管内で展開されると変形および管腔崩壊の問題を起こしやすい。
【0004】
そのため、少なくとも上記のデメリットを克服する新規の血管インプラントに対するニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、その端部にて血管に与える損傷を減少させ、かつ安定性が高められた、血管インプラントのためのステント構造の提供を目的とするものである。
【0006】
この目的のために、本発明は、2以上の織り合わせたワイヤーから編組されている管状のインプラント主要部を備える血管インプラントを提供する。前記インプラント主要部は、前記インプラント主要部の軸の2つの端部に位置する第1端および第2端を有する。
【0007】
前記第1端は、複数のループバックリングを備え、前記複数のループバックリングのうちの少なくとも1つには、その周囲に放射線不透過マーカーが設けられている。
【0008】
前記第2端は、複数の第1接合部を備え、前記複数の第1接合部のそれぞれは、少なくとも2つの前記ワイヤーを接合することで形成される非侵襲性接合部である。
【0009】
さらに、前記インプラント主要部は、血管内に半径方向支持力を供給し、前記半径方向支持力は、0.03~0.12N/mmの数値範囲にあり、次式を満たし。
F=aNd2θ2
式中、aは定数、Nはワイヤー数、dは前記ワイヤーの径、θは前記インプラント主要部の中央区域でワイヤーが織り合わせられた角度である。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、2以上の織り合わせたワイヤーから編組されている管状のインプラント主要部を備える他の血管インプラントを提供する。前記インプラント主要部は、前記インプラント主要部の軸の2つの端部に位置する第1端および第2端を有する。
【0011】
前記第1端は、複数のループバックリングを備え、前記複数のループバックリングのうちの少なくとも1つには、その周囲に放射線不透過マーカーが設けられている。
【0012】
前記第2端は、複数の第1接合部を備え、前記複数の第1接合部のそれぞれは、少なくとも2つの前記ワイヤーを接合することで形成される非侵襲性接合部である。
【0013】
前記2以上のワイヤーのうちの少なくとも1つは、コアと、コアを囲むジャケットとを含む。前記コアは、白金、イリジウム、金、銀、タンタルおよびタングステンのうちの1つ、またはそれらの合金からなり、前記ジャケットは、ニッケルチタニウム合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム合金およびニッケルコバルト合金のうちの1以上からなる。前記コアの断面積は前記ワイヤーの総断面積の20%~35%を占める。
【0014】
いくつかの実施形態では、本発明は、2以上の織り合わせたワイヤーから編組されている管状のインプラント主要部を備える、さらに他の血管インプラントを提供する。前記インプラント主要部は、前記インプラント主要部の軸の2つの端部に位置する第1端および第2端を有する。
【0015】
前記第1端は、複数のループバックリングを備える。
【0016】
前記第2端は、複数の第1接合部を備え、前記複数の第1接合部のそれぞれは、少なくとも2つの前記ワイヤーを接合することで形成される非侵襲性接合部である。
【0017】
前記2以上のワイヤーのうちの少なくとも1つは、コアと、コアを囲むジャケットとを含む。前記コアは、白金、イリジウム、金、銀、タンタルおよびタングステンのうちの1つ、またはそれらの合金からなり、前記ジャケットは、ニッケルチタニウム合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム合金およびニッケルコバルト合金のうちの1以上からなる。
【0018】
任意選択で、前記第1端は、複数の第1ループバックリングと、複数の第2ループバックリングとを備えてもよく、前記複数の第1ループバックリングおよび前記複数の第2ループバックリングは、周方向に交互に配置されている。
【0019】
任意選択で、前記第1および第2ループバックリングは、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿って等しい長さを有してもよく、前記複数の第1ループバックリングまたは前記複数の第2ループバックリングには、その周囲に少なくとも1つの放射線不透過マーカーが設けられている。
具体的には、前記複数の第1のループバックリングおよび前記複数の第2のループバックリングのうちの少なくとも1つには、その周方向に少なくとも1つの放射線不透過マーカーが設けられていてもよい。
【0020】
任意選択で、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第1ループバックリングの長さは、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第2ループバックリングの長さよりも長くてもよく、前記複数の第1ループバックリングには、その周囲に少なくとも1つの放射線不透過マーカーが設けられている。
具体的には、前記複数のループバックリングのうちの少なくとも1つには、その周方向に少なくとも1つの放射線不透過マーカーが設けられていてもよい。
【0021】
任意選択で、前記第2端は、複数の第3ループバックリングをさらに備えてもよく、前記第1接合部および第3ループバックリングは、周方向に交互に配置されている。
【0022】
任意選択で、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第1接合部の長さは、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第3ループバックリングの長さよりも長い。
【0023】
任意選択で、前記複数の第1接合部および前記複数の第1ループバックリングは、前記血管インプラントの両端で左右対称に配置されてもよい。
追加的または代替的に、前記複数の第3ループバックリングおよび前記複数の第2ループバックリングは、前記血管インプラントの前記両端で左右対称に配置されてもよい。
【0024】
任意選択で、前記ループバックリングは、前記ワイヤーのうちの1つを円弧に折り返すことで形成されてもよく、前記円弧は、半円形、半楕円形、または半円状の構造である。
【0025】
任意選択で、前記ループバックリングは、前記ワイヤーのうちの1つを折り返し、前記ワイヤーのうちの他のワイヤーに接着または溶接することで形成されてもよい。
【0026】
任意選択で、前記ループバックリングは、前記ワイヤーのうちの1つを折り返し、放射線不透過マーカーを介して前記ワイヤーのうちの他のワイヤーに接着または溶接することで形成されてもよく、前記放射線不透過マーカーは、放射線不透過性ばねまたは放射線不透過スリーブである。
【0027】
任意選択で、前記ループバックリングは、ループ状バックワイヤーの端部をコイル状に巻き、ばね状の放射線不透過マーカーを形成した後に、他のワイヤーに接着または溶接することで形成されてもよい。
任意選択で、前記第1接合部を形成するために使用される2つのワイヤーは、並置され、またはねじられて、その後、溶接され、前記第1接合部の端部は、滑らかな溶接接合部でもよい。
【0028】
任意選択で、前記第1接合部を形成するために使用される2つのワイヤーは、並置され、またはねじられた後に、管状ばねまたは円筒チューブを介して接着または溶接され、前記管状ばねまたは前記円筒チューブの端部は、滑らかなドーム形状エンドキャップで接着または溶接される。
【0029】
任意選択で、前記インプラント主要部は、菱形状メッシュ開口部を有するメッシュ構造物を有してもよく、前記メッシュ構造物は、12~32本の織り合わせたワイヤーから編組され、軸線方向に沿って前記ワイヤーによってインチ当たり10~75の交点が形成される。
【0030】
任意選択で、前記インプラント主要部は、菱形状メッシュ開口部を有するメッシュ構造物を有してもよく、前記メッシュ構造物は、16~24本の織り合わせたワイヤーから編組され、軸線方向に沿って前記ワイヤーによってインチ当たり30~55の交点が形成される。
【0031】
任意選択で、前記インプラント主要部の金属被覆率は、8%~25%の範囲でもよい。
【0032】
任意選択で、前記コアの前記断面積は、前記ワイヤーの前記総断面積の15%~40%を占めてもよい。
【0033】
任意選択で、前記コアの前記断面積は、前記ワイヤーの前記総断面積の20%~35%を占めてもよい。
【0034】
この目的のために、本発明は、上述の血管インプラントのいずれか一つと、送達ロッドとを備える医療機器を提供する。前記送達ロッドは、前記血管インプラントの前記第1接合部と取り外し可能なスナップ係合するように構成されている第2接合部を備える。
【0035】
任意選択で、前記医療機器は、前記送達ロッドおよび前記血管インプラントの第2端を受け入れるためのルーメンをさらに備えてもよく、前記血管インプラントの前記第2端および前記送達ロッドが、前記ルーメン内に受け入れられると、前記血管インプラントの前記第2端は、前記ルーメンによって拘束されるため、前記第2接合部とスナップ係合したままとなり、これにより、前記血管インプラントを前記送達ロッドに軸方向にロックし、または、前記血管インプラントの前記第2端が前記ルーメンから開放されると、前記血管インプラントの前記第2端は、もはや前記ルーメンによって拘束されないため、前記第2接合部から取り外し可能となり、これにより、前記送達ロッドから前記血管インプラントは軸方向にロック解除される。
【0036】
要約すると、本発明で提供される血管インプラントおよび医療機器には以下の利点がある。
【0037】
第1に、血管インプラントの構造は、滑らかな端部閉鎖構造を考慮して設計されており、これは、インプラントに炎症反応を引き起こし得る、ワイヤーのランダムに向いているまたは鋭利な端部によって血管の壁に損傷が引き起こされるリスクを減らすことができる。このようにして、より優れた外科的安全性およびより良好な治療成果を得ることができる。
【0038】
第2に、血管インプラントの端部に設けられている滑らかな閉鎖構造は、ステントに向上した安定性を付与し、血管内においてそれらがより良好に支持されることを可能にする。その結果、それらのルーメンを望ましく維持すること、変形または崩壊に対して耐久性を持つこと、罹患した血管に支持を提供すること、および非常に良好な治療効果を送達することができる。
【0039】
第3に、血管インプラント内のワイヤーは、放射線不透過性材料製であり、ステントにより良好な放射線不透過性を、およびそれらを使用する外科的処置にさらに高まった安全性を付与する。さらに、ワイヤーは、異なる材料および/またはサイズのものでもよく、ステントの半径方向支持力および柔軟性の調整機能を柔軟にでき、それらをより多くのシナリオおよびより広い適用範囲での使用に適するようにする。
【0040】
第4に、医療機器において、血管インプラントは、スナップ係合特性を有する送達ロッドに近位方向に連結できる。好適には、血管インプラントの近位端は、2以上の第1接合部を含み、これらは血管インプラントの周囲において周方向に間隔を空けている。さらに、第1接合部のスナップ係合部材は、血管インプラントの軸に沿って互いに千鳥状に配置されている。これにより、スナップ係合部材が軸方向長さに沿って、異なる円周で圧着することができる。このようにして、血管インプラントおよび送達装置は、血管インプラントの圧縮形態におけるサイズを縮小でき、血管インプラントは、より小さな送達装置内に送達することができる。これは、送達装置がより遠くのまたはより狭い血管内の対象部位にアクセスすることを可能とするだけでなく、カテーテルを2つのシステムで多重化でき、その結果、手術の時間の節約となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施形態による編組ステントの斜視図である。
【
図4】本発明の他の実施形態による編組ステントの部分的正面図である。
【
図6】(A)から(C)は、
図1の編組ステントにおける第1ループバックリングの3つの各構造的実施形態を模式的に示す。
【
図7】(A)から(D)は、
図1の編組ステントにおける第1接合部の4つの各構造的実施形態を模式的に示す。
【
図8】本発明の実施形態による編組ステントに連結されている送達ロッドを模式的に示す。
【0042】
図面中の参照番号は以下の通りである。
10-ステント;100-インプラント主要部;110-第2端;112-第1接合部;114-第3ループバックリング;120-第1端;122-第1ループバックリング;124-第2ループバックリング;126-放射線不透過マーカー;130、132、134、136、138-ワイヤー;137-円筒チューブ;400-インプラント主要部;410-第2端;420-第1端;422-第1ループバックリング; 424-第2ループバックリング;20-医療機器;300-送達ロッド;320-第2接合部;340-送達シース;360-ルーメン
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の目的、利点および特徴は、添付の図面を参照して行われる以下の本発明のより詳細な説明を読むことでより明らかになるであろう。図面は、必ずしも正確な縮尺で描かれているわけではない非常に簡略化された形態で、実施形態の容易かつ明確な説明を手助けするのみの目的で提供されていることに注意する。矛盾のない限り、本明細書に開示される実施形態およびその特徴は、互いに組み合わせることが可能である。
【0044】
本明細書中で使用されるように、単数形の「a」、「an」および「the」は、複数の指示対象を含み、「plurality(複数)」という用語は、文脈において明確にそうでないと指示されていない限り、「two or more(2以上)」の意味で用いられる。本明細書中で使用されるように、「or(または)」という用語は、文脈において明確にそうでないと指示されていない限り、一般的に「and/or(および/または)」の意味で用いられる。「mounting(取り付け)」、「coupling(連結)」および「connection(接続)」という用語は、広義に解釈されるべきである。例えば、接続は、1以上の介入媒体または2つの要素間の内部連絡もしくは相互作用による、永久的、取り外し可能もしくは一体的接続、機械的もしくは電気的接続または直接的もしくは間接的接続であってもよい。当業者であれば、本明細書中の上述の用語の具体的な意味をそれらの文脈に応じて理解することが可能である。数々の視点にわたり、同様の番号が同様の要素を示している。
【0045】
以下において、説明を容易にするため、「distal end(遠位端)」および「proximal end(近位端)」という用語が使用される。「近位端」という用語は、装置を操作しているオペレーターにより近い医療機器の端部を指し、「遠位端」という用語は、オペレーターから離れた医療機器の端部を指す。以下の説明では、本発明をより十分に理解するために、多くの具体的な詳細を明記する。しかしながら、これらの具体的な詳細が1以上ない場合も本発明の実施が可能なことは当業者には明らかとなるだろう。他の例では、本発明を不必要に曖昧にすることを避けるため、周知の技術特徴は説明されていない。
【0046】
原則として、本発明は血管インプラント、とりわけ、脳血管疾患の処置に使用するための編組ステントの提供を目的とする。血管インプラントは、送達装置により対象部位に送達することができて、頭蓋内動脈瘤または他の血管疾患を治療する。血管インプラントは、頭蓋内動脈瘤または非頭蓋内動脈瘤を治療するため、血管を拡張するため、血管内の血栓を捕捉するため、または他の管腔損傷を治療するために使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0047】
本発明は、2以上の織り合わせたワイヤーから編組されている管状のインプラント主要部を含む血管インプラントを提供する。インプラント主要部は、第1端と第2端とを有し、これらはインプラント主要部の軸の2つの端部に位置している。
【0048】
第1端は、複数のループバックリングを含んでおり、そのうちの少なくとも1つには、その周囲に(その周方向に)放射線不透過マーカーが設けられている。
【0049】
第2端は、複数の第1接合部を含んでおり、そのいずれも少なくとも2つのワイヤーにおいて接合することで形成されている非侵襲性接合部である。
【0050】
血管内で展開されると、インプラント主要部は、0.03~0.12N/mmの数値範囲で半径方向支持力を発揮することができる。半径方向支持力は、次式を満たす。
F=aNd2θ2
式中、aは定数、Nはワイヤー数、dはワイヤーの径、θはインプラント主要部の中央区域でワイヤーが織り合わせられた角度である。
【0051】
実施形態によっては、本発明は、2以上の織り合わせたワイヤーから編組されている管状のインプラント主要部を含む他の血管インプラントを提供する。インプラント主要部は、第1端と第2端とを有し、これらはインプラント主要部の軸の2つの端部に位置している。
【0052】
第1端は、複数のループバックリングを含んでおり、そのうちの少なくとも1つには、その周囲に(その周方向に)放射線不透過マーカーが設けられている。
【0053】
第2端は、複数の第1接合部を含んでおり、そのいずれも少なくとも2つのワイヤーにおいて接合することで形成されている非侵襲性接合部である。
【0054】
2以上のワイヤーのうちの少なくとも1つは、コアとコアを囲むジャケットとを含む。コアは、白金、イリジウム、金、銀、タンタルおよびタングステンのうちの1つまたはそれらの合金からなる。ジャケットは、ニッケルチタニウム合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム合金およびニッケルコバルト合金のうちの1以上からなる。コアとコアを囲むジャケットとを含む各ワイヤーについて、コアの断面積はワイヤーの総断面積の20%~35%を占める。
【0055】
実施形態によっては、本発明は、2以上の織り合わせたワイヤーから編組されている管状のインプラント主要部を含むまた別の血管インプラントを提供する。インプラント主要部は、第1端と第2端とを有し、これらはインプラント主要部の2つの端部に位置している。
【0056】
第1端は、複数のループバックリングを含む。
【0057】
第2端は、複数の第1接合部を含んでおり、そのいずれも少なくとも2つのワイヤーにおいて接合することで形成されている非侵襲性接合部である。
【0058】
2以上のワイヤーのうちの少なくとも1つは、コアとコアを囲むジャケットとを含む。コアは、白金、イリジウム、金、銀、タンタルおよびタングステンのうちの1つまたはそれらの合金からなる。ジャケットは、ニッケルチタニウム合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム合金およびニッケルコバルト合金のうちの1以上からなる。
【0059】
以下、添付の図面およびいくつかの実施形態を参照して、本発明で提供される血管インプラントおよび治療装置がさらに説明される。
【0060】
図1および
図2に示されるように、上記の血管インプラントのうちのいずれかは、2以上の織り合わせたワイヤー130から編組される管状のインプラント主要部100を含む編組ステント10であってもよい。2以上のワイヤー130のうちの少なくとも1つは、コアとコアを囲むジャケットとを含む。コアは、白金、イリジウム、金、銀、タンタルおよびタングステンまたはそれらの合金を含む放射線不透過性材料のうちの1つからなる。ジャケットは、ニッケルチタニウム合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム合金およびニッケルコバルト合金のうちの1以上からなる。インプラント主要部100は、5~30mmの軸方向長さを有してもよい。
【0061】
実施形態によっては、インプラント主要部100は、菱形状メッシュ開口部を有するメッシュ構造物を有し、これは軸線方向に沿ってインチ当たり10~75の交点が形成された12~32本の織り合わせたワイヤー130から編組されている。編組ステント10の静置(または非圧縮)形態において、ワイヤーの交点の数は、ステントの設計寸法に応じて、軸線方向に沿ってインチ当たり10~75で変動してもよいことが理解されるであろう。しかしながら、編組ステント10が圧縮形態にある場合、位置付けられる血管部位の寸法に応じて(すなわち、どれほど圧縮されているかに応じて)、ワイヤーの交点の数は、軸線方向に沿ってインチ当たりわずか10まで減らされてもよい。好適な実施形態では、インプラント主要部100は、菱形状メッシュ開口部を有するメッシュ構造物であってもよく、これは軸線方向に沿ってインチ当たり30~55の交点が形成された、16~24本、例えば、16、20または24本の、織り合わせたワイヤー130から編組されている。これらのワイヤーで構成されるインプラント主要部100の金属被覆率は、8%~25%の範囲であってもよい(金属範囲はインプラントの総表面積における金属ワイヤーによって占められる総面積の割合として定義される)。
【0062】
ステントは、同一もしくは異なる患者の異なる血管に対して、または同一血管の異なる位置に対して異なる半径方向支持力を提供する必要があってもよいことが理解されるであろう。本発明の実施形態では、インプラント主要部100が血管内で発揮する半径方向支持力は、0.03~0.12N/mmの範囲であり、次式を満たす。
F=aNd2θ2
式中、aは定数、Nはワイヤー数、dはワイヤー径、θはインプラント主要部の中央区域でワイヤーが織り合わせられた角度である。定数aは、ワイヤーの材料の特性等のパラメーターに関連している。中央区域とは、その広がった端部以外のインプラントの中間有効部分を指す。
【0063】
実施形態によっては、
図2に示されるように、ワイヤー130がインプラント主要部100の中央区域で織り合わせられた角度θは、70°~160°の範囲であってもよい。好適な実施形態では、角度は120°~160°の範囲である。
【0064】
実施形態によっては、ステントの編組は、異なる血管のさまざまなステント半径方向支持力要件に合う上述の式に従って設計されてもよい。例えば、ワイヤーの数、径および/または角度は変更されて、ステントの適用範囲を広げてもよい。
【0065】
実施形態によっては、インプラント主要部100におけるワイヤー130は全て、コアとコアを囲むジャケットとで構成される複合ワイヤーである。複合ワイヤー130は、0.0016インチ~0.0024インチの範囲にある径を有し、特定のワイヤー130の総断面積における各コアの断面積の比率は、15%~40%、好適には、20%~35%の範囲にわたる。ワイヤーの放射線不透過性材料は、より良好な放射線不透過性をステントに付与し、これは外科的な安全性を高める。実施形態によっては、インプラント主要部100内のワイヤーのいくつかは、コアとコアを囲むジャケットとで構成される複合ワイヤーであり、一方、残りのものは異なる材料製であってもよい、および/または異なるサイズを有してもよい。例えば、それらは、異なる範囲にある径を有するまたはニッケルチタニウム合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム合金およびニッケルコバルト合金のうちの1以上からなる複合ワイヤーであってもよい。異なる材料製および/または異なるサイズを有するこれらのワイヤーは、ステントのコストを下げることができ、より多くの状況およびより広い範囲の用途で適用されることを可能にする。
【0066】
図1および
図2に示されるように、インプラント主要部100は、第1端120と第2端110とを有し、これらはインプラント主要部100の軸の2つの端部に位置する。実施形態によっては、第1端120はインプラント主要部100の遠位端であり、第2端110はインプラント主要部100の近位端である。第1端120は、複数の第1ループバックリング122と複数の第2ループバックリング124とを含む。第1ループバックリング122および第2ループバックリング124は、周方向に交互に配置されている。他の実施形態では、第1ループバックリング122および第2ループバックリング124は、規則的または不規則的なパターンのいずれかで周方向に配置されてもよい。例えば、左右対称に配置されている第1ループバックリングは2つのみであって、他のループバックリングは全て第2ループバックリングであってもよい。
【0067】
実施形態によっては、インプラント主要部100の第1端120および/または第2端110は広げられていてもよく、第1端120および/または第2端110によって形成されるインプラント主要部100の軸に対する角度は15°~45°の範囲である。
【0068】
図3を続けて参照し、第1端120は、4つの第1ループバックリング122と4つの第2ループバックリング124とを含んでもよく、これらは周方向に交互に配置される。第1ループバックリング122は、管状のインプラント主要部100の軸に沿った長さを有してもよく、これは、管状のインプラント主要部100の軸に沿った第2ループバックリング124の長さよりも長い。管状のインプラント主要部100の軸に沿った第1ループバックリング122および第2ループバックリングの長さ間の差は、D1と示され、0.5mm~2mmの範囲であってもよい。第2ループバックリング124から第1ループバックリング122を軸方向に千鳥状に配列することで、血管インプラントがより小さなサイズへと圧縮することが可能になり、こうして、より小さな送達装置内へと送達することが可能になる。実施形態によっては、4つの第1ループバックリング122のうちの少なくとも1つには、その周囲に(その周方向に)少なくとも1つの放射線不透過マーカー126が設けられている。編組ステント10の軸方向のサイズを増加させないため、および、血管に損傷を与えないため、第1ループバックリング122の頂点位には放射線不透過マーカーが設けられていなくてもよい。
図2に示される実施形態では、4つの第1ループバックリング122のうちの3つには、それぞれ、放射線不透過マーカー126が設けられている。これらの放射線不透過マーカー126は、外科的処置中にステントをより放射線不透過性にすることができ、このようにして、外科医がより正確にステントを位置付けすることを手助けし、その結果、より優れた外科的安全性がもたらされる。3つの放射線不透過マーカーを設けることにより、良好な放射線不透過性を確保できる一方で、ステントをより小さな半径サイズへと圧縮でき、これによって、ステントがより小さな送達システム内へと送達されることを可能とする。
【0069】
他の実施形態によっては、2つ、6つ、8つ以上の第1ループバックリング122および第2ループバックリング124が含まれてもよい。放射線不透過マーカー126は、第2ループバックリング124にも設けられてもよく、放射線不透過マーカーの数は、少なくとも1つであってもよい。
【0070】
図4および
図5に示されるように、実施形態によっては、インプラント主要部400の第1端420は、4つの第1ループバックリング422および4つの第2ループバックリング424を含み、これらは等距離のスペースをあけて周方向に配置されている。さらに、第1ループバックリング422および第2ループバックリング424は、管状のインプラント主要部400の軸に沿って等しい長さを有している。実施形態によっては、4つの第1ループバックリング422または4つの第2ループバックリング424には、それらの周囲に少なくとも1つの放射線不透過マーカー(不図示)、例えば、2つ、3つ、4つ、6つまたは8つの放射線不透過マーカーが設けられている。他の実施形態によっては、第1ループバックリング422および第2ループバックリング424それぞれの数は、2つ、6つ、8つ以上であってもよい。
【0071】
図6A~
図6Cは、
図2の第1ループバックリング122の3つの各構造的実施形態を模式的に示している。編組ステント10の1つの設計において、単一の第1ループバックリング構造または2以上の第1ループバックリング構造が使用されてもよい。実施形態によっては、第2ループバックリング124も同一の構造を有してもよい。
【0072】
図6Aに示されるように、第1ループバックリング122は、折り返して円弧を形成する部分を有するワイヤー130の1つから形成され、円弧は、半円形、半楕円形または半円状の構造である。
【0073】
図6Bに示されるように、第1ループバックリング122は、折り返し、ワイヤー134の別のものに直接的に接着または溶接された部分を有するワイヤー132のうちの1つから形成される。具体的には、ループ状バックワイヤー132の一端はばねへとコイル状に巻かれて、放射線不透過マーカー126として機能し、他のワイヤー134へと接着または溶接されている。
【0074】
図6Cに示されるように、第1ループバックリング122は、折り返し、放射線不透過マーカー126を通ってワイヤー134の別の1つに接着または溶接された部分を有するワイヤー132の1つから形成され、放射線不透過マーカー126は、放射線不透過マーカーまたは放射線不透過スリーブのいずれかとして実装されてもよい。
【0075】
編組ステントは、その遠位端に平滑な閉構造が設けられている。これらは、インプラントに炎症反応を引き起こし得る、ワイヤーのランダムに向いているまたは形成端部によって血管の壁に損傷が引き起こされるリスクを減らすことができる。このようにして、より優れた外科的安全性およびより良好な治療成果を得ることができる。
【0076】
図1および
図2を続けて参照し、インプラント主要部100の第2端110は、複数の第1接合部112を含み、そのいずれも少なくとも2つのワイヤー130で接合することにより形成される非侵襲性接合部である。ワイヤー130を共に接合するために使用できるアプローチとしては、ねじること、接着剤で結合すること、および溶接が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
図7A~
図7Dは、
図2の第1接合部112の4つの各構造的実施形態を模式的に示す。第2端110は、4つの構造から選択された1つまたは2以上のいずれかを採用してもよい。
図7A~
図7Dに示されるように、各第1接合部112は、各ワイヤー130の2つの端部で構成され、それらは共にねじられて、または束ねられて、湾曲遷移部のない閉端構造を形成している。すなわち、ワイヤー130の2つの端部は、ほぼ0度の角度を形成する。このような湾曲遷移部のない閉端部は、血管内における編組ステントのより良好な固定と、その中における対象の損傷のより効果的な被覆率とを可能にする。
【0078】
図7Aに示される実施形態では、第1接合部112は、2つのワイヤー136および138(の端部)を共にねじって連結させ、円筒チューブ137の主要部をねじられた端部上に配置し、それらを互いに接着または溶接することで形成される。円筒チューブ137の端部にレーザー溶接が適用されて、そこに、非侵襲性接合部として機能する、円滑なドーム形状の端部閉構造を形成してもよい。円筒チューブ137は、管状ばねに置き換えられてもよい。実施形態によっては、円筒チューブ137は、X線に対して不透過な貴金属またはステンレス鋼製であってもよい。ステント構造の溶接品質および安定性を確保するために、閉端部は、切断金属リングで閉じられた近位端であることが好ましい。
【0079】
図7Bに示される実施形態では、第1接合部112が、2つのワイヤー136および138(の端部)を並置させ、複数の位置に形成されている位置Qを溶接することで形成される。実施形態によっては、ワイヤーが互いに溶接された後、円筒チューブまたは管状ばね(不図示)がそれらの上に配置されてもよく、その後、円筒チューブまたは管状ばねの端部にレーザー溶接を適用し、その結果、非侵襲性接合部として機能する、円滑なドーム形状の端部閉構造を形成する。
【0080】
図7Cに示される実施形態では、第1接合部112が、2つのワイヤー136および138(の端部)を互いにねじって、その端部接合部にレーザー溶接を適用し、非侵襲性接合部として機能する、円滑なドーム形状の端部閉構造を形成することで形成される。
【0081】
図7Dに示される実施形態は、
図7Aに示される実施形態と同様であるが、2つのワイヤー136、138のねじられた部分が少なくとも部分的に円筒チューブ137で受けられない点を除く。本実施形態のその他の特徴は全て、
図7Aに示される実施形態と共有されるため、本明細書中でさらに詳細に説明する必要はない。
【0082】
実施形態によっては、インプラント主要部100の第2端110は、複数の第3ループバックリング114をさらに含み、そのいずれも単一ワイヤーのループバックリングであってもよい。第1接合部112および第3ループバックリング114は、周方向に交互に配置されてもよい。第1接合部112および/または第3ループバックリング114の数は、2つ、3つ、4つ、6つまたは8つであってもよいが、そのことに限定されない。
【0083】
実施形態によっては、第1接合部112は、管状のインプラント主要部100の軸に沿って長さを有してもよく、これは、管状のインプラント主要部100の軸に沿った第3ループバックリング114の長さよりも大きくてもよい。管状のインプラント主要部100の軸に沿った第1接合部112および第3ループバックリング114の長さ間の差は、D2として示され、0.5mm~2mmの範囲であってもよい。第3ループバックリング114から第1接合部112を軸方向に千鳥状に配列することで、血管インプラントがより小さなサイズへと圧縮することが可能になり、こうして、より小さな送達装置内へと送達することが可能になる。
【0084】
実施形態によっては、第1端120の第1ループバックリング122および第2端110の第1接合部112は、編組ステント10の(軸方向)両端にて左右対称に(その半径方向に沿って編組ステントを通常二等分する線に対して)配置されていてもよい。すなわち、第1接合部112の頂点および第1ループバックリング122の各頂点は、編組ステント10の軸方向中心線に実質的に平行な線上に位置する。このことは、ステントがどう拡大するか判断することを容易にでき、その使用の安全性を改善できる。
【0085】
別の態様では、本発明は、上述の血管インプラントのうちの1つを含む医療機器と、血管インプラントの第1接合部と取り外し可能なスナップ係合するための第2接合部を含む送達ロッドとを提供する。
【0086】
任意選択で、医療機器は、送達ロッドおよび血管インプラントの第2端を受け入れるためのルーメンをさらに含んでいてもよい。血管インプラントの第2端および送達ロッドがルーメン内に受け入れられると、血管インプラントの第2端は、第2接合部とスナップ係合にある状態のままとなるようにルーメンによって拘束され、その結果、血管インプラントを送達ロッドに軸方向にロックする。血管インプラントの第2端がルーメンから放出されると、もはやルーメンによって拘束されなくなり、第2接合部から取り外し可能となり、従って、血管インプラントは送達ロッドから軸方向にロック解除することができる。
【0087】
図8は、互いに連結されている本発明の実施形態の送達ロッドおよび編組ステントを模式的に示す。
図2および
図8を参照し、編組ステント10および送達ロッド300に加え、医療機器20は、送達シース340をさらに含んでもよい。インプラント主要部100の第2端110は、送達シース340内のルーメン360によって拘束されている場合、送達ロッド300とスナップ係合するように、またはルーメン360によって拘束されていない場合、送達ロッド300から外れるように構成されている第1接合部112を備える。送達ロッド300は、少なくとも1つの第2接合部320を含んでもよい。示される実施形態では、送達ロッド300は、2つの第2接合部320を含み、これらは送達ロッド300の本体部の軸に沿って、少なくとも1つの第1接合部112がそれらとスナップ係合できる距離を空けて離れている。
【0088】
特定の実装例では、編組ステント10の第2端110および送達ロッド300がルーメン360内に受け入れられると、編組ステント10の第2端110は、第2接合部320が第1接合部112とのスナップ係合を維持するようにルーメン360によって拘束され、その結果、編組ステント10を送達ロッド300に軸方向にロックする。
送達シース340の送達ロッド300に対する近位方向の動作の結果、編組ステント10の第2端110および第2接合部320は、もはや半径方向に拘束されなくなる。編組ステント10の自己拡張特性によって、編組ステント10の第1接合部112は、第2接合部320から半径方向に(外側に)離れるように移動し、その結果、編組ステント10の第2端110が送達ロッド300から外れて、分離する。
【0089】
先行技術と比較して、編組ステント10は、送達ロッド300に機械的に連結しつつ、送達シース340内へと送達される。これにより、送達中に編組ステント10が脱落する可能性を最小限に抑え、こうして、送達の安定性が向上する。さらに、スナップ係合構造は単純で、容易なロックおよびロック解除を可能にする。加えて、この配置は、第1接合部112の軸方向位置を周方向に区別(すなわち、周方向にそれらを互いに千鳥状に配列)し、編組ステント10がより小さなサイズへと圧縮されることを可能にし、その結果、より小さな送達シース内へと送達可能にする。これは、ステントがより遠くのまたはより狭い対象部位にアクセスすることを可能とするだけでなく、カテーテルを2つのシステムで多重化でき、その結果、手術の時間の節約になる。
【0090】
以上、本発明を開示してきたが、上記の開示に限定されるものではない。当業者は、その思想および範囲から逸脱することなく、本発明にさまざまな変更および改良を行うことができる。従って、そのような変更および改良のいずれかおよびその全てもまた、添付の請求項およびその等価物によって定義されるように本発明の範囲ないにあることが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状のインプラント主要部を備え、
前記インプラント主要部は、2以上の織り合わせたワイヤーから編組され、前記インプラント主要部は、前記インプラント主要部の軸の2つの端部に位置する第1端および第2端を有し、
前記第1端は、複数のループバックリングを備え、
前記第2端は、複数の第1接合部を備え、前記複数の第1接合部のそれぞれは、少なくとも2つのワイヤーを接合することで形成される非侵襲性接合部であり、
前記2以上のワイヤーの少なくとも1つは、コアと、前記コアを囲むジャケットとを備え、前記コアは、白金、イリジウム、金、銀、タンタルおよびタングステンのうちの1つ、またはそれらの合金からなり、前記ジャケットは、ニッケルチタニウム合金、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム合金およびニッケルコバルト合金のうちの1以上からなる、血管インプラント。
【請求項2】
前記複数のループバックリングのうちの少なくとも1つには、その周囲に放射線不透過マーカーが設けられている、請求項1に記載の血管インプラント。
【請求項3】
コアと、前記コアを囲むジャケットとを備える各ワイヤーについて、前記コアの断面積は、対応するワイヤーの総断面積の15%~40%
、好ましくは20%~35%を占める、請求項1または2に記載の血管インプラント。
【請求項4】
前記インプラント主要部は、血管内に半径方向支持力を供給し、前記半径方向支持力は、0.03~0.12N/mmの数値範囲にあり、次式を満たし、
F=aNd
2θ
2
式中、aは定数、Nはワイヤー数、dは前記ワイヤーの径、θは前記インプラント主要部の中央区域でワイヤーが織り合わせられた角度である、請求項1または2に記載の血管インプラント。
【請求項5】
前記第1端は、複数の第1ループバックリングと、複数の第2ループバックリングとを備え、前記複数の第1ループバックリングおよび前記複数の第2ループバックリングは、周方向に交互に配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項6】
前記第1および第2ループバックリングは、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿って等しい長さを有し、前記複数の第1ループバックリングまたは前記複数の第2ループバックリングには、その周囲に少なくとも1つの放射線不透過マーカーが設けられている、請求項5に記載の血管インプラント。
【請求項7】
前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第1ループバックリングの長さは、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第2ループバックリングの長さよりも長く、前記複数の第1ループバックリングには、その周囲に少なくとも1つの放射線不透過マーカーが設けられている、請求項5に記載の血管インプラント。
【請求項8】
前記第2端は、複数の第3ループバックリングをさらに備え、前記第1接合部および第3ループバックリングは、周方向に交互に配置されている、請求項6から7のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項9】
前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第1接合部の長さは、前記管状のインプラント主要部の前記軸に沿った前記第3ループバックリングの長さよりも長い
か、
または
前記複数の第1接合部および前記複数の第1ループバックリングは、前記血管インプラントの両端で左右対称に配置され、および/または前記複数の第3ループバックリングおよび前記複数の第2ループバックリングは、前記血管インプラントの前記両端で左右対称に配置される、請求項8に記載の血管インプラント。
【請求項10】
前記ループバックリングは
、円弧に折り返
された一部を有する前記ワイヤーの1つから形成され、前記円弧は、半円形、半楕円形、または半円状の構造である
か、
前記ループバックリングは、円弧に折り返された一部を有し、前記ワイヤーのうちの他のワイヤーに接着または溶接されるワイヤーであって、好ましくは前記折り返された一部を有するワイヤーの一端はコイル状にされたばね状の放射線不透過マーカーでありかつ前記他のワイヤーに接着または溶接されているワイヤーの1つから形成されているか、または
前記ループバックリングは、円弧に折り返された一部を有し、放射線不透過マーカーを介して前記ワイヤーのうちの他のワイヤーに接着または溶接されるワイヤーであって、前記放射線不透過マーカーは放射線不透過ばねまたは放射線不透過スリーブであるワイヤーの1つから形成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項11】
前記第1接合部を形成するために使用される2つのワイヤーは、並置され、またはねじられた後に、溶接され、前記第1接合部の端部は、滑らかな溶接接合部である
か、
または
前記第1接合部を形成するために使用される2つのワイヤーは、並置され、またはねじられた後、管状ばねまたは円筒チューブを介して接着または溶接され、前記管状ばねまたは前記円筒チューブの端部は、滑らかなドーム形状エンドキャップで接着または溶接される、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項12】
前記インプラント主要部は、菱形状メッシュ開口部を有するメッシュ構造物を有し、前記メッシュ構造物は、12~32本の織り合わせたワイヤーから編組され、軸線方向に沿って前記ワイヤーによってインチ当たり10~75の交点が形成さ
れ、好ましくは前記インプラント主要部は、16~24本の織り合わせたワイヤーから編組され、軸線方向に沿って前記ワイヤーによってインチ当たり30~55の交点が形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項13】
前記インプラント主要部の金属被覆率は、8%~25%の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の血管インプラント。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれか一項に記載の前記血管インプラントと、
第2接合部を備える送達ロッドと、を備え、
前記第2接合部は、前記血管インプラントの前記第1接合部と取り外し可能なスナップ係合するように構成されている、医療機器。
【請求項15】
前記送達ロッドおよび前記血管インプラントの第2端を受け入れるためのルーメンをさらに備え、
前記血管インプラントの前記第2端および前記送達ロッドが、前記ルーメン内に受け入れられると、前記血管インプラントの前記第2端は、前記ルーメンによって拘束されるため、前記第2接合部とスナップ係合したままとなり、これにより、前記血管インプラントを前記送達ロッドに軸方向にロックし、または、
前記血管インプラントの前記第2端が前記ルーメンから開放されると、前記血管インプラントの前記第2端は、もはや前記ルーメンによって拘束されないため、前記第2接合部から取り外し可能となり、これにより、前記送達ロッドから前記血管インプラントは軸方向にロック解除される、請求項
14に記載の医療機器。
【国際調査報告】