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特表2024-503643改良された付加製造監視方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】改良された付加製造監視方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/12 20060101AFI20240119BHJP
   G01N 29/46 20060101ALI20240119BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240119BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240119BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240119BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240119BHJP
【FI】
G01N29/12
G01N29/46
B33Y50/00
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541300
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2022050237
(87)【国際公開番号】W WO2022148827
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】21150518.5
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520030800
【氏名又は名称】グラインドソニック・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】GRINDOSONIC BV
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デン・ボッシェ,アレックス
【テーマコード(参考)】
2G047
4F213
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047BA04
2G047BC04
2G047BC07
2G047CA03
2G047GG10
2G047GG31
2G047GG32
4F213AM23
4F213AM32
4F213AP06
4F213AQ02
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL52
(57)【要約】
本発明は、3D印刷された固体部品の逸脱した付加製造(AM)プロセス挙動を非破壊的に検出するための方法に関し、本方法は、固体部品に衝撃、好ましくは機械的衝撃を与えるステップと、周波数領域における衝撃に対する固体部品の振動応答を取得するステップと、振動応答から固有周波数、および任意選択的に減衰、のセットを抽出するステップであって、固有周波数の各々は固体部品の振動モードに対応する、抽出するステップと、少なくとも1つの振動モードについて、振動モードに対応する抽出された固有周波数のセットのうちの1つを振動モードの基準固有周波数値と比較することによって固有周波数シフトを取得し、それによって逸脱したAMプロセス挙動を検出するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D印刷された固体部品の逸脱した付加製造(AM)プロセス挙動を非破壊的に検出するための方法であって、
前記固体部品に機械的衝撃を与えるステップと、
周波数領域における前記衝撃に対する前記固体部品の振動応答を取得するステップと、
前記振動応答から固有周波数のセット、および減衰のセットを抽出するステップであって、前記固有周波数の各々は前記固体部品の振動モードに対応し、前記減衰の各々は前記固有周波数のセットのうちの固有周波数に対応する、抽出するステップと、
少なくとも1つの振動モードについて、
前記振動モードに対応する前記抽出された固有周波数のセットのうちの1つを前記振動モードの基準固有周波数値と比較することによって固有周波数シフトを取得し、前記固有周波数シフトから前記固体部品の多孔度値を取得し、
前記少なくとも1つの固有周波数について、前記固有周波数に対応する減衰から少なくとも1つの制動パラメータを計算することによって、前記固体部品のマイクロクラック量値を取得する
ことによって、前記逸脱したAMプロセス挙動を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記基準固有周波数は、固有周波数軌跡から取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固有周波数軌跡は、前記固体部品の高さの関数として、決定された断面を有する固体部品の前記固有周波数を記述する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記固有周波数軌跡は、較正部品の較正AMプロセス中の異なる瞬間に実行される固有周波数測定のセットを介して決定される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出された固有周波数は、前記固体部品の振動モードに対応し、好ましくは前記振動モードは、屈曲モード、ねじりモード、長手方向振動モード、または1次、2次、3次高調波などのそれらの任意の高調波のいずれかまたは任意の組合せ、より好ましくは前記屈曲モードの前記1次高調波、前記屈曲モードの前記2次高調波、前記ねじりモードの前記1次高調波、前記ねじりモードの前記2次高調波、前記長手方向振動モードの前記1次高調波を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記振動応答は音響センサによって取得される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記固体部品を3D印刷するための付加製造プロセス中に適用される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
3D印刷装置を較正するための較正方法であって、
a)3D印刷によって印刷プレート上に固体部品のセットを形成するステップと、
b)請求項1~7のいずれかに記載の方法を使用して前記固体部品のいずれか、好ましくは各々における逸脱したプロセス挙動を検出することによって、前記逸脱したプロセス挙動の位置情報を取得するステップと、
c)前記3D印刷装置上の前記逸脱したプロセス挙動の前記位置情報を考慮に入れて前記3D印刷装置を較正するステップと
を含む、較正方法。
【請求項9】
前記固体部品のセットは、前記印刷プレートに対して所定のパターン、好ましくはマトリックスパターンで配置され、前記逸脱したプロセス挙動の前記位置情報は、どの固体部品において前記逸脱したプロセス挙動が生じるかを識別することによって、前記印刷プレートのX-Y位置において取得される、請求項8に記載の較正方法。
【請求項10】
どの固体部品において前記逸脱したプロセス挙動が生じるかを識別することは、以下の方法、すなわち、
請求項1~7のいずれかに記載の方法が、前記固体部品のセットの各固体部品に対して別々に実行される、
衝撃が、2つ以上の固体部品に同時に、好ましくはすべての固体部品に同時に与えられ、前記2つ以上の固体部品の応答が得られ得る、
前記セットの前記固体部品は、別個の基準固有周波数値、好ましくは一意に異なる固有周波数値を含み、それにより、前記衝撃は、2つ以上、好ましくはすべての固体部品に同時に与えられ、それにより、好ましくは、前記2つ以上、好ましくはすべての固体部品の前記振動応答は、本質的に同時に得られる、のいずれかまたは任意の組合せを含む、請求項9に記載の較正方法。
【請求項11】
前記較正方法は、前記固体部品のセットの形成中に複数回実行され、好ましくは、前記較正方法は、前記固体部品の異なる高さで実行される、請求項8~10のいずれかに記載の較正方法。
【請求項12】
前記3D印刷装置において実行される、請求項8~11のいずれかに記載の較正方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの固体部品のセットは、生産部品と、較正部品のセットとを備え、請求項8~12のいずれかに記載の較正方法が、前記較正部品のセットに適用される、請求項8~12のいずれかに記載の較正方法。
【請求項14】
3D印刷操作方法であって、少なくとも1つの固体部品のセットに対して前記固体部品の形成中の複数の測定イベントで請求項8~13のいずれかに記載の較正方法を実行することを含み、それにより、各測定イベントでの前記基準固有周波数値は、前記測定イベントに対する所定の目標基準固有周波数であり、それにより、前記3D印刷装置の処理パラメータが、前記固有周波数シフトに基づいて操作される、3D印刷操作方法。
【請求項15】
3D印刷された固体部品の逸脱した付加製造(AM)プロセス挙動を非破壊的に検出するためのシステムであって、
固体部品に衝撃を与えるための機械的インパクタと、
前記衝撃に対する前記固体部品の振動応答を取得するためのセンサと、
処理手段であって、
周波数領域における前記振動応答を計算し、
前記振動応答から固有周波数のセットおよび減衰のセットを抽出し、前記固有周波数の各々は前記固体部品の振動モードに対応し、前記減衰の各々は前記固有周波数のセットのうちの固有周波数に対応し、
少なくとも1つの振動モードについて、前記振動モードに対応する前記抽出された固有周波数のセットのうちの1つを前記振動モードの基準固有周波数値と比較することによって固有周波数シフトを取得し、前記固有周波数シフトから前記固体部品の多孔度値を取得し、
少なくとも1つの固有周波数について、前記固有周波数に対応する減衰から少なくとも1つの制動パラメータを計算することによって、前記固体部品のマイクロクラック量値を取得する
ことによって、前記逸脱したAMプロセス挙動を検出するように構成された処理手段と
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、多孔度、焼結品質、弾性、マイクロセルクラスタリング、欠陥などに関して付加製造プロセスを監視するための非破壊的方法に関する。これにより、逸脱したプロセス挙動を適時に観測し、任意選択的に修正することができる。本発明はまた、例えば逸脱したプロセス挙動の補償によって付加製造装置を較正するための方法に関する。本発明はまた、衝撃励起測定方法およびシステムによる非破壊試験方法およびシステムの分野に関する。本発明は、ワークピースにおけるマイクロクラックの量を測定することを可能にし、それにより、ワークピースにおける長期的な構造的弱点の定性的および定量的評価を可能にする。
【背景技術】
【0002】
背景
3次元または3D印刷とも呼ばれる付加製造(AM)は、近年、大きな勢いを得ているプロセスである。それは、CADモデルまたはデジタル3Dモデルからの3次元物体の構築を可能にする。これにより、材料を制御条件下で堆積、接合、または固化させて3次元物体を作成することができ、液体分子または粉末粒子などの材料が一緒に付加され、通常は層ごとに融合される。3D印刷の精度、再現性、および材料範囲は、いくつかの3D印刷プロセスが工業生産技術として実行可能であると考えられる点まで増加している。3D印刷の重要な利点の1つは、軽量化のための内部トラス構造を有する中空部品または部品を含む、そうでなければ手作業で構築することが不可能である非常に複雑な形状または幾何形状を生成する能力である。
【0003】
多くの場合、3D印刷された部品が要求される品質基準を満たし、異常を検出および特徴付けできることを保証する必要がある。したがって、機械的特性評価ならびに適切な異常検出、品質管理、および監視のための計測ツールを有することが重要である。
【0004】
期待値からの量の様々なタイプの偏差がいつ現れるかを知ることは、付加製造された部品の重大な欠陥の早期検出の可能性を高め、工程内介入の可能性を提供し、したがって修理または再加工の時間およびコストを低減する。AMプロセスは材料の漸進的な堆積を伴うので、堆積されるにつれて材料の品質を監視する固有の機会を与える。この必要性を満たすために、測定することができる様々な検知方法および信号がある。利用可能な測定モダリティの中でも、音響ベースの方法は、比較的低コストで製造プロセスのリアルタイムの継続的な稼働中監視を潜在的に提供するという利点を有する。
【0005】
Taheri,Hosseinの博士論文「Nondestructive evaluation and in-situ monitoring for metal additive manufacturing」(2018年)、Graduate Theses and Dissertations Iowa State University,16675、は、その場でAM方法を監視する方法を開示している。機械および材料の状態の両方を監視するために使用される音響測定のための概念実証が実証される。解析は、音響信号から抽出された時間的およびスペクトル的特徴に対して実行されている。これらの特徴は、一般に、欠陥形成、および生成され、潜在的にプロセスを特徴付けることができる音響ノイズに関連する。信号処理ツールの新規な用途は、音響信号の時間的およびスペクトル的特徴の識別に使用される。この方法は、AMプロセス中に音響測定値を取得し、そこから情報を抽出しようとすることに関する。これは複雑な解析を伴うようであり、正確な製造方法および使用される材料に大きく依存し得る。
【0006】
米国特許出願公開第2019/234908号は、試験信号を印加することによって物体振動を生成することによって、定義された周波数範囲(f)で物体を動的に機械的に励起することによって物体の周波数依存固有振動挙動を測定することと、励起のために物体内に生成された物体振動を検出することとを含む物体解析を開示している。さらに、本方法は、物体の仮想デジタル表現を生成することによって物体の周波数依存固有振動挙動をシミュレートすることと、仮想表現に基づいて有限要素解析を実行することとを含み、仮想物体振動を生成するために仮想表現を仮想周波数範囲にシミュレートされた方法で動的に励起することと、シミュレートされた方法で励起することによって物体に生成された仮想物体振動を計算することと、測定された固有振動挙動とシミュレートされた周波数依存固有振動挙動との比較に基づいて物体状態を導出することとを含む。
【0007】
欧州特許出願公開第3309544号は、3D製造装置のインプロセス監視または3D製造された構造体の品質管理のための方法を開示している。本方法は、3D製造された構造体に音響波を生成する生成ステップを含む。受信ステップは、マイクロフォンアレイを用いて音響波を受信する。解析ステップは、音響波の周波数スペクトルを解析する。判定ステップは、周波数スペクトルが3D製造された構造体の欠陥を示すかどうかを判定する。
【0008】
米国特許出願公開第2020/057030号は、付加製造部品の非破壊試験のためのシステムおよび方法を開示している。入力機構は、構築プラットフォーム上に部品を含む付加製造構築構造体を励起力(例えば、振動)で励起して、部品に動的応答を誘導する。出力機構(例えば、非接触トランスデューサ)は、部品における誘導された動的応答を感知する。プロセッサは、部品の欠陥の指示を識別するために応答と励起との間の関係を決定して調査し、指示が識別された場合にアラートを通信する。プロセッサは、関係の位相、大きさ、コヒーレンス、または時間遅延を基準関係と比較することができ、および/またはモード周波数またはモード制動を基準と比較して、事前に確立された閾値より大きい偏差を識別することができる。
【0009】
欧州特許出願公開第3658868号は、固体材料サンプルの機械的振動応答を解析するための装置であって、固体材料サンプルの表面上のそれぞれの明確な点に衝撃を与えるように配置されたインパクタのアレイと、少なくとも1つのインパクタの衝撃に続いて、機械的振動応答を時変信号として捕捉するように構成されたセンサと、時変信号を解析して、時変信号を構成する正弦波の周波数および崩壊定数を決定するように構成された処理手段とを備える装置を開示している。本発明はまた、固体材料サンプルを特徴付ける対応する方法に関する。
【0010】
国際公開第2020254698号は、高温で試験部品の材料特性を音響的に測定するための方法を開示しており、この方法は、a.試験部品を試験温度範囲内に加熱するステップと、b.較正期間内に試験部品から振動信号を捕捉することによって前記試験温度範囲内でバックグラウンド測定を実行し、それによってノイズ信号を取得するステップと、c.以下のステップ、すなわち、c1.前記試験部品に振動励起を付与するステップと、c2.試験期間内に試験部品の振動信号を捕捉し、それによって前記振動励起に対する振動応答信号を取得するステップと、によって前記試験温度範囲内および試験期間内で前記試験部品に対して音響測定を実行するステップと、d.振動応答信号を解析することによって試験部品の材料特性を取得し、それによってノイズ信号を考慮するステップとを含む。本発明はまた、高温で試験部品の材料特性を音響的に測定するためのシステムに関する。
【0011】
本出願人名義の後者の先行技術文献の両方は、衝撃励起(IE)測定を実行するための方法および装置に関する。IE技術は基本的に、ワークピースに衝撃を与えることと、振動応答信号を取得および解析することとからなる。この信号は、音響応答信号とも呼ばれる。応答信号は、マイクロフォン、圧電変位センサおよび/またはレーザ干渉計を使用することを含む、いくつかの方法を介して捕捉することができる。
【0012】
IE測定を使用して、ワークピースを非破壊的に試験して、ワークピースの品質を定量的に評価することができる。これは、金属、合金、ポリマー、セラミック、またはそれらの任意の組合せなど、あらゆる種類の材料のワークピースに使用することができる。IE測定、特に本発明は、付加製造されたワークピースとも呼ばれる3D印刷されたワークピースを特徴付けるのに特に有用であると思われる。そのようなワークピースでは、付加製造(AM)プロセスは、ワークピースの品質に関して不均一性をもたらす可能性があり、すなわち、ワークピースのいくつかの領域は、他の領域よりも品質が低い可能性がある。
【0013】
ワークピース、特に3D印刷されたワークピースの品質は、ワークピースの多孔度を測定することによって特徴付けることができる。典型的には、より高い多孔度はより多くの欠陥を示し、より低い品質のワークピースを示すことができる。多孔度は、断層撮影法、例えばX線マイクロコンピュータ断層撮影法(CT)を用いて測定することができる。X線マイクロCTは、スキャンされた物体の完全な3Dモデルを再作成し、内部の特徴または欠陥の非破壊検査を可能にするという利点を有する。しかしながら、X線マイクロCTは、高価で時間のかかる測定方法である。さらに、本発明者らは、X線マイクロCTは、あらゆる種類の品質低下構造特性を解決することができないことを見出した。例えば、マイクロCTは、マイクロクラックを検出するための良好な感度を有さない。したがって、本発明は、単一の測定で、または少なくとも単一の測定設定で、多孔度およびマイクロクラックの両方に関してAMワークピースの品質評価を得ることができる方法を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記および他の問題を克服することを目的とする。本発明は、従来技術の方法よりも使用および/または実装が容易であり、音響測定に基づいて逸脱したAMプロセス挙動の正確な測定を可能にする付加製造プロセスを監視するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
本発明は、3D印刷された固体部品の逸脱した付加製造(AM)プロセス挙動を非破壊的に検出するための方法に関し、本方法は、
-固体部品に衝撃、好ましくは機械的衝撃を与えるステップと、
-周波数領域における衝撃に対する固体部品の振動応答を取得するステップと、
-振動応答から固有周波数、および任意選択的に減衰、のセットを抽出するステップであって、前記固有周波数の各々は前記固体部品の振動モードに対応する、抽出するステップと、
-少なくとも1つの振動モードについて、
・ 前記振動モードに対応する抽出された固有周波数のセットのうちの1つを前記振動モードの基準固有周波数値と比較することによって固有周波数シフトを取得し、好ましくは前記固有周波数シフトから固体部品の多孔度値を取得し、それによって逸脱したAMプロセス挙動を検出するステップと
を含む。
【0016】
好ましくは、これにより、振動応答から減衰のセットも抽出され、前記減衰の各々は、前記固有周波数セットのうちの固有周波数に対応する。これらの減衰は、少なくとも1つ、好ましくは固有周波数の各々について抽出することができる。それにより、少なくとも1つの固有周波数について、前記固有周波数に対応する減衰から少なくとも1つの制動パラメータが計算され、それにより、固有周波数シフトのみでは検出されない逸脱したAMプロセス挙動を検出することを可能にする固体部品のマイクロクラック量値が取得される。これにより、減衰は、衝撃が固体部品に与えられた後に特定の固有周波数がどのようにエコーするか、特に、衝撃後に前記固有周波数が振動応答において依然として見られることができる時間に関連する。減衰は、振動応答の時間領域応答から、および/または振動応答の周波数領域応答から、好ましくは周波数領域応答から抽出することができる。制動係数とも呼ばれる制動パラメータは、減衰から計算することができる。典型的には、減衰は、振動応答の周波数スペクトルの固有周波数ピークを見ることによって定量化することができる。好ましくは、制動パラメータは、振動応答における固有周波数ピークの幅、例えば、半値における固有周波数ピークの幅に関連する。代替的または追加的に、制動パラメータは、振動応答における固有周波数ピークの形状、例えばスキュー制動パラメータおよび/または尖度パラメータに関連することができる。
【0017】
本発明者らは、このようにして得られた固有周波数シフトが固体部品の多孔度に直接関係し、これが次に中サイズおよび大サイズの半径を含む空隙の量に関係することを見出した。さらに、本発明者らは、固有周波数の制動パラメータが固体部品内のマイクロクラックの量に密接に関連し、これが次に固体部品の耐久性、すなわち長期強度に関連することを見出した。マイクロクラックは、構造が本質的に線形であり、したがって、固体部品の多孔度に大きく寄与しないことに留意されたい。しかしながら、本発明は、単一の測定および/または単一の測定設定で多孔度およびマイクロクラックの両方に関する情報を得ることを可能にし、したがって固有周波数シフトおよび制動パラメータに基づいて固体部品の品質の定量的評価を得ることも可能にする。この定量的評価は、固体部品を作製するために使用されるAM方法にも適用される。定量的評価は、好ましくはスコアリングアルゴリズムによって行われてもよく、スコアリングアルゴリズムは、1つまたは複数の固有周波数シフトおよび1つまたは複数の制動パラメータの値に応じてスコアを計算し、任意選択的に、好ましくは固体部品の最小品質を確保するように選択される閾値のセットに応じてスコアを計算する。
【0018】
本発明はまた、3D印刷された固体部品の逸脱した付加製造(AM)プロセス挙動を非破壊的に検出するためのシステムに関し、本システムは、
-固体部品に衝撃を与えるためのインパクタ、好ましくは機械的インパクタと、
-衝撃に対する固体部品の振動応答を取得するためのセンサと、
-処理手段であって、
・ 周波数領域における振動応答を計算し、
・ 振動応答から固有周波数、および任意選択的に減衰、のセットを抽出し、前記固有周波数の各々は前記固体部品の振動モードに対応し、
・ 少なくとも1つの振動モードについて、前記振動モードに対応する抽出された固有周波数のセットのうちの1つを前記振動モードの基準固有周波数値と比較することによって固有周波数シフトを取得し、好ましくは前記固有周波数シフトから固体部品の多孔度値を取得し、それによって逸脱したAMプロセス挙動を検出する
ように構成された処理手段と
を備える。
【0019】
好ましくは、処理手段は、振動応答から減衰のセットを取得するように構成され、前記減衰の各々は、前記固有周波数セットのうちの固有周波数に対応する。これらの減衰は、少なくとも1つ、好ましくは固有周波数の各々について抽出することができる。これにより、処理手段は、少なくとも1つの固有周波数について、前記固有周波数に対応する減衰から少なくとも1つの制動パラメータを計算するように構成され、それによって固体部品のマイクロクラック量値を取得する。
【0020】
欧州特許出願公開第3435044号は、固体材料サンプルの機械的振動応答を解析するための装置であって、固体材料サンプルの表面上のそれぞれの明確な点に衝撃を与えるように配置された少なくとも1つのインパクタと、少なくとも1つのインパクタの衝撃に続いて、機械的振動応答を時変信号として捕捉するように構成されたセンサと、時変信号を解析して、時変信号を構成する正弦波の周波数および崩壊定数を決定するように構成された処理手段とを備える装置を開示している。本発明はまた、固体材料サンプルを特徴付ける対応する方法に関する。この文献に記載された方法および装置は、衝撃に対する固体部品の振動応答の測定を実行するために使用することができる。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、3D印刷装置を較正するための方法に関し、本方法は、
a)3D印刷によって印刷プレート上に固体部品のセットを形成するステップと、
b)上述した方法を使用して固体部品のいずれかにおける逸脱したプロセス挙動を検出することによって、前記逸脱したプロセス挙動の位置情報を取得するステップと、
c)3D印刷装置上の逸脱したプロセス挙動の位置情報を考慮に入れて3D印刷装置を較正するステップと
を含む。
【0022】
本発明はまた、3D印刷操作方法に関し、本3D印刷操作方法は、少なくとも1つの固体部品のセットに対して固体部品の形成中の複数の測定イベントで較正方法を実行することを含み、それにより、各測定イベントでの基準固有周波数値は、前記測定イベントに対する所定の目標基準固有周波数であり、それにより、3D印刷装置の処理パラメータが、固有周波数シフトに基づいて操作される。
【0023】
好ましい実施形態では、振動応答は音響センサによって取得される。音響センサは、固体部品と接触していてもよいし、固体部品から離れて配置されていてもよい。好ましくは、本発明において、音響センサは、固体部品から離れて配置される。これにより、音響センサが構築中の固体部品と接触していることを確実にすることを困難にすることなく、その場監視およびインプロセス監視が可能になる。
【0024】
好ましい実施形態では、方法はその場で適用される。これにより、好ましくは、方法は付加製造プロセス中に適用される。これにより、リアルタイムでのAMプロセスのその場監視が可能になり、AMプロセスのどの部分の間に逸脱挙動が発生するかを識別するのに役立つことができる。AMプロセスが層ごとに固体部品を印刷することを含む場合、その場監視はまた、固体部品に欠陥が発生し得る場所を特定することを可能にする。それはまた、AMプロセスを操作することを可能にし得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による装置の一実施形態の概略図である。
図2】固体材料サンプルの機械的振動応答を解析するための装置の好ましい実施形態を示す図である。
図3a】3D印刷されている固体部品に対して実行される本発明による方法を示す図である。
図3b】3D印刷されている固体部品に対して実行される本発明による方法を示す図である。
図4】本発明による方法の例示的な実施形態を示す図である。
図5A】3D印刷された開いた立方体形状の格子構造体のセットを示す図である。
図5B】3D印刷された開いた立方体形状の格子構造体のセットを示す図である。本発明に従って試験した2セットの格子構造体。
図6】10個の異なるAM固体部品の固有周波数および対応する制動パラメータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、上記および特許請求の範囲で規定され、本明細書でさらに規定される3D印刷された固体部品の逸脱した付加製造(AM)プロセス挙動を非破壊的に検出するための方法およびシステムに関する。
【0027】
検出方法は、固体部品に衝撃、好ましくは機械的衝撃を与えるステップと、周波数領域における衝撃に対する固体部品の振動応答を取得するステップと、振動応答から固有周波数、および任意選択的に減衰、のセットを抽出するステップであって、前記固有周波数の各々は前記固体部品の振動モードに対応する、抽出するステップと、少なくとも1つの振動モードについて、前記振動モードに対応する抽出された固有周波数のセットのうちの1つを前記振動モードの基準固有周波数値と比較することによって固有周波数シフトを取得し、それによって逸脱したAMプロセス挙動を検出するステップとを含む。検出方法は、振動応答から減衰のセットを抽出することであって、前記減衰の各々が前記固有周波数のセットのうちの固有周波数に対応する、抽出することと、少なくとも1つの固有周波数について、前記固有周波数に対応する減衰から少なくとも1つの制動パラメータを計算することによって固体部品のマイクロクラック量値を取得することとを含むことが好ましい。
【0028】
ここで、固有周波数シフトとは、周波数領域において観測される応答における固有周波数ピークの変化をいう。この変化は、抽出された固有周波数と基準固有周波数との間の振動モードのピーク周波数の差であり得るが、ピーク幅の変化を指すこともできる。後者の場合、固有周波数シフトは、例えば、ピーク高さの半分の周波数の変化を見ることによって定量化することができる。広がったピークは、マイクロクラックによって引き起こされる可能性がある内部摩擦の増加による制動の増加を示す傾向がある。
【0029】
応答を取得するためのシステムは、固体材料サンプルの機械的振動応答を解析するための装置を備えることができ、その実施形態は図1に概略的に示されている。この実施形態は、固体部品をサンプルホルダ上に配置することによって3D固体部品を試験するために使用することができる。装置100は、固体材料サンプル99の表面上のそれぞれの明確に画定された点に衝撃を与えるように構成された少なくとも1つのインパクタ(すなわち、1つまたは複数のインパクタ)110を備える。一般性を失うことなく、単一のインパクタ110を有する装置100が示されている。装置100は、少なくとも1つのインパクタ99の衝撃に続いて、サンプル99の機械的振動応答を時変信号として捕捉するように構成されたセンサ120をさらに備える。例えば線形支持体を備える適切なサンプルホルダ199が、衝撃時にサンプル99が自由に振動することを可能にするために設けられる。装置100は、時変信号を解析して、時変信号を構成する正弦波の周波数および崩壊定数を決定するように構成された処理手段130をさらに備える。インパクタ110は、好ましくは装置の残りの部分に取り付けられ、自動的に作動する1つまたは複数のハンマー(すなわち、作動され、任意選択的にばね荷重されたアームに取り付けられたおもり)または他の発射体を備えてもよい。センサ120は、圧電センサなどの接触式センサ、マイクロフォンもしくはレーザ振動計などの非接触式センサ、または加速度計を備えてもよい。圧電センサなどの接触ベースのセンサだけでなく、マイクロフォン、レーザ振動計または加速度計でも良好な結果を得ることができる。圧電センサは、信号増幅器、機械的振動応答が捕捉されるスポットを照らす手段(例えば、プローブがサンプルの表面に向かって移動するときに光のスポットとの予期される接触点を照射するように構成された小型レーザ源)、および/または温度センサをさらに含むことができるプローブ内に配置することができる。プローブは、好ましくは、センサによってサンプルに加えられる力を測定する手段を装備している。装置は、作動アームまたはより複雑なロボット支持体など、プローブを試料と自動的に接触させる手段を含むことができる。この場合、力測定手段は、センサとサンプルとの間の良好な接触を確実にするために必要なフィードバックを提供する。プローブがユーザによって手動で扱われる場合、装置は、視覚的および/または聴覚的フィードバックを提供して、ユーザが接触力を所定の目標範囲内に維持するのを助けるように(例えば、加えられた力が大きすぎる場合にはLEDを1つの色で点灯させ、力が小さすぎる場合にはLEDを別の色で点灯させることができる。断続的なビープ音は、加えられた力が高すぎるか低すぎるかに応じて、異なるピッチまたは周期を有することができる、など)構成され得る。装置が2つ以上のインパクタを備える場合、これらは、例えば線形アレイまたは矩形グリッドとして配置されてもよい。線形の場合、装置はスキャナとして機能し、サンプルの異なる部分に対する連続試験のためにサンプルをインパクタのラインの下に移動させ、またはサンプルの異なる部分に対する連続試験のためにサンプルを横切ってインパクタのラインを移動させることができる。装置は、サンプルおよびインパクタの必要な相対運動を提供するために、正確に制御可能なモータを装備することが好ましい。インパクタがグリッドとして配置されている場合、そのような相対移動は、グリッドの範囲がサンプルの関心領域全体をカバーしない場合にのみ必要となる。装置は、好ましくは、3Dスキャナ、カメラ(任意選択的に立体カメラ)などの固体材料サンプル(図示せず)の幾何学的特性を決定する手段を備える。上記の方式から明らかなように、検出された周波数ピークからヤング率および剪断弾性率の正しい値を導出するためには、サンプルの幾何学的形状の正確な知識が重要である。スケール(図示せず)を装置に組み込んで、サンプルの重量、したがって質量を決定することができる。上記の方式から明らかなように、検出された周波数ピークからヤング率および剪断弾性率の正しい値を導出するためには、サンプルの質量の正確な知識も重要である。装置100は、スクリーン140(好ましくはタッチスクリーン)、ボタンまたはダイヤル150、キーパッド(図示せず)などを含むことができる従来のユーザインターフェースを備えることができる。
【0030】
固体部品のその場測定が想定される場合、固体材料サンプルの機械的振動応答を解析するための装置の好ましい実施形態が図2に示される。装置は、印刷ヘッド(201)を有する3D印刷チャンバ(200)の中および周囲に配置することができる。装置は、その上で1つまたは複数の固体部品(203)を付加製造することができる印刷プレート(202)を備える。印刷プレート(202)は、例えば試験部品の振動節の位置で支持することによって、試験部品が可能な限り自由に振動することを可能にする支持構造体(204、205)によって浮遊させられる。マイクロフォンまたはレーザ干渉計を備えてもよい音響センサ(210、211)または複数の音響センサ(210、211)を3D印刷チャンバ内に配置して、衝撃に対する固体部品の振動応答を得ることができる。
【0031】
好ましい実施形態では、音響センサはレーザ干渉計を備える。レーザ干渉計は、真空中での測定に特に有用であり、非接触測定を可能にする。代替的または追加的に、音響センサは、例えば以下に記載されるような、超音波測定センサおよび/または飛行時間センサおよび/またはドップラー式センサを備えてもよい。
【0032】
-S-R.Huang、R.M.Lerner、K.J.Parker、「Time domain Doppler estimators of the amplitude of vibrating targets」、J.Acous.Soc.Am.,91(2),965-974(1992)
-J.Tapson、「High precision,short range ultrasonic sensing by means of resonance mode-locking」、Ultrasonics,33,6,441-444(1995)
-R.Kazys、R.Sliteris、L.Mazeika、「Ultrasonic technique for Vibration Measurements」、Proceedings of the 15th World Conference on Non-Destructive Testing、2000年10月15日~21日、ローマ、https://www.ndt.net/article/wcndt00/papers/idn246/idn246.htm
また、これらのタイプのセンサは、非接触測定に使用されてもよい。
【0033】
一実施形態において、本発明の方法は、3D印刷チャンバが、大気圧よりも低い圧力、好ましくは0.5バール以下、より好ましくは0.2バール以下、最も好ましくは本質的に真空圧力を含むように実施される。これにより、好ましくは、レーザ干渉計を使用して、低圧力からゼロ圧力で非接触振動測定を可能にする。ゼロ圧力まで低下した測定は、周囲のノイズを減衰させ、それによって信号対ノイズ比を増加させる。
【0034】
装置は、好ましくは、インパクタアクチュエータ(213)によって衝撃を与えることができる弾道インパクタ(212)を備える衝撃システムを備える。弾道インパクタ(212)は、セラミックロッドまたは金属ロッドであってもよい。これは、インパクタアクチュエータ(213)を使用して試験部品に向かって上方(214)に発射することができ、インパクタアクチュエータは、
-好ましくは垂直方向に沿って弾道インパクタを案内するための、加熱チャンバの底部を通る案内チューブ(215)と、
-インパクタ(212)に好ましくは垂直な衝撃(217)を与えるように構成された電気機械的に動作するハンマー(216)と
を備える。ハンマー(216)は、電気コイル(218)と、コイル(218)を通って流れる電流に応じて移動することができる可動ロッドまたは弾丸(219)とを備えることができる。そのようなシステムの一例が米国特許第6,782,970号に提示されており、それにより、本発明では、インパクタアクチュエータの弾丸は、試験部品に直接ではなくセラミックインパクタ(212)に衝撃を与える。代替的に、衝撃をインパクタに与えるための、圧力駆動インパクタまたは圧力駆動衝撃アクチュエータ(280)が使用されてもよい。
【0035】
インパクタアクチュエータは、弾道インパクタに衝撃を与えるように構成される。好ましくは、ノイズ測定ステップが実行され、それにより、弾道インパクタは、印刷プレートまたは固体部品の下2cm以内まで上昇するが、印刷プレートまたは固体部品に接触することはない。次いで、インパクタアクチュエータは、好ましくは、印刷プレートまたは固体部品と接触させ、それによって印刷プレートおよび/または固体部品に振動励起を機械的に誘導する衝撃を弾道インパクタに与えるように構成される。
【0036】
固体部品の振動応答は、振動センサを介して得ることができる時変信号である。次いで、振動応答をさらに解析することができる。したがって、本発明のシステムは、好ましくは、時変信号を解析して、時変信号を構成する正弦波の周波数および崩壊定数を決定するように構成された処理手段を備える、すなわち、高調波反転問題を解決する。高調波反転の問題は、より一般的には、所与の帯域幅における有限個のそのような正弦波の和からなる離散時間有限長信号を構成する正弦波の周波数、崩壊定数、振幅、および位相を決定することからなり、文献では周知であるが、インパルス励起技術(IET)に関連することはほとんどない。Vladimir A.MandelshtamおよびHoward S.Taylorは、彼らの論文「Harmonic inversion of time signals and its applications」、The Journal of Chemical Physics 107,6756(1997)において、高調波反転問題を小さい行列対角化の問題として再評価することによってこの問題を解決するために、Wall and Neuhauserの一般的なフィルタ対角化法の使用を記載している。マサチューセッツ工科大学のSteven G.Johnsonによる「Harminv」プログラムを含む、この技術のコンピュータベースの実装は当技術分野で既知である。解析の結果は、スクリーン140に、または他の機器による記憶もしくはさらなる処理のための任意の他の適切なインターフェースに出力することができる。処理手段は、1つまたは複数の専用ハードウェア構成要素(例えば、ASIC)、適切に構成可能な構成可能ハードウェア構成要素(例えばFPGA)、適切なソフトウェアを備えたマイクロプロセッサ、または上記の組合せから構成されてもよい。同じ構成要素が他の機能を実行してもよい。
【0037】
したがって、周波数領域における衝撃に対する固体部品の振動応答を得ることができる。この応答から、固有周波数のセット、および任意選択的に減衰を抽出することができ、前記固有周波数の各々は、前記固体部品の振動モードに対応する。少なくとも1つの振動モード、好ましくは2つ以上の振動モード、より好ましくはすべての振動モードについて、固有周波数シフトは、前記振動モードに対応する抽出された固有周波数のセットのうちの1つを前記振動モードの基準固有周波数値と比較することによって取得することができ、それによって逸脱したAMプロセス挙動を検出する。前述のように、固有周波数シフトは、応答におけるピークの幅の変化を含むことができ、これは、例えば、ピーク高さの半分の周波数の変化を見ることによって定量化することができる。減衰のセットが前記固有周波数に対して抽出される場合、1つまたは複数の制動パラメータを前記減衰のうちの1つまたは複数から計算することができる。これらの制動パラメータから、固体部品のマイクロクラック量を示す値を推定することができる。マイクロクラックおよびピクロクラック伝播は、AM製造された部品の疲労寿命および破断強度性能において極めて重要な役割を果たす。理論に束縛されることを望むものではないが、マイクロクラックはAM材料の内部摩擦を引き起こし、これは振動の減衰、特に衝撃に対する振動応答における固有周波数の減衰をもたらすと考えられる。マイクロクラックは、極端な応力集中を生じさせない球状のボイドに到達する、すなわち、ボイドは多孔度の増加をもたらすが、固体部品の長期強度にとってマイクロクラックほど重要ではない。
【0038】
好ましい実施形態では、基準固有周波数値はデータベースから取得される。このデータベースは、好ましくは、様々な形状およびサイズの、付加製造される固体部品と同じ材料の固体部品の固有周波数を測定することによって得ることができる。次いで、基準固有周波数値は、同じ形状、サイズ、および材料の固体部品に関連するデータベースからの値との直接比較によって、またはデータベースからの値に基づいて得られた補間値によって得ることができる。代替的または追加的に、基準固有周波数は、固有周波数軌跡から取得されてもよい。この固有周波数軌跡は、好ましくは、固体部品の高さの関数として、決定された断面を有する固体部品の固有周波数を記述することができる。ここで、高さとは、断面に垂直な方向に測定したときの固体部品のサイズを指す。例えば、固体部品は、幅wおよび長さlの長方形の断面を有することができ、固有周波数軌跡は、その高さに対する固体部品の固有周波数の依存性を表す。代替的または追加的に、固有周波数軌跡は、較正測定値から取得されてもよい。これにより、固有周波数軌跡は、較正部品の較正AMプロセス中の異なる瞬間に実行される固有周波数測定のセットを介して決定することができ、較正部品は本質的に固体部品と同じであり、すなわち同じ材料から同じサイズおよび形状で作られる。較正部品の品質を十分にチェックすることができ、承認された場合、較正部品の製造中に得られた固有周波数測定値を使用して、固有値軌跡を構築することができる。固有値軌跡は、較正部品および/または較正AMプロセスの1つまたは複数の特性の関数として構築することができる。好ましくは、これらの特徴は、以下のいずれかまたは任意の組合せを含む:
-AMプロセス内の測定の瞬間、例えば、AMプロセスの開始と測定との間の期間、任意選択的に、AMプロセス中の不感期間、すなわち、AMプロセスが停止または減速した期間を考慮に入れる。
【0039】
-例えば、測定時に較正部品および/または固体部品の1つまたは複数のサイズを得ることによる、測定時の較正部品のサイズ。これらの1つまたは複数のサイズは、好ましくはサイズ測定によって得ることができる。
【0040】
固体部品が製造されている場合、AMプロセス中に固体部品について得られた固有周波数値は、対応する特性における固有周波数軌跡上の固有周波数値と比較することができる。例えば、固体部品のAMプロセスが較正部品のAMプロセスと同じ手順に従う場合、時間Tで固体部品について取得された固有周波数値は、同じ時間Tの固有周波数軌跡から取得された基準固有周波数値と比較する必要がある。固体部品のAMプロセスが較正部品のAMプロセスと同じ手順に従わない場合、特性は好ましくは1つまたは複数のサイズを含む。この場合、固体部品が特定のサイズを有するときに固体部品について得られた固有周波数値は、その特定のサイズの固有周波数軌跡と比較することができる。
【0041】
この実施形態は図3aおよび図3bに示される。図3aにおいて、固体部品(301)が印刷プレート(302)上に3D印刷されている。衝撃励起技術を使用するいくつかの周波数測定は、3D印刷された部品(301)の特定の高さ(303)に対応して、一定の間隔で実行される。結果を図3bによって示すことができ、ここでは、印刷されている固体部品の高さ(306)の関数としての基準固有周波数軌跡(304)、および前記高さ(306)の関数としての測定固有周波数(305)を示す。固有周波数値間の偏差、すなわち観測された固有周波数シフト(308)は、特定の高さでの逸脱したプロセス挙動を示す。全高(309)では、シフトが中間の高さに存在したとしても、周波数シフトが消滅する可能性があり、完全な監視のために異なる高さで多くの測定を実行することの重要性を示していることに留意されたい。同時に、固有周波数の制動パラメータを、この固有周波数における振動応答の減衰から計算することができる。減衰を見ることの1つの特定の利点は、固体部品の製造中に大きく変化することが予想されないこと、すなわち、固体部品が製造されている場合、その固有周波数は変化するが、固有周波数における減衰はかなり一定のままであるか、または非常にゆっくりと変化する程度のものである。減衰の大きな偏差は、固体部品が印刷されるときの制動パラメータの大きな変化、例えば、固体部品が特定の高さに達するときの制動パラメータ値のジャンプで見ることができ、その高さでの大量のマイクロクラックを示し得る。
【0042】
固有値軌跡は、上記のようなデータベースに基づくことができ、または様々な形状およびサイズの固体部品および付加製造される固体部品と同じ材料の測定された固有周波数に基づくことができることに留意されたい。基準固有周波数値が固有周波数軌跡から少なくとも部分的に得られる実施形態は、逸脱したAMプロセス挙動を、特にその場および/またはリアルタイムで観測するのに特に適している。
【0043】
一実施形態では、基準固有周波数値は、数値計算および/またはシミュレーションによって取得することができる。このような計算およびシミュレーションは、最良の基準固有周波数値を得るために、固体部品または較正部品の固有周波数値の測定値と組み合わせてもよいことに留意されたい。
【0044】
好ましい実施形態では、検出される逸脱したプロセス挙動は、固体部品の焼結不良部分に関連する。焼結不良部分は、振動パラメータの変化をもたらす。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、不良焼結プロセスが固体部品の剛性の大きな影響、典型的には剛性の低下を有すると考えており、これは、弾性率(ヤング率、せん断弾性率、...)および制動係数などの異なる材料パラメータで観測することができる。これらの材料パラメータは、機械的衝撃に対するピースの音響応答に密接に関連している。したがって、本発明は、3D印刷された固体部品の不良または不完全な焼結を検出するのに特に適している。
【0045】
本発明では、抽出された固有周波数は、固体部品の振動モードに対応する。振動モードは、固体部品の分布した機械的弾性挙動に関する情報を与える任意のモードとすることができる。好ましい実施形態では、振動モードは、屈曲モード、ねじりモード、長手方向振動モード、または1次、2次、3次高調波などのそれらの任意の高調波のいずれかまたは任意の組合せ、より好ましくは屈曲モードの1次高調波、屈曲モードの2次高調波、ねじりモードの1次高調波、ねじりモードの2次高調波、長手方向振動モードの1次高調波を含むことができる。
【0046】
好ましい実施形態では、振動モードは、ねじりモードおよび/またはその任意の高調波を含む。
【0047】
一実施形態では、逸脱したプロセス挙動は、1つまたは複数の固有周波数シフトを取得することによって、および/または抽出された振動応答のピーク幅を考慮することによって検出される。
【0048】
本発明はまた、較正方法に関し、本方法は、以下のステップ、すなわち、
a)3D印刷によって印刷プレート上に固体部品のセットを形成するステップと、
b)上述した方法を使用して固体部品のいずれかにおける逸脱したプロセス挙動を検出することによって、前記逸脱したプロセス挙動の位置情報を取得するステップと、
c)3D印刷装置上の逸脱したプロセス挙動の位置情報を考慮に入れて3D印刷装置を較正するステップと
を含む。
【0049】
位置情報を取得するために使用される固体部品は、較正部品とも呼ばれる。
好ましい実施形態では、固体部品のセットは、印刷プレートに対して所定のパターン、好ましくはマトリックスパターンで配置されてもよい。これにより、印刷プレートのX-Y位置における逸脱したプロセス挙動の位置情報を取得することができる。これは、好ましくは、どの固体部品において逸脱したプロセス挙動が生じるかを識別することによって行われる。この識別を行うことができるいくつかの手法がある。
【0050】
-衝撃を各固体部品に別々に与えることができ、前記固体部品の振動応答を得ることができる。このプロセスは、好ましくは、固体部品の2つ以上、好ましくは各々について繰り返されてもよい。
【0051】
-衝撃は、2つ以上の固体部品に同時に、好ましくはすべての固体部品に同時に与えられてもよく、前記2つ以上の固体部品の応答は、例えば振動センサのセットを使用して得られてもよい。
【0052】
-セットの固体部品は、好ましくは別個の基準固有周波数値、好ましくは一意に異なる固有周波数値を含むことができる。これは、例えば、異なる断面および/または異なる材料特性を有する固体部品によって達成され得る。これにより、2つ以上、好ましくはすべての固体部品に同時に衝撃を与えることができる。次いで、固体部品の別個の固有周波数値により、2つ以上、好ましくはすべての固体部品の振動応答を本質的に同時に得ることができる。
【0053】
さらに、振動応答から、特にマイクロクラック量に関して、固体部品に関する、および理想的なAMプロセスからの偏差に関するさらなる情報を提供する制動パラメータのセットを計算することができる。
【0054】
所定のパターンは、好ましくは水平面であるx-y平面内の好ましくは矩形マトリックスパターンであってもよい。
【0055】
本発明による方法の例示的な実施形態が図4に示される。固体部品(401、402、403、404、406)のセットが印刷プレート(405)上に3D印刷されている。図では、これらの固体部品のうちの4つ(401、402、403、404)が印刷プレートの角部に印刷されているが、他の構成も使用することができる。これら4つの角部固体部品は較正部品として機能する。較正印刷の実行において、4つの固体部品は、さらなる固体部品が3D印刷されることなく印刷されている。較正部品の各々の固有周波数測定は、例えば、部品の異なる高さに対応する規則的な間隔で実行することができる。部品は、それらの固有周波数が十分に分離され、単一の測定によって得ることができるように、異なる断面を有することができる。測定は、印刷プレート(405)に衝撃(407)を与え、例えばマイクロフォンなどのセンサ(408)で振動応答を取得することによって行うことができる。得られた固有周波数は、逸脱したプロセス挙動を示す固有周波数シフトを得るために、基準固有周波数と比較することができる。このような逸脱したプロセス挙動の場合、3D印刷装置を較正および/または再較正することができる。代替的または追加的に、固体部品、好ましくは較正部品の固有周波数シフトは、3D印刷装置から固体部品を取り出し、各固体部品に対して個別にまたは一緒に方法ステップを実行することによって取得することができる。この周波数シフト測定の後、固体部品は、好ましくは部品を取り出す前と同じ位置で3D印刷装置に再導入されてもよい。このプロセスは、例えば層ごとに、またはn層ごとに3D印刷された後に繰り返すことができる。
【0056】
したがって、本発明はまた、生産部品を付加製造する方法に関し、本方法は、同じ3D印刷プロセスで前記生産と、較正固体部品のセットとを付加製造するステップと、前記較正固体部品のセットのうちの1つまたは複数の較正固体部品に対して本発明による方法を実行するステップとを含む。これにより、1つまたは複数の較正固体部品で観測された逸脱したプロセス挙動は、生産部品の逸脱したプロセス挙動の指標である。これは、例えば基準固有周波数の知識がないために、または生産部品が固有のおよび/または複雑な形状を含むために、本発明による方法を使用して生産部品を容易に試験することができない場合に特に有用である。
【0057】
さらに、逸脱したプロセス挙動がない場合、または装置の較正後、印刷プロセスの異なる瞬間および/または異なる高さにおける較正部品の固有周波数の測定値は、基準固有周波数値として機能してもよく、または基準固有周波数軌跡を構築するための入力として機能してもよい。これにより、任意の他の固体部品(406)を較正部品の少なくとも1つ、好ましくはすべてとともに印刷することが可能になる。較正部品のいずれか、好ましくは各々について逸脱したプロセス挙動を検出するための本発明による方法を実行することにより、他方の固体部品(406)が正しく3D印刷されているかどうかを推測することができる。これは、その形状もしくはサイズまたは他の特性とは無関係に、任意のタイプの他の固体部品(406)に適用することができる。これは、多くの異なる種類の固体部品または基準固有周波数値を取得することが容易ではない複雑な形状およびサイズの固体部品を印刷する場合に、明らかに大きな利点を与える。
【0058】
印刷プロセス後、位置合わせされた固有周波数が良好に印刷された固体部品に対応するかどうかをチェックするために、較正部品を欠陥についてさらに試験することができる。さらなる実行において、較正部品、この例示的な場合には4つの較正部品は、印刷される任意の他の固体部品(406)とともに印刷することができる。
【0059】
上述したように、逸脱したプロセス挙動は、好ましくは印刷プレートに衝撃を与えることによって検出することができ、それによってその上に形成された固体部品のそれぞれに衝撃を与える。固体部品の各々の振動応答は、好ましくは、同時に、別々に、続いて、および/またはそれらの組合せで得ることができる。固体部品の各々の振動応答が同時に得られる場合、応答は好ましくは音響測定によって得られ、次いでこれを好ましくは周波数解析することができる。
【0060】
一実施形態では、固体部品は本質的に同一であり、逸脱したプロセス挙動は、1つまたは複数の固有周波数シフトを取得することによって、および/または抽出された振動応答のピーク幅を考慮することによって検出される。
【0061】
本発明の較正方法は、好ましくは、3D印刷プロセス中の異なる瞬間に適用され、これはまた、印刷プレートからの距離に対する逸脱したプロセス挙動に関する位置情報を得ることを可能にする。これにより、3次元の位置情報を取得することができる。
【0062】
固体部品のセットは、ビーム、円柱、ストランドなどの形状のいずれかまたは任意の組合せを含むことができる。
【0063】
好ましい実施形態では、前記セットの第1の固体部品の基準固有周波数値は、前記セットの少なくとも第2の固体部品の抽出された固有周波数を考慮して取得される。
【0064】
逸脱したプロセス挙動は、好ましくは、以下のいずれかまたは任意の組合せに起因し得る。
【0065】
-欠陥、例えば、点欠陥、線欠陥、表面欠陥、体積欠陥、ドメイン欠陥、マイクロクラック、マクロクラック、またはそれらの任意の組合せであり得る局所欠陥、
-密度、多孔度および/または焼結品質などの全体的な逸脱パラメータ、
-粉末品質および/または粉末材料のばらつきなどの材料パラメータ。
【0066】
一実施形態では、セットの固体部品はそれぞれ所定の方法で異なり、例えば、各固体部品は異なる水平断面、異なる厚さおよび/または異なる幅を有し、欠陥は試験部品の少なくとも1つの固有周波数シフトを考慮して検出される。これにより、異なる固体部品における欠陥の同時検出が可能になる。
【0067】
一実施形態では、較正方法は、固体部品のセットの形成中に複数回実行され、好ましくは較正方法は、固体部品の異なる高さで実行される。これにより、3次元の欠陥位置に関する情報を取得することができる。
【0068】
一実施形態では、較正方法は、3D印刷装置において、すなわちその場で実行される。あるいは、較正方法は、逸脱したプロセス挙動に関する3D次元位置情報を得るために、形成された後に装置から固体部品を取り出すことによって、または取り出し、測定し、再取り付けし、特定の高さで3D印刷を継続し、Nを少なくとも2として、このプロセスをN回繰り返すことによって実行される。
【0069】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの固体部品のセットは、生産部品と較正部品のセットとを含み、較正方法は較正部品のセットに適用される。
【0070】
本発明の方法はまた、振動モードに対する振動応答の制動パラメータを測定するか、または少なくとも測定を通じて取得し、制動パラメータに基づいて欠陥、好ましくはマイクロクラック欠陥を検出するステップを含むことができる。
【0071】
図6は、同じAM法を使用して得られた10個の異なるAM固体部品の固有周波数および対応する制動パラメータを示しており、すなわち、異なる部品間の変動は、主にAM法の統計的変動から生じる。結果は、暗いおよび明るい小さな円として示されている。10個の部品のそれぞれを振動モードについて試験した。測定された固有周波数は、x軸から読み取ることができるように、約39800(F1)~43500Hz(F10)の範囲にある。(濃い灰色の)円の下側のセットは、対応する固体部品の多孔度を表し、左側のy軸上に百分率で与えられる。0%の多孔度は、多孔度がない、すなわち完全に中実の部品を意味する。多孔度は、X線マイクロCTを使用して直接測定されている。固有周波数が約43500Hz(F10)の部品は多孔度が0.01%と低く、固有周波数が約39800Hz(F1)の部品は多孔度が約4.3%と測定された。約43500HzのF10固有周波数は、基準固有周波数として機能し得る。明確な相関関係が図に見られ、データポイント、すなわちX線マイクロCTによって測定された多孔度対測定された固有周波数に対する当てはめ3次曲線を示す下のグラフ(601)によって示されている。基準値(F10)からの固有周波数のシフトが大きいほど、多孔度が高いことが分かる。さらに、現在の方法は、周波数F6、F7、F8、F9およびF10でのデータ点によって示されるように、非常に低い多孔度に対して非常に敏感であるように思われ、これらはすべて非常に低い多孔度を有すると測定されたが、依然として測定可能な固有周波数シフトを示すことにも留意されたい。これはまた、低多孔度を有する高品質の部品について、本方法が依然として良好な品質と優れた品質とを区別することができることを示している。
【0072】
固有周波数のそれぞれについて、制動パラメータも測定し(薄灰色の上の円)、プロットした。この場合の制動パラメータは、対応する固体部品の周波数振動応答における半値での固有周波数ピークの幅である。制動パラメータは、周波数シフトに対する依存性を示し、これは、周波数シフトを増加させるために本質的に制動を増加させる。しかしながら、制動パラメータの周波数シフト依存性は、多孔度の場合とは明らかに異なり、本方法が、例えばX線マイクロCT多孔度測定よりも多くの情報を得ることを可能にし、特に固体部品のマイクロクラックに関するさらなる情報を明らかにすることを示している。この場合、固有周波数F6、F7、F8、F9、およびF10を有する部品のデータ点がすべて(0.01%未満の)非常に小さい多孔度を示しても、制動パラメータ値は約13~25の範囲であることに留意されたい。
【0073】
追加的または代替的に、例えば固有周波数ピークの半値幅、制動周波数、損失係数、臨界制動の割合、品質係数、崩壊定数、時定数、残響時間、崩壊率、対数減分などの1つまたは複数の制動パラメータを計算できることに留意されたい。
【実施例1】
【0074】
実施例1:局在欠陥に対する振動パラメータの感度
本発明の方法によって提供される可能性を説明するために、局所的な欠陥に対する振動固有周波数の感度を示すために数値計算が実行された。
【0075】
模擬固体部品は、100mm×25mm×10mmの寸法の長さ×幅×高さ(L×W×H)を有するビームの形状を有する。ビームのいくつかの固有周波数を計算した:
-曲げベースモード(flex)、その第1および第2高調波、
-ねじりベースモード(tors)、その第1高調波および第2高調波、ならびに
-長手方向振動モード(long)およびその第1高調波。
【0076】
1mm×1mm×1mmの局所的な小さな欠陥を導入し、その後、同じ固有周波数を計算した。小さな欠陥は4つの異なる位置に位置していた:
-コーナー欠陥(ビームの頂点の1つの近く)
-ビームの中央の中心欠陥
-幅の半分および高さの半分に位置するが、長さの0.25に位置する中央のゼロ線欠陥
-長さの0.25の長縁に配置された境界ゼロ線欠陥
得られた固有周波数を以下の表で比較する(周波数はHzで与えられ、相対シフトは%で与えられる)。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
特定のモード、特に例えばねじりベースモード、ねじり1次モード、およびねじり2次モードに対する特定のモードの感度に気付くことができる。
【実施例2】
【0082】
実施例2:3D印刷された格子構造体の測定
本発明の方法は、3D印刷された開いた立方体形状の格子構造体のセットにも適用された。各セットが3つの格子構造体を含む2セットの格子構造体を試験した。セット内の格子構造体は同じ格子型を有していたが、異なるセットからの格子構造体は異なる格子構造体を有していた。第1のセットの格子構造体を図5aに示し、第2のセットの格子構造体を図5bに示す。
【0083】
構造体は、アルキメデス測定法(Archi)、2種類のガスピクノメトリおよびフーコー電流測定によるインピーダンス測定によって測定した。これらの方法は、3つの立方体の両方のグループが同じ体積を占め、同じ電気抵抗を有し、6つすべてが同じ材料密度を有することを確認する。しかしながら、本発明の方法は、以下を明らかにする:3つの同一の立方体の第1のセットは、非常に良好な周波数均一性(ねじりモード)を与える。しかしながら、最後の立方体は、より広いピーク、したがってより高い制動を示し、マイクロクラックによって引き起こされることが最も多いより高い内部摩擦を示す。したがって、本発明は、周波数ピークの広がりによってマイクロクラック欠陥を識別することを可能にする。この場合、抽出された固有周波数のセットは、ピーク固有周波数およびピーク高さの半分の固有周波数を含むことができる。これらの3つの固有周波数値の周波数シフトを見ることにより、マイクロクラックをもたらした可能性がある逸脱したプロセス挙動の存在を推定することができる。
【0084】
さらに、3つの立方体の第2のセットは、共振挙動に非常に大きな差を示し、周波数差(ねじりベースモードに対して第1の立方体:20700Hz、第2の立方体:21000Hz、第3の立方体:21150Hz)によって示されるように、第1の立方体は、第2および第3の立方体と比較してはるかに高い弾性を有する。本発明者らは、この非常に顕著な差の理由は、マトリックス点上のワイヤのより良好な/より不良な接着に関与する焼結品質であると考えている。
【0085】
したがって、本発明は、アルキメデス測定方法、ガスピクノメトリおよびインピーダンス測定方法などの他の方法よりも良好な感度で、逸脱したプロセス挙動に敏感であることが観察される。
【0086】
なお、本発明の方法は、手動で行う場合には1回の測定に20秒程度しか必要としないが、全自動インラインモードで1回の測定に2秒以内で行うことができる。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】