(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】組み合わせバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20240119BHJP
【FI】
A61M25/10 520
A61M25/10 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541882
(86)(22)【出願日】2022-01-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 AU2022050006
(87)【国際公開番号】W WO2022147599
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523261506
【氏名又は名称】ナノメディックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイトラ,アシシュ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267AA56
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB28
4C267BB42
4C267BB45
4C267CC09
4C267DD01
4C267GG01
4C267GG21
4C267HH08
(57)【要約】
人体の特定の領域内の血管(動脈又は静脈又は微小血管系)に挿入して、狭窄又は閉塞した血管を広げてそこを通る血流の改善を許容すること、ステント/インプラントの送達及び配置を実行して血管を開いた状態に留めることを確実にすること、並びに血管内の患部に対して様々な治療/治療薬剤の局所的/標的送達を行うことを含むがこれらに限定されない、治療処置の組み合わせを実行できる、複数のバルーン及び管腔を有する改良された多機能バルーンカテーテルが提示される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多機能バルーンカテーテル(10)であって、
先端(12a)と、近位端(12b)と、遠位端(12c)とを有する細長いカテーテル本体(12)と、
前記細長いカテーテル本体(12)の第1の部分(12d)の上に取り付けられた、所定の形状及びサイズを有する第1のバルーン(13)と、
所定の形状及びサイズを有する第2のバルーン(15)及び第3のバルーン(14)であって、それぞれ、前記カテーテル本体(12)の前記近位端(12b)及び前記遠位端(12c)において、前記第1のバルーン(13)の両側で前記カテーテル本体(12)の第2の部分(12e)及び第3の部分(12f)の上に取り付けられた、第2のバルーン(15)及び第3のバルーン(14)と、を備え、
前記第1のバルーン(13)、前記第2のバルーン(15)、前記第3のバルーン(14)が、中を通る血流の改善を許容するために血管(30)の選択されたセクション又は病変の発生点(32)を広げるための処置、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内に1つ以上の治療薬剤を送達するための処置、及び前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内にステント又はインプラント(35)を展開するための処置のうちの少なくとも1つを実行するように選択的に膨張又は収縮され、
前記第2のバルーン(15)及び前記第3のバルーン(14)が、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内で膨張すると、前記第2のバルーン(15)及び第3のバルーン(14)の前記血管(30)との接触点(50)の間に延在するシールされた領域(55)を形成し、
前記第1のバルーン(13)が、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は病変(32)を広げるために膨張すると、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)の内側(13c、13d)を押し、そこと少なくとも部分的に接触する、多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項2】
前記細長いカテーテル本体(12)が、病変を拡張するために医療処置が実施されるときに、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内で前記第1のバルーン(13)を選択的に膨張又は収縮させるために、前記第1の部分(12d)上に位置する第1のポート(16)を含む、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項3】
上に前記第1のバルーン(13)が取り付けられた前記細長いカテーテル本体(12)の前記第1の部分(12d)が、一対の放射線不透過性マーカバンド(13a、13b)を備える、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項4】
前記第2のバルーン(15)及び前記第3のバルーン(14)が、それぞれ、前記カテーテル本体(12)の前記第2の部分(12e)及び前記第3の部分(12f)上に構成された第2のポート(20)及び第3のポート(19)を使用して選択的に膨張又は収縮される、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項5】
前記第2のバルーン(15)及び前記第3のバルーン(14)の前記膨張が、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)とのそれらの接触点(50)においてシールを形成する、請求項4に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項6】
上に前記第2のバルーン(15)及び前記第3のバルーン(14)が取り付けられた前記カテーテル本体(12)の前記第2の部分(12e)及び前記第3の部分(12f)の各々が、前記第2のバルーン(14)及び第3のバルーン(15)の両端においてそれぞれ構成された第1の対の放射線不透過性マーカバンド(15a、15b)及び第2の対の放射線不透過性マーカバンド(14a、14b)を更に備える、請求項4に記載の多機能
バルーンカテーテル(10)。
【請求項7】
前記第1のバルーン(13)の両側に位置する前記第2のバルーン(15)及び前記第3のバルーン(14)は、形状及びサイズが類似しているか、又は形状及びサイズが異なる、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項8】
前記第1のバルーン(13)が、前記第2のバルーン(15)及び前記第3のバルーン(14)よりも大きくサイズ設定されているか、又は前記第2のバルーン(15)及び第3のバルーン(14)と同様にサイズ設定されている、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項9】
前記第2のバルーン(15)が、前記第3のバルーン(14)よりも大きくサイズ設定されているか、又は前記第3のバルーン(14)と同様にサイズ設定されている、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項10】
前記第1のバルーン(13)が、実質的に円筒形である、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項11】
前記第2のバルーン(15)及び前記第3のバルーン(14)が、実質的に球形である、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項12】
前記第1のバルーン(13)が、特定の直径まで拡大し、前記血管(30)の壁(13c、13d)に高圧をかけることができる不適合又は半適合材料で作られている、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項13】
前記不適合又は半適合材料が、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、シリコンからなる材料の群から選択される、請求項12に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項14】
前記第2のバルーン(15)及び前記第3のバルーン(14)が、半適合又は適合材料で作られている、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項15】
前記半適合又は適合材料が、ポリウレタン、シリコン、エチレン-酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル(PVC)、オレフィンコポリマー又はホモポリマー、ポリエチレン、ポリウレタン、架橋低密度ポリエチレン(PET)、高照射直鎖状低密度ポリエチレン(LDPE)、アクリロニトリルポリマー及びコポリマー、アクリロニトリルブレンド及びアイオノマー樹脂からなる材料の群から選択される、請求項14に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項16】
前記医療処置の間又は後に、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内で1つ以上の治療薬剤(60)を送達及び抽出するために、前記第1のバルーン(13)の一方の側又は両方の側のいずれかに位置する少なくとも1つのポート(18、17)を更に備える、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項17】
前記1つ以上の治療薬剤(60)が、単独で、若しくは脂質、金、炭素を含むナノ粒子との組み合わせ又は併用で、溶液の形態で送達可能である薬品、生物学的活性剤、抗血小板物質、抗凝固剤、抗血栓剤及び繊維分解剤、抗炎症剤、抗体を含む、請求項16に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項18】
前記第1のバルーン(13)が、前記第1のバルーン(13)を膨張させることによって、前記選択されたセクション又は前記病変の発生点(32)において展開可能な前記ス
テント(35)を運ぶように更に構成されている、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項19】
前記カテーテル本体(12)が、複数の管腔を含み、各管腔が、マルチポートハブ(22)の専用ポート(25)に接続される、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項20】
前記第1のバルーン(13)が、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は病変(32)の長さを実質的に覆うようにサイズ設定されている一方で、前記第2のバルーン(15)及び前記第3のバルーン(14)が、前記血管(32)の前記選択されたセクション又は病変(32)の近位縁部(32a)内で又は近位縁部(32a)において、かつ遠位縁部(32b)内で又は遠位縁部(32b)において整列した状態に留まる、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項21】
前記第1のバルーン(13)が、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は病変(32)の長さを実質的に覆うようにサイズ設定されている一方で、前記第2のバルーン(15)及び前記第3のバルーン(14)が、前記血管(32)の前記選択されたセクション又は病変(32)の前記近位縁部(32a)及び遠位縁部(32b)から前記血管(30)のより健康な部分に向かって離れて整列した状態に留まる、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項22】
前記カテーテル本体(12)の前記第1の部分(12d)に近接して取り付けられているか、又は位置しており、電源(80)によって電力を供給される1つ以上の電極(72、74、96)を更に備える、請求項1に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項23】
前記電源(80)が、前記1つ以上の電極(72、74、96)にパルスの流れを送達して、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は病変セクション(32)に向かって移動する前記第1のバルーン(13)内に波動又は振動(95)の流れを創り出す、請求項22に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項24】
前記波動又はパルスの流れが、前記血管(30)の前記病変セクション(32)に連続的な振動又は穿孔効果をもたらす、請求項23に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項25】
前記波動が、少なくとも、
空気、流体、及び固体を通って伝播することができる音波又は超音波又は圧力波を含む力学的な波動、又は
空気、流体、固体材料又は真空を通って伝播することができる電磁波を含む、請求項23に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項26】
前記動脈又は静脈の前記遠位端の近くで生じる病変の治療に使用される多機能バルーンカテーテル(10)であって、
先端(12a)と、近位端(12b)と、遠位端(12c)とを有する細長いカテーテル本体(12)と、
前記細長いカテーテル本体(12)の第1の部分(12d)の上に取り付けられた所定の形状及びサイズを有する第1のバルーン(13)と、
前記近位端(12b)において前記カテーテル本体(12)の第2の部分(12e)の上に取り付けられた、所定の形状及びサイズを有する第2のバルーン(15)と、を備え、
前記第1のバルーン(13)、前記第2のバルーン(15)が、中を通る血流の改善を
許容するために血管(30)の選択されたセクション又は病変の発生点(32)を広げるための処置、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内に1つ以上の治療薬剤(60)を送達するための処置、及び前記バルーンカテーテル(10)の前記第1のバルーン(13)を膨張させて一旦開いた前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)を開いた状態に留めることを確実にするために、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は病変セクション(32)内にステント(35)を展開するための処置のうちの少なくとも1つを実行するために、選択的に膨張又は収縮され、
前記第2のバルーン(15)が、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内で膨張すると、前記血管(30)の前記端部において遠位方向に継続的な部分的な血液供給を許容する部分的なシールを形成し、
前記第1のバルーン(13)が、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は病変(32)を広げるために膨張すると、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は選択された病変(32)の内側(13c、13d)を押し、そこと少なくとも部分的に接触する、多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項27】
前記カテーテル本体(12)の前記第1の部分(12d)に近接して取り付けられているか、又は位置しており、電源(80)によって電力を供給される1つ以上の電極(72、74、96)を更に備える、請求項26に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項28】
前記電源(80)が、前記1つ以上の電極(72、74、96)にパルスの流れを送達して、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は病変セクション(32)に向かって移動する前記第1のバルーン(13)内に波動又は振動(95)の流れを創り出す、請求項27に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項29】
前記波動の流れが、前記血管(30)の前記病変セクション(32)に連続的な振動又は穿孔効果をもたらし、空気、流体、及び固体を通して伝播することができる音波又は超音波又は圧力波、若しくは空気、流体、固体材料、又は真空を通して伝播することができる電磁波を含む少なくとも力学的な波動を含む、請求項28に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項30】
前記医療処置の間又は後に、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内で1つ以上の治療薬剤(60)を送達及び抽出するために、前記第1のバルーン(13)の一方の側又は両方の側のいずれかに位置する少なくとも1つのポート(18、17)を更に備える、請求項26に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項31】
微小血管系の治療に使用される多機能バルーンカテーテル(10)であって、
先端(12a)と、近位端(12b)と、遠位端(12c)とを有する細長いカテーテル本体(12)と、
端部(12b)において前記カテーテル本体(12)の部分(12e)の上に取り付けられた所定の形状及びサイズを有するバルーン(15)と、
前記バルーン(15)が、中を通る血流の改善を許容するために血管(30)の選択されたセクション又は病変の発生点(32)を広げるための処置、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内に1つ以上の治療薬剤(60)を送達するための処置、及び前記バルーンカテーテル(10)の前記第1のバルーン(13)を膨張させて一旦開いた前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)を開いた状態に留めることを確実にするために、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は病変セクション(32)内にステント(35)を展開するための処置のうちの少なくとも1つを実行するために、選択的に膨張又は収縮され、
前記バルーン(15)が、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は病変(32)を広げ、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内に前記1つ以上の
治療薬剤(60)を送達するために膨張したときに、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は選択された病変(32)の内側(13c、13d)を押し、そこと少なくとも部分的に接触する、多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項32】
前記カテーテル本体(12)の前記第1の部分(12d)に近接して取り付けられているか、又は位置しており、電源(80)によって電力を供給される1つ以上の電極(72、74、96)を更に備える、請求項31に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項33】
前記電源(80)が、前記1つ以上の電極(72、74、96)にパルスの流れを送達して、前記血管(30)の前記選択されたセクション又は病変セクション(32)に向かって移動する波動又は振動(95)の流れを創り出す、請求項32に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項34】
前記波動の流れが、前記血管(30)の前記病変セクション(32)に連続的な振動又は穿孔効果をもたらし、空気、流体、及び固体を通して伝播することができる音波又は超音波又は圧力波、若しくは空気、流体、固体材料、又は真空を通して伝播することができる電磁波を含む少なくとも力学的な波動を含む、請求項33に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【請求項35】
前記医療処置の間又は後に、前記血管(30)の前記選択されたセクション(32)内で1つ以上の治療薬剤(60)を送達及び抽出するために、カテーテル本体(12)上に位置する少なくとも1つのポート(18、17)を更に備える、請求項31に記載の多機能バルーンカテーテル(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許文献の相互参照
本特許出願は、2021年1月10日に出願された「COMBINATION BALLOON CATHETER」と題された米国仮特許出願第63135730号の優先権の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、医療デバイスに関する。より具体的には、本発明は、人体の特定領域の血管(動脈又は静脈)に挿入して、狭窄又は閉塞した血管を広げて血流の改善を許容するために実行される処置、血管内の患部に様々な治療剤を送達するために実行される処置、血管内にステントを挿入してバルーンカテーテルのバルーンを膨張させることにより一旦開いた血管を開いた状態に留めることを確実にするために実行される処置、及び/又はこれらの組み合わせなどの処置の複数の組み合わせを実行することができる多機能バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
経皮経管血管形成術(PTA)及びステント留置処置中に血管(例えば、冠動脈又は末梢動脈)などの管腔内の狭窄部位を拡大するために使用される、多数のバルーンカテーテルは、従来既知である。そのような既知のカテーテルを使用している間、通常、カテーテルの上に取り付けられた血管形成バルーンは、血流を改善するために血管の壁成分を剪断及び破壊し、血管の管腔を広げるために、アテローム又はプラーク沈着物の場所において、狭窄した血管内で膨張される。必要であれば、拡張した狭窄部位を開いた状態に留めることを確実にするために、バルーン拡張処置の後にステントを挿入して血管内に固定する。
【0004】
従来技術のいくつかのバルーンカテーテルの実施例としては、ガイドカテーテル、安定化バルーン及びステアリングバルーンを有するバルーンカテーテル、並びに任意選択のガイドワイヤを有するカテーテルアセンブリを開示するUS7740609が挙げられる。特許に開示されるように、2つのバルーンのうちの1つは、カテーテル内に位置し、別のバルーンは、カテーテルの外側に位置し得る。バルーンは、任意選択で、同じカテーテルの周りに配設された、共線関係で配置され得る。特許に開示されているように、体内の閉塞を治療しながら、まず2つのバルーンを有するカテーテルシステムを閉塞の所望部位に進め、次に第1のバルーンを膨張させてカテーテルの内面に係合させ、次いで最後に第2のバルーンを膨張させて体腔の表面に係合させる。
【0005】
US5788708は、複数のバルーンステント送達カテーテル及びヒトの血管内にステントを展開するための方法を開示する。
【0006】
US7658744は、切断刃を備えた複数のバルーンカテーテルを開示している。
【0007】
US4445892は、血管、特に動脈内の光学系を使用する二重バルーンカテーテルを開示する。カテーテルは、血管のセグメントを閉塞するための2つの間隔を置いた拡大可能なバルーンを含む。デバイスはまた、閉塞されたセグメントを洗い流すための第1のチャネル、セグメントで使用される光学システム、及びデバイスの遠位の血管内に流体を導入するための第2のチャネルを含む。
【0008】
US5318531は、例えば狭窄部位への血管壁への薬品の適用に使用できるバルーンカテーテルを開示する。特許に開示されているように、バルーンは、管腔を通って送達
される薬品が穴を通って外向きに通過することを可能にするサイズの穴を含む。バルーンの外表面には、穴を覆う実質的に親水性の管状の微細孔膜があり、流れる薬品の流れを分断する。
【0009】
US2011/0060276は、体内血管内に治療剤を送達するのに有用なバルーンカテーテルを開示している。
【0010】
US6997898は、生物空間への薬剤の部位特異的な送達又は生物空間からの薬剤の収集のためにカテーテル及びカテーテルを使用するための方法を開示する。カテーテルは、生物学的空間の標的セグメントで膨張すると、定義された空間からの薬剤の送達又は収集のための閉じた薬剤送達ポケットを創り出す膨張可能なバルーンを含む。
【0011】
US8088103は、特に、人体内の血管内の治療エリアへの薬剤の閉塞、視覚化、洗浄、排出、及び送達に使用される多管腔、多バルーンカテーテルを開示する。米国特許第103’号で提案されているカテーテルは、長手方向軸を有し、その中に5つの管腔を画定する細長いカテーテルシャフトを含む。その遠位端において、カテーテルは非外傷性テーパ状遠位先端を有する。カテーテルは、カテーテルの長手方向軸に沿ってテーパ状遠位先端の近位に位置する遠位閉塞バルーン、遠位閉塞バルーンの近位に位置する空間占有バルーン、及び空間占有バルーンの近位に位置する近位閉塞バルーンを含む。遠位閉塞バルーンと空間占有バルーンとの間には吸引セグメントがあり、空間占有バルーンと近位閉塞バルーンとの間には薬剤送達セグメントが位置する。吸引セグメント及び薬剤送達セグメントの各々は、その中に形成された少なくとも1つのスカイブポートを有する。カテーテルに接続された近位端アダプタは、バルーン膨張ハブ及び送達ハブを閉塞することを含む。特許103’に記載されているように、遠位及び近位閉塞バルーンのみが膨張し、空間充填バルーンが収縮すると、比較的大きな治療体積が閉塞した血管内腔内に残る。この大きな体積は、病気の血管を治療するために希少な薬剤又は高価な薬剤を送達する場合には特に望ましくなく、毒性のある薬剤を送達する場合には、より大量のそれらの薬剤が必要となるため、潜在的に有害である。したがって、治療体積が大きくなるほど、費用及びリスクが増大する。他方では、空間占有バルーンの膨張は、閉塞した血管内腔内に残っている空間を劇的に減少させ、それによって、送達される薬剤の効果的な適用量を増加させると同時に、必要な薬剤の量を減少させる。空間占有バルーンは血管内皮に接触しない程度に膨張させるため、膨張した遠位閉塞バルーンと近位閉塞バルーンとの間の内皮の全領域が、送達された薬剤に曝露可能な状態となる。米国特許第103’号の開示から、本特許が、血管内の患部に薬物を送達し、又は様々な治療剤を送達するための処置を実施するための3つのバルーンカテーテルを開示していることは明らかである。
【0012】
したがって、様々な医療処置を実施するための複数のバルーンを有するものを含む様々なタイプのバルーンカテーテルが過去に存在したが、存在していたそのようなバルーンカテーテルの目的は、PTA又はステント留置又は薬物送達(コーティングを使用するか、又は閉塞性バルーンカテーテルを使用する)などの所与の時間に単一の治療処置を実行することであった。複数の治療処置を血管内の特定の病変部位で実施する場合、既存のバルーンカテーテルを血管内に複数回挿入する必要があり、それによって治療のコストが増加し、患者が処置を複数回受ける必要があり、処置上の合併症の可能性及び関連付けられる罹患率が上昇する。
【0013】
改善された解決策が臨床的に必要であるため、本明細書の発明者は、単一の挿入で複数の治療処置を組み合わせることができ、安全性及び有効性が向上する可能性のあるバルーンカテーテルを提案する。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、単一の挿入で治療処置の組み合わせを同時に実行することを許容でき、臨床上の安全性及び有効性が高まる可能性のある、先進的なバルーンカテーテルの設計及びその使用方法を提案する。
【0015】
本明細書の本発明者は、人体の特定領域内の血管に挿入して、狭窄又は閉塞した血管を広げて、そこを通る血流の改善を許容すること、バルーンカテーテルのバルーンを膨張させて一旦開いた血管を開いた状態に留めることを確実にするためにステント又は適切なインプラントの送達を実行すること、及び血管の隔離/シールされたセクション内の患部に様々な治療薬剤を送達することなどの治療処置の組み合わせを実行することができる、多機能で改良されたマルチバルーン及び多管腔バルーンカテーテルを提案する。
【0016】
本発明の実施形態は、多管腔の多機能バルーンカテーテルであって、先端と、近位端と、遠位端とを有する細長いカテーテル本体であって、第1のポート、第2のポート、第3のポート、第4のポート、及び第5のポートからなる細長いカテーテル本体と、所定の形状及びサイズを有する第1のバルーンであって、カテーテルの上に取り付けられ、第1のポートを使用して選択された血管内で選択的に膨張及び収縮される、第1のバルーンと、所定の形状及びサイズを有する第2のバルーン及び第3のバルーンであって、それぞれ近位端及び遠位端においてカテーテルの上に取り付けられた第2のバルーン及び第3のバルーンと、を備え、第2及び第3のバルーンが、第2のポート及び第3のポートをそれぞれ使用して、選択された血管内で選択的に膨張及び収縮される、多管腔の多機能バルーンカテーテルを開示する。更に、第4及び第5のポートは、医療処置中又は医療処置後に、血管への、及び血管からの、様々な治療薬剤及び/又は生物学的薬剤の送達及び抽出のために構成されている。
【0017】
本発明の別の実施形態において、カテーテルの本体は、第1のバルーンの上に選択的に構成されたステント又は適切なインプラントを具現化する。ステント又はインプラントは、カテーテルの第1のバルーンの膨張とともに選択された血管内に挿入、送達及び膨張され、その後、第1のバルーンを収縮させ、第1のバルーンを運ぶカテーテルは、バルーンカテーテルの第1のバルーンを膨張させることで一旦開いた血管を開いた状態留めることを確実にするために、任意選択で、血管内の所望の位置においてステントを残すか、又は配設した状態で取り出される。しかしながら、提案された本発明の本質として、ステント又はインプラントを送達するか、又は膨張したバルーンによって閉塞した血管を広げると、患部への様々な治療薬剤の送達又は抽出などの他の処置も同時に実施され得る。
【0018】
実施形態によれば、第2及び第3のバルーンが近位端においてカテーテルの上に取り付けられ、その遠位端が膨張すると、それらは血管との接触点においてシールを創り出す。このシールは、血管のシールされた領域内に送達された処置剤を一定の期間保持するのに役立ち得る。これは、第2のバルーンと第3のバルーンとの間で治療剤を単離/制限することを許容し、更に、過剰な治療剤を完全に抽出することを許容し、それによって、薬剤の効果を最大化し、人体の他の望ましくない部分に対する薬剤の損失/移動を最小化/防止する。
【0019】
別の実施形態によれば、本発明の多機能バルーンカテーテルは、第1のバルーン内に1つ以上の電極を更に備え、カテーテル本体に取り付けられ得る。電極は、病変の壁に向かって流れる波動又は振動の生成に適合され、第1のバルーンに隣接する病変セクションに突き当たる際に役立つ。限定されるわけではないが、超音波振動などの波動又は振動は、石灰化した沈着物を含むいくらかのカルシウム/固いアテローム性動脈硬化性病変に連続的な振動又は穿孔効果をもたらし、閉塞又は狭窄した選択されたセクションを開く。波動は、空気、流体、及び固体を通って伝播することが可能な(音波、超音波、圧力波のような)力学的な波動、又は空気、流体、固体材料又は真空を通って伝播することが可能な無
線周波数波などの電磁波を含み得るが、これらに限定されない。
【0020】
本発明のこれら及び他の特徴、利点、及び異なる実施形態は、添付の図面に照らして、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
上記の要約並びに好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解される。図面には例示的な実施形態が示されているが、本出願は、図面に開示される特定のシステム及び方法に限定されない。
【0022】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、本発明の組み合わせバルーンカテーテルを示す。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による、本発明の組み合わせバルーンカテーテルを示す。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による、5管腔カテーテルチューブに接続されたマルチポートハブを有する組み合わせバルーンカテーテルチューブの断面図を示す。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による、4管腔カテーテルチューブに接続されたマルチポートハブを有する組み合わせバルーンカテーテルチューブの断面図を示す。
【
図5】バルーン拡張処置中に狭窄した血管又は閉塞した血管を広げるための、血管の管腔内への組み合わせバルーンカテーテルの挿入及び配置を示す。
【
図6】膨張位置に第1のバルーンを有する
図5の組み合わせバルーンカテーテルを示す。
【
図7】第2及び第3のバルーンが、それぞれの位置においてシールを創り出すために、第1のバルーンと併せて膨張位置にある
図6の組み合わせバルーンカテーテルを示す。
【
図8】狭窄した又は閉塞した血管が開かれた後、第1のバルーンが収縮した位置にある、
図7の組み合わせバルーンカテーテルを示す。
【
図9】治療剤が、膨張した第2及び第3のバルーンによって形成された、シールされた領域内に送達され、保持されている
図8の組み合わせバルーンカテーテルを示す。
【
図10】治療剤が、シールされた領域から抽出された
図9の組み合わせバルーンカテーテルを示す。
【
図11】バルーン拡張処置又は治療剤の抽出が完了し、医療処置の完了後に組み合わせバルーンカテーテルが引き抜かれた後の、収縮した位置にある第2及び第3のバルーンを示す。
【
図12】本発明の組み合わせバルーンカテーテルを使用して閉塞した血管を広げるバルーン拡張処置の一部として、血管の管腔内のプラーク沈着物又は閉塞物の位置におけるステント送達を示す。
【
図13】本発明の組み合わせバルーンカテーテルを使用して閉塞した血管を広げるバルーン拡張処置の一部として、血管の管腔内のプラーク沈着物又は閉塞物の位置におけるステント送達を示す。
【
図14】いくつかの他の特定の用途に有用であり得る、本発明の提案される組み合わせバルーンカテーテルの代替的な実施形態を示す。
【
図15】いくつかの他の特定の用途に有用であり得る、本発明の提案される組み合わせバルーンカテーテルの代替的な実施形態を示す。
【
図16】カテーテル本体に取り付けられたバルーン内に構成された2つの電極を有する、本発明の組み合わせバルーンカテーテルの別の代替的な実施形態を示す。
【
図17】カテーテル本体の周りにコイルの形態で、複数の波動/振動源を有する電極構造を有する本発明の組み合わせバルーンカテーテルの別の代替的な実施形態を示す。
【
図18】電極間の円弧と、第1のバルーンに隣接する選択されたセクション又は病変セクションに突き当たる際に役立つ波動/振動の流れを示す、
図16の組み合わせバルーンカテーテルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、その特徴を例解するいくつかの実施形態について詳細に考察する。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、及び「含む(including)」という単語、並びにこれらの他の形態は、これらの単語のいずれか1つに続く1つの項目又は複数の項目が、そのような1つの項目又は複数の項目を網羅的に列挙することを意味するものではなく、列挙された1つの項目又は複数の項目のみに限定されることを意味するものでもないという点で、同等の意味であり、かつ自由なものであることを意図している。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及びシステムを、実施形態の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及びシステムをここに記載する。開示される実施形態は、単なる例示である。
【0024】
「一実施形態」、「実施形態」、「別の実施形態」、「実施例」、「別の実施例」、「代替実施形態」、「いくつかの実施形態」などへの言及は、そのように記載される実施形態又は実施例が特定の特徴、構造、特性、性質、要素、又は制限を含み得るが、全ての実施形態又は実施例が必ずしもその特定の特徴、構造、特性、性質、要素、又は制限を含むわけではないことを示す。更に、「実施形態では」というフレーズの繰り返し使用は、必ずしも同じ実施形態を指すわけではない。
【0025】
本出願で使用される場合、「カテーテル」、「バルーンカテーテル」、「組み合わせバルーンカテーテル」などの用語は、血流を改善するように血管の側壁上のプラーク沈着物を拡張するため、血管が広がった後にステントを送達するため、及び/又は医療処置、回復プロセス、治療などを効果的に実施することを容易にするように血管内に様々な治療薬剤(薬物、薬品など)を送達するために、人体、特に血管(動脈又は静脈)内に挿入される可撓性チューブを指す。更に、「病変」、「プラーク」などの用語は、本出願の目的のために同義的に使用され、正常な血流を妨げるであろう血管の狭窄につながる血管壁上の任意の沈着物を表す。本発明の目的のために、「選択されたセクション」、「病変の発生点」、「病変セクション」、「石灰化された病変」などの用語は全て、血管が狭くなり、血管壁上のプラークの沈着により通路/管腔が狭くなった血管の患部又は領域を示す。
【0026】
更に、これから
図1~
図15に関して詳細に記載される提案されたカテーテルデバイスは、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)のための使用に限定されるものではなく、むしろ、心臓の冠動脈から小さな毛細血管及び静脈(一般に「微小血管系」と呼ばれる)まで、更に脚、腕などの動脈及び静脈を含む末梢動脈及び静脈にまで及ぶ、狭窄又は閉塞した動脈又は静脈を広げるために実施される様々な経皮経管血管形成術(PTA)処置中に使用することができる。本発明の様々な特徴及び実施形態は、
図1~
図15と併せてよりよく説明される。
【0027】
図1及び
図2を参照すると、多管腔の多機能バルーンカテーテル10が示されている。バルーンカテーテル10は、先端12aと、近位端12bと、遠位端12cとを有する細長いカテーテル本体12を含む。バルーンカテーテル10は、第1の部分12dにおいてカテーテルの本体12の上に取り付けられた所定の形状及びサイズを有する第1のバルーン13を含む。病変を拡張するための医療処置が実施されているときに、バルーン13は、血管の選択されたセクション内で選択的に膨張及び収縮される。バルーン13は、カテーテル本体12の第1の部分12dの上に構成された第1のポート16を使用して膨張又は収縮される。第1のバルーン13は、血管30の選択されたセクション又は病変32を
広げるために膨張すると、血管30の選択されたセクション32の内側13c、13dを押し、そこと(部分的に又は完全に)接触する(
図5及び
図6を参照)。バルーン13が取り付けられているカテーテルの本体12の部分は、バルーン13の両端を表す一対の放射線不透過性マーカバンド13a、13bを更に具現化する。言い換えれば、一対の放射線不透過性マーカバンド13a、13bの各々は、バルーン13の2つの端部に存在する。これらの放射線不透過性マーカバンド13a、13bは、バルーン13の端部、又は医療処置が行われている血管内のバルーン13の正確な位置を識別するのに役立つ。
【0028】
バルーンカテーテル10はまた、近位端12b及び遠位端12cにおける第1のバルーン13の両側のカテーテル本体12の上にそれぞれ取り付けられた所定の形状及びサイズを有する第2のバルーン15及び第3のバルーン14を含む。第2のバルーン15は、第2の部分12eにおいてカテーテル本体12に取り付けられ、第3のバルーン14は、第3の部分12fにおいてカテーテル本体12に取り付けられる。バルーン14、15は、(
図8に示されるように)血管30内の接触点50においてシールを形成するために医療処置が行われている血管の選択されたセクション内で選択的に膨張及び収縮される。バルーン15及び14は、それぞれ第2のポート20及び第3のポート19を使用して膨張又は収縮される。第2及び第3のポート20、19は、カテーテル本体12の第2及び第3の部分12e、12fの上に構成されている。バルーン15及び14が取り付けられているカテーテルの本体12の第2及び第3の部分12e、12fは、バルーン15及び14の両端に構成された放射線不透過性マーカバンド15a、15b及び14a、14bのそれぞれの対(第1の対の放射線不透過性マーカバンド15a、15b及び第2の対の放射線不透過性マーカバンド14a、14bと称される)を更に具体化する。放射線不透過性マーカバンド13a及び13b、14a及び14b並びに15a及び15bの対は、医療専門家がバルーン拡張処置中にそれぞれバルーン13、14、15の端部を位置させるのに役立つ。好ましい実施形態では、バルーン13の両側に位置するバルーン14及び15は、形状及びサイズが同一であり得る。いくつかの他の実施形態では、バルーン14及び15は、互いに形状及びサイズが異なる場合がある。更に、好ましい実施形態では、バルーン13のサイズ、好ましくは、長さは、バルーン13の両側に位置するバルーン14及び15よりも大きい場合がある。いくつかの他の実施形態では、バルーン13は、バルーン13の両側に位置するバルーン14及び15とサイズ、直径及び長さが同様であり得る。
【0029】
更に、実施形態によれば、バルーン13は、本質的に実質的に円筒形の形状を有し得、バルーン13の両側に存在するバルーン14及び15は、本質的に実質的に球形の形状を有し得る。更に、実施形態によれば、バルーン13は、不適合又は半適合材料で作られ得、バルーン14及び15は、半適合又は適合材料で作られ得る。不適合材料の実施例には、典型的にはポリエステル又はナイロン製の高圧で膨張可能な材料があり、この種の材料で作られたバルーン(バルーン13など)は、特定の直径まで拡大し、閉塞部を開くか、又は血管系を拡張させるために高圧をかけることができる。他方では、適合材料の実施例には、例えば、ポリウレタン又はシリコーン(本質的にはエラストマー)が含まれるが、これらに限定されない。半適合材料の実施例としては、Pebax又は高デュロメータポリウレタン、例えば、限定されないが、エチレン-酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル(PVC)、オレフィンコポリマー又はホモポリマー、ポリエチレン、ポリウレタン、架橋低密度ポリエチレン(PET)、高照射直鎖状低密度ポリエチレン(LDPE)、アクリロニトリルポリマー及びコポリマー、アクリロニトリルブレンド並びにイオノマー樹脂が挙げられる。他の適切なバルーン材料も使用され得る。
【0030】
更に、カテーテルの本体12は、医療処置中又は医療処置後に、血管30の病変セクション/選択されたセクション32内での様々な治療薬剤の送達及び抽出のために、バルーン13の両側に位置する第4のポート18及び任意選択で第5のポート17を追加的に含
む。治療薬剤としては、溶液の形態で個別に、組み合わせとして、又は脂質、金、炭素及び同類のものなどのナノ粒子と組み合わせて送達され得る、いくつかの特定の薬品、生物学的に活性薬剤、抗血小板剤、抗凝固剤、抗血栓剤及び線維分解剤、抗炎症剤、抗体及び同類のものが含まれ得る。好ましい実施形態は、治療薬剤の送達及び抽出のための別個のポート18、17の存在を開示するが、治療薬剤の送達及び抽出のための(2つではなく)共通のポートを有することだけが可能であり得る。別個のポート18、17を有する実施形態では、ポート18、17は、任意選択で同時に、複数の治療薬剤の送達を許容するために、個々の管腔に接続され得る(カテーテル本体12内の2つの管腔を必要とする)。実施形態によれば、バルーン14、15が拡張処置中に膨張すると、バルーン14、15は、(
図8に見られるように)血管30との接触点50でシールを形成し、(
図8に見られるように)シールされた領域55を創り出す。(
図9に示されるように)処置剤60の注射又は送達のためのポート17、18は、薬剤60が数秒~15分まで、又は任意選択でより長い範囲の一定の期間、血管30のシールされた領域55内に残るように配置される。
【0031】
実施形態によれば、カテーテル本体/チューブ12は、5つの管腔からなり、各管腔は、
図3に見られるようにマルチポートハブ22の専用ポート25に接続されている。
図3に見られるように、マルチポートハブ22は、カテーテルチューブ12に接続されている。示される実施例では、ハブ22は5つのポートからなり(ただし、1つのガイドワイヤ管腔ポートが見えないため、4つのポートしか見えない)、これらの4つのポートの各々は、少なくともポート16を通るバルーン13の膨張/収縮、ポート19を通るバルーン14の膨張/収縮、ポート20を通るバルーン15の膨張/収縮、及びポート17、18を通る治療薬剤の送達/抽出のために、カテーテルチューブ/カテーテル本体12内でそれぞれの管腔に接続され得る。更に、代替的な実施形態によれば、カテーテル本体/チューブ12は、5つの管腔の代わりに6つの管腔からなり得る。6つの管腔のうち、バルーン13、14、15の各々に専用の3つの管腔は、バルーン13、14、15を個別に膨張及び収縮させるためのものであり、1つは、治療薬剤60の送達のためのものであり、1つは、治療薬剤60の抽出又は吸引のための専用の管腔であり、残りの1つは、ガイドワイヤ誘導のためのものである。
【0032】
別の実施形態によれば、カテーテルチューブ12は、バルーン14、15を膨張/収縮させるための共通の管腔を有する5つの管腔の代わりに4つの管腔からなり得、各管腔は、マルチポートハブ22の専用ポート25に接続されている。
図4に見られるように、マルチポートハブ22は、カテーテルチューブ12に接続されている。示される実施例では、ハブ22は4つのポートからなり(ただし、1つのガイドワイヤ管腔ポートが見えないため、3つのポートしか見えない)、ハブ22のこれらの3つのポートの各々は、少なくとも(ポート16を通る)バルーン13の膨張/収縮、(ポート19及び20を通る)バルーン14及び15の膨張/収縮、及び(ポート17、18を通る)治療薬剤の送達/抽出のために、カテーテルチューブ12内でそれぞれの管腔に接続され得る。
【0033】
次に、提案する組み合わせバルーンカテーテル10の動作と、提案された本発明の組み合わせバルーンカテーテル10を使用して実施するバルーン拡張処置について、
図5~
図11を参照して説明する。
【0034】
狭窄又は閉塞した血管30(例えば、冠動脈又は末梢動脈)の閉塞を開くか、又は広げるためのバルーン拡張処置を始めるために、
図5に示すように、最初にガイドワイヤ40を血管30の管腔36に挿入して、バルーンカテーテル10のレールとして機能させる。既知のように、バルーン拡張処置では、ガイドワイヤ40は、X線モニタリング/視覚化を使用して血管狭窄の選択されたセクションに向けられる。更に、
図5に見られるように、カテーテル10は、ガイドワイヤ40がカテーテルチューブ12の中央管腔を通過する
ように、ガイドワイヤ40の上に挿入され、バルーン13が病変又はプラーク32の長さを覆うように配置され、バルーン13の両側に存在するバルーン15及び14は、それぞれ病変32の近位端32a及び遠位端32bと整列した状態に留まる。任意選択で、カテーテル10は、バルーン15及び14が血管30のより健康なセクションと整列するように(病変32の近位及び遠位端32a、32bから離れて)配置され得る。通常、病変の直径又は長さに基づいて、適切なバルーンサイズを有するカテーテル10を選択し得る。
【0035】
次のステップでは、
図6に見られるように、バルーン13を膨張させて、病変32の発生点において血管30の閉塞した/狭窄した選択されたセクションを開くか、又は血管30の管腔36を広げる。バルーン13は、カテーテル10の内部管腔に接続されたポート16を使用して所定の圧力又は体積に膨張され、これは、次いで、例えば、放射線不透過性生理食塩水などの適切な流体がバルーン13を膨張させるために送達されるハブ22のポートに接続されている。
【0036】
次のステップにおいて、
図7に見られるように、バルーン13の膨張に続いて、バルーン13の両側に位置するバルーン14及び15が膨張される。任意選択で、バルーン14及び15は、同時に膨張され得る。膨張すると、バルーン14及び15は、血管30との接触点50でシールを創り出す。バルーン14及び15は、カテーテル10の内部管腔に接続されたポート19、20を使用して膨張され、これは、次いで、例えば、放射線不透過性生理食塩水などの適切な流体がバルーン14、15を膨張させるために送達されるハブ22のポートに接続される。
【0037】
次のステップにおいて、
図8に見られるように、バルーン13は、同じポート16を使用して収縮される。見られるように、バルーン13が収縮すると、血管30は、病変32の発生点において広げられ/開かれ、血流の増加を許容するために開いた状態に留まる。このステップにおいて、バルーン13の収縮はまた、2つのバルーン14及び15の間にシールされた領域55を創り出す。
【0038】
次のステップにおいて、
図9に見られるように、処置剤60(例えば、薬物、薬品、ナノ粒子、官能化ナノ粒子など)が、ポート18を通してシールされた領域55内に送達される。ポート18は、カテーテル10の管腔に内部接続され、次いで、この内部管腔は、ハブ22の専用ポートに接続され、この専用ポートを通って薬剤60が注入され、シールされた領域55内に送達される。このステップは、好ましくは、バルーン13の収縮と同時に実行され得、すなわち、バルーン13が収縮するにつれて、血管の任意の潜在的な崩壊を防止するために、バルーン13の収縮した体積を連続的に交換しながら治療薬剤60が送達される。
【0039】
次のステップにおいて、(
図8と同じように見える)
図10に見られるように、処置剤60が、シールされた領域55内に送達されると、次いで、送達された薬剤60がポート17を通して抽出される。別の実施形態では、薬剤60がユーザ/患者にとって治療上有効で安全であれば、(薬剤60を抽出するステップを必要とせずに)薬剤60を血液中に流下することが許容され得る。次のステップにおいて、
図11に示すように、次いで、バルーン14及び15は、それぞれポート19及び20を使用して収縮され、シールされた領域55を開封し、カテーテルチューブ12を解放及び引き戻し、続いてガイドワイヤ40がバルーン拡張処置を完了する。このステップは、任意選択で、生理食塩水の挿入と同時に実行され得、すなわち、処置剤60が抽出されるにつれて、血管の任意の潜在的な崩壊を防止するために、処理剤60の抽出された体積を連続的に交換しながら生理食塩水が送達される。
【0040】
図12及び
図13を参照すると、バルーン13を取り囲むステント35を有する上記の
バルーンカテーテル10を示す。提案された本発明のバルーンカテーテル10は、この実施形態によるステント送達システムとして使用することができる。
図12及び
図13は、特に、本発明の組み合わせバルーンカテーテル10を使用して閉塞した血管を広げるために実行されるバルーン拡張処置の一部として、プラーク/病変沈着物32の場所における血管30の管腔36内へのステント35の送達を示す。
【0041】
図14及び
図15は、いくつかの他の特定の用途に有用であり得る、本発明の提案された組み合わせバルーンカテーテル10の代替的な実施形態を示す。特に、
図14は、バルーン13及びバルーン15の存在のみを伴う、カテーテルの断面図(
図1及び
図2で上述したものと同様)を示す。
図14に示される実施形態は、任意選択で、冠動脈病変、具体的には動脈の遠位端の近くに発生する病変の治療に使用することができる。ポート17は、この実施形態では、バルーン13の両側に存在し得る。任意選択で、バルーン15は、遠位への部分的な血液供給の継続を許容するために、部分的なシールのみを維持し得る。同様に、
図15は、バルーン15が存在するだけのカテーテル(
図1及び
図2で上述したものと同様)の断面図を示す。提案された組み合わせバルーンカテーテル10のこの実施形態は、好ましくは、微小血管系の治療、すなわち微小血管系、例えば冠動脈微小血管系への治療薬剤の送達のために展開される。バルーン15は、血管30の選択されたセクション又は病変32を広げ、血管30の選択されたセクション32内に1つ以上の治療薬剤60を送達するために膨張すると、血管30の選択されたセクション又は選択された病変32の内側13c、13dを押し、そこと(部分的に又は完全に)接触する。これらの実施形態では、バルーン15は、病変セクション32を広げるために使用されない場合がある。
【0042】
図16及び
図17は、本発明の代替的な実施形態を示す。特に、
図16は、第1のバルーン内に構成され、カテーテル本体に取り付けられた2つの電極を有する、本発明の組み合わせバルーンカテーテル10を示す。このように、カテーテル10は、電極72及び74の存在以外は、
図1~
図13に関して上で説明したものと同様である。電極は、(第1の部分12d上に位置する)カテーテル本体12に取り付けられる。電極72、74は、高電圧パルス源80に更に取り付けられる。電極72及び74は、金属で形成され、所与の電圧及び電流で再現性のあるアークが発生することを許容するように距離を置いて配置される。流体内の電極72と電極74との間の(バルーン13の膨張の際に役立つ)電気アークは、流体内の波動又は振動を生成するために使用される。これらのパルス/波動は、石灰化した沈着物を含むいくらかのカルシウム/固いアテローム性動脈硬化性病変に連続的な振動又は穿孔効果をもたらし、閉塞又は狭窄した選択されたセクションを開く。波動は、空気、水/流体、及び金属の上を伝播することができる(音波、超音波、圧力波のような)力学的な波動、又は空気、固体材料又は真空の上を伝播することができる電磁波を含み得る。可変電源80は、電極72及び74にパルスの流れを送達して、バルーン13内及び治療中の病変を有する血管30の選択されたセクション32内で波動又は振動の流れを創り出すために使用される。波動の大きさは、パルス電圧の大きさ、電流、及び持続時間及び繰り返し速度を制御することによって制御することができる。
図18は、電極と波動の流れとの間のアークを示す
図16の組み合わせバルーンカテーテルの側面図を示す。波動又は振動は、第1のバルーン13に隣接する選択されたセクション又は病変セクションに当たるのに役立つ。生成された波動又は振動95は、流体を通って伝播し、病変セクションに連続的に当たる。このアクションは、狭窄又は閉塞された選択されたセクション32を容易に広げるのに役立つ。多くの場合、特に狭窄又は石灰化された病変32の既往歴が古い患者では、バルーン13を膨張させるだけでは血管30の石灰化された病変32を広げるのに十分でない場合がある。したがって、そのような場合、バルーン13の膨張とともに波動95を適用すると、病変32の内側壁上により多くの圧力が生成され、それによって、狭窄又は閉塞された血管を広げて、そこを通る血流を改善する可能性が高まる。
【0043】
図17は、カテーテル本体の周りにコイルの形態で構成され、複数の波動源を有する電極構造を有する本発明の組み合わせバルーンカテーテルの別の代替的な実施形態を示す。
図16に示される実施形態のように、カテーテル10は、コイルの形態の電極構造90を含む。カテーテル本体12の第1の部分12d上に構成された電極構造90。電極構造90は、カテーテル本体12の周りに巻かれた絶縁ワイヤ92を含む。絶縁ワイヤ92は、膨張のためにバルーン13内に充填された流体(例えば、生理食塩水)に対して絶縁ワイヤ導体の対応する別個の部分を露出させる複数の開口部94を含み得る。各開口部94は、対応する波動源/電極96を形成する。電極構造90はまた、対向電極74を含む。対向電極74は、電極96と対向電極74との間に適切な高電圧が印加されるときに、電極96の各々と電極74との間に電気アークを生じさせるための共通電極として機能する。上で説明したように、電極74及び96は、高電圧パルス源80に取り付けられる。可変高電圧パルス発生器80は、電極96及び74にパルスの流れを送達して、バルーン13内及び治療中の病変を有する血管30の選択されたセクション32内で波動又は振動の流れを創り出すために使用される。
【0044】
組み合わせバルーンカテーテル10及びバルーン13、14、15などのその関連付けられた部品、並びにカテーテルのチューブに接続されたマルチポートハブ22などの他の促進手段は、異なる寸法の幅広い材料を使用して作製され得る。
【0045】
前述の説明が、様々な実施形態を参照して提示されている。本出願が関連する当業者及び技術者は、本発明の原理、趣旨及び範囲から有意義に逸脱することなく、記載された構造及び動作の方法/ステップの改変及び変更を実施することができることを理解するであろう。
【国際調査報告】