(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】対象者による物質の摂取に関する時間窓の判定
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20240119BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541910
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022050372
(87)【国際公開番号】W WO2022152661
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】デリーモア キラン ハミルトン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フアイブレグツ ローレンシア ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン マーク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト ルツ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ボノミ アルベルト ジオヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ペルセルス エドゥアルド ゲラルド マリエ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
一態様によれば、対象者の汗腺から分泌される汗中の、第1の物質の濃度を示す第1のデータを、センサから受信するステップ(402)と、(i)汗中の第1の物質の濃度に関する特徴的事象の発生時間と(ii)血中の第1の物質の濃度に関する特徴的事象の発生時間との関係を、判定するステップ(404)と、この関係及び受信した第1のデータに基づいて、対象者による第2の物質の摂取に関する時間窓を判定するステップ(406)とを有する、方法が提供される。別の態様は、この方法を実行する装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを使用して、
対象者の汗腺から分泌される汗中の第1の物質の濃度を示す第1のデータを、センサから受信するステップと、
受信した前記第1のデータと、一方では、汗中の前記第1の物質の濃度に関する特徴的事象の発生時間と、他方では、血中の前記第1の物質の濃度に関する前記特徴的事象の発生時間との間の関係とに基づいて、前記対象者による第2の物質の摂取に関する時間窓を判定するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
前記関係と受信した前記第1のデータとに基づいて、前記対象者の血中の前記第1の物質の濃度を判定するステップ
をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のデータを受信するステップの前に、血中の前記第1の物質の濃度に関する前記特徴的事象の前記発生時間を示す、第2のデータを受信するステップ
をさらに有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
判定された前記時間窓に関して、使用者へ警告する信号を生成するステップ
をさらに有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
判定された前記時間窓に基づいて時間的に前記第2の物質の投薬を制御する、制御信号を生成するステップ
をさらに有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象者に関する生理学的データを取得するステップ
をさらに有し、前記時間窓を判定するステップが、さらに、前記生理学的データに基づく、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の物質に関する第1の薬理学的モデル、及び前記第2の物質に関する第2の薬理学的モデルのうちの少なくとも一方を、取得するステップ
をさらに有し、前記時間窓を判定するステップが、さらに、前記第1の薬理学的モデル及び前記第2の薬理学的モデルのうちの少なくとも一方に基づく、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記関係を判定するステップが、前記対象者による前記第1の物質の摂取後、前記対象者の血中で前記第1の物質が検出されるまでにかかる時間の判定と、前記対象者による前記第1の物質の摂取後、前記対象者の血中で前記第1の物質が検出されるまでにかかる時間の推定値であって、前記推定値が、人々の集団に基づく、推定値と、前記対象者による前記第1の物質の摂取後、使用者によって、前記第1の物質の効果が検出されるまでにかかる時間の指標と、前記対象者による前記第1の物質の摂取後、前記第1の物質の効果がセンサによって検出されるまでにかかる時間の指標とのうちの、少なくとも1つに基づく、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
受信する前記第1のデータが、ある期間にわたる前記対象者の前記汗腺から分泌される前記汗中の前記第1の物質の代謝物の濃度を示すデータを含み、且つ
前記関係を判定するステップが、汗中の前記第1の物質の前記代謝物の濃度に関する特徴的事象の発生時間と、血中の前記第1の物質の前記代謝物の濃度に関する前記特徴的事象の発生時間との間の関係を、判定するステップを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の物質に関する前記薬理学的モデル、及び前記対象者に関する前記生理学的データを使用して、前記対象者の前記第1の物質の代謝率を判定するステップ
をさらに有し、前記時間窓を判定するステップが、さらに、判定された前記代謝率に基づく、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の物質と前記第2の物質とが相互作用するか、又は前記第1の物質の代謝産物と前記第2の物質とが相互作用する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
好適なコンピュータ又はプロセッサによる実行時に、前記コンピュータ又は前記プロセッサに、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータ可読コードを含む、コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法のステップを実行する、プロセッサを備える、装置。
【請求項14】
対象者の汗腺によって生成される汗の特徴を示すデータを測定するための汗センサと、
請求項13に記載の装置と
を備えるシステムであって、前記第1のデータが、前記汗センサから受信される、システム。
【請求項15】
判定された前記時間窓に基づく時間に、前記対象者に通知を与える、ユーザインタフェースをさらに備える、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者による物質の摂取に関する時間窓を判定することに関し、より詳細には、対象者の汗に関して取得されたデータに基づいて、かかる時間窓を判定することに関する。
【背景技術】
【0002】
医療処置中に、正しい用量の薬剤を正しい時間に対象者(例えば、人間又は動物)へ投与することは、例えば、パーキンソン病若しくは糖尿病の治療、又は鎮静及び/若しくは鎮痛(すなわち、除痛)に使用される薬剤の場合、極めて重要である可能性がある。
【0003】
薬剤などの、対象者によって服用されるか又は対象者に投与される物質は、対象者の血中だけでなく、対象者の汗中でも、ある程度検出できることが知られている。しかし、物質は、物質が対象者の汗中に存在する濃度とは相異なる(例えば、より高い又はより低い)濃度で、対象者の血中に存在する。この不一致は、物質が血液から間質液を介して汗腺に移送される仕組み、汗腺での生成の可能性、汗腺による排泄、及び汗管で起こり得る再吸収に起因する。さらに、物質の摂取後に、物質が対象者の血中に現れる(例えば、血中で検出可能となる)速度は、物質が対象者の汗中に現れる(例えば、汗中で検出可能となる)速度よりも速い。血中及び汗中の生体異物の物質の濃度は、1回の投与後、時間の経過と共に、低下することも知られている。したがって、ただ単に対象者の汗中の物質の濃度を測定するだけでは、対象者の血中の物質の正確且つ最新の濃度を判定することは、困難な場合がある。
【0004】
例えば、薬剤が対象者によって服用されるか又は対象者に投与される(例えば、静脈内に)と、薬剤は、血管及び毛細血管を通って対象者の身体のあちこちに、また毛細血管の周囲の組織内に移送される。薬剤が望ましい効果を発揮するには、一定量の薬剤の活性物質が、血流中に存在する必要がある。薬剤の最初のボーラス又は用量が投与された後、過剰摂取を避けるため、また対象者の薬剤の治療上の効果が薄れるのを防ぐために、次のボーラス又は用量が、正しい時間に投薬される必要がある。しかし、2回目のボーラス又は用量が、いつ服用又は投与される必要があるかを知るのは、難しい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、対象者の汗に関して取得された測定値に基づいて、対象者による物質の摂取に関する、適切な時間窓を判定する方法が求められている。本発明は、独立請求項によって定義される。従属請求項は、有利な実施形態を定義する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態は、対象者の汗中の物質の濃度の測定値を使用して、別の物質の摂取又は同じ物質のさらなる摂取に関する、時間窓を判定できる仕組みを提供する。これは、対象者の汗中の物質の濃度と対象者の血中の物質の濃度との関係を、判定することによって実現する。本発明者等は、対象者の汗中の物質の濃度に関する特定の事象(例えば最大値)の発生と、対象者の血中の物質の濃度に関する特定の事象(例えば同じ事象)の発生との、時間差を判定することによって、さらなる量の物質の、好適な(例えば安全な)又は不適切な(例えば安全でない)投薬又は摂取に関する時間窓を、判定可能であることを認識した。
【0007】
第1の特定の態様によれば、対象者の汗腺から分泌される汗中の、第1の物質の濃度を示す第1のデータを、センサから受信するステップと、(i)汗中の第1の物質の濃度に関する特徴的事象の発生時間と(ii)血中の第1の物質の濃度に関する特徴的事象の発生時間との関係を判定するステップと、この関係及び受信した第1のデータに基づいて、対象者による第2の物質の摂取に関する時間窓を判定するステップとを有する、方法が提供される。
【0008】
この方法は、この関係及び受信した第1のデータに基づいて、対象者の血中の第1の物質の濃度を判定するステップをさらに有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1のデータを受信するステップの前に、血中の第1の物質の濃度に関する特徴的事象の発生時間を示す、第2のデータを受信するステップをさらに有する。
【0010】
この方法は、判定された時間窓に関して、使用者に警告するための信号を生成するステップを有する。いくつかの実施形態では、この方法は、第2の物質の投薬を、判定された時間窓に基づいた時間に制御する、制御信号を生成するステップを有する。
【0011】
この方法は、いくつかの実施形態では、対象者に関する生理学的データを取得するステップをさらに有する。時間窓を判定するステップは、さらに、生理学的データに基づく。
【0012】
この方法は、第1の物質に関する第1の薬理学的モデル、及び第2の物質に関する第2の薬理学的モデルのうちの少なくとも一方を、取得するステップをさらに有する。時間窓を判定するステップは、さらに、第1の薬理学的モデル及び第2の薬理学的モデルのうちの少なくとも一方に基づく。
【0013】
関係を判定するステップは、以下のうちの少なくとも1つに基づく。対象者による第1の物質の摂取後、対象者の血中で第1の物質が検出されるまでにかかる時間の判定、対象者による第1の物質の摂取後、対象者の血中で第1の物質が検出されるまでにかかる時間の推定値であって、人々の集団に基づく推定値、対象者による第1の物質の摂取後、使用者によって第1の物質の効果が検出されるまでにかかる時間の指標、及び対象者による第1の物質の摂取後、第1の物質の効果がセンサによって検出されるまでにかかる時間の指標。
【0014】
いくつかの実施形態では、受信する第1のデータは、ある期間にわたって対象者の汗腺から分泌された汗中の、第1の物質の代謝物の濃度を示すデータを含む。関係を判定するステップは、汗中の第1の物質の代謝物の濃度に関する特徴的事象の発生時間と、血中の第1の物質の代謝物の濃度に関する特徴的事象の発生時間との関係を、判定するステップを有する。
【0015】
この方法は、第1の物質に関する薬理学的モデル、及び対象者に関する生理学的データを使用して、対象者の第1の物質の代謝率を判定するステップをさらに有する。時間窓を判定するステップは、さらに、判定された代謝率に基づく。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の物質と第2の物質とは、相互作用する。いくつかの実施形態では、第1の物質の代謝産物と第2の物質とは、相互作用する。
【0017】
第2の特定の態様によれば、非一時的なコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品が提供され、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読媒体内に組み込まれたコンピュータ可読コードを有し、コンピュータ可読コードは、好適なコンピュータ又はプロセッサによる実行時に、コンピュータ又はプロセッサに、上述の段落に記載のうちのいずれかの方法を実行させるよう構成される。
【0018】
第3の特定の態様によれば、本明細書に開示されている方法のステップを実行するよう構成された、プロセッサを備える装置が提供される。
【0019】
第4の特定の態様によれば、対象者の汗腺によって生成される汗の特徴を示すデータを測定するための、汗センサと、本明細書に開示されている装置とを備える、システムが提供される。第1のデータは、汗センサから受信される。
【0020】
システムは、判定された時間窓に基づく時間に、対象者に通知を与えるよう構成された、ユーザインタフェースをさらに備える。
【0021】
これらの態様及び他の態様は、これ以降で説明される実施形態から明らかになり、また実施形態を参照しながら説明される。
【0022】
次に、例示的な実施形態を、以下の図面を参照して、ただ単に例として説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】連続した2回の摂取に対する、血中の物質の濃度の一例を示すグラフである。
【
図2】連続した2回の摂取に対する、血中の物質の濃度のさらなる例を示すグラフである。
【
図3】連続した2回の摂取に対する、血中の物質の濃度のさらなる例を示すグラフである。
【
図4】本開示の様々な実施形態による、方法の一例の流れ図である。
【
図5】時間の関数である、血中及び汗中の物質の濃度の変化の一例を示すグラフである。
【
図6】時間の関数である、血中及び汗中の物質の濃度の変化の、さらなる例を示すグラフである。
【
図7】様々な時間領域が示された、
図6のグラフである。
【
図8】本開示の様々な実施形態による、方法のさらなる例の流れ図である。
【
図9】時間の関数である、血中及び汗中の物質の濃度の変化の、さらなる例を示すグラフである。
【
図10】時間の関数である、血中及び汗中の物質の濃度の変化の、さらなる例を示すグラフである。
【
図11】時間の関数である、血中及び汗中の物質の濃度の変化の、さらなる例を示すグラフである。
【
図12】コンピュータ可読媒体と通信するプロセッサの、一例の概略図である。
【
図13】本開示の様々な実施形態による、装置の一例の概略図である。
【
図14】本開示の様々な実施形態による、システムの一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で開示されている実施形態は、対象者の汗中の、以前に服用した物質の濃度の測定値、並びに対象者の汗中の、以前に服用した物質の濃度と、対象者の血中の、以前に服用した物質の濃度との関係についての知識に基づいて、物質の安全な摂取又は投与に関する時間窓を判定できる仕組みを提供する。本明細書で言及される物質は、薬剤(例えば、薬物)、(例えば、食物若しくは飲料の)成分、又は対象者(例えば、人)によって消費されるか、経口摂取されるか、服用されるか、若しくは対象者に投与される、他の任意の物質、或いは物質が対象者の身体によって代謝された後の、かかる物質の産物を含む。本発明は、対象者が薬剤を服用すべき又は投与されるべき臨床的治療分野において、特に有利であることが明らかとなろう。対象者は、かかる例では、第1の薬剤の初回用量を服用し、その後、同じ薬剤の2回目の用量、又は第2の薬剤の用量を、服用する必要がある。薬剤が対象者の組織に吸収されると、薬剤の濃度は、時間の経過と共に低下し、初回用量による薬剤の濃度が、薬剤が治療上有効である閾値を下回って低下する前に、2回目の用量が服用されることが望ましい(例えば、特に薬剤が除痛目的で服用されている場合)。さらに、初回用量による薬剤の濃度がまだ比較的高い間は、2回目の用量の服用が早すぎないことが重要である。というのは、これが、過剰摂取を引き起こす可能性があるからである。
【0025】
図1、
図2、及び
図3は、物質の初回用量及び2回目の用量が、互いに異なる時間に服用されたときに得られる、対象者の血中の物質の(任意単位の)濃度の例を示すグラフである。
図1、
図2、及び
図3に示されているグラフにおいて、線102は、対象者の血中の初回用量の物質の濃度を表し、線104は、対象者の血中の2回目の用量の物質の濃度を表し、線106は、物質の初回用量及び物質の2回目の用量によって生じた、対象者の血中の物質の総濃度の組合せ(例えば、合計)を表す。示されている例では、総濃度は、25任意単位(a.u.)を超えてはならず、また5a.u.を下回ってはならないと想定されている。これは、25a.u.を超える濃度が、対象者にとって有害(例えば有毒)な可能性があり、また5a.uを下回る濃度が、所望の治療上の効果を得るには不十分な場合の例に関するものである。
【0026】
図1では、物質の総濃度(線106)が、薬剤の効果がなくなるレベル未満には低下せず、且つ対象者にとって危険となる可能性があるレベルを超えて高まることがないように、初回用量(線102)が服用された後の適切な時間に、2回目の用量(線104)が服用されている。
図2に示されているグラフは、初回用量(線102)の摂取後、2回目の用量(線104)があまりに早く服用され、その結果、2回目の用量が服用された時間の前後で、総濃度(線106)が特に高くなるシナリオを表している。このシナリオは、極端な場合には、結果的に、対象者に過剰摂取をもたらす可能性があり、医学的合併症を引き起こす可能性がある。
図3に示されているグラフは、初回用量(線102)の摂取後、2回目の用量(線104)が服用されるまでが長すぎ、これにより、2回目の用量が服用される直前には、総濃度(線106)が、ほぼゼロ(すなわち、場合によっては治療上効果のないレベル)まで落ちるシナリオを表している。本明細書に開示されている実施形態は、利点の中でもとりわけ、対象者の血中の物質の総濃度が、
図1に示されている例のように、許容可能、安全、且つ効果的な範囲内に収まるように、2回目の用量を服用するための適切な時間窓の指標を提供するのに役立つ。
【0027】
本明細書に開示されている実施形態では、対象者(例えば、人)によって服用されるか又は対象者に投与される物質のボリュームは、用量又はボーラスと呼ばれる。「ボーラス」という用語は、本明細書で使用されている場合、血中の濃度を効果的なレベルまで上昇させるために、特定の時間内に服用又は投与される薬剤、薬物、又は他の化合物の、個々の量を指すことを意図している。いつ特定の物質の濃度が、物質のさらなるボーラスを安全に服用できるほど十分に低下したかを判定するのは、難しい場合がある。定期的に採血を行うことにより、対象者の血中の物質の量(例えば濃度)を測定することが可能である。採血は邪魔であり、苦痛を与える可能性があるため、代替手法には、対象者の汗中に存在する物質の濃度を測定することが含まれる。ただし、上記のように、対象者の血中の物質の特定の濃度と、対象者の汗中の物質の対応する濃度との間には、時間のずれがある。同様に、対象者の血中の物質の濃度プロファイルの特定の特徴(例えば、最大濃度)の発生と、対象者の汗中の物質の濃度プロファイルの同じ特徴の発生との間には、時間のずれがある。開示されている実施形態では、この時間のずれが考慮される。時間のずれ/時間差は、とりわけ、物質の性質(例えば、薬の種類)及び対象者によって異なり、時間のずれは、対象者の生理学的パラメータ、対象者の年齢、対象者の性別、及び対象者のホルモン量、並びに物質と、食物、飲料、及び他の薬剤など、他の物質との相互作用などの要因の影響を受ける。対象者の発汗量及び対象者の場所も、時間のずれに影響を与える。
【0028】
本発明の第1の態様は、方法に関する。
図4は、方法400の一例の流れ図である。方法400は、方法、例えば、対象者による物質の摂取に関する時間窓を判定する方法を含む。方法400は、ステップ402において、対象者の汗腺から分泌される汗中の、第1の物質の濃度を示す第1のデータを、センサから受信するステップを有する。センサは、いくつかの実施形態では、汗感知デバイス又は汗測定デバイスの一部を形成し(例えば、汗感知デバイス若しくは汗測定デバイスに、組み込まれるか又は付随し)、汗感知デバイス又は汗測定デバイスは、いくつかの例では、対象者の皮膚上に配置される(例えば、皮膚に取り付けられる)よう構成された、パッチ又はデバイスを含む。他の実施形態では、センサは、スマートウォッチなどの装着型デバイスを含むか、装着型デバイスの一部を形成する(例えば、装着型デバイスに、組み込まれるか又は付随する)。
【0029】
この開示において、「対象者」という用語は、人間又は動物を含む、汗をかく能力のある、あらゆる生物を含むことを意図している。いくつかの特定の実施形態では、対象者は、人間(すなわち人)を含み、例えば、人の汗中の物質の濃度を検出及び/又は測定することを伴う、医療処置又は健康評価を受ける人を含む。第1の物質の濃度を示す第1のデータは、例えば、対象者の汗中の第1の物質の濃度の測定値を含む。いくつかの実施形態では、対象者の汗腺から分泌された汗は、汗収集器(例えば、対象者の皮膚上のパッチの位置の汗収集部分)によって収集され、分析のためにセンサに移送される。他の実施形態では、センサが、分泌された汗を直接受容し、分析する。
【0030】
センサによって測定又は分析される物質(例えば、第1の物質)は、上記のように、薬剤(例えば、薬物)、食物若しくは飲料の成分、又は汗中に存在し、他の何らかの物質若しくは状態の存在を示す、生体指標を含む。したがって、いくつかの実施形態では、センサは、生体センサを含む。物質は、より一般的には、生体異物を含み、センサは、汗中の生体異物の特性(例えば濃度)を測定するための、生体センサを含む。生体異物の物質とは、生体内(例えば、人体内)で、自然には見られず、また自然には産出されない物質である。センサは、物質の濃度分析又は測定のために、特定の物質を検出するよう構成又は適合されているが、他の実施形態では、センサは、いくつかの物質を特定し、汗中の物質のうちの1種又は複数の濃度を、分析又は測定するよう構成される。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1のデータは、汗中の第1の物質の濃度のただ1回の測定値(すなわち、特定の時間における第1の物質の濃度の測定値)を含む。しかし、他の実施形態では、第1のデータは、一定期間にわたる、汗中の第1の物質の濃度の複数回の測定値を含む。測定は、例えば、間をおいて、又は定期的に(例えば、30秒ごと、1分ごと、2分ごと、5分ごと、10分ごと、30分ごと、1時間ごとなど)行われてもよい。
【0032】
方法400は、ステップ404において、(i)汗中の第1の物質の濃度に関する特徴的事象の発生時間と(ii)血中の第1の物質の濃度に関する特徴的事象の発生時間との関係を、判定するステップを有する。このステップ404は、一度実行され、次いで、複数回使用される。ステップ404の結果は、例えば、ルックアップテーブルに記憶される。
【0033】
方法400は、ステップ406で、この関係及び受信した第1のデータに基づいて、対象者による第2の物質の摂取に関する時間窓を判定するステップを有する。時間窓は、物質の適切な/安全な摂取のための時間窓、又は物質の摂取が安全ではない/不適切な可能性がある時間窓のうちの、一方又は両方を含む。いくつかの実施形態では、第1の物質と第2の物質とは、同じ物質を含むが、他の実施形態では、第1の物質と第2の物質とは、相異なる物質を含む。第1の物質及び/又は第2の物質は、生体異物の物質を含む。ステップ404及び406については、
図5を参照して、下記でより詳細に論じられる。
【0034】
図5は、時間の関数である、血中の物質(例えば、第1の物質)の濃度(線502)及び汗中の物質の濃度(504)の、一例を示すグラフ500である。まず線502を参照すると、物質は、t
adminで、対象者に(例えば、経口で又は静脈内に)投与される。この例では、物質は、投与された直後に対象者の血中で検出可能(すなわち、物質の濃度が対象者の血中で測定可能)であり、したがって、血中の物質の最初の濃度が変化する時間、t
bl,0は、物質が投与された時間に等しい(すなわち、t
admin≡t
bl,0)と想定されている。したがって、物質は、時間t
bl,0で対象者の血中に現れ始め、濃度は、最大濃度C
bl,maxまで急激に上昇する。これは、対象者の血流への物質の取込みが、非常に速いシナリオを表している。対象者の血中の物質の濃度は、次いで、ほぼ指数関数的に低下し始める。この開示の目的上、対象者の体内(例えば、汗中及び血中)の物質の濃度の低下は、指数関数的であると想定されている。対象者の血中の物質の濃度は、指数関数モデルに従って、物質の半減期の終了後、半分に低下する。
図5では、最初の半減期は時間t
bl,1/2に生じ、この時点の対象者の血中の物質の濃度は、C
bl,1/2で示されている。2回目の半減期は時間t
bl,1/4に生じ、この時点の対象者の血中の物質の濃度は、C
bl,1/4で示されている。
【0035】
ここで線504を参照すると、物質の最初の濃度変化が汗中に現れる時間は、tsw,0で示され、tsw,0は、対象者の血中での出現tbl,0よりも、時間差tdiffだけ遅れて生じる。ここでも、対象者の汗中の物質の濃度は(物質の非常に速い取込みにより)、最大濃度Csw,maxまで急激に上昇する。対象者の汗中の物質の濃度は、ほぼ指数関数的に低下し、その結果、最初の半減期tsw,1/2後の対象者の汗中の物質の濃度が、Csw,1/2で示され、2回目の半減期tsw,1/4後の対象者の汗中の物質の濃度が、Csw,1/4で示されている。
【0036】
ステップ404で言及された、第1の物質の濃度に関連する「特徴的事象」は、
図5の例に示されているように、物質の濃度に関連して生じる任意の事象を含む。特徴的事象は、例えば、物質の投与後、物質の濃度が最初に増加し始める時間(すなわち、t
bl,0及びt
sw,0)に生じると考えられる。別の特徴的な事象は、物質の濃度が最大(すなわち、C
bl,max及びC
sw,max)になる時間に生じると考えられる。別の特徴的な事象は、物質の濃度が半分(すなわち、C
bl,1/2及びC
sw,1/2)に低下したとき(例えば、物質の半減期)に生じると考えられる。別の特徴的事象は、対象者からの指標に基づいて、対象者の体内の物質の効果が最初に検出された瞬間に生じると考えられる。別の特徴的事象は、対象者の血中で物質が検出されるまでにかかる時間の推定値に基づき、推定値は、人々の集団(例えば、同様の生理学的データを共有するか又は同様の属性の、人々の集団)に関する推定値又は測定値に基づいている。第1の物質の濃度に関連する他の特徴的事象も使用され、さらなる例については、下記で論じられる。関係を判定するステップ(ステップ404)は、概ね、以下のうちの少なくとも1つに基づく。対象者による第1の物質の摂取後、対象者の血中で第1の物質が検出されるまでにかかる時間の判定、対象者による第1の物質の摂取後、対象者の血中で第1の物質が検出されるまでにかかる時間の推定値であって、人々の集団に基づく推定値、対象者による第1の物質の摂取後、使用者によって(例えば、対象者、介護者、観察者によって)第1の物質の効果が検出されるまでにかかる時間の指標、及び対象者による第1の物質の摂取後、第1の物質の効果がセンサによって検出されるまでにかかる時間の指標。例えば、下記で説明されるように、センサ(例えば、加速度計)を使用して、何らかの病状によって引き起こされる既知の影響である、振動又は震えなどの動きを検出する。センサが、影響の減少を検出したことは、薬剤(すなわち、第1の物質)が効果を発揮し始めたことを示している。
【0037】
tdiff(すなわち、血中の同等の変化と比較した、汗中の濃度変化(例えば、特徴的事象)の時間遅延)は、以下の例では、物質が最初に投与された時間tadminと、汗中の物質の最初の濃度変化tsw,0が測定された時間との、時間差又は時間遅延を使って近似される。tdiffは、他の例では、上記のように、血中の最大濃度と汗中の最大濃度との時間差、又は濃度対時間曲線で生じる、他の特徴的事象間の時間差によって表される。この例では、物質の最初の投与前に、対象者の血中及び汗中に存在する物質の量は、非常に少ないか、又はゼロと想定されている。
【0038】
この例における時間差tdiffは、以下のように表される。
tdiff=tsw,0-tadmin [1]
【0039】
この状況は、対象者の血流への取込み時間tuptakeが、無視できるか又は非常に速い物質に当てはまり、したがって、tuptake<<tdiffの限度内で、tdiff≒tdiff+tuptakeである。この急速な取込みは、上記のように、tadmin≡tbl,0であることを意味している(すなわち、物質の投与から血中での物質の出現までの時間は、無視できる)。通常、吸入又は静脈注射によって投与される物質は、急速に取り込まれる。式[1]のtadminの値は、方法400を実行するコンピュータ処理デバイスのプロセッサによって、例えば、電子医療記録(EMR)などの対象者に関連する記録から、プロセッサと連係するユーザインタフェースへの、使用者の手作業での入力によって、又は物質が自動的に投与される例では、物質を投与するシステム若しくはデバイスの内部時計から、引き出される。tdiffは、したがって、基本的な例によれば、物質(例えば、薬剤)を対象者に投与してから、対象者の汗中に物質が現れる(例えば、物質の濃度がゼロから増加する)までの時間を、測定することによって判定される。
【0040】
t
diffが判定されると、汗中の物質の濃度を、(例えば、プロセッサによって)血中の濃度に直接マッピングすることができる。ここで、血中の物質のピーク濃度C
bl,maxが、時間差t
diff後の、汗中のピーク濃度C
sw,maxに直接対応すると想定する。さらに、時間遅延を補正した後の汗中の物質の濃度の変化が、血中の物質の濃度の変化に直接対応する(すなわち、血液と汗との濃度の傾向が、1:1の相関関係にある)と想定する。ただし、血中及び汗中の物質の濃度は、汗中の物質の濃度が血中の物質の濃度よりも低い場合も高い場合もあるので、同じスカラの大きさを有していない。
図5に示す例では、汗中の物質の最大濃度は、血中の物質の最大濃度よりも低い。
【0041】
実際には、所与の時間tにおける血中の物質の相対濃度(すなわち、C
bl(t)/C
bl,max)は、汗中の相対濃度C
sw(t)/C
sw,maxを監視することにより、また、
図6に示され、下記でより詳細に論じられるように、例えば、以前に取得された測定値に当てはまる、指数関数を使用した外挿によって、予測することができる。別法として、所与の時間tにおける血中の物質の相対濃度は、物質の半減期t
1/2についての知識を使用して、予測することができる。例えば、ヒドロキシクロロキンは、対象者の血中及び汗中で検出され、濃度が測定される物質の一例である。ヒドロキシクロロキンの半減期(すなわち、吸収半減期)は、3.6時間である。対象者の血中の、所与の時間tにおける物質の相対濃度は、以下のように表すことができる。
C
bl(t)/C
bl,max=C
sw(t+t
diff)/C
sw,max [2]
ここで、C
sw(t)は、以下で与えられる。
C
sw(t)=C
sw,max×exp(-λ(t-t
diff)) [3]
ここで、λは、減衰量(すなわち物質)の減衰定数と呼ばれる正の数で、物質の半減期によって決まる(λ=ln(2)/t
1/2など)。
【0042】
時間t[時間]は、時間t=0での活性物質の最初の投与に基づく、全体的な時間規模に対して規定されることに留意されたい。
【0043】
図6は、時間の関数である、血中の物質(例えば、第1の物質)の濃度(線602)及び汗中の物質の濃度(実線604)の、さらなる例を示すグラフ600である。この例では、対象者の汗中の物質の濃度の測定値(実線604)は、特定の時間までしか得られず、破線604’は、汗中の物質の濃度の変化の、特定の時間後の濃度を外挿することによる、推定又は予測を表している。
【0044】
濃度を予測するためのかかる外挿の使用を例示するために、半減期が1時間の物質(すなわち、λ=ln(2)/1≒0.693)が、時間t=0に投与され、この物質が汗中に最初に現れるまでに15分かかる、したがってtdiff=0.25時間である例を考える。2時間後の、対象者の血中の物質の相対濃度、Cbl(2)/Cbl,maxを知ることが望まれる。すべての定数及び値を式[2]及び式[3]に代入すると、以下となる。
Csw(t)/Csw,max=exp(-ln(2)(2-0.25))=0.297 [4]
これは、測定された汗中の物質の相対濃度である。
Cbl(t)/Cbl,max=exp(-ln(2)(2))=0.250 [5]
これは、血中の物質の実際の相対濃度である。
【0045】
この例より、所与の時間tにおける、測定された汗中の濃度Csw(t)、汗中の最大濃度Csw,max、及び時間差tdiffから、半減期を計算することが可能であり、続いて、時間の関数である、血中の物質の相対濃度が判定できることは、明らかである。
【0046】
物質が、血液から間質を介して汗腺内に拡散するのに時間がかかるので、時間のずれ(すなわち、tdiff)により、汗中で測定される物質の相対濃度が、所与の時間に血中で測定される物質の相対濃度よりも、はるかに大きくなることに留意されたい。
【0047】
tdiffを判定するステップは、物質が対象者に最初に投与されるときに実行されることが好ましい、較正ステップであると考えられる。汗中及び血中の物質の濃度間の、時間遅延の修正が行われると、血中の物質の相対濃度は、上記で説明されたように、どんな時点で判定されてもよい。これにより、適切な時間窓内での物質の安全若しくは適切な投与、及び/又は時間窓内での物質の安全でないか若しくは不適切な投与の防止に関する、いくつかの重要なパラメータを判定することができる。
【0048】
さらなる量の物質を対象者に投与する適切な時間窓を判定するために、最も遅い投与時間と最も早い投与時間が判定される。最も遅い時間の判定は、対象者の体内の物質の濃度を、下限値未満に降下させないという意図に基づいており、最も早い時間の判定は、対象者の体内の物質の濃度を、上限値を上回って増加させないという意図に基づいている。
【0049】
血中の物質の所望の効果の治療上の下限値又は閾値は、汗中で、対応する下限値に達する時間tsw,llよりも早い時間に生じる、時間tbl,ll(ここで、下付き文字「ll」は下限値を表す)において規定される。やはり汗中及び血中の物質の濃度に関する事象間の時間差又は時間遅延が、以下の数式を使用して、tbl,llを判定するために使用される。
tbl,ll=tsw,ll-tdiff [6]
【0050】
血中の物質の濃度が、治療上の下限値Cbl,llを下回って低下するのを防ぐために、物質のさらなる投与(例えば、薬剤のさらなるボーラス又は用量)が、遅くとも時間tlatest=tbl,llまでに、対象者に与えられる必要がある。これもまた、物質の取込みが即時であると想定している。
【0051】
所与の物質について、tlatestは、式[3]を整理及び単純化し、tについて解くことにより、以下のように判定される。
tsw,ll=-ln(Csw,ll/Csw,max)/λ+tdiff [7]
したがって、
tlatest=tbl,ll=tsw,ll-tdiff=-ln(Cbl,ll/Cbl,max)/λ [8]
であり、ここで、Csw,llは、汗中の物質の治療上の下限値である。式[6]を式[2]に代入すると、Csw,ll/Csw,max≡Cbl,ll/Cbl,maxを導出することができる。
【0052】
式[7]及び式[8]は、時間のずれにより、汗中の物質の相対濃度が、血中の物質の相対濃度より高いか又は等しい時間に、血中の物質の濃度の下限値が生じることを意味している。
【0053】
例として、治療上の下限値がCbl,max/4、半減期が1時間(すなわち、λ=ln(2)/1≒0.693)の物質が、時間t=0に投与され、汗中に最初に現れるまでに15分かかり、すなわちtdiff=0.25時間である。定数及び値を式[8]に代入することにより、物質のさらなる量(例えば、薬剤のボーラス又は用量)を投与する、最も遅い時間を判定することが可能である。
tlatest=-ln(0.25)/0.693=2時間{tadminに対して} [9]
【0054】
さらなる量の物質を投与する時間窓を判定するステップは、上記のように、物質の濃度が、これを超えると対象者が過剰摂取となる可能性のある、上限閾値を超えることを防ぐために、さらなる量の物質が投与される必要がある、最も早い時間tearliestを判定するステップも有する。過剰摂取は、例えば、2回目の量の物質(例えば、薬剤の2回目のボーラス)が、初回の量の物質(例えば、薬剤の初回のボーラス)の後、あまりに早く投与される場合に生じる。最も早い時間は、血中の物質の治療上安全な上限値に対応する時間tbl,ul(ここで、下付き文字「ul」は上限値を表す)において規定される。やはり汗中及び血中の物質の濃度に関する事象間の時間差又は時間遅延が、以下の数式を使用して、tbl,ulを判定するために使用される。
tbl,ul=tsw,ul-tdiff [10]
【0055】
血中の物質の濃度が、治療上の上限値(すなわち、有毒性の閾値)Cbl,ulまで増加するか又は超えるのを防ぐために、物質のさらなる投与(例えば、薬剤のさらなるボーラス又は用量)が、早くとも時間tearliest=tbl,ulの後に、対象者に与えられる必要がある。
【0056】
所与の物質に関して、tearliestは、tについて解くために式[3]を整理し、過剰な物質の量がCbl,ul-Cbl,maxで与えられるのを認識することにより、以下のように判定される。
tsw,ul=-ln((Csw,ul-Csw,max)/Csw,max)/λ+tdiff [11]
したがって、
tearliest=tbl,ul=tsw,ul-tdiff=-ln((Cbl,ul-Cbl,max)/Cbl,max)/λ [12]
であり、ここで、Csw,ulは、汗中の物質の治療上の上限値である。
【0057】
例として、治療上の上限値が3/2×Cbl,max、半減期が1時間(すなわち、λ=ln(2)/1≒0.693)の物質が、時間t=0に投与され、汗中に最初に現れるまでに15分かかり、すなわちtdiff=0.25時間である。定数及び値を式[12]に代入することにより、物質のさらなる量(例えば、薬剤のボーラス)を投与する、最も早い時間を判定することが可能である。
tearliest=tbl,ul=tsw,ul-tdiff=-ln((1.5-1)/1)/0.693=1時間{tadminに対して} [13]
したがって、さらなる量の物質(例えば、薬剤のさらなるボーラス又は用量)を投与するための適切な時間窓tappは、tearliest及びtlatestに基づいて、以下のように規定される。
tearliest≦tapp≦tlatest [14]
したがって、上記の例に基づいて、1時間≦tapp≦2時間となる。
【0058】
かかる適切な時間窓を判定することは、リチウムなどの治療上の範囲が狭い薬剤に、特に重要で適合する可能性がある。
【0059】
図7は、様々な時間窓の指標が示された、
図6のグラフ600を示している。第1の領域702は、さらなる量の物質を投与すると、対象者の血中の物質の濃度が、治療上の上限値を超える期間を表す。第1の領域702は、したがって、過剰摂取を引き起こすので、さらなる量の物質を投与するには早すぎる時間窓を表す。第2の領域704は、さらなる量の物質を投与すると、対象者の血中の物質の濃度が、治療上の下限値未満に低下する期間を表す。第2の領域704は、したがって、さらなる量の物質を投与するには遅すぎる時間窓を表す。第3の領域706は、さらなる量の物質の投与が適切/安全である期間を表す。第3の領域706は、したがって、時間窓t
appを表す。
【0060】
したがって、Csw(t)、Csw,max、及びtdiffの値を測定又は判定することにより、半減期、並びに最も早い時間tearliest及び最も遅い時間tlatestを導出することが可能である。最も早い時間及び最も遅い時間、したがってtappを判定することにより、適切な時間(例えば、判定された時間窓内)に、物質を確実に投与するか又は投与を促進し、望ましからざる(例えば、早すぎる又は遅すぎる)時間窓内での、物質の投与を防止することを目的とした、さらなる措置が取られる。かかる措置は、下記でより詳細に論じられる。
【0061】
図8は、対象者による物質の摂取に関する時間窓を判定する方法などの方法も含む、方法800のさらなる例の流れ図である。方法800は、上記で論じられた方法400のステップを有する。方法800は、ステップ802で、関係及び受信した第1のデータに基づいて、対象者の血中の第1の物質の濃度を判定するステップを有する。ステップ802は、例えば、血中の物質の濃度と汗中の濃度との関係が既知である場合に実現し、例えばアンモニウムの場合、汗中の濃度は、血中の濃度より20~50倍高くなる。同様に、血中の第1物質の濃度は、較正が実行されている場合に判定され、例えば、血液の測定値が利用できる場合、遅延時間t
diffが判定されるばかりでなく、測定された汗中の濃度と測定された血中の濃度との関係も判定される(例えば、ピーク濃度を調べることによって、時間のずれを考慮に入れる)。
【0062】
上記のように、物質が対象者に最初に投与されるときに、対象者の血中の第1の物質の濃度の測定が行われる。例えば、患者が薬剤を投与されている場合、薬剤が患者に最初に投与された直後又は投与後すぐに、1回又は複数回、血液サンプルを採取することにより、対象者の血中の薬剤の濃度の指標を判定することができる。この測定値から、とりわけ、薬剤が(投与後)患者の血中に最初に現れる時間、患者の血中の薬剤濃度が最大となる時間、及び患者の血中の薬剤の実際の最大濃度を、判定することが可能である。方法800は、したがって、ステップ804で、第1のデータを受信するステップの前に、血中の第1の物質の濃度に関する特徴的事象の発生時間を示す、第2のデータを受信するステップを有する。
【0063】
判定された時間窓は、いくつかのやり方で使用される。いくつかの実施形態では、物質が対象者に安全に投与される時間窓が、使用者に示される。方法800は、したがって、ステップ806で、判定された時間窓に関して、使用者に警告するための信号を生成するステップを有する。使用者は、対象者、医療専門家(例えば、患者に薬剤を投与する看護師)、又は判定された時間窓に関する警告が有用である、他のどんな人(例えば、介護者)も含む。ステップ806で(例えば、方法800を実行するプロセッサによって)生成される信号は、デバイスに、使用者へ警告を与えさせるよう構成された信号を含む。生成される信号は、例えば、デバイスに、アラームを鳴らさせるか、又は使用者へ、今が、さらなる量の物質を投与するのに適切な時間であるという警報を与えさせる。いくつかの実施形態では、警告は、ユーザインタフェースを介して、視覚的に、聴覚的に、触覚手段を介して、又は他の何らかのやり方で、使用者に与えられる。ユーザインタフェースは、患者デバイス、又はスマートフォン、ワークステーション、装着型デバイス(例えば、スマートウォッチ)など、患者及び/若しくは医療専門家がアクセス可能なデバイスの、ユーザインタフェースを含む。警告は、例えば使用者へ、「これより30分から45分で、薬剤の新しいボーラスを服用して下さい」というメッセージを提示することによって、使用者へ、新しい薬剤のボーラスを患者に投与する必要があることを知らせる、リマインダとして機能する。同様に、新しい薬剤のボーラスを実際に投与することが必要な時間に、「今、薬剤を服用して下さい」という、注意する警告が与えられる。使用者が、警告を遵守し、物質/薬剤を投与すると、使用者は、それ以上のどんな警告も停止させることができる。いくつかの実施形態では、汗中の物質の濃度が増加し始めているか、又は閾値量を超えて増加していることが検出されると、警告は自動的に停止される。しかし、使用者が薬剤を投与しない場合は、使用者へ警告するために、例えば、使用者に物質/薬剤を直ちに投与するよう促す、「適切な時間窓の間に薬剤が投与されませんでした。できるだけ早く、薬剤を投与して下さい」という、さらなる信号が生成される。
【0064】
いくつかの実施形態では、方法800は、判定された時間窓について使用者に警告する信号を生成するステップに加えて、服用されるべき物質の性質(例えば、どの薬剤を服用する必要があるか)、及び/又は服用されるべき物質の量(例えば、服用されるべき薬剤の用量)について使用者へ警告する、例えば「[1錠/5ml/60mg]の薬剤を服用して下さい」という信号を、さらに生成する。
【0065】
方法800は、ステップ808で、対象者に関する生理学的データを取得するステップをさらに有する。かかる生理学的データには、対象者の性別、年齢、医学的背景、体重若しくは血圧、又は対象者に関連する他の臨床データなど、対象者の詳細が含まれる。時間窓を判定するステップ(ステップ406)は、さらに、生理学的データに基づく。
【0066】
生理学的データには、一例では、対象者が疲れ始める時間、対象者が通常就寝する時間、及び/又は対象者が通常起床する時間を示す、データが含まれる。かかるデータは、時間窓を判定するときに考慮に入れられ、例えば対象者の睡眠-覚醒パターンが考慮される。例えば、対象者は、通常、午前7時に起床し、起床後すぐに薬剤を服用する可能性があることを示している場合がある。使用者は、かかる例では、「午後10時に薬剤を服用する場合は、60mgを服用する必要があります。代わりに、午後11時に薬を服用する場合は、50mgを服用する必要があります」といった、薬剤の服用に関する1つ又は複数の可能性について、警告又は通知を受ける。対象者(例えば患者)は、次いで、就寝したい時間に応じて、どれだけの用量を服用すべきかを判断することができる。この方法はさらに、予想される濃度レベルを考慮し、睡眠前に、閾値の(例えば、危険な)限度を超えて物質の濃度を増加させる、追加のボーラスなしに一晩をカバーでき、したがって、対象者が目覚めたときに、物質の濃度が十分に高い半減期を有する、そうした物質/薬剤についてのみ、対象者に時間範囲を提示する。そうでない場合、対象者は、さらなる用量を投与するために、夜中に起きなければならない。この方法は、かかる例では、さらなる用量を投与する必要がある夜間の適切な時間窓を、対象者に通知する信号を生成するステップを有する。
【0067】
方法800は、いくつかの例では、使用者(例えば、対象者及び/又は医療専門家)に対して、経時的に測定された基質の濃度、並びに/又は汗中及び/若しくは血中の基質の現在の状況の指標の、視覚的表現(例えばグラフ)を表示するステップを有する。かかる情報は、デバイス(例えばスマートフォン)又は対象者の測定を実行するデバイス(例えばパッチ)上に提示される。使用者に対して、物質(例えば、薬剤)が投与されるまでの残り時間を視覚的に示す、判定された時間窓(例えば、tearliestからtlatestまで)が表示される。
【0068】
いくつかの実施形態では、方法400、800を実行するよう構成されたデバイス(例えば、プロセッサ)は、対象者に物質を投与できるデバイスと通信する。方法800は、したがって、ステップ810で、第2の物質の投薬を、判定された時間窓に基づいた時間に制御する、制御信号を生成するステップをさらに有する。かかる自動薬剤投与は、使用者が、物質/薬剤の投与を忘れるか、若しくは自分で投与できない状況を回避するか、又は医療専門家の負担を軽減するために実行される。自動薬剤投与は、例えば、静脈路又は注入ポンプを使用して実現する。
【0069】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の要因が、対象者の汗中の物質の濃度に影響を及ぼし、その結果濃度が、予想された通りに、指数関数的に低下しない。したがって、いくつかの実施形態によれば、汗中の第1の物質の濃度を示す第1のデータは、第1の物質の濃度の複数回の測定値を含む。複数回の測定値を使用して、時間差(又は時間遅延)tdiffを判定する。いくつかの実施形態では、対象者の汗中の物質の濃度の、1回の測定又は一連の測定は、物質の各量の投与後(例えば、薬剤の各ボーラスが投与された後)に行われる。各測定値を使用して時間差tdiffが計算され、平均が計算されて、さらなる計算に使用される。様々な時間に計算されたtdiffの値の比較を使用して、1日のうちの様々な時間で変化するtdiffの値間のどんな差異も、またどんな差異の理由も判定し、比較に基づいて措置が取られる。例えば、対象者が、午前中に投与される薬剤の用量を減らす必要があることが、判定される。
【0070】
追加の測定は、様々な事象によって促されるか又はトリガされて、行われる。例えば、tdiffは、発汗量によって変わる可能性があるので、対象者の発汗量が大幅に変化していると判定される場合(例えば、対象者が、より多く又はより少なく汗をかき始める場合)、追加の測定が行われる。追加の測定は、いくつかの例では、対象者の体重に大幅な変化がある場合に行われる。追加の測定は、他の例では、ホルモン量の大きな変化が検出される場合(例えば、月経に関係する)に行われる。tdiffは、この場合、現在(又は以前)の発汗量と同等の発汗量での測定から判定される。この状況では、物質が、既に対象者の血流中に存在しているので、tdiffは、新しいボーラスが投与された後の、血中の物質の濃度がピークになる時間tbl,max、及び汗中の活性物質の濃度が最大になる時間tsw,maxに基づいて、判定されることになる。これは、以下のように表すことができる。
tdiff=tsw,max-tbl,max [15]
【0071】
物質の取込み時間が無視できる場合、
図5に示された例のように、t
bl,maxはt
adminと等しくなろう。
【0072】
上記で論じられた例では、対象者への基質の投与後の、血中への基質の取込み時間が非常に速い(すなわち、無視できる)と想定されている。しかし、場合によっては、物質が血流に急速に取り込まれない(すなわち、tuptake≧tdiff、又はtuptake<tdiffであるが、tuptake<<tdiffではない)。これは、物質の投与時間tadminが、血流中の物質の存在を示していないため、式[1]が成立しないことを意味している。これは、経口摂取又は皮膚からの吸収によって投与される物質の場合に生じる。こうした場合、
tdiff=tsw,0-tuptake [16]
であり、ここで、tsw,0は、汗中の物質の最初の濃度変化が生じる時間(例えば、物質の濃度の最初に検出可能な変化)であり、tuptakeは以下の式で与えられる。
tuptake=tbl,0-tadmin [17]
ここで、tbl,0は、物質が最初に血中に取り込まれる(例えば、血中で最初に検出された)時間であり、tadminは、物質が最初に投与された時間である。
【0073】
tuptakeは、実際には、いくつかのやり方のうちの1つで、例えば、物質の最初の投与(すなわち、現在、対象者の血中に物質がない時点での、物質の投与)後の、所与の時点において、患者から採取された血液サンプル中の物質の濃度を測定することにより判定される。このシナリオは、入院中の対象者(例えば患者)が、最初に物質を受容し、動脈ライン又は静脈ラインから採取された血液サンプルの分析に、血液ガス分析装置が使用されるときに、例えば、集中治療室(ICU)のベッドサイド又は中央検査室に存在する、血液ガス分析装置を使用する場合に、行われる。別法として、前述のように、所与の物質の取込み時間の、集団ベースの推定値が使用される。集団ベースの推定値は、精度を高めるために、性別、年齢、及び特に体重などのパラメータを使用した、特定の集団(例えば、特定の患者群)に基づく。別の例では、対象者は、ユーザインタフェースを介して、自分の体の不調及び/又は活性物質の効果が始まっていると感じたときの指標を、手作業で供給する。上記のように、tbl,0の判定を混乱させる、対象者の血流中の既存の物質の濃度は、存在しないと想定されている。
【0074】
いくつかの実施形態では、別のセンサを使用して、物質(すなわち、薬剤)が、いつ対象者の体内で効果を発揮し始めるかを判定することが可能である。これは、対象者の血中の物質の濃度の上昇に関連している。例えば、パーキンソン病を罹患している対象者の体の部分(例えば手)は、薬剤を服用していないと震える。振戦/振動は、例えば、ブレスレット若しくは指輪として着用される可能性があるか、又は対象者が自分の電話を使用するたびに測定される可能性がある、加速度計などのモーションセンサを使って測定される。センサによって測定された震えの減少は、薬剤が、対象者の血中で効果を発揮し始めたことを示している。
【0075】
代替実施形態では、tdiffは、血中の物質の濃度が測定された時点tbl,measと、汗中の最大濃度に対する汗中の物質の相対濃度が、測定された血液サンプル中の物質の相対濃度と一致する時点(すなわち、時間t、ここで、Csw/Csw,max=Cbl,meas./Cbl,max)との時間差に基づいて判定される。この実施形態では、対象者にどんな著しい不快感を与えることもなく、半連続的に(例えば一定の間隔で)汗中の物質の濃度の測定を行うことができるので、十分な濃度の測定が可能である。この実施形態によれば、時間差は、以下のように表すことができる。
tdiff=t(Csw/Csw,max=Cbl,meas./Cbl,max)-tbl,meas [18]
【0076】
図9は、上記で論じられたように、対象者の血中(及び汗中)への取込みが遅い物質について、時間の関数である、血中の物質(例えば、第1の物質)の濃度(線902)及び汗中の物質の濃度(線904)の、さらなる例を示すグラフ900である。血液と汗との時間差/遅延は、上記で論じられたグラフの特徴的事象の比較によって、判定することができる(例えば、濃度が最初に増加し始めるとき、濃度が最大になるとき、又は濃度の半減期にあるとき)。しかし、この例における時間差/遅延は、上記で論じられたように、任意の時間tにおいて、対象者から採取された血液サンプル中で測定された、サンプルの濃度(
図9の点906)、及び汗中の相対濃度が、時間tにおける血液サンプル中の物質の相対濃度と一致する時間における、測定された汗中の濃度(
図9の点908)から判定される。
【0077】
この例では、血中の物質の濃度の測定は、血中の濃度が最大値に達した後に実行されることが想定されている。これは、例えば、2回の血液測定が連続して行われるときの、血中の物質の濃度の傾向を調べることによって(例えば、濃度がいつ低下し始めるかを認識することによって)、又は特定の物質に関する、薬物動態-薬力学(PK-PD)モデルなどの、既知の薬理学的モデルに基づくタイミングを使用することによって、判定することができる。
【0078】
より一般的には、ステップ406で時間窓を判定するときに、対象者に投与されるべき物質のいずれかに関する薬理学的モデルが考慮される。方法800は、いくつかの実施形態において、ステップ812で、第1の物質に関する第1の薬理学的モデル、及び第2の物質に関する第2の薬理学的モデルのうちの少なくとも一方を、取得するステップを有する。したがって、第1の物質と第2の物質とが同じ物質である場合には、同じ薬理学的モデルが使用され、一方、第1の物質と第2の物質とが別の場合には、別個の薬理学的モデルが取得され、使用される。時間窓を判定するステップ(ステップ406)はさらに、第1の薬理学的モデル及び第2の薬理学的モデルのうちの少なくとも一方に基づく。本明細書に記載されているように、1つ又は複数の薬理学的モデルは、対象者に関する生理学的データで補足される。
【0079】
いくつかの実施形態では、対象者に投与される物質自体は、汗中で測定できない。しかし、一部の物質は、対象者の身体によって代謝又は生体内変換され、汗中で検出でき、汗中で濃度を測定できる、代謝物を生じさせる。物質の投与時間tadminは、かかる例では、対象者の血中の代謝物の存在を示すものではなく、代謝物が対象者の汗中に現れるまでにかかる時間を示すものでもない。したがって、この例では、tdiffを判定するのに、式[1]はもはや適用できない。tdiffを判定するときに、取込み時間tuptakeに加えて、代謝又は生体内変換の時間を考慮に入れる必要がある。
tdiff=tsw,0-(tuptake+tmetabolism) [19]
ここで、tuptake及びtmetabolismは、以下の式で与えられる。
tuptake=tbl,0-tadmin [20]
tmetabolism=tbl,metabolite-tbl,0 [21]
ここで、tadminは、物質が対象者に最初に投与された時間、tbl,0は、物質が血中に最初に現れる時間、tbl,metaboliteは、物質の代謝物が最初に血中に存在する時間である。
【0080】
式[20]及び式[21]を、式[19]に代入すると、以下のtdiffの単純化された数式が得られる。
tdiff=tsw,0-(tbl,metabolite-tadmin)=tsw,0-tbl,metabolite [22]
[tadmin→0なので]
【0081】
式[22]は、血流への取込み時間tuptakeが速い物質にも、取込み時間が長い物質にも当てはまることに留意されたい。さらに、物質の代謝は瞬間的ではないため、tbl,metabolite-tadminは、常に>0になることに留意されたい。
【0082】
tbl,metaboliteは、実際には、いくつかのやり方のうちの1つで判定される。tbl,metaboliteは、例えば、活性物質の最初の投与後の所与の時点に、患者から採取された血液サンプル中で測定された、代謝物の濃度を使用して判定される。このシナリオは、入院中の対象者が、最初に物質を受容したが、採血が不可能な例において、上記で論じられたように、他の方法が使用される場合に行われる。
【0083】
代替実施形態では、tdiffは、血中の代謝物の濃度が測定された時点tbl,metabolite_measと、汗中の最大濃度に対する汗中の物質の相対濃度が、測定された血液サンプル中の代謝物の相対濃度と一致する時点(すなわち、時間t、ここで、Csw,metabolite/Csw,metabolite,max=Cbl,metabolite_meas./Cbl,metabolite,max)との時間差に基づいて判定される。この実施形態によれば、時間差は、以下のように表すことができる。
tdiff=tbl,metabolite_meas=twhere(Cbl,metabolite_meas./Cbl,metabolite,max)-tbl,metabolite_meas [23]
【0084】
図10は、時間の関数である、血中の物質の代謝物(例えば、第1の物質の代謝物)の濃度(線1002)、及び汗中の物質の代謝物の濃度(線1004)の、一例を示すグラフ1000である。上記の
図9に示された例と同様に、血液と汗との時間差/遅延は、上記で論じられたグラフの特徴的事象の比較(例えば、濃度が最初に増加し始めるとき、濃度が最大になるとき、及び濃度の半減期)からばかりでなく、任意の時間tに対象者から採取された血液サンプル中で測定された、サンプル中の代謝物の濃度(
図10の点1006)、及び汗中の代謝物の相対濃度が、時間tにおける血液サンプル中の代謝物の相対濃度と一致する時点での、汗中で測定された代謝物の濃度(
図10の点1008)からも、判定することができる。
【0085】
したがって、上記の例から、汗中の第1の物質の代謝物の濃度の測定値も、時間差tdiffを判定するのに、したがってさらなる量の第1の物質の、適切/安全な投与に関する時間窓を判定するのに、使用できることは明らかである。したがって、いくつかの例によれば、受信する第1のデータは、ある期間にわたって対象者の汗腺から分泌された汗中の、第1の物質の代謝物の濃度を示すデータを含む。関係を判定するステップ(ステップ404)は、汗中の第1の物質の代謝物の濃度に関する特徴的事象の発生時間と、血中の第1の物質の代謝物の濃度に関する特徴的事象の発生時間との関係を、判定するステップを有する。
【0086】
本明細書で論じられている様々な例において、関係の判定(ステップ404)及び/又は時間窓の判定(ステップ406)を支援するために、薬理学的モデルが使用されることに留意されたい。物質の代謝率は、人によって異なるので、対象者に関する生理学的データも、こうした判定を支援するために使用される。したがって、再び
図8を参照すると、方法800は、ステップ814で、第1の物質に関する薬理学的モデル及び対象者に関する生理学的データを使用して、対象者の第1の物質の代謝率を判定するステップを有する。時間窓を判定するステップ(ステップ406)は、さらに、判定された代謝率に基づく。
【0087】
いくつかの実施形態では、物質(例えば、第1の物質)は、汗中で測定可能であるが、物質が、対象者の体内で代謝され、物質の代謝物は、汗中では測定できない。代謝物は、この例では、対象者の体内に作用を及ぼすので、「活性」代謝物と見なされるが、(代謝されない)物質は、対象者の体内に作用を及ぼさないので、「不活性」であると見なされる。時間差t
diffは、この例では、物質の血中への取込みが無視できるか、若しくは取込みが遅いか、又は人体内で代謝若しくは生体内変換されるかどうかに応じて、式[1]、式[16]、又は式[19]を使用して判定される。ただし、記載されたように、物質の代謝物は活性であるが、物質自体は活性ではない。したがって、この実施形態では、汗中の不活性物質の濃度を使用して、血中の不活性物質の濃度を判定する。したがって、血中の活性代謝物の濃度を、推測することができる。代謝物の濃度は、不活性物質が体内で代謝又は生体内変換される速度だけでなく、活性代謝物が体内で消費される速度にも影響されることに、留意されたい。これら2つの速度は、通常は等しくなく、不活性物質の濃度と活性代謝物の濃度との間で、自明ではない伝達関数となる。これは、薬理学的モデル(例えば、薬物動態-薬力学、すなわちPK-PDモデル)を取得し、使用することにより、切り抜けられる。経口摂取後の薬剤の吸収率、及びその後の代謝を示すデータは、一般に、物質又は薬物ごとに製薬会社から入手可能であり、通常は、対象者の年齢、体重、及び性別に基づく。こうした患者固有のデータを入力すると、医薬品データベース又は薬理学的モデルより取得可能な代謝データから、薬物の代謝物の濃度が推定される。代謝物の濃度が判定されると、汗中の不活性物質の濃度と、相関づけることができる。この実施形態の一例が、下記で
図11に示されている。
【0088】
図11は、時間の関数である、血中の物質(例えば、第1の物質)の濃度(線1102)及び汗中の物質の濃度(線1104)の、一例を示すグラフ1100である。この例では、破線1106は、患者固有のデータを使用する薬理学的モデルに基づいて推論又は予測された、物質の代謝物の濃度と、汗中の不活性物質の濃度の測定を使用し、時間差t
diffを考慮することによって判定された、血中の不活性物質の濃度とを示している。
【0089】
これまで、投与されるべき第2の量の物質が、最初の投与の際に投薬されたものと同じ物質である、本発明の実施形態が論じられてきた。言い換えると、方法400では、第1の物質と第2の物質とは、同じ物質である。しかし、相異なる物質(例えば活性物質)は、相互作用する可能性がある。例えば、薬剤或いは栄養(例えば、ビタミン、ミネラル、又は食物若しくは飲料の成分などの栄養)は、他の種類の薬剤又は栄養と相互作用する可能性がある。場合によっては、相異なる物質間の相互作用が、対象者の身体に悪影響を及ぼすため、回避するか又は最小限に抑える必要がある。本開示の実施形態は、これを実現させるために、第1の相異なる物質の投与後に、第2の物質を安全に投与できる、好適な時間窓の判定を可能にする。
【0090】
方法400のステップは、物質の各種類(例えば、対象者に投与される/対象者によって消費されるべき、各薬剤及び成分)に対して実行される。時間差tdiff、及び/又はどんな取込み時間も考慮に入れた時間差tdiff+tuptakeの判定が、物質ごとの較正ステップとして実行される。これは、例えば、薬剤、栄養素、及び第1の物質の成分、並びにこれが反応する薬物、栄養素、及び成分のうちの、少なくとも1つに関して行われる。時間差が判定されると、時間窓が判定され、いつ薬剤を投与又は物質を消費すべきか、またいつすべきでないかに関する情報又は助言が、使用者(例えば、対象者及び/又は医療専門家)に与えられる。例えば、
・対象者が、アルコールと併用すべきではない薬剤を服用した場合、対象者がアルコールを消費することが再び安全になったときに、「青信号」(例えば、許容量の通知)が使用者に対して表示され、且つ/又はアルコールが消費されるべきではないときに、「赤信号」(例えば、警告の通知)が使用者に表示される。
・対象者が、アルコールを飲んだ後に服用できる薬剤を服用する予定である場合、対象者は、いつ服用するのが安全であるかを通知される。例えば、外挿によって、汗中のアルコールの濃度が下限値未満に低下する時間を判定でき、その時間からtdiff,alcohol+tuptake,medicationを差し引くと、薬剤を服用できる最も早い時間が得られる。
・対象者は、(ビタミンCが、身体による鉄の取込みを増進するので)ビタミンCが服用された後に鉄補助剤を服用するための、安全若しくは適切な時間窓、又は鉄補助剤が服用されたときに、ビタミンCを服用するための、安全若しくは適切な時間窓が通知される。或いは、
・対象者は、(カルシウムが、鉄の取込みを減少させるので)鉄補助剤が服用された後で、カルシウムが服用されるべきではない時間窓、又はカルシウムが服用された後で、鉄補助剤が服用されるべきではない時間窓が通知される。
【0091】
この実施形態のさらなる改良では、増強又は抑圧(depotentiation)が生じているかどうかを判定することが可能である(例えば、ある物質の効果が、別の物質の存在下で増大する場合、又は1つの薬物が、別の薬物の効果を低減するよう作用する場合)。これは、例えば、一部の薬剤と相互作用することが知られている、グレープフルーツなどの食物を、患者が食べた場合に生じる。この方法は、かかる例では、食物と薬物との相互作用が生じていることを対象者に通知又は注意するための、信号を生成するステップを有する。これは、適切なボーラスの薬剤を投与したにもかかわらず、患者への薬剤の効果がより強くなるので、増強の場合に特に重要である。
【0092】
したがって、本開示のいくつかの実施形態は、第1の物質と第2の物質とが相互作用するシナリオか、又は第1の物質の代謝産物(例えば、代謝物)と第2の物質とが相互作用するシナリオで使用される。
【0093】
上記で論じられた例では、様々な物質間の相互作用が、汗中で測定された物質の濃度から検出される。例えば、特定の物質(例えば生体指標)の濃度が、予想よりも大幅に高いか又は低い場合、特定の薬物が、予想通りに作用していないと判定される。したがって、何らかの相互作用が起きていると判定される。同様に、濃度の低下が、予想される指数関数的低下から逸脱している場合、別の物質がその物質と相互作用して、その物質の効果を減少させている(又は増進している)と判定される。
【0094】
場合によっては、対象者が複数の相異なる物質/薬剤を同時に服用しており、これにより、各物質が、血中へ個別に取り込まれ、薬物代謝/生体内変換が行われる。かかる場合、本明細書で説明された方法を使用して、各薬物が最初に投与された時間tdiff+tuptake、並びに/又はtdiff、tlatest、及びterliestを判定し、物質(例えば、薬物A、薬物B、薬物Cなど、若しくは代謝物A、代謝物B、代謝物Cなど)ごとに、記録することができる。これらの様々な物質は、様々な時点に(すなわち、同時ではなく)投与されることに留意されたい。したがって、いくつかの実施形態では、この方法は、患者及び/又は使用者に、いつ様々な薬剤が投与されるべきか、且つ/又は投与されるべきでないかを案内するために、警告/リマインダ/警報/助言などを提示する信号を生成するステップを有する。対象者は、例えば、「12時に薬剤A、12時半に薬剤B、13時に薬剤Cを服用して下さい」という通知が与えられる。
【0095】
さらに、いくつかの実施形態では、各薬剤の量又は用量が通知される。対象者は、例えば、「12時に薬剤Aを1錠、12時半に薬剤Bを10mg、13時に薬剤Cを60ml服用して下さい」という通知が与えられる。
【0096】
さらなる実施形態では、この方法は、対象者の汗中の薬剤の濃度に基づいて、患者が誤った薬剤若しくは薬剤の量を服用したかどうか、又は薬剤が誤った時間に服用されたかどうかを検出する。警報/警告/アラームは、対象者及び/又は医療専門家に供給することができる。これは、多くの高齢の多剤併用(polypharma)患者が、投与する必要がある様々な薬剤が多数あるせいで、正しい薬剤を正しい時間に投与することが困難なので、特に有利である。
【0097】
物質は、本明細書に説明されているいくつかの例では、ボーラスとして対象者に投薬又は投与される。しかし、点滴療法で使用されるものなどの、一部の薬剤投与システムでは、医用薬物又は栄養素は、点滴液に溶解されて投与され、ボーラスとして投与されるのではなく、人体への点滴液の流量調節によって与えられる。したがって、上記で説明された実施形態のうちのいくつかは、注入療法システムと共に使用することができない。かかるシステムでは、準ボーラス投与方式が実施される。点滴療法が開始されると、流量は、短時間高い値に設定され、その後、通常の流量まで減らされる。次いで、物質のボーラスが投与(例えば、注射)され、これにより、測定された汗中の濃度から、血中の物質の濃度を判定することができる。上記の実施形態で説明されたように、ボーラスが与えられていない期間であっても、対象者の汗中の物質の濃度の測定値から、対象者の血中の物質の濃度の判定を可能にする、パラメータが判定される。このようにして、点滴療法中の、対象者の汗中の物質の濃度の測定値に基づいて、対象者の血中の物質の濃度を判定することができる。したがって、判定された情報を使用して、点滴液の流量を増減させることができる。これは、インスリンなど、人体に自然に生じる薬物に適用される。
【0098】
方法400、800のステップは、上記の考察より、1つ又は複数のコンピュータ処理デバイスの1つ又は複数のプロセッサを使用して、実行されることが明らかであろう。本発明のさらなる態様は、したがって、コンピュータプログラム製品を提供する。
図12は、コンピュータ可読媒体1204と通信するプロセッサ1202の、一例の概略図である。いくつかの実施形態によれば、コンピュータプログラム製品は、非一時的なコンピュータ可読媒体1204を備え、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読媒体内に組み込まれたコンピュータ可読コードを有し、コンピュータ可読コードは、好適なコンピュータ又はプロセッサ1202による実行時に、コンピュータ又はプロセッサに、本明細書で開示されている方法400、800のステップを実行させるよう構成される。
【0099】
プロセッサ1202は、同様に、コンピュータ処理デバイス(例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、若しくは装着型デバイス)又はサーバなどの、装置の一部を形成する。本発明のさらなる態様は、したがって、装置を提供する。
図13は、装置1300の一例の概略図である。装置1300は、本明細書に開示されている方法400、800のステップを実行するよう構成された、プロセッサ1202を備える。いくつかの実施形態では、装置1300は、コンピュータ可読媒体1204をさらに備える。
【0100】
いくつかの実施形態では、装置1300は、とりわけ、対象者の汗中の物質の濃度を測定するための、センサをさらに備える。しかし、他の実施形態では、センサ及び装置1300は、システムの一部として互いに通信できる別個の構成要素である。
図14は、かかるシステム1400の一例の概略図である。システム1400は、対象者の汗腺によって生成された汗の特徴を示すデータを測定するための、汗センサ1402を備える。汗センサ1402は、例えば、対象者の汗中の物質(例えば、第1の物質、生体指標など)の濃度を測定できるセンサを含む。システム1400は、本明細書で開示されている装置(例えば、装置1300)をさらに備える。装置1300のプロセッサ1202によって受信される第1のデータは、汗センサ1402から受信される。
【0101】
いくつかの実施形態では、システム1400は、判定された時間窓に基づく時間に、対象者に通知を与えるよう構成された、ユーザインタフェース1404をさらに備える。ユーザインタフェース1404は、例えば、使用者(例えば、対象者又は医療専門家)へ、判定された時間窓に関する情報を提示するための、(例えば、スマートフォンなどの携帯型デバイスの、又は装置1300自体の)ディスプレイ又はスピーカを備える。かかる通知は、例えば、上記のように、第2の物質の服用若しくは投与が安全であること、又は第2の物質の服用若しくは投与が現在安全ではないことを、使用者に知らせる。他の警告、通知、及び警報は、本明細書で論じられているように、ユーザインタフェース1404を介して提示される。
【0102】
本明細書で説明されている実施形態は、対象者の汗から得られた測定値から、貴重な情報を判定できる仕組みを提供する。対象者の汗の分析は、分析するために対象者から血液を採取するよりも、はるかに煩わしさがない。汗に関して取得されたデータに基づいて、汗中の物質の濃度と、対象者の血中の物質の濃度との関係を判定することができ、次いで、対象者へのさらなる物質の投与に関する時間窓を判定することが可能である。したがって、対象者は、対象者の汗に関して得られた測定値だけに基づいて、さらなる量の物質を服用すること、又は別の薬剤など、別の物質を服用することが、安全であるか否かを知ることができる。
【0103】
プロセッサ1202は、本明細書で説明されているやり方で、装置1300を制御するよう構成又はプログラムされた、1つ又は複数のプロセッサ、処理ユニット、マルチコアプロセッサ又はモジュールを含むことができる。特定の実施態様では、プロセッサ1202は、それぞれが、本明細書で説明されている方法の個々の又は複数のステップを実行するよう構成された、又は実行するための、複数のソフトウェア及び/又はハードウェアモジュールを含むことができる。
【0104】
本明細書で使用される「モジュール」という用語は、特定の機能を実行するよう構成されたプロセッサ若しくはプロセッサの構成要素などの、ハードウェア構成要素、又はプロセッサによって実行されると特定の機能を有する命令データのセットなどの、ソフトウェア構成要素を含むことを意図している。
【0105】
本発明の実施形態はまた、本発明を実施するように適合されたコンピュータプログラム、特にキャリア上又はキャリア内のコンピュータプログラムにも適用されることが理解されよう。プログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、コード中間ソース、及び部分的にコンパイルされた形式などのオブジェクトコードの形式であるか、又は本発明の実施形態による方法の実施態様で使用するのに好適な、任意の他の形式である。かかるプログラムは、多くの様々なアーキテクチャ設計を有することも理解されよう。例えば、本発明による方法又はシステムの機能を実施するプログラムコードは、1つ又は複数のサブルーチンに細分される。これらのサブルーチン間で機能を分散する多くの様々なやり方が、当業者には明らかであろう。サブルーチンは、自己完結型プログラムを形成するために、1つの実行可能ファイルに一体に記録される。かかる実行可能ファイルは、コンピュータ実行可能命令、例えば、プロセッサ命令及び/又はインタプリタ命令(例えば、Javaインタプリタ命令)を有する。別法として、サブルーチンのうちの1つ若しくは複数、又はすべてが、少なくとも1つの外部ライブラリファイルに記憶され、静的に又は動的に、例えば実行時に、メインプログラムとリンクされる。メインプログラムには、サブルーチンのうちの少なくとも1つに対する、少なくとも1つの呼出しが含まれる。サブルーチンはまた、相互の関数呼出しも有する。コンピュータプログラム製品に関する実施形態は、本明細書に記載の方法のうちの少なくとも1つの各処理段階に対応する、コンピュータ実行可能命令を有する。この命令は、サブルーチンに細分され、且つ/又は静的若しくは動的にリンクされた1つ若しくは複数のファイルに記憶される。コンピュータプログラム製品に関する別の実施形態は、本明細書に記載のシステム及び/又は製品のうちの、少なくとも1つの各手段に対応する、コンピュータ実行可能命令を有する。この命令は、サブルーチンに細分され、且つ/又は静的若しくは動的にリンクされた1つ若しくは複数のファイルに記憶される。
【0106】
コンピュータプログラムのキャリアは、プログラムを担持できる任意のエンティティ又はデバイスである。キャリアには、例えば、ROM、例えばCD ROM若しくは半導体ROM、又は磁気記録媒体、例えばハードディスクなどの、データ記憶装置が含まれる。さらに、キャリアは、電気若しくは光ケーブルを介して、又は無線若しくは他の手段によって伝達される、電気又は光信号などの伝送可能なキャリアである。プログラムがかかる信号で具現化される場合、キャリアは、かかるケーブル又は他のデバイス若しくは手段によって構成される。別法として、キャリアは、プログラムが組み込まれている集積回路であり、集積回路は、当該の方法を実行するように適合されているか、又は当該の方法を実行する際に使用される。
【0107】
開示されている実施形態に対する変形形態は、当分野の技術者が、本明細書に説明されている原理及び技法を実践する際に、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の研究から、理解し、生み出すことができる。特許請求の範囲で、「有する」という単語は、他の要素も、他のステップも排除するものではなく、また単数形の要素は、複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、特許請求の範囲に列挙された、いくつかの項目の機能を果たす。互いに相異なる従属請求項に列挙された手段は、有利に組み合わせて使用することができる。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一体に、又は他のハードウェアの一部として供給される、光記憶媒体又は固体媒体などの好適な媒体に記憶又は分散されてもよく、インターネット又は他の有線若しくは無線の電気通信システムなどを介して、他の形態で分散されてもよい。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【国際調査報告】