(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】セファロスポリン系抗菌化合物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 501/56 20060101AFI20240119BHJP
A61K 31/546 20060101ALI20240119BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240119BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20240119BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20240119BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240119BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240119BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240119BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240119BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240119BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240119BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20240119BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240119BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240119BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240119BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240119BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
C07D501/56
A61K31/546
A61P31/04
A61P11/04
A61P13/00
A61P11/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P1/16
A61P1/02
A61P19/08
A61P27/16
A61P11/02
A61P1/04
A61P17/02
A61P17/00 101
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541922
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 CN2022071527
(87)【国際公開番号】W WO2022152146
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】202110038012.3
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110655016.6
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523238368
【氏名又は名称】上海森▲輝▼医▲葯▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523236560
【氏名又は名称】上海盛迪医▲葯▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 建
(72)【発明者】
【氏名】祝 令建
(72)【発明者】
【氏名】▲鄒▼ 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 慈立
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CC12
4C086CC16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA67
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA90
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB35
(57)【要約】
本開示は、セファロスポリン系抗菌化合物及びその調製方法に関する。当該セファロスポリン系抗菌化合物は、グラム陰性菌などの多種の細菌に対して抗菌活性を示すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで示される化合物又はその薬用可能な塩であって、
【化1】
そのうち、
XはN、CH又はC-Clであり、
TはS、S=O、CH
2又はOであり、
Eは
【化2】
であり、そのうち、R
1とR
2は、それぞれ独立的に水素、ハロゲン、フェニル基、アルキルチオ基又は任意選択的にカルバモイル基で置換されたアルキル基から選ばれ、R
11とR
12は、それぞれ独立的に水素、カルボキシ基、又は任意選択的にカルバモイル基で置換されたアルキル基から選ばれ、mは1~5の整数を指し、
Fは単結合であり、
AはC
1~C
6アルキリデン基、C
2~C
6アルケニレン基又はC
2~C
6アルキニレン基であり、
R
5は、それぞれ独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基、C
1~C
6ハロアルキル基、C
1~C
6ハロアルコキシ基から選ばれ、
G
1は
【化3】
であり、
R
1’、R
2’は、それぞれ独立的に水素原子、ハロゲン、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基、C
1~C
6ハロアルキル基、C
1~C
6ハロアルコキシ基から選ばれ、
R
3は、
【化4】
で置換されたC
1~C
6アルキル基であり、
R
3’は水素原子、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基から選ばれ、そのうち、前記アルキル基、アルコキシ基は、任意選択的にC
1~C
6アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、スルフヒドリル基、-NR
iR
j、
【化5】
、オキソ、チオ、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、C
1~C
6アルコキシ基及びC
1~C
6アルキルスルファニル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
R
mは、それぞれ独立的に水素原子、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基、ヒドロキシ基、6~10員アリール基及び5~8員ヘテロアリール基から選ばれ、そのうち、前記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基は、任意選択的にC
1~C
6アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、スルフヒドリル基、アミノ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、C
1~C
6アルコキシ基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
R
4は、それぞれ独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、スルフヒドリル基、-NR
iR
jから選ばれ、
R
i、R
jは、それぞれ独立的に水素原子、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基から選ばれ、
R
kは、それぞれ独立的に水素原子、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6ハロアルキル基、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルコキシ基、-NR
iR
jから選ばれ、そのうち、前記アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基は、任意選択的にC
1~C
6アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、スルフヒドリル基、-NR
iR
j、オキソ、チオ、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、C
1~C
6アルコキシ基、C
1~C
6アルキルスルファニル基、3~6員シクロアルキル基、3~6員ヘテロシクリル基、6~10員アリール基及び5~8員ヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
pは0~5の整数を指し、
qは0~5の整数を指し、
xは3~8の整数を指し、
nは0~3の整数を指す、
式Iで示される化合物又はその薬用可能な塩。
【請求項2】
Aは、C
1~C
6アルキリデン基である、請求項1に記載の化合物又はその薬用可能な塩。
【請求項3】
R
1’、R
2’は何れも水素原子である、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬用可能な塩。
【請求項4】
xは3~6の整数を指す、請求項1~3の何れか一項に記載の化合物又はその薬用可能な塩。
【請求項5】
R
3は、
【化6】
で置換されたC
3~C
6アルキル基から選ばれる、請求項1~4の何れか一項に記載の化合物又はその薬用可能な塩。
【請求項6】
【化7】
は
【化8】
であり、R
nは、それぞれ独立的にC
1~C
6アルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲンから選ばれ、rは独立的に0~5の整数を指し、好ましくは
【化9】
であり、rは独立的に0~3の整数を指し、より好ましくは
【化10】
である、請求項1~5の何れか一項に記載の化合物又はその薬用可能な塩。
【請求項7】
R
3’は、水素原子又は
【化11】
で置換されたC
1~C
6アルキル基から選ばれる、請求項1~6の何れか一項に記載の化合物又はその薬用可能な塩。
【請求項8】
【化12】
は
【化13】
であり、R
nは、それぞれ独立的にC
1~C
6アルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲンから選ばれ、rは独立的に0~5の整数を指し、好ましくは
【化14】
であり、rは独立的に0~3の整数を指し、より好ましくは
【化15】
である、請求項1~7の何れか一項に記載の化合物又はその薬用可能な塩。
【請求項9】
前記式Iで示される化合物は、
【化16】
から選ばれる、請求項1~8の何れか一項に記載の化合物又はその薬用可能な塩。
【請求項10】
【化17】
又はその薬用可能な塩から選ばれる、請求項1に記載の化合物又はその薬用可能な塩。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の化合物又はその薬用可能な塩の同位体置換物であって、前記同位体置換は重水素原子置換であることが好ましい、同位体置換物。
【請求項12】
請求項1~10の何れか一項に記載の化合物又はその薬用可能な塩或いは請求項11に記載の同位体置換物と、薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~10の何れか一項に記載の化合物又はその薬用可能な塩、請求項11に記載の同位体置換物、或いは請求項12に記載の医薬組成物の、グラム陰性菌による疾患を予防・治療するための薬剤の調製における用途であって、前記疾患は、気道感染症、泌尿器系感染症、呼吸器系感染症、敗血症、腎炎、胆嚢炎、口腔感染症、心内膜炎、肺炎、髄膜脊髄炎、中耳炎、腸炎、蓄膿、創傷感染症、日和見感染から選ばれることが好ましく、前記グラム陰性菌は、大腸菌(E. coli)、クレブシエラ属(Klebsiella)、セラチア(Serratia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、シトロバクター属(Citrobacter)、モルガネラ属(Morganella)、プロビデンシア属(Providencia)、プロテウス(Proteus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、モラクセラ属(Moraxella)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、緑膿菌以外のシュードモナス属(Pseudomonas other than P. aeruginosa)、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)、バークホルデリア属(Burkholderia)又はアシネトバクター属(Acinetobacter)が好ましい、用途。
【請求項14】
請求項1~10の何れか一項に記載の化合物又はその薬用可能な塩、請求項11に記載の同位体置換物、或いは請求項12に記載の医薬組成物の、哺乳動物における病原菌による疾患を予防・治療するための薬剤の調製における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬分野に属し、具体的には、セファロスポリン系抗菌化合物及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗真菌療法の開発は、現代社会が直面している継続的なチャレンジになっている。抗菌薬は、種々の抗生物質、スルホンアミド系、イミダゾール系、ニトロイミダゾール系、キノロン系などの化学合成薬を含み、ここで、β-ラクタム系抗生物質がその中で非常に重要な一種であり、現在まで、複数種のβ-ラクタマーゼ薬剤が文献研究に報告されたり、市販されたりしており、既に、臨床的に非常に重要な抗菌薬になっている。しかし、β-ラクタマーゼ薬剤の薬剤耐性についての問題も益々深刻になり、益々多くの細菌は、β-ラクタマーゼを産生し、β-ラクタマーゼ薬剤を分解することにより薬剤耐性を得ることになってきた。
【0003】
Ambler分子分類法(Ambler molecular classification)に従い、β-ラクタマーゼは、主に4つの種類に分けられる。具体的には、A種(TEM型、SHV型、CTX-M型、KPC型など)、B種(IMP型、VIM型、L-1型など)、C種(AmpC型)及びD種(OXA型など)という種類が含まれる。これらの種類において、A、C及びD種は主にセリン-β-ラクタマーゼに分けられ、B種は金属-β-ラクタマーゼに分けられ、両方は、β-ラクタマーゼ薬剤の加水分解においてそれぞれ異なるメカニズムを有する。
【0004】
β-ラクタマーゼ薬剤(セファロスポリン系及びカルバペネム系を含む)に対して強い薬剤耐性になるグラム陰性菌の出現により、大きな臨床応用問題をもたらし、このような薬剤耐性は、その基質スペクトル(substrate spectrum)を延長するA又はD種のセリンβ-ラクタマーゼ及びB種の金属β-ラクタマーゼを産生することにより引き起こされる。金属β-ラクタマーゼは、グラム陰性菌が多剤耐性を得る原因の1つであることが知られているものの、より効果的な抗菌活性を有し、特に複数種のβ-ラクタマーゼが産生されるグラム陰性菌に有効性を示すセファロスポリン系化合物は、開発する必要があるが、現在、抗菌薬の研究分野における一難題になっている。
【0005】
文献の報告(Antimicrob Agents Chemother. 1982, 22(2), 181-185.)によると、分子内にカテコール基を含むセファロスポリン系化合物は、グラム陰性菌に対して高い抗菌活性を有する。その作用は、分子におけるカテコール基と細胞外のFe3+がキレートを形成することで、化合物が細胞膜上のFe3+輸送系(tonB依存性輸送系)によって細菌の体内に効果的に結合することであるが、このようなトロイの木馬戦略により、そのペリプラズム空間(外膜と細胞壁の間の狭い空間)における濃度がより高くなり、且つ受容体と結合することで細菌の細胞壁の合成が阻害される。従って、セファロスポリン系骨格の3位側鎖又は7位側鎖にカテコール又は類似した構造を有する化合物については、既に研究した(欧州特許第0416410号)。Cefiderocolは、新規のシデロフォアセファロスポリン(国際公開第2010/050468号、国際公開第2017/216765号、 Eur. J Med. Chem. 2018, 155, 847-868.)であり、現在、FDA(米国食品医薬品局)は、感受性グラム陰性菌により引き起こされた腎臓感染を含む18歳以上の患者の複雑性尿路感染症(cUTI)を治療するために、塩野義製薬のFetroja(cefiderocol)を既に承認した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第416410号
【特許文献2】国際公開第2010/050468号
【特許文献3】国際公開第2017/216765号
【特許文献4】中国特許公開106661052号
【特許文献5】国際公開第2016/035847号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Antimicrob Agents Chemother. 1982, 22(2), 181-185.
【非特許文献2】Eur. J Med. Chem. 2018, 155, 847-868
【非特許文献3】「Protective Groups in Organic Synthesis」, 5Th Ed. T. W. Greene & P. G. M. Wuts
【非特許文献4】Angewandte Chemie International Edition、2010、49、7208-7212
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、グラム陰性菌などの多種の細菌に対して有効な抗菌スペクトルを示すことができるセファロスポリン系抗菌化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、式Iで示される化合物又はその薬用可能な塩を提供し、
【化1】
そのうち、
XはN、CH又はC-Clであり、
TはS、S=O、CH
2又はOであり、
Eは
【化2】
であり、そのうち、R
1とR
2は、それぞれ独立的に水素、ハロゲン、フェニル基、アルキルチオ基又は任意選択的にカルバモイル基で置換されたアルキル基から選ばれ、R
11とR
12は、それぞれ独立的に水素、カルボキシ基、又は任意選択的にカルバモイル基で置換されたアルキル基から選ばれ、mは1~5の整数を指し、
Fは単結合であり、
AはC
1~C
6アルキリデン基、C
2~C
6アルケニレン基又はC
2~C
6アルキニレン基であり、
R
5は、それぞれ独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基、C
1~C
6ハロアルキル基、C
1~C
6ハロアルコキシ基から選ばれ、
G
1は
【化3】
であり、
R
1’、R
2’は、それぞれ独立的に水素原子、ハロゲン、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基、C
1~C
6ハロアルキル基、C
1~C
6ハロアルコキシ基から選ばれ、
R
3は、
【化4】
で置換されたC
1~C
6アルキル基であり、
R
3’は水素原子、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基から選ばれ、そのうち、上記アルキル基、アルコキシ基は、任意選択的にC
1~C
6アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、スルフヒドリル基、-NR
iR
j、
【化5】
オキソ、チオ、-C(O)R
k、-C(O)OR
k、-C(S)R
k、ニトロ基、シアノ基、C
1~C
6アルコキシ基及びC
1~C
6アルキルスルファニル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
R
mは、それぞれ独立的に水素原子、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基、ヒドロキシ基、6~10員アリール基及び5~8員ヘテロアリール基から選ばれ、そのうち、上記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基は、任意選択的にC
1~C
6アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、スルフヒドリル基、アミノ基、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、C
1~C
6アルコキシ基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
R
4は、それぞれ独立的にハロゲン、ヒドロキシ基、スルフヒドリル基、-NR
iR
jから選ばれ、
R
i、R
jは、それぞれ独立的に水素原子、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6アルコキシ基から選ばれ、
R
kは、それぞれ独立的に水素原子、C
1~C
6アルキル基、C
1~C
6ハロアルキル基、ヒドロキシ基、C
1~C
6アルコキシ基、-NR
iR
jから選ばれ、そのうち、上記アルキル基、ハロアルキル基、アルコキシ基は、任意選択的にC
1~C
6アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ基、スルフヒドリル基、-NR
iR
j、オキソ、チオ、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、C
1~C
6アルコキシ基、C
1~C
6アルキルスルファニル基、3~6員シクロアルキル基、3~6員ヘテロシクリル基、6~10員アリール基及び5~8員ヘテロアリール基から選ばれる1つ又は複数の置換基で置換され、
pは0~5の整数を指し、
qは0~5の整数を指し、
xは3~8の整数を指し、
nは0~3の整数を指す。
式中の「C」は炭素原子である。
【0010】
幾つかの実施形態において、Eは
【化6】
であり、そのうち、R
1及びR
2は、それぞれ独立的に水素、ハロゲン又は任意選択的にカルバモイル基で置換されたアルキル基から選ばれる。
【0011】
幾つかの実施形態において、Aは、C1~C6アルキリデン基である。
【0012】
幾つかの実施形態において、R1’、R2’は何れも水素原子である。
【0013】
幾つかの実施形態において、xは3~6の整数を指す。
【0014】
幾つかの実施形態において、R
3は、
【化7】
で置換されたC
3~C
6アルキル基から選ばれる。
【0015】
幾つかの実施形態において、
【化8】
は
【化9】
であり、R
nは、それぞれ独立的にC
1~C
6アルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲンから選ばれ、rは独立的に0~5の整数を指し、好ましくは
【化10】
であり、rは独立的に0~3の整数を指し、より好ましくは
【化11】
である。
【0016】
幾つかの実施形態において、R
3’は水素原子又は
【化12】
で置換されたC
1~C
6アルキル基から選ばれ、好ましくは、水素原子又は
【化13】
で置換されたC
3~C
6アルキル基である。
【0017】
幾つかの実施形態において、
【化14】
は
【化15】
であり、R
nは、それぞれ独立的にC
1~C
6アルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲンから選ばれ、rは独立的に0~5の整数を指し、好ましくは
【化16】
であり、rは独立的に0~3の整数を指し、より好ましくは
【化17】
である。
【0018】
幾つかの実施形態において、上記式Iで示される化合物は
【化18】
又はその薬用可能な塩から選ばれる。
【0019】
幾つかの実施形態において、上記化合物は
【化19】
又はその薬用可能な塩から選ばれる。
【0020】
本開示に記載の「アルキル基」は、C1~C6アルキル基が好ましい。
【0021】
本開示に記載の「アルキレン基」は、C1~C6アルキレン基が好ましい。
【0022】
本開示に記載の「アルケニレン基」は、C2~C6アルケニレン基が好ましい。
【0023】
本開示に記載の「アルキニレン基」は、C2~C6アルキニレン基が好ましい。
【0024】
本開示に記載の「アルコキシ基」は、C1~C6アルコキシ基が好ましい。
【0025】
本開示に記載の「アルキルスルファニル基」は、C1~C6アルキルスルファニル基が好ましい。
【0026】
本開示に記載の「シクロアルキル基」は、好ましくは3~12員、より好ましくは3~6員のシクロアルキル基である。
【0027】
本開示に記載の「縮合シクロアルキル基」は、好ましくは6~14員、より好ましくは7~10員の縮合シクロアルキル基である。
【0028】
本開示に記載の「ヘテロシクリル基」は、好ましくは3~12員、より好ましくは3~6員のヘテロシクリル基である。
【0029】
本開示に記載の「縮合ヘテロシクリル基」は、好ましくは6~14員、より好ましくは7~10員の縮合ヘテロシクリル基である。
【0030】
本開示に記載の「アリール基」は、好ましくは6~14員、より好ましくは6~10員のアリール基である。
【0031】
本開示に記載の「縮合環アリール基」は、好ましくは8~14員、より好ましくは8~12員の縮合環アリール基である。
【0032】
本開示に記載の「ヘテロアリール基」は、好ましくは5~12員、より好ましくは5~8員のヘテロアリール基である。
【0033】
本開示に記載の「縮合へテロアリール基」は、好ましくは5~14員、より好ましくは5~12員の縮合へテロアリール基である。
【0034】
幾つかの実施形態において、本開示に記載の化合物はZ配置である。
【0035】
本開示は、少なくとも1種の上記化合物又はその薬用可能な塩と、薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物を更に提供する。
【0036】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物の単位用量は0.001~1000 mgである。
【0037】
幾つかの実施形態において、組成物の総重量に基づき、上記医薬組成物は0.01%~99.99%の上記化合物を含む。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は0.1%~99.9%の上記化合物を含む。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は0.5%~99.5%の上記化合物を含む。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は1%~99%の上記化合物を含む。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は2%~98%の上記化合物を含む。
【0038】
幾つかの実施形態において、組成物の総重量に基づき、上記医薬組成物は、0.01%~99.99%の薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、0.1%~99.9%の薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、0.5%~99.5%の薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、1%~99%の薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は、2%~98%の薬学的に許容されるベクター、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0039】
本開示は、本開示に記載の化合物又はその薬用可能な塩の、ヒトを含む哺乳動物における病原菌による疾患を予防・治療するための用途を更に提供する。上記用途は、例えば、気道感染症、泌尿器系感染症、呼吸器系感染症、敗血症、腎炎、胆嚢炎、口腔感染症、心内膜炎、肺炎、髄膜脊髄炎、中耳炎、腸炎、蓄膿、創傷感染症、日和見感染などである。
【0040】
本開示は、本開示に記載の化合物又はその薬用可能な塩の、グラム陰性菌による疾患を予防・治療するための用途を更に提供する。上記グラム陰性菌は、腸内細菌であるグラム陰性菌(大腸菌(E. coli)、クレブシエラ属(Klebsiella)、セラチア(Serratia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、シトロバクター属(Citrobacter)、モルガネラ属(Morganella)、プロビデンシア属(Providencia)、プロテウス(Proteus)など)、呼吸器系に居候するグラム陰性菌(ヘモフィルス属(Haemophilus)、モラクセラ属(Moraxella)など)及びブドウ糖非発酵グラム陰性菌(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、緑膿菌以外のシュードモナス属(Pseudomonas other than P. aeruginosa)、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)、バークホルデリア属(Burkholderia)、アシネトバクター属(Acinetobacter)など)が好ましい。
【0041】
本開示は、本開示に記載の化合物又はその薬用可能な塩の、グラム陽性菌による疾患を予防・治療するための用途を更に提供する。
【0042】
本開示は、哺乳動物における上記疾患を治療する方法を更に提供し、上記哺乳動物はヒトでも、又は非ヒト哺乳動物でもよく、治療目的のために、哺乳動物に本開示に記載の化合物又はその薬用可能な塩、或いは医薬組成物を投与することを含む。
【0043】
本開示は、本開示に記載の化合物又はその薬用可能な塩、或いは医薬組成物を含む試薬キットを更に提供する。
【0044】
この分野で公知(例えば国際公開第2010/050468号)の試験方法により試験したところ、本開示に係る化合物は、グラム陰性菌に対して阻害活性を有し、効果が優れている。
【0045】
用語の説明:
特に逆の説明がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用される用語は、下記の意味を有する。
【0046】
「アルキル基」という用語は、飽和脂肪族炭化水素基を指し、1~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖基であり、好ましくは1~12個の炭素原子を含むアルキル基である。非限定的な実例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、n-オクチル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-メチル-2-エチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、n-ノニル基、2-メチル-2-エチルヘキシル基、2-メチル-3-エチルヘキシル基、2,2-ジエチルペンチル基、n-デシル基、3,3-ジエチルヘキシル基、2,2-ジエチルヘキシル基、及びその種々の分岐鎖異性体などを含む。より好ましくは1~6個の炭素原子を含むアルキル基であり、非限定的な実施例はメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基などを含む。アルキル基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は任意の利用可能な接続部位で置換されてもよく、上記置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0047】
「アルキレン基」という用語は、親アルカンの同じ炭素原子又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去して誘導した2つの残基を有する飽和の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基を指し、1~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖基であり、好ましくは1~12個の炭素原子を含み、より好ましくは1~6個の炭素原子を含むアルキレン基である。アルキレン基の非限定的な実例は、メチレン(-CH2-)、1,1-エチレン(-CH(CH3)-)、1,2-エチレン(-CH2CH2)-、1,1-プロピレン(-CH(CH2CH3)-)、1,2-プロピレン(-CH2CH(CH3)-)、1,3-プロピレン(-CH2CH2CH2-)、1,4-ブチレン(-CH2CH2CH2CH2-)などを含むが、これらに限定されない。アルキレン基は置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は任意の利用可能な接続部位で置換されてもよい。
【0048】
「アルケニレン基」という用語は、2~8個の炭素原子を有し、好ましくは2~6個の炭素原子を有し、より好ましくは2~4個の炭素原子を含むと共に、任意の位置に少なくとも1つの二重結合を有する直鎖アルケニル基を含み、例えばビニリデン基、アリーリデン基(allylene)、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基(prenylene)、ブタジエニレン基(butadienylene)、ペンテニレン基、ペンタジエニルデン基、ヘキセニレン基、ヘキサジエニレン基などを含む。
【0049】
「アルキニレン基」という用語は、2~8個の炭素原子を有し、好ましくは2~6個の炭素原子を有し、より好ましくは2~4個の炭素原子を有すると共に、任意の位置に少なくとも1つの三重結合を有する直鎖アルキニレン基であり、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基などを含む。
【0050】
「シクロアルキル基」という用語は、飽和又は部分不飽和の単環式又は多環式環状炭化水素置換基を指し、シクロアルキル環は3~20個の炭素原子を含み、好ましくは3~12個の炭素原子を含み、より好ましくは3~6個の炭素原子を含む。単環式シクロアルキル基の非限定的な実例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクチル基などを含み、多環式シクロアルキル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環のシクロアルキル基を含む。
【0051】
「スピロシクロアルキル基」という用語は、5~20員で、単環同士が1つの炭素原子(スピロ原子と称する)を共有する多環式基を指し、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもない。好ましくは6~14員、より好ましくは7~10員である。スピロシクロアルキル基は、環同士の共有するスピロ原子の数によって、モノスピロシクロアルキル基、ビススピロシクロアルキル基又はポリスピロシクロアルキル基に分けられ、好ましくはモノスピロシクロアルキル基及びビススピロシクロアルキル基である。より好ましくは、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員又は5員/6員のモノスピロシクロアルキル基である。スピロシクロアルキル基の非限定的な実例は、
【化20】
を含む。
【0052】
「縮合シクロアルキル基」という用語は、5~20員で、系内の各環が系内の他の環と、隣接する1対の炭素原子を共有する全炭素多環式基を指し、そのうち、1つ又は複数の環は1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもない。好ましくは6~14員、より好ましくは7~10員である。構成する環の数によって二環式、三環式、四環式又は多環式の縮合シクロアルキル基に分けることができ、好ましくは二環式又は三環式であり、より好ましくは5員/5員又は5員/6員の二環式アルキル基である。縮合シクロアルキル基の非限定的な実例は、
【化21】
を含む。
【0053】
「架橋シクロアルキル基」という用語は、5~20員で、何れか2つの環が直接連結されていない2つの炭素原子を共有する全炭素多環式基を指し、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもない。好ましくは6~14員、より好ましくは7~10員である。構成する環の数によって二環式、三環式、四環式又は多環式の架橋シクロアルキル基に分けることができ、好ましくは二環式、三環式又は四環式であり、より好ましくは二環式又は三環式である。架橋シクロアルキル基の非限定的な実例は、
【化22】
を含む。
【0054】
上記シクロアルキル環は、アリール基、ヘテロアリール基又はヘテロシクロアルキル環に縮合されてもよく、そのうち、親構造に連結された環はシクロアルキル基であり、非限定的な実例は、インダニル基、テトラヒドロナフチル基、ベンゾシクロヘプタニル基などを含む。シクロアルキル基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0055】
「ヘテロシクリル基」という用語は、3~20個の環原子を含む飽和又は部分不飽和の単環式又は多環式環状炭化水素置換基を指し、そのうち、1つ又は複数の環原子は、窒素、酸素又はS(O)m(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であるが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-の環部分を含まず、残りの環原子は炭素である。好ましくは3~12個の環原子を含み、そのうち、1~4個はヘテロ原子であり、より好ましくは3~6個の環原子を含む。単環式ヘテロシクリル基の非限定的な実例は、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチエニル基、ジヒドロイミダゾリル基、ジヒドロフラニル基、ジヒドロピラゾリル基、ジヒドロピロリル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ホモピペラジニル基などを含み、好ましくはピペリジニル基、ピロリジニル基である。多環式ヘテロシクリル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環のヘテロシクリル基を含む。
【0056】
「スピロヘテロシクリル基」という用語は、5~20員で、単環同士が1つの原子(スピロ原子と称する)を共有する多環式ヘテロシクリル基を指し、そのうち、1つ又は複数の環原子は窒素、酸素又はS(O)
m(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。それは、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもない。好ましくは6~14員、より好ましくは7~10員である。スピロヘテロシクリル基は、環同士の共有するスピロ原子の数によって、モノスピロヘテロシクリル基、ビススピロヘテロシクリル基又はポリスピロヘテロシクリル基に分けられ、好ましくはモノスピロヘテロシクリル基及びビススピロヘテロシクリル基である。より好ましくは、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員又は5員/6員のモノスピロヘテロシクリル基である。スピロヘテロシクリル基の非限定的な実例は、
【化23】
を含む。
【0057】
「縮合ヘテロシクリル基」という用語は、5~20員で、系内の各環が系内の他の環と、隣接する1対の原子を共有する多環式ヘテロシクリル基を指し、1つ又は複数の環は、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもなく、そのうち、1つ又は複数の環原子は、窒素、酸素又はS(O)
m(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。好ましくは6~14員、より好ましくは7~10員である。構成する環の数によって、二環式、三環式、四環式又は多環式の縮合ヘテロシクリル基に分けることができ、好ましくは二環式又は三環式であり、より好ましくは5員/5員又は5員/6員の二環式縮合ヘテロシクリル基である。縮合ヘテロシクリル基の非限定的な実例は、
【化24】
を含む。
【0058】
「架橋ヘテロシクリル基」という用語は、5~14員で、何れか2つの環が2つの直接的に連結されていない原子を共有する多環式ヘテロシクリル基を指し、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもなく、そのうち、1つ又は複数の環原子は窒素、酸素又はS(O)
m(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。好ましくは6~14員、より好ましくは7~10員である。構成する環の数によって二環式、三環式、四環式又は多環式の架橋ヘテロシクリル基に分けることができ、好ましくは二環式、三環式又は四環式であり、より好ましくは二環式又は三環式である。架橋ヘテロシクリル基の非限定的な実例は、
【化25】
を含む。
【0059】
上記ヘテロシクリル環は、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル環に縮合されてもよく、そのうち、親構造に連結された環はヘテロシクリル基であり、その非限定的な実例は、
【化26】
などを含む。
【0060】
ヘテロシクリル基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0061】
「アリール基」という用語は、共役したπ電子系を有する6~14員の全炭素単環式又は縮合多環式(つまり、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を指し、好ましくは6~10員であり、例えば、フェニル基及びナフチル基である。上記アリール環は、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はシクロアルキル環に縮合されてもよく、そのうち、親構造に連結された環はアリール環であり、その非限定的な実例は、
【化27】
を含み、
アリール基は置換されても、置換されなくてもよく、置換された場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましく、フェニル基が好ましい。
【0062】
「縮合環アリール基」という用語は、8~14個の環原子を含み、2つ以上の環状構造同士が2つの隣接する原子を共有して連結して形成される、芳香族性を有する不飽和の縮合環構造であってもよく、環原子は、8~12個が好ましい。例えば、ナフタレン、フェナントレンなどの完全不飽和の縮合環アリール基を含み、更に、ベンゾ3~8員飽和単環式シクロアルキル基、ベンゾ3~8員部分飽和単環式シクロアルキル基などの部分飽和の縮合環アリール基を含み、具体的な実例としては、例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、IH-インデニル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチルなどである。
【0063】
「ヘテロアリール基」という用語は、1~4個のヘテロ原子、5~14個の環原子を含む複素芳香族系を指し、そのうち、ヘテロ原子は酸素、硫黄及び窒素から選ばれる。ヘテロアリール基は、好ましくは5~12員、例えば、イミダゾリル基、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、ピロリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、チアジアゾリル基、ピラジニル基などであり、好ましくはイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリミジニル基又はチアゾリル基であり、より好ましくはピラゾリル基又はチアゾリル基である。上記ヘテロアリール環は、アリール、ヘテロシクリル又はシクロアルキル環に縮合されてもよく、そのうち、親構造に連結された環はへテロアリール環であり、その非限定的な実例は、
【化28】
を含む。
【0064】
ヘテロアリール基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0065】
「縮合へテロアリール基」という用語は、5~14個の環原子(そのうち、少なくとも1つのヘテロ原子を含む)を含み、2つ以上の環状構造同士が2つの隣接する原子を共有して連結して形成される、芳香族性を有する不飽和の縮合環構造であってもよく、同時に、オキソで置換可能な炭素原子、窒素原子及び硫黄原子を含み、好ましくは「5~12員の縮合へテロアリール基」、「7~12員の縮合へテロアリール基」、「9~12員の縮合へテロアリール基」などであり、例えば、ベンゾフラニル基、ベンゾイソフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、キノリル基、2-キノリノン、4-キノリノン、1-イソキノリノン、イソキノリル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、ベンゾピリダジニル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フェナジニル基、プテリジニル基、プリニル基、ナフチリジニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基などである。
【0066】
縮合へテロアリール基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0067】
「アルコキシ基」という用語は、-O-(アルキル基)及び-O-(非置換のシクロアルキル基)を指し、そのうち、アルキル基の定義は上記の通りである。アルコキシ基の非限定的な実例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を含む。アルコキシ基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、カルボキシ基又はカルボン酸エステル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0068】
「アルキルチオ基」という用語は、-S-(アルキル基)及び-S-(非置換のシクロアルキル基)を指し、そのうち、アルキル基の定義は上記の通りである。アルキルチオ基の非限定的な実例は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロブチルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基を含む。アルキルチオ基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換された場合に、置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基が好ましい。
【0069】
「ヒドロキシアルキル基」という用語は、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指し、そのうち、アルキル基は上記のように定義される。
【0070】
「ハロアルキル基」という用語は、ハロゲンで置換されたアルキル基を指し、そのうち、アルキル基は上記のように定義される。
【0071】
「重水素化アルキル基」という用語は、重水素原子で置換されたアルキル基を指し、そのうち、アルキル基は上記のように定義される。
【0072】
「ヒドロキシ基」という用語は、-OH基を指す。
【0073】
「オキソ」という用語は、=O基を指す。例えば、炭素原子と酸素原子は、二重結合によって連結され、ここで、ケトン又はアルデヒド基が形成される。
【0074】
「チオ」という用語は、=S基を指す。例えば、炭素原子と硫黄原子は、二重結合によって連結され、チオカルボニル基-C(S)-が形成される。
【0075】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0076】
「アミノ基」という用語は、-NH2を指す。
【0077】
「シアノ基」という用語は、-CNを指す。
【0078】
「ニトロ基」という用語は、-NO2を指す。
【0079】
「カルボキシ基」という用語は、-C(O)OHを指す。
【0080】
「アルデヒド基」という用語は、-CHOを指す。
【0081】
「カルボン酸エステル基」という用語は、-C(O)O(アルキル基)又は-C(O)O(シクロアルキル基)を指し、そのうち、アルキル基、シクロアルキル基は上記のように定義される。
【0082】
「ハロゲン化アシル」という用語は、-C(O)-ハロゲンという基を含む化合物を指す。
【0083】
「カルボキシ保護基」は、この分野で既知のカルボキシ基の保護に適用される基であり、文献(「Protective Groups in Organic Synthesis」, 5Th Ed. T. W. Greene & P. G. M. Wuts)におけるカルボキシ保護基が参照され、その例として、好ましくは、上記カルボキシ保護基は、置換又は非置換のC1-10の直鎖又は分岐鎖アルキル基、置換又は非置換のC2-10の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基又はアルキニル基、置換又は非置換のC3-8の環状アルキル基、置換又は非置換のC5-10のアリール基又はヘテロアリール基、或いは(C1-8アルキル基又はアリール基)3シリル基であってもよく、好ましくはC1-6の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、より好ましくはC1-4の直鎖又は分岐鎖アルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、アリル基、イソペンテニル基、トリメチルシリルエチル基などである。
【0084】
「アミノ保護基」は、この分野で既知のアミノ基の保護に適用される基であり、文献(「Protective Groups in Organic Synthesis」, 5Th. Ed. T. W. Greene & P. G. M. Wuts)におけるアミノ保護基が参照され、好ましくは、上記アミノ保護基は、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基などの(C1-10アルキル基又はアリール)アシル基であってもよく、(C1-6アルキル基又はC6-10アリール)スルホニル基であってもよく、BocやCbzなどの(C1-6アルコキシ基又はC6-10アリールオキシ)カルボニル基であってもよく、トリチル基(Tr)、2,4-ジメトキシベンジル(DMB)、p-メトキシベンジル(PMB)やベンジル基(Bn)などの置換又は非置換のアルキル基であってもよい。
【0085】
「ヒドロキシ保護基」はこの分野で既知のヒドロキシ基の保護に適用される基であり、文献(「Protective Groups in Organic Synthesis」, 5Th Ed. T. W. Greene & P. G. M. Wuts)におけるヒドロキシ保護基が参照される。例として、好ましくは、上記ヒドロキシ保護基は、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基などの(C1-10アルキル又はアリール)3シラン基であってもよく、C1-10アルキル基又は置換アルキル基であってもよく、好ましくはアルコキシ基又はアリール基で置換されたアルキル基で、より好ましくはC1-6アルコキシ基で置換されたC1-6アルキル基又はフェニル基で置換されたC1-6アルキル基で、最も好ましくはC1-4アルコキシ基で置換されたC1-4アルキル基で、例えば、メチル基、tert-ブチル基、アリル基、ベンジル基、メトキシメチル基(MOM)、エトキシエチル基、2-テトラヒドロピラニル基(THP)などであり、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基などの(C1-10アルキル又はアリール)アシル基であってもよく、(C1-6アルキル又はC6-10アリール)スルホニル基であってもよく、(C1-6アルコキシ又はC6-10アリールオキシ)カルボニル基であってもよい。
【0086】
「脱離基」という用語は、化学反応において1つの大きい分子から離脱された原子又は官能基を指す。代表的な脱離基には、ハロゲン、置換のスルホニルオキシ基、ホスホリルオキシ基、アミノ基、RiRjN-、シアノ基、RmS-などがある。
【0087】
置換のスルホニルオキシ基は、C1~C6アルキルスルホニルオキシ基、ペルフルオロC1~C6アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、アラルキルスルホニルオキシ基などであってもよい。
【0088】
C1~C6アルキルスルホニルオキシ基の具体的な例は、C1~C6直鎖又は分岐鎖のアルキルスルホニルオキシ基、例えば、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、n-プロピルスルホニルオキシ基、イソプロピルスルホニルオキシ基、n-ブチルスルホニルオキシ基、tert-ブチルスルホニルオキシ基、n-ペンチルスルホニルオキシ基及びn-ヘキシルスルホニルオキシ基などを含む。
【0089】
ペルフルオロC1~C6アルキルスルホニルオキシ基の具体的な例は、C1~C6直鎖又は分岐鎖のペルフルオロアルキルスルホニルオキシ基、例えば、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロ-1-エチルスルホニルオキシ、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-1-プロピルスルホニルオキシ及び1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロ-1-ブチルスルホニルオキシを含む。
【0090】
アリールスルホニルオキシ基の例は、任意選択的にベンゼン環に、C1~C6直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C1~C6直鎖又は分岐鎖のアルキル、ニトロ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる1~3個の置換基を有するフェニルスルホニルオキシ基及びナフチルスルホニルオキシ基を含む。任意選択的に置換基を有するフェニルスルホニルオキシ基の具体的な例は、フェニルスルホニルオキシ基、4-メチルフェニルスルホニルオキシ、2-メチルフェニルスルホニルオキシ、4-ニトロフェニルスルホニルオキシ、4-トリルスルホニルオキシ、2-ニトロフェニルスルホニルオキシ、3-クロロフェニルスルホニルオキシなどを含む。ナフチルスルホニルオキシ基の具体的な例は、α-ナフチルスルホニルオキシ基、β-ナフチルスルホニルオキシ基などを含む。
【0091】
アラルキルスルホニルオキシ基の例は、フェニル基(任意選択的にベンゼン環に、C1~C6直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C1~C6直鎖又は分岐鎖のアルキル、ニトロ基及びハロゲン原子から選ばれる1~3個の置換基を有する)で置換されたC1~C6直鎖又は分岐鎖のアルキルスルホニルオキシ基、及びナフチル基で置換されたC1~C6直鎖又は分岐鎖のアルキルスルホニルオキシ基を含む。フェニル基で置換されたアルキルスルホニルオキシ基の具体的な例は、ベンジルスルホニルオキシ基、2-フェニルエチルスルホニルオキシ基、4-フェニルブチルスルホニルオキシ基、4-メチルベンジルスルホニルオキシ基、2-メチルベンジルスルホニルオキシ基、4-ニトロベンジルスルホニルオキシ基、4-キシリルスルホニルオキシ基、3-クロロベンジルスルホニルオキシ基などを含む。ナフチル基で置換されたアルキルスルホニルオキシ基の具体的な例は、α-ナフチルメチルスルホニルオキシ基、β-ナフチルメチルスルホニルオキシ基などを含む。
【0092】
「任意選択的」又は「任意選択的に」とは、その次に説明される事象又は状況が生じてもよいが、生じなくてもよいことを意味し、当該表現には、当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合が含まれる。例えば、「任意選択的にアルキル基で置換されるヘテロシクリル基」とは、アルキル基が存在してもよいが、存在しなくてもよいことを意味し、当該表現には、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換される場合と、ヘテロシクリル基がアルキル基で置換されない場合とが含まれる。
【0093】
「置換される」とは、基の中の1つ又は複数の水素原子、好ましくは5個以下、より好ましくは1~3個の水素原子が互いに独立的に対応する数の置換基で置換されることを指す。無論、置換基は、それらの化学的に可能な部位にしか位置せず、当業者はそれほど努力せずに(実験又は理論により)可能又は不可能な置換を決定することができる。
【0094】
本開示に記載される化合物の化学構造において、
【数1】
という結合は配置が指定されておらず、即ち、
【数2】
という結合は
【数3】
であってもよく、或いは
【数4】
という2つの配置を同時に含んでもよい。本開示に記載される化合物の化学構造において、
【数5】
という結合は、配置が指定されておらず、即ち、Z配置又はE配置であってもよく、或いは2つの配置を同時に含んでもよい。
【0095】
互変異性体は、有機化合物の構造異性体であり、互変異性化と呼ばれる化学反応によって容易に相互変換される。このような反応は、単結合と隣接する二重結合の変換を伴う水素原子又はプロトンの形態の移動を常に引き起こす。幾つかのよく見られる互変異性体対は、ケト-エノール、ラクタム-ラクチムである。ラクタム-ラクチム平衡の実例は、以下に示すようなAとBの間である。
【化29】
【0096】
本開示における全ての化合物は、A型又はB型として描くことができる。全ての互変異性形態は、本開示の範囲にある。化合物の命名は、何れの互変異性体も排除しない。
【0097】
本開示に記載される化合物又はその薬用可能な塩の何れの同位体標識された誘導体も、本開示にカバーされている。同位体で標識可能な原子は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素、ヨウ素などを含むが、これらに限定されない。それらは、それぞれ、同位体である2H(D)、3H、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Cl及び125Iなどで置換可能である。特に説明のない限り、1つの位置が特に重水素(D)と指定される場合、当該位置は、重水素の天然存在度(0.015%である)よりも少なくとも3000倍高い存在比を有する重水素(即ち、少なくとも45%の重水素が組み込まれる)であると理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0098】
以下、実施例と合わせて本開示に記載の化合物、薬用可能な塩の調製を更に説明するが、これらの実施例は、本開示中の範囲を制限するものではない。
【0099】
本開示中の実施例において具体的な条件が明示されていない実験方法は、一般的に通常の条件、又は原料や商品メーカに勧められた条件に従った。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0100】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)又は/及び質量分析(LCMS)によって決定された。NMRシフト(δ)は、10-6(ppm)の単位で示される。NMRの測定には核磁気共鳴装置Bruker AVANCE-400が使用され、測定溶媒は重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)、重水素化クロロホルム(CDCl3)、重水素化メタノール(CD3OD)であり、内部標準はテトラメチルシラン(TMS)であった。化合物の光学異性体(異性体)の立体配置は、更に、単結晶パラメータを測定することにより確認することができる。
【0101】
HPLCの測定には、Waters ACQUITY ultra high performance LC、Shimadzu LC-20A systems、Shimadzu LC-2010HT series又はアジレントAgilent 1200 LC高圧液体クロマトグラフ(ACQUITY UPLC BEH C18 1.7UM 2.1×50 mmカラム、Ultimate XB-C18 3.0×150 mmカラム又はXtimate C18 2.1×30 mmカラム)が使用された。
【0102】
MSの測定には、質量分析装置Waters SQD2が使用され、正/負イオンモードで走査し、質量走査範囲が100~1200であった。
【0103】
キラルHPLC分析の測定には、Chiralpak IC-3 100×4.6 mm I.D., 3 μm、Chiralpak AD-3 150×4.6 mm I.D., 3 μm、Chiralpak AD-3 50×4.6 mm I.D., 3 μm、Chiralpak AS-3 150×4.6 mm I.D., 3 μm、Chiralpak AS-3 100×4.6 mm I.D., 3 μm、ChiralCel OD-3 150×4.6 mm I.D., 3 μm、Chiralcel OD-3 100×4.6 mm I.D., 3 μm、ChiralCel OJ-H 150×4.6 mm I.D., 5 μm、Chiralcel OJ-3 150×4.6 mm I.D., 3 μmカラムが使用された。
【0104】
薄層クロマトグラフィー用シリカゲル板としては、煙台黄海HSGF254又は青島GF254シリカゲル板が使用され、薄層クロマトグラフィー(TLC)に使用されたシリカゲル板用の仕様は、0.15~0.2 mmであり、薄層クロマトグラフィーによる生成物の分離精製用の仕様は0.4~0.5 mmであった。
【0105】
フラッシュカラム精製系には、Combiflash Rf150(TELEDYNE ISCO)又はIsolara one(Biotage)が使用された。
【0106】
順相カラムクロマトグラフィーには、一般的に煙台黄海シリカゲル100~200メッシュ、200~300メッシュ又は300~400メッシュのシリカゲルがベクターとして使用され、又は、常州三泰予充填超高純度順相シリカゲルカラム(40~63 μm、60、12 g、25 g、40 g、80 g又は他の仕様)が使用された。
【0107】
逆相カラムクロマトグラフィーには、一般的に常州三泰予充填超高純度C18シリカゲルカラム(20~45 μm、100 Å、40 g、80 g、120 g、220 g又は他の仕様)が使用された。
【0108】
高圧カラム精製系には、Waters AutoPが使用され、それに合わせてWaters XBridge BEH C18 OBD Prep Column(130 Å, 5 μm, 19×150 mm)又はAtlantis T3 OBD Prep Column(100 Å, 5 μm, 19×150 mm)が使用された。
【0109】
キラル分取カラムには、DAICEL CHIRALPAK IC(250×30 mm, 10 μm)又はPhenomenex-Amylose-1(250×30 mm, 5 μm)が使用された。
【0110】
本開示における既知の出発物質は、この分野で知られている方法で、又はそれに従って合成されてもよく、或いは上海泰坦科技、ABCR GmbH & Co. KG、Acros Organics、Aldrich Chemical Company、韶遠化学科技(Accela ChemBio Inc)、達瑞化学品などの会社から購入されてもよい。
【0111】
実施例において特に説明のない限り、反応は何れも窒素雰囲気で行うことができる。
【0112】
アルゴン雰囲気又は窒素雰囲気は、反応フラスコに容積が約1 Lのアルゴン又は窒素バルーンが接続されていることを指す。
【0113】
水素雰囲気は、反応フラスコに容積が約1 Lの水素バルーンが接続されていることを指す。
【0114】
加圧水素化反応には、Parr 3916EKX型水素化装置及び清藍QL-500型水素発生器又はHC2-SS型水素化装置が使用された。
【0115】
水素化反応は、一般的に、真空引きして水素を充填する操作を3回繰り返した。
【0116】
マイクロ波反応には、CEM Discover-S 908860型マイクロ波反応器が使用された。
【0117】
実施例において特に説明のない限り、溶液は水溶液を指す。
【0118】
実施例において特に説明のない限り、反応温度は室温で、20℃~30℃である。
【0119】
実施例における反応過程のモニタリングは、薄層クロマトグラフィー(TLC)により行われ、反応に使用された展開溶媒、化合物を精製するためのカラムクロマトグラフィーの溶離液系及び薄層クロマトグラフィーの展開溶媒系は、A:ジクロロメタン/メタノール系、B:n-ヘキサン/酢酸エチル系、C:石油エーテル/酢酸エチル系、D:石油エーテル/酢酸エチル/メタノール、E:石油エーテル/テトラヒドロフラン系を含み、溶媒の体積比は化合物の極性によって調整されたが、少量のトリエチルアミン及び酢酸などの塩基性又は酸性試薬を加えて調整されてもよい。
実施例1:
【0120】
【化30】
【化31】
ステップ1
化合物1-1(中国特許公開第106661052号の方法により合成して得られ、1.5 g、3.50 mmol)のDMF(35 mL)溶液にDMTMM(1.55 g、5.26 mmol)、DIEA(905 mg、7.0 mmol)を加えた。反応をアルゴンで保護して3回置換した後、1-A(525 mg、7.0 mmol)を上記反応液に加えた後、室温で2 h撹拌しながら反応させた。反応液を水に徐々に加え、固体生成物を次第に析出させた。ろ過して得られた固体生成物をDCMに溶解し、抽出して分液させた後、有機相を順に水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して蒸発乾固して生成物1-2(1.6 g、収率94%)を得た。
LC/MS (ESI): m/z 486.1 [M+H]
+
【0121】
ステップ2
塩化オキサリル(1.05 g、8.24 mmol)のDCM(10 mL)溶液をドライアイス/アセトン浴で-78℃に冷却させ、アルゴン保護でDMSO(1.29 g、16.5 mmol)を滴下した後に撹拌しながら反応させた。1-2(1.6 g、3.30 mmol)のDCM(6 mL)溶液を上記反応液に徐々に滴下し、-78℃で撹拌し続けた。更にEt3N(3.34 g、33.0 mmol)を加え、-78℃で撹拌した後、反応が終了するまで反応を徐々に0℃に昇温した。反応液にH2Oを加えて反応をクエンチした後、DCMで抽出し、有機相を順に水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して蒸発乾固して粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して生成物1-3(1.28 g、収率80%)を得た。
LC/MS (ESI): m/z 484.0 [M+H]+
【0122】
ステップ3
基質1-3(1.28 g、2.65 mmol)のDCM(26 mL)溶液に1-B(605 mg、5.30 mmol)を加え、反応液を氷水浴で冷却させた後、NaBH(OAc)3(1.68 g、7.95 mmol)を加えた。反応を室温まで昇温させて撹拌しながら反応させた。反応終了後、反応液をNaHCO3でクエンチした後、DCMで抽出し、有機相を順に水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して蒸発乾固して粗生成物を得た。当該粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製した後に生成物1-4(735 mg、収率48%)を得た。
LC/MS (ESI): m/z 582.1 [M+H]+
【0123】
ステップ4
1-1(650 mg、1.51 mmol)のDMF(13 mL)溶液にHATU(961 mg、2.52 mmol)、DIEA(490 mg、3.78 mmol)を加えた。反応をアルゴンで保護し、室温で撹拌した。1-4(735 mg、1.26 mmol)を上記反応液に加えた後、室温で撹拌しながら反応させた。反応液を水に徐々に加え、ろ過し、吸引乾燥して生成物1-5(1.2 g、収率96%)を得た。
LC/MS (ESI): m/z 992.1 [M+H]+
【0124】
ステップ5
化合物1-5(546 mg、0.55 mmol)、化合物1-6(国際公開2016/035847号の方法により合成して得られ、398 mg、0.5 mmol)及びヨウ化ナトリウム225 mg、1.5 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(1.5 mL)に加え、撹拌しながら反応させた。反応終了後、反応フラスコを氷水浴に入れて冷却させ、PBr3 (360 mg、1.33 mmol)を加え、撹拌しながら反応させた。反応終了後、反応液をNaHSO3水溶液に滴下し、ろ過し、ろ過ケーキを清水で洗浄した後に真空下で乾燥して1-7の粗生成物1.13 gを得た。
LC/MS (ESI): m/z 1737.1[M]+
【0125】
ステップ6
化合物1-7(1.13 g、0.5 mmol)をアニソール(2 mL)、トリフルオロ酢酸(8 mL)に加えた後に室温で反応させ、メチルtert-ブチルエーテルを加え、撹拌した後にろ過した。ろ過ケーキをMTBEですすいだ後に乾燥し、粗生成物600 mgを得た。HPLCで分取した後に4 mgの化合物1を得た。
HRMS: 979.1874 [M+H]+
1H-NMR (400 MHz,DMSO-d6)δ: 1.44(s,3H),1.46 (s,3H),1.66-2.06(m,6H),2.93-3.88 (m,14H),3.04-3.05 (m,2H),4.00-4.03 (m,2H),4.82-5.13 (m,1H),5.18(d,1H),5.74 (dd,1H),6.54 (d,1H),6.60 (d,1H),6.73-6.85 (m,3H),7.28(s,2H),8.05-8.33 (m,1H),9.46(br s,2H),10.26(br s,2H)。
実施例2
【0126】
【化32】
【化33】
ステップ1
反応フラスコに2-1(30.3 g、174.1 mmol、1.0 eq)、2,4-ジメトキシベンズアルデヒド(29.5 g、177.6 mmol、1.02 eq)、メタノール(300 mL)、無水硫酸ナトリウム(24.7 g、174.1 mmol、1.0 eq)を加え、室温で撹拌しながら反応させた。その後、反応液を氷水浴で冷却させ、水素化ホウ素ナトリウム(3.3 g、87.0 mmol、0.5 eq)を数回に分けて加え、5 min撹拌しながら反応させ、更に終了するまで室温で撹拌しながら反応させた。氷酢酸(3.3 mL)を加え、撹拌し、ろ過し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を濃縮し、残留物に水及び酢酸エチルを加えて撹拌して分層させ、水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して生成物2-2 合計58.0 g(収率:102.8%)を得た。
MS m/z 325.1[M+H]
+
【0127】
ステップ2
2-2(2.0 g、6.2 mmol、1.0 eq)、S-エポキシプロパン(0.54 g、9.3 mmol、1.5 eq)及びEtOH(20 mL)を反応フラスコに加え、60℃まで加熱して反応させた。LC-MSにより原料が完全に反応したことをモニターした。反応液を濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物2-3合計1.2 gを得て、収率が51.1%であった。
MS m/z 383.2[M+H]+
【0128】
ステップ3
2-3(1.2 g、3.2 mmol、1.0 eq)、DCM(20 mL)及びTEA(0.65 g、6.4 mmol、2.0 eq)を反応フラスコに加え、氷水浴で冷却させ、MsCl(0.54 g、4.7 mmol、1.5 eq)を徐々に滴下し、撹拌しながら反応させた。LC-MSにより原料が完全に反応したことをモニターした。反応液を水及び飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して2-4の粗生成物(1.34 g)を得て、そのまま次のステップに使用した。
MS m/z 461.1[M+H]+
【0129】
ステップ4
2-4の粗生成物(1.34 g、3.2 mmol、1.0 eq)、テトラヒドロピロール(0.56 g、8.0 mmol、2.5 eq)、MeCN(15 mL)及び炭酸カリウム(0.66 g、4.8 mmol、1.5 eq)を反応フラスコに加え、40℃に加熱して撹拌しながら反応させた。LC-MSにより原料が完全に反応したことをモニターした。反応液に水(30 mL)及びEA(30 mL)を加え、撹拌して分層させた。水相をEAで洗浄し、有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、2-5(0.66 g、2段階収率:48.5%)を得た。
MS m/z 436.1[M+H]+
【0130】
ステップ5
2-5 (600 mg、1.38 mmol)及びTFA(10 mL)を反応フラスコに加えて溶解し、60℃に加熱して終了するまで反応させた。反応液を乾固になるように濃縮し、MTBE(10 mL)を加えた後にスラリー化して上清を注出し、得られた油状物2-6から大部分の溶媒を真空下で除去し、そのまま次のステップの反応に使用した。
MS m/z 186.1[M+H]+
【0131】
ステップ6
2-6の粗生成物及び1-1(1.31 g、3.05 mmol)をDCM(15 mL)に溶解し、0℃で撹拌した。DIPEA(2.02 mL、12.22 mmol)及びHATU(1.39 g、3.67 mmol)を加えた。反応液を室温に自然に昇温させて終了まで反応させた。水(10 mL)を加えた後に分液させ、有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、乾固になるように濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーカラム(DCM:MeOH=10:1)によって分離して2-7合計0.85 gを得た。
MS m/z 1006.3 [M+H]+
【0132】
ステップ7
1-6(720 mg、0.904 mmol)、2-7(650 mg、0.645 mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.406 g、2.71 mmol)及びホウ酸(17 mg、0.271 mmol)を反応フラスコに加え、アルゴンで空気を3回置換した後、NMP(2.1 mL)を加えた。反応液を室温で終了まで反応させた。反応液を処理せずにそのまま次のステップに使用した。
MS m/z 1767.5 [M]+
【0133】
ステップ8
上記反応液にNMP(0.7 mL)を加えた後、反応液を0℃に冷却させ、三塩化リン(0.103 mL、1.17 mmol)を加えた後、0℃で反応が終了するまで反応を保温した。反応液に5%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液(20 mL)を加え、氷水浴でスラリー化し、ろ過し、ろ過ケーキをDCM(20 mL)で溶解した後に無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、乾固になるように濃縮し、2-9合計1.21 gを得た。
MS m/z 1751.4 [M]+
【0134】
ステップ9
2-9(1.21 g、0.69 mmol)をアニソール(0.2 mL)及びトリフルオロ酢酸(0.8 mL)に溶解して反応が終了するまで室温で反応させた。0℃に冷却させた後、MTBE(20 mL)を加え、氷水浴でスラリー化し、ろ過し、ろ過ケーキをMTBEですすいだ後に乾燥し、粗生成物0.82 gを得た。更に逆相HPLCで分取し、化合物2合計107 mgを得た。
MS m/z 993.1 [M+H]+
実施例3
【0135】
【化34】
【化35】
ステップ1
反応フラスコに3-1 (3.7 g、28.0 mmol)(既知の文献Angewandte Chemie International Edition、2010、49、7208-7212の方法により合成した)、1-1(26.4 g、61.6 mmol)、DCM(316 mL)を加えた、撹拌して溶解し、氷水浴で冷却した。DIPEA(11.9 g、92.4 mmol)、DMTMM(23.2 g、84.0 mmol)を加えた。室温まで昇温して反応が終了するまで撹拌した。ろ過し、ろ液を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、乾固になるように濃縮した。粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製して生成物3-2(21.8 g、収率82%)を得た。
LC/MS (ESI): m/z 953.1 [M+H]
+
1H-NMR (400 MHz,CDCl
3) δ: 1.63-1.94 (m,4H),3.19-3.27 (m,3H),3.42-3.47 (m,2H),3.61-3.65 (m,1H),3.67-3.82 (m,14H),3.90-3.97 (m,1H),4.88-5.04 (m,8H),6.77-6.97 (m,12H),7.22-7.40 (m,8H)。
【0136】
ステップ2
3-2 (21.7 g、22.75 mmol)、DCM(217 mL)を反応フラスコに加え、窒素ガスで置換し、氷水浴で冷却した。TEA(8.06 g、79.63 mmol)を滴下した。MsCl(7.82 g、68.25 mmol)を8 mLのDCMに溶け、反応系に徐々に滴下した。滴下終了後、氷水浴で反応が終了するまで撹拌した。水を加えて反応をクエンチし、飽和NaHCO3水溶液でpH=8に調整した。分液し、有機相を収集した。水相をDCMで抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、乾固になるように濃縮して生成物3-3(24.0 g、102%)を得た。
LC/MS (ESI): m/z 1031.2 [M+H]+
【0137】
ステップ3
反応フラスコに3-3 (23.9 g、22.75 mmol)、THF(240 mL)を加え、撹拌して溶解した。LiBr(5.93 g、68.25 mmol)を加えた。加入終了後、60oCまで昇温し、撹拌しながら反応させた。反応終了後、濃縮して溶媒を除去し、水を加え、EAで抽出し、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。乾固になるように濃縮して生成物3-4(22.2 g、収率94%)を得た。
LC/MS (ESI): m/z 1015.2 [M+H]+
【0138】
ステップ4
反応フラスコに3-4 (22.1 g、21.73 mmol)、ACN(442 mL)を加え、撹拌して溶解し、更にK2CO3(10.51 g、76.06 mmol)、ピロリジン(4.64 g、65.19 mmol)をそれぞれ加えた。加入終了後、60oCまで昇温し、撹拌しながら反応させた。反応終了後、濃縮して溶媒を除去し、水を加え、DCM:MeOH=10:1の混合溶媒で抽出した。有機相を合わせ、飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、乾固になるように濃縮した。粗生成物を順相シリカゲルカラムにより精製して生成物3-5(16.2 g、収率74%)を得た。
LC/MS (ESI): m/z 1006.3 [M+H]+
1H-NMR (400 MHz,DMSO-d6) δ: 1.50-1.65 (m,4H),1.74-1.89 (m,4H),2.21-2.38 (m,3H),2.69-2.91 (m,3H),2.99-3.16 (m,4H),3.60-3.68 (m,2H),3.70-3.77 (m,12H),4.81-5.16 (m,8H),6.81-7.45 (m,20H),8.16-8.34 (m,1H)。
【0139】
ステップ5
反応フラスコに1-6(5.4 g、6.78 mmol)、3-5(8.2 g、8.14 mmol)、NaI(3.05 g、20.34 mmol)及びホウ酸(136 mg、2.03 mmol)を加え、アルゴンで3回置換した。氷水浴でNMP(27 mL)を加えた。加入終了後、室温まで昇温して反応が終了するまで撹拌した。反応液を更に精製することなく、そのまま次の反応に使用した。
LC/MS (ESI): m/z 1767.9 [M]+(応答が最も強いイオンフロー)
【0140】
ステップ6
前ステップで得られた反応液を0oCに冷却した。三塩化リン(1.58 g、11.53 mmol)を徐々に滴下し、滴下終了後に0oCのままにして、終了するまで撹拌しながら反応させた。反応液に水を加えて希釈し、ろ過して3-7の粗生成物14 gを得て、吸引乾燥してそのまま次のステップに使用した。
LC/MS (ESI): m/z 1751.5 [M]+(応答が最も強いイオンフロー)
【0141】
ステップ7
上記3-7の粗生成物をアニソール(28 mL)及びトリフルオロ酢酸(112 mL)に溶解して室温で反応させた。完全に反応した後に0℃に冷却し、MTBE(200 mL)を加え、氷水浴でスラリー化し、ろ過した。ろ過ケーキをMTBEですすいだ後に乾燥し、粗生成物8 gを得た。更に逆相HPLCで分取し、生成物である化合物3(3.37 g、収率50%)を得た。
LC/MS (ESI): m/z 993.2 [M+H]+
1H-NMR (400 MHz,DMSO-d6) δ: 1.44-1.46 (m,6H),1.59-2.20 (m,8H),2.83-3.89 (m,16H),4.87-5.19 (m,2H),5.68-5.79 (m,1H),6.53-6.64 (m,1H),6.67-6.84 (m,4H),7.30 (s,2H),8.30 (s,1H),9.42 (br s,3H),10.14 (br s,2H)。
生物学的評価
【0142】
以下、試験例と合わせて本開示を更に説明するが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。
試験例1:抗真菌活性試験
【0143】
1. 試験化合物を滅菌生理食塩水に溶解し、ボルテックスして振とうして均一に混合し、滅菌生理食塩水でそれを2倍勾配希釈し、合計11個の濃度ポイントで試験した。試験濃度範囲は32~0.031 μg/mLであり、2連/濃度であった。更に、薬剤が加えられないウェルを増殖対照として設置した。
【0144】
2. 4 μLの希釈液を96ウェルプレートの196 μLの菌懸濁液に加えた(菌懸濁液における細菌数は2~8×105コロニー形成単位/mLである)。
【0145】
3. 36℃で24 hインキュベートした後、目視でMIC値を読み取った。
【0146】
最小発育阻止濃度(MIC)の検出方法は、米国臨床検査標準協議会(CLSI)のガイドラインを参照して操作した。
【表1-1】
【表1-2】
試験例2:試験化合物のカニクイザル体内での薬物動態試験
【0147】
1. 試料の配置
それぞれ適量の試験化合物を容器に精密に秤量し、試験化合物が完全に溶解するまで、氷浴下で0.9%の塩化ナトリウム注射液及び0.2 MのNaOH溶液を加え、濃度が2 mg/mLの試料溶液に調製し、2~8℃で保存して使用に備えた。
【0148】
2. 試験動物
種属・種族:カニクイザル
動物レベル:コンベンショナル
動物の由来:広西雄森霊長類実験動物養殖開発有限公司
動物使用ライセンス番号:SYXK(蘇)2019-0012
【0149】
3. 試験の方法
6匹のカニクイザルを選択し、雄と雌が半分ずつであり、3群にランダムに分け、1群当たり1匹の動物/性別であり、それぞれ単回静脈内注入によってカニクイザルに試料を投与し、投与量は何れも10 mg/kgであった。各群の動物に対して、投与前、投与終了後の5 min、15 min、0.5 h、1 h、2 h、4 h、6 h、8 hの時点に血液試料を採取した。試験は、LC-MS/MS方法によりそれぞれカニクイザルの血漿中の各試験化合物の濃度を検出し、血漿試料分析方法の定量下限は何れも1 μg/mLであった。薬物動態データ解析ソフトウェアWinNonlinの非コンパートメントモデル法(NCA)で血漿濃度データを解析し、薬物動態パラメータを算出し、投与後の試験化合物のカニクイザル体内での薬物動態的特徴を調べたが、結果は下記の表に示す通りである。
【0150】
【0151】
本開示に係る化合物は、CmaxとAUCにおいてセフィデロコルよりも優れている。
試験例3:試験化合物のICRマウス体内での薬物動態試験
【0152】
1. 試料の配置
氷上で投与製剤を調製し、適量の試験化合物を正確に秤量し、90体積%の生理塩水を徐々に加え、大きな粒子がなくなるように氷水浴で超音波撹拌し、十分に均一に混合した後、ピペットにより数回に分けて少しずつNaOH溶液1 Mを加え、目視で試験品が全て溶解されたことが見られた後、pH値を測定し、最終体積に定容し、皮下注射用の目標濃度の投与製剤を得た。
【0153】
2. 試験動物
種属・種族:ICRマウス
動物レベル:SPF級
動物の由来:Medicilon/MPIアニマルバンク:999M-018
【0154】
3. 試験の方法
試験品は皮下注射により投与され、投与計画が下記の表に示す通りである。
【0155】
【0156】
皮下注射投与:各性別に3匹/時点で、投与後の0.083 h、0.25 h、0.5 h、1 h、2 h、4 h、6 h、8 h、24 hに血液試料を採取し、合計9個の時点であった。収集した血液試料をEDTA-K2抗凝固採血管に入れ、収集した全血を氷上に置き、1時間内に血漿を遠心分離し(遠心力6800 g、6 min遠心分離、2~8℃)、遠心分離した後の血漿を、血漿安定剤が加えられておいた遠心分離管(血漿:濃リン酸=100:0.2で、例えば、50 μLの血漿に1 μLの10%濃リン酸を加える)に移転した。全ての動物は、投与前、投与後の各採血点で詳細な臨床観察が行われ、且つ動物の有害事象症状が記録された。
【0157】
試験結果:各群の薬物動態データは以下の通りである。
【0158】
【0159】
本開示に係る化合物のマウス体内での暴露量は、セフィデロコルの4.2倍である。
【国際調査報告】