(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 403/04 20060101AFI20240119BHJP
A61K 31/4155 20060101ALN20240119BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240119BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
A61K31/4155
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541960
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 CN2022071116
(87)【国際公開番号】W WO2022152090
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516095419
【氏名又は名称】ベイジン・イノケア・ファーマ・テク・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing InnoCare Pharma Tech Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Bldg.8,No.8 Life Park Rd.,ZGC Life Science Park,Changping Dist.,Beijing,PRC,102206
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】パン、イーチョン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャンヤン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC22
4C063DD03
4C063EE01
4C063EE05
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC36
4C086GA07
4C086GA16
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(化合物I)を1kgを超えるスケールで製造する方法に関する。この方法は、安全で堅牢な化合物Iを、良好な収率及び少なくとも95%の純度で提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(化合物I)の製造方法であって、
(a) 1種以上の適切な溶媒中、1種以上の触媒と第一の塩基の存在下、50~140℃で、4と7を反応させて5を得る工程
【化1】
(式中、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又は2-(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEM)からなる保護基であり、Xは、Cl、Br又はIからなる脱離基である);
(b) 5の保護基を酸で除去して、6又はその塩を得る工程;
【化2】
(c) 第二の塩基の存在下で6又はその塩を塩化アクリロイルと反応させて、化合物Iを得る工程;
【化3】
を含む、方法。
【請求項2】
(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(化合物I)の製造方法であって、
(a) 1種以上の適切な溶媒中、1種以上の触媒と第一の塩基の存在下、50~140℃で、4と7を反応させて5を得る工程
【化4】
(式中、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又は2-(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEM)からなる保護基であり、Xは、Cl、Br又はIからなる脱離基である);
(b) 5の保護基を酸で除去して、6又はその塩を得る工程;
【化5】
(c) 第二の塩基の存在下で6又はその塩を3-クロロプロピオン酸クロリドと反応させて、8を得る工程;
【化6】
及び
(d) 8を第二の塩基と反応させて、化合物Iを得る工程;
【化7】
を含む、方法。
【請求項3】
前記工程(a)における1種以上の触媒は、パラジウム含有触媒、銅(I)含有触媒及びその組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラジウム含有触媒は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd
2(dba)
3)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh
3)
4)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPh
3)
2Cl
2)又は[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl
2)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パラジウム含有触媒は無機パラジウム化合物である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記銅(I)含有触媒は、Cu
2O、CuCl、CuBr、CuI又はCuCNである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(b)における酸は強酸である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記酸はHCl、HBr、HI、H
2SO
4、HClO
4、p-トルエンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
化合物4の製造方法であって、
(a) アゾジカルボン酸試薬及び有機ホスフィン化合物の存在下で1と9を反応させて2を得る工程
【化8】
(式中、PGは、Boc、Cbz又はSEMからなる保護基であり、Xは、Cl、Br又はIからなる脱離基である);
(b) 2をCH
3NH
2と反応させて3を得る工程;
【化9】
(c) 塩基、及び過酸化水素又は尿素過酸化水素を含む溶液中で3を加水分解して、4を得る工程;
【化10】
を含む、方法。
【請求項10】
前記アゾジカルボン酸試薬が、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)又はアゾジカルボン酸ジ-tert-ブチル(DBAD)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機ホスフィン化合物が、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン又はトリブチルホスフィンである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
【化11】
からなる群から選択される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、がんの治療のために現在臨床試験中のFGFR阻害剤である(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドの製造方法、及び当該方法で使用する中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(化合物I)は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の強力な阻害剤である。化合物Iは、がん、炎症及び他のFGFR関連疾患の治療に有用である(国際公開第2018/049781号)。国際公開第2018/049781号(実施例21)は、約1gの化合物Iを製造する合成経路を開示している。
【0003】
化合物Iを製造する、効率的でスケーラブルであり、純度が制御された方法、特に1kgを超える規模で化合物Iを製造する方法が必要である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
発明の詳細な説明
本発明は、(S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(化合物I)を高純度かつ良好な収率で製造する方法に関する。この方法は大規模生産(0.5kg以上、好ましくは1kg以上、2kg以上又は5kg以上)に適している。この方法は、純度90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の化合物Iを提供する。
【0005】
【0006】
第一の側面では、本発明は、化合物Iの製造方法を提供する。この方法は、
(a) 1種以上の適切な触媒、1種以上の適切な塩基及び1種以上の溶媒の存在下、50~140℃で、4と7を薗頭カップリングさせて5を得る工程、
【0007】
【0008】
(式中、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又は2-(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEM)からなる保護基、好ましくはBocであり、Xは脱離基、好ましくはCl、Br又はIである)
(b) 1種以上の適切な溶媒中、適切な酸(例.塩酸)を用いて5を脱保護し、PGを置換して6又はその塩(例.塩酸塩)を得る工程、
【0009】
【0010】
(c) 1種以上の適切な溶媒中、1種以上の適切な塩基の存在下で、6又はその塩を塩化アクリロイルでアミド化して化合物Iを得る工程、
を含む。
【0011】
【0012】
工程(a)では、塩基及び1、2種の触媒の存在下で、末端アルキンとヘテロアリールハロゲン化物とを反応させる薗頭カップリングを行う。4を5に変換するために、低酸素含量(<2%)の窒素雰囲気の反応容器内で、1種以上の適切な溶媒中、出発物質4及び7、1種以上の適切な触媒、並びに1種以上の適切な塩基を混合して、5を得る。反応温度は、50~140℃、50~120℃、50~110℃又は60~120℃、好ましくは65~85℃である。反応時間は、通常、8~48時間である。
【0013】
この出願で使用する適切な触媒は、パラジウム含有触媒、銅(I)含有触媒、又は1種以上のパラジウム含有触媒と1種以上の銅(I)含有触媒の組合せから選択できる。パラジウム含有触媒には、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPh3)2Cl2)、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2)といった有機パラジウム化合物、及び、Ph3P、P(tBu)3、PPh2Cy、Cy3P-HBF4及びBINAPといったさまざまな配位子と配位したPd(OAc)2を含む無機パラジウム化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。銅(I)含有触媒には、Cu2O、CuCl、CuBr、CuI及びCuCN等のCu(I)塩、好ましくはCuIが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
工程(a)で使用する適切な塩基には、アミン(例.トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、N-メチルモルホリン)、ピリジン及び置換ピリジンなどの有機塩基、並びに、LiOH、NaOH、KOH、Na2CO3、NaHCO3、K2CO3、Cs2CO3、KHCO3、Li3PO4、Li2HPO4、Na3PO4、Na2HPO4、K3PO4、K2HPO4、LiF、NaF、KF及びCsFなどの無機塩基が含まれる。
【0015】
工程(a)で使用する適切な溶媒は、有機溶媒、水、又は1種以上の有機溶媒と水の混合物から選択できる。有機溶媒には、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、DMF、DMA、NMP、DMSO、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトン、ブタン-2-オン等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
工程(b)では、適切な酸を加えて5から保護基を除去し、6又はその塩を得る。
【0017】
適切な酸にはHCl、HBr、HI、H2SO4、HClO4、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸といった強酸が含まれる。好ましい酸はHClである。
【0018】
工程(b)で使用する適切な溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトン等から選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
工程(c)では、6又はその塩を、1種以上の適切な溶媒中、塩基の存在下、0~30℃で1~24時間、塩化アクリロイルと反応させて化合物Iを得る。
【0020】
工程(c)で使用する適切な塩基には、アミン(例.トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA))などの有機塩基、及び、LiOH、NaOH、Na2CO3、NaHCO3、K2CO3、Cs2CO3、KHCO3、Li3PO4、Li2HPO4、Na3PO4、Na2HPO4、K3PO4及びK2HPO4などの無機塩基が含まれる。
【0021】
工程(c)で使用する適切な溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、アセトニトリル、水等から選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
第二の側面では、本発明は、化合物Iの別の製造方法を提供する。この方法は、6を化合物Iに変換する連続した2工程を除いて、第一の方法に類似する。第二の製造方法は、
(a) 1種以上の適切な触媒、1種以上の適切な塩基及び1種以上の溶媒の存在下、50~140℃で、4と7を薗頭カップリングさせて5を得る工程、
【0023】
【0024】
(式中、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)又は2-(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEM)からなる保護基、好ましくはBocであり、Xは脱離基、好ましくはCl、Br又はIである)
(b) 1種以上の溶媒中、適切な酸(例.塩酸)を用いて5を脱保護し、6又はその塩(例.塩酸塩)を得る工程、
【0025】
【0026】
(c) 1種以上の適切な溶媒中、1種以上の適切な塩基の存在下で、6又はその塩を3-クロロプロピオン酸クロリドでアミド化して8を得る工程、
【0027】
【0028】
(d) 1種以上の適切な溶媒中で、1種以上の適切な塩基により8の脱離反応を行い、化合物Iを得る工程、
【0029】
【0030】
を含む。
【0031】
第二の製法の工程(a)及び(b)の詳細は第一の方法と同じであるが、工程(c)及び(d)が異なる。
【0032】
工程(c)では、6又はその塩を、1種以上の適切な溶媒中、塩基の存在下、-10~30℃で0.5~48時間、3-クロロプロピオン酸クロリドと反応させて8を得る。
【0033】
工程(c)で使用する適切な塩基には、アミン(例.トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA))などの有機塩基、及び、LiOH、NaOH、Na2CO3、NaHCO3、K2CO3、Cs2CO3、KHCO3、Li3PO4、Li2HPO4、Na3PO4、Na2HPO4、K3PO4及びK2HPO4などの無機塩基が含まれる。
【0034】
工程(c)で使用する適切な溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、アセトニトリル、水等から選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
工程(d)では、8は、1種以上の適切な溶媒中で、1種以上の適切な塩基により、約-3~30℃で1~36時間、脱離反応を受けて、水素原子と塩素原子が脱離して二重結合が形成され、化合物Iが得られる。
【0036】
工程(d)で使用する適切な塩基には、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、LiOH、NaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、Cs2CO3、Li3PO4、Na3PO4及びK3PO4が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
工程(d)で使用する適切な溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、DMSO、DMF、DMA、NMP、アセトン、アセトニトリル、水等から選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明は、上記2種類の方法の出発物質4の製造方法も提供する。この方法は、
(a) 1種以上の適切な溶媒中、アゾジカルボン酸試薬及び有機ホスフィン化合物の存在下で、1と9の光延反応により、アルコール9を2に変換する工程、
【0039】
【0040】
(式中、PGは、Boc、Cbz又はSEMからなる保護基、好ましくはBocであり、Xは脱離基、好ましくはCl、Br又はIである)
(b) 1種以上の適切な溶媒中で、MeNH2により2の置換反応を行い、3を得る工程、
【0041】
【0042】
(c) 1種以上の溶媒中、過酸化水素か尿素過酸化水素(H2O2・NH2CONH2)及び1種以上の適切な塩基の存在下で3を加水分解して、4を得る工程、
を含む。
【0043】
1を2に変換する工程(a)では、1と9の反応は、アゾジカルボン酸試薬及び有機ホスフィン化合物の存在下で行う。アゾジカルボン酸には、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)及びアゾジカルボン酸ジ-tert-ブチル(DBAD)が含まれるが、これらに限定されるものではない。有機ホスフィン化合物には、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン及びトリブチルホスフィンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
工程(a)で使用する適切な溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、DMF、DMA、NMP、DMSO、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等から選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
工程(b)で使用する適切な溶媒は、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、水等から選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
工程(c)で使用する適切な塩基は、LiOH、NaOH及びKOHから選択されるが、これらには限定されない強塩基であることが好ましい。
【0047】
工程(c)で使用する適切な溶媒は、1,4-ジオキサン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、NMP、DMSO、水等から選択できるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の方法には、化合物Iの従来の合成法を上回るいくつかの重要な利点があり、工程が少なく、位置選択性が排他的で、効率がよく、全体収率が高い。さらに、この方法は、医薬品のAPIとして使用する高品質の化合物Iを一貫して提供する。
【0049】
本発明はさらに、以下の化合物に関する。これらの化合物は、化合物Iの製法において有用である。
【0050】
【0051】
この発明を、本発明の好ましい態様である以下の実施例によって更に説明する。これらの実施例は例示であり、この明細書に開示する化合物を製造するために当業者が使用できる可能な技術を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0052】
【0053】
スキーム1に、実施例1~6に示す化合物Iの製造方法を要約する。
【0054】
実施例1 (S)-3-(3,5-ジブロモ-4-シアノ-1H-ピラゾール-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(2)の製造
100Lの反応容器に、室温で、トルエン(60L、13.3L/kg)、1(4.500kg、1.00当量)、(R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(9、3.358kg、1.00当量)及びトリフェニルホスフィン(5.410kg、1.15当量)を加え、得られた混合物を、撹拌しながら5~10℃に冷却した。アゾジカルボン酸ジイソプロピル(4.352kg、1.20当量)を5~10℃で1.5時間かけて滴下した後、0~10℃(内部温度)で2時間、次いで、25℃で10時間、撹拌を続けた。混合物を5~10℃に冷却し、ろ過し、トルエン(5L、1.11L/kg)で洗浄した。ろ液を濃縮乾固し、それにエタノール(15L、3.33L/kg)を加えた。次いで、得られた混合物を20℃に冷却し、1時間撹拌し、濾過した。固体を回収し、赤外光下で乾燥させて2を得た(6.000kg、収率80%)。
【0055】
実施例2 (S)-3-(3-ブロモ-4-シアノ-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(3)の製造
10Lのオートクレーブに、THF(5.0L)、メタノール中のメチルアミン(25~30%、6.5L)及び2(3.000kg、1.0当量)を加えた。混合物を80℃で12時間加熱した。室温に冷却後、反応混合物を容器に移し替えた。2(3.000kg)を使用して、上記手順を繰り返し、別の反応混合物を得た。これらの反応混合物を合わせて濃縮乾固した。残留物を室温で1時間、水(12L)でトリチュレートし、次いで、ろ過した。ろ過ケーキを水(5L)で洗浄し、3を得た(5.400kg、未乾燥)。
【0056】
実施例3 (S)-3-(3-ブロモ-4-カルバモイル-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(4)の製造
(a) 3.2kgスケール
50Lの反応容器に、DMSO(25L)、水酸化ナトリウム(972.0g、5.00当量)及び3(1.800kg、1.00当量)を加えた。混合物を5~10℃に冷却し、次いで、30%過酸化水素水(6.385kg、13.40当量)を滴下した。この操作を2回繰り返した。3つ、全てのバッチを合わせ、氷水(氷水の量はDMSOの体積の3倍)に注ぎ、ろ過した。ろ過ケーキを水(10L)で洗浄し、次いで50Lの反応容器に移し替え、そこにエタノール(12L)を加えた。次いで、得られた混合物を加熱還流し、熱時ろ過して不溶性の固体を除去した。ろ液を室温に冷却し、固体をろ別した。ろ過ケーキをエタノール(2L)で洗浄し、ドラフトチャンバー内で風燥させて、4を得た(3.228kg、収率57%、純度99.6%)。
【0057】
(b) 32kgスケール
4は以下の方法でも製造できる:
反応容器に、DMSO(499kg)と3(54kg、1.00当量)を加えた。混合物を10~20℃に冷却し、次いで、水酸化ナトリウム水溶液(固体のNaOH 5.54kgと水50.4kgを混合して調製)を加えた。得られた混合物を、10~20℃で30分間撹拌し、次いで、尿素過酸化水素(12.6kg、1.0当量)を加え、4時間撹拌した。尿素過酸化水素の添加と撹拌は5回に分けて行った。次いで、混合物を10~20℃に保ちながら、水(1360.8kg)を加え、得られた混合物を2時間撹拌した。混合物を遠心分離して固体を回収し、次いで、それを水(100.6kg)で洗浄し、再び、遠心分離して固体(44kg)を回収した。固体を、イソプロパノール(69.5kg)及びエタノール(39.68kg)が入った反応容器に移した。次いで、得られた混合物を75~85℃に加熱し、1~2時間撹拌した。混合物を、1時間に8~12℃の割合で20~30℃まで冷却し、1時間撹拌した。混合物をろ過し、ろ過ケーキを真空オーブン中、40~50℃で12時間乾燥させて、4を得た(32kg、収率60%、純度99.3%)。
【0058】
実施例4 (S)-3-(4-カルバモイル-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-1-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(5)の製造
反応容器に2-メチルテトラヒドロフラン(15.200kg、10L/kg)を入れ、1時間、窒素ガスを吹き込み、次いで、窒素雰囲気中で、4(1.765kg、1.00当量)、7(0.895kg、1.21当量)、炭酸水素ナトリウム(0.570kg、1.49当量)、CuI(4.50g、0.005当量)及び脱イオン水(17.700kg、10L/kg)を順次加えた。反応容器を真空で脱気し、窒素ガスで3回フラッシュした。次いで、Pd(PPh3)4(0.270kg、0.05当量)を加え、得られた混合物を16~20時間加熱還流した。反応混合物を20~30℃に冷却し、有機層を、順次、7%炭酸水素ナトリウム溶液(17.805kg、10L/kg)及び10%塩化ナトリウム溶液(18.000kg、10L/kg)で洗浄し、合わせた水層を2-メチルテトラヒドロフラン(5.305kg、3.5L/kg)で抽出した。合わせた有機層に、1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリチオン三ナトリウム塩(TMT-Na3)(0.725kg、0.64当量)及び活性炭(0.735kg、0.42kg/kg)を加え、得られた混合物を、撹拌しながら、12~18時間、40~50℃に加熱した。20~30℃に冷却後、混合物をセライトの層(0.895kg、0.51kg/kg)に通過させてろ過した。ろ過ケーキを2-メチルテトラヒドロフラン(1.750kg、1L/kg)で洗浄し、ろ液と合わせて、7%炭酸水素ナトリウム溶液(17.750kg、10L/kg)、続いて10%塩化ナトリウム溶液(18.455kg、10L/kg)で洗浄した。水層を合わせ、2-メチルテトラヒドロフラン(5.300kg、3.5L/kg)で抽出した。有機層を合わせ、濃縮した。残留物を酢酸エチル(9kg、5.6L/kg)で3回共蒸留し、次いで、酢酸エチル(12.9kg、8.1L/kg)を加えた。得られた溶液は、更に精製することなく実施例5で直接使用した。
【0059】
実施例5 (S)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1-(ピロリジン-3-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド塩酸塩(6)の製造
実施例5の溶液を15~25℃に冷却し、そこに、エタノール中の塩酸(3.990kg、2.26kg/kg)を滴下した。得られた混合物を1~5時間撹拌し、ろ過し、酢酸エチル(0.360kg、0.2L/kg)で洗浄した。次いで、ろ過ケーキを、順次、酢酸エチル(3.360kg、2.6L/kg)及びアセトン(3.605kg、2.6L/kg)でトリチュレートした。湿った固体を回収し、40~50℃で18~24時間、真空乾燥させて、6を得た(1.765kg、収率 2工程で88%、純度99.3%)。
【0060】
実施例6 (S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(化合物I)の製造
反応容器に、2-メチルテトラヒドロフラン(14.005kg、9.4L/kg)、6(1.760kg、1.0当量)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(DHT)(6.50g、0.006当量)及び水(17.800kg、10L/kg)を、窒素雰囲気中、15~25℃で加え、続いて、炭酸水素ナトリウム(1.460kg、4.0当量)を少しずつ加えた。次いで、得られた混合物を0~10℃に冷却し、これに、滴下漏斗を使用して、2-メチルテトラヒドロフラン(1.600kg)中の塩化アクリロイル(394g、1.0当量)溶液を加えた。添加の完了後、得られた混合物を0~10℃で1~2時間撹拌し、次いで、15~45分間、10~20℃に温めた。水層を分離し、有機層を、順次、7%炭酸水素ナトリウム水溶液(17.790kg、10L/kg)及び10%塩化ナトリウム水溶液(17.610kg、10L/kg)で洗浄した。水層を合わせて2-メチルテトラヒドロフラン(5.305kg、3.5L/kg)で抽出した。有機層を合わせて、活性炭の層(350.20g、0.20kg/kg)を通過させてろ過した。ろ液を6~8kgに濃縮し、残留物を酢酸エチル(8.8kg、5.5L/kg)で3回共蒸留して、6~8kgにした。得られた酢酸エチル溶液を10~15℃に冷却し、そこに、n-ヘプタン(7.910kg、6.6L/kg)を1~3時間かけて滴下し、1~3時間撹拌した。得られた混合物を0~5℃に冷却し、1~5時間撹拌し、ろ過した。固体を酢酸エチル(1.450kg、0.9kg/kg)とn-ヘプタン(1.450kg、0.9kg/kg)の混合物でトリチュレートし、ろ過した。湿った固体を回収し、40~50℃で12~20時間、真空乾燥させて、化合物Iを得た(1.345kg、収率80%、純度98.8%)。化合物I(1.340kg、1当量)を、窒素雰囲気中で、アセトン(6.030kg、5.7L/kg)、DHT(4.68g、0.006当量)を含む水(4.020kg、3.0L/kg)から再結晶して更に精製し、より純度の高い化合物Iを得た(1.175kg、収率88%、純度99.5%)。
【0061】
【0062】
スキーム2は、6の塩酸塩を化合物Iに変換する連続2段階反応を要約しており、これは実施例7及び8に示す。
【0063】
実施例7 (S)-1-(1-(3-クロロプロパノイル)ピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(8)の製造
200Lの反応容器に、テトラヒドロフラン(50kg、10L/kg)及び炭酸水素ナトリウム水溶液(固体の炭酸水素ナトリウム(4.26kg、4.0当量)を脱イオン水(56kg、10L/kg)に溶解して調製)を加え、続いて、噴霧固体添加漏斗を使用して6(5.60kg、1.0当量)を加えた。-5~5℃に冷却後、テトラヒドロフラン(17.45kg、4L/kg)中の3-クロロプロピオン酸クロリド(1.778kg、1.0当量)溶液を速度8~12kg/時でゆっくりと反応容器に滴下した。装置にテトラヒドロフラン(4.98kg、1L/kg)を加えて、すすいだ。混合物を-5~5℃で0.5時間撹拌し、20~30℃まで温め、分離した。水層を2-メチルテトラヒドロフラン(11.03kg、2.3L/kg)で抽出した。合わせた有機層を、飽和塩化ナトリウム水溶液(37.80kg、5.0L/kg)で洗浄し、減圧下、40℃以下で11.20~22.40L(2~4L/kg)に濃縮した。残留物を酢酸エチル(28.00kg、5.5L/kg)で3回共蒸留して、20~30L(3.6~5.4L/kg)に濃縮し、酢酸エチル(25.20kg、5.0L/kg)を加えた。得られた混合物を15~25℃で16時間撹拌し、ろ過した。ろ過ケーキを酢酸エチル(5.55kg、1.1L/kg)ですすぎ、真空中、40~50℃で乾燥させて、8を得た(3.96kg、収率69%、純度99.6%)。
【0064】
実施例8 (S)-1-(1-アクリロイルピロリジン-3-イル)-3-((3,5-ジメトキシフェニル)エチニル)-5-(メチルアミノ)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(化合物I)の製造
80Lの反応容器に、アセトニトリル(34.10kg、11L/kg)及び脱イオン水(7.90kg、2.0L/kg)を加えた。混合物を15~25℃に調整し、噴霧固体添加漏斗を使用して8(3.90kg、1.0当量)を加えた。次いで、漏斗をアセトニトリル(3.10kg、1L/kg)ですすいで、すすぎ液を反応容器に入れた。次いで、得られた溶液を500Lの反応容器に移し替え、80Lの反応容器をすすぐのに、アセトニトリル(3.10kg、1L/kg)を更に使用した。反応容器を15~25℃に調整し、水酸化ナトリウム溶液(NaOH(0.68kg、2当量)を水(7.80kg、2.0L/kg)に溶解して調製)を速度9~18kg/時で加えた。反応混合物を15~25℃で4.0時間撹拌した。10~20℃に冷却後、希塩酸(濃塩酸0.85kgと脱イオン水8.00kgを混合して調製)を反応容器にゆっくりと加えてpHを7~8に調整した。温度を20~30℃に調整して、混合物を分離した。有機層を40℃以下で18~27Lに濃縮し、アセトン(15.36kg、5.0L/kg)を加えた。得られた混合物を、全ての固体が溶解するまで35~40℃に加熱した。脱イオン水(77.96kg、20L/kg)を速度20~40kg/時でゆっくりと加え、33~42℃を維持した。水の添加後、混合物を33~42℃で1時間撹拌し、5~10℃/時でゆっくりと0~10℃に冷却し、3~5時間撹拌し、ろ過した。ろ過ケーキを、真空中、40~50℃で乾燥させて、化合物Iを得た(3.30kg、収率91.9%、純度99.8%)。
【0065】
本発明並びにその製造及び使用の方法及び工程は、本発明が属する技術分野の当業者が、本発明を製造し、使用できるように完全、明確、簡潔かつ正確な用語で説明される。以上は本発明の好ましい態様を説明したものであり、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲から逸脱することなく変更を加えることができることを理解されたい。発明とみなされる主題を特に指摘し、明確に請求するために、特許請求の範囲を示す。
【国際調査報告】