(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】I型膜タンパク質ヘテロダイマー及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20240119BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240119BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240119BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240119BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240119BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240119BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240119BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240119BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240119BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240119BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240119BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240119BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240119BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240119BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240119BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240119BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C07K14/705 ZNA
C07K16/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12N5/078
A61P35/00
A61P35/02
A61K38/17
A61K39/395 W
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542757
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 IL2022050055
(87)【国際公開番号】W WO2022153307
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517307924
【氏名又は名称】カール メディカル リミテッド
【住所又は居所原語表記】28 Dam HaMacbim Street, PO Box 9, ModiIn Makabim-ReUt, Israel
(71)【出願人】
【識別番号】516241599
【氏名又は名称】トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タミール アミ
(72)【発明者】
【氏名】チコシンスキ マーク エル.
(72)【発明者】
【氏名】ブレマー エドウィン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE11
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB19
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA41
4C084BA44
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C085AA33
4C085BB42
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA50
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
I型膜タンパク質ヘテロダイマーが提供される。したがって、SIRPアルファ、PD1、TIGIT、LILRB2及びSIGLEC10からなる群から選択される2種のポリペプチドを含むヘテロダイマーであって、2種のポリペプチドのそれぞれがその天然の結合相手に結合することができ、ヘテロダイマーが、その天然の結合相手に結合することができるII型膜タンパク質のアミノ酸配列を含まない、ヘテロダイマーが提供される。ヘテロダイマーをコードする核酸構築物及びシステム、それを発現する宿主細胞並びにその使用方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIRPα、PD1、TIGIT、LILRB2及びSIGLEC10からなる群から選択される2種のポリペプチドを含むヘテロダイマーであって、前記2種のポリペプチドのそれぞれがその天然の結合相手に結合することができ、前記ヘテロダイマーが、その天然の結合相手に結合することができるII型膜タンパク質のアミノ酸配列を含まない、ヘテロダイマー。
【請求項2】
前記2種のポリペプチドに結合されたダイマー化部分を含む、請求項1に記載のヘテロダイマー。
【請求項3】
前記ダイマー化部分が抗体又はその断片のFcドメインである、請求項2に記載のヘテロダイマー。
【請求項4】
前記Fcドメインが、Fc受容体に対するその結合の変更、その免疫活性化機能の低下、及び/又は融合体の半減期の改善が得られるように修飾されている、請求項3に記載のヘテロダイマー。
【請求項5】
前記SIRPαポリペプチド及び前記PD1ポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項6】
前記SIRPαポリペプチド及び前記LILRB2ポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項7】
前記SIRPαポリペプチド及び前記SIGLEC10ポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項8】
前記SIRPαポリペプチド及び前記TIGITポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項9】
前記TIGITポリペプチド及び前記PD1ポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項10】
前記TIGITポリペプチド及び前記LILRB2ポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項11】
前記TIGITポリペプチド及び前記SIGLEC10ポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項12】
前記PD1ポリペプチド及び前記SIGLEC10ポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項13】
前記LILRB2ポリペプチド及び前記SIGLEC10ポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項14】
前記PD1ポリペプチド及び前記LILRB2ポリペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項15】
前記ヘテロダイマー中で、前記ポリペプチドのそれぞれがモノマーである、請求項1~14のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項16】
前記2種のポリペプチドが、前記ヘテロダイマーのモノマー中に含まれる、請求項1~14のいずれか一項に記載のヘテロダイマー。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のヘテロダイマーを含む組成物であって、前記組成物中の前記2種のポリペプチドの優勢形態が前記ヘテロダイマーである、組成物。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載のヘテロダイマーをコードする少なくとも1種のポリヌクレオチドと、宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドの発現を指示する制御因子とを含む、核酸構築物又はシステム。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載のヘテロダイマー或いは請求項18に記載の核酸構築物又はシステムを含む、宿主細胞。
【請求項20】
ヘテロダイマーの製造方法であって、請求項18に記載の核酸構築物又はシステムを宿主細胞に導入すること、或いは請求項19に記載の細胞を培養することを含む、方法。
【請求項21】
前記ヘテロダイマーを単離することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ヘテロダイマーによる治療が有効に作用し得る疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の、請求項1~16のいずれか一項に記載のヘテロダイマー、請求項17に記載の組成物、請求項18に記載の核酸構築物又はシステム、或いは請求項19に記載の細胞を前記対象に投与し、それにより前記対象において前記疾患を治療することを含む方法。
【請求項23】
前記ヘテロダイマーによる治療が有効に作用し得る疾患の治療を、それを必要とする対象において行うのに使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載のヘテロダイマー、請求項17に記載の組成物、請求項18に記載の核酸構築物又はシステム、或いは請求項19に記載の細胞。
【請求項24】
前記疾患が、免疫細胞の活性化が有効に作用し得るものである、請求項22に記載の方法或いは請求項23に記載の使用のためのヘテロダイマー、組成物、核酸構築物又はシステム、或いは細胞。
【請求項25】
前記疾患に関連する細胞が前記天然の結合相手を発現する、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法或いは使用のためのヘテロダイマー、組成物、核酸構築物又はシステム、或いは細胞。
【請求項26】
前記疾患が癌である、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法或いは使用のためのヘテロダイマー、組成物、核酸構築物又はシステム、或いは細胞。
【請求項27】
前記癌が、リンパ腫、白血病、結腸癌、卵巣癌、肺癌、頭頸部癌及び肝細胞癌からなる群から選択される、請求項26に記載の方法或いは使用のためのヘテロダイマー、組成物、核酸構築物又はシステム、或いは細胞。
【請求項28】
前記癌が非小細胞肺癌(NSCLC)又は中皮腫である、請求項26に記載の方法或いは使用のためのヘテロダイマー、組成物、核酸構築物又はシステム、或いは細胞。
【請求項29】
免疫細胞を活性化する方法であって、請求項1~16のいずれか一項に記載のヘテロダイマー、請求項17に記載の組成物、請求項18に記載の核酸構築物又はシステム、或いは請求項19に記載の細胞の存在下において免疫細胞をin-vitroで活性化することを含む方法。
【請求項30】
前記活性化が、前記天然の結合相手を発現する細胞の存在下におけるものである、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年1月13日に出願された米国特許出願第63/136,687号及び2021年1月20日に出願された米国特許出願第63/139,331号の優先権を主張するものであり、これらの内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される。
【0002】
配列表に関する陳述
本願の出願と同時に提出された、2022年1月13日に作製された303,104バイトを含む89962SequenceListing.txtという名称のASCIIファイルは、参照によって本明細書に援用される。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、I型膜タンパク質ヘテロダイマー及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
癌と免疫系との間の相互作用は、複雑で多面的である。多くの癌患者は、抗腫瘍免疫応答を示すように見えるが、癌も、免疫検出及び免疫破壊を回避する戦略を示す。癌細胞は、その表面での腫瘍抗原の発現を低下させて、免疫系がそれを検出することを困難にし、免疫細胞の不活性化を誘導するタンパク質をその表面で発現させ、及び/又は微小環境内の細胞に免疫応答を抑制する物質を放出させて、腫瘍細胞の増殖及び生存を促進することができる。
【0005】
近年、免疫系の特定の成分を刺激するか、又は癌細胞により生成される免疫応答を抑制するシグナルを相殺することにより、腫瘍に対する免疫応答を増強するための免疫療法が開発されている。免疫応答を調節する機構及び分子の定義の進歩により、癌を治療するための新規の治療標的がもたらされた。これらの標的の中には、T細胞免疫応答の制御において中心的な役割を果たす共刺激分子及び共阻害分子(例えば、CTLA4、PD1)、インターロイキン及びインターフェロンなど、免疫系活性の制御又は調節に役立つタンパク質、腫瘍抗原並びに自然免疫系の活性に関与する成分(例えば、CD47-SIRPα「ドント・イート・ミー(私を食べないで、don’t eat-me)」シグナル)が含まれる。
【0006】
付加的な背景技術には、以下のものが含まれる:
国際公開第2020/146423号、国際公開第201712770号、国際公開第2017152132号、国際公開第2016023001号及び国際公開第2013112986号、並びに
米国特許第7,569,663号明細書及び米国特許第8,039,437号明細書。
【発明の概要】
【0007】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、SIRPα、PD1、TIGIT、LILRB2及びSIGLEC10からなる群から選択される2種のポリペプチドを含むヘテロダイマーであって、2種のポリペプチドのそれぞれがその天然の結合相手(binding partner)に結合することができ、ヘテロダイマーが、その天然の結合相手に結合することができるII型膜タンパク質のアミノ酸配列を含まない、ヘテロダイマーが提供される。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、2種のポリペプチドに結合されたダイマー化部分を含む。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によると、ダイマー化部分は、抗体又はその断片のFcドメインである。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によると、Fcドメインは、Fc受容体に対するその結合の変更、その免疫活性化機能の低下、及び/又は前記融合体の半減期の改善が得られるように修飾されている。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIRPαポリペプチド及びPD1ポリペプチドを含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIRPαポリペプチド及びLILRB2ポリペプチドを含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIRPαポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチドを含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIRPαポリペプチド及びTIGITポリペプチドを含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、TIGITポリペプチド及びPD1ポリペプチドを含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、TIGITポリペプチド及びLILRB2ポリペプチドを含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、TIGITポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチドを含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、PD1ポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチドを含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、LILRB2ポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチドを含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマーは、PD1ポリペプチド及びLILRB2ポリペプチドを含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によると、ヘテロダイマー中で、ポリペプチドのそれぞれがモノマーである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によると、2種のポリペプチドは、ヘテロダイマーのモノマー中に含まれる。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、ヘテロダイマーを含む組成物であって、組成物中の2種のポリペプチドの優勢形態がヘテロダイマーである組成物が提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、ヘテロダイマーをコードする少なくとも1種のポリヌクレオチドと、宿主細胞内でポリヌクレオチドの発現を指示する制御因子とを含む核酸構築物又はシステムが提供される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、ヘテロダイマー又は核酸構築物又はシステムを含む宿主細胞が提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、ヘテロダイマーの製造方法であって、核酸構築物又はシステムを宿主細胞に導入すること又は細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によると、本方法は、ヘテロダイマーを単離することを含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、ヘテロダイマーによる治療が有効に作用し得る疾患の治療を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量のヘテロダイマー、組成物、核酸構築物又はシステム、或いは細胞を対象に投与し、それにより対象において疾患を治療することを含む方法が提供される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、ヘテロダイマーによる治療が有効に作用し得る疾患の治療を、それを必要とする対象において行うのに使用するためのヘテロダイマー、組成物、核酸構築物又はシステム、或いは細胞が提供される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によると、疾患は、免疫細胞の活性化が有効に作用し得るものである。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によると、疾患に関連する細胞は、天然の結合相手を発現する。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によると、疾患は、癌である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によると、癌は、リンパ腫、白血病、結腸癌、卵巣癌、肺癌、頭頸部癌及び肝細胞癌からなる群から選択される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によると、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)又は中皮腫である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によると、免疫細胞を活性化する方法であって、ヘテロダイマー、組成物、核酸構築物又はシステム、或いは細胞の存在下において免疫細胞をin-vitroで活性化することを含む方法が提供される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によると、活性化は、天然の結合相手を発現する細胞の存在下におけるものである。
【0037】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様の又は等価な方法及び材料を、本発明の実施形態の実践又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。加えて、材料、方法及び実施例は、単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本明細書に記載する。以下では、特に図面を詳細に参照して示す細部は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の詳細な説明を目的とすることを強調する。同様に、図面と共に説明を見ることで、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1A】
図1Aは、ヘテロダイマーの可能な配座/コンホメーション(arrangements/conformations)の非限定的な例の概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明のいくつかの実施形態で企図されるヘテロダイマーの組成及び配置の概略図を示す。
【
図2】
図2Aは、本明細書において「DSP120V1」(配列番号5及び7)と称されるSIRPα-PD1ヘテロダイマーの概略図である。
図2B~Cは、SIRPα-PD1ヘテロダイマーDSP120V1(配列番号5及び7)の予測される3D構造を示す。
図2Bは、概略的3Dモデルであり、
図2Cは、全原子3Dモデルである。SIRPα(「ノブ」鎖中)は、濃いグレーのリボン表示で示されている(右側下)。PD1(「ホール」鎖中)は、グレーのリボン表示で示されている(右側上)。「ノブ」配列のhIgG4は、図の右側下に白いリボンで示されている。「ホール」配列のhIgG4は、図の右側上にグレーのリボンで示されている。「スペーサー」/「リンカー」セグメントは、SIRPα、hIgG4及びPD1の構造要素間にグレーのリボン及び白いリボンで示されている。hIgG4のFcドメインのヒンジシステイン残基(複合体を安定化する)は、CPK表示で示されている。
【
図3】
図3Aは、本明細書において「DSP216V1」(配列番号5及び15)と称されるSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーの概略図である。
図3B~Cは、SIRPα-LILRB2ヘテロダイマーDSP216V1(配列番号5及び15)の予測される3D構造を示す。
図3Bは、概略的3Dモデルであり、
図3Cは、全原子3Dモデルである。SIRPα(「ノブ」鎖中)は、濃いグレーのリボン表示で示されている(右側下)。LILRB2(「ホール」鎖中)は、濃いグレーのリボン表示で示されている(右側上)。「ノブ」配列のhIgG4は、図の右側下に白いリボンで示されている。「ホール」配列のhIgG4は、図の右側上にグレーのリボンで示されている。「スペーサー」/「リンカー」セグメントは、SIRPα、hIgG4及びLILRB2の構造要素間にグレーのリボン及び白いリボンで示されている。hIgG4のFcドメインのヒンジシステイン残基(複合体を安定化する)は、CPK表示で示されている。
【
図4】
図4Aは、本明細書において「DSP404V1」(配列番号13及び30)と称されるTIGIT-SIGLEC10ヘテロダイマーの概略図である。
図4B~Cは、TIGIT-SIGLEC10ヘテロダイマーDSP404V1(配列番号13及び30)の予測される3D構造を示す。
図4Bは、概略的3Dモデルであり、
図4Cは、全原子3Dモデルである。TIGIT(「ノブ」鎖中)は、グレーの表面表示で示されている(右側下)。SIGLEC10(「ホール」鎖中)は、グレーの表面表示で示されている(右側上)。「ノブ」配列のhIgG4は、図の右側下に白い表面で示されている。「ホール」配列のhIgG4は、図の右側上にグレーの表面で示されている。「スペーサー」/「リンカー」セグメントは、TIGIT、hIgG4及びSIGLEC10の構造要素間にグレーのリボン及び白いリボンで示されている。hIgG4のFcドメインのヒンジシステイン残基(複合体を安定化する)は、CPK表示で示されている。
【
図5】
図5Aは、本明細書において「DSP502V1」(配列番号13及び7)と称されるTIGIT-PD1ヘテロダイマーの概略図である。
図5B~Cは、TIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502V1(配列番号13及び7)の予測される3D構造を示す。
図5Bは、概略的3Dモデルであり、
図5Cは、全原子3Dモデルである。TIGIT(「ノブ」鎖中)は、グレーのリボン表示で示されている(右側下)。PD1(「ホール」鎖中)は、グレーのリボン表示で示されている(右側上)。「ノブ」配列のhIgG4は、図の右側下に白いリボンで示されている。「ホール」配列のhIgG4は、図の右側上にグレーのリボンで示されている。「スペーサー」/「リンカー」セグメントは、TIGIT、hIgG4及びPD1の構造要素間にグレーのリボン及び白いリボンで示されている。hIgG4のFcドメインのヒンジシステイン残基(複合体を安定化する)は、CPK表示で示されている。
【
図6-1】
図6A~Bは、製造したいくつかのヘテロダイマー(以下の表1の記述及び配列を参照されたい)のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)分析を示す。
図6Aは、還元(R)及び/又は非還元(NR)条件下で分離された、表示したヘテロダイマーをコードするプラスミドをトランスフェクトしたExpi293F細胞の粗(未精製)5日目上清サンプルのSDS-PAGE画像を提示する。対照サンプルは、非トランスフェクトExpi293F細胞の5日目の培養物の上清である。
図6Bは、表示したプロテインA又はアニオン交換クロマトグラフィーを用いて、表示したヘテロダイマーをコードする構築物をトランスフェクトした細胞の5日目上清から精製されたサンプルのSDS-PAGE画像を提示する。
【
図7】
図7A~Cは、製造したいくつかのヘテロダイマー(以下の表1の記述及び配列を参照されたい)のウエスタンブロット分析を提示する。図に示したサンプルは、表示したヘテロダイマーをコードするプラスミドをトランスフェクトしたExpi293F細胞の粗(未精製)5日目上清である。SDS-PAGEにおいて非還元(NR)又は還元(R)条件で上清を分離した後、抗PD1(
図7A)、抗SIRPα(
図7B)又は抗LILRB2(
図7C)抗体による免疫ブロッティングを行った。
【
図8】
図8A~Bは、本明細書において「DSP120」(配列番号1及び3)と称されるSIRPα-PD1ヘテロダイマーのCD47及びPDL1への結合を示す。CD47又はPDL1でプレコートした96ウェルプレートにおいて、ヘテロダイマーを含有する上清又は対照上清(非トランスフェクトExpi293F細胞からのもの)をインキュベートした。インキュベーション後、抗PD-1(CD47でコートしたプレートの場合)又はウサギ抗ヒトSIRPα抗体(PDL1でコートしたプレートの場合)を用いて検出を行い、その後、対応するHRP結合二次抗体と共にインキュベートした。620を参照波長として450nmでプレートリーダー(Thermo Scientific社製のMultiscan FC)を使用し、標準的なELISAプロトコルに従い、TMB基質を用いて検出を行った。
図8Aは、CD47でコートしたプレートへのDSP120の濃度依存的結合を示し、
図8Bは、PDL1でコートしたプレートへのDSP120の濃度依存的結合を示す。
【
図9-1】
図9A~Cは、本明細書において「DSP216」(配列番号1及び11、
図9A)及び「DSP216V1」(配列番号5及び15、
図9B~C)と称されるSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーのHLA-Gへの結合を示す。HLA-Gでプレコートした96ウェルプレートにおいて、ヘテロダイマーを含有する上清又は対照上清(非トランスフェクトExpi293F細胞からのもの)をインキュベートした。620nmを参照波長として450nmでプレートリーダーを使用し、標準的なELISAプロトコルに従い、ウサギ抗ヒトSIRPα抗体と共にインキュベートした後、ヤギ抗ウサギIgG-HRP及びTMB基質と共にインキュベートすることによって結合を検出した。
図9Aは、HLA-Gタンパク質でコートしたプレートへのDSP216の濃度依存的結合を示す。対照上清(対照)では結合が観察されなかった。
図9B~Cは、DSP216V1を含有する粗製上清(
図9B)又は精製DSP216V1(
図9C)の、HLA-Gでコートしたプレートに対する濃度依存的結合を示す。
【
図10】
図10A~Bは、本明細書において「DSP502」(配列番号9及び3)と称されるPD1-TIGITヘテロダイマーの、そのPVR対応物に対する結合を示す。PVRでプレコートした96ウェルプレートにおいて、ヘテロダイマーを含有する上清若しくは対照上清(非トランスフェクトExpi293F細胞からのもの)(
図10A)又は精製タンパク質(
図10B)をインキュベートした。インキュベーション後、抗PD1抗体を用いて検出を行い、その後、対応するHRP結合二次抗体と共にインキュベートした。620を参照波長として450nmでプレートリーダー(Thermo Scientific社製のMultiscan FC)を使用し、標準的なELISAプロトコルに従い、TMB基質を用いて検出を行った。
図10A~Bは、PVRでコートしたプレートへのDSP502の濃度依存的結合を示す。
【
図11-1】
図11A~Eは、フローサイトメトリー分析で決定される、PDL1又はCD47を発現する細胞に対するDSP120及びDSP120V1の結合を示す。示したMFI値を使用して、FlowJoソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
図11Aは、DLD1-PDL1過剰発現細胞株におけるPDL1の発現を示すヒストグラムである。PDL1の表面発現レベルは、蛍光標識抗PDL1抗体によるDLD1 WT及びPDL1過剰発現細胞株(DLD1-PDL1)の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。
図11Bは、CHO-K1-CD47 HB9クローン細胞におけるCD47受容体の発現を示すヒストグラムである。CD47の表面発現レベルは、抗CD47抗体によるCHO-K1 WT及びCD47過剰発現細胞株(クローンHB9)の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。
図11C~Dは、DLD1-WTと比較して、DLD1-PDL1過剰発現細胞株に対するDSP120(
図11C)及びDSP120V1(
図11D)の結合を示す。ヘテロダイマーの細胞株への結合は、インキュベーション後、抗SIRPα抗体を用いたそのSIRPαドメインの免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。
図11Eは、CHO-K1-CD47 HB9クローン細胞へのDSP120V1の結合を示す。hCD47過剰発現細胞株へのヘテロダイマーの結合は、インキュベーション後、抗IgG4抗体を用いたそのIgG-Fcドメインの免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。CHO-K1 WT細胞は、結合アッセイのための陰性細胞対照として使用した。
【
図12-1】
図12A~Fは、フローサイトメトリー分析で決定される、CD47及びHLA-Gを発現する細胞に対するDSP216及びDSP216V1の結合を示す。
図12A及び12Cは、HT1080(
図12A)及びHT1080-HLA-G(
図12C)細胞株におけるCD47の発現を示す。CD47の細胞表面発現は、抗ヒト-CD47抗体及びIgG1アイソタイプ対照による細胞株の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。
図12B及び12Dは、HT1080(
図12B)及びHT1080-HLA-G(
図12D)細胞株におけるHLA-Gの発現を示す。HLA-Gの表面発現レベルは、抗ヒト-HLA-G抗体及びIgG2aアイソタイプ対照による細胞株の免疫染色によって決定した。
図12Eは、CD47発現細胞HT1080へのDSP216の結合を示す。細胞株へのヘテロダイマーの結合は、インキュベーション後、LILRB2抗体を用いたそのLILRB2ドメインの免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。LILRB2に対して陽性の細胞のパーセンテージを示し、これを使用して、GraphPad Prismソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
図12Fは、HT1080-HLA-G細胞株に対するヘテロダイマーDSP216V1を含有する上清の結合を示す。細胞株へのヘテロダイマーの結合は、抗IgG4抗体を用いたIgG4骨格の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。MFI値を示し、これを使用して、GraphPad Prismソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
【
図13】
図13は、フローサイトメトリー分析で決定される、本明細書において「DSP402」(配列番号24及び3)と称されるSIGLEC10-PD1ヘテロダイマーの、DLD1 WT及びPDL1過剰発現細胞株への結合を示す。DSP402と共に細胞をインキュベートした後、DLD1 PDL1過剰発現細胞株に対するヘテロダイマーの結合は、抗PD1抗体を使用したそのPD1ドメインの免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。DLD-1 WT細胞は、結合アッセイのための陰性細胞対照として使用した。MFI値を示し、これを使用して、FlowJoソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
【
図14-1】
図14A~Gは、本明細書において「DSP502」(配列番号9及び3)と称されるTIGIT-PD1ヘテロダイマーの、PVR及びPDL1を発現する細胞に対する結合を示す。
図14A~Cは、DLD-1 WT(
図14A)、DLD-1 PDL1(
図14B)及びHT1080(
図14C)細胞株におけるPVRの発現を示す。PVRの細胞表面発現は、APC標識抗PVR抗体による細胞株の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。MFI値を示した。
図14Dは、HT1080細胞におけるPDL1の発現を示す。PDL1の表面発現レベルは、APC標識抗PDL1抗体又はアイソタイプ対照による細胞株の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。
図14E~Fは、DLD1 PDL1(
図14E)又はHT1080(
図14F)細胞に対するDSP502の結合を示す。細胞株へのヘテロダイマーの結合は、インキュベーション後、抗ヒトIgG1抗体を用いたそのIgG1-Fcドメインの免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。DSP502の各ドメインに対する結合の特異性は、PVR又はPD-L1に対する遮断抗体と共に細胞をインキュベートすることによって試験した。
図14Gは、PVRを発現し、且つPD1を発現しないDLD-1 WT細胞への結合によって示される、本明細書において「DSP502V1」(配列番号13及び7)、「DSP502V2」(配列番号31及び7)、「DSP502V3」(配列番号33及び7)と称されるTIGIT-PD1ヘテロダイマーのPVRへの特異的結合を示す。ヘテロダイマーの結合は、抗ヒトIgG4抗体を用いたそのIgG4-Fcドメインの免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。MFI値を示し、これを使用して、FlowJoソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
【
図15】
図15は、製造したいくつかのヘテロダイマー(以下の表1の記述及び配列を参照されたい)のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)分析を示す。図は、還元(R)及び/又は非還元(NR)条件下で分離された、表示したヘテロダイマーをコードするプラスミドをトランスフェクトしたExpi293F細胞の粗(未精製)5日目上清サンプルのSDS-PAGE画像を提示する。
【
図16-1】
図16A~Fは、HT1080-WT細胞と比較して、HLA-G(HT1080-HLA-G)を過剰発現する細胞に対する、本明細書において「DSP216」(配列番号1及び11、
図16A)、「DSP216V1」(配列番号5及び15、
図16B)、「DSP216V3」(配列番号138及び11、
図16C)、「DSP216V4」(配列番号140及び15、
図16D)、「DSP216V5」(配列番号142及び150、
図16E)又は「DSP216V6」(配列番号144及び150、
図16F)と称されるSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーの結合を示す。細胞株へのヘテロダイマーの結合は、表示されるように、遮断抗体の有無にかかわらずにインキュベートした後、APC結合抗ヒト-IgG1抗体を用いたIgG骨格の免疫染色又はDSP216V1及びDSP216V4に対する抗SIRPαを用いたSIRPαドメインの免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。GMFI値を示し、これを使用して、GraphPad Prismソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
【
図17-1】
図17A~Fは、CD47及びHLA-Gの両方を発現するJEG-3細胞に対する、SIRPα-LILRB2ヘテロダイマーDSP216(配列番号1及び11、
図17C)、DSP216V3(配列番号138及び11、
図17D)、DSP216V5(配列番号142及び150、
図17E)又はDSP216V6(配列番号144及び150、
図17F)の結合を示す(
図17A~B)。細胞株へのヘテロダイマーの結合は、表示されるように、遮断抗体の有無にかかわらずにインキュベートした後、抗ヒト-IgG1抗体を用いたIgG骨格の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。GMFI値を示し、これを使用して、GraphPad Prismソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
【
図18-1】
図18A~Dは、プレート結合(PB)組換えヒトCD47に対するSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーDSP216(配列番号1及び11、
図18A)、DSP216V1(配列番号5及び15、
図18B)、DSP216V3(配列番号138及び11、
図18C)及びDSP216V4(配列番号140及び15、
図18D)の結合を示す。CD47でプレコートした96ウェルプレートにおいて、ヘテロダイマーを含有する上清をインキュベートした。抗ヒトIgG1-又はIgG4-HRP抗体と共にインキュベートし、620nmを参照波長として450nmでプレートリーダー(Thermo Scientific社製のMultiscan FC)を使用し、標準的なELISAプロトコルに従い、TMB基質を用いて検出することによって結合を検出した。O.D.値を使用して、GraphPad Prismソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
【
図18-2】
図18E~Hは、プレート結合(PB)組換えヒトHLA-Gに対するSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーDSP216(配列番号1及び11、
図18E)、DSP216V1(配列番号5及び15、
図18F)、DSP216V3(配列番号138及び11、
図18G)及びDSP216V4(配列番号140及び15、
図18H)の結合を示す。HLA-Gでプレコートした96ウェルプレートにおいて、ヘテロダイマーを含有する上清をインキュベートした。抗ヒトIgG1-又はIgG4-HRP抗体と共にインキュベートし、620nmを参照波長として450nmでプレートリーダー(Thermo Scientific社製のMultiscan FC)を使用し、標準的なELISAプロトコルに従い、TMB基質を用いて検出することによって結合を検出した。O.D.値を使用して、GraphPad Prismソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
【
図19-1】
図19A~Iは、フローサイトメトリー分析で決定される、PDL1及び/又はPVRを発現する細胞に対するTIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502(配列番号9及び3)及び本明細書において「DSP502V4」(配列番号146及び148)と称されるヘテロダイマーの結合を示す。示したMFI値を使用して、FlowJoソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
図19Aは、DSP502のK562PD-L1細胞への結合を示し、
図19Bは、DSP502のK562PD-L1/PVR細胞への結合を示し、
図19Cは、DSP502V4のK562PD-L1細胞への結合を示し、
図19Dは、DSP502V4のK562PD-L1/PVR細胞への結合を示し、
図19Gは、DSP502のK562PVR細胞への結合を示し、及び
図19Hは、DSP502V4のK562PVR細胞への結合を示す。
図19E、19F及び19Iは、K562PD-L1、K562PVR及びK562PD-L1/PVR細胞において、表示されるようなPDL1又はPVRの発現を示すヒストグラムである。PDL1及びPVRの表面発現レベルは、表示されるように、蛍光標識抗PDL1又は抗PVR抗体による細胞の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。
【
図20】
図20Aは、表示されるように、遮断抗体の有無にかかわらずにインキュベートした後、フローサイトメトリー分析で決定される、PVRを発現するSKOV3細胞に対するTIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502(配列番号9及び3)の結合を示す。示したMFI値を使用して、FlowJoソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
図20Bは、SKOV3細胞におけるPVRの発現を示すヒストグラムである。PVRの表面発現レベルは、蛍光標識抗PVR抗体による細胞の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。
【
図21】
図21Aは、表示されるように、遮断抗体の有無にかかわらずにインキュベートした後、フローサイトメトリー分析で決定される、マウスPDL1及びPVRを発現するRenca細胞に対するTIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502(配列番号9及び3)の結合を示す。示したMFI値を使用して、FlowJoソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
図21Bは、Renca細胞におけるPDL-1及びPVRの発現を示すヒストグラムを示す。PDL1及びPVRの表面発現レベルは、表示されるように、蛍光標識抗PDL1又は抗PVR抗体による細胞の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。
【
図22】
図22Aは、フローサイトメトリー分析で決定される、マウス細胞株AB12に対するTIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502(配列番号9及び3)の結合を示す。示したMFI値を使用して、FlowJoソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
図22Bは、AB12細胞におけるPDL1及びPVRの表面発現レベルを示すヒストグラムである。PDL1及びPVRの表面発現レベルは、表示されるように蛍光標識抗PDL1又は抗PVR抗体による細胞の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。
【
図23】
図23Aは、表示されるように、遮断抗体の有無にかかわらずにインキュベートした後、フローサイトメトリー分析で決定される、Jurkat NFAT-CD16細胞に対するTIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502(配列番号9及び3)の結合を示す。示したMFI値を使用して、FlowJoソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
図23Bは、Jurkat NFAT-CD16細胞におけるCD16の発現を示すヒストグラムである。CD16の表面発現レベルは、表示されるように、蛍光標識抗CD16抗体による細胞の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定した。
【
図24】
図24は、種々の濃度のDSP502(配列番号9及び3)の存在下におけるK562-WT細胞又はPDL1及びPVR過剰発現K562細胞との共培養後のJurkat NFAT-CD16細胞からのルシフェラーゼ分泌レベルを示す。ルシフェラーゼ分泌レベルは、ルシフェラーゼと添加基質(QUANTI-Luc)との相互作用によって生じる発光シグナルとして測定した。
【
図25-1】
図25Aは、DSP502(配列番号9及び3)のTIGIT及びPD1ドメインの、その対応物であるリガンド/受容体に対する同時結合を示す。
図25Aは、プレート結合PDL1への結合を示し、続いてヒトCD155(PVR)-マウスIgG2a Fcとのインキュベーションを行った。540nmを参照波長として450nmでプレートリーダー(Thermo Scientific社製のMultiscan FC)を使用し、標準的なELISAプロトコルに従い、ストレプトアビジンHRPの後にTMB基質を添加することによって検出を行った。
図25B~Dは、種々の濃度のTIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502(配列番号9及び3)の存在下におけるNK細胞及びK562PVR/PD-L1細胞のダブレット形成を示す。
図25Bは、蛍光標識抗CD16抗体による細胞の免疫染色と、その後のフローサイトメトリー分析とによって決定される、NK細胞におけるCD16の発現レベルを示すヒストグラムである。
図25Cは、表示される濃度のDSP502の存在下でのダブレット形成を示す。
図25Dは、遮断剤抗体(表示されるように、Fc遮断、PVR遮断又はPD-L1遮断)と共にインキュベートした後、表示される濃度のDSP502の存在下でのダブレット形成を示す。Q1(各パネルの左上4分の1)は、K562PVR/PD-L1 CFSE標識細胞(Y軸の陽性細胞)を表し、Q3(各パネルの右下4分の1)は、NK CPD標識細胞(X軸の陽性細胞)を表し、及びQ2(各パネルの右上4分の1)は、NK-K562PVR/PD-L1細胞のダブレットをダブレットのパーセンテージと共に表す。
【
図26】
図26は、ビヒクル対照と比較した腫瘍体積の減少によって明らかである、ヒト化NSGマウスのA549-NSCLC異種移植モデルにおけるTIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502(配列番号9及び3)のin-vivo抗腫瘍効果を示す。各実験群でn=5。
【
図27】
図27は、ビヒクル対照と比較した生存期間の延長によって明らかである、AB12中皮腫腫瘍を有するマウスにおけるTIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502(配列番号9及び3)のin-vivo抗腫瘍効果を示す。各実験群でn=5。
【
図28】
図28は、顆粒球による癌細胞の食作用に対するSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーDSP216(配列番号1及び11、
図16A)の効果を示す。HT1080又はHT1080-HLA-G細胞を標識し、0、1、2又は5μg/mLのDSP216と共にプレインキュベートし、次に顆粒球と1:1で共培養し、フローサイトメトリーで分析した。3人のドナーから採取した顆粒球による食作用のパーセンテージを示した。
【
図29】
図29Aは、TIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502(配列番号9及び3)の細胞傷害性効果を示す。DSP502の存在下、表示したK562細胞を表示した比率でNK細胞と共培養した後の、死細胞のパーセンテージを示す。バーの上のアスタリスクは、未処理の共培養物に対する統計的有意性を表す。
図29Bは、表示したK562細胞との共培養後、NK細胞からのグランザイムBの分泌に対するTIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502(配列番号9及び3)の効果を示す。バーの上のアスタリスクは、未処理の共培養物に対する統計的有意性を表す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、I型膜タンパク質ヘテロダイマー及びその使用方法に関する。
【0041】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の用途が必ずしも以下の説明に示される詳細又は実施例によって例示される詳細に限定されるとは限らないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態又は様々な方法で実践若しくは実行することが可能である。
【0042】
癌の免疫療法は、免疫系の特定の成分を刺激するか、又は癌細胞により生成される免疫応答を抑制するシグナルを相殺することにより、腫瘍に対する免疫応答を増強することを目標とする。
【0043】
本発明の特定の実施形態を実行する間、本発明者らは、ここで、SIRPα、PD1、TIGIT、LILRB2及びSIGLEC10からなる群から選択される2種のI型膜タンパク質の細胞外部分を含むヘテロダイマーを作製した(例えば、以下の表1を参照されたい)。
【0044】
したがって、本発明の一態様によると、SIRPα、PD1、TIGIT、LILRB2及びSIGLEC10からなる群から選択される2種のポリペプチドを含むヘテロダイマーであって、前記2種のポリペプチドのそれぞれがその天然の結合相手に結合することができ、前記ヘテロダイマーが、その天然の結合相手に結合することができるII型膜タンパク質のアミノ酸配列を含まない、ヘテロダイマーが提供される。
【0045】
本明細書で使用する場合、「ヘテロダイマー」という用語は、2つの異なるタンパク質(本明細書においてモノマーと称する)の人工的な結合によって形成される天然に存在しないダイマータンパク質を指す。
【0046】
ダイマー化、特にヘテロダイマー化を決定する方法は、当技術分野でよく知られており、NATIVE-PAGE、SEC-HPLC 2Dゲル、ゲル濾過、SEC-MALS、分析超遠心分離(AUC)質量分析(MS)、キャピラリーゲル電気泳動(CGE)が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーのモノマーは、共有結合されていない。
【0048】
他の特定の実施形態によると、ヘテロダイマーのモノマーは、共有結合されている。
【0049】
他の特定の実施形態によると、ヘテロダイマーのモノマーは、ジスルフィド結合で結合されている。
【0050】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーのモノマーは、複数のジスルフィド結合で結合されている。
【0051】
本明細書で使用する場合、「SIRPαポリペプチド」、「PD1ポリペプチド」、「TIGITポリペプチド」、「LILRB2ポリペプチド」及び「SIGLEC10ポリペプチド」という用語は、以下にさらに記載されるように、それぞれが少なくともその天然の結合相手に結合することができるSIRPα、PD1、TIGIT、LILRB2及びSIGLEC10のアミノ酸配列又はその機能的ホモログを指す。
【0052】
本明細書で使用する場合、「機能的ホモログ」という表現は、少なくともその天然の結合相手に結合する全長タンパク質の活性を維持する保存的及び非保存的アミノ酸置換を含む断片、ホモログ(天然に存在するか若しくは合成的に/組換えで産生されたもの)及び/又はアミノ酸配列を指す。
【0053】
本明細書で使用する場合、「その天然の結合相手」という表現は、記載されるポリペプチドの本来のリガンド又は受容体を指す。
【0054】
結合を試験するためのアッセイは、当技術分野でよく知られており、フローサイトメトリー、BiaCore、バイオレイヤー干渉法Blitz(登録商標)アッセイ、HPLCが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、PD1ポリペプチドを含む。
【0056】
本明細書で使用する場合、「PD1(プログラム死1、CD279としても知られている)」という用語は、PDCD1遺伝子(Gene ID 5133)によりコードされるポリペプチドを指す。特定の実施形態によると、PD1は、ヒトPD1である。特定の実施形態によると、PD1は、以下のGenBank番号NP_005009で提供されるようなヒトPD1を指す。
【0057】
これまで、PD1に対する2つのリガンド、PDL1及びPDL2(B7-DCとしても知られている)が特定されている。特定の実施形態によると、PDL1タンパク質は、以下のGenBank番号NP_001254635及びNP_054862で提供されるようなヒトタンパク質を指す。特定の実施形態によると、PDL2タンパク質は、以下のGenBank番号NP_079515で提供されるようなヒトタンパク質を指す。
【0058】
特定の実施形態によると、PD1アミノ酸配列は、配列番号37を含む。
【0059】
特定の実施形態によると、PD1アミノ酸配列は、配列番号37からなる。
【0060】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、SPR分析で決定したとき、1nM~100μM、10nM~10μM、100nM~100μM、200nM~10μMのKdでPD-L1に結合し、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0061】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、SPR分析で決定したとき、約270nMのKdでPDL1に結合する。
【0062】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、SPR分析で決定したとき、約8~9μMのKdでPDL1に結合する。
【0063】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、PD1の細胞外ドメイン又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0064】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号41、42若しくは43又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0065】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号41、42又は43を含む。
【0066】
特定の実施形態によると、PD1アミノ酸配列は、配列番号41、42又は43からなる。
【0067】
「PD1ポリペプチド」という用語は、所望の活性(即ちPD-L1及び/又はPD-L2への結合)を示す機能的ホモログも包含する。このようなホモログは、例えば、ポリペプチド配列番号37、41、42若しくは43又は本明細書に開示される任意の他のPD1アミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一又は相同であり得るか、或いはそれをコードするポリヌクレオチド配列(以下でさらに記載される)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一であり得る。
【0068】
本明細書で使用する場合、「同一性」又は「配列同一性」は、包括的な同一性、即ち本明細書に開示されるアミノ酸又は核酸配列全体にわたる同一性を指し、その一部分にわたるものではない。
【0069】
配列同一性又は相同性は、Blast、ClustalW及びMUSCLEなど、任意のタンパク質又は核酸配列アライメントアルゴリズムを用いて決定することができる。
【0070】
ホモログは、以下でさらに記載されるように、オルソログ、欠失、挿入又は置換バリアント(アミノ酸置換を含む)も指すことができる。
【0071】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、保存的及び非保存的アミノ酸置換を含み得る。このような置換は、当技術分野で知られており、例えばMaute et al. PNAS, 2015 Nov 24;112(47): E6506-14;Ju Yeon et al. Nature Communications 2016 volume 7, Article number: 13354 (DOI: 10.1038/ncomms13354);Zack KM et al. Structure. 2015 23(12): 2341-2348 (DOI:10.1016/j.str.2015.09.010)及び米国特許出願公開第2016/0039903号明細書に開示されており、これらの内容は、参照によって本明細書に完全に援用される。
【0072】
特定の実施形態によると、変異は、配列番号37と比較して、PD1ポリペプチドのPDL1に対する親和性の増大をもたらす。
【0073】
特定の実施形態によると、1つ又は複数のアミノ酸変異は、配列番号42に記載されるPD1アミノ酸配列に対応して、V39、L40、N41、Y43、R44、M45、S48、N49、Q50、T51、D52、K53、A56、Q63、G65、Q66、V72、H82、M83、R90、Y96、L97、A100、S102、L103、A104、P105、K106及びA107から選択されるアミノ酸残基に位置する。特定の実施形態によると、1つ又は複数のアミノ酸変異は、配列番号42に記載されるPD1アミノ酸配列に対応して、V39、L40、N41、Y43、R44、M45、S48、N49、Q50、T51、D52、K53、A56、Q63、G65、Q66、C68、V72、H82、M83、R90、Y96、L97、A100、S102、L103、A104、P105、K106及びA107から選択されるアミノ酸残基に位置する。
【0074】
特定の実施形態によると、1つ又は複数のアミノ酸変化は、配列番号42に記載されるPD1アミノ酸配列に対応して、(1)V39H又はV39R、(2)L40V又はL40I、(3)N41I又はN41V、(4)Y43F又はY43H、(5)R44Y又はR44L、(6)M45Q、M45E、M45L又はM45D、(7)S48D、S48L、S48N、S48G又はS48V、(8)N49C、N49G、N49Y又はN49S、(9)Q50K、Q50E又はQ50H、(10)T51V、T51L又はT51A、(11)D52F、D52R、D52Y又はD52V、(12)K53T又はK53L、(13)A56S又はA56L、(14)Q63T、Q63I、Q63E、Q63L又はQ63P、(15)G65N、G65R、G65I、G65L、G65F又はG65V、(16)Q66P、(17)V72I、(18)H82Q、(19)M83L又はM83F、(20)R90K、(21)Y96F、(22)L97Y、L97V又はL97I、(23)A100I又はA100V、(24)S102T又はS102A、(25)L103I、L103Y又はL103F、(26)A104S、A104H又はA104D、(27)P105A、(28)K106G、K106E、K106I、K106V、K106R又はK106T、及び(29)A107P、A107I又はA107Vからなる群から選択される。
【0075】
特定の実施形態によると、1つ又は複数のアミノ酸変化は、配列番号42に記載されるPD1アミノ酸配列に対応して、(1)V39H又はV39R、(2)L40V又はL40I、(3)N41I又はN41V、(4)Y43F又はY43H、(5)R44Y又はR44L、(6)M45Q、M45E、M45L又はM45D、(7)S48D、S48L、S48N、S48G又はS48V、(8)N49C、N49G、N49Y又はN49S、(9)Q50K、Q50E又はQ50H、(10)T51V、T51L又はT51A、(11)D52F、D52R、D52Y又はD52V、(12)K53T又はK53L、(13)A56S又はA56L、(14)Q63T、Q63I、Q63E、Q63L又はQ63P、(15)G65N、G65R、G65I、G65L、G65F又はG65V、(16)Q66P、(17)C68S(18)、V72I、(19)H82Q、(20)M83L又はM83F、(21)R90K、(22)Y96F、(23)L97Y、L97V又はL97I、(24)A100I又はA100V、(25)S102T又はS102A、(26)L103I、L103Y又はL103F、(27)A104S、A104H又はA104D、(28)P105A、(29)K106G、K106E、K106I、K106V、K106R又はK106T、及び(30)A107P、A107I又はA107Vからなる群から選択される。
【0076】
特定の実施形態によると、アミノ酸変異は、配列番号37に記載されるPD1アミノ酸配列に対応するアミノ酸残基C93(例えば、配列番号42に記載されるPD1アミノ酸配列に対応するアミノ酸残基C68に相当する)に位置する。
【0077】
したがって、特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号39又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0078】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号39を含む。
【0079】
特定の実施形態によると、PD1アミノ酸配列は、配列番号39からなる。
【0080】
本明細書で使用する場合、「配列番号37に記載されるPD1アミノ酸配列に対応する」、「配列番号37に対応する」、「配列番号42に記載されるPD1アミノ酸配列に対応する」又は「配列番号42に対応する」という表現は、任意の他のPD1アミノ酸配列に関連して、対応するアミノ酸残基を含むことが意図される。
【0081】
保存的アミノ酸置換及び非保存的アミノ酸置換に関するさらなる説明は、上記及び以下においてさらに提供される。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態のPD1ポリペプチドは、ポリペプチド配列番号39、41、42、43、45、47、49、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79若しくは81と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一若しくは相同であるか、又はそれをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であり、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0083】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号43に対応するアミノ酸セグメントP1~L5及び/又はF146~V150のいずれも含まない。
【0084】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号43に対応するアミノ酸残基P1~L5及び/又はF146~V150のいずれも含まない。
【0085】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、100~288アミノ酸、100~200アミノ酸、120~180アミノ酸、120~160、130~170アミノ酸、130~160、130~150、140~160アミノ酸、145~155アミノ酸、123~166アミノ酸、138~145アミノ酸、123~148アミノ酸、126~148アミノ酸、123~140アミノ酸、126~140アミノ酸、127~140アミノ酸、130~140アミノ酸を含み、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0086】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号39、41、42、43、45、47、49、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79及び81からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0087】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号39、41、42、43、45、47、49、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79及び81からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0088】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号49又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0089】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号49を含む。
【0090】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドは、配列番号49からなる。
【0091】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号38、40、44、46、48、50、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80又は82に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有し、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0092】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号38、40、44、46、48、50、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80及び82からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0093】
特定の実施形態によると、PD1ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号38、40、44、46、48、50、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80及び82からなる群から選択される核酸配列からなる。
【0094】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIRPαポリペプチドを含む。
【0095】
本明細書で使用する場合、「SIRPα(シグナル調節タンパク質アルファ、CD172aとしても知られている)」という用語は、SIRPA遺伝子(Gene ID 140885)によりコードされるポリペプチドを指す。特定の実施形態によると、SIRPαは、ヒトSIRPαである。特定の実施形態によると、SIRPαは、以下のGenBank番号NP_001035111、NP_001035112、NP_001317657又はNP_542970で提供されるようなヒトSIRPαを指す。
【0096】
特定の実施形態によると、SIRPαアミノ酸配列は、配列番号83を含む。
【0097】
特定の実施形態によると、SIRPαアミノ酸配列は、配列番号83からなる。
【0098】
SIRPαの既知の結合相手は、CD47である。特定の実施形態によると、CD47タンパク質は、以下のGenBank番号NP_001768又はNP_942088で提供されるようなヒトタンパク質を指す。
【0099】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、SPR分析で決定したとき、0.1~100μM、0.1~10μM、1~10μM、0.1~5μM又は1~2μMのKdでCD47に結合し、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0100】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、前記SIRPαの細胞外ドメイン又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0101】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0102】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85を含む。
【0103】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85からなる。
【0104】
「SIRPαポリペプチド」という用語は、所望の活性(即ちCD47への結合)を示す機能的ホモログも包含する。このようなホモログは、例えば、ポリペプチド配列番号83若しくは85又は本明細書に開示される任意の他のSIRPαアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一又は相同であり得るか、或いはそれをコードするポリヌクレオチド配列(以下でさらに記載される)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一であり得る。
【0105】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、保存的及び非保存的アミノ酸置換を含み得る。このような置換は、当技術分野で知られており、例えばWeiskopf K et al. Science. (2013); 341(6141):88-91に開示されており、その内容は、参照によって本明細書に完全に援用される。
【0106】
特定の実施形態によると、1つ又は複数のアミノ酸変異は、配列番号85に記載されるSIRPαアミノ酸配列に対応して、L4、V6、A21、A27、I31、E47、K53、E54、H56、V63、L66、K68、V92及びF96から選択されるアミノ酸残基に位置する。
【0107】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85に記載されるSIRPαアミノ酸配列に対応して、L4、A27、E47及びV92からなる群から選択されるアミノ酸残基における変異を含む。
【0108】
特定の実施形態によると、1つ又は複数のアミノ酸変異は、配列番号85に記載されるSIRPαアミノ酸配列に対応して、L4V又はL4I、V6I又はV6L、A21V、A27I又はA27L、I31F又はI31T、E47V又はE47L、K53R、E54Q、H56P又はH56R、V63I、L66T又はL66G、K68R、V92I及びF94L又はF94Vからなる群から選択される。
【0109】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85に記載されるSIRPαアミノ酸配列に対応して、L4I、A27I、E47V及びV92Iからなる群から選択される変異を含む。
【0110】
本明細書で使用する場合、「配列番号85に記載されるSIRPαアミノ酸配列に対応する」又は「配列番号85に対応する」という表現は、任意の他のSIRPαアミノ酸配列に関連して、対応するアミノ酸残基を含むことが意図される。
【0111】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号89又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0112】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号89を含む。
【0113】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号89からなる。
【0114】
保存的アミノ酸置換及び非保存的アミノ酸置換に関するさらなる説明は、上記及び以下においてさらに提供される。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態のSIRPαポリペプチドは、ポリペプチド配列番号85、87、89、91若しくは93と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一若しくは相同であるか、又はそれをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であり、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0116】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85に対応するアミノ酸セグメントK117~Y343を含まない。
【0117】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85に対応するアミノ酸残基K117~Y343のいずれも含まない。
【0118】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85に対応するアミノ酸セグメントP118~Y343を含まない。
【0119】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85に対応するアミノ酸残基P118~Y343のいずれも含まない。
【0120】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、100~504、100~500アミノ酸、150~450アミノ酸、200~400アミノ酸、250~400アミノ酸、300~400アミノ酸、320~420アミノ酸、340~350アミノ酸、300~400アミノ酸、340~450アミノ酸、100~200アミノ酸、100~150アミノ酸、100~125アミノ酸、100~120アミノ酸、100~119アミノ酸、105~119アミノ酸、110~119アミノ酸、115~119アミノ酸、105~118アミノ酸、110~118アミノ酸、115~118アミノ酸、105~117アミノ酸、110~117アミノ酸、115~117アミノ酸を含み、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0121】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85、87、89、91及び93からなる群から選択されるアミノ酸配列又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0122】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85、87、89、91及び93からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0123】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドは、配列番号85、87、89、91及び93からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。
【0124】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号86、88、90、92又は94に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有し、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0125】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号86、88、90、92及び94からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0126】
特定の実施形態によると、SIRPαポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号86、88、90、92及び94からなる群から選択される核酸配列からなる。
【0127】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、TIGITポリペプチドを含む。
【0128】
本明細書で使用する場合、「TIGIT(Igドメイン及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)」という用語は、TIGIT遺伝子(Gene ID 201633)によりコードされるポリペプチドを指す。特定の実施形態によると、TIGITは、ヒトTIGITである。特定の実施形態によると、TIGITは、以下のGenBank番号NP_776160又はXP_024309156で提供されるようなヒトTIGITを指す。
【0129】
特定の実施形態によると、TIGITアミノ酸配列は、配列番号106を含む。
【0130】
特定の実施形態によると、TIGITアミノ酸配列は、配列番号106からなる。
【0131】
TIGITの既知の結合相手は、CD155(PVR)である。特定の実施形態によると、CD155タンパク質は、以下のGenBank番号NP_001129240、NP_001129241、NP_001129242、NP_006496で提供されるようなヒトタンパク質を指す。
【0132】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、SPR分析で決定したとき、0.01~100μM、0.1~100μM、0.1~10μM又は0.1~5μMのKdでCD155に結合し、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0133】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、TIGITの細胞外ドメイン又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0134】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、配列番号107、113若しくは115又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0135】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、配列番号107、113又は115を含む。
【0136】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、配列番号107、113又は115からなる。
【0137】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、配列番号113を含む。
【0138】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、配列番号113からなる。
【0139】
「TIGITポリペプチド」という用語は、所望の活性(即ちCD155への結合)を示す機能的ホモログも包含する。このようなホモログは、例えば、ポリペプチド配列番号106、107、113若しくは115又は本明細書に開示される任意の他のTIGTアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一又は相同であり得るか、或いはそれをコードするポリヌクレオチド配列(以下でさらに記載される)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一であり得る。
【0140】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、保存的及び非保存的アミノ酸置換を含み得る。
【0141】
特定の実施形態によると、1つ又は複数のアミノ酸変異は、配列番号106に記載されるTIGITアミノ酸配列に対応して、I42及びC69から選択されるアミノ酸残基に位置する。
【0142】
特定の実施形態によると、1つ又は複数のアミノ酸変異は、配列番号106位記載されるTIGITアミノ酸配列に対応して、I42A及びC69Sからなる群から選択される。
【0143】
本明細書で使用する場合、「配列番号106に記載されるTIGITアミノ酸配列に対応する」又は「配列番号106に対応する」という表現は、任意の他のTIGITアミノ酸配列に関連して、対応するアミノ酸残基を含むことが意図される。
【0144】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、配列番号109若しくは111又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0145】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、配列番号109又は111を含む。
【0146】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、配列番号109又は111からなる。
【0147】
保存的アミノ酸置換及び非保存的アミノ酸置換に関するさらなる説明は、上記及び以下においてさらに提供される。
【0148】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドは、100~244アミノ酸、100~200アミノ酸、100~150アミノ酸、120~140アミノ酸を含み、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0149】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号108、110、112又は114に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有する。
【0150】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号108、110、112及び114からなる群から選択される核酸配列を含む。
【0151】
特定の実施形態によると、TIGITポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号108、110、112及び114からなる群から選択される核酸配列からなる。
【0152】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、LILRB2ポリペプチドを含む。
【0153】
本明細書で使用する場合、「LILRB2(白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2)」という用語は、LILRB2遺伝子(Gene ID 10288)によりコードされるポリペプチドを指す。特定の実施形態によると、LILRB2は、ヒトLILRB2である。特定の実施形態によると、LILRB2は、以下のGenBank番号NP_001074447、NP_001265332、NP_001265333、NP_001265334、NP_001265335で提供されるようなヒトLILRB2を指す。
【0154】
LILRB2の既知の結合相手は、主要組織適合性分子(MHC、例えばHLA-G)である。特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、SPR分析で決定したとき、0.1nM~100μM、0.1nM~10μM、1nM~1μM、1~100nM又は1~10nMのKdでMHC(例えば、HLA-G)に結合し、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0155】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、前記LILRB2の細胞外ドメイン又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0156】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、配列番号95又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0157】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、配列番号95を含む。
【0158】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、配列番号95からなる。
【0159】
LILRB2の細胞外ドメインは、D1~D4として知られている4つのIg様ドメインを含む。
【0160】
したがって、特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも1つのIg様ドメインを含む。
【0161】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、少なくとも2つのIg様ドメイン、少なくとも3つのIg様ドメイン又は4つのIg様ドメインを含む。
【0162】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、LILRB2のドメインD1及びD2、LILRB2のドメインD1、D2及びD3、LILRB2のドメインD1、D2及びD4又はLILRB2のドメインD1、D2、D3及びD4を含む。
【0163】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、配列番号96若しくは98又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0164】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、配列番号96又は98を含む。
【0165】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、配列番号96又は98からなる。
【0166】
「LILRB2ポリペプチド」という用語は、所望の活性(即ちMHC、例えばHLA-Gへの結合)を示す機能的ホモログも包含する。このようなホモログは、例えば、ポリペプチド配列番号95、96若しくは98又は本明細書に開示される任意の他のLILRB2アミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一又は相同であり得るか、或いはそれをコードするポリヌクレオチド配列(以下でさらに記載される)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一であり得る。
【0167】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、保存的及び非保存的アミノ酸置換を含み得る。保存的アミノ酸置換及び非保存的アミノ酸置換に関するさらなる説明は、上記及び以下においてさらに提供される。
【0168】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、100~597アミノ酸、100~500アミノ酸、100~400アミノ酸、150~400アミノ酸、300~400アミノ酸、350~400アミノ酸、150~250アミノ酸を含み、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0169】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、配列番号96を含む。
【0170】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドは、配列番号96からなる。
【0171】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号97又は99に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有する。
【0172】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号97を含む。
【0173】
特定の実施形態によると、LILRB2ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号97からなる。
【0174】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIGLEC10ポリペプチドを含む。
【0175】
本明細書で使用する場合、「SIGLEC-10(シアル酸結合Ig様レクチン10)」という用語は、SIGLEC10遺伝子(Gene ID 89790)によりコードされるポリペプチドを指す。特定の実施形態によると、SIGLEC10は、以下のGenBank番号NP_001164627、NP_001164628、NP_001164629、NP_001164630、NP_001164632で提供されるようなヒトSIGLEC10を指す。
【0176】
特定の実施形態によると、SIGLEC10アミノ酸配列は、配列番号100を含む。
【0177】
特定の実施形態によると、SIGLECアミノ酸配列は、配列番号100からなる。
【0178】
SIGLC10の既知の結合相手は、CD24及び/又はCD52上で発現されるシアル酸である。特定の実施形態によると、SIGLEC10ポリペプチドは、SPR分析で決定したとき、1nM~100μM、0.01~100μM、0.01~10μM、0.1~10μM、0.1~5μM又は0.1~1μMのKdでCD24又はCD52に結合し、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0179】
特定の実施形態によると、SIGLEC-10ポリペプチドは、SIGLEC10の細胞外ドメイン又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0180】
特定の実施形態によると、SIGLEC10ポリペプチドは、少なくとも1つのIg様ドメインを含む。
【0181】
特定の実施形態によると、SIGLEC10ポリペプチドは、少なくとも2つのIg様ドメインを含む。
【0182】
特定の実施形態によると、SIGLEC10ポリペプチドは、配列番号105又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0183】
特定の実施形態によると、SIGLEC10ポリペプチドは、配列番号105を含む。
【0184】
特定の実施形態によると、SIGLEC10アミノ酸配列は、配列番号105からなる。
【0185】
「SIGLEC10ポリペプチド」という用語は、所望の活性(即ちCD24及び/又はCD52上で発現されるシアル酸への結合)を示す機能的ホモログも包含する。このようなホモログは、例えば、ポリペプチド配列番号100若しくは105と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一若しくは相同であり得るか、又はそれをコードするポリヌクレオチド配列(以下でさらに記載される)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であり得る。
【0186】
特定の実施形態によると、SIGLEC-10ポリペプチドは、保存的及び非保存的アミノ酸置換を含み得る。
【0187】
特定の実施形態によると、1つの変異は、配列番号100に記載されるSIGLEC10アミノ酸配列に対応するアミノ酸残基C36に位置する。
【0188】
特定の実施形態によると、1つのアミノ酸変異は、配列番号100に記載されるSIGLEC10アミノ酸配列に対応するC36Sである。
【0189】
本明細書で使用する場合、「配列番号100に記載されるSIGLEC10アミノ酸配列に対応する」又は「配列番号100に対応する」という表現は、任意の他のSIGLEC10アミノ酸配列に関連して、対応するアミノ酸残基を含むことが意図される。
【0190】
特定の実施形態によると、SIGLEC10ポリペプチドは、配列番号103又はその機能的ホモログ(例えば、断片)を含む。
【0191】
特定の実施形態によると、SIGLEC10ポリペプチドは、配列番号103を含む。
【0192】
特定の実施形態によると、SIGLEC-10ポリペプチドは、配列番号103からなる。
【0193】
保存的アミノ酸置換及び非保存的アミノ酸置換に関するさらなる説明は、上記及び下記においてさらに提供する。
【0194】
特定の実施形態によると、SIGLEC10アミノ酸配列は、100~639アミノ酸、100~600アミノ酸、100~550アミノ酸、100~300アミノ酸、100~200アミノ酸、100~150アミノ酸を含み、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0195】
特定の実施形態によると、SIGLEC10ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号102又は104に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有する。
【0196】
特定の実施形態によると、SIGLEC10ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号104を含む。
【0197】
特定の実施形態によると、SIGLEC10ポリペプチドをコードする核酸配列は、配列番号104からなる。
【0198】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIRPαポリペプチド及びPD1ポリペプチド、SIRPαポリペプチド及びTIGITポリペプチド、SIRPαポリペプチド及びLILRB2ポリペプチド、SIRPαポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチド、PD1ポリペプチド及びTIGITポリペプチド、PD1ポリペプチド及びLILRB2ポリペプチド、PD1ポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチド、TIGITポリペプチド及びLILRB2ポリペプチド、TIGITポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチド又はLILRB2ポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチドを含み、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0199】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIRPαポリペプチド及びPD1ポリペプチドを含む。
【0200】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号85に記載されるSIRPαポリペプチドと、配列番号49に記載されるPD1ポリペプチドとを含む。
【0201】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIRPαポリペプチド及びLILRB2ポリペプチドを含む。
【0202】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号85に記載されるSIRPαポリペプチドと、配列番号96に記載されるLILRB2ポリペプチドとを含む。
【0203】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号93に記載されるSIRPαポリペプチドと、配列番号96に記載されるLILRB2ポリペプチドとを含む。
【0204】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIRPαポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチドを含む。
【0205】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号85に記載されるSIRPαポリペプチドと、配列番号103に記載されるSIGLEC10ポリペプチドとを含む。
【0206】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、SIRPαポリペプチド及びTIGITポリペプチドを含む。
【0207】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号85に記載されるSIRPαポリペプチドと、配列番号109に記載されるTIGITポリペプチドとを含む。
【0208】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、TIGITポリペプチド及びPD1ポリペプチドを含む。
【0209】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号109、111又は113に記載されるTIGITポリペプチドと、配列番号49に記載されるPD1ポリペプチドとを含む。
【0210】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、TIGITポリペプチド及びLILRB2ポリペプチドを含む。
【0211】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号109に記載されるTIGITポリペプチドと、配列番号96に記載されるLILRB2ポリペプチドとを含む。
【0212】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、TIGITポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチドを含む。
【0213】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号109に記載されるTIGITポリペプチドと、配列番号103に記載されるSIGLEC10ポリペプチドとを含む。
【0214】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、PD1ポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチドを含む。
【0215】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号49に記載されるPD1ポリペプチドと、配列番号103に記載されるSIGLEC10ポリペプチドとを含む。
【0216】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、LILRB2ポリペプチド及びSIGLEC10ポリペプチドを含む。
【0217】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号96に記載されるLILRB2ポリペプチドと、配列番号103に記載されるSIGLEC10ポリペプチドとを含む。
【0218】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、PD1ポリペプチド及びLILRB2ポリペプチドを含む。
【0219】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号49に記載されるPD1ポリペプチドと、配列番号96に記載されるLILRB2ポリペプチドとを含む。
【0220】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、その天然の結合相手に結合することができるII型膜タンパク質のアミノ酸配列を含まない。
【0221】
本明細書で使用する場合、「II型膜タンパク質のアミノ酸配列」という表現は、少なくともその天然の結合相手に結合することができるII型膜タンパク質の連続したアミノ酸配列を指す。特定の実施形態によると、このようなアミノ酸配列は、II型膜タンパク質の細胞外ドメイン又はその機能的断片を含む。
【0222】
本明細書で使用する場合、「II型膜タンパク質」という表現は、C末端細胞外ドメインを有する膜貫通タンパク質を指す。
【0223】
このようなII型膜タンパク質の非限定的な例としては、4-1BBL、FasL、TRAIL、TNF-アルファ、TNF-ベータ、OX40L、CD40L、CD27L、CD30L、RANKL、TWEAK、APRIL、BAFF、LIGHT、VEGI、GITRL、EDAl/2、リンホトキシンアルファ及びリンホトキシンベータが挙げられる。
【0224】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、本明細書に開示される2種のポリペプチド以外に、その天然の結合相手に結合することができるI型膜タンパク質のアミノ酸配列を含まない。
【0225】
本明細書で使用する場合、「I型膜タンパク質のアミノ酸配列」という表現は、少なくとも天然の結合相手に結合することができるI型膜タンパク質の連続したアミノ酸配列を指す。特定の実施形態によると、このようなアミノ酸配列は、I型膜タンパク質の細胞外ドメイン又はその機能的断片を含む。
【0226】
本明細書で使用する場合、「I型膜タンパク質」という表現は、N末端細胞外ドメインを有する膜貫通タンパク質を指す。
【0227】
このようなI型膜タンパク質の非限定的な例としては、LAG3、BTN3A1、CD27、CD80、CD86、ENG、NLGN4X、CD84、CD40、IL-8、IL-10、CD164、LY6G6F、CD28、CTLA4、BTLA、LILRB1、TYROBP、ICOS、VEGFA、CSF1、CSF1R、VEGFB、BMP2、BMP3、GDNF、PDGFC、PDGFD、RAET1E、CD155、CD166、MICA、NRG1、HVEM、DR3、TEK、TGFBR(例えば、TGFBR1)、LY96、CD96、KIT、CD244及びGFERが挙げられる。
【0228】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、本明細書に開示される2種のポリペプチド及び任意選択で、以下でさらに記載されるダイマー化部分(例えば、抗体又はその断片のFcドメイン)以外に、タンパク性のターゲティング、シグナル伝達、免疫調節部分及び/又は治療部分を含まない。
【0229】
このような部分の非限定的な例としては、サイトカイン、リガンド、受容体、免疫調節ポリペプチド及び抗体の結合ドメイン(例えば、ScFv)が挙げられる。
【0230】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、本明細書に記載される2種のポリペプチドと、任意選択で、以下でさらに記載されるダイマー化部分(例えば、抗体又はその断片のFcドメイン)とからなる。
【0231】
他の特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、異種の治療部分に結合するか、又は異種の治療部分を含む。治療部分は、小分子化合物及びポリペプチドを含む任意の分子であり得る。
【0232】
本発明の特定の実施形態と共に使用することができる治療部分の限定的な例としては、細胞傷害性部分、毒性部分、サイトカイン部分、免疫調節部分、ポリペプチド、抗体、薬物、化学物質及び/又は放射性同位体が挙げられる。
【0233】
本発明のいくつかの実施形態によると、治療部分は、本発明のいくつかの実施形態のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、治療部分をコードする核酸配列と翻訳的に融合させることによって結合される。
【0234】
付加的又は代替的に、治療部分は、当業者に知られている任意の結合方法を用いて、本発明のいくつかの実施形態のヘテロダイマーに化学的に結合(カップリング)させることができる。例えば、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸Nヒドロキシスクシンイミドエステル(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナートとも呼ばれる)(「SDPD」)(Sigma社製、Cat.No.P-3415、例えばCumber et al. 1985, Methods of Enzymology 112: 207-224を参照されたい)、グルタルアルデヒド結合手順(例えば、G.T. Hermanson 1996, “Antibody Modification and Conjugation, in Bioconjugate Techniques, Academic Press, San Diegoを参照されたい)又はカルボジイミド結合手順[例えば、J. March, Advanced Organic Chemistry: Reaction’s, Mechanism, and Structure, pp. 349-50 & 372-74 (3d ed.), 1985;B. Neises et al. 1978, Angew Chem., Int. Ed. Engl. 17:522;A. Hassner et al. 1978, Tetrahedron Lett. 4475;E.P. Boden et al. 1986, J. Org. Chem. 50:2394及びL.J. Mathias 1979, Synthesis 561を参照されたい]を用いて、ペプチドを目的の薬剤に結合させることができる。
【0235】
治療部分は、例えば、当技術分野において広く実施されている標準的な化学合成技術[例えば、hypertexttransferprotocol://worldwideweb (dot) chemistry (dot) org/portal/Chemistry)を参照されたい]を用いて、例えばペプチド結合(機能的部分がポリペプチドである場合)又はリンカーペプチド若しくは他の化学部分(有機ポリマーなど)などの介在リンカーエレメントへの共有結合による直接又は間接的な任意の好適な化学結合を用いて、本発明のいくつかの実施形態のヘテロダイマーに結合させることができる。キメラペプチドは、ペプチドのカルボキシ(C)若しくはアミノ(N)末端における結合又は直鎖状、分枝状若しくは環状側鎖などの内部化学基、内部炭素若しくは窒素原子などへの結合によって結合され得る。
【0236】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、検出可能なタグを含む。したがって、特定の実施形態によると、ヘテロダイマー中に含まれるポリペプチドのいずれも検出可能なタグを含み得る。本明細書で使用する場合、一実施形態では、「検出可能なタグ」という用語は、当技術分野で既知の技術を用いて当業者が検出することができる任意の部分を指す。検出可能なタグは、ペプチド配列であり得る。任意選択で、検出可能なタグは、化学薬品又はタンパク質分解などの酵素的手段によって除去可能であり得る。本発明のいくつかの実施形態の検出可能なタグは、ポリペプチド又はヘテロダイマーの精製のために使用することができる。例えば、「検出可能なタグ」という用語は、キチン結合タンパク質(CBP)タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグ、ポリ(His)タグ、FLAGタグ、エピトープタグ、例えばV5タグ、c-mycタグ及びHAタグ並びに蛍光タグ、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)及びシアン蛍光タンパク質(CFP)並びにこれらのタグの誘導体又は当技術分野で知られている任意のタグを含む。「検出可能なタグ」という用語は、「検出可能なマーカー」という用語も含む。
【0237】
特定の実施形態によると、ポリペプチドは、そのN末端に結合した検出可能なタグ(例えば、ポリ(His)タグ)を含む。
【0238】
特定の実施形態によると、ポリペプチドは、そのC末端に結合した検出可能なタグ(例えば、ポリ(His)タグ)を含む。
【0239】
特定の実施形態によると、ポリペプチドのN末端は、検出可能なタグ(例えば、ポリ(His)タグ)を含まない。
【0240】
特定の実施形態によると、ポリペプチドのC末端は、検出可能なタグ(例えば、ポリ(His)タグ)を含まない。
【0241】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、切断可能な部分を含む。したがって、特定の実施形態によると、ヘテロダイマー中に含まれるポリペプチドのいずれも切断可能な部分に融合され得る。したがって、例えば回収を容易にするために、発現されるコード配列は、本発明のいくつかの実施形態のポリペプチドと、融合した切断可能な部分とをコードするように工学的に操作することができる。一実施形態では、ポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィーにより、例えば切断可能な部分に特異的なカラムにおける固定化によって容易に単離されるように設計される。一実施形態では、切断部位は、ポリペプチドと、切断可能な部分との間で工学的に操作され、この部位で融合タンパク質を特異的に切断する適切な酵素又は薬剤による処理により、ペプチドをクロマトグラフィーカラムから放出させることができる[例えば、Booth et al., Immunol. Lett. 19:65-70 (1988)及びGardella et al., J. Biol. Chem. 265:15854-15859 (1990)を参照されたい]。特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、本明細書に開示される2種のポリペプチドに結合されたダイマー化部分を含む。
【0242】
本明細書で使用する場合、「ダイマー化部分」という用語は、ヘテロダイマーを形成するために2種の異なるモノマーを結合することができる部分を指す。このようなダイマー化部分は、当技術分野で知られており、化学部分及びタンパク性部分を含む。
【0243】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、ポリペプチドに直接結合されている。
【0244】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、ポリペプチドに非直接的に結合されている。
【0245】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、ポリペプチドに共有結合されている。
【0246】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、ポリペプチドに共有結合されていない。
【0247】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、ポリペプチドに対して異種である。
【0248】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、少なくとも2種の異なる分子の組成物である。
【0249】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、2種のポリペプチドの少なくとも1つの天然の結合相手を発現する細胞及び/又は2種のポリペプチドの天然の結合相手を発現する細胞に対してヘテロダイマーが結合したとき、免疫応答を活性化することができる。
【0250】
本明細書で使用する場合、「活性化する」という表現は、細胞の増殖、成熟化、サイトカインの生成及び/又は調節機能若しくはエフェクター機能の誘導をもたらす免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ)の刺激を指す。免疫細胞の活性化又は機能を評価する方法は、当技術分野でよく知られており、BRDU及びチミジン取込みなどの増殖アッセイ、クロム放出などの細胞傷害性アッセイ、細胞内サイトカイン染色ELISPOT及びELISAなどのサイトカイン分泌アッセイ、フローサイトメトリーを用いたCD25、CD69及びCD69などの活性化マーカーの発現並びにマルチマー(例えば、テトラマー)アッセイが含まれるが、これらに限定されない。
【0251】
特定の実施形態と共に使用され得るこのようなダイマー化部分の非限定的な例は、以下でさらに記載されるように、抗体のFcドメインである。
【0252】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、非タンパク性部分、例えば架橋剤、有機ポリマー、合成ポリマー、小分子等である。
【0253】
複数のこのような非タンパク性部分が当技術分野で知られており、例えば下記から購入可能である:Santa Cruz社、Sigma-Aldrich社、Proteochem社等。特定の実施形態によると、非タンパク性部分は、ヘテロ二機能性架橋剤である。ヘテロ二機能性架橋剤は、2つの異なる反応末端を有する。典型的には、第一の工程において、ヘテロ二機能性架橋剤の1つの反応性基でモノマーを修飾し、残存する遊離試薬を除去する。第二の工程において、修飾したモノマーを第2のモノマーと混合し、且つ試薬のもう一方の末端の修飾基と反応させる。最も広く使用されているものは、アミン基及びスルフヒドリル基を介してタンパク質をカップリングさせる(最も不安定なアミン反応性NHSエステルが初めにカップリングし、未結合試薬を除去した後、スルフヒドリル基のカップリングが進行する)。スルフヒドリル反応基は、通常、マレイミド、ピリジルジスルフィド及びアルファ-ハロセチルである。他の架橋剤としては、カルボキシル基(-COOH)と一級アミン(-NH2)との間を繋ぐカルボジイミドが挙げられる。別の手法は、1つのモノマーのリシン残基をチオールに修飾し、第2のモノマーをマレイミド基の付加によって修飾し、続いてモノマー間に安定なチオエステル結合を形成する。モノマーの内の1種が元々チオールを有する場合、これらの基を他のモノマーに結合したマレイミドと直接反応させることができる。ビス[2-(4-アジドサリチルアミド)エチル)]ジスルフィド(BASED)等、1つの光反応性末端を有するヘテロ二機能性架橋剤も存在する。光反応性基は、反応するための特定の基が存在しないときに使用され、これは、UV光への暴露によって光反応性基が非特異的に反応するためである。このようなヘテロ二機能性架橋剤の非限定的な具体例としては、下記が挙げられるが、これらに限定されない:アルキン-PEG4-マレイミド、アルキン-PEG5-N-ヒドロキシサクシニミジルエステル、マレイミド-PEG-サクシニミジルエステル、アジド-PEG4-フェニルオキサジアゾールメチルスルホン、LC-SMCC(サクシニミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート))、MPBH(4-(4-N-マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド塩化水素+1/2ジオキサン)、PDPH(3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド)、SIAB(N-サクシニミジル(4-イオドアセチル)アミノ安息香酸)、SMPH(サクシニミジル-6-((b-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサン酸)、スルホ-KMUS(N-(κ-マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホサクシニミドエステル)、スルホ-SIAB(スルホサクシニミジル(4-イオドアセチル)アミノベンゾエート)、3-(マレイミド)プロピオン酸 N-ヒドロキシサクシニミドエステル、塩化メトキシカルボニルスルフェニル、プロパルギル-PEG-酸、アミノ-PEG-t-ブチルエステル、BocNH-PEG5-酸、BMPH(N-(β-マレイミドプロピオン酸)ヒドラジド、トリフルオロ酢酸塩)、ANB-NOS、BMPS、EMCS、GMBS、LC-SPDP、MBS、SBA、SIA、スルホ-SIA、SMCC、SMPB、SMPH、SPDP、スルホ-LC-SPDP、スルホ-MBS、スルホ-SANPAH、スルホ-SMCC。
【0254】
他の特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、タンパク性部分である。
【0255】
他の特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、タンパク性ダイマー部分である。
【0256】
特定の実施形態によると、ポリペプチドは、ダイマー化タンパク性部分のN末端に結合されている。
【0257】
特定の実施形態によると、2種のポリペプチドは、ダイマー化タンパク性部分のN末端に結合されている。
【0258】
特定の実施形態によると、ポリペプチドは、ダイマー化タンパク性部分のC末端に結合されている。
【0259】
特定の実施形態によると、2種のポリペプチドは、ダイマー化タンパク性部分のC末端に結合されている。
【0260】
特定の実施形態によると、2種のポリペプチドの1つは、ダイマー化タンパク性部分のN末端に結合されており、2種のポリペプチドの第2のものは、ダイマー化タンパク性部分のC末端に結合されている。
【0261】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、2種の異なる親和性相補性タグのための2種の別個の親和性部分を有するポリペプチドの親和性ペアを含む。このような親和性ペアは、当技術分野で知られており、下記が挙げられるが、これらに限定されない:ヘマグルチニン(HA)、抗HA、AviTagTM、V5、Myc、T7、FLAG、HSV、VSV-G、His、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、リザベジン、金属親和性タグ、レクチン親和性タグ。当業者は、いずれのタグを選択すべきかわかるであろう。
【0262】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、任意の抗体(例えば、IgG、IgA、IgD又はIgE)又はその断片のFcドメインである。
【0263】
特定の実施形態によると、Fcは、IgG、IgA、IgD又はIgEのものである。
【0264】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、IgGのものである。
【0265】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、IgG1又はIgG4のものである。
【0266】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、ヒトIgG4のものである。本発明の特定の実施形態と共に使用することができるヒトIgG4 Fcドメインの非限定的な例は、配列番号134に提供される。
【0267】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、ヒトIgG1のものである。本発明の特定の実施形態と共に使用することができるヒトIgG1 Fcドメインの非限定的な例は、配列番号137及び156に提供される。
【0268】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、Fcドメインモノマーである。
【0269】
他の特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、Fcドメインダイマーである。
【0270】
抗体のFcドメインを用いてヘテロダイマーを作製する際に使用可能な複数の機構が存在し、ノブ・イントゥ・ホール法又は電荷ペア法(例えば、Gunasekaran et al., J. Biol. Chem. (2010) 285(25):19637を参照されたく、参照によってその全てが本明細書に援用される)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0271】
したがって、特定の実施形態によると、Fcドメインは、保存的及び非保存的アミノ酸置換(本明細書において変異とも称する)を有し得る。
【0272】
タンパク質に参照して配列同一性のパーセンテージが使用されるとき、同一ではない残基の位置は、多くの場合、保存的アミノ酸置換によって異なり、このとき、アミノ酸残基は、類似した化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基によって置換され、そのため、分子の機能的性質は、変更されない。配列が保存的置換によって異なる場合、置換の保存的性質について修正するためにパーセント配列同一性は、上向きに調製され得る。このような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」又は「類似性」を有すると考えられる。このような調整を行うための手段は、当業者に広く知られている。典型的には、保存的置換を完全なミスマッチではなく、部分的なミスマッチとしてスコア付けすることを含み、それによりパーセンテージ配列同一性を増やす。したがって、例えば同一アミノ酸のスコアが1であり、非保存的置換のスコアが0であるとき、保存的置換に0~1のスコアが与えられる。保存的置換のスコアを例えばHenikoff S and Henikoff JG.[Amino acid substitution matrices from protein blocks. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 1992,89(22): 10915-9]のアルゴリズムに従って計算する。
【0273】
保存的アミノ酸及び非保存的アミノ酸置換に関するさらなる説明は、後述される。
【0274】
このようなFcドメインの置換は、当技術分野で公知である。
【0275】
本発明の特定の実施形態と共に使用可能な代表的な例は、「ノブ・イントゥ・ホール」(「KIH」)型である。このようなノブ及びホール変異は、当技術分野で広く知られており、例えば米国特許第8,216,805号明細書、Shane Atwell et Al. J. Mol. Biol. (1997) 270, 26-35、Cater et al.(Protein Engineering vol.9 no.7 pp.617-621, 1996)及びA. Margaret Merchant et.al. Nature Biotechnology (1998) 16 Julyに開示されており、これらの内容は、参照によって本明細書に援用される。さらにMerchant et al., Nature Biotech. 16:677 (1998)に記載されているように、これらの「ノブ及びホール」変異は、ヘテロダイマー化を防ぐためにジスルフィド結合と組み合わせることができる。
【0276】
したがって、特定の実施形態によると、モノマーの内の1つは、ノブ変異を含むFcドメインを含み、他のモノマーは、ホール変異を含むFcドメインを含む。
【0277】
特定の免疫グロブリンのクラス及びサブクラスから特定の免疫グロブリンのFcドメインを選択することと、ノブ変異に対する第1のFcバリアント及びホール変異に対する他方のFcバリアントを選択することとは、当業者の範囲内である。特定の実施形態と共に使用することができる置換の非限定的な例としては、S228P、L235E、T366W、Y349C、T366S、L368A、Y407V及び/若しくはE356C[全長抗体の一部としてのヒトIgG4に対応して、EU番号付け(Kabat, E.A., T.T. Wu, M. Reid-Miller, H.M. Perry and K.S. Gottesman. 1987. Sequences of proteins of Immunological Interest. US. Dept. of Health and Human Services, Bethesda)に従う]又はL235A、Y349C、T366W、T354C、D356C、T366S、L368A及び/若しくはY407V[全長抗体の一部としてのヒトIgG1に対応して、EU番号付け(Kabat, E.A., T.T. Wu, M. Reid-Miller, H.M. Perry and K.S. Gottesman. 1987. Sequences of proteins of Immunological Interest. US. Dept. of Health and Human Services, Bethesda)に従う]が挙げられる。
【0278】
本発明の特定の実施形態と共に使用することができるノブ変異を含むIgG4 Fcドメインの非限定的な例は、配列番号135、157、158及び163に提供される。
【0279】
本発明の特定の実施形態と共に使用することができるホール変異を含むIgG4 Fcドメインの非限定的な例は、配列番号136、159及び164に提供される。
【0280】
本発明の特定の実施形態と共に使用することができるノブ変異を含むIgG1 Fcドメインの非限定的な例は、配列番号27、51、154及び160に提供される。
【0281】
本発明の特定の実施形態と共に使用することができるホール変異を含むIgG1 Fcドメインの非限定的な例は、配列番号28、52、152、161及び162に提供される。
【0282】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、配列番号27、28、51、52、134、135、136、137、152、154、156、157、158、159、160、161、162、163及び164からなる群から選択されるアミノ酸配列又は本明細書に開示されるような所望の活性を示すその機能的断片に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%の同一性若しくは相同性を有するアミノ酸配列或いはそれをコードするポリヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0283】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、配列番号135~136、27~28又は51~52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0284】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、Fc受容体に対するその結合の変更、その免疫活性化機能の低下、及び/又は融合体の半減期の改善が生じるように修飾される。
【0285】
特定の実施形態によると、天然の結合相手が健康な細胞において発現されることが知られている場合、Fcドメインは、Fc受容体に対するその結合及び/又はその免疫活性化機能が低下するように修飾される。
【0286】
特定の実施形態によると、SIRPα-LILRB2ヘテロダイマーは、Fc受容体に対するその結合及び/又はその免疫活性化機能が低下するように修飾される。
【0287】
他の特定の実施形態によると、Fcドメインは、Fc受容体に対するその結合の変更、その免疫活性化機能の低下、及び/又は融合体の半減期の改善が生じるようには修飾されない。
【0288】
特定の実施形態によると、天然の結合相手が病的細胞(例えば、癌細胞)において単独で発現又は過剰発現されることが知られている場合、Fcドメインは、Fc受容体に対するその結合の変更、及び/又はその免疫活性化機能の低下が生じるようには修飾されない。
【0289】
特定の実施形態によると、TIGIT-PD1ヘテロダイマーは、Fc受容体に対するその結合の変更、及び/又はその免疫活性化機能の低下を生じるようには修飾されていないFcドメインを含む。
【0290】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、in vivoでFc受容体(例えば、Fc.ガンマ.RI、Fc.ガンマ.RII及びFc.ガンマ.RIII)に対する結合を低減又は防止するように修飾される。このような修飾は、例えば、一連の変異体IgG1、IgG2及びIgG4 Fcドメイン並びにこれらのFc、ガンマ、R結合特性を設計及び記載したClarkらによって記載されている(Armour et al., 1999;Armour et al., 2002、これらの内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される)。ヒトIgG1のFcにおいてFc受容体に対するその結合を低下させるような付加的又は代替的な修飾は、アミノ酸L234及びL235[全長抗体に対応するEU番号付け(Kabat et al.)に従う]がFc受容体の結合にとって必須であると同定したCHAPPELら(Proc. Natl. Acad. Sci (1991) 88: 9036-9040、その内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される)によって記載されている。P329のGへの付加的な置換によって結合はさらに弱くなり、このLALA-PGの置換の組合せは、例えば、Schlothauer, T., et al. (2016) Protein Eng. Des. Sel. 29, 457-466及び国際公開第2012/130831号(これらの内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される)によって記載されている。Fabアーム交換を防止し、Fc受容体に対するその結合を低下させるようなヒトIgG4のFcにおける付加的又は代替的な修飾は、S228P及びL235E[全長抗体に対応するEU番号付け(Kabat et al.)に従う]をそれぞれ同定した、John-Paul Silva et al.(THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY (2015), 290: 9, 5462-5469、その内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される)及びNewman et al.(Clinical Immunology (2001) 98:2、その内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される)によって記載されている。
【0291】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、FcγRIIIa結合を最大にするように修飾される。このような修飾は、例えば、Shields RL J Biol Chem. (2001) 276:6591、Smith P, Proc Natl Acad Sci USA. (2012) 109:6181、Stavenhagen et al., Cancer Res (2007) 67:8882、Lazar et al., Proc Natl Acad Sci UCA (2006) 103:4005、Richards et al., 2008 Cancer Ther 7:2517及びMimoto et al., (2013) MAbs 5:229(これらの内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される)によって記載されている。特定の実施形態と共に使用することができるこのような修飾の非限定的な例には、S298、E333及びK334(例えば、S298A、E333A、K334A)、G236A、S239A、A330L及びI332E、F243L、R292P、Y300L、V305I及びP396L、S239D、I332E及びA330L、236A、S239D及びI332Eから選択される1つ又は複数のアミノ残基における置換[全長抗体に対応するEU番号付け(Kabat et al.)に従う]並びに非対称置換(一方の重鎖におけるL234Y/L235Q/G236W/S239M/H268D/D270E/S298A及び反対の重鎖におけるD270E/K326D/A330M/K334Eが含まれる)。
【0292】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、エフェクター機能の変更(例えば、補体結合の低減)、及び/又は補体依存性細胞傷害の低下又は消失が生じるように修飾される。このような修飾は、例えば、米国特許第5,624,821号明細書及び同第5,648,260号明細書、米国特許第6,194,551号明細書、国際公開第99/51642号、Wines et al., 2000、Idusogie et al. (2000) J. Immunol. 164:4178;Tao et al. (1993) J. Exp. Med. 178:661及びCanfield & Morrison (1991) J. Exp. Med. 173: 1483に記載されており、これらの内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される。特定の実施形態と共に使用することができるこのような修飾の非限定的な例には、234、235、236、237、297、318、320及び322;329、331及び322;L234及び/又はL235(例えば、L234A及び/又はL235A);D270、K322、P329及びP331(例えば、D270A、K322A、P329A及びP331A)から選択される位置[全長抗体に対応するEU番号付け(Kabat et al.)に従う]における1つ又は複数のアミノ酸の置換が含まれる。
【0293】
特定の実施形態によると、Fcドメインは、融合タンパク質の半減期の改善が生じるように修飾される。このような改変は、例えば、米国特許第5,869,046号明細書及び米国特許第6,121,022号明細書に記載されており、これらの内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される。例えば、252(例えば、Thrを導入するため)、254(例えば、Serを導入するため)及び256(例えば、Pheを導入するため)から選択される位置[全長抗体に対応するEU番号付け(Kabat et al.)に従う]における1つ又は複数のアミノ酸の置換である。半減期を改善するための別の修飾は、CH1又はCL領域を改変して、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループにおいて見られるようなサルベージ受容体モチーフを導入することによるものであり得る。
【0294】
FcRn結合を最大にし、半減期を延長することは、例えば、Stapleton NM, Nat Commun. (2011) 2:599、Shields RL. J Biol Chem. (2001) 276:6591、Dall’acqua WF J Immunol. (2002) 169:5171、Zalevsky J, Nat Biotechnol. (2010) 28:157、Ghetie V,.Nat. Biotechnol. (1997) 15:637及びMonnet C, MAbs. (2014) 6:422にも記載されており、これらの内容は、参照によってその全体が本明細書に援用される。特定の実施形態と共に使用することができるこのような修飾の非限定的な例には、Arg435His;Asn434Ala;Met252Tyr、Ser254Thr及びThr256Glu;Met428Leu及びAsn434Ser;Thr252Leu、Thr253Ser及びThr254Phe;Glu294delta、Thr307Pro及びAsn434Tyr;Thr256Asn、Ala378Val、Ser383Asn及びAsn434Tyrから選択される1つ又は複数のアミノ酸残基[全長抗体に対応するEU番号付け(Kabat et al.)に従う]の置換が含まれる。
【0295】
特定の実施形態によると、ダイマー化部分は、ロイシンジッパー又はヘリックス-ループ-ヘリックスを含む。
【0296】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマー中に含まれる部分のそれぞれは、部分間、例えばポリペプチド(例えば、SIRPα、PD1、TIGIT、LILRB2、SIGLEC10)とダイマー化部分との間を隔てるリンカーを含み得る。
【0297】
他の特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、ポリペプチド(例えば、SIRPα、PD1、TIGIT、LILRB2、SIGLEC10)とダイマー化部分との間にリンカーを含まない。
【0298】
当技術分野で知られているリンカーのいずれも本発明の特定の実施形態と共に使用することができる。
【0299】
特定の実施形態によると、リンカーは、天然に存在する多ドメインタンパク質に由来し得るか、又は例えばChichili et al., (2013), Protein Sci. 22(2): 153-167、Chen et al, (2013), Adv Drug Deliv Rev. 65(10): 1357-1369(これらの全内容は、参照によって本明細書に援用される)に記載されるような経験的リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、Chen et al., (2013), Adv Drug Deliv Rev. 65(10): 1357-1369及びCrasto et al., (2000), Protein Eng. 13(5):309-312(これらの全内容は、参照によって本明細書に援用される)に記載されるものなどのリンカー設計データベース及びコンピュータプログラムを用いて設計され得る。
【0300】
特定の実施形態によると、リンカーは、PEGなどの合成リンカーである。
【0301】
特定の実施形態によると、リンカーは、機能的であり得る。例えば、限定されないが、リンカーは、フォールディング及び/又は安定性の改善、発現の改善、薬物動態の改善、及び/又はヘテロダイマーの生物学的活性の改善を生じるように機能し得る。別の例では、リンカーは、ヘテロダイマーを特定の細胞型又は位置に向けるように機能し得る。
【0302】
特定の実施形態によると、リンカーは、ポリペプチドである。
【0303】
ポリペプチドリンカーの非限定的な例には、配列LE、GGGGS(配列番号124)、(GGGGS)n(n=1~4)(配列番号123)、GGGGSGGGG(配列番号122)、(GGGGS)x2(配列番号125)、(GGGGS)x2+GGGG(配列番号121)、(GGGGS)x3(配列番号117)、(GGGGS)x4(配列番号118)、(Gly)8(配列番号119)、(Gly)6(配列番号120)、(EAAAK)n(n=1~3)(配列番号126)、A(EAAAK)nA(n=2~5)(配列番号127)、AEAAAKEAAAKA(配列番号128)、A(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4A(配列番号129)、PAPAP(配列番号130)、K ESGSVSS EQ LAQ FRS LD(配列番号131)、EGKSSGSGSESKST(配列番号132)、GSAGSAAGSGEF(配列番号133)及び(XP)n(Xは、任意のアミノ酸、例えばAla、Lys又はGluを指定する)を有するリンカーが含まれる。
【0304】
特定の実施形態によると、リンカーは、配列番号117を含む(限定されないが、例えばLILRB2ポリペプチドとFcドメインとの間のリンカーとして)。
【0305】
特定の実施形態によると、リンカーは、配列番号125を含む(限定されないが、例えばSIRPα、PD1、TIGIT又はSIGLEC10ポリペプチドとFcドメインとの間のリンカーとして)。
【0306】
特定の実施形態によると、リンカーは、1~6アミノ酸の長さである。
【0307】
特定の実施形態によると、リンカーは、実質的にグリシン及び/又はセリン残基で構成される(例えば、約30%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約95%、又は約97%、又は100%のグリシン及びセリン)。
【0308】
特定の実施形態によると、リンカーは、単一アミノ酸のリンカーである。
【0309】
本発明のいくつかの実施形態では、1つのアミノ酸は、グリシンである。
【0310】
特定の実施形態によると、リンカーは、抗体又はその断片のFcドメイン又はヒンジ領域ではない。
【0311】
本明細書に開示されるヘテロダイマーは、SIRPα、PD1、TIGIT、LILRB2及びSIGLEC10からなる群から選択される2種のポリペプチドを含む。このようなヘテロダイマーの可能な配置の非限定的な例は、
図1Aに概略的に示される。
【0312】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーの配置は、
図1Aのパネル1~6に示される配置から選択され、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0313】
特定の実施形態によると、2種のポリペプチドは、ヘテロダイマーのモノマー中に含まれる。本発明の特定の実施形態と共に使用され得るこのようなヘテロダイマー配置の非限定的な例は、
図1Aのパネル1~2に示される。
【0314】
したがって、特定の実施形態によると、ヘテロダイマーのモノマーの1つは、2種のポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。
【0315】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーのモノマーの1つは、タンパク性ダイマー化部分(例えば、抗体又はその断片のFcドメイン)によって結合された2種のポリペプチドを含む融合ポリペプチドである。
【0316】
本明細書で使用する場合、「融合ポリペプチド」という用語は、天然では単一のアミノ酸配列中に一緒に見出されない2つ以上の部分を有するアミノ酸配列を指す。
【0317】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーのモノマーの1つは、ノブ変異を含む抗体又はその断片のFcドメインによって結合された2種のポリペプチドを含む融合ポリペプチドであり、他方のモノマーは、ホール変異を含む抗体又はその断片のFcドメインを含む。
【0318】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーのモノマーの1つは、ホール変異を含む抗体又はその断片のFcドメインによって結合された2種のポリペプチドを含む融合ポリペプチドであり、他方のモノマーは、ノブ変異を含む抗体又はその断片のFcドメインを含む。
【0319】
他の特定の実施形態によると、2種のポリペプチドのそれぞれは、ヘテロダイマー中のモノマーである。本発明の特定の実施形態と共に使用され得るこのようなヘテロダイマー配置の非限定的な例は、
図1Aのパネル3~6に示される。特定の実施形態によると、ヘテロダイマー配置は、
図1Aのパネル5に示される通りである。
【0320】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、タンパク性ダイマー化部分(例えば、抗体又はその断片のFcドメイン)に結合された(例えば、翻訳融合として)2種のポリペプチドの1つを含む第1のモノマーと、タンパク性ダイマー化部分(例えば、抗体又はその断片のFcドメイン)に結合された(例えば、翻訳融合として)2種のポリペプチドの第2のものを含む第2のモノマーとを含む。
【0321】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、ノブ変異を含む抗体又はその断片のFcドメインに結合された(例えば、翻訳融合として)2種のポリペプチドの1つを含む第1のモノマーと、ホール変異を含む抗体又はその断片のFcドメインに結合された(例えば、翻訳融合として)2種のポリペプチドの第2のものを含む第2のモノマーとを含む。
【0322】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーの組成及び配置は、
図1Bに概略的に示されるヘテロダイマーから選択され、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0323】
本発明の特定の実施形態と共に使用することができるヘテロダイマーの非限定的な例は、以下の表1に示される。
【0324】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1又は5に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むSIRPαポリペプチドを含むモノマー及び配列番号3又は7に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むPD1ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0325】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1を含むモノマーと、配列番号3を含むモノマーとを含む。
【0326】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1に記載されるモノマーと、配列番号3に記載されるモノマーとを含む。
【0327】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号5を含むモノマーと、配列番号7を含むモノマーとを含む。
【0328】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号5に記載されるモノマーと、配列番号7に記載されるモノマーとを含む。
【0329】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号9又は13に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むTIGITポリペプチドを含むモノマー及び配列番号11又は15に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むLILRB2ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0330】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号9を含むモノマーと、配列番号11を含むモノマーとを含む。
【0331】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号9に記載されるモノマーと、配列番号11に記載されるモノマーとを含む。
【0332】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号13を含むモノマーと、配列番号15を含むモノマーとを含む。
【0333】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号13に記載されるモノマーと、配列番号15に記載されるモノマーとを含む。
【0334】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1、5、17、138、140、142又は144に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むSIRPαポリペプチドを含むモノマー及び配列番号11、15、19又は150に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むLLIRB2ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0335】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1、5又は17に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むSIRPαポリペプチドを含むモノマー及び配列番号11、15又は19に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むLLIRB2ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0336】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1を含むモノマーと、配列番号11を含むモノマーとを含む。
【0337】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1に記載されるモノマーと、配列番号11に記載されるモノマーとを含む。
【0338】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号5を含むモノマーと、配列番号15を含むモノマーとを含む。
【0339】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号5に記載されるモノマーと、配列番号15に記載されるモノマーとを含む。
【0340】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号17を含むモノマーと、配列番号19を含むモノマーとを含む。
【0341】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号17に記載されるモノマーと、配列番号19に記載されるモノマーとを含む。
【0342】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号138を含むモノマーと、配列番号11を含むモノマーとを含む。
【0343】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号138に記載されるモノマーと、配列番号11に記載されるモノマーとを含む。
【0344】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号140を含むモノマーと、配列番号15を含むモノマーとを含む。
【0345】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号140に記載されるモノマーと、配列番号15に記載されるモノマーとを含む。
【0346】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号142を含むモノマーと、配列番号150を含むモノマーとを含む。
【0347】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号142に記載されるモノマーと、配列番号150に記載されるモノマーとを含む。
【0348】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号144を含むモノマーと、配列番号150を含むモノマーとを含む。
【0349】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号144に記載されるモノマーと、配列番号150に記載されるモノマーとを含む。
【0350】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号21又は22に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むLILRB2ポリペプチドを含むモノマー及び配列番号3又は7に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むPD1ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0351】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号21を含むモノマーと、配列番号3を含むモノマーとを含む。
【0352】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号21に記載されるモノマーと、配列番号3に記載されるモノマーとを含む。
【0353】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号22を含むモノマーと、配列番号7を含むモノマーとを含む。
【0354】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号22に記載されるモノマーと、配列番号7に記載されるモノマーとを含む。
【0355】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号24又は25に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むSIGLEC10ポリペプチドを含むモノマー及び配列番号3又は7に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むPD1ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0356】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号24を含むモノマーと、配列番号3を含むモノマーとを含む。
【0357】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号24に記載されるモノマーと、配列番号3に記載されるモノマーとを含む。
【0358】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号25を含むモノマーと、配列番号7を含むモノマーとを含む。
【0359】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号25に記載されるモノマーと、配列番号7に記載されるモノマーとを含む。
【0360】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1又は5に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むSIRPαポリペプチドを含むモノマー及び配列番号29又は30に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むSIGLEC10ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0361】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1を含むモノマーと、配列番号29を含むモノマーとを含む。
【0362】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1に記載されるモノマーと、配列番号29に記載されるモノマーとを含む。
【0363】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号5を含むモノマーと、配列番号30を含むモノマーとを含む。
【0364】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号5に記載されるモノマーと、配列番号30に記載されるモノマーとを含む。
【0365】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号9又は13に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むTIGITポリペプチドを含むモノマー及び配列番号29又は30に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むSIGLEC10ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0366】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号9を含むモノマーと、配列番号29を含むモノマーとを含む。
【0367】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号9に記載されるモノマーと、配列番号29に記載されるモノマーとを含む。
【0368】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号13を含むモノマーと、配列番号30を含むモノマーとを含む。
【0369】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号13に記載されるモノマーと、配列番号30に記載されるモノマーとを含む。
【0370】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号24又は25に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むSIGLEC10ポリペプチドを含むモノマー及び配列番号11又は15に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むLILRB2ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0371】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号24を含むモノマーと、配列番号11を含むモノマーとを含む。
【0372】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号24に記載されるモノマーと、配列番号11に記載されるモノマーとを含む。
【0373】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号25を含むモノマーと、配列番号15を含むモノマーとを含む。
【0374】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号25に記載されるモノマーと、配列番号15に記載されるモノマーとを含む。
【0375】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号9、13、31、33又は146に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むTIGITポリペプチドを含むモノマー及び配列番号3、7又は148に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むPD1ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0376】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号9、13、31又は33に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むTIGITポリペプチドを含むモノマー及び配列番号3又は7に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むPD1ポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0377】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号9を含むモノマーと、配列番号3を含むモノマーとを含む。
【0378】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号9に記載されるモノマーと、配列番号3に記載されるモノマーとを含む。
【0379】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号13を含むモノマーと、配列番号7を含むモノマーとを含む。
【0380】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号13に記載されるモノマーと、配列番号7に記載されるモノマーとを含む。
【0381】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号31を含むモノマーと、配列番号7を含むモノマーとを含む。
【0382】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号31に記載されるモノマーと、配列番号7に記載されるモノマーとを含む。
【0383】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号33を含むモノマーと、配列番号7を含むモノマーとを含む。
【0384】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号33に記載されるモノマーと、配列番号7に記載されるモノマーとを含む。
【0385】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号146を含むモノマーと、配列番号148を含むモノマーとを含む。
【0386】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号146に記載されるモノマーと、配列番号148に記載されるモノマーとを含む。
【0387】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1又は5に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むSIRPαポリペプチドを含むモノマー及び配列番号35又は36に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むTIGITポリペプチドを含むモノマーを含む。
【0388】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1を含むモノマーと、配列番号35を含むモノマーとを含む。
【0389】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号1に記載されるモノマーと、配列番号35に記載されるモノマーとを含む。
【0390】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号5を含むモノマーと、配列番号36を含むモノマーとを含む。
【0391】
特定の実施形態によると、ヘテロダイマーは、配列番号5に記載されるモノマーと、配列番号36に記載されるモノマーとを含む。
【0392】
特定の実施形態によると、本明細書に開示されるヘテロダイマーは、可溶性である(即ち合成表面又は天然に存在する表面に固定化されない)。
【0393】
特定の実施形態によると、本明細書に開示されるヘテロダイマーは、合成表面又は天然に存在する表面に固定化される。
【0394】
本発明の付加的又は代替的な態様によると、本明細書に開示されるヘテロダイマーを含む組成物であって、ヘテロダイマーが前記組成物における2種のポリペプチドの優勢形態である、組成物が提供される。
【0395】
ダイマー化、特にヘテロダイマー化を決定する方法は、当技術分野でよく知られており、上記及び下記においてさらに記載される。
【0396】
特定の実施形態によると、優勢形態は、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%を占め、それぞれの可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0397】
特定の実施形態によると、本明細書に記載されるヘテロダイマー又はそれを含む組成物の製造収率、安定性、活性、選択性及び/又は安全性は、同じ2つのポリペプチドを含むホモダイマーを含む組成物の製造収率、安定性、活性、選択性及び/又は安全性よりも高く、ホモダイマーは、組成物における2つのポリペプチドの優勢形態であり、単離されたモノマーは、同じ2つのポリペプチド及び/又は2つのポリペプチドのそれぞれを単剤として含む。
【0398】
特定の実施形態によると、本明細書に記載されるヘテロダイマー又はそれを含む組成物の製造収率、安定性、活性、選択性及び/又は安全性は、抗体、例えば本明細書に記載される2種のポリペプチドの天然の結合相手を標的とする二重特異性抗体の造収率、安定性、活性、選択性及び/又は安全性よりも高い。
【0399】
特定の実施形態によると、選択性及び/又は安全性の増大は、ヘテロダイマーが両方のポリペプチドの天然の結合相手に結合したときにのみ、選択的活性によって明らかにされ得る(例えば、天然の結合相手の一方のみを発現する細胞と比較した、ヘテロダイマーの両方のポリペプチドの天然の結合相手を発現する細胞)。特定の実施形態では、ダイマー化部分がFcドメインである場合、選択性及び/又は安全性は、両方のポリペプチドの天然の結合相手に結合したときにのみ、Fc受容体の結合及び/又は活性化によって明らかにされ得る。
【0400】
特定の実施形態によると、「より高い」という用語は、統計的に有意な増大を指す。
【0401】
特定の実施形態によると、「より高い」という用語は、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍の増大を指す。
【0402】
特定の実施形態によると、本明細書に記載されるヘテロダイマー又はそれを含む組成物は、単剤としての2種のポリペプチドのそれぞれと比較して、組み合わされて改善された活性を有する。本明細書で使用する場合、「組み合わされて改善された活性」という表現は、少なくとも相加的であるが、好ましくは相乗的に改善された活性を指す。
【0403】
特定の実施形態によると、本明細書に記載されるヘテロダイマー又はそれを含む組成物の凝集体の量は、同じ2つのポリペプチドを含むホモダイマーを含む組成物の凝集体の量よりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%少なく、ホモダイマーは、組成物における2つのポリペプチドの優勢形態であり、単離されたモノマーは、同じ2つのポリペプチド及び/又は2つのポリペプチドのそれぞれを単剤として含む。
【0404】
本発明のいくつかの実施形態のヘテロダイマーは、SIRPα、PD1、TIGIT、LILRB2及びSIGLEC10から選択される2種のポリペプチドを含むため、ヘテロダイマーは、in-vitro、ex-vivo及び/又はin-vivoで免疫細胞を活性化する方法で使用され得る。
【0405】
したがって、本発明の一態様によると、免疫細胞を活性化する方法であって、ヘテロダイマー、それを含む組成物、それをコードする核酸構築物又はシステム又はそれを含む宿主細胞の存在下において免疫細胞をin-vitroで活性化することを含む方法が提供される。
【0406】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)を含む。
【0407】
本明細書で使用する場合、「末梢血単核細胞(PBMC)」という用語は、単核の血液細胞を指し、リンパ球、単球及び樹状細胞(DC)を含む。
【0408】
特定の実施形態によると、PBMCは、樹状細胞(DC)、T細胞、B細胞、NK細胞及びNKT細胞からなる群から選択される。
【0409】
特定の実施形態によると、PBMCは、T細胞、B細胞、NK細胞及びNKT細胞を含む。
【0410】
PBMCを得る方法は、対象から全血を採血し、抗凝固薬(例えば、ヘパリン又はクエン酸塩)を含む容器に収集すること及びアフェレーシスなど、当技術分野で周知である。続いて、特定の実施形態によると、少なくとも1種類のPBMCを末梢血から精製する。全血からPBMCを精製するために、白血球アフェレーシス、沈降、密度勾配遠心分離(例えば、ficoll)、遠心溶出法、分画、例えば赤血球の化学的溶解(例えば、ACKによるもの)、細胞表面マーカーを使用した特定の細胞型の選択(例えば、Invitrogen社、Stemcell Technologies社、Cellpro社、Advanced Magnetics社又はMiltenyi Biotec社等から市販されているFACSソーター又は磁気細胞分離技術の使用)及び特定の細胞型を除去する方法であって、特異的な抗体を用いる根絶(例えば、死滅)に基づく方法や、(例えば、磁気細胞分離技術、FACSソーター及び/又は捕捉ELISA標識化を使用する)負の選択による親和性に基づく精製といった当業者に公知のいくつかの方法及び試薬がある。そのような方法は、例えば、THE HANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY, Volumes 1 to 4, (D.N. Weir, editor)及びFLOW CYTOMETRY AND CELL SORTING (A. Radbruch, editor, Springer Verlag, 2000)に記載されている。
【0411】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、腫瘍浸潤リンパ球を含む。
【0412】
本明細書で使用する場合、「腫瘍浸潤リンパ球(TIL)」という用語は、血流から離れて腫瘍中に遊走した単核白血球を示す。
【0413】
特定の実施形態によると、TILは、T細胞、B細胞、NK細胞及び単球からなる群から選択される。
【0414】
TILを得るための方法は、例えば、生検又は剖検によって対象から腫瘍試料を得て、その単細胞懸濁液を調製する方法のように、当技術分野で周知である。単細胞懸濁液は、任意の好適な様式、例えば機械的に(例えば、GentleMACS(商標)Dissociator(カリフォルニア州、オーバーンのMiltenyi Biotec社製)を使用した腫瘍の脱凝集)又は酵素的に(例えば、コラゲナーゼ又はDNaseで)得ることができる。続いて、この細胞懸濁液から少なくとも1種類のTILが精製され得る。所望の種類のTILを精製するために、細胞表面マーカーを使用した特定の細胞型の選択(例えば、Invitrogen社、Stemcell Technologies社、Cellpro社、Advanced Magnetics社又はMiltenyi Biotec社等から市販されているFACSソーター又は磁気細胞分離技術の使用)及び特定の細胞型を除去する方法であって、特異的な抗体を用いる根絶(例えば、死滅)に基づく方法や、(例えば、磁気細胞分離技術、FACSソーター及び/又は捕捉ELISA標識化を使用する)負の選択による親和性に基づく精製といった当業者に公知のいくつかの方法及び試薬がある。そのような方法は、例えば、THE HANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY, Volumes 1 to 4, (D.N. Weir, editor)及びFLOW CYTOMETRY AND CELL SORTING (A. Radbruch, editor, Springer Verlag, 2000)に記載されている。
【0415】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、食細胞を含む。
【0416】
本明細書で使用する場合、「食細胞」という用語は、食作用を実行可能である細胞を指し、プロフェッショナル食細胞及びノンプロフェッショナル食細胞の両方を含む。食作用を分析する方法は、当技術分野で周知であり、例えば殺滅アッセイ、フローサイトメトリー及び/又は顕微評価(生細胞の画像化、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、電子顕微鏡)を含む。特定の実施形態によると、貪食細胞は、単球、樹状細胞(DC)及び顆粒球からなる群から選択される。
【0417】
特定の実施形態によると、食細胞は、顆粒球を含む。
【0418】
特定の実施形態によると、食細胞は、単球を含む。
【0419】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、単球を含む。
【0420】
特定の実施形態によると、「単球」という用語は、組織内に存在する循環単球及びマクロファージ(別称、単核食細胞)の両方を示す。
【0421】
特定の実施形態によると、単球は、マクロファージを含む。典型的には、マクロファージの細胞表面表現型は、CD14、CD40、CD11b、CD64、F4/80(マウス)/EMR1(ヒト)、リゾチームM、MAC-1/MAC-3及びCD68を含む。
【0422】
特定の実施形態によると、単球は、循環単球を含む。典型的には、循環単球の細胞表面表現型は、CD14及びCD16(例えば、CD14++CD16-、CD14+CD16++、CD14++CD16+)を含む。
【0423】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、DCを含む。
【0424】
本明細書で使用する場合、「樹状細胞(DC)」という用語は、リンパ様又は非リンパ様の組織内に見出される、形態学的に同様の細胞型の多様な集団の任意のメンバーを示す。DCは、プロフェッショナル抗原提示細胞のクラスであり、HLA制限T細胞を感作する能力が高い。DCとしては、例えば、形質細胞様樹状細胞、骨髄樹状細胞(未成熟型及び成熟型の樹状細胞を含む)、ランゲルハンス細胞、指状嵌入細胞、濾胞樹状細胞が挙げられる。樹状細胞は、機能又は表現型、特に細胞表面表現型によって認識され得る。これらの細胞は、ベール様の突起を細胞表面に有する特徴的な形態、中レベルから高レベルの表面HLAクラスIIの発現及びT細胞(特にナイーブT細胞)に対して抗原提示する能力を特徴とする(Steinman R, et al., Ann. Rev. Immunol. 1991; 9:271-196を参照されたい)。典型的には、DCの細胞表面表現型としては、CDla+、CD4+、CD86+又はHLA-DRが挙げられる。DCという用語には、未成熟型DC及び成熟型DCの両方が包含される。
【0425】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、顆粒球を含む。
【0426】
本明細書で使用する場合、「顆粒球」という用語は、細胞質内の顆粒の存在を特徴とする、多形核白血球を示す。
【0427】
特定の実施形態によると、顆粒球は、好中球を含む。
【0428】
特定の実施形態によると、顆粒球は、マスト細胞を含む。
【0429】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、T細胞を含む。
【0430】
本明細書で使用する場合、「T細胞」という用語は、CD4+又はCD8+のいずれかの表現型を有するCD3+、T細胞受容体(TCR)+の分化型リンパ球を示す。T細胞は、エフェクターT細胞又は調節性T細胞のいずれでもあり得る。
【0431】
本明細書で使用する場合、「エフェクターT細胞」という用語は、例えば、サイトカインを生成することによって他の免疫細胞を活性化するか若しくは方向付けるT細胞又は細胞傷害活性を有するT細胞であり、例えばCD4+、Th1/Th2、CD8+細胞傷害性Tリンパ球を示す。
【0432】
本明細書で使用する場合、「調節性T細胞」又は「Treg」という用語は、エフェクターT細胞を含む他のT細胞及び自然免疫系細胞の活性化を負に調節するT細胞を示す。Treg細胞は、エフェクターT細胞応答の持続的抑制を特徴とする。特定の実施形態によると、Tregは、CD4+CD25+Foxp3+T細胞である。
【0433】
特定の実施形態によると、T細胞は、CD4+T細胞である。
【0434】
他の特定の実施形態によると、T細胞は、CD8+T細胞である。
【0435】
特定の実施形態によると、T細胞は、メモリーT細胞である。メモリーT細胞の非限定的な例としては、CD3+/CD4+/CD45RA-/CCR7-の表現型を有するエフェクターメモリーCD4+T細胞、CD3+/CD4+/CD45RA-/CCR7+の表現型を有するセントラルメモリーCD4+T細胞、CD3+/CD8+CD45RA-/CCR7-の表現型を有するエフェクターメモリーCD8+T細胞及びCD3+/CD8+CD45RA-/CCR7+の表現型を有するセントラルメモリーCD8+T細胞が挙げられる。
【0436】
特定の実施形態によると、T細胞は、目的の発現産物をコードする核酸配列が形質導入された、工学的に操作されたT細胞を含む。
【0437】
特定の実施形態によると、目的の発現産物は、T細胞受容体(TCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0438】
本明細書で使用する場合、「TCRをコードする核酸配列が形質導入された」又は「TCRをコードする核酸配列を形質導入する」という表現は、MHCとの関連で提示される所望の抗原に対して特異性を有するT細胞から可変α-鎖及びβ-鎖をクローニングすることを示す。TCRを形質導入する方法は、当技術分野で公知であり、例えばNicholson et al. Adv Hematol. 2012; 2012:404081、Wang and Riviere Cancer Gene Ther. 2015 Mar;22 (2):85-94)及びLamers et al, Cancer Gene Therapy (2002) 9, 613-623に開示されている。
【0439】
本明細書で使用する場合、「CARをコードする核酸配列が形質導入された」又は「CARをコードする核酸配列を形質導入する」という表現は、抗原認識部分及びT細胞活性化部分を含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列のクローニングを示す。キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞シグナル伝達ドメイン又はT細胞活性化ドメインに結合した抗体の抗原結合ドメイン(例えば、一本鎖可変断片(scFv))を含有する、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARを形質導入する方法は、当技術分野で公知であり、例えばDavila et al. Oncoimmunology. 2012 Dec 1;1 (9):1577-1583、Wang and Riviere Cancer Gene Ther. 2015 Mar;22 (2):85-94)、Maus et al. Blood. 2014 Apr 24;123 (17):2625-35、Porter DL The New England journal of medicine. 2011, 365 (8):725-733、Jackson HJ, Nat Rev Clin Oncol. 2016;13 (6):370-383及びGloberson-Levin et al. Mol Ther. 2014;22 (5):1029-1038に開示されている。
【0440】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、B細胞を含む。
【0441】
本明細書で使用する場合、「B細胞」という用語は、B細胞受容体(BCR)+、CD19+及び/又はB220+の表現型を有するリンパ球を示す。B細胞は、特異的抗原に結合し、液性応答を引き起こす能力を特徴とする。
【0442】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、NK細胞を含む。
【0443】
本明細書で使用する場合、「NK細胞」という用語は、CD16+CD56+及び/又はCD57+TCR-の表現型を有する分化型リンパ球を示す。NKは、「自己」MHC/HLA抗原を発現できない細胞に結合し、特異的な細胞溶解性酵素の活性化によってこの細胞を死滅させる能力、NK活性化受容体のリガンドを発現する腫瘍細胞又は他の罹患細胞を死滅させる能力及び免疫応答を刺激若しくは阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力を特徴とする。
【0444】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、NKT細胞を含む。
【0445】
本明細書で使用する場合、「NKT細胞」という用語は、セミインバリアントなαβT細胞受容体を発現するが、典型的にはNK細胞に関連する種々の分子マーカー(例えば、NK1.1)も発現する、特殊化したT細胞集団を示す。NKT細胞としては、NK1.1+及びNK1.1-並びにCD4+、CD4-、CD8+及びCD8-の細胞が挙げられる。NKT細胞のTCRは、MHC-I様分子CD1dによって提示される糖脂質抗原を認識する点で独特である。NKT細胞は、炎症又は免疫寛容のいずれかを促進するサイトカインを生成する能力があるため、保護効果を有する場合もあれば、有害効果を有する場合もある。
【0446】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、健康な対象から得る。
【0447】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、病気(例えば、癌)を患う対象から得る。
【0448】
特定の実施形態によると、活性化は、2種のポリペプチドの少なくとも1つの天然の結合相手又は2種のポリペプチドの少なくとも1つの外因性の結合相手を発現する細胞の存在下におけるものである。
【0449】
特定の実施形態によると、活性化は、2種のポリペプチドの天然の結合相手又は2種のポリペプチドの外因性の結合相手を発現する細胞の存在下におけるものである。
【0450】
特定の実施形態によると、外因性の結合相手は、可溶性である。
【0451】
他の特定の実施形態によると、外因性の結合相手は、固体支持体に固定化される。
【0452】
特定の実施形態によると、結合相手を発現する細胞は、病的(罹患)細胞、例えば癌細胞を含む。
【0453】
特定の実施形態によると、活性化は、細胞の増殖、成熟化、サイトカインの生成、食作用及び/又は免疫細胞の調節機能若しくはエフェクター機能の誘導をもたらす、少なくとも一次活性化シグナル[例えば、抗原提示細胞(APC)における主要組織適合抗原(MHC)/ペプチド複合体とT細胞受容体(TCR)のライゲーション]を伝達することが可能な刺激剤の存在下で行う。特定の実施形態によると、刺激因子剤は、二次共刺激シグナルを伝達することもできる。
【0454】
刺激剤の量及び刺激剤と免疫細胞との間の比を決定する方法は、十分に当業者の能力の範疇にあるため、本明細書では特定しない。
【0455】
刺激剤は、抗原依存的様式又は抗原非依存的(即ちポリクローナル)様式で免疫細胞を活性化することができる。
【0456】
特定の実施形態によると、刺激剤は、抗原非特異的な刺激因子を含む。
【0457】
非特異的な刺激因子は、当業者に公知である。したがって、免疫細胞がT細胞を含む場合、抗原非特異的な刺激因子の非限定的な例は、限定されないが、抗CD28抗体などの共刺激タンパク質と組み合わせた抗CD3抗体といったT細胞表面構造に結合し、T細胞のポリクローナル刺激を誘導することが可能な薬剤であり得る。他の非限定的な例としては、単独又は抗CD3との様々な組み合わせにおける抗CD2、抗CD137、抗CD134、Notchリガンド(例えば、Delta様1/4)、Jagged1/2が挙げられる。T細胞のポリクローナル刺激を誘導し得る他の薬剤としては、マイトジェン、PHA、PMA-イオノマイシン、CEB及びCytoStim(Miltenyi Biotech社製)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態によると、抗原非特異的な刺激因子は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を含む。特定の実施形態によると、T細胞刺激因子は、Miltenyi Biotec社から入手できるCD3CD28 MACSiBeadsなどの抗CD3及び抗CD28被覆ビーズを含む。
【0458】
特定の実施形態によると、刺激剤は、抗原特異的な刺激因子を含む。
【0459】
抗原特異的なT細胞刺激因子の非限定的な例としては、抗原を担持した抗原提示細胞[APC、例えば樹状細胞]及びペプチドを担持した組換えMHCが挙げられる。したがって、例えば、T細胞刺激因子は、所望の抗原(例えば、腫瘍抗原)を予め担持しておいた樹状細胞又は所望の抗原をコードするmRNAをトランスフェクトした樹状細胞であり得る。
【0460】
特定の実施形態によると、抗原は、癌抗原である。
【0461】
本明細書で使用する場合、「癌抗原」という用語は、非癌性細胞と比較して、癌性細胞によって過剰発現されるか又は癌性細胞のみによって発現される抗原を示す。癌抗原は、公知の癌抗原又は癌細胞において発生する新たな特異的抗原(即ちネオ抗原)であり得る。
【0462】
公知の癌抗原の非限定的な例としては、MAGE-AI、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-AS、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-AS、MAGE-A9、MAGE-AIO、MAGE-All、MAGE-A12、GAGE-I、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7、GAGE-8、BAGE-l、RAGE-1、LB33/MUM-1、PRAME、NAG、MAGE-Xp2(MAGE-B2)、MAGE-Xp3(MAGE-B3)、MAGE-Xp4(MAGE-B4)、MAGE-Cl/CT7、MAGE-C2、NY-ES0-1、LAGE-1、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-3、SSX-4、SSX-5、SCP-1及びXAGE、メラノサイト分化抗原、p53、ras、CEA、MUCI、PMSA、PSA、チロシナーゼ、メランA、MART-I、gplOO、gp75、アルファアクチニン-4、Bcr-Abl融合タンパク質、Casp-8、ベータ-カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa-1、dek-can融合タンパク質、EF2、ETV6-AML1融合タンパク質、LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA-A2、HLA-All、hsp70-2、KIAA0205、Mart2、Mum-2及び3、neo-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARアルファ融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、GnTV、Herv-K-mel、NA-88、SP17及びTRP2-Int2、(MART-I)、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタイン・バーウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、plSOerbB-3、c-met、nm-23Hl、PSA、TAG-72-4、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、アルファ-フェトプロテイン、13HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3(CA27.29/BCAA)、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68/KP1、C0-029、FGF-5、0250、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/170K、NYCO-I、RCASI、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質/シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPS、チロシナーゼ関連タンパク質、TRP-1又はTRP-2が挙げられる。
【0463】
発現させることができる他の腫瘍抗原は、当技術分野で周知である(例えば、国際公開第00/20581号、Cancer Vaccines and Immunotherapy (2000) Eds Stern, Beverley and Carroll, Cambridge University Press, Cambridgeを参照されたい)。これらの腫瘍抗原の配列は、公知データベースから容易に入手可能であるが、国際公開第1992/020356号A1、国際公開第1994/005304号A1、国際公開第1994/023031号A1、国際公開第1995/020974号A1、国際公開第1995/023874号A1及び国際公開第1996/026214号A1でも確認することができる。
【0464】
上記の代わりに又は上記に加えて、腫瘍抗原は、例えば、生検によって対象から得られた癌細胞を使用して識別することもできる。
【0465】
したがって、特定の実施形態によると、刺激剤は、癌細胞を含む。
【0466】
特定の実施形態によると、活性化は、抗癌剤の存在下で行われる。
【0467】
特定の実施形態によると、免疫細胞は、活性化後に精製する。
【0468】
したがって、本発明は、本発明の方法によって得ることができる単離された免疫細胞も企図する。
【0469】
特定の実施形態によると、本発明において使用され及び/又は得られる免疫細胞は、単離したばかりの、例えば液体窒素温度において、任意の段階で、将来使用するために長期間(例えば、数か月、数年)にわたって保存(例えば、凍結保存)(即ち冷凍)されたもの及び細胞株であり得る。
【0470】
凍結保存の方法は、当業者に広く公知であり、例えば国際公開第2007/054160号及び同第2001/039594号並びに米国特許出願公開第2012/0149108号明細書に開示されている。
【0471】
特定の実施形態によると、本発明によって得られる細胞は、細胞バンク、又は保管所、又は保存施設において保存され得る。
【0472】
結果として、本教示は、免疫細胞の活性化が有効に作用し得る疾患(例えば、過剰増殖性疾患)や、免疫抑制及び感染症に関連する疾患のための養子免疫細胞療法の原料としての、本発明の単離された免疫細胞の使用及び方法をさらに示唆するが、これに限定されない。
【0473】
したがって、特定の実施形態によると、本発明の方法は、免疫細胞の養子移入を必要とする対象に対して、活性化後に免疫細胞を養子移入することを含む。
【0474】
特定の実施形態によると、養子細胞療法において使用するための、本発明の方法によって得ることができる免疫細胞を提供する。
【0475】
本発明の特定の実施形態において使用する細胞は、自家性又は非自家性であり得、同系又は非同系であり得、対象に対して同種又は異種であり得る。それぞれの可能性が本発明の別個の実施形態を表す。
【0476】
本教示は、ヘテロダイマーによる治療が有効に作用し得る疾患を治療する方法における、本発明の組成物(例えば、ヘテロダイマー、それを含む組成物、それをコードする核酸構築物又はシステム又はそれを発現する宿主細胞)の使用も企図する。
【0477】
したがって、本発明の一態様によると、ヘテロダイマーによる治療が有効に作用し得る疾患を治療するための方法であって、それを必要とする対象にヘテロダイマー、それを含む組成物、それをコードする核酸構築物又はシステム又はそれを含む宿主細胞を投与し、対象の疾患を治療する方法が提供される。
【0478】
本発明の追加の又は代替の態様によると、ヘテロダイマーによる治療が有効に作用し得る疾患を治療するために使用する、ヘテロダイマー、それを含む組成物、それをコードする核酸構築物又はシステム又はそれを含む宿主細胞が提供される。
【0479】
「治療すること」又は「治療」という用語は、病気(疾患、障害又は医学的状態)の発症を阻害、防止若しくは抑止すること及び/又は病気若しくは病気の症状の低減、軽快若しくは軽減をもたらすことを示す。当業者は、病気の発症を評価するために様々な方法論及びアッセイを使用することができ、同様に病気の低減、軽快又は軽減を評価するために様々な方法論及びアッセイが使用可能であることが理解されるであろう。
【0480】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語には、任意の年齢及び任意の性別の哺乳動物、例えばヒトが含まれる。特定の実施形態によると、「対象」という用語は、病気(疾患、障害又は医学的状態)を患う対象を示す。特定の実施形態によると、この用語には、病気を発症するリスクを有する個体が包含される。
【0481】
特定の実施形態によると、疾患(例えば、癌細胞)に関連する細胞は、2種のポリペプチドの少なくとも1つの天然の結合相手を発現する。
【0482】
特定の実施形態によると、疾患(例えば、癌細胞)に関連する細胞は、2種のポリペプチドの天然の結合相手を発現する。
【0483】
特定の実施形態によると、疾患は、免疫細胞の活性化が有効に作用し得る。
【0484】
本明細書で使用する場合、「免疫細胞の活性化が有効に作用し得る疾患」という表現は、対象の免疫応答活性が、少なくとも疾患の症状を寛解させるか又は症状の発症を遅延させるには十分であり得るが、これを行う対象の免疫応答の活性が何らかの理由で最適未満である疾患を示す。
【0485】
免疫細胞の活性化が有効に作用し得る疾患の非限定的な例としては、過剰増殖性疾患、免疫抑制に関連する疾患、薬物(例えば、mTOR阻害剤、カルシニューリン阻害剤、ステロイド)により引き起こされる免疫抑制及び感染症が挙げられる。
【0486】
特定の実施形態によると、疾患は、過剰増殖性疾患を含む。
【0487】
特定の実施形態によると、過剰増殖性疾患は、硬化症、線維症、特発性肺線維症、乾癬、全身性硬化症/強皮症、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、肝線維症、放射線誘発肺線維症の防止、骨髄線維症又は後腹膜線維症を含む。
【0488】
他の特定の実施形態によると、過剰増殖性疾患は、癌を含む。
【0489】
本明細書で使用する場合、癌という用語には、悪性癌及び前悪性癌の両方が包含される。
【0490】
前悪性又は良性形態の癌に関して、任意選択で、前悪性癌が悪性形態に進行することを停止するために、本組成物及びその方法を適用することができる。
【0491】
本発明のいくつかの実施形態の方法によって治療され得る癌は、任意の固形癌若しくは非固形癌及び/又は転移癌であり得る。
【0492】
特定の実施形態によると、癌は、悪性癌を含む。
【0493】
本発明のいくつかの実施形態の方法によって治療することのできる癌は、任意の固形又は非固形癌及び/又は転移癌である。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、(胃腸癌を含む)胃癌(gastric cancer又はstomach cancer)、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌又は腎癌、肝癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌及び様々な種類の頭頸部癌並びにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL、巨大腫瘤病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む)、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、ヘアリーセル白血病、慢性骨髄芽球性白血病(CML)及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)並びに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連するもの)及びメイグス症候群が挙げられる。
【0494】
特定の実施形態によると、癌は、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝癌、膵癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫及び多発性骨髄腫からなる群から選択される。本発明の治療に適した癌性状態としては、転移性癌が挙げられる。
【0495】
特定の実施形態によると、癌は、前悪性癌を含む。
【0496】
前悪性癌(又は前癌)は、十分に特徴付けられ、当技術分野で公知である(例えば、Berman JJ. and Henson DE., 2003. Classifying the precancers: a metadata approach. BMC Med Inform Decis Mak. 3:8を参照されたい)。本発明の方法による治療に適した前悪性癌のクラスとしては、後天的な小型又は顕微鏡的前悪性癌、核異型を伴う後天的な大型病変、癌に進行する遺伝性過形成症候群と共に起こる前駆病変並びに後天的なびまん性過形成及びびまん性異形成が挙げられる。小型又は顕微鏡的前悪性癌の例としては、HGSIL(子宮頸部の高悪性度扁平上皮内病変)、AIN(肛門上皮内腫瘍)、声帯の形成異常、(結腸の)異常腺窩巣、PIN(前立腺上皮内腫瘍)が挙げられる。核異型を伴う後天的な大型病変の例としては、管状腺腫、AILD(タンパク異常血症を伴う血管免疫芽球性リンパ節症)、非定型髄膜腫、胃ポリープ、大斑型の類乾癬、骨髄形成異常、乳頭状移行上皮内癌、過剰な芽細胞を伴う難治性貧血及びシュナイダー乳頭腫が挙げられる。癌に進行する遺伝性過形成症候群と共に起こる前駆病変の例としては、異常なほくろ症候群(atypical mole syndrome)、C細胞腺腫症(C cell adenomatosis)及びMEAが挙げられる。後天的なびまん性過形成及びびまん性異形成の例としては、AIDS、非定型リンパ増殖、骨パジェット病、移植後リンパ増殖性疾患及び潰瘍性大腸炎が挙げられる。
【0497】
特定の実施形態によると、癌は、急性骨髄性白血病、肛門癌、基底細胞癌腫、B細胞性非ホジキンリンパ腫、胆管癌、膀胱癌、乳癌、子宮頚癌、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸直腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、子宮内膜癌、食道癌、卵管癌、濾胞性リンパ腫、胃癌、食道胃(GE)接合部癌腫、胚細胞腫瘍、胚細胞腫(精上皮腫)、胚細胞腫瘍、多形神経膠芽腫(GBM)、膠肉腫、頭部及び頸部癌、肝細胞性癌腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、外套細胞リンパ腫、黒色腫、メルケル細胞癌腫、多発性黒色腫、神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔(口)癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、末梢神経鞘腫瘍(神経線維肉腫)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、腹膜癌、前立腺癌、腎細胞癌腫、唾液腺癌、皮膚癌、小細胞肺癌、軟組織肉腫、扁平上皮細胞癌腫、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌腫、甲状腺癌、尿管癌、尿道癌、子宮癌、膣癌又は外陰癌である。
【0498】
特定の実施形態によると、癌は、急性骨髄性白血病、膀胱癌、乳癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、卵巣上皮癌、上皮性腫瘍、卵管癌、濾胞性リンパ腫、多形神経膠芽腫、肝細胞癌、頭頸部癌、白血病、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌である。
【0499】
特定の実施形態によると、癌は、リンパ腫、白血病及び癌腫(例えば、結腸癌、卵巣癌、肺癌、頭頸部癌、肝細胞癌)からなる群から選択される。
【0500】
特定の実施形態によると、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0501】
特定の実施形態によると、癌は、中皮腫[例えば、悪性胸膜中皮腫(MPM)]である。
【0502】
特定の実施形態によると、白血病は、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性顆粒球白血病、慢性顆粒球白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、白血球性(leukocythemic)白血病、好塩基球性白血病、芽細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄球性白血病、皮膚白血病、胎生細胞性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリーセル白血病、血球母細胞性(hemoblastic)白血病、血球芽細胞性(hemocytoblastic)白血病、組織球白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、リンパ向性白血病、リンパ様白血病、リンパ肉腫細胞白血病、マスト細胞白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄球性白血病、骨髄顆粒球白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞白血病、形質細胞性白血病、前骨髄球性白血病、Rieder細胞白血病、Schilling白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病及び未分化細胞白血病からなる群から選択される。
【0503】
特定の実施形態によると、白血病は、前骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病又は慢性骨髄性白血病である。
【0504】
特定の実施形態によると、癌は、リンパ腫である。
【0505】
特定の実施形態によると、リンパ腫は、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫である。
【0506】
特定の実施形態によると、非ホジキンリンパ腫は、侵襲性NHL、形質転換NHL、緩徐進行性NHL、再発性NHL、難治性NHL、低悪性度非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、大細胞型リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、NK細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性リンパ腫及び菌状息肉症/Sezry症候群を含む皮膚T細胞癌からなる群から選択される。
【0507】
特定の実施形態によると、癌は、多発性骨髄腫である。
【0508】
少なくともいくつかの実施形態によると、多発性骨髄腫は、カッパ型の軽鎖及び/又はラムダ型の軽鎖を生成する多発性骨髄腫癌、原発性形質細胞白血病(PCL)を含む侵襲性多発性骨髄腫、多発性骨髄腫に進行し得るMGUS(良性単クローン性ガンマグロブリン血症)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM、別名、リンパ形質細胞性リンパ腫)などの良性形質細胞障害、くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)、緩徐進行性多発性骨髄腫、同様に多発性骨髄腫に進行し得る前悪性形態の多発性骨髄腫、原発性アミロイドーシスからなる群から選択される。
【0509】
特定の実施形態によると、癌は、腫瘍微小環境中に腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を有する腫瘍及び/又は腫瘍微小環境中での天然の結合相手の発現が比較的高い腫瘍の存在によって定義される。
【0510】
特定の実施形態によると、疾患は、免疫抑制に関連する疾患又は薬物(例えば、mTOR阻害剤、カルシニューリン阻害剤、ステロイド)により引き起こされる免疫抑制を含む。
【0511】
特定の実施形態によると、疾患は、HIV、麻疹、インフルエンザ、LCCM、RSV、ヒトライノウイルス、EBV、CMV又はパルボウイルスによるものを含む。
【0512】
特定の実施形態によると、疾患は、感染症を含む。
【0513】
本明細書で使用する場合、「感染症」又は「感染性疾患」という用語は、病原体によって引き起こされる疾患を示す。病原体の特定例としては、ウイルス病原体、細菌病原体、例えば細胞内マイコバクテリア病原体(例えば、Mycobacterium tuberculosisなど)、細胞内細菌病原体(例えば、Listeria monocytogenesなど)又は細胞内原虫病原体(例えば、Leishmania及びTrypanosomaなど)が挙げられる。
【0514】
本発明の教示に従って治療可能な感染性疾患を引き起こす特定の種類のウイルス病原体としては、レトロウイルス、サーコウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、イリドウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、ピコルナウイルス、カリシウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、アレナウイルス及びフィロウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0515】
本発明の教示に従って治療され得るウイルス感染症の特定例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)誘導性後天性免疫不全症候群(AIDS)、インフルエンザ、ライノウイルス感染症、ウイルス性髄膜炎、エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染症、A型、B型又はC型肝炎ウイルス感染症、麻疹、パピローマウイルス感染症/疣贅、サイトメガロウイルス(CMV)感染症、単純ヘルペスウイルス感染症、黄熱、エボラウイルス感染症、狂犬病などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0516】
特定の実施形態によると、本願で開示する組成物(例えば、ヘテロダイマー、それを含む組成物、それをコードする核酸構築物又はシステム及び/又はそれを発現する宿主細胞)は、鎮痛薬、化学療法剤、放射線治療剤、細胞傷害性療法(コンディショニング)、ホルモン療法、抗体及び当技術分野で周知の他の治療レジメン(例えば、手術)を含むが、これらに限定されない、疾患を治療するための他の確立された治療レジメン又は実験的な治療レジメンと組み合わせて対象に投与することができる。
【0517】
特定の実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態の組成物と組み合わせて投与される治療剤は、抗体を含む。
【0518】
特定の実施形態によると、本願で開示する組成物(例えば、ヘテロダイマー、それを含む組成物、それをコードする核酸構築物及び/又はそれを発現する宿主細胞)は、骨髄細胞、造血幹細胞、PBMC、臍帯血幹細胞及び/又は誘導多能性幹細胞の移植などの養子細胞移植と組み合わせて対象に投与することができるが、これに限定されない。
【0519】
特定の実施形態によると、いくつかの実施形態の組成物と組み合わせて投与される治療剤は、抗癌剤を含む。
【0520】
特定の実施形態によると、いくつかの実施形態の組成物と組み合わせて投与される治療剤は、抗感染症剤(例えば、抗生物質及び抗ウイルス剤)を含む。
【0521】
特定の実施形態によると、いくつかの実施形態の組成物と組み合わせて投与される治療剤は、免疫抑制剤(例えば、GCSF及び他の骨髄刺激因子、ステロイド)を含む。
【0522】
特定の実施形態によると、併用療法には、相加効果がある。
【0523】
特定の実施形態によると、併用療法には、相乗効果がある。
【0524】
本発明の別の態様によると、疾患を治療するための治療剤をパッケージングするパッケージング材料と、ヘテロダイマー、それを含む組成物、それをコードする核酸構築物又はシステム又はそれを含む宿主細胞とを含む製品を提供する。
【0525】
特定の実施形態によると、製品は、ヘテロダイマーによる治療が有効となり得る疾患、例えば免疫細胞の活性化が有効となり得る疾患の治療用と特定されている。
【0526】
特定の実施形態によると、疾患を治療するための治療剤と、ヘテロダイマー、それを含む組成物、それをコードする核酸構築物又はシステム又はそれを発現する宿主細胞とは、別々の容器に収容されている。
【0527】
特定の実施形態によると、その疾患を治療するための治療剤と、ヘテロダイマー、それを含む組成物、それをコードする核酸構築物又はシステム又はそれを発現する宿主細胞とは、合剤として収容されている。
【0528】
本明細書で使用されるように、「アミノ酸配列」、「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク性部分」という用語は、本明細書において代替的に使用され、本来のペプチド(分解生成物、人工的に合成されたペプチド又は組換えペプチドのいずれか)及びペプチドミメティック(一般には人工的に合成されたペプチド)並びに例えばペプチドを体内でより安定性にするか、又は細胞内にさらに浸透することができるようにする修飾を有し得るペプチド類似体であるペプトイド及びセミペプトイドを包含する。かかる修飾としては、限定されないが、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾、主鎖修飾及び残基修飾などが挙げられる。ペプチド模倣化合物を調製するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、Quantitative Drug Design, C.A. Ramsden Gd., Chapter 17.2, F. Choplin Pergamon Press (1992)において特定されている。この文献は、本明細書に完全に記載されているかのように参照により援用される。これに関するさらなる詳細を本明細書で後述する。
【0529】
ペプチド内のペプチド結合(-CO-NH-)は、例えば、N-メチル化結合(-N(CH3)-CO-)、エステル結合(-C(R)H-C-O-O-C(R)-N-)、ケトメチレン結合(-CO-CH2-)、スルフィニルメチレン結合(-S(=O)-CH2-)、α-アザ結合(-NH-N(R)-CO-)(式中、Rは、任意のアルキル、例えばメチルである)、アミン結合(-CH2-NH-)、スルフィド結合(-CH2-S-)、エチレン結合(-CH2-CH2-)、ヒドロキシエチレン結合(-CH(OH)-CH2-)、チオアミド結合(-CS-NH-)、オレフィン二重結合(-CH=CH-)、フッ化オレフィン二重結合(-CF=CH-)、レトロアミド結合(-NH-CO-)、ペプチド誘導体(-N(R)-CH2-CO-)(式中、Rは、炭素原子に天然で生じる「正常な」側鎖である)によって置換され得る。
【0530】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿った結合のいずれかで起こり得、さらにいくつか(2~3)の結合において同時に起こり得る。
【0531】
天然の芳香族アミノ酸であるTrp、Tyr及びPheは、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(TIC)、ナフチルアミン(Nol)、Pheの環メチル化誘導体、Phe又はO-メチル-Tyrのハロゲン化誘導体などの合成の非天然酸に置換され得る。
【0532】
本発明のいくつかの実施形態におけるペプチドは、1つ又は複数の修飾アミノ酸又は1つ又は複数の非アミノ酸モノマー(例えば、脂肪酸、複合炭水化物等)も含み得る。
【0533】
1つ又は複数の「アミノ酸」という用語は、20の天然アミノ酸、in vivoで翻訳後に修飾されることが多いアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、ホスホセリン及びホスホトレオニンなど、及び他の珍しいアミノ酸、限定されないが、2-アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシン及びオルニチンなどを包含すると理解される。さらに、「アミノ酸」という用語は、D-アミノ酸とL-アミノ酸との両方を含む。
【0534】
以下の表2及び表3には、本発明のいくつかの実施形態で使用することができる天然アミノ酸(表2)及び非慣例的又は修飾アミノ酸(例えば、合成、表3)を列挙する。
【0535】
【0536】
【0537】
【0538】
【0539】
【0540】
本発明のいくつかの実施形態のポリペプチドは、好ましくは、線状形態で用いられるが、環化がペプチドの特徴に著しく干渉しない場合、環状形態のペプチドを用い得ることが理解されるであろう。
【0541】
本発明のヘテロダイマーは、ヘテロダイマーが可溶型であることが要求される療法に使用されることが好ましいため、本発明のいくつかの実施形態におけるポリペプチドは、1種又は複数の非天然又は天然の極性アミノ酸(ヒドロキシル含有側鎖によってペプチドの可溶性を上げることのできるセリン及びスレオニンが挙げられるが、これらに限定されない)を含む。
【0542】
本発明のポリペプチドのアミノ酸は、保存的又は非保存的に置換され得る。
【0543】
本明細書に記載の「保存的置換」という用語は、ペプチドにおける天然配列に存在するアミノ酸を、天然又は非天然のアミノ又は同様の立体特性を有するペプチドミメティックで置換することを示す。置換されるべき天然アミノ酸の側鎖が極性又は疎水性である場合、保存的置換は、(置換されたアミノ酸の側鎖と同じ立体特性を有することに加えて)同様に極性又は疎水性である天然アミノ酸、非天然アミノ酸又はペプチドミメティック部位との置換であるべきである。
【0544】
天然アミノ酸は、一般に、その特性に従って分類され、本発明によれば、立体的に類似した非荷電アミノ酸による荷電アミノ酸の置換は、保存的置換であるとみなされることから、天然アミノ酸による保存的置換を容易に決定することができる。
【0545】
非天然アミノ酸による保存的置換を行うために、当技術分野でよく知られているアミノ酸類似体(合成アミノ酸)を使用することも可能である。天然アミノ酸のペプチドミメティックは、当業者に公知の文献に十分に記述されている。
【0546】
保存的置換を起こす場合、置換するアミノ酸は、側鎖に元のアミノ酸と同じ又は類似の置換基を有さなければならない。
【0547】
機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野で周知である。いずれのアミノ酸変化が表現型的にサイレントである可能性が高いかに関する指針は、Bowie et al., 1990, Science 247: 1306 1310でも確認することができる。このような保存的に修飾された変異体は、多型変異体、種間ホモログ及び対立遺伝子に追加されるものであり、これらを除外するものではない。典型的な保存的置換としては、1)アラニン(A)、グリシン(G)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、7)セリン(S)、スレオニン(T)、及び8)システイン(C)、メチオニン(M)が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照されたい)。アミノ酸は、側鎖に関連する特性に基づいて置換することができる。例えば、極性側鎖を有するアミノ酸、例えばセリン(S)及びスレオニン(T)、側鎖の電荷に基づくアミノ酸、例えばアルギニン(R)及びヒスチジン(H)並びに疎水性側鎖を有するアミノ酸、例えばバリン(V)及びロイシン(L)の置換が可能である。示されるように、典型的に変化は、わずかな性質のものであり、例えばタンパク質のフォールディング又は活性に著しく影響しない保存的アミノ酸置換などである。
【0548】
本明細書で使用される「非保存的置換」という語句は、異なる電気化学特性及び/又は立体特性を有する他の天然アミノ酸又は非天然アミノ酸により、親配列に存在するアミノ酸が置換されることを示す。したがって、置換するアミノ酸の側鎖は、置換される天然アミノ酸の側鎖より著しく大きい(又は小さい)及び/又は置換されるアミノ酸と比べて著しく異なる電子特性を有する官能基を有し得る。このタイプの非保存的置換の例としては、アラニンをフェニルアラニン又はシクロヘキシルメチルグリシンで置換、グリシンをイソロイシンで置換又はアスパラギン酸を-NH-CH[(-CH2)5-COOH]-CO-で置換することが挙げられる。本発明の範囲内であるこれらの非保存的置換は、抗細菌特性を有するペプチドを依然として構成する置換である。
【0549】
本発明のペプチドのN及びC末端は、官能基によって保護され得る。適切な官能基は、その教示が参照により本明細書に援用される、Green and Wuts, “Protecting Groups in Organic Synthesis”, John Wiley and Sons, Chapters 5 and 7, 1991に記述されている。好ましい保護基は、例えば、化合物の親水性を低減し、化合物の親油性を高めることにより、それに結合した化合物の細胞内への輸送を促進する基である。
【0550】
特定の実施形態において、官能基の付加によって1つ又は複数のアミノ酸を修飾し得、例えば概念的に「化学修飾」し得る。例えば、天然の配列に存在する側鎖アミノ酸残基は、任意選択で修飾され得るが、しかし、代替的に、後述するように、タンパク質の他の部分は、側鎖アミノ酸残基に加えて又はその代わりに任意選択で修飾され得る。化学合成プロセスが続く場合、修飾は、任意選択で、分子の合成中、例えば化学修飾されたアミノ酸を付加することによって行われ得る。しかしながら、分子中に既に存在するアミノ酸の化学修飾(「in situ」修飾)も可能である。ペプチド又はタンパク質に対する修飾は、例えば、遺伝子合成、エキソヌクレアーゼ欠失による部位指向性(例えば、PCRベースの)突然変異誘発若しくはランダム突然変異誘発(例えば、EMS)、化学修飾又は異種ドメイン若しくは結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の融合によって導入することができる。
【0551】
本明細書で使用する場合、「化学修飾」という用語は、ペプチドに言及している場合、そのアミノ酸残基の少なくとも1つが、プロセシング若しくは他の翻訳後修飾などの天然プロセス又は当技術分野で周知の化学修飾技術のいずれかによって修飾されているペプチドを示す。非限定的な代表的な修飾としては、カルボキシメチル化、アセチル化、アシル化、リン酸化、グリコシル化、アミド化、ADP-リボシル化、脂肪酸のアシル化、ファルネシル基、イソファルネシル基、炭化水素基、脂肪酸基、結合のためのリンカーの付加、官能化、GPIアンカー形成、脂質若しくは脂質誘導体の共有結合、メチル化、ミリスチル化、PEG化、プレニル化、リン酸化、ユビキチン化又は任意の同様のプロセス並びに公知の保護基/ブロッキング基が挙げられる。エーテル結合を任意選択で使用して、セリン又はスレオニンのヒドロキシルを糖のヒドロキシルに結合させ得る。アミド結合を任意選択で使用して、グルタメート又はアスパルテートのカルボキシル基を糖のアミノ基に結合させ得る(Garg and Jeanloz, Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, Vol. 43, Academic Press (1985)、Kunz, Ang. Chem. Int. Ed. English 26:294-308 (1987))。アミノ酸と炭水化物との間にアセタール結合及びケタール結合を任意選択で形成し得る。例えば、遊離アミノ基(例えば、リジン)のアシル化により、脂肪酸アシル誘導体を任意選択で作り得る(Toth et al., Peptides: Chemistry, Structure and Biology, Rivier and Marshal, eds., ESCOM Publ., Leiden, 1078-1079 (1990))。
【0552】
特定の実施形態によると、修飾には、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に援用される国際出願第2006/050262号に記載のように、ペプチドへのシクロアルカン部分の付加が含まれる。これらの部分は、生体分子と共に使用されるように設計され、任意選択で、様々な特性をタンパク質に与えるために使用され得る。
【0553】
さらに、任意選択で、ペプチドのいずれの部分も修飾し得る。例えば、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に援用される国際出願第2006/050247号に記載のように、タンパク質のグリコシル化部分のPEG化を任意選択で行い得る。1つ又は複数のポリエチレングリコール(PEG)基をO-結合型及び/又はN-結合型グリコシル化に任意選択で付加し得る。PEG基は、任意選択で、分枝状又は直鎖状であり得る。任意選択で、任意の種類の水溶性ポリマーを、グリコシルリンカーを介してタンパク質のグリコシル化部位に結合させ得る。
【0554】
「PEG化されたタンパク質」とは、タンパク質のアミノ酸残基にポリエチレングリコール(PEG)部分が共有結合した、生物学的活性を有するタンパク質又はその断片を示す。
【0555】
「ポリエチレングリコール」又は「PEG」とは、ポリアルキレングリコール化合物又はその誘導体を意味し、カップリング剤又はカップリング部分若しくは活性化部分での(例えば、チオール、トリフレート、トレシレート、アジリジン、オキシランでの又は好ましくはマレイミド部分での)誘導体化の有無を問わない。マレイミドモノメトキシPEGなどの化合物は、例示的な又は活性化された本発明のPEG化合物である。本発明では、他のポリアルキレングリコール化合物、例えばポリプロピレングリコールを使用し得る。他の適切なポリアルキレングリコール化合物としては、以下の種類の荷電ポリマー又は中性ポリマー:デキストラン、コロミン酸又は他の炭水化物ベースのポリマー、アミノ酸のポリマー及びビオチン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0556】
特定の実施形態によると、ペプチドは、改変された(即ち元の又は本来のグリコシル化パターンから改変された)グリコシル化パターンを有するように修飾され得る。本明細書で使用する場合、「改変された」とは、1つ又は複数の炭水化物部分が欠失していること及び/又は少なくとも1つのグリコシル化部位が元のタンパク質に付加されていることを示す。
【0557】
タンパク質のグリコシル化は、典型的には、N-結合型又はO-結合型のいずれかである。N-結合型とは、炭水化物部分がアスパラギン残基の側鎖に結合していることを示す。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニンのトリペプチド配列(ここで、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への酵素的な炭水化物部分の結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド内にこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が生じる。O-結合型グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸(5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンも使用され得るが、最も一般的にはセリン又はスレオニン)に対する、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースの糖類の1つの結合を示す。
【0558】
ペプチドへのグリコシル化部位の付加は、ペプチドのアミノ酸配列が前述のトリペプチド配列の1つ又は複数を含有するようにこれを改変することにより、簡便に遂行される(N-結合型グリコシル化部位の場合)。改変は、本来のペプチドの配列における1つ又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加又はこれらによる置換によって作製することもできる(O-結合型グリコシル化部位の場合)。ペプチドのアミノ酸配列は、DNAレベルで変化を導入することによって改変することもできる。
【0559】
ペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、ペプチドのアミノ酸残基にグリコシドを化学的又は酵素的にカップリングする方法である。使用するカップリング様式に応じて、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えばシステインのもの、(d)遊離ヒドロキシル基、例えばセリン、スレオニン若しくはヒドロキシプロリンのもの、(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシン若しくはトリプトファンのもの、又は(f)グルタミンのアミド基に糖類を結合させ得る。これらの方法は、国際公開第87/05330号及びAplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., 22: 259-306 (1981)に記載されている。
【0560】
ペプチドに存在する任意の炭水化物部分の除去は、化学的に、酵素的に又はDNAレベルで変化を導入することにより遂行され得る。化学的脱グリコシル化は、トリフルオロメタンスルホン酸又は同等の化合物にタンパク質を曝露させることを必要とする。この治療は、結合糖(linking sugar)(N-アセチルグルコサミン又はN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんど又は全ての糖の切断をもたらし、アミノ酸配列を未変化のままにする。
【0561】
化学的脱グリコシル化は、Hakimuddin et al., Arch. Biochem. Biophys., 259: 52 (1987)及びEdge et al., Anal. Biochem., 118: 131 (1981)に記載されている。タンパク質にある炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura et al., Meth. Enzymol., 138: 350 (1987)に記載されているように、種々のエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼを使用することによって達成することができる。
【0562】
本発明のいくつかの実施形態のポリペプチド及びそれを含むヘテロダイマーは、限定されないが、固相技術及び組換え技術など、ペプチド合成の当業者に知られている任意の技術によって合成及び精製され得る。
【0563】
特定の実施形態によると、ポリペプチド及び/又はヘテロダイマーの調製には、固相ペプチド合成が含まれる。
【0564】
固相ペプチド合成については、多くの技術の概要をJ. M. Stewart and J. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, W. H. Freeman Co. (San Francisco), 1963及びJ. Meienhofer, Hormonal Proteins and Peptides, vol. 2, p. 46, Academic Press (New York), 1973で確認することができる。従来型の溶液合成については、G. Schroder and K. Lupke, The Peptides, vol. 1, Academic Press (New York), 1965を参照されたい。
【0565】
一般的に、これらの方法は、成長中のペプチド鎖に1つ又は複数のアミノ酸又は適宜保護されたアミノ酸を連続的に付加することを含む。通常、第1のアミノ酸のアミノ基又はカルボキシル基を適切な保護基で保護する。保護又は誘導化されたアミノ酸は、次に、アミド結合の形成に適した条件下において、不活性な固体支持体に取り付けるか、溶液中で使用されて、適切に保護された相補的な(アミノ又はカルボキシル)基を有する配列中の次のアミノ酸に付加される。次に、この新たに付加したアミノ酸残基から保護基が取り除かれて、次の(適切に保護された)アミノ酸が付加され、このように続いていく。所望のアミノ酸の全てが正しい順番に結合したら、残存する保護基(及び固体支持体)を順次又は同時に除去し、最終ペプチド化合物を得る。この一般的な方法の単純な改変、例えば脱保護後にペンタペプチド等が形成されるように、保護されたトリペプチドを正しく保護されたジペプチドと(キラル中心をラセミ化しない条件下で)カップリングすることにより、成長する鎖に一度に複数のアミノ酸を付加することも可能である。ペプチド合成のさらなる説明は、米国特許第6,472,505号明細書に開示されている。
【0566】
大規模ペプチド合成は、Andersson Biopolymers 2000; 55(3):227-50によって記載されている。
【0567】
特定の実施形態によると、ポリペプチド又はそれを含むヘテロダイマーは、in vitro発現系を用いて合成される。
【0568】
したがって、本明細書に記載されるポリペプチドのいずれもポリヌクレオチドからコードすることができる。これらのポリヌクレオチドは、それ自体で使用するか、又は本明細書に開示されるポリペプチドの組換え産生において使用することができる。
【0569】
「組換え」ポリペプチドは、組換えDNA技術によって産生されるポリペプチドを指し、即ち所望のポリペプチドをコードする外因性DNA構築物で形質転換された細胞から産生される。
【0570】
したがって、本発明の別の態様によると、ヘテロダイマーをコードする少なくとも1種のポリヌクレオチドと、宿主細胞内でポリヌクレオチドの発現を指示する制御因子とを含む核酸構築物又はシステムが提供される。
【0571】
本発明の特定の実施形態と共に使用され得るポリヌクレオチド配列の非限定的な例は、上記及び以下の表1に記載されている。
【0572】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、単離され、RNA配列、相補的ポリヌクレオチド配列(cDNA)、ゲノムポリヌクレオチド配列及び/又は複合ポリヌクレオチド配列(例えば、上記の組み合わせ)の形態で提供される一本鎖又は二本鎖の核酸配列を示す。
【0573】
特定の実施形態によると、本願で開示する任意のポリヌクレオチド及び核酸配列は、保存的核酸置換を有し得る。保存的に修飾されたポリヌクレオチドとは、同一又は実質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指すか、又は核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、実質的に同一の又は関連した(例えば、天然に連続した)配列を示す。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一の核酸がほとんどのタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは、全てアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定される全ての位置において、このコドンは、コードされるポリペプチドを改変することなく、記載した対応するコドンを別のものに改変することができる。このような核酸変異は、「サイレント変異」であり、保存的に修飾された変異の一種である。本明細書におけるポリペプチドをコードする全てのポリヌクレオチド及び核酸配列は、その核酸のサイレント変異のことも表す。特定の文脈において、機能的に同一の分子をもたらすように核酸内の各コドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるAUG及び通常、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)が修飾され得ることが当業者に認識されるであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸のサイレント変異は、発現産物に関して記載される配列に黙示されている。
【0574】
哺乳動物細胞において外因性ポリペプチドを発現させるために、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を、好ましくは哺乳動物細胞での発現に好適な核酸構築物中にライゲーションする。そのような核酸構築物は、細胞におけるポリヌクレオチド配列の転写を構成的又は誘導性の様式で指示するプロモーター配列を含む。
【0575】
特定の実施形態によると、調節因子は、異種調節因子である。
【0576】
本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物(本明細書では「発現ベクター」とも呼ばれる)は、このベクターを、原核生物、真核生物又は好ましくは両方(例えば、シャトルベクター)における複製及び組み込みに好適なものにするさらなる配列を含む。加えて、典型的なクローニングベクターは、転写及び翻訳開始配列、転写及び翻訳ターミネーター並びにポリアデニル化シグナルも含有し得る。例として、そのような構築物は、典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成起点及び3’LTR又はその一部分を含む。
【0577】
本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物は、典型的には、構築物が入っている宿主細胞からペプチドを分泌させるためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は、哺乳動物のシグナル配列又は本発明のいくつかの実施形態のポリペプチド変異体のシグナル配列である。
【0578】
真核生物プロモーターは、典型的には、TATAボックス及び上流プロモーターエレメントという2種類の認識配列を含有する。転写開始部位から25~30塩基対上流に位置するTATAボックスは、RNAポリメラーゼによるRNA合成の開始に関与していると考えられている。他方の上流プロモーターエレメントは、転写開始の頻度を決定する。
【0579】
本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物に用いられるプロモーターは、形質転換された特定の細胞集団において活性を示すものが好ましい。細胞型特異的プロモーター及び/又は組織特異的プロモーターの例としては、肝臓特異的であるアルブミンなどのプロモーター[Pinkert et al., (1987) Genes Dev. 1:268-277]、リンパ様特異的プロモーター[Calame et al., (1988) Adv. Immunol. 43:235-275]、特にT細胞受容体のプロモーター[Winoto et al., (1989) EMBO J. 8:729-733]及び免疫グロブリンのプロモーター、[Banerji et al. (1983) Cell 33729-740]、ニューロン特異的プロモーター、例えば神経フィラメントプロモーター[Byrne et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5473-5477]、膵臓特異的プロモーター[Edlunch et al. (1985) Science 230:912-916]又は乳腺特異的プロモーター、例えば乳清プロモーター(米国特許第4,873,316号明細書及び欧州特許出願公開第264,166号明細書)が挙げられる。
【0580】
エンハンサーエレメントは、結合した相同プロモーター又は異種プロモーターによる転写を最大で1,000倍まで増加させることができる。エンハンサーは、転写開始部位から下流にあっても上流にあっても活性がある。ウイルスに由来する多くのエンハンサーエレメントが広い宿主範囲を有し、種々の組織において活性を示す。例えば、SV40初期遺伝子エンハンサーは、多くの細胞型に好適である。本発明のいくつかの実施形態に好適な他のエンハンサー/プロモーターの組み合わせとしては、ポリオーマウイルス、ヒト又はマウスサイトメガロウイルス(CMV)に由来するものや、マウス白血病ウイルス、マウス又はラウス肉腫ウイルス及びHIVなどの様々なレトロウイルスに由来する末端反復配列が挙げられる。参照により本明細書に援用されるEnhancers and Eukaryotic Expression, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York, 1983を参照されたい。
【0581】
発現ベクターの構築において、プロモーターは、その天然の環境における転写開始部位からの距離とほぼ同じ距離だけ異種の転写開始部位から離れた位置にあるのが好ましい。しかしながら、当技術分野で公知であるように、プロモーター機能を失うことなく、この距離のいくらかの差異が許容され得る。
【0582】
mRNA翻訳効率を増加させるために、ポリアデニル化配列を発現ベクターに付加することもできる。正確且つ効率的なポリアデニル化には、2つの特徴的な配列エレメントが必要である。それらは、ポリアデニル化部位の下流に位置するGUリッチ配列又はUリッチ配列と、11~30ヌクレオチド上流に位置する、高度に保存された6つのヌクレオチドのAAUAAA配列とである。本発明のいくつかの実施形態に好適な終結シグナル及びポリアデニル化シグナルとしては、SV40に由来するものが挙げられる。
【0583】
本発明のいくつかの実施形態の発現ベクターは、既に記載したエレメントに加えて、典型的にはクローニングされた核酸の発現レベルを上昇させること又は組換えDNAを有する細胞の識別を容易にすることを目的とした、他の特殊化したエレメントを含有し得る。例えば、いくつかの動物ウイルスは、許容細胞型におけるウイルスゲノムの染色体外複製を促進するDNA配列を含有する。こうしたウイルスのレプリコンを有するプラスミドは、プラスミド上又は宿主細胞のゲノム上の遺伝子によって適切な因子が提供される限り、エピソームとして複製される。
【0584】
ベクターは、真核生物レプリコンを含む場合もあれば、含まない場合もある。真核生物レプリコンが存在する場合、ベクターは、適切な選択可能マーカーを使用して真核細胞において増幅可能である。ベクターが真核生物レプリコンを含まない場合、エピソームの増幅は、不可能である。代わりに、組換えDNAは、工学的に操作された細胞のゲノムに組み込まれ、プロモーターが所望の核酸を発現させる。
【0585】
本発明のいくつかの実施形態の発現ベクターは、例えば、単一のmRNAからいくつかのタンパク質を翻訳することを可能にする、さらなるポリヌクレオチド配列、例えば内部リボソーム侵入部位(IRES)及びプロモーターキメラポリペプチドのゲノム組み込みのための配列をさらに含むことができる。
【0586】
したがって、特定の実施形態によると、ヘテロダイマーに含まれる両方のモノマーが1つの構築物から発現される。
【0587】
他の特定の実施形態によると、ヘテロダイマーに含まれるモノマーのそれぞれが異なる構築物から発現される。
【0588】
発現ベクターに含まれる個々のエレメントは、種々の構成で配置され得ることが理解されるであろう。例えば、エンハンサーエレメント、プロモーターなど、及びさらにヘテロダイマーのモノマーをコードするポリヌクレオチド配列は、「ヘッドトゥテール」構成で配置され得、逆相補鎖又は逆平行鎖中の相補鎖として存在し得る。このような構成の多様性は、発現ベクターの非コードエレメントで生じる可能性がより高いが、発現ベクターにおけるコード配列の代替的な構成も考えられる。
【0589】
哺乳動物の発現ベクターの例としては、Invitrogen社から入手可能なpcDNA3、pcDNA3.1(+/-)、pGL3、pZeoSV2(+/-)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81、Promega社から入手可能なpCI、Strategene社から入手可能なpMbac、pPbac、pBK-RSV及びpBK-CMV、Clontech社から入手可能なpTRES並びにこれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0590】
レトロウイルスなどの真核生物ウイルスに由来する調節エレメントを含有する発現ベクターを使用することもできる。SV40ベクターには、pSVT7及びpMT2が含まれる。ウシパピローマウイルスに由来するベクターとしては、pBV-1MTHAが挙げられ、エプスタイン・バーウイルスに由来するベクターとしては、pHEBO及びp2O5が挙げられる。他の例示的なベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE及びSV-40初期プロモーター、SV-40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター又は真核細胞における発現に有効であることが報告されている他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる。
【0591】
前述のように、ウイルスは、多くの場合、宿主の防御機構を回避するように進化してきた、非常に特殊化した感染性因子である。典型的には、ウイルスは、特定の細胞型に感染し、伝播する。ウイルスベクターの標的化特異性は、所定の細胞型を特異的に標的とする天然の特異性を用いることにより、組換え遺伝子を感染細胞に導入する。したがって、本発明のいくつかの実施形態によって使用するベクターの種類は、形質転換される細胞型によって決まる。形質転換する細胞型によって好適なベクターを選択する能力は、十分に当業者の能力の範疇にあり、したがって本明細書では選択に関する検討事項の概説を提供しない。例えば、骨髄細胞は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)を使用して標的化することができ、腎臓細胞は、Liang CY et al., 2004 (Arch Virol. 149: 51-60)に記載の、バキュロウイルスであるAutographa californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)に存在する異種プロモーターを使用して標的化することができる。
【0592】
組換えウイルスベクターは、水平感染及び標的化特異性などの利点をもたらすため、モノマー及びヘテロダイマーのin vivo発現に有用である。水平感染は、例えば、レトロウイルスの生活環に固有であり、単一の感染細胞が出芽して隣接細胞に感染する、多くの子孫ビリオンを生成するプロセスである。その結果、広い範囲が急速に感染し、そのほとんどは、最初は元のウイルス粒子に感染していなかったものである。これは、感染性因子が娘子孫を通してのみ伝播する垂直型の感染と対照的である。水平に伝播することができないウイルスベクターを作製することもできる。この特徴は、特定の遺伝子を限局的な数の標的細胞のみに導入することが所望の目的である場合に有用であり得る。
【0593】
本発明のいくつかの実施形態の発現ベクターを細胞に導入するために様々な方法を使用することができる。そのような方法は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New York (1989, 1992)、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Md. (1989)、Chang et al., Somatic Gene Therapy, CRC Press, Ann Arbor, Mich. (1995)、Vega et al., Gene Targeting, CRC Press, Ann Arbor Mich. (1995)、Vectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses, Butterworths, Boston Mass. (1988)及びGilboa et at.[Biotechniques 4 (6): 504-512, 1986]に概説されており、例えば安定トランスフェクション又は一過性トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔及び組換えウイルスベクターによる感染を含む。加えて、陽性-陰性の選択方法に関しては、米国特許第5,464,764号明細書及び同第5,487,992号明細書を参照されたい。
【0594】
ウイルス感染による核酸の導入には、リポフェクション及び電気穿孔などの他の方法と比べていくつかの利点がある。これは、ウイルスの感染性の性質のため、より高いトランスフェクション効率を得ることができるからである。
【0595】
現在好ましいin vivoでの核酸移入技術としては、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルスI型又はアデノ随伴ウイルス(AAV)及び脂質ベースの系といったウイルス構築物又は非ウイルス構築物のトランスフェクションが挙げられる。脂質を介した遺伝子の移入に有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE及びDC-Cholである[Tonkinson et al., Cancer Investigation, 14 (1): 54-65 (1996)]。遺伝子療法において使用するのに最も好ましい構築物は、ウイルスであり、最も好ましくはアデノウイルス、AAV、レンチウイルス又はレトロウイルスである。レトロウイルス構築物などのウイルス構築物は、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサー又は遺伝子座決定エレメント又はメッセンジャーの選択的スプライシング、核RNA輸送若しくは翻訳後修飾といった他の手段によって遺伝子発現を制御する他のエレメントを含む。そのようなベクター構築物は、ウイルス構築物に既に存在する場合を除き、パッケージングシグナル、末端反復配列(LTR)又はその一部分並びに使用されるウイルスに適切なプラス鎖及びマイナス鎖のプライマー結合部位も含む。加えて、そのような構築物は、典型的には、構築物が入っている宿主細胞からペプチドを分泌させるためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は、哺乳動物のシグナル配列又は本発明のいくつかの実施形態のポリペプチド変異体のシグナル配列である。任意選択で、構築物は、ポリアデニル化をもたらすシグナル並びに1つ又は複数の制限部位及び翻訳終結配列を含み得る。例として、そのような構築物は、典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成起点及び3’LTR又はその一部分を含む。カチオン性脂質、ポリリジン及びデンドリマーなど、ウイルスではない他のベクターを使用し得る。
【0596】
既に述べたように、本発明のいくつかの実施形態の発現構築物は、挿入されるコード配列の転写及び翻訳のために必要なエレメントを含有する他にも、発現されるモノマー又はヘテロダイマーの安定性、生成、精製、収率又は毒性を増進するように工学的に操作された配列を含むこともできる。例えば、本発明のいくつかの実施形態のモノマー又はヘテロダイマーと異種タンパク質とを含む融合タンパク質又は切断可能な融合タンパク質の発現を工学的に操作することができる。そのような融合タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーにより、例えば異種タンパク質に対して特異的なカラムに固定化することにより、融合タンパク質が容易に単離され得るように設計することができる。本発明のいくつかの実施形態のモノマー又はヘテロダイマーと異種タンパク質との間に切断部位を工学的操作によって設けた場合、切断部位を破壊する適切な酵素又は薬剤を用いて処理することにより、クロマトグラフィーカラムからモノマー又はヘテロダイマーを遊離させることができる[例えば、Booth et al. (1988) Immunol. Lett. 19:65-70及びGardella et al., (1990) J. Biol. Chem. 265:15854-15859を参照されたい]。
【0597】
本発明は、本明細書に記載の構築物を含む細胞も企図する。
【0598】
したがって、本発明の一態様によると、ヘテロダイマー又はヘテロダイマーをコードする核酸構築物又はシステムを含む宿主細胞を提供する。
【0599】
本明細書で前述したように、本発明のいくつかの実施形態のヘテロダイマーを発現させるための宿主発現系として、種々の原核細胞又は真核細胞を使用することができる。これらは、コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌、コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母などの微生物、コード配列を含有する、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させた、又はTiプラスミドなどの組換えプラスミド発現ベクターで形質転換した植物細胞系を含むが、これらに限定されない。哺乳動物の発現系を使用して、本発明のいくつかの実施形態のポリペプチドを発現させることもできる。
【0600】
細菌構築物の例としては、pETシリーズのE. coli発現ベクターが挙げられる(Studier et al. (1990) Methods in Enzymol. 185:60-89)。
【0601】
本発明の教示と併せて使用され得る真核細胞の例としては、哺乳動物細胞、真菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、藻細胞又は植物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0602】
酵母において、米国特許出願第5,932,447号に開示されているように、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターを含有するいくつかのベクターを使用することができる。代替的に、酵母染色体への外来DNA配列の組み込みを促進するベクターを使用し得る。
【0603】
植物発現ベクターを使用する場合、いくつかのプロモーターによってコード配列の発現を駆動することができる。例えば、CaMVの35S RNA及び19S RNAプロモーターなどのウイルスプロモーター[Brisson et al. (1984) Nature 310:511-514]又はTMVのコートタンパク質プロモーター[Takamatsu et al. (1987) EMBO J. 6:307-311]を使用することができる。代替的に、植物プロモーター、例えばRUBISCOの小サブユニット[Coruzzi et al. (1984) EMBO J. 3:1671-1680及びBrogli et al., (1984) Science 224:838-843]又は熱ショックプロモーター、例えばダイズhsp17.5-E又はhsp17.3-B[Gurley et al. (1986) Mol. Cell. Biol. 6:559-565]を使用し得る。これらの構築物は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、電気穿孔及び当業者に周知の他の技術を使用して、植物細胞に導入することができる。例えば、Weissbach & Weissbach, 1988, Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, NY, Section VIII, pp 421-463を参照されたい。
【0604】
当技術分野で周知である昆虫及び哺乳動物の宿主細胞系といった他の発現系も本発明のいくつかの実施形態によって使用され得る。
【0605】
特定の実施形態によると、細胞は、哺乳動物細胞である。
【0606】
特定の実施形態によると、細胞は、ヒト細胞である。
【0607】
特定の実施形態によると、細胞は、細胞株である。
【0608】
別の特定の実施形態によると、細胞は、初代細胞である。
【0609】
細胞は、血液、筋肉、神経、脳、心臓、肺、肝臓、膵臓、脾臓、胸腺、食道、胃、腸、腎臓、精巣、卵巣、毛髪、皮膚、骨、乳房、子宮、膀胱、脊髄又は様々な種類の体液を含むが、これらに限定されない好適な組織に由来し得る。細胞は、胚期、胎生期及び成体期を含む任意の発生段階並びに任意の発生起源、即ち外胚葉起源、中胚葉起源及び内胚葉起源に由来し得る。
【0610】
哺乳動物細胞の非限定的な例としては、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS、例えばCOS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胎児由来腎臓株(HEK293細胞又は懸濁培養下で増殖させるためにサブクローニングしたHEK293細胞、Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 1977)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 1980)、サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2)、NIH3T3、Jurkat、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 1982)、MRC 5細胞、FS4細胞並びにヒト肝細胞腫株(Hep G2)、PER.C6、K562及びチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)が挙げられる。
【0611】
本発明のいくつかの実施形態によると、哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK293細胞、PER.C6細胞、HT1080細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、BHK細胞、Namalwa細胞、COS細胞、HeLa細胞及びVero細胞からなる群から選択される。
【0612】
本発明のいくつかの実施形態によると、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、PER.C6細胞又は293(例えば、Expi293F)細胞を含む。
【0613】
本発明の別の態様によると、ヘテロダイマーの製造方法であって、本明細書に記載される核酸構築物又はシステムを宿主細胞に導入すること、或いは本明細書に記載される核酸構築物又はシステムを発現する細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0614】
特定の実施形態によると、製造は、32~37℃、5~10%のCO2で5~13日間培養することを含む。
【0615】
本発明の特定の実施形態と共に使用することができる製造条件の非限定的な例は、以下の実施例の項において開示される。
【0616】
したがって、例えば、ヘテロダイマーをコードする発現ベクターは、Expi293F、ExpiCHO細胞、CHO-K1又はCHO-DG44などの哺乳類細胞に導入される。次に、Expi293F、ExpiCHO、CHO-K1又はCHO-DG44細胞の製造業者の説明書(Thermo社)に従い、細胞特異的培地中、32~37℃、5~10%のCO2で形質導入細胞を培養し、少なくとも5日間の培養後、タンパク質を上清から収集し、精製する。
【0617】
特定の実施形態によると、培養は、バッチ式、スプリットーバッチ式、フィードバッチ式又は潅流モードで実施する。
【0618】
特定の実施形態によると、培養は、フィードバッチ条件で実施される。
【0619】
特定の実施形態によると、培養は、36.5℃で実施される。
【0620】
特定の実施形態によると、培養は、36.5℃で実施され、32℃への温度変化を伴う。この温度変化は、定常状態に達する前に細胞の代謝を遅らせるために実施することができる。
【0621】
特定の実施形態によると、方法は、発現されたポリペプチドにダイマー化部分を付加することを含む。
【0622】
特定の実施形態によると、本方法は、ヘテロダイマーを単離することを含む。
【0623】
特定の実施形態によると、組換えヘテロダイマーの回収は、適切な時間にわたり培養した後に実施する。特定の実施形態によると、組換えヘテロダイマーの回収は、ヘテロダイマーを含有する培養培地全体を収集することを指し、必ずしもさらなる分離又は精製のステップを暗示するとは限らない。特定の実施形態によると、本発明のいくつかの実施形態のヘテロダイマーは、限定されないが、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、ミックスモードクロマトグラフィー、金属アフィニティークロマトグラフィー、レクチンアフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング及びDS法(differential solubilization)など、種々の標準的なタンパク質精製技術を使用して精製することができる。
【0624】
特定の実施形態によると、製造及び精製に続き、ヘテロダイマーの治療有効性は、in vivo又はin vitroのいずれかで検出することができる。このような方法は、当技術分野で知られており、例えば細胞生存率、トランスジェニックマウスの生存及び活性化マーカーの発現を挙げることができる。
【0625】
本発明のいくつかの実施形態の組成物(例えば、ヘテロダイマー、それを含む組成物、それをコードする核酸構築物又はシステム及び/又は細胞)は、それ自体で又は組成物を好適な担体若しくは賦形剤と混合した医薬組成物として生物に投与することができる。
【0626】
したがって、本発明は、いくつかの実施形態において、本願で開示する組成物を治療有効量で含む医薬組成物を特色とする。
【0627】
本明細書において、「活性成分」という用語は、生物学的効果の要因となる組成物(例えば、本明細書に記載のヘテロダイマー、それを含む組成物、核酸構築物又はシステム及び/又は細胞)を示す。
【0628】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を示す。限定されないが、賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類及び各種のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0629】
以降では、交換可能に使用され得る「生理学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される担体」という表現は、生物に著しい刺激作用をもたらさず、また投与される化合物の生物学的活性及び特性を無効にすることのない担体又は希釈剤を示す。これらの表現には、アジュバントが含まれる。
【0630】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性のある、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、非経口投与、脊髄投与又は上皮投与(例えば、注射又は注入による投与)に好適である。活性化合物は、投与ルートに応じて1つ又は複数の薬学的に許容される塩を含み得る。「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望まれない毒性効果を与えない塩を指す(例えば、Berge, S. M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66: 1-19を参照されたい)。そのような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、無毒の無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの並びに無毒の有機酸、例えば脂肪族のモノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカノン酸、ヒドロキシアルカノン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族のスルホン酸などに由来するものが挙げられる。塩基付加塩としては、アルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどに由来するもの並びに無毒の有機アミン、例えばN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものが挙げられる。
【0631】
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る医薬組成物は、薬学的に許容される抗酸化剤を含み得る。薬学的に許容される抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、(2)油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど、及び(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る医薬組成物は、洗剤及び可溶化剤(例えば、TWEEN 20(ポリソルベート-20)、TWEEN 80(ポリソルベート-80))及び保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)並びに増量物質(bulking substances)(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤を含み得る。
【0632】
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る医薬組成物に用いられ得る好適な水性及び非水性の担体の例としては、水、様々なバッファー成分(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の緩衝食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)並びにこれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油並びにオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。
【0633】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散液の場合には必要な粒径を維持すること及び界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0634】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含有し得る。微生物の存在は、滅菌手順(上記を参照されたい)と、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含との両方により、確実に防止することができる。糖類、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物に含めることが望ましい場合もある。加えて、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの包含により、注射用医薬品形態の持続的吸収がもたらされ得る。
【0635】
薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液又は分散液及び滅菌注射用溶液又は分散液を即時調製するための滅菌粉末が含まれる。このような媒体及び薬剤を薬学的活性物質に使用することは、当技術分野で公知である。いずれかの従来の媒体又は薬剤が活性化合物と不適合である場合を除き、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る医薬組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性化合物を組成物に組み込むこともできる。
【0636】
治療用組成物は、典型的には、製造及び保存の条件下で無菌且つ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム又は高い薬物濃度に好適な他の秩序構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)及びこれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒径の維持及び界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール又は塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物に含めることにより、注射用組成物の持続的吸収がもたらされ得る。滅菌注射用溶液は、必要な量の活性化合物を適切な溶媒に、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせと共に組み込み、続いて滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、基礎分散媒及び上記に列挙したもののうち、必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製する。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。これらの方法により、予め滅菌濾過された活性成分及び任意のさらなる所望の成分の溶液から、それらの粉末が得られる。
【0637】
滅菌注射用溶液は、必要な量の活性化合物を適切な溶媒に、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせと共に組み込み、続いて滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、基礎分散媒及び上記に列挙したもののうち、必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。これらの方法により、予め滅菌濾過された活性成分及び任意のさらなる所望の成分の溶液から、それらの粉末が得られる。
【0638】
単一の剤形を作製するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される対象及び特定の投与様式に応じて異なる。単一の剤形を作製するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、概して、治療効果をもたらす組成物の量である。この量は、概して、100パーセントのうち、活性成分の約0.01パーセント~約99パーセント、好ましくは、薬学的に許容される担体と組み合わせた活性成分の約0.1パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約1パーセント~約30パーセントの範囲である。
【0639】
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)をもたらすように調整する。例えば、単回ボーラス投与であり得るか、いくつかの分割用量を経時的に投与し得るか、又は治療状況の緊急性により必要に応じて用量を相対的に低減若しくは増加させ得る。非経口組成物は、投与を容易にし、投薬量を均一にするために、単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形とは、治療される対象のための単位投薬量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位が、必要な薬学的担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の独特の特徴及び達成すべき特定の治療効果、並びに(b)個体の感受性を治療するためにかかる活性化合物を調合する技術分野に固有の制約によって決まり、これらに直接左右される。
【0640】
薬物の製剤化及び投与のための技術は、参照により本明細書に援用される“Remington’s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PAの最新版で確認することができる。
【0641】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、当技術分野で周知のプロセス、例えば従来の混合、溶解、造粒、ドラジェ作製、湿式粉砕(levigating)、乳化、カプセル封入、捕捉又は凍結乾燥のプロセスによって製造することができる。
【0642】
本発明の組成物は、当技術分野で公知である種々の方法の1つ又は複数を使用して、1つ又は複数の投与ルートを介して投与することができる。当業者に理解されるであろうが、投与のルート及び/又は様式は、所望の結果に応じて異なる。本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る治療剤の好ましい投与ルートとしては、血管内送達(例えば、注射又は注入)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、経口、経腸、直腸、肺(例えば、吸入)、経鼻、局所(経皮、頬側及び舌下を含む)、膀胱内、硝子体内、腹腔内、腟内、脳送達(例えば、脳室内、脳内及び対流強化拡散(convection enhanced diffusion))、CNS送達(例えば、くも膜下腔内、脊髄周囲(perispinal)及び脊髄内)若しくは非経口(皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)及び皮内を含む)、経皮(受動的又はイオン泳動若しくは電気穿孔の使用のいずれか)、経粘膜(例えば、舌下投与、経鼻、腟内、直腸又は舌下)の各種投与、又はインプラントによる投与、又は例えば注射若しくは注入による他の非経口投与ルート、又は当技術分野で公知の他の送達ルート及び/若しくは投与形態が挙げられる。本明細書で使用される「非経口投与」という表現は、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を意味し、通常、注射によるものである。限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨下の注射及び注入又は生体内分解性挿入物の使用を含み、各投与ルートに適切な剤形で製剤化することができる。特定の実施形態において、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係るタンパク質、治療剤又は医薬組成物は、腹腔内又は静脈内に投与することができる。
【0643】
特定の実施形態によると、本願で開示する組成物は、水溶液として非経口注射で投与される。製剤は、懸濁液又はエマルションの形態であり得る。通常、非経口注射のための医薬組成物は、有効量の本願で開示する組成物を含み、任意で薬学的に許容される希釈剤保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/又は担体を含むものが提供される。このような組成物は、任意選択で、希釈剤、滅菌水、様々なバッファー内容物(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の緩衝食塩水並びに洗剤及び可溶化剤(例えば、TWEEN 20(ポリソルベート-20)、TWEEN 80(ポリソルベート-80))、抗酸化剤(例えば、水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、二亜硫酸ナトリウム、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール及び金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸)及び保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)並びに増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤の1つ又は複数を含む。非水性の溶媒又はビヒクルの例は、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油及びトウモロコシ油などの植物油、ゼラチン及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。製剤は、フリーズドライ(凍結乾燥)又は真空乾燥し、使用直前に再溶解/再懸濁することができる。製剤は、例えば、細菌保持フィルタを通して濾過すること、組成物に滅菌剤を組み込むこと、組成物を照射処理すること又は組成物を加熱することにより滅菌することができる。
【0644】
本明細書で開示する様々な組成物(例えば、ポリペプチド)は、局所適用することができる。局所投与は、ほとんどのペプチド製剤で効果的でないが、特に肺、鼻腔、口腔(舌下、頬側)、腟内又は直腸の粘膜に適用した場合に有効であり得る。
【0645】
本発明の組成物は、空気動力学的直径が約5ミクロン未満のエアロゾル又は噴霧乾燥粒子のいずれかとして送達された場合、吸入中に肺に送達され、肺上皮層を横断して血流に入ることができる。治療用製剤を肺に送達するように設計された様々な機械デバイスを使用することができる。この機械デバイスは、限定されないが、ネブライザー、計量式吸入器及び粉末吸入器を含み、これらは、全て当業者によく知られている。市販のデバイスのいくつかの特定例は、Ultraventネブライザー(ミズーリ州、セントルイス、Mallinckrodt Inc.製)、Acorn IIネブライザー(コロラド州、エングルウッド、Marquest Medical Products社製)、Ventolin計量式吸入器(ノースカロライナ州、リサーチ・トライアングル・パーク、Glaxo Inc.製)及びSpinhaler粉末吸入器(マサチューセッツ州、ベドフォード、Fisons Corp製)である。Nektar社、Alkermes社及びMannkind社の各社は、吸入可能なインスリン粉末調製物が承認されているか、又はこの技術が本明細書に記載の製剤に適用され得る臨床試験段階にある。
【0646】
粘膜に投与するための製剤は、典型的には、噴霧乾燥した薬物粒子であり、これは、錠剤、ゲル、カプセル、懸濁液又はエマルションに組み込むことができる。標準的な薬学的賦形剤は、いずれの製薬会社からも入手可能である。経口製剤は、チューインガム、ゲル片、錠剤又はロゼンジの形態であり得る。
【0647】
経皮製剤を調製することもできる。これらは、典型的には、軟膏、ローション、スプレー又はパッチであり、これらは、全て標準的な技術を使用して調製することができる。経皮製剤は、浸透促進剤の包含を必要とする。本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に対して有毒となることなく、特定の患者、組成物及び投与様式に関して所望される治療応答を達成するために有効な量の活性成分が得られるように変更され得る。選択する投薬量レベルは、用いる特定の本発明の組成物の活性、投与ルート、投与時間、用いる特定の化合物の排泄速度、治療の期間、用いる特定の組成物と併用する他の薬物、化合物及び/又は材料、治療する患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康及び過去の病歴を含む種々の薬物動態学的要因並びに医学分野で周知である同様の要因に依存する。
【0648】
特定の実施形態によると、本明細書で開示する組成物を治療有効量で対象に投与する。本明細書で使用する場合、「有効量」又は「治療有効量」という用語は、治療されている障害の1つ又は複数の症状を治療、阻害若しくは緩和するのに十分であるか、さもなければ所望の薬理的効果及び/又は生理学的効果をもたらすのに十分な投薬量を示す。治療有効量の決定は、特に、本明細書に提供する詳細な開示内容を踏まえれば、当業者の能力の範囲内である。
【0649】
本発明の方法で使用される任意の製剤について、治療上有効な量又は用量は、in vitro及び細胞培養アッセイから最初に推定され得る。例えば、用量は、所望の濃度又は力価を達成するように動物モデルにおいて処方され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。本明細書に記載の有効成分の毒性及び治療効力は、in vitroで、細胞培養物で又は実験動物で標準医薬手順によって決定され得る。これらのin vitro及び細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための投与量の範囲の処方において使用され得る。投与量は、使用される投与形態及び利用される投与経路に応じて変わり得る。正確な処方、投与経路及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る(例えば、“The Pharmacological Basis of Therapeutics,” Ch. 1 p.1のFingl et al. (1975)を参照されたい)。
【0650】
投与量及び投与間隔は、有効成分のレベルが、生物学的効果を誘導又は抑制するのに十分な量(最小有効濃度、MEC)となるように、個別に調整することができる。MECは、各製剤によって変化するが、in vitroデータから推定することができる。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の特徴及び投与経路に応じて変化する。血漿中濃度を調べるために、検出アッセイが使用され得る。
【0651】
治療されるべき状態の重症度及び応答性に応じて、投与量は、数日から数週間持続する治療の過程で又は治癒が達成されるか若しくは疾患状態の消失が達成されるまでの単回又は複数回投与のものであり得る。
【0652】
投与する組成物の量は、当然のことながら、治療される対象、苦痛の重症度、投与方式、担当医師の判断などに依存するものである。
【0653】
特定の実施形態では、組成物(例えば、ヘテロダイマー、それを含む組成物、核酸構築物又はシステム、或いは細胞)は、例えば、治療すべき部位に直接注射することにより局所投与される。典型的には、注射により、組成物の局所濃度は、全身投与によって達成され得る濃度よりも高い濃度に上昇する。ヘテロダイマー組成物を前述のマトリックスと組み合わせると、治療すべき部位から出るポリペプチドの受動的拡散を低減させることにより、ポリペプチド組成物の局所濃度の上昇をもたらすのに役立ち得る。
【0654】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知の医療デバイスを用いて投与することができる。例えば、任意選択の実施形態において、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る医薬組成物は、米国特許第5,399,163号明細書、同第5,383,851号明細書、同第5,312,335号明細書、同第5,064,413号明細書、同第4,941,880号明細書、同第4,790,824号明細書又は同第4,596,556号明細書に開示されているデバイスなどの無針皮下注射デバイスを用いて投与することができる。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例としては、制御された速度で薬物を分注するための植込み型微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号明細書、皮膚を通して薬品を投与するための治療デバイスを開示する米国特許第4,486,194号明細書、精確な注入速度で薬物を送達するための薬物注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号明細書、持続的な薬物送達のための流量可変植込み型注入装置を開示する米国特許第4,447,224号明細書、マルチチャンバコンパートメントを有する浸透圧性薬物送達系を開示する米国特許第4,439,196号明細書及び浸透圧性薬物送達系を開示する米国特許第4,475,196号明細書が挙げられる。これらの特許は、参照により本明細書に援用される。このようなインプラント、送達系及びモジュールは、他にも多くが当業者に公知である。
【0655】
活性化合物は、化合物の急速な放出を防ぐ担体と共に調製することができ、これは、例えば、徐放性製剤であり、インプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセル化送達系を含む。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸など、生分解性、生体適合性ポリマーを使用し得る。このような製剤を調製するための多くの方法が特許取得済みであるか、又は一般的に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0656】
ポリマーデバイス(ロッド、シリンダー、フィルム、ディスク)の植込み又は注射(微粒子)後に長期にわたって全身に放出するための徐放性ポリマーデバイスを製造することができる。マトリックスは、ペプチドが固体ポリマーマトリックス中に分散したマイクロスフェア又はコアがポリマーシェルと異なる材料からなり、ペプチドがコア内に分散若しくは懸濁されたマイクロカプセル(このコアは、実質的に液体であるか又は固体であり得る)などの微粒子の形態であり得る。本明細書において明確に定義されない限り、微粒子、マイクロスフェア及びマイクロカプセルは、交換可能に使用される。代替的に、ポリマーは、数ナノメートルから4センチメートルまでの範囲の薄いスラブ又はフィルムとしてキャスティングされ得るか、粉砕若しくは他の標準的な技術によって作製された粉末であり得るか、又はヒドロゲルなどのゲルであり得る。
【0657】
本願で開示する活性成分を送達するには、生分解性ではないマトリックス又は生分解性であるマトリックスのいずれも使用し得るが、生分解性であるマトリックスが好ましい。これらは、天然ポリマー又は合成ポリマーであり得るが、合成ポリマーの分解及び放出プロファイルの特徴がより良好であるため、合成ポリマーが好ましい。ポリマーは、放出が所望される期間に基づいて選択する。場合により、線形放出が最も有用であり得るが、他の場合、パルス放出又は「バルク放出」がより有効な結果をもたらし得る。ポリマーは、ヒドロゲル(典型的には最大約90重量%の水を吸収する)の形態であり得、任意選択で多価イオン又はポリマーと架橋され得る。
【0658】
マトリックスは、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出及び当業者に公知の他の方法によって形成することができる。生体内分解性マイクロスフェアは、例えば、Mathiowitz and Langer, J. Controlled Release, 5:13-22 (1987)、Mathiowitz, et al., Reactive Polymers, 6:275-283 (1987)及びMathiowitz, et al., J. Appl Polymer ScL, 35:755-774 (1988)に記載されているような、薬物送達のためのマイクロスフェアを作るために開発された方法のいずれを使用しても調製され得る。
【0659】
これらのデバイスは、典型的には、体全体の治療のための投薬量よりも大幅に低い投薬量を送達する植込み若しくは注射した領域を治療する局所放出のために製剤化され得るか、又は全身送達のために製剤化され得る。これらのデバイスは、皮下、筋肉内、脂肪内に植込み若しくは注射され得るか、又は嚥下され得る。
【0660】
特定の実施形態では、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る治療用化合物がBBBを通過することを確実にするために(所望される場合)、これらの治療用化合物は、例えば、リポソームで製剤化することができる。リポソームの製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811号明細書、同第5,374,548号明細書及び同第5,399,331号明細書を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送されることにより、標的の薬物送達を増進する1つ又は複数の部分を含み得る(例えば、V. V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照されたい)。例示的な標的化部分としては、葉酸塩又はビオチン(例えば、Lowらの米国特許第5,416,016号明細書を参照されたい)、マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038)、抗体(P. G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140、M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180)、界面活性剤プロテインA受容体(Briscoe et al. (1995) Am. J Physiol. 1233:134)、p120(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が挙げられる。K. Keinanen; M. L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123、J. J. Killion; I. J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照されたい。
【0661】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、所望の場合、活性成分を含有する1つ又は複数の単位剤形を含み得る、FDA承認キットなどのパック又はディスペンサーデバイスとして提供することができる。パックは、例えば、金属箔又はプラスチック箔、例えばブリスターパックを含み得る。パック又はディスペンサーデバイスには、投与に関する説明書が付属し得る。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用又は販売を規制する行政機関が規定した形態における、容器に付随した通知が収容され得る。この通知は、組成物の形態又はヒト若しくは動物への投与がその機関によって承認されたことを反映するものである。このような通知は、例えば、米国食品医薬品局によって承認された処方薬のラベル又は承認された製品の添付文書に関するものであり得る。適合性のある薬学的担体において製剤化された本発明の調製物を含む組成物を調製し、適切な容器に入れ、詳細に前述した適応症状の治療に関するラベルを付すこともできる。
【0662】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、±10%を示す。
【0663】
「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」という用語及びその活用形は、「限定されないが、含む」を示す。
【0664】
「からなる」という用語は、「含み、限定される」ことを示す。
【0665】
「から実質的になる」という用語は、組成物、方法又は構造が追加の成分、工程及び/又は部分を含み得ることを示す。但し、これは、追加の成分、工程及び/又は部分が、請求項に記載の組成物、方法又は構造の基本的且つ新規な特性を実質的に変更しない場合に限られる。
【0666】
本明細書において、単数形を表す「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数も対象とする。例えば、「化合物」又は「少なくとも1種の化合物」には、複数の化合物が含まれ、それらの混合物も含まれ得る。
【0667】
本願全体を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性及び簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く限定ではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な下位の範囲の全部及びその範囲内の個々の数値を特異的に開示していると考えるべきである。例えば、1~6といった範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5及び6も具体的に開示するものとする。これは、範囲の大きさにかかわらず適用される。
【0668】
本明細書において数値範囲を示す場合、それは、常に、示す範囲内の任意の引用数(分数又は整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という表現とは、本明細書で代替可能に使用され、第1の指示数及び第2の指示数と、それらの間の分数及び整数の全部とを含むことを意図する。
【0669】
本明細書で使用する「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術及び手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医療の各分野の従事者に既知のもの又は既知の様式、手段、技術及び手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
特定の配列表を参照する場合、そのような参照は、例えば、シーケンシングエラー、クローニングエラー又は塩基置換、塩基欠失若しくは塩基付加をもたらす他の改変に起因する、わずかな配列変化を含む相補的配列に実質的に対応する配列も包含するものと理解されたい。ただし、そのような変化の頻度は、50ヌクレオチド中1未満、代替的に100ヌクレオチド中1未満、代替的に200ヌクレオチド中1未満、代替的に500ヌクレオチド中1未満、代替的に1000ヌクレオチド中1未満、代替的に5,000ヌクレオチド中1未満、代替的に10,000ヌクレオチド中1未満であることを条件とする。
【0670】
明確にするために別個の実施形態に関連して記載される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることが認識される。逆に、明確にするために単一の実施形態に関連して記載される本発明の種々の特徴は、別々に若しくは任意の好適な部分的組合せにおいて又は本発明の任意の他の記載される実施形態において好適であるとして提供され得る。種々の実施形態に関連して記載される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴であるとみなされてはならない。
【0671】
上記で詳述され、以下の特許請求の範囲のセクションで特許請求される本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的に裏付けられる。
【実施例】
【0672】
上記で列挙し、下記の特許請求の範囲に記載した本発明の種々の実施形態及び態様について、以下の実施例が実験的根拠を示す。
【0673】
本明細書で使用される命名法及び本発明に使用する実験手順としては、通常、分子的技術、生化学的技術、微生物学的技術及び組換えDNA技術が挙げられる。このような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、“Molecular Cloning: A laboratory Manual” Sambrook et al., (1989)、“Current Protocols in Molecular Biology” Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994)、Ausubel et al., “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)、Perbal, “A Practical Guide to Molecular Cloning”, John Wiley & Sons, New York (1988)、Watson et al., “Recombinant DNA”, Scientific American Books, New York、Birren et al. (eds) “Genome Analysis: A Laboratory Manual Series”, Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)、米国特許第4,666,828号明細書、同第4,683,202号明細書、同第4,801,531号明細書、同第5,192,659号明細書及び同第5,272,057号明細書に記載された方法、“Cell Biology: A Laboratory Handbook”, Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994)、“Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique” by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition、“Current Protocols in Immunology” Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994)、Stites et al. (eds), “Basic and Clinical Immunology” (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)、Mishell and Shiigi (eds), “Selected Methods in Cellular Immunology”, W. H. Freeman and Co., New York (1980)を参照されたい。利用可能なイムノアッセイは、特許及び科学文献に広く記載されており、例えば米国特許第3,791,932号明細書、同第3,839,153号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,850,578号明細書、同第3,853,987号明細書、同第3,867,517号明細書、同第3,879,262号明細書、同第3,901,654号明細書、同第3,935,074号明細書、同第3,984,533号明細書、同第3,996,345号明細書、同第4,034,074号明細書、同第4,098,876号明細書、同第4,879,219号明細書、同第5,011,771号明細書及び同第5,281,521号明細書、“Oligonucleotide Synthesis” Gait, M. J., ed. (1984)、“Nucleic Acid Hybridization” Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985)、“Transcription and Translation” Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1984)、“Animal Cell Culture” Freshney, R. I., ed. (1986)、“Immobilized Cells and Enzymes” IRL Press, (1986)、“A Practical Guide to Molecular Cloning” Perbal, B., (1984)及び“Methods in Enzymology” Vol. 1-317, Academic Press、“PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications”, Academic Press, San Diego, CA (1990)、Marshak et al., “Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual” CSHL Press (1996)を参照されたい。上記文献の全ては、参照により本明細書に完全に援用される。他の一般的な参考文献は、本明細書を通して提供される。それらに記載の手順は、当技術分野で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供する。それらに含まれる全ての情報は、参照により本明細書に援用される。
【0674】
材料及び方法
試薬 - ExcelBand(商標)3色広範囲タンパク質マーカー又はExcelBand(商標)3色エクストラ範囲タンパク質マーカー(SMOBIO社製、それぞれCat#PM2600又はPM2800)、サンプルバッファー(GenScript社製、Cat#M00676)、ポリアクリルアミドゲル8%又は4~20%(GenScript社製、それぞれCat#M00662又はM00656)、ECL Plus Western Blotting基質(Pierce社製、Cat#32132)、TMB-ELISA基質溶液(Sigma社製、Cat#T0440)、TMB停止溶液(Southern Biotech社製、Cat♯0412-01)、ストレプトアビジン-HRP(Pierce社製、Cat#TS21126)。FuGENE(登録商標)HD Transfection Reagent(Promega社製、Cat#TM328)。Vybrant DiD細胞標識溶液(Thermo Fisher社製、Cat#V22887)、Lymphoprep(商標)密度勾配培地(StemCells Technologies社製、Cat#07801)。
【0675】
抗体 - LEAFTM精製マウス抗ヒトPD-L1(CD274)B7H1クローン29E.2A3、BioLegend社製、Cat♯329711、抗ヒトPD1(GenScript社製、Cat#A01829-40)、APC標識抗PD1(Biolegend社製、Cat#329908)、APCマウスIgG2b、κIC(Biolegend社製、Cat#400322)、ビオチン化ウサギ抗ヒトSIRPα(LsBio社製、Cat#LS-C370337)、ウサギ抗ヒトSIRPα抗体(抗薬物抗体DSP107)バッチ#104、抗ヒトLILRB2(R&D systems社製、Cat#MAB2078)、APC抗ヒトCD155抗体(Biolegend社製、Cat#337618)、APCマウスIgG1 k(Biolegend社製、Cat#400120)、APC抗ヒトCD47抗体(Biolegend社製、Cat#323124)、APC抗ヒトCD274(Biolegend社製、Cat#329708)、APC抗ヒトCD172a/b SIRPαクローンSE5A5抗体、マウスIgG1、κ(Biolegend社製、Cat#323809)、PEマウス抗ヒトIgG1-Fc(SouthernBiotech社製、Cat#9054-09)、PEマウス抗ヒトIgG4(SouthernBiotech社製、Cat#9190-09)、AF647抗ヒトIgG4-Fc(SouthernBiotech社製、Cat#9200-31)、APC抗ヒトCD85d(ILT4)抗体クローン41D1(Biolegend社製、Cat#338708)、ヤギ抗ウサギIgG(H+L)-HRPコンジュゲート(R&D systems社製、Cat#170-6515)、ヤギ抗マウスIgG HRPコンジュゲート(Bio-rad社製、Cat#170-6516)、APC抗ヒトHLA-G(米国特許出願公開第2020/0102390A1号明細書から)、APCヒトIgG4(Biolegend社製、Cat#403706)、CD47遮断剤抗体(国際公開第2011/143624A2号から)、HLA-G遮断剤抗体(米国特許出願公開第2020/0102390A1号明細書から)、マウス抗ヒトIgG1 HRPコンジュゲート(Southern Biotech社製、Cat#9054-05)、マウス抗ヒトIgG4 HRPコンジュゲート(Southern Biotech社製、Cat#9200-05)、PEマウス抗ヒトIgG1 FC(Southern Biotech社製、Cat#9054-09)、PEマウス抗ヒトIgG4-Fc(SouthernBiotech社製、Cat♯9190-09)、抗ヒトPVR(NOVUS社製、Cat#NB6001241)、APCマウス抗ヒトIgG1ヒンジ(Southern Biotech社製、Cat#9054-09)、APC抗ヒトTIGIT、mIgG2aクローンA15153G(Biolegend社製、Cat#372706)、APCmIgG2a MOPC-173(Biolegend社製、Cat♯400220)、PE抗ヒトPD-L1、29E2A3、mIgG2b(Biolegend社製、Cat#329706)、APC抗ヒトCD16、mIgG1クローンICRF44(Biolegend社製、Cat#301310)。
【0676】
組換えタンパク質 - ヒト組換えHLA-Gタンパク質(Hisタグ)、(Abcam社製、Cat#ab225660)、ヒトPDL-1 FCタグ(Acro社製、Cat#PD1-H5258)、ヒトPDL-1-Fc(GenScript社製、U3420DK140-1)、ヒトCD47タンパク質HISタグ(Acro社製、Cat#CD7-H5227)、ヒトCD155(PVR)タンパク質Fcタグ(Acro社製、Cat#CD5-H5251及びCD5-H5254)。
【0677】
細胞株 - Expi293F(Gibco社製、Cat#A14257)、DLD1-WT細胞株(ATCC、CCL-221)、DLD1-PDL1細胞株(Hendriks et al 2016)、HT1080 WT(ATCC、CCL-121)、CHO-K1、CHO-K1-CD47、CHO-K1-CD47(Cell Bank Australia、CBA-0146)、HT1080-HLA-G(細胞は、HLA-G発現プラスミドによるウイルス感染によって生成された)、JEG-3細胞(ATCC、HTB-36)、K562(ATCC、CCL-243)、K562PVR、K562PD-L1、K562PVR/PD-L1(PDL1及び/又はPVR発現プラスミドによるK562細胞のトランスフェクション並びに安定発現細胞の選択により生成される)、AB12(ECACC、10092306)、Renca(ATCC、CRL-2947)、Jurkat NFAT-CD16(Promega社製、jktl-nfat-cd16)、SK-OV-3(ATCC、HTB-77)。
【0678】
培地及び組織培養試薬 - Expi269培地(Gibco社製、Cat#A-14351-01)、RPMI 1640(Biological Industries社製、Cat#01-100-1A)、FCS(Gibco社製、Cat♯12657-029)、BSA、Sigma社製、A7030、EDTA、Sigma社製、E7889、細胞解離バッファー、Gibco社製、13151-014、EMEM(Biological Industries社製、Cat#01-040-1A)、DMEM(Biological Industries社製、Cat#01-055-1A)、TrypLE Express(Gibco社製、Cat#12604-13)、Glutamax(Gibco社製、Cat#35050-038)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco社製、Cat#151140-122)、ピルビン酸ナトリウム(Biological Industries社製、Cat#03-042-1B)、IMDM(Biological Industries社製、Cat#01-058-1A)。
【0679】
機器 - FACSデバイス、Stratadigm社製のCytometry S1000EXI、ELISAリーダー、Thermoscience Multiskan FC、ELISAソフトウェア、マイクロプレートリーダーRE用SkanItソフトウェア4.1、ver.4.1.0.43。
【0680】
ヘテロダイマー-タンパク質の構造解析 - ホモログのX線構造に基づいて、各部分についてホモロジーモデリングを実施した。PD1の場合: PDB ID:3RRQ、5GGR、5GGS、5JXE及び4ZQKをテンプレートとして使用した。hIgG4の場合: PDB ID:4C54、4C55、5W5M及び5W5Nをテンプレートとして使用した。SIRPαの場合: PDB ID:2UV3、2WNG、4CMM、6BIT、2JJS及び2JJTをテンプレートとして使用した。LILRB2の場合: PDB ID:2GW5、4LLA、2DYP及び6BCPをテンプレートとして使用した。SIGLEC10の場合: SIGLEC8ホモログのPDB ID:2N7A及び2N7Bをテンプレートとして使用した。TIGITの場合: PDB ID:3QOH、3RQ3、3UCR、3UDW及び5V52をテンプレートとして使用した。
【0681】
リンカーセグメントは、構造違反(structural violation)を回避し、可能な「スペーサー」長のもっともらしい推定を可能にするために、主にCHARMMのループモデリングを用いてモデル化した。
【0682】
ヘテロダイマーの製造 - 比較機能分析及び製造評価のために、いくつかのヘテロダイマー(本明細書において「DSP」と称される)を設計し、及び/又は「ノブ」イントゥ「ホール」法(例えば、米国特許第8216805号明細書に記載される)を用いて製造した。以下の表1を参照されたい。所望のFc融合タンパク質に対するコード配列でクローニングされたpcDNA3.4発現ベクターによってトランスフェクトされたExpi293F細胞において製造を行った(以下の表1を参照されたい)。
【0683】
配列は、EcoRI及びHindIII又はXbaI及びEcoRVなどの制限酵素を使用し、Kozak配列及び終止コドンの上に人工シグナルペプチド(MESPAQLLFLLLLWLPDGVHA、配列番号116)を加えて、ベクターにクローニングした。細胞培養物の上清からタンパク質を収集し、場合によりプロテインA(PA)Poros MabCapture A樹脂又はアニオン交換High Trap Q FF樹脂を用いて一段階精製によってタンパク質を精製した。
【0684】
【0685】
【0686】
SDS-PAGE分析 - 各ヘテロダイマーサンプルからの35μlの細胞培養上清又は3μgの精製タンパク質をβ-メルカプトエタノールを含むか又は含まないローディングバッファー(それぞれ還元条件及び非還元条件)と混合し、95℃で5分間加熱し、8%又は4~20%勾配のポリアクリルアミドゲル電気泳動SDS-PAGEで分離した。e-Stain装置(GenScript社製)により、製造業者の説明書に従ってゲル上のタンパク質の移動を可視化した。
【0687】
ウエスタンブロット分析 - 製造したヘテロダイマー(50~500ng/レーン)を含有するサンプルを還元条件又は非還元条件(それぞれβ-メルカプトエタノールを含むか又は含まないローディングバッファー中)で処理し、95℃5分間加熱し、8%又は4~20%勾配のSDS-PAGEで分離した。続いて、タンパク質をPVDF膜上に移し、一次抗体と共に1時間又は一晩インキュベートした後、HRP結合二次抗体と共に1時間インキュベートした。ECLの発生後にシグナルを検出した。
【0688】
サンドイッチELISAによる、その対応物であるリガンド/受容体に対するヘテロダイマーの結合 - CD47タンパク質、PDL1タンパク質、HLA-Gタンパク質又はPVRタンパク質などの組換え対応物タンパク質と共に4℃で一晩インキュベートすることにより、分析されるヘテロダイマーの一方のアーム受容体/リガンドで平底96ウェルプレートをプレコートした後、ブロッキング及び洗浄を行った。製造したヘテロダイマーを含有する段階希釈した細胞培養上清又は精製タンパク質サンプルを、対応するプレコートウェルに添加した。付加的な洗浄ステップに続いて、ヘテロダイマーの第2のアーム又はIgG骨格に対するビオチン化した非標識抗体又はHRP標識抗体を添加し、捕捉したタンパク質に結合させた。その後、検出された抗体がHRP標識されていない場合、HRP結合二次抗体又はストレプトアビジン-HRPを添加した。検出は、620nmを参照波長として450nmでプレートリーダー(Thermo Scientific社製のMultiscan FC)を使用し、標準的なELISAプロトコルに従い、TMB基質を用いて行った。O.D.値を使用して、GraphPad Prismソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
【0689】
細胞表面で発現されるその対応物-リガンド/受容体に対するヘテロダイマーの結合 - 分析されるヘテロダイマーの対応物の1つを発現する細胞を、製造されたヘテロダイマーの連続希釈物と共に4℃で30分間インキュベートした後、ヘテロダイマーの第2の成分(即ち、細胞により発現される対応物に結合しないもの)に特異的であるか、又はIgG骨格に特異的である蛍光標識抗体により免疫染色し、フローサイトメトリーにより分析した。任意選択で、細胞が両方の対応物を発現する場合、ヘテロダイマーとのインキュベーション前に、細胞に、それらの一方に対する遮断剤抗体とのプレインキュベーションを行った。O.D.値を使用して、GraphPad Prismソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
【0690】
SIRPα及びLILRB2ドメインを含むヘテロダイマーのマクロファージ及びPMN細胞に対する効果 - 顆粒球による癌細胞の食作用を試験するために、ヒトCD47を発現するHT1080又はヒトCD47及びヒトHLA-Gを発現するHT1080-HLA-G細胞をDiDで標識し、0、1、2又は5μg/mLのDSP216と共に室温で15分間プレインキュベートした。続いて、エフェクター対標的(E:T)比1:1で細胞を顆粒球と共に37℃で一晩共培養し、フローサイトメーターにより分析した。MFI値を使用して、GraphPad Prismソフトウェアにより結合曲線グラフを作成した。
【0691】
細胞傷害性アッセイ - NK細胞(エフェクター細胞)による標的細胞の死滅を共培養アッセイで試験した。一晩のインキュベーション後、死滅した標的細胞のパーセンテージをフローサイトメトリー分析(FACS)で分析した。前標識した標的細胞[K562WT、PVRを過剰発現するK562(本明細書ではK562PVR)細胞、PDL1を過剰発現するK562(本明細書ではK562PDL1)細胞又はPVR/PDL1を過剰発現するK562(本明細書ではK562PVR/PDL1)細胞]を96ウェルプレートに入れ、異なる濃度のTIGIT-PD1ヘテロダイマーの存在下、種々のエフェクター-標的(E:T)比で初代NK細胞と共にインキュベートした。37℃でのONインキュベーション後、細胞をフローサイトメトリーにより分析した。K562WT標的細胞は、標的細胞上で発現されるPVR/PD-L1リガンドの存在下での死滅効果の阻害の参照として使用した。TIGIT-PD1ヘテロダイマー処理の参照は、未処理の標的細胞であった。
【0692】
グランザイムBの分泌 - グランザイムBは、NK細胞及び細胞傷害性T細胞の顆粒中に最も一般的に見出されるセリンプロテアーゼである。グランザイムBは、細孔形成タンパク質パーフォリンと共にこれらの細胞によって分泌され、標的細胞のアポトーシスを媒介する。前標識した標的細胞(K562WT、K562PVR、K562PDL1及びK562PVR/PDL1過剰発現細胞)を96ウェルプレートに入れ、異なる濃度のTIGIT-PD1ヘテロダイマーの存在下、種々のエフェクター-標的(E:T)比で初代NK細胞と共にインキュベートした。37℃でのONインキュベーション後、上清を収集し、ELISAを用いてグランザイムBレベルについて分析した。
【0693】
レポーター遺伝子システムによるルシフェラーゼ活性アッセイを用いたFcγRIIIaの結合 - IgG1-FcによるFcγRIIIaの活性化は、Jurkat NFAT CD16過剰発現細胞のレポーターシステム(Promega社製)を用いて検出した。このシステムでは、FcγRIIIaへの結合は、細胞内カルシウムレベルの増大と、NFATタンパク質を急速に脱リン酸化するカルシウム感受性ホスファターゼのカルシニューリンの活性化とを含むシグナル処理のカスケードを誘導する。脱リン酸化されたNFATは、核内に移動し、ルシフェラーゼの発現及び分泌を誘導する。ルシフェラーゼの分泌レベルは、ルシフェラーゼと添加基質(QUANTI-Luc)との相互作用によって生じる発光シグナルとして測定した。Jurkat CD16過剰発現細胞上のFcγRIIIa(CD16)に対するTIGIT-PD1ヘテロダイマーのIgG1-Fcアームの結合は、K562PVR/PDL-1細胞(標的細胞)と、Jurkat NFAT-CD16過剰発現細胞(エフェクター細胞)との共培養アッセイで試験した。この目的のために、K562PVR/PD-L1を96ウェルプレート内で培養し、異なる濃度のTIGIT-PD1ヘテロダイマーの存在下でインキュベートした。37℃での1時間のインキュベーション後、Jurkat NFAT CD16過剰発現細胞を2:1のE:T比で標的細胞に添加した。37℃での6時間のインキュベーション後、ルシフェラーゼ活性をルミノメーターによって分析した。K562WT標的細胞は、標的細胞上で発現されるPVR/PD-L1リガンドの存在下でのルシフェラーゼ活性の参照として使用した。TIGIT-PD1ヘテロダイマー処理の対照は、未処理の標的細胞であった。
【0694】
ELISAにより決定される、TIGIT-PD1ヘテロダイマーのその対応物に対する同時結合 - 平底96ウェルプレートをhrPDL1-Fcタンパク質でプレコートした後、ブロッキング及び洗浄を行った。段階希釈した精製TIGIT-PD1ヘテロダイマーサンプルを、対応するプレコートウェルに添加した。インキュベーション及び付加的な洗浄ステップに続いて、検出タンパク質-マウスIgG2a Fcに対するヒトCD155(PVR)コンジュゲートを添加し、捕捉したタンパク質に結合させた。付加的な洗浄に続いて、ペルオキシダーゼ結合AffiniPureヤギ抗マウスIgGを添加し、インキュベーション及び洗浄後、620nmを参照波長として450nmでプレートリーダー(Thermo Scientific社製のMultiscan FC)を使用し、標準的なELISAプロトコルに従い、TMB基質を用いて検出を行った。
【0695】
NK細胞及び腫瘍細胞に対するTIGIT-PD1ヘテロダイマーの同時結合 - NK及び腫瘍細胞に対するTIGIT及びPD1の同時結合は、TIGIT-PD1ヘテロダイマーの存在下、NK初代細胞及びK562PVR/PD-L1細胞の共培養細胞系において試験した。異なる細胞型への2つの部分の同時結合は、ダブレットの形成をもたらし、これは、フローサイトメトリーにより二重陽性染色細胞集団として検出された。ダブレット細胞形成の検出を可能にするために、CPD色素で前標識した初代NK細胞の共培養物を、CFSE色素で前標識したK562PVR/PD-L1細胞と2:1の比率で混合した。4℃での2時間のインキュベーション後、異なる濃度のTIGIT-PD1ヘテロダイマーの存在下でダブレット細胞形成を試験した。加えて、ヘテロダイマーを添加する前に、遮断抗体:Fc遮断剤、PVR抗体又はPD-L1抗体との1時間のインキュベーション後、ダブレット細胞形成の特異性を試験した。
【0696】
In vivo同系モデル:AB12マウス中皮腫癌モデルにおけるTIGIT-PD1ヘテロダイマーの効果 - 7週齢のメスBALB/cマウスにAB12マウス悪性胸膜中皮腫(MPM)細胞を腹腔内(i.p.)接種した後、TIGIT-PD1ヘテロダイマー又はビヒクル対照で処置した。ヘテロダイマーの効果は、マウスの生存に対するその影響によって評価した。
【0697】
処置プロトコル:
研究の0日目に105個のAB12細胞をi.p.接種した。
【0698】
実験では2つの群を割り当てた:
群1 - 接種に続いて、6日目から開始して、200μlのビヒクル/マウスによりマウスをi.p.処置した。ビヒクルを3日ごとに投与した。
群2 - 接種に続いて、6日目から開始して、容積200μlの150μgのTIGIT-PD1ヘテロダイマーによりマウスをi.p.処置した。3日おきに合計4回の投与を行った。
【0699】
罹患率及び死亡率について動物を毎日評価した。
【0700】
In vivo NSGモデル:
A549ヒト肺腺癌モデルにおけるTIGIT-PD1ヘテロダイマーの効果 - 11~13週齢のNSGマウスにヒト肺腺癌細胞を皮下(s.c.)接種した後、TIGIT-PD1ヘテロダイマー又はビヒクル対照で処置した。ヘテロダイマーの効果は、腫瘍体積を評価し、腫瘍成長の阻害(TGI)を計算することによって評価した。
【0701】
処置プロトコル:
研究の0日目に5.0×106個のA549細胞をs.c.接種した。9日目にマウスに放射線を照射し、ヒトPBMC(5×106)をi.v.注射した後、16日目にヒトPBMC(5×106)の2回目の注射を行った。
【0702】
実験では2つの群を割り当てた:
群1 - 9日目から開始して、1日おき(EOD)に200μl/マウスのPBSをマウスにi.p.注射した。
群2 - 9日目から開始して、EODで容積200μl/マウスの150μgのTIGIT-PD1ヘテロダイマーによりマウスをi.p.処置した。合計4回の投与を行った。
【0703】
1回目の処置日(9日目)から、追跡調査期間中EODで腫瘍体積を測定した。全ての動物を18日目に屠殺した。
【0704】
実施例1
2種のFc融合タンパク質を含むヘテロダイマーの選択、設計、製造及び特徴付け
SIRPα、PD1、TIGIT、LILRB2及びSIGLEC10から選択される2種のタンパク質(ここで、タンパク質のそれぞれは、「ノブ」イントゥ「ホール」法(例えば、米国特許第8216805号明細書に記載される)を用いてIgG1又はIgG4のFcドメインに融合される)を含むいくつかのヘテロダイマーを設計した(上記の表1を参照されたい)。
【0705】
以下のパラメータを最適化するためにヘテロダイマー-タンパク質の構造解析を行った:
・フォールディング: 標的への結合を可能にする適切なフォールディングは、潜在的なジスルフィドスクランブリングを最小限にする、
・完全性: タンパク質分解性部位の露出がない、
・哺乳類発現系における高発現、及び
・低い免疫原性。
【0706】
図2A~5Cは、本明細書において「DSP120V1」、「DSP216V1」、「DSP404V1」、「DSP502V1」と称されるヘテロダイマー(上記の表1の記述及び配列を参照されたい)の概略図並びに特定されたドメイン及びセグメントに対して生成された3Dモデルを提示する。この分析により、リガンドへの可能な結合及び異なるドメイン間の干渉のないことが予想された。
【0707】
続いて、いくつかのヘテロダイマーを製造し、分析した。
図6A~B及び
図15に示されるように、予測されるヘテロダイマー分子量形態のタンパク質の大部分は、非還元条件下で観察され、2つのサブユニットの発現は、還元条件で確認された。SDS-PAGEにより、低レベルのホモダイマー(2つの「ノブ」断片又は2つの「ホール」断片を含むダイマー)のみが検出された。
【0708】
さらに、製造したヘテロダイマーは、設計されたその全てのドメインを含有し、例えば、DSP120V1は、PD1及びSIRPαドメインの両方を含有し(
図7A~B及び8A~B)、DSP216及びDSP216V1は、LILRB2及びSIRPαドメインの両方を含有し(
図7C及び9A~C)、DSP402は、PD1ドメインを含有し(
図7A)、DSP502は、PD1及びTIGITドメインの両方を含有する(
図7A及び10A~B)。
【0709】
次のステップでは、製造したヘテロダイマーは、その組成に応じて以下の実施例2~8に従ってさらに分析される。
【0710】
実施例2
ヘテロダイマーは、その対応物であるリガンド/受容体に結合する
細胞表面で発現されるCD47及びPDL1に対するSIRPα-PD1ヘテロダイマーの結合分析
本明細書において「DSP120」及び「DSP120V1」と称されるSIRPα-PD1ヘテロダイマーのPD1ドメインの、細胞上で発現されるヒトPDL1に対する結合は、抗SIRPαを検出抗体として、PDL1を過剰発現するDLD1-PDL1細胞株(
図11A)を用いて決定した。低レベルの内因性PDL1を発現するDLD1-WT細胞(
図11A)は、対照としての役割を果たした。
図11C~Dに示されるように、DSP120及びDSP120V1は、用量依存的にDLD1 PDL1過剰発現細胞に結合した。
【0711】
SIRPα-PD1ヘテロダイマーDSP120のSIRPαドメインの、細胞上で発現されるヒトCD47に対する結合は、PE結合抗IgG4抗体を検出抗体として、ヒトCD47を過剰発現するCHO-K1細胞株(
図11B)を用いて決定した。CHO-K1細胞は、ヒトCD47を発現しない(
図11B)ため、対照としての役割を果たした。
図11Eに示されるように、DSP120は、用量依存的にCHO-K1 CD47過剰発現細胞に結合した。
【0712】
プレート結合CD47又はPDL1に対するSIRPα-PD1ヘテロダイマーの結合分析
SIRPα-PD1ヘテロダイマーDSP120のPD1及びSIRPαドメインの、プレート結合PDL1又はCD47に対する結合は、抗ヒトPD-1(CD47コートしたプレートの場合)又は抗ヒトSIRPα抗体(PDL1コートしたプレートの場合)を用いてインキュベーション後に決定し、続いて対応するHRP結合二次抗体とのインキュベーションを行った。TMB基質を用いて検出を行った。
図8Aは、CD47でコートしたプレートに対するDSP120の濃度依存的結合を示し、
図8Bは、PDL1でコートしたプレートに対するDSP120の濃度依存的結合を示す。
【0713】
細胞表面で発現されるCD47及びHLA-Gに対するSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーの結合分析
本明細書において「DSP216」と称されるSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーのSIRPαドメインの、細胞上で発現されるヒトCD47に対する結合は、ヒトCD47を発現する(
図12A)及びHLA-Gを発現しない(
図12B)HT1080細胞株と、検出抗体としてのAPC結合抗LILRB2とを用いて決定した。
図12Eに示されるように、DSP216は、用量依存的にCD47発現細胞に結合した。
【0714】
本明細書において「DSP216V1」と称されるSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーのSIRPα及びLILRB2ドメインの、細胞上で発現されるHLA-G及び/又はヒトCD47に対する結合は、HLA-Gを過剰発現するHT1080細胞株(
図12D)及び抗ヒトIgG4抗体を用いて決定した。
図12Fに示されるように、DSP216V1は、用量依存的にHLA-G及びヒトCD47発現細胞に結合した。
【0715】
HT1080-HLA-Gは、HLA-G及びCD47の両方を発現するため、リガンドのそれぞれに対する遮断抗体を用いて、ヒトCD47及びHLA-Gへの特異的な結合をさらに試験した。
図16Aに示されるように、HT1080-HLA-G細胞株上で発現されるHLA-Gに対するDSP216の特異的な用量依存的結合は、抗ヒトHLA-G遮断抗体を用いて確認した(APC結合抗ヒトIgG1抗体を検出抗体として使用した)。同様に、HT1080細胞株上のヒトCD47並びにHT1080-HLA-G細胞株上で発現されるヒトCD47及びヒトHLA-Gに対するDSP216V1の特異的な用量依存的結合は、抗ヒトCD47及び抗ヒトHLA-G遮断抗体を用いて確認した(
図16B、APC結合抗SIRPα抗体を検出抗体として使用した)。
【0716】
同様に、本明細書において「DSP216V3」、「DSP216V4」、「DSP216V5」及び「DSP216V6」と称される他のSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーの、LILRB2ドメインのヒトHLA-Gへの特異的な用量依存的結合及びSIRPαドメインのCD47への特異的な用量依存的結合は、HLA-Gを過剰発現するHT1080-HLA-G細胞株又はJEG3細胞株(いずれの株もヒトCD47及びヒトHLA-Gの両方を発現する)を使用し、抗ヒトHLA-G遮断抗体又は抗ヒトCD47遮断抗体を用いて決定した(
図16C~17F、APC結合抗ヒトIgG1又はAPC結合抗SIRPα抗体を検出抗体として使用した)。
【0717】
プレート結合ヒトCD47又はヒトHLA-Gに対するSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーの結合分析
SIRPα-LILRB2ヘテロダイマーDSP216、DSP216V1、DSP216V3及びDSP216V4のSIRPα及びLILRB2ドメインの、プレート結合CD47又はHLA-Gに対する結合は、抗ヒトSIRPα抗体(HLA-Gコートしたプレートの場合)を用いてインキュベーション後に決定し、続いて対応するHRP結合二次抗体とのインキュベーションを行うか、又は抗ヒト抗IgG1-HRP若しくは抗ヒトIgG4-HRPを用いた。TMB基質を用いて検出を行った。
図9A~C及び18A~Hに示されるように、試験した全てのヘテロダイマーは、濃度依存的にプレート結合CD47及びプレート結合HLA-Gの両方に結合した。
【0718】
細胞表面で発現されるCD24及びPDL1に対するSIGLEC-10-PD1ヘテロダイマーの結合分析
本明細書において「DSP402」と称されるSIGLEC-10-PD1ヘテロダイマーのPD1ドメインのヒトPDL1への結合は、PDL1を過剰発現するDLD1-PDL1細胞株と、検出抗体としてのAPC結合抗PD1とを用いて決定した(
図11A)。低レベルの内因性PDL1を発現するDLD1-WT細胞は、対照としての役割を果たした(
図11A)。
図13に示されるように、DSP402は、用量依存的にDLD1 PDL1過剰発現細胞に結合した。
【0719】
SIGLEC-10ドメインのその受容体への結合は、CD24発現細胞を用いて試験される。
【0720】
細胞表面で発現されるPVR、PDL1及びFcγRIIIa(CD16)に対するTIGIT-PD1ヘテロダイマーの結合分析
本明細書において「DSP502」と称されるTIGIT-PD1ヘテロダイマーのPD1ドメインのヒトPDL1への結合は、PDL1を過剰発現するDLD1-PDL1細胞株(
図11A)及びPD-L1を内因的に発現するHT1080細胞株(
図14D)を用いて決定した。DSP502のTIGITドメインのヒトPVRへの結合は、いずれも高レベルの内因性PVRを発現するDLD1-PDL1及びHT1080細胞株を用いて決定した(14B及び14C)。PE結合抗ヒトIgG1抗体を両方のアッセイで検出抗体として使用した。
【0721】
図14E~Fに示されるように、DSP502は、用量依存的にPDL1発現細胞に結合し、結合は、抗ヒトPD-L1遮断剤抗体により遮断された。
【0722】
図14E~Fは、抗ヒトPVR遮断抗体を用いてこれらの細胞へのDSP502の結合を遮断することにより示されるように、PVR発現細胞に対するDSP502のTIGITドメインの用量依存的結合も示す。
【0723】
図14Gは、PVRを発現し、且つPD1を発現しないDLD-1 WT細胞に対する、他のTIGIT-PD1ヘテロダイマー(本明細書において「DSP502V1」、「DSP502V2」及び「DSP502V3」と称される)のTIGITドメインの用量依存的結合を示す(
図14A及び11A)。PE結合抗ヒトIgG4抗体を検出抗体として使用した。これらの3種のタンパク質の結合のパターンは、類似している。
【0724】
加えて、DSP502及び本明細書において「DSP502V4」と称される別のTIGIT-PD1ヘテロダイマー(Fc-IgG1ドメイン上にLALA変異を含有する)のPD1及びTIGITドメインの、ヒトPDL1及びヒトPVRに対する用量依存的結合は、それぞれPD-L1を過剰発現するK562 PD-L1細胞株、PVRを過剰発現するK562細胞株並びにPVR及びPD-L1の両方を過剰発現するK562 PVR/PD-L1細胞株を用いて決定した(
図19A~I)。
【0725】
PE結合抗ヒトIgG1抗体又はAPC結合抗TIGIT及び抗ヒトIgG1抗体を、図に示されるように、結合アッセイにおいて検出抗体として使用した。
【0726】
高レベルの内因性PVRを発現するSKOV3細胞株に対するDSP502のTIGITドメインの用量依存的結合も観察した(
図20A~B、PE結合抗ヒトIgG1抗体を検出抗体として使用した)。
【0727】
PVRを内因的に発現するAB12細胞株(
図22A~B、PE結合抗ヒトIgG1抗体を検出抗体として使用した)又はPD-L1及びPVRの両方を内因的に発現するRenca細胞株(
図21A~B、PE結合抗ヒトIgG1抗体を検出抗体として使用した)を用いて、細胞上で発現されるマウスPDL1及びマウスPVRに対するDSP502のPD1及びTIGITドメインの用量依存的結合も観察した。Renca細胞上で発現されるリガンド(PDL1及びPVR)のそれぞれに対するDSP502の特異的結合は、抗mPDL1及び抗mPVR遮断剤抗体を用いて実証した。
【0728】
さらに、ヒトFc受容体CD16に対するDSP502のFcドメインの結合は、CD16を過剰発現するJurkat NFAT細胞株を用いて実証した(
図23B)。PE結合抗ヒトIgG1抗体を検出抗体として使用した。
図23Aに示されるように、DSP502は、用量依存的に細胞に結合した。CD16への結合の特異性は、ヘテロダイマーの細胞への結合を完全に遮断するFc遮断剤を用いて実証した。
【0729】
ヘテロダイマーのFc受容体への結合の効果をさらに試験するために、K562PVR/PDL-1細胞(標的細胞)と、CD16を過剰発現するJurkat NFAT細胞(エフェクター細胞)との共培養アッセイ後、6時間のインキュベーション後にルシフェラーゼシグナルの分析を行った。Jurkat-NFAT-CD16細胞は、NFATエレメントに融合したISG54プロモーターの制御下でLuciaルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に発現する。FcγRIIIa結合は、検出試薬を添加したときにルシフェラーゼによって生成される生物発光シグナルとして測定された。
図24に示されるように、DSP502の存在下で細胞を共培養すると、ルシフェラーゼの分泌が増大した。重要なことに、Jurkat NFAT-CD16細胞をDSP502との単一培養アッセイ(即ちK562PVR/PDL-1細胞の非存在下)としてインキュベートしたとき、ルシフェラーゼの分泌は、検出されなかった。したがって、Jurkat細胞上で発現されるFcγRIIIaに対するDSP502の結合は、PVR及び/又はPDL1に固定されていない場合、シグナル伝達の開始のために十分ではない。
【0730】
TIGIT-PD1ヘテロダイマーのプレート結合PVRへの結合分析
TIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502のTIGITドメインのプレート結合PVRに対する結合は、抗ヒトPD1抗体を用いてインキュベーション後に決定し、続いて対応するHRP結合二次抗体とのインキュベーションを行った。TMB基質を用いて検出を行った。
図10A~Bに示されるように、DSP502は、濃度依存的にプレート結合PVRに結合した。
【0731】
実施例3A
ヘテロダイマーは、ELISAにより決定したとき、その対応物であるリガンド/受容体に同時に結合する
ヘテロダイマーの両側のその対応物への結合、即ちPD1のPDL1への結合、LILRB2のHLA-Gへの結合、SIRPαのCD47への結合、TIGITのPVRへの結合及びSIGLEC-10のCD24への結合は、サンドイッチELISAに基づくアッセイによって試験される。このアッセイは、ヘテロダイマータンパク質の異なるバリアントの機能的特性を比較するためにも使用される。
【0732】
平底96ウェルプレートは、CD47タンパク質、PDL1タンパク質、HLA-Gタンパク質、PVR又はCD24などの組換えの対応物タンパク質と共にインキュベートすることにより一方のアームの受容体/リガンドでプレコートされ、続いてブロッキング及び洗浄が行われる。製造されたヘテロダイマーを含有する段階希釈した細胞培養上清又は精製タンパク質サンプルは、対応するプレコートウェルに添加される。付加的な洗浄ステップに続いて、ヘテロダイマーの第2のアームに対するビオチン化又は非標識の可溶性受容体/リガンドが添加され、捕捉したタンパク質に結合される。その後、第2の受容体/リガンドに対するストレプトアビジン-HRP又はHRP結合抗体が添加され、620nmを参照波長として450nmでプレートリーダー(Thermo Scientific社製のMultiscan FC)を使用し、標準的なELISAプロトコルに従い、TMB基質を用いて検出が行われる。
【0733】
代わりに、プレートは、等モル量の2種のタンパク質の混合物でコートされ、IgG特異的抗体を用いて結合が検出される。
【0734】
図25Aに示されるように、TIGIG-PD1ヘテロダイマーDSP502は、同時にPVR及びPDL1の両方に結合した。
【0735】
実施例3B
ヘテロダイマーは、フローサイトメトリーにより決定したとき、その対応物であるリガンド/受容体に同時に結合する
TIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502のその全ての対応物への同時結合(即ち例えばIgG1-FcのFcγRIIIaへの結合、TIGITのPVRへの結合及びPD1のPDL1への結合)は、FcγRIIIaを発現するNK初代細胞(
図25B)と、PVR及びPDL1を発現するK562PVR/PD-L1(
図19F)とを用いて、フローサイトメトリーにより試験した。具体的には、CPD色素で前標識したNK細胞を、異なる濃度のDSP502の存在下、それぞれ2:1の比率において、CFSE色素で前標識したK562PVR/PD-L1細胞と共培養した。ダブレットの形成は、フローサイトメトリーを用いて分析し、二重染色イベントとして現れた。
図25Cに示されるように、DSP502は、ダブレット形成を媒介し、DSPが両方の細胞型に同時に結合することが示された。さらに、DSP502によるこれらのダブレット形成媒介活性は、PVR、PD-L1又はFcγRIIIに対する特異的遮断剤抗体により遮断され(
図25D)、ダブレット形成の最適条件は、3つの受容体が関与する場合であることが示された。
【0736】
実施例4
リガンド-受容体結合の遮断に対するヘテロダイマーの効果
ヘテロダイマーは、標的細胞上で発現される内因性リガンド/受容体と本来の受容体/リガンドとの相互作用を遮断するように設計される。
【0737】
したがって、例えば、関連のヘテロダイマーのPD1部分は、T細胞上で発現される内因性PD1と、腫瘍細胞上で発現されるPDL1との相互作用を遮断するように設計される。この目的のために、この相互作用の遮断剤としての、製造したヘテロダイマーの有効性が評価される。プレートを組換えヒトPDL1でコートする。続いて、プレートを洗浄し、異なる濃度の製造したPD1含有ヘテロダイマー(例えば、上記の表1を参照されたい)又は陽性対照の抗PD1遮断剤抗体と共に1時間インキュベートする。ビオチン化PD1が添加され、続いて付加的なインキュベーションが行われ、次にプレートが洗浄され、標準的なELISAプロトコルに従い、ストレプトアビジン-HRP及びTMB基質でブロッティングされる。620nmを参照波長として450nmでプレートリーダー(Thermo Scientific社製のMultiscan FC)を用いてプレートを分析した。
【0738】
同様に、PVR-TIGIT、SIGLEC10-CD24、LILRB2-HLA-G及びCD47-SIRPαの結合を遮断するためのその有効性を評価するために、関連のヘテロダイマーの遮断活性が研究される。
【0739】
実施例5
ヘテロダイマーのin vivo抗腫瘍効果
実験設計:
製造したヘテロダイマーの癌の治療における有効性を試験するために、3つの異なるin-vivoマウスモデルを使用する。
1.ヒト幹細胞、又はヒトPBMC、又は固定化ヒトPBMCと、ヘテロダイマーの標的を発現するヒト腫瘍細胞とを接種したNSGマウス。
2.ヒト腫瘍細胞を接種したNude-SCIDマウス。
3.試験したヘテロダイマーの代替マウスタンパク質を用いた同系マウス腫瘍モデル。
【0740】
全モデルにおいて、マウスは、静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮下(SC)又は同所性に腫瘍細胞を接種されている。腫瘍が検知可能(約80mm3)になったら、製造したヘテロダイマーを異なる用量及び異なるレジメで使用し、マウスをIV、IP、SC又は同所性に処置した。
【0741】
マウスの体重及び臨床兆候を追跡した。1週間に数回、腫瘍をカリパスで測定し、腫瘍体積は、式:V=長さ×幅2/2に基づいて計算した。マウスの体重は、毎日測定した。腫瘍成長及び生存率は、実験全体を通してモニタリングした。
【0742】
腫瘍内の免疫細胞の浸潤及びサブタイピングは、腫瘍の切除又はリンパ節の抜き取り、消化及び特異的抗体による染色及びフローサイトメトリー解析を用いた免疫表現型決定で試験した。加えて又は代わりに、腫瘍を切除し、パラフィンに包埋し、切片化して特異的抗体による免疫組織学的染色し、免疫細胞の浸潤又は腫瘍の壊死グレードを決定した。
【0743】
賭殺時、H&E及びIHC染色のためにマウスの臓器を回収し、パラフィンブロックに包埋した。
【0744】
下記の試験のために、一般的な手順に従い、異なる時点でマウスから血液サンプルを採取した。PK解析、血漿中のサイトカインの測定、循環中の血液細胞副集団のFACSプロファイリング、血液学的試験、血清化学試験、抗薬物抗体(ADA)解析及び中和抗体解析(Nab)。
【0745】
結果:
ヒトNSCLC腫瘍を有するNSGマウスにおけるTIGIT-PD1ヘテロダイマーの抗腫瘍効果
ヒト肺腺癌細胞株であるA549細胞を接種した11~13週齢のオスNSGマウスにおいて、TIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502の抗腫瘍in-vivo効果を評価した。DSP502で処置したマウスの腫瘍体積は、腫瘍接種後18日間ほとんど増大しなかったが、対照マウスの腫瘍体積は、400mm
3の体積に達し、DSP502による処置が腫瘍成長の有意な阻害をもたらすことが示された(
図26)。
【0746】
マウス中皮腫腫瘍を有するマウスにおけるTIGIT-PD1ヘテロダイマーの抗腫瘍効果
マウス悪性胸膜中皮腫(MPM)細胞株であるAB12細胞を接種した7週齢のメスBALB/cマウスにおいて、TIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502の抗腫瘍in-vivo効果を評価した。DSP502による処置は、対照マウスと比較してマウスの生存を有意に延長した(
図27)。例えば、対照処置マウスの87.5%は、腫瘍接種後33日目までに死亡したが、DSP502処置マウスの62%は、腫瘍接種後80日を超えて生存した。
【0747】
実施例6
M-CSF依存性マクロファージ成熟に対する、関連ヘテロダイマーのLILRB2アームの効果
ヘテロダイマーのLILRB2アームは、マクロファージ及び樹状細胞等のAPC上に発現されている内因性LILRB2と、それに対して腫瘍又は免疫細胞上に発現されたHLA-Gとの相互作用に対して競合するか又は相互作用を遮断することで、誘導される免疫抑制シグナルを遮断するように設計される。M1様マクロファージは、抗腫瘍活性を示す一方、M2マクロファージは、腫瘍進行の促進について報告されている。M-CSF依存性マクロファージ成熟時のアンタゴニスト様抗体によるLILRB2の遮断は、CD14及びCD163の発現が低く、より丸く、強く結合したM1様(抗腫瘍)表現型をもたらすことが示された。作製したマクロファージのLPSによる刺激後、プロ炎症性サイトカインであるTNFαの分泌の増強及び抗炎症性IL-10の分泌の減少が検出された。
【0748】
このために、LILRB2を含む製造されたヘテロダイマーのM-CSF依存性マクロファージ成熟に対する効果を、フローサイトメトリーに基づくCD14及びCD163の検出及びLPSで前処理したマクロファージの刺激後のTNFα及びIL-10放出の測定によって評価する。
【0749】
実施例7
SIRPα又はLILRB2ドメインを含むヘテロダイマーのマクロファージ及び多形核細胞に対する効果
いくつかの実施形態のヘテロダイマーのSIRPα部分は、腫瘍細胞上のCD47と内因性SIRPαとの相互作用を競合及び遮断することにより、マクロファージ及び顆粒球などのAPC上で発現される内因性SIRPαに向けてCD47発現腫瘍細胞により誘導される「ドント・イート・ミー」シグナルを遮断するように設計される。「ドント・イート・ミー」シグナルのこの遮断は、腫瘍細胞の食作用を誘導する。
【0750】
いくつかの実施形態のヘテロダイマーのLILRB2部分は、一部分において、腫瘍及び免疫細胞上のHLA-Gと内因性LILRB2との相互作用を競合及び遮断することにより、マクロファージ及びDCなどのAPC上で発現される内因性LILRB2に向けて、腫瘍又は免疫細胞上で発現されるHLA-Gによって誘導される免疫抑制シグナルを遮断するように設計される。HLA-Gの「ドント・イート・ミーシグナル」のこの遮断は、腫瘍細胞の食作用を誘導し、免疫細胞間の阻害性HLA-G-LILRB2シグナルの伝達を防止し、その結果、食作用が増強される。
【0751】
ヒトマクロファージ又は多形核細胞(PMN)による腫瘍細胞の食作用に対する製造したSIRPαを含むヘテロダイマーの効果及びヒトマクロファージ又はDCによる腫瘍細胞の食作用に対するLILRB2を含むヘテロダイマーの効果は、フローサイトメトリーに基づくアッセイ又は蛍光顕微鏡法を用いて評価される。
【0752】
この目的のために、ヒトPMN(顆粒球)による腫瘍細胞の食作用に対するSIRPα-LILRB2ヘテロダイマーDSP216の効果を、フローサイトメトリーに基づくアッセイを用いて評価した。異なる3ドナーからの顆粒球を1、2又は5μg/mLのDSP216と共にインキュベートし、次にヒトCD47を発現する腫瘍細胞株HT1080又はヒトCD47及びヒトHLA-Gの両方を発現するHT1080-HLA-Gと1:1のE:T比で共培養した(
図12A及び12D)。
図28に示されるように、DSP216処置は、HT1080細胞の食作用パーセンテージ及びHT1080-HLA-Gの食作用パーセンテージをより大きい程度まで増大した。
【0753】
実施例8
TIGITドメインを含むヘテロダイマーによるNK細胞の細胞傷害活性
ナチュラルキラー(NK)細胞は、B細胞及びT細胞のように特異的抗原を認識することなく、直接的な細胞傷害性又はサイトカイン/ケモカインの分泌を誘導する。NK細胞傷害性は、感染細胞、悪性腫瘍及びストレスを受けた細胞に対する免疫応答において重要な役割を果たし、種々の疾患の病理学的過程に関与する。
【0754】
製造したヘテロダイマーのNK活性化に対する効果を決定するために、限定されないが、以下を含む、当技術分野で知られている多数のアッセイを使用した。
【0755】
・細胞傷害性アッセイ: 共培養アッセイにおけるNK細胞(エフェクター細胞)による標的細胞の死滅。死滅のパーセンテージは、フローサイトメトリー分析(FACS)によって分析する。前標識した標的細胞(例えば、K562PVR/PD-L1細胞又はK562WT細胞)を96ウェルプレートに入れ、種々のエフェクター-標的(E:T)比において、前標識した初代NK細胞と共に37℃でインキュベートする。任意選択で、アッセイ前にNK細胞を1000U/mLのIL-2と共に48時間培養する。4、12及び/又は24時間後に細胞を回収し、フローサイトメトリーにより検定する。NK細胞を含まない培養物から回収された標的細胞の数を参照として使用する。
【0756】
・細胞傷害性アッセイ: 共培養アッセイにおけるNK細胞(エフェクター細胞)による標的細胞の死滅。死滅のパーセンテージは、標識標的細胞及びカスパーゼ感受性蛍光基質を用いてIncucyte装置で決定する。
【0757】
・炎症性サイトカインの分泌: 種々の比率の種々の標的細胞で初代NK細胞を24時間刺激する。無細胞培養上清中のインターフェロンγ(IFN-γ)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のレベルは、ELISA又はCytometric Bead Array(CBA)で決定する。
【0758】
・グランザイムBの分泌: 種々の比率の種々の標的細胞で初代NK細胞を12時間刺激する。無細胞培養上清中のグランザイムBのレベルは、ELISAで決定する
【0759】
結果:
NK細胞によるK562WT標的細胞の死滅は、PVR及び/又はPD-L1を発現するK562細胞の死滅と比較して高かった(
図29A)。標的細胞としてK562WT細胞を含む共培養物にTIGIT-PD1ヘテロダイマーDSP502を添加しても、NK細胞傷害性は、増大しなかった(データは示さず)。しかしながら、標的細胞としてPVR及び/又はPD-L1を発現するK562細胞を含む共培養物にDSP502を添加すると、試験した全てのE:T比において、未処理の細胞と比較してNK細胞傷害性が有意に増大した(
図29A)。最も有意な細胞傷害性効果は、DSP502ヘテロダイマーで処理されたPVR及びPD-L1の両方を発現するK562細胞で観察された。
【0760】
上記に記載される細胞傷害性アッセイと一致して、標的細胞としてK562WTと共培養したNK細胞からのグランザイムBの分泌は、標的細胞としてPVR及び/又はPD-L1を発現するK562細胞との共培養と比較して高かった(
図29B)。標的細胞としてPVR及び/又はPD-L1を発現するK562細胞を含む共培養物にDSP502を添加すると、試験した全てのE:T比において、未処理の細胞と比較してグランザイムBの分泌が有意に増大した(
図29B)。細胞傷害性アッセイの場合と同様に、グランザイムBの分泌の最も有意な増大は、PVR及びPD-L1の両方を発現するK562細胞で観察された。
【0761】
本発明がその特定の実施形態に関連して記載されたが、多くの代替形態、修正形態及び変形形態が当業者に明らかであることは、明白である。したがって、特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内に含まれるこのような代替形態、修正形態及び変形形態の全てを包含することが意図される。
【0762】
本明細書で参照される全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が参照されるとき、具体的及び個別に参照によって本明細書に援用されると言及されているかのように、参照によってその全体が本明細書に援用されることが本出願人の意図である。さらに、本願における参考文献の引用又は特定のいずれも、このような参考文献が本発明の従来技術として利用可能であることを認めると解釈されてはならない。セクションの見出しが使用される限り、これらは、必ずしも限定であると解釈されてはならない。さらに、本願のいかなる優先権文献も参照によってその全体が本明細書に援用される。
【配列表フリーテキスト】
【0763】
配列番号1: SIRP Fc(IgG1ノブ) 585AA DSP120、DSP216、DSP403、DSP503の第1のモノマー
配列番号2: #1の核酸
配列番号3: PD1 Fc(IgG1ホール) 382AA DSP120、DSP220、DSP402、DSP502の第2のモノマー
配列番号4: #3の核酸
配列番号5: SIRPアルファ(IgG4ノブ) 582AA DSP120V1、DSP216V1、DSP403V1、DSP503V1の第1のモノマー
配列番号6: #5の核酸
配列番号7: PD1(IgG4ホール) 379AA DSP120V1、DSP402V1、DSP502V2、DSP502V3の第2のモノマー
配列番号8: #7の核酸
配列番号9: TIGIT Fc(IgG1ノブ) 354AA DSP205、DSP404、DSP502の第1のモノマー
配列番号10: #9の核酸
配列番号11: LILRB Fc(IgG1ホール) 645AA DSP205、DSP216、DSP412の第2のモノマー
配列番号12: #11の核酸
配列番号13: TIGIT Fc(IgG4ノブ) 351AA DSP205V1の第1のモノマー
配列番号14: #13の核酸
配列番号15: LILRB Fc(IgG4ホール) 642AA DSP205V1、DSP216V1、DSP412V1の第2のモノマー
配列番号16: #15の核酸
配列番号17: SIRPアルファ Fc(IgG4としてのIgG1ノブ) 585AA DSP216V2の第1のモノマー
配列番号18: #17の核酸
配列番号19: LILRB2 FC(IgG4としてのIgG1ホール) 645AA DSP216V2の第2のモノマー
配列番号20: #19の核酸
配列番号21: LILRB2 Fc(IgG1ノブ) 645AA DSP220の第1のモノマー
配列番号22: LILRB2 Fc IgG4ノブ 642AA DSP220V1の第1のモノマー
配列番号23: #22の核酸
配列番号24: SIGLEC10 Fc(IgG1ノブ) 375AA DSP402、DSP412の第1のモノマー
配列番号25: SIGLEC10 Fc(IgG4) 367AA DSP402V1、DSP412V1の第1のモノマー
配列番号26: #25の核酸
配列番号27: hIgG1 Fcリンカー(DSP216V2ではノブV1のみ) 232aa
配列番号28: hIgG1 Fcリンカー(DSP216V2ではノブV1のみ) 232aa
配列番号29: SIGLEC10 Fc(IgG1ホール) 475AA DSP404、DSP403の第1のモノマー
配列番号30: SIGLEC10 Fc(IgG4ホール) DSP404V1、DSP403V1の第2のモノマー
配列番号31: TIGIT No I42D Fc(IgG4ノブ) 351AA DSP502V2の第1のモノマー
配列番号32: #31の核酸
配列番号33: TIGIT WT Fc(IgG4ノブ) 355AA DSP502V3の第1のモノマー
配列番号34: #33の核酸
配列番号35: TIGIT Fc(IgG1ホール) 354AA DSP503の第2のモノマー
配列番号36: TIGIT Fc(IgG4ホール) 351AA DSP503V1の第2のモノマー
配列番号37: 全長PD1のアミノ酸配列
配列番号38: 全長PD1の核酸配列
配列番号39: CYS93>Ser置換を有するPD1 ECD全長
配列番号40: 配列番号39をコードする核酸配列
配列番号41: PD1 ECM公知断片
配列番号42: PD1 ECM公知断片
配列番号43: 150aaの本来のPD1ドメイン
配列番号44: 配列番号43の核酸
配列番号45: CYS93>Ser置換を有する、150aaの本来のPD1ドメイン
配列番号46: 配列番号45の核酸
配列番号47: PD1ドメインの140aa -5-5
配列番号48: 配列番号47の核酸
配列番号49: CYS93>Ser置換を有するPD1ドメインの140aa -5-5
配列番号50: 配列番号49の核酸
配列番号51: hIgG1 Fcリンカー(ノブ) 232aa
配列番号52: hIgG1 Fcリンカー(ホール) 232aa
配列番号53: 128aaのPD1セグメント
配列番号54: #53の核酸
配列番号55: 135aaのPD1セグメント
配列番号56: #55の核酸
配列番号57: 133aaのPD1セグメント
配列番号58: #57の核酸
配列番号59: PD1 -10-5(CYS93>Ser置換有)
配列番号60: #59の核酸
配列番号61: PD1 -10-12(CYS93>Ser置換有)
配列番号62: #61の核酸
配列番号63: PD1 -5-12(新規、V20由来)(CYS93>Ser置換有)
配列番号64: #63の核酸
配列番号65: PD 1-11-12
配列番号66: #65の核酸
配列番号67: PD1 -11-12(新規、V18由来)(CYS93>Ser置換有)
配列番号68: #67の核酸
配列番号69: PD1 -11-5
配列番号70: #69の核酸
配列番号71: PD1 -11-5(新規、V19由来)(CYS93>Ser置換有)
配列番号72: #71の核酸
配列番号73: PD1 -5-7
配列番号74: #73の核酸
配列番号75: PD1 -5-7(新規、V21由来)(CYS93>Ser置換有)
配列番号76: #75の核酸
配列番号77: (CYS93>Ser置換無)由来のPD1 -5-9
配列番号78: #77の核酸
配列番号79: (CYS93>Ser置換無)由来のPD1 -0-5
配列番号80: #79の核酸
配列番号81: (CYS93>Ser置換無)由来のPD1 -0-7 143aa
配列番号82: #81の核酸
配列番号83: 全長SIRPアルファのアミノ酸配列
配列番号84: #83の核酸
配列番号85: 本来のSIRPaドメイン(343AA)
配列番号86: #85の核酸
配列番号87: 116aa SIRPaセグメント
配列番号88: #87の核酸
配列番号89: 4つの点変異を有するSIRPaの343アミノ酸配列
配列番号90: #89の核酸
配列番号91: 4つの点変異を有するSIRPaの116アミノ酸配列
配列番号92: #91の核酸
配列番号93: aa SIRPaセグメント-配列番号87(117aaのSIRPaセグメント)のC末にKの付加有
配列番号94: #93の核酸
配列番号95: LILRB2全長ECDアミノ酸配列
配列番号96: LILRB2 D1-4、AA22-419(Q8N423-1 UniParc)アミノ酸配列
配列番号97: LILRB2 D1-4、AA22-419(Q8N423-1 UniParc)核酸配列
配列番号98: LILRB2 D1-2、AA22-219(Q8N423-1 UniParc)アミノ酸配列
配列番号99: LILRB2 D1-2、AA22-219(Q8N423-1 UniParc)核酸配列
配列番号100: Siglec 10全長(Q96LC7-1 Uniprot)アミノ酸配列
配列番号101: Siglec 10、AA18-145変異無(Q96LC7-1 Uniprot)アミノ酸配列
配列番号102: Siglec 10、AA18-145変異無(Q96LC7-1 Uniprot)核酸配列
配列番号103: Siglec 10、AA18-145とC36S(Q96LC7-1 Uniprot)アミノ酸配列
配列番号104: Siglec 10、AA18-145とC36S(Q96LC7-1 Uniprot)核酸配列
配列番号105: Siglec 10全長ECD、AA17-550(Q96LC7-1 Uniprot)アミノ酸配列
配列番号106: TIGIT全長(Q495A1 Uniprot ID)アミノ酸配列
配列番号107: TIGIT、AA22-134変異無(Q495A1 Uniprot ID)アミノ酸配列
配列番号108: TIGIT、ECD AA22-134変異無(Q495A1 Uniprot ID)核酸配列
配列番号109: TIGIT、AA22-134とI42A C69S(Q495A1 Uniprot ID)アミノ酸配列
配列番号110: TIGIT、AA22-134とI42A C69S(Q495A1 Uniprot ID)核酸配列
配列番号111: TIGIT、AA22-134C69S(Q495A1 DSP 502V2内のUniprot IDin)112AA、配列
配列番号112: TIGIT、AA22-134 C69S(Q495A1DSP 502V2内のUniprot ID)336核酸、配列
配列番号113: TIGIT、ECD AA22-137(Q495A1 DSP 502V3内のUniprot ID)116AA、配列
配列番号114: TIGIT、ECD AA22-137(Q495A1 DSP 502V3内のUniprot ID)348核酸、配列
配列番号115: TIGIT全長ECD AA22-141(Q495A1 Uniprot ID)120AA、配列
配列番号116: 人工シグナルペプチド
配列番号117: リンカーアミノ酸配列
配列番号118: リンカーアミノ酸配列
配列番号119: リンカーアミノ酸配列
配列番号120: リンカーアミノ酸配列
配列番号121: リンカーアミノ酸配列
配列番号122: リンカーアミノ酸配列
配列番号123: リンカーアミノ酸配列;6~10位は無くてもよい;11~15位は無くてもよい;16~20位は無くてもよい
配列番号124: リンカーアミノ酸配列
配列番号125: リンカーアミノ酸配列
配列番号126: リンカーアミノ酸配列;6~10位は無くてもよい;11~15位は無くてもよい
配列番号127: リンカーアミノ酸配列;12~16位は無くてもよい;17~21位は無くてもよい;22~26位は無くてもよい
配列番号128: リンカーアミノ酸配列
配列番号129: リンカーアミノ酸配列
配列番号130: リンカーアミノ酸配列
配列番号131: リンカーアミノ酸配列
配列番号132: リンカーアミノ酸配列
配列番号133: リンカーアミノ酸配列
配列番号134: hIgG4 Fcリンカー 229aa
配列番号135: hIgG4 Fcリンカー(ノブ) 229aa
配列番号136: hIgG4 Fcリンカー(ホール) 229aa
配列番号137: hIgG1 Fcリンカー、(P01857-1のAA99-330とC220S(kabat)置換232アミノ酸
配列番号138: 短いSIRPa-Fc(IgG1ノブ)359AA、DSP216V3の第1のモノマー
配列番号139: #138の核酸
配列番号140: 短いSIRPa-Fc(IgG4ノブ)356AA、DSP216V4の第1のモノマー
配列番号141: #140の核酸
配列番号142: SIRPa-Fc(IgG1ノブ LALA)358AA、DSP216V5の第1のモノマー
配列番号143: #142の核酸
配列番号144: 短いSIRPa-Fc(IgG1ノブ LALA)359AA、DSP216V6の第1のモノマー
配列番号145: #144の核酸
配列番号146: TIGIT- Fc(IgG1ノブ LALA)354AA、DSP502V4の第1のモノマー
配列番号147: #146の核酸
配列番号148: PD1- Fc(IgG1ホール LALA)382AA、DSP502V4の第2のモノマー
配列番号149: #148の核酸
配列番号150: LILRB2- Fc(IgG1ホールLALA)382AA、DSP216V5及びDSP216V6の第2のモノマー
配列番号151: #150の核酸
配列番号152: IgG1 FcホールLALA、 Fc(AA99-330)C220S L234A、L235Aと“ホール”T366S及びL368A Y407V)及びY349C(番号はKABATに基づく)、DSP216V5、DSP216V6及びDSP502V4で使用
配列番号153: #152の核酸
配列番号154: IgG1 Fc “ノブ”LALA(Fc IgG1(AA99-330) P01857-1 C220S(kabat)と、“ノブ”T366W(kabat)及びS354C(kabat)とL234A、L235A(kabat)、DSP216v5及びDSP502V4で使用
配列番号155: #154の核酸;1位のnはa、c、g、又はt
配列番号156: hIgG1 Fc
配列番号157: hIgG4-SPLE- Fc ノブ
配列番号158: hIgG4 Fc ノブ
配列番号159: hIgG4 F cホール
配列番号160: hIgG1 Fc ノブのみ
配列番号161: hIgG1 Fc ホールのみ
配列番号162: hIgG1 C220S Fc ホール
配列番号163: hIgG4-SPLE-Fc ノブ Y349C無
配列番号164: hIgG4-SPLE-Fc ホール E356C無
【配列表】
【国際調査報告】