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特表2024-503694下地ハードコートを排除した装飾用コーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】下地ハードコートを排除した装飾用コーティング
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/20 20060101AFI20240119BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20240119BHJP
   C23C 14/10 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
C23C14/20 A
C23C14/06 N
C23C14/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023543002
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2022050554
(87)【国際公開番号】W WO2022152756
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】2021900071
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519331224
【氏名又は名称】マザーソン・イノベーションズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】フィールド,サイモン・デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ストアー,バスティアン
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA11
4K029BA03
4K029BA06
4K029BA07
4K029BA08
4K029BA10
4K029BA11
4K029BA17
4K029BA46
4K029BB02
4K029BC02
4K029BC07
4K029CA05
4K029DC04
4K029DC05
(57)【要約】
本開示は、被覆されたプラスチック物品を製造するための方法であって、a.少なくとも第1および第2の表面を有するプラスチック基材を用意するステップと、b.物理蒸着を用いて、金属または金属合金層を含む装飾用コーティングをプラスチック基材上に堆積させるステップと、c.プラスチック物品の少なくとも第1の表面に保護コーティングを適用するステップとを含み、装飾用コーティングの堆積の前にプラスチック基材のプラズマ前処理がない、方法に言及する。さらに、本開示は、第1および第2の表面を有するプラスチック基材と、プラスチック基材上に直接堆積された金属または金属合金層を含む装飾用コーティングと、プラスチック物品の第1の表面に適用された保護コーティングとを含み、装飾用コーティングの残留応力が引張であり、被覆されたプラスチック物品がSAEJ2527加速化UV試験に合格する、被覆されたプラスチック物品に言及する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆されたプラスチック物品を製造するための方法であって、
a.少なくとも第1および第2の表面を有するプラスチック基材を用意するステップと、
b.物理蒸着を用いて、金属または金属合金層を含む装飾用コーティングを前記プラスチック基材上に堆積させるステップと、
c.前記プラスチック物品の少なくとも前記第1の表面に保護コーティングを適用するステップと
を含み、
前記装飾用コーティングの堆積の前に前記プラスチック基材のプラズマ前処理がない、
方法。
【請求項2】
前記装飾用コーティングが、前記プラスチック基材上に直接堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装飾用コーティングが、前記装飾用コーティングの引張残留膜応力をもたらす条件下、堆積される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記装飾用コーティングが、-50μm以下の前記装飾用コーティングの残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記装飾用コーティングが、-240μm以下の前記装飾用コーティングの残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記装飾用コーティングが、-765μm以下の前記装飾用コーティングの残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記保護コーティングがハードコーティングである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記保護コーティングが紫外線遮断コーティングである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記保護コーティングがMomentive PHC587BまたはAS4700Fである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングに適用される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングおよび前記プラスチック基材の反対面に適用される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記装飾用コーティングが付着促進層を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記装飾用コーティングが光学的改変層を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記光学的改変層および/または付着促進層が透明である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記光学的改変層および/または前記付着促進層がケイ素を含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記光学的改変層および/または付着促進層が、酸素の存在下堆積される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
堆積される前記光学的改変層および/または付着促進層が、二酸化ケイ素である、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記金属または金属合金層がクロム(Cr)を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記金属または金属合金層が、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、銅(Cu)、コバルト(Co)、またはモリブデン(Mo)を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記金属合金が、クロムおよびジルコニウムである、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記プラスチック基材にマスクを設けて、制御された光透過の一部を提供するステップをさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
提供される前記プラスチック基材が、前記装飾用コーティングの堆積の前に可視的なテクスチャー付けを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記プラスチック基材に可視的なテクスチャー付けを付与するステップをさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記プラスチック基材に2つの視覚的に別のテクスチャーを付与するステップをさらに含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記プラスチック基材が、射出成形されている、または、射出成形され得るプラスチックから形成された、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記プラスチック基材がポリカーボネートである、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって製造される、被覆されたプラスチック物品。
【請求項28】
請求項1から26のいずれか一項に記載の方法によって製造される被覆されたプラスチック物品であって、前記被覆されたプラスチック物品がSAEJ2527加速化UV試験に合格する、前記被覆されたプラスチック物品。
【請求項29】
被覆されたプラスチック物品であって、
第1および第2の表面を有するプラスチック基材と、前記プラスチック基材上に直接堆積された金属または金属合金層を含む装飾用コーティングと、前記プラスチック物品の第1の表面に適用された保護コーティングとを含み、前記装飾用コーティングの残留応力が引張であり、前記被覆されたプラスチック物品がSAEJ2527加速化UV試験に合格する、前記被覆されたプラスチック物品。
【請求項30】
堆積された前記装飾用コーティングの前記残留応力が、残留応力変位によって測定される、請求項29に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項31】
前記装飾用コーティングの残留膜応力変位が-50μm以下である、請求項29に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項32】
前記装飾用コーティングの前記残留膜応力変位が-240μm以下である、請求項29に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項33】
前記装飾用コーティングの前記残留膜応力変位が-765μm以下である、請求項29に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項34】
前記保護コーティングが、ハードコーティングである、請求項29から33のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項35】
前記保護コーティングが、紫外線遮断コーティングである、請求項29から34のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項36】
前記保護コーティングがMomentive PHC587BまたはAS4700Fである、請求項29から35のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項37】
前記プラスチック基材上に可視的なテクスチャー付けを含む、請求項29から36のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項38】
前記金属または金属合金層が、前記プラスチック基材と直接接触している、請求項29から37のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項39】
前記保護コーティングが、前記プラスチック物品の前記第1の表面上のみに付与される、請求項29から38のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項40】
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングを有する前記プラスチック物品の表面上のみに付与される、請求項29から38のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項41】
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングを有する前記プラスチック物品の表面および前記プラスチック物品の反対面上に付与される、請求項29から38のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項42】
前記金属または金属合金層がクロム(Cr)を含む、請求項29から41のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項43】
前記金属または金属合金層が、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、銅(Cu)、コバルト(Co)、またはモリブデン(Mo)を含む、請求項29から42のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項44】
前記金属合金が、クロムおよびジルコニウムである、請求項29から43のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項45】
前記装飾用コーティングが付着促進層も含む、請求項29から44のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項46】
前記装飾用コーティングが光学的改変層も含む、請求項29から45のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項47】
前記光学的改変層および/または付着促進層が透明である、請求項44または46に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項48】
前記光学的改変層および/または付着促進層がケイ素を含む、請求項44から47のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項49】
堆積された前記光学的改変層および/または付着促進層が、二酸化ケイ素である、請求項44から48のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項50】
前記プラスチック物品が、マスクを含んで、制御された光透過の一部を提供する、請求項29から49のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項51】
前記制御された光透過の一部が、シンボルを形成する、請求項50に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項52】
前記プラスチック基材が、射出成形されている、または、射出成形され得るプラスチックから形成された、請求項29から51のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項53】
前記プラスチック基材がポリカーボネートである、請求項29から52のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2021年1月14日に出願された豪国特許仮出願第2021900071号に対する優先権の利益を主張し、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本発明は、プラスチック物品を提供する、装飾用に被覆されたプラスチック基材に関する。本発明のプラスチック物品は、内装の装飾品および部品の提供における使用のためなど、自動車用途において使用されるのに十分な弾力性および耐摩耗性を有する。具体的には、本発明は、プラスチック物品を調製するために改良された方法、およびそのような方法によって製造されるプラスチック物品に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]より多くの技術が自動車に組み込まれるに従い、使用される材料への要求は増大する。数多くのセンサーおよびディスプレイ要素がますます車両に組み込まれるようになっているため、見た目に美しい、または伝統的な材料の外見を模倣するが、汎用性が向上され、かつ下にある部品と適合した材料への必要が大きくなりつつある。
【0004】
[0004]結果として、外装および内装のプラスチック部品の使用が増加している。プラスチック部品は、耐破壊性、低コスト、軽量、造形および成形され得る能力、およびいくつかの用途におけるその透明性を含む、多くの魅力的な特性を有する。しかしながら、そのようなプラスチック部品は、自動車用途のために必要とされる視覚的要件および摩耗要件を必ずしも満たさない。プラスチック基材を被覆することによって、下にあるプラスチック基材の耐摩耗性も向上させながら、望ましい視覚的な美しさを満たす部品が提供され得る。
【0005】
[0005]プラスチック基材に薄膜コーティングを適用するための様々な技術が開発されてきた。物理蒸着などのこれらの技法は、プラスチック基材の第1または第2の表面のいずれかに、薄膜コーティングを提供することを目的とする。しかしながら、堆積された膜(特に、金属および合金膜)の熱膨張係数は、多くの場合、プラスチック基材とは桁が異なり、したがって、プラスチック基材上の膜は、使用中に破壊および小割れする傾向がある。これは、内装および外装部品の両方が、苛酷な天候、高UV光、および比較的高い温度にさらされる車両などの用途において、特に問題となる。したがって、膜の破壊を防止するために、堆積された装飾用膜コーティングと基材との界面での応力を調節して、プラスチック基材と堆積された膜コーティングとの強力な付着を促進することが重要である。
【0006】
[0006]強力な付着を達成するために、プラスチック基材(ポリカーボネートなど)は多くの場合、粗さなどの表面特徴を向上させるために前処理される(たとえば、S Pelagadeら、2010、J.Phys.;Conf.Ser.208;012107を参照されたい)。1つの重要な前処理は、プラズマ前処理である(Pelagadeら、2010-前記の箇所;Seidel Cら、1999 Appl.Surface Sci.150、19~33ページ;Hofrichter Aら、2002、J.Vacuum Sci.&Tech.A 20、245~250ページ;Hegemann Dら、2003、Nucl.Instrum.& Meth.B.、208、281~286ページ;Boldyryeva Hら、2004、Nucl.Instrum.& Meth.B.、219~220、953~958ページ;およびKitova Sら、2005、J.Optoelectronics and Advanced Materials、7、2607~2612ページを参照されたい)。プラズマ前処理は、プラスチック基材に対し、表面粗さの改変、表面ポリマー基の改変、および表面エネルギーの増大(および湿潤性)を含む様々な効果を有する。したがって、プラズマ前処理は、プラスチック基材と続いて堆積される薄膜との付着性を向上させる多くの利点を提供し、プラスチック基材上に膜を堆積させることにおける必須かつ慣例のステップである。
【0007】
[0007]プラズマの生成は、紫外線(UV)放射も生み出す。プラスチック基材のUV放射線への曝露は、プラスチック基材の最も外側の曝露される表面を劣化させる。劣化は後に、特に、被覆されたプラスチック物品が、使用中にさらなるUV光に曝露した場合、後に基材-コーティング界面で凝集破壊を引き起こすおそれがある。この破壊の理由は、堆積されたコーティングは必然的に薄く、したがって、光を透過させるためである。これは、使用中のUV曝露は、装飾用コーティングを横断し、下にある基材と相互作用し得ることを意味する。この基材のUV放射線曝露は、特に、装飾用コーティングと相接する基材の上面で、損傷を、または先にUV曝露される場合さらなる損傷をもたらし、それにより凝集破壊を引き起こすおそれがある。
【0008】
[0008]プラスチック基材のUV放射線損傷を防止するために、プラズマ前処理の前に、基材に保護用下地コーティングを付与することが不可欠となっている。この保護用下地コーティングは、プラズマ前処理中のUV光の透過を低減し、基材と適用された膜コーティングとの間の応力を調節する中間層としても機能する。しかしながら、保護用下地コーティングの使用は、製造プロセスに著しい時間およびコストを加える。さらに、下地コーティングは、基材におけるムラおよびテクスチャーを埋め、かつ平滑にする。これが望ましい状況がある一方で、他の状況においては、プラスチック物品の視覚的なテクスチャー付けの形成を妨げるため問題となる。したがって、自動車での使用などの用途のための耐久性試験に合格することができる装飾用コーティングを有するプラスチック物品を製造するための、低コストかつより効率的な方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0009]本発明は、自動車での使用のための十分な耐久性を依然として維持しながら、装飾用コーティングの堆積の前にプラスチック基材が保護コーティングで被覆される必要がない、装飾用に被覆されたプラスチック物品を製造する方法を提供する。したがって、本発明は、プラスチック物品を製造するための改良された方法を提供する。一部の実施形態において、本発明はまた、繊細な視覚的なテクスチャー付けを基材に含めることを可能にしてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0010]具体的には、本発明は、被覆されたプラスチック物品を製造するための方法であって、(a)少なくとも第1および第2の表面を有するプラスチック基材を用意するステップと、(b)物理蒸着を用いて、金属または合金(金属合金)(metal alloy)層を含む装飾用コーティングをプラスチック基材上に堆積させるステップと、(c)プラスチック物品の第1の表面に保護コーティングを適用するステップとを含み、装飾用コーティングの堆積の前にプラスチック基材のプラズマ前処理がない、方法を提供する。一部の好ましい実施形態において、装飾用コーティングは、プラスチック基材の少なくとも第1の表面上に堆積され、保護コーティングは装飾用コーティングに直接適用される。
【0011】
[0011]プラズマ前処理の使用は、産業において、堆積されたコーティングがプラスチック基材に十分に付着することを容易にするために標準的である。しかしながら、本明細書で論じられるように、このプロセス中に生成されるUV放射線はプラスチック基材を損傷し、したがって、保護用下地コーティングを早い段階で適用することが必要となり、これにより、基材と堆積されたコーティングとの界面での応力を調節することもできる。
【0012】
[0012]しかしながら、本発明の一部の実施形態において、装飾用コーティングは、最初にプラスチック基材に適用されるべき保護コーティング(Momentive PHC587BまたはAS4700Fなど)を必要とすることなく、プラスチック基材上に直接堆積される。これらの実施形態において、金属または合金層はプラスチック基材と直接相接し、したがって、目に見える層(金属外観を提供する)、および基材のための保護層の両方として機能する。さらに、堆積された金属または合金層は、装飾用コーティングにおいて後に続く層の付着を容易にする。金属または合金層は、UV光を含む光の著しい部分を吸収し、反射し、したがって、使用中または装飾用コーティングの追加の層が堆積される場合に起こり得る、後に続くUV光への曝露から、下にある基材を保護する。さらに、一部の好ましい実施形態において、金属または合金層は、装飾用コーティングの主要な応力制御層として機能し、基材と相接する。一部の実施形態において、追加の層は、基材との界面で、および金属および合金層との間に堆積されてもよい。これらの層は、追加の光学特性(光透過をマスクする、または装飾用層の色を調節するなど)を提供してもよく、または装飾用コーティングの全残留応力を制御してもよい。
【0013】
[0013](一部の実施形態において)装飾用コーティングはプラスチック基材と直接相接するため、かつ付着性を増強するためのプラズマ前処理が実行されないため、プラスチック基材との装飾用コーティングの付着性を最大化することは極めて重要である。これは、装飾用コーティングの残留応力を制御することによって達成することができる。したがって、一部の実施形態において、装飾用コーティングは、装飾用コーティングの引張残留膜応力(tensile residual film stress)をもたらす条件下、堆積される。
【0014】
[0014]膜内の残留応力は、測定することができ、通常、圧力(たとえばMPa)として報告される。それは、コーティングが適用された後の下にある基材のたわみを表す変位としても報告され得る。変位は、コーティング内の応力、コーティングの厚さ、および下にある基材の特性によって決定される。したがって、より小さい応力プロファイルを有する、より厚いコーティング(MPaで測定されて)は、より大きい応力プロファイルを有する、より薄いコーティングと同じ応力変位を基材に作用させることができる。したがって、一部の好ましい実施形態において、装飾用コーティングの残留応力は、応力変位として測定される。一部の実施形態において、応力変位は、基材としてガラススライドを使用して測定される。一部の実施形態において、ガラススライドの厚さは約150μmである。
【0015】
[0015]一部の実施形態において、装飾用コーティングは、堆積された場合-50μm以下の残留膜応力変位(residual film stress displacement)をもたらす条件下、堆積される。一部のさらなる実施形態において、装飾用コーティングは、堆積された場合-240μm以下の残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される。一部のさらなる実施形態において、装飾用コーティングは、堆積された場合-765μm未満の残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される。
【0016】
[0016]本発明の装飾用コーティングは、使用されているとき、製造されたプラスチック物品の最も前方であるコーティングを形成する保護コーティングが付与される。したがって、保護コーティングは天候にさらされる。装飾用コーティングが基材の第1の表面に付与される、本発明の実施形態において、保護コーティングは、装飾用コーティング上に直接堆積され、下にあるコーティングを保護する。一部の代替的な実施形態において、装飾用コーティングはプラスチック基材の第2の表面上に付与され、保護コーティングは第1の表面に付与され、それにより下にあるプラスチック基材を保護する。しかしながら、一部の実施形態において、装飾用コーティングはプラスチック物品の第1の側および第2の側の両方に適用され、それによりプラスチック基材の装飾用コーティングおよび反対面を覆う。ある特定の実施形態において、保護コーティングは、装飾用に被覆されたプラスチック基材を囲む。
【0017】
[0017]一部の実施形態において、保護コーティングはハードコーティングである。一部の実施形態において、保護コーティングは紫外線遮断コーティングである。一部の実施形態において、保護コーティングはMomentive PHC587BまたはAS4700Fである。
【0018】
[0018]金属または合金層を含む装飾用コーティングは、装飾用コーティングの特性を調整することができる追加の層も含むことができる。そのような実施形態において、装飾用コーティングは、異なる材料の層の「スタック」を含むことができる。たとえば、追加の層は、装飾用コーティングの全残留応力を調節することができる、装飾用コーティングの視覚的外観を変更することができる、または上述の保護コーティングなどの後に続く処理または層への装飾用コーティングの付着を容易にすることができる。したがって、ある特定の実施形態において、装飾用コーティングは、付着制御層(本明細書において付着促進層(接着促進層)とも呼ばれる)も含む。一部の実施形態において、装飾用コーティングは、光学的改変層も含む。
【0019】
[0019]一部の実施形態において、光学的改変層および/または付着促進層は装飾用コーティングの最も外側の層である。したがって、一部の実施形態において、この層は付与された保護コーティングと直接相互作用し、視覚化される最初の層である。したがって、一部の実施形態に関して、透明な光学的改変層および/または付着促進層を有することは有利であり得る。一部の実施形態において、光学的改変層および/または付着促進層は、同じ層である。
【0020】
[0020]一部の実施形態において、光学的改変層および/または付着促進層はケイ素を含む。一部の実施形態において、ケイ素は、酸素の存在下、堆積される。一部の実施形態において、堆積される光学的改変層および/または付着促進層は、二酸化ケイ素である。
【0021】
[0021]一部の実施形態において、装飾用コーティングの金属または合金としては、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)、ケイ素(Si)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、およびそれらの混合物;ならびにそれらの酸化物、窒化物、ホウ化物、フッ化物、または炭化物、およびそれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、金属または合金は、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、銅(Cu)、コバルト(Co)、および/またはモリブデン(Mo)から選択される。他の金属または合金も好適である。一実施形態において、上述の金属または合金のうち任意のものの混合物が使用されてもよい。
【0022】
[0022]本発明の一部の実施形態において、金属または合金層はクロムを含む。一部の実施形態において、金属または合金層はジルコニウムを含む。ある特定の実施形態において、金属層はクロムからなる。ある特定の実施形態において、合金はクロムおよびジルコニウムである。一部の実施形態において、クロムのジルコニウムに対する原子比率は197:3である。
【0023】
[0023]被覆されたプラスチック物品を通る選択的な光透過を可能にすることが望ましいことがある。したがって、一部の実施形態において、方法は、プラスチック基材にマスクを設けて、制御された光透過の一部を提供するステップをさらに含む。このマスクは、第2の表面上、または装飾用コーティングの下にある基材の第1の表面上に設けることができる。マスクは、不透明なコーティング(PVD、インク、または塗料)、接着マスキングフィルム、フィルムインサート成形、または二成分射出成形を含んでもよい。したがって、これは、製造されるプラスチック物品内に、バックライトによって照光され得る視覚的シンボルを付与することができる。
【0024】
[0024]プラスチック基材と装飾用コーティングとが相接する表面上に保護コーティングを使用しない利点は、保護コーティングが適用される間に、基材における繊細な起伏およびテクスチャーが滑らかにされないことである。したがって、装飾用コーティングの適用の前に、プラスチック基材にテクスチャー付けを付与することができ、これは装飾用コーティングのテクスチャー付けをもたらす。したがって、このテクスチャー付けは、最終のプラスチック物品において可視的である。これは、プラスチック物品により広い範囲の設計が組み込まれることを可能にする。したがって、一部の実施形態において、用意されたプラスチック基材は、装飾用コーティングの堆積の前に可視的なテクスチャー付けを含む。一部の実施形態において、方法は、プラスチック基材に可視的なテクスチャー付けを付与するステップをさらに含む。ある特定の実施形態において、プラスチック基材は、2種以上の視覚的に別のテクスチャーが付与される、またはそれらを含む。
【0025】
[0025]設計自由度は、プラスチック基材を使用することによって、ガラスまたは金属などの他の基材と比較して、さらに向上される。プラスチックの1つの特定の利点は、造形および成形されるその能力である。したがって、一部の実施形態において、プラスチック基材は、射出成形される、射出成形されている、または、射出成形され得るプラスチックから形成される。1つのそのような好適プラスチックはポリカーボネートである。したがって、一部の実施形態において、プラスチック基材はポリカーボネートである。
【0026】
[0026]重要なことには、本発明は、自動車用途における使用に対して十分に弾力性であるプラスチック物品の製造を提供する。特に重要であるのは、UV光曝露の結果としての損傷および層間剥離に耐える能力である。したがって、一部の実施形態において、本明細書で説明される方法は、SAEJ2527加速化UV試験に合格する物品を製造することができる。
【0027】
[0027]本開示によってさらに提供されるのは、第1および第2の表面を有するプラスチック基材と、プラスチック基材上に直接堆積された金属または合金層を含む装飾用コーティングと、プラスチック物品の第1の表面に適用された保護コーティングとを含み、装飾用コーティングの残留応力が引張であり、被覆されたプラスチック物品がSAEJ2527加速化UV試験に合格する、被覆されたプラスチック物品である。
【0028】
[0028]プラスチック物品の一部の実施形態において、装飾用コーティングの残留膜応力変位は、-50μm以下であり、または-240μm以下であり、または-765μm以下である。
【0029】
[0029]一部の実施形態において、被覆されたプラスチック物品の保護コーティングは、ハードコーティングおよび/または紫外線遮断(吸収または反射)コーティングである。一部の実施形態において、保護コーティングはMomentive PHC587BまたはAS4700Fである。
【0030】
[0030]一部の実施形態において、被覆されたプラスチック物品は、プラスチック基材上に可視的なテクスチャー付けを含む。一部の実施形態において、被覆されたプラスチック物品は、複数の異なる可視的なテクスチャーを含む。
【0031】
[0031]被覆されたプラスチック物品の一部の実施形態において、金属または合金層は、プラスチック基材と直接接触している。
【0032】
[0032]被覆されたプラスチック物品の一部の実施形態において、保護コーティングは、装飾用コーティングを有する物品の表面上に付与される。一部の実施形態において、保護コーティングは、プラスチック基材の装飾用コーティングを有する表面、および反対面上に付与される。一部の実施形態において、保護コーティングは、装飾用コーティングの反対側の、物品の表面のみを覆う。後者の実施形態において、装飾用コーティングは第2の表面のコーティングであり、したがって、保護コーティングは、基材の第1の表面を保護し、装飾用コーティングは基材を通して見える。
【0033】
[0033]被覆されたプラスチック物品の一部の実施形態において、金属または合金層はクロムを含む。一部の実施形態において、金属または合金層は、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)、ケイ素(Si)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、およびそれらの混合物;ならびにそれらの酸化物、窒化物、ホウ化物、フッ化物、または炭化物、およびそれらの混合物を含む。一部の実施形態において、金属または合金層は、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、銅(Cu)、コバルト(Co)、および/またはモリブデン(Mo)を含む。一部の実施形態において、合金はクロムおよびジルコニウムである。
【0034】
[0034]被覆されたプラスチック物品の一部の実施形態において、装飾用コーティングは、付着制御層および/または光学的改変層も含む。理解されるとおり、付着制御層および光学的改変層は、同じ材料であっても、同じ層であってもよい。一部の実施形態において、光学的改変層および/または付着促進層は透明である。一部の実施形態において、光学的改変層および/または付着促進層はケイ素を含む。一部の実施形態において、光学的改変層および/または付着促進層は二酸化ケイ素を含む。
【0035】
[0035]一部の実施形態において、プラスチック物品は、マスクが設けられて、制御された光透過の一部を提供する。一部の実施形態において、制御された光透過の一部は、シンボルを形成する。
【0036】
[0036]プラスチック物品の一部の実施形態において、プラスチック基材は、射出成形されている、または、射出成形され得るプラスチックから形成される。一部の実施形態において、プラスチック基材はポリカーボネートである。
【0037】
[0037]本明細書で説明される、または本明細書で説明される方法によって製造されるプラスチック物品を含むシステム、およびプラスチック物品の少なくとも一部をバックライトで照らすための照明システムが提供される。そのようなシステムは特に、制御された光透過の一部を有する本発明の実施形態とともに使用するために想定される。
【0038】
[0038]本発明の実施形態は、正確な縮尺ではなく、単に本発明の説明を助けることが意図される図面を参照することによって、本明細書において論じられる。さらに、本明細書において提供される例は、説明される本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、特定の本発明の実施形態を開示することを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】[0039]黄変によって証拠だてられる、プラズマ前処理への曝露の結果としてのポリカーボネートのUV損傷を示すグラフである。
図2】[0040]堆積されたクロムとジルコニウムの合金薄膜の引張応力に影響を及ぼす際の電圧およびガス流の相互作用を示すグラフである。
図3】[0041]基材、クロムおよびジルコニウムの単一層、ならびに保護コーティングを含む本発明の実施形態を例示する図である。
図4】[0042]基材、クロムとジルコニウムとの単一層、二酸化ケイ素層、ならびに保護コーティングを含む本発明の実施形態を例示する図である。
図5】[0043]基材、2つの二酸化ケイ素層と交互であるクロムとジルコニウムの合金の2つの層を含む装飾用コーティングスタック、および外側の保護コーティングを含む本発明の実施形態を例示する図である。
図6】[0044]バックライトで照らされたシンボルを有する本発明の実施形態を例示する図である。プラスチック物品は、第2の表面マスクと、外側の保護コーティングを有するクロムおよびジルコニウムの単一層を含む第1の表面装飾用コーティングとを有する基材を含む。
図7】[0045]装飾用コーティングの応力変位(um)を決定するための例証される方法を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[0046]本明細書全体にわたって、層について、プラスチック基材との関連で、また互いとの関連で述べる。したがって、基材との関連でのコーティングの空間的関係、およびコーティングに含まれる層間の空間的関係を定義するために、以下の技術用語が使用される。
【0041】
[0047]「第1の側」は、使用中に外部環境に面する、基材、コーティング、または特定の層の側と理解される。車両の特定の文脈であれば、これは可視的な表面となる。
【0042】
[0048]「第2の側」は、第1の側に対して反対側と理解される。使用中の文脈において、これは、外部環境から離れて内方向に面する側である。典型的に、第2の側は、プラスチック物品が使用されている場合、可視的でない。
【0043】
[0049]「第1の表面」は、基材、コーティング、または特定された層の第1の側の表面を指すと理解される。
【0044】
[0050]「第2の表面」は、基材、コーティング、または特定された層の第2の側の表面を指すと理解される。
【0045】
[0051]本発明は、被覆されたプラスチック物品を製造するための方法を提供し、被覆されたプラスチック物品も提供する。具体的には、(a)第1および第2の表面を有するプラスチック基材を用意するステップと、(b)物理蒸着を用いて、金属または合金層を含む装飾用コーティングをプラスチック基材上に堆積させるステップと、(c)プラスチック物品の第1の表面に保護コーティングを適用するステップとを含み、装飾用コーティングの堆積の前にプラスチック基材のプラズマ前処理がない、方法が提供される。装飾用コーティングは、少なくとも基材の第1の表面に、または少なくともプラスチック基材の第2の表面に適用することができる。しかしながら、装飾用コーティングは第1の表面コーティングであることが好ましい。本発明によれば、1または複数の金属または合金層が適用されてもよい。
【0046】
[0052]本発明に従う被覆されたプラスチック物品は、任意の用途のために使用することができる一方で、1つの想定される用途は、自動車での使用、特に設計自由度および視覚的仕上げが重要である自動車室内での使用のためのものである。当業者によって理解されるように、自動車の室内は多くの場合、高温(セ氏>50度)およびUV光にさらされる。したがって、これらの室内部品は、そのような条件に耐えるのに十分な耐久性がある必要がある。
【0047】
[0053]そのような温度、およびUV光への曝露は、プラスチック物品、特に薄い金属または合金コーティングで被覆されているものにとって問題となるおそれがある。典型的に、金属または合金コーティングは、プラスチック基材より一桁低い熱膨張係数を有する。したがって、プラスチック基材と装飾用コーティングとの十分な付着性がないと、コーティングは破損して、コーティングの小割れおよび層間剥離に至るおそれがある。このために、特に金属または合金層の堆積前の、プラスチック基材のUV光への曝露により、コーティングの性能は不良となるおそれがある。
【0048】
[0054]UV放射線は、典型的に自動車用途のために使用される、ポリカーボネートなどのプラスチックを劣化させる。UV光に曝露される場合、プラスチック基材の第1の表面は劣化し、これにより、特に被覆された物品がさらにUV放射線に曝露される場合、基材と適用されたコーティングとの間で凝集破壊が生じる(U.Schulzら、Applied Optics、第47巻、no.13、C83~C87ページ、2007;C.Leeら、Thin Solid Films、第295巻、122~124ページ、1997;およびE.Listonら、Journal of Adhesion Science Technology、第7巻、1091~1127ページ、1993を参照されたい)。
【0049】
[0055]標準として、物理蒸着法はプラズマビームでプラスチック基材を前処理し、プラスチック基材の表面の特徴のいくつかを向上させる。しかしながら、プラズマ前処理の使用はまた、UV光にプラスチック基材を曝露させる。透明なポリカーボネートが使用される場合、これはポリカーボネートの黄変をもたらす(A.Rivaton、Polymer Degradation and Stability、第49巻、163~179ページ、1995;A.Rivatonら、Polymer Photochemistry、第3巻、463~481ページ、1983;A.Rivatonら、Polymer Degradation and Stability、第75巻、17~33ページ、2002、およびA.Rivatonら、European Polymer Journal、第38巻、1349~1363ページ、2002を参照されたい)。これは図1において明示され、プラズマ前処理の回数が増えるに伴い黄変(YID)が増大することが示される。典型的に、プラスチック基材の被覆の前に、12回のプラズマ前処理が用いられる。
【0050】
[0056]UV放射線損傷を防止するために、プラスチック基材は、プラズマ前処理の前に保護コーティングが付与される。これは、プラズマ処理中に生成されるUVを遮断し、それによりUV劣化を生じることなく、プラズマ前処理の利点を可能にする。しかしながら、この被覆および前処理は、被覆プロセスに著しい時間およびコストがかかる。本発明は、プラズマ前処理を行わず、それにより被覆の前にプラスチック基材に保護コーティングを適用する必要性を不要にしながら、依然として、自動車用途、特に自動車室内用途における使用のための耐久性要件を満たす。
【0051】
[0057]本発明において使用される基材は、プラスチック物品の意図される目的のために好適な任意の基材であり得る。しかしながら、好ましくは、プラスチック基材は、アクリロニトリルエチレンスチレン(AES)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、高流動AES、アクリロニトリル-(エチレン-プロピレン-ジエン)-スチレン(AEPDS)、熱可塑性物質のブレンド、またはPC-ABSブレンド熱可塑性物質などの合成ポリマーである。一部の実施形態において、基材はポリカーボネートである。
【0052】
[0058]理想的には、装飾用膜の堆積の前に、基材はその望ましい形状で形成される。一部の実施形態において、基材は、望ましい形状で形成されて提供される。他の実施形態において、本発明の方法は、基材を形成することまたは造形することを含む。たとえば、装飾用コーティングの適用の前に、基材は射出成形することができる。
【0053】
[0059]金属または合金層を含む装飾用コーティングは、任意の好適な物理蒸着(PVD)法においてプラスチック基材に適用することができる。たとえば、装飾用コーティングの1または複数の層の堆積は、熱蒸着法、電子ビーム蒸着法(イオンビーム支援の有無にかかわらず)、スパッタ堆積法、パルスレーザー堆積法、陰極アーク堆積法、または電気流体力学堆積法によって行われてもよい。スパッタ堆積が好ましい方法である。
【0054】
[0060]金属または合金層の成分は、コーティングの望ましい物理的および視覚特性に基づいて、当業者によって選択される。異なる金属または合金は、異なる応力プロファイルを有し、当業者はこれらを決定し、本発明の応力変位範囲内となるように、コーティング(および任意のそれぞれの層)の残留応力を調節することができる。一部の実施形態において、金属または合金としては、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、銅(Cu)、コバルト(Co)、またはモリブデン(Mo)のうちの1または複数が挙げられる。一部の実施形態において、金属または合金は、上述のうちの1または複数を含む。
【0055】
[0061]しかしながら、一部の実施形態において、金属または合金コーティングは、クロムまたはクロムの合金を含む。一部の実施形態において、合金としてジルコニウムが挙げられる。一部の実施形態において、合金はジルコニウムを含む。一部の実施形態において、金属はクロムである。一部の実施形態において、合金はクロムおよびジルコニウムである。一部の実施形態において、合金はクロムおよびジルコニウムを含む。一部の実施形態において、合金中のジルコニウムの濃度は、10%以下の原子百分率(at%)、7.5at%以下、5at%以下、4at%以下、3at%以下、2at%以下、または約1.5at%である。
【0056】
[0062]堆積された金属または合金層は、いくつかの重要な機能を実行する。主には、それは、目に見える層として機能し(任意選択で、装飾用コーティングにおいて他の層との組み合わせで)、クロムまたはステンレス鋼の美観などの望ましい美観を提供する。さらに、プラスチック基材の第1の表面上に堆積される場合、それは光吸収層として機能し、それにより使用中の基材のUV光への曝露を低減する。最終的に、それは、プラスチック基材と直接相接し、それにより応力制御層を形成する。これは、基材と金属または合金層の間の中間層を利用して上記2つのものの応力差を制御する、典型的なPVD堆積された装飾用コーティングとは全く別である。
【0057】
[0063]プラスチック基材への好適な付着性を保証することにおいて、堆積される装飾用コーティングの特性は極めて重要である。重要な因子は、装飾用コーティングの残留応力である。例において明示されるように、圧縮残留応力を有するクロムおよびジルコニウムを含む装飾用コーティングは、UV抵抗性試験(SAEJ2527に従った)に不合格となる。したがって、一部の好ましい実施形態において、装飾用コーティングは、装飾用コーティングの引張残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される。好ましくは、装飾用コーティングは、-50μm以下、-240μm以下、または-765μm以下の、堆積された装飾用コーティングの残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される。
【0058】
[0064]「残留応力」は、直接的に適用された負荷の、またはコーティングとその基材とのもしくはコーティングにおける異なる層間の熱膨張差の、結果ではない応力を指す。本明細書に含まれる例において説明されるものなど、堆積された装飾用コーティングの残留応力および応力変位を評価するための方法は、当技術分野で公知である。
【0059】
[0065]装飾用コーティングは、金属または合金層に加えて、層を含んでもよい。これらの追加の層を使用して、装飾用コーティングの残留応力を調節しても、装飾用コーティングの視覚特性を改変しても、または外部付着性の向上などの装飾用コーティングの他の特性を改変してもよい。
【0060】
[0066]一部の実施形態において、装飾用コーティングは、一連のスタックされた層を含んでもよい。たとえば、WO2015/131223(本明細書においてその全体が引用される)は、吸収および透過層の複数の層を含むコーティングを開示する。特に開示されるのは、二酸化ケイ素層と交互であるクロムとジルコニウムの合金の層である。層の厚さおよび数を変更することによって、異なる視覚効果が生成され得る。したがって、本発明の一部の実施形態において、装飾用コーティングは、光学的改変層または付着制御層などの追加の層を含む。一部の実施形態において、これらの2つの機能は、同じ層によって提供される。他の実施形態において、これら2つの機能は、異なる層によって提供される。
【0061】
[0067]本明細書で使用されるように、光学的改変層は、金属または合金層に加えて含めることができる層であり、装飾用コーティングの全体的な視覚的外観を改変する。この層は、透明または不透明のどちらかであり得る(または透明性/不透明性の度合いを有する)。しかしながら、一部の実施形態において、光学的改変層は透明である。
【0062】
[0068]本明細書で使用されるように、付着改変層は装飾用コーティングへの付着性を向上させる層を指す。これは、装飾用コーティングへの向上された付着性を容易にする、基材と金属または合金層との界面での層(保護コーティングではない)、または装飾用コーティングの最も外側の表面上の層を含んでもよい。この後者の実施形態において、付着促進層は透明であることが望ましい。
【0063】
[0069]特に好ましい光学的改変層および付着促進層は、ケイ素を含む。酸素の存在下堆積される場合、二酸化ケイ素が形成される。したがって、好ましい実施形態において、光学的改変層および/または付着促進層は、二酸化ケイ素を含む。実に、二酸化ケイ素は、光学的改変層および付着促進層の両方の役割を果たすことができる。一部の実施形態において、装飾用コーティングは、二酸化ケイ素の複数の層を含み、クロム/ジルコニウムなどの金属または合金の複数の層も含んでもよい。
【0064】
[0070]さらなる層の追加は、装飾用コーティングの全残留応力を改変することができる。たとえば、二酸化ケイ素は、堆積される場合、本来は圧縮性であり、したがって、二酸化ケイ素を装飾用層に含めることにより、全残留応力を圧縮性の方向に移動する。装飾用層の全残留応力を引張として維持することは重要であるため、任意の堆積される二酸化ケイ素層の厚さ、または堆積されるケイ素層の数は、全残留応力を圧縮性にしないように調和される必要がある。
【0065】
[0071]さらに、金属層の堆積パラメーターは、一度堆積された金属または合金層の引張応力を改変するように調整することができる。特に重要であるのは、層の堆積中に用いられるパワー、および堆積中のガス流である。図2おいて明示されるように、堆積中にターゲットパワーを維持しながらガス流(たとえば、アルゴンガス流)を増大させることは、堆積されたコーティングの残留引張応力を増大させる(すなわち、より引張性にし、それにより、応力変位をより負にする)ことになる。さらに、ガス流を維持しながらターゲットパワーを増大させることも、堆積されたコーティングの残留引張応力を増大させることになる。
【0066】
[0072]堆積パラメーターは、最終の堆積されたコーティングの光学的諸特性も改変することができ、これは、望ましい適用および美観に関して、当業者によって決定され、調節され得る。
【0067】
[0073]プラスチック基材への装飾用コーティングの適用に続いて、保護コーティングが適用される。この保護コーティングは、プラスチック物品の1つの表面のみに適用することができ(たとえば、スプレー被覆によって)、またはプラスチック物品の両方の表面に適用することができる(たとえば、浸漬被覆によって)。好ましくは、保護コーティングは、プラスチック物品の第1の表面に適用される。したがって、装飾用コーティングが第1の表面コーティングである実施形態において、保護コーティングは装飾用コーティングに適用される。
【0068】
[0074]一部の実施形態において、コーティングは、風化作用から保護し、特にUV光を吸収または反射する。一部の実施形態において、保護コーティングはハードコーティングである。この点において、「ハードコーティング」と言われるコーティングは、基材より硬質で堅いコーティングであり、それにより基材の耐摩耗性を増大させる。そのような耐摩耗性ハードコーティングは、衝撃および擦傷に起因する損傷を低減するものである。耐摩耗性は、Taber Abraderによって、または周知のスチールウール試験を用いることによって、ASTM F735「Standard Test Method for Abrasion Resistance of Transparent Plastics and Coatings Using the Oscillating Sand Method」、ASTM D4060「Standard Test Method for Abrasion Resistance of Organic Coatings」などの試験によって測定することができる。
【0069】
[0075]さらに、いくつかのプラスチック基材は、ある特定の溶媒によって損傷されるおそれがある、たとえば、ポリカーボネートはアセトンによって損傷される。「耐薬品性」であることは、本発明の装飾用コーティングに適し得る多くの製品にとって要件であり、これは、ディーゼル燃料、石油、バッテリー酸、ブレーキ液、不凍液、アセトン、アルコール、オートマチックトランスミッション液、作動油、およびアンモニア系窓ガラス用洗剤などの通常の溶媒への曝露に耐える能力への言及である。この点において、ハードコーティングは理想的には、そのような耐薬品性を有する本発明の装飾用コーティングを持つ製品を提供することが認識されるであろう。
【0070】
[0076]ハードコーティングは好ましくは1または複数の耐摩耗性層から形成され、装飾用層に良好に結合し、かつ後に続く耐摩耗性層のために好ましい材料を形成するプライマー層を含んでもよい。プライマー層は、任意の好適な材料によって提供されてもよく、たとえば、アクリルポリマー、アクリルモノマーおよびメタクリロキシシランのコポリマー、またはベンゾトリアゾール基もしくはベンゾフェノン基を有するメタクリルモノマーおよびアクリルモノマーのコポリマーなどの有機樹脂であってもよい。これらの有機樹脂は、単独で、または2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0071】
[0077]耐摩耗性層は、好ましくは、有機ケイ素、アクリル、ウレタン、メラミン、または非晶質SiOからなる群から選択される1または複数の材料から形成される。最も好ましくは、その優れた耐摩耗性、および物理蒸着された膜との適合性に起因して、耐摩耗性層は有機ケイ素層である。たとえば、有機ケイ素ポリマーを含む耐摩耗性層は、以下の化合物:たとえば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトルアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトオキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ガンマ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-クロロプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-クロロプロピルトリプロポキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-(ベータ-グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ガンマ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N-ベータ(アミノエチル)-ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、およびベータ-シアノエチルトリエトキシシランなどの、トリアルコキシシランまたはトリアシロキシシラン;ならびに、たとえば、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、ガンマ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ガンマ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、およびメチルビニルジエトキシシランなどの、ジアルコキシシランまたはジアシルオキシシランから選択される化合物の層を、たとえば浸漬被覆などの方法によって形成し、層を硬化させることによって形成することができる。
【0072】
[0078]市販されるハードコートとしては、Momentiveハードコート、たとえば、UVHC3000、UVHC5000、PHC587B/C、PHCXH100P、およびAS4700Fが挙げられる。これらのコーティングのそれぞれは、異なる耐摩耗性、耐候性能、および堆積パラメーターを有する。したがって、当業者は、プラスチック物品の意図される目的のために適切なコーティングを選択することができる。一部の好ましい実施形態において、ハードコーティングはMomentive PHC587BまたはAS4700Fである。最も好ましい実施形態において、ハードコーティングはMomentive PHC587Bである。
【0073】
[0079]耐摩耗性層は、液体中で浸漬被覆し、続いて溶媒蒸発させることによって、または好適なモノマーによるプラズマ励起化学蒸着法(PECVD)によって、プラスチック物品上に被覆されてもよい。フロー被覆およびスプレー被覆などの代替的な堆積技法も好適である。ハードコーティングの耐摩耗性を向上させるために、後に続く耐摩耗性層のコーティングが、先のコーティングの時効および汚染を回避するために好ましくは48時間以内に、加えられてもよい。
【0074】
[0080]保護コーティングの適用は、装飾用コーティングの応力に影響し得る。したがって、一部の実施形態において、装飾用コーティングの残留応力は、任意のさらなる装飾用コーティングの処理の前に、特に保護コーティングの適用前の残留応力である。さらに、保護コーティングの適用は、保護コーティングの結果として、被覆されたプラスチック物品に印加される任意の追加の応力に影響するように改変することができることを当業者は認識するであろう。当技術分野で公知であるように、保護コーティング自体は、硬化された際に残留応力を有してもよく、これは、保護コーティングの適用中に修正することができる。適用の手段(たとえば、浸漬被覆またはスプレー被覆)、コーティングの片側または両側適用、適用されたコーティングの厚さ、コーティングの適用の前にプライマーの使用、保護コーティングの硬化の温度、およびコーティングの冷却速度(適用されたコーティングの性質に応じて)を含む、保護コーティングの適用中に調整することができるパラメーターのいくつかの例。これらの因子のそれぞれは、当技術分野で公知であることに基づいて変更することができ、結果は、本明細書において例証される方法を含む、残留応力を評価するための公知の方法に基づいて評価することができる。
【0075】
[0081]保護コーティングは、装飾用コーティングを覆って適用される場合、コーティングの外観を改変することができる。一部の実施形態において、保護コーティングは、被覆されたプラスチック物品に適用されるつや消し添加剤を組み込む。この点において、つや消し効果は、つや消し添加剤の小さい(通常およそ5μm)粒子によって生成される拡散効果に起因して達成されることが公知である。つや消し添加剤を加えることによる保護コーティングの改変によって、「サテン」外観を達成することもできる。これは、著しい、拡散反射される成分(たとえば、およそ10%~30%の間の拡散反射)によって特徴付けられる。
【0076】
[0082]本発明の、または本発明の方法によって製造される、プラスチック物品は、追加の視覚的特徴を含んで、その美観または機能性を向上させることができる。一部の実施形態において、プラスチック基材は、可視的なテクスチャー付けを含む。したがって、装飾用コーティングが適用される場合、可視的なテクスチャー付けはコーティングにおいて現れる。プラスチック基材への保護コーティングの適用は典型的に、プラスチック基材の表面を平滑にし、多くの場合、基材におけるテクスチャー付けを隠す。いくつかの文脈において、これは望ましい。しかしながら、多くの場合、微細な視覚的なテクスチャー付けは望ましく、保護コーティングの堆積の前に保護コーティングが基材に適用される場合、達成できないことがある。しかしながら、本発明はこれを改善する。したがって、一部の実施形態において、プラスチック基材は、視覚的なテクスチャー付けを有する、またはそれを付与される。一部の実施形態において、プラスチック基材は、2つの視覚的に別のテクスチャーを有する、またはそれを付与される。
【0077】
[0083]本明細書で使用されるように、「可視的なテクスチャー付け」は、装飾用コーティングの堆積後、裸眼で見えるテクスチャー付けであり、平滑な表面を有する被覆されたプラスチック基材とは区別することができる。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、少なくとも0.5μmの中央平均粗さプロファイル(Ra)を有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、少なくとも0.7μmの中央平均Raを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、少なくとも0.9μmの中央平均Raを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、少なくとも1μmの中央平均Raを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、少なくとも1.2μmの中央平均Raを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、最大2μmまでの中央平均Raを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、最大1.8μmまでの中央平均Raを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、最大1.6μmまでの中央平均Raを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、最大1.5μmまでの中央平均Raを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、最大1.4μmまでの中央平均Raを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、0.5~2μmの中央平均粗さプロファイル(Ra)を有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、0.7~1.8μmの中央平均粗さプロファイルを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、1~1.5μmの中央平均粗さプロファイルを有する。一部の実施形態において、可視的なテクスチャー付けは、約1.2μmの中央平均粗さプロファイルを有する。
【0078】
[0084]上に述べられるとおり、本発明は、自動車用途における使用のために十分な弾力性を有する、装飾用に被覆されたプラスチック物品の製造を可能にすることを目的とする。したがって、一部の実施形態において、以下の試験のうちの1または複数に合格することができるプラスチック物品(本発明の方法によって形成することができる)が提供される。
【0079】
[0085]単一刃切込工具および3M Scotch 8981テープを使用するクロスハッチ付着性:ISO2409。付着性評価≦1。
【0080】
[0086]摩耗性-スチールウール:0グレードのスチールウールの30cm長さのかせ(skeen)が40mm×40mmの正方形パッドに折り重ねられ、Sutherland Ink Rub Testerに装着される。75サイクルの間、試料の表面に1.9kgの力が印加される。
【0081】
[0087]摩耗性-擦傷:0000グレードのスチールウールの30cm長さのかせが40mm×40mmの正方形パッドに折り重ねられ、Sutherland Ink Rub Testerに装着される。10サイクルの間、試料の表面に0.9kgの力が印加される。
【0082】
[0088]耐薬品性:300×300mmの綿布が50mLの各試薬に浸される。試薬に浸された布は、被覆された表面上に載置され、48時間、実験室周囲温度で保存され、それに続いて、試薬は除去され、10サイクルの間、被覆された表面は、チーズクロスでぬぐわれる。一部の実施形態において、試薬は、ブレーキ液、冷却液、モーター油、イソプロピルアルコール、オートマチックトランスミッション液、Armor All(商標)、作動油、Coca Cola(商標)、窓ガラス用洗剤、Spray’n’wipe(商標)、酸性汗、アルカリ性汗、タール除去剤、クロームメッキつや出し剤、クロームメッキクリーナー、Mortein(商標)、揮発油、エンジン脱脂剤、洗車剤、33%USウォッシャー液、100%EUウォッシャー液のうちの1または複数からなる群から選択される。
【0083】
[0089]水浸漬:試料は320時間40℃で水に浸漬される。
【0084】
[0090]短時間の加熱:試料は、7時間110℃にさらされる。
【0085】
[0091]温度サイクリング:試料は、10サイクルの、38°±2℃に移行する75℃±2℃、4時間、および16時間の95%±5%の相対湿度、続いて-30°±2℃、4hにさらされる。
【0086】
[0092]温度衝撃:試料は、200サイクルの-40℃~85℃、1時間/サイクルにさらされる。
【0087】
[0093]塩水噴霧:試料は、ASTM B117に従って、480時間、塩水噴霧にさらされる。
【0088】
[0094]高温時効:試料は、500時間、80℃にさらされる。
【0089】
[0095]低温時効:試料は、240時間、-40℃にさらされる。
【0090】
[0096]湿度時効:試料は、500時間、40℃/95%のRHにさらされる。
【0091】
[0097]UV抵抗性:SAEJ2527に従う、1250kJ/m2のキセノンアーク曝露。付着性評価≦1。
【0092】
[0098]残りの図に目を向けると、本発明の方法によって製造される被覆されたプラスチック物品1は、図3において例示される。被覆されたプラスチック物品1は、第1および第2の表面を有するプラスチック基材2を含む。第1の表面は、物理蒸着によって基材2上に直接堆積されたクロムおよびジルコニウムを含む合金層3が付与される。Momentive PHC587Bの保護コート4は、少なくとも最も外側の表面(この例示される実施形態において、物品の第1の表面である)に付与される。
【0093】
[0099]本発明の方法によって製造される被覆されたプラスチック物品1のさらなる実施形態は、図4において例示される。物品は、クロムおよびジルコニウムの合金の層3ならびに二酸化ケイ素の追加の層5を含む装飾用コーティングを有する。次いで、この2層の装飾用コーティングは、保護コーティング4で被覆される。
【0094】
[0100]図5は、本発明の方法によって製造される被覆されたプラスチック物品1のさらなる実施形態をさらに提供する。この実施形態は、二酸化ケイ素層5および7がと交互であるクロムおよびクロム合金層3および6の多層スタックを含む装飾用層を含む。次いで、この4層装飾用コーティングは、保護コーティング4で被覆される。
【0095】
[0101]本発明の方法によって製造される被覆されたプラスチック物品1のさらなる実施形態が図6において提供される。このプラスチック物品は、図3において提供されるものと同一であり、しかしながら、プラスチック物品1の第2の側の部分は、光透過率を低減するマスク8が付与される。マスク8が付与されない領域において、第2の側からのプラスチック物品1のバックライト9は、半透明な合金層3を通して可視である。これは、バックライトで照らされたシンボルを設けることを可能にし、シンボルはバックライトがないと実質的に不可視である。
【0096】
[0102]
【実施例
【0097】
[0103]以下の実施例は、本明細書で開示される本発明の具体的な実施形態を提供し、特許請求される本発明を限定することを意図するものではない。
【0098】
[0104]ステンレス鋼つや消し金属様外見のコーティング
[0105]光沢保護コーティングを有するつや消しステンレス鋼外観を有する様々なプラスチック物品を、以下のプロトコルによって調製する。
【0099】
[0106]基材の調製
[0107]模様付けされた射出成形器具を使用して、ポリカーボネート基材を射出成形し、コーティングの適用まで、基材の汚染を回避する形で保存した。
【0100】
[0108]被覆の前に、イオン化圧縮空気を用いて、基材を完全に吹き清めて表面上に積もった微粒子すべてを除去し、静電気を除去する。次いで、PVD被覆ドラムに基材を装填し、真空被覆チャンバーに入れる直前に2回目の吹き清めを行う。
【0101】
[0109]装飾用コーティングの堆積
[0110]3つの別々の被覆プロトコルを実行して、被覆されたプラスチック物品の実用性および弾力性の評価を可能にした。3つのプロトコルは以下のとおりである。
試料1:ポリカーボネート基材のプラズマ前処理:二酸化ケイ素(SiO)層:クロム/ジルコニウム層(CrZr):二酸化ケイ素(SiO)層。
試料2:ポリカーボネート基材のプラズマ前処理はなし:二酸化ケイ素層(SiO):クロム/ジルコニウム(CrZr)層:二酸化ケイ素層(SiO)。
試料3:ポリカーボネート基材のプラズマ前処理はなし:クロム/ジルコニウム層(CrZr):二酸化ケイ素層(SiO)。
【0102】
[0111]PVD堆積のパラメーターおよび堆積されたコーティングの特性を下記の表1に提示する。
【0103】
[0112]
【0104】
【表1】
【0105】
[0113]保護コーティング
[0114]Momentive PHC587Bのコーティングをプラスチック物品に適用した。この外側の保護コーティングは、装飾用コーティングを覆い、そのUV抵抗性および耐摩耗性を向上させることによって保護する。したがって、保護コーティングは、ハードコーティングとして、かつUV抵抗性コーティングとして機能する。
【0106】
[0115]外側のコーティングを、下記に提示される自動化された浸漬被覆設備、および表2において提示される以下のパラメーターによって適用した。被覆された基材を10分間放置し、表面が実質的に不粘着となるまで溶媒を蒸発させた。その後、被覆された基材を、硬化オーブン中で、130℃で71分間、硬化させ、保護ハードコート表面を得た。
【0107】
[0116]具体的には、以下のパラメーターを使用して保護コーティングを適用した。
【0108】
[0117]
【0109】
【表2】
【0110】
[0118]サテン金属様外見のコーティング
[0119]サテン金属様外見を有する様々なプラスチック物品を、以下のプロトコルによって調製した。
【0111】
[0120]基材の調製
[0121]ポリカーボネート基材を望ましい形状に射出成形し、コーティングの適用まで、基材の汚染を回避する形で保存した。
【0112】
[0122]被覆の前に、イオン化圧縮空気を用いて、基材を完全に吹き清めて表面上に積もった微粒子すべてを除去し、静電気を除去する。次いで、PVD被覆ドラムに基材を装填し、真空被覆チャンバーに入れる直前に2回目の吹き清めを行う。
【0113】
[0123]装飾用コーティングの堆積
[0124]4つの別々の被覆プロトコルを実行して、被覆されたプラスチック基材の実用性および弾力性の評価を可能にした。4つのプロトコルは以下のとおりである。
試料4~6:ポリカーボネート基材のプラズマ前処理はなし:クロム/ジルコニウム層(CrZr):二酸化ケイ素(SiO)層。
試料7:ポリカーボネート基材のプラズマ前処理はなし:クロム/ジルコニウム(CrZr)層:二酸化ケイ素層(SiO):クロム/ジルコニウム(CrZr)層:二酸化ケイ素層(SiO)。
【0114】
[0125]PVD堆積のパラメーターおよび堆積されたコーティングの特性を下記の表3に提示する。
【0115】
[0126]
【0116】
【表3】
【0117】
[0127]保護表面コーティング-サテン
[0128]サテン金属様外見を提供し、装飾用コーティングを保護するために、Momentive PHC587Bの保護コートを装飾用コーティングの外側表面に適用した。この保護コーティングは、2つの点で、実施例1~3において使用されるものとは異なった。第一に、Momentive PHC587Bが、可視光の拡散をもたらし、それによりサテン仕上げを作り出す添加剤を含んだ。第二に、浸漬被覆の代わりに、専用の薄膜被覆スプレーブースにおける自動化されたスプレー法によって保護コーティングを適用した。これは、プラスチック基材の第1の側上のみのコーティングをもたらし(すなわち、装飾用に被覆された側にのみコーティングを適用した)、第2の、被覆されていない側は被覆されなかった。
【0118】
[0129]被覆された基材を10分間放置し、表面が実質的に不粘着となるまで溶媒を蒸発させた。その後、被覆された基材を、硬化オーブン中で、130℃で71分間、硬化させ、保護ハードコート表面を提供した。
【0119】
[0130]具体的には、以下のパラメーター(表4において提示される)を使用して、サテン装飾用コーティングを得た。
【0120】
[0131]
【0121】
【表4】
【0122】
[0132]結果
[0133]引張応力の測定
[0134]薄いガラス(150um)顕微鏡カバースライド上にPVD膜を堆積させ、Sigma Physik SIG-500SP装置を使用してコーティングの残留応力を評価することによって、膜応力を測定した。この装置一式は、応力変位(um)および応力(MPa)のための測定出力を提供する。
【0123】
[0135]装置は、通常20mm離して位置付けられる2つの平行レーザービームを使用する。ガラススライドから反射される2つのビーム間の距離を検出するようにセンサーを位置付け、それによりスライドの湾曲を決定することが可能になる。測定は、スライド上に装飾用コーティングを物理蒸着する前後に行われる。2つの測定の比較により、応力変位(μm)の算出が可能となる。本質的には、圧縮残留応力プロファイルを有する膜は、被覆されたガラススライドの凸湾曲をもたらすことになり(すなわち、スライドの縁端部が、膜が被覆された側から離れる方向に湾曲することになる)、一方で、引張残留応力を有する膜は、凹プロファイルを有することになる(スライドの縁端部が、膜が被覆された側の方向に湾曲することになる)。この変位は、ガラススライドおよび膜の厚さを考慮に入れることによってMPaに変換することができる。
【0124】
[0136]図7は、開示される試料の装飾用コーティングの応力変位の測定の概略図を示す。図7Aは、2つに分割され、半透明な鏡12によってガラススライド基材11に向かって方向付けられる入射光ビーム10を例示する。光ビームの一部は、ガラススライド11からセンサー13上に反射される。処理されていないスライドの2つの光ビーム間の距離を決定する(X=Xbefore)。図7Bは、残留引張応力を有するコーティング14の堆積から生じるガラススライド11の変形を例示する。見られるように、ガラススライドは、スライドの縁端部が装飾用コーティング14に向かって湾曲する凹湾曲を形成する。この湾曲は、被覆された基材から反射される光ビームの、センサー13における集束をもたらし、これを第2の距離(Xa1)(X=Xafter)として測定する。
【0125】
[0137]図7Cは、圧縮残留応力を有するコーティング14の堆積から生じるガラススライド11のゆがみを例示する。引張残留応力を有するコーティングとは反対に、スライドは、スライドの縁端部がコーティング14から離れて湾曲する凸湾曲を形成する。これは、被覆された基材から反射される光ビームの、センサー13における発散をもたらし、これを第2の距離(Xa2)として測定する。
【0126】
[0138]次いで、堆積された膜の応力変位を、式:応力変位(μm)=X-Xを使用して算出する。
【0127】
[0139]明白であるように、引張残留応力を有するコーティングは、μmでの負の応力変位(すなわちXa1<X)を提供することになり、一方で、圧縮残留応力を有するコーティングは、正の測定値(すなわちXa2>X)を提供することになる。
【0128】
[0140]本文脈において、基材および膜の界面でのひずみの大きさは、基材と膜との付着性の促進において重要である。このひずみの大きさは、ガラススライドのたわみ(応力変位(μm))を記録することによって測定し、比較することが最良である。MPaで報告される応力とは対照的に、応力変位の測定は、コーティングの厚さを組み込む。したがって、小さい残留応力(MPaによって測定されて)を有する厚いコーティングは、比較的大きい残留応力(MPaで測定されて)を有する、より薄いコーティングと同じ応力変位を基材に適用することになる。結果として、コーティングの厚さが同じである場合、MPaでの残留応力の測定は適切であるが、コーティングの厚さが様々である場合、直接的な比較はできない。したがって、本明細書において膜応力は、応力変位(μm)として報告され、すべての測定は、保護コーティングを加える前に行った。
【0129】
[0141]さらに、HunterLab Ultrascan Pro Spectrophotometerを用いて、被覆されたプラスチック物品の反射率および透過率を評価した。
【0130】
[0142]残留応力の評価および視覚評価の結果を下記の表5において提供する。
【0131】
[0143]
【0132】
【表5】
[0144]
[0145]上述のとおり調製される試料が、自動車用途における使用のために十分に堅ろう性であるかを評価するために、一連の耐久性試験を行った。
【0133】
[0146]行った試験および結果を下記の表6において要約する。
【0134】
[0147]
【0135】
【表6】
[0148]表6において行った試験のそれぞれの説明を下記で提供する。
【0136】
[0149]単一刃切込工具および3M Scotch8981テープを使用してクロスハッチ付着性:ISO2409を行った。付着性評価≦1。
【0137】
[0150]摩耗性-スチールウール:0グレードのスチールウールの30cm長さのかせを40mm×40mmの正方形パッドに折り重ね、Sutherland Ink Rub Testerに装着した。75サイクルの間、試料の表面に1.9kgの力を印加した。
【0138】
[0151]摩耗性-擦傷:0000グレードのスチールウールの30cm長さのかせを40mm×40mmの正方形パッドに折り重ね、Sutherland Ink Rub Testerに装着させた。10サイクルの間、試料の表面に0.9kgの力を印加した。
【0139】
[0152]耐薬品性:300×300mmの綿布を50mLの各試薬に浸し、次いで、浸された布を被覆された表面に適用し、48時間、実験室周囲温度で保存し(別段に述べられない限り)、それに続いて、被覆された表面から試薬を除去し、次いで、10サイクルの間、被覆された表面をチーズクロスでぬぐう。使用される試薬は、ブレーキ液、冷却液、モーター油、イソプロピルアルコール、オートマチックトランスミッション液、Armor All(商標)、作動油、Coca Cola(商標)、窓ガラス用洗剤、Spray’n’wipe(商標)、酸性汗、アルカリ性汗、タール除去剤、クロームメッキつや出し剤、クロームメッキクリーナー、Mortein(商標)、揮発油、エンジン脱脂剤、洗車剤、33%USウォッシャー液、100%EUウォッシャー液であった。
【0140】
[0153]水浸漬:試料を320時間水に浸漬し、40℃で保持した。
【0141】
[0154]短時間の加熱:試料を7時間110℃にさらした。
【0142】
[0155]温度サイクリング:試料を、10サイクルの、4時間の75℃±2℃、続いて38°±2℃、16時間の95%±5%の相対湿度、続いて4時間の-30°±2℃にさらした。
【0143】
[0156]温度衝撃:試料を、200サイクルの-40℃~85℃、1時間/サイクルにさらした。
【0144】
[0157]塩水噴霧:試料を、ASTM B117に従って、480時間、塩水噴霧にさらした。
【0145】
[0158]高温時効:試料を、500時間、80℃にさらした。
【0146】
[0159]低温時効:試料を、240時間、-40℃にさらした。
【0147】
[0160]湿度時効:試料を、500時間、40℃、95%の相対湿度にさらした。
【0148】
[0161]UV抵抗性:SAEJ2527に従って、1250kJ/m2のキセノンアークに試料を曝露させた。付着性評価≦1。
【0149】
[0162]表5から留意され得るように、すべての試料は、UV抵抗性(SAEJ2527に従った)を除く、行った各耐久性試験に合格した。UV放射線に曝露させた場合、7つの試料のうちの4つが合格し、他の3つは不合格であった。特に、不合格であった3つの試料すべては、圧縮である残留応力変位を有する装飾用コーティングを有した。したがって、これらの結果に基づいて、プラスチック物品が自動車室内用途などの自動車用途のために好適であるためには、装飾用コーティングの残留膜応力変位は引張である必要があると結論付けることができる。
【0150】
[0163]本明細書に添付される仮の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な改変、追加、および/または代替が、前に説明される部品になされてもよいことが理解されるべきである。
【0151】
[0164]本発明は、本願の明細書において言及される、または示される部品、要素、および特徴で、個別に、または集合的に、前記部品、要素、または特徴の2つ以上のうちの任意の、またはすべての組み合わせで、概して構成されると言ってもよい。前述の説明において、整数またはその均等物であることが公知である成分に言及される場合、それらの整数は、個別に記載されるかのように本明細書に組み込まれる。
【0152】
[0165]「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、または「含む(comprising)」という用語のうちのいずれかまたはすべては、本明細書(仮の特許請求の範囲を含む)において使用される場合、述べられる特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を特定するものとして解釈されるべきであるが、1または複数の他の特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素、またはそれらの群の存在を除外しない。
【0153】
[0166]本願に基づいて、または本願の優先権を主張して、資格のある管轄において、将来の特許出願が出願される場合がある。以下の仮の特許請求の範囲は、例としてのみ提供され、任意のそのような将来の出願において特許請求され得るものの範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。本発明をさらに定義する、または再定義するために、後日、特徴が、仮の特許請求の範囲に加えられても、仮の特許請求の範囲から割愛されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆されたプラスチック物品を製造するための方法であって、
a.少なくとも第1および第2の表面を有するプラスチック基材を用意するステップと、
b.物理蒸着を用いて、金属または金属合金層を含む装飾用コーティングを前記プラスチック基材の前記第1の表面上に堆積させるステップと、
c.前記プラスチック物品の少なくとも前記第1の表面に保護コーティングを適用するステップと
を含み、
前記装飾用コーティングの堆積の前に前記プラスチック基材のプラズマ前処理がなく、
前記装飾用コーティングが、前記プラスチック基材上に直接堆積され、前記装飾用コーティングの残留膜応力変位が-50μm以下である
方法。
【請求項2】
前記装飾用コーティングが、前記装飾用コーティングの引張残留膜応力をもたらす条件下、堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装飾用コーティングが、-240μm以下の前記装飾用コーティングの残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記装飾用コーティングが、-765μm以下の前記装飾用コーティングの残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記保護コーティングがハードコーティングである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記保護コーティングが紫外線遮断コーティングである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングに適用される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングおよび前記プラスチック基材の反対面に適用される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記装飾用コーティングが付着促進層を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記装飾用コーティングが光学的改変層を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記光学的改変層および/または付着促進層が透明である、請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
前記光学的改変層および/または前記付着促進層がケイ素を含む、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記光学的改変層および/または付着促進層が、酸素の存在下堆積される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
堆積される前記光学的改変層および/または付着促進層が、二酸化ケイ素である、請求項から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記金属または金属合金層がクロム(Cr)を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記金属または金属合金層が、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、銅(Cu)、コバルト(Co)、またはモリブデン(Mo)を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記金属合金が、クロムおよびジルコニウムである、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
提供される前記プラスチック基材が、前記装飾用コーティングの堆積の前に可視的なテクスチャー付けを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記プラスチック基材に可視的なテクスチャー付けを付与するステップをさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記プラスチック基材に2つの視覚的に別のテクスチャーを付与するステップをさらに含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記プラスチック基材が、射出成形されている、または、射出成形され得るプラスチックから形成された、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記プラスチック基材がポリカーボネートである、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の方法によって製造される、被覆されたプラスチック物品。
【請求項24】
前記被覆されたプラスチック物品が、SAEJ2527加速化UV試験に合格する、請求項23に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項25】
第1および第2の表面を有するプラスチック基材と、前記プラスチック基材の前記第1の表面上に直接堆積された金属または金属合金層を含む装飾用コーティングと、前記プラスチック物品の第1の表面に適用された保護コーティングとを含み、前記装飾用コーティングの残留膜応力変位が引張であり、かつ-50μm以下であり、前記被覆されたプラスチック物品がSAEJ2527加速化UV試験に合格する、請求項23または24に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項26】
堆積された前記装飾用コーティングの前記残留応力が、残留応力変位によって測定される、請求項25に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項27】
前記装飾用コーティングの前記残留膜応力変位が-240μm以下である、請求項25に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項28】
前記装飾用コーティングの前記残留膜応力変位が-765μm以下である、請求項25に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項29】
前記保護コーティングが、ハードコーティングである、請求項25から28のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項30】
前記保護コーティングが、紫外線遮断コーティングである、請求項25から29のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項31】
前記プラスチック基材上に可視的なテクスチャー付けを含む、請求項25から30のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項32】
前記金属または金属合金層が、前記プラスチック基材と直接接触している、請求項25から31のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項33】
前記保護コーティングが、前記プラスチック物品の前記第1の表面上のみに付与される、請求項25から32のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項34】
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングを有する前記プラスチック物品の表面上のみに付与される、請求項25から32のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項35】
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングを有する前記プラスチック物品の表面および前記プラスチック物品の反対面上に付与される、請求項25から32のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項36】
前記金属または金属合金層がクロム(Cr)を含む、請求項25から35のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項37】
前記金属または金属合金層が、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、銅(Cu)、コバルト(Co)、またはモリブデン(Mo)を含む、請求項25から36のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項38】
前記金属合金が、クロムおよびジルコニウムである、請求項25から37のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項39】
前記装飾用コーティングが付着促進層も含む、請求項25から38のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項40】
前記装飾用コーティングが光学的改変層も含む、請求項25から39のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項41】
前記光学的改変層および/または付着促進層が透明である、請求項40に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項42】
前記光学的改変層および/または付着促進層がケイ素を含む、請求項40または41に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項43】
堆積された前記光学的改変層および/または付着促進層が、二酸化ケイ素である、請求項40から42のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項44】
前記プラスチック物品が、マスクを含んで、制御された光透過の一部を提供する、請求項25から43のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項45】
前記制御された光透過の一部が、シンボルを形成する、請求項44に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項46】
前記プラスチック基材が、射出成形されている、または、射出成形され得るプラスチックから形成された、請求項25から45のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【請求項47】
前記プラスチック基材がポリカーボネートである、請求項25から46のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0153
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0153】
[0166]本願に基づいて、または本願の優先権を主張して、資格のある管轄において、将来の特許出願が出願される場合がある。以下の仮の特許請求の範囲は、例としてのみ提供され、任意のそのような将来の出願において特許請求され得るものの範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。本発明をさらに定義する、または再定義するために、後日、特徴が、仮の特許請求の範囲に加えられても、仮の特許請求の範囲から割愛されてもよい。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
被覆されたプラスチック物品を製造するための方法であって、
a.少なくとも第1および第2の表面を有するプラスチック基材を用意するステップと、
b.物理蒸着を用いて、金属または金属合金層を含む装飾用コーティングを前記プラスチック基材上に堆積させるステップと、
c.前記プラスチック物品の少なくとも前記第1の表面に保護コーティングを適用するステップと
を含み、
前記装飾用コーティングの堆積の前に前記プラスチック基材のプラズマ前処理がない、
方法。
[態様2]
前記装飾用コーティングが、前記プラスチック基材上に直接堆積される、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記装飾用コーティングが、前記装飾用コーティングの引張残留膜応力をもたらす条件下、堆積される、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
前記装飾用コーティングが、-50μm以下の前記装飾用コーティングの残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される、態様1または2に記載の方法。
[態様5]
前記装飾用コーティングが、-240μm以下の前記装飾用コーティングの残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される、態様1または2に記載の方法。
[態様6]
前記装飾用コーティングが、-765μm以下の前記装飾用コーティングの残留膜応力変位をもたらす条件下、堆積される、態様1または2に記載の方法。
[態様7]
前記保護コーティングがハードコーティングである、態様1から6のいずれか一項に記載の方法。
[態様8]
前記保護コーティングが紫外線遮断コーティングである、態様1から7のいずれか一項に記載の方法。
[態様9]
前記保護コーティングがMomentive PHC587BまたはAS4700Fである、態様1から8のいずれか一項に記載の方法。
[態様10]
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングに適用される、態様1から9のいずれか一項に記載の方法。
[態様11]
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングおよび前記プラスチック基材の反対面に適用される、態様1から10のいずれか一項に記載の方法。
[態様12]
前記装飾用コーティングが付着促進層を含む、態様1から11のいずれか一項に記載の方法。
[態様13]
前記装飾用コーティングが光学的改変層を含む、態様1から12のいずれか一項に記載の方法。
[態様14]
前記光学的改変層および/または付着促進層が透明である、態様12または13に記載の方法。
[態様15]
前記光学的改変層および/または前記付着促進層がケイ素を含む、態様12から14のいずれか一項に記載の方法。
[態様16]
前記光学的改変層および/または付着促進層が、酸素の存在下堆積される、態様15に記載の方法。
[態様17]
堆積される前記光学的改変層および/または付着促進層が、二酸化ケイ素である、態様12から14のいずれか一項に記載の方法。
[態様18]
前記金属または金属合金層がクロム(Cr)を含む、態様1から17のいずれか一項に記載の方法。
[態様19]
前記金属または金属合金層が、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、銅(Cu)、コバルト(Co)、またはモリブデン(Mo)を含む、態様1から18のいずれか一項に記載の方法。
[態様20]
前記金属合金が、クロムおよびジルコニウムである、態様1から19のいずれか一項に記載の方法。
[態様21]
前記プラスチック基材にマスクを設けて、制御された光透過の一部を提供するステップをさらに含む、態様1から20のいずれか一項に記載の方法。
[態様22]
提供される前記プラスチック基材が、前記装飾用コーティングの堆積の前に可視的なテクスチャー付けを含む、態様1から21のいずれか一項に記載の方法。
[態様23]
前記プラスチック基材に可視的なテクスチャー付けを付与するステップをさらに含む、態様1から22のいずれか一項に記載の方法。
[態様24]
前記プラスチック基材に2つの視覚的に別のテクスチャーを付与するステップをさらに含む、態様1から23のいずれか一項に記載の方法。
[態様25]
前記プラスチック基材が、射出成形されている、または、射出成形され得るプラスチックから形成された、態様1から24のいずれか一項に記載の方法。
[態様26]
前記プラスチック基材がポリカーボネートである、態様1から25のいずれか一項に記載の方法。
[態様27]
態様1から26のいずれか一項に記載の方法によって製造される、被覆されたプラスチック物品。
[態様28]
態様1から26のいずれか一項に記載の方法によって製造される被覆されたプラスチック物品であって、前記被覆されたプラスチック物品がSAEJ2527加速化UV試験に合格する、前記被覆されたプラスチック物品。
[態様29]
被覆されたプラスチック物品であって、
第1および第2の表面を有するプラスチック基材と、前記プラスチック基材上に直接堆積された金属または金属合金層を含む装飾用コーティングと、前記プラスチック物品の第1の表面に適用された保護コーティングとを含み、前記装飾用コーティングの残留応力が引張であり、前記被覆されたプラスチック物品がSAEJ2527加速化UV試験に合格する、前記被覆されたプラスチック物品。
[態様30]
堆積された前記装飾用コーティングの前記残留応力が、残留応力変位によって測定される、態様29に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様31]
前記装飾用コーティングの残留膜応力変位が-50μm以下である、態様29に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様32]
前記装飾用コーティングの前記残留膜応力変位が-240μm以下である、態様29に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様33]
前記装飾用コーティングの前記残留膜応力変位が-765μm以下である、態様29に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様34]
前記保護コーティングが、ハードコーティングである、態様29から33のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様35]
前記保護コーティングが、紫外線遮断コーティングである、態様29から34のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様36]
前記保護コーティングがMomentive PHC587BまたはAS4700Fである、態様29から35のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様37]
前記プラスチック基材上に可視的なテクスチャー付けを含む、態様29から36のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様38]
前記金属または金属合金層が、前記プラスチック基材と直接接触している、態様29から37のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様39]
前記保護コーティングが、前記プラスチック物品の前記第1の表面上のみに付与される、態様29から38のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様40]
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングを有する前記プラスチック物品の表面上のみに付与される、態様29から38のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様41]
前記保護コーティングが、前記装飾用コーティングを有する前記プラスチック物品の表面および前記プラスチック物品の反対面上に付与される、態様29から38のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様42]
前記金属または金属合金層がクロム(Cr)を含む、態様29から41のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様43]
前記金属または金属合金層が、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、銅(Cu)、コバルト(Co)、またはモリブデン(Mo)を含む、態様29から42のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様44]
前記金属合金が、クロムおよびジルコニウムである、態様29から43のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様45]
前記装飾用コーティングが付着促進層も含む、態様29から44のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様46]
前記装飾用コーティングが光学的改変層も含む、態様29から45のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様47]
前記光学的改変層および/または付着促進層が透明である、態様44または46に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様48]
前記光学的改変層および/または付着促進層がケイ素を含む、態様44から47のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様49]
堆積された前記光学的改変層および/または付着促進層が、二酸化ケイ素である、態様44から48のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様50]
前記プラスチック物品が、マスクを含んで、制御された光透過の一部を提供する、態様29から49のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様51]
前記制御された光透過の一部が、シンボルを形成する、態様50に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様52]
前記プラスチック基材が、射出成形されている、または、射出成形され得るプラスチックから形成された、態様29から51のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
[態様53]
前記プラスチック基材がポリカーボネートである、態様29から52のいずれか一項に記載の被覆されたプラスチック物品。
【国際調査報告】