(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】成人の栄養のための乳及び酵素の組成物
(51)【国際特許分類】
A23C 9/00 20060101AFI20240119BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240119BHJP
C12N 9/64 20060101ALN20240119BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20240119BHJP
C12N 9/24 20060101ALN20240119BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20240119BHJP
【FI】
A23C9/00
A23L33/10
C12N9/64
C12N9/16
C12N9/24
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543061
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 US2022070251
(87)【国際公開番号】W WO2022159947
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521029564
【氏名又は名称】エーティーアール スライブ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクノートン、ネビル
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4B065
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC20
4B001AC25
4B001AC26
4B001AC31
4B001AC43
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4B065CA41
(57)【要約】
本発明は、新鮮な全乳及びキモシンと、任意に、ラクターゼ、リパーゼ若しくはエステラーゼ、プレバイオティクス及びプロバイオティクス、又はそれらの組合せから選択される追加の成分とを含む液体栄養組成物を提供する。或る実施形態では、新鮮な乳に懸濁させることができる、キモシンと、任意にラクターゼ、リパーゼ又はエステラーゼ、プレバイオティクス、及びプロバイオティクス、又はそれらの組合せから選択される追加の成分との自由流動性乾燥粉末組成物が提供される。本発明の組成物は、多くの成人が消化するのが困難な新鮮な乳を、悪影響なしに適切に消化することを可能にし、重要な主要栄養素であるタンパク質及び飽和脂肪の有用な供給源となり得る。本発明の組成物は、5歳超の小児によって、及び成人のために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮な全乳と、乳1リットル当たり約5国際凝乳単位(IMCU)~200 IMCUを有する一定量のキモシンとを含む、液体栄養組成物。
【請求項2】
前記キモシン量が、乳中40.625 IMCU/Lである、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項3】
前記新鮮な全乳がA1乳又はA2乳である、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項4】
ラクターゼ、哺乳動物由来リパーゼ、プレバイオティック、及びプロバイオティック、又はそれらの組合せから選択される成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成分がラクターゼであり、前記ラクターゼが乳中約1000~20000U/Lで存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ラクターゼが乳中約3125U/Lで存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
成分が哺乳動物由来リパーゼであり、前記リパーゼが舌リパーゼ又は胃前エステラーゼである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記リパーゼが、1リットル当たり1~100リパーゼ/エステラーゼ前胃単位(LFU/L)、又は2~5LFU/L、又は3.5LFU/Lの量で存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
成分がプレバイオティックであり、前記プレバイオティックが0.025g/L~1.0g/L又は0.0625g/Lで存在するチコリ根全粉末、リーキ全植物粉末、又は純粋なイヌリン粉末を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
0.005~0.25g/L又は0.050g/Lで存在する、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)のブレンドの1グラム当たり300,000,000コロニー形成単位(CFU/g)のプロバイオティック培養物を更に含む、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項11】
0.001~0.25g/L又は0.0025g/Lで存在するバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)の100,000,000CFU/g胞子のプロバイオティック培養物を更に含む、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項12】
0.00025~25g/Lで存在するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)の15,000,000,000CFU/g胞子のプロバイオティック培養物を更に含む、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項13】
前記組成物が、5歳を超える人によって消費される、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項14】
前記組成物が、12歳を超える人によって消費される、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項15】
1.0Lの新鮮な全乳と、40.625 IMCUのキモシンとを含む、ヒト用の液体栄養組成物。
【請求項16】
ヒト摂取用の液体栄養組成物であって、1.0Lの新鮮な全乳と、40.625 IMCUのキモシンと、3125Uのラクターゼと、0.0625gのチコリ根全粉末と、3.5LFUの舌リパーゼと、300,000,000CFU/gを有するビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の0.05gの混合物と、100,000,000CFU/gを有する0.01gのバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)胞子と、15,000,000,000CFU/gを有する0.01gのバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)と、を含む、上記ヒト摂取用の液体栄養組成物。
【請求項17】
キモシン、ラクターゼ、リパーゼ、プレバイオティック、及び1つ以上のプロバイオティック培養物を含む自由流動性乾燥粉末組成物であって、前記組成物が、ヒト摂取用に乳に溶解されることが意図される、上記自由流動性乾燥粉末組成物。
【請求項18】
デキストロース、ソルビトール、シリカ、炭酸カルシウム、及びリン酸二カルシウム、又はそれらの組合せから選択される賦形剤を更に含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
香味剤を更に含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記乳が、牛乳、ヒツジ乳、又はヤギ乳である、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
約0.019~0.58gのキモシンと、0.25~1.00gのラクターゼと、0.40~1.50gの1つ以上のリパーゼと、1.10~4.55gの、イヌリン及びフラクトオリゴ糖又はその両方から選択される1つ以上の形態のプレバイオティクスと、0.035~0.105gの1つ以上のプロバイオティック培養物とのブレンド5gを含む、自由流動性乾燥粉末組成物であって、前記乾燥粉末状の自由流動性組成物が、ヒト摂取用に乳に溶解することが意図される、上記自由流動性乾燥粉末組成物。
【請求項22】
ヒト摂取用の乳ベースの組成物を調製する方法であって、約0.019~0.58gのキモシンと、0.25~1.00gのラクターゼと、0.40~1.50gの1つ以上のリパーゼと、1.10~4.55gの、イヌリン及びフラクトオリゴ糖又はその両方から選択される1つ以上の形態のプレバイオティクスと、0.035~0.105gの1つ以上のプロバイオティック培養物とのブレンド5gを含む自由流動性乾燥粉末組成物を0.5Lの新鮮な冷たい乳に添加し、前記粉末組成物が前記乳中に均一に懸濁されるまで前記混合物を撹拌することを含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乳の消化及び栄養吸収を改善するために、成人の消化管に通常存在しない酵素を添加した乳に基づく成人用栄養組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含む成体哺乳動物による母乳の消費は不自然であり、しばしば、母乳を消費できない品目にするという点で、個体に悪影響を及ぼす。一般的な問題は、消化の不快感、ガス/鼓腸、又は乳糖の消化不良による下痢である。しかし、成人向け食品として、乳製品はタンパク質及び脂肪の重要な供給源となる可能性がある。これらの問題を改善するために乳製品会社によって使用されているいくつかの戦略には、二糖をその2つの成分部分、グルコース及びガラクトースに分割するためのラクターゼの添加が含まれる。別の戦略は、腸内でラクトースをin vivoで切断することができる酵素ラクターゼを産生する細菌であるストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)などのプロバイオティック細菌を添加することであり、腸はこれを達成するための理想的な場所である。
【0003】
不快感の他の問題は、A1乳に対するアレルギー反応に起因し得る。A1及びA2と呼ばれる、乳中のβ-カゼインの2つの密接に関連する遺伝的変異体があることが現在認識されている。ウシの乳β-カゼインは209個のアミノ酸を含む。A1及びA2変異体は、A1乳中のヒスチジン又はA2乳中のプロリンである位置67においてのみ異なる。β-カゼインが消化系に見られる酵素と相互作用する方法のために、A1及びA2は、消化酵素によって異なるようにプロセシングされ、7つのアミノペプチドであるβ-カソモルフィン-7(BCM-7)は、A1-β-カゼインの消化によって放出され得る。現在、ほとんどの牛乳がA1牛乳であることが知られている。ウシがその乳中にA2型又はA1型タンパク質を産生するかどうかを決定するために、遺伝子検査が利用可能である。包括的な2009年の総説は、BCM-7からの決定的な有害効果を見出さなかったが、1より最近の研究は、A2乳がA1乳に起因する炎症効果を回避することを示唆している。2
【0004】
成人の新鮮な乳の摂取に伴う別の問題は、乳児の吸乳動作が、乳が摂取されるときに重要な酵素、特に成人がグラスから乳を飲むときには生成されない舌リパーゼ及び胃前エステラーゼを生成し得ることである。舌リパーゼ及び胃前エステラーゼは食物と共に胃に移動し、胃内の脂肪を消化するように作用し続ける。3吸乳できないとは、胃前エステラーゼ及び舌リパーゼが口の中で乳と組み合わされず、乳は、乳の消化に重要な酵素なしで胃に移動することを意味する。経口酵素が実質的に存在しないということは、胃(又は反芻動物では皺胃)に到達する乳中の脂肪が、正しい経口リパーゼによって処理及び作用されず、体から乳中の脂肪成分から貴重なエネルギー及び栄養素を奪うことを意味する。
【0005】
「脂肪」という用語は、主に、エステル結合でグリセロールに結合した3つの脂肪酸を含む、トリグリセリド又はトリグリセリドエステルとも呼ばれるトリアシルグリセロールを指す。他の脂肪には、リン脂質及びコレステロールが含まれる。本発明は、トリアシルグリセロール脂肪のみに関する。
【0006】
トリアシルグリセロール脂肪の消化は、エステル結合を切断して部分グリセリド及び遊離脂肪酸(FFA)を形成するリパーゼ又はエステラーゼ酵素の作用を必要とする。これは、脂肪が疎水性であり、腸に効果的に可溶性でなく、消化粘膜を効果的に通過しないために必要である。4トリアシルグリセロール脂肪は、消化粘膜を通過するためにFFAに分解されなければならない。腸粘膜に吸収されると、FFAは脂肪酸結合タンパク質に結合し、再びアセチル-CoAを用いてトリアシルグリセロールに再エステル化される。5再形成されたトリアシルグリセロールは、小腸の吸収細胞(腸細胞)における小胞体内でカイロミクロンに集合する。6カイロミクロンは、食物脂質を腸から体内の他の場所に輸送する。
【0007】
様々な化学的性質を有するいくつかのリパーゼは、消化において役割を果たす。より成熟した哺乳動物における主要なリパーゼは膵臓リパーゼである。新生児に関しては、乳中にリパーゼが存在し7、吸乳中に胃前リパーゼが形成される。8胆汁酸塩は、膵臓リパーゼ及び乳リパーゼの両方に必要である。9
【0008】
本発明は、一部には、種々の前十二指腸リパーゼ、特に舌リパーゼ、胃前リパーゼ及び胃リパーゼに関する。10エステラーゼは、本発明においても価値があり得る密接に関連した酵素である。11
【0009】
舌リパーゼは、唾液の一部を分泌する口腔内の漿液腺で産生され、哺乳動物の摂食時に産生される。舌リパーゼは2.0~6.5の最適pHを有し、胆汁酸塩の非存在下で活性である。12食物を嚥下した後、舌のリパーゼ活性は胃内で継続する。13密接に関連する酵素は、舌リパーゼに類似の形態、配列、及び活性を有する胃前エステラーゼ(PGE)である。14PGEは、舌喉頭蓋領域において分泌される。本明細書で使用される場合、舌リパーゼ及び胃前エステラーゼは本質的に同義である。両方とも、他の前十二指腸リパーゼ変異体を含む他のリパーゼよりも新生児及び乳児哺乳動物において重要な役割を果たすと考えられている。15
【0010】
舌リパーゼ及び胃前エステラーゼは、食物が十二指腸を通過した後に消化管に送達される他のリパーゼ、主に膵臓リパーゼとは区別される。生合成(微生物、真菌及び植物)起源のリパーゼは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態で利用され得る哺乳動物起源の舌リパーゼの実行可能な代替物であり得る。乳児哺乳動物における舌リパーゼの口への放出は、通常、吸乳動作の直接的な結果である。16
【0011】
乳中のタンパク質の消化は、成人にとって別の課題であり得る。本発明はまた、プロテアーゼ酵素を含有する組合せに関する。3つの主要なプロテアーゼ、ペプシン、キモトリプシン及びトリプシンがヒト消化系にある。消化の過程で、それぞれが特定の種類のアミノ酸間の連結の切断に特化しているこれらの酵素は協働して、食物タンパク質をそれらの成分、すなわち小腸によって容易に吸収され得るペプチド及びアミノ酸に分解する。
【0012】
カゼインは乳中の主要なタンパク質成分であるが17、非乳児動物では、カゼインは適切に消化されない場合がある。通常は新鮮な乳中の形態であるミセル形態のカゼインは、通常、チーズを作るために使用されるウシの胃からの酵素生成物であるレンネットの主成分である、キモシン、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ、EC 3.4.23.4でウシの胃内で消化される。18ヒトは、カゼインを消化するための異なる酵素機構を有する。19おそらく、カゼインを消化する能力は、ヒトにおいて年齢と共に低下する。哺乳動物が加齢するにつれて、胃内の酵素は、乳ベースのタンパク質を加水分解するものから、他のタンパク質により重点を置いたものに移行する。
【0013】
ペプシンは、胃の内壁の主細胞で産生されるエンドペプチダーゼであり、ヒト及び多くの他の動物の消化系における主要な消化酵素の1つであって、食物中のタンパク質の消化を助ける。ペプシンは、その活性部位に触媒アスパラギン酸を使用するアスパラギン酸プロテアーゼである。ペプシンの切断特異性は広いが、チロシン、フェニルアラニン及びトリプトファンのようないくつかのアミノ酸は切断の確率を高める。ペプシンは、胃壁の主細胞によってプロ酵素であるペプシノゲンとして産生され、胃液の塩酸と混合されると、ペプシノゲンが活性化してペプシンになる。
【0014】
本発明はまた、レンネットに見られるプロテアーゼであるキモシン(レンニンとも呼ばれる)を含有する組合せに関する。レンネットは、乳を固形凝乳(チーズ製造用)と液体ホエイに分離するために使用され、ほとんどのチーズの製造に使用される。これは、MEROPS A1ファミリー(https://www.ebi.ac.uk/merops/index.shtml)に属するアスパラギン酸エンドペプチダーゼである。これは、皺胃の内壁において新生児反芻動物によって産生され、それらが摂取する母乳を凝乳にし、腸内でのより長い滞留及びより良好な吸収を可能にする。ウシキモシンは、チーズを作るという要求のために、現在組換え生産されている。レンネットは、反芻哺乳動物の胃で産生される酵素の複合セットである。キモシンに加えて、レンネットは、ペプシン及びリパーゼなどの他の酵素を含有する。
【0015】
乳凝は、凝集、クリーミング及び癒合の物理化学的プロセスを介して、エマルジョン又はコロイドを異なる組成の大きな部分に分解することである。チーズや豆腐を作る際には、乳凝が用いられる。凝集は、コロイドが自発的に又は清澄剤の添加に起因して、フロック又はフレークの形態で懸濁液から出てくるプロセスを意味する。クリーミングとは、浮力の影響下でのエマルジョンの分散相の移動を意味する。粒子は、粒子の大きさ及び連続相と比較した粒子の密度、並びに連続相の粘性又はチキソトロピーの程度に応じて、上方に浮遊又は沈降する。粒子が分離したままである限り、このプロセスはクリーミングと呼ばれる。クリーム状エマルジョンは、クリーム中の小球が近接しているため、癒合の可能性を高める。クリーミング速度に影響を与える因子は、懸濁粒子の沈降速度に関与する因子と同様であり、ストークス則によって示される。癒合は、接触中に2つ以上の液滴、気泡又は粒子が融合して単一の娘液滴、気泡又は粒子を形成するプロセスである。
【0016】
ウシ起源の舌リパーゼ、他の胃前リパーゼ、キモシンは、チーズの製造において工業的に使用されている。20本開示は、成人を含む哺乳動物の栄養及び食品のための固有の生物学的に活性な成分と組み合わせたリパーゼ及びタンパク質分解酵素の組合せを提供する。
【発明の概要】
【0017】
或る実施形態では、本発明は、ヒト用の液体栄養組成物であって、新鮮な全乳と、乳1リットル当たり約5国際凝乳単位(IMCU)~200 IMCUを有する一定量のキモシンとを含む、液体栄養組成物を提供する。或る実施形態では、キモシン量は乳中40.625 IMCU/Lである。新鮮な全乳は、A1又はA2乳である。
【0018】
本発明の組成物はまた、ラクターゼ、哺乳動物由来リパーゼ、プレバイオティック、及びプロバイオティック、又はそれらの組合せから選択される成分を更に含み得る。或る実施形態では、ラクターゼは、乳中約1000~20000U/L(二糖化酵素活性の単位)で存在する。或る実施形態では、ラクターゼは、新鮮な全乳1リットル当たり約3125Uで存在する。
【0019】
或る実施形態では、組成物は、舌リパーゼ及び胃前エステラーゼから選択されるリパーゼを含み得る。リパーゼは、乳中1~100リパーゼ/エステラーゼ前胃単位(LFU)/L、又は2~5LFU/L、又は3.5LFU/Lの量で存在し得る。
【0020】
或る実施形態では、組成物は、0.025~1.0g/L又は0.0625g/Lで存在し得るチコリ根全粉末、リーキ全植物粉末、又は純粋なイヌリン粉末などのプレバイオティック材料を含み得る。
【0021】
或る実施形態では、組成物は、組成物中に存在する、乳中0.005~0.25g/L又は0.050g/Lで存在する、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)のブレンドの300,000,000コロニー形成単位(CFU)/gのプロバイオティック培養物を含み得る。或る実施形態では、組成物は、組成物中に存在する、乳中0.001~0.25g/L又は0.0025g/Lで存在するバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)の100,000,000 CFU/g胞子のプロバイオティック培養物を含み得る。或る実施形態では、組成物は、組成物中に存在する、乳中0.00025~25 g/Lで存在するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)の15,000,000,000CFU/g胞子のプロバイオティック培養物を含み得る。
【0022】
或る実施形態では、本発明は、1.0Lの新鮮な全乳と、40.625 IMCUのキモシンとを有する、ヒト用の液体栄養組成物を提供する。或る実施形態では、ヒト摂取用の液体栄養組成物は、1.0Lの新鮮な全乳と、40.625 IMCUのキモシンと、3125Uのラクターゼと、0.0625gのチコリ根全粉末と、3.5LFUの舌リパーゼと、300,000,000CFU/gを有するビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の0.05gの混合物と、100,000,000CFU/gを有する0.01gのバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)胞子と、15,000,000,000CFU/gを有する0.01gのバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)と、を有する。
【0023】
或る実施形態では、組成物は、成人又は年長児による摂取が意図される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、新鮮な乳に基づくより年長児及び成人のための栄養組成物を提供する。成人のための食品としての新鮮な乳製品の問題は、多くの大人が新鮮な乳を消化することができないことであり、これは、乳を消化するのに必要な酵素が乳児期及び小児期の後にしばしば消失するためである。本明細書で論じられる組成物により、新鮮な乳に忍容性でない多くの年長児(5歳超)及び成人が有害作用なしにこの製品を安全に消費し、そこから栄養上の利益を享受することができると予想される。この組成物を消費する人は、12歳を超える成人、又は5歳を超える年長児であり得る。組成物は、1つ以上の添加されたフレーバー、例えばフルーツフレーバー(バナナ、イチゴ、ブルーベリー、リンゴ)又はフレーバー、例えばチョコレート又はバニラを含み得る。乳を正常に消化できない人を乳の消化ができるようにすることで、本発明の組成物は、重要な主要栄養素であるタンパク質及び飽和脂肪の供給源となり得る。
【0025】
牛乳は、主にカゼイン(80%)及びホエイタンパク質(20%)として生じる豊富なタンパク質源である。新鮮な乳中のカゼインはミセルであり、成人はしばしばミセルを破壊してカゼインを消化する能力を失う。本発明は、栄養飲料としての新鮮な乳の配合物にキモシンを添加することによってこの問題を解決する。本発明における乳は、A1又はA2乳であり得る。本明細書で特に指定しない限り、「乳」という用語は、世界中の消費者に一般的に入手可能な牛乳を指す。しかしながら、ヤギ乳及びヒツジ乳など、人々によって通常消費される他の種からの乳は、本発明の範囲内である。
【0026】
口及び胃中の乳脂肪を特異的に消化する胃前エステラーゼ又は舌リパーゼ、ラクトースのグルコース及びガラクトースサブユニットを切断するラクターゼ、並びにプレバイオティクス及びプロバイオティクスを含む様々な他の成分も本発明の飲料に含まれ得る。
【0027】
或る実施形態では、本発明は、新鮮な全乳と、キモシンと、ラクターゼ、リパーゼ又はエステラーゼ、プレバイオティクス及びプロバイオティクスから選択される1つ以上の他の成分とを含む、液体栄養組成物を提供する。本発明の全乳は、生乳、低温殺菌乳、A1乳又はA2乳であってもよい。この組成物は、長期間又は短期間の使用のための動物又はヒト用の食品として使用され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載された値の±20を意味する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「成人」という用語は、一般に、12歳を超えるヒトのことを指すが、本発明の組成物はまた、より年長児及び5歳を超える小児に有益であり得る。
【0030】
キモシン及び他のプロテアーゼ
キモシン(レンニン)は、いくつかの種、特にウシの胃に天然に存在し、発酵法によるチーズの製造に使用するために工業的にも生産されている。キモシンの主な役割は、このタンパク質を天然に作る動物の乳中のカゼインの消化を助けることである。
【0031】
カゼインは、牛乳中の主要なタンパク質である。牛乳中のタンパク質の約80%及びヒト乳中のタンパク質の20%~45%がカゼインである。カゼインは比較的疎水性であり、水に弱く溶解する。これは、カゼインミセル(本明細書では「ミセルカゼイン」とも呼ばれる)と呼ばれる粒子の懸濁液として乳中に自然に発生し、これは、親水性部分がミセルの表面に存在し、カゼインミセルが球形であるという意味で界面活性剤型ミセルとの限定された類似性を示す。しかしながら、界面活性剤ミセルとは対照的に、カゼインミセルの内部は高度に水和されている。ミセル中のカゼインは、カルシウムイオン及び疎水性相互作用によって一緒に保持される。カゼインミセルは、α-s1、α-s2、β及びκの4つの主要なタイプのカゼイン分子が存在するために形成される。α及びβカゼインは、カルシウムによって容易に沈殿する疎水性タンパク質である。しかしながら、カッパカゼインはカルシウム沈殿性ではない。カゼインは、アルファカゼイン及びベータカゼインがカッパカゼインとの相互作用によって沈殿するのを抑制されたミセルと呼ばれる凝集体に自己会合する。本質的に、カッパカゼインは、通常、乳タンパク質の大部分を可溶性に保ち、それが自発的に凝固するのを防ぐ。ミセル形態のカゼインは、乳タンパク質濃縮物(MPC)の主成分であり、これは市販されており、多くの食品に添加物として使用されている。
【0032】
消化中、カゼインは、カッパカゼインに特異的なキモシンの作用から不溶性になる。キモシンは、カッパカゼインをタンパク質分解的に切断して不活性化し、それをパラ-カッパ-カゼインに変換する。パラ-カッパ-カゼインは、ミセル構造を安定化する能力を有さず、修飾ミセルが負電荷及び正電荷の両方を有することを可能にする。これにより、カゼインに不溶性のカルシウムが沈殿し、凝乳が形成される。これは、乳の「凝固」とも呼ばれる。ミセルが回転して、正荷電領域が修飾ミセルの負荷電領域に付着し、胃内でゲルが形成される。次いで、他のプロテアーゼがゲルを分解する。乳が消化中に凝固しない場合、それは胃を通って急速に流れ、そのタンパク質の初期消化の機会を逃す。
【0033】
ヒトは、キモシンを天然に産生しないが、むしろ乳児として乳を消化するために他の酵素機構に依存する。21カゼインを消化する能力は、年齢と共に低下し得る。この問題に対処するために、本発明は、全乳に添加されるキモシンを提供する。本発明の全乳は、生乳、低温殺菌乳、A1乳若しくはA2乳、又はヤギ若しくはヒツジ乳であり得る。キモシンの量は、全乳1リットル当たり約5国際凝乳単位(IMCU)~200 IMCUであり得る。或る実施形態では、約40.625 IMCU/Lを使用する。キモシンは、650 IMCU/mLの溶液として市販されている。22このキモシン溶液の好ましい量は、乳4L中0.25mL(乳1L中0.0625mL)であり得る。これは、4L中約162.5 IMCU、又は約40.625 IMCU/Lに相当する。或る実施形態では、乳1リットル当たり約0.010mL~0.10mLのCHY-MAX(登録商標)が使用される。
【0034】
「IMCU」という用語は、国際凝乳単位を意味する。1 IMCUは、約0.126nmolのウシキモシンB(例えば、ウィスコンシン州マディソン(米国)のDairy Connection,Inc.製の「CHY-MAX(登録商標)」22)に等しい。乳凝固酵素(例えば、本発明の組成物中に存在するキモシン酵素)の強度を、乳凝固活性(1 ml当たり又は1グラム当たりのIMCU)として決定する。IMCUは、pH6.5の0.05%塩化カルシウムを含む、レンネット化(renneted)標準乳基質の可視凝集に必要な時間として測定される。試料のIMCU/mlは、既知の乳凝固活性を有し、試料の同じ酵素組成を有する標準の凝固時間との比較によって決定される。参照標準は、ISO 11815:2007に与えられている。仔ウシ及び成体ウシレンネット参照標準粉末の両方の最初のバッチについて、活性を1,000 IMCU/gで定義した。希釈凝固剤を標準的な乳基質に添加した後、乳は凝集する。乳凝固時間は、凝固剤の添加から、乳基質中に目に見えるフロック又はフレークが形成されるまでの時間である。凝固剤試料の強度は、試料の乳凝固時間を参照標準のものと比較することによって求められる。
【0035】
キモシンは、乳の貯蔵に使用される低温では活性ではない。キモシンからの凝固は、25℃~50℃の範囲で最も活性である。23したがって、キモシンは乳とブレンドすることができ、組成物は乳保存温度で貯蔵安定性であると予想される。キモシンは、人が摂取するまでその凝固活性を発揮しない。また、キモシン活性は、腸内の低pHによっても促進される。ヒトにとって天然ではないキモシンは、ヒトが摂取した場合に有害な影響を及ぼさず、実際、チーズの製造中にキモシンを使用するチーズ製品において一般的に摂取される。
【0036】
本発明におけるキモシンは、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)(酵母)及び大腸菌(Escherichia coli)から入手され得る。
【0037】
他のプロテアーゼ、特に、カゼイン又は乳清に必ずしも特異的ではないが、胃及び腸におけるタンパク質の消化に関与するキモトリプシン及びトリプシンも、本発明において価値があり得る。
【0038】
ラクターゼ
乳糖不耐性は成人集団で非常に一般的である。ラクトースは、グルコース及びガラクトースサブユニットを有する乳中の二糖である。乳児では、β-D-ガラクトシダーゼは、ガラクトース-β-グルコース結合をグルコース及びガラクトースに切断する腸絨毛内に分泌され、これは容易に吸収され得る。多くの成人では、この内因性酵素が失われる。新鮮な乳に起因する望ましくない健康影響の多くは、ガス、腹痛、及び下痢などのラクトース不耐性の直接的な結果である。人工ラクターゼは、この問題を解決するために長年にわたって利用可能であった。本発明は、ラクターゼ添加剤、例えば、ウィスコンシン州マディソンのDairy Connection,Inc.から入手可能な「GODO-YNL」を含み得る。この製品は50,000U/gの活性を有する。本発明は、4Lの新鮮な乳当たり0.01~2.0gのこのラクターゼ製品を使用し得る。或る実施形態では、約12,500~25,000Uに相当する0.25g~0.50gのこのラクターゼ製品が使用され得る。本発明は、グラム陽性中温性細菌である、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)(酵母)又はバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)の発酵によって産生されたラクターゼを使用し得る。
【0039】
また、本発明のいくつかの実施形態は、ラクトースを切断する活性も有するストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)(プロバイオティクスの議論を参照)を含み得る。
【0040】
ラクターゼ活性をU/gで測定する。二糖化酵素活性の単位(U)は、37℃で毎分1.0μmolの二糖基質を加水分解する酵素の量として計算される。24
【0041】
リパーゼ及びエステラーゼ
本発明はまた、乳中の脂肪を分解するように特別に設計された1つ以上のリパーゼを含み得る。
【0042】
舌リパーゼ及び胃前エステラーゼは、乳児動物の口の中で産生される関連リパーゼである。ウシでは年齢と共に舌リパーゼが減少することが知られている。おそらく、これはヒトでも起こる。したがって、或る実施形態では、本発明の製剤は、4Lの乳中に0.01g~1gの酵素を提供する範囲の量で、舌リパーゼ又は密接に関連する胃前エステラーゼを含有する。好ましい量は、4Lの乳中0.25gであり得る。
【0043】
本発明者らは、胃前エステラーゼ又はリパーゼ(PGE)などの必須の前十二指腸リパーゼの欠如が、乳及び乳製品を消費するときに人の正しい栄養を奪う可能性があると仮定する。25PGEが存在しない場合、消化管の更に下方では、乳中の乳脂肪中のトリグリセリド脂肪を分解するためのリパーゼ活性が不十分な可能性がある。この同じ原理は、嚢胞性線維症、膵リパーゼ欠乏、非アルコール性脂肪肝、アルコール性脂肪肝又は術後状態など、新生児又は乳児が関与しない他の脂肪消化不良状態にも適用され得る。これらの状況では、リパーゼは、脂肪消化を助けるための栄養補助食品の成分として有用であり得る。嚢胞性線維症患者は、しばしば膵機能不全を有し、充分な膵リパーゼを産生することができず、これは脂肪消化不良を引き起こし得る。
【0044】
脂肪消化不良は栄養素の吸収不良をもたらし得る。この問題は、本発明の製剤において、様々な形態の主要栄養素及び微量栄養素の両方並びに生物活性栄養素成分の添加によって対処され得、例えば、主要栄養素は、ミセルカゼイン又は、単離された大豆タンパク質若しくはオメガ3脂肪酸、又はラクトース若しくはグルコースなどの炭水化物、又は酵素を含む消化助剤であり得る。例えば、生物活性栄養成分は、カフェイン、イソフラボン、成長因子、抗炎症成分又は抗酸化植物色素であり得る。
【0045】
舌リパーゼは、アスパラギン酸、ヒスチジン、及びセリンの触媒三残基を使用して中鎖及び長鎖トリグリセリドを部分グリセリド及び遊離脂肪酸に加水分解するトリアシルグリセロールリパーゼ、EC 3.1.1.3と呼ばれる消化酵素のファミリーのメンバーである。唾液と共に口に放出された酵素は、食事性脂質の消化における第1の反応を触媒し、ジグリセリドが一次反応生成物である。舌リパーゼの最適pHは4.5~5.4であり、胆汁酸塩の非存在下でエステルの加水分解を触媒する。脂肪分解活性は、食物を嚥下した後も胃内で継続し、一般に、舌リパーゼが存在しない新生児では脂肪が適切に消化されない可能性があることが提案されている。26 酵素放出は、摂取後に自律神経系によってシグナル伝達され、その時点で、舌の表面上の有郭舌乳頭及び葉状舌乳頭の下の漿液腺は、有郭舌乳頭及び葉状舌乳頭の溝に舌リパーゼを分泌する。
【0046】
膵臓リパーゼ、乳中に存在するリパーゼ、及び植物又は真菌/生合成源由来のリパーゼなどの他のリパーゼは、典型的には、リパーゼ活性、特に胆汁酸塩の補助因子を必要とする。舌リパーゼを含む動物由来PGEには補助因子は必要ない。27これは、本発明のリパーゼにとって潜在的に重要な特徴である。
【0047】
本発明で使用され得る特定のリパーゼには、舌リパーゼ及びカパラーゼLが含まれる。カパラーゼLは、米国ウィスコンシン州マーシュフィールドのNelson-Jameson,Inc.から市販されている。
【0048】
リパーゼ活性をリパーゼ/エステラーゼ前胃単位(LFU)で測定する。リパーゼ活性は、Food Chemicals Codex,Third ed.111/General Tests and Apparatus/493に記載されているように、pH-statを使用して、標準条件下、すなわちpH6.2及び42℃でトリ-n-ブトリイン基質から遊離した遊離酪酸を測定することによって決定される。1LFUは、アッセイ条件下で毎分1.25μmolの酪酸を放出する活性である。チーズの製造に使用するためのリパーゼの市販の調製物は、一般に約30~70LFU/g(Dairy Connection)を有する。或る実施形態では、約2~5LFUの市販のリパーゼが1Lの乳中で使用されるが、1~100LFU/リットルの範囲が使用されてもよい。或る実施形態では、約3.5LFU/Lを使用する。これは、約56LFU/gを有する約0.0625gの市販の調製物に相当する。
【0049】
本発明のためのリパーゼは、哺乳動物供給源から入手され得る。例えば、チーズ製造に使用される舌リパーゼは、仔ウシ、子供、仔ヒツジの舌から得られる。ウシ及び他の哺乳動物舌リパーゼは市販されている。
【0050】
或る実施形態では、本発明のリパーゼ又はエステラーゼは、例えば哺乳動物の舌リパーゼ又は胃前エステラーゼをコードする適切なDNA配列を発現系に挿入し、生物を培養して酵素を産生することによって、合成的に産生される哺乳動物酵素であり得る。例示的な発現系には、大腸菌(E.coli)及びB.スブチリス(B.subtilis)などの細菌、並びにサッカロミセス(Saccharomyces)などの酵母が含まれる。異種ペプチドを作製するための多くの他の発現系が、当技術分野で周知である。28これらの合成哺乳動物リパーゼは、本明細書で使用される場合、「哺乳動物」リパーゼの範囲内である。
【0051】
理想的には、リパーゼはヒト又はヒト化リパーゼである。潜在的なヒト及び動物の舌リパーゼ及び胃前エステラーゼのアミノ酸配列は公知である。29他の種由来のリパーゼがヒトにおいて活性を有する可能性がある。細菌又は植物源由来のリパーゼは公知であるが、あまり望ましくない。
【0052】
プレバイオティクス
プレバイオティクスは、結腸内の好都合な細菌の基質として作用することによって、大腸に定着する好都合な細菌の増殖又は活性を刺激する。30 或る実施形態では、プレバイオティックは、イヌリン、フラクトオリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖(GalOS)、ラクツロース又はペクチンの組成物であり得る。31本発明は、これらの材料のいずれを含んでもよい。イヌリンの供給源には、チコリ根、キクイモ(Jerusalem Artichoke)(北米原産の塊茎野菜)、タマネギ及びリーキが含まれる。イヌリンは、食品の官能特性に影響を及ぼさずに、無色の味のない粉末として精製された形態で入手可能である。あるいは、イヌリン含有量の高い野菜製品は、チコリ根全粉末及びリーキ全植物粉末などの乾燥粉末植物材料として使用されてもよい。フラクトオリゴ糖の市販形態は、ミネソタ州エデンプレーリーのKindstrom-Schmoll Inc.から入手可能なbioSecure(商標)FOSである。
【0053】
イヌリンは、主としてフルクトース単位(フルクタン)からなる多糖であり、典型的には末端グルコースを有する。これは、β(2,1)結合によって連結された、連鎖停止グルコシル部分及び反復フルクトシル部分からなる。β(2,1)結合のために、イヌリンは、デンプンを消化するように適合されたヒト酵素プチラリン及びアミラーゼによって難消化性である。その結果、上部消化管をそのまま通過する。結腸においてのみ、細菌は、その機能的特性:カロリー値の低下、食物繊維及びプレバイオティック効果に寄与するイヌリンを代謝する。大腸に到達した後、イヌリンは、結腸内細菌によって、腸内微生物叢に栄養価の高いプレバイオティックゲルに変換される。本発明において有用な特定のプレバイオティックはチコリ根全粉末又はリーキ全植物粉末である。チコリ根粉末は約68%のイヌリンを含有する。32純粋なイヌリン粉末及び純粋なフラクトオリゴ糖も入手可能であり、本発明で使用され得る。
【0054】
或る実施形態では、本発明の組成物は、1リットル当たり0.01~1.0gのチコリ根全粉末を含み得る。或る実施形態では、0.025~0.10g/Lを使用する。或る実施形態では、0.0625g/Lを使用する。
【0055】
プロバイオティクス
プロバイオティクスは有益な消化細菌であり、追加の栄養要件である。プレバイオティクスは、腸内微生物叢中の生物の組成を変化させることができる。プレバイオティクス及びプロバイオティクスの添加は、消化に必要とされる適切な細菌を腸に生息させることができる。プロバイオティック培養物をコロニー形成単位又はCFUで測定する。
【0056】
いくつかの特定のプロバイオティクスが本発明で使用され得る。或る実施形態では、本発明は、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)を含む非胞子形成培養物のブレンドを含み得る。この培養ブレンドは、例えば、ワシントン州レドモンド)のProbi USA,Inc.から市販されている。このブレンドは3億CFU/gを有する。或る実施形態では、1リットル乳リットル当たり、このブレンド0.005g~0.25gを使用し得る。或る実施形態では、0.050gのこのブレンドが使用される。
【0057】
或る実施形態では、本発明は、ミネソタ州シャコピーのBio-Cat Microbialsから「OPTI-BIOME(登録商標)」として市販されているバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)胞子を含み得る。この製品は1000億CFU/gを有する。或る実施形態では、1リットル当たり、この製品0.001g~0.25gを使用する。或る実施形態では、0.0010~0.010g/Lを使用する。或る実施形態では、0.0025g/Lを使用する。
【0058】
或る実施形態では、本発明は、商標名ProDURA(登録商標)で販売されている、ウィスコンシン州ワサウのUAS Labsから市販されているバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)胞子培養物を含み得る。この製品は150億CFU/gを有する。或る実施形態では、乳1リットル当たり、0.00025g~25gを使用する。或る実施形態では、0.0010~0.010g/Lを使用する。或る実施形態では、0.0025g/Lを使用する。
【0059】
本発明の組成物
或る実施形態では、本発明は、新鮮な全乳と、乳1リットル当たり約5国際凝乳単位(IMCU)~200 IMCUを有する一定量のキモシンとの液体栄養組成物を提供する。キモシン量は、乳中40.625 IMCU/Lであってもよい。乳は、ウシ供給源から市販されていてもよく、新鮮なA1又はA2全乳などの任意の従来の乳であってもよい。あるいは、乳は、ヒトの摂取に利用可能なヒツジ乳又はヤギ乳であってもよい。
【0060】
或る実施形態では、組成物は、キモシンを含有する自由流動性乾燥粉末組成物であり、乾燥自由流動性乾燥粉末組成物は、牛乳に溶解することが意図されている。或る実施形態では、乾燥自由流動性乾燥粉末組成物は、キモシン、ラクターゼ、リパーゼ、プレバイオティック及びプロバイオティックを含み得る。また、流動特性を助けるために、又は自由流動性乾燥粉末組成物にバルクを提供するために、シリカ、デキストロース及びリン酸二カルシウムなどの賦形剤が添加され得る。自由流動性乾燥粉末組成物を乳に添加し、撹拌によって分散又は懸濁させて、乳ベースの液体栄養組成物を得る。
【0061】
或る実施形態では、組成物は、ラクターゼ、哺乳動物由来リパーゼ、プレバイオティック、及びプロバイオティック、又はそれらの組合せから選択される成分を更に含み得る。ラクターゼは、存在する場合、乳中約1000~20000U/Lで存在してもよく、乳中約3125U/Lで存在してもよい。哺乳動物由来リパーゼは、存在する場合、1~100リパーゼ/エステラーゼ前胃単位/リットル(LFU/L)、又は2~5LFU/L、又は3.5LFU/Lで存在し得る。プレバイオティックは、存在する場合、0.025~1.0g/L若しくは0.0625g/Lで存在するチコリ根全粉末、リーキ全植物粉末、又は純粋なイヌリン粉末であり得る。
【0062】
プロバイオティックは、存在する場合、0.005g/L~0.25g/L又は0.050g/Lで存在するビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)のブレンドの1グラム当たり300,000,000コロニー形成単位(CFU/g)のプロバイオティック培養物を更に含み得る。プロバイオティックはまた、0.00025g.L~.25g/Lで存在するバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)の15,000,000,000CFU/g胞子のプロバイオティック培養物を含み得る。
【0063】
さらに、フルーツフレーバー、チョコレート、バニラ、シナモン、ヘーゼルナッツなどのフレーバーを乾燥粉末状組成物に添加してもよい。
【0064】
或る実施形態では、本発明の乾燥組成物は、以下の成分を含有し得る:
【表1】
【0065】
上記の組成物は、ヒト摂取用に0.5Lの新鮮な乳に懸濁することが意図される。粉末を冷たい新鮮な乳に添加し、撹拌して均一な懸濁液又は分散液を得る。この乾燥粉末ブレンドの総重量は5gであり得る。このブレンドは、5gを含有する単回使用パケットで提供されてもよく、又は5gさじと共により大きなサイズ(例えば、100g又は250gの容器)に包装されてもよい。
【0066】
液状組成物の調製
本発明の組成物は、キモシンを全乳とブレンドし、任意に、ラクターゼ、リパーゼ又はエステラーゼ、プレバイオティクス、及びプロバイオティクスから選択される上記の他の成分の1つ以上を添加することによって調製される。本発明の全乳は、生乳、低温殺菌乳、A1乳、A2乳、ヤギ乳、又はヒツジ乳であってもよい。混合物を、キモシン及び他の成分の均一な懸濁液になるまで撹拌する。
【0067】
乳とブレンドされたキモシンは、乳が消費されるまで乳に影響を及ぼさない。キモシンは、乳の保存に使用される低温(4℃/39°F)で乳を凝固させる際に活性ではないため、本発明の組成物は貯蔵安定性であると予想される。
【0068】
栄養組成物は、飲料として提供されてもよい。追加の香味剤、例えばチョコレートフレーバー、バニラフレーバー、又はフルーツフレーバー(バナナ、リンゴ、ブルーベリー、イチゴなど)を添加してもよい。
【0069】
例
例1
本発明による飲料のための例示的な配合物は、以下のとおりである:
【表2】
【0070】
上記成分を配合して栄養飲料を提供する。飲料は、乳が新鮮なままである限り、冷蔵において安定している。これは、通常は乳製品に不耐性である多くの成人に許容されるであろう、乳製品に基づく新規な栄養組成物である。
【0071】
例2
例示的な自由流動性乾燥粉末ブレンドは、以下のとおりである:
【表3】
【0072】
上記の成分は、ヒト摂取用に500mLの乳において使用することを意図した粉末混合物にブレンドされる。粉末化された混合物は、例えば、100g又は200g及び5gのさじを含む使い捨てパケット又はバルク容器に包装されてもよい。ブレンドを乳に添加し、撹拌して溶解させる。
【0073】
上記のリストに加えて、例えばフルーツフレーバー又はチョコレートフレーバーなどの様々なフレーバーを追加して、風味の嗜好性を改善することができる。
【0074】
参考文献
1Scientific Report of EFSA prepared by a DATEX Working Group on the potential health impact of β-casomorphins and related peptides. EFSA Scientific Report (2009) 231, 1-107, DOI: 10.2903/j.efsa.2009.231r(β-カソモルフィン及び関連ペプチドの潜在的な健康への影響に関するDATEXワーキンググループによって作成されたEFSAの科学報告書。)
2 Sun Jianqin et al., Effects of milk containing only A2 beta casein versus milk containing both A1 and A2 beta casein proteins on gastrointestinal physiology, symptoms of discomfort, and cognitive behavior of people with self-reported intolerance to traditional cows' milk, Nutr J, 2016 Apr 2;15:35. doi: 10.1186/s12937-016-0147-z.(A2ベータカゼインのみを含む乳と、A1及びA2ベータカゼインタンパク質の両方を含む乳が胃腸生理学、不快感の症状、及び従来のウシの乳に対する自己申告による不耐性を持つ人々の認知行動に及ぼす影響)
3 William G Manson, Lawrence T Weaver, “Fat digestion in the neonate,” Arch. Dis. Childhood, 1997, 76, F206-F211; PMID: 9175955.(「新生児における脂肪消化」)
4 Margit Hamosh, A Review. Fat Digestion in the Newborn: Role of Lingual Lipase and Preduodenal Digestion, Pediatric Research, 13, 615-622 (1979), doi: 10.1203/00006450-197905000-00008(総説。新生児における脂肪消化:舌リパーゼと前十二指腸消化の役割)
5 同上。
6 Mahmood Hussain, M “A proposed model for the assembly of chylomicrons,” Atherosclerosis, 148(1) , 1 - 15 (2000), doi: 10.1016/S0021-9150(99)00397-4(「カイロミクロン集合モデル案」)
7 Lipases in bovine milk(牛乳中のリパーゼ): C.V.Patel et al., “Bovine Milk Lipase. II. Characterization”(「牛乳リパーゼII特性評価」) J.Dairy Sci.1968, 51(12), 1879-1886 https://doi.org/10.3168/jds.S0022-0302(68)87306-0; lipases in human milk: William G Manson, Lawrence T Weaver, “Fat digestion in the neonate,”(「新生児における脂肪消化」) Arch. Dis. Childhood, 1997, 76, F206-F211; PMID: 9175955.
8 Nelson, J.H., et al., “Pregastric Esterase and other Oral Lipases-A Review,” J. Dairy Sci., 1977, 60(3) 327 - 362, doi: 10.3168/jds.S0022-0302(77)83873-3(「胃前エステラーゼ及び他の経口リパーゼ―総説」)
9 注3のManson 1997
10 Hamosh, M and Hamosh, P “Gastric Lipase: Characteristics and Biological Function of Preduodenal Digestive Lipases”(「胃リパーゼ:前十二指腸消化リパーゼの特性及び生物学的機能」) in “Esterases, Lipases, and Phospholipases: From Structure to Clinical Significance Volume 266 of Nato Science Series A” (「エステラーゼ、リパーゼ、及びホスホリパーゼ:構造から臨床的意義までNATO科学シリーズAの第266巻」)Editors: M.I. Mackness, M. Clerc; Springer 1994, pp. 139-148. ISBN 1489909931, 9781489909930; Hernell, O; Blackberg L, “Molecular aspects of fat digestion in the newborn,” (「新生児における脂肪消化の分子的側面」)Acta Paediatr Suppl 1994, 405, 65-9; https://doi.org/10.1111/j.1651-2227.1994.tb13401.x; Roussel, Alain, et al., “Crystal Structure of Human Gastric Lipase and Model of Lysosomal Acid Lipase, Two Lipolytic Enzymes of Medical Interest,”(「ヒト胃リパーゼの結晶構造及びリソソーム酸性リパーゼのモデル、医学的に関心のある2つの脂肪分解酵素」)J. Biol. Chem. 1999, 274(24), 16995-17002; https://doi.org/10.1074/jbc.274.24.16995
11 Fojan, P. et al., "What distinguishes an esterase from a lipase: A novel structural approach," Biochimie, 2000, 82 (11) 1033-1041, https://doi.org/10.1016/S0300-9084(00)01188-3(「エステラーゼとリパーゼを区別するもの:新規な構造的アプローチ」)
12 Hamosh 1994の表3、注7のManson 1997も参照されたい。
13 Sweet, B.J., et al. “Purification and characterization of pregastric esterase from calf,” Arch Biochem Biophys. 1984, 234, 144-150, https://doi.org/10.1016/0003-9861(84)90335-7(「仔ウシからの胃前エステラーゼの精製及び特性評価」); 注7のManson 1997も参照されたい。
14 注10のHamosh 1994の表3、
15 同上。
16 Smith, L.J., Kaminsky, S. and D'souza, S. W. “Neonatal Fat Digestion and Lingual Lipase,” Acta Paediatrica, 1986, 75 913-918. doi: 10.1111/j.1651-2227.1986.tb10316.x(「新生児脂肪消化及び舌リパーゼ」)
17 M. Lucarini, “Bioactive peptides in milk: from encrypted sequences to nutraceutical aspects,” Beverages 2017, 3, 41; doi: 10.3390/beverages3030041(「乳中の生理活性ペプチド:暗号化された配列から栄養補助食品の側面まで」)
18 Kumar, A.; Grover, S.; Sharma, J.; Batish, V.K.; “Chymosin and other milk coagulants: sources and biotechnological interventions,” Crit. Rev. Biotechnol.30, 243-258 (2010), DOI: 10.3109/07388551.2010.483459(「キモシンお及び他の乳凝固剤:供給源及びバイオテクノロジー的介入」)
19 Demers-Mathieu, Veronique, et al “Premature Infants have Lower Gastric Digestion Capacity for Human Milk Proteins than Term Infants,” J. Ped. Gastroenterology and Nutrition, 2018 66(5) 816-821 doi: 10.1097/MPG.0000000000001835(「未熟児は正期産児よりも母乳タンパク質の胃消化能力が低い」)
20 http://blog.cheesemaking.com/about-lipase/ (2018年7月3日ダウンロード)
21 注19のDemers-Mathieuを参照されたい。
22 例えば、ウィスコンシン州マディソンのDairy Connection, Inc.製の「CHY-MAX(登録商標)EXTRA(DCI Star)」https://www.dairyconnection.com/CHY-MAX-EXTRA-STAR.html. CHY-MAX(登録商標) EXTRAは、1mL当たり650IMCUを有する。
23 Jose Alberto Espinoza-Molina et al., "Codon Optimization of the Bos Taurus Chymosin Gene for the Production of Recombinant Chymosin in Pichia pastoris" Mol Biotechnol. 2016 Oct;58(10):657-664. doi: 10.1007/s12033-016-9965-7(「ピキア・パストリス(Pichia pastoris)における組換えキモシンの生産のためのウシ(Bos Taurus)キモシン遺伝子のコドン最適化」)。BRENDA reference 754695も参照されたい。
24 Hackenmueller S.A., Grenache D.G.Reference Intervals for Intestinal Disaccharidase Activities Determined from a Non-Reference Population. J. Appl. Lab. Med., 2016 doi:10.1373/jalm.2016.020388.(非参照集団から決定された腸管ジサッカリダーゼ活性の参照間隔)
25 この問題の更なる議論については、国際公開第2020/023521号を参照されたい。
26 注4
27 注1の143、下
28 例えば、Joan Lin Cereghino James M. Cregg, “Heterologous protein expression in the methylotrophic yeast Pichia pastoris,” FEMS Microbiology Reviews, Volume 24, Issue 1, 1 January 2000, Pages 45-66, https://doi.org/10.1111/j.1574-6976.2000.tb00532.x(「メチロトローフ酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)における異種タンパク質発現」)を参照されたい。
29 例えば、“Cloning and expression of cDNA encoding human lysosomal acid lipase/cholesteryl ester hydrolase. Similarities to gastric and lingual lipases” J. Biol. Chem. 266 (33), 22479-22484 (1991). The sequence of bovine pregastric esterase is also known: Timmermans,M.Y., Teuchy,H. and Kupers,L.P., The cDNA sequence encoding bovine pregastric esterase, Gene 147 (2), 259-262 (1994); NCBI NP_776528(「ヒトリソソーム酸リパーゼ/コレステリルエステル加水分解酵素をコードするcDNAのクローニング及び発現。胃リパーゼ及び舌リパーゼとの類似性」)を参照されたい。
30 Hutkins, R. W. et al., “Prebiotics: why definitions matter” Curr Opin Biotechnol. 2016 Feb;37:1-7. doi: 10.1016/j.copbio.2015.09.001.Epub 2015 Sep 29(「プレバイオティクス:なぜ定義が重要なのか」)
31 Belen Gomez, et al., “Purification, Characterization, and Prebiotic Properties of Pectic Oligosaccharides from Orange Peel Wastes,” J. Ag. Food Chem., 2014 62 (40), 9769-9782 DOI: 10.1021/jf503475b(「オレンジピール廃棄物からのペクチンオリゴ糖の精製、特性評価、及びプレバイオティクス特性」)
32 Ifeoma Chinyelu Nwafor, Karabo Shale, Matthew Chilaka Achilonu, "Chemical Composition and Nutritive Benefits of Chicory (Cichorium intybus) as an Ideal Complementary and/or Alternative Livestock Feed Supplement", The Scientific World Journal, vol. 2017, Article ID 7343928, 11 pages, 2017.https://doi.org/10.1155/2017/7343928(「理想的な補完的及び/又は代替家畜飼料サプリメントとしてのチコリ(Cichorium intybus)の化学組成及び栄養上の利点」)
【手続補正書】
【提出日】2022-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
年長児及び成人用のタンパク質及び飽和脂肪の供給源を提供する液体栄養組成物であって、新鮮な全乳と、乳1リットル当たり約5国際凝乳単位(IMCU)~200 IMCUを有する一定量のキモシンと、1リットル当たり1~100リパーゼ/エステラーゼ前胃単位(LFU/L)の量の哺乳動物由来リパーゼとを含む、上記液体栄養組成物。
【請求項2】
前記キモシン量が、乳中6.5 IMCU/L~65 IMCU/L、又は乳中20 IMCU/L~40 IMCU/L、又は乳中40.625 IMCU/Lである、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項3】
前記新鮮な全乳が、ウシのA1乳若しくはA2乳、又はヤギ乳又はヒツジ乳であり、前記のいずれかが生又は低温殺菌されている、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項4】
前記リパーゼが、2~5LFU/L、又は3.5LFU/Lの量で存在する哺乳動物舌リパーゼ又は胃前エステラーゼである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ラクターゼ、プレバイオティック、及びプロバイオティック、又はそれらの混合物から選択される成分を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
乳中約125U~25,000U/L、1000~20000U/L、3125~6250U/L、又は3125U/Lで存在するラクターゼを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
0.025g/L~1.0g/L又は0.0625g/Lで存在するチコリ根全粉末、リーキ全植物粉末、又は純粋なイヌリン粉末を含むプレバイオティックを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
1リットル当たり3,750,000~3,750,000,000コロニー形成単位(CFU/L)のビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)のブレンドを含むプロバイオティック培養物を更に含む、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項9】
100,000,000~25,000,000,000CFU/L、又は100,000,000~1,000,000,000CFU/L、又は250,000,000CFU/Lで存在するバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)のプロバイオティック培養物を更に含む、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項10】
3,750,000~3,750,000,000CFU/Lのバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)のプロバイオティック培養物を更に含む、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項11】
前記組成物が、5歳を超える人によって消費される、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項12】
前記組成物が、12歳を超える人によって消費される、請求項1に記載の液体栄養組成物。
【請求項13】
ヒト摂取用の液体栄養組成物であって、1.0Lの新鮮な全乳と、40.625 IMCUのキモシンと、3125Uのラクターゼと、0.0625gのチコリ根全粉末と、3.5LFUの舌リパーゼと、75,000,000CFU/Lの、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の混合物と、1,000,000,000CFU/Lのバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)胞子と、150,000,000CFU/Lのバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)と、を含む、上記ヒト摂取用の液体栄養組成物。
【請求項14】
キモシン及びリパーゼを含む、年長児及び成人にタンパク質及び飽和脂肪の供給源を提供する自由流動性乾燥粉末組成物であって、ヒト摂取用に乳に溶解されることが意図される、上記自由流動性乾燥粉末組成物。
【請求項15】
プレバイオティック、プロバイオティック、及びラクターゼ、又はそれらの組合せから選択される成分を更に含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
デキストロース、ソルビトール、シリカ、炭酸カルシウム、及びリン酸二カルシウム、又はそれらの組合せから選択される賦形剤を更に含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
香味剤を更に含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記乳が、牛乳、ヒツジ乳、又はヤギ乳である、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
約0.019~0.58gのキモシンと、0.40~1.50gの1つ以上のリパーゼのブレンド5gを含む、年長児及び成人にタンパク質及び飽和脂肪の供給源を提供する自由流動性乾燥粉末組成物であって、前記乾燥粉末状の自由流動性組成物が、ヒト摂取用に0.5Lの乳に溶解することが意図される、上記自由流動性乾燥粉末組成物。
【請求項20】
0.25~1.00gのラクターゼと、1.10~4.55gの、イヌリン及びフラクトオリゴ糖又はその両方から選択される1つ以上の形態のプレバイオティクスと、0.035~0.105gの1つ以上のプロバイオティック培養物、又はそれらの組合せから選択される成分を更に含み、前記乾燥粉末状の自由流動性組成物が、ヒト摂取用に0.5Lの乳に溶解することが意図される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ヒト摂取用の乳ベースの組成物を調製する方法であって、約0.019~0.58gのキモシンと、0.25~1.00gのラクターゼと、0.40~1.50gの1つ以上のリパーゼと、1.10~4.55gの、イヌリン及びフラクトオリゴ糖又はその両方から選択される1つ以上の形態のプレバイオティクスと、0.035~0.105gの1つ以上のプロバイオティック培養物とのブレンド5gを含む自由流動性乾燥粉末組成物を0.5Lの新鮮な冷たい乳に添加し、前記粉末組成物が前記乳中に均一に懸濁されるまで前記混合物を撹拌することを含む、上記方法。
【国際調査報告】