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特表2024-503722リベット締め方法およびリベット締め構造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】リベット締め方法およびリベット締め構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/04 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
F16B35/04 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543235
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 US2021042756
(87)【国際公開番号】W WO2022159140
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202110093414.3
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518030139
【氏名又は名称】ペン エンジニアリング アンド マニュファクチュアリング コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PENN ENGINEERING & MANUFACTURING CORP.
【住所又は居所原語表記】5190 Old Easton Road,Danboro,PA 18916 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スン,チャン
(72)【発明者】
【氏名】カイ,シェンバオ
(57)【要約】
【構成】本発明はリベット締め方法およびリベット締め構造に関する。このリベット締め方法では、第1側部およびこの第1側部に対向する第2側部を有するプレートを用意し、プレートの第1側部に、第1側部に第1凹部領域および第1側部に対向する第2側部に第1凹部領域を有する壁部分を形成し、この第1凹部領域にファスナーを設けて、ファスナーを壁部分の第1側部に隣接させ、そして壁部分の第2側部から壁部分に力を印加して、当該ファスナーを少なくとも部分的に取り囲むように壁部分を変形させる。この技術的な解決策を採用すると、プレートの背部に望ましくない凹みが発生することがなくなる。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1側部およびこの第1側部に対向する第2側部を有するプレートを用意する工程、
第1内側に第1凹部領域を有し、かつ前記第1内側に対向する第2外側に第2凹部領域を有する壁部分を前記プレートの前記第1側部に形成する工程、
前記第1凹部領域内に前記ファスナーを挿入して、このファスナーを前記壁部分の前記第1側部に隣接させる工程、および
前記壁部分の第2側部から力をこの壁部分に印加して、当該壁部分を変形させて、前記ファスナーを少なくとも部分的に取り囲む工程を有する
ことを特徴とするファスナーをプレートにリベット締めするリベット締め方法。
【請求項2】
前記プレートの前記第1側部に壁部分を形成する工程において、
前記プレートの前記第1側部にブラインドホールを形成し、そして
前記ブラインドホールの外側に溝を形成し、このブラインドホールと前記溝との間に前記壁部分を形成して、このブラインドホールと溝がそれぞれ前記第1凹部領域および前記第2凹部領域の少なくとも一部を形成する請求項1に記載のリベット締め方法。
【請求項3】
前記印加された力(印加力)が少なくとも前記壁部分において前記プレートの接平面に直交しない請求項1に記載のリベット締め方法。
【請求項4】
前記印加力が前記壁部分において前記プレートの前記接平面に対して0°~45°の角度を有する請求項3に記載のリベット締め方法。
【請求項5】
前記壁部分に力を印加する工程において、
前記壁部分にそってそれぞれの力を印加するツールの円周方向移動時に断続的に、あるいは連続的にこの壁部分にこれらの力を印加する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記壁部分に力を印加する工程において、
前記壁部分の基部からこの壁部分の上部へ順に、あるいは前記壁部分の上部からこの壁部分の基部へ順に、断続的にあるいは連続的に前記壁部分にそれぞれ力を印加する請求項1に記載のリベット締め方法。
【請求項7】
前記壁部分に力を印加する工程において、
前記壁部分にそってそれぞれの力を印加するツールの第1円周方向移動時にこの壁部分の第1レベルにおいてこの壁部分にこれら力を断続的に、あるいは連続的に印加し、そして
前記壁部分にそってそれぞれの力を印加するツールの第2円周方向移動時にこの壁部分の第2レベルにおいてこの壁部分にこれら力を断続的に、あるいは連続的に印加する請求項1に記載のリベット締め方法。
【請求項8】
前記壁部分に力を印加する工程において、
ツールを使用して、第1力を前記壁部分に印加して、前記ファスナーに向かって凹状の変形部分をこの壁部分に発生し、そして
前記壁部分に対してこの変形部分にツールを設け、そしてこの壁部分にそってこの変形部分の一方の側からこの変形部分の他方の側にこのツールを移動させ、この壁部分に力を印加するツールの前記移動時このツールがこの壁部分に当接している請求項1に記載のリベット締め方法。
【請求項9】
前記ツールが第1軸線を有し、そしてこのツールがさらに前記第1軸線に直交する横断面を有し、この横断面が規則的な横断面であるか、あるいは不規則な横断面である請求項8に記載のリベット締め方法。
【請求項10】
前記の規則的な横断面が円形横断面、楕円横断面、および多角形横断面の一つか、あるいはこれらが組み合わされた形状の横断面である請求項9に記載のリベット締め方法。
【請求項11】
前記の不規則な横断面が前記ツールの軸線に沿って変化する横断面を含む請求項9に記載のリベット締め方法。
【請求項12】
前記ツールが第1軸線を有し、このツールが前記壁部分に沿って該ツールの移動時にこの第1軸線を中心にして回転する構成とすることにより、当該ツールと前記壁部分との摩擦が発生しないか、あるいは低減する請求項1に記載のリベット締め方法。
【請求項13】
前記壁部分にそって前記ツールが移動している間、前記第1軸線の軌道が規則的な軌道であるか、あるいは不規則な軌道である請求項11に記載のリベット締め方法。
【請求項14】
前記規則的な軌道が円形形状、楕円形状、多角形状またはジグザグ形状の一つである請求項12に記載のリベット締め方法。
【請求項15】
マシンツール機械加工、粉末冶金技術、3Dプリンティング、放電機械加工、鍛造または鋳造のうちの一つによって前記凹部領域が形成される請求項1に記載のリベット締め方法。
【請求項16】
前記凹部領域が規則的な形状であるか、あるいは不規則な形状である請求項1に記載のリベット締め方法。
【請求項17】
前記規則的な形状が円形形状、楕円形状または多角形状のうちの一つか、あるいはこれらの併用形状である請求項15に記載のリベット締め方法。
【請求項18】
力を前記壁部分に印加する工程において、
ツールを使用して複数の力をこの壁部分に印加し、このツールが壁部分に当接する複数の当接部分を有し、これら複数の当接部分が等間隔で、あるいは非等間隔で上記壁部分の周囲に分布する請求項1に記載のリベット締め方法。
【請求項19】
前記ファスナーが相互に接続したヘッドおよびシャフトを有し、前記壁部分の変形後この壁部分によって取り囲まれるように前記凹部領域にこのヘッドが配されるように構成される請求項1に記載のリベット締め構造。
【請求項20】
前記ファスナーの軸線に直交する前記ヘッドおよび/または前記シャフトが規則的な形状の横断面、あるいは不規則形状の横断面を有し、この規則的な形状が円形形状、多角形状、または楕円形状のうちの一つか、あるいはこれらを併用した形状である請求項19に記載のリベット締め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年1月22日を出願日とする中国特許出願第CN2021100934143号に関係する非仮特許出願であり、その優先権を主張する出願である。
【0002】
本発明はリベット締めの技術分野に、特にリベット締め方法およびリベット締め構造に関する。
【背景技術】
【0003】
プレートにファスナーやその他の部品を取り付ける多くの方法がある。共通して用いられている方法はプレスリベット締めおよび接着である。
【0004】
プレスリベット締めの過程で、ファスナーに加わる軸方向力も同時にプレートに作用する。プレートが薄いため、プレートの反対側がファスナーによって凹むことがある。リベット締め構造の外見および機械的特性に求められるものが高い部品の場合、凹みにより欠陥が生じる恐れがある。接着の場合には、プレートに望ましくない凹みは発生しないが、接着は環境を汚染する恐れがあり、また接着構造は耐候性が低い。気温が80℃以上になると、接着構造の機械的特性が大きく劣化する。従って、改良リベット締め構造および改良リベット締め方法が依然として求められている。
【発明の概要】
【0005】
従来技術における問題点を解決するために、本発明は上記の技術上の問題点を解決するために使用できるリベット締め方法およびリベット締め構造を提供するものである。
【0006】
本発明の一態様は、ファスナーをプレートにリベット締めするリベット締め方法に関する。このリベット締め方法は以下の工程、即ち、
第1側部およびこの第1側部に対向する第2側部を有するプレートを用意する工程、
内側部に第1凹部領域およびこの内側部に対向する外側部に第2凹部領域を有する壁部を前記プレートの第1側部に形成する工程、
前記ファスナーを第1凹部領域に設けて、壁部分の第1側部に前記ファスナーを隣接させる工程、および
前記壁部分の外側部に力を印加して、前記ファスナーを少なくとも部分的に取り囲むように前記壁部を変形させる工程を有する。
【0007】
一部の実施態様では、プレートの第1側部に壁部分を形成する工程で、
前記プレートの第1側部にブラインドホールを形成し、そしてこのブラインドホールの外側に溝を形成して、このブラインドホールとこの溝との間に前記壁部分を形成し、これらブラインドホールと溝が第1凹部領域および第2凹部領域の少なくとも一部を形成する。
【0008】
一部の実施態様では、印加する力は少なくとも壁部分における前記プレートの接平面に対して直角ではない(直交しない)。
【0009】
一部の実施態様では、印加する力は壁部分における前記プレートの接平面に対して0°~45°の角度を有する。
【0010】
一部の実施態様では、壁部分に力を印加する工程で、この壁部分にそってこのような力を印加するツールが円周方向に移動している間、それぞれの力を壁部分に断続的に、あるいは連続的に印加する。
【0011】
一部の実施態様では、力を壁部分に印加する工程で、壁部分に壁部分の基部から壁部分の上部へという順で、あるいは壁部分の上部から壁部分の基部へという順でそれぞれ力を壁部分に断続的に、あるいは連続的に印加する。
【0012】
一部の実施態様では、壁部分に力を印加する工程で、
壁部分の第1レベルにおいて、壁部分にそってこの力を印加するツールが第1円周方向に移動している間、それぞれの力を壁部分に断続的に、あるいは連続的に印加し、そして
壁部分の第2レベルにおいて、壁部分にそってこの力を印加するツールが第2円周方向に移動している間、それぞれの力を壁部分に断続的に、あるいは連続的に印加する。
【0013】
一部の実施態様では、力を壁部分に印加する工程で、
第1力を壁部分に印加するツールを使用して、壁の変形部分をファスナーに向けて凹ませ、そして
壁部分の変形部分にツールを設定し、ツールが壁部分に当接した状態で、壁部分にそって変形部分の一方の側から変形部分の他方の側までツールを移動させる。
【0014】
一部実施態様では、ツールは第1軸線を有し、このツールがさらに第1軸線に対して直交する横断面を有し、そしてこの横断面が規則的な横断面か、あるいは不規則な横断面である。
【0015】
一部の実施態様では、規則的な横断面が円形横断面、楕円横断面および多角形横断面の一つか、あるいはこれらの組み合わせからなる。
【0016】
一部の実施態様では、ツールが第1軸線を有し、このツールが壁部分にそって移動している間、第1軸線を中心にして回転するため、ツールと壁部分との間に摩擦が発生しないか、あるいは摩擦が低減する。
【0017】
一部の実施態様では、壁部分にそってツールが移動している間、第1軸線の軌道が規則的な軌道であるか、あるいは不規則な軌道である。
【0018】
一部の実施態様では、規則的な軌道が円形形状、楕円形状、多角形状またはジグザグ形状である。
【0019】
一部の実施態様では、マシンツール機械加工、粉末冶金技術、3Dプリンティング、放電機械加工、鍛造または鋳造のうちの一つによって凹部領域を形成する。
【0020】
一部の実施態様では、凹部領域が規則的な形状であるか、あるいは不規則な形状である。
【0021】
一部の実施態様では、規則的な形状が円形形状、楕円形状または多角形状のうちの一つか、あるいはこれらの併用形状である。
【0022】
一部の実施態様では、力を壁部分に印加する工程において、
ツールを使用して、複数の力をこの壁部分に印加し、このツールが複数の壁部分に当接する複数の当接部分を有し、これら複数の当接部分が等間隔で、あるいは非等間隔で前記壁部分の周囲に分布する。
【0023】
本出願の別な態様では、リベット締め構造を提供し、リベット締め構造はプレートとファスナーを有する。このリベット締め構造は上記のリベット締め方法によって得られる。
【0024】
一部の実施態様では、ファスナーが相互接続したヘッドおよびシャフトを有し、壁部分の変形後この壁部分によって取り囲まれるように凹部領域にこのヘッドを設ける。
【0025】
一部実施態様では、ヘッドおよび/またはシャフトの側壁が耐トルク性構造を有する。
【0026】
ファスナーの軸線に直交するヘッドおよび/またはシャフトが規則的な形状の横断面、あるいは不規則形状の横断面を有する。
【0027】
一部の実施態様では、この規則的な形状が円形形状、多角形状、または楕円形状のうちの一つか、あるいはこれらを併用した形状である。
【0028】
一部の実施態様では、プレートは可塑性素材からなる。
【0029】
本発明では以下の技術上の作用効果の少なくとも一つかそれ以上の作用効果が得られる。
1.リベット締め作業時、ファスナーに向かう方向に壁部分が押し込まれるため、まくれが発生することがなく、発生したとしても小さい。
2.本発明のリベット締め方法では、ファスナーを受け取るブラインドホールをプレートに形成し、このブラインドホールを取り囲む環状溝をブラインドホールの外側に設けるため、一定の厚さの周囲壁部分がブラインドホールと環状溝との間に形成する。次に、この力とブラインドホールの軸線との角度αにおいて壁部分に一定の力を印加するため、ブラインドホールの軸線に対して平行な力ではなく、主にブラインドホールの軸線に対して直交する力によって壁が変形する。即ち、壁(または金属プレート)に印加される、ブラインドホールの軸線に平行な力がきわめて小さいため、プレートに望ましくない凹みが生じることはない。
3.ファスナーを備えたリベット締め構造は耐トルク性がよく、また引き抜き抵抗性能もすぐれている。
【0030】
本発明の上記目的、特徴および作用効果をより明らかにするために、具体的に添付図面を参照して好適な実施態様を以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の実施態様、あるいは従来技術の技術的な問題点をより明確に説明するために、実施態様、あるいは従来技術を記載するために使用する必要がある図面について以下短く説明する。いうまでもなく、以下の記載で言及する図面は本発明の一部の実施態様にしか過ぎない。当業者ならば、別に能力がなくてもこれら図面に依拠して別な図面を作成できるはずである。
【0032】
図1は本発明の一実施態様に従ってリベット締めを実施する前のリベット締め構造を示し概略図である。
【0033】
図2は本発明の一実施態様に係る壁部分における力解析を示す図である。
【0034】
図3Aは本発明の別な実施態様に係るツールによるリベット締め操作を示す横断面図である。
【0035】
図3Bは本発明の別な実施態様に係るツールによるリベット締め操作を示す横断面図である。
【0036】
図4A図4Cはツールのいくつかの実施例を示す図である。
【0037】
図5Aおよび図5Bはブラインドホールおよび溝のいくつかの実施例を示す図である。
【0038】
図6A図6Fはプレートにリベット締めを実施するいくつかのファスナーの構成を示す図である。
【0039】
これら図面中の参照符号について、100は金属プレート、110はブラインドホール、120は溝、130は壁、200はファスナー、210はヘッド、220はシャフト、300はツールを指す。
【発明の詳細な説明】
【0040】
本発明の実施態様における技術的な問題解決策について、以下、本発明実施態様を示す添付図面を参照して明確かつ完全に説明する。いうまでもなく、以下に記載する実施態様は実施態様のすべてではなく、本発明実施態様のうちの一部でしかない。本発明の実施態様に依拠して、当業者ならば、創造性を発揮することなく他のすべての実施態様を実現することができるはずであり、いずれも本発明の範囲に属するものである。
【0041】
本発明の発明者は、既存の方法を使用してファスナーを可塑性パネル(例えば変形性の金属パネル)にリベット締めした場合にプレートに凹みやバリなどの欠陥が発生する理由が、リベット締め方法ではプレートに直角(直交)方向に過剰な力が加わり、この力がリベット締め点においてプレートを望ましくない程度まで変形させる恐れがあることを突き止めた。
【0042】
また本発明者は、可塑性パネルに予め形成した2つの凹部領域間の壁部分に可塑性パネルの接線方向や、あるいは他の非法線方向において力を印加して壁部分を変形させた場合には、変形した壁部分が壁部分に隣接する凹部領域の一つの内部にファスナーを拘束できることを突き止めた。このような力の印加方法を採用すると、プレートの法線方向においてプレートに印加される力成分を大きく低減でき、これによってリベット締め作業(操作)時に発生する凹みやバリを大幅に低減できるか、あるいは阻止することが可能になる。
【0043】
上記の本発明のコンセプトに従って、一部の実施態様では、ファスナーをプレートにリベット締めするリベット締め方法を提供するものである。このリベット締め方法は以下の工程を有する。すなわち、第1側部およびこの第1側部に対向する第2側部を有するプレートを用意する工程、第1側部に第1凹部領域およびこの第1側部に対向する第2側部に第2凹部領域を有する壁部を前記プレートの第1側部に形成する工程、前記ファスナーを第1凹部領域に設け、壁部分の第1側部に前記ファスナーを隣接させる工程、および前記壁部分の第2側部から力を壁部分に印加して、前記ファスナーを少なくとも部分的に囲むように前記壁部分を変形させる工程を有する。一部の実施態様では、壁部分の一方の側の凹部領域はリベット締めするファスナーを受け取るブラインドホールであってもよく、また壁部分の他方の側の凹部領域は例えばブラインドホールを取り囲む溝であってもよく、この溝はツールを挿入し、力を壁部分に印加するスペースを有する。他の実施態様では、壁部分の一方の側部は溝であってもよく、また壁部分の他方の側部はブラインドホールであってもよい。ツールをブラインドホールに挿入し、この壁部分に力を印加して、ブラインドホール内のファスナーをリベット締めすることができる(溝としては、例えば環状溝を使用することができ、ファスナーとしては貫通孔を備えたファスナーを使用することができる)。一部の実施態様では、ブラインドホールおよび溝は凹部領域の一部であってもよい。すなわち、ファスナーの形状は凹部領域に正確に一致しなくてもよい。なお、凹部構造の具体的な形状については、ファスナーの形状に従って設計、変更することができる。本出願の以下の実施態様では、壁部分の両側の凹部構造についてブラインドホールおよび溝として例示するが、当業者ならば、本出願はこの構成に限定されないことを理解できるはずである。
【0044】
図1および図2に示すように、本実施態様のリベット締め方法はプレート100にファスナー200をリベット締めするために使用する。プレート100の厚さが3mm未満の場合に、本実施態様のリベット締め方法の作用効果が歴然となる。なお、当業者ならば、本願のリベット締め方法はより厚いプレートにもファスナーをリベット締めできることを理解できるはずである。本実施態様のリベット締め方法は以下の工程を有する。即ち、プレート100にブラインドホール110を形成する工程、およびプレート100のブラインドホール110を形成した側に環状溝120を形成し、この溝120をブラインドホール110の外側に設定して、環状溝120とブラインドホール110との間に壁部分130を形成する工程を有する。これら構造体の寸法については、壁部分130が目的の厚さを有するように選択する。
【0045】
装着時、ファスナー200をブラインドホール110内に設け、壁部分130の側壁に溝120に向けて力を印加するため、壁部分130がファスナー200に向かって変形(変形発生)し、ブラインドホール110内のファスナー200の部分を取り囲む。一部の実施態様では、印加力Fは(図2に示すように)ブラインドホール110の軸線から角度αを有することによって、壁部分130上のブラインドホール110の軸線に直交する力F1の作用が強くなり、ブラインドホール110の軸線に平行な力F2の作用が小さくなる。なお、角度αは0度より大きく、90度以下とすることができる。すなわち、印加力Fはプレート100の接平面に対して直交しない。プレートが平坦なプレートの場合、プレートの前記接平面とは、プレートが配される面を指す。プレートが平坦なプレートでない場合、プレートの前記接平面とは、リベット締め用力を印加する位置にあるプレートの接平面を指す。角度αについては45度~90度であるのが好ましい。すなわち、壁部分におけるプレートの接平面からの印加力の角度は0度~45度である。
【0046】
前記の技術的な解決策によって、本実施態様のリベット締め方法では、プレート100上のファスナー200を収容するブラインドホール110を形成し、このブラインドホール110の外側に溝120を形成するため、一定の厚さを有する周囲の壁部分130がブラインドホール110と溝120との間に形成し、壁部分130に所定配向の力が印加されることになる。壁部分130の変形自体は主にブラインドホール110の軸線に対して直交する力F1によるもので、ブラインドホール110の軸線に対して平行な力F2によるものではない。すなわち、壁部分130(またはプレート100)に印加されるブラインドホール110の軸線に対して平行な力F2は小さく、従ってプレート100に発生凹みは小さく、あるいは防止することができる。
【0047】
本実施態様において壁部分130に印加される印加力はブラインドホール110の軸線に対して完全に直交する力であることが好ましい。換言すると、前記角度αは90度であってもよい。この角度では、壁部分130およびプレート100に軸方向力は作用しないため、プレート100に凹みが発生することはさらになくなる。
【0048】
具体的には、本実施態様におけるリベット締め方法では、壁部分130にそって力を印加するツールが円周方向に移動している間、この力を壁部分130に断続的に(すなわち、段階的に)あるいは連続的に印加してもよく、あるいは壁部分130の基部から壁部分130の上部まで(あるいは壁部分130の上部から基部まで)順に断続的に、あるいは連続的に壁部分130の異なる部分に力を印加してもよい。ツール300については、壁部分130に沿って力を印加するために、ツール300が円周方向(外周に沿って)移動している間、ツール300を使用して(金属プレートが作業プラットフォームに水平に位置していると想定して)壁部分130の同じレベルで複数回このような力を壁部分130に沿って印加するのが好ましい。所定レベルでの壁部分130の円周に対する力の印加が終了した後は、このツール300を壁部分130の別なレベルに移動し、ツール300の別な円周方向移動時に力を壁部分130に印加し、この別なレベルで複数回壁部分130にそってこの力を印加する。換言すると、本実施態様のリベット締め方法の場合、壁部分130の異なるレベルにおいてこの壁部分130にそって(例えば、壁部分の基部から壁部分の上部までの方向に)これら力を印加するツールの円周方向移動時に断続的に、あるいは連続的に印加する複数の力によって壁部分130が変形することになる。
【0049】
なお、軸線に対して異なるレベルで印加する力Fの角度は同角度でもよく、あるいは異なる角度でもよく、異なるレベルで印加する力Fの大きさも同じでもよく、あるいは異なっていてもよい。ブラインドホール110の軸線に対して直交する各印加力Fの力F1の大きさは同じ大きさに維持し、壁部分の異なる位置において力を均一に印加できるようにするのが好ましい。
【0050】
一例として3回の印加操作について説明する。最初に、ツール300を距離L1だけ溝120に挿入する。このレベルでツール300を使用して、ツール300の円周方向移動時に力を壁部分130に印加し、この力を複数回壁部分130に印加する。次に、続けて、ツール300を溝120に距離L2だけ挿入する。この時点で、ツール300の溝120への挿入深さはL1+L2である。このレベルにおいて、ツール300を使用して、ツール300の別な円周方向移動時に力を壁部分130に印加し、壁部分130にそってこの力を複数回印加する。続けて、ツール300を溝120内に距離L3だけ挿入する。この時点で、ツール300の溝120内への挿入深さはL1+L2+L3である。このレベルにおいて、ツール300を使用して、ツール300のさらなる円周方向移動時に力を壁部分130に印加し、これ力を壁部分130にそって複数回印加する。
【0051】
上記の技術的課題をもつ本実施態様のリベット締め方法によれば、小さな力を複数回壁部分130に印加することによって壁部分130を変形させることができる。小さな力を複数回印加する方法では、ブラインドホール110に対して平行な方向に壁部分130に力を印加するたびに力F2をさらに小さくできるため、金属プレート100の凹みをさらに防止できる。
【0052】
本実施態様のツール300は第1軸線を有し(図1において、ツール300の第1軸線は円筒形ツール300の中心軸線である)、またツール300は第1軸線に直交する非円形横断面または円形断面を有する。他の一部の実施態様では、ツールは図1に示すツール300と同様な細長い形状を有し、その第1軸線は細長いツールの中心軸線とすることができる。さらに、非円形横断面としては、楕円形横断面や多角形横断面などの規則的な横断面や、これらを併用した横断面を挙げることができ、また不規則形状の横断面も挙げることができ、これら横断面は対称的な、あるいは非対称的な横断面であってもよい。換言すると、第1軸線に対して直交するツール300の横断面に対応する形状は非円形形状でもよく、あるいは円形形状でもよい。横断面が非円形の場合、横断面は楕円形、多角形(例えば三角形、四辺形、五角形、六角形など)などの規則的な形状や、これらの併用形であればよく、あるいは不規則形状でもよい。図4A図4Cにいくつかのツールの実施例を示すが、図示のように、各種の規則的な、あるいは不規則な形状を採用することができる。例えば、図4Aには円形横断面の一部を切り欠いた不規則な横断面を示す。また図4Bには楕円形の横断面を示し、図4Cには規則的な6つの変形断面を示す。
【0053】
より具体的には、ツール300を円周方向に移動させて壁部分300に複数回力を印加するさいに壁部分130にこの力を印加する上記方法において、以下のようにいくつかの方法がある。第1方法では、ツール300を使用して、壁部分130の厚さ方向に複数回力を壁部分130に印加する(この実施態様では、壁部分130の厚さとは、環状溝120に面した壁部分130の側部とブラインドホール110に面した壁部分130の側部との間の距離を指す)。力を複数回印加する方法では、ツール300は壁部分130に常に接触しているわけではない。第2方法では、最初にツール300を使用して、壁部分300の厚さ方向において壁部分300に第1力を印加して、ファスナー200の方に凹状になった変形部分を壁部分130に発生する。次に、壁部分の円周において変形部分の一方の側から変形部分の他方の側にツール300を移動させて、壁部分130にそって力を印加する。なお、この移動時ツール300は常に壁部分130に当接して、厚さ方向の力を壁部分130に印加する。第2方法では、図示のように、ツール300は壁部分130の周囲を回転する。この回転時、ツール300は常に壁部分130に当接し、力を壁部分130に印加する。
【0054】
さらに図1を参照して説明すると、一部の実施態様では、ツール300の移動時これが壁部分130にそって第1軸線を中心にして回転するため、ツール300と壁部分130との間の摩擦は発生しないか、発生したとしても僅かである。換言すると、ツール300が壁部分130の周囲で回転している間、その第1軸線を中心にして回転する(即ち、自己回転である)。ツール300と壁部分130との間の摩擦は滑り摩擦から回動摩擦に変化するが、これ自体は摩擦が低減し、かつ壁部分130にデブリを発生する恐れが小さくなる作用効果をもつ。一部の実施態様では、ツール300は図1に示す2つの円筒形当接部分などの一つかそれ以上の円筒形当接部分を有することができる。これら当接部分は壁部分130の対向する両側に対称的に位置していればよい。場合に応じて、ツール300は3つか4つの、あるいはそれ以上の当接部分を有することができる。これらは壁部分の両側などの壁部分130の周囲に等間隔で、あるいは異なる間隔で位置していてもよい。なお、ツール300の複数の円筒形当接部分のそれぞれ2つの部分間の距離は異なる外径をもつ壁部分130の加工に対応できるように変更可能である。一部の実施態様では、壁部分にそってツールが円周方向に移動している間、第1軸線の軌道は円形軌道、楕円軌道、多角軌道またはジグザグ軌道やその他の不規則軌道の内の一つか、これらを併用した軌道とすることができる。
【0055】
具体的に説明すると、本実施態様におけるブラインドホール110および/または溝120あるいは他の形状の凹部領域は機械的な方法または非機械的な方法によって工作可能である。図5Aおよび図5Bにブラインドホールおよび溝のいくつかの実施例を示す。図5Aにおいて、ブラインドホールは楕円形であり、そして溝は円形である。あるいは、図5Bにおいてブラインドホールは正方形であり、溝は円形である。当業者ならば、実際の用途に応じて各種形状のブラインドホールおよび溝、これらの対応関係を使用することができるはずである。
【0056】
本実施態様のリベット締め構造はいずれも本実施態様のリベット締め方法によって得ることができる前記プレート100およびファスナー200を有する。
【0057】
具体的に説明すると、図1および図2に示すように、本実施態様のファスナー200は相互接続したヘッド210およびシャフト220を有していればよく、ヘッド210は前記壁部分によって取り囲まれるようにブラインドホール110内に設ける。ファスナー200のヘッド210の側壁にはスプラインを設けることができる。ファスナー200のヘッド210に向けて壁部分130を変形させると、壁部分130の材料がスプラインに流れ込み、プレート100とファスナー200のヘッド210がスナップ嵌合するため、ファスナー200の耐トルク性が高くなる。あるいは、ファスナーの軸線に対して直角なファスナー200のヘッド210の横断面を非円形形状(多角形や楕円形)にすることができる。この形状をもつヘッド210は、壁部分130で取り囲んださいに、耐トルク性が高くなる。本実施態様のファスナー200はスタッド(stud)を有する。
【0058】
図6A図6Fにプレートにリベット締めできる構成のいくつかのファスナーの構造を示す。当業者ならば、他の形状のファスナーも使用できることを理解できるはずである。
【0059】
さらに図1および図2を参照して説明を続けると、本実施態様におけるブラインドホール110の形状については、ファスナー200のヘッド210の形状に倣う形状であってもよく、また溝120の形状についてもブラインドホール110の形状に倣う形状であってもよい。壁部分130の厚さそれ自体がより均一になるため、壁部分130に印加される力の均一性および壁部分130の変形が改善する作用効果が得られる。
【0060】
具体的に説明すると、本実施態様におけるブラインドホール110および/または溝120の基部は平面であるため、ファスナー200の装着時の安定性が改善する作用効果が得られる。
【0061】
具体的に説明すると、本実施例におけるプレートの素材は可塑性の素材であり、低炭素鋼、銅、アルミ、プラスチック、ゴムなどを始めとする金属素材や非金属素材を例示できる。
【0062】
図3Aは本出願の別な実施態様に係るツールによるリベット締め操作を示す概略横断面図である。ファスナー400については、第1凹部領域410内に設ける。この第1凹部領域の各側には別な凹部領域がある。即ち、第1凹部領域410の外側には第2凹部領域420があり、そして第1凹部領域410の内部には第3凹部領域422がある。第1凹部領域410および第2凹部領域420の間に第1壁部分430が位置し、そして第1凹部領域410および第3凹部領域422の間に第2壁部分432が位置する。第2凹部領域420および/または第3凹部領域422にツールを挿入し、それぞれ第1壁部分および/または第2壁部分に力を印加して、第1壁部分430および/または第2壁部分432に変形部分を発生できる。これら変形部分が第1凹部領域420内のファスナーの基部を少なくとも部分的に取り囲むことによって、ファスナー400をリベット締めし、固定する。
【0063】
図3Bは本出願の別な実施態様に係るツールによるリベット締め操作を示す概略横断面図である。ファスナー500については、基体の第1凹部領域510内に設ける。第1凹部領域510内に第2凹部領域520がある。第1凹部領域510および第2凹部領域520の間に壁部分530を設ける。第2凹部領域520にツールを挿入し、壁部分530に外向きに力を印加して、壁部分530に変形部分を発生できる。これら変形部分が第1凹部領域510内のファスナー500の基部を少なくとも部分的に取り囲むことによって、ファスナー500をリベット締めし、固定する。
【0064】
本発明では、具体的ないくつかの実施例を使用して、本発明の原理および実施について説明してきた。上記実施例の説明は本発明の方法および主要な考え方の理解を進めることのみを目的とするものである。同時に、当業者ならば、本発明の考え方に従って具体的な発明の実施および応用については変更可能であることを理解できるはずである。つまり。本明細書の内容については本発明を制限するものとしては解釈してはならない。
【符号の説明】
【0065】
100 プレート
110 ブラインドホール
120 溝
130 壁部分
200 ファスナー
210 ヘッド
220 シャフト
300 ツール
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
【国際調査報告】