(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】海水からリチウムを濃縮するためのシステム及びプロセス
(51)【国際特許分類】
C25B 13/07 20210101AFI20240119BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20240119BHJP
C25B 1/16 20060101ALI20240119BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240119BHJP
C25B 11/02 20210101ALI20240119BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20240119BHJP
C25B 11/061 20210101ALI20240119BHJP
C25B 11/081 20210101ALI20240119BHJP
C25B 11/056 20210101ALI20240119BHJP
C03C 3/12 20060101ALI20240119BHJP
【FI】
C25B13/07
C25B13/04 301
C25B1/16
C25B9/00 E
C25B11/02 302
C25B11/052
C25B11/061
C25B11/081
C25B11/056
C03C3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543429
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 IB2022050405
(87)【国際公開番号】W WO2022157624
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521340171
【氏名又は名称】キング・アブドゥッラー・ユニバーシティ・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジピン・ライ
(72)【発明者】
【氏名】ジェン・リ
(72)【発明者】
【氏名】クオ-ウェイ・ファン
【テーマコード(参考)】
4G062
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G062AA18
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(57)【要約】
流れ中のリチウム(Li)濃度を高めるためのセル(100)は、ハウジング(102);ハウジング(102)内に位置し、ハウジング(102)を第1の区画(104)及び第2の区画(106)に分割する稠密リチウム選択膜(108);第1の区画(104)に位置するカソード電極(105);第2の区画(106)に位置するアノード電極(107);第2の区画(106)に流体連結され、第2の区画(106)に供給流れ(110)を供給するように構成された第1の配管回路(116);第1の区画(104)に流体連結され、第1の区画(104)を通って濃縮流れ(120)を循環させるように構成された第2の配管回路(124);並びにカソード電極とアノード電極の間に電圧を印加し、アノード電極上での酸化性電気化学反応及びカソード電極上での還元性電気化学反応を開始するように構成された電源(109)を含む。稠密リチウム選択膜は、400μm未満の厚さを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ中のリチウム(Li)濃度を高めるためのセル(100)であって、
ハウジング(102)と、
前記ハウジング(102)内に位置し、前記ハウジング(102)を第1の区画(104)及び第2の区画(106)に分割する稠密リチウム選択膜(108)と、
前記第1の区画(104)に位置するカソード電極(105)と、
前記第2の区画(106)に位置するアノード電極(107)と、
前記第2の区画(106)に流体連結され、前記第2の区画(106)に供給流れ(110)を供給するように構成された第1の配管回路(116)と、
前記第1の区画(104)に流体連結され、前記第1の区画(104)を通って濃縮流れ(120)を循環させるように構成された第2の配管回路(124)と、
カソード電極とアノード電極との間に電圧を印加し、前記アノード電極上での酸化性電気化学反応及び前記カソード電極上での還元性電気化学反応を開始するように構成された電源(109)と、を含み、
前記稠密リチウム選択膜が400μm未満の厚さを有する、セル。
【請求項2】
前記稠密リチウム選択膜が、ガラス型Li
xLa
2/3-x/3TiO
3(LLTO)膜であり、xは0.23~0.67である、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記濃縮流れの中に酸を注入してpHを4.5~7.0に維持するように前記第1の区画に流体連結されたポートを更に含む請求項1に記載のセル。
【請求項4】
第3の区画を形成することによって前記アノード電極が前記第3の区画に位置するように、前記第2の区画に配置された第1のアニオン交換膜を更に含む請求項3に記載のセル。
【請求項5】
前記供給流れ及び前記濃縮流れとは異なるアノード流れが前記第3の区画に供給され、前記アノード流れが、アノード電極によって発生した塩素を吸収しないことによって、前記塩素が前記第3の区画に形成されたポートで捕捉されるように構成されている、請求項4に記載のセル。
【請求項6】
前記カソード電極が銅中空繊維製である、請求項4に記載のセル。
【請求項7】
前記銅中空繊維がPt-Ruで被覆されている、請求項6に記載のセル。
【請求項8】
前記銅中空繊維が、前記ハウジングの外からCO
2を受け取る内部チャンネルを形成する、請求項6に記載のセル。
【請求項9】
第4の区画を形成するように前記第1の区画に配置された第2のアニオン交換膜を更に含み、前記カソード電極が前記第4の区画に位置する、請求項4に記載のセル。
【請求項10】
前記供給流れ及び前記濃縮流れとは異なるカソード流れが前記第4の区画に供給される、請求項9に記載のセル。
【請求項11】
前記第1の区画に位置する銅中空繊維を更に含む請求項9に記載のセル。
【請求項12】
前記銅中空繊維がPt-Ruで被覆されている、請求項11に記載のセル。
【請求項13】
前記銅中空繊維が、前記ハウジングの外からCO
2を受け取る内部チャンネルを形成し、前記濃縮流れ内にCO
2を放出する、請求項11に記載のセル。
【請求項14】
流れ中のリチウム(Li)濃度を高めるための多段階セル(700)であって、
多段階セル(700)が、互いに直列に接続された複数のセル(702-I)を含み、前記複数のセル(702-I)の各セルが、
ハウジング(102)と、
前記ハウジング(102)内に位置し、前記ハウジング(102)を第1の区画(104)及び第2の区画(106)に分割する稠密リチウム選択膜(108)と、
前記第1の区画(104)に位置するカソード電極(105)と、
前記第2の区画(106)に位置するアノード電極(107)と、
前記第2の区画(106)に流体連結され、供給流れ(110)を前記第2の区画(106)に供給するように構成された第1の配管回路(116)と、
前記第1の区画(104)に流体連結され、前記第1の区画(104)を通って濃縮流れ(120)を循環させるように構成された第2の配管回路(124)と、
前記カソード電極と前記アノード電極との間に電圧を印加し、前記アノード電極上での酸化性電気化学反応及び前記カソード電極上での還元性電気化学反応を開始するように構成された電源(109)と、を含み、
前記稠密リチウム選択膜が400μm未満の厚さを有し、
前のセルからの濃縮流れが現行のセルの供給流れとなる、多段階セル。
【請求項15】
セル内のリチウム(Li)濃度を高める方法であって、
稠密リチウム選択膜(108)をハウジング(102)内に配置し、前記ハウジング(102)を第1の区画(104)及び第2の区画(106)に分割する工程(1700)と、
前記第2の区画(106)に、海水を含む供給流れ(110)を供給する工程(1702)と、
前記第1の区画(104)に濃縮流れ(120)を供給する工程(1704)と、
前記第1の区画(104)に位置するカソード電極(105)と前記第2の区画(106)に位置するアノード電極(107)との間に電圧を印加し、前記アノード電極上での酸化性電気化学反応及び前記カソード電極上での還元性電気化学反応を開始する工程(1706)と、
前記稠密リチウム選択膜を通して、海水から濃縮供給物の中にLi原子を移動させる工程(1708)と、を含み、
前記稠密リチウム選択膜が、400μm未満の厚さを有する、方法。
【請求項16】
前記稠密リチウム選択膜が、ガラス型Li
xLa
2/3-x/3TiO
3(LLTO)膜であり、xは0.23~0.67である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記濃縮流れの中に酸を注入してpHを4.5~7.0に維持する工程を更に含む請求項15に記載の方法。
【請求項18】
第3の区画を形成し、それによりアノード電極が第3の区画に位置するように、第1のアニオン交換膜を第2の区画に追加する工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
第3の区画にアノード流れを供給する工程を更に含み、前記アノード流れが前記供給流れ及び前記濃縮流れとは異なり、前記アノード流れが、前記アノード電極によって発生した塩素を吸収しないことによって、前記塩素が前記第3の区画に形成されたポートで捕捉されるように構成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記カソード電極がPt-Ruで被覆された銅中空繊維製であり、前記銅中空繊維は前記ハウジングの外からのCO
2を受け取る内部チャンネルを形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
第4の区画を形成することによって前記カソード電極が前記第4の区画に位置するように、前記第1の区画に第2のアニオン交換膜を追加する工程を更に含む請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第4の区画に、前記供給流れ及び前記濃縮流れとは異なるカソード流れを供給する工程を更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の区画に、Pt-Ruで被覆され内部チャンネルを形成する銅中空繊維を追加する工程と、
前記内部チャンネルの中に前記ハウジングの外からCO
2を供給し、前記濃縮流れ内へCO
2を放出する工程と、を更に含む請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月19日に出願された、「PROCESSES FOR ENRICHING LITHIUM FROM SEAWATER」という表題の米国仮特許出願第63/139006号、及び2021年10月1日に出願された「SYSTEM AND PROCESS FOR ENRICHING LITHIUM FROM SEAWATER」という表題の米国仮特許出願第63/251340号の優先権を主張し、その開示は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で開示する主題の実施形態は、概して、海水からリチウム(Li)を濃縮するためのシステム及び方法に関し、より詳細には、ガラス型稠密膜を使用する連続電気ポンピング膜(continuous electrical pumping membrane,CEPM)プロセスを通して、海水からのリチウムイオンで流れを濃縮し、同時に、海水中に存在する他のイオンが濃縮された流れに入ることを防ぐプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム電池の需要の急成長により、リチウムは、戦略的に重要な物品として急速に浮上している。商業的リチウムは、主として塩湖の塩水及び高純度の鉱石などの陸上資源から化学沈澱プロセスを使用して生産され、これは、塩水又は鉱石中のリチウム濃度が数百ピーピーエム(ppm)レベルの場合しか、技術的、経済的に実現できない。しかし、陸上のリチウム埋蔵量は限られており、地理的に不均等に分布している。2018年の世界的リチウム需要量は、0.28Mトン(Li2CO3換算)であった。この需要量は、2030年までに約1.4~1.7Mトン(Li2CO3換算)に増加すると予想される。陸上のLi埋蔵量は、2080年までに枯渇すると予想される。
【0004】
海洋は、陸地より5,000倍多くのリチウムを含有している。海洋は、ほぼ無制限で、立地に依存しないリチウム供給を提供する。しかし、海水からのリチウムの抽出は、その低濃度(約0.2ppm)及び13,000ppmを超える対立イオン(opposed ion)(ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオンなど)のために非常に困難である。今日まで、こうした低濃度の海水からLi原子を効率的に抽出できる、公知のシステムや関連するプロセスは存在しない。この点で、特許文献1(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、塩水又は海水からリチウム濃縮物を生産するための2段階プロセスを開示している。第1の工程では吸着プロセスを使用してリチウムを1,200~1,500ppmのレベルまで濃縮し、第2の工程では2段階の電気透析を直列に行い、リチウム濃度を約1.5%に増加させた。特許文献2(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、塩水からのリチウム回収のための電気透析法を開発した。この方法は、多数で交互の、単極カチオン性選択透過膜と単極アニオン性選択透過膜によって分離された、アノード区画及びカソード区画を含んでいる。約10~500A/m2の範囲の電気を加えて、リチウムイオンをアノード区画からカソード区画に移動させた。しかし、この方法はリチウム濃度が30ppmより高い場合だけ機能し、したがって、このプロセス及びシステムは海水系Li塩水には適用できない。特許文献3(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、供給流れから回収流れへリチウムを回収するために、やはりリチウム選択膜を使用する電気的回復プロセスについて記述している。メッシュ状の電極が、アノードは回収流れに面して、膜の両側に直接取り付けられた。このプロセスは、膜を横断してリチウムイオンを移動させるために、主として濃度勾配に依存している。故に、このプロセスは遅く、回収流れ中のリチウム濃度は供給流れのリチウム濃度より低い。特許文献4(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、リチウム選択膜の供給側にリチウム吸着層を適用することによって、この電気的回復プロセスを改善した。このプロセスは生産速度を高めたが、供給流れからリチウムを濃縮する方法は開示されていない。
【0005】
リチウム濃度は、恐らく、リチウム抽出の技術的課題を決定する最も重要な要因である。塩水中のリチウム濃度が十分に高い場合、従来の化学沈澱法によってリチウムイオンを容易に採取することができる。海水中のリチウム濃度が非常に低い(約0.2ppm)ので、従来のリチウム抽出法を使用することができるようになる前に、塩水中のリチウム濃度を濃縮するプロセスを開発することが非常に望まれる。加えて、プロセスを経済的に実現可能にするためには、濃縮プロセスのエネルギー消費量は十分に低くなければならないが、これは上で議論した技術には当てはまらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6764584号明細書
【特許文献2】米国特許第4636295号明細書
【特許文献3】米国特許第9932653号明細書
【特許文献4】米国特許第10689766号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、低濃度からリチウムを選択的に濃縮することができ、しかも濃縮プロセス中に少量のエネルギーを使用する、新しいシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、流れ中のリチウム(Li)濃度を高めるためのセルが存在し、セルは、ハウジング、ハウジング内に位置し、ハウジングを第1の区画及び第2の区画に分割する稠密リチウム選択膜、第1の区画に位置するカソード電極、第2の区画に位置するアノード電極、第2の区画に流体連結され、第2の区画に供給流れを供給するように構成された第1の配管回路、第1の区画に流動的に接続され、第1の区画を通って濃縮流れを循環させるように構成された第2の配管回路、並びにカソード電極とアノード電極の間に電圧を印加し、アノード電極上での酸化性電気化学反応及びカソード電極上での還元性電気化学反応を開始するように構成された電源を含む。稠密リチウム選択膜は、400μm未満の厚さを有する。
【0009】
別の実施形態によれば、流れ中のリチウム(Li)濃度を高めるための多段階セルが存在し、多段階セルは互いに直列に接続された複数のセルを含む。各セルは、上記段落に記述した構造を有する。前のセルからの濃縮流れは、現行のセルの供給流れである。
【0010】
更に別の実施形態によれば、セル内のリチウム(Li)濃度を高める方法が存在し、この方法は、稠密リチウム選択膜をハウジング内に配置し、ハウジングを第1の区画及び第2の区画に分割する工程、第2の区画に、海水を含む供給流れを供給する工程、第1の区画に濃縮流れを供給する工程、第1の区画に位置するカソード電極と第2の区画に位置するアノード電極の間に電圧を印加し、アノード電極上での酸化性電気化学反応及びカソード電極上での還元性電気化学反応を開始する工程、並びに稠密リチウム選択膜を通して、海水から濃縮供給物の中にLi原子を移動させる工程、を含む。稠密リチウム選択膜は、400μm未満の厚さを有する。
【0011】
本発明をより完全に理解するために、添付図面と併せて以下の記述を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】稠密リチウム選択膜を通して海水からリチウムイオンを移動させることによって、流れ中のリチウム濃度を高めるためのセルの概略図である。
【
図2】稠密リチウム選択膜の化学構造を示す図である。
【
図3】稠密リチウム選択膜を通るリチウムイオンの移動を示す図である。
【
図4】稠密リチウム選択膜を通して海水からリチウムイオンを移動させることによって、流れ中のリチウム濃度を高めるための別のセルの概略図である。
【
図5】稠密リチウム選択膜を通して海水からリチウムイオンを移動させることによって、流れ中のリチウム濃度を高めるための更に別のセルの概略図である。
【
図6】稠密リチウム選択膜を通して海水からリチウムイオンを移動させることによって、流れ中のリチウム濃度を高めるための更に別のセルの概略図である。
【
図7】直列に接続された複数のセルを含む、多段階セルの概略図である。
【
図8】海水からの流れ中のリチウムを高めるための方法のフローチャートの図である。
【
図9A】稠密リチウム選択膜の電子顕微鏡検査法画像を示す図である。
【
図9B】稠密リチウム選択膜の電子顕微鏡検査法画像を示す図である。
【
図10】稠密リチウム選択膜の化学分析を示す図である。
【
図11A】セルとともに使用される、銅中空繊維の物理構造を示す図である。
【
図11B】セルとともに使用される、銅中空繊維の物理構造を示す図である。
【
図12】
図7の多段階セルの異なる段階での、リチウムイオン及び他の主要なイオンの濃度を示す表である。
【
図13】各段階でのクロノアンペロメトリー曲線を示す図であり、曲線下の面積を積分すると、各段階で膜を通過する全電荷をクーロンで与える。
【
図14】プロセスの異なる段階での、定常電流対リチウム供給濃度を示す図である。
【
図15】各段階で異なるイオンが寄与したファラデー効率(faradaic efficiency)を示す図である。
【
図16】収集したリチウム生成物粉末のX線回折図形、理論的に標準的なXRDパターンを示す図である。
【
図17】海水からの流れ中のリチウムを高める方法の、フローチャートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態の記述は、添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照番号は、同じ又は類似の要素と認識する。以下の詳細な記述は、本発明を限定しない。代わりに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。以下の実施形態は、簡単には、供給原料として10億分の1(ppb)範囲の非常に低い濃度のリチウムを有する海水を使用する、リチウム濃縮プロセスに関して議論する。しかし、次に議論する実施形態は、そのような低濃度リチウムの海水だけに限定されるものではなく、ppm濃度のリチウムを有する任意の塩水に使用することができる。
【0014】
明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記述された特定の特徴、構造又は特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、明細書全体を通して様々な位置に出現する「一実施形態では」又は「実施形態では」という表現は、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。更に、1つ又は複数の実施形態において、特定の特徴、構造又は特性を、任意の好適な方法で組み合わせてもよい。
【0015】
実施形態によれば、連続電気ポンピング膜(CEPM)プロセスが導入され、CEPMプロセスが実行されるシステムは、リチウム選択膜によって第2の区画から分離された第1の区画を含む。リチウム選択膜は、Li原子がMg原子及びNa原子のそれぞれより、少なくとも10倍速く通過できる任意の膜であると本明細書で定義される。濃縮プロセスは、リチウム選択膜を、稠密な(水及びガスに対して不透過性である材料として本明細書で規定される)膜、例えば、高温焼結プロセスを使用してLLTOナノ粒子から調製される、LixLa2/3-x/3TiO3(LLTO)膜(式中、xは0.23~0.67の範囲である)であるが、後に議論するように他の材料も使用してもよく、本明細書ではガラス型稠密リチウム選択膜と呼ばれる膜となるように選択する工程、初期濃縮流れを第1の区画に導入し、供給流れを第2の区画に導入する工程、酸又は酸性ガスの添加によって、濃縮流れのpHを4.5~7.0の範囲に調整する任意選択の工程、カソード電極を第1の区画に接続し、アノード電極を第2の区画に接続する工程、アノード上で酸化性電気化学反応を引き起こし、カソード上で還元性電気化学反応を引き起こすのに十分高い電圧を印加する工程、海水中に存在する他のイオンの輸送はリチウム選択膜(例えば、ガラス型稠密LLTO膜)によって実質的に阻止される一方で、リチウム選択膜を通してリチウムイオンを供給流れから移動させて、濃縮流れを濃縮する工程を含む。加えて、この方法は、カソード電極として又はカソード電極に加えて使用される、Pt-Ru被覆銅中空繊維を含んでもよい。1つの応用では、銅中空繊維の内部チャンネルからCO2は導入され、繊維の多孔質壁を通って吹き出され、最終的に第1の区画内へ均一に放出される。この方法を支えているセル内で起こる典型的な酸化還元電気化学反応は、水素還元及び塩素酸化を含む。このシナリオでは、水素ガス及び塩素ガスは、カソード及びアノードからそれぞれ放出され、貴重な副産物として収集される。1つの応用では、リチウム選択膜はガラス型の膜であってもよい。「ガラス型」という用語は、微細構造に粒界を有さない又は低密度の粒界を有する材料として定義される。1つの応用では、低密度は、0%を除いて、10%以下であると定義される。ガラス型材料は、可視光で照らされると、典型的には透明又は半透明な外観を有する。しかし、ガラス型材料は可視光に不透明な材料も含んでもよい。一実施形態では、リチウム選択膜は、セラミックス材料を含む。別の実施形態では、リチウム選択膜は、ハイブリッド系膜である、すなわち、有機材料及び非有機材料を含む。
【0016】
このプロセスは、アノード電極を完全に収容するための第3の区画を作ることによって、すなわち、第2の区画からアノード電極を取り除くことによって、更に改善することができる。第3の区画は、アニオン交換膜によって第2の区画から分離され、貴重な副産物として塩素ガスの放出を促進するために、飽和NaCl溶液で満たされている。このプロセスは、濃縮プロセスを駆動するために他の酸化還元電気化学反応、例えば、酸化還元対Fe2+/Fe3+を使用することによっても、改善してもよい。この場合、カソード電極を完全に収容するために、第4の区画が生成される。第4の区画は、第1の区画からアニオン交換膜によって分離され、酸化還元対の酸化体溶液、すなわち、酸化還元対Fe2+/Fe3+のFe3+で満たされる。アノード電極は、第3の区画中、アノード流れとしての酸化還元対の還元体溶液、すなわち酸化還元対Fe2+/Fe3+のFe2+中に配置される。酸化還元対は、Cl-/ClO3
-、Br-/BrO3
-、I-/I2、Ag/AgCl、Hg/Hg2Cl2、ヒドロキノン/1,4‐ベンゾキノンなどを更に含んでもよい。
【0017】
1つの応用では、多段階セルは、複数のセルの膜ユニットを積み重ねて、カスケードシステムを形成し、リチウムをより高いレベルまで濃縮するように構成することができる。このカスケードシステムでは、前段階からの濃縮された流れが現段階の供給流れとして使用される。リチウムは、従来の化学沈澱法によって最終の段階の濃縮された流れから抽出される。
【0018】
これから、リチウムを高めるセル及び関連する方法を、図に関してより詳細に議論する。
図1は、CEPMプロセスを支えるセル100を示し、セル100は、第1の区画104を受け入れる(host)ハウジング102を有する電気的セルであり、第1の区画104は、稠密リチウム選択膜108(本明細書では簡単化のために、リチウム選択膜と呼ぶ)によって第2の区画106から分離される。リチウム選択膜108は、LLTOからだけでなく、これらに限定されないが、NASICON(Li
1+x+yAl
xM
2-xSi
yP
3-yO
12[式中、M=Ti、Ge、0≦x≦0.6、0≦y≦0.6])、Li
11-xM
2-xP
1+xS
12[式中、M=Ge、Sn、Si]、及びLi
x/3M
2z/3-x/3-4y/3N
yO
z[式中、M=四価金属イオン及びN=三価金属イオン、0≦x≦1.0、0≦y≦1.0、2.9≦z≦3.0]を含む、他の超イオン伝導体から作ることができる。リチウム選択膜は、様々な形態で構築することができる。それは、高温でナノ粒子から焼結させて、稠密で、ガラス型の(これは任意選択の特徴である)、薄い膜を形成することができ、膜の厚さは400マイクロメートル未満である。ナノ粒子をポリマー又は無機バインダーに埋め込んで、混合マトリックス膜を形成することもできる。
【0019】
アノード電極107は第2の区画106に配置され、カソード電極105は第1の区画104に配置される。2つの電極は、アノードが電源のプラス側に接続されて、電源109(例えば、直流電源)に接続される。供給リザーバ112に貯蔵され得る供給流れ110は、ポンプ114を用いて、近くの配管回路116に沿って第2の区画106の中に送り込まれる。供給リザーバ112は、海洋若しくは湖、又は塩水で希釈されたリチウムを含有する任意の天然水域であってもよく、ポンプ114は任意選択であることに留意されたい。濃縮流れ120もまた、第1の区画104内で、ポンプ122によって、配管回路124を通して任意選択で循環する。濃縮流れ120は、濃縮リザーバ126に保持され得る。供給流れ110の体積は、通常は、濃縮流れ120の体積よりはるかに大きい。酸リザーバ142に貯蔵された酸140を、ポート144を通して第1の区画104に供給し、濃縮流れ120を酸性にしてもよい。酸140は、リン酸、カルボン酸、酢酸、クエン酸、及びグリシンなどを含む多塩基酸又は弱酸であり得、これは、緩衝液を形成して、全濃縮プロセス中に、濃縮流れ120のpHを好ましくは4.5~7.0の範囲に安定させるために使用される。
【0020】
供給流れ110は、濃縮流れ中のリチウム濃度を濃縮するために必要な、リチウム150を含有している溶液である。供給流れは、海水及び/又は塩水溶液を含む。濃縮流れ120は、供給流れ110からリチウムイオン150を受け取る溶液である。アノード流れは、後で
図4に関して議論するが、アノード電極が供給流れから分離される時に、アノード電極107が配置される溶液である。カソード流れは、後で
図6に関して議論するが、カソードが濃縮流れから分離される時に、カソード電極105が配置される溶液である。濃縮溶液120の初期濃度は、供給流れ110の初期濃度より低い、同等、又は高くあり得るが、濃縮プロセスの後には、濃縮溶液120は、供給流れ110より高いリチウム濃度を有する。
【0021】
本実施形態のリチウム選択膜108は、好ましくは、Li
xLa
2/3-x/3TiO
3(LLTO)製の、セラミック系、固体の、リチウム伝導性電解質である。LLTO膜が(任意選択でガラス型に)稠密に作られると、Li
+イオンはそのペロブスカイト型格子を通って移動できるようになるが、海水中に存在する全ての他の主要イオン(すなわち、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+など)の輸送を、それらのより大きなイオンの大きさ及び/又は不適合な価電子状態により阻止する。LLTO108の結晶構造は
図2に示されており、ここでTiO
6八面体はLaに乏しい層210とLaに富む層220の間に広がっていることが示され、層220は層210より多くのLa原子を有する。この構造がリチウムイオンに暴露されると、
図3に示すように、格子内空間300の平均径がリチウムイオンの大きさと同等かそれよりわずかに大きいので、リチウムイオン150は、LLTO108の格子内空間300を通って移動する。1つの応用では、ガラス型稠密LLTO膜は、腐食から保護するために、カチオン交換樹脂、好ましくはNafion(登録商標)製の保護層310で外表面を被覆される。リチウム選択膜への保護層は、DOWEX Marathon(登録商標)、Aldex(登録商標)、LEWATIT(登録商標)、SACMP(登録商標)、Tulsion(登録商標)を含むが、これらに限定されない他のアニオン交換樹脂から、調製することができる。
【0022】
LLTOは、優れた固体リチウムイオン超伝導体の1つである。LLTOの高いリチウムイオン伝導性及び他のイオンへの高い選択性は、その結晶構造から説明することができる。LLTOは、
図2に示すようなペロブスカイト型結晶構造を有する。LLTOの格子骨格は、Li
+及びLa
3+を収容する立方晶ケージ又は孔を形成する、相互接続したTiO
6八面体からなる。大きなLa
3+イオンは、結晶構造を安定させるための支柱として作用する。La
3+の高い原子価は、c軸に沿って、Laに富む層220とLaに乏しい層210の代替配置(alternative arrangement)をもたらし、Li
+のインターカレーションを可能にする豊富な空孔300を格子内に発生させる。1つのケージから他のケージへのLi
+の輸送には、0.75~約1.5Å、例えば、1.07Åの大きさを有する正方形の窓又は格子内空間300を通過する必要があり、これは
図3に示すように、4つの隣接するTiO
6四面体によって画定される。Li
+の大きさ(1.18Å)は窓300の大きさよりわずかに大きく、窓を拡大させるためにはLLTO骨格のわずかな歪みが必要であり、これはTiO
6八面体の熱振動により可能である。海水供給物中に存在する他のイオン(すなわち、Na
+、K
+、Mg
2+、Ca
2+など)はリチウムイオンよりはるかに大きく、それらを輸送するためには実質的により大きな歪みが必要であり、したがって、はるかに高いエネルギー障壁が必要である。故に、LLTO膜のこれらの性質から、LLTO膜はLi
+の高速輸送を可能にするが、海水中に存在する全ての他の主要イオンを阻止することが期待される。加えて、後に議論する膜108の厚さは、Li
+イオンの移動を促進し他のイオンを阻止することに貢献する。
【0023】
任意選択で貴金属コーティング(Pt、Ru、Irなど)を備えた、炭素繊維布、黒鉛、チタン製などの不活性電極を、アノード107及びカソード105に使用してもよい。CEPMプロセス中に、1.75Vより高い電圧が電源109によって電極に印加されると、これがカソード及びアノードでの次の電気化学反応を引き起こす。
【0024】
カソードでは、以下の化学反応が起こり、
H++e-→(1/2)H2↑ (1)
アノードでは、以下の反応が起こる:
Cl--e-→(1/2)Cl2↑ (2)
【0025】
水素ガス160は、カソード105から反応(1)を通して連続的に生成され、それによって、供給流れ110からLLTO膜108を通るリチウム150の輸送を駆動し、濃縮流れ120中で濃縮される。同時に、塩素162がアノード107から発生する。しかし、この場合、塩素162は、この実施形態の供給流れ110に部分的に又は完全に溶解する可能性がある。
図1は、それぞれ水素ガス160及び塩素ガス162用に、対応するポート161及び163を有するセル100を示している。コントローラー170、例えば、プロセッサー、ラップトップ、任意のコンピューティングデバイスを提供して、セルを通る各流れの流動を制御するために全てのポンプを調整してもよい。対応するバルブ180を配管系統116及び124に沿って提供し、供給流れ110をリフレッシュする、かつ/又はLi原子を抽出するために濃縮された流れ120を抽出し更にそれを処理してもよい。
【0026】
供給流れ110中の塩素162の溶解を回避するために、
図4に示す一実施形態では、第3の区画410が第2の区画内に形成され、第3の区画410はアニオン交換膜420によって第2の区画106から分離され、これにより主にカチオンではなくアニオンの輸送が可能になる。アニオン交換膜としては、限定されるものではないが、Neosepta(登録商標)、Sustainion(登録商標)、Fumasep(登録商標)、Tokuyama(コピーライト)Aシリーズ、AEMION(商標)、及びFujifilm(コピーライト)イオン膜を挙げてもよい。
【0027】
ここで、アノード電極107は、この実施形態における第3の区画410内に完全に位置する。飽和NaCl溶液がアノード流れ412として使用され、アノード流れ412はリザーバ414に装填され、任意選択でポンプ416を用いて第3の区画410を通って循環する。塩素162は飽和NaCl溶液412中ではるかに低い溶解度を有するので、そのほとんどは塩素ガスとして放出され、ポート163で貴重な副生成物として収集される。
【0028】
図5に示す別の実施形態では、セル500は、銅中空繊維カソード505として実装されたカソード105を有する。銅中空繊維カソード505は、水素発生反応を促進するために、Pt-Ru(2.0mg・cm
-2)などの1種又は複数の貴金属で被覆され得る。銅中空繊維は標準的な指状の多孔質構造を有し、これによってCO
2ガス510はセルの外側からカソード505内に画定された内部チャンネル507の中に導入され、CO
2はカソード505の多孔質壁を通って吹き出され、最終的に第1の区画104内の濃縮流れ120の中に均一に放出される。放出されたCO
2510は、カソード505の近くに酸性環境を生成し、これが高電流密度でのファラデー効率を高める。酸140は、供給流れのpHを制御するための補助溶液として依然として使用することができ、これによってCO
2ガス510及び酸140は濃縮流れ120のpHを4.5~7.0に維持するための緩衝液を形成し、LLTO膜108をアルカリ腐食から保護する。
【0029】
銅中空繊維カソード505を通してCO2ガス510を吹き込むと、カソード505における電気化学反応は以下のように変化する:
CO2+H2O+e-→HCO3
-+(1/2)H2↑ (3)
H3PO4+HCO3
-→xH2PO4
-+2(1-x)HPO4
2-+H2CO3 (4a)
H2PO4
-+e-→HPO4
2-+(1/2)H2↑ (4b)
【0030】
アノード107における電気化学反応は、反応(2)で記述したものと同じである。反応(1)を通して又は反応(3)及び反応(4b)を通して生成した水素は、前に議論した貴重な副生成物として収集される。
【0031】
図6に示す別の実施形態では、セル600は、他の酸化還元電気化学反応を使用して、濃縮プロセスを駆動するように構成される。一例は、酸化還元対Fe
2+/Fe
3+を使用することである。この場合、第4の区画610が第1の区画内に形成され、第4の区画は、アニオン交換膜612を使用することによって第1の区画104から分離される。このようにして、第4の区画はカソード電極105を完全に収容する。Fe
3+溶液はカソード流れ614として用いられ、カソード流れ614はリザーバ616の中に装填され、任意選択でポンプ618を用いて配管回路620を通って、第4の区画610内で循環する。アノード電極107は、第3の区画410の中に依然として挿入されているが、この実施形態ではアノード流れ412はFe
2+溶液によって置き換えられる。この実施形態では、伝導性を改善するために、補助電解質140及び/又は補助ガス510が濃縮流れ120に任意選択で添加される。ガス分配器630は、カソード505と同じ構造を有していてもよいが、ガス分配器は電源109に電気的に接続されておらず、補助ガス510を第1の区画104の中に吹き込むために任意選択で用いることができる。0.8Vより高い電圧が電源109によって電気的セル100に印加され、これが次の電気化学反応を引き起こす:
カソードで、Fe
3++e
-→Fe
2+ (7)
アノードで、Fe
2+-e
-→Fe
3+ (8)
【0032】
補助電解質140は、LiCl、NaCl、酢酸などを含んでもよく、また補助ガス510は、SO2、Cl2及びNH3などを含んでもよい。
【0033】
本明細書で議論されるセル100~600は、より高い濃縮レベルを達成するために、
図7に示す膜カスケードシステム700へ複数の段階で積み重ねることができる。膜カスケードシステム700は、図に示すように、前の段階702-1の第1の区画104からの濃縮された流れ120を、次の段階702-2の第2の区画106の供給流れ110として使用し、以下同様である。
【0034】
約0.21ppmの濃度を有するLiの塩水(紅海の水)(供給流れ)を、
図5に示すセル500とともに使用して、リチウム濃度を濃縮した。より具体的には、
図8に示すように、工程800の濃縮方法は、供給流れ110を、アノード107が位置する第2の区画106に供給することによって始動する。工程802では、濃縮流れ120は、カソード105が位置する第1の区画104へ提供される。供給流れ110は、0.21ppmのLi原子を含有しているが、最初の濃縮流れ120は任意の量のLi原子を含有することができる。工程804では、濃縮流れ120のpHは、所望の範囲、例えば、4.5~7.0に調節される。これは、酸140(例えば、多塩基酸又は弱酸)を流れの中に、例えば、直接第1の区画104の中に、ポート144で導入することによって達成される。1つの応用では、コントローラー170は、第1の区画104のpHを、センサー171を用いて自動的に測定し、目標のpHを達成するために、容器142から放出される酸140の量を制御する。次に工程806では、コントローラー170は、アノード107とカソード105の間に電圧を印加して、アノード上での酸化性電気化学反応及びカソード上での還元性電気化学反応を引き起こすように電源109に指示する。アノード及びカソードでの酸化還元電気化学反応は、リチウムイオン150を供給流れ110から、リチウム選択膜108を通って移動させ、濃縮流れ120中で濃縮するが、海水中に存在する他のイオンの輸送は、ガラス型稠密の薄いLLTO膜のために実質的に阻止される。次いで、工程808で、濃縮供給物の一部がセル500から取り出され、Li原子を抽出する従来のプロセスを適用してLiが抽出される。
【0035】
この点に関して、特許文献3が類似のリチウム濃縮プロセスについて議論しており(この特許の
図3を参照)、4欄60行目から5欄4行目に、「リチウムイオン50に対する選択性が高くない」ので成功しなかったと記述されていることに、本発明者らは気付いている。換言すれば、この特許の
図3に示されるプロセスは、リチウムイオンが溶液を通って電極から膜まで流れるにつれて、リチウムイオンは水和されるので、効率的でないことを示している。この問題を克服するために、特許文献3の著者らは、彼らの
図1に示すように、電極を膜の上に直接配置することを提案しており、それは「高い[リチウムイオン]が得られる」と、成功していることを第5欄の9~15行目で記述している。本発明者らは、特許文献3の
図3に示されるプロセスは、それらの膜の特性及び供給流れのpH制御の不足のために、効率的ではないことを見出した。上で議論した(任意選択でガラス型の)稠密で薄い膜を使用し、供給流れのpHを制御することによって、供給流れ中でppb量のLi原子を使用することができ、それでも濃縮流れを濃縮して、
図8に関して議論したプロセスが非常に効率的であることを本発明者らは発見し、これは、この分野のいかなる公知のプロセス又はシステムによっても達成されなかった。この予期しない結果は、LLTO膜108の稠密かつ/又は薄い様相によるものである。
【0036】
図8に示す方法の任意選択の工程は、
図4に示すように、アノード電極を収容するための第3の区画を作ることである。第3の区画はアニオン交換膜によって第2の区画から分離され、塩素ガスの放出を促進するためにNaCl溶液で満たされ得る。追加の任意選択の工程では、
図5に示すように、Pt-Ruで被覆された中空繊維カソードを使用してもよく、CO
2は電極の内部チャンネルから導入されて第1の区画の中に吹き出される。更に別の任意選択の工程では、前の任意選択の工程と組み合わせて又は組み合わせなくてもよいが、
図6に示すように、第4の膜を使用してカソードを分離してもよい。別の任意選択の工程では、
図7に示すように、2つ又はそれ以上のセルを直列に接続して、前のセルからの濃縮供給物を次のセルの供給流れとして使用し、それにより最終的な濃縮流れ中のLiの濃度を増加させる。例えば、5段階システムに関しては、本発明者らは、わずか0.21ppmのLi原子を有する最初の供給流れから始めて、4500万より大きいLi/Mgの選択性とともに、9,000ppmのLiを得た。
【0037】
これから、(任意選択のガラス型の)稠密で薄いLLTO膜108を作る例を議論する。最初にLLTOナノ粒子を、ゾルゲル法を使用して、Li
0.33La
0.56TiO
3の化学式に従って調製した。化学量論的なLiNO
3及びLa(NO
3)
3を25%のクエン酸水溶液に溶解し、それによって、LiNO
3の当量と比較して18当量のクエン酸が用いられた。続いて、化学量論的な量のチタン(IV)ブトキシドを、激しく撹拌しながら(例えば、1000rpm)混合物に滴下し、混合物を100℃に加熱して均一な溶液を得て、その後連続的に撹拌しながら150℃で乾燥させた。最終溶液中のLiNO
3、La(NO
3)
3、チタン(IV)ブトキシド及びクエン酸のモル比は、0.363:0.57:1.00:6.53であった。得られた固形物は、600℃で4時間及び1050℃で20時間、空気中で、加熱速度及び冷却速度はいずれも2℃/分で、焼結した。得られた白色LLTO粉末を、300rpmで12時間連続してボールミルにかけ、直径約200nmのナノ粒子を得た。LLTOナノ粒子を、直径22mm及び厚さ70μmのディスクにペレット化し、次いで1050℃で4時間焼結してCO
2及びNO
xを放出し、更に1275℃で8時間溶融して溶融状態に達し、
図9A及び9Bに示すガラス型稠密で薄いLLTO膜を形成した。焼結プロセスの加熱速度及び冷却速度は、2℃/分に設定した。焼結プロセス中に、LiNO
3の約10%は蒸発した。故に、LLTO膜の最終化学式は、元素分析から決定してLi
0.33La
0.57TiO
3であった。
図9A及び9Bに示す高倍率SEM画像は、膜108の表面は粒界がなく、平滑であることを示している。LLTO膜の厚さは、80μm未満、より具体的には約60μmである。一実施形態では、約55μmの厚さを有するLLTO膜108が、本明細書で議論した予期しない結果をもたらすことを本発明者らは見出した。膜調製プロセスは、文献で報告されている厚さより約10倍薄い厚さをもたらすように制御され、これが、上で議論したセルで高いLi
+透過性を達成させる要因の1つである。LLTO構造は、
図10に示すようにX線粉末回折測定によって確認され、全ての反射ピークは標準LLTOパターンと一致した。機械試験は、膜が110MPaの応力及び0.066%の延性を有することを示し、これは膜が硬質であるが脆いことを示している。
【0038】
銅中空繊維505を、非溶媒誘導相分離法(nonsolvent induced phase separation method)を通して、続いて高温焼結プロセスによって調製した。銅粉末(99%、約1mm粒径)を、ポリスルホン(PSE)、ポリビニルピロリドン(MW約10000)、及びN‐メチルピロリドン(NMP、99.5%)と質量比64.4:6.2:1.5:27.9で混合し、均一なドープ溶液を形成し、次いでチューブインオリフィス紡糸口金を通して紡糸した。得られた中空繊維を空気下600℃で3時間焼結し、次いで水素/アルゴン(体積比=2:8)の雰囲気中650℃で6時間還元した。Pt/Ru触媒(ケッチェンブラック上50%)を脱イオン水で濡らし、次いで、Nafion(登録商標)溶液(ジメチルホルムアミド中12.5%)と質量比7:3で混合した。Pt/Ru:Nafion混合物を銅中空繊維表面上に2.0mg・cm-2のレベルで噴霧した。
【0039】
5段階のセル700を使用した1つの実験では、LLTO膜108(膜面積=2.01cm
2)及びAEM膜420(膜面積=2.01cm
2、Fumasep FAA‐3‐20、FuelCellStore社、米国)を各セル702-Iに組み立て、Oリングによって密閉した。供給流れとして循環する溶液の体積は、第1の段階では25L、残りの段階では2.5Lであった。カソード区画及びアノード区画における溶液の体積は、全ての段階でそれぞれ2.5ml及び25mlに固定した。触媒性Pt-Ru炭素布ガス拡散電極(FuelCellStore社、USA)をアノードとして使用し、Pt-Ru被覆銅中空繊維エレメント630をカソード505として使用した(
図11A及び11Bを参照)。銅中空繊維カソード505は、6.0ml/分の制御されたCO
2流量でCO
2ガスボンベに接続した。濃縮流れ120のpHを4.5~7.0に制御するための補助溶液140として、濃縮したH
3PO
4を更に使用した。放出されたCl
2は空気汚染を回避するためにCH
2Cl
2溶液によって吸着し、一方水素はガス採取袋によって収集した。3.25Vの低電圧を、ポテンショスタットによって印加した。
【0040】
第1の段階では、紅海の水を供給流れ110として使用し、脱イオン水を初期濃縮流れ120として使用した。第2の段階~第5の段階では、前の段階からの濃縮されたリチウム溶液は、供給流れ及び初期濃縮流れとして使用した。各段階の運転時間は、74,500秒に固定した。
図12の表1は、各段階後の海水中の主なイオンの濃度を列記した。海水レベル(0.21ppm)から最終の段階での約9,000ppmまで連続的に濃縮されたリチウムは例外として、全ての他のイオンは著しく低減された濃度を示し、第2の段階以降はほぼ一定のままであった。第5の段階の後、4500万を超える名目上のLi/Mg選択性が達成され、これは本明細書で議論したセルの高い効率を示している。
【0041】
名目上のLi/Mg選択性βを、以下の式によって計算した:
β=(C(Li,5th)/C(Li,sw))/(C(Mg,5th)/C(Mg,sw))
式中、C(Li,5th)、C(Mg,5th)、C(Li,sw)及びC(Mg,sw)は、それぞれ、第5の濃縮された流れ及び第1の海水流れ中の、Li+及びMg2+のモル濃度である)。単一の段階の選択性は、同じ式によって計算することができるが、第5の段階の値は第1の段階の値によって置き換えられる。
【0042】
図13は、各段階で経時的に記録された電流を示しており、電極上及び膜上へのイオンの吸着による初期の段階での鋭い急上昇の後に、電流は比較的安定なままであることは明らかである。段階5でのみ、電流が経時的にわずかに減少した。定常電流は、供給流れ中のリチウム濃度とともに増加した。
図14は、各段階で膜を通過するイオンの数を示している。Li
+の量は第1の段階から第5の段階まで加速しており、供給濃度とともに輸送速度が増加していることが確認される。他のイオンに関しては、第1の段階でのみ、約300ppmという相当量のNa
+が膜を通過しているが、他の全てはほぼ完全に阻止された。
図15は、全ての段階のファラデー効率の合計が100%に近いことを示している。第1の段階では、電気エネルギーの約47.06%がリチウムの輸送に使用されたが、残りの段階では、電気エネルギーのほぼ100%がリチウムの移動に使用された。これらのデータに基づいて、1kgのリチウムを海水から9,000ppmまで5段階で濃縮するのに必要な総電力量は、76.34kWhであると推定された。同時に、0.876kgのH
2及び31.12kgのCl
2が、カソード及びアノードからそれぞれ収集された。0.065US$/kWhの米国電力価格を考慮すると、このプロセスに対する全電力コストはおよそ5.0US$である。加えて、水素及びCl
2の2020年の価格(すなわち、それぞれ2.5~8.0US$/kg及び0.15US$/kg)に基づくと、副生成物の金額はおよそ6.9~11.7US$に達する可能性があり、全エネルギーコストを十分補うことができる。これらの予期しない結果、すなわち膜108を越えてリチウムイオンを動かす高い電気効率、副産物によって十分に補われる低価格は、セルに使用される(任意選択のガラス型の)稠密で薄いLLTO膜によるものである。加えて、第1の段階後の他の塩の全濃度は500ppm未満であり、リチウムを採取した後に残った水を、淡水として処理できることを意味することも留意されたい。故に、このプロセスは、海水淡水化と統合して、更にその経済的実現可能性を高める可能性も有している。
【0043】
全エネルギー消費量は段階の数に比例することに、更に留意されたい。しかし、
図13に示す安定な電流曲線は、各段階での処理時間を延長することによって、リチウム濃度をより大きく濃縮でき、それによって段階の数を低減できることを意味している。このアプローチは、低い生産速度というペナルティで遂行される。第1の段階での例外的に遅い輸送速度(
図13を参照)は、第1の段階でのリチウムの濃縮が、エネルギーと生産性のトレードオフを調節するのに必要なパラメータであることを示している。この実験では、第1の段階の期間は生成物の純度に基づいて決定され、Mgの濃度が約2.0ppmである必要がある。故に、第1の段階は、濃縮流れ中のMg
2+の濃度が表1に示すように約1.5ppmに到達した時に停止された。これらの条件下で、リチウム濃度は約75ppmに達した。したがって、一実施形態では、第1の段階の期間は、濃縮流れ中のMgの濃度に基づいて決定される。この実施のために、プロセッサー170は、濃縮流れ中のMgの濃度を決定するセンサーに接続してもよい。
【0044】
10.0MのNaOH溶液を使用してpHを12.25に調整することによって、リチウムを第5の段階の濃縮流れからLi
3PO
4の形で沈澱させることができた。沈澱物を遠心分離によって分離し、脱イオン水を使用してすすぎ、次いで真空下で乾燥させた。収集した白色粉体は、
図16に示すようにXRD分光法によって特徴づけを行い、それによって、XRDパターンは、不純物のシグナルが検出されることなく、Li
3PO
4(PDF#25-1030)の標準パターンとよく一致した。更に定量的元素分析は、Li
3PO
4の純度は99.94±0.03%であり、生成物のNa、K、Mg、及びCa含有量は、それぞれ194.53±7.80、0.99±0.02、25.16±0.83、及び17.18±0.57ppmであり、リチウム電池グレードの純度の要求を満たしていることを示した。
【0045】
本明細書で議論した実施形態は、連続電気ポンピング膜プロセスについて記述しており、これにより紅海の海水試料からリチウムがうまく濃縮された。上述した実施形態の成功は、薄い(ガラス型の)稠密LLTO膜に依存しており、これは高いリチウム透過速度に加えて、リチウムと他の妨害イオンとの効率的な分離を提供している。1つの応用では、アノード区画のアニオン交換膜による供給区画からの分離、及びアノード区画内での飽和NaCl溶液の使用により、Cl2の放出が可能になる。大量の供給流れの中で可溶性の高いCl2の溶解を防ぐためには、これが必要である。更に別の応用では、CO2及びリン酸緩衝溶液の使用は、pHを安定化させ、膜の寿命を延ばす。実際に、LLTO膜を200時間使用しても、性能低下は無視できることが見出された。更に金属銅中空繊維の使用によって、ファラデー効率は、全ての段階で約100%まで高まった。濃縮と従来の沈澱法の組み合わせにより、プロセスが可溶性イオンの干渉の影響を受けにくくなる。エネルギー消費量は、大幅に低減される。コスト分析は、副産物の金額はエネルギーコストを十分克服できることを示した。
【0046】
上で議論したセルの1つにおいてLiを高める方法を、これから
図17に関して議論する。この方法は、(任意選択のガラス型の)稠密で薄いLLTO膜をハウジング内に配置し、ハウジングを第1の区画及び第2の区画に分割する工程1700、第2の区画に、海水を含む供給流れを供給する工程1702、第1の区画に濃縮流れを供給する工程1704、第1の区画に位置するカソード電極と第2の区画に位置するアノード電極の間に電圧を印加し、アノード電極上での酸化性電気化学反応及びカソード電極上での還元性電気化学反応を開始する工程1706、並びにLLTO膜を通して、海水から濃縮供給物の中にLi原子を移動させる工程1708を含む。
【0047】
この方法は、濃縮流れの中に酸を注入してpHを4.5~7.0に維持する工程、及び/又は第3の区画を形成し、それによりアノード電極が第3の区画に位置するように、第1のアニオン交換膜を第2の区画に追加する工程、及び/又は第3の区画にアノード流れを供給する工程であり、アノード流れが供給流れ及び濃縮流れとは異なり、アノード流れが、アノード電極によって発生した塩素を吸収せず、それにより塩素が第3の区画に形成されたポートで捕捉されるように構成される、工程、を更に含んでもよい。1つの応用では、カソード電極はPt-Ruで被覆された銅中空繊維製であり、銅中空繊維はハウジングの外からCO2を受け取る内部チャンネルを形成する。
【0048】
この方法は、第4の区画を形成し、それによりカソード電極が第4の区画に位置するように、第2のアニオン交換膜を第1の区画に追加する工程、及び/又は第4の区画にカソード流れを供給する工程であり、カソード流れが供給流れ及び濃縮流れとは異なる、工程、及び/又は、第1の区画に位置する銅中空繊維を追加する工程であり、銅中空繊維がPt-Ruで被覆されており、銅中空繊維が内部チャンネルを形成する、工程、及び/又はハウジングの外から内部チャンネルにCO2を供給し、濃縮流れ内にCO2を放出する工程を更に含んでもよい。
【0049】
本開示の実施形態は、非常に低いリチウム濃度を有する海洋塩水から、リチウムを濃縮するためのシステム及び方法を提供する。本記述は、本発明を限定する意図ではないことを理解すべきである。それどころか、実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲に含まれる、代替物、修正物及び等価物を包含することを意図している。更に、実施形態の詳細な記述では、特許請求された発明の包括的な理解を提供するために、多くの特定の詳細が記載されている。しかし、こうした特定の詳細なしに様々な実施形態が実行され得ることを、当業者は理解するであろう。
【0050】
本実施形態の特徴及び要素は、特定の組み合わせの実施形態において記述されているが、各特徴又は要素は、実施形態の他の特徴及び要素なしで単独で使用することができる、又は本明細書で開示される他の特徴及び要素を含む若しくは含まない様々な組み合わせで使用することができる。
【0051】
ここに書かれた記述は、任意のデバイス又はシステムを製作及び使用し、任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、いずれの当業者も同様に実行できるように開示された主題の例を使用している。主題の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が考えつく他の例を含んでもよい。こうした他の例は、特許請求の範囲内になるように意図している。
【符号の説明】
【0052】
100 セル
102 ハウジング
104 第1の区画
105 カソード電極
106 第2の区画
107 アノード電極
108 リチウム選択膜
110 供給流れ
112 供給リザーバ
114 ポンプ
116 配管回路
120 濃縮流れ
124 配管回路
126 濃縮リザーバ
140 酸
142 酸リザーバ
144 ポート
150 リチウムイオン
160 水素ガス
161 水素ガス用ポート
162 塩素ガス
163 塩素ガス用ポート
170 コントローラー
171 センサー
210 Laに乏しい層
220 Laに富む層
300 格子内空間
310 保護層
410 第3の区画
412 アノード流れ
414 リザーバ
420 アニオン交換膜
505 銅中空繊維カソード
507 内部チャンネル
510 CO2ガス
510 補助ガス
612 アニオン交換膜
614 カソード流れ
616 リザーバ
620 配管回路
630 ガス分配器
630 Pt-Ru被覆銅中空繊維エレメント
【手続補正書】
【提出日】2023-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流れ中のリチウム(Li)濃度を高めるためのセル(100)であって、
ハウジング(102)と、
前記ハウジング(102)内に位置し、前記ハウジング(102)を第1の区画(104)及び第2の区画(106)に分割する稠密リチウム選択膜(108)と、
前記第1の区画(104)に位置するカソード電極(105)と、
前記第2の区画(106)に位置するアノード電極(107)と、
前記第2の区画(106)に流体連結され、前記第2の区画(106)に供給流れ(110)を供給するように構成された第1の配管回路(116)と、
前記第1の区画(104)に流体連結され、前記第1の区画(104)を通って濃縮流れ(120)を循環させるように構成された第2の配管回路(124)と、
カソード電極とアノード電極との間に電圧を印加し、前記アノード電極上での酸化性電気化学反応及び前記カソード電極上での還元性電気化学反応を開始するように構成された電源(109)と、を含み、
前記稠密リチウム選択膜が400μm未満の厚さを有
し、
前記稠密リチウム選択膜が、Na
+
イオン、K
+
イオン、Mg
2+
イオン及びCa
2+
イオンを通さず、Li
+
イオンを通すように稠密に構成されている、セル。
【請求項2】
前記稠密リチウム選択膜が、ガラス型Li
xLa
2/3-x/3TiO
3(LLTO)膜であり、xは0.23~0.67である、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記濃縮流れの中に酸を注入してpHを4.5~7.0に維持するように前記第1の区画に流体連結されたポートを更に含む請求項1に記載のセル。
【請求項4】
第3の区画を形成することによって前記アノード電極が前記第3の区画に位置するように、前記第2の区画に配置された第1のアニオン交換膜を更に含む請求項3に記載のセル。
【請求項5】
前記供給流れ及び前記濃縮流れとは異なるアノード流れが前記第3の区画に供給され、前記アノード流れが、アノード電極によって発生した塩素を吸収しないことによって、前記塩素が前記第3の区画に形成されたポートで捕捉されるように構成されている、請求項4に記載のセル。
【請求項6】
前記カソード電極が銅中空繊維製である、請求項4に記載のセル。
【請求項7】
前記銅中空繊維がPt-Ruで被覆されている、請求項6に記載のセル。
【請求項8】
前記銅中空繊維が、前記ハウジングの外からCO
2を受け取る内部チャンネルを形成する、請求項6に記載のセル。
【請求項9】
第4の区画を形成するように前記第1の区画に配置された第2のアニオン交換膜を更に含み、前記カソード電極が前記第4の区画に位置する、請求項4に記載のセル。
【請求項10】
前記供給流れ及び前記濃縮流れとは異なるカソード流れが前記第4の区画に供給される、請求項9に記載のセル。
【請求項11】
前記第1の区画に位置する銅中空繊維を更に含む請求項9に記載のセル。
【請求項12】
前記銅中空繊維がPt-Ruで被覆されている、請求項11に記載のセル。
【請求項13】
前記銅中空繊維が、前記ハウジングの外からCO
2を受け取る内部チャンネルを形成し、前記濃縮流れ内にCO
2を放出する、請求項11に記載のセル。
【請求項14】
流れ中のリチウム(Li)濃度を高めるための多段階セル(700)であって、
多段階セル(700)が、互いに直列に接続された複数のセル(702-I)を含み、前記複数のセル(702-I)の各セルが、
ハウジング(102)と、
前記ハウジング(102)内に位置し、前記ハウジング(102)を第1の区画(104)及び第2の区画(106)に分割する稠密リチウム選択膜(108)と、
前記第1の区画(104)に位置するカソード電極(105)と、
前記第2の区画(106)に位置するアノード電極(107)と、
前記第2の区画(106)に流体連結され、供給流れ(110)を前記第2の区画(106)に供給するように構成された第1の配管回路(116)と、
前記第1の区画(104)に流体連結され、前記第1の区画(104)を通って濃縮流れ(120)を循環させるように構成された第2の配管回路(124)と、
前記カソード電極と前記アノード電極との間に電圧を印加し、前記アノード電極上での酸化性電気化学反応及び前記カソード電極上での還元性電気化学反応を開始するように構成された電源(109)と、を含み、
前記稠密リチウム選択膜が400μm未満の厚さを有し、
前記稠密リチウム選択膜が、Na
+
イオン、K
+
イオン、Mg
2+
イオン及びCa
2+
イオンを通さず、Li
+
イオンを通すように稠密に構成され、
前のセルからの濃縮流れが現行のセルの供給流れとなる、多段階セル。
【請求項15】
セル内のリチウム(Li)濃度を高める方法であって、
稠密リチウム選択膜(108)をハウジング(102)内に配置し、前記ハウジング(102)を第1の区画(104)及び第2の区画(106)に分割する工程(1700)と、
前記第2の区画(106)に、海水を含む供給流れ(110)を供給する工程(1702)と、
前記第1の区画(104)に濃縮流れ(120)を供給する工程(1704)と、
前記第1の区画(104)に位置するカソード電極(105)と前記第2の区画(106)に位置するアノード電極(107)との間に電圧を印加し、前記アノード電極上での酸化性電気化学反応及び前記カソード電極上での還元性電気化学反応を開始する工程(1706)と、
前記稠密リチウム選択膜を通して、海水から濃縮供給物の中にLi原子を移動させる工程(1708)と、を含み、
前記稠密リチウム選択膜が、400μm未満の厚さを有
し、
前記稠密リチウム選択膜が、Na
+
イオン、K
+
イオン、Mg
2+
イオン及びCa
2+
イオンを通さず、Li
+
イオンを通すように稠密に構成される、方法。
【請求項16】
前記稠密リチウム選択膜が、ガラス型Li
xLa
2/3-x/3TiO
3(LLTO)膜であり、xは0.23~0.67である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記濃縮流れの中に酸を注入してpHを4.5~7.0に維持する工程を更に含む請求項15に記載の方法。
【請求項18】
第3の区画を形成し、それによりアノード電極が第3の区画に位置するように、第1のアニオン交換膜を第2の区画に追加する工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
第3の区画にアノード流れを供給する工程を更に含み、前記アノード流れが前記供給流れ及び前記濃縮流れとは異なり、前記アノード流れが、前記アノード電極によって発生した塩素を吸収しないことによって、前記塩素が前記第3の区画に形成されたポートで捕捉されるように構成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記カソード電極がPt-Ruで被覆された銅中空繊維製であり、前記銅中空繊維は前記ハウジングの外からのCO
2を受け取る内部チャンネルを形成する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
第4の区画を形成することによって前記カソード電極が前記第4の区画に位置するように、前記第1の区画に第2のアニオン交換膜を追加する工程を更に含む請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第4の区画に、前記供給流れ及び前記濃縮流れとは異なるカソード流れを供給する工程を更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の区画に、Pt-Ruで被覆され内部チャンネルを形成する銅中空繊維を追加する工程と、
前記内部チャンネルの中に前記ハウジングの外からCO
2を供給し、前記濃縮流れ内へCO
2を放出する工程と、を更に含む請求項19に記載の方法。
【請求項24】
流れ中のリチウム(Li)濃度を高めるためのセル(100)であって、
ハウジング(102)と、
前記ハウジング(102)内に位置し、前記ハウジング(102)を第1の区画(104)及び第2の区画(106)に分割する稠密リチウム選択膜(108)と、
前記第1の区画(104)に位置するカソード電極(105)と、
前記第2の区画(106)に位置するアノード電極(107)と、
前記第2の区画(106)に流体連結され、前記第2の区画(106)に供給流れ(110)を供給するように構成された第1の配管回路(116)と、
前記第1の区画(104)に流体連結され、前記第1の区画(104)を通って濃縮流れ(120)を循環させるように構成された第2の配管回路(124)と、
カソード電極とアノード電極との間に電圧を印加し、前記アノード電極上での酸化性電気化学反応及び前記カソード電極上での還元性電気化学反応を開始するように構成された電源(109)と、を含み、
前記稠密リチウム選択膜が400μm未満の厚さを有し、
前記稠密リチウム選択膜は、水及びガスに対して不透過性であるように稠密に構成されている、セル。
【請求項25】
前記稠密リチウム選択膜が、ガラス型Li
x
La
2/3-x/3
TiO
3
(LLTO)膜であり、xは0.23~0.67である、請求項24に記載のセル。
【国際調査報告】