(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-26
(54)【発明の名称】車体端部の横転防止制振装置及び鉄道車両、列車
(51)【国際特許分類】
B61F 5/24 20060101AFI20240119BHJP
【FI】
B61F5/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544323
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 CN2022070345
(87)【国際公開番号】W WO2022199208
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】202110328578.X
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520112818
【氏名又は名称】シーアールアールシー チンダオ スーファン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ドンシャオ
(72)【発明者】
【氏名】フェン ヨンファ
(72)【発明者】
【氏名】フェン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン グオピン
(72)【発明者】
【氏名】リャン ハイシャオ
(72)【発明者】
【氏名】リー グイユウ
(72)【発明者】
【氏名】ワン チアン
(57)【要約】
本願は、車体端部の横転防止制振装置及び鉄道車両を提供する。当該車体端部の横転防止制振装置は、互いに接続された1対の車体において対向して設置された1対の端壁にそれぞれ取り付けられており、且つ車体の長さ方向に沿った軸線の両側にそれぞれ設置される1対の制振機構と、両端が1対の制振機構にそれぞれヒンジ接続されるものであって、車体の横転運動と垂直方向運動とをデカップリングするように、その長さは、いずれかの車体の垂直方向運動の変位よりも大きい接続ロッドと、を含む。当該車体端部の横転防止制振装置により、1対の車体の間に接続された接続ロッドの長さが車体の垂直方向運動の変位よりもはるかに大きいことを確保することができ、それにより、車体が異なる運動を行う過程において接続ロッドによって制振機構の運動を位置制限することができ、少なくとも、車体の横転運動と垂直方向運動とのデカップリングを実現し、ひいては垂直方向の安定性を影響することなく、横転振動をより確実に抑制し、鉄道車両の走行の安定性及び乗り心地を大幅に向上させることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接続された1対の車体において対向して設置された1対の端壁にそれぞれ取り付けられており、且つ前記車体の長さ方向に沿った軸線の両側にそれぞれ設置される1対の制振機構と、
両端が1対の前記制振機構にそれぞれヒンジ接続されるものであって、前記車体の横転運動と垂直方向運動とをデカップリングするように、その長さは、いずれかの前記車体の垂直方向運動の変位よりも大きい接続ロッドと、を含むことを特徴とする車体端部の横転防止制振装置。
【請求項2】
前記制振機構は、
前記端壁に設置されており、且つその固定端は、前記端壁にヒンジ接続されるダンパと、
揺動支点が設けられているものであって、その第1の端部は、前記接続ロッドの端部にヒンジ接続され、その第2の端部は、前記ダンパの伸縮端部にヒンジ接続され、前記第1の端部と前記第2の端部は前記揺動支点に対して揺動可能である揺動ロッドと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の車体端部の横転防止制振装置。
【請求項3】
前記車体に横転運動が発生した場合、前記揺動ロッドは、前記接続ロッドの制限作用によって揺動し、前記ダンパを伸縮運動させて減衰力を発生させ、
前記車体に垂直方向運動が発生した場合、前記接続ロッドは、前記車体の垂直方向に沿って運動し、且つ前記ダンパは減衰力を発生させないことを特徴とする請求項2に記載の車体端部の横転防止制振装置。
【請求項4】
前記揺動ロッドは、第1のロッド及び第2のロッドを含み、前記第1のロッドと前記第2のロッドはL字状に接続され、前記揺動ロッドの揺動支点は、前記第1のロッドと前記第2のロッドとの接続箇所に設置され、前記揺動ロッドの第1の端部は、前記第1のロッドの前記揺動支点から離れた端部に設置され、前記揺動ロッドの第2の端部は、前記第2のロッドの前記揺動支点から離れた端部に設置され、
ここで、前記車体端部の横転防止制振装置の横転防止減衰係数は、前記揺動ロッドの長さ比例係数に反比例し、前記揺動ロッドの長さ比例係数は、前記第1のロッドの長さと前記第2のロッドの長さとの間の比例係数であることを特徴とする請求項2に記載の車体端部の横転防止制振装置。
【請求項5】
前記揺動ロッドの第1の端部の揺動速度は、1対の前記車体間の相対横転速度であり、前記揺動ロッドの第2の端部の揺動速度は、前記ダンパの伸縮端部の運動速度であり、
前記揺動ロッドの第2の端部の揺動速度は、下記の式1を満たし、
【数1】
前記ダンパが前記揺動ロッドの第2の端部に対して発生する減衰力は、下記の式2を満たし、
【数2】
前記揺動ロッドの第1の端部に発生する力は、下記の式3を満たし、
【数3】
前記揺動ロッドの第1の端部の等価減衰係数は、下記の式4を満たし、
【数4】
ここで、
v
Aは、前記揺動ロッドの第1の端部の揺動速度を表し、
v
Bは、前記揺動ロッドの第2の端部の揺動速度を表し、
l
Aは、前記第1のロッドの長さを表し、
l
Bは、前記第2のロッドの長さを表し、
F
Aは、前記揺動ロッドの第1の端部に発生する力を表し、
F
Bは、前記ダンパが前記揺動ロッドの第2の端部に対して発生する減衰力を表し、
cは、前記ダンパの減衰係数を表し、
【数5】
は、前記揺動ロッドの長さ比例係数を表し、
c
Aは、前記揺動ロッドの第1の端部の等価減衰係数、即ち、前記車体端部の横転防止制振装置の横転防止減衰係数を表すことを特徴とする請求項4に記載の車体端部の横転防止制振装置。
【請求項6】
前記制振機構は、
前記端壁に固着されて、前記揺動ロッドの揺動支点にヒンジ接続される第1取り付け座と、
前記端壁に固着されて、前記ダンパの固定端にヒンジ接続される第2取り付け座と、をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の車体端部の横転防止制振装置。
【請求項7】
前記第1取り付け座と前記揺動ロッドの揺動支点との間、前記揺動ロッドの第2の端部と前記ダンパの張出端との間、及び前記第2取り付け座と前記ダンパの固定端との間は、それぞれ滑り軸受を介して接続されることを特徴とする請求項6に記載の車体端部の横転防止制振装置。
【請求項8】
前記制振機構と対応する前記端壁との間に接続されるリセット機構をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の車体端部の横転防止制振装置。
【請求項9】
前記リセット機構は、リセット弾性部材及びリセット取り付け座を含み、前記リセット弾性部材の第1の端部は、前記揺動ロッドに接続され、前記リセット弾性部材の第2の端部は、前記リセット取り付け座に接続され、前記リセット取り付け座は、前記端壁に固着されることを特徴とする請求項8に記載の車体端部の横転防止制振装置。
【請求項10】
前記リセット弾性部材の第1の端部は、前記揺動ロッドの揺動支点と前記揺動ロッドの第1の端部との間に接続されることを特徴とする請求項9に記載の車体端部の横転防止制振装置。
【請求項11】
前記接続ロッドの両端は、それぞれ玉軸受を介して1対の前記制振機構にヒンジ接続されることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の車体端部の横転防止制振装置。
【請求項12】
複数の車体を含む鉄道車両であって、少なくとも1対の隣接する前記車体の間には、請求項1から11のいずれか1項に記載の車体端部の横転防止制振装置が取り付けられていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項13】
複数の鉄道車両を含む列車であって、少なくとも1対の隣接する前記鉄道車両の間には、請求項1から11のいずれか1項に記載の車体端部の横転防止制振装置が取り付けられていることを特徴とする列車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年3月26日に提出された、出願番号が202110328578.Xであり、名称が「車体端部の横転防止制振装置及び鉄道車両、列車」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体を参照により本開示に組み込む。
【0002】
本願は、鉄道車両の技術分野に関し、特に、車体端部の横転防止制振装置及び鉄道車両、列車に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の動車群の時速の向上及び車体の階数の増加に伴い、車体は、重量が大きくて重心が高いという技術的特徴を有し、ひいては鉄道車両の横転防止に対する要求がますます高まっている。鉄道車両の横転防止とは、車体が横転振動に抵抗する能力である。二階動車群を例とすると、二階動車群の車体は、従来の列車より明らかに高く、且つ車体の横転振動の減衰比が低過ぎ、横転の安定性が低下し、横転角の角速度が増大するという不都合が存在する。
【0004】
従来の横転防止装置は、通常、台車と車体との間の二段式サスペンションシステムに取り付けられ、台車と車体との間で減衰力を発生させて、横転運動を抑制する役割を果たすことができる。確実な横転防止作用を実現するために、従来の鉄道車両では、サスペンションシステムに二段式垂直方向ダンパを設置したり、二段式空気ばねの減衰を増大させたりすることが一般的であり、いずれも横転運動を抑制する役割を果たすことができるが、垂直方向の乗り安定性に悪影響を与える。特に、二段式垂直方向ダンパが横転防止減衰を提供する場合、垂直方向の減衰をさらに提供し、且つ、車体の重心が高く横転の慣性モーメントが大きい車両に対して、適切な横転防止効果を達成するために、二段式垂直方向ダンパの減衰を比較的に大きく設置する必要があり、こうすると、車両システムの垂直方向振動の伝達に悪影響を与え、垂直方向の安定性の悪化を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、従来技術において採用された横転防止装置が垂直方向の乗り安定性に悪影響を与える欠陥を解決するために、少なくとも、垂直方向の安定性を影響することなく、横転振動を抑制することを実現できる車体端部の横転防止制振装置を提供する。
【0006】
本願は、鉄道車両をさらに提供する。
【0007】
本願は、列車をさらに提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、
互いに接続された1対の車体において対向して設置された1対の端壁にそれぞれ取り付けられており、且つ前記車体の長さ方向に沿った軸線の両側にそれぞれ設置される1対の制振機構と、
両端が1対の前記制振機構にそれぞれヒンジ接続されるものであって、前記車体の横転運動と垂直方向運動とをデカップリングするように、その長さは、いずれかの前記車体の垂直方向運動の変位よりも大きい接続ロッドと、を含む車体端部の横転防止制振装置を提供する。
【0009】
本願に係る車体端部の横転防止制振装置によれば、前記制振機構は、
前記端壁に設置されており、且つその固定端は、前記端壁にヒンジ接続されるダンパと、
揺動支点が設けられているものであって、その第1の端部は、前記接続ロッドの端部にヒンジ接続され、その第2の端部は、前記ダンパの伸縮端部にヒンジ接続され、前記第1の端部と前記第2の端部は前記揺動支点に対して揺動可能である揺動ロッドと、を含む。
【0010】
本願に係る車体端部の横転防止制振装置によれば、前記車体に横転運動が発生した場合、前記揺動ロッドは、前記接続ロッドの制限作用によって揺動し、前記ダンパを伸縮運動させて減衰力を発生させ、
前記車体に垂直方向運動が発生した場合、前記接続ロッドは、前記車体の垂直方向に沿って運動し、且つ前記ダンパは減衰力を発生させない。
【0011】
本願に係る車体端部の横転防止制振装置によれば、前記揺動ロッドは、第1のロッド及び第2のロッドを含み、前記第1のロッドと前記第2のロッドはL字状に接続され、前記揺動ロッドの揺動支点は、前記第1のロッドと前記第2のロッドとの接続箇所に設置され、前記揺動ロッドの第1の端部は、前記第1のロッドの前記揺動支点から離れた端部に設置され、前記揺動ロッドの第2の端部は、前記第2のロッドの前記揺動支点から離れた端部に設置され、
ここで、前記車体端部の横転防止制振装置の横転防止減衰係数は、前記揺動ロッドの長さ比例係数に反比例し、前記揺動ロッドの長さ比例係数は、前記第1のロッドの長さと前記第2のロッドの長さとの間の比例係数である。
【0012】
本願に係る車体端部の横転防止制振装置によれば、前記揺動ロッドの第1の端部の揺動速度は、1対の前記車体間の相対横転速度であり、前記揺動ロッドの第2の端部の揺動速度は、前記ダンパの伸縮端部の運動速度であり、
前記揺動ロッドの第2の端部の揺動速度は、下記の式1を満たし、
【数1】
前記ダンパが前記揺動ロッドの第2の端部に対して発生する減衰力は、下記の式2を満たし、
【数2】
前記揺動ロッドの第1の端部に発生する力は、下記の式3を満たし、
【数3】
前記揺動ロッドの第1の端部の等価減衰係数は、下記の式4を満たし
【数4】
ここで、
v
Aは、前記揺動ロッドの第1の端部の揺動速度を表し、
v
Bは、前記揺動ロッドの第2の端部の揺動速度を表し、
l
Aは、前記第1のロッドの長さを表し、
l
Bは、前記第2のロッドの長さを表し、
F
Aは、前記揺動ロッドの第1の端部に発生する力を表し、
F
Bは、前記ダンパが前記揺動ロッドの第2の端部に対して発生する減衰力を表し、
cは、前記ダンパの減衰係数を表し、
【数5】
は、前記揺動ロッドの長さ比例係数を表し、
c
Aは、前記揺動ロッドの第1の端部の等価減衰係数、即ち、前記車体端部の横転防止制振装置の横転防止減衰係数を表す。
【0013】
本願に係る車体端部の横転防止制振装置によれば、前記制振機構は、
前記端壁に固着されて、前記揺動ロッドの揺動支点にヒンジ接続される第1取り付け座と、
前記端壁に固着されて、前記ダンパの固定端にヒンジ接続される第2取り付け座と、をさらに含む。
【0014】
本願に係る車体端部の横転防止制振装置によれば、前記第1取り付け座と前記揺動ロッドの揺動支点との間、前記揺動ロッドの第2の端部と前記ダンパの張出端との間、及び前記第2取り付け座と前記ダンパの固定端との間は、それぞれ滑り軸受を介して接続される。
【0015】
本願に係る車体端部の横転防止制振装置によれば、前記制振機構と対応する前記端壁との間に接続されるリセット機構をさらに含む。
【0016】
本願に係る車体端部の横転防止制振装置によれば、前記リセット機構は、リセット弾性部材及びリセット取り付け座を含み、前記リセット弾性部材の第1の端部は、前記揺動ロッドに接続され、前記リセット弾性部材の第2の端部は、前記リセット取り付け座に接続され、前記リセット取り付け座は、前記端壁に固着される。
【0017】
本願に係る車体端部の横転防止制振装置によれば、前記リセット弾性部材の第1の端部は、前記揺動ロッドの揺動支点と前記揺動ロッドの第1の端部との間に接続される。
【0018】
本願に係る車体端部の横転防止制振装置によれば、前記接続ロッドの両端は、それぞれ玉軸受を介して1対の前記制振機構にヒンジ接続される。
【0019】
本願は、複数の車体を含む鉄道車両であって、隣接する1対の前記車体の間には、上述したような車体端部の横転防止制振装置が取り付けられている鉄道車両をさらに提供する。
【発明の効果】
【0020】
本願は、互いに接続された1対の車体において対向して設置された1対の端壁にそれぞれ取り付けられており、且つ車体の長さ方向に沿った軸線の両側にそれぞれ設置される1対の制振機構と、両端が1対の制振機構にそれぞれヒンジ接続されるものであって、車体の横転運動と垂直方向運動とをデカップリングするように、その長さは、いずれかの車体の垂直方向運動の変位よりも大きい接続ロッドと、を含む車体端部の横転防止制振装置を提供する。当該車体端部の横転防止制振装置は、接続ロッドによって中心対称に設置された1対の制振機構を接続することにより、1対の車体の間に接続された接続ロッドの長さが車体の垂直方向運動の変位よりもはるかに大きいことを確保することができ、それにより、車体が異なる運動を行う過程において接続ロッドによって制振機構の運動を位置制限することができ、少なくとも、車体の横転運動と垂直方向運動とのデカップリングを実現し、ひいては垂直方向の安定性を影響することなく、横転振動をより確実に抑制し、鉄道車両の走行の安定性及び乗り心地を大幅に向上させることができる。
【0021】
さらに、当該車体端部の横転防止制振装置は、一方で、車体に横転運動が発生する過程において、接続ロッドによる位置制限作用で、制振機構によって減衰力を発生させ、それにより、車体の横転運動を効率的で確実に抑制することができ、他方で、車体に垂直方向運動(即ち、ヒーブ運動)が発生する過程において、接続ロッド全体の垂直方向運動によって1対の車体の垂直方向運動の相対変位を制限して、1対の制振機構にいずれも減衰力を発生させず、それにより、車体の横転運動と垂直方向運動との確実なデカップリングを達成することができる。
【0022】
以上から分かるように、従来技術に比べると、本願に係る車体端部の横転防止制振装置は、隣接する車体において対向して設置された端壁の間に取り付けられ、隣接する車体の間で減衰を発生させることができ、台車に影響を与えない。また、上記の構造によって車体の横転運動と垂直方向運動とのデカップリングを実現することができ、即ち、車体には横転運動が発生する過程において、横転防止減衰のみを発生させ、垂直方向減衰を提供せず、それにより、従来技術に記載されたサスペンションシステムが適切な横転防止効果を達成するために比較的大きな垂直方向減衰を発生させて、垂直方向振動の伝達に悪影響を与えることを効果的に回避することができる。このように、本願に記載の車体端部の横転防止制振装置は、台車を避けて車体の間の横転防止減衰を直接提供することができ、それによって、車両の垂直方向の走行の安定性を効果的に向上させることができる。
【0023】
本願は、複数の車体を含む鉄道車両であって、隣接する1対の車体の間には、上述したような車体端部の横転防止制振装置が取り付けられている鉄道車両をさらに提供する。上記の車体端部の横転防止制振装置を設置することにより、当該鉄道車両は上記の車体端部の横転防止制振装置の全ての利点を備え、ここでは詳細な説明を省略する。
【0024】
本願は、複数の鉄道車両を含む列車をさらに提供する。ここで、少なくとも1対の隣接する鉄道車両の間には、上述したような車体端部の横転防止制振装置が取り付けられている。上記の車体端部の横転防止制振装置を設置することにより、当該列車は上記の車体端部の横転防止制振装置の全ての利点を備え、ここでは詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下、本願又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明する図面は、本願の一部の実施形態に過ぎず、当業者であれば、創造的な労働をせずに、これらの図面に基づいてその他の図面を取得することができる。
【
図1】本願に係る車体端部の横転防止制振装置が鉄道車両に装着された構造の概略図である。
【
図2】本願に係る車体端部の横転防止制振装置が隣接する車体の間に装着された構造の概略図である。
【
図3】本願に係る車体端部の横転防止制振装置の構造の概略図である。
【
図4】本願に係る車体端部の横転防止制振装置の、車体に横転運動が発生した場合の作動状態の模式図である。
【
図5】本願に係る車体端部の横転防止制振装置の、車体に垂直方向運動が発生した場合の作動状態の模式図である。
【
図6】本願に係る制振機構の作動原理を簡略化した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本願の目的、技術案及び利点をより明らかにするために、本願における図面を参照しながら、本願における技術案を明確かつ完全に説明する。勿論、説明する実施形態は、全ての実施形態ではなく、本願の一部の実施形態に過ぎない。本願における実施形態に基づいて、当業者が創造的な労働をしないうちに取得する全ての他の実施形態は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0027】
本願の実施形態は、二階動車群の車両を例として、本願に記載の車体端部の横転防止制振装置を具体的に説明する。時速が350kmである二階動車群の車両は、重量が増加し、慣性モーメントが増加し、重心が上昇し、車体の風当て面積が増加したため、車両が比較的強い横転防止能力を有し、且つ任意の風荷重で車体の横転振動を効果的に減衰させ、車体の横振動の加速度を低下させ、車両の動力学性能を向上させることができることを確保するために、車体の端部に車体端部の横転防止制振装置を配置する。
【0028】
以下、
図1から
図6を参照しながら、本願に係る車体端部の横転防止制振装置(本願の実施形態において「制振装置」と略称され得る)を説明する。
【0029】
図1に示すように、本願の実施形態に記載の制振装置は、隣接する1対の車体300の間に接続され、隣接する前後の2つの車体300の間の相対横転運動と相対垂直方向運動(即ち、ヒーブ運動)に対してデカップリング作用を果たし、それにより、垂直方向の安定性に影響を与えることなく、横転振動を抑制し、鉄道車両の走行の安定性及び乗り心地を大幅に向上させることができる。
【0030】
図1、
図2、及び
図3に示すように、当該制振装置は、具体的に、接続ロッド200と1対の制振機構100を含む。
【0031】
1対の制振機構100は、互いに接続された1対の車体にそれぞれ取り付けられており、対向して設置された1対の端壁にそれぞれ取り付けられている。且つ、1対の制振機構100は、車体の長さ方向に沿った軸線の両側にそれぞれ設置され、即ち、上記の1対の端壁の間の車間領域の中心線を対称軸として、1対の制振機構100は、当該対称軸に対して中心対称に設置される。ここで、車間領域の中心線は、車間領域において車体の長さ方向に沿った中心及び車体の幅方向に沿った中心に位置するように設置される。
【0032】
接続ロッド200の両端は、1対の制振機構100にそれぞれヒンジ接続される。且つ、接続ロッド200の長さは、車体の横転運動と垂直方向運動とをデカップリングするように、いずれかの車体の垂直方向運動の変位より大きい。前後の車体の車間領域の長さが車体垂直方向運動の変位よりはるかに大きく、且つ接続ロッド200の両端は1対の車体の両側にそれぞれ接続されるため、当該制振装置は、1対の車体の間に接続された接続ロッド200の長さが車体の垂直方向運動の変位よりはるかに大きいことを確保することができ、それにより、車体が異なる運動を行う過程において接続ロッド200によって制振機構100の運動を位置制限することができ、ひいては少なくとも車体の横転運動と垂直方向運動とのデカップリングを実現し、車体の垂直方向の安定性に影響を与えことなく、車体の横転振動をより確実に抑制することを実現することができる。
【0033】
理解できるように、車体は、台車サスペンションシステムの支持の下で、走行過程において垂直方向運動及び横転運動を含む複数の剛体運動が発生する。従来技術において、二段式サスペンションシステムの垂直方向減衰によって車体の横転運動の減衰を実現することが一般的であり、具体的には、二段式垂直方向ダンパを設置したり、空気ばねの減衰係数を増大させたりする。しかしながら、上記のような設置は、車体の横転減衰モーメントを増加させると共に、二段式垂直方向の減衰を増加させ、それにより、車両の乗り心地の低下を招く。
【0034】
本願の実施形態に記載の制振装置は、従来の横転防止制振装置と比べると、少なくとも以下のような相違点を有する。
【0035】
まず、従来の横転防止制振装置は、通常、台車と車体との間に取り付けられ、台車により車体の横転運動を抑制し、車体の横転運動を抑制する一方で、台車の受力状況に対して一定の悪影響を与える。なお、本願に記載の制振装置は、隣接する車体の間に取り付けられ、隣接する車体の間の相対運動により制振装置を動作させ、それにより、車両の横転運動を抑制する役割を果たす。
【0036】
次に、従来の横転防止制振装置は、横転防止剛性のみを提供することができるが、横転防止減衰を提供することができず、従って、横転衝撃のみを緩和することができ、横転振動を減衰させることができない。また、車体の横転振動を減衰させることを実現するために、通常、従来の横転防止制振装置に加えて、上記の二段式垂直方向ダンパを追加して設置する必要がある。なお、本願に記載の制振装置は、自体で横転防止減衰を提供することができ、それにより、横転運動のエネルギーを効果的に減衰させることができ、それと共に、本願の制振装置は、車体の横転運動と垂直方向運動とのデカップリングを実現したため、二段式垂直方向ダンパの減衰力が過大で車体の垂直方向の安定性に悪影響を与えることを解決することができ、即ち、元の垂直方向減衰を増大することなく、横転防止減衰のみを増大することができる。
【0037】
具体的に、本願の実施形態に記載の制振装置は、一方で、車体に横転運動が発生する過程において、接続ロッド200による位置制限作用で、制振機構100によって減衰力を発生させ、それにより、車体の横転運動を効率的で確実に抑制することができ、他方で、車体に垂直方向運動(即ち、ヒーブ運動)が発生する過程において、接続ロッド200全体の垂直方向運動によって1対の車体の垂直方向運動の相対変位を制限して、1対の制振機構100にいずれも減衰力を発生させず、それにより、車体の横転運動と垂直方向運動との確実なデカップリングを達成することができる。
【0038】
以上から分かるように、従来技術と比べると、本願の実施形態の制振装置は、隣接する車体において対向して設置された端壁の間に取り付けられ、隣接する車体の間で減衰を発生させることができ、台車に影響を与えない。また、上記の構造によって車体の横転運動と垂直方向運動とのデカップリングを実現することができ、即ち、車体に横転運動が発生する過程において、横転防止減衰のみを発生させ、垂直方向減衰を提供せず、それにより、従来技術に記載されたサスペンションシステムが適切な横転防止効果を達成するために比較的大きな垂直方向減衰を発生させて、垂直方向振動の伝達に悪影響を与えることを効果的に回避することができる。このように、本願の実施形態の制振装置は、台車を避けて車体の間の横転防止減衰を直接提供することができ、それによって、車両の垂直方向の走行の安定性を効果的に向上させることができる。
【0039】
図1及び
図3を例として、1対の制振機構100のうちの一方は、第1の端壁301の左側に取り付けられ、1対の制振機構100のうちの他方は、第2の端壁302の右側に取り付けられ、このように、1対の制振機構100は上記の対称軸に対して中心対称に設置される。ここで、第1の端壁301及び第2の端壁302は、それぞれ前後に接続された2つの車体において対向して設置された1対の端壁であり、即ち、第1の端壁301は、前の車体の端壁であり、第2の端壁302は、後の車体の端壁である。
【0040】
なお、上記の1対の制振機構100の設置については、左右に入れ替えることができ、即ち、1対の制振機構100のうちの一方は、第1の端壁301の右側に取り付けられ、1対の制振機構100のうちの他方は、第2の端壁302の左側に取り付けられる。1対の制振機構100が上記の対称軸に対して中心対称に設置されることを満足すればよい。
【0041】
理解できるように、鉄道車両全体の走行の安定性及び乗り心地をさらに向上させるために、好ましくは、一本の鉄道車両のそれぞれの隣接する各一対の車体の間の制振装置は、第1の端壁301に取り付けられるすべての制振機構100が、いずれも第1の端壁301の一方側に取り付けられ、且つ第2の端壁302に取り付けられるすべての制振機構100が、いずれも第2の端壁302の他方側に取り付けられるように設置される。即ち、一本の鉄道車両において、各車間領域内の接続ロッド200の設置方向が一致していることが確保される。
【0042】
理解できるように、1対の制振機構100同士が中心対称に設置されることを確保するために、第1の端壁301における制振機構100は第2の端壁302における制振機構100と反対に設置されることが好ましい。
【0043】
いくつかの実施形態において、
図3に示すように、当該制振機構100は、ダンパ101及び揺動ロッド102を含む。ここで、ダンパ101は、対応する端壁に設置され、且つダンパ101の固定端は、当該端壁にヒンジ接続される。ダンパ101は、垂直方向に沿って端壁に設置されることが好ましい。ダンパ101は、車体の振動を減衰させるように減衰力を発生させるために用いられる。揺動ロッド102は、車体間の横方向運動(即ち、横転運動)をダンパ101の垂直方向の伸縮運動に変換するために用いられ、車体間の横転防止減衰係数を調整するために用いられる。
【0044】
理解できるように、揺動ロッド102には揺動支点1023が設置されている。揺動ロッドの第1の端部は、接続ロッド200の端部にヒンジ接続される。揺動ロッドの第2の端部は、ダンパ101の伸縮端部にヒンジ接続される。且つ、揺動ロッドの第1の端部と第2の端部は、揺動支点1023に対して揺動可能である。揺動ロッド102は、揺動過程において、ダンパ101を伸縮運動させることができる一方、接続ロッド200による位置制限及び駆動の作用により、車体の横転運動と垂直方向運動との確実なデカップリングを実現することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、
図3及び
図6に示すように、揺動ロッド102は、第1のロッド1021及び第2のロッド1022を含む。第1のロッド1021と第2のロッド1022は、L字状に接続される。揺動ロッド102の揺動支点1023は、第1のロッド1021と第2のロッド1022との接続箇所に設置される。揺動ロッドの第1の端部は、第1のロッド1021の揺動支点1023から離れた端部に設置される。揺動ロッドの第2の端部は、第2のロッド1022の揺動支点1023から離れた端部に設置される。L字形構造の揺動ロッド102は、揺動過程においてダンパ101の減衰作用を接続ロッド200に伝達し、且つ接続ロッド200による位置制限及び駆動の作用をダンパ101に伝達することができる。また、L字形構造の揺動ロッド102は、第1のロッド1021と第2のロッド1022との長さ比例関係を調整することにより、当該制振装置の横転防止減衰係数を調整することができる。ダンパ101の減衰係数及び揺動ロッド102の構造パラメータを調整することにより、垂直方向減衰に影響を与えることなく、横転防止減衰を確実に調整することを実現することができる。当該設置は、鉄道車両全体の制振システムに対して、垂直方向の安定性に影響を与えることなく、横転の安定性を大幅に向上させることを実現することができる。また、揺動ロッド102の第1のロッド1021と第2のロッド1022との長さ比例関係を柔軟に調節することにより、同じ型番のダンパ101を異なる車両に適応させると共に、ダンパ101の伸縮運動の速度を低下させ、ダンパ101の動作信頼性を向上させることを実現することができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、車体に横転運動が発生した場合、揺動ロッド102は接続ロッド200の制限作用によって揺動し、ダンパ101を伸縮運動させて減衰力を発生させる。車体に垂直方向運動が発生した場合、接続ロッド200は、車体の垂直方向に沿って運動し、且つダンパ101は減衰力を発生させない。
【0047】
具体的に、
図4は、制振装置の、車体に横転運動が発生した場合の作動状態を示し、
図4に示す実線部分は、車体に横転運動が発生する前の初期状態であり、破線部分は、車体に横転運動が発生した後の運動状態である。
図5は、制振装置の、車体に垂直方向運動が発生した場合の作動状態を示し、
図5に示す実線部分は、車体に垂直方向運動が発生する前の初期状態であり、破線部分は、車体に垂直方向運動が発生した後の運動状態である。ここで、L1は、初期状態におけるダンパ101の全長を表し、L2は、運動状態におけるダンパ101の全長を表す。
【0048】
図4から分かるように、L字形の揺動ロッドの第1の端部は、車体が横に移動するため、水平に設置された接続ロッド200の制限作用を受けることで、揺動ロッドの第1の端部と第2の端部に比較的大きな角度の揺動を発生させ、ダンパ101を駆動して引張・圧縮運動させ、それにより、ダンパ101に減衰力を発生させ、即ち、当該制振装置は横転防止減衰係数を有し、さらに車体の相対横転運動を抑制する。
【0049】
図5から分かるように、水平に設置された接続ロッド200の長さは車体の相対垂直方向運動の変位よりはるかに大きいため、接続ロッド200のみは小さな角度の揺動が発生する。接続ロッド200は両端に接続された揺動ロッド102に対して制限作用を与えることにより、制振機構100の揺動ロッド102はほとんど揺動せず、従って、ダンパ101はほとんど引張及び圧縮運動を行わず、それにより、ダンパ101は減衰力を発生させない。
【0050】
理解できるように、接続ロッド200は2000mm以上に設定されることが好ましい。従来の鉄道車両の車体の垂直方向運動の変位は30mm程度であるため、接続ロッド200の長さは車体の相対垂直方向運動の変位よりはるかに大きいことが分かる。
【0051】
図4及び
図5から分かるように、本願の実施形態に記載の制振装置は、車体の横転運動と垂直方向運動とのデカップリングを実現した。当該制振装置は、ダンパ101の減衰係数、及び揺動ロッド102の第1のロッド1021と第2のロッド1022との長さ比例係数を調整するだけで、垂直方向減衰に影響を与えることなく、横転防止減衰を調整することを実現することができる。これは、車両全体の制振システムに対して、垂直方向の安定性に影響を与えることなく、横転の安定性を向上させることを実現することができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、制振装置の横転防止減衰係数を柔軟に調整することを実現するために、制振装置の横転防止減衰係数が揺動ロッド102の長さ比例係数に反比例することを決定することが好ましい。ここで、揺動ロッド102の長さ比例係数は、第1のロッド1021の長さと第2のロッド1022の長さとの比例係数である。
【0053】
具体的に、
図6に示すように、揺動ロッドの第1の端部Aの揺動速度は、1対の車体の間の相対横転速度であり、揺動ロッドの第2の端部Bの揺動速度は、ダンパ101の伸縮端部の運動速度である。
【0054】
揺動ロッドの第2の端部Bの揺動速度は、下記の式1を満たし、
【数6】
ダンパ101が揺動ロッドの第2の端部Bに対して発生する減衰力は、下記の式2を満たし、
【数7】
揺動ロッドの第1の端部Aに発生する力は、下記の式3を満たし、
【数8】
揺動ロッドの第1の端部Aの等価減衰係数は、下記の式4を満たし
【数9】
ここで、
v
Aは、揺動ロッドの第1の端部Aの揺動速度を表し、
v
Bは、揺動ロッドの第2の端部Bの揺動速度を表し、
l
Aは、第1のロッド1021の長さを表し、
l
Bは、第2のロッド1022の長さを表し、
F
Aは、揺動ロッドの第1の端部Aに発生する力を表し、
F
Bは、ダンパ101が揺動ロッドの第2の端部Bに対して発生する減衰力を表し、
cは、ダンパ101の減衰係数を表し、
【数10】
は、揺動ロッド102の長さ比例係数を表し、
c
Aは、揺動ロッドの第1の端部Aの等価減衰係数、即ち、当該制振装置の横転防止減衰係数を表す。
【0055】
理解できるように、上記の揺動ロッドの第1の端部Aの揺動速度は、1対の車体の間の相対横転角速度ω及び接続ロッド200の車体の空気ばね支持面Hから離れた高さに関連する。
【0056】
上記の内容から分かるように、制振機構100の揺動ロッド102は、少なくとも下記の利点を有する。
【0057】
(1)同じ型番のダンパ101を用いる場合、揺動ロッド102の長さ比例係数を調整することにより、当該制振装置の等価減衰係数を柔軟に変更することができ、それにより、当該制振装置は異なる車両パラメータに適応することができる。
【0058】
(2)揺動ロッド102のL字形本体の設置により、車体からダンパ101に伝達される運動速度を効果的に低下させることができ、それにより、制振装置における各部品構造の設計を容易にして、当該制振装置を簡易化することに寄与し、さらに制振装置の部品の耐用年数を大幅に向上させる。
【0059】
いくつかの実施形態において、
図3に示すように、当該制振機構100は、第1取り付け座103及び第2取り付け座104をさらに含む。第1取り付け座103は、端壁に固着されて、揺動ロッド102の揺動支点1023にヒンジ接続される。第2取り付け座104は、端壁に固着されて、ダンパ101の固定端にヒンジ接続される。第1取り付け座103及び第2取り付け座104は、それぞれ揺動ロッド102の揺動及びダンパ101の伸縮運動に確実な固定支持作用を提供するために用いられる。
【0060】
理解できるように、上記のヒンジ構造の信頼性をさらに向上させるために、第1取り付け座103と揺動ロッド102の揺動支点1023とは、第1滑り軸受108を介して接続され、揺動ロッドの第2の端部とダンパ101の張出端とは、第2滑り軸受109を介して接続され、第2取り付け座104とダンパ101の固定端とは、第3滑り軸受110を介して接続されることが好ましい。滑り軸受の設置により、制振機構100の各部品の運動面は、常に、端壁の位置する平面に平行に維持されるか、または重なり合うことを確保することができる。
【0061】
理解できるように、接続ロッド200の両端と1対の制振機構100との間のヒンジ構造の信頼性をさらに向上させるために、接続ロッド200の両端は、それぞれ玉軸受107を介して1対の制振機構100にヒンジ接続されることが好ましい。玉軸受107は、接続ロッド200の端部と揺動ロッドの第1の端部との間の多次元的な回動を確保することができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、
図3に示すように、当該制振機構100は、リセット機構をさらに含む。リセット機構は、制振機構100と、対応する端壁との間に接続される。リセット機構は、制振機構100が車体に上記の剛性運動が発生した後にタイムリーにリセットすることができることを確保するために用いられ、それにより、当該制振機構100が次の突発的な車体運動変化により確実に対応できることが確保される。リセット機構は、リセット弾性部材105及びリセット取り付け座106を含むことが好ましい。リセット弾性部材105の第1の端部は、揺動ロッド102に接続されている。リセット弾性部材105の第2の端部は、リセット取り付け座106に接続されている。リセット取り付け座106は、端壁に固着されている。ここで、リセット弾性部材105の第1の端部は、リセット機構を用いて揺動ロッド102の揺動をリセットさせやすくするように、揺動ロッド102の揺動支点1023と揺動ロッドの第1の端部との間に接続される。
【0063】
理解できるように、リセット弾性部材105は、リセットスプリングであることが好ましい。
【0064】
本願の実施形態に記載の鉄道車両は、複数の車体を含む。なお、当該車体は、運転室の車体であってもよく、中間車体であってもよい。隣接する1対の車体の間には上記のような車体端部の横転防止制振装置が取り付けられる。上記の車体端部の横転防止制振装置を設置することにより、当該鉄道車両は上記の車体端部の横転防止制振装置の全ての利点を備え、ここでは詳細な説明を省略する。
【0065】
本願の実施形態に記載の列車は、複数の鉄道車両を含む。ここで、少なくとも1対の隣接する鉄道車両の間には、上述したような車体端部の横転防止制振装置が取り付けられる。上記の車体端部の横転防止制振装置を設置することにより、当該列車は上記の車体端部の横転防止制振装置の全ての利点を備え、ここでは詳細な説明を省略する。
【0066】
本願の実施形態の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」等の用語が指示する方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本願の実施形態を説明しやすく且つ説明を簡略化するためのものに過ぎず、示された装置又は素子が特定の方位を有しなければならず、特定の方位で構成及び操作しなければならないことを指示又は示唆するためのものではないため、本願の実施形態に対する制限として理解されることができない。また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は説明するためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示又は示唆するためのものとして理解されることはできない。
【0067】
本願の実施形態の説明において、特に明確な規定及び限定がない限り、「互いに接続」、「接続」などの用語は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、着脱可能な接続であってもよく、又は一体に接続されてもよく、機械的接続であってもよく、電気的接続であってもよく、直接接続してもよく、中間媒体を介して間接的に接続してもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記の用語の本願の実施形態における具体的な意味を理解することができる。
【0068】
本願の実施形態において、特に明確な規定及び限定がない限り、第1特徴が第2特徴の「上」または「下」に位置することは、第1特徴が第2特徴と直接的に接触することであってもよく、第1特徴が中間媒体を介して第2特徴と間接的に接触することであってもよい。また、第1特徴が第2特徴の「上」、「上方」及び「上のほう」に位置することは、第1特徴が第2特徴の真上や斜め上に位置することであってもよく、あるいは、第1特徴の水平高さが第2特徴より高いことのみを表す。第1特徴が第2特徴の「下」、「下方」や「下のほう」に位置することは、第1特徴が第2特徴の真下や斜め下に位置することであってもよく、あるいは、第1特徴の水平高さが第2特徴より低いことのみを表す。
【0069】
本明細書の説明において、「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「例」、「具体的な例」、又は「いくつかの例」等の用語を参照した説明は、当該実施形態又は例を参照して説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が、本願の実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記の用語に対する例示的な表現は、必ずしも同じ実施形態又は例に該当するものではない。さらに、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性は、いずれか1つ又は複数の実施形態又は例において適切な形で組み合わせられてもよい。また、互いに矛盾しない場合、当業者は、本明細書において説明された異なる実施形態又は例、及び異なる実施形態又は例の特徴に対して結合及び組み合わせを行ってもよい。
【0070】
最後に説明すべきことは、上記の実施形態は、本願の技術案を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではないことである。上記の実施形態を参照して本願を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として上記の各実施形態に記載の技術案を修正し、又はその一部の技術的特徴を等価的に置き換えることができ、これらの修正又は置き換えは、対応する技術案の本質を本願の各実施形態の技術案の趣旨及び範囲から逸脱させない。
【符号の説明】
【0071】
100:制振機構
101:ダンパ
102:揺動ロッド
1021:第1のロッド
1022:第2のロッド
1023:揺動支点
103:第1取り付け座
104:第2取り付け座
105:リセット弾性部材
106:リセット取り付け座
107:玉軸受
108:第1滑り軸受
109:第2滑り軸受
110:第3滑り軸受
200:接続ロッド
300:車体
301:第1の端壁
302:第2の端壁
A:揺動ロッドの第1の端部
B:揺動ロッドの第2の端部
【国際調査報告】