(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】蓄熱体としてのレールを備える熱貯蔵体
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
F28D20/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022566463
(86)(22)【出願日】2022-01-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2022050001
(87)【国際公開番号】W WO2022157006
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522423961
【氏名又は名称】ルメニオン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】LUMENION GMBH
【住所又は居所原語表記】Ella-Barowsky-Strase 11, 10829 Berlin (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コート,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ピアーダー,ハーバート
(57)【要約】
熱貯蔵体は、熱エネルギーを貯蔵するための蓄熱体(10)と、前記蓄熱体(10)が収容されるハウジング(2)と、熱エネルギーを蓄熱体(10)に供給するための、および/または蓄熱体(10)から運び去るための、伝熱流体(6)用の少なくとも1つのライン(7)と、を備える。蓄熱体(10)の各々は、拡幅端部(13,14)の間のウェブ(12)を有する断面の長手形の金属レール(11)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱貯蔵体であって、
熱エネルギーを貯蔵するための複数の蓄熱体(10)と、
前記蓄熱体(10)を受け入れるハウジング(2)と、そして
熱エネルギーを、前記蓄熱体(10)に向けて、および/または前記蓄熱体(10)から逃がすように、導くための伝熱流体用の少なくとも1つの導管(7)と、を備え、
前記蓄熱体(10)の各々が、幅広端部(13,14)間のウェブ(12)を備える断面の長手形状を有する金属製のレール(11)を含むことを特徴とする、熱貯蔵体。
【請求項2】
前記幅広端部(14)の1つは、断面において、平底を有する基部(16)を形成している、請求項1に記載の熱貯蔵体。
【請求項3】
前記幅広端部(13)の1つは、断面において、前記ウェブ(12)に直接接合されるとともに前記ウェブ(12)の幅よりも大きく且つ前記基部(16)の幅よりも小さい幅を有するレールヘッド(15)を形成している、請求項2に記載の熱貯蔵体。
【請求項4】
前記レールヘッド(15)の質量は、前記レール(11)の全質量の少なくとも40%である、請求項3に記載の熱貯蔵体。
【請求項5】
前記レール(11)は、鉄道レールによって形成されている、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の熱貯蔵体。
【請求項6】
複数の前記レール(11)が、前記ハウジング(2)において複数の層(12A~12F)に互いに積み重ねられている、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の熱貯蔵体。
【請求項7】
同一の前記層(12B)の前記レール(11)は互いに平行に配置され、これに交差するように、隣接する前記層(12A,12C)の前記レール(11)が配置されている、請求項6に記載の熱貯蔵体。
【請求項8】
全てのレール(11)がそれぞれの基部(16)上に立設されているか、或いは、隣接するレール(11)がそれらの基部(16)上にまたはそれらのレールヘッド(15)上に交互に立設されている、請求項3から請求項7の何れか一項に記載の熱貯蔵体。
【請求項9】
前記伝熱流体(6)は、それぞれ隣接するレール(11)の基部(16)、レールヘッド(15)、およびウェブ(12)の間に形成される空スペース(19)内に受け入れられる、請求項3から請求項8の何れか一項に記載の熱貯蔵体。
【請求項10】
前記蓄熱体(10)に向けて熱を導くために、並びに、前記蓄熱体(10)から逃がすように熱を導くために、独立して導かれる2つの伝熱流体(5,6)が設けられており、
前記伝熱流体(5)の1つは、前記レール(11)の間のパイプ導管(8)に導かれ、そして
他方の前記伝熱流体(6)は、前記レール(11)に沿って自由に、或いは、前記レール(11)間の他のパイプ導管に、導かれる、請求項1から請求項9の何れか一項に記載の熱貯蔵体。
【請求項11】
電気加熱素子(20)が、隣接するレール(11)間に、または伝熱流体(6)の回路(7A)内に、配置されている、請求項1から請求項10の何れか一項に記載の熱貯蔵体。
【請求項12】
熱貯蔵体を操作するための方法であって、
熱エネルギーを蓄熱する複数の蓄熱体(10)がハウジング(2)に受け入れられており、
伝熱流体(6)を用いて、前記蓄熱体(10)に向けて、および/または前記蓄熱体(10)から逃がすように、熱エネルギーが導かれ、
前記蓄熱体(10)の各々が、幅広端部(13,14)の間のウェブ(12)を備える断面の長手形状を有する金属製レール(11)を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱貯蔵体および熱貯蔵体の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CO2排出量の削減を伴う気候に優しいエネルギー供給との関連において、蓄熱システムの重要性が高まっている。例えば、晴天や強風の期間中に太陽光発電や風力発電所で発電された電気エネルギーは、熱に変換し熱エネルギーとして熱貯蔵体に蓄えることができる。エネルギーは、後の時点で、例えば本出願人によって欧州特許第3379040号明細書に記載されているように、加熱目的のため、またはタービン発電機ユニットによる電気エネルギー生成のために、取り出すことができる。
【0003】
汎用の熱貯蔵体は、熱エネルギーを貯蔵するための蓄熱体と、蓄熱体を受け入れるハウジングと、蓄熱体に向けて、および/または蓄熱体から逃がすように、熱エネルギーを導くための伝熱流体用の少なくとも1つの導管と、を備える。したがって、熱エネルギーを貯蔵する蓄熱体がハウジング内に受け入れられている熱貯蔵体を操作する一般的な方法では、熱エネルギーは伝熱流体によって蓄熱体に向けて、および/または蓄熱体から逃がすように、導かれる。
【0004】
一般に、蓄熱体は、とりわけ、できるだけ大きな熱容量を有し、高いエネルギー変換効率のために可能な限り高い温度に加熱することができ、迅速な熱交換のために大きな接触面を提供できるべきである。また、加熱段階および冷却段階で、熱貯蔵体を損傷または摩耗させることなく、高いサイクル数が可能であるべきである。独国特許出願公開第102011007335号明細書に記載されているような単純な熱貯蔵体では、蓄熱体としてコンクリートブロックを利用する。しかしながら、損傷を避けるため、このような熱貯蔵体は、理想的には適度な温度および温度変化でのみ操作される。さらに、ブロック形状は小さな接触面しか提供しないため、熱伝達が比較的遅くなる。蓄熱体として、石、粒状材料、または同様の多孔質材料を利用する熱貯蔵体は、より大きな接触面を提供する。しかしながら、高温または多数の加熱サイクルが破壊を招きかねず、結果として粒状物質が崩壊し、例えば流動ガスへの効率的な熱伝達が不可能になる可能性がある。
【0005】
一方、例えば鋼製のような金属製蓄熱体を使用すると、より高い温度、したがって高いエネルギー変換効率を、高い長期安定性で達成可能である。このような汎用の熱貯蔵体は、本出願人によって欧州特許第3139107号明細書に記載されている。ここでは、金属蓄熱体として複数の鋼板を用いており、これらを互いに積み重ねて、その間に熱交換パイプを配置している。しかし、熱貯蔵体を広い温度範囲にわたって操作すると、特に鋼板とは異なる温度を有する熱交換パイプが鋼板と直接接触している場合、熱膨張が問題になり得る。別のアプローチでは、国際公開第2019/025182号、欧州特許出願公開第3633303号明細書、および欧州特許出願公開第3647677号明細書に公開されているように、本出願人によって蓄熱体として特に金属棒が記載されている。金属棒は、互いに離間するように、適切な支持体を介して垂直に配置または水平に保持できる。前述した一般的な目標の大部分は既に達成されているが、引き続き、可能な限り大きな蓄電容量と、シンプルな設計での急速充放電の可能性を実現すること が望まれている。西独国特許第1005673号明細書には、ヘアピン状に曲げられた複数の鉄ロッドが蓄熱体として流路に吊り下げられた熱交換器が記載されている。放熱媒体と被加熱媒体を交互に流路に通し、ヘアピン状に曲げられた複数の鉄ロッドが、それぞれ熱を吸収および放出するようにする。ヘアピン形状により、鉄棒を吊り下げることが可能となり、ひいては洗浄のための鉄棒の振動が容易になる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、シンプルな設計で特に効率的な蓄熱を可能とする熱貯蔵体および方法を提供することと考えることができる。
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する熱貯蔵体によって、および請求項12の特徴を有する方法によって、達成される。
【0008】
前述したタイプの熱貯蔵体において、本発明によれば、蓄熱体の各々は、幅広端部間のウェブを備える断面の長手形状を有する金属製レールを含む。
【0009】
同様に、前述したタイプの方法において、本発明によれば、蓄熱体の各々は、幅広端部間のウェブを備える断面の長手形状を有する金属製レールを含む。
【0010】
ウェブは幅広端部よりも薄いため、比較的大きな接触面を有する自由スペースが熱交換のために提供される。この断面形状は、Iビーム形状とも言われるが、高い機械的安定性をもたらす。また、安定した足場、特に、例えばレールが不正確に配置された場合の崩壊のリスクのない積み重ねを可能にする。幅広端部、すなわち一方または両方の端部は、比較的高い質量、したがって大きな熱容量を提供する。導入部に記載した蓄熱体よりも大きな表面積を有する大きな蓄熱容量と高い安定性とが、本発明によって同時に、複雑なまたはコストのかかる構成を必要とすることなく、達成される。
【0011】
任意の実施形態
本発明による熱貯蔵体および本発明による方法の変形例は、従属請求項の目的であって、以下の記載において説明される。
【0012】
レールの形状
幅広端部の1つは、断面において、必要に応じて平底を有する基部を形成できる。基部はグランド上に立設でき、その平底部によって信頼できる足場が提供される。1つのレールの基部を下のレール上に配置することで、レールを安全に積み重ねることが可能である。
【0013】
付加的にまたは代替的に、断面における幅広端部の1つが、レールヘッドを形成できる。レールヘッドには丸みを帯びさせることができ、ウェブに直接接合できる。レールヘッドの幅はウェブの幅よりも大きく、中央くびれ領域と呼ぶこともできる。より幅広な他方の端部が基部を形成する場合は、レールヘッドの幅を必要に応じて基部の幅よりも小さくする。比較的大きな質量、したがって大きな蓄熱容量が、レールヘッドによって提供される。レールヘッドの質量は、例えば、レールの全質量の少なくとも30%または少なくとも40%を構成するようにできる。これは、(レールの長手方向軸に直交する)レールの断面において、レールヘッドの断面積がレールの断面積の少なくとも30%または少なくとも40%であることを意味する。オプションのレールヘッドの丸みまたは曲率は、ウェブの反対側にあるレールヘッドの側面に関連し、レールが互いに積み重ねられている場合、隣接するレールの平底部との接触面が過度に大きくなるのを防ぐ。湾曲したレールヘッドを有する複数のレールの全体的な配置により、より大きな表面積が、したがって伝熱流体へのより迅速な熱交換が、もたらされる。
【0014】
列車または他の鉄道車両のために製造されるような鉄道レール/列車軌道レールは、レールの好適な例である。鉄道レールは、前述の利点を兼ね備えており、典型的には、適切な鋼または鋼合金で作られ、急速な材料疲労を伴うことなく例えば600℃を超える高温での蓄熱動作を可能にする。
【0015】
レールの配置
レールの少なくとも一部は、互いに隣り合うように配置でき、レール間の剛直な機械的接続は必要とされない。したがって、熱貯蔵体内で温度勾配が生じるとレールが互いに熱的に膨張したり収縮したりできるため、レールの熱膨張が破壊や過度の応力をもたらさない。
【0016】
特に、ハウジング内のレールは、複数の段または層において互いに積み重ねることができる。1つのレイヤーのレールは、その下のレイヤーのレール上に直接配置できる。同じ層に属するレールは、本質的に互いに平行に配置できる。これには、互いに正確に平行になるように配置されたレール、またはレールの長手軸間の角度が最大10°または最大15°になるように配置されたレールが含まれる。直接隣接する層のレールは、1つのレールがその下の複数のレール上に載るように、これに交差するように、特に直交するように、配置できる。これにより、上層のレールが誤って下層のレールの間に落下するリスクのない、信頼性の高い足場が確保される。
【0017】
全てのレールは、それぞれの基部の上に立設できる。したがって、レールの最下層の基部が基板上に立設される一方、残りの層の基部はそれらの下のレール上に置かれている。或いは、いくつかのレールは、それらの基部が側方または上方を向きレールヘッドが潜在的に下方を向くように、回転させて配置することもできる。特に、隣接するレールは、基部またはレールヘッド上に交互に立設でき、すなわち同じ層内のレールは、それらの基部もしくはヘッドが下を向くように交互に方向付けられる。これにより、それぞれの基部上に立設する2つのレール間の自由スペースにさらなるレールを受け入れ可能となるため、より高い蓄熱容量が同じスペースで提供され、同時に、レールの表面は伝熱流体に対してアクセス可能に維持される。
【0018】
記載した変形例では、レールが互いに積み重ねられているが、例えば(金属製)分離プレートまたは穴あきプレートによって、レールが互いに直接接触せず、むしろ離間するように変更することもできる。
【0019】
原理的には、代替的に、レールを直立させて配置することもでき、これにより、それらの長手軸は垂直となって、記載した断面はそれぞれのレールの基部表面を形成する。前述の利点は、本実施形態においても達成されるが、特に、記載した形状が、迅速な熱交換と同時に高い機械的安定性のための十分な接触表面積を提供する。レールを互いに直接接触するように配置すれば、大きな蓄熱容量、並びに、熱交換のための大きな表面積を限られたスペース内で提供できる。例えば円形または正方形の断面を有する長手状の蓄熱体と比較して、本発明による形状は、同じ断面積/蓄熱容量で、大きな表面積を提供する。さらに、隣接するレール間が直接接触している場合、例えば正方形断面を有し面接触(flush contact)によって表面積の大部分に伝熱流体がアクセス不能となるバーとは対照的に、伝熱流体のレール表面の大部分へのアクセス性が保持される。
【0020】
伝熱流体と熱源
原理的には、伝熱流体は、任意の気体または気体混合物、蒸気または任意の液体、例えば水または熱油とすることができる。混合ガスは、特に周囲空気またはシールドガスとすることができ、その水分含有量および/または酸素含有量は、例えば腐食の防止のために低減される。本発明の変形例では、伝熱流体は、蓄熱体を加熱するために、並びに、(別の時点で)蓄熱体から熱を取り出すために、利用される。本発明の他の変形例では、伝熱流体は、蓄熱体を加熱するためにのみ、または蓄熱体から熱を取り出すためにのみ、利用される。これらの変形例では、前述した伝熱流体から第2の伝熱流体を独立させて導き、一方の伝熱流体は熱を供給するためにのみ利用し、他方の伝熱流体は熱を除去するためにのみ利用できる。2つの伝熱流体は、同一の流体または異なる流体とすることができる。より詳細に後に記載するように、熱供給をハウジング内の加熱素子によって行うことも可能であり、これにより、熱抽出のための1つの伝熱流体があれば十分となる。
【0021】
伝熱流体は、隣接するレールの基部、ヘッド、およびウェブの間に形成される空のスペースに受け入れることができる。レールに直接沿って流れるため、レールに直接接触させることができる。
【0022】
独立して導かれる2つの伝熱流体が、蓄熱体に熱を導くために、および蓄熱体から熱を導くために、利用される場合、一方の伝熱流体をレール間のパイプ導管で導き、他方の伝熱流体をレール間の他のパイプ導管またはレールに沿って自由に(すなわち、レールに直接触れるように)導くことができる。パイプ導管は、より良い熱接触を提供するために、レールに押し当てるか溶接できる。
【0023】
冒頭で述べた伝熱流体用の導管は、ハウジングに案内される導管とすることができ、伝熱流体は、ハウジング内を自由に流れる。或いは、導管は、ハウジング内部のパイプを含むことができ、伝熱流体は、ハウジング内の残りの自由スペースを通ってではなくパイプを通ってのみ流れる。導管は、導管システムと解することができ、これは、互いに隣り合って走る複数のパイプへの接合部を備えることもできる。導管はまた、例えば1つまたは複数のポンプによって伝熱流体が循環する回路を形成できる。回路は、完全にハウジング内部を走らせることも、部分的にハウジングの内部と外部とを走らせることもできる。特にハウジングの外側に配置できる熱交換器は、伝熱流体に熱を伝達するために、および/または伝熱流体から熱を取り出すために、導管に結合できる。この熱交換器は、別の流体または流体回路に例えば熱交換を提供できる。特に、別のシステムからの廃熱、例えば製鉄所または発電所からの廃熱、燃焼プロセスからの排ガスの熱、または発熱化学反応によって放出される熱を、熱交換器を介して導入できる。
【0024】
熱貯蔵体は、必要に応じて電気加熱素子を備えることもでき、これによって電気エネルギーが熱エネルギーに変換され、次いでそれが蓄熱体に伝達され、そこで貯蔵される。加熱素子は、加熱素子からの熱が伝熱流体を介してレールに伝達されるように、伝熱流体の回路内に配置できる。或いは、電気加熱素子は、隣接するレール間に配置することもできる。加熱素子のための適切な空スペースは、レールのウェブおよび肉厚な2つの端部によって、並びに、少なくとも1つの隣接するレールの周辺部によって、レール間の断面に形成される。加熱素子は、原理的には任意の設計とすることができ、例えば電気抵抗の結果として熱を発生させるものとできる。
【0025】
一般的な特徴
ハウジングは、基本的に、蓄熱体を囲む任意の形状の壁と解することができる。ハウジングは、蓄熱体からハウジング外の環境への熱損失を低減するために断熱材を備えることができる。いくつかの実施形態では、ハウジングが伝熱流体の境界を構成する。伝熱流体が気体または蒸気状の形態である場合、ハウジングは、流体ポートを除き、気密に作製できる。流体ポートは、ハウジングを介して伝熱流体を搬送するために伝熱流体の導管に接続できる。原則として、ハウジングは、液体の形態の伝熱流体で満たすこともでき、ここではレールが液体中に沈められる。他の実施形態において、ハウジングの壁は伝熱流体と直接接触せず、代わりに、伝熱流体用の導管は、レールに沿ってハウジングを貫通する複数の配管を備える。
【0026】
レールの長手形状とは、レールの長手方向の寸法が、レールの幅および/または高さと比べて少なくとも5倍または少なくとも10倍大きいことを意味するものと解することができるが、ここで幅および高さは、長手方向に直交するものと解されるべきである。断面は、長手方向に直交する。レールの断面形状は、長手方向全体に沿って一定とできる。原理的には、レールを長手方向に沿って湾曲させることもできる。
【0027】
また、付加的な装置の特徴として記載した本発明の特徴が意図した通りに導入された場合には、本発明による方法の変形例がもたらされる。逆に、記載した方法の変形例を実施するように、熱貯蔵体を構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明のさらなる効果および特徴を、添付の模式図を参照しつつ以下に記載する。
【
図1】
図1は、本発明の熱貯蔵体の実施形態の一例の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の熱貯蔵体の実施形態の一例のレールの断面を示している。
【
図3】
図3は、本発明の熱貯蔵体の実施形態のさらなる例の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の熱貯蔵体の実施形態の一例におけるレールの配置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
種々の実施形態例について、図面を参照しつつ以下に記載する。原則として、類似の要素および類似の方法で機能する要素は、同一の参照符号によって示す。
【0030】
図1および図2の実施形態例
本発明による熱貯蔵体の実施形態の一例について、蓄熱体10として複数のレール11を有する熱貯蔵体1を模式的に示している
図1および
図2を参照しつつ、以下に記載する。
図2は、レール11の1つの断面を示している。
【0031】
熱貯蔵体1は、蓄熱体10として複数のレール11を受け入れるハウジング2を備える。伝熱流体6用の導管7は、ハウジング2に案内されている。図示の例では、導管7は、伝熱流体6がレール11に沿ってハウジング2を自由に流れることができるように、ハウジング2に案内されている。伝熱流体6用の導管7を有する回路7Aが形成されており、伝熱流体6を、例えばここには図示しないポンプにより、蓄熱体10に沿って循環させることができる。
【0032】
導管7は、導管7内の伝熱流体6と、独立導管4内の別の流体との間で熱エネルギーを移動させるため、熱交換器3に熱的に連結される。熱交換器3は、特に、導管4内の流体を加熱して例えば建物や温水加熱システムへの供給に利用できるように、熱貯蔵体1からの熱の取り出しに利用できる。高温熱貯蔵体としての構成により、導管4内の加熱流体は、電気エネルギーの生成にも適している。熱エネルギーの導入は、図示の熱交換器3と同様に導管7に熱的に連結される熱交換器でも起こり得る。しかしながら、図示の例では、代わりに、伝熱流体6の加熱に電気エネルギーを利用する電気加熱素子20が設けられている。
【0033】
従来の熱貯蔵体とは異なり、図示されている例では、列車の線路レールである複数のレール11が、蓄熱体10として用いられている。レール11は、層12A~12Dにおいて互いに積み重ねられている。複数のレール11は、水平に延びるそれぞれの層12A、層12B、層12C、または層12Dを形成するように、互いに略平行に配置できる。直接隣接する層、例えば層12Aおよび層12Bのレール11は、互いに相対的に交差するように配置されている。図示された例では、異なる層のレール11が互いに直交するように配置されているが、他の角度も可能である。したがって、レール11は、その下の複数の、例えば少なくとも5本または少なくとも10本のレール11の上に載置される。レール11間には伝熱流体6が流れる空スペース19が形成され、ここを通って伝熱流体6が流れる。このようにして、空スペース19が、レール11の長手方向に沿ってチャネルを形成する。
【0034】
レール11は、
図2に示すように、その長さに沿って均一な断面を有することができる。断面において、レール11は、比較的幅狭なウェブ12によって互いに接合された2つの幅広端部13,14からなる。前述の断面は、一部材として、または少なくとも同じ材料から、製造できる。幅広端部14は基部16を構成し、幅広端部13はレールヘッド15を形成する。基部16は、信頼性の高い足場に寄与する平底部を有している。基部16またはその底部の幅も、ウェブ12の幅よりも大きく、そしてレールヘッド15の幅よりも大きい。幅は、レール11の長手軸に直交する方向、並びに、レールヘッド15と基部16とが接合される方向に直交する方向、と解されるべきである。したがって、基部16の底部の表面積は、基部の幅および長さによって画定される。
【0035】
レールヘッド15は、比較的大きな質量を有しており、したがって大量の熱エネルギーの貯蔵を可能にする。同時に、レール11の表面積と、したがって熱交換とは、例えば同じ長さおよび断面積の長方形の棒の場合よりもかなり大きい。レールヘッド15の幅が基部16の幅よりも小さいほど、レールヘッド15上に配置されたさらなるレールの底部はアクセス可能なままとなる。これにより、レールヘッドの代わりに基部と同じ形状を有する対称的な二重Tビーム断面の場合よりも、熱エネルギーの良好な交換が可能になる。また、レールヘッド15の少なくとも上部に丸みをもたせると、隣接するレールとの接触表面積が小さくなって、レール11が伝熱流体と熱エネルギーを交換できる面はさらに大きくなる。
【0036】
図1は、全てのレール11の長手方向が水平面内に延び、レール11が互いに積み重ねられているレール11の配置を示しているが、記載されている効果と利点の多くは、これらの長手軸が垂直方向に延びるようにレール11が直立して立設された変形例でも達成される。垂直に配置されるレール11は、その長手軸に沿った伝熱流体の連続的な流れを容易にするために、必要に応じて、穴あきプレートの上に立設できる。レール11の可能な別の配置について、
図3を参照しつつ以下に記載する。
【0037】
図3の実施形態例
図3は、本発明による熱貯蔵体1の別の一変形実施形態を模式的に示している。この変形例は、レール11の配置において、上に記載した実施形態例と相違している。これらもまた、長手軸が水平方向に配置された鉄道レールである。しかしながら、層内(すなわち同じ高さ)では、基部16とレールヘッド13が交互に下方を向いている。よって、ヘッド上に立設するレール11は、基部16上に立設する2つのレール11の間に配置される。これにより、原理的に伝熱流体が利用できるレール11間の容積は減少する。同時に、レール11のアクセス可能な表面は、
図1に示されている(同数または同質量のレールを有する)例と本質的に同じままとなる。使用される伝熱流体および所望の流れ特性に応じて、
図1または
図3に示される設計が、より好適なものとなり得る。
【0038】
図3はまた、レール11が積み重ねられている場合、各段または層12A~12Fが隣接する段に対して交差または直交するように向けられる必要はないことを示している。代わりに、上下に配置された2つのレール11の長手軸は、例えば層12Aおよび層12Bでは、本質的に平行である。その上に配置された(層12Cの)次のレール11は、その下の2つのレール11に直交するように走っている。
図3はさらに、例として、金属チェーンなどのオプションの留め具を使用して、レールの一部をそれぞれ所定の位置に保持したり、熱貯蔵体の組み立て中にレールの輸送を容易にしたりできることを示している。
【0039】
図4の実施形態例
図4は、
図1または
図2の実施形態例において採用できるレール11の代替配置を示している。伝熱流体は、ここでも隣接するレール11間に形成された自由スペースまたは空スペース19に受け入れられる。また、さらなる伝熱流体5が通るパイプ導管8が、空スペース19の少なくとも一部を貫通するように導かれている。2つの伝熱流体5,6の一方は、熱貯蔵体に熱を導入するために利用でき、2つの伝熱流体5,6の他方は、熱貯蔵体から熱を取り出す役割を果たす。
【0040】
記載した実施形態の例は純粋に例示であって、添付の特許請求の範囲の範囲内で同実施形態の変形例が可能である。例えば、伝熱流体用の導管7の設計は、導管7もハウジング2を通って延びるように、または専らハウジング2内に延びるように、および/または導管7で形成された閉回路7Aの代わりにレール11への/レール11からの伝熱流体6の供給および除去だけが行われるように、変更できる。一般に、ある要素の記載は、そのような要素の「少なくとも1つ」を意味すると解されるべきである。例えば、ハウジング2内の異なるレール11に対して、部分的に独立して、または完全に独立して、伝熱流体を導くために、複数の導管7を設けることも可能である。これにより、レール11を異なる温度に加熱でき、また、どのレールから熱を取り出すかの選択が生じ得るので、熱エネルギー使用のエネルギー変換効率を潜在的に高めることが可能となる。図面はまた、模式的な原理と解されるべきであって、記載したレールに加えて、さらなる構成要素、例えば、ポンプ、ファン、整流器(flow baffle)、断熱材、圧力放出導管、温度および圧力センサ、またはさらなる蓄熱体、で補完することできる。
【符号の説明】
【0041】
1…熱貯蔵体
2…ハウジング
3…熱交換器
4…独立導管/独立流体回路
5…伝熱流体
6…伝熱流体
7…伝熱流体用導管
7A…伝熱流体用回路
8…伝熱流体用パイプ導管
10…蓄熱体
11…レール
12A~12F…レール11の層
12…ウェブ
13,14…幅広端部
15…レールヘッド
16…基部
19…レール11間の空スペース
20…電気加熱素子
【国際調査報告】