(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】複数のプロファイルを有するレリーフ前駆体の露光のための方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240122BHJP
【FI】
G03F7/20 511
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023530819
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2021086478
(87)【国際公開番号】W WO2022129516
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508373925
【氏名又は名称】エクシス ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】XSYS Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 77731 Willstaett, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ターテ, マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー, マティアス
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA01
2H197AA29
2H197AA31
2H197AB11
2H197CA01
2H197CA07
2H197CA15
2H197HA01
(57)【要約】
レリーフ前駆体Pを光源(2)で露光し、光源(2)の照射領域が前駆体の領域の一部を覆う方法、制御手段および露光装置であって、前駆体の全領域の露光を、露光通過中に光源と前駆体とを相対的に移動させて実施し、この方法は、感光性層上にマスク(4)を設けるステップ(20)と、第1の露光ステップ(ES1)であって、一つ又は複数の露光通過中に第1の強度プロファイル(IP1)及び第1の速度プロファイル(SP1)に従って前駆体を露光する、第1の露光ステップ(ES1)と、第2の露光ステップ(ES2)であって、一つ又は複数の露光通過中に第1の強度プロファイル(IP1)とは異なる第2の強度プロファイル(IP2)及び第1の速度プロファイル(SP1)とは異なる第2の速度プロファイル(SP2)に従って前駆体を露光する、第2の露光ステップ(ES2)と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レリーフ前駆体(P)を光源(2)で露光する方法であって、前記光源(2)の照射領域が、前記前駆体の領域の一部を覆い、前記前駆体の全領域を露光通過中に前記光源と前記前駆体とを相対的に移動させることにより露光し、前記方法は、
前記前駆体(P)の感光層上にマスク(4)を設けるステップ(20)と、
第1の露光ステップ(ES1)であって、一つ又は複数の露光通過中に、第1の強度プロファイル(IP1)および第1の速度プロファイル(SP1)に従って、前記前駆体をマスクを介して露光する、第1の露光ステップ(ES1)と、
第2の露光ステップ(ES2)であって、一つ又は複数の露光通過中に、第1の強度プロファイル(IP1)とは異なる第2の強度プロファイル(IP2)および第1の速度プロファイル(SP1)とは異なる第2の速度プロファイル(SP2)に従って、前記前駆体をマスクを介して露光する、第1の露光ステップ(ES2)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の速度プロファイル(SP1)は、前記第1の露光ステップ(ES1)の一つ又は複数の露光通過中の速度が実質的に一定であるようなプロファイルであり、かつ/または第2の速度プロファイル(SP2)は、前記第2の露光ステップ(ES2)の一つ又は複数の露光通過中の速度が実質的に一定であるようなプロファイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の露光ステップ(ES1)の露光通過中の平均速度(S1)が、第2の露光ステップ(ES2)の露光通過中の平均速度(S2)よりも高い、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の強度プロファイル(IP1)は、前記第1の露光ステップ(ES1)の一つ又は複数の露光通過中の強度が実質的に一定であるようなプロファイルであり、かつ/または、第2の第1の強度プロファイル(IP2)は、前記第2の露光ステップ(ES2)の一つ又は複数の露光通過中の強度が実質的に一定であるようなプロファイルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の露光ステップ(ES1)の露光通過中の平均強度(I1)は、第2の露光ステップ(ES2)の露光通過中の平均強度(I2)よりも高い、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の露光ステップ(ES1)は、第1の数の露光通過(n1)を有し、かつ/または、第2の露光ステップ(ES2)は、第2の数の露光通過(n2)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の露光ステップ(ES1)の露光通過中に照射される第1の線量は、前記第2の露光ステップ(ES2)の露光通過中に照射される線量よりも低い、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の線量および第2の線量は、それぞれ0.2-30J/cm
2である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の線量は、0.2~20J/cm
2、前記第2の線量は、2~28J/cm
2である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の数の露光通過(n1)と前記第2の数の露光通過(n2)が異なる、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の数の露光通過(n1)が第2の数の露光通過(n2)よりも高い、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の数の露光通過(n1)は2以上であり、前記第2の数の露光通過(n2)は1である、請求項6-11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記光源(2)は、第1の方向への第1の移動および第2の反対方向への第2の移動を伴う露光サイクルで移動され、各露光サイクルは1つ又は2つの露光通過を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の露光ステップの一つ又は複数の第1の露光通過と、前記第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過とが、同一方向への移動中に実施される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の露光ステップの一つ又は複数の露光通過及び/又は前記第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過は、両方向の移動中に実施される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の露光ステップの露光通過における第1の平均速度(S1)は、1000~10000mm/分の範囲であり、前記第2の露光ステップの露光通過における平均速度(S2)は、10~1000mm/分の範囲である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の露光ステップの露光通過中の平均強度(I1)は、30~10000mW/cm
2の範囲であり、前記第2の露光ステップの露光通過中の平均強度(I2)は、1~5000mW/cm
2の範囲である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の露光ステップの露光通過中の平均速度(S1)と前記第2の露光ステップの露光通過中の平均速度(S2)との比が、1.5より高く、好ましくは2より高く、第2の平均速度と第1の平均速度との比が、0.05より高く、好ましくは0.08より高い、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の露光ステップの露光通過中の平均強度(I1)と前記第2の露光ステップの露光通過中の平均強度(I2)との比が、0.15より高く、好ましくは0.5より高く、より好ましくは1より高く、前記第2の平均強度と前記第1の平均強度との比が、0.5より高く、好ましくは0.7より高く、より好ましくは1より高い、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
第3の速度および第3の強度で露光するステップを更に含み、前記第3の速度が前記第2の速度と異なり、かつ/または前記第3の強度が前記第2の強度と異なる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の露光ステップ(ES1)および前記第2の露光ステップ(ES2)の前に、前記第1の強度プロファイル(IP1)、前記第1の速度プロファイル(SP1)、前記第2の強度プロファイル(IP2)および前記第2の速度プロファイル(SP2)をオペレータインターフェース(7)を介して受け取るステップ(21)を更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
マスク(4)を提供するステップ(20)は、予め作製されたマスク層を加える工程、または前記前駆体の真性層であるマスク層における透明領域を生成する工程を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の露光ステップおよび第2の露光ステップの前、後、または間に露光された前記前駆体のレリーフ形成側とは反対の側からの電磁放射線に前記前駆体を背面露光するステップを更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記背面露光は、前記第1の露光ステップ(ES1)および/または前記第2の露光ステップ(ES2)中に実施される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
入力された前記第1の速度プロファイルおよび第2の速度プロファイル(SP1、SP2)に基づいて、前記第1の露光ステップおよび/または第2の露光ステップ(ES1、ES2)中に背面露光ステップを実施するか否かを更に含む、請求項19及び21に記載の方法。
【請求項26】
前記電磁放射線の波長は、200~2000nmの範囲である、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の露光ステップ(ES2)の後に、液体による処理、ガスによる処理、熱処理、表面との接触、溶解または液化可能な材料の除去、電磁放射への曝露、プラズマへの曝露、切断、サンディング、またはこれらの組合せを含むグループから選択される更なるステップが実施される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記レリーフ前駆体(P)は、少なくとも寸法的に安定な支持層、一つ又は複数の感光層、および任意でカバー層、接着層、障壁層、保護層、粒子層、マスク層、またはこれらの組合せを含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の方法によって得られるレリーフ構造体。
【請求項30】
フレキソ印刷版、レタープレス版、レリーフ印刷版、(可撓性の)プリント回路基板、電子素子、マイクロ流体素子、マイクロ流体工学素子、マイクロリアクタ、泳動セル、フォトニック結晶、光学素子またはフレネルレンズとしての請求項29に記載のレリーフ構造体の使用。
【請求項31】
光源(2)によるレリーフ前駆体(P)の露光を制御するように構成された制御手段(5)であって、前記光源(2)の照射領域が前記前駆体の領域の一部を覆い、前記前駆体の全領域の露光を、露光通過中に前記光源と前記前駆体とを相対的に移動させて実施し、前記制御手段(5)は、前記前駆体の表面の強度と前記光源(2)の移動速度とを第1の露光ステップ(ES1)および第2の露光ステップ(ES2)が実施されるように制御し、
前記第1の露光ステップ(ES1)は、一つ又は複数の露光通過中に、第1の強度プロファイル(IP1)および第1の速度プロファイル(SP1)に従って、前記前駆体をマスク(4)を介して露光する工程を含み、
前記第2の露光ステップ(ES2)は、一つ又は複数の露光通過中に、第1の強度プロファイル(IP1)とは異なる第2の強度プロファイル(IP2)および第1の速度プロファイル(SP1)とは異なる第2の速度プロファイル(SP2)に従って、前記前駆体を前記マスク(4)を介して露光する工程を含む、制御手段。
【請求項32】
前記第1の露光ステップの前記一つ又は複数の露光通過の速度が実質的に一定であるように、かつ/または、前記第2の露光ステップの前記一つ又は複数の露光通過中の速度が実質的に一定であるように、前記光源(2)の移動速度を制御するように構成される、請求項31に記載の制御手段。
【請求項33】
前記第1の露光ステップの露光通過中の平均速度(S1)は、前記第2の露光ステップの露光通過中の平均速度(S2)よりも高い、請求項31~32のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項34】
前記第1の露光ステップの前記一つ又は複数の露光通過中の前記強度が実質的に一定であるように、かつ/または、前記第2の露光ステップの前記一つ又は複数の露光通過中の前記強度が実質的に一定であるように、前記前駆体の表面における前記強度を制御するように構成される、請求項31~33のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項35】
前記第1の露光ステップの露光通過中の前記平均強度(I1)は、前記第2の露光ステップの露光通過中の前記平均強度(I2)よりも高い、請求項31~34のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項36】
前記第1の露光ステップは、第1の数の露光通過を含み、かつ/または、前記第2の露光ステップは、第2の数の露光通過を含み、好ましくは、第1の通過数が第2の通過数とは異なり、より好ましくは、第1の通過数が第2の通過数よりも高い、請求項31~35のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項37】
前記第1の露光ステップの露光通過中に照射される第1の線量は、前記第2の露光ステップの露光通過中に照射される線量よりも低い、請求項31~36のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項38】
前記光源は、第1の方向への第1の移動および第2の反対方向への第2の移動とともに周期的に移動され、各周期は、1つ又は2つの露光通過を含む、請求項31~37のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項39】
レリーフ前駆体の第1の側を露光するように構成された第1の光源(1)と、一つ又は複数の露光通過中に前記第1の側とは反対側のレリーフ前駆体の第2の側を露光するように構成された移動可能な第2の光源(2)と、前記第2の光源を移動させるように構成された移動手段と、請求項31~38のいずれか一項に記載の制御手段と、を備える露光装置。
【請求項40】
前記制御手段は、前記第1の露光ステップおよび第2の露光ステップの前、後、またはその間に露光された前記前駆体のレリーフ形成側とは反対の側からの電磁放射線に前記前駆体を背面露光するように構成される、請求項39に記載の露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、レリーフ前駆体、特に印刷版前駆体を露光するための装置および方法に関する。
【0002】
【背景】
【0003】
レリーフ構造は、画像情報を画像形成可能層上に転写し、画像形成可能層の一部を除去することによって作成することができる。次いで、形成されたレリーフを使用して、印刷ステップにおける情報を基板上に転写することができる。レリーフ前駆体の一例は印刷版前駆体である。デジタル画像形成可能な可撓性印刷版前駆体は公知であり、典型的には少なくとも寸法安定性支持層、感光層およびデジタル画像形成可能なマスク層を含む。デジタル画像形成可能マスク層は、例えば、レーザー除去可能層とすることができる。従来の印刷版前駆体の場合において、デジタル画像形成可能層は、感光層に取り付けられた別個のマスクによって置き換えられる。
【0004】
印刷版レリーフ前駆体から印刷版を作り出すために、既存の方法によれば、まず、印刷されるべき画像データに基づいて、マスクがデジタル画像形成可能層に書き込まれる。マスクの書き込みに続いて、感光性層が重合もしくは架橋、またはマスクで覆われていない領域で感光性層の溶解性もしくは流動性を変化させる反応を受けるように、版がマスクを通して放射線で露光される。露光後、マスクおよび感光層の非露光部分の残留物が除去される。これは、洗浄装置中の一つ又は複数の液体を用いて、または感光層の非露光材料が温度上昇によって液化され除去される熱現像によって行うことができる。
【0005】
印刷版前駆体のための露光装置が知られている。露光装置は、背面露光用の第1の光源と、前面露光用の第2の光源とを備えてもよい。背面露光は、一組のUV光管を使用して行うことができる。背面露光は、レリーフ構造が生成される固体層(床)を作成する。前面露光は、一組のUV光管を用いて行うこともできるし、移動可能なレーザやLEDバーのような移動可能なUV光源を用いて行うこともできるし、静止光源、例えば管状光源の配置を用いて行うこともできる。露光装置によっては、要求に応じて、前面露光のみを行うものや、背面露光のみを行うものがある。一部の場合には、露光装置は両面から露光することができ、本発明の実施形態はそのような場合に関する。
【0006】
従来技術として、フレキソ印刷版を作り出すための公知の方法を開示する公知の米国特許第2018/0004093号、米国特許第2018/0126721号および米国特許第2013/0242276号がある。
【0007】
【概要】
【0008】
本発明の実施形態の目的は、効率および/または印刷品質が向上した複数のプロファイルに従ってレリーフ前駆体を露光するための装置および方法を提供することである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、レリーフ前駆体を光源で露光する方法であって、光源の照射領域が前駆体の領域の一部を覆っており、前駆体の全領域の露光は、露光通過中に、光源と前駆体とを相対的に移動させることによって実施される方法が提供される。この方法は、前駆体の感光層上にマスクを設けるステップと、第1のステップと、第2のステップとを含み、第1のステップは、一つ又は複数の露光通過中に第1の強度プロファイルおよび第1の速度プロファイルに従ってマスクを介して前駆体を露光し、第2のステップは、一つ又は複数の露光通過中に第1の強度プロファイルとは異なる第2の強度プロファイルおよび第1の速度プロファイルとは異なる第2の速度プロファイルに従ってマスクを介して前駆体を露光する。
【0010】
したがって、本発明の実施形態によれば、2つの露光ステップ間で強度プロファイルと速度プロファイルの両方を変更することができる。このようにして、印刷品質と消費電力の両方を状況に応じて多変数的に制御することができる。印刷品質と効率(消費電力)の両方に影響する強度および速度、より精細でより多目的な制御は、強度および速度の両方についての異なるプロファイルに従って第1の露光ステップおよび第2の露光ステップを制御することによって達成される。このようにして、最良の印刷品質を最良の効率で達成しながら、より広い範囲のレリーフ前駆体を生み出すことができる。露光されるレリーフ前駆体の特性(反応性、とりわけ厚さ)に応じて、典型的には、高強度での一つ又は複数の高速露光通過の後に、低強度での一つ又は複数の低速露光通過を続けて、高い硬化品質を達成しながら熱蓄積を緩和することができる。
【0011】
好ましい実施形態によれば、第1の速度プロファイルは、第1の露光ステップの一つ又は複数の露光通過中の速度が実質的に一定であるようなプロファイルであり、かつ/または、第2の速度プロファイルは、第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過中の速度が実質的に一定であるようなプロファイルである。代替的に、第1の速度プロファイルまたは第2の速度プロファイルの少なくとも1つは、経時的に変化するプロファイル、典型的には経時的に速度が減少または増加するプロファイルとすることができる。プロファイルは、直線的または段階的に変化させることができる。このようにして、露光ステップの更に細かい制御を達成することができる。
【0012】
好ましい実施形態によれば、第1の露光ステップの露光通過中の平均速度は、第2の露光ステップの露光通過中の平均速度よりも高い。このようにして、高速露光ステップが低速露光ステップに先行する。典型的には、高速露光ステップは第1の強度に関連し、一方、低速露光ステップはより低い第2の強度に関連するので、このようにして、レリーフ前駆体は、高速露光ステップ中に平坦なドットを形成しながらあまり加熱されず、低速露光ステップ中に硬化を終了する。あるいは、第1の露光ステップの露光通過中の平均速度は、第2の露光の露光通過中の平均速度よりも低くてもよい。このようにして、低速露光ステップが高速露光ステップに先行する。このようにして、高強度での高速最終露光ステップは、露光後ステップとしても機能することができ、したがって、後処理として実施する必要はない。後処理時間を省略または短縮すると、レリーフ前駆体の総現像時間が短縮される。
【0013】
好ましい実施形態によれば、第1の強度プロファイルは、第1の露光ステップの一つ又は複数の露光通過中の強度が実質的に一定であるようなプロファイルであり、かつ/または、第2の第1の強度プロファイルは、第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過中の強度が実質的に一定であるようなプロファイルである。あるいは、第1の強度プロファイルまたは第2の強度プロファイルのうちの少なくとも1つは、経時的に変化するプロファイルであってもよく、典型的には、経時的に強度が減少または増加するプロファイルである。プロファイルは、直線的または段階的に変化させることができる。このようにして、露光ステップの更に細かい制御を達成することができる。
【0014】
好ましい実施形態によれば、第1の露光ステップの露光通過中の平均強度は、第2の露光ステップの露光通過中の平均強度よりも高い。その場合、高強度露光ステップは、低(より低い)強度露光ステップに先行する。典型的には、高強度露光ステップは速い速度に関連し、一方、低強度露光ステップはより低い第2の速度に関連する。このようにして、レリーフ前駆体は平坦なドットを形成し、高強度露光ステップ中にあまり加熱されず、一方、低強度露光ステップ中に硬化を終了する。あるいは、第1の強度は、第2の強度よりも低くてもよい。その場合、低強度露光ステップは、高強度露光ステップに先行する。このようにして、高強度での高速最終露光ステップは、露光後ステップとしても機能することができ、したがって、別個の後処理として実施する必要はない。後処理時間を省略または短縮することにより、レリーフ前駆体の総現像時間が短縮される。
【0015】
好ましい実施形態によれば、第1の露光ステップは第1の数の露光通過を含み、かつ/または、第2の露光ステップは第2の数の露光通過を含む。このようにして、露光ステップを制御するための別の変数が提供される。露光通過を繰り返すことによって、所望の品質および効率を得るためにレリーフ前駆体の露光がどのように実施されるかを更に制御するために、線量を通過の間に分配することができる。
【0016】
好ましい実施形態によれば、第1の露光ステップの通過中に加えられる第1の線量は、第2の露光ステップの通過中に加えられる線量よりも低い。好ましくは、第1の線量および第2の線量はそれぞれ0.2-30J/cm2である。より好ましくは、第1の線量は0.2-20J/cm2、好ましくは、0,5-18J/cm2、より好ましくは、1-17J/cm2のであり、第2の線量は、2-28J/cm2、好ましくは、5-25J/cm2、より好ましくは、10-20J/cm2である。
【0017】
好ましい実施形態によれば、第1の数の露光通過は、第2の数の露光通過とは異なる。このようにして、異なるプロファイルに従った異なる露光挙動を選択的に繰り返すことができる。好ましくは、第1の数の露光通過は、第2の数の露光通過よりも高い。このようにして、全線量を露光通過の間に広げることができる。より好ましくは、第1の数の露光通過は2以上であり、第2の数の露光通過は1である。
【0018】
好ましい実施形態によれば、光源は、第1の方向への第1の移動および第2の反対方向への第2の移動を伴う露光サイクルで移動され、各露光サイクルは1つまたは2つの露光通過を含む。このように、光源による露光は、一方向または両方向に移動しながら実施することができる。
【0019】
好ましい実施形態において、第1の露光ステップの一つ又は複数の第1の露光通過と第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過は、同じ方向への移動中に実施される。あるいは、第1の露光ステップの一つ又は複数の露光通過は第1の方向への移動中に実施され、第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過は第2の反対方向への移動中に実施される。代替的に、第1の露光ステップの一つ又は複数の露光通過および/または第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過が、両方向の移動中に実施される。このようにして、第1の露光ステップと第2の露光ステップとで別々に露光し、状況(考慮すべき可能なパラメータの間の厚さ、反応性)に応じて露光をカスタマイズすることが可能である。
【0020】
好ましくは、第1の露光ステップの露光通過中の平均速度が500-10000mm/分であり、第2の露光ステップの露光通過中の平均速度が10-1000mm/分である。
【0021】
好ましくは、第1の露光ステップの露光通過中の平均強度は30-10000mW/cm2、好ましくは、50-5000mW/cm2、より好ましくは、50-2500mW/cm2であり、第2の露光ステップの露光通過中の平均強度は1-5000mW/cm2、好ましくは、20-2500mW/cm2、より好ましくは、50-500mW/cm2である。
【0022】
第1の露光ステップの一つ又は複数の露光通過中の第1の強度または第1の強度プロファイルに言及する場合、それは、レリーフ前駆体が露光装置に配置されるときに、レリーフ前駆体の第1の側に対応する平面内に置かれるように配置された直径16mmのダイアフラムを有するOphir 10A-V1.1センサ(Ophir Optronics Solutions Ltd)によって測定された強度を指すことを意図する。従って、露光装置が支持面を有する担持構造体、例えば、支持面を有するガラス版を有する場合、センサは、その測定側が第1の光源に向けられた状態で、支持面上に設定可能である。これは
図7に図示されており、センサSは、例えばガラス版のような支持構造体3の支持面上に置かれ、センサSの測定側Mは、測定側Mが第1の光源によって発せられた光を受光するように支持面上に置かれている。
【0023】
第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過中の第2の強度または第2の強度プロファイルに言及する場合、レリーフ前駆体が露光装置内に配置されたときのレリーフ前駆体の第1の側に対応する平面と第2の光源との間の強度を、前記平面から15mmの距離で言及することを意図する。したがって、露光装置が支持面、例えばガラス版を有する担持構造体を備えるとき合、強度は、支持面上方15mmの距離における強度である。しかしながら、センサは一定の高さを有し、第2の光源と支持面との間の距離は典型的には非常に小さいので、光強度は露光装置の外側で測定されなければならない場合がある。したがって、センサは露光装置の外側に配置されてもよいが、センサの測定側は、第2の光源と支持面との距離d2から15mmを引いた距離d2(dm=d2-15mm)に対応する第2の光源の距離dmに位置するようにする。また、第2の光源の強度は、直径16mmのダイアフラムを備えたOphir 10A-V1.1センサ(Ophir Optronics Solutions Ltd)によって測定してもよい。これは、
図7に図示されており、センサS’の測定側M’が、第2の光源2と支持構造体3の支持面との間の距離d2(図示の実施例では、d2=50mm)から15mmを引いた距離d2に等しい距離dm(すなわち、dm=d2-15mm=50mm-15mm=35mm)にあるように、センサS’が置かれている。
【0024】
好ましくは、第1の露光ステップの露光通過中の平均速度と第2の露光ステップの露光通過中の平均速度との比は、1.5よりも高く、好ましくは、2よりも高く、または第2と第1の速度との比が0.05よりも高く、好ましくは0.08よりも高い。
【0025】
好ましくは、第1の露光ステップの露光通過中の平均強度と第2の露光ステップの露光通過中の平均強度との比は、0.15よりも高く、好ましくは、0.5よりも高く、より好ましくは、1.0よりも高く、または第2と第1の強度との比が0.5よりも高く、好ましくは、0.7よりも高く、より好ましくは、1よりも高い。
【0026】
好ましい実施形態によれば、第3の露光ステップは、第3の速度および第3の強度で露光する工程を備え、第3の速度は第2の速度と異なり、かつび/または、第3の強度は第2の強度と異なる。このようにして、品質を改善するための別の露光ステップを更に提供することができる。好ましくは、第3の露光ステップは、一つ又は複数の更なる工程を含んでもよい。
【0027】
好ましい実施形態によれば、第1のステップおよび第2の露光ステップの前に、ユーザ入力インターフェースを介して第1の強度プロファイル、第1の速度プロファイル、第2の強度プロファイルおよび第2の速度プロファイルを受け取るステップが提供される。このようにして、プロファイルをオペレータがカスタマイズすることができる。
【0028】
好ましい実施形態によれば、マスクを提供するステップは、事前に作製されたマスク層を加える工程、または前駆体の真性層であるマスク層における透明領域を生成する工程を含む。
【0029】
好ましい実施形態によれば、この方法は、第1の露光ステップおよび第2の露光ステップの前、後、または第1の露光ステップおよび第2の露光ステップ中に露光されたレリーフ形成側とは反対の側から、前駆体を電磁放射線に背面露光するステップを更に含む。好ましくは、背面露光は、第1の露光ステップおよび/または第2の露光ステップ中に実施される。より好ましくは、この方法は、入力された第1の速度プロファイルおよび第2の速度プロファイルに基づいて、第1の露光ステップおよび/または第2の露光ステップ中に背面露光ステップを実施するか否かを含む。
【0030】
好ましくは、電磁放射線の波長は200-2000nmである。
【0031】
好ましい実施形態によれば、第2の露光ステップの後に、液体による処理、ガスによる処理、熱処理、面との接触、溶解または液化可能な材料の除去、電磁放射への曝露、プラズマへの曝露、切断、サンディング、またはこれらの組合せを含むグループから選択される更なるステップが実施される。このようにして後処理が実現される。
【0032】
好ましくは、レリーフ前駆体は、少なくとも寸法的に安定な支持層と、一つ又は複数の感光性層と、任意にカバー層と、接着層と、障壁層と、保護層と、粒子層と、マスク層と、またはこれらの組合せとを備える。
【0033】
本発明の別の態様によれば、レリーフ構造は、上記の好ましい実施形態のいずれか1つに記載された方法によって得られる。
【0034】
本発明の別の態様によれば、フレキソ印刷版、レタープレス版、レリーフ印刷版、(可撓性)プリント回路基板、電子素子、マイクロ流体素子、マイクロ流体工学素子、マイクロリアクタ、光電池、フォトニック結晶、光学素子、またはフレネルレンズとして、前の態様によるレリーフ構造の使用が提供される。マイクロ流体要素またはマイクロリアクタを得るために、形成されたレリーフの上に追加層が追加され、それによってチャネルおよび空間が作成される。
【0035】
本発明のさらに別の態様によれば、光源によるレリーフ前駆体の露光を制御するように構成された制御手段が提供され、光源の照射領域は、前駆体の領域の一部を覆い、前駆体の全領域の露光は、露光通過中に、光源と前駆体とを相対的に移動させることによって実施される。制御手段は、前駆体の面での強度および光源の移動速度を制御するように構成され、第1の露光ステップと第2の露光ステップが実施され、第1の露光ステップは、一つ又は複数の露光通過中に、第1の強度プロファイルおよび第1の速度プロファイルに従って、前駆体をマスクを介して露光する工程を含み、第2の露光ステップは、一つ又は複数の露光通過中に、第1の強度プロファイルとは異なる第2の強度プロファイルおよび第1の速度プロファイルとは異なる第2の速度プロファイルに従って、前駆体をマスクを介して露光する工程を含む。
【0036】
好ましい実施形態によれば、制御手段は、第1の露光ステップの一つ又は複数の露光通過の速度が実質的に一定であるように、および/または第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過の間の速度が実質的に一定であるように、光源の移動速度を制御するように構成される。
【0037】
好ましい実施形態によれば、第1の露光ステップの露光通過中の平均速度は、第2の露光ステップの露光通過中の平均速度よりも高い。
【0038】
好ましい実施形態によれば、制御手段は、第1の露光ステップの一つ又は複数の露光通過中の強度が実質的に一定であるように、かつ/または第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過中の強度が実質的に一定であるように、前駆体の面における強度を制御するように構成される。
【0039】
好ましい実施形態によれば、第1の露光ステップの露光通過中の平均強度は、第2の露光ステップの露光通過中の平均強度よりも高い。
【0040】
好ましい実施形態によれば、第1の露光ステップは、第1の数の露光通過を含み、かつ/または、第2の露光ステップは、第2の数の露光通過を含む。好ましくは、第1の数の通過は、第2の数の通過とは異なり、より好ましくは、第1の数の通過は、第2の数の通過よりも高い。
【0041】
好ましい実施形態によれば、第1の露光ステップの露光通過中に加えられる第1の線量は、第2の露光ステップの露光通過中に加えられる線量よりも低い。
【0042】
好ましい実施形態によれば、光源は、第1の方向への第1の移動および第2の反対方向への第2の移動を伴うサイクルで移動され、各サイクルは、1つまたは2つの露光通過を含む。
【0043】
別の態様によれば、露光装置は、レリーフ前駆体の第1の側を露光するように構成された第1の光源と、一つ又は複数の露光通過中に第1の側と反対の側のレリーフ前駆体の第2の側を露光するように構成された移動可能な第2の光源と、第2の光源を移動させるように構成された移動手段と、上記の好ましい実施形態のいずれか1つに従った制御手段と、を備える。
【0044】
好ましくは静止光源である第1の光源は、複数のLED若しくは複数の光管、又は複数のレーザダイオード若しくはそれらの組合せを備えることができる。任意選択的に、第1の光源は、第1の光源によって発せられる強度を変化させるように構成された強度制御手段を備えることができる。たとえば、第1の光源がLEDアレイである場合、強度制御手段は、異なる電力レベルでLEDアレイを駆動するように構成された駆動手段であってもよい。あるいは、強度制御手段は、例えば、光源とレリーフ前駆体との間に部分的に吸収する、部分的に反射する、または部分的に回折する媒体を設置することによって、レリーフ前駆体上の光強度を変化させるように構成された光学的手段であってもよい。また、光学特性の異なる複数の版の中から適切な光学特性を有する版を選択し、この版を第1の光源とレリーフ前駆体との間に配置して、レリーフ前駆体によって見られる強度に影響を与えることによって、強度を変化させてもよい。異なる強度が必要な場合には、この版を交換してもよい。さらに別の実施例において、第1の光源の必要な駆動電流を生成するための駆動回路を有するPCBは、必要な強度に応じて、異なる駆動電流を生成するように構成された複数のPCBの中から選択することができる。また、第2の光源とレリーフ前駆体との間の距離を変化させて、レリーフ前駆体によって見られる強度に影響を与えてもよい。
【0045】
第2の光源は、好ましくは移動可能な光源であり、複数のLED若しくは複数の光管、又は複数のレーザダイオード若しくはそれらの組合せを備えることができる。任意選択的に、第2の光源は、複数のLEDを備えることができる。このようにして、可変強度を便利な方法で達成することができる。任意選択的に、第2の光源は、第2の光源によって発せられる強度を変化させるように構成された強度制御手段を備える。たとえば、第2の光源がLEDアレイである場合、強度制御手段は、異なる電力レベルでLEDアレイを駆動するように構成された駆動手段であってもよい。あるいは、強度制御手段は、レリーフ前駆体上の光強度を変化させるように構成された光学的手段であってもよい。また、光学特性の異なる複数の版の中から適切な光学特性を有する版を選択し、この版を第2の光源とレリーフ前駆体との間に配置して、レリーフ前駆体によって見られる強度に影響を与えることによって、強度を変化させてもよい。異なる強度が必要な場合には、この版を交換してもよい。さらに別の実施例において、必要とされる強度に応じて、異なる駆動電流を生成するように構成された複数のPCBの中から、第2の光源の必要とされる駆動電流を生成するための駆動回路を有するPCBを選択することができる。また、第2の光源とレリーフ前駆体との間の距離を変化させて、レリーフ前駆体によって見られる強度に影響を与えてもよい。
【0046】
好ましい実施形態によれば、露光装置は、第1の露光ステップおよび第2の露光ステップの前、後、または、第1の露光ステップおよび第2の露光ステップ中に露光されたレリーフ形成側とは反対の側からの電磁放射線で前駆体を背面露光するように構成された制御手段を備える。
【図面の簡単な説明】
【0047】
添付の図面は、本発明の装置および方法の現在好ましい非限定的例示的実施形態を図示するために使用される。本発明の特徴および目的の上記および他の利点は、より明らかになり、本発明は、添付の図面と併せて読むとき、以下の詳細な説明から、よりよく理解される。
【
図1】
図1は、レリーフ前駆体を露光のための装置の例示的実施形態の概略断面図である。
【
図2】
図2は、前方移動中にのみ第2の光源が露光する場合におけるレリーフ前駆体のカーソルの露光のための方法の例示的実施形態の第1の露光ステップの時間図である。
【
図3】
図3は、前方移動および後方移動の全サイクル中に第2の光源が露光する場合におけるレリーフ前駆体のカーソルの露光するための方法の例示的実施形態の第1の露光ステップの時間図である。
【
図4】
図4は、レリーフ前駆体の露光のための方法の例示的実施形態のフローチャートである。
【
図5】
図5は、露光のための方法の例示的実施形態に従ったデータを含む表である。
【
図6】
図6は、レリーフ前駆体を露光のための装置の別の例示的実施形態の斜視図である。
【
図7】
図7は、第1の光源および第2の光源によって発せられる強度がどのように測定されるかを概略的に図示する。
【実施形態の詳細な説明】
【0048】
図1は、基板層と少なくとも1つの感光層とを含むレリーフ前駆体Pの露光装置の断面図を概略的に示す。この装置は、レリーフ前駆体Pの感光層上に設けられた第1の光源1と、移動可能な第2の光源2と、搬送構造体3と、マスク4とを備える。第1の光源1は、レリーフ前駆体Pの第1の側、ここでは裏側とも呼ばれる下側を照射するように構成されている。移動可能な第2の光源2は、レリーフ前駆体Pの第1の側とは反対側の第2の側を照射するように構成されている。第2の側は、典型的には、レリーフ前駆体Pの前側とも呼ばれる最上側である。
【0049】
第1の光源1は、レリーフ前駆体Pに平行な平面内に実質的に延びている。第1の光源1は、静止している。第2の光源2は、矢印A1で示すように、第1の光源1の平面に平行な平面内を前後に移動可能である。
【0050】
好ましくは、第1の光源1は、(
図1において幅w1’を有する)平面の第1の照射領域を照射するように構成され、第2の光源は、(
図1において幅w2’を有する)前記平面の第2の照射領域を照射するように構成され、前記平面は、前記第1の光源と前記第2の光源との間に置かれ、かつ前記レリーフ前駆体Pの第1の側が置かれることが意図される平面に対応する。平面の照射領域とは、前記平面における光の強度の最大値の10%を超える領域をいう。担持構造体3が存在する場合、平面は担持構造体3の支持面に対応する。(
図1において幅w2’を有する)第2の照射領域は、(
図1において幅w1’を有する)第1の照射領域よりも少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、最も好ましくは少なくとも5倍小さいことが好ましい。典型的な実施形態において、第1の光源1は、レリーフ前駆体Pの第1の側全体(即ち、後側全体)を実質的に照射するために使用され、一方、第2の光源2は、レリーフ前駆体の第2の側(即ち、上側)のより小さな領域を、典型的にはより高い光強度で照射する。好ましくは、幅w2’は、100mm~600mm、例えば、200mm~400mmである。好ましくは、幅w1’は、1500mm~3000mm、例えば1800mm~2500mmである。
【0051】
担持構造体3、例えばガラス版は、レリーフ前駆体を支持するように構成され、第2の光源2と第1の光源1との間に置かれる。搬送構造3は、第1の光源1から放射される電磁放射線に対して透明であってもよい。
【0052】
第1の光源1は、複数のLED、一組の蛍光ランプ、フラッシュランプ、一組の光管、LCDスクリーン、(移動可能なミラーを有する)光投影システム、太陽光収集システム、およびそれらの組合せを含むグループから選択されてもよい。第2の光源2は、LEDアレイ、一組の蛍光ランプ、フラッシュランプ、直線状に配置された一組の光管、(走査)レーザ、LCDスクリーン、(移動可能なミラーを有する)光投影システム、およびこれらの組合せを含むグループから選択されてもよい。
【0053】
図1は、第2の光源2を移動させるように構成された移動手段Mを図示する。制御手段5は、第2の光源2がレリーフ前駆体の全面を露光するように移動手段Mを制御してもよい。制御手段5は、第1の光源1を制御し、第2の光源2を制御して移動させるように構成することができる。
【0054】
特に、制御手段5は、第2の光源2による露光を制御して受け取られた強度プロファイルに追従させ、移動手段Mを制御して受け取られた速度プロファイルに従って第2の光源2を移動させるように構成することができる。制御手段5は、オペレータインターフェース7を介して強度および速度プロファイルを受け取ることができる。オペレータインターフェース7は、グラフィカルインターフェースであってもよい。
【0055】
好ましくは固定光源である第1の光源は、複数のLED若しくは複数の光管、又は複数のレーザダイオード若しくはそれらの組合せを含むことができる。任意選択的に、第1の光源は、第1の光源によって放射される強度を変化させるように構成された強度制御手段を備えることができる。たとえば、第1の光源がLEDアレイである場合、強度制御手段は、異なる電力レベルでLEDアレイを駆動するように構成された駆動手段であってもよい。あるいは、強度制御手段は、例えば、光源とレリーフ前駆体との間に部分的に吸収する、部分的に反射する、または部分的に回折する媒体を配置することによって、レリーフ前駆体上の光強度を変化させるように構成された光学的手段であってもよい。
【0056】
第2の光源は、複数のLEDを備えることができる。このようにして、異なる電力レベルでLEDアレイを駆動するように構成された駆動手段を強度制御手段として使用することによって、可変強度を達成することができる。あるいは、強度制御手段は、例えば、光源とレリーフ前駆体との間に部分的に吸収する、部分的に反射する、または部分的に回折する媒体を設定することによってレリーフ前駆体上の光強度を変化させるように構成された光学的手段であってもよい。追加的または代替的に、強度制御手段は、光源2とレリーフ前駆体Pとの間に配列された追加のプレートの移動を制御して、レリーフ前駆体Pによって見られる線量を制御してもよく、かつ/または、第2の光源2とレリーフ前駆体との間の距離を制御して、レリーフ前駆体Pによって見られる強度を制御してもよい。
【0057】
一実施形態によれば、レリーフ前駆体の感光層上にマスク4が設けられると、制御手段5は、オペレータインターフェース7を介して受け取られた第1の強度プロファイルに従うように第2の光源2を制御する一方で、オペレータインターフェース7を介して受け取られた第1の速度プロファイルに従ってレリーフ前駆体を露光するように移動手段Mを制御するように構成することができる。この第1の露光ステップでは、第1の強度プロファイルおよび第1の速度プロファイルに従って、マスク4を介してレリーフ前駆体Pを露光することができる。次いで、制御手段は、第2の露光ステップに従ってレリーフ前駆体を露光するように構成することができ、その間、前駆体は、第1の強度プロファイルとは異なる第2の強度プロファイルに従ってマスクを介して第2の光源2で露光され、一方、第2の光源2は、第1の速度プロファイルとは異なる第2の速度プロファイルに従って移動手段Mによって移動される。
【0058】
図2は、前方移動中にのみ第2の光源が露光する場合におけるレリーフ前駆体カーソルの露光の為の方法の例示的実施形態の第1の露光ステップの時間図である。次に、第2の光源2を露光サイクルで移動させ、第1の方向に第1の移動を行い、第2の反対方向に第2の移動を行うことができる。各露光サイクルは、1つの露光通過と、光源を元の位置に戻すための1つの時間期間とを含むことができる。
【0059】
図2は、一実施例として、2つのサイクルEC1およびEC2を含む第1の露光ステップES1を示す。各サイクルEC1、EC2中、光源は、露光通過EP1、EP2中にレリーフ前駆体を露光することができ、残りのサイクル中、光源は次のサイクルのために元の位置に戻される。
【0060】
第1の露光ステップES1中、第2の光源2の強度Iは、第1の強度プロファイルIP1に従うように制御される。第1の強度プロファイルIP1は、露光通過EP1およびEP2中、強度が実質的に一定であり、平均強度I1に等しく、残りのサイクルEC1およびEC2中、実質的にゼロであるようなプロファイルである。依然として、状況に応じて、第1の強度プロファイルIP1が、第1の露光ステップの各通過中、または第1の露光ステップの後続の通過の間に、時間とともに増加または減少するプロファイルに従う他の選択肢を想定することができる。第1の露光ステップの通過の間に強度を段階的または直線的に増加させることも考えられる。
【0061】
第1の露光ステップES1中、第2の光源2を移動させる移動手段Mの速度が第1の速度プロファイルSP1に追従するように制御される。第1の速度プロファイルSP1は、露光がEP1およびEP2を通過中、速度が実質的に一定であり、第1の露光ステップ中の前方移動のための平均速度S1fに実質的に等しく、残りのサイクルEC1およびEC2中、速度が第1の露光ステップ中の後方移動のための平均速度S1bに実質的に等しくなるようなプロファイルである。後方速度S1bは、通常、後方移動の持続時間をできるだけ短くするために、前方速度Sfよりも高い。依然として、状況に応じて、第1の速度プロファイルSP1が、第1の露光ステップの各通過中、または第1の露光ステップの後続の通過の間に、時間とともに増加または減少するプロファイルに従う他の選択肢を想定することができる。第1の露光ステップの通過の間の速度の段階的または直線的な増加もまた想定され得る。さらに、速度および強度の両方は、状況に応じてカスタマイズ可能なプロファイルを有することができる。
【0062】
図3は、前方移動および後方移動の全サイクル中に第2の光源が露光する場合におけるレリーフ前駆体カーソルの露光方法の例示的実施形態の第1の露光ステップの時間図である。
【0063】
図3において、第1の露光ステップES1はまた、2つのサイクルEC1およびEC2を含む。さらに、
図2の実施形態に反して、
図3において、第2の光源2は、露光サイクル全体の中、すなわち、第2の光源2の前方移動中および後方移動中に、レリーフ前駆体を露光してもよい。この場合、各サイクルは、2つの露光通過を含む。例えば、サイクルEC1は露光通過EP1および露光通過EP2を含み、露光サイクルEC2は露光通過EP3および露光通過EP4を含み、ここで、EP1およびEP3の間で第2の光源2は同じ(前方)方向に移動され、EP2およびEP3の間で第2の光源2は反対(後方)方向に移動される。
【0064】
第1の露光ステップES1全体において、第2の光源2の強度Iは、実質的に一定の平均強度I1である第1の強度プロファイルIP1に追従するように制御される。同様に、第1の光ステップES1全体において、第2の光源2を移動させる移動手段Mの速度は、前後移動ともにほぼ一定の平均速度S1である第1の速度プロファイルSP1に追従するように制御される。
【0065】
その上に、
図2の実施形態と同様に、第1の露光ステップをオペレータのニーズに合わせてカスタマイズするために、状況に応じて、強度プロファイルまたは速度プロファイル、あるいはその両方に対して、一定プロファイル以外の他のオプションを想定することができる。例えば、第1の露光ステップの通過中の平均速度および/または平均強度を、一定の数の通過後に段階的に増加させることができる。
【0066】
図4は、レリーフ前駆体の露光方法の例示的実施形態のフローチャートである。
【0067】
最初のステップ20では、レリーフ前駆体Pの感光層上にマスク4を設けてもよい。次に、ステップ21では、第1の強度プロファイルIP1、第1の速度プロファイルSP1、第2の強度プロファイルIP2、および第2の速度プロファイルSP2が、オペレータインターフェース7を介して受け取られてもよい。次に、レリーフ前駆体Pを、第1の露光ステップES1において第1の強度プロファイルIP1および第1の速度プロファイルSP1に従って露光し、第2の露光ステップES2において第2の強度プロファイルIP2および第2の速度プロファイルSP2に従って露光してもよい。
【0068】
例示的な実施形態において、全てのプロファイルは一定であってもよい。例えば、第1の強度プロファイルIP1および第2の強度プロファイルIP2は、第1の露光ステップES1の露光通過中の平均強度I1が、第2の露光ステップES2の露光通過中の平均強度I2よりも高くなるようにすることができる。同様に、第1の速度プロファイルSP1および第2び速度プロファイルSP2は、第1の露光ステップES1の露光通過中の平均速度S1が、第2の露光ステップES2の露光通過中の平均速度S2よりも高くなるようなプロファイルでもよい。しかしながら、既に上述したように、第1の露光ステップおよび/または第2の露光ステップ中の強度および/または速度の他のプロファイルも想定することができる。
【0069】
図2および
図3に画定されるように、通過とは、第2の光源2の照射領域でレリーフ前駆体の全面を覆う単一方向への移動を意味する。反対方向の2つの連続した通過でサイクルを定義できる。各サイクルは、1つまたは2つの露光通過を含むことができる。サイクルは、実際に、露光の実施中の一方向の第1の通過と、露光が実施されず、第2の光源2が(
図2のように)単に初期位置に戻される間の第2の通過とを含むことができる。代替的に、また好ましくは、1つのサイクルは2つの露光通過を含んでもよく、露光は、(
図3のように)第2の光源2の前後の移動中に実施される。この状況において、第1の露光ステップES1は、第1の数の通過n1を含むことができ、および/または、第2の露光ステップES2は、第2の数の通過n2を含むことができる。典型的には、第1の数の通過n1および/または第2の数の通過n2は、オペレータインターフェース7を介して制御手段5によって受け取られてもよい。第1の数の通過n1は、典型的には、第2の数の通過n2より高くてもよい。第1の露光ステップES1の通過中に加えられる第1の線量はまた、典型的には、第2の露光ステップES2の通過中に加えられる線量より低くてもよい。
【0070】
典型的には、露光方法は、比較的高い強度I1での第2の光源2のn1の比較的速い通過と、比較的高い速度S1とを含む第1の露光ステップES1と、比較的低い強度I2での第2の比較的遅い通過と、比較的低い速度S2とを含む第2の露光ステップES2とを含み、I1>I2およびS1>S2である。
【0071】
図5は、露光方法の例示的実施形態に従ったデータを含む表である。AおよびBとラベルされた2つの異なるレリーフ前駆体を、異なる第1の露光ステップおよび第2の露光ステップに従って露光させた。これらの2つの実施例において、第1の露光ステップES1は、前方移動中にのみ複数の高速通過を含み、第2の露光ステップES2は、前方移動中に1つの低速通過(n2=1)を含む。一般に、このシーケンスは、高速通過での第1の露光ステップ中に平坦なドットを形成するために高強度を用いてレリーフ前駆体における酸素阻害を第1に低減することに焦点を当てるために使用することができ、低強度での低通過での第2の露光ステップは、前駆体の適度な加熱で硬化を完了することができる。
【0072】
なお、第1の露光ステップまたは第2の露光ステップの前、後、または同時に、第1の光源1による背面露光を行ってもよい。より一般的には、第1の光源および第2の光源による露光ステップおよび移動ステップのタイミングおよび強度は、任意の可能な方法で制御することができ、例えば、レリーフ前駆体のタイプに応じて調整することができる。たとえば、第1の光源1が高電力レベルで露光している間に、第2の光源2が複数回前後に移動して、レリーフ前駆体の各部分が第1の光源による露光の最後に同じ線量を受けるようにタイミングを調整することが可能である。
【0073】
厚さ1.14mmのタイプAの前駆体について、光源2を用いて460mW/cm2での最初の2つの通過を、1,000mm/分の速度で、1つの通過当たり8.3J/cm2の線量で実施し、続いて、光源2を用いて370mW/cm2での1つの通過を、350mm/分の速度で18J/cmの線量で実施した。
【0074】
厚さ2.84mmのタイプBの前駆体については、光源2を用いて426mW/cm2での最初の2つの通過を、6000mm/分の速度で1275J/cm2の線量で実施し、次いで、光源2を用いて370mW/cm2での1回の通過を、350mm/分の速度で18J/cm2の線量で実施した。
【0075】
印刷品質は次のように評価した:紙上の処理された領域と未処理の領域との間でインク密度に差がない場合、それは低品質として示された。紙の処理された領域と未処理の領域との間のインク密度の差が強く、2つの領域が明確な境界線によって分離された場合、それは高品質であると示された。その中間の結果を凡庸な品質とした。
【0076】
両タイプの前駆体に対して、上記露光パラメータを用いて、高品質の平坦ドットを高効率で得た。
【0077】
さらに、第1の露光ステップが一つ又は複数の低速通過を含み、第2の露光ステップが一つ又は複数の高速通過を含む代替実施形態も想定されてよい。特にそのような実施形態において、第2の露光ステップは、レリーフ前駆体の硬化を完了するために使用することができる高強度で露光する。硬化の完了は、一般に、硬化の完了と第2の露光ステップとを組み合わせた場合に総現像時間が短縮できるように、別個の後処理ステップである。
【0078】
図6は、
図1の実施形態と同じ主要な構成要素を使用する例示的な実施形態を詳細に図示しており、これらの構成要素については再度説明しない。装置は、第1の光源を備えた下部ハウジング部分130と、任意選択的に追加の光源を備えた上部ハウジング部分110とを有するハウジング100を備える。レリーフ前駆体Pは、下部ハウジング部分130内の第1の光源と上部ハウジング部分110との間に置かれるように、手動または自動的に担持構造体3上にもたらされてもよい。この装置は、移動可能なLEDバーを含む第2の光源2を備える。移動可能なLEDバー構造体2は、右から左へ、および後方へ移動可能である。
【0079】
さらに、図示されていない実施形態では、前処理ユニットは、レリーフ前駆体に前処理を行うために提供されてもよく、前記前処理は、以下を含むグループから選択される:切断、アブレーション、電磁放射への曝露、およびこれらの組合せ。
【0080】
図示されていない実施形態において、後処理ユニットは、レリーフ前駆体に後処理、例えば、洗浄、乾燥、後処理露光、加熱、冷却、材料の除去などを実施するために提供されてもよい。さらに、図示されていない実施形態において、前処理ユニットは、レリーフ前駆体に前処理、例えば、以下を含むグループから選択される:切断、アブレーション、電磁放射への曝露、およびこれらの組合せ。
【0081】
レリーフ前駆体は、一般に、支持層および少なくとも1つの感光層を備える。支持層は、可撓性金属、天然または人工ポリマー、紙、またはそれらの組合せであってよい。好ましくは、支持層は可撓性金属またはポリマーのフィルムまたはシートである。可撓性金属の場合、支持層は、薄膜、ふるい様構造、メッシュ様構造、織布または不織布構造、またはそれらの組合せを含むことができる。鋼、銅、ニッケルまたはアルミニウムシートが好ましく、約50-1000μmの厚さであってよい。ポリマーフィルムの場合、フィルムは寸法的に安定であるが屈曲可能であり、たとえば、ポリアルキレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミドおよびポリカーボネート、織られた繊維、不織の繊維または層状の繊維(例えばガラス繊維、炭素繊維、ポリマー繊維)で強化されたポリマー、またはこれらの組合せから作ることができる。好ましくはポリエチレンおよびポリエステルの箔が使用され、それらの厚さは約100-300μm、好ましくは100-200μmである。
【0082】
感光性層および支持層に加えて、レリーフ前駆体は、一つ又は複数の更なる追加の層を備えてもよい。たとえば、更なる追加の層は、以下のいずれか1つでもよい:直接的な(例えば、レーザーによる)刻み込み可能な層、溶媒または水現像可能な層、熱現像可能な層、マスク層、カバー層、障壁層など。上述の異なる層の間に一つ又は複数の接着層が置かれてもよく、これらは、異なる層の適切な接着を確保する。
【0083】
レリーフ前駆体は、少なくとも1つの追加層を担持してもよい。たとえば、追加層は、以下のいずれかであってもよい。直接(例えば、レーザーによる)刻み込み可能な層、溶媒または水現像可能な層、熱現像可能な層、感光層、カバー層、障壁層、感光層とマスク層の組合せ。任意選択的に、追加層の上に一つ又は複数の追加層を設けることができる。上述した異なる層の間に、異なる層の適切な接着を保証する一つ又は複数の接着層を置くことができる。このような一つ又は複数の更なる追加層は、画像形成可能な層が画像形成される前に除去される他の全ての層の最上部にカバー層を備えることができる。一つ又は複数の追加層は、レリーフ層と、支持層とレリーフ層との間、または支持層のレリーフ層と反対の側にあるハレーション防止層と、を備えることができる。一つ又は複数の追加層は、レリーフ層、画像形成可能層、および酸素の拡散を防止するレリーフ層と画像形成可能層との間の一つ又は複数の障壁層を備えることができる。上述した異なる層の間に、異なる層の適切な接着を保証する一つ又は複数の接着層を置くことができる。
【0084】
好ましい態様において、レリーフ前駆体は、ポリマー材料のポリエステルからなる支持層と、樹脂材料などの直接的に彫み込み可能な材料から作られる追加層とを含む。次いで、任意選択の層は、レーザアブレーション層であってよい。例示的な実施形態において、レリーフ前駆体は、少なくとも寸法的に安定な支持層、レリーフ層および画像形成可能なマスク層を含むことができる。任意選択的に、更なる層が存在してもよい。画像形成可能マスク層が画像形成される前に除去される全ての他の層の最上部にカバー層があってもよい。支持層とレリーフ層との間にハレーション防止層を設けてもよいし、それは、支持層のレリーフ層と反対側に置かれてもよい。酸素の拡散を防止する一つ又は複数の障壁層が、レリーフ層と画像形成可能マスク層との間に存在してもよい。上述した異なる層の間に、異なる層の適切な接着を保証する一つ又は複数の接着層を置くことができる。一つ又は複数の層は、液体による処理によって除去可能であってもよい。使用される液体は、異なる層に対して同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、使用される液体は異なる。
【0085】
好ましい態様において、レリーフ前駆体は、感光層およびマスク層を備える。マスク層は、処理中に除去されるか、または透明性が変化してもよく、透明領域および非透明領域を有するマスクを形成する。マスク層および/または障壁層は、更なるプロセス工程または最終レリーフの使用中に問題を引き起こす可能性のある材料を含む可能性があるため、システムの前洗浄セクションで除去されることが好ましい。マスクの透明領域の下で、感光性層は、照射によって溶解度および/または流動性の変化を受ける。この変化は、一つ又は複数の後続のステップにおいて感光性層の一部を除去することによってレリーフを生成するために使用される。溶解度および/または流動性の変化は、光誘導重合および/または架橋によって達成することができ、照射された領域の溶解性を低下させる。他の場合には、電磁放射線は、結合の破壊または保護基の開裂を引き起こし、照射された領域をより可溶性にする。好ましくは、光誘起架橋および/または重合を用いる方法が用いられる。
【0086】
露光された前駆体から材料を除去するために使用可能な液体は、とりわけ以下を含む:水、水溶液、溶媒およびそれらの組合せ。使用される液体の性質は、使用される前駆体の性質によって導かれる。除去される層が水または水溶液に可溶性、乳化性または分散性である場合、水または水溶液を使用してもよい。層が有機溶媒または混合物に可溶性、乳化性または分散性である場合、有機溶媒または混合物を使用することができる。有機的に現像可能な前駆体の場合、異なる有機溶媒またはそれらの混合物を使用することができる。
【0087】
露光された前駆体からの未硬化材料の除去はまた、加熱および現像材料による液化材料の除去によって実施されてもよい。軟化された材料の除去は、それを吸収材料と連続的に接触させることによって達成される。吸収性現像剤材料は、ポリアミド、ポリエステル、セルロースまたは無機繊維の不織布であってよく、その上に軟化材料が付着し、その後除去される。そのような方法は、たとえば、米国特許第3264103号、米国特許第5175072号、WO 96/14603またはWO 01/88615に記載されている。あるいは、WO 01/90818は、露光されたレリーフ前駆体を高温ガスまたは流体ジェットで処理して未硬化材料を除去することを提案している。EP-A 469 735およびWO 01/18604には、上記の方法を実施することができる装置が記載されている。
【0088】
本発明の原理は特定の実施形態に関連して上述したが、この説明は単に実施例としてなされたものであって、添付の特許請求の範囲によって決定される保護範囲の限定としてなされたものではないことを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レリーフ前駆体(P)を光源(2)で露光する方法であって、前記光源(2)の照射領域が、前記前駆体の領域の一部を覆い、前記前駆体の全領域を露光通過中に前記光源と前記前駆体とを相対的に移動させることにより露光し、前記方法は、
前記前駆体(P)の感光層上にマスク(4)を設けるステップ(20)と、
第1の露光ステップ(ES1)であって、一つ又は複数の露光通過中に、第1の強度プロファイル(IP1)および第1の速度プロファイル(SP1)に従って、前記前駆体をマスクを介して露光する、第1の露光ステップ(ES1)と、
第2の露光ステップ(ES2)であって、一つ又は複数の露光通過中に、第1の強度プロファイル(IP1)とは異なる第2の強度プロファイル(IP2)および第1の速度プロファイル(SP1)とは異なる第2の速度プロファイル(SP2)に従って、前記前駆体をマスクを介して露光する、第2の露光ステップ(ES2)と、
を含み、
前記第1の露光ステップ(ES1)の露光通過中の平均強度(I1)は、前記第2の露光ステップ(ES2)の露光通過中の平均強度(I2)よりも高い、方法。
【請求項2】
前記第1の速度プロファイル(SP1)は、前記第1の露光ステップ(ES1)の一つ又は複数の露光通過中の速度が実質的に一定であるようなプロファイルであり、かつ/または第2の速度プロファイル(SP2)は、前記第2の露光ステップ(ES2)の一つ又は複数の露光通過中の速度が実質的に一定であるようなプロファイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の露光ステップ(ES1)の露光通過中の平均速度(S1)が、第2の露光ステップ(ES2)の露光通過中の平均速度(S2)よりも高い、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の強度プロファイル(IP1)は、前記第1の露光ステップ(ES1)の一つ又は複数の露光通過中の強度が実質的に一定であるようなプロファイルであり、かつ/または、第2の第1の強度プロファイル(IP2)は、前記第2の露光ステップ(ES2)の一つ又は複数の露光通過中の強度が実質的に一定であるようなプロファイルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の露光ステップ(ES1)は、第1の数の露光通過(n1)を有し、かつ/または、第2の露光ステップ(ES2)は、第2の数の露光通過(n2)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の露光ステップ(ES1)の露光通過中に照射される第1の線量は、前記第2の露光ステップ(ES2)の露光通過中に照射される線量よりも低い、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の線量および前記第2の線量は、それぞれ0.2-30J/cm
2である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の線量は、0.2~20J/cm
2、前記第2の線量は、2~28J/cm
2である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の数の露光通過(n1)と前記第2の数の露光通過(n2)が異なる、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の数の露光通過(n1)が第2の数の露光通過(n2)よりも高い、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の数の露光通過(n1)は2以上であり、前記第2の数の露光通過(n2)は1である、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記光源(2)は、第1の方向への第1の移動および第2の反対方向への第2の移動を伴う露光サイクルで移動され、各露光サイクルは1つ又は2つの露光通過を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の露光ステップの一つ又は複数の第1の露光通過と、前記第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過とが、同一方向への移動中に実施される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の露光ステップの一つ又は複数の露光通過及び/又は前記第2の露光ステップの一つ又は複数の露光通過は、両方向の移動中に実施される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の露光ステップの露光通過における第1の平均速度(S1)は、1000~10000mm/分の範囲であり、前記第2の露光ステップの露光通過における平均速度(S2)は、10~1000mm/分の範囲である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の露光ステップの露光通過中の平均強度(I1)は、30~10000mW/cm2の範囲であり、前記第2の露光ステップの露光通過中の平均強度(I2)は、1~5000mW/cm
2の範囲である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の露光ステップの露光通過中の平均速度(S1)と前記第2の露光ステップの露光通過中の平均速度(S2)との比が、1.5より高く、好ましくは2より高く、第2の平均速度と第1の平均速度との比が、0.05より高く、好ましくは0.08より高い、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の露光ステップの露光通過中の平均強度(I1)と前記第2の露光ステップの露光通過中の平均強度(I2)との比が、0.15より高く、好ましくは0.5より高く、より好ましくは1より高く、前記第2の平均強度と前記第1の平均強度との比が、0.5より高く、好ましくは0.7より高く、より好ましくは1より高い、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
第3の速度および第3の強度で露光するステップを更に含み、前記第3の速度が前記第2の速度と異なり、かつ/または前記第3の強度が前記第2の強度と異なる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の露光ステップ(ES1)および前記第2の露光ステップ(ES2)の前に、前記第1の強度プロファイル(IP1)、前記第1の速度プロファイル(SP1)、前記第2の強度プロファイル(IP2)および前記第2の速度プロファイル(SP2)をオペレータインターフェース(7)を介して受け取るステップ(21)を更に含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
マスク(4)を提供するステップ(20)は、予め作製されたマスク層を加える工程、または前記前駆体の真性層であるマスク層における透明領域を生成する工程を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の露光ステップおよび第2の露光ステップの前、後、または間に露光された前記前駆体のレリーフ形成側とは反対の側からの電磁放射線に前記前駆体を背面露光するステップを更に含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記背面露光は、前記第1の露光ステップ(ES1)および/または前記第2の露光ステップ(ES2)中に実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
入力された前記第1の速度プロファイルおよび第2の速度プロファイル(SP1、SP2)に基づいて、前記第1の露光ステップおよび/または第2の露光ステップ(ES1、ES2)中に背面露光ステップを実施するか否かを更に含む、請求項18又は20に記載の方法。
【請求項25】
前記電磁放射線の波長は、200~2000nmの範囲である、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の露光ステップ(ES2)の後に、液体による処理、ガスによる処理、熱処理、表面との接触、溶解または液化可能な材料の除去、電磁放射への曝露、プラズマへの曝露、切断、サンディング、またはこれらの組合せを含むグループから選択される更なるステップが実施される、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記レリーフ前駆体(P)は、少なくとも寸法的に安定な支持層、一つ又は複数の感光層、および任意でカバー層、接着層、障壁層、保護層、粒子層、マスク層、またはこれらの組合せを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
光源(2)によるレリーフ前駆体(P)の露光を制御するように構成された制御手段(5)であって、
前記光源(2)の照射領域が前記前駆体の領域の一部を覆い、前記前駆体の全領域の露光を、露光通過中に前記光源と前記前駆体とを相対的に移動させて実施し、前記制御手段(5)は、前記前駆体の表面の強度と前記光源(2)の移動速度とを第1の露光ステップ(ES1)および第2の露光ステップ(ES2)が実施されるように制御し、
前記第1の露光ステップ(ES1)は、一つ又は複数の露光通過中に、第1の強度プロファイル(IP1)および第1の速度プロファイル(SP1)に従って、前記前駆体をマスク(4)を介して露光する工程を含み、
前記第2の露光ステップ(ES2)は、一つ又は複数の露光通過中に、第1の強度プロファイル(IP1)とは異なる第2の強度プロファイル(IP2)および第1の速度プロファイル(SP1)とは異なる第2の速度プロファイル(SP2)に従って、前記前駆体を前記マスク(4)を介して露光する工程を含み、
前記第1の露光ステップ(ES1)の露光通過中の平均強度(I1)は、前記第2の露光ステップ(ES2)の露光通過中の平均強度(I2)よりも高い、制御手段。
【請求項29】
前記第1の露光ステップの前記一つ又は複数の露光通過の速度が実質的に一定であるように、かつ/または、前記第2の露光ステップの前記一つ又は複数の露光通過中の速度が実質的に一定であるように、前記光源(2)の移動速度を制御するように構成される、請求項28に記載の制御手段。
【請求項30】
前記第1の露光ステップの露光通過中の平均速度(S1)は、前記第2の露光ステップの露光通過中の平均速度(S2)よりも高い、請求項28~29のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項31】
前記第1の露光ステップの前記一つ又は複数の露光通過中の前記強度が実質的に一定であるように、かつ/または、前記第2の露光ステップの前記一つ又は複数の露光通過中の前記強度が実質的に一定であるように、前記前駆体の表面における前記強度を制御するように構成される、請求項28~30のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項32】
前記第1の露光ステップは、第1の数の露光通過を含み、かつ/または、前記第2の露光ステップは、第2の数の露光通過を含み、好ましくは、第1の通過数が第2の通過数とは異なり、より好ましくは、第1の通過数が第2の通過数よりも高い、請求項28~31のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項33】
前記第1の露光ステップの露光通過中に照射される第1の線量は、前記第2の露光ステップの露光通過中に照射される線量よりも低い、請求項28~32のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項34】
前記光源は、第1の方向への第1の移動および第2の反対方向への第2の移動とともに周期的に移動され、各周期は、1つ又は2つの露光通過を含む、請求項28~33のいずれか一項に記載の制御手段。
【請求項35】
レリーフ前駆体の第1の側を露光するように構成された第1の光源(1)と、一つ又は複数の露光通過中に前記第1の側とは反対側のレリーフ前駆体の第2の側を露光するように構成された移動可能な第2の光源(2)と、前記第2の光源を移動させるように構成された移動手段と、請求項30~36のいずれか一項に記載の制御手段と、を備える露光装置。
【請求項36】
前記制御手段は、前記第1の露光ステップおよび第2の露光ステップの前、後、またはその間に露光された前記前駆体の前記レリーフ形成側とは反対の側からの電磁放射線に前記前駆体を背面露光するように構成される、請求項35に記載の露光装置。
【国際調査報告】