IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブルーカー ナノ ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2024-503782ハイブリッド集積シリコンドリフト検出器及びその製造方法
<>
  • 特表-ハイブリッド集積シリコンドリフト検出器及びその製造方法 図1
  • 特表-ハイブリッド集積シリコンドリフト検出器及びその製造方法 図2
  • 特表-ハイブリッド集積シリコンドリフト検出器及びその製造方法 図3
  • 特表-ハイブリッド集積シリコンドリフト検出器及びその製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】ハイブリッド集積シリコンドリフト検出器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/24 20060101AFI20240122BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
G01T1/24
G01T7/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534138
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2022072539
(87)【国際公開番号】W WO2023017118
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】21191266.2
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515222687
【氏名又は名称】ブルーカー ナノ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】BRUKER NANO GMBH
【住所又は居所原語表記】Am Studio 2 D, 12489 Berlin (DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ボンベリ, ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ボスラウ, オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ノアック, マーカス
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA27
2G188BB02
2G188CC31
2G188DD35
2G188DD42
2G188EE05
2G188FF11
(57)【要約】
本発明は、X線検出のためのハイブリッド集積シリコンドリフト検出器(HiSDD)に関し、特に、シリコンドリフト検出器(SDD)をSDDセンサチップ上の低ノイズ前置増幅器と組み合わせて、検出器アセンブリの電気的及び構造的特性を改善するHiSDDに関する。本発明は、さらに、HiSDDを製造するための対応する方法に関する。本発明に係るHiSDDは、シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップ(100)と、前置増幅器モジュール(200)と、をハイブリッド集積するHiSDDであって、フリップチップボンディングのために構成される第1の端部とワイヤボンディングのために構成される第2の端部とを有する導電性経路(32)は、SDDセンサチップ(100)の表面上に形成され、前置増幅器モジュール(200)は、前置増幅器モジュール(200)の表面上に配置された接触部を有し、導電性経路(32)の第1の端部は、前置増幅器モジュール(200)の接触部にフリップチップボンディングされる、HiSDDである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド集積シリコンドリフト検出器(HiSDD)であって、前記HiSDDは、
シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップ(100)と、
前置増幅器モジュール(200)と、
を備え、
前記シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップ(100)は、入射放射線に露出されるように構成される第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有し、
接触領域(14)及び複数のドリフトリング領域(20)が、前記センサチップ(100)の前記第2の表面に配置され、前記接触領域(14)は、前記ドリフトリング領域(20)から離間され、前記ドリフトリング領域(20)に対して共通の中心領域を形成し、
接触部(18)が、前記接触領域(14)の上方に形成され、前記接触領域(14)に導電的に接続され、フリップチップボンディングのために構成され、
導電性経路(32)が、前記第2の表面上に形成され、前記接触領域(14)及び前記ドリフトリング領域(20)から絶縁され、フリップチップボンディングのために構成される第1の端部と、ワイヤボンディングのために構成される第2の端部と、を有し、
前記前置増幅器モジュール(200)は、前記前置増幅器モジュール(200)の表面上に配置された接触部を有し、
前記導電性経路(32)の前記第1の端部及び前記接触部(18)は、前記前置増幅器モジュール(200)の前記接触部にフリップチップボンディングされる、HiSDD。
【請求項2】
請求項1に記載のHiSDDのであって、前記HiSDDは、さらに、
前記SDDセンサチップ(100)を支持するように構成されるホルダ(300)
を備え、
前記導電性経路(32)の前記第2の端部は、前記ホルダ(300)上の接触エリアにワイヤボンディングされる、HiSDD。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のHiSDDであって、
前記SDDセンサチップ(100)は、第1のドーピング型の半導体材料のチップ基板(10)を備え、
前記チップ基板(10)は、好ましくは、nドープ型半導体材料である、HiSDD。
【請求項4】
請求項3に記載のHiSDDであって、
前記接触領域(14)は、前記第1のドーピング型で高濃度にドープされ、前記接触領域(14)は、好ましくは、nドープされており、
前記複数のドリフトリング領域(20)は、第2のドーピング型でドープされ、前記ドリフトリング領域(20)は、好ましくは、pドープされている、HiSDD。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のHiSDDであって、前記SDDセンサチップ(100)は、さらに、
前記SDDチップ(100)の前記第1の表面に対応する前記チップ基板(10)の第1の表面上に接触層(12)を備え、
前記接触層(12)は、第2のドーピング型でドープされ、好ましくは、pドープされている、HiSDD。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のHiSDDであって、前記HiSDDは、さらに、
前記SDDセンサチップ(100)の前記第2の表面を覆う絶縁層(16)
を備え、
前記接触部(18)は、前記絶縁層(16)内の開口部を通して前記接触領域(14)に導電的に接続され、前記導電性経路(32)は、前記絶縁層(16)の上方に形成される、HiSDD。
【請求項7】
請求項6に記載のHiSDDであって、前記HiSDDは、さらに、
前記絶縁層(16)の上方に形成された少なくとも1つのドリフトリング接触部(22)
を備え、
ドリフトリング接触部(22)は、前記絶縁層(16)内の第2の開口部を通して対応するドリフトリング領域(20)に導電的に接続され、
少なくとも1つのドリフトリング接触部(22)は、前記絶縁層(16)の上部に形成された導電性経路(32)を含む、HiSDD。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のHiSDDであって、
前記前置増幅器モジュール(200)の第1の入力FETは、前記前置増幅器への接続(A)の浮遊容量に整合される、HiSDD。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のHiSDDであって、
前記前置増幅器モジュール(200)は、温度センサを備える、HiSDD。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のHiSDDであって、
前記少なくとも1つのドリフトリング接触部(22)は、前記絶縁層(16)の上部に導電性リングを形成する、HiSDD。
【請求項11】
請求項10に記載のHiSDDであって、
少なくとも1つの導電性リングは、前記前置増幅器モジュール(200)の下の領域において開いている、HiSDD。
【請求項12】
HiSDDモジュールであって、前記HiSDDモジュールは、
請求項2~11のいずれか一項に記載のHiSDDと、
前記ホルダ(300)に熱的に接続された熱電クーラと、
を備える、HiSDDモジュール。
【請求項13】
請求項11に記載のHiSDDモジュールであって、前記HiSDDモジュールは、さらに、
X線放射線のための円形の入口開口部
を備え、
前記入口開口部の中心は、前記接触領域(14)の上方に位置する、HiSDDモジュール。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のハイブリッド集積シリコンドリフト検出器(HiSDD)を製造するための方法であって、前記方法は、
前記シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップ(100)を提供する工程と、
前記前置増幅器モジュール(200)を提供する工程と、
前記導電性経路(32)の前記第1の端部及び前記接触部(18)を前記前置増幅器モジュール(200)の前記接触部にフリップチップボンディングする工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項2~11のいずれか一項に記載のHiSDDを製造するための請求項14に記載の方法であって、前記方法は、さらに、
前記導電性経路(32)の前記第2の端部を前記ホルダ(300)上の接触エリアにワイヤボンディングする工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検出のためのハイブリッド集積シリコンドリフト検出器(HiSDD)に関し、特に、シリコンドリフト検出器(SDD)をSDDセンサチップ上の低ノイズ前置増幅器モジュールと組み合わせて、検出器アセンブリの電気的及び構造的特性を改善するHiSDDに関する。本発明は、さらに、HiSDDを製造するための対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景及び先行技術
エネルギー分散分光法(EDS:energy dispersive spectroscopy、EDXとも呼ばれる)は、おそらく最も一般的に使用されているX線分析技術として、入射電子ビームによって励起された試料によって放出される特性X線に基づいて試料の元素組成を特徴付けるものである。EDS測定は、一般に、走査型電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡(EM)内で行われ、EMは、電子顕微鏡の測定室内に適切に構成されるEDS検出器を備えている。EMでは、EDS検出器は、電子ビームの伝搬方向において試料の上流側に配置されることが多い。
【0003】
固体EDS検出器では、入射X線光子のエネルギーは、検出器材料の感応領域内で吸収される際の対生成によって生じる電荷キャリアの量によって測定することができる。高分解能X線分光法には、Si(Li)検出器を使用することができる。Si(Li)検出器に代わるものとして、高分解能・高速シリコンドリフト検出器(SDD)がある。SDDの基本構造は、高濃度にpドープされた第1の領域と中程度にnドープされた第2の領域とを含むp-nフォトダイオードに対応する。検出器は、通常、既存の空間電荷層を拡張し、生成した電荷キャリアの再結合を回避するために、逆方向に動作する。空間電荷層に第2の電圧を重畳することにより、電荷キャリアを制御された方法で対応する接触領域にドリフトすることができ、増幅回路又は評価用電子機器に供給することができる。ある種のSDDでは、複数(several)のpドープされたドリフトリング領域が、センサチップの中心にある小さなnドープされたアノードの周りに円形リングとして直径が大きくなるように配置される。
【0004】
SDDは、Si(Li)検出器と比較して適度な冷却での動作を可能にする、高い信号対雑音比(SNR)を提供する。さらには、センサチップの中心の接触領域(例えば、アノード領域)が小さいため、その電気容量が低く、高い応答速度を実現することができる。読み出しのために、前置増幅器として機能する1つ又は複数のトランジスタをウェハに直接集積することができる。その結果、例えば低ノイズ接合ゲート型電界効果トランジスタ(JFET)などの前置増幅器をSi(Li)検出器よりも検出器材料に近い位置に配置でき、これにより、より良好な電子評価が可能になる。このような直接集積型フロントエンド電界効果トランジスタ(FET)アプローチの欠点は、電子集積化が技術的に困難であり、不合格率が非増幅センサチップと比較して高くなり得ることである。したがって、センサチップの技術プロセスと適切なフロントエンドFETの製造とを切り離すために、低ノイズ外部JFET又はCMOSベースの電荷前置増幅器などの外部前置増幅器がしばしば好まれる。
【0005】
外部前置増幅器は、集積回路(IC)に基づいている場合がある。ワイヤボンド接続のキャパシタンスに対する感度を低く保つため、外部前置増幅器は、通常、短いボンドワイヤを介してSDDセンサチップの接触領域に最も近接して配置される別個のモジュールであり、すなわち、外部前置増幅器の入力は、短いボンドワイヤでSDDセンサチップの出力に接続される。検出器と前置増幅器とのさらなるの接触部もまた、ボンドワイヤを用いて共通のプリント回路基板(PCB)に接続することができる。その後、PCB基板を得られた検出器モジュールのハウジングに接続することができる。
【0006】
前記した外部アプローチの欠点は、非常に小さいボンドパッド(低い電気容量のため好まれる)での複雑で時間のかかるボンディングプロセスに加えて、前置増幅器の入力とSDDセンサチップの出力との間のワイヤボンド接続にもキャパシタンスがあり、検出器信号のシリアルノイズをさらに増加させることである。さらに、フリーボンドワイヤは、機械的に振動し、出力信号にいわゆるピックアップノイズを生成する傾向がある。要約すると、検出器内の電子ノイズは、前記ワイヤボンド接続によって増加する。
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくともいくつかを克服又は低減し、接続のキャパシタンスの影響を受けず、ピックアップノイズに対するより良好な耐性を提供する、外部前置増幅器に接続されたSDDを提供することにある。SDDシステムの複雑さ及び製造コストを低く抑えるために、外部前置増幅器を使用することができる。さらに、SDDを外部前置増幅器に接続するための改善された方法が提供され、この方法により、この2つの構成要素の簡単かつ確実な接続が可能になる。
【0008】
発明の概要
請求項1のHiSDD及びHiSDDを製造するための対応する方法によって、本発明の目的は解決され、従来技術の欠点を、少なくとも部分的に克服する。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を対象とする。
【0009】
本発明の一態様は、ハイブリッド集積シリコンドリフト検出器(HiSDD)に関し、前記HiSDDは、シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップと、前置増幅器モジュールと、を備え、前記シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップは、入射放射線に露出されるように構成される第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有し、接触領域及び複数のドリフトリング領域が、前記センサチップの前記第2の表面に配置され、前記接触領域は、前記ドリフトリング領域から離間され、前記ドリフトリング領域に対して共通の中心領域を形成し、接触部が、前記接触領域の上方に形成され、前記接触領域に導電的に接続され、(例えば、対応して離間された接触パッドを設けることによって)フリップチップボンディングのために構成され、導電性経路が、前記第2の表面上に形成され、前記接触領域及び前記ドリフトリング領域から絶縁され、(例えば、対応して離間された接触パッドを設けることによって)フリップチップボンディングのために構成される第1の端部と、(例えば、対応して大きなボンドパッドを設けることによって)ワイヤボンディングのために構成される第2の端部と、を有し、前記前置増幅器モジュールは、前記該前置増幅器モジュールの単一表面上に接触部を有し、前記導電性経路の前記第1の端部及び前記接触部は、前記前置増幅器モジュールの前記接触部にフリップチップボンディングされる、HiSDDである。
【0010】
ドリフトリング領域は、共通の中心に接触領域を有し、直径が増加する個々の円形リングとして形成されてもよい。これにより、リングは、原則として閉ループとして理解されるが、リングの一部を省略することも可能である。この場合、リングはオープンリング、つまり、開いている。リングは、構造的に変形されてもよい。例えば、ドリフトリング領域は、楕円形又はドロップ状のリング形状を有することができる。変形されたリングのサイズは、1つのリングから次のリングへと増加してもよい。接触領域は、ドリフトリング領域に対して共通の中心領域を形成しており、これは、接触領域が、ドリフトリング領域によって形成されたリングによって囲まれていることを意味する。ドロップ状のリング形状を有するドリフトリング領域の場合、接触領域は、全てのドロップ形状が収束する共通領域に形成されることが好ましい。ドロップ形状の設計は、SDDセンサチップの中心からSDDセンサチップの端に向かって接触領域を除去することを可能にする。この置換は、本発明に係るHiSDDにおいて起こり得る放射線誘発損傷を防止するのに有用であり得る。さらには、円形リング構造と比べて、接触領域のサイズを小さくすることができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、前記HiSDDは、さらに、前記SDDセンサチップを支持するように構成されるホルダを備え、前記導電性経路の前記第2の端部は、前記ホルダ上の接触エリアにワイヤボンディングされる。ホルダは、保持基板、フレーム、支持体などであり得る。好ましくは、ホルダは、ホルダにおいて導電性接続を提供するワイヤフレームを備える。
【0012】
好ましくは、前記SDDセンサチップは、第1のドーピング型の半導体材料のチップ基板を備え、前記チップ基板は、nドープ型半導体材料であることが好ましい。前記接触領域は、前記第1のドーピング型で高濃度にドープされてもよい。前記接触領域は、nドープされていることが好ましい。前記複数のドリフトリング領域は、第2のドーピング型でドープされてもよい。前記複数のドリフトリング領域は、pドープされていることが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、前記HiSDDは、さらに、前記SDDセンサチップの前記第2の表面を覆う絶縁層を備え、前記接触部は、前記絶縁層内の開口部を通して前記接触領域に導電的に接続される。前記導電性経路は、前記絶縁層の上方に形成される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、前記HiSDDは、さらに、前記絶縁層の上方に形成された少なくとも1つのドリフトリング接触部を備え、ドリフトリング接触部は、前記絶縁層内の第2の開口部を通して対応するドリフトリング領域に導電的に接続され、少なくとも1つのドリフトリング接触部は、前記絶縁層の上方に形成された導電性経路を含む。
【0015】
本発明の特に好ましい実施形態では、ハイブリッド集積シリコンドリフト検出器(HiSDD)は、シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップと、前置増幅器モジュールと、をハイブリッド集積するHiSDDであって、前記シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップは、チップ基板と、接触層と、接触領域と、複数のドリフトリング領域と、絶縁層と、接触部と、少なくとも1つのドリフトリング接触部と、を備え、前記チップ基板は、ドープされた半導体材料であり、前記接触層は、前記チップ基板の前記第1の表面上にあり、前記接触層のドーピング(ドーピング型)は、前記チップ基板の半導体材料のドーピングとは反対であり、前記接触領域は、好ましくはトレンチ形状構造として形成され、前記第1の表面とは反対側の前記チップ基板の第2の表面に配置され、前記接触領域のドーピングは、前記チップ基板の半導体材料のドーピングよりも高く、前記複数のドリフトリング領域は、好ましくはトレンチ形状構造として形成され、前記接触領域を共通の中心として前記チップ基板の前記第1の表面とは反対側の前記チップ基板の前記第2の表面に配置されており、前記ドリフトリング領域及び前記接触領域は、互いに離間され、前記ドリフトリング領域のドーピングは、前記チップ基板の半導体材料のドーピングとは反対であり、前記絶縁層は、前記チップ基板の前記第2の表面を覆い、前記接触部は、前記絶縁層の上部に形成され、前記絶縁層内の第1の開口部を通して前記接触領域に導電的に接続され、前記少なくとも1つのドリフトリング接触部は、前記絶縁層の上部に形成され、ドリフトリング接触部は、前記絶縁層内の第2の開口部を通して対応するドリフトリング領域に導電的に接続され、前記前置増幅器モジュールは、該前置増幅器モジュールの単一表面上に配置された接触部を有する、HiSDDである。接触部は、第1の開口部及びその下にある接触領域の真上にフリップチップボンディングのために形成され、SDDセンサチップは、さらに、絶縁層の上部に形成された導電性経路を備え、導電性経路の第1の端部は、(例えば、対応して離間された接触パッドを設けることによって)フリップチップボンディングのために形成され、導電性経路の第2の端部は、(例えば、対応して大きなボンドパッドを設けることによって)ワイヤボンディングのために形成され、前置増幅器モジュールの接触部は、(例えば、対応して離間された接触パッドを設けることによって)フリップチップボンディングのために形成され、導電性経路の第1の端部及び接触部は、前置増幅器モジュールの接触部にフリップチップボンディングされる。
【0016】
前置増幅器モジュールの信号入力は、フリップチップボンドを介して、SDDセンサチップの信号出力に(すなわち、接触領域に)直接接続されてもよい。しかしながら、前置増幅器モジュールは、典型的には、複数の入力及び出力、例えば、増幅された入力信号のための信号出力、1つ又は複数の電圧入力、及び接地電位(GND)接触部を要求する。前置増幅器モジュールの接触部の全て又は少なくともいくつかは、(例えば、対向する接触パッド間のはんだバンプ又はスタッドバンプを用いて)フリップチップボンドを介して、SDDセンサチップ上の対応する接触パッドに直接接続されてもよい。これらの接触パッドは、導電性経路を介して、フリップチップボンドされた前置増幅器モジュールによって覆われた領域の外側にあるさらなる接触パッド(例えば、ボンドパッド)に接続することができる。導電性経路のこれらのいわゆる第2の端部は、次いで、ワイヤボンドを介して、ホルダ上の対応する接触エリアに接続することができる。
【0017】
しかしながら、従来技術のSDDでは、外部前置増幅器は、検出軸の外側に配置されていたが、本発明では、前置増幅器モジュールは、X線光子が反対側から入射するSDDセンサチップの感応領域の中心に直接、又は少なくともの中心付近に、配置される。従来技術では、前置増幅器モジュールは、典型的には、SDDセンサチップ及び外部前置増幅器モジュールが別々に結合されるキャリア基板からの高エネルギーX線光子によって引き起こされる光子誘起イオン化に対して少なくとも部分的に保護される。しかしながら、実際のSDDセンサチップは光子変換率が高いため、入射X線光子のほとんどは電子-正孔対に変換され、SDDセンサチップの感応領域を透過する光子はほとんどない。したがって、入射光子の強度が検出許容限界を超えない場合、SDDセンサチップの感応領域のすぐ後ろに外部前置増幅器を使用することもできる。
【0018】
SDDセンサチップ及び外部前置増幅器モジュールは、当業者には既知のものである。さらに、当業者に既知のものとして、フリップチップボンディング法があり、この方法は、典型的には、接続される接触部の1つに金属バンプを適用し、次いで、これらを互いに対向させ、金属バンプを加熱することによって接続する溶接プロセスを介して実行される。ハイブリッド集積という用語は、特に、機能的に異なる要素を別々に提供し、共通のプラットフォーム上で組み合わせることで、単一構成要素レベル上にありながらも増大した機能性を有する単一要素を提供する製造アプローチとして理解される。SDDセンサチップと関連する前置増幅器との近接・短距離の組み合わせは、回路上の理由から特に好ましく、従来のアプローチと比較して多くの利点を提供する。
【0019】
接触部は、フリップチップボンドによって前置増幅器モジュールの入力に直接接続されるので、SDDセンサチップの接触領域と前置増幅器の第1のFETとの間の距離が最小化される。距離が短いということは、接続の電気容量も非常に低くできることを意味する。電気容量が低いため、HiSDDの低時定数が実現でき、高速応答と広い検出帯域幅が可能になる。強度が急激に変化するX線放射線を検出するためには、広い検出帯域幅が好ましい。より長いワイヤボンド接続のため、従来技術のSDDセンサチップと外部前置増幅器との間の接続の電気容量は非常に高くなり、その結果、対応するSDDモジュールの検出帯域幅が低減する。さらには、従来技術のフリーボンドワイヤSDDベースの検出器モジュールは、機械的に振動する傾向があり、出力信号にいわゆるピックアップノイズを生成する可能性がある。接触領域と前置増幅器入力との間の少なくともメインボンドワイヤを、安定かつ堅牢なフリップチップボンドに置き換えることにより、起こり得る機械的不安定性を回避し、電気的特性を安定化することができる。
【0020】
さらに、製造の観点からも利点がある。従来技術のSDDモジュールであっても、低い電気容量の前置増幅器への最短の接続を確保するために、既に注意が払われている。これは、とりわけ、電気容量のさらなる発生源を最小化することによって達成することができ、これはまた、接触部の表面と対応する接触パッドのサイズが、通常、最小限のサイズになることを意味する。しかしながら、接続する構造が小さくなればなるほど、接続ボンドワイヤを確立することがますます難しく、困難になる。
【0021】
これに対し、本発明のフリップチップ法では、信号出力を提供するSDDセンサチップの接触領域と前置増幅器の信号入力との間のメインボンドワイヤを、非常に短く安定かつ機械的に堅牢な接続に置き換えることができる。さらには、電気的に重要でない他の接続に導電性の経路を使用するめ、遠く離間された接触部及びより大きな接触パッドを有するより適切な接触スキームを実現することができる。メインワイヤボンドをフリップチップボンドによって置き換え、SDDセンサチップ上により遠く離間された接触部を配置できるようにすることで、製造時のプロセス、特に関連するボンディングプロセスが大幅に簡略化する。これは、ホルダ上の構造にも適用され、(例えば、接着剤による)外部前置増幅器の取り付けを避けることができるため、簡略化することができる。その代わりに、SDDセンサチップへの取り付けプロセスは、導電性接続の形成、特に接触領域と前置増幅器入力との間の主接続の形成を既に含んでいる。
【0022】
信号出力として中心接触領域の周りに(好ましくは、円形に配置される)ドリフトリング領域を含むSDDセンサチップにより、生成された電荷キャリアのドリフト特性を規定することが可能になる。X線光子が基板の空乏層に吸収されると、電子-正孔対が生成され、印加された逆電圧によって分離される。ドリフトリング領域を介して空間電荷層に第2の電圧を印加することにより、電荷キャリアを制御された方法で接触領域にドリフトすることができる。このようなSDDセンサチップでは、電気信号は、SDDセンサチップの中心にある低い電気容量の低い小さな接触領域のみに集められる。ドリフトリング領域には、共通のドリフトリング電圧を供給することができ、又は異なるドリフトリング電圧が印加される。後者の場合、少なくともいくつか又は全てのドリフトリング領域に、適切なドリフトリング電圧源に接続するための個々のドリフトリング接触部を提供してもよく、或いは、リングを、例えば、異なるドリフトリング構造間に抵抗素子を含めることによって、分圧回路によって導電的に接続してもよい。
【0023】
前置増幅器モジュールは、ゲートがモジュールの信号入力に直接接続された入力トランジスタとして、例えば、低ノイズJFETなどのFETを備え得る。好ましくは、前置増幅器モジュールは、前置増幅器チップの表面上に配置された接触部を有する前置増幅器チップであり得る。例えば、前置増幅器チップは、少なくとも1つのFETを含むベアチップ又はベアダイであり得る。前置増幅器モジュール又はチップは、パッケージ(例えば、チップキャリアパッケージ又はシステムインパッケージ、SiP)内に設けられてもよい。パッケージ内に設けられた前置増幅器モジュールは、パッケージの表面上に配置されたフリップチップボンディングのための各接触部を有し得る。前置増幅器モジュールは、該前置増幅器モジュールの表面上に配置された接触部を有することが好ましく、これは、平面フリップチップボンディングプロセスにより、全ての接触部を一度に接続し、さらなるワイヤボンド又は他の接続が不要となり好ましいためである。フリップチップボンディングの別の利点は、特有の、ボンドの保護である。ワイヤボンドは、応力及び衝撃に対して機械的に敏感であるが、フリップチップボンドは、本質的に安定しており、接合された構成要素によって覆われているため、そのような機械的な衝撃に対する感度が低い。全ての接触部が前置増幅器モジュールの単一表面上に配置されてもよいが、接触部のいくつかは前置増幅器モジュールの他の表面に配置されてもよい。
【0024】
前置増幅器モジュールは、さらに、前置増幅器モジュールに集積される温度センサを備え得る。例えば、温度センサは、NTC又は半導体温度センサ(例えば、シリコンバンドギャップ温度センサ)であり得る。好ましくは、温度センサは、前置増幅器チップの集積素子であり得る。前置増幅器モジュール内に温度センサを集積することで、温度が外部構成要素によって測定される従来技術の方法と比較して、より直接的なセンシングが可能になる。本発明では、増幅器を放射線検出エリアに顕著に近接させ、SDDセンサチップと直接接触させるため、例えば、入射放射線の強度が変化する場合、急激な温度変化の影響を前置増幅器モジュールが受けやすくなる。したがって、集積温度センサは、温度制御の品質を改善することを可能にする。
【0025】
導電性経路は、好ましくは、絶縁層の上方又は上部に(above or on top of)形成され、前置増幅器モジュールの密接な接触部を広い範囲に広げることを可能にする。信号出力、GND又は基準電位接触部、複数の入力などを含み得るこれらの追加的な接触部は、電気容量及び電子ノイズの原因となる影響に対して感度が低い。したがって、対応するボンドパッドは、従来技術の外部前置増幅器に接続するためのSDDセンサチップ上の従来のワイヤボンドパッドと比較して、サイズをより大きくすることができる。より大きなボンドパッドは、より高い公差を許容できるため、ボンディングプロセスが非常に簡略化される。
【0026】
接触層及び接触領域、並びに複数のドリフトリング領域は、当業者に知られている様々な方法によって構造化することができる。例えば、不純物原子をこれらの領域にドープ、注入、又は(イオン)注入することができる。空間選択的な改質のために、マスキング技術を適用してもよい。接触層又は異なる領域は、蒸着法によって設けることもできる。マスキング技術により、改質領域は、矩形に近い深さプロファイルを示すトレンチ形状構造として形成され得る。
【0027】
好ましくは、絶縁層は、SiO、Si、Al、TiO若しくはZrO層、又はそれらの組み合わせなどの誘電体層である。 誘電体層は、基板の第2の表面内の接触領域及び複数のドリフトリング領域を覆い、保護する。好ましくは、接触部は金属接触部として形成され、金属は当業者に知られている方法によって選択的に蒸着される。特に、接触部は、Al、Ag、Cu、Au又はポリSi接触部とすることができる。本発明に係るHiSDDは、1つ又は複数の追加の層を含み得る。これらの層は、少なくとも1つの不動態化層と、少なくとも1つの追加の絶縁層と、異なる層にわかって分布される導電経路とを含み得るが、これらに限定されない。不動態化層は、例えば、SiN、SiO、Si又はポリマー層であり得る。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、前記HiSDDは、さらに、前記ホルダを備え、前記ホルダは、第1の表面において前記SDDセンサチップ及び前記前置増幅器モジュールを支持するように構成され、前記導電性経路の前記第2の端部は、前記ホルダ上の対応する接触パッドに接続するようにワイヤボンディングされる。ホルダは、例えば、エンドユーザ及び産業アプリケーションにおけるさらなる組み立て工程のために、埋め込み用途のために、又はウエハレベル以外の取り扱い性の改善のために、安定かつ堅牢なプラットフォームを提供してもよい。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、前記チップ基板は、nドープ型半導体材料である。本発明の特に好ましい実施形態では、前記接触層は、pドープされ、前記接触領域は、nドープされる。好ましくは、前記ドリフトリング領域は、pドープされる。pドープされた表面カソード層として接触層と、nドープされたアノード領域として接触領域と、を含むnドープ型半導体材料では、電子はアノードに集められ、一方、生成された電子-正孔対の正孔はカソードに拡散する。しかしながら、SDDセンサチップの構造化及び個々の領域のドーピングは、当業者に知られているように変更されてもよい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、前記ドリフトリング領域及び前記接触領域は、それぞれ、基板に平行な軸に沿って互いに等間隔に離間される。等間隔であれば、個々のドリフトリング領域に異なるドリフトリング電圧(第2の電圧)が印加されるときに生じる電界が単純化する。しかしながら、ドリフトリング領域の間隔は、SDDセンサチップの少なくともいくつか又は全てのセクションにおいて異なるように設定されてもよい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つのドリフトリング接触部は、遠隔接続のために絶縁層の上部に形成された導電経路を含む。HiSDDでは、前置増幅器モジュールの様々な接触部を互いに分離し、接続プロセスを簡略化するために、導電性経路が絶縁層の上部に適用される。しかしながら、同じタイプの導電性経路を、SDDセンサチップに関して他の必要な接続に適用することもできる。特に、ドリフトリング接触部は、互いにより遠く離間されてもよく、より大きなボンディングパッドが設けられてもよい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、前記前置増幅器モジュールの第1の入力FETは、前記前置増幅器への接続の浮遊容量に整合される。第1の入力FETを前置増幅器への接続の浮遊容量に整合させることで、検出器信号のシリアルノイズを低減することができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、前記少なくとも1つのドリフトリング接触部は、前記絶縁層の上部に導電性リングを形成する。別個のドリフトリング領域は、基板の第2の表面において既に閉じた電気リング回路を形成していてもよい。これらの電気リング回路は、通常、対応するドリフトリング接触部によって接続され、同様にリングを形成する。電気抵抗をさらに低減し、ドリフトリングの全区間を等電位にするために、絶縁層の上部に閉じた導電性リングをさらに設けることができる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの導電性リングが、前記前置増幅器モジュールの下の領域において開いている。導電性リングを開くことにより、HiSDDの電気的特性を低下させる短絡及び他の電気的交番効果の発生を回避することができる。さらには、前置増幅器モジュールの下の領域の加熱抵抗が高められるため、フリップチップボンドプロセスを簡略化することができる。
【0035】
本発明のさらなる態様は、本発明に係るHiSDDと、前記ホルダに熱的に接続された熱電クーラと、を備えるHiSDDモジュールに関する。熱電クーラは、高エネルギーX線の検出の場合であっても、本発明に係るHiSDDモジュールを冷却するのに十分である。フリップチップボンディングにより、従来のワイヤボンドアプローチと比較して、前置増幅器モジュールからの熱伝達の増加を実現することができる。したがって、前置増幅器モジュールは、SDDセンサチップを介して直接冷却することができる。
【0036】
好ましくは、本発明に係るHiSDDモジュールは、さらに、X線放射線を透過させるための円形の入口開口部を備え、前記入口開口部の中心は、前記接触領域の上方に位置する。該開口部は、X線放射線がSDDセンサチップによって検出されることができる感応領域を規定する。
【0037】
本発明の別の態様は、本発明に係るハイブリッド集積シリコンドリフト検出器(HiSDD)を製造するための方法に関し、前記方法は、前記シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップを提供する工程と、前記前置増幅器モジュールを提供する工程と、前記導電性経路の前記第1の端部及び前記接触部を前記前置増幅器モジュールの前記接触部にフリップチップボンディングする工程と、を含む、方法である。提案される製造方法は、本発明に係る上述のHiSDDモジュールに直接関連し、したがって、定義される工程も、本発明に係るHiSDDの個々の特徴に直接関連する。好ましくは、前記導電性経路の前記第2の端部は、前記ホルダ上の接触エリアにワイヤボンディングされる。
【0038】
本明細書に記載された全ての実施形態は、それらのそれぞれの特徴が適合する範囲において、互いに有利に組み合わせることができる。特に、「実施形態では」という表現は、それぞれの特徴が本発明の特定の実施形態の一部であっても、一部でなくてもよいことを意味する。
【0039】
本発明のさらなる態様及び好ましい実施形態は、従属請求項、図面、及び以下の図面の説明から明らかになる。異なる開示された実施形態は、特に記載しない限り、互いに有利に組み合わされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の特徴は、添付の図面を参照した例示的な実施形態の詳細な説明によって、当業者にとって明らかなものとなる。
図1図1は、従来技術の外部前置増幅器モジュールに接続されたSDDセンサチップの例示的な実施形態を概略的に示す。
図2図2は、本発明に係るHiSDDの例示的な実施形態を概略的に示す。
図3図3は、従来技術の例示的なSDDセンサチップの構造レイアウトを概略的に示す。
図4図4は、本発明に係るSDDセンサチップの例示的な実施形態の構造レイアウトを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
次に、添付図面にその例が示されている実施形態について詳細に説明する。例示的な実施形態の効果及び特徴、そして、その実施方法について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で具現化され得るものであり、本明細書に示された実施形態のみに限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、当業者に本発明の態様及び特徴が十分に伝わるように、例として提供されるものである。
【0042】
したがって、本発明の態様及び特徴の完全な理解のために当業者に必要であると考えられないプロセス、要素、及び技術については、説明しない場合がある。
【0043】
本明細書で使用される場合、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連する列挙された項目の1つ又は複数の任意の及び全ての組み合わせを含む。さらに、本発明の実施形態を説明するときの「してもよい/し得る(may)」の使用は、「本発明の1つ又は複数の実施形態」を指す。本発明の実施形態の以下の説明では、単数形の用語は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形を含み得る。
【0044】
「第1の」及び「第2の」という用語は、様々な要素を説明するために使用されるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と命名することができ、同様に、第2の要素を第1の要素と命名することもできる。「のうち少なくとも1つ」などの表現は、要素のリストに先行する場合、要素のリスト全体を修飾し、リストの個々の要素を修飾することはない。
【0045】
本明細書で使用される場合、「実質的に」、「約」という用語及び同様の用語は、近似の用語として使用され、程度の用語としてではなく、当業者によって認識されるであろう測定値又は計算値における固有の偏差を考慮することを意図している。さらに、「実質的に」という用語が、数値を使用して表現され得る特徴と組み合わせて使用される場合、「実質的に」という用語は、その値を中心とする値の+/-5%の範囲を意味する。
【0046】
図1は、従来技術の外部前置増幅器モジュール200に接続されたSDDセンサチップ100の例示的な実施形態を概略的に示す。特に、図1aは、円形ドリフトリング領域20(例えば、20-1及び20-4)を有する従来のSDDの断面を示し、図1b及び図1cは、それぞれ、前記従来のSDDの上面図及び側面図を示す。
【0047】
これらの図は、SDDの異なる態様を示すもので、該SDDは、シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップと、外部前置増幅器モジュールと、を別々に組み合わせるSDDであって、シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップ100は、チップ基板10と、接触層12と、接触領域14と、複数のドリフトリング領域20と、絶縁層16と、接触部18と、少なくとも1つのドリフトリング接触部22と、を備え、チップ基板10は、ドープされた半導体材料であり、接触層12は、チップ基板10の第1の表面上にあり、接触層12のドーピングは、チップ基板10の半導体材料のドーピングとは反対であり、接触領域14は、トレンチ形状構造として形成され、第1の表面とは反対側のチップ基板10の第2の表面に配置され、接触領域14のドーピングは、チップ基板10の半導体材料のドーピングよりも高く、複数のドリフトリング領域20は、トレンチ形状構造として形成され、接触領域14を共通の中心としてチップ基板10の第1の表面とは反対側のチップ基板10の第2の表面に配置されており、ドリフトリング領域20及び接触領域14は、互いに離間され、ドリフトリング領域20のドーピングは、チップ基板10の半導体材料のドーピングとは反対であり、絶縁層16は、チップ基板10の第2の表面を覆い、接触部18は、絶縁層16の上部に形成され、絶縁層16内の第1の開口部を通して接触領域14に導電的に接続され、少なくとも1つのドリフトリング接触部22は、絶縁層16の上部に形成され、ドリフトリング接触部22は、絶縁層16内の第2の開口部を通して対応するドリフトリング領域20に導電的に接続され、外部前置増幅器モジュール200は、該前置増幅器モジュール200の単一表面上に配置された接触部を有する、SDDである。
【0048】
接触部18は、第1の開口部及び下にある接触領域14の真上にワイヤボンディングのために形成され、前置増幅器モジュール200の接触部は、ワイヤボンディングのために形成され、接触部18は、前置増幅器モジュール200の信号入力にワイヤボンディングされる。複数のドリフトリング領域20の少なくともいくつか又は全ては、個々のドリフトリング接触部(22、例えば22-1)を有してもよい。これは、接触部18が、前置増幅器モジュール200、特に、外部前置増幅器200の信号入力へのワイヤボンド接続Aに適合していることを意味する。図示のドリフトリング接触部22-1は、ドリフトリング電圧源へのワイヤボンド接続Bに適合している。
【0049】
SDDセンサチップ100及び外部前置増幅器モジュール200は、両方の構成要素を支持するように構成される適切なホルダ300上で別々に組み合わせることができる。ホルダ300は、外部前置増幅器200の信号出力への接続Cを提供してもよい。ホルダ300は、ワイヤボンディングのためのさらなる接触部を提供してもよい。これらのさらなる接触部は、別個のワイヤボンドを介して特定のドリフトリング電圧Vringを送達するための接触部40(例えば、40-1、40-4)を含み得るが、それらに限定されない。別の接触部42は、接地電位GNDへの接続を提供してもよい。
【0050】
図2は、本発明に係るHiSDDの例示的な実施形態を概略的に示す。特に、図2aは、円形ドリフトリング領域20(例えば、20-1及び20-4)を有するHiSDDの断面を示し、図2b及び図2cは、それぞれ、HiSDDの上面図及び側面図を示す。
【0051】
これらの図は、HiSDDの異なる態様を示すもので、該HiSDDは、シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップと、外部前置増幅器モジュールと、をハイブリッド集積するHiSDDであって、シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップ100は、チップ基板10と、接触層12と、接触領域14と、複数のドリフトリング領域20と、絶縁層16と、接触部18と、少なくとも1つのドリフトリング接触部22と、を備え、チップ基板10は、ドープされた半導体材料であり、接触層12は、チップ基板10の第1の表面上にあり、接触層12のドーピングは、チップ基板10の半導体材料のドーピングとは反対であり、接触領域14は、トレンチ形状構造として形成され、第1の表面とは反対側のチップ基板10の第2の表面に配置され、接触領域14のドーピングは、チップ基板10の半導体材料のドーピングよりも高く、複数のドリフトリング領域20は、トレンチ形状構造として形成され、接触領域14を共通の中心としてチップ基板10の第1の表面とは反対側のチップ基板10の第2の表面に配置されており、ドリフトリング領域20及び接触領域14は、互いに離間され、ドリフトリング領域20のドーピングは、チップ基板10の半導体材料のドーピングとは反対であり、絶縁層16は、チップ基板10の第2の表面を覆い、接触部18は、絶縁層16の上部に形成され、絶縁層16内の第1の開口部を通して接触領域14に導電的に接続され、少なくとも1つのドリフトリング接触部22は、絶縁層16の上部に形成され、ドリフトリング接触部22は、絶縁層16内の第2の開口部を通して対応するドリフトリング領域20に導電的に接続され、前置増幅器モジュール200は、該前置増幅器モジュール200の単一表面上に配置された接触部を有する、HiSDDである。
【0052】
接触部18は、第1の開口部及び下にある接触領域14の真上にフリップチップボンディングのために形成され、SDDセンサチップ100は、さらに、絶縁層16の上部に形成された導電性経路32を備え、導電性経路32の第1の端部は、フリップチップボンディングのために形成され、導電性経路32の第2の端部は、ワイヤボンディングのために形成され、前置増幅器モジュール200の接触部は、フリップチップボンディングのために形成され、導電性経路32の第1の端部及び接触部18は、前置増幅器モジュールの接触部にフリップチップボンディングされる。フリップチップボンディングのため、対向する接触部(例えば、接触パッド)間に金属バンプ30を適適用してもよい。
【0053】
これらの図は、さらに、ホルダ300の第1の表面においてSDDセンサチップ100及び前置増幅器モジュール200を支持するように構成されるホルダ300を示し、導電性経路32の第2の端部は、ホルダ300上の接触エリアにワイヤボンディングされている。チップ基板10は、nドープ型半導体材料であることが好ましい。好ましくは、接触層12は、pドープされる。好ましくは、接触領域14は、nドープされる。ドリフトリング領域20及び接触領域14は、それぞれ、基板10に平行な軸に沿って互いに等間隔に離間することができる。少なくとも1つのドリフトリング接触部22は、遠隔接続のために絶縁層16の上部に形成された導電性経路32を含み得る。好ましくは、前置増幅器モジュール200の第1の入力FETは、前置増幅器への接続Aの浮遊容量に整合される。少なくとも1つのドリフトリング接触部22は、絶縁層16の上部に閉じた導電性リングを形成することができ、少なくとも1つの導電性リングは、前置増幅器モジュール200の下の領域で開いていてもよい。
【0054】
SDDセンサチップ100及びハイブリッド集積前置増幅器モジュール200は、ホルダ300にワイヤボンディングすることができる。ホルダ300は、プリント回路基板(PCB)であり得る。ホルダ300は、ハイブリッド集積前置増幅器200の信号出力への接続Cを提供してもよい。ホルダ300は、ワイヤボンディングのためのさらなる接触部を提供してもよい。これらのさらなる接触部は、別個のワイヤボンドを介して特定のドリフトリング電圧Vringを送達するための接触部40(例えば、40-1、40-4)を含み得るが、それらに限定されない。別の接触部42は、接地電位GNDへの接続を提供してもよい。
【0055】
図3は、従来技術の例示的なSDDセンサチップ100の構造レイアウトを概略的に示す。複数のドリフトリング領域20の円形構造、具体的には、その上方に形成されたドリフトリング接触部22-1の円形構造が示されており、ドリフトリング接触部22-1は、絶縁層(16、図示せず)の上部に閉じた導電性リングを少なくとも部分的に形成する。ドリフトリング接触部22-1及び接地接触部24の各々は、密接に離間されたワイヤボンドパッドを提供する。接触部18は、SDDセンサチップ100の上部にワイヤボンドパッドとして完全に形成される。
【0056】
図4は、本発明に係るSDDセンサチップ100の例示的な実施形態の構造レイアウトを概略的に示す。基本構造は、図3に示す構造に本質的に対応し、したがって、参照符号及びそれらの具体的な割り当ては同じである。
【0057】
しかしながら、SDDセンサチップ100の上部の回路レイアウトは、絶縁層(16、図示せず)の上部に直接前置増幅器モジュール200をハイブリッド集積できるように接触部が改質されているため、フリップチップボンディングに適合している。特に、前置増幅器への接続(A)の電気容量を低減するために、前置増幅器の信号入力は、SDDセンサチップ100の中心の接触部18においてSDDセンサチップ100の信号出力に直接接続される。前置増幅器モジュール200のさらなる接触部は、導電性経路32によって遠く離間されており、導電性経路32の第1の端部は、フリップチップボンディングのために形成され、導電性経路32の第2の端部は、ワイヤボンディングのために形成される。簡略化されたワイヤボンドプロセスを可能にするために、導電性経路32の第2の端部は、従来技術のSDDセンサチップ100及び前置増幅器モジュール200上の典型的なワイヤボンドパッドよりもサイズが大きいワイヤボンドパッドを提供してもよい。ドリフトリング接触部22のほとんどは、絶縁層(16、図示せず)の上部に導電性リングを形成するが、前置増幅器モジュール200が接続される領域の下では、対応するドリフトリング接触部22は、前置増幅器モジュール200の下の領域において開いている。
【符号の説明】
【0058】
10 チップ基板(好ましくは、nドープされる)
12 接触層(好ましくは、pドープされたカソード層)
14 接触領域(好ましくは、nドープされたアノード領域)
16 絶縁層(好ましくは、誘電体層、例えば、SiO、Si、AlTiO、又はZrO
18 接触部(好ましくは、金属接触部、例えば、Al、Ag、Cu、又はAu接触部)
20 ドリフトリング領域(好ましくは、pドープされ、好ましくは、リング形状又はドロップ形状)
22 ドリフトリング接触部(好ましくは、金属接触部、例えば、Al、Ag、Cu、又はAuドリフトリング接触部)
24 GND接触部
30 金属バンプ
32 導電性経路
50 GND(接地電位)
52 Vring(ドリフトリング電圧)
100 センサチップ
200 前置増幅器モジュール
300 ホルダ(好ましくは、プリント回路基板、PCB)
A 前置増幅器への接続
B ドリフトリング電圧への接続(Vring
C 外部電子機器への接続
D 接地電位(GND)への接続
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド集積シリコンドリフト検出器(HiSDD)であって、前記HiSDDは、
シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップ(100)と、
前置増幅器モジュール(200)と、
を備え、
前記シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップ(100)は、入射放射線に露出されるように構成される第1の表面と、前記第1の表面とは反対側の第2の表面と、を有し、
接触領域(14)及び複数のドリフトリング領域(20)が、前記センサチップ(100)の前記第2の表面に配置され、前記接触領域(14)は、前記ドリフトリング領域(20)から離間され、前記ドリフトリング領域(20)に対して共通の中心領域を形成し、
接触部(18)が、前記接触領域(14)の上方に形成され、前記接触領域(14)に導電的に接続され、フリップチップボンディングのために構成され、
導電性経路(32)が、前記第2の表面上に形成され、前記接触領域(14)及び前記ドリフトリング領域(20)から絶縁され、フリップチップボンディングのために構成される第1の端部と、ワイヤボンディングのために構成される第2の端部と、を有し、
前記前置増幅器モジュール(200)は、前記前置増幅器モジュール(200)の表面上に配置された接触部を有し、
前記導電性経路(32)の前記第1の端部及び前記接触部(18)は、前記前置増幅器モジュール(200)の前記接触部にフリップチップボンディングされる、HiSDD。
【請求項2】
請求項1に記載のHiSDDのであって、前記HiSDDは、さらに、
前記SDDセンサチップ(100)を支持するように構成されるホルダ(300)
を備え、
前記導電性経路(32)の前記第2の端部は、前記ホルダ(300)上の接触エリアにワイヤボンディングされる、HiSDD。
【請求項3】
請求項1に記載のHiSDDであって、
前記SDDセンサチップ(100)は、第1のドーピング型の半導体材料のチップ基板(10)を備え、
前記チップ基板(10)は、好ましくは、nドープ型半導体材料である、HiSDD。
【請求項4】
請求項3に記載のHiSDDであって、
前記接触領域(14)は、前記第1のドーピング型で高濃度にドープされ、前記接触領域(14)は、好ましくは、nドープされており、
前記複数のドリフトリング領域(20)は、第2のドーピング型でドープされ、前記ドリフトリング領域(20)は、好ましくは、pドープされている、HiSDD。
【請求項5】
請求項3に記載のHiSDDであって、前記SDDセンサチップ(100)は、さらに、
前記SDDチップ(100)の前記第1の表面に対応する前記チップ基板(10)の第1の表面上に接触層(12)を備え、
前記接触層(12)は、第2のドーピング型でドープされ、好ましくは、pドープされている、HiSDD。
【請求項6】
請求項1に記載のHiSDDであって、前記HiSDDは、さらに、
前記SDDセンサチップ(100)の前記第2の表面を覆う絶縁層(16)
を備え、
前記接触部(18)は、前記絶縁層(16)内の開口部を通して前記接触領域(14)に導電的に接続され、前記導電性経路(32)は、前記絶縁層(16)の上方に形成される、HiSDD。
【請求項7】
請求項6に記載のHiSDDであって、前記HiSDDは、さらに、
前記絶縁層(16)の上方に形成された少なくとも1つのドリフトリング接触部(22)
を備え、
ドリフトリング接触部(22)は、前記絶縁層(16)内の第2の開口部を通して対応するドリフトリング領域(20)に導電的に接続され、
少なくとも1つのドリフトリング接触部(22)は、前記絶縁層(16)の上部に形成された導電性経路(32)を含む、HiSDD。
【請求項8】
請求項1に記載のHiSDDであって、
前記前置増幅器モジュール(200)の第1の入力FETは、前記前置増幅器への接続(A)の浮遊容量に整合される、HiSDD。
【請求項9】
請求項1に記載のHiSDDであって、
前記前置増幅器モジュール(200)は、温度センサを備える、HiSDD。
【請求項10】
請求項1に記載のHiSDDであって、
前記少なくとも1つのドリフトリング接触部(22)は、前記絶縁層(16)の上部に導電性リングを形成する、HiSDD。
【請求項11】
請求項10に記載のHiSDDであって、
少なくとも1つの導電性リングは、前記前置増幅器モジュール(200)の下の領域において開いている、HiSDD。
【請求項12】
HiSDDモジュールであって、前記HiSDDモジュールは、
請求項2に記載のHiSDDと、
前記ホルダ(300)に熱的に接続された熱電クーラと、
を備える、HiSDDモジュール。
【請求項13】
請求項11に記載のHiSDDモジュールであって、前記HiSDDモジュールは、さらに、
X線放射線のための円形の入口開口部
を備え、
前記入口開口部の中心は、前記接触領域(14)の上方に位置する、HiSDDモジュール。
【請求項14】
請求項1に記載のハイブリッド集積シリコンドリフト検出器(HiSDD)を製造するための方法であって、前記方法は、
前記シリコンドリフト検出器(SDD)センサチップ(100)を提供する工程と、
前記前置増幅器モジュール(200)を提供する工程と、
前記導電性経路(32)の前記第1の端部及び前記接触部(18)を前記前置増幅器モジュール(200)の前記接触部にフリップチップボンディングする工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項2に記載のHiSDDを製造するための請求項14に記載の方法であって、前記方法は、さらに、
前記導電性経路(32)の前記第2の端部を前記ホルダ(300)上の接触エリアにワイヤボンディングする工程
を含む、方法。
【国際調査報告】