(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】高度に圧縮された金属-CNT複合材料及びその製造
(51)【国際特許分類】
C25D 5/54 20060101AFI20240122BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20240122BHJP
C25D 5/22 20060101ALI20240122BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20240122BHJP
C25D 15/02 20060101ALI20240122BHJP
C25D 1/04 20060101ALI20240122BHJP
C25D 1/08 20060101ALI20240122BHJP
C25D 17/00 20060101ALI20240122BHJP
C22C 1/10 20230101ALI20240122BHJP
【FI】
C25D5/54
C01B32/168
C25D5/22
C25D7/00 R
C25D15/02 F
C25D15/02 B
C25D15/02 C
C25D1/04 311
C25D1/08 321Z
C25D17/00 H
C22C1/10 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537394
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021083348
(87)【国際公開番号】W WO2022135841
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516296566
【氏名又は名称】ルクセンブルク・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー・(エルアイエスティ)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ・デュハイン
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・ランブラン
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン・ルノーブル
【テーマコード(参考)】
4G146
4K020
4K024
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB05
4G146AB06
4G146AC01A
4G146AD22
4G146BA04
4G146CB03
4G146CB19
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4G146DA07
4K020AA04
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4K024AA09
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4K024CA15
4K024CB02
4K024CB05
4K024CB12
4K024CB15
4K024DA01
4K024GA16
(57)【要約】
金属-CNT複合材料の製造方法が開示される。この方法は、CNTの凝集体を提供する工程と、めっき溶液におけるCNT凝集体の隙間を充填して、CNTが埋め込まれる金属相を形成する工程とを含む。金属相が形成される場合、CNT凝集体は、クランプ器具で圧縮される。本発明の更なる態様は、高いCNT含有量を有する金属-CNT複合材料に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属-CNT複合材料を作製するための方法であって、
カーボンナノチューブの凝集体を提供する工程と、
めっき溶液における前記カーボンナノチューブ凝集体の隙間を充填して、前記カーボンナノチューブが埋め込まれる金属相を形成する工程と、
を含み、前記カーボンナノチューブ凝集体は、前記金属相が形成される場合、クランプ器具で圧縮されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ凝集体の圧縮は、前記金属相の形成中に前記カーボンナノチューブ凝集体の膨潤を抑制又は防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブは、親水性コーティングを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記親水性コーティングは、ポリフェノール又はポリ(カテコールアミン)、好ましくはポリドーパミン、並びに前記ポリフェノール又は前記ポリ(カテコールアミン)を架橋する及び/又は前記ポリフェノール又は前記ポリ(カテコールアミン)によってキレート化される金属イオンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属は、銅を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記クランプ器具は、その間に前記カーボンナノチューブ凝集体を保持する第1及び第2のプレートを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の及び第2のプレートのうちの少なくとも1つは、前記めっき溶液のための通路を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の及び前記第2のプレートのうちの少なくとも1つは、前記カーボンナノチューブ凝集体に向けられたパターン化された圧力伝達面を含み、前記パターン化された圧力伝達面は、凸部領域と凹部領域とを含み、前記凹部領域は、前記通路と連通している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブ凝集体の圧縮は、少なくとも主に前記凸部領域を介して行われ、前記凸部領域の反対側の前記カーボンナノチューブ凝集体の領域により高い圧縮をもたらし、前記凹部領域の反対側の前記カーボンナノチューブ凝集体の領域により低い圧縮をもたらし、前記凹部領域の反対側の前記カーボンナノチューブ凝集体の前記より低い圧縮領域内に少なくとも主に前記金属相の形成をもたらす、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブ凝集体を前記クランプ器具から解放する工程と、前記金属相であまり含浸されていない、又は含浸されていない事前により高度に圧縮された領域から前記カーボンナノチューブを洗い流す工程とを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の及び前記第2のプレートの少なくとも1つと前記カーボンナノチューブ凝集体との間に、前記めっき溶液に対して透過性である膜を配置する工程を含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記めっき溶液における前記カーボンナノチューブ凝集体の前記隙間を充填する工程は、電気めっきにより行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記カーボンナノチューブ凝集体の前記隙間を充填する工程は、例えば、超音波処理下などの音波処理下で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
金属-CNT複合材料は、少なくとも10体積%のカーボンナノチューブを含むことを特徴とする、カーボンナノチューブ凝集体の隙間を占有する金属相に埋め込まれた前記カーボンナノチューブの凝集体を含む、金属-CNT複合材料。
【請求項15】
前記金属-CNT複合材料は、15~65体積%のカーボンナノチューブを含む、請求項14に記載の金属-CNT複合材料。
【請求項16】
前記金属-CNT複合材料は、少なくとも45体積%のカーボンナノチューブを含む、請求項14又は15に記載の金属-CNT複合材料。
【請求項17】
前記金属相は、連続している、請求項14~16のいずれか一項に記載の金属-CNT複合材料。
【請求項18】
5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下の細孔率を有する、請求項14~17のいずれか一項に記載の金属-CNT複合材料。
【請求項19】
前記カーボンナノチューブ凝集体は、短いカーボンナノチューブと長いカーボンナノチューブの混合物を含み、前記カーボンナノチューブの少なくとも30重量%は、2.5μm~50μmの範囲の長さを有する短いカーボンナノチューブであり、前記カーボンナノチューブの少なくとも30重量%は、75μm~1500μmの範囲の長さを有する長いカーボンナノチューブである、請求項14~18のいずれか一項に記載の金属-CNT複合材料。
【請求項20】
金属-CNT複合材料は、メッシュの形態である、請求項14~19のいずれか一項に記載の金属-CNT複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、金属-カーボンナノチューブ複合材料(金属-CNT複合材料)及びこのような複合材料を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクスにおける小型化の傾向が続いているため、ますます多くの導体が、その最大通電容量に近い状態で動作する。材料がその機能的特性に損傷を与えることなく耐えることができる最大電流密度は、「電流容量」と呼ばれる。その電流容量制限に近い導体を動作させると、電子デバイスの寿命が短くなる。その結果、銅、銀、又は金と同様の導電率を持ちながら、より高い電流容量を有する材料を開発するための研究努力が強化されている。このような材料は又、落雷保護(特に、材料又は構造体の重量が重要な場合、例えば、飛行機、風力タービン、宇宙システムなどで)、自動車分野(例えば、カソード集電体として)、マイクロエレクトロニクス、パワーエレクトロニクスなどの様々な分野で使用できる可能性がある。
【0003】
金属-カーボンナノチューブ複合材料は、上記の点で特に有望な材料として考案されている。カーボンナノチューブ(CNT)は、1990年代のS.Iijimaの刊行物以来、多くの関心を集めてきた(例えば、(非特許文献1)及び(非特許文献2))。CNTを銅マトリックスに統合する科学的研究が進行中である。最も一般的な製造ルート、即ち、粉末冶金、電気めっき又は無電解めっきに基づく製造ルートの概要は、(非特許文献3)に見られることができる。その刊行物に示されているように、上記の方法で出会う困難さは、CNTの固有の「疎銅性」の性質にある。電気めっき技術に関しては、CNTの疎水性が高いため、CNT間の隙間を銅で良好に充填することは特に困難である。
【0004】
高電流容量と高導電率は、一般に相互排他的な特性である。第1では、強く結合したシステムを必要とし、第2では、弱く結合したシステムを必要とする。両方の特性を組み合わせる可能性のある方法の1つは、それぞれ高電流容量と高導電率を示す2つの材料の複合材料を使用することである。(非特許文献4)は、その高電流容量のためにCNTを、及びその高導電率のために銅を使用し、優れた結果を得た(導電率は銅とほぼ同じであるが、電流容量は銅の約100倍である)。電流容量の改善を実証したことに加えて、(非特許文献4)は、それらの複合材料は、銅よりも電気伝導率の温度依存性が低いことも示した。Cu-CNT複合材料は、シリコンのものと同様の、395Wm-1K-1の熱伝導率(銅の熱伝導率:400Wm-1K-1に近い)と低い熱膨張係数(5ppm K-1)を示した。これら2つの特性の組み合わせにより、入手可能な全ての材料の中で最も安価なものである、シリコンのものと比較して、材料の熱安定性を特徴付ける熱歪みパラメータ(TDP)の値、TDP=CTE/κ(κは熱伝導率、CTEは熱膨張係数である)が得られる。前述したように、CNTの疎水性が高いため、CNT間の隙間を銅(又は他の金属)で満足に充填することは困難な作業である。(非特許文献4)は、2工程の手法を使用した:第1の電気めっき工程は、アセトニトリルと酢酸銅の有機溶液を使用して行われ、第2の工程では、典型的な電気めっき溶液を用いて電気めっきが実行された。詳細には、Cuシード(seed)の核形成のためにアセトニトリル-酢酸銅溶液中のCNTの含浸工程を実行し、続いて同じ溶液中で5mA/cm2で電気めっきを行った。得られた中間生成物をアセトニトリルで洗浄し、真空デシケーター中にて60℃で30分間乾燥させた。次いで、管状炉にて250℃で3時間のアニーリング工程を実行し、続いて150sccmでH2下にて冷却した。次いで続いて、CuSO4溶液中で電気めっきを行って隙間を充填し、同じ乾燥とアニーリングの工程を繰り返した。
【0005】
その全体が参照により本明細書に組み込まれる、ルクセンブルク科学技術研究所(Luxembourg Institute of Science and Technology)(LIST)の(特許文献1)は、別の手法を開示している:ポリフェノール又はポリ(カテコールアミン)でコーティングされたCNTの層が提供され、次いでCNT層の隙間が金属マトリックスで充填され、その結果、CNTがその中に埋め込まれる。ポリフェノールとポリ(カテコールアミン)は、親水性であり、酸化還元活性を有する(即ち、金属イオンを還元することができる)。充填は、電着又は無電解めっきにより行われる。ポリフェノール又はポリ(カテコールアミン)コーティングは、金属イオンによって架橋され、金属イオンは、金属シードとして、充填工程中に金属マトリックスの接着及び/又は成長を促進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/043590A1号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Iijima S.,“Helical microtubules of graphite carbon,”Nature 1991;354:56-8
【非特許文献2】Iijima S,Ichihashi T.,“Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter,”Nature 1993;363:603-5
【非特許文献3】Janas D.,Liszka B.,“Copper matrix nanocomposites based on carbon nanotubes or graphene,”Mater.Chem.Front.,2018,2,22-35
【非特許文献4】Subramaniam et al.,Nature communication 4 2202(2013)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、金属-CNT複合材料、特に、これに限定されるものではないがCu-CNT複合材料の製造に関する。この第1の態様によれば、金属-CNT複合材料を作製するための方法は、CNTの凝集体を提供する工程と、めっき溶液からの金属の堆積によってCNT凝集体の隙間を充填して、CNTが埋め込まれている(連続)金属相を形成する工程とを含む。CNT凝集体は、金属相が形成されるとき(堆積プロセス中)にクランプ器具で圧縮される。
【0009】
本明細書で使用される場合、「クランプ器具」(簡単に「クランプ」)という表現は、あるもの(この場合はCNT凝集体)を保持するために一緒に集められた機械部品(例えば、プレート、爪状物又は鋳型部品)を有する器具を指す。
【0010】
本明細書における「カーボンナノチューブ凝集体」(又は「CNT凝集体」)という表現は、一般に無秩序な配置でのCNTの三次元クラスター又は蓄積を指す。別の表現としては、「CNTもつれ(tangle)」又は「CNT寄せ集め(gallimaufry)」である。好ましくは、凝集体のCNTは、ランダムに配向されており、その結果、CNT凝集体は、CNTが一般に平行に整列しているいわゆるCNT「森林状態(forest)」ではなく茂み状態(thicket)に似ている。CNT凝集体内のCNTの配向の完全なランダム性(等方性を意味する)は、必要要件ではないが、特定の用途には有利である場合があることに留意すべきである。
【0011】
クランプ器具によるCNT凝集体の圧縮は、金属相の形成中にCNT凝集体の膨潤を抑制又は防止するような方法で実行されることが好ましい。本発明の発明者らは、CNT凝集体をめっき溶液に浸漬すると、CNT凝集体が膨潤する、即ち隙間(細孔)の体積が増加することに気づいた。次いで、この膨潤により、結果、金属-CNT複合材料中のCNTの体積分率が低くなる(10%をはるかに下回る)。CNT凝集体をめっき溶液に導入する前に圧縮(「事前圧縮」)しても、より高い体積分率を得ることができないことが観察された。実際、CNT凝集体層の事前圧縮の度合いは、めっき後に得られた金属-CNT複合材料の厚さに本質的に影響を及ぼさないことが判明した。言い換えれば、事前圧縮が高いほど、めっきプロセス中の膨潤がより重要であった。
【0012】
この方法により、Cu-CNT複合材料、特に薄膜Cu-CNT複合材料におけるCNTの密度を向上させることができる。これは、一定の膜厚であれば、高度に多孔性のナノ複合材料に到達することなく、金属-CNT複合材料の全体的な材料密度を低減できることを意味する。実際、本発明は、ほぼ空隙のないCu-CNT複合材料(高度に圧縮されたCu-CNT複合材料)へのCNTの高度な組み込みを可能にする。
【0013】
クランプ器具により、例えば、(超)音波処理下での電気めっきなどの、前例のない条件での電気めっきが可能になる。クランプシステムがなければ、CNT凝集体は、(超)音波によって破壊され、溶液中に分散されるであろう。電気めっき中の(超)音波処理により、CNT凝集体へのイオンの移動が改善されることができ、最大電気めっき速度が増加する可能性がある。
【0014】
更に、クランプ器具により、ある場合には、CNT凝集体の基板との良好な接触が保証される。導電性基板の場合、金属の成長は、ボトムアップ(bottom-up)で行われる(基板で開始される)。この場合、CNT凝集体が基板と良好に接触していない場合、望ましくない成長の不均一性が生じ、結果として多孔性が生じる可能性がある。同様に、クランプ器具は、CNT凝集体水溶液の浸漬時にCNT剥離/破裂を引き起こす可能性がある、CNT凝集体で出会う可能性のある潜在的な親水性の問題を克服するのに役立つことができる。
【0015】
最後に、所定の電流密度の場合(又は同等に、所定の堆積速度の場合)、同じ体積の密度の低い(圧縮されていない)CNT凝集体(即ち、CNT体積%が低い)と比較して、圧縮によって生じる凝集体中のCNTの密度が高くなると、堆積される銅の体積が減少し、従って堆積時間が短縮される。必然的に、本発明の方法は、より厚いCu-CNT複合材料の製造をより容易に(より迅速に)する。
【0016】
提案された方法に関連して使用されるCNTは、親水性コーティングを含むことが好ましい。CNT又はCNT凝集体は、当初はCNT組織の形態(乾燥形態又は液体媒体中で包まれる)で提供され得る。或いは、CNTの親水化がプロセスの一部であり得る。親水性コーティングは、ポリフェノール又はポリ(カテコールアミン)を含むことが好ましい。より好ましくは、親水性コーティングは、ポリフェノール又はポリ(カテコールアミン)を架橋する、及び/又はポリフェノール又はポリ(カテコールアミン)によってキレート化される金属イオンを含む。ポリフェノール及びポリ(カテコールアミン)の例は、それぞれタンニン酸及びポリドーパミンである。ポリフェノール及びポリ(カテコールアミン)は、親水性であり、酸化還元活性を有する(即ち、金属イオンを還元することができる)。具体的には、これらは、金属イオンとキレート化及び/又は架橋することができる。この状況においてこれらの物質を興味深いものにするもう1つの特性は、π-π相互作用によりCNTをコーティングする能力である。
【0017】
CNTの親水化がプロセスの一部である場合、CNTのコーティングは、当初はコーティングされていないCNTが分散しているフェノール及び/又はカテコールアミン部位を含む溶液中で実行されることが好ましい。好ましくは又、溶液は、フェノール及び/又はカテコールアミン部位を架橋することができる、及び/又はそれらとキレートを形成することができる、特定の量の金属イオンを含む。CNTのコーティングは、例えば、超音波処理下などの、音波処理下で、及び/又は撹拌下で、実行することができる。溶液は、1つ以上の触媒、緩衝剤などを更に含み得る。CNTは、フェノール及び/又はカテコールアミン部位を含む溶液中に分散する前に酸化されることが好ましい。
【0018】
金属相の形成後、例えば、アニーリング工程において、CNTの親水性コーティングが破壊される可能性があることは注目に値する。
【0019】
好ましくは、金属は、銅(Cu)を含む。それにもかかわらず、他の金属も同様に使用することができる(銅の代わりに、又は銅と組み合わせて)。好ましい金属(銅以外)には、Ag、Au、Sn、Zn、Cd、Cr、Ni、Pt、Pb、Pd、Co、Ti、Fe、及びそれらの合金が含まれる。
【0020】
クランプ器具は、その間にCNT凝集体を保持する第1及び第2のプレートを含むことが好ましい。プレートは、平坦であり得る又は湾曲していることができ、それらの形状は、金属-CNT複合材料に与える形状に応じて選択されることができる。プレートに使用される材料は、電気絶縁材料の中から選択されることが好ましい。好ましい材料には、ポリ乳酸、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE及び/又はPEEK/PTFE複合材料が含まれる。CNT凝集体と接触するプレートの表面は、導電性であり得る。第1及び第2のプレートの一方又は両方は、めっき溶液及びその中に含まれる金属イオンのための穿孔又は他の通路を含むことができる。クランプ器具は、空気圧で、油圧で及び/又は機械的に、例えば、1つ以上の締め付けネジ、ばね機構(spring mechanism)等によって、閉鎖されることができる、又は閉鎖された状態に保持することができる。堆積中のCNT凝集体の膨張を防ぐために必要なのは中程度の圧力のみであるため、様々なタイプのクランプ及び様々なロック機構が考えられ得る。クランプ器具は、電気めっきチャックと統合されることができる。
【0021】
好ましくは、第1及び第2のプレートの少なくとも1つは、CNT凝集体に向けられたパターン化された圧力伝達面を含み、パターン化された圧力伝達面は、凸部領域と凹部領域とを含み、凹部領域は、通路と連通している。
【0022】
CNT凝集体の圧縮は、少なくとも主に(又は排他的に)凸部領域を介して行われることができ、凸部領域の反対側のCNT凝集体の領域により高い圧縮をもたらし、凹部領域の反対側のCNT凝集体の領域により低い圧縮をもたらし、CNT凝集体のあまり圧縮されていない領域内、即ち、凹部領域の反対側に少なくとも主に(又は排他的に)金属相の形成をもたらす。
【0023】
この方法は、CNT凝集体をクランプ器具から解放する工程と、金属相であまり含浸されていない、又は含浸されていない事前に高度に圧縮された領域からカーボンナノチューブを洗い流す工程とを含み得る。
【0024】
任意に、第1及び第2のプレートのうちの少なくとも1つとCNT凝集体との間に膜が配置されることができ、この膜は、めっき溶液に対して透過性である。CNT凝集体が溶媒で適切に濡れている場合、膜は、半透性膜であり得る。透過性膜は、金属相が成長し得る体積を制限する役割を果たし得る。CNT凝集体の特定の領域で金属相の成長速度が著しく高い場合、隣接する層における任意の細孔又は凹部内に金属が局所的に成長し始める可能性があるが、他の領域では、CNT間の隙間の充填が、依然として不完全である。従って、多孔性膜は、クランプ器具のプレート及び/又は他の中間層を金属相の侵入から保護するのに役立つことができる。クランプ器具が1つ以上のエンボス加工されたプレートを含む場合、透過性膜は更に、エンボス加工されたプレートの凹部領域の反対側に位置するCNT凝集体の領域に圧縮応力を分散させるのに役立ち得る。膜は、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリスルホン、PTFE(特に、親水性PTFE)、又は他のポリマーに基づくことができる。膜は、使い捨て層として構成されることができる:膜が金属-CNT複合材料に付着した場合(膜の細孔内への金属の成長により)、任意の適切な方法(破壊的又は非破壊的な方法)で金属-CNT複合材料から除去されることができる。膜は、剥離、研削、粉砕、研磨などによって機械的に除去されることができ、例えば、溶媒の使用(例えば、ポリカーボネート膜の場合はジクロロメタンへの浸漬によって)、及び/又は熱(例えば、熱分解)によって化学的に除去されることができる。
【0025】
膜に加えて、膜とクランプ器具のプレートとの間に毛細管層(例えば、組織などの、膜よりも大きい細孔を有する)を使用することができる。このような毛細管層は、CNT凝集体へのめっき溶液の分散(特に、圧力の方向に対して垂直に)を強化するという目的と、膜を機械的に強化する(膜と毛細管層のシステムが、CNT凝集体の体積を効率的に制限するように)という目的に役立つ。特に、膜は、金属相の成長速度(CNT凝集体の中心でよりも側面の方で速くなる傾向がある)の均一化に役立つことができる。膜と毛細管層の両方を含む圧縮システムでは、毛細管層(より大きな細孔を有する)は、CNT凝集体とは反対側の膜の側に配置されることになる。このようなシステムにおける膜の役割は、CNTの凝集体が実際に小さい細孔内に膨潤できないように、CNTが「会う(see)」細孔サイズを小さくすることである。膜が除去されると、CNTは、毛細管層の細孔内に膨潤し、複合材料内でしっかりと覆われるようになる。毛細管層と膜の組み合わせは、連続的な超高密度の金属-CNT複合材料の生成に有利に働くことができる。
【0026】
好ましくは、めっき溶液におけるCNT凝集体の隙間を充填することは、電気めっき(又:電着)又は無電解めっきによって実行される。
【0027】
本発明の更なる態様は、記載された方法によって得られることができる金属-CNT複合材料に関する。金属-CNT複合材料は、CNT凝集体の隙間を占有する(連続)金属相に埋め込まれたCNT凝集体を含む。金属-CNT複合材料のCNT含有量は、少なくとも10体積%、好ましくは15~65体積%である。一実施形態によれば、金属-CNT複合材料は、少なくとも45体積%のカーボンナノチューブを含むことができる。
【0028】
前に示したように、金属-CNT複合材料は、高度に圧縮されている、即ち、本質的に空隙(細孔)がない。金属-CNT複合材料は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更により好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下の細孔率を有する。細孔率は、マイクロ/ナノコンピュータ断層撮影法(マイクロ/ナノCT)によって決定されることが好ましい。
【0029】
好ましくは、カーボンナノチューブ凝集体は、短いカーボンナノチューブと長いカーボンナノチューブの混合物を含み、カーボンナノチューブの少なくとも30重量%が2.5μm~50μmの範囲の長さを有する短いカーボンナノチューブであり、カーボンナノチューブの少なくとも30重量%が75μm~1500μmの範囲の長さを有する長いカーボンナノチューブである。長いカーボンナノチューブは、200μm~800μmの範囲の長さを有することがより好ましい。短いCNTの直径は、5~30nmであることが好ましく、5~20nmであることがより好ましく、6~13nmであることが更により好ましい。長いCNTは、好ましくは50~100nm、例えば80nmの直径を有する。長いCNTと短いCNTの混合物は、より短いCNTがより長いCNTの隙間に留まる可能性があるため、カーボンナノチューブの高密度の凝集体を達成するのに非常に有利であり得る。このような高密度のCNT凝集体により、複合材料内のCNTの体積パーセントが高くなり得る。
【0030】
金属-CNT複合材料は、任意の幾何学的形状を取ることができるが、好ましくは、メッシュの形態をとる(例えば、六角形のメッシュ、長方形の格子、規則的又は不規則なネットワークなど)。
【0031】
本文書では、「含む(to comprise)」という動詞及び「からなる(comprised of)」という表現は、「少なくともからなる(consist at least of)」又は「含む(include)」を意味するオープン移行句として使用される。文脈によって別の意味が示されない限り、単数形の使用は、基数「1」が使用される場合を除き、複数形を包含することを意図している:本明細書での「1」は、「正確に1」を意味する。序数(「第1」、「第2」など)は、本明細書では一般対象物の異なる例を区別するために使用され、これらの表現の使用によって、特定の順序、重要性、又は階層が暗示されることは意図されていない。更に、対象物の複数の例が序数で参照される場合、これは必ずしもその対象物の他の例が存在しないことを意味するわけではない(文脈から明らかな場合を除く)。例えば、クランプ器具が第1のプレートと第2のプレートとを含む実施形態では、更なるプレート、例えば、第3のプレート及び第4のプレートの存在は、自動的に除外されない。しかしながら、CNT凝集体を保持し圧縮するための第1及び第2のプレートのみを含むクランプ器具の使用は、簡略化及び実施の容易さの理由から有利であると考えられ得る。
【0032】
例として、本発明の好ましい非限定的な実施形態を、添付の図面を参照して詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】電着浴に浸漬されたCNT凝集体を保持する第1のクランプ器具の概略断面図である。
【
図2】電着浴に浸漬されたCNT凝集体を保持する第2のクランプ器具の概略断面図である。
【
図3】電気めっき中の圧縮されていないCNT凝集体の膨潤を事前圧縮の度合いの関数として示すグラフである。
【
図4】クランプ器具のプレートのパターン化された面の一例の斜視図である。
【
図5】本明細書に開示される方法によって得られたパターン化されたCu-CNT複合材料の写真である。
【
図6】a)クランプ器具を使用せずに得られた金属-CNT複合材料(比較例)、及びb)クランプ器具を使用して得られた金属-CNT複合材料のSEM写真を示す。
【
図7】本発明に従って得られた、パターン化されたCu-CNT複合材料の写真であり、CNT凝集体がめっきされずに残っている領域を示している(左側の暗い点:CNTを洗い流す前、右側の明るい点:エタノールを浸したワイプでCNTを除去した後)。
【
図8】パターン化されたCu-CNT複合材料のSEM断面図であり、CNTを洗い流すことができるめっきされていない領域を示している。
【
図9】銅が高密度に充填されたCu-CNT複合材料領域のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の一実施形態によれば、ポリドーパミンでコーティングされたCNTの組織(不織)の形態のCNT凝集体が提供される。或いは、CNT組織は、導電性又は絶縁性の基板の片面又は両面に堆積される。
図1に示されるように、CNT凝集体10は、クランプ器具16の第1のプレート12と第2のプレート14との間にクランプされ、次いで、めっき溶液18に浸漬される。クランプ器具16のプレート12、14(両方とも絶縁材料で作られている)は、めっき溶液18がCNT凝集体10と接触でき、金属イオンがCNT凝集体10に移動できるように、その中に通路20を有する。CNT凝集体10は、作用電極端子22と電気的に接触され、次いで、CNT凝集体10の隙間は、金属相36で充填され、その結果、CNTがその中に埋め込まれるようになる。電着プロセス中、クランプ器具16は、CNT凝集体10の膨張が防止される又は少なくとも抑制されるように、CNT凝集体10を圧縮した状態に維持する。
【0035】
高圧は必要ないので、クランプ器具のプレート12、14及び締め付けネジ24は、プラスチック又は同様の材料で作られることができることは注目に値する。プレートを製造する特に便利な方法は、付加製造(「3Dプリンティング」)によるものである。
【0036】
第1及び第2のプレート12、14のそれぞれは、凸部領域28及び凹部領域30を有する、CNT凝集体10に向けられたパターン化された圧力伝達面26を含む。凹部領域30は、通路20と流体連通している。凸部領域28は、CNT凝集体10に圧力を伝達する役割を果たす。第1のプレート12の圧力伝達面とCNT凝集体10との間に第1の多孔性膜32が配置され、第2のプレート14の圧力伝達面とCNT凝集体10との間に第2の多孔性膜34が配置されている。膜32、34は、めっき溶液18に含まれる金属イオンに対して透過性であり、更にCNT凝集体10において圧力をより均一に分散させる(従って凹部領域30に面する領域にもCNT凝集体を制限する)働きをする。膜は、例えば、孔径10μm、細孔率約80%、及び厚さ85μmの親水性PTFE膜であり得る。イオンの物質移動を促進するには、高多孔性膜(多孔度>60)が好ましくあり得る。孔径は、CNTが細孔内に膨潤するのを避けるために十分小さく選択されることが好ましいが、金属相の許容可能な成長速度を確かにするために妥協し得る。又、親水性膜が好ましい場合もある:試験では、親水性膜が他の候補の膜よりも良好な性能を発揮した。
【0037】
パターン化された圧力伝達面26により、CNT凝集体の圧縮は、主に凸部領域28の反対側で起こり、これによりCNT凝集体10のそれらの領域の圧縮がより高くなる。膜は、圧力の一部を凹部領域30の反対側のCNT凝集体10の領域にも伝達するが、これらの領域は、あまり圧縮されていない(CNT密度が低く、隙間が広い)。その結果、金属相36の形成は、CNT凝集体10のあまり圧縮されていない領域内、即ち、凹部領域30の反対側で主に起こる。パターン化された圧力伝達面26のおかげで、結果、金属とCNTとの間の比を空間的に調節することができる。プロセスパラメータ(加える圧力、膜の種類、堆積時間、CNT凝集体の厚さなど)を調整することで、金属-CNT複合材料を得ることができ、この場合、高度に圧縮された領域には金属相がほとんど含浸されていないため、クランプ器具から及びめっき浴からCNT凝集体を除去した後、CNTは洗い流されることができ、パターン化された金属-CNT複合材料(例えば、メッシュ又は成形片など)が残る。
図7は、パターン化された金属-CNT複合材料の写真である。
図7の左側は、電気めっき浴から取り出した複合材料の一部を示し、右側は、エタノールで湿らせた組織を使用して未めっき領域からCNTを除去した部分を示す。
図8及び
図9は、それぞれ、パターン化された金属-CNT複合材料の非めっき領域及びめっき領域のSEM写真である。
【0038】
全ての用途において膜32、34の一方又は両方が必要なわけではないことは注目に値し得る。
【0039】
図2は、いくつかの点で
図1の構成とは異なる別の構成を示す。
図2の設定では、CNT凝集体10全体に金属相が実質的に均一に分散することを目指す。この構成では、第1及び第2のプレート12、14は、Cクランプ16’によって一緒に保持される。第2のプレート14は、電圧源の作用電極端子22と接触する導電性圧力伝達面26を有する。CNT凝集体10は、第2のプレート14に直接載っている(即ち、CNT凝集体と第2のプレートの圧力伝達面26との間に多孔性膜は存在しない)。
【0040】
クランプ器具の第1のプレート12のみがその中に通路20を有し、その結果、めっき溶液18がCNT凝集体10と接触でき、金属イオンがCNT凝集体10に移動できる。第1のプレート12の圧力伝達面26は、本質的に平坦であり、即ち、通路開口部の面積は、比較的小さい。圧力と金属イオンの両方をCNT凝集体10に均一に分散するために、多孔性膜32が、第1のプレート12の圧力伝達面26とCNT凝集体10との間に配置される。
【実施例】
【0041】
A.銅イオンで架橋されたポリドーパミンでコーティングされたCNTの作製
100mgの酸化されたCNTを、ドーパミン塩酸塩溶液(DA、0.1mg/ml)及びCuSO4・5H2O(0.6mg/ml)からなる溶液625mlに添加した。溶液を10秒間超音波処理し、次いで激しく撹拌しながら30分間放置した。375mlのトリス-HCl(10mM)を溶液に添加した。溶液を10秒間超音波処理し、次いで激しく撹拌しながら24時間放置した。12.5mlのNaOH(1M)を添加し、溶液を濾過した。次いで濾過したCNTをEtOH(エチルアルコール)に分散させた。得られたCNTは、銅イオンで架橋されたポリドーパミン(Pda)でコーティングされた。
【0042】
この実施例で使用されたCNTは、長さが2.5μm~8μm(直径6~13nm)、及び/又は長さが約200μm(直径5~30nm)及び/又は長さが約800μm(直径70~80nm)の多層CNT(MWCNT)であった。
【0043】
コーティング溶液中のDAとCuSO4・5H2Oの量は、それぞれ0.0125mg/mlと0.075mg/mlまで減らすことができる。得られたCNT凝集体は、粘着性が低く、より簡単に(事前)圧縮することができる。
【0044】
例えば、国際公開第2020/043590A1号パンフレットに開示されているものなどの、他のコーティングプロトコルに従うことができる。
【0045】
B.CNT凝集体(層の形態における)の調製
銅イオンで架橋されたPdaでコーティングされたCNTを0.25g/ml含む上記のように生成したエタノール溶液20mlを、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜(直径5cm)にて濾過した。濾過により得られたCNT凝集体を剥離により回収した。CNT凝集体を5分間400kg/cm2で圧縮した。
【0046】
或いは、PdaコーティングされたCNTの分散液を基板にてスプレーすることによって、CNT凝集体を得ることができる。金属相が電着によって生成される場合、基板は、電着工程の作用電極又は多孔性膜であり得る。基板は、形成後に層が除去される一時的な基板であり得る。スプレーコーティングによるCNT層の調製の例は、国際公開第2020/043590A1号パンフレットに詳細に記載されている。
【0047】
C.CNT凝集体の事前圧縮
事前圧縮工程中のCNT凝集体の細孔率の減少は、適用される圧力に依存する(試験された最大圧力:800kg/cm2)。
【0048】
CNT凝集体の事前圧縮だけでは、金属-CNT複合材料のCNT体積含有量を増加させるのに十分でない。
図3の図は、電気めっき後のCNT層の厚さは、事前圧縮の度合い(電気めっき工程中に圧縮が維持されない場合)とは基本的に無関係であることを示している:事前圧縮が高いほど、電気めっき中の膨潤が大きくなった。
【0049】
この図は、MWCNT(長さ2.5~8μm、直径6~13nm)を使用して得られ、膨潤を示しており、圧縮比の関数として、電気めっき後のCNT層の厚さ、Fの、任意の事前圧縮後であるが電気めっき浴に浸漬する前のCNT層の厚さ、Cに対する比として表される、即ち、元の圧縮されていないCNT層の厚さ(任意の事前圧縮前の)、Uの、任意の事前圧縮後であるが電気めっき浴に浸漬する前のCNT層の厚さ、Cに対する比として表される。事前圧縮の度合いとは無関係に、Fは約1.4Uであることがわかる。
【0050】
D.試験に使用されたクランプ器具
クランプ器具は、パターン化されたプレート及び平らな支持プレートを含んだ。
図4は、パターン化されたプレートの圧力伝達面を示している。(六角形のメッシュを形成する)凹部領域30は、黒で示され、一方、凸部領域28は、白で示される。凹部領域は、パターン化されたプレートを横切ってめっき溶液が通過できるようにする通路に流体的に接続されている。平坦な支持プレートは、シリコン/Al
2O
3基板であった。
【0051】
E.パターン化された金属-CNT複合材料の製造
上述のように調製された乾燥したCNT凝集体を、クランプ器具のプレート間にクランプした。多孔性PCA膜をプレートとCNT凝集体の間に挿入した。
【0052】
作用電極端子との電気的接触は、CNT凝集体にて直接行われた。CNT凝集体が固定されたクランプ器具を、銅めっき水溶液(CuSO4 0.63M、H2SO4 0.1M、-HCl 50ppm、ビス(ナトリウムスルホプロピル)ジスルフィド15ppm、PEG(ポリエチレングリコール)100ppm)に浸漬した。めっきは、CNT間の隙間を銅で充填するのに必要な時間の間、ガルバニックパルス(35mA/cm2/0mA-ON/OFF-0.02秒/0.1秒)を使用して実行された。本明細書で使用される場合、「ppm」は、質量分率の単位での100万分の1を意味する。
【0053】
電気めっき工程の期間は、(他のパラメータの中でも特に)CNT凝集体の圧縮レベル(細孔体積が大きいほど、より多くの金属が堆積し、従って堆積時間が長くなることを意味する)及びCNT層の厚さ(発明者らの実験では、厚さ20μmの金属-CNT複合材料層を得るには約3時間の堆積時間が必要であった)に依存する。
【0054】
電着工程の最後に、堆積した銅が、CNT凝集体にパターンを形成した。めっきされていない領域に存在するCNTは、水で洗い流すことができる。
図5は、スケール用のペンの隣に示されているプロトタイプの金属-CNT複合材料の写真である。
【0055】
パターン化されたプレートとCNT凝集体との間に多孔性膜を追加して、パターン化された複合材料中のCNTの体積パーセントを高めることができる。
【0056】
F.金属-CNT複合材料箔の製造
上述のように作製された事前圧縮されたCNT凝集体を、銅のシード層(100nm)で覆われた平坦なチタン基板に配置した。多孔性膜をCNT層の上部に置いた。毛細管層(組織)を膜の上部に追加した。次いで、穿孔したプレートを毛細管層の上部に置き、ネジで基板に固定した。作用電極端子との電気的接触は、導電性基板にて取られた。CNT凝集体が固定されたクランプ器具を、銅めっき水溶液(CuSO4 0.63M、H2SO4 0.1M、HCl 50ppm、ビス(スルホプロピル)ジスルフィド15ppm、PEG 100ppm)に浸漬した。めっきは、CNT間の隙間を銅で充填するのに必要な時間の間、ガルバニックパルス(35mA/cm2/0mA-ON/OFF-0.02秒/0.1秒)を使用して実行された。
【0057】
めっき時間の終わりに、堆積された銅は、その中に埋め込まれたCNTを有する連続金属相を形成した。毛細管層を除去した。膜を銅-CNT複合材料箔から剥がし、後者をチタン基板から剥がした。
【0058】
多孔性膜は、金属によって部分的に捕捉されるようになりやすく、金属が、その細孔内に成長し始めることができる。膜の除去は、化学的溶解(例えば、ポリカーボネート膜の場合はジクロロメタンへの浸漬)及び/又は機械的研磨(例えば、PTFE膜の場合)によって成されることができる。
【0059】
G.複合材料におけるCNTの体積パーセントの計算
金属-CNT複合材料におけるCNTの体積パーセントは、次のように計算できる:
【0060】
【0061】
式中、
V複合材料は、複合材料の測定された体積(例えば、単位はcm3)であり、
式2で得られるV金属は、複合材料に含まれる金属の体積であり、
m複合材料は、複合材料の測定された質量(例えば、単位はg)であり、
mCNTは、めっき前の(乾燥した)CNT凝集体の測定された質量(例えば、単位はg)であり、
γ金属は、金属の比質量(例えば、単位はg/cm3)である。
【0062】
層の形態の金属-CNT複合材料の場合、別の方法として、複合材料におけるCNTの体積パーセントは、以下の式を使用して計算することができる:
【0063】
【0064】
式中、
σ複合材料は、複合材料の測定された表面密度(例えば、単位はg/cm2)であり、
σCNTは、めっき前の(乾燥)CNT層の測定された表面密度(例えば、単位はg/cm2)であり、
γ金属は、金属の比質量(例えば、単位はg/cm3)であり、
t複合材料は、複合材料の測定された厚さであり、
式1から得られるt金属は、複合材料内の金属の同等の厚さであり、
式2から得られるtCNTは、複合材料内のCNTの同等の厚さである。
【0065】
H.結果
上述の方法により、CNTの体積パーセントが高い連続金属-CNT複合材料を得ることができた。CNT凝集体を圧縮せずに同じめっきプロセスを実行すると、その中に10体積%未満のCNTを有する複合材料が得られた(
図6参照)。更に、圧縮システムを使用しない場合、得られた複合材料の厚さは、CNT凝集体の事前圧縮のレベルに依存しないことが観察され、これは、CNT凝集体がより圧縮されている場合、膨潤がより重要であることを意味している。対照的に、電気めっき中にCNT凝集体が圧縮された場合、膨潤は、抑制された、即ち、CNT凝集体の厚さは、電気めっき工程中に本質的に一定のままであった。
【0066】
本明細書において特定の実施形態を詳細に説明したが、当業者であれば、本開示の教示全体を考慮して、それらの詳細に対する様々な修正及び代替を発展させることができることが理解されよう。従って、開示される特定の構成は、例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、添付の特許請求の範囲及びその任意の全ての均等物の全範囲に与えられるものである。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属-CNT複合材料を作製するための方法であって、
カーボンナノチューブの凝集体を提供する工程と、
めっき溶液における前記カーボンナノチューブ凝集体の隙間を充填して、前記カーボンナノチューブが埋め込まれる金属相を形成する工程と、
を含み、前記カーボンナノチューブ凝集体は、前記金属相が形成される場合、クランプ器具で圧縮されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ凝集体の圧縮は、前記金属相の形成中に前記カーボンナノチューブ凝集体の膨潤を抑制又は防止する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブは、親水性コーティングを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記親水性コーティングは、ポリフェノール又はポリ(カテコールアミン)、好ましくはポリドーパミン、並びに前記ポリフェノール又は前記ポリ(カテコールアミン)を架橋する及び/又は前記ポリフェノール又は前記ポリ(カテコールアミン)によってキレート化される金属イオンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属は、銅を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記クランプ器具は、その間に前記カーボンナノチューブ凝集体を保持する第1及び第2のプレートを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の及び第2のプレートのうちの少なくとも1つは、前記めっき溶液のための通路を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の及び前記第2のプレートのうちの少なくとも1つは、前記カーボンナノチューブ凝集体に向けられたパターン化された圧力伝達面を含み、前記パターン化された圧力伝達面は、凸部領域と凹部領域とを含み、前記凹部領域は、前記通路と連通している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブ凝集体の圧縮は、少なくとも主に前記凸部領域を介して行われ、前記凸部領域の反対側の前記カーボンナノチューブ凝集体の領域により高い圧縮をもたらし、前記凹部領域の反対側の前記カーボンナノチューブ凝集体の領域により低い圧縮をもたらし、前記凹部領域の反対側の前記カーボンナノチューブ凝集体の前記より低い圧縮領域内に少なくとも主に前記金属相の形成をもたらす、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カーボンナノチューブ凝集体を前記クランプ器具から解放する工程と、前記金属相であまり含浸されていない、又は含浸されていない事前により高度に圧縮された領域から前記カーボンナノチューブを洗い流す工程とを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の及び前記第2のプレートの少なくとも1つと前記カーボンナノチューブ凝集体との間に、前記めっき溶液に対して透過性である膜を配置する工程を含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記めっき溶液における前記カーボンナノチューブ凝集体の前記隙間を充填する工程は、電気めっきにより行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記カーボンナノチューブ凝集体の前記隙間を充填する工程は、例えば、超音波処理下などの音波処理下で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
金属-CNT複合材料は、少なくとも
45体積%のカーボンナノチューブを含むことを特徴とする、カーボンナノチューブ凝集体の隙間を占有する金属相に埋め込まれた前記カーボンナノチューブの凝集体を含む、金属-CNT複合材料。
【請求項15】
前記金属-CNT複合材料は、
45~65体積%のカーボンナノチューブを含む、請求項14に記載の金属-CNT複合材料。
【請求項16】
前記金属相は、連続している、
請求項14又は15に記載の金属-CNT複合材料。
【請求項17】
5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、最も好ましくは1%以下の細孔率を有する、
請求項14又は15に記載の金属-CNT複合材料。
【請求項18】
前記カーボンナノチューブ凝集体は、短いカーボンナノチューブと長いカーボンナノチューブの混合物を含み、前記カーボンナノチューブの少なくとも30重量%は、2.5μm~50μmの範囲の長さを有する短いカーボンナノチューブであり、前記カーボンナノチューブの少なくとも30重量%は、75μm~1500μmの範囲の長さを有する長いカーボンナノチューブである、
請求項14~16のいずれか一項に記載の金属-CNT複合材料。
【請求項19】
金属-CNT複合材料は、メッシュの形態である、
請求項14~17のいずれか一項に記載の金属-CNT複合材料。
【請求項20】
金属-CNT複合材料は、層又は箔の形態である、請求項14~18のいずれか一項に記載の金属-CNT複合材料。
【国際調査報告】