(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】ネオジム・鉄・ホウ素磁性体および三次元粒界拡散によるネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/057 20060101AFI20240122BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240122BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20240122BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20240122BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240122BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240122BHJP
B22F 1/107 20220101ALI20240122BHJP
B22F 1/10 20220101ALI20240122BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20240122BHJP
【FI】
H01F1/057 150
H01F1/057
H01F41/02 G
B22F3/00 F
B22F3/24 K
B22F3/24 B
B22F1/00 R
B22F1/05
B22F1/107
B22F1/10
B22F1/14 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540869
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2021102058
(87)【国際公開番号】W WO2022193464
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】202110296351.1
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523251194
【氏名又は名称】金力永磁(包頭)科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】JL MAG RARE-EARTH (BAOTOU) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廖 明活
(72)【発明者】
【氏名】毛 華云
(72)【発明者】
【氏名】劉 永
(72)【発明者】
【氏名】毛 ▲ツォン▼堯
【テーマコード(参考)】
4K018
5E040
5E062
【Fターム(参考)】
4K018AA27
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC13
4K018DA32
4K018FA08
4K018FA11
4K018KA45
5E040AA04
5E040AA19
5E040BD01
5E040CA01
5E040HB11
5E040HB14
5E040NN01
5E040NN06
5E040NN12
5E040NN18
5E062CD04
5E062CE03
5E062CE04
5E062CE05
5E062CG05
5E062CG07
(57)【要約】
本発明は、重希土類元素が拡散浸透したネオジム・鉄・ホウ素磁性体を提供する。前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は表層の重希土類拡散領域とコア部の非拡散領域とを含む;前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は磁性体の三次元方向にいずれも表層の重希土類拡散領域を有する。本発明は、拡散の原理を微視的結晶粒から巨視的磁性体に拡張し、即ち、重希土類が微視的結晶粒の表層に堆積することから重希土類が巨視的磁性体の表面に堆積することに拡張し、20%以上のコア部の体積は浸透しない。熱処理の温度と時間を調整し、深さの異なる拡散層が得られ、表層磁性体を磁気硬化させることにより、磁性体の保磁力を高めるとともに、磁性体の残留磁束密度(Br)及び最大エネルギー積(BHmax)の低下が極めて少ない目的を達成する。そして、三次元方向で、異なる拡散深さに応じて独立したコントロールを実現し、製造プロセスが簡単であり、制御性が強く、工業化の普及と応用にさらに適する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重希土類元素が拡散浸透したネオジム・鉄・ホウ素磁性体であって、
表層の重希土類拡散領域及びコア部の非拡散領域を含み、
磁性体の三次元方向にいずれも表層の重希土類拡散領域を有することを特徴とするネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【請求項2】
前記重希土類元素がDyおよび/またはTbを含み、
ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の体積に占める前記コア部の非拡散領域の体積の割合が20%以上であることを特徴とする請求項1に記載のネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【請求項3】
前記拡散浸透は三次元粒界拡散であり、
前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は、いずれかの表面に表層の重希土類拡散領域を有し、
前記重希土類元素の拡散浸透量は前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の質量の0.1wt%~1.0wt%を占めることを特徴とする請求項1に記載のネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【請求項4】
前記コア部の非拡散領域の重希土類の含有量が拡散浸透の前後で増加しない、
前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の中心を基準として、前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体のいずれかの表面内の表層の重希土類拡散領域の深さが、その表面から磁性体の中心までの距離の80%以内であり、
前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は、拡散浸透の前よりも、磁性体のHcjが2~15kOe増加することを特徴とする請求項1に記載のネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【請求項5】
前記表層の重希土類拡散領域は、層方向に沿って、端の重希土類元素の濃度が中央の重希土類元素の濃度よりも高い、
前記表層の重希土類拡散領域は、層方向に沿って、端から中央まで、重希土類元素の濃度が徐々に減少した後一定に維持され、
前記表層の重希土類拡散領域は、深さ方向に沿って、重希土類元素の濃度が徐々に減少することを特徴とする請求項1に記載のネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【請求項6】
A)重希土類を有機溶剤と混合した後、混合液を得るステップと、
B)前記ステップで得られた混合液をネオジム-鉄-ホウ素ブランクの各表面に塗布し、半完成品を得るステップと、
C)前記ステップで得られた半完成品を粒界拡散及び時効処理した後、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体を得るステップと、を含む、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶剤がシリコーンオイルを含み、
前記重希土類の平均粒子径が1~100μmであり、
前記重希土類と前記溶剤との質量比が(90~98):(2~10)であることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ネオジム-鉄-ホウ素ブランクは、表面研磨処理後のネオジム-鉄-ホウ素ブランクを含み、
前記粒界拡散が具体的に真空条件下で粒界拡散することであり、
前記真空の絶対圧力が10Pa以下であり、
前記粒界拡散は、低温揮発ステップと高温拡散ステップとを含むことを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記低温揮発の温度が、300~500℃であり、
前記低温揮発の時間が3~5hであり、
前記高温拡散の温度が700~1000℃であり、
前記高温拡散の時間が1~100hであることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記時効処理は具体的に高温拡散冷却後にさらに時効処理することであり、
前記時効処理の温度が400~600℃であり、
前記時効処理の時間が1~15hであることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2021年3月19日に中国特許庁へ提出された出願番号が202110296351.1、発明の名称が「特にネオジム・鉄・ホウ素磁性体および三次元粒界拡散によるネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は磁性体製造の技術分野に属し、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体およびその製造方法に関し、特にネオジム・鉄・ホウ素磁性体および三次元粒界拡散によるネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ネオジム・鉄・ホウ素磁性体はネオジム磁性体(Neodymium magnet)とも呼ばれ、その化学式がNd2Fe14Bであり、人工の永久磁性体であり、今まで最強の磁気力を有する永久磁性体でもあり、その最大エネルギー積(BHmax)はフェライトの10倍以上であり、裸の磁気の状態で、その磁気力は3500ガウス程度に達することができる。現在、業界では焼結法を使用してネオジム-鉄-ホウ素永久磁石材料を作製することがよくあり、例えば、王偉らは《焼結NdFeBの磁気エネルギー及び機械的な性質に対するキープロセスパラメーター及び合金元素の影響》に焼結法を使用してネオジム-鉄-ホウ素永久磁石材料を製造するプロセスフローを開示し、一般に原料配合、製錬、鋼インゴット破砕、製粉、水素による超細粉の粉砕、粉末配向プレス成形、真空焼結、検分、および電気めっきなどのステップを含む。ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の利点は、コストパフォマンスに優れ、小型、軽量、良好な機械的性質と磁気特性を有するなどの特徴であり、このような高エネルギー密度の利点は、ネオジム-鉄-ホウ素永久磁石材料が現代工業及び電子技術で広く使用され、磁性の分野で磁性の王様と呼ばれている。そのため、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造と拡張は、業界で継続的に注目されている。
【0004】
現在、焼結ネオジム-鉄-ホウ素の最大エネルギー積は理論限界値に近いであるが、固有保磁力はその理論限界値よりもはるかに低い。固有保磁力を高める方法は、伝統的なプロセスが製錬段階での重希土類Dy/Tbを添加することとジェットミル段階での結晶粒微細化プロセスを採用することである。製錬段階で大量の重希土類を添加するのは、一方では大幅にコストを増加し、他方では、大量の重希土類を添加すると残留磁束密度が大幅に低下するため、残留磁束密度は主にNd2Fe14Bの主相の体積分率によって決定されるため、Nd2Fe14Bの体積分率が高いほど、残留磁束密度が高くなり、Dy、Tbの添加後、部分的に主相Nd2Fe14BのNdを置換し、(Nd、Dy)2Fe14Bまたは(Nd、Tb)2Fe14Bを形成する。Nd及びFeの磁気モーメントは正平行に配列し、両者の磁気モーメントは同じ方向に重なっているが、Dy/TbとFeは反強磁性結合であり、Dy/Tbの磁気モーメントとFeの磁気モーメントと反対方向に重なっており、残留磁束密度が大幅に低下する。結晶粒微細化プロセスはジェットミル設備に対して高い要求があるとともに、結晶粒の微細化後の粉末は酸化しやすく、結晶粒の微細化プロセスは生産過程での高度な酸化防止管理が必要であり、このプロセスはプロセスコストが増加し、不良率が高い。
【0005】
近年、粒界拡散プロセスは焼結ネオジム-鉄-ホウ素の固有保磁力を高めるために使用され、かつ磁性体の残留磁束密度とエネルギー積を減少することが少なく、焼結ネオジム-鉄-ホウ素の保磁力は主相粒子の異方性場によって決定され、高濃度の重希土類は拡散により(Nd、Dy)2Fe14Bまたは(Nd、Tb)2Fe14Bを生成し、その結晶磁気異方性場がNd2Fe14Bよりも大きいため、保磁力を大幅に高めるとともに、(Nd、Dy)2Fe14Bまたは(Nd、Tb)2Fe14B強化項は結晶粒の表層のみに堆積し、その体積はNd2Fe14Bの主相結晶粒の体積と比較して割合が低いため、磁性体の残留磁束密度(Br)と最大エネルギー積(BHmax)の低下が少ない。粒界拡散の原理は、塗布方法で磁性体の外部に重希土類元素を含む粉末または化合物を覆い、熱処理により重希土類元素を富Ndの液状粒界相に沿って磁性体内部に拡散させることである。ただし、粒界でのDy/Tbの拡散速度は主相結晶粒内部の拡散速度よりもはるかに速いため、重希土類拡散後に主相結晶粒表層のみに堆積し、結晶粒内部に入ることが少ない。
【0006】
そのため、どのように粒界拡散の效果をさらに高めるかは、既に業界での多くの第一線の研究者および将来を見据えたメーカーが解決するすべき緊急の問題の一つとなっている。
【発明の概要】
【0007】
これに鑑みて、本発明が解決すべき技術課題は、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体およびその製造方法、特に三次元粒界拡散によるネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法を提供することにある。本発明は拡散の原理を微視的結晶粒から巨視的磁性体に拡張し、即ち、重希土類が微視的結晶粒の表層に堆積することから重希土類が巨視的磁性体の表面に堆積することに拡張し、熱処理の温度と時間を調整することで、深さの異なる拡散層が得られ、表層磁性体を磁気硬化させることにより、磁性体の保磁力を向上させるとともに、磁性体の残留磁束密度(Br)及び最大エネルギー積(BHmax)の低下が非常に少ない目的を達する。また、製造方法プロセスが簡単であり、工業化の普及と応用にさらに適する。
【0008】
本発明は、重希土類元素が拡散浸透したネオジム・鉄・ホウ素磁性体であって、
表層の重希土類拡散領域とコア部の非拡散領域を含み、
磁性体の三次元方向にいずれも表層の重希土類拡散領域を有する、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体を提供する。
【0009】
好ましくは、前記重希土類元素がDyおよび/またはTbを含み、
ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の体積に占める前記コア部の非拡散領域の体積の割合が20%以上である。
【0010】
好ましくは、前記拡散浸透は三次元粒界拡散であり、
前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体はいずれかの表面に表層の重希土類拡散領域を有し、
前記重希土類元素拡散浸透量は前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体質量の0.1wt%~1.0wt%を占める。
【0011】
好ましくは、前記コア部の非拡散領域の重希土類含有量が拡散浸透の前後に増加しない、
前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の中心を基準として、前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体のいずれかの表面内での表層の重希土類拡散領域の深さは、この表面から磁性体中心までの距離の80%以内であり、
前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は、拡散浸透の前よりも、磁性体のHcjが2~15kOe増加する。
【0012】
好ましくは、前記表層の重希土類拡散領域は、層方向に沿って、端の重希土類元素の濃度が中央の重希土類元素の濃度よりも大きい、
前記表層の重希土類拡散領域は、層方向に沿って、端から中央まで、重希土類元素の濃度が徐々に低下してから一定に維持され、
前記表層の重希土類拡散領域は、深さ方向に沿って、重希土類元素の濃度が徐々に低下する。
【0013】
本発明は、A)重希土類を有機溶剤と混合した後、混合液を得るステップと、
B)前記ステップで得られる混合液をネオジム-鉄-ホウ素ブランクの各表面に塗布し、半完成品を得るステップと、
C)前記ステップで得られる半完成品を粒界拡散及び時効処理した後に、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体を得るステップと、を含む、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法をさらに提供する。
【0014】
好ましくは、前記有機溶剤がシリコーンオイルを含み、
前記重希土類の平均粒子径が1~100μmであり、
前記重希土類と前記溶剤との質量比が(90~98):(2~10)である。
【0015】
好ましくは、前記ネオジム-鉄-ホウ素ブランクは表面研磨処理後のネオジム-鉄-ホウ素ブランクを含み、
前記粒界拡散は具体的に真空条件下で粒界拡散することであり、
前記真空の絶対圧力が10Pa以下であり、
前記粒界拡散は低温揮発ステップと高温拡散ステップとを含む。
【0016】
好ましくは、前記低温揮発の温度が300~500℃であり、
前記低温揮発の時間が3~5hであり、
前記高温拡散の温度が700~1000℃であり、
前記高温拡散の時間が1~100hである。
【0017】
好ましくは、前記時効処理は具体的に高温拡散冷却の後にさらに時効処理を行い、
前記時効処理の温度が400~600℃であり、
前記時効処理の時間が1~15hである。
【0018】
本発明は、重希土類元素が拡散浸透したネオジム・鉄・ホウ素磁性体であって;前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体が表層の重希土類拡散領域及びコア部の非拡散領域を含み;前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体が磁性体の三次元方向にいずれも表層の重希土類拡散領域を有する、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体を提供する。本発明は、先行技術と比べて、粒界拡散の原理に基づき、塗布の方法で磁性体外部に重希土類元素を含む粉末または化合物を覆い、熱処理により重希土類元素を富Ndの液状粒界相に沿って磁性体内部に拡散させる。しかし、粒界におけるDy/Tbの拡散速度は、主相結晶粒内部の拡散速度よりもはるかに速いため、重希土類が拡散した後に主相結晶粒表層のみに堆積し、結晶粒内部に入ることは少ない。
【0019】
本発明は、創造的に拡散の原理を微視的結晶粒から巨視的磁性体に拡張し、即ち、重希土類が微視的結晶粒の表層に堆積することから重希土類が巨視的磁性体の表面に堆積することに拡張し、20%以上のコア部の体積は浸透しない。熱処理温度及び時間を調整することで、深さの異なる拡散層が得られ、表層磁性体を磁気硬化させることにより、磁性体の保磁力を向上させるとともに、磁性体の残留磁束密度(Br)及び最大エネルギー積(BHmax)の低下が非常に少ない目的を達する。特に、複数の磁性体を組み合わせて使用すると、単一の磁性体は全体の結晶粒個体とみなすことができ、より優れた組み合わせ效果が得られるはずである。
【0020】
一般に磁性体の一方向(磁化方向または非磁化方向)にしか拡散できない既存の粒界拡散技術に比べて、本発明で提供される三次元粒界拡散技術及び三次元粒界拡散磁性体は、製品自体の特性に応じて、0.10wt%~1.0wt%の重希土類を添加し、拡散により重希土類を磁性体表層に堆積させ、20%以上のコア部の体積は浸透せず、三次元方向で、異なる拡散深さに応じて独立したコントロールを実現することができる。そして、製造プロセスが簡単で、制御性が強く、工業化の普及と応用により適する。
【0021】
実験結果は、従来の非拡散プロセスに比べて、三次元粒界拡散技術を採用して0.1%~0.5%のTbを添加し、Br>14.85kGs、Hcj>21kOeの超高性能磁性体が得られることを示し、これは非拡散プロセスが達成できない高性能である。同じ性能を得るために、三次元粒界拡散プロセスは、従来の非拡散プロセスと比較して、重希土類の添加量が大幅に低下する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明の実施例1で製造された磁性体サンプル3の断面のEDS図である。
【
図2】
図2は本発明の実施例2で製造された比較サンプル3磁性体の性能データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をさらに理解するために、本発明の好ましい実施形態を、実施例を参照しながら詳細に説明するが、以下の記載は、本発明の特徴やメリットをさらに説明するためだけのものであり、本発明の特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0024】
本発明のすべての原料は、それらの供給源に特に制限されず、市場上で購入するか、または当業者が知られている常法に従って製造することができる。
【0025】
本発明のすべての原料は、その純度に特に制限されず、本発明は、分析純度またはネオジム・鉄・ホウ素磁性体分野で使用される従来の純度を採用することが好ましい。
【0026】
本発明は、重希土類元素が拡散浸透したネオジム・鉄・ホウ素磁性体であって、
上記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は、表層の重希土類拡散領域及びコア部の非拡散領域を含み、
上記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は磁性体の三次元方向にいずれも表層の重希土類拡散領域を有する、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【0027】
本発明では、上記重希土類元素は、Dyおよび/またはTbを含むことが好ましく、Tb、Dy、またはDy-Tb合金であることがより好ましい。
【0028】
本発明では、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の体積に占める上記コア部の非拡散領域の体積の割合は、20%以上であることが好ましく、30%以上であってもよく、または50%以上であってもよい。
【0029】
本発明では、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は磁性体の三次元方向にいずれも表層の重希土類拡散領域を有し、上記拡散浸透は三次元粒界拡散であることが好ましい。具体的には、本発明に係るネオジム・鉄・ホウ素磁性体は、いずれかの表面に表層の重希土類拡散領域を有する。即ち、立方体を例として、長さ×幅×高さで構成される6つの平面で、各表面に表層の重希土類拡散領域を有する。
【0030】
本発明では、上記重希土類元素の拡散浸透量は、上記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体質量の0.1wt%~1.0wt%を占めることが好ましく、0.3wt%~0.8wt%であることがより好ましく、0.5wt%~0.6wt%であることがより好ましい。
【0031】
本発明では、上記コア部の非拡散領域の重希土類の含有量は、拡散浸透の前後に増加しない。即ち、コア部は不拡散領域である。
【0032】
本発明では、上記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の中心を基準として、上記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体のいずれかの表面内での表層の重希土類拡散領域の深さは、この表面から磁性体中心までの距離の80%以内であることが好ましく、60%以内であることがより好ましく、40%以内であることがより好ましい。具体的には、10%~80%であってもよく、または20%~70%であり、または30%~60%である。本発明では、表面から磁性体中心までの距離、即ち、表面から磁性体中心までの高さ(長さ)であり、この距離は、磁性体の各表面が同時に同じ数値を選択してもよく、異なる数値を選択してもよい。
【0033】
本発明では、上記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は、拡散浸透の前より、磁性体のHcjが2~15kOe増加することが好ましく、5~14kOe増加することがより好ましく、8~13kOe増加することがより好ましい。
【0034】
本発明では、上記表層の重希土類拡散領域は、層方向に沿って、端の重希土類元素の濃度が中央の重希土類元素の濃度よりも大きいことが好ましい。具体的には、上記表層の重希土類拡散領域は、層方向に沿って、端から中央まで、重希土類元素の濃度が徐々に低下した後、一定に維持することが好ましい。より具体的には、上記表層の重希土類拡散領域は、深さ方向に沿って、重希土類元素の濃度が徐々に低下することが好ましい。これは、本発明の三次元粒界拡散が有する特徴であり、本発明では、任意の表面を基準として、深さ方向から拡散を見た場合、重希土類元素の濃度が徐々に低下する。同時にこの表面およびそれに対応する拡散領域の横方向から見た場合、三次元方向にいずれも拡散するので、隣接する面の拡散により、端の重希土類元素の濃度が増加し、即ち、濃度が重なっている。しかし、拡散領域の中央では、磁性体コアが非拡散領域を有するので、各拡散領域の横方向の中央位置で、近接拡散領域の影響を受けず、中央の元素の拡散濃度は端より低い。そして、全体の拡散元素の濃度変化の傾向は、端から中央に向かって低下した後一定に維持する。
【0035】
本発明は、A)重希土類を有機溶剤と混合した後に、混合液を得るステップと、
B)上記ステップで得られた混合液をネオジム-鉄-ホウ素ブランクの各表面に塗布し、半完成品を得るステップと、
C)上記ステップで得られた半完成品を粒界拡散及び時効処理した後、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体を得るステップと、を含む、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法をさらに提供する。
【0036】
本発明は、まず、重希土類を有機溶剤と混合した後に、混合液を得る。
【0037】
本発明では、上記有機溶剤は、シリコーンオイルを含むことが好ましい。
【0038】
本発明では、上記重希土類原料の平均粒子径は、1~100μmであることが好ましく、5~80μmであることがより好ましく、10~60μmであることがより好ましく、20~50μmであることがより好ましい。
【0039】
本発明では、上記重希土類と上記溶剤との質量比は、(90~98):(2~10)であることが好ましく、(91~97):(2~10)であることがより好ましく、(93~95):(2~10)であることがより好ましく、(90~98):(3~9)であってもよいし、(90~98):(5~7)であってもよい。
【0040】
本発明はその後、上記ステップで得られた混合液をネオジム-鉄-ホウ素ブランクの各表面に塗布し、半完成品を得る。
【0041】
本発明では、上記ネオジム-鉄-ホウ素ブランクは、例えば立方体、直方体、多角形体または球体などの任意の形状であってもよく、具体的には立方体または直方体であってもよい。
【0042】
本発明では、上記ネオジム-鉄-ホウ素ブランクは、表面研磨処理されたネオジム-鉄-ホウ素ブランクを含むことが好ましい。
【0043】
本発明では、上記粒界拡散は具体的に真空条件下で粒界拡散をすることが好ましい。より具体的には、上記真空の絶対圧力は10Pa以下であることが好ましく、1Pa以下であることがより好ましく、0.1Pa以下であることがより好ましい。
【0044】
本発明では、上記粒界拡散は、低温揮発ステップと高温拡散ステップとを含むことが好ましい。
中でも、上記低温揮発の温度は、300~500℃であることが好ましく、325~475℃であることがより好ましく、350~450℃であることがより好ましく、375~425℃であることがより好ましい。上記低温揮発の時間は、3~5hであることが好ましく、3.2~4.8hであることがより好ましく、3.5~4.5hであることがより好ましく、3.8~4.3hであることがより好ましい。
本発明にかかる高温拡散の温度は、700~1000℃であることが好ましく、750~950℃であることがより好ましく、800~900℃であることがより好ましい。上記高温拡散の時間は、1~100hであり、5~80時間であることがより好ましく、10~60時間であることがより好ましく、20~50時間であることがより好ましい。
【0045】
本発明は、上記粒界拡散の設備に特に制限されなく、当業者が知られている磁性体粒界拡散の設備であればよく、本発明は、真空拡散炉が好ましく、底面が平らな焼結箱を採用することがより好ましく、変形しにくい黒鉛箱またはC-C板を採用することがより好ましい。
【0046】
本発明は、全体的な製造プロセスを完全かつ微細化し、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の三次元粒界拡散效果をより良く保証し、拡散後のネオジム・鉄・ホウ素磁性体の磁気特性をより良く向上させるために、上記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法、即ち、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の拡散浸透プロセスは、具体的に、以下のステップであることができ、
ブランク磁性体を製造するステップ1;
重希土類と溶剤との混合物を製造するステップ2において、
溶剤はシリコーンオイルから選ばれ、重希土類粉末の溶解を実現するとともに、後期拡散過程における溶剤の揮発に有利であるために、上記重希土類の平均粒子径は1~100μmであり、より具体的には、上記重希土類粉末と上記溶剤との質量比は(90~98):(2~10)であり、具体的な実施例では、上記重希土類粉末と上記溶剤との質量比は95:5であるステップ2;
ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の三次元方向(六つの表面)に重希土類粉末と溶剤を含む混合物を塗布し、得られたネオジム・鉄・ホウ素磁性体材料を粒界拡散させ、冷却後、時効処理し、即ち、三次元粒界拡散ネオジム・鉄・ホウ素磁性体を得るステップ3。
ここで、粒界拡散の過程は具体的に、上記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体材料をまず300~500℃で3~5hを保温し、混合物における溶剤を揮発させ、さらに700~1000℃に昇温して1~100h拡散する。上記時効処理の温度は400~600℃であり、時間は1~15hである。
【0047】
本発明は、上記ネオジム-鉄-ホウ素ブランクに特に制限されていない、当業者が知られているネオジム-鉄-ホウ素ブランクであればよく、即ち、ネオジム-鉄-ホウ素原料が原料配合、製錬、破砕製粉、粉末の配向プレス成形および真空焼結などのステップを経たネオジム-鉄-ホウ素ブランクであり、即ち、さらに表面処理および加工を経て、通常の完成したネオジム・鉄・ホウ素磁性体のブランクとして使用することができる。本発明は、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の性質をより良く向上させるために、また、好ましくはネオジム-鉄-ホウ素ブランクを完成品のサイズに近い半完成品に加工し、半完成品配向方向の尺寸が完成品のサイズに近く、より好ましくは、これに基づいて、ネオジム-鉄-ホウ素ブランクをさらに除油、洗浄などの前処理を行い、表面を滑らかできれいにし、より良い拡散效果を達成する。
【0048】
本発明は、上記のステップを経て、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体が得られる。本発明は、上記ステップの後にさらに含有可能な後処理ステップ、例えば洗浄、スライスなどのステップに特に限定せず、当業者は実際の生産状況、製品要求などに応じて、調整または選択することができる。
【0049】
本発明の上記ステップは、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体および三次元粒界拡散によるネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法を提供する。本発明は、拡散の原理を微視的結晶粒から巨視的磁性体に拡張し、即ち、重希土類が微視的結晶粒の表層に堆積することから重希土類が巨視的磁性体の表面に堆積することに拡張し、20%以上のコア部の体積は浸透しない。熱処理温度及び時間を調整することで、深さの異なる拡散層が得られ、表層磁性体を磁気硬化させることにより、磁性体の保磁力を向上させるとともに、磁性体の残留磁束密度(Br)及び最大エネルギー積(BHmax)の低下が非常に少い目的を達成する。特に、複数の磁性体が組み合わせて使用すると、単一の磁性体が全体の結晶粒個体とみなすことができ、より優れた組み合わせ効果が得られるはずである。
【0050】
一般に磁性体の一方向(磁化方向または非磁化方向)に沿ってしか拡散できない既存の粒界拡散技術に比べて、本発明で提供される三次元粒界拡散技術及び三次元粒界拡散磁性体は、表層が磁気硬化するネオジム・鉄・ホウ素磁性体であり、磁性体表面から磁性体内部の0~10mm深さまで重希土類元素拡散領域が存在し、拡散領域で重希土類の含有量が基材よりも高くなることを含む。20%以上のコア部領域は拡散処理が全く行われておらず、それでも基材の成分と性能である。しかしながら、本発明は、製品自体の特性に応じて、0.10wt%~1.0wt%の重希土類を添加ことができ、拡散により重希土類を磁性体表層に堆積させ、20%以上のコア部の体積は浸透せず、三次元方向で、異なる熱処理温度及び保温時間を調整することにより、異なる拡散深さに応じて独立したコントロールを実現し、異なる拡散深さのネオジム・鉄・ホウ素磁性体を得ることができる。そして、製造プロセスが簡単で、制御性が強く、より工業化の普及と応用に適する。
【0051】
実験結果から明らかになるように、従来の非拡散プロセスと比べて、三次元粒界拡散技術を採用して0.1%~0.5%のTbを添加し、Br>14.85kGs、Hcj>21kOeの超高性能磁性体が得られ、これは、非拡散プロセスが達成できない高性能である。同じ性能を得るために、三次元粒界拡散プロセスは、従来非拡散プロセスと比較して、重希土類の添加量が大幅に低下する。同時に、三次元粒界拡散プロセスは製品の三次元方向に異なる拡散深さに応じて独立したコントロールを実現できる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明をさらに説明するために、本発明で提供されるネオジム・鉄・ホウ素磁性体およびその製造方法を、実施例を挙げて以下に詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の技術形態の前提下で実施され、詳細的な実施態様および具体的な操作手順を挙げて、本発明の特徴とメリットをさらに説明するためのみのものであり、本発明の特許請求の範囲に対する制限ではなく、本発明が保護する範囲はこれらの実施例に限定されないことを理解されたい。
【0053】
実施例1
平均粒子径3~4ミクロンの金属テルビウム粉末を用意し、窒素雰囲気のグローブボックス内で、テルビウム粉末とシリコーンオイルとの重量比が95:5であるようにシリコーンオイルにテルビウム粉末を入れ、その後、均一に撹拌して用意した。
【0054】
N56型ブランクを50個取り、ブランクブロックから採取したサンプルを測定した性能の結果は、表1に示される。
【0055】
【0056】
各ブランクを40×20×6(mm)の四角形のシートに切断し、合計240枚のサンプルを4つのグループに分けて、グループごとに60枚である。
【0057】
第1グループは基材のオリジナルサンプルであり、塗布を行わず、拡散処理を行わず、比較サンプル1とした。
残りのサンプルは、専用の塗布装置で、用意された金属Tb粉末とシリコーンオイルとの混合物を、6つの面に均一に塗布し、Tbの使用量がサンプル重量の0.2%である。
【0058】
第2グループ:塗布されたサンプル60枚を真空拡散炉に入れ、まず、400℃で4時間保温し、シリコーンオイルを乾燥させ、真空炉の真空システムによりシリコーンオイルを拡散炉から排出し、その後、700~1000℃まで昇温して、粒界拡散処理を行い、拡散時間は5時間であり、拡散終了後、80℃以下に急冷し、その後、さらに500℃まで昇温して、時効処理を行い、時効時間は5時間であり、時効終了後、さらに80℃以下に急冷し、炉から取り出し、処理済みサンプル60枚を得て、比較サンプル2とした。
【0059】
第3グループ:塗布されたサンプル60枚を真空拡散炉に入れ、まず、400℃で4時間保温し、シリコーンオイルを乾燥させ、真空炉の真空システムによりシリコーンオイルを拡散炉から排出し、その後、700~1000℃まで昇温して粒界拡散処理を行い、拡散時間は10時間であり、拡散終了後、80℃以下に急冷し、その後、さらに500℃まで昇温して、時効処理を行い、時効時間は5時間であり、時効終了後、さらに80℃以下に急冷し、炉から取り出し、処理済みサンプル60枚を得て、比較サンプル3とした。
【0060】
第4グループ:塗布されたサンプル60枚を真空拡散炉に入れ、まず、400℃で4時間保温し、シリコーンオイルを乾燥させ、真空炉の真空システムによりシリコーンオイルを拡散炉から排出し、その後、700~1000℃まで昇温して粒界拡散処理を行い、拡散時間は25時間であり、拡散終了後、80℃以下に急冷し、その後、さらに500℃まで昇温して、時効処理を行い、時効時間が5時間であり、時効終了後、さらに80℃以下に急冷し、炉から取り出し、処理済みサンプル60枚を得て、比較サンプル4とした。
【0061】
4つのグループのサンプルは異なる領域でEDS分光比較試験を行い、結果を表2に示した。
【0062】
【0063】
表2から分かるように、5hおよび10hの拡散プロセスでは、磁性体が表層拡散強化のみを行い、コア部でTb元素が検出されていない。25hの拡散プロセスでは、磁性体のコア部におけるTb含有量は表面と同等であり、このプロセスでは、磁性体は完全に拡散されている。拡散時間を制御することにより、重希土類が磁性体の表層のみに堆積し、20%以上のコア部領域が拡散しない目的を達成することができることを示した。
【0064】
図1を参照し、
図1は本発明の実施例1で製造された磁性体サンプル3の断面のEDS図である。
【0065】
実施例2
実施例1におけるN56ブランクを取り、各ブランクを40×20×6(mm)の四角形のシートに切断し、合計180枚のサンプルを3つのグループに分けて、グループごとに60枚である。
【0066】
第1グループを基材オリジナルサンプルとして、塗布を行わず、拡散処理を行わず、比較サンプル1とした。
【0067】
第2グループ:第2グループのサンプルは、専用の塗布装置で、用意された金属Tb粉末とシリコーンオイルとの混合物を6つの面に均一に塗布し、Tbの使用量がサンプル重量の0.1%であり;塗布された60枚のサンプルを真空拡散炉に入れ、まず、400℃で4時間保温し、シリコーンオイルを乾燥させ、真空炉の真空システムによりシリコーンオイルを拡散炉から排出し、その後、700~1000℃まで昇温し、粒界拡散処理を行い、拡散時間は5時間であり、拡散終了後、80℃以下に急冷し、その後、さらに500℃まで昇温し、時効処理を行い、時効時間は5時間であり、時効終了後、さらに80℃以下に急冷し、炉から取り出し、60枚の処理後のサンプルを得て、比較サンプル2とした。
【0068】
第3グループ:第3グループのサンプルは、専用の塗布装置で、用意された金属Tb粉末とシリコーンオイルとの混合物を6つの面に均一に塗布し、Tbの使用量がサンプル重量の0.2%であり;塗布された60枚のサンプルを真空拡散炉に入れ、まず、400℃で4時間保温し、シリコーンオイルを乾燥させ、真空炉の真空システムによりシリコーンオイルを拡散炉から排出し、その後、700~1000℃まで昇温し、粒界拡散処理を行い、拡散時間は5時間であり、拡散終了後、80℃以下に急冷し、その後、さらに500℃まで昇温し、時効処理を行い、時効時間は5時間であり、時効終了後、さらに80℃以下に急冷し、炉から取り出し、60枚の処理後のサンプルを得て、比較サンプル3とした。
【0069】
3つのグループのサンプルは磁気特性比較試験を行い、結果を表3に示した。
【0070】
【0071】
表3から分かるように、磁性体は、三次元粒界拡散プロセスにより、0.10%Tb、0.20%Tbの微量拡散を採用し、磁性体の表層に磁気硬化層を形成し、Br:14.91kGs、Hcj:21.47kOeの超高性能の56SH番号を製造でき、このような性能は、従来の非拡散プロセスで製造できない。
【0072】
図2を参照し、
図2は本発明の実施例2で製造された比較サンプル3磁性体の性能データ図である。
【0073】
以上、本発明で提供されたネオジム・鉄・ホウ素磁性体および三次元粒界拡散によるネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法を具体的に説明したが、本明細書では、具体的な例を使用して、本発明の原理および実施態様について説明した。以上の実施例の説明は、最適な態様を含み、本発明の方法および要旨を理解するためにのみ用いられ、当業者が本発明を実現できるために、いずれの装置またはシステムを製造、使用することおよびいずれの結合の方法を実施することを含む。当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、幾つかの改良および修飾を加えることができるが、これらの改良および修飾も本発明の特許範囲に含まれることに留意する必要がある。本発明が保護する範囲は、特許請求の範囲によって限定され、当業者が想到可能な他の実施例を含むことができる。これらの他の実施例が、特許請求の範囲の文字通りの表現と異ならない構造要素を有すると、またはそれらが請求項の文字通りの表現と実質的に異ならない同等の構造要素を含むと、これらの他の実施例も特許請求の範囲に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重希土類元素が拡散浸透したネオジム・鉄・ホウ素磁性体であって、
表層の重希土類
粒界拡散領域及びコア部の非拡散領域を含み、
磁性体の三次元方向にいずれも表層の重希土類
粒界拡散領域を有
し、
前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は、各表面に表層の重希土類粒界拡散領域を有することを特徴とするネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【請求項2】
前記重希土類元素がDyおよび/またはTbを含み、
ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の体積に占める前記コア部の非拡散領域の体積の割合が20%以上であることを特徴とする請求項1に記載のネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【請求項3】
前記拡散浸透は三次元粒界拡散であ
り、
前記重希土類元素の拡散浸透量は前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の質量の0.1wt%~1.0wt%を占めることを特徴とする請求項1に記載のネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【請求項4】
前記コア部の非拡散領域の重希土類の含有量が拡散浸透の前後で増加しない、
前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の中心を基準として、前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体のいずれかの表面内の表層の重希土類
粒界拡散領域の深さが、その表面から磁性体の中心までの距離の80%以内であり、
前記ネオジム・鉄・ホウ素磁性体は、拡散浸透の前よりも、磁性体のHcjが2~15kOe増加することを特徴とする請求項1に記載のネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【請求項5】
前記表層の重希土類
粒界拡散領域は、層方向に沿って、端の重希土類元素の濃度が中央の重希土類元素の濃度よりも高い、
前記表層の重希土類
粒界拡散領域は、層方向に沿って、端から中央まで、重希土類元素の濃度が徐々に減少した後一定に維持され、
前記表層の重希土類
粒界拡散領域は、深さ方向に沿って、重希土類元素の濃度が徐々に減少することを特徴とする請求項1に記載のネオジム・鉄・ホウ素磁性体。
【請求項6】
A)重希土類を有機溶剤と混合した後、混合液を得るステップと、
B)前記ステップで得られた混合液をネオジム-鉄-ホウ素ブランクの各表面に塗布し、半完成品を得るステップと、
C)前記ステップで得られた半完成品を粒界拡散及び時効処理した後、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体を得るステップと、を含む、ネオジム・鉄・ホウ素磁性体の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶剤がシリコーンオイルを含み、
前記重希土類の平均粒子径が1~100μmであり、
前記重希土類と前記溶剤との質量比が(90~98):(2~10)であることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ネオジム-鉄-ホウ素ブランクは、表面研磨処理後のネオジム-鉄-ホウ素ブランクを含み、
前記粒界拡散が具体的に真空条件下で粒界拡散することであり、
前記真空の絶対圧力が10Pa以下であり、
前記粒界拡散は、低温揮発ステップと高温拡散ステップとを含むことを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記低温揮発の温度が、300~500℃であり、
前記低温揮発の時間が3~5hであり、
前記高温拡散の温度が700~1000℃であり、
前記高温拡散の時間が1~100hであることを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記時効処理は具体的に高温拡散冷却後にさらに時効処理することであり、
前記時効処理の温度が400~600℃であり、
前記時効処理の時間が1~15hであることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【国際調査報告】