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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】発音装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240122BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20240122BHJP
   G10K 11/165 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
H04R1/02 101E
G10K11/162
G10K11/165
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540920
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 CN2021114492
(87)【国際公開番号】W WO2022217808
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】202110401670.4
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512280079
【氏名又は名称】ゴーアテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GOERTEK INC
【住所又は居所原語表記】#268 Dongfang Road,Hi-Tech Industry District,Weifang,Shandong,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パン チュアンチュアン
(72)【発明者】
【氏名】リン フォンコアン
(72)【発明者】
【氏名】リー チュン
【テーマコード(参考)】
5D017
5D061
【Fターム(参考)】
5D017AD23
5D061AA02
5D061AA11
5D061AA16
5D061AA25
5D061AA29
(57)【要約】
本発明は、発音ユニットと、複数の磁性吸音粒子と、収容キャビティを有するケースとを含み、前記発音ユニットが前記収容キャビティ内に収容され、前記収容キャビティをフロントキャビティとバックキャビティに仕切り、前記磁性吸音粒子が前記フロントキャビティ及び/又は前記バックキャビティ内に充填され、複数の前記磁性吸音粒子の間に磁気吸引力を有する、発音装置を開示する。本発明では、磁性吸音粒子を用いて発音装置の音響バックキャビティの共振空間の仮想増大効果を実現し、かつ磁性吸音粒子が互いに吸着して一体に貼り付けられることにより、粒子間の自由流動を制限し、磁性吸音粒子が破砕するという現象を減少させ、発音装置の音響性能を効果的に保護する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発音ユニットと、複数の磁性吸音粒子と、収容キャビティを有するケースとを含み、前記発音ユニットは、前記収容キャビティ内に収容され、前記収容キャビティをフロントキャビティとバックキャビティに仕切り、前記磁性吸音粒子は、前記フロントキャビティ及び/又はバックキャビティ内に充填され、複数の前記磁性吸音粒子の間は、磁気吸引力を有する、ことを特徴とする発音装置。
【請求項2】
前記磁性吸音粒子は、多孔質マトリックス及び強磁性材料を含み、前記強磁性材料の磁化により前記磁性吸音粒子に磁性を持たせる、ことを特徴とする請求項1に記載の発音装置。
【請求項3】
前記磁性吸音粒子が着磁処理されることにより前記磁性吸音粒子内の強磁性材料が磁化される、ことを特徴とする請求項2に記載の発音装置。
【請求項4】
前記多孔質マトリックスは、ゼオライト、活性炭、多孔質アルミナ、多孔質シリカ、水和アルミノケイ酸塩及び金属有機構造体材料のうちの少なくとも1種類を含み、粒径が0.1~80μmである、ことを特徴とする請求項2に記載の発音装置。
【請求項5】
前記強磁性材料は、鉄、コバルト、ニッケル及びランタノイド系希土類金属のうちの1種類若しくは複数種類、並びに/又は、鉄、コバルト、ニッケル及びランタノイド系希土類金属の酸化物若しくは化合物のうちの1種類若しくは複数種類を含み、粒径が0.01~80μmである、ことを特徴とする請求項2に記載の発音装置。
【請求項6】
前記磁性吸音粒子において、前記多孔質マトリックスの質量百分率は、50%~96%であり、前記強磁性材料の質量百分率は、0.01%~70%である、ことを特徴とする請求項2に記載の発音装置。
【請求項7】
前記磁性吸音粒子は、前記多孔質マトリックスと前記強磁性材料を粘着させるための、質量百分率が3%~10%である粘着剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項2に記載の発音装置。
【請求項8】
前記バックキャビティに充填され、かつ前記磁性吸音粒子との間に磁気吸引力を有する透磁性吸音粒子をさらに含み、前記磁性吸音粒子の磁界中における前記透磁性吸音粒子の間に磁気吸引力を有する、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の発音装置。
【請求項9】
セパレータをさらに含み、
前記セパレータは、前記バックキャビティに設置されて前記バックキャビティを2つの部分に仕切り、前記発音ユニットと前記磁性吸音粒子が、それぞれ前記セパレータの両側に設置されるか、或いは、前記セパレータは、前記発音ユニットの表面に被覆され、かつ少なくとも前記発音ユニットの通気領域を覆い、
前記セパレータのメッシュ直径は、前記磁性吸音粒子の粒径よりも小さい、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の発音装置。
【請求項10】
前記フロントキャビティには前記磁性吸音粒子が充填される、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の発音装置。
【請求項11】
前記磁性吸音粒子の粒径は、100~600μmである、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の発音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気音響変換の技術分野に関し、特に、発音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発音装置は、携帯型電子機器の重要な音響部品として、電気信号と音響信号との間の変換を完了するエネルギー変換装置である。発音装置の体積の減少による音響性能の低下を緩和するために、一般的に、発音装置のバックキャビティ内に吸音粒子を充填してスピーカのバックキャビティの共振空間の仮想増大効果を実現し、音響性能を向上させる。しかし、バックキャビティ内の吸音粒子は、発音装置の運動又は気流の運動に伴い、磁性吸音粒子同士間又は吸音粒子とバックキャビティの内壁との間に摩擦、衝突が発生しやすく吸音粒子の破砕を引き起こし、かつ発音ユニットの内部に入って汚染を引き起こし、音響性能の失効を引き起こす。
【0003】
したがって、上記技術的課題を解決するために新たな発音装置を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、発音装置を提供することを主な目的とし、吸音粒子が破砕しやすく、吸音粒子の破砕した材料が発音ユニットの内部に入って汚染を引き起こし、音響性能の失効を引き起こすという問題を解決するためになされたものである。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る発音装置は、発音ユニットと、複数の磁性吸音粒子と、収容キャビティを有するケースとを含み、前記発音ユニットは、前記収容キャビティ内に収容され、前記収容キャビティをフロントキャビティとバックキャビティに仕切り、前記磁性吸音粒子は、前記フロントキャビティ及び/又は前記バックキャビティ内に充填され、複数の前記磁性吸音粒子の間は、磁気吸引力を有する。
【0006】
好ましくは、前記磁性吸音粒子は、多孔質マトリックス及び強磁性材料を含み、前記強磁性材料の磁化により前記磁性吸音粒子に磁性を持たせる。
【0007】
好ましくは、前記磁性吸音粒子が着磁処理されることにより前記磁性吸音粒子内の強磁性材料が磁化される。
【0008】
好ましくは、前記多孔質マトリックスは、ゼオライト、活性炭、多孔質アルミナ、多孔質シリカ、水和アルミノケイ酸塩及び金属有機構造体材料のうちの少なくとも1種類を含み、粒径が0.1~80μmである。
【0009】
好ましくは、前記強磁性材料は、鉄、コバルト、ニッケル及びランタノイド系希土類金属のうちの1種類若しくは複数種類、並びに/又は、鉄、コバルト、ニッケル及びランタノイド系希土類金属の酸化物若しくは化合物のうちの1種類若しくは複数種類を含み、粒径が0.01~80μmである。
【0010】
好ましくは、前記磁性吸音粒子において、前記多孔質マトリックスの質量百分率は、50%~96%であり、前記強磁性材料の質量百分率は、0.01%~70%である。
【0011】
好ましくは、前記磁性吸音粒子は、前記多孔質マトリックスと前記強磁性材料を粘着させるための、質量百分率が3%~10%である粘着剤をさらに含む。
【0012】
好ましくは、前記発音装置は、前記バックキャビティに充填され、かつ前記磁性吸音粒子との間に磁気吸引力を有する透磁性吸音粒子をさらに含み、前記磁性吸音粒子の磁界中における前記透磁性吸音粒子の間に磁気吸引力を有する。
【0013】
好ましくは、前記発音装置は、セパレータをさらに含み、前記セパレータは、前記バックキャビティに設置されて前記バックキャビティを2つの部分に仕切り、前記発音ユニットと前記磁性吸音粒子が、それぞれ前記セパレータの両側に設置されるか、或いは、前記セパレータは、前記発音ユニットの表面に被覆され、かつ少なくとも前記発音ユニットの通気領域を覆い、前記セパレータのメッシュ直径は、前記磁性吸音粒子の粒径よりも小さい。
【0014】
好ましくは、前記発音装置は、セパレータをさらに含み、前記フロントキャビティに設置されて前記フロントキャビティを2つの部分に仕切り、前記発音ユニットと前記磁性吸音粒子が、それぞれ前記セパレータの両側に設置されるか、或いは、前記セパレータは、前記発音ユニットの表面に被覆され、かつ少なくとも前記発音ユニットの通気領域を覆い、前記セパレータのメッシュ直径は、前記磁性吸音粒子の粒径よりも小さい。
【0015】
好ましくは、前記フロントキャビティに前記磁性吸音粒子が充填される。
【0016】
好ましくは、前記磁性吸音粒子の粒径は、100~600μmである。
【0017】
本発明の技術手段では、バックキャビティ内に磁性を有する磁性吸音粒子を充填することにより、磁性吸音粒子を用いて発音装置の音響バックキャビティの共振空間の仮想増大効果を実現し、そして磁性吸音粒子が磁力の作用下で互いに吸着することにより、粒子間の自由流動を制限し、磁性吸音粒子間の摩擦と衝突を回避するか又は除去して、磁性吸音粒子間の衝突による流動ノイズを除去し、磁性吸音粒子間の衝突により磁性吸音粒子が破砕するという現象を減少させる。このため磁性吸音粒子の破砕した材料が発音ユニットの内部に入って汚染を引き起こすことがなく、発音装置の音響性能を効果的に保護する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施例又は従来技術における技術手段をより明らかに説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に使用される図面を簡単に説明し、明らかに、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に示された構造に基づいて他の図面を得ることができる。
【0019】
図1】本発明の実施例における発音装置の概略構成図である。
図2】本発明に係る発音装置において充填された磁性吸音粒子の信頼性実験のデータテーブルである。
【符号の説明】
【0020】
100 発音装置
1 磁性吸音粒子
2 発音ユニット
3 ケース
32 バックキャビティ
4 セパレータ
【0021】
本発明の目的の達成、機能特徴及び利点について、実施例と組み合わせて、図面を参照しながらさらに説明する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術手段を明確かつ完全に説明し、明らかに、説明される実施例は、本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的労働を行わずに得られる他の全ての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0023】
なお、本発明の実施例における全ての方向性指示(例えば、上、下、左、右、前、後、…)は、ある特定の姿勢(図面に示すように)で各部材の間の相対的な位置関係や移動状況などを解釈するものに過ぎず、該特定の姿勢が変化すると、該方向性指示もそれに伴って変化する。
【0024】
また、本発明では、「第1」や「第2」などに言及される用語は、単に説明を目的とするが、その相対的な重要性を指示するか又は示唆したり、指示された技術的特徴の数を暗黙的に示したりするためのものであると理解すべきではない。したがって、「第1」、「第2」で限定された特徴は、少なくとも1つの該特徴を明示的又は暗黙的に含んでもよい。本発明の説明では、「複数」とは、別途に明確かつ具体的な限定がない限り、少なくとも2つ、例えば2つや3つなどを意味する。
【0025】
本発明では、別途に明確な規定及び限定がない限り、用語「接続」や「固定」などは、広義に理解されるべきであり、例えば、別途に明確な規定がない限り、「固定」は、固定接続であってもよく、着脱可能な接続であってもよく、一体的な接続であってもよく、機械的な接続であってもよく、電気的接続であってもよく、直接的な連結であってもよく、中間媒体を介する間接的な連結であってもよく、2つの部品の内部の連通又は2つの部品の相互作用関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて本発明における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0026】
また、本発明の各実施例の間の技術手段は、互いに組み合わせることができるが、当業者が実現できることを基礎としなければならず、技術手段の組み合わせが互いに矛盾するか又は実現できない場合に、このような技術手段の組み合わせは、存在せず、本発明の保護範囲内にないと見なされるべきである。
【0027】
本発明は、発音装置を提供する。
【0028】
図1に示すように、本発明の一実施例では、発音装置100は、発音ユニット2と、複数の磁性吸音粒子1と、収容キャビティを有するケース3とを含み、発音ユニット2が収容キャビティ内に収容され、収容キャビティをフロントキャビティとバックキャビティに仕切り、磁性吸音粒子1がフロントキャビティ及び/又はバックキャビティ32内に充填され、複数の磁性吸音粒子1の間に磁気吸引力を有する。
【0029】
上記実施例では、フロントキャビティ及び/又はバックキャビティ32内に磁性を有する磁性吸音粒子1を充填することにより、磁性吸音粒子1を用いて発音装置100の音響バックキャビティの共振空間の仮想増大効果を実現し、そして磁性吸音粒子1が磁力の作用下で互いに吸着することにより、磁性吸音粒子1間の自由流動を制限し、磁性吸音粒子1間の摩擦と衝突を回避するか又は除去して、磁性吸音粒子1間の衝突による流動ノイズを除去し、磁性吸音粒子1間の衝突により磁性吸音粒子1が破砕するという現象を減少させる。このため磁性吸音粒子1の破砕した材料が発音ユニット2の内部に入って汚染を引き起こすことがなく、発音装置100の音響性能を効果的に保護する。
【0030】
磁性吸音粒子1は、形状が球形又は略球形であり、直径が100~600μmである。磁性吸音粒子1は、バックキャビティ32のみに充填されてもよく、フロントキャビティのみに充填されてもよく、バックキャビティ32及びフロントキャビティに同時に充填されてもよい。吸音粒子1がフロントキャビティのみに充填される場合、発音装置の高周波性能を調整することができ、吸音粒子1がバックキャビティのみに充填される場合、発音装置の低周波性能を調整することができ、フロントキャビティ及びバックキャビティに同時に充填される場合、高周波性能及び低周波性能を同時に調整することができる。説明を容易にするために、以下、磁性吸音粒子1がバックキャビティ32に充填されることを例として各実施例を挙げて説明する。磁性吸音粒子1の直径は、バックキャビティ32の容積とマッチングし、100~600μmであることにより、磁性吸音粒子1を製造する時に造粒成形しやすく、かつバックキャビティ32内の磁性吸音粒子1の充填率の需要を満たす。
【0031】
一実施例では、磁性吸音粒子1は、互いに接続された多孔質マトリックス及び強磁性材料を含み、強磁性材料の磁化により磁性吸音粒子1が磁性を有する。強磁性材料として、粉体材料を選択してもよく、粉末状の多孔質マトリックスと強磁性材料を均一に混合し、かつ接続して磁性吸音粒子1を形成し、バックキャビティのガスに対する多孔質材料の内部の特殊な物理的孔路構造の迅速な吸引-脱着の性質を用い、スピーカの音響バックキャビティの共振空間の仮想増大効果を実現する。勿論、強磁性材料として、一体性材料を選択してもよく、多孔質マトリックスを強磁性材料の外周に被覆することにより磁性吸音粒子1を形成する。着磁する前に、製造された磁性吸音粒子1は、磁性を備えないため、分注されてバックキャビティ32内に充填されやすく、磁性吸音粒子1は、バックキャビティ32内に充填された後に着磁され、強磁性材料が着磁された後に磁化されて磁性を備えることにより、磁性吸音粒子1を磁力の作用下で一体に吸引する。多孔質マトリックスと強磁性材料とは、直接的に粘着剤を介して接続されて磁性吸音粒子1を形成してもよい。他の実施例では、他の加工方式を用いて多孔質マトリックスと強磁性材料を一体に接続してもよく、例えば多孔質マトリックスを強磁性材料の外側に被覆するか又は強磁性材料を多孔質マトリックスの外側に被覆する。
【0032】
信頼性検証実験において、2組の発音装置を設定して信頼性実験を行い、2組の発音装置を70℃で、電圧3.18Vで、ピンクノイズ信号で、144h連続的に通電して動作させた。実験が終了した後に、発音装置の共振周波数F0を測定し、分解して磁性吸音粒子を得て、かつ破砕現象の有無を観察した。2組の発音装置は、1組の発音装置に充填された磁性吸音粒子1に対して着磁処理を行わず(すなわちバックキャビティ内の磁性吸音粒子の間に磁気吸引力がない)、他組の発音装置に充填された磁性吸音粒子1に対して着磁処理を行うという点で相違する。図2を参照し、第1組の発音装置は、信頼性実験を行う前の共振周波数が787Hzであり、信頼性実験を完了した後の共振周波数が879Hzであり、分解して得た磁性吸音粒子1に摩耗現象が存在し、かつ一部に破損現象が発生した。第2組の発音装置は、信頼性実験を行う前の共振周波数が787Hzであり、信頼性実験を完了した後の共振周波数が800Hzであり、分解して得た磁性吸音粒子に明らかな変化がない。すなわち、本発明では、バックキャビティ内に磁性吸音粒子を充填し、かつ磁性吸音粒子を着磁処理することにより、バックキャビティ内に充填された磁性吸音粒子が磁化されかつ互いに吸着し、磁性吸音粒子1間の自由流動を効果的に制限し、磁性吸音粒子1間の摩擦と衝突を回避するか又は除去し、吸音粒子とキャビティ壁との間の衝突による流動ノイズ及び従来の吸音粒子の間の衝突による流動ノイズを除去し、磁性吸音粒子1間の衝突により磁性吸音粒子1が破砕するという現象を減少させ、かつ信頼性実験前後の共振周波数の変化量が小さく、発音装置100の音響性能を効果的に保護する。
【0033】
また、磁性吸音粒子1は、粉末状の多孔質マトリックスと強磁性材料とを粘着させるための粘着剤をさらに含む。多孔質マトリックスと強磁性材料は、粘着剤により一体に粘着され、適切な粘着性を提供することにより、磁性吸音粒子1の成形を容易にし、成形後のブランクの機械的強度を向上させ、強磁性材料の多孔質マトリックスからの脱離を防止し、磁性吸音粒子1の磁性の持続性を保証することに役立つ。粘着剤は、ポリアクリル酸系、ポリウレタン系及びポリ酢酸ビニル系の粘着剤のうちの1種類又は複数種類であってもよい。粘着剤の質量百分率は、3%~10%であり、多孔質マトリックスと強磁性材料が一体に粘着できることを保証する場合、製造過程において、粘着剤が多過ぎると、多孔質マトリックス上の空隙を塞ぎ、粘着剤の使用量を制御することにより、磁性吸音粒子1中の孔隙の大きさ及び数を制御することに役立つ。
【0034】
多孔質マトリックスは、ゼオライト、活性炭、多孔質アルミナ、多孔質シリカ、水和アルミノケイ酸塩及び金属有機構造体材料のうちの少なくとも1種類を含み、粒径が0.1~80umである。金属有機構造体材料は、金属イオンと有機小分子リガンドにより形成された周期的なネットワーク構造を有する多孔質材料であり、金属有機構造体材料は、細孔及びメソ孔を有し、細孔の孔径範囲が0.3~0.8ナノメートルであり、メソ孔の孔径範囲が2~40ナノメートルである。金属イオンは、少なくとも銅、鉄、亜鉛、マンガン、インジウム、カドミウム及びコバルトのうちの1種類の元素のイオンを含み、小分子リガンドは、少なくともギ酸、マロン酸、酒石酸及びクエン酸のうちの少なくとも1種類を含む。
【0035】
強磁性材料は、鉄、コバルト、ニッケル及びランタノイド系希土類金属のうちの1種類若しくは複数種類、並びに/又は、鉄、コバルト、ニッケル及びランタノイド系希土類金属の酸化物のうちの1種類若しくは複数種類を含み、粒径が0.01~80μmである。上記材料で製造された強磁性材料は、外部磁界の作用下で磁性を示すことができ、かつ形成された磁界強度が安定的であり、消磁されにくい。強磁性材料として、具体的には、鉄粉やニッケル粉、コバルト粉、四酸化三鉄粉末、フェライト粉末、アルニコ合金粉末、ネオジム鉄ホウ素粉末、鉄クロムコバルト合金粉末、サマリウムコバルト合金粉末などを選択してもよい。
【0036】
磁性吸音粒子1において、多孔質マトリックスの質量百分率は、50%~96%であり、強磁性材料の質量百分率は、0.1%~70%であり、粘着剤の質量百分率は、3%~10%である。一実施例では、磁性吸音粒子1において、多孔質マトリックスの質量百分率は、72%であり、強磁性材料の質量百分率は、20%であり、粘着剤の質量百分率は、8%である。磁性吸音粒子1における多孔質マトリックスの質量百分率と強磁性材料の質量百分率を平衡化させることにより、磁性吸音粒子1の吸音能力を保証し、磁性吸音粒子1の磁化された後の磁界強度を制御し、かつ多孔質マトリックスと強磁性材料を強固に粘着させることができることを保証する。
【0037】
一実施例では、磁性吸音粒子1において、多孔質マトリックスの質量百分率は、50%であり、強磁性材料の質量百分率は、40%であり、粘着剤の質量百分率は、10%である。強磁性材料の質量百分率をできるだけ多くすることにより、単一の磁性吸音粒子1が磁化された後に形成された磁界強度を向上させ、隣接する2つの磁性吸音粒子1の接続密着性を保証する。
【0038】
一実施例では、磁性吸音粒子1において、多孔質マトリックスの質量百分率は、94%であり、強磁性材料の質量百分率は、1%であり、粘着剤の質量百分率は、5%である。バックキャビティ32の容積が小さい場合、多孔質マトリックスの質量百分率を向上させることにより、発音装置100の音響バックキャビティの共振空間の仮想増大効果を強化してスピーカの共振周波数を効果的に低下させることができる。
【0039】
また、発音装置100は、バックキャビティ32に充填され、かつ磁性吸音粒子1との間に磁気吸引力を有する透磁性吸音粒子をさらに含み、磁性吸音粒子1により形成された磁界中における透磁性吸音粒子の間に磁気吸引力を有する。磁性吸音粒子1及び透磁性吸音粒子は、いずれもバックキャビティの共振空間を増大させる作用を有する吸音粒子であり、透磁性吸音粒子に透磁性金属粉末又は透磁性金属酸化物粉末がドープされることにより、透磁性吸音粒子が磁性吸音粒子1に吸引されるか、又は磁性吸音粒子1で形成された磁界中で互いに吸着することができるため、吸音粒子間の自由流動を制限し、吸音粒子間の摩擦と衝突を回避するか又は除去し、吸音粒子間の衝突による流動ノイズを除去し、磁性吸音粒子間の衝突により吸音粒子が破砕するという現象を減少させる。このため吸音粒子の破砕した材料が発音ユニットの内部に入って汚染を引き起こすことがなく、発音装置100の音響性能を効果的に保護する。
【0040】
発音装置100は、セパレータ4をさらに含み、セパレータ4は、バックキャビティ32に設置されてバックキャビティ32を2つの部分に仕切り、発音ユニット2と磁性吸音粒子1が、それぞれセパレータ4の両側に設置されるか、或いは、セパレータ4は、発音ユニット2の表面に被覆され、かつ少なくとも発音ユニット2の通気領域を覆い、セパレータ4のメッシュ直径は、磁性吸音粒子1の粒径よりも小さい。セパレータ4のメッシュ直径は、磁性吸音粒子1の粒径よりも小さい。セパレータ4を設置して磁性吸音粒子と発音ユニットを仕切ることにより、ガスがセパレータ4によりバックキャビティ32に入ることができ、磁性吸音粒子1がセパレータ4によりバックキャビティ32に隔離されるため、磁性吸音粒子1が発音ユニット2の所在するキャビティに入って発音ユニット2に影響を与えることを防止し、セパレータ4上の孔隙のサイズを設定することにより、一部の破砕した磁性吸音粒子1が発音ユニット2の所在するキャビティ内に入ることをさらに制限し、発音装置100全体の音響性能をさらに保証することができる。
【0041】
ケース3にバックキャビティ32と外部とを連通するリーク孔が形成される。リーク孔は、バックキャビティ32とケース3の外部とを連通させて、バックキャビティ32内の気圧を平衡化させる。
【0042】
磁性吸音粒子1を製造する場合、多孔質材料、強磁性材料及び粘着剤を所定の比率で混合して湿潤材料を形成し、混合物を大きさが均一である複数の粒子ブランクに製造し、粒子ブランクを乾燥させて磁性吸音粒子1を得る。
【0043】
まず、一定の比率に応じて多孔質材料と強磁性材料を水に均一に分散させて混合物を形成してから、所定の比率に応じて混合物に粘着剤を添加し、かつ均一に撹拌して湿潤材料を形成してもよく、勿論、水を他の溶媒に交換してもよく、まず、多孔質材料と強磁性材料を混合すると、多孔質材料と強磁性材料を均一に混合することに役立つ。或いは、多孔質材料と強磁性材料を粘着剤水溶液に直接投入して混合撹拌して湿潤材料を形成する。
【0044】
凝集造粒や押出造粒、噴霧造粒などの方式を用いて粒子ブランクを形成してから、粒径が100~600μmである粒子ブランクを選別して乾燥させて磁性吸音粒子1を得てもよい。混合物を金型内に充填して成形して粒径が100~600μmである粒子ブランクを形成し、かつ得られた粒子ブランクを乾燥させて磁性吸音粒子1を得てもよい。
【0045】
一実施例では、乾燥したゼオライト材料及び四酸化三鉄材料を一定の比率で溶媒水に添加し、500rpmで、1.5h機械的に撹拌し、均一に分散した混合懸濁溶液を得て、混合物にポリアクリル酸粘着剤を添加し、500rpmで、0.5h機械的に撹拌して湿潤材料を形成する。ゼオライトの添加質量は、上記スラリーの総質量の27%であり、四酸化三鉄材料の添加質量は、上記スラリーの総質量の2.8%であり、ポリウレタンの添加質量は、上記混合懸濁溶液の総質量の0.2%である。スラリーにおいて、固体質量は、上記混合懸濁溶液の総質量の30%である。
【0046】
均一に分散した湿潤材料を噴霧乾燥造粒機に入れ、噴霧乾燥造粒機の入口温度を140~160℃に設定し、出口温度を100~110℃に設定し、噴霧圧力を0.5MPaに設定し、乾燥造粒を行い、予備成形粒子を得る。
【0047】
上記予備成形粒子を120℃のオーブンで0.5h加熱して硬化させて乾燥させ、乾燥粒子を得る。上記乾燥粒子を篩で篩い分けて粒径が約100~600μmである磁性吸音粒子1を得る。
【0048】
製造された磁性吸音粒子1を組み立て対象の発音装置100のバックキャビティ32内に充填し、バックキャビティ32内に充填された磁性吸音粒子1を着磁処理して、上記のような発音装置100を製造する。
【0049】
磁性吸音粒子1を製造する場合、磁性吸音粒子1を製造する時に強磁性材料をドープすることにより、製造された磁性吸音粒子1が着磁されて磁化されて磁性を備えることができる。このように製造された発音装置100のバックキャビティ32内に磁性を有する磁性吸音粒子1を充填し、磁性吸音粒子1が磁力の作用下で互いに吸着することにより、粒子間の自由流動を制限し、磁性吸音粒子1間の摩擦と衝突を回避するか又は除去して、磁性吸音粒子1間の衝突による流動ノイズを除去し、磁性吸音粒子1間の衝突により磁性吸音粒子1が破砕するという現象を減少させる。このため磁性吸音粒子1の破砕した材料が発音ユニット2の内部に入って汚染を引き起こすことがなく、発音装置100の音響性能を効果的に保護する。
【0050】
以上の記載は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の特許範囲を限定するものではなく、本発明の発明構想で、本発明の明細書及び図面の内容を用いて行われた等価構造変換、又は他の関連する技術分野における直接又は間接運用は、いずれも本発明の特許保護範囲内に含まれる。

図1
図2
【国際調査報告】