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特表2024-503819近赤外線反射機能を有する効果顔料、これを用した塗料及びパネル
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  • 特表-近赤外線反射機能を有する効果顔料、これを用した塗料及びパネル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】近赤外線反射機能を有する効果顔料、これを用した塗料及びパネル
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/24 20060101AFI20240122BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240122BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240122BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240122BHJP
【FI】
C09C1/24
C09D17/00
C09D201/00
C09D7/62
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540954
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 KR2022018417
(87)【国際公開番号】W WO2023113275
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0180527
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511153183
【氏名又は名称】CQV株式会社
【氏名又は名称原語表記】CQV CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】144 Seongjung-ro, Jincheon-eup Jincheon-gun Chungcheongbuk-do 365-802 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ドンミン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジェ イル
(72)【発明者】
【氏名】カン,クワンチュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ビョンギ
(72)【発明者】
【氏名】イム,クワンス
(72)【発明者】
【氏名】チャン,キルワン
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA15
4J037AA18
4J037AA22
4J037AA25
4J037AA26
4J037AA30
4J037FF02
4J038EA011
4J038KA08
(57)【要約】
本発明は、特に、車両用塗料などに用いられる近赤外線反射機能性顔料、塗料及びパネルについて開示する。
本発明による顔料は、小板状基質と、前記基質の上部の少なくとも一部にコーティングされて、1.8以上の屈折率を有する第1金属酸化物層と、前記第1金属酸化物層の上部の少なくとも一部にコーティングされて、吸収性材料を含む第2金属酸化物層と、を含み、850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小板状基質;
前記基質の上部の少なくとも一部にコーティングされて、1.8以上の屈折率を有する第1金属酸化物層;及び、
前記第1金属酸化物層の上部の少なくとも一部にコーティングされて、吸収性材料を含む第2金属酸化物層;を含み、
850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射する、
近赤外線反射機能性効果顔料。
【請求項2】
前記第1金属酸化物層は、Feを含み、
前記第2金属酸化物層は、Coを含み、
前記第1金属酸化物層に含まれるFeの含量と、前記第2金属酸化物層に含まれるCoの含量に対する比率が、1:0.5~1:1の範囲を有する、
請求項1に記載の近赤外線反射機能性効果顔料。
【請求項3】
前記第1金属酸化物層は、TiO及びSnOを含み、
前記第2金属酸化物層は、CuOを含み、
前記第1金属酸化物層に含まれるTiとSnの含量と、前記第2金属酸化物層に含まれるCuの含量に対する比率が、1:4~1:6の範囲を有する、
請求項1に記載の近赤外線反射機能性効果顔料。
【請求項4】
黒色度(L*)が35以下であり、
可視電子線を平均15%以下反射する、
請求項1に記載の近赤外線反射機能性効果顔料。
【請求項5】
前記小板状基質は、
合成雲母、天然雲母、ガラスフレーク(Glass flake)、板状ガラス、板状酸化鉄、板状アルミナ、板状シリカ、板状アルミニウム、及び板状TiOのうち1つ以上を含む板状材質である、
請求項1に記載の近赤外線反射機能性効果顔料。
【請求項6】
バインダー;及び、
近赤外線反射機能性顔料;を含み、
前記顔料は、
小板状基質と、
前記基質の上部の少なくとも一部にコーティングされて、1.8以上の屈折率を有する第1金属酸化物層と、
前記第1金属酸化物層の上部の少なくとも一部にコーティングされて、吸収性材料を含む第2金属酸化物層と、を含み、
850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射する、
近赤外線反射機能性塗料。
【請求項7】
前記第1金属酸化物層は、Feを含み、
前記第2金属酸化物層は、Coを含み、
前記第1金属酸化物層に含まれるFeの含量と、前記第2金属酸化物層に含まれるCoの含量に対する比率が、1:0.5~1:1の範囲を有する、
請求項6に記載の近赤外線反射機能性塗料。
【請求項8】
前記第1金属酸化物層は、TiO及びSnOを含み、
前記第2金属酸化物層は、CuOを含み、
前記第1金属酸化物層に含まれるTiとSnの含量と、前記第2金属酸化物層に含まれるCuの含量に対する比率が、1:4~1:6の範囲を有する、
請求項6に記載の近赤外線反射機能性塗料。
【請求項9】
黒色度(L*)が35以下であり、
400~700nmの可視電子線を平均1%以下反射する、
請求項6に記載の近赤外線反射機能性塗料。
【請求項10】
前記小板状基質は、
合成雲母、天然雲母、ガラスフレーク(Glass flake)、板状ガラス、板状酸化鉄、板状アルミナ、板状シリカ、板状アルミニウム、及び板状TIOのうち1つ以上を含む板状材質である、
請求項6に記載の近赤外線反射機能性塗料。
【請求項11】
近赤外線反射機能性塗料がコーティングされたパネルであって、
前記塗料は、バインダーと、近赤外線反射機能性顔料とを含み、
前記顔料は、
小板状基質と、
前記基質の上部にコーティングされて、1.8以上の屈折率を有する第1金属酸化物層と、
前記第1金属酸化物層の上部にコーティングされて、吸収性材料を含む第2金属酸化物層と、を含み、
850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射し、
前記パネルは、LiDAR(Light Detection and Ranging)によって検出可能である、
パネル。
【請求項12】
前記パネルは、
車両の外部に適用される、
請求項11に記載のパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線反射機能を有する効果顔料に関し、より具体的には、前記顔料と、これを用した塗料及び車両などに適用されるパネルに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
効果顔料は、種々の産業分野、特に、自動車、装飾用コーティング、プラスチック、ペイント、印刷インクの分野及び化粧用配合物において使用される。
【0003】
上述した種々の分野のうち特に、効果顔料は、自動車のような車両用塗料に用いられており、真珠色のような明るい色の顔料と共に、黒色のような暗い色系の顔料も車両用塗料に用いられる。
【0004】
近年、自動車産業では、自律走行の可能な自動車に関する研究が活発に進められている。これら自律走行自動車には、周辺要素を認知するためにカメラ、超音波、Rader、Lidarなどのセンサが使用されており、これらシステムを通じて認知された内容を基に、自律走行の拡大を図っている状況である。これらセンシング技術におけるLiDARシステムは、Raderシステムに比べて認知距離は、相対的に短いものの、適宜な距離内で周辺環境に対して、Raderシステムに比べて向上した解像度を有する3次元認知システムであって、特徴として、905nm程度の周波数を有するレーザを光源として用いる。
【0005】
しかし、一般的な暗い色の車両に適用される塗料らに使用される暗い色の顔料らは、一般的な光学特性によって、視覚認知する可視光線領域と共に、LiDAR光源として用いられる905ナノメータの波長を含む近赤外線領域の光も共に吸収する特性がある。これら光吸収特性によって、既存の暗い色で塗装された車両らは、LiDARセンサによる認知効率が大きく落ちる状況であり、これは、現在、自律走行を具現するにあたり、大きな障害物となっている実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、可視光線領域の低い反射率によって暗い色相を具現し、近赤外線領域のLiDAR光源を効果的に反射して、暗い色の顔料であるにもかかわらず、LiDAR光源を効果的に反射するLiDARシステム用の暗い色の新規な顔料を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達するために、本発明の実施例による近赤外線反射機能性顔料は、小板状基質と、前記基質の上部の少なくとも一部にコーティングされて、1.8以上の屈折率を有する第1金属酸化物層と、前記第1金属酸化物層の上部の少なくとも一部にコーティングされて、吸収性材料を含む第2金属酸化物層と、を含み、850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射することを構成上の特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記第1金属酸化物層は、Feを含み、前記第2金属酸化物層は、Coを含み、前記第1金属酸化物層に含まれるFeの含量と、前記第2金属酸化物層に含まれるCoの含量に対する比率が、1:0.5~1:1の範囲を有することができる。
【0009】
また、好ましくは、前記第1金属酸化物層は、TiO及びSnOを含み、前記第2金属酸化物層は、CuOを含み、前記第1金属酸化物層に含まれるTiと Snの含量と、前記第2金属酸化物層に含まれるCuの含量に対する比率が、1:4 ~1:6の範囲を有することができる。
【0010】
より具体的に、前記顔料は、黒色度(L*)が35以下であり、400~700nmの可視電子線を平均15%以下反射することができる。
【0011】
さらに、上記目的を達するために、本発明の他の一実施例による塗料は、バインダーと、近赤外線反射機能性顔料とを含み、前記顔料は、小板状基質と、前記基質の上部の少なくとも一部にコーティングされて、1.8以上の屈折率を有する第1金属酸化物層と、前記第1金属酸化物層の上部の少なくとも一部にコーティングされて、吸収性材料を含む第2金属酸化物層と、を含み、850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射することを構成上の特徴とする。
【0012】
上述したように、前記塗料に適用される顔料は、黒色度(L*)が35以下であり、400~700nmの可視電子線を平均15%以下反射することができる。
【0013】
また、前記小板状基質は、合成雲母、天然雲母、ガラスフレーク(Glass flake)、板状ガラス、板状酸化鉄、板状アルミナ、板状シリカ、板状アルミニウム、及び板状TiOのうち1つ以上を含む板状材質であってもよい。
【0014】
さらに、上記目的を達するために、本発明のさらに他の一実施例によるパネルは、近赤外線反射機能性塗料がコーティングされたパネルであって、前記塗料は、バインダーと、近赤外線反射機能性顔料とを含み、前記顔料は、小板状基質と、前記基質の上部の少なくとも一部にコーティングされて、1.8以上の屈折率を有する第1金属酸化物層と、前記第1金属酸化物層の上部の少なくとも一部にコーティングされて、吸収性材料を含む第2金属酸化物層と、を含み、850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射し、前記パネルは、LiDAR(Light Detection and Ranging)によって検出可能であることを構成上の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による近赤外線反射機能性顔料は、850~950nmのIR電子線を平均30%以上、好ましくは、LiDARセンサの周波数である905nmにおける反射率が30%以上反射して、LiDAR(Light Detection and Ranging)によって検出可能である効果を有する。
【0016】
特に、本発明による顔料は、黒色度(L*)が35以下である暗色の場合も、850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射し、400~700nmの可視電子線を平均15%以下反射することができ、LiDAR(Light Detection and Ranging)によって検出可能である効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による顔料の構造を概略的に示した断面図である。
図2】本発明の実施例による顔料に関するSEM写真である。
図3】本発明の実施例による顔料に関するSEM写真である。
図4】本発明の実施例による顔料に関するSEM写真である。
図5】本発明の実施例による顔料の反射特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達する方法は、詳細に後述する実施例及び図面を参照すれば明確になる。
【0019】
しかし、本発明は、以下で開示の実施例に限定されるものではなく、相異する様々な形態に具現することができる。但し、本実施例は、本発明の開示を完全にして、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0020】
以下では、本発明の実施例による機能性顔料、塗料及びパネルについて詳説する。
【0021】
[近赤外線反射機能性顔料]
図1を参照すると、本発明の近赤外線反射機能性顔料100は、小板状基質10と、前記基質10の上部の少なくとも一部にコーティングされて、1.8以上の屈折率を有する第1金属酸化物層20と、前記第1金属酸化物層20の上部の少なくとも一部にコーティングされて、吸収性材料を含む第2金属酸化物層30と、を含み、850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射する。
【0022】
本発明における近赤外線とは、850~950nmの間の波長を有するIR電子線を意味する。また、平均反射率とは、一定範囲のIR電子線に対する反射率の算術平均値を意味する。
【0023】
本発明は、このように、近赤外線を平均30%以上反射し、最も好ましくは、LiDARセンサの周波数である905nmにおける反射率が30%以上反射する顔料100に関する。
【0024】
本発明の顔料100に用いられる小板状基質10は、特に、その種類が制限されるものではなく、合成雲母、天然雲母、ガラスフレーク(Glass flake)、板状ガラス、板状酸化鉄、板状アルミナ、板状シリカ、板状アルミニウム、及び板状TiOのうち1つ以上を含む板状材質を用いることができる。
【0025】
次に、本発明の顔料100は、前記小板状基質10の上部の少なくとも一部に第1金属酸化物層20がコーティングされて、前記第1金属酸化物層20は、1.8以上の屈折率を有する。
【0026】
ここで、前記第1金属酸化物層20が、前記小板状基質10の上部の少なくとも一部にコーティングされるという意味は、前記第1金属酸化物層20が、前記小板状基質10の上部にいずれもコーティングされていてもよく、又は前記第1金属酸化物層20が、前記小板状基質10の上部の少なくとも一部のみにコーティングされていてもよく、又は前記第1金属酸化物層20が、前記小板状基質10の上部における島状にコーティングされていてもよいことを意味する。
【0027】
前記第1金属酸化物層20は、前記小板状基質10に対し可視光線及び近赤外線の光反射効率を改善し、顔料100の製造工程上の安定性を付与する機能を行う。
【0028】
前記第1金属酸化物層20に含まれる金属酸化物は、屈折率が1.8以上の高屈折率を有する物質であれば、制限なく用いることができるものの、好ましくは、前記第1金属酸化物層は、Fe、SnO及びTiOのうち1種以上を含むことができる。より具体的に、前記第1金属酸化物層20は、Fe、SnO及びTiOのうち1種を単独で含むことができ、又は2種以上の混合物を含むことができる。
【0029】
次に、本発明の顔料100は、前記第1金属酸化物層20の上部に第2金属酸化物層30がコーティングされて、前記第2金属酸化物層30は、吸収性材料を含む。
【0030】
ここで、前記第2金属酸化物層30が、前記第1金属酸化物層20の上部の少なくとも一部にコーティングされるという意味は、前記第2金属酸化物層30が、前記第1金属酸化物層20の上部にいずれもコーティングされていてもよく、又は前記第2金属酸化物層30が、前記第1金属酸化物層20の上部の少なくとも一部のみにコーティングされていてもよく、又は前記第2金属酸化物層30が、前記第1金属酸化物層2の上部における島状にコーティングされていてもよいことを意味する。
【0031】
前記吸収性材料は、可視光を吸収する吸収材料を意味し、特に、本発明では、顔料が暗い色を有するように作用する材料を意味する。
【0032】
本発明における暗い色は、黒色度(L*)が35以下である暗色を意味する。このように、本発明による顔料は、吸収性材料を含み、暗い色を有する。
【0033】
本発明に用いられる吸収性材料は、上述したように、顔料が暗い色を有するようにする材料であれば限定されないものの、好ましくは、前記吸収性材料は、Co及びCuOのうち1種以上を含むことができる。
【0034】
本発明の一実施例によれば、前記第1金属酸化物層は、Feを含み、前記第2金属酸化物層は、Coを含み、前記第1金属酸化物層に含まれるFeの含量と、前記第2金属酸化物層に含まれるCoの含量に対するの比率が、1:0.5~1:1の範囲を有するのが好ましい。
【0035】
前記成分の含量比率において、前記第1金属酸化物層20に含まれるFeの含量が1であるとき、前記第2金属酸化物層30に含まれるCoの含量が0.5未満である場合には、顔料の黒色度(L*)が低下して、顔料が赤色あるいは暗赤色を有するという問題がある。
【0036】
逆に、前記成分比において、前記第1金属酸化物層20に含まれるFeの含量が1であるとき、前記第2金属酸化物層30に含まれるCoの含量が1を超えると、顔料の近赤外線反射特性が減少することによって、LiDAR反射特性が発現しないという問題がある。
【0037】
換言すれば、前記第1金属酸化物層20は、Feを含み、前記第2金属酸化物層30は、Coを含む場合には、FeとCoの特性を考慮して、前記第1金属酸化物層20に含まれるFeと、前記第2金属酸化物層30に含まれるCoの含量比率が、1:0.5~1:1の範囲を満足するのが好ましい。
【0038】
本発明の他の一実施例によれば、前記第1金属酸化物層20は、TiO及びSnOを含み、前記第2金属酸化物層30は、CuOを含み、前記第1金属酸化物層20に含まれるTi及びSnの含量と、前記第2金属酸化物層30に含まれるCuの含量に対する比率が、1:4~1:6の範囲を有するのが好ましい。
【0039】
前記成分の含量比率において、前記第1金属酸化物層20に含まれるTiとSnの含量が1であるとき、前記第2金属酸化物層30に含まれるCuの含量が4未満である場合には、黒色度(L*)が増加することによって、顔料の暗い色を発現し難いという問題がある。
【0040】
逆に、前記成分比において、前記第1金属酸化物層20に含まれるTi及びSnの含量が1であるとき、前記第2金属酸化物層30に含まれるCuの含量が6を超えると、顔料の近赤外線反射特性が減少することによって、LiDAR反射特性が発現しないという問題がある。
【0041】
まとめると、前記第1金属酸化物層20は、TiO及びSnOを含み、前記第2金属酸化物層30は、CuOを含む場合には、Ti、Sn及びCuの特性を考慮して、前記第1金属酸化物層20に含まれるTi及びSnの含量と、前記第2金属酸化物層30に含まれるCuの含量の比率が、1:4~1:6の範囲を満足するのが好ましい。
【0042】
さらに、好ましくは、本発明の近赤外線反射機能性顔料100は、黒色度(L*)が35以下であり、可視電子線を平均15%以下反射することができる。
【0043】
ここで、平均反射率とは、一定範囲の可視電子線に対する反射率の算術平均値を意味する。
【0044】
このように、本発明の顔料は、相対的に低い黒色度(L*)を有し、かつ、上述したように、近赤外線を高く反射できる効果を発現することができる。
【0045】
以上で言及したように、本発明の顔料100は、暗い色を有し、かつ、850~950nmのIR電子線を平均30%以上、好ましくは、LiDARセンサの周波数である905nmにおける反射率が30%以上反射して、LiDARによって検出可能である効果を有する。
【0046】
[近赤外線反射機能性塗料]
次に、上述した顔料を適用した本発明による近赤外線反射機能性塗料について説明する。
【0047】
本発明による塗料は、バインダーと、近赤外線反射機能性顔料とを含み、前記顔料は、小板状基質と、前記基質の上部の少なくとも一部にコーティングされて、1.8以上の屈折率を有する第1金属酸化物層と、前記第1金属酸化物層の上部の少なくとも一部にコーティングされて、吸収性材料を含む第2金属酸化物層と、を含み、850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射する。
【0048】
前記バインダーは、公知の塗料バインダーを用いることができ、例として、エナメル塗料バインダー、ウレタン塗料バインダー、及び複合エナメル-ウレタン塗料バインダーが挙げられる。
【0049】
さらに、前記近赤外線反射機能性顔料は、前述したように、暗い色を有し、かつ、850~950nmのIR電子線を平均30%以上、好ましくは、LiDARセンサの周波数である905nmにおける反射率が30%以上反射して、LiDARによって検出可能である効果を有する。
【0050】
[パネル]
次に、上述した塗料を適用した本発明によるパネルについて説明する。
【0051】
本発明によるパネルは、近赤外線反射機能性塗料がコーティングされたパネルであって、前記塗料は、バインダーと、近赤外線反射機能性顔料とを含み、前記顔料は、小板状基質、前記基質の上部の少なくとも一部にコーティングされて、1.8以上の屈折率を有する第1金属酸化物層と、前記第1金属酸化物層の上部の少なくとも一部にコーティングされて、吸収性材料を含む第2金属酸化物層と、を含み、850~950nmのIR電子線を平均30%以上反射し、前記パネルは、LiDAR(Light Detection and Ranging)によって検出可能である。
【0052】
前記近赤外線反射機能性顔料は、前述したように、暗い色を有し、かつ、850~950nmのIR電子線を平均30%以上、好ましくは、LiDARセンサの周波数である905nmにおける反射率が30%以上に相当する。前記顔料を適用した塗料がコーティングされることによって、本発明のパネルは、表面が暗い色にコーティングされているにもかかわらず、LiDAR(Light Detection and Ranging)によって検出可能である。
【0053】
特に、本発明のパネルは、車両の外部に適用することができる。これによって、本発明の顔料、塗料及びパネルは、自律走行システムに好適に使用することができる。
【0054】
[実施例]
以下では、本発明の好ましい実施例によって、本発明の構成及び作用をさらに詳説することとする。但し、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであり、どのような意味でも、これによって本発明を制限するものと解釈してはならない。
【0055】
ここに記載していない内容は、この技術分野における熟練者であれば、技術的に十分類推することができるため、その説明を省略することとする。
【0056】
1.実施例1
小板状基質(合成雲母)100gを水に約9%前後に分散して、70~80℃の間に昇温した。昇温した状態の分散基質に鉄塩希釈液をpH2.5~3.5が維持されるように、対イオン(counterion)と共に滴加した。このとき、鉄塩のコーティング量は、酸化鉄を基準に33~43%程であり、顔料が所望の色相を発現するまで、上記範囲内でコーティングを行った。その後、コバルト塩希釈液を塩基性条件であるpH8.0~9.5の間になるように、対イオンと共に滴加した。このとき、コーティングされたコバルト量を酸化物を基準に約25~35%程になるように調節して、所望の色相の顔料を得た。前記反応液で顔料を得るために、反応液を水洗、脱水した後、800℃で熱処理した。
【0057】
上記のように製造された実施例1による顔料は、小板状基質(合成雲母)の上部にFeがコーティングされ、前記Feの上部にCoがコーティングされている。
【0058】
また、実施例1による顔料において、全体顔料に対するFeの含量は、30.70%であり、Coの含量は、24.20%である。
【0059】
2.実施例2
小板状基質(板状アルミナ)100gを水に約9%前後に分散して、70~80℃の間に昇温した。昇温した状態の分散基質にスズ塩とチタン塩の希釈液をpH1.0~2.0が維持されるように、対イオンと共に滴加した。このとき、スズ塩とチタン塩のコーティング量は、酸化物を基準に酸化スズは、約0超~3%、二酸化チタンは、5~10%になるように滴加して、顔料が所望の色相を発現するようにした。その後、銅塩希釈液を中性で、塩基性条件であるpH7.0~9.0の間になるように、対イオンと共に滴加して、コーティングした。このとき、コーティングされた酸化銅の量は、酸化銅を基準に約20~40%程内で、顔料が所望の色相を発現するようにコーティングした。前記反応液で顔料を得るために、反応液を水洗、脱水した後、800℃で熱処理した。
【0060】
上記のように製造された実施例2による顔料は、小板状基質(板状アルミナ)の上部にTiOとSnOの混合物がコーティングされ、前記混合物層の上部にCuOがコーティングされている。
【0061】
また、実施例2による顔料において、全体顔料に対するTiの含量は、5.46%であり、Snの含量は、0.64%であり、Cuの含量は、28.60%である。
【0062】
3.実施例3
小板状基質(合成雲母)100gを水に約9%前後に分散して、70~80℃の間に昇温する。昇温した状態の分散基質に鉄塩希釈液をpH2.5~3.5が維持されるように、対イオンと共に滴加した。このとき、鉄塩のコーティング量は、酸化鉄を基準に25~35%程コーティングされ、所望の色相が発現されるまで、前記範囲内でコーティングを行った。その後、コバルト塩希釈液を塩基性条件であるpH8.0~9.5の間になるように、対イオンと共に滴加して、コーティングした。このとき、コーティングされたコバルト量を酸化物を基準に約15~25%程になるようにコーティングして、顔料が所望の色相を発現するようにコーティングした。さらに、NIR反射層である酸化銅を形成するために、銅塩を最終顔料で、酸化銅の量が約20~30%になるように、銅塩希釈液を中性で、塩基性条件であるpH7.0~9.0の間になるように、対イオンと共に滴加して、コーティングした。反応液を水洗、脱水した後、800℃で熱処理した。
【0063】
上記のように製造された実施例3による顔料は、小板状基質(合成雲母)の上部にFeがコーティングされ、前記Feの上部にCoがコーティングされ、前記Coの上部にCuOがコーティングされている。
【0064】
[実施例の物性評価]
1.顔料表面の観察
上述した方式で製造された近赤外線反射機能性顔料の表面を走査電子顕微鏡で観察した。実施例1~3による顔料の表面を図2~4にそれぞれ示している。
【0065】
図2を参照すると、実施例1による顔料のSEM写真が示されている。
【0066】
また、図3を参照すると、実施例2による顔料のSEM写真が示されており、前記CuOは、島状にコーティングされていることが確認できる。
【0067】
さらに、図4を参照すると、実施例2による顔料のSEM写真が示されている。
【0068】
このように、図2~4を参照すると、小板状基質の上部に金属酸化物らがコーティングされていることが確認できる。
【0069】
2.反射率、明度及び彩度の分析
実施例による顔料の反射率と明度及び彩度を分析した。
【0070】
顔料による波長別反射率は、透明なアクリル樹脂を用いて12%濃度で顔料を混合し、湿潤150μm厚で、OHPフィルムに塗膜を形成した後、これを常温で十分乾燥して、UV-Vis分光分析装置を用いて硫酸バリウムを基準物質として測定した。
【0071】
明度及び彩度は、透明なアクリル樹脂を用いて6%濃度で顔料を混合し、隠蔽用紙(opacity chart)に100μm厚で塗膜を形成し、これを常温で十分乾燥した後、色差計を用いて25゜で測定した。
【0072】
各実施例の顔料による波長別反射率を図5に示した。また、各実施例の顔料による905nm反射率と明度及び彩度に対する結果値を下記の表1に記載した。
【0073】
【表1】
【0074】
図5及び表1を参考すると、実施例1及び2の顔料は、いずれも850~950nmの波長を有する近赤外線に対して、平均30%以上の反射率を示すことが確認できる。
【0075】
特に、905nmの波長において、実施例1は35%、実施例2は43%の反射率を示すことにより、LiDARに検出可能な顔料として使用可能であることが確認できる。
【0076】
さらに、実施例1及び2の顔料は、可視光線波長帯領域(400~700nm)では、平均反射率が15%以下であることが分かる。
【0077】
だけでなく、表1と図4を参考して、明度に関する測定結果を見ると、実施例1及び2は、いずれもL*値が35以下に相当する。
【0078】
但し、実施例3は、CoとCuをいずれも用いてコーティングを行ったが、905nm波長の近赤外線反射率が30%未満であると示された。
【0079】
これを総合すると、暗い色を示す成分と、近赤外線を反射する成分を用いて顔料を製造するとしても、必ずしも905nmの近赤外線に対して30%以上の反射率を示すのではないことが確認できる。
【0080】
暗色を有し、かつ、905nmの近赤外線を一定比率以上反射するためには、小板状基質の上部にコーティングされるコーティング層の本数、成分の選択、及び各コーティング層を構成する成分比率が重要な要素と作用することが確認できる。
【0081】
このように、本発明による顔料は、暗い色を有し、かつ、近赤外線に対して30%以上の反射率を示すことによって、LiDARに検出可能な顔料として使用可能であることが分かる。
【0082】
以上では、添付の図面を参照して、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、相異する様々な形態に変更することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に実施できることを理解することができる。よって、上述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】