(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】タガトースを産生する枯草菌の遺伝子工学菌及びタガトースの調製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20240122BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240122BHJP
C12P 19/02 20060101ALI20240122BHJP
C12N 15/61 20060101ALI20240122BHJP
C12N 15/74 20060101ALI20240122BHJP
C12N 11/14 20060101ALI20240122BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20240122BHJP
C12N 9/90 20060101ALI20240122BHJP
C12N 9/92 20060101ALI20240122BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20240122BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C12N15/54
C12N1/21 ZNA
C12P19/02
C12N15/61
C12N15/74 Z
C12N11/14
C12N9/16 B
C12N9/90
C12N9/92
C12N9/10
C12N15/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540968
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 CN2021108983
(87)【国際公開番号】W WO2022148008
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】202110006046.4
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523166348
【氏名又は名称】天工生物科技(天津)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】馬 延和
(72)【発明者】
【氏名】シー ティン
(72)【発明者】
【氏名】李 運杰
(72)【発明者】
【氏名】韓 平平
(72)【発明者】
【氏名】李 元
【テーマコード(参考)】
4B033
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B033NA12
4B033NA22
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4B033NA26
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4B065AA19Y
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4B065CA20
4B065CA27
4B065CA29
4B065CA31
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
(57)【要約】
タガトースを産生する枯草菌の遺伝子工学菌及びタガトースの調製方法を提供し、前記遺伝子工学菌は、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ、耐熱性ホスホグルコムターゼ、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ及び耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼをそれぞれ発現させた、又は共発現させたものの構築を含む。前記遺伝子工学菌を用いて、澱粉をタガトースに効果的に転化することができる。該方法は、タガトースの従来の生産方法と比べて、全細胞のリサイクルに適しており、安全性が高く、収率が高く、生産プロセスが簡単であり、コストが低く、量産が容易であるなどの利点がある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タガトースを産生する枯草菌の遺伝子工学菌であって、
前記遺伝子工学菌はα-グルカンホスホリラーゼ(α-Glucan phosphorylase)遺伝子、ホスホグルコムターゼ(phosphoglucomutase)遺伝子、ホスホグルコースイソメラーゼ(phosphoglucose isomerase)遺伝子、タガトース6-リン酸エピメラーゼ(tagatose-6-phosphate epimerase)遺伝子及びタガトース6-リン酸ホスファターゼ(tagatose-6-phosphate phosphatase)遺伝子を共発現させた枯草菌の遺伝子工学菌、又はα-グルカンホスホリラーゼ遺伝子、ホスホグルコムターゼ遺伝子、ホスホグルコースイソメラーゼ遺伝子、タガトース6-リン酸エピメラーゼ遺伝子及びタガトース6-リン酸ホスファターゼ遺伝子をそれぞれ発現させた枯草菌の遺伝子工学菌の混合物であることを特徴とする、前記枯草菌の遺伝子工学菌。
【請求項2】
前記枯草菌の出発菌株は、プロテアーゼ(protease)がノックアウト(Knockout)された枯草菌菌株であることを特徴とする請求項1に記載の遺伝子工学菌。
【請求項3】
前記遺伝子工学菌は、α-グルカンホスホリラーゼ、ホスホグルコムターゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、タガトース6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース6-リン酸ホスファターゼを共発現させる発現ベクターを含むか、又はα-グルカンホスホリラーゼの発現ベクターを含む遺伝子工学菌、ホスホグルコムターゼの発現ベクターを含む遺伝子工学菌、ホスホグルコースイソメラーゼの発現ベクターを含む遺伝子工学菌、タガトース6-リン酸エピメラーゼの発現ベクターを含む遺伝子工学菌及びタガトース6-リン酸ホスファターゼの発現ベクターを含む遺伝子工学菌の混合物であることを特徴とする
請求項1に記載の遺伝子工学菌。
【請求項4】
前記α-グルカンホスホリラーゼ、ホスホグルコムターゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、タガトース6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース6-リン酸ホスファターゼはそれぞれ耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ、耐熱性ホスホグルコムターゼ、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ及び耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼであることを特徴とする
請求項1に記載の遺伝子工学菌。
【請求項5】
前記耐熱性とは40℃以上で酵素活性を有することであることを特徴とする
請求項4に記載の遺伝子工学菌。
【請求項6】
前記遺伝子工学菌中の内因性のウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(uracil phosphoribosyltransferase)遺伝子、α-アミラーゼ(α-Amylase)遺伝子、胞子形成RNAポリメラーゼσ
F因子遺伝子、及びサーファクチン(surfactin)シンターゼサブユニット3遺伝子がすべて不活性化又はノックアウトされることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の遺伝子工学菌。
【請求項7】
発現ベクターであって、
α-グルカンホスホリラーゼ、ホスホグルコムターゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、タガトース6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース6-リン酸ホスファターゼの遺伝子を含み、これらの遺伝子を共発現可能であることを特徴とする、前記発現ベクター。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の遺伝子工学菌の全細胞(whole-cell)の触媒作用による澱粉からタガトースへの調製及び生産方法であって、
前記枯草菌の工学菌を発酵して全細胞を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた枯草菌の全細胞を細胞膜透過性処理して、透過性全細胞を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた透過性全細胞の触媒作用によりデンプンからタガトースを調製し、共発現型の枯草菌工学菌全細胞の場合は、そのまま触媒作用に用い、各種酵素をそれぞれ発現させた枯草菌工学菌全細胞の場合、これらを混合して触媒作用に用いるステップ(3)と、を含む、方法。
【請求項9】
ステップ(2)で得られた枯草菌透過性全細胞を固定化処理して、固定化全細胞又は固定化全細胞混合物を得て、触媒作用に用いるステップをさらに含むことを特徴とする
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(1)の全細胞の調製は外来タンパク質の発現に適する発酵方法によって行われることを特徴とする
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(2)の細胞膜透過性処理は熱処理、有機溶剤及び/又は界面活性剤の添加により行われることを特徴とする
請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記有機溶剤はアセトン(acetone)及びアセトニトリル(acetonitrile)から選択され、前記界面活性剤は臭化セチルトリメチルアンモニウム(cetyl trimethyl ammonium bromide)及びTween-80から選択されることを特徴とする
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記熱処理温度は45~100℃であり、熱処理時間は10~100minであり、処理時の細胞濃度はOD
600=10~300であることを特徴とする
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記熱処理温度は70~80℃であり、熱処理時間は50~70minであり、処理時の細胞濃度はOD
600=30~150であることを特徴とする
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記熱処理はHEPES緩衝液、リン酸塩緩衝液、Tris緩衝液、酢酸塩緩衝液から選択される緩衝液にて行われることを特徴とする
請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップ(3)の触媒反応系において、基質澱粉の濃度は50~300g/Lであり、反応条件は、pH5.0~8.0、40~80℃で0.5~96h反応させることであることを特徴とする
請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(3)の触媒反応系において、基質澱粉の濃度は100~200g/Lであり、反応条件は、pH6.5~7.5、45~75℃で12~60h反応させることであることを特徴とする
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(3)の触媒反応はHEPES緩衝液、リン酸塩緩衝液、Tris緩衝液、酢酸塩緩衝液から選択される緩衝液にて行われることを特徴とする
請求項8に記載の方法。
【請求項19】
各種酵素をそれぞれ発現させた枯草菌工学菌透過性全細胞の場合、その混合物はα-グルカンホスホリラーゼを発現させた透過性全細胞、ホスホグルコムターゼを発現させた透過性全細胞、ホスホグルコースイソメラーゼを発現させた透過性全細胞、タガトース6-リン酸エピメラーゼを発現させた透過性全細胞、タガトース6-リン酸ホスファターゼを発現させた透過性全細胞を(0.1~10):(0.1~10):(0.1~10):(0.1~10):(0.1~10)の割合で混合したものであることを特徴とする
請求項8に記載の方法。
【請求項20】
前記透過性全細胞の固定化処理方法においては、リン酸ナトリウム(sodium phosphate)又はリン酸カリウム(potassium phosphate)緩衝液で前記透過性全細胞を再懸濁させ、無機土を加えて、均一に撹拌し、続いて、ポリエチレンイミン(polyethyleneimine)水溶液を加えて凝集させ、次に架橋剤を加えて架橋し、その後、吸引ろ過して濾過ケーキ層を得、濾過ケーキを脱イオン水で洗浄した後に押し出して、粒子に調製し、乾燥して固定化全細胞を得ることを特徴とする
請求項9に記載の方法。
【請求項21】
前記無機土はモンモリロナイト(montmorillonite)、珪藻土、カオリン及びベントナイト(bentonite)から選択され、前記架橋剤はグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、トリヒドロキシメチルホスフィン(trihydroxymethylphosphine)、N,N-メチレンビスアクリルアミド(N,N-methylenebisacrylamide)、エピクロロヒドリン(epichlorohydrin)及びゲニピン(genipin)から選択されることを特徴とする
請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物工学の技術分野に関し、特にタガトースを産生する遺伝子工学菌及びそのタガトースの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タガトース(Tagatose)は天然に存在する希少な単糖で、ガラクトース(galactose)のケトース(ketose)の形態であり、フルクトースのエピマー(epimer)である。タガトースは甘味特性がショ糖に似ており、カロリーがショ糖の3分の1程度で、低カロリー甘味料と呼ばれている。天然のタガトースは主に酸乳や粉ミルクなどの乳製品に含まれている。タガースは非常に新鮮でピュアな甘さを提供し、フルクトースに似た味の特徴を持つ。研究により、タガトースは低カロリー、低糖質指数、抗虫歯、抗酸化、プレバイオティクス(Prebiotics)、腸機能改善、免疫調節、薬物前駆体(Prodrug)などの重要な生理機能特性を持ち、食品、飲料、医薬、健康維持などの分野に広く応用でき、巨大な経済価値を持つことが明らかになった(Oh D-K: Tagatose: properties, applications, and biotechnological processes. App. Microbiol. Biotechnol. 2007, 76:1-8)。
【0003】
2001年、米国食品医薬品局(FDA)はタガトースの安全性を確認し、GRAS(Generally Regarded As Safe)製品として承認した。FDAは2002年12月に歯にやさしい成分としてタガトースを、2003年10月に甘味料として食品飲料業や医薬分野で使用できる食品添加剤として承認している。2001年、国際連合食糧農業機関と世界保健機関合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、タガトースを食品添加剤として使用できる新たな低カロリー甘味料として推奨して、食品添加物として使用できる。2004年の第63回会議では、タガトースの許容日摂取量(ADI)を制限する必要がないことが宣言され、JECFAが手配可能な食品成分の中で最も安全なリストに「指定されていない」ADIが割り当てられた。韓国、オーストラリア(オーストラリア、ニュージーランド)、EUは、それぞれ2003年、2004年、2005年にタガトースを域内で発売することを承認しており、2005年12月には、タガトースがEUで使用制限のない新規食品成分として正式に承認された。中国でも、2014年5月にタガトースが新たな食品原料として承認された。現在、タガトースは世界30カ国以上、WHO/FAO及び国際食品規格委員会の承認を受けており、許容日摂取量や使用用途に制限はない。
【0004】
タガトースの生産方法には主に化学合成法と生物転化法がある。一般的にはガラクトースを原料とし、化学的方法や生物転化による異性化反応によって作られる。化学合成法は可溶性アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を触媒として用い、ガラクトースからアルカリ性条件下でタガトースを生成し、金属水酸化物-タガトース複合体を生成させるように促進した後、酸で中和してタガトースを得るものである。化学法はエネルギー消費量が高く、生成物が複雑で、精製が困難で、副反応が多く、化学汚染を発生する。生物法はガラクチトール(galactitol)又はガラクトースを利用し、酵素又は微生物の触媒作用により対応する基質をタガトースに変換するものである。ガラクチトールは価格が高く、しかも入手しにくいため、工業的生産の原料として使用するのに適さない。現在、タガトースの主流の生産方法はガラクトースの異性化、脱塩、脱色、分離、濃縮、結晶化などのステップを経てタガトース純品を製造するものである。しかし、この方法にも、ガラクトースを完全にタガトースに変換することができず、最終生成物がガラクトースとタガトースの混合物であるため、タガトースの分離プロセスが複雑で、転化率が低く、分離コストが高く、また原料であるガラクトースの価格が安くなく、最終的にタガトースの生産コストが高くなるという欠点がある(Rhimi M, Aghajari N, Juy M, Chouayekh H, Maguin E, Haser R, Bejar S: Rational design of Bacillus stearothermophilus US100l-arabinose isomerase: Potential applications for d-tagatose production. Biochim. 2009, 91:650-653. Oh H-J, Kim H-J, Oh D-K: Increase in d-tagatose production rate by site-directed mutagenesis of l-arabinose isomerase from Geobacillus thermodenitrificans. Biotechnol. Lett. 2006, 28:145-149. Bosshart A, Hee CS, Bechtold M, Schirmer T, Panke S:Directed divergent evolution of a thermostable D-tagatose epimerase towards improved activity for two hexose substrates. ChemBioChem 2015,16:592-601.)。
【0005】
韓国CJ社はフルクトースキナーゼ(fructokinase)、アルドラーゼ(aldolase)、フィターゼ(phytase)を含む複数種の酵素でフルクトースを触媒してタガトースに転化する技術(Oh DK ,HONG SH ,Lee SH: Aldolase, aldolase mutants and tagatose using the same production methods and compositions for production. WO 2015016544A1)を発明しているが、フルクトースからフルクトース-6-リン酸(Fructose-6-phosphate)を生産するにはATPがフルクトースについて基質リン酸化を行う必要があり、高価なATPを添加するとタガトースの生産コストが高くなり、工業的生産価値がない(TW107111500、US20160186162A1)。韓国CJ社はヘキスロン酸4-エピメラーゼ(Hexuronate C4-epimerase)を発見して改造してフルクトースをタガトース(CN105431541B、CN109415715A)に転化したが、改造したヘキスロン酸4-エピメラーゼは酵素活性が極めて低く、工業的には応用価値がない。韓国CJ社はまた、新規由来のタガトース6-リン酸ホスファターゼ(tagatose-6-phosphate phosphatase)を発見し、それをデンプンや、マルトデキストリン(maltodextrin)やショ糖などの基質転化に用いてタガトースを生産したが(WO2018004310A1、CN 109790524A)、このタガトース6-リン酸ホスファターゼは酵素活性が極めて低く、現段階では工業的には応用価値がない。
【0006】
中国科学院天津工業生物技術研究所は安価なコーンスターチ、マルトデキストリン、ショ糖などを原料とし、タガトースを体外で多酵素により合成するような新しい経路を構築し、既存のタガトースの生産プロセスを根本的に変えた(CN106399427A)。これを踏まえた上で、中国科学院天津工業生物技術研究所は安価なコーンスターチ、セルロース、マルトデキストリン、ショ糖などを原料とし、全細胞(whole-cell)の触媒作用によるタガトースの調製方法(CN107988286A)を利用しており、同プロセスは多酵素精製プロセスのステップを減らし、生産コストを低下させて環境汚染を低減し、タガトースの収率を高めた。しかし、この方法におけるキー酵素(key enzyme)の発酵生産宿主は食品製剤の生産に関連する酵素の生産菌株として工業的生産に適さないが大腸菌BL21(DE3)であり、そのほか、体外酵素の分離精製ステップが煩雑で、酵素の回収利用率が低く、リサイクルが困難であり、生産コストを更に下げることができず、高濃度生成物を工業的に量産して応用することを実現できない。
【0007】
そのため、全細胞のリサイクルが可能であり、安全性が高く、収率が高く、生産プロセスが簡単で、コストが低く、基質を高濃度で投入して生成物のタガトースを高収率で生産することに適し、タガトースを大規模で調製することが容易である新方法の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【0008】
従来の多酵素触媒作用によるタガトースの製造方法の問題点、例えば、大腸菌が食品製剤の工業的製造に不利であることに対処し、精製工程の煩雑さ、酵素の回収利用率の低さ、リサイクルの困難さ、低濃度の基質澱粉の投入の課題を解決するために、枯草菌の全細胞の触媒作用による高濃度の澱粉調製から高濃度のタガトースへの調製及び生産方法を提供することを主な目的とする。
【0009】
本発明は、まず、α-グルカンホスホリラーゼ(α-Glucan phosphorylase)遺伝子、ホスホグルコムターゼ(phosphoglucomutase)遺伝子、ホスホグルコースイソメラーゼ(phosphoglucose isomerase)遺伝子、タガトース6-リン酸エピメラーゼ(tagatose-6-phosphate epimerase)遺伝子及びタガトース6-リン酸ホスファターゼ(tagatose-6-phosphate phosphatase)遺伝子を共発現させた枯草菌の遺伝子工学菌、又はα-グルカンホスホリラーゼ遺伝子、ホスホグルコムターゼ遺伝子、ホスホグルコースイソメラーゼ遺伝子、タガトース6-リン酸エピメラーゼ遺伝子及びタガトース6-リン酸ホスファターゼ遺伝子をそれぞれ発現させた枯草菌の遺伝子工学菌の混合物であるタガトースを産生する枯草菌の遺伝子工学菌を提供する。
【0010】
上記の技術案の原理は、関連する触媒経路を十分に利用して生体において細胞レベルで発現させ、有効な触媒反応を実現することであり、α-グルカンホスホリラーゼによって無機リンの存在下で基質である澱粉を中間体であるグルコース-1-リン酸(G1P)に転化することと、ホスホグルコムターゼによって中間体であるグルコース-1-リン酸(G1P)を別の中間体であるグルコース-6-リン酸(G6P)となるように移動することと、ホスホグルコースイソメラーゼによって中間体であるグルコース-6-リン酸(G6P)を別の中間体であるフルクトース-6-リン酸(F6P)となるように移動することと、タガトース6-リン酸エピメラーゼによって中間体であるフルクトース-6-リン酸(F6P)を異性化して別の中間体であるタガトース-6-リン酸(T6P)にすることと、タガトース6-リン酸ホスファターゼによって中間体であるタガトース-6-リン酸(T6P)からリン酸基を離脱して生成物であるタガトース(Tagatose)にすることと、を含む。
【0011】
例えばBacillus subtilis 168、DB104、WB800、WB600、SCK6、1A751、ATCC6051a、ATCC6051など本分野に知られている各種の枯草菌菌株はすべて本発明の出発菌株として有用である。好ましくは、前記枯草菌の出発菌株はノックアウトプロテアーゼ(protease)の枯草菌菌株、例えばWB800、WB600、SCK6、1A751などである。より好ましくは、前記枯草菌の出発菌株はSCK6である。
【0012】
特定実施形態においては、前記枯草菌の遺伝子工学菌は、α-グルカンホスホリラーゼ、ホスホグルコムターゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、タガトース6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース6-リン酸ホスファターゼを共発現させる発現ベクター、又はα-グルカンホスホリラーゼの発現ベクターを含む遺伝子工学菌、ホスホグルコムターゼの発現ベクターを含む遺伝子工学菌、ホスホグルコースイソメラーゼの発現ベクターを含む遺伝子工学菌、タガトース6-リン酸エピメラーゼの発現ベクターを含む遺伝子工学菌及びタガトース6-リン酸ホスファターゼの発現ベクターを含む遺伝子工学菌の混合物である。
【0013】
好ましくは、前記の各種酵素は耐熱性のものであって、すなわち、熱性α-グルカンホスホリラーゼ、耐熱性ホスホグルコムターゼ、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ及び耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼである。耐熱性ではない常温酵素に対しては、耐熱性の酵素は菌株の不活性化において好ましく、すなわち、後者は発酵終了後に加熱処理によって菌株を不活性化することができ、また、タガトース合成に関連する酵素は活性を維持し、これによって、不活性化菌株を混合してタガトースを生産することができ、これは工業的適応により適している。常温の関連酵素を使用すれば、タガトースを生産するための関連酵素を得るには、発酵・生産終了後、菌体破砕と酵素精製のステップによって純酵素を取得する必要がある。
【0014】
具体的には、前記耐熱性α-グルカンホスホリラーゼとは、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上で澱粉をグルコース-1-リン酸(G1P)にリン酸化する機能を有する酵素を指す。さらに好ましくは、前記耐熱性α-グルカンホスホリラーゼは好熱性微生物、例えばGeobacillus kaustophilus、Geobacillus stearothermophilus、Thermotoga maritima、Pseudothermotoga thermarum、Thermococcus kodakarensis、Archaeoglobus fulgidus、Thermoanaerobacter indiensis、Dictyoglomus thermophilum、Caldicellulosiruptor kronotskyensis、Clostridium thermocellum、Caldilinea aerophila、Pyrococcus furiosus、Thermus thermophilus、Methanothermobacter marburgensis、Archaeoglobus profundusなどに由来し、又は前記耐熱性α-グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列は前記好熱性微生物に由来する耐熱性α-グルカンホスホリラーゼとは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。より好ましくは、前記耐熱性α-グルカンホスホリラーゼはThermococcus kodakarensisに由来する。
【0015】
具体的には、耐熱性ホスホグルコムターゼとは、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以でグルコース-1-リン酸(G1P)をグルコース-6-リン酸(G6P)に移動させる機能を有する酵素を指す。さらに好ましくは、前記耐熱性ホスホグルコムターゼは好熱性微生物、例えばGeobacillus kaustophilus、Geobacillus stearothermophilus、Thermotoga maritima、Pseudothermotoga thermarum、Thermococcus kodakarensis、Archaeoglobus fulgidus、Thermoanaerobacter indiensis、Dictyoglomus thermophilum、Caldicellulosiruptor kronotskyensis、Clostridium thermocellum、Caldilinea aerophila、Pyrococcus furiosus、Thermus thermophilus、Methanothermobacter marburgensis、Archaeoglobus profundusなどに由来し、又は前記耐熱性ホスホグルコムターゼのアミノ酸配列は前記好熱性微生物に由来の耐熱性ホスホグルコムターゼと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。より好ましくは、前記耐熱性ホスホグルコムターゼはThermococcus kodakarensisに由来する。
【0016】
具体的には、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼとは、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上でグルコース-6-リン酸(G6P)をフルクトース-6-リン酸(F6P)に移動させる機能を有する酵素を指す。さらに好ましくは、前記耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼは好熱性微生物、例えばGeobacillus kaustophilus、Geobacillus stearothermophilus、Thermotoga maritima、Pseudothermotoga thermarum、Thermococcus kodakarensis、Archaeoglobus fulgidus、Thermoanaerobacter indiensis、Dictyoglomus thermophilum、Caldicellulosiruptor kronotskyensis、Clostridium thermocellum、Caldilinea aerophila、Pyrococcus furiosus、Thermus thermophilus、Methanothermobacter marburgensis、Archaeoglobus profundusなどに由来し、又は前記耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼのアミノ酸配列は前記好熱性微生物に由来の耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有するものを指す。より好ましくは、前記耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼはThermus thermophilusに由来する。
【0017】
具体的には、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼとは、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上でフルクトース-6-リン酸(F6P)をタガトース-6-リン酸(T6P)に異性化する機能を有する酵素を指す。さらに好ましくは、前記耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼは、好熱性微生物、例えばGeobacillus kaustophilus、Geobacillus stearothermophilus、Thermotoga maritima、Pseudothermotoga thermarum、Thermococcus kodakarensis、Archaeoglobus fulgidus、Thermoanaerobacter indiensis、Dictyoglomus thermophilum、Caldicellulosiruptor kronotskyensis、Clostridium thermocellum、Caldilinea aerophila、Pyrococcus furiosus、Thermus thermophilus、Methanothermobacter marburgensis、Archaeoglobus profundusなどに由来し、又は前記耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼのアミノ酸配列は前記好熱性微生物に由来の耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。より好ましくは、前記耐タガトース6-リン酸エピメラーゼはThermoanaerobacter indiensisに由来する。
【0018】
具体的には、前記タガトース6-リン酸ホスファターゼとは、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、又は80℃以上でタガトース-6-リン酸(T6P)からリン酸基を離脱して生成物タガトース(Tagatose)にする機能を有する酵素を指す。さらに好ましくは、前記タガトース6-リン酸ホスファターゼは好熱性微生物、例えばGeobacillus kaustophilus、Geobacillus stearothermophilus、Thermotoga maritima、Pseudothermotoga thermarum、Thermococcus kodakarensis、Archaeoglobus fulgidus、Thermoanaerobacter indiensis、Dictyoglomus thermophilum、Caldicellulosiruptor kronotskyensis、Clostridium thermocellum、Caldilinea aerophila、Pyrococcus furiosus、Thermus thermophilus、Methanothermobacter marburgensis、Archaeoglobus profundusなどに由来し、又は前記タガトース6-リン酸ホスファターゼのアミノ酸配列は前記好熱性微生物に由来のタガトース6-リン酸ホスファターゼと少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。より好ましくは、前記タガトース6-リン酸ホスファターゼはArchaeoglobus fulgidusに由来する。
【0019】
本発明はまた、α-グルカンホスホリラーゼ、ホスホグルコムターゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、タガトース6-リン酸エピメラーゼ及びタガトース6-リン酸ホスファターゼ遺伝子を含み、これらの遺伝子を共発現させることができる上記の遺伝子工学菌用の発現ベクターを提供する。
【0020】
当業者が理解できるように、本発明に係るベクター及び遺伝子工学菌は本分野に知られている一般的な方法によって調製されてもよく、例えば、組換えDNA技術によってα-グルカンホスホリラーゼ遺伝子、ホスホグルコムターゼ遺伝子、ホスホグルコースイソメラーゼ遺伝子、タガトース6-リン酸エピメラーゼ遺伝子、タガトース6-リン酸ホスファターゼ遺伝子を構築して取得し、組換え発現ベクターを構築し、次に、既知の方法によって枯草菌に形質導入して、遺伝子工学菌を得る。
【0021】
より好ましくは、前記ベクターは、プロモータ(promoter)、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ遺伝子、耐熱性ホスホグルコムターゼ遺伝子、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ遺伝子、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ遺伝子、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼ遺伝子及びターミネータを含む。耐熱性α-グルカンホスホリラーゼを発現させる前記ベクターはそれぞれ、プロモータ、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ遺伝子、ターミネータを含み、耐熱性ホスホグルコムターゼを発現させる前記ベクターはプロモータ、耐熱性ホスホグルコムターゼ遺伝子、ターミネータを含み、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼを発現させる前記ベクターはプロモータ、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ遺伝子、ターミネータを含み、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼを発現させる前記ベクターはプロモータ、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ遺伝子、ターミネータを含み、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを発現させる前記ベクターはプロモータ、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼ遺伝子、ターミネータを含む。
【0022】
当業者が理解できるように、本分野に知られている各種のプロモータはすべて、本発明のプロモータとして利用可能であり、P43プロモータ、Pylbプロモータ、PamyLプロモータ、Plapsプロモータ、PhpaIIプロモータ、PamyEプロモータ、Pgracプロモータ、PsacBプロモータ、PsigXプロモータ、PaprEプロモータ、PgroESプロモータなどを含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、本発明のプロモータとして、PhpaIIプロモータとPylbプロモータを選択して直列に接続する。本分野に知られている各種ターミネータも本発明のターミネータとして有用である。
【0023】
好ましい実施形態では、前記遺伝子工学菌における内因性のウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、及び/又はα-アミラーゼ遺伝子、及び/又は胞子形成RNAポリメラーゼσF因子遺伝子、及び/又はサーファクチンシンターゼサブユニット3遺伝子は不活性化又はノックアウト(Knockout)される。最も好ましくは、前記遺伝子工学菌における内因性のウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(uracil phosphoribosyltransferase)遺伝子、α-アミラーゼ(α-Amylase)遺伝子、胞子形成RNAポリメラーゼσF因子遺伝子、及びサーファクチン(surfactin)シンターゼサブユニット3遺伝子はいずれも不活性化又はノックアウトされる。ここでは、上記の遺伝子の不活性化又はノックアウトは遺伝子工学菌からタガトースを生産する効率をさらに高めることができ、その理由は具体的には以下のとおりである。ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子の不活性化又はノックアウトはトレースレス遺伝子操作系を構築し、後続の遺伝子操作(すなわち、遺伝子ノックアウト)をトレースレス操作にし、耐性遺伝子などの外来遺伝子の導入を必要とせず、α-アミラーゼ遺伝子の不活性化又はノックアウトは菌株が外因性澱粉を利用する経路を切断し、タガトースを生産する基質である澱粉が菌株により炭素源として代謝、利用されることを回避し、胞子形成RNAポリメラーゼσF因子遺伝子の不活性化又はノックアウトは、菌種を代謝してタガトース合成に関連する異種タンパク質の合成発現に用いることを可能とし、また、胞子を生成しないように菌株の発酵を制御することもでき、サーファクチンシンターゼサブユニット3遺伝子の不活性化又はノックアウトは、菌体の発酵生産における制御をより容易にし、泡を少なく抑えることができる。したがって、上記の4つの遺伝子の不活性化又はノックアウトは、遺伝子工学菌によるタガトース産生により有利であるので、好ましい実施形態である。
【0024】
内因性遺伝子の不活性化又はノックアウトは、本分野に知られている方法、好ましくは遺伝子編集方法によって行われ得る。
【0025】
本発明はまた、上記の遺伝子工学菌の全細胞(whole-cell)の触媒作用による澱粉からタガトースへの調製及び生産方法であって、
前記枯草菌の工学菌を発酵して全細胞を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた枯草菌の全細胞を細胞膜透過性処理して、透過性全細胞を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた透過性全細胞の触媒作用によりデンプンからタガトースを調製し、共発現型の枯草菌工学菌の場合、そのまま触媒作用に用い、各種酵素をそれぞれ発現させた枯草菌工学菌の場合、これらを混合して触媒作用に用いるステップ(3)と、を含む。
【0026】
好ましくは、ステップ(2)で得られた枯草菌透過性全細胞を固定化処理して、固定化全細胞、又は固定化全細胞混合物を得て、触媒作用に用いるステップをさらに含む。
【0027】
特定実施形態においては、ステップ(1)の前記全細胞は本分野に公知の方法によって調製される。発酵には、外来タンパク質の発現に適する、LB培地、SR培地、TB培地などを含むが、これらに限定されない任意の培地を使用することができる。
【0028】
好ましい実施形態においては、ステップ(2)では、前記細胞膜透過性処理は、熱処理、添加有機溶剤及び/又は添加界面活性剤などを含むが、これらに限定されない既知の方法を採用してもよい。ここでは、有機溶剤はアセトン(acetone)及びアセトニトリル(acetonitrile)などを含むが、これらに限定されない。界面活性剤は、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB:Cetyl trimethyl ammonium bromide)及びTween-80などを含むが、これらに限定されない。好ましくは、細胞膜透過性処理は熱処理である。細胞膜を透過性処理する目的は、細胞外の澱粉が細胞膜を経て細胞内に入るためである。
【0029】
好ましくは、前記熱処理温度は45~100℃、より好ましくは70~80℃である。好ましくは、熱処理時間は10~100min、より好ましくは50~70minである。好ましくは、熱処理時の細胞濃度はOD600=10~300、より好ましくは、OD600=30~150である。また、前記熱処理は緩衝液無し系又は緩衝液系にて行われてもいが、好ましくは、前記熱処理は緩衝液系にて行われ、前記緩衝液はHEPES緩衝液、リン酸塩緩衝液、Tris緩衝液、酢酸塩緩衝液などであってもよい。リン酸塩緩衝液は例えばリン酸ナトリウム(sodium phosphate)緩衝液、リン酸カリウム(potassium phosphate)緩衝液などである。
【0030】
特定実施形態においては、触媒反応系において、基質澱粉の濃度は50~300g/L、より好ましくは、100~200g/Lである。好ましくは、反応条件は、pH 5.0~8.0、40~80℃で0.5~96h反応させ、より好ましくはpH 6.5~7.5、45~75℃で12~60h反応させ、最も好ましくはpH 7.5、60~70℃で12~96h反応させることである。前記触媒は緩衝液無し系又は緩衝液系にて行われてもよいが、好ましくは、緩衝液系にて行われ、前記緩衝液はHEPES緩衝液、リン酸塩緩衝液、Tris緩衝液、酢酸塩緩衝液などであってもよい。リン酸塩緩衝液、例えばリン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液などである。
【0031】
好ましくは、各種酵素をそれぞれ発現させた枯草菌工学菌の透過性全細胞に対しては、これらの混合物では、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性ホスホグルコムターゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを発現させた透過性全細胞の割合は、(0.1~10):(0.1~10):(0.1~10):(0.1~10):(0.1~10)、より好ましくは(0.5~5):(0.5~5):(0.5~5):(0.5~5):(0.5~5)、最も好ましくは1:1:1:1:1である。
【0032】
特定実施形態においては、前記透過性全細胞の固定化処理方法においては、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウム緩衝液で耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ、耐熱性ホスホグルコムターゼ、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ及び耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを共発現させた透過性全細胞を再懸濁させ、適量の無機土を加えて、均一に撹拌する。ポリエチレンイミン(polyethyleneimine)水溶液を加えて室温条件下で凝集させ、次に架橋剤を加えて架橋する。その後、吸引ろ過して濾過ケーキ層を得、濾過ケーキを脱イオン水で洗浄した後に押し出して、粒子に調製し、乾燥して固定化全細胞を得る。
【0033】
前記固定化透過性全細胞の混合物の処理方法においては、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウム緩衝液を用いて、耐熱性α--グルカンホスホリラーゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性ホスホグルコムターゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを発現させた透過性全細胞を再懸濁させ、適量の無機土を加えて、均一に撹拌する。ポリエチレンイミン水溶液を加えて室温条件下で凝集させ、次に架橋剤を加えて架橋する。その後、吸引ろ過して濾過ケーキ層を得、濾過ケーキを脱イオン水で洗浄した後に押し出して、粒子に調製し、乾燥して固定化全細胞を得る。
【0034】
ここで、前記無機土は、モンモリロナイト(montmorillonite)、珪藻土、カオリン及びベントナイト(bentonite)等を含むが、これらに限定されず、好ましくは、前記無機土は珪藻土であり、前記架橋剤はグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、トリヒドロキシメチルホスフィン(trihydroxymethylphosphine)、N,N-メチレンビスアクリルアミド(N,N-methylenebisacrylamide)、エピクロロヒドリン(epichlorohydrin)、ゲニピン(genipin)等を含むが、これらに限定されず、好ましくは、前記架橋剤はグルタルアルデヒドである。
【発明の効果】
【0035】
従来技術と比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0036】
(1)本発明は、初めて耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ、耐熱性ホスホグルコムターゼ、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ及び耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを発現させた全細胞の触媒作用を初めて利用して澱粉からタガトースを生産するものであり、簡単でスケールアップしやすいタガトースの新しい調製方法を開発する。
【0037】
(2)枯草菌は一般的に安全と認められている(GRAS:Generally Recognized As Safe)食品グレードの微生物であり、エンドトキシンを生成することはない。さらに、α-アミラーゼコード遺伝子のノックアウトは後続の基質澱粉の触媒用に有利であり、胞子形成RNAポリメラーゼσF因子コード遺伝子のノックアウトは、後続の基質からタガトースへの転化生産における遺伝子工学菌株の発酵生産の適用に有利であり、表面活性ペプチドシンターゼサブユニット3コード遺伝子のノックアウトは、後続の基質からタガトースへの転化生産における遺伝子工学菌株の発酵生産の適用に有利である。
【0038】
(3)好ましい実施形態では、耐熱性の各種酵素を用いると、タガトースの調製は高温度で行われ得、これにより、基質澱粉の溶解度を高めることができ、従来技術と比べて、本発明は、高基質濃度でタガトースを調製することができ、生産効率の向上、さらに生産コストの削減に有利である。
【0039】
(4)本発明の方法では、タガトースの転化反応は緩衝液無し体又は緩衝液系にて行われてもよく、炭素源、窒素源、無機塩及び抗生物質を含有する培地を必要とせず、これよって、生産コストの削減に有利である一方、生成物であるタガトースの分離精製に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の全細胞触媒作用による澱粉からタガトースの生産の概略図である。
【
図2】組換え発現ベクターpMA5-Pylb-aGPのマップである。
【
図3】組換え発現ベクターpMA5-Pylb-PGMのマップである。
【
図4】組換え発現ベクターpMA5-Pylb-PGIのマップである。
【
図5】組換え発現ベクターpMA5-Pylb-TPEのマップである。
【
図6】組換え発現ベクターpMA5-Pylb-TPPのマップである。
【
図7】組換え発現ベクターpMA5-Pylb-aGP-PGM-PGI-TPE-TPPのマップである。
【
図8】タガトースの収量の反応時間に伴う変化の曲線図である。
【
図9】共発現組み換え菌株を固定化してタガトースを生産する場合の収量の傾向図である。
【
図10】個別発現組み換え菌株を固定化してタガトースを生産する場合の収量の傾向図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明に使用される技術手段及びその効果をさらに説明するために、以下は、特定実施例によって本発明の技術案をさらに説明する。ただし、前記実施例は例示的なものに過ぎず、かつ好ましい実施例であるが、本発明の範囲を何ら制限するものではない。当業者にとって明らかなように、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく本発明の技術案の詳細及び形態について修正又は置換を行うことができ、これらの修正又は置換はすべて本発明の特許範囲に含まれる。
【0042】
実施例1:枯草菌組換え菌株SCK8の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-upp-FRの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼコード遺伝子upp遺伝子配列(NCBI-ProteinID: NP_391570)に従って、プライマーを設計し、PCRによって増幅し、upp遺伝子上流500bpの相同断片と下流500bpの相同断片を得て、simple cloning連結方式(You, C., Zhang, X. Z., & Zhang, Y. H. (2012). Simple cloning via direct transformation of PCR product (DNA Multimer) to Escherichia coli and Bacillus subtilis. Appl. Environ. Microbiol., 78(5), 1593-1595. doi:10.1128/AEM.07105-11)によって組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-upp-FRを得た。
【0043】
(2)枯草菌組換え菌株SCK8の構築
枯草菌菌株SCK6のスーパーコンピテント細胞(200μl)(Zhang, X. Z., & Zhang, Y. H. P. (2011). Simple, fast and high-efficiency transformation system for directed evolution of cellulase in Bacillus subtilis. Microb. Biotechnol., 4(1), 98-105. doi:10.1111/j.1751-7915.2010.00230.x)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-upp-FR(1μg)と枯草菌菌株SCK6スーパーコンピテント細胞(200μl)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、クロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体LB培地(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に菌液を塗布し、37℃インキュベーターに入れて14~16h培養した。
【0044】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単交換形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bp DNA断片と2000bp DNA断片の2本のバンド(1000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-upp-FRにおけるベクター中のuppコード遺伝子の上下流相同性アーム(arm)の断片のサイズであり、2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてuppコード遺伝子の上流相同性アーム、uppコード遺伝子及びuppコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンである。
【0045】
陽性クローンを選択して、抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μlを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-フルオロウラシル(5-FU)基礎塩培地固体プレート(40%グルコース20.0ml/L、4%グルタミン50.0mL/L、0.5%トリプトファン10.0mL/L、1%ビタミンB1 1.0mL/L、20mM 5-フルオロウラシル500μL/L、10×基礎塩100.0mL/L、1000×微量元素1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、uppノックアウトを受けた目的形質転換体を得ることである。
【0046】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択し、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、upp遺伝子ノックアウト枯草菌工学菌株、すなわちウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ酵素活性のない枯草菌組み換え工学菌株を保存し、SCK8と命名した。
【0047】
実施例2 枯草菌組換え菌株SCK8-ST1の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-amyE-FRの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来のα-アミラーゼのコード遺伝子amyG遺伝子配列(NCBI-ProteinID: NP_388186)に従って、プライマーを設計し、PCRによって増幅し、amyG遺伝子上流の500bp相同断片と下流500bpの相同断片を得て、simple cloning連結方式(You, C., Zhang, X. Z., & Zhang, Y. H. (2012). Simple cloning via direct transformation of PCR product (DNA Multimer) to Escherichia coli and Bacillus subtilis. Appl. Environ. Microbiol., 78(5), 1593-1595. doi:10.1128/AEM.07105-11)によって組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-amyE-FRを得た。
【0048】
(2)枯草菌組換え菌株SCK8-ST1の構築
枯草菌菌株SCK8スーパーコンピテント細胞(200μl)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-amyE-FR(1μg)と枯草菌菌株SCK8スーパーコンピテント細胞(200μl)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、クロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体LB培地(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に菌液を塗布し、37℃インキュベーターに入れて14~16h培養した。
【0049】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単交換形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bp DNA断片と2000bp DNA断片2本のバンド(1000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-amyE-FRにおいてベクター中のamyEコード遺伝子の上下流相同性アームの断片のサイズであり、2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてamyEコード遺伝子の上流相同性アーム、amyEコード遺伝子及びamyEコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンであった。
【0050】
陽性クローンを選択して抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μlを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-FU基礎塩培地固体プレート(40%グルコース20.0ml/L、4%グルタミン50.0mL/L、0.5%トリプトファン10.0mL/L、1%ビタミンB1 1.0mL/L、20mM 5-フルオロウラシル500μL/L、10×基礎塩100.0mL/L,1000×微量元素1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、myEノックアウトを受けた目的形質転換体を得ることである。
【0051】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択し、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、amyG遺伝子ノックアウト枯草菌工学菌株、すなわちα-アミラーゼ酵素活性のない枯草菌組み換え工学菌株を保存し、SCK8-ST1と命名した。
【0052】
実施例3 枯草菌組換え菌株SCK8-ST2の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-spoIIAC-FRの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来の胞子形成RNAポリメラーゼ σF 因子のコード遺伝子spoIIAC遺伝子配列(NCBI-ProteinID: NP_390226)に従って、プライマーを設計し、PCRによって増幅し、胞子形成spoIIAC遺伝子上流500bpの相同断片及び下流500bpの相同断片を得て、simple cloning連結方式(You, C., Zhang, X. Z., & Zhang, Y. H. (2012). Simple cloning via direct transformation of PCR product (DNA Multimer) to Escherichia coli and Bacillus subtilis. Appl. Environ. Microbiol., 78(5), 1593-1595. doi:10.1128/AEM.07105-11)によって組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-spoIIAC-FRを得た。
【0053】
(2)枯草菌組換え菌株SCK8-ST2の構築
枯草菌菌株SCK8-ST1スーパーコンピテント細胞(200μl)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-spoIIAC-FR(1μg)と枯草菌菌株SCK8-ST1スーパーコンピテント細胞(200μl)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、クロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体LB培地(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に菌液を塗布し、37℃インキュベーターに入れて、14~16h培養した。
【0054】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単交換形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bp DNA断片と2000bp DNA断片の2本のバンド(1000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-spoIIAC-FRにおけるベクター中のspoIIACコード遺伝子の上下流相同性アームの断片のサイズであり、2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてspoIIACコード遺伝子の上流相同性アーム、spoIIACコード遺伝子及びspoIIACコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンであった。
【0055】
陽性クローンを選択して抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μlを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-FU基礎塩培地固体プレート(40%グルコース20.0ml/L、4%グルタミン50.0mL/L、0.5%トリプトファン10.0mL/L、1%ビタミンB1 1.0mL/L、20mM 5-フルオロウラシル500μL/L、10×基礎塩100.0mL/L、1000×微量元素1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、spoIIACノックアウトを受けた目的形質転換体を得ることである。
【0056】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択し、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、胞子形成spoIIAC遺伝子ノックアウト枯草菌組み換え工学菌株、すなわち胞子形成RNAポリメラーゼσF因子活性のない枯草菌組み換え工学菌株を保存し、SCK8-ST2と命名した。
【0057】
実施例4 枯草菌組換え菌株SCK8-ST3の構築
(1)組換え組み込みベクターpSS-srfAC-FRの構築
KEGGデータベースにおける、枯草菌Bacillus subtilis 168に由来の表面活性ペプチドシンターゼサブユニット3コード遺伝子srfAC遺伝子配列(NCBI-ProteinID: NP_388233)に従って、プライマーを設計し、PCRによって増幅し、srfAC遺伝子上流500bpの相同断片と下流500bpの相同断片を得て、simple cloning連結方式(You, C., Zhang, X. Z., & Zhang, Y. H. (2012). Simple cloning via direct transformation of PCR product (DNA Multimer) to Escherichia coli and Bacillus subtilis. Appl. Environ. Microbiol., 78(5), 1593-1595. doi:10.1128/AEM.07105-11)によって組み込みベクターpSSに構築し、組換え組み込みベクターpSS-srfAC-FRを得た。
【0058】
(2)枯草菌組換え菌株SCK8-ST3の構築
枯草菌菌株SCK8-ST2スーパーコンピテント細胞(200μl)を調製し、組換え組み込みベクターpSS-srfAC-FR(1μg)と枯草菌菌株SCK8-ST2スーパーコンピテント細胞(200μl)とを均一に混合し、続いて、37℃シェーカーに入れて90min蘇生させ、クロラムフェニコール(5μg/mL)を含有する固体LB培地(酵母抽出物5g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム10g/L)に菌液を塗布し、37℃インキュベーターに入れて、14~16h培養した。
【0059】
クロラムフェニコール耐性プレートで成長している陽性単交換形質転換体コロニーを選択してコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bp DNA断片と2000bp DNA断片の2本のバンド(1000bp DNA断片のサイズはベクターpSS-srfAC-FRにおけるベクター中のsrfACコード遺伝子の上下流相同性アームの断片のサイズであり、2000bp DNA断片のサイズはゲノムにおいてsrfACコード遺伝子の上流相同性アーム、srfACコード遺伝子及びsrfACコード遺伝子の下流相同性アームを含む断片のサイズである)を得るものは陽性クローンであった。
【0060】
陽性クローンを選択して抗生物質を添加していないLB培地に移して8~12h培養し、その後、菌液200μlを遠心分離して上清を除去し、次に、無菌水を用いて再懸濁させて、5-FU基礎塩培地固体プレート(40%グルコース20.0ml/L、4%グルタミン50.0mL/L、0.5%トリプトファン10.0mL/L、1%ビタミンB1 1.0mL/L、20mM 5-フルオロウラシル 500μL/L、10×基礎塩100.0mL/L、1000×微量元素1.0mL/L)に塗布し、37℃インキュベーターに入れて24h培養した。このステップの目的は、抗生物質を添加していないLB培地で培養することにより、陽性形質転換体の分子内の相同組換えを促進し、5-FU基礎塩培地でスクリーニング培養をし、srfACノックアウトを受けた目的形質転換体を得ることである。
【0061】
5-FU基礎塩培地固体プレートから複数のコロニーを選択し、さらにコロニーのPCR検証を行い、PCR増幅の結果、1000bpのDNA断片だけを有する形質転換体は陽性クローンであった。形質転換体をPCRシーケンシングして検証した結果、正しい菌株、すなわち、srfAC遺伝子ノックアウト枯草菌組み換え工学菌株、すなわち表面活性ペプチドシンターゼサブユニット3酵素活性のない枯草菌組み換え工学菌株を保存し、SCK8-ST3と命名した。
【0062】
実施例5:組換えベクターの構築
(1)pMA5-Pylb-aGPの構築
本実施例では、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼはThermococcus kodakarensisに由来する。耐熱性α-グルカンホスホリラーゼコード遺伝子agp配列(NCBI-ProteinID: BAD85595)は蘇州金唯智生物科技有限公司により合成されて普通プラスミドに連結された。耐熱性α-グルカンホスホリラーゼコード遺伝子agp遺伝子は1対のプライマーを用いてPCRにより取得された。プライマー299-F:5´-AGAAACAACAAAGGGGGAGATTTGTatggtgaacgtttccaatgccgttg-3´と300-R:5´-gcttgagctcgactctagaggatcctcagtcaagtcccttccacttgacca-3´は使用され、pMA5-Pylb線状骨格は1対のプライマーを用いてPCRにより取得された。プライマー301-F:5´-tggtcaagtggaagggacttgactgaggatcctctagagtcgagctcaagc-3´と302-R:5´-caacggcattggaaacgttcaccatACAAATCTCCCCCTTTGTTGTTTCT-3´は使用され、
プライマーはすべて蘇州金唯智生物科技有限公司により合成されたものである。遺伝子のPCR条件としては、94℃ 5min変性とし、94℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 1min伸長、最後に72℃ 10min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。PCR反応で得られた生成物のそれぞれについて0.8%アガロースゲル電気泳動によって結果を分析した。ゲル画像システムによりイメージングした結果、断片のサイズが正しいと確認した後、DNA精製回収キット(天根生化科技有限公司、中国)を用いて目的断片を回収し、組換え発現ベクターの構築に用いた。
【0063】
その後、POE-PCRを用いて耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ遺伝子断片とpMA5-Pylbベクター骨架を組み立てた。POE-PCR系は以下のとおりである。精製後のpMA5-Pylb線状骨格、200ng;精製後の耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ遺伝子断片、131ng;2×PrimeSTAR MAX DNA Polymerase(大連宝生物、中国)、25μL、50μLまで残量の水。POE-PCR条件として、98℃ 2min変性とし、98℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 3.5min伸長、最後に72℃ 5min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。連結産物を塩化カルシウム法によりコンピテントE.coli Top10に形質転換し、形質転換体を選択してコロニーのPCR及び二重酵素消化による同定を行い、2~3個の陽性形質転換体を選択してさらにシーケンシングして検証し、シーケンシングの結果、pMA5-Pylb-aGP組換え共発現ベクターが得られ、プラスミドのマップは
図2に示すとおりである。
【0064】
(2)pMA5-Pylb-PGMの構築
本実施例では、耐熱性ホスホグルコムターゼはThermococcus kodakarensisに由来する。耐熱性ホスホグルコムターゼコード遺伝子pgm配列(NCBI-ProteinID: BAD85297)は蘇州金唯智生物科技有限公司により合成されて普通プラスミドに連結された。耐熱性ホスホグルコムターゼコード遺伝子pgmは1対のプライマーを用いてゲノムDNAからPCRにより取得された。プライマー327-F:5´-AGAAACAACAAAGGGGGAGATTTGTatgggcaaactgtttggtaccttcg-3´と328-R:5´-agcttgagctcgactctagaggatccTTAacctttcagtgcttcttccagc-3´は使用され、pMA5-Pylb線状骨格は1対のプライマーを用いてPCRにより取得された。プライマー329-F:5´-gctggaagaagcactgaaaggtTAAggatcctctagagtcgagctcaagct-3´と330-R:5´-cgaaggtaccaaacagtttgcccatACAAATCTCCCCCTTTGTTGTTTCT-3´は使用され、
プライマーはすべて蘇州金唯智生物科技有限公司により合成された。遺伝子のPCR条件として、94℃ 5min変性とし、94℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 1min伸長、最後に72℃ 10min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。PCR反応で得られた生成物のそれぞれについて0.8%アガロースゲル電気泳動によって結果を分析した。ゲル画像システムによりイメージングした結果、断片のサイズが正しいと確認した後、DNA精製回収キット(天根生化科技有限公司、中国)を用いて目的断片を回収し、組換え発現ベクターの構築に用いた。
【0065】
その後、POE-PCRを用いて耐熱性ホスホグルコムターゼ遺伝子断片とpMA5-Pylbベクター骨架を組み立てた。POE-PCR系は以下のとおりである。精製後のpMA5-Pylb線状骨格、200ng;精製後の耐熱性ホスホグルコムターゼ遺伝子断片、131ng;2×PrimeSTAR MAX DNA Polymerase(大連宝生物、中国)、25μL;50μLまで残量の水。POE-PCR条件として、98℃ 2min変性とし、98℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 3.5min伸長、最後に72℃ 5min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。連結産物を塩化カルシウム法によりコンピテントE.coli Top10に形質転換し、形質転換体を選択してコロニーのPCR及び二重酵素消化による同定を行い、2~3個の陽性形質転換体を選択してさらにシーケンシングして検証し、シーケンシングの結果、pMA5-Pylb-PGM組換え共発現ベクターが得られ、プラスミドのマップは
図3に示すとおりである。
【0066】
(3)pMA5-Pylb-PGIの構築
本実施例では、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼはThermus thermophilusに由来する。耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼコード遺伝子pgi配列(NCBI-ProteinID: AAS82052)は蘇州金唯智生物科技有限公司により合成されて普通プラスミドに連結された。耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼコード遺伝子pgiは1対のプライマーを用いてゲノムDNAからPCRにより取得された。プライマー331-F:5´-AGAAACAACAAAGGGGGAGATTTGTATGCTGCGTCTGGATACTCGCTTTC-3´と332-R:5´-agcttgagctcgactctagaggatccTTAACCAGCCAGGCGTTTACGAGTC-3´は使用され、pMA5-Pylb線状骨格は1対のプライマーを用いてPCRにより取得された。プライマー333-F:5´-GACTCGTAAACGCCTGGCTGGTTAAggatcctctagagtcgagctcaagct-3´と334-R:5´-GAAAGCGAGTATCCAGACGCAGCATACAAATCTCCCCCTTTGTTGTTTCT-3´は使用され、
プライマーはすべて蘇州金唯智生物科技有限公司により合成された。遺伝子のPCR条件として、94℃ 5min変性とし、94℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 1min伸長、最後に72℃ 10min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。PCR反応で得られた生成物のそれぞれについて0.8%アガロースゲル電気泳動によって結果を分析した。ゲル画像システムによりイメージングした結果、断片のサイズが正しいと確認した後、DNA精製回収キット(天根生化科技有限公司、中国)を用いて目的断片を回収し、組換え発現ベクターの構築に用いた。
【0067】
その後、POE-PCRを用いて耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ遺伝子断片とpMA5-Pylbベクター骨架を組み立てた。POE-PCR系は以下のとおりである。精製後のpMA5-Pylb線状骨格、200ng;精製後の耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ遺伝子断片、131ng;2×PrimeSTAR MAX DNA Polymerase(大連宝生物、中国)、25μL;50μLまで残量の水。POE-PCR条件として98℃ 2min変性とし、98℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 3.5min伸長、最後に72℃ 5min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。連結産物を塩化カルシウム法によりコンピテントE.coli Top10に形質転換し、形質転換体を選択してコロニーのPCR及び二重酵素消化による同定を行い、2~3個の陽性形質転換体を選択してさらにシーケンシングして検証し、シーケンシングの結果、pMA5-Pylb-PGI組換え共発現ベクターが得られ、プラスミドのマップは
図4に示すとおりである。
【0068】
(4)pMA5-Pylb-TPEの構築
本実施例では、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼはThermoanaerobacter indiensisに由来する。耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼコード遺伝子tpe配列(NCBI-ProteinID: B044_RS0101530)は蘇州金唯智生物科技有限公司により合成されて普通プラスミドに連結された。耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼコード遺伝子tpeは1対のプライマーを用いてゲノムDNAからPCRにより取得された。プライマー335-F:5´- AGAAACAACAAAGGGGGAGATTTGTatgaaagtttggctggttggtgcct-3´と324-R:5´-agcttgagctcgactctagaggatccTTAtttcaggttgctataccattct-3´は使用され、pMA5-Pylb線状骨格は1対のプライマーを用いてPCRにより取得された。プライマー325-F:5´-agaatggtatagcaacctgaaaTAAggatcctctagagtcgagctcaagct-3´と326-R:5´-aggcaccaaccagccaaactttcatACAAATCTCCCCCTTTGTTGTTTCT-3´は使用され、
プライマーはすべて蘇州金唯智生物科技有限公司により合成された。遺伝子のPCR条件として、94℃ 5min変性とし、94℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 1min伸長、最後に72℃ 10min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。PCR反応で得られた生成物のそれぞれについて0.8%アガロースゲル電気泳動によって結果を分析した。ゲル画像システムによりイメージングした結果、断片のサイズが正しいと確認した後、DNA精製回収キット(天根生化科技有限公司、中国)を用いて目的断片を回収し、組換え発現ベクターの構築に用いた。
【0069】
その後、POE-PCRを用いて耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ遺伝子断片とpMA5-Pylbベクター骨架を組み立てた。POE-PCR系は以下のとおりである。精製後のpMA5-Pylb線状骨格、200ng;精製後の耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ遺伝子断片、131ng;2×PrimeSTAR MAX DNA Polymerase(大連宝生物、中国)、25μL;50μLまで残量の水。POE-PCR条件として98℃ 2min変性とし、98℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 3.5min伸長、最後に72℃ 5min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。連結産物を塩化カルシウム法によりコンピテントE.coli Top10に形質転換し、形質転換体を選択してコロニーのPCR及び二重酵素消化による同定を行い、2~3個の陽性形質転換体を選択してさらにシーケンシングして検証し、シーケンシングの結果、pMA5-Pylb-TPE組換え共発現ベクターが得られ、プラスミドのマップは
図5に示すとおりである。
【0070】
(5)pMA5-Pylb-TPPの構築
本実施例では、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼはArchaeoglobus fulgidusに由来する。耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼコード遺伝子tpp配列(NCBI-ProteinID: AAB90791)は蘇州金唯智生物科技有限公司により合成されて普通プラスミドに連結された。耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼコード遺伝子tppは1対のプライマーを用いてゲノムDNAからPCRにより取得された。プライマー339-F:5´- AGAAACAACAAAGGGGGAGATTTGTATGTTCAAGCCGAAAGCGATCGCGG-3´と340-R:5´-agcttgagctcgactctagaggatccTTAACGCAGCAGGCCCAGAAACTG-3´は使用され、pMA5-Pylb線状骨格は1対のプライマーを用いてPCRにより取得された。プライマー;341-F:5´- CAGTTTCTGGGCCTGCTGCGTTAAggatcctctagagtcgagctcaagct-3´と342-R:5´- CCGCGATCGCTTTCGGCTTGAACATACAAATCTCCCCCTTTGTTGTTTCT-3´は使用された。
【0071】
プライマーはすべて蘇州金唯智生物科技有限公司により合成された。遺伝子のPCR条件として、94℃ 5min変性とし、94℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 1min伸長、最後に72℃ 10min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。PCR反応で得られた生成物のそれぞれについて0.8%アガロースゲル電気泳動によって結果を分析した。ゲル画像システムによりイメージングした結果、断片のサイズが正しいと確認した後、DNA精製回収キット(天根生化科技有限公司、中国)を用いて目的断片を回収し、組換え発現ベクターの構築に用いた。
【0072】
その後、POE-PCRを用いて耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼ遺伝子断片とpMA5-Pylbベクター骨架を組み立てた。POE-PCR系は以下のとおりである。精製後のpMA5-Pylb線状骨格、200ng;精製後の耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼ遺伝子断片、131ng;2×PrimeSTAR MAX DNA Polymerase(大連宝生物、中国)、25μL;50μLまで残量の水。POE-PCR条件として98℃ 2min変性とし、98℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 3.5min伸長、最後に72℃ 5min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。連結産物を塩化カルシウム法によりコンピテントE.coli Top10に形質転換し、形質転換体を選択してコロニーのPCR及び二重酵素消化による同定を行い、2~3個の陽性形質転換体を選択してさらにシーケンシングして検証し、シーケンシングの結果、pMA5-Pylb-TPP組換え共発現ベクターが得られ、プラスミドのマップは
図6に示すとおりである。
【0073】
(6)pMA5-Pylb-aGP-PGM-PGI-TPE-TPPの構築
本実施例では、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼはThermococcus kodakarensisに由来し、耐熱性ホスホグルコムターゼはThermococcus kodakarensisに由来し、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼはThermus thermophilusに由来し、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼはThermoanaerobacter indiensisに由来し、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼはArchaeoglobus fulgidusに由来する。耐熱性α-グルカンホスホリラーゼコード遺伝子agp(NCBI-ProteinID: BAD85595)はPCRにより取得され、プライマー350-F:5´- AGAAACAACAAAGGGGGAGATTTGTatggtgaacgtttccaatgccgttg-3´と351-R:5´- cgaaggtaccaaacagtttgcccatTTTGAATTCCTCCTTTtcagtcaagtcccttccacttgacc-3´は使用され、耐熱性ホスホグルコムターゼコード遺伝子pgm(NCBI-ProteinID: BAD85297)はPCRにより取得され、プライマー352-F:5´- ggtcaagtggaagggacttgactgaAAAGGAGGAATTCAAAatgggcaaactgtttggtaccttcg-3´と353-R:5´- GAAAGCGAGTATCCAGACGCAGCATTTTGAATTCCTCCTTTTTAacctttcagtgcttcttccagc-3´は使用され、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼコード遺伝子pgi(NCBI-ProteinID: AAS82052)はPCRにより取得され、プライマー354-F:5´- gctggaagaagcactgaaaggtTAAAAAGGAGGAATTCAAAATGCTGCGTCTGGATACTCGCTTTC-3´と355-R:5´- TTTTCAGCGGATGTTCGGTGTTCATTTTGAATTCCTCCTTTTCAACCAGCCAGGCGTTTACGAGTC-3´は使用され、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼコード遺伝子tpe(NCBI-ProteinID: B044_RS0101530)はPCRにより取得され、プライマー356-F:5´- GACTCGTAAACGCCTGGCTGGTTGAAAAGGAGGAATTCAAAATGAACACCGAACATCCGCTGAAAA-3´と357-R:5´- ACCGCGATCGCTTTCGGCTTGAACATTTTGAATTCCTCCTTTttaAATCAGTTTGAATTCACCGCTG-3´は使用され、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼコード遺伝子tpp(NCBI-ProteinID: AAB90791)はPCRにより取得され、プライマー358-F:5´- CAGCGGTGAATTCAAACTGATTtaaAAAGGAGGAATTCAAAATGTTCAAGCCGAAAGCGATCGCGGT-3´と359-R:5´- gcttgagctcgactctagaggatccTTAACGCAGCAGGCCCAGAAACTGCA-3´は使用され、pMA5-Pylb線状骨格はPCRにより取得され、プライマー;360-F:5´- TGCAGTTTCTGGGCCTGCTGCGTTAAggatcctctagagtcgagctcaagc-3´と361-R:5´- caacggcattggaaacgttcaccatACAAATCTCCCCCTTTGTTGTTTCT-3´は使用される。
【0074】
プライマーはすべて蘇州金唯智生物科技有限公司により合成された。遺伝子のPCR条件として、94℃ 5min変性とし、94℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 1min伸長、最後に72℃ 10min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。PCR反応で得られた生成物のそれぞれについて0.8%アガロースゲル電気泳動によって結果を分析した。ゲル画像システムによりイメージングした結果、断片のサイズが正しいと確認した後、DNA精製回収キット(天根生化科技有限公司、中国)を用いて目的断片を回収し、組換え発現ベクターの構築に用いた。
【0075】
その後、POE-PCRを用いて耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ遺伝子断片、耐熱性ホスホグルコムターゼ遺伝子断片、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ遺伝子断片、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼ遺伝子断片及びpMA5-Pylbベクター骨架を組み立てた。POE-PCR系は以下のとおりである。精製後のpMA5-Pylb線状骨格、200ng;精製後の耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ遺伝子断片、131ng、耐熱性ホスホグルコムターゼ遺伝子断片、131ng、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ遺伝子断片、131ng、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ遺伝子断片、131ng、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼ遺伝子断片、131ng;2×PrimeSTAR MAX DNA Polymerase(大連宝生物、中国)、25μL;50μLまで残量の水。POE-PCR条件として98℃ 2min変性とし、98℃ 15s変性、58℃ 15sアニーリング、72℃ 3.5min伸長、最後に72℃ 5min伸長のようなパラメータに従って30サイクルとした。連結産物を塩化カルシウム法によりコンピテントE.coli Top10に形質転換し、形質転換体を選択してコロニーのPCR及び二重酵素消化による同定を行い、2~3個の陽性形質転換体を選択してさらにシーケンシングして検証し、シーケンシングの結果、pMA5-Pylb-aGP-PGM-PGI-TPE-TPP組換え共発現ベクターが得られ、プラスミドのマップは
図7に示すとおりである。
【0076】
実施例6 組換え組み換え菌の構築
構築した組換え発現ベクターpMA5-Pylb-aGP、pMA5-Pylb-PGM、pMA5-Pylb-PGI、pMA5-Pylb-TPE、pMA5-Pylb-TPP、pMA5-Pylb-aGP-PGM-PGI-TPE-TPPをそれぞれ枯草菌工学菌SCK8-ST3に形質転換し、LB試験管で一晩培養し、プラスミド抽出キットでプラスミドを抽出し、正しいクローンSCK8-ST3/pMA5-Pylb-aGP、SCK8-ST3/pMA5-Pylb-PGM、SCK8-ST3/pMA5-Pylb-PGI、SCK8-ST3/pMA5-Pylb-TPE、SCK8-ST3/pMA5-Pylb-TPP、及びSCK8-ST3/pMA5-Pylb-aGP-PGM-PGI-TPE-TPPを保存した。
【0077】
実施例7 組換え組み換え菌全細胞の調製
組換え組み換え菌SCK8-ST3/pMA5-Pylb-aGP、SCK8-ST3/pMA5-Pylb-PGM、SCK8-ST3/pMA5-Pylb-PGI、SCK8-ST3/pMA5-Pylb-TPE、SCK8-ST3/pMA5-Pylb-TPP、及びSCK8-ST3/pMA5-Pylb-aGP-PGM-PGI-TPE-TPPをそれぞれ選択して、スペクチノマイシン含有LB培地に接種し、37℃で振とうさせて一晩培養した。培養物を1%の接種量でスペクチノマイシン含有の新しいLB培地に接種し、37℃で振とうさせて一晩培養し、5500rpmで10min遠心分離し、上清を捨てて、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼを発現させた全細胞、耐熱性ホスホグルコムターゼを発現させた全細胞、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼを発現させた全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼを発現させた全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを発現させた全細胞、及び耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ、耐熱性ホスホグルコムターゼ、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ及び耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを共発現させた全細胞を得た。
【0078】
実施例8 共発現する全細胞の触媒作用による澱粉からタガトースへの調製
実施例7で調製した、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ、耐熱性ホスホグルコムターゼ、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ及び耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを共発現させた全細胞を、50mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)で1回洗浄し、5500rpmで10min遠心分離し、上清を捨てて、沈殿に50mM Tris-HCl(pH 7.5)緩衝液を加え、菌体をOD600=約300となるまで再懸濁させた。再懸濁菌体を75℃で90min熱処理した。
【0079】
1L反応系に、終濃度100g/L澱粉、50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)及び熱処理全細胞をそれぞれ加えて、OD600=約20とした。70℃の水浴シェーカーにて46h反応させ、サンプリングして高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析を行った。HPLC検出条件として、クロマトグラフィーカラム Bio-Rad HPX-87H;流速 0.6mL/min;カラム温度は60℃;検出器は示差屈折率検出器;注入量は20μLとした。
【0080】
合計3回の並行重複実験を行って、タガトースの収量の反応時間に伴う変化の曲線図を
図8に示し、70℃水浴シェーカーにて46h反応後、HPLCにより試験の結果、タガトースの収量は50g/Lに達し、収率は50%に達した。
【0081】
実施例9 全細胞混合物の触媒作用による澱粉からタガトースへの調製
実施例7で調製した、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼを発現させた全細胞、耐熱性ホスホグルコムターゼを発現させた全細胞、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼを発現させた全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼを発現させた全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを発現させた全細胞を、それぞれ50mM Tris-HCl緩衝液(pH 7.5)で1回洗浄し、5500rpmで10min遠心分離し、上清を捨てて、沈殿に50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)をそれぞれ加え、菌体をOD600=約300となる再懸濁させた。再懸濁菌体を75℃で90min熱処理した。
【0082】
1L反応系に、終濃度100g/L澱粉、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)及び以上の4種の熱処理全細胞を加えて、OD600=約20とし、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼを発現させた全細胞、耐熱性ホスホグルコムターゼを発現させた全細胞、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼを発現させた全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼを発現させた全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを発現させた全細胞の添加割合を1:1:1:1:1とした。70℃水浴シェーカーにて46h反応させ、サンプリングしてHPLC分析を行った。合計3回の並行重複実験を行って、HPLC検出条件として、実施例8に同様にした。70℃水浴シェーカーにて46h反応後、HPLC試験の結果、タガトースの収量は73g/Lに達し、収率は73%に達した。
【0083】
実施例10 固定化全細胞の触媒作用による澱粉からタガトースへの調製
リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)1Lを用いて、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼ、耐熱性ホスホグルコムターゼ、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼ、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼ及び耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを共発現させた透過性全細胞を再懸濁させ、OD600=約400とし、モンモリロナイト1gを加えて、均一に撹拌した。5%(w/v)ポリエチレンイミン水溶液40mlを加えて室温条件下で凝集させ、50%グルタルアルデヒド水溶液20mlを加えて、室温で3h架橋した。その後、吸引ろ過して濾過ケーキ層を得、濾過ケーキを脱イオン水で洗浄した後に押し出して、粒子に調製し、乾燥して固定化全細胞を得た。
【0084】
反応系1Lに、終濃度100g/L澱粉、50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)及び固定化全細胞をそれぞれ加えて、OD
600=約20とし、70℃水浴シェーカーにて反応させた。反応終了後、反応液を4℃で遠心分離し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行ってタガトースの含有量を分析し、固定化粒子を収集して、緩衝液で洗浄し、次のロットの反応を行う。実験結果は
図9に示したとおりであり、結果により、固定化全細胞の触媒作用により澱粉からタガトースを生産する過程において、所定の生成物の収率は最高50%に達し、連続触媒反応のロットが増えるに伴い、生成物の収率は徐々に低下し、50ロット連続触媒後にも、生成物の収率は約36%に保持されることが明らかになった。
【0085】
実施例11 固定化全細胞混合物の触媒作用による澱粉からタガトースへの調製
1Lリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.0)を用いて、耐熱性α-グルカンホスホリラーゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性ホスホグルコムターゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性ホスホグルコースイソメラーゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸エピメラーゼを発現させた透過性全細胞、耐熱性タガトース6-リン酸ホスファターゼを発現させた透過性全細胞を1:1:1:1:1の割合で再懸濁させ、OD600=約300とし、モンモリロナイト0.8gを加えて、均一に撹拌した。5%(w/v)ポリエチレンイミン水溶液35mlを加えて室温条件下で凝集させ、50%グルタルアルデヒド水溶液18mlを加えて室温で3h架橋した。その後、吸引ろ過して濾過ケーキ層を得、濾過ケーキを脱イオン水で洗浄した後に押し出して、粒子に調製し、乾燥して固定化全細胞混合物を得た。
【0086】
反応系1Lに、終濃度100g/L澱粉、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.5)及び固定化全細胞をそれぞれ加えて、OD
600=約20とし、70℃水浴シェーカーにて反応させた。反応終了後、反応液を4℃で遠心分離し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行ってタガトースの含有量を分析し、固定化粒子を収集し、緩衝液で洗浄して、次のロットの反応を行った。実験結果は
図10に示したとおりであり、結果より、60ロット連続触媒の場合、生成物の収率はすべて50%を超え、最高73%以上に達することが明らかになった。実験の結果を
図10に示し、結果により、固定化全細胞混合物を連続して触媒反応させた場合、初期生成物の収率は最高73%以上に達し、連続触媒反応が進むに伴い、生成物の収率は徐々に低下し、60ロット連続触媒後にも、生成物の収率は52%に保持されることが明らかになった。
【配列表】
【国際調査報告】