(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】上昇した眼圧を下げる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/498 20060101AFI20240122BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240122BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240122BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240122BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
A61K31/498
A61P27/02
A61P27/06
A61K47/32
A61K9/107
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541979
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 IB2022050259
(87)【国際公開番号】W WO2022153208
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】202121001732
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507310592
【氏名又は名称】サン・ファーマ・アドバンスド・リサーチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】コパデ,アジャイ・ジェイシン
(72)【発明者】
【氏名】ハルダー,アリンダム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076DD38
4C076DD49
4C076DD50Z
4C076DD52
4C076EE08
4C076EE14
4C076EE16
4C076EE32
4C076FF16
4C076FF61
4C076FF67
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC52
4C086GA07
4C086GA14
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA58
4C086NA06
4C086NA10
4C086ZA33
(57)【要約】
本発明は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒトにおける上昇した眼圧を低下させる方法に関し、ここで、該方法は、ブリモニジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。本発明は、さらに、ブリモニジン又はその薬学的に許容される塩を含んでいる、眼科での使用に適した医薬組成物にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子(brimonidine loaded nano-resin particles)の可逆的クラスター及び(b)懸濁化剤を含んでいる水性懸濁液であって、前記ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子は、D
90値が70~900nmでD
50値が50~700nmである粒径分布を有し、並びに、前記懸濁液は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧の治療に使用するためのものである、前記水性懸濁液。
【請求項2】
前記D
90値が200nm~700nmである、請求項1に記載の水性懸濁液。
【請求項3】
前記ナノ樹脂粒子のD
50値が50~700nmである、先行する請求項のいずれかに記載の水性懸濁液。
【請求項4】
前記ナノ樹脂粒子のD
50値が100~500nmである、請求項3に記載の水性懸濁液。
【請求項5】
前記ナノ樹脂粒子のD
50値が150~350nmである、請求項3に記載の水性懸濁液。
【請求項6】
前記ナノ樹脂粒子のD
50値が200~300nmである、請求項3に記載の水性懸濁液。
【請求項7】
前記可逆的クラスターが、ブリモニジンを薬学的に許容される塩又は溶媒和物として含んでいる、先行する請求項のいずれかに記載の水性懸濁液。
【請求項8】
前記ブリモニジンがブリモニジン酒石酸塩である、請求項7に記載の水性懸濁液。
【請求項9】
前記懸濁液が患者の眼に1日1回投与される、先行する請求項のいずれかに記載の水性懸濁液。
【請求項10】
前記治療が、さらに、以下の段階:
(a)前記水性懸濁液による治療を開始する前に、治療を受ける患者の眼病歴を確認する段階;
(b)前記水性懸濁液による治療を開始した後、少なくとも16週間以内に、好ましくは、少なくとも12週間以内に、眼科検査を実施する段階(ここで、該検査は、傾眠、眼球充血、神経系障害又は口腔乾燥の出現をチェック及び/又はモニタリングすることを含んでいる);
(c)眼科医が決定した間隔で患者の症状に基づいて追加の眼科検査をオプションで実施する段階;
を含んでいる、先行する請求項のいずれかに従って使用するための水性懸濁液。
【請求項11】
平均眼圧が少なくとも2-6mmHg低下する、先行する請求項のいずれかに記載の水性懸濁液。
【請求項12】
前記懸濁液が、約0.05重量/体積%~約0.5重量/体積%のブリモニジン又はその薬学的に許容される塩を含んでいる、先行する請求項のいずれかに記載の水性懸濁液。
【請求項13】
前記懸濁液が、約0.2重量/体積%~約0.5重量/体積%のブリモニジン又はその薬学的に許容される塩を含んでいる、先行する請求項のいずれかに記載の水性懸濁液。
【請求項14】
前記懸濁液が、約0.35重量/体積%のブリモニジン酒石酸塩を含んでいる、先行する請求項のいずれかに記載の水性懸濁液。
【請求項15】
開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に先行する請求項のいずれかに記載の水性懸濁液を投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧を低下させる方法であって、ブリモニジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、ここで、該方法は、前記患者の眼圧を少なくとも2-6mmHg低下させ、及び、該方法は、約7~15週間の期間にわたって眼圧を低下させるのに有効である、前記方法。
【請求項17】
開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧を低下させる方法であって、請求項1~14のいずれかに記載の水性懸濁液を投与することを含み、ここで、該方法は、前記患者の眼圧を少なくとも2-6mmHg低下させ、及び、該方法は、約7~15週間の期間にわたって眼圧を低下させるのに有効である、前記方法。
【請求項18】
ブリモニジン又はその薬学的に許容される塩が、約0.05重量/体積%~0.5重量/体積%の濃度で存在している、請求項15~17に記載の方法。
【請求項19】
ブリモニジン又はその薬学的に供される塩が、ブリモニジン酒石酸塩であり、そして、約0.35重量/体積%の濃度で存在している、請求項15~18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、少なくとも12週間、眼圧を低下させるのに有効である、請求項15~19に記載の方法。
【請求項21】
ブリモニジンを患者の眼に1日1回投与する、請求項15~20に記載の方法。
【請求項22】
開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧を低下させる方法であって、ブリモニジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含み、ここで、投与後、患者はベースラインから>20%の眼圧低下を達成し、それは少なくとも12週間持続する、前記方法。
【請求項23】
開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧を低下させる方法であって、請求項1~14に記載の水性懸濁液を投与することを含み、ここで、投与後、患者はベースラインから>20%の眼圧低下を達成し、それは少なくとも12週間持続する、前記方法。
【請求項24】
前記患者が、ベースラインから>40%の眼圧低下を達成し、それは少なくとも12週間持続する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
ブリモニジン又はその薬学的に許容される塩が、約0.05重量/体積%~0.5重量/体積%の濃度で存在している、請求項22~24に記載の方法。
【請求項26】
ブリモニジン又はその薬学的に供される塩が、ブリモニジン酒石酸塩であり、そして、約0.35重量/体積%の濃度で存在している、請求項22~25に記載の方法。
【請求項27】
ブリモニジンを患者の眼に1日1回投与する、請求項22~26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒトにおける上昇した眼圧を低下させる方法に関し、ここで、該方法は、ブリモニジン又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む。本発明は、さらに、ブリモニジンを含んでいる水性懸濁液及びその薬学的使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、世界中で不可逆的な失明の主な原因となっている。それは、一般に、眼圧の上昇を伴い、それによって、網膜神経節細胞が損傷し、そして、治療しないと進行して失明し得る。眼圧は、眼の毛様体上皮によって継続的に分泌される液体である房水の分泌(流入)と排出(流出)の間の動的なバランスの尺度である。房水は、分泌されると、前房から瞳孔を通って眼に入り、そして、主に小柱網を通って、又は、程度は低いがぶどう膜強膜流出経路を通って、出る。小柱網は、シュレム管を介して房水を強膜神経叢及び全身血液循環に排出する。眼圧の上昇は、眼からの房水の不充分な排出に起因し、緑内障の主要な危険因子である。
【0003】
緑内障には、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障の2つの主要なタイプが存在する。開放隅角緑内障は、小柱網内の閉塞に起因する房水の排出低減によって引き起こされ、その結果、眼圧が上昇する。閉塞隅角緑内障は、虹彩と小柱網が接触していることを特徴とし、それによって、房水の流出が妨げられ、眼圧の上昇を引き起こす。閉塞隅角緑内障の症例の約50%では、虹彩と小柱網の間の長時間の接触により癒着が形成され、水性流出が永久に妨げられる。
【0004】
「高眼圧症」は、眼圧が正常レベルを超えて上昇した状態を示し、これは、視覚の機能障害は伴わないが、長期間経過すると緑内障を発症し得る。高眼圧症又は緑内障の医学的治療は、上昇した眼圧を機能障害を引き起こさない正常なIOPまで低下させることを目的とし、さらに、正常なIOPを維持することも目的としている。
【0005】
眼科用薬物送達は、製薬科学者が直面する最も困難な試みの1つである。目は、解剖学的にも生理学的にも独特な器官であり、独立した生理学的機能を有するいくつかの多種多様な構造を含んでいる。目の複雑さは、薬物送達戦略に独特の課題をもたらす。典型的には、点眼薬として局所投与された薬物の眼の生物学的利用能は、極めて低い。眼内における薬物の吸収は、眼の適切な機能を保証するいくつかの保護的な機構及び他の付随する要因(例えば、点眼液の鼻涙液排出;流涙及び涙のターンオーバー;短い角膜接触時間;代謝;涙の蒸発;非生産的な吸収/吸着;限られた角膜面積及び低い角膜透過性;及び、涙液タンパク質による結合)によって厳しく制限される。これらの要因は、眼による薬剤の吸収と配置に大きな影響を及ぼし、眼の薬剤の生物学的利用能の低下をもたらす。従って、薬物の最適な生物学的利用能を提供する眼用薬物送達システムを開発することは、難題である。
【0006】
ブリモニジン酒石酸塩は、緑内障に関連して上昇した眼の眼圧(IOP)を低下させるα-2-アドレナリン作動薬である。緑内障又は高眼圧症を患っている患者において、眼圧を下げるためにブリモニジンを局所的に使用することは知られている。
【0007】
ブリモニジンは、典型的には、高眼圧症の眼では約20~25%の、及び、正常圧の眼(21mmHg未満)では6~18%の、中程度のピークIOP低下をもたらす。そのピーク効果は、点眼後2時間以内であり、その効果の持続時間は、通常12時間未満であり、そして、その中程度の効果は、通常1日当たり2~3回の投与を必要とする。
【0008】
米国内における最初の眼科用ブリモニジン製品は、1996年にFDAによって承認された。商品名「Alphagan(登録商標)」で販売されているその製品は、ブリモニジン酒石酸塩の形態にあるブリモニジンを0.2%の濃度で含んでいた。2001年に、2番目の眼科用ブリモニジン製品が米国FDAによって承認された。商品名「Alphagan(登録商標)P」で販売されているこの製品は、ブリモニジン酒石酸塩を2種類のブリモニジン濃度(0.15%及び0.1%)で含んでいた。これらの濃度は、それぞれ、Alphagan(登録商標)中のブリモニジン濃度0.2%よりも低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、優れた眼圧降下作用(即ち、眼圧を低下させる効果)を有し、重大な副作用がなく、特に眼への刺激作用が最小限である、高眼圧症又は緑内障を治療するための組成物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、眼に投与された後で、その薬物の眼における生物学的利用能の増大をもたらし、その薬物の眼への作用を延長し、使用がより便利であり、眼への投与に伴う刺激又は他の不快症状を最小限に抑える、効率的で安定した眼科用薬物送達システムを提供することである。
【0011】
本発明は、この必要性を満たし、そして、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒトにおける上昇した眼圧を低下させるのに有効で1日1回眼に滴注することが可能なブリモニジン又はその薬学的に許容される塩を含んでいる新規水性懸濁液の形態にある眼科用組成物を提供する。
【0012】
本発明の新規組成物は、Alphagan P(登録商標)に対して処方される1日3回の点眼と比較して少ない投与頻度で、即ち、1日1回の点眼で、Alphagan P(登録商標)と同等の効力を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、(a)ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子(brimonidine loaded nano-resin particles)の可逆的クラスター及び(b)懸濁化剤からなる水性懸濁液に関し、ここで、前記ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子は、D90値が70~900nmでD50値が50~700nmである粒径分布を有し、並びに、ここで、前記懸濁液は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧の治療に使用するためのものである。
【0014】
本発明は、さらに、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧を治療する方法にも関し、ここで、該方法は、そのような治療を必要とする患者に上記で記載した水性懸濁液を投与することを含む。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧を低下させる方法に関し、ここで、該方法は、ブリモニジン若しくはその薬学的に許容される塩又は上記で記載した水性懸濁液を投与することを含み、ここで、該方法は、前記患者の眼圧を少なくとも2~6mmHg低下させ、及び、ここで、該方法は、約7~15週間の期間にわたって眼圧を低下させるのに有効である。
【0016】
本発明の別の態様は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧を低下させる方法に関し、ここで、該方法は、ブリモニジン若しくはその薬学的に許容される塩又は上記で記載した水性懸濁液を投与することを含み、ここで、投与後、患者はベースラインから>20%の眼圧低下を達成し、それは少なくとも12週間持続する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、(a)ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子の可逆的クラスター及び(b)懸濁化剤からなる水性懸濁液に関し、ここで、前記ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子は、D90値が70~900nmでD50値が50~700nmである粒径分布を有し、並びに、ここで、前記懸濁液は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧の治療に使用するためのものである。前記水性懸濁液は、驚くべきことに、持続的な眼科作用とともにブリモニジンの生物学的利用能を増加させることが可能であった。
【0018】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、ブリモニジンナノ樹脂粒子の可逆的なクラスターは、眼内に滴注されると、瞬きによる剪断力を受けて脱クラスター化する(decluster)と考えられる。その脱クラスター化した個々の薬物担持ナノ樹脂粒子は角膜の表面上で広がり、その後、眼組織内に存在するイオンの影響下でイオン交換現象を通して薬物を放出する。薬物の鼻涙による排出が低減する。全体的な現象は、長期にわたる眼科的作用とともにその薬物の生物学的利用能の増大を引き起こす。
【0019】
好ましくは、該ナノ樹脂粒子のD90値は、200~700nmの範囲内である。本発明者らは、該粒子が当該範囲内にある場合、前記水性懸濁液が特に有効であることを見出した。
【0020】
さらに、該ナノ樹脂粒子のD50は、好ましくは、50~700nm、さらに好ましくは、100~500nm、あるいは、150~350nm又は200~300nmの範囲内である。
【0021】
さらに、本発明による水性懸濁液のブリモニジン担持ナノ樹脂粒子の可逆的クラスターは、ブリモニジンを薬学的に許容される塩又は溶媒和物として含むこともできる。特に好ましい塩は、ブリモニジン酒石酸塩である。
【0022】
本明細書中で使用されている場合、用語「IOP」は、いずれにおいても、「眼圧」の略語である。IOPが上昇して21mmHgを超えると、伝統的に緑内障を引き起こすと疑われてきた(7); IOPが高いほど、視神経損傷及び視野喪失の可能性が高くなる。IOP>30mmHgでは、失明の潜在的なリスクは、15mmHgのIOPと比較して40倍大きくなる。
【0023】
用語「低減させる(reducing)」及び「低下させる(lowering)」は、そのような用語が適用される疾患、障害若しくは状態の可能性又はそのような疾患、障害若しくは状態の1以上の症状を低減させるための予防的使用を示している。
【0024】
ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子の「可逆的クラスター」という用語は、本発明によれば、個々のブリモニジン担持ナノ樹脂粒子が凝集体(aggregates)又は凝集体(agglomerates)(ここで、これらの凝集体は、好ましくは、約2マイクロメートル以上の平均サイズを有している)を形成し、剪断力が加えられると、デアグロメレート(deagglomerate)又は脱クラスター化して、個々のブリモニジン担持ナノ樹脂粒子になることを意味する。
【0025】
定性的には、脱クラスター化は、顕微鏡(Morphology G3S-IDTM Instrument, Make: Malvern(登録商標))によって、スライドガラス上で(なすりつけによる)剪断サンプルと非剪断サンプルを観察することにより、観察することができる。
【0026】
本明細書でさらに言及されるように、該クラスターのD50は、剪断を加える前に得られる粒径分布から得られる。粒径分布は、Malvern Mastersizer 2000(登録商標)などの適切な粒径分析装置で測定することができる。該粒径分析装置の超音波処理手段は使用せず、サンプルは、機械式撹拌機による撹拌のみに付す。
【0027】
クラスターの懸濁液を超音波処理槽内に入れ、約33±3kHzの超音波処理周波数を使用して5秒間剪断に付し、サンプルを取り出して粒径分布を測定する。それぞれ1分間隔で、該プロセスを5回繰り返す(実施例7を参照されたい)。
【0028】
本発明によるナノ樹脂粒子又は薬物担持ナノ樹脂粒子は、個々のイオン交換樹脂粒子を意味し、そして、その個々の粒子のクラスター又は凝集体を意味せず、ここで、個々の粒子は、D90値が約70ナノメートル~900ナノメートル、好ましくは200~700ナノメートルの範囲内にあることを特徴とする粒径分布を有する。該ナノ樹脂粒子の粒径分布は、上述したように、懸濁液を各1分間隔で周波数33±3KHzの5回のパルスに付した後で得られる粒径分布と考えることができる。
【0029】
個々のブリモニジン担持ナノ樹脂粒子は、70nm~900nm、好ましくは、200nm~700nmのD90の粒径分布値を有する。さらに、そのような薬物担持ナノ樹脂粒子は、700nm未満の平均粒径(D50)を有し得る。好ましくは、該ナノ樹脂粒子のD50は、50~700nm、好ましくは、100~500nm、あるいは、150~350nm又は200~300nmである。該ナノ樹脂の粒径分布は、さらに、D10が300nm未満、好ましくは、10nm~250nmであることも特徴とし得る。
【0030】
該可逆的クラスターは、平均粒径が好ましくは少なくとも2マイクロメートル(μm、又は、ミクロン)であるような粒径分布を有する。好ましいさらなる実施形態では、前記クラスターの粒径分布は、そのD90が80マイクロメートル未満、好ましくは、50マイクロメートル未満、最も好ましくは、30マイクロメートル未満であるようなものである。その粒径分布は、さらに、そのD50が40マイクロメートル未満、好ましくは、20マイクロメートル未満、さらに好ましくは、10マイクロメートル未満であることも特徴とし得る。前述したように、該可逆的クラスターは、剪断力が加えられると、デアグロメレート又は脱凝集する(deaggregate)して、ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子を形成する。
【0031】
本発明は、ヒトにおける上昇した眼圧を低下させる方法を提供し、ここで、該方法は、(a)ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子の可逆的クラスター(ここで、該クラスターは、少なくとも2マイクロメートルのD50値を有し、及び、該ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子は、そのD90値が70nm~900nmであり且つD50値が50nm~700nmであることを特徴とする粒径分布を有している)、及び、(b)懸濁化剤、及び、(c)薬学的に許容される賦形剤、を含んでいる水性懸濁液を投与することを含む。
【0032】
本発明者らは、驚くべきことに、前記水性懸濁液を投与された患者を特定の副作用についてモニターすることが重要であることを見いだした。例えば、本発明による懸濁液を投与された患者が、例えば、神経系障害、眼球充血、傾眠又は胃腸障害を患っていないかどうかをモニターすることが重要である。これを考慮すると、本発明による水性懸濁液の投与に加えて、患者のモニタリングを提供することは、重要である。前記患者のモニタリングは、1以上の潜在的な副作用の出現についての眼科検査を含んでいる。眼への永久的な損傷を避けるために、前記検査が水性懸濁液による治療開始後の短期間内に、例えば、16週間以内に、場合によっては、12週間以内に行われることがさらに重要である。
【0033】
従って、場合により、本発明による水性懸濁液を用いた上記治療は、さらに、以下の段階:
(a)該水性懸濁液による治療を開始する前に、治療を受ける患者の眼病歴を確認する段階;
(b)該水性懸濁液による治療を開始した後、少なくとも16週間以内に、好ましくは、少なくとも12週間以内に、好ましくは眼科医によって、眼科検査を実施する段階(ここで、該検査は、傾眠、眼球充血、神経系障害又は口腔乾燥の出現をチェック及び/又はモニタリングすることを含んでいる);
(c)眼科医が決定した間隔で患者の症状に基づいて追加の眼科検査をオプションで実施する段階;
を含んでいる。
【0034】
本発明による水性懸濁液及びその使用のさらなる実施形態では、ブリモニジン又はその薬学的に許容される塩は、0.05重量/体積%~0.5重量/体積%の濃度で存在している。好ましい実施形態では、該薬学的に許容される塩は、ブリモニジン酒石酸塩である。最も好ましくは、該懸濁液は、約0.35重量/体積%のブリモニジン酒石酸塩を含んでいる。さらなる実施形態では、該懸濁液は、約0.2重量/体積%~約0.5重量/体積%のブリモニジン又はその薬学的に許容される塩(特に、ブリモニジン酒石酸塩)を含んでいる。
【0035】
一実施形態では、ブリモニジン酒石酸塩は、該懸濁液の中に、0.35重量/体積%の濃度で存在している。別の実施形態では、本発明の水性懸濁液は、0.15重量/体積%の濃度のブリモニジン酒石酸塩を含んでいる。
【0036】
さらなる実施形態では、該樹脂は、ポリスチレンジビニルベンゼンスルホネートである。別の実施形態では、該懸濁化剤は、カルボポールとポリビニルピロリドンとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物である。さらに別の実施形態では、該樹脂は、ポリスチレンジビニルベンゼンスルホネートであり、及び、該懸濁化剤は、カルボポールとポリビニルピロリドンとヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物である。該ナノ樹脂粒子とブリモニジンの重量比は、約1:1であり、そして、そのpHは、約7~8である。
【0037】
別の実施形態では、該樹脂は、カチオン交換樹脂である。カチオン交換体のマトリックスは、スルホン酸基、カルボン酸基及びリン酸基などのイオン基を保持している。アニオン交換体のマトリックスは、第一級、第二級、第三級又は第四級アンモニウム基を保持している。該樹脂マトリックスは、その物理的特性、生物学的物質に対するその挙動を決定し、及び、ある程度、その能力を決定する。ブリモニジンは正電荷を有しているので、カチオン交換樹脂と結合することができる。スルホン酸交換体は、本発明の薬剤レジネート水性懸濁液に使用される最も一般的なカチオン交換樹脂である。一般に、それらは、重合後に硫酸又はクロロスルホン酸で処理することで導入されたスルホン酸基を有する架橋ポリスチレンである。本発明において使用することができる適切なカチオン交換樹脂としては、限定するものではないが、以下のものなどを挙げることができる:ポリスチレンジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、例えば、Rohm and Haasから商品名AmberliteTMIRP69で市販されているもの; ポラクリレックス樹脂(これは、メタクリル酸とジビニルベンゼンの多孔質コポリマーから誘導される)、例えば、Rohm and Haasから商品名AmberliteTMIRP64で市販されているもの; ポラクリリンカリウム(これは、メタクリル酸とジビニルベンゼンから誘導される架橋ポリマーのカリウム塩である)、例えば、Rohm and Haasから商品名AmberliteTMIRP88で市販されているもの。会社Ion Exchange India Ltd.によってINDIONTM234;INDIONTM264;INDIONTM204;INDIONTM214などの商品名で市販されている樹脂も使用することができる。一実施形態では、本発明で使用される好ましい樹脂は、スチレンとジビニルベンゼンのスルホン化コポリマーから誘導されるAmberlite IRP69である。Amberlite IRP69は、医薬品グレードの強カチオン交換樹脂であり、構造的には、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンスルホン酸樹脂、即ち、ポリスチレンジビニルベンゼンスルホン酸塩である。Amberlite IRP69樹脂は、Rhom & Haas Companyから市販されている。該樹脂内の可動性のある又は交換可能なカチオンはナトリウムであり、これは、カチオン性(塩基性)種と交換され得るか又は置き換えられ得る。本発明の実施形態では、正に帯電したカチオン性薬物をAmberlite樹脂の負に帯電したスルホン酸基に結合させる。
【0038】
本発明の水性懸濁液の中に存在しているカチオン交換樹脂の量は、その懸濁液の約0.05重量/体積%~5.0重量/体積%の範囲内であり得る。樹脂とブリモニジンの重量比は、0.1:1~1:0.1の範囲内、さらに好ましくは、0.3:1~1:0.3の範囲内であり得る。好ましい一実施形態では、該ナノ樹脂粒子とブリモニジンとの重量比は、約1:1である。本発明に従って使用されるナノ樹脂粒子は、D90値が70nm~900nm、好ましくは、200nm~700nmであることを特徴とする粒径分布を有し得る。
【0039】
本発明による水性懸濁液は、1以上の懸濁化剤を含有し得る。該懸濁化剤は、該懸濁液の粘度を高めるために、該ナノ樹脂粒子をミクロンサイズのクラスターにクラスター化させるために、及び、該懸濁液の固化を防止するために、使用される。適切な懸濁化剤は、アニオン性ポリマー、非イオン性ポリマー又はそれらの混合物から選択される。該アニオン性ポリマーは、カルボキシビニルポリマー又はカルボマー(これは、カルボポールとしても知られている)のようなアクリル酸のポリマーからなる群から選択することができる。Carbopol 934P、974及び1342などを包含する様々なグレードのカルボマーを本発明で使用することができる。アクリル酸のポリマーは、本発明の水性懸濁液の中に、その懸濁液の約0.01重量/体積%~0.5重量/体積%の範囲内の量で存在し得る。使用することが可能な他のアニオン性ポリマーとしては、限定するものではないが、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グアーガム、コンドロイチン硫酸及びアルギン酸ナトリウムなどがある。特に、使用し得る好ましいアニオン性ポリマーとしては、Carbopol 974Pなどを挙げることができる。このアニオン性ポリマーは、最も好ましくは、該懸濁液の0.1%w/vの量で使用する。本発明に従って使用することが可能な非イオン性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ソルプラス-a ポリビニルカプロラカタム-ポリ酢酸ビニル-PEGグラフトコポリマー、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなど)などの非イオン性ポリマーからなる群から選択することができる。該非イオン性ポリマーは、本発明の水性懸濁液の中に、その懸濁液の約0.1重量/体積%~約5.0重量/体積%の範囲の量で存在し得る。使用し得る好ましい非イオン性ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンなどがある。薬学的に許容される様々なグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(これは、ヒプロメロース又はHPMC又はMethocelとしても知られている)及びポリビニルピロリジン(これは、ポビドン又はPVP又はプラスドンとしても知られている)を使用することができる。本発明の懸濁液において使用することが可能なポリビニルピロリジンの好ましいグレードとしては、PVP K-30、PVP K-25、PVP K-50、PVP K-60及びPVP K-90などがある。それは、該水性懸濁液の中に、その懸濁液の約0.5重量/体積%~約3.0重量/体積%の範囲の量で存在し得る。本発明の水性懸濁液に使用される最も好ましいグレードは、PVP K-90であり、その10%w/v水溶液は、20℃で約300.0cps~約700.0cpsの範囲内の動粘度を有し、約1,000,000~1,500,000のおおよその分子量を有する。好ましい実施形態では、ポリビニルピロリジンPVP K-90を該懸濁液の1.2%w/vの量で使用する。本発明の水性懸濁液の中で使用するために選択し得るヒドロキシプロピルメチルセルロースの好ましいグレードとしては、限定するものではないが、以下のものなどがある:METHOCEL E、(USPグレード 2910/HYPROMELLOSE 2910); METHOCEL F、(USPグレード 2906/HYPROMELLOSE 2906); METHOCEL A15 (Premium LV); METHOCEL A4C (Premium); METHOCEL A15C (Premium); METHOCEL A4M (Premium), HPMC USP Grade 1828など。これらの物質は、本発明の水性懸濁液の中に、その懸濁液の約0.5重量/体積%~約3.0重量/体積%の範囲内の量で存在し得る。最も好ましい実施形態では、該水性懸濁液は、Hypromellose 2910を0.3%w/vの量で含んでいる。該懸濁化剤に対する補助として、ナノ樹脂粒子の凝集を電解質によって助成することもできる。
【0040】
本発明による水性懸濁液は、約2cps~4000cps、好ましくは、約5cps~400cpsの範囲内の粘度を有し得る。該水性懸濁液の粘度は、既知の技術及び機器によって、例えば、標準条件下で、Brookfield viscometerTMによって、測定することができる。本発明の一実施形態による水性懸濁液は、眼内に滴注されてもその粘度を維持すること、即ち、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、塩化物及び重炭酸塩などの様々なイオンを含んでいる眼液と接触しても粘度は実質的に変化しないこと、に留意されたい。
【0041】
本発明による水性懸濁液は、キレート剤、保存剤及び保存剤用のアジュバントなどの他の薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る。該水性懸濁液は、さらに、1以上の浸透剤(osmotic agent)/張性調節剤(tonicity adjusting agent)、1以上の薬学的に許容される緩衝剤及び/又はpH調整剤を含有することができる。これらの賦形剤は、注射用水などの薬学的に許容される水性ビヒクルに溶解又は分散させることができる。
【0042】
眼科用調製物に適した最適なpHを達成し、その後維持するために、本発明の水性懸濁液は、適切な量のpH調節剤及び/又は緩衝剤を含有し得る。該水性懸濁液のpHの好ましい範囲は、約5.0~約8.0、好ましくは、7.0~8.0である。最も好ましいpHは、約7.4である。本発明の水性懸濁液は、トロメタミン、酢酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、リン酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酒石酸又はその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トロメタモールなど及びそれらの混合物を含む群から選択され得る薬学的に許容されるpH調節剤を含んでいる。特に、本発明の水性懸濁液の中で使用し得る好ましいpH調節剤としては、トロメタミン、酢酸、塩酸、炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムなどがあり、最も好ましくは、トロメタミンである。
【0043】
本発明の水性懸濁液は、人間の目の中に存在している眼液に関して等張であることができ、そして、250~375mOsm/kgの浸透圧を特徴とする。浸透圧は、浸透圧/張性調節剤を添加することによって調節する。人間の目の中に存在している眼液に対して等張にするために本発明の懸濁液において使用し得る浸透剤(osmotic agent)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、臭化ナトリウム、マンニトール、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、ブドウ糖、スクロースなど及びそれらの混合物を含む群から選択される。これらは、所望の浸透圧を維持するために適切な量で使用される。本発明の好ましい実施形態では、浸透剤(osmotic agent)として、マンニトールなどの非イオン性浸透剤を使用する。マンニトールは、本発明の懸濁液の中に、約2.0w/v%~約6.0%w/vの量で、好ましくは、約3.0w/v%~約5.0%w/vの量で、最も好ましくは、約4.5%w/vの量で、存在し得る。
【0044】
さらに、本発明の水性懸濁液は、抗菌有効量の保存剤を含有することができる。本発明の水性懸濁液の中で使用し得る保存剤は、限定するものではないが、以下のものから選択することができる:第4級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム(BKC)、臭化ベンゾドデシニウム、塩化セトリモニウム、ポリキセトニウム、及び、塩化ベンゼトニウム; 有機水銀、例えば、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、及び、チメロサール; パラベン類、例えば、メチルパラベン、及び、プロピルパラベン; パラオキシ安息香酸エチル、又は、パラオキシ安息香酸ブチル; 酸及びその薬学的に許容される塩、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、アスコルビン酸、ホウ酸、ホウ砂、サリチル酸; 置換アルコール類及びフェノール類、例えば、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール; アミド類、例えば、アセトアミド; 他の保存剤、例えば、Polyquad(登録商標)、ポリヘキサメチレンビグアニド、過ホウ酸ナトリウム、アミノメチルプロパノール、酢酸クロルヘキシジン、イオン性保存剤を含んでいる自己保存システム、例えば、亜鉛とホウ酸塩の組み合わせ;など、及び、それらの組み合わせ。好ましくは、本発明の眼科用水性懸濁液は、保存剤として、「第4級アンモニウム化合物」、特に、塩化ベンザルコニウムを含んでいる。塩化ベンザルコニウムは、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドの混合物として特徴付けられる。それは、本発明の水性懸濁液の中で、約0.005%w/v~約0.05%w/vの濃度で、好ましくは、0.02%w/vの濃度で、使用することができる。該水性懸濁液は、さらに、保存剤に対するアジュバント(例えば、N-ラウロイルサルコシンナトリウム)を適切な量で含有することができる。使用することが可能な適切なキレート剤は、エデト酸二ナトリウムである。
【0045】
本発明の水性懸濁液は、その製品の保存期間中、物理的及び化学的に安定なままである。例えば、薬物ブリモニジンを含んでいる水性懸濁液の場合、該懸濁液を長期間保存した後で、ブリモニジンのアッセイにおいて有意な変化は生じない。該薬物のアッセイは指定された制限内に留まり、保管中に分解生成物や不純物は観察されなかった。さらに、関連する物質においても有意な増大はなかった。
【0046】
組織分布研究から、本発明の方法によって薬物を後眼部に送達することが可能であることが確認された。後眼部に薬物を送達することが可能な本発明の能力によって、本発明は、治療が困難な後眼部の疾患を治療するのに適している。例えば、ブリモニジンの場合、後眼部への送達は、ニューロンの変性を防止し、神経保護作用を付与するのに役立つ。このことは、驚くべき発見であった。それは、この方法が、眼に滴注した際、持続的な眼科的作用に加えて薬物の生物学的利用能の増大をもたらしたのみではなく、後眼部への送達を達成することも可能としたからである。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子の可逆的なクラスターは、眼内に滴注されると、瞬きによる剪断力を受けて脱クラスター化する(decluster)と考えられる。その脱クラスター化した個々の薬物担持ナノ樹脂粒子は角膜の表面上で広がり、その後、眼組織内に存在するイオンの影響下でイオン交換現象を通して薬物を放出する。薬物の鼻涙による排出が低減する。全体的な現象は、長期にわたる眼科的作用とともにその薬物の生物学的利用能の増大を引き起こす。
【0047】
本発明のさらなる態様は、該水性懸濁液自体に関する。
【0048】
本発明の別の態様は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧を治療する方法に関し、ここで、該方法は、そのような治療を必要とする患者に上記で記載した水性懸濁液を投与することを含む。
【0049】
さらなる態様において、本発明は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト患者における上昇した眼圧を低下させる方法に関し、ここで、該方法は、ブリモニジン若しくはその薬学的に許容される塩又は上記で記載した水性懸濁液を投与することを含み、ここで、該方法は、前記患者の眼圧を少なくとも2~6mmHg低下させ、及び、ここで、該方法は、約7~15週間の期間にわたって眼圧を低下させるのに有効である。
【0050】
さらに特に好ましい実施形態では、本発明は、ヒトにおける上昇した眼圧を低下させる方法を提供し、ここで、該方法は、ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子の可逆的クラスター(ここで、前記クラスターは、好ましくは、少なくとも2マイクロメートルのD50値を有し、及び、前記ブリモニジン担持ナノ樹脂粒子は、D90値が70nm~900nmであり、D50値が50nm~700nmであることを特徴とする粒径分布を有する)及び懸濁化剤を含んでいる上記水性懸濁液を投与することを含み;ここで、該薬物は、ブリモニジン酒石酸塩であり、これは、0.35%w/vの量で存在しており;該樹脂は、ポリスチレンジビニルベンゼンスルホン酸塩であり;及び、該懸濁化剤は、カルボポール、ポリビニルピロリドン及びヒドロキシルプロピルメチルセルロースの混合物である。該ナノ樹脂粒子とブリモニジンの重量比は、約1:1であり;及び、pHは、約7~8である。さらに、驚くべきことに、本発明の水性懸濁液は、より高濃度(約0.35%w/v)の薬物を含有しているにもかかわらず、副作用や毒性のない非常に安全な眼科用懸濁液を提供した。
【0051】
驚くべきことに、本発明の発明者らは、本発明の製剤が統計的に有意なIOP低下効果を示したことを見いだした。
【0052】
IOPが1mmHg低下するごとに、視野損失が実質的に防止され得る。本発明の効果のより長い持続時間は、24時間にわたって実質的な効果を生み出す。
【0053】
1以上の実施形態において、本発明の水性懸濁液は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒトの平均眼圧を効果的に低下させる。
【0054】
ベースラインIOPからの平均低下は、各追跡時点において、各治療群内で統計的に有意であった。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明の水性懸濁液を1日1回投与した後で、平均IOPがベースラインから少なくとも2~6mmHg低下した。
【0056】
1以上の実施形態において、本発明の水性懸濁液は、ベースラインから少なくとも20%のIOP低下をもたらす。治療された眼におけるIOP低下は、ブリモニジンの最も最適化された製剤(Alphagan(登録商標) P、0.1%)で見られるものと同等であるか又はそれよりも勝った。
【0057】
別の実施形態では、本発明の水性懸濁液は、ベースラインから約30%~約50%のIOP低下をもたらす。
【0058】
従って、本発明の水性懸濁液が、1日3回投与されたAlphagan P(登録商標) 0.1%と比較して、1日1回投与された場合に、改善された効力を提供するのみではなく、IOPの有意な低下も提供することは、極めて予想外であり、驚くべきことである。
【0059】
本発明について上記で概括的に開示してきたが、さらなる態様については、以下の実施例を参照して、さらに論じ及び例証する。しかしながら、該実施例は、本発明について単に例証するために提供されており、本発明をそれら実施例に限定するものと考えるべきではない。
【実施例】
【0060】
実施例
実施例1: ブリモニジンの水性懸濁液
樹脂Amberlite(登録商標) IRP69を無水アルコールで複数回洗浄した。その樹脂を、中性(pH7.0)に近いpHが得られるまで、ミリポア水でさらに洗浄した。樹脂の粒径分布は、Malvern Mastersizer 2000(登録商標)Ver.5.60(Malvern Instruments Ltd., Malvern, UK)を使用して測定した。該樹脂は、D
10が2.341ミクロン、D
50が5.175ミクロン及びD
90が10.41ミクロンであるような粒径分布を有していた。この樹脂は、以下に示されている表1の組成物を調製するのに使用した。
【表1】
ステンレス鋼(SS316)製ビーカーの中に総バッチサイズの15%の注射用水を入れ、85℃に加熱した。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース2910)を高速撹拌しながら分散させて、均一な分散液を得た。温度が25℃に達するまで撹拌を続けた。別のステンレス鋼(SS316)製ビーカーの中に総バッチサイズの注射用水の一部を入れて25℃にした。ポリビニルピロリドン(ポビドンK-90)を注射用水に撹拌しながら分散させて、均一な分散液を得た。
【0061】
ステンレス鋼(SS316)製ビーカーの中に総バッチサイズの約10%の注射用水を入れ、65℃に加熱した。Carbopol 974Pをその加熱した注射用水に撹拌しながら分散させた。温度が25℃に達するまで撹拌を続けた。Carbopol 974Pスラリーをトロメタミンで中和した(pH7.4)。上記で得られたヒプロメロース及びポビドンポリマー分散液を、Carbopol 974P相に順次添加した。そのポリマー混合物を121℃で20分間オートクレーブ処理した。N-ラウリルサルコシンナトリウムを、総バッチサイズの注射用水の一部に混合させ、0.2ミクロンのナイロンフィルターで濾過した後、該ポリマー相に添加した。マンニトールを50~60℃で注射用水の一部に溶解させ、塩化ベンザルコニウム及びエデト酸二ナトリウムを加えて透明な溶液を形成した。この溶液を上記のポリマー相に添加した。総バッチサイズの15%の注射用水を容器に入れ、撹拌しながらAmberlite IRP69を分散させた。別の容器に、総バッチサイズの15%の注射用水を入れ、撹拌しながらブリモニジン酒石酸塩を加えて溶解させた。この溶液を0.2ミクロン及び0.45ミクロンのナイロンフィルターを通して濾過した。その濾過したブリモニジン酒石酸塩溶液を、上記のオートクレーブ処理したAmberlite IRP69分散液に添加し、30分間撹拌した。そのAmberlite IRP69とブリモニジン酒石酸塩の分散液を、上記で得られたポリマー混合物に撹拌しながら添加し、撹拌を1時間続けた。トロメタミン溶液を用いてpHを約7.4に調節した。その懸濁液の体積は、最終的に100%のバッチサイズとした。その懸濁液を60分間撹拌し、続いて、15000rpmで10分間均質化した。
【0062】
その懸濁液を周波数33±3KHzでの超音波処理に5秒間付し、サンプルを取り出してMalvern Mastersizer 2000(登録商標), Ver.5.60(Malvern Instruments Ltd., Malvern, UK)によって粒径分布を測定した。毎回1分間の間隔の後、該超音波処理プロセスとそれに続く粒径の測定を5分間繰り返した。粒径分布については、以下の表2を参照されたい。
【表2】
観察結果: ブリモニジン担持樹脂粒子の粒径分布はミクロンサイズのままであることが観察され、周波数33±3KHzでの5秒間の超音波処理による剪断を加えた後、5分間の終了時点でD
50は5ミクロンであった。さらに、D
90も剪断力の影響を受けず、10ミクロンの範囲内に留まった。
【0063】
精製されたナノ樹脂の調製
精製されたナノ樹脂の調製: 樹脂Amberlite(登録商標) IRP69を、メタノール又は無水アルコールなどの適切なアルコールで複数回洗浄した。その樹脂を、中性(pH7.0)に近いpHが達成されるまで、加熱したミリポア水でさらに洗浄した。その洗浄した樹脂を湿式粉砕に付して、粒径をナノメートル範囲(D90が900nm未満)まで小さくした。その洗浄した樹脂と安定化ジルコニアビーズを、テフロンでコーティングされた磁性ビーズを含んでいる容器の中の注射用水に加えた。その容器を磁気撹拌機上で湿式粉砕のために約24~48時間保持して、ナノサイズに粉砕された樹脂粒子を得た。形成されたスラリーを25ミクロンの篩に通してビーズを除去し、さらに、40ミクロンのPPフィルターに通した。上記で得られた粉砕された樹脂懸濁液を、500kDの中空糸カートリッジを使用するダイアフィルトレーションに付し、水抽出可能な不純物が樹脂の1.0重量%未満に減少した。その粉砕された樹脂懸濁液を注射用水でさらに洗浄した。このスラリーを凍結乾燥して、粉砕して精製された樹脂の乾燥粉末形態を得た。
【0064】
該粉砕された樹脂の粒径分布は、Malvern Mastersizer 2000(登録商標) Ver.5.60(Malvern Instruments Ltd., Malvern, UK)を使用して測定した。その粒径分布は、D10=0.148ミクロン、D50=0.24ミクロン、及び、D90=0.606ミクロンであるような粒径分布であった。このナノ樹脂は、以下に記載されている実施例2~実施例5の水性懸濁液を調製するのに使用した。
【0065】
実施例2(A)及び実施例2(B)
【表3】
実施例2(A)及び(B)の水性懸濁液は、以下のように調製した。
【0066】
ステンレス鋼(SS316)製ビーカーの中に、総バッチサイズの約15%の注射用水を入れ、85℃に加熱した。ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース2910)などの特定のポリマービヒクルを高速撹拌しながら分散させて、均質な分散液を得た。温度が25℃に達するまで撹拌を続けた。別のステンレス鋼(SS316)製ビーカーの中に、総バッチサイズの約12%の注射用水を25℃で入れた。ポリビニルピロリドン(ポビドンK-90)を注射用水に撹拌しながら分散させて、均質な分散液を得た。実施例2の場合、ステンレス鋼(SS316)製ビーカーの中に、総バッチサイズの約10%の注射用水を入れ、65℃に加熱した。Carbopol 974Pを加熱した注射用水の中に撹拌しながら分散させた。温度が25℃に達するまで撹拌を続けた。そのCarbopol 974Pスラリーをトロメタミンで中和した(pH7.4)。上記で得られたヒプロメロース及びポビドンポリマー分散液を、Carbopol 974P相に順次添加した。そのポリマー混合物を121℃で20分間オートクレーブ処理した。N-ラウリルサルコシンナトリウムを注射用水の一部に混合させ、0.2ミクロンのナイロンフィルターで濾過した後、ポリマー相に添加した。マンニトールを注射用水の一部に50~60℃で溶解させ、塩化ベンザルコニウム及びエデト酸二ナトリウムを加えて透明な溶液を形成した。この溶液を上記ポリマー相に添加した。総バッチサイズの注射用水の一部を容器に入れ、実施例1に従って得られたAmberlite IRP69を撹拌しながら分散させた。この分散液を121℃で20分間オートクレーブ処理した。別の容器の中に、注射用水の一部を入れ、撹拌しながらブリモニジン酒石酸塩を加えて溶解させた。この溶液を0.2ミクロン及び0.45ミクロンのナイロンフィルターを通して濾過した。その濾過したブリモニジン酒石酸塩溶液を、上記のオートクレーブ処理したAmberlite IRP69分散液に添加し、30分間撹拌した。
【0067】
Amberlite IRP69及びブリモニジン酒石酸塩の分散液を、上記で得られたポリマー混合物に撹拌しながら添加し、撹拌を約30分~1時間続けた。その懸濁液の体積は、最終的に、100%バッチサイズとした。その懸濁液を約60分間撹拌し、続いて、15000rpmで10分間均質化した。トロメタミン溶液を用いてpHを約7.4に調節した。実施例2(A)の水性懸濁液の粘度をBrookfield粘度計を使用して測定して、19.7cpsであることが確認された。
【0068】
実施例3-実施例5
実施例3~実施例5の水性懸濁液は、HPMC及びPVPを添加する段階を除いた以外は、上記と同様の方法で調製した。
【表4】
実施例3~実施例5の水性懸濁液の粘度は、Brookfield粘度計を使用して測定した。それらの粘度は、それぞれ、8.2cps、12.0cps、及び、97.9cpsであることが確認された。
【0069】
実施例6
実施例2(A)の水性懸濁液を5mL容の白色不透明LDPE容器に入れ、化学的安定性の評価を行った。実施例2(A)の懸濁液を入れたボトルを加速安定性条件に付して、製品の保存期間中の貯蔵安定性を確認した。ボトルは、さまざまな条件で保管した。ボトルは、直立に、及び、「横向き」の位置に、保管した。ブリモニジンのアッセイに関する観察結果は、以下の表5及び表6に示されている。
【表5】
【表6】
表5~表6の結果は、長期間保存した後のブリモニジンのアッセイにおいて有意な変化がなかったことを示している。薬物のアッセイは、指定された制限内に留まり、保管中に分解生成物や不純物は観察されなかった。さらに、関連物質の有意な増加もなかった。本発明による懸濁液は、製品の保存期間中、化学的に安定なままであった。該懸濁液は、室温で安定である。
【0070】
実施例7
この実施例は、実施例2(A)で懸濁されたブリモニジン担持ナノ樹脂粒子の可逆的クラスターに対する剪断の効果を説明するものであり、該可逆的クラスターは、剪断(例えば、目の瞬きによって生じる剪断)を受けると、脱クラスター化して個々の薬物担持ナノ樹脂粒子になる。この効果は、最初と剪断を加えたときの粒径分布に関して測定した。
【0071】
手順: 該懸濁液を含んでいるバイアルをバスソニケーター(モデルタイプ: MC-109 and SI no-1909; Oscar Ultrasonic Pvt. Ltd.製)の上に置くことによって試験サンプルに剪断を加えた。剪断は、33±3kHzの超音波処理周波数の形態で5秒間加え、その後、サンプルを取り出して、粒径分布を測定した。それぞれ1分間の間隔をあけて、このプロセスを5回繰り返した。
【0072】
粒径の測定は、Malvern Mastersizer 2000(登録商標), Ver.5.60(Malvern Instruments Ltd., Malvern, UK)を使用して実施したが、分析装置の超音波処理手段は使用しなかった。サンプルは、機械式撹拌機による穏やかな撹拌のみを受けた。観察結果は、以下の表7において要約されている。
【表7】
観察結果: 実施例2(A)のブリモニジン担持ナノ樹脂粒子のクラスターは、懸濁液に剪断力が加えられると完全に崩壊したことが確認された。これは、表7に示されているように、剪断/超音波処理を加えた際に観察された粒径の低減によって明らかであった。薬物-樹脂ナノ粒子のD
50は、当初約19.5ミクロンであったが、剪断を一定の間隔で5分間加えると崩壊し、0.213ミクロン(213nm)のD
50を有する個々の薬物-樹脂ナノ粒子に変換された。
【0073】
これに対し、比較例1の場合には、崩壊はなく、粒径は変化しなかった。これは、表2から明らかである。表2に示されているように、懸濁した薬物-樹脂粒子のD50は、最初は約5.2ミクロンであり、そして、剪断を一定の間隔で5分間加えた後でも、粒子のサイズは変化せず、ほぼ同じままであった(即ち、5.176ミクロン)。
【0074】
実施例8
開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒトにおける、1日3回のAlphagan(登録商標) Pと比較した1日1回のブリモニジン酒石酸塩眼科用懸濁液剤の、無作為化、多施設、研究者-隠匿、並行群、同等性研究
この研究は、ブリモニジン酒石酸塩0.35%眼科用懸濁液剤(午前8:00にQD投与)とブリモニジン酒石酸塩0.1%(ほぼ午前8:00、午後2:00及び午後8:00にTID投与)を比較するために、第2週、第6週及び第12週の3つの時点(午前8:00、午前10:00、午後4:00)のそれぞれにおいて、平均IOPの推定値を取得するように設計された。
【0075】
主な目的は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っているヒト被験者(即ち、患者)において、TID投与されたブリモニジン酒石酸塩眼科用溶液剤0.1%(「Alphagan」)と比較して、上記実施例2(A)に従って調製したブリモニジン酒石酸塩眼科用懸濁液剤0.35%の1日1回(QD)投与の効力を評価することであった。
【0076】
第2の目的は、開放隅角緑内障又は高眼圧症を患っている被験者において、TID投与されたブリモニジン酒石酸塩眼科用溶液剤0.1%と比較して、本発明のブリモニジン酒石酸塩眼科用懸濁液剤0.35%のQD投与の安全性を評価することであった。
【0077】
眼圧降下薬で慢性的に治療されている被験者は、他の有効な眼圧降下薬の残留効果を最小限に抑えるために、研究に参加する前に適切な休薬期間を受けることが必要であった。
【0078】
開放隅角緑内障、偽落屑、色素分散又は高眼圧症を患っている適格なヒトを、来院2/午前8時の研究眼のIOPに基づいて2つの群に層別した:IOP≦25mmHg、又は、IOP>25mmHg。各層及び部位内で、被験者は来院2でランダムに割り当てられた(1:1の比率)。約666人の被験者が登録された。
【0079】
両眼に開放隅角緑内障(偽落屑、色素分散要素の有無にかかわらず)又は高眼圧症を有し、単剤療法で制御できる可能性が高い被験者が含まれていた。
【0080】
一次有効性変数は、第2週、第6週及び第12週の3つの時点(午前8:00、午前10:00、午後4:00)のそれぞれにおける時間一致平均IOP(研究眼)であった。これらのサンプル値を使用して、9つの時点(3日のそれぞれで3回)のそれぞれにおけるIOPの治療群間の差によって定義される一次エスティマンドの点推定値を計算した。
【0081】
二次有効性変数は、以下のとおりであった:
2週目、6週目及び12週目の3つの時点(午前8:00、午前10:00、午後4:00)それぞれにおけるベースライン平均IOP(研究眼)からの時間一致変化;
2週目、6週目及び12週目の3つの時点(午前8:00、午前10:00、午後4:00)のそれぞれにおける標準偏差IOP(研究眼);及び、
第2週、第6週及び第12週の3つの時点(午前8:00、午前10:00、午後4:00)のそれぞれにおけるIOP(研究眼)のベースラインからの時間一致パーセント変化。
【0082】
一次有効性解析は、プロトコルごとの母集団を使用して、第2週、第6週及び第12週の各時点(午前8時、午前10時及び午後4時)(合計9時点)における2つの治療群間の時間一致IOP測定値の差に関する両側95%信頼区間を構築することによって完了した。これらの信頼区間は、プールされた分散を有する2サンプルのt分布を使用して構築された。サンプルの分散が大きく異なる場合、使用される信頼区間はサタースウェイト調整によって構築した。治療群間のこれらの時間一致平均の同等性を検定するためのp値は、TOST(2つの片側検定)手順を使用して、同等性限界(-1.0、1.0)及び(-1.5、1.5)のそれぞれで生成させた。
【0083】
二次有効性エンドポイントのそれぞれは、PP集団を使用した治療群及び時点ごとの記述統計を使用して要約した。治療群内の各時点での95%信頼区間は、これらの二次エンドポイントのそれぞれについて、治療群間の時間一致差に関する95%信頼区間とともに表示した。
【0084】
一次安全性解析では、各治療群に関する全身器官クラス及び好ましい期間ごとに被験者レベルで個別の要約を使用して、全ての治療被験者の眼(いずれかの眼)及び非眼のTEAEを要約した。TEAEは、研究薬の初回投与後に発生すると定義される。
【0085】
まぶた/まつ毛、結膜、角膜前房、虹彩及び水晶体を含む眼の全体的な健康状態を観察するために、本研究中の来院のたびに細隙灯生体顕微鏡検査を実施した。
【0086】
来院
来院1: (42日目から1日目): スクリーニング
来院2: (0日目) ベースライン/無作為化
来院3: (2週目±2日) 有効性/安全性の評価
来院4: (6週目±2日) 有効性/安全性の評価
来院5: (12週目±2日) 有効性/安全性の評価、及び、研究の終了。
【0087】
前記来院中に、傾眠、眼球充血、神経系障害、口腔乾燥(全来院)及び拡張検眼鏡検査(来院1、来院5)などの様々な有害事象について検査した。観察対象の項目は、網膜、黄斑、脈絡膜、視神経であり、視神経乳頭蒼白検査の測定値は、個別の要約統計を使用して来院ごとに要約した。
【0088】
視力: データは、ライン数のベースラインからの変化及びベースラインから3ライン以上悪化した被験者の割合を含む、連続的及び個別の要約を使用して、各来院時に要約した。
【0089】
心拍数及び血圧: データは、ベースラインの概要からの変化を含む、来院ごとの連続的な要約統計量(平均、標準偏差、最小値、中央値、及び、最大値)を使用して要約した。
【0090】
結果は、以下の表8及び表9に示されている。
【表8】
プロトコルごとの母集団: PP母集団には、全ての包含/除外基準を満たし、連続する3日を超えて予定された申請を欠席せず、及び、治療評価に影響を与えるであろうプロトコル違反をすることなく2週目、6週目及び12週目に評価を完了する、全ての無作為化被験者が含まれており、彼らのコンプライアンスは、≧75%~≦125%である。
【表9】
2週目、6週目及び12週目の各時点(午前8時、午前10時、及び、午後4時)における2つの治療群の間の時間一致IOP測定値における差に関するブリモニジン(即ち、本発明による水性懸濁液)とAlphaganの同等性試験では、その結果は有意である。従って、本研究の主な目的は達成された、即ち、本発明によるブリモニジン製剤は、Alphaganと同等である。
【0091】
有害事象に関しては、本発明の水性懸濁液を投与された70人の患者を対象とした研究において、特に、眼充血、傾眠及び神経系障害が発生したことがすでに観察されている。上記研究における副作用の発生率は、以下の通りであった:
【表10】
【国際調査報告】