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特表2024-503852安定状態を有する非小細胞肺がん患者におけるバイオマーカーの予後値
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】安定状態を有する非小細胞肺がん患者におけるバイオマーカーの予後値
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20240122BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALN20240122BHJP
【FI】
G01N33/574 A
C12Q1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542727
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2022050507
(87)【国際公開番号】W WO2022152732
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】21151645.5
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】マンク,アニカ
(72)【発明者】
【氏名】ムレイ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロルニー,ビンツェント
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーンル,ビルギット
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QS33
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、進行中のNSCLC処置レジーム下で安定状態を有すると分類された対象について非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価するためのインビトロ方法に関する。本方法は、対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;並びに(i)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/若しくはCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較することを含む。本発明の方法はさらに、対象が進行中の処置に応答するかどうか、及び/又は処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうかを評価することを可能にする。本発明はまた、対応する使用、コンピュータ実装方法、及びコンピュータプログラム製品も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患しており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象について、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価するためのインビトロでの方法であって、前記対象が安定状態を有すると分類されており、前記方法が、
a)前記対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;並びに
b)(i)前記CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)前記CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)前記CYFRA21-1の決定されたレベル及び/若しくは前記CA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含む、方法。
【請求項2】
a)において前記CYFRA21-1のレベルが決定され、b)における前記比較することが、請求項1のb)に記載の(i)を含むか又は(i)からなり、
前記CYFRA21-1カットオフレベル以下のCYFRA21-1の決定されたレベルが、NSCLC疾患進行の低リスクを示し;かつ/又は
前記CYFRA21-1カットオフレベルよりも高いCYFRA21-1の決定されたレベルが、NSCLC疾患進行の高リスクを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、サブタイプ腺癌のNSCLC(ADC-NSCLC)に罹患している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
a)において前記CA125のレベルが決定され、b)における前記比較することが、請求項1のb)に記載の(ii)を含むか又は(ii)からなり、
前記CA125カットオフレベルよりも低いCA125の決定されたレベルが、NSCLC疾患進行の低リスクを示し;かつ/又は
前記CA125カットオフレベルよりも高いCA125の決定されたレベルが、NSCLC疾患進行の高リスクを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(SCC-NSCLC)に罹患している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a)において前記CYFRA21-1及び/又はCA125のレベルが決定され、b)における前記比較することが、請求項1のb)に記載の(iii)を含むか又は(iii)からなり、前記カットオフスコアよりも低い決定されたスコアが、NSCLC疾患進行の低リスクを示し;かつ/又は
前記カットオフスコアよりも高い決定されたスコアが、NSCLC疾患進行の高リスクを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するためのインビトロでの方法であって、前記対象が安定状態を有すると分類されており、前記方法が、
a)前記対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;並びに
b)(i)前記CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)前記CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)前記CYFRA21-1の決定されたレベル及び/若しくは前記CA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含む、方法。
【請求項8】
非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかを評価するためのインビトロでの方法であって、前記対象が安定状態を有すると分類されており、前記方法が、
a)前記対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;並びに
b)(i)前記CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)前記CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)前記CYFRA21-1の決定されたレベル及び/若しくは前記CA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含む、方法。
【請求項9】
前記方法が、CEAのレベルを決定することをさらに含み、b)における前記比較することが、それぞれ請求項1のb)、請求項7のb)又は請求項8のb)に記載の(iii)を含むか又は(iii)からなり、前記スコアが、前記CEAの決定されたレベルをさらに考慮する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が非小細胞肺癌サブタイプの扁平上皮癌(SCC-NSCLC)又は腺癌(ADC-NSCLC)に罹患しているかどうかの情報を得ることをさらに含み、
b)における前記比較することが、それぞれ請求項1のb)、請求項7のb)又は請求項8のb)に記載のiii)を含み、前記スコアが、好ましくは前記NSCLCサブタイプに関する前記情報と前記試料中の前記CYFRA21のレベル及び/又は前記CA125のレベル及び任意選択的に前記CEAのレベルとの間の相互作用項を使用することによって、前記NSCLCサブタイプをさらに考慮する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記試料が、前記進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは前記進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは前記進行中の処置レジームの開始日の25日後~108日後に得られた試料である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、血液試料、特に全血、血清及び血漿からなる群から選択される血液試料である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するための、バイオマーカー(複数可)としてのCYFRA21-1及び/又はCA125、並びに任意選択的にCEAの使用であって、(i)、(ii)及び(iii)における前記対象が安定状態を有すると分類されている、使用。
【請求項14】
(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するための、コンピュータ実装方法であって、
(i)、(ii)及び(iii)の前記対象が安定状態を有すると分類されており、前記コンピュータ実装方法が、
a)請求項1~12のいずれか一項のa)で決定されたCYFRA21-1、CA125及び/又はCEAのレベルを含むデータ、並びに任意選択的に前記NSCLCサブタイプに関する情報を受信すること;並びに
b)前記データを処理して、請求項1~12のいずれか一項のb)に記載の前記比較することを実行すること
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項15】
コンピュータプログラム製品又はコンピュータ可読媒体であって、前記プログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項14に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品又はコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
請求項14のa)に記載のデータを受信するように構成された受信ユニット;及び請求項14に記載のステップb)を実行するように構成された処理ユニット;及び任意選択的に、評価結果を出力するように構成された出力ユニットを備える、データ処理システム。
【請求項17】
対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベルを検出するための試薬若しくは試薬のセット及び/又はCA125を検出するための試薬若しくは試薬のセット、並びに任意選択的に、CEAを検出するための試薬若しくは試薬のセットを含む、キットであって、
前記キットは、
(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するためのキットであり、
(i)、(ii)及び(iii)の前記対象が安定状態を有すると分類されている、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、進行中のNSCLC処置レジーム中に安定状態を有すると分類された対象について非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価するためのインビトロ方法に関する。本方法は、対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;並びに(i)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較することを含む。本発明の方法はさらに、対象が進行中の処置に応答するかどうか、及び/又は処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうかを評価することを可能にする。本明細書では、対応する使用、コンピュータ実装方法、及びコンピュータプログラム製品も提供される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肺がんは、世界中のすべてのがんタイプの中で最も高い発生率を有し(2018年に200万を超える新規症例が推定された)、中央ヨーロッパ及び東ヨーロッパでは2番目に高い発生率である(GLOBOCAN 2018.2018 ed.;International Agency for Research on Cancer.World Health Organization:2018.)。がん死亡率の主な原因でもあり、中央ヨーロッパ及び東ヨーロッパでは年間131,000人が死亡し、世界では年間180万人が死亡している(GLOBOCAN 2018.2018 ed.;International Agency for Research on Cancer.World Health Organization:2018.)。
【0003】
肺がんの全症例の約85%が非小細胞肺がん(NSCLC)である。NSCLCの最も一般的な組織学的サブタイプは、腺癌(ADC;全症例の40%)及び扁平上皮癌(SCC;全症例の35%)である(Bender,E.,Nature 2014,513,S2-S3,doi:10.1038/513S2a.)。
【0004】
肺がんは大部分が無症候性であり、全症例の70%超が後期段階で診断される(Molina,J.R.et al.,Mayo Clinic Proceedings 2008,83,584-594,doi:10.4065/83.5.584)。処置選択肢には、手術、放射線療法、化学療法及び免疫チェックポイント阻害剤が含まれる。ステージII及びIIIAのNSCLC患者には補助化学療法が推奨される(Postmus,P.E.et al.,Annals of Oncology 2017,28,iv1-iv21,doi:10.1093/annonc/mdx222;NCCN Guidelines.Non-Small-Cell Lung Cancer.Version 4.2019.)。さらに、小分子チロシンキナーゼ阻害剤は、生存を改善することが示されており、上皮増殖因子受容体、未分化リンパ腫キナーゼ、ROS1又はBRAFにおける活性化突然変異を有する進行期NSCLC患者に推奨される(NCCN Guidelines,Non-Small-Cell Lung Cancer,Version 4.2019;Planchard,D.et al.,Annals of Oncology 2018,29,iv192-iv237,doi:10.1093/annonc/mdy275)。
【0005】
コンピュータ断層撮影法(CT)又は陽電子放射断層撮影法(PET)が、臨床病期分類のために広く使用されている(Molina,J.R.et al.,Mayo Clinic Proceedings 2008,83,584-594,doi:10.4065/83.5.584;Postmus,P.E.et al.,Annals of Oncology 2017,28,iv1-iv21,doi:10.1093/annonc/mdx222;NCCN Guidelines.Non-Small-Cell Lung Cancer.Version 4.2019)。さらに、CTイメージング結果に基づく応答基準は、多数の無作為化臨床試験で首尾よく使用されており、CTは現在、処置応答を評価するために選択される方法である(Eisenhauer,E.A.et al.,Eur J Cancer 2009,45,228-247,doi:10.1016/j.ejca.2008.10.026)。
【0006】
細胞傷害性化学療法を受けている患者において、活性薬剤をそれらが引き起こした腫瘍縮小の量に基づいて評価する手段として、CTベースの応答基準が開発された。WHO及びその後のRECIST基準が、臨床試験における処置応答を評価するためのゴールドスタンダードとして採用され、バイラテラル及びユニラテラル測定が、日常的な臨床診療における応答評価の中心であり続けている。それにもかかわらず、イメージングに基づいて評価される客観的腫瘍応答は、患者の転帰との不完全な相関を示し、その有用性は、非化学療法処置を評価する最近の研究(Lee H.Y et al.,Lung Cancer 2011,73,63-69;Hwang K and Kim H,Tuberc Respir Dis(Seoul)2017,80,136-142,doi:10.4046/trd.2017.80.2.136)において、特にチェックポイント阻害剤(M.Tazdait et al.,European Journal of Cancer,Volume 88,2018,Pages 38-47;Wolchok,JD et al.,Clin Cancer Res December 1 2009(15)(23)7412-7420)で、疑問視されている。
【0007】
肺がん患者におけるいくつかの研究は、がんバイオマーカー、例えばCYFRA21-1、CEA、ProGRP及びNSEを使用して肺がんサブタイプを決定し、腫瘍病期、予後及び治療に対する応答と相関させることができることを実証している(Jing A.G.et al.,BMC Cancer 2015,15,doi:10.1186/s12885-015-1403-x;Liu,L.et al.,BioMed Research International 2017,2017,1-9,doi:10.1155/2017/2013989;Muley,T.et al.,Lung Cancer 2018,120,46-53,doi:10.1016/j.lungcan.2018.03.015;Wojcik E and Kulpa JK,Lung Cancer(Auckl)2017;8:231-40)。しかしながら、vis-a-vis画像化アプローチによるバイオマーカーのさらなる価値を実証する説得力のあるユースケースは、現在不足している。特に、イメージングとバイオマーカー評価を組み合わせることが、治療又は予後を導くためのさらなる価値を提供するかどうかはほとんど不明である。
【0008】
進行した非小細胞肺がん(NSCLC)における治療効果の評価は、現在、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンによる画像化に基づいている。固形腫瘍の治療応答評価(RECIST)のための確立された定義が存在し、それは、応答を、腫瘍体積の減少/増加、病変の数及び新しい病変/転移に応じて、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定状態(SD)及び進行性疾患(PD)の4つの主要カテゴリーに分類する(固形腫瘍における新しい奏功評価基準:改訂されたRECISTガイドライン(バージョン1.1)E.A.Eisenhauer et al,European Journal of Cancer 45(2009)228-247)。治療の継続(又は停止)の決定は、典型的には、これらのイメージング結果に基づいており、世界的に適用されている処置ガイドライン(NCCN Guidelines.Non-Small-Cell Lung Cancer.Version 4.2019.2019.Postmus PE,Kerr KM,Oudkerk M,Senan S,Waller DA,Vansteenkiste J,et al.Early and locally advanced non-small-cell lung cancer(NSCLC):ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis,treatment and follow-up.Annals of Oncology 2017;28(suppl_4))で定義されている。
【0009】
部分奏効(PR)及び安定状態(SD)の奏効カテゴリーでは、通常、治療はガイドライン推奨に従って継続される。患者のSD群には、RECIST 1.1基準によると、部分奏効(大きさの30%以上の減少)と見なすのに十分な腫瘍縮小も、進行性疾患(大きさの20%以上の増加)と見なすのに十分な増殖もない測定可能な病変を有する患者が含まれる。特に、広範囲の腫瘍サイズ範囲をカバーするSD群では、進行中の処置レジーム及び予後に対する応答に関して高い不確実性が残っている。しかし、SD患者のこの群における疾患進行の処置有効性及び/又は予後をさらに特徴付けるために利用可能な信頼できる手段は現在のところ存在しない。
【0010】
Wang及び共同研究者ら(Wang t al.,2002,Tumor,(25 Dec 2012)Vol.32,No.12,pp.1021-1024)は、進行NSCLC患者についてEGFR-TKI(上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤)による標的化療法に対する応答をモニタリングする際の血清腫瘍マーカーの発現レベルの臨床的価値を調査した。しかし、この研究は、血清バイオマーカーによるSD患者の群における疾患進行の予後に具体的に対処しなかった。さらに、この研究は、バイオマーカーレベルの変化のみに焦点を合わせており、これは、必要とされる異なる時点で同じアッセイを使用する少なくとも2つの測定という欠点を有する。
【0011】
Hall C.及び共同研究者ら(Hall C et al.,Journal of Thoracic Oncology,(June 2011)Vol.6,No.6,Supp.SUPPL.2,pp.S979-S980)は、肺がん患者における疾患進行の検出のためのCYFRA21-1血清レベルの低下の性能を遡及的に評価した。しかしながら、この研究は、SD患者における処置応答の予後の改善に挑戦せず、経時的なCYFRA21-1レベルの測定に焦点を当てた。
【0012】
Iqbal Kashifの研究(Journal of Thoracic Oncology,(June 2011)Vol.6,No.6,Supp.SUPPL.2,pp.S1248-S1249)は、進行NSCLCにおける第一選択化学療法に対する応答の早期予測因子としてCEA及びCYFRA21-1を報告した。しかしながら、この場合もやはり、この研究は、バイオマーカーレベル変化の厄介な評価に基づいており、CT画像化によってSDとして分類された患者群についての特定の利益は報告されなかった。
【0013】
Essink A.及び共同研究者ら(Essink et al.,Journal of Thoracic Oncology,(April 2016)Vol.11,No.4,Supp.SUPPL.1,pp.S126)は、NSCLCの免疫療法処置に対する応答の状況におけるCYFRA21-1、CEA、SCC、CEA及びNSEの変化を含む血清腫瘍マーカーの変化を研究した。ここでも、バイオマーカーレベルの変化のみを評価し、CTイメージングによってSDとして分類された患者群に対する特定の利益は試験されなかった。
【0014】
NSCLCの化学療法時のCYFRA21-1レベルの低下を評価する別の研究を、Alm El-Din Mohamed A及び共同研究者が行った(Alm El-Din Mohamed A et al.,The International journal of biological markers,(2012 Jul 19)Vol.27,No.2,pp.e139-46)。この研究は、バイオマーカーレベルの低下に焦点を合わせ、したがって、定義された時点での2つ以上のバイオマーカー評価も含む。さらに、この研究は、SD患者における疾患進行及び/又は処置応答を評価するための特定の利益を報告しなかった。
【0015】
Yang Liang及び共同研究者ら(Yang Liang et al.,Experimental and therapeutic medicine,(2012 Aug)Vol.4,No.2,pp.243-248)は、NSCLC患者の化学療法応答の予測因子として血清CYFRA21-1レベルの低下を報告した。ここでも、バイオマーカーレベルの変化のみが評価され、SD患者に対する特定の利益は記載されなかった。
【0016】
Li Lingらは、進行NSCLC患者における治療有効性の評価指標としてのCEA、CYFRA21-1の値を調査した。この研究でも、定義された時点での絶対的なバイオマーカーレベルではなく、バイオマーカーレベルの変化に焦点が当てられた。
【0017】
上記を考慮すると、特にイメージングによって安定状態を有すると分類されたNSCLC患者において、処置応答及び予後の評価をさらに改善する必要性が高い。
【発明の概要】
【0018】
上記の必要性は、本発明によって対処される。
【0019】
本発明は、特に以下の項目を提供する。
【0020】
1.非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患しており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象について、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価するためのインビトロでの方法であって、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;並びに
b)(i)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、安定状態を有すると分類されている、方法。
【0021】
2.a)において、CYFRA21-1のレベルが決定され、b)における比較することが、項目1のb)に記載の(i)を含むか又は(i)からなり、CYFRA21-1カットオフレベル以下のCYFRA 21-1の決定されたレベルが、NSCLC疾患進行の低リスクを示す、項目1に記載の方法。
【0022】
3.a)において、CYFRA21-1のレベルが決定され、b)における比較することが、項目1のb)に記載の(i)を含むか又は(i)からなり、CYFRA21-1カットオフレベルよりも高いCYFRA 21-1の決定されたレベルが、NSCLC疾患進行の高リスクを示す、項目1又は2に記載の方法。
【0023】
4.対象が、サブタイプ腺癌のNSCLCに罹患している、項目2又は3に記載の方法。
【0024】
5.a)において、CA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目1のb)に記載の(ii)を含むか又は(ii)からなり、CA125カットオフレベルよりも低いCA125の決定されたレベルが、NSCLC疾患進行の低リスクを示す、項目1に記載の方法。
【0025】
6.a)において、CA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目1のb)に記載の(ii)を含むか又は(ii)からなり、CA125カットオフレベルよりも高いCA125の決定されたレベルが、NSCLC疾患進行の高リスクを示す、項目1又は5に記載の方法。
【0026】
7.対象が、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(SCC-NSCLC)に罹患している、項目5又は6に記載の方法。
【0027】
8.a)において、CYFRA21-1及び/又はCA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目1のb)において定義された(iii)を含むか又はこれからなり、カットオフスコアよりも低い決定されたスコアが、NSCLC疾患進行の低リスクを示す、項目1に記載の方法。
【0028】
9.a)において、CYFRA21-1及び/又はCA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目1のb)において定義された(iii)を含むか又はこれからなり、カットオフスコアよりも高い決定されたスコアが、NSCLC疾患進行の高リスクを示す、項目1又は8に記載の方法。
【0029】
10.a)において、試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルが決定され、スコアが、CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルを考慮に入れる、項目8又は9に記載の方法。
【0030】
11.前記スコアを決定するステップをさらに含む、項目10のいずれか一項に記載の方法。
【0031】
12.NSCLC疾患進行のリスクが、参照集団、好ましくはそれぞれのカットオフが基づいている参照集団のNSCLC疾患進行リスクと比較して評価される、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0032】
13.NSCLC疾患の進行のリスクが、腫瘍成長のリスク(好ましくはRECIST 1.1基準によって評価される)、新たな病変の形成若しくは転移のリスク、或いは、及び/又はNSCLCによる死亡のリスクを含む、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0033】
14.非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するためのインビトロでの方法であって、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;並びに
b)(i)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/若しくはCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み;
前記対象は、安定状態を有すると分類されている、方法。
【0034】
15.a)において、CYFRA21-1のレベルが決定され、b)における比較することが、項目14のb)で記載される(i)を含むか又は(i)からなり、CYFRA21-1カットオフレベル以下のCYFRA21-1の決定されたレベルが、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示す、項目14に記載の方法。
【0035】
16.a)において、CYFRA21-1のレベルが決定され、b)における比較することが、項目14のb)で記載される(i)を含むか又は(i)からなり、CYFRA21-1カットオフレベルよりも高いCYFRA21-1の決定されたレベルが、進行中のNSCLC処置レジームが修正されるべきであることを示す、項目14又は15に記載の方法。
【0036】
17.対象が、サブタイプ腺癌のNSCLCに罹患している、項目15又は16に記載の方法。
【0037】
18.a)において、CA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目14のb)で記載される(ii)を含むか又は(ii)からなり、CA125カットオフレベルよりも低いCA125の決定されたレベルが、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示す、項目14に記載の方法。
【0038】
19.a)において、CA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目14のb)で記載される(ii)を含むか又は(ii)からなり、CA125カットオフレベルよりも高いCA125の決定されたレベルが、進行中のNSCLC処置レジームが修正されるべきであることを示す、項目14又は18に記載の方法。
【0039】
20.対象が、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(SCC-NSCLC)に罹患している、項目18又は19に記載の方法。
【0040】
21.a)において、CYFRA21-1及びCA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目14のb)で記載される(iii)を含むか又はこれからなり、カットオフスコアよりも低い決定されたスコアが、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示す、項目14に記載の方法。
【0041】
22.a)において、CYFRA21-1及びCA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目14のb)で記載される(iii)を含むか又はこれからなり、カットオフスコアよりも高い決定されたスコアが、進行中のNSCLC処置レジームが修正されるべきであることを示す、項目14又は21に記載の方法。
【0042】
23.a)において、試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルが決定され、スコアが、CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルを考慮に入れる、項目21また22に記載の方法。
【0043】
24.前記スコアを決定するステップをさらに含む、項目21~23のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
25.非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかを評価するためのインビトロでの方法であって、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;及び
b)(i)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/若しくはCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
前記対象は、安定状態を有すると分類されている、方法。
【0045】
26.a)において、CYFRA21-1のレベルが決定され、b)における比較することが、項目25のb)で記載される(i)を含むか又は(i)からなり、CYFRA21-1カットオフレベル以下のCYFRA21-1の決定されたレベルが、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答すること及び/又は応答するであろうことを示す、項目25に記載の方法。
【0046】
27.a)において、CYFRA21-1のレベルが決定され、b)における比較することが、項目25のb)で記載される(i)を含むか又は(i)からなり、CYFRA21-1カットオフレベルよりも高いCYFRA21-1の決定されたレベルが、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答しないこと及び/又は応答しないであろうことを示す、項目25又は26に記載の方法。
【0047】
28.対象が、サブタイプ腺癌のNSCLCに罹患している、項目26又は27に記載の方法。
【0048】
29.a)において、CA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目25のb)で記載される(i)を含むか又は(i)からなり、CA125カットオフレベルよりも低いCA125の決定されたレベルが、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答すること又は応答するであろうことを示す、項目25に記載の方法。
【0049】
30.a)において、CA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目25のb)で記載される(i)を含むか又は(i)からなり、CA125カットオフレベルよりも高いCA125の決定されたレベルが、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答しないこと又は応答しないであろうことを示す、項目25又は29に記載の方法。
【0050】
31.対象が、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(SCC-NSCLC)に罹患している、項目29又は30に記載の方法。
【0051】
32.a)において、CYFRA21-1及び/又はCA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目25のb)で記載される(iii)を含むか又はこれからなり、参照よりも低い決定された組み合わせスコアが、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答することを示す、項目25に記載の方法。
【0052】
33.a)において、CYFRA21-1及びCA125のレベルが決定され、b)における比較することが、項目25のb)で記載される(iii)を含むか又はこれからなり、参照よりも高い決定された組み合わせスコアが、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答しないことを示す、項目25又は32に記載の方法。
【0053】
34.CEAのレベルを決定するステップをさらに含む、項目1~33のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
35.b)における比較することが、それぞれ項目1のb)、項目14のb)又は項目25のb)で記載される(iii)を含むか又は(iii)からなり、スコアがさらにCEAの決定されたレベルを考慮に入れる、項目34の方法。
【0055】
36.項目1~35のいずれか一項に記載の方法であって、
好ましくは組織学的データに基づいて、対象が非小細胞肺癌サブタイプの扁平上皮癌(SCC-NSCLC)又は腺癌(ADC-NSCLC)に罹患しているかどうかの情報を得ることをさらに含み、
b)での比較することが、それぞれ項目1のb)、項目14のb)又は項目25のb)で記載されるiii)を含み、スコアが、好ましくは相互作用項を使用することによって、さらにより好ましくはNSCLCサブタイプに関する情報と含まれるバイオマーカー(すなわち、CYFRA21及び/又はCA125、及び任意選択的にCEA)との間の相互作用項を使用することによって、NSCLCサブタイプをさらに考慮する、方法。
【0056】
37.CYFRAカットオフレベル、CA125カットオフレベル及び/又はカットオフスコアが、対象の参照集団、好ましくは安定状態を有すると診断され、進行中の処置レジーム下にある非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象を含む参照集団に基づいており、カットオフレベル又はスコアが、好ましくは処置レジーム(複数可)の第2サイクルが参照集団に適用された後のレベル(複数可)又はスコアに基づいて決定される、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
【0057】
38.進行中のNSCLC処置レジームが、化学療法、標的療法、免疫療法及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1~37のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
39.前記対象が、イメージングデータ、好ましくはCT又はPET CTデータに基づいて安定状態を有すると分類された対象である、項目1~38のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
40.前記対象が、RECIST、好ましくはRECIST 1.1基準に基づいて安定状態を有すると分類されている対象である、項目1~39のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
41.試料が、進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは進行中の処置レジームの開始日の25日後~108日後に得られた試料である、項目1~40のいずれか一項に記載の方法。
【0061】
42.対象が、進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは進行中の処置レジームの開始日の35日後~108日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されている、項目1~41のいずれか一項に記載の方法。
【0062】
43.試料が、処置レジーム(例えば、化学療法)の第2のサイクル後に得られた試料であり、好ましくは試料が処置レジームの第3のサイクル前に得られる、項目1~42のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
44.試料が、健康診断(例えば、CTなどのイメージング)の日付近の特定の時間枠内に得られ、最終的に対象が安定状態であると分類される試料であり、好ましくは、特定の時間枠が、健康診断の日の35日前から健康診断の日の35日後までであり、さらにより好ましくは、特定の時間枠が、健康診断の日の30日前から健康診断の日の30日後までであり、最も好ましくは、特定の時間枠が、健康診断の日の10日前から健康診断の29日後までであり得る、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
45.処置レジームが第一選択処置レジームである、項目1~44のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
46.試料が、血液試料である、項目1~45のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
47.血液試料が、全血、血清又は血漿からなる群から選択される、項目46に記載の方法。
【0067】
48.血液試料が血清又は血漿である、項目46に記載の方法。
【0068】
49.血液試料が静脈血試料である、項目46~48のいずれか一項に記載の方法。
【0069】
50.(i)対象がNSCLC疾患進行のリスクがあるかどうか、(ii)処置レジームが維持若しくは修正されるべきであるかどうか、及び/又は(iii)対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかの情報を提供することをさらに含む、項目1~49のいずれか一項に記載の方法。
【0070】
51.NSCLCと診断された対象の処置方法であって、(i)対象が項目25~50のいずれか一項に記載の進行中の処置レジームに応答するかどうかを評価すること、又は(i)’前記対象の進行中の処置レジームが項目14~24及び34~50のいずれか一項に記載のように維持されるべきかどうかを評価すること;及び(ii)進行中の処置レジームで患者を処置し続けること、又は(i)若しくは(i)’の評価の結果に従って処置レジームを修正すること、を含む方法。
【0071】
52.(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するための、バイオマーカー(複数可)としてのCYFRA21-1及び/又はCA125の使用であって、
(i)、(ii)及び(iii)における前記対象が安定状態を有すると分類されている、使用。
【0072】
53.(i)、(ii)及び/又は(iii)に対するバイオマーカーとしてCEAを使用することをさらに含む、項目52の使用。
【0073】
54.好ましくは組織学的データに基づいて、対象が非小細胞肺癌サブタイプの扁平上皮癌(SCC-NSCLC)又は腺癌(ADC-NSCLC)に罹患しているかどうかの情報を考慮に入れることをさらに含む、項目52又は53に記載の使用。
【0074】
55.項目1~50のいずれか一項に記載のステップをさらに含む、項目52~53のいずれか一項に記載の使用。
【0075】
56.(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するための、コンピュータ実装方法であって、
前記コンピュータ実装方法が、
a)項目1~50のいずれか一項のa)で決定されたCYFRA21-1、CA125及び/又はCEAのレベルを含むデータ、並びに任意選択的にNSCLCサブタイプに関する情報を受信すること;並びに
b)前記データを処理して、項目1~50のいずれか一項のb)に記載の比較するステップを実行すること
を含み、前記対象は、安定状態を有すると分類されている、コンピュータ実装方法。
【0076】
57.方法が、評価を(例えば、ディスプレイを介して)出力することをさらに含む、項目56に記載の方法。
【0077】
58.プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに項目56又は57に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【0078】
59.コンピュータによって実行されると、コンピュータに項目56又は57に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータ可読媒体。
【0079】
60.項目56のa)に記載のデータを受信するように構成された受信ユニット;及び項目56に記載のステップb)を実行するように構成された処理ユニット;及び任意選択的に、評価結果を出力するように構成された出力ユニットを備える、データ処理システム。
【0080】
61.対象から得られた試料中の前記CYFRA21-1のレベルを検出するための試薬若しくは試薬のセット及び/又はCA125を検出するための試薬若しくは試薬のセットを含む、キットであって、
キットは、
(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するためのキットであり、
(i)、(ii)及び(iii)の前記対象が安定状態を有すると分類されている、キット。
【0081】
62.対象から得られた試料中のCEAのレベルを検出するための試薬又は試薬のセットをさらに含む、項目61のキット。
【0082】
63.項目61又は62のキットであって、前記キットは、項目61の(i)、(ii)又は(iii)で記載される評価を提供する方法の説明を含み、前記説明は、項目1~50のいずれか1つに記載の方法のステップ又は項目52~55のいずれか1つで記載される使用の説明を含むか、或いは、項目56若しくは57のコンピュータ実装方法、項目58のコンピュータプログラム製品、項目59のコンピュータ可読媒体、又は項目60のデータ処理システムを指す、キット。
【0083】
64.項目61の(i)~(iii)に記載の目的のうちの1つ又は複数を記載する添付文書を含む、項目61~63のいずれか一項に記載のキット。
以下の図は、本発明の理解を助けるために提供されており、その真の範囲は、特許請求の範囲に明記されている。本発明の要旨から逸脱することなく、記載された手順に変更を加えることができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1-1】CTスキャン結果によって層別化された第2のサイクル後の最初のCTスキャンで部分奏効又は安定状態を有する患者における無増悪生存期間(A)及び全生存期間(B)。
図1-2】CTスキャン結果によって層別化された第2のサイクル後の最初のCTスキャンで部分奏効又は安定状態を有する患者における無増悪生存期間(A)及び全生存期間(B)。
図2-1】中央値を上回る又は下回る、CYFRA21-1によって層別化された腺癌(A)、CA125によって層別化された扁平上皮癌(B)、CYFRA21-1及びCA125によって層別化された腺癌又は扁平上皮癌(C)、並びにCYFRA21-1、CA125及びCEAによって層別化された腺癌又は扁平上皮癌(D)を有する患者における、第2サイクル後の最初のCTスキャンでの安定状態を有する患者における無増悪生存期間。(C)及び(D)におけるスコアによるバイオマーカーの組み合わせ(図ではPredと呼ばれる)は、各バイオマーカーと組織学との間の相互作用項を考慮に入れる。バイオマーカーレベルのベースライン補正は使用しなかった。
図2-2】中央値を上回る又は下回る、CYFRA21-1によって層別化された腺癌(A)、CA125によって層別化された扁平上皮癌(B)、CYFRA21-1及びCA125によって層別化された腺癌又は扁平上皮癌(C)、並びにCYFRA21-1、CA125及びCEAによって層別化された腺癌又は扁平上皮癌(D)を有する患者における、第2サイクル後の最初のCTスキャンでの安定状態を有する患者における無増悪生存期間。(C)及び(D)におけるスコアによるバイオマーカーの組み合わせ(図ではPredと呼ばれる)は、各バイオマーカーと組織学との間の相互作用項を考慮に入れる。バイオマーカーレベルのベースライン補正は使用しなかった。
図2-3】中央値を上回る又は下回る、CYFRA21-1によって層別化された腺癌(A)、CA125によって層別化された扁平上皮癌(B)、CYFRA21-1及びCA125によって層別化された腺癌又は扁平上皮癌(C)、並びにCYFRA21-1、CA125及びCEAによって層別化された腺癌又は扁平上皮癌(D)を有する患者における、第2サイクル後の最初のCTスキャンでの安定状態を有する患者における無増悪生存期間。(C)及び(D)におけるスコアによるバイオマーカーの組み合わせ(図ではPredと呼ばれる)は、各バイオマーカーと組織学との間の相互作用項を考慮に入れる。バイオマーカーレベルのベースライン補正は使用しなかった。
図2-4】中央値を上回る又は下回る、CYFRA21-1によって層別化された腺癌(A)、CA125によって層別化された扁平上皮癌(B)、CYFRA21-1及びCA125によって層別化された腺癌又は扁平上皮癌(C)、並びにCYFRA21-1、CA125及びCEAによって層別化された腺癌又は扁平上皮癌(D)を有する患者における、第2サイクル後の最初のCTスキャンでの安定状態を有する患者における無増悪生存期間。(C)及び(D)におけるスコアによるバイオマーカーの組み合わせ(図ではPredと呼ばれる)は、各バイオマーカーと組織学との間の相互作用項を考慮に入れる。バイオマーカーレベルのベースライン補正は使用しなかった。
図3-1】中央値を上回る又は下回る、CYFRA21-1、CA125及びCEAによって高リスク群及び低リスク群に層別化された腺癌又は扁平上皮癌を有する患者における、第2サイクル後の最初のCTスキャンでの安定状態を有する患者における無増悪生存期間(A)及び全生存期間(B)。バイオマーカーの組み合わせのモデルは、各バイオマーカーと組織学との間の相互作用項を考慮に入れる。バイオマーカーレベルのベースライン補正は使用しなかった。
図3-2】中央値を上回る又は下回る、CYFRA21-1、CA125及びCEAによって高リスク群及び低リスク群に層別化された腺癌又は扁平上皮癌を有する患者における、第2サイクル後の最初のCTスキャンでの安定状態を有する患者における無増悪生存期間(A)及び全生存期間(B)。バイオマーカーの組み合わせのモデルは、各バイオマーカーと組織学との間の相互作用項を考慮に入れる。バイオマーカーレベルのベースライン補正は使用しなかった。
図4-1】最適化されたカットオフを上回る又は下回る、CYFRA21-1、CA125及びCEAによって高リスク群及び低リスク群に層別化された腺癌又は扁平上皮癌を有する患者における、第2サイクル後の最初のCTスキャンでの安定状態を有する患者における無増悪生存期間(A)及び全生存期間(B)。バイオマーカーの組み合わせのモデルは、各バイオマーカーと組織学との間の相互作用項を考慮に入れる。バイオマーカーレベルのベースライン補正は使用しなかった。
図4-2】最適化されたカットオフを上回る又は下回る、CYFRA21-1、CA125及びCEAによって高リスク群及び低リスク群に層別化された腺癌又は扁平上皮癌を有する患者における、第2サイクル後の最初のCTスキャンでの安定状態を有する患者における無増悪生存期間(A)及び全生存期間(B)。バイオマーカーの組み合わせのモデルは、各バイオマーカーと組織学との間の相互作用項を考慮に入れる。バイオマーカーレベルのベースライン補正は使用しなかった。
【発明を実施するための形態】
【0085】
発明の詳細な説明
驚くべきことに、本発明の文脈において、試料(例えば、血清又は血漿試料)中のバイオマーカーCYFRA21-1及び/又はCA125のタンパク質レベルを決定することにより、安定状態(SD)NSCLC(例えば、イメージング及びRECIST基準による)を有すると診断された患者を、2つの群:進行中の処置レジーム下で疾患進行のリスクが低い第1の群と、進行中の処置レジーム下で疾患進行のリスクが高い第2の群にさらに分けることができることが見出された。このリスク層別化によって、進行中の処置レジームに応答する可能性の評価、及び/又は、さらなる処置決定、すなわち進行中の処置が維持若しくは修正されるべきであるかどうかの支援も提供することができる。本発明の特に驚くべき知見は、単一の時点(特に第2の処置サイクル後の最初のCT時)における、例えば絶対濃度又は絶対量(又はその対数変換)としてのCYFRA21-1及び/又はCA125のレベルが、処置開始と比較した同じバイオマーカーのレベルの変化を使用するよりも、疾患進行リスク評価においてはるかに良好な性能を示すことであった。
【0086】
上記の背景セクションから明らかなように、従来技術の研究は、対照的に、患者が処置に応答するかどうかを評価するために、バイオマーカーレベルの変化に焦点を当てていた。患者間の本発明で使用されるバイオマーカーのレベルの既知の変動のために、処置前のそれぞれのバイオマーカーのレベルを考慮しない場合、リスク層別化が優れていることは全く予想外であった。より良好な性能にもかかわらず単一のバイオマーカーレベルを使用することには、いくつかの他の利点もある。例えば、定義された時点で単一のバイオマーカー測定のみが必要とされるため、バイオマーカーに基づく評価が簡単になる。バイオマーカーの変化を利用するのとは対照的に、本発明の方法は、以前のバイオマーカーレベルの利用可能性とは無関係に実施することができ、したがって、増加した量の患者に利用可能である。さらに、2つの独立した時点及び異なるアッセイを潜在的に含み得る測定からのバイオマーカーレベルを比較する必要性は、本発明によって排除される。
【0087】
両方のバイオマーカーCYFRA21-1及びCA125を用いて、NSCLC進行リスク(例えば無増悪生存期間及び/又は全生存期間によって評価される)を評価するための単変量マーカー性能は、試験した他のすべての腫瘍バイオマーカーよりも有意に良好であった。組織学的サブタイプ腺癌のNSCLCに罹患している対象について、CYFRA21-1は最良の単変量性能を示した。組織学的サブタイプ扁平上皮癌(SCC-NSCLC)のNSCLCに罹患している対象について、CA125は最良の単変量性能を示した。
【0088】
スコアの形態のCYFRA21-1及びCA125レベルの組み合わせは、性能をさらに改善した。特に、バイオマーカーのそれぞれについて組織学的サブタイプ(腺癌又はSCC)を考慮に入れた相互作用項を使用すると、スコアを計算するための性能がさらに改善された。
【0089】
さらに、第3のバイオマーカーレベル、すなわちCEAのレベルをスコアに含めることにより、進行中の処置レジーム下での疾患進行の予後をさらに改善することができることが分かった。
【0090】
第1の態様では、本発明は、対象について非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価するためのインビトロ方法に関する。
【0091】
本発明の第1の態様による方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;並びに
b)(i)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/若しくはCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較することを含む。
【0092】
試料が得られる対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患していると診断され、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象である。換言すれば、試料が得られる対象は、第1の態様による方法を実施する前にNSCLCに罹患していると診断されており、試料が得られた時点でNSCLC処置レジーム下にある。
【0093】
さらに、試料が得られる対象は、本方法のステップとは異なる手段によって、安定状態を有すると分類又は診断され得る。好ましくは、安定状態の分類は、CTなどのイメージング法によって行われる。
【0094】
実施形態において、試料が得られる対象は、試料が得られる前又は得られた時点で安定状態を有すると診断されている。
【0095】
実施形態において、試料は、安定状態の診断につながる健康診断(例えば、CTなどのイメージング)の日付近の特定の時間枠で得られた試料である。実施形態において、特定の時間枠は、健康診断の35日前から健康診断の35日後までであり得る。好ましい実施形態では、特定の時間枠は、健康診断の30日前から健康診断の30日後までであり得る。さらにより好ましい実施形態では、特定の時間枠は、健康診断の10日前から健康診断の29日後までであり得る。
【0096】
実施形態において、対象は、進行中の処置レジームの開始日の少なくとも10日後、好ましくは少なくとも20日後、さらにより好ましくは少なくとも30日後、最も好ましくは少なくとも35日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されている。実施形態において、対象は、進行中の処置レジームの開始日から最大で150日後、好ましくは最大で120日後、最も好ましくは最大で108日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されている。したがって、対象は、進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは進行中の処置レジームの開始日の35日後~108日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類され得る。
【0097】
実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の少なくとも10日後、好ましくは少なくとも20日後、最も好ましくは少なくとも25日後に対象から得られた試料である。実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の最大150日後、好ましくは最大120日後、最も好ましくは最大108日後に対象から得られた試料である。したがって、実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは進行中の処置レジームの開始日の25日後~108日後に対象から得られた試料である。
【0098】
実施形態において、対象は、進行中の処置レジームの開始日の35日後~108日後に得られたデータ(例えば、腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されており、試料は、進行中の処置レジームの開始日の25日後~108日後に対象から得られた試料である。
【0099】
進行中の処置レジームの「開始」又は「開始日」は、この処置レジームの最初の処置が対象に投与された日である。例えば、薬物又は薬物組成物が対象に最初に投与された日である。
【0100】
第1の態様による方法の実施形態では、CYFRA21-1のレベルはa)において決定され得、b)における比較は、CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較することを含み得るか又は比較することからなり得、CYFRA21-1カットオフレベル以下のCYFRA21-1の決定されたレベルは、NSCLC疾患進行の低リスクを示す。
【0101】
第1の態様による方法の実施形態では、CYFRA21-1のレベルはa)において決定され、b)における比較は、CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較することを含むか又は比較することからなり、CYFRA21-1カットオフレベルよりも高いCYFRA21-1の決定されたレベルは、NSCLC疾患進行の高リスクを示す。
【0102】
したがって、本発明の第1の態様の実施形態では、対象について非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価する方法であって、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベルを決定すること;及び
b)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること
を含む方法が提供され、CYFRA21-1カットオフレベル以下のCYFRA21-1の決定されたレベルはNSCLC疾患進行の低リスクを示し、及び/又は、CYFRA21-1カットオフレベルよりも高いCYFRA21-1の決定されたレベルはNSCLC疾患進行の高リスクを示し、
試料が得られる対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患していると診断されており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象であり、対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。これに関連して、対象は、サブタイプ腺癌のNSCLC(ADC-NSCLC)と診断されることがさらに好ましい。
【0103】
添付の実施例では、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価する際のバイオマーカーCYFRA21-1の性能は、サブタイプ腺癌のNSCLCに罹患している対象にとって特に良好であることが実証された。したがって、バイオマーカーCYFRA21-1を決定する実施形態では、試料が得られた対象は、特に、サブタイプ腺癌のNSCLCに罹患していると診断された対象であり得る。
【0104】
第1の態様による方法の実施形態では、CA125のレベルはa)において決定され得、b)における比較は、CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較することを含み得るか又は比較することからなり得、CA125カットオフレベル以下のCA125の決定されたレベルは、NSCLC疾患進行の低リスクを示す。
【0105】
第1の態様による方法の実施形態では、CA125のレベルはa)において決定され、b)における比較は、CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較することを含むか又は比較することからなり、CA125カットオフレベルよりも高いCA125の決定されたレベルは、NSCLC疾患進行の高リスクを示す。
【0106】
したがって、本発明の第1の態様の実施形態では、対象について非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価する方法であって、
a)対象から得られた試料中のCA125のレベルを決定すること;及び
b)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること
を含む方法が提供され、CA125カットオフレベル以下のCA125の決定されたレベルはNSCLC疾患進行の低リスクを示し、及び/又は、CA125カットオフレベルよりも高いCA125の決定されたレベルはNSCLC疾患進行の高リスクを示し、
試料が得られる対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患していると診断されており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象であり、対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。これに関連して、対象は、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(SCC-NSCLC)と診断されることがさらに好ましい。
【0107】
添付の実施例では、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価する際のバイオマーカーCA125の性能は、サブタイプ扁平上皮癌(SCC)に罹患している対象にとって特に良好であることが実証された。したがって、バイオマーカーCA125を決定する実施形態では、試料が得られた対象は、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(SCC-NSCLC)に罹患していると診断された対象であり得る。
【0108】
本発明の第1の態様の実施形態では、本方法は、試料中で決定されたCYFRA21-1及び/又はCA125のレベルを考慮してスコアを決定することを含んでもよい。これらの実施形態では、b)の比較は、CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較することを含むか又は比較することからなる。
【0109】
試料中のCYFRA21-1及び/又はCA125のレベルを考慮したスコアは、CYFRA21-1及び/又はCA125の決定されたレベルを使用した重み付け計算によって決定することができる。実施形態において、スコアは、CYFRA21-1及び/又はCA125のみに基づいてもよい。他の実施形態では、スコアは、試料中の1つ又は複数の他のバイオマーカーの存在又はレベル及び対象の1つ又は複数の臨床パラメータ(例えば、腫瘍組織学、喫煙状態、疾患のステージ、年齢及び/又は性別)を含むがこれらに限定されない1つ又は複数の他の因子を考慮に入れることができる。特定の実施形態では、スコアは、腫瘍組織学が腺癌であるかSCCであるかを考慮に入れてもよい。特に、腫瘍組織学は、バイオマーカー値との相互作用項によって考慮され得る。それにより、バイオマーカーCYFRA21-1及びCA125が腫瘍組織学に依存してわずかに異なる性能を示したことを考慮に入れることができる。
【0110】
したがって、第1の態様による方法は、対象について非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価する方法であってもよく、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;
aa)a)において決定されたCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを考慮してスコアを決定すること;並びに
b)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
試料が得られる対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患していると診断されており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象であり、対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。
【0111】
実施形態において、カットオフスコアよりも低い(CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮した)決定されたスコアは、NSCLC疾患進行の低リスクを示す。これらの実施形態では、スコアは、CYFRA21-1のレベルが高いほど、及び/又はCA125のレベルが高いほど、スコアが増加するように構成される。
【0112】
実施形態において、カットオフスコアよりも高い(CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮した)決定されたスコアは、NSCLC疾患進行の高リスクを示す。これらの実施形態では、スコアは、CYFRA21-1のレベルが高いほど、及び/又はCA125のレベルが高いほど、スコアが増加するように構成される。
【0113】
当業者であれば、CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアは数学的に逆も同様に構成することができること、例えば、カットオフスコアよりも高いスコアはより低いリスクを示し、カットオフスコアよりも高いスコアはより高いリスクを示すことを理解するであろう。これは、CYFRA21-1のレベルが高いほど、及び/又はCA125のレベルが高いほど、スコアが低くなるようにスコアを構成することによって達成することができる。例えば、スコアを計算するための式においてバイオマーカーレベルと掛け合わされる負の因子を使用することによって、スコアの反転を達成することができる。
【0114】
第1の態様の方法の実施形態において、試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルの両方が決定され、決定されたスコアは、CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルの両方を考慮に入れる。
【0115】
したがって、第1の態様による方法は、対象について非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価する方法であってもよく、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを決定すること;
aa)a)において決定されたCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを考慮してスコアを決定すること;並びに
b)CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
試料が得られる対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患していると診断されており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象であり、対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。
【0116】
試料中のCYFRA21-1及びCA125のレベルを考慮したスコアは、CYFRA21-1及び/又はCA125の決定されたレベルを使用した重み付け計算によって決定することができる。
【0117】
実施形態において、CYFRA21-1及びCA125のレベルを考慮したスコアは二成分スコアであってもよく、カットオフスコアも二成分であってもよい。「二成分」は、スコアが2つの値、例えば、CYFRA21-1のレベル又はそれから導かれる値である第1の値(CYFRA21-1値とも呼ばれる)及びCA125のレベル又はそれから導かれる値である第2の値(CA125値とも呼ばれる)を含むことを意味する。「それから導かれる値」は、例えば、数学的演算によって得られる値であり得る。「それから導かれる値」は、好ましくはそれぞれのレベルに正比例する。二成分カットオフスコアの値は、それぞれのバイオマーカーを用いた単変量解析によって、すなわち、本明細書に記載の単一バイオマーカーのカットオフを定義する手順と同様に得てもよい。
【0118】
二成分スコアを二成分カットオフスコアと比較することは、決定された二成分スコアの第1の値をカットオフ二成分スコアの第1の値と比較し、決定された二成分スコアの第2の値をカットオフ二成分スコアの第2の値と比較することを意味する。実施形態において、決定された二成分スコアの第1の値及び第2の値の両方が二成分基準スコアの第1の値及び第2の値をそれぞれ上回る場合、これは、試料が得られた対象におけるNSCLC疾患進行の高いリスクを示す。実施形態において、決定された二成分スコアの第1の値及び第2の値の一方又は両方が二成分基準スコアの第1の値及び第2の値をそれぞれ下回る場合、これは、試料が得られた対象におけるNSCLC疾患進行の低いリスクを示す。
【0119】
実施形態において、決定された二成分スコアのCYFRA21-1値がカットオフ二成分スコアのCYFRA21-1カットオフ値を上回り、決定された二成分スコアのCA125値がカットオフ二成分スコアのCA125カットオフ値を上回る二成分スコアは、試料が得られた対象におけるNSCLC疾患進行の高リスクを示す。
【0120】
実施形態において、決定された二成分スコアのCYFRA21-1値及び/又はCA125値の二成分スコアが、カットオフ二成分スコアのCYFRA21-1カットオフ値及び/又はCA125カットオフ値より低いことは、試料が得られた対象におけるNSCLC疾患進行のリスクが低いことを示す。
【0121】
したがって、第1の態様による方法は、対象について非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価する方法であってもよく、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを決定すること;
aa)第1の値及び第2の値を含む二成分スコアを決定し、a)で決定されたCYFRA21-1のレベルを第1の値において、及びa)で決定されたCA125のレベルを第2の値において考慮すること;
b)CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルを考慮に入れた二成分スコアを二成分カットオフスコアと比較することであって、前記二成分カットオフスコアがCYFRA21-1カットオフ値及びCA125カットオフ値を含み、決定された二成分スコアの第1の値がCYFRA21-1カットオフ値と比較され、決定された二成分スコアの第2の値がCA125カットオフ値と比較される、二成分スコアを二成分カットオフスコアと比較すること;
c)b)における比較に基づいて、対象における非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価すること
を含み、
試料が得られる対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患していると診断されており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象であり、対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。
【0122】
第1の態様による方法の実施形態では、NSCLC疾患進行のリスクは、それぞれのカットオフ又はカットオフスコアが基づいている参照集団などの参照集団の平均又は中央値NSCLC疾患進行リスクと比較して評価される。参照集団は、好ましくは、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患しており、(例えば、CTを使用した)イメージングに基づいて安定状態として分類/診断されている対象の集団であり得る。添付の実施例において明らかにされるように、CYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベル又はそのレベルを考慮に入れたスコアを検出することにより、これらの対象群におけるさらなるリスク層別化がもたらされ、この患者集団を、部分奏効(PR)を有するとカテゴリー分類された対象に匹敵するより低い疾患進行リスクを有する患者と、進行性疾患(PD)を有する対象に匹敵するより高い疾患進行リスクを有する患者とに分離することが可能になる。
【0123】
実施形態において、高い疾患進行リスクは、イメージング(例えば、CTベースのイメージング)によって進行性NSCLC疾患を有するとしてカテゴリー分類された対象からなる参照集団の平均疾患進行リスクに匹敵する疾患進行リスクであり得る。
【0124】
実施形態において、低い疾患進行リスクは、イメージング(例えば、CTベースのイメージング)によってNSCLC処置に対する部分奏効を有するとしてカテゴリー分類された対象からなる参照集団の平均疾患進行リスクに匹敵する疾患進行リスクであり得る。
【0125】
実施形態において、高い疾患進行リスクは、低い疾患進行リスクよりも少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも2倍高くてもよい。換言すれば、高い進行リスクと低い進行リスクとの間の比は、少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2になり得る。実施形態において、比はハザード比であり得る。
【0126】
実施形態において、NSCLC疾患の進行のリスクは、腫瘍成長のリスク(好ましくはRECIST基準によって評価される)、新たな病変の形成若しくは転移のリスク、或いは、及び/又はNSCLCによる死亡のリスクを含む。
【0127】
第1の態様による方法は、試料中のCEAのタンパク質レベルを決定することをさらに含み得る。これらの実施形態では、比較するステップは、CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベル及びCEAの決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較することを含む。
【0128】
したがって、本明細書では、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患しており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象について、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベルを決定すること;
aa)試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベルを考慮してスコアを決定すること;並びに
b)aa)で決定されたスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、(例えば、CTなどのイメージングによって)安定状態を有すると以前に分類されている。
【0129】
実施形態において、第1の態様による方法は、対象がサブタイプ扁平上皮癌(SCC-NSCLC)又はサブタイプ腺癌(ADC-NSCLC)の非小細胞肺癌に罹患しているかどうかの情報を得ることをさらに含み得る。好ましくは、得られた情報は組織学的データに基づく。
【0130】
添付の実施例において示されているように、少なくともCYFRA21-1及びCA125レベル(及び任意選択的にCEA)を考慮に入れたスコアを使用する場合、例えば、決定されたバイオマーカーと組織学的タイプとの間の相互作用項をスコアを計算するための数式に含めることによって、NSCLC(腺癌又はSCC)の組織学的サブタイプに関する情報をさらに含めると、SD患者の疾患進行リスクを評価する際の性能がさらに増加した。
【0131】
実施形態において、第1の態様の方法は、NSCLC組織学的サブタイプ(腺癌又はSCC)に関する情報を得ることを含み、比較するステップは、決定されたバイオマーカー(すなわち、CYFRA21-1及び/又はCA125、及び任意選択的にCEA)及び組織学的NSCLCサブタイプのレベルを考慮に入れたスコアを比較することを含む。実施形態において、スコアは、組織学的NSCLCサブタイプと決定されたバイオマーカーの1つ又は複数との間の1つ又は複数の相互作用項によって組織学的サブタイプを考慮に入れる。
【0132】
したがって、第1の態様の一実施形態では、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患しており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象について、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを決定すること;
aa)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプに関する情報を得ること
aaa)i)試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベル;及びii)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプ(例えば、バイオマーカーレベルと組織学的サブタイプとの間の相互作用項の形態で)を考慮してスコアを決定すること;並びに
b)aaa)で決定されたスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、(例えば、CTなどのイメージングによって)安定状態を有すると以前に分類されている。
【0133】
第1の態様の別の実施形態では、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患しており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象について、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベルを決定すること;
aa)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプに関する情報を得ること
aaa)i)試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベル;及びii)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプ(例えば、バイオマーカーレベルと組織学的サブタイプとの間の相互作用項の形態で)を考慮してスコアを決定すること;並びに
b)aaa)で決定されたスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、(例えば、CTなどのイメージングによって)安定状態を有すると以前に分類されている。
【0134】
第1の態様による方法の実施形態では、本方法は、対象が疾患進行のリスクが高いか低いかの情報を対象及び/又は医師に提供することをさらに含み得る。次いで、この情報は、単なるイメージング結果を超える処置応答のための価値ある追加の入力を提供するという点で、さらなる処置決定を支援するために使用され得る。
【0135】
第2の態様では、本発明は、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するためのインビトロでの方法に関し、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;並びに
b)b)(i)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/若しくはCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、(例えば、CTに基づく腫瘍イメージングによって)安定状態を有すると分類又は診断された対象である。
【0136】
したがって、試料が得られた対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患していると診断され、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象である。換言すれば、試料が得られる対象は、第2の態様による方法を実施する前にNSCLCに罹患していると診断されており、試料が得られた時点でNSCLC処置レジーム下にある。
【0137】
さらに、試料が得られる対象は、本方法のステップとは異なる手段によって、安定状態を有すると分類又は診断され得る。好ましくは、安定状態の分類は、CTなどのイメージング法によって行われる。
【0138】
実施形態において、試料が得られる対象は、試料が得られる前又は得られた時点で安定状態を有すると診断されている。
【0139】
実施形態において、試料は、安定状態の診断につながる健康診断(例えば、CTなどのイメージング)の日付近の特定の時間枠で得られた試料である。実施形態において、特定の時間枠は、健康診断の35日前から健康診断の35日後までであり得る。好ましい実施形態では、特定の時間枠は、健康診断の30日前から健康診断の30日後までであり得る。さらにより好ましい実施形態では、特定の時間枠は、健康診断の10日前から健康診断の29日後までであり得る。
【0140】
実施形態において、対象は、進行中の処置レジームの開始日の少なくとも10日後、好ましくは少なくとも20日後、さらにより好ましくは少なくとも30日後、最も好ましくは少なくとも35日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されている。実施形態において、対象は、進行中の処置レジームの開始日から最大で150日後、好ましくは最大で120日後、最も好ましくは最大で108日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されている。したがって、対象は、進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは進行中の処置レジームの開始日の35日後~108日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類され得る。
【0141】
実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の少なくとも10日後、好ましくは少なくとも20日後、最も好ましくは少なくとも25日後に対象から得られた試料である。実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の最大150日後、好ましくは最大120日後、最も好ましくは最大108日後に対象から得られた試料である。したがって、実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは進行中の処置レジームの開始日の25日後~108日後に対象から得られた試料である。
【0142】
実施形態において、対象は、進行中の処置レジームの開始日の35日後~108日後に得られたデータ(例えば、腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されており、試料は、進行中の処置レジームの開始日の25日後~108日後に対象から得られた試料である。
【0143】
進行中の処置レジームの「開始」又は「開始日」は、この処置レジームの最初の処置が対象に投与された日である。例えば、薬物又は薬物組成物が対象に最初に投与された日である。
【0144】
第2の態様による方法の実施形態では、CYFRA21-1のレベルはa)において決定され得、b)における比較は、CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較することを含み得るか又は比較することからなり得、CYFRA21-1カットオフレベル以下のCYFRA21-1の決定されたレベルは、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示す。
【0145】
第2の態様による方法の実施形態では、CYFRA21-1のレベルはa)において決定され、b)における比較は、CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較することを含むか又は比較することからなり、CYFRA21-1カットオフレベルよりも高いCYFRA21-1の決定されたレベルは、進行中のNSCLC処置レジームが修正されるべきであることを示す。
【0146】
したがって、本発明の第2の態様の実施形態では、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するための方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベルを決定すること;及び
b)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること
を含み、CYFRA21-1カットオフレベル以下のCYFRA21-1の決定されたレベルは、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示し、及び/又は、CYFRA21-1カットオフレベルよりも高いCYFRA21-1の決定されたレベルは、進行中のNSCLC処置レジームが修正されるべきであることを示し、対象は、(例えば、CTベースのイメージングによって)安定状態を有すると以前に分類(又は診断)されている。これに関連して、対象は、サブタイプ腺癌のNSCLC(ADC-NSCLC)と診断されることがさらに好ましい。
【0147】
添付の実施例では、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスク及びその結果として処置応答を評価する際のバイオマーカーCYFRA21-1の性能は、サブタイプ腺癌のNSCLCに罹患している対象にとって特に良好であることが実証された。したがって、バイオマーカーCYFRA21-1を決定する実施形態では、試料が得られる対象は、特に、サブタイプ腺癌のNSCLCに罹患していると以前に診断された対象であり得る。
【0148】
第2の態様による方法の実施形態では、CA125のレベルはa)において決定され得、b)における比較は、CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較することを含み得るか又は比較することからなり得、CA125カットオフレベル以下のCA125の決定されたレベルは、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示す。
【0149】
第2の態様による方法の実施形態では、CA125のレベルはa)において決定され、b)における比較は、CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較することを含むか又は比較することからなり、CA125カットオフレベルよりも高いCA125の決定されたレベルは、進行中のNSCLC処置レジームが修正されるべきであることを示す。
【0150】
したがって、本発明の第2の態様の実施形態では、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するための方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCA125のレベルを決定すること;及び
b)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること
を含み、CA125カットオフレベル以下のCA125の決定されたレベルは、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示し、及び/又は、CA125カットオフレベルよりも高いCA125の決定されたレベルは、進行中のNSCLC処置レジームが修正更されるべきであることを示し、
対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。これに関連して、対象は、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(SCC-NSCLC)と診断されることがさらに好ましい。
【0151】
添付の実施例では、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価する際のバイオマーカーCA125の性能は、サブタイプ扁平上皮癌に罹患している対象にとって特に良好であることが実証された。したがって、バイオマーカーCA125を決定する実施形態では、試料が特に由来し得る対象は、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(SCC-NSCLC)に罹患していると診断された対象であり得る。
【0152】
本発明の第2の態様の実施形態では、本方法は、試料中で決定されたCYFRA21-1及び/又はCA125のレベルを考慮してスコアを決定することを含んでもよい。これらの実施形態では、b)の比較は、CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較することを含むか又は比較することからなる。
【0153】
試料中のCYFRA21-1及び/又はCA125のレベルを考慮したスコアは、CYFRA21-1及び/又はCA125の決定されたレベルを使用した重み付け計算によって決定することができる。実施形態において、スコアは、CYFRA21-1及び/又はCA125のみに基づいてもよい。他の実施形態では、スコアは、試料中の1つ又は複数の他のバイオマーカーの存在又はレベル及び対象の1つ又は複数の臨床パラメータ(例えば、腫瘍組織学、喫煙状態、疾患のステージ、年齢及び/又は性別)を含むがこれらに限定されない1つ又は複数の他の因子を考慮に入れることができる。特定の実施形態では、スコアは、腫瘍組織学が腺癌であるかSCCであるかを考慮に入れてもよい。特に、腫瘍組織学は、バイオマーカー値との相互作用項によって考慮され得る。それにより、バイオマーカーCYFRA21-1及びCA125が腫瘍組織学に依存してわずかに異なる性能を示したことを考慮に入れることができる。
【0154】
したがって、第2の態様による方法は、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するための方法であり得、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;
aa)a)において決定されたCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを考慮してスコアを決定すること;並びに
b)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。
【0155】
実施形態において、カットオフスコアよりも低い(CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮した)決定されたスコアは、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示す。これらの実施形態では、スコアは、CYFRA21-1のレベルが高いほど、及び/又はCA125のレベルが高いほど、スコアが増加するように構成される。
【0156】
実施形態において、カットオフスコアよりも高い(CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮した)決定されたスコアは、進行中のNSCLC処置レジームが修正されるべきであることを示す。これらの実施形態では、スコアは、CYFRA21-1のレベルが高いほど、及び/又はCA125のレベルが高いほど、スコアが増加するように構成される。
【0157】
当業者であれば、CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアは数学的に逆も同様に構成することができること、例えば、カットオフスコアよりも高いスコアはより低いリスクを示し、カットオフスコアよりも高いスコアはより高いリスクを示すことを理解するであろう。これは、CYFRA21-1のレベルが高いほど、及び/又はCA125のレベルが高いほど、スコアが低くなるようにスコアを構成することによって達成することができる。例えば、スコアを計算するための式においてバイオマーカーレベルと掛け合わされる負の因子を使用することによって、スコアの反転を達成することができる。
【0158】
第2の態様の方法の実施形態において、試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルの両方が決定され、決定されたスコアは、CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルの両方を考慮に入れる。
【0159】
したがって、第2の態様による方法は、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するための方法であり得、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを決定すること;
aa)a)において決定されたCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを考慮してスコアを決定すること;並びに
b)CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。
【0160】
試料中のCYFRA21-1及びCA125のレベルを考慮したスコアは、CYFRA21-1及び/又はCA125の決定されたレベルを使用した重み付け計算によって決定することができる。
【0161】
実施形態において、CYFRA21-1及びCA125のレベルを考慮したスコアは二成分スコアであってもよく、カットオフスコアも二成分であってもよい。「二成分」は、スコアが2つの値、例えば、CYFRA21-1のレベル又はそれから導かれる値である第1の値(CYFRA21-1値とも呼ばれる)及びCA125のレベル又はそれから導かれる値である第2の値(CA125値とも呼ばれる)を含むことを意味する。「それから導かれる値」は、例えば、数学的演算によって得られる値であり得る。「それから導かれる値」は、好ましくはそれぞれのレベルに正比例する。二成分カットオフスコアの値は、それぞれのバイオマーカーを用いた単変量解析によって、すなわち、本明細書に記載の単一バイオマーカーのカットオフを定義する手順と同様に得てもよい。
【0162】
二成分スコアを二成分カットオフスコアと比較することは、決定された二成分スコアの第1の値をカットオフ二成分スコアの第1の値と比較し、決定された二成分スコアの第2の値をカットオフ二成分スコアの第2の値と比較することを含む。実施形態において、決定された二成分スコアの第1の値及び第2の値の両方が二成分基準スコアの第1の値及び第2の値をそれぞれ上回る場合、これは、進行中のNSCLC処置レジームが修正されるべきであることを示す。実施形態において、決定された二成分スコアの第1の値及び第2の値の一方又は両方が二成分基準スコアの第1の値及び第2の値をそれぞれ下回る場合、これは、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示す。
【0163】
実施形態において、決定された二成分スコアのCYFRA21-1値がカットオフ二成分スコアのCYFRA21-1カットオフ値を上回り、決定された二成分スコアのCA125値がカットオフ二成分スコアのCA125カットオフ値を上回る二成分スコアは、進行中のNSCLC処置レジームが修正されるべきであることを示す。
【0164】
実施形態において、決定された二成分スコアのCYFRA21-1値及び/又はCA125値の二成分スコアが、カットオフ二成分スコアのCYFRA21-1カットオフ値及び/又はCA125カットオフ値より低いことは、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示す。
【0165】
したがって、第2の態様による方法は、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するための方法であり得、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを決定すること;
aa)第1の値及び第2の値を含む二成分スコアを決定し、a)で決定されたCYFRA21-1のレベルを第1の値において、及びa)で決定されたCA125のレベルを第2の値において考慮すること;
b)CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルを考慮に入れた二成分スコアを二成分カットオフスコアと比較することであって、前記二成分カットオフスコアがCYFRA21-1カットオフ値及びCA125カットオフ値を含み、決定された二成分スコアの第1の値がCYFRA21-1カットオフ値と比較され、決定された二成分スコアの第2の値がCA125カットオフ値と比較される、二成分スコアを二成分カットオフスコアと比較すること;
c)b)における比較に基づいて、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価すること
を含み、
試料が得られる対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患していると診断されており、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象であり、対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。
【0166】
第2の態様による方法は、試料中のCEAのレベルを決定することをさらに含み得る。これらの実施形態では、比較するステップは、CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベル及びCEAの決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較することを含む。
【0167】
したがって、本発明の第2の態様の一実施形態では、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベルを決定すること;
aa)試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベルを考慮してスコアを決定すること;並びに
b)aa)で決定されたスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、(例えば、CTなどのイメージングによって)安定状態を有すると以前に分類されている。
【0168】
実施形態において、第2の態様による方法は、対象がサブタイプ扁平上皮癌(SCC-NSCLC)又はサブタイプ腺癌(ADC-NSCLC)の非小細胞肺癌に罹患しているかどうかの情報を得ることをさらに含み得る。好ましくは、得られた情報は組織学的データに基づく。
【0169】
CYFRA21-1及びCA125レベル(及び任意選択的にCEA)を考慮に入れたスコアを使用した添付の実施例において示されているように、例えば、決定されたバイオマーカーと組織学的タイプとの間の相互作用項をスコアを計算するための数式に含めることによって、NSCLC(腺癌又はSCC)の組織学的サブタイプに関する情報をスコアにさらに含めると、SD患者の疾患進行リスクを評価する際の性能がさらに増加した。
【0170】
実施形態において、第2の態様の方法は、NSCLC組織学的サブタイプ(腺癌又はSCC)に関する情報を得ることを含み、比較するステップは、決定されたバイオマーカー(すなわち、CYFRA21-1及び/又はCA125、及び任意選択的にCEA)及び組織学的NSCLCサブタイプのレベルを考慮に入れたスコアを比較することを含む。実施形態において、スコアは、組織学的NSCLCサブタイプと決定されたバイオマーカーの1つ又は複数との間の1つ又は複数の相互作用項によって組織学的サブタイプを考慮に入れる。
【0171】
したがって、第2の態様の一実施形態では、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを決定すること;
aa)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプに関する情報を得ること;
aaa)i)試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベル;及びii)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプ(例えば、バイオマーカーレベルと組織学的サブタイプとの間の相互作用項の形態で)を考慮してスコアを決定すること;並びに
b)aaa)で決定されたスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、(例えば、CTなどのイメージングによって)安定状態を有すると以前に分類されている。
【0172】
第2の態様の別の実施形態では、非小細胞肺癌(NSCLC)と診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームが維持又は修正されるべきかどうかを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベルを決定すること;
aa)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプに関する情報を得ること;
aaa)i)試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベル;及びii)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプ(例えば、バイオマーカーレベルと組織学的サブタイプとの間の相互作用項の形態で)を考慮してスコアを決定すること;並びに
b)aaa)で決定されたスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、(例えば、CTなどのイメージングによって)安定状態を有すると以前に分類されている。
【0173】
第2の態様による方法の実施形態では、本方法は、方法によって得られた情報、すなわち処置が維持又は修正されるべきかどうかの情報を、対象及び/又は医師に提供することをさらに含んでもよい。次いで、この情報は、単なるイメージング結果を超える処置応答のための価値ある追加の入力を提供するという点で、さらなる処置決定を支援するために使用され得る。
【0174】
第2の態様による方法の実施形態では、「処置レジームを維持すること」は、進行中の処置レジームが継続されること、すなわちさらなる処置サイクルが行われることを意味する。
【0175】
第2の態様による方法の実施形態では、「処置レジームを修正すること」は、それだけに限らないが以下を含む:(i)処置の用量を調整すること(例えば、薬物の用量を増加させること)、(ii)処置の種類を別の種類の処置に変更すること(例えば、進行中の処置が化学療法である場合、処置を修正することは、処置を免疫療法に変更することであり得る)。換言すれば、「進行中の処置レジームを修正すること」は、「進行中の処置レジームを調整すること」又は「進行中の処置レジームを変更すること」として表現され得る。
【0176】
第3の態様では、本発明は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかを評価するためのインビトロでの方法に関し、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;並びに
b)(i)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること、(ii)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること、又は(iii)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/若しくはCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含む。
【0177】
この方法の文脈における対象は、安定状態を有すると分類又は診断された対象である。
【0178】
したがって、試料が得られた対象は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患していると診断され、進行中のNSCLC処置レジーム下にある対象である。換言すれば、試料が得られる対象は、第3の態様による方法を実施する前にNSCLCに罹患していると診断されており、試料が得られた時点でNSCLC処置レジーム下にある。
【0179】
さらに、試料が得られる対象は、本方法のステップとは異なる手段によって、安定状態を有すると分類又は診断され得る。好ましくは、安定状態の分類は、CTなどのイメージング法によって行われる。
【0180】
実施形態において、試料が得られる対象は、試料が得られる前又は得られた時点で安定状態を有すると診断されている。
【0181】
実施形態において、試料は、安定状態の診断につながる健康診断(例えば、CTなどのイメージング)の日付近の特定の時間枠で得られた試料である。実施形態において、特定の時間枠は、健康診断の35日前から健康診断の35日後までであり得る。好ましい実施形態では、特定の時間枠は、健康診断の30日前から健康診断の30日後までであり得る。さらにより好ましい実施形態では、特定の時間枠は、健康診断の10日前から健康診断の29日後までであり得る。
【0182】
実施形態において、対象は、進行中の処置レジームの開始日の少なくとも10日後、好ましくは少なくとも20日後、さらにより好ましくは少なくとも30日後、最も好ましくは少なくとも35日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されている。実施形態において、対象は、進行中の処置レジームの開始日から最大で150日後、好ましくは最大で120日後、最も好ましくは最大で108日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されている。したがって、対象は、進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは進行中の処置レジームの開始日の35日後~108日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類され得る。
【0183】
実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の少なくとも10日後、好ましくは少なくとも20日後、最も好ましくは少なくとも25日後に対象から得られた試料である。実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の最大150日後、好ましくは最大120日後、最も好ましくは最大108日後に対象から得られた試料である。したがって、実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは進行中の処置レジームの開始日の25日後~108日後に対象から得られた試料である。
【0184】
実施形態において、対象は、進行中の処置レジームの開始日の35日後~108日後に得られたデータ(例えば、腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されており、試料は、進行中の処置レジームの開始日の25日後~108日後に対象から得られた試料である。
【0185】
進行中の処置レジームの「開始」又は「開始日」は、この処置レジームの最初の処置が対象に投与された日である。例えば、薬物又は薬物組成物が対象に最初に投与された日である。
【0186】
本発明の第3の態様の実施形態では、対象が進行中の処置に応答するかどうかを決定する/示すことは、試料が得られた時点で対象が進行中の処置レジームに応答したかどうかを決定する/示すことであり得る。
【0187】
本発明の第3の態様の実施形態では、対象が進行中の処置に応答するかどうかを決定する/示すことは、対象が進行中の処置レジームに応答する(すなわち、試料が得られた後に応答する)かどうかを決定する/示すことであり得る。
【0188】
第3の態様による方法の実施形態では、CYFRA21-1のレベルはa)において決定され得、b)における比較は、CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較することを含み得るか又は比較することからなり得、CYFRA21-1カットオフレベル以下のCYFRA21-1の決定されたレベルは、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答することを示す。
【0189】
第3の態様による方法の実施形態では、CYFRA21-1のレベルはa)において決定され、b)における比較は、CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較することを含むか又は比較することからなり、CYFRA21-1カットオフレベルよりも高いCYFRA21-1の決定されたレベルは、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答しないことを示す。
【0190】
したがって、本発明の第3の態様の実施形態では、本発明は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベルを決定すること;及び
b)CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフレベルと比較すること
を含み、
CYFRA21-1カットオフレベル以下のCYFRA21-1の決定されたレベルは対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答することを示す、及び/又は、CYFRA21-1カットオフレベルよりも高いCYFRA21-1の決定されたレベルは対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答しないことを示す。これに関連して、対象は、腺癌のNSCLC(ADC-NSCLC)と診断されることがさらに好ましい。
対象は、(例えばCTベースのイメージングによって)安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。これに関連して、対象は、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(ADC-NSCLC)と診断されることがさらに好ましい。
【0191】
添付の実施例では、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスク及びその結果として処置応答の検出及び予後を評価する際のバイオマーカーCYFRA21-1の性能は、サブタイプ腺癌のNSCLCに罹患している対象にとって特に良好であることが実証された。したがって、バイオマーカーCYFRA21-1を決定する実施形態では、試料が得られる対象は、特に、サブタイプ腺癌のNSCLCに罹患していると以前に診断された対象であり得る。
【0192】
第3の態様による方法の実施形態では、CA125のレベルはa)において決定され得、b)における比較は、CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較することを含み得るか又は比較することからなり得、CA125カットオフレベル以下のCA125の決定されたレベルは、対照が進行中のNSCLC処置レジームに応答することを示す。
【0193】
第3の態様による方法の実施形態では、CA125のレベルはa)において決定され、b)における比較は、CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較することを含むか又は比較することからなり、CA125カットオフレベルよりも高いCA125の決定されたレベルは、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答しないことを示す。
【0194】
したがって、本発明の第3の態様の実施形態では、本発明は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCA125のレベルを決定すること;及び
b)CA125の決定されたレベルをCA125カットオフレベルと比較すること
を含み、
CA125カットオフレベル以下のCA125の決定されたレベルは、進行中のNSCLC処置レジームが維持されるべきであることを示し、及び/又は、CA125カットオフレベルよりも高いCA125の決定されたレベルは、進行中のNSCLC処置レジームが修正されるべきであることを示し、
対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。これに関連して、対象は、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(SCC-NSCLC)と診断されることがさらに好ましい。
【0195】
添付の実施例では、非小細胞肺癌(NSCLC)疾患進行のリスクを評価する際のバイオマーカーCA125の性能は、サブタイプ扁平上皮癌に罹患している対象にとって特に良好であることが実証された。したがって、バイオマーカーCA125を決定する実施形態では、試料が特に由来し得る対象は、サブタイプ扁平上皮癌のNSCLC(SCC-NSCLC)に罹患していると診断された対象であり得る。
【0196】
本発明の第3の態様の実施形態では、本方法は、試料中で決定されたCYFRA21-1及び/又はCA125のレベルを考慮してスコアを決定することを含んでもよい。これらの実施形態では、b)の比較は、CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較することを含むか又は比較することからなる。
【0197】
試料中のCYFRA21-1及び/又はCA125のレベルを考慮したスコアは、CYFRA21-1及び/又はCA125の決定されたレベルを使用した重み付け計算によって決定することができる。実施形態において、スコアは、CYFRA21-1及び/又はCA125のみに基づいてもよい。他の実施形態では、スコアは、試料中の1つ又は複数の他のバイオマーカーの存在又はレベル及び対象の1つ又は複数の臨床パラメータ(例えば、腫瘍組織学、喫煙状態、疾患のステージ、年齢及び/又は性別)を含むがこれらに限定されない1つ又は複数の他の因子を考慮に入れることができる。特定の実施形態では、スコアは、腫瘍組織学が腺癌であるかSCCであるかを考慮に入れてもよい。特に、腫瘍組織学は、バイオマーカー値との相互作用項によって考慮され得る。それにより、バイオマーカーCYFRA21-1及びCA125が腫瘍組織学に依存してわずかに異なる性能を示したことを考慮に入れることができる。
【0198】
したがって、第3の態様による方法は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかを評価するための方法であり得、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを決定すること;
aa)a)において決定されたCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベルを考慮してスコアを決定すること;並びに
b)CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。
【0199】
実施形態において、カットオフスコアよりも低い(CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮した)決定されたスコアは、対照が進行中のNSCLC処置レジームに応答することを示す。これらの実施形態では、スコアは、CYFRA21-1のレベルが高いほど、及び/又はCA125のレベルが高いほど、スコアが増加するように構成される。
【0200】
実施形態において、カットオフスコアよりも高い(CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮した)決定されたスコアは、対照が進行中のNSCLC処置レジームに応答しないことを示す。これらの実施形態では、スコアは、CYFRA21-1のレベルが高いほど、及び/又はCA125のレベルが高いほど、スコアが増加するように構成される。
【0201】
当業者であれば、CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベルを考慮したスコアは数学的に逆も同様に構成することができること、例えば、カットオフスコアよりも高いスコアはより低いリスクを示し、カットオフスコアよりも高いスコアはより高いリスクを示すことを理解するであろう。これは、CYFRA21-1のレベルが高いほど、及び/又はCA125のレベルが高いほど、スコアが低くなるようにスコアを構成することによって達成することができる。例えば、スコアを計算するための式においてバイオマーカーレベルと掛け合わされる負の因子を使用することによって、スコアの反転を達成することができる。
【0202】
第3の態様の方法の実施形態において、試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルの両方が決定され、決定されたスコアは、CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルの両方を考慮に入れる。
【0203】
したがって、第3の態様による方法は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかを評価するための方法であり得、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを決定すること;
aa)a)において決定されたCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを考慮してスコアを決定すること;並びに
b)CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。
【0204】
試料中のCYFRA21-1及びCA125のレベルを考慮したスコアは、CYFRA21-1及び/又はCA125の決定されたレベルを使用した重み付け計算によって決定することができる。
【0205】
実施形態において、CYFRA21-1及びCA125のレベルを考慮したスコアは二成分スコアであってもよく、カットオフスコアも二成分であってもよい。「二成分」は、スコアが2つの値、例えば、CYFRA21-1のレベル又はそれから導かれる値である第1の値(CYFRA21-1値とも呼ばれる)及びCA125のレベル又はそれから導かれる値である第2の値(CA125値とも呼ばれる)を含むことを意味する。「それから導かれる値」は、例えば、数学的演算によって得られる値であり得る。「それから導かれる値」は、好ましくはそれぞれのレベルに正比例する。二成分カットオフスコアの値は、それぞれのバイオマーカーを用いた単変量解析によって、すなわち、本明細書に記載の単一バイオマーカーのカットオフを定義する手順と同様に得てもよい。
【0206】
二成分スコアを二成分カットオフスコアと比較することは、決定された二成分スコアの第1の値をカットオフ二成分スコアの第1の値と比較し、決定された二成分スコアの第2の値をカットオフ二成分スコアの第2の値と比較することを含む。実施形態において、決定された二成分スコアの第1の値及び第2の値の両方が二成分基準スコアの第1の値及び第2の値をそれぞれ上回る場合、これは、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答しないか又は応答しないであろうことを示す。実施形態において、決定された二成分スコアの第1の値及び第2の値の一方又は両方が二成分基準スコアの第1の値及び第2の値をそれぞれ下回る場合、これは、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するか又は応答するであろうことを示す。
【0207】
実施形態において、決定された二成分スコアのCYFRA21-1値がカットオフ二成分スコアのCYFRA21-1カットオフ値を上回り、決定された二成分スコアのCA125値がカットオフ二成分スコアのCA125カットオフ値を上回る二成分スコアは、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答しない又は応答しないであろうことを示す。
【0208】
実施形態において、決定された二成分スコアのCYFRA21-1値及び/又はCA125値の二成分スコアが、カットオフ二成分スコアのCYFRA21-1カットオフ値及び/又はCA125カットオフ値より低いことは、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答する又は応答するであろうことを示す。
【0209】
したがって、第2の態様による方法は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するか又は応答するであろうかどうかを評価するための方法であり得る:
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを決定すること;
aa)第1の値及び第2の値を含む二成分スコアを決定し、a)で決定されたCYFRA21-1のレベルを第1の値において、及びa)で決定されたCA125のレベルを第2の値において考慮すること;
b)CYFRA21-1の決定されたレベル及びCA125の決定されたレベルを考慮に入れた二成分スコアを二成分カットオフスコアと比較することであって、前記二成分カットオフスコアがCYFRA21-1カットオフ値及びCA125カットオフ値を含み、決定された二成分スコアの第1の値がCYFRA21-1カットオフ値と比較され、決定された二成分スコアの第2の値がCA125カットオフ値と比較される、二成分スコアを二成分カットオフスコアと比較すること;
c)b)における比較に基づいて、対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するか又は応答するであろうかどうかを評価すること
を含み、
試料が得られる対象は、安定状態ステージを有すると以前に分類(又は診断)されている。
【0210】
第3の態様による方法は、試料中のCEAのレベルを決定することをさらに含み得る。これらの実施形態では、比較するステップは、CYFRA21-1の決定されたレベル及び/又はCA125の決定されたレベル及びCEAの決定されたレベルを考慮したスコアをカットオフスコアと比較することを含む。
【0211】
したがって、本発明の第3の態様の一実施形態では、本発明は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベルを決定すること;
aa)試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベルを考慮してスコアを決定すること;並びに
b)aa)で決定されたスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、(例えば、CTなどのイメージングによって)安定状態を有すると以前に分類されている。
【0212】
実施形態において、第3の態様による方法は、対象がサブタイプ扁平上皮癌(SCC-NSCLC)又はサブタイプ腺癌(ADC-NSCLC)の非小細胞肺癌に罹患しているかどうかの情報を得ることをさらに含み得る。好ましくは、得られた情報は組織学的データに基づく。
【0213】
CYFRA21-1及びCA125レベル(及び任意選択的にCEA)を考慮に入れたスコアを使用した添付の実施例において示されているように、例えば、決定されたバイオマーカーと組織学的タイプとの間の相互作用項をスコアを計算するための数式に含めることによって、NSCLC(腺癌又はSCC)の組織学的サブタイプに関する情報をスコアにさらに含めると、SD患者の疾患進行リスクを評価する際の性能がさらに増加した。その結果、処置応答を評価する際の性能も向上する。
【0214】
実施形態において、第3の態様の方法は、NSCLC組織学的サブタイプ(腺癌又はSCC)に関する情報を得ることを含み、比較するステップは、決定されたバイオマーカー(すなわち、CYFRA21-1及び/又はCA125、及び任意選択的にCEA)及び組織学的NSCLCサブタイプのレベルを考慮に入れたスコアを比較することを含む。実施形態において、スコアは、組織学的NSCLCサブタイプと決定されたバイオマーカーの1つ又は複数との間の1つ又は複数の相互作用項によって組織学的サブタイプを考慮に入れる。
【0215】
したがって、第3の態様の一実施形態では、本発明は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベルを決定すること;
aa)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプに関する情報を得ること;
aaa)i)試料中のCYFRA21-1のレベル及びCA125のレベル;及びii)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプ(例えば、バイオマーカーレベルと組織学的サブタイプとの間の相互作用項の形態で)を考慮してスコアを決定すること;並びに
b)aaa)で決定されたスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、(例えば、CTなどのイメージングによって)安定状態を有すると以前に分類されている。
【0216】
第3の態様の別の実施形態では、本発明は、非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象が、進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうかを評価するためのインビトロでの方法が提供され、前記方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベルを決定すること;
aa)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプに関する情報を得ること;
aaa)i)試料中のCYFRA21-1のレベル、CA125のレベル及びCEAのレベル;及びii)対象が罹患している組織学的NSCLCサブタイプ(例えば、バイオマーカーレベルと組織学的サブタイプとの間の相互作用項の形態で)を考慮してスコアを決定すること;並びに
b)aaa)で決定されたスコアをカットオフスコアと比較すること
を含み、
対象は、(例えば、CTなどのイメージングによって)安定状態を有すると以前に分類されている。
【0217】
第3の態様による方法の実施形態では、本方法は、方法によって得られた情報、すなわち対象が進行中の処置レジームに応答するかどうかの情報を、対象及び/又は医師に提供することをさらに含んでもよい。この情報は、さらなる処置決定を支援するために、例えば進行中の処置レジームを維持又は修正するために使用され得る。
【0218】
第4の態様では、本発明は、NSCLCに罹患している対象の処置方法を提供する。処置方法は、好ましくは、本発明の第1、第2又は第3の態様による方法の1つのステップを含む。第1、第2及び第3の態様の方法について本明細書の他の箇所に開示されているすべての実施形態は、必要な変更を加えて第4の態様の方法に適用される。本発明の第4の態様による処置方法は、進行中の処置レジームで患者を処置し続けること、又は第1、第2若しくは第3の態様の方法による評価の結果に基づいて処置レジームを修正することをさらに含む。
【0219】
したがって、本発明の第4の態様による方法は、(i)非小細胞肺癌(NSCLC)に罹患している対象が、本発明の第3の態様の実施形態のいずれか1つに記載の方法によって、進行中の処置レジームに応答するかどうかを評価すること;又は(i)’本発明の第2の態様の実施形態のいずれか1つで記載されるように、前記対象の進行中の処置レジームが維持若しくは修正されるべきかどうかを評価すること;(ii)進行中の処置レジームで患者の治処置継続すること、又は(i)若しくは(i)’における評価の結果に基づいて処置レジームを修正することを含み得る。
【0220】
第4の態様による方法の実施形態では、「処置レジームを継続すること」は、進行中の処置レジームが維持されること、すなわち処置ガイドラインによって計画又は推奨されるようにさらなる処置サイクルが行われることを意味する。
【0221】
進行中の処置レジームは、原則として、NSCLCのための任意の処置レジームであり得る。NSCLCに関するガイドラインは、当技術分野で公知である(S3-Leitlinie Pravention,Diagnostik,Therapie und Nachsorge des Lungenkarzinoms Langversio;及びNCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology(出願日現在の最新版におけるNSCLCに関するNCCN Guidelines(登録商標)))。実施形態において、「進行中の処置レジーム」は、化学療法、標的療法、免疫療法、放射線療法、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0222】
添付の実施例は、様々な異なる処置レジームに対する応答が、本明細書中に記載の方法及び使用を用いて首尾よく評価され得ることを実証している。
【0223】
特定の実施形態では、「進行中の処置レジーム」 は、化学療法の処置レジームであり得る。
【0224】
具体的であるが非限定的であるが例示的な進行中の処置レジームは、添付の実施例、具体的には表1a、1b及び1cに開示されている。
【0225】
実施形態において、化学療法は、白金系化学療法及び白金非含有化学療法の非限定的な群から選択され得る。
【0226】
白金系化学療法は、白金系化学療法剤を含む医薬組成物の投与を含む治療である。白金系化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサプラチン、ネダプラチン、硝酸トリプラチン、フェナトリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。特定の実施形態では、白金系化学療法剤は、カルボプラチン及びシスプラチンから選択され得る。
【0227】
白金非含有化学療法は、白金系化学療法剤以外の化学療法剤のみを投与する治療である。白金系化学療法薬以外の化学療法剤の非限定的な例は、エトポシド、ドセタキセル、ゲムシタビン、パクリタキセル、ペルメトレキセド、ビノレルビン及びビンクリスチンである。
【0228】
標的療法は、がん細胞の増殖、分裂及び/又は拡大の方法を制御するタンパク質を特異的に標的とするがん処置の一種である。したがって、これらの治療は、典型的には、がん細胞を優先的に標的とする。
【0229】
例示的であるが非限定的な標的療法は、チロシンキナーゼ阻害剤(本明細書ではTKIとも呼ばれる)を用いた治療である。チロシンキナーゼ阻害剤の例示的であるが非限定的な例は、アファチニブ、アレクチニブ、クリゾチニブ、エルロチニブ及びオシメルチニブである。
【0230】
免疫療法は、抗体(単一特異性又は多重特異性)、抗体断片又は抗体様分子による処置である。
【0231】
例示的であるが非限定的な免疫療法剤は以下である:アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))及びペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))。実施形態において、免疫療法剤による処置は、アテゾリズマブ(Tecentriq)(登録商標)、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))及びペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))から選択される免疫療法剤によるものであり得る。
【0232】
実施形態において、免疫療法は、PD-1又はPD-L1遮断薬などのチェックポイント阻害剤であり得る。
【0233】
放射線治療又は放射線療法は、しばしばRT、RTx、又はXRTと略され、電離放射線を使用する治療である。放射線療法は、化学療法と一緒に与えられてもよく、手術に適格でないNSCLCを有する者において治癒目的で使用されてもよい。この形態の高強度放射線療法は、根治的放射線療法と呼ばれる。この技術の改良は、高線量の放射線療法が短期間で与えられる連続的な多分割加速放射線療法(CHART)である。術後胸部放射線療法は、一般に、NSCLCのための治癒目的の手術後に使用されるべきではない。がんの成長が気管支の短い部分を遮断する場合、通路を開くために近接照射療法(局所放射線療法)を気道の内側に直接施すことができる。外部ビーム放射線療法と比較して、近接照射療法は、処置時間の短縮及び医療スタッフへの放射線曝露の低減を可能にする。しかしながら、近接照射療法の証拠は、外部ビーム放射線療法の証拠よりも少ない。
【0234】
第4の態様による方法の実施形態では、「処置レジームを修正すること」は、それだけに限らないが以下を含む:(i)処置の用量を調整すること(例えば、薬物の用量を増加させること)、(ii)処置の種類を別の種類の処置に変更すること(例えば、進行中の処置が化学療法である場合、処置を修正することは、処置を免疫療法に変更することであり得る)。特に、進行中の処置レジームを修正することは、特定の進行中の処置レジームから「進行中の処置レジーム」の上述の例のいずれか1つに変更することであり得る。別の言葉で表現すると、「進行中の処置レジームを修正すること」という用語は、「進行中の処置レジームを調整すること」又は「進行中の処置レジームを変更すること」であり得る。
【0235】
第5の態様では、本発明は、
(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するための、バイオマーカー(複数可)としてのCYFRA21-1及び/又はCA125の使用に関する。
【0236】
評価が行われる対象は、進行中の処置レジーム下で安定状態NSCLCを有すると分類又は診断された対象である。
【0237】
第5の態様による使用は、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様による方法について説明した実施形態のいずれかを、必要な変更を加えて含んでもよい。
【0238】
例えば、第5の態様による使用は、
(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するための、バイオマーカーとしてCEAを使用することをさらに含んでもよい。
【0239】
実施形態に置いて、使用は、好ましくは組織学的データに基づいて、対象が非小細胞肺癌サブタイプの扁平上皮癌(SCC-NSCLC)又は腺癌(ADC-NSCLC)に罹患しているかどうかの情報を考慮に入れることをさらに含んでもよい。
【0240】
第6の態様では、本発明は、
(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するための、コンピュータ実装方法であって、
(i)、(ii)及び(iii)の対象は、安定状態を有すると分類されている、コンピュータ実装方法に関する。
【0241】
簡単に言えば、コンピュータ実装方法は、コンピュータ実装方法が必ずしもCYFRA21-1、CA125及び/又はCEAのレベル、並びにスコアの計算に考慮され得る任意の他の情報又はデータを決定することを含まないことを除いて、本発明の前述の態様のいずれかによる方法及び使用のコンピュータ実装変形であり得る。
【0242】
コンピュータ実装方法は、
a)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベル、並びに任意選択的にCEAのレベル、並びに任意選択的に前記対象のNSCLCサブタイプに関する情報を含むデータを受信すること;並びに
b)前記データを処理して、上記の前述の態様の実施形態で定義された比較するステップのいずれかを実行することを含んでもよい。
【0243】
前述の態様について記載され、本明細書で以下に記載のすべての実施形態は、必要な変更を加えて適用される。
【0244】
当業者は、当技術分野で説明されている日常的な方法を用いてそのようなコンピュータ実装方法を確立し、構成する人を知っている。
【0245】
実施形態において、第6の態様によるコンピュータ実装方法は、評価の結果を出力すること、すなわち、
(i)対象が、進行中のNSCLC処置レジームの下でNSCLC疾患進行のリスクが高いか、又は低いかどうか;
(ii)対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)対象のレジームが維持若しくは修正されるべきであるかどうか
を出力することを、さらに含んでもよい。
【0246】
出力は、ディスプレイによって達成されてもよい。
【0247】
第7の態様では、本発明は、プログラムがコンピュータによって実行されると、本発明の第1、第2、第3、及び第5の態様による実施形態で定義された方法及び使用のいずれか1つをコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0248】
前述の態様について記載され、本明細書で以下に記載のすべての実施形態は、必要な変更を加えて適用される。
【0249】
第8の態様では、本発明は、コンピュータによって実行されると、本発明の第1、第2、第3、及び第5の態様による実施形態で定義された方法及び使用のいずれか1つをコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体を提供する。
【0250】
前述の態様について記載され、本明細書で以下に記載のすべての実施形態は、必要な変更を加えて適用される。
【0251】
第9の態様では、本発明は、
(i)対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベル及び/又はCA125のレベル、並びに任意選択的にCEAのレベル、並びに任意選択的に前記対象のNSCLCサブタイプに関する情報を含むデータを受信するように構成された受信ユニット;
(ii)上記の前述の態様の実施形態で定義された比較するステップのいずれかを実行するように構成された処理ユニット;並びに
(iii)任意選択的に、評価結果を出力するように構成された出力ユニット
を含むデータ処理システムを提供する。
【0252】
評価結果は、
(i)対象が、進行中のNSCLC処置レジームの下でNSCLC疾患進行のリスクが高いか、又は低いかどうか;
(ii)対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)対象のレジームが維持若しくは修正されるべきであるかどうか
についての情報であってもよい。
【0253】
前述の態様について説明され、以下に説明されるすべての実施形態は、必要な変更を加えて、本発明の第9の態様によるデータ処理システムに適用される。
【0254】
第10の態様において、本発明は、
対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベルを検出するための試薬若しくは試薬のセット及び/又はCA125を検出するための試薬若しくは試薬のセットを含むキットに関する。
【0255】
前述の態様について説明され、以下に説明されるすべての実施形態は、必要な変更を加えて、本発明の第9の態様によるキットに適用される。
【0256】
キットは、好ましくは、
(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するためのキットであり、
(i)、(ii)及び(iii)の対象は、(例えば、CTベースのイメージングによって)安定状態を有すると診断された対象である。
【0257】
特定の実施形態では、キットは、対象から得られた試料中のCYFRA21-1のレベルを検出するための試薬若しくは試薬のセット及びCA125を検出するための試薬若しくは試薬のセットを含む。
【0258】
実施形態において、キットは、対象から得られた試料中のCEAのレベルを検出するための試薬又は試薬のセットをさらに含む。
【0259】
CYFRA21-1を検出するための試薬又は試薬のセットは、当技術分野で周知である。例示的な試薬は、それぞれのバイオマーカーに特異的に向けられた抗体又は抗体対である。そのような試薬の例は、添付の実施例で使用されるElecsys(登録商標)アッセイで使用される試薬である。
【0260】
実施形態において、キットは、検出されたCYFRA21-1、CA125及び任意選択的にCEAのレベル、並びに/又はNSCLCのサブタイプに関する情報(すなわち、腺癌又はSCC)に基づいて、(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジームの下でのNSCLC疾患進行のリスク;(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうかを評価する方法の説明書を含み得る。
【0261】
これらの説明書は、レベル(複数可)が比較される必要があるカットオフを含み得る。実施形態において、説明書は、検出剤又は検出剤のセットがキットに含まれるバイオマーカー(すなわち、CYFRA21-1、CA125及び/又はCEA)に基づくスコア(特に、本明細書の他の箇所に記載される)の計算又は構築に関する情報を含み得る。
【0262】
実施形態において、説明は、本明細書で上述したコンピュータ実装方法(例えば、ウェブリンクを介して、)、コンピュータプログラム製品、コンピュータ可読媒体、又はデータ処理システムの参照を含み得る。
【0263】
一実施形態では、キットは、
(i)NSCLCと診断された対象に対する進行中のNSCLC処置レジーム下でのNSCLC疾患進行のリスク;
(ii)NSCLCと診断された対象が進行中のNSCLC処置レジームに応答するかどうか;及び/又は
(iii)NSCLCと診断された対象について、進行中のNSCLC処置レジームを維持若しくは修正すべきかどうか
を評価するためのキットであることを規定する添付文書を含んでもよく、
(i)、(ii)及び(iii)の対象は、(例えば、CTベースのイメージングによって)安定状態を有すると診断された対象である。
【0264】
以下の定義及び実施形態は、本明細書に記載の本発明のすべての態様に適用される。
【0265】
非小細胞肺がん腫(NSCLC)は、肺がんの組織学的タイプである。肺がんは、肺の癌又は肺性癌としても知られており、肺組織における制御されない細胞増殖を特徴とする悪性肺腫瘍である。処置せずに放置すると、この増殖は、近くの組織又は身体の他の部分への転移のプロセスによって肺を越えて広がり得る。肺で発生するほとんどのがんは、原発性肺がんとして知られており、上皮細胞に由来する癌である。肺がんの主な4つの組織学的タイプは、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌及び小細胞癌(SCLC)である。最初の3つのサブタイプは、一般に非小細胞癌(NSCLC)と呼ばれ、肺がんの約80%を占める。肺腫瘍の診断は、一般に、イメージング法及び生検試料の分析に基づく。肺腫瘍の2004年世界保健機関(WHO)スキーマは、肺がん分類の基礎となった。これには、肺癌の不均一性の認識、いくつかの神経内分泌腫瘍の日常診断のための診断用免疫組織化学染色(IHC)技術の導入、及び胎児腺癌、嚢胞性粘液性腫瘍、及び大細胞神経内分泌癌などの新たに記載された実体の認識を含むいくつかの開発が組み込まれた。2011年に、International Association for the Study of Lung Cancer(IASLC)、American Thoracic Society(ATS)、及びEuropean Respiratory Society(ERS)を代表する集学的専門家パネルが、分類体系の主要な改訂を提案した。これらの変化は、主に腺癌の分類及びその扁平上皮癌からの区別に影響を及ぼす。腫瘍学者及び病理学者による腫瘍の分類のための現在の国際標準は、「WHO Classification of Tumours of the Lung,Pleura,Thymus and Heart」(Travis et al,2015,WHO Classification of Tumours,Volume 7,fourth edition)によって提供される。本発明の文脈において疑いがある場合、上記の基準は、NSCLC及びその組織学的サブタイプを定義するために適用されるべきである。
【0266】
扁平上皮肺癌(SCC)は、予備細胞、すなわち、肺の主気道である気管支の内壁の負傷又は損傷した細胞と置き換わった円形細胞から形成された非小細胞肺がんの一種である。扁平上皮腫瘍は、通常、肺の中央部分又は主気道分岐部の1つに発生する。これらの腫瘍は、大きなサイズに成長すると、肺に空洞を形成し得る。扁平上皮癌は、全肺がんの25~30%を占め、骨、副腎、肝臓、小腸、又は脳に広がり得る。この種の肺がんの進行ステージの予後は不良である。しかしながら、初期ステージで同定されて除去された限局性肺がんを有する人の5年生存率は35~40%にもなり得る。これらの5年生存率は、30歳未満の患者については85%に近づく。この種のがんは、ほぼ常に喫煙によって引き起こされる。二次危険因子には、年齢、家族歴、並びに副流煙、鉱物及び金属粉塵、アスベスト又はラドンへの曝露が含まれる。
【0267】
扁平上皮癌の組織学的診断は、腫瘍細胞及び/又は細胞間デスモソーム(「細胞間架橋」と呼ばれる)によるケラチン産生の存在に基づいて予測される。主に紡錘状(多形性癌の紡錘細胞変異体)であるか、又は末梢髄鞘化の特徴的なパターンを有するいくつかの腫瘍も、扁平上皮癌として分類され得る。歴史的に、ほとんどの扁平上皮癌(60~80%)は、扁平上皮化生、異形成、in situ癌(in situ扁平上皮癌)を介して、気管気管支樹の近位部分に発生した。症例の少数は末梢で発生し、気管支拡張性空洞又は瘢痕に関連し得る。中心及び末梢扁平上皮癌は、広範な中心壊死を示し得、その結果、空洞化が生じる。中心性の高分化扁平上皮癌の小さなサブセットは、外方増殖性の気管支内乳頭病変として生じる。扁平上皮癌のこの異常な変異体を有する患者は、典型的には、気道閉塞による持続性咳、再発性喀血、又は再発性肺感染症を呈する。
【0268】
腺癌は、現代のシリーズにおいて最も一般的なタイプの肺がんであり、肺がん症例の約半分を占める。これは、全身の粘液分泌腺に形成される肺がんの一種である。腺がんは、通常、肺の外側部分に見られ、他の種類の肺がんよりも増殖が遅い傾向があり、肺の外側に広がる前に見られる可能性が高い。これは主に現在又は過去の喫煙者に発生するが、非喫煙者に見られる最も一般的なタイプの肺がんでもある。それは男性よりも女性でより一般的であり、他のタイプの肺がんよりも若年者に発生する可能性が高い。腺癌の発生率の増加は、1960年台の低タールフィルタ付きタバコの導入によるものと考えられるが、そのような因果関係は証明されていない。
【0269】
本発明の文脈における評価が提供される対象は、好ましくは、サブタイプ腺癌及び/又は扁平上皮肺癌のNSCLCを有する。
【0270】
進行中の処置レジームは、原則として、NSCLCのための任意の処置レジームであり得る。NSCLCに関するガイドラインは当技術分野で公知である(S3-Leitlinie Pravention,Diagnostik,Therapie und Nachsorge des Lungenkarzinoms Langversion 1.0-Februar 2018 AWMF-Registernummer:020/007OL;及びNCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology(NCCN Guidelines(登録商標))for NSCLC,Version 7.2015。実施形態において、「進行中の処置レジーム」は、化学療法、標的療法、免疫療法、放射線療法、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0271】
添付の実施例は、様々な異なる処置レジームに対する応答が、本明細書中に記載の方法及び使用を用いて首尾よく評価され得ることを実証している。
【0272】
特定の実施形態では、「進行中の処置レジーム」 は、化学療法の処置レジームであり得る。
【0273】
具体的であるが非限定的であるが例示的な進行中の処置レジームは、添付の実施例、具体的には表1a、1b及び1cに開示されている。
【0274】
実施形態において、化学療法は、白金系化学療法及び白金非含有化学療法の非限定的な群から選択され得る。
【0275】
白金系化学療法は、白金系化学療法剤を含む医薬組成物の投与を含む治療である。白金系化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサプラチン、ネダプラチン、硝酸トリプラチン、フェナトリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る。特定の実施形態では、白金系化学療法剤は、カルボプラチン及びシスプラチンから選択され得る。
【0276】
白金非含有化学療法は、白金系化学療法剤以外の化学療法剤のみを投与する治療である。白金系化学療法薬以外の化学療法剤の非限定的な例は、エトポシド、ドゲムシタビン、セタキセル、パクリタキセル、ペルメトレキセド、ビノレルビン及びビンクリスチンである。
【0277】
標的療法は、がん細胞の増殖、分裂及び/又は拡大の方法を制御するタンパク質を特異的に標的とするがん処置の一種である。したがって、これらの治療は、典型的には、がん細胞を優先的に標的とする。
【0278】
例示的であるが非限定的な標的療法は、チロシンキナーゼ阻害剤(本明細書ではTKIとも呼ばれる)を用いた治療である。チロシンキナーゼ阻害剤の例示的であるが非限定的な例は、アファチニブ、アレクチニブ、クリゾチニブ、エルロチニブ及びオシメルチニブである。
【0279】
免疫療法は、抗体(単一特異性又は多重特異性)、抗体断片又は抗体様分子による処置である。
【0280】
例示的であるが非限定的な免疫療法剤は以下である:アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))及びペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))。実施形態において、免疫療法剤による処置は、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))及びペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標))から選択される免疫療法剤によるものであり得る。
【0281】
実施形態において、免疫療法は、PD-1又はPD-L1遮断薬などのチェックポイント阻害剤であり得る。
【0282】
放射線治療又は放射線療法は、しばしばRT、RTx、又はXRTと略され、電離放射線を使用する治療である。放射線療法は、化学療法と一緒に与えられてもよく、手術に適格でないNSCLCを有する者において治癒目的で使用されてもよい。この形態の高強度放射線療法は、根治的放射線療法と呼ばれる。この技術の改良は、高線量の放射線療法が短期間で与えられる連続的な多分割加速放射線療法(CHART)である。術後胸部放射線療法は、一般に、NSCLCのための治癒目的の手術後に使用されるべきではない。がんの成長が気管支の短い部分を遮断する場合、通路を開くために近接照射療法(局所放射線療法)を気道の内側に直接施すことができる。外部ビーム放射線療法と比較して、近接照射療法は、処置時間の短縮及び医療スタッフへの放射線曝露の低減を可能にする。しかしながら、近接照射療法の証拠は、外部ビーム放射線療法の証拠よりも少ない。
【0283】
本発明の態様の好ましい実施形態では、進行中の処置レジームは、第一選択処置(すなわち、対象が受ける第1の処置)によるものであり得る。
【0284】
本明細書で使用される「NSCLC処置レジームを修正すること」には、それだけに限らないが、以下が含まれ得る。(i)処置の用量を調整すること(例えば、薬物の用量を増加させること)、(ii)処置の種類を別の種類の処置に変更すること(例えば、進行中の処置が化学療法である場合、処置を修正することは、処置を免疫療法に変更することであり得る)。特に、進行中の処置レジームを修正することは、特定の進行中の処置レジームから「進行中の処置レジーム」の上述の例のいずれか1つに変更することであり得る。別の言葉で表現すると、「進行中の処置レジームを修正すること」という用語は、「進行中の処置レジームを調整すること」又は「進行中の処置レジームを変更すること」であり得る。好ましい実施形態では、進行中の処置レジームを修正することは、第一選択療法から第二選択療法に変更することであり得る。
【0285】
本明細書の処置レジームは、いくつかの処置サイクルを含む。処置サイクルは、処置タイプによる処置の期間と、それに続く規則的なスケジュールで繰り返される休止期間(処置なし)とを含む。例えば、1週間の処置とそれに続く3週間の休薬が1回の処置サイクルである。このサイクルが規則的なスケジュールで複数回繰り返される場合、これは数サイクルを含む処置レジームを構成する。好ましくは、本発明の文脈において、処置レジームは、3~6回の処置サイクル(任意選択的に、その後に維持療法が続く)を含む。例示的には、処置レジームは4回の処置サイクルを含み得る。処置サイクルの好ましい長さは、15日間~27日間、好ましくは18日間~24日間、最も好ましくは21日間である。
【0286】
本発明のすべての態様の文脈において、「進行中の処置レジーム」という表現は、試料が得られた時点で対象に投与された処置レジームを指す。処置レジーム自体は、本発明の第1、第2、第3、第5及び第6の態様のいずれかによる方法及び使用の一部を明確に形成しない。「進行中」という用語は、本発明の方法に供される試料が、対象が処置レジーム下にあった時点で得られたことのみを意味する。したがって、第4の態様による方法を除く本発明の方法及び使用は、人体では実施されず、単なる「インビトロ」方法及び使用である。
【0287】
本発明の態様の好ましい実施形態における処置レジームに対する応答は、対象が処置レジームから利益を得ることを意味する。本発明の文脈において、これは具体的には、疾患進行のリスク(腫瘍成長、新たな病変、転移の形成及び/又はNSCLCによる死)が遅延又は回避されることを意味し得る。
【0288】
NSCLCは、典型的には、ステージI~IVに病期分類される。本発明のすべての態様の文脈において、試料が得られる対象は、これらのステージのいずれかであり得る。本発明の態様の好ましい実施形態では、対象はステージIII又はIVのNSCLCを有し得る。
【0289】
現在、NSCLCの腫瘍病期分類は、「The Revised International System for Staging Lung Cancer」に基づいている。肺がんは、5,000人を超える患者の臨床データベースからの情報を考慮して分類されており、2010年にAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)及びUnion Internationale Contre le Cancerによって採用された。
【0290】
T(原発性腫瘍)分類は以下の通りである:
T1=腫瘍≦3cmのサイズ
T2=腫瘍>3~7cmのサイズ
T3=腫瘍>7cmのサイズ又は同じ肺葉内の複数の腫瘍結節
T4=同じ肺にあるが異なる肺葉にある複数の腫瘍結節
【0291】
N/M(転移)分類は以下の通りである:
N0=所属リンパ節転移なし
N1=直接伸長による関与を含む、同側気管支周囲及び/又は同側肺門リンパ節並びに肺内リンパ節における転移
N2=同側縦隔及び/又は気管分岐部リンパ節(複数可)における転移
N3=対側縦隔、対側肺門、同側若しくは対側の斜角線、又は鎖骨上リンパ節(複数可)における転移
M0=遠隔転移なし
M1=遠隔転移
【0292】
腫瘍ステージI~IVは、上記のTNMカテゴリーに従って以下のように分類される:
【表1】
【0293】
病期分類に関するさらに詳細な情報は、「The IASLC Lung Cancer Staging Project:Proposal for Revision of the TNM Stage Groupings in the Forthcoming eighth edition of the TNM Classification for Lung Cancer」(Goldstraw et al JTO 2016;11:39-51)から取得され得る。
【0294】
パフォーマンスステータスのECOGスケールは、対象の日常生活能力に対する疾患の影響の測定値である(患者のパフォーマンスステータスとして医師及び研究者に知られている)。それは、自分自身をケアする能力、日常活動、及び身体能力(歩行、作業等)に関して患者の機能レベルを記載する。
【0295】
このスケールは、現在はECOG-ACRIN Cancer Research Groupの一部であるEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)によって開発され、1982年に公表された(Oken M,et al.Toxicity and response criteria of the Eastern Cooperative Oncology Group.Am J Clin Oncol.1982;5:649-655)。
【0296】
この参考文献によるECOGスケールは以下の通りである:
【表2】
【0297】
本発明の文脈において、評価されている(すなわち、試料が由来する)対象が有し得るECOGスコアに関する特定の制限はない。本発明の態様の特定の実施形態では、対象は、0~2のECOGスコアを有し得る。
【0298】
進行中の処置レジームにあるNSCLC患者は、典型的には、コンピュータ断層撮影(CT)などのイメージングに基づく方法によってモニタリングされる。イメージングによるこのモニタリングに基づいて、処置に対する腫瘍応答を評価することができる。腫瘍イメージング結果に基づいて、患者は、典型的には、以下のカテゴリー:完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、進行性疾患(PD)及び安定状態(SD)の1つに分類される。RECIST 1.1などのこの分類のための標準的な基準が利用可能である。本発明の文脈において、カテゴリーの定義は、好ましくは以下の通りである:部分奏効(PR)は、腫瘍サイズの30%以上の減少に割り当てられる。進行性疾患(PD)は、腫瘍サイズの20%以上の増加に割り当てられる。そのような症例では、PRと見なされるのに十分なサイズの減少も、PDと見なされるのに十分な成長も見出されなかったという点で、安定状態が割り当てられる(すなわち、30%未満のサイズの減少~20%未満のサイズの増加)。CRは、すべての標的病変の消失として定義される。この分類は、固形腫瘍における応答評価基準に基づく(RECIST 1.1;Eisenhauer et al.,Eur J Cancer 2009,45,228-247,doi:10.1016/j.ejca.2008.10.026を参照)。
【0299】
本発明の文脈において、対象は、安定状態を有すると分類され得る。分類は、好ましくは、上で定義されたRECIST 1.1又はRECIST 1.1で定義されたRECISTに基づく基準によるCTなどのイメージング法によるものである(Eisenhauer et al.,Eur J Cancer 2009,45,228-247,doi:10.1016/j.ejca.2008.10.026を参照。その全体が組み込まれる)。競合の場合、RECIST 1.1基準が優先する。
【0300】
本明細書で使用される場合、「安定状態を有すると分類されている」又は「安定状態を有すると診断される」という表現は、進行中の処置レジームに対する対象の応答が、好ましくはイメージングベース(例えば、CT又はPET CT)によって評価され、上記の基準(好ましくはRECIST 1.1)に従って安定状態として分類されたことを意味する。本発明の実施形態において(本発明のすべての態様を含む)、対象は、進行中の処置レジームの第2の処置サイクル後に安定状態を有すると分類され得る。特に、対象は、2回目の処置サイクル後100日以内、好ましくは80日以内、好ましくは70日以内、好ましくは60日以内(例えば、2回目の処置サイクルの薬物/処置投与後100日以内、好ましくは80日以内、好ましくは70日以内、好ましくは60日以内)に安定状態を有すると分類され得る。好ましい実施形態では、対象は、進行中の処置レジームの開始日の少なくとも10日後、好ましくは少なくとも20日後、さらにより好ましくは少なくとも30日後、最も好ましくは少なくとも35日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されている。実施形態において、対象は、進行中の処置レジームの開始日から最大で150日後、好ましくは最大で120日後、最も好ましくは最大で108日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類されている。したがって、対象は、進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは進行中の処置レジームの開始日の35日後~108日後に得られたデータ(例えば、CTデータなどの腫瘍イメージングデータ)に基づいて安定状態を有すると分類され得る。
【0301】
進行中の処置レジームの「開始」又は「開始日」は、この処置レジームの最初の処置が対象に投与された日である。例えば、薬物又は薬物組成物が対象に最初に投与された日である。
【0302】
本発明の文脈において、試料は、対象(或いは、本明細書において「個体」とも呼ばれる)から得られた試料である。本発明による対象は、任意のヒト又は非ヒト動物、特に哺乳動物であり得る。したがって、本明細書に記載の方法及び使用は、ヒト及び獣医学の疾患の両方に適用可能である。明らかに、特に関心のある非ヒト哺乳動物には、商業的価値(例えば、ウマなどの家畜)又は個人的価値(例えば、イヌ、ネコなどのペット)のある家畜、ペット及び動物が含まれる。この方法は、診断方法が一般的に用いられるヒト対象に特に好ましい。したがって、特に好ましい実施形態では、試料が得られた対象はヒトである。
【0303】
本発明の文脈で使用される「試料」は、本発明によるバイオマーカーを測定するのに適した任意の試料(すなわち、CYFRA21-1及び/又はCA125、及び任意選択的にCEA)であり得、インビトロでの評価を目的として得られた生物学的試料を指す。それは、個体に特に関連することができ、個体に関する特定の情報をそこから決定、計算又は推測することができる材料を含む。試料は、患者由来の生体物質(例えば、肺生検から得られた固形組織試料)の全体又は一部で構成され得る。試料はまた、個体に関する情報を提供する試験が試料に対して行われることを可能にする方法で患者と接触した材料であり得る。試料は、好ましくは、任意の体液を含み得る。例示的な試験試料には、血液、血清、血漿、尿、唾液、及び肺からの流体(例えば、上皮内層液)が含まれ、例えば、気管支鏡検査又は気管支栄養法によって得られる。試料は、対象から採取され、決定/測定の直前に使用され得るか、又は処理され得る。処理は、精製(例えば、遠心分離などの分離)、濃縮、希釈、細胞成分の溶解、凍結、酸性化、保存などを含み得る。好ましい試料は、全血、血清、及び血漿である。特に好ましい実施形態では、試料は血清又は血漿である。
【0304】
典型的には、血液関連試料は、本発明の文脈で使用するための好ましい試験試料である。これらの試料は、静脈から、通常は肘の内側又は手の甲から採血することによって得られたものであり得る。特に、乳幼児では、ランセットと呼ばれる鋭利な器具を使用して皮膚を穿刺し、それを出血させてもよい。したがって、血液は静脈血であってもよい。血液は、例えばピペット内に、又はスライド若しくは試験ストリップ上に収集され得る。したがって、本発明の好ましい実施形態では、個体から得られる試料は、特に血清、血漿及び全血からなる群から選択される血液試料である。最も好ましくは、試料は、血清又は血漿から選択される血液試料である。
【0305】
本発明の文脈において評価される対象から得られた試料は、対象が受けている進行中のNSCLC処置レジーム内の定義された時点で得られた試料であり得る。実施形態において、試料は、最終的に安定状態の診断につながる健康診断(例えば、CTなどのイメージング)の日付近の特定の時間枠内に得られた試料である。実施形態において、特定の時間枠は、健康診断の30日前から健康診断の30日後までであり得る。好ましい実施形態では、特定の時間枠は、健康診断の20日前から健康診断の30日後までであり得る。さらにより好ましい実施形態では、特定の時間枠は、健康診断の10日前から健康診断の29日後までであり得る。実施形態において、試料は、処置レジームの第2のサイクルの処置投与段階後に得られた試料である。好ましい実施形態では、試料は、進行中の処置レジームの開始日の少なくとも10日後、好ましくは少なくとも20日後、最も好ましくは少なくとも25日後に対象から得られた試料である。あ実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の最大150日後、好ましくは最大120日後、最も好ましくは最大108日後に対象から得られた試料であるあしたがって、実施形態において、試料は、進行中の処置レジームの開始日の10日後~150日後、好ましくは進行中の処置レジームの開始日の20日後~120日後、最も好ましくは進行中の処置レジームの開始日の25日後~108日後に対象から得られた試料である。進行中の処置レジームの「開始」又は「開始日」は、この処置レジームの最初の処置が対象に投与された日である。例えば、薬物又は薬物組成物が対象に最初に投与された日である。
【0306】
本発明は、バイオマーカーCYFRA21-1及び/又はCA125を使用する。任意選択的に、CEAも使用され得る。
【0307】
CYFRA21-1はサイトケラチンファミリーに属する。サイトケラチンは、細胞細胞骨格の主要成分である上皮中間フィラメントのサブユニットを形成する構造タンパク質である。40~70キロダルトン(kD)の範囲の分子量を有する20の異なるサイトケラチンポリペプチドがこれまでに同定されている。細胞によって合成されるサイトケラチンの種類もまた、成長及び分化速度によって影響される。それらの特異的な分布パターンのために、それらは腫瘍病理における分化マーカーとしての使用に非常に適している。CYFRA21-1は、上皮細胞の細胞骨格の一部であるサイトケラチン19の断片であり、上皮起源の腫瘍において過剰発現して見出され得る。インタクトなサイトケラチンポリペプチドは難溶性であるが、可溶性断片が血清中に検出され得る(Bodenmueller et al.,1994,Int.J.Biol.Markers 9:75-81)。
【0308】
ムチン16又はMUC16としても知られるCA125(がん抗原125、癌抗原125、又は炭水化物抗原125)は、ヒトにおいてMUC16遺伝子によってコードされるタンパク質である。MUC16は、ムチンファミリー糖タンパク質のメンバーである。CA125は、単一の膜貫通ドメインを有する膜結合型ムチンである。CA125の特有の特性は、その大きなサイズである。CA125は、MUC1及びMUC4の2倍を超える長さであり、約22,000個のアミノ酸を含有し、最大の膜結合ムチンとなる。CA125は、いくつかの異なる機構によって腫瘍形成及び腫瘍増殖の進行において役割を果たすことが示されている。
【0309】
CEAは、約45~60%の可変炭水化物成分を有する単量体糖タンパク質(分子量約180.000ダルトン)である。CEAは、AFPと同様に、胚性及び胎児期に産生される癌胎児性抗原の群に属する。CEA遺伝子ファミリーは、2つのサブグループの約17個の活性遺伝子からなる。第1の群は、CEA及び非特異的交差反応性抗原(NCA)を含有し、第2の群は妊娠特異的糖タンパク質(PSG)を含む。CEAは、主に胎児の消化管及び胎児血清に見られる。これはまた、健康な成人の腸組織、膵臓組織及び肝臓組織にわずかな量で生じる。
【0310】
本発明の文脈において、CYFRA21-1、CA125及びCEAについて述べる場合、それぞれのタンパク質に対して言及され、それをコードする核酸ではない。
【0311】
本発明の態様に記載の方法及び使用は、特定のバイオマーカータンパク質のレベルを決定するステップを含み得る。具体的には、CYFRA21-1及び/又はCA125、及び任意選択的にCEAのレベルが決定され得る。また、レベルを決定することは、「バイオマーカーのレベルを測定すること」と表現され得る。
【0312】
タンパク質バイオマーカー分子(特に、CYFRA21-1、CA125又はCEA)を測定するための様々な方法が当技術分野で公知であり、これらのいずれかを使用することができる。
【0313】
好ましくは、バイオマーカー(複数可)は、特異的結合剤の使用によって液体試料から特異的に測定される。
【0314】
特異的結合剤は、例えば、バイオマーカーに対する受容体又はマーカーに対する抗体である。本発明の文脈において、バイオマーカー分子(すなわち、CYFRA21-1、CA125及び/又はCEA)は、タンパク質レベルで測定される。
【0315】
マーカーポリペプチドの結合パートナーとしてのタンパク質の決定は、タンパク質又はポリペプチドと特異的に相互作用するタンパク質を同定及び取得するためのいくつかの公知の方法のいずれか、例えば、米国特許第5,283,173号及び米国特許第5,468,614号又はその同等物に記載されているような酵母ツーハイブリッドスクリーニングシステムを使用して行うことができる。特異的結合剤は、その標的分子に対して、好ましくは少なくとも108 l/mol、又はさらにより好ましくは少なくとも109 l/molの親和性を有する。当業者は、特異的という用語が、試料中に存在する他の生体分子がマーカーに特異的な結合剤に有意に結合しないことを示すために使用されることを理解するであろう。好ましくは、標的分子以外の生体分子への結合レベルは、それぞれ標的分子に対する親和性のわずか10%以下、より好ましくはわずか5%以下の結合親和性をもたらす。好ましい特異的結合剤は、親和性及び特異性について上記の最小基準の両方を満たす。
【0316】
特異的結合剤は、好ましくはバイオマーカー、特にCYFRA21-1、CA125又はCEAと反応性の抗体である。抗体という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、そのような抗体の抗原結合断片、一本鎖抗体、並びに抗体の結合ドメインを含む遺伝子構築物を指す。
【0317】
「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、F(ab’)2等のそれらの断片、及びFab断片、並びにCYFRA21-1、CA125又はCEAポリペプチドに特異的に結合する分子である任意の天然に存在する又は組換え生産された結合パートナーを含む。特異的結合剤の上記基準を保持する任意の抗体断片を使用することができる。抗体は、例えばTijssen(Tijssen,P.,Practice and theory of enzyme immunoassays,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam(1990)、全書籍、特に43~78頁)に記載されているように、最先端の手順によって生成される。加えて、当業者は、抗体の特異的単離のために使用され得る免疫吸着剤に基づく方法を十分に承知している。これらの手段によって、ポリクローナル抗体の品質、したがってイムノアッセイにおけるそれらの性能を高めることができる(Tijssen,P.、前出、108~115頁)。
【0318】
本発明に開示される成果のために、例えばヤギ、ラット、ウサギ又はモルモットにおいて産生されるポリクローナル抗体、並びにモノクローナル抗体を使用することができる。モノクローナル抗体は、一定の特性で必要とされる任意の量で産生することができるので、臨床ルーチンのためのアッセイの開発における理想的なツールである。
【0319】
CYFRA21-1、CA125若しくはCEA又は任意の他のタンパク質バイオマーカーのレベルを決定するために、個体から得られた試料を、結合剤マーカー複合体の形成に適切な条件下で、問題のマーカーに対する特異的結合剤と共にインキュベートしてもよい。当業者は、いかなる発明的努力もなく、そのような適切なインキュベーション条件を容易に特定することができるため、そのような条件を明示する必要はない。結合剤マーカー複合体の量を測定し、本発明の方法及び使用に使用する。当業者であれば理解するように、特異的結合剤マーカー複合体の量を測定するための多くの方法が存在し、すべてが関連する教科書(例えば、Tijssen P.,(上記)又はDiamandis,E.P.and Christopoulos,T.K.(eds.),Immunoassay,Academic Press,Boston(1996)を参照)に詳細に記載されている。
【0320】
特に、マーカー(CYFRA21-1、CA125及びCEA)に対するモノクローナル抗体は、定量的な(マーカーの量又は濃度が決定される)イムノアッセイにおいて使用され得る。
【0321】
好ましくは、問題のマーカーは、サンドイッチ型アッセイ形式で検出される。そのようなアッセイでは、第1の特異的結合剤を使用して一方の面で問題のマーカーを捕捉し、第2の特異的結合剤(例えば第2の抗体)を、直接的又は間接的に検出可能であるように標識して、他方の面で使用する。第2の特異的結合剤は、検出可能なレポーター部分又は標識、例えば酵素、色素、放射性核種、発光基、蛍光基又はビオチン、電気化学発光標識(例えば、ルテニウム系電気化学発光標識)などを含み得る。そのようなシグナルが洗浄後に支持体上に残存する結合剤の量に直接関連するか又は比例する限り、任意のレポーター部分又は標識を本明細書に開示される方法と共に使用することができる。電気化学発光標識(例えば、ルテニウム系電気化学発光標識)の使用が好ましい。次いで、固体支持体に結合したままである第2の結合剤の量を、特異的な検出可能なレポーター部分又は標識に適した方法を用いて決定する。放射性基の場合、シンチレーションカウント法又はオートラジオグラフィー法が一般に適切である。抗体-酵素コンジュゲートは、様々なカップリング技術を用いて調製することができる(総説については、例えば、Scouten,W.H.,Methods in Enzymology 135:30-65,1987を参照のこと)。分光法を使用して、色素(例えば、酵素反応の比色生成物を含む)、発光基及び蛍光基を検出することができる。ビオチンは、アビジン又はストレプトアビジンを使用して、異なるレポーター基(通常、放射性又は蛍光性基又は酵素)に結合させて検出することができる。酵素レポーター基は、一般に、基質の添加(一般に特定の期間)、続いて反応生成物の分光分析、分光光度又は他の分析によって検出することができる。標準及び標準添加を使用して、周知の技術を使用して、試料中の抗原のレベルを決定することができる。
【0322】
上述したように、CYFRA21-1のレベルを測定する様々な方法がある。「CYFRA21-1」のアッセイは、循環中に存在するサイトケラチン19の可溶性断片を特異的に測定する。CYFRA21-1の測定は、典型的には、2つのモノクローナル抗体に基づく(Bodenmueller et al.,1994,Int.J.Biol.Markers 9:75-81)。CYFRA21-1を測定するための市販品としては、Roche DiagnosticsのElecsys(登録商標)CYFRA21-1アッセイ、サイトケラチン19断片(CYFRA21-1)イムノラジオメトリックアッセイキット(Cisbo Assays,Codolet,France)、サイトケラチン断片抗原21-1のためのELISAキット(Wuhan USCN Business Co.,Ltd.,China)及びARCHITECT CYFRA21-1アッセイ(Abbott,Wiesbaden,Germany)が挙げられる。Roche Diagnostics(ドイツ)からのCYFRA21-1アッセイでは、2つの特異的モノクローナル抗体(KS 19.1及びBM 19.21)を使用し、約30,000ダルトンの分子量を有するサイトケラチン19の可溶性断片を測定する。好ましくは、CYFRA21-1レベルは、製造業者の指示に従ってRoche製品番号11820966122を使用してElecsys(登録商標)で測定される。
【0323】
CA125レベルの測定のために、様々な市販のアッセイが存在する。CA125レベルを測定するための市販の製品としては、例えば、Roche DiagnosticsからのElecsys(登録商標)CA125 IIアッセイ及びCA 125IIアッセイ(Siemens Healthineers,Erlangen,Germany)が挙げられる。好ましくは、CA125レベルは、Elecsys(登録商標)CA125 IIアッセイ(製品番号11776223322)を使用して測定される。
【0324】
CEAレベルの測定についても、様々なアッセイが存在する。CEAを測定するための市販の製品としては、ADVIA Centaur(登録商標)CEAイムノアッセイ(Siemens Healthineers,Erlangen,Germany)及びARCHITECT CEAアッセイ(Abbott,Wiesbaden,Germany)が挙げられる。好ましくは、CEAは、CEAの定量のための電気化学発光免疫測定法(ECLIA)である「Elecsys(登録商標)CEA」(材料番号:11731629322,Roche Diagnostics,Ltd,Rotkreuz,Switzerland)を用いて測定される。
【0325】
マーカーのレベルを決定するステップは、以下のように実行することができる:試料並びに任意選択的にキャリブレータ及び/又は対照が、マーカーへの薬剤の結合を可能にする条件下で結合剤(これは、例えば固相上に固定化することができる。)と接触され得る。結合していない結合剤は、分離ステップ(例えば、1回又は複数回の洗浄ステップ)によって除去され得る。第2の薬剤(例えば、標識剤)を添加して、結合した結合剤を検出し、その結合及び定量化を可能してもよい。結合していない第2の薬剤が除去され得る。マーカーの量に比例する第2の結合剤の量は、例えば標識に基づいて定量され得る。定量は、例えば、測定値を各キャリブレータの濃度に対してプロットすることによって各アッセイに対して構築された検量線に基づいて行われ得る。次いで、試料中のマーカーの濃度又は量を検量線から読み取ることができる。
【0326】
試料中のバイオマーカー(例えば、CYFRA21-1、CA125又はCEA)の「レベル」を決定することは、試料中のそれぞれのバイオマーカー分子の量又は濃度が決定されることを意味する。物質の量は、絶対量(例えば、質量を与える)、又は原子、分子、電子、及び他の粒子などの基本的実体の集合体のサイズを測定する標準的に定義された量であり得る。化学量と呼ばれることもある。国際単位系(SI)は、存在する基本実体の数に比例する物質の量を定義する。物質量のSI単位はモルである。単位記号molを有する。物質の濃度は、成分の量を混合物の総体積で割ったものである。いくつかのタイプの数学的記述を区別することができる:質量濃度、モル濃度、数濃度、及び体積濃度。濃度という用語は、任意の種類の化学混合物に適用することができるが、最も頻繁には、溶液中の溶質及び溶媒を指す。モル(量)濃度には、通常濃度、浸透濃度などの変形がある。
【0327】
本明細書で使用される「バイオマーカーのレベル」は、進行中の処置の間の規定の時点での対象の試料中の量又は濃度の測定に基づく前記バイオマーカーのレベルに関する。本明細書で使用される「バイオマーカーのレベル」は、2つの時点にわたるバイオマーカーレベルの変化に特に関するものではない。驚くべきことに、単一のバイオマーカー値が、以前に使用されたバイオマーカーレベルの変化よりも良好な疾患進行リスク評価(及びその結果として処置応答評価/予後)をもたらすことが本発明の要旨である。
【0328】
本発明の文脈において、「...を考慮したスコア」が決定され得る。これは、考慮される個々のパラメータが、例えば重み付け計算によって数学的に組み合わされることを意味する。或いは、本明細書で上述したように、二成分スコアを構築することができる。考慮される個々のパラメータは、試料中の決定されたCYFRA21-1レベル及び/又は試料中の決定されたCA125レベルであり得る。任意選択的に、試料中のCEAレベルも考慮に入れることができる。レベルはそのまま使用されてもよいし、数学的に変換されてもよい(例えば、log2又はlog10変換などの対数変換によって、)。好ましい実施形態では、バイオマーカーCYFRA21-1及び/又はCA125、及び任意選択的にCEAのレベルは、スコアを決定するために対数変換(すなわち、log2又はlog10値が計算される)され得る。任意選択的に、対象が組織学的サブタイプ腺癌又はSCCのNSCLCを有するかどうかの情報も、好ましくは考慮されるバイオマーカーと組織学的サブタイプとの間の相互作用項を含めることによって、考慮され得る。
【0329】
本発明の実施形態において、スコアは、試料中のマーカー分子(複数可)の量又は濃度の重み付け計算によって得ることができる。これは、マーカーに他のマーカーとは異なる重み付けを与えてもよいことを意味する。例示的に、スコアが試料中のCYFRA21-1のレベル(量又は濃度)([CYFRA21-1])及びCA125のレベル(量又は濃度)([CA125])を考慮する場合、スコアは以下の式によって計算され得る:
スコア=a[CYFRA 21-1]+b[CA 125]、
(式中、a及びbは重み付け係数を表す)。好ましくは、重み付け係数は、参照集団(例えば、以下のカットオフ値の文脈で定義される任意の参照集団)を分析することによって得られている。適切な手順は実施例に記載されている。
【0330】
本発明の実施形態において、スコアは、バイオマーカーに加えて、NSCLCの組織学的タイプ(すなわち、腺癌又はSCC)に関する情報も考慮に入れることができる。腫瘍組織学に関する情報は、好ましくは、組織学とそれぞれのバイオマーカーとの間の関連を考慮するために、腫瘍組織学情報と各バイオマーカーとの間の相互作用項(Vatcheva,K.P.,et al,Epidemiology(Sunnyvale,Calif.)6.1,2015)を使用することによって考慮される。
【0331】
3つのバイオマーカー及びバイオマーカーとCox回帰の組織学との間の相互作用項を含むモデル式の一例は、以下の通りである:
【数1】
tは生存時間を表し、h(t)はハザード関数を表し、係数β、・・・、βは共変量の影響を測定し、SCCは組織学的扁平上皮癌を表し、バイオマーカーCYFR21-1、CA125及びCEAは上記式log2で変換されている(log2変換が好ましいが必須ではない)。
【0332】
SCCのない患者では、SCCを0に設定すると式が減少する:
【数2】
SCC患者については、SCCが1に設定されているので、式全体が考慮される。複数のバイオマーカーを含むモデルと同様に、例えばCox回帰モデルのリスク予測に基づいてスコアを構築することができる。
【0333】
実施形態において、CYFRA21-1及びCA125のレベルを考慮したスコアは二成分スコアであってもよく、カットオフスコアも二成分であってもよい。「二成分」は、スコアが2つの値、例えば、CYFRA21-1のレベル又はそれから導かれる値である第1の値(CYFRA21-1値とも呼ばれる)及びCA125のレベル又はそれから導かれる値である第2の値(CA125値とも呼ばれる)を含むことを意味する。「それから導かれる値」は、例えば、数学的演算によって得られる値であり得る。「それから導かれる値」は、好ましくはそれぞれのレベルに正比例する。二成分カットオフスコアの値は、それぞれのバイオマーカーを用いた単変量解析によって、すなわち、本明細書に記載の単一バイオマーカーのカットオフを定義する手順と同様に得てもよい。二成分スコアを二成分カットオフスコアと比較することは、決定された二成分スコアの第1の値をカットオフ二成分スコアの第1の値と比較し、決定された二成分スコアの第2の値をカットオフ二成分スコアの第2の値と比較することを含む。
【0334】
当業者は、スコア及び対応するカットオフスコアが参照集団(例えば、以下のカットオフの決定の文脈で定義される任意のもの)に基づいて最適化され得ることを認識している。
【0335】
例えば、参照集団の各試料についてスコアを決定することができ、その後、組み合わせた値の中央値又は適切なカットオフを選択することができる。適切なコホートでは、生存に対する予測変数としてのCYFRA21-1及び/又はCA125、及び任意選択的にCEAの効果を評価するために、Coxの比例ハザード回帰モデルを計算し得る。
【0336】
次いで、CYFRA21-1及び/又はCA125、及び任意選択的にCEA、並びに任意選択的にバイオマーカーと組織学情報との間の相互作用項についてのCoxの比例ハザード回帰モデルによってもたらされる回帰係数を使用して、バイオマーカー及び潜在的な組織学情報の重み付けされた組み合わせとしてコホート内の各患者のスコアを計算することができる。
【0337】
Coxの比例ハザードモデルは相対リスクモデルであるため、各患者の予測はサンプル平均(例えば、本明細書の他の箇所で指定される参照集団に基づく)に対して計算される。これは、各患者のパラメータレベルが集団の平均によって調整されることを意味する。次いで、以下のようにスコアを計算することができる:
【数3】
【0338】
スコアについて、カットオフは、例えば、中央値スコア又は最適化されたカットオフスコアを決定することによって、参照集団を使用して計算することができる(以下を参照)。
【0339】
次いで、例示目的のためにカプラン・マイヤー曲線によってリスク群を比較することができる。
【0340】
Coxの比例ハザード回帰(Cox,David R 1972 Journal of the Royal Statistical Society.,Breslow,N.E.1975 International Statistical Review)は、共変量に対する生存分布の関係を調べるための生存分析における典型的な方法である。Coxモデルは、通常、以下に示すハザードモデル式で記述される。このモデルは、Xで示される説明変数のセットの所定の指定を有する個人に対して、時刻tにおけるハザードを表現する。Xは、個人のハザードを予測するためにモデル化されている予測変数の集合を表す。Coxモデル式は、時間tにおけるハザードが2つの量の積であることを示している。h0(t)は、ベースラインハザード関数と呼ばれる。第2の量は、βの線形和に対する指数表現eであり、和はp個の説明X変数にわたる(Gail,M.et al 1996 Statistics for Biology and Health)。
【数4】
患者の分類は、カプラン・マイヤー(KM)生存曲線を含み得る。KM曲線は、寿命データから生存関数を推定するために使用されるノンパラメトリック統計である(Kaplan,E.L.;Meier,P1958 J.Amer.Statist.Assn)。KM曲線は滑らかな関数ではなく、むしろ段階的な推定である。X軸は生存期間の連続時間を示す。所与の集団からのメンバーが時間tを超える寿命を有する累積確率は、Y軸上に見られる。ある区間についての累積確率は、その区間までの区間生存率を乗じることによって計算される。(Rich JT et al 2010 Otolaryngol Head Neck Surg).KM曲線は、典型的には、患者をカテゴリーにグループ化するために適用される。
【0341】
カプラン・マイヤー推定法は統計であり、その分散を近似するためにいくつかの推定量が使用される。最も一般的なそのような推定法の1つは、Greenwoodの式である:
【数5】
【数6】
【0342】
場合によっては、異なるカプラン・マイヤー曲線を比較したい場合がある。これは、ログランク検定又はCox比例ハザード検定を含むいくつかの方法によって行うことができる。
【0343】
CA125の決定されたレベルをCA 125カットオフ値と比較する「CYFRA21-1の決定されたレベルをCYFRA21-1カットオフ値と比較すること」、「CA125の決定されたレベルをCA125カットオフ値と比較すること」、「...を考慮に入れたスコアをカットオフスコアと比較すること」という表現は、とにかく当業者に明らかなことをさらに説明するために使用されているにすぎない。
【0344】
本発明によれば、それぞれのカットオフは、特に参照集団を使用することによって定義され得る。好ましくは、参照集団は、進行中の処置レジーム(本明細書の他の箇所で定義される)下のNSCLC患者で構成され得、安定状態(本明細書の他の箇所で定義される)を有すると分類され得る。参照集団は、好ましくは、疾患進行のリスクが高いSD患者及び疾患進行のリスクが低いSD患者を含むものとする。実施形態において、参照集団の患者は、サブタイプ腺癌又はSCCのNSCLCを有し得る。実施形態において、参照集団の患者は、ステージIII又はIVのNSCLCを有し得る。実施形態において、参照集団の患者のECOGは、0~2であり得る。一実施形態では、参照集団は、添付の実施例の「試験集団」のセクションで定義される患者群であり得る。疾患進行(すなわち、生存時間及び疾患進行が検出された時間)は、参照集団の患者について知られていなければならない。同様に、カットオフが定義される関連パラメータ、すなわち試料中のCYFRA21レベル、CA125レベル及び/又はスコアは、参照集団の患者について知られていなければならない。次いで、それぞれのカットオフが、CYFRA21-1、CA125のレベル及び/又はSD患者の参照集団を2つの群(すなわち疾患進行リスクが高い第1の群及び進行リスクが低いさらなる群)に最良に分けるスコアとして定義され得る。それぞれのカットオフは、2つの群間の所望の分離が最良になるように選択され得る。分離の質は、例えば、ハザード比によって測定することができる。例えば、患者試料中のマーカーレベル(量又は濃度)を、高リスク又は低リスク患者に関連することが知られているレベルと比較することができる。本明細書のマーカー又はスコアの適切なカットオフ又はカットオフ値を選択することは、当業者の範囲内である。当業者にも明らかなように、対照において確立されたそれぞれのバイオマーカーのレベルは、使用されるアッセイに依存する。好ましくは、適切な参照集団からの十分に特徴付けられた100以上の個体からの試料を使用して、カットオフを確立する。また好ましい参照集団は、少なくとも20、30、50、100、200、500又は1000個の個体からなるように選択され得る。好ましくは、バイオマーカーレベルは、(本明細書の他の箇所で定義されるように)本発明によって分析される対象の試料が得られた時点で得られる。
【0345】
本発明の実施形態では、参照集団中のそれぞれの測定値の中央値レベルに対応するCYFRA21-1、CA125のレベル又は本発明によるスコアをカットオフとして選択することができる。
【0346】
本発明の好ましい実施形態では、それぞれのカットオフは最適化されたカットオフであり得る。そのような最適化されたカットオフは、バイオマーカー又はスコア値の0.05の段階による0.2から0.8までのすべての分位を、患者を2つの群に分割する能力について試験し、各分割のハザード比及びログランクp値を計算して決定され得る。次いで、最も低いログランクp値(最も高いハザード比)を有する分位点が、最適化されたカットオフとして選択され得る。最適化されたカットオフ値はまた、高リスク患者群と低リスク患者群との間のリスク識別の代替的な尺度によって選択されてもよく、それによって適切な尺度が当業者によって選択される。
【0347】
一般的に、本開示は、本明細書に記載されている特定の方法論、プロトコル、及び試薬に限定されない。理由はこれらが変動し得るからである。さらに、本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態のみについて記載する目的のためのものであり、本開示の範囲を限定することを意図しない。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「含む、備える(comprise)」、「含む、含有する(contain)」、「包含する(encompass)」という言葉は、排他的ではなく包括的に解釈される。
【0348】
他に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術的及び科学的用語及び任意の頭字語は、本開示の分野の当業者により共通して理解されている意味と同じ意味を有する。
【0349】
単語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」のような変形は、記載された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップのグループの包含を意味するが、いかなる他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップのグループの除外を意味しないことが理解されよう。
【0350】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容が特に明白に示さない限り、個々の複数の用語も含む。
【0351】
以下の図及び実施例は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲において説明される。本発明の要旨から逸脱することなく、記載された手順に変更を加えることができることが理解される。
【実施例
【0352】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提供されており、その真の範囲は、特許請求の範囲に明記されている。本発明の思想から逸脱することなく、定められた手順に変更を加えることができると理解される。
【0353】
実施例1:NSCLC患者における血清ベースのバイオマーカーの予後値の評価
血液ベースの腫瘍バイオマーカーが処置成功及び疾患進行予後を、それ自体で又はイメージングベースの分析に加えてモニタリングすることにおいて予測値を有するかどうかを研究するために、並行する最先端のイメージングベースの腫瘍病期分類/処置モニタリング及び7つの予め選択されたバイオマーカー候補(CEA、ProGRP、NSE、CYFRA21-1、SCC、CA15-3及びCA125)の並行測定を含む臨床研究を行った。
【0354】
研究集団
この臨床研究のコホートには、以前に処置されていないステージIII又はIVのNSCLC(腺癌又は扁平上皮癌(SCC)の組織学)及びEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンススコア0~2を有する18歳以上の患者が含まれる。
【0355】
387人のNSCLC患者のうち、265人の患者が第一選択処置を受け、処置サイクル2(サイクル2)の前に進行性疾患を有さず、処置開始後25日~108日(中央値44日)に利用可能なコンピュータ断層撮影(CT)データを有していた。
【0356】
サイクル2後の最初のCTでは、230人の患者は進行性疾患を有さなかった(100人の患者は安定状態[SD]を有し、130人の患者は部分奏効[PR]を有した)。これらの患者のうち228名(SD患者100名及びPR患者128名)について、完全なバイオマーカー結果、すなわちCEA、ProGRP、NSE、CYFRA21-1、SCC、CA15-3及びCA125のレベルが入手可能であった。
【0357】
除外基準は、血液試料を得ることができないこと、二次性悪性腫瘍の病歴、重篤な併存症、任意の種類の腫瘍に対する前処置(一部の患者は放射線療法によって定義される第一選択処置を受けた)、妊娠又は授乳であった。
【0358】
患者は、処置する医師の裁量で、第一選択治療化学療法(全患者の75.1%)、チロシンキナーゼ阻害剤及び/又は免疫チェックポイント阻害剤として投与された。
【0359】
第一選択治療の第2の処置サイクル後のNSCLC(腺癌又はSCC)患者及び利用可能なCTスキャンデータをバイオマーカー分析に使用した(以下を参照)。最初のCTスキャンの前に疾患進行が実証された患者は、バイオマーカーデータを用いた分析から除外した。
【0360】
分析集団の患者人口統計及び処置スキームを以下の表1a、1b及び1cに要約する。
【表3】
【表4】
【表5】
【0361】
研究目的
主な目的は、処置成功のモニタリングにおける血清バイオマーカーの予測値及び疾患進行の予後を評価することであった。具体的には、CTに基づく安定状態(SD)を有する患者を、血清バイオマーカーレベルに基づいてリスク群(例えば、予後が良好な応答者)にさらに分化させることができるかどうかを評価した。この分析は、最初の2サイクルの処置後に行った。評価に使用した尺度は、全生存期間(OS)及び無増悪生存期間(PFS)であり、それぞれを個別に分析した。
【0362】
最新技術のCTイメージングによる処置有効性評価
第一選択処置のサイクル2後の最初のCTスキャンを全患者の分析時点として設定した(2回目のサイクル処置とサイクル2後の最初のCTとの間の最大時間は60日であった)。CTでの腫瘍応答は、固形腫瘍における応答評価基準によって定義した(RECIST 1.1;Eisenhauer et al.,Eur J Cancer 2009,45,228-247,doi:10.1016/j.ejca.2008.10.026を参照)。部分奏効(PR)は、サイズの30%以上の減少に割り当てられた。進行性疾患(PD)は、サイズの20%以上の増加に割り当てられた。そのような症例について安定状態が割り当てられたが、PRと見なされるのに十分なサイズの減少も、PDと見なされるのに十分な成長も見出されなかった(すなわち、30%未満のサイズの減少~20%未満のサイズの増加)。
【0363】
無増悪生存期間(PFS)の時間及び全生存期間(OS)の時間を処置開始日から計算した。PFSを以下のように定義した:
進行=患者は、少なくとも1つの進行(すなわちRECISTによるPD)が観察されるか、又は死亡した;
進行なし=患者は進行がなく、研究完了時に生存している;
進行した患者のPFS時間=進行日(検出)-治療開始日+1(日);
研究の間に死亡した患者のPFS時間=死亡日-治療開始日+1(日);
進行事象のない患者のPFS時間=最後の連絡日-治療開始日+1(日)。
【0364】
OS時間を以下のように定義した:
研究の間に死亡した患者のOS時間=死亡日-治療開始日+1(日);
最後の連絡後に生存している患者のOS時間=最後の連絡日-治療開始日+1(日)。
【0365】
試料採取及びバイオマーカー評価
静脈血試料を、ベースライン(すなわち、処置開始前)及び可能であれば各日常的訪問(通常、各処置サイクル(それぞれ約21日間))に各患者から採取した。2回目の処置サイクル後の最初のCTでの分析のための試料は、CTの10日前~CTの29日後の範囲で採取した。処置開始日から計算して、その日から25~108日後に試料を採取した。血清試料を-70℃未満で500μlアリコートとして保存した。
【0366】
これらの血清試料では、バイオマーカーレベルを後の時点で測定した。具体的には、インビトロ診断用タンパク質バイオマーカーCEA、ProGRP、NSE、CYFRA21-1、SCC、CA15-3、及びCA125の電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)を、製造業者のガイドラインに従って、Roche Diagnostics Centralized and Point of Care Solutions(CPS)製のcobas(登録商標)システムで行った。
【0367】
統計分析
患者の人口統計学及び疾患特性を記述統計学を使用して要約した。進行に対するリスク予測(PFS又はOS)を、Cox回帰モデル及びカプラン・マイヤー曲線を用いて、CT応答とバイオマーカー値との間で比較した。
【0368】
予後モデルは、それぞれ、サイクル2後の最初のCTでの応答(PR対SD)、サイクル2後の最初のCTでのバイオマーカー値、及びサイクル2後のベースラインと最初のCTとの間のバイオマーカー変化(ベースライン補正)に基づいた。バイオマーカー値をlog2変換した。単変量モデル(1つのバイオマーカーのみを含む)の場合、バイオマーカーの値に基づくカットオフを使用して、患者を低リスク群と高リスク群に分け、例えばバイオマーカーの中央値を使用する。説明のために、単変量モデルのカットオフをカプラン・マイヤー曲線について元のバイオマーカースケールに逆変換した。1つよりも多くのバイオマーカーを含むモデルについては、Cox回帰モデルの線形予測値に基づく重み付け線形結合によってスコアを構築した。患者を低リスク群と高リスク群に分けるために、例えばこのスコアの中央値を単変量バイオマーカーと等しく使用した。
【0369】
さらに、代替では、1つよりも多くのバイオマーカーを含むモデルについて、含まれる各バイオマーカーの単変量モデルのリスク群の組み合わせに基づいて二成分スコアを構築した。簡単に記載すると、単変量モデル(1つのバイオマーカーを含む)と同様に、個々のバイオマーカー各々の値に基づくカットオフを定義した(例えば、バイオマーカーレベルの中央値)。両方のバイオマーカーレベルが二成分スコアカットオフの一部を形成するそれぞれのバイオマーカーカットオフを上回った場合、患者は高リスク群に分類された。単一バイオマーカーがそれぞれのカットオフを下回った場合;すなわち、二成分スコアのレベルの1つが二成分スコアカットオフの対応するカットオフ値を下回った場合、患者は低リスク群に分類された。
【0370】
ハザード比(HR)及びC指標を使用して予後モデルを評価した。C指標は、モデル予測及び観察された結果が一致するすべての患者ペアの割合のノンパラメトリック推定法であり、したがってCox回帰モデルの全体的な評価基準である。C指標1は最良のモデル予測に対応し、C指標0.5はランダム予測を表す。ハザード比は、患者群間のリスクを表し、例えば、ハザード比2は、高リスク群の患者のリスクが低リスク群の患者と比較して2倍高いことを意味する。
【0371】
バイオマーカーベースのリスク予測モデルでは、カットオフとしてのバイオマーカー/スコア中央値又は最適化されたカットオフのいずれかを使用してSD群の患者を2つのリスク群に分離した。最適化されたカットオフは、バイオマーカー/スコア値の0.05の段階による0.2から0.8までのすべての分位を、患者を2つの群に分割する能力について試験し、各分割のハザード比及びログランクp値を計算して決定した。最も低いログランクp値を有する分位点を、最適化されたカットオフとして選択した。
【0372】
Cox比例ハザードモデルは、単一のバイオマーカー又は2つ若しくは3つのバイオマーカーの組み合わせに基づいた。腺癌とSCCとを合わせた集団(組織学情報)について、モデルはまた、組織学とそれぞれのバイオマーカーとの間の関連を説明するために、前記組織学情報と各バイオマーカーとの間の相互作用項(Vatcheva,K.P.,et al,Epidemiology(Sunnyvale,Calif.)6.1,2015)を含む。3つのバイオマーカー及びバイオマーカーとCox回帰の組織学との間の相互作用項を含むモデル式の一例は、以下の通りである:
【数7】
tは生存時間を表し、h(t)はハザード関数を表し、係数β、・・・、βは共変量の影響を測定し、BM、・・・、BMはバイオマーカーを表し、SCCは組織学的扁平上皮癌を表す。SCCのない患者では、SCCを0に設定すると式が減少する:
【数8】
SCC患者については、SCCが1に設定されているので、式全体が考慮される。
【0373】
複数のバイオマーカーを含むモデルと同様に、Cox回帰モデルのリスク予測に基づいてスコアを構築した。
【0374】
研究の結果
a)第2の処置サイクル後の最先端の最初のCTスキャンの予後値
最初に、無増悪生存期間(PFS)又は全生存期間(OS)を予測する際の第2の処置サイクル後の最初のCTスキャンの予後値を評価した。CTによるモニタリングは、NSCLCの進行及び処置応答の評価における現在の最先端技術である。
【0375】
最初のCTスキャンでPR又はSDを有すると特定された患者は、進行のリスクが類似しており(図1Aを参照のこと)、最初のCTスキャンが、進行中の処置レジームから臨床的利益を得ている患者、すなわちPR群及びSD群の患者においてPFSの予後性能が不良であったことが示唆された。
【0376】
PFSに関する具体的な結果は以下の通りである:
腺癌又はSCC:ハザード比(HR)=1.326(p値=0.055)、C指標=0.579。
腺癌:HR=1.482(p値=0.025)、C指標:0.616。
SCC:HR=0.992(p値=0.978)、C指標:0.507。
【0377】
最初のCTスキャンはまた、OSについても不良な予後性能を示し、OSの割合はPR及びSDを有する患者においてほぼ同様であった(図1B)。
【0378】
OSに関する具体的な結果は以下の通りである:
腺癌又はSCC:HR=1.517(p値=0.012)、C指標=0.608。
腺癌:HR=1.784(p値=0.005)、C指標0.656
SCC:0.924(p値=0.786)、C指標0.527
【0379】
b)非ベースライン補正単一測定値を使用したがんバイオマーカーの予後値
PFS又はOSを予測する際の個々のがんバイオマーカー(CA125、CA15-3、CEA、CYFRA21-1、NSE、SCC及びproGRP)又はがんバイオマーカーの組み合わせの予後値を、ベースライン補正なしで血清中の単一タンパク質バイオマーカーレベルを使用してSD患者において評価した(すなわち、処置前のバイオマーカー濃度を考慮に入れない絶対的なバイオマーカーレベル)。
【0380】
バイオマーカーのカットオフ中央値に基づく分析
第1の一連の分析において、バイオマーカーデータ(ベースライン補正なし)を、SD患者を各バイオマーカーについての中央値で2つの群に分割することによって、すなわち絶対的バイオマーカー値の中央値又は組み合わせバイオマーカー値(スコア)の中央値をカットオフとして使用することによって分析した。単一バイオマーカー(単変量解析)及びスコアと組み合わせたいくつかのバイオマーカー(多変量解析)の性能を評価した。
【0381】
読み出した無増悪生存期間の結果を以下の表2に要約する。
【表6】
【0382】
試験した単一バイオマーカーのうち、CYFRA21-1は、C指標及びHRによって示されるように、SD患者において腺癌について最も高い予後値を有していた(表2及び図2Aを参照のこと)。CYFRA21-1とCA125との組み合わせは、より高いHRによって示されるように、疾患進行のリスクが高い群と低い群とを分ける改善された性能を示した。最高の性能は、CYFRA21-1、CA125及びCEAを含む組み合わせ分析(スコア)によって達成された。
【0383】
SCC患者については、CA125は、C指標及びHRによって示されるように、単一バイオマーカーとしてSDを有する患者において最も高い予後値を有していた(表2及び図2Bを参照のこと)。CYFRA21-1及びCA125の組み合わせは、C指標及びHRの改善された性能を示した。最高の性能は、CYFRA21-1、CA125及びCEAを含む組み合わせ分析(スコア)によって達成された。
【0384】
腺癌とSCCとを合わせた集団について、CYFRA21-1とCA125との組み合わせ(相互作用項を使用)は、RECISTによるSD患者においていずれかのバイオマーカー単独よりも予後値が高かった(表2及び図2Cを参照のこと)。CYFRA21-1、CA125、CEA、及びさらにバイオマーカーと組織学(SCC又は腺癌)との間の相互作用項を考慮に入れたスコアを構築することにより、SD NSCLCを有する患者コホートにおける腺癌及びSCCについての組み合わせの予後性能をさらに高めることができた(表2を参照のこと):
【0385】
注目すべきことに、SD患者、及びそれぞれのバイオマーカーCYFRA21-1若しくはCA125又はCYFRA21-1、CA125及びCEAを含む併用モデル(並びに任意選択的に相互作用項)に基づく進行又は死亡のより低いリスクは、ハザード比(HR)によって示されるように、PR患者と比較して同様の進行確率を有していた(図3、表3)。これらのハザード比を計算するために、PR患者については「PR」、低リスク群のSD患者については「低リスク」、高リスク群のSD患者については「高リスク」という変数を作成した。この共変量を含むさらなるCoxモデルをフィッティングし、これにより、3つの群の各組み合わせ間のHRが得られた(「低リスク」対「高リスク」、「低リスク」対PR及び「高リスク」対PR)。
【表7】
【0386】
PFSについては、高リスク患者対低リスク患者(CYFRA21-1 CA125、CEA及び組織学的相互作用項を考慮したスコアに基づく)のHRは2.372(p値<0.001)に達し、疾患進行のリスクがバイオマーカーモデルに従って高リスク患者で有意に高いことを示している(表2参照)。このスコアに基づく低リスクにおけるPR対SDのHRは1.107に達し(p値0.594)、バイオマーカーモデルによって疾患進行についての低リスクとしてカテゴリー分類されたSD患者が、イメージングによるPR患者と比較して疾患進行について同等のリスクを有することを示している(図3A及び表3)。第1の読み出しPFSについて行われた同様の分析は、第2の読み出しOSについても行われている。
【0387】
OSに関するデータ(表4参照)は、PFS読み出しに基づく所見を確認した。
【0388】
ここでも、同じバイオマーカー及びスコアに基づいて、疾患進行/死のリスクが高い患者と疾患進行/死のリスクが低い患者の堅固な予後分離を達成することができた。
【0389】
OSについては、高リスク患者対低リスク患者(CYFRA21-1 CA125、CEA及び組織学的相互作用項を考慮したスコアに基づく)のHRは2.091に達し(p値0.002)、この読み出しについても、バイオマーカーモデルを使用して高リスクと低リスクとの間の分離がうまく機能することが確認される(表4参照)。このスコアに基づくPR対低リスクのHRは0.960に達し(p値0.853)、バイオマーカーモデルによって同定された低リスク群がPR患者群と同程度のリスクを有することが確認された(表5参照)。PD対高リスクのHRは1.760になる(図3B)。
【表8】
【表9】
【0390】
要約すると、上記の結果は、CYFRA21-1及びCA125の絶対レベル自体、2つのバイオマーカーの絶対レベルを組み合わせたスコア、特にCYFRA21-1、CA125及びCEAの絶対レベルを考慮したスコアが、SDを有する患者を高リスク群及び低リスク群に区別することによって、不確定なCT応答を有する患者における第2の処置サイクル後の最初のCTスキャンに追加のガイダンスを提供することができることを実証している。これは、PFS及びOSを使用することによって検証された。さらに、本発明者らは、腫瘍組織学(SCC又は腺癌)に基づく相互作用項を考慮し、カットオフを最適化することによってバイオマーカースコアをさらに改善できることを実証した。
【0391】
分析ベースの最適化されたバイオマーカーのカットオフ
CYFRA21-1、CA125及びCEAに基づくモデル/スコアを使用し、相互作用項を使用した分析を、最適化されたカットオフで繰り返した。具体的には、2つのリスク群(高リスク群及び低リスク群)のそれぞれにおいて患者の20%を保つことによってバイオマーカー群間の最大リスク差を得るためにカットオフを最適化した。
【0392】
最適化されたカットオフでは、バイオマーカーモデルによる高リスクSDの患者は、OSに対するPDの患者と同様の生存確率を有し、バイオマーカーモデルによる低リスクSDの患者は、PFS及びOSに対するPRの患者と同様の生存確率を有した。(図4)。カットオフ最適化は、高リスク群と低リスク群のHRをさらに増加させることができ、バイオマーカースコアを使用することによって行うことができる予後決定の改善を強調した。
【0393】
PFSについては、CYFRA21-1、CA125、CEA及び相互作用項を含むモデルの高リスク対低リスクのHRは3.241に達した。PR対低リスクのHRは1.023に達した(図4A)。
【0394】
OSについては、CYFRA21-1、CA125、CEA及び相互作用項を含むモデルの高リスク対低リスクのHRは4.206に達した。PR対低リスクのHRは0.924に達した。PD対高リスクのHRは0.940に達した(図4B)。
【0395】
個々のバイオマーカー分割の組み合わせに基づく分析(二成分スコア)
最適化されたカットオフを使用したCYFRA21-1及びCA125に基づくモデル/スコアを使用した分析を、最適化されたカットオフ(上記のように)を単一バイオマーカーに適用し、単一マーカーに基づいてすべての患者を低リスクSD群及び高リスクSD群に分離し、次いで2つのバイオマーカーの分割を組み合わせることによって繰り返した。簡単に説明すると、それぞれCYFRA21-1及びCA125のカットオフを含む二成分スコアを構築し、CYFRA21-1レベル及びCA125レベルをそれぞれのカットオフとそれぞれ比較した。バイオマーカーレベルがカットオフよりも高い場合、二成分スコアのそれぞれの部分を高いと定義した。バイオマーカーレベルがカットオフ以下である場合、二成分スコアのそれぞれの部分を低いと定義した。次いで、個々の分割の組み合わせに基づく二成分スコアの得られた群を、高リスク群(カットオフを上回るCYFRA21-1及びカットオフを上回るCA125)対低リスク群(カットオフを下回るCYFRA21-1及びカットオフを下回るCA125、カットオフを下回るCYFRA21-1及びカットオフを上回るCA125、カットオフを上回るCYFRA21-1及びカットオフを下回るCA125)にさらに要約した。
【0396】
最適化されたカットオフでは、バイオマーカーモデルによる高リスクSDの患者は、OSに対するPDの患者と同様の生存確率を有し、バイオマーカーモデルによる低リスクSDの患者は、PFS及びOSに対するPRの患者と同様の生存確率を有した。
【0397】
全患者に基づくPFSについて、CYFRA21-1及びCA125項を含むモデルの高リスク対低リスクのHRは3.430に達した。PR対低リスクのHRは0.856に達した。
【0398】
全患者に基づくOSについて、CYFRA21-1及びCA125を含むモデルの高リスク対低リスクのHRは3.341に達した。PR対低リスクのHRは0.796に達した。PD対高リスクのHRは0.913に達した。
【0399】
したがって、二成分スコアは、線形結合を使用したスコアと同様の結果をもたらす。
【0400】
c)処置前のバイオマーカーレベルによるバイオマーカーレベルのベースライン補正を使用したがんバイオマーカーの予後値。
無増悪生存期間についてのベースライン補正バイオマーカーレベル(すなわち、第2の処置サイクル後の最初のCTにおけるバイオマーカーレベルと処置前の初期バイオマーカー濃度との比)を用いた分析によって得られた結果を以下の表6に要約する。ベースライン補正バイオマーカーレベルをlog2変換する。
【表10】
【0401】
結果は、驚くべきことに、バイオマーカーの絶対レベルに依存するベースライン補正なしのデータが(表2参照)、バイオマーカーレベル変化を使用するよりも(表6参照)、SD患者群をPFS及びOSについて高リスク患者及び低リスク患者に区別するはるかに良好な結果を示すことを示す。リスク評価、したがって患者が処置から利益を得るかどうかの決定は、単一のバイオマーカー測定に基づくことができ、ベースライン測定を必要としないことは、真の利点及び驚くべき発見である。さらにより驚くべきことは、単一バイオマーカー測定値及びそれに由来するスコアの性能が、(処置前の)ベースラインと比較したバイオマーカー(複数可)のレベル(複数可)の変化に基づいて、同じバイオマーカーと比較してはるかに優れていることである。
【0402】
結論
CTは、現在、肺がんにおける治療に対する応答を評価するために選択される方法である。しかしながら、この研究では、2回目の処置サイクル後の最初のCTスキャンでPRを有する患者は、SDを有する患者と同様の進行及び生存のリスクを有していた。さらに、CTスキャン及びカテゴリーRECIST基準は、SD患者内のリスク識別を可能にしない。
【0403】
試験した7つのバイオマーカーのうち、最適な予後バイオマーカーは腫瘍の組織学に応じて異なっていた;CYFRA21-1は腺癌NSCLCについて最も高い予後値を有し、CA125はSCC NSCLCについて有していた。
【0404】
SDを有する患者は、中央値を上回る又は下回る、CYFRA21-1、CA125及びCEAの組み合わせ(バイオマーカーCYFRA21-1及びCA125及び任意選択的にCEAの組織学に関連する性能を考慮に入れた相互作用項を使用したスコア)に基づいて、2つの予後群;高リスク及び低リスクに分けることができた。最適化されたカットオフに基づいて患者を分離した場合、三重の組み合わせ(バイオマーカーCYFRA21-1及びCA125並びに任意選択的にCEAの組織学依存的性能を考慮した相互作用項を使用したスコア)の予後性能が増加し、高リスクSD転帰を有する患者はOSについてPDを有する患者に匹敵し、低リスクSDを有する患者はOS及びPFSについてPRを有する患者に匹敵する転帰を有することが示唆された。
【0405】
本発明者らは、本明細書に置いて、CYFRA21-1及びCA125の絶対レベル自体、2つのバイオマーカーの絶対レベルを組み合わせたスコア、特にCYFRA21-1、CA125及びCEAの絶対レベルを考慮したスコアが、SDを有する患者をPFS及びOSについて高リスク群及び低リスク群に区別することによって、不確定なCT応答を有する患者における第2の処置サイクル後の最初のCTスキャンに追加のガイダンスを提供することができることを実証した。さらに、本発明者らは、腫瘍組織学(SCC又は腺癌)に基づく相互作用項を考慮し、カットオフを最適化することによってバイオマーカースコアをさらに改善できることを実証した。
【0406】
この研究の特定の驚くべき知見は、第2の処置サイクル後の最初のCTスキャン後の1回の測定に基づくバイオマーカーレベルが、処置前に測定された同じバイオマーカーのレベルの変化よりも、疾患進行のリスクが高いSD患者及び疾患進行のリスクが低いSD患者の層別化においてはるかに良好な性能を示したことであった。この所見は、バイオマーカーレベルの継続的なモニタリングの面倒な要件を伴わない単一のバイオマーカー測定が、疾患進行を予測するのに十分であり、さらには最良であることを示している。さらに、単一の測定のみで十分であることは、このリスク評価を連続的なバイオマーカー調査を受けていない患者にも開放し、処置の異なる時点での測定のための異なる方法の使用に伴う任意の潜在的な問題を回避する。
【0407】
これらの所見は、医師が早期(サイクル2後)に治療に応答する可能性が高いか低い患者を特定するのを助けることができる。SD患者における最初のCTスキャン時に既に予測する能力は、安定状態における追加のガイダンスを提供し、したがって不確定な放射線学的結果を提供し、さらなる処置決定(例えば、可能な処置調整のモニタリング)を導くのに役立ち得る。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
【国際調査報告】