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特表2024-503860新規アレルゲンアイソフォームバリアント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】新規アレルゲンアイソフォームバリアント
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/29 20060101AFI20240122BHJP
   C07K 14/415 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240122BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 39/35 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 39/36 20060101ALI20240122BHJP
   A61K 36/736 20060101ALN20240122BHJP
   A61K 36/14 20060101ALN20240122BHJP
【FI】
C12N15/29
C07K14/415 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P37/08
A61P37/04
A61K39/35
A61K39/36
A61K36/736
A61K36/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542748
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2022050663
(87)【国際公開番号】W WO2022152803
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】2150022-8
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500139981
【氏名又は名称】ファディア・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】Phadia AB
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】リドホルム ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】マットソン ラース
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン ホーカン
(72)【発明者】
【氏名】エーレンベルク アンジェリカ
(72)【発明者】
【氏名】エストリング ヨナス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C088
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA02
4C085BB03
4C085BB04
4C085BB11
4C085CC21
4C085CC40
4C085EE01
4C088AB03
4C088AB52
4C088AC03
4C088AC04
4C088BA08
4C088BA16
4C088NA14
4C088ZB09
4C088ZB13
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA30
4H045DA86
4H045EA22
4H045FA74
4H045GA20
4H045GA21
4H045GA22
4H045GA25
4H045GA31
(57)【要約】
本発明は、アレルゲンの分野に関し、より具体的には、位置23にイソロイシンを含む、Cup s 7の新規アレルゲンアイソフォームバリアント及び関連アレルゲンに関する。新規アレルゲンアイソフォームバリアントは、1型Cupressaceace花粉アレルギー及びCupressaceace花粉関連食物アレルギーのインビトロ診断、治療、並びに/又は予防において使用が見出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号53に従うアミノ酸配列を含む単離アレルゲンタンパク質、又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアントであって、位置23にイソロイシンを含み、かつ少なくとも85%の配列番号53との配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質、又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアント。
【請求項2】
前記配列番号53との配列同一性が、少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%である、請求項1に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項3】
前記タンパク質又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアントが、配列番号52に従う以下のアミノ酸配列を含み、
【表1】
位置Xのうち最大4つが、表3に定義される任意のアミノ酸を含み、残りの位置Xにおいて、前記アミノ酸が、配列番号53の対応する位置におけるアミノ酸と同一であるが、ただし、位置23がイソロイシンを含むことを条件とする、請求項1又は2に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項4】
前記タンパク質又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアントが、配列番号9に従う以下のアミノ酸配列を含み、
【表2】
位置Xが、任意のアミノ酸を含むが、ただし、XがCではないことを条件とし、かつ位置23がイソロイシンを含むことを条件とする、請求項1又は2に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項5】
配列番号9の前記位置Xのうちの最大4つが、任意のアミノ酸を含むが、ただし、XがCではないことを条件とし、
残りの位置Xにおいて、前記アミノ酸は、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、若しくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、若しくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、若しくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、若しくはQのうちのいずれか1つから選択され、かつ/又は
位置52におけるXが、H、N、D、若しくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、請求項4に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項6】
前記残りの位置Xにおいて、前記アミノ酸は、
位置2におけるXが、Q又はHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、I又はLのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K又はEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A又はYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V又はSのうちのいずれか1つから選択され、かつ
位置52におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、請求項5に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項7】
位置Xにおいて、前記アミノ酸は、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、若しくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、若しくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、若しくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、Qのうちのいずれか1つから選択され、かつ/又は
位置52におけるXが、H、N、D、若しくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、請求項4に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項8】
位置Xにおいて、前記アミノ酸は、
位置2におけるXが、Q又はHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、I又はLのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K又はEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A又はYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V又はSのうちのいずれか1つから選択され、かつ
位置52におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、請求項7に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項9】
配列番号9の前記位置Xのうち最大4つは、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、若しくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、若しくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、若しくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、Qのうちのいずれか1つから選択され、かつ/又は
位置52におけるXが、H、N、D、若しくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択され、
残りの位置Xにおいて、前記アミノ酸が、配列番号53の対応する位置におけるアミノ酸と同一である、請求項4に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項10】
前記位置Xのうち最大4つにおいて、前記アミノ酸は、
位置2におけるXが、Q又はHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、I又はLのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K又はEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A又はYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V又はSのうちのいずれか1つから選択され、かつ
位置52におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される、請求項9に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項11】
前記タンパク質が、配列番号53~58のうちのいずれか1つに従うアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項12】
前記タンパク質が、配列番号63に従うアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項13】
前記タンパク質が、配列番号64に従うアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項14】
前記タンパク質、断片又はバリアントが、組換え的に産生されており、任意に、前記タンパク質が、構造的に修飾されており、非天然起源タンパク質をもたらす、請求項1~13のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片又はバリアントをコードする、単離核酸分子。
【請求項16】
前記核酸分子が、配列番号10によってコードされる、請求項15に記載の単離核酸分子。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の単離核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項18】
請求項17に記載の発現ベクターを含む、単離宿主細胞。
【請求項19】
アレルゲン組成物を産生するための方法であって、アレルゲン抽出物及び/又は少なくとも1つの精製アレルゲン成分を含む組成物に、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片又はバリアントを添加するステップを含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法によって得られる、アレルゲン組成物。
【請求項21】
1型アレルギーのインビトロ診断又は評価のための、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片又はバリアントの使用。
【請求項22】
前記1型アレルギーが、Cupressaceae種の花粉によって引き起こされる、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記1型アレルギーが、食物に関連している、例えば、柑橘類果物又はモモなどの果物に関連している、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
前記1型アレルギーが、花粉食物に関連している、例えば、花粉食物関連症候群(PFAS)に関連している、請求項21に記載の使用。
【請求項25】
1型アレルギーのインビトロ診断又は評価のための方法であって、
-1型アレルギーを有すると疑われる対象からの免疫グロブリン含有体液試料を、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片又はバリアントと接触させるステップと、
-前記試料において、前記タンパク質、断片又はバリアントと特異的に結合する抗体、例えば、IgE抗体の存在を決定するステップと、を含み、
前記タンパク質、断片又はバリアントと特異的に結合する前記試料中の抗体の存在が、前記対象における1型アレルギーに関して有益である、方法。
【請求項26】
キットオブパーツであって、可溶性又は固体支持体に固定化された、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片又はバリアントを含み、前記キットが、任意に、検出試薬及び/又は使用説明書を更に含む、キットオブパーツ。
【請求項27】
1型アレルギーの治療又は予防に使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片又はバリアント。
【請求項28】
前記1型アレルギーが、Cupressaceae種の花粉によって引き起こされ、食物関連アレルギー、例えば、柑橘類果物若しくはモモなどの果物関連アレルギーであり、かつ/又は花粉食物関連症候群(PFAS)に関連している、請求項27に記載の使用のための単離アレルゲンタンパク質、断片又はバリアント。
【請求項29】
請求項1~14のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片又はバリアントと、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項30】
1型アレルギーの治療又は予防のための方法であって、その治療又は予防を必要とする対象に、薬学的有効量の、請求項1~14のいずれか一項に記載の単離アレルゲンタンパク質、断片若しくはバリアント、請求項20に記載のアレルゲン組成物、又は請求項29に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【請求項31】
前記1型アレルギーが、Cupressaceae種の花粉によって引き起こされる1型アレルギーであり、食物関連アレルギー、例えば、柑橘類果物若しくはモモなどの果物関連アレルギーであり、かつ/又は花粉食物関連症候群(PFAS)に関連している、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギーの分野に関する。より具体的には、本発明は、Cupressaceae科に属する種の花粉からのアレルゲンの新規アイソフォームバリアントの特定、並びにかかる花粉に対するアレルギー及び特異的に関連する食物アレルギーの診断及び治療に関する。
【背景技術】
【0002】
工業先進国における人口のおよそ20%が、様々な環境生物物質又は食物からの抗原に曝露されると、過敏性(アレルギー)となる。即時型及び/又は遅延型の過敏症を誘導する抗原は、主にタンパク質又は糖タンパク質であり、アレルゲンと称され[1]、花粉、ヒョウヒダニ、動物の皮屑、昆虫の毒液、植物又は動物由来食物など、様々な源に見られる。アレルギー性疾患の基本的な免疫学的機序は、一般に感作と称される、かかるアレルゲンに対するアレルゲン特異的免疫グロブリンE(immunoglobulin E、IgE)抗体の形成である。IgE抗体は、特定の高親和性IgE受容体であるFcεRIを介して、好塩基球、肥満細胞、及び樹状細胞に結合する。アレルゲンに曝露されると、細胞表面上のアレルゲン特異的IgE抗体は、各アレルゲン分子の少なくとも2つの異なるエピトープの認識を通して架橋され、これらの細胞からヒスタミン及びロイコトリエンなどの炎症性媒介物が放出される。その結果、組織炎症及びアレルギーの生理学的症状が生じる[2]。
【0003】
臨床診療では、医師によるアレルギーの診断は通常、同じアレルゲンに対する感作の証拠と組み合わせた、アレルゲンに対する過敏性の納得できる病歴に基づいている。アレルゲン感作の診断検査手順は、患者の血液試料中のアレルゲン特異的IgE抗体を検出するためのインビトロイムノアッセイ、又は患者の皮膚へのアレルゲン抽出物の局所適用によって実行される皮膚プリック検査(skin prick test、SPT)のいずれかを利用することができる[3]。どちらの様式でも、アレルゲン源からのタンパク質抽出物を含むアレルゲン試薬が従来使用されている。かかる検査は高い感受性、それによる高い陰性の予測値を有し得るが、天然アレルゲン抽出物における成分に対する感作は、必ずしもアレルギーの臨床症状が発生することを意味するわけではない。検出可能な感作と臨床的アレルギーとの間のかかる解離は、部分的には、天然抽出物に存在する異なるアレルゲンタンパク質の不等な有意性によるものである。アレルゲン源における特定のタンパク質に対する感作が他のものよりも臨床疾患と密接に関連しているという事実は、診断検査に純粋な形態でかかる特定のタンパク質を利用することにより、改善された臨床的有用性を伴う診断検査の開発へ向かう手段を開いた。個々のアレルゲンタンパク質に対するIgE抗体についてのインビトロ診断検査は、多くの場合、成分分解診断(component-resolved diagnostics、CRD)と称される[4]。
【0004】
アレルゲン抽出物を使用する従来のIgE分析と比較して、CRDにはいくつかの明確な利点があることが現在広く認識されている。CRDの1つの重要な特徴は、アレルゲン源に対する一次感作と交差反応性による感作とを区別する能力であり、前者はより重度の症状に、後者は軽度の症状又は臨床的耐性に関連している。食物アレルギーでは、一次感作は通常、豊富で多くの場合安定したタンパク質に指向する。結果として、問題の食物を少量でも誤って摂取すると、相当量のかかる食物タンパク質に曝露され、感作された個体において高いリスクの重度の反応をもたらすであろう。対照的に、花粉アレルゲンと相同で交差反応する食物タンパク質は、通常、少量しか存在しないため、重度の症状を引き起こすことはめったにない[5、6]。関連する食物アレルゲン成分に対するIgE抗体の分析は、小麦、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、及びカシューナッツに対するアレルギーによって例示されるように、試験の診断値及び臨床的有用性を有意に増加させることが示されている[7~13]。CRDを使用することにより、重度で生命を脅かす可能性のあるアレルギー反応のリスクが高い患者を特定し、食物への曝露を厳密に回避し、緊急治療のためにアドレナリン自動注入器を常に携帯するように指示することができる一方で、かかる重篤な反応のリスクがない患者は、不当な不安から解放され、改善された生活の質から恩恵を受けることができる。同様に、呼吸器アレルギーでは、一次感作と交差反応性感作とを区別するCRDの能力により、重要性の低い交差反応性感作ではなく、アレルギー症状の真の原因を対象としたアレルゲン免疫療法治療(allergen immunotherapy treatment、AIT)の最適な選択が容易になる[14]。
【0005】
精製された天然又は組換えアレルゲン成分の別の用途は、天然アレルゲン抽出物中の対応するタンパク質の不均衡又は不足に対抗するためのスパイク試薬としてのそれらの使用である。これは、アレルゲンマイクロアレイ又は診療所での検査など、小型化された又は実験室以外のイムノアッセイで特に重要となり得、あまり好ましくないアッセイ条件、抗体結合アレルゲン試薬の能力の低下、及び効力が制限された天然アレルゲン抽出物の組み合わせは、不十分な診断感度を引き起こし得る。
【0006】
2016年、欧州アレルギー学会(European Academy of Allergy and Clinical Immunology、EAACI)は、「EAACI分子アレルギー学-ユーザガイド」を発表した[1]。これは、より信頼性の高い診断のために、アレルギー患者をアレルゲン成分で検査することの重要性を認識する上で画期的な出来事であった。このガイドを使用することにより、アレルギー専門医及び他の医療専門家は、交差反応性及び特定の感作パターンに関連するリスクのレベルをよりよく理解し、それによって適切なアレルゲン回避戦略を含む、患者のより適切な管理を提供することができる。
【0007】
アレルギーの最も一般的な治療法は薬理学的(例えば、抗ヒスタミン薬)であり、一時的に症状を緩和するように作用するが、治癒的ではない。アレルギーの長期的及び治癒的な治療は、患者の免疫学的脱感作を引き起こすアレルゲン免疫療法(AIT)で達成することができる。治療は、皮下又は舌下のいずれかで、原因アレルゲンの抽出物の用量を、非常に低いレベルから100~1000倍高い維持用量まで徐々に増加させる用量の投与を含む。この制御され、徐々に増加するアレルゲン曝露は、時に免疫系の再教育とも称される、アレルゲンタンパク質に対する防御免疫応答の特異的な活性化を引き起こす。免疫療法の確立された形態の可能な更なる発展は、天然のアレルゲン抽出物の代わりに、1つ又はいくつかの精製アレルゲンタンパク質の使用である。このような免疫療法の試験は、イネ科草本[15、16]及びカバノキ[17]の花粉アレルギーに対して成功裏に実施されており、ペット動物に対するアレルギーの治療にも提案されている[4、18]。
【0008】
AITの疾患修飾機序は完全には理解されていないが、それが主にIgG4サブクラスからなるアレルゲン特異的IgG応答を誘導することが周知である。これらのIgG抗体は、アレルゲンを遮断することによって直接的に、又はFc受容体を介して作用することによって間接的にIgE抗体の効果を調節し得る[19~21]。IgG抗体応答は免疫療法の成功の機序の一部であると考えられているため[20、21]、アレルゲン特異的IgGの分析は、治療の関連する免疫学的効果をモニタリングする方法であり得る。結論として、アレルゲン特異的IgGレベルの測定は、環境曝露又は免疫療法治療を通したアレルゲンに対する自然又は誘導耐性を反映している可能性があり、IgE測定と組み合わせて、アレルギーにおける診断検査の臨床的関連性を高める可能性がある。
【0009】
花粉アレルゲンは工業先進国における呼吸器アレルギーの主な原因であり、おそらく気候変動の結果として、花粉症は過去数十年の間に着実に増加している[22]。花粉症は、季節性鼻炎、結膜炎、喘息などの様々な症状を示す。花粉粒は、イネ科草本、雑草、樹木の花から放出され、風又は昆虫のいずれかによって飛散される。樹木からのほとんどのアレルギー性花粉は風で運ばれ、ブナ目、シソ目、ヤマモガシ目、及びマツ目に属する種によって産生される。マツ目は裸子植物であり、別々に雄花及び雌花を有することによって特徴付けされる。アレルギーに関連するPinales種は、主にCupressaceae科に属し、主に比較的温暖な気候において見られる[23]。地中海地域では、Cupressus sempervirens(地中海又はイタリアのヒノキ)が冬の花粉症の重要な原因であり、ヒノキ花粉に対する感作の有病率は過去数十年で劇的に増加している。特定の地域では、感作率は、アトピー性個体の間で42%高く達し得る[24、25]。地中海ヒノキはアリゾナヒノキ(Cupressus arizonica)と密接に関連しており、北米及び日本でそれぞれ見られるマウンテンシダ(Juniperus ashei、別名J.sabinoides)、二ホンヒノキ(Chamaecyparis obtusa)、及び二ホンシダ(Cryptomeria japonica)とは、いくらかより遠縁である。これらの種の主要なアレルゲンであるCup s 1、Cup a 1、Jun a 1、Cha o 1、及びCry j 1は、それぞれ90%を超えるCupressaceae花粉アレルギー患者を感作している。これらのアレルゲンは全て糖タンパク質であり、40~50kDaの分子量を有し、ペクチン酸リアーゼタンパク質ファミリーに属する。アレルゲンは交差反応性が高く、70%~95%の配列同一性を共有する[26、27]。2群アレルゲン(Cup s 2、Cup a 2、Jun a 2、Cha o 2、及びCry j 2)はポリガラクツロナーゼファミリーに属し、71%~97%の配列同一性を示す。感作率はCupressaceae花粉アレルギー患者では80%にもなる可能性があり、したがってそれを主要なアレルゲンとみなすこともできる[24]。3群及び4群のCupressaceae花粉アレルゲンは、それぞれタウマチン様タンパク質ファミリー及びポルカルシンタンパク質ファミリーに属し、少数アレルゲンとして記載されている[27、28]。これらの4つの群を超えて、Cupressaceae花粉において約15個の他のアレルゲンタンパク質が報告されている。
【0010】
花粉に対する感作は、多くの場合相同な花粉と食物タンパク質との間の交差反応性による、異なる植物性食物に対するアレルギーに関連している。かかる交差反応性は、花粉及び植物由来食物中に存在する相同タンパク質間の構造的類似性の結果として生じる。関連するタンパク質のかかる対間のアミノ酸配列同一性及び三次元構造類似性のレベルが高いほど、交差反応性の確率及び強度が高くなる。互いに60%以上の配列同一性を有するタンパク質間で広範な交差反応性が期待することができるが、関連性の低いタンパク質間で生じ得る[29]。
【0011】
花粉関連食物アレルギーは、主に又は完全に花粉感作によって駆動されると考えられている。これは通常、口腔症状を引き起こすため、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome、OAS)と称される。花粉関連食物アレルギーの最も周知である広く見られる例は、カバノキ花粉によって引き起こされ、様々な果物及び野菜におけるいわゆるPR-10タンパク質Bet v 1及び相同タンパク質が関係している[30]。別の例は、任意の花粉感作によって駆動され得るプロフィリン媒介性食物アレルギーであり、これは頻度が低く、メロン、バナナ、及び他の果物などの食物に対してアレルギーを引き起こし得る[31、32]。
【0012】
更に別の例では、Cupressaceae花粉感作とモモアレルギーとの関連を示すいくつかの患者症例が報告された[33]。その調査では、45kDaのモモアレルゲンが、免疫ブロット阻害実験によって交差反応性の原因の可能性があると特定された。最近では、Pru p 7又はpeamacleinと称された新規モモアレルゲンが、南イタリアのモモアレルギー患者の主要なアレルゲンとして報告された[34]。Pru p 7は、日本において果物アレルギーの重要な原因としても報告されているジベレリン制御タンパク質(gibberellin regulated protein、GRP)ファミリーに属する7kDaのシステインに富むタンパク質である[35]。フランス南部では、Pru p 7感作を特徴とする重度のモモアレルギーとCupressaceae花粉症との間に有意な関連が観察されている[36]。阻害実験を行うことにより、ヒノキ花粉抽出物は、Pru p 7とのIgE結合を凌駕することが見出され、ヒノキ花粉におけるPru p 7と交差反応するタンパク質の存在を示している。ヒノキ花粉由来のBP14と称される14kDaのタンパク質は、GRPファミリーの別のメンバーであるジャガイモタンパク質snakin-1[37]と配列相同性のある13アミノ酸残基のペプチドを含むことが報告されている。この配列伸展は、13残基のBP14配列を使用したBlast検索によって証明されるように、40を超える植物種からのGRPにおいて同一である高度に保存されたGRPセグメントを含むが、Cupressaceae種からの他の利用可能な配列は含まれない。したがって、報告されたBP14ペプチドには、Cupressaceae花粉GRPに特徴的かつ区別的な配列情報が含まれておらず、したがって、かかるタンパク質の特定の特徴に向けたガイダンスは提供されていない。Tuppoらは、GRPタンパク質ファミリーからの7kDaタンパク質の精製を最初に報告したが[38]、このタンパク質の配列は部分的にしか解明されなかった。Cupressus sempervirensからの7kDa GRPタンパク質(現在、Cup s 7と命名されている)の完全配列は、2つの部位、すなわち、アミノ酸位置18及び位置52におけるアイソフォーム変異を含め、Ehrenbergらによって開示された[39]。
【0013】
しかしながら、1型アレルギー、特に食物中のタンパク質との交差反応性を示し、かつ感作を誘発して食物アレルギー反応を引き起こし得るアレルゲンの診断、予後、治療及び/又は予防に使用することができる、更なるCupressaceae花粉アレルゲンを更に特定するための当技術分野における必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0014】
上記の必要性は、本明細書において代替的にCup s GRPと称されるアレルゲンタンパク質である、Cup s 7の新規アイソフォームバリアントを本明細書において特定及び提供することによって、現在満たされているか、又は少なくとも軽減されている。現在特定され、Cup s 7において開示されているバリアントアミノ酸残基は、モモアレルゲンPru p 7(ジベレリン制御タンパク質(GRP)ファミリーに属する7kDa塩基性システインに富むタンパク質)において保存されていない。かかる新規アレルゲンアイソフォームバリアントの発見により、アレルゲンタンパク質Cup s 7の理解が完全なものとなる。これは、1型アレルギー診断の分野、並びに果物及び潜在的な他の植物性食物に対して重度のアレルギーを発症するリスクのあるCupressaceae花粉アレルギー個体の特定において用途が見出される。
【0015】
位置23にイソロイシンを含む本明細書で特定されたCups GRPのアイソフォームバリアント(以下、Ile及びIとも略記される)は、Cupressaceae科からの他の種における花粉タンパク質にも存在し得る。したがって、J.ashei及びC.japonicaからの新規花粉GRPアレルゲンアイソフォームバリアントもまた、位置23にイソロイシンを有し得る。少なくとも、これまでに、J.ashei(配列番号63)においても位置23にイソロイシンを含むアイソフォームバリアントが存在することが本明細書において更に確認された。
【0016】
本出願において開示される知見の前に、位置23のアミノ酸は、植物種にかかわらず全ての既知のGRPタンパク質においてロイシン(以下、Leu及びLとも略記される)であり、厳密に保存されていることが一般的に理解されていた。しかしながら、位置23にイソロイシンを有する一部のGRPタンパク質のアイソフォームバリアントの存在が今回初めて示された。本明細書で研究された3つのCupressaceae種が、今までに特徴付けられた他の全てのGRPタンパク質が由来する被子植物(Magnoliophyta)から進化的に区別され、離れている植物のグループである裸子植物(Acrogymnospermae)に属することは注目に値する。この事実は、CupressaceaeのGRP配列が、それ以外の場合は保存されているアミノ酸位置で他の既知のGRP配列から逸脱し得る理由を提供する。
【0017】
したがって、本明細書に開示される新規アイソフォームバリアントは、それらがコンセンサス配列(配列番号52及び配列番号9)のアミノ酸配列の位置23にロイシンの代わりにイソロイシンを有するという共通の知見に基づく。
【0018】
位置18にイソロイシンを有するCup s GRPアレルゲンアイソフォームバリアントが本明細書に更に開示される。位置23にイソロイシン及び位置18にイソロイシンを有するCup s GRPアレルゲンアイソフォームバリアントも本明細書に開示される。
【0019】
したがって、本明細書に提供される第1の態様では、配列番号53(すなわち、Cup s GRPc)に従うアミノ酸配列を含む単離アレルゲンタンパク質(すなわち、本明細書で特定されたアレルゲン)、又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアントであって、位置23にイソロイシンを含み、かつ少なくとも85%の配列番号53との配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質、又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアントが提供される。また、本明細書では、位置23にイソロイシンを含み、かつ少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列番号53との配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質、又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアントも提供される。
【0020】
また、本明細書では、配列番号53~58(すなわち、表1のCup s GRPc~h)、配列番号63(すなわち、表1のJun a GRPb)、若しくは配列番号64(すなわち、表1のCry j GRPb)のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、単離アレルゲンタンパク質も提供される。また、本明細書では、位置23にイソロイシンを含み、かつ、それぞれ少なくとも90%、例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%配列同一性の配列番号53~62、配列番号63、又は配列番号64のうちのいずれか1つとの配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質、又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアントも提供される。
【0021】
更なる態様では、本明細書に示されるそれぞれの単離タンパク質をコードする単離核酸分子が提供される。かかる単離核酸分子は、IUPAC多義性コードに従う同義コドン及びバリアントを含む花粉GRPの縮重DNA配列を提示する配列番号10に従う配列によって表される。
【0022】
更なる態様では、本明細書の他の場所に開示される単離核酸配列を含む単離核酸分子を含む、発現ベクター(本明細書では単にベクターとも称される)が提供される。
【0023】
更に別の態様では、本明細書に記載の発現ベクターを含む、単離宿主細胞が提供される。当該宿主細胞は、発現ベクターによってコードされる目的のタンパク質を発現させるために使用される。
【0024】
更に別の態様では、アレルゲン組成物を産生するための方法であって、アレルゲン抽出物及び/又は少なくとも1つの精製アレルゲン成分を含む組成物に、本明細書に記載の単離タンパク質、又はその断片若しくはバリアントを添加するステップを含む、方法が提供される。
【0025】
更に別の態様では、本明細書に記載のアレルゲン組成物を産生するための方法によって得られるアレルゲン組成物であって、当該アレルゲン組成物が、本明細書の他の場所で更に定義される単離タンパク質、又はその断片若しくはバリアントを含む、アレルゲン組成物が提供される。
【0026】
また、本明細書に記載の単離タンパク質、又はその断片若しくはバリアント、並びにアレルゲン抽出物及び/又は少なくとも1つの精製アレルゲン成分を含む、アレルゲン組成物も提供される。
【0027】
更に別の態様では、1型アレルギーのインビトロ診断又は評価のための、本明細書に開示される単離タンパク質、又はその断片若しくはバリアントの使用が提供される。
【0028】
更に別の態様では、本明細書において、1型アレルギーのインビトロ診断又は評価のための方法であって、1型アレルギーを有すると疑われる対象からの免疫グロブリン含有体液試料を、本明細書に開示の単離タンパク質、又はその断片若しくはバリアントと接触させるステップと、当該試料において、当該タンパク質、断片若しくはバリアントと特異的に結合する抗体、例えば、IgE抗体、又はその機能的に同等な断片の存在を決定するステップと、を含み、当該タンパク質、断片若しくはバリアントと特異的に結合する当該試料中の抗体、又はその機能的に同等な断片の存在が、当該対象における1型アレルギーに関して有益である、方法が提供される。
【0029】
更に別の態様では、キットオブパーツであって、可溶性又は固体支持体に固定化された、本明細書に記載の単離アレルゲンタンパク質、又は断片若しくはバリアントを含み、当該キットが、任意に、検出試薬及び/又は使用説明書を更に含む、キットオブパーツが提供される。
【0030】
別の態様では、1型アレルギーの治療又は予防に使用するための、本明細書に開示される単離タンパク質、又はその断片若しくはバリアントが提供される。
【0031】
更に別の態様では、本明細書に開示される単離アレルゲンタンパク質、又はその断片若しくはバリアントと、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物が提供される。
【0032】
更に別の態様では、1型アレルギーの治療又は予防のための方法であって、その治療又は予防を必要とする対象に、薬学的有効量の、本明細書で提供される単離アレルゲンタンパク質、又はその断片若しくはバリアント、あるいはアレルゲン組成物、あるいは薬学的組成物を投与することを含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】カチオン交換クロマトグラフィによる天然Pru p 7の第1の精製ステップを示す。280nmでの吸光度(A280)及び導電率を、それぞれ実線及び斜線で示す。括弧は、更に精製するためにプールされた画分を示す。
図2】サイズ排除クロマトグラフィによる天然Pru p 7の第2の精製ステップを示す。280nmでの吸光度(A280)及び導電率を、それぞれ実線及び斜線で示す。括弧は、更に精製するためにプールされた画分を示す。
図3】抗Pru p 3モノクローナル抗体を使用する親和性免疫吸着クロマトグラフィを含む天然Pru p 7の第3の精製ステップを示す。280nmでの吸光度(A280)及び導電率を、それぞれ実線及び斜線で示す。括弧は、更に精製するために収集した非結合の物質を示す。
図4a】逆相クロマトグラフィによる天然Pru p 7の第4の精製ステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及びパーセンテージアセトニトリルを伴うクロマトグラムをそれぞれ実線及び斜線で示す。矢印は、SDS-PAGEによって分析された画分を示し、括弧は、更なる分析のためにプールされた画分を示す。b)図4aに示した画分のSDS-PAGE。レーン7~9には、図4aの括弧で示した画分が含まれる。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図4b】逆相クロマトグラフィによる天然Pru p 7の第4の精製ステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及びパーセンテージアセトニトリルを伴うクロマトグラムをそれぞれ実線及び斜線で示す。矢印は、SDS-PAGEによって分析された画分を示し、括弧は、更なる分析のためにプールされた画分を示す。b)図4aに示した画分のSDS-PAGE。レーン7~9には、図4aの括弧で示した画分が含まれる。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図5】カチオン交換クロマトグラフィによる組換えPru p 7の第1の精製ステップを示す。280nmでの吸光度(A280)及び導電率を、それぞれ実線及び斜線で示す。括弧は、更に精製するためにプールされた画分を示す。
図6a】サイズ排除クロマトグラフィによる組換えPru p 7の第2の精製ステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び斜線で示す。括弧は、更なる分析のためにプールされた画分を示す。b)サイズ排除クロマトグラフィステップからのプールの還元(レーン1)及び非還元(レーン2)試料のSDS-PAGE分析。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図6b】サイズ排除クロマトグラフィによる組換えPru p 7の第2の精製ステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び斜線で示す。括弧は、更なる分析のためにプールされた画分を示す。b)サイズ排除クロマトグラフィステップからのプールの還元(レーン1)及び非還元(レーン2)試料のSDS-PAGE分析。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図7a】ウサギ抗Pru p 7 IgGの、a)組換えPru p 7及びb)Cupressus sempervirens花粉抽出物との異なる抗血清希釈での結合を示す。同じウサギからの免疫前血清を陰性対照として使用した。
図7b】ウサギ抗Pru p 7 IgGの、a)組換えPru p 7及びb)Cupressus sempervirens花粉抽出物との異なる抗血清希釈での結合を示す。同じウサギからの免疫前血清を陰性対照として使用した。
図8】サイズ排除クロマトグラフィによるCupressus sempervirens花粉抽出物からのnCup s GRPの精製の第1のステップを示す。214nmでの吸光度(A214)及び導電率を、それぞれ実線及び斜線で示す。括弧は、更に精製するためにプールされた画分を示す。
図9a】イオン交換クロマトグラフィによるnCup s GRPの精製の第2のステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び点線で示す。矢印は、ウサギ抗Pru p 7 IgGの結合について試験した画分を示す。括弧は、更に精製するためにプールされた画分を示す。b)画分と結合するウサギ抗Pru p 7 IgGのレベルを図9aに示す。c)画分の銀染色SDS-PAGEを図9aに示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図9b】イオン交換クロマトグラフィによるnCup s GRPの精製の第2のステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び点線で示す。矢印は、ウサギ抗Pru p 7 IgGの結合について試験した画分を示す。括弧は、更に精製するためにプールされた画分を示す。b)画分と結合するウサギ抗Pru p 7 IgGのレベルを図9aに示す。c)画分の銀染色SDS-PAGEを図9aに示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図9c】イオン交換クロマトグラフィによるnCup s GRPの精製の第2のステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び点線で示す。矢印は、ウサギ抗Pru p 7 IgGの結合について試験した画分を示す。括弧は、更に精製するためにプールされた画分を示す。b)画分と結合するウサギ抗Pru p 7 IgGのレベルを図9aに示す。c)画分の銀染色SDS-PAGEを図9aに示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図10a】サイズ排除クロマトグラフィによるnCup s GRPの精製の第3のステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)を伴うクロマトグラムを実線で示す。矢印は、ウサギ抗Pru p 7 IgGの結合について試験した画分を示し、括弧は、更なる精製のためにプールした画分を示す。b)画分と結合する抗Pru p 7 IgGのレベルを図10aに示す。c)画分の銀染色SDS-PAGEを図10aに示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。d)画分のプールのSDS-PAGEを図10aに示す(nCup s GRP、レーン1)及びrPru p 7(レーン2)。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図10b】サイズ排除クロマトグラフィによるnCup s GRPの精製の第3のステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)を伴うクロマトグラムを実線で示す。矢印は、ウサギ抗Pru p 7 IgGの結合について試験した画分を示し、括弧は、更なる精製のためにプールした画分を示す。b)画分と結合する抗Pru p 7 IgGのレベルを図10aに示す。c)画分の銀染色SDS-PAGEを図10aに示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。d)画分のプールのSDS-PAGEを図10aに示す(nCup s GRP、レーン1)及びrPru p 7(レーン2)。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図10c】サイズ排除クロマトグラフィによるnCup s GRPの精製の第3のステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)を伴うクロマトグラムを実線で示す。矢印は、ウサギ抗Pru p 7 IgGの結合について試験した画分を示し、括弧は、更なる精製のためにプールした画分を示す。b)画分と結合する抗Pru p 7 IgGのレベルを図10aに示す。c)画分の銀染色SDS-PAGEを図10aに示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。d)画分のプールのSDS-PAGEを図10aに示す(nCup s GRP、レーン1)及びrPru p 7(レーン2)。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図10d】サイズ排除クロマトグラフィによるnCup s GRPの精製の第3のステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)を伴うクロマトグラムを実線で示す。矢印は、ウサギ抗Pru p 7 IgGの結合について試験した画分を示し、括弧は、更なる精製のためにプールした画分を示す。b)画分と結合する抗Pru p 7 IgGのレベルを図10aに示す。c)画分の銀染色SDS-PAGEを図10aに示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。d)画分のプールのSDS-PAGEを図10aに示す(nCup s GRP、レーン1)及びrPru p 7(レーン2)。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図11a】MS/MSによるnCup s GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY878079のヌクレオチド配列(配列番号2)(Cryptomeria japonica雄球花からのcDNA配列)は、精製された7kDaのCupressus sempervirensタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致を表す。中断された仮定のオープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)及び終止コドン(TGA及びTAG)に下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された4つのペプチド(Pep1~4)と、BY878079によってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたCup s GRPのアミノ酸配列(仮説上BY878079の修正バージョンによってコードされる配列から逸脱するアミノ酸に下線を付し、代替アミノ酸は配列の上に示された2つの多型部位で特定されている)。d)Cup s GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図11b】MS/MSによるnCup s GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY878079のヌクレオチド配列(配列番号2)(Cryptomeria japonica雄球花からのcDNA配列)は、精製された7kDaのCupressus sempervirensタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致を表す。中断された仮定のオープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)及び終止コドン(TGA及びTAG)に下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された4つのペプチド(Pep1~4)と、BY878079によってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたCup s GRPのアミノ酸配列(仮説上BY878079の修正バージョンによってコードされる配列から逸脱するアミノ酸に下線を付し、代替アミノ酸は配列の上に示された2つの多型部位で特定されている)。d)Cup s GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図11c】MS/MSによるnCup s GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY878079のヌクレオチド配列(配列番号2)(Cryptomeria japonica雄球花からのcDNA配列)は、精製された7kDaのCupressus sempervirensタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致を表す。中断された仮定のオープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)及び終止コドン(TGA及びTAG)に下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された4つのペプチド(Pep1~4)と、BY878079によってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたCup s GRPのアミノ酸配列(仮説上BY878079の修正バージョンによってコードされる配列から逸脱するアミノ酸に下線を付し、代替アミノ酸は配列の上に示された2つの多型部位で特定されている)。d)Cup s GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図11d】MS/MSによるnCup s GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY878079のヌクレオチド配列(配列番号2)(Cryptomeria japonica雄球花からのcDNA配列)は、精製された7kDaのCupressus sempervirensタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致を表す。中断された仮定のオープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)及び終止コドン(TGA及びTAG)に下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された4つのペプチド(Pep1~4)と、BY878079によってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたCup s GRPのアミノ酸配列(仮説上BY878079の修正バージョンによってコードされる配列から逸脱するアミノ酸に下線を付し、代替アミノ酸は配列の上に示された2つの多型部位で特定されている)。d)Cup s GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図12a】サイズ排除クロマトグラフィによるnJun a GRPの第3の及び最後の精製ステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び斜線で示す。括弧は、クロマトグラムに示される3つの吸光度ピーク(プール1~3)のプールされた画分を示す。b)図12aに示されるサイズ排除クロマトグラフィから選択された画分のSDS-PAGE分析。プール1~3を含む画分は、括弧で示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。c)図12aに示される3つのプールによるウサギ抗Pru p 7 IgG結合のレベルを示す棒グラフ。
図12b】サイズ排除クロマトグラフィによるnJun a GRPの第3の及び最後の精製ステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び斜線で示す。括弧は、クロマトグラムに示される3つの吸光度ピーク(プール1~3)のプールされた画分を示す。b)図12aに示されるサイズ排除クロマトグラフィから選択された画分のSDS-PAGE分析。プール1~3を含む画分は、括弧で示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。c)図12aに示される3つのプールによるウサギ抗Pru p 7 IgG結合のレベルを示す棒グラフ。
図12c】サイズ排除クロマトグラフィによるnJun a GRPの第3の及び最後の精製ステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び斜線で示す。括弧は、クロマトグラムに示される3つの吸光度ピーク(プール1~3)のプールされた画分を示す。b)図12aに示されるサイズ排除クロマトグラフィから選択された画分のSDS-PAGE分析。プール1~3を含む画分は、括弧で示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。c)図12aに示される3つのプールによるウサギ抗Pru p 7 IgG結合のレベルを示す棒グラフ。
図13a】サイズ排除クロマトグラフィによるnCry j GRPの第3の及び最後の精製ステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び斜線で示す。矢印は、SDS-PAGE及びウサギ抗Pru p 7 IgGの結合による分析のために選択した画分を示す。括弧は、更に精製するためにプールされた画分を示す。b)図13aに示した画分のSDS-PAGE分析。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。c)図13aに示す画分によるウサギ抗Pru p 7 IgG結合のレベルを示す棒グラフ。
図13b】サイズ排除クロマトグラフィによるnCry j GRPの第3の及び最後の精製ステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び斜線で示す。矢印は、SDS-PAGE及びウサギ抗Pru p 7 IgGの結合による分析のために選択した画分を示す。括弧は、更に精製するためにプールされた画分を示す。b)図13aに示した画分のSDS-PAGE分析。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。c)図13aに示す画分によるウサギ抗Pru p 7 IgG結合のレベルを示す棒グラフ。
図13c】サイズ排除クロマトグラフィによるnCry j GRPの第3の及び最後の精製ステップを示す。a)280nmでの吸光度(A280)及び導電率を伴うクロマトグラムを、それぞれ実線及び斜線で示す。矢印は、SDS-PAGE及びウサギ抗Pru p 7 IgGの結合による分析のために選択した画分を示す。括弧は、更に精製するためにプールされた画分を示す。b)図13aに示した画分のSDS-PAGE分析。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。c)図13aに示す画分によるウサギ抗Pru p 7 IgG結合のレベルを示す棒グラフ。
図14a】MS/MSによるnJun a GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY878079の修正バージョンのヌクレオチド配列(配列番号3)は、精製された7kDaのJuniperus asheiタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致である。仮定のオープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)、補正された前の終止コドン(TGY)及び末端終止コドン(TAG)に下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された4つのペプチド(Pep1~4)と、BY878079の修正バージョンによってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたJun a GRPのアミノ酸配列、修正されたBY878079によってコードされると仮定される配列から逸脱するアミノ酸に下線を付す。d)Jun a GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図14b】MS/MSによるnJun a GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY878079の修正バージョンのヌクレオチド配列(配列番号3)は、精製された7kDaのJuniperus asheiタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致である。仮定のオープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)、補正された前の終止コドン(TGY)及び末端終止コドン(TAG)に下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された4つのペプチド(Pep1~4)と、BY878079の修正バージョンによってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたJun a GRPのアミノ酸配列、修正されたBY878079によってコードされると仮定される配列から逸脱するアミノ酸に下線を付す。d)Jun a GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図14c】MS/MSによるnJun a GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY878079の修正バージョンのヌクレオチド配列(配列番号3)は、精製された7kDaのJuniperus asheiタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致である。仮定のオープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)、補正された前の終止コドン(TGY)及び末端終止コドン(TAG)に下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された4つのペプチド(Pep1~4)と、BY878079の修正バージョンによってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたJun a GRPのアミノ酸配列、修正されたBY878079によってコードされると仮定される配列から逸脱するアミノ酸に下線を付す。d)Jun a GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図14d】MS/MSによるnJun a GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY878079の修正バージョンのヌクレオチド配列(配列番号3)は、精製された7kDaのJuniperus asheiタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致である。仮定のオープンリーディングフレームの開始コドン(ATG)、補正された前の終止コドン(TGY)及び末端終止コドン(TAG)に下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された4つのペプチド(Pep1~4)と、BY878079の修正バージョンによってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたJun a GRPのアミノ酸配列、修正されたBY878079によってコードされると仮定される配列から逸脱するアミノ酸に下線を付す。d)Jun a GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図15a】MS/MSによるnCry j GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY900480のヌクレオチド配列(配列番号7、Cryptomeria japonica雄球花からのcDNA配列)は、精製された7kDaのCupressus sempervirensタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致を表す。仮定のオープンリーディングフレームの開始(ATG)及び停止(TAG)コドンに下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された5つのペプチド(Pep1~5)と、BY900480によってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたCry j GRPのアミノ酸配列。d)Cry j GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図15b】MS/MSによるnCry j GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY900480のヌクレオチド配列(配列番号7、Cryptomeria japonica雄球花からのcDNA配列)は、精製された7kDaのCupressus sempervirensタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致を表す。仮定のオープンリーディングフレームの開始(ATG)及び停止(TAG)コドンに下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された5つのペプチド(Pep1~5)と、BY900480によってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたCry j GRPのアミノ酸配列。d)Cry j GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図15c】MS/MSによるnCry j GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY900480のヌクレオチド配列(配列番号7、Cryptomeria japonica雄球花からのcDNA配列)は、精製された7kDaのCupressus sempervirensタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致を表す。仮定のオープンリーディングフレームの開始(ATG)及び停止(TAG)コドンに下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された5つのペプチド(Pep1~5)と、BY900480によってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたCry j GRPのアミノ酸配列。d)Cry j GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図15d】MS/MSによるnCry j GRPのアミノ酸配列決定を示す。a)EST記録BY900480のヌクレオチド配列(配列番号7、Cryptomeria japonica雄球花からのcDNA配列)は、精製された7kDaのCupressus sempervirensタンパク質から得られたMS/MSデータとの最良のデータベース一致を表す。仮定のオープンリーディングフレームの開始(ATG)及び停止(TAG)コドンに下線を付す。b)MS/MS分析によって特定された5つのペプチド(Pep1~5)と、BY900480によってコードされると仮定されるアミノ酸配列とのアラインメント。予測されるシグナルペプチドには下線を付し、終止コドンはアスタリスクで示す。c)MS/MSによって決定されたCry j GRPのアミノ酸配列。d)Cry j GRP及びPru p 7のアミノ酸配列のアラインメント。垂直線、コロン、及びピリオドは、それぞれ同一、保存、及び半保存の位置を示す。
図16a】Cupressaceae花粉由来GRPの配列及び電気泳動の比較を示す。a)Cup s GRPa、Cup s GRPb、Jun a GRP、及びCry j GRPアミノ酸配列のマルチアラインメント。全ての配列において同一のアミノ酸を有する位置はアスタリスクで示す。b)上記のアミノ酸配列のマトリックス比較は、パーセント配列同一性を示す。c)C.sempervirens(レーン1)、J.ashei(レーン2)、及びC.japonica(レーン3)花粉並びに組換えPru p 7(レーン4)から精製された3つの7kDaタンパク質のSDS-PAGE。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図16b】Cupressaceae花粉由来GRPの配列及び電気泳動の比較を示す。a)Cup s GRPa、Cup s GRPb、Jun a GRP、及びCry j GRPアミノ酸配列のマルチアラインメント。全ての配列において同一のアミノ酸を有する位置はアスタリスクで示す。b)上記のアミノ酸配列のマトリックス比較は、パーセント配列同一性を示す。c)C.sempervirens(レーン1)、J.ashei(レーン2)、及びC.japonica(レーン3)花粉並びに組換えPru p 7(レーン4)から精製された3つの7kDaタンパク質のSDS-PAGE。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図16c】Cupressaceae花粉由来GRPの配列及び電気泳動の比較を示す。a)Cup s GRPa、Cup s GRPb、Jun a GRP、及びCry j GRPアミノ酸配列のマルチアラインメント。全ての配列において同一のアミノ酸を有する位置はアスタリスクで示す。b)上記のアミノ酸配列のマトリックス比較は、パーセント配列同一性を示す。c)C.sempervirens(レーン1)、J.ashei(レーン2)、及びC.japonica(レーン3)花粉並びに組換えPru p 7(レーン4)から精製された3つの7kDaタンパク質のSDS-PAGE。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を右側に示す。
図17】rCup s GRPa(レーン1)、rCup s GRPb(レーン2)、精製された天然Cup s GRP(レーン3)、及びrPru p 7(レーン4)のSDS-PAGE分析を示す。マーカータンパク質の分子量(レーンM)を左側に示す。
図18】44人のモモアレルギー対象におけるrPru p 7及びnCup s GRPとのIgE結合の比較を示す。アッセイの0.1kUA/Lの定量限界(limit of quantitation、LoQ)を下回る値は、0.1 kUA/Lに設定した。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図19a】18人のモモアレルギー対象におけるnCup s GRP及び組換えCup s GRPの2つのバリアントとのIgE結合の比較を示す。a)rCup s GRPa対nCup s GRP、並びにb)rCup s GRPb対nCup s GRP。c)rCup s GRPb対rCup s GRPa。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図19b】18人のモモアレルギー対象におけるnCup s GRP及び組換えCup s GRPの2つのバリアントとのIgE結合の比較を示す。a)rCup s GRPa対nCup s GRP、並びにb)rCup s GRPb対nCup s GRP。c)rCup s GRPb対rCup s GRPa。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図19c】18人のモモアレルギー対象におけるnCup s GRP及び組換えCup s GRPの2つのバリアントとのIgE結合の比較を示す。a)rCup s GRPa対nCup s GRP、並びにb)rCup s GRPb対nCup s GRP。c)rCup s GRPb対rCup s GRPa。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図20】4人の異なる対象の血清において、天然及び組換えCup s GRPbによるrPru p 7とのIgE結合の阻害を示す。結果は、希釈緩衝液対照の割合として表される。
図21a】18人のモモアレルギー対象におけるa)nJun a GRP及びnCup s GRP、b)nCry j GRP及びnCup s GRP、並びにc)nCry j GRP及びnJun a GRPとのIgE結合の対比較を示す。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図21b】18人のモモアレルギー対象におけるa)nJun a GRP及びnCup s GRP、b)nCry j GRP及びnCup s GRP、並びにc)nCry j GRP及びnJun a GRPとのIgE結合の対比較を示す。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図21c】18人のモモアレルギー対象におけるa)nJun a GRP及びnCup s GRP、b)nCry j GRP及びnCup s GRP、並びにc)nCry j GRP及びnJun a GRPとのIgE結合の対比較を示す。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図22】ヒノキ花粉に感作された88人の対象の血清におけるnCup s GRPに対するIgE抗体の保有率及びレベルを示す。アッセイの0.1kUA/Lの定量限界(LoQ)を下回る値(斜垂直線及び水平線で示される)は、0.05kUA/Lに設定した。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
図23a】プロフィリンBet v 2、Cor a 2、Mal d 4、Pru av 4、Pyr c 4、Api g 4、Dau c 4、及びPhl p 12間の免疫学的比較及び配列比較を示す。a)異なるプロフィリンとのIgE結合の対比較。斜水平線及び垂直線は0.35kUA/Lのレベルを示し、対角線は1:1の勾配を示す。b)対配列比較は、パーセント配列同一性を示す。
図23b】プロフィリンBet v 2、Cor a 2、Mal d 4、Pru av 4、Pyr c 4、Api g 4、Dau c 4、及びPhl p 12間の免疫学的比較及び配列比較を示す。a)異なるプロフィリンとのIgE結合の対比較。斜水平線及び垂直線は0.35kUA/Lのレベルを示し、対角線は1:1の勾配を示す。b)対配列比較は、パーセント配列同一性を示す。
図24】Cup s GRPa、Cup s GRPb、Cup s GRPc、Jun a GRP(本明細書ではJun a GRPaとも称する)、Jun a GRPb、及びCry j GRP配列、並びにこれら5つの配列に基づくCupressaceaeコンセンサス配列のアラインメントを示す。Cup s GRPaのアミノ酸から逸脱するアミノ酸のみは、Cup s GRPb、Cup s GRPc、Jun a GRP、及びCry j GRPの配列において示される。変動性を示すアミノ酸位置は、他の配列の上部にアラインメントしたCupressaceae花粉GRPコンセンサス配列(配列番号9)においてXで示される。
図25】37個の既知のGRP配列の多重配列アラインメントを示す。アスタリスクは、比較された全ての配列の中で系統的に保存されたアミノ酸を示す。
図26】Cupressaceae花粉GRPコンセンサス配列、配列番号9、及びPru p 7の配列アラインメントを示す。行Aにおいて、Zで示されるアミノ酸の位置は、Cupressaceae花粉GRPとPru p 7とで異なる。行Bにおいて、Cupressaceae花粉とPru p 7との間で保存されているが、図25に示すようにアラインメントされた37個の配列間で異なるアミノ酸が示されている。行Cにおいて、37個のアラインメントされた配列全ての間で保存されているアミノ酸を示す。配列番号52は、Cupressaceae花粉GRP配列とPru p 7との間のコンセンサス配列であり、Xはこの比較において保存されていないアミノ酸を表す。
図27】23人のモモアレルギー対象におけるrCup s GRPa及びrCup s GRPc(位置23にLeuの代わりにIleを有するアイソフォーム)へのIgE結合の比較を示す。斜線対角線は1:1の勾配を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本発明の詳細を以下に示す。本明細書に記載されているものと類似又は同等の任意の材料及び方法を本発明の実施又は試験に使用することができるが、ここで、好ましい材料及び方法を記載する。本発明の他の特徴、目的及び利点は、記載から明らかになるであろう。本明細書において、単数形は、別段に文脈が明確に指示しない限り、複数形も含む。別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0035】
「タンパク質」及び「ペプチド」という用語は、当技術分野においてそれらの通常の意味を有すると解釈されるべきである。別段に明記されない限り、これらの用語は本明細書では互換的に使用される。
【0036】
「単離」タンパク質とは、その天然環境から単離又は除去されたタンパク質を指す。また、ヒトの介入によって産生されており、タンパク質産生環境で共存する材料から実質的に分離されていることも示す。
【0037】
「単離タンパク質」又は「タンパク質」が本明細書で言及される場合はいつでも、これは本明細書において更に説明される単離タンパク質との配列同一性を有し、起源の全長タンパク質と機能的に同等である、当該単離タンパク質の断片又はバリアントを指し得る。「機能的に同等」は、本明細書の他の場所で更に定義される。
【0038】
本明細書において、「タンパク質」、「単離タンパク質」、「アレルゲンタンパク質」、「その断片又はバリアント」、「単離アレルゲンタンパク質の断片又はバリアント」、及び「アレルゲン」という用語は、は互換的に使用することができ、本開示の全ての文脈及び態様で想定される。
【0039】
「配列同一性」は、2つの(ヌクレオチド又はアミノ酸)配列が、アラインメントにおける同じ位置に同じ残基を有する程度に関連し、割合で表される。この点での「アラインメント」は、最大レベルの同一性を達成するために2つ以上の生物学的配列のヌクレオチド又はアミノ酸残基を一致させるプロセス又は結果、アミノ酸配列の場合、類似性の程度及び相同性の可能性を評価する目的での保存に関する。「全体的な」配列同一性を決定するために、その断片若しくはバリアントと比較したそれぞれの単離タンパク質のアミノ酸配列、又はそれらをコードする核酸配列を、アラインメントに使用することができる[40、41]。
【0040】
タンパク質の「長さ」は、タンパク質のアミノ酸残基の数である。
【0041】
本明細書において、タンパク質の「断片」は、参照タンパク質の全長にわたって計算されるように、参照タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有する断片を意味すると解釈されるべきである。換言すると、本開示に従うと、全長参照タンパク質のアミノ酸残基の少なくとも85%が断片に存在する。本明細書に開示されるように、参照タンパク質は、配列番号53に従うアミノ酸配列を有し得る。結果として、本明細書に開示される「断片」は、配列番号53の全長にわたって計算されるように、配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し得る。タンパク質断片は、ヘキサヒスチジンタグ、リンカー配列、又はベクター由来アミノ酸など、それらの産生の結果として追加のアミノ酸を更に含み得る。このような断片は、配列番号53の位置23にイソロイシンを含む。
【0042】
タンパク質の「バリアント」は、バリアントタンパク質の全長にわたって計算されるように、参照タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するバリアントに関する。参照タンパク質は、配列番号53に従うアミノ酸配列を有し得る。結果として、本明細書に開示される「バリアント」は、配列番号53のアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性を有し得る。European Bioinformatics Institute(Cambridge,United Kingdom)が提供するClustal Omegaなど、起源タンパク質とバリアントタンパク質とアラインメントし、配列同一性を計算するための多数のソフトウェアツールが市販されている。タンパク質バリアントは、ヘキサヒスチジンタグ、リンカー配列、又はベクター由来アミノ酸など、それらの産生の結果として追加のアミノ酸を更に含み得る。このようなバリアントは、配列番号53の位置23にイソロイシンを含む。
【0043】
本明細書において、タンパク質の「機能的に同等なタンパク質断片又はバリアント」、又はタンパク質の「機能的に同等な断片又はバリアント」に言及する場合はいつでも、これはタンパク質及びその断片又はバリアントが同等のIgE結合特性を有することを意味することが意図される。より詳細には、起源の単離アレルゲンタンパク質の機能的に同等なバリアント又は断片であるために:
(a)バリアント又は断片は、起源アレルゲンタンパク質に感作された代表的な患者の血清試料からのIgE抗体の、起源アレルゲンタンパク質による結合を、緩衝液のみによる模擬阻害と比較して少なくとも50%阻害する(IgE希釈剤、Thermo Fisher Scientific)。バリアント又は断片のこの特性は、例えば、実施例9に記載されるように、当技術分野で既知の任意の好適な阻害アッセイを使用することによってアッセイすることができる。
(b)バリアント又は断片は、起源アレルゲンタンパク質と実質的に同じレベルでIgE抗体と結合する。結合レベルは、例えば、実施例8に記載されるように、バリアント又は断片を固相に固定化し、個々の血清のIgE反応性を測定し、測定されたIgE反応性を起源単離アレルゲンタンパク質のIgE反応性と比較することによって測定することができる。この定義の目的について、「実質的に同じレベル」とは、バリアントの結合レベルが起源タンパク質の結合レベルと最大で25%、20%、15%、10%、又は5%異なることを意味すると解釈されるべきである。
(c)バリアント又は断片は、CupressaceaeGRPコンセンサス配列の全ての保存アミノ酸を含む(すなわち、配列番号9、保存アミノ酸については図26を参照されたい)。
(d)(i)それがバリアントである場合、バリアントは、配列番号53と比較して最大9個のアミノ酸残基が交換されている、例えば、配列番号53と比較して9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1個のアミノ酸残基が交換されているか、又は
(ii)それが断片である場合、断片は、配列番号53と比較して最大9個のアミノ酸残基が削除されている、例えば、配列番号53と比較して9、8、7、6、5、4、3、2、若しくは1個のアミノ酸残基が削除されているか、又は
(iii)それがバリアント及び断片の組み合わせである場合、バリアント及び断片の組み合わせは、配列番号53と比較して最大9個のアミノ酸残基が交換若しくは削除されている。
【0044】
上述の当該単離アレルゲンタンパク質のバリアント又は断片は、本明細書の他の箇所に記載される配列番号53の位置23にイソロイシンを含む。
【0045】
実施例10及び12は、交差反応性によるアレルゲンタンパク質のIgE結合が、同じタンパク質ファミリー内の密接に関連するアレルゲンタンパク質間で非常に類似していることを示している。互いに少なくとも80%、例えば、90%以上の配列同一性を有する相同タンパク質は、著しく類似したIgE反応性を示す。
【0046】
アミノ酸配列の特定の位置にあるアミノ酸残基は、当該位置のアミノ酸残基が、比較されたアラインメントタンパク質配列間で同一である場合、同じタンパク質ファミリーの異なるタンパク質間で「系統的に保存された」、時には単に「保存された」と記される。したがって、異なるタンパク質間で「保存されていない」アミノ酸残基は、比較したタンパク質配列間で同一ではない。保存されていないアミノ酸残基は、比較されるタンパク質配列にわたって「系統的に制限された」又は「系統的に制限された変動性」を有し得、これは、特定の位置におけるアミノ酸が、例えば、GRPタンパク質ファミリーからの類似のタンパク質の群の系統的比較において見出される制限された数のアミノ酸からなる群から選択されることを意味することが意図される。
【0047】
「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、外来遺伝物質を別の細胞に人工的に運び、そこで複製及び/又は発現させることができるビヒクルとして使用されるDNA分子に関する。
【0048】
「宿主細胞」は、目的のタンパク質、断片又はバリアントを発現するために本明細書に開示されるベクターによって形質転換されている細菌、酵母、昆虫、又は哺乳動物細胞に関する。
【0049】
タンパク質「アイソフォーム」又はタンパク質「アイソフォームバリアント」は、高い類似性を有するタンパク質の群のメンバーであり、単一遺伝子の対立遺伝子バリアント又は遺伝子ファミリーの非同一メンバーに由来し、遺伝的差異から生じる。多くのアイソフォームは、同じ又は類似の生物学的機能を実行する。
【0050】
本明細書において、「Cup s GRP」及び「Cup s 7」という用語は、同じタンパク質、すなわち、Cupressus sempervirensからの7kDa GRPタンパク質を示す。これらの用語は、本明細書において互換的に使用される。同様に、「Jun a GRP」及び「Jun a 7」という用語は、同じタンパク質、すなわちJuniperus asheiからの7kDa GRPタンパク質を意味し、互換的に使用される。更に、「Cry j GRP」及び「Cry j 7」という用語は、同じタンパク質、すなわち、Cryptomeria japonicaからの7kDa GRPタンパク質を意味し、本明細書において互換的に使用される。
【0051】
詳細な説明
本明細書で前述したように、本発明者らは、Pru p 7によって媒介される重度のモモアレルギーに対する一次感作物質であると考えられる、Pru p 7に対応するCupressaceae花粉タンパク質の新規アイソフォームを今回特定した(実施例8に提示した結果を参照されたい)。天然起源からの高純度のPru p 7の単離は、真に特異的な抗Pru p 7ウサギ抗血清を得るための前提条件であった。Pru p 7タンパク質は、Pru p 3と同様の生化学的特性を有するので、Pru p 3の市販の調製物におけるPru p 7混入の実証によって証明されるように[34]、Pru p 3を除去するための生体特異的親和性吸着、及び他の共精製タンパク質を除去するための逆相クロマトグラフィ(reversed phase chromatography、RPC)のステップなど、本目的のために精巧な精製方法を開発した(実施例1を参照されたい)。高度に精製された天然Pru p 7調製物を用いてウサギを免疫化することによって得られた抗Pru p 7抗血清を更に使用して、Cupressus sempervirens、Cryptomerica japonica、及びJuniperus ashei花粉抽出物の溶出画分においてPru p 7相同体を検出できる。以前に本明細書で言及したC.sempervirensからの以前に報告された14kDaのBP14タンパク質を考慮して予想され得たこととは対照的に、ウサギ抗Pru p 7 IgG抗体は、C.sempervirens花粉抽出物、並びにJuniperus ashei及びCryptomeria japonicaの花粉抽出物において7kDaタンパク質(すなわち、BP-14の半分のサイズのタンパク質)のみを検出した。特定されると、これらのタンパク質は、質量分析による分析並びに生化学的及び免疫学的特性評価のために均一に精製され得る。
【0052】
N末端配列決定データ、各調製物の異なる酵素消化からのMS/MSデータ、及び反復プロセスにおけるCryptomeria japonicaからの中断/不完全なEST配列を組み合わせることにより、7kDaタンパク質の完全なアミノ酸配列は、Cupressus sempervirens及びJuniperus asheiから一緒に推定/解明(puzzled)され得る。Cryptomeria japonicaからのPru p 7相同体の完全な配列は、ESTデータベースにおけるMS/MSデータを分析することによって決定された。3つの天然Cupressaceae花粉アレルゲン間の免疫学的類似性は、実施例10で証明され、考察される。
【0053】
本プロジェクトの別の必要条件は、正確に折りたたまれた免疫反応性組換えGRPアレルゲンを実用的に有用な量で産生するための方法論の開発であった。これは、rPru p 7及びrCup s 7の産生のための様々な発現系、ベクタークローニングバリアント、及び発酵戦略の調査を伴う。異なる標準的な手順に従ういくつかの最初の試みは、生化学的及び免疫学的に欠陥のあるタンパク質産物を生成したが、最終的に精巧に作られた方法論は、品質と及び収量の両方に関して非常に成功した。
【0054】
本明細書で確立及び開示されたCup s GRPの配列に基づいて、組換えCup s GRPはPichia pastorisにおいて産生され、天然精製タンパク質と同様の生化学的特性及びIgE反応性を有することが示された。組換えタンパク質は、Pru p 7とのIgE結合を阻害し、モモタンパク質Pru p 7とCup s GRPとの間に交差反応性があり、後者が一次感作物質として作用し得ることを示す。Cup s GRPの天然調製物を、HCD MS3(第3レベルの多段階断片化の高エネルギー衝突解離)、及びETD(electron transfer dissociation、電子移動解離)HCD MS3評価を使用して詳細に分析し、新規アミノ酸アイソフォームバリアントを明らかにした(実施例14~15)。
【0055】
このタンパク質の特定及びそれに続くその組換え産生、並びにいくつかのそのアイソフォームの特定は、1型アレルギーの新しくかつ改善された診断への道を築く。重度のモモアレルギーとCupressaceae花粉症との関連が確立されているため、現在開示されている知見は、花粉及び食物アレルギーの両方の診断、治療、及び/又は予防に応用することができるであろう。
【0056】
本明細書で言及したように、何年にもわたって、花粉からジベレリン制御性タンパク質ファミリーのアレルゲンタンパク質を特定し、単離し、特徴付ける多くの試みがあった。このタンパク質ファミリーの花粉アレルゲンの重要性についての推測された理解にもかかわらず、最近まで、かかるタンパク質の完全な配列を単離及び決定することに成功した者は誰もいなかった。本明細書で言及したように、配列情報の一部は以前に報告されているが、完全な配列、タンパク質の構造及びそれが同じタンパク質ファミリーの他のメンバーとどのように比較されるかを理解するための、並びに診断及び治療用途のための組換えタンパク質を生成するための必要条件は、Ehrenbergらによる出版物[39]の前にはまだ明らかにされていなかった。
【0057】
最近まで進展しなかったことは、花粉からこのタンパク質ファミリーのタンパク質を特定及び単離することの難しさを示している。特に、本発明者らは、この問題を解決する方式を発見した。例として、本明細書に記載の新規アイソフォームバリアントを含むアレルゲンタンパク質の完全な詳細の供給をもたらす機能的な実験プロトコル、並びに単離及び特徴付けのプロセスを通して得られた発見を取得して適用する方式を特定するには、実質的な発明の要点が必要であった。しかしながら、最終的に、アレルゲンタンパク質は、本明細書で更に示され、記載されるように、単離され、評価され、利用された。
【0058】
したがって、本明細書では、配列番号53に従うアミノ酸配列を含む単離アレルゲンタンパク質、又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアントであって、位置23にイソロイシンを含み、かつ少なくとも85%の配列番号53との配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質、又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアントが提供される。更に、当該配列番号53との配列同一性は、少なくとも90%、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であり得る。
【0059】
以前に単離されたタンパク質[39]は、本明細書において、相同性の高いタンパク質であるCup s GRP、すなわちタンパク質アイソフォームバリアントa(配列番号4)及びCup s GRPb、すなわちタンパク質アイソフォームバリアントb(配列番号5))、Jun a GRP(配列番号6、本明細書ではJun a GRPaとも称する)、並びにCry j GRP(配列番号8)によって表され、例示されている。
【0060】
ここで、以前に記載されたタンパク質の更なる新規アイソフォームバリアントが本明細書に開示され、当該アイソフォームバリアントは位置23にイソロイシンを含む(配列番号52、配列番号9)。本明細書で前述したように、本開示まで、位置23のアミノ酸は厳密に保存されており、植物種にかかわらず全ての既知のGRPタンパク質においてロイシンであると一般的に理解されていた。しかしながら、驚くべきことに、位置23にイソロイシンを有する一部のGRPタンパク質のアイソフォームバリアントの存在が今回初めて示された。そのような新規アイソフォームバリアントは、本明細書の他の箇所で示され、説明されるように、I型アレルギーの診断のための非常に有用な代替物であることが示された。実施例17において確認されるように、このようなバリアントは、他の以前に記載されたタンパク質と同様に、高いIgE結合活性を有し、それによって診断目的に有効であることが証明された。これは、I型アレルギーの診断の分野における大きな必要性を満たし、個体におけるこの型のアレルギーを特定するための代替手段を提供する。
【0061】
Cup s GRPの以下の新規アイソフォームバリアントが今回特定されており、本明細書に開示される(表1も参照されたい):
Cup s GRPc、アイソフォームバリアントc(配列番号53);
Cup s GRPd、アイソフォームバリアントd(配列番号54);
Cup s GRPe、アイソフォームバリアントe(配列番号55);
Cup s GRPf、アイソフォームバリアントf(配列番号56);
Cup s GRPg、アイソフォームバリアントg(配列番号57);
Cup s GRPh、アイソフォームバリアントh(配列番号58)。
配列番号53~配列番号58は、当該配列の位置23にLeuの代わりにIleを有するアイソフォームバリアントを含む。
【0062】
また、本明細書では、以下も言及される:
Cup s GRPi、アイソフォームバリアントi(配列番号59);
Cup s GRPj、アイソフォームバリアントj(配列番号60);
Cup s GRPk、アイソフォームバリアントk(配列番号61);
Cup s GRPl、アイソフォームバリアントl(配列番号62)。
配列番号59~配列番号62は、当該配列の位置23にLeuを有するアイソフォームバリアントを含む。
【0063】
更に、Jun a GRPの以下の新規アイソフォームバリアント(Jun a GRPa)が今回特定されており、本明細書に開示される(表1も参照されたい)。このアイソフォームバリアントをJun a GRPb、アイソフォームバリアントb(配列番号63)と称する。そのようなアイソフォームバリアントはまた、本明細書の他の箇所に記載されるようなI型アレルギーの分野における使用を提示する。
【0064】
Pru p 7のアミノ酸配列は、以下の配列を含む:
GSSFCDSKCGVRCSKAGYQERCLKYCGICCEKCHCVPSGTYGNKDECPCYRDLKNSKGNP 60
KCP 63
配列番号1(Pru p 7)
Cup s GRPaのアミノ酸配列は、以下の配列を含む:
AQIDCDKECNRRCSKASAHDRCLKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYANLKNSKGGH 60
KCP 63
配列番号4(Cup s GRPa)
Cup s GRPbのアミノ酸配列は、以下の配列を含む:
AQIDCDKECNRRCSKASLHDRCLKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYAHLKNSKGGH 60
KCP 63
配列番号5(Cup s GRPb)
Jun a GRPのアミノ酸配列は、以下の配列を含む:
AQIDCDKECNRRCSKASAHDRCLKYCGICCKKCHCVPPGTAGNEDVCPCYANLKNSKGGH 60
KCP 63
配列番号6(Jun a GRP)
Cry j GRPのアミノ酸配列は、以下の配列を含む:
AHIDCDKECNRRCSKASAHDRCLKYCGICCEKCNCVPPGTYGNEDSCPCYANLKNSKGGH 60
KCP 63
配列番号8(Cry j GRP)
【0065】
以下の実施例13に記載及び示されるように、Cupressaceae-Pru p 7 GRPコンセンサス配列(配列番号52)が設計されており、本明細書に開示される。配列番号52に従う当該コンセンサス配列において、本明細書に開示される異なるCupressaceae花粉GRPの一部(すなわち、Cup s GRPa、Cup s GRPb、Cup s GRPc、Jun a GRPa、Jun a GRPb及びCry j GRP)の間でアミノ酸が異なる位置、並びに本明細書に開示されるCupressaceae花粉GRPとモモGRP(すなわち、Pru p 7)との間でアミノ酸が異なる位置が、Xで示される(図26)。図26の行Aにおいて、本明細書に開示されるCupressaceae花粉GRPとモモGRP(すなわち、Pru p 7)との間でアミノ酸が異なる位置が、Zで示される。
【0066】
【表1】
【0067】
したがって、本開示は、単離アレルゲンタンパク質であって、当該タンパク質が、配列番号52に従う以下のアミノ酸配列を含み、
【0068】
【表2】
位置Xのうちの最大9つ、例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1つが、表3で定義される任意のアミノ酸を含み、
残りの位置Xにおいて、当該アミノ酸が、配列番号53の対応する位置におけるアミノ酸と同一であるが、ただし、位置23がイソロイシンを含むことを条件とする、単離アレルゲンタンパク質を提供する。
【0069】
特に、本開示は、単離アレルゲンタンパク質であって、当該タンパク質が、配列番号52に従う以下のアミノ酸配列を含み、
【0070】
【表3】
位置Xのうち最大4つが、表3に定義される任意のアミノ酸を含み、残りの位置Xにおいて、当該アミノ酸が、配列番号53の対応する位置におけるアミノ酸と同一であるが、ただし、位置23がイソロイシンを含むことを条件とする、単離アレルゲンタンパク質を提供する。
【0071】
表3に列挙されるアミノ酸残基は、配列番号52の位置Xにおいて系統的に制限された変動性を有するアミノ酸残基であることに留意されたい。
【0072】
位置23にイソロイシンを含有し、かつ、それぞれ少なくとも85%の配列番号53~58、又は配列番号63、又は配列番号64のうちのいずれか1つとの配列同一性を有する、単離アレルゲンタンパク質、又はその機能的に同等なタンパク質断片若しくはバリアントが更に提供される。更に、当該配列番号53~64との配列同一性は、それぞれ少なくとも90%、例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であり得る。
【0073】
本明細書において言及されるCupressaceae科からの例示的な単離タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号9に示されるように最大8つのアミノ酸位置においてのみ互いに異なるが、ただし、本開示によって包含されるアイソフォームバリアントが位置23に(すなわち、当該8つの位置のうちの1つに)イソロイシンを含むことを条件とする。上記のファミリーメンバーの一部の間の相違性及び類似性を示す配列アラインメントを図24に示す。本明細書の実施例10において、少なくともこれらの位置のうちの7つでアミノ酸残基が異なっていても、それらの意図された目的のためのタンパク質の機能性に影響を及ぼさないことが証明された。したがって、それにより、アミノ酸配列におけるある程度の構造的柔軟性が示され、これは、配列番号53によって示される単離タンパク質の機能的に同等なバリアント又は断片が想定され、本開示の文脈において有用であることが証明されることを意味する。本明細書に提示される配列番号53に従う単離タンパク質の機能的に同等なバリアント又は断片の定義は、本明細書の他の箇所に記載される。本明細書中に開示される単離タンパク質の機能的に同等なバリアント又は断片は、配列番号53の位置23にイソロイシンを含む。
【0074】
したがって、本明細書ではまた、単離アレルゲンタンパク質であって、当該タンパク質が、配列番号9に従う以下のアミノ酸配列を含み、
【0075】
【表4】
位置Xが、任意のアミノ酸を含むが、ただし、XがCではないことを条件とし、かつ位置23がイソロイシンを含むことを条件とする、単離アレルゲンタンパク質も提供される。
【0076】
本明細書において、配列番号9又は配列番号52における位置X(のうちのいずれか)が「任意のアミノ酸」を含み得ると述べる場合、この表現は、任意の天然又は非天然起源アミノ酸を意味することを意図する。特に、本明細書では、配列番号9又は配列番号52における位置X(のうちのいずれか)が任意の天然起源アミノ酸を含み得ることが開示される。配列番号9及び配列番号52における位置23は、本開示のアイソフォームバリアントにおいてイソロイシンを含む。
【0077】
配列番号9は、本明細書で特定及び考察された単離タンパク質を表すCupressaceae花粉GRPコンセンサス配列の例とみなすことができ、当該最大8つのアミノ酸位置(位置2、18、23、31、34、41、46、及び52)において、アミノ酸残基が、任意の他のアミノ酸について1つ以上の位置において異なり得る、すなわち交換され得るが、ただし、XがCではないことを条件とし、かつ、かかるタンパク質が、本明細書の他の箇所に記載される意図された目的に関して、起源タンパク質と機能的に同等である活性を維持することを条件とする。しかしながら、本明細書に開示されるアイソフォームバリアントでは、位置23はイソロイシンであり、したがって、異ならない。また、本明細書では、同じ配列類似性を有するが、追加又は代替のアミノ酸残基が異なる、配列番号9の他のバリアントも想定されており、当該バリアントは、起源タンパク質と同じ機能的活性を維持する、すなわち、当該バリアントは、アミノ酸が起源タンパク質、又は上記の8つの位置において本明細書で更に記載されるように異なっているタンパク質と機能的に同等である。本明細書には、本明細書の他の箇所で定義される配列番号9に従う単離タンパク質の機能的に同等な断片も提供される。
【0078】
実施例13に示されるように、当該8つのアミノ酸位置Xにおいて、アミノ酸は、系統的に制限されたアミノ酸からなる群から選択されることが想定される。
【0079】
図25によれば、配列番号9の各位置Xにおいて、以下であるアミノ酸が、系統的に好ましい:
位置2:A E S D T L Y
位置18:Y L I V F M R
位置31:E D Q A G S K
位置34:Q N H K
位置41:Y F A S
位置46:E V A Q
位置52:D E N
【0080】
位置Xにおいて上に開示される好ましいアミノ酸残基は全て、系統的に制限された相互の変動性を有し、図25にアラインメントされた既知のGRP配列において見られるものと一致している。加えて、本明細書に開示される新規の知見によれば、配列番号9の位置23は、本開示によって包含されるアイソフォームバリアントではイソロイシン(I)である。
【0081】
更に、本明細書に開示されるCupressaceae花粉GRPタンパク質の配列によれば、配列番号9の各位置Xにおいて、以下であるアミノ酸が、系統的に好ましい:
位置2におけるXが、Q若しくはHであり、
位置18におけるXが、A、I若しくはLであり、
位置23におけるXが、L若しくはIであり、
位置31におけるXが、K若しくはEであり、
位置34におけるXが、H若しくはNであり、
位置41におけるXが、A若しくはYであり、
位置46におけるXが、V若しくはSであり、かつ/又は
位置52におけるXが、H若しくはNである。
【0082】
当該上に開示されるアミノ酸残基は、系統的に制限された変動性を有し、本明細書に開示されるCupressaceae花粉GRPアイソフォームバリアント、すなわち、Cup s GRPa、Cup s GRPb、Cup s GRPc、Cup s GRPd、Cup s GRPe、Cup s GRPf、Cup s GRPg、Cup s GRPh、Cup s GRPi、Cup s GRPj、Cup s GRPk、Cup s GRPl、Jun a GRPa、Jun a GRPb、及びCry j GRP、及びCry j GRPbに見出されるものと一致し、これらは全て表1に列挙されている。当該アイソフォームバリアントのうち、Cup s GRPa、Cup s GRPb、Cup s GRPc、Jun a GRPa、Jun a GRPb、及びCry j GRPを図24のアラインメントに示す。
【0083】
したがって、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の当該位置Xのうちの最大6つ、例えば、5、4、3、2、又は1つが、任意のアミノ酸を含むが、ただし、XがCではないことを条件とし、
残りの位置Xにおいて、アミノ酸は、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、若しくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、若しくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、若しくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、若しくはQのうちのいずれか1つから選択され、かつ/又は
位置52におけるXが、H、N、D、若しくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0084】
特に、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の当該位置Xのうちの最大4つ、例えば、3、2、又は1つが、任意のアミノ酸を含むが、ただし、XがCではないことを条件とし、
残りの位置Xにおいて、アミノ酸は、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、若しくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、若しくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、若しくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、若しくはQのうちのいずれか1つから選択され、かつ/又は
位置52におけるXが、H、N、D、若しくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0085】
また、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の当該位置Xのうちの最大6つ、例えば、5、4、3、2、又は1つが、任意のアミノ酸を含むが、ただし、XがCではないことを条件とし、
当該残りの位置Xにおいて、当該アミノ酸は、
位置2におけるXが、Q又はHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、I又はLのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K又はEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A又はYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V又はSのうちのいずれか1つから選択され、かつ
位置52におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0086】
特に、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の当該位置Xのうちの最大4つ、例えば、3、2、又は1つが、任意のアミノ酸を含むが、ただし、XがCではないことを条件とし、
当該残りの位置Xにおいて、当該アミノ酸は、
位置2におけるXが、Q又はHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、I又はLのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K又はEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A又はYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V又はSのうちのいずれか1つから選択され、かつ
位置52におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0087】
より詳細には、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、位置Xにおいて、当該アミノ酸は、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、若しくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、若しくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、若しくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、Qのうちのいずれか1つから選択され、かつ/又は
位置52におけるXが、H、N、D、若しくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択される単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0088】
更に、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、
位置2におけるXが、Q若しくはHであり、
位置18におけるXが、A、I若しくはLであり、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K若しくはEであり、
位置34におけるXが、H若しくはNであり、
位置41におけるXが、A若しくはYであり、
位置46におけるXが、V若しくはSであり、及び/又は
位置52におけるXが、H若しくはNである、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0089】
更に、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の当該位置Xのうちの最大4つ、例えば、3、2、又は1つは、
位置2におけるXが、Q、H、A、E、S、D、T、L、若しくはYのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、L、Y、I、V、F、M、若しくはRのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K、E、D、Q、A、G、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H、N、Q、若しくはKのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A、Y、F、若しくはSのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V、S、E、V、A、Qのうちのいずれか1つから選択され、かつ/又は
位置52におけるXが、H、N、D、若しくはEのうちのいずれか1つから選択される、アミノ酸の群から選択され、
残りの位置Xにおいて、当該アミノ酸が、配列番号53の対応する位置におけるアミノ酸と同一である、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0090】
より詳細には、本明細書では、単離アレルゲンタンパク質であって、配列番号9に従うアミノ酸配列を含み、配列番号9の当該位置Xのうちの最大4つ、例えば、3、2、又は1つは、
位置2におけるXが、Q若しくはHであり、
位置18におけるXが、A、I若しくはLであり、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K若しくはEであり、
位置34におけるXが、H若しくはNであり、
位置41におけるXが、A若しくはYであり、
位置46におけるXが、V若しくはSであり、及び/又は
位置52におけるXが、H若しくはNであり、
残りの位置Xにおいて、当該アミノ酸が、配列番号53の対応する位置におけるアミノ酸と同一である、単離アレルゲンタンパク質が提供される。
【0091】
詳細には、本開示は、それぞれ配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64に従うアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、単離アレルゲンタンパク質を更に提供する。
【0092】
本明細書に記載のタンパク質はまた、起源配列に化学的に修飾されたアミノ酸を付加することができ、これは、側鎖が化学的に修飾されているアミノ酸を指す。例えば、側鎖は、フルオロフォア又は放射性標識などのシグナル伝達部分を含むように修飾され得る。側鎖は、チオール、カルボン酸、又はアミノ基などの新しい官能基を含むように修飾され得る。翻訳後修飾されたアミノ酸も、化学的に修飾されたアミノ酸の定義に含まれる。
【0093】
本明細書を通して開示される単離タンパク質、そのバリアント又は断片は、組換え的に産生され得る。一般に、研究、診断又は他の用途におけるアレルゲンタンパク質の実用的な利用は、組換え形態でのそれらの利用可能性によって大いに促進される。アレルゲンタンパク質が特定され、そのアミノ酸配列が確立されると、それは周知の方法を使用して組換えタンパク質として産生することができる[42])。しかしながら、教科書的な例として挙動しない困難な場合において、有用な量の機能性タンパク質を得るという目標を達成するために、発現系構成、培養方法、及び/又は精製戦略を広範に適応させるか、更には新たに開発する必要性があり得る。かかる広範な適応をどのように達成するかは、当業者にとってさえ容易に予見することはできない。タンパク質をコードする遺伝子は、アレルゲン起源物質から調製されたmRNAに由来するcDNAの形態でクローン化するか、又は所望のDNA配列に従って合成することができる。同じアミノ酸を指定する最大6つの異なるコドンを有する遺伝暗号の冗長性により、所与のアミノ酸配列は、多数の同義DNA配列によってコード化することができる。必要に応じて、タンパク質への機能的な追加又は修飾は、合成遺伝子の設計を通じて、部位特異的変異誘発によって、又はクローニング戦略の一部として導入することができる。目的のアレルゲンをコードする遺伝子は、様々な異なる発現ベクターのうちのいずれかにクローン化され、様々な原核生物又は真核生物の発現宿主のうちのいずれかに導入される[42]。一般的な発現宿主には、グラム陰性菌Escherichia coli、酵母Saccharomyces cerevisiae及びPichia pastoris、Spodoptera frugiperda又はDrosophila melanogasterに由来する昆虫細胞株、並びに哺乳動物細胞株が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
組換えタンパク質は、可溶性若しくは不溶性の形態で細胞内に発現されるか、又は培養培地に分泌され得る。組換えタンパク質の回収及び精製は、様々な周知の方法又はそれらの組み合わせによって実施することができる。一般的なクロマトグラフィ技術には、固定化金属イオン親和性クロマトグラフィ(immobilized metal ion affinity chromatography、IMAC)、アニオン及びカチオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィが含まれる。
【0095】
本明細書に提示される単離タンパク質は、組換え的に産生される場合、特定の目的のために意図的に修飾され得、それにより、例えば、抗体結合特性に関してタンパク質に機能的に影響を与えることなく、非天然起源タンパク質をもたらす。非天然起源タンパク質は、発現レベル又は溶解性を高めるために別のタンパク質と融合された組換えタンパク質であり得る。かかる融合パートナーの例には、チオレドキシン(thioredoxin、TRX)、マルトース結合タンパク質(maltose binding protein、MBP)、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(glutathione-S-transferase、GST)が含まれる。別の例は、タンパク質を培養培地に分泌することを可能にするシグナルペプチドの添加であり、そこからそれを可溶性形態で容易に回収することができる。非天然起源タンパク質はまた、短いペプチドタグが親和性精製を可能にする目的で当該タンパク質に遺伝的に移植されている組換えタンパク質であり得る。かかるペプチドタグの例には、金属イオン親和性を付与するためのヘキサヒスチジン、又は抗ヘマグルチニン、抗c-myc若しくは抗Flagモノクローナル抗体などの特定の抗体のためのペプチドエピトープが含まれる。
【0096】
組換えタンパク質へのかかる付加物の分離及び削除を可能にするために、部位特異的タンパク質分解切断のための短いペプチド配列を、目的のタンパク質と融合パートナー又はペプチドタグとの間に挿入することができる。タンパク質分解酵素のかかる標的部位の例には、エンテロキナーゼのDDDDK、第Xa因子のIEGR、TEVプロテアーゼのENLYFQA、及びP.pastorisにおけるインビボプロセシングのためのKex2/Ste13のEKREAEAEFが含まれる。かかる標的配列のいくつかのアミノ酸残基は、切断後に、例えば、P.pastorisにおける分泌発現の場合、EAEFEF又はその一部が残存し得る。
【0097】
本明細書に開示される単離タンパク質、断片又はバリアントをコードする単離核酸分子もまた本明細書に提供される。単離核酸は、配列番号10によってコードされ得る。配列番号10は、コンセンサスCupressaceaeアミノ酸配列(すなわち、配列番号9)をコードする縮重DNA配列であり、これは、本明細書に記載のCup s GRPa、Cup s GRPb、Cup s GRPc、Jun a GRP、及びCry j GRP配列、すなわち、IUPAC多義性コードに従った同義コドン及びバリアントを含む、本明細書に開示される単離タンパク質に基づき(International Union of Pure and Applied Chemistry、https://iupac.org/)、配列番号9の位置Xにおけるアミノ酸に対応するヌクレオチドは、以下のアミノ酸群:
位置2におけるXが、Q又はHのうちのいずれか1つから選択され、
位置18におけるXが、A、I又はLのうちのいずれか1つから選択され、
位置23におけるXが、Iであり、
位置31におけるXが、K又はEのうちのいずれか1つから選択され、
位置34におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択され、
位置41におけるXが、A又はYのうちのいずれか1つから選択され、
位置46におけるXが、V又はSのうちのいずれか1つから選択され、かつ
位置52におけるXが、H又はNのうちのいずれか1つから選択される、をコードするように選択されている。
【0098】
配列番号10に従うコンセンサスCupressaceae核酸配列は、Cup s GRPaアミノ酸配列(すなわち、配列番号4)から開始し、逆翻訳され、同義コドンを含み、Cup s GRPb~j、Jun a GRPb、及び/又はCry j GRPbがCup s GRPaアミノ酸配列と異なる8つのアミノ酸位置を考慮して構築された。8つの可変アミノ酸位置をコードするヌクレオチドは、以下の太字のテキストでマークアップされる。
【0099】
配列番号10、すなわちCupressaceaeコンセンサス核酸配列:
【0100】
【表5】
ここで、
N=T、C、A、又はG;
R=A又はG;
H=T、C、又はA;
Y=T又はC;
M=C又はA;
W=T又はA;
S=G又はC;
B=C、G、又はT;
K=G又はT;及び
D=A、G又はT。
ただし、コドン18におけるNYNが、Ala(GCT、GCC、GCA、GCG)、Leu(TTA、TTG、CTT、CTC、CTA、CTG)、又はIle(ATT、ATC、ATA)のうちのいずれか1つをコードすることを条件とし、アイソフォームバリアントがアミノ酸位置23にイソロイシンを含む場合、コドン23(すなわち、ヌクレオチド位置67~69)がATHを含むことを条件とする。
【0101】
本明細書には、以下の核酸配列も提供される:
配列番号50、すなわち、Cup s GRPaが逆翻訳され、同義コドンを考慮する:
【0102】
【表6】
配列番号51、すなわち、Cup s GRPaが逆翻訳され、8つの可変アミノ酸位置(太字でマークアップ)をコードするヌクレオチドが、Cup s GRPb、Cup s GRPc、Jun a GRPa、及び/又はCry j GRPに存在するアミノ酸をコードするヌクレオチドに変更されている:
【0103】
【表7】
配列番号50及び配列番号51において、可変ヌクレオチドは、上記で定義されたように、配列番号10におけるものと同じ意味を有する。
【0104】
配列番号50及び配列番号51のコドン23(すなわち、ヌクレオチド位置67~69)は、アイソフォームバリアントがアミノ酸配列位置23にイソロイシンを含む場合、ATHを含む。
【0105】
本明細書には、配列番号10、50、若しくは51のうちのいずれか1つに従う核酸配列、又は少なくとも85%のそれとの配列同一性、例えば、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%のそれとの配列同一性を有する配列を含む、核酸分子も提供され、当該配列のコドン23はイソロイシンをコードする。
【0106】
本明細書に開示される単離核酸分子を含む、ベクター又は発現ベクターも提供される。単離核酸分子は、本明細書に開示される単離タンパク質又はその断片若しくはバリアントをコードし得、したがって、本明細書に開示される任意の核酸配列を含み得るか、又はそれからなり得る。
【0107】
加えて、本明細書に記載のベクター又は発現ベクターを含む、単離宿主細胞も提供される。本明細書で前述したように、当該ベクター又は発現ベクターは、本明細書の他の場所に開示されているように、単離タンパク質又はその断片若しくはバリアントをコードする核酸分子を含む。
【0108】
アレルゲン組成物を産生するための方法であって、アレルゲン抽出物及び/又は少なくとも1つの精製アレルゲン成分を含む組成物に、本明細書に記載の単離タンパク質又はその機能的に同等な断片若しくはバリアントを追加するステップを含む、方法が提供される。また、かかる方法によって得られるアレルゲン組成物も提供される。かかるアレルゲン組成物は、本明細書に提示されるように、単離タンパク質、その断片、又はバリアントに「スパイク」することができる。かかるアレルゲン組成物は、アレルゲン抽出物、又は本明細書に提示される単離タンパク質を含まないか若しくは低い含有量でそれを有する精製された天然又は組換えアレルゲン成分の混合物であり得、単離タンパク質、その断片又はバリアントは、IgEが他の方法ではアレルゲン組成物と結合しないか、又は不十分に結合する患者からのIgEを結合するために、当該アレルゲン組成物に追加される(すなわち、アレルゲン組成物が「スパイク」される)。したがって、この態様は、かかる組成物を産生するための方法に関し、方法は、アレルゲン抽出物(任意に他の成分をスパイクすると言及したように)又は精製された天然又は組換えアレルゲン成分の混合物などのアレルゲン組成物に当該タンパク質を追加するステップを含む。また、本明細書に記載の単離タンパク質、又はその断片若しくはバリアントと、アレルゲン抽出物及び/又は少なくとも1つの精製アレルゲン成分と、を含む、アレルゲン組成物も提供される。
【0109】
また、本明細書では、1型アレルギーのインビトロ診断又は評価のための、単離タンパク質又はその機能的に同等な断片若しくはバリアントの使用も提供される。
【0110】
また、本明細書では、当該1型アレルギー症状がCupressaceae種の花粉によって誘発される場合の使用も提供される。加えて、当該1型アレルギーが、モモ、アプリコット、プラム、柑橘類果物又はザクロなどの食物によって誘発される症状を伴う花粉関連食物アレルギーである場合の使用も提供される。
【0111】
ヒト又は動物検体中のアレルゲン特異的IgE抗体の検出又は測定は、いくつかの異なる方式で実行され得るが、通常、問題のアレルゲンと結合する抗体を捕捉する最初のステップと、それに続く非結合抗体を除去するための洗浄ステップ、IgE検出試薬を適用するステップ、非結合のかかる試薬を除去するための洗浄ステップ、及びIgE検出試薬からのシグナルを生成して記録する最終ステップが含まれる。アレルゲンは、アレルゲン特異的抗体を捕捉するために固体又は可溶性の支持体に固定化するか、又はかかる複合体のその後の捕捉及び定量化のために溶液中の抗体と複合体を形成することができる。アレルゲン検出試薬は、通常、レポーター物質又は蛍光法又は比色法で定量可能な生成物の形成を触媒することができる酵素のいずれかと結合したモノクローナル抗体である。アレルゲン特異的抗体を測定するためのアッセイには、一次応答単位を抗体濃度単位に変換することを可能にする較正システムも含まれる。同じアッセイ原理が他のアイソタイプのアレルゲン特異的抗体の測定にも適用されるが、唯一の違いは使用される検出試薬の特異性である。
【0112】
更に、本明細書では、1型アレルギーのインビトロ診断又は評価のための方法であって、1型アレルギーを有すると疑われる対象からの免疫グロブリン含有体液試料を、本明細書に開示の単離タンパク質、又はその断片若しくはバリアントと接触させるステップと、当該試料において、当該タンパク質、断片若しくはバリアントと特異的に結合する抗体、例えば、IgE抗体の存在を決定するステップと、を含み、当該タンパク質と特異的に結合する当該試料中の抗体の存在が、当該対象における1型アレルギーに関して有益である、方法が提供される。IgE抗体が当該試料中に存在し、当該タンパク質と特異的に結合する一実施形態では、これは、当該対象におけるI型アレルギーを示す。
【0113】
体液試料は、対象からの血液又は血清試料であり得、当該体液試料は、当該対象試料が、単離タンパク質、そのバリアント、又は断片と特異的に結合するIgE抗体を含むかを決定するために、単離タンパク質、又はその断片若しくはバリアント、又は当該タンパク質、又はその断片若しくはバリアントを含む組成物と接触させる。
【0114】
本明細書で言及される任意の単離タンパク質の断片又はバリアントは、起源タンパク質と機能的に同等である天然又は人工的な断片又はバリアントであり得る。
【0115】
キットオブパーツであって、可溶性又は固体支持体に固定化された、単離アレルゲンタンパク質、又は断片若しくはバリアントを含み、当該キットが、任意に、検出試薬及び/又は使用説明書を更に含む、キットオブパーツが更に提供される。固体支持体は、ニトロセルロース、ガラス、シリコン、及びプラスチックの群から選択することができ、並びに/又はマイクロアレイチップ、若しくは当技術分野で利用可能な任意の他の好適な固体支持体である。
【0116】
本明細書の他の場所で言及されるように、キットは、固定化されたタンパク質と結合したIgE抗体などの抗体と結合することができる検出剤も更に含み得る。かかる検出剤は、例えば、免疫アッセイの分野で既知である、色素、フルオロフォア又は酵素などの検出可能な標識で標識された抗IgE抗体であり得る。
【0117】
タンパク質及びペプチドの固定化に好適な支持体は当技術分野で周知であり、本明細書では、この態様において、タンパク質又はタンパク質断片の免疫原性に実質的な程度で悪影響を及ぼさない任意の支持体が含まれる。この文脈において、「固定化された」という用語は、特定の支持体に好適な任意の種類の付着物であり得ることが理解される。単離タンパク質又はタンパク質断片は、ImmunoCAP、又は別の固相ベースのイムノアッセイなどの診断方法での使用に好適な固体支持体に固定化してもよい。代替的に、タンパク質又はタンパク質断片は、溶液中の1つ以上の樹状突起構造など、溶液中の天然又は合成ポリマー構造に固定化され得る。
【0118】
標識又は標識要素が提供されている、本明細書に記載の単離タンパク質、その断片又はバリアントもまた本明細書に提供される。したがって、本明細書には、光発光標識、蛍光標識又はリン光標識、化学発光標識又は放射線ルミネセンス標識などの発光標識が提供されているタンパク質又はタンパク質断片若しくはバリアントも提供される。親和性機能などの特定され得る要素で誘導体化された単離タンパク質、その断片若しくは誘導体もまた、本開示に含まれる。タンパク質及びペプチドの標識のための親和性機能は当技術分野で周知であり、当業者は、ビオチンなどの任意の好適な機能を選択することができるであろう。
【0119】
1型アレルギーの治療又は予防に使用するための、単離タンパク質又はその機能的に同等な断片若しくはバリアントもまた、本明細書に提供される。1型アレルギーは、Cupressaceae種の花粉によって引き起こされ得、及び/又はモモ、アプリコット、プラム、柑橘類果物、又はザクロなどの果物の摂取によって誘発される症状を伴うCupressaceae花粉関連食物アレルギーであり得る。同様に、1型アレルギーの治療又は予防のための医薬の製造において、本明細書に開示される単離タンパク質又はその機能的に同等な断片若しくはバリアントの使用も提供される。1型アレルギーは、Cupressaceae種の花粉によって引き起こされ得、及び/又はモモ、アプリコット、プラム、柑橘類果物、又はザクロなどの果物の摂取によって誘発される症状を伴うCupressaceae花粉関連食物アレルギーであり得る。
【0120】
本明細書では、薬学的組成物であって、単離タンパク質又はその機能的に同等な断片若しくはバリアントと、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と、を含む、薬学的組成物が更に提供される。
【0121】
本明細書における薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤は、液体若しくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、又はカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物、又はビヒクルを指す。各成分は、製剤の他の成分と適合性があるという意味で「薬学的に許容される」ものである必要がある。また、合理的な利益/リスク比に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、免疫原性、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物の組織又は臓器と接触して使用するのに好適である必要がある。
【0122】
1型アレルギーの治療又は予防のための方法であって、その治療及び予防を必要とする対象に、薬学的有効量の、本明細書に記載の単離タンパク質、その断片若しくはバリアント、アレルゲン組成物、又は当該単離タンパク質、その断片若しくはバリアントを含む薬学的組成物を投与することを含む、方法も本明細書に提供される。免疫療法におけるタンパク質、そのバリアント又は断片の使用には、例えば成分分解免疫療法が含まれる[43]。単離タンパク質は、その天然の形態で、又は天然のタンパク質と同様の生化学的及び免疫学的特性を示す組換え形態で使用することができる。単離タンパク質は、化学的又は遺伝的に生成される修飾形態で使用され得る。単離タンパク質への修飾の例には、タンパク質の断片化、トランケーション、タンデマー化(tandemerization)若しくは凝集、内部セグメントの削除、アミノ酸残基の置換、ドメインの再配置、又はジスルフィド架橋の破壊若しくは別の高分子構造若しくは他の低分子量化合物へのその結合による三次構造の少なくとも一部の破壊が含まれるが、それらに限定されない。
【0123】
本明細書に開示される薬学的組成物の任意の好適な投与方法は、単離タンパク質の投与の目的に応じて使用され得る。投与の用量及びタイミングは、治療される対象に好適であるとして医師によって決定されるであろう。
【0124】
本明細書の他の場所で言及されているように、タンパク質はその天然起源から精製することができる。それはまた、組換えDNA技術によって産生され得るか、又は当業者に既知である方法によって、又は本出願に記載されるように化学的に合成され得る。
【0125】
本明細書では、当該1型アレルギーが、Cupressaceae種の花粉によって引き起こされる1型アレルギーであり、かつ/又はモモ、アプリコット、プラム、柑橘類果物、又はザクロなどの果物の摂取によって誘発される症状を伴うCupressaceae花粉関連食物アレルギーである、方法が更に提供される。
【0126】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、添付の特許請求の範囲の範囲によって定義される本発明を限定するものとみなされるべきではない。
【0127】
実験セクション

以下の表1は、本開示の一部である配列表による配列番号、及び当該配列の対応する定義/名称を特定する。
【0128】
【表8】
【0129】
表2:a)nCup s GRP、b)nCup s GRPのアイソフォームバリアント、c)nJun a GRP、及びd)nCry j GRPのMS/MS分析で特定されたペプチド配列のリスト。列1は、ペプチドの配列を示し、列2は、対応する配列番号を示し、列3は、統計的有意性値-logPを示し、列4は、ペプチドの実験的に決定した質量(M/Z-1.00794)をDa単位で示し、列5は、生物学的又は実験的修飾について補正した、実験的に決定した質量(PTM)を示し、列6は、ペプチドの理論的に計算した質量を示し、列7~8は、ペプチドが表す成熟タンパク質のアミノ酸配列における開始位置及び終了位置を示し、列9は、分析したペプチド内に存在する修飾を示す。MS/MS分析の前に、全てのシステイン残基がプロピオンアミド残基に修飾された結果、システイン残基当たり71.03712Daの質量が増加した。いくつかのペプチドでは、以下の列9に示すように、末端グルタミン酸のアミド化が発生し、0.984Daの質量の減少を引き起こした。このMS/MS分析の文脈では、生物学的又は実験的なアミノ酸修飾はPTMと称される。以下に示すペプチドにおいて、位置23のロイシン(L)はロイシン又はイソロイシン(I)残基を表し、表2bに示すペプチドにおける位置18のロイシン(L)も同様である。
【0130】
【表9】
【0131】
【表10】
【0132】
【表11】
【0133】
【表12】
【0134】
表3は、配列番号52の位置Xにおいて系統的に制限された変動性を有するアミノ酸、すなわち、22個の可変位置を有するCupressaceae-Pru p 7 GRPコンセンサス配列を特定する。
【0135】
【表13】
【0136】
位置1、3、4、7、8、10、11、17、19、20、44、51、59、及び60におけるアミノ酸は、本明細書に開示されるC.sempervirens、J.ashei及びC.japonicaからのGRPタンパク質の異なるアイソフォームバリアント間で保存されているが、Pru p 7の対応する位置におけるアミノ酸とは異なる。当該位置は、図26の行AではZで示されるが、配列番号52ではXで示される。
【0137】
位置2、18、23、31、34、41、46、及び52におけるアミノ酸は、本明細書に開示され、言及される上記のGRPタンパク質間で異なる。当該位置は、配列番号9及び配列番号52の両方においてXで示される。
【0138】
本開示によって包含されるアイソフォームバリアントは、コンセンサス配列(配列番号9及び配列番号52)の位置23にIle(I)を含む。
【実施例
【0139】
別段に明記されない限り、全てのフィルタ、クロマトグラフィ媒体、及び機器は、GE Healthcare Life Sciences、Uppsala、Swedenから入手した。
【0140】
実施例1:缶詰のモモからの天然Pru p 7の生成及び分析
天然Pru p 7の精製
天然Pru p 7は、4つのクロマトグラフィステップを使用して缶詰のモモから精製した。換言すると、缶詰のモモを130mMのNaAc(pH4.5)の台所用ブレンダーで混合し、4℃で粉砕球(Haldenwanger MTC,Berkshire,UK)と撹拌しながら2時間インキュベートした。抽出物を遠心分離によって清澄化し、濾過し、130mMのNaAc(pH4.5)で平衡化したSPセファロースFFカラムに負荷した。洗浄及び溶出は、130mMのNaAc(pH4.5)で、それぞれ0.15及び0.5MのNaClの均一濃度ステップで実施した(図1)。画分をSDS-PAGEで分析し、顕著な7kDaバンドを含むその画分をプールして、20mMのNaPO4、0.15MのNaCl、0.02%のNaN3(pH7.4)で平衡化したSuperdex 75調製グレード(preparation grade、pg)サイズ排除クロマトグラフィ(size exclusion chromatography、SEC)カラムに適用した。溶出を平衡化緩衝液(図2)を用いて実施し、顕著な7kDaバンドを含む画分をプールした。
【0141】
Pru p 7と同様のサイズ及び等電点を有するPru p 3の残留量を特異的に除去するために、生物特異的親和性吸着ステップを適用した。この目的のために、Pru p 3抗体に対する独自のモノクローナル抗体をNHS活性化Sepharose HPカラムと結合させた。SECプールを、20mMのNaPO4(pH7.4)、150mMのNaCl、0.02%のNaN3で平衡化した抗Pru p 3親和性カラムに適用した。平衡化緩衝液で溶出した後(図3)、未結合の物質を収集し、0.1%TFAで平衡化したSource 15 RPC逆相クロマトグラフィ(RPC)カラムに適用した(図4a)。結合タンパク質は、0~55%アセトニトリルの直線勾配で溶出した。画分をSDS-PAGEで分析し(図4b)、純粋な7kDaのバンドを含む画分を図4aに示すようにプールし、Sephadex G25カラム上で20mMのMOPS、0.15MのNaCl(pH7.6)に脱塩した。
【0142】
nPru p 7の質量分析(MS/MS)
天然Pru p 7のプールは、トリプシン又はキモトリプシンのいずれかによる還元、アルキル化、及び酵素的切断の後、Orbitrap Fusion Tribrid instrument(Thermo Fisher Scientific,CA,USA)でMS/MS分析によって分析した。データ分析は、これらの消化から得られたMSスペクトルの組み合わせで行った。データは、Viridiplantae データベースの分類ID 33090に対して分析し、精製したタンパク質がPru p 7(配列番号1)であることを確認した。Pru p 3又は他のモモタンパク質の痕跡は調製物中に検出されなかった。
【0143】
結論として、実施例1は、天然Pru p 7の精製、及びMS/MSによるその同一性の確認について記載する。続いて、この調製物を、Pru p 7に対するポリクローナルウサギ抗体の産生に使用した。
【0144】
実施例2:組換えPru p 7の発現及び精製
Pru p 7をコードする合成遺伝子を含むプラスミドDNA構築物を調製し、酵母Pichia pastoris株X-33に形質転換した。形質転換株を増殖させ、誘導して、3リットルバイオリアクタ(Belach Bioteknik,Skogas,Sweden)で組換えPru p 7を産生した。培地を遠心分離により収集し、上清を回収した。HAcでpHを4.5に調整し、Whatman GF/Fガラスマイクロファイバフィルタを通して濾過した後、上清を50mMのNaAc(pH4.5)で平衡化したSPセファロースFFカラムに適用した。組換えタンパク質は、同じ緩衝液中で直線0~1MのNaCl勾配で溶出した(図5)。rPru p 7を含む画分を収集し、50mMのNaAc(pH4.5)、150mMのNaCl中のSuperdex 75pgカラムでSECにより更に精製した(図6a)。rPru p 含む画分をプールし、0.72mg-1mL cm-1の計算された吸光係数を使用して、280nmでの吸光度によって濃度を決定した。アレルゲン調製物の純度及び同一性は、SDS-PAGE(図6b)及び質量分析によって検証した。実験的ImmunoCAP試験(Thermo Fisher Scientific,Uppsala,Sweden)は、以前に記載されたように調整し[44]、免疫学的活性は、関連する患者の血清試料を使用して評価した。
【0145】
結論として、実施例2は、Pichia pastorisにおけるrPru p 7の発現及び組換えタンパク質の精製を記載する。組換えPru p 7を使用して、nPru p 7に対して産生されたポリクローナルウサギ抗体を特徴付け、関連する患者の血清中のPru p 7に対するIgE反応性を研究することができる。
【0146】
実施例3:Pru p 7に対するポリクローナルIgG抗体の生成及び利用
実施例1に記載したように調製した精製したnPru p 7を使用して、Pru p 7に対するポリクローナルウサギ抗体を産生した。ウサギを抗原の4回の追加免疫注入を含むプロトコルに従って、nPru p 7で免疫した。免疫化の前に、免疫前の血清試料をウサギから採取し、その後の実験で対照として使用した。全ての手順は、地域倫理承認の下で、Agrisera AB(Vannas,Sweden)で実施された。
【0147】
得られた抗Pru p 7抗血清は、ImmunoCAP固相に固定化されたrPru p 7及びCupressus sempervirens花粉抽出物の両方に対して一連の希釈で試験した。抗血清は、最高希釈率(1:8000)でも、前血清と比較して固定化rPru p 7との強いIgG結合を示し(図7a)、Pru p 7反応性IgGの含有を確認した。更に、血清はC.sempervirens花粉抽出物との結合を示し(図7b)、Pru p 7と交差反応する今まで未知であったタンパク質の存在を示唆する。したがって、以下の実施例に示すように、抗Pru p 7抗血清をプローブとして使用して、Pru p 7のこの潜在的なCupressaceae花粉相同体を追跡し、精製することができる。
【0148】
実施例4:新規Pru p 7関連C.sempervirens花粉アレルゲンの精製
実施例3において、Pru p 7に対して産生されたポリクローナルウサギIgG抗体が、C.sempervirens花粉の固定化タンパク質抽出物と結合することが示された。同じ抗体を利用して、Pru p 7と交差反応するC.sempervirens花粉タンパク質を特定、精製、及び特性付けすることができた。
【0149】
換言すると、C.sempervirens花粉(Allergon,Valinge,Sweden)を50mMのNaAc、1MのNaCl(pH4.5)で、4℃で72時間撹拌しながら抽出し、遠心分離によって清澄化し、Whatman GF/Fガラスマイクロファイバフィルタで濾過し、50mMのNaAc(pH4.5)で平衡化したSephadex G25カラムで脱塩した(図8)。空隙容量で溶出するタンパク質含有画分をプールし、50mMのNaAc(pH4.5)で平衡化したSPセファロースFFカラムに負荷した。溶出を同じ緩衝液中で0~1MのNaClの直線勾配で実施した(図9a)。9つの選択した画分をImmunoCAP固相に固定化し、抗Pru p 7 IgG結合活性をアッセイし(図9b)、SDS-PAGEで分析した(図9c)。抗Pru p 7 IgGの最高の結合を示し、顕著な7kDaタンパク質バンドを含む画分7~9を、図9aに示すようにプールし、SPセファロースHPカラムに濃縮した。濃縮したプールは、20mMのNaAc(pH4.5)、250mMのNaClで平衡化した、Superdex 30pgカラムでのSECによって更に精製した。溶出を同じ緩衝液で実施した(図10a)。8つの選択した画分をImmunoCAP固相に固定化し、上述のように抗Pru p 7 IgG結合活性を試験し(図10b)、SDS-PAGEで分析した(図10c)。抗Pru p 7 IgGの最も高い結合は、7kDaで単一の明確なバンドを示した画分3~5で見られた。したがって、図10aに示すように画分3~5をプールし、この広範に精製したPru p 7関連C.sempervirens花粉タンパク質を以下に記載するように生化学的及び免疫学的に分析した。精製したC.sempervirensタンパク質は、Pru p 7と同等の見かけ上の分子量を示した(図10d)。
【0150】
結論として、実施例4は、一連のクロマトグラフィステップ及び実施例3に記載の抗Pru p 7 IgG抗体を使用して、以下でCup s GRPと称される、新規C.sempervirens花粉タンパク質をどのように精製したかを記載する。
【0151】
実施例5:Cup s GRPのアミノ酸配列の解明
実施例4で精製した7kDaのC.sempervirens花粉タンパク質の同一性及び一次構造を確立するために、それをOrbitrap Fusion Tribrid機器でMS/MSによって分析した。MS分析の前に、タンパク質をDTTによって還元し、アクリルアミドでアルキル化し、トリプシン、キモトリプシン、又はLys-Cのいずれかで酵素切断した。MSデータ分析は、7kDaタンパク質の3つの消化物から得られたスペクトルの組み合わせで行った。
【0152】
NCBIタンパク質データベースの記録は、MSデータとの確証的で完全な配列一致を提供しなかった。したがって、CupressaceaeEST(expressed sequence tag、発現配列タグ)データベースに存在するヌクレオチド配列の仮想上翻訳に対して検索を行った。このデータベースにおいて最も一致したのは、記録BY878079(配列番号2)、Cryptomeria japonica雄球花からのcDNA配列であった(図11a)。このEST配列は、位置302~304での終止コドンによって分離された2つの仮想上アミノ酸配列(図11b)に翻訳された、中断されたオープンリーディングフレーム(ヌクレオチド位置44~397)を含んでいた。MS/MSによって特定した4つのペプチドは、図11bに示すように、BY878079の仮想上アミノ酸配列と完全に一致し、2つは終止コドンのうちのいずれかの側にある。この観察により、位置302~304の終止コドンが配列決定エラーの結果である可能性が生じた。
【0153】
この概念を支持して、中断されたBY878079由来配列とPru p 7のアミノ酸配列との間のアラインメントは、位置302~304での終止コドンにわたって伸びる相同性を示した(示さず)。実際に、TGA終止コドンにおけるAがT又はCのいずれかに変更された場合、その代わりにシステイン残基をコードし、対応する位置でPru p 7と完全に一致する。BY878079(配列番号3)のかかる修正を導入した後、MS/MSデータの改善された全体的な一致が得られ、精製したCup s GRPタンパク質が、修正されたBY878079に由来する仮想上アミノ酸配列の残基87に対応する位置に実際にシステインを有していたことを示す(図11b)。
【0154】
得られたMS/MSスペクトルの分析についてPEAKS Studioソフトウェア(Bioinformatics Solutions Inc.,Ontario,Canada)を使用して、Cup s GRPの完全な63残基のアミノ酸配列(図11c、配列番号4)は、4つの反復ステップで決定され得る。Cup s GRP配列は、図11cに示すように、更に4つの位置で修正されたBY878079由来配列とは異なった。MS/MS分析は、修正されたBY878079記録によってコードされた配列の残基55~117に対応する、このアミノ酸配列の完全な適用範囲を示した。この配列の一部である特定したペプチドの例を表2aに示す。
【0155】
更に、新たに決定したCup s GRP配列を標的配列として使用するMS/MSデータの再分析は、Cup s GRP配列の2つの位置:位置18(Ala/Leu)及び位置52(Asn/His)に多型が存在することを明らかにした(図11c、表2b)。位置18にAla及び位置52にAsnを含む最初に決定したCup s GRP配列は、以下ではCup s GRPaと称され、代替アミノ酸、すなわち位置18にLeu及び位置52位にHisの両方を含む配列は、Cup s GRPb(配列番号5)と称される。Cup s GRPa及びCup s GRPbに加えて、2つの代替アミノ酸のうちのいずれか一方又は他方を含む2つの他のアイソフォームの存在が考えられる。
【0156】
EST記録BY878079によってコードされたアミノ酸配列には、予測した24残基のシグナルペプチドが含まれた(図11bにおける下線付き配列)。加えて、MS/MSによって特定したシグナルペプチドとCup s GRPペプチド1(図11bにおけるPep 1)に一致する配列との間に、一致するCup s GRPペプチドが特定されなかった30個のアミノ酸の伸展が存在した。
【0157】
それにもかかわらず、精製したCup s GRPがかかるN末端ペプチドを含むかを決定するために、タンパク質を、[45]に記載されるように、エドマン分解によるN末端配列決定に供した。タンパク質の最初の4つのアミノ酸残基は、Ala-Gln-Ile-Aspとして特定され、MS/MSによって特定されたCup s GRPペプチド1のN末端部分と正確に一致した。したがって、Cup s GRPの前駆体は、BY878079由来配列の残基25~54に対応する部分を含み得るが、それは切断され、成熟Cup s GRPタンパク質中にはもはや存在しない。
【0158】
Cup s GRP調製の完全性及びタンパク質の新規に決定したアミノ酸配列の証拠は、試料の還元及びアルキル化の後に実行した非切断タンパク質のMS分析によって得られ、その無傷の分子量を決定した。分析は、全てのシステイン残基が減少した非修飾タンパク質の分子量6828.98Daに対応する、m/z=7682.43で優勢なピークが明らかになった。これは、全てのシステイン残基が減少したCup s GRPa配列(配列番号4)について計算したモノアイソトピック分子量と完全に一致する。
【0159】
N末端配列及び全質量MS分析は、MS/MS分析によって得られたアミノ酸配列がC.sempervirens花粉から精製した7kDaタンパク質の完全なアミノ酸配列を網羅していることを確認した。PfamシグネチャについてのCup s GRPのこのアミノ酸配列の分析(http://pfam.xfam.org/)により、このタンパク質が、GASAタンパク質ファミリーとしても知られるジベレリン制御タンパク質ファミリーに属することが確認された。GRP配列は植物界全体で高度に保存されており、Cup s GRPa及びCup s GRPb配列の両方がPru p 7と68%の配列同一性を示した(図11d)。
【0160】
結論として、実施例5は、Cup s GRPのアミノ酸配列がMS/MS及びN末端配列決定によってどのように決定したかを記載する。MS分析により、無傷タンパク質の質量を決定し、計算した理論上質量と完全に一致することを見出した。63残基配列は、2つの位置に代替アミノ酸を有し、その天然状態におけるタンパク質の4つの可能なアイソフォームをもたらすことを示した。
【0161】
実施例6:Juniperus ashei及びCryptomeria japonica花粉からのPru p 7関連タンパク質の精製及びアミノ酸配列決定
上記の実施例4に記載したCup s GRPの精製のために作成した手順は、2つの他のCupressaceae種、Juniperus ashei及びCryptomeria japonicaの花粉からの対応するタンパク質の精製に使用した。
【0162】
J.asheiからの花粉を抽出し、記載した精製及びモニタリングステップに供した。第3の精製ステップでは、SECを使用して、以前のカチオン交換クロマトグラフィステップからの画分の濃縮プールに存在するタンパク質を分離した。SECカラムから溶出した3つの顕著なピーク(図12a)及びSDS-PAGEによる個々の画分の分析(図12b)は、3つのピークの各々に明確に異なるタンパク質バンドを明らかにした。3つのピークを図12aに示すように別々にプールし、ImmunoCAP固相と結合させ、ウサギ抗Pru p 7 IgG抗体と結合する能力を分析した(図12c)。
【0163】
ピーク2は、約7kDaに優勢なタンパク質バンドを含むことを見出し、強い抗体結合活性を示した。以下ではJun a GRPと称される、J.ashei花粉からのこのタンパク質調製物は、以下に記載するように生化学的及び免疫学的に分析した。
【0164】
同様に、C.japonicaからの花粉の抽出物を調製し、脱塩し、カチオン交換クロマトグラフィに供した。抗体結合活性を示す画分をプールし、SECに適用した(図13a)。このSECクロマトグラムは、J.ashei花粉抽出物で得られたものよりも複雑な外観を示した。選択した画分をSDS-PAGE及び抗Pru p 7 IgGの結合について分析した。分析は、画分2及び3において約7kDaのタンパク質バンドを明らかにし(図13b、レーン2及び3)、これらの画分も強い抗体結合活性を示した(図13c)。結果に基づいて、画分2及び3は図13aの括弧で示したように、プールした。以下ではCry j GRPと称される、C.japonica花粉からのこのタンパク質調製物は、以下に記載するように生化学的及び免疫学的に分析した。
【0165】
Jun a GRP調製物は、実施例5に記載されるように、試料調製後にOrbitrap Fusion Tribrid機器でMS/MS分析によって分析した。この場合も、得られたMS/MSスペクトルの最適なデータベースの致はEST記録BY878079であった(図11a、配列番号2)。図14aは、BY878079の修正バージョンを示し、実施例5において特定したように、位置302~304の誤ったTGA終止コドンは、システインコドンTGY(配列番号3)によって置き換えられ、Yは、IUPAC多義性コードシステム[46]で定義されるようにC又はTを表す。図14bには、修飾BY878079(配列番号6)のヌクレオチド44~394によってコードされるアミノ酸配列を示し、MS/MSによって特定したJun a GRPペプチドが下を配置した。
【0166】
得られたMS/MSスペクトルの分析にPEAKS Studioソフトウェアを使用して、Jun a GRPの完全なアミノ酸配列(図14c、配列番号6)を4つの反復ステップで決定され得る。Jun a GRP配列は、図14cに示すように、5つの位置で修正されたBY878079由来配列とは異なった。MS/MS分析は、修正されたBY878079記録によってコードされた配列の残基55~117に対応する、このアミノ酸配列の完全な適用範囲を示した。この配列を表す特定したペプチドの例を表2cに示す。分析において多型は検出されず、配列はPru p 7と67%の同一性を示した(図14d)。
【0167】
Jun a GRP調製物の完全性の証拠、及び新規に決定したアミノ酸配列の確証は、試料をTris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(Tris(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)で還元した後に実行した非切断タンパク質のMS分析によって得た。分析により、分子量6828.03Daに対応する、m/z=6829.04で優勢なピークが明らかになった。これは、配列番号6の全てのシステイン残基が減少したJun a GRP配列で計算したモノアイソトピック質量と完全に一致する。
【0168】
Cry j GRP調製物は、実施例5に記載されるように、試料調製後にOrbitrap Fusion Tribrid機器でMS/MSによって分析した。得られたMS/MSスペクトルの最適なデータベースの致は、C.japonica雄球花からのcDNA配列である、EST記録BY900480であった(図15a、配列番号7)。図15bには、BY900480のヌクレオチド位置15~365に及ぶオープンリーディングフレームの翻訳されたアミノ酸配列を示し、MS/MSによって特定したCry j GRPペプチドを下に配置した。タンパク質全体を表す、MS/MSによって特定した選択Cry j GRPペプチドのリストを表2dに示す。Cry j GRPの完全なアミノ酸配列を図15c、配列番号8に示す。分析において多型は検出されず、配列はPru p 7と68%の同一性を示した(図15d)。
【0169】
Cup s GRP及びJun a GRPの場合と同様に、Cry j GRPは、最も一致するデータベース記録によってコードされたアミノ酸配列の最初の54残基を欠いていた。この場合も、最初の24残基は予測したシグナルペプチドを含み、続く30残基はタンパク質成熟中に切断されたプロペプチドを表すと結論付けた。
【0170】
Cry j GRP調製物の完全性の証拠、及び新規に決定したアミノ酸配列の確証は、試料をTCEPで還元した後に実行した非切断タンパク質のMS分析によって得た。分析により、分子量6894.95Daに対応する、m/z=6895.96で大きなピークが明らかになった。これは、配列番号8の全てのシステイン残基が減少したCry j GRP配列で計算したモノアイソトピック分子量質量と完全に一致する。
【0171】
3つのCupressaceae花粉由来GRP配列、Cup s GRP、Jun a GRP、及びCry j GRPは、90~98%の配列同一性を共有し(図16a~b)、SDS-PAGEにおいて同じ電気泳動移動度を有する(図16c)。
【0172】
結論として、実施例6は、J.ashei及びC japonicaからのPru p 7関連花粉タンパク質Jun a GRP及びCry j GRPの精製、アミノ酸配列決定、並びに質量決定をそれぞれ記載する。
【0173】
実施例7:2つの組換えCup s GRPアイソフォームのクローニング及び精製
実施例5からのCup s GRPa及びCup s GRPbのアミノ酸配列をコードするように設計した合成遺伝子を、発現ベクターpPICZα Aにクローン化し、Pichia pastoris株X-33に形質転換した。2つの組換えタンパク質は、実施例2においてrPru p 7について記載しものと同じ手順を使用して発現及び精製した。MS/MS分析により、精製した組換えタンパク質の同一性及び完全性を確認した。SDS-PAGEによるCup s GRPの2つの組換えアイソフォーム、nCup s GRP、及びrPru p 7の比較は、見かけ上の分子量が7kDaで、4つのタンパク質調製物のほぼ同一の電気泳動的外観を示した(図17)。
【0174】
結論として、実施例7は、実施例5において決定したアミノ酸配列バリアントのうちの2つを表す、Cup s GRPの2つの組換えアイソフォームのクローニング及び精製を記載する。
【0175】
実施例8:rPru p 7と比較した天然及び組換えCup s GRPのIgE結合活性
44人のモモアレルギー対象の血清中の精製したnCup s GRPと結合するIgE抗体を、ImmunoCAPで分析して、rPru p 7と比較した(図18)。試験した44個の血清のうち、43個(98%)がnCup s GRPに対して、38個(86%)がrPru p 7に対して検出可能なIgE応答(≧0.1kUA/L)を示した。rPru p 7に対して陰性であると試験された6つの血清のうち5つはnCup s GRPに対して陽性IgE応答を示した。nCup s GRP及びrPru p 7とのIgE結合のレベルは有意に相関しており(r=0.68)、結合の中央値はnCup s GRPよりも約2倍高かった。分析は、Cup s GRP及びPru p 7が免疫学的に関連していることを示したが、Pru p 7はCup s GRPと比較して不完全なエピトープ提示を保有することも示した。
【0176】
産生した2つの組換えCup s GRPタンパク質の免疫学的活性及び確実性を評価するために、nCup s GRPを用いたIgE結合活性の比較を、19人のモモアレルギー対象の血清を使用するImmunoCAPで実行した。図19a及び19bに示すデータは、nCup s GRPと比較したrCup s GRPa(配列番号3)及びrCup s GRPb(配列番号4)の両方の本質的に同等のIgE結合活性(それぞれr=0.98及びr=0.99)、rCup s GRPaよりもrCup s GRPbとのわずかに高いIgE結合を明らかにした。結果は、組換えCup s GRPタンパク質の構造的及び免疫学的確実性の両方の証拠を提供する。
【0177】
結論として、実施例8は、ヒトIgE抗体による認識に関しても、ウサギIgG抗体によって最初に確立したモモアレルゲンPru p 7とC.sempervirens花粉タンパク質Cup s GRPとの間の免疫学的関連を確認する。第2に、Pru p 7よりもCup s GRPと結合するIgEレベルが高いことは、Cup s GRPが一次感作物質として作用し、Pru p 7と交差反応するIgE抗体を誘発し得ることを示唆する。
【0178】
実施例9:Pru p 7とCup s GRPとの間の交差反応性
Pru p 7とCup s GRPとの間の免疫学的関連を更に特徴付けするために、IgE競合実験を実行した。4つのPru p 7反応性ヒト血清を、20μg/mLの最終濃度でnCup s GRP若しくはrCup s GRPbと個別に、又は陰性対照としての役割を果たす同じ容量比率の希釈緩衝液のみと組み合わせた。抗体/抗原複合体形成を可能にするために室温で2時間インキュベートした後、全ての試料をImmunoCAPによってPru p 7とのIgE結合について試験した。nCup s GRP及びrCup s GRPbによるPru p 7とのIgE結合の阻害レベルを、希釈緩衝液対照の割合として計算した。
【0179】
実験結果を図20に示す。試験した4つの血清のうちの3つにおいて、nCup s GRP及びrCup s GRPbの両方が、rPru p 7とのIgE結合を本質的に完全に阻害した。また、第4の血清において、rPru p 7とのIgEの結合は、nCup s GRPによって完全に打ち負かされたが、rCup s GRPbは約80%の阻害を引き起こした。別の対照実験において、nCup s GRPが非関連のカバノキ花粉アレルゲンBet v 1とのIgE結合に対して阻害効果を発揮しないこと、Pru p 7とのIgE結合に対するその効果の特異性を確信 させることを確認した。
【0180】
結論として、IgE競合実験は、Pru p 7及びCup s GRPとのIgE結合における相関が、他の理由による共変動ではなく、2つのタンパク質に共通するエピトープ構造の抗体認識によって本当に引き起こされることを示す。
【0181】
実施例10:Cup s GRP、Jun a GRP、及びCry j GRP間の免疫学的類似性
この研究において特定及び精製した3つの天然Cupressaceae花粉GRP間の免疫学的類似性の程度は、比較IgE結合分析で評価した。各樹木アレルゲンをImmunoCAP固相と結合させ、アッセイを使用して、18人のモモアレルギー対照の血清中のIgE抗体結合を測定した。比較を図21a~図21cに示す。nCup s GRP及びnJun a GRPとのIgE結合のレベル(図21a)は、nCup s GRPとわずかに高い結合傾向(中央値レベル比1.12)で、非常に高い相関関係があることを見出した(r=0.98)。nCup a GRP及びnCry j GRP(図21b)はまた、nCup s GRPとわずかに高い結合ではあるが(中央値レベル比1.46)、IgE結合と強い相関関係を示し(r=0.84)、血清を分析において使用した対象におけるC.japonica花粉に対する一次感作の欠如を反映している可能性がある。nJun a GRP及びnCry j GRPの比較(図21c)は、IgE結合において同様の相関(r=0.87)を示したが、再びnCry j GRPとのわずかに低い結合を伴った(中央値レベル比1.28)。
【0182】
この例は、GRPタンパク質ファミリーからの4つのタンパク質(>90%の配列同一性)が非常に類似したIgE反応性を有することを示す。これは、アミノ酸配列において小さな変動があるにもかかわらず、IgE反応性が本質的に同じままであるという、高い配列同一性の他の小さなアレルゲンタンパク質について行われた観察を支持する。更に実施例12を参照されたく、これは、交差反応性によるIgE反応性が、同じタンパク質ファミリー内の密接に関連するタンパク質間で非常に類似していることも示す。
【0183】
実施例11:ヒノキ花粉症を有する対象間のCup s GRPに対する感作の有病率
88人のヒノキ花粉感作対象(t23>0.1kUA/L)の血清中の精製したnCup s GRPと結合するIgE抗体を、ImmunoCAPで分析した(図22)。これらの血清のうち、28個(32%)がnCup s GRPに対して検出可能なIgE応答(≧0.1kUA/L)を示した。血清のうちの13個(15%)において、nCup s GRP及びヒノキ花粉抽出物と同様のレベルのIgEを観察し、このサブセットにおける対象のヒノキ花粉感作におけるCup s GRPの優勢な役割を示す。
【0184】
分析は、ヒノキ花粉感作対象の約3分の1が、Cupressaceae花粉GRPに相同なタンパク質を含む食物に対してアレルギー反応のリスクを与える感作プロファイルを有することを示唆する。かかる個体は、好適で代表的なCupressaceae花粉GRPを含むIgE試験を使用して特定することができる。
【0185】
より詳細には、モモアレルギーに関して選択されていない花粉症患者の分子分析は、これらの個体のうちの3分の1のみがCup s GRPに対する検出可能なIgEを有し、3分の2の大多数がこのアレルゲンに対する感作を欠いていることを示した。この発見は、Cup s GRPがヒノキ花粉においてマイナー的なアレルゲンであることを明らかにし、ヒノキ花粉感作患者の特定可能な亜群がモモ又は他のGRP含有食物に対するアレルギー反応のリスクがあることを示唆する。Cupressaceae花粉曝露が高い地域においてこの亜群を構成する実質的な絶対数及びGRP媒介性食物アレルギー反応の潜在的な重症度を考慮すると、GRP感作を伴うそれらを特定することは、この患者群の管理におけるリスク低減の貴重なステップとなるであろう。この目的のために、実施例7において記載したように、インビトロ診断用途のための試薬として好適な、完全に免疫反応性の組換えCup s GRPの生成が、第1の重要なステップである。
【0186】
実施例12:同じタンパク質ファミリーからの密接に関連するタンパク質-プロフィリンのIgE反応性の分析
類似アレルゲンの互換性を実証するために、異なるアレルゲン起源からの8つの異なるプロフィリンタンパク質を比較した。カバノキ(rBet v 2)、ヘーゼルナッツ(Cor a 2)、リンゴ(Mal d 4)、サクランボ(Pru av 4)、ナシ(Pyr c 4)、セロリ(Api g 4)、ニンジン(Dau c 4)、及びチモシー牧草(Phl p 12)からの組換えプロフィリンを、immunoCAPに固定化し、いくつかの血清を使用して試験した。タンパク質の各対間のIgE反応性の比較は、試験した血清の大部分について、試験した全てのタンパク質の強い相関及び非常に類似したIgE結合活性を示した(図23a)。
【0187】
これらのタンパク質の配列は、Emboss針プログラム[47]を使用して対合アラインメントした(図23b)。対合配列同一性は、これらのタンパク質間で74%~93%の範囲であった。
【0188】
配列データをPhyre2[48]などの構造予測プログラムによって分析した場合、これら8つの配列は全て、プロフィリンについて実験的に決定したものに近い折りたたみ構造と一致すると結論付けすることができる(データは示さず)。
【0189】
IgEデータは、これらのプロフィリンのうち4つを比較したScheurerらのデータと良好に一致する[49]。その研究において、Bet v 2、Pru av 4、Pyr c 4、及びApi g 4が比較され、これらのタンパク質は細胞媒介物放出試験でほぼ同一のアレルゲン特性を示すと結論付けられた。これらの4つのタンパク質の対合配列同一性は76~86%の間で変動した。同様の結論及びプロフィリン間の高い交差反応性の更なる証拠が、Villaltaらによる研究で提示された[50]。
【0190】
結論として、この実施例は、交差反応性によるIgE反応性が、同じタンパク質ファミリー内の密接に関連するタンパク質間で非常に類似していることを示す。この研究において、タンパク質は可溶性で折りたたまれた小さなサイズのタンパク質であり、対合配列同一性は約80%であった。上述の研究は全て天然起源タンパク質バリアントを用いて実行したが、特定のプロフィリンと高い配列同一性を有するこれらのタンパク質の人工的なバリアントも、バリアントが可溶性の折りたたみタンパク質で提供される場合、非常に高い類似性のIgE反応性を示すであろう。依然として可溶性及び折りたたみプロフィリンの人工的なバリアントは、アミノ酸が系統的に保存されていない位置での制限された数のアミノ酸置換によって設計され得る。かかる置換が任意のかかる位置で他のプロフィリンにおいて生じるアミノ酸で行われる場合、これは可溶性の折りたたみタンパク質を産生する可能性を高めるであろう。
【0191】
実施例13:異なるCupressaceae種の花粉から実験的に決定したGRPの配列の分析
本発明者らが同様のIgE抗体結合反応性を割り当てた4つの配列、及び本明細書において特定された位置23にイソロイシンを有するCup s GRPの新規アイソフォームバリアント配列(詳細については実施例14を参照されたい)をアラインメントした(図24)。これらの5つの配列から、非保存的な全てのアミノ酸がXでマークされているCupressaceae花粉GRPコンセンサス配列(配列番号9)を構築することができる。
【0192】
更に、このコンセンサス配列を使用してBLAST検索を実行し、このコンセンサス配列と相同性を有する全ての既知の配列を特定した。特に、このCupressaceae花粉GRPコンセンサス配列に対して68%(43/63)を超えるアミノ酸同一性を示す既知の配列は存在せず、本明細書で特定したCupressaceae花粉からの配列が、Pru p 7などの食物に存在するGRPタンパク質から系統的に比較的離れていることを示す。
【0193】
コンセンサス配列と57%(36/63)を超える配列同一性を有する37個の記録配列の選択を使用して、多重配列アラインメントを行った。clustal omegaプログラムを使用して作成したこの多重配列アラインメント(図25)から、図26の行Cに示すように、分析した全ての配列で同一である22個の高度に保存されたアミノ酸を特定した。これらの位置におけるアミノ酸交換は、タンパク質のIgE結合能力に影響を与え得る構造変化をもたらし得る。加えて、Pru p 7と系統的に比較的離れたCupressaceae花粉コンセンサス配列との間で19個のアミノ酸が同一であり、図26の行Bを参照されたい。これらの位置におけるアミノ酸交換は、タンパク質のIgE結合能力に影響を与え得る構造変化を誘導する高い可能性を有するであろう。最後に、Cupressaceae花粉コンセンサス配列とPru p 7との間で異なる14個のアミノ酸残基が存在し、図26の行AにおいてZで示した。表3に列挙したように、系統的に関連するタンパク質において生じるアミノ酸残基へのこれらの14個のアミノ酸位置Zのうちのいずれか1つ以上のアミノ酸置換は、タンパク質の全体的な構造を妨害しない可能性が高い。
【0194】
これらの配列から、Cupressaceae-Pru p 7 GRPコンセンサス配列(配列番号52)を設計し、Cupressaceae花粉GRP間で非保存的であるか、又はCupressaceae花粉及びPru p 7 GRP間で非保存的であるかのいずれかである全てのアミノ酸をXで示す(図26及び配列番号52)。
【0195】
図25に示すアラインメントを調査することにより、Cupressaceae-Pru p 7 GRPコンセンサス配列の系統的に非保存的な位置(図26における22個のX位置)で使用されている全てのアミノ酸を特定することができた。表3において、Cupressaceae花粉GRP配列から実験的に決定したものを含む、これらの系統的に試験したアミノ酸を列挙した(図24)。
【0196】
実施例14:MS分析によるCup s GRPの選択的配列アイソフォームの解明
イソロイシン及びロイシン残基に関しては、実施例4で精製された7kDa C.sempervirens花粉タンパク質の一次構造は、密接に関連するタンパク質配列及びEST mRNA配列に対する相同性によって以前に決定された。本実施例に記載されるように、質量分析(mass spectrometry、MS)分析を使用する相補的で詳細な研究は、Cup s GRP配列におけるイソロイシン/ロイシンアミノ酸の正確な同一性を実験的に評価する目的を有した。
【0197】
分析は、Orbitrap Fusion Tribrid機器上で実行した。MS分析の前に、タンパク質をDTTによって還元し、アクリルアミドでアルキル化し、トリプシン又はキモトリプシンのいずれかで酵素切断した。MSデータ分析は、7kDaタンパク質のこれら2つの消化物から得られたスペクトルの組み合わせで行った。
【0198】
第1に、HCD MS3(第3レベルの多段階断片化の高エネルギー衝突解離)
評価を、Xiaoら[51]に従って選択されたペプチドに対して実行した。この分析は、1つのL*(Ile又はLeu)残渣を含むペプチドのHCD-MS2評価(第2レベルの多段階断片化)に基づく。86DaのIle/Leu-特徴的インモニウムイオンのその後のHCD MS3断片化により、これら2つのアミノ酸の区別が可能になる。イソロイシンは、スペクトルにおいて69Daイオンの高い存在量をもたらすが、ロイシン残基は、この断片の低い存在量をもたらす。例えば、HCD断片化後のアルキル化ペプチドHDRCL*KY(Cup s GRPの位置19~25)の分析は、L*-インモニウムイオンの有意な強度を有する4つのMS2スペクトルを明らかにした。L*-インモニウムイオンの更なるHCD断片化の後、MS3スペクトルのその後の分析は、69kDaイオンの高い相対存在量を明らかにし、これは、このペプチド中のイソロイシンの存在を示した(表4)。したがって、位置23にイソロイシンを含むアイソフォームの存在を確認することができる。したがって、このペプチドアイソフォームの配列は、HDRCIKY(配列番号65)である。
【0199】
表4はまた、天然Cup s GRPからの他の選択されたL*含有ペプチドのHCD MS3分析を示す。分析により、位置3、28及び53における配列、より厳密にはアミノ酸の以前の決定が確認された。位置18由来のL*-インモニウムイオンを含むスペクトルは1つしか得られなかったが、このペプチドではイソロイシンを検出することができた(表4)。したがって、本発明者らのデータは、Cup s GRPの位置18における更なるアミノ酸アイソフォーム変異の存在を示唆している(表4)。
【0200】
位置23におけるイソロイシンの発見を確認するために、天然7kDaタンパク質もまた、ETD HCD MS3(electron-transfer dissociation、ETD=電子移動解離)プロトコルを使用した分析に供した(Xiaoら、上記)。このプロトコルでは、選択されたL*含有ペプチドのETD断片化により、N末端ロイシン又はイソロイシンを有するMS2z-イオン断片が得られた。これらのMS2z-イオン断片をHCD断片化に供し、-29(Ileからのエチル損失)又は-43(Leuからのプロピル損失)のいずれかのニュートラルロスを生じた。ペプチドSAHDRCL*KYを分析した合計8つの異なるMS3スペクトル(表5)において、29Daの特徴的な重量損失が検出され、全てこのペプチド中のイソロイシンの存在を示した。したがって、このペプチドの配列は、SAHDRCIKY(配列番号66)である。
【0201】
結論として、本実施例は、ロイシンに加えて位置23にイソロイシンを有するCup s GRPのアミノ酸配列の代替アイソフォームの特定を記載する。位置18のイソロイシンの検出により、この位置で先に検出されたものに追加のアイソフォーム変異を加えることができた。配列中にアイソフォーム変異を有する2つの他のアミノ酸位置と共に、これは、Cup s GRPアミノ酸配列(配列番号53~配列番号62)の12の可能なアイソフォームバリアントをもたらす。
【0202】
【表14】
【0203】
【表15】
【0204】
配列
配列番号53~62:位置18、23及び/又は52に異なるアミノ酸残基を有する配列番号4のバリアント。
配列番号53:AQIDCDKECNRRCSKASAHDRCIKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYANLKNSKGGHKCP
配列番号54:
AQIDCDKECNRRCSKASAHDRCIKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYAHLKNSKGGHKCP
配列番号55:
AQIDCDKECNRRCSKASLHDRCIKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYANLKNSKGGHKCP
配列番号56:
AQIDCDKECNRRCSKASLHDRCIKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYAHLKNSKGGHKCP
配列番号57:
AQIDCDKECNRRCSKASIHDRCIKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYANLKNSKGGHKCP
配列番号58:
AQIDCDKECNRRCSKASIHDRCIKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYAHLKNSKGGHKCP
配列番号59:
AQIDCDKECNRRCSKASIHDRCLKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYANLKNSKGGHKCP
配列番号60:
AQIDCDKECNRRCSKASIHDRCLKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYAHLKNSKGGHKCP
配列番号61:
AQIDCDKECNRRCSKASAHDRCLKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYAHLKNSKGGHKCP
配列番号62:
AQIDCDKECNRRCSKASLHDRCLKYCGICCEKCHCVPPGTAGNEDVCPCYANLKNSKGGHKCP
配列番号65~78:配列番号4のペプチド(アイソフォーム)
配列番号65:
HDRCIKY
配列番号66:
SAHDRCIKY
配列番号67:
AQIDCDKE
配列番号68:
SLHDR
配列番号69:
SIHDR
配列番号70:
SAHDRCIKY
配列番号71:
HDRCLKY
配列番号72:
CDKECNRRCSKASAHDRCLKY
配列番号73:
CGICCEK
配列番号74:
GNEDVCPCYANLKNSKGGHKCP
配列番号75:
EDVCPCYANLKNSKGGHKCP
配列番号76:
CGICCEK
配列番号77:
CLKYCGICCEK
配列番号78:
CDKECNRRCSKASAHDRCIKY
【0205】
実施例15:MS分析によるJun a GRP及び/又はCry j GRPの選択的配列アイソフォームの解明
実施例14の手順に従ってMS分析を実行して、実施例6のJuniperus ashei及びCryptomeria japonica花粉からのPru p 7関連タンパク質のアイソフォームバリアントを特定する。予想は、実施例14でC.sempervirensについて示したものと同様のアイソフォームバリアントを特定することである。
【0206】
Jun a及びCry jの各々は、それぞれ配列番号63及び配列番号64に従って、位置23にイソロイシンを有するアイソフォームバリアントを有し得ると予想される。
【0207】
配列番号63:位置23に異なるアミノ酸残基を有する配列番号6のバリアント。
配列番号63:AQIDCDKECNRRCSKASAHDRCIKYCGICCKKCHCVPPGTAGNEDVCPCYANLKNSKGGHKCP
配列番号64:位置23に異なるアミノ酸残基を有する配列番号8のバリアント。
配列番号64:
AHIDCDKECNRRCSKASAHDRCIKYCGICCEKCNCVPPGTYGNEDSCPCYANLKNSKGGHKCP
Jun a GRPaの選択的配列アイソフォーム(位置23にロイシンの代わりにイソロイシンを有する)(本明細書ではJun a GRPbと称する)の存在が、以下の実施例18で確認される。
【0208】
実施例16:組換えCup s GRP(c)アイソフォームのクローニング及び産生
実施例14のアイソフォームバリアントCup s GRPcのアミノ酸配列(表1、配列番号53を参照されたい)をコードするように設計された合成遺伝子をクローニングし、実施例7においてCup s GRPa及びCup s GRPbについて記載したのと同じ手順を用いて、タンパク質を発現させ、精製した。MS/MS分析により、精製した組換えタンパク質の同一性及び完全性を確認した。
【0209】
SDS-PAGEによる組換えアイソフォームCup s GRPc及びCup s GRPa(位置23のLeu)の比較により、タンパク質調製物の同一の電気泳動的外観が示され、見かけの分子量は7kDaであった(データは示さず)。
【0210】
結論として、実施例16は、実施例14において決定したアミノ酸配列バリアントを表す、組換えアイソフォームCup s GRPcのクローニング及び精製を記載する。
【0211】
実施例17:Cup s GRPaとCup s GRPcとの間の免疫学的類似性
2つの組換えアイソフォームバリアントCup s GRPaとCup s GRPcとの間の免疫学的類似性の程度を、比較IgE結合分析において評価した。2つのアレルゲンの各々をImmunoCAP固相に結合させ、IgE抗体結合を23人のモモアレルギー対象の血清中で測定した。比較を図27に示す。
【0212】
rCup s GRPa及びrCup s GRPcへのIgE結合のレベル(図27)は、1.04の中央値レベル比で、非常に高度に相関する(r=0.992)ことが判明した。結果は、2つの組換えCup s GRPアイソフォームの機能的同等性の証拠を提供する。
【0213】
この実施例は、位置23におけるロイシンからイソロイシンへの置換がIgE反応性に顕著な影響を及ぼさないことを実証する。これは、高い配列同一性の他の小さなアレルゲンタンパク質についてなされた観察と一致しており、それらのIgE結合活性は、アミノ酸配列における小さな変動によって有意に影響されない。
【0214】
更に、IgE反応性が同じタンパク質のアイソフォームバリアント間で非常に類似していることも実証する実施例8及び図19a~bも参照されたい。
【0215】
実施例18:MS/MS分析によるJun a GRPaの選択的配列アイソフォームの解明
分析は、Orbitrap Fusion Tribrid機器上で実行した。MS/MS分析の前に、タンパク質をDTTによって還元し、アクリルアミドでアルキル化し、トリプシン、キモトリプシン、Glu-C又はLys-Cのいずれかで酵素切断した。
【0216】
第1に、HCD MS3(第3レベルの多段階断片化の高エネルギー衝突解離)評価を、Xiaoら[51]に従って選択されたペプチドに対して実行した。この分析は、1つのL*(Ile又はLeu)残渣を含むペプチドのHCD-MS2(第2レベルの多段階断片化)断片化に基づく。86DaのIle/Leu-特徴的インモニウムイオンのその後のHCD MS3断片化により、これら2つのアミノ酸の区別が可能になる。イソロイシンは、スペクトルにおいて69Daイオンの高い存在量をもたらすが、ロイシン残基は、この断片の低い存在量をもたらす。この方法では、注釈を付けることができる高品質のスペクトルは得られなかった。
【0217】
また、Juniperus asheiからの天然7kDaタンパク質を、ETD HCD MS3(ETD=電子移動解離)プロトコルを使用した分析に供した(Xiaoら、上記)。このプロトコルでは、選択されたL*含有ペプチドのETD断片化により、N末端ロイシン又はイソロイシンを有するMS2z-イオン断片が得られた。これらのMS2z-イオン断片をHCD断片化に供し、-29(Ileからのエチル損失)又は-43(Leuからのプロピル損失)のいずれかのニュートラルロスを生じた。ペプチドASAHDRCL*KY並びに翻訳後修飾されたCSKASAHDRCL*KY及びASAHDRCL*KYを分析した合計7つの異なるMS3スペクトル(表5)において、29Daの特徴的な重量損失が検出され、全てこのペプチドにおけるイソロイシンの存在を示した。したがって、これらのペプチドの配列は、ASAHDRCIKY(配列番号80)及びCSKASAHDRCIKY(配列番号82)である。
【0218】
結論として、本実施例は、ロイシンに加えて位置23にイソロイシンを有するJun a GRPのアミノ酸配列の代替アイソフォームの特定を記載し、したがって、以前に提案されたアイソフォーム変異を検証する。(Jun a GRPb、配列番号63)。
【0219】
【表16】
【0220】
配列
配列番号79~82:配列番号6(Jun a GRP)のペプチド(アイソフォーム)
配列番号79
ASAHDRCLKY
配列番号80
ASAHDRCIKY
配列番号81
CSKASAHDRCLKY
配列番号82
CSKASAHDRCIKY
【0221】
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図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c
図10d
図11a
図11b
図11c
図11d
図12a
図12b
図12c
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b
図14c
図14d
図15a
図15b
図15c
図15d
図16a
図16b
図16c
図17
図18
図19a
図19b
図19c
図20
図21a
図21b
図21c
図22
図23a
図23b
図24
図25
図26
図27
【配列表】
2024503860000001.app
【国際調査報告】