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特表2024-503868アミド化合物を生成する方法および組成物
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  • 特表-アミド化合物を生成する方法および組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(54)【発明の名称】アミド化合物を生成する方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20240122BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240122BHJP
   C12P 13/02 20060101ALI20240122BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20240122BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N1/19
C12N1/15
C12P13/02
C12N15/52 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543000
(86)(22)【出願日】2022-01-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 US2022012644
(87)【国際公開番号】W WO2022155554
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/138,495
(32)【優先日】2021-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510199890
【氏名又は名称】ジェノマティカ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナガラジャン,ハリシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,タエ・フーン
(72)【発明者】
【氏名】コダヤリ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】バチャン,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ガータク,サンカ
(72)【発明者】
【氏名】イークリー,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】シャー,アミット
(72)【発明者】
【氏名】シャー,ジネル
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ボー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE02
4B064CA02
4B064CA19
4B064CB11
4B064CB16
4B064DA20
4B065AA01X
4B065AA26X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA10
4B065CA16
4B065CA60
(57)【要約】
6-アミノカプロエート、ヘキサメチレンジアミン、カプロン酸、カプロラクトン、またはカプロラクタムの生合成を上昇または改善させる、生合成法および操作型微生物が開示される。該操作型微生物は、例えば、アップレギュレートされたおよび/もしくは外来の6-アミノカプロエートのためのトランスポーター、欠失および/もしくはダウンレギュレートされた6-アミノカプロエートのためのインポーター、アップレギュレートされたおよび/もしくは外来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ、ならびに/またはrcsAおよび/もしくはcpsBGの欠失および/もしくはダウンレギュレーションを含むように改変されている。他の操作型微生物は、6-アミノカプロエートの内在性トランスポーターの破壊を有し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
6-アミノカプロン酸を生成する経路、および前記6-アミノカプロン酸のトランスポーターをコードする外来核酸を含む天然に存在しない微生物生物体であって、外来トランスポーターが、前記6-アミノカプロン酸を細胞からエクスポートする天然に存在しない微生物生物体。
【請求項2】
6-アミノカプロン酸を産生し、かつ前記微生物生物体による前記6-アミノカプロン酸の産生が、前記外来核酸を有さない微生物生物体と比べて増加している、請求項1に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項3】
前記外来エクスポーターが、0.80超の相対的6ACAエクスポート活性を有する、表16中のトランスポーターの1つから選択される、請求項1に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項4】
前記外来エクスポーターが、1.10超の相対的6ACAエクスポート活性を有する、請求項3に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項5】
さらに、6-アミノカプロン酸を前記微生物生物体内にインポートするトランスポーターをコードする内在性核酸の破壊を含む、請求項1に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項6】
前記破壊を有する前記トランスポーターが、gabP、csiR、または前記の1つのホモログからなる群から選択される遺伝子の中にある、請求項5に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項7】
さらに、グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする第3の外来核酸を含む、請求項5に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項8】
前記グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、GdhAまたはそのホモログである、請求項7に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項9】
さらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、請求項8に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項10】
6-アミノカプロン酸を生成する経路、および破壊を有する遺伝子を含む天然に存在しない微生物生物体であって、前記破壊された遺伝子が、前記6-アミノカプロン酸を細胞内にインポートする、前記6-アミノカプロン酸の内在性トランスポーターをコードする、天然に存在しない微生物生物体。
【請求項11】
6-アミノカプロン酸を産生し、かつ前記微生物生物体による前記6-アミノカプロン酸の産生が、前記内在性トランスポーターをコードする前記遺伝子の前記破壊を有さない微生物生物体と比べて増加している、請求項10に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項12】
前記破壊を有する前記トランスポーターが、gabP、csiR、または前記の1つのホモログからなる群から選択される遺伝子の中にある、請求項10に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項13】
6-アミノカプロン酸を生成する経路、およびグルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸を含む天然に存在しない微生物生物体であって、前記グルタミン酸デヒドロゲナーゼによって生成されるグルタミン酸の少なくとも一部が、前記6-アミノカプロン酸を産生するトランスアミナーゼによって使用される天然に存在しない微生物生物体。
【請求項14】
前記グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、表17から選択され、かつ100ΔF/分超の、NADHまたはNADPHを用いたin vitro活性を有する、請求項13に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項15】
前記グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、表17から選択され、かつ100~500ΔF/分の、NADHまたはNADPHを用いたin vitro活性を有する、請求項14に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項16】
前記グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、表17から選択され、かつ500ΔF/分超の、NADHまたはNADPHを用いたin vitro活性を有する、請求項14に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項17】
6-アミノカプロン酸を生成する経路、および前記微生物生物体のムコイド表現型を軽減する、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む天然に存在しない微生物生物体。
【請求項18】
前記破壊が、前記破壊を有さない前記天然に存在しない微生物生物体と比べて、6-アミノカプロン酸の産生を増加させる、請求項17に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項19】
C6生成物を生成する経路を含む天然に存在しない微生物生物体であって、前記C6生成物を細胞からエクスポートする、前記C6生成物のトランスポーターをコードする外来核酸を含む天然に存在しない微生物生物体。
【請求項20】
前記微生物生物体による前記C6生成物の産生が、前記外来核酸を有さない前記天然に存在しない微生物生物体と比べて増加している、請求項19に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項21】
C5~C14生成物を産生する経路、および前記C5~C14生成物を細胞からエクスポートする、前記C5~C14生成物のトランスポーターをコードする外来核酸を含む天然に存在しない微生物生物体。
【請求項22】
前記微生物生物体による前記C5~C14生成物の産生が、前記外来核酸を有さない前記天然に存在しない微生物生物体と比べて増加している、請求項21に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【請求項23】
6-アミノカプロン酸を生成する方法であって、請求項1に記載の天然に存在しない微生物生物体を準備する工程;および前記天然に存在しない微生物生物体を、前記6-アミノカプロン酸が産生される条件下の培地中で培養する工程を含む方法。
【請求項24】
さらに、前記6-アミノカプロン酸を、前記微生物生物体から前記培地に輸送する工程を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記外来核酸が、1.10超の相対的6ACAエクスポート活性を有する、表16から選択されるトランスポーターをコードする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記天然に存在しない微生物生物体がさらに、6-アミノカプロン酸を前記微生物生物体内にインポートするトランスポーターをコードする遺伝子の破壊を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記遺伝子が、gabPまたはcsiRである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記天然に存在しない微生物生物体がさらに、グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記天然に存在しない微生物生物体がさらに、rscA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
6-アミノカプロン酸を生成する方法であって、請求項13に記載の天然に存在しない微生物生物体を準備する工程;前記天然に存在しない微生物生物体を、前記6-アミノカプロン酸が産生される条件下の培地中で培養する工程;および前記6-アミノカプロン酸を、前記微生物生物体から前記培地に輸送する工程を含む方法。
【請求項31】
前記グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、表17から選択され、かつ100ΔF/分超の、NADHまたはNADPHを用いたin vitro活性を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、表17から選択され、かつ100~500ΔF/分の、NADHまたはNADPHを用いたin vitro活性を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、表17から選択され、かつ500ΔF/分超の、NADHまたはNADPHを用いたin vitro活性を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
C6生成物を生成する方法であって、請求項19に記載の天然に存在しない微生物生物体を準備する工程;前記天然に存在しない微生物生物体を、前記C6生成物が産生される条件下の培地中で培養する工程;および前記C6生成物を、前記微生物生物体から前記培地に輸送する工程を含む方法。
【請求項35】
C5~C14生成物を生成する方法であって、請求項21に記載の天然に存在しない微生物生物体を準備する工程;前記天然に存在しない微生物生物体を、前記C5~C14生成物が産生される条件下の培地中で培養する工程;および前記C5~C14生成物を、前記微生物生物体から前記培地に輸送する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
配列表、表、またはコンピュータプログラムの参照
配列表の写しは、明細書と同時に、EFSウェブを経由してACSII形式テキストファイルとして提出されており、ファイル名は「GMTA048_ST25.txt」、作成日は2022年1月14日でサイズ212キロバイトである。EFSウェブを経由し出願した配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
背景技術
ナイロンは、ジアミンとジカルボン酸との縮合重合またはラクタムの縮合重合により合成され得るポリアミドである。ナイロン6,6は、ヘキサメチレンジアミン(HMD)とアジピン酸との反応により製造されるのに対して、ナイロン6は、カプロラクタムの開環重合により製造される。したがって、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、およびカプロラクタムは、ナイロン製造において重要な中間体である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ナイロン中間体の一部を製造するために微生物が操作された。しかしながら、操作型(engineered)微生物は、経路中間体および最終産物に対する望ましくない酵素活性の結果として、望ましくない副産物を製造し得る。したがって、そのような副産物および不純物は、化合物の生合成の費用および複雑さを高め、望ましい生成物の効率または収率を下げ得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本明細書は、6-アミノカプロン酸経路、カプロラクタム経路、ヘキサメチレンジアミン経路、カプロラクトン経路、1,6-ヘキサンジオール経路、またはそれらの経路の1つまたは複数の組合せを有する天然に存在しない(non-naturally occurring)微生物生物体(microbial organism)を提供する。天然に存在しない微生物生物体は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、カプロラクトン、および/またはヘキサンジオールをエクスポートする外来トランスポーターをコードする少なくとも1つの外来核酸を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、細胞内に6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、カプロラクトン、および/またはヘキサンジオールをインポートする内在性トランスポーターの破壊を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、外来グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、gdhAまたはそのホモログ、EC番号1.4.1.4)をコードする少なくとも1つの外来核酸を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、その生成物がムコイド表現型に関与する内在性遺伝子の破壊を含み得る。天然に存在しない微生物は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、カプロラクトン、および/または1,6-ヘキサンジオールの産生と炭素を競合する中間体および/または生成物の産生を低下させる破壊を含み得る。それらの変化の1つまたは複数を、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、カプロラクトン、および/または1,6-ヘキサンジオールを生成する経路を有する天然に存在しない微生物細胞に導入すると、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、カプロラクトン、および/または1,6-ヘキサンジオールの産生が増加する。天然に存在しない微生物は、前記または以下に記載する操作型変化の1つまたは複数を含み得る。
【0005】
6-アミノカプロン酸をエクスポートする外来トランスポーターは、例えば、表16中のトランスポーターであり得る。天然に存在しない微生物生物体は、配列番号1、3、17、19、21、23、25、27、29、31、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、および/または93の1つまたは複数をコードする外来核酸を含み得る。細胞内に6-アミノカプロン酸をインポートする内在性トランスポーターは、例えば、gabPもしくはそのホモログ、および/またはcsiRもしくはそのホモログであり得る。天然に存在しない微生物生物体は、内在性gabPまたはそのホモログ、csiRまたはそのホモログ、または両方の破壊を含み得る。外来グルタミン酸デヒドロゲナーゼは、例えば、α-ケトグルタル酸からグルタミン酸グルタミン酸を生成し、かつそのグルタミン酸グルタミン酸生成物が、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、および/またはヘキサメチレンジアミンを生成する経路でのアミノ基転移反応に使用され得る任意のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、表17のgdhAまたはそのホモログなど、EC番号1.4.1.4)であり得る。天然に存在しない微生物生物体は、1つまたは複数のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、表17のgdhAまたはそのホモログなど)をコードする外来核酸を含み得る。その生成物がムコイド表現型に関与する内在性遺伝子は、例えば、rcsAもしくはそのホモログ、またはcpsBもしくはそのホモログ(EC番号2.7.7.13もしくは2.7.7.22)、またはcpsGもしくはそのホモログ(EC番号5.4.2.8)、またはcpsBG rcsAもしくはそのホモログ、またはcpsBもしくはそのホモログ、またはcpsGもしくはそのホモログ、またはcpsBGを含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、rcsAもしくはそのホモログ、またはcpsBもしくはそのホモログ、またはcpsGもしくはそのホモログ、またはcpsBG rcsAもしくはそのホモログ、またはcpsBもしくはそのホモログ、またはcpsGもしくはそのホモログ、またはcpsBG、または前記の任意の組合せにおける破壊を含み得る。
【0006】
炭素を競合する中間体および/または生成物の産生を低下させる破壊は、例えば、アジピン酸を生成する経路における破壊(例えば、sadもしくはそのホモログ、gabDもしくはそのホモログ、および/もしくはybfFもしくはそのホモログにおける破壊)、6-ヒドロキシカプロン酸を生成する経路における破壊(例えば、yghDもしくはそのホモログ、yjgBもしくはそのホモログ、および/もしくはyahKもしくはそのホモログにおける破壊)、ならびに/またはガンマアミノ酪酸を生成する経路における破壊(例えば、gabTもしくはそのホモログにおける破壊)を含み得る。
【0007】
天然に存在しない微生物生物体は、6-アミノカプロン酸を生成する経路、ybjEもしくはそのホモログ、および/またはyhiMもしくはそのホモログ、および/またはグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、gdhAもしくはそのホモログ)をコードする外来核酸、gabPもしくはそのホモログ、および/またはcsiRもしくはそのホモログ、および/またはrcsAもしくはそのホモログ、および/またはcpsBもしくはそのホモログ、および/またはcpsGもしくはそのホモログ、および/またはcpsBGの破壊を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、6-アミノカプロン酸を生成する経路、gabPまたはそのホモログ、およびrcsAまたはそのホモログの破壊、ならびにybjEまたはそのホモログおよびグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、gdhAまたはそのホモログ)をコードする外来核酸を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、6-アミノカプロン酸を生成する経路を含み得て、かつアジピン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、および/またはガンマアミノ酪酸を生成する経路における破壊も含み得る。
【0008】
天然に存在しない微生物生物体は、6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンを十分な量で産生するために、対応する生成物の産生に欠かせない酵素をコードする外来核酸を含み得る。いくつかの場合、それらの外来核酸の1つまたは複数が、天然に存在しない微生物生物体に対して異種であり得る。
【0009】
天然に存在しない微生物生物体は、C6生成物(例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、カプロラクトン、1,6-ヘキサンジオール、および/またはアジピン酸)を生成する経路を有し得る。天然に存在しない微生物生物体は、C6生成物をエクスポートする外来トランスポーターをコードする外来核酸を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、C6生成物をインポートする内在性トランスポーターの1つまたは複数の破壊を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、rcsAおよび/またはcpsBGの内在性遺伝子の破壊を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、望ましいC6生成物と炭素を競合する中間体および生成物を生成する経路における破壊を含み得る。
【0010】
天然に存在しない微生物生物体は、C5~C14生成物を生成する経路を有し得る。天然に存在しない微生物生物体は、C5~C14生成物をエクスポートする外来トランスポーターをコードする外来核酸を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、C5~C14生成物をインポートする内在性トランスポーターの1つまたは複数の破壊を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、内在性rcsAおよび/またはcpsBGの破壊を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、望ましいC5~C14生成物と炭素を競合する中間体および生成物を生成する経路における破壊を含み得る。
【0011】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、および/またはヘキサメチレンジアミンを産生する方法も開示される。本方法は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、および/またはヘキサメチレンジアミンを産生する天然に存在しない微生物生物体を培養する工程を含み得て、該天然に存在しない微生物生物体は、ybjEもしくはそのホモログ、および/もしくはyhiMもしくはそのホモログ、および/もしくはグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(例えば、gdhAもしくはそのホモログ)をコードする外来核酸を発現し、ならびに/または該天然に存在しない微生物生物体は、gabPもしくはそのホモログ、および/もしくはcsiRもしくはそのホモログ、および/もしくはrcsAもしくはそのホモログ、および/もしくはcpsBもしくはそのホモログ、および/もしくはcpsGもしくはそのホモログ、および/もしくはcpsBGもしくはそのホモログの破壊を有し、ならびに/または該天然に存在しない微生物生物体は、炭素を競合する中間体および/もしくは生成物の破壊を有し、例えば、アジピン酸を生成する経路における破壊(例えば、sadもしくはそのホモログ、gabDもしくはそのホモログ、および/もしくはybfFもしくはそのホモログにおける破壊)、6-ヒドロキシカプロン酸を生成する経路における破壊(例えば、yghDもしくはそのホモログ、yjgBもしくはそのホモログ、および/もしくはyahKもしくはそのホモログにおける破壊)、および/もしくはガンマアミノ酪酸を生成する経路における破壊(例えば、gabTもしくはそのホモログにおける破壊)を含む。本方法は、天然に存在しない微生物生物体を、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンを産生するための条件下かつ十分な時間にわたり培養する工程を含む。
【0012】
6-アミノカプロン酸(6ACA)を産生する方法は、前記の適切な天然に存在しない微生物生物体を、6ACAを産生するための十分な時間にわたり適切な条件下に培養する工程を含み得る。本方法はさらに、微生物生物体、発酵ブロスまたは両方から6ACAを回収する工程を含み得る。
【0013】
ヘキサメチレンジアミンを産生する方法は、前記の適切な天然に存在しない微生物生物体を、ヘキサメチレンジアミンを産生するための十分な時間にわたり適切な条件下に培養する工程を含む。本方法はさらに、微生物生物体、発酵ブロスまたは両方からヘキサメチレンジアミンを回収する工程を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、各々がヘキサメチレンジアミン経路酵素をコードする、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ以上の外来核酸配列を含み得る。
【0014】
さらに、C6生成物(例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、カプロラクトン、1,6-ヘキサンジオール、および/またはアジピン酸)を生成する方法が開示される。本方法は、C6を産生する天然に存在しない微生物生物体を培養する工程を含み得て、該天然に存在しない微生物生物体は、C6生成物をエクスポートするトランスポーターをコードする外来核酸を発現し、該天然に存在しない微生物生物体は、rcsAもしくはそのホモログの、ならびに/またはcpsBもしくはそのホモログの、ならびに/またはcpsGもしくはそのホモログの、ならびに/またはcpsBGもしくはそのホモログの、ならびに/またはC6生成物を細胞にインポートする内在性トランスポーターの、ならびに/または望ましいC6生成物と炭素を競合する中間体および/もしくは生成物を生成するステップの、破壊を有する。本方法は、天然に存在しない微生物生物体を、C6生成物を産生するための条件下かつ十分な時間にわたり培養する工程を含む。
【0015】
6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンを産生する方法は、前記で開示した適切な天然に存在しない微生物生物体を、十分な時間にわたり、6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンを産生するための条件下に培養する工程を含む。本方法はさらに、微生物生物体、発酵ブロス、または両方から、6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、および/またはヘキサメチレンジアミンを回収する工程を含む。天然に存在しない微生物生物体は、各々が6-アミノカプロン酸、1,6-ヘキサンジオール、カプロラクトン、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン経路酵素をコードする、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つの外来核酸配列を含み得る。
【0016】
望ましいC5~C14生成物を産生する方法が本明細書に開示される。本方法は、C5~C14を産生する天然に存在しない微生物生物体を培養する工程を含み得て、該微生物生物体は、望ましいC5~C14生成物をエクスポートするトランスポーターをコードする外来核酸を発現し、該微生物生物体は、rcsAの、ならびに/またはcpsBGの、ならびに/または望ましいC5~C14生成物を細胞にインポートする内在性トランスポーターの、ならびに/または望ましいC5~C14生成物と炭素を競合する中間体および/もしくは生成物を生成するステップの、破壊を有する。本方法は、天然に存在しない微生物生物体を、望ましいC5~C14生成物を産生するための条件下かつ十分な時間にわたり培養する工程を含む。
【0017】
6-アミノカプロン酸経路は、(i)トランスアミナーゼ、(ii)6-アミノカプロン酸デヒドロゲナーゼ、または両方(iii)トランスアミナーゼおよび6-アミノカプロン酸デヒドロゲナーゼの酵素を含み得る。天然に存在しない微生物生物体はさらに、6-アミノカプロン酸経路酵素の1つまたは複数をコードする1つまたは複数の付加的な外来核酸を含み得る。6-アミノカプロン酸経路酵素の1つまたは複数をコードする外来核酸は、微生物生物体に対して異種であり得る。
【0018】
天然に存在しない微生物生物体は、ヘキサメチレンジアミン経路を含み得る。ヘキサメチレンジアミン経路は、(i)6-アミノカプロイルCoAトランスフェラーゼ、(ii)6-アミノカプロイルCoAシンターゼ、(iii)6-アミノカプロイルCoAレダクターゼ、(iv)ヘキサメチレンジアミントランスアミナーゼ、(v)ヘキサメチレンジアミンデヒドロゲナーゼ、(v)または酵素(i)~(v)の1つもしくは複数の組合せを含み得る。微生物生物体はさらに、ヘキサメチレンジアミン経路酵素の1つまたは複数をコードする1つまたは複数の付加的な外来核酸を含み得る。ヘキサメチレンジアミン経路酵素の1つまたは複数をコードする外来核酸は、微生物生物体に対して異種であり得る。
【0019】
天然に存在しない微生物生物体は、カプロラクタム経路を含み得る。カプロラクタム経路は、アミノヒドロラーゼ酵素を含み得る。天然に存在しない微生物生物体はさらに、アミノヒドロラーゼ酵素をコードする1つまたは複数の付加的な外来核酸を含み得る。アミノヒドロラーゼ酵素をコードする外来核酸は、微生物生物体に対して異種であり得る。
【0020】
天然に存在しない微生物生物体は、1,6-ヘキサンジオール経路を含み得る。1,6-ヘキサンジオール経路は、以下の酵素:6ACAから6-アミノカプロイル-CoAへの変換を触媒する、6-アミノカプロイル-CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼ;6-アミノカプロイル-CoAから6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換を触媒する6-アミノカプロイル-CoAレダクターゼ;6-アミノカプロン酸セミアルデヒドから6-アミノヘキサノールへの変換を触媒する6-アミノカプロン酸セミアルデヒドレダクターゼ;6ACAから6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換を触媒する6-アミノカプロン酸レダクターゼ;アジピル-CoAからアジピル酸セミアルデヒドへアジピル-CoAレダクターゼ;アジピン酸セミアルデヒドから6-ヒドロキシヘキサノエートへの変換を触媒するアジピン酸セミアルデヒドレダクターゼ;6-ヒドロキシヘキサノエートから6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼ;6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAから6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAレダクターゼ;6-ヒドロキシヘキサナールからHDOへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサナールレダクターゼ;6-アミノヘキサノールから6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-アミノヘキサノールアミノトランスフェラーゼまたはオキシドレダクターゼ;6-ヒドロキシヘキサノエートから6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサン酸レダクターゼ;ADAからアジピン酸セミアルデヒドへの変換を触媒するアジピン酸レダクターゼ;およびアジピル-CoAからADAへの変換を触媒するアジピル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、またはシンターゼの1つまたは複数を含み得る。
【0021】
天然に存在しない微生物生物体は、アジペートまたはアジピル-CoAからカプロラクトンへの経路を含み得る。アジペートまたはアジピル-CoAからカプロラクトンへのそれらの経路は、以下の酵素:アジピル-CoAレダクターゼ、アジピン酸セミアルデヒドレダクターゼ、6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼ、6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAシクラーゼまたは自発的環化、アジピン酸レダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、6-ヒドロキシヘキサン酸シクラーゼ、6-ヒドロキシヘキサン酸キナーゼ、6-ヒドロキシヘキサノイルリン酸シクラーゼまたは自発的環化、ホスホトランス-6-ヒドロキシヘキサノイラーゼ(phosphotrans-6-hydroxyhexanoylase)の1つまたは複数を含み得る。
【0022】
天然に存在しない微生物生物体は、Acinetobacter、Actinobacillus、Anaerobiospirillum、Aspergillus、Bacillus、Clostridium、Corynebacterium、Escherichia、Gluconobacter、Klebsiella、Kluyveromyces、Lactococcus、Lactobacillus、Mannheimia、Pichia、Pseudomonas、Rhizobium、Rhizopus、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Streptomyces、およびZymomonasの種を含み得る。天然に存在しない微生物生物体は、大腸菌(Escherichia.coli)の株であり得る。
【0023】
一態様では、本開示は、6-アミノカプロン酸を生成する経路、および6-アミノカプロン酸のトランスポーターをコードする外来核酸を含む天然に存在しない微生物生物体に関し、外来トランスポーターは、6-アミノカプロン酸を細胞からエクスポートする。
【0024】
6-アミノカプロン酸を産生し、かつ微生物生物体による6-アミノカプロン酸の産生が、外来核酸を有さない微生物生物体と比べて増加している、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0025】
外来トランスポーターが、YbjEまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0026】
外来トランスポーターが、YhiMまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0027】
さらに、YhiMまたはそのホモログである第2の外来トランスポーターをコードする第2の核酸を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0028】
少なくとも1つの外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0029】
少なくとも1つの外来核酸がエピソームである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0030】
少なくとも1つの外来核酸が、6-アミノカプロン酸のトランスポーターを過剰発現する、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0031】
さらに、6-アミノカプロン酸を微生物生物体内にインポートするトランスポーターをコードする内在性核酸の破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0032】
破壊を有するトランスポーターが、gabPまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0033】
破壊を有するトランスポーターが、csiRまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0034】
破壊を有するトランスポーターが、csiRまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0035】
さらに、グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする第3の外来核酸を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0036】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、GdhAまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0037】
第3の外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0038】
第3の外来核酸がエピソームである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
第3の外来核酸がグルタミン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現する、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0039】
さらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0040】
破壊が、rcsAまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0041】
破壊が、cpsBまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0042】
破壊が、cpsGまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0043】
破壊が、cpsBGの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
一態様では、本開示は、6-アミノカプロン酸を生成する経路、および破壊を有する遺伝子を含む天然に存在しない微生物生物体に関し、破壊された遺伝子は、6-アミノカプロン酸を細胞内にインポートする、6-アミノカプロン酸の内在性トランスポーターをコードする。
【0044】
6-アミノカプロン酸を産生し、かつ微生物生物体による6-アミノカプロン酸の産生が、内在性トランスポーターをコードする遺伝子の破壊を有さない微生物生物体と比べて増加している、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0045】
破壊を有する遺伝子が、gabPまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0046】
破壊を有する遺伝子が、csiRまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0047】
さらに、第2の破壊を有する、csiRまたはそのホモログである第2の遺伝子を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0048】
さらに、グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0049】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、GdhAまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0050】
外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の天然に存在しない微生物生物体。
外来核酸がエピソームである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0051】
外来核酸がグルタミン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現する、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0052】
さらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0053】
破壊が、rcsAまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0054】
破壊が、cpsBまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0055】
破壊が、cpsGまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0056】
破壊が、cpsBGの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
一態様では、本開示は、6-アミノカプロン酸を生成する経路、およびグルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸を含む天然に存在しない微生物生物体に関し、該グルタミン酸デヒドロゲナーゼによって生成されるグルタメートの少なくとも一部が、6-アミノカプロン酸を産生するトランスアミナーゼによって使用される。
【0057】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、GdhAまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0058】
外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の天然に存在しない微生物生物体。
外来核酸がエピソームである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0059】
外来核酸がグルタミン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現する、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0060】
さらに、6-アミノカプロン酸を細胞からエクスポートする、6-アミノカプロン酸のトランスポーターをコードする第2の外来核酸を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0061】
外来トランスポーターが、YbjEまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0062】
外来トランスポーターが、YhiMまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0063】
さらに、YhiMまたはそのホモログをコードする第3の外来核酸を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0064】
第2の外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0065】
第2の外来核酸がエピソームである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
第2の外来核酸がトランスポーターを過剰発現する、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0066】
さらに、6-アミノカプロン酸を細胞内にインポートする、6-アミノカプロン酸の内在性トランスポーターをコードする、破壊を有する遺伝子を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0067】
破壊を有する内在性トランスポーターが、gabPまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0068】
破壊を有する内在性トランスポーターが、csiRまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0069】
破壊を有する内在性トランスポーターが、csiRまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0070】
さらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0071】
破壊が、rcsAまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0072】
破壊が、cpsBまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0073】
破壊が、cpsGまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0074】
破壊が、cpsBGの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
一態様では、本開示は、6-アミノカプロン酸を生成する経路、および微生物生物体のムコイド表現型を軽減する、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む天然に存在しない微生物生物体に関する。
【0075】
破壊が、破壊を有さない天然に存在しない微生物生物体と比べて、6-アミノカプロン酸の産生を増加させる、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0076】
破壊が、rcsAまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0077】
破壊が、cpsBまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0078】
破壊が、cpsGまたはそのホモログの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0079】
破壊が、cpsBGの破壊である、前記の天然に存在しない微生物生物体。
さらに、6-アミノカプロン酸のトランスポーターをコードする外来核酸を含む天然に存在しない微生物生物体であって、外来トランスポーターは、6-アミノカプロン酸を細胞からエクスポートする。
【0080】
トランスポーターが、YbjEまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0081】
トランスポーターが、YhiMである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
さらに、YhiMまたはそのホモログをコードする第2の核酸を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0082】
外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の天然に存在しない微生物生物体。
外来核酸がエピソームである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0083】
外来核酸がトランスポーターを過剰発現する、前記の天然に存在しない微生物生物体。
さらに、6-アミノカプロン酸を微生物生物体内にインポートするトランスポーターをコードする遺伝子の破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0084】
破壊が、gabPまたはそのホモログ内にある、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0085】
破壊が、csiRまたはそのホモログ内にある、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0086】
さらに、csiRまたはそのホモログ内に第2の破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0087】
さらにグルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0088】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、GdhAまたはそのホモログである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0089】
外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の天然に存在しない微生物生物体。
外来核酸がエピソームである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0090】
外来核酸がグルタミン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現する、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0091】
一態様では、本開示は、C6生成物を生成する経路を含む天然に存在しない微生物生物体に関し、該天然に存在しない微生物生物体は、C6生成物を細胞からエクスポートする、C6生成物のトランスポーターをコードする外来核酸を含む。
【0092】
微生物生物体によるC6生成物の産生が、外来核酸を有さない天然に存在しない微生物生物体と比べて増加している、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0093】
外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の天然に存在しない微生物生物体。
外来核酸がエピソームである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0094】
外来核酸がトランスポーターを過剰発現する、前記の天然に存在しない微生物生物体。
さらに、C6生成物を微生物生物体内にインポートするトランスポーターをコードする遺伝子の破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0095】
さらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、請求項86に記載の天然に存在しない微生物生物体。
【0096】
さらに、rcsAまたはそのホモログの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0097】
さらに、cpsBGの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
さらに、cpsBまたはそのホモログの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0098】
さらに、cpsGまたはそのホモログの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0099】
一態様では、本開示は、C5~C14生成物を生成する経路、およびC5~C14生成物を細胞からエクスポートする、C5~C14生成物のトランスポーターをコードする外来核酸を含む天然に存在しない微生物生物体に関する。
【0100】
微生物生物体によるC5~C14生成物の産生が、外来核酸を有さない天然に存在しない微生物生物体と比べて増加している、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0101】
外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の天然に存在しない微生物生物体。
外来核酸がエピソームである、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0102】
外来核酸がトランスポーターを過剰発現する、前記の天然に存在しない微生物生物体。
さらに、C5~C14生成物を微生物生物体内にインポートするトランスポーターをコードする遺伝子の破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0103】
さらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0104】
さらに、rcsAまたはそのホモログの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0105】
さらに、cpsBGの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
さらに、cpsBまたはそのホモログの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0106】
さらに、cpsGまたはそのホモログの破壊を含む、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0107】
微生物生物体による6-アミノカプロン酸の産生が、グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸を有さない天然に存在しない微生物と比べて増加している、前記の天然に存在しない微生物生物体。
【0108】
一態様では、本開示は、請求項1に記載の天然に存在しない微生物生物体を準備する工程;および該天然に存在しない微生物生物体を、6-アミノカプロン酸が産生される条件下の培地中で培養する工程を含む、6-アミノカプロン酸を生成する方法に関する。
【0109】
さらに、6-アミノカプロン酸を、微生物生物体から培地に輸送する工程を含む、前記の方法。
【0110】
外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の方法。
外来核酸がエピソームである、前記の方法。
【0111】
外来核酸がトランスポーターを過剰発現する、前記の方法。
外来核酸が、YbjEもしくはそのホモログ、またはYhiMもしくはそのホモログをコードする、前記の方法。
【0112】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、6-アミノカプロン酸を微生物生物体内にインポートするトランスポーターをコードする遺伝子の破壊を含む、前記の方法。
【0113】
該遺伝子が、gabPまたはcsiRである、前記の方法。
天然に存在しない微生物生物体がさらに、グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸を含む、前記の方法。
【0114】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の方法。
【0115】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸がエピソームである、前記の方法。
【0116】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸が、グルタミン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現する、前記の方法。
【0117】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、GdhAまたはそのホモログである、前記の方法。
天然に存在しない微生物生物体がさらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、前記の方法。
【0118】
外来トランスポーターがybjEであって、天然に存在しない微生物生物体がさらに、gabPの破壊、rcsAの破壊、および外来グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含む、前記の方法。
【0119】
一態様では、本開示は、請求項23に記載の天然に存在しない微生物生物体を得る工程;該天然に存在しない微生物生物体を、6-アミノカプロン酸が産生される条件下の培地中で培養する工程を含む、6-アミノカプロン酸を生成する方法に関する。
【0120】
破壊された遺伝子がgabPまたはcsiRである、前記の方法。
天然に存在しない微生物生物体がさらに、グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸を含む、前記の方法。
【0121】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の方法。
【0122】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸がエピソームである、前記の方法。
【0123】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸が、グルタミン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現する、前記の方法。
【0124】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼがGdhAである、前記の方法。
天然に存在しない微生物生物体がさらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、前記の方法。
【0125】
破壊を有するトランスポーターがgabPであって、天然に存在しない微生物生物体がさらに、rcsAの破壊、および外来グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を含む、前記の方法。
【0126】
一態様では、本開示は、請求項38に記載の天然に存在しない微生物生物体を準備する工程;該天然に存在しない微生物生物体を、6-アミノカプロン酸が産生される条件下の培地中で培養する工程;および6-アミノカプロン酸を、微生物生物体から培地に輸送する工程を含む、6-アミノカプロン酸を生成する方法に関する。
【0127】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の方法。
【0128】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸がエピソームである、前記の方法。
【0129】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸が、グルタミン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現する、前記の方法。
【0130】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、GdhAまたはそのホモログである、前記の方法。
天然に存在しない微生物生物体がさらに、6-アミノカプロン酸を細胞からエクスポートする、6-アミノカプロン酸のトランスポーターをコードする外来核酸を含む、前記の方法。
【0131】
外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の方法。
外来核酸がエピソームである、前記の方法。
【0132】
外来核酸がトランスポーターを過剰発現する、前記の方法。
外来核酸が、YbjEもしくはそのホモログ、またはYhiMもしくはそのホモログをコードする、前記の方法。
【0133】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、6-アミノカプロン酸を微生物生物体内にインポートするトランスポーターの破壊を含む、前記の方法。
【0134】
破壊された遺伝子が、gabPもしくはそのホモログ、またはcsiRもしくはそのホモログである、前記の方法。
【0135】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、前記の方法。
【0136】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、gabPの破壊、rcsAの破壊、およびYbjEをコードする外来核酸を含む、前記の方法。
【0137】
一態様では、本開示は、請求項60に記載の天然に存在しない微生物生物体を準備する工程;該天然に存在しない微生物生物体を、6-アミノカプロン酸が産生される条件下の培地中で培養する工程;および6-アミノカプロン酸を、微生物生物体から培地に輸送する工程を含む、6-アミノカプロン酸を生成する方法に関する。
【0138】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、6-アミノカプロン酸のトランスポーターをコードする少なくとも1つの外来核酸を含み、外来トランスポーターが、6-アミノカプロン酸を細胞からエクスポートする、前記の方法。
【0139】
外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の方法。
外来核酸がエピソームである、前記の方法。
【0140】
外来核酸がトランスポーターを過剰発現する、前記の方法。
外来核酸が、YbjEもしくはそのホモログ、またはYhiMもしくはそのホモログをコードする、前記の方法。
【0141】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、6-アミノカプロン酸を微生物生物体内にインポートするトランスポーターをコードする遺伝子の破壊を含む、前記の方法。
【0142】
該遺伝子が、gabPもしくはそのホモログ、またはcsiRもしくはそのホモログである、前記の方法。
【0143】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、外来グルタミン酸デヒドロゲナーゼを含む、前記の方法。
【0144】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸が、染色体に組み込まれている、前記の方法。
【0145】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸がエピソームである、前記の方法。
【0146】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼをコードする外来核酸が、グルタミン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現する、前記の方法。
【0147】
グルタミン酸デヒドロゲナーゼが、GdhAまたはそのホモログである、前記の方法。
一態様では、本開示は、請求項82に記載の天然に存在しない微生物生物体を準備する工程;該天然に存在しない微生物生物体を、C6生成物が産生される条件下の培地中で培養する工程;およびC6生成物を、微生物生物体から培地に輸送する工程を含む、C6生成物を生成する方法に関する。
【0148】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、C6生成物を微生物生物体内にインポートするトランスポーターの破壊を含む、前記の方法。
【0149】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、前記の方法。
【0150】
一態様では、本開示は、請求項93に記載の天然に存在しない微生物生物体を準備する工程;該天然に存在しない微生物生物体を、C5~C14生成物が産生される条件下の培地中で培養する工程;およびC5~C14生成物を、微生物生物体から培地に輸送する工程を含む、C5~C14生成物を生成する方法に関する。
【0151】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、C6生成物を微生物生物体内にインポートするトランスポーターの破壊を含む、前記の方法。
【0152】
天然に存在しない微生物生物体がさらに、rcsA、cpsB、cpsG、またはcpsBGの破壊を含む、前記の方法。
【図面の簡単な説明】
【0153】
図1】スクシニル-CoAとアセチル-CoAとから、6-アミノカプロン酸、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、およびカプロラクタムへの例示的経路を示す。酵素は、以下のとおり指定される:A)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、B)3-オキソアジピル-CoAレダクターゼ、C)3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、D)5-カルボキシ-2-ペンテノイル-CoAレダクターゼ、E)3-オキソアジピル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ、F)3-オキソアジピル-CoAシンターゼ、G)3-オキソアジピル-CoAヒドロラーゼ、H)3-オキソアジピン酸レダクターゼ、I)3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、J)5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクターゼ、K)アジピル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ、L)アジピル-CoAシンターゼ、M)アジピル-CoAヒドロラーゼ、N)アジピル-CoAレダクターゼ(アルデヒド形成)、O)6-アミノカプロン酸トランスアミナーゼ、P)6-アミノカプロン酸デヒドロゲナーゼ、Q)6-アミノカプロイル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ、R)6-アミノカプロイル-CoAシンターゼ、S)アミドヒドラーゼ、T)自発的環化、U)6-アミノカプロイル-CoAレダクターゼ(アルデヒド形成)、V)HMDAトランスアミナーゼ、W)HMDAデヒドロゲナーゼ、X)アジピン酸レダクターゼ、Y)アジピン酸キナーゼ、Z)アジピルリン酸レダクターゼ。
図2A】スクシニル-CoAとアセチル-CoAとから、エクスポートされる6-アミノカプロン酸への例示的経路を示す。
図2B】外来グルタミン酸デヒドロゲナーゼの発現による6-アミノカプロン酸の産生に関する棒グラフを示す。左から1番目のバーは、対照である;左から2番目のバーは、低いGDH発現である;左から3番目のバーは、GDHの中程度発現である;左から4番目のバーは、GDHの高発現である。
図2C】外来グルタミン酸デヒドロゲナーゼの発現による6-アミノカプロン酸の産生に関するグラフを示す。上方の線は、中程度のGDH発現であり、中位の線は、GDHの高発現であり、最下方の線は対照である。
図3】リジンを起点として使用した、6-アミノカプロン酸およびアジペートの合成に関する例示的経路を示す。
図4】アジピル-CoAを起点として使用した、例示的カプロラクタム合成経路を示す。
図5】ピルベートとコハク酸セミアルデヒドとから6-アミノカプロエートへの例示的経路を示す。酵素は、A)HODHアルドラーゼ、B)OHEDヒドラターゼ、C)OHEDレダクターゼ、D)2-OHDデカルボキシラーゼ、E)アジピン酸セミアルデヒドアミノトランスフェラーゼおよび/またはアジピン酸セミアルデヒドオキシドレダクターゼ(アミノ化)、F)OHEDデカルボキシラーゼ、G)6-OHEレダクターゼ、H)2-OHDアミノトランスフェラーゼおよび/または2-OHDオキシドレダクターゼ(アミノ化)、I)2-AHDデカルボキシラーゼ、J)OHEDアミノトランスフェラーゼおよび/またはOHEDオキシドレダクターゼ(アミノ化)、K)2-AHEレダクターゼ、L)HODHギ酸リアーゼおよび/またはHODHデヒドロゲナーゼ、M)3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、N)2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼ、O)アジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、P)OHEDギ酸リアーゼおよび/またはOHEDデヒドロゲナーゼ、Q)2-OHDギ酸リアーゼおよび/または2-OHDデヒドロゲナーゼである。省略形は、HODH=4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタン-1,7-ジオエート、OHED=2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-ジオエート、2-OHD=2-オキソヘプタン-1,7-ジオエート、2-AHE=2-アミノヘプタ-4-エン-1,7-ジオエート、2-AHD=2-アミノヘプタン-1,7-ジオエート、および6-OHE=6-オキソヘキサ-4-エノエートである。
図6】6-アミノカプロエートからヘキサメチレンジアミンへの例示的経路を示す。酵素は、A)6-アミノカプロン酸キナーゼ、B)6-AHOPオキシドレダクターゼ、C)6-アミノカプロン酸セミアルデヒドアミノトランスフェラーゼおよび/または6-アミノカプロン酸セミアルデヒドオキシドレダクターゼ(アミノ化)、D)6-アミノカプロエートN-アセチルトランスフェラーゼ、E)6-アセトアミドヘキサン酸キナーゼ、F)6-AAHOPオキシドレダクターゼ、G)6-アセトアミドヘキサナールアミノトランスフェラーゼおよび/または6-アセトアミドヘキサナールオキシドレダクターゼ(アミノ化)、H)6-アセトアミドヘキサンアミンN-アセチルトランスフェラーゼおよび/または6-アセトアミドヘキサンアミンヒドロラーゼ(アミド)、I)6-アセトアミドヘキサノエートCoAトランスフェラーゼおよび/または6-アセトアミドヘキサノエートCoAリガーゼ、J)6-アセトアミドヘキサノイル-CoAオキシドレダクターゼ、K)6-AAHOPアシルトランスフェラーゼ、L)6-AHOPアシルトランスフェラーゼ、M)6-アミノカプロエートCoAトランスフェラーゼおよび/または6-アミノカプロエートCoAリガーゼ、N)6-アミノカプロイル-CoAオキシドレダクターゼである。省略形は、6-AAHOP=[(6-アセトアミドヘキサノイル)オキシ]ホスホネートおよび6-AHOP=[(6-アミノヘキサノイル)オキシ]ホスホネートである。
図7】1,6-ヘキサンジオールをもたらす例示的生合成経路を示す。A)は、6ACAから6-アミノカプロイル-CoAへの変換を触媒する、6-アミノカプロイル-CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼである;B)は、6-アミノカプロイル-CoAから6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換を触媒する6-アミノカプロイル-CoAレダクターゼである;C)は、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドから6-アミノヘキサノールへの変換を触媒する6-アミノカプロン酸セミアルデヒドレダクターゼである;D)は、6ACAから6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換を触媒する6-アミノカプロン酸レダクターゼである;E)は、アジピル-CoAからアジピル酸セミアルデヒドへアジピル-CoAレダクターゼである;F)は、アジピン酸セミアルデヒドから6-ヒドロキシヘキサノエートへの変換を触媒するアジピン酸セミアルデヒドレダクターゼである;G)は、6-ヒドロキシヘキサノエートから6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼである;H)は、6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAから6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAレダクターゼである;I)は、6-ヒドロキシヘキサナールからHDOへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサナールレダクターゼである;J)は、6-アミノヘキサノールから6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-アミノヘキサノールアミノトランスフェラーゼまたはオキシドレダクターゼである;K)は、6-ヒドロキシヘキサノエートから6-ヒドロキシヘキサナールへの変換を触媒する6-ヒドロキシヘキサン酸レダクターゼである;L)は、ADAからアジピン酸セミアルデヒドへの変換を触媒するアジピン酸レダクターゼである;およびM)は、アジピル-CoAからADAへの変換を触媒するアジピル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、またはシンターゼである。
図8】アジペートまたはアジピル-CoAからカプロラクトンへの例示的経路を示す。酵素は、Aが、アジピル-CoAレダクターゼ、Bが、アジピン酸セミアルデヒドレダクターゼ、Cが、6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAトランスフェラーゼまたはシンテターゼ、Dが、6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAシクラーゼまたは自発的環化、Eが、アジピン酸レダクターゼ、Fが、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、シンテターゼまたはヒドロラーゼ、Gが、6-ヒドロキシヘキサン酸シクラーゼ、Hが、6-ヒドロキシヘキサン酸キナーゼ、Iが、6-ヒドロキシヘキサノイルリン酸シクラーゼまたは自発的環化、Jが、ホスホトランス-6-ヒドロキシヘキサノイラーゼである。
図9A】野生型speABを有する株と比べた、ΔspeABを有する株中の副産物の比率を示す。
図9B】野生型speABを有する株と比べた、ΔspeABを有する株中の副産物の力価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0154】
詳細な説明
本開示の教示は、記載される特定の実施形態に限定されないため、当然のことながら異なり得ると理解されるものである。同じく、本明細書で使用する術語は、単に特定の例示を記載する目的のためであり、限定的であるとは意図されないと理解される。なぜなら、本教示の範囲は、添付クレームによってのみ限定されるからである。
【0155】
異なる定義がない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法、装置、および材料が、本発明の実践において使用できる。以下の定義は、本明細書で頻繁に使用する特定の用語を理解しやすくするために提供されており、本開示の範囲を限定するとは意図されない。本明細書で言及されるすべての文書(例えば、特許出願または特許)は、参照によりその全体が組み込まれている。
【0156】
本明細書および添付クレームで使用する単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、複数の指示対象も含むと明記する。さらに、クレームは、任意の要素を除外するために選出できると明記される。そのため、この記載は、「solely」、「only」等のような除外的術語をクレーム要素の列挙と関連して使用する際の、または「negative」限定を使用する際の先行的な根拠として使用されると意図される。物質の濃度またはレベルに関して与えられる数値限定は、文脈が明らかに異なる指定をしない限り、おおよそであると意図される。したがって、濃度が(例えば)10μgであると示されている場合、濃度は、少なくともおよそまたは約10μgであると理解されるものと意図される。
【0157】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載および例証される個々の例示の各々は、個別の成分および特徴を有し、それらは、本教示の範囲または趣旨から逸脱することなしに、他のいくつかの例示のいずれかの特徴から容易に分離され得る、または合体され得る。列挙される任意の方法は、列挙されるイベントの順番または論理的に可能な他の任意の順番で行い得る。
【0158】
例示的アミド化合物、例えば、ナイロン中間体は、図1に記載される経路を使用して生合成され得る。図1の経路は、遺伝子組換え(genetically modified)細胞、例えば、本明細書に記載されるもの(例えば、天然に存在しない微生物)において提供され得る。操作型細胞は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、および/またはヘキサメチレンジアミンを産生するために十分な量で発現される経路酵素をコードする少なくとも1つの外来核酸を含み得る。
【0159】
操作型経路は、図1に記載されるHMD経路であり得る。HMD経路は、本明細書に記載される遺伝子組換え細胞(例えば、天然に存在しない微生物)において提供することができ、HMD経路は、HMDを産生するために十分な量で発現されるHMD経路酵素をコードする少なくとも1つの外来核酸を含む。酵素は、以下を含み得る。1Aは、3-オキソアジピル-CoAチオラーゼである;1Bは、3-オキソアジピル-CoAレダクトランスアミナーゼ(reductransaminasee)である;1Cは、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラトランスアミナーゼ(dehydratransaminasee)である;1Dは、アジピン酸セミアルデヒドレダクトランスアミナーゼである;1Eは、3-オキソアジピル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼである;1Fは、3-オキソアジピル-CoAシンターゼである;1Gは、3-オキソアジピル-CoAヒドロラーゼである;1Hは、3-オキソアジピン酸レダクトランスアミナーゼである;1Iは、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラトランスアミナーゼである;1Jは、5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクトランスアミナーゼである;1Kは、アジピル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼである;1Lは、アジピル-CoAシンターゼである;1Mは、アジピル-CoAヒドロラーゼである;1Nは、アジピル-CoAレダクトランスアミナーゼである(アルデヒド形成);1Oは、6-アミノカプロン酸トランスアミナーゼである;1Pは、6-アミノカプロン酸デヒドロゲナーゼである;1Qは、6-アミノカプロイル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼである;1Rは、6-アミノカプロイル-CoAシンターゼである;1Sは、アミドヒドロラーゼである;1Tは、自発的環化である;1Uは、6-アミノカプロイル-CoAレダクトランスアミナーゼである(アルデヒド形成);1Vは、HMDAトランスアミナーゼである;および1Wは、HMDAデヒドロゲナーゼである。
【0160】
図1と関連して、天然に存在しない微生物は、以下の経路:ABCDNOPQRUVW、ABCDNOPQRT、またはABCDNOPSの1つまたは複数を有し得る。他の例示的経路が、アジピン酸セミアルデヒドを産生し得て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第8,377,680号明細書に記載されるものを含む。
【0161】
図1はさらに、トランスフェラーゼまたはシンターゼ酵素による、6-アミノカプロエートから6-アミノカプロイル-CoA(図1、ステップQまたはR)に続く、6-アミノカプロイル-CoAの自発的環化がカプロラクタムを形成する(図1、ステップT)経路を示す。6-アミノカプロエートは同じく、6-アミノカプロイル-CoAへと活性化され得て(図1、ステップQまたはR)、その後に還元(図1、ステップU)およびアミノ化(図1、ステップVまたはW)が続いてHMDAが形成される。6-アミノカプロン酸は、6-アミノカプロイル-CoAの代わりに6-アミノカプロイル-ホスフェートへと活性化され得る。6-アミノカプロイル-ホスフェートは、自発的環化し得て、カプロラクタムを形成する。6-アミノカプロイル-ホスフェートは、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドに還元され得て、次いで、図1に示すように、HMDAに変換され得る。
【0162】
本明細書に記載される天然に存在しない微生物生物体は、トランスポーターの操作を含み得て、例えば、望ましい生成物のエクスポートを増大させるための微生物生物体の操作を含む。微生物生物体はさらに、望ましい生成物のインポートを減少させるために操作されてもよい。微生物生物体内のトランスポーターのそのような操作は、望ましい生成物の、微生物生物体からの産生を増加させ得る。望ましい生成物の、微生物生物体からのエクスポート(または分泌)、および/または望ましい生成物の、微生物生物体内へのインポートの阻害は、微生物生物体内の生成物の濃度を下げて、微生物生物体細胞内のより多くの反応物質を生成物にすることにより、生成物形成を高め得る。望ましい生成物の産生は同じく、該望ましい生成物用の反応物質および/または中間体のインポートの増大(および/またはエクスポートの低下)により、増加し得る。望ましい生成物の産生は同じく、該望ましい生成物から生成される生成物(該望ましい生成物がその反応物質または中間体である生成物)のインポートの増大(および/またはエクスポートの低下)により、増加し得る。望ましい生成物の産生は、該望ましい生成物を生成する経路と炭素を競合する、中間体および生成物の産生の低下により、増加し得る。
【0163】
以下の実施例2に記載されるように、6-アミノカプロン酸の産生は、微生物生物体からの、6-アミノカプロン酸の分泌/エクスポートにより限定される。6-アミノカプロン酸のエクスポート(分泌)が増大するように微生物生物体を操作すると、微生物生物体から得られる、細胞単位当たり6-アミノカプロン酸の量が増加する。例えば、大腸菌に由来する、6-アミノカプロン酸のエクスポーターlysO(別名 ybjE)および/またはyhiMを発現するように微生物生物体を操作すると、6-アミノカプロン酸の量が増加する。同様に、6-アミノカプロン酸のインポーターを阻害するように微生物生物体を操作すると、6-アミノカプロン酸の産生が、同じく増加する。例えば、大腸菌に由来する、6-アミノカプロン酸のインポーターgabPもしくはそのホモログ、および/またはcsiRもしくはそのホモログを破壊すると、6-アミノカプロン酸の産生が増加する。破壊は、配列番号5の配列を有する核酸、または配列番号5に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の相同性を有する核酸配列において行われ得る。破壊は同じく、配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸において行われ得る。破壊は、配列番号7の配列を有する核酸、または配列番号7に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の相同性を有する核酸配列において行われ得る。破壊は同じく、配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号8に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の相同性を有するアミノ酸配列をコードする核酸において行われ得る。
【0164】
一態様では、6-アミノカプロン酸を生成する操作型微生物生物体が、lysO(別名 ybjE)もしくはそのホモログ、および/もしくはyhiMもしくはそのホモログ、および/もしくは以下の表16中の適切な酵素の1つもしくは複数を過剰発現してもよく、ならびに/またはgabPもしくはそのホモログの、および/もしくはcsiRもしくはそのホモログの破壊を有してもよい。他の態様では、6-アミノカプロン酸を生成する操作型微生物生物体が、以下の表16中の適切な酵素の1つまたは複数を過剰発現してもよく、例えば、配列番号1、17(acc.#P75826)、19(acc.#A0A3S6EWD1)、21(acc.#A0A3R0JPG3)、23(acc.#A0A2X5EV87)、25(acc.#A0A0B6FGQ0)、27(acc.#A0A0T9T4V6)、29(acc.#A0A3X9TWR2)、31(acc.#A0A0Q4NI65)、57(acc.#A0A447V4H2)、59(acc.#A0A085HLU7)、61(acc.#A0A085AG20)、63(acc.#A0A2X2DZ65)、65(UniParc ID UPI00045BA014)、67(acc.#A0A1B9PQG6)、69(acc.#A0A0Q9CPY2)、71(acc.#A0A2N5KTP3)、73(acc.#A0A2U3BBA9)、75(acc.#A0A3S0AXG7)、77(acc.#A0A198FET8)、79(acc.#A0A1C5WGH0)、81(acc.#A0A3E4Z618)、83(acc.#A0A0B6XA16)、85(acc.#A0A0G3CKY0)、87(acc.#A0A2N4W2H6)、89(acc.#A0A101K111)、91(acc.#A0A356QXL1)、および/または93(acc.#W3V0I2)の核酸、もしくは配列番号1、17、19、21、23、25、27、29、31、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有する1つもしくは複数の核酸配列、および/もしくは配列番号3、もしくは配列番号3に対して99%、95%、90%、80%もしくは70%の相同性を有する核酸配列を含み、ならびに/または配列番号5、もしくは配列番号5に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有する核酸配列、および/もしくは配列番号7、もしくは配列番号7に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有する核酸配列の破壊を有してもよい。他の態様では、6-アミノカプロン酸を生成する操作型微生物生物体が、配列番号2、4、18、20、22、24、26、28、30、32、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、および/もしくは94の1つもしくは複数、もしくは配列番号2、4、18、20、22、24、26、28、30、32、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、および/もしくは94に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有する1つもしくは複数のポリペプチドをコードする核酸を過剰発現してもよく、ならびに/または配列番号6、もしくは配列番号6に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸、および/もしくは配列番号8、もしくは配列番号8に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有するポリペプチドをコードする核酸の破壊を有してもよい。
【0165】
他の望ましい生成物の合成を増加させるために微生物生物体内へと操作され得る他のインポーターは、例えば、溶質輸送体(SLC)トランスポーターを含む。SLCは、膜を介して溶質(イオン、代謝物、ペプチド、薬物、リガンド、他の有機小分子等)を輸送する膜タンパク質であり得る。SLCは、能動トランスポーターであり得て、エネルギー(例えば、ATPまたはイオン勾配)を利用して、微生物生物体内へと溶質(例えばリガンド)を輸送する。SLCは、溶質(例えばリガンド)の輸送にエネルギーを利用しない受動トランスポーターであり得る。例示的SLCは、例えば、そのすべてが、参照により全体があらゆる目的のために組み込まれているFathら、Microbiol. Rev. 57巻:995~1017頁(1993);Moussatovaら、Biochim. Biopys. Acta Biomemb. 9巻:1757~1771頁(2008);Linら、Nat. Rev. Drug Discov. 14巻:543~560頁(2015);Hedigerら、Mol. Aspects Med. 34巻:95~107頁(2013);Yeら、PLoS ONE 9巻:e88883(2014);Schlessingerら、Curr. Top. Med. Chem. 13巻:843~856頁(2013);Saier、Microbiol. 146巻:1775~1795頁(2000);SLC Tables at slc.bioparadigms.org;HUGO Gene Nomenclature for SLCs at genenames.org/cgi-bin/genefamilies/set/752に記載される。SLC内に含まれるのは、例えば、チャネル、ポア、電気化学ポテンシャル駆動トランスポーター、一次性能動トランスポーター、グループ輸送体、電子伝達体、ATP駆動ポンプ(ATP powered pump)、イオンチャネル、およびトランスポーターであり、単輸送体、共輸送体、およびアンチポータを含む。
【0166】
合成経路にトランスアミナーゼを含むアミン化合物の産生は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼの活性の上昇により増加し得る。アミン生成物のアミノ基を得るためにグルタミン酸を利用してグルタミン酸からαーケトグルタル酸を産生するトランスアミナーゼは、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(「GDH」)の発現(および/または活性)の上昇により、生成物の産生を増加させ得る。グルタミン酸デヒドロゲナーゼは、α-ケトグルタル酸とNH4とからグルタミン酸を生成する大きな負のギブス自由エネルギーを有するため、微生物細胞へのGDHの添加は、トランスアミナーゼと反応する過剰のグルタミン酸(大量のこの反応物質)および非アミノ化中間体を産生し得る。アンモニウムのトランスポーターも同じく、トランスアミナーゼからの生成物の産生を増加するために使用され得る。アンモニウムのインポーターの活性の上昇および/またはアンモニウムのエクスポーターの活性の低下により、GDH用のこの反応物質の細胞内濃度が上昇し得て、それがさらに、GDHによるグルタミン酸の産生を高め、さらに、トランスアミナーゼによる生成物の産生を高める。
【0167】
例えば、以下の実施例5および9に示すように、GDH(例えば、gdhAまたはそのホモログ)の過剰発現は、6-アミノカプロン酸の産生を高める。発現されるGDHはさらに、以下の実施例5または表17からの酵素の1つまたは複数によりコードされ得て、例えば、配列番号9、33(acc.#A0A1F9IMB6)、35(acc.#C7RFH9)、37(acc.#A0A3M1CG83)、39(acc.#A0A095X4D3)、41(acc.#A0A2S7L1V8)、43(acc.#W5WWS1)、45(acc.#P94316)、47(acc.#AAA25611)、53(acc.#A0A1V4WK45)、および/もしくは55(acc.#a0A367ZGM1)の1つもしくは複数、または配列番号9、33、35、37、39、41、43、45、47、53、および/もしくは55に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有する1つもしくは複数の核酸配列を含む。発現されるGDHは同じく、配列番号10、34、36、38、40、42、44、46、48、54、および/もしくは56の1つもしくは複数のアミノ酸配列、または配列番号10、34、36、38、40、42、44、46、48、54、および/もしくは56に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有する1つもしくは複数のアミノ酸配列をコードする1つまたは複数の核酸から発現され得る。図2Aは、GDHが過剰のグルタミン酸を産生し、この反応物質の濃度を上昇させて、トランスアミナーゼ反応を6-アミノカプロン酸の方向に駆動することを示す。図2Aに示すように、6-アミノカプロン酸を形成するトランスアミナーゼ反応のギブス自由エネルギーは、ゼロに近いため、反応物質および生成物(6-アミノカプロン酸)は、等量近くに存在する。GDHのグルタミン酸産生に関する高い負のギブス自由エネルギーは、GDHが、反応物質(αーケトグルタル酸およびアンモニウム)と比べて大過剰の生成物(グルタミン酸)を産生することを意味する。過剰のグルタミン酸は、トランスアミナーゼ反応を6-アミノカプロン酸の方向に駆動し得て、この望ましい生成物の量を増やす。グルタミン酸の産生は同じく、例えば、大腸菌由来のアンモニウムトランスポーターamtB、大腸菌由来のamtBのW148Lバリアント、および/またはC.glutamicum由来のamtAの過剰発現により増加し得る。これらのアンモニウムトランスポーターは、微生物生物体内のアンモニウム濃度を高め得て、より多くのグルタミン酸を産生するようにGDH反応を駆動する。
【0168】
望ましい生成物の産生はさらに、微生物生物体からムコイド表現型を除去することにより増加し得る。ムコイド表現型を有する微生物生物体は、細胞外多糖を産生し、いくつかの微生物生物体では、大量の細胞炭素を意味することになる。ムコイド表現型は、免疫監視からの逃避およびバイオフィルムの形成と関連し、その状況の宿主中での微生物生物体にとって有利である。ムコイド表現型はさらに、望ましい生成物の製造にとって有害である複数の特性と関連する。例えば、ムコイド表現型を有する微生物生物体は、不十分にペレットし、製造培養において都合よくかつ再現性よくは振る舞わない。これらの有害な特性は、微生物生物体からの、望ましい生成物の産生を低下させ得る。ムコイド表現型を除去または軽減/抑制するための微生物生物体の操作は、それらの産生上の問題を緩和し得て、細胞外多糖を生成するために使用される炭素を、望ましい生成物の産生に向けて解放し得るため、それらの望ましい生成物の産生を増加できる。
【0169】
例えば、rcsAもしくはそのホモログ、rcsBもしくはそのホモログ、wcaFもしくはそのホモログ、および/またはcpsBもしくはそのホモログ、および/またはcpsGもしくはそのホモログ、および/またはcpsBGもしくはそのホモログの破壊は、ムコイド表現型をノックアウトし、非ムコイド型である微生物生物体を生成した。破壊は、配列番号11の配列を有する核酸、または配列番号11に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有する核酸配列において行われ得る。破壊は同じく、配列番号12のアミノ酸配列、または配列番号12に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸において行われ得る。破壊は、配列番号13の配列を有する核酸、または配列番号13に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有する核酸配列において行われ得る。破壊は同じく、配列番号14のアミノ酸配列、または配列番号14に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸において行われ得る。破壊は、配列番号15の配列を有する核酸、または配列番号15に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有する核酸配列において行われ得る。破壊は同じく、配列番号16のアミノ酸配列、または配列番号16に対して99%、95%、90%、80%、もしくは70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸において行われ得る。rcsAおよび/またはcpsBGの破壊も望ましい生成物の産生を顕著に増加させたのに対して(実施例6を参照)、rcsBまたはwcaFの破壊は、望ましい生成物の産生を増加させなかった。rcsAまたはcpsBGの破壊を有する微生物生物体は、ムコイド親株(またはrcsBもしくはwcaFが破壊された株)よりも3~4倍多くの6-アミノカプロン酸を産生した。
【0170】
望ましい生成物の産生はさらに、生成される競合する中間体および/または生成物の量の低下により増加し得る。アジピン酸(ADA)が、産生細胞中での副産物である場合、望ましい生成物(例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、および/またはヘキサメチレンジオール)の量は、gabD(コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼNADP)、sad(コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼNAD)、および/またはybfF(アシル-CoAエステラーゼ)の破壊により増加し得る。6-ヒドロキシカプロン酸(6HCA)が副産物である場合、望ましい生成物(例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、および/またはヘキサメチレンジオール)の量は、yghD(II型分泌系タンパク質)、yjgB(アルコールデヒドロゲナーゼ)、および/またはyahK(アルデヒドレダクターゼ)の破壊により増加し得る。ガンマアミノ酪酸(GABA)が副産物である場合、望ましい生成物(例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、および/またはヘキサメチレンジオール)の量は、gabT(4-アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼ)の破壊により増加し得る。
【0171】
以下の表1は、遺伝子、DNA配列、タンパク質配列、登録番号、および遺伝子座タグを列挙する。
【0172】
【表1】
【0173】
ybjEの代表的ホモログは、例えば、以下の表2中のものを含む。
【0174】
【表2】
【0175】
yhiMの代表的ホモログは、例えば、以下の表3中のものを含む。
【0176】
【表3】
【0177】
gabPの代表的ホモログは、例えば、以下の表4中のものを含む。
【0178】
【表4】
【0179】
csiRの代表的ホモログは、例えば、以下の表5中のものを含む。
【0180】
【表5】
【0181】
gdhAの代表的ホモログは、例えば、以下の表6中のものを含む。
【0182】
【表6】
【0183】
rcsAの代表的ホモログは、例えば、以下の表7中のものを含む。
【0184】
【表7】
【0185】
cspBの代表的ホモログは、例えば、以下の表8中のものを含む。
【0186】
【表8】
【0187】
cspGの代表的ホモログは、例えば、以下の表9中のものを含む。
【0188】
【表9】
【0189】
望ましい生成物が6-ヒドロキシカプロン酸(6HCA)である場合、この生成物の産生は、yghD(II型分泌系タンパク質)、yjgB(アルコールデヒドロゲナーゼ)、および/またはyahK(アルデヒドレダクターゼ)を過剰発現するように産生細胞を操作することにより、増大され得る。
【0190】
本明細書に記載される遺伝子組換え細胞(例えば、天然に存在しない微生物)は、ナイロン中間体、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、およびヘキサメチレンジアミンなどを産生する能力があり得る。
【0191】
本明細書で使用する用語「天然に存在しない」は、微生物生物体または微生物に関して使用する場合、該微生物生物体が、上述の種(referenced species)の野生株を含む、上述の種の天然株中で通常は見出されない少なくとも1つの遺伝子変異を有することを意味すると意図される。遺伝子変異は、例えば、代謝ポリペプチドをコードする発現可能な核酸を導入する改変、他の核酸付加、核酸欠失、および/または微生物遺伝物質の他の機能破壊を含む。そのような改変は、例えば、上述の種の異種ポリペプチド、同種ポリペプチド、または異種ポリペプチドおよび同種ポリペプチドの両方に対するコード領域およびその機能的断片を含む。付加的な改変は、例えば、その中での改変が遺伝子またはオペロンの発現を変化させる非コード調節領域を含む。例示的代謝ポリペプチドは、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンまたはレブリン酸生合成経路内の酵素を含む。
【0192】
本明細書で使用する用語「破壊」は、天然の遺伝子またはプロモーターが、宿主細胞中での該遺伝子および/または遺伝子産物の活性が低下するようなかたちで変異、欠失、中断、またはダウンレギュレートされていることを意味する。遺伝子は、全ゲノムDNA配列のノックアウトまたは除去により、完全に(100%)低下し得る。フレームシフト変異、早期終止コドン、重要残基(critical residue)の点変異、または欠失もしくは挿入等の使用は、活性タンパク質の転写および/または翻訳の完全な阻害により、遺伝子産物を完全に(100%)不活性化し得る。
【0193】
代謝改変は、その天然状態から変化している生化学反応に関する。したがって、天然に存在しない微生物は、代謝ポリペプチドをコードする核酸またはその機能的断片に対する遺伝子組換えを有し得る。例示的代謝改変が、本明細書に開示される。
【0194】
本明細書で使用する用語「微生物性」、「微生物生物体」または「微生物」は、交換可能に使用され、かつ古細菌、細菌、真核生物のドメイン内に含まれる、微小細胞として存在する任意の生物体を意味すると意図される。したがって、該用語は、原核細胞もしくは真核細胞、または微小なサイズを有する生物体を含むと意図され、あらゆる種の細菌、古細菌、および真正細菌、ならびに真核微生物、例えば、酵母および真菌などを含む。該用語はさらに、生化学物質の産生のために培養され得る任意の種の細胞培養を含む。
【0195】
本明細書で使用する用語「CoA」または「コエンザイムA」は、活性酵素系を形成するために、その存在が、多くの酵素(アポ酵素)の活性に必要とされる有機補因子または補欠分子族(酵素の非タンパク質部分)を意味すると意図される。コエンザイムAは、ある種の縮合酵素において機能し、アセチル基または他のアシル基の転移、および脂肪酸合成、および酸化、ピルビン酸酸化、および他のアセチル化において作用する。
【0196】
本明細書で使用する、化学式-OOC-(CH2)4-COO-を有する「アジペート」(図1を参照)(IUPAC名はヘキサンジオエート)は、アジピン酸(IUPAC名はヘキサン二酸)の電離型であり、アジペートおよびアジピン酸は、完全に交換可能に使用できると理解され、その天然型または電離型のいずれかでの化合物を指し、その任意の塩形態を含む。具体的な形態はpHに依存することを当業者は理解する。
【0197】
本明細書で使用する、化学式-OOC-(CH2)5-NH2-を有する「6-アミノカプロエート」(図1を参照、6-ACAと省略される)は、6-アミノカプロン酸(IUPAC名は6-アミノヘキサン酸)の電離型であり、6-アミノカプロエートおよび6-アミノカプロン酸は、完全に交換可能に使用できると理解され、その天然型または電離型のいずれかでの化合物を指し、その任意の塩形態を含む。具体的な形態はpHに依存することを当業者は理解する。
【0198】
本明細書で使用する「カプロラクタム」(IUPAC名はアゼパン-2-オン)は、6-アミノヘキサン酸のラクタムである(図1を参照、CPOと省略される)。
【0199】
本明細書で使用する、1,6-ジアミノヘキサンまたは1,6-ヘキサンジアミンとも呼ばれる「ヘキサメチレンジアミン」は、化学式H2N(CH2)6NH2を有する(図1を参照、HMDと省略される)。
【0200】
本明細書で使用する用語「実質的に嫌気性」は、培養または増殖の条件に関して使用する場合、酸素の量が、液体培地中の溶存酸素に関して、飽和の約10%未満であることを意味すると意図される。該用語はさらに、酸素約1%未満の雰囲気で維持される、液体培地または固体培地の密封チャンバを含むと意図される。
【0201】
本明細書で使用する用語「増殖と連関した」は、生化学物質の産生に関して使用する場合、上述の生化学物質の生合成が、微生物の増殖期中に産生されることを意味すると意図される。特定の一実施形態では、増殖と連関した産生が、不可避であり得て、上述の生化学物質の生合成が、微生物の増殖期中に産生される不可避的生成物(obligatory product)であることを意味する。
【0202】
本明細書で使用する「代謝改変」は、その天然状態から変化している生化学反応に関すると意図される。代謝改変は、例えば、反応に関与する酵素をコードする1つまたは複数の遺伝子の機能破壊による、その生化学反応活性の除去を含み得る。
【0203】
本明細書で使用する用語「破壊」、「遺伝子破壊」、またはその文法的に同等な語(grammatical equivalent)は、コード遺伝子産物を不活性にする遺伝子変異を意味すると意図される。該遺伝子変異は、例えば、遺伝子全体の欠失、転写もしくは翻訳に必要とされる調節配列の欠失、切断型(truncated)遺伝子産物をもたらす、遺伝子の一部の欠失であり得るか、またはコード遺伝子産物を不活性化する様々な変異戦略のいずれかにより得る。遺伝子破壊の特に有用な一方法は、完全遺伝子欠失であり、なぜなら天然に存在しない微生物中での遺伝的復帰の発生を軽減または除外するからである。
【0204】
本明細書で使用する「外来」は、上述の分子または上述の活性が、宿主微生物生物体内に導入されることを意味すると意図される。分子は、例えば、コード核酸を、例えば、宿主染色体への組込みにより宿主遺伝物質内に導入することにより、またはプラスミドなどの非染色体遺伝物質として導入され得る。したがって、該用語は、コード核酸の発現に関して使用する場合、コード核酸を、発現可能な形で微生物生物体内に導入することに関する。生合成活性に関して使用する場合、該用語は、宿主参照生物体内に導入される活性に関する。供給源は、例えば、宿主微生物生物体への導入に続いて上述の活性を発現する、同種または異種のコード核酸であり得る。したがって、用語「内在性」は、宿主中に存在する、上述の分子または活性に関する。同様に、該用語は、コード核酸の発現に関して使用する場合、微生物生物体内に含有されるコード核酸の発現に関する。
【0205】
用語「異種」は、上述の種以外の供給源に由来する分子、物質、または活性に関するのに対して、「同種」は、宿主微生物生物体に由来する分子、物質、または活性に関する。したがって、コード核酸の外来性発現は、異種もしくは同種のコード核酸のいずれか一方、または両方ともを利用できる。
【0206】
2つ以上の外来核酸が微生物生物体内に含まれる場合、該外来核酸は、前記で考察されるように、上述のコード核酸または生合成活性に関すると理解される。さらに、本明細書に開示されるように、そのような外来核酸は、別々の核酸分子上、ポリシストロン型核酸分子上で、またはそれらの組合せで宿主微生物生物体内に導入され得て、それでもなお2つ以上の外来核酸と見なされ得ると理解される。例えば、本明細書に開示されるように、微生物生物体は、望ましい経路酵素またはタンパク質をコードする2つ以上の外来核酸を発現するように操作され得る。望ましい活性をコードする2つの外来核酸を、宿主微生物生物体内に導入する場合、2つの外来核酸を、単一核酸として、例えば、単一プラスミド上、別々のプラスミド上で導入してもよく、宿主染色体の単一部位または複数部位において組み込まれてもよく、それでもなお2つの外来核酸と見なされ得ると理解される。同様に、3つ以上の外来核酸を、任意の望ましい組合せ、例えば、宿主染色体に組み込まれない単一プラスミド上、別々のプラスミド上で宿主生物体内に導入してもよく、それらのプラスミドは染色体外エレメントとして存続し、それでもなお2つ以上の外来核酸と見なされ得ると理解される。上述の外来核酸または生合成活性の数は、宿主生物体内に導入される別々の核酸の数ではなく、コード核酸の数または生合成活性の数に関する。
【0207】
天然に存在しない微生物生物体は、安定な遺伝子変異を含有し得て、それは、変化を失うことなく5世代を超えて培養できる微生物に関する。概して、安定な遺伝子変異は、10世代を超えて存続する改変を含み、特に安定な改変は、約25世代を超えて存続し、特に、安定な遺伝子組換えは、50世代超であり、無期限を含む。
【0208】
遺伝子破壊の場合、特に有用である安定な遺伝子変異は遺伝子欠失である。安定な遺伝子変異を導入するための遺伝子欠失の使用は、特に、遺伝子変異前の表現型に復帰する可能性を低下させるために有用である。例えば、生化学物質の、増殖と連動した安定した産生は、例えば、代謝改変のセット内の1つまたは複数の反応を触媒する酵素をコードする遺伝子の欠失により達成され得る。生化学物質の、増殖と連関した産生の安定性はさらに、複数の欠失により高まり得て、破壊された各々の活性に関する複数の代償性復帰の可能性を著しく下げる。
【0209】
当業者は、本明細書で例示される代謝改変を含む遺伝子変異は、適切な宿主生物体、例えば大腸菌など、およびその対応する代謝反応、または望ましい遺伝物質、例えば、望ましい代謝経路の遺伝子などに関して適切な供給源生物体と関連して記載されることを理解する。しかしながら、多種多様な生物体の完全ゲノムシーケンシングおよびゲノミクス分野での高い技能レベルを考慮すると、当業者は、本質的にあらゆる他の生物体に対して、本明細書で提供される教示および手引きを容易に適用できる。例えば、本明細書で例示される、大腸菌の代謝変化は、上述の種以外の種からの同じまたは類似のコード核酸を組み込むことにより、容易に他種に適用できる。そのような遺伝子変異は、例えば、概して、種のホモログ、特に、オルソログ、パラログの遺伝子変異、または非オルソロガス遺伝子置換(nonorthologous gene displacement)を含む。
【0210】
オルソログは、垂直的な系統(vertical descent)により近縁の1つまたは複数の遺伝子であり、異なる生物体での実質的に同じまたは同一の機能を担う。例えば、マウスエポキシドヒドロラーゼおよびヒトエポキシドヒドロラーゼは、エポキシドの加水分解の生物学的機能に関してオルソログと見なされ得る。遺伝子は、例えば、同種であること、または共通祖先からの進化によって近縁であることを示すために十分な量の配列類似性を共有する場合、垂直的な系統により近縁である。遺伝子が、必ずしも配列類似性ではなく、一次配列類似性が識別可能でない範囲内で、それらが共通祖先から進化したことを示すために十分な量の三次元構造を共有する場合、同じくオルソログと見なされ得る。オルソロガスである遺伝子は、約25%~100%のアミノ酸配列同一性の配列類似性を有するタンパク質をコードし得る。25%未満のアミノ酸配列類似性を共有するタンパク質をコードする遺伝子も、その三次元構造が同じく類似性を示す場合、垂直的な系統により生じたと見なされ得る。組織プラスミノーゲン活性化因子およびエラストランスアミナーゼ(elastransaminasee)を含む、酵素のセリンプロテアーゼファミリーの一員は、共通祖先から垂直的な系統により生じたと見なされる。
【0211】
オルソログは、例えば、進化により、構造または全体的活性の点で分岐した遺伝子またはそのコード遺伝子産物を含む。例えば、ある種が2つの機能を示す遺伝子産物をコードし、そのような機能が、第2の種では、別個の遺伝子へと分離されている場合、3つの遺伝子およびその対応する産物は、オルソログであると見なされる。生化学産物の産生には、導入または破壊されることとなる代謝活性を持つオルソロガス遺伝子が、天然に存在しない微生物の構築用に選択されるべきであることを当業者は理解する。分離可能な活性を示すオルソログの一例は、別個の活性が、2つ以上の種間または単一種内での別個の遺伝子産物に分離された場合である。一具体例は、2つの種類のセリンプロテアーゼ活性であるエラストランスアミナーゼタンパク質分解およびプラスミノーゲンタンパク質分解の、プラスミノーゲン活性化因子およびエラストランスアミナーゼとしての別個の分子への分離である。第2の例は、マイコプラズマ5’-3’エキソヌクレアーゼおよびショウジョウバエDNAポリメラーゼIII活性の分離である。第1の種に由来するDNAポリメラーゼは、第2の種に由来するエキソヌクレアーゼまたはポリメラーゼのいずれか一方または両方ともに対してオルソログと見なすことができ、逆もまた同様である。
【0212】
それに対して、パラログは、例えば、重複に続く進化的分岐により近縁であるホモログであり、同一ではないが、類似または共通する機能を有する。パラログは、例えば、同じ種または異なる種に起因または由来し得る。例えば、ミクロソームエポキシドヒドロラーゼ(エポキシドヒドロラーゼI)および可溶性エポキシドヒドロラーゼ(エポキシドヒドロラーゼII)は、パラログと見なされ得る。なぜなら、それらは、同じ種において別個の反応を触媒し、別個の機能を有する、共通祖先から共進化した2つの別個の酵素であるからである。パラログは、同じ種に由来する、互いに著しい配列類似性を有するタンパク質であり、それらが、同種である、または共通祖先からの共進化により近縁であることを示唆する。パラロガスタンパク質ファミリーの群は、HipAホモログ、ルシフェラーゼ遺伝子、ペプチダーゼ等を含む。
【0213】
非オルソロガス遺伝子置換は、異なる種における上述の遺伝子機能を置換できる、ある種に由来する非オルソロガス遺伝子である。置換は、例えば、異なる種における上述の機能と比べて、起源の種において実質的に同じまたは類似の機能を行い得るものを含む。概して、非オルソロガス遺伝子置換は、上述の機能をコードする公知の遺伝子に構造上近縁であるものとして識別可能であるが、構造上あまり近縁でないものの機能的に類似する遺伝子およびその対応する遺伝子産物もなお、本明細書で使用する該用語の意味の範囲内に入る。機能的類似性は、例えば、置換が目指された機能をコードする遺伝子と比べて、非オルソロガス遺伝子の活性部位また結合領域において少なくとも多少の構造的類似性を必要とする。したがって、非オルソロガス遺伝子は、例えば、パラログまたは非近縁遺伝子を含む。
【0214】
したがって、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、またはレブリン酸の生合成能力を有する天然に存在しない微生物生物体を同定および構築する際に、当業者は、本明細書で提供される教示および手引きを特定種に適用することにより、代謝改変の同定が、オルソログの同定および包含または不活性化を含み得ることを理解する。類似または実質的に類似の代謝反応を触媒する酵素をコードするパラログおよび/または非オルソロガス遺伝子置換が、上述の微生物において存在する範囲内で、当業者は同じく、それらの進化的に近縁である遺伝子を利用できる。遺伝子破壊戦略では、破壊の標的とされた酵素活性のあらゆる機能的冗長性が、設計された代謝改変を妨げないことを確保するために、活性を低下させるまたは排除するように、進化的に近縁である遺伝子をさらに、宿主微生物生物体、パラログ、またはオルソログにおいて破壊または欠失してもよい。
【0215】
オルソログ、パラログ、および非オルソロガス遺伝子置換は、当業者に周知の方法により決定され得る。例えば、2つのポリペプチドの核酸配列またはアミノ酸配列の検査が、比較される配列間の配列同一性および類似性を明らかにする。そのような類似性に基づいて、当業者は、共通祖先からの進化を通してタンパク質が近縁であることを示すために十分に類似性が高いかを決定できる。当業者に周知のアルゴリズム、例えば、Align、BLAST、Clustal W等が、生の配列の類似性または同一性を比較および決定し、さらに重みまたはスコアが割り当てられ得る、配列中のギャップの存在または有意性を決定する。そのようなアルゴリズムは同じく、当該技術分野では公知であり、ヌクレオチド配列の類似性または同一性の決定に同様に適用可能である。関連性を決定するために十分な類似性に関するパラメータは、ランダムなポリペプチドにおける統計的類似性または類似マッチを見出す可能性、および決定されたマッチの有意性を計算する周知の方法に基づいて計算する。2つ以上の配列のコンピュータ比較は、望ましければ、同じく、当業者により視覚的に最適化され得る。関連する遺伝子産物またはタンパク質は、高い類似性、例えば、25%~100%の配列同一性を有すると予想され得る。非近縁のタンパク質は、十分なサイズのデータベースをスキャンする場合、偶然に起きると予想されるのと本質的に同じ同一性を有し得る(約5%)。5%から24%の間の配列は、比較される配列が近縁であると結論するために十分な相同性を示す場合も示さない場合もある。データセットのサイズを考慮してそのようなマッチの有意性を決定するための付加的な統計解析が、それらの配列の関連性を決定するために行われ得る。
【0216】
BLASTアルゴリズムを使用して2つ以上の配列の関連性を決定するための例示的パラメータは、例えば、以下に記載されるとおりであり得る。簡単に言うと、アミノ酸配列アライメントは、BLASTPバージョン2.2.29+(2014年1月14日)を使用して、以下のparameTransaminase:マトリクス:0 BLOSUM62;ギャップオープン:11;ギャップ伸長:1;x_ドロップオフ:50;予測:10.0;文字サイズ:3;フィルター:オンで行われ得る。核酸配列アライメントは、BLASTNバージョン2.0.6(1998年9月16日)を使用して、以下のparameTransaminase:マッチ:1;ミスマッチ:-2;ギャップオープン:5;ギャップ伸長:2;x_ドロップオフ:50;予測:10.0;文字サイズ:11;フィルター:オフで行われ得る。例えば、比較の厳密性を高めるまたは低めるために、および2つ以上の配列の関連性を決定するために、前記のparameTransaminaseに対して行い得る改変が当業者には公知である。
【0217】
図中に記載されるものを含む、本明細書に開示される経路のいずれかが、望みどおりに任意の経路の中間体または生成物を産生する天然に存在しない微生物生物体を生成するために使用可能であると理解される。本明細書に開示されるように、そのような、中間体を産生する微生物生物体を、望ましい生成物を産生する下流経路酵素を発現する他の微生物生物体と組み合わせて使用してもよい。しかしながら、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、またはヘキサメチレンジアミンを産生する天然に存在しない微生物生物体を、望ましい生成物としての中間体を産生するために利用してもよいことが理解される。
【0218】
代謝反応、その反応物質もしくは生成物に一般的に関連して、または上述の代謝反応、反応物質、もしくは生成物と関連するか、もしくは触媒する酵素をコードする1つもしくは複数の核酸もしくは遺伝子に具体的に関連して、本明細書に記載される。本明細書中に明らかに述べられない限り、当業者は、反応に対する言及がさらに、その反応の反応物質および生成物に対する言及とも見なされることを理解する。同様に、本明細書中に明らかに述べられない限り、反応物質または生成物に対する言及は同じく、その反応に言及するものであり、それらの代謝構成要素のいずれかに対する言及は同じく、上述の反応、反応物質または生成物を触媒する酵素をコードする遺伝子に言及するものである。同様に、代謝生化学、酵素学、およびゲノミクスの周知の領域を考慮すると、遺伝子またはコード核酸に対する本明細書での言及は同じく、対応するコード酵素、およびそれが触媒する反応、ならびにその反応の反応物質および生成物に対する言及と見なされる。
【0219】
天然に存在しない微生物生物体は、1つまたは複数の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生合成経路に関与する酵素の1つまたは複数をコードする発現可能な核酸の導入により製造され得る。生合成のために選ばれる宿主微生物生物体に依存して、特定の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生合成経路の一部または全部の核酸が発現され得る。例えば、選ばれた宿主に、望ましい生合成経路の1つまたは複数の酵素が欠けている場合、欠損酵素の発現可能核酸を、続く外来性発現に向けて宿主内に導入する。代替的に、選ばれた宿主が、一部の経路遺伝子の内在性発現を示すが、他の遺伝子の発現が欠けている場合、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成を達成するためには、欠損酵素をコードする核酸が必要である。したがって、天然に存在しない微生物生物体は、望ましい生合成経路を得るために、外来酵素活性の導入により製造され得る、または望ましい生合成経路は、1つまたは複数の内在性酵素と共に、望ましい生成物、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、またはヘキサメチレンジアミンなどを産生する1つまたは複数の外来酵素活性を導入することにより得られ得る。
【0220】
選択される宿主微生物生物体の、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成経路の構成要素に依存して、天然に存在しない微生物生物体は、少なくとも1つの外来性に発現させた6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路コード核酸、および1つまたは複数のアジペート、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、または他のC5~C14生成物生合成経路をコードする最高で全部の核酸を含む。例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成は、経路酵素を欠く宿主において、対応するコード核酸の外来発現により確立され得る。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路の全酵素を欠く宿主では、該経路の全酵素の外来性発現が含まれ得る。もっとも、たとえ宿主が該経路酵素の少なくとも1つを含有する場合であっても、宿主経路の全酵素を発現させてもよいと理解される。
【0221】
本明細書で提供される教示および手引きを考慮すると、当業者は、発現可能な形で導入するコード核酸の数は、少なくとも、選択された宿主微生物生物体のアジペート、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路欠損に相当することを理解する。したがって、天然に存在しない微生物生物体は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成経路を構成する前記の酵素をコードする、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、または12個、最高で全部の核酸を有し得る。いくつかの実施形態では、天然に存在しない微生物生物体がさらに、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、もしくは他のC5~C14生成物生合成を促進もしくは最適化する、または宿主微生物生物体に他の有用な機能を与える他の遺伝子組換えを含み得る。他のそのような1つの機能性は、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路前駆体の1つまたは複数の合成の増加を含み得て、例えば、アジペート合成の場合のスクシニル-CoAおよび/もしくはアセチル-CoAなど、または本明細書に開示されるアジペート経路酵素を含む、6-アミノカプロン酸もしくはカプロラクタム合成の場合のアジピル-CoAもしくはアジペート、または6-アミノカプロエート合成の場合のピルベートおよびコハク酸セミアルデヒド、グルタミン酸、グルタリル-CoA、ホモリジン、もしくは2-アミノ-7-オキソサバレート(oxosubarate)、またはヘキサメチレンジアミン合成の場合の6-アミノカプロエート、グルタミン酸、グルタリル-CoA、ピルベートおよび4-アミノブタナール、もしくは2-アミノ-7-オキソサバレートである。
【0222】
天然に存在しない微生物生物体は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、またはレブリン酸を合成する酵素能力を含有する宿主から生成され得る。例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路反応を、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物産生方向に駆動するために、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路生成物の合成または蓄積を高めることが有用であり得る。合成または蓄積の増加は、例えば、前記の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路酵素の1つまたは複数をコードする核酸の過剰発現により実現され得る。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路酵素の過剰発現は、例えば、内在性遺伝子の外来性発現により、または異種遺伝子の外来性発現により起こり得る。したがって、天然生物体は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成経路酵素をコードする、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、すなわち最高で全部の核酸の過剰発現により、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を産生する天然に存在しない微生物生物体となるように容易に生成され得る。さらに、天然に存在しない生物体は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成経路における酵素の活性を上昇させる、内在性遺伝子の変異導入により生成され得る。
【0223】
外来性発現は、使用者によって制御される望ましい発現レベルを達成するために、発現および/または調節エレメントをカスタムテーラーする能力を宿主および適用に対して与え得る。しかしながら、内在性発現も、負の調節エフェクタの除去により、または誘導性プロモーターもしくは他の調節エレメントと連結された場合の遺伝子プロモーターの誘導により利用可能である。したがって、天然の誘導性プロモーターを有する内在性遺伝子は、適切な誘導剤の供給により、アップレギュレート可能であり、または内在性遺伝子の調節領域は、誘導性調節エレメントを組み込むために操作可能であり、それによって、望ましい時に、内在性遺伝子の発現上昇の調節を可能にする。同様に、誘導性プロモーターを、天然に存在しない微生物生物体内に導入される外来遺伝子の調節エレメントとして含めてもよい。
【0224】
天然に存在しない微生物生物体は、1つまたは複数の遺伝子破壊を含み得て、生物は、6-ACA、カプロラクタム、HMDA、および/または他のC5~C14生成物を産生する。破壊は、本明細書に記載される遺伝子において生じるため、その遺伝子破壊が、天然に存在しない生物体に、6-ACA、カプロラクタム、HMDA、および/または他のC5~C14生成物の産生の増加を与えるように、遺伝子産物の活性を低下させることになる。したがって、生物体において6-ACA、カプロラクタム、HMDA、および/または他のC5~C14生成物の産生の増加を与える、本明細書に記載される1つまたは複数の遺伝子破壊を含む天然に存在しない微生物生物体。本明細書に開示されるように、そのような生物体は、6-ACA、カプロラクタム、HMDA、および/または他のC5~C14生成物を産生する経路を含有する。
【0225】
方法では、1つまたは複数の外来核酸のいずれかを、微生物生物体内に導入して天然に存在しない微生物生物体を産生し得ると理解される。核酸は、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成経路を微生物生物体に付与するために導入され得る。代替的に、コード核酸は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成能力を与えるために必要とされる反応の一部を触媒する生合成能力を有する中間微生物生物体を産生するために導入され得る。例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成経路を有する天然に存在しない微生物生物体は、望ましい酵素をコードする少なくとも2つの外来核酸を含み得る。アジペート産生の場合、少なくとも2つの外来核酸は、酵素、例えば、スクシニル-CoA:アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼおよび3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、またはスクシニル-CoA:アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼおよび3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラトランスアミナーゼ、または3-ヒドロキシアジピル-CoAおよびアジピン酸セミアルデヒドトランスアミナーゼ、または3-ヒドロキシアシル-CoAおよびアジピル-CoAシンテターゼ等の組合せをコードし得る。カプロラクタム産生の場合、少なくとも2つの外来核酸は、酵素、例えば、CoA-依存性トランス-エノイル-CoAレダクターゼおよびトランスアミナーゼ、またはCoA-依存性トランス-エノイル-CoAレダクトランスアミナーゼおよびアミドヒドラーゼ、またはトランスアミナーゼおよびアミドヒドラーゼの組合せをコードし得る。6-アミノカプロン酸産生の場合、少なくとも2つの外来核酸は、酵素、例えば、4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタン-1,7-二酸(HODH)TAolaseおよび2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-二酸(OHED)ヒドラトランスアミナーゼ(hydratransaminasee)、または2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-二酸(OHED)ヒドラトランスアミナーゼおよび2-アミノヘプタン-1,7-二酸(2-AHD)デカルボキシラーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラトランスアミナーゼおよびアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、グルタミル-CoAトランスフェラーゼおよび6-アミノピメロイル-CoAヒドロラーゼ、またはグルタリル-CoAベータ-ケトチオラーゼおよび3-アミノピメレート2,3-アミノムトランスアミナーゼ(aminomutransaminasee)の組合せをコードし得る。ヘキサメチレンジアミン産生の場合、少なくとも2つの外来核酸は、酵素、例えば、6-アミノカプロン酸キナーゼおよび[(6-アミノヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸(6-AHOP)オキシドレダクトランスアミナーゼ(oxidoreductransaminasee)、または6-アセトアミドヘキサン酸キナーゼおよび[(6-アセトアミドヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸(6-AAHOP)オキシドレダクトランスアミナーゼ、6-アミノカプロン酸N-アセチルトランスフェラーゼおよび6-アセトアミドヘキサノイル-CoAオキシドレダクトランスアミナーゼ、3-ヒドロキシ-6-アミノピメロイル-CoAデヒドラトランスアミナーゼおよび2-アミノ-7-オキソヘプタン酸アミノトランスフェラーゼ、または3-オキソピメロイル-CoAリガーゼおよびホモリジンデカルボキシラーゼの組合せをコードし得る。したがって、生合成経路の2つ以上の酵素の任意の組合せが、天然に存在しない微生物生物体に含まれ得ると理解される。
【0226】
同様に、望ましい生合成経路の酵素の組合せが、対応する望ましい生成物の産生をもたらす限り、生合成経路の3つ以上の酵素の任意の組合せが、天然に存在しない微生物生物体に含まれ得ると理解され、例えば、アジペート産生の場合、酵素の組合せ、スクシニル-CoA:アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ、3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、および3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラトランスアミナーゼ;またはスクシニル-CoA:アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ、3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、およびアジピン酸セミアルデヒドレダクトランスアミナーゼ;またはスクシニル-CoA:アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ、3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、およびアジピル-CoAシンセトランスアミナーゼ(synthetransaminasee);または3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラトランスアミナーゼ、およびアジピル-CoA:アセチル-CoAトランスフェラーゼ等が、望みどおりに含まれ得る。6-アミノカプロン酸産生の場合、少なくとも3つの外来核酸は、酵素、例えば、4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタン-1,7-二酸(HODH)TAolase、2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-二酸(OHED)ヒドラトランスアミナーゼ、および2-オキソヘプタン-1,7-二酸(2-OHD)デカルボキシラーゼ、または2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-二酸(OHED)ヒドラトランスアミナーゼ、2-アミノヘプタ-4-エン-1,7-二酸(2-AHE)レダクトランスアミナーゼ、および2-アミノヘプタン-1,7-二酸(2-AHD)デカルボキシラーゼ、または3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラトランスアミナーゼ、2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクトランスアミナーゼ、およびアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、または6-アミノ-7-カルボキシヘプタ-2-エノイル-CoAレダクトランスアミナーゼ、6-アミノピメロイル-CoAヒドロラーゼ、および2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、またはグルタリル-CoAベータ-ケトチオラーゼ、3-アミノ化オキシドレダクトランスアミナーゼ、および2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、または3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクトランスアミナーゼ、およびアジピン酸レダクトランスアミナーゼの組合せをコードし得る。ヘキサメチレンジアミン産生の場合、少なくとも3つの外来核酸は、酵素、例えば、6-アミノカプロン酸キナーゼ、[(6-アミノヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸(6-AHOP)オキシドレダクトランスアミナーゼ、および6-アミノカプロン酸セミアルデヒドアミノトランスフェラーゼ、または6-アミノカプロン酸N-アセチルトランスフェラーゼ、6-アセトアミドヘキサン酸キナーゼ、および[(6-アセトアミドヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸(6-AAHOP)オキシドレダクトランスアミナーゼ、または6-アミノカプロン酸N-アセチルトランスフェラーゼ、[(6-アセトアミドヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸(6-AAHOP)アセチルトランスフェラーゼ、および6-アセトアミドヘキサノイル-CoAオキシドレダクトランスアミナーゼ、または3-オキソ-6-アミノピメロイル-CoAオキシドレダクトランスアミナーゼ、3-ヒドロキシ-6-アミノピメロイル-CoAデヒドラトランスアミナーゼ、およびホモリジンデカルボキシラーゼ、または2-オキソ-4-ヒドロキシ-7-アミノヘプタン酸TAolase、2-オキソ-7-アミノヘプタ-3-エン酸レダクトランスアミナーゼ、およびホモリジンデカルボキシラーゼ、または6-アセトアミドヘキサン酸レダクトランスアミナーゼ、6-アセトアミドヘキサナールアミノトランスフェラーゼ、および6-アセトアミドヘキサンアミンN-アセチルトランスフェラーゼの組合せをコードし得る。同様に、望ましい生合成経路の酵素の組合せが、対応する望ましい生成物の産生をもたらす限り、本明細書に開示される生合成経路の4つ以上の酵素の任意の組合せが、望みどおりに、天然に存在しない微生物生物体に含まれ得る。
【0227】
本明細書に記載される、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の生合成に加えて、天然に存在しない微生物生物体および方法はさらに、他のルートによる生成物生合成を達成するために、互いに、ならびに当該技術分野で周知の他の微生物生物体および方法と、様々な組合せで利用され得る。例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物産生体の使用以外の、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を産生するための代案は、アジペート、6-アミノカプロン酸、またはカプロラクタム経路中間体を、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物に変換する能力のある他の微生物生物体の添加による。そのような一手順は、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路中間体を産生する微生物生物体の発酵を含む。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路中間体は、次いで、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路中間体を、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物に変換する第2の微生物生物体用の基質として使用され得る。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、もしくは他のC5~C14生成物経路中間体は、第2の生物体の他の培養に直接に添加され得るか、または6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、もしくは他のC5~C14生成物経路中間体産生体の元の培養から、例えば、細胞分離により、それらの微生物生物体を除去してもよく、次いで、発酵ブロスへの第2の生物体の続く添加を利用して、中間精製工程なしに最終生成物を産生してもよい。
【0228】
天然に存在しない微生物生物体および方法は、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の生合成を達成するために、多種多様なサブ経路において組立て可能である。望ましい生成物の生合成経路は、異なる微生物生物体に分離可能であり、異なる微生物生物体は、最終生成物を産生するために共培養され得る。そのような生合成スキームでは、最終生成物が合成されるまで、ある微生物生物体の生成物が、第2の微生物生物体の基質である。例えば、一方の経路中間体を他方の経路中間体または生成物に変換するための生合成経路を含有する微生物生物体の構築により、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の生合成が、実現され得る。代替的に、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物がさらに、同じ容器中で2つの生物体を使用した共培養または共発酵により、微生物生物体から生合成的に産生され得て、第1の微生物生物体が、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物中間体を産生し、第2の微生物生物体が、その中間体を、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物に変換する。
【0229】
本明細書で提供される教示および手引きを考慮すると、当業者は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を産生するために、他の微生物生物体と共に、サブ経路を有する他の天然に存在しない微生物生物体の共培養と共に、ならびに当該技術分野で周知の他の化学的および/または生化学的な手順の組合せと共に、天然に存在しない微生物生物体および方法に関して多種多様な組合せおよび入替えが存在することを理解する。
【0230】
同様に、当業者は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の産生を増加させるために、1つまたは複数の遺伝子破壊の導入に向けて望ましい特性に基づいて、宿主生物体を選択できることを理解する。したがって、遺伝子を破壊するために遺伝子組換えが宿主生物体内に導入されることになる場合、類似するが、同一でない代謝反応を触媒する任意のホモログ、オルソログ、またはパラログが、同様に破壊され得て、望ましい代謝反応が十分に破壊されることを確保すると理解される。異なる生物体間の代謝ネットワーク中には、ある種の差異が存在するため、当業者は、所与の生物体で破壊される実際の遺伝子は、生物体間で異なり得ることを理解する。しかしながら、本明細書で提供される教示および手引きを考慮すると、当業者はさらに、本方法が、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成を増加させるであろう、目的の種の生物を構築するために必要とされる同種の代謝変化を同定するために、任意の適切な宿主微生物に適用され得ることを理解する。産生の増加は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の生合成を、生物体の増殖と連関させることができ、望ましければ、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の産生を、生物体の増殖と不可避に連関させ得る。
【0231】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路酵素をコードする核酸の供給源は、例えば、コード遺伝子産物が、上述の反応を触媒できる任意の種を含み得る。そのような種は、原核生物および真核生物の両方を含み、古細菌および真正細菌を含む細菌、ならびに酵母、植物、昆虫、動物、およびヒトを含む哺乳類を含む真核生物を含むがそれらに限定されない。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路酵素をコードする核酸の供給源は、表4に示され得る。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路酵素をコードする核酸の供給源は、種、例えば、大腸菌、大腸菌株K12、大腸菌C、大腸菌W、Pseudomonas種、Pseudomonas knackmussii、Pseudomonas種B13株、Pseudomonas putida、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas stutzeri、Pseudomonas mendocina、Rhodopseudomonas palustris、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、コレラ菌(Vibrio cholera)、Heliobacter pylori、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、Serratia proteamaculans、Streptomyces種2065、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、緑膿菌PAO1、Ralstonia eutropha、Ralstonia eutropha H16、Clostridium acetobutylicum、Euglena gracilis、Treponema denticola、Clostridium kluyveri、ヒト(Homo sapiens)、ラット(Rattus norvegicus)、Acinetobacter種ADP1、Acinetobacter種M-1株、Streptomyces coelicolor、Eubacterium barkeri、Peptostreptococcus asaccharolyticus、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ボツリヌス菌A3株、Clostridium tyrobutyricum、Clostridium pasteurianum、Clostridium thermoaceticum(Moorella thermoaceticum)、Moorella thermoacetica Acinetobacter calcoaceticus、マウス(Mus musculus)、イノシシ(Sus scrofa)、Flavobacterium種、Arthrobacter aurescens、Penicillium chrysogenum、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、Aspergillus nidulans、枯草菌(Bacillus subtilis)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、Zymomonas mobilis、Mannheimia succiniciproducens、Clostridium ljungdahlii、Clostridium carboxydivorans、Geobacillus stearothermophilus、Agrobacterium tumefaciens、Achromobacter xylosoxidans、Achromobacter denitrificans、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、Acidaminococcus fermentans、Clostridium種M62/1、Fusobacterium nucleatum、ウシ(Bos taurus)、Zoogloea ramigera、Rhodobacter sphaeroides、Clostridium beijerinckii、Metallosphaera sedula、Thermoanaerobacter種、Thermoanaerobacter brockii、Acinetobacter baylyi、Porphyromonas gingivalis、Leuconostoc mesenteroides、Sulfolobus tokodaii、Sulfolobus tokodaii7、Sulfolobus solfataricus、Sulfolobus solfataricus、Sulfolobus acidocaldarius、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、サルモネラ菌(Salmonella enterica)、Thermotoga maritima、Halobacterium salinarum、セレウス菌(Bacillus cereus)、Clostridium difficile、Alkaliphilus metalliredigenes、Thermoanaerobacter tengcongensis、Saccharomyces kluyveri、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、Corynebacterium glutamicum、Clostridium saccharoperbutylacetonicum、Pseudomonas chlororaphis、Streptomyces clavuligerus、Campylobacter jejuni、高度好熱菌(Thermus thermophilus)、Pelotomaculum thermopropionicum、Bacteroides capillosus、Anaerotruncus colihominis、Natranaerobius thermophilius、Archaeoglobus fulgidus、Archaeoglobus fulgidus DSM 4304、Haloarcula marismortui、Pyrobaculum aerophilum、Pyrobaculum aerophilumIM2株、タバコ(Nicotiana tabacum)、ペパーミント(Menthe piperita)、テーダマツ(Pinus taeda)、オオムギ(Hordeum vulgare)、トウモロコシ(Zea mays)、Rhodococcus opacus、Cupriavidus necator、Bradyrhizobium japonicum、Bradyrhizobium japonicum USDA110、ブタ回虫(Ascarius suum)、酪酸菌L2-50、巨大菌(Bacillus megaterium)、Methanococcus maripaludis、Methanosarcina mazei、Methanosarcina mazei、Methanocarcina barkeri、Methanocaldococcus jannaschii、線虫(Caenorhabditis elegans)、森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、Methylomicrobium alcaliphilum 20Z、Chromohalobacter salexigens、Archaeglubus fulgidus、コナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)、膣トリコモナス(trichomonas vaginalis)G3、Trypanosoma brucei、Mycoplana ramose、Micrococcus luteas、Acetobacter pasteurians、Kluyveromyces lactis、Mesorhizobium loti、Lactococcus lactis、Lysinibacillus sphaericus、Candida boidinii、Candida albicans SC5314、Burkholderia ambifaria AMMD、ブタ回虫(Ascaris suun)、Acinetobacter baumanii、Acinetobacter calcoaceticus、Burkholderia phymatum、Candida albicans、Clostridium subterminale、Cupriavidus taiwanensis、Flavobacterium lutescens、Lachancea kluyveri、Lactobacillus種30a、Leptospira interrogans、Moorella thermoacetica、Myxococcus xanthus、Nicotiana glutinosa、Nocardia iowensis(種NRRL 5646)、Pseudomonas reinekei MT1、Ralstonia eutropha JMP134、Ralstonia metallidurans、Rhodococcus jostii、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、Selenomonas ruminantium、Streptomyces clavuligenus、Syntrophus aciditrophicus、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、Vibrio vulnificus、ならびに本明細書に開示されるか、または対応する遺伝子の供給源生物体として入手可能である他の例示的種である(実施例を参照)。しかしながら、今のところ入手可能な完全ゲノム配列は、395種の微生物ゲノム、ならびに様々な酵母、真菌、植物、および哺乳類ゲノムを含む550種超であり(そのうちの半分超は公開データベース、例えばNCBIから入手可能)、例えば、公知の遺伝子のホモログ、オルソログ、パラログ、および非オルソロガス遺伝子置換を含む、近縁種または遠縁種における1つまたは複数の遺伝子に関する、必要な6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成活性をコードする遺伝子の同定、ならびに生物体の間での遺伝子変異の交換は、ルーチン的であり、当該技術分野では周知である。したがって、特定の生物体、例えば大腸菌と関連して本明細書に記載される、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の生合成を可能にする代謝変化は、同様に、原核生物および真核生物を含めて、他の微生物に容易に適用できる。本明細書で提供される教示および手引きを考慮すると、当業者は、ある生物体において例示される代謝変化を、等しく他の生物体に適用できることを知る。
【0232】
いくつかの場合、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成経路が、非近縁種において存在する場合、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成は、例えば、類似するが、同一でない代謝反応を触媒する、上述の反応に取って代わる、該非近縁種に由来するパラログの外来性発現により宿主種に与えることができる。代謝ネットワークの中のある種の差異が、異なる生物体の間で存在するため、当業者は、実際の遺伝子使用が、異なる生物体の間で異なり得ることを理解する。しかしながら、本明細書で提供される教示および手引きを考慮すると、当業者はさらに、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を合成する、目的の種の微生物生物体を構築するために、本教示および方法が、本明細書で例示されるものに対する同種の代謝変化を使用して、すべての微生物生物体に適用され得ることを理解する。
【0233】
宿主微生物生物体は、例えば、細菌、酵母、真菌、または発酵工程に適用可能な他の様々な微生物のいずれかから選択可能であり、天然に存在しない微生物生物体は、それらの中で生成できる。例示的な細菌は、大腸菌、Klebsiella oxytoca、Anaerobiospirillum succiniciproducens、Actinobacillus succinogenes、Mannheimia succiniciproducens、インゲン根粒菌(Rhizobium etli)、枯草菌、Corynebacterium glutamicum、Gluconobacter oxydans、Zymomonas mobilis、Lactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、Streptomyces coelicolor、Clostridium acetobutylicum、Pseudomonas fluorescens、およびPseudomonas putidaから選択される種を含む。例示的な酵母または真菌は、出芽酵母、分裂酵母、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Aspergillus terreus、クロコウジカビ、Pichia pastoris、Rhizopus arrhizus、Rhizobus oryzae等から選択される種を含む。例えば、大腸菌は、遺伝子工学に適切な十分に特徴づけられた微生物生物体であるため、特に有用な宿主生物体である。他の特に有用な宿主生物体は、酵母、例えば出芽酵母を含む。代謝改変および/または遺伝子組換えを導入して望ましい生成物を産生するために、任意の適切な宿主微生物生物体を利用できると理解される。
【0234】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、またはレブリン酸を産生する天然に存在しない宿主を構築するおよびその発現レベルを試験するための方法は、例えば、当該技術分野では周知の組換えおよび検出方法により行われ得る。そのような方法は、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory、New York(2001);およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley and Sons、Baltimore、MD (1999)に記載されていることが分かる。
【0235】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を産生する経路に関与する外来核酸配列は、当該技術分野では周知の技術を使用して宿主細胞内に安定または一過性に導入可能であり、接合、エレクトロポレーション、化学的形質転換、形質導入、トランスフェクション、および超音波形質転換を含むがそれらに限定されない。大腸菌または他の原核細胞での外来性発現には、真核生物の核酸の遺伝子またはcDNAにおける一部の核酸配列が、望ましければ、原核宿主細胞内への形質転換前に除去され得る、標的化シグナル、例えば、N末端ミトコンドリアシグナルまたは他の標的化シグナルなどをコードしてもよい。例えば、ミトコンドリアリーダー配列の除去は、大腸菌中での発現の上昇をもたらした(Hoffmeisterら、J. Biol. Chem. 280巻:4329~4338頁(2005))。酵母または他の真核細胞での外来性発現には、遺伝子が、リーダー配列の付加なしにサイトゾル中で発現されてもよく、または適切な標的化配列、例えば、宿主細胞に適したミトコンドリア標的化シグナルもしくは分泌シグナルなどの付加により、ミトコンドリアもしくは他の小器官へ標的化されても、分泌に向けられてもよい。したがって、標的化配列を除去または含めるための、核酸配列への適切な改変は、望ましい特性を付与するために、外来核酸配列に組み込まれ得ると理解される。さらに、遺伝子は、タンパク質の最適化された発現を達成するために、当該技術分野では周知の技術によりコドン最適化されてもよい。
【0236】
発現ベクターは、宿主生物体において機能的な発現制御配列に作動可能に連結した、本明細書で例示される、1つまたは複数の、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、またはレブリン酸生合成経路をコードする核酸を含むように構築され得る。宿主微生物生物体での使用に適用可能な発現ベクターは、例えば、宿主染色体への安定な組込みに操作可能なベクターおよび選択配列またはマーカーを含む、プラスミド、ファージベクター、ウイルスベクター、エピソーム、および人工染色体を含む。さらに、発現ベクターは、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子および適切な発現制御配列を含んでもよい。例えば、抗生物質または毒素に対する耐性を供与する、栄養要求性の欠損を補完する、または培養培地中にない決定的な栄養素を供給する選択マーカー遺伝子がさらに含まれ得る。発現制御配列は、当該技術分野では周知である、構成的および誘導性のプロモトランスアミナーゼ(promoTransaminase)、転写エンハンサ、転写ターミネーター等を含み得る。2つ以上の外来コード核酸が、共発現されることになっている場合、両方の核酸が、例えば、単一発現ベクターまたは別々の発現ベクターに挿入されてもよい。単一ベクター発現では、コード核酸が、1つの共通発現制御配列に作動可能に連結されてもよく、異なる発現制御配列、例えば、1つの誘導性プロモーターおよび1つの構成的プロモーターなどに連結されてもよい。代謝経路または合成経路に関与する外来核酸配列の形質転換は、当該技術分野では周知である方法を使用して確認できる。そのような方法は、例えば、核酸分析、例えば、mRNAのノーザンブロットもしくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、または遺伝子産物の発現に対する免疫ブロッティング、または導入された核酸配列もしくはその対応する遺伝子産物の発現を試験するための他の適切な分析法を含む。当業者は、外来核酸が、望ましい生成物を産生するために十分な量で発現されることを理解し、さらに、発現レベルは、当該技術分野では周知であり、かつ本明細書に開示される方法を使用して、十分な発現を得るために最適化され得ることを理解する。
【0237】
いくつかの実施形態は、望ましい中間体または生成物、例えば、アジペート、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、もしくは他のC5~C14生成物などを産生する方法である。例えば、アジペートを産生する方法は、アジペート経路を有する天然に存在しない微生物生物体を培養する工程を含み得て、該経路は、アジペートを産生するために十分な量で、アジペートを産生するための条件下、かつ十分な時間にわたり発現されるアジペート経路酵素をコードする少なくとも1つの外来核酸を含み、該アジペート経路は、スクシニル-CoA:アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ、3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラトランスアミナーゼ、アジピン酸セミアルデヒドレダクトランスアミナーゼ、およびアジピル-CoAシンセトランスアミナーゼ、またはホスホトランスアジピラーゼ/アジピン酸キナーゼ、またはアジピル-CoA:アセチル-CoAトランスフェラーゼ、またはアジピル-CoAヒドロラーゼを含む。さらに、アジペートを産生する方法は、アジペート経路を有する天然に存在しない微生物生物体を培養する工程を含み得て、該経路は、アジペートを産生するために十分な量で、アジペートを産生するための条件下、かつ十分な時間にわたり発現されるアジペート経路酵素をコードする少なくとも1つの外来核酸を含み、該アジペート経路は、スクシニル-CoA:アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ、3-オキソアジピル-CoAトランスフェラーゼ、3-オキソアジピン酸レダクトランスアミナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラトランスアミナーゼ、および2-エン酸レダクトランスアミナーゼを含む。
【0238】
さらに、6-アミノカプロン酸を産生する方法は、6-アミノカプロン酸経路を有する天然に存在しない微生物生物体を培養する工程を含み得て、該経路は、6-アミノカプロン酸を産生するために十分な量で、6-アミノカプロン酸を産生するための条件下、かつ十分な時間にわたり発現される6-アミノカプロン酸経路酵素をコードする少なくとも1つの外来核酸を含み、該6-アミノカプロン酸経路は、CoA-依存性トランス-エノイル-CoAレダクトランスアミナーゼ、およびトランスアミナーゼ、または6-アミノカプロン酸デヒドロゲナーゼを含む。さらに、カプロラクタムを産生する方法は、カプロラクタム経路を有する天然に存在しない微生物生物体を培養する工程を含み得て、該経路は、カプロラクタムを産生するために十分な量で、カプロラクタムを産生するための条件下、かつ十分な時間にわたり発現されるカプロラクタム経路酵素をコードする少なくとも1つの外来核酸を含み、該カプロラクタム経路は、CoA-依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼ、トランスアミナーゼ、または6-アミノカプロン酸デヒドロゲナーゼ、およびアミドヒドラーゼを含む。
【0239】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、またはレブリン酸の産生を試験するための適切な精製および/またはアッセイは、周知の方法を使用して行われ得る。試験対象の各操作型株に関して、適切なレプリケート、例えば、三つ組の培養などを、増殖させることができる。例えば、操作型産生宿主中での生成物および副産物の形成が、監視可能である。最終生成物および中間体、および他の有機化合物は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)、およびLC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)、または当該技術分野では周知である常法を使用した他の適切な分析方法などの方法により分析可能である。発酵ブロス中での生成物の放出は同じく、培養上清を用いて試験できる。副産物および残存グルコースは、例えば、グルコースおよびアルコールに対する屈折率検出器、ならびに有機酸に対するUV検出器(Linら、Biotechnol. Bioeng. 90巻:775~779頁(2005))、または当該技術分野では周知である他の適切なアッセイ法および検出方法を使用してHPLCにより定量され得る。外来DNA配列からの個々の酵素活性も、当該技術分野では周知である方法を使用してアッセイできる。
【0240】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、またはレブリン酸は、当該技術分野では周知である様々な方法を使用して、培養中の他の成分から分離可能である。そのような分離法は、例えば、抽出手順、ならびに連続液液抽出、浸透気化、膜ろ過、膜分離、逆浸透、電気透析、蒸留、結晶化、遠心分離、抽出ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、および限外ろ過を含む方法を含む。
【0241】
本明細書に記載される天然に存在しない微生物生物体のいずれかは、生合成産物を産生および/または分泌するために培養可能である。例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を生合成産生するために、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物産生体を培養し得る。
【0242】
6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の産生には、組換え株を、炭素源および他の必須栄養素を含む培地中で培養する。工程全体の費用を削減するためには、発酵槽中の嫌気性条件を維持することが時には望ましく、非常に望ましい場合がある。そのような条件は、例えば、まず培地に窒素を注入し、次いでフラスコをセプタムとクリンプキャップで密封することにより得られ得る。嫌気的には増殖が認められない株では、限られた通気用の小孔をセプタムにあけることにより、微好気性または実質的に嫌気性の条件を適用できる。例示的な嫌気性条件は、以前に記載されており、当該技術分野では周知である。例示的な好気性および嫌気性の条件は、例えば、2011年5月24日に発行された米国特許第7,947,483号明細書に記載される。発酵は、本明細書に開示されるように、回分、流加回分、または連続式に行われ得る。
【0243】
望ましければ、培養培地を望ましいpHに維持するために必要であるように、塩基、例えばNaOHもしくは他の塩基、または酸の添加により、培地のpHを、望ましいpH、特に中性pH、例えばおよそ7のpHに維持してもよい。増殖速度は、分光光度計(600nm)を使用して光学密度の測定により決定することができ、グルコース取込み速度は、炭素源の経時的な枯渇のモニタリングにより決定できる。
【0244】
増殖培地は、例えば、天然に存在しない微生物に炭素源を供給できる任意の炭水化物源を含み得る。そのような供給源は、例えば、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、スクロース、およびデンプンなどの糖を含む。炭水化物の他の供給源は、例えば、再生可能供給原料およびバイオマスを含む。本方法での供給原料として使用可能である例示的なタイプのバイオマスは、セルロース質バイオマス、ヘミセルロース質バイオマス、およびリグニン供給原料、または供給原料の一部を含む。そのようなバイオマス供給原料は、例えば、炭素源として有用な炭水化物基質、例えば、グルコース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、およびデンプンなどを含有する。本明細書で提供される教示および手引きを考慮すると、当業者は、前記で例示したもの以外の再生可能供給原料およびバイオマスも、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の産生用の微生物生物体の培養に使用できることを理解する。
【0245】
前記で例示したもののような再生可能供給原料に加えて、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物微生物生物体はさらに、その炭素源としてのシンガス上での増殖向けに改変されてもよい。シンガスまたは他の気体炭素源の利用に適した代謝経路を用意するために、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物産生生物体において、1つまたは複数のタンパク質または酵素を発現させてもよい。
【0246】
シンガスまたは発生炉ガスとしても知られる合成ガスは、石炭および炭素質材料、例えば、農業作物および農作物残渣を含むバイオマス材料などのガス化の主生成物である。シンガスは、主にH2とCOとの混合物であり、任意の有機供給原料のガス化から得ることができ、石炭、石油、天然ガス、バイオマス、および廃棄有機物を含むがそれらに限定されない。ガス化は、概して、高い燃料対酸素比の下で行われる。主としてH2およびCOであるものの、シンガスはさらに、CO2および他のガスも少量で含み得る。したがって、合成ガスは、CO、さらにはCO2などのコスト効率のよい気体状炭素源を供給する。
【0247】
Wood-Ljungdahl経路は、COとH2とから、アセチル-CoAおよび他の生成物、例えばアセテートへの変換を触媒する。COおよびシンガスを利用できる生物体は同じく、概して、酵素の同じ基本セットおよびWood-Ljungdahl経路によって含有される変換を介してCO2およびCO2/H2混合物を利用する能力を有する。微生物による、CO2からアセテートへのH2依存変換は、同じ生物体によってCOも利用され得ること、かつ同じ経路が関与していることが明らかになるかなり前に認められていた。多くのアセトゲンが、CO2の存在下に増殖し、かつ必要な還元当量を供給するために水素が存在する限り、アセテートなどの化合物を産生することが示された(例えば、Drake、Acetogenesis、3~60頁、Chapman and Hall、New York(1994)を参照)。それは、次式により要約できる。
【0248】
2CO2+4H2+nADP+nPi→CH3COOH+2H2O+nATP
したがって、Wood-Ljungdahl経路をもつ天然に存在しない微生物は、アセチル-CoAおよび他の望ましい生成物の産生に、CO2とH2との混合物も利用できる。
【0249】
Wood-Ljungdahl経路は、当該技術分野では周知であり、2つの分岐:(1)メチル分岐、および(2)カルボニル分岐に分離され得る12個の反応からなる。メチル分岐は、シンガスをメチル-テトラヒドロホレート(メチル-THF)に変換するのに対して、カルボニル分岐は、メチル-THFをアセチル-CoAに変換する。メチル分岐の反応は、以下の酵素:フェレドキシンオキシドレダクトランスアミナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、ホルミルテトラヒドロ葉酸シンセトランスアミナーゼ、メテニルテトラヒドロ葉酸シクロデヒドラトランスアミナーゼ、メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ、およびメチレンテトラヒドロ葉酸レダクトランスアミナーゼにより順々に触媒される。カルボニル分岐の反応は、以下の酵素またはタンパク質:コバルアミドコリノイド/鉄硫黄タンパク質、メチルトランスフェラーゼ、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、アセチル-CoAシンターゼ、アセチル-CoAシンターゼジスルフィドレダクトランスアミナーゼおよびヒドロゲナーゼにより順々に触媒され、それらの酵素は、メチルテトラヒドロホレート:コリノイドタンパク質メチルトランスフェラーゼ(例えば、AcsE)、コリノイド鉄硫黄タンパク質、ニッケル-タンパク質アセンブリタンパク質(例えば、AcsF)、フェレドキシン、アセチル-CoAシンターゼ、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、およびニッケル-タンパク質アセンブリタンパク質(例えば、CooC)とも呼ばれ得る。6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、またはレブリン酸経路を生成する、十分な数のコード核酸を導入するための、本明細書で提供される教示および手引きに従って、当業者は、同じ操作デザインがさらに、少なくとも、宿主生物体中に存在しないWood-Ljungdahl酵素またはタンパク質をコードする核酸の導入に関して行われ得ることを理解する。したがって、改変型生物体が完全なWood-Ljungdahl経路を含有するように、1つまたは複数のコード核酸を微生物生物体内に導入すると、シンガス利用能力が付与されることになる。
【0250】
さらに、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ活性および/またはヒドロゲナーゼ活性と連関された還元的(逆)トリカルボン酸回路もまた、CO、CO2および/またはH2からアセチル-CoAおよびアセテートなどの他の生成物への変換に使用できる。還元的TCA経路を経由して炭素を固定できる生物体は、以下の酵素:ATPクエン酸リアーゼ、クエン酸リアーゼ、アコニトランスアミナーゼ(aconitransaminasee)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アルファケトグルタル酸:フェレドキシンオキシドレダクトランスアミナーゼ、スクシニル-CoAシンセトランスアミナーゼ、スクシニル-CoAトランスフェラーゼ、フマル酸レダクトランスアミナーゼ、フマラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、NAD(P)フェレドキシンオキシドレダクトランスアミナーゼ、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ、およびヒドロゲナーゼの1つまたは複数を利用できる。具体的には、一酸化炭素デヒドロゲナーゼおよびヒドロゲナーゼにより、COおよび/またはH2から抽出された還元当量は、還元的TCA回路を経由して、CO2をアセチル-CoAまたはアセテートに固定するために利用される。アセテートは、アセチル-CoAトランスフェラーゼ、酢酸キナーゼ/ホスホトランスアセチラーゼ、およびアセチル-CoAシンセトランスアミナーゼなどの酵素により、アセチル-CoAに変換され得る。アセチル-CoAは、ピルベート:フェレドキシンオキシドレダクトランスアミナーゼ、および糖新生の酵素により、p-トルエート、テレフタレート、または(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-オキソブトキシ)ホスホネート前駆体、グリセロアルデヒド-3-ホスフェート、ホスホエノールピルベート、およびピルベートに変換され得る。p-トルエート、テレフタレート、または(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-オキソブトキシ)ホスホネート経路を生成する、十分な数のコード核酸を導入するための、本明細書で提供される教示および手引きに従って、当業者は、同じ操作デザインがさらに、少なくとも、宿主生物体中に存在しない還元的TCA経路の酵素またはタンパク質をコードする核酸の導入に関して行われ得ることを理解する。したがって、改変型生物体が完全な還元的TCA経路を含有するように、1つまたは複数のコード核酸を微生物生物体内に導入すると、シンガス利用能力が付与されることになる。
【0251】
本明細書で提供される教示および手引きを考慮すると、当業者は、炭素源、例えば、炭水化物などの上で増殖させた場合に、生合成された化合物を分泌する天然に存在しない微生物生物体が製造され得ることを理解する。そのような化合物は、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物、および6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路における中間代謝物のいずれかを含む。必要なことは、必要とされる酵素活性の1つまたは複数において操作して、例えば、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物生合成経路の一部または全部の含有物を含む、望ましい化合物または中間体の生合成を達成することだけである。したがって、いくつかの実施形態は、炭水化物上で増殖させると6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を産生および/または分泌し、炭水化物上で増殖させると6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路において示される中間代謝物のいずれかを産生および/または分泌する天然に存在しない微生物生物体を提供する。例えば、アジペート産生微生物生物体は、望みどおりに、中間体、例えば、3-オキソアジピル-CoA、3-ヒドロキシアジピル-CoA、5-カルボキシ-2-ペンテノイル-CoA、またはアジピル-CoAから合成を開始できる(図1を参照)。さらに、アジペート産生微生物生物体は、中間体、例えば、3-オキソアジピル-CoA、3-オキソアジペート、3-ヒドロキシアジペート、またはヘキサ-2-エンジオエートから合成を開始できる。6-アミノカプロン酸産生微生物生物体は、中間体、例えば、アジピン酸セミアルデヒドから合成を開始できる。カプロラクタム産生微生物生物体は、望みどおりに、中間体、例えば、アジピン酸セミアルデヒドまたは6-アミノカプロン酸から合成を開始できる(図1を参照)。
【0252】
いくつかの実施形態では、図3~8に示すように、天然に存在しない微生物が、アジペート、6ACA、カプロラクトン、ヘキサメチレンジアミン、またはカプロラクタムを生成できる。
【0253】
天然に存在しない微生物生物体はさらに、外来性に発現させた、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALD)またはトランスエノイルレダクターゼ(TER)または両方をコードする核酸を含む。ALDは、アジピル-CoAと反応してアジピン酸セミアルデヒドを産生するのに対して、TERは、5-カルボキシ-2-ペンテノイル-CoA(CPCoA)と反応してアジピルCoAを生成する。
【0254】
ALD酵素は、スクシニル-CoAまたはアセチル-CoA、または両方の基質と比べて、アジピルCoA基質に対して高い触媒効率および触媒活性を有する。例示的なALD酵素は、表10に示すとおりである。
【0255】
【表10】
【0256】
【表11】
【0257】
【表12】
【0258】
いくつかの実施形態では、TER酵素が、表11に示すとおりである。
【0259】
【表13】
【0260】
天然に存在しない微生物生物体は、本明細書で例示されるように当該技術分野では周知である方法を使用して、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物経路酵素をコードする少なくとも1つの核酸を、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を産生するために十分な量で外来性に発現するように構築される。微生物生物体は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を産生するために十分な条件下で培養されると理解される。本明細書で提供される教示および手引きに従うと、天然に存在しない微生物生物体は、約0.1~200mM以上の間の細胞内濃度をもたらす6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の生合成を達成できる。概して、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の細胞内濃度は、約3~150mMの間、特に約5~125mMの間、特に約8~100mMの間であり、約10mM、20mM、50mM、80mM以上を含む。これらの例示的範囲の各々の間および各々を超える細胞内濃度も、天然に存在しない微生物生物体により達成され得る。
【0261】
培養条件は、嫌気性および実質的に嫌気性の増殖または維持条件を含み得る。例示的な嫌気性条件は、以前に記載されており、当該技術分野では周知である。発酵工程用の例示的な嫌気性条件は、本明細書に記載されており、例えば、2011年5月24日に発行された米国特許第7,947,483号明細書に記載されている。それらの条件のいずれか、および当該技術分野では周知である他の嫌気性条件を、天然に存在しない微生物生物体に対して使用し得る。そのような嫌気性条件下、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物産生体が、5~10mM以上の細胞内濃度、および本明細書で例示される他のあらゆる濃度で6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を合成し得る。前記の記載は細胞内濃度に関するが、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を産生する微生物生物体は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物を細胞内で産生する、および/または生成物を培養培地に分泌することができると理解される。
【0262】
培養条件は、例えば、液体培養法ならびに発酵および他のラージスケール培養法を含み得る。本明細書に記載されるように、生合成産物の特に有用な収率は、嫌気性または実質的に嫌気性の培養条件下に得られ得る。
【0263】
本明細書に記載されるように、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の生合成を達成するための例示的な一増殖条件は、嫌気性培養条件または発酵条件を含む。天然に存在しない微生物生物体は、嫌気性条件下または実質的に嫌気性条件下に維持、培養、または発酵され得る。簡単に言うと、嫌気性条件は、酸素を欠いた環境に関する。実質的に嫌気性条件は、例えば、培地中の溶存酸素濃度が、飽和の0%から10%の間に維持される培養、回分発酵、または連続発酵を含む。実質的に嫌気性条件はさらに、1%未満の酸素雰囲気状態に維持された密封チャンバ内部の液体培地中または固体寒天上で増殖中または休息中の細胞を含む。酸素の百分率は、例えば、培養にN2/CO2混合物または適切な非酸素ガスを注入することにより、維持され得る。
【0264】
本明細書に記載される培養条件は、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の製造に向けて、スケールアップして連続的に増殖させ得る。例示的な増殖法は、例えば、流加回分発酵および回分分離;流加回分発酵および連続分離、または連続発酵および連続分離を含む。発酵法が、商業的な量の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の生合成産生にとって特に有用である。概して、非連続培養法と同様に、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の連続的および/またはほぼ連続的な産生は、対数期での増殖を維持するおよび/またはほぼ維持するために十分な栄養素および培地中で、天然に存在しない6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物産生生物体を培養することを含む。そのような条件下での連続培養は、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日以上を含み得る。さらに、連続培養は、1週、2週、3週、4週、または5週以上、および数か月までを含み得る。代替的に、特定の適用に適切であれば、生物体を数時間にわたって培養してもよい。連続培養条件および/またはほぼ連続培養条件はさらに、それらの例示的期間の中間にあるすべての期間を含み得ると理解されるべきである。さらに、微生物生物体を培養する時間は、望ましい目的にとって十分な量の生成物を産生するために十分な時間にわたると理解される。
【0265】
発酵法は、当該技術分野では周知である。簡単に言うと、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、またはレブリン酸の生合成産生用の発酵は、例えば、流加回分発酵および回分分離;流加回分発酵および連続分離、または連続発酵および連続分離において利用され得る。回分発酵法および連続発酵法の例は、当該技術分野では周知である。
【0266】
実質的な量の6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の連続産生のために、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物産生体を使用する前記の発酵法に加えて、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物産生体はさらに、例えば、同時に化学合成法にさらして、生成物を他の化合物に変換してもよく、または望ましければ、生成物を発酵培養から分離し、順次化学変換させて、生成物を他の化合物に変換してもよい。本明細書に記載されるように、3-オキソアジペートを利用するアジペート経路における中間体、ヘキサ-2-エンジオエートは、例えば、白金触媒による化学的水素化により、アジペートに変換され得る。
【0267】
本明細書に記載されるように、6-アミノカプロン酸、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、または他のC5~C14生成物の生合成を達成するための例示的な増殖条件は、培養条件への浸透圧保護剤の添加を含む。特定の実施形態では、天然に存在しない微生物生物体が、浸透圧保護剤の存在下に、前記のように維持、培養、または発酵され得る。簡単に言うと、浸透圧保護剤は、浸透圧調節物質として作用し、かつ本明細書に記載される微生物生物体が浸透圧応力に耐えることに役立つ化合物を意味する。浸透圧保護剤は、ベタイン、アミノ酸、および糖トレハロースを含むがそれらに限定されない。それらの非限定的な例は、グリシンベタイン、プラリンベタイン(praline betaine)、ジメチルテチン、ジメチルスルホニオプロプリオネート、3-ジメチルスルホニオ-2-プロピオン酸メチル、ピペコリン酸、ジメチルスルホニオ酢酸、コリン、L-カルニチン、およびエクトインである。一態様では、浸透圧保護剤がグリシンベタインである。本明細書に記載される微生物生物体を浸透圧応力から保護するのに適切な浸透圧保護剤の量およびタイプは、使用される微生物生物体に依存することが当業者に理解される。例えば、異なる量の6-アミノカプロン酸の存在下での大腸菌は、2mMのグリシンベタインの存在下で適切に増殖する。培養条件での浸透圧保護剤の量は、例えば、約0.1mM以下、約0.5mM以下、約1.0mM以下、約1.5mM以下、約2.0mM以下、約2.5mM以下、約3.0mM以下、約5.0mM以下、約7.0mM以下、約10mM以下、約50mM以下、約100mM以下、または約500mM以下であり得る。
【0268】
経路の効果的な操作は、十分な活性および特異性を有する酵素の適切なセットの同定を含む。これは、酵素の適切なセットを同定すること、それらの対応する遺伝子を産生宿主にクローニングすること、発酵条件を最適化すること、および発酵後の生成物の形成に対してアッセイすることを必要とする。6-アミノカプロン酸またはカプロラクタムの産生に向けて産生宿主を操作するために、1つまたは複数の外来DNA配列を宿主微生物中で発現させてもよい。さらに、微生物は、内在性遺伝子を機能的に欠失させて有してもよい。これらの改変は、再生可能供給原料を使用する、6-アミノカプロエートまたはカプロラクタムの産生を可能にする。
【0269】
いくつかの実施形態では、6-アミノカプロン酸からHMDAへの変換中に環状イミンまたはカプロラクタムの形成を最小限に抑えるか、または除外さえすることが、官能基(例えばアセチル、スクシニル)を6-アミノカプロン酸のアミン基に付加して、それを環化から保護することを必要とする。これは、大腸菌におけるL-グルタミン酸からのオルニチン形成に類似する。具体的には、グルタミン酸が、N-アセチルグルタミン酸シンターゼにより、まずN-アセチル-L-グルタミン酸に変換される。次いで、N-アセチル-L-グルタミン酸が、N-アセチルグルタミル-ホスフェートへと活性化され、それが、還元およびアミノ基転移されてN-アセチル-L-オルニチンが形成される。次いで、アセチル基が、N-アセチル-L-オルニチンデアセチラーゼによりN-アセチル-L-オルニチンから除去されて、L-オルニチンが形成される。そのようなルートは、グルタミン酸からグルタミン酸5-ホスフェートの形成に続くグルタミン酸5-セミアルデヒドへの還元が、グルタミン酸5-セミアルデヒドから自発的に形成される環状イミンである(S)-1-ピロリン-5-カルボキシレートの形成をもたらすため、必要である。6-アミノカプロン酸からHMDAを形成する場合、ステップは、6-アミノカプロン酸のアセチル-6-アミノカプロン酸へのアセチル化、CoAまたはリン酸基によるカルボン酸基の活性化、還元、アミノ化、および脱アセチル化を含み得る。
【実施例1】
【0270】
実施例1. 6-アミノカプロエートの産生
アジペートの産生のための高効率経路は、類似の酵素反応がスクシニル-CoAとアセチル-CoAとからのアジペート合成のために採用されるように、微生物を遺伝的に変化させることにより達成される(図1を参照)。これを効果的に実施するには、適切な遺伝子の発現、それらの発現の調整、ならびに高いアセチル-CoA、スクシニル-CoAおよび/またはレドックス(例えばNADH/NAD+)比が、この経路を通して、分解でなくアジペート合成の方向に代謝フラックスを駆動するような培養条件の変化が必要である。クロストリジウムにおけるブチレート形成との強い類似性(KanehisaおよびGoto、Nucl. Acids Res. 28巻:27~30頁(2000))は、アジペート合成経路における各ステップが、関与する代謝物の濃度によって反応の方向が支配されるかたちで、熱力学的に実現可能であることを支持する。アジピル-CoAからアジペートを形成する最終ステップは、シンテターゼ、ホスホトランスアジピラーゼ/キナーゼ、トランスフェラーゼ、またはヒドロラーゼ機構を経由して起こり得る。そのような操作型生物体は、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれている米国特許第10,415,042号明細書に記載される。
【0271】
アジピル-CoAを前駆体として使用してカプロラクタムおよび/または6-アミノカプロン酸を形成するための例示的な経路を図2に示す。その経路は、アジピル-CoAをアジピン酸セミアルデヒドに還元することができるCoA依存性アルデヒドデヒドロゲナーゼ、およびこの分子を6-アミノカプロン酸に変換することができるトランスアミナーゼまたは6-アミノカプロン酸デヒドロゲナーゼを含む。6-アミノカプロエートをカプロラクタムに変換する最終ステップは、アミドヒドロラーゼを経由してか、または化学的変換を経由してのいずれかで実現され得る(2002年3月7日に発行されたGuitとBuijsらの米国特許第6,353,100号明細書;1997年12月23日に発行されたWoltersらの米国特許第5,700,934号明細書;2003年12月9日に発行されたAgterbergらの米国特許第6,660,857号明細書)。逆アジペート分解経路が図2に示す反応スキームで補完されたと仮定すると、カプロラクタムの最大理論収率は、消費されたグルコース1モル当たり0.8モルと計算された(表7を参照)。消費されたグルコース1モル当たり0.78モルまでのATPが、カプロラクタムの最大理論収率において形成されるため、その経路はエネルギー的に有利である。ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PPCK)がオキサロアセテートの形成に向かうATP生成方向で機能すると仮定すると、ATP収率をさらに、グルコース1モル当たり産生される1.63モルのATPまで向上させることができる。
【0272】
アジピル-CoAを生成してから、アジピル-CoAから6-アミノカプロン酸を生成する操作型生物体は、参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれている米国特許第10,415,042号明細書に記載される。この操作型微生物は、6アミノカプロン酸を生成した。
【実施例2】
【0273】
実施例2. 6ACA産生は、細胞からのエクスポートにより限定される
6-アミノカプロン酸(6ACA)の産生用に操作された細胞を使用した(例えば、実施例1のように操作した細胞)。操作型細胞を増殖させ、6ACAの細胞内レベルおよび細胞外レベルを監視した。操作型大腸菌宿主における6ACA産生は、定常に達する、6ACAの細胞内蓄積、および細胞内プラトーから時間的に前に上昇して停止した細胞外蓄積を示した。産生速度のさらなる動態解析は、6ACA産生が、細胞からの6ACAのトランスポーターによるエクスポートにより限定されることを示した。
【実施例3】
【0274】
実施例3. 6ACAエクスポーターは、6ACAの産生を増加させる
6ACA産生細胞株を、以下の表12中のトランスポーターを過剰発現するように操作した。次いで、トランスポーター過剰発現細胞株を、6ACAの産生に関して試験した。トランスポーターybjE(別名 lysO)およびyhiMは、6ACAの産生の著しい増加をもたらしたが、他の9つのトランスポーターはそうではなかった。
【0275】
【表14】
【0276】
ybjEもyhiMも、6ACAトランスポーターとして知られていない。シロイヌナズナトランスポーターAtGAT1は、6ACAのトランスポーターとして報告されているが、6ACA産生を増加させなかった。おそらく、そのKmは、産生細胞株中での内在性6ACAトランスポーターのKmのような大きさであった。
【0277】
トランスポーターybjEは、リジントランスポーターとして公知であり、トランスポーターyhiMは、ガンマアミノ酪酸(GABA)トランスポーターとして公知であった。
【実施例4】
【0278】
実施例4. 6ACAインポーターの欠失は、6-アミノカプロエート産生を増加させる
前記の実施例は、細胞外6ACAの増加が、産生細胞株による6ACAの全体的産生を増加させることを示した。6ACAインポーター(産生細胞株内に6ACAをインポートする)の欠失も、6ACA産生を増加させた。表13中のインポートトランスポーターを、産生細胞中で欠失させると、gabPおよびcsiRの欠失は、6ACA産生を増加させたが、lysPトランスポーターの欠失は、6ACA産生を変化させなかった。
【0279】
【表15】
【0280】
GABAパーミアーゼとして知られるgabP、または炭素飢餓により誘導されることで知られるインポーターであるcsiRの欠失は、産生細胞株中での6ACAの産生を増加させた。リジン共輸送体lysPは、その欠失後に6ACA産生を増加させなかった。
【実施例5】
【0281】
実施例5. GDHの過剰発現は、6-アミノカプロエートの産生を増加させる
6ACA産生経路の最終ステップは、グルタミン酸を利用するトランスアミナーゼにより触媒される。グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)の過剰発現は、6ACA産生の最終トランスアミナーゼステップを駆動できるグルタミン酸産生を増加させる。図2Aおよび図2Bは、低いGDH発現、中程度GDH発現、および高いGDH発現による、6ACA産生の増加の棒グラフおよびグラフを示す。GDHの中程度発現および高発現の両方が、6ACAの産生を増加させた。
【実施例6】
【0282】
実施例6. ムコイド表現型遺伝子の欠失は、6-アミノカプロエートの産生を増加させる
産生細胞株は、時折、ムコイド表現型を示し、ムコイド表現型に伴う菌体外多糖の形成を低下させると、6ACAの産生を増加させることができた。いくつかの遺伝子が、ムコイド表現型においてアップレギュレートされると同定され、それらの遺伝子の欠失を行った。遺伝子rcsA、rcsB、wcaF、およびcpsBGの欠失は、産生細胞株を非ムコイド型にしたのに対して、アップレギュレートされる遺伝子galFおよびyjb opの欠失は、依然としてムコイド型である株をもたらした。以下の表14は、遺伝子欠失が、ムコイド表現型および6ACAの産生に及ぼす効果を示す。ΔrcsA、ΔrscB、ΔwcaF、およびΔcpsBGはすべて、産生細胞株を非ムコイド型にし、欠失ΔrcsAおよびΔcpsBGのみが、6ACA産生の大きな増加をもたらした。
【0283】
【表16】
【0284】
ムコイド表現型は、6ACA株の産生特性に対して有害である。ムコイド株は大口径フィルターを必要とし、二重層細胞ペレットをもたらし、細胞は完全にはペレットせず、産生中の取扱いがより面倒であり、かつムコイド表現型の菌体外多糖は、望ましい生成物から炭素を奪う。
【0285】
欠失ΔrcsAを有する非ムコイド株は、6ACA産生を、ムコイド親株に対して約4倍増加させた。非ムコイド株ΔcpsBGは、6ACA産生を、親株に対して約3倍増加させた。他の2つの非ムコイド欠失株は、親株と比べて、6ACA産生の増加が無視できるほどだったか、または増加がなかった。
【実施例7】
【0286】
実施例7. 6ACAトランスポーター、GDH、および抗ムコイド欠失は、6-アミノカプロエートの産生を増加させる
6-アミノカプロン酸を生成するための産生細胞株を、ybjE(lysO)エクスポーターおよびグルタミン酸デヒドロゲナーゼを過剰発現するように、かつムコイド表現型を防止するために、rcsAを破壊するように操作した。産生細胞株はさらに、9833Tにより操作した。それらの操作型細胞株による、6-アミノカプロン酸の産生を、以下の表に示す。
【0287】
【表17】
【0288】
6ACA産生細胞株の以前のバージョンへのybjEの付加は、力価を9.6から15.9に高め(66%の上昇)、量を0.13から0.22に増やし(69%の増加)、収率を0.07から0.12に増やした(71%の増加)。
【0289】
6ACA産生細胞株への変化の各々、エクスポーター(ybjE)の付加、gdhの付加、およびrcsAの破壊は、産生細胞株による6ACAの産生を増加させた。それらの変化を9893Tと組み合わせると、6ACA産生の全体的増加は約4倍であった。
【実施例8】
【0290】
実施例8. 6ACAトランスポーター活性
推定6ACAトランスポーターを、6ACA経路酵素:1)チオラーゼ(Thl)、2)3-ヒドロキシブチル-CoAデヒドロゲナーゼ(Hbd)、3)クロトナーゼ(Crt)、4)トランス-エノイル-CoAレダクターゼ(Ter)、5)アルデヒドデヒドロゲナーゼ(Ald)、および6)トランスアミナーゼ(TA)をコードする遺伝子をさらに含む、大腸菌のΔlysO株中で試験した。代替的に、推定6ACAトランスポーターを、経路遺伝子を含有する大腸菌染色体に組み込み、生じる株を、6ACA産生に関して評価した。
【0291】
操作型大腸菌細胞に、最少培地中で5%グルコースを与え、35℃において16~24hインキュベーション後、細胞を回収して、上清中の6ACAのレベルを、標準的LC/MS法によるか、または精製6ACA-トランスアミナーゼを使用して酵素的に決定した。6ACAの酵素的検出には、精製6ACAトランスアミナーゼ(3μM)、50U/mLウシグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(SIGMA)、0.1mMのαーケトグルタル酸、0.1mMのNAD、10μMのPMS(1-メトキシ-5-メチルフェナジニウムメチルスルフェート、および2mMのXTT(2,3-ビス-(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム-5-カルボキシアニリド)を、0.1MのTris-HCl、pH7.4バッファ中でインキュベーション後に、450nmで吸光度を測定した。上清中の6ACAレベルは、前記と同じ成分に加えて既知量の6ACAを含有する検量線を使用して決定した。評価された各トランスポーター遺伝子に関して、候補遺伝子を含有しないプラスミド(空ベクター;陰性対照)の上清中の6ACAに対する、トランスポーター遺伝子を含有するプラスミドの上清中の6ACAから相対的6ACAエクスポートを決定した。推定6ACAトランスポーターの活性を、6ACAトランスポーターが付加されていない対照に対する、上清中の6ACAの量としてスコアする([推定6ACAトランスポーターの上清6ACA]/[推定6ACAトランスポーターが付加されていない上清6ACA])。
【0292】
試験した推定6ACAトランスポーターに関する結果を、以下の表16に示す。<0.80の相対的トランスポートスコアはマイナス(-)であり、0.8~1.1のスコアは+であり、1.10~2.0のスコアは++であり、検出されなかった場合は空白である。++のスコアを有する6ACAトランスポーターは、細胞からの6ACAのエクスポートを増加させる。細胞からエクスポートされる6ACAの量を低下させる6ACAトランスポーター(-および空白)は、6ACAインポーターである。
【0293】
【表18】
【0294】
【表19】
【0295】
【表20】
【0296】
【表21】
【実施例9】
【0297】
実施例9:グルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性
推定GDH候補を発現プラスミドにクローニングして、大腸菌に形質転換した。推定GDH候補を有する大腸菌の細胞懸濁液を600nmで測定し、細胞懸濁液を4のODに正規化した。遠心分離により細胞ペレットを調製し、次いで、ペレットを、ヌクレアーゼおよびリゾチームを含有する化学溶解試薬により、室温において30分間溶解した。このライセートを、室温(22~25℃)でGdh活性を測定するために使用して、アッセイは、次のように行った:クルードGdhライセートの一定分量、望ましい濃度のa-ケトグルタレート(0.5mM)、5mMの塩化アンモニウム、および0.2mMのNADHまたはNADPHを、0.1MのTris-HCl、pH7.5バッファ0.02mL中で混合した。反応の動力学を、蛍光または340nmでの吸光度を使用して、NADHまたはNADPHの酸化により監視した。プレートリーダープログラムを使用して、速度(ΔF/分)を決定した。配列番号10に対する相対活性を決定した。
【0298】
【表22】
【0299】
【表23】
【0300】
【表24】
【実施例10】
【0301】
実施例10:アグマチンおよびプトレシンの低下
図1のHMD経路(A B C D N O P Q R U V W)を有するように操作した大腸菌株における欠失により、アルギニンデカルボキシラーゼ(speA、GenBank登録番号NP_417413.1、Uniprot登録番号P21170、配列番号49)およびアグマチナーゼ(speB、GenBank登録番号NP_417412.1、UniProt登録番号P60651、配列番号51)をノックアウトした。
【0302】
これらの株では、欠失を有さないHMD株と比べて、アグマチンおよびプトレシン副産物の比率および力価が低下したことから、6ACAの産生が増加した。ΔspeAB株に関するそれらの結果を、図9Aおよび図9Bに示す。
【0303】
本明細書で考察および引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、参照により本明細書にその全体が組み込まれている。開示される発明は、記載される特定の方法論、プロトコルおよび材料に限定されず、それらは様々であり得ると理解される。同じく、本明細書で使用する術語は、単に特定の実施形態を記載する目的のためであり、本発明の範囲を限定することは意図しないと理解され、本発明の範囲は、添付クレームによってのみ限定される。
【0304】
当業者は、慣例に過ぎない実験を使用して、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態に対する多数の均等物を認識するか、または確認できる。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって含有されると意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
【配列表】
2024503868000001.app
【国際調査報告】